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coin―裏と表の世界―
8
:
辰魅
:2012/12/25(火) 15:12:13 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 六〟
深澤は、走ってきた女性に連れられてどちらかというと大きめの部屋に連れ込まれた。白で統一されたその部屋にはたくさんの机と椅子がずらりと並んでいる。
部屋の外の壁には『男性絞殺事件捜査本部』と黒い筆でキレイに書かれた紙が貼ってあった。
「――……!…来たかぁ、深澤ぁ〜。早くこっち来い…」
深澤が部屋に入ると、部屋の壁にもたれかかっている二〇代前半の男が手招きで深澤を呼びつけた。
深澤はその男の元まで早足で駆け寄り、「事件か…?」と険しい顔つきで聞いた。
男――木下 慎一(キノシタ シンイチ)は「あぁ…」と軽く返す。
警察学校から馴染みの二人は、同じ捜査一課の同僚である。まだ警察になって何年と経っているわけでもないが、二人とも推理力にかけたものはなく、小さなものとはいえ数多くの事件を解決した仲である。
「害者は………?」
「今教えられるだろうよ」
木下が言うと、深澤は「………渋谷(シブヤ)は…?」と顔をキョロキョロとさせながら二度目の問を呟く。
渋谷という者も深澤たちと同じ警察学校を卒業した中で、単独行動をするお呼ばれものだが推理力的には只者ではない。
「尚哉(ナオヤ)ならもう単独行動だ。先に現場行きやがった…」
木下が呆れた物言いで言うと、深澤は深くため息を零した。
「!……そういや……。お前万引き犯の事情聴取してんじゃなかったっけ?さっき太ったおっさんに連れられて来た野郎…」
人差し指を立てて言う。あの野郎とは楓眞のことだろう。「あぁ……。彼なから帰ったよ?お兄さんとお姉さん置いて…」
「なに、また、お前刑事の勘ってヤツで返したの?キッチリ調べろよなぁ〜…。……っま、その勘のお蔭で今まで乗り切ってきたんだけど……」
二人は苦笑したが、苦笑する場所が悪く周りのものから白い目で数分間睨まれた。
9
:
辰魅
:2012/12/25(火) 15:48:31 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 七〟
渋谷は黒い短髪を日光に反射させながら、野次馬の来ているビルに脚を運んだ。
そこは今回の事件「男性絞殺事件」の現場となったビルだ。
朝。ビルの前をランニングしていた女性が、その駐車場で倒れている男を発見。声をかけても返事をしないことから警察と救急車に連絡。しかしその時はもう息をしていなかったらしい――
「――…チワァ〜」
渋谷は駐車場の柱に掛けられた黄色のテープをくぐり抜けて中に入る。
「お疲れ様です…」
「ドツカれさん。…害者は?」
「ハイ。…害者は北見 幸樹(キタミ コウキ)24歳。朝、ここをランニングしていた女性に倒れているところを――」
「あぁぁぁあ〜…。そう言うのイイから、そう言うの……。凶器は?」
渋谷は整った顔立ちを一切変えず、征服を着た警察に淡々と話しかける。そうこう喋っている間に、被害者、北見 幸樹が倒れていたと思われる場所に到着した。足元には白いテープで形取られた人の形がある。
「…あの、凶器は縄のような紐じょうの物と推定されています…」
「推定ってことは見つかってない訳ね…。っで、害者誰?」
「………イヤ、あのですから。北見…」
「そうじゃなくて、そうじゃなくて…。何やってる人ってこと……。解かる?つか解かってるの?」
制服を着た警察は少し恐縮しながら頭を下げる。
「……えぇ〜。確か…」
「北見 幸樹24歳。コンビニ店でバイト中。高卒後すぐに製品工場に就職したが、問題を起こして解雇……」
何処からともなく低い男の声が聞こえてきて、渋谷は「フゥ〜ン…」と顎に手を当てた。そして、地面に向けられていた顔を正面に向け「今の誰?」と言った。
10
:
辰魅
:2012/12/25(火) 17:34:48 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 八〟
「――あぁ!?…だから君ぃ!!」
警察官は唐突に叫んだ。その矛先は地面にしゃがみこんで音楽を聴いている青年。
「何度言ったら解かるんだっ!?現場は高校生の遊び場じゃないんだっ!!早く出ていきなさい!!!」
