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ネタバレ@ファラミア/*  2

1萌えの下なる名無しさん:2004/05/12(水) 00:20
薄幸のゴンドール大将、後のイシリアン大公にして27代執政ファラミア殿に
原作・映画込みで萌えるスレ。
多彩なカプ萌え(攻受不問)から単体萌えまでこちらでどうぞ。

■『萌える子馬亭』の約束(必読)■SS投稿時には必ずお読み下さい。
http://0024.hiho.jp/pony/fellowship_rule.html

■前スレはこちら(過去ログ倉庫)■
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197萌えの下なる名無しさん:2004/07/02(金) 21:16
小ネタいきます。
MHK出演叶わなかったさびしんぼう父上と、
某所での、兄上が生きてたらエオインシチューを平らげてたにちがいないというお話を
拝見して思い付いたものです。
ご発言者の皆様の意図をねじ曲げてるかも知れません。
他意はありませんのでご容赦を。




<ファラミア/ボロミア、ファラミア/父上/親子群像>









 ローハンに出向いていたボロミアが、ミナス・ティリスに帰投してきた。
 出迎えたファラミアにボロミアは、挨拶の抱擁もそこそこに、一つの包みを手渡した。
「これは?」
「ローハンの土産だ」
「それは、ありがとうございます。しかし、お珍しい事もあるものですな」
 物見遊山の場合はともかく、公務に際してボロミアが何かを持ち帰る事などほとんどなかったので、ファラミアはボロミアの行動を嬉しく思う一方、不思議でもあった。
「今回のは特別なのだ。何せ、ローハンの姫が手ずからこしらえたという、焼き菓子であるからな」
「なるほど。ならば、わたしは兄上と共にいただきとうございますが」
「…わたしは、もうかの国で十分堪能してきたのでな。だからファラミア、それは全てそなたのものとしてよい」
「分かりました。有り難く頂戴致します」
 ボロミアは、旅の疲れが残っているとかで、早々にファラミアの前から姿を消した。

 さて、デネソールは一部始終を見ていた。
 そして、ファラミアはデネソールが見ていたことを知っていた。
 ファラミアは素知らぬ顔で父親に近づくと、ボロミアから貰った包みを差し出した。
「兄上はおっしゃいませんでしたが、わたしは、父上に召し上がっていただきというございます」
 デネソールは、冷笑を浮かべた。
「このようなもので、父の機嫌を取ろうという腹であるか」
「兄上の気持ちを慮ってみたのですが。ご不要でしたら、やはりわたしが頂きます」
「待つのだ。ボロミアの心遣いを無にするわけにはいくまい」
「それでは、こちらは父上に」
 包みはデネソールの所有となった。
 兄がせっかく自分にと与えたものを手放すのが少しも惜しくないといえば嘘になる。しかし、それ以上に、父親が喜ぶなら、物が手元になくとも満足だった。

 翌日。
 ファラミアは、困惑していた。
 ボロミアは姿を見せないし、父親がいつもにも増して、自分に対し冷徹な態度で接してくるのだ。
 しかし、いくら考えても、ファラミアをしてその理由はまったく分からなかった。


 終わり。

198萌えの下なる名無しさん:2004/07/03(土) 10:40
某所ではイシリアン大公、王様から「今すぐ料理人を雇え」とか勧められていたなあ。
ゴンドール、ローハン両国の友好にまで影を落としかねない姫の手料理、おそるべし。

何をやってもお互い嫌がらせにしかならない親子関係というのも悲劇だな、とマジレス。

199萌えの下なる名無しさん:2004/07/04(日) 02:05
兄上が姿を見せないのは気まずいからかそれとも本気で体調を崩したのか(w
そしてファラミアが食べて倒れでもしたらどうしたんだろうなど謎は尽きません。


でもって、改編コピペネタ吉野家ファラボロ。死にネタ注意。
似たようなのが以前ありましたらご容赦。









そんな事より父上よ、ちょいと聞いてください。任務とあんま関係ないですけど。
このあいだ、大河の岸辺に行ったんです。大河の岸辺。
そしたらなんか川上から小船が流れてくるんです。
で、よく見たらなんかそれに乗って、兄上がどんぶらことやってくるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前な、いまどき桃太郎の真似なんかしてんじゃねーよ、ボケが。
桃太郎だよ、桃太郎。
なんか靄まで出てきたし。幻想的ふいんき(←なぜか(ry)出してんのか。おめでてーな。
よーしパパベルファラス湾まで行っちゃうぞー、とか無言で語ってるの。もう見てらんない。 パパじゃないし。
お前な、今すぐつかまえてやるから止まってくださいと。
兄弟の再会ってのはな、もっと嬉しいものであるべきなんだよ。
凱旋のスピーチの後で人目もはばからず抱きあったり杯を交わしたり、
互いの無事を喜び合う、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。悲しみなんか、すっこんでろ。
で、やっと手が届くと思ったら、船の中の兄上が凄い荘厳な表情で、後を頼む、とか語ってるんです。
そこでまた涙腺ぶち切れですよ。
あのな、無言の帰還なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
綺麗な顔して何が、後を頼む、だ。
お前は本当に後を頼みたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、本当は生きて還りたかったんだろうがと。
弟の俺から言わせてもらえば今、兄上はかなり、満ち足りた表情、これだね。
何かを成し遂げた男の表情。これが一番いい顔。
兄上ってのは丈高き偉丈夫。おまけに鼻筋の通った顔立ち。これ。
で、それが今は何の曇りもない顔。これ最強。
しかしこれ以外の表情はしないし二度と動かない、いわば抜け殻。
それだったら悩む兄上の方が何万倍もいい。
まあ俺は、おとなしく去っていく船を見送ることしか出来ないんだってこった。

200萌えの下なる名無しさん:2004/07/04(日) 23:47
>199
うおおおお、なんだかすごく悲しいぞ。読んでる方もアンドゥインに身投げ
したくなるくらいです。いや、マジで。

それにしても、ここの住人さんで若葉に行かれた方はおいでなのでしょうか。
199のシーンも、弟君の必殺うるうる目も大画面で見たかったけど、悲しいやら
萌えるやらで、他のお客さんも大勢いる所では困ったことになりそうです。

201萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 01:00
>>199 GJ!
吉野家に涙する日が来ようとは…・゚・(ノД`)・゚・

>>200
今日行って来ますた。
よりによって弟君回想シーンでビニール袋ガサガサさせたヤシがいて
殺意を覚えますた…。兄と父の会話シーンでもだ。
これが最後の映画館鑑賞になったら悔しいのでもう一度行く算段を
しようかと思ってますだ。片道2時間かかるけど。

202萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 09:49
>199様
多分、大将が見せた生涯で一度の悪態。
大将にとってどんなに過酷な場面だったか。
普段の大将からは考えられないあの悪態がすべてかと。



余韻さめやらぬまま、>197に関するフォローらしきもの。
登場は、ファラミア、兄上、エオウィン。
置いてきぼり弟君。得手勝手兄上。








 ほとぼりが冷めた頃を見計らい、憔悴したファラミアの前に、ひょっこり現れたボロミア。
「顔色が優れぬぞ。よほどあの菓子が合わなかったと見える」
「おっしゃる意味が分かりかねますが、菓子ならば、父上に差し上げました。それより、なにゆえ嬉しそうなのですか、兄上」
「嬉しげであったか? それで、父上は」
「ご体調はさておき、ご機嫌の方が如何ともしがたいのです」
「召し上がってしまったのだな…さもありなん」
「何です?」
「気にするな。独り言だ。わたしは父上のご様子を伺って来る」
「ならば、わたしも参ります」
「ならぬ。話がこじれる元だ。この兄に任せよ」
 取り残され、釈然としないファラミア。

 月日は過ぎ、ファラミアは美しく成長した、かのローハンの姫を娶った。
 ファラミアは、新婚にして生まれて初めて彼女の手料理を口にした。
 その時、ファラミアのどこかで、くすぶり続けていた謎が一瞬にして全て解けた。
 そういうことだったのだ。あの日、父親は、ファラミアが菓子の出来を知って父に押しつけ、やっかい払いをしたのだと、誤解したに違いない。
「お口に合いませんでしたの?」
 考え事に気を取られていたファラミアに、可愛い新妻が心配げな顔を見せた。
「まさか。兄が生前、野宿時に作って食べさせてくれた得体の知れない食物に比べても、随分と良い」
 ファラミアにしてみれば、どのような点であれ、今なお慕わしい兄より優れているというのは、最大の讃辞だったのだが。
 エオウィンは、まだ途中だった食事を無言のまま下げた。
 取り残され、釈然としないファラミア。
 しかし、いくら考えても、ファラミアをしてその理由はまったく分からなかった。




 フォロー?終わり。


>そしてファラミアが食べて倒れでもしたらどうしたんだろうなど謎は尽きません。

ベタベタなところで、
後ろ暗さから世話を焼く兄上。小さな幸せを噛みしめる大将希望。

203萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 22:23
>202
ひどいよ大将、じゃなくて大公殿下w いや、もっとひどいのは兄上か。
ファラミアって本当に、聡いんだかヌケてるんだか・・・このスレの大将が、
ということかも知れませんが。

>199
しかしあの状況って、兄上から見れば、いちばん会いたかった人に最後に
会えたということなんだろうか、とも思います。
残される立場にとっては、たまったもんじゃないけれど。

204萌えの下なる名無しさん:2004/07/07(水) 00:58
>202様
そのベタネタに萌えますた(*´Д`*)
僭越ながら、「大将が食べた(そして倒れた)Ver.」で、その後の小話など。







-------------------------------------------------------------
「ファラミア!」
 乱暴に開け放された扉が騒々しい音を立て、ベッドに臥せっていたファラミアはやっとの思いで目を向けた。
 大股で入ってきたボロミアは、恐ろしく不安げな顔で枕の際にかがみこみ、ファラミアの顔を見る。
「倒れたそうだな。大丈夫か?」
「ええ・・・」
 曖昧に頷くと、ボロミアはますます弱った顔をし、ファラミアの腹をさすり、頬を撫で、額に手をやる。
「腹の具合はどうだ。吐き気は治まったか?頭痛は」
「・・・兄上」
 なんでそんなに的確に症状を言い当てられるんですか。
 ファラミアは思ったが、そう尋ねる間をボロミアは与えてくれなかった。
「ああまったく、お前がわたしほど強健ではないと何故思い至らなかったのだろう。それとも疲れて
いたのだろうか。ともかくお前は繊細だから」
「兄上」
「それにしても倒れるとは、よほど参っていたのだな。この際、少し静養するといい。幸い危急のこともない」
「兄上ってば」
「そうだ、その間はわたしが世話をしてやろう。何でも言ってみるがいい。何が欲しい。ん?」
「・・・・・・」
 もしかして貴方原因に心当たりあるんですか等々、問い詰めたい気持ちは大いにあった。
が、それもこれも最後の申し出の前には吹き飛んだも同然だった。
 答えを促すように顔を覗き込んだボロミアに、ファラミアはニコリと微笑み、
「では、林檎が食べたいです」
「いいぞ、剥いてやろう。それから?」
「食べさせては貰えないので?」
「食べさせてやろうとも。他には?」
「それから、歌を聴きながら眠りたい」
「・・・お前はわたしに何をさせたいのだ」
「昔は歌ってくれました」
「うるさくて眠れぬと文句を言ったのはお前ではないか。・・・・・・まあいい。だが、やめてほしくなったら
すぐに言え。まだあるか?」
 ファラミアが首を振ると、ようやくボロミアは笑顔を見せて、弟にキスをした。
「また思いついたら言うがいい。では、望みのものを持ってこよう」
 そうして行きかけたボロミアだったが、ふと扉の前で振り返って、
「眠ってしまいたければそうして構わないからな」
「いいえ」
 ファラミアは小さく笑って答えた。「待っています」
 遠さかって行く足音を聞きながら、ファラミアは久々にのんびりとした気分で目を閉じた。

―――――――――――――――――
で、しばらく後に戻ってきた兄上は、幸せそうな顔でまどろむ弟を前に、起こしていいものやらと
悩むことになるわけで。

205萌えの下なる名無しさん:2004/07/07(水) 21:08
世話焼き兄上ってば、弟を実は構い倒したくて
仕方なかったのではなどと邪推。
これでもかとばかりに甘える大将も、
兄上心をよく分かっておられるようで、微笑ましく。
たっぷり和ませていただきました。



いらんことに、
>204様小話の続きを妄想。







悩んだ挙げ句、添い寝という名案(自画自賛)を思い付いた兄上。
人の布団に潜り込み、ファラミアは昔から良いにおいであるな、などと
浸ってるうち、添い寝のつもりが、お約束通りに熟睡。
寝苦しさで目が覚めてしまった大将は、寝台を占領しつつある兄上を発見。
仕方ない人だとか思いつつ、上掛けを具合良くかけ直してやる大将。
ボロミアが持ち込んだりんごは、不器用にいびつな形で刻まれていて、
どこから見てもボロミア本人の手によるもの。
まどろんだ時間の分、切り口はちょびっと茶色に変わってしまってたりして、
お世辞にもきれいな物ではなかったけれど。
大将は、兄上の寝顔を見つめつつ、大切そうに、そのりんごをかじるのですねえ。
りんごは甘くて酸っぱい至福の味がするに違いないです。

そして、唇に残ったりんごの香りを、眠りこける兄上の唇にお裾分けする大将。
幸せとは、一人で味わうものではなく分かち合うものだから。







一転、本日付某全国紙朝刊プロ野球欄見出し"お兄様ギラギラ"より妄想吐き出し。
当該選手ファンの方、申し訳ありません。


<天体観測執政兄弟> 



場所はミナス・ティリス城壁のどこか。時は深夜。人影は二つ。
頭上には満天の星。
夜の闇では星が、わたしたちの位置を教えてくれるのですね。
などと、夜空をあおぐ大将の横で、よりにもよって、
"お兄様ギラギラ"。

兄上ヤバイです。兄上の身に一体何が起こったのかと。
大将は、お星様よりも兄上を観察するべきではないかと思います。

206萌えの下なる名無しさん:2004/07/08(木) 13:48
(・∀・)イイ!
>205
スリーピングビューティー逆バージョンで。

待っているといったのに、と苦笑する兄上。
椅子に座って目覚めを待ちながら、りんごを一欠片つまみ食い。
全部食べてしまうぞ、と言ってみるものの、相変わらず寝こけたままの大将。
悪戯心で口移しをしてみる兄上。

 りんごのかけらがファラミアの口にころりと転がり込みました。
 すると、どうでしょう!
 みるみるうちに、ファラミアのほおに赤味がさし、彼はぱっちりと目をさましたのです。


って白雪姫かよゴ━━━(#゚Д゚)=○)゚Д)、;'.・━━━ルァ!!


ところで"お兄様ギラギラ"はわかんなかったです。
兄上の体が光ってたってこと(;´Д`)?

