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女が男を金的攻撃で倒すSS

284名無しさん:2018/08/31(金) 23:26:12 ID:jCcZM/NU0
 天井で、大きなサーキュレータが回っています。最初は、何で扇風機が天井についているのかしらと不思議でした。
後で聞いたところだと、エアコンで冷えた室内の空気を攪拌するためなんだそうです。ウチにはエアコンも無かったですし、
無いのが普通だと信じていたので、実際のところ、今でも必要性は分からないのですけど、ね。これは秘密です。

この部屋に備え付けられたエアコンも、もう結構使い古されていて。長時間動かしていると、水漏れしてしまうんです。
床に敷き詰めた、真っ白いシーツに染みがついてしまうので、洗濯しているといつも閉口してしまうのですが。

もう一回。強めに背中を叩かれます。今回は、前についたお肉が揺れるほど、強い衝撃。
上の空だったのが見抜かれてしまったのでしょうか……恐る恐るサツキさんを見やると、彼女の視線は私に向けられていませんでした。

「う〜〜〜〜〜」

聞き慣れた声。あの人が、目を覚ましたみたい。瞬間、緊張が背筋を走るのを感じます。
いつものことで、これは彼のためでもあると信じているのですけれど、それでも。本当、駄目ですね、私は。

「シノブ……?」

胡乱な瞳で此方を見やると、彼の口から言葉が零れました。
ドクン、と。一拍だけ、心音が跳ね上がったのは、誰にも気付かれていないと信じたいです。

それでも。私の役立たずの口は、震えるばかりで何一つ言葉を発することが出来なくて。
あんなに、色々と話したいことがあったのにと、心だけが焦燥に苛まれるばかり。悔しくて、申し訳なくて、目尻に涙が滲む。

と。

「おはよう、おにーさん。ごきげんいかがですか?」

場違いなほどに、穏やかな声音。サツキさんの顔は微笑を湛えていて。
台本とは違う台詞だけれど、その言葉は彼と、そして私に対する思いやりに溢れていることは痛いほど分かりました。

彼女には、恐れ多くて頭が上がりません。きっと、あのコは笑って流すのでしょうけど。

なんで、私はああじゃないんでしょうか。彼女の様になれるのならば、何を捧げても悔いは無いのに……コレも、高望みですね。

異様な雰囲気を感じ取ったのか、『彼』の目線は右に、左にと泳いでいるみたい。
お揃いですね、と含み笑い。私も、彼を直視することが出来ないですし。ふふ、意外な共通点をみつけた気がして、少し心が軽くなる。

可笑しいですよね。私達には相違点があるから、こんなコトになっているのに。でも。

「ちょっと状況が呑み込めない……何事?というか、オマエ、シノブだろ?くそ、何がなにやら―――
「あ、じゃ、当ててみてくださいよ。おにーさん的には、どんな状況だと思います?コレ」

しどろもどろな彼が琴線に触れたのか、コロコロと笑いながらサツキさんは続ける。
箸が転がっても可笑しい年頃だからでしょうか。それとも、コレからの『お仕事』のことが楽しみだからなのかしら。

実を言うとね、私も楽しみなの。だって、私が人のために出来ることなんて、コレぐらいだから。
そういう意味では、『簡単な』作りをしている彼に、いや彼等には、感謝しているところもあるんです。

「分かんねーよ。ボッタのフーゾクか何か?オレ、入った覚えねーんすけど」
「アハハハハ、おにーさん、ニアピン賞。確かに、これから性的にスッキリさせてあげるわけですけどー」

サツキさんが目線で催促してくるのを感じて、再度、口を開きます。
先程とは打って変わって、自分でも驚いてしまうほど、流暢に言葉が流れるのは、心を整理する時間を頂けたから。
本当に、彼女には感謝してもしきれません。

「あのね、フジワラ君―――
「やっぱシノブじゃん。キレーになったね……なんて、オレがいうコトじゃないか」

そして、彼にも。あの時、私を選んでくれたことが、どれだけ支えになったか、貴方はきっと知らないでしょうけれど。
私なんかを選んでくれて、本当にありがとう。例え、直ぐに他のコの方を選びなおしたとしても、それでも。
選ばれたことがあるっていう事実だけで、私は今まで生きてこれました。


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