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中・長編SS投稿スレ その2

1名無しさん:2011/02/24(木) 02:44:38
中編、長編のSSを書くスレです。
オリジナル、二次創作どちらでもどうぞ。

前スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9191/1296553892/

754earth:2011/09/10(土) 21:26:07
あとがき
ボラー連邦軍ボロボロ。ヤマトも相応に被害を受けます。
これだと太陽系についてもボラーは大きな態度はできないかも。
まぁそれ以前に首相閣下がお怒りでしょう。恥の上塗りだし。
次回、砲撃戦の予定です。

何故か、こちらのほうがサクサク進むのは何故だろうか?
あと申し訳ございませんが、憂鬱本編は少し遅れるかも知れません。
リアルで色々と精神的に来ることが多かったので……胃が痛い。

755earth:2011/09/10(土) 21:37:36
あと、『嗚呼、我ら地球防衛軍』を纏めてHTML化してHPのほうに
掲載しようと思うのですが、どうでしょうか?

756名無しさん:2011/09/10(土) 23:28:32
未来人の多元世界見聞録も一緒にお願い

757earth:2011/09/11(日) 10:32:31
第13話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第13話

 ナスカ艦隊による航空攻撃でボロボロになったボラー連邦艦隊は艦隊の立て直しに懸命だった。
 喪失艦は戦艦1、駆逐艦1のみであったが戦艦1隻、戦闘空母1隻、駆逐艦3隻が大破(後に自沈処分)、他の艦も軒並み
被害を受け、無傷の艦は皆無。また艦載機の消耗も少なくない。このため立て直しは難航した。 

「壊滅ではないか!」

 旗艦である空母の艦橋でボラー連邦艦隊司令官は呻くが、実際にその通りだった。

「恥の上塗りどころではないぞ……」

 ヤマトが居なかったらボラー艦隊は全滅していたかも知れなかった。この失態を知られたら彼は破滅だった。  
あの冷酷な独裁者であるべムラーゼが、このような失態を犯した人間を生かしておくはずが無いからだ。

「くそ。何としても報復しなければならない。偵察機を出して何としても犯人を見つけ出すのだ!」

 身の破滅を避けるには、何としても落とし前をつける必要がある。そのため司令官はそう厳命した。
 だがそれにレジェンドラ号のラム艦長が反発する。

『今は艦隊の立て直しを優先するべきです。また沈んだ艦の乗組員の救助も』
「放っておけ! 今は反撃が先だ!! これはボラー連邦軍司令官としての命令だ! それともバース星軍人の君は
 私の決定に従えないと?」

 司令官はラム艦長の反対を押し切るどころか、立場を利用して脅した。
 ボラー連邦の保護国であるバース星の軍人であるラム艦長に逆らう真似は出来なかった。

『了解しました』
「では頼むぞ」

 しかしその直後、下手人であるガトランティス艦隊が姿を現すことになる。

758earth:2011/09/11(日) 10:33:14
 ヤマトのメインスクリーンに12隻の艦隊が映し出される。

「敵艦接近。距離10.5宇宙キロ!」

 森雪の報告を受けて艦長は頷くと攻撃を命じた。

「砲雷撃戦用意。目標、前方の敵艦隊。敵大型艦を先に叩く」
「了解! 主砲発射用意。ターゲットスコープオープン!」
 
 古代の指示は直ちに第1砲塔、第2砲塔に飛ぶ。
 そして南部が詳細な指示を出す。

「方位−5度、上下角+3度」

 この指示をもとに主砲が旋回し、砲身が持ち上がる。  
 さらに敵艦隊が10宇宙キロにまで近づくと、細かい微修正が行われる。だがこの光景を見ていた艦長は心のうちで
呟く。
   
(大和の本来の運用方法がベースになっているというべきか……普通はマニュアルよりも機械にやらせたほうが
 間違いが無いんだが……いや職人芸は未だにコンピュータを凌駕することもあると考えたほうが良いのだろう)

 そんなことを考えている内に、照準のセットが終る。 

「発射!」

 古代がそう言った直後、第1砲塔、第2砲塔が斉射した。46センチショックカノン砲から放たれたエネルギーは
寸分違わずガトランティス帝国軍の戦艦に命中し、目標を轟沈させた。

「一撃か……(やはりダンボール装甲だな。いやこちらの攻撃力が高すぎるだけか?)」
「続いて発射用意」

 艦長の内心など露知らず、古代は攻撃を続ける。
 ガトランティス艦隊も回転速射砲で応戦するが、こちらには当ることはなかった。逆にヤマトの反撃を呼び
次々に撃破されていく。

759earth:2011/09/11(日) 10:33:49
 ガトランティス軍は駆逐艦で接近戦を仕掛けようとするが、すでに3隻の戦艦が撃沈されており、勝ち目がない
のは明らかだった。
 一方のボラー連邦軍は未だにガトランティス軍を射程に捉えておらず、ヤマトの長距離砲(衝撃砲)の攻撃に
唖然となるだけだった。 
 
「凄まじい……」

 ラム艦長はこの長距離にも関わらず、敵を余裕で撃破するヤマトの姿を見て衝撃を受けた。
 これほどの高火力を持ち、高い防御力と多数の艦載機を搭載する戦艦はボラーでもあまり見たことがないのだ。

「彼らのような国と早めに友誼を結べば、バースもあのようなことにならなくて済んだんだろうか……」

 そんなラム艦長の呟きを他所に、ガトランティス艦隊は足早に撤退していく。
 さすがのナスカもこれ以上の被害は耐えられなかった。

「ヤマトは確かに恐るべき敵だ」

 瞬く間に大戦艦3隻を沈められたナスカは、改めてヤマト、そして地球防衛軍を難敵と見做した。

「だが、あのボラー連邦軍は大したことはない。我が軍は全力で地球攻略を行うべきだろう」

 ナスカの意見はこの場のガトランティス軍人の共通認識であった。

「これ以上の長居は無用だ。引き上げる!」

 しかし、地球防衛軍は敵を見逃してやるほど慈悲深くなかった。
 
「敵機接近!!」
「何?!」

 救援のために派遣された地球艦隊から発進したコスモタイガーⅡが彼らを発見したのだ。

760earth:2011/09/11(日) 10:34:24
「あれが下手人か!」

 地球艦隊司令官はコスモタイガーⅡから届けられた映像を見て立ち上がった。

「攻撃隊発進! 金剛と榛名は全速で接近し砲撃戦に持ち込む!!」

 このときいち早く到着したのは主力戦艦『金剛』『榛名』と戦闘空母『サラトガ』『レキシントン』、巡洋艦2隻、駆逐艦8隻から
なる艦隊だ。ヤマトとの戦闘で消耗していたナスカ艦隊からすれば死神に等しい陣容だった。 

「だ、脱出だ! 急げ!!」

 慌てて脱出しようとするナスカだったが、早期警戒機仕様のコスモタイガーⅡまでがナスカ艦隊周辺をうろつくようになると
どうやっても逃れることができなくなった。
 さらに敵艦隊発見の報告はヤマトにも齎される。

「反撃の時だ!」

 加藤の言葉にヤマトのコスモタイガー隊も士気を上げる。

「いくぞ!!」

 こうしてナスカ艦隊は哀れにも(自業自得とも言えるが)防衛軍艦隊とヤマトから発進した攻撃隊によって袋叩きにあうことになる。
 戦艦は1隻残らず沈没。ナスカが乗る高速空母エウレカは沈没こそ免れたものの、ミサイル攻撃で速度が半減。護衛の駆逐艦も満身創痍
という状況になる。

「くっ……た、大帝に何と言ってお詫びをすれば良いのだ」

 だが彼が言い訳を考える必要はなかった。このあと全速で急行してきた金剛と榛名のショックカノン砲によって彼の乗るエウレカは
集中砲撃を受け轟沈したかだ。
 かくして太陽系外縁部で行われた会戦は地球防衛軍の勝利で終ることになった。
 だがそれは同時に、新たな敵が現れたことを克明に示していた。地球連邦に残っていた楽観論は完全に一掃され、地球は新たな脅威に
備えて軍拡を進めることになる。

761earth:2011/09/11(日) 10:36:36
あとがき
地球防衛軍大勝利です。
ナスカ艦隊は金星基地を攻撃する前に壊滅してしまいました。
ボラー連邦軍は……いいところがなかったですが、まぁ本気を出せば
何とかなるでしょう。彼らの地力は地球を遥かに超えますし。

あとHTML化を進めることにしました。
元ネタSSの拙作ですが楽しんでいただけているようで幸いです。

762earth:2011/09/11(日) 22:46:09
第14話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第14話

 満身創痍とも言うべきボラー連邦艦隊は、地球防衛艦隊の護衛の下、太陽系に到着した。
 当初は強硬な姿勢を貫こうと考えていたボラー連邦特使であったがガトランティス帝国軍によって一方的に味方艦隊が叩かれた上に
ヤマトの圧倒的戦闘力を見せ付けられたことから、強硬な姿勢など取れるわけが無かった。
 天王星軌道で開かれた会談の席(会場は地球側が用意した豪華客船)でボラー連邦の特使は、防衛艦隊の健闘を褒め称えた。

「地球は素晴らしい戦艦や軍人をお持ちのようだ。羨ましい限りです」
「いえいえ奇襲にもかかわらず、ボラー軍も健闘したと聞きます」

 地球側の特使はそう言ってボラー連邦の面子をつぶさないように努力した。
 尤も新興国家の小国から配慮されても、ボラー連邦が失った面子が戻るわけがなかった。実際、べムラーゼは怒り狂っていた。

「何だ、この醜態は!」

 ボラー軍高官は揃って震え上がった。目の前の怒れる独裁者の機嫌をさらに損なえば、首が物理的に飛ぶのだ。

「これは奇襲であったのが原因かと」
「奇襲されること事態が無能の証拠だ、馬鹿者が!」

 言い訳を切って捨てるべムラーゼ。

「軍は気を緩めすぎているのではないのかね?」
「そ、そのようなことは……」
「ふん。だがこの失態は大きいぞ。ボラー連邦軍が大したことがないと思われれば反体制派が勢いづく。
 まして地球の戦艦がボラー連邦の1個艦隊に匹敵する実力があるなど知られたら、地球と連携しようとするかも知れん」
「で、ですが本国艦隊を派遣すれば地球など一撃で下して見せます」
「当たり前だ。だが、問題は我がボラーの体面を傷つけた愚か者だ。連中の正体は?!」
「ふ、不明です。地球側は捕虜を取ったようですが」
「何としても情報を引き出せ!」

 軍の高官は転げるように部屋を後にした。それを冷たい視線で見送った後、べムラーゼは小声で呟く。

「……ガミラスに勝ったのは伊達ではないということか。地球の評価を改める必要があるな」

 こうしてボラー連邦は、新興国家であるはずの地球連邦をある程度認めるようになる。

763earth:2011/09/11(日) 22:47:04
 地球防衛軍は正体不明の敵艦隊を撃滅したことに鼻高々だった。
 味方の損失艦は皆無。一方で空母3隻、戦艦6隻を含め21隻を撃沈していた。3隻の駆逐艦を逃したが完全勝利だった。
 参謀長もこの結果に安堵した。

「漂流していた敵機のパイロットを尋問した結果、敵はガトランティス帝国軍ナスカ艦隊であることが分った」

 この参謀長の報告に、転生者たちは遂に来たかと頷いた。
 ちなみに密談の場所は関係者が忙しくなったので、集まりやすいメガロポリスにあるレストランの一室になった。勿論、貸切だ。
 
「だがこれでナスカ艦隊は壊滅だ。潜空艦こそ撃破できなかったが、取りあえずは先手を取ったのでは?」
「そうだ。これで太陽系内の安全は当面は確保できた。資源とエネルギー供給も安定する」
「あとは艦隊増強です。無人艦隊整備も前倒しすべきかも知れません」
 
 これらの意見を聞いてから、参謀長は堪える。

「まずは奴らの出鼻はくじけた。だが安心は出来ん。何しろ相手にはまだ前衛艦隊が居るし、デスラー率いるガミラス残党もいる。
 あと無人艦隊はまだ無理だ。色々と試行錯誤する必要がある」
「では従来のとおりに?」
「そうだ。アンドロメダ級3番艦、4番艦、5番艦の建造を急ぐ。6番艦以降は間に合わんが、建造の準備は進めておく」
「『しゅんらん』建造のため、ですか?」
「そうだ。デザリウム戦役になった場合、改アンドロメダ級は必要だ」
 
 参謀長は次の戦役も見据えていた。

「もうそろそろ、テレサの通信が来るだろう。土方総司令や藤堂長官と連携して防衛会議を動かす。皆も協力を頼むぞ」
「そういえばヤマトの艦長はどうするつもりです? 本人はかなり疲れていましたが」
「彼は今回の功績から、艦隊司令官に転任してもらうことにした。ガトランティス戦役のヤマトは……古代艦長代理に任せる」
「主人公補正に期待ですか」
「あんな無茶な運用ができるのは彼しか居ない。それに……何れはムサシと組ませることを考えている。
 これで悪い意味での暴走は抑えられるだろう」
「ムサシと?」
「ああ。ヤマトとムサシを組ませて、独立部隊『α任務部隊』を作ろうと思う」
「……スパ○ボですか」

 そしてこの密談の後日、予定通りテレサの通信を傍受することになる。

764earth:2011/09/11(日) 22:47:47
 転生者たちは再び動き出した。
 捕虜から得た『ガトランティス帝国がアンドロメダ星雲を支配する帝国であること、その艦隊が銀河系にも進出してきている』
との情報は防衛会議にも衝撃を与えていたので軍備増強に関わる話し合いで反対意見は出なかった。

「ボラー連邦、ガトランティス帝国。どちらも強大な国家です。これに対抗するには今の防衛軍では戦力不足です」

 土方の意見を否定できる人間は居なかった。
 ボラー連邦軍は確かに無様であったものの、ただ1戦のみでボラー軍恐れるに足らずと判断するのは危険であった。
 またガトランティス帝国軍の艦載機は、地球側の機体よりも遥かに多くのミサイルを搭載できるとの情報も危機感に拍車を掛けた。

「ガトランティス帝国軍の戦艦や空母は、地球のそれより遥かに大型。また速射砲の発射速度も速く火力も侮れん」

 土方の意見に参謀長はすかさず頷く。   

「また大型空母があるということは、恐らく我がほうよりも遥かに多くの艦載機を運用できることを意味します。
 航空戦に敗北すれば波動砲を撃つ機会さえない。ですが、幸いにもボラー連邦は多数の空母を持っています。
 彼らの力を得られれば助けになるでしょう」

 しかし、防衛会議出席者のうち数名が渋い顔をする。 

「だが恐怖政治を敷く国だ。下手に招き入れたら大変なことになるのでは?」
「判っています。ですが毒は毒をもって制すという言葉もあります。幸い、先方はガトランティス帝国への報復を望んでいます」 

 異星人を異星人に嗾けることを主張する参謀長に、何人かが顔を顰めるが積極的な反対意見はなかった。 
 相手の政治体制がどうであれ、国益に適うのであれば利用するために手を結ぶ……それは当然のことだった。
 
「それと謎の通信を傍受しました。ガトランティス帝国に関する情報かも知れません。ヤマトを調査のために派遣しようと思います」 
「しかしヤマトを派遣して防衛体制は大丈夫かね?」
「ムサシが就役するので大丈夫です。それに、何か情報を得られればボラーとの取引に使えるかも知れません」

 かくして防衛会議は大幅な軍備増強を急ピッチで進めること、そしてヤマトを調査のために派遣することを決定した。

765earth:2011/09/11(日) 22:50:10
あとがき
ボラー連邦は落とし前をつけるために動きます。
ムサシもいよいよ完成。防衛軍は大幅に強化されるでしょうが……本気に
なったボラー艦隊が来たら出番があるかどうか(笑)。

あと改行については、今後できるだけ改善していこうと思います。

766名無しさん:2011/09/12(月) 01:27:21
未来人の多元世界見聞録も一緒にHTML化をお願いします

767earth:2011/09/13(火) 23:15:48
非常に短めですが第15話です。
見聞録のHTML化ですか……少しお待ちください。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第15話

