レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13
-
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。
注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。
企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。
・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/
詳しいルールなどは>>2-5
-
◆
金居に追随した八神はやてが、地面に出来たアスファルトを覗き込んでいるのは、ヴィータの死から数分後の出来事であった。
四方八方どっちを見ても、視界に入って来るのは粉砕されたコンクリやアスファルトのみ。
これが地上本部のなれの果て。この場所で幾重にも重ねられた、激しい戦いの傷跡であった。
その中で一箇所、際立った傷がアスファルトに亀裂を走らせて、地下部分を露出させている場所があった。
「調べて欲しいものっていうのは、これの事ですね?」
「ああ、そこの看板を見てみろ」
金居が指差した方向を見れば、そこにあったのは見覚えのある触れ込みの看板であった。
『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』なんて書いておきながら、実際には嘘八百。
この転移魔法陣は、望んだ場所などには決して飛ばしてくれない。行き場所はランダム、主催側が設置した罠だ。
はやては一度、キングと共にこの罠に掛っているからこそ、その真相を知っている。
「残念やけど、これは罠です。望んだ場所やなんて言いながら、実際には違います」
「というと、飛ぶ場所はランダムという事か? 何のために?」
「恐らくは、他者と手を組んだ参加者の戦力を分断する為」
「何故そう言い切れる?」
「私たちも一度、この罠に嵌ったからです」
「ほう」
このデスゲームが始まってすぐの事、はやてはキングという少年と行動を共にした。
そのキングがまたとんでもない馬鹿で、何の策も無しにこの罠に自ら嵌りに行った。
はやて自身は乗り気ではなかったのだが、結局はキングに押し切られる形でこの罠を使ってしまった。
結果、キングとは離れ離れ。到着した場所は誰もいない図書館。開始早々、はやては完全に孤立したのだ。
それらを簡潔に、尚且つキングの無能さと危険さを前面に押し出す形で、説明を終えた。
「成程な……ちなみに聞くが、あんたは何処に飛びたいと願ったんだ?」
「それは……私の家族の、ヴィータ達の元にです」
「その図書館に、直前までヴィータ達が居た可能性は?」
「それは……今になってはもう、確かめようのない事です」
ヴィータは死んだ。そこにヴィータが居たとしても、居なかったとしても、確かめる術は無い。
当然ながら、死んでしまった人間にはもう、質問する事はおろか口を聞く事すら出来ないのだから。
ここに居たヴィータは当然、家族なんかでは無い。赤の他人のヴィータだ。赤の他人のヴィータが死んだのだ。
さっきまでここに居て、一緒に話をして、一緒に行動をしていたヴィータ。
あのヴィータは、はやてのヴィータでこそ無いが、生きていた。
ヴィータという名前があって、はやてと過ごした記憶があって……だけど、死んでしまった。
それを赤の他人と割り切って、忘れてしまうのは容易い事なのだが、どういう訳か心が晴れない。
ここまで来て、自分は何を迷っているのだ。雑念を振り払う様に、頭を二度三度振った。
「まぁ、キングと離れ離れになるのは当然だろうな」
「え……?」
「家族の場所へと飛びたいと思ったあんたは、どういう訳か図書館へと飛んだ。
一方で、キングは一体何処に飛んだ? というより、何処へ飛びたいと思ったか?」
「考えるだけ無駄やと思いますけど」
「そうかな? 仮にこの魔法陣が本当にこの看板通りの効力を持って居たとして、
キングとあんたの望む目的地が一致するとは、俺には到底思えないが」
眼鏡を押し上げて、舐める様な視線ではやてを見る。至って理知的な表情であった。
金居の言わんとする事は大体分かった。向き直って、金居の考察をまとめる事にした。
-
「つまり、金居さんはこう言いたいんですね? 私が飛ぶ直前まで図書館にはヴィータが居た……
で、私はこの触れ込み通りに図書館に飛んで、キングは自分が望んだ何処かへと飛んで行った」
「その可能性は否定しきれないと思うが」
「確かにそうですけど……なら逆に訊きますけど、金居さんはこの魔法陣をどうしたいと思いますか?」
こんな考察を続ける事にさしたる意味は無い。はやては、今後の具体案が聞きたいのだ。
何の考えも無しにこの魔法陣を使いたいだけと言うのであれば、所詮金居もキングと同じだ。
はやてを唸らせるだけの回答を得られなかった場合は、金居の今後の扱いも考え直さなければならない。
「ならば率直に言おう。俺はこの魔法陣を罠だとは思わない。よって俺はこれを使いたいと思っている」
「もしこれが主催側の罠で、私達が分断されてしまったら?」
「俺は“こいつ”を外す為に、工場を目指している。高町なのはともそこで落ち合う約束をしてる」
首に装着された忌々しい鉄製の輪っかを、人差し指の爪でつつきながら言った。
成程、なのはと共に行動していると言ってはいたが、そういう事か。これは使えるかもしれない。
「確かに、あらかじめ目的地を決めておけば、混乱する事もない……」
「そうだ。それに、二手に分かれた方が仲間を集められるかも知れない」
「逆に殺されてしまうという可能性も捨て切られへんと思いますけど」
「その時は逃げてでも生き延びれば良い。それに、お互い戦力には困ってないだろう?」
眼鏡を押し上げながら、にやりと口角を吊り上げた。
恐らくこの男は、はやてが既に本来の力を取り戻している事に気付いている。
その上、お互いにとってもあまり長期間行動を共にしない方がいいという事を心得ている。
この金居という男、恐らくは対主催に紛れて主催打倒、もしくは乗っ取りを狙う人種……はやてと同じタイプだ。
だけど、だとしたらある意味でこんなに信用出来る相手は居ない。
何せ、目的は自分と同じなのだ。手を組めば……もとい使い方によっては、これ以上心強い味方は居ない。
「……わかりました。金居さんがそこまで言うなら、私も信じてみようと思います」
「賢明な判断だな。それに、どうやらお互いに思う所は同じらしい」
「そうですね。ほな、分かり易く工場に飛んでみます?」
「ああ、それがいい」
この殺し合いの場で、時間を無駄にする事は避けたい。故に、話が決まれば即行動。
人一人が入れるくらいの亀裂から、二人は順に地下へと侵入した。
転移魔法陣の上に乗って、はやては考える。
工場に飛びたいとは言ったが、本当に飛べるとは思わない。
はやてが今、何よりも欲しているのは“駒”だ。よって、必然的に駒が居る場所へと飛ぶ事になるだろう。
だけど、駒と言っても有力なものはほとんどが死んでいる筈。残っている参加者で、有力なのは誰だ?
高町なのは。スバル・ナカジマ。ユーノ・スクライア。戦力として考えられるのは、そんなところだろうか。
純粋な戦力として考えるならば、一番に高町なのは、次いでスバル・ナカジマだが……。
同時に、自分を貶めたクアットロのような策士が居る場所は避けたいと思う。
会ってこの手で殺せればいいのだが、それは別に心から会いたいと願っている訳ではないからだ。
-
さて、策士と言えばこの男もまた然りだ。
この金居と言う男、間違いなくクアットロに近い性質を秘めている。
当然、心の底からこの男を信頼することなどあり得ないのだが、純粋に利用し合う仲間としてなら心強い。
その為にも、先程抱いた疑問……金居が持って居た銃は、何処から手に入れたのか。それを質問してみる事にした。
「そういえば金居さん、さっき持ってた銃……あんなん持ってはりました?」
「ああ、銃なら拾った」
「拾った?」
「誰の持ち物かは知らないが、こんな状況だ。武器の一つや二つ転がっていても可笑しくないだろう」
「……それもそうですね」
言われて納得した。……いや、心底から納得はしていないが。
今の持ち主である金居が拾ったと言うからには、それまでだろう。
変に追及して怪しまれるのも得策ではないし、今はこのままでいい。
当然、クアットロの轍を踏まない為にも、警戒を緩める気は無いが。
「さて、準備は出来ました。いいですか?」
「ああ、構わない」
ほとんどの魔力を消費してしまった以上、残った魔力はほんの僅か。
この短期間で少しばかり回復した魔力を、魔法陣へと注ぎ込む。
キングと一緒に居た時と、殆ど同じ光景だ。
淡い魔力光が、次第に強く輝き出して――刹那の内に、二人の姿は掻き消えた。
◆
金居が目を開ければ、そこは既に瓦礫だらけの市街地では無くなっていた。
周囲には鬱葱とした森林が生い茂る、都会と自然の間と表現するのが相応しい場所。
舗装されたアスファルトの道路と、その周囲の雑木林。木々の匂いは心地が良く、金居の種としての本能を刺激する。
ここが殺し合いの場でなければ、クワガタムシの一匹くらい居ても可笑しくはないな、と思う。
ただ一つ、異様な存在感を放って居るのが、正面に見えるホテルらしき巨大な建物。
問題は、ここが一体何処なのかという事だが……
「どうやら、罠やなかったみたいですね」
「そうだな。まさか二人揃って飛んで来れるとは。意外だよ」
傍らに居た低身長の女、八神はやてに嘲笑と共に返した。
二人は確か、工場へ飛ぼうという話で魔法陣に乗った筈だ。
それなのに、飛んで来た場所は工場などでは決してない。
そもそも、表向きには工場に飛びたいと言っていたものの、金居にはそれよりも渇望する相手が居る。
種の存続を掛けて、何としてでも仕留めなければならない相手が居る。
この場で工場以外に望む場所とあらば、奴が居る場所くらいしか考えられないが……。
「ここは、何処だと思う?」
「ホテル・アグスタ……私も知ってる施設やけど、何でこないな場所に――」
どごぉぉぉん!!!
はやてが言い終えるよりも先に、轟音が二人の耳朶を叩いた。
反射的にびくんと震え、二人は轟音の方向へと視線を向ける。
その先は、ホテル・アグスタの正面玄関。そのロビー内で、轟音の主が暴れていた。
硝子越しに、一瞬見えただけでも、この場には三人以上の人間がいるらしい。
その三人が三人共、三つ巴状態で争っていたのだ。
-
「緑の仮面ライダーと、黒の仮面ライダー……それに、スバル!?」
「なるほどな。ここにお前の仲間がいる……そういう事か」
「そうです、スバルは頼れる私の部下で、味方に出来れば大きな戦力になる事は間違いない。
……けど、この乱戦の中に入って行くのは……ええい、情報が少なすぎる!」
「いや……そうでもないさ」
はやては状況を判断しようと考えているらしいが、最早金居にその必要は無い。
目の前に居るのは、はやてにとっての頼れる仲間と、己が宿敵。それが全ての答えだ。
金居の中で全ての謎が氷解した。あの魔法陣は、罠などでは無かったのだ。
なれば、誰が敵で、誰が味方かを視界した金居に、悩む必要が無いのは必然。
「ようやく分かったよ。俺達がここへ飛ばされた理由が」
「……どういうことです?」
「俺には、どうしても決着をつけなきゃならない宿敵がいるんでね」
薄ら笑みを浮かべて、金居が言った。
眼鏡の奥の鋭い眼光が捉えたのは、見まごう事無き宿敵・ジョーカー。
伝説の鎧で身を隠して、戦いに臨む偽りの仮面ライダー。
奴は敵だ。それも、世界に生きる生命全ての、だ。
地球に巣くう悪質なウイルス、それがジョーカー。
この戦いで何度も巡り合い、決着を付けられなかった相手がここに居る。
カテゴリーキングとしての闘争本能に、火が点いて行くのが自分でも分かるようだった。
「いいか八神。スバルが味方で、あの黒のライダーが敵だ……人類全てのな!」
嘘は言っていない。ジョーカーが生きている限り、人類も滅亡の危機と隣り合わせなのだから。
といっても、人類にとってはジョーカーに代わって金居が最後に生き残った所で変わらないのだが。
どうやらはやては、金居の只ならぬ雰囲気にどうしたものかと考えているらしい。
そうこうしている内に、気付けば二人を照らしていた月明かりが、届かなくなっていた。
「これは……雨雲? なんでこないな所に……」
ごろごろと音を立てて、空を覆う暗雲が時たまぴかっ!と光輝く。
ホテルの屋上に設けられた避雷針が、何度も何度も空から降り注ぐ雷を吸い込むが、それでも足りない。
信じられない量の雷が、周囲で鳴り響いていた。
「まずい……“アイツ”が来よった」
「アイツ……だと?」
立て続けに起こる異常事態に、金居も警戒を強めて聞き返した。
されど、それに答えるよりも先に、二人の視界に飛び込んできたのは一人の男だ。
男の周囲だけ、他とは比べ物にならないほどの雷が奔っていた。
空から、男から、空気中から。もはや自然に存在する雷の常識など通用しない。
男がそのものそのまま発電機だとでも言う様に、縦横無尽に雷を奔らせているのだ。
青白い光に照らし出されたその姿は、まさしく昔ながらの雷神というに相応しい。
背中に背負った太鼓と、周囲で轟音を上げる雷とが、金居にそんな印象を抱かせた。
「なんだ……アイツは」
呆然と立ち尽くす金居が、言葉を発した。
一時的にではあれ、ジョーカーに対する闘争本能が掻き消える程の存在感。
それは金居が……というよりも、生物が種として抱く、生理的な本能。
雷に抗おうとする昆虫など、世界に居る訳がない。雷に触れれば、昆虫などそれで終わりだからだ。
金居の本能全てが、奴は危険だと警鐘を鳴らしている。
あのアーカードを初めて見た時と同等か……否、恐らくこいつは、それ以上。
アーカードはまだ、理性を持ち合わせていたが、こいつにそれは感じられない。
周囲の全てを焼き焦がしてしまうような怒りが、こっちにまで伝わってくる。
現れた雷神に、二人は――。
-
【1日目 夜中】
【現在地:F-9 ホテル・アグスタ前】
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(中)、魔力消費(大)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、
【道具】支給品一式×3、コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、
トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、
デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる
首輪(セフィロス)、デイパック(ヴィータ、セフィロス)
【思考】
基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
1.神・エネル……!!
2.スバルは味方にしたいが……この状況をどう切り抜ける?
3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
4.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
8.金居を警戒しつつ、一応彼について行く。
9.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
10.金居の事は警戒しておく。怪しい動きさえ見せなければ味方として利用したい。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
基本:ゼストに恥じない行動を取る
1.畜生……
2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する
3.金居を警戒
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。
-
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、
デザートイーグル@オリジナル(5/7)、首輪(アグモン、アーカード)、
アレックスのデイパック(支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、
ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3))
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.なんだあの化け物は……!
2.そろそろジョーカーとの決着をつけたい。
3.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
4.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
5.同行者の隙を見てUSBメモリの内容を確認する。
6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
-
それは、鬼神へと堕ちた雷神の姿。
それは、近寄る者全てを、本当の意味で破壊し尽くす神の姿。
神でありながらも地べたを舐めさせられた屈辱と憤怒が、彼を破壊神へと変えたのだ。
目的は只一つ。失ってしまった威信を、プライドをこの手に取り戻す為に。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードを塵一つ残らず消滅させてやらねば気が済まない。
そうしなければ、身体に染み着いた『死』への恐怖は拭いされないのだ。
一歩歩く度に、異常と呼べるまでに蓄電された電力が、アスファルトを真っ黒に焦がす。
空を覆う漆黒の暗雲全てが……迸る雷全てが、エネルの一部。エネルの手足なのだ。
止めどなく迸り続ける高圧力の雷の所為で、最早昼なのか夜なのかすらも分からない。
今が夜だと言う事は頭では理解しているが、それすらも怒りで忘れる程に、エネルは激情していた。
周囲の電力を取り込むことで、電気人間の自分はいくらでも回復する事が出来る。
周囲の雷雲と雷を利用する事で、兵隊百人にも等しい戦力を常時発揮する事が出来る。
この暗雲の下に居る限り、エネルは無敵だ。圧倒的に有利な地の利を得ているのだ。
そうだ。最初からこうすればよかった。首輪の所為で自分の身体を電気に出来ないなら、周囲の電気を使えばよかったのだ。
雷として周囲を奔った電力は、再びエネルと雷雲に吸い込まれて、刹那の内にチャージが成される。
空気中の静電気を始めとするあらゆる電力は、全てエネルの味方をしてくれるのだから。
ヴァッシュは確かにこっちの方角へと消えた。
この方角で会場に残された施設は最早、目の前のホテルしかありはしない。
そして、そのホテル内から響く戦闘による轟音。
間違いない。ここにヴァッシュが居る。
既に他の誰かと戦っているのか知らないが、そんな事は関係ない。
一緒に居る奴、近くに居る奴、邪魔をする奴。
それらに関係なく、この雷で皆殺しにしてくれる。
――最早、神を止められる者は居ない。
-
【1日目 夜中】
【現在地:F-8 東側】
【エネル@小話メドレー】
【状態】健康、激怒、『死』に対する恐怖
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0〜2
【思考】
基本:主催含めて皆殺し。この世界を支配する。
1.ヴァッシュに復讐する。
2.ホテルに居る参加者は皆殺し
【備考】
※黒い鎧の戦士(=相川始)、はやてと女2人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています。
※なのは(StS)の事はうろ覚えです。
※なのは、フェイト、はやてがそれぞれ2人ずついる事に気付いていません。
※背中の太鼓を2つ失い、雷龍(ジャムブウル)を使えなくなりました。
※市街地と周囲の電力を取り込み、常時雷神(アマル)状態に近い放電状態になりました。
※吸収した電力で、僅かな傷や疲労は回復しています。
【全体の備考】
※エネルの周囲で大規模な停電が発生しています。
※エネルの周囲に雷雲が拡がっています。
-
投下終了です。
どうせホテルにヴィヴィオが向かってるのならもっとやらかしちまえと思いまして……はい。
ちょっとエネルはやり過ぎた感があるかも知れませんが、原作を考えればこれくらいは出来てもいいかなと。
というか自然系最大の強みである雷化が出来ない上に、太鼓二つ失って、おまけに神としての威厳まで失ってしまった以上、
こうでもしないと再び初期の様な恐ろしいマーダーとして、アーカードやナイブズと並べる事は出来ないと思いまして。
アーカードやナイブズに比べて割と不遇だった(?)マーダー三巨頭、最後の一角をここらで立ててみようぜ!って感じです。
それでは指摘などがありましたら宜しくお願いします。
-
投下乙です。
ていうか何でみんなしてホテルに行くの!? タイミングとしてはVj氏の話の直後だよな……黒はやてに金居、そしてエネルまでやって来て……
対主催:スバル、ヴァッシュ、こなた
危険人物:はやて
マーダー:始(ジョーカー)、バーサーかがみ、金居、エネル、ヴィヴィオ
……ホテルと共に対主催オワタ。
しかし思いっきり再会の予感がするなぁ……こなた&かがみ、金居&始、ヴァッシュ&エネル、リイン&はやて……何となく碌でもない結末にしかならない気もするけど。
まさかまだ他にも来る???
-
投下乙です
ああ…これは死者が出るだろうな…
ホテルに人多すぎw
-
泉こなた分投下します
-
「アジトへ向かう前に言っておく……ッ! あたしは今やつの魔法をほんのちょっぴりだが体験した」
「こなた……?」
「い……いや……体験したというよりはまったく理解を超えていたんだけど……
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
『あたしは森の中でアジトへ向かっていたと思ったらいつのまにか(森は)消えていた』」
「いや、それリインも体験しているですよ!」
「な……何を言っているのかわからねーと思うがあたしも何をされたのかわからなかった……」
「その口調の方がわけわからないですよ!」
「頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
「………………満足したですか?」
「………………うん」
「確かにこなたの言う通り理解を超えているですね」
-
泉こなたとリインフォースⅡはスカリエッティのアジトへ向かう為、森の中を北へと進んでいた。
が、気が付いた瞬間に森は消失し平野が広がっていた。周囲を見ても森は欠片も見当たらない。
そこでこなたは地図と磁石を出して周囲を確認する。
「地図でいうところのD-9かE-9だと思うけど……でも森になってなきゃおかしいよね」
「北には何も無いですね。それに……」
北方向を見ても森は欠片もなく。東方向には市街地が見えると共に微かに煙が見える。
「あたし達のいた場所は東端なんだからそれより東には何もない筈だけど」
「もしかしたら地図に描かれていないだけでその先にも何かがあるのかも知れないですよ」
「だけど……地図にない場所に出られるんだったら最初からそこに逃げ込めばいいんじゃないのかな。幾ら何でもそんな事はさせないよね」
と、こなたは首輪を触る。要するに場外は禁止エリアとして扱われ、首輪が爆発するという事を暗に語っているのだ。それはリインも理解している。
「ここは場外ではないという事になりますよ」
「場外じゃなかったら何処なの?」
「東に市街地が見える平野はB-1〜E-1……確かB-1が禁止エリアになっていた筈ですからC-1かD-1、E-1になるですよ」
「D-9かE-9からどうやってD-1かE-1に移動を……あれ?」
こなたは指をD-9とE-9の境目からD-1とE-1の境目の間を動かしている内にある事に気付いた。
「整理すると、『D-9辺りにいると思ったらD-1辺りにいた』って事だよね」
と、磁石を片手に西方向を向く。
「じゃあ、もしかして……」
そして足を進めると突然周囲に森が広がった。
「あ……ありのまま今起こった事を話すぜ! 『あたしは木1本無い平野を進んでいたら……』」
「そのネタもういいですよ!!」
リインは軽くこなたの頭をポンと叩いた。
「つまり、区切られているエリアの端と端は繋がっているという事ですね。東端と西端、北端と南端という感じですね」
「でも北に進んでいた筈なのにどうして東に?」
「さっきまで磁石出さないで走ったり歩いたりしたから方向がずれてしまったんじゃないんですか?」
実際、こなた達の進行方向は若干東にずれてしまっていた。故に、東端のラインを越えて西端へとワープしたのである。
「そういえばあの天使、東から西方向に飛んでいた様な飛んでいなかった様な」
今更ながらに放送より少し前にホテルアグスタの屋上に消えた天使の事を思い出した。確かあの天使は南東から北西方向へ飛んでおり、屋上で消えていた。
だがホテルの位置は東端のF-9だ。つまり、天使の進行方向を踏まえれば天使はエリア外から来たという事になる。もっとも、この時こなた達はそこまで思考が回らなかったが。
しかし、先程起こった現象を踏まえればこの現象は簡単に説明出来る。
「あの天使は客船や船着き場のある海方向からやって来たという事になりますね」
「何にせよ、端と端はワープ出来るって事だね」
「恐らくプレシアがリイン達を逃がさない為にこのフィールドに仕掛けた仕掛けだと思うですよ。
それでこれからどうするですか? さっき見た感じだと市街地では戦いが起こっているみたいですけど……」
市街地では微かに煙が上がっていた。これを踏まえれば少なくても誰かがいた事は確実。
しかしそれは必ずしも味方とは限らない。殺し合いに乗っている参加者という可能性もある。
更に言えば煙が上っていることから戦いが起こっている事はほぼ確実。
リインとしては市街地に向かいたいという気持ちが無いわけではない。しかし制限の都合上こなたの同行が絶対に必要となる。
こなたを危険に巻き込む可能性が非情に高い。何の力もない一般人を危険に遭わせる事は避けるべきである。
その一方、あの場所に仲間がいる可能性もある。数少ない家族や仲間との合流の機会を逃したくは無いというのも本音である。
故にリインはこなたに判断を仰いだのである。
「勿論、最初の予定通りアジトに向かうつもりだよ。もしスバルがアジトに来た時にあたし達がいなかったら……」
「そうでしたね。わかったですよ、このままアジトに向かいます」
こうして2人は再びアジトへと足を進めた。
「今東端にいますから少し西寄りに行かないと密林を迷う事になるですよ」
「大丈夫、今度は磁石も確認するから」
「それだけならまだ良いですけど気付かないで進んで禁止エリアのA-9やB-1へ飛び込む可能性もあるですよ」
「だからわかったって」
-
こ な ☆ り ん
その放送はあまりにも無機質かつ無慈悲であった。それ故に淡々と事実だけが伝えられた。
無機質かつ無慈悲であったからこそその衝撃は非常に大きなものであった。
「シャマルまで……」
リインにとって大事な家族であるシャマルの死亡が伝えられた。
勿論、リインの世界のシャマル達は妖星ゴラスの媒介になっている筈なので呼ばれたシャマルはリインとは別世界の彼女だという事実は頭では理解している。
しかし、それでも溢れ出す深い悲しみの感情は止まる事はない。故にリインの目からは涙がただただ溢れていた。
それでも何とか放送自体は聞き逃さず聞きとめた。しかしそれが限界だった。リインの思考は大事な家族が再び失われた事で真っ白になっていた。
そして脳裏には家族であり主でもある八神はやての姿が浮かぶ。
前述の通りシャマル達守護騎士はゴジラを封印する為の妖星ゴラスの媒介となった。これだけならば只の悲劇で済む話だ。
しかし、封印は決して永久ではない。その限界はたったの1年、それを過ぎればゴジラは再び復活する。
1年を経過した時点でシャマル達の犠牲は完全な無駄となってしまうのだ。そんな事をはやてが許すわけがない。
そして家族を助ける方法が1つあった――簡単な事だ、妖星ゴラスが限界を迎える前にゴジラを完全に抹殺する事だ。
当然、シャマル達の限界を踏まえるならば1年などと言わず早ければ早い方が良いのは言うまでもない。
故に、彼女は家族を助ける為にこれまでの彼女からはまず考えられない非道な事を行った。
各次元世界に生息する怪獣達を使い魔に、時には洗脳すら施してゴジラにぶつける為の決戦兵器としたのだ。
当然だが高町なのはやフェイト・T・ハラオウンも従いながらもそれを受け入れているわけではない。故にはやてと衝突を起こした事もあった。
全ては家族を助ける為、故に許される許されざるは別としてそれ自体は決して否定出来るものではないだろう。
だが、客観的に言えばそれは決して許される事ではないし、自分達が当事者にならなければリインもその行いを認める事は無かっただろう。
はやてがこの放送を聞いたとすればどうするだろうか?
容易に想像が付く、死んだ家族を生き返らせる為、優勝を目指す可能性が非情に高い。
もしくは優勝ではなくプレシア・テスタロッサの技術を奪う為に他の参加者を陥れてでも彼女に迫ろうとするだろう。
それが許されざる事なのはリイン自身もわかっている。だが、リインはそれを止める事が出来ない――
――何しろリイン自身の中からも外見とは真逆のどす黒い邪悪な感情が湧き上がっているのだから。
ジブンガサンカシャナラバユウショウシテデモカゾクヲトリモドシタイ
いや、わかっている、わかっているのだ、家族や仲間がそれを望んだりしない事は。
それ以前に自分自身、そんな事はしたくはないのだ。
何の罪のない人々を傷付けたり陥れる事なんてしたくはないのだ。
それでも、湧き上がる感情はとどまらない。リインは何とかそれを抑えようと――
-
その瞬間、轟音が響いた。
「えっ……!?」
音はホテルの中からだ。
ホテルには先に安全確認の為にスバル・ナカジマが向かっていた筈だ。今現在ホテルで何が起こったのだろうか?
確かホテルには屋上に降り立った『天使』がいた。となれば『天使』が殺し合いに乗っていて、スバルと交戦状態に陥ったのだろうか?
真実は不明だが1つだけ確実な事がある。それはホテルは危険な場所だという事だ。
我に返った瞬間、リインは自分の愚かな思考を恥じた。
自分が今すべき事は何なのか? 何の力を持たない少女を守る事じゃなかったのか?
にもかかわらず自分は今何をしていた? 家族が死んで泣いて……いや、正直それ自体は仕方がない。
問題なのはこの瞬間まで足を止めていてあまつさえ僅かだが殺し合いに乗ろうかと考えていた事だ。
今の自分の姿を見たらゴジラを封印する為にゴラスの触媒となったシグナムやシャマル、ヴィータにザフィーラが見たらどう思う? 軽蔑するに決まっている。
自分は何者か? 無限に続く悲しみの呪縛より解放された先代よりその名を受け継ぎし蒼天をゆく祝福の風リインフォース・ツヴァイではないか?
