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赤瞳の不良

9竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2011/11/20(日) 15:52:32 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
こちらでは初のコメントですね。

不良……。
何だか今までのライナーさんの作品からは想像が出来ないようなジャンルですね。
にしても、青い髪の少女っていいですよね。
僕は結構好きですy((
白髪も好きですが、今はまだ二人ともよく分からない状況ですね。
続きも楽しみにしてます。頑張ってくださいねw

10ライナー:2011/11/20(日) 16:34:34 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!

そうですね、不良を主人公に置くのは初めてかも知れませんね^^;
自分でもどんな作品になるのか分からなかったりします、今後が不安だw
青い髪、僕も好きです。キャラの絵は小説を書く度に出てくるキャラを描いているのですが、自分でも意外と良いのが描けたりなんかしちゃったりしt((殴
勿論1作目のキャラも描いています。
麗華ちゃんがやb((殴
こんな作者ですが、頑張らせていただきますので、応援宜しくお願いします!

11ライナー:2011/11/22(火) 19:21:12 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
「どうした」
 女の言葉で、2人は意識が半分飛んでいたことに気付く。
 そして2人は同時に唾を呑む。
 この女は、どう考えても普通の人間ではないことが確かだ。それに少女を追っているとすると、少女は何かの事件の重要参考人と言うことも有り得る。
「(どうする……)」
 無心で、紅蓮の頭にその言葉が響いた。
 何にせよ、ここで少女を女に渡してしまえば、面倒臭いことは逃れることは出来る。しかし、もし、少女が無実の罪でただ追われていたとするとどうだろう。気を失っている状態にも関わらず、女は鋭い目つきになっている。と言うことは、少女が寝ていても何か危険性があると言うことだろうか。
「(どうする、俺……!!)」
 再び、無意識のうちにその言葉が響く。
 追われている……いや、もしかしたら少女は危険人物で、今すぐ消さなければいけないのか。それが女の鋭い目つきの理由だろう。
 しかし、少女がどんな位置に立たされていても、答えは1つだった。

 助けるしかない。

 騎士道精神、侍魂。色々な言葉があるが、少女を見捨てるなどと言うことは男とも言えない。それが紅蓮のポリシーのようなものだった。
 それに少女が仮に悪い立場に立とうと、良いモンの立場に立とうと、それは関係なかった。何故って?
 何故ならそれは、紅蓮が極道に関係する一端の不良だったからだ。
「どうした、そいつをサッサと渡してくれぬか」
 女の根強い声量が耳に届く。
 紅蓮は女の返事の代りに、懐に手を伸ばした。
「悪いな、コイツとはものの1分しか、それも話せねぇ状態で出会ったが……」
 学ランの内ポケットに隠されていたのは……
「お前、怪しすぎるから渡せねぇ!」
 一丁の自動拳銃だった。
 瞬間、女の目が一層鋭さを増して、紅蓮の赤い瞳を睨み付ける。
 紅蓮はそんな女をものともせず、スライドを引いて素早く銃口を向ける。それに習って、滝はポケットに手を突っ込みメリケンサックを取り付けた。
「アニキ、久々ッスね。でもいいんスか? 絶対にただモンじゃないっスよ?」
「バカかお前は、奴は全体的に白い。だから白テープと同じ意味を持つ、つまり『喧嘩売ります』だ! ちなみに俺の方は赤い目が赤テープの役割をこなしている」
「その考え方、古いっスよ……」
 苦笑いを浮かべながら、滝はボクシングのような構えになる。その横で、いーんだよと言いながらトリガーに指を添える紅蓮の姿があった。
「関係のない人間を巻き込むのは、いささか気が引けるが仕方がない。主らには死んで貰おう」
 言葉が終わると同時に、女の汚れのない手からは不格好な針が放たれる。
 その針は真っ直ぐに紅蓮の方に向かい、銃声と共にその勢いを失った。そして、紅蓮と滝は目を疑いゴシゴシと擦る。
 針は一枚の葉だった。
 葉は、虫に食われたように丸い穴を開けて、ヒラヒラとアスファルトに降りてゆく。
「……やっぱただモンじゃねぇ」
 額に大粒の汗を浮かべて、紅蓮は無理矢理笑みを作った。
「滝、下がってろ」
 苦汁の声が滝の耳に伝わる。

