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女が男を金的攻撃で倒すSS

1管理人★:2017/01/18(水) 12:30:15 ID:???0
2chスレッドの避難所になります。

版権(漫画・アニメ・ゲーム)・オリキャラ等の
金蹴りや電気按摩といった金的攻撃があるSSならなんでもOK!
ただし女→男でお願いします。

それ以外は別所でお願いします。

283名無しさん:2018/08/31(金) 23:25:42 ID:jCcZM/NU0
あの、シノブです。
導入部分を思い出しながら、次のステップに思いを馳せさせて頂いています。

ここは、『娯楽室』と呼ばれている場所。

カメラの前で、二人。サツキさんの受け答えは堂に入ったもので、見ているだけで惚れ惚れとしちゃいます。
それに引き換え、私ときたら。年甲斐も無く、制服なんて着て。目線は伏せがち、俯きがち。背中も丸めてしまって、我ながら情けない限りです。

必死に身を縮めようとしていたみたいですけど、傍目から見ると、無駄に大きな胸をやたらと強調しているようにしか見えません。
サツキさんは、清楚な女学生って言葉がピッタリなのに。私ときたら、張り詰めた胸元から、黒い色がクッキリと透けて、ふしだら……えーと、なんて言うんでしたっけ?
そう、とてもビッチっぽい……これ、使い方間違っていませんよね?

でも!あの、言い訳になっちゃうんですけど!でも、衣装併せの時は、ベージュの下着にしていたんです。透けちゃうから。
そうしたら、サツキさんから『極めて悪いと評価しました』とか、通販のレビューみたいなことを言われてしまって……、いや、私の責任ですよね。

小学生の頃から大きくて、エッチなコってレッテルを貼られていた身としては、コレ、本当に邪魔なんです。
あ、分かってほしいわけじゃないの。そんなに図々しいことは言えません。それに、皆が私のことをいやらしいって言うなら、きっとそれが正しかったんです。

大きいことは良いことです、なんて、サツキさんは慰めてくれます。遠い目をして。
本当は、私の方がリードしてあげないといけないのに。後輩にまで気を使わせてしまって……本当、自分が嫌になる。

昔から、私は皆に世話をかけっぱなし。今日だって、お二人をお相手しないといけないのに、無理を言って、『彼』だけを別枠にしていただいて。
それでも、皆、優しいですから。私は、いつも甘えっぱなし。皆さん、それは気づいているのでしょうけれど。。

あの時、私は裏切られた気分でしたけど……本当は、単に私に愛想が尽きただけだったんでしょう?貴方も。
恨んでなんかいません。私には、過ぎた幸せだったのですから。私も、貴方を少しでも幸せにできていたなら、それだけで―――

目線の先には、一人の男性。私にとっては、特別な顔です。サツキさんは、量産型っぽーいって評していましたけれど。
太平楽に高鼾のその姿。私なんかには望み得べくもない、平凡な日常を想起して、一抹の寂しさを覚えます。
あの頃は、部活でクタクタになっていたのでしょうその姿を見ながら、明日のお弁当の用意に頭を悩ませていましたっけ。

異常な点は、彼が一糸纏わぬ姿であるところでしょうか。
全裸で這い蹲っているべき立場が入れ替わっている。それだけで、彼に対して申し訳ない気持ちが沸いてきます・

「ほら、シノ先輩!しゃんとして!」

背中に平手の感触。知らず知らず、私はまた丸まっていたみたいです。目線を上げると、満面の笑顔の後輩。
眩しさに、思わず目を細めてしまうと、再度、バシンと背中を叩かれます。。

回りのカメラを見渡して、しょぼくれた顔をしていましたっけと反省。
とはいえ、隠しカメラですから、張り合いが無いって……あぁ、また、言い訳です。気持ちのネガティブスパイラル。

「先輩がそんなで、どーするんですか?!そんなんじゃ、この人も不安になっちゃいますよ?」

本当に、優しいコです。私の相方なんかには役不足もいいところ。
気を使わせてしまったことが情けなくて、それでも。意識的に背筋を伸ばして、決然と……そんな気合で、上を向きます。

284名無しさん:2018/08/31(金) 23:26:12 ID:jCcZM/NU0
 天井で、大きなサーキュレータが回っています。最初は、何で扇風機が天井についているのかしらと不思議でした。
後で聞いたところだと、エアコンで冷えた室内の空気を攪拌するためなんだそうです。ウチにはエアコンも無かったですし、
無いのが普通だと信じていたので、実際のところ、今でも必要性は分からないのですけど、ね。これは秘密です。

この部屋に備え付けられたエアコンも、もう結構使い古されていて。長時間動かしていると、水漏れしてしまうんです。
床に敷き詰めた、真っ白いシーツに染みがついてしまうので、洗濯しているといつも閉口してしまうのですが。

もう一回。強めに背中を叩かれます。今回は、前についたお肉が揺れるほど、強い衝撃。
上の空だったのが見抜かれてしまったのでしょうか……恐る恐るサツキさんを見やると、彼女の視線は私に向けられていませんでした。

「う〜〜〜〜〜」

聞き慣れた声。あの人が、目を覚ましたみたい。瞬間、緊張が背筋を走るのを感じます。
いつものことで、これは彼のためでもあると信じているのですけれど、それでも。本当、駄目ですね、私は。

「シノブ……?」

胡乱な瞳で此方を見やると、彼の口から言葉が零れました。
ドクン、と。一拍だけ、心音が跳ね上がったのは、誰にも気付かれていないと信じたいです。

それでも。私の役立たずの口は、震えるばかりで何一つ言葉を発することが出来なくて。
あんなに、色々と話したいことがあったのにと、心だけが焦燥に苛まれるばかり。悔しくて、申し訳なくて、目尻に涙が滲む。

と。

「おはよう、おにーさん。ごきげんいかがですか?」

場違いなほどに、穏やかな声音。サツキさんの顔は微笑を湛えていて。
台本とは違う台詞だけれど、その言葉は彼と、そして私に対する思いやりに溢れていることは痛いほど分かりました。

彼女には、恐れ多くて頭が上がりません。きっと、あのコは笑って流すのでしょうけど。

なんで、私はああじゃないんでしょうか。彼女の様になれるのならば、何を捧げても悔いは無いのに……コレも、高望みですね。

異様な雰囲気を感じ取ったのか、『彼』の目線は右に、左にと泳いでいるみたい。
お揃いですね、と含み笑い。私も、彼を直視することが出来ないですし。ふふ、意外な共通点をみつけた気がして、少し心が軽くなる。

可笑しいですよね。私達には相違点があるから、こんなコトになっているのに。でも。

「ちょっと状況が呑み込めない……何事?というか、オマエ、シノブだろ?くそ、何がなにやら―――
「あ、じゃ、当ててみてくださいよ。おにーさん的には、どんな状況だと思います?コレ」

しどろもどろな彼が琴線に触れたのか、コロコロと笑いながらサツキさんは続ける。
箸が転がっても可笑しい年頃だからでしょうか。それとも、コレからの『お仕事』のことが楽しみだからなのかしら。

実を言うとね、私も楽しみなの。だって、私が人のために出来ることなんて、コレぐらいだから。
そういう意味では、『簡単な』作りをしている彼に、いや彼等には、感謝しているところもあるんです。

「分かんねーよ。ボッタのフーゾクか何か?オレ、入った覚えねーんすけど」
「アハハハハ、おにーさん、ニアピン賞。確かに、これから性的にスッキリさせてあげるわけですけどー」

サツキさんが目線で催促してくるのを感じて、再度、口を開きます。
先程とは打って変わって、自分でも驚いてしまうほど、流暢に言葉が流れるのは、心を整理する時間を頂けたから。
本当に、彼女には感謝してもしきれません。

「あのね、フジワラ君―――
「やっぱシノブじゃん。キレーになったね……なんて、オレがいうコトじゃないか」

そして、彼にも。あの時、私を選んでくれたことが、どれだけ支えになったか、貴方はきっと知らないでしょうけれど。
私なんかを選んでくれて、本当にありがとう。例え、直ぐに他のコの方を選びなおしたとしても、それでも。
選ばれたことがあるっていう事実だけで、私は今まで生きてこれました。

285名無しさん:2018/08/31(金) 23:26:49 ID:jCcZM/NU0
「ありがとう。お世辞でも、嬉しいです。……コレは本心ですよ?私、嘘吐けるほど頭良くないので。知ってますよね?
 ……こんなトコロで会いたくは無かったです。これも、本当。
 
 あのね、貴方、借りちゃいけないところで、いっぱいお金を借りちゃいましたよね?私の実家みたいに」

「……………………………………」

返されたのは沈黙。お金の話が出た途端、彼から不機嫌なオーラが放たれたのを感じます。
膝が震えて、手汗が滲んで。それでも、彼のためだから。何時までも萎縮してはいられませんと、自身を突き動かします。

「せめて、誰かに相談すれば良かったのに……私に言ってくれれば、身体を売ってでも「そこまで堕ちちゃいねーよ」……ありがとう。
 でも、でも、ゴメンなさい。私が知ったときは、もう、こんな身体を売ったくらいじゃ、全然追いつかない状況になっちゃってたんです。

 そう。フジワラ君、その負債、貴方の身体で支払ってもらおうってことになってしまっているんです」
 
「……………………………………」

「『臓器売買』とか、『保険金』とか、怖いコト言ってる人たちも居たんですけど……。
 それだけはって泣きついて、償わせますからって、足りない分は私が身体で贖いますからって縋りついて……ふふふ、そんな目をしないでください。
 私が勝手なことをしただけですから。……それに、私なんかの身体が役に立つなら、幾らでも。感謝するのはこっちだと思ってます。
 
 それで、ですね。何とか、命だけは見逃して頂けたので」
「次は、おにーさんが身体で支払う番が来たってことですよ。つっても、返してもらうのは肉体労働力ですけど……
 ほら、いうでしょ?男はマグロで、女はお風呂で、みたいな。まぁ、今は男女平等の時代ですから……」
「こういうのは他の方々に悪いですけど、容姿や体力に優れない……本当にゴメンなさい!私がそう言ったわけじゃないんです!!
 あの、そういう方は、ちょっとしたところで強制労働していただくことになってるんです」

沈黙が続く。やおら、彼は胡坐から立ち上がり、天を仰いで顔を覆いました。

「ちょっと待ってくれよ、理解が追いつかない。誰も信じちゃくれねーけど、オレは金なんか―――」

零れた一言は、掛け値なしの本音でしょう。

「言い訳しなくても大丈夫ですよ、おにーさん。全部私達に任せてくれれば」
「えぇ。私は馬鹿ですけど、拙いなりに、きっとお互いに一番いいって方法を考えてきましたから」

顔を覆った手を外し、私達を凝視する。サツキさんはいいんでしょうけど、二十歳を越えて制服を着ている私は赤面してしまう。
また、身を縮めようと無駄な努力をして、反抗期な胸肉を暴れさせてしまい、更に赤面。見苦しいものを見せて、ゴメンね。

「どういうコトだ?強制労働?で、一番いい方法?時系列が上手く繋がらない。オマエ等と働くってことか?」
「いや、私達は終身刑みたいなものだし、流石におにーさんまでは巻き込めないですよぉ……。つまりですね―――
「フジワラ君が働きに行く前に、金目のものは全部没収させていただく……そういうコトで落ち着いてもらったんです」

彼は、パチクリと目を瞬かせる。そんなトコロは、3年前と変わらないんですね。
おこがましいって言われてしまうかもしれませんが、時折覗かせる、そういう無邪気なところ、好きでした。

「何言ってんだ?というか、ココまで剥いたら分かってんだろ?まだ金残ってってんなら、オレの方が教えて欲しいぐらいだ」

ダンッ!苛立った彼が床を踏み鳴らす音に、『ひゅい』みたいな声を上げて縮こまってしまう。説明が下手でゴメンなさい。
―――ちょっと、シノ先輩を怖がらせないで下さいよぉとか、サツキさんが口を尖らせているのを見ると、不甲斐なさに恐縮してしまいます。
―――知るかよ、これぐらいで怖がる方が変なんだろ!?って、フジワラ君も怒った口調。その通りすぎて、返す言葉もありません……。

恐る恐る目を開くと、二人とも気を取り直してくれたみたい。良かったです。
そのまま、サツキさんはさっきの話を続けてくれる。

286名無しさん:2018/08/31(金) 23:27:22 ID:jCcZM/NU0
「女の子に何言わせようとしてるんですか、おにーさん。セクハラですよ!もう!ココで『金』持ってるのは、おにーさんだけ。
 一目瞭然でしょ?ほら―――

サツキさんの手が無造作に伸ばされて、2本の指が絡みつくのが見えます。私達とは無縁の、彼だけが持つ『金』の部分に。
一本の指に、一つの睾丸。サツキさんは、朗らかに、ソレの形を確かめようとしているみたい。想像の埒外だったのか、フジワラ君は呆けた顔。

「?おい、どこ触ってんだよ?!」

数秒の間をおいて、不機嫌な声。そういえば、お付き合いさせて頂いていた頃も、ソコを触られるのは嫌みたいでしたよね。
私も、嫌われたくなかったから、あの時は引き下がりましたけど……正直にいうと、興味津々だったんですよ。ふふ、皆が言うように、私、えっちなコだったんでしょう。
そういえば、あの時、ソコには男気が詰まっているんだって教えてくれましたっけ。ふふふ、今なら意味が分かります。けど、幼かった私にはさっぱりで……一緒に笑ってしまいましたね。

ちょっと、サツキさんに妬いてしまいます。それと、無防備にソレを許してしまう、フジワラ君にも。

見たくないという拒絶感と、見届けてあげたいという義務感。相反する気持ちに混乱している内にも、状況は進んでしまい。

「―――!!変なトコロ触んなっ、この変態女っ!!」
「へー、変なトコロなんですね、コレ。じゃ、心置きなく―――取り立てちゃいますっ」

『釣鐘抜き』って彼女は呼んでました。彼女の指が、楕円形の睾丸を包み込むように動いたのが分かります。
指先から、付け根まで。睾丸の裏側、奥まったところから先端まで。摩り下ろすように絞りつつ、入れ物ごともごうとする勢いで、引き抜かれます。
付け根にあるコリっとしたところに爪を差し込んで、睾丸を剥がし取るつもりでやるのがコツって教えていただきましたけど……如何せん、私には付いていない部分なので、よくは分かりません。

フジワラ君の顔色を伺うと、時間が止まったみたいな無表情。きっと、何をされたのか分かってないんだと思います。だって、男の方って、皆そんな顔をしますものね。
ここまでなら、私にだって分かります。突然、股間の隙間に指を差し込まれたら、私だって『何事?!』みたいな顔をしちゃうと思うもん。
でも、私で分かって上げられるのは、ココまで。気の毒だけど……

―――きゅぅ、と。睾丸と一緒に、威勢まで抜かれてしまったみたいな声が、彼の口から絞り出されます。
サツキさんはゆっくりと片手をあげてVサイン。完全に掛からなくても、男性はアレだけで動けなくなるというのは何度も目の当たりにしてきましたけど、
あのVサインは二つともやっつけちゃったよということ。ということは。

ゆっくりと、顔色が青く変わっていく。両膝が震えながらも揃えられ、お船が沈んでいくように、彼の身体も沈んで行きます。
ほんの少し、ほんの少しだけ、失望してしまう自分が情けないです。男の方である以上、睾丸はどうしようもないのに。フジワラ君は違うと、心の何処かで信じていたのかも知れません。
そして、その不幸に同情してしまう自分も。分かりっこない癖に、分かったような顔で哀れむなんて、傲慢この上ないと分かっているのに。

分かってあげられなくて、ゴメンなさい。でも、分からない私だからこそ、してあげられることもあるんです。

「おにーさん、気分が悪くなったら、遠慮せずに教えてくださいね?ほら、言葉にしてくれないと、どれくらい手加減すればいいのか分からないですから」

サツキさんは、彼の金的を抉った指をペロリと舐めて、あの人の唇をなぞっています。
優しい微笑み。元々、顔の造作が整っているコですけど、あの表情も負けず劣らず。私は、あの顔を見るだけで、元気を貰えた気がします。

ただ、可哀相に、男性特有の苦痛に晒されている彼には、それを堪能する余裕も無いみたいで。
とても見ていられず、二人の間に割って入ってしまいました。どんな言葉をかければいいのかも、私には分かっていないのに。
それでも。

287名無しさん:2018/08/31(金) 23:27:54 ID:jCcZM/NU0
「ゴメンなさい、痛いんですよね。きっと。大丈夫ですか?おっぱい、揉みますか?少しは気が紛れるかもしれませんし……だらしないおっぱいで、申し訳ないですけど」

サツキさんは、フジワラ君の傍らにしゃがみこんで、両手で大事そうに覆われた、彼の股間を撫で擦っています。
「痛いトコ痛いトコ、飛んでけー」なんて、そこはかとなく不穏な台詞には笑ってしまいますけど。

彼の両手を取って、私の駄肉……こんな時にしか役に立たないんですから……に導こうとしましたが、彼の腕は頑として動きません。
私のおっぱい程度じゃ仕方無いですねと、少し寂しい気持ちになりましたが、見れば、視線はサツキさんに釘付け。

怯えた視線……改めて、他ならぬ彼がこんな顔をしないといけなくなる原因を何とかしてあげたいという気持ちが湧き上がるのを感じます。
私が。私が、何とかしてあげたい、と。

その視線に気が付いたのか、サツキさんはおもむろに立ち上がって、横から彼を覗き込みました。
口にはしませんでしたが、子供みたいな彼に『しょうがないなぁ、もう』と思っているのは私にも読み取れます。

「そんなに怯えなくてもいいじゃないですかぁ。ちょっとした悪戯なんですから♪男の子でしょ?」

その言葉のまま、自分の股間に指を添えて、先程と同じ動きを繰り返します。ほら、ほらと軽い掛け声。
男の子だからこそ痛いんでしょうけど……嘘も方便っていいますし。あれ?コレ、言葉の使い方が間違ってますね……私、バカでゴメンなさい。

彼女の動きは、男女の埋められない違いを示しているように、フジワラ君には見えているみたい。それが、とても、可哀相。
私なんかに哀れみを抱かれるというのもそうですし……それに、埋められないなんて勘違いに過ぎないんですから。

私は馬鹿ですけど、それだけは教えてあげられると思うと、少し、誇らしい気持ちになります。

「あた……当たり前だろ、クソが…………なんつーことを……」
「お言葉を返すようですけどね、おにーさん。これぐらいで痛がる方が変なんだろ?!ってコトじゃないですか?
 さっき、おにーさんが馬鹿にしてたシノ先輩だって、ここまで苦しんだりはしませんでしたよ?ね。先輩」
 
突然話を振られると、頭が真っ白になってしまいます。私は、彼の背中を擦ってあげることに専念したかったんですけど……。
でも、そうなんです。昔、せめて苦しみを共感できればと思って、同じことをしてもらったことがあるんです。

男性は皆、言葉にならないぐらいに苦しんでいましたから、実際にやられるときは、本当に覚悟していたんですよ。
お股のところがキュっとしてしまって……後でサツキさんにその話をしたら、ソレってキンタマが縮みあがったってことじゃないですかなんて笑われちゃいましたけど。
ふふ、でも、私も笑っちゃいました。縮みあがるも何も、元から無いのにねって。

無いからこそ、アレをやられたところで。

「そうでしたね……ゴメンなさい。私から見ても、ちょっとフジワラ君は大袈裟かなって……怒らないでくださいね。
 でも、アレ、単なるビンタみたいなものじゃないですか……脛をぶつけたときの方が、よっぽど痛かったです」
 
グルルルと、低い唸り声が聞こえて、私の口から、意図せず『ひゃ』と怯えた音が漏れ出します。
ちょっと和むからと思ったんですけど、その、逆効果でしたか。ゴメンなさい。でも、でも。今でこそ笑い話ですけど、当時は、
嫌がる彼女に無理矢理頼み込んで、あまりの呆気なさに『本気でやってよ』って怒ってしまって、その、大変だったんですよ。言い訳ですけど。
思い返すと、あの時、彼女は『手応えが無いよぉ』とか嘆いてみたり、『先輩にはこの技で抜く『鐘』が無いんだから当然ですっ」ってプリプリむくれたり。

『私も悶絶させてみて』なんて、先輩の立場を悪用したパワハラもいいところでしたね、と死にたくなってしまう。
いつか、愛想を尽かされてしまうか分からないし、そうなったら私が悪いんでしょうけど……そんな日は、こないで欲しいと願っています。

288名無しさん:2018/08/31(金) 23:28:32 ID:jCcZM/NU0
回想に耽っている間に、彼は有る程度回復したみたいで。唸り声を上げながら身を起こしていました。
私がソレを認識したのは、彼が完全に立ち上がったあとで……常々、私は鈍くさいと言われていることを思い出し、また自己嫌悪。

一人で凹んでいる私は気にする価値も無いと思ったのでしょうか(実際、私には価値なんて無いですけど)、彼はサツキさんに襲い掛かろうとします。
男の子だけの急所は、意識しているのでしょう、いつでもカバーできるような体勢。摺り足でサツキさんとの距離を詰め―――

慌てず騒がず。自慢の後輩は、片手を閃かせて、自分よりも大きい相手の顔面を平手で打ちます。
何時見ても、惚れ惚れとしてしまう、鮮やかな一撃。私なんて、自分より大きい相手に立ち向かうぐらいなら、全てを諦める自信しかないっていうのに。

う、と一言。彼の両手が股間から離れ、顔面を覆わんとしたところで、間髪入れずに彼女の左足が翻ったのです。
私は、ただただ、彼の背中越しに後輩の勇姿を眺めることしか出来ていません。が、次に起きることを想像して、ギュっと目を瞑りました。