青年が立ち上がると、警察官は怒鳴り散らした。なんだこの餓鬼。渋谷が呆れ目で青年を見ると、青年は言葉を放っていない渋谷に向かって
「……どうも。…盟誓高等学園二年の…。武神 楓眞です……」
と言った。青年――楓眞は虚ろな目を下に向けたまま礼儀正しく渋谷に挨拶を交わす。
「あぁ。…コレはどうも、ご丁寧に……じゃ、ねぇよ!!!?お前誰ぇ!!何者!何で一般市民がこんな現場にいるのぉぉ!!?」
渋谷は楓眞から距離を取り、ビシィィィと人差し指を楓眞の顔に向ける。
「つか、なにぃ〜…。一般市民のクセしてその情報力。何ナノ?陰陽術でも使って世界見てるの?地球の全て見てるの?個人情報ダダ漏れなの?」
「情報はツイッターです。陰陽師は占い師です。地球の全て見えるなら、次号の漫画当ててます。個人情報漏洩は犯罪です」
楓眞がポーカヘェースを保たせる顔つきで話すと、渋谷は「あのなぁ〜!?」と怒号を発した。
「この餓鬼ほっぽり出せェッ!!ついでに北見のツイッターを洗えぇぇ!!!」
怒りに任せて渋谷が叫ぶと、数名の警察官が「ハイッ!!」と言って楓眞に近づいた。
「……でも、ここ最近送信ありませんよ?……一番最近で、三週間前です。洗っても得られる朗報少ないと思いますよ………?」
楓眞が虚ろな目を鈍く輝かせてそういうと、渋谷の堪忍袋の尾が切れた。
「いい加減にしろよ、糞餓鬼ィィ!!?ここは高校生のたまり場じゃねぇんだよ!つかっ!高校生がこんな真昼間からフラついてんじゃねぇ!!拘束だ拘束ッ!!」
「………最近は横暴な警察が多いですね……。……だから冤罪が増えるんですよ……」
「なっ!!?テメッ!…警察侮辱剤で逮捕すん」
「!………っあ、琢磨(タクマ)くん……」
「聞けよっ!!!?」
楓眞にその気はなかったのであろう、口論は楓眞の携帯にかかってきた一本の電話によって終了した。
楓眞は携帯で話しながら人混みの方に歩いていく。最終的に楓眞の後ろ姿が見えなくなると、渋谷の「あの糞餓鬼絶対逮捕するっ!絶対してやるっ!!死んでもしてやるっ!!!殺されてもしてやるっ!!!!」という怒号だけがその場に響いた。
11
:
辰魅
:2012/12/25(火) 19:52:51 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 九〟
深澤、木下、渋谷両3名は署で会議を終え(渋谷はサボったが…)、今回の「男性絞殺事件」の被害者、北見 幸樹の身辺調査をしていた。
「――っで、その餓鬼がスゲェウザい奴で…何か、こう…死んだ魚の目をしてたっていうか、虚ろっていうか、眠たそうっていうか……兎にも角にもウザい輩が現場にいてよぉ〜」
北見に怨みや殺す理由である動機を持っている者を調べていたさなか、渋谷はその話ばかりしていた。聞いていた木下と深澤はそれなりに聞き流していたのだが、こう何度も言われると、ハッキリ言って……ウザい…
この話は殺害現場から北見の同居中の彼女、安井 美咲(ヤスイ ミサ)の元に行くところから始まった。「死んだ魚のような目…?……虚ろぉ…?…眠たそう……?」その間ずっと、深澤はその言葉に引っかかっていた。どこかで見たことがあるのだろうが思い出せない。
そして、今。北見から金を借りて一度モメた事のある、津川 圭史(ツガワ ヨシフミ)が一人暮らししているマンションに着くまでその長話は続いた。
『ピンポーンッ』5階建てのマンションの2階。そこのインターフォンを木下が押すと、中から「ハイ、ハーイ……。ちょっと待って下さぁ〜い…」男の低い声が聞こえてきた。そして「ガチャ」っという有り来りな音を立ててドアが外側に開かれた。
「はい?」
ドアと壁の隙間からひょこっと色黒の男が首を出す。
男――津川 圭史は、外にいる大の男3人を疑視する。
「津川 圭史さんですね?少々お聞きしたいお話がありまして…。お時間大丈夫ですか?―――…」
そこからは、北見と口論をしたのは本当なのか、死亡推定時刻と考えられている午後8時から9時までの間どこで何をしていたのか。その他諸々グダグダと……
津川の話では、8時から9時の間は喫茶店で彼女と話していたらしい。確かめたいなら彼女に聞くとイイと最後につ加えられた。最初からそういうつもりだ。だからこそ一つの疑問が湧いた。そんな早くから仕事もしないで、どうして喫茶店に行っていたのか…。