12ライナー:2011/11/26(土) 17:44:01 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「これは俺の勘だが、接近戦に縺れたらやばそうな感じがする」
 勘と言っても、あまり根本的ではない紅蓮の意見だったが、滝の足を2、3歩下がらせる。
 極道の世界では、上の人間の命令は絶対服従だった。

 阿曇組若頭、阿曇紅蓮―――
 その右腕である滝は、生まれた時から紅蓮を支えてきた。
「なー、滝ー。俺のとーさんっていつ帰ってくんの?」
 阿曇紅蓮、5歳。生まれた時、彼は母を失い、頭である父、阿曇 天斗(あずみ あまと)は旅に出ると言って、組を去っていた。
「もうすぐ……じゃ、ないっスかね?」
 幼い紅蓮が、乱暴な言葉を使う事に、滝 次五朗(たき じごろう)は少々悲しみを覚えていた。
 このような、赤い瞳という特性を受けついだ子供が、極道という中で失われるのではないかと、不安だった。
 自分よりも美しい存在は傷つけたくない、汚してはならないと考えていた。
 11年前、滝は17歳だった。
 天斗から救われ、組に入ったのを滝は良く覚えている。しかし、何故入ったのか、何故助けられたのかは未だに思い出せずにいた。
「とーさんって、どんな人だったんだ?」
「えーと、強くて、口べたで、とにかく男らしい人だったっスよ」
「んじゃ、俺はとーさんみたいに、強くて、口べたで、男らしい人間になってやる!」
 そう言う紅蓮の瞳は、微かに日の光を帯びて、真っ赤に輝いていた。
「いや、口べたはいいんじゃないスか……?」

 とにかく、滝は紅蓮の命令に絶対服従してきた。それはこれからもそうだし、紅蓮は無理な命令は今までしなかった。滝が今まで会ってきた中で、一番部下思いな上司だった。
 だから、どんな状況下でも、紅蓮の言うことに反論はしなかった。
 ただ、ギリギリまで待って―――

 その頃、紅蓮と防寒女は葉と銃弾のぶつけ合いをしていた。
 葉と銃弾だというのに、金属音が辺りに響く。
「クソッ! どうなってやがる、コイツの攻撃は!」
 無限と言うに等しいくらい、女の懐からは何枚もの葉が、手裏剣のように打ち出される。
「貴様に言ってくれるほど、そう易々とした技ではないわっ!」
 言葉と同時に、また、葉の先端が紅蓮を襲った。
 このままでは銃弾が足りなくなる。そう感じた紅蓮は急いで横に跳ぶ。
 紅蓮が葉を横跳びして躱すと、着地と同時に頬から血が溢れる。葉の側面は刃のように鋭かったのだ。
「チクショウ!」
 すぐさま体勢を立て直し、紅蓮は女に向かって銃声を響かせる。
 一瞬と言える銃弾の速さに、女は白いマントで身を防ぐ。たった一切れの布一枚で。
 銃弾がマントに当たると、これもまた金属音が響き渡る。一体、相手はどんな方法で、あのような芸当とも言える事をしているのだろうか。
「(弾切れか……)」
 スライドを引きながら、銃弾がもう残っていない事を察する。
「(あんまし、これは使いたか無いんだが……!)」
 紅蓮は銃のリリースボタンを押して、マガジンを取り出す。そして、それを懐へと仕舞うと、先程とは違う鉄骨の山に身を隠す。
「仕入れが難しい弾なら、一発で決めねぇとな!」
 紅蓮は、懐から新たなマガジンを取り出し、銃に填め込む。
 その間にも、女は鋭い葉を放っているようで、鉄骨の影から、緑の葉がまるで地から出たモグラのように、3つ4つ飛び出してくる。
 飛び出す葉に焦りながら、鉄骨の影で銃を構え、歩調を早めた。
「これでも、食らいやがれっ!」
 鉄骨の影から、銃口を女に向けた状態で飛び出した。
 呆気に取られた女を余所に、いらない力まで振り絞って、紅蓮はトリガーを引いた。
 大砲でも撃ち放つように、大きな銃声が響く。
 女は同じようにマントで防いだが、今度はそうではなかった。白いマントに銃弾が触れると、勢いよく爆発が起こったのだ。
 マントの外で炎が舞い上がり、黒い煙を纏いながら、女は鉄骨の山へと飛ばされて行く。
「逃げるぞ、滝!!」
 紅蓮の雷声(かみなりごえ)を聞き取って、滝は急いでバイクのエンジンを掛ける。
 バイクの荷台に、布団でも干すように掛けられた少女を紅蓮は担いで、滝の後ろへとバイクに跨った。
 鉄骨で蠢(うごめ)く女を確認しながら、バイクは工事現場をうるさく走り抜けていった。

