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欧州情勢・西洋事情

901とはずがたり:2015/11/23(月) 17:21:26
>>900-901
しかし、近年のドイツは出生率が世界で最低レベルに落ち込むなど少子高齢化が進み、労働力不足が目立ち始めている。実際、政府による子育て支援策は十分に機能せず、これまでに築いた経済優位性を早晩失うのではないかとの懸念が高まりつつある。さらに、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題に端を発してドイツ製造業の威信が揺らぐなど国内経済は変調の兆しを示している。

また、旧東ドイツの所得水準が旧西ドイツより大きく劣後し地域間格差が残ったことで、移民・難民に対する嫌悪感はドイツ社会に根強い。特に今夏以降の難民の急増ぶりに恐怖感も広がるなど国民感情は揺れている。今後、難民問題は国論を二分して社会を不安定化させる恐れがある。

<VW国有化あるか、強まる中国傾斜>

それでも、これまでは経済成長が様々な国内矛盾を覆い隠してきた。しかし、ここにきてVW問題が加わり、社会の亀裂に加えて経済の変調が明らかとなっている。ドイツは環境保護を優先する国とのイメージが強かっただけに、今回のVW問題は同国製造業のブランドを失墜させ、さらに環境技術水準の高い国家としての威信を大きく損なった。

VWについて言えば、同社の自己資本は今後、損害賠償金や、米国当局から課される制裁金、さらにリコール(回収・無償修理)費用などによって大きく毀損される恐れがある。そうした事態を避けるために、業績が堅調な傘下のアウディなどを売却したり、中国事業を手放したりして、資本増強を図る可能性が一部で報じられている。

そして、最後の手段が国有化だ。もちろん、企業救済にあたっての税金投入には国民の納得感を得ることが必要である。とはいえ、自動車産業の裾野は広く、多くの雇用を生み出している点から、最悪の場合には国有化の選択肢は排除できないだろう。

ところでドイツ経済の特徴は外需依存度の高さであり、欧州域内に加えて、中国市場に強みを持つことだ。メルケル首相は10月末、自国の主力企業を帯同して在任10年間で8度目となる訪中を行った。そして、独フランクフルトでの人民元建て金融商品国際取引所の開設、130機(総額約170億ドル=約2兆円)に上るエアバス製航空機売買契約、さらに中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を軸に両国企業が共同でシルクロード域内に進出するといった大型商談をまとめ、ドイツ経済の中国依存度を高めることを明らかにした。

ただし、減速傾向を強める中国経済への傾斜が、新たな成功体験創出につながるとは考えにくい。実際、中国の貿易総額は減少を続けており、輸出産業への打撃を通じてドイツの産業活動全般への下押し圧力になる可能性が懸念されている。

これまで述べてきたとおりドイツ経済は、生産年齢人口の減少、ブランド力と輸出競争力の低下、そして金融力の陰りなどに直面し、変調の色が濃くなっている。これを打開するために各民族それぞれの独自文化を尊重し共存を目指す文化多元主義へのシフトをより鮮明にし、人口減少対策として難民の受け入れを積極的に図ることに徹するのではないだろうか。

*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。


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