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決闘バトルロイヤル part4
702
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:27:58 ID:VQtoL8aQ0
「或人!?どうなってんだよ…お前むちゃくちゃヤベェことになってんじゃねぇか!?」
馬鹿の二文字がマッチする語彙力だが、本心からの驚愕だ。
Dホイールを飛び降り、赤いスーツの戦士がアナザーゼロワンの前に立つ。
放送前に続き二度目の再会となる青年、万丈龍我が或人の復讐へ待ったを掛ける。
キャルと別れ、或人及びDIOの捜索にDホイールを走らせどれくらい経った頃か。
北上した先のエリアで喧騒を聞き取り、念の為にと龍騎に変身し来てみればこの状況だ。
アナザーゼロワンの姿は一度見ている為、すぐに或人と気付けた。
だが望んだ再会とは言い難く、安易に近寄る事を戸惑わせるプレッシャーが漂っている。
一体全体、自分の元を去ってから何が起きたのか。
近くにいる他の連中が関係あるのかと、質問を飛ばせる程呑気に構えてはいられない。
「滅ィ……!!」
「は?滅って……」
万丈の存在など視界に映っていないかの如く、瞳はヒューマギアに向けられたまま。
思わず振り返り或人と同じ方を見やれば、破損の激しい青年の姿。
この男がイズを破壊し或人を復讐へ走らせた元凶。
ということはつまり、今の状況は或人が望んだ展開に他ならない。
「……」
或人から話を聞いた時、万丈も滅は危険だと思った。
大切な人を理不尽に奪われた境遇を重ねたのを抜きにしても、人類滅亡の結論を受け入れるのは真っ平御免。
滅は倒した方が良いのと思ったのは、万丈なりに考えた末の答え。
であるならば、或人がこれからやる事に口を出すべきではないのかもしれない。
703
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:28:38 ID:VQtoL8aQ0
「……やっぱ駄目だ。今やっちまったら、後で絶対後悔するとしか思えねぇ」
しかし万丈が選んだ答えは、或人を止めること。
これに驚いたのは様子を見ているしかなかった滅だ。
突然現れた男が何者か知らないが、或人と接触済なら自分の情報も得ている筈。
何故強く警戒するべき相手を、守る気になったのか。
「貴様は何を考えている……飛電或人から俺の事を聞いていないのか……?」
「全部聞いた。正直俺だって、お前を何発かぶん殴ってやりてぇくらいには頭に来たけどよ――」
もう一度或人を真正面から見る。
恋人を人体実験に掛けた連中への、全ての元凶だった星狩りへの。
許してはおけない連中への怒りに燃えた時の自分と似ている、けれど決定的に違う。
「俺にはこいつが、止めてくれって泣いてるようにしか見えないんだよ」
確たる根拠は何だと問われたら、万丈自身言葉では上手く説明出来ない。
それでも、今の或人は最初に会った時より尚酷い。
復讐の事しか頭にないのではなく、復讐以外を無理やり考えさせられなくなったようだ。
理由を聞かれても、強いて言うなら勘としか答えられない。
馬鹿だ筋肉馬鹿だと呆れられるのは承知の上、けれど自分自身が感じたものを信じなくてどうする。
もしこのまま或人が滅を破壊すれば、きっと心に良くないものを残す。
もう二度と、イズが信じた飛電或人には戻れなくなるかもしれない。
その理由一つで、万丈が戦うには十分だった。
「ドケェエエエエエエエエッ!!!」
「うおっ!」
尤も、どれだけ或人を思っての行動も届くとは限らない。
最優先は滅だが、復讐を阻む者も等しく自身の敵。
一度は喝を入れてくれた相手であろうと、攻撃には躊躇を抱かない。
たとえ殺してしまう結果になっても、祝福(のろい)を受けた魂には響かないだろう。
704
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:29:33 ID:VQtoL8aQ0
絶叫を上げ蹴りを繰り出すアナザーゼロワンに対し、龍騎は咄嗟に防御の構えを取る。
両腕の交差で即席の盾を作れば、腕部装甲が攻撃を弾きダメージを最小限に抑えられる筈。
そんな予想を裏切り、殺し切れない衝撃に足が地面から離れた。
「がっ…!?」
吹き飛ばされたと、脳が状況を理解するのを待ってはくれない。
視界に一瞬黄色い光が映り、次の瞬間には背中に痛みが襲う。
龍騎の胸部及び背は特に強固なアーマーで覆われ、破壊は至難の業。
だというのに今受けたのは、装甲が意味を為したと思えない鈍痛。
「アアアアアアアアアアッ!!」
短く漏れた呻き声すら掻き消し、次から次へと龍騎の全身へ衝撃が走る。
何をされているのかを正確に理解出来ぬまま、辛うじて腹部に捻じ込まれる爪先を見た。
一瞬呼吸が止まる感覚を覚え、ゴミのように地面を転がる。
「クッソ……!遠慮も躊躇もなしかよ!期待してなかったけどな!」
『GUARD VENT』
サンドバッグのキツい洗礼を受けたが、ノックダウンには程遠い。
両肩に赤龍の腹部を模した盾、ドラグシールドを装備し防御力を強化。
猛攻へ備え距離を詰め、こちらから攻撃に出るもアナザーゼロワンを捉えらない。
蛍光イエローの脚部が消えたかと思えば、数十の蹴りが一斉に龍騎を叩いた。
「っ、何だこの速さ……!?」
常人を遥かに超える身体機能を以てしても、ロクな反応が許されない異常なスピード。
どうにか隙を見付けて反撃に移る、といった戦法がまるで取れず耐えるしか出来ない。
ドラグシールドを構えダメージを抑えるも、限界はすぐそこまで来ていた。
盾越しに伝わる衝撃で腕に痺れが襲い、僅かに力が弱まる。
705
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:30:13 ID:VQtoL8aQ0
「ぐあああああああっ!?」
防御が崩れた途端に叩き込まれる、機関銃さながらの蹴りの嵐。
数十の打撃を纏めて受けたかの勢いに、紙風船のように軽々と吹き飛ぶ。
地面へ激突し、カードデッキもバックルから外れてしまった。
万丈に力を齎したスーツは、鏡が砕け散るかの儚さで消失。
生身で痛みに呻く青年に心を揺さぶられる事無く、アナザーゼロワンの意識は滅へ逆戻り。
全体的なスペックの大幅な上昇に加え、超出力による高速戦闘。
基本形態であるライジングホッパーの正統進化と言うべき、仮面ライダーゼロワンの最終形態。
そのリアライジングホッパーの能力を付与されたのが、現在のアナザーゼロワンだ。
加えてアナザーライダーであるも、ベースとなったのは或人が元々変身するライダー。
使いこなせなかったメタルビルドと違い、十全の戦闘を行える。
初戦時と違い持ち得る力に差が大きく開き、万丈は手も足も出ない。
かといってアッサリ諦める気は皆無、痛む体に鞭打って立ち上がり、
「っ!?マジかよ……!」
見覚えのあるモノが地面へ投げ捨てられてるのを発見し、驚きながらも拾い上げる。
横部分に備え付けられたレバーと、二つのボトルを填め込むスロット。
自意識過剰な正義のヒーローが使う物と同じ特徴を持つも、決定的に異なる毒々しいカラーリング。
滅が殴り飛ばされた際に、ボトル共々デイパックから落ちたエボルドライバーだ。
まさか自分のビルドドライバーより先に、宿敵だった男の変身ツールを見付けるとは。
厳密に言うと内海成彰が使っていた複製品だが、今それを知る由はない。
「よりにもよってエボルトのかよ……」
顔を顰め露骨に拒否感を表す。
当然と言えば当然だ、自分達の星を滅ぼそうとした男の使う兵器なのだから。
強い武器が手に入って万歳などと、能天気に考えるにはエボルトとの因縁は非常に根深い。
思わず拾ったとはいえ、早くもそこらに放り捨てたい衝動に駆られる。
同時に因縁の男の力だからこそ、この状況でどれだけ役立つかも理解出来てしまう。
使用へ躊躇が大きいか否かと言ったら後者。
だがしかし、ぶん殴ってでも助けてやりたい相手がすぐ近くにいるなら。
自分の中の意地や葛藤のせいで、取り返しの付かない事態になるかもしれないなら。
706
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:30:55 ID:VQtoL8aQ0
「迷ってる場合じゃ、ねぇだろうが!!」
『EVOL DRIVER!』
腰へ巻きつけたドライバーが、腹立たしい男の声で起動を伝えた。
右手で複数のボトルの内の一本、龍を模したソレを強く握り締める。
嘗て自分の体を好き勝手に動かされた時、生み出されたドラゴンエボルボトルだ。
昂る戦意と、内に眠る力が引き出される感覚は覚えがある。
変身を不可能にされ、足掻き続けた果てに再び力を取り戻した時と同じ。
心意システムの影響も少なからず存在するだろう。
されど想いの力で可能性を切り開くのは、万丈にとってこれが初めてではない。
嘗ての己と同じく復讐に囚われ、自分自身ではどうにも出来ず苦しむ男を助けたい。
揺るがぬ意思を糧に、創造(ビルド)は今ここに現実のものとなる。
青いカラーリングから一転、ボトルが黄金に輝く。
グレートドラゴンエボルボトルを、もう一度己が手に掴み取った。
万丈の決意に呼応し、デイパックからクローズドラゴンが飛び出す。
小さな相棒もまた、馬鹿が付く程に真っ直ぐな青年と想いは同じだ。
言葉は無くとも通じ合い、クローズドラゴンへボトルを装填。
エボルボトル同様に進化を果たし、或人を閉じ込める悪意の檻を共に打ち砕く。
『覚醒!』
『グレートクローッzzzzzzzzuuuzuzuzuzzzzzz』
『CROSS-Z BLOOD!』
本来のドライバーでそうするように、星狩りの兵器と一体化させた。
豪快に叫ぶ電子音声にエラーが起こるも、次いで聞こえたのは万丈に聞き覚えの無い名前。
旧世界での死闘でも、新世界でのキルバスとの戦いでも存在しない。
正史においては有り得なかった力を、臆さずに受け入れる。
707
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:31:45 ID:VQtoL8aQ0
『Are You Ready?(覚悟はいいか?)』
「んなもんとっくにできてんだよ!変身!」
『Wake up CROSS-Z!Get GREAT DRAGON!with BLOOD!』
『フッハッハッハッハッハッ!!!』
レバーの急速回転によりファクトリーが展開。
今更覚悟を問われたとて、答えは初めて仮面ライダーになった日から完了している。
断ち切れぬ因縁で繋がれた青年の足掻きへ、だから人間は面白いと言わんばかりの高笑いが響き渡った。
青い光が晴れた時、現れたのは仮面ライダーエボルとは異なる戦士。
黄金と真紅で彩られた装甲を纏い、風に靡くは漆黒のマント。
星狩りと似た特徴を持ちながらも、頭部には正しき心を持つ戦士の仮面を装着。
蒼炎と龍を象ったパーツが、変身者の戦意を表すかの如く輝きを放つ。
名付けるならば、仮面ライダークローズブラッド。
旧世界でビルド殲滅計画を実行した、仮面ライダーブラッドとの類似点があれど同じに非ず。
ハザードトリガーとロストボトルを使わない代わりに、エボルドライバーとエボルボトルでブラッド族としての高スペックを付与。
更に変身者が万丈なのもあって、ラブ&ピースの戦士として戦う。
「今の俺は…負ける気がしねぇっ!!!」
湧き上がる膨大な力を実感し、なれど強さに酔いしれ目的を見失う本物の馬鹿にはならない。
新たな戦士の誕生にもアナザーゼロワンは見向きせず、復讐以外に何も考えられない。
上等だ、嫌でも自分の方を向かざるを得なくするまで。
脚部装甲に蒼炎が迸り、踏みしめた地面が溶け出す。
必ずや止めてやると、昂り続ける戦意に押し出され疾走。
急接近する気配へようやっ振り返った直後、頬へ突き刺さる拳。
銃弾を数十発浴びても、痒いとすら思えない肉体強度をアナザーゼロワンは誇る。
だがクローズの拳はどんな兵器よりも重く、奥底へ沈んだ魂にまで響く一撃だ。
意識が飛び掛ける程の衝撃が襲い、脳が激しく揺さぶられる。
708
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:32:50 ID:VQtoL8aQ0
「ガァッ…!?」
「うおらあああああああああああっ!!」
呻き体勢が崩れるも、クローズが止まる気配は欠片も見当たらない。
怯んだ隙へ拳の連打を叩き込むのは、ボクサー時代から変わらぬ戦法。
或人を縛る悪意という名の鎖を、一本残らず打ち砕くように。
決意の証たる蒼炎を纏わせ、アナザーゼロワンへ放ち続ける。
「邪魔ダ…!!」
無抵抗なサンドバッグになると言った覚えはない。
龍騎よりも力が増したからと言って、アナザーゼロワンが脅威でなくなった訳でもない。
数発目の拳が当たる寸前、残像を残しクローズの死角へ高速移動。
向こうの反応を律儀に待ってやらず、凶器と化した右脚を振るう。
「あっぶね…!」
頭部センサーにより強化した反応速度と、培った戦闘経験による危機察知能力。
それらを駆使し防御を間に合わせ、アナザーゼロワンの蹴りは腕部装甲を叩くに留めた。
尤も、この一発が攻撃の全てと言うなら大間違い。
つい数分前に龍騎を散々痛め付けた猛攻が、再度始まる。
「っ、やっぱ速ぇな……!」
一定方向のみからじゃない、全方位から一斉に襲い来るに等しい。
あらゆる抵抗を許されず、肉片に変えられるまで続く蹴りの嵐。
新たな姿になっても戦慄を抱かざるを得ない速さだが、諦める理由にはならない。
何より、先の光景の焼き直しを覆す力が今はある。
胸部を狙った蹴りに合わせ拳を放ち、互いに腕と脚が弾かれ合った。
「こんなもんじゃ俺は止まらねぇぞ!!」
「黙レ…!!」
悪夢の如き速度で迫る足底へ、クローズもまた拳速を急激に引き上げ迎え撃つ。
羽織ったローブは飾りに非ず、特殊推進ユニットの機能を発揮。
アナザーゼロワンにも引けを取らぬスピードを我が物とし、熱き鉄拳を幾度も叩き付けた。
頭部を狙った蹴りが防がれる、四肢を狙った蹴りが弾かれる、腹部を狙った蹴りが押し負ける。
悪意へ心を浸らせ手に入れた筈の圧倒的な強さに、徐々に追い付かんとしていた。
709
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:33:36 ID:VQtoL8aQ0
「アアアアアアアアアアッ!!!」
「おらああああああああっ!!!」
防ぎ漏らした蹴りが、クローズへ届く回数も少なくない。
優れた耐久性の装甲や肉体であっても、連続で受ければ捨て置けぬ傷と化す。
それが分からない筈はなく、されど「だから何だ」の一言で捻じ伏せる。
痛みには慣れている、仮面ライダーになる前からキツい目にばかり遭って来たのだから。
苦痛へ泣き叫び、戦いから逃げたいと駄々を捏ねる段階は遥か昔に通り過ぎた。
「それによぉ…お前の方がもっと痛い想いしてんだろ…!」
数十発目の蹴りを振り払い、自身の額を相手へ力の限りぶつける。
原始的な戦法にたたらを踏んだ復讐者へ、逃がさぬとばかりに踏み込む。
「或人…お前やっぱり前の俺にすっげぇ似てるわ。大事な相手をふざけた理由で奪われて、手が届く距離にいるのに何もしてやれなくて……!」
言葉を遮るように右脚が振るわれるも、返答を期待して口を開いたんじゃない。
相手同様、クローズの脚部が唸りを上げアナザーゼロワンと激突。
蹴りと蹴りの拮抗は長続きせず、揃って弾かれ間髪入れずに次撃を放つ。
持ち前の走力を存分に活かし、クローズの反応を許さぬスピードで以て襲来。
「仇を討つ以外、ロクに考えられないよなそりゃ。余裕なんて、全っ然あるわけねぇ」
脅威の度合いは変わらずとも、そう来る事はクローズにも予想出来た。
裏拳がアナザーゼロワンの脚を叩き、自身へは到達させない。
攻撃失敗による隙は致命的だが、敵の速さなら文字通りの一瞬でその隙を埋められる。
「俺もそうだった。ファウストの連中が許せなくて、おまけにやってもいねぇ殺人の濡れ衣まで着せられたんだぜ?一々変装しないと散歩にも行けねぇよ」
であるならば、この瞬間にクローズはアナザーゼロワンを上回ったのだろう。
怪物を倒し悪しき夢を終わらせる、魔弾の如き拳が胴を貫く。
並外れたスピードでも回避が叶わない、肉体のみならず目に見えぬ心にまで届く一撃。
ギシリと聞こえた軋む音は、果たしてどこからだったのか。
「仮面ライダーになってもそれは変わんなかった。自分の事以外、あれこれ頭回してられなかった」
短く悲鳴を上げ殴り飛ばされ、空き缶のように地面を転がる。
体と、体以外の部分が痛くて仕方ない。
常人だったら瞬く間に戦意を失い兼ねないが、アナザーゼロワンはその枠に入らない。
絶えず湧き上がり、自分自身でも止める術を知らない憎悪が戦闘続行を瞬時に選択。
滅を破壊しろ、その為なら邪魔者を消し去っても構わない。
復讐鬼に堕ちても本来の或人が決して考えなかった、無慈悲な指令に迷わず従う。
羽音を響かせ現れた大量のバッタが、農作物を食い荒らす害虫さながらにクローズへ群がる。
710
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:34:33 ID:VQtoL8aQ0
「けどなぁ……!口じゃ偉そうなことなばっか言うくせに、見てないとこで俺を助けようと…泣かせることしやがった奴がいてくれたんだよ!」
全身を食い荒らされた、哀れなヒーローの成れの果て。
惨たらしい予想を裏切り、バッタの大群が焼き払われる。
掴む得物は火炎と蒼炎の二つを纏いし聖剣、烈火。
物語の守り手とクローズ自身の異なる炎を一本に宿し、敗北を真っ向から否定。
助けねばならない男を放置して、勝手に死んでおさらばは御免だ。
「あいつのおかげで、俺は本当の意味で仮面ライダーになれた。取り返しのつかねぇことやって、香澄に顔向け出来ない馬鹿にならずに済んだんだよ。
だからよ或人…今のお前が道踏み外して、二度と仮面ライダーに戻れなくなる前に絶対ぇ連れ戻してやる!お前がイズを、裏切っちまわない為にも!」
「黙レェエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
妬みと憎しみで、滅への復讐以外どうでもいい筈なのに。
何故こんなにも、聞くだけで苦しくなるのか。
どうしようもない程に、泣きたくなってしまうのだろうか。
だったら壊せば、いいや殺して黙らせれば良い。
