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パラレルワールド・バトルロワイアル part2

1 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:17:06 ID:hUjGYcYM
『バトル・ロワイアル』パロディリレーSS企画『パラレルワールド・バトルロワイアル』のスレッドです。
企画上、グロテスクな表現、版権キャラクターの死亡などの要素が含まれております。
これらの要素が苦手な方は、くれぐれもご注意ください。

前スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14757/1309963600/

【外部サイト】
パラレルワールド・バトルロワイアルまとめwiki
http://www45.atwiki.jp/pararowa/
パラレルワールド・バトルロワイアル専用したらば掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/14757/

81 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:18:34 ID:mfS682sw
予約分投下します

82闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:22:23 ID:mfS682sw
真理とタケシの二人はバーサーカーの脅威からどうにか逃げた二人は流星塾へと向かっていた。
普通に考えると向かう場所は洞穴なのだろうが真理の向かった場所は山の上だった。
地図に書いてある流星塾は山岳地帯にあったものだが、記載されているそれは洞穴の中にあるように思える配置である。
しかし真理は偶然そうなっていると思い、洞穴ではなく一直線に流星塾へと進行していた。
真理としては当然だろう。彼女にとって流星塾の思い出はとても楽しく、大事であったものであり、洞穴の中にあるべき建物ではないのだから。
だが、たどり着いた場所にあったのは一つの小さな山小屋だった。

「ここがこの流星塾ってところですか?」
「違う…、じゃあ流星塾は…?」


もし草加雅人なら、少なくともこの場にいる草加雅人であれば迷うことなく洞穴へと行ったであろう。
スマートブレインの地下で流星塾を見た彼であれば。そこで見た様々なもの、そしてその場にいた存在を見た彼であれば。
だが園田真理は知らない。彼女にとって流星塾での出来事は楽しかった思い出として刻まれているのだから。

位置を何度確認してもここが流星塾のあるエリアであることには間違いはないはずである。
だが外を見渡してもあるのは山岳の風景のみ。流星塾どころか建築物も見当たらない。
そもそもこの山小屋自体かなり不自然な位置に建っているものなのだが。

(じゃあこれはやっぱり…。でも言い出しにくいなぁ…)

タケシはやはり洞穴から行く場所なのではないかということも薄々気が付いていた。
だが、ここに来るまでの間に真理からはその流星塾という場所で過ごした思い出を聞かされていた。
その思い出を話す際の真理の顔がとても楽しそうで、とても輝いているように思えたのだ。
そんな彼女にこの事実を伝えるのは、タケシも躊躇せざるをえなかった。

真理は落胆しつつもあの巨人から逃げてきた後のこの移動で疲れたのか小屋にあった椅子に腰掛ける。
タケシはというともう少しじっくり見たいようで、小屋にあった家具などを物色していた。
無論その最中ずっと真理にどう切り出すべきか考えているようだった。
ずっとこうしていても埒が明かない。

「ん〜、どうしたものか…。あれ、グレッグル?どうした?」

ふと気付くとグレッグルは室内にあった棚の前に座ってそれをじっと凝視していた。
棚には何も置かれておらず、特に何かあるようには見えなかった。

「どうした?ここに何かあったか?」

問いかけてみるとグレッグルはタケシの方を一度向き、頬を膨らませた後また棚を見つめた。
何度見ても何かあるようには見えない。
と、その棚を凝視しているとある違和感に気がつく。

83闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:24:17 ID:mfS682sw

「ん?そういえばここの壁…」

一度小屋の外に出るタケシ。
それが違和感の正体が何なのか気付く。

「どうしたの?」
「ここの壁なんですけど、他の場所と比べて妙に厚みがあるみたいなんです」

そう、棚のある一角だけがなぜか他の三角より不自然な厚みがあった。
ぱっと見では分かりづらいが外と見比べるとその違和感はかなりはっきり分かる。

「つまり、どういうこと?」
「ここに何か隠されてるんじゃないかと…」

何かといってもこの場にあるのは棚だけである。
だがこのような場所にあるとすればこの棚自体に何か仕掛けがあるということのはずだ。
何かあるか確かめるために横から押してみたり色々まさぐってみるタケシ。
だが特になにか起こる様子はない。
タケシは棚にもたれかかり考え込む。

「おかしいな…。ここ絶対何かあるんだけど…」
「ケケ」

ふとグレッグルが鳴き声を発し、
その直後だった。棚が突然扉のように横に動いて、後ろの余分なスペース部分が開く。
突然開いたその中に、棚にもたれかかっていたタケシは驚きのまま入り込んでしまう。

「?!何だ!?」
「ちょ…!タケシ!!」

慌ててそこに吸い込まれるタケシを追いかける真理。
グレッグルがその後飛び込んできたと同時にその扉は閉じる。

「……」

訳も分からず呆然とする二人。
だが何が起きたのか把握するにはそこまで時間は掛からなかった。

「これ、エレベーターよね?」
「…みたいですね」

中はあまり広くはなく、何もない空間があるだけだった。
しかし、この空間が下に向けて動いていることは分かった。
しばらくしてまた扉が開くと、そこに広がっていたのは山小屋ではなく、真っ白で小さな空間だった。
行き止まりかと思いつつ壁に手を触れた時、そこが開き薄暗い廊下にたどり着いた。

84闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:27:17 ID:mfS682sw
「これは…どういうことなんですか?」
「分からないわ。でも…」

懐中電灯を片手に先頭を歩く真理。
やがてある一つの扉に手をかける。
中は机や椅子が積み重ねられており、床には色々なものが散らかっていた。
足元に気を付けながら、部屋の奥、絵が貼られている壁の前に立つ真理。

「間違いないわ…」

そこには様々な絵があった。多くの人が描かれた絵。男の子と女の子の二人が手を繋いでいる絵。
絵を描いた者の名前はこう記されていた。「園田真理」「草加雅人」

「ここは、流星塾よ」





ナナリーは流星塾へと向かうために洞穴へと向かっていた。
幸いにもすぐ近くに山道があったようで、そこまでの道もネモの導きのおかげで転んだりすることなく行くことができた。
だが、洞穴内はかなりデコボコしており、車椅子での移動はなかなか困難だった。
時間をかけながらもどうにかたどり着いた奥にあったのは一つの扉だった。

「中には誰かいる?」
『探知機を見る限り、この中にはいないようだ。この山の上に二人いるみたいだな。
 まあ気にすることはないだろうな』

マップ上では山の上にいるようだった二人の参加者の反応。確かにこの場から気にする物ではないだろう。
そうナナリーも考える。ただ、念のためにこまめにチェックはするようにしておく。

扉を開けて中に入るナナリーとネモ。
目の見えないナナリーには辺りの視覚情報を得ることはできない。
よってそれはネモに任せる。

「この中の様子ってどうなってるの?」
『確かここは流星塾と言う名前から教育施設とは考えていたが…、どうやらここは学校のようだな』
「学校?」
『ああ、どちらかと言えば昔日本にあった物に近いな。だがそれはかなり前の話のようだが』

辺りに無造作に積み上げられている机こそあるものの、廃校にしては随分と綺麗な廊下である。

85闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:29:51 ID:mfS682sw
(しかしここも学校か…。なぜこの場にはこうも学校が置かれているのだ…?)

ネモがマップを見たときから少しだけ思っていたこと。それはこの場に来て疑問となり始めた。
ナナリーの通っていたアッシュフォード学園。さらにそこからそれぞれ反対に離れた位置にある穂群原学園、見滝原中学校も名前からして学校だろう。
そして今いるこの流星塾。
なぜここまで学校が配置されているのだろうか。
学校だけではない。マップ上には参加者の家と思える施設まであった。
間桐、夜神、鹿目、美国、衛宮。
夜神を除くと一人ずつしかその苗字の者はいない。
ついでにNの城というのもある。
ただの民家であるならそこまで重要にはならないはずであるが、学校のこともあわせるとどうも気になってしまう。
何か意味でもあるのだろうか。

(考えすぎならいいのだがな)

だがこればかりは実際に行ってみないと分からないだろう。今いるこの場所もそうだ。

『ん?ナナリー!』

そんなことを考えながらナナリーの手にある探知機を見ると、不可解なことが起こっていた。

「どうかしたの?」
『さっきの二つの光点、この建物の中に入ってきているぞ』

山の上にいたはずの二人の参加者はどうやったのかこの流星塾の中に移動していた。
いくらネモでもずっと探知機を見ていた訳ではない。どうやってここまで来たのか、その瞬間を見損ねてしまった。
何らかの瞬間移動の能力を持っているのか、はたまた何かの移動装置でもあったのか。
己の中の油断を呪うネモ。そうこうしている内に光点はこちらに近付いてくる。

「警戒しなくてもいいわネモ。きっと彼らも殺し合いに乗っているわけではないはずよ」

足音はかなり慎重に足を運んでいる。その足取りから辺りを警戒しているのが分かる。
ナナリーの耳には少なくとも危険な人間のものとは思えなかった。
一つ気になるのは足音が三つしていることだろうか。二つは特におかしいところはないが、一つはかなり小さい足音だった。
その小さな足音がこちらに近付いてきた。
その足音はナナリーの目の前で止まる。

『?!何だこいつは?!』

ネモの驚く声が聞こえる。
ナナリーは小さな子供か何かかと思って手を差し出し、優しく声をかける。

86闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:31:34 ID:mfS682sw
「大丈夫よ。私はあなたを襲ったりしないわ」

ナナリーの手にその手が触れるのとさっきの声の主が近付いてくるのは同時だった。

「おい、グレッグル。お前どうし…、あ」

こうしてナナリーはタケシ、真理と出会った。



「あの、気を使わなくても大丈夫ですから…」
「いや遠慮しなくてもいいんだよ。こんな足場じゃ危ないだろう?」

ナナリーはタケシに車椅子を押されていた。
盲目で車椅子の少女という姿は真理、タケシに警戒心を起こさせることもなく。
ナナリーからしても声や雰囲気から特に悪い人ではないと印象づけ、おかしな齟齬も生まれることもなく今に至る。


「このグレッグルという子、ポケモンというのですか?」
「なんかそういうみたい。あなた何か知ってるの?」
「ちょっと気になることがあって。私の支給品にこんなものがあったのですが分かりますか?」

そう言ってバッグから取り出したのはプロテクター。
ポケモンという単語が記されていた支給品である。

「あ、これプロテクターだ」

タケシはそれを一目で何なのか把握する。
岩タイプのジムリーダーを勤めていたタケシにとっては重要なアイテムだ。
それを使うことで進化したドサイドンは彼の弟が継いだジムにもいる。

ナナリーは持っていたもう一つの支給品のことも一応聞いてみた。
タケシは知らなかったがそちらは真理が知っていた。
真理はそれを巧の持っていたファイズ強化ツールであることを説明する。

「じゃあこれは真理さんが持っていてください。私が持っていても仕方ありませんし」

そう言ってファイズアクセルを渡すナナリー。
真理としては巧と合流したときのために必要な物であり願ってもないことだった。
だが、同時に真理の中に一つの不安が現れる。
もしかして今巧の手元にはファイズギアはないのではないか、と。
タケシに支給されていたカイザギアもその考えの根拠の一つだ。
カイザギアがここにあるということは雅人や啓太郎の手元にはないということを意味する。
同じように、巧の手元にファイズギアがあるとは限らないのだ。
ではもしかすると、巧は今あの姿で戦っているというのだろうか?
木場や村上のような敵と。さっきのあの巨人のような怪物と。

87闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:35:00 ID:mfS682sw

「あの、タケシさん。そのポケモンという生き物についてもう少し詳しく教えてもらえませんか?」
「そういえば詳しく聞いてなかったわ。この際だから教えてくれない?」
「ああ、そういえば言ってませんでしたね。いいでしょう、このポケモンブリーダー、タケシ。
 分からないことがあれば何でもお答えしましょう!さあマリさん、聞きたいことがあればなんでもぎゃ!!」

真理の手を取り熱く語り始めるタケシに毒突きを食らわせ止めるグレッグル。

「あ…、大丈夫ですか…?」
「…だ、大丈夫、いつものことだから…」

慣れとは恐ろしいものだ。
しばらくグレッグルに引きずられていたタケシは間もなく立ち上がって何事もなかったのようにナナリーの車椅子を押し始めた。





流星塾の中を回っても特に変わったものは見つけられなかった。
真理の記憶からはかけ離れているほど散らかっているところが多かったものの、過ぎた年月を考えれば当然だろう。
しかしここを掃除する者はいなかったのだろうか?あの日々の後間もなくだれもいなくなってしまったというのだろうか?

と、ここまで考えたところで自分があの流星塾とこの場にある流星塾を同じものとして考えていることに気付く。
この場にある流星塾はあくまでこの場にある流星塾だ。いくら似ていようとあの思い出の場であるはずもない。
流星塾をそのままこの場に持ってくるでもしない限り。


やがて真理達が入ったのは理科室だった。
そこは当然何の変哲もないただの理科室である。真理の記憶の中では。
その通り、辺りにあるのは実験器具や人体模型など理科室定番の道具ばかりだ。
当然誰もいないはずの薄暗い空間である。


そしてある机に近付いたときだった。

「えっ?」

机の上においてある電灯に突然明かりが点ったのは。
そして薄暗い中では見えなかったものが目に止まる。

「これは…」

もしこれが本来の、会場に設置されたこの流星塾に通っていた真理であれば分からなかっただろう。
否、推測は立てられただろう。父親から送られてきたそれとそっくりであるこの物体に。
だが、ここにいる真理はそれとかなり似通った物をよく知っていた。
人間居住区に攻め入るオルフェノク達の、あの日大軍で襲い掛かり自分と乾巧を引き離したあの兵士達が装備していたものだから。

88闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:37:19 ID:mfS682sw
机の上で円柱のケースの中で何かの液体に浸かり浮いている物体。
それはスマートブレインの開発したライオトルーパーのベルトに似たものだった。

「これは…、あのカイザとかいう物にそっくりですけど…?」
「スマートブレインのオルフェノク部隊の兵士が使っていたものに似てるわ
 試作品か何かかしら?」
「もしかしてさっきの時計のファイズっていう言葉に関係があるのですか?」
「これは言ってみればファイズギアの量産型みたいなものなのよ」

真理としては思わぬ収穫だ。
繋がっているコードを外してバッグに入れようとしたところで真理の腕を掴む者がいた。
グレッグルが真理のその腕を掴んだ。
見ると何だか身震いしているような動きをしている。

「…真理さん、これって普通の人が使ったら危ないんじゃないんですか?」
「まあこれオルフェノク専用の物みたいだし。ただ知り合いに使えそうな人がいるから一応ね」

自分で使うことはできないが、仲間になってくれるオルフェノクがいたときこれがあると少しは戦力の足しになるだろう。
それにベルトについての情報を得る材料になるかもしれない。 

と、ここまで言ったところで真理はその知り合いの中にオルフェノクがいるということを言うべきかどうか考えた。
オルフェノクという存在を知らない彼らがオルフェノクかどうかで敵か味方かを判断するとは思えない。
巧はもちろん長田結花、海堂直也のように味方になってくれるだろう者もいるが、オルフェノク側についた木場、スマートブレイン社長の村上が仲間になってくれるとは思えない。
今は切り出しにくいが巧のためにもどこかでタイミングを見て話しておくべきだろうと考えた。


スマートバックルをバッグにしまい、理科室を見て回るが、他におかしなところは見当たらなかった。
ナナリーが持っていた探知機を見せてもらっても周辺には特に人が来る様子はない。
とりあえず理科室を出る三人。
これ以上ここにいても仕方ないと判断した真理は出口に向かいながら二人に意見を聞く。

「ねえ、二人はどこか行きたいところってある?」

本来ならここでしばらく休息をとってから出発するつもりだったが、この散らかりようと薄暗さでは休息はとれないだろう。
ならば人間居住区まで行こうかと思ったが、特にタケシにはこんな所まで付き合わせた事もあり、そっちの意見を優先しておこうというのが真理の考えだった。

89闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:42:58 ID:mfS682sw
「いいんですか?真理さんの知り合いがここに来るってことも考えられますけど」
「あ、そういえばそっか」

タケシに言われてその可能性を考える。
しかしもし巧や啓太郎との合流を考えるのならばここからは遠いがH-3のクリーニング店の方が向いている。
長田結花や海堂直也のような者達などこの場の存在も知っていないはずだ。彼らならむしろ居住区に行くだろう。
ここに来るとすれば雅人くらいしかいない。
ならばこの場にいる意味は薄いと思える。
一応何か書置きくらいはしておこう。一緒に居たくないとはいえあんな奴でも仲間なのだから。


「まあ大丈夫よ。ここに来そうな仲間はあんまりいないと思うし。
 ただもしものために伝言残して行くからあの絵のあった教室に寄らせて」

そう、あそこなら雅人への伝言を残しておく場所としては適しているだろう。

通る場所は来た道と同じ場所だ。
何箇所か鍵の掛かった部屋もあったが真理の記憶の中では特に何かあった場所でもないらしいのでそこは通り過ぎることにしていた。
あの謎の染みも今となっては気にするものではない。そのまま三人と一匹は通り過ぎる。
ただ、タケシには、そこを通り過ぎるときにその染みを気にかけるグレッグルが気になっていた。




「にしてもここ洞窟の中じゃない!
 なんでこんな所に流星塾があるのよ…!」
(ああ、やっぱりそうだったんだな)

その後最初の教室から出てきた真理は出口へ戻ろうと来た道を戻った。
しかし来た時のようにエレベーターの扉が開かずしばらく立ち往生するはめになってしまった。
だがナナリーの入ってきた場所からなら出られるだろうということで普通の入り口から出たのであった。
洞窟に埋まっているという事実に真理が怒ったのは出口から洞穴に入ってすぐのことだ。

流星塾を出たところでどこへ向かうのかまだ決まっていなかったことに気付く。

「タケシ、ここから近くに休めそうなところってない?」
「それならちょうどいいところが。この滝の下にあるポケモンセンターなんですけど。
 ここなら俺の仲間も立ち寄る可能性があるんです」
「あー、じゃあそこでいっか。ナナリーはどうするの?」
「滝の下、ですか…。分かりました。私もご一緒させてください」

タケシはもしナナリーが行きたい場所があるのなら優先するつもりではあったのだが大丈夫だったようだ。
そこについてから色々と情報交換すればいいだろう。
真っ暗であった夜も明ける時間は近い。
この深夜に移動詰めだった三人はとりあえずの目的地に向けて出発した。

90闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:44:52 ID:mfS682sw
「ところでポケモンセンターって何なのよ?」
「ポケモン達の治療や回復ができる施設で、一応我々の休息場所としても適した場所です。
 あ、そういえばポケモンについての説明まだでしたね…」
「あー、そんな話もあったわね。まあ向こうに着いてからゆっくり聞くわ」
「そうですね。ではこのタケシ、ポケモンセンターに着くまでマリさんをエスコートさせてもらいましょう!
 さあ、その手をこちらに――ぐほっ!!」

そんなやりとりの中、真理の中で一つだけ気になっていることがあった。
雅人への伝言を残すためあの教室に改めて入ったときに気付いたもの。
深く考えはしなかったがほんの少し疑問に思ったそれ。

(あそこの教室の地面にあった染み、あれは何だったんだろ?)





