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('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです
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避難所の皆様、初めまして。このスレッドは元々vipに投下していたのですが、設定ミスや誤変換を修正するために
こちらで改正版を投下させていただくことに決めました。
各まとめ様には大変ご迷惑をお掛けする事になりましたがよろしくお願いします。
また今回の東日本大震災で被災された全ての方々に、心から御見舞い申し上げます。
今回、改訂ということでまとめ様に影響があるため、早めに投下させてもらいますが
2話までの投下が終わりましたら、次話の投下はしばらく自粛させていただきます。
----俺の財布から飛び立った番いの鶴が少しでも皆様のお役に立ちますように----
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('A`)「ユクモにはHR6の狩人は居ないと聞いていたんだが」
ここで、ドクオはユクモに来て不思議に思っていた事を尋ねる。
(,,゚Д゚)「……それには、色んな原因があるんだ。 ドンドルマではどうやってG級になる?」
('A`)「……これと言って試験のような物は無いな。俺の場合、Gの名を持つ飛竜を狩っていたら、自然とそう言われるようになった」
そうか、とギコは腕を組む。
(,,゚Д゚)「ユクモに所属する狩人の数は多くない。だからこそ、俺たちはちゃんと示されたルールによって昇級してきた。先日、ベーンさんの倅がクルペッコを討伐してHR2に上がったのも、クルペッコがギルドの指定する昇級モンスターだったからだ」
(,,゚Д゚)「そういう風にして、HR1〜5までの試験には指定されたモンスターを倒す、という決まりがあった。 しかし問題はHR6だ。狩人の数が少ないユクモではHR6を持つ狩人は元々二人しか居なかった」
('A`)「一人は、ブーンの親父さんかな?」
その通りだ、とギコは驚いた様子で目を見開いた。
(,,゚Д゚)「1人はブーンの親父さんであるベーンさん。そしてもう一人は、この村の英雄であるロマネスクさんだ」
('A`)「ふむ」
ここでドクオがブーンの父親がHR6だと言い当てられたのは、いくつかの理由がある。
ギコの『ベーンさん』と呼ぶ言葉に確かな尊敬の念を感じたこと。ブーンの持っていたデッドリボルバーが醸していた雰囲気。そして毎年誕生日にはリオレウスの素材を貰ったといっていたブーン。
特に三つ目。そう易々とリオレウスを狩ることの出来る者は多く居ない。やはりHR6に準ずる何者か、だとドクオは内心星を付けていた。
(,,゚Д゚)「その二人に認められる事がHR6になる為の条件だった」
なるほど、ここまででドクオがユクモの現状を理解するには十分。
HR6が自分以外に存在しない理由は、そういう事だったのか。
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(,,゚Д゚)「その二人が居なくなっちまったからだよ。ユクモにHR6が生まれなくなったのは」
そして、ドクオはここでもう一つ合点のいった事がある。
いきなり現れた俺を、HR6にしたギルドマスターの意図。
そして急に狩りに同行すると買って出たギコ。
つまりは、ドクオに見極めろと言うのだ。
Gを戴く者として。
ギコがHR6に相応しいか、否かを。
全く、けったいな押し付け方をするものだ、とドクオは内心溜め息を吐いた。
('A`)「概ねの事情は分かったよ」
(,,゚Д゚)「……すまねぇな。ユクモに来たばかりのお前さんにこんな事を押し付けて。
しかしロマネスクさんが死に、ベーンさんが旅立った今、ユクモに新しい風をもたらす事が出来るのは、お前さんだけだと、うちのじじいも判断したんだ」
('A`)「べつにGだからといって、この村に何か貢献をしたわけでもない。そんな俺がこんな大事なことを決めていいモンなのかね」
ははは、とギコは笑った。
(,,゚Д゚)「よそ者にそんな事を頼まなきゃならないくらい事態は切迫してるのさ」
優しくヘリカルの頭を撫でながら自嘲気味に呟く。
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('A`)「切迫……ねぇ。 そういえばもう一つ気になっていたことがあるんだ」
(,,゚Д゚)「おう! なんだ!」
('A`)「ツーの事なんだが、何故村の人たちはツー様と呼ぶんだ?」
これも気になっていた事の一つであった。 確かにアオアシラとの戦闘で見せた人を護る気概。ギギネブラ戦で見せた仕事の速さ、尊敬を受けるだけのものはあると思う。
しかしそれでも“様”は言いすぎだと、思っていた。
(,,゚Д゚)「なんだ、ツー様から聞いてないのか?」
('A`)「なにも聞いてないな」
ふぅむ、と腕を組み少し考えるギコ。
(,,゚Д゚)「ツー様はな、亡くなったロマネスクさんのオトモだったんだよ」
('A`)「ほう」
村を救った英雄、ロマネスク。
その命と引き換えに。
(,,゚Д゚)「あれは俺が十二の頃だ。ユクモの四方を囲むように三頭のディアブロスが住処を作った。元々ディアブロスは肉食ではないが、その獰猛な性格と攻撃性故に第一種危険モンスターとして扱われていたが
それが三頭同時に現れたんだ。 ギルドも気が付かなかった訳じゃないんだろう。それはそうさ。調査に向かった狩人達、その全てから連絡が途絶えれば嫌でも気づくだろうからな」
その時の俺は、絵に書いたようなクソガキでな。なにかお祭りのように感じたよ。いつもは毅然と振舞っている大人達が、慌てふためいているのを見て、どこかしらの非日常性を感じてたんだ。
でも、ユクモの近くにあった幾つかの集落が壊滅したと聞いて、そんなお祭り気分もぶっ飛んだよ。
親しくしてもらっていた者もその中には居た。
そんな人たちの、原形を留めない位にグチャグチャにされた死体を見れば、どんなクソガキだって事態の深刻さに気が付いた。
もうユクモは終わりだ、なんていう自暴自棄な終末論者と。狩人ならば何とか出来るという無責任な希望的観測をする者しか居なかった。
でも、あの人だけは違っていた。
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こんな絶望的な状況の中で、ただ前だけを見ていた。
多分、ロマネスクさん自身も分かっていたんだと思う。誰よりも。
この討伐で自分が命を落とすことを。
そして、ロマネスクさんは討伐に向かった。
('A`)「それで死んだのか」
(,, Д )「……あぁ、死んださ。 でも犬死じゃねぇ!!! あの人は三頭のディアブロスを全て狩り、死んだ!!! 村を救って死んだんだ!!!!
だから絶対犬死じゃねぇんだ!!!!!!」
響き渡るギコの怒声。余りの声量に、辺りの葉っぱがざわついた。
('A`)「そうだな、確かにロマネスクという人は死は犬死ではなかったようだ」
(,,゚Д゚)「……お前に何がわかるんだゴルァ」
('A`)「わかるさ、俺にも。お前はその死を踏み越えて、今狩人をしてるんだ」
(,,゚Д゚)「……」
('A`)「その人が、お前を強くしてくれたんだ。だから、その人の死は無駄じゃないさ」
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沈黙。しかし息苦しく緊張感を持ったそれではなく、優しくその空間が一枚の絵になったような、やわらかな空気。
(,,゚Д゚)「……そうか」
('A`)「あぁ。そうだとも」
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次の日、生憎の雨。しかし雨雲は厚くなく足も速かった。
四人は、といってもヘリカルはすやすやと眠っているので三人だが、荷車を押して再び道を進んでいる。
ヘリカルが喋らなくなってしまって、とんと三人の間の会話の声は途絶えた。
('A`)「……」
そんな中ここで一つ、ドクオが気になっていたことを質問する。
('A`)「……失礼だがご主人。ヘリカルと貴方は親子なのか?親子にしては歳が離れすぎていると思うのだが」
(,,゚Д゚)「……ドクオ、あまり詮索するもんじゃねーぞ」
(‘_L’)「ふふっ、気になりますか?」
確かにドクオの言う通りだった。籠ですやすやと寝息を立てている少女は四、五歳。
フィレンクトの歳は四十過ぎ位か。
確かにこの子の年の親だとすれば、少し歳が高い。
('A`)「気になる、というかな。こうやって寝食を共にし、一時とはいえ、命を共に賭けているんだ。 だからこそ、秘密を作りたくない。勿論、俺に質問があるならば誠心誠意答えさせて貰う」
フィレンクトは『なるほど』っと、口元に拵えた髭を撫でながら笑った。
(‘_L’)「お察しの通り、私はこの子の本当の親ではありません。この子は拾い子ですよ。親をモンスターに食われた可哀想な子です」
('A`)「……いや、可哀想という理由だけではないはずだ。商人は余計な荷物を背負わない。人であれ物であれ、な。それが手の掛かる子供となれば尚更だ。 ご主人は、この子に一体どんな負い目がある?」
ゆらゆらと揺らめき始めた炎。雨は、やはりにわか雨だったのか、しとしとと降ってすぐ止んだ。しかし、頬を打つ様な風が出てきた。
(‘_L’)「はぁ、全てお見通しですか。流石聞きしに及ぶGですね。 つまらない、ありきたりな話ですが、お話しましょう。 ……あれは三年前です。私を贔屓にしてくれていた村があったのですがね。そこが7m以上の体躯を持つアオアシラに襲撃されるという事件がありました」
(,,゚Д゚)「三年前といやぁ、アプトノスの大移動があった年だぞ!」
アプトノスの大移動、耳にした事がある言葉。デレの祖母が亡くなる切っ掛けとなった事件。
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(‘_L’)「あの年の狩場は荒れに荒れていました。ギコさんならばご存知だとは思いますが」
(,,゚Д゚)「……確かに、あの年は何から何までおかしくなってたぞ! アプトノスの所為で地形まで変わっちまった所もあったし、異様に飛竜の数が減っちまってたぞ!」
アプトノスは、この世界で組み上げられた生態系のピラミッドの中で最下層に所属する草食種だ。
しかし、その固体数は他を圧倒する。
元来の大人しい性質故に、取り上げられる事は少ないが 一つ、特筆される事柄がある。
それは、群れを形成する事である。
ここで一つ、皆も疑問に思っているであろう事を説明しておく。
ジャギィやフロギィ達も、確かに群れを形成する。しかし、アプトノスの群れとジャギィの群れでは、全く異なる意味を持つ。
ジャギィは、お互いの都合の為に群れを成す。
狩りを効率よく行うためであったり、集団で暮らす事により天敵である飛竜種や牙獣種に対抗する為であったり。
謂わば、共同体。
同じ共通の目的を持つ集団なだけで、仲間ではないのだ。
しかし、アプトノスは違う。
助け合い、時に幼体を護るために飛竜にでも向かっていく。
謂わば、家族である。
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その群れが、何十万頭という固まりが何百キロの距離を移動すれば、木々は薙ぎ倒され、生い茂っていた草は踏み潰される。
(‘_L’)「火事場泥棒、とは言いませんが。あの時、私は出来る限りのハチミツを集めていたんです。いつもハチミツが密集していた場所を根城にしていた小型の鳥竜種や青熊獣が、アプトノスの大移動によって住みかを替えざろうを得なかった。 それを利用して、私は出来る限りのハチミツを集めました」
('A`)「……」
(,,゚Д゚)「……」
それが引き金。食料であるハチミツを失ったアオアシラがどうなるのか。それを予想できなかった商売人フィレンクトの失態。
(‘_L’)「飢えたアオアシラは、山から一番近い村を襲いました。そこで犠牲になった六人。私が殺した六人と言っても良いでしょう。 その被害者の娘ですよ。ヘリカルは」
