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ネタバレ@ファラミア/*  2

1萌えの下なる名無しさん:2004/05/12(水) 00:20
薄幸のゴンドール大将、後のイシリアン大公にして27代執政ファラミア殿に
原作・映画込みで萌えるスレ。
多彩なカプ萌え(攻受不問)から単体萌えまでこちらでどうぞ。

■『萌える子馬亭』の約束(必読)■SS投稿時には必ずお読み下さい。
http://0024.hiho.jp/pony/fellowship_rule.html

■前スレはこちら(過去ログ倉庫)■
http://0024.hiho.jp/pony/last_log/index.html

132萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 15:13
<セオドレド×ファラミア/文字通りしるけあり> 2















 汗が、形の良い額に張り付かせた、乱れてなお彼の顔立ちを映えさせる色の薄い髪を、頭に回した手の指で退けてやりながら、引き込まれるようにファラミアの表情を見つめた。そして、セオドレドは、自分の知る限り誰の物でもない頬に、自分の頬を重ねた。汗を滲ませてはいるものの、繊細な、セオドレドから見てもまだ若い体が持つ皮膚は、まるで吸い付くようで、願望が勝るがゆえの思いこみに過ぎないにしても、それが自分を受けいれようとしているかに思えて仕方がなかった。
 なぜだか、ファラミアが、不意に表情を緩めたのが見えた気がした。落ち着く筈のない呼吸は相変わらずだったが、ファラミアは、寝台に預けていた腕をゆるゆると持ち上げて、セオドレドの髪に指を差し入れて、絡ませた。
 セオドレド自身さえ思わないことに、身に鳥肌が立った。
 ファラミアの中心にあるものをゆるく上下していたセオドレドの指が、ファラミアにしてみれば、無理な力でそれを締め上げた。
 突然の事に、ファラミアは高く声が上がるのを、とどめることが出来なかった。
 咄嗟に、年長の彼の名を呼ぼうとしたが、加えられた行為に意味を持った言葉は奪われた。絞られた指が、激しいまでの性急さで、ファラミアの体を誘おうとしていた。体にきついはずなのに、セオドレドの望むままに反応を返している自分のままならない部分を、ファラミアは心の内で呪おうとした。が、それも長くは続かなかった。逆うのを望んだところで逆らいきれない、身体の内から出口を要求してくる苛烈な感覚だけを、ファラミアはいつしか追っていた。片方の足を不自然な形に縛められ、出会って間もない見知らぬ異国の人間の体に体を拘束され、自ら選ぶこと無しに、まるでセオドレドの意志の他には何も自分を動かし得ないのだとでも言いたげに、体は無邪気なほどに追い立てられていく。セオドレドの強い腕がファラミアの肩の片側を、痛みさえをも覚えるほどの力で、寝台に押さえつけていた。ファラミアは、火がついたように叫んだ。身も世もなく体の自由を求めた。そのファラミアを待っていたのは、セオドレドの手の内に、無駄に体液を放出する瞬間だったけれども。
「…っん」
 背と腰が、セオドレドの体に阻まれずに済む程度まで跳ねた。後は、正体なく弛緩するだけだった。息を継ぐことのみで精一杯である中で、ファラミアはセオドレドの顔に、目を向けずにはいられなかった。ファラミアの体から溢れた、放置すれば決して清潔とはほど遠くなる液体を受けて、ファラミアが見たセオドレドもまた、乱れた自分の呼吸に対峙していた。茫然自失に見えるのは、自分の目がくるっているからだろうかと、ファラミアは、普段通りにはきかない頭の片隅にぼんやりと考えた。
 セオドレドは、初めに放った布切れを手探りに見つけて手を拭い、肩に抱え上げていたファラミアの足を寝台に横たえさせて、ファラミアの身のあり方をファラミアの意志に委ねた。

133萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 15:20
<セオドレド×ファラミア/しるけあるかも程度> 3 短いです。【とりあえずラスト】














「ご気分はいかがです」
 問いかけに、ファラミアは首を横に振り、セオドレドに自ら体を添わせた。
「…わたしには、申し上げられません。セオドレド殿を疑ってのことではなく、わたし自身の問題ではありますが、おそらく、何か言えばそれと意図せずとも嘘になりかねません。わたしは、それを望みませんので。…今は、確かに物が言えそうにも、ないのです」
 語尾が弱くなるのを、自覚したがどうにもならなかった。自分自身にとってさえ曖昧模糊なものとしてしか把握できない己の姿など、本当は誰の目にも晒したくはなかった。だから、自分の頭を、自分の片腕に顔を縦断させて抱えた。ただ、見る者が違えば、たとえ両者が同一のものを目にしているとしても、そこから得られる認識は異なるのだという、考えずともごく当たり前でしかない事実が、すっかり失念されていたので、セオドレドが一体、今のファラミアに何を見ているのかなどということは、ファラミアの思い至るところではなかった。
 背中側から伸ばされてきた腕が、両の腋を通り肩を拘束したと思うと、体を引きずられた。
 引きずった張本人は、大人二人が三人でも楽に寝られそうなほどたっぷりとしていて、かつ、見るからに柔らかそうな枕に背を預け、見ようによってはだらしなく体を伸ばして、その上にファラミアの体を仰向かせて引き上げた。無駄を蓄える気配はかけらもないファラミアの腹筋の上で、ファラミアの背後から体に回された腕が、取るに足りない程度の拘束力を発現させて、交差させられていた。セオドレドの両足の間から胸にかけて背を伸ばすと、ちょうどファラミアの頭がセオドレドの肩先に触れた。
 セオドレドは、ファラミアが落ち着きを回復するのを待っていたのかも知れない。息がようやく整った頃に首を少しだけ傾けて、間近にあるセオドレドの顔を見上げると、ファラミアも決して嫌うことができない、件の笑顔が目に入った。そして、セオドレドの肩が、ファラミアの頭を押しやって顔の傾きの角度を変えさせたと思うと、瞬きをしている間に、口づけられた。隙間もなく深く触れ合わされる唇の内側には、いずれの者にとっても既に、それがどちらのものであるかの区別など無いに等しかった。口中を繰り返して吸われると、自分の精が解放されたときのように頭の芯が働かなくなりそうで、何の解決にもならないと知りつつも、目を閉じた。
 一つの感覚が塞がれると、他に向けられる神経は意識せずとも敏感さを増すのだろう。セオドレドの体が与えてくる温度と、セオドレドのにおいが、皮膚に染みるようで心地良かった。自分のものではない滑らかな舌も、唇も、その味も。
 片方の足の、内側をセオドレドの手が筋肉の動きに沿って、撫でていた。その手に身を委ねて視界を得ぬまま、身を包み込むような温かさの内にたゆたうのは、ファラミアにしてみても決して悪いものではなかった。

【続きます】

中途半端な量が、はみ出すなんて…。ごめんなさい。
いつ終わりそうとか嘘になるので、もう言いません。
女神さまのご光臨、みなさまのご歓談お願いします。

134萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 20:51
はい!はい!ここにもこっそりエロを待ちわびている者がおります!
女神様、私の分までこれからもどんどんファラミア様を気持ち良くしてしまってくださいますよう!

ローハンガール、かわゆかったです。
贅沢を申し上げるならセオ/ファラに至る過程もリクエストしたく。

135萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 22:19
エロと素敵な連ドラを待たれているところすみません。
おつまみ置き逃げします。しるけ系のお話ではないです。
これを含め5レス分です。

前半(0/3)は現時点での「劇場版オンリー」のやさぐれ気味の大将視点、
後半(1〜3/3)はそれを踏まえた旅の仲間な複数とどたばたです。

受け取り方は人それぞれだとは思うのですが
・執政を継いでいるかどうかあれじゃわからないよー
・戴冠式もなんだかお客さんっぽいんだけど…
・式典中エオウィンとは隣にいたから笑いあっただけ?
・王の手エピソード無し(今のところ)→王様ともたいした接点無いんじゃ?
という、劇場版のみで最大限寂しい解釈から自己フォローしました。

ちょっと前の映画板本スレで、エオウィンとのことでいろいろ
書かれてたのを見て、ついつい書いたは書いたのですが、
最後まで書いてたら今になってしまいまして。

これで「ちっがーう!」と怒らない方だけ…
テーマ?は家出する大将、時はエレスサール戴冠式の日です。

それでは次から4レス、You must come with me.Now.

136135〜:2004/06/14(月) 22:21
<ネタバレ無し劇場版のみ大将・0/3>















空が青い。こうやって、思い切り天を仰いだのは久しぶりな気がする。

父が、いない。兄も、いない。自分を縛るものは、もう何もない。

青い、どこまでも青い空の下での戴冠式の中、私の胸には涼しい風が吹いていた。
還ってきた王という人物は、自分はほとんど知らない人物であったけれども、
来るべき時代を象徴するような、深くゆるぎない何かをたたえた人物であることはわかった。
戴冠式には、来賓にまぎれてこっそり出席してみた。出席してよかったと思う。
自分も含んだ古い時代が終わったことが実感できた。
もう自分は大将ではないだろうし、何くれとなく支えてくれた副官も、
死地に赴く自分に着いて来てくれた部下達も、既に誰もいない。
もう自分には、何も誰も残ってはいないのだ。

…自分だけ何故助けられたのか、自分が助かったところでどうなるというのか、
その煩悶もまだ少し残ってはいたけれど、それはもう真綿で首をしめられるような
息苦しさをもたらしはしなかった。どのみちこの思いは、おそらく今後一生連れて
歩くしかないのだ。さしあたって肝心なのは、自分は助けられて今生きているという事実。

式典はまだ続いていたが、王が通り過ぎた後にこっそり抜け出してしまった。
勝手知ったる城内にするりと紛れ込んで、さてこれからどうしようか。
このまま自分がミナス・ティリスに留まることは、新しいゴンドールにとって
いいこととは思えなかった。人々は自分の後ろに父の姿を思い出すだろうし、
兄の影を見て嘆くだろう。旧体制の面影は、新しい時代には鬱陶しい枷にしかなりえない。

…いや、それは単なる言い訳かもしれない。
人々が思い出すのは良かれ悪しかれ兄や父であって、目の前にいる「ファラミア」は
それを映す鏡に過ぎない、「ファラミア」を見ている人など、これまでもこれからも
いないのだという現実を思い知らされることに、耐えられないだけなのかもしれない…

…どこか、遠く離れた街でひっそり暮らそうか。
いや、傷もだいたい癒えたことだし、いっそ旅に出てみるのはどうだろう。
そうだ、もっとこの世界を見てまわりたい。
焦燥に駆り立てられることなく、寂寥にとりつかれることもなく、
まっさらな気持ちで見てまわりたい。
山も河も森も、きっと今までとは違う姿で目に映るだろう。
イシリアンを越えて、ローハンも越えて、どこまでも行ってみよう。
…そういえばさっき隣にいたひとは、ローハンの姫君らしい。綺麗なひとだったな。

そんなことを考えて、考えた自分に気づいて、心の中でちょっと笑った。
なんだろう、こんなこと考えられたのは、そんな余裕ができたのは、いつ以来だろう。
そうだ、旅に出よう。ここ数年のレンジャー暮らしで野宿は慣れてしまったし、
無茶をしなければ自分の身ぐらい自分で守れるだろう。

そこまで考えて、ひとつ、思い切り伸びをしてみる。
さて、善は急げ、準備をしなくては。
心には、涼しい風がまだ吹いているのがわかる。
振り返って窓越しに見た空は、まだどこまでも泣きたくなるほど青かったけど、
目に浮かんだ涙はこぼれなかったし、哀しいけれど悲しくはなかった。

137135〜:2004/06/14(月) 22:22
<大将と旅の仲間複数・1/3>















「さてアラゴルン、いやエレスサールよ、今後のことなのだが」
式典を無事に終えて、来賓達も思い思いに歓談しつつ大広間まで戻ってきた頃。
還ってきた王にガンダルフが話しかけてきた。
「そなたを補佐する執政のことで、話がある」
エレスサール王は心得ているように頷いて応えた。
「もちろんファラミア殿に執政を継いで働いてもらいたい。私には彼の助けが必要だ」
自分達が黒の門に出撃している間、独裁者を失って揺れるゴンドールを執政家の生き残りとして
しっかり統率し、これまで彼の父だけが携わっていた政治的諸事万端をきちんとまとめて
まるまる引き渡してくれたファラミアを、交わした言葉は少なくとも既に王は信頼していた。
それを見て、白い魔法使いも安心したように頷いた。
「新しい時代に、まことふさわしい新しい執政といえる」
しかし、王は何かに気づいたようにふとあたりを見回した。
「そういえばその彼はどこに…?式典中は見かけた気がするのですが…」
白い魔法使いは、そういえばその当人をしばらくほったらかしにしていたことに気づいた。
「はっ、うっかりしておった!…そもそも今日、式にいたのか?」

ガンダルフと今日の主役のエレスサールまで自分を探し回っているとはつゆ知らず、
元々少ない私物をさっさとまとめて馴染んだレンジャーの装束に身を包んだファラミアは、
すでに馬上の人になってミナス・ティリスの回廊を進んでいた。
しばらく進むと、背後から声がした。
「ファラミア!」
最近彼と知り合いになった小さい人が、彼に向かってまっすぐに駆けてくる。
ファラミア自身はほぼ意識がなかったために実感はないのだが、その小さき人が
自分の命の恩人であることは伝え聞いていたし、深く感謝もしていた。
「ペレグリン・トゥック、どうなされた。式典は?」
馬ごと振り向きつつ、少し距離をおいてその相手に向き合う。
「アナタがいなかったから、探してたんです。これからどうするのかなあって…
でも…どこかへ、行ってしまうの?」
その答えと問いに、ファラミアは視線を落としてわずかに微笑んだ。
この小さき人は自分を探してくれたのだろうか、自分を見てくれていたのだろうか、
そんな思いが彼の脳裏をよぎる。しかし、気持ちは全く揺らがなかった。
そしてピピンも、その微笑から既に答えを読み取っていた。
「…お元気で…そうだ、ホビット庄にも遊びに来て!美味しいものやビールやパイプ草、
たくさん用意して待ってるから!」
それを聞いたファラミアは、ふわりと微笑んだ。
それは以前の彼からはとても想像がつかない、晴れ晴れとした優しい微笑みだった。
「…ありがとう…いろいろ、本当に。…では、ペレグリン、お元気で!」
そう言うと彼はまた馬を返し、背中越しに軽く片手を振ってピピンに最後の別れを告げると、
軽い速足で馬を走らせはじめた。もう振り向くことも思い残すこともない…
そんなファラミアの後姿を、泣きそうに微笑んでピピンは見送った。

138135〜:2004/06/14(月) 22:23
<大将と旅の仲間複数・2/3>















ピピンがこっそり広間に戻った時、こっそりだったのだがあっさりギムリに捕まった。
「どこへ行っておった?まったく、すーぐ何かしでかすからな」
「友達のお見送り…何かあった?」
その問いには、いつの間にか隣に来たレゴラスが答えてくれた。
「うん、ファラミアって人を探してるんだって。これからのことで」
答えながらレゴラスは、目の前のホビットの目が泳いだのを見逃さなかった。
「?…何か、知ってるんだね?ピピン、話して。…ガンダルフ!」
逃げかけたホビットの首根っこは、エルフの王子とあうんの呼吸を持つドワーフに
よってしっかりと捕まえられていた。

「ばっかもん!なんで止めなかった!というか、ヤツもヤツだ!どうして毎度そういう
自虐的で悲観的な発想になるんだか!デネソールも息子の一人二人ちゃんとしつけとけ!」
お互い見ず知らずなエレスサール達とファラミアの間をちゃんと取り持ってやるのを
忘れていたこと、そもそもファラミア本人のことをすっかり忘れていたことを棚に上げて
怒鳴り散らしつつ、ガンダルフは中庭へ出た。戴冠式の準備等忙しかったのもあるのだが、
それを彼に手伝わせるということを考えていなかった自分にも腹が立っているらしかった。
「執政」として、どこかに役目を作ってやっておけばよかった…今更後悔する。
「ガンダルフ、あれ!」
いつの間にかガンダルフを追い抜いていたレゴラスが、彼ならではの身軽さで
目もくらむような高さの中庭の縁の上に立って身を乗り出し、彼方を指差している。
そこには、まだ戦闘の爪跡が残るペレンノールを駆けていく一騎のレンジャーの姿が
かろうじて見て取れた。

「彼は、笑ってるんじゃないかな…」
エルフの目で見たのか、レゴラスがつぶやいた。他の者にはもちろん目では全く
見えなかったのだが、ピピンだけは同意の言葉を告げた。
「うん、僕もそう思うよ…そんな気がする」
このまま行かせてあげて欲しい、その思いを瞳にこめて傍らの魔法使いを見上げた
ピピンだったが、魔法使いはその思いを察しはしてもあっさり一蹴した。
「ダメだ。今から追いかけるぞ。彼にはまだ教えなければならんことがある…
誰の代わりでもなく彼が彼自身として必要とされていることと、愛されているということを」
瞬間曇ったピピンの表情が、ぱっと明るくなって思い切り頷いた。

139135〜:2004/06/14(月) 22:24
<大将と旅の仲間複数・3/3>















飛蔭に乗った白い魔法使いにあっさり追いつかれ、しかも戻る道中に杖で小突かれながら
くどくどとその性根について説教されたファラミアが、大変気まずい顔で
ミナス・ティリスに戻って来たのはそれから少し後のことだった。
中庭までガンダルフに引きずられるように連れて来られると、その場にいた数名の中から
2人のホビット〜1人はファラミアが知っている、先ほど別れの挨拶を交わしたはずの
人物だった〜が飛び出してきて笑いながら彼の両腕にぶら下がって来た。
何がなんだか状況が全くわからなく、ぼんやりとした表情でその重みに耐えている
ファラミアに、還ってきた王がにやにやと笑いながら告げた。
「お帰り。短い間だったけど、家出は楽しかったか?我が執政殿」
呆然と目を瞬かせていたファラミアは、その言葉を聞いてはっとしたように何かを
言おうとしたが、彼が発しようとした言葉は他の数名の騒ぎに飲み込まれてしまった。
「面白い人だね。もっと真面目な人なのかと」
「ふん、まだまだ若いのう。拗ねとるだけだろ?」
「前にも思ったんですけど、結構びっくりすることしますよねキャプテンファラミア」
「サム!…僕、目が覚めてから貴方とちゃんとお話してませんでした。あの後のこととか、
貴方に何があったのかとか、いろいろお話したいです」
口々に話しかけられ、ファラミアはますます混乱した。自分に何が起こっているんだろう、
この人達は誰に何を言っているんだ?自分に語りかけているのか?私に?何故?
その混乱ぶりを微笑ましく、そして少し痛ましく見てから、王は再び彼に呼びかけた。
「ファラミア」
すがるように自分に向けられた揺れる薄青い瞳を、包み込むような気持ちで正面から
見返しながら、王は言葉を続けた。
「ここが、このミナス・ティリスとゴンドールの国が、君の家だろう?
いや、これまでに何があっても、どういう思いがあろうとも、ここは紛れもなく
君が君として守ってきた家で、故郷で、これからも守っていく場所なんだ。
他の誰の代わりでもない、ファラミア自身として…ね。みんなそう思っているんだよ。
君にここにいて欲しいんだよ…これからも頼む、執政殿」
ファラミアは何も言葉を返さなかったが、その潤んだ瞳は彼がその言葉と思いを
まっすぐに受け止めたことを雄弁に語っていた。

それからファラミアは不意にしゃがみこんだ。横のホビット二人を抱え込むように
手を回し、一瞬うつむいてから顔を上げて、目の前にいる一人一人を見渡して言った。
「私は、まだみなさんのことをよく知らない。だからその…知りたいと思うんだが」
その様子を見て、彼は今やっと本当に救われたのではないだろうか、とガンダルフは
思いながら、杖を振り回してその間に明るく割り込んだ。
「あーほらほらみんな中に入らんか。時間はたっぷりある、茶でも飲みながら
ゆっくりおしゃべりしようじゃないか…全く世話の焼けるやつばっかりじゃな」
一同は笑いさざめきながら、青い空の下にそびえる明るい白い塔の中へと入っていった。

その日、ゴンドールで27代目の執政が任命された。王が還り来た日の出来事だった。




おしまい。

140萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 01:03
>135-139様

>来賓にまぎれてこっそり出席
って、大将・・・w
でも、なんだかすごく切なくて、3/3まで読んだら、じんとして涙まで出てきて
しまいました。本当にねえ、大将、特に映画版大将には、いろんな意味で幸せに
なってほしいですよ。
そう言えば「王の手」のシーンて、画像としてはかなり前から出回っていて、
子供向けのフォトノベライズにまで載っているくらいだから、当然SEEに入れて
くれるものと信じています。





SEEでは、戴冠式とイシリアン大公御夫妻の結婚式を一緒に執り行なっちゃう、
大盤振舞いなんだか経費削減なんだか判らない王様が見られるという噂を
聞いたことがありますが・・・本当なんでしょうか?

141萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 01:17
通りすがりに失礼いたします(作品読んでないのにすみません)。

お話の前の<1/3>というのは、3分割分のうちの1つ目、つまり
「これから3レス分使用して投稿するから、雑談等の方はお気をつけ下さい」
という注意であるので、今回の>134-139様のような場合は
<*/4>とするべきではないでしょうか。
それほどレスが活発でないので、そんなに気にすることもないのでしょうが……

こちらのスレは女神様が絶えずご降臨で羨ましく思っているのですが、
長編投稿の際の分割数がなかったり(目安としてでも入れるべきでは?)
他スレ住人ながらちょっとハラハラしていたもので、
差し出がましいとは思いましたが、長文で苦言呈させていただきました。

142萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 02:22
(;´Д`)やれやれ

143萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 21:12
>>141>>142
申し訳ありません、どうか謝らせて下さい。
長文を分割数無しに投稿した者です。
141様のおっしゃる事、その通りだと思います。
投稿の際には目安を入れるべきですし、私のした事はマナー違反だと思います。
本来なら全て書き上げてからアップロードすべきでした。しかも分かっていて
したのですから確信犯です。本当に申し訳ありません。
また、皆様大人ですからおっしゃいませんでしたが、スレ寡占状態を見苦しく
お思いの方もいらっしゃったと思います。あえて苦言を呈してくださった
141様に感謝します。
スレの住人様方、女神様方、どうぞお気を損じて下さいませんよう。
心優しい皆様、どうかお聞きくださるよう。
土下座して済む物ならします。見えないと思いますけど土下座してます。
畳の上ですから痛くありませんけどごめんなさい。

個人的には最近他スレが活発化してきてとても嬉しいです。節操無しですので
レゴギムも大好物ですしメリピピスレのSSには涙ぐみました。アラボロスレの流れに
噴き、烽火リレーには前板より心躍らせていました。今はサムフロスレに
女神様が御降臨してくださるのをお待ちしています。
本当に申し訳ありませんでした。
そしてこれからも子馬亭に女神様がたくさん来てくださるのを楽しみにお待ち申し上げております。

144萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 00:53
>135-139女神様

泣きました、泣きましたとも、笑いながら泣かせていただきました。
大将〜・゚・(つД')・゚・  幸せになって下さいまし〜
しかし、
>そういえばさっき隣にいたひとは、ローハンの姫君らしい。綺麗なひとだったな。
って見るべきところはしっかり見てるんですね、大将w

145萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 09:56
>135-139様

大将は自分を、「ゴンドールのキャプテンファラミア」ではなく、
ただのファラミアとして受けいれることが出来たのだろうなと。
本当は親兄弟が生きてるときからただのファラミアとして
愛されてたはずで、だからこそ、旅の仲間のあの言葉なのでしょう。
自分については無頓着な大将、かわいかったです。

146SS投下 1/6:2004/06/16(水) 10:08
万年カレンダー、昨日はヘンネス・アンヌーンでぐれていた頃の大将、
本日は父君なんですね。という訳でーーー

<ネタバレ@ ファラミア/父君 ファラミア/兄君 しるけなし>

・第三紀3003年くらい。兄25歳、弟20歳の設定。
・/で区切ってあるのは、単にファラミア視点という意味。

多分6レス使う筈ですが、いつまで経ってもしるけもエロも色気も出てこない
話で、特に前半は、父と子がただただ陰険に会話しているだけという萌え所の
なさ・・・
それでも良いという方はおつきあい下さい。



ボロミアが、アンドゥイン河口を騒がせていた海賊を掃討してミナス・ティリスに還って来たのは、春たけなわの頃であった。
高齢の父に代わり、二十五歳にして、既に白の塔の総大将との名を冠されていた彼の戦果は、往年の英雄、ウンバールの海賊たちを一網打尽にした後、忽然と姿を消した、かのソロンギルにこそ及ばぬながら、その年齢を鑑みれば称賛に値するものであり、父執政は、
メレズロンドに於て大々的な祝勝会を設けたのであった。
その後、ボロミアは、白の塔の下層で、気心の知れた部下たち、そして都に残っていた弟のファラミアと共に内々の祝宴を開き、エールの樽をあけ、呑み語らった。
その時、ボロミアは弟に向かい、おまえも二十歳になったことだし、共に轡を並べ、ゴンドールとその都の為に戦おう、と言った。
「我らが共に行けるよう、私から父君にお願いしてみよう」
と言う兄の言葉を、ファラミアは誇らしく聞いていた。

ファラミアが執政デネソールの呼び出しを受けたのは、翌日の午後のことだった。
彼の父親でもある執政は、大広間の執政の椅子に座し、彼を待っていた。
「我が子ファラミアよ。そなたもそろそろ、実戦の場で部隊を率いることを学ぶべき時期が来た。執政の子、ゴンドールの大将と称されるにふさわしい働きを示すべき時がな」
低いがよく通る声で執政は言った。
勿論ファラミアも、初陣はとうに済ませ、戦術や用兵についても体系的に学んではいた。
「今朝、そなたの兄が予の許に参り、次に出陣する際には是非そなたを伴いたいと、願い出て行った」
では、ボロミアは約束を守ってくれたのだと思い、再び誇らしい気持ちと、そして兄への感謝と愛情が、ファラミアの胸に湧き起こった。
しかし、執政は
「予は彼に即答はしなかった。これはそなたの身に関わることゆえ、そなたに先に伝えるのが道理であるからだ」
と前置きした後、冷然と言い放った。
「残念ながら、その願い出は却下する」
ファラミアの心も一気に冷えた。
とは言え、これは、幼い頃より憶えのある経験に過ぎない。希望を抱かされ、それが一転して失望に転じるなど、特に父の前では、何度も繰り返されたことであった。
「そなたらは幼き頃より、共に同じ戦場に手を携えて行こうと口約束をしておったそうだが、ゴンドールの執政は、子供の戯言などに取り合ってはおれぬ」
父の言葉の陰に、かすかな嫉妬めいたものが見える。と、ファラミアが感じたその時、父は、その心を見抜くかのようにこう言った。
「その理由は、第一に、執政の息子を二人ながら同じ場所で失う危険は冒せぬからであり、第二に、それと関連するが、戦力を分散させるに当たっては、それぞれ信頼するに足る指揮系統を築くことが必要とされるからだ。以上により、予はそなたにイシリアンの野伏の統轄を命ずる」
失望は既に落胆に転じていたが、ファラミアは、なんとかそれを表情に出すまいとだけはした。
「イシリアンの守りは殊の外肝要であるが、そなたはそこで、そなたの兄とは異なる戦いをなさねばならぬ。山や森の中で、忍び寄る敵の影を少しずつ、だが確実に切り崩すに当たっては、戦略も用兵も、これまで机上で学んだ理論はさして役に立たず、むしろ実戦で得ることの方がはるかに多くなるであろう。そなたには老練の野伏共をつけてやる。彼らから多くを学ぶがよい。またそれは、そなたにはそういう場の方が適していると見込んでのことだ」
そう述べてから、執政はふと語調を変え、
「家臣たちやボロミアは、またさぞ、そなたを不憫がることであろうな」
と言った。

147Sons(タイトルです)2/6:2004/06/16(水) 10:13
一応下げます。














背筋に冷たいものが走るのを、ファラミアは感じた。父の命令にすぐにも諾と答え、この場を立ち去りたいほどだった。
「他人に不憫な者と思わせておくのも才能の一つとして利用できるようになるなら、予もそなたをそう呼んでやってもかまわぬが、して、そなた自身は己を不憫と思うか」
「思いませぬ」
かすれた声で、ファラミアは答えた。父は頷き、
「賢明だ。予もそなたを不憫だなどとは全く思っておらぬ」
と言った。
「分け隔てなく育てたなどと言うつもりは毛頭ない。実際、予はそなたら兄弟を分け隔てしてきたが、それは、ボロミアが世継ぎの長子で、そなたがそうではないからであり、他意あってのことではない」
本当に他意はないかと問う意思は、ファラミアにはなかったが、それにしても父は何を言いたいのであろうかという疑問は、彼の気持ちを落ち着かなくさせた。
彼の父は、表向きの言葉の裏に、常に別の意味を持たせつつ話をする人間だった。そして、そのことを読み取れぬ相手を軽蔑し、反面、それを見透かす者を嫌悪する類いの人物でもあった。
「そなたの立場が、予にも身に覚えのある位置であればなおさらだ」
と、父は意外なことを言った。
「ボロミアがゴンドールの希望の光であるなら、そなたは彼の影に位置することを運命づけられた者だ。予が、かつてこの都で星の鷲と呼ばれた者の影と見なされたように」
「ソロンギル」
ファラミアはその名を口にした。それが、父にとっては禁句に等しいものと承知の上だったが、しかし、それを耳にしても、デネソールが顔色を変えることはなかった。
「彼は大将の器を持ち、多くの者は、その上に王者の風格をさえ見出していた。ほどなくして、ソロンギルは賢明にも都を去って行ったが、彼奴がいる間、予は執政職の何たるかに深く思いを致すところとなった」
父がいかなる意図を以てその話をしているかは、依然として判らない。
「しかるに、現在ソロンギルの位置にいるのはボロミアであり、そなたの立っている場所は、かつて予のいた場所である。それは予が意図したことではなく、そなたらの資質によるものだ。かつ、執政の長子はそなたではなくボロミアであり、わが家系に於て長子相続の原則が崩されることもまたない。そして、これをこそ不憫と言うのだ」
と、父はまたもその言葉を用いた。
「かつて、彼が予に、執政が王になれる機会はないのかと問うたことがあったが、おのが立場と職務を受容すればよいそなたより、優れた王者の資質を持ちながら執政の跡取りたることを義務づけられたボロミアの方こそが、予は不憫でならぬ」

148Sons 3/6:2004/06/16(水) 10:18
続きます。ちょっと短いけれど、区切りの都合です。














一瞬の綻びに、ふと肩の力が抜けた。
これまで、言葉を換え、表現を弄して父が述べてきたことは、つまるところ、そこに帰結するものだったのかと思えた。
しかし、その時ファラミアの胸に去来したものは、決して怒りでも軽侮でもなく、むしろ父への同情だった。そして、そのような感情を抱いてしまったことを、父に気どられてはならぬとも判っていた。
加えて奇妙なことに、父の言葉からは、彼が既に「王還ります時」の予兆を得ているようにさえ感じられたが、それについても今は触れまいと思い、ファラミアは更に表情を引き締め、心を堅固に閉ざして、ただ、
「先ほどのご命令は確かに承りました」
とのみ言った。
「よろしい」
と、執政は言った。
「そなたは、そなたの意志により、その資質にそった方法で兄の佑けとなる道を選択した。しかし、敢えて問うが、兄の影となることに不満はないのだな」
「ありません」
と、ファラミアは答えた。不満と言えば、当分兄から離れなくてはならないことだけだったが、それを父に伝える必要もない。
「白の塔の総大将はボロミア一人であり、兄上の佑けとなれることは、私の誇りでもあります」
そして言った。
「しかしながら、父君、それは義務感によるものではなく、愛情に基くものです」
「愛だと?」
父の薄い唇が引き歪んだ。
「予の前で、軽々しくそのような言葉を口にするでない。また、そなたの申すそれは、いかなる類いの愛か」
再び、背筋に緊張が走る。
「兄弟としての愛です、もちろん」
鋭い灰色の目が、刺し貫くようにファラミアに向けられる。が、やがて、
「まあよかろう」
唇の歪みが、冷笑めいた形に変わった。
「いずれにせよ、愛などというもので人は動かぬぞ、聡明なるファラミアよ。このような時代にあっては特に、人はその運命の僕であり、義務の奴隷に過ぎぬのだから。大将と呼ばれる身となれば、その意味を噛みしめることにもなろう。まして、この先もはや、そなたの兄に護ってもらう訳にもいかぬとなればな」
そして、最後の命令が下った。
「出立の準備はこちらで整える。それまで待機し、大河の東岸の地理をもう一度頭に叩き込んでおくのだ」

149Sons 4/6:2004/06/16(水) 10:22
すみません!うっかりsage忘れました。
ああ、緊張で手が震える・・・
ここから兄君が登場します。












大広間を出た後、疲労感が一気に押し寄せてきた。
一対一で父と話す時には常に緊張を強いられてきたが、それは、父も遠回しに述べたように、自分たちの資質に似通ったものがあり、それをお互いに疎ましく感じながら、なお悪いことには、疎ましく思い合っていることさえも十分認識している為だったかも知れない。
その時、塔の入り口の大扉が開き、廊下の向こうからボロミアがこちらに歩いて来るのが見えた。
「ファラミア」
彼は立ち止まり、兄を待った。
「父君には今朝、一度お目通り頂いたのだが、また呼び出しを受けた。おまえの方はどんなお話だった?」
ファラミアは、ゆっくり首を振った。
「ご自分でお訊き下さい」
しかし、彼は、こう付け足さずにはいられなかった。
「執政の君は、子供の戯言になどつきあっては下さらないそうです」
「どういう意味だ」
兄は眉を顰め、弟の顔を覗き込むようにした。
「何があった。父君からまた何かーー言われたのか」
この人はいつもこんな顔で自分を見るのだ、とファラミアは思った。
自分が赤ん坊の頃から、五歳の時も十歳の時も、二十歳になっても、おそらくこれから先もずっと。
そして、父から面と向かってあのようなことを聞かされた後でも、ボロミアに対する自分の愛情と信頼が微塵も揺るがないのが、我ながら不思議なくらいだった。そこで揺らぐほどの思いであればいっそ楽だったのに、とさえ思えた。
そのまま、彼の胸に顔を埋め、子供のように泣き出してしまいたい。
そうしたところで、おそらく兄は驚くこともなく、肩を抱き、髪を撫でて、何も心配することはないと言ってくれるだろう。幼ない日々、そうであったように。
だが、ファラミアは、すんでの所でその衝動を抑え、
「どうぞ、父君の許に」
とだけ言った。
背中に兄の視線を感じつつ歩き出したファラミアは、途中一度だけ振り返った。
「どうやら私は、弓を修練しなくてはいけないようです、兄上。今度見て頂けますか」
ボロミアの顔が明るくなった。
「もちろんだとも。弓でも剣でも、何でも見てやるぞ」
この笑顔を憶えてさえいれば、どれほど離れていても、自分は自らを保っていけるだろうと、ファラミアは思った。
ーーー私たちは決して、互いを不憫な者だなどと思い合っているのではありません、父君。
胸にその言葉を収め、自分も兄に微笑を返して、ファラミアは白の塔を辞した。

                  ○

150Sons 5/6:2004/06/16(水) 10:26
まだ続きます。














弟の処遇について、ボロミアは執政に強く反対したらしいが、日頃長男に甘い父ではあっても、今回は
「執政の長子と謂えども、執政の決定を覆す権限はない」
と一蹴し、その半月後、ファラミアはイシリアンに向かうこととなった。さすがに愛では動かぬと言ったお方だけのことはあると、ファラミアはむしろ冷めた気持ちで、その成り行きに身を委ねていた。
彼が出立する二日前、ボロミアは、いかなる名目でか、執政の名代としてローハンに使いに出されていた。その時、ファラミアは見送りに出ることすら許可されなかったが、しかし、彼自身の出立に当たっては、執政自ら
「イシリアンは今がいちばん緑の美しい季節だ。それはまた、そなたたちの活動にとっても有利なものとなろう」
と、珍しく気遣いめいたことを口にしたのであった。

そして、北イシリアンにはいって、ファラミアは父の言葉の正しさを知ることとなった。
ヘンネス・アンヌーン周辺の森林は、森の空気を嫌うオーク共はもちろん、地理に不案内な異国の敵たちに対しても格好の防御となっていたし、何より、滴る緑や咲き乱れる花たちは、間近にあるかの忌わしき国の瘴気も、人の心をも浄化する作用があるように思えた。
自分より実年齢も実戦の経験も勝る部下たちが、何やら同情的な視線を送ってくることに、当初は閉口したが、彼らについて、山中を細い抜け道一つ一つに到るまで踏査するのは、辺りにどのような敵が潜んでいるか判らない緊張の下であっても、却って開放的な気分を与えてくれた。
体も神経も酷使するのは、余計なことを考えない為にも都合がよかったが、疲労感はあの白い石の都で父と対峙する時より少ないくらいだったし、平地での戦さとはおおよそ勝手の違う、この地形や環境ならではの戦術戦法を老練な部下たちから学び、討議しあうことは、思わぬ充実感をもたらし、なるほど、父は確かに自分に適した任務を与えてくれたと、今更ながら感心するくらいだった。
執政からは、時折、敵情に関する便りが送られてきたが、不思議なのは、前線に位置する自分たちの得た情報より、都からのそれの方が、より早く、正確な場合が間々あるということだった。
ボロミアからの便りは殆どなく、あったとしても、執政を通じての情報交換や業務連絡の類いであったが、互いに任務に追われる身とあってはそれもやむなしと思い、それ以上のことは考えないようにした。

ファラミアが再び都に戻ったのは、実にその半年後、木々の葉が黄金色に変わり始める頃のことだった。これから迎える冬に備える為と、とりあえずの休暇の意味もあった。
慰労の宴の席上、執政は、次子の前では滅多に見せることのない笑顔と共に、
「我が子よ、父の見込みは正しかったであろう」
と言った。ファラミアも素直に
「はい、父君」
と答えた。実際、離れてみて改めて、父への敬意を持ち直すようになっていたからでもあった。
父の傍らに控える兄は、その時には何も言わなかった。
ただ、ファラミアがミナス・ティリスの大門を通って戻った時、ボロミアは自ら馬に乗り、わざわざ最下層の広場まで迎えに来てくれていた。
野伏の装束に身を包んだ弟の姿を初めて見た時、彼は表情を曇らせた。
「日に焼けたな」
暫しの沈黙の後、兄は言った。
「それに随分痩せたようだ」
「ご心配頂かなくとも、兄上、私はあちらではきわめて充実した日々を送っております。木立ちの中で矢を射ることにもかなり熟達しました。また見て頂けたらと思います」
「ああ、弓でも剣でも見てやろう」
兄は、出立前と同じ言葉を口にした。それから、
「だが、今の私は、むしろおまえが書庫で古文書や巻物に読みふける姿が見たいと思う」
そう言って、どこか寂しげにほほえんだ。

151Sons 6/6:2004/06/16(水) 10:29
ラストです。どうにか6分割に収まりそうです。














宴の後、ファラミアが自室に戻ろうとすると、長い廊下の中ほどに、先に出ていたボロミアが立っているのが見えた。
「ファラミア大将」
と、彼は声をかけてきた。
「もうそう呼ばなくてはいけないな。私の望んだ形ではなかったが、ゴンドールの平和のため相携えて行くには、父君のおっしゃる通り、これが最善であったのかも知れない」
並んで歩き出しながら、兄は弟の肩に手を置いた。
「おまえを誇りに思うぞ、弟よ」
「私もあなたの弟であることを誇りに思います、総大将殿」
「もうおまえを守る必要もないのだな」
そう言って、ボロミアは、再会した時と同じ微笑を浮かべた。
自分の肩を抱く兄の手、以前に変わらぬその温かさを十分感じながらも、ファラミアは言った。
「私も、もはや子供ではありません。自らのいるべき場所も、あるべき姿も弁えております。ですから、私を憐れんで下さる必要も、もうないのですよ、兄上」
「憐れみ?」
問い返して立ち止まり、兄は弟の顔を見た。
「そんな風に思ったことはない。幼き日より、私はただ、おまえに執政の子として相応しい処遇を、また、より良い生き方をと・・・」
言いかけて、彼は不意に言葉を切った。
「いや・・・」
ボロミアは髪をかき上げながら、ひとり言のように呟いた。
「今回の件に関しては、それは嘘だな。いや、おまえの身が心配だったのは本当だが・・・」
「ボロミア?」
半年前別れた時とは、異なる何かを湛える灰緑色の瞳を、ファラミアは見た。
「私は、おまえの姿が見えないのが寂しかっただけだ。おまえが私の傍らにいないのが、ただつらかった」
妙に早口で、ボロミアは言った。
「おまえに会いたかった」
自分の中で、張りつめた弓の弦が切れるような音を立てるのを、ファラミアは聞いた。半年間抑えこんでいたものが溢れ出す。
「兄上・・・」
目を伏せ、ファラミアは頭を兄の肩にもたせかけた。
「私もあなたに会いたかった。兄上・・・兄上・・・」
震える声で口にすると、兄は片手でその頭を引き寄せ、もう片方の手を肩に回して、そっと抱きしめてくれた。
「よく帰って来た」
都でも王宮でもなく、自分の帰るべき場所はここしかないと、温かい腕の中で、ファラミアは感じていた。
「私たちは兄弟だ」
その想いに応えるかのように、ボロミアの声もまた、熱と震えを帯びる。
「何があっても、どれほど離れても、そのことに変わりはない。それを変えることは何ものにもできはしない」
互いの鼓動が一つに重なり、そして、その時初めて、ごく自然なことのように、二人の唇も重なり合っていた。


ーーー父君・・・

脳裡に浮かぶ灰色の冷厳な眼差しに向けて、彼は語りかける。

あなたはやはり間違っておられる。
あなたの理解も認識も超えた所に、それはある。私の頭ではなく、私の胸の内に、この身の奥に、それは確かに存在する。
私を動かす唯一のもの。私たちは二人だけでそれを育ててきた。
そして父君、それを生み出したのは、あなたであるというのにーーー

152146-151:2004/06/16(水) 10:40
>設置様
保管の際は、3、4、6それぞれの頭に一行空け願います。

<言い訳>
実は原作父君がわりと好きだった私。執政殿に対する巷でのあんまりな扱いには
涙を禁じ得ません。だからと言って、自分の書いているものが救済になるとも
思えませんが、次男坊に対する屈折しまくった愛情の片鱗でも感じて頂ければ
幸いです。
ソロンギルの話は余計と言えば余計なのですが、父君こちらにも屈折した愛憎を
抱いていそうなので、ちょっと触れてみました。

・・・にしてもmind reader同士の会話って疲れそー。書く方も疲れました。

153萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 16:31
弟が巣立ちの時期を迎えてちょっぴりさびしんぼな兄上(*´Д`) '`ァ '`ァ
愛情表現が複雑骨折してる父上(*´Д`) '`ァ '`ァ

そして
戦地が別となれば、これが今生の別れになるかもしれないと
毎度毎度出立前夜は5割増で濃厚な一夜を過ごすと予想。


(*´Д`) <・・・・・・。
(; ゚∀゚)=3

おいしく頂きました。ありがとうございます女神様!

154萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 23:26
>146-151様

後半、理屈ではない兄弟の愛情に、ひたすらに萌えました。
素直な兄上につられるのか、大胆に兄上と触れ合う大将に萌え。

前半、父上がソロンギル殿に抱いていた感情は、なかなかに複雑で、
父上の人生というものを考えさせられました。
大将にかつての自分を投影しているくだりには、大いに頷かせていただきました。
勝手な解釈ながら、立場の類似を認めればこそ、大将について理解もし、
甘やかしも出来ないのが父上かもと。
その父上に同情を感じる大将は、大人の格好良さをお持ちで、素敵。
惚れ直しました。

155<父上にとって大将とは?>1/2:2004/06/17(木) 21:44
二番目の息子は兄弟の父にとって、いかなる意味を持っていたのか。
人それぞれ解釈の違いをご理解いただける方向け。

以下ご注意。

・萌えなし・しるけなし・原作準拠。
・死に向かう父上・兄上死にネタ・死にかけ大将・デネソール視点。
・とにかく暗いお話。

>146-151女神様の素敵SSと共通した部分を含みますが、
これは、父の日が近いので父親話という発想に基づいた偶然の産物です。

2レス分使用させて頂きます。

<デネソールとファラミア、デネソールとボロミア/しるけなし>・1/2















 堅牢を世に誇ったミナス=ティリスの、城門が燃えていた。
 瀕死の状態ながらも帰館を果たした、もはやたった一人の息子は、黒の息の元に囚われようとしていた。
 デネソールが何より愛した長子も、彼なりに愛した妻も、とうにここにはいなかった。賢明にも最後まで父の元に残った二人目の息子さえ、仮に、運良く一命を取り留め得たところで、黒の息により、元のままの息子ではいられまい。その時には、もはやファラミアであってファラミアではない悪しき何かが、息子の肉体という殻を纏い、その悪しき者が戴くに相応しい主の元へと赴くのだろう。
 そのような勝手が許されて良い筈が無い。
 いかにあろうと、これは自分の息子だ。よって、これは誰にもやらぬ。悪しき存在にはいわずもがな、たとえそれが魔法使いだろうが、いずれ還り来る王だろうが、だ。

 自分は、旧い時代に生きた。自分の生の根拠は常に、そこに存在した。来るべき次代にではない。
 時代が、音を立てて動いていた。必然により、世のあり方は変わろうとしていた。動き始めた流れは誰であろうとゆるがせられぬ。人の子が、無力だからではない。動かせぬものこそを人は、運命と呼ぶからだ。
 その奔流の中にあっても、己の意志で決定されうる事は、必ず存在する。それは、己自身に対する己の処遇というものだ。
 
 虫の息にある息子が、もう一度口を開くやも、などというささやかな望みは、事ここに至っては、己を空しくさせるばかりだった。

***

 きっかけは忘れた。イムラドリス探索行へ単独で出立する直前だったと、時期については記憶している。おそらくは、ずっと心の内にあったのだろう。尊敬してやまぬ父に、珍しくボロミアが意見した。
「父上は、ファラミアを愛してはおられぬのですか」
 弟への愛情を隠そうともしない兄らしい言葉には、無条件に頬が緩んだ。
「なぜそのように聞く」
「父上のなさりようは、わたしとファラミアでは、幾分異なるよう思われてならぬのです」
「兄弟といえど、別個の人格であるという事に、よもや異存はなかろうな。個にはそれぞれ相応の接し方がある。そなたとて、そなたにとって同じく親とはいえ、この父と先に逝った母と、同一の態度を見せてきたとは言うまい」
 立派な体躯を持ち、総大将にふさわしく育ったゴンドール執政家の長子は、俯いた。
「そなたがいくつの時であったか。随分と、この父に対して我を主張し、手を焼かせおったな」
 思わぬところで話題が自分に移り、ボロミアは内心首をかしげた。

156<父上にとって大将とは?>・2/2:2004/06/17(木) 21:45
<デネソールとボロミア、デネソールとファラミア/しるけなし>・2/2

















「その時分の所行については、申し訳なく存じます。ただ、お言葉ながら、父上。あれは、人というものが形成途上にある折、必要な過程の一つであると、自らご教示下さったかと記憶しておりますが」
「わしは、過去を蒸し返してそなたを責めておるのではない。そなた、己の我によって父の愛情を失うかも知れぬとは、後にも思わなんだか」
「…実を申せば、些かもございません」
「であろうな。そして、そなたの認識は、たとえ無根拠にせよ正しい」
「有り難く存じます」
「そなたの目には余るらしい、あれに対するわしのやりようにも、そなたの弟は異を言わぬ。わしの見立てでは、そなたに不平不満を漏らした事すらなかろう。何故か?」
 目にしない事までをも見通しながら、なぜ肝心要である理由は分からぬのかと、喉まで出掛かった言葉をボロミアは飲み込んだ。ボロミアにとっては、相手が父親でなければ、手が出ていたかも知れない物言いに、声が震えた。
「それこそが、ファラミアが父上を、深く愛しているからではございませぬか」
「さもあろう。そなたがどう判断しようが、事実として、わしはあれを理解しておる。それだけではない。あれ自身もまた、わしを理解しておる。そなたの言う愛、とやらを持つばかりではなくな。ファラミアは、何事においてもわしの言に否は唱えず、従順を常とするのはそなたも知るところであろう。ゆえんは、今、申したところの理解にある」
 父親の言葉に、呼吸すら忘れたかのように耳を傾けていたボロミアの表情は、かつて結果として、泥で縄をなう程度の役にしか立た無かった詩歌の講義中にだったか、偶然垣間見たそれを思い出させた。
「そなたに言うべき事は全て伝えた。下がるがよい」
 ボロミアが父親の前を辞す前に、親子は、お互いへの慈愛に満ちた抱擁を交わした。
 ファラミアの助けになる言葉を、兄弟の父親から引き出すことは適わなかったと、ボロミアは思った。ゆえに、ボロミアは、その会話を己一人の胸に納めたまま旅立ち、逝った。

***

 今や、目の前にいる息子は、口をきくことも叶わなかった。
 己と同じ血を引き、同じ見える目を持つ息子にして、己が生涯で持ち得た最大の理解者、ファラミア二世は、ただ横たわり、父が手を差し伸べようとも決して触れる事の能わぬ死の淵を、孤独のうちに彷徨い続けていた。
 
 時、ここに至れり。

 息子が、己の知る息子であるうちに、己が決めた場所に共に赴こう。最後まで共にあった息子は、最後まで己が連れて行こう。たった一人で、自分の与り知らぬ場所に行かせたりはせぬ。なぜなら、ファラミアは我が子である。それ以上、何を言うことがあろうや?
 命令一下、執政家の忠実なる部下たちは、旧時代最後の執政、そして、ゴンドールの大将ファラミアの父親であるデネソール最後の下命を叶えるべく、動き出した。

 それは、父が与えるどのような処遇にも、決して揺るがぬ愛情と誤ることのない理解を以て応じる息子の思いの上に、それと知って依存し、彼の存在の限り彼に甘え続けてきた父の、一度たりとも父を裏切ることがなかった二人目の息子に対する、最後の甘えだった。

//おわり

157萌えの下なる名無しさん:2004/06/17(木) 23:30
>155-156様
えー、上の方でヘリクツ大魔王な執政殿を書いた者です(w
そうなんですよ、父君とご次男て、実はちゃんと、と言うか誰よりも理解しあって
いたと思うのですよ。理解しあっているから売り言葉買い言葉になってしまうと
いう・・・。ご次男に必要なのは果たして「理解」だったのか、とも思いますし。
間にはいって心痛める兄君には、それこそ理解や納得はできない、親子の在り方
でしょうね。

さて、執政殿にあんまりな扱いをしてくれた筆頭は、実はPJだったりする訳ですが、
某サイトさん情報によると、映画の父君、いまわの際にちゃんと
"Faramia...My son..."
と言って下さっているのだそうです。My son.のところは音声にはなっていない
のですが。よかったね、大将・・・とも言いにくいですよね。あの状況じゃ。

158萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 07:53
>146さま
>155さま

 映画での父上の扱いに憤慨していたことさえも懐かしく思えてしまうほど、
デネソールとしての息子ファラミアを想う心情に感動しました。
それと同時に、こう云った解釈をすんなりと納得させてくれる演技を見せてくれた
俳優さんの素晴らしさに、改めて感謝してしまいます。
 お二方共、素敵なお話をありがとうございました。

159萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 09:30
>157
Faramiaじゃなくて-mirだろ!これじゃローマ字だよ、と自分自身に言っておくw

これだけじゃ何なので、某所で見かけたネタ。
映画の執政ご一家の共通点は「鼻」だけにあらず。「美しい手」もあるのよ。
ちょっと中の人話に傾くけれど、お三方とも、大きいけどゴツくない手で、細く
長いきれいな指をしている。その手であんなこととかこんなこととか・・・と
妄想してしまったことは内緒w
本編では殆ど手袋をしていた弟君が、SEEではその美しい手をふんだんに見せて
下さることを期待しておきます。(何か間違っている気が・・・)

160萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 17:37
ああデネソール&ファラミア大将・・・このスレにお邪魔したのは初めてですが、こんなによいお話を見せていただけるとは!
失礼致しました。

>>146女神様
>>155女神様

素晴らしいSSをありがとう!。・゚・(ノД`)・゚・。

161萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 19:46
>159
あと、兄弟の中の人はどっちも「(国)の代表的セクシー俳優(w」ですよね。
父上の中の人ももしかしたら・・・とか言ってみる(w

セクシー一家(*´Д`)

162萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 21:38
父上の中の人もせくしぃデスヨ!!

ああ、ココ最近女神様日和で萌え萌えー

163萌えの下なる名無しさん:2004/06/19(土) 11:08
162タンと同じく、女神様日和で萌え萌えー

ファラミア様は、パパ&兄との関係が一番萌え
ゴンドールを代表するセクシー兄弟&父ということで…

164<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/6:2004/06/20(日) 15:05
個人的嗜好を除くご意見は適宜。

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/6 >133の続き

【苦手な方】護身推奨。専用ブラウザ+NGワード指定orスルー。
【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133
【私信】派生元現行スレご関係者各位 ご英断感謝。

6レス分予定。未完結。以下続く。














「体に、傷が付くかも知れません」
 セオドレドの言葉の意味が咄嗟に分からず、ファラミアは目を開いた。
「出来る限りのことはさせていただきますが。慣れてはおられないのでしょう」
 セオドレドが溜息を漏らすのを、ファラミアは初めて見た。セオドレドは、身を寝台の縁の側に寄せて、飾り棚から取り上げておいたたらしい何かを拾い上げていた。
「わたしは、傷も痛みも慣れております」
 ファラミアはほんの僅か、体を伸ばした。別に嘘ではなかった。鍛錬にせよ、まだ経験が少ないとはいえ、実際の戦においても、少しの傷もなく終えることなどほぼあり得なかった。
「そうでしょうとも。…本来は、そうあっていただきたくは無いのですが」
「ご心配は有り難く思いますが、このような世に、人々のあり方に対し大いに責任を持つべき家系の人間として生まれたからには、当然果たすべきつとめです」
 思わしげな目がじっと見つめてくる。
「私は、世を恨めしく思わずにはいられません。ファラミア殿も、それに、私の可愛らしい従兄弟も−−彼女はまだ幼いのに、剣の訓練をさせろと言って聞かないのですが。剣を持つこと自体はともかく、その先にあるのが戦場であるからには、おいそれと願いを叶えるわけにもいきません。大事な者を危地に置きたいと、願う者はおらぬというのに」
 意外な気がした。案外と心配性らしい。まるで誰かのようだと思い、そう思う自分に対して、首を振った。
「戦場でなくとも剣の技能が、彼女自身を救うということもありましょう。…ご心配はごもっともに思いますが」
 何もかも、自分らが背負おうとするのは、年長者の、あるいは同じ年に生まれた二人の習い性なのだろうかという思いが、ふと頭を掠める。ただ、彼らはなにも理解してはいない。広い背中の後ろに安住し、守られたいなどと、誰が思うというのだろうと。大事な者は危険から遠ざけておきたいというならば、その気持ちは誰であれ同じであろうと、なぜ気付かないのだろう。自分とて例外ではない。セオドレドの幼い従兄弟とやらも、おそらく。
「お聞き苦しい愚痴でしたな。面目ない。私に、お体を向かい合わせていただけますか」
 頷いて、セオドレドの手の助けも借りつつ、体の向きを変えた。腰骨の上に足をまたぐ格好になって、体の安定を図るため、セオドレドの肩に腕を預け、背で腕を交わらせて左右それぞれに掴まった。いかなる思いをもってか、セオドレドの腕が、ファラミアの体を息ぐるしさを感じさせるほどに抱き締めた。溜息と共にすぐに緩められたそれが、自分の背中で、ゆっくりとだが仕事をする気配がしていた。少しだけ首を巡らして見ると、セオドレドが手にしているのは、ガラスで出来ているらしい華奢な細工を持った小さな瓶だった。そこから、セオドレドが中身を彼の手に垂らすと、立ち上る甘い香りがファラミアにまで感じられた。
「冷たいようでしたら、ご勘弁を」
 セオドレドは自分の手の内に香りの良いそれを馴染ませると、ファラミアの後ろに手を這わせ、狭間を探った。
 セオドレドの体温が移ったそれは、冷たさを感じさせることなど一切無かったが、予想していたとはいえ、慣れない場所へ与えられた慣れない感触には、思わず身を竦ませた。ファラミアの感覚に間違いがなければ、皮膚を覆ってなま暖かさを感じさせるそのものの正体は、油だった。人の手が触れることの無い場所に油にまみれた指を滑らされると、ファラミアもさすがに、落ち着くどころではなくなった。意図しないで腰がセオドレドの身体をずり上がり、自分の後ろを揉みしだく無骨な指から、逃がれようとした。しかし、それが許されない事は、すぐに知らされた。ファラミアの片足に掛かった手が、彼の足の外側へそれを引いて、その場所から動かせないよう腕で抑えつけてきた。あまり安定感があるとはいえない姿勢を取らされて、セオドレドの体からずり落ちないよう、ファラミアはそれまでよりも強く、手にした肩にすがった。

165<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 2/6:2004/06/20(日) 15:06
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 2/6
















「大丈夫です。それほど辛くはありません。…初めは」
 明らかな含みのある物言いと声色に、全身が粟立った。狭間の中心がセオドレドの指に、緩やかにだが押さえられていた。苦痛というほどのものは無かった。油が、驚くほどの滑らかさで、セオドレドの、背丈に見合って長い指を、ファラミアの内側にくわえ込ませた。潤滑に優れていたお陰で、騒ぐほどの痛みを与えられずに済んだと言っても、否定しようのない異物感に、ファラミアの口から常ならぬ呻きが漏れた。
 本来、そこにあるべきではない、他人に所属する身体の部分は、決して長居をしなかった。が、まったく居なくなるわけでもなかった。浅い場所まで後退させた指に、セオドレドは瓶から油を足してきた。伸ばされた指を伝い、ファラミアの身体の内側と繋がっているその場所から、ファラミアの後ろの狭間にも、ねっとりと這うように、それは訪れた。もし、これが自分の体のためにも必要なものなのだと、ファラミア自身が納得していなければ、是非も問わず拭い取っていただろう。そういう類の、強烈な違和感を持つそれは、彼の指と、自分の肌を行くのには足りず、そこから溢れて自分の体の表面をゆるゆると流れて降り、おそらくは、初めにこの寝台でファラミアが触れた、素晴らしく清潔な敷布に染みていた。一度付着してしまえば、拭いようのない油の染みにどんな意味があるのか、当事者の片方であるセオドレド自身はともかく、当然いるだろう彼の部屋の世話をしている者はどう見るだろう。ふと、ファラミアは人ごとなのか、自分の事なのか判然としない不安にかられた。
 セオドレドは、彼が自分で洗うわけでもないだろう真っ白な布を汚して、何も構ってはいないようだった。だから、こうした事態は、セオドレドにはよくあることなのかも知れない、というよりも、間違いなくそうなのだ。
 自分の内側を再び訪れた異物に、思考は唐突に途切れた。一度味わわされたからといってすぐになじめるものではない。それでも、異物感に慣れる事だと、ファラミアは自分に言い聞かせたものの、理屈で割り切ったところで堪えることが叶わない何かに内側から突き動かされたように、顔をセオドレドの首に伏せた。
 なるべく手加減しながら歯を当てると、不思議に少しは気が済んだ。セオドレドが、喉の奥で笑った音が、聞こえたような気がした。身体のどこへたりとも無駄に力が入らないよう、ファラミアは意識して呼吸を深くし、自分の身体でなければ何であれ構わなかったものの、さしあたって、五感にはっきりと感じられるセオドレドの皮膚の事だけを頭に上らす事に決めた。そうして、散漫なのが最も望ましくない事だろうと、目を閉じた。改めて触れてみたセオドレドの肌とはいかなるものかと、興味のあるなしに関わらず無理矢理、感覚をそこに向けさせた。尋常ならざる事態にあっても、まだ感覚は正直だった。服の上からは決して想像もつかない滑らかさに、うっすらと滲む汗のにおい。それから−−。
 舌をセオドレドの皮膚につけてみると、かすかに塩の味がした。その分かりやすいものを除いた何かが、セオドレドの味なのだろうかと、ファラミアは、不意に愉快になって、セオドレドの肌をゆるゆると舐めた。とはいえ、本当は味などどうでも良い事だと自覚していた。ただ自分は、何かをしていなければ安定を保てない気がして、何にでも良いからすがりたかったのだ。
 自分を支える体から、深い息が吐かれた。
 何を思い描いて良いのか見失ったまま、ファラミアは、自分の体の芯を、かすかに上がってくる覚えのある感覚は、気のせいだと思う事にするしかなかった。そうでなければ、一度上り詰めることを思い出してしまった体は、それと望まず、簡単にそちらに向けてさらわれて行ってしまうだろう。

166<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 3/6:2004/06/20(日) 15:06
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 3/6
















 異物は、ファラミアの中を探っていた。身体の内側で動かされるその度に、くぐもった声が漏れたが、それは、意識して聞かないことにした。異物感は決して消える事がなかったが、それだけではない感覚を、体は確かに覚え始めていた。自分のことであるのに、自分自身奇妙な感じがした。しかも、それは、決して歓迎されざるものである異物感に取って代わるのかとさえ思えるほど、だんだんと存在を増し、それを意識せよとファラミアに聞きたくもないのに強弁し続けていた。音声ならば耳を塞げば、あるいは身体を遠ざければ足りる。しかし、自分の身の内のことは、如何様にもしがたいだけだった。
 だからファラミアは、気を逸らそうと、握力の限りにセオドレドの肩を手の内に掴んだ。内側を探る動きが、一瞬だけ、止まった。セオドレドにしてみれば、それは長年に渡り鍛え抜かれて完成された戦士が持つ力で加えられた暴力沙汰でしかなく、本音を言うならば、堪ったものではない強さを持っていた。それでも、何を言う気もなかった。ファラミアの望みならば、多少行きすぎた痛みといえど、甘受出来た。それよりも、ファラミアの体が、どこまで耐えてくるのかが気に病まれた。
 考えても始まらなかった。どのみち成されることに心を痛めるなど、馬鹿馬鹿しい事ではないか。気休めかも知れないが、余計な事は声色には出さず、セオドレドは告げた。
「少し、きつくなりますが。大丈夫です」
 返答はなかったが、頷くのが分かった。ファラミアの息づかいに耳を傾けながら、セオドレドは指を加えた。ファラミアの呼吸が、詰められたようだった。しかし、止めるわけにはいかなかった。ファラミアが、もし何かを耐えなければならないとしたら、まだ、これからの事だった。

 全身が、一つの感覚に支配されようとするのを、ファラミアは感じていた。恐怖とは違う。いや、恐怖かも知れない。自分自身どちらでも良いと分かり切っていることが、頭の中を行き来するのを止められなかった。感情に適当な名前を付けたところで、何の助けにもなるものではない。確かなのは、これは自分が望んだ事であり、そして、自分は逃れられないということだけだった。
 親切にも予告された通り、セオドレドが己の身の内側に指を増やすたび、身体が悲鳴を上げた。息苦しさと、下肢への誤魔化しようのない圧迫感とに、ファラミアの身体は苛まれていた。せめて、内側を穿つものをじっと動かさずにいてくれればと思う。思うが、声はもう出なかった。セオドレドの肩にすがり、ひたすら呻いた。それでも、声を上げずに済んでいる事だけは、救いと言えるのかも知れなかった。

 ファラミアの体温は、心地良かった。何ひとつお互いを隔てる邪魔も無く、それ以上なく直接にファラミアに触れている指にしみこむその温みには、指に触る内側の感触と共に、つい引き込まれそうになる。十分触れている筈であるのに、更に強くそれを感じたいと、セオドレドは念じる。念じながら、内側を貪る。ファラミアの、初めて聞く声は、セオドレドには媚薬に等しかった。それなのにどうしてここまで、時間をかけていられるのかと、己自身を訝りさえした。自分の身にそそり立つものは、手指ではなくこちらにファラミアを寄越せと、煩いくらいに訴えかけ続けているというのに。

167<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 4/6:2004/06/20(日) 15:07
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 4/6

















  しかし、セオドレドは決して忘れてはいなかった。何故、ファラミアがここに、こうしているのかを。
 顔を合わせぬまま過ぎた日々の後にも失せなかった滑稽なくらいの彼への思いこみは、ファラミアの姿形によるものでは、おそらくない。とはいえ、それが何者であれその内側に存在するものが、外側に必ず影響しないわけがない。だから、一目のうちにファラミアが自分を執着させずにはおかなかったのも、不思議はないといえばないが、その、内側に有しているものこそが、セオドレドにしてみれば、一つの奇跡だった。
 どのような物事にせよ、かれは一度は身の内に取り込み、そして、決して元の形ではその内に留めないのだろう。かれの内側に入れられたものは、どんなものでも、かれだけが持つ何かによって繰り返して濾され、かれにしか持てない、はじめとは別の形をした、きれいな何かになって、かれの内に堆積して彼自身を形作っていくのだ。誰しもが、そのようなもので構成されていくのかも知れないが、方法ではなく結果が、唯一見えるものなのだ。
 それが何かは知らない。が、ファラミアは、少なくともセオドレドにとって好ましいもので出来ている。
 ファラミアにとって、持ち合わせる濾紙は多様なほど、そして、漉されるのを待つ材料は、数多いほど良いのだろう。
 セオドレドに対する同情でも欲でも、ましてや、愛などというものでもなく、ファラミアは、ファラミア自身のために、今ここに、こうしている。欲深くも、素材を求めて。
 なるほど、かれは貪欲な教えられる者で、自分は親切極まりない教え手ではないか。たとえそれが、自分の身の内に、彼にとって咀嚼すべき何かが存在しうる間だけであってもだ。今、この時だけを見れば、異を挟む隙もないくらいこの関係は、確かなもので、そして、それは、人の一生から見れば、おそらくは、瞬きする間ほどもない僅かな時間でしかないだろう。
 だが、その今こそが、セオドレドにとって、恐らく最初で最後の好機だった。
 ファラミアにとって、真実自分が何者であるのかは、自分が教え手などという面白くとも何ともないものではなくなったその時に立っていられる場所から、初めて、決まっていくのだ。
 ファラミアは、見られるだけのものを、見れば良い。望むものを望むだけ得れば良い。この腕の中にあるものと引き替えとするのに、僅かでも惜しむべきものが、この身のどこにあるだろうか。

「ファラミア殿」
 呼びかけられたのは知れたらしいが、ファラミアは、顔を上げることも出来ないようだった。
 見える限りセオドレドが覗き込んだ顔は、どこをどう取ろうが虚ろだった。ファラミアには聞こえないように、ほんの僅か溜息を吐いて、セオドレドは瓶に入った油を、自分の煩い場所にいい加減に垂らすと、間違って中身をぶちまければさすがに面倒になるからと、身体を置いている場所から、入れ物を遠ざけた。
 今や、肩に触れているだけで精一杯らしく、力の無いファラミアの片手を、自分の肩から引きはがし、油を中途半端に浴びせたせいで、鈍く光を反射させている己の鬱陶しく主張する場所に導いた。掴んだ手は逆らわなかった。触れた場所を、自分の手の動きで導き、上下させてやると、さすがに肩を震わせていた。セオドレドの望みのまま、形だけにせよファラミアの手が、自分の欲を、彼自身の身に受けいれるための準備を整えていく様には、なかなかに高揚感を煽られた。が、それだけだった。

168<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 5/6:2004/06/20(日) 15:08
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 5/6

















