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女が男を金的攻撃で倒すSS

367名無しさん:2019/02/11(月) 22:24:26 ID:UjBvFcQQ0
『金的上手の山本さん』⑥

――翌日。


昨日、山本さんに二回蹴り上げられた急所の痛みがまだ少し残っている。
今日は体育の無い日で良かった。

……とはいえ、当の山本さんに呼び出されたら元も子も無いんだけど。

そんなことを考えていた矢先だった。

「あっ」

僕は思わず足を止めた。
廊下の反対方向から、山本さんがこちらに向かって歩いてきていたのだ。

「? どした?」

僕の隣にいた友人が尋ねる。

「い、いや……なんでもない」
「?」

僕には当然気付いているだろうが、山本さんは表情一つ変えずにつかつかと歩いてくる。

そもそも、僕達二人は同じ学校で同じ学年だ。
クラスこそ違えど、こうして「いつもの場所」以外でニアミスするのは一度や二度の事ではない。
現に僕達はその都度、赤の他人のような顔をしてすれ違ってきた。

……いや、実際、今も赤の他人のようなものだけど。

とにかく、僕達は表向きには何の接点も無いのだから、他人のように通り過ぎる以外に取り得る選択肢なんて無いのだ。
もっとも、昨日の今日ですれ違うのは何となく気まずいような気はするけれど。

一歩、二歩。
僕達は互いに互いを見ようとはせず、各々の歩みを進める。

それは一瞬の偶然だった。

僕の左隣を歩いていた友人が、何の気無しに、僕とは反対側の窓の外に目をやった。
その瞬間、僕の右側ですれ違う直前の山本さんがにやりと笑った。

「えっ」

ドスッ、と、山本さんの足の甲が僕の股間にめり込んだ。

「…………!」

山本さんはすぐに足を引く。
時間にして1秒も無かっただろう。

「あ、あ……」

僕はその場にうずくまりそうになるのを必死に堪える。
そんな僕の様子を愉しむように、山本さんは僕の右側を通り過ぎる瞬間、そっと耳打ちした。

「今日、来いよ」

それだけ言い残すと、何事も無かったように通り過ぎて行った。
ほどなくして、友人が僕の方に向き直る。

「……ん? どした? お前」
「え、い、いや……別に、何も」
「何もって……え? なんかいきなり顔色悪くなってねぇ?」
「な、なってないって。は、はは……」
「?」

友人は訝しそうにしていたが、それ以上追及しようとはしなかった。
まさかほんの一瞬目を離した隙に、隣を歩いていた友人がすれ違いざまに女子に急所を蹴り上げられていたなど、想像だにしないだろう。

僕は急所の鈍痛を堪えながら、なるべく平静を装って廊下を歩いた。

今日もまた、山本さんの気まぐれに支配される放課後が待っている。









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