('A`)「……なるほど」
(‘_L’)「自分の仕事が村を、人の生活を支えているという自覚がありました。 人の命に関わる仕事だという事も。けれど、こんな形で人の命を奪うなんて行商を始めて二十五年、想像すらしていませんでした」
『だから私が、この子を護るのは義務なんですよ』
大きな、本当に大きな手がヘリカルの桜色した頬を撫でる。
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(,,゚Д゚)「お前さんはどう思う」
夜も更け、月も山の向こうに姿を消した。
護衛の任を預かる二人は、同時に寝る事をしない。
今は、ドクオが警戒をしている。
寝袋に入りながら、ギコは問い掛けた。
('A`)「フィレンクトさんの事か?」
正直なところ、ドクオもフィレンクトの事は計りかねていた。 先程のエピソードを聞くかぎり、利益至上主義のようにも感じる。 だがヘリカルを見つめる、あの瞳を見てしまえばそれが間違ってるようにも思えた。
(,,゚Д゚)「……あぁ。こう言っちゃなんだがフィレンクトさんは一概に悪いとは言えない。 俺達狩人にだって予見する事が出来たはずだ。俺が有志を募って狩場周辺の警護をする事だって出来たんだぞゴルァ!!」
確かにギコの言う事は正論だ。
しかし、〜〜たら、〜〜ればの机上の空論に過ぎない。
何処までも真っ直ぐに、折れる事を知らない、この狩人は、それでも許せなかったのだろう。
しかし、だからこそドクオはこれを否定した。
('A`)「……ギコの言いたい事は分かる。だが割り切らなければならない時は、割り切る。 俺達の力は、確かに村人から見れば絶大なのかもしれない。だが、それでも人間だ。出来る事には限りがあるし、いくら命を削った所で、それではたかがしれている」
(#,,゚Д゚)「分かってるぞっ!!そんなの分かってるに決まってんだろーがゴルァ!!!!」
いつの間にかギコは、寝袋を這い出し外に出てきていた。
(,,-Д-)「それでも俺は諦めたくないんだぞゴルァ……」
挺身の英雄、ロマネスクに憧れ狩人になったギコに育まれた清廉な心意気。
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('A`)「いつかのその心が、お前を殺すとしてもか?」
(,,゚Д゚)「あぁ。もしそうなったとしても、俺は笑顔で死ねる。 その理想を抱いたまま逝けるなら、俺は笑って死ぬ」
ドクオは素直に悲しい、と思った。だが同時に美しいとも。
一人の命を救うために死ぬのなら、長く生きもっと多くの命を救った方がパフォーマンスは良い。 確かに数字の上ではそうだ。
しかしそれが正解か、と聞かれれば。
('A`)「なら、強くなるしかないな。どんな敵と戦っても負けないように強くなるしかない。 その志を決して忘れるな。それがお前を強くしてくれる」
(,,゚Д゚)「おう!! ドクオ!俺は強くなるぞゴルァ!!!」
あぁ、お前はきっと強くなるよ。ドクオは、そう呟いて荷車の中に戻って行った。
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>>337 3−2です 間違えました
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ぶっはw 4−2です
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勃起不全のおっさんがハメ撮り公開してるw
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次の日、四人は再び日が完全に顔を出す前に動き出した。
早朝にも関わらず、ヘリカルもテキパキと積み荷を数える手伝いをしている。
*(‘‘)*「おとーさんはえらいんだ♪お日さまよりも早起きで♪お月さまより夜更かしさん♪」
昨日の雨のおかげか、いくらか気温は下がっていた。しかし、妙に空気が絡みつく。湿度が高いためか、ヘリカルを除く大人三人の口数は少ない。
いや、気候以上にもう一つ理由があった。
('A`)「……騒がしいな」
草食獣達の声が、昨日とは比べものにならない位多いのだ。
(,,゚Д゚)「あぁ、準備はしておいた方が良さそうだ」
ギコもこれを的確に感じ取っていた。背に担いでいた【大剣】ジークムントを手に取り、剣先を足で固定し万遍なく研ぎ始める。
草食獣の移動は、一部例外を除き、天敵が現れた時にのみ行われる。
天敵、つまり飛竜だ。
('A`)「フィレンクトさん、積み荷の内容を聞いていいか?」
(‘_L’)「良いですが、様々ですよ。一番多いのは、ユクモの祭りが中止になり余ってしまった“光虫”でしょうか。他にも、アオキノコや、不死虫等もあれば、素材玉等もあります。 しかし、今回の一番の目的は出荷ではなく入荷です。ギルドから大量の“カクサンデメキン”を依頼されたのです」
カクサンデメキン、という言葉にドクオの眉が釣り上がった。
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('A`)「それは……穏やかじゃないな」
カクサンデメキンとは、絶命時に爆散する極めて取り扱いの難しい魚である。 その性質故に生きたまま運ぶ事が絶対条件であり、もし大量のカクサンデメキンを運んでいる途中に一匹でも死んでしまえば、見るも無残なカクサンデメキンの連鎖爆発が起こる。
その使い道は一つ。
('A`)「大樽爆弾Gか……」
(‘_L’)「えぇ、恐らくは。しかし余りに大量の発注だったため、私としても戸惑っています。ギルドは戦争でも始める気なのでしょうかね」
フィレンクトは冗談のように言ったが、これをドクオは否定しなかった。
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(,,゚Д゚)「!!」
不意に地響きが聞こえた。方向は北東。嫌でも気が付く。なにせ木々が薙ぎ倒されながら此方に向かって来ているのだから。
ドス、ドスという継続的な足音。距離にして一キロ。真っ先に悲鳴を上げたのはヘリカルだ。
速い、いや大きいのだ。その一歩の幅が大きいからこそ速い。
足音の大きさ、向かってくる早さからして15mいや、20m級だ。
紛れもなく飛竜、それも成体の。
('A`)「皆荷台に捕まれ!弾き飛ばされるぞ!!」
目の前に差し迫った巨大な竜。フィレンクトとヘリカルは息を呑む。 ドクオは茫然自失して動けなくなったヘリカルを素早く、そして強く抱え込んだ。
次いで衝撃。
数百キロはあるガーグァが、葉っぱのように荷台の更に後方に飛ばされてきた。 荷台はへこみ、半分以上の荷物が地面に散乱してしまった。
厳重な鉄の箱に入れられた物以外は全てひしゃげてしまっている。
('A`)「ギコ、無事か!?」
(,,゚Д゚)「あっ、あぁ。俺は問題ねぇ。ヘリカルは?」
ヘリカルは、突然の飛竜の出現と地面に投げ出された衝撃を受け気絶してしまっていた。
しかし、ぱっと見て外傷は無い。
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『うぅ……ぐぅ……』
問題はもう一人、ガーグァを操っていたフィレンクト。苦しそうな呻き声をあげ、半壊した荷台の前部に挟まれている。
すぐさま狩人二人は己の得物を構え、荷台の前に踊り出た。
(,,゚Д゚)「コイツは……最悪だぞ」
('A`)「……」
二人の前に立ちはだかったのは、飛竜。それも飛竜の中の火竜。
曰く 【天空の覇者】
曰く 【飛竜の王】
曰く 【炎からの使い】
【火竜】リオレウス
深紅を纏う、その身体。
何物をも寄せ付けぬ、その翼。
犯し悶えさせる、その毒爪。
威風堂堂、翼を広げるその姿は正に天空の覇者。 どんな生物であろうとも、その姿を見れば、身を潜め通り過ぎるのを待つという。
吟遊詩人に唄われたその生物が、今にも四人に飛びかからんと迫った。
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狩人達と長きに渡って戦ってきた飛竜。その中でも火竜、そして雌火竜との戦いの歴史は長い。
狩人が、一番理解している飛竜と言っても良い。
だが言い換えれば
狩人の事を一番理解している飛竜、とも言える。
―――【空王の終】 猟長ペニサス=ランクルス―――
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この威圧感。この迫力。正真正銘、飛竜のそれ。
チリチリと焼け付くようなプレッシャー、目の前の竜が息を吐き出す度に身体を焦がすような熱を感じる。
('A`)「……」
引き抜いた双剣は油断無く正眼に構えた。
この状況、【火竜】リオレウスが一吹きするだけで一変する。それ程までに、この飛竜は強大。
かなり不味い状況だ。手負いのフィレンクトに、ヘリカル。荷物が多すぎる。
('A`)「……ギコ、フィレンクトさんの状態はどうだ?」
ヘリカルに怪我は無い。だがガーグァを運転席で操っていたフィレンクトは、直撃しないまでも、その衝撃を身体に受けてしまったはずだ。
(,,゚Д゚)「……足をやられてるぞ! 折れてはいないが走れそうにはねぇ!!」
(メ‘_L’)「……お二人とも、私を置いていって下さい」
見ればフィレンクトの太股から踝にかけて、全体が赤く腫れている。今は、まだ大した怪我には見えないが半日も経てばドス黒く変色するだろう。
目から、耳から、次々と入ってくる情報を迅速に組み上げ消化していく。
('A`)「一旦退くぞ」
選択したのは、逃げだ。この場合は仕方がない。何かを護りながら戦うというやり方は、狩人の領分ではないのだから。
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(,,゚Д゚)「そうした方が良さそうだな」
('A`)「ヘリカルを頼む。俺はフィレンクトさんを連れていく。 まずは、二人の安全を確保したい」
(メ‘_L’)「無理です!私は走れません!!」
(,,゚Д゚)「もう少し行ったところに、小さな洞窟がある。そこまで走るぞ!」
二人は徹底的にフィレンクトの意見を無視する。 確かに彼の言う事は正しい。手負いの者を庇いながら逃げ切れる程、リオレウスは易くない。
だが、その尺度に狩人を当てはめるのは間違いだ。
ギコの抱える大剣、それだけで100キロ以上の重量がある。 それを背負いながら50mを6秒足らずで走る狩人に、子供一人は大した障害ではない。
(,,゚Д゚)「少し我慢してくれよ、ヘリカル」
胸当てを少し緩め、そこにヘリカルを納める。
('A`)「走れ!!」
(;‘_L’)「ぐぅ……」
斯くして狩人と飛竜の鬼ごっこが始まった。
ここでリオレウスという飛竜について、もう少し詳しく述べておこう。
まずここで知っていてもらいたいのは、飛竜という種の事だ。 何故、彼らが飛竜たり得るのか。
それは読んで字の如く、飛べるからである。
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飛竜にもいくつかの種類が存在するが、その全てが飛行可能だ。
その手段は、翼であったり、跳躍であったりと様々だが。 彼等は空を支配する。
空を飛ぶ事のメリットは、もうクルペッコとの戦闘の時に示しておいたので、詳しくは割愛するが
最大の利点は【自分のタイミングで戦闘を切り上げられる】という事にある。
これにより、飛竜は一撃離脱、電光石火の術を学んだ。
リオレウスは、その最上だ。彼らは空を自由に飛び回り、獲物の一瞬の隙を見逃さずに仕留める。
まさに空の王。上空に滞空し、放たれる尖爪の一撃は生きとし生ける物を死へと誘う。
普通の飛竜にこんな事は出来ない。
これは、飛ぶ事により特化したリオの名を冠する二種の飛竜のみに許された必殺の技である。
そして、もう一つのメリット。
それは純粋な速さだ。
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(;'A`)「………チッ」
(;,,゚Д゚)「やべぇ、もう来やがったぞゴルァ!」