その名を持つ自分が他者に悲しみを与える事などあってはならない。与えるべきは祝福でなければならない。
故に今は自らのすべき事を、目の前の少女泉こなたを守らなければならない。
放送からどれぐらい経過しただろうか? 幸い攻撃の余波はここには届いていないがそれは結果でしかない。
これまでの戦いを踏まえればホテルからこの場所に届く程の攻撃など無数にあり得る。惚けて棒立ちなど愚行以外の何物でもない。
一歩間違えればこの一撃でこなたが致命傷を受けていた可能性もあるのだ。愚かと言わず何というのだろうか。
このまま犠牲を出してしまう事は家族や先代リインフォースに対する最大の裏切りだ。彼女達の為にも二度と堕ちたりはしない――そう考えリインは周囲を見回しながら次の行動を考える。
スバルに関しては負傷はしているものの戦闘機人としての力が使えれば余程の相手では無い限り後れを取る事はない。最悪、逃げ切る事は出来るだろう。
ジェットエッジを渡してあるから移動に関してもおおむね問題はない。
だが、戦闘機人としての力は威力が強すぎる。敵を倒す事に関してはともかく、周囲に及ぶ被害は甚大なものとなる。先程の轟音ももしかしたらスバルのIS振動破砕によるものかもしれない。
つまり、この場所にいればこなたを戦いに巻き込むという事だ。スバルもそれを恐らくは理解している。
故に自分達がこの場所にいる限りスバルは全力を出せない。相手次第だが全力を出さないで切り抜けられるとは思えない。
だからこそ自分がとるべき判断は――
-
「リイン、行くよ」
その答えを出す前にこなたが声を発した。
「え? 何処へ?」
「ここにいたらスバルに迷惑がかかるよ、だから……」
既にこなたの足はホテルとは逆の方向に向いていた。奇しくもリインと同じ判断をこなたはしたのだ。
しかし、あまりにも的確な判断であったが故、リインは驚きを隠せなかった。
そもそも、何故こなたはそこまで冷静なのだろうか?確か放送では――
「大丈夫、スバルだったら何とかしてくれるよ。スバルが全力で戦う為にもあたし達はここにいない方がいいんだ!」
こなたの声は何時もののほほんとしたものではなく、力強いものだった。
「確か、あの時ホテルの他にもう1つ目的地決めていたよね。そこに行こう、スバルも戦いが終わった後で来てくれる筈だよ」
そう言いながら、その方向へとこなたは走り出した。リインもこなたの横を飛びながら移動をする。
リインもおおむね同じ考えだった為、こなたの判断自体に異論はない。しかし、人の話も聞かずに行動をする事は決して良い事ではない。
故にその事について口を出そうとするが、
「こなた、少しはリインの話も聞い――」
横顔を見た瞬間、彼女の心情を理解した。そう、こなたは冷徹な程冷静なわけではなかったのだ。
「ごめん、でも攻撃に巻き込まれて怪我しちゃったらきっとスバルはショックを受けると思う……だから急がないと」
こなたの目からは涙が溢れ流れていた。
放送では彼女の友人である柊つかさの死亡が伝えられた。彼女にとって大事な友人である彼女の死に衝撃を受けないわけがない。
真面目な話、暫くはショックで動けず俯いているのが自然だ。最悪、生き返らせる為に殺し合いに乗ってもおかしくはない。
しかし、こなたの表情にはその様などす黒い感情は見えない。むしろ、スバルの為にこの場所を離れようとするこなたの瞳には強い意志が宿っていた。
そうだ、何の力も持たないか弱き少女だって負けずに戦おうとしているのだ。自分も負けずに戦わなければならない。
だからこそ今はこなたを守る為に戦おう。夜空に祝福の風を巻き起こすかの様に――
こうして、こなたとリインはホテルを離れスカリエッティのアジトへと移動を開始した。
駅にてスバル達は次の目的地としてホテルとアジトの2つを考えていた。
その為、戦いが終わった後、ホテル周辺に自分達がいなければアジトへと向かったと判断してくれると考えたのだ。
書き置きは何もない。残す余力が無かったというのもあるが、下手に残した所で戦いの余波に巻き込まれ紛失する可能性もあり、危険人物に読まれる可能性もあったからだ。
ちなみに、ホテル到着直前スバルはデュエルアカデミアに向かおうかと考えていたがその事をこなたもリインも聞いていない為、それは全く考慮に入っていない。
もっとも、崩壊の可能性があるアカデミアに戻るのも危険なので仮に聞いていたとしても選択肢に入らない可能性は高いだろうが。
この地に残らないで移動を行った理由は前述の通り今回の戦いに巻き込まれるのを避ける為、
これまでの事を踏まえホテルが崩壊する可能性は非常に高く、その崩壊に巻き込まれて死亡する可能性は高い。
また攻撃の余波に巻き込まれて死亡する可能性も言うまでもなく高い。
更に前述の通り、近くにいるとスバルは自分達を巻き込まない為に全力を出せないだろう。この状況でそれは避けるべきだ。
また、こなたが殺された場合、当然スバルは強いショックを受けるがそれとは別に避けるべき事項が存在する。
放送で伝えられた殺害者のボーナス支給品の話。この話を踏まえればこなたが誰かに殺された時点でその参加者は支給品を1つ確保しそのまま強化される事になる。
それでなくても武装に乏しい状況だ。危険人物の強化は絶対に避けなければならない。
故に、自分の身を守る為にも、スバルの身を守る為にも、2人はホテルからの待避、アジトへの移動を選択したのだ。
-
こなたとリインがこの場を離れたのは放送から約10分後、幸か不幸かホテルでの戦いに巻き込まれる事を回避する事が出来た。
だが、結果として2人はそれぞれが最も再会したい人物との再会の機会を逃す事となった。
簡単に放送前後から2時間強の間にホテルで起こった事を客観的に説明しよう。勿論、大部分はこなたもリインも知り得ない事である事を補足しておく。
放送直前、スバルはホテルロビーで『天使』ことヴァッシュ・ザ・スタンビートとつかさの姉でありこなたの友人である柊かがみと遭遇した。
だが、かがみはヴァッシュにスバルは危険人物と説明した為、両者は緊迫した状態となり、かがみはホテル地下の駐車場へと移動した。
そして放送、このタイミングでヴァッシュ自身の左腕が暴走し無数の白刃が繰り出された。
その白刃の斬り口からスバルはルルーシュ・ランペルージの右腕を切り落とした人物と断定し戦闘機人モードとなりヴァッシュとの交戦に入った。
こなたとリインはその戦いの衝撃から、ホテルは危険だと断定し待避するという選択を選んだのである。
勿論、2人の待避後もホテルでの戦いは止まらない。スバルとヴァッシュの戦いは続いていた。
その一方、かがみは駐車場にあった装甲車を発進させ、ホテル近くまで来ていた相川始を轢き殺そうとした。
結果は失敗、そしてそのまま両名はホテル方面へと移動しながら戦闘に突入した。
ちなみに、かがみが装甲車でホテルから出たタイミングは放送から約30分後、こなた達が既に遠く離れた後だ。故にかがみはこなたが少し前まで近くにいた事を知る事は無かった。
もっとも、再会した所で今のかがみはそのままこなたを殺す可能性が高かった為、それを避ける事が出来たのはある意味では幸運だったのかも知れないが。
さて、放送から約2時間後、ホテルロビーでは何とかスバルとヴァッシュは和解しかけていた。しかしこのタイミングでかがみと始がロビーに乱入し4名は再び戦闘に突入した。
それだけではない。この直後、はやてと金居が地上本部にあった魔法陣を使いホテル前までワープして来たのだ。
このはやてはリインと同じ世界から連れて来られている。その為、リインにとって最も会いたい人物である反面、外道に堕ちてでも目的を達しようとする危険人物でもある。
更に金居と始は元々の世界での敵同士、両者が出会えば戦いになる事は明白だ。
そして、更に2人の『神』がホテルに迫っていた。
1人は雷神・エネル、ヴァッシュに敗北を喫し威厳を奪われた神はヴァッシュ他全てを抹殺する為に自らの身に雷を纏いホテルへと足を進めていた。
1人は死神・ヴィヴィオ、母を無惨に奪われ死神の鎌を手にした神は母を殺した者全てを抹殺する為に自らの身を血で染めホテルへと足を進めていた。
ホテルにおけるこの後の物語は今はまだ語らない――だがこれだけは確実に言える。今最も危険な場所はこの場所だということだ。
こなた達が再会の機会を潰した事は不幸だったのかも知れない――だが、こなたがここに残ったところで出来る事など特にない。むざむざ殺され下手人を強化させるのがオチだ。
再会出来たけどすぐに死亡しました。それもまたある意味では不幸な結末だろう。そう、柊姉妹が再会しつかさが無惨に惨殺された時の様に――
少なくてもそんな結末はこなたもリインも、そしてスバルも望んではいない。再会するならば当然お互いに笑顔で再会すべきだろう。
その意味では、こなた達は祝福の風を受けていたのかも知れない――
-
こ な ☆ り ん
「マンガとかで、無理矢理怒らせたり、悲しい気分にさせたりする超能力ってあるよね?」
「いや、リインに同意を求められても困るんですけど。そういうのあんまり読まないですし」
「でさ、そういう気の利いた魔法とかってある?」
「ありますよ。例えば……」
リインはこなたにコンシデレーション・コンソール、怒りや悲しみの感情を強化する洗脳技術について簡単な説明をした。
「……ってもしかして参加者の中に洗脳されている参加者がいるって言い出すんじゃないですよね?」
「いや、そういう意味じゃなく、もしかしたらあたし達の考え方や感情が操作されているんじゃないかってちょっと思って」
こなたの言いたい事はこういう事だ。
知らず知らずの内に自分達の思考や感情が殺し合いする上で都合の良い風に誘導されているのでは無いかという事だ。
「少なくても、こなたやスバル、それにルルーシュを見る限りそんな様子は無かったですよ」
「でもね、レイやシャーリーの豹変がどうしても気になったんだよね。それにかがみんも……」
確かに早乙女レイが突如豹変しルルーシュに対し発砲した事はある意味異常だった。
またシャーリーがレイを射殺した事も事前に聞いた人物評から考えれば異常である。
そしてかがみが殺し合いに乗って何人か殺している事実などこなたにとっては今でも信じがたい話である。
また、2人は知る由もないが貴重な首輪確保の機会を何故か逃したり、
示し合わせたかの様に出会えば対話を放棄し戦いに突入したり、
思考する事を放棄して安易に諦め殺し合いに乗ったり、
元々殺し合いに乗る筈の無い人物の精神が破綻し破滅を撒き散らしたり、
ゲームを破壊するつもりが何故かゲームを促進させてしまったり、
冷静に見れば殺し合い継続という意味では都合の良い出来事が頻繁に起こっている様な感はある。
-
「突然殺し合いに放り込まれたらそういう行動に出てもおかしくは無いと思いますよ」
リインの言う通りだ。突然殺し合いに放り込まれて普段と同じ行動をしろというのも無茶な話だ。
「あたしもそう思うけど……それで説明が終わるぐらいにわかりにくく知らず知らずの内にそういう風にもっていかれている様な感じがするんだよね」
理由を『殺し合いだから仕方がない』と説明出来る程度の異常を発生させて参加者全員に殺し合いを加速させようと目論んでいるという説だ。
それは極々僅かな異常だからこそ、普通はまず気付かない。
また選んだ危険な選択肢も選ぶ可能性は低くても0ではなく状況を考えれば有り得ない話ではないと納得出来るものだ。
そして考えられない異常があった時は『殺し合いだから』で思考を止めてしまえばそれで終了だ。
「やっぱり毎回毎回ノストラダムスのせいにするミステリー調査班みたいな有り得ない仮説なのかな?」
「リインにはよくわからない例えを出されても困りますよ」
こなた自身もこの仮説はあまりにも突拍子も無い説だという事は理解している。リインもその仮説を軽く流そうと――
「……有り得ないとは言い切れないですよね」
リインは先程自分の奥底で湧き上がったどす黒い感情を思い出した。
少なくても湧き上がった感情自体は本心によるもの、それは否定しない。
だが、それとは全く真逆の理性もあったのだ。少なくとも何時ものリインが本来の理性を全て放棄してどす黒い感情のまま行動する事などまず有り得ないと自分では思っている。
だが、先程の状況を思い出す限り、感情のままに暴走する可能性は否定出来ない。
つまり、殺し合いに都合の良い感情が僅かに出やすい様に強化されているという事だ。
僅かであるが故に、普段はそれに気付かない。パニックに陥った時に良心は駆逐され倫理観を捨て去る様にし向けるという事だ。
それがいかに異常であっても前述の通り全て『殺し合いの状況だから仕方がない』と片付ければまず気付かれる可能性はない。
「コンシデレーション・コンソールの応用で可能だと思いますが……幾らそれが弱いものでもこの舞台全部に仕掛けているなら相当大げさな装置になるですよ」
「さっきのループといい何でもありだね」
「それに、こなたの仮説通りだとしても、結局の所この舞台をどうにかしないとどうにもならない事に変わりはないですよ」
「何か良い手段は無いかな?」
「(一応今スバルが持っているハイパーゼクターが使えるかもという話ですけど……幾ら何でもプレシアがそれを見落とすわけもないですから、別の方法も考えておかないと……)
それを見つける為にも、今はアジトへ移動しないと」
「……で、方向ってこっちで合ってる?」
「まさか迷ったってオチは無いですよね?」
「……」
「…………」
「………………」
「こー! なー! たー!」
ちなみに、現在位置はD-9中央の森林ではあったが、夜の闇は深く目印となる灯りも無い為、自身の位置を断定しきれない2人であった。
-
こ な ☆ り ん
結論を先に述べれば実感なんてまだなかった。
こう書くと現実を直視出来ない人に見えるが実際そうだったのだ。
そう、こなたはつかさが本当に死んだとは思えなかったのだ。
だがそれはある意味では仕方がない。こなたは幸か不幸かこれまでまともな死体を目の当たりにした事などなかった。
故に、放送で淡々と名前を告げられただけで死んだ事を理解出来るわけではなかった。
いや――だが恐らく放送は真実だろう。自分は実感出来なくても既に友人や家族の死を伝えられて泣いていたスバルやリインの姿を見ていたのだ。
それを見ていながらいざ自分の時はその現実を認めず逃避する――あまりにも酷い人物だとこなた自身が思う。
わかっている。まだ完全に実感したわけじゃないが――柊つかさは死んだ。少なくてもそれは認めなければならないだろう。
勿論、残酷な話だが希望がまだ無いわけじゃない。
仮につかさが自分のいた世界と違う世界から連れて来られていたならば、元の世界に帰っても変わらずつかさはそこにいるという可能性はある。
そんな事を一瞬でも考えた自分を酷く嫌悪した。
自分で巫山戯るなと思った。それを希望だと思った自分に腹が立った。
それを認める事は別の世界のスバルでも変わらず守ろうと思ったルルーシュに対する最大級の冒涜だ。
スバルやリインだって互いが別世界から来たとしても変わらず仲間だった筈だ、彼女達に対する侮辱だ。
大体、別の世界のつかさだとしてもそれはその世界の自分自身の友人がいなくなった事を意味する。別の世界の自分を悲しませてどうするというのだ?
結局の所、元の世界のつかさが無事という可能性があるというだけの話であってそれ以上でもそれ以下でも無いという事だ。決して希望ではない。
真面目な話、つかさ達を生き返らせる――いや、ゲーム機のリセットボタンを押すかの様に優勝して全てを無かった事にしようかと本当に一瞬だけだが考えた。
しかしそう考えた瞬間、今まで出会った仲間達、ルルーシュ、スバル、リイン、ヴィヴィオ、シャーリー達の顔が浮かんできた。
彼等はどんなに悲しくても決して投げ出そうとはしなかった。なのに自分は何を考えているのだろうか?
故にこなたはこのデスゲームのリセットボタンを押す事を止めた。いや、リセットボタンその物を破壊して二度と馬鹿な考えをしないと思った。
だが、進もうとしている足は止まってしまった。スタートボタンを押してポーズした状態で動きを止めてしまったのだ。
そう、どんなに先へ進めようとも起きてしまった事実は変えられない。つかさが死んだ事実は決して揺るがないのだ。
高い確率でつかさとは二度と会えない可能性が高いのだ――その空虚は決して埋まる事はない。限りなく切なく空しい――
覚悟はしていた筈だった。どちらにしてももう元の生活に戻る事はないと思っていた。だから前に進もうと思っていた。
だが、本当は何処か甘く考えていた。覚悟なんて出来ていなかったのだろう。
結局の所、現実はゲームやアニメ等とは違うという事だ。
所詮、現実世界では泉こなたはヒーローでもヒロインでも何でもなく、只の何の力も持たない一般人Aでしかないのだ。
故にこなた自身、もう前に進めないと思っていた――
『そうやって悩んで立ち止まるのは……生き残ってからでも出来るだろう』
そう考えていると、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。
(ルルーシュ……?)
そんなオカルトは決して有り得ない。既に彼は死亡している筈なのだ、首輪も回収している以上それは揺るがない真実だ。
ならば幻聴だというのだろうか?
『今そのために何もできずに立ち止まってそのまま殺されては何もならない。誰も喜ばないだろう』
その言葉はこなたの胸に深く突き刺さる。
わかっている。今このまま無為に立ちつくしても無駄に殺されるだけだ。そんな事はスバル達は勿論、元の世界にいる家族や友人達も喜びはしない。
それは絶対に許される事ではない。
-
『だから……今はまず、生き残ることを考えろ』
その通りだ。所詮自分はヒーローでもヒロインでもない、しがない只の一般市民だ。
生き続ける限り何度でも悩み立ち止まる事はあるだろう。だがそれでも生き続ける限り何か出来る事はあり、幾らでも前に進める筈なのだ。
死んでしまえば最早進む事も戻る事も、悩み立ち止まる事すら出来なくなる。そうなってしまえばどんなに願おうとも誰も助ける事は出来ない。
(……つかさ、ごめん。今はまだつかさの為に何が出来るかは考えられないし、つかさのいない世界を受け入れられるかはわからない……
でも、あたしはまだ生き続けるよ……まだ生きているスバル達や……なによりかがみんの為にも……)
轟音が響く。
「!? もしかして、あの『天使』さん敵だったの?」
恐らくホテルではスバルと『天使』が戦っているのだろう。ならば戦いが激しくなればこの場所も危ない。
スバルが全力で戦えば『天使』が相手でも問題は無いだろう。だが、自分が近くにいると自分を危険に巻き込むまいと全力を出せなくなる可能性がある。
更に、自分が不用意に殺されれば殺害者へのボーナス支給品が与えられスバルを危機へと追い込んでしまうし、それでなくてもスバルはショックを受けるだろう。
(それに……スバルと約束したんだ、自分の身は自分で守るって……だから!)
そう考えたこなたの行動は素早かった。
「リイン、行くよ」
早急にホテル周辺から離れ予め話していたもう1つの目的地であるスカリエッティのアジトへの移動を開始した。
自分達が無事に離れればスバルは遠慮無く全力で戦える。確かスバルにはジェットエッジを持たせていたから戦闘後すぐにでもアジトに向かってくれるはず。
ならば迷う事はない。移動しない手はない。というより、このままこの場所に留まっている方が危険が大きい。移動すべきである。
「こなた、少しはリインの話も聞い――」
ああそうか、リインの意見を無視していた様だ。
「ごめん、でも攻撃に巻き込まれて怪我しちゃったらきっとスバルはショックを受けるから……だから急がないと」
自分は今、泣いていたのだろう。それでもみんなの為に生き残る、その為に今は悲しみに負けないで走らないとならない。
気が付けばルルーシュの声は聞こえなくなっていた。結局の所あの声は何だったのだろうか?
いや、実を言えばルルーシュが言っていた言葉には聞き覚えがある。というよりあって当然だ。
その言葉は、右腕を失い絶望しているルルーシュに自分自身が言った言葉と殆ど同じじゃないか。
そして、つかさを失い絶望している自分にルルーシュがその言葉を返したという事――
そんな都合の良い幻想なんて無い。きっと、自分を立ち直らせる為に自分の中のルルーシュにそれを言わせただけなのだろう。ある意味酷い妄想だ。
だけど、正直そんな事はどっちでも構わないし大した問題じゃない。どちらにしてもルルーシュが助けてくれた事に変わりはない。
「ありがとう、ルルーシュ」
「何か言ったですか?」
「ううん、何でもないよ」
そういえば、つかさの死亡を知ったらかがみはどうするだろうか?
それでなくても殺し合いに乗っていたのだから。強いショックを受けて暴走してもおかしくはない。出会った人を次々襲っている可能性は十分にあり得る。
(どうしてこうなった……幾らかがみんがツンデレでも、平然と人を殺せるはずが無いんだけど……まさかあのおばさんかがみんに何かしたのかな?
それに冷静に考えてみればあの状況でいきなりレイがルルーシュを襲う事だってヤンデレ化したと片づけるには何処か不自然だし……
シャーリーにしたって、ルルーシュに聞いた彼女の性格から考えて状況が状況とは言えレイを有無を言わさず殺す何て事有り得ないしなぁ……
ひょっとして……あのおばさんがみんなに殺し合いさせようと操っているんじゃ……
……いや、考え過ぎかな……本当にどうしてこなた……)
-
「何よりも困難で幸運なくしては近付けない道のりだった……アジトに近付くという道のりがな……」
「実際、アレ見つけなかったら朝まで迷っていたかもしれなかったですからね。というか、こなたキャラ変わってませんか?」
目の前には洞窟があった。リインが見たJS事件の資料で見た写真通りだった事からスカリエッティのアジトである事は間違い無い。
「まぁ、アジトって言うからには目立つ様な外見じゃ困るから見つけにくくて当然だけどね」
幸か不幸か2人は2時間以上も森の中を迷っていた。
リインが周囲の策敵を行っていたが魔力も人の反応も見受けられなかった為、誰にも遭遇することなく今まで時間が掛かっていたのである。
そして無事にアジトに辿り着けたのは偶然ある痕跡を見つけた事だ。
それは血痕、その近辺で戦いが起こった事は明白である。血の乾き具合から見て12時間以上も前のものだと推測出来た。
血痕は何処かへ移動するかの様に続いていた。それが意味する事は治療の為に何処かの施設への移動、
この近辺で治療に使えそうな施設はスカリエッティのアジトぐらい、故に2人はそれを辿り移動した。
勿論、血痕が比較的早期のものというの否定出来ず、危険人物がまだ近くにいる可能性もあった為、慎重に移動した。
そして慎重に周囲を探った事であるものを発見する事が出来た。それはチンクのナンバーズスーツの残骸だ。
回収こそしなかったが、これによりチンクが治療の為アジトへ向かった事はほぼ確定した。
血痕そのものは途中で途切れていたが消された痕跡があった事からも近くにアジトがある事は確実。2人は慎重に周囲を探り今ようやくこの場所にたどり着いたのだ。
以上の事と、スバル経由で聞いたチンクの動向から次の推測が導き出された。
チンクと万丈目準がこの近辺で交戦しチンクは負傷し治療の出来そうな施設へ移動した。
その途中、天上院明日香もしくはユーノ・スクライアの助けを受け移動の痕跡を消した上でアジトにたどり着いた。
そして治療が終わった後、チンク達は市街地方面へ移動したという事だ。
「……ということは、もうこの施設は調べられちゃったって事?」
「そういう事になりますね。チンクが使える道具を回収しないわけないですし。見落としが無いとは限らないですけど」
「じゃあもしかして無駄足だった?」
「そんな事は無いですよ。この施設を使えばスバルの治療も出来る筈ですし」
戦闘機人であるスバルは通常の人間の治療があまり有効ではない。それ故に専門の施設が必要となる。
が、アジトはチンク達戦闘機人の拠点、当然戦闘機人の治療設備は整っている。
実際チンクがここを訪れた事がその証明と言えよう。
「じゃあ、すぐにでも中に入ろうよ。もしかしたらスバルが先に来ているかも知れないし、来ていなくても治療の準備も出来るし」
と、足早に洞窟に入ろうとしたがリインが制止する。
「慌てないでくださいよ! 殺し合いに乗った参加者が先回りしていてここに罠を仕掛けたかも知れないんですからね!!
それでなくても、この場所は敵地なんですよ。どんな罠や危険があるかわかったものじゃありませんよ!」
「そっか、ここはアウェーだったね」
「アニメイトの時を思い出してください。施設に入って安心した所で襲撃を受ける可能性は否定出来ませんよ。あの時助かった幸運が何度も続くわけないんですからね」
「う……」
「それに、アジトは出入り口の限られた場所です。逃げ道を封じられればその時点でこなたもリインもおしまいです。突入は慎重に行うべきですよ」
「じゃあ、安全が確認出来るまではここで待つって事?」
「そういう事になりますね。さっきも言った通り既にチンクが調べたのは確実ですから、現状リイン達が慌てて調べる必要性はないですよ」
何はともあれ、周囲の警戒は決して怠らず2人はアジトの近くでスバル、もしくは他の仲間の到着を待つ事にした。
ちなみに今更ながらにこれまで何も食べていなかった事もあり2人は簡単に食事を取る事にした。
そして食べながらも2人はこれまでの情報を整理する事にした。
-
「とりあえず、放送の事は大体覚えていますよね」
「うん……」
「あ、誰が死んだかについての話じゃないですから。それ以上に重要な事が幾つかあるですよ」
「殺した人へのボーナスの事?」
「それに関しては殺し合いに乗っていないリイン達にはあまり関係ない話ですよ。
ただ、殺し合いに乗った人は誰かを殺した時点で新たな武器が手に入る事になりますから、それを避ける為にも今まで以上に身を守らないとならないですよ」
「とりあえずスバル達の為にも生き続けなきゃいけないって事だね」
「そうです。現状、ボーナスに関してはこれ以上出来る事は無いからこれで話を区切りますね。こなた、先程の放送誰が行っていたか覚えていますか?」
「そういえばおばさんじゃなかったね。誰だったかな?」
「こなたが知らないのも無理無いですよ。さっき放送を行ったのはオットー、スカリエッティの戦闘機人の1人でチンク達と同じ姉妹の1人です」
「ふーん……え? それっておかしくない? それはつまりオットーはチンクの姉って事だよね……」
「妹ですよ」
「いや、声が低かったから年上だと……チンクの服も体型が……」
そう口にした瞬間、自分の体型を思い出しこなたは暗い気持ちになった。
「勝手に自爆しないでくださいよ」
「うん、貧乳はステータスだから大丈夫。希少価値だから大丈夫」
「後で殴って良いですか?」
「それはともかく、リインの話が事実だったらそのスカリエッティ達もおばさん達に協力しているって事になるけど……
わざわざ自分達の仲間を危険な殺し合いに放り込んでいるって事になるよね。それっておかしくない?」
「まず、前提として説明しますけど主催者側にいるスカリエッティ達は参加者にいるクアットロ、チンク、ディエチとは別世界の可能性が高いです。
こなたにも分かり易く言えば、参加者の彼女達と主催者達はほぼ無関係という事ですね」
仮にチンク達が主催者側の人物であれば自分達と協力関係を結ぶ可能性は非常に低い。
だが、チンクにしてもディエチにしてもこちら側と敵対するつもりが無かった事はルルーシュやスバルの証言からも明らかだ。
一方、クアットロに関してはこの場での彼女の動向が不明である以上、判別はつけにくい。
しかし、クアットロの能力や性格を考えれば最も危険な参加者として戦う事はまず有り得ない。裏方に回って他の参加者を扇動する役割に回る方が自然である。
「もっとも、既にチンクとディエチは死亡していますし、クアットロはそれでなくても危険人物ですから今となってはさほど意味を成さない話ですけどね
むしろ、チンクとディエチが死亡したタイミングだからこそオットーが前面に出てきたと思いますよ。
チンク達だったらショックを受ける事でも、クアットロはあっさり受け入れるでしょうし」
「1つ気になったんだけど。みんなクアットロを敵だと思っているの?」
「彼女を知る人間はまず彼女を信用していないですよ。信用する人物は余程のお人好しか馬鹿としか言いようがありませんよ」
「……本当にそんな人いないの?」
「シグナムにしてもヴィータにしてもザフィーラにしてもはやてちゃんにしてもそんな馬鹿な事しないですよ」
「それだけ信用されていないんだったら、クアットロ自身も自重しそうな気もするけど…………あれ、誰か忘れてない?」
「………………話進めますよ。
恐らく主催者側にいるスカリエッティ達はJS事件が終わる前の存在だとだと思います。そして、その戦力を確保していると考えて良いですね」
「もしかして、主催者達との戦いになった時は彼女達と戦う羽目になるって事?」
「その通りです」
仮に首輪を解除する事に成功し主催者側との戦いに突入出来たとしよう。主催者側は恐らく自身達の持つ戦力を投入するのは明白だ。
そしてスカリエッティ達の存在が確認出来た今、その戦力はある程度推測出来る。
単純計算して最低でもJS事件の規模の戦力が控えていると考えて良いだろう。
「それだけじゃないですよ。プレシアの技術力が確かなら遥か未来で起こった事件の首謀者達の戦力を確保しても不思議じゃないです」
「ねぇ、それ何の無理ゲー? それにそれってあくまでも首輪を解除してそこに辿り着いてからの話だよね? まだその段階にすら辿り着けていないんだけど……」
「もしかすると『だから何やっても無駄だから諦めて殺し合え』って言いたい様に聞こえますけど、リイン達は諦めるつもりは全く無いですよ」
「そうだね」
-
ふと2人は空を見上げる。空には星と共に月が輝いているのが見える。
「綺麗な満月です」
「……うん、そういえば昨日も綺麗な満月だったよ」
「そうでしたか……あれ? 『昨日も』?」
「ん、どうかした?」
「いや、連日満月なんて有り得ないですよ」
「あ……」
「ちょっと待ってくださいよ……もしかしたらリイン達はとんでもない思い違いをしていたのかも知れないですよ」
「どういう事?」
「今までこの場所に来てから雲を見ましたか?」
「そういえば見た覚えが……でもそれはたまたま天気が良かっただけじゃないの?」
「さっきホテルから離れる時雷の音が聞こえたのは覚えていますよね」
実の所、先程ホテルから移動する際、遠くから雷鳴の音が聞こえてきたのだ。
雷そのものを見たわけではない為具体的な場所はわからないが音の方向は西側からというのは把握出来た。
今更な話だったが、方向が東に寄れてしまったのは無意識のうちに雷を避けていたからかも知れない。
「そういえば……雲1つ無いのに珍しい事もあると思ったけど……」
「普通雲も無いのに雷なんて落ちないですよ。多分、アレは参加者の誰かによるものだと思います」
「そういえば、ヴィヴィオがそんな参加者に出会ったって言っていた様な」
リインの推測自体は当たっている。もっとも、雷の元凶となっている参加者の周囲には能力による雷雲が構築されていたが、確認していない2人には知る由もない。
「でも、これ自体は別に問題じゃないです。重要なのは『1日中全く雲が発生しない異常気象』という事です。多分、これは意図的によるものだと思いますよ?」
「どうして雲1つない晴れにする必要があるの?」
「雨降っている中歩き回りたいですか?」
「納得」
「それからこなた、カード出して貰えます?」
「これの事?」
と、こなたは2枚のデュエルモンスターズのカードを出した。
「レイ達の情報が確かならカードで強力なモンスターを使えるという話でしたよね」
「使い捨てみたいだけどね」
「その力がどれぐらいなのかはリインにはわからないですけど、多分それに関しても制限がかかると思いますよ」
「まぁ、ギアスとかにも制限がかかるわけだからそれ自体は不思議じゃないけど……それがどうかした?」
「その制限は何処から発せられていると思います?」
「…………あ!」
通常、参加者の能力を縛っているのは首輪だと誰もが考える。自分達を拘束しているのが首輪だからそう考えてもおかしくはない。
では、参加者の能力が絡まない支給品独自の能力、例えばデュエルモンスターズのカード等に関してはどうだろうか?
