したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

クレイジー・デスゲーム【長編】

14有紀 ◆PyB831QpqM:2009/12/19(土) 10:18:40 ID:WPT8tlWQ
智史がそこまで言いかけた時、久美子の手首にピッケルが突き刺さった。久美子は悲鳴を上げて銃を取り落とす。何事かと思い、智史がそちらを向くと、そこには先ほど捨てたピッケルを拾い上げている蒼の姿があった。
「あっ!私の銃……」
久美子と蒼では、蒼の方が銃を拾う体勢が整っていた。智史は思わず蒼に体当たりして体制を崩させる。その隙に久美子が再び銃を手にした。そして蒼に向かい引き金を引こうとするその瞬間……智史が、久美子を半ば強引に引っ張り駆け出した。
「逃げるぞ、久美子!」
久美子は逆らおうとした。これが蒼を殺せるチャンスだと。しかし智史は久美子に誰かを殺して欲しくは無かった。それに、久美子の怪我した手で正確に相手を狙えるとは思えない。この近距離なら自分達がピッケルで殺されるかもしれない。それに、戦いに巻き込まれること自体が耐えがたかった。

蒼は冷たい目で逃げていく2人を見送った。ゲームのプレイヤー達が次々と出発する校門前で長々と立ち話とはどれだけ気楽なんだろうと蒼は思った。
しかし、同時にちょっとだけ羨ましいとも感じた。もちろんそれはこのゲームの中では不必要な感情なのだけど。
俺にもあんな気楽さがあれば、少しは人生を楽しむことが出来たんだろうか、と一瞬だけ考えた。その直後、自分の考えがいかにもこれから死に逝く者の考え方だなと思い、すぐに打ち消した。俺は負けない。今までの不運に比べたらこんなゲームは大した障害にはならないはずだから。必ず生き残ってその後は……。
そこまで考えて、蒼は自分のディパックを空けた。生き残った後のことは生き残ってから考えればいいのだから。
中から出てきたのはロープだった。とっさに昔の嫌な思い出が蒼の脳裏に映る。自分はどこまで不運なんだろうか。
「ただの役立たずな支給品ならともかく、よりにもよって……」
思わず口に出していた。まあいい、ピッケルが手に入ったんだから、これを自分の支給品だと思うことにしよう。そう考え、ロープを自分のディパックの中に戻した。
名簿によると次の出発は浅川瀬奈。あまり覚えていないが、確か説明のときにブルブル震えていたあの女だ。問題無いだろう。このまま待ち伏せして殺すことにするか。

蒼がそんなことを考えていると、予想通りビクビクした様子で涙目になりながら歩いてくる瀬奈の姿が見えた。恐怖のあまり、ディパックを開けることも忘れている。
これ以上怯えさせるのも悪いような感じだが、彼女には俺の優勝のため死んで貰う。
瀬奈が蒼の姿を視界に捕らえ、ビクッと肩を震わせた。だが、もう遅すぎた。次の瞬間、蒼のピッケルが瀬奈の頭に浅く突き刺さった。
瀬奈は気絶し、その場に倒れこんだ。ピッケルを引き抜くと頭からはゆっくりと血が流れ出した。
蒼は瀬奈が死んだと思い、(もっとも蒼にとって無害なら、それは死んだとほぼ変わらない意味を持つのだが)彼女のディパックの中を探った。出てきたのは幸運にも銃だった。
これでいい、これまでの人生の不幸を考えれば、自分にもこれくらいの幸運が訪れてもいいはずなんだ。
そう思い蒼は再び待ち伏せをすることにした。

次は伊達雷太。こちらも蒼はあまり覚えていない。ただ、男の分瀬奈よりは苦労するだろうという予感はあった。蒼はそれほど運動能力に自信はない。いざとなったら逃げ出すのは(殺されるのとは思わないようにした、あえて)自分の方かもしれない。
そこに雷太が来た。右手にはレイピア、左手にはナベのフタを盾代わりに持っている。どうやら支給品は1つとは限らないようだ。
雷太は、倒れている瀬奈を見ると、驚いて蒼から逃げ出した。蒼も追いかけたが、相手が近距離武器のときのために、離れた位置にいたためなかなか追いつくことが出来ない。どうやら足は雷太の方が速いようだ。蒼はしばらく追うと諦めた。そして、自分がずいぶん廃校から離れてしまったため、待ち伏せの作戦もそこで打ち切った。今後どうすれば良いか考え、そういえば竜哉と瑠璃葉が井戸で合流する予定だったことを思い出した。誰かにチームを組まれると自分は不利になる。その前に殺しておいた方が都合がいい。そう考え、蒼は井戸周辺に向かうことにした。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板