その速さに抗う術を持たぬ人間は、ただただ祈るのみ。
【どうか自分を狙うな】と。
仲間が食われようて構わない。
だから来るな。
自分に尖爪。
醜いと思うかもしれない。だがこれは真実。圧倒的な飛竜の体躯を目の当たりにして、自己犠牲の精神を働かせる者など存在しない。
('A`)「散開ッ!!」
(,,゚Д゚)「おうよ!」
しかし、これらの前提は全て力無き獲物に当てはめられる事。
狩人とは獲物に非ず。狩人とは“狩る者”。
バラバラに走りだした二人は、それぞれ木立の陰に入りリオレウスの視界から消える事に成功する。
('A`)「……」
(メ‘_L’)「……私の事は、置いていってくれても良かったのですよ」
フィレンクトは、先程から思い詰めたようにうなだれていた。
確かに客観的に見てフィレンクトは荷物以外の何物でもない。それはフィレンクト自身が一番適切に理解している。
例え狩人であろうとも、いや狩人だからこそ人一人という荷物は重い。
('A`)「それでも俺達は、やらねばならない」
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(メ‘_L’)「……」
('A`)「例え、この道が困難であろうと、険しくあろうと、俺達は往く」
それが狩人。人間を守り、飛竜を貫く槍なのだ。
('A`)「フィレンクトさん。脚は痛むか?」
(‘_L’)「……生まれてこの方、こんなに痛いのは初めてです」
('A`)「少し無理をする。傷が広がるかもしれない。痛ければ声を出しても構わん。ただ、俺の首から絶対に手を離すな」
(;‘_L’)「何故そこまでするのです!? 私は……私を置いていけば、皆さんが助かる可能性は、かなり上昇するはずです!」
フィレンクトには理解が出来ない。そんな簡単な事を、何故この狩人は分かってくれない。
天秤に賭けるまでもない。私の命と、三人の無事。同じ質量の物が一つと三つ。言うまでもなく、後者が優先されるべきだ。
('A`)「命に質量なんて存在しない」
(‘_L’)「!!」
思考が口から漏れてしまっていた。
('A`)「今と同じ言葉、ヘリカルにも言えるか?」
(;‘_L’)「………」
それに、と区切ってドクオさんはこちらを真っ直ぐ見据えて言い切った。
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('A`)「“G”の狩場に敗北は無い」
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言うやいなや狩人は飛び出した。速度は最速、先程までのスピードはローギア。発進ギアだったとでも言うようなスピード。
前方から向う風の音が轟々と耳を擘く。フィレンクトは、あまりの圧力に思わず手を離しそうになる。
目も開けられない。
猛進、そして蛇行。
リオレウスもこれには目を回した。
それでも、純粋なスピードではリオレウスがやや勝っている。 少しずつ獲物に近づき鋭く爪で薙ぐが、その瞬間に奇妙に動くのだ。
右に左に、リオレウスが目を向けた方とは必ず逆に、獲物は逃げていた。
それを見ていたギコも動き出す。目指す洞窟は、もうすぐそこだ。
ドクオに気を取られている今、辿り着く事は容易い。 ギコは一気に駆けた。今ばかりは、胸に抱いたヘリカルを気に掛ける余裕はない。
彼が命を賭したのだ。自分にも救わねばならない命がある。
(,,゚Д゚)「なんて速さだぞ、ゴルァ……」
あの速さ、そして動き。まさに疾風迅雷。
疾く風、まさに雷の迅。
ドクオは、みるみる内に目的地だった洞窟を通り越していった。
これは陽動、より安全にヘリカルを逃がすためにドクオが敢行した捨て身。
(,,゚Д゚)「あんにゃろう……それはオレの仕事だぞゴルァ!!」
洞窟に飛び込む。すぐさまヘリカルを出来るだけ奥の入り組んだ場所に寝かせて外に飛びだした。
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('A`)(……ギコは洞窟に入れたか)
ドクオは一気に脚を停止した。
一瞬の間。そして吹き抜けた轟風。
リオレウスは、いきなり視界から消えた獲物に困惑する。
だがリオレウスは飛竜。そんな誤魔化しが通じるのは一瞬だけ。
すぐさまリオレウスは、後ろに反転する。
('A`)「……流石は空の王。これくらいでは撒かれてくれないか」
もうすぐ手が届く、リオレウスも必死だった。
あの素早く動く鼠を捕えるのは至難の業。
リオレウスの本能は、それを正しく理解していた。
だが逃げられれば追う、というのもまた本能。
リオレウスは笑っていた。今はこの鬼ごっこが楽しいのだ。
しかし、楽しい時間はこれで終わりだ。
リオレウスは、体内のある器官に指令を送る。
リオレウスの翼に付随する、もう一つの武器。
リオレウスを火竜たらしめる、その武器。
ドクオも、的確にその動作をキャッチする。
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('A`)「チッ……あともう少しだっていうのに」
背後からジリジリと伝わる異常な熱量が、それを文字通り肌で感じさせる。
火球ブレス。リオが吐き出すその息は、生きとし生ける物の命を刈り取る死神の鎌。
('A`)「!! ギコ!!構えろ!!!!」
(,,゚Д゚)「任せろゴルァ!!!」
確かに捉えた背中、文句なく命中。
あの忌々しい鼠が、王たる自分の息吹きを食らって生きられるはずがない。
しかし、それを阻む者がいた。
(,,゚Д゚)「ゴルァアアア!!!!!」
ギコの構えた大剣は、王のブレスを全て受け止め雲散させた。
ドクオは、間一髪で洞窟の中に滑り込んでいた。
('A`)「ギコもとりあえず中に入れ。対策を練るぞ」
(,,゚Д゚)「おう!!」
リオレウスは、何度か前脚で洞窟に逃げ込んだ鼠を引き摺り出そうとするが、入口が小さすぎて上手く入らない。
数十分、それをずっと繰り返すが やはり届かないと悟ると、翼を広げ上空へと去っていった。
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一方、洞窟の中ではフィレンクトの手当てが行われている。
軽く見ただけで、打ち身、打撲、裂傷を負っている。 幸いにもリオレウスの爪で裂かれた訳ではなく、破壊された荷車の廃材で脚を切っていただけだった。
('A`)「動脈は切れていない。静脈ならば薬草を磨り潰して塗り込み、綺麗な布で圧迫すれば問題ない」
(‘_L’)「……すいません、お手数をかけます」
('A`)「気にするな」
(,,゚Д゚)「………」
テキパキと進められるドクオの応急処置を見ながら、ギコはどこか腑に落ちなかった。
昨夜ギコと話していたドクオなら、三人の無事の為にフィレンクトを置いてくるかもしれない、と内心思っていた。
そして先程見た、あのスピード。
あの人外の速度は、人を担ぎながら出来る物ではない。
あれは、フィレンクトを担ぎながら行っていたのだろうか。
まさか。しかし、それしか考えられない。
それにギコの疑問は、“速さ”だけではなかった。あの動き。 リオレウスの行動を、さも後ろに眼が付いているかの如く全て見切っていた。
(,,゚Д゚)「……ドクオ、さっきのアレはどうやったんだ?」
('A`)「ん、アレとはさっきの走り方の事か?」
(,,゚Д゚)「おう、リオレウスの動きを全て躱したあの走り方だぞ」
('A`)「それ程難しい事じゃない。 ある程度の速さで走れれば誰にでも出来る事さ」
(,,゚Д゚)「……馬鹿言っちゃいけねぇぞ。 あんな奇妙な動き、見た事がねぇ」
('A`)「……ふむ。まぁ口で説明するのは難しい。実戦で教えよう。 俺自身、友から教えられたやり方なんでな、上手く説明できるか分からんが」
ドクオは、そう言うと洞窟の外に出た。
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洞窟の上空をゆっくりと旋回するリオレウスを見やる。
見逃してくれる気はなさそうだ。
('A`)「全く……ままならないな……」
狩人と飛竜の舞曲が始まろうとしている。
-
薄暗い洞窟の中、地べたに寝かされていたフィレンクトを交えて話し合いが行われていた。
('A`)「まず、今の状況を整理しよう」
(,,゚Д゚)「リオレウスは、この洞窟の上をずっと旋回してるぞ。 間違いなくオレ達がまだここに潜んでいると確信しているはずだ」
(‘_L’)「そんな……しかし、モンスターがそんな知恵を働かせる事が出来るのでしょうか?」
('A`)「いや、普通は有り得ない。ただ相手は長年の狩人の好敵手、リオレウスなんだ。分かっていてもおかしくはない」
(,,゚Д゚)「オレが思うに、現状採れる策は三つあると思うぞ」
('A`)「……ほぅ、言ってみてくれ」
ギコの策、というより勝利条件の三つ。
まず一つ目、ここから自分達二人で外に行きリオレウスを討伐する事。
討伐出来ないまでも、奴の翼さえなんとか出来ればそれで問題ない。
そして二つ目、助けが来るのを待つ事。
フィレンクトの出血が止まった今、慌てて外に飛びだす理由は無い。
じっくりと、機を待って脱出出来ればするし 厳しいならばギルドからの応援を待つ。
('A`)「二つ目は却下だな。 フィレンクトさんの足は軽傷だが、傷口から細菌が入っていれば深刻だ。 それに、ヘリカルをずっとこの暗い穴蔵に閉じ込めておくのも衛生上良くない」
(,,゚Д゚)「あぁ、分かってるぞ」
-
そして三つ目。
('A`)「三つ目は? それが本命なんだろ?」
ギコはドクオの見透かした言葉に、驚き眼を見開くが平静を装い三つ目を明かす。
(,,゚Д゚)「オレが陽動してリオレウスを引き付ける。 その間にドクオが二人を連れて村まで逃げる。幸い当初の目的地までは、そこまで距離は無い」
ドクオは溜息を吐いた。やはりか、と。
ドクオは、数日しか話していないギコの心の奥底。
本質を正しく理解していた。
つまりは“死にたがり”なのだ。
自己犠牲の固まり。自分を全く顧みない。
それでは駄目なのだ。ギコは分かっていない。
ユクモの狩人達にとって、如何にギコが代えがたい存在であるのかを。
自分が居なくなった後のことを、全く考えていないのだ。
しかし、同時に感嘆もしていた。
この状況で、努めて冷静にドクオと同じ三つの策を出した事に。
生憎と、三つ目の策は少しばかりドクオと違っているが。
-
(,,゚Д゚)「オレとしては三つ目が良いと思うぞ。ドクオに陽動をやってもらった方が、良いんだろうけどな……。
だがユクモに来て間もないドクオに、こんな危険な役割は任せられない」
だから、オレがやる。
ギコは最後にそう区切った。
飛竜相手に単独の陽動なんて正気の沙汰ではない。
ドクオが行った陽動は、“帰る場所”ありきの行動。 しかし、今回のは逃げ場のないデスマッチ。
三人が無事にリオレウスの縄張りを抜けるまで、引き付ける。自分自身が隠れる事は許されない。
陽動となる者を見失ってしまえば、逃げていた本命の方にリオレウスが食い付くかもしれないからだ。
(,,゚Д゚)「ドクオ、お前はそれで良いか?」
('A`)「……そうだな。恐らく三つ目が一番勝算が高いだろう」
ギコは、ドクオの言葉にどこかホッとしたような息を吐いた。
('A`)「だが、三つ目は採らない」
驚愕、ギコの表情にありありと溢れる驚き。
(#,,゚Д゚)「なんでだゴルァ! 一番被害の少ないのは、間違いなく陽動だぞ!!!」
('A`)「あぁ、お前の言ってる事は正しく理解してるつもりだ。 確かにそれが一番無難だと思う」
(,,゚Д゚)「だったらなんでだゴルァ!!」
('A`)「簡単な事だ、お前は前提が間違っている。“誰かを犠牲”とする考えは捨てろ。そして犠牲になろうとするな」
薄暗い洞窟の中、三歩先にいる物の輪郭ですらはっきりと把握出来ない。
ただ、そんな暗闇の中でドクオの存在感だけが際立った。
フィレンクトは、ただ息を呑む。
-
('A`)「俺達全員が生きる、という事を前提に考えれば採る方法は見えるだろ」
(,,゚Д゚)「!? お前、リオレウスを討伐するつもりなのかゴルァ!!」
これにフィレンクトは、さらに衝撃を受けた。
あのリオレウスを討伐する?