 ヤマトがテレザートに向かって発進するころ、いよいよ防衛軍というか参謀長期待の星である機動戦艦『ムサシ』が就役した。
 収束型波動砲1門、46センチショックカノン6門という火力を持ちながら、60機もの艦載機とヤマトを超える航空機運用能力を
持ち、さらにヤマトの打たれ強さを受け継いだこの戦艦なら、来るべきガトランティス戦役で活躍できると転生者たちは考えた。

「まぁ昔なら航空戦艦なんて中途半端な品物でしかないんだが」
「気にしたら負けだよ。そういう世界と思ってくれ」
「……参謀長、もう少しオブラートに包んで言ってくれ」

 まぁ何はともあれ、ムサシは艦長古代守の下で猛訓練に励む。
 ヤマト並のマニュアル操作ができるということは、逆にそれだけの高い技能を要求される。
 一部の人間からは「ただでさえ人手が足らないときに、やたらと高スキルの乗り手を要求する艦なんて作るなよ」と言われるほどだ。
 だが勿論、転生者たちは気にしない。

「(原作の過密スケジュールに対応するには)この程度の無茶ができなかったら何も出来ん」

 参謀長はそう嘯き、ひたすらに幕僚達と訓練計画について協議した。
 いくらハードが優れていても、ソフトが脆弱だったら意味が無いのだ。 

「土方総司令には頑張ってもらわないと」

 勿論、この参謀長の姿勢は土方や宇宙戦士訓練学校の山南には好感触だった。
 ヤマトの勝利を機械力の勝利と謳う馬鹿政治家や、拡散波動砲に依存する防衛軍の戦術を懸念していた男達にとっては、このような
男が後方に居るのは心強いことだったのだ。

「あの男は前線の人間のことをよく判っている」

 見舞いに訪れた土方の言葉を聞いて、病室のベットに横たわっていた沖田は頷く。

768earth:2011/09/13(火) 23:17:55
「でしょうな。彼ほど頼りになる男はいない。それに前線に出るのも厭わない勇気がある」
「彼には長官のサポートをしてもらわないと。防衛会議のお偉方と遣り合うには彼のような存在が必要だ」
「防衛軍は連邦政府が統制する。だが政府が正しい統制をできなければ意味がない」

 本土決戦に傾いていた頃を沖田は思い出す。
 ガミラスとの本土決戦を主張する人間達に引きずられ地球各地で本土決戦が叫ばれている頃、参謀長は将来のことを憂い、ヤマトの
建造を根回しした。またイスカンダルにヤマトを送り出す手筈を整えた。加えて地球復興や防衛軍再建でも大きな功績を残している。
また今回は新たな脅威、ガトランティス帝国に対抗するためにボラー連邦という一大星間国家と手を結ぶ切っ掛けを作った。
 常識的に考えると途方もない政治手腕と先見性だった。

「我々もある程度、政治家と付き合うべきなのでしょう。ですが私には到底そんな真似は出来ない。私は船に乗るのが仕事です」
「私もです。鬼教官などと言われているが、政治家との付き合いとなれば参謀長の足元にも及ばない」

 二人の男は自分が戦場で戦うことしか出来ない職業軍人でしかないことを理解していた。
 故に参謀長のような男は非常に重要だった。いくら彼らが艦隊を整えても、政府や司令部が無能では悪戯に死者を増やすだけだ。

「だが彼にも敵はいる」
「でしょう。藤堂長官やこれまでの功績によって押さえられているが」
「それゆえに、我々のような前線の人間が彼を支えることも必要だ。だが私はまだ動けない」
「勿論、我々が支える。古代艦長も同意見だ」

 勿論、これは土方だけの意見ではなかった。宇宙艦隊の主流派、今の実戦部隊を支えているのはガミラス戦役の末期を生き抜いた
男達だ。その彼らは誰もが参謀長の功績を理解していたのだ。

「……頼みます」

 沖田はそう言って頭を下げる。
 かくして、参謀長の発言力はさらに増すことになる。
 引き換えに彼の希望である輝かしい出番が回ってくる可能性はさらに低くなったが……。

769earth:2011/09/13(火) 23:19:46
あとがき
爺2人にやたらと手腕を買われ、参謀長はますます前線に出づらくなります。
彼に華やかな出番が来る日は来るのだろうか(爆)。
もう諦めて後方で栄達を望んだほうが楽な気が……
それでは失礼します。

770earth:2011/09/14(水) 23:08:54
第16話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第16話

 ヤマトがテレザートに向かっている頃、太陽系ではナスカ艦隊の数少ない生き残りと言える潜空艦(ステルス艦)が
地球側の輸送船を襲おうとする事件が多発していた。
 防衛軍司令部では連日、潜空艦の対策会議を開いていた。

「『海上護衛戦』再びと言ったところだな」 
「ですが、参謀長の主張で配備された一式偵察機(コスモタイガーⅡ早期警戒機仕様)による哨戒網によって
 敵艦の動きは封殺できています」 
「だが撃沈できたのは1隻だけだ。まだ何隻かが太陽系に潜んでいる」

 当初は手間取っていた防衛軍だったが、参謀長が予め手配していた哨戒網が機能しだすと、輸送船団への被害は激減した。
護衛空母に改装された旧式の大型艦(『えいゆう』など)、ソナー(殆ど閃光弾)や爆雷を装備した護衛艦が護衛につくように
なると、ますます潜空艦は手出しが出来なくなった。
 だが後方で暴れられるのは、防衛軍としては面白くない。

(全く小うるさい連中だ。敵の策源地を叩いておきたいが、どこにあるのやら……)

 だが参謀長の懸念はすぐに解決されることになる。そう、ボラー連邦軍によって。
 ボラー連邦軍上層部は前回の太陽系外縁での大失態を雪ぐべく、ボラー連邦建国以来有数の大艦隊を編成して、太陽系周辺に
派遣することを決定した。

「侵略者のガトランティス帝国軍を叩き潰すのだ!」
 
 ラム艦長から聞けば「お前が言うか」と突っ込まれそうな台詞を吐いたべムラーゼの厳命を受けたボラー軍の本気であった。
 しかし大艦隊を一気に送り込めないため、まずは先遣部隊が派遣された。

771earth:2011/09/14(水) 23:10:23
 勿論、ボラー連邦の動きを地球連邦は警戒したが、ボラー連邦の面子を立てる形で派兵を黙認した。ボラー連邦ほどの大国なら
わざわざ地球連邦の黙認など必要ないのだがヤマトをはじめとした地球防衛軍の力、そして新たな脅威であるガトランティス帝国の
存在が地球連邦への宥和政策を是とした。

「地球人にボラー軍の真の実力を見せてやる」

 ボラー連邦軍先遣部隊司令官のハーキンス中将は、先遣部隊の空母艦載機を使って太陽系周辺のガトランティス帝国軍の所在を
調べ上げた。そして潜空艦を見つけるや否や、全力で叩き潰していった。
 先遣部隊であるものの、その空母や戦闘空母の数は防衛軍が保有する戦闘空母を凌駕しており、その攻撃力も圧倒的だった。
かくしてナスカ艦隊の数少ない潜空艦は撃滅されてしまった。
 勿論、その報告は多少脚色された形でべムラーゼに届けられる。

「次は侵攻してくる敵の主力艦隊と白色彗星本体だな」
 
 べムラーゼは少しは機嫌を持ち直すも、すぐに厳しい顔で軍部に派兵を急かした。

「必要なら機動要塞も投入せよ。不足するものがあれば私の名前で関係部署に通達すれば良い」
「了解しました!」

 ブラックホール砲を搭載し、波動砲を超える収束率を持つデスラー砲さえ弾き返す防御力を誇る機動要塞ゼスバーゼはボラー連邦に
とっても貴重な兵器だ。しかし今回はそれを投入するだけの意味があった。 

「今に見ておれ」

 怒りに燃えるべムラーゼ以下のボラー連邦首脳陣に対して、ガトランティス帝国側はボラー連邦軍の評価を少しながら上方修正した。

772earth:2011/09/14(水) 23:10:56
「地球艦隊と比べると練度は高くは無いな。だが数は多い。地球を越える星間国家なのだろう」

 攻撃されてからすぐに大規模な部隊を派遣してきたボラー連邦軍を見て、ズォーダーはそう判断した。

「それに太陽系外縁に進出してきている。このままだと地球艦隊と戦う前に、奴らと戦うことになりそうだな」
「小癪な!」

 帝国ナンバー2であるサーベラーはヒステリックに叫ぶ。

「あのような軍、速やかに踏み潰すべきです!」
「勿論叩き潰す。だが地球艦隊は思ったより侮れん。奴らと本格的に協調されると面倒なことになる。
 それにナスカ艦隊が壊滅したせいで太陽系に前線基地が作れなかったのも問題だ」

 ズォーダーの台詞に遊撃艦隊司令長官ゲーニッツは頭を下げる。

「も、申し訳ございません」
「前衛艦隊はどうなっている?」
「主力はシリウス恒星系に集結、再編中です。バルゼー司令官を急かすこともできますが」
「全面攻勢はまだ行わん。だがゲリラ攻撃を仕掛けて奴らを撹乱する。ナスカ艦隊の二の舞は許さんぞ」
「承知しました」

 話は終わりだと席を立とうとするズォーダー。だがそれをサーベラーが引き止める。

「それと大帝、デスラーのことですが……」
「サーベラー、ヤマトのことは、ヤマトのことをよく知っている者に任せる」
「……」
 
 かくして地球艦隊は蚊帳の外に置かれたまま、太陽系の外ではボラー連邦とガトランティス帝国の熾烈な戦いが繰り広げられる
ことになる。

773earth:2011/09/14(水) 23:13:10
あとがき
ガトランティス帝国とボラー連邦は勝手に殴りあいます。
地球連邦と地球防衛軍としては願ったり適ったりでしょうけど。
ヤマトこそ被害を受けますけど、他の被害は原作よりも少ないですし。
それにしても、下手したら名前ありのキャラの出番も削られそうだ(爆)。

774earth:2011/09/15(木) 23:34:08
第17話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第17話

 11番惑星はボラー連邦軍と地球防衛艦隊の最前線基地となっていた。
 ボラー連邦艦隊や地球防衛艦隊の艦船の整備と補修ができるように次々に大型ドックが建設され、それを守るために必要な
航空隊や空間騎兵隊が配備された。

「最前線の砦たる11番惑星、そして防衛艦隊の根拠地である土星基地。この二重の守りがあれば太陽系は守りきれる」

 参謀長の言うとおり、11番惑星に建設された基地群はボラー連邦と地球防衛艦隊の双方を見事に支えた。
 ガトランティス帝国軍の空母部隊がゲリラ攻撃を仕掛けてきたものの、11番惑星周辺に張り巡らされた防衛線を突破する
ことはできなかった。

「やはり数は偉大だな」

 ボラー連邦軍の圧倒的数は参謀長からすれば羨ましい限りだった。
 
「空母群も本格的だし……うちの空母とは大違いだ」

 防衛軍司令部のモニターに映る地球防衛艦隊の『宇宙空母』を見て、参謀長は内心でため息をつく。
 主力戦艦の後ろに強引に空母機能をつけたこの艦は、本格的な空母とは言いがたかった。ムサシはさらに発展させているが
本格的な空母より劣る。汎用性は高いだろうが……。

(シナノはあのような中途半端な艦ではなく、真の、本格的な『空母』にしたいものだ)

 しかし正規空母というのは作っただけでは意味が無い。
 むしろ艦をきっちりガードするための護衛艦隊が必要となる。ワープ技術の発達によって咄嗟砲撃戦が多くなると
脆い可能性は否定できない。

(アウトレンジ攻撃か。ガミラスの瞬間物質位相装置が欲しいな。あれがあれば……いやボラー連邦からワープミサイルの
 技術を得られれば小型のワープユニットが作れるかも知れん)

775earth:2011/09/15(木) 23:34:39
 色々と新戦術の構想を練りつつも、参謀長は他の仲間と共に次の手を考えていた。

「ボラー連邦軍の登場で戦力比は大幅に改善された。またボラー連邦の大使も本格的に参戦すると言ってきているので
 ガトランティス戦役は何とかなる可能性が高まった。そこで反攻作戦についても話し合いたい」
「まさかと思いますが、アンドロメダ星雲へ侵攻するとでも?」
「あり得んよ。まぁボラーが出兵すると言ってきたら付き合い程度に艦を出す必要はあるかも知れないが……
 真の狙いは太陽系の外の宙域、そしてシリウスなどのガトランティス帝国軍によって占領されている地域の確保だ」

 参謀長の意見に連邦政府高官が頷く。

「復活編に備えて、第二の地球の確保は必要だ。アマールに頭を下げて移民するよりも自前の植民地惑星があったほうが楽だ」

 この言葉に賛同者が相次ぐ。
 
「それに銀河系中心部とは離れている。赤色銀河との衝突があっても被害はない」
「ボラー連邦の弱体化とSUSの台頭に対応するには必要でしょう」
「開発特需も期待できる」
「安全保障面でもメリットはある。いつまでも太陽系だけを生存圏にするわけにはいかない。
 というか原作だと、何で太陽系のみに住んでいたのか分らないが……まぁ気にしないで置こう」

 勿論、これらの決定は目の前に迫り来る白色彗星や前衛艦隊を撃滅しないことには意味が無い、狸の皮算用になる。
 しかし終ってから決めていたのでは、ボラー連邦によっていいようにガトランティスの占領地を奪われ、地球人類は太陽系へ
閉じ込められてしまう。それは避けなければならない。

「では白色彗星撃滅後、ただちにボラー連邦と協議を行おう」

 こうして地球防衛軍と連邦政府は手薬煉を引いてガトランティス軍の本格的な襲来を待ち受けた。

776earth:2011/09/15(木) 23:35:21
「名無しキャラがメインの地球防衛艦隊が如何に手強いか見せてくれる……まぁ私の出番はないが」
 
 参謀長が嘆息する傍らで、前線部隊は意気軒昂だった。

「死亡フラグを叩き折って生還してやる!」
「ついでに地球防衛軍がやられ役じゃないってことを思い知らせてやる!」
「ヤマトとムサシだけに美味しい役はさせないぞ!」

 原作ではヒペリオン艦隊司令官だった艦長以下、多数の名無しキャラ達はそう士気を上げた。
 彼らの勢いと、ガミラス戦役での消耗が抑えられたこと、早めに軍拡に舵を切っていたことで地球防衛艦隊の実力は
非常に高かった。何しろ波動カードリッジ弾、コスモ三式弾、波動爆雷などの新兵器も配備されている。
 これらはテレザートに向かっている途中にガトランティス軍と戦ったヤマトから送られてきた実戦データを基にして
さらに改良が進められており、高い戦果が期待できた。

「ふむ。これなら何とかなるかも知れん」

 土方でさえもそう言うのだから、地球防衛艦隊の充実振りが分る。
 かくして地球防衛軍の出番が回ってくる……筈だったのだが、彼らの目論見は大きく狂うことになる。

「……もう一度言ってくれないか、古代艦長代理」

 防衛軍司令部のスクリーンに映る古代に、参謀長は顔を引きつらせながら再度尋ねる。
 だが答えは変わらない。

「はい。ヤマトは先ほど白色彗星を奇襲。これを撃破しました」

 原作が木っ端微塵になった瞬間だった。

777earth:2011/09/15(木) 23:36:16
あとがき
所詮名無しキャラに華やかな出番は……詳細は次回に。

778earth:2011/09/16(金) 23:14:07
18話です。短いですがご容赦ください。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第18話

 時はさかのぼる。
 ヤマトはガトランティス艦隊やデスラー艦隊を退けてテレサが閉じ込められているテレザートに到着した。
 ここで原作ならテレサは自分の力を振るうことを嫌って、最初ヤマトクルーの協力要請を拒否するのだが
この世界では会談の末、ヤマトと地球連邦への協力を是としたのだ。
 切っ掛けを作ったのは原作にはいない人物だった。