20分近く話したあと、深澤と木下が愛想笑いを浮かべて「ありがとうございました」と言って津川との話し合いは終了。
マンションから外に出て、近くの歩道を歩く大の男3人。行き先は只一つ、津川が今日の朝、彼女と共にいたという喫茶店「MITUBA」である。
12
:
辰魅
:2012/12/26(水) 14:03:10 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 十〟
津川の住んでいるマンションから喫茶店までは徒歩十分程のところになった。
「カラン、カランッ」喫茶店について、ドアを開けると、ドアに付けられていたベルが鳴る。
店内にそれほどの客はおらず、目に付く客は店の奥に座る高校生くらいの青年二名だけだった。三人はそれに目もくれず、「いらっしゃいませ」と愛想笑いを浮かべて言った定員に近付き津川のことを聞く。
「――…今日の8時頃…ですか?」
女性定員は頭をひねらせる。今日のこととは言え、時間は大分経っている。大きな行動でもお越していない限り覚えていないだろう。
女性定員は深澤から差し出された、津川の写真を渋い顔で見つめる。だが、一向に返事がない。
「この人来てたかなぁ〜…?……すいません、よく覚えてません…」
小さく頭を下げる女性定員を、深澤は「そうですか」と言いながら見つめる。
「…っあ!……あのちょっと待ってて下さいっ!」
何かを思い出した様子で女性定員は店の奥に走っていく。そしてすぐに定員は背の高い黒髪の男性を連れてきた。
「桜田(サクラダ)さん……。この人今日見ました…?」
女性定員の連れてきた男は驚きながらも、女性から差し出された津川の写真を見る。
「……!あっ…あぁ!!覚えてる、覚えてる!!」
「本当ですかっ?!」
男性定員の言い分に木下は噛み付くように聞き返した。「……えぇ…」
定員の言い分には一緒に来た女性に一回怒鳴ったらしく、それが迷惑でよく覚えていたらしい。
「一体俺の何が悪いんだ!……って、物凄い剣幕で怒鳴ってたのでよく覚えてます…。それに、電話か何かでちょくちょく店から出てたので、食い逃げじゃないのかとも思ったほどですから……」
ふむふむと頷く3人。アリバイは確かだ。
「…ご協力ありがとうがざいました……。また何かあったらお伺いすることがあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします…」
深澤がそう言った時、店の1時を知らせるチャイムが鳴った。壁に飾られている鳩時計から鳩が出てくるところも、定員を含める5人はきちんと見た。
「………ま…まぁ、何だぁ……。飯でも食っていくか…?」
苦笑いを浮かべながら木下が言うと、定員たちも苦笑して「お好きなお席へどうぞ」と聞き込み刑事たちを歓迎した。
13
:
辰魅
:2012/12/26(水) 16:01:58 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 十一〟
三人はレジに一番近い席に腰掛ける。思い思いにメニューを頼み、それを待つ。
「――…しかし……。あの北見っていう男…。随分とイイ女と付き合ってんだなぁ〜…」
木下はオットリとした顔をしている女性が写った写真を見る。茶色の髪は染めた様な色具合だ。
女性――北見の彼女、安井 美咲。写真を見てもわかるよう、彼女はオットリとした性格だ。つい先ほど、北見が殺されたと報告すると足に力が入らなくなり、崩れるように倒れるほどだった。
「……イイ女ほど腹が黒いって言うだろうが…。意外と犯人だったりするかもだぜ?」
一人一人に配られた水をすすって渋谷は呟いた。「そうかもなぁ〜…」木下は笑って言い返す。
「…そういえば渋谷。……さっきまで話してた、死んだ魚のような目だの虚ろな目だの――……その子一体どうしたんだ?」
水を一気に半分ほど飲み干した深澤は一人だけ自分たちの前の席に座る渋谷を見る。
「あぁ……。なんかよぉ〜…。タクヤ君だか、タクミ君だかから電話もらってどっか言った。っま、邪魔だったし丁度良かったけどぉ〜……」
愛想なく言う渋谷の顔はまた怒りに溺れている。タクヤにタクミ…。どれも似た名前だな…。
「………タクヤでもタクミでもなく、琢磨(タクマ)君ですよ……」
「おう、ソレだソレッ!!タクマ、タクマ!!そうだ、そうだ。サンキュー!思い出せたわッ!!………ん?」
顔に浮かべられていた笑が一瞬にして消える。……ていうか今誰が言ったの…?
