米国のムスリム団体「US Council of Muslim Organizations」のウサマ・ジャマル(Oussama Jammal)代表は、米大統領選にドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が立候補する時代にこうした動きは危険だと危惧する。「イスラム教徒の入国を禁止したり、監視対象にしたりすることを主張する人物にこのような道具を与えることを、私たちは本当に望んでいるのでしょうか?」
さらに2004年には、国勢調査局が2000年の調査時に中東地域出身と申告した人々の所在に関する情報をまとめていたことが分かり、物議を醸した。この事実は第2次世界大戦(World War II)中の日系米国人の強制収用という暗い歴史を想起させた。当時、国勢調査局が日系人の特定に協力していたとの調査報告もある。
トランプの「Make America Great Again(アメリカを再び偉大にしよう)」という選挙スローガンと「アメリカを優先する」というメッセージの本質は、「アメリカを、マイノリティや移民が乗っ取る前の、居心地がよい白人の国に戻そう」ということだ。トランプに投票した裕福な白人有権者の言葉からは、そういったセンティメント(心情)を感じる。
サンディエゴ州立大学(San Diego State University)で起きた事件は、大学警察当局がヘイトクライムと強盗などの疑いで捜査している。大学警察によると、被害者の女子学生は構内で2人から「トランプ次期大統領とイスラム教コミュニティーに関する複数の言葉」を浴びせられ、財布とリュックサック、車の鍵を奪われた。女子学生は助けを求めに行き、警察官と共に現場に戻ったが、その時には既に車も盗まれていたという。
全米各地の教育機関では、リベラルな校風で知られる学校も含め、ここ数日で憂慮すべき事件が立て続けに起こり、学校側は対処を約束するメールを保護者らに送る事態に迫られている。中には、トイレの壁にトランプ氏陣営のキャッチフレーズ「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」をもじって「米国を再び白人の国に(Make America White Again)」というスローガンが落書きされていたケースもあった。
■危惧される暴力の激化
言葉の暴力だけでは終わらなかった例もある。
カリフォルニア(California)州サンノゼ州立大学(San Jose State University)では、イスラム教徒の女子学生が背後からいきなり白人男性にヘッドスカーフを引っ張られ、首が絞まりそうになる事件が発生。ミシガン大学(University of Michigan)でも、ヘッドスカーフを外さなければライターで火をつけるぞとイスラム教徒の女子学生が男性に脅される事件があった。
モンタナ(Montana)州ミズーラ(Missoula)では、ユダヤ人がメディアを牛耳っていると非難するアメリカ・ナチ党(American Nazi Party)のパンフレットが地域で配布され、地元のシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)が警察に警備を強化するよう要請した。
クレイ郡開発事業団(Clay County Development Corp.)のパメラ・ラムジー・テイラー(Pamela Ramsey Taylor)代表は、米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が勝利したことを受け、フェイスブックに「これで気品があって美しくて堂々としたファーストレディーをホワイトハウス(White House)に迎えられるかと思うとわくわくする」「ヒールを履いた類人猿は見飽きた」などと投稿したとされる。