そういえば昨日は七夕だったですね。
大河によって引き裂かれた2人が唯一会える日・・・
大将も年に一度兄上に会えたらいいのに(つД`)

207SS投下1/7:2004/07/09(金) 10:56
流れ遮ります。7レス分予定。
苦手な方は護身推奨。
完結します。終盤に向かうほどにへたれ度UP。ご注意。


<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/7

>191の続き 完結編

【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169,88-191

















 意志のかけらも無いかのように、ファラミアの体は易々と寝台とセオドレドの体の間に挟まれた。苦痛はあるのだろう。セオドレドが見たファラミアは、目を閉じ、口を引き結び、彼の内側にもたらされるあらゆる物を、耐えているようだった。せめてもと、額に張り付いた汗を手で拭ってやる。少しでも、表情が和らいでくれれば、どんなにか助かるだろうと思う。彼に行おうとしていることを思えば、随分と勝手な言い草だったが。
 仰向けに転がった体の腰に、セオドレドが腰を寄せると、堪えきれないのかくぐもった声がファラミアの口から漏れ出でる。それ以上を聞きたい衝動を、ファラミアの体に回した腕に、力を込めることでやり過ごす。セオドレドにとって、今最も気に掛けなければならないのは、ファラミアの体を自分から逃させないことだった。だから、足をすくい上げた腕を、ファラミアの汗ばんだ背に回して体同士をひどく密着させた。
 忘れてはいけない。自分は、選択を成したのだ。
 思い起こすと、ファラミアの首元に顔を寄せ、低く笑った。それは、ファラミアの目から、自分の表情を隠すためだけの行為だった。
「質問を、変えましょうか」
 顔の間近にある耳に囁くついでに、舌で柔らかなその耳朶の形を辿ってやると、抱き込んだ体の肩が、小刻みに揺れた。人間の体のうちでも、とりわけ滑らかな舌触りを持つ耳の後ろの味を、堪能しながら答えを待つ。ファラミアは、その口元に耳を寄せればやっと聞こえるほどに小さく、音を漏らしていたがそれは、どう聞いても意味のある言葉ではなかった。ファラミアの意志が窺えるとすれば、ただ、首を振る、その行為からだけだった。

 分からない。
 体に与えられる不慣れな刺激がそうさせるのか、元々意味など持たせていない質問を選んで投げかけられているのか。それさえも、ファラミアには分からなかった。
 一体、問いかけに答えを得る気があるのか疑わしいことに、喉元に唇の感触を得たのが分かった。すぐに離れるとファラミアが一人合点していたそれは、ファラミアの喉仏を包んだ。ファラミアは、首筋に内側から冷たいものが走るのを感じて、息をのんだ。決して頼りなくもない喉に、はっきりとした形を現している骨を覆っている皮膚を、湿ったセオドレドの舌が、少なくともファラミアの感じたところによれば、我が物顔に触れていく。奇妙な感触から逃れることを期待してファラミアがとった、体を伸張させるという行いは、意図とは逆向きに作用した。体の芯を貫いていくような痛みと疼きが、自分の身のどこともなく駆け上がっていくのだ。それは、単に触れられるよりも、よほど耐え難い感覚だった。誰のせいでもないそれは、ファラミアに常ならぬ高い声を上げさせた。咄嗟に、自分の片手で口を塞いだ。気休めにしかならなかった。むしろ、呼吸を大いに妨げられるのが、自分のしたことながら、恨めしいだけだった。自分の身体を、一切意識せずに済むなら、どんなに楽になれるだろうと、頭の隅で思う。
 望むところのものを得るための、もっとも賢い方法は、じっと動かないでいることだと、ファラミアは学習したが、だからといって、何の役に立ちそうにもなかった。この期に及んでは結局、ファラミアは自分が思い通りに出来るのは、自分の身体くらいのものだと思い知っただけだった。
 ファラミアの都合を、セオドレドが汲んでやる理由は、おそらく無い。
 ほんのごく僅か、緩くセオドレドが腰を寄せただけで、身が裂かれるような思いがした。繰り返されると、自分には逃げ場も救いも、残されていないような錯覚に否応なく陥らされる。楽になりたいと、ファラミアの身体が叫んでいた。それが叶うなら手段など選ぶものかとさえ思った。余計に触れ合わないように、じっと身を潜めるように、ファラミアは身動きすることを、自分に禁じた。それが、セオドレドの意に任せて、自分の身体を融通させることだとしても、進んで余分な苦痛を引き受けることと比べれば、何ということもなかった。
 それでもファラミアは、多少なりとも、意図するところが伝わるかも知れないと、自分の体を拘束するセオドレドの背に、両の腕を回して出来るだけの力で、自分の方に引き寄せた。

208SS投下2/7:2004/07/09(金) 10:58
修正:
【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169,188-191
                                                    ~~~~~ 

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 2/7


















 どれだけ体が要求しようとも、目を閉じたくはなかった。
 だから、ファラミアは、自分の目が、自分の意志に関係なく何を語っているのかも理解出来ないまま、セオドレドの目を見上げた。
「お答えは?」
 接触の深さこそそのままだったが、ファラミアを苛んでいた行いだけは止んだ。降って湧いた少しの間も逃すまいとでもするかのように、ファラミアは呼吸を深くした。そのファラミアの髪に、セオドレドの手が触れてくる。思うままには動かない手を、ファラミアはどうにかセオドレドの、その手に添えた。
 今、この時にあっても、ファラミアはその手を、心地良いと思う。なぜ、それのみの存在であってはくれないのかと、ファラミアは思う。詮無いことだと、思いを自らすぐに打ち消した。セオドレドに、それ以外の何かを望んだのは、他ならぬ自分ではないか。
「ファラミア殿」
 自分の名を呼ぶ声は、落ち着きと、錯覚でなければ慈しみさえ含んでいるように聞こえた。体を抱く腕は、ファラミアにとって長年の保護者であり援助者であった大切な人のものを思い起こさせるほどに、心地良かった。余計な痛みさえなければ、一晩このままいるのも悪くはない。そんな事さえ頭に浮かぶ。
 顔を近くに見ようと、自分を見下ろす顔の額に、額を擦り寄せた。セオドレドの、あの笑顔が目に映った。身体がどうあれ安心すれば良いのだと、自分の内なる声が語りかけてくる。
 触れ合った部分から込み上げる苦痛は変わらないものの、内面からの声に従って、ファラミアは表情を緩めた。
「質問を、変えさせて頂きますよ」
 問いかけではなく決定を告げるセオドレドの声は、あくまで穏やかだった。
 頷くことも、首を振ることも忘れたファラミアの、剥き出しになった額に、セオドレドの唇が押し当てられた。思わずファラミアは、目を閉じた。額だけではなく、きめの細かい皮膚を持つ目尻に、こめかみに、頬に、セオドレドの唇が触れていくのを、ファラミアはやけにはっきりと感じていた。少しの暇も与えまいとしているように、セオドレドはファラミアの顔のどこへと言うこともなく、唇を押し当てた。それが、くすぐったくないと言えば、嘘になる。皮膚の感覚だけではない、心の中もまた、唇が持つ独特の微妙な柔らかさでもってくすぐられているような、心地悪くもないが安んじてもいられない、奇妙な感覚にファラミアは囚われた。
「ファラミア殿は、白の塔の何が、お好きなのです?」
 問われている意味がすぐには分からず、ファラミアは、半分熱に浮かされた者が見せるような表情で、セオドレドの顔を覗き込んだ。
 身体が竦んだ。
 身体のあり方に気を取られ続けている頭で、ファラミアは悟った。セオドレドが、自分に何を言わせようとしているのかを。
 誰に告げたこともなかった、墓場まで持ち行くと決めたファラミアの思いを、昨日今日出会ったばかりの他人に見透かされているのは、疑いようもなかった。自覚した途端、全身は小刻みな震えを帯びた。聞き流せば良い。分かっている。それでも、震えはファラミア自身にも、どうしようもなかった。
 ままならぬ体を、十分に鍛錬された太い腕が包んで、きつく戒めた。それで身体の動揺が止むわけではなかったが、それでも、放置されるよりも、いくらかましであるかのように、ファラミアは感じていた。
 苦い表情でファラミアは、抱え込まれた自分の足先に目を向けた。
 セオドレドは、自分にとって丁度良いほどまで膝を折らせ、裸足の足指に口をつけた。足が、意識しないまま逆らうように跳ねたので、セオドレドの体重が膝の裏に向けてかけられてきた。足指の隙間に指を通されると、ファラミアの足は簡単に身動きがとれなくなった。足の指の一つ一つを、口に含みながら、セオドレドの視線がファラミアの顔に向けられてきた。ファラミアには何の感慨もなかった。だから、表情は無かったに違いない。それすら、今のファラミアには知りようがなかった。

209SS投下 3/7:2004/07/09(金) 10:59
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 3/7



















 セオドレドは構う様子もなく、口に含んだ指の腹に歯を立ててくる。肉の感触が良かったらしく、もっと確かに味わおうと、足指の股に舌を伸ばし、指の内側から丹念に舐めていく。ファラミアは、さすがにたまらなくなり、体をよじろうとした。が、身の内に走った苦痛が勝って、結局、何一つ成されなかった。
 ファラミアは一つ大きく息をつくと、セオドレドから視線を逸らし、天井を見上げた。体を硬くしているのが、足の指に入った無理な力からセオドレドにも分かった。舌だけでなく、指を突っ込んで爪の先で指の股の皮膚を掻いてやると、ファラミアの手が、自分で口を塞いだのが視界の端に入った。体を動かさず、声も立てず、視界を塞ぐこともなく。ファラミアは、何をしようとしているのか、セオドレドには理解しかねた。片足に満足がいったので、セオドレドはその足を自分の口から解放した。
 ファラミアはあからさまにほっと息をつき、体を弛緩させた。予想外にもう片方の足を口に含まれると、咄嗟に、ファラミアは肘を寝台について上体を起きあがらせようとした。熟慮の上の行為ではなく、単なる反射だった。だから、ファラミアは自分で腕を寝台に投げ出し、体を元通りに横たえた。
 指の股に舌を触れて、口に含んだ足指ごと強く吸われた。そのたびに揺れようとする足を、ファラミアは意志でもって、その動きを封じた。セオドレドは内心舌を巻いた。が、それと行為とは、まったく別の問題だった。ファラミアの足指がいい加減、唾液にまみれてきたところで、セオドレドはファラミアの足指の一つ一つに、柔らかい口づけを与えた。
 ファラミアを困惑させていた体の震えは、いつの間にか収まっていた。
 自分の体の末端を愛撫する頭の後ろに手を伸ばして、ファラミアは自分の顔近くに、年長者の頭を引き寄せた。大人しく間近に寄ってきたセオドレドが、口付けようとするのを、手を割り込ませて阻み、自分の指を口に含んで唾液を得ると、その指でセオドレドの口を拭った。セオドレドは目を瞬かせていたけれども、気の済んだファラミアが両腕でセオドレドの頭を抱くと、はじめは唇を触れ合わせるだけの、軽い口付けがファラミアの唇に降ってきた。柔らかさを心地良く味わうには、内側に入り込んだ部分が与える感触が、ひどく邪魔ではあったけれど、お互いに、繰り返して唇を触れ合わせた。湿り気を帯びた小さな音が、二人の間だけに聞こえるくらいに、何度も溢れた。
 ロヒアリムらしく一つに編まれたセオドレドの髪を、ファラミアはその流れに逆らわず、撫でた。編み終わりを止めている紐を手探りに見つけると、ファラミアは迷わずそれを引いた。ゴンドールの者がしているよりも、よほど長く伸ばされた髪が、自分の上にある体の、肩から背中に流れ落ちてきた。耳の後ろから指を差し入れて、先端までファラミアは、その淡い色彩の髪を梳き、一房を指の間に捕らえて、自分の頬に押しつけた。
 たっぷりとした厚さを持った背中に回した腕にも、ほどけた髪が絡んだ。ファラミアはそれを指の一本ずつを握って手の中に包み、そうして、締まった肉の形に隆起した背を抱いた。片手では足りず、もう片手もセオドレドの背に上げて、両腕で、彼の体を抱き潰しても構わないくらいの力で抱き、細く息を飲んだ。
 ファラミアは、苦痛を主張するばかりいる内側でセオドレドと触れ合っている部分を、自らより深く、彼が入り込むよう腰を寄せた。
 ファラミアは、上がりそうになる声を、必死で殺した。なんとか成功させると、再び行為を繰り返した。
「ファラミア…殿」
 自分を見下ろしながら呟かれる声の、取ってつけたような敬称が、ファラミアには少しだけ可笑しかった。
 唇同士の触れ合いを求めながら、ファラミアはセオドレドの行為を待った。

 理由は知らない。
 セオドレドは、初めて、ファラミアから自分が望まれているものを知った。その中味が何であれ、その目的がどうであれ、間違いなく自分は、望まれているのだ。
 初めての邂逅とも言えないような邂逅の日。彼に、自分は触れることも叶わなかった。再会を果たした今、ファラミアの体は、考え得る限り一番深い方法で自分の身体と触れ合わされていた。それ以上の何かを欲するのは、贅沢に過ぎるかも知れない。しかし、セオドレドは望まずにはいられなかった。ファラミアに、どんな事でも構わない。望まれたいと。

210SS投下 4/7:2004/07/09(金) 11:00
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/7
















 ファラミアは、セオドレドに対し、これ以上なく明瞭に答えを提示していた。
 我ながら、馬鹿なものだとセオドレドは思う。ファラミアの口から、確かな答えを聞こうと、自分で決めたばかりだというのに、もう、その決定を放棄してまるで構わない自分がいるのだ。
 ファラミアが、なぜ今、自分に問いかけとは無関係に望みを見せるのかというその理由が、いかに見え透いていようと、その行いがどれほどあざとかろうと、ファラミアに望まれるなら、そのほかの全ては、枝葉末節ですらなくなってしまう。これ以上、馬鹿げた事があるだろうか。そして、それを自覚しながら、自分は間違いなく、幸福感の頂点に身を置いているのだ。
 それを、何と呼ぶべきだろうか?
 セオドレドは首を振った。自分の髪が鬱陶しく体に張り付いているからだと、そういうことにしておいた。
 ファラミアは、彼が守るべきものを守ろうとしている。自分は、欲しているものを手に入れようとしている。それに、何の問題がある? セオドレドは、自分に言い聞かせた。 もはや、迷いも思考も、必要なかった。
 無理な力が、体の内側からファラミアを貫こうとしていた。声を上げようとした口は、片方で十分ファラミアの口程度は覆ってしまえるほどの、大きな手に塞がれた。自由を封じられた足と、体と。唯一意志に従って動かせる腕に出来ることは、自分の体の安定を得るために、それが自分の体から自由を奪っている張本人のものであっても、手近なものに掴まっておく事くらいだった。
 体の内と外とを揺さぶられながら、一体それが自分のものであるのかどうかも不確かなまま、どんな思考も手放して、自分ではない人間の気が済むまでの、永遠とも思える自分の時間と、自分の持つ全てを、ファラミアは目の前の彼に与えた。
 ファラミアは息苦しくなって、首を仰け反らすと、激しく振った。まともに息をしようというのが、はじめから無理な相談だった。その上、口を塞がれていては、事態はよほど深刻だった。
 以心伝心とはこのことだろうかと思えるほど、ファラミアの状態をセオドレドは汲んだのか、口を覆っていた手を外し、ファラミアの口を自由にした。声を上げれば、少しは状態がましになるかという期待は、間違っていたと、ファラミアはすぐに思い知った。だから代わりに、ファラミアはセオドレドの肩に歯を当てた。我を忘れたファラミアは、肉を噛みしめるかも知れなかった。だが、セオドレドは僅かに呻いただけだった。
 一体、自分は求められたものを与えているのか、求めているものを与えられているのか。
 
 両方に決まっている。
 
 セオドレドは、ともすれば持って行かれそうになる気を絞って、自分とファラミアの体の間に手を割り込ませ、ファラミアの張ったものを探った。ファラミアの顎が上がった。身体的な興奮の証を、手に握り込み、具合を見ながら擦り上げてやる。
 声を発するのも大儀そうなのに、ファラミアは断続的な高い声を、喉の奥から聞かせていた。手の中のものの張りが増したと思った時、なま暖かい粘った液体がセオドレドの手の中に溢れてきた。
 息を荒げるファラミアの背を、それまでよりもきつく抱くと、ファラミアの体の深くに、セオドレドは自分のそれを突き込んだ。それが、充足を告げる合図だった。
 ファラミアは息を詰めると、そこに彼が与える全てを受けいれた。

 お互いを繋ぎ止めていた腕が緩んだ。
 体は触れ合わせたまま、息が整うのを待った。
 汗ばんだせいで、乱れた髪が張り付いている顔を間近に見た。いくらかは自分の責任であると、ファラミアは一房ずつ指に髪の束をつまみ、耳の後ろに回してやった。掌で、撫でつけてやると、なかなか整った格好になって、ファラミアは満足した。
 息が落ち着いてみると、体が痛むのだけが気になった。
 疲労している筈なのに、眠気が自分を攫っていく気配は少しもなかった。
 汗にまみれた体が不快だった。それ以上に、刺激への生理的な反応のまま体外に出された、鬱陶しく粘る体液がまとわりついたままの下肢が、耐え難かった。

211SS投下 5/7:2004/07/09(金) 11:01
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/7















 察したのか習慣なのか、自分もまだ平常ではないだろうに、セオドレドが体を起こした。ファラミアは、腕を掴んで引くことで、それを制した。
「まず、体を休める事が肝要かと思います」
 ファラミアの言葉を受けたセオドレドは、あっさりと寝台に体を落とした。せめてもということだろう、乾いた布で、寝台に投げ出されたファラミアの体の隅々を、拭っていった。多少なりとも体に清潔が取り戻されるのは、実際ありがたいものではあったが、こんなものが常備されている事自体が、ファラミアには、呆れて良いのか感心して良いのか分からないところだった。
「わたしも」
 手伝おうと伸ばしたファラミアの手を、セオドレドは握った。そして、清潔な布を握らせる代わりに、指先に口づけた。
「体を休めるのが、肝要ではありませんでしたか」
 セオドレドが笑うので、仕方なくファラミアは手を引き、体の湿り気を布切れに吸い取らせていくセオドレドを、寝台に寝転がったまま、ただ見つめた。

 汗が引いた体を、お互いに寄せて抱き締め合った。
 ファラミアの体を包む人の温みも、肌の具合も、くだらないものだと思っていた疲労感も、決して悪くはなかった。
 息が規則正しくなったと思って顔を覗くと、いつの間にかセオドレドは眠りに落ちているようだった。
 暗がりで姿に目をこらしながら、その長い髪を指に掛けて梳いた。
 彼は繰り返して自分に問うた。
 自分は、答えを持っていた。しかし、彼には答えなかった。
 それでいて彼は何も言わず、ファラミアが仕掛けた誘いに乗った。おそらく、全てを知りながら。
 いくらお互い関わり合いのある国で、責任ある立場に生まれついた者同士とはいえ、二度ほど会ったと言いつつ、自分とセオドレドは、お互いただの他人ではないのだろうか。それが、何故だろう。
 まったく、興味は尽きないではないか。
 そう思い至って、ファラミアが答えるべきものとして最後に残された一つの答えを、ファラミアは得たと思った。そして、発問者の耳元に口を寄せ、回答を与えた。
「セオドレド殿」
 ごく小さな呟きでしかないファラミアの声は、眠りにある者の耳に届いてはいないだろう。ただ、ファラミアはそれで良かった。好きなものの話をしようと提案したのは、確かにセオドレドだったが、考えるまでもなく、セオドレドが欲しているのは、ファラミアが今、答えとして彼に与えることが出来るような、そんなものでは決してないのだろうから。
「好きなもの」でありながら、誰とも、どんなものとも決して並列には語れない特別な存在は、ファラミアには、ただ一人だけだった。そうは言わないが、ファラミアが内に抱え込んだものを、セオドレドは間違いなく、正しく知っている。誰にも口に出来ないそれを共有する彼には、せいぜい、共犯者になっていただこうではないかと、泥のように眠っている特別な一人と自分の知らない何かを分かち合っている、彼と同じ年に生まれた、年長者を見つめながら、ファラミアは思った。
 いい加減煩くなってきた睡魔の誘いに応じて、ファラミアは、セオドレドと枕を並べて眠ることにした。
 馬さえも上げることが出来そうな寝台の上で、ファラミアはセオドレドの体から、自分の体を決して離さなかった。
 