『さっきのあいつのこと、やはり気にしているのか』

ネモが問いかけてくる。自分にしか聞こえない声と今会話するのは控えたかったため頷くぐらいしかできなかったが。
さっきのあの少年は滝の下に落ちていったのだ。もし無事ならそこの近くにある施設にいる可能性はある。
なぜ戦いを仕掛けてきたのか、彼の兄とは誰なのか。もう少し話す時間があれば分かり合えるのではないか。
そういったことも気がかりだった。

『ああ、そういえばあのグレッグルとかいうやつ、意外と面白い能力を持ってるみたいだ』
「え…?」

聞くと、どうもあのグレッグルという生き物があのベルトを押さえたとき、ネモも一瞬何かを感じ取ったらしい。
見えたわけではないのではっきりとは分からないが、危険なものだったというのだ。
偶然かもしれないがネモは何か予知に近い能力を持っているのではないかと推測している。
いや、それ以上にもしそうだとしたら、

『あのベルトはあの二人が思っている以上に危険なものなのかもしれんな』

ナナリーの中の不安が大きくなる。
あの二人は悪い人ではない。まだ出会って間もないがナナリーにはそれがはっきり分かった。
そんな彼らが危険な目に会う。それは嫌だった。
だが何と言って説明すればいいのか。そもそも確信もないことを言って大丈夫なのだろうか。

『ナナリー、こういうことでは私が手を貸すことはできない。
 もし力のことを言うのも自由だ。だが後悔することはない選択をしろ』

それっきりネモは話しかけなくなった。
何か考え事でもしているのだろうか。

あの謎の少年、真理の持っているベルト、そしてアリスや兄達の捜索。問題は多い。
向かう先に何があるのか。ネモのギアスは何も示さない。

91闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:45:46 ID:mfS682sw
【B-6/洞穴付近/一日目 早朝】

【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(少)、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:Jの光線銃(4/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:ポケモンセンターへ行く。
2:タケシと同行。とりあえず今は一緒に行動。無駄死にされても困るし……
3:怪物(バーサーカー)とはできれば二度と遭遇したくない
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
 しかし機を見て話すつもりです   
※美遊とサファイアから並行世界の情報を手に入れましたが、よくわかっていません


【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(少)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:ピンプク、ウソッキーを探す
1:真理、ナナリーと同行。ポケモンセンターへ向かう。
2:ピンプクとウソッキーは何処にいるんだ?
3:サトシとヒカリもいるらしい。探さないと!
4:菊池啓太郎と出会えたらカイザギアを渡す
5:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
6:『オルフェノク』って奴には気をつけよう
7:万が一の時は、俺がカイザに変身するしかない?
8:並行世界?
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイアから並行世界の情報を手に入れましたが、よくわかっていません

92闇の実験室 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:47:13 ID:mfS682sw
【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:呪術式探知機(バッテリー残量7割以上)、ネモ(憑依中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いを止める
1:ポケモンセンターに同行する
2:とにかく情報を集める
3:人が多く集まりそうな場所へ行きたい
4:ルルーシュやスザク、アリスたちと合流したい
5:ロロ・ランペルージ(名前は知らない)ともう一度会い、できたら話をしてみたい
6:自分の情報をどこまで明かすか…?
[備考]
※参戦時期は、三巻のCODE13とCODE14の間(マオ戦後、ナリタ攻防戦前)
※ネモの姿と声はナナリーにしか認識できていませんが、参加者の中にはマオの様に例外的に認識できる者がいる可能性があります
※ロロ・ランペルージ(名前は知らない)には、自分と同じように大切な兄がいると考えています。ただし、その兄がルルーシュであることには気づいていません
※マオのギアス『ザ・リフレイン』の効果で、マオと出会った前後の記憶をはっきりと覚えていません
※ネモを通して、ルルーシュら一部参加者の名前を知りましたが、まだ全ての参加者の名を確認していません
※園田真理、タケシとはまだ名前しか名乗っていません。

【ネモ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康、ナナリーに憑依中
[思考・状況]
基本:ナナリーの意思に従い、この殺し合いを止める
1:とにかく情報を集める
2:参加者名簿の内容に半信半疑。『ロロ・ランペルージ』という名前が気になる
3:ロロ・ランペルージ(名前は知らない)を警戒
4:マオを警戒
5:ポケモンとは何だ?
[備考]
※ロロ・ランペルージの顔は覚えましたが、名前は知りません
※ロロ・ランペルージを、河口湖で遭遇したギアスユーザーではないかと認識しています
※アカギは、エデンバイタルに干渉できる力があるのではないかと考えています
※琢磨死亡時、アカギの後ろにいた『何か』の存在に気が付きました。その『何か』がアカギの力の源ではないかと推測しています
※参加者名簿で参加者の名前をを確認しましたが、ナナリーにはルルーシュら一部の者の名前しか教えていません
※マオが自分たちの時間軸では既に死亡していることは知りません
※ナナリーに名簿に載っていた『ロロ・ランペルージ』の名前を教えたかどうかは後続の書き手にお任せます


【スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555】
花形がオルフェノクの王に対抗するため製作した変身ベルト。
オルフェノクが使用することでライオトルーパーへと変身できる。
というのは完成品の話。
こちらは花形曰く失敗作であり、変身は不可能。
人間であれば装着するだけで死亡、オルフェノクであってもダメージを受ける危険物となっている。




※流星塾の絵が掲示してある部屋に草加宛の真理の書置きがあります。

93 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:48:40 ID:mfS682sw
投下終了です
問題点などありましたら指摘お願いします

94名無しさん:2011/10/23(日) 19:18:01 ID:QfTE2Tzc
投下乙です!こちらも無事合流、しかし話すべき事は山積み……ってなに嫌なフラグにしかならないのを拾ってますかw

95名無しさん:2011/10/23(日) 20:38:52 ID:6bH4EnU6
投下乙っす
どうにか合流は無事に済んだか…エリア的にもしばらくは安全だな
失敗作…ビリビリの刑に誰かが処されることになるのか…w

96名無しさん:2011/10/23(日) 22:20:07 ID:eoZXBFT.
>>93
乙です。

>>82の一行目の文章が、日本語としてちょっとおかしいみたいです。

97名無しさん:2011/10/24(月) 21:53:24 ID:6DKYcehk
>>93
投下乙ですー。
ふむ、やはり流星塾は地下なのかー。 なにやら危険なものまであるし。
グレッグルは地味にナイス。 見た目からだとアレだが結構バランスはいいメンバーなのかな?

98 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/24(月) 23:14:25 ID:XtedG2Qk
指摘と感想ありがとうございます
文章はwiki収録の際に直しておきます

それにしてもなんでこんな文章になってるんだ

99名無しさん:2011/10/25(火) 21:39:31 ID:n7ITWlVw
投下乙です

言いたい事は既に上で言われているなあ
とりあえず色々としなければならない事が多いんだよなあ…

100名無しさん:2011/10/28(金) 02:12:31 ID:j1eMktMo
投下乙です。
未完成スマートバックルって、装着すると死ぬのか。
満身創痍のたっくんが変身しようとして、止めを刺される図が頭に浮かんだ。

ところで、非常に重箱の隅な指摘で恐縮なのですが、真理の話し方に少し違和感があります。
今回のSSの真理は「分からないわ」「~かしら」みたいなちょっと芝居がかった喋りかたをしていますが、
どちらかと言うと「分かんない。でも…」「~じゃないかな」みたいな、少し砕けた話し方をする子じゃなかったかなと思います。
まどマギで例えると、ほむほむやマミさんよりもまどかに近い感じだったような。


劇場版555の記憶がだいぶ薄れてるので、劇場版真理の話し方はこれで正しい!とかだったらごめんなさい。

101 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/28(金) 03:02:20 ID:8lBTdw0M
おや、そうでしたっけ
一応wikiにて修正してみました
どうも口調はうろ覚えのキャラだと難しいもので

102 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:53:27 ID:QIHkP89I
これより、間桐桜、藤村大河を投下します。

103悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:54:54 ID:QIHkP89I



 飼育箱で夢を見る。
 廃墟の巣穴。
 黒色の蛹。
 誕生の記憶はない。
 繁栄にあつく。
 ルーツは原初からして不明。
 滅日の記憶はない。


        ◇


 ――――…………ィ……―――


 ふらふらと熱に浮かされたように彷徨う。
 あれだけあった高揚感は、身を削る様な飢餓感にすり替わり、まともな思考を奪っていく。
 まるで底なし沼。もがけばもがくほど沈んでいく泥の泉。
 もうどこに向かっているのかわからない。
 そこに向かうことに意味があるのかさえわからない。


 ―――足リ……ナイ―――


 ああ、意味など考えるまでもなかった。
 私はあの人の所へ向かうのだ。
 あの人のために、より多くの人を斃(コロ)すのだ。
 そのために、この飢えを満たして力を付けるのだ。


  ―――足リナイ―――


 だから私は歩いている。
 だってこっちからは、

「―れ? もし――て……桜ち――? やっぱ――――んだ。 よかっ―ぁ、無――ったの―。もうホント心――たんだか―」

 とてもオイシソウな匂いが――――


 フラフラと覚束ない足取りで声のした方へと歩く。
 ゆらゆらと揺らぐ視界で相手を捉える。
 目の前には、舌が蕩けそうなご馳
「―――ふじむら……せんせい?」
 目の前には、最後に見た時と何ら変わりない藤村先生の姿がある。

 あれ……?
 私は今、何を考えていたのだろう。
 頭は熱くてぼうっとしているのに、辺りはとても寒くて、矛盾した感覚に吐きそうになる。
 まるでぬるま湯の泥の中にいるみたいに気持ち悪い。

「よーし、これ――とは士郎と――バーちゃ――遠坂さ――けね。だいじ――――いじょ―ぶ、みんな元――してる――」
 頭がズキズキして、ぐらぐらして、藤村先生の声が良く聞こえない。
 けど先輩の名前で、ふわふわ浮いていた頭がひょっこり顔を上げて、
 姉さんの名前で、ギシリ、と右手に握っていた物を軋ませた。

 ……なにを、軋ませたのだろう。
 恐る恐る右手を覗きこめば、そこには私に力をくれるグリップが。
 腰にはベルトが、いつでも変身出来るように巻かれている。

「あ――も、士郎―――ぱり心配―え。セイ―――ゃんは強―し――坂さ――あ――いい―ら何とか―――だけ――士郎――ら無暗――――突っぱ―――うだ――なあ」
 辛うじて認識出来た言葉から、藤村先生が何を言ったのかを推測する。
 先生は、先輩が心配だ、と言ったのだろうか。

104悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:55:36 ID:QIHkP89I

 ああ、確かに先輩は心配だ。
 もう死んだ姉さんなんかどうでもいいけど。
 先輩はすぐにどこかに行ってしまいそうで、鳥籠にでも閉じ込めてないと安心できない。

 じゃないとあの姉さんに似た人に、先輩を盗られてしまうかもしれない。
 もっと力を付けないと。力を付けて、はやくあの人を殺さないと。

「そ―――ても――難――え。みん―――こん―――に巻き――れる――て。
 殺―合い――てやっ―――るかー! って感――ねー」
 たぶん、殺し合いなんてやれるか、と藤村先生は言ったのだろう。
 まったくだ。殺し合いなんて先輩が悲しんでしまう。
 そんな事は許せない。
 だから殺し合いなんて終わらせないと。
 もっと力を付けて、“悪い人”を殺さないと。

 そのためにも――――タクサンゴハンヲタベナイト。

「ッ――――――――………………!?」
 今……なにを考えた?
 私は一体、“何を食べようとした”?

「私………藤村先生を………?」
 そんなはずない。そんな事考えてない……!

 人間なんて食べれないし、食べたくもない。
 それに食べるということは命を奪うということで、それはつまり殺すということだ。
 藤村先生は“悪い人”じゃないから殺しちゃいけないし、そもそも先生は先輩と同じ大切な人で、


 ………でも、目の前の藤村先生は――――こんなにも美味しそうで――――


「――ゃん、どうし―の? 顔―悪いよ? 具合――悪い―?」
 意識が飛んでいた。ちゃんとしていないと、記憶がコマ送りみたいになる。
 その間に、藤村先生が、私の様子を心配して近づいていた。
 その様子があまりにも無防備で、あまりにも簡単に捕らえれそうで、私は、

「だめ、来ないでください……!」
 出来る限りの力で、必死に自分を抑え込んだ。

 怖い。怖い。怖い。
 私は今、何より自分が怖い。
 どうして私は、藤村先生を殺すことを考えてるんだろう。
 どうして私は、大切な人を食べようとしているんだろう。

「さ――ちゃ――…?」
 私の声に思わず足を止めた藤村先生が、心配そうに名前を呼んだ。

 ああ、どうしてこの人はそんな顔が出来るんだろ。
 藤村先生は本当に私の事を心配して、気に掛けてくれている。
 でもその様子には何の陰りもなくて。
 こんな所に呼ばれたのにまだいつも通りの明るさを保っていて。
 けどそれは、

 藤村先生は何も知らないからで。

「どう― の? なん― ―つも―桜ちゃ― ―ない ?」
「いつもの……私……?」
 その言葉に、グラリ、と天秤が傾く様な音を聞いた。
 いつもなら心が癒されたその明るさが、今はどうしてか癇に障る。

「いつもの私って……何ですか?」
「――らちゃ―  ? ―体――  ?」
 間桐の家の事を黙って、自分が魔術師である事も黙って、セイバーさんの事も黙って。何もかも黙ったまま、藤村先生も、先輩さえも騙していた私の事?
 それともあのジメジメとした薄暗い蟲倉で、よくわからないものに嬲られていた私の事?

105悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:57:18 ID:QIHkP89I

 そんなの決まってる。
 藤村先生は何も知らない。
 先輩が魔術師だって事も知らない。
 何もかも隠していた、嘘の私しか知らない。

「魔術師でも何でもない、なんにも知らないくせに……」
 私の事も、セイバーさんの事も、先輩の事も。
 なんにも知らない、まるで白紙のノートのようで、
 そんなんだと、

「藤村先生。私、藤村先生が思っている様な綺麗な女の子じゃないんですよ?」
 ぐちゃぐちゃに汚したくなってしまう。
「                              」
 真っ白な画用紙を黒いクレヨンで塗り潰すように。まだ誰も踏んでない新雪を滅茶苦茶に踏み荒らすように。ひらひらと舞う綺麗な蝶の肢を一本一本引き千切るように。
 目の前でそれをした時、この人は一体どんな顔をしてくれるのか、想像しただけで笑いが込み上げてくる。

「小さい頃からよくわからないものに触られて、汚れてない所なんかどこにもなくて――――今だって、私の手は真っ赤に汚れていて」
「                              」

 ああ――――私、おかしくなってる。

 そんな事をする意味はないのに。
 そんな事をしたら大切な物を壊してしまうのに。
 そんな事をしたくてしたくて堪らない。
 こんなんじゃ私、きっと先輩に嫌われてしまう。
 でも。

「でもいいんです。こんな私でも、出来る事があったんです。先輩の為に、私が代わりになるんです」
 こんな私でも、先輩の為に出来る事はある。
 今の私だから、先輩の為になれる。

「                              」
「先輩は優しい人だから、こんな殺し合いに呼ばれたら悲しんでしまう。
 先輩は正義の味方だから、きっと誰かを助けるために無茶をしちゃう。
 だからそうなる前に、先輩を悲しませる人はみんないなくなってもらうんです」
「                              」
 ベルトの力さえあれば、誰にも負けない。
 さっきはちょっと油断したけど、もう失敗なんてしない。
 今度こそちゃんと殺してあげるんだから。

「そうすれば先輩は悲しまない。
 そうすれば先輩は傷つかない。
 そうすれば先輩は、ずっと綺麗なまま」
「                              」
 あの夕陽のグラウンドの中、諦めてしまえという思いを、頑張れという想いに変えてくれた少年。
 あの人に守ってもらいたいと願ったから、今度は私が、あの人を守って見せる。
 だから。

「藤村先生。私にとっては、あなただって綺麗な人なんです。
 優しくて、暖かくて、子供みたいで。なんにも知らないからこそ綺麗な藤村先生」
「                              」
 私と先輩と先生の、大切な日常の象徴。
 先生がいなくなったら、先輩が悲しむ。
 先生がいなくなったら、帰る場所がなくなってしまう。

「だから、来ないでください。
 いま近づかれると、わたし――――何をするか、わからない」

 壊したくないのに壊してしまいそうで、近くになんて居られない。
 今にも“影”が粟立って、藤村先生へと襲いかかりそうで怖い。
 自分の事なのに自分がわからなくなりそうなのが一番怖い。

 だからはやく、藤村先生から離れなきゃ。
 はやく“悪い人”をみんな殺して、いつもの日常に帰らなきゃ。

「へんしん」
 体を黒と白の装甲が覆う。跳ね上げられた身体能力で駆けだす。
 見る見る離れていく藤村先生。ただの人間である彼女には決して追いつけない。
「                              」
 その爽快感が心地いい。藤村先生と別れるのが心苦しい。―――から離れるのが口惜しい。
 私を引き止める声がしたけど、止まったら自分がどうなるか分からない。

106悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:58:31 ID:QIHkP89I

「、っ――――――」
 本当は、藤村先生の傍にいたかった。
 藤村先生の傍で、いつものように笑っていたかった。
 あの日溜りのような人と一緒に、先輩に会いに行きたかった。
 けど、今の自分じゃ先生を殺してしまう。

「………ぃ………」
 全身を包む高揚感。
 今までは心地が良かった力。
 今でも心地が良いそれは、けれど。

「こんなんじゃ、足りない」

 もはやより強く、飢餓感を覚えさせるモノでしかなかった。

「足りないから、苦しいんだ。
 足りないから、傍にいられないんだ」
 全身を苛む飢餓感。
 そのせいで私はおかしくなってるんだ。
 “悪い人”じゃないのに藤村先生を殺そう(食べよう)としているんだ。

「――――――――」
 足りないものはわかっている。
 もとより欲しいものは一つだけ。
 それ以外のものなんて何もいらない。
 それを手に入れる為にも、

「早く会いたいです、先輩」

 はやく、先輩に会わなければ。
 先輩に会えば、この渇きも満たされる。
 そうすればきっと、いつもの自分に戻れる。

 けど。

「――――あの人の所為だ」
 こんなに渇きを覚えたのは、あの人と会ってからだ。
 あの人が、姉さんに似たあの人さえいなければ、私はおかしくなんてならなかったのだ。

 あの人がいる限り、私はまたおかしくなってしまうかもしれない。
 せっかく満たされても、また乾いてしまうかもしれない。
 そうしたら今度は、先輩まで殺したくなるかもしれない。

 ―――そんなのは許せない。

「……許せない―――絶対に許さない」
 姉さんみたいな口をきいて、先輩をバカにして、私をおかしくして。

「ははは、あははは………」
 ああ、ホントにおかしい。
 こんなにも腸が煮えくりかえっているのに、あとからあとから笑いが込み上げてくる。

 でも理由は明白だ。
 あの人が私にした事は、間桐の家で私がされた事とはぜんぜん質が違う。
 あんな風にバカにされたことは初めてだった。
 私だけじゃなく、私の大切な人まで貶められたのは本当に初めてだった。

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは―――――!!!!」

107悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:59:04 ID:QIHkP89I

       そう。

 こんな屈辱は味わったことがない。
 こんな恥辱は身にうけたこともない。

 ―――だから、愉しい。

 あの人に、この身を焦がすほどの憤怒をぶつけ、叩きつける時がどれほど気持ちよい事か想像もつかない。

 壊す。壊す。壊す。
 少しずつ、一息に、この上なく優しく、痺れるぐらい残酷に、あの命を犯しつくそう。

 そう。

 四肢を引き千切って肋骨をあばいて臓物をよじり出して、助けをこう喉を踏み潰して眼を噛み砕いて頭蓋を切開して脳髄をバターのように地面に塗りたくるその瞬間―――――!