憎悪に突き動かされるまま、或いは逃避するかの結論へ辿り着く。
脚部へエネルギーを集中、眼前で聞くに堪えないモノを吐き出す男を仕留める。
マギアやレイダーに打ち勝ち、悲劇を食い止めて来たゼロワンの蹴り技。
此度は悪意を糧に標的を砕くという、自身のこれまでの戦いに泥を塗るに等しい。
たった今言われた通り、二度と仮面ライダーゼロワンに戻れなくなるだろう。
放たれんとしている力が如何に危険か、対峙中のクローズも勿論分かる。
何度言葉を投げかけても、悪意は深く根を張ったまま。
もし自分が殺されれば、きっと完全に手遅れになってしまう。
711
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:35:11 ID:VQtoL8aQ0
「だったら俺も、本気でぶつけて止めてやるよ!」
『Ready Go!』
『GREAT DRAGONIC FINISH!』
過去の戦いで幾度もして来たように、レバーを高速回転。
ボトルの成分とクローズドラゴンの機能が、最大まで活性化。
パイプオルガンの演奏に似た音声が鼓膜を激しく刺激し、エボルドライバーから右脚へとエネルギーが流れ込む。
示し合わせたかのタイミングで共に跳躍、飛び蹴りを叩き込む。
足底同士がぶつかり、それ以上は進ませまいと両者宙で拮抗。
発せられる悪意の波動がクローズの体力を削り取り、敗北へ一歩また一歩と近付けさせる。
「これが……どうしたぁっ!!!」
「ッ!?」
助けると、己が抱いた想いは決して裏切らない。
負ける気がしないんじゃない、負けられない。
戦意の高まりは留まる所を知らず、限界を超えて尚も昇り続ける。
土壇場でハザードレベルが急上昇、逸る鼓動がクローズを巨大な蒼龍に変え突き進む。
「戻って来い…或人ォッ!!!」
「ぁ――」
先の見えない暗闇の中で、取り残された子供を救い出すように。
憎悪という名の檻を木っ端微塵に粉砕し、善意の心を引っ張り上げる。
712
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:36:08 ID:VQtoL8aQ0
偽りの歴史を完全に砕くには、正しき歴史を歩んだ戦士の力が必要。
しかしアナザーウォッチの使用者の肉体が、限界以上のダメージを受ければ変身を保っていられない。
体内から弾き出されたウォッチは宙を泳いだ後、乾いた音を立てて地面に転がった。
「つっっっかれたぁ……!ってか、これ言うの二度目じゃねかよ……」
地面へ大の字に横たわり、疲労を思いっ切り声に出す。
一度目の或人との戦闘時と同じだが、消耗は確実に今回のが大きい。
打ち勝ったものの体力がどっと抜き取られ、堪らず変身解除。
慣れないドライバーを使った反動もあってか、額には汗がびっしょりと浮かんでいる。
「万丈さん……」
力無く呟かれた自身の名へ、顔を向ければ曇った表情でへたり込む青年が一人。
暴れ回ったアナザーゼロワンの面影はなく、正気に戻ったのは間違いない。
有言実行、或人を悪意から解放出来て安堵する。
万丈と違い、当の或人は喜べるような心境ではないが。
「暗い顔すんなって。俺は――」
重い体を起こし口を開き、視線の先で彼の表情が急に変わった。
どうしたと聞くのを待たず、立ち上がり駆け寄った或人が突き飛ばす。
背中から地面に倒れ、鈍痛が疲れた体に響く中、
「或人……?」
呼んだ名前に一言も返さず、夥しい血を吐き出す青年が見えた。
713
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:38:09 ID:VQtoL8aQ0
◆
「もー、無駄にしぶといおじさんだにゃー。中高年の体に負荷を掛けるのはオススメしないよー」
生意気極まる罵倒を耳で拾いながら、とんだ悪手だったと失敗に舌を打つ。
解放した戦士達のライダモデルに加え、天津自身がチューンナップを行ったサウザー。
これらが揃えば余程の敵、それこそ軍服の男や継国縁壱のような規格外でもない限り容易く敗れはしない。
早急な無力化は難しくないと、数分前の考えはものの見事に裏切られた。
「くっ、またか…!」
巨体を豪快に叩き付けるマッド・キマイラへ対抗すべく、得物にプログライズキーを装填。
アビリティを付与し技を発動する、慣れた動作が行えない。
何度トリガーを引いても、プログライズキーの認証が行われないのだ。
理由もなく故障は有り得ないが、現実にうんともすんとも言わない。
四苦八苦している間にも脅威は迫っており、迎撃を諦め回避へと移行。
この流れも今が初めてでなく、危ういながらもマッド・キマイラの体当たりを躱す。
但し敵はマッド・キマイラ一体のみじゃあない。
回避直後に呪符が飛来、サウザンドジャッカーを振るい数枚を斬り落とす。
それもまた予想通りと拳を突き出すのは、真紅の瞳を持つ戦士。
仮面ライダーアギトの放つ一撃を防ぎ、仮面の下で苦々しい表情を作る。
率直に言って、戦況はサウザーが圧倒的に不利だった。
ダメージステップ終了時まで相手の魔法・罠とモンスター効果を封じる。
マッド・キマイラの効果の一つはプログライズキーにも作用し、手数の大半を潰されたも同然。
更にマッド・キマイラ自体がリンボの強化を受け、時間を掛けずに出現させたライダー達をほぼ壊滅に追いやった。
気付けば残ったのはドライブのみ、しかも倒れたライダー達は全て敵に寝返る始末。
マッド・キマイラの二つ目の効果、破壊したモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
力こそ減少しているも、数の差を完全に覆されたのだ。
トドメとばかりに、コントロールを奪った相手モンスター一体に付き自身の攻撃力を300Pアップ。
ライダモデルの一斉開放は、敵に塩を送るに等しい悪手だったのだ。
「データ再現されたに過ぎないとはいえ、良い気分ではないな……!」
自分の知らない仮面ライダー達が、灯花達の操り人形にされた。
意識は存在しないライダモデルと分かっても、嬉しい光景な訳がなく。
己の失態を恨みながら、地を駆けジオウの銃撃を躱す。
サウザンドジャッカーで斬り落としつつ、反対の手を向け光弾を発射。
タッチパネル型の可変武器、ガシャコンバグヴァイザーⅡはライダー・バグスターの両方に効果的なダメージを与える。
力を削がれたデータ体を消し去るのは難しくないが、妨害に出る者がいなければの話だ。
714
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:38:44 ID:VQtoL8aQ0
「元は味方でも敵に回れば容赦なし、と。ですが拙僧もいることをお忘れなく」
五芒星の結界が光弾を寄せ付けず、タイミングを同じくしてキバとブレイドが襲い掛かった。
拳と剣を捌くが、ライダー達だけに意識は割いていられない。
マッド・キマイラがミサイルを発射、煙を噴射し迫り来る。
光弾の連射で着弾前に消し飛ばすも、爆風で吹き飛ばされどうにか受け身を取る。
余計な足止めを食らう現状へ歯噛みし、
『ガイ!あの赤いライダーってガイの言う通りに動くの!?』
突然の問いに、思わず視線を左腕のパネルへ落とす。
状況は彼女も把握しており、苦戦中なのは説明されずとも分かっている。
「ああ、仮面ライダーのデータを記録した特殊なプログライズキーだからかもしれないが…ある程度は私の指示通りに動かせる」
『そっか……なら、今から私の言う通りにして!それと、上手くいったら――』
内容に思わず、本気かと聞き返しそうになった。
無茶だと言いたいが、自暴自棄故の発想でないのは顔を見れば明らか。
彼女なりに勝算があるからだろう。
「議論を重ねる時間は無いか……ポッピー、君を信じよう」
『うん!信じてもらったからには、期待を裏切らないよ!』
会話を延々と続ける余裕はない。
短剣で幾度も斬り付けるカブトを、反対にサウザンドジャッカーで突き刺す。
言葉無くよろけた赤い戦士には構わず、傍らへ駆け寄って来たドライブへ一つのアイテムを投げ渡した。
どうなるかは不明だがやる他ない、指示を出しポッピーから伝えられた行動を行わせる。
仮面ライダーにとって第二の心臓と言っても過言ではない、ドライブドライバーを外す。
ライダモデル故変身解除はされないが、これでは自分から消滅を選んだも同然。
だからそうなる前に、渡されたばかりのバグルドライバーⅡを装着。
一瞬の硬直後、ピンク色のエネルギーがドライブの全身を駆け巡った。
715
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:39:30 ID:VQtoL8aQ0
『ガシャット♪』
『BUGL UP!』
流れる動作でライダーガシャットを装填。
背後にセレクト画面が出現し、ドライブを全く別の戦士へと変える。
『ドリーミングガール♪恋のシミュレーション♪乙女はいつもときめきクライシス♪』
音声が鳴り止んだ時、ドライブシステムのライダーは最早そこに影も形も存在しない。
ボブカットのピンクヘアーや、ハートをあしらった装飾。
病院前での戦闘で環いろはも変身した、仮面ライダーポッピーがサウザーの隣へ立つ。
バグルドライバーⅡを通じてドライブのデータへ干渉し、自身が動かす仮の器に使用。
外見は本物の仮面ライダードライブと同じでも、あくまでライダモデル…自我を持たないデータの塊だから可能になった荒業。
生身の人間に相手には不可能であるし、出来たとしても倫理の面で拒否するだろう。
「よっし成功!じゃあガイ、あっちの相手は私に任せて!」
「分かった、だがくれぐれも無茶はしないでくれ」
会話もそこそこにサウザーはリンボへ得物を構え、ポッピーは見上げる程の巨体と対峙。
ゲムデウスを思い出させるサイズでも、臆さず真っ直ぐに見据える。
マッド・キマイラと、怪物を従える少女を。
「里見灯花ちゃん、だよね?」
「…ああ、お姉さまをそのヘンテコで美的センスが足りない恰好にさせたのは、あなただったもんねー。なら、わたくしのことも聞いてるか」
「酷っ!?何で!?この見た目可愛いじゃん!っていうか、何でイロハちゃんが変身したのを知って……」
「教えてあーげないっ」
ライダーのデザインを貶された上、至極当然の疑問には生意気な返答。
お転婆な子供の入院患者は慣れているが、ここまで大人を舐めたのは滅多にいない。
少々たじろぐも、すぐに真剣な顔を取り戻す。
716
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:40:13 ID:VQtoL8aQ0
「イロハちゃんが言ってたよ。あなたと、柊ねむちゃんっていう女の子を凄く大事に想ってるって。…もし、誰かを傷付けようとしてるなら、自分が絶対に止めてみせるって」
「…………そう」
予想通りの内容に、何も感じなかったと言えば嘘になる。
変わらない愛を向けてくれる事も、自分達のやり方を否定するのも。
分かっていても胸の奥から込み上げてくる。
会いたいけど会いたくない。
会って抱きしめて欲しい、自分とねむと、ういが大好きなあの人の笑みを見たい。
会ったら抱いた決意に、迷いが生じないとも限らない。
自分の幸福を捨てでもいろはを救わなければならないのに、いろはの傍にいる未練へ縋り付いてしまうかもしれないから。
そう己に言い聞かせても、いろはが聖都大学附属病院にいると分かった時、じっとしてられなくて。
取り繕い平静であるとの仮面を被るが、動揺はポッピーにも伝わった。
CRの一員として多くの患者と向き合って来たのだ、様子の変化に気付かない訳がない。
灯花なりにいろはへ思う所が多々あるのは分かった、だから余計に彼女を放っては置けない。
「今のトーカちゃんをイロハちゃんが知ったら、絶対に悲しむよ。あんなに心配して、会いたがってるイロハちゃんを傷付けて、それでトーカちゃんは良いって思うの!?」
「あーもー、うるっさいなー。わたくし、そういう知ったかぶりのお説教ってきらーい。低俗な学園ドラマの見過ぎじゃないのー?」
「イロハちゃんが今のトーカちゃんを見て喜ぶ女の子じゃないのは、私にだって分かるよ!」
「それジョーク?面白いことを言うにゃー、このショッキングピンクさんは」
貼り付けた笑みと裏腹に、瞳には不快感が宿る。
ほんの一時共闘しただけの分際で、いろはの何を知ると言うのだ。
奇妙な装甲…仮面ライダーの力を貸しておきながら、いろはが傷付くのを防げなかったくせに。
揃いも揃って役に立たず、こちらのストレスを煽ってばかり。
燻る苛立ちへ呼応し、マッド・キマイラがミサイルを発射。
加減の一切無い攻撃へ、ポッピーも会話を一旦打ち切り動き出す。
先程サウザーがやったのと同じく、ガシャコンバグヴァイザーⅡを装備し銃口を向ける。
勿論爆風を浴びないよう駆けながら、光弾を連射し着弾前に破壊。
吹き飛ばされる呆気ない終わりは退けるも、すかさずマッド・キマイラが自身の巨体を叩き付けた。
「よっと…!」
一般人なら身を竦ませ兼ねない光景にも動じず、シューズに搭載された加速スラスターを起動。
ステップを踏み華麗な動作で回避し、マッド・キマイラの死角へ立つ。
そのまま攻撃を行う、のではなく背を向け走り出した。
717
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:40:52 ID:VQtoL8aQ0
<高速化!>
戦闘放棄が目的に非ず、駆け寄った先に設置されたメダルを掴み取る。
振り返ったマッド・キマイラに叩き潰されるより早く、ポッピーの姿が消失。
正確に言うと、消えたとしか思えない速さで動いた。
<分身!>
マッド・キマイラには目もくれず別のメダルを入手。
響く電子音声が告げた通り、複数体の分身が生み出される。
巨体を取り囲んで飛び跳ね翻弄するポッピー達を、羽虫を叩き落とすように蹴散らす。
ノイズを走らせ消滅するが、それらは全てコピー体。
本物のポッピーは既に、マッド・キマイラから離れた場所へ駆け出していた。
<伸縮化!>
ゴムのように両腕を伸ばし、別の個所に設置されたメダルを二つ共引き寄せる。
と言っても自分の為に使うのではない。
片方は仲間である黄金のライダーへ、もう片方は対峙中の相手に投げ付ける。
マッド・キマイラ…ではなくモンスターを操る灯花自身にだ。
<混乱!>
「うにゃっ!?」
痛みは無いが、上手く言葉に表せない気持ち悪さが襲う。
何をされたか定かじゃなくとも、敵をこのまま調子付かせるのは避けたい。
マッド・キマイラへ攻撃の指示を出そうとし、
カードの表示形式を守備表示へと変えた。
「っ!?わたくしの体が……」
望んだのとは全く異なる行動を取ってしまった。
原因が何かを深々と考える必要はない。
たった今投げ付けられた、奇怪なメダルの影響なのは確実だ。
718
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:41:49 ID:VQtoL8aQ0
ポッピーの変身と共に配置されたこのメダルの正体は、CRの関係者やバグスターなら知っていて当然の存在。
ライダーガシャットの起動時に現れステータス変化を齎す、エナジーアイテムである。
使い方次第で戦況を有利に動かせるが、マッド・キマイラが相手ではそうもいかない。
魔法や罠、或いはモンスター効果として処理され、使用不可能になった可能性は非常に高いからだ。
詳細な原因は知らないが、プログライズキーが度々起動しなくなるのはポッピーも画面越しに把握。
何らかの特殊な技だったり装備が使えなくなると、察するのに時間は掛からなかった。
マッド・キマイラと戦おうとするとそういった不調が現れるなら、そもそもマッド・キマイラとの戦闘を避ければ良い。
半ば賭けにもなったが、回避に徹しマッド・キマイラから敵意を外した結果。
エナジーアイテムは効果を発揮し、ステータス強化の恩恵に与った。
更に正規のデュエルでない以上、モンスターを無視しプレイヤーへのダイレクトアタックも反則ではない。
混乱のエナジーアイテムを灯花へ直接ぶつけ、本人の意図しない行動を取らせたのだった。
猛威を振るおうと存在の核がカードである故、デュエルモンスターズのルールには逆らえない。
身を縮こまらせて受け身の耐性を取り、守備表示へと変更。
こうなれば再び表示形式を変えない限りは、自ら攻撃は不可能だ。
<マッスル化!>
一方でサウザーもエナジーアイテムの恩恵を受け、反撃の兆しを見せる。
パワー面を大幅に強化され、アギトとキバを薙ぎ払う。
斬り掛かって来たブレイドを逆に斬り付け、すかさず穂先を突き刺した。
『JACK RISE』
「手荒で申し訳ないが、あなたのデータを頂きました」
敵に回ったライダモデルを、再び自身の力として使わせてもらう。
稲妻を帯びた光刃を振り回し、ライダー複数体を纏めて撃破。
煙が覆い隠す中を突っ切り、唯一残ったジオウも同様に得物で刺す。
データは貰った、であれば何をするかは決まったも同然。
『JACKING BREAK』
時計の針を象ったエネルギー刃が二本出現、切り刻まれジオウも消滅。
歯止めを掛けるべく投擲された呪符をも掻き消し、投げた本人へ斬撃が襲う。
力を大きく削がれた式神には堪える威力だ、ノロの力を上乗せし火炎で相殺。
雲行きが怪しくなって来たのを実感し、丁度目に映ったのは借りて来た猫のように大人しくなったマッド・キマイラ。
719
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:42:30 ID:VQtoL8aQ0
「これは少々宜しくない流れと見ました!」
灯花目掛けて呪符を投げ放ち、念を籠める。
呪うのではなく祓う為にだ。
解呪の効果を受け、エナジーアイテムの混乱状態から脱する。
『CRITICAL CREWS-AID!』
『THOUSAND DESTRUCTION!』
しかし得られた最大のチャンスを前に、敵の立て直しをむざむざ許すお人好しはいない。
リンボの解呪を待たず、サウザーとポッピーがそれぞれドライバーを操作。
プログライズキーとガシャット、異なるキーアイテムからエネルギーが流し込まれる。
脚部へ纏わせた力を同時に叩き付け、決着とするべく共に跳躍。
「これで終わりとしましょう!」
「トーカちゃんにも、ここで止まってもらうから!」
非情の玩具は爆散し、次なる手を打たせず少女と術師を無力化。
思い描いた光景が現実に変わるまで、残り数秒もない。
「いーやっ。そんな要求は受け付けませーん」