と。一向に甲高い悲鳴が上がらないことに違和感を覚えて目を開くと、彼は両手でサツキさんの蹴り足を押さえていました。
きっと、相手が何をしてくるのか見当をつけていたんでしょう。そういう、諦めない姿勢は、尊敬に値すると思います。でも、それでも。

サツキさんは、動じずにニコリ、と笑います。ククッと、喉を鳴らしている彼も、きっと笑っているのでしょう。
二人だけの世界。でも、私は。いや、だからこそ。

「ゴメンなさいっ!!!」


謝罪の言葉を叫ぶと、彼の背後。大きく開かれた彼の股間から覗く、その、私には無いサッカーボール的なものを、躊躇も容赦も無く、蹴り上げました。
爪先に、重量と滑った感触。慣れ親しんだソレと、柔らかい何かが、私の爪先と、彼の股間の骨に挟まれて、拉げていく感触。

水気を含んだ何かが破裂する感触が来ることを覚悟して、きつく目を瞑ります。幸いなことに、彼の睾丸はギュルリと動いて、私の爪先から流れてくれましたけど。
そして、先程聞くはずだった、甲高い悲鳴が轟いて。身を竦ませる私を文字通り尻目に、大木が倒れるかのように、彼はゆっくりと横倒しになっていきました。

申し訳なさと、僅かな達成感、そして、それでも私が何とかしないとという義務感が綯い交ぜになって、グルグルと巡るのを感じます。
ほんの少しでもいいから、その痛みを肩代わりしてあげたいという気持ち。そして、そんなコトは不可能だからこそ、してあげられることがあるという気持ち。

相反する気持ちに折り合いをつけるなんて、私の頭には荷が勝ちすぎます。
ただでさえ、のた打ち回って、全身で苦痛を表現している彼のことが心配で仕方が無いのに……自分でやっておいて、本当、身勝手ですよね。

「シノ先輩、ナイッシュー!」

両手でサムズアップ。朗らかな笑顔を向けてくるサツキさんに、縋るような視線を送ると―――

「あ、大丈夫ですよ、先輩。私の方からは、ちゃーんと潰れずに逃げてくトコ、見えましたから……よく出来てますよねーコレ。
 欲を言うなら、そもそもこんなトコに無かったら良かったんでしょうけど……なんでこんなトコに付いてるのか、女には分からないですねー」
 
肯定の言葉で、ハイビートを刻んでいた心の臓腑が、ほんの少し落ち着いていくのを感じる。
でも、でも。潰れてなければそれでいいってものでもないでしょう?こんな、みっともない姿を見せて、どれだけ心が傷ついているのか……想像するだけで、泣きそうになってしまう。
居た堪れない。恥ずかしいことじゃないんだよって、男の子はみんなそうなるんだよって慰めてあげたい。平気な顔が出来たら、そのコは男じゃないんだよって。

心に任せて、彼の傍らに跪くと、ゆっくり、ゆっくりと腰を叩いてあげました。
なんで股間を蹴られたのに腰を叩くのか、コレも私にとっては謎ですけれど……でも、コレで少しは楽になるっていうのなら。

お尻を高くあげて、土下座するような格好で、私達とは無縁の痛みに耐える姿。サツキさんも、吸い寄せられるように近付いてきて、彼の眼前にしゃがみこみます。
ライムグリーンの下着が露になって、私の方が赤面してしまったり。ソレ、お洒落なんでしょうか……私には、何か、お年寄りが着ている蛍光ベストみたいに見えるんですけど……。

彼の腰を叩きながら、安らかな口調を心がけて、慰めの言葉をかけます。

289名無しさん:2018/08/31(金) 23:29:04 ID:jCcZM/NU0
「ゴメンなさい。本当に、ゴメンなさいね。痛かったでしょ?ソコの手加減の仕方、私は知らないですから……思いっきり蹴っちゃっいましたものね。
 大丈夫、恥ずかしくなんてないですよ?ソコが痛いのは、立派に男の子をしてるってコトなんですから……。ね。男の子じゃなかったら、一生、そんな痛みとは無縁なんですから……。
 痛いのは、男の子だって証拠。……そういえば、話が途中でしたね」

彼の気を紛らわせることが出来れば、なんでも良かったんです。
穏やかに、彼の顔を覗き込ませていただきます。キスが出来る距離。恋人の距離。あの日、私が見てしまった距離。

「理解して欲しいとはいいません……でも、コレがきっと一番いい方法だと思ったんです」

「先輩、時系列が滅茶苦茶……落ち着いて。ほら、おにーさんも。一緒に深呼吸して。ほら、すぅー、はぁー、って。
 もしかしてですけど、おにーさん、今までキンタマ蹴られたことってなかったんですかぁ♪うふふ、お揃いだったんですねぇ。私も、キンタマ蹴られたことって無いんですよぉ。
 まぁ、私は女の子だから?これからも蹴られることは絶対ないんですけど……ほら」

サツキさんは、見せ付けるように、自分の股間、パンツ越しに薄く盛り上がったお肉を抓んで、グリグリと揉みしだいています。

「おにーさんと違って、私、ここにそーんなオデキみたいなもの付いてないんです。だから、どれだけキンタマ苛めても、一生やりかえされる心配なんて要らないんです。
 一回、金的の痛みを知っちゃうと、怖くなっちゃうんでしょ。可哀相。私は絶対に知ることが出来ないから、これからも遠慮なくソコを苛めますけど。

 ……そんな顔しないでくださいよぉ。でね、優しい私達は、哀れなおにーさんにグッドニュースを持ってきてあげたんですから。ね、先輩」
 
グチャグチャになった頭の中が整理できたと思ったら、読んでいたみたいに、サツキさんから話の接ぎ穂を渡される。
……頭がイイ子ですよね。同じ人間なのに、どうしてこうも違うのか。殊更、私の出来が悪いだけだと、分かってはいるつもりなんですけど。

「フジワラ君、貴方、何をするつもりだって聞きましたよね……アレ、その、非常に心苦しいんですけど、その、ね。
 あの、コレから、ですね。取り乱さないで聞いて欲しいんですけど……その。貴方を去勢させていただこうと思っているんです」
 
ハテナマークが浮かんでいるのを感じる。マトモな人生を送っていると、畜産業でも無いと去勢なんて言葉、聞かないですものね。
ただ、彼が知らない言葉を知ってたという事実で、後ろ暗い優越感を感じてしまうのは、許してくださいね。知らない貴方の方が、正常なんですから。

「去勢っていうのは、雄の睾丸……有体に言えば、キンタマ。その、それを抜き取ってあげるっていうことです。
 別に潰してしまってもいいですし、その方が簡単なんですけど……潰されると、男の人って凄い苦しむから、見ていられなくて。
 
 それなら、潰すのはお仕置きするときぐらいに限定して、抜き取ってあげる方がいいのかなって。ちょっと大変ですけど、貴方もその方がいいですよね?」
 
純白のシーツを、彼から流れ出した脂汗が染め上げていく。些か蒸し暑いとはいっても、風邪を引いてしまわないか、すこし心配になってしまいます。
ガタガタと震えているのは、やっぱり寒いからでしょうか。それとも、タマタマを抜かれるのが恐い……これでも譲歩したつもりなのですけれど。

でも、結局、私達はタマタマ抜くって言われても恐がれない性別ですし……こればっかりは、彼自身に克服してもらうしか無いんです。
私よりも全然強い、フジワラ君なら大丈夫です!微力ながら、私だって、恐怖を克服するお手伝いは考えてきていますし!!
……まぁ、私の浅知恵には期待出来ないと言われると、押し黙るしかないですけどね。

それを、そのまま言葉に換えて彼に投げ掛ける。

「そんなに震えて……寒いんですか?空調の温度、あげた方がいいなら、気後れする必要ないですからね?
 それとも、恐いの?なら、大丈夫。無理矢理、取り上げてしまおうとは思ってませんから。そうですよね、サツキさん?」
「そーですよ、おにーさん。無理矢理奪うつもりなら、おにーさんが寝てる隙にちょん切っちゃうとか、そーだな。反応が見たいみたいな変態だったら、
 おにーさんが起きる前にギッチギチに拘束してから、ペンチとかで捻り潰したりとかしてますよ♪」
 
子供を寝かしつけるように、彼の腰を叩き続けます。少しでも落ち着いてくれれば、それだけで嬉しいです。

290名無しさん:2018/08/31(金) 23:29:42 ID:jCcZM/NU0
「私、考えたんです。男の人がタマタマ抜かれてしまうのを恐がるのは、それが大切なモノだと誤解しているからじゃないかなって。
 ほら、ちょっと違うかもしれませんけど……私も力づくで貞操を奪われたとき……「うわ、おにーさん、サイッテー」あ、良いんです。彼に奪われたわけでは無いですし。
 その時も、失ってみると、あ、こんなものなんだって拍子抜けしちゃいましたし。男女は逆ですけど、きっと、貴方も、抜かれてみたら、呆気なさに笑っちゃうかもしれませんよ?」
 
「女に……何が分かる………………………………」

「分かりませんよ、何にも。だって、私達には生まれたときから『付いてない』部分なんですから。
 でも、『男の子』だってそうでしょう?逆に、『付いてない』女の気持ちは分からないでしょう?お互い様、ですよ。
 それに、分からないからこそ、してあげられることも有ると思うんです……恨まれてでも、してあげないといけないことが。だから」

緩々と。腰を叩いていた手を下ろして、彼の股間……お尻と足との間の、菱形に開いた窓みたいな隙間に捻じ込みます。
空間の奥に、大事そうに両手という殻で覆われたナニかを見つけて。可哀相に、痛みで力が入っていない脆い殻を抉じ開けて、中央の柔らかいものを掴み取らせていただきました。

「だから、ね。貴方が、気持ちよくコレとお別れが出来るように。こんなモノ要らないって、心から思えるように。
 最初から『こんなモノ要らない』って分かってる、女が。私達が、それを教えてあげようって考えたんです。
 
 いいアイデア、ですよね?貴方の魅力はこんなタマがあるからじゃないんだって、私は知ってますから。大丈夫ですよ」

軽く掌を閉じると、二つの柔らかい塊とその拍動を感じます。男を男たらしめるものが、こんな脆弱なものだなんてと思うと、愛おしさまで覚えてしまいます。
でも、ゴメンね。君達に恨みは無いんだけれど……ご主人様を解放するために、少し、一緒に遊びましょうね。

ゴリゴリと、掌で音が聞こえるような錯覚を覚えます。二つのソレを、お互いに擦り合わせ、摩り下ろさせていただいていく。
この場合って、右と左、どっちが痛いのでしょうか……コレも、私のお粗末な頭にとっては、永遠の謎です。

「ひぎィッ!!!ふぐぅッ!!」

彼に聞いてみようとしたのですけど、気の毒に。答えるどころでは無いみたい。
聞いてみたところで、持っていない私には分からないかもしれませんけれど……それでも、理解しようとしないと進歩のしないです。
私は愚昧ではありますが、いえ、だからこそ、躊躇っていては皆に置いていかれてしまいます。

なんて。少しでも危ないと思ったら、直ぐに固まってしまう私の言えたことではないかもしれませんね。
こう調子に乗りやすいところも、数え切れない私の悪癖の一つ。

「や、めろっ!違うっ!!オレは、借金なん、て!!!金なんて、必要じゃ、ない!!!」
「『金』、要らないのですか?それじゃ、遠慮なく―――ふふ、コーリ、コリ」

彼は、必死なのでしょう。何とか、私の手を、男性の果実から引き離そうと四苦八苦しています。
でも、それは徒労。睾丸を握られてしまうと、男の方って力を出せなくなってしまうみたいですから。ふふ。どうしようも無い状況に追い込まれることを、
『金玉を握られる』っていいますけど、アレ、上手いこと言っていたんですね。実際に握ってみるまで、言葉の意味はちんぷんかんぷんでしたけど。

それに、安心してください。だって―――

291名無しさん:2018/08/31(金) 23:30:15 ID:jCcZM/NU0
「落ち着いてください。大丈夫、大丈夫ですよ。私の握力じゃ、キンタマ潰れることなんてありません、きっと。
 ただ、ちょっと苦しいだけですから。安心して、男性であるコトを堪能して頂いて結構です。
 
 コレで、こんなモノ要らないって思えたら、遠慮なく口にしてくださっていいですからね。笑いませんから。バカにもしません。
 だって、『要らない』っていうのが、共通認識になったってことでしょう。寧ろ、やっと分かってくれたんですねって、嬉しくなってしまうくらい。
 
 ほら、コリ、コリ、コリ。どうですか?要らなくなってきませんか?
 ……ふふ。一体どんな痛みなのか、一生分からないと思うと、ちょっと羨ましく思ってしまいますね」

亀のように頸を伸ばして、目を見開いて。その眼前では、サツキさんが、まだ自分の股間を見せ付けているみたい。
踊るように悶える彼に応えるように、片手で、自身の睾丸に囚われていない股間を揉みしだきながら、もう片手で慈しむように頭を撫でてあげています。

「ほら、おにーさん、見て。お揃いですよ?ほら、ほら。私も、お股、コリコリされてます……うふふ、可愛い。
 ゴメンね。私は、コリコリというより、フニフニって感じですけど。ほら、無いからさ。全然平気。いいでしょ?おにーさん、羨ましい?」
 
あの人が、その言葉に首肯してくれることを期待していなかったというと、嘘になります。
だって。もう、詰んでいる状態なんですから。これ以上我慢しても、お互い辛いだけでしょう。私だって、分からないなりに、心を痛めてるんです。
貴方のこんな姿は、見たくありませんでしたし。私のこんな姿も、見せたくはありませんでした。

……そして。暫く、彼に付いた『吹き出物』のお世話をしていると、一つの疑念が心を過ぎります。
もしかして。もう、慣れちゃったのでしょうか。睾丸の痛みは、決して慣れたり耐えたりは出来ないって聞いたことはありますけど、
私、ソレは大袈裟……正確にいうなら、眉唾物だと思ってます。だって、そんな、慣れることが出来ない痛みなんて、想像することも出来ないですもん。

だから、一旦。スルリと、彼の袋を解放して、右腕を股間から引き抜きました。
その刺激にせいなのでしょうか、どういう仕組みかは分かりかねますが、バネ仕掛けみたいに彼は立ち上がり、弾みで、私は尻餅をついてしまいました。
『きゃっ』と、年甲斐も無い悲鳴。大きく開脚した状態で黒い下着を晒す形になって、お耳汚し、お目汚ししてしまい、申し訳ありません。

鈍臭い私とは違って、サツキさんは彼に合わせて立ち上がっていました。
一瞬の睨みあい。そして。一呼吸の間を空けて、フジワラ君は、遮二無二右腕を振り回します。一生懸命で、いじましいですよね。

膠着状態で、金的を入れられてしまった先程の反省なのでしょうか。先制して殴ってしまおうと考えたのでしょうか。
暴力はあまり好きじゃないのですけれど、頑張って考えたんですねと思うと、関係ないのに誇らしい気持ちになってしまいます。

でも。それでも。
サツキさんは泰然自若とした様相を崩さず、下半身を突き出して、その反動で上半身を大きく仰け反らせていて。
フジワラ君の乾坤一擲の右フックは、彼女の鼻を擦るようにするのが精一杯。空しくも、空気を切ってしまいました。

愕然としているのが、足元からでも分かります。そのまま、金的の守備に回ろうとしていたのですが―――

ニコリと、サツキさんは彼に微笑みかけると、右拳を顔の高さまで持ち上げて、頸を傾げます。
ショートボブの髪が流れていく様は、微笑みと併せて、まるで大輪の花が咲いたみたい。一瞬、見惚れてしまいました。

そのまま。先の一撃をトレースするかのように、彼女もテレフォンパンチを一つ。
気取った言葉で、デジャヴュっていうんでしたっけ。全く同じように、彼も下半身を残して、上体を反らします。

同じじゃないのは、一箇所だけ。

292名無しさん:2018/08/31(金) 23:30:46 ID:jCcZM/NU0
「ほいやっ」

気の抜けた掛け声と共に、左足が振り抜かれます。軽い声ではありますけど、右拳を振りぬく勢いを捻りにのせて、股関節から爪先までを鞭のように撓らせた一撃。
狙いはいうまでも無く、不恰好に晒された、男の子が『的』としてもっている、『金』のように大切に思っている部分。

爪先が、二つの敏感で脆弱な肉球を、それを包む袋を引っ掛けるのが見えます。袋が、ゆっくりと撓んでいくところも。
彼女の爪先は委細構わずに進んでいって、一瞬、袋が千切れちゃうんじゃと思うほど伸びきって。

グリンと、幻聴が聞こえる程に変形、自身を捉えた爪先から解放され、元の場所に戻されました。

恥骨に挟んで、押し潰さないようにと配慮しつつ、最大限に変形させることを主眼に置いた一蹴り。力任せしか能がなくて、ただ、潰れないでくださいって祈りながら蹴る私とは、次元が違う動き。
『ついてない』私は、見蕩れるだけで済みますけれど、その、『ついている』彼は―――危ない!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」

絶叫が迸るのと、私が再度彼の睾丸を捕まえたのは同時。男性であれば、アレを見せ付けられると自分のモノまで痛くなっちゃうでしょうけど、
コレについては、『ついてない』女の役得として、勘弁してくれると嬉しいです。

共感出来ないから、躊躇無く。彼が、再度そこを押さえる前に、先手をとって制圧します。
お尻側から手を差し入れ、思いっきり下に引き下ろします。その、上がっちゃったら下ろしたほうがいいかなって思ったのもありますけど。

足から力が抜けて、正座するみたいに座り込む彼と、その前で雄雄しくも仁王立ちの(可笑しいですね、女の子なのに)サツキさん。
まるで、先生に叱られる子供みたいなんて、場違いな印象を受けて、少し微笑ましい気分になってしまったり。

サツキ先生は、呆れたといった顔で、フジワラ君を見下ろして、溜息をつきました。

「おにーさん、学習能力って知ってます?シノ先輩だって、コレだけやれば少しは学びますよ……(ん?)……
 あのですね。なぁーんで、私と同じ方法で避けようとするんですか?さっき、見せましたよね?私には、金的付いてないんだよって。
 
 おにーさんは違いますよね?不公平かもしれませんけど、おにーさんには『金的』っていう弱点が、『まだ』あるんですから。
 『無い』私達とは違うんですから、ソコはず〜っと意識してないと駄目でしょ?女の子なら、全然平気でも―――

欺瞞です。いくら女だからとはいっても、股間を思いっきり蹴り上げられたら、それなりには痛いです。私だけ?……いや、そんなことは無いと思います。
少なくとも、全力で弁慶の泣き所を蹴飛ばされるのと、股間を蹴り上げられるの、どっちがいいって聞かれたら、どっちも嫌ですって即答する自信があります。

ただ、『女』の私が、『男』の痛みを理解出来ないように。『男』の彼は、『女』のサツキさんに平気って言われると、それを否定することは出来ないんでしょうね。
急所が有るのと無いのとは、どうしても視覚的に違いが分かってしまいますし……究極的にいうと、痛いとは言っても、それだけで即戦闘不能になるわけじゃないですし。

それは、彼女も分かっているんでしょう。でも、彼が諦めやすくなるように、あえて気丈に振舞っていると考えると、私も、足手纏いになるばっかりじゃ駄目と気合が入ります。
次は、どうやって『説得』しましょうかしらと考えていると、頭上から衣擦れの音。見上げると、サツキさんが、自然な所作でスカートと下着を脱ぎさっていました。

ぽい、と。彼女の下半身を覆っていた布が、放り投げられます。畳んであげたいと、刹那の雑念。
彼女の姿は、スレンダーな肢体、瑞々しいばかりの若さ、そして天然物の無毛の丘と相まって、ひどく倒錯的にも、そして神々しくも見えました。

「おにーさん、手、貸してください?」

息を呑んでいた彼が、恐る恐るといった様子で手を差し伸べます。不快な感情が巻き起こりましたけど、コレは、当然のこと。
私だって見惚れていたんですから、彼が呆けるのを咎めていい理由なんて有りません。そこまでの魅力が無い、自分をこそ責めるべき話なんですから。

差し伸べられた手に、惜しげもなく自身の女性器を弄らせる彼女を見て、私はどっちに嫉妬していたのでしょうね。

293名無しさん:2018/08/31(金) 23:31:18 ID:jCcZM/NU0
「ほら、分かりますか?おにーさん。私には、今、おにーさんを苦しませている『悪者』がついてないって感じられますか?」

薄く盛り上がった丘と、中央の峡谷。そこに、無粋なものは何もないと、彼に示しているその姿。

「ほら、ココ、抓んでみてください。大丈夫、私は全然平気ですから。でも―――先輩?」

サツキさんに促され、言われるがままに、彼の睾丸を摺り合わせる作業に戻る。今回は、付け根にあるコリコリしたところを、親指の腹で押し潰すことも忘れない。
ヒッと、息を呑む音が聞こえましたけど……サツキさんは、自身の股間に添えられた手だけは、解放するつもりがないようでした。

「ほら、おにーさんは駄目ですよね?何でか分かりますか?ふふ、正解です。おにーさんは、私と違って、ココにとっても痛いものが付いてるからですね。
 それなら、もう、それ取っちゃってもいいんじゃないですか?ソレさえ無ければ、もう苦しまなくてもいいんですよ?嘘だと思うなら……私にやり返してみてください?
 出来ますか?出来ないですよね?いいんです、当たり前です。やり返す場所は、ココには無いんですから」
 
出来の悪い子に噛んで含めるように語り掛けている彼女は、先生どころか、母親のようにも見えてしまって。
先輩なのに、と。我が身を省みて、その不甲斐なさに歯噛みをしてしまいそうになります。

「おにーさんは、ソレが付いているのが当然と思っているのかもしれないですけど……ソレ自体が間違いなんです。
 私達にとっては、そんなモノが付いていないのが当然。自然なんです。だからこそ、おにーさんのためを思って、ソコを取り外して上げられるんです。
 
 それに、おにーさんがコレから行くところも―――

「えぇ。皆さん、ソコはスッキリしているハズです。……コレ、最初に説明しておくべきでしたね。本当、自分の段取りの悪さには辟易します……。
 あの、ですね。最初にも言いましたけれど、あの、貴方のキンタマはもう詰んでます。心苦しいんですけれど、その、胸が痛むのは確かなのですけど、コレ、諦めてください」
 
俯いてしまう。背中が丸まってしまう。威風堂々とした、サツキさんみたいには、私はなれない。
私に出来ることといったら―――

「コレからフジワラ君が行くところは、その、男女合同で、重労働を課されるところなんです。だから、その、増えてしまうと困りますよね?」

言葉を選ぼうとして、自身の語彙力の貧しさに気が遠くなる。

「だから、増えることが無いように、その、『加工』してから出荷するってことになるのですけど……」
「ね、おにーさん。分かるでしょ?女の子は、『加工』しようとしても、ほら。どうすればいいのか、分からないでしょ?
 その点、男の子だったら、『加工』は簡単。おちんちんとタマタマが付いたお股を、『私達と同じ形』にすればいいんだから」
 
気の毒に、とは思います。大変そうですね、とか、理不尽ですよね、とか。言いたいことは、いくらでもあります。
それでも、コレだけは。物理的に違いがある以上、私だけの思いでは、どうしようもないんです。

「本当に、ゴメンなさい……許して欲しいとは言えません。でも、それでも。殺されてしまうよりは、絶対にいいと思いましたから!
 ……貴方がタマを取られる程度なら、私は耐えられますけど。命まで取られてしまうなんて、とても耐えられる気がしなかったから!!

