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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13
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逃げる? こいつは一体何を言っているんだ。
最強のアンデッドたるこの俺が、一体何時、何から逃げたというのだ。
ハートの複眼に捉えるは、決して鈍らない信念を瞳に宿したスバルを捉える。
その目は何処か怒っているようで、不思議な気迫を感じさせた。
「嫌な事から、怖い物から、戦わずに逃げる事は簡単だよ。でも、それじゃダメなんだ!
戦う事を止めて逃げてしまったら、そこで終わりだ。そんなの、私は絶対に嫌だ!」
「俺が何時逃げようとした」
「死んだら終われるとか、殺されたら自分の責務から解放されるとか……
ギン姉に貰ったたった一つの命を、そうやって投げ出して終わらせるつもり!?」
スバルの怒号に、カリスは言い様のない憤りを感じた。
何と一方的な言い分だろうか。何と一方的な正義だろうか。
それを押し付けられる側がどんな気持かなど、こいつは知らないのだろう。
しかし、そう感じる心はまさしく人間としての憤り。
それに気付く事も無く、カリスは自分の思いを吐き出す。
「お前に何が解る……俺は人間でも無い、アンデッドでもない。俺を知っているのは俺だけだ……!
だから言えるのだ! 俺の苦悩、お前などに解りはしないと!」
「わからないよ! 当然でしょう、貴方は何も話そうとしないじゃない!
……それに、人間じゃないのは貴方だけじゃない! 私だって、ギン姉だって……!」
何だと……?
ギンガは人間では無い? その妹のスバルも、人間では無い?
だが、それは可笑しい。ギンガは自分に言った筈だ。「貴方は人間だ」と。
人間でもない奴が、同じく人間では無い身の自分の人間らしさを証明する?
なんと滑稽な話だろう。それで命まで落としてしまったのでは、話にならない。
理解出来ない。ただでさえ馬鹿だと思っていたギンガが、余計に理解出来なくなる。
「人間じゃない……だと……? だがギンガは、化け物の俺を人間だと言った……
そのギンガが人間じゃない……? いや……」
始は思う。それは違う、と。
誰よりも意志の強かったギンガは、何処までも人間らしかった。
そして、誰よりも人間らしかったギンガが、自分を人間だと言ってくれたのだ。
あの優しさは、紛れも無く人間のものだ。
紛い物の自分とは違う、本物の人間の優しさだ。
だからこそ言える。だからこそ断言できる。
「違う……ギンガは人間だ……誰が何と言おうと、奴は人間だった……!」
「それなら、貴方も人間だ! そんなことを言える貴方が、化け物の訳が無い!」
「無理だ! 俺には人間が理解出来ない……ギンガの考えが、理解出来ない!」
問題は凄く単純な事だ。
ギンガの考えが、始には理解出来なかった。
ギンガの行動が、始には理解出来なかった。
何故あの女は、見ず知らずの自分を助けたのだろう。
何故、殺し合いに乗った自分なんかの為に命を投げ出したのだろう。
誰が聞いたって、馬鹿な生き方だ。とても上手い命の使い方とは言えない。
始の心を、無数の「何故」が埋め尽くして行く。
「何故だ……何故……!」
考えれば考える程、頭がパンクしそうになっていく。
ああ、何故目の前の女はこんなにもギンガに似ているのだろう。
守りたいものとか、人間の心とか、そんな綺麗事を並べて戦えば、生物は弱くなる。
生きるか死ぬか、命を掛けた戦いにそのような面倒事は一切不要なのだ。
ジョーカーである自分はそれを最も良く理解している、筈なのに……。
「何故、ギンガは……!」
だが、ギンガはその方程式には当て嵌らなかった。
あの女は誰よりも強く、そして誰よりも気高かった。
戦いに負けたとか、他の誰かよりも戦闘力で劣っていたとか、そういう事じゃない。
自分には無い物。浅倉にも、かがみにも無い「強さ」を、ギンガは持ち合わせていた。
それは目の前の少女――ギンガと同じ目をした少女にも言える事だ。
この強さは何だ? この強さは何処から湧いてくる?
「わからない……わからない……わからない……!」
「ギン姉は――」
――CLOCK UP――
「――ぇ……?」
刹那、電子音声と同時に、スバルの身体が吹き飛んだ。
左腕を封じられていたスバルの身体は見事に宙を舞い、そのまま吹っ飛ばされる。
告げようとしていた言葉は結局告げられる事は無く、無限にも等しい刹那の中で、スバルの身体はコンクリの床を転がった。
カリスの頭の中で、何が起こったのかを理解するよりも先に、言い様の無い感情が湧き起こった。
そうだ。この感情と似たものを自分は知っている。
確か、ギンガが死んだ時の……。
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