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蝶が舞う時… ―絆―

339:2012/01/12(木) 15:19:09 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
中からはシルバーのハートのネックレスだった。

装飾もなにもないシンプルなデザイン。

「付けてやるから。貸して。」

私は誠の問いかけにネックレスを渡す。

誠は黙って私の首元にネックレスを付ける。

その時。誠は私の首の項をそっと舐める。

「ひゃっ…。」

「怖がんな。こんなの挨拶代わりだしな。夜那が嫌がってんならもう止めとくよ。」

誠はそう言って私の耳元を触って立ち去ろうとした。

「嫌…。行かないで…。」

私は後姿の誠に抱きついた。

「何処にも行かないさ。今日憐の葬式だから喪服に着替えて来るだけだよ。」

「喪服?喪服って何?」

私は訊く。

「葬式などに着る黒い服の事だ。夜那はそれでいいかもしれないがな。」

誠がそう言うと私はゆっくりと誠の身体から離れた。

「…分かった。待っとくね。」

私は俯きながら静かにベッドの淵に座る。

340:2012/01/12(木) 15:40:20 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
誠は私を一瞥して部屋を出て行った。

「はぁ…。」

誠が出て行った途端、私の口から出た深いため息。

憐は死んだんだ…。

現実をちゃんと受け止めなくちゃ…。

弱虫だな…私。。

まるで半年前のあの頃と同じ…。

義理のお母さんに逆らえなくて私は日々死ぬという望みを持っていたあの頃みたいだな…。

私はそう思いながら天井を見上げていた。

天井を見上げていると横の窓から温かくて赤い光が私をあてる。

もう夕方なんだ…。そう思った。

まるで赤い妖精が私を悠々と照らしているかのようだった。

「憐…。ずっと私の傍に居るんだよね…?」

私は泣きながら唇を噛み締め、呟く。

「なら…ずっと私の隣で私の手を握ってよぉ…。憐が眠る前だって一度だけ
 握り返してくれたように握って…。そして私との絆を表して…くれたらそれでいいから…。」

私は泣きながら居ない憐に話しかける。

それでも答えは帰って来ない。

341:2012/01/12(木) 16:12:16 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「ねぇ…答えて?答えてくれないと私…泣いちゃうから…。。
 泣いちゃうからぁ…。」

私は両手で顔を覆って泣き叫んだ。

「…大丈夫か?」

誰かの手が私の頭をそっと撫でる。

「誠…。うん…。大丈夫……。」

私は涙を拭き取り、笑顔で誠に言った。

何時までも悔やんではいられない…。

笑顔で憐を見送らなくちゃ…憐に喜んで貰えない。

「…誠。私分かったような気がする…。憐はきっと最初から分かってたんだよ。
 私と誠が幸せになる事を…ずっと陰で願ってたのかも。。」

342:2012/01/12(木) 17:23:58 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私の言葉に誠は黙ってしまった。

「…そうか。」

「どうしたの誠?顔色悪いよ?」

私は誠の顔に覗き込む。

「何でもない…。さ、憐に逢いに行こう。」

誠は強引に私の腕を引き、部屋を出た。

343:2012/01/12(木) 18:07:14 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
それから私と誠は車に乗せられて葬式場に向かった。

葬式場に向かうと10人位の人がパイプ椅子に座っていた。

中心には憐の写真が飾られていた。

その写真はとびっきりの笑顔で笑っていた。

写真の下には棺が置かれていた。

そこにはきっと憐の亡骸が入っているんだ…。

そう思っただけで胸が苦しくなる。

私はそっと棺に近づく。

「憐…。」

棺の蓋は閉まっていた。

私は俯いて前から2列目の席に座った。

それから数分後…憐の葬式は始まった。

葬式は順調に進んでいく。

私はずっと俯きながら耐えていた。

やがて最後の項目に入り、憐との最後の別れがやって来た。

憐の入っている棺の蓋が開けられて、私と大勢の人が棺に集まる。

344:2012/01/12(木) 18:20:50 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
憐の顔は無表情だった。

両手はお腹の前で握られていて左手首にはミサンガがある。

でも憐の顔は悲しい顔じゃなかった。

嬉しい顔でもない。不思議な顔だった。

「憐…ずっと私の傍に居てね。憐と私と誠は一生の友達だよ。
 その絆を心に刻んでこれからも生きていくから。」

私がそう言うと棺の蓋は静かに閉じた。

345:2012/01/13(金) 13:59:36 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
それから憐の棺は火葬場に運ばれた。

憐の親戚の人達が次々と火葬場に足を運んでいく。

私はそれに紛れて火葬場に向かう。

私は必死に涙を堪えて火葬場に向かった。

火葬場は葬式場の隣にあり、私は玄関から静かに入った。

「大丈夫か?」

誠が私の肩に手を置く。

「うん…大丈夫。心配してくれてありがとう…。」

そう言った瞬間、目に溜まってた涙が一気に溢れ出した。

「ずっと我慢してたのかよ…。はぁ…。」

誠は呆れた顔をして私の目元についている涙をそっと右手の人差し指で拭き取る。

「我慢してないよ…。憐をちゃんと見送ったらちゃんと泣くから…。」

私はそう言って誠の身体に抱きついた。

「…もう泣いてんじゃねーか…。…俺だって悲しいんだよ…。
 憐は俺にとって初めての男友達だったんだからな…。
 たださ…泣いてたら憐も喜ばないだろ?こんな時だからこそ笑うもんだって
 夜那が教えてくれただろ?」

誠は泣きながらも笑顔で言った。

「そうだよね…。ごめんね…?憐を見送る事が先決なのにね?
行こっ?憐の所に…。」

私は誠の身体から離れて誠の腕を引いた。

346:2012/01/13(金) 14:22:05 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「そうだな。」