「待っていてください、すぐに殺してあげますから……!」


 愛する人への想いを胸に、憎悪を振りまいて少女は駆ける。
 藤村大河という日常に照らされた少女は、それ故に自身の闇をより濃くさせる。
 それはあたかも、ふらふらと揺れる振り子のように。光に照らされ現れる影のように。

 笑って、狂ったように笑い続けて、少女は全身に紅い紋様を蠢かせていた――――


【B-5/森林/一日目 早朝】

【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(小)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、無自覚の喪失感と歓喜、強い饑餓、ダメージ(頭部に集中)
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(変身中)、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)
[道具]:基本支給品×2、最高級シャンパン@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:先輩(衛宮士郎)の代わりに“悪い人”を皆殺し
0:先輩に会いたい
1:藤村先生から離れる/あの人(ルヴィア)を惨たらしく殺す
2:先輩(衛宮士郎)の所へ行く
3:先輩(衛宮士郎)を傷つけたり悲しませたりする人は、みんな殺す
4:あの人(ルヴィア)は―――絶対に許さない
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※「黒い影」は桜の無意識(気絶状態)でのみ発現します。桜から離れた位置には移動できず、現界の時間も僅かです
※頭部のダメージにより、外界の認識が難しくなっています。

108悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:59:33 ID:QIHkP89I


        ◇


 そうして間桐桜は、藤村大河の前から走り去って行った。
 慌てて追いかけようと彼女もまた走り出すが、
「ま、待ってよ桜ちゃぶふっ!!??」
 彼女の腕から離れ、その足を掴んだピンプクによって無理矢理に止められた。

「うごごごご。い、いたい……物凄くいた〜い」
 ビタン、と顔面を強打し、激痛に悶える。
 それでもやるべき事があるからと身を起こすが、ピンプクに足を掴まれたままで動けない。

「プクちゃん? お願い離して、はやく桜ちゃんを追いかけないと!」
 足を引っ張りながらピンプクにそう言うが、ピンプクは首を振るばかりで離さない。

「どうして!? 今の桜ちゃん絶対変だった! だからあのまま一人にするなんて出来ないよ!」
 間桐桜は明らかに様子がおかしかった。
 自分が何を言っても上の空で、魔術師だとかなんにも知らないだとか自分は汚いとか、そんなよくわからない事ばかり喋って。
 挙句の果てには士郎の代わりになるとか言って、ヒーローみたいに変身してどこかへ行ってしまった。

 あんな状態の彼女を放っておくことは、これでも根っからの教師である藤村大河に出来る事ではなかった。
 しかし、

「プクちゃん?」
 ピンプクは、明らかに何かに脅えてその体を震わしていた。
 今にも泣きそうなのを堪えて、自分を押し留めていた。

 ピンプクが何に脅えているのかはわからない。
 だが自分の勘も、何かがヤバイことは感じていた。
 それと間桐桜の事は別問題だが、ピンプクを放っておくこともまた、藤村大河には出来なかった。

「………わかったわ、プクちゃん。おいで」
 その言葉で、ピンプクは大河の胸に飛び込んだ。
 それでも怯えたままのピンプクを安心させるように抱きしめる。

「桜ちゃん………」
 もうどこにも姿の見えなくなった間桐桜を思う。

 彼女に何があったのかは分からない。
 今すぐにでも追いかけたいが、今のピンプクの状態ではそれは出来ない。

 けど、間桐桜と話がしたかった。
 そうしていつもの彼女に戻って、いつものように笑って欲しいと思った。


【B-4/教会跡近く/一日目 早朝】

【藤村大河@Fate/stay night】
[状態]:額に大きなこぶ、顔面強打
[装備]:タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品、変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:出来ることをする
1:桜ちゃんを追いかけたい。けど……
2:事が終わった後だろうとは思うが、一応教会跡に行ってみる
3:士郎と桜を探す
4:セイバーと凛も探す
5:南から聞こえて来た音の正体が少し気になる
[備考]
※桜ルート2月6日以降の時期より参加
※ミュウツーからサトシ、タケシ、サカキの名を聞きました
※Nの部屋から『何か』を感じました。(それ以外の城の内部は、ほとんど確認していません)
※間桐桜の状態が“危険”であると感じ取りました

109 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 17:00:49 ID:QIHkP89I
以上で投下を終了します。
何か意見や、修正すべき点などがありましたらお願いします。

110名無しさん:2011/10/28(金) 17:04:37 ID:IZmDvcf2
投下乙です!
藤ねえ、無事に生き延びてくれて良かった! 桜もどんどんやばくなっていくなぁ……
彼女がこれから堕ちてしまうのかそれとも立ち直ってくれるか……
もしも士郎と出会ったら、どうなるだろう。

111名無しさん:2011/10/28(金) 17:34:34 ID:eXHvkqVE
投下乙!
あぶねえ…まさにタイガー危機一髪ってところか
桜が最後の一線を踏みとどまれたのは幸運なのか不運なのか…
しかしほんとタイガーが死ぬかと思ってハラハラしましたw

112名無しさん:2011/10/28(金) 21:55:18 ID:Afvmc6vM
>>109
投下乙ですー。
おおお、どうなるかと思ったけどもギリギリ助かったかー。
桜にとってはある意味士郎よりも知られたくない聖域的な人だしなぁ。

113名無しさん:2011/10/29(土) 08:29:00 ID:gAz134O.
投下乙です!

タイガーはなんとかギリギリ、ってとこかな。しかしこれ桜がルヴィアも士郎が好きって知ったらとんでもないことになる予感しかw

114名無しさん:2011/10/29(土) 11:50:33 ID:IusJDN9w
投下乙
プクちゃんかわいいよプクちゃん
タイガーと士郎次第で説得もでき…たらいいな
ここまで堕ちたら難しそうだが

115名無しさん:2011/10/29(土) 22:34:16 ID:a9.5V.e6
投下乙です

タイガーが、或いはタイガーならと思ったけど完全に堕ちた人間には…
とりあえず生きてはいるが桜にとって士郎とは違う意味で特別だったのかなあ…

116 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:24:54 ID:PEXuR5os
草加雅人、鹿目まどか、投下します

117天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:25:29 ID:PEXuR5os


「ここは段差があるから気をつけて」
「はい……きゃっ!」
 可愛らしくバランスを崩すまどかを、草加は片手で軽々と支えた。
 申し訳なさそうな彼女に対し、笑顔を向ける。
「ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」
「気にすることはないさ。外灯があるとはいえ、暗いところの移動は危険だからね」
 なだめつつ、周囲を警戒しながら草加は民家が密集する道を進んでいた。
 もともと夜での行動は、オルフェノクが活動時間に決まりがないためお手の物だ。
「けど、本当にわたしの家にむかってよかったんですか?」
「構わないさ。流星塾は逃げないしね。ところで、その喋り方でいいのかな?」
「こっちのほうが楽なんです」
 そうか、とだけつぶやいた。
 草加たちが向かっているところは、彼女の家である。
 最初に提案されたときは煩わしさも感じたが、魔法少女である彼女の友人が集まるかも知れない、と聞いて判断を変えた。
 杏子とは一合だけ交わした間柄だが、力自体は侮れるものではない。
 オルフェノクや三本のベルトに匹敵するくらいの力はあるだろう。
 ならば敵に回さず厄介な敵にぶつけるか、味方にするべきである。
 先は長い。北崎に村上峡児、木場勇治と始末せねばならない存在は山ほどいる。
 対してこちらの武器は不慣れなファイズのベルトのみ。
 乾巧は利用するつもりではあるが、しょせんはオルフェノク。
 いつ敵につくかわかったものではない。
 三原もいない今、戦力の強化は当面の目標である。
 しかし、一つ問題がある。
 乾巧がオルフェノクであることをいつ伝えるかだ。
 杏子や彼女に対し伝えなかった理由は作れる。
 たとえば、
「草加さん、どうしました?」
「乾巧について考えていてね。君や夜神さんたちにも伝えていないことがあるんだ」
「えっ、どうして……」
「俺にもまだ整理がついていない。それに、真理や啓太郎くんに伝わるのは好ましくないんだ。みんなを追い詰めるかも知れないからね」
「そうなんだ……」
 だけど、と笑顔を浮かべながら草加は続ける。
「心の準備ができて、仲間たちにも冷静に受け止めさせる準備ができたら、君にも教えるよ。それまでは俺を信じてくれ」
 これで草加の仕込みは終わりだ。まどかは素直に頷いている。
 それにしても不思議だ。彼女は『普通』すぎる。
 頭が切れていないが、愚鈍というわけではない。
 運動神経は多少心もとないが、それでも同年代に劣っているわけでもない。
 可愛らしい容姿だが、抜群に恵まれているというわけではない。
 なのになぜこの場に呼ばれ、殺し合いを強要されているのか。
 まったくもってわからないが、せいぜい役に立ってもらう。
 草加雅人の復讐のために。

118天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:26:03 ID:PEXuR5os



 鹿目まどかの家を目指す途中、草加は違和感を感じていた。
 家は彼女の話では特筆した家ではないという。そこら中に見かけるものと大差ないようだ。
 なのに地図に記されている。彼女が参加者だとしても、彼女の家を再現して地図に示す根拠は薄い。
 実際、彼女の実家と変わりないかどうかは行ってみないとわからないが、ほぼ同等のものだったとして思考を進めてみる。
 参加者の家をこの土地で再現し、地図に記す状況といえばなんだろうか。
 名簿と地図を照らし合わせると、参加者の家だと思わしきものがいくらか存在している。
 この『鹿目家』を始め、『間桐家』、『衛宮家』、『Nの城』、そして『西洋洗濯舗 菊池』である。
 ならば啓太郎とまどかの共通点を抜き出すことが、彼女の呼ばれた理由を推察する材料となるわけだ。
 とはいえ、草加がパッと思いついた共通点は少ない。
 二人とも平凡な人間であり、魔法少女やオルフェノクといった超常能力者の知り合いが多いことか。
 なるほどと納得がいった。
 要するに彼女や啓太郎は贄なのである。
 魔法少女やベルトの適合者といった者を本気で殺し合わせるための餌だ。
 地図にはないが、真理もそういう目的で呼び出されたのだろう。腹立たしい。
 主催者を殺す理由がもう一つできた。
 だが、悲観することばかりではない。
 まどかを手元に置いているのは、充分メリットであるということだ。
 啓太郎のように超常能力者の知り合いが多いというのなら、こちら側に取り込めば戦力が増えるということだ。
 と、なると地図に記されている人間には会ったほうがいいだろう。
 まどかや啓太郎と同タイプの人間なら、こちらの味方を増やせる可能性が高い。
 第二の方針になり得る。
「ふぅ」
「疲れてきたのかな?」
「大丈夫! まだぜんぜん平気です」
 強がっているが、疲労しているのは目に見えて明らかだ。
 困ったような表情を作りながら、草加は一つ提案する。
「そこの家で休憩していこう」
「草加さん、ごめんなさい。気を使わせちゃって……本当はいきたいところがあるのに……」
 申し訳ないと主張する彼女を面倒に思いながらも、態度は崩さない。
 優しげな笑顔を浮かべて、諭すような口調を続ける。
「いや、放送というやつが近いから、聞き逃さないように休んでいきたいんだ。『禁止領域』も『脱落者』も必要な情報だからね。付き合ってくれるかな?」
 まどかは顔を真赤にして、首肯した。

119天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:26:41 ID:PEXuR5os



 台所で作業している音をまどかはボーッと聞いていた。
 草加は家に入るなり時間を確認し、料理を作るから待っているようにと言ったのだ。
 こんな状況で食事の用意が行われているなんて、変な気分だった。
 家の中はとても広く、お金持ちが住んでいたのだろう、と感想を抱く。
 地図にも記載されている、とは草加の弁だ。確かめてみると、『間桐』という人の家らしいことがわかった。
 草加は自身が料理している間、少し休んでいるといいと言っていたが、とてもそんな気にはなれない。
 目をつむると嫌なことばかり浮かんで、怖くてしょうがないのだ。
 杏子は生きていた。だからさやかも生きていて欲しい。いつもの、そばにいた明るい彼女で。
 そう願うのは自然だと思う。
「浮かない顔だね」
 急に声をかけられて、まどかは驚いた。
 声の主はもちろん、草加雅人だ。彼は出来上がった料理を並べ、箸をおいた。
 並べられたのはごはんとお味噌汁。それにさばの味噌煮だ。
 意外と和風な人らしい。いただきます、と互いに言い合い、一つ口に入れる。
「あっ……美味しいです」
 味噌で煮こまれたサバは程良く身がほぐされており、噛みやすい。
 染み込んだ味付けはやや薄いものの、甘すぎずないように調整されていた。
 骨は取り除いているようだが、一見ではわからないほど見た目は崩れていない。
 どうやって取ったのだろうか。まどかは感心する。
 そういえば、自分のパパも主夫のため料理がうまかった。最近は料理上手な男性が増えているのだろうか。
 ただ、草加の場合は何でもそつなくこなすという印象のほうが強い。
「これでも一人暮らしが長かったから、栄養が偏らないように自炊していたんだ。好みの味じゃなかったら、遠慮なく言ってくれ。次までには改善しておく」
「そんな、こんなに美味しいし、文句なんてつけれません」
「そう言ってくれると助かる」
 お互いに笑顔を交わし、食事をすすめる。
 草加は『食べて休んで、体力を蓄えることも君の仕事だ』と、料理に取り掛かる前に言っていた。
 頼りになるとはこの人のことを言うのだろう。助けられてばかりで情けない。
 そう自己嫌悪に陥っているとき、スピーカーを通したような声が響いた。
 ああ、これが放送の始まりか。


 草加は箸を止めて、天を睨みつけた。
 真理が生き延びていることを、そして奴が生き延びていることを、珍しく神に祈った。
 そう、この手で殺してやらないと気が済まない。
 奴だけは絶対に生かしておけない。
 北崎。
 流星塾のみんなの、自分の復讐は絶対に果たす。
 だから草加は一瞬だけ、本性を映した顔を天井に見せた。

120天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:26:57 ID:PEXuR5os

【D-4/間桐家/一日目 早朝】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう
4:佐倉杏子はいずれ抹殺する
5:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:ひとまず自分の家へ
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんは信用できる人みたいだ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

121 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:27:20 ID:PEXuR5os
投下終了
問題点などありましたら、指摘をお願いします

122名無しさん:2011/11/03(木) 01:35:33 ID:iaDmP2Ro
>>121
投下乙ですー。
ここも朝食かーw いや当然なんだけどw
その影で着々と考察を進める草加さん。 やはり頼りにはなる、のだよねー…

123名無しさん:2011/11/03(木) 01:39:07 ID:b77p0FdY
投下乙です。
まどか達はまどかの家に向かうことで決定ですか。
そっちにはおりこがいるので心配です。
他にも危険人物はいますし。

124名無しさん:2011/11/03(木) 07:55:34 ID:rEzvBcJk
投下乙です!
うーん、やっぱり草加さんは色々と良い味だなぁ。ただその子は(今はまだ違うとはいえ)普通の子やなくて一種の神様やw

125名無しさん:2011/11/03(木) 14:27:09 ID:MSGs2B42
投下乙です

火種になりそうな草加さんがロワである意味頼りがいになるとか皮肉だなあ
彼とそりが合う参加者なら組めるけど逆ならなあ…
さて、まどかの家に行くのか。でもそっちはおりこがいるぞ

126 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/06(日) 00:08:04 ID:McpJHrvk
第一回放送投票が開始されます
投票期間は11/7(月)00:00〜11/8(火)00:00の24時間です。


No.1 《第一回放送》―システム01:円環の理― ◆UOJEIq.Rys死

No.2 無題 ◆vNS4zIhcRM氏


上記の二つのOPの内、一番良いと思ったものに投票してください
一人一票での投票となります
無効票でない限り、間違えて他の作品に投票してしまったとしても投票先の変更はできません
ご注意ください

投票スレはhttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14757/1308752361/となります

127 ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 20:59:20 ID:t16tFM2A
呉キリカ、ニア分を投下します

