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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第五章

101崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/11/01(金) 20:00:27
作戦決行が明日と決まっても、アコライト外郭でやることは変わらない。
夜になると、城壁の上にある歩廊に夜哨が立つ。普段なら守備隊の兵士たちが持ち回りでするのだが、兵士たちも明日は出陣だ。
寝られる者は少しでも寝ておかなければならない。ということで、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』もそのサイクルに加わった。
三時間交代くらいで次の者に引き継ぎ、帝龍の攻撃に備えるのだ。
帝龍は定時にしか攻撃してこないと分かってはいるが、だからといって油断するわけにはいかない。
そして――
ジョンが夜哨に立つ順番となった時。城郭内へと続く螺旋階段をのぼって、何者かがジョンのいる歩廊にやってきた。

「えと……、こんばんは。
 交代の時間だよ、ジョン」

それは、なゆただった。手にはキングヒルから持ってきたお茶の入った木のコップをふたつ持っている。
ただ、交代の時間にしては随分早い。ジョンの担当はまだ一時間ほど残っている。
なゆたは湯気の立つコップのひとつをジョンへ差し出す。濃い目の紅茶だった。

「ね……ジョン。交代する前に、少しだけお話に付き合ってくれない?
 明日の戦いを考えると、ちょっと……眠れなくて。
 それに――話しておきたいことも、聞きたいこともあったから」

自分のコップを壁の上に置き、空を見上げる。
天には星の大河。文明の光に照らし出された都会では決して見ることのできない原初の夜空が、目の前に広がっている。
なゆたは思わず歓声をあげた。

「うわーっ! 見てよ、ジョン! すっごいキレイな星空!
 こんなの、プラネタリウムでお金を払ったってお目にかかれないよ!
 ほらほら! ジョンもこっち来て! 一緒に星を見ようよ!」

ジョンへ手招きして、自分の隣に来ることを促す。
なゆたはそれからしばらく、何も言わずに満天の星空を眺めた。

「……さっきはゴメン。あなたの提案した作戦を、全部否定するようなことしちゃって。
 でもね……そこは譲れなかったんだ。明神さんと同じように……絶対に譲っちゃいけないことだったから」

城壁に両手を乗せ、空を見上げたままで、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。

「ジョンは、親友になりたいって言ったよね。わたしたちと親友になるって。
 ……じゃあ。親友ってなんだろう? どういうものを親友って言うんだろう?
 友達と親友の違いって、なんだろう――?」

そう告げると、なゆたは静かにジョンを見た。身体ごとジョンへ向き直り、正対する。
まるで、ジョンの身体だけではなく。心と向き合うかのように。

「わたしはこう思うんだ。一緒に楽しいことをできる仲。面白いことを共有できるのが友達。
 そして――楽しいことだけじゃない。つらいこと、悲しいこと、痛いことも一緒にできるのが……親友なんじゃないかって」

ひゅうう、と夜風がなゆたのサイドテールにした長い髪を、フレアミニのスカートを。マントを撫でて吹きすぎてゆく。

「あなたはわたしたちを守るって言った。その守るは、何を守るもの?
 わたしたちの身体? 心? それとももっと別の何か――?
 あなたはわざと非情な作戦を提案して、みんなの憎しみが自分に向くように仕向けた。
 可能性のひとつとして、わたしや明神さんが当然議題に上らせなくてはならなかったその作戦を、敢えて自分が口にした。
 みのりさんから引き継いだ、タンクの役割を果たすように――」

違う? と。なゆたは後ろ手してジョンの顔を覗き込んだ。

「……黙っていれば、ヒーローでいられたのにね」

或いはジョンはそんなことは全く考えず、素で提案しただけなのかもしれない。
だが、意識的にであろうと無意識であろうと、あの場でその提案をすること。それ自体に意味がある。
食堂で敢えて仲間以外を見捨てるという作戦を提示し、みなに憎まれる。それが大事なのだから。


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