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依存的僕と消失的君。

1 ◆OYVkqChdsA:2010/11/03(水) 16:49:28 HOST:249.200.12.221.megaegg.ne.jp


 某月某日某所、某病院の109号室にて。僕と君は其処に居た。

「どう?調子は」
 僕は君に話しかける。
君は使い古した幼稚園生などが使っているような可愛らしいスケッチブックを取り出して、ボールペンを走らせる。
ボールペンを走らせる君の白い手は僕の目を掴んで離さない。綺麗だ、艶めかしい。

『声はまだ出ないけど、大丈夫。 それより、今日学校はどうしたの?』
「学校? 学校は今日は休みだよ」
『そう』
「本当は学校なんて辞めて、君とずっと一緒に居たいのだけれど…」
 ぐいっと袖をひっぱられて、君との距離が凄く縮まった。
 そしてずいっとスケッチブックを差し出される。僕の顔の前に。鼻がスケッチブックにあたってしまうほど。
『――――』
 近すぎてピントが合わない。なので字が読み取れない。
「ちょっとごめんね」そういって君の手を僕の袖から話す。名残惜しい、とてつもなく。

『駄目』

 スケッチブックにはその二文字。そしてさらに文字が追加されていく。
『貴方には学校に行って貰わないと困るの。君には私の分も、生活を楽しんで?』
「嗚呼…。大丈夫だよ。君を傷つけた犯人は必ず僕が探し出してあげる」
 君は凄く困った顔をして顔を横に思い切り振る。
「大丈夫、そこまで酷い事はしないよ。ただ…、ただ少しだけ悪戯をするだけさ」
『お願い、そんな事しないで。お願いだよ』
 切なげな顔で僕を見つめる。軽く上目づかいなので僕の心がきゅん、と跳ねる音がする。

「大丈夫、大丈夫だから」

 そっと君の唇に熱を落とす。
 そして僕は病室を後にする。

 病院の通路は嫌に静かで、ドアを閉めた音がいやに響いた。

2 ◆OYVkqChdsA:2010/11/03(水) 17:02:32 HOST:249.200.12.221.megaegg.ne.jp


―――

こんにちわ。
以前どったんばったんした変な小説を描いていた雫です。
もう誰も自分のことなんか覚えていないであろう事を期待しております。あんな黒歴史…。

えっと。前作が終了していないながらも、この小説をまた新たに綴り始める事にしました。
今回の主人公は男の子。一人称は僕、『君』にべた惚れな感じです。
ちょっと前作がぶっ飛んでいたので今回は地上をはいずる様な感じの暗いものにしようと思いまして。

とか言いながら初っ端から違う方向へぶっ飛んでいるのは突っ込まないであげてください。


『君』に依存して仕方ない『僕』。
『君』が世界の中心で、『君』がすべてなんだ。
だから『君』を傷つけたものは許さない、「絶対にだ」


そんな感じのポリシーをですね、お持ちの主人公さんです。よ。
一方ヒロインの消失的『君』なのですが、この人の事はまた後で詳しくという事で。

そしてこの小説を読むにあたっての注意事項。等。

・グロを含む可能性が大ありです。
・主人公軽く病ませる予定です。
・この小説を読む場合、マナーとルールは最低限のライン以上でお守りください。

以上です。
今回の作品は、上記にも記したように、前作のぷわっぷわした感じではなく、
心の奥底で眠っているような、滅多に表に出ない感情を一掴み掬う。
そんな感じを目指しております。どうか応援宜しくです。