参加者自身はほぼノーリスクでその力が使える以上、その力を制限するのは首輪ではない事は明白だ。
ではカードのモンスターの能力はどうやって制限しているのだろうか?
「このフィールド自体?」
「その通りです。正直、この小さな首輪に種々様々な力全てを制限するのは難しいです。ですが、この舞台全てがその装置だとしたら十分可能です」
「……あれ、ちょっと待って、それってもしかして……」
これまでの話からこなたの脳内にある仮説が浮かんだ。
「このフィールドはプレシアによって作られたものだったんだよ!!」
「正解ですけど……なに急に口調変えているんですか?」
「『な、なんだってー!』って言ってくれないんだ……」
殺し合いに都合の良い負の感情を増幅する機能、
参加者を逃がさない様に端と端とのループ、
永久に晴れ続け、変わらない夜を作る不自然な空、
そして多様に存在する力の制限、
これはこの舞台が殺し合いの為に人為的に作られた空間を示す証拠となり得るだろう。
「なんとかこれでこのフィールドを破壊出来ないかなぁ?」
こなたは2枚のカードを見つめながらそう口にする。
「残念ですけど、その2体の威力程度はプレシアも計算済みだから無理ですよ。大体それで簡単に突破されたらあまりにもお粗末過ぎじゃないですか」
(でも……カードゲームのカードって組み合わせ次第で色々出来るんだけどね……それこそカードを作った人も知り得ないくらいにね……融合とか何か出来ればさ……)
もしも、手元に2枚のカードを生かす為のカードがあったならば――こなた自身それが何かはわからないが想像を絶する程の力を発揮すると考えていた。
(ま、無い物ねだりしても仕方ないけど)
そういいながらカードを仕舞った。
-
「……という事は、あたし達が助かる為には4つクリアしなければならない問題があるって事?」
1つ目、殺し合いに乗った参加者を全て無力化する事、
2つ目、首輪を解除する事、
3つ目、殺し合いのフィールドから脱出し主催者の元に辿り着く事、
4つ目、主催者側の戦力を打ち破る事、
現状、これら全てをクリアしない限りこの殺し合いを打破する事は不可能という事だ。
「っていうか、1つ目すらマトモにやらせてもらっていないんだけど……」
「とりあえず参加者の無力化はリイン達には無理ですから現状は2つ目と3つ目を何とか考えなきゃならないですね」
「……ねぇ、これだけ大規模な舞台だったらその為の装置は相当な大規模になっていると思うんだけど」
「多分、相当な数のロストロギアを使っている可能性は高いですよ」
「前リインは、管理局の助けは期待出来ないって言っていたけど、これだけ大規模なのに気付かないのは流石に馬鹿過ぎるんじゃないの?」
「スカリエッティ達が絡んでいる時点で隠蔽もクリア出来るとは思いますけど……でも、これだけ大規模なのに全く察知されないのも不自然と言えば不自然ですね……」
「でしょ、この舞台がある世界の管理局だったらわかると思……ちょっと待って、逆に考えるんだ『管理局にバレてもいい』と考えれば……」
「いや、管理局にバレたらその時点で踏み込……そうですよこなた、バレても踏み込まれる前に決着を着ければ何の問題も無いですよ」
リインはJS事件の背景事情である地上の対応の悪さについて簡単に説明をした。
要点を纏めると管理局と言えども、完全無欠ではなく迅速に対応出来るわけではないという事だ。
つまり、管理局にこの場所がわかったとしても対応される前に全ての決着を着ければ何の問題も無いという事だ。
前述の通り主催側の戦力は十分に揃っている。管理局が踏み込んだとしてもある程度の時間は稼げるだろう。
「思い出してください。ボーナスの話を何度も持ち出している事から考えてもプレシア達が早くこの殺し合いを終わらせようとしている事は明らかです。
つまり、この殺し合いは最初からタイムリミットが存在していたという事になるですよ。ペースを考えてそのタイムリミットは長くても2日程度だと思いますよ」
「……うわ、それじゃあ管理局間に合いそうにないね」
「良くてギリギリです。だからやっぱり援軍は期待出来ないですよ」
「ていうか、残り人数だけで4つの問題をクリアするのってどれだけ無理ゲーなんだろう……」
「嘆きたい気持ちはわかりますけど、とりあえず今生き残っている人を整理するですね」
-
放送までに生き残っている人数はこなたを除いて18人。
その内、相川始、アーカード、アレックス、エネル、金居、ヒビノ・ミライの6名は具体的な人物像が不明瞭なので保留。
ちなみに赤コートの男がアーカードで雷の男がエネルなのだがこなた達はその事実を知らない。
次にチンク経由の情報でアンジール・ヒューレーが味方でヴァッシュが敵という情報がある。もっとも、チンクが死亡した今アンジールが殺し合いに乗る可能性があるのが気になる所だ。
メールからの情報ではキングという名の人物が要注意人物らしい。
天道総司に関してはヴィヴィオとクラールヴィントからの情報があるもののどちら側かまでは判断が付けられない。
「ここまでで10人です」
「あと、かがみんだけど……今どこで何をしているやら」
かがみが今も生きている事は嬉しい。しかし、殺し合いに乗っている事実がある以上素直に喜ぶ事が出来ないのが本音だ。
「一度スバルが戦ったけど止められなかった事を考えると難しいかも知れないですね」
「出来ればかがみんにはもう誰も殺して欲しくないし、殺されて欲しくもない」
「この辺はなのはちゃんやスバルを信じるしか無いですね」
後の7人はリインもよく知る人物だ。
なのは、はやて、ヴィータ、スバルは機動六課の仲間。先程まで行動していたスバルは頼れる仲間だが、後の3人は状況次第ではどうなっているかわからない。
「はやてちゃんですら危険人物というのがリインとしては辛いですけど」
クアットロに関しては完全に危険人物だ。保護を頼んだディエチやチンクには悪いが信用は全く出来ない。
「でもクアットロって頭は回るんだよね。幾ら何でも自分が信用されていないとわかっているならそういう無茶はしないと思うけど」
「そう思わせておいて最後に裏切る可能性がありますよ」
「流石に可哀想になって来た気がする」
「同情しちゃダメですよ」
-
そしてヴィヴィオ、放送で名前が呼ばれていない為生存は確認出来た。
だが、彼女を連れ去った容疑者とされていたルーテシア・アルピーノ、キャロ・ル・ルシエ共に死亡しているのが引っかかる。
勿論、この2人が犯人ではなかったという可能性もある。だが、彼女達がゆりかごに向かう途中でヴィヴィオを残して命を落とした可能性もある。
それならばヴィヴィオは今何をしているのだろうか?
「でも、リインの話が確かだったらレリックが無い限りゆりかごを起動される心配は無いよね。少なくとも今のところその様子は無いし」
「逆言えばレリックがあれば起動出来……あ、もしも、アニメイトを襲ったのがルーテシアだったの話ですけど、その場合嫌な仮説が……」
一番の理想はヴィヴィオとレリックが両方そろっている場合だ。その可能性も無いとは言わないが、正直少々都合の良すぎる話だ。
だが、ルーテシアがヴィヴィオを攫ったと仮定すればどうだろうか?
ルーテシアの体内にはレリックがある。つまり彼女を殺してそのレリックをヴィヴィオに埋め込めば条件はクリア出来るという事だ。
おそらく全てが上手く行って余裕の表情でゆりかごにやって来た所を残虐な参加者に仕留められレリックを摘出された可能性がある。
「そんな残酷な……って、誰がそれをやったの?」
「それはわからないです。でも……それを行った人ももう死んでいる可能性がありますよ」
「え?」
「JS事件と同様にヴィヴィオを聖王にして洗脳する可能性があるです……それに放送を聞いたとしたら」
それを聞いた瞬間、2人の表情が青ざめる。
「ヴィヴィオが大好きな人……みんな死んじゃったんだ……」
「コンシデレーション・コンソールとそのショックでヴィヴィオが全てに復讐する可能性があるです」
勿論こなたは生きているがそんな理屈は通用しない。死者が多すぎる以上こなたの生存を認識し損なう可能性は非常に高い。
「だけど……JS事件で1度止めているんだよね?」
「あの時は先に装置を牛耳っているクアットロを仕留めて洗脳を解除したから何とか上手く行った様なものです。そんな都合の良い展開に2度もならないです。
それに一応言っておくですけど、あの状態のヴィヴィオは全力全開のなのはちゃんよりも強いですよ」
「うそぉ……でもさ、よくわからないんだけど他の人のレリックを埋め込んでその時と同じ状態になるのかな?」
「同じ状態にならなければ大丈夫だって言いたそうですが……というか、そんなレリックをポンポン埋め込むのが身体に良いと思っているんですか?
適合しないレリックを埋め込めば命に関わりますよ」
「つまり……死ぬって事?」
「まぁ、仮説を何重も上塗りした仮説ですからそんな事が実際に起こっているとは限らない……というか思いたくないですけど」
「ヴィヴィオ……天道さん大丈夫かな……?」
「はい? どうして天道って人の名前が出るですか?」
シャーリーの父親はゼロに殺されていた。そんな中、シャーリーは天道をゼロだと断定しており、ヴィヴィオもその場に居合わせていた。
もっとも、その後シャーリーはゼロの正体がルルーシュである事を知り、それが誤解だと理解した。勿論、その場所にもヴィヴィオは居合わせている。
しかしヴィヴィオはルルーシュが残虐なゼロだとは思えなかった。こなたもルルーシュがそこまで悪い人間じゃない事をヴィヴィオに説明している。
となれば、ヴィヴィオは未だにゼロがルルーシュではなく天道だと誤解する可能性があるだろう。
「というかどうしてシャー……」
「あれ? どうしたの?」
「いや、あっちのシャーリー(本名はシャリオ)を思い出しただけですよ。ともかくシャーリーは天道をゼロだと思ったんですかね?」
「ゼロと断定出来る物を持っていたんじゃない? 何にせよ、ヴィヴィオがあの状態になっていたら天道さんが危ないと……」
「そうそう都合の悪い事になんてならないと思いますけどね」
「なんか起こってそうな気がする」
-
「そういえば今何時です?」
こなたが時計を取り出し確認をすると既に9時半を過ぎていた。ちなみに丁度今食事が終わった所だ。
「もう、ホテルでの戦いは終わったかな? 無事だったら良いけど……」
「スバルは強いですからきっと大丈夫ですよ」
そうこなたには答えたもののリインも不安を感じている。
(でも、何時までもここで待っているわけにはいかないですね。恐らく次の放送で残り人数が15人以下になる可能性は高いですから……)
駅には15人以下になった時点で開く事の出来る車庫がある。4人死亡したのを確認出来ない限り向かう事は不可能なのでそれが可能となるのは次の放送以降だと考えて良い。
(ただ、同じ事を考えている参加者もいる筈です。戦いになる可能性を考えるとこなたを行かせるべきではないです。
それに、中の危険を考え突入は控えたけど何時までも只待っているわけにはいかないです。本当に中に誰もいないなら一度入るべきですか?
もしくは他の施設へ向かうという方法もあるですね。ただ、スバルが来る可能性がある以上下手に動くわけにもいかないです……)
リインは周囲の様子を探る。しかし、アジト及びその周囲に人がいる気配はない。
(人はいない……そう思ってむやみに動くとアニメイトの二の舞に……)
そう考えていると、
「リインってユニゾンデバイスって話だけど、ユニゾンデバイスって何?」
「……ていうか今更な話ですね」
リインは簡単にユニゾンデバイスについて説明をした。
「じゃあ、ユニゾンすれば強い魔法が使えるって事?」
「でも、相性の問題がありますから誰でもってわけにはいかないですよ。リインにしてもはやてちゃんとヴィータ、それにシグナムとしかユニゾンしてないですし」
「ちぇ、ユニゾンしたらあたしも使えるのかなって思ったのに……ところで他にもユニゾンデバイスっているの?」
「1人いますよ。アギト……」
「ん? どうしたの?」
リインはアギトについての簡単な説明を行った。
アギトはJS事件ではゼスト・グランガイツとルーテシアと行動を共にしスカリエッティと協力していた。
JS事件後はシグナムをロードとして八神家の一員となっていたが……
「そっか、アギトの大切な人がみんな死んじゃったんだね」
「リインが支給されていた事から考えてアギトも支給されていると思いますが……心配です」
2人は空を見上げる。そこには変わらぬ星が輝いていた――
そしてそんな2人の横を一陣の風が吹き抜けていった――
輝ける星は幸運の星――
吹き抜ける風は祝福の風――
彼女達及び家族や友人達にとってそうである様に――
-
「あと、ユーノって人がいたよね」
「すっかり忘れていたですよ。無限書庫の司書長をしていて、なのはちゃんが魔法に出会う切欠になった人ですね。
チンクの話では殺し合いに乗っていないらしいですから多分大丈夫だと思いますが……」
「何か特徴とかってないの?」
「確かPT事件ではフェレットに変身していたって聞いているですよ」
「まさか一緒にお風呂に入ったってオチは……」
「何故わかったんですか? 念の為言っておくですけど、なのはちゃんが9歳の時の話ですよ」
「他に何か分かり易い特徴ってある?」
「どの時期から連れて来られているかわからないですからね……そうだ、ヴィヴィオと声が似ていましたよ」
「ユーノきゅんって男の娘?」
「言いたい事わかりますけど違いますよ!」
【1日目 夜中】
【現在地 C-9 スカリエッティのアジト前】
【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康
【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、救急箱
【思考】
基本:かがみん達と『明日』を迎える為、自分の出来る事をする。
0.スバルの到着を待つ。
1.スバルやリイン達の足を引っ張らない。
2.かがみんが心配、これ以上間違いを起こさないで欲しい。
3.おばさん(プレシア)……アリシアちゃんを生き返らせたいんじゃなくてアリシアちゃんがいた頃に戻りたいんじゃないの?
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました。また、下手に思い出せば首輪を爆破される可能性があると考えています。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※PT事件の概要をリインから聞きました。
※アーカードとエネル(共に名前は知らない)、キングを警戒しています。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。
※リインと話し合いこのデスゲームに関し以下の仮説を立てました。
・通常ではまずわからない程度に殺し合いに都合の良い思考や感情になりやすくする装置が仕掛けられている。
・フィールドは幾つかのロストロギアを使い人為的に作られたもの。
・ループ、制限、殺し合いに都合の良い思考や感情の誘導はフィールドに仕掛けられた装置によるもの。
・タイムリミットは約2日(48時間)、管理局の救出が間に合う可能性は非常に低い。
・主催側にスカリエッティ達がいる。但し、参加者のクアットロ達とは別世界の可能性が高い。仮にフィールドを突破してもその後は彼等との戦いが待っている。
・現状使える手段ではこのフィールドを瓦解する事はまず不可能。だが、本当に方法は無いのだろうか?
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています。
【リインフォースⅡ:思考】
基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
1.このまま待つ? アジトに入る? 駅に向かう? もしくは……
2.周辺を警戒しいざとなったらすぐに対応する。
3.はやて(StS)やアギト、他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。
【備考】
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています。
-
投下完了致しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。
今回も前後編で>>192-201が前編『Iの奇妙な冒険/祝福の風』(約26KB)で、
>>202-209が後編『Iの奇妙な冒険/すたーだすとくるせいだーす』(約23KB)です。
今回のサブタイトルは見ての通り『仮面ライダーW』風のタイトルになりました(本当はやるかどうか迷ったけど、結局やることにした。)。元ネタは以下の通り
『Iの奇妙な冒険』……『ジョジョの奇妙な冒険』※Iは泉こなたの泉のI
『祝福の風』……『ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風』※祝福の風にしたのはリインメインだから……前にも祝福の風使った事あったけど問題は無いよね?
『すたーだすとくるせいだーす』……『ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース』
ちなみにサブタイ当初案は『こなリンの奇妙な冒険 Part1 祝福の風』&『こなリンの奇妙な冒険 Part2 すたーだすとくるせいだーす』でした。
……また仮面ライダーW風にしちゃったよ、テヘッ♪
まぁ、仮面ライダーWのドーパントの能力ってスタンド能力的なの多いから問題は無いかな? さぁ、明日の放送が楽しみだ……って休みじゃねーか。
-
投下乙です
冷静に的確な判断をくだすこなたスゲーとか祝福の風として頑張ってるリインカッコいいとか貧乳はステータスだ希少価値だとか色々感想あったのに全部最後でぶっ飛んじまったw
JS事件でゆりかご内部地図とかで頑張ってくれたユーノを忘れんなよリインw
しかも貴重な対主催の一人だってのにwww
でも男の娘には同意です
-
連日の投下乙です
>Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6
今でさえヤバいホテルがさらにヤバいことに!?
エネルは周囲の電気を吸収して神・エネルというか常時正真正銘雷神・エネルみたいに…
それにしてもはやてと金居の腹黒二人の腹の探り合いがw
>Iの奇妙な冒険/祝福の風 ◆7pf62HiyTE
>Iの奇妙な冒険/すたーだすとくるせいだーす ◆7pf62HiyTE
こなたはあの引きから止まったか
そして力がダメなら頭とばかりに色々と考察を巡らすちびっ子二人組
おいリイン!シャマルさんディするなよ!
今回やたらとネタを繰りだすこなただがもしかしてつかさの死を紛らわせようとわざとそうした行動していたのかな
あとユーノ君がんばっているんだぞ!
-
投下乙です
動揺してたのに止まって冷静に考察とはすげえ
色々とネタもあって面白いが…なるほど、こなたの死を誤魔化す為の行動かもな
そしてユーノ君の扱いがw
-
うおおおお!?
気付けば投下が沢山!
ヴァッシュとスバルがひとまず和解したと思えば何か危険要素がぞろぞろと!
さらにエネルまでー!
しかし天は我らを見捨てなかった!
こなりんに吹きつつ考察に感心したぜ!
-
これより高町なのは(StS)、天道総司、ヒビノ・ミライ、アンジール・ヒューレー、クアットロ、キングで投下します
-
プレシアの目論みによって開かれたデスゲームも彼此10時間が経過しようとしていた。
暗き夜に開始された凄惨な催しは朝と昼を通過して、今まさに再び夜に戻ろうとしている。
当初は60人いた参加者も既に生き残りは3分の1を切っている。
そんな過酷な環境の中で生き残った4人の参加者が紅蓮の炎に包まれたスーパーを背に対峙していた。
ここまでの激戦を潜り抜けて生き残ってきただけあって4人とも名うての兵揃いだ。
時空管理局が誇るエース・オブ・エース、高町なのは。
天の道を往き総てを司る男、仮面ライダーカブトこと天道総司。
元ソルジャー・クラス1st、アンジール・ヒューレー。
無限大の未来を秘めた宇宙警備隊のルーキー、ウルトラマンメビウスことヒビノ・ミライ。
なのはとカブト、アンジール、そしてメビウス。
まさに三者鼎立、三竦みの状態。
今の状況は緊迫していた。
その一翼を担うなのははカブトの傍に控えながらある事が気に掛かっていた。
(銀色の鬼は殺し合いを望んでいない……?)
