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国際関係・安全保障論

1■とはずがたり:2003/01/22(水) 12:15
経済畑出身の私の鬼門,外交・安全保障を考える。
適宜,憲法談義・世界経済等もこちらで。

2939とはずがたり:2013/12/23(月) 19:47:52

国の防空識別圏
真の目的は「国内」と「米国」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3440
2013年12月18日(Wed)
小原凡司 (東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官)

中国の防空識別圏設定に対する日米の共同声明が期待されていた12月3日、安倍・バイデン共同記者発表は一部の日本人を失望させたかもしれない。まず、開始時刻が予定より大幅に遅れた。発表に際して、双方の事務方は表現のすり合わせを行うが、双方の考え方に相違があった可能性もある。また、記者発表という、共同声明より拘束力の弱い形式で発表されたこともそれを示唆している。

日米で異なるスタンス?

 実際の発表もまた、双方の認識の差を印象付けた。安倍首相の談話が、バイデン米副大統領の談話に比べて非常に短かったのだ。更に突っ込んだ表現をしたかった安倍首相が、言いたいことを言わせてもらえなかったと感じた人も多かっただろう。事前に報道されていた「ADIZ設定の撤回を求める」といった文言も含まれていなかった。

 バイデン副大統領は、中国のADIZ設定を指して「緊張を高める」と非難し、「一方的な現状変更の試みは許さない」と米国の意図を示した。こうした緊張を高める行動が「誤解に基づく不測の事態の生起」を招くとし、誤解による不測の事態は、意図して起こされる事態より危険だとも述べている。

 しかし、バイデンが、不測の事態を避けるために必要だとしたのは、中国に対する強硬姿勢ではなく、「緊張緩和」である。そのために「危機管理メカニズムの構築と有効なコミュニケーション」が必要だと述べたのだ。

 更に明確に米国の見解を示したのは、12月4日のヘーゲル国防長官とデンプシー統合参謀本部議長の記者会見だった。ヘーゲル国防長官は、ADIZ自体は問題ではないと明言し、撤回を求める日本とは異なるスタンスを示した。問題は、事前に周辺国等に何の相談もなく突然設定したことにあると言う。デンプシー統合参謀本部議長も、ADIZ自体が事態を混乱させるのではないとした上で、当該空域を通過する航空機にもADIZ進入の報告を義務付けることが混乱を招いているとした。

ADIZ進入の報告を義務付けることは出来ない

 そもそもADIZは国際法に依拠するものではない。各国が、防空の目的で領空の外側に独自に設定するものである。領空ではないのだから、もちろん主権は及ばない。ADIZ進入の報告を義務付けることは出来ないのだ。出来るのは、要請、すなわち「お願い」なのである。

 それにも拘わらず、中国のADIZに関する説明が、あたかもADIZに進入する際に報告を義務付けるかのような表現を用い、「報告がなければ防御的措置を採る」といった挑発的な表現を用いて強制力をちらつかせていることが、周辺国の緊張を高めているのだ。

 ADIZ設定の範囲も問題である。尖閣諸島は日本の領土であるので、この上空に中国のADIZが設定されたことに対して抗議することは合理的だ。しかし、隣国の領土上空で航空機の識別を行うことは日常的に行われている。例えば、陸上国境で隣接する隣国の上空を監視・識別しなければ、領空侵犯されてからしか当該航空機を識別できないという滑稽なことになってしまう。ADIZを公表するのであれば、周辺国に配慮して線を引いて見せるに過ぎない。

 中国のADIZが尖閣諸島上空で日本のADIZと重なることを以て、スクランブル合戦が起こるという話も聞くが、これは理屈として間違いである。そもそも尖閣諸島は日中両国が領有権を主張しており、その上空は両国にとって領空なのである。ADIZがあろうがなかろうが、領空に近接或いは侵入されれば、スクランブルをかける理由はある。後は意図の問題だ。ADIZの重複が問題なのではなく、双方が領有権を主張する状況こそ問題なのである。

国内の強硬派の圧力も

 では、なぜ米国は中国に対して日本ほど「強い態度」で臨まなかったのだろうか。

 米国は、中国のADIZ設定が軍事的意味よりも政治的意味を有するものだと理解したのだろう。現状では、中国が軍事力で他国の航空機を排除するためにAIDZを設定したのではないと判断したのだ。米国の判断の基準は、ADIZ設定公表からの中国側の出方によるのだろう。中国国防部発表の翌日には、米軍はB52爆撃機を中国ADIZの内側で飛行させている。B52は核兵器を搭載可能な爆撃機であり、本来、とても挑発的な飛行であったはずだ。米国は、「中国側の特異な対応はなかった」と発表した。