 部屋を満たす薄明かりが、寝台に反射して淡い色を見せていた。
 ファラミアが目を開いたときには、習慣なのか、セオドレドは既に起き出していた。
「これは、失礼致しました」
 ファラミアは上体を起こそうとした。が、痛みが伴うだろうことは彼らしくもなく、失念していた。
「熱い湯を持つよう言いつけてあります。少々お待ち下さい。清潔にすれば、お体も多少は楽になりましょう」
 ファラミアの様子に気付いたセオドレドは、寝台の縁に腰掛けて、ファラミアの髪を労るようにさすった。
 どこか、気遣わしげなのは気のせいではないだろう。ファラミアは素直に問うた。

212SS投下 6/7:2004/07/09(金) 11:03
修正:>211 誤4/7 正5/7

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 6/7


















「お気を煩わせる事が、何かございましたか」
 セオドレドの手が止まった。それまでになく思わしげな顔を見せられて、ファラミアは息を飲んだ。
 低く、セオドレドは言った。
「こちらに滞在した最初の晩。ボロミアが、どこで何をしていたか。お聞きになりたくはありませんか」
 ファラミアは、一瞬言葉を失った。
 そして、笑った。
「お忘れですか。セオドレド殿。ボロミアが言わないのなら、わたしはそれを、聞きたいとは思わないのです」
 すっかりやられてしまったとでも言いたげに、セオドレドは頭を抱えた。
「まったく、ファラミア殿という方は」
 俯いてしまった頑強かつ丈高い体に、ファラミアは体をにじって寄り添わせた。そして、自分とセオドレドと、たった二人しかいない部屋で、声を潜めた。
「ひとつだけ、わたしはセオドレド殿にお願いをしなければなりません。というのは、わたし共の間にあったことは、決してボロミアの耳に入れませぬように」
「私はボロミア殿の知るところになっても一向に構いませんが。それに、ファラミア殿らしくもない、不正直さではありませんか」
 ファラミアは、首を振った。
「結果、受けるのが叱責であるなら、良いのですがセオドレド殿。われらは、祝福されてしまいます」
「祝福?」
 思いがけない単語のせいで、つい声が高くなる。ファラミアは、そのセオドレドに頷いて見せた。
「話したが最後、ボロミアは花嫁の父さながらに、男泣きに泣きながら、弟を頼むと、セオドレド殿に何度も頭を下げましょう。そして、ボロミアの気分はおそらく舅以外の何者でもなくなるでしょうが。セオドレド殿は、ボロミアとそのような関係を結びたいとお望みですか」
 セオドレドは、黙って首を振った。光景が目に浮かぶようだった。セオドレドとて、ボロミアが、どのくらいたった一人の弟を可愛く思っているのか、決して知らないわけではなかった。初めて出会ったときの態度が既に、それを物語っていたではないか。
「わたしもご免被りたいのです。彼自身の思いを殺して、わたしの幸せとやらのため、ボロミアに泣かれるなどということは」ファラミアは、言葉を切った。愉快でもない言葉を紡ぎつつ、どこか虚空に視線をやるファラミアの横顔さえ、セオドレドは好ましいと思う。だから、ファラミアの言葉に含まされていることの意味を、セオドレドは考えもしなかった。
 ややあって、セオドレドの顔面に視線を戻したファラミアは、くすくす笑った。「こう申し上げて失礼でなければ、おそらく、セオドレド殿とわたしは、似通っているのです」。
 セオドレドは、ファラミアの心の底を図ろうとでもするかのように、顔を見つめた。
「正確には、求めているものが、と言うべきなのでしょうけれども。更に申し上げるならば」
 ファラミアは、セオドレドの手を取って、指をその隙間に絡ませて握ると、一本一本に、丁寧に口づけた。
「決して手に出来ないものを求めてやまない。そこが似ております」
 口づけに飽きたのか、ファラミアは指先を口に含んで、爪の際の僅かな肉に歯を立てた。愛撫だか手慰みだか判然としない行為にも、セオドレドはファラミアの為すがままに任せていた。
「わたしは、ボロミアが言わないことを聞こうとは思いませんが。ボロミアが、セオドレド殿のおられる国に、何を求めて来たのかくらいは、理解しているつもりです。そして、わたしが理解するに至った多くは、セオドレド殿に負っております」
「ファラミア殿?」
 セオドレドも、さすがにようやく顔色を変えた。だから、ファラミアは片手をセオドレドの頬に触れ、柔らかく撫でつけると、そこに口付けをした。
「ゆめ、お考え違いをなされませぬよう。わたしは、何もセオドレド殿をお恨み申し上げているわけではないのです」

213SS投下 7/7 最終:2004/07/09(金) 11:06
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 7/7 【完結】

















 思い起こさずとも知れたことだった。
 この国をボロミアは幾度か訪問していた。
 自分は、初めての異国で一人だった。セオドレドと大事な話があると、ボロミアは言った。それが、ファラミアを単身残すための口実ではないとすれば、それは何か? 
 この国への訪問を提案したのは、ボロミアだった。何故ここなのか?
 ファラミアが尋ねてもいないことを、ボロミアは口にした。ボロミアは、馬を見たいと言った。それから?
 異国の衣服は思いの他、自分を手こずらせた。自分の着衣もセオドレドには異国のもののはずだが、セオドレドはそれを苦にしなかった。つまり、慣れているのだ。何故?
 ボロミアが、セオドレドを相当気に入っている事は、ファラミアにもすぐに知れた。ただ、その意味までは、実際は図りかねねいていた。が、それも昨日の朝までのことだった。
 ボロミアが見せた態度のひとつひとつは、一つの方向をさし示していた。それらは少なくとも、この国に来るまでファラミアの知らないところであったし、今あるこの機会を得なければ、この先に渡っても、ファラミアの与り知らぬ事とされ続けたかも知れないことだった。
「真実を得るということは、素晴らしいものです。常づねわたしは、そう思ってきましたが。今この時ほど、大いに実感したことは無いようにさえ思います」
 ファラミアは笑っていた。
「ボロミアが望むなら、それが何であれ、わたしはボロミアに差し上げたい。それを、ただの思い上がりで無くするだけの力を、わたしは身につけたいと望み、そこそこには成功しているやもと自惚れることも出来ましたが−−よりにもよって、肝心な部分は。ままならぬと、思い知らされたと。こういうわけです」
 そう言って、ファラミアは、苦く笑って見せた。そうしたいのは、むしろ、自分ではなかったかと、セオドレドは思う。
「その口がおっしゃいますか。望み通りになどなりはしません。誰一人です」
「何一つ、ではないらしいですな」
 ファラミアは、声を殺して笑い、絡ませていた指をほどいた。
「ままならぬ。だからこそ、考えぬ事でしょう。幸い、セオドレド殿は、わたしが口にせぬ事ですら正しく理解しておられる。わたしの事も、そして」
 誰とは、ファラミアは言わなかった。言われずともしれたことゆえに、ファラミアも口にしなかったのだろう。
「これを幸運と呼ばずして、何と呼びましょう。せいぜいわれわれは、無い物ねだりに身を焦がして思いを虚しくするより、互いの幸福を望もうではありませんか」
 ファラミアは、セオドレドの体に体を添わせ、両の腕で抱擁を与えた。
「実に、悪くありません−−。まったく、我が兄ながら、ボロミアの目は確かなものです」
 編まれないままの髪に、頬を寄せたファラミアの体に、セオドレドは抱擁を返した。そうしたかったからではなかった。ファラミアが、それを望んでいたからだった。

 扉の方向から、遠慮がちな合図が聞こえた。
 ファラミアは体を離し、主の言いつけを守って来訪した従者を迎えるために立ち上がったセオドレドを、見上げた。
「さて、わたしは、明日には帰国致しますので。残された今日一日を、有意義に過ごす手だてについて、共に考えてはいただけませんか」
「そのように致しましょう」
 セオドレドは答えた。
 ファラミアは、初めて見たときからずっと、セオドレドにとって、内なる宝物だった。それは、短くもない年月を経てなお、セオドレドの夢想さえ超えた輝きでもって、セオドレドの眼前に現された。
 ただ一つ、かつてとの違いは、セオドレドが手を触れられる場所に、彼がその身を置いているということだけだった。
 ファラミアの望みは何でも叶えよう。彼に望まれることが、自分の望みであるのだから。
 さて、自分は望む物を得たのだろうか。あるいは、誰一人として、何ひとつ、得られるものなどないのだろうか。
 体は重く、勝手知った筈の自分の部屋で、扉は遠かった。

【終わり】

お目に入れて下さった皆様へ。ありがとうございました。

214萌えの下なる名無しさん:2004/07/09(金) 15:31
ヽ(´ー`)ノ

215萌えの下なる名無しさん:2004/07/10(土) 11:50
>214
ん?なんじゃ、おまえさんは。この宿に立ち寄ったのなら、感想の一言も
残して行くものじゃぞ。
・・・って、誰のなりきりだよ!w

で、改めて
>>207->>213
いやもう、章を追うごとに加速するエロさ(誉め言葉)と途切れぬ緊張感に、
殆ど指の隙間からモニターを覗くようにして読み進めてまいりましたが、
なんとハッピーエンディングだったんですね!どう着地するのか、本当に
予測がつかなかったので、嬉しい驚きでありました。
執政のお子さんたちですが、ボロミアの下が「妹」だったら、父君はとっとと
ローハンの嫡子と政略結婚でもさせていたんだろうな・・・などと考えた
ことがありますが、「弟」でも問題はなかった訳ですねw
・・・なんかすごくアホなことを書いている気が・・・
ともあれ、完結おめでとうございました。

216萌えの下なる名無しさん:2004/07/11(日) 23:23
>>207-213
セオファラ小説、完結おめでとうございます。美しい小説でした。読んでて悲しくなりました。
ただ、最初に全部で何スレ消費するか明記しなかったのはマナー違反だったと思います。
私はこのスレの77なので、私が言って良い事では無いんですが。
ご存知無かったのなら、申し訳有りませんでした。
しかしながら、若大将の若々しさが痛々しく萌えでした。おつかれさまでした。

217萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 11:44
>207->213です。
ご意見、ご感想ありがとうございました。
全レス数の見通しが無いまま、なし崩し的に長いものを
投下させていただいたこと、また、護身をお願いせざるをえなかったことについては、
お詫びさせてください。
今後は一名無しとして、大将の多彩な萌えを楽しませて頂きたいと思います。

218萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 12:54
長編投下の際の心得や住人の対応としては、旧館フロスレなどが参考に
なるかも知れませんね。
それでなくとも、大将絡みの話は長くなる傾向がある気がするのですよ。
お悩みキャラな上、外に顕れる言動が不可解だったりするせいでしょうかw
しかし、投稿者としては不可解にならないように、と、自戒もこめて
いろいろ思いました。

219萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 15:59
要するに、

ある程度切りのいいところまで話を完結させてから投稿しろ


でFA?<フロスレ心得

220萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 10:44
引っ張って申し訳ないですが。

SS投下のバッティングが、最もいただけない事だろうと。私見ですが。
せっかくのSSも読みづらくなりますし、感想も書きづらいので。
>218中にてご紹介頂いたスレで、長編投稿者様が全体の長さと、
投下時期の予告をされてたのは、バッティングを回避するための
ご配慮だろうと私は理解しました。

もちろん、物語を細切れに見せられるのは困る、という
ご意見が多ければ、投稿者は考慮しなければならないでしょう。

すごい差し出がましい上に、
必要かどうかは分かりませんが、敢えてガイドライン的にまとめるなら、

投稿者
/投下前に、使用レス数を予告する。
/投下前に、投下時期を予告する(しかし、誘い受けウザーと言われるかもしれない諸刃の剣)。
/投下前に、SSの内容をある程度明らかにしておく。
/投下はSSが完結してから。

住人
/スレの主旨に合わないものは、適切なスレへ誘導する。
/スレの主旨と照らして問題なければ、投下時期を承認あるいは示唆する。
/スレの主旨には合うが、自分の趣味と合わないものについては黙ってスルー
 (出来ない方は、よもやおられまいとは思いますが一応)。

こういったあたりで。

明文化されてなくても投稿者が自覚しろよ。出来ないヤツは投下すんなよというものも含め、
この機会に住人からご意見が出れば、今後、新規に投稿される方のお役にも立つのでは無かろうかと。
これもまた私見ですが、投稿の際の敷居が低い、あるいは敷居が明らかである方が、
より多くのSSを拝見出来るのではないかと。

そういう狙いもあって、余計なことではありますが、まとめてみた次第です。

221萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 12:01
>220
しかしながら、そういう「心得」みたいなものは、「旅の仲間のお約束」を
熟読すれば、おのずと理解できることなのではないかと思われます。
そもそも「お約束」自体、初代アラボロスレ等で問題になった諸々を踏まえて
成立したという経緯がある訳ですし。
そういうことを知る為に、たまには他スレや過去ログを覗いてみるのも
いろいろ勉強になると思いますよ。
あと、使用レス数や内容については、従来通り1レス目の最初に明記して
おけばいいのでは?レス数の目安についても同様。
ただ、それが10レス以上にも及びそうな場合や、連載形式を取らざるを得ない
ような時には、前もっての予告も必要かと思います。
それからバッティングを避ける為には、小まめなリロードもお忘れなく、とか。

以上、これまで投稿下さった皆様のSSの「内容」を貶める意図は毛頭ないことを
付け加えさせて頂きます。

222萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 15:40
>221
使用レス数、内容表記について同意。
投下予告は、数レスで終わるような短いものなら不要でしょう。
それから、投稿者様方にはできるだけ一括で投下して戴きたいと思います。
「嗜好の合わないものはスルー」が原則なのは勿論ですが、
何度も何度も(しかも同じ話の続き)だとさすがにストレス溜まります。

223萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 19:25
77ですが、私の投稿が混乱を招いたようで反省しています。
悪気は無かったんですが言い訳をすると自分語りウザーになるので止めておきます。

投稿の際のガイドラインについては、220様、また他の皆様のご意見に同意です。
222様、不愉快な思いをさせて申し訳有りませんでした。
実のところ、私が始めた事なので責任を感じていました。真剣に受け止めてくださって
ありがとうございます。私が言うな、とツッコミをくらいそうですが、いいスレですね、
ここは。
1レス消費しておきながら有意義な意見を出さなくて申し訳有りませんでした。

224萌えの下なる名無しさん:2004/07/15(木) 00:27
たびたびの書き込みで、申し訳ないです。>220です。
まず、真摯なご意見をくださったことについて、
お礼を申し上げさせてください。

>221でご提示いただいた内容を受けた上での問題意識の中心は、
「旅の仲間のお約束」として明文化されたガイドラインがあり、
それが成立されるに至った理由も過去ログとして閲覧可能であるにも拘わらず
「心得違い」な振る舞いがなされたのは何故かということです。
そして、「心得違い」の中味が明確になれば、それに属する振る舞いは以後、
回避されやすくなるのではと考えます。
>220に提示させていただいたまとめや、自分の私見が
唯一無二だというつもりは、もちろんありません。
私が申し上げるのも口はばったい事ですが、貴重なご意見の数々、
本当にありがたく思います。

私も、SSを投稿させて頂いている者の一人です。
実際に「心得違い」を為した以上、自省するばかりです。
そして、ご表明下さった>222様はじめ、投稿の形態においてストレスを与えてしまった皆様に。
この場を借りまして改めてお詫びさせて下さい。
今後は、「〜お約束」の再確認はもちろん、
>221様、>222様のご意見を併せまして、肝に銘じさせていただきます。

>77=233様
お話を引っ張ったのは私(>220)ですので。
>216では、必要なご指摘を下さったという印象を、私は持ちました。

>220(=217)でした。SS投稿中から事後まで、お騒がせしてすみません。
以降は、よほどでない限り名無しで。

225221:2004/07/15(木) 10:42
レス数についての文言がダブっていましたね。

さて、お約束通りになっているか心許ありませんが、SSいきます。

<ネタバレ@ ボロ/ファラ しるけなし・・・しめりけ程度?>
*6レス使用予定。
*場所はロスロリアン。
*最後の方でちょっとだけ馳夫さん登場。そして、意外なカプも。