 自分が何か、許されざる罪を犯しているような気に、セオドレドはいきなり襲われた。
 今、自分が手に抱いているものは、特別なのだ。二十年近く待ち、ようやく再びまみえた磨かれた宝物を、自分が得手勝手に扱えるなどと、有り得ることではない。思いこもうとする一方で、言い訳でしかないと思い始めている自分もまた、いるのだ。今更、くどくどと迷っているのが何よりの証拠ではないかと。
 真実を一言で言うなら、これは欲情だ。ご教授だのというきれい事に飾ったところで、この行為は、彼への欲情によって動いている。これは、その止めどのない発現でしかない。
 おそらくは自分の言葉を信じて、慣れない身体を任せている彼を、それと望まず裏切るのだろうか、自分は。考えるほどに身が竦んだ。揺らぐ自分の心を打ち消すように、セオドレドはファラミアの内から、入り込める限りの数と深さで抉っていた指を、ゆっくりと引き抜いた。
「あ…」
 安堵からなのか、自分の声などもはや意識してはいないのか、顎を反らしたファラミアの頬が自分の肩に触れ、切ない喘ぎと吐息に、首筋をくすぐられていく。
 セオドレドは、もう迷ってはいられなかった。ファラミアの腰を自分の腰の上にさし上げるよう両手に持ち上げ、ファラミアには彼自身の膝で、体重を支えるよう誘導した。定まらない体に、難儀している様子のファラミアの肩口に何度も口づけ、殊更優しげな口調を作って、囁いた。
「何一つ、困難な事はございません。ゆっくりと、腰を落として座る。なすべきは、たったそれだけです」
 それだけ、などで在るはずはないと知っていながら事も無げに告げたのは、意識しての事だった。事に至れば嫌でもその身に知れることを、わざわざ事前に語り、不安の材料を余分に与える必要など、これっぽっちもない。
 ファラミアは、セオドレドが驚くほど素直に頷いた。
 思い通りにならないらしい身体を、もどかしさを隠そうともせず緩慢な動きでセオドレドに預けてくる。体重が降りてくる前に、自分で自分の抜き差しならないものをファラミアの狭間にあてがい、ファラミアが間違いない場所に降りてこられるよう、自分自身を手で支えた。
「苦痛は、ほんの初めだけです。ご心配は無用に」
 声色を作って知った嘘を重ねる。初めだろうが終わりだろうが、経験を重ねて体が行為に慣れるまでは、辛いに決まっているのは分かり切ったことだった。正確を期すならば、初めがとりわけ辛い、というべきところを、ファラミアへの気休めというより、ファラミアの翻心を恐れる余りに、自分自身のために嘘ばかりを並べ立てる。それに何の抵抗も無い自分に、嫌悪を感じないわけではない。が、自分が手に入れようとしているものと比べれば、些細なものでしかなかった。
 ともかく、欲しいのだ。仮に、彼が今身を引こうとしたならば、それを笑って受容することなど到底出来そうにもないくらいに。最初で最後の好機に、後も先もない。失うわけにはいかない。ここは勝手知ったる自分の寝室だ。傷つけまいという選択を捨てさえすれば、人一人どうにも出来ない事などないとばかりに、自分は行動出来るのだろう。それは、考え得る限り最悪の事態だった。だから、それを回避するためならば、嘘など安い物だとさえ思う。

169<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 6/6:2004/06/20(日) 15:08
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 6/6 【今回ラスト】















 支えた身体が震えた。
 他人の一部を受けいれようとした場所に、その狭さには到底見合いそうもない体積を持つものが触れて、気後れしたのかも知れなかった。正直なところ、焦れた。ならば、せいぜい、焦らされておこうではないか。
「難しいのですか。それとも、抵抗感があられる」
 ファラミアは、進みもせず、かといって引きもせず、言葉なく首を振るばかりだった。
「少し、休みましょうか」
 片方の膝の上に腰を落とさせ、片手に包み込んだ顔を自分の方へ向かせ、口づける。舌をファラミアの口腔で誘うが、弱々しく触れてきただけで、すぐに力を失った。そんな様も愛おしいといえば愛おしく、両の腕をまだ完成途上の若い体に回して、抱き寄せた。
「わたしには、教わる資格が、無かったのかも知れません」
 訥々と漏らされる言葉に、セオドレドは舌打ちをしたいような気分になった。今ファラミアが告げたのは、今、もっとも耳にしたくない言葉ではなかったか。が、それを言っても始まらない。逃がさなければ、それでいい。
 乱れた髪に、乾いている方の指を差し入れ、子供にするのと変わらぬ程度に、ゆるくかき回し、頬に顔を寄せた。
「何を、教わるおつもりでしたか」
「…頭で、物を考えぬ事をと」
「成る程。ファラミア殿は、まだしっかりと頭を働かせておられる。もっとも、ご無理と悟れば中途で終えるのも、賢いやり方と言えましょう。ファラミア殿のご判断であれば、私も何も申しますまい」
 突き放す言葉は本心などではなく、最後通牒を突きつけられる羽目になるかもしれない賭けだった。ファラミアは、あるいは烈火のごとく怒るかも知れない。そうすれば、ファラミアにとって自分は、教え手ではない何者かにはなれるわけだ。多分、無能か、忌み嫌われる者という位置で。
 自虐的な考えが浮かんで、セオドレドは苦く笑った。
 表情を見られていないのを良いことに、自分の肩口で俯いて下唇をかみしめているファラミアに、畳みかけていく。
「今、ファラミア殿にとって私は何者です。そして、ファラミア殿は?」
 セオドレドの視線に、それまでになくきつく射抜かれて、ファラミアは喉を詰まらせた。それでも、まっすぐにセオドレドに顔を向け、目を見据えた。誇りと矜持のいずれかでも、ファラミアの内に無かったならば、それすらも決して出来なかっただろうが。だが、それだけだった。彼の、直接の血縁者を除いては誰一人として聞くことが無いような、張りを失った弱々しい声が、セオドレドに答えた。
「セオドレド殿は、教え手で…私は、教わる者です」
 そして、それきりファラミアは口をつぐんだ。ファラミアは、決して目を閉じようとはしなかった。その代わり、ファラミアは何度も瞬きをした。はっきりと目を開けば、そこには濡れた双眸が恐らく見えるのだろう。しかし、ファラミアは、それをセオドレドの目に晒すのを、自分に許さなかった。
「ならば、どうなさいます」
「…仰るとおりに、と」
 ファラミアは、緩慢にだが自分から腰を上げた。

【続く】

170<エオメル/ファラミア>カップリングなし 1/2:2004/06/21(月) 19:19
執政一家萌えのところ失礼します。
セクシー執政一家話、おいしくいただきました。
兄貴スレとどちらか迷ったのですが、大将好きなのでこちらに。
エオメル/ファラミアのしょーもない小話です。

登場人物…エオメル/ファラミア、ちょい役…エオウィン 
名前だけ登場…エレスサール、ロシーリエル
ネタバレ原作追補編前提、指輪戦争終結後、エオメル視点、カップリングなし

これを含め、2レス使用させていただきます。

<エオメル/ファラミア/カップリングなし> 1/2















 エオウィンと、ゴンドール執政家のファラミアが婚約したというので、両者の身内を集めての会食が持たれた。エオウィンの実兄であるローハン王・エオメルも、当然その場に出席した。幸せそうな妹の笑顔を複雑な気分で眺めつつも、会は、和やかな空気の内に締められた。
 エオウィンが席を外した時、エオメルはちょっとした違和感に気付いた。原因は、ほどなく自分の義弟にとなるファラミアにあった。気のせいでなければ、ファラミアは、瞬きしないで対象物をじっと見つめていられる猫のように、自分の顔を注視していた。
 ゴンドール執政家といえば、表だって口に出すのはさすがに憚られてはいたが、人間性に加え、男性としての性的魅力に満ちた人物ばかりであると、エオメルの故国・ローハンでも、もっぱらの評判だった。ご婦人方にとっては、真実かも知れぬと他人事として聞いていたエオメルだったが、実際に噂の人物を目の前にすれば、それが己の浅はかな誤認であったと、認めざるを得なかった。
 そのファラミアに長々と見つめられては、さしものエオメルとて心安らいではいられなくなった。だから、エオメルは、ことさら落ち着いた顔を作ったつもりで、ファラミアの元に歩み寄った。
「突然に失礼を。先ほどから、私の方をご覧になっておられたようですが。ご用がございましたか」
「いえ」
 ファラミアは、目を細くして笑った。笑うとまた、それが眩しく感じられてエオメルには珍しく、視線を合わせての会話が困難であるように思わされた。
「ローハンの方は、お国で一番美しいものを、惜しげもなくわたしに下されました」
 ファラミアは言ったが、惜しくないわけがない。エオメルは心中で毒づいた。しかし、妹の幸せのためである。余計な波風は立てまい、と自分を戒めた。
「それが、エオウィンの望みであるからです」
「やはり、兄君であるエオメル殿にとっても、エオウィン姫は、ローハンで一番美しいものなのでしょうね」
 間接的にせよ、身内を手放しで褒められて、エオメルは単純に表情を緩ませた。
「もちろんです」
「そこで、わたしは思ったのです。エオウィン姫がローハンで一番美しいなら、その、たった一人のご兄妹であるエオメル殿は、ローハンで二番目にお美しいのかも知れぬと」
「は?」
 その人物を評する基準として勇猛果敢さはともかく、美を持ち出されたことの無かったエオメルは、間抜けな声で応じざるを得なかった。
「それで、ご結論は」
「血のつながりは、ご兄妹に全ての形質を受け継がせるものではない、ということでした」
 エオメルは、決してファラミアから美的に称揚される事を期待していたわけではなかった。しかし、面と向かっての低評価を、喜ぶ輩もいない。
「お二人とも、何のお話ですの」
 折良くエオウィンが戻ってきて、話が途切れた。
「エオウィン姫が、いかにお美しいかというお話を、エオメル殿とさせていただいていたのですよ」
 エオウィンは顔を赤くして目を伏せた。自分には決して見せることのない、どこの乙女かという可愛らしい姿を、事も無げに妹から引き出すファラミアに対し、エオメルは逆恨みまがいと分かっていながら、この、可愛いが可愛くない年上の義弟に、先ほどの礼も含めて、いずれ目に物見せてくれようと、心の中で誓った。

171<エオメル/ファラミア>カップリングなし 2/2:2004/06/21(月) 19:25
<エオメル/ファラミア/カップリングなし> 2/2















 復讐の機会は、思わぬところから訪れた。
 エオメルは、義弟となったファラミアの叔父、ドル・アムロス大公イムラヒル大公イムラヒルの息女であるロシーリエルと縁合って夫婦となる事になった。
 それを知らせたときのファラミアの顔は、エオメルには痛快極まりなかった。しかしその様子は、一方で、拭いきれない違和感を湧き起こさせた。
「義弟殿。それではまるで、ご自身が花嫁の父のようです」
「何とでもおっしゃるが良い。わたしが、彼女をどれだけ可愛らしく思っていたか、義兄殿はご存じないのですから」
 未だに、ファラミアはエオメルを「ぎけいどの」と呼ぶ。兄と呼べというのも酷な話だろうと、エオメルも薄々は理解していた。彼にとって「兄上」とは、旅の途上に落命したボロミアの他に存在しえないのだろうから。
 幾度かローハンに立ち寄っていたボロミアの武勇は、エオメルも知るところであったし、実はかなり尊敬もしてたので、彼を見舞った悲劇を、今はゴンドールの王となったアラゴルンから初めて聞かされたときには、それほど近しい関係にあったとも言えない自分でさえ、悲痛な思いがしたものだった。それが、たった二人の兄弟であれば、その心中はいかばかりであろうか。
 末子として生まれているせいか、ファラミアが彼よりも年若い者、か弱い者に殊更情をかけるのは、エオメルも知るところとなっていた。ただし、会食時の態度から言っても、野郎は対象外らしかったが。 
 それでもエオメルは、不意に鼻の奥につんとした痛みを感じた。
「義弟殿の大切な従姉妹殿を泣かせるような真似は、このエオメル、決して致しませぬと、ここに誓いましょう。ですから、どうぞ、お心を安らがせ下さい」
 涙ながらに熱弁をふるうエオメルに、ファラミアは寂しげに笑って見せた。
「義兄殿のお気持ち、確かに頂戴致しました」
 そして、エオメルの額に、柔らかいものが触れた。
「な、何ですか、これは」
 口づけられたのだと気付いて、エオメルはファラミアから数歩飛び退き、自分の手で額を抑えた。
「感謝の気持ちです。義兄殿は、わたしに下さらないので?」
「なぜ、私が」
 まだあたふたとして、酒酔いでもないのにろれつが回らないエオメルに向けて、ファラミアは穏やかに言った。
「誓いを立てる時に口づけを贈り合うのが、わたしどもの習わしなのです。それで、義兄殿は正式に誓われるのですか。それとも、お取り下げなさるのですか」
「取り下げるなど」
 後に引けるはずもなく、エオメルは大股にファラミアに歩み寄り、目を不必要なまでにきつく閉じて、ファラミアの額に唇を触れさせた。
「ありがとうございます。わたしも、これで心安らげましょう」
 微笑むファラミアは、いつかの会食の折と同じく、やはりエオメルの目にも魅力があるものとして映った。
 美しい妻に義理の弟。幸せそうな妹。それらを思うと、エオメルは、自分がとんでもない幸福の中にいるように思えて、また涙ぐんだ。

 かねてより昵懇の仲であるゴンドール王エレスサールから、ゴンドールにかくなる習わしなど存在しないという真実を告げられるまでの、ほんの短い幸せだった。

//終わり

172170-171:2004/06/21(月) 19:30
訂正。

>170 二段落目。
誤>エオメルは、義弟となったファラミアの叔父、ドル・アムロス大公イムラヒル大公イムラヒルの息女〜
正>エオメルは、義弟となったファラミアの叔父、ドル・アムロス大公イムラヒルの息女〜

以上です。

173萌えの下なる名無しさん:2004/06/21(月) 20:17
>170-171女神様
かわいい兄貴と大将、すごく素敵なお話でした。
ほのぼのでしみじみ。彼らはこれからきっといい「家族」に
なるんだなあと暖かい気持ちに。ありがとうございました。

174萌えの下なる名無しさん:2004/06/21(月) 20:49
>170-171様
兄貴、なんか可愛いなあ。大将、あんたやっぱりヘンな人だw
両国の友好と発展を象徴するかのようなお話、ありがとうございました。

>164-169様
続きが読めて嬉しかったです。しかもまだ続く!?
いつも、「ひー、この先どうなっちゃうの」とドキドキしながら読ませて
頂いていますが、ぎりぎりまで高まる緊張がどう決着するか、見届けたいですね。







いろいろたいへんな思いもされたかと思いますが、あなたのSSを待っている住人も
いることをお忘れなく。
私も、前スレから何回かSSを投下させて頂いておりますが、普段は一住人として、
それこそ多彩な萌えを楽しんでいます。セオファラも、今までなかった視点での
展開に心惹かれます。ぜひ完結までつきあわせて頂きたいですね。

175萌えの下なる名無しさん:2004/06/22(火) 22:13
大将の多彩な萌え万歳。
そこで、大将萌え選手権@ゴンドール。※くだらないネタが許せる人向け。

大将に多彩に萌えてる者の筆頭は、言わずと知れたベ(ry。
ゴンドールに、もし大将ファンクラブがあったら、この人は絶対入ってる。
会員ナンバーは当然一桁台。
当然グッズコレクター。
これまでレアアイテムゲットのために、オークションに身代傾くほどつぎ込んで、
妻にしかられたのも、一度や二度ではきかない。でもオークションは止められない。
地下でこっそり行われてるオークションで、ベ(ryがいつも競り負けてしまう
宿命のライバルの正体は、多分兄上(知らない方が幸せなこともある)。

業務日誌に続いて、大将がどうしたばかりの秘密日記を書くのが、ベ(ryの日課。
立場上、隠れ大将萌えなせいで善良そうなホビットには反動から、つい次々と本音が。
大将萌えこそ我が人生。

しかし、ベ(ryは、兄上の恐ろしさと特権を知らない…。

176萌えの下なる名無しさん:2004/06/22(火) 23:16
大将は大将で兄上ファンクラブの会長とかしてそうですね(w
名誉会長は父君か?
そう言えば以前、ゴンドールの財政の為にご兄弟のブロマイドを売り出す父君
・・・とかいうネタがありませんでしたか?しかし、兄と弟がお互いの分を
買い占めにかかり、僅かに残った弟君の分はベ(ryがかき集めてしまった為、
結局財源確保にはならなかったり。

ベレファラもいろいろ妄想はしているのですが、どうにもへぼんな設定しか
思いつかず・・・報われているんだかいないんだか、または報われなくても
幸せ、なのか、そのポジションの微妙さが好きです(w
出会ったばかりのホビットも、息子までも、自分の萌えに洗脳しようという
はた迷惑なヤツでもあるな・・・W

177萌えの下なる名無しさん:2004/06/23(水) 21:16
>ゴンドールの財政の為にご兄弟のブロマイドを売り出す父君
「ブロマイド」で検索したら、前スレ70番でネタが出てました。
それのことかな?

コピペ「イオナズンのガイドライン」
ネタ一部いただきました。>176様



面接官「特技は大将萌えとありますが?」
ベ(ry 「はい。大将萌えです。」
面接官「大将萌えとは何のことですか?」
ベ(ry 「執政家のご次男を慕うことです。」
面接官「え、次男?」
ベ(ry 「はい。次男です。実の父親から、長男の代わりにお前が死ねば良かったとまで言われます。」
面接官「・・・で、その大将萌えはミナス・ティリスにおいて働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」
ベ(ry 「はい。執政殿の命令に反逆して大将のお命を死守します。」
面接官「いや、ミナス・ティリスには大将の命を狙うような輩はいません。それに命令に反逆するのは犯罪ですよね。」
ベ(ry 「でも、近衛兵にも勝てますよ。」
面接官「いや、勝つとかそういう問題じゃなくてですね・・・」
ベ(ry 「ペレグリン君や自分の息子を、大将萌えに洗脳出来るんですよ。」
面接官「ふざけないでください。それにペレグリン君って何ですか。だいたい・・・」
ベ(ry 「ホビットです。小さい人とも言われてます。ペレグリン君というのは・・・」
面接官「聞いてません。帰って下さい。」
ベ(ry 「あれあれ?怒らせていいんですか?語りますよ。大将萌え。」
面接官「いいですよ。語って下さい。大将萌えとやらを。それで満足したら帰って下さい。」
ベ(ry 「運がよかったな。今日は語り尽くすには時間が足りないみたいだ。」
面接官「帰れよ。」



キングゲイナーのがはまりそう。

178萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 12:12
そうきたか(w
キングゲイナーコピペも好きなんだけど、そっち方面の才能がなく、自分じゃ書けない・・・
職人さんカモーンですだ。

179萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 17:44
自分も無理っす。
まじで言うとSS女神様のご光臨もいただきたい。

元ネタ ゲイナー告白
シャア専用板 続・コピペ参上?キングゲイナー ヨリ
繋ぎにドゾ-(AA略




そうだ!
どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!
職人さん!
光臨キボンだァー! 職人さん! 待望しているんだ! 職人さんー!
レスをする前から
光臨キボンだったんだ!
光臨キボンなんてもんじゃない!
職人さんの技をもっと知りたいんだ!
職人さんの技はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!
職人さんを賞賛したいんだァ!
勢い余って新スレに移行しちゃうくらい賞賛したーい!
心の声は
心の叫びでかき消してやる! 職人さんッ! キボンだ!
職人さんーーーっ! 待望しているんだよ!
ぼくのこの心のうちの叫びを
きいてくれー! 職人さーん!
萌え対象が同じになってから、職人さんを知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ!
待望ってこと! 光臨キボンだってこと! スレ住人に振り向いて!
職人さんがスレ住人に振り向いてくれれば、ぼくはこんなに苦しまなくってすむんです。
優しい君なら、スレ住人の心のうちを知ってくれて、ぼくに応えてくれるでしょう
ぼくは君をスレ住人のものにしたいんだ! その卓越した技と卓越したすべてを!
誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!
投下を躊躇わす輩がいるなら、今すぐ出てこい! 相手になってやる!
でも職人さんがぼくのキボンに応えてくれれば戦いません
ぼくは職人さんを讃えるだけです! 君の技の奥底にまで礼賛をします!
力一杯の礼賛をどこにもここにもしてみせます!
礼賛だけじゃない! 心から君に尽くします! それが僕の喜びなんだから
喜びを分かち合えるのなら、もっとふかい礼賛を、どこまでも、どこまでも、させてもらいます!
職人さん! 君がスレの中にベ(ry/大将しるけたっぷりSSを投下しろというのなら、やってもみせる!


ついでに原文。

そうだ!
どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!
サラ!
好きだァー! サラ! 愛しているんだ! サラァー!
エクソダスをする前から
好きだったんだ!
好きなんてもんじゃない!
サラの事はもっと知りたいんだ!
サラの事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!
サラを抱き締めたいんだァ!
潰しちゃうくらい抱き締めたーい!
心の声は
心の叫びでかき消してやる! サラッ! 好きだ!
サラーーーっ! 愛しているんだよ!
ぼくのこの心のうちの叫びを
きいてくれー! サラさーん!
クラスが同じになってから、サラを知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ!
愛してるってこと! 好きだってこと! ぼくに振り向いて!
サラが僕に振り向いてくれれば、ぼくはこんなに苦しまなくってすむんです。
優しい君なら、ぼくの心のうちを知ってくれて、ぼくに応えてくれるでしょう
ぼくは君をぼくのものにしたいんだ! その美しい心と美しいすべてを!
誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!
恋敵がいるなら、今すぐ出てこい! 相手になってやる!
でもサラさんがぼくの愛に応えてくれれば戦いません
ぼくはサラを抱きしめるだけです! 君の心の奥底にまでキスをします!
力一杯のキスをどこにもここにもしてみせます!
キスだけじゃない! 心から君に尽くします! それが僕の喜びなんだから
喜びを分かち合えるのなら、もっとふかいキスを、どこまでも、どこまでも、させてもらいます!
サラ! 君がツンドラの中に素っ裸で出ろというのなら、やってもみせる!

180萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 17:56
リクエストのものではなくて申し訳ないです。
「ユッキーはそれから2年後に死んだ。」ネタ、大将バージョンで。

できれば映画で接触のあるメンツだけで、と思ったのですが、
ベレゴンド親子だけ入れてしまいましたw
人数をちょびっと削ってあるのと、内容いろいろウソっぱちですが、笑って許して・・・

そしてゲイナーネタ!私も激しくきぼん!







父上と兄上が亡くなってからもう随分経ちました。
あの戦争が終わり、王が還ってきた今では、思い出す回数がほんの少しだけ
減ったかもしれません。
ゴンドールにいないみなさんには、戴冠式以来なかなか会えていません。
だから最後にお会いしたのは、もう何年前なのでしょう。
ベレゴンドはその忠誠を買われて白の部隊隊長です。
早くも鬼隊長とか呼ばれて、みんなに畏れられています。
べアギルもついに入隊してしまいました。理想の隊員像は父親だそうです。
ピピンはホビット庄に帰郷後パパになったそうで、しかも子供に私の名前をつけたらしく、
オメデトウというかなんというか・・・気恥ずかしいです。
エオウィンは現在イシリアンに住んでいます。私がミナス・ティリスで執務中は
絶賛文通中、週末婚というものになってしまいました。
五通に一通はすごい手料理付の返事が返ってくる、可愛い奥さんです。
ミスランディアは西へ渡ったらしいです。西の国でまた花火を上げているのでしょうか。
高齢に見えますがあの方達の年齢の感覚はわからないので、ぜひもう一旗揚げてほしいです。
フロドも西の国らしいですね。もう指輪をころがすこともないのでしょう。
サムはホビット庄長になったのですが、時々手紙で庭の手入れについて教えてくれる
親切なホビットです。
そういえばあの時にいたもう一人・・・ゴラムってどうなったんでしょうね。

そして私は今・・・
いろいろあったのですが、まだ執政をやっています。
王はまたオーク狩りと言って外に出てしまいました。
お強いのはわかっていますが、ちょっと心配です。
私自身は、あれから戦闘には参加していません。
・・・しかし兄上、そして、父上。私は最近思うんです。
できることならあの日のオスギリアスに戻って、貴方達とお酒でも飲みたいって・・・

181萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 19:22
"Remember today, little brother."