即座に訪れるだろう敗北を、小馬鹿にするように笑って跳ね除ける。
この攻撃を受ければ、確かにマッド・キマイラも破壊は免れない。
だが一体いつ、こちらに打つ手が無いと言ったのか。
間一髪で混乱を脱し、デュエルディスクを操作。
「なんだと……!?」
「うえええ!?ピプペポパニック〜!?」
撃破の正に寸前、力を付与していたガシャットとプログライズキーが急に沈黙。
ライダー達が脚部に纏ったエネルギーが消え失せた。
異変はそれだけに留まらず、ドライバー部分へ衝撃が襲い反対に弾き飛ぶ。
変身ツールが外れ天津は生身へ逆戻りし、ポッピーの意識もバグルドライバーⅡへ再び閉じ込められる。
地面を転がり鈍い痛みに呻く天津の横には、不安定な状態と化した一体のライダモデル。
元はドライブのデータ体だったが、ポッピーの変身解除に伴い実態を上手く保てずにいた。
720
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:43:09 ID:VQtoL8aQ0
マッド・キマイラが倒されるだろうタイミングで一手早く、灯花は伏せていた罠カードを使用。
デストーイ・マーチ。
自分フィールドのデストーイモンスターが相手カードの対象となった時、発動を無効にし破壊するカウンター罠。
ドライバー本体の耐久性故壊れはしなかったが、衝撃を与え弾き変身を解くのには成功した。
おまけにデストーイ・マーチの効果はまだ残っている。
「はいはいご苦労さまー。じゃ、次はあなたの出番だよー」
対象となったモンスターを墓地へ送り、新たにデストーイモンスター一体を召喚する。
マッド・キマイラと入れ替わりで現れるは、これまた巨体を誇る不気味な玩具。
血に染まった体に黒々とした翼を生やし、手には鋭利な三又槍。
ギョロリと飛び出た目が獲物を捉えて離さない、悪魔そのものなモンスター。
デストーイ・デアデビルが、召喚と同時に槍を振り被った。
「くっ……!」
問答無用の一撃を見舞われるとあっては、おちおち寝転がってもいられない。
体が上げる悲鳴を噛み殺し、転がる二つのドライバーを掴んで後退。
天津もポッピーにも被害は及ばず、哀れ餌食となったのはライダモデルのみ。
放って置いてもすぐ消えるだろうに、三又槍で一刀両断の憂き目に遭う。
運の悪い事に、これがトリガーとなって天津の全身へ激痛が駆け巡った。
「がああああああっ!!!??!」
『ガイ!?どうしたの!?ねえガイ!?』
手の中で必死に呼びかけるポッピーの声も遠ざかり、天津の意識は落とされる。
病院での消耗を抱えたまま戦闘を行い、軽くないダメージを受け遂に限界が来たのだ。
眠っている場合じゃないと言い聞かせても、無駄な抵抗に終わる。
デストーイ・デアデビルは相手モンスターを破壊した時、プレイヤーに1000Pのダメージを与える。
万全と程遠い天津を気絶へ追い込むには、十分過ぎる痛みだった。
「おや……」
倒れ伏す男と、自力では悪足掻き一つやれない女。
敗北者二名から視線を外し、見つめた先の光景にリンボは短い呟きを漏らす。
声色に含まれるのは上機嫌とは言い難い、落胆や期待外れと言ったもの。
見たいと思っていたのはどこにもなく、あるのはリンボの嗜好と正反対。
過度な期待をし過ぎたか、乱入者が思っていたより面倒な手合いだったか。
のんびり見物を行うつもりだったが、こうなっては仕方ない。
芝居へ茶々を入れる無粋な者には、舞台から降りてもらうに限る。
紙飛行機でも飛ばすような気安さで、呪符を投げ付けた。
721
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:46:02 ID:VQtoL8aQ0
◆
或人がそれに気付いたのは偶然だった。
のっそりと体を起こした万丈の後方で、こちらをじっと見据える術師が視界に映った時。
猛烈な悪寒に急かされるまま、無我夢中で突き飛ばした。
自分のどこにまだこんな体力が残っていたのか、不思議でならない。
とはいえ、直に消え失せる些細な疑問に過ぎないだろう。
「がふ……げほっ……」
体の内側が燃え盛っているように熱い。
吐き出しても吐き出しても、血がせり上がるのが抑えられない。
ゼロワンとして戦い続け、時にはヒューマギア顔負けの打たれ強さで立ち上がって来た。
しかし或人はどこまでいっても、肉体的にはただの人間。
鬼やブラッド族、神ならば耐えられたろう呪符も命を刈り取るのに過剰な凶器。
内より腐らせ、溶かし、呪い殺される末路は避けられない。
「或人!おいしっかりしろ!」
大声で自分を呼ぶ青年を力無く見上げる。
朧気な視界の中でも、彼が焦燥を露わにしてるのが分かった。
「万丈、さん……」
悪い事をしたと、心から思う。
もしあのまま滅を破壊していたら。
きっと万丈が言うように、二度と仮面ライダーには戻れなかった。
イズを裏切り、本当の意味で取り返しが付かなくなっていた。
そうなる前に引き戻してくれたのに、こうも早く命を失ってしまうなんて。
万丈にも、自分と滅の争いを止めようとした天津にも、ただただ申し訳ない。
「ありがとう……俺を止めてくれて……」
伝えたい言葉を全部口にする時間も、もう残されていない。
だからせめて、感謝を告げたかった。
自分を二度もアークから引き戻した彼に。
決定的に道を踏み外すのを、止めてくれたヒーローに。
顔を動かし、呆然とこちらを見つめるヒューマギアと視線を合わす。
正直、完全に許す事は今も難しい。
けど天津が言った通り、自分の行いに後悔と罪悪感を抱いてるなら。
悪意から抜け出す方法が分からず、苦しんでいるなら。
彼の息子を未来で自分が奪ったなら、最後に放って置くのは出来ない。
「滅……お前の悪意を止められるのは……お前自身だけだ……」
復讐の連鎖は、悪意の支配は自分達で断ち切らねばならない。
どうか彼が恐怖した自身の心を受け入れ、間違った道をこれ以上行かないように。
強く願い、瞼が静かに閉じられる。
夢に向かってもう一度、高く跳んだ未来へ踏み出すことは叶わず。
己を蝕んだ悪意共々、異界の地で眠りに就いた。
722
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:46:53 ID:VQtoL8aQ0
「或人…?おい、或人……っ!」
命の熱さを失い、語る術を持たなくなったのが何を意味するか。
嫌という程覚えがあるから、万丈は強く悔やむ以外に出来ない。
悪意を振り切り、肩を並べて戦う仲間となれたかもしれない男を喪った。
「ンンン……これはちと予想外。或人殿にはまだ使い道を考えていたのですが…ま、過ぎた事を悔やんでも仕方ありますまい」
「ふざけんじゃねぇぞ……テメェ!!」
「まあまあ落ち着きなされ。やる気に溢れるのは結構ですが、随分とお疲れのご様子。折角拾った命を無駄にしては、或人殿も浮かばれないでしょうなぁ」
「うるせぇ!!テメェだけは、絶対に許さねぇ……!」
今殺した相手など、どうでもいいと言わんばかりの態度が逆鱗に触れる。
旧世界で人々の命を玩具同然に弄んだ、エボルトと同じ外道の類だ。
怒りに身を任せ再変身しようとするが、リンボの言うように体力的な余裕はない。
アナザーゼロワンから受けた傷が残る身体で戦うのは、無茶以外のなにものでもなかった。
『POISON』
「変…身……」
『FORCE RISE』
『STING SCORPION』
『BREAK DOWN』
負傷を無視し戦いを選ぶ万丈を諌めるように、暗く淀んだ電子音声が響く。
銀の体を持つサソリが現れ、尾の先端を滅に突き刺す。
広がるのは毒に非ず、対象を戦士に変えるエネルギーデータ。
バイオレットカラーのボディスーツで覆い隠し、拘束具状のアーマーを各部へ装着。
黄色く輝く瞳が術師を射抜き、豪快に左腕を振るう。
ひらりと跳び鋼鉄の鞭を躱すリンボから、まるで万丈を庇うかの姿で前へ出た。
天津のデイパックから転がり落ちたフォースライザーと、数時間前に戻って来たプログライズキー。
上気二つを使い変身した仮面ライダー滅は、振り返らずに自身の支給品を背後へ投げ渡す。
723
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:47:36 ID:VQtoL8aQ0
「天津垓を連れて去れ。足手纏いがいては満足に戦えん」
「は?お前何言って……」
「人類滅亡の結論を、間違いだったと言うつもりはない。だが、この場で真っ先に滅ぼさねばならないのは奴らだ」
「お前……」
何を言いたいのか、何をしようとしてるのか。
分かるからこそ反論を口に出しかけ、しかし口論を行える余裕がないと即座に察する。
気を失いピクリとも動かない男と、必死に呼びかける聞き覚えがあるような声。
まだ助けられる彼らを無視するのは、あの時と何が違う。
自分の事しか考えられなかった旧世界での過ちを繰り返し、馬渕由衣の前で言った全てを嘘に変える。
出来る筈がなく、故に不甲斐なさを押し殺してでも滅へ背を向けるしかなかった。
「……追い掛けて来いよ。或人が言ったこと、無意味にするんじゃねぇ」
無理だと分かっていても、そう言わずにいられない。
白スーツの男を背負い、奇妙な女が映っている機械を拾い上げDホイールに乗り込む。
気を失った相手を強引に後部へ乗せ、クローズドラゴンが小さな体を駆使し支える。
サイズに反しスマッシュを怯ませるパワーがあるだけに、振り落とされるのを防げる筈。
指を咥えて見ているリンボ達ではないが、滅が一歩も近付けさせない。
オーソライズバスターから毒針を乱射し牽制。
片や結界を展開し、もう一方はモンスターを盾に使いノーダメージで凌ぐ。
そうこうしてる内にDホイールが急発進。
ライディングデュエルでない以上、速度制限も掛からずあっという間に走り去って行った。
「なにそれ、一人で残ってヒーローごっこでもしたいの?それとも、データが完全におしゃかになっちゃった?」
「他者へ悪意を伝染させる大元の貴様らを、生かしてはおけん……!」
冷え切った目で問う灯花へ断言し、ドライバーに手を伸ばす。
トリガーを押し、高威力の技の待機状態へ入った。
724
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:48:22 ID:VQtoL8aQ0
『STING DYSTOPIA!』
プログライズキー内のデータを読み取り、エネルギーへと変換。
左腕の伸縮ユニットへ流し込み、先程と同じく鞭のように伸びる。
尤もそのまま攻撃に使うのではなく、右脚へ巻きつけた。
崩壊毒を蓄えた針を装着し高く跳ぶ。
標的を高く見下ろし蹴りを放てば、返り討ちにすべく悪魔の玩具が三又槍を振るう。
足底から伝わる衝撃は軽くない。
攻撃力3000のパワーに加え、滅自身もダメージが激しい。
押し返されスクラップに変えられる最期も、冗談では済ませらない。
「この程度がどうした……!」
力が足りないなら、強引に掻き集めてでも敵を滅ぼす。
制御ユニットの役割を持つ胸部パーツに指令を送り、パワー全てをこの一撃へ上乗せする。
安定性を捨て攻撃特化の代償が即座に襲い、各部が火花を散らす。
しかし滅が止まる理由にはならない。
三又槍を押し返すばかりか亀裂を生み、真っ向から砕いた。
「オオオオオオオオオオッ!!!」
足底がデストーイ・デアデビルの巨体を叩き、哀れ爆散。
召喚されて間を置かずに退場となったモンスターに、何の思いも浮かばない。
倒すべきはその先にまだ健在。
たとえ幼い人間だろうとここで滅ぼさねば、悪意が広まるのは間違いない。
奇怪な術を用いる男共々、自分が終わらせようと突き進み、
「……うっざ」
ボソリと、呟いたのを果たして滅が聞いたかどうか。
突如全身へ不可視の攻撃が襲い、血の雨の如く火花が散った。
止まる意志が無くとも、思わぬ衝撃へ強制的に勢いが落ちる。
それでも構うものかと蹴りを突き出し、滅は見た。
絶対零度の瞳で見上げる少女が、アークに勝るとも劣らないエネルギーを纏っているのを。
725
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:49:07 ID:VQtoL8aQ0
「バイバイ、ロボットさん」
吐き捨てた声は終わりの合図となって、滅へ終焉の刻が訪れる。
突き出した足から徐々に焼き潰され、胴体を熱が侵食。
頭部を飲み込み消し去るまで、一刻の猶予も無いだろう。
相手にとってではない、ここが自分にとっての果てだった。
(そうか……)
敗北を理解し、全く悔やんでないと言えば嘘になる。
己の足掻きは届かず、悪意を滅ぼせずに力尽きるのだから。
けれど不思議と、この結末に納得を抱く自分も存在した。
いいや何も不思議なんかじゃあない、至極当然の末路がようやく訪れたに過ぎない。
本当に滅ぶべきは或人でも天津でも、目の前の二人組でもない。
自分だ、他ならぬ滅自身が真っ先に滅びねばならなかった。
迅を奪った或人は許せない、だが根本的な原因を作ったのが誰かは言うまでもない。
奪われて初めて分かった。
いや若しかしたら目を背けて来ただけで、自分に心があると言われた時から分かっていたのかもしれない。
大切な存在を失う苦痛がどれ程か、或人に夢を捨てさせる程の絶望がどんなものかを。
或人と、それに、ああ、この地でも自分は奪ってしまった。
仲間を理不尽に奪われた環いろはと七海やちよへ、罪の重さを理解したと言っても今更だ。
届ける術はなく、仮に伝えられても全てが手遅れ。
あれだけ聞こえた迅の声も、いつまで待っても現れやしない。
己が心へ向き合うのが遅過ぎた、滅ぶべき悪が当然の如く消え去る。
抵抗の意志を示さず、自らの終わりを受け入れ、
(すまなかった……)
誰にも聞こえない懺悔を最後に、もう一つの悪意も眠りに就いた。
726
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:49:47 ID:VQtoL8aQ0
○
勝てた理由を説明するなら、何も難しいものはない。
デストーイ・デアデビルは戦闘で破壊された時、墓地のデストーイモンスターの数に応じて相手にダメージを与える。
効果を使って滅の勢いを削ぎ、後は灯花自身の力で消し飛ばした。
フリル付きのドレスを身に纏った、魔法少女としての姿。
これまで使わなかった力を解禁し、変換の固有魔法を使用。
周囲一帯の力を自身の魔力に変え固有武器の日傘へ収束、高威力の砲撃を先端から発射。
それで呆気なく片付いた。
「もー、あんまり無駄なことさせないでよねっ」
原型を留めていない、僅かに残った残骸へ愚痴をぶつける。
威力に反し低燃費なのが灯花の魔法だが、魔力を使わされたのは事実。
微量なれどソウルジェムに濁りを確認でき、全く最後までこちらの不快感を煽ってくれる。
ついでに首輪も砲撃に巻き込んだせいで、回収は不可能。
尤も、それは灯花の自業自得だが。
「ふぅ、一仕事した後に吹く風は心地良いものですな」
冷風を気持ち良さ気に浴びながら、いけしゃあしゃあと言ってのける。
逃げた連中が見たら、さぞ額に青筋を浮かべるだろうな。
そう内心で独り言ちる灯花の元へ、言葉通り仕事を終えたリンボが近付く。
放置されていた幾つかの支給品に加え、新たに首輪一つを入手。
リンボの後ろには、頭と胴体が別れた死体が転がっている。
倫理の面から抗議をぶつける気は一切ない。
役に立たないと判断すれば、桜田ネネのような幼稚園児でも殺す少女だ。
差し出された首輪を当然のように受け取り、デイパックへ放る。
殺し合いに乗った邪魔な輩の退場と、幾つかの支給品。
それに病院前で手に入れたのと合わせ、首輪が二つ。
収穫があったのは良いとして、ここからどう動くか。
727
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:50:23 ID:VQtoL8aQ0
「それにしても、いろは殿の現在位置は変わらず不明と。ですが運が良ければ、灯花殿のご友人であるねむ殿が先に見付けているやもしれませぬぞ」
「ふーん、ねむとお姉さまが……」
絶対ないとは言い切れない。
元々の知り合い同士である或人達が三人集まったように、他の者だってそういう事態は起こり得る。
きっとねむもいろはとの再会を望む気持ちと、同じく拒む気持ちの両方があるだろう。
いざ会えた時、コロッと考えを変え魔法少女救済を諦める。
そんな情けない事にはならない筈だ、ういとの間に誓ったいろはを救う約束を忘れるなんて有り得ないのだから
「ねむが、わたくしより先に……」
再会が叶ったら、いろはからはさぞ喜ばれるに違いない。
死に別れた相手ともう一度会える、夢や幻じゃなく現実で。
いろはがどれだけ自分達を想ってくれてるか分かるから、どう反応するかも予想は付く。
何もおかしくはない、いろはと自分達の関係を思えば当たり前の光景。
「……」
なのにどうしてだろうか。
涙を流し、もう二度と離すまいといろはに抱きしめられるねむを思い浮かべると。
こんなにも苦々しく感じるのは。
変わる事のないいろはからの愛が、自分より先にねむが受け取ると思うと。
どういう訳か胸が掻き乱されるのは。
理由は分からないけど、無性に気に食わなかった。
◆
どこから道を間違えたのだろうか。
敵として出会い、時に理解し合い、肩を並べ共通の敵へ挑み、憎しみをぶつけ合って。
その果てに得たソレゾレの未来を、掴み取ることは終ぞ叶わず。
死という絶対の結末だけが、人とヒューマギアへ平等に与えられた。
善意と悪意の闘争に、終わりはない。
【飛電或人@仮面ライダーゼロワン 死亡】
【滅@仮面ライダーゼロワン 破壊】
728
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:51:13 ID:VQtoL8aQ0
【E-5/一日目/午前】
【里見灯花@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、あり得ない思考に対する動揺(小)、リンボ(式神)による暗示の影響(中)、嫉妬と不快感(中)
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、桜田ネネのランダム支給品×1〜3、首輪(ネネ、承太郎、或人)
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。並行してドッペルに関しても調べる。
3:出来ることならねむと合流。もしねむがわたくしより先にお姉さまと会っていたら……?