しるけも直接描写もないけど、「あった」ことが前提だし、近親ネタのお嫌いな方は
スルーして下さい。
嫌いじゃなくても、何と言うか・・・いわゆる「砂吐きそー」な話ですので、
ご注意下さい。
まあ、夏の夜の怪談とでもお思い下されば・・・


そこは、平安の裡に守られてある場所と言う。
しかし、木々の太い枝や生い茂る葉が昼も濃い影を作り、夜は不思議な輝きに充ちる黄金の森の中で、ゴンドールの子ボロミアの心の安らうことはない。
昼ともつかず夜とも分たぬ時の中、そしてまた、木々の作り出す濃すぎる大気の中、彼は次第に、今がいつであるのか、自分がどこにいるのかということさえ忘れそうになり、その感覚は、慰安と休息ではなく、むしろ不安と焦燥を彼にもたらした。
森の住人たちが、旅の仲間の休息場所として用意したくれた立派なテントを離れ、ボロミアは、しばしば一人になれる場所を求めて、森の中をさまよい歩いた。その方が、よりこの場所の魔力に捕われることになるかも知れぬと思いつつ、彼は、仲間たち、特に小さい指輪所持者と、王の末裔と名乗るあの男と顔を合わせることを避けた。と言うより怖れた。
彼らはそれぞれに、ゴンドールの子の望みを体現する存在であったから、そして同時に、彼がその望みの困難さを思い知らされる存在でもあったからだ。
森の奥方は、彼の心に囁きかけた。まだ望みはある、と。
しかし、その言葉は本当に希望を語ったものであるのか、ボロミアは今もなお疑っていた。あれは、怖しい誘惑ではなかったか。

ゴンドールの子よ、そなたの望みが叶えられる為に、そなたは何をなすのか。
また、何を必要とするのか。

あなたの  ほんとうの  のぞみは  なに 

===

226SS 2/6:2004/07/15(木) 10:45
<ロリアン>














奥方の声が、今なお私の頭の中で響く。
こうして一人、人目につかぬ木立の奥にいても。
太い木の根に腰を下ろしていても、自分が今眠っているのか、或いは覚めているのかさえ、私には判らない。
あの奥方は怖しい、怖しいかただ。
黄金の森には魔女が住まうという、あの噂は真実であったのだ。
老婆のような、それでいて幼女のようなあの声。
弟がここにいればーー伝承学に詳しい彼であれば、私に知恵を貸してくれるだろうか。この試練に堪える為の力になってくれるだろうか。

そう考えていた、まさにその瞬間、私は自分の目の前に彼の姿を見出す。

「ファラミア・・・」
呼びかける言葉は声にならない。
彼は、最後に別れた時の姿のまま、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「ーー私は夢を見ているのか」
自分の声が、今度ははっきりと聞こえる。
「我らが共に、イムラドリスへと誘なう声を聞いたあの夢のように、私たちは同じ夢の中にいるのか。或いはこれも、あの奥方の力によるものだろうか」
「ボロミア」
彼が私の名を呼ぶ声も、現実の如く耳に届く。
「奥方とはどなたです。ボロミア、あなたは今、どこにいらっしゃるのですか」
そっと手を伸ばしてみる。当然、実体のない幻をすり抜けていくかと思った自分の手は、しかし、確かに彼の腕に触れた。
もう一方の手もゆっくり差し伸べ、私は彼の両腕を掴んだ。
「夢だ・・・」
自分の目から予期せぬ涙が溢れ出すのを、私は感じる。
その目を閉じると、今度は、
「兄上」
と呼ぶ弟の声が私の耳に聞こえ、彼の細い指が私の頬に触れて涙を拭い、私の髪を撫でるのを、私は感じていた。
このような実体、このような感覚を伴う夢が存在するのだろうか。
「なぜ、涙を流すのですか。なぜ、それほどつらい、それほど疲れきった顔をなさるのです」
懐かしい声が囁きかける。
もう一度目をあけ、その顔を見上げると、気づかわしげな表情がそこにあった。
そして彼は、私の頭を両手で抱いたまま身を屈め、私の額にそっと唇を寄せた。その感触も温かさも、もはや現実のものとしか思えない。
「ファラミア」
彼が離れようとした時、私はまたその両腕を掴み、引き寄せ、かき抱き、今度は自分から、唇を彼のそれに重ねた。
弟にするキスではなかった。しかし、彼は拒まない。私たちが最後に過ごしたあの夜のように。
今や、彼の体は私の体の傍らにあり、彼の手は私の頭を抱き寄せ、彼の唇は私の唇を深く受け入れる。
ようやく唇が離れた後、私は彼の肩に頭をもたせかけた。
「おまえのことを思い出さないようにしてきた」
私は言う。
「イムラドリスを発ってからは特に、おまえのことは考えまいとした」
「いとしい兄上、私は一日たりと思い出さない日はありませんでした」
彼は、両腕で私を抱きしめながら言う。
その腕の温かさ、力強さ。もし、これが夢なら、そして、こんなものを見せるのがあの奥方の力だとするなら、あのかたは何と残酷なことをなさるのだろう。

227SS 3/6:2004/07/15(木) 10:47
<ロリアン>














「随分お痩せになって、兄上、あなたの身に何が起きたのですか」
優しい囁きが耳をくすぐる。堪らず、私はその抱擁を解いた。
「夢でないなら、これは罠だ」
私は言った。
「おまえは何者だ。今どこにいる。どこから私を見ている。弟と同じ顔をし、同じ姿をし、同じ声で私に呼びかける、おまえは何者なのだ」
目の前にいる者は、ひどく悲しげな表情を浮かべる。
「私にも判らない。自分がどこにいるのか、あなたがどこにいらっしゃるのか。これが夢なのか、そうでないのかも」
そして、その手が再び私の頬に触れ、その唇は、そこを伝う私の涙を吸い取る。
「でも、あなたは今ここに、私の前にいる。こうして触れることもできる。夢でも罠でもいい。懐かしい兄上、お会いしたかった」
「ファラミア、ファラミア」
もう一度、私は彼の体をきつく抱いていた。
「こうしていてくれ。こうしていてくれるだけでいい」
あの夜、そう言ったのは彼の方だった。
私の腕の中で、眠りに就くその前に、
ーーーこうしていて下さい。朝まで。それだけでいい。
と。
「あんなことをするべきではなかった」
私はそう言っていた。
「あのまま兄と弟としてのみ、別れた方がよかった」
「為したことを後悔などなさらないで下さい、ボロミア」
彼は言う。
「私は悔やんだことなど一度もない。なぜなら、私はこういう風に生まれついた者なのだから。この世に生を享けた時から、それは私の中にあったものなのだから」

この子は、おまえは、自分が何を言っているか判っているのかーーと、問い質したかった。
私たちが共に為したあのことは、一刻の衝動などではなく、長年にわたって私たちを蝕み続けてきた狂気の噴出と呼ぶべきものだったのだろうか。或いは、迫り来る破滅をつかの間忘れ、互いの生を確かめる為に、あれほど強く求め合ったのか。その行き着く先にあるものが不毛の曠野であったとしても。かの忌わしき国の影は、そのような形で、ゴンドールとその都の中枢を侵蝕していたということなのだろうか。
不思議なのは、彼が、日ごろ誰より聡明な私の弟が、それを自明のこととして受け入れ、何ら疑念を抱いていないかのように見えることだ。
「私たちのしたことは、私たちを穢すものではない。何も変わらない。何も失いはしないのです、ボロミア」
彼の言葉が呪いのように、むしろ懲罰のように響く。長い時間をかけて彼をそういう人間にしてしまったのは、私自身であるのかも知れない。
そして、それこそが私の最大の罪だ。私たちが行なったこと以上に。彼の罪もおそらくそこにはない。
他の誰を愛するより、血のつながった実の兄弟を愛した。それのみを至上のものと思いなし、その他の愛に心動かされることはなかった。
私たちの罪はそこにこそある。
そして、その罰はーーー

228SS 4/6:2004/07/15(木) 10:50
<ロリアン>














「私は怖しい・・・」
そう呟きながらも、私の腕は、なおも彼の体を抱いている。夢であれ幻であれ、いま縋るものはそれしかない。
「何が怖しいのですか」
「何もかもがだ。この場所も、我が国の行く末も、私自身も、何もかもが、ただ怖しい」
そして、にもかかわらず、ついに私は言ってしまうのだ。
「おまえに会いたい」
と。
「一刻も早く帰りたい」
もちろんそれは、旅の仲間たちにも、これまでずっと言い続けてきたことだった。ゴンドールの為、ミナス・ティリスを守る為、人間たちの世界の為にーーー
しかし、今はただ、夢でも幻でもない彼に会う為に、私はそこに帰りたい。
互いが別の地へ赴き、もっと危険な戦いの中で、もっと長い期間離れていたこともある。その時でさえ、今ほどつらくはなかった。二度と会えないかも知れないなどと思ったことはなかった。
「あなたがいずこにおられようと、また私がどこにいようと、私は常にあなたのものです。生まれた時からずっと、そうであったように。私の心も魂も、いつもあなたのおそばにあり、あなたをお守りします」
そう言って、彼はまた私の髪を梳き、涙を拭い、額にキスしてくれる。
それは、弟がまだ幼い頃、私が彼を慰め、力づける為にしていたことだ。しかし、今は彼が私にそうしてくれている。
戦さに出る歳となってからは、都に戻る暇とて殆どなかった私が、次なる戦場へと向かう時、目に涙を溜めて、
ーーーあにうえ、いつおもどりですか。
と抱きついてきた、小さいあの子が。
「自分がこれほど弱い人間だとは思わなかった。おまえは、兄のあまりの不甲斐なさを見かねて、現れてくれたのだろうか」
自嘲めいた言葉が洩れる。
彼はそっと首を振った。
「かつて、あなたは私の英雄でした。私の目に、あなたは誰よりも丈高く美しく雄々しく、完全な人として映っていた。あなたは私の光であり風であり、私の世界の中心そのものであり、そういうあなたを、私は愛していたのです」
「それでは、おまえの中の私の地位は、今や失墜するばかりであろうな、弟よ」
「いいえ、ボロミア」
彼の声は優しい。
「あなたは今、そんなに悲しそうな顔をなさっている。苦しみ、傷つき、弱っておられる。でも、私のあなたへの愛が害われることは決してない。あなたは、今も私の世界の中心にいるのです」
そして、また唇が触れあう。
「あなたを愛しています。あなたの強さも弱さも、すべてを愛しています。今までも、そしてこれからもずっと、私の愛が欠けることはない。愛しています、ボロミア。いとしい兄上」
「愛している」
私も言う。それが破滅へと誘なう罠であっても。
呪文のように。誓言のように。祈りのように。
「愛している、ファラミア。どこにいても、この先何が起きようとも、私はおまえだけを愛し続ける。私の過去も未来も、すべてはおまえと共にある」
彼の唇に、彼の耳に、繰り返し繰り返しーーー

===

229SS 5/6:2004/07/15(木) 10:52
<ロリアン>














「ボロミア、ボロミア!」
と呼ぶ自分の声で、ファラミアは目を覚ました。
いとしい人の体を抱いていたはずの腕が、むなしく空を掻く。
「いかがなされました」
見張りの兵が声をかけるのを、
「何でもない。退がれ」
と戻らせた後も、彼は寝台の上に身を起こしていた。
既に薄明かりが射し込み始めた洞窟の中、聞こえるのは滝の音と、夜勤の兵士たちが動き回る僅かな物音だけだった。
いま誰の名を呼んだかを、部下たちに聞かれなかったかと危惧もしたが、聞かれたところで、彼らがきわめて親しい兄弟であったことは周知の事実であったから、特に不審に思われる謂われもなく、また、夢の内容が他所に洩れる訳もなかった。
しかし、夢が本当に他人に作用しないのなら、あのイムラドリスの夢、そして、今まで自分がその中にいた、夢ともつかぬあの出来事は何だったのかと、ファラミアは思う。
彼の手にも唇にも、兄の体、兄の唇の感触が、幻と言うにはあまりにも生々しく残っている。その体温や鼓動まで、ファラミアは、はっきり憶えていた。
現ならぬ場所であれ、兄と巡り会えたことを嬉しく思う一方、二人を共にそこへ導いたものが何であったのか、また、兄の心身に何が起きているのかと思うと、胸騒ぎがしてならない。
「・・・あなたがいずこにおられようと」
夢の中で語りかけた言葉を、彼はもう一度口に上らせる。
「私は常にあなたと共にあります、ボロミア」
兄であり、それ以上の存在でもある、愛する人に。

===

「妃よ、何を見たのか」
銀の髪の王が問う。
水鏡の前に立つ、黄金の貴妃が答える。
「これを通すまでもないこと。とても醜くあさましきものが、今夜この地に出来いたしました」
「して、それはそなたの力によるものか」
貴妃は首を振る。
「わらわの力でも、また、わらわに制御できるものでもありませぬ。あの者の方に、この森の空気に感応する素地があり、それがまた同じ血を持つ者を呼び寄せたまでのこと。あれを、人の子は愛と呼ぶのです。それが闇へと向かうひと足となるとも知らず」
「ああ、だが妃よ、それはまだ闇ではない」
銀の王の唇が、笑みに似た形を作る。
「愚かではあっても、それはとても強い力となって、人の子を動かすのだから。そして、それは未だ破滅に到ってはおらぬ」
「そうであればと思います。しかし、おのが真の望みに気づいたとしても、また自らそれを封じたとしても、この先、あの者の心に平安はない」
言い放つ貴妃の面に浮かんだのは、冷徹さか、諦念か、あるいは慈悲であったかーーー

===

230SS 6/6:2004/07/15(木) 10:54
<ロリアン>ラスト














濃厚でありながら清らかな、朝の空気の中を歩いていたアラゴルンは、探す相手が、大木の隆起した根に腰を下ろしているのを見つけた。
「ボロミア」
声をかけたが、相手は返事もせず、動きもしない。腰かけた姿勢のまま、眠っているようにも見えた。
「ボロミア?」
近づいてもう一度呼ぶと、その体が大きく揺らぎ、それから、
「アラゴルン」
と答えが返ってきた。
彼は、ゆっくり辺りを見回し、
「もう朝か」
と呟いた。
「ああ、ホビットたちが朝食の支度に取りかかっている。あんたを探すように頼まれた」
「食欲がありません」
アラゴルンは眉を顰め、彼の顔を見た。
「何か口に入れておかないと保たないぞ」
「わかっております」
「昨夜は眠れたのか」
「それがよく判らないのです。ずっと覚めていたようでもあり、深い眠りの中にいたようでもあり・・・夢を見ていた気もするのですが、思い出せませぬ」
「夢?」
「とても美しい夢であったようにも思え、怖しい悪夢であったようにも思えるーーこの森の空気のせいであるやも知れませぬ」
そう言いながら、彼は、ここではない、どこか別の世界をさまよい歩く者の目をしていた。
しかし、アラゴルンは、それ以上何か問うことはせず、
「先に行っている」
とだけ言って、踵を返した。そこで、ボロミアもやっと立ち上がった。


「・・・どこにいても、これまでも、この先もずっと」
ふと、そんな言葉がボロミアの口をついて出る。
前を歩く男がちらと振り返ったが、何も問うてはこなかった。
それは、夢の中で誰かが囁いた言葉のようにも思えたが、ボロミアがその意味を自らに問うことはなく、また、その夢の内容を思い出すこともなかった。
今はただ、それが希望をつなぐものとなり得るなら、あの男を都に連れて行くことを考えるべきだと思いつつ、彼は折れたる剣の継承者の後を追って歩き出した。

231221=225:2004/07/15(木) 10:58
6レス使う必要もなかったかも知れませんが、区切り等の都合です。

保管の際には、3、4の間に一行あけ願います。

232萌えの下なる名無しさん:2004/07/15(木) 20:05
>221=225様

良いお話ありがとうございます。
実際に、ロリエンで弟君との夢ともうつつとも付かない邂逅が
兄上の身にあったならばと、夢見さしてもらいました。
それなのに、せっかくの一夜を覚えてないなんて、不憫な。

>長い時間をかけて彼をそういう人間にしてしまったのは、私自身であるのかも知れない。

兄上本人は認めたがらないだろうけども、兄上には
大将が「そういう」ものとして必要だったからこそ、
現在の形に、兄弟の在りようが決定されたのだろうと。
つまり、兄上が、自分自身受容し切れていない部分であろうが、
兄上を含む兄弟にとっての必然が、それをもたらしたのだろうと、
思うわけです。
そして、普段は情より理屈が優先してるのかと思わせてくれる大将が、
兄上の前ではかわいい弟っていうのが、なんともツボです。

兄弟に関係ないところで、ケレ様が持つ存在感に感動。
「殿」の名は伊達ではありませぬな。

233萌えの下なる名無しさん:2004/07/16(金) 20:55
>225

えーと、難しい講釈とかナシで。

萌 え ま す た(*´Д`*)ハァハァ

234225:2004/07/18(日) 12:41
ご感想ありがとうございました。
実は萌ルドールのようじょ(小文字が出せない・・・)ガラ様もけっこう萌え、
と言うかツボなわたくしw
銀の殿の腕に抱っこされつつご託宣を垂れるガラ様にハァハァ・・・(板違い)