 私の我儘です。タマを取られるのが、男の方にとってどんな意味を持つのか、結局のところ他人事ですので……それなら。
 それなら、私は、貴方に生きていて欲しい。女の私にとっては、それが一番大事だと思ったんです!!!……だから、後悔はしていません。
 そして、貴方にも、後悔して欲しくない」
 
知らず知らずの内に、掌に熱と力が篭ります。ヤバいかもと憂う理性と、もうどうなってもいいと叫ぶ心と。
魂を搾り出されるような声をあの人が吐き出すのを聞いて、哀れみと、謝罪と、そして。こんなコトで、魂が搾り出されることなんて無いって確信と。
……だって、そうじゃないですか。じゃないと、タマが無い私達に、魂が無いみたい。そう。こんなモノ、単なる飾りなんです。

294名無しさん:2018/08/31(金) 23:31:49 ID:jCcZM/NU0
「おにーさん、聞いてくださいね。分かってくださいね。おにーさんみたいな人に、そのオモチャは不相応なんです。だって、そうでしょう?守れてないでしょう?
 それなら、いっそ、取ってしまったほうが、おにーさんのためなんです。違いますか?取ってしまえば、『普通』の股間になれて、もうキンタマを守る必要だってなくなるんですよ?
 
 大丈夫。私達と一緒になるだけです。ソレ、付いていてイイコトなんて有りましたか?無かったでしょう?ソレのせいで、いやらしい思いに振り回されて、男の子の責任を押し付けられて……
 挙句の果てに、女の子の前で、惨めに蹲る羽目になって……あ、自分を卑下しないてくださいね。ココに来た男の子は皆、最後はそうなる……いや、そうなったんですから。
 
 ほら、息を整えてください……って無理ですか。不思議ですね。下半身の、それも、あんな小さなところを責められているだけで、何も出来なくなるなんて。
 でも、それも今日までの辛抱です。私達には最初から無いですけど、それに不満を覚えたり、不便を蒙ったりしたことなんて、一度も無いですよ。
 
 ね。最後ぐらいは、男らしく迎えましょう?観念してキンタマ差し出すのって、すっごい『男らしい』と思いますよぉ?」

……そりゃ、オンナには出来ないですものね。物理的に。差し出すモノが無いんだもの。

「フジワラ君、お願いです。一言、たった一言でいいんです。勇気を出して、『要らない』って言ってください。お願い、です、から……………………
 …………分かっていただけないなら、『抜かれる』のがそんなに嫌なら、いっそのこと、もう、ココで―――

両手に更なる力が篭っていきます。縦に、押し潰すように。10本の指を、すべて食い込ませるように。
私の握力じゃ足りないなんて、もう、知ったことじゃありません。彼のためになるなら、全身全霊の力を使い果たしても―――

穏やかな顔で、自身の秘所を擦らせる後輩と、必死の形相で彼のソレを押し潰さんとしている私。
長いような、短いような、そんな時間が消費されていき……

と。甲高い声で、意味を為す文字列が、彼の口蓋から流れ出してきて。私は、胸にこみ上げるものを感じました。

「分かった、分かったから、もう、止めて」

―――不安なんて感じなくてもいいんですよって。『普通』になるだけなんですからって。

シーリングで、サーキュレータが回っています。蛍光灯は、鈍い音を立てながら点滅しています。
薄暗い光の下、脂汗にまみれてのたうつ彼は、妙に艶かしくも美しい幻想の生き物のようにも、愚かしくも哀れな、死に切れない屍のようにも。

私が、私が責任を持って引導を渡してあげないといけない。愛すべき、聖餐の贄にも見えました。

295名無しさん:2018/08/31(金) 23:32:26 ID:jCcZM/NU0
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(テロップ):丁度席を外されていますし、相方について教えていただけますか?

「相方って、シノ先輩のことですか?逆に、どんな印象でした?」

(テロップ):いや、いいですね〜。穏やかで控えめ、身持ちも固そうで、まさに大和撫子って感じです。
       なのに、あの柔らかそうなダイナマイトボディ!知的で清楚で淫乱で、ホント、男のユメっていうか。

「うわ、言葉古っ!それに、柔らかそうでも、あの人、きっと石で出来て―――おっと、放送コードに引っ掛かっちゃいますかね。テヘペロ。
 そんなに気になるなら、触らせてってお願いしてみたらどうです?あの人、きっと深く考えずに応じてくれますよ?

(テロップ):マジですかー。それじゃ、お願いしてみます。土下座の練習もしておいたほうがいいですかね?
       あー、あのおっぱいに顔を埋めて、深呼吸してみてーなー。

「あはは、ウケるー。いや、そこまででしたら、そのままヤラせてくれるかもしれませんね。ただ、気をつけてくださいね。
 あの人、ヤラせることより、ヤラかすことの方が多いですから……そんなトコロも可愛いんですけど。ウチのペットを思い出しますよぉ」
 
(テロップ):ペットですか……酷い言い草「オフレコ!オフレコでお願いしますぅ」はは、了解しました。
       あ、それでは準備が整ったようなので……



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296名無しさん:2018/08/31(金) 23:32:56 ID:jCcZM/NU0
本当に、頑張ってみてよかったです……。

シノブです。あの、お手洗い……コホン、その、お花摘みに行かせて頂いていました。
だって、その、私達にとっては何時もの『仕事』ですけど、彼にとって一生に一回しか経験できない晴れ舞台ですから。
途中でおトイレに行きたくなったら、申し訳なさに死にたくなってしまいますもの……

今は、シャワーで身を清めさせていただいているところです。せめて、綺麗な体で見送ってあげたいというのも……自己満足かもしれませんが、人情でしょう。

熱い飛沫に晒されながら、先だっての遣り取りに思いを馳せます。

あの人の、男気ある決断。どれだけ勇気が必要だったのでしょう。私には、とても真似できません。
と、ソコまで思って、含み笑い。そういえば、真似しようとしても、女に生まれた私では不可能でしたね、と。

もし、私が男として生まれていたら、同じことが出来たのでしょうか。自分のタマを差し出すなんてこと。
想像すると、大したこと無い気がするのは、きっと、実際のところ私は女性で、アレに大した思い入れが無いから。

置かれた立場は似通っているのに、性別が違うだけで、ココまで分かり合えないんだね、と寂しい気持ちになってしまいます。

結局、私達と、彼は同じ穴の狢。いえ、そう考えることも図々しい。
借りてはいけないお金とはいえ、自分の意思でそうした彼と、それすら分からず、流されるまま、ココに辿り着いた情けない私では。

偉い人達の判断や、額にもよるらしいですけど……こんな時の末路は悲惨です。
男性であれば、強制労働から臓器提供まで。女性はマシで、若くて容姿に優れていれば、夜の街で働くという選択肢もありますけれど。

私達にいたっては、ソレにすら劣ります。最低な方々との運命共同体。共犯関係にまで成り下がってしまっているのですから。

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もう、記憶も曖昧になってしまいましたけれど……あの日。私と、母が住んでいたあばら家に来た『あの人』は、随分と荒んでいました。
母は水商売をしていたのですが、年齢には勝てず。それまで身体を酷使していたのもあって、常に臥せっていたのを覚えています。

物心ついたときから、父親は居ませんでした。母も、決して語ってはくれませんでしたが……薄々、彼女も分かっていないということは、気付いていました。

若い頃の散財癖が抜けなかったのか、生活は苦しく。私も、学校生活の合間を縫ってはアルバイトをしていたのですけれど、生まれつき要領が悪くて。
母が、昔日に知った、表立っては口に出せないことろでお金を工面したのも、突き詰めれば私の稼ぎが悪かったせいでしょう。

母は、よくそのように私を詰りましたし、私も概ね事実だと考えていたので、特に反論はしませんでした。

それでいて、私が高校を止めようとすることは頑なに反対していましたし……おかしな人、ですよね。
でも、私もそうかもしれません。蛙の子は蛙といいますか、矛盾を抱えた親子関係。
生活に不満はありませんでしたし、分相応と考えていましたけど……それでも、あの毎日から一番遠いイメージがあった、この口調が染み付いてしまったのですから。

いつしか、恐い人が家に出入りすることが多くなりました。いつも、同じ人。母から、取立てに来た人です。
仕事熱心な方、だったのでしょう。母を怒鳴りつけたり、殴りつけたり。その度に、私は、その人にしがみついて許しを乞うていました。

いつからでしょうか。その人が母を責めることを止めて、私に咥えさせたり、私を掻き抱いたりすることが増えたのは。
母は全てを諦めたような目で見ていましたが、私は特に不満は無かったんです。寧ろ、こんな身体を差し出したぐらいで、あの人が
乱暴を止めてくれるのであれば、有り難い話だとすら思っていました。

乱暴なことは嫌いです。自分がされたくないことは、人にもしてはいけない……コレだけは、私でも理解できる真理だと信じています。

297名無しさん:2018/08/31(金) 23:33:31 ID:jCcZM/NU0
ふふ、フジワラ君は知らないでしょうけど、貴方とお付き合いすることになった時だけ、あの人は家に近寄らなくなったんです。
きっと、恐かったんでしょうね。母は、臆病者と蔑んでいましたけれど……ふふふ、どの口で言っていたのかしら。
私は、自分に勇気が無いことを自覚していたので、心の底で、少し共感していたのですけれど。

そして。フジワラ君が、賢明にも私に見切りをつけてから、数週間後。少しお酒を嗜まれていたのか、例に無く荒れた様子で、あの人が現れました。

眼前に厳つい顔。キスが出来る距離。恋人の距離。幸せになるべき女性と、彼との距離。私のような薄汚れた女と、『あの人』との距離。
こんな女だとは思わなかったぜ、と吐き捨てられて。あぁ、コレが私に相応しい境遇なんですねと、ただ、ただ一人、静かに納得をしていました。

暫くの間、母とあの人は、随分と激しく口論していた印象があります。母が、あの人を意気地なしと、そのタマは飾りかと、あの人はアバズレと、親子共々、売女だな、と。
そして。借金のカタに、私を連れて行き、色街に沈めると。もう、コイツには未練を感じない、と。

私は、ボケッと、その様子を見ていました。コレまでがいい夢だったんですね、と。あるべき人生に、コレから進んでいくんですね、と。
ただ、母はそうでは無かったみたいで。色街という言葉が出た瞬間、獣のような声を上げて、私に向き直った『あの人』に飛びついていました。

まぁ、今まで臥せっていた身ですから。目測を誤ったのか、力が足りなかったのか。引き倒すには至らず……ただ、ズボンとパンツを、ズルリと引き下げるだけで。
私の眼前に、彼の『男性たる所以』が、ブルリ、と晒されました。

きっと、ソコが分かれ道だったのでしょう。無我夢中で、なら、まだ救われたのでしょう。

でも、私は自分でも驚くほど冷静で。
まず、その時手にしていた、菜箸をお尻に突っ込んでしまおうかとしました。でも、お股に物を入れられるのは不快でしょうと取りやめて。
おちんちんに噛みついてしまおうかとも思いました。でも、あの人は、おちんちんを触っているとき、とても幸せそうだったので。可哀想と思い、取りやめて。

残った場所。私がされても、嫌じゃない部分。何のためについているのか、分からなかった部分。
私と同じ、『男気』を持っていない彼なら、無くしてもそこまで困らないのではと感じてしまった部分。

気付けば、あの人のおちんちんの下。ちょこんと付いていた袋に噛り付いていました。

―――シャワーの飛沫を浴びながら、身震いを一つ。私なりに処理した股間に手を伸ばして、ソレの形を確認します。
そこに、男性が持つような袋も、そしてその中身も存在しないことを、ゆっくり、ゆっくりと再確認して。

耳を劈く絶叫。私は、近所迷惑にならないかなと、困惑したことを覚えています。
家は町外れなので、余程のことが無い限り聞こえないのは分かっていましたが、その叫喚は距離すら軽く貫くようでした。

母は、あの人を羽交い絞めにして、「そのまま食い千切ってやりなさい」とかなんとか喚いていましたけど。
私としては、お祝いの時に奮発して買うスジ肉を噛んでいるような、何の変哲もない歯応えと、二人の温度差に呆れるばかりでした。

ただ。母ではなく、あの人の苦しみようが侘しくて。少しでも早く、楽にしてあげたいと、渾身の力を込めた。そんな、記憶があります。


気付いたときには、あの人は股間を抑えて蹲っていて。口一杯に、彼の一部を頬張った私と、彼の股間から夥しい赤色が広がっていました。
もともと汚れた床でしたけれど、カビが生えたら困るなと、見当違いのことを考えたりもしたのですが。

想像以上で、本当に、なんでそんなに苦しむのか分からない。悶える彼を見ていると痛ましさに胸が詰まってしまって。
口の中にあったものを吐き出して、彼の前に差し出したんです。

「あの、ゴメンなさい。お金、欲しかったんですよね……コレ、お金っていうか、貴方の『金』玉ですけど……どうぞ。
 本当、すみません。ウチ、金目のものはもう無くて。私も母も女性ですから、その、お股にも『金』を持っていないですし」
 
愕然としているあの人の背中を、優しく叩きながら、語り掛けました。

298名無しさん:2018/08/31(金) 23:34:09 ID:jCcZM/NU0
「何に使うのか分からなくて……ゴメンなさい。貴方は男らしくないし、無くても困らないと思ったんですけど。コレ、『金』、お返ししますね……
 残りは、出来るだけ工面するように頑張りますから……

と、彼の両目からボロボロと大粒の涙が流れ出して、息を呑みました。男の人が泣くところなんて、初めてみたんですもん。
今にして思えば、その時はもう、男の人じゃ『無かった』んですけれど。あの頃は、おちんちんあれば男性だと思ってたんです。

轟音のような足音と怒号。先程の悲鳴を聞きつけたんでしょうか、私を連れて行こうと待機されていた方々が雪崩れ込んできたのが、次の瞬間。
私なんかのために待機されていたとは、恐縮するばかりですが……その方々は、眼前の光景に一瞬絶句。

二言三言言葉を交わしたかと思うと、私の腕を掴んで、そのまま連れて行ってしまいました。
最後に見た母は、涙を流していましたが……その意味は、未だに私には分かりません。もはや、定期的に行っている仕送りだけが、私と母との縁になっています。


―――連れて行かれた先は、独房と呼ばれていました。
 
私の処遇が決められるまで、ココで待つようにって言われていたのですが、独房というのは名ばかりでしたね。
饐えた匂いがする万年床には閉口しましたが……コレについては、全部の部屋のお布団を天日干しさせてくださいって頼み込んでみたり。
初めての、自分の部屋。初めての、エアコン。お湯が出る、蛇口。極めつけは、何もしなくても三食だされる、お肉やお魚がついたご飯。

こんな贅沢をしていいのかしらと、頬をつねっても目は覚めやらず……次第に、私はとんでもないことをしてしまったのではと恐怖を覚えました。
これは、話に聞く、死刑囚の最期の晩餐なのではないでしょうか、と。未だに、何を食べたらそうなるのって聞かれるのですけれど、胸とかお尻とかにばかり、
無駄にお肉が付いてしまう体質なので、太らせてから食べるつもりなんでしょうか、とか。


いえ、殺されることは別に良かったんです。もし、アレがとんでもないことだったのならば、最期に、一言。あの人に謝りたい。
ただそれだけが、心残りでした。

一週間ほどたったでしょうか、妙齢の女性がいらっしゃって、私は独房から解放されました。
キミは美人さんだし、お風呂に沈んでもらおうと思ったんだけど―――と語りかける彼女を遮るように、思いの丈を、あの人の様子を聞くと苦笑。
見たほうが早いね、と、『医務室』と呼ばれるところに案内されたんです。

そこに居たあの人は、見た目、健康そのもの。ただ、股間付近に包帯が巻かれ、管が伸びていて。そして、魂が抜け出たような瞳が印象的でした。

生気というものが抜け落ちた姿に狼狽したところ、付き添ってくださった女性が笑いながら、タマもがれると皆あーなるわよと告げられます。
理解できず、何でですか?と聞いたら、女には一生分からないし、分かる必要もないんじゃない?とのこと。

何か、重篤な後遺症でもと狼狽していると、単に、いやらしいコトが出来なくなっただけだよと教えられ、胸を撫で下ろします。
いやらしいコトはやり過ごすべき出来事であって、別に自分からする必要なんて無いと思っていましたので。

アレがあるから、いやらしいコトに振り回されるんですね、と。『あの人』が、男性が悪いのでは無く、アレが悪いのですね、と。
胸のつかえが取れたような気分になったのは、何故なんでしょうね。

あと、真っ直ぐ歩けなくなることもあるみたいよ、バランスが悪くなってと告げられたのですが、それについては未だに納得がいっていません。
自分の股間を押さえてタマが無いことを確認して、数歩進んでみても、バランスが何て感じることは無いですから。
それも男の子の不思議よねって、付き添いの方は笑っていました。

聞くところによると、あの人も私達と同じ、多重債務者だったそうです。
私達から取り立てられれば、ノルマ達成ということで、逸ったんじゃないかしら?返り討ちにあってちゃ世話無いけどねーと言われ、
なんとか解放してあげることは出来ないかと頼み込んだことも覚えています。だって、ウチには本当にお金が無かったのですから。

付き添いの方は本当に朗らかに笑う方で、もうアレじゃ使いようが無いから解放するよん、と、また、笑って答えてくれました。
その言葉で、胸を撫で下ろしたのは、仕方が無いことではないでしょうか?

299名無しさん:2018/08/31(金) 23:34:45 ID:jCcZM/NU0
男としても使いようが無いってね♪という言葉を聞き返すと、つまりはタマが無いと妊娠させることが出来なくなるとのこと。
それだけですか、と私も苦笑。付いていた時にも、散々私を抱いていて、それでも私が孕むことは無かったんですから……やっぱり、無くても困らないところだったんですね、と。

解放される前に、言葉を交わしたくて、あの人の側に寄り添います。私を見て、瘧のように震える彼は、以前より愛おしく見えました。

「喜んでください。解放、して頂けるんですって。良かった……本当に良かったですね。
 大丈夫。おちんちんは未だ有りますし、そもそも、貴方のタマタマが無くなってても、誰も気にしたりしませんよ。

 現に、私も。貴方がタマ無し……こんな言葉でいいのでしょうか?になっても、別に、貴方に対する印象は変わりませんから。
 ふふ。むしろ、男らしくない貴方が有るべき姿になれたねって、嬉しいぐらいです。女の私と、お揃いですね。
 
 大丈夫、大丈夫。良かったんですよ。幸い、外見からは分からない場所、そうでしょう?」
 
彼の瞳に涙がたまって。そこで、「男気」が無くなるっていう意味が、少し分かった気がしました。
そして、彼が『男』の責任から解放されたことが嬉しくて、遮二無二、胸に掻き抱いて背中を叩きます。

「要らない『モノ』が無くなっただけで、解放されたんですから。本当に、本当に良かった……」

その様子に、付き添いの方は面白がるような視線を向けていました。

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「キミには、アタシ達、去勢班の仕事を手伝ってもらうことになったから」

『応接室』と呼ばれる部屋で、付き添いの方……今は班長とお呼びしている女性から、講習を受けます。

「去勢っていうのはね、簡単にいうと、キンタマ潰すこと。家畜を大人しくしたりするために、よくやることなんだけどね」

彼女は、世間話をするトーンで、右手を持ち上げると、グッと握り締めます。あ、アソコにキンタマがあるイメージなんですねと一人納得。

「キンタマ潰すと、寿命は延びるらしいし、言うコトもよく聞くようになるし、イイコト尽くめだと思うんだけどさ。
 個人差もあるけれど、性欲も無くなるみたいだよん。まぁ、性欲が残っているコからは、おちんちんも没収するんだけど。
 男の人って、自分にもキンタマ付いてるからか、『潰したり』『切ったり』って作業を嫌がるんだよ……世話が焼けるわよね」
 
なんでもないようなお話。私は、ただただ聞き入ります。

「なんつーのかな。自分が潰されるのを想像して、辛くなっちゃうんだって。私からしたら、使う予定ないキンタマなら、
 ついでに潰してあげてもいいのになって感じなんだけどさー。だから、『潰される』って心配しなくてもいい女が、コレ、やってあげるしかないってワケ」
 
へー。でも、それなら、私でもお役にたてそうです。あんなコト、今までのアルバイトよりも全然単純。

「いーねっ!いやね、アタシ的には偽善もいいトコで吐き気がするんだけど、いるんだよね。付いてないハズのタマが痛むとかいって、
 やたらと感情移入する子がさ……念の為気くけど、付いてないよね?」
 
おもむろに、股間に手を差し入れられましたけど。プロが確認してくれるなら安心ですねと考え、身を委ねます。

「反応薄いコだねー。ま、タマ無いってことは確認できましたよっと。でね。そういう仏心は命取りなの。
 ……これだけは、心して。男って、何の使い道もないタマでも、命懸けで守ろうとしてくるからさ。
 
 キミの前任のコは、それで命を落としたんだよ」

300名無しさん:2018/08/31(金) 23:35:22 ID:jCcZM/NU0
まぁ、惜しむほどの命じゃないのですけど。それでも、その仏心というものの方が、理解に苦しみます。
……申し訳ありません。ずっと言われてきましたけれど、私、あまり頭の出来が良くないもので。

取り合えず、キンタマ付けて無くてもいいって判断された方のモノを潰せば良いってことで問題ないでしょうか?