思い出しただけで震えが止まらない。
あの巨大な存在を前に、人間の小ささをまざまざと見せ付けられた。
(;‘_L’)「わっ……わたしは……」
自分が外に出て出来る事など、何もない。
きっと戦うのならば、この二人だけだろう。
それでもこの震え、恐怖。
実際に戦う事になるかもしれない二人はどれ程の恐怖を感じているのだろうか。想像すら出来ない。
('A`)「その通りだ」
(,,゚Д゚)「無茶苦茶だぞゴルァ!! 飛竜種の成体を相手に二人で挑むなんて馬鹿げてるぞ!!」
('A`)「やってやれない事はないさ」
洞窟に響く怒声。
自分を犠牲に三人の安全を高めようとするギコ。
あくまで全員で助かろうとするドクオ。
-
しかし、フィレンクトはここで言い様の無い違和感を感じる。自分はドクオやギコの本質を理解しているわけではない。
だが漠然と『ドクオはきっと無用な荷物は切り捨てるのだろうな』と考えていたのだ。何故かと理由を尋ねられても答えられない。
ドクオの冷徹そうに見える切れ長の目が、落ち着いた雰囲気がそう思わせたのかもしれない。
だから今の状況は意外である。
この二人の争い、客観的に見れば間違いなくギコの主張に理がある。
一人が死んで三人が確実に助かるのならば、間違いなくその方法を採るべきだ。 しかしドクオは認めない。
('A`)「ギコ、お前は自分が犠牲になれば三人が助かると思ってるんだろ」
(,,゚Д゚)「……少なくともオレら二人が、飛び出して討伐する可能性よりは高いだろうな」
フィレンクトには、二人の口論に割り込む隙を見つけられなかった。
どちらが正しいのかなんて、分からないのだから。
(,,゚Д゚)「別に死にたいわけじゃねぇ。 ただオレとお前が両方ともくたばっちまったらフィレンクトさんとヘリカルを、誰が安全に導くんだ」
(‘_L’)「………」
ギコの言葉に、フィレンクトはハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
そうなんだ。私とヘリカルはこの上ない荷物、重荷。
担げば潰され、この二人の命すら脅かす。
-
(‘_L’)「……わたしは 」
この二人のぶつかり合いに、私が口を挟む事は許されない。
('A`)「いいや、ギコ。お前は怖いんだ。自分の知らない所で仲間が傷つくのが」
(,,゚Д゚)「!!」
('A`)「それなら自分が傷つく方法を選ぶ、ってとこだろう。 全く、困ったもんだ」
ドクオのこの意見は、殆んど勘から出たものだ。 昨夜のギコが話した英雄ロマネスクの話。
少なくとも、ギコはロマネスクの事を敬愛している。 それは、別段長く付き合っていなくても分かる。
そこからロマネスクの考えに、ギコが感化されていると予測しての突っ込みだった。
(,,゚Д゚)「……お前に何がわかる。死にに行ったロマネスクさんを見送る事しか出来なかったオレの気持ちが分かるのかゴルァ!?」
ギコは怖がりだ。自分が傷つくのは怖い。だが仲間を護れないのは、もっと怖いのだ。
だからこそギコは、死にたがる。
仲間を護り朽ち果てるのが、唯一その恐怖から逃げる道なのだから。
('A`)「分かるさ。そんな奴は何人も見てきた。ドンドルマの先達は、そうやって俺達に“狩人のなんたるか”を教えてきた。 だから俺は逃げなかった。もう誰も失う事のないようにと、強くなろうと決めた」
(,,゚Д゚)「……」
('A`)「それに陽動は俺も考えていた事だ。だがお前の立てた作戦とは違う。 俺が陽動すれば、生存率はグッと上がっただろう」
ギコは、その言葉に拳を強く握り耐えた。
-
オレはまだまだ弱い。ドクオに陽動をして貰えれば成功率は高くなる。
でも、それじゃオレが護れない。
いや、オレも護られてしまってる。
(,, Д )「エゴだって、そう、言いてぇのか?」
('A`)「あぁ。だが決して醜い物じゃない」
(,,゚Д゚)「……」
無言で睨み合う二人、ギコだってわからず屋ではない。ドクオの意見を聞いて、図星を付かれた部分が少なからずあるとも思った。
だが、それでも簡単に変えられぬ。曲げられぬのが“信念”。
しかし、そんな二人を取り成すように小さな声が聞えてきた。
『……お父さん、どこ?』
(‘_L’)「ヘリカル!? ここにいるよ!!」
小さな、小さな声。
狩人達二人が護ろうとしている者から、聞こえた声だった。
*(‘‘)*「おとーさん!!」
洞窟の奥から飛び出してきたヘリカルは、ギュっと強くフィレンクトに飛び付いた。
*( ; ;)*「ヘリカルね、恐かった。起きたら、おとーさんが居なかったから……」
(‘_L’)「……すまないね、ヘリカル。もう大丈夫だよ」
それに応えて、フィレンクトも義娘を強く強く抱き締めた。
-
『……えるのか』
('A`)「なんだ?」
(#,,゚Д゚)「テメェの決断、この小さな命に賭けて誓えんのかゴルァ!?」
洞窟の中、一杯に響き渡るギコの叫び。
壁にぶつかり合い、反響し、その叫びはどこまでもこだました。
しかし、だからこそ。
その後に発せられた言葉は、凪ぎの水面の様に静かで力強かった。
('A`)「誓おう」
この小さな命。村に身命を賭した男の命。全てを護ろう。
('A`)「狩人の名に於いて」
そして、これからのユクモを担う若い狩人の命も。
最後にドクオはギコに聞こえないよう、心の中で付け足した。
-
(,,゚Д゚)「勝算はあるんだろうな」
('A`)「無論だ」
狩る、そう決めたなら話は早かった。先程までの対立は無かったかのように。
(,,゚Д゚)「どうやってリオレウスを攻略する。聞かせてくれ」
('A`)「考えはあるんだ。だが、確認したい事が幾つかある。 フィレンクトさん、貴方にも」
(‘_L’)「……えぇ、分かりました」
まずは、地形の確認。周辺にある大樹や泥濘。知りすぎて困るという事はない。 加えて近辺の村への道。
('A`)「なるほど。最初に考えた案でいけそうだ」
(,,゚Д゚)「どうやるつもりだ?」
ギコの疑問に、ドクオはニヤリと笑って答えた。
('A`)「奴から翼を奪い取る」
-
*(‘‘)*「おにーちゃん達、戦うの?」
これから起こるであろう生死を賭けた戦い。
ヘリカル自身、幼いながらも今この洞窟に溢れている緊張感を精一杯感じ取っていた。
(,,゚Д゚)「………」
少女の不安を、ギコに汲み取る余裕は無かった。
これから戦う【火竜】リオレウス。それも十二分に成長した成体。
二人という少人数で、成体を相手にするのはユクモ随一のギコであっても初めての経験だった。
('A`)「大丈夫だよ、ヘリカル。すぐに終わらせて帰ってくる」
*(‘‘)*「……ほんと?」
少女の不安気な瞳。
モンスターによって家族を殺された少女。
再び、その危機に直面する。 ヘリカルが感じている不安は筆舌し難い物であるだろう。
('A`)「ヘリカルも、ヘリカルの大切な家族も。俺達が護る。
なぁ、ギコ」
(,,゚Д゚)「!! ……おう。だからそんな顔するんじゃねーぞゴルァ」
ゴツゴツとした手で、ギコはヘリカルの頭を不器用に撫でた。
*( ー ー)*「……うん」
(‘_L’)「すいません、貴方達に全てを押し付けてしまって」
('A`)「気にするな。俺達はそれが仕事だ。 フィレンクトさんにはフィレンクトさんの。
父親としての仕事があるだろう」
(‘_L’)「……はい」
-
背に携えていた双剣、【コウリュウノツガイ】を引き抜く。
('A`)「ギコ、準備は良いか?」
それに呼応して、ギコも自身の大剣【ジークムント】を掲げた。
(,,゚Д゚)「任せろ」
狩りを前に、余計な雑念は不要。
必要なのは明確な覚悟。
生きて帰る。勝利するという決意だけ。
『おにーちゃん!これ持っていって!!』
('A`)「!?」
その時、ドクオの胸に湧いた懐かしい気持ち。
混じり気の無い黒でありながらどこか透き通った髪。
-
川 ゚ -゚)『そんな不安そうな顔をするな、私は帰ってくるよ。お前の元に』
-
('A`)「これはヘリカルの物だろ。良いのか?」
川‘‘)「……うん、お父さんに初めて貰ったプレゼントなの。 だから絶対に返しにきて……。ヘリカル、お父さんと待ってるから!」
ドクオは、少女の髪留めを、少女の気持ちを受け取り、自分の無造作に伸びた後髪を束ねた。
('A`)「受け取れ、ギコ。そして自分の手で必ず返せ」
(,,゚Д゚)「おう!!」
ギコは、それを自らの利き手である右手に括り付けた。
('A`)「ヘリカル、帰ったらまたあの歌を聞かせてくれ」
川*' ')「うん!」
光の向こうへと躍り出た。
凄まじい速度で元来た道を引き返していく。
出来るだけ音をたてて、派手に爆進する。
その頃、リオレウスは四人が隠れている洞窟から一キロ以上離れた上空に居た。
一キロ、人間にしてみれば気安い距離ではないが飛竜にすれば、ただの一歩と変わらない。
他の生物と一線を画した嗅覚を持つ飛竜は、鼠が動き出した事を的確に把握していた。
空を一回り、二回りと繰り返し、獲物の位置を確認していく。
小型種は【索敵】と【戦闘】に別れて、群れで狩りをする必要があるが
殊、リオレウスにそれは必要ない。
そしてリオレウスに見つかったが最後、奴は獲物に向かって真っ直ぐ滑空する。余りにも的確で、痛烈な一撃。
-
たまらんのぅ
脳内ストーリーつけてMHP3やり直したくなる
-
今日はここまで?