リオソの、王様のせいで苦労の絶えない新執政ネタもけっこうツボ。
笑えるアラファラ(エレファラ?)話も、たまには読みたいです。とか言って
みる。

235萌えの下なる名無しさん:2004/07/19(月) 20:18
アラファラ便乗なうえ、どっかでガイシュツだったらスマソですのだが、
指輪戦争終結後のゴンドールで、故ボロミア元総大将を騙る連中が発生。
連中に対してキレる若者27代執政、執政には公正さの重要性を説くものの、
実は騙り野郎には執政同様怒り心頭のエレッサール陛下とか。

236SS<兄弟/イムラヒル> 1/2:2004/07/20(火) 21:34
学生の皆さんは夏休み本番。ということで、いきなり小ネタ@海、行かせていただきます。
アラファラでなくてごめんなさい。

場所は、ドル・アムロス。
登場人物は、執政兄弟中心に、イムラヒル大公を加えた三名。
兄弟の年齢は、兄上二十歳前くらいで。
捏造ものなので、原作との整合性が気になる方にはお勧め出来ないです。
それから、兄上が物知らず過ぎるのが許せない方もご注意いただきたく。
カップリングは、ありません。

2レス分、使用させて頂きます。

<ファラミア/ボロミア/イムラヒル/カップリング要素皆無> 1/2















 ドル・アムロスの海岸は、つかの間の恩寵のように降り注ぐ、目もくらむような夏の日差しに満ちていた。
 この地の大公であるイムラヒルが居城に招いた、彼の夭逝した姉の忘れ形見である兄弟は、石の都では決して目にすることのない海を、それぞれに堪能していた。
 兄であるボロミアは、泳ぎに堪能だったし、その事への自信も手伝ってか、とりわけ、海を気に入っているようだった。
 兄と共に海水に体を任せ、波にたゆたっていた弟、ファラミアは、心地よさげに水に浸かっている兄の方へ向き直った。
「わたしはこれで上がりますので。兄上もご一緒にいかがですか」
 ボロミアは、信じられないとでも言いたげな顔を、弟に投げかけた。
「もう限界なのか。そんなことでは、いざという時が思いやられるが」
「では、兄上はまだこちらにいらっしゃるので」
「ああ。一人で上がれ」
「承知しました。くれぐれも申し上げておきますが、わたしは、ちゃんと兄上をお誘い申し上げましたからね」
「何のための念押しか知らぬが、確かに聞いた」
「それでは、心おきなく上がらせていただきます。兄上は、お気の済むまでごゆっくりと」
 不思議そうな顔を見せる兄を海上に置いて、ファラミアは兄に負けず劣らず達者な泳ぎで、遠浅の砂浜に上がった。見つけておいた適当な木陰に入って、体の水分を拭っていたとき、ファラミアは近づいてくる人影に気付いた。つい身構えたが、その主が知れると、ファラミアは目に見えて表情を緩めた。
 人物は、彼ら兄弟の叔父、イムラヒル大公だった。
「叔父上。このような所までお越しいただいてありがとうございます」
 イムラヒルは、礼儀に則って立ち上がりかけたファラミアに手真似で座るよう促すと、自らも体を低くした。
「いや。来訪を乞うたのは私だ。そなたたちには礼を言わねばな。無論、許可を下さった執政殿にも」
「痛み入ります。われら兄弟、この地を堪能させて頂いております」
「それは何より」
 イムラヒルは、目を細くした。彼にとって、姉が残した子供たちはいくつになっても可愛いのだ。
「ところで、ボロミアの姿が見えぬが」
「ボロミアですか」
 ファラミアは意味深長に笑った。
「兄上は、海がことのほかお気に入りのようで。上がるようお誘いしても、一向に聞き入れて下さらぬのです」
 ファラミアとイムラヒルは、顔を見合わせた。
「私からも、一言申す事にするか」
「叔父上。お心遣いは有り難く思いますが。ボロミアは、常として、自らの身に体験して得心せぬ限りは、梃子でも動かぬのです」
 ファラミアとイムラヒルは、もう一度顔を見合わせた。
「間もなく、私が習慣にしている午後のお茶の時間が来る。ファラミアよ。兄弟二人で私に付き合ってくれるな?」
「喜んで」
 ファラミアは、心からの礼を叔父に見せた。
「では、これよりボロミアを呼び返して参ります。衣服を整え次第、叔父上の元に参上させて頂きますゆえ」
「相分かった」
「ありがとうございます。ボロミアに成り代わり、礼を申し上げます」
「何の。ただ、既に手遅れかも知れぬがな」
 イムラヒルは、波間に見えるボロミアの姿に思わしげな視線をやると、波打ち際に向かうファラミアの背を見送ってから、居城に戻った。

 さて、さすがのボロミアも、叔父の招きとあっては無碍には出来ないとあって、自分の元に舞い戻ってきたファラミアから事情を聞かされるなり、ファラミアに先立つように、海を後にした。ファラミアは、ボロミアの背を追いながら、やれやれと胸をなで下ろした。
 しかし、問題なのは今ではないと、ファラミアは理解していた。

237SS<兄弟/イムラヒル> 2/2:2004/07/20(火) 21:38
<ファラミア/ボロミア/イムラヒル/カップリング要素皆無> 2/2















 叔父、甥でたしなむ午後のお茶の時間は、ファラミアにしてみても愉快なひとときだった。
 ただ、ボロミアにとって不思議な事には、気付けば弟と叔父が、二人して、自分を伺うような目で見つめているのだ。何かと思い、視線を合わせると、つと目は逸らされてしまう。
 同じ事は、夕食の席でも起きた。

「お前と叔父上は、わたしに何か含むところがあるのではないか?」
 夜も更け、兄弟のために用意された部屋に二人きりになって、ファラミアは開口一番、ボロミアから疑問を投げつけられた。
「ございませぬ」
 ファラミアは即答した。ファラミアが兄を欺くような人間でないことは、ボロミアが一番よく理解していた。だから、ボロミアはファラミアの言葉に納得するしかなかった。
「そうか」
 言うと、ボロミアは寝台に体を横たえた。その枕元に顔を寄せて、ファラミアは囁いた。
「もし、何かお困り事が生じましたら、時は問いませぬ。ご遠慮なく私に申していただけますか」
「何を困ることがある? まあ良い。分かった。お前も休め」
「お休みなさい。兄上」
 就寝前の挨拶であるキスをお互いの額に送り合ってから、ファラミアも自分の寝台に体を落ち着けた。

 ボロミアは、翌朝、弟と叔父が見せていた視線の意味を、身を以て知ることになった。
 ボロミアは、目が覚めても寝台から起きあがれなかった。全身が、擦りむいた覚えもないのにひりひりと痛むからだった。
「強い日差しを許容量以上に浴びると、人間の皮膚というものは、軽い火傷のような状態になるのです。特に、皮膚の色が薄い方は、日差しに弱いといいます。ボロミア」
 寝間着をはだけて寝台に横たわったボロミアに説明をしながら、ファラミアは、火傷に有効だという薬草の汁をしみこませた布を、赤く腫れた肌の上に広げていった。それでも、望まぬ痛みが不快でないわけがない。ボロミアが恨めしげな目をファラミアに向けてきた。
「そこまで知っていて、なぜ兄に教えず、放っておいた?」
「わたしは、自分が上がる時に兄上をお誘いしました。もっとも、兄上はご自分のなさりたいようになさったわけですが。昨日の今日で、よもや、お忘れになったとはおっしゃいますまい」
 ボロミアは、黙りこくってしまった。
 ファラミアは、寝台に釘付けになるしかなくなった兄の、枕元に持ってきた椅子に座り、本を読みつつ、時折物言いたげに自分を見上げるボロミアの、皮膚の状態の面倒を見ることでその日を過ごした。
 ゆるゆると流れる時間。眼下には砂浜、そして海。耳には、くすぐるような波の音。カーテンで遮られ、一日薄明るい光に満ちた部屋。そして、傍らにはいつになく無力なボロミア。
 あまりに満ち足りた時間を得て、ボロミアには、これからもたまに、日焼けに苦しんでいただくことにしようかと、ファラミアは密かに考えていた。

//終わり

238萌えの下なる名無しさん:2004/07/21(水) 09:26
>236->237様
大将・・・腹黒・・・?
そして(どうでもいいことですが)サンバーン体質の自分には、兄君の
苦しみがよーくわかりますw
夏にふさわしいお話ありがとうございました。

それにしても、ここんとこ東京の暑さは異様だ。なんとかならんのか・・・

239萌えの下なる名無しさん:2004/07/22(木) 13:07
大将と叔父上GJ!(w
ところで泳ぐ時はやはり水着なんでしょーか。もしや裸・・・?

240236:2004/07/23(金) 11:09
【訂正】 >237 第2段落8行目

誤 >「もし、何かお困り事が生じましたら、時は問いませぬ。ご遠慮なく私に申していただけますか」  
                                        ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
正 >「もし、何かお困り事が生じましたら、時は問いませぬ。ご遠慮なく、わたしにおっしゃっていただけますか」 


兄上は、自分が動けない分、弟を顎で使いそうな予感。
小ネタの、さらに小ネタ。

「痛い」
「いずれ回復します。今は、我慢なさる他ありませぬ」
「元はといえば…」
「兄上が加減をごご存知ないせいでしたかな」

「喉が渇いた」
「水をいただいてきましょう」
「この姿勢で、どうやって飲むのだ」
「ご心配せずとも、わたしが、飲ませて差し上げますよ」

「退屈だ」
「本をお読みしましょうか」
「お前が選ぶ本は、つまらん」
「そうおっしゃらず」
(朗読。兄上熟睡)

「ボロミアの具合はどうだ」
「これは叔父上。お陰様で、眠れる程度には大丈夫なようです」
「ファラミア。ボロミアはうちの者に任せて、羽を伸ばしてきても構わぬぞ」
「ありがとうございます。ただ、わたしは兄上のお側にあって、お役に立ちたく思います」
「ボロミアも、それを、恐らく知っておるのだな」
「はい?」
「これは、信頼しきっておる者の顔だ」
(顔を見合わせるファラミアとイムラヒル。そして、両者ともに声をたてず笑う)。

//終わり

241萌えの下なる名無しさん:2004/07/23(金) 15:45
今日も暑いっすね。

兄へ「あんたは幼児か!」
弟へ「あんたはおかーさんか!」
そして、兄弟に対する叔父上のスタンスが絶妙。
コワイ父君の目の届かないところでは、ほんとにこんな感じで仲良くして
くれていたらいいな。

242萌えの下なる名無しさん:2004/07/25(日) 01:27
RoTK-CEのレンタルが始まった訳ですが、北米海軍基地のある町でヲタクの
祭典が開かれていまして、そこでSEE追加分に関するかなりのネタバレ情報や
実際の映像のさわりなどが公開された模様。
で、そのパネルディスカッションにおでましになったのが、我らが大将の
中の人と、ゴンドールの小さい騎士の中の人だったのですよ。
大将絡みで復活が期待されるシーンは、あらかたはいっているようですね。
以下、かなりネタバレなので・・・








大将がピピンと兄上のことを話す場面があるそうです。勿論、例の騎士の
制服が大将のお下がりだという話も。二人で笑い合ったり、大将にとっては
僅かな安らぎのひとときだったのでしょうね・・・
なお、大将の中の人が(自分の出番の中で)三部作中最も好きな場面は、
TTT-SEEのオスギリアスだそうで、やっぱりねw という感じですが、RoTKの
中では、「兄上と私の立場が入れ替わっていたら〜」のあたりと、上述した
ピピンとのシーンがいちばん好きなのだそうです。

今から来るべき冬のことを思い、現在の酷暑を少しでも忘れたいです。

243萌えの下なる名無しさん:2004/07/26(月) 01:53
>242サマ、情報ありがとうございます!
うわぁ〜、そんな祭典、うらやまし杉!!
フォー・ゴンドーーーール!!

244242:2004/07/26(月) 21:30
いろんなネタバレ情報を見て回って、改めて思ったのが、実は映画では、
ピピンこそがベ(ry の役割を(大将に対して)担っていたのかも、という
こと。実際に炎の中から助け出したのが彼だったというだけでなく。
ネタバレに関しては、あっと言う間に隠し撮り映像(おいおい)なんてもの
まで出回っているけどーーー










ああ、大将笑ってるよ。ピピンに向けて。それだけで嬉しい自分がいる。
ピピンが大将を慰めると言うか励ます台詞もあるらしい。そこで一気に
ファラピピ萌えが・・・とか言うより、いろいろな人から
「あなたは決してひとりではない」
と言われながらも、一人で行こうとする大将が、なおさら痛々しく思えて
きそうです。

245萌えの下なる名無しさん:2004/07/27(火) 00:22
>242さま
ネタバレ?なのでさげます。












あの隠し撮り(モロ隠し撮りーって感じでしたね)での
ピピンへ向けた笑顔、これまでのどれとも違ってるように見えました。
オスギリアスでボロミアに対しての全開の笑顔、戴冠式でのエオウィンとの
ふわっとした笑顔、フロドたちを放す時の腹くくった笑顔、
どれとも違いますよね…。中の人、ホント上手いなあと思いました。

246SS1/2:2004/07/30(金) 23:29
皆様、夏バテですか?それとも、わが国の祭典に向けての準備中?
という中、SEEネタバレ情報に触発されて、ファラピピ小ネタいきます。
その情報も、以前別の所で見たものとは少し異なるように思えますが、
はっきりしたことが判る前に、あえて書かせて頂きます。

<ネタバレ@ ピピン/ファラミア しるけ皆無>

*/はピピン視点という意味。
*大将オスギリアス撤退後、次の出撃前。
*ファラピピと言いつつ、半分くらいガンピピ。





白い花のような人だと、ピピンは思った。
初めて会った時には、前線から戻ったばかりで血と埃にまみれたその姿を、恐ろしいと感じた。
しかし、この冷やかな石造りの建物の中に佇むその人は、都の公子に似つかわしくない革の胴衣も籠手もまだ身に着けたままでいながら、慎ましく咲く白い花を思わせた。
自分が黒い石の中で燃え落ちる姿を見せられ、この都に来て枯れ果てたその実物を目にした、あの白い木がもし花をつけることがあるなら、この人に似ているかも知れない。
大将と呼ばれる人に対してふさわしい連想ではなかったが、ピピンはそう思わずにいられなかった。

そして、その人は今、実の父親から死を宣告されたにもかかわらず、穏やかな微笑さえ浮かべて、自分の前にいる。
この人の兄はこんな風には笑わなかった、とピピンは思う。
少なくとも、自分やメリーに向ける笑顔は、どこまでも明るく、太陽の光を集めたかのようだった。
それが失われたことは、もちろん自分たちにとっても打撃だったが、その父や弟にとっては、量り知れないほどの影響をもたらすものだったのだと、ピピンは思い知った。

「僕でお力になれることがあれば・・・」
と声をかけると、その人は微笑を浮かべたまま、静かに答えた。
「なすべきことはもうない。自分の身を護ることだけ考えるがよい」

ああ、この人は死ぬ気だ。
そう思った。
父親にそう言われたからだけではない。おそらくあの光を失った時から、この人は死ぬ気だったのだ。むしろ、父親の口からはっきりとそれを告げられることを、望んでさえいたのではないだろうか、と。
しかしーーー

「ガンダルフ!ガンダルフ!」
広い宮殿の中、やっと魔法使いの姿を見出して、ピピンは駆け寄って行った。
「ガンダルフ、どうかあの方を助けて下さい。あの方は死ぬ気です。ガンダルフ、お願いだから、やめさせて下さい」
「ペレグリン・トゥックよ、何の話じゃ」
白い衣にしがみついた手をぐいと引き離し、魔法使いは訊ねた。
それでピピンは、自分が目にしたことを、彼に話して聞かせた。
「こんな時だから、命がけでしなくちゃならないことだってあるでしょう。でも、あんなのは間違ってる・・・」
言ううち、ピピンの目からは涙が溢れ出した。
「ぼ、僕は、ボロミアさんが僕たちの前で斃れた姿が忘れられない・・・今また、その弟さんにまで、死んでなんかほしくないんです。たったひとりで、身を捨ててほしくなんか・・・」

あんなに傷ついたままで。
あんな微笑だけを残して。

247SS 2/2:2004/07/30(金) 23:33
<ファラピピ 2/2>














「しかし、あれも昔から、自分で決めたことに関しては枉げるということのない子じゃったよ。その点は、父や兄とよく似ている。それに、いったん執政の命令が下った以上、そう易々とは覆せん」
「ガンダルフ!」
「だが、おまえさんは、彼の助けになりたいんじゃな」
ピピンは頷いた。

ボロミアの弟だからーーーフロドとサムの無事な姿を最後に確認した人だからーーー
しかし、自分の気持ちがそれだけによるものでないことに、ピピンは気がついていた。
ボロミアには、彼が導いてくれるのであれば、自分はただどこまでもついて行きたかった。だがーーー

