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クレイジー・デスゲーム【長編】

15有紀 ◆PyB831QpqM:2009/12/19(土) 10:20:16 ID:WPT8tlWQ
次に出発したのは児美だった。児美は倒れている瀬奈を見つけると、辺りに誰もいないのを確認してからそっと手を触れた。少し震えながら。
「ねえ、起きてよ。しっかりして!あなた名前は?」
すると瀬奈がわずかに呼吸しているのが分かった。ほっとしながら忘れていた自分のディパックを空けてみる。やけに重いと思っていたら、そこにはモーニングスターが入っていた。児美は女にしては力があり、空手部の中でも実力者だ。扱えないことはない。名簿を見てみると、この女の人が瀬奈という名前だということが分かった。(先に出発したもう1人の女、久美子は児美の元クラスメートで名前も覚えていたため、消去法で)
このままここに放置しておいたら、きっと瀬奈は誰かに見つかり止めを刺されてしまう。そうでなくても瀕死の重傷なのだ。そう思った児美は瀬奈を背中に抱え、その場を離れることにした。確実に足手まといだが仕方ない。児美は弱い者を放っておけない性分なのだから。できるだけ急いだ。次の人が危険人物ではありませんように。そう願いながら。

次に出発したのは政雄だった。柔道部に所属していた過去があり腕力はあったが、ゲーム説明のとき男で一番怯えていたのは彼だった。慌てながらディパックを開けても、出てきたのはただのハチマキだった。こんなものでどう戦えばいいんだよ……と政雄はたくましい体つきに似合わない震えた声を漏らした。
戸惑っている間にあっという間に次の参加者の足音が聞こえた。逃げようかどうか戸惑っていると、そこには元クラスメートの中でも大人しい美代子が出てきて声をかけた。
「政雄くん?」
その声でようやく政雄は少し落ち着いた。名簿を見ていなかったから分からなかったものの、自分の次に来たのは美代子だったんだ。嬉しくてほっとする。
「あの……」
おずおずしく美代子が取り出した武器を見て政雄は最初何だか分からなかった。それでも美代子が自分の方に武器を向けてきたことに対して政雄は一気に恐怖に陥った。
ああ、あんなに大人しかった美代子ちゃんでもやっぱり自分の命のためなら人を殺したりするんだ。そう思い、政雄は思いっきり叫んだ。
「うっ……うわあああああっ!」
その声に美代子もびっくりして、ひっと小さい悲鳴を上げる。そして、政雄の恐怖の原因に素早く気付き、手にしたスタンガンをディパックに戻した。
「だっ……大丈夫だから、そんなに大きい声出さないで!他のやる気のある人とかに見つかっちゃうかもしれないわ」
「みっ……美代子ちゃんは大丈夫なんだよな?俺を殺そうとか思ってないよね?」
「もちろんよ。……あ、万が一私たちが最後の2人になったりして追い詰められたら、私もどうなっちゃうか分からないけど今のところは……」

その声色はどこか自分を保つ自信が無さそうだった。例え殺す気でもそんなことは口にしない方がいいのは美代子にも分かっている。だが彼女はどこか正直すぎる節があった。
しかし、その正直さがちょうど政雄を落ち着かせる結果になった。まだ混乱で息は荒いままだったが。
「……信用していいんだよね?」
「ええ、信用して欲しいわ。どうせ私は最後までは生き残れないと思うの。だから積極的に人を殺したりしない。残りの時間どうやって過ごすか考えてみたの。それでどうしても会っておきたい人がいて……。政雄くんにも協力して欲しいわ」
「会っておきたい人って誰?」
「政雄くんは知らないと思うな。私の親友。淳くんっていうの。ほら、この名簿に鏡谷淳って載ってるでしょ」
「ホントだ。この人あと3人で出てくるんだ。じゃあどこかで待つ?」

その時だ。後ろに誰か人がいると気付いたのは。考えてみれば次の参加者がもう現れるころなのに、正門前で長々としゃべっていたのはあまりにも無用心すぎる。しかし2人は混乱していたためか、それとも本来の性格のせいか、そのことをあまり気にかけてはいなかったのだ。
背後にはサーベルを持った修平が立っていた。しかし、いきなり襲い掛かってはこなかった。2人の会話を聞こうと待っていたようだ。
「お前ら、待ち伏せならもっと慎重にやれば?」
修平が呆れたように2人に話しかけた。もちろん修平にも、政雄と美代子が誰かを狙って待ち伏せしていたわけではないのが分かる。しかし、話をほとんど最後の部分しか聞いていなかったため、どんな対応に出るか少し迷っているようだった。再び政雄が恐怖で混乱しだす。


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