前作のぷわぷわが気になる方(宣伝乙)→「僕らだけの恋の歌を歌って」
タイトルと内容が大変異なる作品です。出来れば見ないで欲しい黒歴史。きゃあ。

―――

3 ◆OYVkqChdsA:2010/11/04(木) 19:34:40 HOST:249.200.12.221.megaegg.ne.jp


―――一章、四月。

 
 君と僕が出会ったのは、今から数年前。中学二年生に進級した頃だったよね。


―――



 四月、だ。四月というと、進学、進級、卒業等など。出会いと別れの季節っていうのが一般常識だけれども。
別に中学二年に進級するからと言って、そんな人生が急変するような、そんな出会いは無いのだ。 という事がわかり始めてきた。
変わると言っても、同じ室内で視界の中をわらわらとする人間が変わるだけで。面白くもなんともない。
 そんな小説的口調(?)で僕は一体何をしているのかと一人突っ込み。
まあ何を考えるにも行動をしなければ始まらないわけで。僕は自分の指定されたクラスに向かった。
「――…!――…!」
 誰かが僕を遠くで、そして大声で呼んでいる。このいやに陽気で、明るくって声のよく通る奴は…。
あいつしか居ない。 嫌な予感が僕の全身を血のように駆け巡る!
 ヤバい、このままではあいつの力強い平手打ちを背中にお見舞いされる事になる!

―バシッ!

「っつう!」

 背中に突き刺さるような痛みが走る。とても痛い。

「―っ何すんだよ!」
「なあなあなあなあ、ちょっと聞いてくれってばよ!俺さぁ、めっちゃビックなニュース聞いちまった!てか掴んできたぜぇ、その情報!
さすが俺って感じだよなー。なんつーの?こう…、俺の中の隠しきれないスタ―性とモテフェロモンが全世界の生物を魅了してしまうからこそなせる技なんだろうな!」
「嗚呼、話したい事は終わったかい?」
「いやいやいや。まだこれからが本題ですぜ健太のアニキ」
「健太じゃねぇし」
「なぁーんとビック☆ニュースだっっ!俺等のクラスに、転校生が来るらしい!」
「―転校生?」
 驚きを隠せなかった。そのため素っ頓狂な声が口からもれだす。かなりご機嫌になったようで、またこいつは言葉を紡ぎ出す。
「しかも女子!俺もちょっと応接室から見たんだけどな?息をのむような感じの女子だったぜ…!」
 小さく握りこぶしを作る。その噂の転校生の彼女を見た事思い出したのか、顔の筋肉が緩み、大変気持ち悪い感じになってしまっている。それなりに整った顔なのに、残念だ。

「転校、生…かぁ」
 ―ポツリ、と小さくつぶやいた。のが聞こえていたのか、こいつは僕の腕を掴んで走り出した。
「気になるだろ!?さっさと俺等の教室に行こうぜ!」
「―おう!」
 ざわざわとしている同級生の群がりを割って走り進む。よくありがちな光景だが、何故だか今回は凄く心地よかった。

4 ◆OYVkqChdsA:2011/01/23(日) 01:23:15 HOST:249.200.12.221.megaegg.ne.jp


「まあ、当たり前というかなんというか」

 僕等がこれから一年間お世話になる教室に着いた。
黒板に座席表が張られていて、担任の綺麗な字で「進級おめでとう」って書いてある。その横に、担任のちょっとした自己紹介。
 教室ではもう何コカグループに分かれていて(流石に二年目だし、同じ小学校の奴もいるしな)、その、息を飲むような女の子は見当たらない。
だって普通、息をのむような女の子が自分達のクラスに居たら、下心丸見えの男子と好奇心むき出しで、あわよくば仲よくなって格好いい男子と仲良くなろうという女子に囲まれている。これが普通だと思う。 
―まあ、当たり前というかなんというか。
 僕等はあの時の興奮と好奇心のままに動いたが、冷静に考えれば可笑しいのだ。
転校生の女の子(しかもずば抜けた容姿をしている場合)が最初からクラスに居る事はない。よくある王道な感じでは、応接室なんかで説明を聞き、HRの最中に先生の紹介により入ってくる。これが普通。(というか別にずば抜けてなくても普通そうだろう)
 僕はため息をはあ、とついた。あいつが可愛い女の子を見る度喚いているのは毎度の事だが今回は顔が本気(と書いてマジと読む)だった。
だから楽しみにしていたのに……。うらむような気持で隣をちろり、と見た。