「僕は、あの方の為に何かしてさしあげたいんです。何ができるかはわからないけれど」
「そう思う者は、おまえさん以外にも、この都には大勢おると思うぞ」
と言うガンダルフの声は、いつになく優しかった。
「あの子が、ちゃんとそれに気づいてくれるといいのじゃが」
「だから、あなたがそうおっしゃって下さい」
ガンダルフは首を振った。
「言ったじゃろう。人がこうと決めた心を簡単に動かすことなどできん。そんなことは魔法使いの仕事でもないわ。だが、おまえさんならあるいは、本当に何かをなし得るかも知れんな。ホビットには、人間や魔法使いの思い及びもしない力がある。ボロミアの心を最後の最後で踏みとどまらせたのも、おまえさんたちだったのじゃから」
そう言われて、また涙が出そうになった。それがこぼれ落ちる前に、ガンダルフはピピンの肩にそっと手を置いた。
「が、まあ、わしも彼には伝えておかなくてはならんことがある。おまえさんはおまえさんで、その"できること"について考えればよい。さしあたっては、いま身に着けている制服にふさわしい振舞いをすることじゃ、小さい騎士よ」
「この服ですけど・・・」
ピピンは少し腕を広げ、白の木の徴しを捺した黒い胴衣に目を落とした。
「あの方が子供の頃、着ておられたものなのだそうです」
「ふうむ?」
魔法使いは眉を上げた。
「なるほどな。では、あれの父親にも、まだ少しは望みがあるやも知れぬ」
去り際、ガンダルフはもう一度言った。
「忘れるな。おまえさんにできることは必ずある筈じゃ」

あの人を守りたい。
と、ピピンは思った。
どう考えても、身に過ぎた思いには違いない。共に前線に出る訳にいかないことも判っている。
またそれは、ボロミアが自分たちを守る為に命を掛けてくれた、その恩に報いたいというだけの気持ちではなかった。

白の木を燃え尽きさせてはならない。
血を浴び、踏みにじられ、それでもなお端然と咲く白い花のようなあの人を、僕はただ守りたい。
その為に命を掛けることになろうとも。

「できることは必ずある。必ずーーー」
魔法使いの言葉を、もう一度、ピピンは自分の口で繰り返した。


***
お粗末さま。1と2の間に1行あけ願います。

248萌えの下なる名無しさん:2004/07/31(土) 17:56
>246さま

世間は夏祭り準備の予感。

読後の今、気分はまさにベレゴンドです。
この追い込まれっぷりが大将だと思いつつ、
もっと楽になって欲しいのも本当だし。悩まし過ぎます、大将。
ピピンは成人前なのに、見事な腹のくくりっぷりを見せてくれるし。
小さい人には改めて感服しました。

ファラミア=白い花の喩えがぴったりで、一行目がもう萌えだったんですが。

兄上は熱帯雨林のイメージなんですが。中つ国にあるかどうかは…。
あるいは月見草と向日葵とか。嫌なたとえだったらごめんなさい。

249萌えの下なる名無しさん:2004/07/31(土) 19:30
>246さま
大将=白い花にツルッ禿になる程同意ですヽ(゚∀゚)ノ
大将のイメージカラーはなんとなく白、緑、茶・・・まさにお花色。

全然関係ないのですが、
某ケータイ指輪ゲームの人物紹介の大将、
一人キラキラしてて眩しかったです。
大女優用スポットライトでも当てられていたのかと思う程に。

250SS<ベレゴンド執政兄弟> 1/2:2004/08/01(日) 22:43
唐突に、季節感のない小ネタいかせて頂きます。
原作のどのエピソードとも絡みません。捏造ものです。ご注意お願いします。

登場人物はベレゴンド、ファラミア、ボロミアの三名。
主役はベレゴンドです。カップリングはありません。
大将二十代後半くらい。
読み流していただければ幸い、というお話です。
2レス分使用させて頂きます。



<ベレゴンド/ファラミア/ボロミア しるけなし> 1/2















 ミナス・ティリス第三中隊の近衛兵、ベレゴンドは面食らった。
 今まで無い事に、総大将殿から直々に呼び出しがあったからだった。
 ともかく、ミナス・ティリスでは総大将といえば執政に次ぐ責任者である。その総大将の呼び出しとあらば、何を置いても駆けつけなければならない。夜更けにも拘わらず、ベレゴンドは支持された場所へと急いだ。
 城塞の一角に総大将であるボロミアは、いた。
 ベレゴンドもミナス・ティリスに仕える身である。その姿は見知っていたが、直接に顔を合わせるのは初めてのことだった。平伏しようとするベレゴンドにボロミアは近づき、耳元で低く言った。
「ベレゴンドであるな。事は急を要するのでな。事情は道々話す」
 先に立って大股に歩き出したボロミアに遅れないよう、ベレゴンドは姿勢を正し、足を速めた。ベレゴンドの気のせいでなければボロミアは、通常ならば一介の近衛兵に過ぎない身であるベレゴンドなどが入ることを許されるような場所ではない、執政家の個人的な居住空間へと進んでいた。
 意識に上らすまいとしても、どうしても緊張が勝って身構えてしまうベレゴンドに構わず、ボロミアが振り返りもせずベレゴンドに問う。
「お前には妻があるな」
 何故、今、ボロミアがベレゴンド個人の話を聞きたがるのか、ベレゴンドには実は分からなかった。が、考えても仕方がなかった。
「その通りにございます」
「子供はあるか」
「息子がおります」
「妻子は、かわいいか」
 総大将殿は、何を聞きたいのだろう。ベレゴンドの混乱は増すばかりだった。
「大事に思っております」
「結構な事だ」
 ボロミアが、頷いたような気がした。しかし、総大将殿と会話するというだけで強いられる緊張感から、背中にしたたる嫌な汗をこらえるので、ベレゴンドは精一杯だった。ボロミアとの会話は、ベレゴンドにとっては、光栄というより、ただ、畏怖の念が勝るものだった。
 ベレゴンドが連れて行かれた先は、湯殿だった。ますます訳が分からない。待ちかまえていた女官が、ベレゴンドを中へ引っ張っていく。
「念入りにな」
 ボロミアが女官に告げる声が聞こえた。
「何がどうなっているのです」
 されるがままになるしかないベレゴンドは、普段親交の持ちようもない女官たちに尋ねた。が、答えはなかった。
 すっかり体を洗われ、袖を通したこともないような真っ白なガウンに身を包まされて、ベレゴンドは女官に付き添われて、湯殿から出された。
 まるで品定めされるように、頭のてっぺんから足の先までボロミアの遠慮無しな視線に晒されて、ベレゴンドは居心地悪いことこの上なかった。
「ご苦労」
 女官をねぎらうと、ボロミアは再び歩き出した。置いて行かれてはどうにもならない。ベレゴンドは、目的が知れずとも、どこまでもボロミアに従うしかなかった。
 扉の一つの前でボロミアは足を止めた。
「以降、足音は厳禁である。不用意に気配を立てることも許さぬ」
 殊更抑えた声で告げられた命令に、ベレゴンドはごく低く短く御意と答えた。
 慎重かつ丁重に、ボロミアが扉を開いた。
 広く、薄暗い部屋に、人の気配があることに、ベレゴンドは気付いた。そして、部屋の空気は、ただならぬ湿気と熱に覆われているように感じられた。
 ベレゴンドに指示した以上に注意深く、ボロミアは部屋を進んだ。ベレゴンドは、粗相がないよう神経を尖らせながらボロミアに続いた。
 ボロミアが再び立ち止まったので、ベレゴンドはそれに従った。
 ボロミアの体越しにベレゴンドが見たのは、寝台だった。人の気配はそこにあった。禁じられていたにも拘わらず、ベレゴンドは息を飲んだ。彼が、職務上の義務からだけではなく、崇拝してやまない、ファラミア大将の姿があったからだ。気付かれたのだろう、ボロミアが振り返り、ベレゴンドにきつい非難の目を向けていた。ベレゴンドは、非礼を詫びるために頭を下げるしかなかった。

251SS<ベレゴンド執政兄弟> 2/2:2004/08/01(日) 22:44
<ベレゴンド/ファラミア/ボロミア しるけなし> 2/2














 ファラミアは、眠っているようだった。
 ベレゴンドの目には、それが安らかな眠りであるようには見えなかった。見間違いでなければ、顔は上気し、ただの寝汗とは思えない玉のような汗が、額に滲んでいた。僅かに開いた唇の間から漏れる息は、多分、熱を帯びてるのだ。
「どう思う」
 いきなりの問に、ベレゴンドは答えることが出来なかった。
「痛々しい事だ」
 悲痛な響きを持つ呟きに頷く事が、ベレゴンドに出来る精一杯だった。
「熱がある。薬の処方を受けたが下がらぬ」
 おいたわしいことだ。そう思ったが、ベレゴンドが声に出すわけにはいかなかった。
「添い寝を言いつける」
 えっ。と声を上げそうになるのを、ベレゴンドは自分の両手で口を塞ぐことで、なんとか抑えた。
 命じられたことは理解出来た。が、聞き違いかも知れないと、礼も忘れてベレゴンドは総大将殿の顔を、目を丸くして見た。
「聞こえぬのか」
 念を押されて、ようやくベレゴンドは体を動かすことが出来た。
「失礼を」
 自分が使っているよりは広い寝台に、ベレゴンドは慎重に慎重を重ねて体を滑り込ませた。こもっている熱と、汗によるしっとりとした湿り気に体を包まれてもなお、自分のしていることが、到底現実とはベレゴンドには思えなかった。
「余計な事を為すな。考えもするな。明朝、迎えの者を寄越す。以上だ」
 ボロミアは、一方的にベレゴンドに告げ、身を翻した。部屋を出ていく気配がベレゴンドにも感じられた。

 大将殿は、目を覚まさなかったのだろう。
 とてもまともに体を向き合わせる気にはなれず、自分の背中越しにようやく盗み見るようにしてベレゴンドが確かめたのは、呼吸のため大きく上下しているファラミアの体だけだった。
 自分は、一体、ここで何をしているのだろう。
 ベレゴンドは何度も自分自身に問うた。
 手を伸ばせば触れられる位置に、大将殿がいる。それどころか、自分は同じ寝台に身を横たえている。これは命令だった。添い寝だ、と総大将殿は言った。いい年をした大人に添い寝が必要なのだろうか。そして、何故自分なのか。もしそれが必要ならば、医術の心得がある者や、兄弟である総大将殿の方が、より相応しいのではないか。
 色々な考えが頭に浮かんだが、何一つ確かな道筋を示すものにはならなかった。

 それにしても、大将殿だ。
 熱に浮かされて寝付いているにしても、佇まいは整っていて、普段見かける様子と変わることと言えば、多少弱々しさが見えるくらいのものだった。
 余計なことを為すな。
 不意に、ボロミアの言葉が頭によみがえってきて、ベレゴンドは自分が、ファラミアの姿に不躾にも見入っている事に気付いた。
 自分も、寝れば良いのだろうかと、ベレゴンドは目を閉じてみた。しかし、ファラミアの呼吸と、体の持つ熱が、殊更、体に染みるように感じられて、寝付くどころではないのが、分かっただけだった。
 それでも、命令は命令だった。気配をなるべく殺し、自分の心臓の鼓動が己の耳に煩いのを我慢しつつ、ベレゴンドは自分の上官の寝台に、寝転がっているしかなかった。
 そうして、まんじりともしないまま、ベレゴンドは朝が来るのを待った。

 視界は暗かった。横たえている体が重かった。
「ベレゴンド」
 名を呼ばれて、くっついたままでいようと粘るまぶたを、なんとか開いた。
 視界に入ったのが、誰なのか頭が認識するまで多少かかった。
「ファラミア…様」
 ベレゴンドは跳ね起きようとしたが、何故かひどい頭痛と倦怠感が体を支配していて、思うようにならなかった。
「迎えが来ている。療病院に寄って指示を仰ぐが良い」
「は…」
 ふらつく体を、迎えだという近衛兵に支えられて、なんとか立ち上がるとベレゴンドは、自分の上官に深々と礼をした。
「いかにも総大将殿の考えそうなことだ。ご苦労だった」
 張りのある声は、病人のそれではないと、ベレゴンドは意識の片隅で思った。本当に良かった。とベレゴンドは思った。
 次に気付いた時には、ベレゴンドの体は療病院にあった。
「風邪だね。まったく、どこで貰ってきたのやら」
 喉に苦い薬を流し込まれたが、大将殿に貰った風邪なら悪くはないかも知れないと、昨夜取れなかった分までも取り戻そうとするかのように、朦朧とする割に痛む頭に心悩ませつつ、ベレゴンドは深い眠りに落ちていった。

252SS<ベレゴンド執政兄弟> (2/2)+1:2004/08/01(日) 22:47
<ベレゴンド/ファラミア/ボロミア しるけなし> (2/2)+1
















***

「兄上」
 身支度を調えたファラミアは、真っ先にボロミアの元に向かった。
「ファラミア。元気になったか。結構な事だ」
 満面の笑みをたたえたボロミアは、熱が引いた弟の体を抱き締めた。
「ありがとうございます。しかし、他人を巻き込むのは感心しませんな」
「気付いていたか。風邪は人にうつすと治るという。単なる民間伝承だと思ってはいたが、試す価値があったというわけであるな」
「兄上…」
 思わぬ溜息が漏れた。
「ベレゴンドはとりわけ信用のおける人物であると、調べはついている。でなければ、任せるものか」
「そのようなことは申しておりません」
「では何だ」
 幼い頃、あの場所にいるのは必ずボロミアだったのだが。
 この兄は、自分の言いたいことになど、一生気付くまいとファラミアは思った。だから、黙って兄の背を抱き返しただけだった。

//終わり

253萌えの下なる名無しさん:2004/08/03(火) 23:11
>250様
あの・・・子馬限定かどうかわかりませんが、ベレって総大将殿の思いつきの
おかげで、いろいろ大変な目に遭ってません?w その反面役得も有り、と。
そして兄上、「弟は心配。でも自分がうつされるのはいや」って・・・w

私事ですが、DVD封入の中つ国住民票で、晴れてゴンドールの民と認定され
ました。これはやはり、今後とも執政家の為に尽くせという啓示でしょうか。
(え、帰還あそばした王様には・・・?)

254萌えの下なる名無しさん:2004/08/04(水) 14:16
>250−252女神様
夏風邪注意ですな。いやあ、べレゴンドさん役得。
でも「ファラミアさまぁー!!」(原作)のひとだからオールおっけー。

>253
いいえ、兄上は涙をのんで職務を優先したのですよ。
白い都の大将と総大将がそろって寝込んでいたんでは
東よりの悪しき風が機に乗じる恐れがある。
なにより、父上がパらんティあで見てるかも、だ!!

255萌えの下なる名無しさん:2004/08/05(木) 10:50
>パらんティあ
そ れ だ !
そうでなければただの感冒、何を恐れることがあろうか!
と断腸の思いで諦めたのですね、兄上は(w
というかプライバシーの侵害ですよ父上……

256萌えの下なる名無しさん:2004/08/05(木) 21:20
小ネタを引っ張ってごめんなさいなのですが。
こんな父上出ました。



<父上、次男が高熱に伏せるの報を受け部屋を訪れる>






時は遡り、ファラミアが伏せった直後。
起きあがれないファラミアの枕元で、
無言のまま立ちつくす父上。
その気配のため落ち着かず、眠れないファラミア。

ファラミア心の声:
(責任ある大将の身でありながら伏せるなど
 不甲斐ないとのお怒り、ご尤もです。
 回復後にはどのようなお叱りも受けますゆえ、
 どうか今は療養に専心させて下さい)。

父上心の声:
(父に手の一つも差し出しさえしてくれば、
 握るなり添い寝なりしてやれるというのに、
 なぜこのような時でさえ、ファラミアは父を頼みにしてこぬのだ)。

自分から手を伸ばせば話が早いにも拘わらず、
素直になれない純情(?)父上。
待てど暮らせどファラミアからのアクションが
無いことに業を煮やして自ら退室。

「そしてかれは多くの他のことと同様
このことでも父の不興を買ったのである」(追補編より)。




//双方とも「よく人の心を読」むらしいのに擦れ違う大将と父上。
 …失礼しました。




引用部分の補足
出典:新版指輪物語10追補編/p69
「かれ」…ファラミア
「このこと」…ガンダルフの智恵をファラミアが喜んで学んだこと。

257萌えの下なる名無しさん:2004/08/05(木) 22:11
>256
父上…
部屋を立ち去る時、例によってシニカル笑いをうかべながら
「寝たふりなど」
とか、聞こえるようにつぶやいて
大将の寒気を倍増させているんだろうな(笑)

そんな気配は感じつつ、おろおろしてしまう兄上。
で、ベレを呼ぶのか。風鈴家の人々はつくづく可愛いな。

258萌えの下なる名無しさん:2004/08/06(金) 16:09
いざとなれば父上もファラミアを気遣うのだな。
と、現象だけを見て一人で心温まってる兄上とか。
大将、確かに父兄から愛されてるんだけど、
不憫さ増量(当初比)な気もしたり。

ここらで、"幸せな"大将を禿げしくキボン。

259萌えの下なる名無しさん:2004/08/09(月) 18:36
>"幸せな"大将
と言われて、何も思いつかないことに気づきました。ひでぇ・・・
う〜ん、イシリアン大公御夫妻のほのぼのバカッポー話とかなら何とか
なるかもだけど、この板的にはどうかと思うし。
それ以外で大将の幸せはどこに・・・?