4:七海やちよは邪魔をしてくるなら容赦しない。
5:私は、いろはお姉さま、を――?
6:この陰陽師(リンボ)、信用はできないは実力はあるから今のところは保留。
7:六眼の侍(黒死牟)が気に入らない。なんであんな奴がお姉さまのお傍に……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。
※リンボによる暗示の影響で、リンボに危害を加えることは不可能となっております。
【キャスター・リンボ(式神)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康(本体より弱体化)、魔力消費(中)
[装備]:
[道具]:小倉しおんの支給品袋及び支給品一式、タイムテレビ(残り使用回数3回)@ドラえもん、ノロの入ったアンプル×7@刀使ノ巫女(漫画版)、ポルターガイスト(6時間使用不可)@遊戯王OCG、オーソライズバスター@仮面ライダーゼロワン、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン 令和・ザ・ファーストジェネレーション
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:里見灯花に付き従う。何時彼女が爆発するか楽しみですぞ、ンンンンン―――。
2:あの侍達(黒死牟、縁壱)は……ンン。
3:飛電或人は少々期待外れでしたな。まあいいでしょう。
[備考]
『式神について』
※最大召喚数は1名
※他参加者から5メートル以上離れた場合自動的に消滅。
※性能は本体より著しく弱体化。
※自動消滅または撃破された場合、式神再召喚まで6時間のインターバルが必要。
※本体が撃破された場合、式神も同じく消滅する。
※式神が得た情報は本体に共有される。
※タイムテレビを使い黎明、朝の時間帯にD-6の病院前で起きた戦闘を見ました。
729
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:52:12 ID:VQtoL8aQ0
【万丈龍我@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、怒りと悔しさ、運転中
[装備]:エボルドライバー(複製)+エボルボトル(コブラ、ラビット、ライダーシステム)@仮面ライダービルド、グレートドラゴンエボルボトル+グレートクローズドラゴン@仮面ライダービルド、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、遊星のDホイール@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品一式×3、フルボトルバスター@仮面ライダービルド、火炎剣烈火&聖剣ソードライバー@仮面ライダーセイバー、ガトリングフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:主催の奴ら全員倒して殺し合いを潰す。
0:或人……チクショウ……
1:今はこいつら(天津、ポッピー)を連れて逃げる。
2:遊戯って奴が心配。
3:檀黎斗はもう絶対に許さねぇ。
4:戦兎ならクレヨンの腕も直せる筈だ。
5:戦兎、玄さん、絶対生きてろよ。
6:エボルト、滅、DIOを警戒、特にエボルトは一度共闘したからって信用出来るわけねぇ
7:爆発頭野郎(パラダイスキング)は次に会ったら絶対に倒す。
8:他にも仮面ライダーがいるのか知りてぇな
9:俺のフルボトル(ドラゴンフルボトル)はどこいったんだ?出来たら知りてぇな
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』以降。
※キャルと情報交換しました。
※ドラゴンエボルボトルをグレートドラゴンエボルボトルに再創造しました。それに伴いクローズドラゴンも進化を果たしました。
※どの方角へ向かっているかは後続の書き手に任せます。
【天津垓@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、無力感(大)、気絶中、同乗中
[装備]:ザイアサウザンドライバー&アウェイキングアルシノゼツメライズキー&アメイジングコーカサスプログライズキー@仮面ライダーゼロワン、バグルドライバーⅡ&ときめきクライシスガシャット@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品×2、プログライズキーホルダー×7@仮面ライダーゼロワン、ゲネシスドライバー(破損)+チェリーエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、みーたんの抱き枕(破損)@仮面ライダービルド、パンドラパネル@仮面ライダービルド、スクラッシュドライバー+ロボットスクラッシュゼリー@仮面ライダービルド、オレンジロックシード@仮面ライダー鎧武、一海の首輪
[思考・状況]基本方針:檀黎斗とその部下を倒し、罪を償う
0:……
1:何処かへ飛ばされた仲間達を探す。彼らの元々の目的地へ向かうのも手か?
2:CRの関係者らしい花家大我とも合流しておきたい。
3:ポッピーから聞いたガシャットを見付ける。本当にあれば良いのだがな…。
4:出来る限り多くの人を病院に連れて来て治療したい。が、今戻るのは危険か
5:飛電或人と合流したい。もしアークに囚われていた時にこの場に来ていたのならば必ず止める。
6:滅は次に会えば必ず止める。たとえ力づくでも。
7:これ等のプログライズキーに映っている仮面ライダー達は誰なんだ?知っている人に会えたらいいが…
8:猿渡一海の仲間達を探し彼の最期を伝える。氷室幻徳とは随分離れているか…。
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーゲンムズ スマートブレインと1000%のクライシス終了後
※ハイパームテキガシャットなど主催者撃破・会場からの脱出を安易にする強力なガシャットは、ゲームに乗っており尚且つ上位の力を持つ参加者の支給品にあると考えています。(現在の有力候補はポセイドンと縁壱)
※殺し合いの会場が仮想現実の可能性を考えています。
※現在バグルドライバーⅡにはポッピーピポパポが閉じ込められています。
※滅亡迅雷フォースライザー@仮面ライダーゼロワン、スティングスコーピオンプログライズキー@仮面ライダーゼロワンは破壊されました。
『支給品解説』
【ノロの入ったアンプル@刀使ノ巫女(漫画版)】
珠鋼を精製する際に砂鉄から出る不純物が結合したモノが収められたアンプル。10本セットで支給。
主に折神家親衛隊が体内に投与し、身体能力の強化を行っていた。
但し余り大量に取り込むと制御が利かず、暴走を招く。
【ポルターガイスト@遊戯王OCG】
通常魔法
(1):相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
その相手のカードを持ち主の手札に戻す。
このカードの発動と効果は無効化されない。
一度の使用後、6時間使用不可。
『NPC解説』
【ハーピィ・レディ@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻1300/守1400
人に羽のはえたけもの。
美しく華麗に舞い、鋭く攻撃する。
730
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:52:54 ID:VQtoL8aQ0
投下終了です
731
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/11(日) 00:09:02 ID:p3hkfsYM0
環いろは、黒死牟、エボルト、武藤遊戯、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、蛇王院空也を予約します
732
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 00:12:18 ID:???0
ゲリラ投下します。
733
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 00:14:04 ID:???0
某空間にて、デュエルのペンデュラムとリンクの件を話し、リリスの処遇を施した後、少し、時刻が経過して、ハ・デスはある支給品の話題に触れる。
「では、そのような考えなら、マジカルルビーも口封じも決定したと」
ハ・デスはまたも疑問をぶつける。
キバットとリリスにこのような処置を取るなら、直ぐに実行せずに放置するのは可笑しいからだ。
「彼女もリリス同様に神の恵みを与えたに過ぎない。マジカルルビーも午前8時になった瞬間に言語は遮断する」
「二時間も何故猶予を?」
「本来、情けなど言語道断。だが、上げて落とすやり方も悪くないと考えたのだ。精々足掻くがいいイリヤスフィール・フォン・アインツベルン!」
リリスの件もそうだが、あくまでゲームの主役はプレイヤー。
リリスも大概であったが、ルビーも意思持ち支給品の分際であらすじを行うなど調子に乗り過ぎ。
あくまでルビーの言語を封印するだけでマジカルステッキの変身機能は当然ながら剥奪しない。
ルビーの情報とアドバイスなしのイリヤがどう藻掻くか見物だ。
「まだデイパックに入っている意思がある者達も全て口封じも実行済みだ」
最早、プレイヤーとNPC以外の第三者が口を挟むのを端っから黎斗は気に入らなかった。
最初は予選とあって一部の者は見逃していた。
それでも、自分の理想としたゲームではないのは確かだ。
言葉すら話せないクローズドラゴンは別だが。
ついでに他にも意思持ち支給品が存在するかは黎斗のみ知る秘密。
いてもとっくに黎斗によって誰も彼も言語能力を封印している。
「言葉を話すNPCは例外だ。彼らはゲームを盛り上がる存在だ」
意思持ち支給品と違い、NPCは面白い働きをしてくれる。
NPCなくてはこのゲームは語れない。
お助けキャラだったり、女性だけ守るキャラ、武器や情報など売り渡すキャラなど彼らの存在により、より一層テンションが高まるだろう。
グレートアイもNPCに組み込んだが、当然ながら、主催を倒す、殺し合いからの脱出等明らかにゲームにおけるルール違反を侵す願いは無効で対策済みだ。
NPCの存在がバトルロワイアルを興奮出来ると言っても過言ではない。
「それから、全体の調整の再チェックも行う」
「冥王が心意でカード化したのが、気に入らなかったと」
「当たり前だ。心意で現象が起きようが私は楽しませればそれで良い。だが、こんな事は私の望んだゲームではない。今回だけは神を興奮させたから見逃してやろう。遊びすぎたが、もう次はないと思え」
ハ・デスは冥王の結末にモヤモヤ感を残している。
冥王とは幾度もなく争い、互いに相容れぬ関係だ。
彼を参加者にすると提案し、支給品の没収の発案したのはハ・デス本人。
最初こそは保身第一だったはずなのに覚醒してからあそこまで活躍するとは思っても見なかった。
なら、彼が這い上がって来たら、決着を付けるつもりでいた。
カード化して、勝ち逃げ同然の結果に内心は苛立っている。
「全く少々、自由にしすぎたな。心意を含む参加者のカード化の防止をしておくか。君はもう部屋に戻れ」
「そうさせて貰う」
遊びさえなければこんな事にはとハ・デスは本心では愚痴を零しながらも再び某空間から出て行った。
【意思持ち支給品について】
以下の要因により、全ての意思持ち支給品の言語能力は封印or口封じするものとします。
※マジカルルビーの言語能力の封印は午前8時を過ぎれば起こるものとし、二度と話せません。
※今後は意思持ち支給品が登場しても言語能力は封印or口封じされるものとします。
【その他の事項】
※今後は心意を含めて正規の参加者である遊戯王OCG勢による深淵の冥王のようなカード化現象は二度と起こらないものとします。それでも、起こってしまう場合はその参加者は強制的に首輪を爆破するものとします。(対象は閃刀姫-レイ、閃刀姫-ロゼ)
734
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 00:15:35 ID:???0
投下を終了します。
タイトルは閑話:神の整理PART2
735
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/11(日) 01:41:03 ID:pRhK714U0
ハデスについての解釈が完全に一致していたり、ルビーがあらすじを語っていたり面白い話の投下をありがとうございます
ですが◆2fTKbH9/1氏の閑話:神の整理PART2について質問があります。
閑話:神の整理PART2におけるルール変更について、どのような意図があるのでしょうか?
また檀黎斗のキャラ性を考えると、心意によるカード化現象という想定外の展開を楽しむことこそあれど、問題視する気はしないと思います
また今後、ルールなど全体に影響力がある話は一度、本スレで相談してください
またこの相談については、企画主以外の書き手も意見を書くことが可能とします
736
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:33:44 ID:???0
>>735
先程の投下ですが、ルビーの口封じについてはリリスが口封じした回でゲームの主役はプレイヤーとハッキリと明言しています。
プレイヤー以外がいつまでも情報を話すのはフェアではないと断言までしています。
それならキバットとリリスが口封じしているのにルビーだけお咎めなしは不公平と思います。
今後も意思持ち支給品が出て来た場合も公平ではなくなってしまうのでこの処置を受けなければなりません。
確かに黎斗ならカード化現象は問題ないと考えますし、そこのくだりはカットして内容の一部を修正いたします。
737
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:55:18 ID:???0
修正版を投下します。
738
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:56:59 ID:???0
某空間にて、デュエルのペンデュラムとリンクの件を話し、リリスの処遇を施した後、少し、時刻が経過して、ハ・デスはある支給品の話題に触れる。
「では、そのような考えなら、マジカルルビーも口封じも決定したと」
ハ・デスはまたも疑問をぶつける。
キバットとリリスにこのような処置を取るなら、直ぐに実行せずに放置するのは可笑しいからだ。
「彼女もリリス同様に神の恵みを与えたに過ぎない。マジカルルビーも午前8時になった瞬間に言語は遮断する」
「二時間も何故猶予を?」
「本来、情けなど言語道断。だが、上げて落とすやり方も悪くないと考えたのだ。精々足掻くがいいイリヤスフィール・フォン・アインツベルン!」
リリスの件もそうだが、あくまでゲームの主役はプレイヤー。
リリスも大概であったが、ルビーも意思持ち支給品の分際であらすじを行うなど調子に乗り過ぎ。
あくまでルビーの言語を封印するだけでマジカルステッキの変身機能は当然ながら剥奪しない。
ルビーの情報とアドバイスなしのイリヤがどう藻掻くか見物だ。
「まだデイパックに入っている意思がある者達も全て口封じも実行済みだ」
最早、プレイヤーとNPC以外の第三者が口を挟むのを端っから黎斗は気に入らなかった。
最初は予選とあって一部の者は見逃していた。
それでも、自分の理想としたゲームではないのは確かだ。
言葉すら話せないクローズドラゴンは別だが。
ついでに他にも意思持ち支給品が存在するかは黎斗のみ知る秘密。
いてもとっくに黎斗によって誰も彼も言語能力を封印している。
「言葉を話すNPCは例外だ。彼らはゲームを盛り上がる存在だ」
意思持ち支給品と違い、NPCは面白い働きをしてくれる。
NPCなくてはこのゲームは語れない。
お助けキャラだったり、女性だけ守るキャラ、武器や情報など売り渡すキャラなど彼らの存在により、より一層テンションが高まるだろう。
グレートアイもNPCに組み込んだが、当然ながら、主催を倒す、殺し合いからの脱出等明らかにゲームにおけるルール違反を侵す願いは無効で対策済みだ。
NPCの存在がバトルロワイアルを興奮出来ると言っても過言ではない。
「折角、面白い物が見れたというのに面白くない顔をしてるな」
「何か。テンションが上がらない」
ハ・デスは冥王の結末にモヤモヤ感を残している。
冥王とは幾度もなく争い、互いに相容れぬ関係だ。
彼を参加者にすると提案し、支給品の没収の発案したのはハ・デス本人。
最初こそは保身第一だったはずなのに覚醒してからあそこまで活躍するとは思っても見なかった。
なら、彼が這い上がって来たら、決着を付けるつもりでいた。
カード化して、勝ち逃げ同然の結果に内心は苛立っている。
「君はもう、いい加減に部屋に戻れ」
「そうさせて貰う」
ハ・デスは本心では愚痴を零しながらも再び某空間から出て行った。
【意思持ち支給品について】
以下の要因により、全ての意思持ち支給品の言語能力は封印or口封じするものとします。
※マジカルルビーの言語能力の封印は午前8時を過ぎれば起こるものとし、二度と話せません。
※今後は意思持ち支給品が登場しても言語能力は封印or口封じされるものとします。
739
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:59:10 ID:???0
投下を終了します。
反対意見や矛盾するルール変更がありましたら投下した話を破棄します。
740
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/11(日) 04:22:20 ID:pRhK714U0
ご修正ありがとうございます
ただ今後の展開にかなり関わってくるルール変更ではあるので、ひとまず保留にします
他の書き手さんの意見も気になるので、1週間ほどの期間、意見を募集したいと思います
741
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/05/11(日) 11:27:02 ID:eCpramF20
意見が募られてたので、
多少決闘ロワに書いてる書き手の意見を一つさせていただきますね
あ、因みに私はエグゼイドは一度全話見てますがキャラクターの解釈的に、
企画主様の方が説得力のある解釈がなされると思うので私はそこには言及しません
それと文章が滅茶苦茶長いのは私の悪癖ですので、すみませんがお付き合いください
いずれの制限も「そこまでやる必要性が余りにも薄い」と感じると言うのが個人的見解になります
意志持ち支給品は確かに主役ではありませんし、企画主様自身がリリスの言動を封じていたり、
リリスを書いた氏からすれば、納得できない扱いについては分からないわけではありません
特別問題はないはずなのに何故か封じられたわけですから
ただ、氏は自分で書いたキバットは意思疎通について殆ど封じられてる扱いでありながらも、
リリスは意思疎通ができたので、その不公平を自らが行ってしまってることにもなります
勿論これはまちカドまぞくは数人参戦、キバは見せしめポジションとしての退場ともあるため、
扱いの差が生まれるのは分かりますが、それって普通にロロワと言うところの特徴だと思います