「無問題!どっちかって言えば、男ってこんな不便なモノぶら下げててウケルーとか、そんなテンションでいーよ!
 アタシ達は一生無縁な痛みなのにねーとか考えると、ストレス解消にもなるし」

それも分かりかねます……誰かがしなければいけないことならば、粛々と潰して差し上げればいいのではないでしょうか……?

「……いーねっ!新しいっ!それじゃ、今日からキミも、アタシ達の一員だねっ!
 ―――去勢するところは、動画にとってるから。好事家に売ったりもするけど、もし裏切ったら、その動画……」
 
パソコンも、スマホも縁遠い人生でしたので、動画というのも良く分かりませんが……裏切るもなにも。
こんな私でも微力ながら世の中のお役に立てるなら、それ以上のことは望みません。

……それが、私の、この世界への第一歩。
後悔と未練を数珠繋ぎにした人生ですけれど。あの頃の私は、どれだけ甘ったれていたのでしょうね。

シャワーを止めて、再度、自分の股間を弄ります。21年間慣れ親しんだ、タマなんて無い、『普通』の股間。
それが『普通』だと、心の底から確認をすることだけが、私に次の一歩を踏み出させてくれました。

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『準備室』。『コンパス』、『ロデオ』、『テントウムシ』etcetc…

一見して用途が分からない器具が、雑然と転がっています。
気付いたときには整理整頓させていただいているのですけれど、他の方々はそんな意識は持ち合わされておられないようです。
私と違って有能なので、こんなコトに割いている時間は無いのでしょうね。

物思いに耽っていた私とは大違い。サツキさんは、既にテキパキと準備を進めていてくれました。
ライムグリーンの下着だけを身に付けたその姿。全身に薄い脂肪と健康的な筋肉を纏った彼女は、まるで芸術品のようで。

振り返って、私。私は裸ん坊。女性らしいといえば聞こえはいいですけれど、生きていくには不要な塊が胸に、お尻に。
そのくせ、お腹には全然脂肪は付きません……つくづく、貯えという概念と縁遠い女です。私にとっては、こんな脂肪は贅肉としか形容しようが無いのに。

薄着であったり、裸でいさせて頂いている理由は単純です。コレからの『お仕事』、どうしても返り血で汚れてしまいますので。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうけど、血の染みはどうにも頑固で。なので、お仕事が終われば、直ぐシャワーを浴びてお終い、と出来るようにこの格好ということです。

無精者なので、私はいつも全裸で『お仕事』にあたらせていただいていますけれど、サツキさんは恥ずかしいんですって。
減るものでは無いですし気にせずとも(減るなら、私だって着込みます!)と訊ねたら、先輩は女を捨てすぎです!って叱られてしまいました。

『男』を捨てるお仕事なのに、『女』を捨てすぎって叱られていることが、とても可笑しかったことを覚えています。

今回、利用することにしていた道具はこちら。分厚いゴム盤の端に、梃子の原理を利用した大きなカッターが備え付けられたもの。
端的に言えば、手動の紙の裁断機です。学校で先生方が利用しておられるのを、見たことがある方も多いのではないかしら。

他の器具の例にならいますと、皆さんからは、コレは『ギロちんちん』って呼ばれています。最初は、内心悪趣味だと顔を顰めていましたけれど。
元となった『ギロチン』自体が、受刑者の苦痛を可能な限り軽減させようと作られたことを知った今では、的を射たネーミングですねと感心しきり。
皆さん、頭がよろしくくて、羨ましい限りです。

301名無しさん:2018/08/31(金) 23:36:49 ID:jCcZM/NU0
……最初は、葛藤することも無かったのです。あの日の言葉の通り。
私達、『チーム』の元に送られてくるのは、敵対されていた組織の所謂『鉄砲玉』の方であったり、『チンピラ』の方であったり。
男性の『タマ』が司っている血の気に、骨の髄まで支配されてしまい、自分ではどうしようもないほど振り回されている方々でしたので。

私は、なんの疑念を抱くことも無く、コレは人助けなんですと思いながら、淡々と、悪意の源を磨り潰させていただいていました。
あの頃は、単純に、身動きが取れないように拘束された方の、私には無い部分をコンクリートブロックで挟んで、そのまま力を入れるといった方法で……特に、拘りも無かったのです。

拘束された男性から、流れ作業のように下穿きを取り去って。十人十色のモノをお持ちでしたけれど……共通されて付いている、二つのモノが入った袋を引き伸ばして。
養生テープで、その悪性のモノをコンクリートブロック上に固定して。『潰すので、歯を食いしばってくださいね』と一言。返事を聞く前に、両手でもったもう一つのブロックを思いっきり叩きつけて、押し潰す。

示し合わせたかのような、甲高い悲鳴、それでお終い。これだけで、『大人しく』なっていただけるなんて親切な作りをしていますね、なんて感想を抱いてみたり。
でも、その悲鳴は、澱のように、私の心の奥底に積もっていっていたのです。


月日は流れて。何でもないような人も、送られてくるようになりました。今にして思えば、あの場所に送られる方々だったのでしょう。
『感情移入する子がいる』という、班長の言葉が、フラッシュバックのように思い返されることが増えてきました。

痛みや、苦しみは分かりません。喪失感も。性格が変わってしまう……なんてコトに至っては、私の身体では完全に想像の範囲外です。
結局、分かりきったことなんです。私は、『潰すことを楽しめる』ような才能なんて無かった。『共感出来ない』という、欠落しか備えていなかった。

きっと、件の亡くなられた方は、その苦痛を見かねて『どうやったら潰さないであげられるか』を考えたのでしょう。
私は、『潰すこと』自体はその人のためと信じきっていましたから……『どうやったら痛み無く潰せるか』を考えはじめました。

それから、私なりの試行錯誤がはじまりました。何せ、潰す側ですので、納得行くまで何回でも出来るのですから。言い辛いのですが、気軽なモノという意識が無かったといえば嘘になります。
潰される側は、多くて二回(私は一回も経験できませんが)。その経験を無駄遣いするなんてトンでもないと、自身を戒める日々でもありましたけれども。

暖かみのある方法がいいかと思い、蹴飛ばして。掌と床に挟んで、押し潰して。
一息で終わらせたほうが痛みも少ないかもと思い、一瞬で。名残を惜しむ時間を与えたほうが未練が残らないかもと考えて、じっくりと。

丁度二つあるのですから、と。それぞれ、別の方法でお別れしていただいて、どちらが良かったかを聞いて回っていたこともありましたっけ。
個人的には、ゆったりとお喋りしながら、ジワジワと潰させていただくのが好きだったのですが……被験者の方からは大不評だったため、涙を呑んで取り下げたこともあります。

302名無しさん:2018/08/31(金) 23:38:13 ID:jCcZM/NU0
その頃ですね。歩み寄ろうと思って、サツキさんに色々な技を掛けていただいたのも。
『鐘抜』のみならず、眩暈を覚えるほど色々なレパートリーを彼女は持っていて……感心すると同時に、そのどれもで苦しむことが出来ず(痛くはありましたよ?)随分もどかしい思いもしました。

無理は承知で。『共感できない』という欠陥を埋めたかったのだと思います。ただ、自分自身のためだけに。私は我儘で、ただ、自分のことしか考えられない子供だと、言い聞かされて育ちましたから。
「大切な場所なら、簡単には潰れませんよ」って。「簡単に潰れてしまったのは、どうでもいい場所だったからですよ」って。「たいしたことは無かったですよね」って。
でも、どんな慰めの言葉をかけても、私と彼等は、理解しあうことが出来なくて。

彼等が、物理的に、私達に歩み寄ってくれるのだから。私も、精神的に(物理的に生やすことは出来ないので)分かり合ってあげたかった。
これが、班長が仰っていた、忌むべき『感情移入』でも構いませんでした。でも。私程度では、その糸口すら掴めなくて。

陰部を剃毛しはじめたのも、その頃でしたっけ。『無い』というのがどういうことか、実物があれば安心して頂けるかもと考えたので。
その頃から、既に『仕事』は全裸でと決めていたので、コレについてはたいして抵抗はありませんでした。

結局、私に出来たのは。『更生』させた手間賃として頂いていた、ちょっとした報酬をお渡しさせていただくぐらい。金額は、きまって15000円……何故か、全額500円玉でした。
お給金のほぼ全てを仕送りにつかっていた私には大金でしたが……あの人にとって、キンタマを差し出すのに見合う額だったのでしょうか。

サツキさんは、『銀貨30枚なんて、洒落が効いてる』って笑っていましたけど。その額は、『神様』を買える額ですよって。
無教養な私には、一月分の食費程度にしか見えませんでしたが……そんなモノまで買えるのですかと、大層驚いて見せた記憶があります。

そして、最終的に分かったのが。その、タマを抜く……つまり、切り落としてしまう方が、潰されるよりも楽そうだということでした。
予想もしていませんでした。その、指を詰める方が、爪を剥がれるよりもいいみたいなこと?そんな、理不尽な、なんて腹を立てたことも懐かしい思い出。

『あの人』の男性としての最期を。鮮血にそまった我が家を、それを思い出すと、未だに足が竦んでしまうのに。
『無い』私でも、壊れた蛇口のように……ふふ、壊れる蛇口を取り外したからそうなるのに、変ですね……暗褐色の、錆びた匂いの液体が流れているのを見ると、幻痛を感じてしまうのに。

まぁ、私のことはどうでもいいのです。ただ、何時ものように黙って耐えればいいだけなので。
そこで、初めて、何故それがギロチンに由来する名前を冠しているのかを、理解しました。

私の使い方は、簡単です。コンクリートブロックで行わせていただいていた経験を生かして、対象者の方のおちんちんと、キンタマを化粧板に固定させていただいて。
そして、対象者の方ご自身で、カッターを押し込んでいただく……ただ、それだけ。

これは、私の経験則なのですが。絶対に、おちんちんや、キンタマを切断されることが無い女に、どうでもいいコトのように軽く奪われてしまうというのはとても屈辱的なようなので。
……思い詰め過ぎ、ですよね。確かに、ソレを頂くこと自体には、感慨を覚えることは無いですけれど。そんなに気負う必要はどこにも無いのに。奪われる側も、気楽な気分でいてくれれば、それが一番なのに。
苦悶に戦慄く姿を見ているときは、心の底から、男性として生まれてしまった不運に同情はしますけれども。

だから、せめて最期は自分の手で、と。勿論、お手伝いはします。
一息に切断した方が、結局は貴方のためですよ、と励まし。その、勇気の元が詰まっている部分から、本体の方に勇気を押し出してあげたりもして。
昔取った杵柄といいますか、色々試したことがある経験上、苦しみは分からなくても、苦しませ方であれば、下手な男性以上に熟知させていただいていましたので。

勇気の元といいながら、実態は空っぽで。最期まで、ご自身で始末をつけられない方は、そのまま潰させていただいています。
可哀想に、コレは外れだったんですねと、勇気も男気も入っていないハリボテのタマをつけていて、生きていくのは大変でしたよねと、労いの言葉をかけながら、ですけれど。

彼は、フジワラ君は、そんな心配は不要でしょうけどと笑いながら、カッターの刃の手入れをしていると、サツキさんが面白いものを見ましたといって、こちらを手招きしていました。

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303名無しさん:2018/08/31(金) 23:38:53 ID:jCcZM/NU0
白昼夢から醒め、彼女を見ると、『準備室』内に備え付けられているモニターに釘付けになっている様子。
先だっても説明したかもしれませんが……『娯楽室』には、幾つか監視カメラが仕掛けて有るんです。その、『動画』を取るために。

所謂、人質?データ質?その、こういう『はいてく』なものは、未だに慣れることが出来ません。

モニターに写されたものは、剥き出しになった床板。そして、敷かれていたシーツが全て捲くられて、部屋の中央に見慣れない繭が出来ているところでした。

最初は、申し訳なく思いました。また、勝手に彼に重荷を押し付けてしまった、と。最期まで、邪魔な期待をかけてしまった、と。
そうですよね。男の子ですものね。きっと、今まであって当たり前だと信じ込んでいたものが無くなってしまうと思うと、寂しいんですよね、と。

可能なら、直ぐにでも、変わってあげたかった。彼が、シーツの中、寂寥感に包まれて泣いているんじゃないかと思った。
そして、決して変わってあげることが出来ないということに思い至って、そして、今まで『更生』させてきた方々への申し訳なさが湧き出してきて、
それだけで浮かれていた先程までの自分が許せなくなってしまって。

と。サツキさんが指差す方向、別のモニター。そこに写っていたのは。

丁度、入り口から死角になる場所。そこで待ち構える、信じていた『彼』の、勇ましくも……浅ましい姿でした。

「おにーさん、まだ諦めきれないみたいですね……クス。仕方が無い、世話の焼けるコですねぇ」

また、裏切るのですか、と。

柔らかい笑み。どうしようもない聞かん坊で、そしてそこが可愛くてたまらないと言外に語る、その顔を眺めながら。
瞬間、自分でもどうかしてしまったみたいと思うぐらいに、横隔膜あたりから吹き上がってきた黒い感情に、平衡感覚が狂うのを、他人事のように感じていました。
そして、何故か。脳裏に、顔が見えない誰かと、彼と繋がる映像が。

304名無しさん:2018/08/31(金) 23:39:29 ID:jCcZM/NU0
―――バシィィンッ!!

静寂を切り裂いて、破裂音が一つ。唖然とした顔で、サツキさんが私を見やります。
私が、自分の頬を思い切り叩いた音。驚くほど大きな音で、自分自身もビックリしてしまいました。

ビックリついでに、落ち着いてきた思考を確認します。うん、良し。えぇ、そうです。只でさえ馬鹿なんですから、感情に呑まれてしまって良いことなんて有るわけが無い。
きっと、あのままでは……それこそ、たった一回(二回、ですかね)しか出来ない貴重な経験を、お互いに最悪な後味のまま終わらせてしまっていたでしょう。

だって、治らないんです。取り返しがつかないんです、去勢って。
何回もあの痛みを思い知らせるなんて残酷なことをしなくてもいいと、治らないことに内心感謝していたのも確かです。でも、この場では、それが、ただ、恐ろしい。

呆然としたサツキさん……珍しい姿を見せた彼女に、『ギロちんちん』では無く、『ロデオ』を準備するように伝えて。

私は、気合を入れなおします。多寡がしれた気合ではありますけれど、それでも。心を鬼にして、彼にお仕置きをしなければいけない、と。
どこか遠いところで、見なかったことにすればいいじゃないって、何も無かったことにしてちょん切っちゃえばいいんですよって、そんな弱気の虫が鳴いていましたけれど。
それは、きっとどうしようもないほどの亀裂をつくる道かもしれないと分かってはいました。それでも。

きっと、子供を躾ける親って、こんな気分なのかもしれませんね。
母も、こんな気持ちで私を見ていたのかしら。

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305名無しさん:2018/08/31(金) 23:40:10 ID:jCcZM/NU0
女々しいことは、承知の上です。仕方が無いでしょう、女なのですから。

気合を入れたつもりでも、心臓は乱雑な拍動を刻んでいて。掌、足の裏が不快な湿り気を帯びていくのを感じます。
アレが、夢や幻であってくれれば、どれだけ良かったでしょう。何かの間違いにしてくださるのであれば、私は何だって捧げたでしょう。

鼻歌を歌いながら、平然と『娯楽室』の扉を開く後輩に、畏敬の念すら覚えてしまいます。
私ときたら、彼女がドアを解錠しようとしたとき、思わず縋りついてしまわないように、なけなしの精神力を総動員するしかなかったのに。

そして。開かれた扉の先に見えたのは。『準備室』で確認したままの、純白の繭。私とって、それは誰かの亡骸が包まれているようにも見えました。

彼女は委細構わず、飄々とした様子で歩を進め……

「ばあっ!!」「うおあぁぁぁぁ!!」

刹那。両手を掲げて、扉の陰、丁度、彼が身を潜めていた場所に振り返りました。

あの人は、とても驚いたでしょうね。それこそ、キンタマが縮みあがったのではないでしょうか。その感覚は、縮みあがるモノが無い私には確かめようが無いですけど。
その流れのまま、彼とサツキさんは組み合った様子です。扉の陰なので、私からは彼の肘から先しか見えません。

サツキさんは、前と同じく大股を開いています。如何せん下着のみですので、はしたないと心配する感情が一分。
素っ裸の我が身を省みて、下らないことをと考える感情が一分。そして、残りの感情は―――

先程から散々急所を責めさせていただいたので、彼は総身に力が入らないのでしょう。
不便ですね、と呆れつつ、だからこそ二人は今拮抗しているんですねと、私達にとって便利な作りになっている彼の身体に感謝。

このまま、あの人の金的を蹴り上げられればサツキさんの勝利。逆に、体勢を崩したその一瞬で、彼女を組み伏せたならフジワラ君の勝利。
誰も、私に気付いてはくれません。ふふ、私の人生そのものの、Deja vuってヤツですよね。コレこそが。

一歩、二歩、三歩と。扉の陰から身を晒すと、鏡写しのような体勢で、二人が相手の肩を押さえあっています。
キスが出来る距離。恋人の距離。あの日、私が奪われた距離。


「―――嘘吐き」


一言、自分でも、何を言ったのか分からない言葉が漏れ出て。そのまま、全力で。乱雑に、大雑把に。
ただ、全身全霊の力を込めて、私は、お二人の股間を蹴り上げました。

「きゃうッ!?」「ぎぅ!ふゥウウウゥウウウウウウ―――

結果を語る必要、有りますでしょうか?立てた爪先に、柔らかい感触。覚えのある重量が、足先と恥骨に挟まれて、変形していくのが分かります。
楕円形のナニかが、硬い骨に挟まれて、扁平な形に変わっていくところが。

脛には、柔らかい感触。女性らしい丸みを帯びた、後輩のお尻の感触です。そして。挟まれるものが『無い』から、ダイレクトに伝わる、恥骨の感触。

306名無しさん:2018/08/31(金) 23:40:50 ID:jCcZM/NU0
蹴りぬくことは、出来ませんでした。非力な私では、サツキさんの重みですら耐えかねてしまいましたので。
ただ、爪先から流れ逃れる睾丸の感触を感じながら、あぁ、潰し損ねちゃいましたね、なんて、実感の抜けた感情を味わってみたり。

私が通常の体勢に戻らせていただくと、そのまま、彼女は内股に。股間を押さえて、か細い声をあげました。
彼は……崩折れるように床に伏せ、低い声をあげながら身を震わせていて。甲高い声になって頂くつもりでしたのに、と、少し残念な気分。

「痛ッ〜〜〜〜〜〜〜〜ちょっと、先輩!?」


サツキさんが、猛然と振り返ります。憤懣やるかたないという表情。
やはり、女性相手ならこの程度ですよね、と、うすぼんやりとした頭で得心していた気がします。

勢いのまま、食ってかかろうとしていた彼女は、私の顔をみて、風船が萎んでいくように大人しくなってしまって。
悼ましいという表情をして、両の頬に手が添えられて。何故か安心感と虚脱感、そして仄暗い爽快感。
手垢のついた表現で心苦しいですけれど。知らぬ間に、冷たいものが、頬を流れていていたことを、その時、はじめて理解しました。
悼むべきは私ではなくて、痛むべきは彼なのにと、不思議な気分になったのは何故でしょうか。

フジワラ君は、不憫なことに、苦しみようがサツキさんの比では無く。
シーツが剥がされた床板。所々、ササクレができているソレを転げまわると、棘が刺さったりしないかしらと、ささやかながらも案じてみたり。

「いい気味です」と、冷ややかな目で彼を見下ろす後輩の姿は、だからこそ、ほんの少し、癇に障りました。
私が、情けなくも涙を零してしまったのが悪いのに。理不尽ですよね、それだけで貴方が敵意を向けられるなんて。