ここまでなのははカブトのそばで治癒魔法を行使しながら乱入してきた銀色の鬼の様子を窺っていた。
最初は問答無用にカブトを撃墜したのでアンジールの仲間かと思った。
以前弁慶から銀色の鬼は危険な存在だと聞かされていたのでてっきりそうだと思い込んでいた。
だがその直後アンジールの攻撃を阻み、さらに戦いを止めろと言った行動を目の当たりにして銀色の鬼の真意が分からなくなった。
実のところなのはは天道とアンジールの戦いに横槍が入る事を危惧していた。
その理由は周辺をサーチしてすぐ近くの雑居ビルに誰か潜んでいる事を知ったからだ。
当初可能性として考えられたのはアンジールの協力者か、様子見の参加者だった。
もしも後者ではなく前者なら天道は罠が仕掛けてあるかもしれない場所に誘い込まれた事になる。
今でさえ互角であるところに横槍を喰らえば敗北は必至。
だからこそ雑居ビルに潜む第三者に注意は払っていざとなればカブトを守るために戦場に介入するつもりだった。
ところが乱入してきたのは雑居ビルに潜んでいた者ではなく、別の方角から飛び込んできた銀色の鬼であった。
雑居ビルに注意を払っていたなのはとっさには対処する事ができなかった。
だが銀色の鬼は戦闘を止めようとしていると知って様子見で今に至る。
ここまで何も行動を起こさないという事はアンジールの協力者の線は薄くなる。
(じゃあ、いったいあのビルに潜んでいるのは――)
その時、またしても新たな乱入者が現れた。
しかも今度はなのはにとっては馴染みのある人物だった。
▼ ▼ ▼
「さあ、みんなで協力してこのデスゲームから脱出しましょうか」
クアットロは走っていた。
目の前に広がる光景は戦場。
三者鼎立を形作る緊張の場。
だがクアットロは悲観していない。
その場にいる4人のうち高町なのはは無闇に戦いを求める性格ではないし、アンジールは自分が説得すれば大丈夫。
しかも正体不明の銀色の戦士は戦いを止めたいらしい。
それならあとはクアットロ自身の舌三寸で皆を説得して仲間に出来る可能性は高い。
お誂え向きの状況に思わず頬が緩んでしまう。
「アンジール様ー!」
すぐに自分がクアットロだと分かってもらえるように変装用に外しておいた眼鏡を再び付ける。
そして髪もいつものように両端で結ぶ。
服装はいつものスーツではないが、それでも顔を見ればすぐに分かるはずだ。
「みなさ〜ん!」
準備は整った。
あとはこれからの交渉次第。
▼ ▼ ▼
-
「ダメだよ、そんなつまらない事したらさ」
▼ ▼ ▼
「――ッ!?」
それは突然の出来事だった。
4人がお互いを牽制して緊張状態に陥った戦場。
そこに乱入しようと走ってきたクアットロが爆発と共に宙へと吹き飛んだ。
その背後では赤と黒の爆炎が立ち上っている。
明らかに砲撃の直撃だった。
あまり突然の出来事であったために注意を呼びかける暇すらなかった。
「うおおおおおおおおおおおおおおお」
だが急転直下の戦場はなのはに考える間も与えてはくれなかった。
突然アンジールが悲しみの叫びを上げると、クアットロを抱えて戦線から離脱したのだ。
その様子から二人の間に並々ならぬ関係があった事は明白だが、とりあえず尋常な雰囲気ではなかった。
このまま一人にするのは不味いと考えて、引き留めようとしたが――。
「アンジールさ――」
――呼びかけようとしたなのはの声は続けて放たれた砲撃音でかき消された。
しかも砲撃は何発も続き、迂闊に動けない状態だ。
反射的に展開したシールドで防ぎきれる程度ではあるが、こうも続けば爆煙が濃くなり、自ずと周囲の視界も悪くなる。
おかげでなのはもカブトもアンジールの行方を完全に見失っていた。
それと同時にもう一人この場からいなくなっている人物に気付いた。
「おい、さっきの銀色の奴もいないぞ」
「たぶんアンジールさんを追いかけていったんでしょうね」
「お前もそう思うか。で、どうする?」
「あっちは任せましょう。私達は……」
「……この砲撃手をどうにかした方が良さそうだな」
先程の一件で銀色の鬼が実は殺し合いを望んでいない事は二人とも感じ取っていた。
伝聞の情報と直に見聞した情報では後者の方が信じられる。
二人は自分達の判断を信じてこの場に残る事を選択した。
二人の考えが一致した時にはもう砲撃は止んでいた。
▼ ▼ ▼
(このままでは、終われませんわ……)
数秒前までは意気揚々としていたクアットロは死に瀕していた。
背後からRPG-7の砲撃を直撃したのだから当然の結果だった。
だがそこは戦闘機人。
もしクアットロが生身の身体なら砲撃の時点で五体は千切れて一瞬で死んでいた。
半分機械の身体だからこそ即死だけは避けられたのだ。
さらにとっさにデイパックを盾にした事も命を長らえた一因となっていた。
だが即死こそ避けたが、クアットロに助かる見込みはなかった。
唯一スカリエッティのアジトに行けばなんとかなるかもしれないが、どう計算しても時間的に着くまで生きている可能性は皆無だ。
地上本部の転移魔法陣を使っても間に合いそうにない。
(なんで、私が、こんな目に……)
血に濡れた頭を上げ、ぼんやりと霞む目を向けるとアンジールの姿が見えた。
先程から揺れる自分の身体と合わせてアンジールに抱えられている事は明白だ。
だがいくらアンジールの力でも生きている間にアジトへ着く事は不可能だ。
なまじ頭が良いばかりにクアットロは自分が生き残る可能性が皆無である事に思い至っていた。
本当ならこのような不条理に文句を言いたいところだが、あいにくそんな余力もない。
だからクアットロは残り少ない命を糧にして考えていた。
(いいですわ……それなら、それで私にも考えがあります……)
どうすれば生き残っている参加者により大きな絶望を与えられるかと。
▼ ▼ ▼
-
「よし! 追い付けた!」
あの騒動の中、メビウスは偶然にも戦場から離脱するアンジールの姿を見つける事が出来た。
そして一瞬の迷いの後に追いかける事にした。
確かに別世界のなのはも気になるが、あの時はそれ以上にアンジールが気に掛かった。
それは目の前で大切な人を亡くしたからだったのかもしれない。
なによりあのような状態で一人にする方が危なく思えた。
そのアンジールを見失う前に追いつけた事は辛い出来事が続いていたメビウスを安堵させるものだった。
「あの、すいま――」
だがすぐにメビウスは気付いた。
アンジールの目の前に砲撃を受けた女性が横たえている事に。
少し考えればここへ来るまでに女性は息絶えてしまったという事は分かった。
「そ、そんな……」
これで3度目だ。
1度目は赤コートの怪人と対峙した時に身を張って時間を稼いでくれたクロノ。
2度目はほんの少し前ゼロによって殺された壮年の戦士。
どれも目の前で死んでいった。
ミライの力が及ばないばかりに。
そしてこれで3度目。
自分のせいではないにしてもミライは後悔してもしきれなかった。
「くそっ……!」
既にメビウスの安堵は後悔に変わっている。
少し前にも同じ経験をした身としてアンジールの背後に近付いてもかける言葉が見つからなかった。
こういう時は下手に言葉をかけるよりは黙っていた方がいい気がした。
静寂の暗闇の中でカラータイマーが点滅する光と音が一層虚しく感じられる。
やはりこういう時気の利いた事が上手くできない自分はまだまだだなと居たたまれなくなる。
だから――。
「約束しよう、クアットロ」
――その言葉と共にアンジールが振るった刃に驚かされた。
「!?」
下段からの斬撃に対してとっさにメビウスディフェンサークルで防ぐが、今のメビウスにとってその判断は誤りだった。
あまりの急展開にメビウスは失念していたのだ。
変身時間の残りがもうない事に。
刹那の拮抗を齎した∞のバリアはカラータイマーの沈黙と共にあっさり砕かれ、メビウスの変身が解けたミライに刃が襲いかかる。
バリアを張るために突き出していた右腕がメビウスブレスごとバスターソードで無残に斬られていく様子がひどくスローに見えた。
(なのはちゃん、ごめん……)
奇しくもバスターソードの描く斬撃はセフィロスの正宗が斬り付けた傷口と同じ場所をなぞっていた。
そして二度と奇跡は起きなかった。
▼ ▼ ▼
「アンジール、様……」
「クアットロ喋るな! 今すぐ俺達のアジトに――」
「もう、無理ですわ……この傷ではアジトまで、は……」
「そんな事はない! 俺の力なら――」
「アンジール様も、分かっているのでしょう」
「…………」
「大丈夫です。私、寂しくはありませんから」
「そ、それは」
「アンジール様が生き返らせてくれる。私は、そう信じています」
「!?」
「私だけじゃありません。きっとディエチちゃんも、チンクちゃんも、そう信じているはずです」
「それは……」
「だからお別れは少しの間だけです。私達のためにも、アンジール様は……このデスゲームで最期の一人になってください……」
「……クアットロ」
「……またお会いできる時を楽しみにしています」
▼ ▼ ▼
-
その瞬間が来るまでアンジールは自分の処遇を決めかねていた。
もちろんアンジールが悩む原因は天道だ。
決着は付かなかったとはいえあのままなら負けていたのは間違いなく自分だ。
しかも天道には自分と同じく妹がいるらしい。
その天道の言葉だからこそ少なからず共感できるものがあったのは事実だ。
だが一方で本当にそれでいいのだろうかという疑念も渦巻いている。
孤高を貫くか、手を取り合って協力するか。
アンジールはデスゲームに於いて重大な岐路に立っていた。
だが岐路を決するきっかけは呆気なく訪れた。
突如戦場に届いた新たな乱入者の声。
その声の主をアンジールは知っていた。
いや知っているどころではない。
聞き間違えるはずがない。
それはまさしくアンジールが守らんとする者の声。
もう唯一人となってしまった大事な妹。
だがその妹は突然の砲撃で瀕死の状態に陥ってしまった。
あの瞬間の紅い炎と赤い血を周囲に撒き散らせながら宙に吹き飛ばされるクアットロの姿が何度もフラッシュバックする。
近くにいたにもかかわらずアンジールは何もできなかった。
その直前まで天道の言葉に従うか悩んでいたせいで反応が遅れたからだ。
だから最初何が起こったのか理解できずにただ見ているしかできなかった。
そして地面に叩きつけられてようやく事態を理解した。
それからはほとんど反射的にクアットロを抱えて走りだしていた。
スカリエッティのアジトへ行けばまだ生きる望みはあると思ったからだ。
だがアンジールも分かっていた。
いくらソルジャーの脚力を以てしてもクアットロはアジトに着くまでに死んでしまう。
それは逃れようのない事実だった。
だがそうだとしてもアンジールは立ち止まる気はなかった。
もう自分が知らないところで妹が死んでいくのは耐えられない。
だがそんなアンジールの行動も虚しくクアットロは最期の言葉を残して死んでいった。
クアットロの最期の表情は今まで見た事もないような笑みが浮かんでいた。
だからアンジールは決意した。
なんとしてもこのデスゲームの最期の一人になると。
それこそ自分が守れなかった妹達に出来る唯一の贖罪。
「ミライの旦那ぁぁぁ」
少し思いに耽っていると、突然それを中断させる声がした。
ふと見ると、今しがた斬り捨てた参加者のデイパックから持ち主を呼ぶ声が上がっていた。
どうやら醜い絵柄のカードからその声は発せられているようだった。
「なんで、ミライの旦那を殺したんだ」
「そうだ、なんでだよ」
「この鬼、悪魔」
しかし本来なら愛嬌あるその声は決意を新たにした今のアンジールにとって耳障りでしかなかった。
「ファイガ」
▼ ▼ ▼
-
全ての元凶は数時間前に遡る事になる。
「えー、なんだよ。俺が狙っていた奴ほとんど死んでいるじゃんか」
どこにでもあるような灰色のコンクリート製の雑居ビルの2階の主は3回目の放送が終わるや否や早速不満の声を上げていた。
声の主は最強のアンデッドを自負するキング。
コーカサスオオカブトムシの祖であるカテゴリーKは未だ放送前のメビウスとの戦闘の傷を癒している最中であった。
1万年ぶりの敗北を味わったせいかキングを着飾る赤ジャケットと色とりどりのアクセサリーもどこかくすんで見える。
だが不満の声が上がったのは敗北による不愉快に加えて先の放送が原因だ。
実はこの放送でキングが目を付けていた参加者が大量に死んでしまっていた。
浅倉にはもっと暴れてもらって是非とも非道な仮面ライダーとして天道と対決してもらいたかった。
ミラーワールドで新たな殺し合いを開いたまでの首尾は良かったが、どうやらその戦いで死んだらしい。
自分で開いた殺し合いで自分が死んでは洒落にもならない。
キャロもあそこまで追い詰めて覚醒させてから全く会えなかった。
出来る事なら天道と再会させたかったが、それももう叶わず。
ルーテシアとフェイトも伝え聞いた話や『CROSS-NANOHA』の内容から想像するに、キャロと同様に心を抉ればさぞかし面白いものになったかもしれない。
結局その二人には一度も会う事もないままどこかで死んでしまった。
そしてルルーシュとシャーリー。
せっかくゼロの格好を手に入れたのだから是非とも二人に会って反応を楽しみたかった。
特にシャーリーはどんな顔をするのか想像するだけでワクワクしていた。
だがそれも二人の死亡によって無駄になってしまった。
しかもこれで生き残っている参加者の中でゼロのことを直接知っている者は誰もいなくなってしまった。
キングにとっては不愉快な事ばかりであった。
メビウスとの戦闘のダメージはアンデッドの回復力と手持ちの『治療の神 ディアン・ケト』を連続使用する事でほぼ回復した。
もうすでに普通に動く分には問題ないが、完全回復まではもう少しかかりそうだ。
もし今戦う事になれば雑魚相手なら支障はないが、メビウスやジョーカー相手だと少し厳しいかもしれない。
だが先程までと違って今のキングには当面急ぐ理由はない。
反応が気になる参加者のほとんどが死亡した事で新たな獲物が欲しいところだ。
雑居ビルの近くをかなりの速度でアンジールが走り去っていったのはそんな時だった。
(へぇ、しばらく見ないうちに派手に戦っているじゃん)
大通りを一心不乱に北進するアンジールを追跡する事数十分。
追いついた先で繰り広げられていたのは仮面ライダーとソルジャーの戦いだった。
その様子をキングは近くの雑居ビルに潜んで観察していた。
どうすればより面白くなるかを考えながら。
だがキングが介入する前に突然乱入してきた人物によって戦いは中断してしまった。
その人物はキングもよく知る人物。
放送前に一戦交えてキングに苦汁を嘗めさせたウルトラマンメビウスことヒビノ・ミライ。
そのせいでこの場は膠着状態になってしまったが、その均衡は思わぬ形で崩れる事になった。
(ん、誰か来た?)
常人を遥かに上回るアンデッドの聴覚が捕らえたのはクアットロの足音だった。
クアットロに関しては『CROSS-NANOHA』で既に把握していたのですぐに分かった。
敵方として特徴的である意味自分と似た者だったというのがすぐ分かった一因だ。
そのクアットロがどうして急いで戦場に向かっているのか、その理由はすぐに分かった。
『それから、あの銀色の……どうやらアレも殺し合いには乗って居ないように見えますけど……』
『――上手くいけば、この場の全員を仲間に出来る……?』
その言葉だけならまだ4人を騙して上手く取り入ろうとしているのかと思った。
だが次の一言でキングの行動は決まった。
『さあ、みんなで協力してこのデスゲームから脱出しましょうか』
そしてキングはクアットロを砲撃した。
理由は簡単。
あのままクアットロに説得の機会を与えればせっかくの火種が台無しになってしまうからだ。
そうなる前に自ら手を出して火種を作る方が面白くなりそうだった。
結果は上々。
クアットロはRPG-7の直撃を受けて死亡、アンジールはそのクアットロを抱えて離脱。
それを追いかけてメビウスも離脱。
ついでに殺害ボーナスも手に入った。
予想外に場が一転したのでキングとしては満足だった。
-
「さて、どうしようかな」
この場に残っているのは高町なのはと天道総司。
二人にとって今のキングが扮しているゼロは完全に敵だ。
しかもゼロの衣装を解いても放送でペンウッドとC.C.の名前が呼ばれた以上二人ともキングを味方とは思っていないだろう。
それにRPG-7も殺傷力のある榴弾は全弾使い切って残っているのは照明弾とスモーク弾だ。
それならそれでアンデッドの姿に戻って戦うのも一興だが、それでは芸がない気もする。
「なにか面白い物ないか……ん、あれって……」
銀色のトランクケース。
それは砲撃の影響で誰かのデイパックから零れたのかキングの足元に転がっていた。
さっそく中身を確認してみると、キングは思わず目を輝かせた。
そこに入っていた物はベルトだった。
「やった、良い物見っけ!」
その笑顔はまさしく面白い玩具を見つけた子供のような純真な笑みだった。
【1日目 夜中】
【現在地 D-2 スーパー前】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、少し満足
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード、デルタギア一式@魔法少女リリカルなのは マスカレード、デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギルモンとアグモンとC.C.のデイパック(道具①②③)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【思考】
基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
1.デルタのベルトで遊ぶのも面白そうだね。
2.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
3.はやての挑戦に乗ってやる。
4.ヴィヴィオをネタになのはと遊ぶ。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、疲労(小)、変身中(カブト)
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
1.砲撃手を倒す。
2.一応あとで赤と銀の戦士(メビウス)の思惑を確かめる。
3.高町と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを救出、何としても親子二人を再会させる。
4.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
5.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
6.キングは信用できない。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※SEALのカードがある限り、ミラーモンスターは現実世界に居る天道総司を襲う事は出来ません。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました。
※アンジールは根は殺し合いをするような奴ではないと判断しています。
※ゼロの正体はキングだと思っています。
-
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、弁慶のデイパック(支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER)
【思考】
基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
0.砲撃手を倒す。
1.出来れば銀色の鬼(メビウス)と片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
2.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
3.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
4.フェイトちゃんもはやてちゃんも……本当にゲームに乗ったの?
【備考】
※金居とキングを警戒しています。紫髪の少女(柊かがみ)を気にかけています。
※フェイトとはやて(StS)に僅かな疑念を持っています。きちんとお話して確認したいと考えています。
※ゼロの正体はキングだと思っています。
【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
1.まずは現状確認。
2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
友好的:なのは、(もう一人のなのは)、(フェイト)、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、(シャマル)、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、(キャロ)、(ギンガ)、ヴィヴィオ、(ペンウッド)、天道、(弁慶)、(ゼスト)、(インテグラル)、(C.C.)、(ルルーシュ)、(カレン)、(シャーリー)
敵対的:アーカード、(アンデルセン)、(浅倉)、相川始、エネル、キング
要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)、アンジール
それ以外:(チンク)・(ディエチ)・(ルーテシア)、紫髪の女子高校生、(ギルモン・アグモン)
▼ ▼ ▼
-
赤く立ち上る炎を背に受けて天使の姿をした悪魔は歩き出す。
炎の原料となるのはファイガによって燃やされたカードとその持ち主だった死体と荷物。
「悪魔か、それでもいいだろう」
亡き妹達の願いを叶えるなら天使でも悪魔でもなんだっていい。
「悪魔なら、悪魔らしいやり方で叶えるだけだ」
もうこの手に誇りも夢もない。
その象徴だったバスターソードは最期の一撃で砕けてしまった。
今まで戦闘でそこまでダメージがあったのだろうか。
だが逆に踏ん切りがついた。
もう今の自分にはあの剣は似合わない。
今の自分にはこの『反逆』という名を冠する剣の方が似合っている。
そうだ、先程までの悩んでいた自身に反逆するのだ。
幽鬼のように歩き出した今のアンジールには夢も誇りもない。
今のアンジールにあるのは亡き妹の願いという名の呪縛だけだった。
【1日目 夜中】
【現在地 D-2 東部】
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
1.参加者の殲滅。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡確認】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは 死亡確認】
【全体備考】
※クアットロの荷物は砲撃で木っ端微塵になりました(それなりに強度のある物なら残っているかもしれません)。
※D-2東部の路上でミライの死体と荷物が全て燃え尽きました。なお近くに折れたバスターソードが放置しています。
-
投下終了です
タイトルは「絶望の暗雲」、元ネタはメビウス49話より
誤字・脱字、疑問、矛盾などありましたら指摘して下さい
-
投下乙です。
やはり潰されるのはクアットロだったか(それでアンジール完全マーダー化するので。)。つか、最後に余計な事するんじゃねーよクアットロ……
で、その流れでミライも退場、荷物まで焼かれて……おジャマ……(涙)
つか、クアットロとミライの荷物ほぼ全滅か……(いや、クアットロはまだわからんが……)……ブリッツキャリバー……(涙)
で、しっかりデルタのベルトは残ってキングが使うというキングにとって都合の良いオチ(キングだったら耐えられるだろうからなぁ)……とりあえず天道、逃がすと回復アイテムで回復されるから今度こそ確実に仕留めろー。
で、アンジールがミライを仕留めて手に入れたのがリベリオンなのは状態表で把握できたが……キングがクアットロを仕留めて手に入れたボーナスはまだ判明していないよな……(状態表見たところ増えた様子は無い。)
-
投下乙です
アンジールは悲壮だな。そして道化だわ…可哀そうだがとっとと死んでねとしか言えんな
クアットロは対主催しててもやっぱりクアットロだわw
さて、キングを追う二人は打倒できるか?
キングも簡単には倒せないだろうし…
-
投下乙です
ミライ南無…
そして本当にクアットロは最期の最期でなんて遺言残してくれたんだwww
でもそこがクアットロらしい
-
>>225
状態表はただの書き漏れです
wikiに収録した際に書き加えておきます(詳細は後続にお任せします)
-
投下乙です
綺麗なクアットロとか色々言われて来たがクアットロはやはりクアットロだったか
今までの綺麗分をここで一気に取り戻したな
ミライにはご愁傷様としか言えないな…ここまでよく頑張った。
-
これよりホテル組の投下を開始します。
-
このデスゲームに於いて、ホテル・アグスタという施設は比較的幸運な方だったと言える。
では、何が幸運なのか。その答えは、他の施設を見れば考えるまでも無く導き出されるだろう。
何と言っても、このホテルは未だ無傷。つい先程まで、誰もこの場所で戦闘を起こそうとはしなかったからだ。
しかし、いつまでもそんな幸運が続きはしない。このホテルにも、破壊の魔の手が迫っていた。
「このっ!」
少女の叫び声と共に、緑の脚が一直線に振り下ろされた。
しかし、緑の脚が標的を捉えることは無く、振り下ろされた踵落としはテーブルを砕いただけだった。
ど真ん中から真っ二つに砕かれたテーブルを蹴って、仮面ライダーキックホッパーは跳ぶ。
標的は、ちょこまかと回避を続ける漆黒の仮面ライダー、カリス。
宙に浮かび、キックの体勢を作るが――
「うわっ……!?」
カリスアローから放たれた数発の青白い光弾によって、体勢を崩されてしまう。
空中で姿勢を崩したキックホッパーは、そのまま下方へと落下。
したたかに身体を打ちつけるが、そこは仮面ライダーの装甲だけあって装着者へのダメージは無い。
すぐに立ち上がり、構えを取るが――すぐに、後方から羽交い絞めにされる。
「やめてくれ、かがみさん! 俺達は君に危害を加えるつもりはない!」
「なら黙って殺されなさいよ! あんた達全員殺して、私も死ぬから!」
「なんでそうなるの! そんな事言われて、黙ってハイなんて言える訳ないだろ!?」
ヴァッシュ・ザ・スタンピードが、仮面ライダー相手に肉弾戦を仕掛けたのには訳がある。
自分が今装備している武器は、アイボリーとエンジェルアームズのみだ。
アイボリーは残弾5発。しかし、仮面ライダーの装甲には弱点はおろか、目立った亀裂すら見当たらない。
例えばライダーの装甲を解除させる一点を発見するとか、そんなチャンスが到来するまでは残り少ない弾を使う事は避けたい。
そして、エンジェルアームズ。これには、アイボリーよりもキツいリミットが掛っている。
プラントとしての能力を行使すればするほど、ヴァッシュの髪の毛は黒くなって行く。
やがて全ての髪の毛が黒くなった時、ヴァッシュはこの世から消滅してしまうのだ。
既に九割が黒髪化している今、残ったエンジェルアームズは温存していきたい。
そして、もう一つの理由。
「もう、離しなさいよ! セクハラで訴えるわよ!」
「訴えるのはいいけど、その為にはまず生きてくれ!」
我武者羅に腕を振り回し、ヴァッシュを振り払おうとする。
そう。仮面ライダーキックホッパーは、言い分だけでなく、戦闘スタイルも滅茶苦茶なのだ。
油断さえしなければ、戦闘においては素人同然のかがみに負ける事はまず無いだろう。
とりあえず賞金首として扱われていた時期もあったヴァッシュにとっては、セクハラで訴えられるくらいどうって事はない。
いや、出来れば訴えて欲しくは無いが、それ以前にかがみが生き残る事が出来るかが問題なのだ。
それに何より、一度でも会話を交わしたかがみにこのまま死んでほしくは無い。
スバルはスバルで、どうやらカリスと話があるらしい。だからヴァッシュは、かがみを優先して止める事にしたのだ。
-
キックホッパーに向けて光の矢を放ったカリスへと、素早い回し蹴りを叩き込む少女が一人。
スバル・ナカジマだ。骨折した左腕は使い物になりはしない。故に、使えるのは右腕と脚のみ。
幼い頃からストライクアーツを習得して来たスバルにとって、左腕を使えないと言う状況が如何に不利かは十分過ぎる程に分かっている。
先程のヴァッシュ戦では、極度の怒りと興奮で痛みは感じなかったが、一旦熱が引いた今となっては話は別だ。
固定された状態の左腕は、スバルにとって足かせでしか無い。かと言って無理に動かそうとすれば、左腕に激痛が走る。
当然だろう。内部フレームからへし折られてしまったのだ。応急処置程度で前線に戻れる程、戦闘は甘くは無い。
「仮面ライダー! 貴方はゲームに乗ってるんですか!?」
「乗っていると言ったらどうする」
「止めてでも、ギン姉の事を聞きだして見せる!」
駆け出したスバルが右脚を振り上げ、ハイキックを繰り出す。
IS・振動破砕を発動してのハイキック。入れば、それなりのダメージは望める。
……筈なのだが、そう上手く事が運びはしない。
スバルのハイキックは、カリスの左腕によって容易く払われてしまう。
(効かない……!?)
「無理だ。そんな身体で、俺を止める事は出来ない」
カリスの言う事は正しい。
いくら振動破砕を発動しているといっても、今のスバルではハンデが大きすぎる。
何せスバルは現在、左腕が固定されているのだ。そんな状況でのハイキックに意味等無い。
本来、パンチやキックと言った打撃系攻撃は、身体全体を使って打ち出す攻撃だ。
決して乱れぬ精密なフォームがあって、初めて打撃系攻撃は力学的な威力を生み出すのだ。
そのフォームが乱れたとあれば、いくらプロの格闘家であろうと威力を出す事は難しい。
それ程にフォームという物は重要なのだ。
ましてや、それが乱れるだけで威力が半減する打撃系格闘技に於いて、左腕が使えない等問題外だ。
左腕無しで本来のバランスを保った状態でのキックなど打てる訳が無いのだ。
仮に左腕に痛みを走らせないよう、無理して打撃を放ったところで、その攻撃に威力は無い。
多少の打撃は覚悟しているであろう相手に……それも仮面ライダーに、そんな状態の攻撃が通用する訳が無いのだ。
それくらいは格闘技をやっているものならば子供でも解る事。
ましてやスバルともなれば、この状況が如何に不利かなど考えるまでも無い。
だけど、それでも止まってはいられないのだ。
「無理じゃない! ギン姉に何があったのか、聞かせて貰うまで私は退かない!」
「ならば教えてやろう。ギンガは殺し合いに乗った俺を救い、死んだ!」
「え……!?」
驚愕と同時に、一瞬だけ動きが止まってしまう。
その一瞬は、カリスにとっては無限にも等しく感じられる、攻撃の瞬間。
漆黒の装甲に包まれた右脚を突き出し、スバルの胸を強打。
蹴りつけられたスバルは後方へと吹っ飛ばされ、その身体を壁へとしたたかに打ちつけた。
「ぐぁ……ッ」
「馬鹿な奴だ! 俺なんかの為に、奴は死んだ! 俺なんかの為に……!」
カリスの声が、震えていた。
まるで、行く先を失った怒りをぶつけるように。
どうしようも無い悲しみを吐き出すように。
先程まで戦う事しか考えない戦闘マシーン同然だったカリスの声が、震えていたのだ。
その声色の変化を、スバルは見逃さなかった。
ふらふらと立ち上がり、緑の視線でカリスを捉える。
その瞳に浮かべるのは、姉にかける想い。姉の想いを踏みにじらぬ様に。
姉に救われ、姉の想いを託されたであろうカリスに、それをぶつける。
「ギン姉は馬鹿じゃない! ギン姉が、無駄な命を救う訳が無い!」
「何を言ってももう遅い! 俺は戦う事でしか、他者と分かりあえない!」
言うが早いか、醒弓を構えたカリスが駆け出した。
刹那の内にスバルの間合いまで踏み込み、その刃を振り下ろす。
命中すれば、首が跳ね飛ぶ。それ即ち、間違いなく即死だ。
されど、スバルは微動だにしない。決して臆さず、決して逃げない。
瞳逸らす事無く、真っ直ぐにカリスを見据えた。
-
「まだ遅くなんかない! 貴方は、せっかくギン姉に救われた命を、こんな下らない戦いに使うつもりなの!?」
腹から絞り出すような怒号。
醒弓の刃は、スバルの喉元を掻き切る寸前に、止まった。
震える刃。震える腕。ほんの僅かに、カリスの身体が震えていた。
カリスが何を思ったかは、スバルにも分からない。
だけど、カリスがすぐに自分を殺せなかったのは、大きなチャンスだと思う。
「だから! 私は貴方を止めて見せる! 戦うことでしか分かりあえないなら、戦ってでも話を聞かせて貰う!!」
「な……ッ!」
上体を低く屈め、僅かに左脚で壁を蹴った。
僅か一瞬で、腕を突き出したままのカリスの懐へと跳び込んだ。
だんっ! と、左足で地面を踏み締め、太腿で壁を作る。腰を捻って、肩を入れる。
左足で踏み締めた運動エネルギーをそのままに、流れる様なフォームで、上体まで伝える。
今持てる全力を尽くして、ISを発動。拳を回転させながら、真っ直ぐに突き出す。
同時に、ジェットエッジで一瞬だけ加速を生み出した。突き出された拳に、ジェットエッジによる加速が加えられる。
それは、左腕が使えない今、この状況を最大限に活かして繰り出した渾身の右ストレートだった。
「――ぉぉぉぉぉぉぉっぉりゃぁぁぁぁぁッ!!!」
「が……ァ……!!?」
カリスの腹部……ベルトと胸部装甲の間の、比較的装甲の薄い箇所。
そこを目掛け、全力を込めた振動破砕を、全力を込めた右の拳を叩き込んだ。
流石のカリスと言えど、この一撃を受け切る事など不可能だ。
カリスの装甲を通じて、不死生物の体内まで、振動派が叩き込まれる。
その威力は尋常ではなく、かなりの体重差を持ったカリスを、数メートル後方まで吹っ飛ばす程だった。
◆
月明かりを閉ざす雷雲が空を埋め尽くし、地上は漆黒の闇に閉ざされていた。
人口の明かりが無くなったこの空から聞こえるのは響く様な雷鳴。
たまに周囲に落下する青白い稲妻だけが、木の影に隠れた金居とはやての顔を照らし出してくれた。
はやては思う。この状況、どうするべきが正解なのだろう?
(ようやく見付けたスバルを、こんなとこで失いたくは無い……かといって、無策にあの乱戦の中に入る訳にはいかへん。
スバル達はまだエネルに気付いてないみたいやし……あかん、このままやったら皆エネルに殺されてまう……!)