・゚・(つД`)・゚・

182萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 20:05
>180
笑いながら読んでいたら、最後にきて・・・
SEEの特典にはいっている、執政ご一家&ゴンドリアンの記念写真は、わが心の
アルバムにおいても宝物ですよ。

話はそれるけど、他の所で書けないのでここで、というネタ。
どこで見たかは忘れましたが、オスギリアスでの兄上演説後、兵士たちの間を
すり抜けるように大将が駆け寄って行く大将の姿が*ヲトメ*だった・・・と
いうので見直したら、本当でした(w
おまけに、海外でもそれがツボだった人がいるのか、某所でそこのカットが
キャプられてるし・・・
(以下、微妙に中の人話なので下げます)




総じてあの追加エピソードの、中の人の演技って・・・元来、天然な芝居など
決してしない演技派だけに、兄上の前でだけヲトメなファラたん、というのが
彼の解釈なのか!?と思うと、萌えていいんだかいけないんだか。

183182:2004/06/24(木) 23:15
ごめん。後半に書いたようなことはレスを求めている訳じゃないのだ。
ただこう、胸にたまっていたものを吐き出したかっただけなのだ。
(ここ以外に持っていきようのない話題だしw)
そんな訳で、引き続き職人さん&女神様降臨キボンヌ。

184萌えの下なる名無しさん:2004/06/25(金) 00:48
ユッキーネタ>180様GJ!





コピペ 元ネタ "ところでめぐみって萌えないか?"

キングゲイナーはどなたか頼みます。

原作ネタバレ映画混合で語り手は兄上。元ネタのノリの兄上が許せる人だけ。













ところでゴンドールのファラミア大将というのは萌えぬか?
萌えぬか?

あれは、善良なホビットに誘導尋問を仕掛けるのですぞ? 黙っておれば、可愛い髭面の弟なのであるが…
夜な夜な辺境の警備をしておるし。美味しい扱いは父上からいただけぬし…… 涙目の上目遣いを振りまくし。口も上手であるし・・・

しかし 萌えるのですぞッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
うおおぽおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
誰よりも!!ゴンドール内の誰よりもッ!!中つ国の誰よりも萌えるッッッッッ!!!!!!
萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え!!!!!

ファラミアの頭を抱えてその髪の毛のにおいを嗅ぎますぞッ!!!!!
ファラミアの簡素な野伏衣装をめくりあげて足を擦りあげてやりますぞッ!!!!!
ファラミアのその帷子を静かに解いて野戦服の上から胸を撫で付けてもいますぞッ!!!!
ファラミアは寝間着は何を使っておりましたかな!?絹のローブか不正直者には見えぬという不思議な衣服であったか?不思議な衣服一択!!
ファラミアは石鹸は何を使っておりましたかな?ドル・アムロスの海草石鹸か?東夷製は不許可!!
ファラミアは下着はちゃんと高価にしてケバ立たない逸品を使っているのですぞ600年以上も風雨に晒された得体の知れぬ腰布は不許可!!
ファラミアは銀器の他では葡萄酒は飲みませぬぞ!生水を直に飲みませぬぞ!死者の沼地に生息する魚はつままぬ!!
ファラミアは作戦前の食事でさえ食前の黙想は欠かしませぬ!不調法な思いをしたホビットが弁明すれば、主人への礼はわれらとてしますと、追い打ちをかけますぞ!!
バター付きパンは両手ではむはむ食すのですぞ!その時上目使いでこちらを見ますぞっ!!そして恥ずかしそうに微笑みますぞッ!
当然じゅうの肉なぞ口にしませぬ!!塩漬け肉か干した果実!!
もしくは上等の赤チーズですぞ!そしてファラミアと親密なキスを交わすと上等の赤チーズの味が交換されるのですなチクショー!!

おさらば

185萌えの下なる名無しさん:2004/06/27(日) 02:05
ちょっと前、リオソの兄上スレで、弟は盾乙女と結婚したけど兄上はどんな
女性を妻に選ぶのか、という話題が出たことがあって、その一連のレスを
読みながら、「要するに兄は弟みたいなタイプ、弟は兄に似た感じの人を
妻に選ぶ(選んだ)のですね?そうなのですね!?」と書き込みたくなる心を
必死で抑えておりました・・・

186萌えの下なる名無しさん:2004/06/27(日) 23:31
>>184
我慢してたけど最後のおさらばで吹いてしまった

187萌えの下なる名無しさん:2004/06/28(月) 00:40
>184
通りすがりの者ですが
不調法な思いをしたうえ追い打ちをかけられたホビットのファンとして
吹きながら肯いてしまいますた。

188<セオドレド/ファラミア> 1/4:2004/06/28(月) 13:37
流れ遮ります。4レス分予定。
苦手な方は護身推奨。
嗜好を除く要素についてのご意見は適宜。


<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/4

>169の続き 未完結 以下続く。

【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169
【私信】>164-169へのレスをありがとうございました。












 このような事態にあっても、賢明であるのだ。
 そう思うと、セオドレドは、誰が一体そうさせているのかも忘れて、涙の一つもこぼしたいような気分に襲われた。
 他人の助けなど必要無しに、ファラミアは自分の成すべき事を成す事が確信されたので、一切の手出しは無用であるどころか、障害にしかならないだろうと、両腕は自分の肩幅で背中側について、ファラミアが受けいれなければならない部分だけを別に、セオドレドは楽な姿勢をとった。
 ファラミアは間違いなく知っているのだ。行為は、自身の意志で、自身の手により成された事であるのだと、誰の目にも明らかに、というよりはむしろ自身が得心行く形を作らなければならないということを。
 ならば、自分に出来る事など、せいぜいが、ファラミアにとって都合良くなるよう、大人しく身体を差し出しているくらいのものだ。そして、ファラミアは、彼自身が欲しているものを自分で見出し、その所在と在り方を自ら知るだろう。
 なりゆきは決して悪くはない。彼も自分も、自らの欲しているものを満たし、望むものを得るのだ。まれに見る双方共にお得な取引ではないか、これは。
 それを取引だと信じているのが、ファラミアだけであり、そう信じさせるようにし向けたのが、他ならぬ自分だとしても。
 ファラミアの片手が、セオドレドの肩を掴んで彼自身の身体の安定の助けにしていた。余りにも僅かなので、触れ合っていなければ分からないだろうくらいに、それが小刻みに震えているのが知れた。彼の別の手は、自分が受容すべきセオドレドの部分を、間違えないよう保持するために使われていた。
 事ここに至って、肩を緊張させたのは、セオドレドの方だった。
 自分のものよりも高い位置にある顔を、とても見開く気にはなれない目を細くして仰ぐと、間近に見えたそれは、見間違いでも、愚かな願望が見せる幻でもなく、薄く、笑みを浮かべていた。どんな表情を返して良いのか決めかねているところに、ファラミアの顔が近づけられ、唇が額にやんわりと触れてきた。セオドレドは、つまり、和めば良いのだと得心して、腕に体重を預けるのを片方だけ放棄すると、その手でファラミアの頬をまさぐった。一瞬だけ、くすぐったがる子供のような表情を浮かべたファラミアは、次に気付いたときにはもう、その残滓さえ窺えないくらい、セオドレドが見たはずの心地良いもの全てを、顔から消し去っていた。
 セオドレドの下肢に跨った格好で浮かされていたファラミアの腰が、沈んだ。触れ合わされるべき部分の、体温が交換される形になると、頭の上に聞こえる呼吸が意識してだろう、深くなった。やり方さえ誤らなければ、触れ合った異物の行き場は、それがどんなにあり得ない事としか思えなかろうが、一つしかなかった。
 声も出なかった。
 蝋燭の薄明かりだけが暖かみを醸すほの暗い部屋は、人の呼吸だけが支配しているようだった。
 行為の行方を逃すも逃さないも、ファラミアが自身で選択するさじ加減一つで決まるのだと、ファラミアも理解しているに違いない。そして、ファラミアは捕らえる方に、確実に進んだ。決して望んでの事ではないだろうが、セオドレドの目に映ったファラミアは、煩悶をその表情に伴わせていた。もっとも困難な部分が窮屈そうに身の内に飲み込まれたところで、息を入れようというのか静止したファラミアの背に、セオドレドは片腕だけを回した。必要な体勢を維持しているだけでやっとだろう体を抱き締める代わりに、ファラミアが自らの体重を支え、落とし方を加減しているのに使用している膝を、もう片手で容赦なく払った。姿勢を崩させないために背は支えてやったが、制御を失った体は、自然の摂理に逆らえる筈もなく、下にしていたセオドレドの体に触れるまで、止まらなかった。
 ファラミアの口から、身も世もないような叫びが上がった。
「うあ…」
 高い声が途切れた後も、どのようにして落ち着けば良いのかを探しあぐねているように、ファラミアは声を絞り出し続けていた。

189<セオドレド/ファラミア> 2/4:2004/06/28(月) 13:39
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 2/4













 他人の一部をセオドレドが望む以上の形で、身の内側にすっかり飲み込んだ愛しいものの背を押して、体をセオドレドは自分の胸に倒させた。他人の出方を構える場合ではないせいか、要求されたまま簡単に身体を預け、ファラミアは僅かの身じろぎも自分に禁止しているかに見えるほど、じっとして動かなかった。それはそうだろう。と、セオドレドも思う。ファラミアは、痛みには慣れているとは言ったが、受けいれたその場所には、生身をヤスリで削がれる程度の苦痛は、当然受けているに違いないので。
 知りながらも、折角触れ合った腰を勝手に浮かされないように、ファラミアの膝の裏に手を入れて、片方ずつ足を真っ直ぐにさせた。
 ついおとといまでは姿を見ることさえ叶わなかったファラミアが、これ以上の身体的接触は望みようもないほど近くにいる。
 それが、全てであるようにセオドレドは思う。一方で、身体は苦痛の一歩手前に、向き合っているのも事実で、行きすぎは何にせよ、本来はそうではないものでさえ、好ましくないものへとその性質を変化させてしまうのだ。
 生身の他人を受けいれた場所を自分の意志で弛緩させる術を、無理もない事だがファラミアは持ち合わせてなかったので、行為に慣れない体は、ファラミアにとっても、苦痛を増すばかりだというのに、加減をしらずセオドレドの身を締め上げてきていた。その証左と言って良いのか、さすがに声こそは上げなかったが、自分の腰の上に体重の全てを預けているファラミアの息は、自然荒くなっていた。
 ファラミアに苦痛を味わわせたいわけではなかった。だから、ファラミアが見せている姿は、どこかセオドレドの胸の内まで苦しくさせるものだった。
 それなのに、否定しようのない恍惚感は、抗いがたくセオドレドを突き上げていた。それを振り捨てるように、ファラミアの顔を覗くと、彼自身が向かい合っている感覚を持て余しているのだろう事が、ファラミアの表情からはありありと見て取れた。彼は、形の良い眉を寄せ、うつむき加減に息が乱れるに任せていた。
 セオドレドは手を伸ばし、呼吸の妨げにならないよう、ファラミアの耳を隠している髪に触れた。
 汗のために、それはしっとりとして指にも、掌にも張り付いてきた。濡れているのは、自分の手かも知れないが、どちらでも良かった。その内側では各々が勝手な物に目を向けているにしても、事実として、今、自分とファラミアは同じ物を分かち合っているのだ。そう思うと、身体には何も原因が無いのに、目眩さえしそうだった。それは、遠い昔に初めてファラミアを見たときの感覚に、少しだけ似ていた。
「んん、ん…」
 意味をなさないうめき声と共に、多分、手持ちぶさただからだろう。ファラミアの両腕がセオドレドの背に回されてきた。
 正直で無防備で、一見頼りなさげに思える姿には、これはどんなに、か弱く保護が必要な生き物なのだろうと、つい惑わされそうになりさえした。だが、セオドレドは幻惑を真実であるかのように自分に思いこませようとするほどには、お人好しにはなれなかった。それでも、ファラミアの体が寄り添わされると、自分自身、それが何であるのか決して理解してるとは言い難い自分の心の内にあるどこか深い場所が、充足を訴えてくるのが明瞭に知れた。
 今感じるそれと、同時に、ファラミアの内側で脈打つ欲惚けたものの存在も認めつつ、さて、身体の充足とそれと、どちらにより重きをおくべきなのだろうかと思いかけ、やめた。まるで別の部分に属しているものが、直接の比較の対象になりうるわけがなかった。自分とボロミアと、どちらのあり方が、より幸福であるのかを考えるのが無意味であるのと同様、意味をなさない比較でしかない。

190<セオドレド/ファラミア> 3/4:2004/06/28(月) 13:40
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 3/4















 ファラミアの呼吸が割合と落ち着いてきたのを見計らい、それは、結び合わせる事が出来るものであるということすら、忘れてしまったかのようなファラミアの唇に口づけた。柔らかく唇をはむ事で応えてくるファラミアに、セオドレドは少しだけ安堵した。
 セオドレドの思うところによれば、必要なのは、ファラミアの体を僅かでも慣らすだけの時間だった。
 だから、セオドレドが掛けた言葉に深い意味は、本来は無かった。
「好きなもののお話を、致しましょうか」
 余裕が無いなりに訝しげな顔が、セオドレドに向けられてきた。
「あれは…終わりでは」
 意識と体を保持しているだけで精一杯だろうに、唐突な問いかけにも答えを返さないではいられない律儀さは、誰に教わったのだろうかと思わされる。どこまでも好ましく、同時に、何故かある部分では痛々しい。
 それでいて、ファラミアは、自分の気を逸らすためだけに、自分の頭を預けている他人の肩口に、緩く額を擦りつけてくる。場合によっては、行為に伴うただの儀礼、あるいは小賢しい演技である以上の感想を得られるものではないそれも、今、行為を見せている者の手にかかった途端、自分が何故ここにあるのかという、最も頭から追い出してはならない事さえをも、簡単にはぎ取っていってしまいかねない、魔法か何かのように思えて仕方がなかった。それは、ファラミアが負うべき責ではなく、だからこそ、セオドレドにとっては質が悪いものとして作用するのだ。その程度を自覚することは、まだ、セオドレドにも容易だった。
「はじめに挙げたのは私、途切れた時も私でした。ということはです、」
 皆まで言わないうちに、ファラミアの顔が緩慢にセオドレドの方に向けられた。
「そう。ファラミア殿の番が一つ分、残っております」
 ファラミアの口が何か言葉を紡ぐかのように開かれかけたが、すぐに、忙しない息の一つと共に失せたのに、がっかりしなかったといえば、嘘になる。
「ファラミア殿は、口を休めて、身体を使うのをご希望ですか」
 言わんとすることが理解されたのだろう。ファラミアは大儀そうに首を小さく何度か振った。予想はしていた。だから構わないはずなのに、セオドレドは急いている自分に気付いた。
「それで結構です」
 言葉を掛けながら、セオドレドがファラミアの腰の後ろに手を回し、尾てい骨に押し当てた指を、腰の終わりまで撫で上げると、ファラミアの体がセオドレドの腰の上で、跳ねた。体に、それまでよりも一層強く、背に食い込むかと思わされるほどファラミアから腕を巻き付けられて、セオドレドはようやく自分が成すべき事を自分の身に、取り戻せたかのような気になれた。
 顔を肩に伏せたファラミアの呼吸は、それまでになく荒く、肌に熱かった。
 観念したのか、ほんの呟くほどの声が、耳をくすぐってきたけれども、意味を持った言語としては聞こえてこなかった。
「何と、おっしゃったのです」
「何…も、と」
「あれらの他、何も?」
 ファラミアは、何も無いと言った。ファラミアの口から漏らされる掠れた音から、なんとか意味が取れたそれは、セオドレドが考えるところによれば、少しだけ本当で、少しだけ嘘だった。

191<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/4:2004/06/28(月) 13:42
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/4 【今回ラスト】














 ファラミアは適当な何かを口にすることもできただろうが、そうはしなかった。だから、いい加減な答えは決して返さないという意味では、その言葉は本当だった。しかし、生を受けて二十年近くになろうかという人間が好ましく思っている事物が、片手に足りないほど挙げたそれで全て、などという事が有り得るだろうか。ファラミアは、そんな言葉を他人に信じてもらえるなどと、本気で考えているのだろうか。だから、皆無だというファラミアの言葉には、故意か否かは知らないが、間違いなく少しの嘘が混入されている。
 ファラミアが、答えるべきものを持たないのではない。口にするのを憚っているのか、あるいは自分の内でそれを、存在しないことにしているのだ。
 口に出来ない何かを、ファラミアは胸の内に、自分自身それを抑圧しながら抱え込んでいる。恐らく、好ましく思っているものであるにも関わらず、だ。要は、それは人目に晒せないほど大切なものだ。つまり、ファラミアが見せたのは、彼自身の自己欺瞞である。そう考えるとしっくりきた。
 とはいえ、ファラミアが口にしないそのものが、セオドレドにしてみればあまりにも見え透いているのに、他人である自分にさえ明らかなものを、自分自身からも隠しおおそうとしている事こそが、セオドレドにはあまり愉快ではなかった。
 路傍の花の一つ一つにいちいち注目し、感嘆する者はそうはいない。しかし、同じものが一輪だけ仰々しい庭園の奥深くに人目を憚るようにひっそりと大切そうに置かれていたならば、どうだろう。どんなに価値のある植物であるのかと、多くの者が思うのではないか。つまり、大切に仕舞い込み、他人の目から遠ざけようとすればするほど、隠された物は、隠している者にとってどんなに重大であるのかが、露見されるのだ。
 そんなことにすら、ファラミアは本当に気付いてはいないのだろうか。
 それにしても、もし、その諸々が真実ならばあまりの扱いではないか。と、セオドレドは思う。望まない言葉を口にする事からは逃れられないならば、何でも良い、僅かでも好ましい何かの名前を挙げるという類の事で、ファラミア自身は苦しい言葉から逃れられる上に、目の前にいる人間の安心が買えるのは明々白々だというのに、ファラミアはセオドレドの心情を安らがせるためになるそれさえ、与えようともしないのだ。それとも、その可能性すらも頭に上らないのだろうか。

 賢明で知に貪欲で、内面を裏切らないうつくしい姿形を持ち、そして、何も知らないファラミア。

 セオドレドが望まれたいと渇望を抱く対象は、紛れもないそのファラミアだった。
 さて、一体、自分は絶望すれば良いのだろうか。
 自問の答えは、考えるまでもなく否だった。今は今、これからはこれからだ。
 分からないなら、確かめれば良い。欲しければ手を伸ばせばいい。手をつかねていては何も変わらない。許されるか否かは、自分が決めることではない。けれども、選択の結末が、どのような形で着地するにしても、それは自分の行為によるものなのだ。誰一人として例外などない。ファラミアも、自分も。
 ならば、成すべき事は一つしかない。ファラミアが既にそうしたように、選択を成すことだ。
 セオドレドは、自分の体の両脇にそれぞれ伸ばされたファラミアの足の、両膝に腕を入れ抱えると、触れ合った場所が少しも離れないよう注意を払いつつ、否を言わせる暇を与えず、自分よりも細いファラミアの体に、じわりと体重を押しつけた。

 【続く】

192萌えの下なる名無しさん:2004/06/29(火) 01:51
>185
言われてみれば確かに(w
そしてこんな風景を考えました。
ネタスレの方が相応しいような話なのでちょっと下げます。


<<MHK(ミドルアース放送協会)の番組・「中つ国・この人3017」でのひとコマ>>









―― ここで、お二人に理想の女性像を伺ってみましょうか。(一同微妙な笑い)
   初めにボロミアさん、貴方の理想は?

B「そうだな、わたくしの場合、出過ぎず己の分を弁えた者が良い。
  といって、自分の意見なく従う者では駄目だ。芯は強く持たなくてはな。

―― なるほど、おしとやかだけれどもしっかりとした女性ですか。ではファラミアさんは?

F「私は兄とは違って(二人顔を見合わせて笑い)、活動的な人が好きです。
  傍にいて、活力を与えてもらえるような。私自身が屋内に篭りがちなので・・・

B「無理に引っ張り出して日に当ててやれねばならんのだ。(笑い)

F「(笑い)そう。それくらい元気な方がいいですね。

――ずいぶん好みが分かれましたね。では次に、容姿の好みを聞いてみましょう。

B「容姿?(しばらくの間)・・・そうだな、(ファラミアを見てから)腰の細い方が良い。(笑い)

――細身が好みですか。では小柄な人の方が?

B「(再びファラミアを見て)いや、身の丈にはこだわらん。さすがにトロルほどあると困るが。

――ははは。(どんな女だYO) ファラミアさんは?

F「(ボロミアをじっと見て) 肉感的な方が好み、ですね。

――おっと、意外ですね。

F「そうでしょうか。(笑い)ああ、でもウルク=ハイほどになるとちょっと勘弁していただきたい。

――あはははは。(だからどんな女だYO!)あとそれから、顔立ちなどはどうですか?

(二人、顔を見合わせる)

B「(ファラミアを見ながら)目の色は青。髪はふわふわとした巻き毛で、色はそうだな、
  わたくしと同じくらい。高貴な血を色濃く表した顔立ちをしていて、

F「(ボロミアを見ながら)緩く巻いた癖毛を肩の辺りまで。瞳は緑、日に透かすと綺麗な
  金に変わる茶色の髪をしている人で、

B/F「(同時に)鼻は高めで。

―― (なんでこんな具体的なんだろう・・・)あ、ありがとうございました。
 えーでは次のコーナーですが〜・・・


(以下割愛)

193萌えの下なる名無しさん:2004/06/29(火) 21:58
>188-191様
そろそろおいで下さるかと思っておりましたぞ(w
緊張感が途切れぬ展開に、そしてファラミアの(本人あまり自覚してなさそうな)
痛々しさにハラハラです。まだ続くって、そんな・・・でも、これだけ心理描写を
書き込んでいらしたら当然ですね。おとなしく次を待ちます。

>192様
公共の電波(ってどこから!?)を使って何を語っているのか、この兄弟は!
これじゃ父上も引き離したくなる訳だ、と同情申し上げ・・・いや、そんなことで
同情されてもお困りでしょうな。
実は>185を書いたのは私なのですが、つまらぬネタをふくらませて下さって、
ありがとうございました。

194萌えの下なる名無しさん:2004/06/30(水) 11:19
理想の女性談義にかこつけて、公衆の面前で
お互いを自慢し合ってるのですねこの兄弟は。

二つ返事で出演を承諾した兄上(※目立つの大好き)に
渋々同調してみたものの、よく考えてみれば、兄上と一緒に
仕事が出来る上に、どさくさに紛れて兄上語り(別名のろけ)を
する絶好のチャンスではないかと思い直してノリノリな大将。
ではありますまいか。

仲良し兄弟に、父上ジェラシー(※実は混ざりたい)。






コピペ。
元ネタ「アンパンマンにインタビューしました」
ファラミアver.