-
いえいえ、再開します
-
しかしドクオも、また流石。
耳に入ってきた異常な風切り音。
何か大きな物体が、風に逆らい向ってくる。
その一つの情報でドクオは、リオレウスの接近を察知し素早く木陰に隠れた。
姿を消した鼠に、リオレウスは歯噛みしながらも再び上昇する。
透かさずドクオは、再び木陰から飛び出して走りだした。
ここで隠れていれば確かにリオレウスからはやり過ごせるかもしれないが、それでは意味が無い。
('A`)「付き合ってもらうぞ、空の王。俺とお前、二人ぼっちの鬼ごっこだ」
応えるように【火竜】リオレウスも、また吠えた。
人と飛竜、極めてアンフェアな鬼ごっこの始まりだ。
-
歌いましょう―――目覚めの唄―――
奏でましょう―――生命の旋律―――
きっと誰かを救うから 貴方の紡ぐ その調べ
誰かを 祈る その心
きっと 誰かを 護るから
―――歌姫 キュート=バレンタイン―――
-
('A`)「ギコ、もう一度確認しておくがユクモ樹はこの先にあるんだな?」
(,,゚Д゚)「ああ、来た道にそって真っ直ぐ進めばユクモ村で一番大きなユクモ樹があるぞ」
ドクオの確認事項は、それだけだった。
今改めて考えてみれば、余りにも無茶苦茶な作戦。
いや、ギコに課せられた役割はそれ程難しい物ではない。
危険なのは、ドクオだ。
この作戦の成否はドクオの陽動にかかっていると言っても過言ではない。
そう、二人が選んだ作戦は、単純な【待ち伏せ】だった。
如何にも先時代的だと思われるかもしれないが、たかが【待ち伏せ】と侮るなかれ。
ずっと昔から今に至るまで、潰える事なく続けられてきた単純な作戦は、それだけ先人達が有用性を保証しているとも言えるのだから。
そも、モンスターとの戦闘において【待ち伏せ】というのは最もポピュラーな作戦なのだ。
しかし、それは万全の準備を成してこそ言える。
罠を張り巡らせ、幾重にも謀ってこその待ち伏せ。
ただ待機しているだけの今回は、それとは言えない。
だからこそ、全てはドクオにかかっているのだ。
-
(,,゚Д゚)「……馬鹿野郎が、なにが“自己犠牲”だ。アイツもオレとかわらねーじゃねーか」
この依頼を終えたら、とりあえず一発殴ろうと、ギコは“ユクモ樹の上で”密かに思った。
一方、そんなギコの思いを知る由もなく。
ドクオは、リオレウスと絶賛鬼ごっこ中。
昨日の続きが出来ると、空の王は嬉々としてドクオを追い掛けていた。
あの時は、間一髪の所で逃がしてしまったが今日はそうはいかない。
リオレウスは、自らの全力を以て鼠を追う。
これが、王の、王足り得る資質なのだ。
今、ドクオを追う飛竜がティガレックスであれば。
きっと、既にドクオを見失ってしまっていただろう。 圧倒的な種としての格差は、必然的に慢心を生み出す。
狩るのは飛竜、獲物は人間。
その構図は、もはや飛竜にとって必然であるのだから。
しかし、永きに渡って狩人と戦ってきた【火竜】リオレウスは、消して油断しない。
常に的確に狩人の動きを見極め、確実に仕留める事の出来る一瞬を冷静に探っている。
だからこそリオレウスは気付く。
“昨日”と“今日”の違いに。
-
昨日は、仕留められそうなタイミングが何度もあった。
しかし、今日はそれが見当たらないのだ。
('A`)「………」
顔色を変える事なく、昨日と同じ絶妙なタイミングで左右へと身体を振り、リオレウスのタイミングを崩すドクオ。
しかし、その速さは昨日の倍以上。
それもそう、昨日は自分よりも大きなフィレンクトを背負いながらの逃走だったのだから。
リオレウスも、昨日と動きが違うという事は理解した。
しかし、飛竜の本能ではその要因を理解するまでには及ばない。
ならば、とリオレウスは炎を練る。
昨日は忌々しい壁に阻まれたが、今回は走りながらだ。
爪は躱せても、この火球ブレスは躱せまい、と。
('A`)「……チッ」
狩人も、気が付き身体を強引にリオレウスに向けた。しかし、それは絶望的に遅い。
時速200キロ、摂氏600度以上の速度と熱で吐き出されるリオレウスの炎息は、抵抗する事自体を許さない必殺の武器。
リオレウスは、勝利を確信する。
-
しかし
('A`)「俺に、炎は効かない」
-
ドクオは、自らの双剣でそれを逸らした。
いや、軌道を無理矢理に捻曲げたと言うべきか。
例えるならば、脈々と流れる圧倒的な勢いを持つ水流のど真ん中に、鉄筋コンクリートをブチ込んだような。
驚くのも無理はない。
こんな事、普通の人間が出来る事ではないのだ。
いや、誤解を招かぬようにはっきりと言おう。
たとえG級の狩人であったとしても、こんな芸当出来るわけがない。
加えて、この事象はドクオに人並み外れた特殊な技能があって引き起こされた物ですらない。
しかしドクオの両目は確かに時速200キロのブレスを捉え、金銀の双剣は600度以上の火球を逸らした。
それは一重に、ドクオの持つ双剣による所だ。
ドクオの持つ金銀の双剣、【夫婦剣】コウリュウノツガイは、【雌火竜】リオレイアと【火竜】リオレウスの貴重な素材を、ふんだんに使って作られている。
それも、ただの人間では一生に一度遭遇出来るかも分からない希少種の物だ。
リオの魂とも言える“紅玉”を丁寧に時間を掛けて、剣の形に打ち直し、銀火竜と金火竜の鱗で刃と柄を作る。
その上で、刃の部分に火竜の髄を丁寧にコーティングした、ドンドルマの鍛冶職人入魂の二振り。
この双剣だからこそ、リオレウスの炎を受けても焦げ一つ付かなかった。
飛竜であるリオレウスに、人間のような感情があるのかは分からないが
もし、それを持ち得たならば
きっとこの時、リオレウスは驚愕していただろう。
-
('A`)「ここまで来れば大丈夫だろう。待たせたな、リオレウス。鬼ごっこはひとまずここで終わりだ」
リオレウスは、堂々と自分を見据える狩人に異様な雰囲気を感じた。
怖気づいたのだ。
両翼を二度、三度靡かせ距離を開けた。
そして驚く事が起きる。
('A`)「!?」
空の王が頭を垂れたのだ。
偉大な物にかしづく様に。
('A`)「コイツ……俺の双剣に反応してるのか?」
ゴクリ、とドクオは息を呑んだ。今まで何年と狩りを続けてきたが、こんなリオレウスを見るのは初めてだった。
偉大な同胞を使い、作られた双剣に対し
王は、頭を下げた。
('A`)「……」
静かな時間が流れる。人間と飛竜、どちらも動く事なく互いに正面から向き合っている。
ユクモの神木に囲まれた、この小さな空間で。
一人と一頭は、ただどちらとも言葉を発する事無く、黙っていた。
-
先にこの沈黙を破ったのはドクオだ。
('A`)「ドクオ・ウェイツー。ドンドルマの狩人にして“G”を戴く者だ。
御相手願おう、空の王」
動き出したのは、飛竜。
ドクオの名乗りに応えるかのように、長く、そして強く吠えた。
('A`)「……チッ」
余りに長い咆哮。普段ならばその衝撃に当てられる事無くスルリと躱すドクオだったが、ここまで長く吠えられると流石に対処の仕様がない。
先手はリオレウスが取った。
('A`)「……面倒だな」
鋭く見舞われるリオレウスの翼爪。 足の爪とは違い毒線は無いが、それでも人間を仕留めるには十分な威力を持っている。
これをドクオは、リオレウスに背を向け必死に跳び退き回避した。
体勢は最悪。
リオレウスに背を向けた状態、それに加えて跳んだ為に身動きが取れない。
新人の狩人が、突然の攻撃に対してやってしまう最悪の避け方だった。
-
この方法では、地面から身体を起こす時に一瞬だけ必ず無防備になる。
その一瞬を見逃すほど、飛竜は甘くない。
起き上がりにブレスを見舞われ、跡形も無く蒸発してしまった狩人も少なくない。
その最高の好機。リオレウスも勿論認識している。
すぐさま追撃をかけるために飛び上がらず、そのまま突進する事でドクオを砕こうとする。
('A`)「……厄介な奴だ」
ドクオは地面に着地する一瞬に、片手で地面を押し返し、側転の要領でその隙を消した。
勿論、リオレウスの目論みは空回りに終わる。
加えて、このタイミングで攻守が逆転。
リオレウスの巨体が、単純に突進すれば
その反転の鈍さは、欠伸が零れる程だ。
身体が大きいというのは、大きなメリットであり 大きなデメリットになる。
透かさず、ドクオは自分を捉えられず、そのまま通り過ぎたリオレウスに向けて走りだした。
“双剣”という武器の特性上、一撃でリオレウスを倒す事は出来ない。
だからこそ、このような細かな隙を見逃してはいけないのだ。
生粋の双剣使いであるドクオは、勿論これを理解していたし
だからこそ、正確にリオレウスの脚を不規則な形で切り結んでいた。
-
しかしリオレウスは全く意に介さないかのように、その場で尻尾を振り回す。
('A`)「……チッ、これだから図体のでかい奴は」
身体が大きいというのは、痛覚の鈍感さに関係する。
一般的に飛竜種に限らず、どんなモンスターでも痛みにのたうち回るなんて事はない。
蓄積した痛みが、一気に身体の底から溢れだした時に、奴らは初めて“痛み”という物を自覚する。
('A`)「………」
だから今は我慢の時。
出来る限り、リオレウスの脚を集中的に切り結んでいく。
ドクオの戦法は単純。リオレウスと距離を取り、突進を誘う。
それを躱し、奴が振り返る前に脚を狙う。
痛くも痒くもない、とばかりに尻尾を振るリオレウスだが
着実に、その脚に蓄積は溜まっていく。
この構図が、最初から最後まで終始動かなければドクオは確実に勝利するだろう。
しかし、相手にしているのは飛竜。
人間よりも圧倒的に上位。
gaohooooooooooo!!!!!!!