全ての意志持ち支給品を均一に調整してまで得られるメリットが余りないというのもありますが、
一番個人的疑問として大きいのは「一書き手がルールに介入しすぎている」と言うのが少し気になります
特にルビーの場合は言動を封じられたら、解説は仕方ないにせよ戦闘時にも支障が出るレベルだと思います
(FGOで例えるならば、宝具ボイスでの疑似魔術回路変換の過程の確認ができないと同義なので)
そうなるとイリヤが一人であがくどころではなくなってしまい、かなり苦しい立場に置かれてしまいます
こういうイリヤが見たいか、と言われると個人的には漫才やってる方がよほど見たいという個人的理由もありますが
また、今後登場する可能性のある意志持ち支給品についても口出しできるほど、一書き手の権限ってそこまでないと思います
つかぶっちゃけ公平不公平なんていったら、マーダーに神器ばかり仕込む私の方がよほど不公平やってますがね(笑)
野獣先輩の話では確かにリンクモンスターの概念はおろか、エクストラモンスターゾーンについての言及は、
今まで何度もデュエルを書いていた癖に一切言及してなかった私の落ち度も結構あったりしますので、
そこについての調整の言及については特に何か言うことはないというか寧ろありがたいのですが、
(拙作のスカイ・ハンターで実はモンスターを合計で六体展開してた事実については、
漆黒の闘龍はデュエルディスクに置かずに召喚してるつもりで書いてたので気にしないでください)
流石に今回のは一書き手がルールに介入するには踏み込みすぎた領域だと思っています
これを許諾、許容すると「〇〇も〇〇では?」が罷り通ってしまう可能性も出てくるので
また冥王を退場させた身としましては、
冥王に関係するカードの登場はあくまで心意による産物であり、
当人をカード化ではなく、当人の力をイメージした冥王結界波にしています
冥王自身のカード化は(性能の強弱は別として)それは違うものだと思ったからです
彼はあくまでカードとは無関係のモンスター。フィクションではなく生きた存在ですから
これはレイとロゼも同様で、個人の考えですが死亡、
或いは心意でもレイとロゼの当人をカード化はしないと思います
(今後の展開次第で何が起きるか分からないし、他の書き手がするかもしれないので断定はしません)
長々と話しましたが、以上が私の見解となります
あ、因みに私もハ・デスがもやもやしてるところについては、
「あんだけヘタレで個人の恨みで不利な状況に置いた癖に何か覚醒して、
最終的に神殺しの一端を担ったのは、散々やりあった魔王としてはむかっ腹が立ってる」
と言うところに味が感じられてとてもいい解釈だと思ってるつもりです
742
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/11(日) 21:03:23 ID:pRhK714U0
橘朔也、鬼舞辻無惨で予約します
743
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/11(日) 22:20:33 ID:p3hkfsYM0
投下&修正お疲れ様です
さらっとビルド風のあらすじを観測してる神に笑いました。本人らは大真面目で運営してるのに、どことなくシュールさが漂ってて面白い
ハ・デス、あんだけ嫌がらせした相手に勝ち逃げされたらそりゃね。イラッとする
意見を募集中とのことで自分も書かせて頂きますが、概ね◆EPyDv9DKJs氏と同意見です
私自身ポッピーや魔導雑貨商人をNPCで出した手前、どうこう言える立場でないのは重々承知しております
それを踏まえてもルビーを含めた意志持ち支給品の制限という、企画全体に影響を及ぼすルールを企画主以外の書き手が行うのは控えるべきじゃないかと思いました
事前に企画主である◆QUsdteUiKY氏に相談した上で書いたならともかく、独断でのルール変更は一書き手がやべるべきではないと考えています
氏が出したリリスに制限を掛けられ、不満を感じる気持ちは理解出来ます
ただそれならまず、ゲリラ投下を行う前に「何故リリスを制限したのかちゃんとした理由を直接聞かせて欲しい」と、◆QUsdteUiKY氏に質問をすべきだったのではと思いました
無論、氏の納得のいく返答が得られるかは分かりません
しかし俺ロワの企画の最終決定権が企画主にある以上、事前に◆QUsdteUiKY氏へ確認を取った方が良かったと言うのが私の意見となります
否定的な意見と思われたなら申し訳ありません
ですが同じ企画で書いてる書き手として、氏の作品も毎回楽しく読ませて頂いています
一緒に企画を盛り上げたいからこそ、こうした方が良いのではないかと思い意見させて頂きました
744
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:52:49 ID:Zb77DTj.0
投下します
745
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:53:40 ID:Zb77DTj.0
――橘朔也は皆で協力してポセイドンを討伐した後、リゼを殺した化け物を独り待ち構えていた。
勝算はある。勝てる可能性は限りなく低いが、最悪でも相討ちには持ち込むつもりだ。
(剣崎。――俺はお前のようになれないのかな)
もしもあの場に居たのが橘ではなく、彼の後輩――剣崎一真だったなら。
あのヒーローという存在を具現化したような男なら。
誰よりも強く、誰よりも〝仮面ライダー〟に相応しい彼ならば。
もしかしたらリゼの命を守れたかもしれない。
リゼは死ななかったかもしれない。
ふと、そんな弱気なことを橘は考えてしまった。
しかしそれは同時に彼が剣崎をそれだけ信じる仲間だという証明でもある。
(……剣崎の代わりに戦えない人々を守ると決めたのに情けないな、俺は)
橘は殺し合いが始まってすぐ、剣崎の代わりに人々を守ると誓っていた。それが仮面ライダーだからだ。
「リゼ……」
リゼ専用スピアーを眺めると、思わずリゼの名前が口から零れ出てしまう。
……なんとも情けなく、不甲斐ない声だ。
「リゼ……君には仮面ライダーは大切な人を守れないと言ったが……まさか君まで守れないとは思わなかった……!」
小夜子、剣崎に続いてリゼまで失った。
今まで仮面ライダーギャレンとして数々のアンデッドと戦ってきたが――それでもリゼを守れなかった。
それにあの場には海馬や太我も居た。……だというのに、リゼという本来ならば戦う力を持たない少女に救われた。
その事実があまりにも悔しくもあり、苦々しくもある。
「リゼ……君は本来なら平和な日常で過ごすべきだったんだ。それなのに神を自称する男のせいで殺し合いに、巻き込まれた。……そして君は勇気を振り絞って俺達を助けてくれたが、その結果……命を落とした」
橘は檀黎斗と名前も知らない化け物――鬼舞辻無惨に怒りを抱いている。
檀黎斗がいなければこんなふざけた殺し合いは開かれなかったし、鬼舞辻無惨が居なければリゼが死ぬことはなかった。
ゆえにこの二人に対する怒りは凄まじい。
だからこそ単独でも無惨に挑む道を選んだ。
746
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:54:49 ID:Zb77DTj.0
「とりあえずリゼの友人を殺した金髪の男――ポセイドンは倒したが……肝心のリゼを守れないなんて、俺は師匠失格だな……」
もしもこの場にリゼや剣崎一真、上城睦月が居ればその言葉を否定していたかもしれない。
だが今の橘は独りきり。ゆえにこの場に彼の言葉を否定する者は存在せず、怒りと悔しさ。哀しみと自責の念が波のように押し寄せてくる。
橘朔也は仮面ライダーだ。
仮面ライダーとは、ヒーローのようなものだ。
剣崎一真がそうだったように。
闇を振り払った上城睦月が最終的にそうなったように。
橘とて立派な仮面ライダーだ。それは彼を知る誰もが認めることだろう。
しかし今の橘の心境としては自分が剣崎達のような仮面ライダーだと胸を張って言える自信がない。
そして自分は師匠としても不甲斐ないと考えてしまう。
(弟子のリゼに命懸けで助けられて、何が師匠だ――)
あの状況を乗り越えられたのは、間違いなくリゼの勇気のおかげだ。
きっと死ぬのは怖かっただろう。共に殺し合いに巻き込まれた友達のことも心配だったろう。
本当ならば――リゼがした役割は自分がするべきだった、と。橘は自分を責める。
しかしそんなことをしても現実は変わらない。
リゼが死んだという。化け物に殺されたという悲劇は何も変わらないのだ。
「リゼ……本当にすまない……」
――だから橘にはリゼに謝罪して、そしてリゼの仇を取ることしかもう出来ない。
それしかもう、出来ないのだ。
小夜子の時と同じように。
リゼ専用スピアーを暫く眺めた後、仕舞う。
相手はリゼの仇だ。せめてトドメはコレで刺したいが、どうしたものか。
あの化け物は日光が弱点の可能性が非常に高い。
そしてリゼは仮面ライダーに変身していた。……ということは日光を避けるためにリゼが変身していた仮面ライダーに変身してくる可能性が高い。
そうなれば必然的に相手の攻撃手段は限られてくる。あの化け物染みた強さは発揮出来ないだろう。
更に言えば日光が弱点ということは、バックルを破壊するか多大なダメージを与えて変身解除まで追い詰めれば勝機はある。
リゼ専用スピアーは、槍だ。貫通力が高く、バックルを破壊するのに向いている。
だから橘は師匠として弟子の形見もしっかりと使うつもりだ。……この槍は、リゼと自分が最初に邂逅した時のキッカケでもあり、何かと思い入れも深い。
……もっとも本来はリゼが使う予定だったのだが。
そして――ギャレンの複眼は。
橘朔也の目は、たしかに捉えた。
こちらに向かってやってくる仮面ライダースナイプが。
ゆえにギャレンは容赦なく仮面ライダースナイプに向けてギャレンラウザーで銃弾を連射する。
仮面ライダースナイプは銃弾を被弾して、火花を散らしながらもギャレンに迫る!
747
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:56:34 ID:Zb77DTj.0
運の良いことにスナイプもその名の通り、銃使いの仮面ライダーだ。ゆえに無惨もガシャコンマグナムを乱射するが――銃を使いこなすには当然、技術が必要だ。
しかし無惨にそんな技術はなく、ゆえに走りながら雑に乱射するだけではなかなかギャレンに被弾しない。
だが二人の距離は着実に近付いている。
そしてスナイプとギャレンの距離が一定まで縮まった瞬間――橘はギャレンラウザーを連射して牽制しながら、拳を握り走り出した
「ウワアアァァアア――!」
『UPPER』 『FIRE』
――それは、魂の咆哮
ギャレンの拳が燃え盛る
「ほう。この場にいるのはお前独りか」
相手から距離を詰めてきたことは好都合。無惨は慣れないガシャコンマグナムで戦闘することをやめ、ギャレンに殴り掛かる。
互いの腕が交差し、スナイプの拳がギャレンの仮面に。橘のファイアアッパーが無惨の腹に命中する。
だがスナイプのみが、一方的に吹っ飛ぶ。
何故、このような結果になっているのか。
何故、鬼を統べる鬼舞辻無惨が。先程はギャレンなんて虫けら程度に思っていた無惨が不利な状況に立たされてるのか。
その理由は至って単純。
まず、仮面ライダーとして戦ってきた長さが違いすぎる。橘は元々仮面ライダーギャレンとしてアンデッドと戦ってきたが、無惨は鬼としては驚異的な強さを誇るものの仮面ライダーに変身したのは今回が初めてだ。ゆえにその技量の差は大きい。
次に、橘の融合係数が非常に上昇していることがある。仮面ライダーギャレンは感情次第で融合係数が上下し、それによって強さが大きく変動する。そして――リゼの仇を前に、橘の融合係数は爆発的に上がっていた。
この爆発力こそが橘の強みであり、何故か強化フォームであるジャックフォームよりも基本フォームで強敵を倒してきた原因もこれだ。
次に、スナイプは普通のパンチだがギャレンはファイアアッパーという技を使ったこと。
当然だが、ただ拳で殴るより技のほうが強い。
そして無惨は仮面ライダーに変身していることもあり、本来の戦い方が出来ない。これがあまりにも大きすぎる。
仮面ライダーに変身することで装甲を纏い、日光は克服出来たが鬼としての強みを失った。そんな無惨は大した脅威にならない。
総じて言えることは、無惨はリゼを殺すことで日光の対策は出来たが、それが橘の逆鱗に触れてギャレンが先程よりも爆発的に強くなり。
逆に無惨は仮面ライダーとしての戦い方を強いられることで大幅に弱体化したようなものだ。
「ぐっ……!何故、私がたかだか人間一匹に……!」
「人間を無礼(なめ)るな!リゼを殺した化け物――貴様はここで俺が倒す、生かしてはおけない!」
言葉を互いに交わし、再び距離を詰めたギャレンは、今度はゲーマドライバーに向けて零距離で連射する。
748
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:58:22 ID:Zb77DTj.0
「お前はここで終わりだ!これ以上、リゼのような犠牲は出さない!きっとリゼもそれを望むはずだ!」
「グァァアアア!リゼリゼうるさいぞ、この異常者が!」
――異常者。
無惨にとって橘はそれ以外のなんでもなかった。
つい数時間前に数人掛かりで惨敗したというのに、今度は独りで挑もうとするなど狂っている。
そしてそんな異常者に、鬼舞辻無惨は追い詰められている。しかも最悪なことに継国縁壱の時のように自身の細胞を分解して逃げ去ることも出来ない。変身を解除したら、死あるのみだ。
そんな状況に無惨は苛立つ。
(何故だ。何故、こんな異常者如きに私が殺されねばならん!!!)
しかしどれだけ憤怒したところで、状況は変わらない。
このままだとゲーマドライバーを破壊されて無惨の変身は解除されることだろう――。
(!そういえばあの少女が、不思議な力を発揮していたな――)
無惨が思い出したのは、ハイパームテキガシャットを使い自分に喰らいついてきたリゼの姿。
あの時、何故か不思議と少女は一切の負傷を受けていなかった。
ならば――
無惨は零距離射撃を受けながらも、ハイパームテキガシャットを取り出し――ゲーマドライバーに挿入する。
『ガッチャーン!ムテキレベルアップ!バンバンシューティング!…アガッチャ!』
そして――スナイプが黄金に輝き、無敵になる。
(やはりこの道具が鍵だったか……)
リゼが異様な強さを発揮していたことに納得しながら、ハイパームテキガシャットをキメワザホルダーに入れた。彼女がその効果を発揮していた時間もわかっている。非常に短時間だ。
ゆえに無惨は慢心せず、安心して生き残れるように目の前の異常者をムテキの効果が切れる前に屠ることを迷わず選んだ。
『キメワザ!!ハイパークリティカルストライク!!!』
黄金に光り輝くスナイプが渾身のキックを繰り出す。何度も、何度も、怒涛の嵐のように連撃を加える。
「ぐわぁあああああ――!」
あまりもの激痛に橘が絶叫するが、それでも容赦なく連撃は続く。
対抗する手段は残念ながら――ギャレンにはない。
しかし地獄のような時間はほんの僅か。
橘の体感時間では凄まじく感じたが、たったの10秒で終わった。
そして無惨がギャレンを見ると――その仮面の半分が割れ、露出した顔から血を流し地に伏す橘が見えた。
――その光景はまるで、ギラファアンデッドと戦った時と同じ。
強いて違いを上げるなら、橘が大地に伏していることか。
749
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:59:31 ID:Zb77DTj.0
「どうやらお前の悪足掻きもここまでのようだな」
(リゼ……。俺は――)
スナイプは露出した橘の顔に向けて冷酷にもガシャコンマグナムの銃口を向けた。
当然だが、装甲を纏っていない部分は生身同然だ。
ゆえにこの一撃が決まれば橘は命を落とすだろう――
(俺は――君のことが大切だった)
不思議と橘に恐怖心はない。
この絶体絶命の窮地で――されども橘はすぐに立ち上がり。
「ウワアアァァアアアアア!」
「何!?」
左手でスナイプのガシャコンマグナムを叩き落とし、更に右手に握ったギャレンラウザーを無惨へゼロ距離で連射する。
「ぐぅぅうう!この異常者が!」
スナイプからバチバチと火花が飛び散り、無惨に着実にダメージを与える。
無惨は眼前の異常者(たちばな)に苛立ちを爆発させるが、このままではベルトが破壊されて日光を浴びてしまう。
ゆえに無惨は痛みを堪えながらも橘に背を向け、逃走を図る。
自分がピンチになればプライドも何もかなぐり捨て、逃走する。鬼舞辻無惨とはそういう男だ。
しかしそれは橘にとってはあまりにも突然であり、対応が遅れる。
ギラファアンデッド以上の化け物が逃げ出すなど、予想外過ぎる行動だった。
「待て!」
僅かに遅れてリゼ専用スピアーをデイパックから取り出し、握り締めたギャレンがスナイプを追跡する。
無惨は背後から迫る橘にガシャコンマグナムを乱射するが、その視線は前を向いたままなので素人であり、相手を見てもいない攻撃がまともに当たるはずもない。これはただの威嚇射撃だ。
しかし下手な鉄砲も数打ちゃ当たるという諺通り、ギャレンに当たる可能性は十分にある。
橘は弱点である露出した顔を片腕で隠しながら威嚇射撃を恐れることなく走る。無惨の銃撃がその腕に当たる。ギャレンの装甲がない生身の顔に命中していたら危険だっただろう。
750
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:59:58 ID:Zb77DTj.0
「しつこい異常者が……!」
「俺は貴様を倒す。リゼの仇は必ず取る!」
ギャレンは走りながらもギャレンラウザーを連射し、正確にスナイプに当てる。
スナイプの背中から火花が散り、無惨は痛みを受けるがそれでも止まらない。生に対する異様なまでの執着心が無惨の身体を突き動かしているのだ、痛みなど気にしている場合じゃない。
(何故だ。何故、あれほど負傷してもこいつは戦える……!)
橘はギャレンの仮面の半分が割れるほどの猛攻を受け、その負傷も大きいはずだ。
なのに何故か彼は普通に動けている。鬼舞辻無惨という脅威に臆することなく、恐怖することなく追跡してくる。
それは無惨からしたらあまりにも気が狂った異常者だ。
(……虫唾が走るが。このままでは埒が明かんな。こいつはここで仕留める)
このまま逃げ続けても、鬼ごっこのように橘は無惨を追い続けるだろう。
そうしていると道中で他の人間と遭遇し、手を組む可能性がある。もしもそんな展開になったらあまりにも厄介だ。
ゆえにこの異常者(たちばな)はここで潰す。
幸いにも無惨と橘はそれなりに距離が開いている。
無惨はガシャコンマグナムをライフルモードに変更。
そしてくるりと橘の方を見て、ガシャコンマグナムを構える。
(なんだ?急に逃げるのをやめた?)
無惨の行動を不思議に思う橘だが、ガシャコンマグナムの銃撃程度ならばギャレンの装甲で負傷を軽く出来ることは実証済み。
ゆえに走る足は止めず、無惨に接近する
そして無惨は――ガシャコンマグナムにバンバンシューティングガシャットを挿入。
『バンバンクリティカルフィニッシュ!』
――ガシャコンマグナムからエネルギーが一直線に放たれ、ギャレンのいる方向へ凄まじい速度で進む。
751
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:00:36 ID:Zb77DTj.0
(……これでようやく死んだか?)
