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国際関係・安全保障論

3071とはずがたり:2014/10/08(水) 16:18:17
>>3069-3071
不整地踏破能力が低いAAV7

このように批判をすると、「AAV7の調達は、まだ決定事項ではない」と反論するのだろう。しかし、すでに決定事項であるとの間接的証拠は他にもある。

海上自衛隊の輸送艦おおすみ級が「水陸両用車」運用のために同型艦3隻すべてがデッキや搭載するLCACの床に特殊な加工をする改修工事を行う予算が本年度予算で要求されている。

単にAAV7の評価試験のためならば3隻も改修する必要はないだろう。しかも来年度予算では更に1隻のおおすみ級のウェルドックの注水機能や完備門扉開閉機構の強化が要求されている。仮に「水陸両用車」が必要なしとなった場合、これらの改修費用は無駄になる。当然、AAV7の採用を前提とした改修と考えるべきだろう。

こうしたプロセスの問題も重大だが、さらに重大な問題は、AAV7が日本の国防上、最適な兵器ではないという点だ。AAV7は旧式とされる装甲車。不整地踏破能力が低く、南西諸島のリーフ(サンゴ礁)や護岸工事が施された海岸を踏破できない可能性が高いうえに、水上航行能力が時速13キロ程度に過ぎない。米海兵隊は将来の揚陸作戦を現在の20カイリほどの沖合から100カイリ程度に伸ばす。これは地上型の対戦車兵器や火砲の長射程化が進んでいるためだ。つまりAAV7は何時間もかけて延々と陸地を目指すことになるが、敵からみればいい的でしかない。

そのうえ、問題になっている尖閣諸島などでは、AAV7は狭すぎて使用できない。LCACを使用して沿岸あるいは海岸までAAV7を運ぶ構想もあるが、それならば高い水上航行能力をもつ装甲車は必要ない。むしろ陸上での機動性が高い通常型の水陸装甲車を採用する方が合理的だ。

それに現中期防で52輛調達しても、おおすみ級3隻ではそのうちの3分の1も輸送できない。海自の揚陸能力は低い。本来であれば、戦車揚陸艦のようなものの装備増強を優先すべきである。

欠点はほかにもある。AAV7を導入しても、本格的な整備は米国でしか行えないのだ。整備には1年半かかると言われている。AAV7の稼働率は相当低くなると見積もらないといけない。

AAV7が本領を発揮するのは、沖縄本島などビーチが多い大きな島への揚陸である。だが現在焦眉の急となっているのは、尖閣諸島などの離島を巡る紛争だ。沖縄本島などへの大規模な侵攻は極めて可能性が低い。現在の調達計画は、その可能性が低い方にフォーカスを当てているようにしか思えない。

尖閣諸島など離島での紛争を意識するならば、AAV7ではなく、輸送機やヘリで空輸できる空挺装甲車を調達する方がよほど役に立つだろう。海自では実質的なヘリ空母である「いずも」がもうすぐ就役し、二番艦も現在建造中である。ヘリでの輸送が可能な空挺装甲車であれば、これらの「ヘリ空母」との組み合わせによって戦力化を迅速に行える。

AAV7を急いで導入しても現在の海自の揚陸能力では一度に揚陸できるのは、せいぜい十数輌だ。52輌を投入できるのは、来年度に調査費が計上されている強襲揚陸艦が数隻就役してからであり、10年以上未来の話である。とても喫緊の問題とされる島嶼防衛には間に合わない。こう考えると、AAV7を調達すること自体が目的化しているのではないだろうか。

AAV7を52輛購入すると442億円

ちなみにAAV7の新造品は平成26(2014)年度予算によれば2輛で17億円だ。これを基準とするならば中期防中に1個中隊分の52輛で442億円の予算が必要である。編成される水陸両用機動団は普通科連隊3個連隊を基幹とするとあるので、すべての連隊がAAV7を装備するならば1326億円にもなる。だが、これまで説明したように、防衛省は最終的にどれだけのAAV7を調達するかという計画を国会にも納税者にも知らせていない。

筆者個人の見解ではAAV7はすでに時代遅れで、南西諸島の防衛には寄与しない。全くの無駄遣いである。それでも、どうしても使ってみたいのであれば米海兵隊から1個小隊分リースをして試験的に運用してみる、という手段もあったはずだ。わざわざ博打のような調達を行う裏には、いったい何があるのだろうか。


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