たった一吠え、それだけで一連の攻守は逆転してしまうのだ。
-
“音”というのは、つまるところ“振動”だ。
リオレウスの雄叫びは、大気中の空気を振動させ
ドクオの三半規管を、直接刺激する。
聴覚だけでなく、人間の平行感覚を司る三半規管を、揺らされれば
いくら強靭に肉体を鍛えようと無意味。
空の王の怒りは、焼き尽くす炎となって愚者の身を焦がす。
('A`)「不味いな」
咆哮により動けなくなった一瞬。
そこに加えられた、尻尾による回転攻撃。
ドクオは間一髪でそれを避ける。
しかし、次の瞬間。
リオレウスが大きく翼を広げた。
この構えから繰り出される攻撃は、万国共通。
('A`)「!?」
“飛び上がりブレス”
-
リオレウスが繰り出す多種多様の技の中で、最も凶悪な攻撃。
吠えて、ブレス。
この単純かつ明快な攻撃によって幾人もの狩人が命を落としてきた。
凄まじい衝撃と共に、ドクオが立っていた場所から5m四方が焼け焦げた。
リオレウスは、満足そうに何百度にもなる灼熱を吐いて、上機嫌に空を舞った。
殺してやった。
あの忌々しい鼠を。
王たる自分に逆らい、逃げ続けたモノを。
-
しかし、なんだというのだ。あの鼠は自分の灼炎を受け間違いなく絶命しているはずだ。それなのに緊張感から開放されない。自分の本能が言っている。
まだ終わっていないと。
『王は、路肩の石を蹴っても気が付かない』
『なぁ、空の王。お前は気付いていたか?』
('A`)「まず一つ目だ」
あれは何だ?
あの忌々しい鼠は、何故焼け爛れた様子もなく悠然と立っているのだ。
それに、奴が手に持っているのは何だ。
あれは
('A`)「左右6つの尖爪。お前が地に落ちるまでに何本無事に残っているかな」
ドクオは、再び駆け出した。
-
そもそもドクオは、何の考えもなく陽動を買って出た訳ではない。
リオレウスを倒すための、ピースを集める為に行っているのだ。
そして一つ目のピースは、すぐそこだった。
('A`)「ひどいな、これは」
グシャグシャに潰されたフィレンクトの荷台。
そこにある勝利の鍵。
リオレウスから翼をもぎ取る為の鍵が。
ドクオは、素早く荷車の中から“それら”を引っ掴んで再び駆け出す。
もうリオレウスとやり合うつもりはない。この先に待つ巨大なユクモの樹。そこまで付かず離れずの距離で飛竜を誘導する。
目指すは、ギコとの約束の場所。
二人の狩人に“勝利の光”が指す。
-
生い茂る森、無数に林立する木々の中でも、飛びぬけて背の高いユクモ樹の上でギコは座っていた。
打ち合わせでは、ドクオがここまで誘導してくるらしい。そんな飛竜をコントロールするような事が出来るのか、とも思ったが自分は仲間を信じて待つことしか出来ない。
しかし、不安は拭えない。時間稼ぎにしては遅すぎる。自分がこの場所に辿り着くまでの陽動だったはずなのに。ドクオは一体何をしているのか。
(,,゚Д゚)「!! 来たか!!」
薙ぎ倒されていく木々。真っ直ぐこちらに向かってくる。
(,,゚Д゚)「……流石だな。宣言通り、あのリオレウスをコントロールしてやがる」
ゆっくりと心を落ち着ける。三度息を吸い、吐いた。
三年来の相棒である大剣、ジークムントを握り締める。ヘリカルに借り受けたリボンは柄と自分の手を結ぶのに使っている。
そういえば、こうやって人に頼んで狩りをするのは何時ぶりだろう。
思えば、本当の意味で人に頼った事など一度も無かった。
だからこそ手が震える。
他人の努力の成否が自らに重くのしかかる。
-
(,,゚Д゚)「……」
そうか。
俺は、こんな重圧を大切な仲間にかけていたのか。
(,,-Д-)「……謝らねぇとな、帰ったら」
見据える先には飛竜、リオレウス。
その一歩先を行くドクオ。
(,,゚Д゚)「大した奴だ」
ここからが狩猟の本領。仲間との力を合わせた戦いだ。
('A`)「ギコオオォォォオオ!!!!!」
空の王から、翼をもぎ取る。
30m以上あるユクモ樹から飛び降りる。
ジークムントを携えて。
これが二つ目のピース。
空の王よりも、高みからの奇襲。
Ghyaaaaaaaaaaaaa!!!!!!
-
地面に縫い付けられたリオレウス。
翼が折られたのだ。
(,,゚Д゚)「ハァハァ……」
('A`)「……ふぅ」
その飛行能力。圧倒的な制空力故に繊細過ぎる作り。その脆さ。
('A`)「良くやったな」
(,,゚Д゚)「あぁ。だが、まだ終わってない」
片翼を折られた空の王。その顔には、憤怒がありありと浮かんでいる。
自分より下等な存在に。
王たる自分の翼が奪われた。
許せない。許してはならない。
('A`)「……油断するなよ、ギコ。こいつは一筋縄ではいかない」
(,,゚Д゚)「……誰に言ってやがる。ユクモの狩人の力を見せてやるぞゴルァ!!」
-
大剣というのは、人間の使ってきた武器の歴史において特異な存在である。
武器に求められる性能は、大きく分けて二つ。
【威力】と【リーチ】だ。
効率良く、多くのモンスターを狩るために、人は【威力】を求めた。
傷つかず、無傷で敵を倒すために、人は【リーチ】を求めた。
石斧や石槍から脈々と受け継がれてきた武器の系譜。
しかし、その二つを両立する事は決して出来なかった。
いや、出来なかった訳ではない。
人は【大剣】という形で、そのテーゼに答えを出したのだ。
しかし、それは人の身体には余りに大きく、普通に扱える物ではなかった。
だからこそ、大剣使いは少ない。
(#,,゚Д゚)「いくぞゴルァ!!」
彼は、数少ない大剣使いの一人。 それも一流の。
全身を使い振り回される大剣は、当たらないと分かっているドクオでさえ、迫力を感じさせる。
真っ直ぐ、リオレウスの眉間に叩き込んだ。
堪らずリオレウスは、後ろへと下がる。
ドクオの双剣では、意に介さなかったリオレウスであっても、何百キロの重量を持つ大剣であれば話は別だ。
-
('A`)「――♪」
ドクオは、鼻歌でも歌うかのように余裕の表情でリオレウスの懐に潜り込んでいた。
脚と脚の間。
如何な生物でも死角となる絶対的安地。
リオレウスは、異常さに気付く。
自分が、ここまで良い様にやられた事は無かった。
飛竜として、生態系のトップに君臨していた自分を脅かす存在になど遭った事がなかったのだから。
加えて言えば、野性に生きる物が、そのような生物に出会ってしまった時点で、待ち受ける末路は等しく死、なのだから。
しかし飛竜の本能は極限まで、敵に背を向ける事を許さない。
その闘争心こそが、真の飛竜の武器なのだ。
だからリオレウスも負けない。
ブレスを三方向に分けて、吐き出す。
ドクオは、前転する事でそれを回避。
ギコは、自らの大剣でそれを封じた。
透かさず攻勢に移ろうとする。
リオレウスは、その様子を見て一度飛ぼうと翼を広げるが、風を起こすだけで身体が浮上しない。
-
('A`)「地に墜ちたな、空の王」
空高く飛びすぎた物の終焉は、その高さ故に陽の光に焼かれると相場が決まっている。
ドクオは、リオレウスから距離を取った。
見極める為だ。
ギコの素養を。
(,,゚Д゚)「ゴルァァアアアアァァ!!!!」
身体全体を捻り、広範囲、高威力で繰り出される凪ぎ払い。
一分の迷いも無く、その迷いが死に繋がると正しく理解している動き。
やはり最初に推し量った通り、ギコの実力はドンドルマにいた凄腕と比べても、なんら遜色ない。
それに、先程のリオレウスの翼を奪った一撃。
あれは、そんな生易しい物ではない。
まず、問題としてリオレウスが低空飛行している状態でギコの場所を通過しようとしなければならない。
それにはリオレウスの行動をある程度支配する事が絶対だ。
そしてギコは、信じなければならない。
ドクオの事を信じ、歯痒い心を押し殺して我慢する辛さ。
それを知ったギコに、もう不安は無かった。
-
洞窟の一番奥に居ても聞こえてくる飛竜の咆哮。
聞こえてくる度に、ヘリカルと身を寄せ耐えた。
川‘‘)「……おにーちゃん達、帰ってくるよね?」
(‘_L’)「……あぁ、きっと帰ってきてくれるよ」
ドクオさん達と話している時は、言わなかったが 彼らが敗れれば、それは私達親子の死に直結する。
川*‘‘)「うん!帰ってきてくれるって約束したもんねっ!!」
こんな死が目の前の状態だからこそ、分かる。
自分は、この子にずっと引け目を感じて生きていたんだな、と。
ヘリカルの本当の親を殺してしまった自分。
その罪をいつまでも忘れないように、ヘリカルを引き取った。
だからこそ、この子が自分に向ける純粋無垢な笑顔が眩しかった。
川*‘‘)「ヘリカルねっ!また皆でご飯食べたいっ!!」
忙しく動き回る自分は、きっとヘリカルに随分と悲しい思いをさせてきたのだろう。
私の仕事に付いてきたがったのも、そんな気持ちに気付いて欲しかったからだろうか。
-
(‘_L’)「……ヘリカル」
名前を呼び、抱き寄せた。
川‘‘)「……なーに? おとーさん」
( ;_L; )「……寂しかったかい?」
寂しくないはずがないだろう。
それでもヘリカルに、そう尋ねてしまったのは、自分のズルさなのだろう。
否定して欲しい、と。
心の奥底で、それを願うズルさだ。
川‘‘)「ヘリカル寂しくなかったよ!」
(‘_L’)「……ヘリカル」
川‘‘)「おとーさん、お仕事の後は、ぜーたい楽しいお話してくれたし! うん、ヘリカル寂しくなかったよ!!」
涙が止め処なく溢れる。
こんな状況になるまで気付かないなんて。
-
私は、ヘリカルを愛していた。
家族として。
愛していたのだ。
( ;_L; )「……愛してるよ、ヘリカル。私の可愛い娘」
先程のズルさを、掻き消すように先に言った。
自分の気持ちを。
川*‘‘)「うん! わたしもおとーさんの事、だーいすきっ!!」
暫くして、戦いも終盤へと移ってきたようだ。