2940とはずがたり:2013/12/23(月) 19:49:00
>>2939-2940
 では、政治的意味とは何なのか。中国は、なぜこの時期に、このような発表をしたのだろうか。

 問題の背景には、中国国内の強硬派の圧力がある。近年、中国空軍内部に不満があるとされているが、主要な理由の一つが予算配分だと見られる。中国海軍は、多額の費用をかけて訓練空母「遼寧」を就役させ、更に実運用のための空母及び空母戦闘群を形成する大型艦艇の導入を計画している。こうなると、空軍の予算が制限される。中国の国防予算も無限ではないのだ。許其亮・空軍上将を中央軍事委員会副主席に抜擢したのは、強いリーダーシップを空軍内に残したくなかったからでもあり、予算面で優遇できない分を人事でバランスをとろうとしたからでもあると聞く。

 しかし、昨年9月11日以降、活躍が報じられるのはやはり海軍ばかりである。ただでさえ、中国国内には人民解放軍の一部を含め、対日開戦止むなしという強硬派がいる。強硬派が軍内の不満と結びつけば更に危険だ。中国指導者は、こうした国内の圧力を受けつつ、軍事衝突を避けるという綱渡りをしていると言える。

 こうした中、日本の無人機撃墜検討等は、中国強硬派を勢いづかせるものだった。日本が軍事力行使の意図を明確にしたと捉えたのだ(前回記事『中国に抑止は効いているのか』参照)。中国指導部は、日本に対話の意志は無く挑発を繰返すだけなので、日本を相手にし続けるのは危険だと認識している。日本の態度が中国国内の強硬派に、更に挑発的な行動をとるための口実を与えるからだ。日中がこれ以上挑発的な行動をとれば、不測の事態を招きかねない。中国にとって優先順位の高い問題は国内にあり、日本及び米国との軍事衝突は避けねばならない。中国では、「強硬派は習主席の真意を誤解している」という話も聞く。

「対立」を前面に出してでも、米国との議論を試みる

 そこで出て来たのは、やはり米国との議論である。中国のADIZ設定の発表がバイデン米副大統領訪中の直前であったことは、米国ファクターの存在を示唆している。11月下旬には、中国中央電子台のニュース番組が、主たる相手は米国であることを示唆する報道をしている。米国が第2次世界大戦時に作成したフィルム「敵を認識せよ−それは日本」をこの時期に報道したのも、日米が必ずしも対等な協力関係にないということを示したかったからだ。日本はただ米国に使われているに過ぎないので相手にする必要はない、という論理である。相手にすべきは米国であり、しかも、東シナ海の問題だけでなく、国際秩序の再構築を目指すという。

 中国は、今年4月頃から米国と「新型大国関係」構築の議論をしてきたが、6月の首脳会談で、相容れない戦略の相違も明らかになった。そこで、今度は対立を前面に出して、米国と国際秩序再構築の議論を試みる。そのきっかけとして、ADIZというカードを切ったのではないだろうか。と言っても、米国が乗ってきてくれなければ困る。そこで、既に決定されていたバイデン副大統領訪中の直前を選んだのだ。

 国際秩序の再構築とはあまりに大きな話だが、直ちに日本と戦争をするという話ではなくなる。しかし、中国は当面の間、表面的にしろ、対米強硬姿勢をとらざるを得ないということにもなる。国内向けの論理ではあっても、これはやはり綱渡りだ。米国と言っても、現在相手にしているのはオバマ政権である。バイデン副大統領はリベラルで知られ、中国にとっては最初に議論するには最適であったかも知れない。しかし、米国内にはオバマ大統領の融和的な対中政策に不満を持つ保守派も多い。中国の強硬姿勢は、米国の強い反応を誘起する可能性もある。

北朝鮮、豪州、ASEAN…各国の対応にも注意を払うべき

 また、北朝鮮の張成択氏の粛清も、中国にとっては痛手だった。中国は人民解放軍の部隊を北朝鮮国境に増派して不測の事態に備えているという。張成択氏は金正男氏の生活費等を提供していたと言われ、中国は、更なる暗殺や粛清の可能性を心配している。金正恩第一書記が未だ訪中しないことも中国をいらつかせている。北朝鮮の不安定化は、中国の安全保障政策の分散を強いているのだ。

 米中以外の国々の対応にも注意が必要だ。天然資源によって豊かな暮らしを支えるオーストラリアにとって、中国は最良の顧客である。中国との決定的な対立を望むことはないのだ。中国との経済関係が深い国々を含むASEAN諸国も一枚岩ではない。韓国も中国への配慮を忘れない。日中が直接対話できない現在、日中関係のバランスを取れるのが米国だけという異常な情況が続く。日中とも、自分の意図を実現するために米国に頼らざるを得ないのだ。…


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