執政家次男にインタビューしました。

Q1「あなたの名前はなんですか?」
A1「ファラミア二世」

Q2「お仕事は?」
A2「主に名を言うもはばかるアレに困ってる中つ国の助けになる事」

Q3「休息がもらえない時、痛くはないのですか?」
A3「正直、めちゃくちゃ痛い。一度泣いた」

Q4「嫌いな人は誰ですか?」
A4「名を言うにはばかる者」

Q5「本当ですか?」
A5「はい」

Q6「本当の事を言って下さい」
A6「父上」

Q7「それはどうしてですか?」
A7「自軍が負けた次の日、よくわたしの野伏部隊の中に傷病兵を混ぜるから」

Q8「それはどうしてですか?」
A8「たぶん嫌がらせ」

Q9「ペレグリンさんをどう思いますか?」
A9「声は可愛い」

Q10「愛妻、エオウィンをどう思いますか?」
A10「どっちかというと、小さい人の方の料理の腕前を、妻のにして欲しかった」

Q11「ファラミア一世という偽物がいますが」
A11「意味わからん」

Q12「一番嫌いな味方は?」
A12「ベレゴンド」

Q13「それはどうしてですか?」
A13「いや・・・誰でもあれはヒク」

Q14「マドリルに一言」
A14「お前だけ原作にないぞ」

Q15「いやな思いでとかありますか?」
A15「前に一度、命からがらで退却に成功したとき、戦況報告やら作戦会議やら次なる任務やらのために、ほんのちょっとしか休んでないのに、部屋に呼ばれた」

Q16「誰にですか?」
A16「父上」

Q17「それはどうしてですか?」
A17「たぶん嫌がらせ」

Q18「駄目になった部下をよくどこかに放逐しますが、あれはその後どうなるんですか?」
A18「ただの野伏になる」

Q19「では野営地などはどこにあるのですか?」
A19「君達の行かないあたりだけどひみつ」

Q20「でも、その元部下が喋ってたという情報もありますが」
A20「えっ!!??」

195192:2004/07/01(木) 01:28
>193-194
きっとこの前後で、お二人とも互いのことをこれでもかと公共の電波に乗せて
中つ国全土に発信しておられることでしょう(w
聞いただけでオナカイパーイになりそうだ。

そしてMHKネタを引っ張って恐縮ですが(w
話があったとき、極めて乗り気な兄上が大将を強引に引っ張り出すのではないかと予想。

<<以下、MHK出演決定時の光景>>






B「ファラミア、MHKから出演依頼がきていたので、承諾しておいたぞ。
F「そうですか、楽しんできてくださいね。
B「なにを他人事のように言っている?もちろんお前も行くのだ。
F「��(゚д゚) そのような話は初耳ですが!
B「そうだったか?では今聞いたので問題なかろう。「中つ国・この人3017」という番組だ。知っているな?
F「(´д`;)
 ・・・?たしかその番組、ゲスト一名が原則では?
B「そうか、では今回が特別なのだな(´∀`)
F「・・・なにかなされましたか、兄上。
B「人聞きの悪い。局の上層部に確認を取っただけだ。ミナス・ティリスの双翼たるゴンドールの大将を、
 よもや一人しか呼ばぬなどという愚かな事はなさらぬだろうな、と。
 彼らは快く承知してくれたぞ(´∀`)アオイカオシテタケドナー
F「・・・貴方という人は。
B「いいではないか、たまにはこのような仕事であっても。・・・それとも、わたくしと一緒では不満か?(´・ω・`)
F「不満など!嬉しいに決まっているではありませんか!
B「では共に出てくれるな?
F「もちろんです。
B「(・∀・)ではこの依頼受諾書にサインをしておくように。
F「えっ(・д・;)既に承諾なされたという話では・・・
B「あちらにはな。お前からの承諾は今もらうところだ。(´∀`)
F「・・・(・ω・;)(謀られた?)



そして物陰からパパン。

壁 |Д゚)
D「・・・(何故執政家3人で出演するよう掛け合わんのだ(゚Д゚#)ゴルァ!)
D「・・・・・・(゚Д゚)
D「(´・ω・`)

  ● λ..........................
パラソティア


--------------------
おそまつ。

196萌えの下なる名無しさん:2004/07/02(金) 01:51
最後にワロタ。そうか、それでデネ侯やさぐれてしまったか...

197萌えの下なる名無しさん:2004/07/02(金) 21:16
小ネタいきます。
MHK出演叶わなかったさびしんぼう父上と、
某所での、兄上が生きてたらエオインシチューを平らげてたにちがいないというお話を
拝見して思い付いたものです。
ご発言者の皆様の意図をねじ曲げてるかも知れません。
他意はありませんのでご容赦を。




<ファラミア/ボロミア、ファラミア/父上/親子群像>









 ローハンに出向いていたボロミアが、ミナス・ティリスに帰投してきた。
 出迎えたファラミアにボロミアは、挨拶の抱擁もそこそこに、一つの包みを手渡した。
「これは?」
「ローハンの土産だ」
「それは、ありがとうございます。しかし、お珍しい事もあるものですな」
 物見遊山の場合はともかく、公務に際してボロミアが何かを持ち帰る事などほとんどなかったので、ファラミアはボロミアの行動を嬉しく思う一方、不思議でもあった。
「今回のは特別なのだ。何せ、ローハンの姫が手ずからこしらえたという、焼き菓子であるからな」
「なるほど。ならば、わたしは兄上と共にいただきとうございますが」
「…わたしは、もうかの国で十分堪能してきたのでな。だからファラミア、それは全てそなたのものとしてよい」
「分かりました。有り難く頂戴致します」
 ボロミアは、旅の疲れが残っているとかで、早々にファラミアの前から姿を消した。

 さて、デネソールは一部始終を見ていた。
 そして、ファラミアはデネソールが見ていたことを知っていた。
 ファラミアは素知らぬ顔で父親に近づくと、ボロミアから貰った包みを差し出した。
「兄上はおっしゃいませんでしたが、わたしは、父上に召し上がっていただきというございます」
 デネソールは、冷笑を浮かべた。
「このようなもので、父の機嫌を取ろうという腹であるか」
「兄上の気持ちを慮ってみたのですが。ご不要でしたら、やはりわたしが頂きます」
「待つのだ。ボロミアの心遣いを無にするわけにはいくまい」
「それでは、こちらは父上に」
 包みはデネソールの所有となった。
 兄がせっかく自分にと与えたものを手放すのが少しも惜しくないといえば嘘になる。しかし、それ以上に、父親が喜ぶなら、物が手元になくとも満足だった。

 翌日。
 ファラミアは、困惑していた。
 ボロミアは姿を見せないし、父親がいつもにも増して、自分に対し冷徹な態度で接してくるのだ。
 しかし、いくら考えても、ファラミアをしてその理由はまったく分からなかった。


 終わり。

198萌えの下なる名無しさん:2004/07/03(土) 10:40
某所ではイシリアン大公、王様から「今すぐ料理人を雇え」とか勧められていたなあ。
ゴンドール、ローハン両国の友好にまで影を落としかねない姫の手料理、おそるべし。

何をやってもお互い嫌がらせにしかならない親子関係というのも悲劇だな、とマジレス。

199萌えの下なる名無しさん:2004/07/04(日) 02:05
兄上が姿を見せないのは気まずいからかそれとも本気で体調を崩したのか(w
そしてファラミアが食べて倒れでもしたらどうしたんだろうなど謎は尽きません。


でもって、改編コピペネタ吉野家ファラボロ。死にネタ注意。
似たようなのが以前ありましたらご容赦。









そんな事より父上よ、ちょいと聞いてください。任務とあんま関係ないですけど。
このあいだ、大河の岸辺に行ったんです。大河の岸辺。
そしたらなんか川上から小船が流れてくるんです。
で、よく見たらなんかそれに乗って、兄上がどんぶらことやってくるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前な、いまどき桃太郎の真似なんかしてんじゃねーよ、ボケが。
桃太郎だよ、桃太郎。
なんか靄まで出てきたし。幻想的ふいんき(←なぜか(ry)出してんのか。おめでてーな。
よーしパパベルファラス湾まで行っちゃうぞー、とか無言で語ってるの。もう見てらんない。 パパじゃないし。
お前な、今すぐつかまえてやるから止まってくださいと。
兄弟の再会ってのはな、もっと嬉しいものであるべきなんだよ。
凱旋のスピーチの後で人目もはばからず抱きあったり杯を交わしたり、
互いの無事を喜び合う、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。悲しみなんか、すっこんでろ。
で、やっと手が届くと思ったら、船の中の兄上が凄い荘厳な表情で、後を頼む、とか語ってるんです。
そこでまた涙腺ぶち切れですよ。
あのな、無言の帰還なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
綺麗な顔して何が、後を頼む、だ。
お前は本当に後を頼みたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、本当は生きて還りたかったんだろうがと。
弟の俺から言わせてもらえば今、兄上はかなり、満ち足りた表情、これだね。
何かを成し遂げた男の表情。これが一番いい顔。
兄上ってのは丈高き偉丈夫。おまけに鼻筋の通った顔立ち。これ。
で、それが今は何の曇りもない顔。これ最強。
しかしこれ以外の表情はしないし二度と動かない、いわば抜け殻。
それだったら悩む兄上の方が何万倍もいい。
まあ俺は、おとなしく去っていく船を見送ることしか出来ないんだってこった。

200萌えの下なる名無しさん:2004/07/04(日) 23:47
>199
うおおおお、なんだかすごく悲しいぞ。読んでる方もアンドゥインに身投げ
したくなるくらいです。いや、マジで。

それにしても、ここの住人さんで若葉に行かれた方はおいでなのでしょうか。
199のシーンも、弟君の必殺うるうる目も大画面で見たかったけど、悲しいやら
萌えるやらで、他のお客さんも大勢いる所では困ったことになりそうです。

201萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 01:00
>>199 GJ!
吉野家に涙する日が来ようとは…・゚・(ノД`)・゚・

>>200
今日行って来ますた。
よりによって弟君回想シーンでビニール袋ガサガサさせたヤシがいて
殺意を覚えますた…。兄と父の会話シーンでもだ。
これが最後の映画館鑑賞になったら悔しいのでもう一度行く算段を
しようかと思ってますだ。片道2時間かかるけど。

202萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 09:49
>199様
多分、大将が見せた生涯で一度の悪態。
大将にとってどんなに過酷な場面だったか。
普段の大将からは考えられないあの悪態がすべてかと。



余韻さめやらぬまま、>197に関するフォローらしきもの。
登場は、ファラミア、兄上、エオウィン。
置いてきぼり弟君。得手勝手兄上。








 ほとぼりが冷めた頃を見計らい、憔悴したファラミアの前に、ひょっこり現れたボロミア。
「顔色が優れぬぞ。よほどあの菓子が合わなかったと見える」
「おっしゃる意味が分かりかねますが、菓子ならば、父上に差し上げました。それより、なにゆえ嬉しそうなのですか、兄上」
「嬉しげであったか? それで、父上は」
「ご体調はさておき、ご機嫌の方が如何ともしがたいのです」
「召し上がってしまったのだな…さもありなん」
「何です?」
「気にするな。独り言だ。わたしは父上のご様子を伺って来る」
「ならば、わたしも参ります」
「ならぬ。話がこじれる元だ。この兄に任せよ」
 取り残され、釈然としないファラミア。

 月日は過ぎ、ファラミアは美しく成長した、かのローハンの姫を娶った。
 ファラミアは、新婚にして生まれて初めて彼女の手料理を口にした。
 その時、ファラミアのどこかで、くすぶり続けていた謎が一瞬にして全て解けた。
 そういうことだったのだ。あの日、父親は、ファラミアが菓子の出来を知って父に押しつけ、やっかい払いをしたのだと、誤解したに違いない。
「お口に合いませんでしたの?」
 考え事に気を取られていたファラミアに、可愛い新妻が心配げな顔を見せた。
「まさか。兄が生前、野宿時に作って食べさせてくれた得体の知れない食物に比べても、随分と良い」
 ファラミアにしてみれば、どのような点であれ、今なお慕わしい兄より優れているというのは、最大の讃辞だったのだが。
 エオウィンは、まだ途中だった食事を無言のまま下げた。
 取り残され、釈然としないファラミア。
 しかし、いくら考えても、ファラミアをしてその理由はまったく分からなかった。




 フォロー?終わり。


>そしてファラミアが食べて倒れでもしたらどうしたんだろうなど謎は尽きません。

ベタベタなところで、
後ろ暗さから世話を焼く兄上。小さな幸せを噛みしめる大将希望。

203萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 22:23
>202
ひどいよ大将、じゃなくて大公殿下w いや、もっとひどいのは兄上か。
ファラミアって本当に、聡いんだかヌケてるんだか・・・このスレの大将が、
ということかも知れませんが。

>199
しかしあの状況って、兄上から見れば、いちばん会いたかった人に最後に
会えたということなんだろうか、とも思います。
残される立場にとっては、たまったもんじゃないけれど。

204萌えの下なる名無しさん:2004/07/07(水) 00:58
>202様
そのベタネタに萌えますた(*´Д`*)
僭越ながら、「大将が食べた(そして倒れた)Ver.」で、その後の小話など。







-------------------------------------------------------------
「ファラミア!」
 乱暴に開け放された扉が騒々しい音を立て、ベッドに臥せっていたファラミアはやっとの思いで目を向けた。
 大股で入ってきたボロミアは、恐ろしく不安げな顔で枕の際にかがみこみ、ファラミアの顔を見る。
「倒れたそうだな。大丈夫か?」
「ええ・・・」
 曖昧に頷くと、ボロミアはますます弱った顔をし、ファラミアの腹をさすり、頬を撫で、額に手をやる。
「腹の具合はどうだ。吐き気は治まったか?頭痛は」
「・・・兄上」
 なんでそんなに的確に症状を言い当てられるんですか。
 ファラミアは思ったが、そう尋ねる間をボロミアは与えてくれなかった。
「ああまったく、お前がわたしほど強健ではないと何故思い至らなかったのだろう。それとも疲れて
いたのだろうか。ともかくお前は繊細だから」
「兄上」
「それにしても倒れるとは、よほど参っていたのだな。この際、少し静養するといい。幸い危急のこともない」
「兄上ってば」
「そうだ、その間はわたしが世話をしてやろう。何でも言ってみるがいい。何が欲しい。ん?」
「・・・・・・」
 もしかして貴方原因に心当たりあるんですか等々、問い詰めたい気持ちは大いにあった。
が、それもこれも最後の申し出の前には吹き飛んだも同然だった。
 答えを促すように顔を覗き込んだボロミアに、ファラミアはニコリと微笑み、
「では、林檎が食べたいです」
「いいぞ、剥いてやろう。それから?」
「食べさせては貰えないので?」
「食べさせてやろうとも。他には?」
「それから、歌を聴きながら眠りたい」
「・・・お前はわたしに何をさせたいのだ」
「昔は歌ってくれました」
「うるさくて眠れぬと文句を言ったのはお前ではないか。・・・・・・まあいい。だが、やめてほしくなったら
すぐに言え。まだあるか?」
 ファラミアが首を振ると、ようやくボロミアは笑顔を見せて、弟にキスをした。
「また思いついたら言うがいい。では、望みのものを持ってこよう」
 そうして行きかけたボロミアだったが、ふと扉の前で振り返って、
「眠ってしまいたければそうして構わないからな」
「いいえ」
 ファラミアは小さく笑って答えた。「待っています」
 遠さかって行く足音を聞きながら、ファラミアは久々にのんびりとした気分で目を閉じた。

―――――――――――――――――
で、しばらく後に戻ってきた兄上は、幸せそうな顔でまどろむ弟を前に、起こしていいものやらと
悩むことになるわけで。

205萌えの下なる名無しさん:2004/07/07(水) 21:08
世話焼き兄上ってば、弟を実は構い倒したくて
仕方なかったのではなどと邪推。
これでもかとばかりに甘える大将も、
兄上心をよく分かっておられるようで、微笑ましく。
たっぷり和ませていただきました。



いらんことに、
>204様小話の続きを妄想。







悩んだ挙げ句、添い寝という名案(自画自賛)を思い付いた兄上。
人の布団に潜り込み、ファラミアは昔から良いにおいであるな、などと
浸ってるうち、添い寝のつもりが、お約束通りに熟睡。
寝苦しさで目が覚めてしまった大将は、寝台を占領しつつある兄上を発見。
仕方ない人だとか思いつつ、上掛けを具合良くかけ直してやる大将。
ボロミアが持ち込んだりんごは、不器用にいびつな形で刻まれていて、
どこから見てもボロミア本人の手によるもの。
まどろんだ時間の分、切り口はちょびっと茶色に変わってしまってたりして、
お世辞にもきれいな物ではなかったけれど。
大将は、兄上の寝顔を見つめつつ、大切そうに、そのりんごをかじるのですねえ。
りんごは甘くて酸っぱい至福の味がするに違いないです。

そして、唇に残ったりんごの香りを、眠りこける兄上の唇にお裾分けする大将。
幸せとは、一人で味わうものではなく分かち合うものだから。







一転、本日付某全国紙朝刊プロ野球欄見出し"お兄様ギラギラ"より妄想吐き出し。
当該選手ファンの方、申し訳ありません。


<天体観測執政兄弟> 



場所はミナス・ティリス城壁のどこか。時は深夜。人影は二つ。
頭上には満天の星。
夜の闇では星が、わたしたちの位置を教えてくれるのですね。
などと、夜空をあおぐ大将の横で、よりにもよって、
"お兄様ギラギラ"。

兄上ヤバイです。兄上の身に一体何が起こったのかと。
大将は、お星様よりも兄上を観察するべきではないかと思います。

206萌えの下なる名無しさん:2004/07/08(木) 13:48
(・∀・)イイ!
>205
スリーピングビューティー逆バージョンで。

待っているといったのに、と苦笑する兄上。
椅子に座って目覚めを待ちながら、りんごを一欠片つまみ食い。
全部食べてしまうぞ、と言ってみるものの、相変わらず寝こけたままの大将。
悪戯心で口移しをしてみる兄上。

 りんごのかけらがファラミアの口にころりと転がり込みました。
 すると、どうでしょう!
 みるみるうちに、ファラミアのほおに赤味がさし、彼はぱっちりと目をさましたのです。


って白雪姫かよゴ━━━(#゚Д゚)=○)゚Д)、;'.・━━━ルァ!!


ところで"お兄様ギラギラ"はわかんなかったです。
兄上の体が光ってたってこと(;´Д`)?

そういえば昨日は七夕だったですね。
大河によって引き裂かれた2人が唯一会える日・・・
大将も年に一度兄上に会えたらいいのに(つД`)

207SS投下1/7:2004/07/09(金) 10:56
流れ遮ります。7レス分予定。
苦手な方は護身推奨。
完結します。終盤に向かうほどにへたれ度UP。ご注意。


<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/7

>191の続き 完結編

【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169,88-191

















 意志のかけらも無いかのように、ファラミアの体は易々と寝台とセオドレドの体の間に挟まれた。苦痛はあるのだろう。セオドレドが見たファラミアは、目を閉じ、口を引き結び、彼の内側にもたらされるあらゆる物を、耐えているようだった。せめてもと、額に張り付いた汗を手で拭ってやる。少しでも、表情が和らいでくれれば、どんなにか助かるだろうと思う。彼に行おうとしていることを思えば、随分と勝手な言い草だったが。
 仰向けに転がった体の腰に、セオドレドが腰を寄せると、堪えきれないのかくぐもった声がファラミアの口から漏れ出でる。それ以上を聞きたい衝動を、ファラミアの体に回した腕に、力を込めることでやり過ごす。セオドレドにとって、今最も気に掛けなければならないのは、ファラミアの体を自分から逃させないことだった。だから、足をすくい上げた腕を、ファラミアの汗ばんだ背に回して体同士をひどく密着させた。
 忘れてはいけない。自分は、選択を成したのだ。
 思い起こすと、ファラミアの首元に顔を寄せ、低く笑った。それは、ファラミアの目から、自分の表情を隠すためだけの行為だった。
「質問を、変えましょうか」
 顔の間近にある耳に囁くついでに、舌で柔らかなその耳朶の形を辿ってやると、抱き込んだ体の肩が、小刻みに揺れた。人間の体のうちでも、とりわけ滑らかな舌触りを持つ耳の後ろの味を、堪能しながら答えを待つ。ファラミアは、その口元に耳を寄せればやっと聞こえるほどに小さく、音を漏らしていたがそれは、どう聞いても意味のある言葉ではなかった。ファラミアの意志が窺えるとすれば、ただ、首を振る、その行為からだけだった。

 分からない。
 体に与えられる不慣れな刺激がそうさせるのか、元々意味など持たせていない質問を選んで投げかけられているのか。それさえも、ファラミアには分からなかった。
 一体、問いかけに答えを得る気があるのか疑わしいことに、喉元に唇の感触を得たのが分かった。すぐに離れるとファラミアが一人合点していたそれは、ファラミアの喉仏を包んだ。ファラミアは、首筋に内側から冷たいものが走るのを感じて、息をのんだ。決して頼りなくもない喉に、はっきりとした形を現している骨を覆っている皮膚を、湿ったセオドレドの舌が、少なくともファラミアの感じたところによれば、我が物顔に触れていく。奇妙な感触から逃れることを期待してファラミアがとった、体を伸張させるという行いは、意図とは逆向きに作用した。体の芯を貫いていくような痛みと疼きが、自分の身のどこともなく駆け上がっていくのだ。それは、単に触れられるよりも、よほど耐え難い感覚だった。誰のせいでもないそれは、ファラミアに常ならぬ高い声を上げさせた。咄嗟に、自分の片手で口を塞いだ。気休めにしかならなかった。むしろ、呼吸を大いに妨げられるのが、自分のしたことながら、恨めしいだけだった。自分の身体を、一切意識せずに済むなら、どんなに楽になれるだろうと、頭の隅で思う。
 望むところのものを得るための、もっとも賢い方法は、じっと動かないでいることだと、ファラミアは学習したが、だからといって、何の役に立ちそうにもなかった。この期に及んでは結局、ファラミアは自分が思い通りに出来るのは、自分の身体くらいのものだと思い知っただけだった。
 ファラミアの都合を、セオドレドが汲んでやる理由は、おそらく無い。
 ほんのごく僅か、緩くセオドレドが腰を寄せただけで、身が裂かれるような思いがした。繰り返されると、自分には逃げ場も救いも、残されていないような錯覚に否応なく陥らされる。楽になりたいと、ファラミアの身体が叫んでいた。それが叶うなら手段など選ぶものかとさえ思った。余計に触れ合わないように、じっと身を潜めるように、ファラミアは身動きすることを、自分に禁じた。それが、セオドレドの意に任せて、自分の身体を融通させることだとしても、進んで余分な苦痛を引き受けることと比べれば、何ということもなかった。
 それでもファラミアは、多少なりとも、意図するところが伝わるかも知れないと、自分の体を拘束するセオドレドの背に、両の腕を回して出来るだけの力で、自分の方に引き寄せた。

208SS投下2/7:2004/07/09(金) 10:58
修正:
【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169,188-191
                                                    ~~~~~ 