13ライナー:2011/12/03(土) 16:57:23 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net

#2 家と少女

 鉄骨を手で退かしながら、防寒女はゆっくりと起き上がる。
「撒かれたか……」

 大通り。紅蓮達は、バイクの走行音を鳴らして、レースゲームのように軽車両を追い越して行く。
「クゥ〜! マッポに通報なんてされてないだろうな……!」
 紅蓮は滝の後ろに座り、寒色少女を担いでいた。
 つまり、1台のバイクに3人乗り。今も通報される可能性はあり得るのだ。さらに言うと、車を追い越していることで、違反になり、さらにスピード違反も犯している。3段活用の違反だった。
「通報されてたら、即ムショ行きっスね」
 滝は暢気な調子で、紅蓮に言う。
 人から見られれば、即変な人達扱いされるというのに、良く平気でいられるものだ。紅蓮はそう思う。
 暫く街灯の当たる大通りを走り抜け、少し狭い住宅街へと入っていった。
 ある場所で、滝はバイクを留める。
「着いたっスよ」
 滝の声で紅蓮はヘルメットを外し、少女を担いだままバイクから降りた。
 バイクを留めた先は、大きい日本式の屋敷で、ここが紅蓮の家、または阿曇組の本拠地と言った。
 紅蓮が先頭になって屋敷の門をくぐる。

「お疲れ様ですっ! 阿曇の若頭!」

 帰宅早々、柄の悪い男の声が紅蓮の耳に差し掛かる。
 紅蓮は、あーハイハイ、とぞんざいに返す。家の入り口までの道程に、90°の角度で頭を下げる男達の間をスタスタと通り過ぎ、家に入って行った。
 その姿を追い掛けるが如く、紅蓮に持たされた少女を担いで、滝も家の中へと足を踏み入れた。
「若〜、おかえりなさ〜い」
 ボタンの花の柄をした着物を纏った女が、紅蓮にニッコリと声を掛ける。
 彼女は樒(しきみ)と言う名前で、まあ、言ってみればメイドのような存在だ。ちなみに、苗字しか明かさないのは阿曇組の仕来りのようなものだった。
「おう、樒。滝の持ってるヤツ、悪いところないか調べてやってくんないか?」
 紅蓮が親指を立てて、滝の方を差す。
 樒は元女医で、この屋敷では怪我したときに頼れる人物だった。言うなれば、学校の保健の先生当たりだろうか。
「あらあら、こんな遅くに帰ってきたと思ったら、女の子まで連れてきて、もしかして……」
「テメェは何を考えてんだ! 言っておくが、コイツは空から落ちてきたんだ!」
 紅蓮は樒の言葉を防ぐように言った。
「空?」
 信じられない言葉に、樒は疑問符を浮かべている。
 それもそうだろう。樒は事情を知らないし、あからさまにファンタジー一杯の嘘のような出来事なのだから。
「ハハァ〜ン、そう言うこと。分かりましたよ〜、アタイにお任せ下さいな」
 案外素直に受け取ったことに、紅蓮はひどく驚いた。どうせ、紅蓮が誤魔化しているとでも思っているのだろう。
 何となく嫌な顔をしながら、紅蓮は2階へ上がった。
「ったく、今日は不運だ。寒色系の少女が落ちてくるし、完全防寒の女が襲ってくるし……」
 そんなことを思いながら、今日の占いを見ておけば良かった、と後悔した。