128言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:00:19 ID:t16tFM2A
「織莉子は健在のようだけど、魔法少女達も未だ死せず、か……」
 潮風に髪をなびかせながら、呉キリカが1人ぽつんと呟く。
 背後からの陽光を受け、ゆらゆらと揺れる黒髪の煌めきは、鴉の羽根のように妖艶だ。
 そうして後光を浴びながら、西の海岸に立つキリカは、先ほど流れた放送を、反芻し思い返していた。
「あァん、もう、やんなっちゃうなぁ。ここに飛ばされてからというもの、本気で役に立ててないじゃないか」
 がしがしと頭を掻き毟りながら、苛立たしげに吐き捨てる。
 誰かに怒っているわけではない。
 魔王を名乗るマント男に、邪魔をされたことを怒るでもなく。
 現状のそもそもの原因である、あの傲岸な男を呪うでもなく。
 誰でもない己自身の醜態が、誰より何より許せなかった。
「とんだ腐れだ。役立たずだ。いっそ腐れは腐れらしく、腐って果ててしまおうか」
 この身は織莉子のためのもの――そのために人間性を対価に捧げ、彼女は騎士(ナイト)の叙任を受けた。
 それがどうだ。このざまだ。
 かれこれ6時間以上が経つというのに、たった今読み上げられた名前の中に、己が手にかけた者は1人もいない。
 織莉子の役に立つという、何より優先すべき至上任務を、自分は何一つ為せていないのだ。
 そんな役立たずは要らない。愛の守護者が笑わせる。
 唯一無二の存在意義を、果たすことができないのなら、命の価値は無為へと消える。
 死ねよ、死んでしまえよと、己の無能をひたすらに呪う。
「……あー、でも駄目。やっぱり駄目だ。このまま死んでしまったならば、それこそ私は無能のままだよ」
 しかし、そんなろくでもない恨み節は、30秒ともたずに中断された。
 自殺は責任を取ることとイコールではない。
 せめて名誉挽回をせねば、呉キリカの汚名は消えることなく、永遠に人類史に刻まれることになる。
 それはそれでなんか嫌だ。どうせ墓標に刻まれるなら、こんな一文の方がいい。
 すげーカッコいい呉キリカ、愛する織莉子の役に立ち、愛に殉じてここに眠る。
「というわけで前言撤回……まずはあれをどうにかしないと」
 陰湿ムードはこれで終わりだ。
 わざとらしく右手を顎に沿え、斜め上方をキリカが睨んだ。
 魔獣の金眼が見据えるものは、洋上に浮かんだ巨大な影だ。
 見上げんばかりの巨大戦艦――飛行要塞・斑鳩である。
 黄金の巨人に蹴散らされ、キラ対策本部でぐだぐだして、遂にここまで辿り着いた。
 唾棄すべき害悪が立てこもる、極悪外道の本拠地の、その目前にまで到達したのだ。
「やれやれ、恩人も人が悪いね。そりゃあ戦艦だとは言ってたけどさ、それがヤマトだとは聞いてなかったよ」
 大和ならまだマシだったのに、と。
 肩を落とし、溜息をつく。
 魔法少女、そして魔女――人界と魔界の境界を跨ぎ、怪異の領域に触れたキリカには、
 生半可なものが化けて出ようが、そんなものは今更だと、驚かず受け止める覚悟があった。
 ところがバゼットの言っていた斑鳩は、そんな非常識的な常識すらも、一撃で粉砕するほどの、絶大なインパクトを宿していたのである。
 大仰な翼を船体から伸ばし、奇天烈なエンブレムの刻まれたそれは、どう見てもSFの宇宙船だ。
 その内に宿されたテクノロジーが、見た目通りのものであるなら、これは厄介な強敵である。
 レーザー光線だの波動砲だの、危険な粒子だのがばらまかれかねない。さすがに魔法少女でもSFは怖い。
「あの船全部が飲まれるように、速度低下の魔法を張れば……いや、駄目だ。それは少し贅沢すぎる」
 このまま突入するとして、あれに襲われたらどうするか。
 ああでもなければこうでもないと、ぶつぶつとシミュレーションを繰り返す。
 とりあえず、敵艦を速度低下で覆って、全武装を低速化させるというのはNGだ。必要な魔力が多すぎる。
 というかそもそも、レーザー光線を遅めたところで、光速が高速になるだけだ。どの道避けられるとは思えない。
「……あっ、でも向こうは一応、レスキュー隊のお友達募集をしてるんだった」
 少し目を丸くして、言った。
 そうだ、悩む必要などなかったのだ。
 もし仮に見つかったとしても、現状では、こちらが攻撃されることは100%有り得ない。
 仲間を集めている人間が、その相手を殺してしまっては、本末転倒だからである。
「そうと分かれば、行くとしようか。目指すは正面突破あるのみだ」
 くつくつと不敵に笑いながら、少女は砂浜に足跡を刻む。
 こうしてキリカは、本来ならば敵地であるはずの斑鳩へと、堂々と侵入を果たしたのだった。

129言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:01:20 ID:t16tFM2A


(……以上、3ヶ所か)
 きゅ、きゅっ、と油性ペンの音を立て。
 司令室に座したニアが、地図に×印を描き込んでいく。
 合計3マスのエリアは、先の放送で発表された、立ち入り禁止指定の場所だ。
 それぞれ、禁止化される時間にはばらつきがあるものの、今のうちから入らずにおくに越したことはないだろう。
 もっとも、現在地との距離を考えれば、どう足掻いても到達不可能かもしれないが。
(しかし……)
 どうにも解せない、と。
 黒いマーキングの施された地図を、瞳を細めて睨みつける。
 焦点の合わせられた場所は、3番目のG-7エリアだ。
 そこは1つきりの孤島が浮かんでいるだけで、あとは海でのみ占められている。
 本来なら、この斑鳩のような船を調達しなければ、到達することそのものが困難な場所だ。
 状況からして、海路で脱出を図ることが、不可能であろうことも推測できる。
 そこに行こうとする者はなく、そこに行く意味もほとんどない。
(ならば何故、わざわざそこを禁止エリアにしたのか?)
 あくまで無作為に選んだ結果ということか?
 否、それは有り得ない。相手が馬鹿でない限りは、普通こうしたエリアは、事前に選択候補から除外される。
 ランダムに決定する度に、こんな場所ばかりが紛れこんでいては、貴重な禁止枠が勿体ないからだ。
(ならばそこには、理由がある。わざわざ意図的にここを選び、侵入不可能とした理由が存在する)
 火のないところに煙は立たない。
 不可解としか見えない行動には、必ず意図が存在する。
 なれば、この度のこの行動の意図は、
(……ポケモン城の隠匿、か)
 導き出された結論は、それだ。
 この3番目の禁止エリアは、明らかに孤島に存在する施設――ポケモン城を隠すために設定されている。
 恐らくこの施設には、主催の存在に迫れるような、何か秘密が隠されていたのだろう。
 それに転送された誰かが、からくりに気付きかけたので、その追及の手を遠ざけるために、侵入の不可能な場所とした。
 推測するならば、そんなところか。
(狙ってやったというのなら、相変わらず白々しいというか……)
 白けた目つきで、地図から離れた。
 反撃の目を詰むための隠蔽工作……それは理屈としては分かるが、これは明らかに性急過ぎる。
 こんなからくりの解明など、ニアでなくても十分に可能だ。
 ちょっと頭の回る程度の者でも、この不自然さには気付くだろう。誰だって疑いを持つに決まっている。
 いいやそもそもさかのぼれば、このポケモン城の存在そのものが、あまりにも下策というものだ。
 何故、自分達に辿り着くようなヒントを、この儀式の会場に用意したのか。
 止むにやまれぬ事情があったとしても、それならば何故、そんな場所に、参加者の誰かを転送したのか。
(これもまた、反抗を望む者へのヒントのつもりか?)
 であれば、わざとそうしたとしか考えられない。
 それが反抗の手を強めるように、わざと分かりやすいヒントを配置して、わざと気付きやすくなるように禁止エリアにした。
 お前達の望むものはここにあるぞと。
 脱出の手立てが知りたければ、呪いを解いて入ってみろ、と。
 証拠は1つから2つに増えた。
 有り得なくもない、程度の推論は、ここに来て現実味を帯びてきた。
 あるいはこの推理そのものも、お膳立てされた誘導だというのか。
「まったく、嘗められたものですね」
 苛立ちも怒りも通り越し、呆れにも近い声色で、無感動に呟いた。
(まぁ、ぼやいたところで、どうせすぐに調べに行くことはできないが)
 そう思いながら、ニアの視線は、司令室のモニターへと向かう。
 6時間以上を費やした甲斐あって、斑鳩の操縦システムは、9割がた理解を終えるに至っていた。
 残すところの細かいところは、実際に動かしてみれば分かるだろう。
 既に先刻承知の通り、禁止エリアに選ばれた、ポケモン城にはまだ行けない。
 急げば10時までには着けるだろうが、それでも探索にかけられる時間が少なすぎる。
 ならば操舵の練習も兼ね、当初の予定通り、他の参加者を探しに行くべきか――

130言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:03:06 ID:t16tFM2A
「……ん?」
 その、時だ。
 ふと、何の気なしに見た監視モニターに、何者かの影が映っているのに気付いたのは。
(侵入者か……)
 私としたことが迂闊だった。こんな見落としを犯すとは。
 軽く額を抑えながら、己が不始末を自戒する。
 恐らくこの侵入者――黒髪の歳若い少女だ――は、ニアが地図とにらめっこしている間に、この艦内に入ってきたのだろう。
 それに気付けなかったというのは、失態といえば失態である。
 何せこちらには、身を守るための武器がないのだ。
 あれが殺し合いに乗っている人間で、それが気付かない間にここまで来ていたのなら、間違いなく大変な目に遭っていたはずだ。
 ともあれ、あれがバゼットの連れてきた、脱走計画に賛同する協力者という可能性もある。
 まずは相手の声を聞き、行動の指針を確かめなければ。
「――そこの貴方、止まってください」
 艦内放送のスイッチを入れ、マイクに向かって、声を発した。
 モニターに映った黒髪の少女が、ぴくりと身を震わせ足を止める。
 きょろきょろと視線を左右させているのは、カメラか、放送機材を探しているのか。
「落ち着いてください。すぐに貴方をどうこうしようというつもりはありません。
 とりあえずは貴方の名前と、ここに来た理由を聞かせていただけないでしょうか」
 協力的な相手であれば、受け入れる。
 敵対的な相手であれば、ここから逃げる。
 モニター越しに見える彼女が、何を想い、何のためにここに来たのか。
『……やあやあ、キミがニアなんだね?』
 第一声は、こちらの名前。
 大仰に、芝居がかったような動作で、ニアの名前を少女が発する。
『私の名前は呉キリカ。別段怪しい者じゃないよ。我が恩人バゼット・フラガ・マクレミッツの紹介を経て、キミの元へ馳せ参じた次第さ』
 得られた情報は3つだ。
 1つは、彼女の名前が呉キリカであること。
 1つは、ニアの名前を知っていたこと。
 1つは、それをバゼッド・フラガ・マクレミッツから聞き出したということ。
 現状、ニアという人間が、ここに立て籠っていることを知っているのはバゼットだけだ。
 その両者の名前を知っているということは、キリカはバゼットと言葉を交わし、彼女からニアの名を聞き出したということなのだろう。
 言葉の調子から察するに、自分が取っている立場も理解している。
 やましい素振りも見せることなく、自身の名前も公開している。
 敵対しているという線は、考えにくい。
 彼女はある程度バゼットに信用され、この場所へと案内された協力者――そう考えた方が、筋が通る。
「分かりました。ひとまず貴方を、私の所へ案内します。こちらの誘導に従ってください」
 とりあえず、テストは合格だ。
 たとえ本心を隠していたとしても、交渉に持ち込めば、言いくるめるだけの自信はある。
 ニアはこの呉キリカという少女と、対面することを選択した。

131言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:03:50 ID:t16tFM2A


「――はーっはっはっ! よくここまで案内してくれた! そしてたった今よりこの艦は、この私が乗っ取らせてもらう!」
 このくそやかましいシージャック宣言が、対面した呉キリカの第一声であり。
「……バゼットの馬鹿」
 このやたらと簡潔な悪態が、迎え入れたニアの第一声である。
 そりゃまあ、見事に騙されて、ここまで連れてきた自分も大概間抜けだが、バゼットはそれに輪をかけた大馬鹿だ。
 あの女は、こんな見るからに頭が足りなくて、見るからに不審人物な少女を、危険がないと判断したのか。
「無駄な抵抗はするんじゃないよ。生かすも殺すも与うるも奪うも、全ての権限は私にあるんだ」
 元から妙な奴だとは思っていたが、実際に出会った呉キリカは、予想を遥かに超えたパープーだ。
 どこぞの学生服を着た少女は、ろくに武装もしていないのに、根拠もない大口を叩いている。
 身のこなしもバゼットとは異なり、至って年相応の普通の動作だ。特に身体能力に長けているとか、そんな様子はないように見えた。
 これなら死んでいった弥海砂の方が、いくらかマシとも取れるかもしれない。
 だがそれはそれで、分からないことがある。
「貴方先ほど、怪しい者じゃないって言ってませんでしたか?」
 こいつはバレない嘘がつけるほど、腹芸が上手そうには見えないのだ。
「んー? ああ、確かに私は怪しくはないよ。このバトルロワイアルでは至って普通の、誰だってやってそうな殺し屋だもの」
 ああ、成る程。こいつ馬鹿などころか痛い子だ。
 彼女の脳内独自世界では、先ほどの言葉には一片たりとも、嘘偽りはなかったのである。
 そりゃあ確かに分からないわけだ。そんなの顔に出てこないもの。
 こいつは骨の折れそうな相手だ。気だるげに肩を落としながら、ふぅ、と重い溜息をついた。
「さってと、じゃあこっちも質問だよ……キミは何故、こんな馬鹿な真似をしているんだい?」
 たん、たん、とリズムを刻むように。
 場違いに軽快な足音を立て、詰め寄るキリカが問いかける。
「……私は見ての通り、戦って生き残れるほど強くはありません。私がこの場で生き延びるには、こうする他に手はないのです。
 それに、人殺しのゲームに乗るというのは、私の主義に反します」
 貴方に馬鹿と言われたくはありませんでしたが、というのは、さすがに口にはしなかった。
「くっ、はは、主義と来たか。それは無意味というものだよ、キミ。私達の正義以上に、正しいものなど有り得ないんだ。キミの正義に意義はない」
「私達? なるほど、共犯者がいるのですか」
「さぁてね。そこまで話す義理はないよ」
 ステップを踏み、歩み寄り、手元のコンソールに腰を下ろしたキリカを、ニアは冷静に分析する。
 意外に思ったのは、この傍若無人に振舞う少女が、「正義」という言葉を口にしたことだ。
 一見何も考えていない、混沌の権化のような人間に見えて、ある種の信念・倫理観を持ち合わせている。
 口ぶりからして、ノリで名乗っているキラ信者とは違うのだろう。
 殺人で人心を掌握したキラだが、あくまでその目的は犯罪抑止だ。その信者があんな軽々しい口調で、殺すと口にするはずもない。
「……それで? 呉さん、貴方は私をどうするつもりですか?」
 少し棘のこもった語調で、問う。
 自分が正しいと思うことを信じ、正義とする――それがニアの持論だった。
 だから極論するのであれば、キリカがどんな正義を語ろうと、その行為そのものを責めるつもりはない。
 問題はその正義の内容が、自分にとっては気に食わないものであったこと。
 そしてそれを他者に強要し、他人の正義を蔑ろとしたこと。
 それがニアにとっては不快であり、ニアの正義観の範疇においては、紛れもない害悪に他ならなかった。
「もちろん、始末させてもらうよ。キミの存在は邪魔なんだ。私の悲願成就のためには、みんなに死んでもらわなきゃ」
 ああ、鬱陶しい。
 けたけたと笑う黒髪の女は、馴れ馴れしく白いニアに右手を伸ばし、肩を組んで言い寄ってくる。
 金眼に宿された念は、見えない。
 ふざけているのか、本気で殺す気なのか。
 私達の正義とやらに毒されて、人格が壊れきってしまったのだろうか。
 黄金は本音も虚飾も語らず、掴みどころがないという印象を強化させる。

132言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:05:05 ID:t16tFM2A
「いいんですか? 私は貴方がたにとっても、有益な情報を持っているのに」
 Lの後継者になると決めた時から、このような修羅場は覚悟していた。
 しかし、ここで死ぬのはまっぴらごめんだ。
 こんなアホには殺されたくない。ここで死んでしまうくらいなら、いっそキラと刺し違えた方がマシというものだ。
 故にニアは生き残りを賭けて、キリカに対して交渉を切り出す。
 通用するかどうかは分からない。人の話を聞かない馬鹿は、人を騙す賢人よりもやりにくい。
 だからといって何もせず、大人しく殺されるわけにはいかない。
「有益な情報?」
「貴方は気付いていないかもしれませんが、実は私は、既に脱出のルートについて、ある程度目星は立てているのですよ」
「へぇ! そりゃすごいや。でも、じゃあ何でそこに行かないの?」
「色々と事情がありましてね。もうしばらく時間をかけないと、そのルートを使うことはできないんです」
「なら駄目だ、遅すぎる」
 この作戦は失敗だ。
 一瞬煌めいた金の瞳は、しかし即座に熱を失った。
 それくらいの時間も待てないというのか。まるでわがままな子供じゃないか。
 なんてことは口にしない。不満はぐっと胸に留める。
 ヤケになるのはまだ早い。これが駄目でも、交渉材料はもう1つあるのだ。
「それで? 情報っていうのはそれっきり? だったらお粗末な上に役立たずだねぇ、私達の世界には要らないよ」
「勝手に人の限界を決めつけないでください。そうですね……貴方、船は欲しくないですか?」
「船? この宇宙戦艦のことかい?」
「宇宙戦艦ではありませんが、私はこの船の操舵方法を、およそ9割がた把握しています。
 複雑なコンピューター制御がなされていますから、私のような専門家でなければ、動かすことは困難でしょう」
「ふむふむ、成る程。私の運転手になるから、その間だけ生かしてほしいと、キミはそうお願いしているわけだね?」
「必要なら、武装の解析も進めてみましょう。とりあえず今はそういうことで、手打ちにしてはもらえないでしょうか」
 これは嘘だ。
 武装はただ単に使えないのではなく、いずれも撤去されている。
 存在しないものを使う術など、いくら検索したところで見つからない。
 しかし、相手は殺し屋だ。武器が使えるかもしれないというのは、彼女にとって大きなプラスになる。
 それに先ほどとは違って、航行システムは解禁されているのだ。せっかちなキリカも、これを切り捨てはしないだろう。
「ふーむ……」
 ほうら、案の定そうなった。
 顎に手を当て考え込むキリカを前にして、ニアは内心で密かにほくそ笑んだ。
 もちろん、これはあくまで時間稼ぎだ。
 彼女の言うように合わせて斑鳩を動かし、味方が見つかれば、そいつに追い払ってもらえばいい。
 いざという時は、不意を突いて逃げ出せばいいだけだ。
 口やかましい置き物が増えただけ――そう考えれば、まだ気分もよくなる。
「……よっし、いいだろう! こっちも絶賛人捜し中の身だからね。お望み通り、キミを使ってあげようじゃないか」
 ぱちん、と指で音を立て、キリカは提案を快諾した。
「あぁ、でもおかしな考えは持たない方がいいよ? 誰も私からは逃げられないんだからね」
 刹那、頬を這う、指先。
 鳴らした親指と中指と、その間にある人差し指が、掬うようにして動く。
 くい、と顎を持ち上げられ、ニアの目とキリカの目が合った。
 これは戯れではなく、真意。
 光沢はこれまでになく冷徹に煌めき、黒水晶を射抜くように光る。
 今まで面白半分だった少女の、ようやく見せた本気の警告。
 その殺意は本物だ。たとえ見た目が童女でも、この目でひとたび睨まれたなら、常人は為す術もなく竦み上がるだろう。
「……覚えておきます」
 もっとも、天才ニアは常人ではない。
 この程度の殺意の吹雪なら、彼にとってはそよ風だ。
 刺すような殺気をさらりと流し、瞳を細めてそう返す。
 その様子が面白くなかったのか、ちぇっと吐き捨て手を離すと、キリカは立ち上がり、正面モニターの方へと歩いていった。