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 2/7


















 どれだけ体が要求しようとも、目を閉じたくはなかった。
 だから、ファラミアは、自分の目が、自分の意志に関係なく何を語っているのかも理解出来ないまま、セオドレドの目を見上げた。
「お答えは?」
 接触の深さこそそのままだったが、ファラミアを苛んでいた行いだけは止んだ。降って湧いた少しの間も逃すまいとでもするかのように、ファラミアは呼吸を深くした。そのファラミアの髪に、セオドレドの手が触れてくる。思うままには動かない手を、ファラミアはどうにかセオドレドの、その手に添えた。
 今、この時にあっても、ファラミアはその手を、心地良いと思う。なぜ、それのみの存在であってはくれないのかと、ファラミアは思う。詮無いことだと、思いを自らすぐに打ち消した。セオドレドに、それ以外の何かを望んだのは、他ならぬ自分ではないか。
「ファラミア殿」
 自分の名を呼ぶ声は、落ち着きと、錯覚でなければ慈しみさえ含んでいるように聞こえた。体を抱く腕は、ファラミアにとって長年の保護者であり援助者であった大切な人のものを思い起こさせるほどに、心地良かった。余計な痛みさえなければ、一晩このままいるのも悪くはない。そんな事さえ頭に浮かぶ。
 顔を近くに見ようと、自分を見下ろす顔の額に、額を擦り寄せた。セオドレドの、あの笑顔が目に映った。身体がどうあれ安心すれば良いのだと、自分の内なる声が語りかけてくる。
 触れ合った部分から込み上げる苦痛は変わらないものの、内面からの声に従って、ファラミアは表情を緩めた。
「質問を、変えさせて頂きますよ」
 問いかけではなく決定を告げるセオドレドの声は、あくまで穏やかだった。
 頷くことも、首を振ることも忘れたファラミアの、剥き出しになった額に、セオドレドの唇が押し当てられた。思わずファラミアは、目を閉じた。額だけではなく、きめの細かい皮膚を持つ目尻に、こめかみに、頬に、セオドレドの唇が触れていくのを、ファラミアはやけにはっきりと感じていた。少しの暇も与えまいとしているように、セオドレドはファラミアの顔のどこへと言うこともなく、唇を押し当てた。それが、くすぐったくないと言えば、嘘になる。皮膚の感覚だけではない、心の中もまた、唇が持つ独特の微妙な柔らかさでもってくすぐられているような、心地悪くもないが安んじてもいられない、奇妙な感覚にファラミアは囚われた。
「ファラミア殿は、白の塔の何が、お好きなのです?」
 問われている意味がすぐには分からず、ファラミアは、半分熱に浮かされた者が見せるような表情で、セオドレドの顔を覗き込んだ。
 身体が竦んだ。
 身体のあり方に気を取られ続けている頭で、ファラミアは悟った。セオドレドが、自分に何を言わせようとしているのかを。
 誰に告げたこともなかった、墓場まで持ち行くと決めたファラミアの思いを、昨日今日出会ったばかりの他人に見透かされているのは、疑いようもなかった。自覚した途端、全身は小刻みな震えを帯びた。聞き流せば良い。分かっている。それでも、震えはファラミア自身にも、どうしようもなかった。
 ままならぬ体を、十分に鍛錬された太い腕が包んで、きつく戒めた。それで身体の動揺が止むわけではなかったが、それでも、放置されるよりも、いくらかましであるかのように、ファラミアは感じていた。
 苦い表情でファラミアは、抱え込まれた自分の足先に目を向けた。
 セオドレドは、自分にとって丁度良いほどまで膝を折らせ、裸足の足指に口をつけた。足が、意識しないまま逆らうように跳ねたので、セオドレドの体重が膝の裏に向けてかけられてきた。足指の隙間に指を通されると、ファラミアの足は簡単に身動きがとれなくなった。足の指の一つ一つを、口に含みながら、セオドレドの視線がファラミアの顔に向けられてきた。ファラミアには何の感慨もなかった。だから、表情は無かったに違いない。それすら、今のファラミアには知りようがなかった。

209SS投下 3/7:2004/07/09(金) 10:59
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 3/7



















 セオドレドは構う様子もなく、口に含んだ指の腹に歯を立ててくる。肉の感触が良かったらしく、もっと確かに味わおうと、足指の股に舌を伸ばし、指の内側から丹念に舐めていく。ファラミアは、さすがにたまらなくなり、体をよじろうとした。が、身の内に走った苦痛が勝って、結局、何一つ成されなかった。
 ファラミアは一つ大きく息をつくと、セオドレドから視線を逸らし、天井を見上げた。体を硬くしているのが、足の指に入った無理な力からセオドレドにも分かった。舌だけでなく、指を突っ込んで爪の先で指の股の皮膚を掻いてやると、ファラミアの手が、自分で口を塞いだのが視界の端に入った。体を動かさず、声も立てず、視界を塞ぐこともなく。ファラミアは、何をしようとしているのか、セオドレドには理解しかねた。片足に満足がいったので、セオドレドはその足を自分の口から解放した。
 ファラミアはあからさまにほっと息をつき、体を弛緩させた。予想外にもう片方の足を口に含まれると、咄嗟に、ファラミアは肘を寝台について上体を起きあがらせようとした。熟慮の上の行為ではなく、単なる反射だった。だから、ファラミアは自分で腕を寝台に投げ出し、体を元通りに横たえた。
 指の股に舌を触れて、口に含んだ足指ごと強く吸われた。そのたびに揺れようとする足を、ファラミアは意志でもって、その動きを封じた。セオドレドは内心舌を巻いた。が、それと行為とは、まったく別の問題だった。ファラミアの足指がいい加減、唾液にまみれてきたところで、セオドレドはファラミアの足指の一つ一つに、柔らかい口づけを与えた。
 ファラミアを困惑させていた体の震えは、いつの間にか収まっていた。
 自分の体の末端を愛撫する頭の後ろに手を伸ばして、ファラミアは自分の顔近くに、年長者の頭を引き寄せた。大人しく間近に寄ってきたセオドレドが、口付けようとするのを、手を割り込ませて阻み、自分の指を口に含んで唾液を得ると、その指でセオドレドの口を拭った。セオドレドは目を瞬かせていたけれども、気の済んだファラミアが両腕でセオドレドの頭を抱くと、はじめは唇を触れ合わせるだけの、軽い口付けがファラミアの唇に降ってきた。柔らかさを心地良く味わうには、内側に入り込んだ部分が与える感触が、ひどく邪魔ではあったけれど、お互いに、繰り返して唇を触れ合わせた。湿り気を帯びた小さな音が、二人の間だけに聞こえるくらいに、何度も溢れた。
 ロヒアリムらしく一つに編まれたセオドレドの髪を、ファラミアはその流れに逆らわず、撫でた。編み終わりを止めている紐を手探りに見つけると、ファラミアは迷わずそれを引いた。ゴンドールの者がしているよりも、よほど長く伸ばされた髪が、自分の上にある体の、肩から背中に流れ落ちてきた。耳の後ろから指を差し入れて、先端までファラミアは、その淡い色彩の髪を梳き、一房を指の間に捕らえて、自分の頬に押しつけた。
 たっぷりとした厚さを持った背中に回した腕にも、ほどけた髪が絡んだ。ファラミアはそれを指の一本ずつを握って手の中に包み、そうして、締まった肉の形に隆起した背を抱いた。片手では足りず、もう片手もセオドレドの背に上げて、両腕で、彼の体を抱き潰しても構わないくらいの力で抱き、細く息を飲んだ。
 ファラミアは、苦痛を主張するばかりいる内側でセオドレドと触れ合っている部分を、自らより深く、彼が入り込むよう腰を寄せた。
 ファラミアは、上がりそうになる声を、必死で殺した。なんとか成功させると、再び行為を繰り返した。
「ファラミア…殿」
 自分を見下ろしながら呟かれる声の、取ってつけたような敬称が、ファラミアには少しだけ可笑しかった。
 唇同士の触れ合いを求めながら、ファラミアはセオドレドの行為を待った。

 理由は知らない。
 セオドレドは、初めて、ファラミアから自分が望まれているものを知った。その中味が何であれ、その目的がどうであれ、間違いなく自分は、望まれているのだ。
 初めての邂逅とも言えないような邂逅の日。彼に、自分は触れることも叶わなかった。再会を果たした今、ファラミアの体は、考え得る限り一番深い方法で自分の身体と触れ合わされていた。それ以上の何かを欲するのは、贅沢に過ぎるかも知れない。しかし、セオドレドは望まずにはいられなかった。ファラミアに、どんな事でも構わない。望まれたいと。

210SS投下 4/7:2004/07/09(金) 11:00
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/7
















 ファラミアは、セオドレドに対し、これ以上なく明瞭に答えを提示していた。
 我ながら、馬鹿なものだとセオドレドは思う。ファラミアの口から、確かな答えを聞こうと、自分で決めたばかりだというのに、もう、その決定を放棄してまるで構わない自分がいるのだ。
 ファラミアが、なぜ今、自分に問いかけとは無関係に望みを見せるのかというその理由が、いかに見え透いていようと、その行いがどれほどあざとかろうと、ファラミアに望まれるなら、そのほかの全ては、枝葉末節ですらなくなってしまう。これ以上、馬鹿げた事があるだろうか。そして、それを自覚しながら、自分は間違いなく、幸福感の頂点に身を置いているのだ。
 それを、何と呼ぶべきだろうか?
 セオドレドは首を振った。自分の髪が鬱陶しく体に張り付いているからだと、そういうことにしておいた。
 ファラミアは、彼が守るべきものを守ろうとしている。自分は、欲しているものを手に入れようとしている。それに、何の問題がある? セオドレドは、自分に言い聞かせた。 もはや、迷いも思考も、必要なかった。
 無理な力が、体の内側からファラミアを貫こうとしていた。声を上げようとした口は、片方で十分ファラミアの口程度は覆ってしまえるほどの、大きな手に塞がれた。自由を封じられた足と、体と。唯一意志に従って動かせる腕に出来ることは、自分の体の安定を得るために、それが自分の体から自由を奪っている張本人のものであっても、手近なものに掴まっておく事くらいだった。
 体の内と外とを揺さぶられながら、一体それが自分のものであるのかどうかも不確かなまま、どんな思考も手放して、自分ではない人間の気が済むまでの、永遠とも思える自分の時間と、自分の持つ全てを、ファラミアは目の前の彼に与えた。
 ファラミアは息苦しくなって、首を仰け反らすと、激しく振った。まともに息をしようというのが、はじめから無理な相談だった。その上、口を塞がれていては、事態はよほど深刻だった。
 以心伝心とはこのことだろうかと思えるほど、ファラミアの状態をセオドレドは汲んだのか、口を覆っていた手を外し、ファラミアの口を自由にした。声を上げれば、少しは状態がましになるかという期待は、間違っていたと、ファラミアはすぐに思い知った。だから代わりに、ファラミアはセオドレドの肩に歯を当てた。我を忘れたファラミアは、肉を噛みしめるかも知れなかった。だが、セオドレドは僅かに呻いただけだった。
 一体、自分は求められたものを与えているのか、求めているものを与えられているのか。
 
 両方に決まっている。
 
 セオドレドは、ともすれば持って行かれそうになる気を絞って、自分とファラミアの体の間に手を割り込ませ、ファラミアの張ったものを探った。ファラミアの顎が上がった。身体的な興奮の証を、手に握り込み、具合を見ながら擦り上げてやる。
 声を発するのも大儀そうなのに、ファラミアは断続的な高い声を、喉の奥から聞かせていた。手の中のものの張りが増したと思った時、なま暖かい粘った液体がセオドレドの手の中に溢れてきた。
 息を荒げるファラミアの背を、それまでよりもきつく抱くと、ファラミアの体の深くに、セオドレドは自分のそれを突き込んだ。それが、充足を告げる合図だった。
 ファラミアは息を詰めると、そこに彼が与える全てを受けいれた。

 お互いを繋ぎ止めていた腕が緩んだ。
 体は触れ合わせたまま、息が整うのを待った。
 汗ばんだせいで、乱れた髪が張り付いている顔を間近に見た。いくらかは自分の責任であると、ファラミアは一房ずつ指に髪の束をつまみ、耳の後ろに回してやった。掌で、撫でつけてやると、なかなか整った格好になって、ファラミアは満足した。
 息が落ち着いてみると、体が痛むのだけが気になった。
 疲労している筈なのに、眠気が自分を攫っていく気配は少しもなかった。
 汗にまみれた体が不快だった。それ以上に、刺激への生理的な反応のまま体外に出された、鬱陶しく粘る体液がまとわりついたままの下肢が、耐え難かった。

211SS投下 5/7:2004/07/09(金) 11:01
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/7















 察したのか習慣なのか、自分もまだ平常ではないだろうに、セオドレドが体を起こした。ファラミアは、腕を掴んで引くことで、それを制した。
「まず、体を休める事が肝要かと思います」
 ファラミアの言葉を受けたセオドレドは、あっさりと寝台に体を落とした。せめてもということだろう、乾いた布で、寝台に投げ出されたファラミアの体の隅々を、拭っていった。多少なりとも体に清潔が取り戻されるのは、実際ありがたいものではあったが、こんなものが常備されている事自体が、ファラミアには、呆れて良いのか感心して良いのか分からないところだった。
「わたしも」
 手伝おうと伸ばしたファラミアの手を、セオドレドは握った。そして、清潔な布を握らせる代わりに、指先に口づけた。
「体を休めるのが、肝要ではありませんでしたか」
 セオドレドが笑うので、仕方なくファラミアは手を引き、体の湿り気を布切れに吸い取らせていくセオドレドを、寝台に寝転がったまま、ただ見つめた。

 汗が引いた体を、お互いに寄せて抱き締め合った。
 ファラミアの体を包む人の温みも、肌の具合も、くだらないものだと思っていた疲労感も、決して悪くはなかった。
 息が規則正しくなったと思って顔を覗くと、いつの間にかセオドレドは眠りに落ちているようだった。
 暗がりで姿に目をこらしながら、その長い髪を指に掛けて梳いた。
 彼は繰り返して自分に問うた。
 自分は、答えを持っていた。しかし、彼には答えなかった。
 それでいて彼は何も言わず、ファラミアが仕掛けた誘いに乗った。おそらく、全てを知りながら。
 いくらお互い関わり合いのある国で、責任ある立場に生まれついた者同士とはいえ、二度ほど会ったと言いつつ、自分とセオドレドは、お互いただの他人ではないのだろうか。それが、何故だろう。
 まったく、興味は尽きないではないか。
 そう思い至って、ファラミアが答えるべきものとして最後に残された一つの答えを、ファラミアは得たと思った。そして、発問者の耳元に口を寄せ、回答を与えた。
「セオドレド殿」
 ごく小さな呟きでしかないファラミアの声は、眠りにある者の耳に届いてはいないだろう。ただ、ファラミアはそれで良かった。好きなものの話をしようと提案したのは、確かにセオドレドだったが、考えるまでもなく、セオドレドが欲しているのは、ファラミアが今、答えとして彼に与えることが出来るような、そんなものでは決してないのだろうから。
「好きなもの」でありながら、誰とも、どんなものとも決して並列には語れない特別な存在は、ファラミアには、ただ一人だけだった。そうは言わないが、ファラミアが内に抱え込んだものを、セオドレドは間違いなく、正しく知っている。誰にも口に出来ないそれを共有する彼には、せいぜい、共犯者になっていただこうではないかと、泥のように眠っている特別な一人と自分の知らない何かを分かち合っている、彼と同じ年に生まれた、年長者を見つめながら、ファラミアは思った。
 いい加減煩くなってきた睡魔の誘いに応じて、ファラミアは、セオドレドと枕を並べて眠ることにした。
 馬さえも上げることが出来そうな寝台の上で、ファラミアはセオドレドの体から、自分の体を決して離さなかった。
 
 部屋を満たす薄明かりが、寝台に反射して淡い色を見せていた。
 ファラミアが目を開いたときには、習慣なのか、セオドレドは既に起き出していた。
「これは、失礼致しました」
 ファラミアは上体を起こそうとした。が、痛みが伴うだろうことは彼らしくもなく、失念していた。
「熱い湯を持つよう言いつけてあります。少々お待ち下さい。清潔にすれば、お体も多少は楽になりましょう」
 ファラミアの様子に気付いたセオドレドは、寝台の縁に腰掛けて、ファラミアの髪を労るようにさすった。
 どこか、気遣わしげなのは気のせいではないだろう。ファラミアは素直に問うた。

212SS投下 6/7:2004/07/09(金) 11:03
修正:>211 誤4/7 正5/7

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 6/7


















「お気を煩わせる事が、何かございましたか」
 セオドレドの手が止まった。それまでになく思わしげな顔を見せられて、ファラミアは息を飲んだ。
 低く、セオドレドは言った。
「こちらに滞在した最初の晩。ボロミアが、どこで何をしていたか。お聞きになりたくはありませんか」
 ファラミアは、一瞬言葉を失った。
 そして、笑った。
「お忘れですか。セオドレド殿。ボロミアが言わないのなら、わたしはそれを、聞きたいとは思わないのです」
 すっかりやられてしまったとでも言いたげに、セオドレドは頭を抱えた。
「まったく、ファラミア殿という方は」
 俯いてしまった頑強かつ丈高い体に、ファラミアは体をにじって寄り添わせた。そして、自分とセオドレドと、たった二人しかいない部屋で、声を潜めた。
「ひとつだけ、わたしはセオドレド殿にお願いをしなければなりません。というのは、わたし共の間にあったことは、決してボロミアの耳に入れませぬように」
「私はボロミア殿の知るところになっても一向に構いませんが。それに、ファラミア殿らしくもない、不正直さではありませんか」
 ファラミアは、首を振った。
「結果、受けるのが叱責であるなら、良いのですがセオドレド殿。われらは、祝福されてしまいます」
「祝福?」
 思いがけない単語のせいで、つい声が高くなる。ファラミアは、そのセオドレドに頷いて見せた。
「話したが最後、ボロミアは花嫁の父さながらに、男泣きに泣きながら、弟を頼むと、セオドレド殿に何度も頭を下げましょう。そして、ボロミアの気分はおそらく舅以外の何者でもなくなるでしょうが。セオドレド殿は、ボロミアとそのような関係を結びたいとお望みですか」
 セオドレドは、黙って首を振った。光景が目に浮かぶようだった。セオドレドとて、ボロミアが、どのくらいたった一人の弟を可愛く思っているのか、決して知らないわけではなかった。初めて出会ったときの態度が既に、それを物語っていたではないか。
「わたしもご免被りたいのです。彼自身の思いを殺して、わたしの幸せとやらのため、ボロミアに泣かれるなどということは」ファラミアは、言葉を切った。愉快でもない言葉を紡ぎつつ、どこか虚空に視線をやるファラミアの横顔さえ、セオドレドは好ましいと思う。だから、ファラミアの言葉に含まされていることの意味を、セオドレドは考えもしなかった。
 ややあって、セオドレドの顔面に視線を戻したファラミアは、くすくす笑った。「こう申し上げて失礼でなければ、おそらく、セオドレド殿とわたしは、似通っているのです」。
 セオドレドは、ファラミアの心の底を図ろうとでもするかのように、顔を見つめた。
「正確には、求めているものが、と言うべきなのでしょうけれども。更に申し上げるならば」
 ファラミアは、セオドレドの手を取って、指をその隙間に絡ませて握ると、一本一本に、丁寧に口づけた。
「決して手に出来ないものを求めてやまない。そこが似ております」
 口づけに飽きたのか、ファラミアは指先を口に含んで、爪の際の僅かな肉に歯を立てた。愛撫だか手慰みだか判然としない行為にも、セオドレドはファラミアの為すがままに任せていた。
「わたしは、ボロミアが言わないことを聞こうとは思いませんが。ボロミアが、セオドレド殿のおられる国に、何を求めて来たのかくらいは、理解しているつもりです。そして、わたしが理解するに至った多くは、セオドレド殿に負っております」
「ファラミア殿?」
 セオドレドも、さすがにようやく顔色を変えた。だから、ファラミアは片手をセオドレドの頬に触れ、柔らかく撫でつけると、そこに口付けをした。
「ゆめ、お考え違いをなされませぬよう。わたしは、何もセオドレド殿をお恨み申し上げているわけではないのです」

213SS投下 7/7 最終:2004/07/09(金) 11:06
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 7/7 【完結】

















 思い起こさずとも知れたことだった。
 この国をボロミアは幾度か訪問していた。
 自分は、初めての異国で一人だった。セオドレドと大事な話があると、ボロミアは言った。それが、ファラミアを単身残すための口実ではないとすれば、それは何か? 
 この国への訪問を提案したのは、ボロミアだった。何故ここなのか?
 ファラミアが尋ねてもいないことを、ボロミアは口にした。ボロミアは、馬を見たいと言った。それから?
 異国の衣服は思いの他、自分を手こずらせた。自分の着衣もセオドレドには異国のもののはずだが、セオドレドはそれを苦にしなかった。つまり、慣れているのだ。何故?
 ボロミアが、セオドレドを相当気に入っている事は、ファラミアにもすぐに知れた。ただ、その意味までは、実際は図りかねねいていた。が、それも昨日の朝までのことだった。
 ボロミアが見せた態度のひとつひとつは、一つの方向をさし示していた。それらは少なくとも、この国に来るまでファラミアの知らないところであったし、今あるこの機会を得なければ、この先に渡っても、ファラミアの与り知らぬ事とされ続けたかも知れないことだった。
「真実を得るということは、素晴らしいものです。常づねわたしは、そう思ってきましたが。今この時ほど、大いに実感したことは無いようにさえ思います」
 ファラミアは笑っていた。
「ボロミアが望むなら、それが何であれ、わたしはボロミアに差し上げたい。それを、ただの思い上がりで無くするだけの力を、わたしは身につけたいと望み、そこそこには成功しているやもと自惚れることも出来ましたが−−よりにもよって、肝心な部分は。ままならぬと、思い知らされたと。こういうわけです」
 そう言って、ファラミアは、苦く笑って見せた。そうしたいのは、むしろ、自分ではなかったかと、セオドレドは思う。
「その口がおっしゃいますか。望み通りになどなりはしません。誰一人です」
「何一つ、ではないらしいですな」
 ファラミアは、声を殺して笑い、絡ませていた指をほどいた。
「ままならぬ。だからこそ、考えぬ事でしょう。幸い、セオドレド殿は、わたしが口にせぬ事ですら正しく理解しておられる。わたしの事も、そして」
 誰とは、ファラミアは言わなかった。言われずともしれたことゆえに、ファラミアも口にしなかったのだろう。
「これを幸運と呼ばずして、何と呼びましょう。せいぜいわれわれは、無い物ねだりに身を焦がして思いを虚しくするより、互いの幸福を望もうではありませんか」
 ファラミアは、セオドレドの体に体を添わせ、両の腕で抱擁を与えた。
「実に、悪くありません−−。まったく、我が兄ながら、ボロミアの目は確かなものです」
 編まれないままの髪に、頬を寄せたファラミアの体に、セオドレドは抱擁を返した。そうしたかったからではなかった。ファラミアが、それを望んでいたからだった。

 扉の方向から、遠慮がちな合図が聞こえた。
 ファラミアは体を離し、主の言いつけを守って来訪した従者を迎えるために立ち上がったセオドレドを、見上げた。
「さて、わたしは、明日には帰国致しますので。残された今日一日を、有意義に過ごす手だてについて、共に考えてはいただけませんか」
「そのように致しましょう」
 セオドレドは答えた。
 ファラミアは、初めて見たときからずっと、セオドレドにとって、内なる宝物だった。それは、短くもない年月を経てなお、セオドレドの夢想さえ超えた輝きでもって、セオドレドの眼前に現された。
 ただ一つ、かつてとの違いは、セオドレドが手を触れられる場所に、彼がその身を置いているということだけだった。
 ファラミアの望みは何でも叶えよう。彼に望まれることが、自分の望みであるのだから。
 さて、自分は望む物を得たのだろうか。あるいは、誰一人として、何ひとつ、得られるものなどないのだろうか。
 体は重く、勝手知った筈の自分の部屋で、扉は遠かった。