 朝。部屋に布団を敷いて寝ていた紅蓮は、昨日風呂に入っていないことに気が付いた。
「風呂、入っかー……」
 寝ぼけ眼の状態で、紅蓮は部屋の襖(ふすま)を開けて風呂へと向かう。
 現在、午前5時。学校には間に合う時間帯だった。
 紅蓮は、私立蘭西高等学校(しりつらんせいこうとうがっこう)に通う高校生だ。
 学校が終わってからも、極道に関する仕事が溜り疲れる毎日だが、もしもの為に勉強はしている。と言うたぐいで入学した少年。
 とりあえず今からは、余裕を持って風呂に―――

「お早う御座います」

 紅蓮は風呂場にいた。しかし何故だろう、目の前には髪が青い少女が立っているのだ。

 ―――何の服も纏わずに。

「ドワアァッ!!」
 紅蓮は大声を上げて、回れ右という体育の時間に身につけたスキルを発動する。
「て、テメーは何でこんな所にいるんだあー!」
 半分棒読み状態で、紅蓮は少女に怒鳴りつける。
「昨日、お風呂に入りそびれて……」
 運命とは恐ろしいものだ、紅蓮はそう思った。
 そして、今日から紅蓮の不運な日々が送られるのだった。

14月峰 夜凪 ◆XkPVI3useA:2011/12/05(月) 18:40:05 HOST:softbank221085012009.bbtec.net
こんにちは、コメントさせて頂きますノ

不良(ヤクザ)が主人公の物語は、ここの掲示板では見覚えが無かったので新鮮だなぁ、と思いつつ読ませていただきましたノ
いやー、黒髪赤瞳ってかっこいいですよね!
月峰のストライクだったりします((
あと、聞きなれない語句がちょくちょく出てきたので、補足を見ては「なるほど〜」となっていますw
さて、青い髪の少女は一体何者なんでしょうか……気になりますw
これからも頑張ってください^^ノ

15ライナー:2011/12/25(日) 18:51:04 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
月峰 夜凪 さん≫
コメントだいぶ遅れまして済みません(汗)
全然スレッドに触れていなかったので……

新鮮ですか!? そう言って貰えると有り難いです。新鮮さは重要かなと思っていたので^^;
主人公は、やはり容姿からして良い物を! と思って、こういった容姿にしてみました。気に入って貰えて良かったです!
青い髪の少女は、これからがお楽しみですよ^^
本当に返すの遅れてしまいましたが、頑張りますので、応援宜しくお願いします!

16ライナー:2011/12/25(日) 20:42:13 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
たったの一つですが、語句補足です^^;

ムショ……刑務所の事

17ライナー:2011/12/25(日) 21:23:45 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net