260萌えの下なる名無しさん:2004/08/09(月) 21:24
あるだろう、ささやかなのが。
兄上のかげにはなったけど父上の視界にはいったとか。

261萌えの下なる名無しさん:2004/08/09(月) 22:24
父上に久しぶりに声をかけられたとか?
「その醤油をとってくれ。」とか?

262萌えの下なる名無しさん:2004/08/10(火) 15:27
↑ひ、ひどい!!w

263萌えの下なる名無しさん:2004/08/10(火) 22:03
>260>261
君たち・・・w

264萌えの下なる名無しさん:2004/08/11(水) 13:26
ささやかに愛されてるな、大将w

265萌えの下なる名無しさん:2004/08/13(金) 17:05
だけど御大将、口答えするんだよな…
父上がだんだんおかしくなってきて
「自分が王になるのだ!」みたいなことを言い出しても
「父上、冗談だとしたら全然面白くありませんが
本気だとすれば、かなりおかしいですな」
とかしれっと言いそうだ。

266萌えの下なる名無しさん:2004/08/14(土) 10:51
>265
父上相手に、生真面目な受け答えをする大将かわいいなー。
そんなところはデネソールにそっくりなんでしょうね。

267萌えの下なる名無しさん:2004/08/15(日) 20:43
デネソールに似ているのは大将で、
デネソールの父君は兄上に似ていたのかも。

そんでもってSSなのですが。
兄弟を分ける要素ってなんだろうというところから出発。
テーマは「大人になるってどういうことなんだろう?」
ファラミア視点。
ファラミアを直接指導していたのは教師と兄だったという前提。父上不関与。
登場人物。子どもファラミア、子どもボロミア、教師(捏造)
4レス分予定。

しるけは、なしで。それでは数レス分お借りします。

<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 1/4













 自分というものがある限り、兄の役に立つこと。それが自分の存在理由だった。
 ファラミア、一二歳。
 そして、何より兄は自分の支えだった。

 五歳になった年、母を亡くした。
 何も分からない子どもでしかなかった自分に、役割を教え、道理を説き、義務を自覚せしめたのは、教師たちよりもむしろボロミアだった。なぜならば、ボロミアは誰よりも自分と近しい位置にある。あるいは、あろうとしているからだ。
 時と共に母の記憶は薄らいでいく。父親は、自分を省みる事が稀であるかに思えてならない。父の心の内は知らない。
 そうした環境にあって、感情というままならぬものを受け止めてくれるのは常にボロミアだった。
 疑問に、時に理不尽な物言いに耳を傾け、困り事は無いかと体を抱き締めてくれる。そのたびに得られるのは、安らぎに他ならなかった。誰も代わりはない。懐疑を抱くたび、自分はここにいるべき人間であるのだと、ボロミアが言葉ではなく飽かず繰り返し教えてくれたのだ。

 だから、ボロミアと自分は分かちがたく生涯に渡って共にあるものだと、ファラミアは思っていた。
「大人になる」という事が、自分の理解にある事柄以外の意味を含むものだと、教えられるまでは。
 兄の姿を見上げるたび思ったものだった。早く、ボロミアのようになりたい、と。背が伸びること、体が発達することに伴って身に付く頑強さをファラミアは羨望した。とはいえ、ボロミアもまだ年は十七で、いわゆる「成人」の体と比べれば、ボロミアが持つのもまだ少年のそれには違いなかったが、ファラミアの目には随分、大人であるように感じられていた。ファラミアにとって、目に見えて変わろうとしている自分の体は喜ばしく、誇らしいものだった。
 しかし、体の発達は、重い剣を自在に操ることや、長く早く歩むことだけに役立てるものではないという。教師いわく、こうだ。
「いずれはしかるべき方を妻と迎え、後継者となるお子をなさねばなりません。そのためにも、お体はそれにふさわしく、健康に保たねば」
 それは、「自立」するという事を同時に意味していた。
「もちろん、今すぐ、という事ではございません。しかし、来るべき時のための準備は、今から為さねばならぬでしょう。お気持ちの上でも、お体の上でもです」
「わたしがですか? 執政の後継者は兄です。兄に必要であるのはわかりますが」
「ボロミア様は、もちろんご理解なさっております。ファラミア様が同じくご成長なさり、お力になるとすれば、執政殿にとってもボロミア様にとっても、さぞお心強いことでしょう。そのために必要なことについてお話させていただかねばなりません。つまりはです…」
 初老の講師が語る言葉は、どこか遠くを滑って行くようだった。
 いずれ自分は、ボロミアと離れるのだ。ボロミアもそれを受けいれているという。
 そんなばかな。
 理屈ではなかった。ただ、認めたくないだけだと分かっていた。今すぐ、というわけでさえない。それでも、言いようのない喪失感をファラミアは拭えなかった。

 ファラミアは年の割に口数の多い方ではなかった。暇があれば書物を読みふけり、疑問があれば自分で本を開く。何かと言えば表に出て体を動かそうとする兄とは対照をなす、そういう子どもだった。
 その日を境に、ファラミアの口数はますます減った。
 それを見とがめたのは教師でも父親でもなく、兄だった。
 ボロミアは僅かも待たなかった。
 一日の日課を終え、後は部屋で休むだけだという時間になって、ファラミアは自室にボロミアの訪問を受けた。

268SS<ファラミア/ボロミア> 子ども時代2/4:2004/08/15(日) 20:46
<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 2/4
















「兄上?」
 部屋にボロミアを迎え入れつつも、ファラミアは疑問を隠せなかった。逆はよくあることだった。ファラミアは、自分で処理しきれない問題が起こるたびに、ボロミアを頼ったものだ。しかし、ボロミアが自らファラミアを訪ねてくることは、至極稀だった。
 ファラミアが勧めた椅子を、ボロミアは断った。
「今の時間なら横になっていたのだろう。ファラミアは寝ていて良い」
 弟が持つ旺盛な知識欲と頭の回転の良さは、ボロミアも舌を巻くほどだったが、それでもファラミアはやはり一二歳の子どもに違いなく、ボロミアにしてみれば、まだ、かれの保護下に置くべき存在だった。そして、ファラミアもそれに薄々気付くだけの年にはなっていた。「兄上の役に立つ」どころではないのが今の自分ならば、それがたとえ不遜な考えであろうと兄と肩を並べるほどに成長したいと、ファラミアは望まないではいられなかった。教師からあの言葉を与えられた今にして思えば、それに付随する何かがある事を知ろうともしなかっただけの、無邪気過ぎる願いであるにしても。
「それではお言葉にあまえます」
 ボロミアの来訪があるまで寝転がっていた寝台にファラミアは上がって、再び眠る姿勢を取った。そのファラミアの顔が見えるよう寝台の端に腰掛けたボロミアの手が、ファラミアの体を包む布団を引き上げ、ファラミアの肩口辺りに具合良く整えていく。納得いったらしい手が、ファラミアの生来ゆるく癖のある髪に触れると、それだけでファラミアは、心地よさから眠りに落ちてしまいそうになるのだが、それを堪えた。
「どうかなさったのですか。兄上」
 寝転がった姿勢では見上げるしかないので、そうしてファラミアはボロミアの顔を見た。
「どうかしているのは、ファラミアであるとわたしは思う」
 ファラミアは目を瞬かせた。
「なぜそう思われるのですか」
「ファラミア。何か、思い詰めていることがあるのではないか」
 言われて思い出されるのは、教師から聞かされた「大人になる」という事の意味だった。しかし、それをボロミアに吐露して何になるだろう。ファラミアは、片手を伸ばしボロミアの膝を覆う寝間着を手の内に掴んだ。
「それは、おたずねにならないでいただきたく思います」
「兄に、話せぬ事があると申すのだな」
 ボロミアの顔に険しさが浮かんだ。
「それはよほどの重大事に違いないな。ファラミア。ならば、是が非でも耳にせぬわけにはいかぬが。兄は、頼りにならぬか。ファラミア」
「いいえ」
 いつでも兄だけが頼みだというのに、ボロミアはなぜ平気でそう問えるのだろう。
「ならば兄に話してみよ。ファラミア。思うより兄には良い知恵がきっとあるぞ」
 ボロミアの声は優しい。髪に触れたままの手も、また。ファラミアは、ボロミアの寝間着を掴んだ拳を更に強く握りしめた。思うところを口にすれば、ボロミアはこれが自分の弟かと幻滅するだろうか。義務を忘れて何事を言いだすかと呆れ果てるだろうか。
 怖かった。ボロミアの暖かな目が、自分に注がれなくなる可能性を考える事は、ファラミアを何より苦しくさせた。
「ボロミア。−−兄上」
 言うべき事はあるだろうに、言葉が見つからない。ボロミアの膝頭に額を寄せたファラミアの髪を、ボロミアは悪戯でもするようにくしゃくしゃとかき混ぜた。
「辛いことがあったか。−−怖い夢を見たか?」
 後半低く潜められたボロミアの声に、ファラミアの背は思わず竦んだ。それを見越したわけではないだろうが、ファラミアが置いた頭と高さが合うようにボロミアは、足を床に残して腰までを寝台に横たえた。ファラミアの額に、兄の額が触れた。泣き出してしまいたいくらいだった。様子に気付いたのか、ボロミアはファラミアの体にかかる布団の下に腕を入れ、ファラミアの体をボロミア自身の体に触れ合うよう、抱き締めた。
「どんな事にせよ、己の身に降りかかる事は己で受け止めなければならぬ」
「承知して、おります」
 か細い声をボロミアはどう取っただろう。
「だがな。ファラミア。頼みに出来るものがあるなら、そうすることに何もためらう必要はない。結局はお前が負うものであろうともだ。兄に話せば気は軽くなるかも知れぬぞ。わたしは、いつでもそのつもりでいる。お前の信頼に足るようにと」
 そうして、ファラミアの目をまっすぐ見据えてくる。
「兄上、わたしは」
 自分が何を言おうとしているのか、ファラミア自身分かっているわけではなかった。しかし、何も言わないことはつまり、兄にとっては手ひどい裏切りなのだ。

269SS<ファラミア/ボロミア> 子ども時代3/4:2004/08/15(日) 20:49
<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 3/4
















「わたしは、ずっと兄上のお側にあって、お役に立ちたく思います」
「うん? もちろんであるとも。誰もそれを咎め立てしたりはせぬぞ」
「兄上。わたしはそれがかなわぬと知りました」
 ボロミアが眉をひそめるのが見えた。
「かなわぬ理由などなかろう。それこそ、お前の心一つであることだ」
「わたしの心は、いま申したままです。かわりはしません」
「やはり、何か悪い夢でも見たのか。心が揺らぐような。−−ファラミア。父上同様にお前は"見える"のだろう。何か見たのだな。ファラミア」
「兄上」
 自分の表情から何かを知ろうとするのかのように、ボロミアは不安を隠そうともせずつめてくる。それがボロミアにとって殊更気がかりになるのは、ボロミアには"見えない"からだろう。得体が知れぬものほど、その正体が何であれそれは恐ろしいものとして立ち現れるのだ。そういえば、ボロミアはロスロリエンに住まうという魔女の話をひどく嫌っていたような記憶がある。ボロミアにとっては、ファラミアが時折語る夢の話も、それとさして変わらぬのだろう。
 それでいてボロミアは、自らの目に見えず、体感しようがないものにも、自分と共に向き合おうとしているのだ。
 ファラミアは思う。誰もボロミアの代わりにはならない。かれが自分の兄だからというだけでは、おそらくない。ボロミアが自分に向ける姿勢が、ボロミアの心のあり方が、自分には必要であるから。それ以上に、それらが何より増して好ましいものだからだ。
 しかし、ファラミアを捕らえて離さないのは、夜に訪れる夢ではない。それが何かと敢えて言わねばならぬならば、それは、来るべき未来に待ち受けている自分が果たすべき役割の一つなのだろう。民を安んじること。国を統べる者を助けること。それと同じ意味で。
「兄上は、大人になるとはどういうことであるとお考えですか」
「いきなりどうした」
 言いながらも、ボロミアはファラミアに与えるべき答えを探しているように見えた。
「人に助けられるのではなく、人を助ける存在になるということではないか。わたしとて、これからの身だが」
「これから」
「そうだ。ファラミア。だからといって心配はいらぬ。ファラミアにはわたしも、父上も、教師たちもついている」
 ついている。そうだ。今はそれが真実だ。だが、不安として心に上るのは「今」ではなく「これから」なのだが。ファラミアは核心を口にする覚悟を決めた。
「どちらからか妻を得て、世継ぎを為すことも、大人になるということであると、聞きました」
「わたしも、それは聞いた。時が来ればそうするのかも知れないが」
 事も無げにボロミアは言う。ボロミアにとってはその程度の事でしかないのだろう。そう思うと、望みもしないのに声が震えた。
「そのときは、わたしはもう、兄上のお側にはいられないのでしょう」
「何をばかな」
 ボロミアは声を殺して笑った。なぜ笑えるのか、ファラミアにはボロミアの気持ちは分かりかねた。ボロミアが足先を使って履き物を脱いでいるのが気配で分かった。そうして、ボロミアは寝台に体の全てを上げ、ファラミアの体を腕だけでなく全身で包み込むよう抱き締めてきた。
「妻子がいようがいまいが、ファラミア。お前は変わらずわたしの弟ではないか。それに、われらの為すべきことに終わりがないとすれば、ファラミア。生涯ずっと、わたしを助けてくれなければ、わたしが困ろうというものだ」
 ファラミアは、自分のものより二回りは大きな兄の体に、まるでしがみつくかのように腕を預けた。
「それに、そのときにはおそらく、ファラミアも自分の妻子を持っているだろう。つまりは、お互い様というわけだが」

270SS<ファラミア/ボロミア> 子ども時代4/4:2004/08/15(日) 20:51
<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 4/4

















「兄上…。わたしには、それはまだ見通しの利かない霧の中にあるように、ぼんやりとしたものとしてしか、思い描けないのです」
 ファラミアの額に額を押しつけるようにして、ボロミアは背を震わせて笑った。
「それならば、わたしも同じだ。教師たちは準備が肝要なのですと言うが。わたしに言わせれば、ゴンドールを脅かす存在を滅ぼす力を得ることが、他の何よりも優先されるべきことだ」
 兄らしい物言いだと、ファラミアは思った。
「わたしは、兄上のお力になれますね」
「わたしは、それを望んでいる。それに、ファラミア。それこそ己の心次第だろう」
「わたしの心はすでに決まっております」
 明瞭な口調で、ファラミアは断じた。
「それでこそ、わが弟だ」
 顔を見るとボロミアははちきれんばかりの笑みで、ファラミアを見つめていた。
 他に何も要らない。
 ファラミアはいつも思う。しかし、いつまでこれが自分だけに向けられるものであるのかは、誰にも分からない。助けられるのではない存在が大人というものであるなら、そのうち自分の手からは失われるべく定められたものなのかも知れない。
「兄上。今日はいっしょに休んでください」
 離れてしまわないように、自分のものより太い腕を、自分の腕で絡めとる。
「難しいことを聞いてくると思えば、そのようなことを言う。まだ甘えたい盛りであるらしいな」
 愉快そうなボロミアの声に答えず、眠いわけではなかったが目を閉じた。ファラミアが眠ろうとしているのだと思ったのだろう。ファラミアの耳元に口を寄せ、ほんの僅か囁くような声が、耳をくすぐる。
「今夜は兄がついていよう。一晩休んで、不安は忘れるが良い」
 次に来るのは、額へのキスだ。ほんの僅か触れて離れるだけの。
 どうやら、ボロミアも眠る体勢に入ったらしい。呼吸が深くなるのが分かる。
 愛しくて、満ち足りすぎていて、苦しいほどだった。
 かれは、ファラミアが欲しいと言えばそれを与え、言わずとも与えようとするのだ。
 
 「大人」になりたい。それが兄の役に立つことだから。しかし、同時にそれが失うことを意味するのだとしたら。その流れは不可避なのだろうか。
 どうしたら、失わずにすむのだろう。
 考えても考えても、ファラミアには答えは見えなかった。
 
 そしてそのうち、眠りがファラミアをさらっていった。



【おわりです】

271萌えの下なる名無しさん:2004/08/24(火) 06:03
執政兄弟の過去捏造は最高です。
ファラミアかわいいなー。
いつまでも兄上をお幸せに‥w

272萌えの下なる名無しさん:2004/09/04(土) 02:29
あ、久々に他スレにも書き込みが増えてる。
えーと、このスレ的には・・・と言っても、実はスレどころか板も違う気が
するけど、ここ何日か大将の中の人来日祭りで、燃えるやら萌えるやら
大変でした。また新たな活力が湧いてきそうです。

273SS<ファラミア/エオメル> 1/2:2004/09/10(金) 23:16
大将の萌えネタでなくて申し訳ありません。
ファラミア/エオメルらしきSS置かせて頂きます。
女神様ご光臨までの繋ぎになれば幸いです。2レス分予定です。

時期:指輪戦争終結後。ファラミアとエオウィン婚礼前。
登場人物:ファラミア、エオメル、エレスサール
前提:ファラミアは生真面目である。お兄ちゃん子だった。
    エオメルは妹思いである。ある面では器用さに欠ける。
しるけ:なし。風味だけファラミア/エオメル