エネルとの戦いか、仮面ライダー同士の戦いへの介入か。
出来る事ならば、スバルだけを味方として獲得し、そのままエネルに気付かれる事無く何処かへと逃げ去りたい。
しかし、それをするにはあのライダーバトルの真っただ中に介入せねばならないのだ。
今の戦力で無策にあの中に入るのは自殺行為に等しいし、かといってエネルとの戦いは論外だ。
海楼石はこちらにある。倒せない事はないだろうが、今はまだその時ではない。
勝負を仕掛けるには、確実に倒せるだけの戦力と情報が必要不可欠だ。
幸い、まだエネルはこちらには気付いていないようだが……
「金居さんは、現状をどう思いますか」
「ジョーカーとあの仮面ライダーだけならまだしも、あの雷男まで相手にするのは御免被りたいな」
金居は金居で、エネルの脅威については本能的に感じ取っているらしい。
だが、その言葉は同時に金居の戦闘力のレベルを窺い知るためのヒントにもなり得る。
金居は「あの黒のライダーと緑のライダーの二人までなら戦える」と、そう言ったのだ。
キングとは違い、冷静な金居がただの自信だけでものを言うとも思えない。
つまり、金居の戦闘力はそれなりのものという事だ。
(それなら、この男もまだここで失う訳にはいかへんな)
出来る事なら、金居をキープしたままでスバル(とその仲間?)の戦力を確保したい。
その為にも、スバルと交戦しているあの黒のライダーを確実に倒して、先に進みたい所だ。
だが、それをする為にはやはりエネルがネックになる。この分じゃエネルがホテルに到達するまでに時間はあまりかからない。
エネルがここに来るまでに、何とか状況を変えたいが……
-
「おい、八神」
「何ですか?」
「あれを見ろ」
森林に多くそびえ立つ木々の影から、金居がそっと手を伸ばす。
その先にいるのは、雷光に照らし出された神・エネル。そして、その奥にもう一人。
漆黒の騎士甲冑は、まるでなのはのバリアジャケットをそのまま黒くしたようなイメージを抱かせる。
サイドポニーに纏めたプラチナブロンドの髪が、ゆらりと揺れるその姿は、なのはに良く似ていた。
しかし、その立ち居振る舞いはなのはとは全く違う。どこか不気味な、生気を感じさせない歩み。
死すらも恐れて居ない様な足取りで、一歩、また一歩と歩を進めているのだ。
まるで死神の様な姿ではあるが、しかしはやてはその姿に見覚えがあった。
◆
今の一撃は効いた。
もしも万全の状態で放たれたなら、一撃で変身解除まで追い込まれていたかもしれない。
それ程の激痛を伴う一撃。まるで身体を内側からブチ壊されたような、凄まじい威力。
スバルのIS、振動破砕による爆発的な攻撃力によって、カリスの身体は吹き飛ばされた。
硬いコンクリートの床に叩き付けられたカリスの身体は、思う様に動かない。
アンデッドの回復力をもってすれば、これくらいはすぐに回復出来るだろうが……今すぐに戦線復帰するのは、少し厳しい。
赤い複眼を持ち上げて、こんな芸当をやってのけてくれた娘に視線を向ける。
「もう止めて下さい……手応えは確かに感じました。貴方はこれ以上戦えない!」
「貴様……、あくまで俺を殺さないつもりか……ッ!」
「ギン姉に救われた貴方の命を、妹の私が奪う事は出来ない……
だから、聞かせて貰う! ギン姉と貴方の間に何があったのかを!」
真っ直ぐな瞳で、真っ直ぐな想いを自分へとぶつけるこの女。
ああ、やはり見覚えがある。つい数時間前まで一緒に居た、何処までも強い女と同じ目だ。
その後に出会った浅倉威にも、柊かがみにも、ギンガと同じ意志の強さは感じられなかった。
この殺し合いで、もうあんな人間に会う事は無いだろう。会ったとしても、関わる事はないだろう。
そう思っていたが、運命とは何と皮肉な事だろう。
この短時間で、再びこの瞳に出会ってしまうとは。
「……これから殺す相手に教えても、意味がない」
「まだそんな事を……!!」
言ってはみたものの、今すぐに再び立ち上がってスバルを殺す事は、無理だ。
何よりも振動破砕の威力が大きすぎる。この身体がアンデッドのものでなければ、どうなっていたか分かった物じゃない。
そして第二に、この女の目を見ていたら、この女の言葉を聞いていたら、ギンガを思い出してしまう。
それが研ぎ澄まされつつあった闘争本能を、内に潜むジョーカーの感覚をどれだけ鈍らせる事か。
同時に、ギンガ達の存在が自分の闘争本能を鈍らせると自分自身で理解出来てしまうのが、どうしようもなく悔しかった。
「殺されるのが嫌なら、俺を殺せ。そうすれば、全て終わりだ」
「そうやって、逃げるんですか!?」
「何、だと……?」
-
逃げる? こいつは一体何を言っているんだ。
最強のアンデッドたるこの俺が、一体何時、何から逃げたというのだ。
ハートの複眼に捉えるは、決して鈍らない信念を瞳に宿したスバルを捉える。
その目は何処か怒っているようで、不思議な気迫を感じさせた。
「嫌な事から、怖い物から、戦わずに逃げる事は簡単だよ。でも、それじゃダメなんだ!
戦う事を止めて逃げてしまったら、そこで終わりだ。そんなの、私は絶対に嫌だ!」
「俺が何時逃げようとした」
「死んだら終われるとか、殺されたら自分の責務から解放されるとか……
ギン姉に貰ったたった一つの命を、そうやって投げ出して終わらせるつもり!?」
スバルの怒号に、カリスは言い様のない憤りを感じた。
何と一方的な言い分だろうか。何と一方的な正義だろうか。
それを押し付けられる側がどんな気持かなど、こいつは知らないのだろう。
しかし、そう感じる心はまさしく人間としての憤り。
それに気付く事も無く、カリスは自分の思いを吐き出す。
「お前に何が解る……俺は人間でも無い、アンデッドでもない。俺を知っているのは俺だけだ……!
だから言えるのだ! 俺の苦悩、お前などに解りはしないと!」
「わからないよ! 当然でしょう、貴方は何も話そうとしないじゃない!
……それに、人間じゃないのは貴方だけじゃない! 私だって、ギン姉だって……!」
何だと……?
ギンガは人間では無い? その妹のスバルも、人間では無い?
だが、それは可笑しい。ギンガは自分に言った筈だ。「貴方は人間だ」と。
人間でもない奴が、同じく人間では無い身の自分の人間らしさを証明する?
なんと滑稽な話だろう。それで命まで落としてしまったのでは、話にならない。
理解出来ない。ただでさえ馬鹿だと思っていたギンガが、余計に理解出来なくなる。
「人間じゃない……だと……? だがギンガは、化け物の俺を人間だと言った……
そのギンガが人間じゃない……? いや……」
始は思う。それは違う、と。
誰よりも意志の強かったギンガは、何処までも人間らしかった。
そして、誰よりも人間らしかったギンガが、自分を人間だと言ってくれたのだ。
あの優しさは、紛れも無く人間のものだ。
紛い物の自分とは違う、本物の人間の優しさだ。
だからこそ言える。だからこそ断言できる。
「違う……ギンガは人間だ……誰が何と言おうと、奴は人間だった……!」
「それなら、貴方も人間だ! そんなことを言える貴方が、化け物の訳が無い!」
「無理だ! 俺には人間が理解出来ない……ギンガの考えが、理解出来ない!」
問題は凄く単純な事だ。
ギンガの考えが、始には理解出来なかった。
ギンガの行動が、始には理解出来なかった。
何故あの女は、見ず知らずの自分を助けたのだろう。
何故、殺し合いに乗った自分なんかの為に命を投げ出したのだろう。
誰が聞いたって、馬鹿な生き方だ。とても上手い命の使い方とは言えない。
始の心を、無数の「何故」が埋め尽くして行く。
「何故だ……何故……!」
考えれば考える程、頭がパンクしそうになっていく。
ああ、何故目の前の女はこんなにもギンガに似ているのだろう。
守りたいものとか、人間の心とか、そんな綺麗事を並べて戦えば、生物は弱くなる。
生きるか死ぬか、命を掛けた戦いにそのような面倒事は一切不要なのだ。
ジョーカーである自分はそれを最も良く理解している、筈なのに……。
「何故、ギンガは……!」
だが、ギンガはその方程式には当て嵌らなかった。
あの女は誰よりも強く、そして誰よりも気高かった。
戦いに負けたとか、他の誰かよりも戦闘力で劣っていたとか、そういう事じゃない。
自分には無い物。浅倉にも、かがみにも無い「強さ」を、ギンガは持ち合わせていた。
それは目の前の少女――ギンガと同じ目をした少女にも言える事だ。
この強さは何だ? この強さは何処から湧いてくる?
「わからない……わからない……わからない……!」
「ギン姉は――」
――CLOCK UP――
「――ぇ……?」
刹那、電子音声と同時に、スバルの身体が吹き飛んだ。
左腕を封じられていたスバルの身体は見事に宙を舞い、そのまま吹っ飛ばされる。
告げようとしていた言葉は結局告げられる事は無く、無限にも等しい刹那の中で、スバルの身体はコンクリの床を転がった。
カリスの頭の中で、何が起こったのかを理解するよりも先に、言い様の無い感情が湧き起こった。
そうだ。この感情と似たものを自分は知っている。
確か、ギンガが死んだ時の……。
-
スバルがその拳で漆黒のライダーを吹っ飛ばしたのとほぼ同時、こちらでも状況は変化しようとしていた。
緑の装甲の仮面ライダーが、赤いコートの男に羽交い締めにされ、子供の問答の様なやりとりを繰り返す。
我武者羅に腕を振るうだけでヴァッシュの腕から抜けられる訳も無く、そんなシュールな光景を延々と続けていたのだ。
次第に募りに募りまくった苛立ちもMAXを向かえたのか、キックホッパーの叫びがさらに甲高くなった、その時。
装着者である柊かがみの内側から聞こえて来る声は、かがみを安心させるものであった。
「あぁもう……わかったわよ、あんたに従う! だから話して……お願い」
「本当かい? 離した瞬間にドン、なんて御免だぜ?」
「あんたなら私にそんな隙を与えないでしょ? もう解ったから……鬱陶しいのよ。
話だけでも聞いてあげるから、離して。お願い」
「よし、解った」
果たして、ヴァッシュの口から発せられたのは、かがみが望んだ答え。
キックホッパーの仮面の下で、存外思い通りに事が進んだなと、不敵に唇をゆがめる。
ヴァッシュが自分に攻撃の隙を与えてはくれない? そんな事は素人のかがみに解る訳が無い。
全ては、かがみの中に潜むもう一人の人格の指示するままに動いた結果であった。
「ありが……とっ」
後は簡単だ。ヴァッシュの手が緩んだ瞬間に、かがみは軽く腰を叩いた。
同時に鳴り響く、「クロックアップ」の電子音声。齎されたのは、キックホッパーの加速。
周囲の時間軸を切り取り、自分を超高速の世界に顕在させる事で可能となる超加速だ。
これには流石のヴァッシュも、対応仕切れる筈も無かった。
「さて……とりあえず一発、いっちゃおうかしら」
驚いた表情のまま、スローモーションになってしまったヴァッシュを見据えて、不敵に告げる。
柊かがみの戦闘能力は素人同然ではあるが、それでも仮面ライダーの装甲は強力だ。
左脚を軸に、右脚を振り上げる。キックホッパーの得意とする蹴り技、それもミドルキック。
ヴァッシュの脇腹目掛けて、それを振り抜いた。
右脚がヴァッシュを叩いたのと同時、ヴァッシュの身体がゆっくりと宙に浮かんだ。
「次は、アイツね……スバル!」
何やら黒いライダーと言い合っているようだが、そんな事はお構いなしだ。
黒いライダーは既に戦闘不能に陥っているようだし、ライダーに邪魔をされる心配は無い。
心おきなくスバルを蹴る事が出来る。余裕の態度でスバルの傍らへと歩み寄り。
「――ふんっ!」
右側の脇腹へと、ミドルキックを叩き込んだ。
後は先程のヴァッシュと同じだ。スバルの身体が、ゆっくりと宙へ浮かび上がって行く。
これがクロックアップ空間の外であれば、きっと一瞬の出来事なのだろう。それはかがみ自身もすぐに知る事になる。
ヴァッシュとスバルを蹴り飛ばし、もう一度地に足を付けた時には、既にクロックアップは終了していた。
悠然と立ち尽くすキックホッパーの周囲で、同時に二つの呻き声が聞こえた。
一つはヴァッシュ。一つはスバル。重い蹴りを叩き込まれた二人のものだ。
「……なんだ、今の一撃で死ななかったんだ?」
心底つまらなさそうに呟いた。
今し方蹴り飛ばした二人ともが、呻きながらも何とか受身を取っていたのだ。
仮面ライダーの蹴りを受けて生きて居られる人間など居る訳が無い、と思ってはいたが、そこはかがみの判断ミス。
スバルもヴァッシュも、数えきれないほどの修羅場をくぐり抜けて来た戦士なのだ。
まともな蹴りのフォームすら知らない素人の一撃で殺される程柔では無い。
「かがみさん……! もう止めてくれ! こんな殺し合いを続けてちゃ、いつか君の命まで奪われてしまう!」
「うっさいわね……もう私の命なんてどうだっていいのよ! 皆殺して私も死ぬ! もう失う物なんて何もないのよ!」
ずっと一緒に生活して来た、たった一人の妹は目の前で殺された。
大勢の人の死を目の当たりにして、精神を病んでしまったかがみに最早希望は無い。
深い闇の様な絶望だけが、かがみの孤独を癒してくれるのだ。
絶望と激情に突き動かされるままに参加者を手当たり次第に殺して、最後は自分も死ぬ。
これは、柊かがみという弱い人間の精いっぱいの悪あがきであった。
左腕を庇う様に、先程吹っ飛ばしたスバルがゆらりと立ち上がった。
-
「……こなただって、諦めずに戦ってるんだよ……それなのに」
「どうせそのこなたも別の世界のこなたなんでしょ? なら私には関係無い事よ!」
「それでも、こなたがかがみさんの友達だって事に変わりはないでしょう!?
自分の世界の、自分の知る相手でなくとも、変わらず接してくれた人を、私は知ってる!」
スバルの言い分に、かがみが感じるのは怒り。
それも、大層な理由があってのものではない。単純な苛立ちから来るものだ。
確かに60人も居れば、スバルの言う様な御人好しが居ても不思議ではない。
だが、それを自分に押し付けて来る無責任さに、かがみは腹が立ったのだ。
「ならそいつは今何処に居るのよ……? もう死んじゃったんでしょ……?
そんな甘っちょろい事言ってるから、誰かに殺されちゃったんでしょ……!?」
スバルは答えない。悔しげに唇を噛み締め、ただ此方を睨み付けるだけだ。
ああ、スバルのあの目付きが気に入らない。圧倒的に不利なのに、勝てる見込みなんて無いのに、抵抗を止めない目だ。
かがみの言う事……理解は出来ても納得は出来ないと、そう言いたげな目だ。ああ、見てるだけで腹が立つ。
仲間と一緒に温い戦いを続けて来たスバルに、ずっと一人で戦ってきた自分の気持ちなど解られてたまるものか。
「所詮人間なんてそんなもんでしょ? 誰かの為にとか、守る為にとか、そんな事言ってる奴から死んで行くのよ」
そうだ。何も間違いは言っていない。
かがみは自分の為だけに戦う。もう誰も守る者なんて無いし、失う物もない。
足かせの無くなったかがみは、何に遠慮する事もなく、思うがままに戦える。
それこそが、本当の強さだ。それこそが、真の強者だ。
「私は今、本当の意味で強くなれた……今の私は、アンタ達なんかに負けない!」
怒りを吐き出すように怒鳴った後、かがみはベルトに手を伸ばした。
今のスバルは無防備だ。必殺技を叩き込めば、確実に殺す事が出来る。
もうこんな苛々する戦いは御免だ。これ以上余計な事を言われる前に、スバルには死んで貰う。
ホッパーゼクターの中心、タイフーンと呼ばれる部分を起点とするレバーを、押し倒した。
同時にキックホッパーの左足のアンカージャッキが作動。
身体が遥か上空へと跳ね上がり――
「死ぃねぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええッ!!!」
その身に稲妻を奔らせ、それら全てを左足へと集束させる。
タキオン粒子が駆け巡り、放たれるは目標を原子崩壊させる程の威力を秘めたキック。
仮面ライダーの必殺技であるライダーキックを受けては、一たまりも無いだろう。
重力に引かれるままに、キックホッパーの身体が落下しようとした、その時であった。
「きゃっ……?!」
彼方から駆け抜けた青白い閃光によって、キックホッパーの身体が爆ぜた。
上空で体勢を崩したキックホッパーに、その場で姿勢を矯正する事など出来はしない。
キックホッパーの身体は、受身すらもままならない姿勢のまま、真下へと落下した。
-
◆
わからない。わからない。わからない。わからない。
何度考えたって、何をどう考えたって、始の中で答えは出なかった。
そもそもどうして自分はこんなに悩んでいるのだろう。
どうしてこんな無駄な事を考えているのだろう。
それは、自分の中で次第に人間の心が大きくなっているからなのだが……。
始はそんな事実は認めないし、それに気付く事も無い。
だから何も解らずに、カリスは終わらない葛藤を繰り返す。
栗原親子と共に過ごす様になってから、始にとっては不可解の連続だった。
柄にもなく、人間を守る為に戦ったり。あの親子を守る為に戦ったり。
あの親子を傷つけられた時には、尋常でない怒りすら感じた。
これが、ギンガの言う人間としての強さ……という奴なのであろうか。
だが、怒りに任せて戦ったあの時の戦いは、ギンガの強さとは違う気がする。
(ああ……確かに、あいつは強かったな)
そんな事を始は思う。
始は、内心ではギンガを認めていたのだ。
本当は、誰よりも強いギンガの事を、認めていた筈なのだ。
だからこそ始は、死にゆくギンガの最期の願いを聞いた。
始の知る誰よりも気高く、人間として生き抜いたギンガの最期の願いを。
そして、スバルと接した今の始になら、あの願いの意味が解る気がする。
ギンガの口から告げられなかった言葉が、告げようとした言葉が、解る気がする。
(そうだ。ギンガは俺に、スバルを……皆を、守って欲しかったんだ)
ギンガらしい、真っ直ぐな願いだ。
だけど、今更それに気付いた所で遅い。
自分はもう、数えきれない程無駄な戦いを繰り返してきた。
今更誰かの為に戦おうだなんて、虫が良すぎるというものだ。
それに、始はまだ……自分が人間だと認めた訳ではない。
ギンガの頼みを聞いてやる義理だってないのだ。
だが、スバルが緑のライダーに吹っ飛ばされた時の感情は何だ。
怒りと同時に、何処か胸が苦しくなるような……不可解な感覚を感じた。
そして、スバルが無事だったと知った瞬間に込み上げて来た、安心にも似た感覚。
どういう事だ。何故化け物である自分が、こんな感情を持ってしまうのだ。
スバルが口を開く度に、緑のライダーが何かを言う度に、胸が締め付けられるような感覚を覚える。
「所詮人間なんてそんなもんでしょ? 誰かの為にとか、守る為にとか、そんな事言ってる奴から死んで行くのよ」
ああ、そうだ。その通りだ。
人間は無駄な物を背負い、無駄に死んでいく。
馬鹿な考えで、無駄に命を散らしたギンガはそのいい例だ。
それは始自身も良く解っている事だし、嫌という程に理解出来る。
だが……理解は出来ても、納得する事は出来ない。
頭では解っていても、始の心の何処かが、それを否定する。
-
(……違う。お前は、間違っている……)
誰かの為に、守る為に。
そんな馬鹿な理由の為に戦った女を、始は知っている。
御人好しで、馬鹿な奴だったが、あいつは誰よりも強かった。
自分達には無い輝きを、心(ハート)の輝きを、あの女は持って居た。
「私は今、本当の意味で強くなれた……今の私は、アンタ達なんかに負けない!」
……違う。それは、違うんだ。
この緑のライダーは、大きな勘違いをしている。
それじゃ駄目なんだ。その強さは、ギンガを否定する。
認める訳には行かない。こいつの強さを認めれば、ギンガの強さが否定されてしまうから。
だが、何故自分はこんな事を考えているのだ。
何故ギンガを否定されるのが、こんなにも嫌なんだ。
ギンガの心の強さを否定されるのが、嫌で嫌でたまらないのだ。
……ああ、そうか。そういう事だったのか。
何となくではあるが、今ようやく解ったような気がする。
人の心の強さ……その意味が。ギンガを羨望していた、この心が。
自分も、気付かぬ内にギンガの影響を受けていたのだろう。
自分の知らないギンガの強さに、憧れにも似た感情を抱いていたのだろう。
その考えに至った時、いつの間にか、始の中の疑問符は消えていた。
緑のライダーに対する、強烈なまでの否定と、沸き起こる激情。
それらが、カリスの回復力を更に早める。
気付けば、痛みも忘れていた。
ふらりと立ち上がる。
今なら、迷い無く戦える気がする。
疑問も何も吹っ切った今、沸き上がるのは緑のライダーに対する闘争本能のみ。
そして、闘争本能が昂れば昂る程、自分の中のジョーカーが暴れ出す。
だけど、この力は使わないし、使えない。
今、本能の赴くままにこの力を使う事は、最悪の結果に繋がる。
そうだ。それは即ち、ギンガの想いを踏み躙る行為に繋がってしまうのだ。
ジョーカーの力は、相川始という一人の人間にとっての本当の強さでは無い。
心と理性で本能を抑え込み、カリスアローを構えた。
狙い定めるは、跳び上がった緑の仮面ライダー。
弓を引き絞り……青白い光弾を、発射した。
-
◆
この現場を見ていた全員に共通して言える事がある。
それは、今の一瞬で何が起こったのかが解らなかっただろう、という事。
スバルを蹴り殺そうと飛び上がったキックホッパーが、上空で爆ぜたのだ。
それを見ていた立会人も、下手をすれば下手人であるかがみにすらも状況は解らなかっただろう。
しかし、それも当然だ。こんな現実を、誰が想像出来ただろうか。
先程まで殺し合いに乗っていた人物が、誰かを助ける為に行動する等、誰に想像出来ただろうか。
……いや、誰にも想像出来なかったに違いない。
「あんた……弱ってると思って放っておけば、余計な真似を……!!」
「違う……貴様は間違ってる」
否定と同時に、声にならない呻きを上げたのは、カリス。
そして、そのまま床へと崩れ落ちる。力が抜けた様に、糸の切れた人形の様に。
両の掌を地べたに着かせ、カリスの仮面の下、苦しそうな呻きを漏らす。
同時に、カリスの身体に重なるように現れたのは、不気味な緑の影。
それは、全てを滅ぼす死神たる最強のアンデッドの影であった。
沸き起こる激情と闘争本能に、死神が触発されたのだろう。
だが、現れた影にそのまま包み込まれはしなかった。
影を振り払う様に、カリスが上体を上げたのだ。
「何よ、あの化け物の姿になるならなりなさいよ。今の私なら、あんたなんか――」
「貴様如き、ジョーカーになるまでも無い……」
不敵に佇むキックホッパーを遮って、カリスが告げた。
カリスの脳裏を過るのは、今まで出会った大切な人達の記憶。
始が苦しんでいる時は、いつだって付き添って看病をしてくれた遥香。
始の事を慕い、いつだって信頼してくれる少女――天音。
そして、二人と共に過ごす内に知った、色んな事。
他愛ない思い出から、人間として大切だと思える想いで。
様々な思い出が駆け巡り、始の人間としての心を揺さぶる。
その感情が、体内で暴れ回るジョーカーの力を抑え込んで行く。
「へぇ……随分と見くびってくれるわね……いいわ、証明してあげる!」
刹那、電子音と共にキックホッパーの姿が掻き消えた。
次にキックホッパーが姿を現した時には、既にカリスのレンジ内。
既に見なれた、クロックアップによる超加速を用いての急接近。
装着者であるかがみの疲労が溜まって居たのか、攻撃に移る前に加速が終わったのhが僥倖か。
高く振り上げた蹴り脚を防ぐべく、カリスが両の腕を振り上げるが――
「あんたなんかに、負ける訳が無いって事をね!!」
「ぐ……ぁぁ……ッ!!」
重いキックは、スバルの一撃で体力を削られた状態のカリスには堪えた。
キックを必殺技とするライダーの一撃は伊達では無い。
未だ足取りの覚束ないカリスにその攻撃を受け切れる訳も無く、カリスの身体は遥か後方へと吹っ飛んだ。
そのままホテルの内装の壁に激突したカリスは、力無く床へとずり落ちる。
それから間もなく、再びカリスの身体に重なるのは、緑の死神――ジョーカーの面影。
ジョーカーの姿になれば、こんな仮面ライダーに遅れは取らない。
ジョーカーになってしまえば、こんな仮面ライダー簡単に捻り潰せる。
だけど、カリスはジョーカーにはならない。ならないと誓ったのだ。
表に出ようとするもう一人の自分を振り払う様に、カリスが立ち上がった。
「こんなものは、本当の強さじゃない……」
「さっきから訳のわからない事を。あんたの本当の強さが、緑の化け物だって事ならもう解ってるのよ!」
「違う……! 俺は……ジョーカーには、戻らない……!」
「何……?」
それを宣言すると同時、カリスの身体が一気に軽くなった。
いつも通りのファイティングポーズ。腰を低く落として、構える。
カリスのハートの複眼が、熱い心(ハート)の輝きを宿した赤の瞳が、美しく煌めいた。
それはまさしく、人の心を現す「ハート」に相応しい輝き。
ハートのライダーとして選ばれた、相川始として――仮面ライダーカリスとして。
両腕を広げ、腰を低く落とした姿勢のまま、カリスは走り出した。
-
「トゥェッ!!」
「……ッ!?」
次の瞬間には、まるで野生の獣のように飛び掛っていた。
キックホッパーの突き出た両肩をその手に掴み、そのまま押し倒す。
押し倒した勢いでもつれ合った二人は、ホテルの床をごろごろと転がる。
だが、意外にもすぐに解放されたのはキックホッパーの方であった。
転がり様に距離を置いて立ち上がったホッパーが、カリスを視線に捉える。
対するカリスは、いつでも受け切れるように、両手を軽く掲げ、構える。
一拍の間を置いて、ホッパーが怒号を上げて駆け出した。
「ハァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
一撃目は、右上段からのハイキック。振り上げた腕で、容易く振り払った。
二撃目は、左上段からのミドルキック。これも同様、カリスの腕に阻まれ、打ち落される。
我武者羅になって右のストレートパンチを繰り出すも、そんな単調な攻撃は絶対に通らない。
突き出したホッパーの腕は、逆にカリスの腕に捻り上げられる。
「トゥッ!」
「……痛ッ!?」
そのままの勢いで、カリスが繰り出したのは左右交互の1・2パンチ。
パンチ二つをヒヒイロノカネで造られた装甲で受け止めるも、カリスの攻撃力は殺し切れない。
カリスの戦闘力の高さは浅倉との戦いで窺い知ってはいた事だろう。
だが、今のカリスを突き動かすのは、あの時とは決定的に違う感情だ。
カリス自身にも解る。あの時とは、比べ物にならない程の力が湧いてくる。
すぐにカリスはホッパーの上段を飛び越え、背後へと回った。
「ちょこまかと……!」
すぐに振り向き、ハイキックを浴びせようと脚を振り上げるホッパー。
だが、何度やっても同じことだ。カリスにはそんな単調な攻撃は通じはしない。
上体を僅かに屈める事で蹴り脚を回避。矢継ぎ早に、何処かから取り出したのはカリスアロー。
それを舞う様に振るい、ホッパーの装甲を切り裂いた。
攻撃を受けて、派手に舞い散る火花と共に、ホッパーが数歩後退。
「本当に強いのは――!」
カリスが、唸る様に怒号を上げる。
思い出すのは、全ての始まりたる栗原晋の記憶。
自分に命を奪われたも同然なのに、あの男は自分に家族を託した。
あの男は、見ず知らずの自分に、掛け替えのない家族を託したのだ。
最期の力を振り絞って優先した願いは、自分よりも家族の事だった。
大切な人を守って欲しい。その願いを受けた始は、栗原家へと向かった。
その時は理解出来なかったが……始は、晋の家族を思う心に突き動かされたのだ。
吹きつのる愛に突き動かされて、始はあの家族を守ると誓ったのだ。
そんな不可解な事が出来る、それが人間の心の強さ。
「強いのは――ッ!!」
再び向かってきたホッパーの蹴りを交わし、続けざまにカリスアローを振るう。
胸部装甲を切り裂かれたホッパーの、声にならない悲鳴。それを掻き消す様に、もう一撃。
連撃によるダメージによってよろけるホッパーの背後へと飛び上がった。
-
――ありがとう……ござ、います。あと……なのはさんと、フェイトさん……はやて部隊長、それにスバルと……キャロに会ったら――
思いだすのは、数時間前に出会った一人の少女。
奴は、自分を人間だと言ってくれた。奴は、こんな自分を信じてくれた。
本当は自分だって人間では無いのに……いや、だからこそだろうか。
彼女は誰よりも人間らしく、そして誰よりも強く、気高い人間であった。
では、その強さとは何か。その強さこそが、人間らしさの成せる業。
人の心。人の想い。優しさや、愛情。それこそが、人間が持つ真の強さ。
そして、そんな彼女が最期に託したのは、やはり自分では無く、他の誰かだった。
ギンガは最後の最後に、自分の命よりも優先して、スバルや、その仲間達を守ってほしいと願った。
(そうだ……本当に強いのはッ!!)
