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石油・LNGなど=エネルギー総合スレ=

289とはずがたり(2/3):2005/06/08(水) 21:31:06
 こうした悲観的な予測は、石油地質学の歴史における伝説的な逸話に端を発している。1956年、シェル石油社の地質学者、M・キング・ハバートが、米国の石油生産量は1970年がピークになると予言したのだ。これに仰天した同社の上層部は、ハバートにこの予測を公にしないよう説得を試みたほどだった。それまでの数十年間というもの、目覚しい油田発見を当たり前のように見ていた仲間たちは、ハバートの説に懐疑的だった。

 しかしハバートは正しかった。米国の石油生産は1970年に頭打ちとなり、それ以後は着実に減り続けている。アラスカのプルドーベイ油田――利用可能な埋蔵量は130億バレルにのぼるといわれる――などの衝撃的な発見でさえ、この流れを変えることはできなかった。

 ハバートの分析は、1901年から1956年の間に米国本土48州の沿岸および沖合で発見、生産された石油量に関する統計を集めることから始まった(50年前はまだ、アラスカは石油地質学者には未知の土地だった)。データによって示されたのは、米国の確認されている石油埋蔵量は1901年から1930年代までは急増していたが、その後は増加の勢いが落ちているということだった。

 ハバートがこのパターンをグラフ化すると、米国の石油供給量がまさに頂点に達しようとしている図が現れた。米国の石油埋蔵量が過去最高になる日も近いように見えた。そして以後、埋蔵量は減少に転じる。石油企業が原油を地中から採掘するスピードの方が、地質学者が新たに発見するより速いからだ。

 これは当然といえる。油田には発見しやすいものとしにくいものがあり、規模の大きいもののほうが発見しやすいことは自明だとハバートは考えた。大規模な油田が先に発見されてしまったので、あとの油田は、だんだんと規模も小さく見つけにくい場所にあるものになっていき、発見されるペースも落ちていったのだ。

 生産量のグラフも埋蔵量と似たようなパターンを示していたが、ピークは数年遅れるように見えた。これも理論的に当然のことだった。なんといっても、原油は見つかったそばから採掘できるわけではない。土地の賃借契約を交渉しなければならないし、油井を掘ったり、パイプラインも引いたりしなければならない。こうした開発には数年かかることもある。

 ハバートが、生産量を示す曲線を未来に伸ばしてみると、1970年ごろがピークになるようだった。そしてそれ以後は、米国の採掘量は、毎年、前年を下回ると予測された。

 こんな予測では驚きたりないとでもいうように、ハバートはさらに数字の手品を披露して見せた。埋蔵量の減少を示すカーブが、増加を示すカーブに対応する形で下降すると仮定するなら、曲線のピーク時点で、アラスカをのぞく米国本土48州の全石油量のうちのちょうど半分が発見されていることになる。ハバートは、この数字を倍にして、米国本土の下に埋まる利用可能な石油の総量を1700億バレルと算出した。

 当初、このハバートの分析に対しては、油田探索と採掘の技術が今後向上すれば、石油の産出量は増えるとの反論が出た。実際そのとおりではあったが、ハバートが予測した最大量を超えるほどの産出拡大にはいたっていない。アラスカ油田という予想外の発見を加味してさえ、米国の石油生産はこれまで、ハバートのほぼ予測どおりに推移してきている。

 ハバートは運がよかっただけだというのが反対派の言い分だ。

 SEER社のリンチ社長は、「非常にきれいな結果が出たので、ハバートは、なるほど、これは釣鐘曲線になるにちがいないと考えたのだろう」と言う。

 しかし、世界的な石油生産をピークに達するまで増加させなければならない理由はないと考える専門家は多い。ある程度安定した生産量が続いたのちに、経済が他のエネルギー形態に移っていくのにともない、ゆっくりと減少していく可能性もあるというのだ。

 「今後30年から40年たっても、中東にはまだ相当な量の石油が残っているだろう」と、カリフォルニア大学デービス校輸送研究所(ITS-Davis)のダニエル・スパーリング所長は話す。

 数年前、地理学者たちがハバートの手法を、世界全体の石油生産量の計算に応用した。この分析結果では、世界の石油生産量は2010年までのどこかの時点でピークを迎えると示された。

 ドフェイエス教授は、そのピークが2005年の終わりか2006年の初めにくると考えている。また、ヒューストンの投資銀行を経営するマシュー・シモンズ氏は2007年から2009年の間になると予測している。一方、カリフォルニア工科大学の物理学者で、昨年には著書『ガス欠――石油時代の終焉』(Out of Gas:The End of the Age of Oil)を発表した、デビッド・グッドスタイン教授は、2010年までには訪れると見ている。


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