頻繁に聞こえてきたリオレウスの咆哮も、たまにしか聞こえない。
しかし、かなり距離としては近づいていた。
(‘_L’)「………」
この子だけは、なんとしてでも助けたい。
そう祈るばかりだ。
-
川‘‘)「くろかみ♪ なーがい髪をのばしてー♪ ほーそい手足はもやしのよう♪ 背にはふたつの刀がひとつー♪ リオの名を持つ金と銀ー♪」
その時、ヘリカルが歌いだした。楽しそうに。
(‘_L’)「その歌は?」
川*‘‘)「ヘリカルね。 おにーちゃんと約束したの! 帰ってきたらもう一回聞かせてあげるねって!」
えへへー、と笑うヘリカル。 なんの疑いもなく彼らの帰りを信じている。
(‘_L’)「……大丈夫だよ、きっと彼らは帰ってくる。ヘリカルの歌はきっと届くよ」
川*‘‘)「うん!!」
薄暗い洞窟の中、ヘリカルの奏でる拙く、それでも暖かな音色は、その中で反響し重なり合い
外の世界に漏れ出した。
-
狩人たちの戦局は、緩やかに終わりへと近づいていた。しかし決定打に欠ける。
元々はは翼の一撃で怯んだリオレウスに、ギコの一撃を以って終わらせるはずだったのだ。
ドクオの使う双剣は手数が多いが致命傷には至りづらい。 加えて火を司るリオレウスとの相性も最悪だった。
だからこそ、この戦いを終わらせるのはユクモの狩人であるギコだと最初から睨んでいた。
しかしそのギコも後一撃が出ない。
細かな打撃を与えたところで、空の王の心は折れない。
('A`)「ギコ、このままじゃ埒が明かないぞ」
(,,゚Д゚)「わかってるぞゴルァ! だがこうも動かれちゃー、狙えねーぞ」
('A`)「あぁ、分かってる。一度だけチャンスが来る。恐らく、後5合も俺が切れば、奴は一瞬怯むはずだ。チャンスはそこだ」
(,,゚Д゚)「お前、なんでそんな事……あぁ。もういいぞゴルァ!!!!やってやる!!!!!」
('A`)「決めろ、ギコ」
(,,゚Д゚)「任せろ」
この戦況を長引かせる訳にはいかない。二人はあの少女と大切な約束をしたのだから。
-
『くろかみ♪ なーがい髪をのばしてー♪ ほーそい手足はもやしのよう♪ 背にはふたつの刀がひとつー♪ リオの名を持つ金と銀ー♪』
ドクオが斬りかかろうとした時、それは聞こえてきた。
あの暖かな音色。純粋で、なんの悪意にも染まっていない彼女の音。
小さく、密閉された洞窟のなかを反響し、それが拡声器の代わりとなって、確かに二人の元まで届いた。
('A`)「!?」
(,,゚Д゚)「!!」
誰かを願う歌は、誰かを護る力となり
狩人たちに無限の力を与える ヘリカルの想いが歌となり二人の身体に染み込んでいく。
('A`)「……やるぞ」
(,,゚Д゚)「おう」
-
ドクオの身体が、紅い風を纏った。
人が人以上の力を出すときに纏う、紅いオーラ。
【鬼人化】というのは、己の心拍数や血圧、全てを高め脳内のリミットを意図的に外して行う生者必滅の技だ。
ドクオの双剣が舞う。圧倒的な速度、圧倒的な手数。一見、球体の様にドクオの回りに金と銀の壁が出来る。
それはドクオの宣言どおり五合目だった。
リオレウスは、堪らないとばかりに身体を捩じらせた。
ギコに与えられた絶好の好機。二人で作り出した最後のチャンス。
限界まで捻り、そこで押し留める。自分のタイミングを計る。ミキミキと、ギコの身体から嫌な音が聞こえてくる。
自分の身体が壊れていくのを省みない、その最大威力の攻撃。
(#,,゚Д゚)「ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
【抜刀全開溜め斬り】
その一撃は、周辺に聳えるユクモの巨大な木々をも揺らす程の威力。
-
('A`)「……すごいな、これは」
顔の半分が拉げてしまったリオレウス。
(,,゚Д゚)「ハァハァ……」
これこそが大剣の本質。圧倒的威力にして、一撃必滅の技。
-
しかし
-
空の王、リオレウスは倒れなかった。いや、飛竜としての本能が。王としての矜持が、顔の半分を潰され、片翼を折られても倒れることを許さなかったのだ。
もうリオレウスに意識はない。ただ本能のみがリオレウスを動かしていた。
−−−−空へ
もう一度あの青い蒼穹を、自由に飛び回りたい。
('A`)「!?」
(,,゚Д゚)「……おいおい、まじかゴルァ」
リオレウスは飛んだ。折られた翼で。それでも空を飛んだ。
そこが自分の還る場所なのだから。
(,,゚Д゚)「くそがぁ! なんて奴だ!! あんな状態でまだ空に君臨するってのか!?」
余りに神々しいその姿に、ギコは一瞬見惚れるが、それでも自分達がすべきは奴を狩ることだ。
このまま逃げられれば、また一からやり直すことになってしまう。
-
『狩りは、最後まで気を抜いてはいけない。上に立つなら覚えとけ』
一瞬の閃光、余りに眩くギコは我慢できずに目を押さえた。
次いで、地面に衝撃が走る。
三度落ちた空の王。
【対飛竜用 閃光玉】
ドクオが最初に用意した勝利のピース。
フィレンクトの許可を得て、拝借した光虫と素材玉を調合して作った物だ。
地に堕ちたリオレウスに止めを刺そうとドクオが近づく。
('A`)「……!! コイツ、さっきの墜落で……」
リオレウスは既に力尽きていた。
翼を捥がれ、顔を潰されてもなお、王の視線の先には空があった。
蒼い、蒼い空があった。
-
リオレウスの討伐終了後、ドクオとギコの二人はヘリカルとフィレンクトを無事シルミド村へと送り届けた。
道中、モンスターの襲撃もなく、フィレンクトの傷口も開く事なく、至って安穏な道程だった。
二人きりの帰り道、ドクオとギコはゆっくりと、話をしながら帰った。
(,,゚Д゚)「しかし凄いとは聞いていたが、あそこまでとは思わなかったぞゴルァ!」
('A`)「リオレウスとの事か? 大したことはしてないぞ。結局、最後にアイツを倒したのはお前だしな」
少年のようにキラキラと目を輝かせながら尋ねるギコに、ドクオは頬を掻きながら答える。
(,,゚Д゚)「おぉ! ドンドルマにはドクオみてぇな狩人がうじゃうじゃ居るんだろ?」
('A`)「……そんなに多くはないよ。まぁ、俺より狩りが上手い奴は、両手に余るほど居たが」
やはり、ギコも自分の知らないドンドルマに興味がある。
幾人もの凄腕狩人を排出してきたドンドルマは、ギコ自身文献でしか読んだことが無いが、ドクオの実力の一端を垣間見た今、どれほどの物なのかは予想出来る。
(,,゚Д゚)「聞いた話じゃ亜種って奴らも、ゴロゴロいるんだろ?」
('A`)「……まぁ、居たな。簡単に狩れるような相手じゃないが。 それに世界地図のど真ん中にあるドンドルマは、モンスターの行き来が激しくてな。見たことのないモンスターが、突然表れる事も珍しくなかった」
(,,゚Д゚)「……うぉ、地獄みたいな所だな」
('A`)「まぁな。 だが、それだけ狩人というのは人の尊敬を集める。 ユクモの様に権力や派閥争いなんかは無かったな」
ドクオの答えに、ギコは目を見開いた。
(,,゚Д゚)「お前……知ってたのか?」
('A`)「いや、ユクモに来る前に教えられていただけだ。 確か【狩人派】と【騎士派】だったか。 俺達には、そういう経験が無いからな」
(,,゚Д゚)「確かに、ユクモ以外の者に話して楽しいような事じゃないな。 馬鹿馬鹿しい事だ、人を助けたいと思いつつも、プライドの為に一つになれない」
忌々しそうに、ギコは足下に転がっていた石を蹴った。
-
(,,゚Д゚)「前まで【騎士派】の連中もそこまで大きな事はしなかったんだがな。 ロマネスクさんとベーンさんが居なくなって、随分と幅を利かせるようになってきやがった」
('A`)「………」
(,,゚Д゚)「HR6の狩人が居ないギルドに、村人を護ることなんて出来ないってな。 今は、騎士長であるフォックスさんが抑えているから大事になってないが、これから先、フォックスさんが居なくなってしまう事があれば、ただの喧嘩じゃ済まないよーな事態になりかねねぇ」
('A`)「なるほどねぇ」
ドクオが遥々ドンドルマからユクモに招かれた理由。
厳しくギルドで監視していたクルペッコの突然の出現。
フィレンクトに大量に発注された大樽爆弾G。
様々なピースが、組み合わさって一つの答えを示す。 だが、まだ全てのピースが出揃った訳ではなさそうだ。
('A`)「ギコ」
(,,゚Д゚)「なんだ?」
('A`)「見失うなよ。俺達に出来るのは狩ることだけだ。良くも悪くも、な」
(,,゚Д゚)「……おう」
-
―――それに
('A`)「ロマネスクとベーンという偉大な先人を失った今、ユクモを支えるのは、他の誰でもなくお前だ。それを絶対に忘れるな」
(,,゚Д゚)「……おう」
二人の歩く道は、暖かな夕日に照らされ 赤く、輝いていた。
次世代のユクモの大黒柱と、ドンドルマのG。
二人の出会いが、これからこの小さな世界にどれ程の光を生み出すのか。
まだ、誰もそれを知らない。
-
( ^Д^)「私はフォックス騎士長から全権を預かった代理として来ています。 私の発言は【騎士派】全ての発言であると思ってください」
/ ,' 3「………」
化かし合い、騙し合い、この空間で繰り広げられるのは、狩りとは全く無縁の、もっと薄暗く陰湿な物。
/ ,' 3「それで、【騎士派】のボンボンが何の用かいのぉ?」
( ^Д^)「嘘を吐くのも、回りくどいのも、私は好きではないので率直に言いましょう」
嘘つけぇい、と【ギルドマスター】アラマキは聞こえるように言ったが
当の本人は、気にもしないように咳を一つして続けた。
( ^Д^)「率直に言いましょう。あの積乱雲、アレはなんですか」
/ ,' 3「はて、なんの事じゃあ?」
( ^Д^)「誤魔化さないで頂きたい。あの積乱雲、あれはユクモの守り神の出現以外の何物でもないでしょう」
