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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

44崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/10/11(金) 22:26:55
翌日。なゆたはやはりマホロを手伝って食事の支度をしたり、城塞の中を見回って過ごした。
アコライト外郭の中では兵士が訓練をしたり、壊れた壁の補修を行ったりしている。

「午前中は待機で。各々好きなことをしてくれていて構わないよ。
 ただ……正午までには絶対にこの中央広場へ集合して。いい? それがこのアコライト外郭のルール。
 それを守れないと……死んでしまう、から」

マホロが注意を促す。
そして、城壁の内側にある広場に昨日狩ったトカゲやヒュドラの残骸を積んでおく。
『異邦の魔物使い(ブレイブ)』たちが午前中に各自自由行動していると、やがて正午が近づいてくる。
全員が中央広場に集まると同時、マホロは空を見上げた。
ほどなくして、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』たちのスマホの時計表示が正午を指す。
それまで晴れていた空が、にわかに掻き曇ってくる。

「……来る」

険しい表情で空を眺めながら、マホロがぽそ、と呟く。
そして、その直後。
トカゲたちが群れなす地平線の向こうから、真っ黒い雲のような『なにか』がアコライト外郭めがけて湧き出してきた。

「総員、退避! 建物の中に入って!」

マホロはそう叫ぶや否や、踵を返して脱兎のように建物の中へと飛び込んだ。
全員が建物に入ったことを確認すると、鉄扉を閉めて厳重に封鎖する。

ブゥゥゥゥゥ――――――――――ン……

扉の外で、巨大なプロペラを回したような轟音が響いている。
それはもちろん、飛行機が飛んでいるわけではない。それは『羽音』だった。
アコライト外郭の周辺を、何かが飛んでいる。
それも夥しい数だ。数えきれないほどの何かが扉の外を飛び回り、思うがままに蹂躙している。
あれほど士気の高かった兵士たちも、今は恐怖に身を縮こまらせている。
マホロも同様だ。ただ凝然と扉を睨みつけたまま、表情をこわばらせて佇立している。

「……マホたん、これは……」

「静かに。息を殺して、喋らないで」

事態を呑み込めないなゆたが訊ねようと口を開くと、マホロはそれを鋭く制した。
いつもの朗らかなユメミマホロの姿とはかけ離れた様子に、なゆたも口をつぐむ。
どれほどの時間が過ぎただろうか、実際の時間は5分から10分程度であったに違いない。
けれど永劫とも思えるような永い体感時間の果て、羽音が徐々に小さくなってゆき、徐々に消えてゆくと、マホロは息を吐いた。

「もう終わったみたいね。お疲れさま、みんな。……でも、まだ今日はやることがある。
 ……外へ出よう」

マホロは固く閉ざしていた扉に両手をかけ、ゆっくりと押し開いた。
黒雲は去り、今はもう空もすっかりと元の青さを取り戻している。
だが、先ほどの青空と今の青空とでは、一点だけ違いがある。
通信の魔術だろうか、空にまるで大きなスクリーンでも張ったかのように、ひとりの人間の顔が映し出されていた。

《――おやおや。おやおやおや! これは驚いたアル!》

男である。年齢はだいたい明神と同じくらいだろうか。
長い黒髪をオールバックに纏めた、ひょろりとした痩身の青年だ。
仕立てのいいダークグレーのスーツを隙なく着込んだ、ビジネスマン然とした姿はファンタジー世界にはまるで似つかわしくない。
男は丸眼鏡のブリッヂを右手の中指でくいと持ち上げると、奥の細められた糸目でマホロを見た。

《ここしばらく、城塞の中に引きこもっていたのが――今日は姿を見せてくれるとは思わなかったアル。
 ようやくワタシの軍門に下る気になったアルか? マホロ》

「バカなこと言わないで。
 たとえ死んだって、あなたのところへなんて行かないわ! 今日はあなたに宣戦布告するために出てきたのよ――
 覚悟しなさい、帝龍!」

《ほう》

男は愉快げに糸目をますます細めた。

煌 帝龍(ファン デイロン)。

世界でもトップクラスのIT企業、帝龍有限公司の長にしてニヴルヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』。
アコライト外郭攻略の主将であり、これからなゆたたちが戦うべき敵。
その姿が、ここにあった。


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