「祈るだけでは何も解決しない! 実際に銀河系中心部ではシャルバート教の信者は祈りを捧げているにも
 関わらず、恐怖政治を敷くボラー連邦に弾圧されている!」

 そう言ったのは、会談に同行していた名無しの空間騎兵隊隊長(斉藤ではない&転生者ではない)だ。
 斉藤と違って彼は理路整然と反論していく。バース星では、命を掛けてヤマトの乗っ取りを図らざるを得なかった
囚人達と戦い、後に彼ら尋問をしただけにその言葉には重みがあった。 

「ですが……」

 ゆれるテレサ。これに古代や島が追い討ちをかける。

「協力してもらえないでしょうか? 仮にガトランティスを退けることができたとしても、ボラーが出てくれば結局は
 同じことになりかねない」
「そうです」

 結果的にテレサは折れ、ヤマトクルーと話し合った上、テレザートを自爆させることで白色彗星を食い止めることになる。
 勿論、テレサ本人が死なないようにした。ここまでなら原作に近かったかもしれない。だがヤマトを不沈艦とする要因①で
ある真田がここで口を挟む。

「白色彗星を効率的に食い止めるにはタイミングが重要だ」

 かくしてタイミングを見て、テレザートは自爆する。
 それが第二の分岐点となった。

779earth:2011/09/16(金) 23:14:40
 テレザートの自爆によって大打撃を受けた都市帝国は、防御スクリーンでもあった本体周辺のガス帯を完全に
吹き飛ばされた。さらにその帝国の機能そのものが一時的に麻痺状態に陥った。
 あちこちから黒煙があがり、都市の機能は麻痺した。摩天楼の集合体のような都市は真っ暗となっていた。

「全ての回線を速やかに立て直せ!」

 大帝であるズォーダーは混乱する帝国上層部を叱責して、事態の収拾を図った。
 だがその隙を見逃すほど、ヤマトは甘くは無かった。伊達にガミラス帝国を滅ぼした船ではないのだ。

「波動砲発射!」

 機能不全に陥った都市帝国に奇襲を仕掛けた上、ヤマトは容赦なく波動砲を撃ち込んだ。
 何とか迎撃しようとしたガトランティス帝国軍部隊は、コスモタイガー隊によって悉く阻止されてしまったので
成す術がなかった。
 都市帝国の本体は直径15キロ程度。波動砲の破壊力を持ってすれば破壊することは容易だった……かくして
都市帝国は巨大戦艦諸共、元々テレザートがあった宙域で崩壊してしまった。
 
「ば、馬鹿な!」

 大帝は巨大戦艦に乗り込むことも出来ず、他の帝国首脳と共に都市帝国の崩壊に巻き込まれ、爆炎の中に消えた。
 ちなみにサーベラーの策略でヤマトとの戦いで敵前逃亡をしたとの濡れ衣で監禁されていたデスラーは、相変わらずの
不死身振り、もとい悪運と副官であるタランの手で何とか脱出に成功。そのままガミラス残存艦隊に拾われることになる。
 しかしデスラー艦は失われており、支援者であるガトランティス帝国が崩壊。加えて地球のバックには他の星間国家が
付きつつあるという状況では、さすがのデスラーもヤマトへの復讐を挑む決断はできなかった。

「暫しの別れだ。だが……私は必ず戻ってくるぞ」

 こうしてデスラーは雌伏の時を過ごすことを決意した。

780earth:2011/09/16(金) 23:15:11
 デスラーのことはヤマトの乗組員も知らなかったが、取りあえず白色彗星は撃破できたのは事実。
 このためヤマトのメンバーは鼻高々に防衛軍司令部に白色彗星を撃破したことを報告したのだ。

「……そうか。よくやってくれた」

 詳細な報告を聞き、誰もが喝采をあげる中、参謀長は少し乾いた笑みを浮かべつつヤマトの奮戦と戦果を称えた。
 いや称えるしかなかった。何しろ彼らは表向き、新たな脅威であるはずのガトランティス帝国の本拠地を最小限の
犠牲で撃滅したのだ。
 ましてヤマトを派遣するように防衛会議に提案したのは参謀長自身。ヤマトは与えられた任務をこなしたにすぎない。
表向き、彼らには非難される理由はなかった。

「と、とりあえず都市帝国の残骸を調査してくれ。何か有益なものが見つかるかも知れない」

 参謀長はそう言って後は別の人間に任せた。
 そして防衛軍司令部の指令室を後にする。彼は暫く廊下を歩き、周囲に誰も居ないのを確認すると叫んだ。 
 
「……何だ、そりゃあ!?」

 これまで準備した入念な計画や戦略を、名前ありのレギュラー陣によって容赦なくぶち壊された男の魂の叫びだった。

781earth:2011/09/16(金) 23:19:06
あとがき
テレサ&真田さん無双といったところでしょうか。
ガトランティス艦隊は都市帝国壊滅で浮き足立つでしょう……
まぁボラー連邦も唖然呆然でしょうけど(爆)。

782earth:2011/09/18(日) 00:19:38
第19話です。

 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第19話

 ヤマトは防衛軍司令部の指示を受けて、都市帝国の残骸を細かく調査した。
 波動砲によって都市帝国は滅茶苦茶に破壊されていたが、破壊を免れた部分もあったし、崩壊の際に生まれた大量のデブリは
宝の山でもあった。
 巨大戦艦の残骸や、比較的損傷が少なかったデスラー艦は最優先で確保された。ただしあまりにも確保しなければならない
物品が多いので、地球防衛軍司令部はただちに高速艦を急行させることを決定した。

「目ぼしいものは全て奪うのだ!」

 参謀長の台詞は些か非道だったが、ガミラスに続いて、侵略の危機にさらされた人類からすれば当然であった。
 また今後の過密スケジュールを知る転生者たちにとって、都市帝国の残骸から得られるであろう資源や技術は垂涎の的であった。

「暗黒星団帝国、いやデザリウムと接触する前に地球連邦の国力と防衛軍をさらに強化しなければならない」

 形振り構っていられる余裕は地球に無かった。
 彼らは広大な宇宙においては地球連邦が小国に過ぎないことをよく認識していたのだ。
 
「あとはテレサ、彼女の扱いだな……何しろ彼女の力が公になれば争いの火種になる」

 参謀長の意見に対して、転生者仲間からは彼女の存在を公にして、ボラー連邦に対する抑止力としてはどうかという意見もでたが
参謀長はこれを否定した。

「あのボラーが簡単に引き下がるとでも? ただでさえ警戒されるのに、火種を増やしてどうする?」

 ガトランティス帝国から技術や資源を収奪すると同時に反物質を操るテレサについては、その存在を隠匿することが決定された。 

「下手に公表したらボラー連邦との関係が揺るぎかねない」

 防衛会議の席で放たれた連邦高官の台詞は正鵠を得ていた。
 地球連邦首脳部も、心の底からボラー連邦を信用したわけではない。彼らは敵対するより協調するほうがメリットが大きいと判断した
からこそボラーと付き合っているのだ。勿論、ボラー連邦とて同じこと。
 そのメリットを悪戯に失わせる意味は、今のところなかった。

783earth:2011/09/18(日) 00:20:23
「厄介な存在だ。だがこの際、彼女には色々と地球に協力してもらう。島という丁度良い餌もある」

 防衛軍司令部の自室で、参謀長は転生者仲間(表向きは部下)にそう告げる。

「……悪役みたいな顔をしていますよ、参謀長」
「何とでも言え。全く」
「まぁこれで防衛艦隊はほぼ無傷です。良かったのでは?」
「戦術的にはな。だが戦略面では問題が大きい。
 何しろ地球が単独でガトランティスを撃退したとなれば、銀河の盟主を自称する困った大国が煩い。
 彼らの怒りを何としても前衛艦隊にぶつける必要があるだろう……地球が迷惑を被らないためにも」
「では?」
「そうだ。シリウス、プロキオンの攻略作戦を提案する。
 本来は前衛艦隊と都市帝国撃滅後に提案するつもりだったんだが、こうなってしまった以上、止むを得ない」

 だが地球が単独で白色彗星撃滅に成功したとの情報を受け取ったボラー連邦の動きは予想以上に早かった。
 勿論、べムラーゼなどボラー首脳部も報告を受けた際には唖然となったが、即座に頭を切り替えた。

「銀河系に展開するガトランティス帝国軍を撃滅するのだ!」

 べムラーゼの厳命を受けたボラー連邦軍は、集結を待たずして大攻勢に出ることになる。
 前線指揮官の中には十分に兵力を集中させた後に攻勢に出るべきと主張する者もいたが、政治の事情がそれを許さなかった。 
 
「このままでは面子が丸つぶれではないか!!」

 ボラー連邦の威信をかけて、ボラー連邦軍はシリウス、プロキオンへの攻勢を開始した。
 その一方で彼らは対地球戦争も想定しはじめる。地球がボラー連邦にとっても脅威になりえる国家と認識された瞬間だった。

784earth:2011/09/18(日) 00:21:05
 地球とボラーの動きが慌しくなっている頃、ガトランティス帝国軍前衛艦隊も俄かに騒がしくなっていた。
 
「馬鹿な! 大帝が戦死され、都市帝国が崩壊だと?! そんなことがあってたまるか!!」

 バルゼー提督は旗艦メダルーザの艦橋で、副官にそう言って何度も事実を確認させた。
 そしてそれが真実であることを知ると頭を抱えた。

「大帝が戦死……」

 自軍の根拠地である都市帝国が崩壊し、政府首脳が根こそぎ全滅したことで銀河系に展開している前衛艦隊は根無し草に
なったと言っても良い。
 さらに情報が拡散すれば兵士達の動揺も予想される。何しろこれほどの一方的な大敗など帝国建国以来始めてのことだ。

「ヤマト、ただの戦艦1隻に帝国が敗れるというのか……」
「提督、この際、アンドロメダ星雲に引き上げ、態勢を整えるべきでは?」

 副官の提案は正論だったが、バルゼーは簡単に首を縦に振らない。

「ここまでやられて何もせずに引き返すことなどできるか! せめて地球に一撃を与えなければならん!!
 情報を秘匿せよ。それとプロキオンのゲルンに通信回線を繋げ!!」
「了解しました!」

 かくしてガトランティス帝国軍は事情を知って浮き足立つ人間を押さえつつ、攻勢に出ることになる。

「大帝の敵討ち、そして帝国の威信にかけて地球艦隊を撃破するのだ!」
「侵略者共を逃がしてはならん! ボラーの威信にかけて撃滅するのだ!」

 かくして相変わらず地球防衛艦隊は蚊帳の外に置かれたまま、大艦隊決戦が生起しようとしていた。
 この動きを見ていた防衛軍の某高官はボソリと呟く。

「防衛艦隊は壊滅しないで済んだが、引き換えに出番が壊滅した気がするのは何故だろうか……」

785earth:2011/09/18(日) 00:23:18
あとがき
というわけでボラーVSガトランティスです。
ボラーは当初想定されていた戦力より少ない戦力で出撃します。
それでも大艦隊ですけど……。
地球防衛艦隊は見事なまでに出番がなくなっています(笑)。
戦略面でみれば正しいのですが。

787earth:2011/09/18(日) 10:30:39
第20話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第20話

 西暦2201年12月7日、ガトランティス帝国軍とボラー連邦軍による大艦隊決戦が生起した。
 地球防衛軍を撃滅するべく太陽系に向けて侵攻するガトランティス帝国軍に、ガトランティス帝国軍撃滅を目論む
ボラー連邦軍が襲い掛かる形で発生した艦隊決戦は、地球人類にとってはじめて見る大規模な空母決戦から始まった。

「100隻以上の空母、戦闘空母による大決戦か」

 参謀長は司令部で報告を聞くと感心したような、羨ましがるような顔をした。
 何しろ史上稀に見る大決戦なのだ。華やかな出番を願う参謀長としては複雑な思いを抱くのも無理は無かった。 

「……偵察部隊に情報収集を怠るな、と伝えろ。他国の戦争でも、色々と参考になるからな」
「はっ!」

 史上稀に見る航空戦は数で勝るボラー軍の辛勝で終った。
 ガトランティス帝国軍は保有空母全てを撃沈、或いは飛行甲板をズタズタにされ空母としては役立たずとなった。
 ボラー連邦軍も保有空母の大半がやられてしまったが、空母2隻が辛うじて戦場に踏みとどまることに成功。これによって 
ボラー連邦軍は限定的ながらも制空権を握ることが出来た。
 しかしバルゼーは容易に引き下がることはなかった。

「ゲルン、お前の艦隊は下がれ! 主力は密集隊形をとり前進する!!」
 
 バルゼーは旗艦メダルーザを先頭にしてボラー艦隊に向けて突撃した。
 勿論、ボラー艦隊司令官のハーキンス中将は空母2隻でガトランティス艦隊を攻撃したが、ガトランティス艦隊を阻止する
ことは適わなかった。
 密集隊形をとり、さらに回転砲で応戦するガトランティス艦隊によって航空戦力は少なくない打撃を受け取った。
 
「こうなれば艦隊決戦で叩き潰す!」

 ハーキンス中将は航空攻撃を切り上げると、艦隊を再編した後、ガトランティス帝国軍との艦隊決戦に臨んだ。
 数の面ではボラー連邦軍はガトランティス艦隊を上回っていた。正面勝負なら互角以上に戦えるはずだった。
 だがその目論見は、原作で地球防衛艦隊に大打撃を浴びせた『火炎直撃砲』によって覆される。

788earth:2011/09/18(日) 10:31:11
 拡散波動砲の2倍の射程を誇る火炎直撃砲は、ボラー連邦艦隊を滅多打ちにした。
 戦力の中核であった空母2隻が撃沈され、続いて戦艦が一方的にアウトレンジ攻撃で撃沈されていく。
 
「これが敵の切り札か!」
「ど、どうされますか?」
「浮き足立つな! 距離を詰めるぞ!!」

 ハーキンス中将はそう言って全速力でガトランティス艦隊に接近していった。だがそれは致命的な事態を引き起こした。
 距離を詰めていく途中、ハーキンス中将が乗る旗艦が火炎直撃砲の直撃を受けたのだ。
 地球防衛軍が誇るアンドロメダ級戦艦でさえ撃沈できるエネルギーの前に、旗艦の装甲は意味を成さなかった。

「ボラー艦隊旗艦撃沈!」

 この報告は地球防衛軍司令部にも衝撃を与えた。

「信じられん」
「あの威力で、あの射程。そして高い連射能力……防衛艦隊も唯ではすまないぞ」
「これがガトランティス帝国軍の実力か」

 地球では考えられないほどの物量のぶつかり合い、そして今の地球の科学力では到底実現できないであろう超兵器の
存在は白色彗星を撃破したことで少し天狗になっていた地球防衛軍高官たちの鼻をへし折った。
 同時に波動砲に依存することが危険であることも明らかになり、参謀長の新戦術構築の主張を鼻で笑っていた人間達は
真っ青になった。

「もしもあそこにいるのが防衛艦隊で、波動砲発射隊形をとっていたら、一方的に滅多打ちになっていただろう」

 参謀長の言葉に誰もが沈黙した。
 全てのエネルギーを波動砲に回すということは、身動きが取れなくなるということであり、的同然なのだ。

「戦術の見直しが必要だろう」

 藤堂の言葉に反対意見は無かった。

789earth:2011/09/18(日) 10:32:48
 ボラー連邦軍は旗艦が撃沈されたことで浮き足立った。
 そしてこれを見逃すバルゼーではなかった。伊達にアンドロメダ星雲で戦歴を重ねたわけではないのだ。
 大戦艦や駆逐艦、ミサイル艦などが一斉に砲門を開き、その圧倒的火力をボラー連邦艦隊に叩きつけた。

「反撃する! 全砲門開け!!」

 ラジェンドラ号のラム艦長は混乱する部下達を叱責した後、周りの艦を統制して反撃を開始するが、そのようなことが
出来た艦長は少数だった。多くのボラー連邦軍部隊は、混乱した状態のままガトランティス軍によって蹂躙されていった。
 その光景に、会戦をモニターしていた地球防衛軍司令部の面々は沈黙した。