パニックに陥ったホッパーは、やはり我武者羅に腕を振るう。
本当の意味で強い人間と言うのは、こんな奴の事を言うのではない。
自分の為に、他者を殺す。そうまでして、自分一人で生き残ろうとする。
この緑の仮面ライダーは、最早人間の心を持っているとは言えない。
そんな奴の攻撃に当たる訳もなく、カウンターを入れるのはカリスの醒弓。
一撃、二撃とホッパーの身体を切り裂き――跳び上がった。
――始さん!――
脳裏を過る声は、誰のものであったか。
そうだ。今まで自分の事を、人間として接してくれた皆の声だ。
あの家族と、ギンガ・ナカジマの声。それが、自分を人間へと引き戻してくれる。
(今なら解る……! これが、この力が――)
次いで思い浮かべるのは、いくつもの顔だ。
大切な家族を、自分に託して死んでしまった晋さん。
見ず知らずの自分を、家族として受け入れてくれた遥香さん。
何時だって自分の事を慕って、色んな感情を教えてくれた天音ちゃん。
そして、最期まで自分を人間だと信じて戦い抜き、命を落としたギンガ。
それら全てが、カリスに力を与えてくれるのだ。
「――人の、想いだッ!!」
色んな人の想い。人間としての想い。
それらを乗せた乗せた最後の一撃は、渾身の力を込めたカリスの飛び蹴りだった。
正面からまともにその一撃を受けたホッパーは後方まで吹っ飛び、近くに備え付けられていたテーブルへと倒れ込んだ。
テーブルはホッパーの体重に耐えきる事は無く、見事に真っ二つに破壊。
ホッパーも度重なるダメージに変身状態を保って居られなくなったのか、緑の装甲は粒子になって崩れ落ちた。
そこにいるのは、漆黒の仮面ライダー・カリスと、一人の紫髪の少女のみ。
戦いは、完全にカリスの勝利に終わった。
-
バクラは悩んでいた。
本来バクラは悩むという行為をあまりしないのだが、今回は訳が違う。
如何なバクラであろうとも、悩まざるを得ない状況に陥ってしまったのだ。
何故なら、今後の行動方針にも関わる人間の名が、放送で呼ばれてしまったから。
(相棒……本当に死んじまったのか?)
心中で思い浮かべる人物の名は、キャロ・ル・ルシエ。
まだ幼い召喚士。バクラが初めて選んだ、唯一のパートナー。
あいつには、自分がついていないと駄目だ。自分がいなければ、駄目なんだ。
それと同時に、キャロは今バクラがここに存在する唯一の意義。
共に未来へのロードを進んで行くと誓った人間なのだ。
そのキャロの名が、放送で呼ばれた。
たった一人の相棒が、自分の預かり知らぬ所で死んでしまった。
それを知ったバクラを襲ったのは、気の抜けたような虚無感だった。
暫くは、死んでしまったキャロについて考えていた。
だけど、やがてバクラはそれに意味がない事に気付いた。
(まだ相棒が死んだと決まった訳じゃねぇ)
そう。この世界には、平行世界から連れて来られた人間が大勢いる。
自分と同じ世界の人間かと思えば、別の世界の同一人物。そんな例が数え切れない程にある。
だから、死んでしまったキャロが自分の知る相棒だと決めつけるのは、まだ早い。
確かめなければならない。死んだキャロが自分の相棒だったのかどうかを。
すぐに思い付く方法は二つだ。
一つ。キャロと出会った参加者から話を聞くか。
二つ。ゲームに勝ち残って、元の世界に戻って確かめるか。
だけど、それならばあまり考える必要はなかった。
どうせゲームには勝ち残るつもりだったし、行動方針に変わりは無い。
ただ、今し方挙げた前者の方法を今後の行動に組み込めばいいだけだからだ。
一つ問題を挙げるとすれば、それは現在の宿主のかがみだ。
-
(ケッ……オレ様が言うのも何だが、こいつは壊れ過ぎてやがる)
そう。今のかがみに、まともな判断は出来ないだろう。
見境なしに他者を殺し回って、自殺することしか考えていない。
冗談では無い。自殺なんてされたら困るのだ。
こっちはゲームに勝ち残ってでも、相棒の元に帰らねばならない。
それなのに、相棒の元に帰る前に宿主が死んでしまっては話にならない。
(こりゃそろそろ本気で他の宿主を探した方がいいな)
これ以上壊れ過ぎたかがみと共に行動するのは御免だ。
こいつの考えをもう少しまともな状態まで戻せるのなら話は別だが、それでなくたってこいつは役立たず過ぎる。
スバルには逃げられる。浅倉にはデッキを奪われる。カリスには惨敗する。
かがみがまともにバクラの望む結果を導き出せた事など皆無と言っていい。
今回の戦いは、態々アドバイスまでしてやったのに負けたのだから、尚更始末に負えない。
(何でもっと上手い戦い方が出来なかった? 人質でも取りゃ状況は変わっただろうがよ)
それはつい先日までは一般の女子高生として過ごしていたかがみには酷な評価であった。
そもそも、かがみの身体能力では例えホッパーに変身してもカリスに勝つ見込みなど無いに等しいのだ。
まともな戦い方すらも知らない素人が、本物の戦士であるカリスに勝てる訳が無い。
そんな事は最初から解り切ってはいた。
だが、だからこそクロックアップの使い方は間違えて欲しく無かった。
あそこをああすれば良かったとか、そんな事を考え出したらキリが無い。
それ程にかがみの戦闘は落ち度だらけだった。
上手く立ち回れば、状況はいくらでも変わった筈なのだ。
(いや……今の宿主サマじゃ無理か)
かがみは只でさえ連戦で疲労が溜まっていた。
続いてカリス、スバル、ヴァッシュとの乱戦、直後のクロックアップ。
この時点でかなりの疲労が蓄積されていたであろう。それは仕方が無い。
だが、その直後にもう一度クロックアップを使ったのは誤算でしかなかった。
ライダーシステムは、使用者の身体に負荷が掛る前にクロックオーバーを告げる。
疲れ切った身体でクロックアップを使っても、加速出来る時間はたかが知れているのだ。
それをカリスへの一撃の為に使用。それも、その一撃で仕留めきれなかった。
後は知っての通り、圧倒的な戦闘力の差でカリスに敗北し、気絶してしまった。
挙げるとするならクロックアップ辺りがミスだったと言えるだろうか。
気絶状態のかがみから身体を奪う事は出来るが、このダメージではまともに動けないだろう。
(だが、これはチャンスかも知れねぇ)
誰にも見えはしない笑みを浮かべ、考える。
かがみは気絶してしまったが、現状でかがみを殺そうという人間はいない。
スバルもヴァッシュも甘ちゃんだし、カリスも悪ぶってはいるが悪にはなりきれない。
ならば、こいつらは気絶したかがみをどうするだろう。
考えるまでも無い。まず間違いなく、かがみの戦力を奪って拘束する筈だ。
後は千年リングを誰かになすりつける事さえ出来れば、めでたく宿主交代。
バクラもこんな思いをしなくて済む……のだが、問題が一つ。
(スバルの奴……オレ様に気付いてなきゃいいが)
そう、スバルだけはバクラの存在に気付いているのだ。
千年リングの存在にさえ気付かれなければ、後はどうとでもなる。
これは掛けにも近いが、果たして――。
-
◆
「仮面ライダー!!」
全てが終わった後、カリスの傍らへと歩み寄って来たのは、スバル・ナカジマであった。
その表情にはやけに嬉しそうな色が浮かんでいるが……何を考えているのか、解るのが嫌だった。
こいつはまず間違いなく、あの時のギンガと同じように自分と組もうとするだろう。
だが、それは早計だ。カリスとしては、まだ人間になったつもりはないのだから。
何せ、自分は人間とは呼べない程、今まで無駄な戦いを繰り返してきた。
自分は、人間ではないし、アンデッドでも無い。それで十分だ。
もしも変な勘違いをしているのならば、迷惑極まりない事だ。
「勘違いするな。俺は人間になったつもりはない」
「ううん、違う……貴方は人間だよ。言い逃れなんてさせない」
「……ギンガに似て、面倒臭い奴だな」
だが、今までとは何かが違うのも確か。
不思議と頭ごなしに否定をする気にはならないのだ。
これが人間であるという感覚であるのなら、それも悪くは無いかもしれない。
人間らしい感情とは不思議な物で、あれだけ燻っていたジョーカーを抑え込む事が出来たのだ。
それに、今の戦闘で内から湧き上がってきた力は、今まで感じた事のない物だった。
ギンガの強さ……それは、人間の心。少しだけ、理解出来た気がする。
だけど、だからこそ悩む。化け物の自分が、そんな心を持って何になるのだろう。
そんな事を考えていた始の耳朶を叩いたのは、一人の男の声だった。
「俺も、あんたは人間だと思うぜ」
「お前は……」
にこやかな笑顔と共に現れた男の名は、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
エンジェルアームの使用制限が限られている上、仮面ライダーが相手では銃など意味を成さない。
それ故に、今の戦いでは静観に徹するしかなかったのだが、プラントとしての本来の力は計り知れない。
化け物の強さと、人間としての心の強さ。その両方を兼ね備えているのが、ヴァッシュという男。
「ああ、俺の名前はヴァッシュ・ザ・スタンピード。で、あんたの名前は?」
「相川……始」
「じゃあ始、これからは俺達と一緒に、戦ってくれるって事でいいんだよね?」
「何だと……?」
人懐っこい笑顔には、何の影も見られない。
こいつは本気で自分を信用して、自分と一緒に戦おうというつもりなのだ。
何て御人好しだろうと、始は思う。否……こいつもギンガと同じ、馬鹿なのかも知れない。
「断る。俺は誰とも組まない」
「そんな……! もう残った人数だってそんなに多くないんです。
目的が同じなら、一緒に行動した方がいいに決まってる!」
「俺とお前達の目的が同じだとは限らない」
「まだそんな事を……」
やれやれとばかりに、ヴァッシュが溜息を吐いた。
だけど、スバルの言い分は確かに始にも理解出来る。
残り少ない参加者が組むことで安全がより確保されるのは間違いない事だ。
だけど、始は素直にこいつらと組む気になれずにいた。
「そうだ。そいつと組むのは止めておいた方がいい。そいつは死神だからな」
次に言葉を発したのは、新たにやってきた第三者であった。
咄嗟に身構える一同をよそに、眼鏡を掛けた優男は不敵な笑みを崩さない。
始は思う。ああ、またしてもこの男と出会ってしまった、と。
そして、出会ってしまったからにはもう、戦いは避けられない。
-
「貴様……カテゴリーキング!」
「久しぶり……でもないな、ジョーカー」
スバルとヴァッシュを差し置いて、二人が言葉を交わす。
カリスの赤い複眼と、眼鏡の奥の金居の視線が交差する。
視線に込められているのは、周囲にも伝わる程にピリピリとした殺気。
カリスの怒りと、金居の憎悪にも似た感情がぶつかり合っていた。
そんな金居が、まるで嫌味でも言う様に呟いた。
「何だ、随分と疲れているようじゃないか、ジョーカー?」
「関係無い。貴様を倒すにはこれで十分だ」
「ほう……随分とナメられたものだな? いいだろう、ここで決着を付けてやる!」
刹那、金居の身体に異変が起こった。
黄色のハイネックに、黒のジャケット。それら衣服の下から溢れ出す、黄金の輝き。
やがて金居の身体を覆い尽くした光が、もう一つの姿を象って行く。
それは、もう何度も目撃して来た、宿敵たるアンデッドの姿。
頭部の仮面から覘く二つの黄金の角は、まさしくクワガタムシのもの。
ギラファノコギリクワガタの祖たる不死生物、ギラファアンデッド。
両手に双剣を構え、深く息を吐いた――その刹那。
「ストップ! ストーップ!」
「止めて下さい、二人とも!」
戦場に響く、場違いな声。
男の声と女の声が、ほぼ同時に周囲の者の耳朶を打った。
だけど、それについてはもう考える必要もない。
こんな事を言う人間は、ここには二人しかいないからだ。
「スバル、ヴァッシュ……お前たちは手を出すな!」
「そういう訳には――」
「手を出すなッ!!」
低く、ホテルのロビーに響き渡る様な怒号。
漆黒の仮面の下、カリスが凄まじいまでの剣幕で声を荒げたのだ。
流石にこの人声には驚いたのか、スバルとヴァッシュが黙り込む。
「いいな、手を出すなよ……」
今度は少しだけ穏やかな語調で告げる。
スバルはまだ何か言いたげにこちらを見ていたが、言葉が出て来ないのか黙り込んだままだ。
ヴァッシュはヴァッシュで、カリスとギラファの間の空気から何かを感じ取ったのか、それ以上何も言わなくなった。
こういう時、いくつもの修羅場をくぐり抜けて来た男はやはり状況の理解が早いものだ。
「……OK、始。ただ一つ約束してくれ」
「何だ」
「誰も死人は出さない。それだけだ」
「ああ、俺は誰も“殺さない”」
それを聞いたヴァッシュの表情が僅かに綻んだ。
本当に御人好しなんだな、とカリスは思う。
だけど、一応嘘は言っていないつもりだ。
そもそもアンデッドに死と言う概念は無い。
カードに封印される事はあっても、本当の意味で死んでしまう事は永久に無いのだ。
「だからお前たちはそこの女を連れて、ここから立ち去れ」
「そんな……! ギン姉の事だって、始さんの事だってまだ聞いてないのに……!」
「いいから行けッ!」
気絶したままのかがみへと一瞬視線を流し、カリスが絶叫した。
スバルにヴァッシュの二人がかがみを連れて移動してくれるなら、もう憂いは無い。
何にも気を使う事無く、全力でカテゴリーキングと戦う事が出来るからだ。
だけど、スバルにとってそれは不本意らしい。
-
「私は貴方から聞き出さないと行けない事がまだ沢山ある! ここでお別れなんて出来ません!」
「……戦いになれば、俺の身体は俺の意志とは関係なく動く。どうなっても知らないぞ」
「大丈夫です。私は、そう簡単には死にません」
「ならば勝手にしろ……どうなっても知らないぞ」
もう、こう言うしか無かった。
このスバルという人間は、ギンガと同じだ。
言った所で人の自分の信念を曲げたりはしない。
ならばギンガの時の様に勝手に着いて来られるよりもマシだ。
最初からスバルが居ると解って居るなら、スバルに危害が及ばないくらいには気を配れるだろう。
あとはヴァッシュ達がそれでもいいと言ってくれれば、話は纏まるが。
「ヴァッシュさん、スカリエッティのアジトに向かえば、きっと私の仲間がいます。
私も後から始さんを連れて向かうから……ヴァッシュさんを信じて、あの子を任せます」
「……約束するよスバル。君の仲間は、死なせない」
「ありがとう、ヴァッシュさん。それから、かがみさんのデイバッグを私に下さい」
「これかい?」
言いながらヴァッシュが投げ渡してくれたのは、柊かがみが持って居たデイバッグ。
スバルの考えはこうだ。まずデイバッグを預かることで、かがみから戦力を奪い、自分の戦力を確保。
かがみが危険人物である事はヴァッシュも解っているだろうから、拘束は怠らない筈だ。
後はヴァッシュとかがみの二人に先行してアジトへ向かって貰い、こなたと合流。
上手くいけばこなたがかがみを説得してくれる……と、信じたい。
まずは投げられたそれを右腕で掴み取り、中身の確認をする。
使えそうなものは……レヴァンティンとライディングボードのみ。
どちらも使い慣れた武器ではないが、無いよりはマシだろう。
それから、あと二つ……どうしても気になる装備がある。
「それから、かがみさんが巻いてるベルトと首からかけてるリング。
ベルトは私に。リングは……十分気を付けた上で何処かへ処分して下さい」
「リング……? これに何かあるのかい?」
投げ渡されたのは、無機質な銀色のベルト。
ZECTと描かれたそのバックルに視線を落とし、それをデイバッグに突っ込んだ。
それから、かがみの首に未だかけられたままのリングに視線を向ける。
先程かがみと交戦した際に感じ取った、もう一つの意思。
かがみを戦いに追い込んだのであろう、邪悪な意思。
それが宿っているであろうリングを、放っておく訳には行かない。
「そのリングには何者かの……多分、かがみさんをここまで追い込んだ奴の人格が宿っています。
迂闊に触って意識を乗っ取られたりしないように十分気をつけて、二度と誰も触れないように処分して下さい」
「OK、わかった……こいつは俺が責任を持って処分する」
「それから、アジトに行けばかがみさんの友達がいます。その子ならきっと、かがみさんを元に戻せるから……
その子に会ったら、こう伝えて下さい。『かがみさんをよろしく。私もすぐに向かう』と」
「わかった……死ぬなよ、スバル」
ハイ、と一言返しながら、スバルは再び身構える。
目前に居る二人の脅威。仮面ライダーカリスと、黄金のギラファアンデッド。
いつ飛び出してもおかしくないこの状況、どちらも動かずに様子を見ているのは自分達に気を使っているのだろうか。
どちらが先に動く? そんな事を考えながら戦況を眺めるスバルの耳朶を叩いたのは、ギラファの声だった。
「待て、そこの……ヴァッシュだったか?」
「……!?」
ギラファから、呼びかけられた。
瞬間、反射的にスバルとヴァッシュの動きが止まる。
今まさに柊かがみを背負って駆け出そうとしていたヴァッシュと。
いつどちらが先に動いても対応出来るように身構えていたスバル。
いきなり現れた相手に、いきなり呼び掛けられる義理などは無い筈だ。
二人とも、何事かとギラファアンデッドに視線を向ける。
「あんたたちの仲間からの伝言だぜ。このホテルの外で待ってるから、合流しよう……との事だ」
「何……!?」
「八神はやてと言えば解るか。つい先ほどまで、一緒に行動していたんでね」
「八神部隊長と……!? 何でお前が……殺し合いに乗ってるんじゃないのか!?」
「生憎、俺が興味を持つのはそこにいるジョーカーだけなんでね」
片手に持った双剣をカリスに向けながら、悠然と語る。
どうやらこの化け物は、今すぐに自分達を殺すつもりはないらしい。
何故なら、こいつの目的はどういう訳か相川始ただ一人だから。
だが、それならそれでハイそうですかと許す訳にはいかない。
カリスからは、まだ聞かねばならない事が山ほどあるのだから。
-
「さぁ、これで前座は終わりか。始めようぜ、ジョーカー……俺達の戦いを」
「望むところだ……俺とお前は、戦うことでしか解り合えないッ!」
腰を低く落とし、醒弓を構えるカリス。
双剣を振り上げ、戦闘態勢へと移行するギラファ。
二人の不死生物のバトルファイトが、ここに始まろうとしていた。
闘争本能の赴くままに戦いを始めてしまえば、二人はもう止まらない。
だけど、カリスには今までに無かった力がある。
人間としての心。人の想い。人の愛情。
栗原晋が託してくれた、家族への愛。
ギンガが託してくれた、妹と仲間達への愛。
それらがカリスを突き動かす限り、こんなアンデッドには負けない。
嫌……負ける訳には行かないのだ。
ここで決着を付けて、全ての宿命を断ち切る。
その為に、仮面ライダーカリスは走り出した。
【1日目 夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ1階ロビー】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】変身中(カリス)、疲労(小)、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、ジョーカー化への欲求徐々に増大
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
基本:?????????
1.カテゴリーキングを叩き潰す。
2.スバルの事は絶対に死なせたくない。
3.エネル、赤いコートの男(=アーカード)を優先的に殺す。アンデッドは……。
4.アーカードに録音機を渡す?
5.どこかにあるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
6.ギンガの言っていたなのは、はやてが少し気になる(ギンガの死をこのまま無駄に終わらせたくはない)。彼女達に会ったら……?
7.何やら嫌な予感が近付いてきているのを感じる。
【備考】
※ジョーカー化の欲求に抗っています。ある程度ジョーカーを抑え込めるようになりました。
※首輪の解除は不可能と考えています。
※赤いコートの男(=アーカード)がギンガを殺したと思っています。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、変身中(ギラファUD)、ゼロ(キング)への警戒
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、
デザートイーグル@オリジナル(5/7)、首輪(アグモン、アーカード)、
アレックスのデイパック(支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、
ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3))
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.ジョーカーとの決着を付ける。
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
4.同行者の隙を見てUSBメモリの内容を確認する。
5.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
-
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】戦闘機人モード、疲労(小)、全身ダメージ小、左腕骨折(処置済み)、ワイシャツ姿、若干の不安と決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具①】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【道具②】支給品一式、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
1.始と金居の戦闘を見届ける。どちらも殺させはしない。
2.戦いが終われば、始を連れてスカリエッティのアジトへ向かう。
3.六課のメンバーとの合流。つかさとかがみの事はこなたに任せる。
4.準備が整ったらゆりかごに向かいヴィヴィオを救出する。
5.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
6.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
7.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
8.ヴァッシュと始の件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。
-
ホテルの外は、未だに漆黒の闇に包まれていた。
だけど、物陰に潜む八神はやてに危害は及んでいない。
輝く雷は一片たりともはやてには届いていない。
雷鳴もまた、遠くで鳴り響いているのみであった。
「頼むでヴィヴィオ……もう少し持ち堪えてや」
祈る様に呟く。
鬼神たるエネルに今現在立ち向かっているのは、同じく鬼神たる存在。
とうに優しさを枯らしてしまった、最強最悪の魔道師。
それは、古代ベルカにおける聖王(ザンクトカイザー)の姿を取り戻した者。
純粋な戦闘力だけで考えれば、なのはですらも勝てるかどうか解らない程の猛者。
聖王・ヴィヴィオ。それがエネルと戦闘を繰り広げている少女の名前だった。
さて、はやてがここで待って居るのには、理由がある。
周囲の電気を吸収したエネルが現れた時には、万事休すかと思った。
冷静に考えて、明らかに勝てる訳が無いのだ。
魔力もまともに残って居ない自分と、あんな優男(金居)一人では戦力が乏しすぎる。
仮面ライダー二人までなら相手に出来ると豪語しながらも、金居はエネルとの戦闘を避けた。
その辺りからも金居はエネルに敵わないのだという事は容易に想像できた。
ならばどうする。スバルは味方に引き入れたいが、乱戦中。
かと言ってホテルの外にはエネルが待ち受けている。
このままスバルの戦いが終わるのを待っている内にエネルに殺されてしまえば話にならない。
そんな時、現れたのが聖王ヴィヴィオであった。
現れたヴィヴィオは、何の迷いもなくエネルとの戦闘を開始した。
当初はヴィヴィオでも勝てないのではないかと思ったが、それは大きな見当違いだ。
今のヴィヴィオの戦闘能力は、どういう訳かエネルにも匹敵するポテンシャルを引き出していた。
それどころか、傍から見ればヴィヴィオの方が有利なのではないかと思える程であった。
またコンシデレーションコンソールで狂わされたのか、誰かの死を切欠に壊れたのかは知らないが……。
一方で、ヴィータとはヴィヴィオを守るとの約束した覚えもある。
だけど、今がそんな事を言っている場合ではないのは明らかだ。
まず第一に、助けが必要なのであればあんな化け物と戦わないで欲しい。
第二に、現状では確実にヴィヴィオの方が自分たちよりも強いのだ。
最早自分が態々守ってやる必要もないだろう。
ともすれば、これは大きなチャンスと鳴り得る。
ヴィヴィオが時間を稼いでくれるし、上手くいけばヴィヴィオがエネルを倒してくれるかもしれない。
-
と、そんな状況下で、金居はすぐに次の作戦を立案した。
金居の目的はスバル達と戦っている黒いライダーだけだという。
他の奴と戦うつもりはないし、黒のライダーが居る以上、スバル達にも興味は無い。
故に、ヴィヴィオがエネルを引き付けてくれている間に、金居がホテルに潜入。
機を見計らって、黒いライダーに戦闘を吹っ掛ける。
その際スバル達には、「外ではやてが待っている」などと伝えて貰う。
そしてこの場での戦闘は金居に任せて、スバル達には先に離脱を促す。
簡単な作戦だが、この状況ではこれが最善の策だと思えた。
そして数分後、ホテルから出て来たのは、一人の少女を背負った男であった。
まるで箒のような、黒髪トンガリ頭にサングラス。赤いコートを靡かせて、男は走る。
何者かと目を細めるはやてに、先に声を掛けて来たのは男の方であった。
「やぁ、あんたが八神はやてかい!?」
「え……えぇ、そうですけど……」
男はとても悪人とは思えない、ともすれば馬鹿とも思えるような口調だった。
◆
時は数分前に遡る。
ヴァッシュを殺す為に、参加者を皆殺しにする為に。
それだけを目的にホテルの目前までやってきたエネルは、一人の少女と出会った。
全身を漆黒で塗り固めた、金髪の少女。緑と赤のオッドアイには、気味が悪い程の虚が宿っていた。
闇に溶けるその姿は、まるで周囲を凍てつかせるような気迫を放って居た。
そんな第一印象を抱いた後に、エネルは自分の考えを否定した。
神たる自分が、こんな小娘一人に何を考えているのだ。
一撃で殺して、終わりにしてやればいいだけの話ではないか。
そう判断して、エネルは片腕を挙げた。
同時に、エネルの腕は雷と化し、天を埋め尽くす雷雲へと昇って行く。
それから間もなく、空全体がぴかりと光って――計り知れない威力を秘めた雷が、少女へと降り注いだ。
ごろごろ、ごろごろと。周囲の電気を自分の電気を合わせた一撃は、生半可な威力では無い。
アスファルトを焼いて拡散した電力は、再び自分の身体へと舞い戻る。
無限ループの雷地獄。あんな小娘一人が耐えきれる訳が無い。
そう思っていた。
「ほう……?」
雷が止んだ後、小娘はそこに変わらず立ち尽くしていた。
エネルが殺そうとした相手・聖王ヴィヴィオは、聖王の鎧という先天固有技能を持っている。
それはあらゆる障害から聖王を守る、強固な盾となりて、雷からヴィヴィオを救った。
エネルは知らない。ヴィヴィオの命を削るレリックが、同時にヴィヴィオを強くする事を。
身体に深刻なダメージを与える一方で、ヴィヴィオの命の炎を燃やし尽くさんと稼働している事を。
「まずはお前から殺してやる……!」
ヴィヴィオが、憎悪を吐き出すように絶叫した。
瞳には僅かな涙を浮かべて、その表情を醜く歪ませて。
虹色の魔力光を宿した鬼神・ヴィヴィオの命はもう、長くは持たない。
消えゆく命の輝き。その恐ろしさを、出会った参加者全てに刻みつける。
そして、愛する者を傷つけた全ての参加者を血祭りにあげてやる。
例え死んでも構わない。例え地獄に落ちても構わない。
それだけの決意が、ヴィヴィオを動かしているのだ。
-
「神に対して、何たる不遜。ならば教えてやるぞ小娘よ……神の恐怖を!」
今度は、エネルが腕を突き出した。
刹那の内に、エネルの腕が極太の雷へと変化した。
それは周囲全ての電力を吸収し、瞬く間に膨れ上がる。
放たれたのは、アスファルトを抉る程の威力を秘めた電撃。
神の裁き――エル・トール。
「ハァァァァァァァァァァァァァッ!!」
ヴィヴィオから吐き出される、咆哮。
放たれるは、眩い閃光。ヴィヴィオの命の輝きを体現したような虹色の輝き。
それらが同じく、極太の奔流となってエネルの雷を打ち消したのだ。
これには流石のエネルも驚かずには居られない。
何たることかと、大口を開けるエネルに対し、先に行動したのはヴィヴィオ。
「ママ……ママ……ママ……ママ……!」
狂ったような笑み。狂ったように叫ぶ、愛しい人の名前。
アスファルトを蹴って、ヴィヴィオがエネルへと一直線に走る。
それを阻止せんと、周囲の雷雲が無数の電撃を放電するが……。
「解ったよ……ママ!」
右へ跳び、左へ跳び、上空へ跳び上がり、回転する。
見事なステップ、見事な動きで、エネルの攻撃を全て回避。
いくつか小さな攻撃が命中するが、そんなものは聖王の鎧の前には無意味だ。
虹色の輝きが電撃を弾き、ヴィヴィオの前進を手助けする。
「ママが……私を守ってくれてる! 私を見てくれてる!」
口元を大きく歪め、狂った笑いを作り出す。
なのはママの気配を感じる。フェイトママの気配を感じる。
それだけじゃない。ザフィーラや、死んでいった他の人間。
それら皆が、ヴィヴィオのすぐ傍に付いてくれている。
だからヴィヴィオは、何も恐れはしない。
「ずっと……ずっと……一緒に居てくれたんだね……なのはママ!!」
「消え去るがいい……!!」
愛する者の名を絶叫しながら、エネルの眼前まで迫る。
今度はエネルが両手を掲げ、その電力を放出する。
エネルの電撃の前には、何も残らない。アスファルトも、周囲の建物も。
全てを焼き尽くす神の閃光が、至近距離でヴィヴィオへと放たれる。
「うぁぁぁぁあああああああああああああああああああッ!!」
「ひぃ……ッ!?」
だけど、ヴィヴィオは止まらない。
今度の雷は、確かに聖王の鎧を貫いた。
ヴィヴィオの漆黒の騎士甲冑を焼き、インナーを露出させる。
全身にダメージを負いながらも、ヴィヴィオの猛攻は止まらない。
これが、死さえも恐れぬ聖王の力。エネルには絶対に不可能な芸当。
例え自分が死に、地獄に落ちる事さえ厭わない究極の聖王の姿。
虹色の魔力を拳に宿らせて、ただ力任せに振り抜いた。
-
「地獄聖王(ヘルカイザー)を、ナメるなぁぁぁぁぁッ!!」
「わぶ……っ!?」
最早自分は、聖王(ザンクトカイザー)などでは無い。
ザンクトカイザーをも超えた、最強にして究極の闇。
神すらも、地獄すらも恐怖の対象には鳴り得ない。
その想いをぶつける様に、振り抜いた拳をエネルの顔面に叩き込んだ。
情けない声を上げながら、エネルの身体が後方へと吹っ飛んで行く。
何度も何度も硬いアスファルトに身体をぶつけながら、エネルの身体が醜く舞う。
「第二打ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいい!?」
逃がしはしない。すぐにエネルに追い付いたヴィヴィオが、その脚を振り上げた。
虹色の魔力光を宿した一撃が、エネルの腹を両断せんと振り抜かれる。
咄嗟に雷によるバリアを張るが、そんなものは気休めだ。
ヴィヴィオの威力を殺すには至らず、エネルの身体が遥か上空へと舞う。
だけど、まだヴィヴィオの気は済まない。こんなものでは、ママの無念は晴らせない。
半ば八つ当たりにも近い想いで、ヴィヴィオは飛び上がった。
「第三打……第四打ッ!!」
「ぐ……ぅ……!」
一撃目は、跳びひざ蹴り。
空中で受身など取れる訳もないエネルの腹部に、その膝を叩き込んだ。
その口から夥しい量の鮮血を吐血し、エネルが白眼を剥いた。だけど、まだ終わらない。
両手の指を硬く絡ませて作り出したハンマーを、矢継ぎ早にエネルの背中目掛けて振り下ろした。
比較的筋肉の多い背中で受ける分、まだダメージは少ないが、それでも今のエネルには十分過ぎる一撃。
エネルの身体が、真下のアスファルトに向かって加速。
どごぉん! と、馬鹿でかい破砕音と共に、エネルの身体がアスファルトを抉った。
これで殺してやる。
「五連打ァァッ!!」
アスファルトへと着地するよりも先に、ヴィヴィオが両手を突き出した。
眩く輝く輝きは、聖王だけに許された最高純度の魔力光。
それらを解き放つように、エネルに向かって発射――する、筈だった。
「う……ぐ、ッ!」
ヴィヴィオの動きが止まった。
吐血だ。エネルにも負けず劣らず、明らかに命に関わる量の鮮血。
同時に、ヴィヴィオの胸を襲う激痛。心臓が鼓動する度に、痛みが募る。
咄嗟に心臓を抑えた事で、空中で体勢を崩してしまった、その刹那。
「この……不届き者がぁぁぁぁああああああああああああああッ!!!」
「な……ぐ、あぁぁあああああああああああああああ!?」
遥か頭上の天空から。エネルのいる真下から。周囲の雷雲から。
ほぼ360度から、目を眩ます程の輝きがヴィヴィオを襲った。
それらは体調を崩した今のヴィヴィオが受け切るには、あまりに協力過ぎる。
聖王の鎧である程度はダメージを軽減できても、それがヴィヴィオにとって大きな一撃となる事は間違い無かった。
閃光が晴れた後に、どさりと音が鳴る。
ヴィヴィオの身体が、アスファルトへと落下した音だ。
あれだけの一撃を受けたのだ。最早五体を動かす事すらもままならないだろう。
……否、緑と赤のオッドアイはまだ見開かれていた。
憎々しげにエネルを睨むその表情に、確かな憎悪が込められていた。
「ほう……まだ戦えるか。いいだろう、ヴァッシュより先に、貴様から裁いてくれる」
赤い剣をその手に構え、エネルがヴィヴィオに視線を送る。
対するヴィヴィオも、まだ戦意を失ってはいない。まだ輝きを消してはいない。
その眼は未だにギラギラと光り輝いているし、滲みだす戦意だって生半可ではない。
痛む身体に鞭を打って、もう一度二本の足で立ち上がった。
「お前なんかに負けてられない……ママが、見てるのに……!!」
現実も、五感も、思考も、遠のいていく。
ただ沸き上がる憎悪と怒りに身を任せるままに、ヴィヴィオは再び拳を構える。
心臓の痛みは、もう引いている。
今は只、全身が心臓になったように鼓動を鳴らしているだけだった。
-
【1日目 夜中】
【現在地 F-8 東側(ホテル付近)】
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】究極聖王モード、血塗れ、洗脳による怒り極大、肉体内部に吐血する程のダメージ(現在進行形で蓄積中)
【装備】レリック(刻印ナンバー不明/融合中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式、フェルの衣装、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:なのはママとフェイトママの敵を皆殺しにする、その為に自分がどうなっても構わない。
1.エネルを殺して先に進む。
2.天道総司を倒してなのはママを助ける。
3.なのはママとフェイトママを殺した人は優先的に殺す。
4.頃合を見て、再びゆりかごを動かすために戻ってくる。
5.ヴィヴィオにはママがずっとついてくれている。
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※ヴィヴィオに適合しないレリックが融合しています。
その影響により、現在進行形で肉体内部にダメージが徐々に蓄積されており、このまま戦い続ければ命に関わります。
また、他にも弊害があるかも知れません。他の弊害の有無・内容は後続の書き手さんにお任せします。
※副作用の一つとして、過剰なまでに戦闘力が強化されています。しかし、力を使えば使う程ダメージは大きくなります。
※レークイヴェムゼンゼの効果について、最初からなのは達の魂が近くに居たのだと考えています。
【エネル@小話メドレー】
【状態】ダメージ・疲労(極大)、激怒、『死』に対する恐怖
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0〜2
【思考】
基本:主催含めて皆殺し。この世界を支配する。
1.神の威厳を守るため、ヴィヴィオを殺す。
2.ヴァッシュに復讐する。
2.ヴィヴィオに対する恐怖。
【備考】
※黒い鎧の戦士(=相川始)、はやてと女2人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています。
※なのは(StS)の事はうろ覚えです。
※なのは、フェイト、はやてがそれぞれ2人ずついる事に気付いていません。
※背中の太鼓を2つ失い、雷龍(ジャムブウル)を使えなくなりました。
※市街地と周囲の電力を取り込み、常時雷神(アマル)状態に近い放電状態になりました。
※吸収した電力で、僅かな傷や疲労は回復しています。
-
森林の中を駆け抜ける影が二つ。
一つは、紫髪の少女を背負った赤コート。ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
一つは、管理局の制服に身を包んだ若き部隊長。八神はやて。
少女を一人背負う事で、ヴァッシュの走る速度は著しく低下していた。
だけど、魔法を抜けば一般人と変わり無いはやての速度に合わせるという意味では、それくらいが調度良かった。
二人が目指す先は同じ。このマップ上に示された、スカリエッティのアジトだ。
そこにスバルが言う仲間がいる。
では、その仲間とは一体全体誰の事であろうか。
生き残っている参加者から考えると、高町なのは辺りであろうか?
