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国際関係・安全保障論

3222とはずがたり:2015/06/11(木) 00:30:32
>>3221-3222
そもそも、完全封鎖は強者が弱者に対して行う戦法だ。イランが米国に挑む戦法ではない。過去の実例を見ても、海域を完全封鎖する段階まで至ったのは、1945年に瀬戸内海での海上輸送封止を狙った米国の対日攻勢機雷戦(敷設機雷1.2万個)や、1972年に北ベトナムのハイフォン港等を狙ったトンキン湾機雷敷設(合計8000個)くらいである。強者である米国が弱体化した日本、弱者である北ベトナムに対して行ったものだ。米国とイランの関係ではあべこべである。

また万が一にもイランが機雷封鎖を行おうとしても、米国は機雷敷設を見逃さず攻撃し妨害する。これは攻勢的対機雷戦と呼ばれる戦法である。イランがホルムズ海峡での機雷敷設を始めた場合、米国は妨害を躊躇しない。中央部航路帯近くに機雷を敷設しただけでも、国際海峡の通航確保を理由に攻撃するだろう。

その場合、敷設用艦船や航空機は発見次第に攻撃される。これらは比較的鈍重なタイプが多く使われるため容易に撃破されてしまう。攻撃を避けるため民間船舶を使っても、機雷敷設に従事した段階で保護の対象から外れるので意味はない。

完全封鎖前には迂回航行できる

場合によっては、イランは逆封鎖を受けるだろう。米国は逆封鎖することによって機雷封鎖を妨害できるだけの能力を持っている。中小規模の港湾なら機雷100〜300個でほぼ使用できなくなる。機雷の準備や設定ができていれば、米国なら1日で敷設できる数である。

仮にホルムズに多少の機雷が敷設されても、日本の支援が必須になるわけではない。完全封鎖以前であれば、機雷対策は迂回航行によって実現できる。

迂回航行のために機雷原を局限・確定するのも容易だ。ホルムズ海峡の航路帯は水深60〜100メートルと深いこともあり、海底設置式はまず使われない。適するのはロープで錘と繋がれ、海面近くに浮かぶタイプだ。特にイランが使用するタイプは接触で爆発させる方法なので、船底にあわせて水深5メートル未満に設置される。これであればヘリを使って上空からの透視で発見できる。

もちろん将来的には機雷除去が求められ、その場合には間違いなく日本の出番もある。だが、機雷処分をしなければ日本の生存が脅かされると考えるのは間違いだ。

このような完全封鎖といった非現実的な議論が、なぜ生まれるのだろうか。それは機雷使用法と対策へのを誤解があるためだ。

まずは、機雷敷設と海上封鎖を同一視する誤解が広がっている。日本では、大戦末期の瀬戸内海における機雷敷設のトラウマがある。大陸からの食料や石炭輸送が止まったため飢餓寸前となり降伏に追い込まれたことは事実である。が、完全封鎖には機雷約1万2000個が必要であった。

この規模の敷設を行えるのは、米国だけだ。イランは少数敷設しかできない。海峡にごく少数の機雷を敷設しても、保険料増加や原油価格高騰があるだけで通過はできる。

また、機雷対策と機雷処分も同義ではない。掃海等の破壊処分による対抗策は、あくまでも敷設妨害や機雷原迂回といった、数ある手法のひとつでしかない。ホルムズでの小規模な機雷敷設であれば、消極的な迂回でも対応可能である。

現実的な前提を置くことはできる

もちろん、海自掃海部隊は外交的な切り札である。国際貢献としても極めて有効であり、危険性が低い割には相当の恩を売れる手段だ。しかし、そのための前提の議論として、ホルムズ海峡完全封鎖や、機雷処分がなければ日本が滅びるといった主張はあまりにもおかしい。

現実的な事例はいくらでもあるのだ。たとえば1984年のリビアによる紅海機雷事件やそこでの米ソ英仏による機雷の水中捜索、イラン-イラク戦争での機雷戦激化と1987年の米英による日仏伊への派遣要請、1991年の湾岸戦争後の機雷処分といったケースが現実的な前提である。ホルムズ完全封鎖という非現実的な前提による議論は、すぐに止めるべきだろう。


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