「「「………」」」 

 かくしてボラー連邦軍艦隊は壊滅した。
 だがガトランティス軍も少なくない消耗を強いられていた。

「くそ。敵の数が多かったせいで、エネルギーや弾薬が消耗しすぎた。それに損傷した艦も少なくない」

 バルゼーは報告を聞いて顔を顰めた。
 
「数だけが取り柄の三流軍隊が、手間取らせおって」
「どうされますか?」
   
 艦隊決戦に勝利したものの、バルゼー艦隊が受けた損害は少なくない。さらに空母部隊は事実上壊滅している。

(都市帝国をただ1隻で撃滅したヤマト、そしてそれを超える戦艦を持つ地球艦隊が待ち構える太陽系にこのまま向かう
 のは危険すぎるか)

 バルゼーは勇猛な武人であったが無謀ではなかった。彼は補給のために一旦艦隊をシリウスに引き上げていった。

790earth:2011/09/18(日) 10:34:42
あとがき
機動要塞があればボラーが勝てたのですが……急ぎすぎて失敗しました。
というわけでボラー軍再び面子丸つぶれです。
何人の首が物理的に飛ぶだろうが……
何とか防衛軍にも出番が回ってくるかも知れません(笑)。

792名無しさん:2011/09/18(日) 11:34:58
>>791
ここは投稿スレ

793名無しさん:2011/09/18(日) 11:38:24
男は黙って削除依頼、原則として、だけど

794earth:2011/09/18(日) 18:23:59
第21話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第21話

 ボラー連邦軍艦隊がガトランティス帝国軍に大敗を喫し、壊滅したという情報はボラー連邦上層部に衝撃を与えた。
 有利な条件(数で勝り、さらに敵の根拠地である白色彗星を撃破している)にも関わらず、このような大敗北を喫した
ことはボラーの威信を失墜させるものだった。 

「首相、お待ちを。も、もう一度だけチャンスを!!」
「お前のような無能者は要らん! 連れて行け!!」

 首相官邸に弁明に訪れた軍高官は、べムラーゼの指示を受けた秘密警察の人間によって逮捕され、処刑された。

「機動要塞、それにプロトンミサイルも投入せよ。何が何でもガトランティス帝国軍を撃滅するのだ!
 いや、ここまでコケにされては銀河系にいる奴らを潰すだけでは足りん。アンドロメダ星雲への大遠征も準備せよ!!」

 怒れる独裁者べムラーゼの言葉に逆らえる人間はいなかった。
 尤もべムラーゼの介入で、戦力の結集が終っていない状況で攻勢を余儀なくされた軍の高官達の中には、大敗の責任の幾らかは
べムラーゼにあると思っている者も多かった。
 だがそれを口にするのは、自分の処刑執行書類にサインするに等しい。このため彼らは必死にガトランティス帝国軍殲滅のの準備を
進めた。

「今度こそは勝利して見せます!」

 だがべムラーゼの機嫌は直らない。
 
「地球人は二度も勝ち星を挙げているというのに、我が連邦はいいところ無し。何故かね?」
「ち、地球人は宇宙に進出前から同族同士で戦ってた、戦闘民族といってもよい連中です。
 それがガミラスにさえ勝ち、このたびの活躍の理由になっているのかと……」
「加えて彼らはこの前までガミラスと戦っており、準戦時体制といってもよい状態です。準備の差は大きいかと」

 軍人達の言い訳を聞いたべムラーゼは「ふん」と鼻を鳴らす。

「我が軍の軍人が得意なのは言い訳だけだな。次は必ず勝利せよ。星ごと破壊してもかまわん」

795earth:2011/09/18(日) 18:24:31
 一方、地球防衛軍ではボラー連邦軍の敗因を分析していた。

「敵の新型長距離砲。都市帝国の調査で『火炎直撃砲』という名前であることが判明しましたが、これが問題です」

 防衛軍司令部の会議室では多数の名無しキャラ達が、この新兵器にどう対処するかで話し合っていた。
 しかし波動砲の2倍もある長距離砲となると正面からの対処は難しいという結論がそうそうに出た。
 
「幸い、敵空母部隊は壊滅している。我が軍の宇宙空母やムサシを総動員すれば航空攻撃でしとめることは出来るだろう。
 それに鹵獲したデスラー艦についていた瞬間物質位相装置で奇襲することも可能だ」
 
 参謀長の意見に大艦巨砲主義者(特に波動砲を過信していた人達)がムスッとした顔をするが、反論は無かった。
 
「それとプロキオンの攻略作戦を政府に提案したいと思う。何か意見は?」
「参謀長、ガトランティス帝国軍は空母部隊こそ壊滅しましたが、打撃部隊は健在です。危険なのでは?」
「確かに危険な作戦だ。だが、このままだとボラー連邦がこの地域を制圧するだろう。連邦の今後を考えると好ましくない。
 それに……ボラー連邦が態勢を整える前に、奴らが態勢を整えて太陽系に押し寄せないとは断言できないだろう?」
「積極的自衛権の行使……ですか」
「そういうことだ。また今回、ヤマトとムサシを組ませたα任務部隊を結成し、シリウスでの独立任務に当てたいと思う」
「……ヤマトをですか?」

 何人かは嫌な予感しかしないという顔をするが、参謀長はどこぞの特務機関司令官のような黒い笑みを浮かべ言い放った。

「そうだ。ガミラス本星を滅ぼし、白色彗星さえ撃破して見せた、彼らの活躍に期待しようじゃないか」

796earth:2011/09/18(日) 18:25:38
 ここに至り、参謀長はヤマトの主人公補正を存分に使うことにしたのだ。
 勿論、それだけに頼ることはしないが利用できるものとして作戦に組み込むつもりだった。

(馬鹿とハサミは使いようだ。ガン○ムのホワイトベース隊みたいな活躍を期待するとしよう)
 
 藤堂と参謀長は防衛会議の席で、プロキオン攻略作戦を提案した。紆余曲折の末、防衛会議はこれを承認。
 地球防衛艦隊の機動戦力の半数をつぎ込んだ大作戦が行われることが決定された。
 加えて防衛軍のさらなる戦力の強化のために波動砲3門、51センチショックノン砲4連装5基という凶悪な打撃力を持った
『改アンドロメダ級』とも言うべき戦艦を速やかに建造することが決定された。

「『しゅんらん』の建造が可能になったな」

 幸いというか参謀長の根回しもあり、アンドロメダ級の建造のために多数の部品が調達されていたので、建造は比較的早く
できると考えられていた。
 これによって地球防衛艦隊はアンドロメダ級5隻に加え、来年中には改アンドロメダ級を2隻手に入れることになる。
 戦闘空母の建造も進められており、既存の宇宙空母と併せると原作では考えられないほど充実した戦力を地球防衛軍は
持つこととなった。  

「個人的には自分が乗って指揮を取りたいが……くっ何故、私は前線に出れないんだ!?
 いやここで連邦の支配地域が広がれば前線ポストにも増えるはず。諦めるのは早い」

 参謀長は気合を入れて、このたびの作戦を成功させようと決意する。
 だがそれが、さらに自分の希望を遠ざけることに彼は気付くことはなかった。

797earth:2011/09/18(日) 18:27:12
あとがき
第21話でした。
いよいよプロキオン攻略戦です。シリウスは……ボラー連邦に譲ります(笑)。
参謀長は執念強く動きますが、もう『試合終了』にしたほうが楽ですね。

798earth:2011/09/19(月) 21:43:23
第22話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第22話

 ボラー連邦艦隊は大敗したが、勝利したガトランティス帝国軍も消耗していた。特に空母部隊は壊滅的打撃を受けた。
 航行不能になった艦は機関部を爆破後に遺棄されたが、地球防衛軍からすれば宝の山であった。都市帝国で得られた
数々の技術や希少資源で味をしめた防衛軍上層部は、ただちにこれらの回収を命じた。
 勿論、ガトランティス帝国軍の攻撃を受けることを懸念して、反対する意見もあったが参謀長はこう言って退けた。 

「うち(地球)は金と資源が無いんだ。仕方ないだろう」
「「「………」」」

 世知辛かったが、軍というのは金食い虫なので、何かしらの臨時収入があるとなれば見逃せなかった。
  
「ボラーは良いな。金と資源と人的資源が有り余るほどあって……」
 
 密談の席で零れる参謀長のぼやきに、他の転生者が肩をすくめる。

「仕方ないですよ。こちらは零細の恒星系国家。彼らは銀河を支配する超大国。地力が違いすぎます」
「正直、金持ちとはあまり喧嘩したくはないですよ。というか何とかうまく付き合って、旨い汁を吸いたいものです」
「人口が減ったせいで市場も縮小していますからね……復興特需とイスカンダルやガミラスから得られた技術による
 技術革新で経済成長していますが、ボラーと比べると市場は小さい」

 『ずーん』と重たい空気が漂う。何はともあれ時代は変われど、世の中、金だった。  

「何はともあれ、敵から資源と技術を収奪し、それを連邦の強化に役立てよう」

 こうして防衛軍はデブリ回収業者のごとくガトランティス軍艦艇や航空機の残骸を回収していった。
 この際、一部の将校から懸念されたガトランティス軍による攻撃はなかった。
 彼らもボラー連邦軍との戦いで消耗しており、攻撃に出る余裕がなかったのだ。

「都市帝国や巨大戦艦の残骸、さらに今回回収したデブリを利用すれば1個艦隊以上の艦を楽に揃えられる。
 有人艦隊を計画以上に拡張するのは難しいが、無人艦隊の整備には使える。それに太陽系内の防衛線の構築も捗る」
 
 参謀長は上機嫌だった。

799earth:2011/09/19(月) 21:44:02
 地球防衛軍はデブリ回収業者の真似事をする傍らでプロキオン攻略作戦を急いだ。
 土方総司令自らが指揮をとるプロキオン攻略艦隊(戦艦24隻、巡洋艦48隻、宇宙空母5隻が中核)とヤマトと共に独立任務に
当る予定の機動戦艦ムサシが11番惑星基地に集結していた。
 隻数こそガトランティス艦隊に劣るものの、相手は空母機動部隊が壊滅し、主力部隊も消耗していることから十分に戦えると
判断されていた。
 アンドロメダの艦長室で報告を受けていた土方は険しい顔で口を開く。

「ガトランティス帝国軍の大機動部隊が壊滅していなかったら、職を賭してでも反対したな」

 土方の座る机の前に立つムサシ艦長の古代守は頷く。

「確かに」
 
 ガトランティス帝国軍が強敵であることはボラー艦隊の敗戦を見れば明らかだった。
 敵旗艦が持つ火炎直撃砲も怖いが、大戦艦が持つ衝撃砲も侮れない。また駆逐艦の機動力も馬鹿にできない。   
  
「しかしヤマトが白色彗星を潰してくれたにも関わらず、これだけ手強いとは……」
「そうだな。もしも敵艦隊がボラー艦隊と戦わずに太陽系に押し寄せていれば、苦戦は免れなかっただろう」
「敵主力だけでも脅威ですが、あれほどの空母部隊と戦うのはぞっとしません。我が軍も航空戦力を強化していますが」

 機動戦艦の指揮を執る故に、古代守は航空戦力の重要性を理解していた。
 
「やはりボラーと手を結ぶという参謀長の考えは外れではなかったな」
「はい。もっとも進はボラーを毛嫌いしているようですが」

 土方は苦笑した。
 
「あの男は頑固だし、少し青いところがある。古代艦長、いやα任務部隊司令官。頼むぞ」
「お任せください」

800earth:2011/09/19(月) 21:44:47
 ヤマトとムサシはα任務部隊を形成し、シリウス恒星系でガトランティス軍を撹乱する任務を与えられていた。
 たった2隻で後方撹乱という、どこぞのホワイ○ベース隊のような任務だが、ヤマトは艦隊で動くことに慣れていないので  
この任務は適当と思われていた。
 加えてヤマトは白色彗星を撃破したことで、ガトランティス帝国軍にも名前が轟いている。このため、ヤマトがシリウスに
入り込めば、間違いなく食いつくとも予想された。 

「相手からすれば仇敵であるヤマト、そしてその準同型艦であるムサシを何としても討ち取ろうとするだろう。
 厳しい任務になる」
「判っています。ですがこれほどの重要任務を拒否するつもりはありません。それに我々の任務は敵の撃滅ではなく霍乱。
 やりようはあります」
 
 古代進こそ目立たないが、古代守はヤマトがイスカンダルから帰ってくるまで、地球を守りきった地球防衛艦隊の一翼を担った
一流の、そして歴戦の宇宙戦士だった。
 その男の言葉には重みと説得力があった。

「そうか。期待しているぞ」
「吉報をお待ちください」 

 惚れ惚れとする敬礼をして、古代守はアンドロメダの艦長室を後にする。
 ムサシの初陣はもうすぐだった。

801earth:2011/09/19(月) 21:46:49
あとがき
原作ではなかった土方と古代兄の会話がメインでした。
歴史が変化したらなこういう会話もありかなと思いまして。
おかげで話が進んでいませんが(笑)。
いよいよムサシの初陣です。
でもヤマト級2隻が暴れたらどうなることやら……。

802earth:2011/09/20(火) 21:25:02
第23話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第23話


 地球防衛軍は満を満たして、プロキオン恒星系の攻略を開始しようとしていた。

「地球連邦は諸君らの献身に期待している」

 地球連邦大統領が直々に司令部で激励した後、藤堂長官は厳かに作戦の開始を告げる。

「地球人類の興亡はこの一戦にあり。全部隊出撃せよ!!」
『了解しました』
  
 土方は敬礼すると、作戦に参加する全艦隊に出撃を命じた。
 11番惑星基地に集結していた防衛軍艦隊は整然と隊列を整えて地表から離れていく。
 1年前はガミラスによって絶滅寸前に追いやられていた地球人類が作り上げたとは思えないほどの大艦隊だった。

「ヤマトとムサシが出撃しました」 
「続けて土方総司令の攻略艦隊も出撃しました」

 防衛軍司令部でオペレータから報告を聞いた参謀長は「ふむ」と頷くとメインスクリーンに映される宙域図を見上げる。

「プロキオン攻略作戦『アウステルリッツ』の開始だ」
「はい。いよいよガトランティス帝国に対する反攻のときです」
「そして地球が星間国家として飛躍できるかどうかの分岐点でもある。この戦いには勝たなければならない」

 地球連邦はまだ駆け出しの新興国。
 ガミラスを打ち破ったとは言え、その立場は脆弱なものだった。ボラー連邦の気が変わればどうなるか判らないのだ。
 確かにボラーは二度敗れた。二度目に至っては地球防衛艦隊の総数を遥かに超える艦艇を失っていた。
 だがそれでもボラーは立ち上がる余裕がある。それは地球では到底真似は出来ないものだった。

(赤色銀河が現れるまでは我慢だ……)

803earth:2011/09/20(火) 21:28:09
 11番惑星から出撃した後、土方艦隊と分かれたα任務部隊(といっても2隻だが)はシリウス恒星系に向かった。
 ヤマトはこれまで戦死者が皆無なので戦力低下はなく、ムサシと併せればドリームメンバーが揃っており、2隻の『破壊力』は
ずば抜けていると転生者たちは考えていた。

「まぁさすがに二重銀河を吹き飛ばすみたいにシリウスを崩壊させることはないだろう」
「ですが参謀長、メンバー的には『二重銀河の崩壊』の面子に近い気が……」
 
 ムサシ艦長は古代守。技術班長は彼の同期であり天才技術者である大山俊郎、機関長は山崎奨。
 コスモタイガー隊にはヤマトから転属した山本明と鶴見二郎が居る。ちなみに戦闘班長を務めるのは沖田艦長の息子だ。
 乗員のスキルは防衛軍指折り。おまけに名前ありの準主役級も多数乗っているという心強さだった。

「山南はいないし、『しゅんらん』も第7艦隊もない。波動融合反応もない。大丈夫だ。大丈夫だろう。大丈夫と思いたい」
「(湯呑みを持つ手が震えていますよ)参謀長、水と胃薬を持ってきます」 

 参謀長とその部下がオーバーキルを心配していることなど露も知らず、2隻の乗員は意気軒昂だった。
 初陣であるはずのムサシでさえ、誰もが不安を見せず、やる(殺る?)気に満ちている。

