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国際関係・安全保障論

3267名無しさん:2015/06/27(土) 21:27:46
>>3266

解釈改憲は可能か?
このように、集団的自衛権の中核部分が憲法により否定されているとの解釈は、1980年代どころか、1950年代から、少なくとも半世紀以上、政府が一貫して繰り返してきたものなのである。国会の会議録を読めば、首相、閣僚、内閣法制局長官、外務省条約局長らが、政府として一丸となり、時として「物わかりの悪い」議員たちの執拗な追及に対して、苦心しながらも丁寧に憲法解釈を説明してきたことがわかる。政策論としては、安倍首相の祖父を始めとする歴代の首相、そして歴代の長官や局長のなかにも集団的自衛権の行使を支持する人間はいたかもしれない。しかし政府は、国会に対して、半世紀間、集団的自衛権は憲法により禁じられていると説明し、それを前提として国会はこれまでの立法活動を展開してきたのである。

集団的自衛権という、日本という国家の命運に直結する、憲法上最も重要であると言ってもよい論点で、半世紀以上維持してきた解釈を、しかも法の専門家がこぞって誤りだと指摘しているという状況があるわけでもないのに、一時の政権が変更することは、明白に重大な危機が差し迫っている例外状況でもない限り、とても正当化することはできない。そしてこれほどまでの大問題を、憲法改正もせずに断行する国家は諸外国からの信頼も失うだろう。この問題での解釈改憲は、失うものがあまりにも大きすぎる。

筆者には、安倍首相の言うように「集団的自衛権を行使できるなら、日米は圧倒的に対等になります。日米が対等になれば、アメリカに対してもっと主張できるようになる」(「論座」2004年2月号)とは到底思えないし、これほどまでに近隣諸国との関係が悪化しているタイミングで集団的自衛権行使の容認へと政策転換することが得策とも到底思えない。とはいえ、民主的に正当な政権がそう考えて決断することは許されるだろうし、そのために国際政治や外交の専門家の意見を聴くことも賢明であろう。著名な国際政治学者をメンバーに含む「安保法制懇」がそのような役割を自任し、集団的自衛権行使の容認を提言するのであればそれはそれで良い。しかしそのような政策を実現する手段は、法的に正当化できるものでなければならない以上、今度は法の専門家の意見に耳を傾ける必要がある。政策上の必要性から、過去半世紀の歴代内閣の憲法解釈は誤っていたなどと嘯くことほど大きな誤りはないだろう。そしてそれはあまりにも先人への礼を欠く。

安倍首相は、集団的自衛権行使のための憲法9条改正が現状では困難とみるや、憲法96条から先に変えようとした。それも評判が悪く想定した支持が得られないとなると、今度は解釈改憲を先行させようとしている。内閣の法律顧問団がそれに法的観点から抵抗するや、そのトップの首を、先例にも慣行にも反して「お友だち」にすげ替えることで強行突破しようとする。このように次々に禁じ手を用いて伝統を破毀しようとするのは、つくづく美しい国に相応しくない。壊し屋ではなく、真の保守政治家として歴史に名を残すためにも、正攻法での政策実現を目指すべきではないだろうか。

南野森
九州大学法学部教授


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