「はあぁぁぁあぁぁああ〜〜〜……」

 僕よりも重症な奴がいた。
重苦しくて長い溜息を吐いており、背中は腰のところで曲がっている。

「元気出せよ、HRでは逢えるさ」

 と慰めの言葉をかけるも、

「俺は今すぐあの子に会いたかった!!!!!!
良いか、男は惚れたら速攻で攻めにかかる。これが俺の精神だったのに嗚呼嗚呼嗚呼!!!!!!」

 と叫んで教室のドアのところでしゃがみこんでしまった。おいおい、迷惑になるだろ。人の事考えろ。

「ねえ、邪魔なんだけど」

 凛としたちょっと幼めの声が聞こえた。

5 ◆OYVkqChdsA:2011/01/23(日) 01:23:47 HOST:249.200.12.221.megaegg.ne.jp
「ねえ、邪魔なんだけど」
「あ。うっす、藤下。今年も同じクラスか。宜しくな」

 凛とした声の主は去年も同じクラスだった藤下だった。
下に髪を残して、上の部分の髪だけ二つに分けて結わえるというヘアスタイルがよく似合う強気で猫目の女子。
 ―ぶっちゃけ、こういう女子好みはである。

「うっす。こっちも宜しくね。
―ところで、この金色のもじゃもじゃは誰かしら」
「おおぅ、明日夏…。金色のもじゃもじゃじゃさんは今ガラスのハートがブロッキングなんだ」
「意味分からんわ。つーか、早くどけろ」

 げし、と金もじゃ……面倒くさいので金もじゃと命名しよう。
改め金もじゃは藤下の強烈な蹴りをくらって前回りを三回ほどした。僕は思わず拍手を藤下に送ると、藤下は誇らしげな顔をして「どうも」と言い、スカートの裾を持ち、軽くお辞儀した。こんな姿も可愛いな、なんて。

「明日夏、てんめぇぇぇぇ―……」
「えっと、私の席はどこかしら」
「てめぇ人様の話きけや!!」
「藤下はそこの席だね」
「おうっ!!?お前もかよ!!!!!」

 騒がしい奴。
 僕等はそれ(言い方酷いかな)を無視して指定された席に着き始めた。

「な、何だよお前ら……って何で座ってんの!!!?」

 金もじゃは辺りを見回して、自分だけが立っている事に不思議を感じたようだ。
さっきまで騒がしかったクラスは、今は皆指定された席に着き、各々静かにしている。

「何でだよぉぉぉ!!!」
「こういう事だ、羽場」

 ―羽場は、羽場の後ろに居た人物に出席簿で軽く頭を叩かれた。
誰だよ!!!!!、なんてぶち切れながら後ろを物凄い形相で振り返った。あ―あ、どうなってももうしんね。

「―うぉっふう先生コンニチワ!!」
「おお、朝から無駄に元気が良いなぁ羽場。早く席に着け―」
「……うぃ―っす」

 どっという笑いの波がクラス中から起こった。
羽場はそれに恥ずかしさからか頬を少しあからめ、物凄い顔でこちらを睨み、口パクで『覚えとけよ』と言ってきた。
おお、怖い怖い。

 羽場が席に着いてから、HRが始まった。
僕等の担任は強気な女の人で(しかも二十代前半だ)、赤城(と書いてアカジョウ、と読むらしい)。
軽くあとからの始業式と時間割について説明した後、いよいよ僕等お待ちかねの瞬間がやってくる。
 僕は羽場を見ると、羽場もこちらを見ていた。
二人でにしし、と笑っているのを丁度僕等の真ん中の席の藤下が気持ち悪っという顔で僕等を見てきた。
超絶傷ついた。

「あ―。もう知ってる奴もいるかも知れんが、今日は転校生がいる。
しかも超絶べっぴんさんだからなぁ。お前ら、あんま騒がしくすんなよ―?」

 少しおどけた感じで言う赤城先生。
 とても可愛らしいのですが僕はその子が気になるのでちゃっちゃとしてください。

「転校生を紹介する。入ってこ―い」
「はい」

 先生のそれに返事をする声にキュンと来た。
 彼女の声は鈴の音を転がしたような、そんな感じの声だった。
ソプラノの綺麗な声で滑舌も大変よく、少し幼い感じのあるなんとも言えない可愛らしい声。
僕ぁ声だけで彼女に恋をしてしまうんじゃないかと本気で思った。本気で思った。
 からら、というドアを開ける軽い音がする。
教室のドアからみえた細くて白くて綺麗な手が素敵だ。何かもう手からして美少女ってわかる。

 ドアが全部開いて彼女がこの教室に一歩入った時、教室の空気が変わった。


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