涙を見ただけで、一体私の何が分かると―――いえ、やめておきましょう。これだって、理不尽極まりないですから。だって、自分だって分かっていないのに。
いや、そうじゃない。だって、私が悲しいのは。腹を立てているのは。

「浮気者。さっきは要らないっていってくださったのに、もう移り気ですか」

そう。私が怒っているのは、彼が自分の言葉に責任を―――いや、違います。……違う、筈。
私が怒っているのは、彼が、自分から『より苦しい』と思われる方を選ぼうとしているコトと、彼を説得しきれなかった自分自身に対して。
きっと、そう。だから。

307名無しさん:2018/08/31(金) 23:41:26 ID:jCcZM/NU0
「チクショウ…………だから、人違いだって……」

彼の言葉は、意味を持たない泣き言だったのかもしれません。ただ、それは私が求めていた言葉ではなくて。
……逆に、あの日と同じ。一番聞きたくなかった言葉で。一体、私はどんな言葉を求めていたのでしょうね。自分でも、自分を理解できません。

軽く、背中を叩かれる感覚が。振り返ると、サツキさんが、どこか呆れたような、そして慈しむような顔を向けていて。
『しょうがないなぁ』なんて、そう語っている表情。そして、無言のまま、彼女は扉まで下がっていって……そのまま腕を枕に、胡坐をかいて座り込んでしまいました。
まだ痛むのでしょうか、軽くお股を擦る、その様子に申し訳なく思いながらも。その格好、とてもはしたないですよ、と差し出がましいにも程が有ることを考えてみたり。

ズルリと、背後で異音がなって。クルクルクルクル、バレリーナみたいと思いながら振り返ると、あの人は両脚で立てるぐらいには回復したようでした。
なんと声を掛ければよかったのでしょう?「潰してあげられず、ゴメンなさい」?「大したことなさそうで、安心しました」?「痛いなら、無理しないでくださいね」?
サツキさんからは、何の声も掛からず。ただ、思いのままにすればいいと、そんな視線だけを背中にうけます。

心に任せて、出てきた台詞は、コレ。



「ねぇ、フジワラ君。―――ケンカ、しましょう?」



意味が分からない。なんで、こんな言葉が出てきたのかが。それでも。
ほんの少し、背中の重荷が取れたような、そんな気がしました。


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308名無しさん:2018/08/31(金) 23:42:08 ID:jCcZM/NU0
生まれたての小鹿みたい、何て、黴臭い表現をしてしまいすみません。
フジワラ君は、両膝をピタリと閉じて、片手で痛むところ―――気の毒に―――を押さえて。
片手だけ構えた、ファイティングポーズ。内股のその姿に、まるで女の子みたいという印象を受けて、内心で謝罪します。

だって、そのポーズは、男の子だからこそ強いられているのですものね。
それなのに、なんで女の子みたいな体勢になってしまうのか……手前味噌ですけれど、きっと、身体の方は男の子を止める覚悟が出来たのでしょうね、と感慨深くなってしまいます。
片手の隙間から、ひょっこりとおちんちんの先が顔を出しているのはお間抜けで……それすらも、愛おしいと感じてしまって。


お互いに裸ん坊で。なにもかにも、晒けだして、隠しごとなんて、何一つ無くて。
と、彼の視線が股間に注がれているのが分かりました。見飽きたでしょうとも思いますけれど、見返せば、今、私は正面で手を合わせていて。
染み付いた所作って怖いですね、と苦笑。女性なので、それだけで性器が完全に隠れてしまいますものね、と。

ゆっくりと、両手を横に開きます。今度こそ、隠すものなんて、何もありません。
視線が鋭くなって、こそばゆくなってしまいます。男性は、皆さん、ココに興味津々のようで……玩具を見詰める子供みたいと微笑ましく思います。
好きなだけご覧になってくださって結構ですよ。それにしても……皆さん、何故こんなトコロが好きなのでしょうね。

私にとっては、見慣れた場所。特に何もついてはいない、何の変哲もない、つまらない部分。そして……男性が、私に求める、全て。
不思議だな、とは思いますけれど、不満はありません。こんな私に価値を見出してくれるなんて、感謝こそすれ、蔑んだり、恨んだりする理由なんてありませんから。

ただ、何も無いココが羨ましいのかなと思うことは、正直、あります。きっと、内心、自分もこう有りたいと思っているのではないでしょうか、とも。
だからこそ、彼等はココを渇望して……だからこそ、私は、彼等の『期待に応える』生業を、まがりなりにも続けてこられたのです。

お返しに、と。私も、視線を同じ場所に注ぎます。私とは違う、その部分に。
ひぅ、と彼の喉が鳴って。無意識なのでしょうか、両手で。大きな身体を縮めるようにして、必死でソレを守ろうとしているのを見て、残念、ともう一回苦笑い。
老婆心ながらの忠告ですけれど……それでは、ケンカなんてできないのではないでしょうか。

彼との間合いを詰めていきます。とはいえ、私は身体を動かすのも得意な方ではないので、不恰好にですけれど。
裸足の足裏が、ペタペタと気の抜ける音をたてて……蹲った彼と私の背丈は同じぐらい。片手を振り上げて、思いっきり頭に振り下ろしたら、ポコンと軽い音がしました。

ポコポコ。ポコポコ。一打、一打を入れる度に、さまざまな思いが去来してくるのを感じて。
今まで溜め込んできた、耐え忍んできた何かを、彼に伝えることが出来ているような気がして。

ほとんどダメージは無いのでしょう。そも、体重が違いすぎますし。体格だって、彼が本気になったら、私なんて軽く払われてしまうでしょう。
男と女で埋められない差。叩いている、私の拳の方が痛くなってきて……反比例しているように、心が軽くなってきて。夢中になっていると、彼が一言、調子に乗るなよ、と。

両手で私の乱打を軽々と押さえたのと、ガラ空きになった『金的』に爪先が捻じ込まれたのと、どちらを先に認識されたのでしょうね。男と女で、埋めようが無い、差。

309名無しさん:2018/08/31(金) 23:42:40 ID:jCcZM/NU0
『火男』のお面を思いださせる、歪んだ顔。足応えは、まだ『非男』にできてはいないわ、と伝えてきていましたけれど。
私の手首を握り潰そうとしていたかのような力が、大気に溶け出すように抜けていって。何回目、でしたっけ。膝をついて、『急所』を押さえる体勢に戻って行きました。
そこの脆さについては……経験は出来ずとも、知識としては知っています。今更、驚いたり、バカにしたりなんてしません。ですけど……その無用心さには、些か呆れてしまいます。

「フジワラ君……その、私、ケンカなんて初めてなのでよく知らないのですけれど……『金的』って、ケンカだと真っ先に狙われる場所じゃないんですか?」
「グゥゥゥゥ……ふざけんなよ、卑怯者ォッ……」

返されたのは、思いがけない言葉で。意味を飲み込めずに、目を白黒させていると、背後から長閑な声が届きます。

「シノせんぱーい、男の人って、なんでか、ケンカでソコだけは狙わないってルールがあるらしいですよぉ」

そうなのですか、と。途端に、無知故に、なにか失礼なことを仕出かしてしまったのかと思い、お尻がむず痒くなってしまいました。
幸いにも、続く言葉は、その不安を払拭してくださるもので。

「意味不明なんですけどぉ、なんか、自分でも痛さが分かるし、やり返されたら怖いしってコトで、そういう不文律があるんですって」

「良かった……それなら、痛さも分からない、やり返されることの決して無い、私達女性にとっては関係ないルールということですね……。
 ですって、フジワラ君。何か、反則的なことをしてしまったのかと心配だったのですけど、ふふ、ほっとしました。
 
 でも、一つだけ聞いてもいいですか?その、痛みが分かるなら―――

仰向けに横たわる彼。その股間目掛けて、思いっきり踵を踏み下ろします。あの人は、尺取虫みたいに、ぴょこんっと跳ねて、私の足から逃げていきましたけれど。
躊躇無くこういうことができるのも、痛みがわからない女性の特権ということなのかしら、なんて愉快になって。ふふ、愉快な気分っていうのも、久しぶり。

ガツン、ガツンと何回か踏みつけて。その度に、ぴょこん、ぴょこんと逃げ回って。ほうほうの態で、彼は再度立ち上がりました。

310名無しさん:2018/08/31(金) 23:43:18 ID:jCcZM/NU0
「分かるなら、尚更、『金的』を狙うべきなんじゃないんですか?あ、勿論、相手が男性の場合ですけど……ホラ。ご覧の通り、女の『金的』は蹴れないですものね。
 あの、蹴っ飛ばす側の経験しかない私がいうのもなんですけれど、『金的』って便利ですよ?上手く入れば、たった1回で大勢も決まってしまいますし。
 私、コレをケンカで使ったのは初めてなんですけど……仕方ないじゃないですか!ケンカするぐらいなら、我慢すればいいって、そうやって今まで生きてきたんですから!
 でも、素人もいいところな私でも、ね。これだけで、勝てちゃうんですから。ふふ、男の人にとっては、残酷な話しですけれど。
 
 
 それに、ですね。秘密ですよ?ココだけの話、上手く入ると……グチャって感触があると……うふふふふ。ちょっと、スッキリした気分にもなれますし。
 その、蹴り潰された方も、一生スッキリするらしいので、ね。そのお裾分けなんでしょうか。フジワラ君は、どう思いますか」

タンッ、タンッ、タンッ。軽く助走をつけさせていただくと、渾身の力で、彼の……両手で覆われた膨らみを、掌ごと押し潰すつもりで蹴り上げます。
また、変な顔。いや、違いますよね。それって、本当は男らしい表情なんだって分かってますから。だって、男の人しか出来ない表情ですものね。

何度目か。またへたりこもうとして。私が、踏み潰させていただこうと上げた脚をみて、痛みに耐えて踏みとどまって。耐え切れず、ぴょん、ぴょんと飛び跳ねて。
あの踊りは、可愛らしくて大好きなのですけど、痛みが和らぐのでしょうか、私には、分かりかねます。……分かってあげようと四苦八苦していた頃が懐かしく思い出されます。
あのとき、サツキさんから、『金的』を蹴る方法を学んでいて良かった。本当、人生って何が幸いするか分からないものですね。

練習で、お互いに『無い』金的を蹴る真似事をしていたときは、運動神経の無さも相まって、うらぶれた気分にもなりましたけど。
それでも、『金的』の有無だけで、こんな私でも、フジワラ君に勝てるなんて……私には、コレしか無いのに。

「せんぱーい。単に、金的をもう苛められすぎてて、おにーさんの動きが鈍っていただけですからね。調子にのらないでくださいね?」

見透かしたような(実際に、見え透いていたのでしょう)サツキさんの言葉に、知らず背筋を伸ばします。本当に、調子にのりやすいのは、私の悪い癖。
調子に乗ってみたところで、それで成功したことなんて、これまで一度も無いのにね。

苦しむ彼をみて、罪悪感を感じないかと問われれば、感じると答えます。自分では、決して共感してあげることが出来ない、苦痛に悶えるあの人に、憐憫の情を覚えないのかと問われれば、答えは否。
でも、それでも。初めて、『傾聴』するのでは無くて。彼と、『対話』が出来ているという実感が湧き出て止まらず、自身の高揚を抑えることができないのです。

「フジワラ君、せっかく守っていたのに、それでも痛いんですか?それじゃ、何のために守ったのか、分かりませんよね?ふふ、もう答えをいっちゃいますと、守り方が間違っているんですよ。
 別に、難しいことじゃないんです。女の子なら、みーんな、実践している方法―――

飛び跳ねる彼を抱きとめて。全身を、その苦悶をうつしとる心算で抱きしめて。ニッコリと、彼を見上げて微笑みかけます。
不憫なことに、彼は恐慌状態に陥っているみたいで。早く、早く楽にしてあげてと、どこかで私が悲鳴をあげていて。まだ。まだ語り足りないと、別の私は歓声をあげていて。

その時です。意図してか否か、彼の右足が振り上げられて。太腿が、過たず、私の股間を突き上げました。思っていたよりも、柔らかい感触だなと感動したことを覚えています。
どうなったかって?いえ、どうにもなりませんよ。だって、私は『金的』の守りは完璧ですから。ふふ、ココを蹴り上げるのって、意外と難しいんですよねなんて、練習時代のことを思い返してみたり。
男女問わず、股間は『急所』といいますけれど。『急所』の度合いが違いすぎますよね。しかも、膝でもなく、太腿でだなんて。ふふふふ、可愛いですね。

先程のサツキさんの言葉が正しかったのでしょうか。蹴り上げたのが、『女』の股間であるにも関わらず、彼の動きが一瞬止まりました。禁忌を犯した、とでも思ったのでしょうか。
気にして頂かなくても、私は一向に構わないのですけど。その律儀さには、頭が下がります。

311名無しさん:2018/08/31(金) 23:43:57 ID:jCcZM/NU0
「お上手ね。うふふ、ね。簡単でしょう。キーンって感じ、しましたか?ふふ、しませんでしたよね……ゴメンね。女には『金的』が通用しなくて。
 でも、男の人が相手なら、今のレベルでも一瞬は怯むと思いますよ?……初めてですもの、下手なのは当然です。そうだ!後で、私で練習してみましょうか、大丈夫、私は全然平気ですよ。
 
 ふふふ、その、ね。コレから、貴方には、力が入らない身体になって頂きますから……アレ、何でなんでしょうね?護身術の一つや二つ、覚えていた方がいいかもしれないですし、ね。

 そんなに恐がらないで。その頃には、貴方も私達と同じ。もう、その痛みを知ることはないし、絶対にやりかえされることがない肉体になっていますから。
 ―――そう。護身術と同じ。危ないところには近付かないのと同じように、危ないモノは持ち歩かなければいい。ね。これが、最高の守り方だと思いませんか?
 
 ふふふ。『金的』さえ無ければ、決してソコをヤられることは無いのです。でも、貴方は抜かれたくないそうなので」

キスが出来る距離。恋人の距離。あの日から、どこかで私が夢見ていた距離。

「申し訳ないのですけど」

心苦しさに目を伏せます。ただ、彼の心境を慮って、一瞬だけ。目線を上げて、彼を見上げて。不安が消え去ってくれればいいと、ニコリと微笑む。一言。

「潰しますね」

彼の頭を掻き抱いて、彼の腰を引き込んで。体中のバネをつかって、体中の思いを込めて。

「―――ゴメンなさいっ!!」

膝頭が、彼の太腿は感じられなかっただろう器官……睾丸を押し潰していくのを感じます。また、えんどう豆みたいに変形して。
膝と恥骨で、摩り下ろされていくように削られて。生き汚く、いじましくも、それでも自身を維持しようとして。限界まで潰れて、そのまま……

彼の頬が膨らんだかと思うと、吐瀉物が撒き散らされました。きっと、下を押し潰されて、上から漏れてしまったのでしょうね。可哀想に。
頭からソレを被ることになりましたけれど、不思議と不快感はありません。寧ろ、頑張ったねと、褒めてあげたいという気分の方が強いぐらいです。

結論からいうと、潰れてはいませんでした。まぁ、私にとってはどちらでも良かったんです。
……ですが、彼にとっては、ここで潰れていたほうが良かったんでしょうかね。それとも、一秒でも長い間、ぶら下げられた方が幸運なのでしょうか。
ふふ、分かんないです。私には。


口の端から泡を噴いて、失神してしまった彼。キレイに拭いて、身嗜みを整えて欲しい(裸ん坊なのに、身嗜みって変ですね)とサツキさんにお願いしたら、
彼女は既にその先を見越していて。次の『工程』で利用する、拘束具まで用意してくれていました。いつの間に、と今度は私が驚愕する番。

再度、シャワーを浴びついでに。『ロデオ』を準備するために、『準備室』に引き返す私。
甲斐甲斐しく、サツキさんがフジワラ君の身を清めているのを見ても、以前程の疑心と嫉妬は浮かび上がることはありませんでした。

―――また、脳裏に謎の映像。誰かと繋がる、彼のイメージ。ただ……お相手の顔は、何処と無く自分に似た面影がありました。

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312名無しさん:2018/08/31(金) 23:44:33 ID:jCcZM/NU0
『ロデオ』という言葉で、皆様はどのようなモノを思い浮かべるのでしょうか。実際に、お馬さんを乗りこなすこと?もっと卑近に、公園にあったようなお馬さんの遊具?
それとも、大きな電気屋さんにあるような、あのグイングイン動く、椅子のような装置なのかしら。

この器具は、強いて言うなら、最後の例が近い……のでしょうか。実体は単純。大型の万力に、頑丈な土台が据え付けられただけの代物です。
遠目にみると、跳び箱が一番近いのでしょうかね。ハンドルに尻尾を模した意匠が施されていて、もう片方の終端には、お祭りで見たような、お馬さんの頭が取り付けられています。
そこに注目してみるなら、公園のお馬さんにも近いかもしれませんね。

台車を押して、『ロデオ』を運びます。『娯楽室』の扉を潜った先、両手両足の親指を括り付けられ、ブリッジのような体勢。目だけを覗かせた紙袋。
きっとその下では猿轡を噛まされていらっしゃるのでしょう。まるで、咎人のような出で立ちの彼と。

柔らかく微笑み、膝枕をした状態で、優しく彼の髪を手櫛で梳いている、サツキさんの姿が出迎えてくれました。

私のような下賎の者は、見ることすら許されないような、清廉な風景にも見えました。聖母に抱かれる殉教者を描いた、神聖な絵画かもしれない、とも思いました。。
―――そして、あの日、私が見てしまった、あの光景のみたいですね、とも。

今までの私であれば、きっと、耐え切ることが出来ず、そのまま逃げ出していてしまったかもしれません。
いつものように。そして、あの日のように。

ふふ、あの日を想起してしまったのは、『お馬さん』に一因があるのかも知れません。
フジワラ君……きっと貴方は知らないでしょう。あの日、私が独り、公園のお馬さんに腰掛けて、一晩泣いていたことなんて。

いいんです。ただ、私のお家にはお金が無くて。遊び道具なんて、公園の遊具しか知らなくて。
辛いことがあったら、そこで泣くことにしていた……なんて、単純に、私の都合。知ってもらおうなんて、自己中心的すぎますよね。

それでも、今回は。何故なのでしょうね、自分でも奇妙なほど落ち着いて、その情景を受け入れることが出来ました。
どんな話をしていたのでしょう。コレが終わったら、二人とじっくり話し合いたいですね、なんて、柄にも無いことを考えてみたり。

二人の下へ、足を進めます。猿轡のせいで、彼と言葉は交わせません。紙袋のせいで、彼の表情は伺えません。無性に悲しく感じますけれど、でも、コレは仕方が無いこと
これからの『お仕事』で、舌を噛んでしまっては大変です。だから、猿轡は彼のためにどうしても必要なモノ。
これからの『お仕事』で、悶え苦しむ顔を晒させるのは、彼のプライドを傷付けてしまうでしょう。だから、紙袋は、彼のためにどうしても必要なモノ。

313名無しさん:2018/08/31(金) 23:45:11 ID:jCcZM/NU0
私の一時の感傷で、彼の一生の晴れ舞台を汚すなんて、それこそ、どうお詫びしても詫び切れませんから。私の感情なんて、些細なこと。
それでも、少しでも彼を感じ取れればと覗き込むと。暗渠から見返す目は、どうしようもない諦観に支配されていて。それが痛ましくて、彼に、コッソリと蜘蛛の糸を囁きます。
少しでも、希望を取り戻して欲しかったので。コレも、私の我儘なんでしょうね。

(大丈夫、安心して。信じられないかもしれないけれど……まだ助かる道はありますから)

現金なもので。その瞬間、彼の目は信じられないモノを見たかのように広がって。私は、(だから、大人しくしてくださいね)と耳打ちしながら、彼の御髪を整えました。
サツキさんは、見守るような視線を此方に向けつつも、沈黙を保ってくれていて。とても有り難かったことを覚えています。

サツキさんと私。女二人で協力して、彼を『ロデオ』に跨らせます。実感した、彼の大きさと逞しさ。画竜点睛を欠く、というべきでしょうか。ふふ、欠くとは正反対ですけれど。
彼の強さを、その一点だけで台無しにしてしまう、私には無い『部分』を恨めしくすら思ってしまいます。

彼は、状況の展開に追いつけないようで。これ幸いと、私達は、彼の両膝を土台に固定して。両腕を、フックを降ろして固定して。
あの人が我に返ったのは、私達が、彼が『彼』である理由を、ヒンヤリとした土台の溝に、嵌めこませていただき終わった時点だったみたいです。

「むふーっ!!むぐーっ!!!!」

頭を左右に振り回し、抗議の声と視線を私に向けるあの人。なんと言っているのかは聞き取ることはできませんが、差し詰め、「騙したのか」とか、「裏切り者」とか仰っているのでしょう。
当初から、恨まれることは覚悟の上でしたが……その様子は、私に心外だという思いを抱かせるのには十分でした。身勝手、ですね。

「早とちりしないでくださいね。私、嘘は言っていないつもりですから……コレ、『ロデオ』って言うんです。可愛いですよね」

私は、彼とは違うので。少なくとも誠実ではありたいと、そう願わせていただいているので……乏しい言葉で、懸命に状況を説明しようと頭を捻ります。

「使い方は簡単で……フジワラ君からは見えないでしょうけど、お尻の方についているハンドル……尻尾を回すと、そこの隙間が、ゆっくり、ゆっくり閉じていくんです。
 身も蓋もない言い方をしてしまうと、結局は単なる万力ですから……でも、ですね。コレのおかげで、タマタマ……タマのこともありますけど……取り留めた方もいらっしゃるんですよ?」

何を言っているんだ、と。とうとう狂ったのか、と。そして、コイツは元々狂っていたのか、と。無言で、かつ雄弁に。彼は私を問い詰めます。
翻って私は。言葉を発することが出来る状況にいるのに、上手く思いを伝えることが出来ず、ひとり、やきもきするばかり。

「その、別に驚いていただけるようなタネはありません……ゴメンなさい。単純に、潰すまでも無いかなって方が複数いらっしゃった時に、こう使っているというだけのことなんですけど……
 端的に言えば、そういう場合は、その方々全員に同時に跨っていただいて―――

彼は、全身で困惑を表現していて。私は、自分の語彙力の無さに、また頭が痛くなってきてしまう。

「でね。最後まで耐えたタマぐらいは、残しておく価値があるタマかもしれないから、助けてあげてもいいかな、みたいな使い方をすることもあるんですよぉ。
 ね、シノ先輩、そーゆーことを説明したかったんですよね?アハハ、まぁ、実際のところ、誰のタマが残るかなって、晩御飯のオカズを賭けて楽しむのがメインなんですけど……
 仕方ないでしょ、おにーさん。ココ、意外と娯楽が少ないんですよ」

314名無しさん:2018/08/31(金) 23:45:53 ID:jCcZM/NU0
何かを察したのか、サツキさんが説明を引き継いでくださって。
私は彼女に甘えて、説明することを一旦止めて。懸命に、『ロデオ』の上に攀じ登ろうとします。大股を広げて、無様な姿。
気恥ずかしくなってしまいますけれど、如何せん、この小さな身体ではどうしようもないのです。本当、要らないところにばかりお肉がついてしまう、みっともない身体。
片足を、なんとか向こうに引っ掛けて。胸に吊るされた、無駄な重りが引っ掛かって。ただ、跨るだけでも四苦八苦。

形振り構ってはいられませんでしたけれど、何とか登りきることが出来たので。乱れた息を整えながらも、私は彼に相対しました。
今回は、私と彼とが鏡写し。だからこそ、男女の物理的な違いが、ただ、どうしようもないモノとして際立って。

「今回は、他に男性がいらっしゃらないので……僭越ながら、私がお相手を勤めさせていただきますね。
 ―――ね。助かる方法、ちゃんとあったでしょう?貴方は、ただ私よりも耐えればいいだけ。ただ、それだけで良いんです。大切な場所なら、耐えるぐらい簡単でしょう?
 