誠は笑顔で返す。

私と誠は笑顔で憐が居る所に向かった。

憐の所に向かうと、ちょうど棺が窯みたいな所で焼かれる所だった。

親戚の人達が2、3人集まっていた。

その親戚の人達の中の一人が私の所に寄ってきてくれた。

「月隠夜那さんですよね?今まで憐君と仲良くしてくれてありがとう。
 きっと憐君喜んでいるわ。本当にありがとうね。」

その人は深く頭を下げた。

「いえ…私こそ憐と出会えて本当に良かったって思ってます。
 わざわざ礼を言ってくださってありがとうございます。」

私も深く頭を下げた。

そう言った直後、憐の入った棺は窯の中に入れられ、銀色の蓋がそっと閉められた。

「バイバイ憐…。私は貴方に出会えて良かったです。」

私は静かにそう呟いた。

347:2012/01/13(金) 14:58:03 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
それから30分後。

窯の蓋は開いて、白い骨だけになった憐が居た。

「夜那ちゃん。この袋に骨を詰めて?夜那ちゃんと誠でやった方が憐君も喜ぶと思うの…。」

誠のお母さんに言われ私は泣きながらお骨用の袋に手で骨を入れる。

ポタポタと大粒の涙を零しながらお骨を袋に入れる。

一個一個の骨に重みを感じる。

温かさも…感じる。

「憐…。私の傍にずっと居るよね?これからも見守っていてね。」

私はそう呟くと、誠が私の身体を抱き寄せた。

「…憐の為にも生きなきゃな。」

誠は笑みを浮かべて言った。

「そうだね…。」

私はお骨用の袋の紐を縛り、手に持った。

この袋を持っているだけで憐が隣に居るような気がして嬉しかった。

憐の骨は親戚の人達と私と誠に分けられた。

私は強く袋を抱き締めて、背を向けて駆け出した。

「夜那!」

後ろから誠の声が聞こえたけど私は振り返らなかった。

348:2012/01/13(金) 16:05:31 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「憐…。」

私は無意識に憐の名前を呼んだ。

憐はもう居ない。

私…何やってんのかな?

きっと誠が居なかったら今頃私も死んでたな…。

「夜那…!」

その声に私は掌を握り締めた。

振り向きたくなかった。

でも身体がふいに動いてしまって振り返ってしまったんだ…。

「…どうしたの?」

「どうしたの?じゃねーよ!…辛いからあの場から逃げたのか?」

誠の言葉に私は笑顔で返す。

「ううん。そんなんじゃない。声が聞こえた気がしたの。
 “玄関に来て”って声が…。空耳かもしれないけど…その声で目が覚めた気がした。
 何時までも泣いてちゃ憐に悪いし…。」

「そっか。憐ってさ…夜那にベタ惚れだったんじゃねーの?今思えばだけど…。」

誠はズボンのポケットに手を入れながら言った。

「ベタ惚れって?」

「辞書で調べろ。」

誠はそっぽを向く。

「ま、いいや。」

そう言った瞬間、誠の背後から声が聞こえた。

349:2012/01/13(金) 16:27:16 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「2人とも帰るわよ!」

誠のお母さんに呼ばれ、私は誠の手を握って駆け寄る。

「夜那ちゃんは何時まで経っても真面目ね。それに比べて誠は…。」

誠のお母さんは呆れた表情をする。

「悪かったな。不束者で。」

誠は不機嫌そうに言う。

「あら良く分かってるじゃない。さ、家に帰りましょうか。」

「母さん…。今一瞬逸らそうとしただろ?バレバレなんだけど。」

誠は息を吐いて言った。

「母さんって…昔から嘘とか下手だったよな。まるで夜那みたいだな。」

誠は笑いながら言う。

「さ、夜那ちゃん。こんな不束者さんは置いといて帰りましょうね。」

誠のお母さんは笑顔で私の肩に手を置く。

「誠を置いていかないでください…。」

私は俯きながら答える。

「ぷっ…。夜那は真面目すぎるな…。あんなのジョークなのに簡単に信じまってさ。
 やっぱ夜那は面白いな。」

誠は腹を押さえて笑っている。

350:2012/01/13(金) 16:57:45 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「冗談ならもっとマシなのにしてよ…。」

私は怪訝な顔で呟く。

でもそれでもいいと思った。

いつもの誠だなぁ…って思った瞬間だった。


憐…。

ずっとずっと私の傍に居てくれるよね?

憐の黒い蝶も今は居ないけど…見かけたらちゃんと預かるから。

心配しなくていいよ。

私と誠と憐の絆はちゃんと私の心の中に刻み続けてるから…。

憐が此処に生きた証となってきっと死ぬまで残る。

それからネックレスと言うか…ペンダントもありがとう。

憐の形見として毎日見に付けとくからね。

本当にありがとう…。

私達3人の絆はこれからも続いていきますように―――…。


私はふと空を見上げた。

辺りはすっかり真っ暗になっていて空には星屑が散りばめられていた。

「夜那!そろそろ行くぞ〜。」

誠の暢気な声が私の耳に届く。

「うん!」

私は静かに誠の隣に駆け寄った。


絆…それが私の運命を大きく変える引き金となるなんて…。

今は知る由もなかった…。


           To be continued…。

351:2012/01/13(金) 21:14:30 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
第2期は完結と言うか・・・第3期に続いてます。

第3期は・・・たぶん泣けます。

残酷なシーンが一部含んでいるんで・・・。

きっと私自身も書くのが辛すぎて一時期休むかもしれませんが・・。

最後までお楽しみください(-_-;)


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