133言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:06:41 ID:t16tFM2A
「しっかしまぁ、キミも無茶をするもんだね。駄目だよ? 子供は子供らしく、大人しくしてなきゃあ」
 制服の背中を見せながら、遠ざかるキリカが暢気に言う。
 その命を摘み取ろうとする者が、口にしていい言葉ではないように感じたが、もうそこはスルーすることにした。
 ここまででもう慣れきったことだ。いちいちツッコミを入れていては、こちらの神経がもたなくなる。
「ええ、よく言われます。ですが私、こう見えて、多分貴方よりも年上なんですよ」
 とりあえず、訂正すべきはそこくらいでいいだろう。
 ニアの誕生日は1991年――今年の誕生日が来ていないので、現在は18歳ということになる。
 見たところ、ジュニアハイであろうと思われるキリカよりは、確実に年上の年齢だ。
「っ」
 ぴくり、とキリカの肩が動く。
 珍しく、反応は沈黙だ。
 彼女の性格からすれば、えー本当にー、だの、全然見えなかったー、だの、そういう反応が来るだろうと思っていたのだが。
 あるいは、同い年くらいに思っていた相手が、年上だったという事実に、素直にショックを覚えているのかもしれない。
「だから、それは本来私の台詞です。中学生くらいの子供が、人殺しをするなんて、滅多に言うものじゃないですよ」
 背中を向けているキリカからは、その感情は読み取れなかった。
 故にニアはごく自然に、それまでと別段変わらない口調で、世間話のようにそう言った。
 本当に、世間話のつもりだったのだ。
 これまでの自分達のやりとりのように、「余計なお世話だ」という答えの分かり切った、その程度の話のつもりだった。
「――駄目だなぁ、キミは」
 それが間違いだと分かるよりも早く、少女の背中が黒に染まり、
「え、」
 それが間違いだと分からないままに、ニアの意識は暗転した。



 ニアには人の心が分からない。
 もちろん、犯罪心理学には長けているのだろうが、こと人の感情というものに関しては、彼は恐ろしく鈍感で無遠慮だ。
 それが敵であれ味方であれ、遠慮というものを知らないから、相手を苛立たせずにはいられない。
 社交性は人間の最底辺――引きこもりがちな性分と合わせれば、あのLよりも酷いと言っていいだろう。
 故に、いかんせん経験の少ないニアには、それは最期まで読み切れなかった。
 錯乱した犯罪者にとって、その行為がいかに危険なものであったのかを。
 正気を失った犯罪者が、その神経を逆なでされれば、どんな行為に及ぶことになるのかを。
「ニア、それは言っちゃいけなかったんだよ」
 漆黒のキリカは淡々と呟く。
 三爪二対の閃刃は、爛々と赤黒い煌めきを放つ。
 血みどろの爪をだらりと下ろし、金眼の魔獣は眼下を見下ろす。
 狂乱の呉キリカが嫌うことが、この世には全部で4つ存在した。
 1つは愛すべき親友・美国織莉子の悪口を言われること。
 1つはその織莉子と自分の関係について、無責任にとやかく言われること。
 1つは今の自分になる前の、卑屈で根暗で臆病な自分。
 そして残る最後の1つは。
「私は、子供扱いされるのが、大っ嫌いなんだ」
 こればっかりは、耐えられない。
 たとえあの織莉子がそうしたとしても、無視して受け流すことはできない。
 それを彼女にとってはどうでもいい、赤の他人が口にすれば。
「あーあ……せっかくの船、無駄にしちゃった」
 後には、何も残らない。


【ニア@DEATH NOTE(漫画) 死亡確認】

134言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:07:11 ID:t16tFM2A


 激情の嵐が吹き荒れた後、そこに残ったのは静寂だった。
 元々静かだった司令室だが、2人が1人に数を減らし、機械の音も消えうせた今、1人が黙れば無音が生まれる。
 そんな静かな室内で、唯一響いていた音が、がさごそと物を漁る音だった。
「うーん、どっちが役に立つかなー……仕方ない、両方持ってくか」
 呉キリカ。
 さながら彼女は不発弾。
 ふとしたことでキレる彼女は、怒りが冷めるのも非常に早い。
 一旦怒りが解消されれば、後にはすっかり忘れている。
 さりとて刹那に凝縮された、憤怒の感情の破壊力は、紛れもなく爆弾の爆発そのもの。
 あっけらかんとした様子で、ニアのデイパックを物色する彼女は、
「あ、これいいね。後で暇潰しにでも使おう」
 すぐ傍らにいたニアを、つい数分前に、血みどろの八つ裂きにしたばかりだったのだ。
 むせかえるような臭気にも、おくびも怯んだ様子もなく、彼女はそこにあったパズルを取る。
 いくらか付着していた返り血は、脱ぎ捨てた制服で拭き取った。
 子供扱いされた腹いせに、怒りに任せてニアを惨殺。
 そうして誰もいなくなったので、ちょうど乾いていた私服に着替える。
 そろそろ用もなくなったので、戦利品であるニアの支給品を物色。
 これらを何の嫌悪感も、いいや疑問すらも覚えることなく、一切のタイムラグを置かぬままに、キリカはやってのけたのだった。
「さーってと、それじゃそろそろずらかるとするかな」
 暢気そのものな声色で、どっこいしょ、と腰を起こす。
 その時ちょうど目に留まったのは、物言わぬ男の遺体だった。
 白一色のニアの姿は、赤一色の肉塊に変わった。
 顔面だけはかろうじて、奇跡的に原型をとどめている。
 しかしそれ以外の箇所は、溢れんばかりの怒りを納めきれず、ほぼ全てがズタズタに引き裂かれていた。
 ミンチとまではいかないが、人体の面影はほとんどない。
「……ま、ここまで徹底的にやったなら、脱出する気も失せるだろうね」
 白い三日月が口から覗いた。
 あはははは、と笑いながら、八重歯の少女が歩み去った。
 希望を求め集まる者には、この死体は最高の警告文になりうるだろう。
 これがお前達の末路だ。滅多なことをしようものなら、お前達も同じ目に遭うぞ。
 きっとバゼットの案内した者は、この無惨に打ち捨てられた遺体から、そんなメッセージを読み取るはずだ。
「私達の邪魔はさせないよ。そう……それが誰であってもね」
 獣は血に濡れ残忍に笑い、闇より来たりて命を食らう。
 黒き魔獣は獲物を求め、斑鳩の司令室を後にした。


【H-2/斑鳩/一日目 朝】

【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)、ソウルジェムの穢れ(2割2分)
[装備]:私服、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ
[道具]:基本支給品、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)
    スナッチボール×1、魔女細胞抑制剤×1、ジグソーパズル×n
[思考・状況]
基本:プレイヤーを殲滅し、織莉子を優勝させる
1:織莉子と合流し、彼女を守る。ひとまずは美国邸が目的地。
2:まどかとマミは優先的に抹殺。他に魔法少女を見つけたら、同じく優先的に殺害する
3:マントの男(ロロ・ヴィ・ブリタニア)を警戒。今は手を出さず、金色のロボット(ヴィンセント)を倒す手段を探る
[備考]
※参戦時期は、一巻の第3話(美国邸を出てから、ぬいぐるみをなくすまでの間)
※速度低下魔法の出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です
※バゼット・フラガ・マクレミッツから、斑鳩の計画とニアの外見的特徴を教わりました。
※バゼット・フラガ・マクレミッツを『大恩人』と認定しました。

※H-2・斑鳩司令室に、ニアの遺体とデイパック(基本支給品入り)が放置されています

135 ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:07:37 ID:t16tFM2A
投下は以上です。
問題点などありましたら、指摘お願いします

136名無しさん:2011/11/12(土) 21:14:26 ID:949RMQWE
投下乙です。あーあ、これどうしてくれんだよダメットさんwそしてキリカはキリカしてるなぁ。

137名無しさん:2011/11/12(土) 21:19:12 ID:nOBBdPfw
投下乙です。
ダメットさんマジダメット
あれ?ダメさんが他の参加者にニアの事伝え続けて仮にキリカがここに陣取ったら・・・

138名無しさん:2011/11/12(土) 21:33:57 ID:Q3NAnUTU
投下乙
ニアェ……
地味にダメットさんもピンチだなぁ、これw

139名無しさん:2011/11/12(土) 22:16:36 ID:N00irNi6
>>134
投下乙ですー。
うわ、一瞬上手くいくかと思ったけどこうなっちゃったかー。 ニア南無。
キリカちゃんは相変わらずアホの子かわいいなぁ、壊れてるけどw

140名無しさん:2011/11/12(土) 22:27:02 ID:gobvwYtQ
バゼットの馬鹿……
馬鹿に刃物というか、獣に肉というか、そんなイメージしかねえ。
バゼットの馬鹿……大事なことなので二回言いました。投下乙です

141名無しさん:2011/11/13(日) 14:46:17 ID:SO5OW1iA
投下乙

そしてバゼットさんこれはひどいバゼットさん

142名無しさん:2011/11/14(月) 18:03:16 ID:ptemAUaQ
投下乙です

キリカちゃんは壊れたアホの子だからこれはしゃあないわ
そしてバゼットはダメットと言われても仕方ないわw

143 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:07:21 ID:kC.ZYZwQ
N、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト、海堂直也を投下します

144「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:08:14 ID:kC.ZYZwQ

「放送か」
「ええ、そのようですわね」
 はあ、と仰向けの二人はため息をついた。
 正直場所は悪い。草原には障害物がなく、見晴らしがいい。しかもルヴィアはいまだ海堂に担がれている。
 敵意あるものから見れば都合のいい標的だ。
 ルヴィアは遠坂凛を死人と告げる声を受けながら、場を離れる指示を出す。
 胃の奥がムカムカしていた。どこか冷静な部分で禁止領域の場所を記憶しながら、予想以上に腹立っている自分を自覚する。
 遠坂凛が死んだ。
 わかっていたはずだ。聞いていたはずだ。
 魔術師は何より感情を制御しなければならない。名門の出である自分にとっては義務ですらある。
 なのに、抑えられない感情があるのはどういうことか。
 もし誰かに遠坂凜をどうしたかったのかと聞かれたら、答えは決まっている。

 あのメス豚をいつかこの手で屈服させたかった。

 最初にあったのは家の因縁だ。
 言葉を交わし、拳を交わし、ガントを撃ちあってもなお消えない敵愾心。
 何度たたきつぶしても台所に現れる黒いGのごとく復活するしぶとさ。
 小狡く、小賢しく、あきらめ悪く、最後の瞬間まで手を尽くす、遠坂凛が大嫌いだ。
 だからこそ、あの女がこんなにも早く死ぬことが信じられなかったし、信じたくなかった。
 長く生き残る卑怯さを、この自分が認めているというのに、足元に這いつくばる前に死んでしまうなど。
「最後まで気に食わない相手でしたわ……遠坂凛」
 思わず声に出すほど、不快な出来事だった。
「なあ、ちゅーかもしかしたらだけどよ」
 目だけで「なに?」と尋ねる。話すのも億劫だ。
「あの、ですのーと、ってやつだっけか? あれのせいで、なんだ。えーと……」
 言いたいことはわかるが、イライラした物言いだ。
 海堂が優柔不断と言うより、単に言葉が思いつかないだけだろう。
 無視してもいいが、遠坂凛のことは苛立つのでここで話を終わりにしておく。
「まったく関係はありませんわ」
「インチキだっていうのか?」
「いえ、おそらく本物でしょう。あの時あなたに名前を書かれたとき、わたくしは焦ったでしょう?
どれほどの力があるか不明ですけれど、呪いの用途においては効果のある本物だと感じ取れましたわ。
説明を鵜呑みにするなら、儀式も魔力も必要ないのに、因果を操るほどの存在。おそらく創りあげたのは人ではないでしょう。
わたくしたちの世界における宝具、もしくは魔法に通じるなにかを持っているのではないか、と推察しますわ」
「じゃあ、俺様が紙で遠坂凛ってのを殺したことになるんじゃないか?」
 言い淀まないあたり、もしそうなら制裁を覚悟しているのだろう。
 軽薄で頼りなく、間抜けな同行者だが、卑しいものがない精神だけは認めてもいい。
「ありえませんわ。あのノートで死ぬ場合の死因は心臓麻痺。対し、あの遠坂凛の妹が告げていた死因は――――」
「あっ」
 海堂が合点が言ったらしく、ポンと手のひらを叩く。

『頭を割られてあっけなく、惨めに死んでいました』

 ルヴィアはこの言葉を刻み込んでいた。
 忘れたくても、忘れられない言葉でもあるのだが。
「よって、遠坂凛はあなたにも、わたくしにも殺されていませんわ。幸いなのは、あの紙を悪用される前に処分できたことでしょう。
それで、あなたの知り合いはどうでしたの?」
 自分がしゃべるのは飽きた。次は海堂の番だ。
 海堂は一瞬だけ遠い目をして、顔を歪めた。
「ああ、死んだよ。たくっ、あの野郎……」
「その方もオルフェノクでしたの?」
「いや、ただの馬鹿な人間だよ。自分ら人間が追い詰められてるっちゅーに、オルフェノクの俺様たちを信じてよ。
だからあいつは生き残れないと思ってはいたよ。いたけど……なんで俺様が駆けつけるまで、頑張ってくれねーんだよ」
 舌打ちが一回聞こえる。それ以来、ムスッとしたまま黙り込んだ。
 はぁ、とルヴィアはため息を吐く。幸いといっていいかどうかわからないが、美遊もイリヤも生きている。
 カレイドステッキたちも彼女らの元にいるのだろう。
 美遊はともかく、イリヤが生き延びたならその可能性は高い。
 ちゃんと脳内地図に禁止領域を重ねながら、現在位置が安全であることを確かめた。

145「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:08:59 ID:kC.ZYZwQ
 おそらく自分を担ぐ海堂は、禁止領域のことなんて忘れているだろうから。
 一息ついたら、海堂にも注意しなければならないだろう。なんだかんだ言って、貴重な戦力だ。
 そう思考を続けていたルヴィアは、澄んだ声に出迎えられる。
「ああ、よかった。ふたりとも無事だったんだね」



 身を潜めるために森へと移動したルヴィアは違和感に気づく。
 とはいえ干渉する気はないので、同じく気づいた海堂が反応した。
「おい、ピカチューどうしたんだ? なんかさっきよりも落ち込んでんぞ」
「うん、さっきの放送でちょっとね」
 Nがそっと抱いているピカチュウの頭を撫でた。ピカチュウの顔は悲しみが絶望に変わっている。
 遠坂凛の妹を引き離すときは、まだ怒りに燃える気概があったはずだが。
「放送のおかげでサトシくん以外にもトモダチを亡くしたのを知ったんだ。彼の心は悲しみで満ちている。
ピカチュウ、どうすれば君は心が癒えるんだい? どうすれば君の力になれるんだい?」
 ピカチュウは答えない。顔を伏せ、歯を食いしばるだけだ。
 なるほど、放送は自分たちだけじゃなく、小さな獣にも影響を与えたようだ。
 海堂は口を尖らせたまま、クシャッとピカチュウの頭を乱暴に撫でる。
 気休めにもならないとはやった本人も知っているだろう。
 おそらく、同じく仲間を喪った傷の舐め合いに近い行為だ。
 自分がやるのはゴメンだが、彼らがやるのは口出す気はない。
 ルヴィアは体力と魔力を回復させるのに務めた。
 と言っても、体を休めているだけなのだが。必要事項はもちろん伝えている。
 海堂はともかく、Nは禁止領域について把握していた。賢い子どもだ。
「それで、今後どう動きたいですの?」
 ルヴィアとしてはしばらく動きたくないが、休憩するにも行動するにも指針は必要である。
 さしあたって自分よりは二人の意見を優先したほうがいいだろう。
 仲間に関しては、遠坂凛の妹以外どこにいるのか検討もつかないのだ。
「あー……あの女をとっちめたい。結花がどうなったか聞きてーしな」
「カイドウさん、その途中にフレンドリィショップに寄れないかな?」
「フレンドリィショップ? ああ、俺様たちがいたあの店か。なんでまた?」
「リザードンの治療をしたいんだ。あのときは詳しく探せれなかったけど、もしかしたらポケモンを回復させる“げんきのかけら”があるかもしれない。
今傷ついたまま放置しておくのは、とてもつらいんだ」
 わかってくれるよね、とNは言葉を続けそうな雰囲気があった。
 むしろわかって当然、配慮して当然という態度である。
 ポケモンを優先するのはN個人として勝手だが、場合によってはこちらが同じように動くわけにも行かない。
「なあ、あの女が向かった方向は……」
「そのフレンドリィショップと方向が一緒ですわ。追いかける途中でよっても構わないと思いますわよ。
わたくしやあなたの治療に有用な道具があるかも知れませんし」
 方針が定まったとき、海堂はうっし、と気合を入れた。
 瞬間、体が浮き上がる。
「じゃあさっさといくべ! お前らついてこ……あべしっ!」
「レディに断りもなく、いきなり担ぎ上げないでくださいまし。しかもまた荷物のように……」
「うっせー! 肘はよせ肘はよー! だいたい、人を殴れるくらいなら、自分の足で歩きやがれ!」
「ホーホッホッホッホ! 残念でしたわね。わたくしはまだ歩けるほど体力が回復していませんのよ!」
「いばるな!」
 実際よけいなことに使う体力はない。
 担がれるままにしていると、カサっと茂みの動く音が聞こえた。
 海堂とNも警戒して音の方向を見つめている。
「おい、そこに隠れている奴。出てこい」

146「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:09:40 ID:kC.ZYZwQ
 海堂が代表して告げるが、相手は沈黙を返す。
 自分を担いだまま近寄ると、人影が飛び出してきた。
 Nと海堂の中間に立った相手はこちらを睨みつける。
「ゆ、結花……? うわっ!」
 結花と呼ばれた女は爪を振るってきた。
 上体を倒してかわした海堂の髪が数本ちぎれる。
「お、おい! なにすんだよ、結花!」
 海堂が呼び止めるが、彼女は方向転換してNへと走った。
 このままでは彼が餌食になるだろう。ルヴィアには宝石もガントを撃つ魔力もない。
 しかし、黙っていないのは人間たちだけじゃなかった。
「ピ〜カ〜……」
 バリッ、と宙に火花が散る。帯電を終え、Nの腕から跳んだピカチュウが結花を睨んでいた。
「おい、ピカチュー! そいつは俺の仲間だから手加減を……」

「チュウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!」

 海堂が言い終わる前に、ピカチュウは放電を終える。
 電撃が朝のさわやかな空気を切り裂いて、一人の少女へと向かった。
 だが、少女はその場から跳躍して、電撃の落ちる場所から離れた。
 そのまま樹の枝に着地して、狼のような唸り声をあげる。
「……ずいぶんと野生的なお仲間ですのね」
「い、いやぁ……んなことする奴じゃないんだけど」
 頬を引きつらせながら、海堂が戸惑っている。
 ルヴィアも相手がオルフェノクであると想定して、皆にどう対応させるか頭を働かせた。
 ただ一人、Nだけが別の動きを見せる。
「大丈夫だよ、ゾロアーク。彼らは味方だから」



「誰かに化けれるポケモンねぇ〜」
 海堂の感心する言葉に思わず共感する。
 ピカチュウの電撃といい、ポケモンはなかなか優れた生物である。
「とはいえっても、ある程度近くの相手にしか化けれないよ。
だからカイドウさんの仲間……ユカさんだったかな。会ったと思う」
「んだと! お前、本当に結花にあったのか!」
 海堂が問い詰めようと近づくと、黒い人狼の外見を持つポケモン、ゾロアークは唸って威嚇した。
 思わず手を引っ込める海堂に変わって、ルヴィアがNに問い直す。
「それで、ソロアークは結花というお方と出会っていますの?」
「うん、聞いてみるから少し待って。ゾロアーク、君が化けた人とどうして会ったの?」
 ゾロアークは少し黙っていたが、しばらくしてNに話しているように耳に口を近づけた。
 相槌をうつ少年を横目に、いいかげん担がれている体勢はキツイと文句をつける。
 海堂がおぶる形に変える途中で、Nとゾロアークの会話は終わった。
「うん、会ったことがあるって」
「なんだと! おい、どこで会ったか……」
「その前にひとつ確かめさせなさい。もしかしてゾロアークは結花さんを襲いました?」
「んなっ!」
 驚く海堂を視界に入れたまま、Nは静かに頷いた。
「ルヴィアさんの言う通りだよ。ゾロアークは心ない人間に支給されて、ユカさんを襲ったんだ」

「ふざけんなよ、てめえ!!」

 海堂が感情のまま吠え、ゾロアークを睨みつける。
 対する黒いポケモンも臨戦態勢だ。
「あいつを……」
「カイドウさん、どうして怒鳴るのかな?」
「仲間が襲われたんだぞ! 怒らないほうがおかしいだろ!」
「だってゾロアークは心ない人間に使われていたんだ。ピカチュウから察するに、モンスターボールの強制力が強化されている。
だったら、その操った人間に対して怒るのが筋じゃないかな?」
 Nの言葉に海堂を責める意図はない。
 単純に疑問を持った子どもが、大人に答えを求める。その程度の意味合いしかないだろう。
 ルヴィアは黙って見届けるつもりだが、Nとはここで別れるかも知れないと思った。
 Nはポケモンの気持ちがわかると言っていたが、人の気持ちをわからなすぎる。
 人と会話したことが極端に乏しいのだろうか。相手の気持を察せず、ただ正論をぶつける。
 相手によっては、一番残酷な仕打ちだというのに。
「それとも、ゾロアークがポケモンだから怒ったのかな?」
 おそらく、Nが一番聞きたい部分だろう。海堂はどう答えるのか、ルヴィアは待った。
「アホか」

147「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:09:59 ID:kC.ZYZwQ
 海堂は怒りと共に息を吐き出すように告げた。

「お前さんの友だちだから切れるだけで済ませたんだ。これが赤の他人、しかも男だったら問答無用でぶん殴るっちゅーの!
あ、女子どもはお尻ペンペンのお仕置きな。これだからガキは嫌いなんだ」

 むくれる海堂のほうが子どもっぽいが、Nは面食らっている。
「トモダチを怒鳴るの?」
「あーん? だって悪いことしただろう」
「でも悪いのは命令した人じゃないかな?」
「命令されたとしても、悪いことした奴じたいに腹立つだろ、普通。んで、悪いことした奴はダチでも怒ってやるべきじゃねーのか。
俺様なんか木場の野郎にしょっちゅう説教食らったぞ」
「カイドウさんはトモダチに怒られたの?」
「木場の野郎はと、友だちちゃうわ! いや、ちげーちげー。たしかにあいつはと、と、と……」
「照れてないでちゃんといえばいいじゃありませんか。似合いませんわよ?」
「うるせえ! まあ、そーいうこっちゃだから怒ったわけよ。だいたい、ダチ相手に腹たたないなんておかしいだろ。
喧嘩だってしょっちゅーだってのに」
「おかしい……そうなのかな? ピカチュウはよく喧嘩したのかい?」
「……ピカピー、ピカピカチュ。ピカピカッチュー」
「そっか……君はサトシくんとよく喧嘩したのか。そうか……」
 Nは大発見したかのように、小さくつぶやいた。
 ゆっくりとゾロアークに穏やかな顔を向ける。
「ゾロアーク、これからは悪い人の言うことは聞いちゃダメだよ」
 ゾロアークはグル、と一言鳴いてNにモンスターボールを渡した。
「カイドウさん、これでいいのかな?」
「あー、まー……」
「よろしいのでは? 別にわたくしたちが口出すことでも、尾を引かせることでもないでしょう」
「しゃあねえ! 特別に俺様が許してやる」
「なに偉そうに」
 ルヴィアのツッコミを無視したまま、海堂は偉そうに胸を逸らしていた。
 その横をピカチュウを抱えたNとゾロアークが通りすぎる。
「おい、なに無視してんだよ」
「え? まずはフレンドリィショップに行くんじゃなかったかな?」
「いや、そうだけどこう、なんか俺様を称える言葉の一つや二つは……」
「なくていいですわ。N、店に着きましたら、ゾロアークが出会った人間の特徴とプラズマ団について詳しく教えなさい」
「かまわないよ」
「おい、俺様は微妙に無視されてね?」
「はいはい、さっさと進みなさい。ゴー!」
「お前もう体力回復しているだろ! 降りろ!」
「うるさいですわね。レディなんだから丁重に扱いなさい」
「誰がレディだ!」
 海堂とあーだこーだ言い合いながら、Nと共に目的の店へと進んだ。
 もちろん、ルヴィアは見逃していない。自分と海堂を見るゾロアークの瞳が、警戒心に満ちていること。
 それを感じたピカチュウが、実は牽制していることを。
 これからはフレンドリィショップのあと、ゾロアークの案内で海堂の仲間のもとに向かうだろう。
 それまでにトラブルが起きなければいいが。
 ルヴィアは静かに、周囲の状況に気を配った。

148「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:10:20 ID:kC.ZYZwQ


【C-4/森林 北西/一日目 朝】

【海堂直也@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:怪人態、体力消耗
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:人間を守る。オルフェノクも人間に危害を加えない限り殺さない
1:とりあえずフレンドリィショップに。その後ゾロアークの案内で結花の元へ。
2:パラロス世界での仲間と合流する(草加含む人間解放軍、オルフェノク二人)
3:プラズマ団の言葉が心の底でほんの少し引っかかってる
4:村上とはなるべく会いたくない
5:あの女(桜)から色々事情を聞きたい
6:結花……!
[備考]
※草加死亡後〜巧登場前の参戦です
※並行世界の認識をしたが、たぶん『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の世界説明は忘れている。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました……がプラズマ団の以外はどこまで覚えているか不明。
※桜の名前を把握していません


【ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:魔力消耗(大)
[装備]:澤田亜希のマッチ@仮面ライダー555、クラスカード(ライダー)@プリズマ☆イリヤ、
[道具]:基本支給品、ゼロの装飾剣@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
0:あの女(桜)…次は見てなさい…
1:フレンドリィショップに向かう。ついでにゾロアークの出会った人物、プラズマ団について聞きだす。
2:元の世界の仲間と合流する。特にシェロ(士郎)との合流は最優先!
3:プラズマ団の言葉が少し引っかかってる
4:オルフェノクには気をつける
5:あの女(桜)から色々事情を聞きたい
6:海堂に礼を言いたいが…まあそのうち
7:遠坂凛の死に複雑な気分
[備考]
※参戦時期はツヴァイ三巻
※並行世界の認識。 『パラダイス・ロスト』の世界観を把握。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※桜の名前を把握していません



【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定、ゾロアークを牽制)サトシのリザードン(戦闘不能、深い悲しみ)
    ゾロアーク(体力:7割、海堂とルヴィアを警戒)
[道具]:基本支給品、カイザポインター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ピカチュウを慰めつつフレンドリィショップに向かう。途中ルヴィアに説明。
2:やはり人とポケモンは共にあるべきでは無いのかな。
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:人を傷付けはしない。なるべくポケモンを戦わせたくはない。しかし、殺人者の女はどうするか
5:ミュウツーとは出来ればまた会いたい。
6:シロナ、サカキとは会って話がしてみたいな。
7:ちょっとカイドウさんが面白い。
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。

149 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:10:42 ID:kC.ZYZwQ
投下終了します。
何らかのミスがありましたら、指摘をお願いします。

150名無しさん:2011/11/14(月) 22:58:17 ID:xMSueVZw
投下乙っした。
戦力的にはかなり充実してる反面ポケモン関係において不穏な齟齬が。
そろそろNは人間の方も見ておいて…無理か

151名無しさん:2011/11/14(月) 22:59:13 ID:fap2JI7U
投下乙です
気さくなあんちゃんって感じで子どもと相性がいいな、海堂さんは
やっぱ海堂さんだなぁ

152名無しさん:2011/11/14(月) 23:39:50 ID:ptemAUaQ
投下乙です

海堂さんは頼もしいなあ
でも、不穏な影もあるんだよなあ…
Nの歪みをどうこうする事が出来るのだろうか?
海堂さんが頼みの綱だぞ

153名無しさん:2011/11/15(火) 00:29:58 ID:O72cI9VQ
投下乙です。うーん、やっぱり海堂さんは安心できるなぁw
とりあえずNはもっと人を見ようか、いくらポケモン第一だろうと自分も人間なんだしさ。

154名無しさん:2011/11/15(火) 22:08:32 ID:1.Sauat.
>>149
投下乙ですー。
いきなり結花が現れたからビックリしたらゾロアークだったかーw
Nは難しいけど海堂さんには期待できそうですなー。

155 ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:06:57 ID:vsbmJ37I
微調整も終わったので投下いきます

156REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:08:12 ID:vsbmJ37I
ゼロの言葉を信じ、政庁で待つことを決めたユーフェミア。
距離自体はそこまで離れてはいなかった。故にそこにたどり着いたのはゼロと離れて数分後のことだった。
そこは自分の知っている政庁とは何の違いもない建物であった。
自分や姉の執務室もあり、その部屋の中にあるものもユーフェミア自身の知っているものと全く同じだったように思う。

しかし本来あるはずのものの中にはないものもあった。
政庁の基地内を見て回ったが、格納庫にはナイトメアフレームは一機も配置されていなかった。
つまりKMFはこの会場には配置されていないということなのだろうか。

他にも武器の保管庫にも行ってみたが、当然のことながら鍵が掛かっていた。
いくら政庁で勤める皇族といっても流石に武器庫の鍵の場所までは分からない。
ありそうな場所くらいは想像がつくが自分が持っても使えるものではないだろう。

そうして一通り政庁内を見回った後、己の執務室にユーフェミアはいた。
ふとゼロから渡されたものを取り出す。ユーフェミアの身を守り得る物として渡されたものだ。確認しておく必要がある。
赤と白のボール。真ん中のボタンを押すことで使用するらしい。
ボタンを押すユーフェミア。
するとボールが開き、中から光が飛び出し――

「ポッチャマ〜〜〜!!」

水色の小さなペンギンが現れた。

「ポチャ?ポチャ!ポチャポチャー!!」

どうも状況が飲み込めていないらしい。
というかユーフェミアにとっても予想外であった。
身を守る武器というのがまさかこのような可愛らしい生き物だったとは。

「…えっと、私の言葉、分かる?」
「ポチャ…?ポチャ!」

水色のペンギンは頷く。何を言っているかは分からないがどうやら意思疎通は可能のようだ。

「あなた、ポッチャマという名前でよろしいのかしら?」
「ポチャ」

肯定のようだった。だがどうも警戒されている気がする。
もしかして今どのような状況に置かれているのか把握できていないのだろうか。
そうならまず警戒を解く必要がある。

「もしかしてあなたの飼い主って、ヒカリという名前ではないかしら?」
「ポチャチャ?ポーチャ、ポチャ!」

ヒカリという名前はこのポッチャマのボールと共に渡された説明書に書いてあった名だ。
その名を出すと、ポッチャマは大きく反応した。
だがユーフェミアとしてはその後の説明はできればしたくはなかった。
それでも言わないわけにはいかない。

157REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:09:28 ID:vsbmJ37I
「あのね、今私達がおかれている環境なんだけど…」

そうして全てを説明した。
ここが殺し合いの会場であること。
それにヒカリも巻き込まれていること。
話していく度にその青い顔がますます青ざめている様子なのが分かった。

「ポ…ポチャ…」
「正直こんなことを言うのも厚かましいのかもしれないけど…、それでもあなたにお願いしたいの。
 あなたは絶対にヒカリさんの元に返すわ。だから、それまでの間でいい。
 あなたの力を私に貸して欲しいの」

ユーフェミアの中には自分の意思を持ち、人の持ち物であるポッチャマを使役するということに抵抗があった
しかし、だからといって迷っているわけにはいかない。こうしている間にも、きっとルルーシュやスザク、ナナリー達やあのゼロも戦っているのだ。
自分には戦う力がない。だからこそこの生き物に力を貸して欲しいと、そう思ったのだ。

「ポチャ…」

ユーフェミアは知らないことだが、もしこれが命令など強制力のあるものであったらポッチャマは逆らえなかっただろう。
しかしこれは命令ではなく懇願。ゆえにポッチャマにも選択の余地があった。

「ポチャー…、……、ポチャ!」

どうやら頷いてくれたようだった。

「ありがとう!私はユーフェミア、多分短い間だと思うけどよろしくね!」」

短い間。そう、ポッチャマはヒカリの元に届けるまで力を貸してくれるに過ぎないのだ。
ポッチャマもユーフェミアの真摯な言葉を信じることにした。

だが彼らは知らない。
その飼い主がもうこの世にはいないということを。
それを知ることになる放送の時間は、もうすぐそこまで迫っていた。




魔女と罵られる。
体を串刺しにされる。
全身を焼かれる。

魔女となって一体どれだけの罵倒を、処刑を受けただろうか。
だがそれでも死ねない。
私の生きている意味はなんだろう?
今更生きていて何になるのか。
そもそも、なぜ今更生きたいなどと思ってしまったのか―――


『最期くらい笑って死ね! 必ず俺が笑わせてやる!だから――』

『俺は知っているぞ!お前のギアスを、本当の願いを!!』

そんな声が聞こえた気がした。
あれは確か誰の声だっただろうか。

ああ、そうだ。ルルーシュ、お前だったか。

158REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:10:53 ID:vsbmJ37I


「目が覚めたようだな」
「…ここは、政庁か」

C.C.が目を覚ましたとき、そこは机と椅子の並んだ会議室のような場所だった。
それがどこなのか一瞬分からなかったが、アッシュフォード学園から近くにあった場所といえば政庁しか思い当たらなかった。
ちなみにアッシュフォード学園という選択肢はない。C.C.はこれでもあの学園にはある程度は詳しいのだ。

「…ニャースはどこだ?」
「そこで眠っている」

そこ、といって指されたのはC.C.のすぐ傍。ニャースは丸くなって静かに寝息を立てていた。その表情はあまり安らかとは言い難い。
無理もないのかもしれない。敵だったとはいえ自分に近かった存在の死。ゲーチスの説法。さらに突然の襲撃から仮面の男から連れ去られたのだ。
緊張が解けたところで一気に精神的にきたのだろう。

「警戒が解けるまで随分と時間が掛かったぞ」
「ふん、突然現れた仮面の男に拉致されれば当然だろう、スザク」
「…ここでその名を呼ぶのは遠慮してもらいたい」
「あの名簿に書いてあった一人のゼロとはまさかお前の事ではあるまい」
「心当たりならある。私の同行者が教えてくれた」

そう話すスザクはずっとゼロの仮面を被ったままだ。いくらC.C.とて気になってしょうがない。
どういうつもりなのかを問おうとしたところで先に問いかけてきた。

「それにしてもなぜ君はあの時動かなかった?この猫を除くあの場の全員が何もしなかったのはおそらくそれが原因だぞ」
「なぜ、か。さあな。私にも分からん」
「……」
「正直あんなに面と向かってはっきりと魔女などど言われたのは久しぶりでな。どうも昔を思い出してしまったよ。
 あいつが言っていた人を誑かす魔女。ああ、間違ってはいないな」
「だが君は生きようと思ったのではないのか?」
「確かにその通りだ。だがもしかしたら、今までの生き方のように、どこかで贖罪を求めていたのかもしれんな」

多くの人間を誑かし、人の気持ちを弄んで、それで己の願いを叶えようとした自分への罰。
それからは結局逃げられなかったのだろうか。

「ふん、それにしても何が悲しくてお前とこんな話をしなければならんのだ」
「確かにな。本来その役目は私には役者不足だ」
「今度はこっちの質問に答えてもらうぞ。
 その格好は何だ?今からそんな格好をしているとは随分気が早いと言いたいところだが、この場でその格好をする意味が分かっているのか?」
「?何を言っているんだ?ゼロレクイエムは……、ん?まさか…」
「一人で納得したかのような反応をされても困るんだが」
「名簿のゼロのことについてはちゃんとその都度説明している。そして今はこれを外すわけにはいかない」
「なぜだ?」

159REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:12:59 ID:vsbmJ37I

そう問いかけ、スザクがマスクの中で口を開こうとしたとき。

「ポチャ?ポチャ!!」

会議室の扉が開き水色のペンギンと、

「あ、ゼロ。戻られていたのですか」

ユーフェミア・リ・ブリタニアが姿を見せた。



「ここは確か…、D-2、じゃあこれが政庁…」

C.C.を攫った仮面の男を追うさやかはようやく政庁についたところだった。
仮面の男は人一人と猫(?)一匹を抱えているとは思えないスピードであったことと、ゲーチスという同行人を連れていたことがかなりの遅れを誘発していた。
最も同行人のゲーチスに対しては、