「また面倒な任務だな」
「いうなよ、トチロー。司令部もこれ以上、戦力は割けなかったんだ」
「やれやれ」

 真田に勝るとも劣らない地球の頭脳。大山俊郎はそういって肩をすくめる仕草をする。
 尤も口ではそう言いつつも、言葉とは裏腹に表情は暗くない。

「まぁ連中の情報は白色彗星の残骸から大方掴んでいる。
 暗号だろうが何だろうが、あっという間に丸裸にしてやるよ」
「頼むぞ」

806earth:2011/09/20(火) 21:33:53
 ヤマトを含む地球防衛艦隊が出撃したとの情報を入手したバルゼー提督は直ちに迎え撃つことを決意する。
 
「地球人め、目に物見せてくれる!」

 旗艦メダルーザでバルゼーはそう言って気炎を挙げた。
 特に大帝と都市帝国を打ち破ったヤマトも居るという情報は、大帝の敵討ちに燃える彼の闘志を掻き立てた。

「提督、他の地球艦隊はどうされます?」
「ヤマト、そして準同型艦のムサシとやらを沈めるのを優先する! 他の船は後回しだ」

 バルゼーは他の艦には目もくれなかった。
 だがこれには大帝の敵討ち以外の理由もあった。
 彼は勇敢果敢な武人であるものの決して無謀な人間ではなかった。彼は現在の自軍の艦隊では地球艦隊を完全に撃滅する
のは難しいと判断していたのだ。

(空母部隊は壊滅し、我が艦隊も消耗している。さらに地球人にはこちらの奥の手を知られている。これだけでも不利だ。
 加えて兵の中にはアンドロメダ星雲へ帰りたがっている者も多い)

 大帝の死や都市帝国崩壊はいつまでも隠しきれるものではなかった。このため艦隊ではかなりの情報が出回っていた。
 これによる士気の低下は甚だしかった。

(それに大帝が死んだことで本国では反乱が起こっている。おかげで補給も危うい……この際、大帝の仇であるヤマトを
 討ち取り、速やかに本国に帰還するのが適当だろう)  

 合理的な判断だった。だが彼は理解していなかった。相手は不可能を可能にしてきた男達だということを。 
 特に真田と大山。地球人類が誇る二大マッドサイエンティストに加え、古代兄弟を敵に回したガトランティス艦隊は散々な
目に合うことになる。

808earth:2011/09/20(火) 21:36:19
あとがき
ヤマトに拘りすぎるのは死亡フラグ(爆)。
デスラー総統並に悪運が強くないと……。
触らぬ神(地球orヤマト)に祟り無しと言ったところでしょうか。
しかしだとすると参謀長も祟られそうだ(笑)。

誤字が多かったので削除と修正を実施しました。
……疲れているようです。

813earth:2011/09/21(水) 21:10:05

 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第24話

 ヤマトとムサシはシリウス星系に侵入すると、次々にガトランティス帝国軍の拠点を攻撃していった。
 60機も艦載機が搭載できるムサシからは、ヤマト戦闘機隊の倍の数の部隊が発進しようとしていた。

『爆撃隊の護衛頼むぞ』

 ムサシ航空隊隊長である山本は、通信機ごしにムサシ航空隊副隊長である鶴見に念を押す。

『判っています。任せてください。加藤隊長には無様な真似は見せられませんから』
『いや加藤じゃない。ヤマト戦闘機隊に、だ。俺達はいまやムサシ航空隊で、今回はムサシの初陣だぞ』
『了解! ムサシはヤマトの姉妹艦だっていうことを教えてやりましょう』

 ヤマト、ムサシから出撃した戦爆連合70機による猛爆を受けるガトランティス軍は堪ったものではなかった。
 戦闘機隊が応戦したものの、圧倒的な練度と戦意を持つコスモタイガー隊によってあっさり駆逐され制空権を
奪われると、あとは一方的な展開だった。

「た、助けてください! バルゼー提督、このままではこの基地は全滅してしまいます!!」
『うろたえるな! 今から救援を出す! それまで持ち堪えよ!!』
「無理です。もう、我が基地には満足に抵抗をする力が……」

 しかし基地司令官は最後まで自分の台詞を言うことはできなかった。
 ガトランティス軍シリウス方面軍第15哨戒基地司令部は、ムサシ航空隊から放たれた波動エネルギーを籠められた
新型対地ミサイルによって木っ端微塵に爆砕された。

「第15哨戒基地、音信途絶しました……」 
「戦闘開始後、わずか15分で……」

 だがガトランティス軍にとっての悪夢はこれからだった。

814earth:2011/09/21(水) 21:11:05
 ヤマトとムサシのコスモタイガー隊による猛爆、そして直後に突進してきたヤマトの一撃離脱攻撃という
まさに通り魔的な攻撃によってバルゼーが築き上げた拠点は叩き潰されていった。運悪く(?)ヤマトと遭遇した
輸送船など1隻残らず血祭りだった。
 
「ヤマトから攻撃を受けていると連絡してきた後、第23輸送艦隊からの通信が途絶しました!」
「第10資源採掘施設壊滅!」

 旗艦メダルーザの艦橋では、悲鳴のような声で通信兵が凶報を次々に報告する。

「護衛部隊は何をやっていたのだ!?」
「その護衛部隊も全滅したとの報告が……」
「………」

 次々に壊滅していく拠点と部隊。一方でヤマトとムサシは巧みに姿をくらましていた。

(ガトランティス帝国軍がこれほど愚弄されることになるとは……)

 ヤマトとムサシが巧みにガトランティス軍の警戒網を潜り抜けているのは、真田と大山の功績だった。
 彼らはガトランティス帝国軍の通信を次々に解読。これをもとに警戒網の穴を突いたのだ。
 しかし彼らがそれで満足する訳が無い。
 
「ついでに偽のデータも流して撹乱してやろうぜ」
「だな。あとコンピュータウイルスも混ぜて送ってやろう」

 大山と真田の悪巧みによってガトランティス軍の情報ネットワークは半ば麻痺していった。
 これで古代弟の戦闘指揮能力(?)と島の神業的な操艦能力が加わったヤマトが直接襲ってくるのだ。
 堪ったものではない。

「奴らは悪魔の化身か何かか?!」

 ガトランティス軍の将校はそう言って頭を抱えた。
 シリウス方面のガトランティス艦隊主力がα任務部隊に翻弄されたことで、プロキオン方面は手薄となった。
 その隙を突くように、地球防衛艦隊はワープを使って一気にプロキオンへ侵入していった。

815earth:2011/09/21(水) 21:12:00
「糞、迎え撃て!」

 慌ててガトランティス軍は迎撃しようとするが、数で劣るガトランティス軍は防衛艦隊によって包囲殲滅されていく。

「撃て!!」

 土方の号令を受けてアンドロメダ以下の戦艦群のショックカノンが火を噴く。
 ガトランティス軍の大戦艦がその砲火に囚われる。地球の主力戦艦を超える大型艦だったが、ショックカノンの集中砲火を
受けては一溜まりもなく、轟沈した。

「敵空母が艦載機を発進させようとしています!」
「発進させてはならん!」

 先の戦いで辛うじて生き残ったガトランティス軍の大型空母(滑走路4本持ち)が攻撃機を発進させようとする。
 しかし発進させる直前に、アンドロメダから放たれた波動カードリッジ弾3発が命中。弾薬の誘爆も起こり、大戦艦の後を
追う様に火達磨になった後、宇宙の塵と化した。
 逃げ惑う残った船には、防衛軍の巡洋艦以下の高速艦艇が襲い掛かる。もはや戦闘というよりリンチ状態だ。

「逃げる奴はガトランティス軍だ! 逃げない奴はよく訓練されたガトランティス軍だ!!」

 巡洋艦妙高の艦長(勿論転生者)はそう言って、逃げ惑うガトランティス軍艦隊を蹂躙した。
 プロキオンに地球防衛艦隊が来襲したとの情報を聞いて、バルゼーは自分が嵌められたことを悟った。

「おのれ、地球人どもめ!!」 
 
 何と言うが遅かった。このままではプロキオンは陥落するのは間違いない。
 そうなればバルゼー艦隊は二正面、いや三正面(ボラー軍、太陽系の地球防衛軍、プロキオンの地球艦隊)を強いられる。 

「何としても大帝の仇であるヤマトだけでも沈めておかなければ! 偵察機を出せ! 何としても見つけるのだ!!」

 この彼の願いが天に通じたのがヤマト発見の報告が齎される。  

「よし、艦隊を急行させよ!」

 かくしてシリウスにおける最後の戦いの幕が開ける。

816earth:2011/09/21(水) 21:15:03
あとがき
地球防衛艦隊は強いんですよ……ヤマトの引き立て役にされる時は(笑)。
防衛軍が強化されたせいで、ヤマトの無双振りが強化されそうです。
原作でも無茶苦茶なのに(爆)。

817earth:2011/09/22(木) 22:17:05
少しヤマトとムサシが強すぎたかもしれない(汗)。
というわけで第25話です。

 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第25話

 ヤマト発見の報告を受けたバルゼーは即座に艦隊を差し向けた。だがそこに居たのは大山が用意していたダミーだった。

「おのれ、小癪な!!」
 
 ダミー艦を全力で破壊した後、バルゼーは再び全方位で索敵を命じた。
 しかし帰ってきたのは『複数』の『ヤマトを発見した』という内容の報告だった。
 真田と大山特製のコンピュータウイルスによる情報ネットワークの混乱もあって、バルゼーはどれが本物のヤマトが
全く判らなかった。
 さらに一部の偵察部隊からはヤマトと思われる艦がシリウスから脱出しようとしているとの報告さえあった。

「奴らの任務が我々の霍乱であったのなら、用済みと言うことで離脱しても不思議ではない……」
「提督、どうされますか?」
「艦隊を3つに分けて捜索する。兵力の分散になるがしかたあるまい。それに分艦隊とは言っても数では圧倒している。
 易々とは負けはせん!」 

 しかしそれこそがα任務部隊指揮官である古代守の狙いだった。
 偵察機からの報告を艦橋で聞いたこの男は、不敵な笑みを浮かべる。

「奴さん、罠にかかったな。凝ったダミーを作った甲斐があったぜ」
「ああ。トチローには感謝だな」

 古代進ならここで敵旗艦への突撃……と言う方法をとったかも知れない。だが、彼はさらに辛辣だった。

「攻撃隊発進。だが全力では攻撃するな。こちらも消耗しているように見せかけるんだ。
 それとヤマトにも『予定通りポイントRに待機』と伝えろ」
「了解」

818earth:2011/09/22(木) 22:17:43
 ムサシの攻撃隊に襲われたのは旗艦メダルーザ直属部隊から最も離れた第2部隊だった。
 だがムサシ航空隊の攻撃がいつもの精彩に欠けることを見抜いた第2部隊司令官はバルゼーにその旨を報告した
後に追撃に入る。

「奴らも疲れているのだ! 追え!!」

 第二次攻撃部隊が少数であったことも、彼らの認識をより強固にした。
 だがそれは、古代守の思う壺だった。

「これだけ暴れたのだから、こっちも疲れているに違いない。いやきっとそうだ……と思い込ませる。辛辣な手だな」
「心理戦も戦術のうちさ」

 この光景を見ていた沖田(息子のほう)は戦慄する。

(これがうちの艦長か……)

 虎の子の艦載機まで出してムサシの居場所を突き止めた第2部隊はムサシだけでも撃沈するべく急進した。
 本来は戦力の結集を待つのが適当なのだが、ムサシが逃げ出したとの報告を受けてはそうは言ってられなかった。

「さて、連中をポイントRに誘導してやろう」

 こうしてムサシは巧みに付かず離れずで第2部隊を引き付け、最初の作戦通りポイントRにまで誘導していった。
加えて小数のコスモタイガーで巧みに第2部隊の動きを牽制する。このため第2部隊はいつの間にか狭い宙域に密集する
ことになった。

「さすが兄さんだ」

 現れた敵艦隊を見て古代進は感嘆し、真田も相槌を打つ。 

「同期でも指折りの指揮官だからな、あいつは。さて古代、いつまでも見ているわけにはいかんぞ」
「勿論ですよ」
「ではいくぞ。岩盤爆破!」

819earth:2011/09/22(木) 22:18:22
 小惑星帯に隠れていたヤマトは周囲に纏っていた岩盤を爆破して姿を現す。
 ムサシの追撃に夢中になっていた第2部隊にとっては青天の霹靂であった。

「や、ヤマトです。3時の方向からヤマトが現れました!!」
「何?!」

 慌ててヤマトに艦首を向けて攻撃態勢に入ろうとする第2部隊。だがそれは遅かった。

「波動砲発射!!」

 先手必勝とばかりに、ヤマトから放たれた必殺の波動砲が第2部隊を襲う。
 ムサシ航空隊の手によって巧みに一部の宙域に追い込まれていた第2部隊は、その半数以上が波動砲の一撃の前に
宇宙の塵と化した。
 
「よし、今だ。反転180度!」 

 第2部隊の多くが消滅したことを見た守はムサシを反転させ、艦首を第2部隊残存艦に向ける。

「全コスモタイガー隊発進! 本艦はこれよりヤマトと共に敵艦隊に突撃。一撃を加えた後に離脱する!!」
「「「了解」」」

 このあとの展開は言うまでもない。
 コスモタイガー隊のミサイルや、ヤマトとムサシの46センチショックカノン、艦首ミサイルが残ったガトランティス艦艇を
次々に火球に変えていった。

「何という砲撃精度だ」

 大戦艦の艦長はそう唸った。
 特にヤマトの砲撃の命中率はずば抜けていた。それは古代だけでなく、砲術科チーフの南部の才覚を示すものだった。

「凄い命中率だな。沖田戦闘班長、ヤマトに負けるなよ」
「任せください! 修正、仰角+2! 撃て!!」

 航空機を先頭にして戦艦と戦闘空母が敵艦隊を挟撃するという、後に古代チャージと言われる戦術によって第2部隊は 
20分も経たないうちに1隻残らずデブリに成り果てた。一方的な勝利だった。

820earth:2011/09/22(木) 22:18:52
 第2部隊が文字通り全滅(軍事的な意味の全滅ではなく)したとの報告は、猛将バルゼーをも呆然とさせた。 

「馬鹿な。20分も経っていないのに、第2部隊が全滅だと?!」

 勿論、バルゼーは最初は信じなかった。
 だが急行した宙域にかつて第2部隊の艦船だった物の成れの果てが漂っているのを見ると、それが事実であることを
認識せざるを得なかった。

「地球人、恐るべし……アンドロメダ星雲で叩き潰してきた蛆虫共とは比べ物にもならない」

 ガトランティス主力艦隊の3分の1が成す術も無く2隻の戦艦に捻り潰された……この事実は将兵の士気を打ち砕く
には十分すぎた。
 白色彗星を砕き、シリウス恒星系の自軍拠点をいいように蹂躙し、さらに次に第2部隊を赤子の手を捻るかのように
殲滅する……これまで長きに渡って侵略戦争を続けていた彼らにとっても、このような悪魔のような敵は初めてだった。

「提督……」
「判っている……」

 バルゼーは項垂れてシリウスからの、銀河からの撤退を決断する。このままでは全滅すると判断したからだ。 
 だが彼らにとっての試練はそれで終わりではなかった。
 これから彼らガトランティス帝国軍将兵は、自分達がどんな星に手を出そうとしたかを嫌と言うほど思い知ることになる。

821earth:2011/09/22(木) 22:20:13
あとがき
触らぬ神に祟り無し(笑)。
次回、完全決着です。参謀長の胃がもつかどうか……。
あとボラーのSAN値も(爆)。

822earth:2011/09/23(金) 08:58:30
防衛艦隊が活躍する第26話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第26話


「「「………」」」

 密談の席にも関わらず、転生者たちは黙りこくっていた。誰もテーブルに出ている料理に手を出さない。
 だが何時までも黙ったままでは話が進まないと思ったのか、一人の男が探るように口を開く。 

「どうします?」
「やってしまった以上は仕方ないだろう。
 前線部隊の指揮は、土方提督に任せていた……後方でいちいち指示するよりは臨機応変な対応が出来るように。
 それにプロキオンを落とした後、ヤマトとムサシの支援、敵軍の追撃を理由に行動されては罰することも出来ん」
 
