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国際関係・安全保障論

1■とはずがたり:2003/01/22(水) 12:15
経済畑出身の私の鬼門,外交・安全保障を考える。
適宜,憲法談義・世界経済等もこちらで。

4076とはずがたり:2016/09/17(土) 15:02:49

富士重勝訴でも晴れない防衛調達費の不透明
防衛省の調達システムは問題が多すぎる
http://toyokeizai.net/articles/-/97503
清谷 信一 :軍事ジャーナリスト 2015年12月20日

富士重工業がライセンス生産していた戦闘ヘリ「AH-64D」の調達中止をめぐる訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷は12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定したことになる。

防衛省が負けるのは必然だった

AH-64Dの調達計画は当初62機だったが2002〜2007年度に13機調達したところで停止されている。

とはいえ、防衛省とメーカーである富士重工の間では生産契約は結ばれていない。いわば口約束で何千億円の契約を行っていたわけだ。これは防衛装備調達では普通に行われており、関係者は誰も不思議に思っていなかった。ある意味でメーカー側は泣き寝入りをするしかない受発注形態だったのだ。

AH-64Dの問題が発生した後の2008年度から、防衛省は装備の単価以外にも「初度費」(兵器など装備の生産を始めるのに必要な治具やラインの構築費用などの初期投資にかかる費用のこと)を支払うようになっている。つまり防衛省は調達システムの問題点を理解しており、その問題点を改善したわけだ。そうしなければ、一方的にリスクを負わせられる防衛産業からの反発が必至だったからだ。企業によっては防衛産業から撤退するところも出てきただろう。

そうであれば和解をすればいいものだろう。ところが、防衛省はメンツのためなのか、はたまた裁判で負ければ支払いは財務省がもつことになるためなのか、和解をせず長々と裁判を継続してきた。これはとんだ茶番といえる。

初度費の支払いで防衛装備調達の問題が解決したわけではない。むしろ調達の不透明さを拡大し、弊害が大きくなった。

そもそも防衛装備の調達は根源的な問題は、戦闘機など一部では例外的に調達が事前に発表されることはあるが、導入あるいは開発時に、その開発、調達数、調達期間、調達プログラムの総額が国会で審議されることがないことだ。例えば現在調達されている10式戦車にしてもオスプレイにしても、防衛省や自衛隊は内部での見積もりやプランは持っているが、国会や納税者は調達の具体的なプランを知らされていない。

期間と総量がわからないまま開発

つまり防衛予算を審議すべき国会議員ですら、10式戦車がいつまでに何輌調達され、その調達プログラムの総額がいくらかも知らされていない。当然どんな運用がなされるかも知らない。にもかかわらず、国会は1000億円近い10式戦車の開発予算を承認し、生産を認めて毎年調達が行われている。1輌あたりの開発費は100輌と1000輌では10倍も違うことは言うまでもないだろう。

当然、国会議員たちは基本的な事情を全く知らされておらず、戦車が必要かどうか、費用対効果すら判断できない。にもかかわらず、戦車の開発や調達を国会は認めていることになる。文民統制の基幹は軍隊の予算と人事を政治が管理・監督・掌握することにある。だが、日本では国会議員が自衛隊の予算を管理・監督・掌握しているとはいいがたい。このような文民統制の放棄ともいえる無責任なシステムで軍の装備調達を行っている民主国家は、筆者の知る限りに我が国しか存在しない。

以下は、たびたび東洋経済オンラインに書いてきたことの繰り返しになるが、重要なことなので繰り返す。

装備調達は民間企業ならば設備投資である。民間企業の役員会が自社の設備投資に関して投資計画の概要はもちろん、プログラムにどの程度の期間、規模、投資総額も知らされないまま、設備投資を了承するだろうか。例えば新工場を建設するとして投資金額が、100億円か1000億円かもわからず、完成までの期間が3年なのか30年かもわからないで、ゴーサインをだすだろうか。

そんなことをすれば資金調達計画が立てられないだけではなく、工場ができた頃にはすでに設備が旧式化して市場で競争力のある製品が生産できなくなる可能性もある。そんなことをやる企業は倒産するだろう。

これは防衛装備でも同じだ。例えば空自が採用したF-35Aは周辺諸国、特に中国の戦闘機の近代化によって空自の航空優勢の減退が見込まれるために、老朽化しているF-4EJ改の後継として調達が決定された。これは2個飛行隊が調達さることが決定していたが、それをいつまで行うかが決定されていない。

4077とはずがたり:2016/09/17(土) 15:03:26

10年後かもしれないし、30年後かもしれない。防衛省は大臣以下期間が長くなれば既存のF-4EJ改の飛行時間を減らせばいいと呑気なことをいるが、練度の維持のためには一定以上飛行時間を減らすことはできない。仮にやれば技量低下で部隊を維持できなくなり、空自の基地は基地ではなく航空博物館になってしまう。