「はぁ、はぁ、さやかさん、もう少し、速さを落としてくれたらよかったんですが…」
「ご、ごめんなさい…。大丈夫ですか?」

あまり配慮できていなかったが。
最低限の速さで走ったのだとしても魔法少女と人間なのだ。
置いて行ってしまわないように手を繋いでいたのだが、さやか自身もアッシュフォード学園での出来事が頭の中を占めており同行者への配慮まではあまり気が回せなかった。
ゲーチスも流石に魔法少女の身体能力に合わせるのはきつかった様子で、息を切らせていた。

「はぁ、さやかさん、私は少しここで休んでから中に入りますので先に行っていてください」
「でもそれじゃゲーチスさんが…」
「大丈夫ですよ。落ち着いたらすぐに追いますから。何か思うところがあってあの仮面の人を追ったのでしょう?ならばあなたは早く彼に追いつくべきです」
「……。分かりました。じゃあなるべく早いうちに来てください」

そう言ってさやかは政庁の中へと入っていった。

………


「…行きましたか」

やがて一人になったゲーチス。
走ったことへの疲労があったことは事実だが、それだけが理由で一人になったわけではない。
ここは政庁らしい。つまりあと数時間もすればシロナがやって来るであろう場所だ。
なればこそここからは早いうちに出発しなければまずい。
だがせっかくだ。少し不安要素を減らしておくのもよいだろう。

「出なさい、サザンドラ」

160REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:14:31 ID:vsbmJ37I


(なるほどな、それがこの仮面の理由か)

ユーフェミアと会話するスザクを見ながらさっきまでの疑問を解消するC.C.。
曰くこのユーフェミアは自分達の知るユーフェミアとは別の存在なのだという。
もしそれが本当なら様々な疑問に説明がつくかもしれない。

「えっと、C.C.さん、でいいのかしら?ユーフェミア・リ・ブリタニアです」
「ああ、知っている。お前とは違うユーフェミアだったがな」

確かに彼女相手であればスザクは顔を隠さざるを得ないだろう。
目や言葉の端々には意志の強さが見て取れる。

「時にお前は枢木スザクという男を知っているか?」
「あなたはスザクをご存知なのですか?彼は私の騎士ですが」
「やっぱりな。どんなやつだったか知りたくないか?」
「雑談はそれまでにしておけ。そろそろ時間のようだ」



そんなやり取りの一方でポッチャマはニャースに対して突っかかっていた。

「ポチャ!ポチャポチャ!ポッチャ!」
「おみゃーまでいたのかニャ…。
 あのにゃー、そんな訳ないニャ。あと今はあんまり話しかけないでほしいニャ…」

安眠とは言いがたいものの眠っていたニャースはポッチャマの登場で目が覚めた。
この状況をあまりくわしく把握できていないポッチャマはこの状況がロケット団が関係したものではないかと思い、ニャースに責め立てていた。
だがニャースは憂鬱であった。ポッチャマに旅の仲間が死んだという事実をどう伝えればいいのか。それを改めて説明するとなると気が重かった。

「…あのニャ、落ち着いて聞いて欲しいニャ」
「ポチャ?」
「………ジャリボーイが―」
『06:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう』

その時だった。アカギの声がどこからともなく響いてきたのは。

161REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:16:22 ID:vsbmJ37I


ドン ドン

放送が終了したとき、苛立ち混じりにさやかは壁を殴りつけた。
その行為は主催者に対する怒りからの行動ではない。

死亡者の名前が読み上げられているとき、ドキドキしていた。まどかやマミさんの名が呼ばれるのではないか、と。
だが呼ばれた参加者の中には自分の友や先輩はいなかった。気にかけるわけではないが佐倉杏子や暁美ほむらの名もなかった。
つまり知り合いは皆今はまだ生き延びているということになる。
その事実にほっとして、

(何で安心してるのよあたしは…!)

直後にその事実に安心してしまった自分の存在に気付いてしまったのだった。
マミさんのような正義の味方として生きるのではなかったのか。なぜその自分が知り合いが死ななかったというだけで安心などしているのか。
10人死んだのだ。その中にはC.C.やクロの仲間の名もあったではないか。
アッシュフォード学園でのあのポケモン達の悲しんでいる顔が頭の中をよぎる。
そんな者達の思いを無視してまどかやマミさんが死ななくてよかったなど――

「…あたしって最低だ」

Nやゲーチスに言われていたことを思い出す。
さやかにはポケモンがどうとかといったことは出会ったばかりということもありよく分からない。
だが、その中にあった言葉がさやかの心に残り続ける。
結局自分には己に近い物しか見ることはできないのではないかと。


「待つニャーー!」

ふと声が聞こえた。確かその声はニャースのものだ。
その方向を見ると、廊下の向こうを水色の小さな何かが横切り、それを追っているニャースがいた。
ニャースは何か慌てている様子に見えた。あのペンギンは何なのだろうか。ニャースの知り合いだろうか。

あっちから出てきたということはあの仮面やC.C.は向こうにいるということであろうか。
一刻も早くこの自己嫌悪を忘れたかった。だからニャースを追うことよりC.C.と話すことを優先した。


ガチャッ

「何だ。追ってきたのか」

巨大な机にその周りに規則的に並んだ椅子。会議室のようだった。
黒い仮面にマントの男と桃色の髪の女性、そしてC.C.がいた。
C.C.は座り込んで俯いており、女性は何か信じられない物を聞いたかのような顔をしている。仮面の男は分からない。
空気が明らかに暗いのだが今のさやかにはそこまで気が回せなかった。

162REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:17:44 ID:vsbmJ37I
「…何をしにきた?」
「あ、あの白い仮面が言っていたこと!あんたが人を惑わす魔女って…」
「ああ、その話か。――――本当だ」
「…え?」
「聞こえなかったのか?私は魔女だと言ったんだ。
 まあグリーフシードは落とさないがな」

できれば嘘だと言って欲しかった。
もしそれが本当なら、

「ああ、正義の味方であるお前の敵ということになるんじゃないか?」



「どこへ行ったニャ…」

ニャースはポッチャマを探していた。
ポッチャマが走り出していったのはあの放送の直後だ。それも当然だろう。
問題はあの放送で呼ばれた名前だ。

(まさかヂャリガールまで死んでたニャンて…)

サトシに続き、ヒカリの名まで呼ばれてしまったのだ。
さすがにこれまでは想定していなかった。
だが自分ですらそれなりの衝撃があったのだ。主を失ったポッチャマのショックはニャースには計り知れない。
だからこそ早く見つけ出さなくてはいけない。

ふとゲーチスの言葉が脳裏をよぎる。

「あいつの言葉、やっぱりおかしいニャ…」

彼は人とポケモンは異なる場所に生きるべきだと言った。だが主を失ったポケモンは一体どうなるというのだろうか。
別れてよかったと思う者もいるかもしれない。だがあのポッチャマの様子を見て、それでも離すのが正解などとは考えられなかった。

「おや、あなたは…」
「ゲーチス…」

そうしてポッチャマを探すうちにその張本人とバッタリ出会った。

163REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:19:39 ID:vsbmJ37I


「ちょっとやめ――、ゼロ?!」

声をあげて駆け寄ろうとしたユーフェミアをゼロが止める。

「……」
「どうした、殺さないのか?」

さやかはすでに剣を取り出していた。が、まだそれは構えられてはいない。

「お前の仕事は人を惑わす魔女を倒してきたのだろう?なら今更何を躊躇うことがある?」

C.C.は何を考えているのかさやかに自分を殺すようにけしかけているかのような言動を繰り返す。
ユーフェミアにはその行動の意味が分からなかったが、スザクは何を考えているのかは分かっているのか静観を続けている。

「殺せばいいだろう。そうでなければおそらくこの場にいる多くの者を傷つけるだろうな。もしかしたらお前の友達を死なせるかもしれんな」
「…っ!」
「それともお前は他の人間を傷つけるような者であっても殺す覚悟もないのか?甘ちゃんだな。
 お前のようなやつはそうやって戦う事自体が間違っているんじゃないのか」

その言葉を言い終えた瞬間に限界を迎えたのだろう。
さやかは手に持つ剣を振り上げ、そのまま勢いよく振り下ろした。

ガァァァァァァッ

C.C.に向けられたその剣はC.C.の目の前で軌跡を変え、C.C.のすぐ横の壁を切り裂いた。

「…私はあんたと話をしに来たって言ったでしょ…!勝手に殺させようとしないでよ…!」
「お前と何を話せと?」
「何で魔女って呼ばれるようになったのかってことよ…。あんたが悪人かどうかはこっちで決めるわ」
「聞いてどうなる?倒すべきかもしれない敵のことなど知るだけ無駄だろう」
「それでも、相手のこと分かってから、その上であんたのことをどうするか決めたいの」

さやかの中で佐倉杏子という魔法少女のことが思い出される。彼女も初めは敵としかなりえない存在と思っていたのだ。
しかしあの教会で杏子が話した己の過去を聞いて、彼女はそれを背負って生きていることを知った。
目の前の少女が敵なのだとしても、ちゃんと自分で理解しておきたかった。
それはゲーチスやNとのやり取り、あの放送で己に感じた自己嫌悪がさやかの中で持たせた考えだ。

「……。いいだろう。おいス――ゼロ、ユーフェミアを外に連れ出しておけ。
「分かった。ユーフェミア、一端部屋から出よう」
「彼女は、大丈夫なのですか?」
「それはC.C.自身が決めることだ」
「…分かりました」

ユーフェミアはゼロに連れられて会議室から出て行った。


「まあこっちもお前から色々と聞かせてもらったからな。少しぐらいは話すのもいいだろう」
「………」
「そうだな、あれは今から―――」

164REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:21:52 ID:vsbmJ37I


「…それにしても、あなたはお知り合いの方が亡くなられたというのに冷静なのですね」
「彼女とはあくまで仕事上の関係ほどしかなかったからな」

それは嘘というわけではないが本当のことでもない。篠崎咲世子とはナナリーを通じてそれなりに関係もあった上、最後までルルーシュに仕えてくれた一人でもある。
ただ、彼女が死んだと言われてもスザクには実感が沸かなかった。あまりスザクには重要な存在ではなかったのだろうか。

ルルーシュが死んだと聞いたときもそこまで思うことはなかった。スザク自身まだルルーシュを刺したときの感覚を思い出すことができる。
ただ、この場でルルーシュはどう生き、どう死んだのだろうか。
あのビルの爆破がルルーシュの物であったのなら何かと戦っていたのかもしれない。
あるいはゼロレクイエムを成し遂げたことで己の生を否定して死んだのだろうか。
それはもう今となっては分からない。

「君こそ大丈夫なのか?ルルーシュという人は君の知り合いだったのだろう?」
「ええ、私にとって大切な人でした…。彼が生きていたという事実がとても嬉しかった。それなのに…!」
「……」

泣き崩れるユーフェミアを見るスザク。
それは慰めにはならないだろう。むしろ禁忌とも言うべき言葉かもしれない。それは自分にも分かった。
だがスザクはあえて、その問いを投げかけた。

「もしここにいるルルーシュが、君の知っているルルーシュでなければ」
「…え?」
「ここから抜け出すことができれば君の世界のルルーシュに会うことは可能なのではないか?」



「おみゃーが何でここにいるニャ?」
「さやかさんがあなた達を追ってこられましてね。
 用事が済めばすぐに出発しますよ」

ニャースとしてはゲーチスに気を抜くことはできなかった。
ガブリアスの忠告もあったがそれ以上にアッシュフォード学園でのあの言葉がニャースの警戒を煽っていた。
だがあまり警戒心を見せるのも逆に不自然。あえて自然に、普通に振舞う。

「こっちにポッチャマが来なかったかニャ?」
「ポッチャマですか?いいえ、見ていませんね」

こちらに話しかけるゲーチスはあくまでにこやかだ。
ゆえに何を考えているのか読みづらい。
おかしなことをする様子がない以上普通に接するべきだろう。

「何かあったのですか?」
「さっきの放送で知り合いが呼ばれてニャ…」
「それは…、何と言葉をかけたらよいか…」

今はポッチャマを見つけなければいけない。主を失ったポケモンがどういう行動に出るのか、想像するのも嫌だ。
だがその前にゲーチスには聞いておかねばならないこともある。

165REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:23:54 ID:vsbmJ37I
「ニャー、おみゃーはポケモンを解放するためにあんな事言って回っているニャ?
 ポケモンと人間は別々にするのはポケモンのためになると思っているみたいニャが」
「ええ、その通りですね」
「何で人間のおみゃーがポケモンを代表するかの事言ってるのニャ?
 ニャーはポケモンの立場として言わせて貰うにゃが、本当に一緒に過ごすことを嫌がってるポケモンにゃんて極一部にゃ」

たとえトレーナーから酷い扱いを受けているとしてもポケモンがトレーナーを嫌っているとは限らない。
あのシンジという少年にひどい扱いを受けていたヒコザルでもシンジに好かれようと必死だったのだ。
なのになぜそんなポケモンの思いを無視するかのようなことをしようとするのか。
ニャースにはそれが疑問だった。

「なるほど、あなたはやはりポケモンの立場として意見を言うことができる者のようですね」
「だったらニャンにゃ」
「いえ、何でもありませんよ。今はあまり話しているときではないのでしょう?
 長くなりそうですのでまた次の機会にでもゆっくり話しませんか?」
「…確かにそうだったニャ。じゃあニャ、そっちも気をつけるニャ」

そう言ってニャースは走り去っていった。



その後ろに飛ぶ黒い影に気付かぬまま。



「…」
「満足したか?」

知りたいというから全て聞かせてやったのだぞとでも言いたげな顔で言う。
なぜこんなことをしたのだろうか?自分でも何か自棄になっているようにC.C.は感じた。

C.C.の話した内容はさやかには思いもよらぬ話だった。
目の前の自分と少し年上にしか見えない少女が数百年生きているなどどうして思えようか。
あの白い生き物と似たような行為をしていたことなどどうして想像できようか。


「それで、こんな話を聞いた上でお前はどうするのかな?」
「そんな話信じろっていうの?」
「信じられないのも仕方ないことではあるがな。
 だがお前も人のことが言える存在でもないんじゃないのか?魔法少女の美樹さやか」
「…あんたは、それで寂しくなかったの?」
「さあな。ただひたすらに死にたいと願った。ただそれだけだった。
 そんな私のことなど理解してくれた者などいなかった。いや、一人だけいたな。他の者が知りえなかった所までやつが」

あそこまでC.C.に踏み込んできた存在は後にも先にもおそらく奴だけだろう。
ただ利用するだけだったはずの男がこうも自分の中で大きな存在となっていた。
彼と関わったことでそれまでの自分とは大きく変わってしまったことは認めざるをえない。
だがそれほどの男も――

「さっき名前を呼ばれたよ。この私に笑わせてやるとまで言ったあいつも。
 きっと私はこのまま今までのようにまた魔女として生きるしかない。だがお前はそんなことは許せないだろう?」
「…っ!ふざけないでよ!そんな顔をしたあんたを殺すことが正義だって言うの!?」

美樹さやかの正義は人間を傷つける存在を倒すはずのこと。断じて目の前の、今にも死にかねない少女を殺すことではない。


「正義など人それぞれだ。力こそが正義と言った男もいれば父親を殺せば国を救えるとか考えた男なんかもいたな。結果は散々なものだったが。
 そういえばあいつもあいつで悪逆の限りを尽くして人々からの憎しみを自分一人で負うことで世界から争いを取り除こうなどと考えていたな。
 …ではお前の正義とは何だ?」

166REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:26:12 ID:vsbmJ37I
だが目の前の少女に問われてさやかは改めて考えざるをえなかった。そう、自分の中の正義をだ。
それは憧れたあの人のように皆を救うのだというものだったはずだ。

では誰と戦うのだ?
決まっている。魔女のような人を傷つける存在だ。

ならばこの場において魔女となるのは誰だ?人を傷つけるのは誰だ?
それは――

『殺してしまえばいい』
『誰かがそういってました、あなたたちを騙そうとしてた、悪い人だって』


「もういいだろう?お前の答えを聞かせろ」
「……」

さやかはしばらく黙り込んだあと、意を決したように話しかけた。

「クロちゃん…」
「?」
「さっきの学校に、クロちゃんの仲間だっていうルヴィアさんがいたわ」
「ああ、確かあの金髪ドリルだったか?」
「私はもうすぐここから出てまどかの家に向かうわ。
 もう少しでここにクロちゃんが来るんでしょ?あんたにそれを伝えて欲しいの」
「…それを頼むということは私を生かしておくということか?」
「…」
「……くくく」
「…何よ」
「いや、逃げの口実がこんなものだというのがおかしくてな。
 いいだろう。伝えておこう」

それを聞いてさやかは会議室を出て行った。

最後にその背に向かってC.C.は、

「次に会うことがあれば答えを聞かせてもらいたいものだな」

と言った。




167REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:28:31 ID:vsbmJ37I

「もしそうだとしても、ここにいたのはルルーシュなのでしょう?」

ユーフェミアの言葉に迷いはなかった。

「あなたのいた世界に、ブリタニアはあったのですか?」
「ああ、そうでなければ私が存在することはないだろうな」
「そうならきっと、あなたの世界のルルーシュもきっと私が想像しているように戦っていたのでしょう。
 ならば彼が死んだことには変わりないでしょう…」

はっきりとそう言った。

やはり仮面は外せないなとスザクは思う。
もしこの仮面の中の顔を見たとき、彼女はどういう反応をするのだろうか。
きっとこんな自分であっても枢木スザクとして見てくれるのだろう。
この血と裏切りで穢れた自分であっても。それにはきっと耐えられないだろう。

「君を試すようなことを聞いてすまなかった」

だが質問の意味はあっただろう。

「…」

C.C.は何を話しているのだろうか。
物音が聞こえないところから判断してまだそれが起こっているわけではないはずだ。

ガチャッ

やがて扉が開き、青い髪の少女はこちらに目をくれることもなく去っていった。




「全く何をやっているんだろうな。あんな小娘相手に…」

美樹さやかにそこまで思い入れなどないはずなのにこうまで構ってしまった。
冷静になってみればやはりおかしな話だ。
ルルーシュが死んだという事実がそこまでショックだったのだろうか。

「どうやら終わったようだな」
「結局死に損ねたようだがな」

さやかが出て行ってまもなくゼロはユーフェミアを伴って部屋へと入ってきた。

「そういえば聞いてなかったな。ゼロ、お前はこの殺し合いでどう動く気だ?」
「決まっている。私はこの儀式を止めるために動く。君はどうなんだ?」
「私か…。さあ、どうだったかな。当面は預かった伝言を伝えなければならんしな。
 そうそう、確か政庁には9時にここで出会ったやつと集合するという約束をしていたんだった」
「信用できるのか?」
「少なくとも約束した二人に関しては問題あるまい」

9時といえばまだ時間がある。だが来るのがユーフェミアを任せられる者が来るというならば待つのもいいかもしれない。
と、ふと窓の外で黒い煙が上がっているのが見えた。

168REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:30:08 ID:vsbmJ37I

「C.C.、彼女を頼む」
「行かれるのですね」
「何、すぐ戻ってくる」
「どうか気をつけてください。それと…、もし見かけられればあの…水色のペンギンのことをお願いしたいのですが」
「了解した」


そう言って窓から飛び降りた。
ここは何階だっただろうか…?