 ゴメンなさい。貴方は、もうこの道しか残されていないの。でも、寂しくはないですよ?私も、私も一緒に罰を受けてあげますから」
 
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!〜〜〜〜〜ッ!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」

身も世もなく、とはこのことでしょうか。タマより先に、首がもげてしまうのではないかしらと心配になるぐらいに取り乱されて。
ただ、彼の、『彼』としての最後の勇姿を、一瞬たりとも見逃すまいと、私は見詰めることしか出来ませんでした。

キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。

暫しの間があって、彼がピタリと静止されました。何か、不具合があったのかしらと不安になっていると、そのままフルフルと震えだしたのが見えて、状況を理解。
私の身体では実感できません。そこには、空虚しかありませんから。察するところ、そろそろ、下の隙間に余裕が無くなってきているのですね。
彼の身に起きていることを想像しつつ。また、彼に語りかけます。だって、コレが『彼』と話せる最後の機会なんですから、どんなことでも、語っておきたいのですもの。

「その様子、タマタマと外壁が触れ合った頃合なんですね。意外と冷たくて、火照ったソコには気持ちよかったりしませんか?

 そこまで震えないで下さい。まるで、電気椅子に座らせているみたいで、罪悪感を覚えてしまいます……ほら、私を見て。私は、今の状況、安楽椅子に座っているのと変わりありませんよ。
 私よりも耐えなければいけないのに、ちょっと先が思いやられてしまいますね。あぁ、非難しているつもりはないのです。
 
 貴方は、はじめてなんですから、仕方がないの。―――そうだ!経験者として、コレから何が起きるのか、説明してあげますね。
 きっと、その方が、恐がらずにすむでしょうから……ふふ、まるで私がもう勝ったみたいな口ぶりで、ゴメンなさい。勝負なんて、終わってみないと分からないのに、ね」
 
両手の人差し指を、腰に当てて。内股を伝って、下に、下にスライドさせていきます。閉じていく場所より少し上。サツキさんと比べると、多少肉厚なソコに指を添えて。
彼とは違って、その下は空洞。『ロデオ』の背と、性器との距離が、埋まらない性差を象徴している、そんな気がしました。

「ココ、恥丘って呼ぶこと、ご存知でした?御自分の状況はご覧になれないみたいですけれど、今、丁度これぐらいの幅まで閉じてきているんです。
 まぁ、男性であれば、ご自身の目では確認できなくとも、感覚として分かりますよね。私では、物理的に不可能な感覚。ふふ、ほんの少しだけ、羨ましいです」

315名無しさん:2018/08/31(金) 23:46:34 ID:jCcZM/NU0
キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。
これが落ち着いた空気だと感じられてしまうのは、女性的な感性であるからでしょうか。両の指先に力を込めて、肉の襞を、半分ぐらいの厚みまで押し潰します。
彼は、縫い止められたように私のソレに視線を注いで。それなのに、震えは少しずつ大きくなっていって。

「あと少し。この程度の厚みになると、タマが変形をはじめるんです。その感覚は、女には分かりませんけど……男性は、皆様、とても激しく暴れだされます。
 ですから、状況の進み具合であれば一目で分かります。あ、耐えようとなんて為さらずとも結構ですよ?そも、耐えるなんて不可能だとも聞きますから。
 
 そのご様子が、まるで暴れ馬を乗りこなしているみたいですから……この器具、『ロデオ』って言うのです。
 作った方が言うには、このお馬さんは『セン馬』なんですって。ふふ、分かります、『セン馬』?貴方も、耐え切らないと、仲間入りしてしまいますよ?
 
 あらあら、そんなに怯えないでください。まだ、そこまで閉じてはいないでしょう?私は、毛筋ほどの恐怖も感じてはいませんよ?」
 
キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。
今、どのあたりまで閉じたのでしょうか。やはり、こういう時、『実感出来ない』身は、不便ですね。

「もう少し締まると。その、おちんちんが勃ってきます。本能的なものらしいので、危機感は覚えなくてもいいですからね。
 まだ、物理的にも、精神的にも、壊れてしまったわけではないですよ。その、命(タマ)を獲られそうな状況だと、最後に子孫を残そうと、そうなるのですって。

 恥ずかしがることないですよ。みっともない顔を晒さないで済むよう、紙袋を被っていただいていますし……おちんちん最後の勇姿なんですから、見届けてあげて欲しいなって思います」
 
キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。
彼から発せられる振動の、種類が変わってきているのを認識します。その姿を、網膜に焼付けるまで、凝視して。
私は、両の指先が白くなるほどの力で、自分のそれを押し潰しました。指の端に、冷たい金属の淵を感じて。ここまで締まってきていたのね、なんて他人事じみた感想を抱きました。

316名無しさん:2018/08/31(金) 23:47:07 ID:jCcZM/NU0
「ゴメンなさい。私はまだ、全然平気なのですけど……そろそろ、みたいですね。いいんです。私のココには何も無いのですから、当然、かもしれませんね。
 見て下さい。私のココには、貴方と違って、絞め潰されるモノがついていないってことを。確認して、実感してください。
 ほら、ね。ここまで押し潰しても、私のコレは、そもそも閉じるところにすら届いていないでしょう。ふふ、ズルじゃないですよ?ココに、変なモノ付けているほうが、可笑しいだけ。
 
 ……実例からの予測ですけど、これぐらいまで締まったら、その、ね。睾丸が、弾けます。『男性』から解放……そうです。潰れてしまうということです。
 気休めにもならないかもしれませんけれど……その瞬間、おちんちんから白い汁と、紅い汁が漏れ出してきて、ちょっとおめでたい気分になれますよ。
 
 あ、それに、蹴り潰させていただく場合みたいに、ビシャッて破裂する訳でもないんです。だから、痛みも派手では無い、かも。
 その、キンタマって、皮厚のブドウみたいな造りをされていまして……ね。あ、その皮のこと、白膜って言うのですけれど。知ってました?
 
 その膜が、内圧に耐えられなくなったら……ブシューって、パンクするみたいに中身をお漏らししてしまって……男の子としての人生は、そこで中退。
 慰めになるのかは分かりかねますけど、比較的穏やかなお終いなのではないでしょうか……それでも、気の毒に、とても悶えられますけれど。やっぱり、ショックなのでしょうか。
 
 皆様、おいたわしい声を上げられて……馬じゃなくて騎手が嘶いたなんて嘯くコもいらっしゃいますけど、酷い話ですよね」
 
キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。
両指を離して、割れ目を一撫で。そして―――

「最終的には、この割れ目ぐらいの幅になるまで絞めさせていただきます。けど、その前に気絶される方が大半ですから、気負わないでくださいね。
 目が覚めたときには、私達と同じ。こんな玩具に跨らされたところで、何一つ恐がらなくてもいい身体になれていますよ」

キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。
『ロデオ』の名に恥じず。あの人の身体は、まるで踊り狂っているよう。悲しい。私は、何一つ分かってあげられないことが。
彼のおちんちんは、例に漏れず硬度を増していき―――口が裂けてもいいませんが、記憶していたよりも、それ、粗末なモノだったんですねと思ってしまいました。
あの頃は、ソレと、『あの人』のモノしか知らなかったんです。

そのまま、丹念に。丁寧に、ソレをしゃぶって、唾液を絡ませていきます。……焦燥感が、背筋を這って。だって、そこまで小さいとは思っていなくて。
私の股間は、全くと言って良いほど、湿り気を帯びてくれなかったものですから。本当に、持ち主に似て、肝心な時に役に立たないわね、と自分のソレを叱責して。

彼と違い、『ロデオ』に股間を囚われることが無い私は、僅かに腰を浮かせて。無理矢理、ソレを自身の胎内に捻じ込んでいました。

のたうつ彼を、両脚で。両手で抱きしめて。彼の苦痛を、少しでも分け与えてもらおうとして。潰される心配の無い、股間を彼に押し付けて。
ちょっとでもいい、彼の苦悶に近寄りたくて……それが叶わないということは、飽きるほど教えられてきたのに。でも、一欠けらでも、彼の痛苦を、彼の責め苦を、分かち合ってあげたくて。

317名無しさん:2018/08/31(金) 23:47:39 ID:jCcZM/NU0
「分かりますか―――貴方は、この体位、好きでしたよね。感じられますか。私のおっぱいが、貴方の胸板で形を変えていることが。
 実感できますか?あなたの、その、おちんちんが、私を貫いていることが。ちょっとでも気持ちよくなってもらえるなら。その痛みを紛らわさせることだ出来るなら、それだけで幸いです。
 
 これが、これが、本当に、『男』の貴方が感じることができる、最後の女体です。だって、そろそろ―――」
 
もう、言葉は届いていないかもしれません。碌に濡れていないソコは、疼痛を私に訴えていて。それでも、彼が、今みているのでしょう地獄を鑑みると生温いさえと叱咤して。
彼の粗末さ故に、その疼痛さえも簡単に耐えられてしまうレベルでしかないことに落胆して。それでも。それでも、少しでも彼の気を紛らわせることが出来るなら、と。

本心としては、あわよくば。コレで、私が耐えられなくなってくれれば、と。何処かで期待していたのかもしれません。けれども。
……肉体的には、快感なんて全然無い。苦痛すら、ほとんど無い。でも、そのお粗末さこそが、幾らでも替えが利くものだという実感となって、僅かに心を慰めてくれたのを覚えています。

「ゴメンね。私のソコは、貴方のおちんちん程度なら、耐えられてしまう、みたい。残念だけど、貴方のキンタマは、もう命運が尽きてしまったみたいです。
 だから、せめて。この、『男』としての最期の感触だけは、何も考えずに、楽しんで、記憶しておいて、ください……
 
「〜〜〜〜ッ!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!〜〜〜ッ!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」

キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。
彼は全身を波打たせて。引きちぎれんばかりに頭を振り回して。ただ、それを気にも留めることなく、耳元に口を寄せて、一言。

思い返せば、この言葉に、私の感情の全てが込められていたんですね。

「フジワラ君、好き、だったよ。『初めて』をあげられなくて、ゴメンなさい。そして……『お終い』をくれて、ありがとう」

なにかが切れた感覚。暴れていた彼が静止し、魂が抜けていくように小さくなっていくような錯覚。
あぁ、今。潰れてしまったのですね、と。これから『彼』では無いなら、なんてお呼びすればいいのでしょう、と場違いな戸惑い。

私の股間は、持ち主に何の感慨を伝えてくることもなく。逆に、ズルリと、この人のおちんちんが、掻きだされていくのを感じていました。
このおちんちんも、取り外してしまうつもりですけど。それでも。私と出会ったとき、この人を『男の子』でいさせてくれてありがとう、と労いの言葉を掛けてあげたくなります。

数瞬の間しか、実際は無かったのでしょう。この人が、ソプラノで、最期の声を張り上げて。そのまま、先の比では無いほど、のた打ち回りはじめて。
私は、ただただ、この人にしがみついていました。最期の最期まで、一滴残さず、この人の『男性としての終着』を記憶しつくしてあげたいと、そう願って。

……ふふ、もう千切れても平気ですしね、なんて思ってしまったのは秘密です。

この人の、『最期』は私のモノ。これだけは、何処の誰にも、奪うことはできません。もう、『無くなった』彼からは、奪えません。
私だけの、絶対の、タカラモノ。

キュル、キュル、キュルと。無言で、サツキさんがハンドルを回す音が響いています。
―――また、脳裏に謎の映像。誰かと繋がる、彼のイメージ。その誰かは私だったのだ、と。今、ようやく理解できました。。


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318名無しさん:2018/08/31(金) 23:48:16 ID:jCcZM/NU0
(テロップ):おい、コレは何の真似だ!外せ!

「あら、暴れると危ないですよ?」「何の真似って、オジサマ、今の動画、見ていたんでしょう?」

(テロップ):ふざけるな!!お前ら、なんつーことしやがる!!!

「何というコトと言われても……あ、手際が悪かったのでしょうか。ゴメンなさい」「あはは、本当に初見だったんだ。不勉強でしたね、オジサマ」

(テロップ):おい、何笑ってやがるんだ……まて、近付くな!!

「サツキさんから聞きましたよ?私のおっぱいに興味があるって。ですから―――」「手足の拘束は外せないから、お顔で堪能してね♪」

(テロップ):うぷ……

「はい、深呼吸。ふふ、満足していただけましたでしょうか。それでは」「そろそろ、この動画も仕上げにはいっちゃいましょーね」

(テロップ):止せ!やめろ!ズボンを脱がすな!やめ、やめ、やめて!!!

「大丈夫。ご覧になったでしょう。こんなモノ、簡単に失くせてしまうって。天井の染みでも数えていれば、直ぐですよ」「右からがいい?左からがいい?ねぇ、オジサマ、どっち?」

(テロップ):〜〜っ!!〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!

「今回は、手際よく行きましょうか。ふふ、ペロリ。それじゃ、失礼して、頂きますね―――」「お、オジサマ、右から齧られるみたいですよ。あはは、お覚悟ー☆」

(テロップ):〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!



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319名無しさん:2018/08/31(金) 23:48:47 ID:jCcZM/NU0
一月ほどたって。容態が安定したという知らせをうけた私は『元彼』の病室へと向かいます。

ふふ。フジワラ君のこと、『元彼』って呼ぶことにしたんです。二つの意味がかかっていて、私にしては洒落ているんじゃないでしょうか。

足取りは軽く、心にいたっては、何処かに浮かれて飛び立ってしまいそう。
あの日、彼の股間にぶら下がっていたシコリといっしょに、私の胸にずっと痞えていたシコリも、何処かに消え去ってしまったかのよう。

思い返せば、妥協して、切り落としてしまわなくて、本当によかった。
あのおかげで、初めて、『元彼』と本気でケンカが出来ました。本気で、会話が出来ました。
もしかしたら、そこまで考えて、フジワラ君は、あんな真似をしたのでしょうか。本心から、感謝の念が溢れてしまってとまりません。

あの後、浮かれ気分のまま、何名かのモノを潰させていただいて……少し、悪いことをしましたね。
あまりに舞い上がった気分でしたので、取り外し方を考えて差し上げるのが面倒で……もう印象もおぼろげですが、次にお会いしたら謝罪しないといけません。

私の手には、お酒の瓶が一本。普段は全く嗜まないのですけど、今回ばかりは特別と、奮発させていただきました。
お酒も、特別。だって、取り外した『元彼』のモノが漬け込んであるのですから。ふふ、小学生の頃、男子がおちんちんを見せびらかしてくることがありましたけど、こんな気分だったんですね。
私も、もう私のものになったコレを、『元彼』にみせびらかしたいなんて、悪戯心が刺激されているのですから。二十歳も過ぎて、何を考えているのでしょうね。


『元彼』が、あの場所に送られてしまうまでの猶予は、あまり無いと分かっています。
でも、それでも。お酒を酌み交わしながら、つもる話を。3年間、短いようで長い、空白の時間を埋めてくれるような話を。

大丈夫。男と女の違いだって、ちゃーんと埋めることが出来たんですから。人生の空白だって、簡単に埋めちゃえると、信じています。

浮き足立って、踊るように。私は、『元彼』の病室の扉を開くと、そこから光が溢れ出てきました。
それは私達の前途みたいで。そう、私達は、これから。そう思うと、今までの全てが、この日のためにあったのかな、なんて。そう、思えました。


                                                             <<おしまい>>

320名無しさん:2018/08/31(金) 23:54:11 ID:jCcZM/NU0
ご無沙汰しております。時間頼みですが、新鮮味も復活したかなと思って、一つ自作してみました。長いですね。
>>177
女性視点、義務的、女複数対男1、抵抗有り、同年代にしました。
>>179、182
描写を追加してみましたが、どうですかね。
>>181
視点固定させました。そしたら、時間軸が前後してしまうという不覚。
>>265
組織だった感じにしてみました。前書いたヤツとは設定は違いますが、如何でしょう。

オマケで。筆力不足で書ききれなかった、各人物はこんな設定でした。

シノブ:メンヘラ。11月4日生まれ。4Novでシノブです。蠍座。本編で色々喋っていたので、特に語ることもないです。悲劇のヒロイン病を拗らせて、死にます。

シノブの母:命懸けで娘を守ろうとして果たせなかった、健気な私という記憶を反芻しながら、それなりに人生を謳歌していました。
      心配しているのは、娘に彼氏が出来て仕送りが減らされてしまうこと。シノブの死で経済的に困窮しますが、働くぐらいなら死を選ぶと啖呵を切って、死にます。

サツキ:無敵の未成年様の内に、珍獣を愛でる感覚で参加しています。以前書いた、拳法的なヤツと絡めようと思ったのですが、蛇足と思って削りました。
    成人前に足を洗って、幸せな生活を謳歌するという人生設計。娑婆で暴れていた悪行の末路としてのお礼参りで、死にます。
    
班長、『あの人』:モブです。『あの人』という単語は、数箇所ダブルミーニングになっているところがあります。なんだかんだあって、死にます。
    
フジワラ君:被害者。シノブから貰ったお弁当が、米と草しか入っていないナイジェリア国旗のような彩りだったことに激怒。二股を決意。身体としては高レベルだったシノブと、
      器量はいま一つだけれど成金のお嬢様とで人生を謳歌していました。何時の間にか、どことなく重そうだと感じていたシノブがフェードアウトしてくれて、さらに人生順風満帆。
      シノブと連絡をとろうとしなかったのは、実際のところ厄介事になる確信があったからです。
      
      妊娠を機に彼女が性交渉を嫌がりはじめ、再度他の女の子を食い漁っていました。バレて、本編にいたります。ハメる側でもあり、嵌められる側でもあったんですね。死にます。
      
彼女:未登場。成金。ヤバイところと関わった報いで親の生業が破綻して、母子共々、死にます。

インタビュア:人間。LV2 N-N 2EXP 0魔貨
       ノーマル耐性。破魔無効、魅了、金的に弱い。
       保有スキル:パニックボイス、暴れまくり

321名無しさん:2018/09/01(土) 15:37:38 ID:clVqbDAo0
GJ!!
今回も最高でした。練り込みがすごい!

322名無しさん:2018/09/03(月) 00:37:33 ID:kakMOy/A0
とても素晴らしい小説でした!ありがとうございます

323名無しさん:2018/09/03(月) 01:01:27 ID:LU3dMTYI0
最高!
本当にありがとう!!