 参謀長は苦い顔だった。

「だがまさかこうなるとは思わなかった。
 まぁヤマトとムサシが大暴れするのは……下手をすればオーバーキルする可能性があることは判っていたが」
「『原作』、いや歴史の修正力と言う奴でしょうか?」
「さぁな。だが問題はボラーの出方だ。プロトンミサイルやワープミサイルを地球に向かって乱打されたら……」

 参謀長の台詞に誰もが冷や汗を流す。

「防衛軍はボラー連邦と戦って勝てますか?」
「防衛軍が戦線を支えている間にヤマトとムサシをボラーの首都に殴りこませるなら何とかなる……『かも』知れないが
 それをやると多分、いや間違いなく防衛艦隊は壊滅するだろう。ヤマトは勝ったが屍累々といったところが関の山だな」
「「「………」」」 

 頭痛がしてきた参謀長は眉間を揉むと嘆息する。

「いや勝てるとは思っていたさ。しかし相手を根こそぎ殲滅ってどういうことだ……」

 α任務部隊が大暴れしたことで、ガトランティス軍の大部分がシリウスに拘束された。
 これによってプロキオンのガトランティス軍守備隊は無縁孤立となり、防衛艦隊の猛攻によって殲滅されることになる。
 だがここで終らないのが土方という男だった。

823earth:2011/09/23(金) 08:59:35
 時は遡る。
 プロキオン攻略後、土方はα任務部隊のことを気に掛けていた。

「シリウスでの戦いはどうなっている?」
「最新の報告ではガトランティス軍を翻弄しているようです」

 幕僚の答えに土方は少し考え込む。

「ふむ……空母部隊の派遣は可能か?」
「空母部隊ですか? 確かに派遣できますが、司令部からの命令には」
「構わん。たった2隻で敵を翻弄しているヤマトとムサシ。彼らを支援するのに何を躊躇う必要があるのだ」

 自分達のためにたった2隻で死地に向かったα任務部隊。彼らを見捨てることが出来る宇宙戦士など防衛艦隊にはいない。
 まして彼らには今、手持ちの兵力に余裕があるのだ。

「了解しました! ただちに空母部隊に連絡します!!」

 青のコートの幕僚はすぐに通信兵に指示を出した。するとすぐに空母部隊から返答が帰ってくる。

『こちら第1航空戦隊。いつでも出撃は可能です』
『第2航空戦隊も同様です』
『護衛部隊も準備は整えています! いつでも発進できます!!』

 この言葉に土方は頷く。

「よし出撃せよ。本隊も後始末が終ったら、そちらに向かう!!」

 かくして宇宙空母5隻、主力戦艦2隻、巡洋艦4隻、駆逐艦16隻から構成される空母機動部隊(第51任務部隊)が
本隊に先行してシリウスに全速力で向かうことになる。

「ヤマトとムサシを支援するんだ!」

 第51任務部隊の人間はそう意気込む。
 だが彼らは知らない。すでにヤマトとムサシによってガトランティス帝国軍は可哀想な位、フルボッコにされていたことを。

824earth:2011/09/23(金) 09:00:08
 ガトランティス帝国軍がシリウスから撤退する準備を開始した頃、α任務部隊は補給と整備に追われていた。
 尤も指揮官である古代守は、これ以上無茶をするつもりはなかった。

「敵の3分の1は削ったんだ。十分だろう。あとは地味な嫌がらせで十分だ」

 彼らは『無理』をすることなく哨戒艦、輸送船を通り魔的に撃破、撃沈していった。
 そしてその行為はガトランティス帝国軍の撤退を遅延させる効果があった。
 バルゼーは甲羅の中に引篭もるかのように防御を固めれば、多少時間が掛かっても何とかなると判断したのだがその判断は
些か、いやかなり甘かった。
 ガトランティス帝国軍が撤退を本格的に撤退を開始する直前、プロキオンから駆けつけた第51任務部隊がシリウスに着いたのだ。
(さらに土方率いる本隊もプロキオンを完全に片付け、シリウスに向かっていた)
 
「敵が撤退を?」
「はい。α任務部隊の報告によれば敵はすでに総兵力の3分の1を失っているとのことです。これ以上の損害には耐えられないと
 判断したと思われます」

 第51任務部隊司令官兼旗艦レキシントン艦長はヤマトとムサシの暴れっぷりを聞いて驚愕するが、すぐに頭を切り替える。

「α任務部隊は?」
「嫌がらせ程度の追撃をすることを提案しています」
「……そうか。ならばこの際、我々も参加させてもらおう。嫌がらせではなく本格的な追撃に」

 α任務部隊の支援……それを名目に第51任務部隊は参戦する。
 かくしてバルゼーの受難が始まった。

825earth:2011/09/23(金) 09:01:03
 撤退しようとするバルゼー艦隊に、α任務部隊と第51任務部隊の双方から発進したコスモタイガーが襲い掛かる。
 第51任務部隊の攻撃隊は総数も多いが、雷撃機仕様のコスモタイガーも多数含まれていた。
 このため、対艦攻撃能力は非常に高かった。加えて対艦ミサイルも波動エネルギーを使った新型ミサイルだった。
そんな凶悪なミサイルを叩き付けられたガトランティス帝国軍艦隊は次々に沈んでいく。

「密集隊形をとれ! 対空砲火を密にするんだ!!」

 バルゼーは懸命に艦隊を纏めて撤退しようとするが、執拗な攻撃によって思うようにいかない。
 
「ここを耐え凌げばアンドロメダ星雲へ帰還できる! 踏ん張り時だ!!」

 だがそう言った直後、旗艦メダルーザにも3発のミサイルが直撃する。
 
「左舷に被弾!」
「火炎直撃砲損傷!!」
「ぐぅ……うろたえるな!! 体勢を立て直せ!!」
 
 5度の空襲に耐え切ったバルゼー艦隊は、被害が大きい艦艇を遺棄して再び撤退を開始しようとする。
 だがその彼らの前面に信じられない光景が広がる。

「12時の方向に、地球艦隊が!?」
「何?!」

 そうプロキオンから駆けつけた地球防衛艦隊が先回りして、彼らの針路を塞ぐように陣取っていたのだ。
 後方にはヤマトとムサシ、そして第51任務部隊、前面には地球防衛艦隊の戦艦部隊。袋のネズミだった。
 
「ええい、こうなれば突撃だ! いくら波動砲が強力でも分散していれば何とかなる!」

 ヤマトの波動砲を知るが故の判断だった。彼は不幸なことに拡散波動砲に関する知識がなかった。

「敵、突撃してきます」
「勇敢だ。だが……無謀でもある。拡散波動砲発射!!」

 土方の命令を受け、アンドロメダを含む24隻の戦艦から放たれた拡散波動砲によってガトランティス帝国軍艦隊は全滅。
 こうして後にガトランティス戦役と呼ばれる戦いは終結した。

826earth:2011/09/23(金) 09:06:00
あとがき
ここまで一方的に負ける白色彗星帝国があっただろうか……。
でも防衛艦隊は壊滅を免れたので、デザリウム戦役でも無様な真似はさらさずに
済む可能性が高くなりました。
まぁボラーがどう出るか……それでは。

827earth:2011/09/23(金) 14:33:54
第27話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第27話

 シリウスとプロキオンに展開していたガトランティス帝国軍を、地球防衛軍が撃滅したとの情報は地球だけではなく
ボラー連邦にも届けられた。
 一般大衆が喜ぶ中、参謀長など政治に関わる、又は精通している人間達は今後のボラーの動きに神経を尖らせた。
 防衛軍司令部の執務室で報告書を読んでいた参謀長はため息を漏らすと呟くように言った。

「ボラー連邦がどう動くかが問題だ。万が一に備えて改アンドロメダ級。いや『タケミカヅチ』の建造を急ごう」

 原作では『しゅんらん』という名になるはずだったこの艦は、世界各地の神話上の軍神から名前を取る事になった。
 そして喧々囂々の末、日本で建造されるこの超弩級戦艦の1番艦は『タケミカヅチ』と名づけられたのだ。

「タケミカヅチ、続いて2番艦の建造も準備中だ。各州もヤマトを参考にした新型戦艦の建造を発表している。
 空母部隊の実力が示されたことで、機動部隊の整備も急ピッチで進む。本格的な正規空母の建造も認められるはずだ。
 あと1年で防衛艦隊は、いや地球連邦の戦力は飛躍的に強化される。しかし問題は……」
「ボラーが指をくわえて待つか、そして我が連邦の政治家達と防衛軍高官ですね」

 部下の言葉に参謀長は頷く。

「そうだ。防衛軍は勝ちすぎた。おかげで自信をもってボラーと交渉することを主張する馬鹿が増えている。
 まぁガミラスに逆転勝利。ガトランティスには完全勝利(主力艦損失0)。これでは過信してもおかしくない」
「そして強硬派は勝利に献策した参謀長を担ごうと目論み、穏健派は防衛軍の組織を改変し統制を強化。
 さらに政府とも仲が良い参謀長を要職に据えて防衛軍の抑えに使おうと目論んでいる」
「……欝になることを言わないでくれ。ただでさえ、華やかな出番がさらに遠ざかる可能性が高いのに」

 参謀長の言葉に部下は言葉に出さず突っ込んだ。

(ひょっとしてそれはギャグで言っているんですか?)

828earth:2011/09/23(金) 14:34:25
 一方、ボラー連邦ではべムラーゼ首相の怒りが爆発していた。
 
「これはどういうことだね?」

 べムラーゼの視線を受けた軍高官たちは震え上がった。ちなみに、責任者はすでに問答無用で処刑済みだ。
 
「我々政府は、一辺境国家の引き立て役にするために軍に予算を与えているわけではないのだ。判っているのかね?」
「も、申し訳ございません」
「言い訳や侘びはいい。何故、こうなったのだ?」

 べムラーゼの問いに対して、軍高官は慌てて答える。

「は、はい。ボラー連邦艦隊が敗北したのは予期せぬ敵の新兵器のためです。
 これに対して地球は我が軍とガトランティスの戦いから十分な情報を収集して打って出ました。
 加えて我が軍との戦いでガトランティス側も消耗していたはずです。この差かと」
「艦隊決戦では『運悪く』旗艦が早期に撃沈され指揮系統が混乱しました。これが無ければうまく混戦に持ち込めました」
「空母戦では互角以上に戦っています。我々が弱いわけではありません」

 だがべムラーゼの機嫌は直らない。

「空母戦闘だが、今回は敵に対して数で優勢な戦力をもってしても、辛勝しか出来なかったようだが?」
「彼らはアンドロメダ星雲で侵略戦争をしてきた歴戦の部隊です。地球防衛軍もガミラスと戦ってきました。
 一方、我が連邦は偉大な首相閣下による指導の下で平和を謳歌してきました。よって全員が『戦争処女』です。
 これは大きな差になります」

 首相を必死に持ち上げるボラー軍高官。しかしべムラーゼは相変わらず冷たい視線を浴びせる。
 
「それにしても地球の戦艦はよほど優秀なようだな。我がボラーのものとは比較にならない位に」
「せ、設計思想の差かと。我がボラーの戦艦は単艦の戦闘能力よりも数を揃えることを優先しているので」

829earth:2011/09/23(金) 14:34:55
 ボラー連邦はその広大な領土を維持するために、膨大な数の宇宙船を必要としていた。
 勿論、宇宙での覇権を支えるために必要となる宇宙戦闘艦の数もそれ相応の数になる。よって量産性を重視され1隻あたりの
性能は抑えられていた。軍はイザとなれば数で質の面の劣勢をカバーするつもりだったのだ。

「ふむ。では我がボラーがその気になれば、彼らに打ち勝てる艦を作れるとでも?」
「勿論です。地球人が作ったものよりはるかに優秀な艦を作ってみせます! 彼らに出来て我々に出来ないことはありません!!」

 実際にはボラーの技術は地球に負けるものではないし、機動要塞を建造できることを考えれば一部では地球を凌駕していた。
 だがこうまで地球人の戦闘能力の高さを見せ付けられ、さらに自軍の負けが続くと誰もそうは思わなくなる。

「地球との技術交流(というか技術の強奪)も必要なのでは?」

 一部の人間からは真剣にそんな声が出ていた。
 べムラーゼも、もしもヤマトに匹敵する艦が作れないのであれば、それも必要になると考えていた。
 しかし即座に実力行使を含む強硬路線に出ることも躊躇われた。

「狂戦士のような地球人類を屈服させるには、ボラー連邦軍を総動員するしかないのではないか?」

 ボラー連邦軍と政府内部ではそんな声さえ囁かれていた。
 彼らは戦争に勝てないとは思っていない。やれば勝てる……しかし、そこまでして勝つだけの意味があるのかという疑問が
出ていたのだ。地球を滅ぼしたものの、ボラーも疲弊した挙句に内乱に陥るという悪夢は誰もが避けたかった。

「もはやボラーの威信を回復するにはアンドロメダ星雲に攻め込み、ガトランティス軍に痛打を浴びせるしかない。
 遠征を始める前までに、必ずボラーの象徴となりえる新型戦艦を、あのヤマトに打ち勝てる艦を建造せよ!」

 同時にボラー連邦は本格的に地球を脅威と見做すようになる。
 彼らにとって地球は取るに足らない新興国ではなく、小さいながらもボラーと張り合うプレイヤーだった。

「地球人の目に見えるように軍事演習を行え。それと未開発の地域の探索と開発も急がせろ。
 反乱分子への締め付けも忘れるな。とくにシャルバート教徒などの宗教狂いの狂信者共は徹底的に取り締まるのだ」

 かくして俄かにボラー連邦の動きが活発化することになる。

830earth:2011/09/23(金) 14:38:37
あとがき
ボラーにも面子というものがあるので……。
というわけでプ○ジェクトXばりにボラー軍は新型戦艦建造に着手です。
(まぁ並行して色々と地球に圧力を加えますが……)
尤も彼らが新型を建造する前に新たな嵐がおきそうですけど(邪笑)。

タケミカヅチ……恐らく転生者の一部の方が猛プッシュしたんでしょう(爆)。

832earth:2011/09/23(金) 21:54:19
風雲急(?)を告げる第28話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第28話

 ガトランティス戦役終了後、地球連邦政府は地球防衛軍の再編に乗り出した。
 シリウス、プロキオンの攻略によって支配地域が急速に拡大したため、従来の組織では軍の有機的運用が難しいと
連邦政府が判断したというのが発表された理由だった。

「それで、何故、私が統合参謀本部議長に就任することになるんだ?」

 参謀長、もとい新たに創設された統合参謀本部の議長(以後、議長と呼称)に就任することになった男は執務室で嘆息した。
 ぶつぶつと不平を漏らす議長を秘書(参謀長と同じく防衛軍司令部から異動した元部下の転生者)が宥める。 

「良いじゃないですか、大出世じゃないですか」
「どうせなら、方面軍司令官のほうが良かったよ。私にさらに地味な仕事を増やすつもりか?」
「……いや、まぁ参謀長の能力が買われているってことなのでは?」
「こっちの希望とは真逆だよ。艦隊司令官どころか、一兵も指揮できない立場になるとは」
 
 統合参謀本部は議長、副議長、宇宙軍軍令部長、空間騎兵隊総司令官、地上軍参謀総長の5人から構成される。
 彼らは作戦計画の立案や兵站要求などの仕事に当る。しかし彼らに兵を直接指揮する権限はない。
 統合参謀本部が出した案を大統領(又は防衛会議)が承認すると、それが正式な命令書となり防衛軍司令長官が
その作戦を遂行するという形になった。
 といっても現場を指揮する人間は議長と仲が良かったり、議長のシンパが多いので、いざと言うときには統合参謀本部の威光と
議長個人のコネで多少は融通が利くと思われた。

「各方面軍を統括する統合軍司令官である防衛軍司令長官……あっちのほうが断然良かった」

 防衛軍司令長官は太陽系、シリウス、プロキオンなどの各方面軍(宇宙軍、空間騎兵隊、地上軍の三軍の統合軍)を統括
指揮する統合軍司令長官となった。これは実戦部隊の長でもあることを意味する。ちなみに司令長官には藤堂が横滑りしている。