攻撃の余波で砂埃が舞い、ギャレンの姿が見えないがこの一撃を受ければ流石に死ぬだろう。
無惨は安心して再びギャレンに背を向ける、と――
「まだだ!そうだろ?橘さん」
――槍と盾を手にした紫髮の少女が、橘の前に立っていた。
「リゼ……。君はたしか――」
「ああ、私は死んだよ。でも橘さんの〝想い〟と私の槍が少しだけ私に時間をくれたんだ」
「そうか……。俺の想いが、君を……」
「とにかく急ごう、橘さん。あいつはかなり危険だ!」
――それは土壇場で橘とリゼに起きた奇跡。
否。断じて、否。
これは奇跡などじゃない。師匠と弟子の絆による、必然の結果。
――橘の想いがリゼ専用スピアーに反応し、心意を引き起こした。
ちなみにリゼが盾でバンバンクリティカルフィニッシュを防げたのは、復活してすぐにスキル〝ここからが私の見せ場だな!〟を使っていたためだ。
「どうなっている!お前は私が喰ったはずだ!」
コメカミに青筋を立て、怒り狂う無惨。
なんなのだ、このわけのわからない展開は。死者が復活するなど有り得ない。
(まさか――)
無惨には一つだけ心当たりがあった。
彼が思い返すのは、神を自称する異常者による放送だ。
禁止エリアなど重要な情報を得るために無惨はこれをしっかり聞き、様々な情報を記憶していた。
『それと、だ。君達の中には既に奇妙な現象に遭遇した者もいることだろう。
本来なら使えない力やアイテムを、死闘を経験し手に入れた者達が、だ。
不安がる必要はない!それらも私が設定した、ゲームを盛り上げる要素の一つ!
たとえ格上とぶつかっても腐るな!一発逆転のチャンスは平等に転がっているゥ!』
(放送であの男が言っていた奇妙な現象とは、こういうことだったのか……!)
無惨はリゼが蘇ったことに納得すると同時にあまりもの理不尽に苛立ちを募らせる。
しかし無惨は、再び逃げ始めた。
本来ならば苦も無く倒せる相手だというのに、今の状態では逃げるしかない。
それが異様に腹正しいが、太陽さえ沈めば。夜になれば変身解除して、この異常者(たちばな)を瞬殺出来る自信がある。
それに死者の蘇生なんて滅茶苦茶なことは、永続的じゃないだろう。そうでなければこの殺し合いは終わらないからだ。
「逃がすか!」
リゼは自身のとっておきを使い、巨大な銃で仮面ライダースナイプこと無惨を撃ち抜く!
無惨は光の奔流に飲み込まれ――かなりの負傷を負った。
「しつ、こいぞ……。この、異常者共が……」
それでも無惨は一度倒れたものの、両手を地面に着けてゆっくりと立ち上がる。
そしてなんとか身体を動かし、逃走を図った。
752
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:01:27 ID:Zb77DTj.0
「今だ、橘さん!」
「ああ。ありがとう、リゼ!」
『DROP』 『FIRE』『GEMINI』
『バーニングディバイド』
電子音が鳴り響き――
「ウォォオオオオ!!」
橘の雄叫びが木霊すると共に、逃げ出そうとゆっくり動く無惨の背後から、宙を舞う二人のギャレンによる炎を纏った蹴りが炸裂する!
「グ、ァアアアアアアア――!」
立て続けに必殺技を受け、あまりもの激痛に無惨は絶叫する。
そして無惨の近くに降り立った橘の元にリゼがやってきた。
「この異常者共が!どうして私がこんな仕打ちを受ける必要がある!!私はただ生きたいだけだ!!!」
「それは――貴様がリゼを殺したからだ!」
「生きたいだけ?それならどうして私達を襲ったんだ。異常者はお前だろ!」
喚き散らす無惨に橘とリゼが一喝する。
「……それにしてもこいつかなりしぶといな、橘さん」
「ヤツの弱点はおそらく日光だ。アンデッドが封印しなければ不死身だったように、こいつも日光を浴びなければ不死身なのかもしれない」
「そのアンデッドっていうのはよくわからないけど、つまりベルトを壊せばいいのか?」
「そういうことだ」
「それなら――橘さん、私と一緒にこの槍を握ってくれ」
「……わかった」
二人が会話している間にも無惨は逃げ出そうとするが、度重なる負傷でその速度はあまりにも鈍い。
「いくぞ、リゼ!」
「任せろ、橘さん!」
そして二人は両手に槍を握ったまま走り出し――。
「橘さん、技名はダブルワイルドクラッシュなんてどうだ?」
「リゼと俺でダブルということか。いい技だな、リゼ」
そして――
「くらえ、化け物!」
「リゼの仇、取らせてもらう!」
「「ダブルワイルドクラッシュ――!!」」
二人で握り締めた槍を無惨の背後から腹を貫き、ベルトへ突き刺す。
「ガッ……!」
無惨は腹を槍が貫通した痛みに、うめき声をあげて――やがて変身が解除される。
「ア……ア……ア……!アアアアアア!!」
生身になった無惨は太陽に灼かれ、絶叫と共に無へと帰った。
カラン、カラン――。
無惨は肉体を失い、後に残った首輪の金属音と装着者を失ったベルトの音が鳴り響く。
橘はその首輪とバンバンシューティングガシャット、ハイパームテキガシャットを拾う
そして無惨のデイパックから基本支給品とボーちゃんの首輪を発見して、回収するのだった
753
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:02:00 ID:Zb77DTj.0
◯
「ふぅ……。終わったな、橘さん」
「ああ、そうだな……」
戦闘が終わった後、リゼの身体が僅かに透き通る。
「リゼ……。君の身体に何か異常があるようだが、大丈夫か!?」
「……ん?あぁ……そろそろお別れの時間なのかもな」
「……そうか。たしかにリゼは、少しだけ時間を与えられたと言ってたな……」
「そういうことだ。……私のためにがんばってくれてありがとな、橘さん」
「いや……感謝されるようなことはしない。むしろ俺を助けるためにリゼは命を落とした。俺は師匠として、君に何もやってあげられなかった……!」
「アレは私が選んだ道だ。橘さんやもぐもに死んでほしくなかったからな。それに橘さんは私の仇を取ろうと必死になってくれた」
――だから、さ。
「だから――橘さんは私にとって最高の師匠だったぞ!」
「ありがとう。……こんな俺にそんな言葉を掛けてくれるなんて優しいな、リゼは」
――橘さんは未だに暗い顔をしたままだった。まだ仮面ライダーに変身してるけど、マスクが割れてるから表情くらいわかるんだ。
私は本心から橘さんを最高の師匠だと思ってる。マヤの仇を取ってくれたのも、あの世からしっかり見てたし――だから私にはあまり悔いがない……なんて言ったら嘘になるけどさ。
ココアやチノやメグが心配だし、私が死んだらシャロや千夜も――みんな悲しむだろうし……。
だけど橘さんやもぐもを助けられて良かったと思うし、橘さんにも言ったけどこれは私が選んだ道だ。
だからそれで橘さんにこんな表情(かお)されたら――成仏してもしきれないじゃないか。
「別に優しさとかじゃないぞ。私は自分が選んだ道のせいで橘さんが落ち込むのが嫌なんだ――」
「……そうか。それは、すまない」
「だから、橘さんが謝る必要ないって。なんていうかさ――橘さんには笑顔でいてほしいんだよ。これが私の――弟子としての最期のお願いだ」
そうじゃなきゃ、橘さんが心配で死んでも死に切れないからな。
「わかった。ありがとう、リゼ!君は俺の最初に出来た弟子と並んで――最高の弟子だ!」
そんなことを言いながら、ぎこちなく笑う橘さん。
まあいきなり気持ちの整理をして、心から笑えっていうのは無理があるよな。
……でもそんな表情(かお)になるくらい、私を大切にしてくれたかとは嬉しいとも思う。
――なんて考えたら、周りが光に包まれてきた。
そろそろ本当にお別れ、か――。
「最高の弟子なんて嬉しい言葉をありがとな、橘さん。……そろそろ私にまたお迎えが来そうだ」
「……そうか。リゼは、また逝ってしまうのか……」
「ああ。でも私はいつまでも一緒だ、橘さん。最期に私の手を握ってくれ」
「……わかった」
そうすると私は橘さんと握手をして――。
「短い間だったけど、楽しかったよ。本当に橘さんの弟子になれて良かったと思ってる」
「ああ、俺も楽しかった。リゼ……君に会えて本当に良かった」
「……ありがとな」
またあの世に行くのは悔しくて、涙が出そうになるけど――私は気合いでグッとそれを堪えて、笑顔で告げる。
「――じゃあな、橘さん」
「ああ……。さよなら、リゼ」
754
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:02:48 ID:Zb77DTj.0
◯
橘はリゼが消滅するのを、見送った。
その直後――ギャレンの変身を解除しようとする橘に変化が起きた。
「ぐ、ぅ……!?なんだこれは……!身体が……熱い!」
唐突に全身を焦がすような熱が襲い、ギャレンを焔が包み込む。
「何が起こって――」
そう口にして、変化に気付く。
「なんだこの声は?これは俺の声じゃない。まるでリゼの声だ!」
そう、橘の声はリゼそっくりになっていた。
そして焔から解き放たれると――そこで視線が低くなっていることに橘は気付いた。
「俺の身に何が起こっている……?」
不思議な体験を果たした橘は、少し歩くと偶然にも民家があった。
橘はそこへ入り、少し探索すると――目的のものはすぐに見つかった。鏡だ。
そして橘は鏡の前に立ち、自分の姿を確認すると――
「なに!?俺がリゼになってるだと!?」
そこには紫色のラビットハウスの制服を着用したツインテールの長身の美少女が映っていた。
というより――その姿は誰がどう見ても、天々座理世そのものだった。
橘は暫し困惑するが、元々研究者であった彼は意外と頭が良い。
この現象に、1つ心当たりがあった――。
『それと、だ。君達の中には既に奇妙な現象に遭遇した者もいることだろう。
本来なら使えない力やアイテムを、死闘を経験し手に入れた者達が、だ。
不安がる必要はない!それらも私が設定した、ゲームを盛り上げる要素の一つ!
たとえ格上とぶつかっても腐るな!一発逆転のチャンスは平等に転がっているゥ!』
――放送で神を名乗る男が話していたことを思い出す。
リゼが一時的に生き返ったのも、自分がリゼと同じ姿になったのも彼の言っていた〝不思議な現象〟なのだと察する。
つまり、これは橘の心意だ。
リゼと再び出会い、別れを惜しみ――〝いつまでも一緒だ〟という言葉を掛けられた橘は、このような形でリゼと同じ姿になった。
もっともこれはリゼが一時的に蘇った心意と同じく、橘だけでは発動しなかったであろう心意だ。
リゼ専用スピアーとリゼに再び出会ったから起こった心意といえるだろう。
「……それにしても、見た目が変わってもギャレンラウザーとラウズカードはそのままなんだな」
リゼの見た目になっても腰にホルダーがあり、そこにギャレンラウザーがある。ラウズカードも無事だった。
どういうわけかギャレンバックルは失ったが、戦闘は可能だろう。
なお橘は気付いていないがこの状態はギャレンの通常フォーム並のスペックを生身で誇り、融合係数によって強さが変動することも同じだ。
「俺がリゼになったということは……。試してみる価値はありそうだな」
そして橘はリゼ専用スピアーを手に取り――
「変身!」
――その掛け声と共に〝ナイト〟のクラスへと変身し、服装が変わると共に槍だけでなく盾を手にする
「なるほど……。やはりこの武器で〝変身〟出来るようになったのか」
確認を終えた橘は変身解除する。
すると、服装もラビットハウスのものに変わっていた。
「リゼ……。君の意志は俺が引き継ぐ。リゼの友達を助け、戦えない人々を守りながら――この殺し合いを打破してみせる」
その後、橘は民家を漁り包帯など治療に使えるものを発見。
包帯を巻いたり、ガーゼで傷痕を止血すると余った分をデイパックに詰め込んだ
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 死亡】
【E-2(民家)/午前/一日目】
【橘朔也@仮面ライダー剣】
[状態]:ダメージ(大、包帯やガーゼにより止血済み)、疲労(大)、心意によりリゼの姿・声に変化
[装備]:ギャレンラウザー&ラウズカード@仮面ライダー剣、リゼ専用スピアー@きららファンタジア
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×1、バンバンシューティングガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ハイパームテキガシャット@仮面ライダーエグゼイド、首輪×2(ボーちゃん、鬼舞辻無惨)
[思考・状況]基本方針:剣崎とリゼの分まで人々やリゼの友達を助ける。ゲームマスターも倒す
1:ありがとう、リゼ。君は睦月と並んで最高の弟子だ
2:まさか俺自身がリゼになるとはな……
3:リゼの友達を探す。リゼの分まで俺が守る
[備考]
※参戦時期は最終回後。
※遊戯王OCGのルールを多少把握しました
※脚の負傷具合については少なくとも完治してます
※心意により見た目と声がリゼと同じになりました。生身でギャレンのスペックで、融合係数の変動で強さが変わるシステムを常に発揮しています。ギャレンラウザーを用いることでラウズカードやコンボ技も使えます
※リゼの姿になったことでリゼ専用スピアーで変身可能になりました
755
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:03:38 ID:Zb77DTj.0
投下終了です
756
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 13:06:06 ID:Zb77DTj.0
閑話:神の整理PART2の件についてご連絡です
まずは皆様、ご意見ありがとうございます
ふと思ったのですが、◆2fTKbH9/12氏がリリスが口封じされたことを不公平に思っているなら、リリスを口封じしない方向で『fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI』を修正しようと思っています
まだリリス達のグループはこれが最新話なので、まだ修正が出来ると判断し、それでこの提案に至りました
しかしキバットだけが口封じされている状況もまた歪なので、キバットの口封じも解禁する方向での修正になると思います
ご検討よろしくお願いします
757
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/12(月) 18:07:50 ID:???0
意見を頂いた皆さまにお手数をおかけしてすみません。
初めに誤解がないよう言います。決してリリスの扱いが不満で書いた訳ではありません。
今後がどうなろうが文句はないです。
ペンデュラムゾーンとエクストラモンスターゾーンのような放置して対応がいい加減にしない為です。
それらの戦闘シーンがないお陰でその場をしのいで来ましたが、手を打って無事に済みました。
また上記のように繰り返さないようまた管理が甘く曖昧さをなくすために全ての意思持ち支給品が口封じの方針で対応しようとしました。
報連相もしないで先走ってしまい皆さまに誤解を生んでしまい、本当に申し訳ございません。
今後のリリスとキバットの処遇は♦QUsdteUiKYさんの判断に委ねます。
一書き手が口出しする権利はないです。どのように下すかはお任せします。
758
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/13(火) 00:35:02 ID:koWNE/hQ0
◆QUsdteUiKY氏投下お疲れ様です&◆2fTKbH9/12氏返答ありがとうございます
>>731
の予約に橘朔也を追加します
759
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/14(水) 19:34:26 ID:IraaUs.c0
◆2fTKbH9/12氏、ご回答ありがとうございます。
とりあえず皆様の意見を見て、考えた結果として閑話:神の整理PART2は不採用ということにしておきます
またリリスとキバットの口封じですが、もしもリリスの扱いが不公平だと思ったのならば強引にでもなんとか修正するつもりでした。
しかしキバットだけが先に口封じされている理由付けを考えるのが困難であり、また◆2fTKbH9/12氏がリリスの扱いを不満に思っていないとのことで、ひとまず修正は無しということにします。
ですが◆2fTKbH9/12氏は様々な話を書いて、当企画に貢献していただけてる書き手さんなのでもしも〝本当は不満〟だと思っているならば、遠慮なく言ってくださいね。
その場合、なんとかキバットのみが口封じされていた理由付けを考えて修正致します
760
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/17(土) 23:30:02 ID:9YHx6vdg0
延長します
761
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/18(日) 16:23:54 ID:???0
>>759
♦QUsdteUiKY氏のご決断をして頂き有難うございます。
こんなことでお手数をおかけして申し訳ありません。
教えろ!野獣先輩が学ぶデュエル教室 にて状態表の道具の欄に緑へものスタンガン@落ちこぼれフルーツタルト が書き忘れていたのでwikiで修正をお願います。
お詫びにキリト、空、宮川尊徳、ユキ、直見真嗣、クウカ、奈津恵、コッコロ、継国縁壱、肉体派おじゃる丸を予約と延長をします。
762
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/18(日) 18:31:17 ID:2lq4aURA0
>>761
ご予約ありがとうございます、該当箇所を修正致しました
763
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:52:27 ID:W.NkZqAI0
投下します
764
:
この残酷な世界の成り立ちを!
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:54:16 ID:W.NkZqAI0
――赤い装甲を身に着けた銀髪の男はジッとモニターを眺めていた。
幾多ものモニターがある中、彼が特に注目しているのはキリトのグループと直見真嗣のグループ、そしてジャック・アトラスのグループだった。
「ジャック・アトラスが脱落したか……」
ジャック・アトラス。
このデスゲームの重要な要素――心意を誰よりも。現段階ではキリト以上に使いこなし、数多の激戦を繰り広げてきた男。
そんな男の最期は、あまりにも呆気ないものだった。〝ボスクラスのレッドプレイヤー候補〟としてデスゲームに参加させたポセイドンを他の参加者と共に討ち取る姿には高揚したが――されどもジャック・アトラスは死んでしまった。彼の進化は、ここで止まってしまったのだ。
「これは、ゲームであっても遊びではない——。ジャック・アトラスの死亡は惜しいが、それを撤回することは出来ない……」
「その様子だと随分とジャック・アトラスを買っていたようようだなァ。ヒースクリフ。――いや、茅場晶彦ォ!」
「私は彼に期待していた。ラスボス戦まで辿り着くと確信すらしていたんだ。まさかの展開に動揺もするさ」
「だがジャック・アトラスは死んだァ。同じゲームクリエイターだからわかると思うが、このゲームでは基本的にコンテニューは出来ない!」
「そうだな。だが私にはまだ一戦を交えたいプレイヤーがいる」
「かつて君を一度倒したというキリトか?」
「ああ。それとあの時のキリト君と同じくシステムを上回る人間の意志を見せてくれる参加者――直見真嗣だな」
「直見真嗣か。彼には君と私が作り上げたMurder――〝マサツグ様〟もいるな。もっともマサツグ様の方はあまり上手くいってないようだが……」
「マサツグ様は単純に出会いが悪いのと、性格をあまりにも悪くし過ぎたようだ。だが彼は負の心意に目覚める可能性が高い。そういう意味では期待出来るさ」
「負の心意か。茅場晶彦、君が直見真嗣に注目しているのはオレイカルコスの結界に呑まれたプレイヤーをその呪縛から解き放ったからか?」
「そうだ。そういう意味ではコッコロ君やメグ君にも期待はしている。特にメグ君はコッコロ君の負の心意を振り払ったからな。それに罪と光を受け入れた彼女達がどういう行動をするかは、個人的に興味深い」
「……なるほど。やはり君は〝心意〟を重要視しているようだな」
765
:
この残酷な世界の成り立ちを!