もしもそうであれば、これ以上心強い物はない。が、必ずしもそうとは限らない。
アジトに居るのがなのはなら、仲間などという間接的な表現を取る必要は無い筈だ。
ストレートに「なのはさんがそこに居る」と言えば伝わるのだから。
それらを踏まえて考えると、アジトに居るのははやても知らない第三者である可能性が高い。
「で、その子はどうするんですか?」
「スバルの仲間と会わせなきゃならない。俺はそうスバルと約束したから」
「わからへん……そんな危険人物を合わせる事に、意味があるんですか?」
「ああ、きっとね。スバルは無駄なお願いはしない……と思う」
走りながら、はやては大きなため息を吐いた。
何度か言葉を交わして解った。こいつもスバル同様御人好しタイプだ。
態々「その子を仲間に会わせろ」と言うからには、何らかの策はあるのだろう。
スバルの事だ、危険人物を改心させたいとか、大方そんな所だろう。
だが、だとしたらそれは少々楽観視し過ぎではないだろうか?
話を聞く限りでは、かがみという人間は相当な危険人物らしいが……。
そんな不安を抱えたまま、はやて達は走り続けるのであった。
【1日目 夜中】
【現在地 D-9 森林】
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、融合、黒髪化九割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish、アイボリー(5/10)@Devil never strikers
【道具】なし
【思考】
基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。
1.スバルを信じて、スカリエッティのアジトへ向かう。
2.柊かがみから戦力を奪った上で、スバルの仲間(=泉こなた)に会わせる。
3.こなたに出会ったら、スバルからの伝言を伝える。
4.首輪の解除方法を探す。
5.アーカード、ティアナを警戒。
6.アンジールと再び出会ったら……。
7.千年リングには警戒する。
【備考】
※制限に気付いていません。
※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。
※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。
※暴走現象は止まりました。
※防衛尖翼を習得しました。
-
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(中)、魔力消費(大)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、
【道具】支給品一式×3、コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、
トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、
デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる
首輪(セフィロス)、デイパック(ヴィータ、セフィロス)
【思考】
基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
1.スカリエッティのアジトへ向かう。
2.柊かがみは本当に大丈夫なのか……?
3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
4.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
9.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
10.金居の事は警戒しておく。怪しい動きさえ見せなければ味方として利用したい。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
基本:ゼストに恥じない行動を取る
1.…………
2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する
3.金居を警戒
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。
-
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】気絶、疲労(極大)、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、自分以外の生物に対する激しい憎悪、やさぐれ
【装備】千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、ホテルの従業員の制服
【道具】無し
【思考】
基本:みんな死ねばいいのに……。
1.………………。
2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
1.そろそろ宿主サマを変えたい
2.キャロが自分の世界のキャロなのか確かめたい。
3.こなたに興味。
4.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
5.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。
-
これにて投下終了です。
言うなれば究極地獄聖王(アルティメット・ヘルカイザー・ヴィヴィオ)でしょうか。
調度ヴィヴィオもカイザーで身体にダメージ蓄積だったので、ずっとやりたかったんです。
今回の元ネタは仮面ライダーW風サブタイトルのみ。
「H激戦区/人の想いとは」「H激戦区/ハートのライダー」の二つがカリスメイン。
「H」は「HOTEL」の意と、「HEART」の意です。後はこじつけ臭いけど、「HUMAN(人)」とかもありかも知れません。
「誕生、Hカイザー/NEXT BATTLE」「誕生、Hカイザー/神と聖王」の二つはヴィヴィオメイン(?)。
こちらの「H」はヘルカイザーの「HELL」の意です。単純です。
それでは、指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
-
投下乙です。
うぉぉぉ、激戦未だ終わらずか!
遂に仮面ライダーとなった始、最終目的こそ未だ不明だけどひとまずギンガの想いが報われた気がする。
とはいえ、金居をどうにかしない事には先はないんですけどね。ジョーカー化の危険も消えたわけじゃないしなぁ。
一方、GX組は全滅したのにヘルカイザーは登場というわけでヴィヴィオ。そういや、GXのヘルカイザーも似たような状態だったなぁ。五連打か……なるほどキメラテック・フォートレス・ドラゴン(ヘルカイザーの切り札の1つ)じゃねーの。
エネルすら圧倒はしているけど内部からのダメージが深刻化しているのが……まぁエネルが勝とうがヴィヴィオが勝とうがマーダーである事に代わりはないんですけどね。
そしてバクラに見放されたアレ……というか、ヴァッシュもスバルもこなたに会わせれば大丈夫ってそんなの幻想だぞーそういう意味でははやてが正しいぞー、こなたオワタ……。
状況を整理すると
ホテル内部……スバル&始vs金居
ホテル近く……アルティメット・ヘルカイザー・ヴィヴィオvsゴッド・エネル
アジトへ移動中……ヴァッシュ&はやて&アギト他1名
……結局今回誰も死ななかったけど、危険は終わらないか……とりあえずスバルとこなた伏せやー! アレ(とU・H・Vと神エネル)は下手なマーダーよりも危険だー!
-
投下乙です
激戦区の激闘はまだこれからって感じだな
始はとうとう仮面ライダーに目覚めたか。だが金居も一筋縄ではいかないんだよな
ヴィヴィオはお前はアスカかよw まずい、敗北フラグが立ったとしか見えねえw
どぐされかがみんは…とりあえずこなたと出合っても…でも何がが起こる悪寒がするわw
-
五連打ってグォレンダァ!ってやつが元ネタ?
-
というよりグォレンダァの元ネタが五連打
-
投下乙です
ついに始が仮面ライダーとして覚醒か
まだジョーカー化の可能性も残っていて予断を許さない状況だが感慨深いな
それにしてもはやて危なかったな
>海楼石はこちらにある。倒せない事はないだろうが、今はまだその時ではない。
頼りの海楼石はクアットロに奪われているでしょうがw
-
>>263
しまった……クアットロに奪われた事を完全に忘れていたorz
その一文に関しては、wiki編集の際にこちらの方で編集しておきます。
また、読み返してみたところ誤字脱字が多く、色々と思うところがありましたので、
今回も自分で細かな編集をした上でwikiに収録しておこうと思います。
-
おっと……もう編集されていたのか。
度々申し訳ありません、後日細かな編集を加えておこうと思います。
-
八神はやて(StS)、柊かがみ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード分投下します。
-
「む……」
意識を取り戻した時に真っ先に感じたのは口の中に広がる違和感、
次に感じたのは肌を滑る風の冷たさ、
周囲を見回すとそこは何も見えない平野であった。
「ふぐ……」
喋ろうとしても声が出ない。何かを口に詰め込まれている様だ。
身動きを取ろうとしても両手両足を何かに拘束されている為動けないでいた。
「はんはのほ……ふぇ!?」
そして自分の姿を見て驚いた。身に着けている物を全て剥ぎ取られていたのだ。
どうやら自分の身に着けていたホテルの服で拘束している様だった。
当然、先程まで身に着けていた千年リングとベルトも無くなっている。
「ひゃぁほれは……」
そして今自分の口に詰め込まれている物が何か気が付いた。それは――自分が身に着けていた下着である。
「はにはほほっはほ!!」
怒り苛立つ中、
「お目覚めか?」
目の前にはスバルと同じ制服を身に着けていた女性が小刀を構えて立っていた。
「おはよう、かがみん」
「はっ……はんはがははひを!」
「そう怖い顔するなや、ちょっと『お話』しようと思っているだけや」
その女性の笑みはどことなく冷たかった――
-
(はぁ……本当にどうしたもんかな……)
八神はやては内心で頭を抱えたかった。その理由とは――
今現在置かれている状況を整理しよう。
先程ホテルアグスタ周辺に自分を含め8人もの参加者が集結した。
その8人ははやて、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ、金居、相川始、エネル、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、柊かがみだ。
ある者達はホテル内で戦い、ある者達はホテル外で戦い、またある者達は状況の動きを見ていた。
その後、はやてとヴァッシュはかがみを連れてホテルを離脱しスバルの仲間が待つらしいスカリエッティのアジトへと移動していた。
ちなみに、今現在もホテルでの戦いは続いている。
次に、今現在も生き残っている参加者をはやての視点から整理しよう。
放送時点で残り19人、その後ヴィータとアーカードの死亡を確認し残りは17人。
なお、はやては気絶していた為先程の放送自体は聞き逃しているが、金居から大まかな内容である死亡者の名前と御褒美の話は聞いていた。
では、はやて自身を除く残り16人を整理しよう。
まず、現状殆ど情報が無い参加者がアレックス、アンジール・ヒューレー、泉こなた、天道総司、ヒビノ・ミライの5人。残念ながら敵か味方かの判断は不可能だ。
次に高町なのはとユーノ・スクライア、断言こそ出来ないがこの両名が殺し合いに乗る可能性は低い。更に言えばその能力は高く是非とも合流し味方に付けたい所だ。
問題人物の1人としてクアットロがいる。真面目な話、彼女のスタンス自体はある程度理解しているし、彼女と決裂したのもある種自業自得だったのも理解はしている。
だがあの女の事、なのは達と合流して自分の悪評を振りまいている可能性が高く、自分達との対立は不可避だ。故に自身の目的達成の障害にしかなり得ない。何とかして排除したい所だ。
ホテルでの戦いに関係のない9人の内これで8人。あとの1人に関してはある理由からひとまず外す。
-
ここから7人は先の戦いの関係者だ。まずその内5人について整理しよう。
まず、現在ヴァッシュに背負われているかがみだ。ヴァッシュによると殺し合いに乗っており先の戦いでスバル達3人を圧倒した緑の仮面ライダーという話だ。もっとも変身する為のベルトはスバルが預かっているらしい。
ヴァッシュからの証言だけなので詳しい事は不明だがこの場に来てから各所で酷い目に遭い続け、妹である柊つかさも無惨に殺されたそうだ。
それ故に殺し合いに乗ったと好意的に解釈する事も出来なくはない。しかし、一方で彼女がお人好しなヴァッシュ達を騙している可能性……いや、確実に騙していた。
何しろ、スバルが危険人物という偽情報を伝えヴァッシュとの無用な戦いを起こし、乱戦に入った時には掌を返し皆殺しにしようとしたのだ。
こんな危険人物を信用する事などはやてには無理だ。聞いた所、自暴自棄になり皆殺しにして自殺すると言い張っている。
迷惑極まりない、そんなに死にたいなら誰にも迷惑かけずに1人で死ねと言いたい。
スバルとヴァッシュによるとアジトで待つスバルの仲間ならばかがみを説得出来るらしいが、正直それも全く信用していない。
どうせまた、こちらが隙を見せた所を裏切り自分達を一掃するのがオチだろう。
真面目な話、早々に彼女を斬り捨てた方が良い。とはいえ、それをやろうとすればヴァッシュやスバル達と対立するのは明白、故にむやみに行うわけにはいかないのが辛い所だ。
次に現在の同行者であるヴァッシュ、まだ詳しい情報交換はしていない為、その全貌は掴みきれてはいない。
しかし、強敵とも言える先の仮面ライダーとの戦いでのダメージが殆ど無い事からその実力はトップクラスと言えよう。
思考に関しても馬鹿すぎる程のお人好しなのは把握した。つい先程まで自分を殺そうとしていた相手を殺さず保護していたからだ。
だが気になる事もある。殺し合いに乗らない人物でなおかつ凶悪的なパワーを持つ人物をそのまま殺し合いに放り込む事をするだろうか? 何かしらのデメリットを抱えてはいないだろうか?
ヴァッシュ自身の頭髪にも違和感を覚えた。黒髪に約1割の金髪が混じるという不自然な髪色だ。何故彼はそんな不自然な髪型をしているのだろうか?
これが今後にとって致命傷になる可能性はある。もっとも、これは現状些細な事ではあるが。
むしろ問題なのはお人好しという点だ。折角敵にトドメを刺せる状況になってもこの男ならばそれを強引にでも止めかねない。
それ自体は善行と言える。だがこの場では少々不味いと言わざるを得ない。危険人物を残しておいてその逆襲を受けて此方の戦力が削られるならむしろ逆効果だろう。
とはいえ、ヴァッシュの思考そのものはなのは達に近い。下手にそれを咎めると自分が孤立するのは明白、故に現状ではその事について口出す事は出来ないだろう。
-
続いてホテル外で戦闘中のエネルだ。言うまでもなく殺し合いに乗っている危険人物でその実力もトップクラス。
真面目な話現状のはやて達に手の打ち様が無い以上、ヴィヴィオが倒してくれる事を期待するしかない。
だが、そのヴィヴィオに関しても大きな問題を抱えている。
何が原因かは不明だが彼女は聖王状態となっておりエネルに匹敵する力を持っていた。だがそれは必ずしも自分達にとって良い事ばかりではない。
その最大の理由がヴィヴィオがほぼ無差別に殺意を向けていたという事だ。一歩間違えれば自分達にその殺意が向けられていた可能性がある。エネルとの戦いに入った事はむしろ幸運だったのかも知れない。
一応、ヴィータからヴィヴィオを助けてと頼まれた事もあり、それが無くてもなのはの娘である彼女を助ける事についてはさほど異論はない。
だが、あの状態のヴィヴィオを止めるなど自殺行為以外の何物でもない。悪いが今のヴィヴィオを助ける事は不可能と言って良い。
とはいえ倒す事もまず不可能だ。エネルと同等もしくはそれ以上の強敵を倒す手など今の自分にはない。
勿論、弱点も幾つかある。遠目で見たところ、今のヴィヴィオは感情の赴くままに全力で戦っていた。
あんな状態で戦い続けて負担がかからないわけがない。断言も出来ないし何時になるかは不明ではあるが、戦い続ければその内ヴィヴィオは自滅するだろう。
もう1点気になる事がある。それはヴィヴィオが持っていた鎌の様な武器だ。どことなく今自分が所持している憑神刀と雰囲気が似ていた。
同系列の武器ならば、前述の仮説がより裏付けられる事になる。なにしろ憑神刀も強い力を発揮する反面、消耗が大きい武器だからだ。
そういえば、クアットロが大きな鎌を持ったキャロに襲われたと言っていた。もしかするとあの鎌はキャロが持っていたものかもしれない。
何にせよ、ヴィータやなのは達には悪いが両名の戦いにおける理想の決着は共倒れだ。
仮にどちらかが勝った場合、勝者はそのままホテルに突入する可能性が高い。疲弊しているとはいえホテル内の連中にとってもそれは同じ。避けたい結末である事に違いはない。
次はホテル内の金居と始の戦いの場に残ったスバルだ。
残った理由は始を、いや始も金居も死なせずに戦いを収める為らしい。勿論、スバルの性格を考えるならばその行動自体は理解出来る。
だが、正直悪手以外の何物でもない。金居の話から察するに両名の戦いは相手を完全に滅するものだ、両名とも死なせずという事はまず不可能だ。
それでなくても金居と始がスバルに牙を剥けないとは言い切れないし、戦いの余波に巻き込まれて命を落とす可能性もある。
運良くそれをどうにか出来たとしよう。だが、その後素直にアジトへ向かってくれるだろうか?
いや、もしホテル近くでヴィヴィオが戦っている事を知ったら彼女を助けに向かうのは明白だ。
なのはや自分ですら勝てない相手に向かうなど自殺行為以外の何者でもない。戦力としてはアテにできるのにどうしてこんな頭を抱える様な行動ばかり取るのだろうか?
-
続いて金居だ。金居の実力については本人の言葉を信じるならば仮面ライダーに匹敵すると考えて良い。エネル程ではないとしても強者には違いないだろう。
そして現状では自分達に協力する素振りを見せている事から利用出来ると考えて良いが、クアットロと似た性格である金居を完全に信用は出来ない。水面下では自身の優勝を目指す為に暗躍している可能性がある。
状況証拠として、先程持っていなかった筈の銃がある。金居自身は拾ったと言っていたが、もしかすると密かに誰かを殺してそのボーナスで得た銃という可能性もある。
とはいえ、現場を押さえたわけではない為これ以上は追求は出来ない。とりあえずボーナスで得たなら殺した人物は自分達の仲間ではない事を祈るしかない。
何にせよ、金居自身も此方が警戒しているとわかっているならば下手な動きは見せないだろう。具体的に手を下すのは動きを見せた時だ、今はひとまずそれで良い。
その金居が『人類全ての敵』と言っていたのが始だ。あの戦いの様子やヴァッシュの証言からも彼がスバル達と対立していた事は間違いない。
しかし、その始がスバル達を助けあの戦いでの敵であったかがみを倒した事実がある。同時にスバルやヴァッシュの証言から彼は現状他の参加者を殺すつもりはないという話だ。
つまり、金居の証言と違い味方になり得る可能性が高いという事だ。はやて自身金居の証言を鵜呑みにしているわけではない、貴重な戦力、得られる物ならば得たい所である。
だが、『人類全ての敵』という言葉に引っかかりが無いわけではない。金居が無用な嘘を吐くとは思えない、その言葉の解釈次第では始が自分達に牙を剥く可能性は十分にあるだろう。
月並みな言葉ではあるが始に対しても警戒はしておいた方が良い。元々敵対していたわけだ、不満を言われる筋合いはない。
何にせよ、両名の戦いは不可避だ。どちらかが退場する可能性が高いだろうが、はやてとしてはそれでも構わないと思っている。
どちらにも危険な要素がある以上片方が潰れる事はむしろ都合が良い。スバルさえ巻き込まなければ正直それで良いと考えている。
だが、理想を言えば片方には生き残って欲しい。その理由がこれまで言及を避けてきたキングの存在だ。
キングははやてが最初に出会った相手で彼に翻弄されたお陰でヴィータと仲違いをし、更に開始6時間を殆ど無為に過ごす結果を引き起こした。
あの後、奴の動きは全く見受けられない。だが逆を言えば自分の知らない所でかき回しているという事だ。
つまり、今現在もホテルの戦いに関わっていない8人の内の誰かに仕掛けているという事だ。クアットロといった危険人物を潰す事については一向に構わないが、なのは達を潰されるのは非常に不味い、何とかして早々にキングを排除したい所だ。
では、キングを排除する手段に関してはどうだろうか? 実の所1つ気になる事があった。
金居と話してわかったことだが、金居の口ぶりからどうやらキングを知っている様だった。確証こそ無いが元々の世界で敵対していた可能性もある。少なくても味方という事はないだろう。
となればこういう話は成り立たないだろうか? 金居、キング、始の3名は互いを知っていてなおかつ敵対しているという事だ。
つまり、金居と始のどちらかをキングに対するカウンターにすれば良いという事だ。
幸い、金居も始も味方になりそうな感じではある。キングが元々の敵であるならばキングを倒す為に協力してくれる可能性は高いだろう。
故に金居と始の戦いでは共倒れではなく片方に生き残って貰いなおかつスバルも無事な状態でホテルから離脱して欲しいという事だ。
だが、その為にはどちらにしてもエネルもしくはヴィヴィオとの戦いを避けなければならない。とはいえ、金居はともかく始とスバルが素直に離脱してくれるとは思えないわけだが。
-
(全く頭が痛いなぁ……)
ここまでの話だけでも現状が非常に厳しい事は理解出来ただろう。
前述の通りホテルの戦い次第では貴重な戦力とも言えるスバル、始、金居の3名がエネルもしくはヴィヴィオによって潰される可能性が高いのだ。
残り人数の少ない状況でこれ以上戦力が潰されるのは痛い。はやてが頭を抱えるのも理解出来るだろう。
真面目な話、スバルぐらいはホテルから離脱して欲しかったというのが本音だ。アジトに仲間を1人向かわせているという話ならばなおの事だ。
(まぁ、私も全く失敗していないわけやないけどな)
勿論、はやて自身にも全くミスがないわけではない。
実はこうやって移動している最中に気付いた事だが、シャマルとクアットロと情報交換した際に罠ではないという結論を出していた事を思い出していた。つまり、金居に魔法陣が罠だと説明した際にはその事を忘れていたという事だ。
(その後、色々ありすぎて私自身も整理ついていなかったからな……嫌な夢も見たし)
もっとも、魔法陣に関しては金居の助言があったので別段大きな問題はなかった。むしろ、その際に金居とキングの関係のヒントを得られた為、その意味では幸運だったのかも知れない。
(そんなことはひとまずどうでもええか……それに……)
先程万一に備え武器を探した際に夜天の書を構えようとしていた。しかし、それに触れた瞬間何か嫌な予感がしたのだ。気のせいだろうと思ってはいたが、脳裏にある危惧が浮かんだのだ。
(あの餓鬼……夜天の書にいらん細工せんかったか?)