 紅蓮は湯に浸かりながら、ジッとしていた。
 水面から半分程顔を出して、ブクブクと息を吐き出す。
「(忘れろー! 忘れろ俺ー! 学生から変態に成り下がるぞ俺ー!)」
 心中で、敢えて不良(ヤクザ)でなく学生言ったのは、紅蓮自身分からない。いつも不良(ヤクザ)の方で押し切っているにはいるのだが、こういう例えの場合学生が優先されるのだろうか。
 10分くらいこんな事を続け、紅蓮は窒息になりそうになりながら、そして逆上せそうになりながら風呂を上がる。
「ふー、疲れたー……あ、いや、何で風呂で疲れてんだ、俺……」
「それは、逆上せたからじゃないですか?」
「あー、それだな、逆上せたからだな……」
 言葉を途中で失って、紅蓮は横を振り向いた。
「………」
 バスタオルが、青髪の少女へと投げられる。
 それを受け取った少女は、紅蓮の方を見やって首を傾げた。
「どうしたんですか?」
「いや、お前の方がどうしたんですかー!?」
 紅蓮は、一生懸命バスタオルで身を隠しながら叫ぶ。少女はまだ、体に何も纏っていなかったのだ。
「ッてかさー、服ぐらい着ろよ! 風引くだろ? お願いだから俺に変な事しないでくれる!?」
 何だか自分が少し女子みたいだ、紅蓮は悲しくそう思う。
「えーと、私の服が無くて……」
 少女は自分が裸を見られたのにも関わらず、普通に紅蓮に言った。こういう場合なら、顔を赤らめて、俯いて、それでもって小声で呟くならまだ分かる。それなのに、普通に話しているなんて、どれほど鈍感なのだろうか。
 紅蓮はタオル一枚を腰に巻いたまま脱衣所を飛び出し、長い廊下の先に向かって言い放った。
「樒ーッ! この子の服持って来ーいッ!!」
 すると、空気が読めない動きで、樒が少女の着ていたワンピースを持ってきた。
「若、いくら何でも女の子の服を嗅ぎたいだなんて……」
「誰がそんなこと言ったんだ! つーかそっちに服があるって事は、コイツは全裸で風呂場に来たんかい!?」
 紅蓮は少女の肩を掴んで、少女を纏っていない肌隠し中のタオル一枚と一緒に少女が飛び出る。
「わ、私がこの娘の服を洗濯している内に……そんな関係に……!!」
 樒はワンピースを廊下に落とし、両手で口を塞いだ。
「テメーは何を想像してんだ!! サッサとコイツを着替えさせろ!!」
 何とか樒と青髪少女を脱衣所に押し込み、紅蓮は廊下に佇む。
 ドッドッと、いかにも重みのありそうな足音を立てて、滝が廊下を歩いてきた。容姿はまだ外着ではなかったので、滝も起きたてだろう。
「……どうしたんスか、アニキ」
 暫く黙ってから、紅蓮は言った。
「着替え、置いてきちった……」
 その廊下は石庭に接していたため、冷たい風が吹き付けてくる。
 その寒さに、紅蓮は身を屈めながらも、樒達が出てくるのを待った。
「アニキ、タオル持ってきましょうか……?」
 紅蓮は震える体で首を振る。
 冷たい風が、さらにその場を凍り付かせるように滝の声が呟かれた。
「そうスか……」
 タオルは現在、脱衣所に全て納められていたのだった。不運と風が、紅蓮の体を痛めつける。
 惨めな気分になりながら、紅蓮は言った。
「今、何時……?」
「7時30分っス」
 紅蓮が学校を出るのも、その時間帯。そして、現在学ランが脱衣所。
「休もうかな、学校……」
 今年一番、弱気になる紅蓮だった。

18ライナー:2011/12/28(水) 15:46:58 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 結局、紅蓮は学校を休み(朝風呂の時に風邪を引いたから)、布団に潜りながら青髪の少女と部屋にいた。
「だいぶ遅れちまったが幾つか訊いて良いか?」
 少々鼻声になりながら、紅蓮は少女に言う。
「はい」
「んじゃ訊くけどよ、何で空から落ちてきたんだ? 最も、お前自身気を失ってたみてぇだから分かんねぇと思うけど……」
 紅蓮の鼻声が聞き取りづらかったのか、少女は暫く黙ってから口を開いた。
「えーと、恐らく落ちてきたからだと思います」
「どこら辺が理由になってんだ!!」
 改めて紅蓮は聞き直し、何分か経った今、やっとちゃんとした答えが出てきた。
「分かりません」
 つい、どこら辺がちゃんとしているのか訊きたくなるが、意味の分からない答えよりずっとまマシだ。にしても、ここまで溜めて来てまさかの「分からない」は、紅蓮にとって殺してやろうかと思う勢いだった。
 しかしながら、紅蓮は女という生物に簡単に手を挙げる程無能ではない。どんなに鈍感で馬鹿でも、不良(ヤクザ)と知らない相手にいきなり殴り掛かるのは、自分の正体を明かすのと同じだ。
「……ま、それは分からないとしてこれ以上の詮索はしねぇ。それじゃあ、髪の白い厚着した女は知ってるか?」
 紅蓮が本当に訊きたかったのは、コッチの方だった。
 おかしな術を使う相手を知りたい、同じ人類にそんな奴がいるなら早めに片付けなければ、それが紅蓮の考えだ。
 すると、少女は青い髪を波打たせるようにして頷いた。
「その人は、私を狙ってて、何故狙っているかというと、力を押さえるとか何とか……」
 少女の話を聞いて、紅蓮は身を乗り出して訊く。
「アイツに攻撃が効かなかったのだが、何でか分かるか?」
「硬化能力です。物質の繊維を固めて、どんな物でも堅くすることが出来るって言うのですね。それのお陰で、物理攻撃はほぼ防げます」
 今の少女の発言で、全ての整理が付いた。
 あの白髪防寒女が投げてきた葉が何故あれほどにも鋭かったのか、それは硬化していたからだ。紅蓮の銃撃がマントで防がれたことも、それに準ずる。
「なるほどな……」
 紅蓮は半ば納得した表情になる。しかし、その後微妙な沈黙が後に続いた。
「……硬化、能力!?」
「え、何か変ですか?」
 少女はまたも首を傾げて、疑問符を浮かべる。
「能力って……お前ら一体何なんだよ。空から降ってきたり、物固めたり……」
 紅蓮に言われて、少女は思い出したように「あ」と声を上げた。
「これ、言っちゃダメなんだった……」
 何処まで馬鹿なんだ、紅蓮はそう思う。
 言ってはいけないと念を押されていたようだが、それなりに念を押されていたのだとしたら言わないだろう。それとも、念の押し方が甘かったのだろうか。
 とにかく、紅蓮が今関わろうとしている事は、非常識であって、一番信じたくないファンタジーが絡んでいるのだ。
「……とりあえず、俺には言っちまったんだから全部言ってみろって」
 紅蓮は少女に言うが、少女は俯きながら何か呟いていた。そして、不意を突くように顔を上げる。
「これ知った人間は、殺さなきゃいけないんですけど、死んで貰って良いですか?」
 風邪を引いていた紅蓮は、一気に寒気が増していくのを感じた。
「無理って言ったらどうするよ……?」
 布団の中に収まった紅蓮の手は、服の懐に忍ばされる。そこには一丁の銃が入れられていた。