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:54:36 ID:W.NkZqAI0
「私はキリト君のシステムを上回る人間の意志――心意に敗北した。拘るのも当然だろう」
「茅場晶彦。まさか君はキリトやマサツグ達に負けるのを望んでいるのか?」
「そういうわけじゃない。どんな理不尽を前にしても、ゲームマスターを前にしても――屈服せずに立ち上がる。そんな彼らの姿が見たいだけだ」
「だがキリトは全く戦闘をしていない。それについては君の期待外れか?」
「いや――キリト君達もいずれ戦闘する時が来るだろう。このデスゲームはソードアート・オンラインとはまた違う。バトル・ロワイヤル形式の仮想現実だ。否が応でもキリト君は剣を握り、レッドプレイヤーと戦わなければならない時が来る。そのために彼と因縁が深い人物も招待した」
「PoHか。たしかに彼の心意や経歴はなかなか面白い。このバトルロワイヤルにはうってつけのものだァ!」
「そしてもう一人、気になるプレイヤーは居るが――」
茅場はチラりと遊星が映されたモニターを眺める。
「――彼の相手は十代君に譲ろう。私より十代君が相手をする方が向いている」
「それは一理あるな。だから私は覇王の時代から遊城十代を連れてきたのだァ!だが茅場、君は武藤遊戯には興味がないのか?」
「今のところは武藤遊戯よりも心意で神のカードを再び手にした海馬瀬人に興味があるな。武藤遊戯にもこれから興味が湧くかもしれないが……現時点ではそれほど重要視していない」
それだけ言うと、今度は茅場が質問する番だ。
「そして1つ質問だ。NPCにボスクラスのキャラが潜んでいることを私は聞いていない。天ヶ崎恋――ラヴリカバグスターは能力も経歴も明らかに私が想定しているNPCの範疇を超えている」
「そこについては問題ない。ラヴリカ本人は気付いていないようだが、大幅に弱体化している」
「……弱体化させてまでNPCとして召喚する意味があったのか?」
「彼はなかなか面白い性格をしている。今回は性能よりもそこを買った。まあ一種のギミックのようなものだ。今後はボスクラスのキャラがNPCとして出てくることもないから安心したまえ!」
「なるほど。そういうことなら、私も納得しよう」
追加主催
【茅場晶彦(ヒースクリフ)@ソードアート・オンラインシリーズ(アニメ版)】
※この世界は茅場晶彦と檀黎斗が構築したものでした
※マーダー不足を懸念して、新たなマーダーがプレイヤーとして招かれる可能性があります。もしかしたらその関連人物も招かれる可能性もありますが、対主催とマーダーのバランスを考慮して茅場と檀黎斗が判断します
※茅場晶彦のアバターはヒースクリフです。キリト同様、ステータスなどもヒースクリフと同じです
※ルールに記載していなかったこちらの落ち度なのでラヴリカのみ特例ですが、今後は企画主以外は事前の相談なしにNPCでボスクラスのキャラが出ることを禁止します。ポッピーや魔導雑貨商人などのお助けNPCは大丈夫です
※ラヴリカバグスターは大幅に弱体化しています
766
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:55:54 ID:W.NkZqAI0
投下終了です
767
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:46:31 ID:dyk1XPSI0
投下お疲れ様です。自分も投下します
768
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:48:27 ID:dyk1XPSI0
「強大なエネルギーを秘めたパンドラボックスを巡り…っていつの話だよこれ。台本チェンジだチェンジ」
『胡散臭さに手足が生えたような地球外生命体が去った後、わたしとイリヤさん達一行は仮面ライダー捜索の為に別行動を取りました。
見てますか皆さん!何故か喋れなくなったような気がしましたけど、ご覧の通りいつものルビーちゃんですよー!』
「急に何の話をしてんだよ。一方俺ことエボルトは七海やちよのお気に入りの魔法少女、環いろはとの接触に成功。
こいつを連れて行けば好感度アップも間違いなし。おいおいまさか、本当にハーレムルートに入っちまったか?」
『魔法少女に不埒な真似を目論む愚行、全ての可憐な女の子の味方であるこのわたしが許しませんよ!
それにしても環いろはさん、あんなピッチリスケスケ衣装とはけしからんですねぇ。ウチのイリヤさんとの素敵なショット(意味深)を期待したいですねぇゲフフ(汚い笑い)』
「一行前と即座に矛盾してんぞ。さぁて、どうなりますやら」
----
「しっかし分からねぇもんだな」
エーデルフェルト邸を後にし、徒歩で移動の最中。
暫し続いた無言を打ち破ったのは、蛇王院が発した一言だった。
前触れなく出たその言葉に、同行者二名と一本は視線で続きを促す。
分からないと急に言われても、一体何の事かがこっちはサッパリなのだから。
「遊戯や遊星は自分のデッキを取られてんのに、凌牙は本人のを渡されてんだぜ?それにイリヤだって、相棒と引き離されなかった。
なんだってこうも支給品に差があるのか分からなくてよ」
「言われてみれば……そっか、わたしもルビーが一緒じゃなかったかもしれないんだ」
有り得た可能性を思い浮かべ、幼い肢体が微かに震える。
デイパックを開けたら真っ先に相棒のステッキが飛び出し、普段通りに戦えた。
しかし遊戯や遊星のみならず、イリヤもルビーの没収により戦闘手段を失う事態が起こらなかったとも限らない。
運が悪ければ、司共々斬り殺された末路があったかもしれないのだ。
平行世界への転移直後、ベアトリスから必死に逃げた時の事を嫌でも思い出す。
事情が重なり見逃され命拾いした、そういう幸運が二度も続くと楽観的には考えられない。
『うむむむ…むさ苦しくてあくどい男の手に渡った可能性もあるってことですねー……。何たる地獄!ルビーちゃんはイリヤさんに身も心も全て捧げ、染め上げられたと言うのに!』
「誤解を招くこと言わないでよ!?」
『えー事実じゃないですか。初めて会った晩、熱くてドロリとした液体をわたしに……』
「あ、あれは鼻血でしょ!」
半分事故、もう半分はこの面白ステッキが原因で義兄と入浴中バッタリになったのも今や懐かしい。
あの時見たモノが記憶から引っ張り出され、つい頬に朱が差す。
769
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:49:29 ID:dyk1XPSI0
「デッキを取られたのは確かに痛いが、コレが没収を免れたのは助かったぜ」
傍らの漫才染みたやり取りを尻目に、遊戯は首から下げた装飾品を見やる。
現代を生きる決闘者と名も無きファラオが人格交代を行うには、千年パズルが必要不可欠。
今こうして自分が表に出て話す事すら、現実に起こっていなかったのも有り得た。
主催者に感謝する気は微塵も無いが、没収を免れたのには安堵を抱く。
それはそれとして、デッキが他者の手に渡ったのはやはり頭の痛い問題だった。
「凌牙が最初から自分のデッキを持ってるってことは、別にデュエル自体を禁止してる訳じゃねぇんだろ?なら、遊戯達にだって支給しても問題ない筈なんだが」
「……若しかすれば、俺や遊星くんがデッキが無い状態でどう足掻くか見てみたい。なんてだけかもな」
険しい顔で立てた仮説はシンプルながら、絶対ないと否定も出来ない内容。
決闘都市準決勝の直前に巻き込まれた電脳空間での戦いが、一つの良い例になる。
首謀者の海馬乃亜はデュエルで勝てば肉体を与えると、BIG5をそそのかし遊戯達を襲わせた。
だが実際は最初から約束を守る気は無く、自身の娯楽に過ぎなかったのだ。
油断ならない強大な力の持ち主であっても、性根は傍迷惑な好奇心の悪童に等しい。
檀黎斗もそれに当て嵌まるなら、拍子抜けな動機であっても不思議はない。
『確かに、放送でのふんぞり返った態度を見ると逆に納得がいきますねー。ルビーちゃんに小細工までして、ふてぇ野郎ですよ!』
「あの人にとっては、本当に全部自分が楽しむ為なんだね……」
クラスカードの時間制限や治療魔術の効きの悪さなど、イリヤが不利になる為の細工を施された。
主催者にとってはバランス調整の一環であっても、こっちからすれば迷惑でしかない。
ふよふよ浮かぶ羽を拳に見立て振るい、魔術礼装なりに怒りを表す。
一方でイリヤは顔を曇らせ、怒りと悔しさを乗せ呟いた。
仲間である司と零、敵でも助けたい気持ちに嘘はなかった小さな魔女。
たった一つしかない命を失った彼らも、檀黎斗にはゲームを盛り上げたか否か以外に何も思わない。
ひょっとすれば自分達が知らないだけで、最初の想いは違ったのかもしれない。
ダリウスのように、長い年月の中で変わってしまったのが真実でないとも言い切れない。
だとしても、決闘と称し殺し合いを強要したのが許されるかは別。
司達の死を娯楽と扱い嘲笑ったのには怒りがあり、そのような男の元に親友が囚われているのは気が気でなかった。
770
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:50:03 ID:dyk1XPSI0
『おや、この反応は……皆さんどうやら追い付いたようです』
若干空気が重くなりかけたが、ルビーの声で切り替えを余儀なくされる。
移動中も常に網を張っていた為、他参加者の探知は正確だ。
言い方からして、自分達三人が追い掛けている者が見付かったらしい。
トラブルが起きず目的達成に近付いたのは良いが、イリヤの表情はどこか硬い。
件の相手の人を食ったような、根本的な部分で相容れない雰囲気を思えば当然だが。
「心配すんな。俺も話で聞いただけだが、ふざけた態度続けるようならガツンと言っとくからよ」
「ああ。イリヤだけに気負わせはしないから、頼ってくれて良いぜ」
緊張を察し、軽く頭を撫で蛇王院が不敵な笑みを見せる。
魔界孔の出現に端を発した、群雄割拠の日本で一勢力を纏め上げた男だ。
アクの強い連中相手と斬った張ったは珍しくなく、今更滅多な事で動じる弱腰にも非ず。
魔法少女とはいえまだ小学生のイリヤ一人に、負担を強いるつもりはない。
遊戯も同じだ、奇人悪人相手の舌戦はデュエルを通じて幾度となく経験済。
エーデルフェルト邸の時同様、毅然とした態度で臨むまで。
「…うん、二人共ありがとうございます」
『頼れる殿方で安心しちゃいました。ルビーちゃんも人間ならコロッと惚れちゃったかもしれませんよ』
「惚れんのは別に構わねぇがな。俺の女どもなら、杖相手でも仲良くやれんだろ」
『ま、まさかの公式ハーレム王!?一体どこのア○ススフトのキャラなんですか!?』
「は?何言ってんだ?」
心強い仲間の存在に、幾分緊張も解れる。
ルビーの案内に従い移動を続け、5分も経っていない頃。
付近の民家より大きく、一際目立つ建造物が目に映り込んだ。
外観からして学校、ただ三人の記憶にあるどれとも一致しない。
数時間前にイリヤを庇って力尽きた、白鳥司の通う中学校とは知る由もなく。
反応が近いとの言葉に気を引き締め直し、
「えっ」
この場にいる筈のない親友が視界に飛び込み、イリヤから平常心を奪い取った。
771
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:50:45 ID:dyk1XPSI0
◆◆◆
人の皮を被った蛇、と。
初対面の相手に対し大変失礼であり、うっかり口に出そうものなら怒りを買うこと確実である。
何かと突飛な神浜の魔法少女の中で常識人の部類に入るいろはが、分からない筈がなく。
理解した上で、そう思わずにはいられなかった。
少女、である。
年の頃は十を過ぎてまだ一年程度。
妹達と同年代で、ランドセルを背に登下校を繰り返すのが当たり前の日常を送っている筈。
同性のいろはをして、綺麗と言う他ないくらいには整った顔立ち。
黒い薄手のドレスで隠し切れない、剥き出しの素肌は透き通るような白さ。
病的な青白さとは違う、少女が本来持ち得る女としての魅力が体に表れていた。
その手の趣味嗜好の持ち主が見れば、己が欲棒を鎮めるのにさぞや苦労するだろう。
「まさか、やちよより先に俺が会っちまうとはねぇ。折角お空のデート中だったってのに、邪魔したのは恨まないでくれよ?」
異性同性問わず惹き付ける魅力を自らぶち壊す、軽薄な口調。
外見と中身がまるで一致していない、酷くアンバランスな態度である。
密かに片思い中の男子生徒が目撃したら、百年の恋も一瞬で冷めるだろう。
こんな状況で何だが、ふと水波レナを思い出す。
変身の固有魔法を持ち、他者の姿をしばしば無断で借りていた。
元の言葉遣いと変身中の姿とのギャップに面食らったのは、神浜に来て間もない頃だったか。
ここにいるのはレナではない、しかし他人の姿を偽る力の持ち主に違いない。
いろはのみならず、全プレイヤーが断言出来る。
何せ眼前の少女、美遊・エーデルフェルトは主催者に囚われの身。
会場で呑気に軽口を叩くのは有り得ない。
何故、美遊の姿を真似ているのか。
何を目的に動いているのか等、抱いて当然の疑問が泡のようにプカプカ浮かぶ。
しかし最も聞かずにいられないのは、先程から度々口にする名前。
神浜で最初に会った魔法少女であり、チームの纏め役であり、尊敬と信頼を向ける先輩であり、
一人にさせないと約束したあの人。
772
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:51:19 ID:dyk1XPSI0
「教えてください、やちよさんと会ったんですか?」
「でなきゃ、わざわざお前に付いて来たりはしてねぇさ」
別段誤魔化す意味も無い為、あっさり肯定。
次に気になるのは、どういった状況でやちよと会ったのか。
定時放送の前、それともフェントホープを訪れる直前。
行動を共にしていない理由をいろはが問うのを待たず、薄く色付いた唇が動く。
「折角顔を合わせたんだ。コーヒーでも飲みながら、ゆっくりお喋りといきたいんだがねぇ。生憎豆も機械も手元にないと来た。檀黎斗も神様を気取るなら気を利かせて欲しいもんだ、だろ?」
「え?えっと……」
「何だよ、女同士のトークは苦手だったか?やちよにもっとお前さんの好みなりを、聞いとけば良かったかもな」
返答に詰まるもお構いなしで、軽口が飛んで来る。
少なくともいろはの知る魔法少女達に、こういったタイプはいなかったように思う。
気さくな口調で心を開かせる、というのとも異なる。
冗談交じりの態度の裏にどことなく、値踏みするかの不躾な視線を宿らせている気がしてならない。
ちょっとした遊び心で揶揄う八雲みたまと違い、距離を感じる冷たいナニカがあった。
「痴れ事を垂れ流し……煙に巻く……それが貴様の目的か……?」
気圧され会話の主導権を奪われつつある中、鬼が蛇の独擅場へ待ったを掛ける。
魔族の王の鎧を纏い、素顔は仮面で隠れ見えない。
なれど発する威圧感は健在、サファイアブルーのレンズが小さき体を射抜く。
いろはを庇おうと前に出たつもりはない。
だが毒にも薬にもならない茶飲み話に耳を傾けてやる程、我が身を戦から完全に遠ざけた覚えも無し。
戯れに付き合う気は無いと、刃の如き視線を黒死牟が叩き付ける。
「おいおいそう凄むなって。今のご時世、いい大人がか弱いガキを脅しちゃ通報確定だろ?」
「戯けたことを……童の皮を被った化生が……何をほざく……」
神に囚われた少女の姿を模してるだけではない。
執念で辿り着いた武の境地、透き通る世界を取り繕った外見だけで欺くのは不可能。
小娘の形は見た目だけ、中身は人間どころか如何なる生物とも一致せず。
真紅の騎士や軍服の男と同じ、鬼とは別に人の理から外れた者。
或いは生まれながらに、人ならざる存在として産声を上げたか。
いずれにせよ、天津達のように持ち得る情報を開示するならともかく。
軽口でこちらを煙に巻く気であれば、律儀に相手をしてやる理由は皆無。
怪物同士の視線が交差し、魔法少女が場を宥めようと口を開き掛け、
773
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:52:03 ID:dyk1XPSI0
「美遊っ!」
駆け寄って来る白い少女へ、言葉を引っ込めざるを得なかった。
「あの子は……」
「思ったよりお早い再会になったな」
見知らぬ少女の登場にいろはが目を瞬かせる一方で、彼女を知っているような言葉を吐く。
後方へ視線を移せば、慌てて追いかける二人の参加者。
テンプレートな海賊スタイルの男はともかく、特徴的な髪型のもう一人は知っている。
プレイヤー全員が最初の場で慟哭する少年を目にし、自分は数時間前に直接会った。
白い少女共々、こうも早くにまた会うとは思わなかったが。
その白い少女ことイリヤは、一心不乱に親友の元へ走る。
ダリウスの救済に巻き込まれ、かと思えば神を名乗る狂人に囚われた親友。
どうして会場にいるのだという疑問はあれど、深く考え込むより先に体が動いた。
今だけは同行者達の声も、初対面の顔ぶれもイリヤを止めるには至らない。
目尻に涙を浮かべ堪らず手を伸ばす。
「おっと、ハグがお望みってんなら頼みを聞いてやっても良いが……俺相手で良いのか?本物のこいつに知られりゃ、浮気と思われるかもなァ?」
「っ!?」
触れる寸前で腕を跳ね除け、足に急ブレーキが掛かった。
姿形は自分の記憶にある美遊と、何一つ変わらない。
同じなのはそれだけだ。
美遊はこのような、人を小馬鹿にした話し方なんてしない。
嘲りを隠そうともしない笑みなど、絶対に浮かべない。
何より近付いてようやく分かった。
全身を蛇に巻き付かれ、舌先で首を舐められる捕食寸前に似たおぞましさ。
