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国際経済学

804とはずがたり:2015/10/08(木) 20:13:39
反対派の懸念点はほとんど杞憂ただし政府の十分な説明が重要

 デメリットとして、TPP反対派が懸念していたものは、アメリカの言いなりになってしまうということだった。さすがに自由貿易におけるメリットがデメリットを上回るという定量的な部分は否定できないので、貿易ルールがアメリカ有利になって、日本がデメリットを受けることが強調されていた。

 その代表例として、ISD条項(国家対投資家の紛争処理条項)を考えよう。筆者は、これを重大な問題と考えていない。というのは、これまで日本は25以上の国と投資協定を結んでおり、その中に既にISD条項は入っているが、対日訴訟は一件もない。一方で、世界では同条項による訴訟は400くらいあり、訴えられている国は国内法整備が不備の途上国が多い。ISD条項は投資家や企業が国際投資で相手国に不平等な扱いを受けないようにするためのものだから、日本のような先進国では有利に働く。

 これまでの報道では、ISD条項がTPPの交渉で大きな問題になったということを聞いていない。実際には、投資協定の書き方がどうなるかであるが、従来と同じだろう。であれば、心配する必要はない。

 ISD条項以外にも、懸念点があるだろう。重要なのは、条約の国会承認や国内法の整備での国会審議で、十分に政府から説明を受けることだ。筆者の感覚では、従来からある話なら解決法が既にあるし、たいした話にならないことが多い。新規の話があれば別だが、TPPのような多国間交渉では、まとめるために、すべての国で新規の話を避け、どこかの国で前例のあるものになる傾向がある。もしすべての国で新規の話であれば、これまでの交渉で問題になっているはずだ。

 TPPは多国間交渉であるから、対アメリカという観点では、二国間交渉より有利だ。今回の交渉でも、知的財産権において、最後までアメリカにオーストラリアなどが抵抗して、日本は結果として漁夫の利を得ている。

 むしろ、アメリカは知的財産権保護などで妥協したので、同国議会がTPPを認めるかどうかが心配になるくらいだ。

 なお、このアメリカの事情については、ノーベル賞学者クルーグマンのブログに興味深いことが書いてある。クルーグマンは、知的財産権で米国企業有利にしようとしている点でTPPに消極的だった。ところが、米政府(ホワイトハウス)から、今回の交渉ではかつてと米政府は変わったと説明されたという。米国企業や共和党の怒りを見ると、この点が確認できるとしている。

 アメリカ議会は同国政府から情報を多く得ているので、そこで今回の大筋合意についてアメリカとして譲りすぎという意見が多いのは、日本には朗報かもしれない。ただし、日本の国会もしっかりと政府から情報を得て、条約の国会承認や国内法の整備での国会審議を行わなければいけない。ここが最後の山である。アメリカ議会は議会承認を行わないことも珍しくない。

 いずれにしても、多国間交渉によって、米国の尖った意見が緩和されて少なくなっていくというTPP推進論者の見立てのほうが、これまでのところやや分があるようだ。今後具体的な事項の詳細がわかれば、TPP反対派が懸念していたことはほとんど杞憂ということになるだろう。


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