ご注意:しるけなしですが、"風味"はあるのでファラミアが
性にあけすけで抵抗感皆無なのが苦手な方には辛いかもです。


<ファラミア/エオメル/+エレスサール> 1/2















 王が帰還したばかりのゴンドールは、新たな歴史の第一歩を踏み出そうとしていた。
 新体制の執政にと請われたファラミアは、ゴンドールが蓄積した歴史と英知の集積所とも言える、ミナス・ティリスにある書庫の整理に着手した。修復すべき文書、写本を取るべき文献、蔵書の分類法など、書架に向きあったファラミアが考えるべきことは、いくらでもあった。
 ファラミアは集中力に欠けるような性格ではなかったが、あまり心地良いとも言えない視線を受けて作業の手を止め、その元になっているらしい方に顔を向けた。
 いつからいたのか書庫の隅に、ファラミアの妻となるべき女性の実の兄が、壁に背をもたせかけてこちらを見ているのがファラミアの目に入った。
「これは、エオメル殿」
 作業のせいで多少の埃に見舞われた手をはたいてから、ファラミアは義理の兄になる予定の人物に歩み寄った。
「このようなむさ苦しい所までご足労いただくほどの事とは…ご用の向きはエレスサール陛下の所在でしょうか」
 仕事の中断を余儀なくされたにも拘わらず、不快さを微塵も感じさせない機嫌良さで、ファラミアはエオメルに笑顔を向けた。
 一方のエオメルは、ファラミアに投げかけていた過剰なばかりに生真面目な視線を少しも動かさなかった。
「私は、あなたを探してこちらに参ったのです。ファラミア殿」
 多少の強張りを伴いつつ、にこりともしないでエオメルが言う。
 ファラミアの気のせいであるはずもなく、エオメルは神経を尖らせているように見えた。
「ファラミア殿は我が妹を妻とされるお方ゆえ、不躾ながら、兄として多少なりともお人柄を存じ上げておきたいと思いまして」
「得心致しました」
 エオメルの言葉にじっと耳を傾けていたファラミアは、真顔になってエオメルを見た。
「エオメル殿は、私がエオウィン姫の伴侶に相応しいか否かをご心配なさっておられるのですね」
「失礼を承知で申し上げればお言葉の通りです。何せ、われわれはお互いをほとんど存じ上げないのですから」
「お気持ちは理解出来るつもりです」
 ファラミアが難しい顔を見せたので、エオメルは思わずそれを覗き込んだ。
「それにしてもです。エオメル殿のお気をそのように煩わせるような不安材料とは、一体?」
 問わず語りのようにも聞こえるファラミアの言葉に対する答えの持ち合わせは、エオメルには無かった。少なくともエオメルの耳には、ファラミアに関する悪い噂は届いていなかったし、むしろ、ミナス・ティリスでは程度の差こそあれ誰もが彼を慕い、尊敬の念をもって彼に接しているように見えた。だから、具体的な心配事は抱きようがなかった。それでも、たった一人の妹が選んだファラミアという人物は、漠然と気にかかる存在だった。エオメルの意識にあったのはそれだけのことだった。
 言葉のないエオメルの代わりにファラミアが口を開いた。
「どうやら、口になさるのを躊躇われるような事でございますね。もしや、私の男性的機能に問題があるやも知れぬとのご憂慮ですか」
 まるで天気の話でもするかのような響きと口調でもって問われたせいか、ファラミアが言わんとすることをエオメルが理解するのに少しの時間が必要だった。理解したところで、どう応じるべきなのか咄嗟に決めかねたエオメルに、ファラミアは畳みかけるように言葉を続けた。
「いずれ知れることとはいえ、婚礼前にエオウィン姫の兄であるエオメル殿が自らご確認されたいとおっしゃるなら、エオメル殿のご安心のため尽力させていただくのは、やぶさかではありません」
「それは…痛み入ります」
 そう言ってはみたものの、エオメルは困惑を深くするしかなかった。

274SS<ファラミア/エオメル> 2/3:2004/09/10(金) 23:26
<ファラミア/エオメル/+エレスサール> 2/3
 分割数2の予定が3になりました。ご迷惑お掛けします。














「決して快適な環境とは申し上げられませんが、そこにある閲覧用の机は寝台の代用品くらいにはなりましょう」
 果たして、エオメルは困惑に囚われている場合ではないような気がしてきた。
「少々お待ちをファラミア殿。ご発言が意味するところを、ご自身でご理解なさっておられますか」
 エオメルに言えたのはそれだけだった。みっともなく舌がもつれていたかも知れなかったが、今、気に掛けるべきはそんな事ではなかった。
「私は何事であれ確信なく申し上げたりはしません。従ってご遠慮は無用です」
「遠慮など…」
 していない、という言葉が口から出る前に、ファラミアがエオメルの方へ一歩踏み出したので、エオメルは一歩下がらざるを得なくなった。更に一歩引こうとしたエオメルの体を阻むように、ファラミアが言った通り、数人が並んで書物を閲覧出来るくらいの大きさを持つ机に、エオメルの体が突き当たった。
 ファラミアがもう一歩を踏み出せば、エオメルの体の置き場は無くなるに違いなかった。
 たちの悪い冗談かも知れず、そうでなくともエオメルの立場ではまさか、妹の夫になろうという人物を恫喝するわけにも、ましてや拳を上げるわけにもいかない…が。
 進退窮まったエオメルに対し、ファラミアは本当にもう一歩を踏み出してきた。
 せめて不用意に体が触れ合わないようにと、エオメルは自分の後ろに回した両手を閲覧台について、背を反らした。しかし、引けば引いただけファラミアは間を詰めてくるのだから、あまり有用な行為とは言えなかった。仕方なくエオメルは自分でも何をしたいのか分からないまま、そっと、しかし力のこもった拳を固めた。
「万事休す、といったところかな」
 二人共に覚えのある、少々呆れを含んだ声がファラミアの背後から聞こえた。
 ファラミアはまだ体を固くしているエオメルを余所に、書架の向こうから姿を現した声の主に対して極めて愛想の良い笑顔を向けた。
「エレスサール陛下。ご担当部分は無事片づかれましたか」
 エオメルの視線もまた、ファラミアの体越しにエレスサールに向けられていた。その目に浮かんだのは安堵だけではなく、明らかに助けを求めるものでもあった。
「執政殿よ。その方は、仮にもあんたの義兄となるべきローハン王エオメル殿であろう。そのくらいにしておくというのはいかがかな」
「承知致しました。陛下」
 エレスサールの言葉を受けたファラミアは、あっさりと体を引き、下がった。
「私は自分の仕事を続けて参ります」
 二人に向けて深々と頭を下げると、ファラミアは何事もなかったかのような様子で再び元の書架に向かい、それからは振り返ることもなかった。
 緊張と安堵の余り体の力が抜けたらしいエオメルは、エレスサールが勧めた椅子に倒れ込むように腰を下ろした。
「同じ部屋に私がいるというのによくぞまあ、二人で愉快な会話を交わしてくれたものだ」
 エオメルの視線の高さまで体を低くしたエレスサールは、笑いながらもなだめるようにエオメルの背を軽く数度叩いた。

275SS<ファラミア/エオメル> 3/3:2004/09/10(金) 23:27
<ファラミア/エオメル/+エレスサール> 3/3














「あなたは、いつからおられたのです」
「ファラミアが書庫の整理を始めたときから、ずっとここにいた」
「気付いておられたのならば、もっと早く止めて頂きたかったものですが」
「いや。成り行きが興味深くてな。すまない」
 エレスサールは相変わらず笑っていた。
「笑い事なのでしょうか、一体。…何なのです」
「あれが、我がゴンドールの新しい執政であり、あんたにとっては義弟になるファラミアだ。まあ、笑い事だと思っておく方が、心穏やかに過ごせるであろうよ」
 幾分憔悴気味なエオメルは、溜息が漏れるのを隠せなかった。そのエオメルの耳元にエレスサールは声を潜めて囁いた。
「ファラミアは"兄"というものに対し、少々敏感なところがあるように私には見える。私は兄弟というものを知らぬし、彼ら兄弟がどのような関わり合いにあったのか詳しくは分からぬが」
 はっとしたように、エオメルはエレスサールを見た。エオメルの胸にはファラミアの兄であり、エオメルにとって知己でもあったボロミアの姿が去来していた。
「誰もが変化と無縁ではいられぬ。が、変化は必ずしも不幸と同義ではあるまい。たとえばエオウィンとファラミアは新しい家族になる。そして、エオウィンの兄であるあんたも当然その一員であろう」
 それだけ言うと、エレスサールは自分の役割に戻るためエオメルの傍を離れた。
 エオメルは物言わぬファラミアの背中に注いだ呆然とした視線を逸らせずにいた。他の誰でもない、義理とはいえファラミアの兄になることがお互いにとってどのような意味を為すのかという問いが、エオメルの頭から離れなかった。エレスサールが声を掛けなければ一体どうするつもりだったのかと問いたい心と共に。
 そのエオメルを、ファラミアが振り返った。
 見透かされたのかとエオメルは一瞬ひやりとしたが、ファラミアは屈託無く笑っているように見えた。
 そして何を思ってかエオメルに頷いて見せた。
 そのときエオメルの脳裏には、「笑い事だと思っておく方が…」というエレスサールの言葉がなぜか蘇っていた。


//終わり



不手際すみません。
それでは女神様ご光臨、萌えネタどうぞです。

276萌えの下なる名無しさん:2004/09/25(土) 22:45
せっかく女神様降臨なさってたのに
したらばだからいぶどあだかなかなかここに来られなくて…

不思議ちゃんな大将ですねー。風変わりで楽しかったです!

277萌えの下なる名無しさん:2004/10/06(水) 23:12
ピピたんが自分の子どもにファラミアと名付けた事に対する
感想を目にしたのですが。
ピピたんファンの方に対して失礼だったらごめんなさいという妄想。
萌えネタではありませぬ。






大将は兄上の最期に関して何か良いことを為したのだろうと
考えてましたが、その「何か」がピピたんの内に結実した結果として、
あの名付けがあったのかな、なんて。
ボロミアが愛していた祖国や苦労性の弟を、ボロミアの分まで
自分が見守り幸せにしたいとか。

ボロミアさん大好きの延長上にある感情がそうさせたのかなってことですが、
ピピたんが、ボロミアの愛したものとして大将を認知してくれてるってのが、
妄想の妄想たるゆえんというところで。

278萌えの下なる名無しさん:2004/10/08(金) 01:20
>277
それはあると思いますね>ボロミアの分まで
加えて、映画ピピは執政親子のあのやりとりを目の当たりにしちゃった訳で、
だから、真っ当に親に愛される「ファラミア」も、自分の内に結実させたかった
のかな・・・などと、私も妄想しております。

ところで、SEEの療病院大将の痛々しい画像も出回り始めたようで・・・
盾の姫との出会いはどうやらちゃんとはいるらしいけど、癒しの手はどうなる
のか・・・なかったら暴れちゃうかもw

279萌えの下なる名無しさん:2004/10/08(金) 23:58
>278
癒し手のシーン、カットされていたら私も暴れちゃうよ。
でも入っていたら入っていたで、
萌えのあまり部屋中転げ回りそうだわ(w

280萌えの下なる名無しさん:2004/10/17(日) 00:20
SEEトレイラー(ティーザーって言う方が合ってるのかな?)来ましたね。
この板的な話は措くとしてw、大将、男前。と言うか、お美しい。
何回も見直しては、そのたびに見とれてしまいます。
ああ、12月が待ち遠しい・・・!

281萌えの下なる名無しさん:2004/10/17(日) 00:52
>280
見ました見ました。
本当お美しいというかお可愛らしいというか。
なんであんなに可憐なのか・・・(*´Д`)ハァハァ

282萌えの下なる名無しさん:2004/10/17(日) 19:00
もうね、あんなお顔で見つめられたら、そりゃ姫だって落ちますとも。
いや、兄も王も野伏も近衛も、みーんな落ちます。
特に毎日(?)あんな目を向けられていたであろう兄上は、さぞ理性と忍耐力を
試されていたことでしょう。

ところで、癒しの手の新画像も、某所で見ました。やっぱり入れてくれるの
でしょうか。

283萌えの下なる名無しさん:2004/10/23(土) 21:27
>282 入れてくれることを心から願っています。

大将が来る前には
「都のボンボンの面倒なんか見れるかヽ(`Д´)ノ」と不満タラタラだった南の野伏が
実際大将を見て総ベレゴンド化する妄想が頭を離れませんよ、タスケテー。

284萌えの下なる名無しさん:2004/10/24(日) 17:22
>283
(・∀・)イイ!

全然旬じゃない古い画像&ガイシュツだろうとは思いますが禿しく萌えたので・・・
ttp://www.warofthering.net/photoforum/showphoto.php?photo=1515&password=&sort=1&size=medium&cat=514&page=

285萌えの下なる名無しさん:2004/10/24(日) 21:14
>284
萌えました・・・というより禿しく和みました。
しかし実際の執政家はこんな風に笑い合うことなく、
兄が逝き、そして父が逝ったかと思うと・・・。・゚・(ノД`)・゚・。

あと大将の目が三日月型でちょっと笑いました。

286萌えの下なる名無しさん:2004/11/24(水) 22:36
ファラミア様の微笑みは聖母の微笑み

と思える瞬間がある

287萌えの下なる名無しさん:2004/12/07(火) 08:38
SEE予告ロングバージョンはもう公式に上がって来ているし、ネタバレも
各所で出回ってるんだけど・・・けど・・・
大将ファンとしても原作ファンとしても、ちょっとそれってどうなの!?
と小一時間問いつめたくなるような情報が伝わってきていて、
正直なところ、期待は半分くらいにしぼんでしまいました・・・
以下、超ネタバレ。内容も内容なので、嫌な人は絶対!見ないで。










アラゴルン→ファラミアの「癒しの手」カット。王がそれを発揮するのは
エオウィンに対してだけ。
わーん、兄上の背後霊とか出すんなら、そっちを入れてほしかったよ〜。
いや、兄上もに出て来てほしかったのは確かだけど、なにもそんな出方を
しなくても・・・・゚・(ノД`)・゚・。
やっぱり、PJの大将に対する扱いって、はげしく疑問なんだわ・・・

288萌えの下なる名無しさん:2004/12/08(水) 18:38
カットって・・・・・・(;゚ロ゚) (゚д゚;)゚ロ゚;)

289萌えの下なる名無しさん:2004/12/10(金) 01:25
え??は?ちょっとハゲしく動揺……

290萌えの下なる名無しさん:2004/12/11(土) 19:54
気を取り直して(取り直せないかも知れないけど)、あと10分足らずで
TTT地上波初登場だよ、と言ってみる。

291萌えの下なる名無しさん:2004/12/11(土) 22:19
実況板を見ていたら初心者の方が多かった。
じゅうのシーンで御大将が初めて出てきたとき
兄上と勘違いした人がいた。
皆が「弟だよ」と説明すると
「それで同じ役者なのか」と妙な納得をしてしまっていました。
いやあ、新鮮。

292萌えの下なる名無しさん:2004/12/12(日) 00:02
>291
ワロタ

TTT、改めて思った事はアルウェンの出番を削ってファラミア様を(ry

293萌えの下なる名無しさん:2004/12/16(木) 16:12
>287
ショック大………悲しくて潰れてしまいそうだ
PJのイケズ……!
(;_:)

294萌えの下なる名無しさん:2004/12/17(金) 22:39
景気づけにSSとか。おねだりは御法度かもですが、
女神様ご光臨お願いしたいです。


TTTの地上波放映で、大将を堪能させていただきました。
目隠しを当たり前にさせてる大将…。
ホビットたちに食べ物を分け与える気配すらない大将…。
噂には聞いていたので見る前は気にとめてもいなかったのですが、
目の当たりにしたら結構な破壊力でした_| ̄|○

295萌えの下なる名無しさん:2004/12/20(月) 23:15
女神様待ちの間に、おつまみでも。
ちょうどガイドライン板のそのスレで指輪ネタだったので…

元ネタは以下

それはヴェルタースオリジナルで、私は4才でした。
その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーをもらえる私は、
きっと特別な存在なのだと感じました。
今では、私がおじいいちゃん。孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら、

彼もまた、特別な存在だからです。


**************


そこはオスギリアスで、私は35才でした。
兄と一緒に飲んだ発泡酒はとても美味しくて、こんな素晴らしい日は私にそって
きっと特別な存在の一日なのだと感じました。
でも今では、私が執政。孫バラヒアに語り継ぐのは、父と兄と一族の物語。
なぜなら、

彼もまた、執政の白い杖を受け継ぐ存在だからです。

296萌えの下なる名無しさん:2004/12/23(木) 21:00
ガ板のスレを探したものの見つけられなくて(´・ω・`)ショボ-ン

執政となった大将は、
ゴンドールに王がいる時も空位の時も、
役割は違うけど国を執政家が守ってきたのだと
語ったんだろうかとか。
父親と兄の死をどんな気持ちで捉えてたんだろうかとか。
とりとめのないことを考えてしまいました。

関係ないですが、大将の孫はさぞや可愛いでしょうな。


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