【終わり】

お目に入れて下さった皆様へ。ありがとうございました。

214萌えの下なる名無しさん:2004/07/09(金) 15:31
ヽ(´ー`)ノ

215萌えの下なる名無しさん:2004/07/10(土) 11:50
>214
ん?なんじゃ、おまえさんは。この宿に立ち寄ったのなら、感想の一言も
残して行くものじゃぞ。
・・・って、誰のなりきりだよ!w

で、改めて
>>207->>213
いやもう、章を追うごとに加速するエロさ(誉め言葉)と途切れぬ緊張感に、
殆ど指の隙間からモニターを覗くようにして読み進めてまいりましたが、
なんとハッピーエンディングだったんですね!どう着地するのか、本当に
予測がつかなかったので、嬉しい驚きでありました。
執政のお子さんたちですが、ボロミアの下が「妹」だったら、父君はとっとと
ローハンの嫡子と政略結婚でもさせていたんだろうな・・・などと考えた
ことがありますが、「弟」でも問題はなかった訳ですねw
・・・なんかすごくアホなことを書いている気が・・・
ともあれ、完結おめでとうございました。

216萌えの下なる名無しさん:2004/07/11(日) 23:23
>>207-213
セオファラ小説、完結おめでとうございます。美しい小説でした。読んでて悲しくなりました。
ただ、最初に全部で何スレ消費するか明記しなかったのはマナー違反だったと思います。
私はこのスレの77なので、私が言って良い事では無いんですが。
ご存知無かったのなら、申し訳有りませんでした。
しかしながら、若大将の若々しさが痛々しく萌えでした。おつかれさまでした。

217萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 11:44
>207->213です。
ご意見、ご感想ありがとうございました。
全レス数の見通しが無いまま、なし崩し的に長いものを
投下させていただいたこと、また、護身をお願いせざるをえなかったことについては、
お詫びさせてください。
今後は一名無しとして、大将の多彩な萌えを楽しませて頂きたいと思います。

218萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 12:54
長編投下の際の心得や住人の対応としては、旧館フロスレなどが参考に
なるかも知れませんね。
それでなくとも、大将絡みの話は長くなる傾向がある気がするのですよ。
お悩みキャラな上、外に顕れる言動が不可解だったりするせいでしょうかw
しかし、投稿者としては不可解にならないように、と、自戒もこめて
いろいろ思いました。

219萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 15:59
要するに、

ある程度切りのいいところまで話を完結させてから投稿しろ


でFA?<フロスレ心得

220萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 10:44
引っ張って申し訳ないですが。

SS投下のバッティングが、最もいただけない事だろうと。私見ですが。
せっかくのSSも読みづらくなりますし、感想も書きづらいので。
>218中にてご紹介頂いたスレで、長編投稿者様が全体の長さと、
投下時期の予告をされてたのは、バッティングを回避するための
ご配慮だろうと私は理解しました。

もちろん、物語を細切れに見せられるのは困る、という
ご意見が多ければ、投稿者は考慮しなければならないでしょう。

すごい差し出がましい上に、
必要かどうかは分かりませんが、敢えてガイドライン的にまとめるなら、

投稿者
/投下前に、使用レス数を予告する。
/投下前に、投下時期を予告する(しかし、誘い受けウザーと言われるかもしれない諸刃の剣)。
/投下前に、SSの内容をある程度明らかにしておく。
/投下はSSが完結してから。

住人
/スレの主旨に合わないものは、適切なスレへ誘導する。
/スレの主旨と照らして問題なければ、投下時期を承認あるいは示唆する。
/スレの主旨には合うが、自分の趣味と合わないものについては黙ってスルー
 (出来ない方は、よもやおられまいとは思いますが一応)。

こういったあたりで。

明文化されてなくても投稿者が自覚しろよ。出来ないヤツは投下すんなよというものも含め、
この機会に住人からご意見が出れば、今後、新規に投稿される方のお役にも立つのでは無かろうかと。
これもまた私見ですが、投稿の際の敷居が低い、あるいは敷居が明らかである方が、
より多くのSSを拝見出来るのではないかと。

そういう狙いもあって、余計なことではありますが、まとめてみた次第です。

221萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 12:01
>220
しかしながら、そういう「心得」みたいなものは、「旅の仲間のお約束」を
熟読すれば、おのずと理解できることなのではないかと思われます。
そもそも「お約束」自体、初代アラボロスレ等で問題になった諸々を踏まえて
成立したという経緯がある訳ですし。
そういうことを知る為に、たまには他スレや過去ログを覗いてみるのも
いろいろ勉強になると思いますよ。
あと、使用レス数や内容については、従来通り1レス目の最初に明記して
おけばいいのでは?レス数の目安についても同様。
ただ、それが10レス以上にも及びそうな場合や、連載形式を取らざるを得ない
ような時には、前もっての予告も必要かと思います。
それからバッティングを避ける為には、小まめなリロードもお忘れなく、とか。

以上、これまで投稿下さった皆様のSSの「内容」を貶める意図は毛頭ないことを
付け加えさせて頂きます。

222萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 15:40
>221
使用レス数、内容表記について同意。
投下予告は、数レスで終わるような短いものなら不要でしょう。
それから、投稿者様方にはできるだけ一括で投下して戴きたいと思います。
「嗜好の合わないものはスルー」が原則なのは勿論ですが、
何度も何度も(しかも同じ話の続き)だとさすがにストレス溜まります。

223萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 19:25
77ですが、私の投稿が混乱を招いたようで反省しています。
悪気は無かったんですが言い訳をすると自分語りウザーになるので止めておきます。

投稿の際のガイドラインについては、220様、また他の皆様のご意見に同意です。
222様、不愉快な思いをさせて申し訳有りませんでした。
実のところ、私が始めた事なので責任を感じていました。真剣に受け止めてくださって
ありがとうございます。私が言うな、とツッコミをくらいそうですが、いいスレですね、
ここは。
1レス消費しておきながら有意義な意見を出さなくて申し訳有りませんでした。

224萌えの下なる名無しさん:2004/07/15(木) 00:27
たびたびの書き込みで、申し訳ないです。>220です。
まず、真摯なご意見をくださったことについて、
お礼を申し上げさせてください。

>221でご提示いただいた内容を受けた上での問題意識の中心は、
「旅の仲間のお約束」として明文化されたガイドラインがあり、
それが成立されるに至った理由も過去ログとして閲覧可能であるにも拘わらず
「心得違い」な振る舞いがなされたのは何故かということです。
そして、「心得違い」の中味が明確になれば、それに属する振る舞いは以後、
回避されやすくなるのではと考えます。
>220に提示させていただいたまとめや、自分の私見が
唯一無二だというつもりは、もちろんありません。
私が申し上げるのも口はばったい事ですが、貴重なご意見の数々、
本当にありがたく思います。

私も、SSを投稿させて頂いている者の一人です。
実際に「心得違い」を為した以上、自省するばかりです。
そして、ご表明下さった>222様はじめ、投稿の形態においてストレスを与えてしまった皆様に。
この場を借りまして改めてお詫びさせて下さい。
今後は、「〜お約束」の再確認はもちろん、
>221様、>222様のご意見を併せまして、肝に銘じさせていただきます。

>77=233様
お話を引っ張ったのは私(>220)ですので。
>216では、必要なご指摘を下さったという印象を、私は持ちました。

>220(=217)でした。SS投稿中から事後まで、お騒がせしてすみません。
以降は、よほどでない限り名無しで。

225221:2004/07/15(木) 10:42
レス数についての文言がダブっていましたね。

さて、お約束通りになっているか心許ありませんが、SSいきます。

<ネタバレ@ ボロ/ファラ しるけなし・・・しめりけ程度?>
*6レス使用予定。
*場所はロスロリアン。
*最後の方でちょっとだけ馳夫さん登場。そして、意外なカプも。

しるけも直接描写もないけど、「あった」ことが前提だし、近親ネタのお嫌いな方は
スルーして下さい。
嫌いじゃなくても、何と言うか・・・いわゆる「砂吐きそー」な話ですので、
ご注意下さい。
まあ、夏の夜の怪談とでもお思い下されば・・・


そこは、平安の裡に守られてある場所と言う。
しかし、木々の太い枝や生い茂る葉が昼も濃い影を作り、夜は不思議な輝きに充ちる黄金の森の中で、ゴンドールの子ボロミアの心の安らうことはない。
昼ともつかず夜とも分たぬ時の中、そしてまた、木々の作り出す濃すぎる大気の中、彼は次第に、今がいつであるのか、自分がどこにいるのかということさえ忘れそうになり、その感覚は、慰安と休息ではなく、むしろ不安と焦燥を彼にもたらした。
森の住人たちが、旅の仲間の休息場所として用意したくれた立派なテントを離れ、ボロミアは、しばしば一人になれる場所を求めて、森の中をさまよい歩いた。その方が、よりこの場所の魔力に捕われることになるかも知れぬと思いつつ、彼は、仲間たち、特に小さい指輪所持者と、王の末裔と名乗るあの男と顔を合わせることを避けた。と言うより怖れた。
彼らはそれぞれに、ゴンドールの子の望みを体現する存在であったから、そして同時に、彼がその望みの困難さを思い知らされる存在でもあったからだ。
森の奥方は、彼の心に囁きかけた。まだ望みはある、と。
しかし、その言葉は本当に希望を語ったものであるのか、ボロミアは今もなお疑っていた。あれは、怖しい誘惑ではなかったか。

ゴンドールの子よ、そなたの望みが叶えられる為に、そなたは何をなすのか。
また、何を必要とするのか。

あなたの  ほんとうの  のぞみは  なに 

===

226SS 2/6:2004/07/15(木) 10:45
<ロリアン>














奥方の声が、今なお私の頭の中で響く。
こうして一人、人目につかぬ木立の奥にいても。
太い木の根に腰を下ろしていても、自分が今眠っているのか、或いは覚めているのかさえ、私には判らない。
あの奥方は怖しい、怖しいかただ。
黄金の森には魔女が住まうという、あの噂は真実であったのだ。
老婆のような、それでいて幼女のようなあの声。
弟がここにいればーー伝承学に詳しい彼であれば、私に知恵を貸してくれるだろうか。この試練に堪える為の力になってくれるだろうか。

そう考えていた、まさにその瞬間、私は自分の目の前に彼の姿を見出す。

「ファラミア・・・」
呼びかける言葉は声にならない。
彼は、最後に別れた時の姿のまま、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「ーー私は夢を見ているのか」
自分の声が、今度ははっきりと聞こえる。
「我らが共に、イムラドリスへと誘なう声を聞いたあの夢のように、私たちは同じ夢の中にいるのか。或いはこれも、あの奥方の力によるものだろうか」
「ボロミア」
彼が私の名を呼ぶ声も、現実の如く耳に届く。
「奥方とはどなたです。ボロミア、あなたは今、どこにいらっしゃるのですか」
そっと手を伸ばしてみる。当然、実体のない幻をすり抜けていくかと思った自分の手は、しかし、確かに彼の腕に触れた。
もう一方の手もゆっくり差し伸べ、私は彼の両腕を掴んだ。
「夢だ・・・」
自分の目から予期せぬ涙が溢れ出すのを、私は感じる。
その目を閉じると、今度は、
「兄上」
と呼ぶ弟の声が私の耳に聞こえ、彼の細い指が私の頬に触れて涙を拭い、私の髪を撫でるのを、私は感じていた。
このような実体、このような感覚を伴う夢が存在するのだろうか。
「なぜ、涙を流すのですか。なぜ、それほどつらい、それほど疲れきった顔をなさるのです」
懐かしい声が囁きかける。
もう一度目をあけ、その顔を見上げると、気づかわしげな表情がそこにあった。
そして彼は、私の頭を両手で抱いたまま身を屈め、私の額にそっと唇を寄せた。その感触も温かさも、もはや現実のものとしか思えない。
「ファラミア」
彼が離れようとした時、私はまたその両腕を掴み、引き寄せ、かき抱き、今度は自分から、唇を彼のそれに重ねた。
弟にするキスではなかった。しかし、彼は拒まない。私たちが最後に過ごしたあの夜のように。
今や、彼の体は私の体の傍らにあり、彼の手は私の頭を抱き寄せ、彼の唇は私の唇を深く受け入れる。
ようやく唇が離れた後、私は彼の肩に頭をもたせかけた。
「おまえのことを思い出さないようにしてきた」
私は言う。
「イムラドリスを発ってからは特に、おまえのことは考えまいとした」
「いとしい兄上、私は一日たりと思い出さない日はありませんでした」
彼は、両腕で私を抱きしめながら言う。
その腕の温かさ、力強さ。もし、これが夢なら、そして、こんなものを見せるのがあの奥方の力だとするなら、あのかたは何と残酷なことをなさるのだろう。

227SS 3/6:2004/07/15(木) 10:47
<ロリアン>














「随分お痩せになって、兄上、あなたの身に何が起きたのですか」
優しい囁きが耳をくすぐる。堪らず、私はその抱擁を解いた。
「夢でないなら、これは罠だ」
私は言った。
「おまえは何者だ。今どこにいる。どこから私を見ている。弟と同じ顔をし、同じ姿をし、同じ声で私に呼びかける、おまえは何者なのだ」
目の前にいる者は、ひどく悲しげな表情を浮かべる。
「私にも判らない。自分がどこにいるのか、あなたがどこにいらっしゃるのか。これが夢なのか、そうでないのかも」
そして、その手が再び私の頬に触れ、その唇は、そこを伝う私の涙を吸い取る。
「でも、あなたは今ここに、私の前にいる。こうして触れることもできる。夢でも罠でもいい。懐かしい兄上、お会いしたかった」
「ファラミア、ファラミア」
もう一度、私は彼の体をきつく抱いていた。
「こうしていてくれ。こうしていてくれるだけでいい」
あの夜、そう言ったのは彼の方だった。
私の腕の中で、眠りに就くその前に、
ーーーこうしていて下さい。朝まで。それだけでいい。
と。
「あんなことをするべきではなかった」
私はそう言っていた。
「あのまま兄と弟としてのみ、別れた方がよかった」
「為したことを後悔などなさらないで下さい、ボロミア」
彼は言う。
「私は悔やんだことなど一度もない。なぜなら、私はこういう風に生まれついた者なのだから。この世に生を享けた時から、それは私の中にあったものなのだから」

この子は、おまえは、自分が何を言っているか判っているのかーーと、問い質したかった。
私たちが共に為したあのことは、一刻の衝動などではなく、長年にわたって私たちを蝕み続けてきた狂気の噴出と呼ぶべきものだったのだろうか。或いは、迫り来る破滅をつかの間忘れ、互いの生を確かめる為に、あれほど強く求め合ったのか。その行き着く先にあるものが不毛の曠野であったとしても。かの忌わしき国の影は、そのような形で、ゴンドールとその都の中枢を侵蝕していたということなのだろうか。
不思議なのは、彼が、日ごろ誰より聡明な私の弟が、それを自明のこととして受け入れ、何ら疑念を抱いていないかのように見えることだ。
「私たちのしたことは、私たちを穢すものではない。何も変わらない。何も失いはしないのです、ボロミア」
彼の言葉が呪いのように、むしろ懲罰のように響く。長い時間をかけて彼をそういう人間にしてしまったのは、私自身であるのかも知れない。
そして、それこそが私の最大の罪だ。私たちが行なったこと以上に。彼の罪もおそらくそこにはない。
他の誰を愛するより、血のつながった実の兄弟を愛した。それのみを至上のものと思いなし、その他の愛に心動かされることはなかった。
私たちの罪はそこにこそある。
そして、その罰はーーー

228SS 4/6:2004/07/15(木) 10:50
<ロリアン>














「私は怖しい・・・」
そう呟きながらも、私の腕は、なおも彼の体を抱いている。夢であれ幻であれ、いま縋るものはそれしかない。
「何が怖しいのですか」
「何もかもがだ。この場所も、我が国の行く末も、私自身も、何もかもが、ただ怖しい」
そして、にもかかわらず、ついに私は言ってしまうのだ。
「おまえに会いたい」
と。
「一刻も早く帰りたい」
もちろんそれは、旅の仲間たちにも、これまでずっと言い続けてきたことだった。ゴンドールの為、ミナス・ティリスを守る為、人間たちの世界の為にーーー
しかし、今はただ、夢でも幻でもない彼に会う為に、私はそこに帰りたい。
互いが別の地へ赴き、もっと危険な戦いの中で、もっと長い期間離れていたこともある。その時でさえ、今ほどつらくはなかった。二度と会えないかも知れないなどと思ったことはなかった。
「あなたがいずこにおられようと、また私がどこにいようと、私は常にあなたのものです。生まれた時からずっと、そうであったように。私の心も魂も、いつもあなたのおそばにあり、あなたをお守りします」
そう言って、彼はまた私の髪を梳き、涙を拭い、額にキスしてくれる。
それは、弟がまだ幼い頃、私が彼を慰め、力づける為にしていたことだ。しかし、今は彼が私にそうしてくれている。
戦さに出る歳となってからは、都に戻る暇とて殆どなかった私が、次なる戦場へと向かう時、目に涙を溜めて、
ーーーあにうえ、いつおもどりですか。
と抱きついてきた、小さいあの子が。
「自分がこれほど弱い人間だとは思わなかった。おまえは、兄のあまりの不甲斐なさを見かねて、現れてくれたのだろうか」
自嘲めいた言葉が洩れる。
彼はそっと首を振った。
「かつて、あなたは私の英雄でした。私の目に、あなたは誰よりも丈高く美しく雄々しく、完全な人として映っていた。あなたは私の光であり風であり、私の世界の中心そのものであり、そういうあなたを、私は愛していたのです」
「それでは、おまえの中の私の地位は、今や失墜するばかりであろうな、弟よ」
「いいえ、ボロミア」
彼の声は優しい。
「あなたは今、そんなに悲しそうな顔をなさっている。苦しみ、傷つき、弱っておられる。でも、私のあなたへの愛が害われることは決してない。あなたは、今も私の世界の中心にいるのです」
そして、また唇が触れあう。
「あなたを愛しています。あなたの強さも弱さも、すべてを愛しています。今までも、そしてこれからもずっと、私の愛が欠けることはない。愛しています、ボロミア。いとしい兄上」
「愛している」
私も言う。それが破滅へと誘なう罠であっても。
呪文のように。誓言のように。祈りのように。
「愛している、ファラミア。どこにいても、この先何が起きようとも、私はおまえだけを愛し続ける。私の過去も未来も、すべてはおまえと共にある」
彼の唇に、彼の耳に、繰り返し繰り返しーーー

===

229SS 5/6:2004/07/15(木) 10:52
<ロリアン>














「ボロミア、ボロミア!」
と呼ぶ自分の声で、ファラミアは目を覚ました。
いとしい人の体を抱いていたはずの腕が、むなしく空を掻く。
「いかがなされました」
見張りの兵が声をかけるのを、
「何でもない。退がれ」
と戻らせた後も、彼は寝台の上に身を起こしていた。
既に薄明かりが射し込み始めた洞窟の中、聞こえるのは滝の音と、夜勤の兵士たちが動き回る僅かな物音だけだった。
いま誰の名を呼んだかを、部下たちに聞かれなかったかと危惧もしたが、聞かれたところで、彼らがきわめて親しい兄弟であったことは周知の事実であったから、特に不審に思われる謂われもなく、また、夢の内容が他所に洩れる訳もなかった。
しかし、夢が本当に他人に作用しないのなら、あのイムラドリスの夢、そして、今まで自分がその中にいた、夢ともつかぬあの出来事は何だったのかと、ファラミアは思う。
彼の手にも唇にも、兄の体、兄の唇の感触が、幻と言うにはあまりにも生々しく残っている。その体温や鼓動まで、ファラミアは、はっきり憶えていた。
現ならぬ場所であれ、兄と巡り会えたことを嬉しく思う一方、二人を共にそこへ導いたものが何であったのか、また、兄の心身に何が起きているのかと思うと、胸騒ぎがしてならない。
「・・・あなたがいずこにおられようと」
夢の中で語りかけた言葉を、彼はもう一度口に上らせる。
「私は常にあなたと共にあります、ボロミア」
兄であり、それ以上の存在でもある、愛する人に。

===

「妃よ、何を見たのか」
銀の髪の王が問う。
水鏡の前に立つ、黄金の貴妃が答える。
「これを通すまでもないこと。とても醜くあさましきものが、今夜この地に出来いたしました」
「して、それはそなたの力によるものか」
貴妃は首を振る。
「わらわの力でも、また、わらわに制御できるものでもありませぬ。あの者の方に、この森の空気に感応する素地があり、それがまた同じ血を持つ者を呼び寄せたまでのこと。あれを、人の子は愛と呼ぶのです。それが闇へと向かうひと足となるとも知らず」
「ああ、だが妃よ、それはまだ闇ではない」
銀の王の唇が、笑みに似た形を作る。
「愚かではあっても、それはとても強い力となって、人の子を動かすのだから。そして、それは未だ破滅に到ってはおらぬ」
「そうであればと思います。しかし、おのが真の望みに気づいたとしても、また自らそれを封じたとしても、この先、あの者の心に平安はない」
言い放つ貴妃の面に浮かんだのは、冷徹さか、諦念か、あるいは慈悲であったかーーー

===

230SS 6/6:2004/07/15(木) 10:54
<ロリアン>ラスト














濃厚でありながら清らかな、朝の空気の中を歩いていたアラゴルンは、探す相手が、大木の隆起した根に腰を下ろしているのを見つけた。
「ボロミア」
声をかけたが、相手は返事もせず、動きもしない。腰かけた姿勢のまま、眠っているようにも見えた。
「ボロミア?」
近づいてもう一度呼ぶと、その体が大きく揺らぎ、それから、
「アラゴルン」
と答えが返ってきた。
彼は、ゆっくり辺りを見回し、
「もう朝か」
と呟いた。
「ああ、ホビットたちが朝食の支度に取りかかっている。あんたを探すように頼まれた」
「食欲がありません」
アラゴルンは眉を顰め、彼の顔を見た。
「何か口に入れておかないと保たないぞ」
「わかっております」
「昨夜は眠れたのか」
「それがよく判らないのです。ずっと覚めていたようでもあり、深い眠りの中にいたようでもあり・・・夢を見ていた気もするのですが、思い出せませぬ」
「夢?」
「とても美しい夢であったようにも思え、怖しい悪夢であったようにも思えるーーこの森の空気のせいであるやも知れませぬ」
そう言いながら、彼は、ここではない、どこか別の世界をさまよい歩く者の目をしていた。
しかし、アラゴルンは、それ以上何か問うことはせず、
「先に行っている」
とだけ言って、踵を返した。そこで、ボロミアもやっと立ち上がった。


「・・・どこにいても、これまでも、この先もずっと」
ふと、そんな言葉がボロミアの口をついて出る。
前を歩く男がちらと振り返ったが、何も問うてはこなかった。
それは、夢の中で誰かが囁いた言葉のようにも思えたが、ボロミアがその意味を自らに問うことはなく、また、その夢の内容を思い出すこともなかった。
今はただ、それが希望をつなぐものとなり得るなら、あの男を都に連れて行くことを考えるべきだと思いつつ、彼は折れたる剣の継承者の後を追って歩き出した。

231221=225:2004/07/15(木) 10:58
6レス使う必要もなかったかも知れませんが、区切り等の都合です。

保管の際には、3、4の間に一行あけ願います。


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