アメリカのTVバラエティ番組の特徴と魅力のひとつに番組専属の生バンドの存在がある。バンドは単に演奏をするためだけにいる訳ではなく、魅力的なパーソナリティとウィットを備えたホスト(MC)の”相棒役”を果たす。ホストとバンドマスターとの掛け合いは番組の名物となっているケースも多い。CBSネットワークの”レイトショー”におけるデイビッド・レターマンとポール・シェイファ、NBCならば”ザ・トゥナイト・ショー”のジェイ・レノとケビン・ユーバンクス、”レイトナイト”のコナン・オブライアンとマックス・ワインバーグ。オープニングだけでなく、CM前のジングルやアドリブ的な効果音の挿入など、統制の利いた歯切れのいいバンドの生演奏が番組にライブならではの華やかさとテンポを与える。日本のバラエティ番組と比べると放送時間帯が深夜に及ぶこともあり、いかにも大人向けの贅沢でなおかつリラックスしたトークとムードをかもし出す。日本にもこんな構成の番組がひとつくらいあってもいい。そうなるとホストはやっぱり大橋巨泉かタモリあたりか? Gimmie a breakって。
この楽屋オチ的悪乗りは、幸運にもエスカレートしていく。エイクロイドは敬愛するジョン・リー・フッカーなどのブルース・R&Bミュージシャンのスタイルを取り入れてあの黒いストレートジャケット、ポークパイハット、サングラスのアイコンを作り上げると同時に、後の映画化の種となる着想やキャラクタ設定のアイディアをあたためていった。当時、SNLバンドのアレンジを事実上仕切っていたポールシェイファの人脈とコーディネーションでブルース兄弟をバックアップする強力なミュージシャン達が召集される。サザンソウルの雄、STAXサウンドの黄金期を支えた Booker T & The M.G.s のギタリスト、スティーブ・クロッパーとベースのドナルド・ダック・ダン、シカゴブルースからはギターのマット・マーフィー、ホーンセクションはSNLバンドがサポートした。いずれもプロフェッショナルと言う表現がぴったりの懐の深い、それでいてメインの魅力を引き立てることに長けた一流のスタジオミュージシャン達だった。シェイファの手によってブルース、R&B、ジャズそれぞれのプレイヤのバックグラウンドは絶妙にブレンドされ、ブルース・ブラザース・バンドのクレジットで78年にリリースされたファースト・フル・アルバム "Briefcase Full of Blues"はスマッシュヒットを記録した。