324名無しさん:2018/09/03(月) 09:35:31 ID:dIPqjU0.0
すごい大作
ありがたい…ありがたい

325名無しさん:2018/09/06(木) 21:30:11 ID:dR1o8kV.0
ありがたや

326名無しさん:2018/09/10(月) 23:32:43 ID:xT2wDwpo0
#秋の金玉潰し祭りがかなり良いSSになってしまっている

327名無しさん:2018/09/11(火) 00:53:56 ID:dozlXIZA0
何その心ときめくタグ…と思って調べたらアホなフェミニストの発狂が元ネタか…
金的フェチ達のSS祭りかと思ったのに

328名無しさん:2018/09/11(火) 02:42:44 ID:QyIeY3xA0
基地外共の話題はNG

329名無しさん:2018/09/11(火) 10:22:47 ID:I4leb.RU0
しかし供給不足のジャンルなのだから
そういう所にも目を光らせて些細なものでも拾っていくことは大事だと思う
今回のそのタグは趣旨から外れてるっぽいけど
掲示板やコメント欄とかの体験談が結構良かったりするんだよね(内容の真偽はともかく)
少し無理矢理SSのことに絡めるなら、書くときの題材になったり、言い回しや表現の参考になったりもする

330名無しさん:2018/09/12(水) 20:45:04 ID:7UO0IDNU0
ネカマのなりすましじゃなく本物の女性が書いたって点では価値があると言える

331名無しさん:2018/09/15(土) 10:36:25 ID:B6bZXG9A0
古典太平記みたいなQ&Aのボイスがいいな
リアル女子の話を聞いている気分になる

332名無しさん:2018/09/17(月) 01:09:55 ID:uUDLGLbE0
古典太平記の音声の再生数地味に凄いよね

333名無しさん:2018/09/17(月) 02:01:06 ID:S592R6.g0
このフェチは小説か音声形式が移入しやすくて相性良いと思う

334名無しさん:2018/09/17(月) 11:18:03 ID:Y.//nmf.0
配信1週間の初動で、再生4000回って
このジャンルでは稀だと思う
そもそも、視聴者がコアで、投稿数も少ないし

335名無しさん:2018/09/17(月) 19:52:03 ID:Y.//nmf.0
何となく、有名どころの「闘えスキンネッドマン」を見たら
再生回数3100回位だった
やっぱり、4000回はすごい

336名無しさん:2018/09/28(金) 00:35:52 ID:bFZ5VTw20
「どSな姉妹があなたの金○蹴っちゃうぞ!」は音声系の中では出色だと思う
声優の声質で若干好み分かれそうだけど

337名無しさん:2018/09/28(金) 01:30:54 ID:cOF.2Gzg0
ただでさえ希少なジャンルなだけに台本の出来と声優の上手さがマッチしてる音声は殆ど無い
まあ萌えボイスなりで自分で依頼しろと言われればそれまでなんだけど

338名無しさん:2018/12/02(日) 14:14:02 ID:k84s9jMA0
過疎りすぎやろ…

339名無しさん:2018/12/02(日) 18:33:40 ID:FOTXufN60
気長にマターリすればいいじゃない?
みんなのオカズ事情は気になるけどね

340名無しさん:2018/12/03(月) 09:42:37 ID:WALKShdE0
金蹴りSS界隈自体どこも更新無いのが痛い
金玉を蹴る女達復活して欲しい

341名無しさん:2018/12/06(木) 01:31:42 ID:ZFlgWj1A0
自分で書いてみるか

342名無しさん:2018/12/09(日) 09:34:58 ID:jOqnm3hk0
古典太平記の音声作品更新キタ
すでに再生回数500回越えているw

343名無しさん:2018/12/09(日) 21:31:31 ID:LyrlFxcA0
>>342
SS好きにとっては、また貴重なSS書きが居なくなってしまった感があるけどね。
音声への方針転換で・・・。

344名無しさん:2018/12/09(日) 22:08:21 ID:23weyfIU0
言われてみれば、最後にSSが出たのは
8月にアップされた帰国子女の女子が金蹴りする話だったね。
でも、音声専門にするとも言っていないし
そのうち、また小説も書いてくれると思う。

345名無しさん:2018/12/10(月) 09:56:28 ID:yB68Rdkg0
まああの人は音声路線で良いと思うけどね
正直文章力は微妙だし、代わりに色々新しい事を開拓していけるのがあの人の強みな気がする

346名無しさん:2018/12/11(火) 00:43:07 ID:uQNCFhUo0
同感

347名無しさん:2018/12/11(火) 21:22:11 ID:weTyhgVA0
台本形式のが書きやすそうだし、むしろ音声に移行してくれたほうがありがたい

348名無しさん:2018/12/11(火) 23:38:41 ID:r1kYDkyc0
久々の投稿です。
最近金的SS界隈に新作がないので、賑やかしになれば幸いです。


■二人の怪盗1

人気のない路地裏に一人の少女が佇んでいる。
漆黒のライダースーツから伸びる長い手足とくびれた腰。そして自己主張の激しい胸。
彼女の幼さが残る顔とは相反するように女の色香を醸し出している。
目元は黒い仮面で覆われているが、その輪郭から彼女が美少女であろうことが見て取れた。

「これが"ルピスの涙"……素敵ですね」

少女は手に持っていたウズラ卵大のの宝石を月にかざし満足そうに微笑んだ。

「尾行に気が付かないとはマヌケだな! 怪盗スカーレット!」
「誰ですか!?」

少女が背後からの突然の声に振り返ると、黒い影が突進してくるのが見えた。
彼女はそれを間一髪でかわした。

「他人のお宝を盗むなんて、ほめられた趣味ではないですね。怪盗リンクさん」

少女……スカーレットが先ほど突進してきた影に問いかけた。
彼女の手にあったはずの宝石は、黒い影……リンクの手に握られていた。

「盗まれるヤツが悪いに決まってるだろ」

リンクと呼ばれた少年は"ルピスの涙"を自慢げにかかげながらあざ笑った。
彼もスカーレットと同じく黒の衣装に身を包み、目元を仮面で隠していた。
そう、彼女と彼はこの街に暗躍する同年代の怪盗であった。

「悪いけど返してもらいます!」

スカーレットはリンクに向けて走り出した。
彼女の俊敏さは並の女性を遥かに凌ぐものであったが、先ほどの攻防から分かるように身体能力はリンクの方が上である。

「……へ、そのまま向かってきて、やっぱりマヌケだな」

当然リンクもそれを把握していた。
彼は彼女の突進を華麗にかわして力の差を見せ付けてやろうと余裕の笑みで身構えた。
しかしその余裕の笑みは突如驚愕へと変わった。
スカーレットがライダースーツのジッパーを、ヘソの下まで下げたのだ。スーツの下には下着の類は確認できず、彼女の白い透き通った肌を覗かせていた。

「うふふふ」

彼女は怪しい笑みを浮かべてさらに駆け寄る。
当然の帰結であるが、彼女の豊満な胸はライダースーツから飛び出し、ステップを踏む度に上下左右へ大きく揺れた。
張りのある大きな乳房の先には薄桃色の美しい突起が付いている。
男ならば誰でも目立追ってしまう光景。当然リンクも例外ではなかった。

349名無しさん:2018/12/11(火) 23:39:16 ID:r1kYDkyc0
■二人の怪盗2
「あらあら、よそ見をしていると大事なお宝が盗まれてしまいますよ」

スカーレットの言葉で我に返った時には、彼女の美しい顔が眼前にあった。
そして彼女の細い指が"ルピスの涙"を彼の手から奪おうとする直前でもあった。
リンクは慌てて半身を捻り宝石を持っている手を彼女から遠ざける。
その瞬間----

「あはっ! いただいちゃいました! あなたの大事な大事な・た・か・ら・も・の……」
「ぐぁあ!!?」

スカーレットが耳元で囁いた突如、リンクの身体に稲妻に撃たれたような衝撃が走った。
彼の下半身は突如力を失い、支えを失った身体は四つん這いになって崩れ落ちた。

「ぉ、あぁ、ぅぁぁあ……あ……」

身体が無意識に痙攣し息が上手くできない。そこで彼はやっと自分の置かれた状況を把握した。
男の最大の急所……睾丸を蹴り上げられたのだ。

「ああああああぁぁぁあああっがああぁ!!!」

その事実を把握した刹那、彼の男性としての地獄の痛みに苛まれた。
自身の急所である睾丸自身からの激痛。そしてそこからジワジワ広がるように下腹部を覆う鈍痛。
どちらも生まれ初めて味わう地獄の痛みだった。
その激痛が波のように、あるいは同時に幾度となく彼を襲い続けた。

「あーあ、一応警告したんですけどね。リンクさんの宝物……殿方の大切なシンボルががら空きですよって」

這いつくばるリンクを見下すように、スカーレットは腰に手を当て仁王立ちで嘲笑した。
まだスーツのファスナーは戻しておらず、豊満な二つの乳房が露出している。
リンクが今顔を上げれば、絶景が拝めるのだが彼は睾丸からくる激痛に身動きが取れない。
先ほどまで圧倒的に有利だった状況が、たった一発の蹴りで覆されてしまった。

「ではリンクさん、このお宝は返してもらいますね……」

スカーレットは彼の脇に落ちている"ルピスの涙"を拾い上げると、激痛で痙攣している彼のしゃがみ込み耳元で囁いた。

「この一件で身に沁みたと思うのですが、リンクさんたち男の人はとてもとても大切な本来なら地下室の金庫にでもしまっておくような"宝物"を不用心に持ち歩かなくてはいけないんです」
「ぁうっ!!」

突然の感触にリンクは驚き喘いだ。
スカーレットが尻の側から彼の睾丸をズボン越しに撫で始めたのだ。
それはとても優しい手付きで痛みを加えるようなものではなかったが、リンクは今まで味わったことのない恐怖を感じた。
自身の男性としての生殺与奪を握られているので無理もない。

「しかもその"宝物"は両足の付根……股間なんていうどうしようもなく無防備な場所にぶら下げていないといけないんです。これはもう『狙って悶絶させて下さい』って催促しているようなものですよ」
「……」

スカーレットはリンクの二つの睾丸を撫でながら続ける。

「さっきの膝蹴りも手加減してあげたんですよ。私の全力疾走の膝蹴りなんて当てられたら、こんな骨はおろか筋肉にも守られてない、管一本と薄皮一枚でぶら下がってるプニプニの脆弱な肉塊なんて一瞬で潰れちゃうんですからね」

彼女は睾丸から手を離した。しかしまだリンクの傍から離れずにしゃがみ込んでいる。
俯向いて激痛に痙攣している彼にもその気配は感じとれた。

「ですから、今後は私のお仕事をあまり邪魔しないでいただけると助かります。伝えといていただけますか、リンクさんの股間に無様にぶら下げてるこの大事な大事な・キ・ン・タ・マ・にっ!!」
「はぐぉうっ!!!!?!??」

スカーレットはそう囁くとリンクの副睾丸を弾いた。しかも二本の指で均等に。気を抜いていたところへ急所中の急所へ打撃を加えられ彼の身体は大きく跳ねた。それと同時にスカーレットの放り出された乳房も小さく揺れた。

「うふふふ、それじゃちゃんと伝えといて下さいね」

スカーレットはリンクのシンボルを弾いた指を軽く舐めると、その指で"ルピスの涙"を摘み上げ胸の谷間に押し込み、スーツのジッパーを首元まで戻した。

その後もリンクはスカーレットと同じ国で怪盗を続けたが、彼女の獲物を横取りすることは一切しなくなった。
逆に彼女から横取りされることが多くなった。当然彼も抵抗したが勝率は芳しくないが当然である。
男であるリンクは女であるスカーレットにはない"守らなくてはならない宝"を股の下にぶら下げていなくてはいけないのだから。

350名無しさん:2018/12/12(水) 14:36:35 ID:jHXqhGz.0
素晴らしかったです
男の悶絶する様子と、攻撃した女の佇まい、短いながらも読みたい情報がちゃんと書かれていて楽しめました
女であることを胸の描写で強調するのもまた良いですね
玉ピンした瞬間に揺れる表現、弾いた指を舐める、などの細かい仕草も好みです
乙でした〜

351名無しさん:2018/12/12(水) 18:47:12 ID:v86RweEU0
乙でした
(二戦目からはファールカップ付けるんじゃね?とかは黙っておこう)

352名無しさん:2018/12/12(水) 19:52:59 ID:ubIhPFC60
>>351
黙っとけよ

353名無しさん:2018/12/13(木) 13:53:52 ID:T.6H315E0
ファールカップなんか付けたら機動力が落ちちゃうだろ!(棒読み)

久しぶりの投下乙です
お色気で油断させてからの金的という王道展開に性差表現もバッチリでお手本のようなSSだった

354名無しさん:2019/01/01(火) 09:35:18 ID:6JT25GMA0
お正月から古典太平記で新作の音声作品が出ていて
うれしいと思ったら、昨日、再度更新があったんだな
金蹴り祭りでうれしい
除夜の鐘代わりで、煩悩も吹っ飛ぶぜ!

355名無しさん:2019/01/14(月) 21:29:45 ID:GSvOdZkc0
新作SSが来たな
イラストは上出来

356名無しさん:2019/02/02(土) 00:41:30 ID:ftGvlgME0
『長さ比べ』①


「絶対俺の方が長い!」
「何言ってんのよ。どう見たって私の方が長いじゃない」

二人の男女が言い合っている場所は、とある公立高校の放課後の教室。
掃除当番で残っていた二人の他には、誰もいない。

「何なら比べてみるか?」
「ええ、望むところよ」

普段から何かあればすぐ口喧嘩になってしまうこの二人は、今日もいつものように些細なことで言い合いになっていた。
男子生徒が「お前は高2になっても小学生みたいな胸のサイズだな」と言えば、女子生徒も「そういうあんたは高2になっても小学生みたいな身長ね」と言い返す。

そこからは先は、考えるより先に口が動く、いつもの展開だった。

「はあ? お前の方がチビじゃねーか!」
「ほとんど変わんないじゃん。それに脚だけなら私の方が長いし」
「バカかお前? 俺の方が長いに決まってるだろ!」

そして冒頭の会話に至ったという次第だ。

高校2年にもなる男女が互いの脚の長さを比べて言い合いをしているという、なんとも滑稽な状況だが、生憎ここは二人だけの世界。
ヒートアップしている二人には、自分達の姿を客観視する余裕は無かった。

「で、どうやって比べる?」
「立ったままだと分かりづらいわ。とりあえず座りましょう」
「よし」

二人はぺたん、とその場に座り込んだ。
最初は横並びになって脚を伸ばしてみたが、微妙に差が分かりづらい。

「これじゃあよくわからないわね……そうだ! 向き合って互いの脚を互い違いにすればいいのよ」
「ああ、そうだな」

二人は向かい合う格好になり、互いに互いの脚を挟み込む姿勢になった。

最初、二人は互いに距離を取っていた。
そうしないと、いずれかの脚が相手の股間に当たってしまう可能性があるからである。

だが、ここで女子生徒の方が何かに気付いた。

「……ねぇ」
「な、なんだよ」

そしておそらくは、男子生徒の方も気付いている。

「これ……やっぱり私の方が長いよね」
「え? そ、そんなこと……ないだろ」
「ふ〜ん?」

女子生徒はにやりと笑うと、座ったまま、少しだけ身体を男子生徒の方に近づけた。
もう少しで、上履きの裏が男子生徒の股間に当たりそうな位置だ。

「ほら」
「ぐ……」

対して、男子生徒の脚の方は、まだ女子生徒の股間まで距離がある。
それはすなわち、この勝負が女子生徒の勝ちであることを意味していた。

「ほら、認めなさいよ。このままだともう当たるわよ?」
「う……」

確かに、もはやこの状況での言い逃れは厳しい。
しかし、彼にも男のプライドがあった。

「ひ、引き分け……かな」
「は?」

女子生徒の眉が吊り上がる。

「引き分け……うん。引き分けだ」
「…………」

357名無しさん:2019/02/02(土) 00:44:49 ID:ftGvlgME0
『長さ比べ』②


女子生徒は一瞬無言になった後、

「……あ、そう」

冷たい声で呟くと、さらに身体を男子生徒の方に近づけた。

「あっ!」

女子生徒の足裏は、完全に男子生徒の股間に密着した。
予想外の状況に、男子生徒は思わず声を上げた。

「これでもまだ、そんなことを言うの?」
「…………」

他方、男子生徒の脚はまだ女子生徒の股間に触れていない。
もはや勝敗は誰の目にも明らかだった。

「ほら、認めなさいよ。自分の負けを」
「…………」

しかしこの状況でもまだ、いや、こんな状況になってしまったからこそ、男子生徒はなおさら自分の負けを認めることができなくなっていた。

「ちょっと! 何とか言いなさいよ!」
「…………」

股間に足をあてがわれたまま、沈黙を貫く男子生徒。
その煮え切らない態度に、女子生徒も遂に我慢の限界を超えた。

「……あ、そ。そういうことなら……」
「え?」

女性生徒は男子生徒の両足首をつかんだ。

「! ちょ……」
「よい! しょーっ」
「!!」

そしてそのまま一気に、男子生徒の両足首を自分の方に水平に引っ張った。
男子生徒の股間に、女子生徒の脚が深く刺さる。

「い! ちょ……」
「ほ〜ら!」

ぐぐぐっと、女性生徒はさらに男子生徒の脚を強く引き付ける。

「! あ、あぐっ……」
「ほら、こ〜んなに強く引っ張っても、あんたの脚、まだ私に届いてないわよ?」
「あ、ぐぎぎ……」

女子生徒はあくまでも、『男子生徒の脚が自分の股間に達していない』という元々の勝負の結果を強調するが、男子生徒の方は、もはやそれどころではなくなっていた。

「あ、あああ……」

女子生徒の脚によって、自分の股間、それもちょうど急所の位置に強く圧をかけられている状態になっているためだ。
しかし当の女子生徒の方は、そんなことには微塵も思考が及んでいない。

もちろん、自分の脚が男子生徒の股間にめり込んでいること、そして男子生徒の股間に急所が付いていることは理解しているが、今のこの状態が男子生徒にどれほどのダメージを与えているかまでは認識できていないのだ。

「ちょっと! まだ認めないの?」
「い、いだ……」
「何?」
「いだい……」

これも男子生徒にとっては不運だったのだが、女子生徒の脚は、ちょうど彼の玉を恥骨に押し当てる形で圧迫していた。
男子生徒にとっては堪えようがない程の激痛である。

「痛い? 何が?」
「た……」
「た?」
「玉……」
「タマ?」

358名無しさん:2019/02/02(土) 00:50:52 ID:ftGvlgME0
『長さ比べ』③


そこでようやく、女子生徒も事態に気付いた。

「あー、なんだ。タマって……そういうこと?」
「…………」

男子生徒は無言で頷く。

「ふ〜ん。ただ押し付けてるだけなのに、痛いんだ。蹴られたら痛いっていうのはよく聞くけど」

女子生徒は他人事のように言いながら、

「で、どうなの? 自分の負けを認めるの?」
「……それは……」

本当はもう脚の長さ比べなどどうでもよかったが、しかしこの体勢のまま自分の負けを認めると、もう一生この女子生徒には逆らえなくなってしまうのではないか。
そんな直感にも似た予感が、彼を一瞬躊躇させた。

「も〜、まだ認めないの? なら……これでどうだ!」

女子生徒は、さらに強く男子生徒の両足首を引っ張った。

「ぎゃあ!」

玉がさらに体内に押し込まれるような感覚に、男子生徒は思わず悲鳴を上げた。

「あはは! 痛そう!」
「う、うぅう……」
「ほらほら、このままだとあんたの金玉、身体ん中に入ったまま、戻って来なくなっちゃうかもしれないわよ?」

嬉しそうに言いながら、男子生徒の脚をぐいぐいと引っ張り続ける女子生徒。
男子生徒はもう限界だった。

「わ、わかった……俺の負け。俺の負けだ!」

半分泣きそうなその声を聞いて、女子生徒はようやく男子生徒の足首から手を離した。
男子生徒はすぐに股間に手を当ててうずくまる。

「うぅう……」
「あはは。金玉大丈夫? ちゃんと下りてきてる?」

勝負に勝った嬉しさと、目の前で苦しんでいる男子生徒の様子のおかしさがあいまって、女子生徒はケラケラと笑いながら尋ねる。

「でも変なの。別に蹴ったりしたわけでもないのに、そんなに痛いなんて」
「…………」
「もし、思いっ切り蹴っ飛ばしたりしたら……どれくらい痛いんだろう?」
「! な、何を……」

さらっと恐ろしいことを言う女子生徒に、男子生徒は思わず顔を青くする。

「あはは! 冗談だって! まあでも、もしまたあんたが私に変なことを言ったりしてきたら……」
「い、言わない! 言わないから!」
「ん?」
「い、言わない……です」
「よろしい」

すっかり覇気を失った男子生徒を見て、女子生徒は満足げに頷いた。
男子生徒は先ほどの予感の通り、もう一生、この女子生徒には逆らえなくなってしまったことを悟った。


「ほら、いつまでもうずくまってないで、早く立って! ……金玉蹴るよ?」
「ははいっ! すみません!」








359名無しさん:2019/02/02(土) 22:23:52 ID:rweMfqL60
>>356
ナイス!
あとは評価が分かれると思うけど
少し男に欲情させた方が面白い。
例えば、今回は最初、異性を余り意識しない女子みたいだから
パンチラとか、竿狙いの電気あんまとか。

360名無しさん:2019/02/03(日) 23:42:24 ID:yUupfZQw0
とても良い!
対等に見えてた力関係が、タマの存在の露呈により一瞬で崩壊…急所の威力と明暗を分けた男女の差を強く感じられました
知識としては知ってたけど、目の当たりにした実感によって利用できる急所だと意識した女の子が『目覚めた』瞬間を描いていて素晴らしいです
その後自分から普通に金玉って呼んじゃうのもとても萌えました
この二人がやがて恋仲になったとしても男の子は尻に敷かれちゃうんだろうなあと想像の余地があるいい引きでした

361名無しさん:2019/02/04(月) 06:46:31 ID:4f1J5RTo0
乙です〜
個人的にはもう少し玉責めパートが欲しいけどちゃんと性差も描けてて良いSSだと思う

>>359
感想書く時の配慮なんだけど、「〜の方が面白い」とか断定的な表現使うと上からな印象になっちゃうから
「個人的には〜」とか「〜だと思う」とかあくまで自分の主観だという事を示す書き方にした方が良いかも
文章作法上の問題ならともかく内容は個人の好みだからね