渋谷は声のした後ろの方に顔を方向転換をする。すると、そこには店の奥の席に座っていたと思われる高校生あたりの青年――楓眞が腰を曲げてじっと渋谷を見ていた。
……………………――
『――…ギャァァァァァァァァッ!!!!!?』
14
:
辰魅
:2012/12/26(水) 23:32:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 十二〟
「――…えぇ〜……。改めまして、盟誓高等学園二年、武神 楓眞です……。そして、こちらが…」
「ろうきゅうしぇいの、ろろむら たくまれす……。よろしくれす…。(同級生の野々村 琢磨です。宜しくです…)」
「自己紹介の時は口に物を入れるなっ!!礼儀悪すぎるだろ!それでも高校生か!!?礼儀を知れ!!」
怒鳴ったり叫んだり怒鳴ったり、忙しい奴だ…。木下は内心そう思いながらため息をこぼした。
「悪いっすね。礼儀教えられるの遅すぎたんで、高校でこのザマでさぁ〜…」
琢磨は礼儀も考えず言い放つ。相手が刑事だと分かっているのだろうか。深澤がそう思うと楓眞がそんな琢磨を制すように
「琢磨くん………。……相手は国家のご役人、警察ですよ…。喧嘩は学校で先輩型に吹っ掛けて下さい……」
と、高校生とも思えない口調で琢磨に言った。それを聞くなり琢磨は黙り込んで、不貞腐れたような顔になる。
「お前本当に高校生か?まさかどこぞのボンボンとでも言うんじゃ…」
「心配無用です。僕はそれほど裕福な家庭に生まれてはいません。………まぁ…学校ではボンボン扱いされてますけどね……」
椅子に座って腕組をする楓眞を見ると、どうしても自分が負け組に見える渋谷。頭をくしゃりとかくと怒りと焦りのせいか、貧乏ゆすりをしたくなる。
「ハハハッ。…高校生にも頭が上がらないんじゃこれから思いやられるぞぉ〜…」
深澤は話を変える為ワザと、渋谷の怒りを買うようなことを言い放つ。それに乗るかのように渋谷は「はぁぁ?!なんでこいつより少なからず、五歳以上は年上の俺が!!こいつに尻しかれなきゃいかねぇんだよ!?巫山戯んなよなッ!」と机を叩きながら席から立ち上がった。
「食事中はその場を立つなっ!!!!」
渋谷の怒号と重なって、楓眞の怒号もその場に響く。刑事三人はそれに驚き、目を見張る。
「……って、僕のお姉ちゃんが言ってました…」
ポーカヘェースの面向きで楓眞はそれだけ言うと目の前に置かれた水を軽く飲み干した。渋谷は眼を見張りながらその場に軽くすとんと座り直す。
(…なんだこの意味不明の糞餓鬼…)
それが、渋谷の楓眞に対する第一印象だった。
15
:
雪乃
:2013/01/17(木) 19:58:05 HOST:p23228-ipngn401aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
とてもおもしろいですね☆^^
あの、聞きたい事が2つあるのですが…
私、ここの掲示板には、小説書くのに興味があって、なんとなく、
「小説掲示板」と、検索して、来たんです☆^^
質問コーーーナーーー☆☆☆
①この掲示板は、こんなふうに普通に話して良いんですか?
必ず小説を書かないと…だめんなんですか?
②どうやったら、自分も小説かけますか?
私、バカなんで、わかんないんです><。。。
できたら…おしえてくださいっ!!!
辰魅さん、このお話、本当におもしろいですね^^
②
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