833earth:2011/09/23(金) 21:55:02
「各方面軍が必要な戦力や物資の分配案。あと今回のシリウスの件から現場と上との意思疎通の徹底。
 これにボラーを仮想敵にした戦略の作成。おまけにデザリウム戦役への備えを並行してやれ、だと? 
 過労死させるつもりか!?」

 ボラー連邦はガトランティス戦役以後、地球連邦と交流を深めつつも、露骨に軍事力を誇示するようになった。
 よって地球連邦政府はボラーと協調する傍らで、対ボラー戦争計画の策定を決定したのだ。

「まぁ議長一人で仕事をされるわけではないですし」
「一人でなくても死ねる仕事量だ! どいつもこいつも面倒ごとばかり持ってきやがって! 
 そのくせ、華々しい出番は皆無とは一体全体、どういう了見だ?!」

 よほど不満が溜まっているのか、果てしなく愚痴は続く。

(そんなに艦隊指揮がとれないのが不満ですか……)

 秘書官は乾いた笑みを浮かべる。 

「まぁまぁ。それに防衛会議に手を回して、非常時には内惑星艦隊、いえ地球本土防衛艦隊だけでも統合参謀本部の直接指揮下に
 入れるというのは?」
「そうだな。あとは実験艦隊、例の試験運用をはじめる予定の無人艦隊。あのラジコン艦隊だけでも当面の指揮下に入れよう。
 有人艦は……旗艦と直属の護衛部隊で10隻あれば良い。手持ちの部隊があれば不測の事態があっても手が打てる」
「旗艦と言うことは、無人艦艇を制御できるように?」
「そうだ。地上施設がやられたら即全滅では役に立たん。それに無人艦は有人艦艇と組み合わせてこそ役に立つものだ。
 タケミカヅチで本格運用する前に小規模でも良いから試験運用するのが適当だ」
「アンドロメダは各艦隊旗艦になるので実験艦隊に回すのは無理かと」
「主力戦艦を改造すれば良い。武装を減らせば何とかなる。問題があるなら波動砲そのものも撤去して良いだろう。
 艦隊旗艦に必要なのは武装ではなく指揮統制能力だ」

 かくして議長(元参謀長)の苦闘が始まる。

834earth:2011/09/23(金) 21:55:37
 面子を大いに傷つけられたボラー連邦は、屈辱の倍返しのためにガトランティス帝国本国のあるアンドロメダ星雲への侵攻を
目論み準備を進めた。
 新型艦の建造や補給基地の整備などやることは幾らでもある。だがそれをやる前にやることも多かった。
 その一つが国内の反乱分子の弾圧だった。

「容赦するな!」

 各地では中央政府から檄を飛ばされた秘密警察や軍が動き、反体制派を弾圧した。
 特にシャルバート教には厳しい弾圧が加えられた。何しろあちこちに勢力が浸透している彼らはボラーにとっても脅威だった。
 続いてボラーからの独立を図る各地のゲリラ組織が弾圧された。

「ガルマン人共が歯向かうなら、見せしめに街ごと消しても構わん!!」

 ガミラスの先祖であったガルマン民族は、ボラーの支配に抵抗を続けていた。故にこの度、ボラー連邦の激しい弾圧に見舞われた。
 一部のボラー人からも「やりすぎでは?」という声が挙がるほどだった。しかし総督府や現場の役人はそんな声を気にしない。

「そんな声を気にして手心を加えたら、ノルマが達成できないだろうが!」
「俺達に死ねと言うのか?!」

 彼らも命が惜しかった。
 こうして原作ではデスラーが来訪するまで持ち堪えたガルマン人だったが、本気になって押し潰しに来たボラー連邦に歯向かうのは
困難を極めた。そしてそれは他の惑星でも同じようなものだった。 

「逃げるしかない」

 一部のゲリラ、特に宇宙船を保有している勢力の中には未開の惑星に脱出する者も出た。
 勿論、ボラー連邦はこれらを追撃したので、各地で戦闘が行われた。だがそれは新たな国家との遭遇と戦いを呼ぶことになる。

「領空を侵犯する愚か者を殲滅せよ!」
「了解しました、父上」 
 
 前ヤマト艦長(完結編では地球艦隊司令官)が見たら、顔を引きつらせることが確実な新たな勢力が盤面に出現する。

835earth:2011/09/23(金) 21:57:43
あとがき
1日に三話連続更新……新記録達成ですね(笑)。
さてあの帝国の登場です。外道さでは定評のあるあの国です。
歴史が変わったゆえに敵の出現順番にも変化が出たということでしょう。

まぁ本格的に地球防衛軍と敵対するのはまだ先になるでしょうけど。

837earth:2011/09/24(土) 17:03:03
第29話です。今回は短めです。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第29話

 銀河で新たな戦乱の機運が高まっている頃、地球連邦は獲得した新たな領地の開発に力を入れていた。
 地球本星では開発に必要な船舶や機材が生産され、植民惑星では地球本星から送られてきた資材を使ってテラフォーミングと
植民都市が建設される。
 
「新たなフロンティアは宇宙にある!」

 マスコミはそう煽りたて、連邦政府、財界も関連する分野に投資を行った。
 宇宙開発はガミラス戦役によって中断を余儀なくされていたのだが、ガミラス、ガトランティス戦役終了に伴い、再開する
ことが出来たのだ。
 加えてボラー連邦という巨大な外圧が生まれたこともあり、人類は地球連邦の下で自分達の生存圏の拡大のために団結する
ことが出来た。これによって宇宙開発は急ピッチで進むことになる。
 
「人口の8割近くを失う戦争が終って、2年もしないうちにでこれだけ復興、いや飛躍できるって……」
「気にしたら負けですよ、議長」
「……そうだな」

 某所でそんな会話が行われていたが、そんなことはお構い無しに人類は勢力圏の拡大に勤しんだ。 
 そして同時に防衛軍の再編も急がれた。各方面軍が創設され、命令指揮系統が変更されていく。
 勿論、必要な事務処理は膨大なものとなり、防衛省や防衛軍の官僚達はその処理に忙殺された。議長もその一人だった。

「再編は何とか進んでいる。
 あと非常時には地球本土防衛艦隊と地上軍、各州軍を統合参謀本部の直接指揮下に入れることが何とか認められた」

 議長はそう呟くと議長室の椅子に背を預けた。
 それを見た秘書は議長の疲れを少しでも癒すためにお茶を用意した。

「これで万が一の時に、参謀本部独自に身動きが取れます」
「まぁ、そんな事態がないようにするのが参謀本部と防衛軍司令部の仕事だろう。本土決戦など悪夢でしかない」

 地球本土決戦となれば経済に途方もない悪影響が出る。
 戦争には勝ったが経済は崩壊しました……では洒落にならない。まぁ種族が絶滅するよりかはマシかもしれないが。
 
「太陽系で戦うとすれば11番惑星などの外惑星で、最悪でも土星圏で敵を食い止めたいが……」

838earth:2011/09/24(土) 17:03:52
「しかし次に相手になるのは、暗黒星団帝国。そこまで上手くいくでしょうか?」
「判っている。だからこそ、暗黒星団帝国を敵に回すのを嫌がる人間が多いんだ」

 転生者たちの中でも、イスカンダル救援に行くかどうかでは賛否両論があった。
 いくら恩人だからといって、二重銀河を支配する怪物国家を悪戯に敵に回すのは危険すぎるという声もあれば
イスカンダル救援後に先手必勝として二重銀河に攻め込んで逆に彼らを殲滅すれば良いと主張する者もいる。
 特にテレサという強力なジョーカー(超能力者)が居ることも好都合だった。

「議長としては?」
「デザリウム戦役は可能な限り避けたいが……放置していて予期せぬタイミングで攻め込まれるのは拙い。それに」
「それに?」
「放置したら、ヤマトが勝手に何かしそうで怖い」
「……た、確かに」

 秘書も乾いた笑みしか浮かべられない。

「で、では?」 
「原作どおり開戦が適当だろう。ただデスラーと和解していないから、イスカンダルの危機を事前に知るのは難しい。
 口実がいるだろう」
「どのような口実を?」
「なぁに。丁度良い口実があるじゃないか。アンドロメダ遠征の練習という口実がな」

 地球連邦としてはボラーの面子に配慮するために、アンドロメダ星雲への反攻作戦に限定的に付き合うことを
考えていた。しかしこれほどまでの長距離遠征。それも艦隊規模での遠征は例がない。

「α任務部隊、そして新たに編成する艦隊でイスカンダルへの表敬訪問を兼ねた練習航海をさせる。
 ついでに旧ガミラス星の調査という名目もつければいい。妨害が無ければ片道3ヶ月程度で済むだろう」
「なるほど。そしてその経験を基にして、二重銀河遠征も?」
「そうだ。無駄にはならない。それに二重銀河に行かなかったとしても、防衛艦隊にとっては良い経験になる」
  
 かくして防衛軍は新たな艦隊の整備に着手することになる。

839earth:2011/09/24(土) 17:05:40
あとがき
閑話的なお話でした。
イスカンダルへ向けて1個艦隊をでっち上げて艦隊が出撃します。
α任務部隊も同行します……また大暴れするかも(爆)。
それでは失礼します。

840earth:2011/09/24(土) 22:04:27
第30話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第30話

 ガトランティス戦役と呼ばれる戦いで、地球防衛軍は遺棄されていたガトランティス帝国軍艦艇を多数鹵獲した。
 鹵獲した艦艇の多くは調査された後に解体され、資源として再利用された。だが利用する価値があると思われた
艦艇については改装された後、防衛艦隊に編入されることになる。
 その中でも特に目立ったのが、4本滑走路を持つ大型空母と高速の中型空母であった。

「シナノ建造の前に本格的空母のノウハウを学習できるのは大きい……」

 ドックの中で改装を受ける元ガトランティス軍の空母を見て、議長は満足げに頷く。 
 空母戦力の重要性は理解されたものの、本格的空母の建造と運用となると問題も多かった。
 ムサシのデータは蓄積されていたが、やはり本格的な正規空母のデータが取れるに越したことはない。
 まぁそれ以外にも問題があったのだが。

「予算の問題もありますからね……宇宙開発で思ったよりも予算が必要でしたし」 

 秘書の突っ込みを聞いて、議長はジト目で睨む。 

「……それを言うな」 

 地球連邦政府は宇宙開発を重視するにつれて、防衛予算の際限のない増額に歯止めを掛けた。
 産業を育成して国と国民を豊かにしたいというのが政治家達の主張だった。
 おまけに急速に支配領域が拡大したせいで、防衛軍は質よりも、とりあえずは量を求められていた。
 このために決戦を志向した高コストのシナノより、とりあえずは急場を凌げる鹵獲空母の整備が重視されたのだ。
正規空母シナノ建造を望んでいた転生者たちは悔しがったが、どうしようもなかった。 

「まぁ長距離航海に適したガトランティス軍空母を運用するというのは悪くない。『今後』のことを考えるとな」

 議長はそう言って肩をすくめる動作をする。

(シナノ、いや信濃は当面は横須賀基地のドックで放置だな。何とかディンギル戦までには手を付けたいが……)

841earth:2011/09/24(土) 22:05:04
 ハードの整備を進める傍らで、政治的意図を考慮しない将校の暴走をどう防止するかで防衛軍上層部は頭をひねった。
 土方の行動は政治的には色々と問題が多いが、命令違反ではないし、戦術的に言えば間違っていないからだ。

「死地に向かった味方を支援するな、とは言えんからな……」

 ただでさえ人的資源が困窮する地球において土方の行動は当然だったし、下手に叱責したら後が面倒になる。 
 今後はボラーと付き合う必要があるので、政治的な思惑を理解して動いてもらう必要もあるのだが、どうやって理解して
動いてもらうかとなると問題が山済みだった。 
 当面は政治が苦手な将兵は地球や太陽系防衛に振り向け、政治が理解できる、又は再教育して短期間で校正する可能性が
ある将兵を新たに獲得した領域、他の勢力と接触する可能性が高い場所に振り向けることになった。
 
「下手に再教育すると、彼らの特性や長所を殺すことになりかねない」
「ガミラス戦役のときの弊害が出ましたな」
「全くだ。あの時は戦場で勝てばよかったからな」

 議長は密談の席で苦い顔で言う。これに他の転生者たち、特に外交部門の人間が噛み付く。

「しかし戦争は政治の延長であることを理解してもらわないと困ります。こっちがどれだけ胃が痛い思いをしたと……」
「だが配慮しすぎて戦闘に大敗したらどうする? まぁ指揮官の苦手分野をサポートするのが幕僚なんだが、現状では
 満足に艦隊司令部に幕僚を置けない。そんなに人がいない。下手なのを配備しても戦場では邪魔になるだけだ」
「「「………」」」

 相変わらず地球防衛軍の懐は苦しかった。

「これ以上、ボラーの機嫌を損なわないように高度な判断ができる提督を、前に出すしかないだろう。
 とりあえず土方提督は本土防衛に専念してもらう。あとは気長に政治について理解してもらう。無理なら再教育した
 若い人間を補佐に付かせる。まぁこちらは少し時間が掛かるだろうが」
「しかし、そんな人材が戦死されたら堪りませんな……」
「勿論、作戦は慎重にする。人を無駄死にさせる余裕は防衛軍にはない」
「それは民間も同じですよ。正直、防衛軍から人を戻して欲しいくらいです。まぁ無理なのは判っていますが」 

 彼らは原作よりもマシな状況にも関わらず、地球連邦が零細国家であることを改めて思い知った。
 
「こんな状況でデザリウム戦役に挑むなんて無謀すぎません?」
「しかし、やるしかないだろう。下手に放置して二正面作戦なんてことになったら目も当てられん。
 それに奴らが今行っている星間戦争を片付けた後、地球に目を向けないとも限らない。
 そしてその時にボラーが地球の味方をするとも限らない」
 
 議長の意見に不満は漏れるが反対意見は出なかった。

842earth:2011/09/24(土) 22:05:57
「こうなったらヤマトクルーが使えるときに、脅威になる連中は叩いておくに限る。勿論、地球防衛も手は抜かない」
「好戦的過ぎるのでは?」 
「いつもオーバーキルするような連中だ。それなら存分に暴れてもらうさ。まぁ今でも十分に無双伝説状態だが」
「確かに」

 ガミラス帝国軍の名だたる将兵達(ドメルやシュルツ等)とその艦隊とガミラス本星、白色彗星、ガトランティス帝国軍前衛艦隊の
3分の1がヤマト(ガトランティス艦隊はムサシと共同だが)によって葬られている。
 第三者からすれば無双といっても過言ではない。

「ではイスカンダルへ?」
「α任務部隊とアンドロメダ級2番艦『ネメシス』、主力戦艦『加賀』、宇宙空母2隻、巡洋艦4隻、パトロール艦4隻、駆逐艦12隻を
 考えている」
「ネメシスをつけると?」 
「収束型波動砲搭載艦はヤマトとムサシで十分だろう。あとは敵艦隊を効率よく掃討できる艦で良い筈だ。
 最悪の場合はガミラスの残党も叩いてもらう必要があるからな。それに、これ以上は出せない……」
「司令官は?」
「山南提督を、と言いたいところだが、ここは彼に出てもらう」

 議長が目を向けた先には原作ではヒペリオン艦隊司令官を務めた男の姿があった。

「は? 何の冗談です?」
「冗談じゃない。派遣が正式決定になったらネメシス艦長兼イスカンダル派遣艦隊司令官に任命するから……頑張ってくれ」
 
 こうしてイスカンダルへの艦隊派遣が進められることになる。
 しかしそんな中、転生者たちにとっては寝耳に水とも言うべき情報が飛び込む。

「ディンギルだと? 間違いないのか?」
 
 議長は統合参謀本部で何度も確認させたが、虚報ではなかった。

(早すぎる。何が起こっている?)