思い出せばジュエルシードのエネルギーは全て使い切られていた。はやて自身はそれで安全に使えると考えており深くは考えていなかった。
だが、こういう解釈は出来ないだろうか。夜天の書を使っていた人物、はやて自身名前は知らないが天上院明日香が夜天の書を自分に都合の良い風に使う為にジュエルシードを利用したという事だ。
分かり易く言えば、かつての闇の書の様に改変を行った可能性があるという事だ。
(あの餓鬼は異常なまでに力を欲しがっていた……その辺の力を蒐集出来る様に改変した可能性は無いとは言い切れん……)
力への渇望そのものははやて自身も望む事がある為それ自体を咎める気はない。しかしその為によりにもよって夜天の書を改変しようとした事が問題なのだ。
かつての夜天の書が改変された闇の書は多くの深い悲しみを生んだ。はやて自身もその管制人格であるリインフォースとの辛い経験をしている為、それを痛い程理解している。
長きの時間苦しみ続けて最後に散ったリインフォースの為にも二度と闇の書を生み出してはならないのだ。
(冗談や無い……そんな事許してたまるか……! あんな餓鬼の自分勝手な都合で闇の書が生み出されてなんてたまるか……!)
心情的な問題はともかく、実際に改変された場合、殺し合い云々以前の問題になる可能性がある。
勿論、プレシア・テスタロッサがデスゲームを壊す事態を許すわけはないだろうが、どちらにしても自分達の障害となる可能性は否定出来ない。
少なくてもアーカード戦の時に使った際には別段問題は無かった。だが、夜天の書の安全が保証されたわけではない。表面上はそう見えても中枢が改変されている可能性はある。
下手に改変された場合破壊したタイミングで周辺一帯を破壊に巻き込む可能性もあり安易に処分するという選択は取れない。もっとも、大事な夜天の書を安易に処分するという選択肢もないわけだが。
理想は改変された部分を元に戻す事だ。今の夜天の書ははやて自身が作ったからそれ自体は可能だ。あとはそれを行える大規模な施設が必要となる。
勿論、何の問題もない可能性もあるがはやて側から見た場合、専門の設備で調べなければそれも出来ないだろう。何しろジュエルシードによる改変だ、どうなっているかは想像も付かない。
(まぁ、私の考えすぎという説もある……というかそうであって欲しいけどな)
勿論、夜天の書の改変云々ははやての過剰な警戒という説もある。だが、闇の書事件の当事者であるはやてがそれを警戒するなと言うのも無理だろう。
どちらにせよ、夜天の書に関しては何処か専門の施設で安全を確かめる必要がある。運が良ければアジトでそれを行える可能性はある。
-
(まぁ、そのアジトが何事も無く使えるとも思えないのが問題やけど)
今現在はやて達はアジトでスバルの仲間と合流する事が目的となっていた。同時にかがみにその人物と会わせてかがみを説得し改心させる手筈となっている。
正直それがそのまま上手く行くとは思えなかった。そもそもスバルの仲間が無事にアジトに辿り着いている保証もないし、そのアジトが危険人物によって潰されている、もしくは牛耳られている可能性もある。
仮に以上の問題が無くてもかがみの説得が上手く行くとは思えない。大体、スバルとヴァッシュは何をもって改心出来ると確信しているのだろうか?
話せばわかるという単純かつ馬鹿な理由もあるだろう。だが、幾らスバルでも何の考えも無しに危険人物と他人を遭遇させるなんて考えない筈だ。つまり、高確率で説得出来る相手がいるという事だ。
(真っ先に考え付くのは家族……けど、彼女の家族らしき人物は死亡している……となると友達か?)
はやてはその人物がかがみの友人だと推測した。ヴァッシュが名前を聞いていなかった為その人物が誰か全くわからないわけだが。
では、説得は可能なのだろうか? 確かに説得出来る可能性は0ではない。しかし成功する可能性も100ではないのだ。
スバルやヴァッシュと言った参加者を陥れる様な危険人物だ、説得された様に見せかけて隙を見せた所を一網打尽にする可能性が高い。
それでも説得を繰り返すという理論もあるだろうが正直人の生死が懸かっている以上そんな余力は全く無い。たった1人の危険人物を改心させる為に何人もの貴重な戦力を減らす意味など無い。
(けどなぁ、絶対に私の方が間違っているって言われるに決まっているからな……)
客観的に見ればはやての考えはある種正しい。しかし、スバルやヴァッシュははやての考えを否定し危険人物も絶対に殺したりはしないだろう。
同時に恐らくはなのはやユーノもスバル達の考えを指示するのは想像に難くなく、かつてのはやてもスバル達の考えを指示していただろうというのは自分でも理解している。
つまり、危険人物だからと言ってかがみを排除する事は現状難しいという事だ。かといって、説得が成功する保証も無く、どちらにしてもはやてが望まない展開となる可能性が高いとなる。
(胃薬が欲しくなってきたな……)
「……んでだよ……なんでアイツが……」
そんな中、はやての傍で声が響く。
声の主は融合騎である烈火の剣精アギトだった。ヴィータの死後ずっと彼女の死を悲しみデイパックの中で泣いていたのだ。
いや、それだけではなく先の放送で彼女の仲間であるゼスト・グランガイツとルーテシア・アルピーノの死亡も伝えられていた。そのショックから完全に抜け出せてはいなかったのだろう。
故にはやては現状アギトに関してはこのままにしていた。だが、そのアギトがいきなり口を出してきたのだ。
「少し黙っていてくれるか、今色々考えて……」
「おい、はやて! 何でアイツを連れているんだよ!」
「……アイツってどっちや? ヴァッシュさんか? それともかが……」
「紫の髪した女の事だよ! 見てわからねぇのかよ!」
紫髪の女といえばかがみの事だ。アギトの口ぶりが確かならかがみと何処かで面識があったというのだろうか?
そういえばヴィータと合流した時、自分の側の説明はしたがヴィータ側、特にアギトの事情はあまり深い所まで聞いていない事に今更ながら気が付いた。
いや、そもそもアギトは最初からヴィータと同行していたのかも不明瞭だ。最初に接触した時には見かけなかったからだ。
何にせよ、アギトが何か知っている可能性が高い。
「なぁ、紫髪の女が何かしたんか?」
「アイツが……○○○○を殺したんだ!」
「なん……やって……」
-
その一方、ヴァッシュもある事を考えていた。
(どっかで会った気がするけど……)
そう、ヴァッシュ自身、はやてを見た記憶があったのだ。しかし、ヴァッシュ自身それに関して強い確証が無かったのである。
結論から言えば、ヴァッシュ自身はやてと面識は全く無い。しかし、はやてとその家族についての記憶は確かにあったのだ。
思い出して欲しい、今のヴァッシュは自身の兄であるミリオンズ・ナイブズと融合している事を。
融合した際に彼の記憶と動向をヴァッシュは把握した。この殺し合いでなのはを含む4人を殺した事を、そして元の世界での彼の記憶をだ。
そう、この殺し合いに連れて来られる直前のナイブズの記憶もまた例外ではなかったのだ。
ヴァッシュがなのはに保護されたのと同様に、ナイブズもまたはやてに保護されていた。その際に彼女の家族であるヴィータ達とも出会っていたのだ。
では、何故ヴァッシュは確証を持てなかったのだろうか?
まず、記憶のはやてとこの場にいるはやてが似ていたとはいえあまりにも違いすぎたのだ。ここにいるはやては20歳の女性、記憶の中のはやては9歳の車椅子の少女なのだから。
また、そもそもナイブズがはやてに保護されてという記憶がヴァッシュにはある意味現実味が薄かったのだ。ナイブズが何度と無く人間を虐殺するのをヴァッシュは見ていたのだから。
そして、融合以降約10時間前後力の暴走とそれによりフェイト・T・ハラオウンを殺したショックからヴァッシュ自身それどころでは無くなっていた。
以上の事からヴァッシュははやての記憶を持ちながらもそれについての確証が持てなかったのである。
とはいえ現状それは大きな問題ではない。いち早くアジトに向かい背負っているかがみをスバルの仲間に会わせる事が今の最優先事項だ。
と、気が付いたらはやてよりも数十メートルも先行していた事に気が付いた。
「ちょっとー!!」
最初の放送直後、ヴァッシュは自身のデイパックを奪われており以降地図も磁石も持たずに行動していた。その為、はやての道案内無しにアジトへ向かえる道理は無い。
ともかく、ヴァッシュははやての所に戻り、
「はやて! ……ってあれ?」
口を出そうとしたが、はやての傍に見慣れない小人がいた事に気が付きあっけに取られた顔をした。
「あ、すみません、ちょっと考え事していたんで」
「それはいいけど……って君は?」
「あたしは……」
「ああ、この子は仲間のアギトです。それよりヴァッシュさん、少し貴方とお話したいんですけど」
はやての口から発せられたのは情報交換の提案だ。
「え、でもそれはアジトに行ってからゆっくりやれば……」
確かにアジトまではそう遠くない。ここで無理に行わずともアジトに付いてからスバルの仲間を交えて行えば済む話ではある。しかし、
「ここ数時間殆ど休みらしい休みを取ってないんです、ヴァッシュさんもホテルでの戦いから休んでないですよね? 休憩がてら貴方の事情を聞きたいんやけど。
それにアジトについてすぐに戦いになる可能性も否定出来ません。万全な状態にしておくべきやと思いませんか?」
「うーん……」
はやての言い分は理解出来る。しかしヴァッシュとしては一刻も早くアジトへ向かい、かがみをスバルの仲間に会わせたかった。故に素直に提案を受け入れられなかったが、
「こう言っては失礼かも知れませんけど、私は貴方を完全に信じたわけやないです。仲間達の命が懸かっている以上、信用出来ない相手に背中を任せるわけにはいきません。
勿論、全部話してとは言いません。知り合いやこの場に着てから何をしてきたかを話してくれればそれで良いです」
「……わかった」
-
まず、ヴァッシュは自分が管理局に属していてこの場に大切な仲間達がいる事を説明した。
「なのはちゃんにフェイトちゃん、ユーノ君とクロノ君……1つ確認したいんですけど、なのはちゃんとフェイトちゃん何歳ぐらいでした?」
「確か10歳ぐらい……って、はやての口ぶりだとなのは達を知っている様に聞こえるんだけど」
「それについて後ほど、とりあえず続けて」
はやての言葉が気になるもののヴァッシュは説明を再開した。更に、危険人物としてナイブズが参加している事を説明した。
まずヴァッシュは最初にアレクサンド・アンデルセンと出会い彼と行動を共にしていた事を話した。アンデルセンの話ではアーカードが危険人物でティアナ・ランスターがアーカードによって吸血鬼になったという話である。
ちなみに、はやて達は既にアーカードが死亡している事を知っているがそれに関してはヴァッシュに伝えなかった。
その後、2人は家族を守る為に殺し合いに乗っていたアンジールと遭遇し彼を無力化した。そしてアーカードの放送が響き渡りその場所へ向かったが――
「(そうか、あの時乱入したのがアンデルセンだったんだな……)ん、でアンタはアーカードの所に行ったのかよ?」
「いや……」
ヴァッシュはアンデルセンを見失い、その後ナイブズの存在を察知し彼を止める為、アンジールを近くのビルに置いて1人その場所へ向かったが――
「アイツは死んでいた――」
その後、気が付いたら何者かに襲われ左腕を斬り落とされ――
「じゃあその左腕は何なんです?」
「信じられない話かも知れないが聞いてくれ――ナイブズが俺の左腕になった――」
「1つになった……っていう解釈で良いんですね?」
「……って、妙にあっさり受け入れている!?」
確かに驚きではあるし詳しくは聞きたい所だ。しかし今はそこの説明に必要以上の時間を取られるわけにはいかない。最低限把握出来れば十分なので、話を進める事にした。
「こういう事には慣れていますから。で、その後どうなりました?」
ヴァッシュの口調は重いものの話は続けられた。
「アイツと一つになった事で宿った力を僕は制御出来なかった……それで……フェイトを殺した……」
「そう……ですか」
その後、自身の制御出来ない力に他者を巻き込まない様に彷徨い神社へ辿り着きそこで新庄・運切と出会った。
新庄を死なせまいと離れる様に言ったものの彼はそれを聞かずヴァッシュの傍にいたのだ。
そして2度目の放送の後、雷を放ち自らを神と名乗る男が2人を襲撃してきた際にヴァッシュ自身が制御出来ない力で彼を殺しそうになった事があった。ヴァッシュは名前を知らなかったがその特徴はエネル以外に有り得ない。
「な……エネルに勝ったというんか……」
その後、新庄がエネルを監視する名目で同行し、ヴァッシュは新庄の為に禁止エリアとなっていた神社から離れた。
そして気が付いたら海に落ち、海から上がった後、アンジールと再会した。
忌まわしき力はアンジールを殺さんと暴走したものの、アンジールのお陰で遂に暴走は収まった。
その後、ヴァッシュはホテルへ移動しそこでかがみと出会ったのだ。その後、スバルと遭遇した際に放送が鳴り響き、新庄の死のショックで再び左腕が暴走しスバルと交戦する事となった。そして――
「……何とか暴走が収まりスバルと落ち着いて話そうと思ったらかがみと始が来て混戦状態になったわけですね……ちょっと整理しに行って良いですか?」
-
はやてとアギトはヴァッシュから少し距離を置き、
「はやて……どうするんだ?」
ヴァッシュの人格そのものに関してはアギトも信じて良いとは思っている。だが、左腕が暴走した際の危険性は否定出来ない。
「確かに暴走は怖い……けど、その実力は確かやし性格に関しても十分すぎるぐらいのお人好しや。あのエネルを殺せるのに殺さへんかった事からもそれは明らかや
(そのお人好しさ加減のお陰で誰か死なせているけどな。十中八九新庄を殺したのはエネルや、全く……あの場で仕留めてくれれば良かったんに……まぁ、その場合ヴィヴィオを相手にせなあかんかったけどな)」
「そんなにエネルってヤバイのかよ?」
「アギトはデイパックの中にいたからよくわからんかも知れんけど、あそこの雷全部アイツの仕業や」
「確かに厄介そうだな……」
「暴走さえ除けば十分信頼出来ると思う」
「はやてがそう言うんだったらいいけどよ……」
(それに……幾つか面白い事も聞けたからな)
その1つがアンジールの存在だ。アンデルセンはヴァッシュと出会う前にアンジールと交戦していたらしい。詳しい事情は不明だがアンデルセンがアンジールの家族に害を及ぼすという話なのだ。
ここで、はやてはある話を思い出す。クアットロがこの場に来て神父らしき男に襲われたという話があった。その神父がアンデルセンである可能性が高い。
彼女を助ける為にアンジールが現れアンデルセンと交戦した可能性があるという事だ。何の為に? それはアンジールからみてクアットロが家族だからだろう。
それを裏付ける証拠として、アンジールは青いスーツの女達を探していた。これは言うまでもなくクアットロ達ナンバーズだ。故に、アンジールから見てクアットロ達は家族という事になる。
(けど、これだけやと根拠として弱いな……)
「そうだ、アンジールと言えば……」
「何かあったんか?」
「ああ、もう1人のお前殺していたぜ」
「って、見ていたんか!? そういう大事な事は先に言えや!」
「そんな余裕無かっただろ……」
「ていうか、ヴィータ何してたんや……」
「その時、セフィロスのデイパックの中だったんだよ。そういやアンジールとセフィロス知り合いみたいだったな」
「それ本当か? そうか、それなら……」
アギトの話からはやてはある仮説を立てた。
クアットロがアンデルセンに襲われた際、アンジールがクアットロを助けアンデルセンを退けた。
その後、クアットロはアンジールを利用して参加者を殲滅しようと目論んだ。故にはやて達に対しアンジールの存在を伏せておいた。
そして、クアットロがはやてを斬り捨てた際に強気だったのは、セフィロス対策にもなる確実な味方のアンジールがいたという事になる。
勿論、これは推測でしかない。しかしこれまでの証言からその可能性は高いだろう。
(となると、アンジールは敵ということになるな。クアットロと敵対する以上交戦は避けられん……)
-
話し合いを終えたはやて達がヴァッシュ達の所に戻って来る。
「フェイトちゃんを殺した事に関しては決して許される事やないです。それが貴方の意志によるものやなかったとしてもや」
「ああ……それは……」
ヴァッシュがフェイトを殺した罪の重さは今もヴァッシュは決して忘れない。
「せやけど……本当に悔やんでいるんやったらその力を……今度は人々を守る為に使ってくれませんか?」
「はやて……」
「だから約束してくれませんか、もう二度と決してその力を暴走させへん事を」
「……わかった」
「それなら貴方を仲間として迎えます。なのはちゃん達と力合わせて何とかこのゲームを止めましょう」
「ありがと……ん、ちょっと待って、はやての口ぶりだとなのはが生きている様に聞こえるんだけど……?」
それは有り得ない。放送で名前も呼ばれていたし、ナイブズがなのはを殺す記憶をヴァッシュは見ている。だが、
「18時の放送でもフェイトちゃんの名前が呼ばれていた事に気付いてました?」
「えぇ!?」
ホテルでの放送の時、新庄の名前が呼ばれた時点でヴァッシュの思考が停止していた為、フェイトの名前が呼ばれていた事を知らなかった。というより、フェイトの名前が呼ばれたのは12時の放送だった筈だ。一体何を言っているのだろう?
「名簿になのはちゃんとフェイトちゃん、私の名前が2つずつ乗ってます」
「そういえばそうだった様な……」
「それにですね、私の知り合いのなのはちゃん達も20歳ぐらいなんです。これらから考えて、私らは異なる平行世界から連れて来られているって事になるんです」
「あ、成る程」
ヴァッシュ自身、なのは達にいる地球が自分の元々の世界の地球とは異っていた事を把握していた事から平行世界に関しては容易に理解出来た。
「せやから、此処にいるなのはちゃん達がヴァッシュの知る彼女達とは限らないという事になります。とはいえ、絶対に無いとは言い切れないし、別世界の別人だからってみんなの命を守る事に変わりはないですけどね」
「ああ」
そう、仮に異なる平行世界の存在だとしても、なのはがナイブズに殺され、フェイトを自分が殺した事実に違いはなく、同時に守るべき命である事に変わりはない。結局の所、ヴァッシュにとってはさほど重要な問題ではないのだ。
「それじゃあ暫くアギトと色々話してくれますか?」
と、アギトがヴァッシュの方へ移動する。
「ん? どういうこと?」
「私はちょっとその子と少し今後の事について『お話』しようと思いまして」
つまり、はやてとかがみの2人きりにして話をするという事だ。
「ちょっと待ってくれ、それこそアジトに行ってからでも」
「いや、今のこの子は誰彼構わず憎しみをぶつけてきます。そんな状態で彼女の友達と会わせて取り返しのつかない事になっても困る、せやから彼女を落ち着かせた上で事情を一度説明しておこうかと思いまして」
「成る程……だったら僕も」
「ダメです、ついさっきまで命のやり取りしていたヴァッシュさんやったら彼女も警戒します。
それに……女の子同士やないと話せない話もあると思いません?」
その妖艶な笑みを浮かべるはやてに対し、
「そ、そうだね……」
素直に頷くしかないヴァッシュであった。そしてヴァッシュの背からかがみが降ろされ、
「そうそう、これをどうにかしないと」
と、彼女の首にかかっていた千年リングを外した。
「そのリングがどうしました?」
「ああ、スバルの話じゃこのリングに宿る人格がかがみをここまで追い込んだらしい。乗っ取られたりしない様に気をつけて処分してくれって言っていた」
それを聞いたアギトが不思議そうな表情をしていたのをはやては見逃さなかった。
「ヴァッシュさんが乗っ取られたら困るんですけど大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫。絶対に乗っ取られたりなんてしないから!」
力強い声でそう答えた。そして、はやてがかがみを背負い、
「それじゃ、決して覗いたりなんかしない様に」
そう言って、深い森林の奥へと消えていった。
「はやて……大丈夫か……」
「大丈夫だって、リングも手元にあるから」
「(そうじゃねぇんだよ……)」
「あ!」
「何かあったのかよ」
「いや、ちょっとはやての喋り聞いていたらアイツの事を思い出しただけだから」
「アイツって誰だよ……」
ヴァッシュの脳裏には関西弁を喋る牧師の姿が浮かんでいた。
-
「おははひって……はひもははふほほはんへはいはほ!」
はやてによって拘束されたかがみははやてに対しまくし立てる。
「ああ、流石にこの状態じゃ何も答えられんな」
と言って、かがみの口から下着を取り出す。
「こんな事やって只で済むと思っ……」
その瞬間、かがみの首に憑神刀が突き付けられる。
「助けを呼ぼうとしても無駄や、周囲には誰もおらんし仮に誰かが来るとしてもそれより早くあんたの命が終わる……少しでも長生きしたいんなら大人しく『お話』しようや」
その表情からかがみはこの女が本気だと思った。
「お話って言われてもアンタに話す事なんて何もないわよ……殺してやる……」
人を全裸にして下着を口に詰める様な変態に話す事はない。そう答えるかがみだったが、
「ところで、さっき青い髪のロングヘアのあんたぐらいの女の子殺したんやけど」
そんな人物などかがみの知る限り1人しかいない。
「なっ……あんたこなたを殺したの!?」
「ほう、こなたっていうんか。そうか……」
「許さない……」
「ああ、ちなみに今の嘘や」
「え!?」
この女はさっきから何を言っているのだろうか? 何故こなたを殺したという嘘を吐くのだろうか?
「実は、今私達は移動していたんや。あんたを説得する人物のいる場所にな」
はやてはかがみに彼女を説得出来る人物がいるスーパーへ移動中だという事を話した。
「あんたを説得出来るという話やから多分あんたの友人って事まではわかったんやけど名前がわからなかったからこうやって聞き出したわけや。普通に聞いても答えへんと思ったからな」
ちなみに、こなたの外見についてはヴァッシュがホテルへ移動する最中、スバルを見かけた際にこなたらしき人物も一瞬だが見かけていた為、それを聞く事で把握出来た。
「このタヌキ……」
「褒め言葉やな」
(なんなのよコイツ……それに、何処かで会った様な……)
はやてを何処かで見た記憶があった。しかしそれが何処かまでは思い出せないでいた。
「1つ聞きたいんやけど……こなたが殺し合い止めてくれって言ってくれたら殺し合いやめてくれるんか?」
「はぁ!? そんなのやめるわけないでしょ!」
「友達が説得しても応じるつもりはないって事か?」
「どうせ別世界のこなたでしょ、関係なんて無いわよ!」
そう、スバルに何度も話した通り、ここのこなたは別世界の他人。友達でない以上言う事を聞く必要は全く無い。
「そうか……そういうか……ははっ……」
はやての笑いが何処か恐ろしいものに見えた。
「で、何人殺した?」
と、憑神刀を突き付けながらかがみにそう問いかける。
「覚えてないわよ、誰を何人殺したかなんて」
そう答えた瞬間、はやてが怖い顔をして、
「……答えろや、答えなかったらその首斬り落とす」
そう言い放つはやてに対し、かがみはゆっくりと口を開く。
「エリオと眼帯の女の子……後は覚えていないわ……」
「そうか……じゃあ、質問を変えようか。あんた……ここに来てからどうやって殺し回ってきた?」
「は?」
「この場に来てから何をしてきたかって聞いているんや、覚えている範囲全部答えて貰う」
「だから覚えていないって言って……がばっ!」
腹部に蹴りが叩き込まれた。
「頭悪いな……覚えている範囲と言ったやろ……」
と、はやては右手で憑神刀を構え左手で下着ごとかがみの口を押さえ込み――
そのまま両足首に憑神刀をなぞらせた――
「がばぁぁぁ!」
両足首に激痛が奔る、叫びたかったが腹の痛みと口を押さえられていた事により声にならなかった。
「本当に良く斬れるな」
かがみの両足首からは血が流れている。アキレス腱が切断されたのだ。そして口から下着を持った手が離れ、
「あ……あんた……」
「これで私がスバル達みたいなお人好しと違うって理解出来たな。あんたが下手な事すれば今度はその首が飛ぶで」
「わかったわよ……」
勿論、かがみ自身最後には死ぬつもりだった。だからこのまま突っぱねても別段問題はない。
しかし、この女を殺さなければ気が済まない、故に今は従うしかない。後で絶対にコイツを殺してやる……そう考えかがみはこの場に来てからの事を語り出した。
-
まず、殺し合いに放り込まれたショックから自分を保護しようとしたエリオを撃った。
その血から自身の支給品にあった仮面ライダーに変身出来るカードデッキに宿る蛇の怪物が現れエリオが喰われた事を話した。
「どうせ、エリオも後で私を裏切るつもりだったんでしょ……今となっては後悔なんて無いわ……」
その後、自殺しようとした所を友人だったなのはに助けられたがなのはは自分の事を知らないと言い放ち裏切った。
そして今度はクワガタの怪物が現れ自分に襲いかかった。死にたくなかった自分はなのはの支給品にあったベルトを使い黒い仮面ライダーに変身した。
その後の事はあまり覚えていない。その後暫くは2つの変身ツールを使い無差別に暴れ回った事は覚えている。その過程で誰か殺した奴もいたかもしれない。
「そうよ、なのはが悪いのよ! 私を裏切ったなのはが!!」
気が付いたら今度はLと名乗る男に拘束されていた。何とか逃げだしたものの奪われたデッキのモンスターに追われ殺されかけた。
「私は悪くない! 悪いのはLよ!!」
その後、万丈目準に保護されたが今度はその万丈目に参加者を餌にしなければ自分が喰われるカードデッキを押しつけられたのだ。
「バクラが言ってた通りアイツは悪人だった! 私はまた裏切られたのよ!!」
続きを話そうとしたかがみだったが、
「ちょっと待て、1つ確認したいがバクラってのはもしかしてリングの中に宿った人格の事か?」
「それがどうかしたの?」
「もう1つ、あんたがリングを手に入れたのは万丈目に会った時って事でええな?」
「ええ、バクラも万丈目には困っていたわ。そういえば眼帯の女の子を襲ったって言っていたわ」
「そうか……続けてくれ」
制限時間の迫ったカードデッキの餌を探そうとする中、ある男を餌にする為襲撃したが、その男は銀色の戦士メビウスに変身しモンスターが撃破された。
そしてモンスターを倒され力を失い逃げた所、Lに奪われた荷物を見つけ回収した。その中にはカードデッキはあったがもう1つのベルトは無くなっていた。
「あんたまさかまたそれ手にしたって言うんか?」
「そうよ、他人を殺す為には力が必要でしょ」
その後、ホテルで休憩をとりデュエルアカデミアに向かいスバルと出会った。
その際にスバルから参加者が異なる平行世界から連れて来られている事を知り、こなたやつかさも別の世界から来ている事を知った。
故にこなたやつかさも殺しても問題ないと考え、まずはスバルをモンスターの餌にしようとしたがその時に眼帯の少女を喰った。
スバルとの交戦後、昇る煙を見てレストランに向かい、黒いライダーと緑の怪物の2つの姿を持つ男と、浅倉と戦った。
その時にカードデッキは浅倉に奪われたもののどういうわけかは不明だが緑のライダーに変身する為のベルトを手に入れた。
そして再びホテルへと向かったが、そこで浅倉によって再びレストランの方に連れて行かれ――
「浅倉が目の前でつかさを……! アイツ……私が殺してやるはずだったのに……!」
そして再び浅倉と戦おうとしたが気が付いたらホテルに戻っていた。その後ヴァッシュと出会い、彼にスバルが危険人物だと伝えスバルと戦わせようとして――
「で、始とあんたを交え4人で戦った所、あんたは敗れて今に至るってわけか」
「とりあえず覚えている事は全部よ……」
「最後に1つ確認してええか、あんたは自分の行動を悪いと思っているんか?」
「は!? そんなわけないでしょ! 悪いのはなのはやL、それに万丈目や浅倉、それにスバル達よ! アイツらが私をこんな目に――」
「そうか」
「あんたの知りたい事は全部答えたわ、さっさとこの拘束解きなさいよ!」
拘束を解いた隙を突いてデイパックを奪い、逆に仕留める。ダメージは大きいが喉仏に噛みつくと言った手段はまだ使える――そう考えていたが、
|
|
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板