「あの、C.C.さん…でしたか?」
「ああ」
「あなたはルルーシュのことを知っているのですか?」
「ああ」
「もしよければ…、ルルーシュのことを教えてもらえませんか?
 彼がどのような人間だったのか…」

ルルーシュの死を知りながらもそれを聞くのか、と関心するC.C.。

「まあいいだろう。待っている間の暇つぶしにはなりそうだ」

あいつが死んだ今、生きる意味を見つけることができるだろうか。
見つけられなかったらどうするのだろうか。
それを考えつつユーフェミアの知らないルルーシュのことを話し始めた。

【D-2/政庁内/一日目 早朝】

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:魔力減少(中)、精神的ショック
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:これからどうしたいのかを考える
1:知り合いとの合流
2:ユーフェミアと話す
3:さやかの答えを聞きたいが、また会えることに期待はしない
4:プラズマ団に興味は無い。
5:ミュウツーは見た目に反して子供と認識。
6:9時まで政庁で待つ
[備考]
※参戦時期は21話の皇帝との決戦以降です
※ニャースの知り合い、ポケモン世界の世界観を大まかに把握しました
※ディアルガ、パルキアというポケモンの存在を把握しました
※桜とマオ以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:防犯ブザー
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル1本)、シグザウエルP226(16/15+1)、スタンガン、モンスターボール(空)(ヒカリのポッチャマ)@ポケットモンスター(アニメ)
[思考・状況]
基本:この『儀式』を止める
1:C.C.と話す
2:スザク(@ナイトメア・オブ・ナナリー)と合流したい
3:他の参加者と接触し、状況打開のための協力を取り付けたい
4:細マッチョのゼロ(スザク)は警戒しなくてもいい……?
5:ルルーシュ……
[備考]
※CODE19『魔女の系譜�①櫂魁璽疋丯▲后檗戮妊璽蹐陵霪類靴神鐓譴ǂ薀蹈ぅ匹墨△譴蕕貳鯑颪靴燭茲蠅盡紊ǂ蕕了伽�
※名簿に書かれた『枢木スザク』が自分の知るスザクではない可能性を指摘されました
※『凶悪犯罪者連続殺人事件 被害者リスト』を見ました

169REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:33:03 ID:vsbmJ37I


さやかの中では色々なことが一杯一杯だった。問いに対する答えなど出すどころではない。
結局また先延ばしにしたのだ。だが自分でどうにかできるようなことではなかった。

「マミさんなら…、何て言うんだろう…」

あの人ならもしかしたらこれに対して何かしらの解答を持っているだろうか。
もう一度、魔法少女として同じ立場となった今だからこそもう一度話をしたいと、そう考えるさやか。

「待たせてしまってすみません……、ってゲーチスさん?」


入るときに待っているように頼んだ場所にゲーチスはいなかった。
辺りを見回すと、裏手辺りで黒い煙が上がっているのが見えた。

「ゲーチスさん!!」

向かった先には、ボロボロになって倒れたニャースと腕に火傷を負ったゲーチス、そしてあの黒い仮面の男が立っていた。

「っ!!あんた――」
「私ではない。ここへ来たときにはすでに襲撃者は逃げていったようだ」
「そいつはどっちに行ったの!?」
「…向こうの方に逃げていきました」
「分かりました!ゲーチスさん、付いてきてもらっていいですか?」

問いかけたことへの答えを聞く間も惜しいと言うかのように示された方へ走り出すさやか。

「すみません、では彼をお願いしても大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。後のことは私に任せてくれ」
「ゲーチスさん、早く!!」
「では失礼します」




そうして残されたスザク。
ニャースを確かめると意識はないがまだ生きているようだった。
まだ息があったことに少し安心する。もしこのまま死なれてはC.C.に何と言われるか分からない。
だがニャースの処置も大事だがまだ問題は残っている。
さっき見た黒い煙は周囲に生えていた木を燃やしていた。
そこまで多くの木が生えているわけではないので燃え広がる可能性は薄い。
だが放置すると煙につられて危険人物が寄ってくる可能性もある。迅速に消火しなければならない。

「っ…、何処かに消火に使えるものは…!」

170REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:35:51 ID:vsbmJ37I

【D-2/政庁付近/一日目 早朝】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(小)
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:迅速に消火してニャースの手当てをする
2:なるべく早くユーフェミアと同行してくれる協力者を捜し、政庁に行ってもらいたい
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:9時に来る者を見極めてからその後の行動を決める
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※ゼロがユーフェミアの世界のゼロである可能性を考えています
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。


【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:瀕死(ポケモン的な意味で)、ダメージ(大)、気絶中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
0:気絶中
1:????
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)




さやかと別れた後、ゲーチスはサザンドラを放った。合図があったときに攻撃を仕掛けるように。
サザンドラの存在は隠さなければならない。
が、一人になった今であればボールからは出して自分と離れた場所から付いてくるようにしておいたほうが都合がよかった。

とはいえすぐに行動に起こすとは限らなかったのだが、政庁の周りを歩いていたときに遭遇したのはニャースだった。
あの短いやり取りの中でやはり邪魔な存在と確信したゲーチスは、ニャースをここで消しておくためになるべく姿を見せないようにして始末しろと支持を出したのだ。
ニャースはサザンドラのことを知らないとはいえ姿を見られた上で逃げられた場合、シロナ経由でばれる可能性もあるのだ。
万一のことを考え、自分の支持ではなくサザンドラの判断に任せて行動させておいた。
自分は離れた場所で隠れて見ているだけだったが、ニャース程度ならそれでも十分だろうと、戦闘が始まるまではそう思っていた。

171REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:37:16 ID:vsbmJ37I
だがニャースには予想以上に粘られてしまった。
ゲーチスは知らないことだが、ニャースが未進化であるのは戦闘経験が不足しているためではなく言語能力の代償なのだ。
普段は機械に頼りきりとはいえ経験自体は並以上にはある。
それでも素の能力の差には埋めがたいものがあるのも事実。
問題は全ての判断をサザンドラに一任していたということだ。もしゲーチスの的確な指示の元で動いていれば違っただろう。
結果としてサザンドラは少ないながらも乱れ引っかきによるダメージを受け、ニャースは瀕死にこそなっているが未だに命は残っている。
だがそれだけならばまだいい。想定していなかったわけでもないのだ。
ダメージは病院から持ってきた物を使えばどうにかなるはずだ。仕留め損ねたことに関しては自分の手で止めを刺すこともできる。さやかから貰った拳銃が手にあるのだ。
事はなるべく静かに済ませるつもりだったのだがサザンドラの大文字が小火を起こしてしまったのが大きな誤算だった。
確かにその煙がニャースの目くらましになったことでサザンドラの姿はまともに視認できてはいなかった様子に見えた。
だがもし仮面の男が窓から飛び降りてくるタイミングがもう少し早ければサザンドラをボールに戻すところを、遅ければニャースを殺すところを見られていただろう。
あえて自分で申し訳程度に腕に火傷を作っていたのが幸いだった。
正直今回のことでトレーナーのいないポケモンの限界を垣間見た気がする。

美樹さやかに呼ばれた以上、付いて行かなければ不自然だろう。
仕留めそこなった以上、今回は諦めるしかない。せめて小火で集まってくるかもしれない者に殺されてくれれば御の字だ。

あとは美樹さやかのことが問題である。
想定外のことが重なりすぎたことでどうも彼女への対応も疎かになってしまった気がする。
どうにか彼女を有用な手駒として持っていきたい身としてはこの先でどうにか挽回していかなければならない。



さやかの迷いは果たして己に答えを与えるのか、あるいは絶望を与えゲーチスの駒とさせるのか、また、それがこの先にあるのかは彼女次第になるだろう。
そのどちらに向かうことになるのかは、今はこの二人にも分からない。

【D-2/市街地/一日目 早朝】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、精神的に疲弊。
[装備]:魔法少女服、ソウルジェム(濁り小)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)、グリーフシード
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:襲撃者を追う
2:ゲーチスさんと一緒に行動する
3:鹿目家や見滝原中学にも行ってみたい。
4:まどか、マミさんと合流したい
5:マミさんと話がしたい
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします

172REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:39:05 ID:vsbmJ37I
【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:表向きは「善良な人間」として行動する
2:理屈は知らないがNが手駒と確信。
3:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
4:美樹さやかが絶望する瞬間が楽しみ
5:政庁からはなるべく離れる
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします



放送を聞いたポッチャマはそれが嘘であると信じたかった。
サトシが、それ以上にヒカリが死んだなどという事実を。
だが放送の主、アカギが嘘を言うとも思えなかった。
信じたくないという思いと信じるしかない現実から逃げるようにポッチャマは走った。
ユーファミアとの約束など忘れ、一人でヒカリを探しに行こうともしたのだがその途端体が動かなくなった。
その事実を受け入れることが怖かった。
もうどうしたらよいかなど全く分からなかった。

主を失ったポッチャマは彷徨う。かつて決意として持ったかわらずの石ももはや虚しさしか表さない。


※ポッチャマは政庁内、もしくは周辺にいます。おそらく政庁からそこまで離れることはないでしょう。

※D-2、政庁付近で小火が発生しました。同エリア内であれば煙を視認できる可能性があります。

173 ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:41:42 ID:vsbmJ37I
投下終了です
そしてまたもや文字化け
wiki収録の際に直しておきます

174名無しさん:2011/11/17(木) 23:49:13 ID:T.v5bP.Q
投下乙っでしたあ
ニャースが危ない!しかしサザンドラ相手に粘った方か…
ギアス勢3人集合か。スザクの方は決着ついてたが2人には辛いかもな
ところでここのC.C.はゼロレクイエムについては知らないのだろうか?反応的にそんな感じがしたが

175名無しさん:2011/11/18(金) 01:40:45 ID:Rwm8/O1E
投下乙です。正直リアルチート仕様なサザンドラ相手にニャースオワタかと思いきや、黒いG並みのしぶとさは伊達や酔狂じゃなかったか・・・しかしこれでガブリアスの警告もあるし晴れてゲーチスは敵認定かな?
そんなゲス親父は相変わらず安定のさやかあちゃんを抱えたままなのが吉と出るか凶と出るか・・・後者な気しかしないのがさやかあちゃんクオリティw

176名無しさん:2011/11/18(金) 11:29:34 ID:j15yjXCk
投下乙です

ニャースは俺も死んだと思ったがしぶといなあw
本当にしぶとい
ギアス組は案の定ショック受けてるがまだ余裕あるのかな? 少なくともさやかちゃんよりはまだ大丈夫かもなw

177 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:47:00 ID:h8iqk6xU
こんな遅い時間ですが完成しましたので投下します

178Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:49:40 ID:h8iqk6xU
「何?それは本当なのか!?」

夜神総一郎とメロ、佐倉杏子は移動中であった。
理由は簡単。あのスマートブレイン跡地から爆発音のようなものが響いてきたからだ。
あの戦いの後であそこに向かった誰かがゼロと戦っているのだろう。
今余波が向かってきても戦うことはできない。そう思い、そこから離れるために移動を開始したのだった。
当然時間は無駄にはできない。その最中にも情報交換をしておくのだった。

最初は佐倉杏子だった。
ここに来るまでの杏子のことなどこの場では本人にしか分からないため判断は難しかった。
だが、これまで魔法少女として基本的に一人で生きてきた佐倉杏子にはゆまという少女を助けた記憶など、増してや連れて行ったことなどないという。
そこはあえて保留にしておいた。
そして先ほどの声はメロと総一郎の互いの情報を明らかにしたときに総一郎があげた驚きの声だった。

「ああ、本当だ。まさかそんなことがあったとは…」

パラレルワールド、平行世界。
まさかそんなものを目の当たりにするとはメロも思っていなかった。
総一郎の世界ではLとキラ、月の戦いはLの勝利となったという。
一方メロの世界ではLは敗北し、キラが正義となりつつある世界が広がっていったという。
お互いの知り合いについての情報を開示しているところで気付いた事実だった。

(道理で夜神月がキラだったことを知っているわけだな)

メロにはLがキラに勝ったのだということを聞いて、複雑な気分になった。
Lが勝ったのは良かっただろうが、もしそうなっていたら自分がニアを超える機会など到底来なかっただろう。
その為にワイミーズハウスを抜け出したのだから。
一方で夜神総一郎はやはりショックを受けていたようだ。
息子が道を誤ったまま世界がそれを認めてしまったという事実に。
彼の脳裏には息子のあの叫びが蘇っていた。


「…それで、君は月を止めるために戦っていたというのか?」
「ああ、死神のノートの存在も知っている」

大体のことは話したものの、夜神粧裕にしたことは伏せておいた。
メロとしてもあれには若干の負い目もある。そしてそれ以上に今変な感情を持たせることはマイナスにしかならない。

「あー、それで、一体どういう事だっていうんだ?もちっと分かりやすく言って欲しいんだけど」

そんな中、二人の会話についていけなくなった様子の杏子は支給品に入っていた羊羹を齧っていた。
総一郎はなるべく分かりやすいように杏子に説明する。といっても総一郎自身もよくは分かっていないのだが。

179Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:51:02 ID:h8iqk6xU

「う〜ん、よく分かんないけど、要するにさっき言ってたゆまって奴があたしのこと言ってたっていうのは…」
「佐倉杏子と千歳ゆまが共に過ごしていた世界があったということだろうな」

そう言うメロもあまりに突拍子のない事実に若干困惑していた。
それならば今までのことに説明がつくとはいえ、簡単に受け入れられる事実ではなかった。

「…そういえば、今は何時だ?」
「そろそろ六時に近いけど、それがどうかしたのか?」
「どうやら時間のようだな」




「クロちゃん、大丈夫?」
「…別にそこまで気にしてないわ」

シロナとクロエは向かった先で拾った少女、巴マミを連れて救急車を走らせていた。
その少女は未だ目を覚まさず、後ろで眠り続けている。
そしてスマートブレイン社へと向かおうとしたところで放送が始まったのだった。

「正直殺しても死にそうな人じゃなかったんだけどね」

遠坂凛。イリヤとカレイドルビーの出会いのきっかけとなった人物。おそらく彼女がイリヤと出会わなければ自分が誕生することもなかっただろう。
いつもルヴィアと喧嘩しては騒ぎを巻き起こすトラブルメーカーだった。
死んだからといってそこまでショックだったわけではない。魔術師とは常に死とは隣り合わせなのだから。イリヤはともかく、クロエはそれを弁えている。
ただ、あのルヴィアとのやり取りが、騒がしいあの声がもう聞けないのだと。
そう思うと何だか寂しいものがあった。

「ねえ、シロナさんはアカギって男のこと知ってるんだよね?」
「ええ」
「少しはニャースから聞いてるけど、詳しく教えて欲しい」

その問いかけは果たして失ったものへの悲しみを紛らわせるためか、あるいは放送者への怒りからか。

「そうね。ちゃんと言っておかないといけないわね」

さっきは己の行動の遅れでゲーチスに遅れを取るようなことになってしまった。
アカギのこともちゃんと話しておかねばならないだろう。




「そんな物が…」
「信じられないかもしれないけど、本当よ。それに本来ならあのディアルガとパルキアは神話の存在なの。
それをアカギは手に入れる方法を発見したの」

説明を受けたが、クロエには信じられるものではなかった。
シロナの連れているガブリアスのような存在の中に、時間と空間を司るような存在がいることなど。
そんなものがあるとすればもはや魔法の領域にいるようなものではないのか。

180Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:52:35 ID:h8iqk6xU
「でもそれって本物なの?その…、力を借りた模倣品とかじゃないの?じゃなきゃ神話の存在なんて…」

聖杯が呼び出すサーヴァントのような存在ではないのかと、むしろそうであったほうが納得ができるという思いを込めてクロエは問いかける。

「いえ、私はこの目で本物を見たことがあるの。アカギがどうやってあの二匹の力を再び手に入れたのかは分からないわ。彼が何を考えてこんなことを始めたのかも、ね」

彼の野望とこの状況にどんな繋がりがあるのか、それを考えるにはまだ情報が足りなかった。
そういえば、野望といえば言っておかなければならないことが一つあった。

「あと、一つ言っておかなければいけないことがあるの」
「あ、ちょっと待って。前に人がいるわ」



「松田…!バカ野郎…」

総一郎が部下の死に悲しむ一方でメロと杏子は優先する人物の名前が呼ばれなかったことに安堵していた。
L、ニア、美樹さやかに鹿目まどかといった者たちはまだ生きているようだった。
夜神月の駒が一つ減ったという事実もいい知らせなのだろうか。
最もメロとしては手放して喜べるわけでもなかったが。

「なあ、お前」
「メロだ」
「その千歳ゆまって、どんなやつだったんだ?」

放送で呼ばれた、知る中でおそらく唯一であろう魔法少女。佐倉杏子を慕っていたという子供。
今この場で唯一それを知っているメロにその少女についてを問いかける。

「…そうだな、最初に会ったときはコンビニから食い物と金を持ち出していたな。
ガキにしてはよくやると関心したもんだ」

それを聞いてやはりその少女をその世界で連れていたのが自分なのだなということを考える杏子。
それもそうだ。もし目の前に人のいないコンビニがあれば、自分も同じことをしただろう。
別の自分が面倒を見ていたという魔法少女。これほど近くにいながら出会うことはなく死んでいった。
果たして自分はどんな思いで千歳ゆまと過ごしていたのだろうか。
もう捨て去った過去、あの巴マミと過ごした記憶が脳裏をよぎり、

「―って巴マミ?」

杏子のソウルジェムが巴マミの魔力の反応を捉えた。つまり巴マミがこちらに向かってきているということだ。

「む?あれは、救急車か?」

見ると救急車がこちらに向かってきていた。あれに巴マミが乗っているということなのだろう。
マミが乗っているのならばあれに殺し合いに乗った人間は乗っていないだろう。乾巧は大丈夫だったのかも気になる。
止めようとして前に出ると、向こうから止まってきた。
そして目の前で金髪の女性と肌が黒い少女が降りてきた。

「あなた達は…」
「そんなに警戒しなくても殺し合いに乗ってねえよ」


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