 転生者たちにも全く予期できなかった『ディンギル帝国』とボラー連邦との戦争。
 それはボラーの本当の恐ろしさを地球人にはっきりと示すことになる。

843earth:2011/09/24(土) 22:07:57
あとがき
次回、ディンギルVSボラーの予定です。
ボラー連邦軍名誉挽回のとき……かも(笑)。
狂犬国家VS独裁国家。実に救いようが無い組み合わせです。

844earth:2011/09/25(日) 11:12:57
ボラー軍大活躍(?)な第31話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第31話

 ディンギル帝国を名乗る国家と偶発的な戦闘を切っ掛けに大規模な戦闘に陥ったとの報告は即座に首都の中央政府と
そのトップであるべムラーゼにも届けられた。
 本来なら辺境の小国など気にもしないのだが、ガトランティス帝国に痛い目に合わされ、辺境の新興国がトンでもない
強敵であることを思い知った直後であったので、ボラー連邦政府首脳は事態を軽視しなかった。

「全力をもって叩き潰すのだ! 機動要塞、プロトンミサイル、それに新開発したワープミサイル。あらゆる物で潰せ!!」
「了解しました!」

 べムラーゼはディンギル帝国の殲滅を、そう制圧ではなく殲滅を命じた。
 また情報収集の結果、ディンギルが宗教国家であることが判明すると、べムラーゼはディンギルへの嫌悪を露にする。

「シャルバート教と結びついたら手を焼くだろう。
 狂信者共が神の名の下に戦うのなら、奴らの望むとおりに奴らが崇める神の御許に送ってくれる。女子供も容赦するな。
 生き残ったとしても、新たなテロリストになるだけだ」
「で、では捕虜はどうされます?」
「捕虜もいらん! ディンギルは見せしめのために民間人諸共、根こそぎ殲滅するのだ。何も残すな!!
 それと地球人共にボラー連邦の恐ろしさを見せ付けるのだ!!」
「防衛軍に参戦を要請すると?」
「参戦ではない。武官なり役人を機動要塞に搭乗させるか、それとも2、3隻の小艦隊をボラー艦隊に同行させるのだ!
 そして我がボラーの恐ろしさを直に見せ付けるのだ!!」
「了解しました!」

 べムラーゼの厳命は直ちに前線部隊に伝達された。
 地球防衛軍によって面子を潰されたこともあり、今度活躍しないと大粛清になることを理解している軍人達は本気だった。

「全軍出撃!!」

 小国と言えども、油断は出来ない。
 これが嫌と言うほど理解している男達は、悪戯に戦力を逐次導入することなく、機動要塞を中心とした大機動部隊を集結させ
それをもってディンギルの母星がある恒星系へ侵攻を開始する。

845earth:2011/09/25(日) 11:13:39
 本気になったボラー連邦軍はディンギル帝国軍の実に6倍もの数の艦船でディンギル本星がある恒星系に押し寄せた。

「ワープミサイル発射!」

 敵の監視網を察知し、自力で小ワープすることでそれを突破するというボラー連邦期待の新型ミサイルは期待通りディンギル帝国軍の
監視網を突破した。そして5個の弾頭ミサイルに分離すると次々にディンギル帝国軍の前線基地に降り注いだ。
 
「一体どこから現れたというのだ?!」
「わ、判りません!」
「とりあえず、本星に救援要請を!」

 だが彼らは本星からの援軍を見ることは無かった。
 ボラー軍はディンギル帝国軍の前線基地がある惑星をワープミサイルによる奇襲で大打撃を与えた後、プロトンミサイルで星ごと
消し飛ばした。周辺に居たディンギル艦隊は爆発に巻き込まれて壊滅した。
 だがその光景を見ても、ボラー軍の指揮官達は気を抜かない。

「偶発戦闘で生き残った艦からの報告では、連中は極めて強力な対艦ミサイルを保有しているらしい。
 戦艦クラスでさえ一撃で撃沈する破壊力を持っている。油断は禁物だ」

 二度も痛い目に合っているボラー軍は、相手を侮ることはなかった。
 
「艦載機を発進させ、周囲を厳重に警戒せよ! 敵の大型機(水雷艇のこと)の接近を許すな!!」

 ボラー軍は持ち込んだ大量の空母や戦闘空母から常に警戒機を発進させ、ディンギル帝国軍の決戦兵器であるハイパー放射ミサイルを
防ごうとする。いくらハイパー放射ミサイルが強力でも制空権を奪われ、奇襲さえできない状況では発射母機である水雷艇ごと撃破され
何の役にも立たない。またハイパー放射ミサイルでは艦船は撃破できても機動要塞は潰せなかった。
 ディンギル軍が誇る移動要塞母艦はボラー自慢のブラックホール砲によって、一撃で周辺の艦隊ごと破壊されてしまう。
 
「力業だな」

 防衛軍から派遣されてきたパトロール艦隊とそのパトロール艦からの映像を見ていた防衛軍首脳は慄然とした。  
 勿論、議長もその一人だ。しかし彼は冷静に次の手も考えていた。

(さすがソ連がモデルの国だけはある。ミサイルと人海戦術で押し寄せられたら、ディンギルも堪らないな。
 いやむしろ彼らを他山の石として新兵器開発と軍備強化を進めるのが良いだろう。
 ハイペロン爆弾対策も兼ねたプロトンミサイルの防御策を構築すれば、一石二鳥だし。
 まぁディンギル帝国には、せいぜい頑張ってもらって防衛軍強化の踏み台になってもらおう)

846earth:2011/09/25(日) 11:14:30
 ボラー連邦軍は真綿で締めていくように、ディンギル帝国軍を追い詰めた。
 当然、降伏してきた者もいたが、ボラーは情報を取った後はさっさと裁判にかけて処刑していった。

「ボラーの敵に容赦は不要だ!」
 
 勿論、ディンギルも似たようなものだった。捕虜となったボラー軍人は国民の前で公開処刑されていく。
 ボラーが神を信じぬ者たちであるということがディンギル人の反感を煽り立てていたので殆ど文句は無かった。

「これは聖戦である!」

 大神官大総統であるルガールはそう言って国民を鼓舞した。しかし戦況は変わらず、彼らはジリジリと追い詰められた。
 こうしてディンギル帝国は最後の賭けとして、残存する艦隊を掻き集めて、母星周辺宙域で決戦に出た。
 ルガールは宇宙艦隊の指揮権を自身の長男であるルガール・ド・ザールに任せた。
 
「神を信じぬ愚か者共を生かして帰してはならぬ!」

 ルガールは自身の長男にそう言うと、司令部に戻っていった。
 その姿を見送った後、ルガール・ド・ザールは巨大戦艦ガルンボルストに乗って出撃した。
 ガルンボルストを含むドウズ級戦艦、カリグラ級巡洋戦艦を中心とした大艦隊はボラー艦隊を迎え撃つべく出撃した。
 ディンギルの総力を挙げた艦隊であり、その規模は地球防衛艦隊に勝るとも劣らない規模であったが、それでもボラー艦隊の
規模に比べるとお寒い限りだった。
 しかしディンギル帝国軍に後退は許されなかった。何しろ後方には母星があり、ここで敗れることは自分達の滅亡を意味する。
  
「ここで食い止めるのだ!」
 
 ルガール・ド・ザールはそう勢い込んだが、ボラーは実に情け容赦が無かった。
 ハイパー放射ミサイルによる損害をものともせずに、物量にものを言わせた波状攻撃を実施。
 これによって一時的に本星の守りが薄くなったのを見ると、プロトンミサイルの飽和攻撃を実施したのだ。  

「ディンギル人どもよ、ボラー連邦からのプレゼントだ。有難く受け取るが良い。
 そして地球人よ、これがボラーの力だ。思い知れ」

 首相官邸で前線の映像を見ていたべムラーゼはニヤリと笑う。
 そして彼が笑った直後……ディンギル本星は実に5発ものプロトンミサイルの直撃を受けて、宇宙の塵となった。

847earth:2011/09/25(日) 11:16:03
あとがき
ディンギル帝国が……
まぁこれが超大国ボラーの本気と言ったところでしょう。
こんなのと遣り合ったら普通に死ねます。
でもこれで完結編のフラグは折れたとも言えます(爆)。

848earth:2011/09/25(日) 18:24:28
第32話です。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第32話

 地球と似た規模の国家である『ディンギル帝国』がボラー連邦の猛攻によって、僅か1週間で消滅したことは地球に衝撃を与えた。
 ブラックホール砲、プロトンミサイル、ワープミサイルなどの戦略兵器群はどれも地球には無いものであった。

「あんな兵器で飽和攻撃されたら防衛艦隊は全滅するぞ」

 防衛軍の某高官はそう呟いて頭を抱えた。
 超大国『ボラー連邦』の真の恐ろしさを思い知った人間達は、ボラーがガミラス以上にトンでもない相手ではないのかとさえ考えた。

「ガミラスではなく、ボラーが攻めてきていたら人類は終っていたかもしれない」
「敵には回せませんな」
「ガトランティスに完敗したのに、すぐにあれだけの艦隊を揃えられるなんて……化物か?」

 連邦政府が震え上がる中、議長を筆頭にした転生者たちは元気に動き回っていた。
 議長は連邦政府大統領府で熱心に説いて回った。

「当面はボラー連邦には低姿勢で臨むべきです。その間に対抗手段を探りましょう」
「そのようなことが可能なのかね?」
「不可能ではありません。人類の総力を結集すれば絶対に克服できます! しかし今だけは屈辱に耐え宥和に徹するべきです。
 幸い、先方はこちらとの友好関係を崩すつもりは無いと言っています。最大限、それを利用するべきです」
「………」 
「ボラー連邦はアンドロメダ星雲への侵攻を目論んでいます。これに協力することを表明すれば向こうの歓心は買えるでしょう」 
「艦隊規模の遠征になるぞ。犠牲も少なくない」
「1、2個艦隊の犠牲で地球が守れるなら十分実行する意味があります。ただこの手の遠征は経験がありません」

 そう言って議長はイスカンダルへの艦隊派遣を提案する。

「この手の大遠征はヤマトしか経験がありません。この航海は防衛軍全体にとっても有益なものになるでしょう。
 さらにガミラス星に残された技術を接収できるかも知れません」

 反対意見は出なかった。
 かくして後日、防衛会議の席でイスカンダルへの表敬訪問とガミラス星調査を兼ねた艦隊の派遣が決定されることになる。

849earth:2011/09/25(日) 18:24:59
「藤堂長官、前線部隊には迷惑を掛けますが、宜しくお願いします」

 防衛会議の後、議長は実戦部隊を統括する藤堂に頭を下げる。
 原作よりもマシな状況とは言え、アンドロメダ級やヤマト級を含む戦艦3隻、機動戦艦1隻、宇宙空母2隻を中心とした30隻の
艦隊を遥々イスカンダルに送るのだ。それだけ前線の負担は大きくなる。

「頭を下げなくても良いよ、議長。私も今回の派遣の必要性は理解している」
「はい」
「しかしボラーに頭を下げ続ければ、我々は良いように使い潰されるぞ。そうなれば、いずれは完全な従属の道しかなくなる」
「勿論承知しています。ですがジリ貧を避けるために破滅を選択するのは愚かなことです。
 幸い、ボラーは敵対すればこちらを破滅させようとしますが、味方である姿勢をしめせば話を聞いてくれます。
 味方であることをアピールし、その間に彼らに対抗できる力を身につけることが必要です」
「『今日の屈辱に耐える』か。沖田君も同じ事を言っていたな」
「それこそが今の地球に必要なことなのでしょう。何を譲歩し、何が譲れないかを政府と協議する必要があるでしょう」
「ふむ」
「防衛軍は地球人類を守る盾であり矛でもあります。しかし武器である以上、消耗しますし、使い方によっては自らを傷つけます。
 持ち主が正しく武器を使用できるようにサポートするのも我々の仕事です」
「そうだな。全く、ガミラス戦役の時とは大違いだ」
「時代の変化なのでしょう。私のようにガミラス戦役からの生え抜きは、前線での仕事のほうが向いていると思うのですが」

 この言葉に藤堂は笑う。

「君が議長を務まらないのなら、今の防衛軍で統合参謀本部を統括できる人間はいない。自信を持ちたまえ」
(私としては、こんな仕事は嫌なんですけどね。地味だし)

 心のうちでため息をつく議長。
 だが彼の心情など、藤堂が知る由も無い。

「実戦部隊の皆も議長を信用している。これからも(後方で)頑張ってくれ」

 まだダメなのか……と、SAN値が減る議長だった。

850earth:2011/09/25(日) 18:25:49
 SAN値が減った議長であったが、実験艦隊が統合参謀本部の指揮下に入ることが正式に決まると少しは持ち直した。
 まぁ実際には防衛省とも話をする必要があるのだが、それでも自分が乗り込める艦があるというのは議長のテンションを
上げさせた。

「よし。みなぎってきた!」

 議長はとりあえず実験艦隊『第01任務部隊』を立ち上げた。
 旗艦として白羽の矢が立ったのは、建造中の主力戦艦『アイル・オブ・スカイ』だった。
 
「旗艦としての機能が低いから改造する必要があるだろう」
「武装を減らして無人艦の指揮機能を強化すると?」

 だがこの秘書の言葉に、議長は首を横に振る。

「いやここは本格的に改造しておきたい。実験艦ということもある。この際、色々な新装備も載せれるようにしたい」
「……誰に改造を任せるおつもりで?」
「勿論、地球が誇るマッドサイエンティスト、もとい技術者の真田さんか大山さんだろう」
(嫌な予感しかしませんが……)

 秘書は冷や汗を流す。

「二重銀河に行く前にヤマトは改装するんだし、そのテストになる艦があってもおかしくないだろう?
 まぁ真田さんは忙しいからダメかもしれないが……」
「はぁ……(ダメだ、この議長)」

 こうして不幸(?)なことに『アイル・オブ・スカイ』は大改装されることになる。

851earth:2011/09/25(日) 18:34:34
あとがき
魔改造は男の浪漫です。
議長が乗る戦艦についてはまだ決めていません。さてどんな艦にするか……。
次回以降、ディンギル戦役に突入する予定です。
尤もリアルの事情と、展開にある程度区切りが付いたこと、もうそろそろ憂鬱本編を
書く予定なので更新速度が落ちるかも知れませんのでご了承ください。

852earth:2011/09/25(日) 19:42:11
すいません。ディンギルじゃなくてデザリウム戦役でした(汗)。

853earth:2011/09/27(火) 21:59:07
何か出来てしまったので掲載します。33話です。
あとデザリウム戦役に本格的に突入できませんでした(汗)。


 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第33話

 ディンギル帝国の終焉を見せ付けられた地球連邦政府は、ボラー連邦の圧倒的力に震え上がった。
 このため議長が主張したように、表向きだけでもボラー連邦に服従しつつ密かに力を蓄えることを決意した。  
 
「ボラーに対する抑止力の整備。これが重要です!」

 こうした声に押されて、ガトランティス帝国軍から得た潜空艦と破滅ミサイルの技術を組み合わせた艦の建造が
計画された。

「現代(?)に蘇った戦略原潜といったところだな」

 計画案を見た議長がそう呟いたように、この艦は防衛軍が初めて建造する報復攻撃用の艦だった。
 ステルス化した艦体で敵の警戒網を突破し、艦首に格納された破滅ミサイル(のデットコピー)で相手の主要惑星を
破壊するというのが、この艦のコンセプトだ。

「MAD。相互確証破壊をこの世界で目論むとは……」

 密談の席で転生者の一人はそう嘆息する。

「実に夢も希望もないですね」
「まぁボラーのワープミサイルもMIRVっぽいですし、ある意味、現実(?)に追いついたということでしょう」
「しかし本当に抑止力になるんですか? ボラーの首都は地球から見て銀河の反対側ですよ?」

 この疑問に議長は渋い顔で答える。

「ないよりはマシだろう。生存性もある。
 あとこの艦は別に使えなくても良い。地球を滅ぼすと大打撃を受けると相手に思わせれば、作る意味がある」
「ボラーをいたずらに刺激するだけでは? それに予算は?」
「完成しても即座に公開はしない。時期を見て行う。
 予算については現在の主力戦艦の建造を打ち切りにしてひねり出す。主力戦艦建造計画はカモフラージュとして残すが」

 この言葉に全員がショックを受ける。




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