少し苛ついた様子で、口元に常に厭らしい笑みを浮かべた男は言った。
/ ,' 3「なんじゃ、分かっとるじゃないかー」
( ^Д^)「そんな揚げ足の取り合いをしに、ここまで来た訳ではないんですがね」
/ ,' 3「なら、さっさと要求を言わんか小僧」
ここでスカルチノフの雰囲気が変わる。
確かな怒りを、男に向けてぶつける。
しかし男の方も、全く動じない。竜人の怒気に当てられても、だ。
-
( ^Д^)「要求は一つです。【雷狼竜】ジンオウガは、我々【騎士派】が狩ります」
/ ,' 3「はてぇ、今おかしな言葉が聞こえたのぉ。騎士様の仕事は、確か姫さんを護る事ではなかったかのぉ」
( ^Д^)「………」
/ ,' 3「それが、たかだか一匹のモンスターを狩りたい、などと。一体どういう風の吹き回しじゃろぉなぁー」
騎士派が狩りに出る事は、ない。
騎士は、ただ姫の傍らで彼女を護る事だけが、その役割なのだから。
( ^Д^)「いえ、ロマネスクやベーンが健在だった時代ならばいざ知らず。 今、このギルドにはHR6が、ただの一人もいない。そんな貧弱な狩人の皆さんに、ジンオウガは荷の重い話でしょう」
/ ,' 3「ふぉふぉ、チミたちならあの化け物を狩れるとでも言うのかのぉ。こりゃけっさくじゃ」
( ^Д^)「少なくとも、貴方達よりは可能性があると思いますよ。HR6のいないギルドなんて、ただの野蛮な酒飲みの集まりですからね」
/ ,' 3「ほぉ、しかし今はドンドルマから、かのG級を預かっているんじゃが?」
( ^Д^)「……彼はユクモの狩人ではないでしょう」
/ ,' 3「まぁ、そうじゃの」
( ^Д^)「というわけで、アイツは私達が狩ります。あなた方は手出し無用でお願いします」
これはギルドマスターであるスカルチノフの責任だ。
今まで無理やりにでもHR5の狩人を昇格させてこなかった。だからこそ【騎士派】につけいられる隙を作ってしまった。
-
/ ,' 3「まぁ、待てよい」
( ^Д^)「まだ何か?」
/ ,' 3「言い忘れておったわい、ちょっと今から息子の昇級を祝って宴があるんじゃ。小僧も参加していかんか?」
ありありと、男の顔に怒りが表れる。 この竜人は、いつも突然訳の分からないことを言う。
正直言って、男はスカルチノフが苦手だった。
敬愛するフォックス騎士団長の命令でなければ、絶対に断っていただろう。
昇級というのは、以前に聞いていたベーンの息子であるブーンとかいった狩人の祝いか。
( ^Д^)「すいませんが、我々も忙しいのでね。それなら今日のところは挨拶だけして帰らせていただきます」
/ ,' 3「ふぉふぉ。そうか、挨拶してくれるか。では、紹介しようかの」
は? という疑問符が男の頭の中に湧いてきた。ただの宴ではないのか。
『おーい、騎士派の方に挨拶しろーい』
『わかったぞゴルァ!!!!』
そして二人の男が入ってくる。
一人はよく見知った顔、均整の取れた筋肉に、すらっと伸びた長身。妬ましいほどに整った顔。
もう一人は独特、陰鬱そうで、ひょろっとした男。
(,,゚Д゚)「久しぶりだな、プギャー」
('A`)「……」
-
/ ,' 3「紹介しようかのぉ、先の検定で晴れて“G”となったギコ=ストッドウッドじゃ」
プギャーの頭は混乱に陥る。今、竜人はなんと言った。Gだと。
HR6にもなっていなかったギコが伝説に唄われるG級になっただと。
(#^Д^)「なっ、何言ってやがる!!! そんな飛び級、認められるわけがないだろーが!!!!!!」
/ ,' 3「ふぉふぉ、これは正当な昇格じゃよ。本来、HR6の狩人に認められて初めて昇級できるものじゃが、今回はこの男。ドクオにそれを依頼した」
('A`)「あぁ、俺は許可したぞ。ギコには十分な素養もあり、向上心がある。いつまでも既存のHRに縛り付けていては、成長を損ねるからな」
そうか、この男が噂に聞いていたG級。ドクオ=ウェイツーか。
/ ,' 3「ふぉふぉ、それを儂が了承したのじゃ。文句あるまいに」
つくづく憎憎しいジジイだ。
(#^Д^)「だが、HR6になるにはフォックス卿の了承も必要になるはずだ!!!!!」
/ ,' 3「ふぉふぉふぉ、なにを寝ぼけたことを言うておるんじゃ。もう貰ったわい」
(#^Д^)「なに!?」
スカルチノフは、口角を吊り上げ嘲笑うかの如く言った。
/ ,' 3「祝ってくれるんじゃろ? “フォックスから全権を受けた”チミがのぉ」
(;^Д^)「!?」
-
/ ,' 3「竜人を舐めるなよ、小僧」
-
(,,゚Д゚)「じじい、本当によかったのか?」
/ ,' 3「ふぉふぉ、問題あるまい。ドンドルマのGからお墨付きまでもらっとるんじゃからのぉー」
ギコ自身、思うところはあった。事情が事情なだけにHR6には早急になりたいと思っていたが、まさか“G”になるとは思ってもみなかったのだ。
/ ,' 3「形式なんぞない、前例がないからのぉ。ドクオ、“誓いの儀”は任せたぞい」
('A`)「あぁ、俺の時も適当だったからな。さてギコ、覚悟は良いな」
(,,゚Д゚)「おう」
-
−−−−汝 人を護る盾として その身尽きるまで 命を燃やすと誓うか
『誓うぞゴルァ』
−−−−汝 和を以って 人を愛すると誓うか
『誓うぞゴルァ』
−−−−汝 この誓いも以って 自分を愛すると誓うか
『・・・・・・誓うぞゴルァ』
('A`)「その誓い、確かに聞き届けた。 今日、今より 我ドンドルマの狩人ドクオ=ウェイツーの名に於いてギコ=ストッドウッドをGへと謹んで推薦する」
/ ,' 3「了承したぞい。精進せい“Stubborn”ギコ=ストッドウッド」
('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです 4話 END
To be Continue……
-
超乙!!
面白かった!
-
よかったよ
ありがとう
-
今日の投下はこれで終了となります。
拙い文章ですが楽しんでいただければ幸いです。
質問がありましたら、いつでもこのスレッドにて尋ねてください。
これから少し、この話のこれからの展望と自分の感想について書いていこうと思います。長くはなりませんが読み飛ばしていただいて結構です。
-
乙!
ドクオの台詞がいちいち格好良くて困る
-
乙
熱いな
-
ではでは、少し自分が感じていることなどについて書いていこうと思います。
まず、この話が何話で終わるかについてです。
自分としては、今までの話自体、導入部に過ぎないという考えを持っています。
というのも、元々この話自体がジンオウガ編までで前編という構成になっているからです。
つまりまだ折り返しにも辿り着いていないわけです。物凄い不安ですが、モチベは皆さんがくれたレス等を見て維持していくつもりです。
もう少しお付き合いください。
-
どのモンスターまで狩る予定?
龍属性の解釈を自分なりに教えて
-
次にドクオが強すぎる件について。
これは本当に悩んだのです。MHFと2ndGの舞台となるドンドルマ。3rdの舞台となるユクモ村。
この二つに登場するモンスター達には誤魔化し切れない力の差があります。
それを表現するためにも、ドクオには強すぎるほどに強くなってもらいました。
実際問題MHFの武器と防具を持って3rdに乗り込めば、三日で世界の半分を手に入れられるレベルです。
-
>>422 どのモンスターまで狩るかは明かさないでおきます。
ただ、ユクモ村には存在するはずのないモンスターが登場する予定はあります。 これは、この話を書き始めた当初から考えていた事でした。
【龍属性武器】についてですが、自分としては『伝説、又は架空の武器』として扱おうと思います。
例えば、虫素材で作れる双剣で双曲剣ロワーガという武器があります。
何故虫素材から龍属性?という疑問に、自分は答える事が出来ません。
だからこそ【存在するか定かではない】という形でぼかそうと思います。
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だからこそ、まだまだ未熟なブーンやギコに焦点を当てた話をこれからも書いていこうと考えています。
この話自体、全てドクオ視点で進めていけばなんとも淡白な話になっていたと思います。
色んなPSを持つ人がいてこそ楽しいモンハンですから、その辺りはご了承ください。
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それでは、今日はこの辺りで。ジンオウガ編が終わった時にはもう少し話せることも増えていると思います。
独自解釈満点の、一見「これってモンハン?」と思われるようなお話ですが、お付き合い下されば幸いです。
また空白の期間、大変申し訳なく思ってました。
それでも今日、この話を読んでくれた方々。これからこの話を読んでくれる方々には最大の謝辞を遅らせていただきます。
ありがとうございました。
では、また逢いましょう。予告はしませんが書き溜め状況の報告にはまめに参ります。
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>>1乙 これはポニーテール云々
リオレウスかわいそす(´・ω・`)
もう狩れなくなっちゃうじゃないか。ただし銀レウスてめーはだめだ
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モンハンやった事ない俺でも楽しんで読める
完結まで読みたいから焦らずマイペースでやってくれい
乙でした!
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