だがその間にも中国は刻々と国産のステルス戦闘機を開発したり、ロシア製の最新型のSu-35戦闘機の導入を決定したりしているので、日中の航空戦力の質的なギャップは徐々に縮まりつつある。

本来、例えば10年後にまでに2個飛行隊の戦力化が必要なのに、20年もかかるのであればその間必要な戦力を空自は保有し得ないことになり、抑止力としての機能も果たせないことになる。その間くらいに有事が勃発すれば空自は博物館アイテムのF-4EJ改で戦わざるをえない。何のために新装備を導入するのか、目的がなく、調達自体が目的化している。

仮に10年後までに整備に戦闘機100機の投資に1兆円が必要であったとしよう。とろこがそれに20年かかれば、調達の途中で戦闘機は旧式化するので、投資に見合ったリターンは期待できない。運送会社でいえば今年のモデルの軽トラックが200万円だとして、未使用だが燃費も性能も劣り、パーツも枯渇している20年前のモデルの軽トラックに同じ費用を出すだろうか。

自衛隊の調達の多くは細々と続くので、旧型装備との併用期間が長い。その間訓練や整備は2系統が必要だ。当然スペアパーツなどの量産効果もでない。また実際に戦闘が起こった場合、装備の異なった部隊が混在すれば兵站面でも不利である。

併用期間が5年で済むのか30年も続くのかでは、運用および運用コストに大きな違いが出る。だからこの面からも諸外国では調達期間、あるいは戦力化までの期間をできるだけ短くしている。ところが自衛隊では1989年に64式小銃の後継として採用された89式小銃は四半世紀たった現在でも更新が完了していない。

オスプレイを何機調達するのか

あれだけ騒がれたオスプレイにしても防衛省は現在の中期防衛力整備計画で17機を調達する事だけを決定し、最終的に何機調達するのか発表していない。防衛省の予算担当者も中谷大臣も、何個飛行隊を編成するのかわからない、調達してから決めると発言している。

必要な部隊の規模が分からない、というのは換言すればどのような運用をするのか決めていない、あるいは分からない。欲しいから買いましたといことだ。当事者意識が完全に欠如している。新装備を買うという手段が目的化している。

政治家にしても納税者にしてもオスプレイの導入に賛成でも例えば2個飛行隊は多すぎるが、1個飛行隊12機、それと教育所要、予備機として17機ならば理解を示す人もいるだろう。だが現状オスプレイを導入するか、否かの二元論でしか意見を述べられない。これではまとも防衛議論が成り立たない。

防衛省は当初、初度費の存在を積極的に発表してこなかった。記者クラブに対してレクチャーも行っていない。この初度費の問題を初めてとりあげたのは筆者である。筆者は2009年にブログで初度費のことを書いて以来、執拗にこの問題を指摘している。

常識的に考えれば、装備調達のコストは初度費+(調達単価×数量)という式が成り立つ。初度費は事前に総額が分かり、調達の開始の当年あるいは、こぼれても2〜3年で支払いが終わる、と思うだろう。ところが実際には初度費には初年度に以降に発生した各種の不具合の調整や改良などにかかった費用を延々と払うことができる。理屈の上では20年でも30年でも払い続けることができるのだ。これでは初度費は事実上「初度費」ではない。

しかも防衛省は当初各装備の初度費の金額を公開していなかった。防衛省は平成24年度からHPなどでその年度に調達される主要装備の初度費が明示するようになったが、これは防衛省内局の幹部によれば、財務省から促されて渋々公開に踏み切ったものだ。本来装備の本当の調達単価は(初度費+調達単価×調達数量)÷数量となる。総額から初度費を引けば、その分調達単価が安く見える。防衛省が初度費を示さなかったは、調達単価を安
く見せるための印象操作であったと批判されても仕方あるまい。

4078とはずがたり:2016/09/17(土) 15:03:37

>>4076-4078
防衛装備品の調達単価の正確な積算ができない

筆者は初度費に関して防衛省に取材したが、前記の理由で調達前に初度費の総額を出すことはできない、という。それでは本来の意味での初度費(イニシャルコスト)ではない。この怪しげな初度費のために、防衛装備品の調達単価の正確な積算は不可能となり、防衛装備調達はますます不透明になった。

このような国際的にみて不透明かつ異常な防衛装備品の調達は装備品のコストを押し上げ、議会が防衛調達を監視することを妨げている。更には軍事的な整合性からも外れて、自衛隊を弱体化させているとも言える。年末にも防衛省予算の政府案が示されるだろうが、早急にこのような装備調達の悪癖と欠陥を改めるべきである。


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