19ライナー:2012/01/01(日) 12:28:43 HOST:as01-ppp17.osaka.sannet.ne.jp

「じゃあいいです」
 紅蓮はその言葉に拍子抜けする。
 一体、どこまでが重要でどこまでが重要でないのか、紅蓮にしてみたら白昼夢(ファンタジー)が起こっている時点で油断はならないはず。
 でもしかし、相手に殺意はないようで、それを察して紅蓮は懐から手を出した。
「……で、まず根本的なところから訊くぞ? お前らは何者なんだ?」
 青髪の少女は黙る。
 言ってはいけない事なのだろうが、もう紅蓮にはばれている訳で、殺しもしないなら、喋ってもいいはずだ。
 そして、少女は口を開く。
「それじゃあ、貴方は何者って訊かれたらどうします?」
 最もな意見だった。
 確かに、自分の存在を当たり前と思っている時点でそれは難しい。紅蓮の場合なら普通に人間だ、とでも言った方が良いのだろか。
 紅蓮は考えて、質問の仕方を変える。
「お前らの……あれだ、硬化能力ってのは何なんだ? 一種の魔法みたいなモンなのか?」
「うーんと、魔法ではないですね。いや、ここで言うなら魔法でしょうか?」
 少女は、何やら紅蓮に伝わらない独り言を繰り返している。
「ま、そう思ってもらって結構です」
 これは完全に少女の方が自分で納得しているのではないだろうか、紅蓮はそう思う。
「……で、その魔法ってのはどこで手に入れたんだよ?」
 別に、紅蓮自身、魔法が欲しい訳ではなかったが、少女の住む世界の確認程度に訊いてみた。
「ヘヴンです」
 一言。少女はそう言った。
 紅蓮の知識が間違っていなければ、『天国』と言う意味になるだろう。
「何処の国の町だ?」
 何となく恐怖を感じ、紅蓮は諦め半分で訊いてみた。
 答は勿論―――
「地球には有りませんよ」
 だろうな、と、紅蓮は心中で返す。
 それにしても、紅蓮は意外に自分が冷静さを保っている事に驚いていた。恐らく、いきなり殺しに掛かられていたら、白髪防寒女のように驚く騒ぎの事ではなかっただろう。
「もう、だいぶ喋っちゃいましたけど、これから言うことも黙っていてくださいね?」
 事は真剣に運ばなければいけないのだろうが、少女の目は笑っていた。
 別に怖みが混じっているようなものでは無いのだが、多分、いや、絶対にこの場に適切ではない表情だ。
 紅蓮は幾多の荒い仕事をこなしてきたが、ここまで肝が据わっている(いや、単に無神経なだけな)少女は見たことが無い。
 そして、両者は結局、自分の事は自分で解決したような気になっていた。


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