したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13

235H激戦区/人の想いとは ◆gFOqjEuBs6:2010/07/09(金) 18:25:43 ID:dR2I84lo0
 
 逃げる? こいつは一体何を言っているんだ。
 最強のアンデッドたるこの俺が、一体何時、何から逃げたというのだ。
 ハートの複眼に捉えるは、決して鈍らない信念を瞳に宿したスバルを捉える。
 その目は何処か怒っているようで、不思議な気迫を感じさせた。

「嫌な事から、怖い物から、戦わずに逃げる事は簡単だよ。でも、それじゃダメなんだ!
 戦う事を止めて逃げてしまったら、そこで終わりだ。そんなの、私は絶対に嫌だ!」
「俺が何時逃げようとした」
「死んだら終われるとか、殺されたら自分の責務から解放されるとか……
 ギン姉に貰ったたった一つの命を、そうやって投げ出して終わらせるつもり!?」

 スバルの怒号に、カリスは言い様のない憤りを感じた。
 何と一方的な言い分だろうか。何と一方的な正義だろうか。
 それを押し付けられる側がどんな気持かなど、こいつは知らないのだろう。
 しかし、そう感じる心はまさしく人間としての憤り。
 それに気付く事も無く、カリスは自分の思いを吐き出す。

「お前に何が解る……俺は人間でも無い、アンデッドでもない。俺を知っているのは俺だけだ……!
 だから言えるのだ! 俺の苦悩、お前などに解りはしないと!」
「わからないよ! 当然でしょう、貴方は何も話そうとしないじゃない!
 ……それに、人間じゃないのは貴方だけじゃない! 私だって、ギン姉だって……!」

 何だと……? 
 ギンガは人間では無い? その妹のスバルも、人間では無い?
 だが、それは可笑しい。ギンガは自分に言った筈だ。「貴方は人間だ」と。
 人間でもない奴が、同じく人間では無い身の自分の人間らしさを証明する?
 なんと滑稽な話だろう。それで命まで落としてしまったのでは、話にならない。
 理解出来ない。ただでさえ馬鹿だと思っていたギンガが、余計に理解出来なくなる。

「人間じゃない……だと……? だがギンガは、化け物の俺を人間だと言った……
 そのギンガが人間じゃない……? いや……」

 始は思う。それは違う、と。
 誰よりも意志の強かったギンガは、何処までも人間らしかった。
 そして、誰よりも人間らしかったギンガが、自分を人間だと言ってくれたのだ。
 あの優しさは、紛れも無く人間のものだ。
 紛い物の自分とは違う、本物の人間の優しさだ。
 だからこそ言える。だからこそ断言できる。

「違う……ギンガは人間だ……誰が何と言おうと、奴は人間だった……!」
「それなら、貴方も人間だ! そんなことを言える貴方が、化け物の訳が無い!」
「無理だ! 俺には人間が理解出来ない……ギンガの考えが、理解出来ない!」

 問題は凄く単純な事だ。
 ギンガの考えが、始には理解出来なかった。
 ギンガの行動が、始には理解出来なかった。
 何故あの女は、見ず知らずの自分を助けたのだろう。
 何故、殺し合いに乗った自分なんかの為に命を投げ出したのだろう。
 誰が聞いたって、馬鹿な生き方だ。とても上手い命の使い方とは言えない。
 始の心を、無数の「何故」が埋め尽くして行く。

「何故だ……何故……!」

 考えれば考える程、頭がパンクしそうになっていく。
 ああ、何故目の前の女はこんなにもギンガに似ているのだろう。
 守りたいものとか、人間の心とか、そんな綺麗事を並べて戦えば、生物は弱くなる。
 生きるか死ぬか、命を掛けた戦いにそのような面倒事は一切不要なのだ。
 ジョーカーである自分はそれを最も良く理解している、筈なのに……。

「何故、ギンガは……!」

 だが、ギンガはその方程式には当て嵌らなかった。
 あの女は誰よりも強く、そして誰よりも気高かった。
 戦いに負けたとか、他の誰かよりも戦闘力で劣っていたとか、そういう事じゃない。
 自分には無い物。浅倉にも、かがみにも無い「強さ」を、ギンガは持ち合わせていた。
 それは目の前の少女――ギンガと同じ目をした少女にも言える事だ。
 この強さは何だ? この強さは何処から湧いてくる?

「わからない……わからない……わからない……!」
「ギン姉は――」

 ――CLOCK UP――

「――ぇ……?」

 刹那、電子音声と同時に、スバルの身体が吹き飛んだ。
 左腕を封じられていたスバルの身体は見事に宙を舞い、そのまま吹っ飛ばされる。
 告げようとしていた言葉は結局告げられる事は無く、無限にも等しい刹那の中で、スバルの身体はコンクリの床を転がった。
 カリスの頭の中で、何が起こったのかを理解するよりも先に、言い様の無い感情が湧き起こった。
 そうだ。この感情と似たものを自分は知っている。
 確か、ギンガが死んだ時の……。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板