362名無しさん:2019/02/11(月) 22:04:01 ID:UjBvFcQQ0
『金的上手の山本さん』①

いつものように山本さんの鋭い蹴りが僕の急所にめり込む。

「うっ……」

僕は呻きながら股間を押さえ、その場にうずくまる。

「ははっ。入ったなー今の」

嬉しそうな山本さんの声が頭上から響く。

放課後、体育館裏。

一昔前のラブコメ漫画ならヒロインから告白されてもおかしくないような秘密の場所で、僕は同級生の女子に急所を蹴り上げられて苦しんでいる。

僕と山本さんのこの歪な関係が始まったのは、今からもう一年ほど前になる。
高校最初の夏休みを前にした、7月のある日のことだった。

-----------------------------------

「おい、そこのお前」
「……え?」

その日の放課後、この体育館裏で、僕は不意に女子からそう呼び止められた。
少しドスを利かせた感じだったが、可愛らしい声だった。

「お前だよ。他にいねーだろ。バカ」
「…………」

不機嫌そうな顔でそう言っていたのが、同学年の山本さんだった。
顔は間違いなく美人の部類に入るが、いわゆるヤンキー系で、少し怖い感じの女子だった。

「……僕に、何か用?」

同学年といってもクラスも違うし、話したこともない。
ただ入学当初から、なんとなく怖い感じの女子がいるらしい、という程度で話は聞いていたので、一方的に認識はしていた。

「…………」

山本さんは僕の問いには答えず、無言で僕の方に近づいてくる。

参ったな、と僕は思った。

ゴミ捨て当番の帰り、単に近道だからという理由で通った体育館裏で、まさかこんなバッドイベントが待ち構えていたなんて。

……とはいえ。

僕はちら、と改めて山本さんの容姿を一瞥した。

第一印象、茶髪ロングの美人。
胸元のシャツを少し開けており(服の上からでもわかる程度には胸もそこそこあるようだ)、膝上15センチほどのミニスカ。
まさにザ・ヤンキー……というほどではないにせよ、ヤンキー「系」というカテゴリーには間違いなくあてはまるだろう。

黙っていれば十分モテそうだが、如何せん、このヤンキー「系」特有のオーラが男を寄り付かせない雰囲気を醸し出しているような気がした。

実際、どこかで男と一緒にいたという話は聞いたことがないし、そもそも彼女は他のギャルグループとつるんだりもしておらず、基本一人で行動していると聞いたこともある。
もし今の状況で、彼女のようなヤンキー「系」女子5〜6人に取り囲まれでもしたら、流石に多少は身の危険を感じるだろうが、今回はそんな心配も要らなさそうだ。

その他、胸がそれなりにありそうな以外はスタイルは全体的に細身。
身長は女子にしてはやや高い方だが、せいぜい僕と同じくらいだ。

仮に取っ組み合いになったとしても、特に意識するほどの体格でもない。

以上のような前提知識が僕を安心、もとい油断させたのは間違いない。
いくら多少ツッパっていても、女子は女子。
どうということもないだろう。

僕は本心からそう思った。

363名無しさん:2019/02/11(月) 22:07:34 ID:UjBvFcQQ0
『金的上手の山本さん』②

そんな僕の内心を知ってか知らずか、僕の真正面に立った山本さんは端的に言った。

「金、出せ」
「は?」

思わず聞き返してしまった。

「最初だから、今持ってる分だけで許してやる。出せ」
「……いや、何で僕が……」

まさか、一対一の状況で女子からカツアゲされるなんて。
よっぽど貧弱そうに見えたのかと思うと情けないやら腹立たしいやらだったが、流石にこんなのにまともに取り合ってはいられない。

他を当たってくれ、とでも言わんばかりに手を振り、その場を立ち去ろうとすると。

「ッ!?」

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
軽く身体が浮き上がったような気がした。

目の前にいた山本さんが僕の股間……即ち、急所を蹴り上げたのだと理解したのと同時、僕は地面に崩れ落ちた。

「う、うぅう……」

両手で股間を押さえ、人目も憚らずに(といっても、この場には僕と山本さんしかいないのだが)呻く。

完全に不意を衝かれた。
正直油断していたのは事実だが、まさかノータイム・ノーモーションで物理攻撃を仕掛けて来るなんて思いもしなかった。

(それも、よりによって……)

こんな所を蹴らなくても、と思わずにはいられなかった。

股間から込み上げてくる鈍痛に、僕は為す術も無かった。
これまでも事故で股間を打ったりしたことは何度かあったが、こんな風に、誰かから思いっ切り蹴り上げられたことは今までなかった。

男子にすらされたことがないのに、まさか女子にされる日が来るなんて……。

過去、ここまで直撃といっていいほどのレベルの衝撃を急所に受けた経験が無かった僕は、暫く立ち上がることができなかった。
同時に、こんな無防備な状態を晒すのは危険過ぎるとも思ったが、意外にも山本さんからの追撃は無く、ただ嘲笑混じりの声が聞こえてきただけだった。

「あはは。効いただろ。最初から素直に出しとけばいいのに、バカなヤツ」
「…………」

やはり彼女は故意に僕の急所を蹴り上げたのだ。
流石にあれだけ的確に蹴っておいて、「ごめんごめん、当たっちゃった」は無いだろうと思っていたが。

ただ、同時に少し気になった。
いくら狙ったとしても、ほとんどノーモーションで、ここまで正確に男の急所を蹴り上げることができるものだろうか?

見た目が少しヤンキー系であることを除けば、山本さんはどこにでもいそうな普通の女子高生なのに……。

そんな僕の疑問を読み取ったかのように、山本さんは続けて話した。

「私、中学まで空手やってたんだ」
「!」

その情報は初耳だった。

「試合では当然金的禁止なんだけどさ。練習中、私は面白いからしょっちゅう男子の金玉蹴って遊んでたんだ」
「…………」

当たり前のように話すその声に、僕は背筋がぞくっと寒くなる心地がした。
まるで武勇伝を語るように、山本さんは続ける。

「男子達もバカでさ。明らかに悪いのは私なんだから、『山本さんに金玉蹴られました』って、親とか師範とかに言えばいいのに、言わないんだよ。男のプライドってヤツかな? はは」
「…………」

その気の毒な男子達の気持ちは、僕にもよく分かる。
僕だって、今のこの状況――「同級生の女子に急所を蹴られて苦しんでました」――なんて、恥ずかし過ぎて親にも先生にも言えない。

「でも玉蹴られた男子ってどうしても動きが鈍くなるから、師範もすぐ気付くんだよ。『どうした? 金的入ったのか?』って。でも男子達は『はい。練習でちょっと当たっちゃって……』とかもごもご言うだけで、私の名前は絶対出さない」
「…………」
「だから、私はどれだけ男子の金玉を蹴って遊んでても、一切お咎め無しだったってわけ。いやー、楽しかったな。あれは」
「…………」

この瞬間、僕ははっきりと理解した。

この山本さんという人は、男子の急所を攻撃するのに何の抵抗感も罪悪感も抱いていない。
ただ「自分の身体には付いていない、遊ぶと面白い玩具」という程度の認識しか持っていないのだ。

「とまあ、ずっとそんな風に遊んでたからさ。私、上手いんだよ。玉蹴るの。痛かっただろ? 実際」
「…………」

ともかく、これで合点がいった。
ただのヤンキー系女子にしては、異常なまでに的確に、僕の急所を蹴り上げたことが。

364名無しさん:2019/02/11(月) 22:09:17 ID:UjBvFcQQ0
『金的上手の山本さん』③

「さ、もう十分回復しただろ? 立てよ」

次の瞬間、山本さんはまた最初のような少しドスを利かせた感じの声になった。
元々の声が可愛らしい感じなので、正直この声単体ではそこまでの迫力は無いのだが、今の僕に恐怖心を与えるには十分だった。

「う……」

回復しただろ? と山本さんは言ったが、もちろんこんな短時間で回復するはずはない。
僕はまだ痛みの残る股間を庇うようにしながら、よろよろと立ち上がった。

「あははっ。何よろついてんだよ。子鹿かお前は」

山本さんは楽しそうに笑う。
僕をこんな状態に陥れた張本人がよく言う……。

「じゃあ、金出せ」
「…………」

すっかり忘れていたが、そういえば僕は彼女にカツアゲされていたのだった。

「小銭は勘弁してやるから、札だけ全部出せ」
「わ……わかった」

この時、僕の精神は既に山本さんに支配されていたのかもしれない。
その気になればもっと抵抗することもできたのかもしれないが、あまり深く考えることも無く、財布から千円札を二枚取り出して渡した。

「二千円ねぇ……」

山本さんは不満そうに僕から金を受け取りつつ、

「まあ、最初だからいいか。次からは五千円用意しとけよ」

そう言った瞬間。

「うっ!?」

山本さんはまたしても、ノーモーションで僕の股間を蹴り上げた。
たまらず、再び崩れ落ちる僕。

「三千円足りなかったから、三回な。あと二回蹴るから」
「………!?」

む、無茶苦茶な……。

全身を脂汗が伝う。
というか、最初に「今持ってる分だけで許してやる」って言ってなかったか……?

いや、この際それを置いたとしても、さっき一回蹴られてるのに……。

様々な疑問や疑念が渦巻いたが、僕はすぐに考えるのをやめた。
もう考えるだけ無駄だと、本能的に悟ったからだ。

365名無しさん:2019/02/11(月) 22:15:58 ID:UjBvFcQQ0
『金的上手の山本さん』④

「よし。もういいだろ。立て」
「…………」

僅かとはいえ、回復のためのインターバルを挟んでくれるのは、彼女なりの最低限の優しさなのかもしれない。

しかし如何せん、僅か過ぎた。
おまけにさっきより短くなってるし……。

「うぅ…………」

ほとんど回復していない状態で、僕は再び立ち上がる。
自分でもまだこうして立つことができるのが不思議だった。

「足、開け」

言われるがままに、足を開く。

「はい、ラスト2!」

ドスン、と山本さんの足の甲が僕の股間にめり込む。

「うっ……」

うずくまる僕。
まるで何度も同じネタを繰り返すコントのようだ。

「おー。今の、きれいに入ったなー。痛かっただろ?」
「…………」
「分かるんだよな。上手く入った時って。こう、玉が二つとも足の甲の上に『ぐにっ』って乗った感じがしてさ。こうなると痛いんだよな〜すっごく!」
「…………」

山本さんはしたり顔で、うん、うんと頷きながら言っている。
どれだけ痛いか知らないくせに……とは口が裂けても言えない僕だった。

「でもヘンだよな、金玉って。何でこんな急所がこんな蹴りやすい位置にぶら下がってるんだ? どう考えても身体の中に入ってた方が安全だろ」
「…………」

そんなこと、こっちが聞きたいくらいだ。

「よし。次で最後だ。立て」

言われるがままに立ち上がる。
山本さんにより既に都合三回も急所を蹴られている僕は、痛みと吐き気と眩暈で思考力はほぼゼロになっていた。

「開け」

命じられるがままに足を開く。

「これで、ラストッ!」

ミシミシッ、という擬音語が似つかわしいほどの勢いで、僕の二つの玉は山本さんの足の甲で綺麗に掬い上げられた。

「うっ……」

一瞬、目の前が真っ白になった。
いっそこのまま気絶できたら良かったのにとすら思ったが、残念ながらそれは叶わず、僕ははっきりした意識を持ったまま、この日四度目の――それも最上級の――苦しみを味わうこととなった。

「はっ……あっ……あっ……!」

地面に額を擦り付け、両手で股間を押さえたままひたすら呻く。
もしこんな惨めな姿がSNSで拡散されたら、僕はきっと自殺するだろう。

だが山本さんは僕の姿を写真や動画に撮ったりはしなかった。
その代わりに、嬉しそうにこんなことを言った。

「あはは。今の一番効いただろ? 最後だから、ちょっとだけ本気で蹴ったんだ」
「…………」

道理で……。
これまでの三回の蹴りも相当なものだったが、最後のそれは群を抜いていた。

……というか、今ので「ちょっとだけ」……?

眩暈がしたのは、きっと痛みのせいだけではないだろう。
山本さんは楽しそうに続ける。

「しかも男にとって一番痛い、フクコーガンってとこを狙って蹴ったんだ。地獄の苦しみだろ?」
「…………」

副睾丸、という言葉を聞いたことはあったが、そんな急所の中の急所だったとは知らなかった。
男の自分ですら知らないような急所の知識を、まさか同級生の女子から、それも身をもって教わる日が来ようとは……。

「じゃあ、今日はこれで。お前、明日からは毎日財布に五千円入れとけよ。こうやって金玉蹴られたくなかったらさ。はは」

最初に声を掛けてきた時の不機嫌面はどこへやら、山本さんは実に楽しそうな笑みを浮かべながら、うずくまったままの僕にそう言い残して去って行った。

366名無しさん:2019/02/11(月) 22:20:58 ID:UjBvFcQQ0
『金的上手の山本さん』⑤

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そんな風に僕と山本さんが出会ってから、もう一年以上になる。
高校二年生に進級してもなお、僕達のこの歪な関係は続いている。

頻度にして月に2〜3回、僕は山本さんからいつものこの体育館裏に呼び出されると、儀式のようにその日財布に入っている千円札をあるだけ差し出す。
彼女は五千円用意しておけと毎回言うが、そもそも僕の毎月の小遣いが五千円なので、当然の事ながら毎回足りない。

足りない分は、千円ごとに金的蹴り一回のペナルティ。
最後の一回以外は、彼女曰く「50〜60%程度の力」で蹴り、最後の一回だけは「70〜80%程度の力」で、それも副睾丸を狙って蹴り上げるというのが習慣だ。

ちなみに、これは暫く経ってから知ったことだが、彼女が「最後の一蹴り」をそれまでより強い力で蹴るのは、「最後の一回なら、蹴ったらそれで終わりだから。それまでだと、回復するまで待ってやらないといけないから」ということだった。

つまり、やはりあのインターバルは、僕が最初の日に感じた通り、彼女なりの優しさだったということだ。
ただ実際、回復にはほとんど意味をなさない程度の時間しか与えられないので、事実上、ほとんど意味の無いインターバルとなっているのだが……。

「さあ、もういいだろ。立て」
「う……」

今日も短めのインターバルが終わり、僕は再び立ち上がる。
とはいえ、今日は幸いにも三千円入っていたので、金的蹴りは二回で済む。

(……って、なけなしの三千円巻き上げられて、そのうえ二回も急所蹴られて、これのどこが『幸い』なんだ……?)

いつものように疑問が一瞬頭をもたげるが、やはり深くは考えない。
考えても意味は無いし、考えても結局僕はこうして山本さんの前に立って足を開くことになるからだ。

そう。
今ではもう「開け」と言われるまでもなく、彼女の前に立ったら条件反射のように足を開いてしまう自分がいた。

「じゃ、いっくぞ〜。せーのっ!」
「うっ!」

ドスン、と深く、山本さんの足の甲が僕の股間にめり込む。
山本さんの蹴りは本当に的確で、正確に僕の玉(しかもこれは最後の一回なので副睾丸)だけにダメージを与えることができる。

「あ……」

いつものようにうずくまる僕。
この一年間、何百回と山本さんに急所を蹴り上げられてきたけど、この「最後の一回」だけは本当にいつまで経っても慣れる気配すらなく、まさに「地獄の苦しみ」と言うほかない。

「ぷぷっ。いたそ〜」

僕の急所を蹴った後、山本さんは本当に嬉しそうに笑う。
でもそれは本当にそれだけで、うずくまる僕の頭を踏ん付けたり、背中やお腹を蹴ったりするようなことはしない。

多分彼女は、単純に『玉を蹴られて苦しんでいる男』を見るのが好きなのだろう。
変な事を言うとまた余分に急所を蹴り上げられそうな気がするので、確かめたことは無いけれど。

「あー。面白かった。じゃあまた明日な」

山本さんはまだうずくまっている僕に笑顔で手を振ると、そう言って去って行った。

(また明日、ね……)

基本的に、山本さんは気まぐれだ。
今日みたいに「また明日」と言いつつ、1〜2週間も音沙汰が無いことなんてしょっちゅうだし、逆に「また来週な」なんて言った次の日から三日連続で呼び出されたこともある。

だから、僕はもう深く考えるのはやめた。

考えても意味が無いし、山本さんに呼び出されたら最後、僕はこの体育館裏に足を運ぶ以外の選択肢は無いのだから。
たとえ財布の中に、千円札が一枚も入っていない日であったとしても。

367名無しさん:2019/02/11(月) 22:24:26 ID:UjBvFcQQ0
『金的上手の山本さん』⑥

――翌日。


昨日、山本さんに二回蹴り上げられた急所の痛みがまだ少し残っている。
今日は体育の無い日で良かった。

……とはいえ、当の山本さんに呼び出されたら元も子も無いんだけど。

そんなことを考えていた矢先だった。

「あっ」

僕は思わず足を止めた。
廊下の反対方向から、山本さんがこちらに向かって歩いてきていたのだ。

「? どした?」

僕の隣にいた友人が尋ねる。

「い、いや……なんでもない」
「?」

僕には当然気付いているだろうが、山本さんは表情一つ変えずにつかつかと歩いてくる。

そもそも、僕達二人は同じ学校で同じ学年だ。
クラスこそ違えど、こうして「いつもの場所」以外でニアミスするのは一度や二度の事ではない。
現に僕達はその都度、赤の他人のような顔をしてすれ違ってきた。

……いや、実際、今も赤の他人のようなものだけど。

とにかく、僕達は表向きには何の接点も無いのだから、他人のように通り過ぎる以外に取り得る選択肢なんて無いのだ。
もっとも、昨日の今日ですれ違うのは何となく気まずいような気はするけれど。

一歩、二歩。
僕達は互いに互いを見ようとはせず、各々の歩みを進める。

それは一瞬の偶然だった。

僕の左隣を歩いていた友人が、何の気無しに、僕とは反対側の窓の外に目をやった。
その瞬間、僕の右側ですれ違う直前の山本さんがにやりと笑った。

「えっ」

ドスッ、と、山本さんの足の甲が僕の股間にめり込んだ。

「…………!」

山本さんはすぐに足を引く。
時間にして1秒も無かっただろう。

「あ、あ……」

僕はその場にうずくまりそうになるのを必死に堪える。
そんな僕の様子を愉しむように、山本さんは僕の右側を通り過ぎる瞬間、そっと耳打ちした。

「今日、来いよ」

それだけ言い残すと、何事も無かったように通り過ぎて行った。
ほどなくして、友人が僕の方に向き直る。

「……ん? どした? お前」
「え、い、いや……別に、何も」
「何もって……え? なんかいきなり顔色悪くなってねぇ?」
「な、なってないって。は、はは……」
「?」

友人は訝しそうにしていたが、それ以上追及しようとはしなかった。
まさかほんの一瞬目を離した隙に、隣を歩いていた友人がすれ違いざまに女子に急所を蹴り上げられていたなど、想像だにしないだろう。

僕は急所の鈍痛を堪えながら、なるべく平静を装って廊下を歩いた。

今日もまた、山本さんの気まぐれに支配される放課後が待っている。








368名無しさん:2019/02/11(月) 23:58:27 ID:LbN82ZUs0
>>365
ここすき

369名無しさん:2019/02/15(金) 22:13:52 ID:SnK2MDZE0
良かった乙乙
続編が欲しくなる引きですね(チラッチラッ

370名無しさん:2019/02/21(木) 02:01:50 ID:LHWBgZWI0
タイトル名からして、からかい上手の高木さんを思い出す
書いてみたいけど俺には文才ないわww

371名無しさん:2019/03/18(月) 14:48:03 ID:V9KSMS9g0
金玉を蹴る女達復活しとるやんけ

372名無しさん:2019/03/18(月) 20:51:35 ID:8u0jV4NY0
もう諦めて最近更新確認してなかったから助かるわ

373名無しさん:2019/03/22(金) 21:09:24 ID:3l1OGRb20
>>371
グッジョブすぎ!!!
更新に3週間も気づかなかったw

374名無しさん:2019/05/02(木) 15:59:43 ID:TWgbPKzI0
いつもお世話になっています
令和もよろしくお願いします

375名無しさん:2019/05/04(土) 23:25:37 ID:EF7lyctQ0
令和記念に何か無いですかね…

376名無しさん:2019/05/06(月) 09:34:09 ID:bW/F4bMI0
今月に入って更新があったのは古典太平記だけですね。
季節外れのひな祭りの音声作品と言うのがツボでした。

377名無しさん:2019/05/06(月) 13:25:43 ID:2vaqAbvo0
前はそれなりに投稿されてたけど以前の書き手はどこでやってるのですかね

378名無しさん:2019/05/06(月) 20:13:25 ID:MKBxFYRs0
焦らず待ちましょうよ
書き手がいなくてもスレが存在しているだけで幸せなこと

379名無しさん:2019/05/15(水) 11:19:46 ID:YGGCvqb20
過去の作品をサルベージするのも楽しいぞ
2ちゃん時代のスレにはSSが大量に眠ってるからな

380名無しさん:2019/05/22(水) 19:37:18 ID:offtDZHI0
>>379
おすすめ教えてほしい

381名無しさん:2019/06/16(日) 18:03:54 ID:uWFC6vzM0
ttps://www.youtube.com/watch?v=WbZpG0dRKk0&t=1273s

"金蹴り"にハマる女性が急増中♡ディープな大会にグラドル三宿菜々が"女王様"として潜入!「思ってたよりも楽しめた自分が怖い」|『給与明細』#53

382名無しさん:2019/07/06(土) 07:46:25 ID:1sQfL5F.0
親の敵の武士に金蹴りして首を取り
墓前に報告する音声って、すごい斬新だよな
そもそも墓前報告する金蹴りボイス自体ないだろう


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