こんなものを感じさせる存在が、美遊であるなど有り得ない。
一体何者なのかの答えは、傍らの相棒が呆れと軽蔑を籠めた声で教えてくれた。
774
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:52:50 ID:dyk1XPSI0
『趣味は人それぞれと言いますが、限度があるでしょうに。無駄に敵を作るのがお好きなんですか?エボルトさん』
「そいつは心外ってやつだ。こいつの見た目になったのはお遊びだが、お前らの友達だってのは今初めて知ったからな」
「なっ……」
ルビーが言った名前を知らない筈がない。
エーデルフェルト邸での戦闘に介入し、魔女の頸を落とした地球外生命体。
一応自分達の恩人という立場であれど、信用出来る要素が一つもない男。
仮面ライダーに関する情報を聞く為追いかけたが、美遊の姿になってるのを誰が思い付けるという。
宇宙服に似た装甲とも、コブラのような頭部の異形でもない。
他者の姿を真似られる能力でも持っているからか。
混乱は長く続かず、すぐに怒りへ変わりキッと鋭い目をぶつける。
当の相手は怯む所かヘラヘラ笑い、美遊を馬鹿にされているようで我慢ならない。
「揶揄ったにしても笑えねぇな。胸糞悪いもん見せてくれたからには、相応の礼が返って来るのを知ってるか?」
「人を見下す態度をやめないなら、痛い目見るって忠告した筈だぜ!」
美遊とイリヤの関係を聞いた二人の男も、瞳を吊り上げ口々に言う。
片や冷静ながら不快さを隠さず、片や明確な怒りを露わにと違いはある。
しかし抱く思いは同じ。
これ以上イリヤの心を弄ぶなら、タダで済ませる気はない。
「分かった分かった、一旦落ち着けって。ったく、このお嬢ちゃんに関しちゃ冤罪なんだがねぇ」
美遊は士郎だけでなくイリヤの関係者。
初耳でありイリヤを惑わせる意図は無いのだが、言った所で納得しないだろう。
尤も、エボルトにとっては嬉しい誤算でもあった。
つい先程立てた仮説が真実か否か、答えを知ってるかもしれない者が向こうからやって来たのだ。
追々聞くとして、取り敢えず美遊の擬態を解かねば拳が飛ぶに違いない。
仕方ねぇなと呟き自身の細胞を変化、小さな体躯が一瞬で赤い粘液状に崩れる。
秒と掛けずに再構築、聖杯の少女は影も形も見当たらない。
「こいつなら文句は――」
瞬間、言葉を切り右腕を跳ね上げた。
電光石火と言うに相応しい、必要な動作を数段階すっ飛ばしたとしか思えぬ速さ。
右手に握るは短銃型の変身ツール、トランスチームガン。
単体でも武器として扱え、放つは対象を溶かし貫く高熱硬化弾。
西部劇のガンマン顔負けのクイックドローだがしかし、肝心の引き金を引く締めの動作は行わない。
銃口が睨む先には、イリヤが現れてから沈黙を保った白い鎧。
ステンドグラスを填め込んだ額へ、何故得物を突き付けているのか。
エボルトの首に添えられた、煌めく刀身が何よりの答え。
775
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:53:49 ID:dyk1XPSI0
「幾ら何でも気が短過ぎだろ。カルシウムが足りないなら、ミルクでも探してやろうか?」
美遊の擬態を解いた直後、間近で殺意の爆発が起きた。
肌を焼く激痛にも似た痛みへ、エボルトも無反応ではいられない。
数多の星を狩り培われた戦闘技術により、人外の速度で銃を引き抜いたのだ。
だが一手早く、黒死牟もまた得物へ手を掛けエボルトの頸へと走らせた。
指先すら触れず垂らしていた手を、一体いつ柄に置いたのか。
スタンド使いや仮面ライダーが有する時間停止ではない。
視認不可能と言っても過言でない速さで、魔剣を抜き放ったのである。
ザンバットソードと首の間の隙間は、紙切れ一枚が挟まるかも怪しい。
指の腹で蟻を潰す程度の、ほんのそれだけの力が加われば終わり。
限界寸前で斬首を留め、仮面越しに殺気立った瞳で睨み付ける。
黒死牟をこうも怒りで逸らせた理由は、誰の目にも明らか。
現代日本では滅多に見ない着物姿。
後ろで結び馬の尾のように垂らした黒の長髪。
両耳に付けた、日の出が描かれた耳飾り。
天界の寵愛を受けた人間(ばけもの)、この世でただ一人鬼の始祖を恐怖させた日輪。
神が掌で転がす操り人形、憎たらしくも断ち切れぬ血で結ばれた弟。
継国縁壱に擬態したエボルトの頸を、魔剣が今すぐ斬らせろと訴えていた。
「貴様が……童遊びにもならぬ戯れを……止める気が起きないなら……」
妬んだ。
憎んだ。
常に目障りだった。
幾度となく、死を願った。
心底嫌った。
負の念を両手足の指の数並べても、尚足りない。
なれど、忘れた事はただの一度もなく。
常に己が内を焼き続けた、永き時を経ても変わらぬ羨望の対象だからこそ。
指先が触れることすら叶わなくとも、背を追うのを止められなかった故に。
たとえ一時の悪巫山戯に過ぎなかろうと、弟を騙るその愚行に殺意が滾るのを抑えられない。
776
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:54:40 ID:dyk1XPSI0
「頸を落とし……黙らせれば良い……」
弟に姿を変えた化生を殺すのに、躊躇を抱く余地はない。
むしろ縁壱の顔で腐り切った軽口がほざかれるのを待たず、早々に死で以て終わらせたって構わない。
生前ならば、恐らくその通りにしただろう。
一刀で即座に黙らせた筈が、この場においては必要かも分からない警告を先に発した。
相手の口を割る前に殺すのが如何に愚策かを、僅かな理性が訴えているからか。
迷い全てを断ち切れぬ身なれど、自死を選ぶ気が無い以上情報の必要性は理解してるつもりだ。
或いはもう一つ。
自身と化生の発する殺気へ、息を呑む気配が周囲で複数。
今しがた現れた白い小娘の一団だろうが、知ったことではない。
だがそれとは別に、己の後方に立つソレは。
視界に収めずとも脳裏を掠め続ける桜色が、振り返った先にいる事実が。
花を編んで作った鎖となって、魔剣を握る手に絡み付く。
振り払えば散る脆き拘束に過ぎない、なのに引き千切れず捕らえられるがまま。
化生へ向ける殺意とは別に、例えようのない煩わしさで歯が音を立てた。
「エボルト、さん」
充満する剣鬼の怒りへ、喉に猛烈な痛みを感じる中。
怪物同士の睨み合いに割って入り、殺伐とした空気を鎮めんとする声があった。
喉を震わせ叫んだのではない、ただ一言名を読んだ。
横目で見やる星狩りから、いろはは目を逸らさない。
ああと、こうして近くでその顔を見たから思うのだ。
外見だけ真似た所で、やはりここにいるのは縁壱ではない。
彼について全てを知ってはいない。
怒気交じりに、ほんの少し教えてもらっただけ。
それでも、弟の事で兄が心を掻き毟る姿を見たから。
「もうやめてください。縁壱さんも美遊ちゃんも、あなたが誰かを傷付ける為にいるんじゃありません」
どれだけ手を伸ばしても届かない痛みを、いろはは知っている。
再会を強く願っても決して叶わない現実に、頬を濡らして来たから。
たとえ意図したものでなくても、心へ唾を吐きかける行為に黙ってはいられない。
777
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:56:07 ID:dyk1XPSI0
「……ま、おふざけも程々にしなきゃ困るのは俺の方か」
『自覚してるんなら、今からでも真面目になるのをオススメしますよー』
「性分なんでな。死んでも治らないもんだと思って、諦めてくれ」
人間の小娘の言葉に揺り動かされるなら、地球に潜伏した10年の間に心を入れ替えている。
お説教が利いたのでないが、おちょくるのも大概にせねばなるまい。
分かっていても皮肉や軽口が飛ぶのは、ルビーに言ったのが全て。
ともかく、詳しい関係は不明だが自分は黒死牟の地雷を踏んだらしい。
警告は最初で最後、いつ戦闘になってもおかしくない。
銃を下ろし、最も馴染み深い石動惣一に擬態。
桜ノ館中学前に集まった面々には、初めて見せる姿だ。
「これなら文句ねぇだろ?俺なりに多少は反省してるんだ、お前らの前じゃこいつの見た目のままでいるさ」
「……」
姿が変わろうと、神経を逆撫でする態度は健在。
いらぬ遊びでこちらを掻き回し、頭を沸騰させた化生をこのまま斬りたい気持ちが無いとは言わない。
されど向こうは縁壱ではない男の皮を新たに被り、得物を懐に納めた。
無駄な遊びを繰り返した挙句、膨れ上がった殺意をぶつける空気も削ぐとは。
まっこと不愉快極まる相手に低く唸り声を漏らし、ザンバットソードを首から離す。
「おっかないったらねぇな、まったく」
刀身が触れた箇所を擦りつつ、改めて集まった面々を見回す。
友好的なものが一つも存在しないのは、別に良い。
仲良しこよしで友情を築く気はない、だがいい加減真面目に話を進める頃合いか。
「さて、と。ちょっとしたアクシデントもあったが、お互いちゃんと話した方が良いだろ」
『なんか纏め役っぽいこと言ってますけど、そもそもあなたが原因ですからね?』
「それを言うなって。トラブルメーカー同士、少しは肩を持ってくれよ」
『失礼な!あなた程悪趣味じゃありません!一緒にナレーションやったくらいで心を許す軽い女と思ってるなら、そりゃ大間違いですよ!』
「冷たいねぇ。声の仕事が得意な仲だろ?」
話が拗れた10割の原因だと自覚しつつ、何でも無いようにあっさり切り替えた。
さしものルビーも呆れを隠せないが、当のエボルトはどこ吹く風。
彼らだけにしか伝わらない内容を話す両者へ、解けないパズルにぶち当たったような顔を作る。
778
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:57:14 ID:dyk1XPSI0
「二人共何のことを言ってるの……?」
「ルビーが素っ頓狂な事を言い出すのは珍しくないから、深く考えなくて良いと思います……」
「そ、そうなんだ」
どこか遠い目で言うイリヤに軽く困惑し、自己紹介もしないままつい言葉を交わした相手に向き合う。
インキュベーターとカレイドステッキ、異なる契約を結んだ魔法少女達。
妹と姉、半身をそれぞれ喪った両者だが現時点では互いの名前も知らない。
まずは基本的なことからと名乗り合う。
「嬢ちゃん同士打ち解けんのが早ぇな。俺らも倣って自己紹介くらいやっとくか?」
「……」
いろは達の様子を横目に、蛇王院が話しかけたのは白い鎧の参加者。
未だ素顔を見せぬ男は言葉無く、青いレンズを二人に向ける。
襲って来る気配は見られないが、相応に緊張感を抱く相手だ。
因縁深いホーリーフレイムとの抗争を始め、各勢力とぶつかり合った蛇王院。
ブルーアイズを巡る海馬とのデュエルに始まり、数多の強敵に打ち勝った遊戯。
戦いの舞台は異なるも歴戦の強者である彼らをして、今しがたの強烈な殺気に自然と身構えたのも無理からぬ反応。
とはいえそこはスカルサーペント総長と、初代決闘王。
及び腰の姿勢にはならず、堂々とした態度で相手との対話を望む。
男達の顔を仮面越しに見つめ、ややあって黒死牟は思い出す。
片方は一番最初の空間、磯野なる人間が屠り合いの宣言を行った場で発言を許された少年である。
頭を吹き飛ばされた別の少年が名を口にしており、自分のみならず全ての参加者の知るところ。
ついでに言うなら、本田以外の者からも遊戯の名は聞いている。
「不動が信を置く札使いとは……お前か……」
「遊星くんと会ったのか!?」
「こいつは流石に予想してなかったな……」
まさかその名が出るとは思わず、驚きを露わに聞き返す。
驚愕は蛇王院も同じだ、合流前に遊星の動向を知る者と接触が叶った。
行動を共にしていないのが気になるが、そこも含めて詳しく聞かねばなるまい。
とっつき辛い相手であるも、仲間と会ってる以上はキッチリ話してもらう。
「丁度良い場所の前に全員集まったんだ、お喋りの続きは中でやったの方が良いだろ」
「胡散臭いエイリアン野郎に同意するのは癪だが、ここで話し込んでも悪目立ちするだけだな」
正論だが余計なトラブルの元でもあるエボルトへ、蛇王院から辛辣な声が飛ぶ。
言われた当人はわざとらしく肩を竦め、全く懲りた様子がない。
ただ提案に反対する者はおらず、直ぐ近くの施設へ入って行く。
数時間前に覇瞳皇帝一行が訪れた桜ノ館中学は、新たな来訪者達を招き入れた。
779
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:58:56 ID:dyk1XPSI0
馬鹿正直に内履きを探し履き替える者はおらず、土足を咎める者も皆無。
生徒用の玄関を通り、廊下を進み数分。
見付けた図書室を情報開示の場に決め、先頭のエボルトが引き戸を開ける。
学校に置いてある本特有の、何とも言えぬ匂いが漂う。
殺し合いには何の意味も無い、こういった細部の再現まで拘ったらしい。
その情熱の向かう先がゲームと称する悪辣な殺戮では、素直に褒める者もいないが。
(懐かしい、な……)
自分の通っていた穂群原学園ではないが、図書室の空気はイリヤにも覚えがある。
特別な思い出じゃない、取るに足らない日常の一幕。
とっくに覚悟は決まっており、過去へ飛んだ選択に後悔はない。
僅かに漏れ出た心の雫を拭い、今やらなきゃならない戦いへ意識を戻す。
本棚の並ぶ空間へ足を踏み入れる中、振り向き一点を睨む者がいた。
「新手、か……」
「え、黒死牟さん?」
校内に参加者が訪れたと、即座に分かった。
竈門炭治郎や我妻善逸のような、先天性の優れた五感に非ず。
人間時代より戦の渦中に身を置き、数百年かけて研ぎ澄まされた感覚。
始祖の血が齎す、人の限界を容易く見下ろす五感機能。
此度はそれらに加え、サガの情報収集器官装置が稼働している。
一人分の足音が何処から響き、闘争を終えた証の血の臭いまでもを正確に捉えた。
尤も、サガの鎧を纏わずとも侵入を察するのは難しくない。
『むむ?』
「っと、タイミングが悪いな」
図書室前に集まった6人以外の者の気配に、他の数人も気付く。
幾つかの制限を課せられたが、ルビーの優れた探知機能は誤魔化せない。
特体生として超常の能力を持ち、尚且つ魔界孔出現後の日本で否応なしに危機察知能力が磨き上げられた蛇王院も同様。
中途半端に気配を隠したとて、気付かれないと思ったら大間違い。
「ルビー、誰か来たの?」
『みたいですねー。何やら変わった反応をお持ちのようですけど』
「ま、その辺の家よりは目立つからな。立ち寄ってもおかしくねぇか」
参加者の誰かに馴染みのある学校なのか。
そうでなくとも、保健室なりで物資調達をしに来る者がいても不思議はない。
問題は来訪者のスタンスが、自分達と相容れるか否か。
780
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:59:42 ID:dyk1XPSI0
さてどうするかと話し合う前に、黒死牟は一人踵を返す。
ファンガイアの王の鎧は相応の力と、日除けの加護を鬼に授ける。
しかし必要に迫られなければ、積極的に活用する気は無し。
慣れぬ着心地は、却って黒死牟を縛る拘束具にもなり兼ねない。
であれば、日の当たらぬ屋内での解除は至極当然。
資格者の意志に従い、サガークが離れ霞のように鎧は消え去った。
「っ!」
露わとなる、古風な着物を纏った侍。
人の形を保ちながらも、人では有り得ぬ三対六つの眼。
複数人の強張る気配を察するが、感じ入るものは毛先程もない。
背に声が掛けられるのを呑気に待たず、姿の見えぬ侵入者の元へ足早に向かって行く。
「行っちゃった…」
『まあパーティに一匹狼系の殿方が混じってるのも、ある意味お約束ですよ』
「それってフォローのつもりなの…?」
相棒の惚けた発言は置いておき、有無を言わさぬ口調にイリヤも何か言うタイミングを失った。
冥王やうさぎなど、人でない参加者とは既に顔を合わせている。
ルビーと(合意なしに)契約を結ぶ前ならまだしも、今更大概の事で動じる少女でもない。
とはいえやはり、抜き身の妖刀染みた威圧感には相応の緊張があるわけで。
「アイツに任せても良いが、あの口下手っぷりで誰彼構わずバッサリ!なんてならなきゃいいんだがなァ」
「黒死牟さんはそんなこと……」
冗談めかして言うエボルトに、いろはは思わずムッとして反論。
そんなことしないと言い切る筈が、ふと思い出す。
定時放送の前、病院で自分が寝ている間に何があったかを。
あっけらかんとする結芽と反対に、疲れたような姿のキャルを。
エボルトの言うような、見境なしに剣を向ける男ではない。
けれど万が一、あらぬ誤解を受けてしまうんじゃないかと言われたら――
「あ、あの!わたしも黒死牟さんを追い掛けます!」
大丈夫と信じたい反面、前例があるだけに一度浮かんだ心配はなくならず。
皆にそう言い、いろはもまた背を向け走り出した。
『めんどくさい年上に尽くすタイプな気がしますね、いろはさんって』
「急に何の話!?」
781
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:00:23 ID:dyk1XPSI0
◆◆◆
一人だった。
民家内の気配も、微かに耳を震わせる呼吸の音も。
自分自身以外に存在しない。
ゲーム開始直後以来二度目となる、一人きりの時間で橘朔也は身を休ませていた。
ガラスに映った姿をじっと見つめる。
つい昨日まで当たり前にあった己の体は、どこにも見当たらない。
アメジストの瞳と二つに結んだ長髪。
不死の生物との戦いを通じ鍛えられた体はなく、細身ながら少女特有の柔らかさも備えた肢体。
窓を挟んだ向こう側に立っているんじゃあない、正真正銘これが今の橘だ。
この世を去った少女をハッキリ見れるのに、本人はここにいない。
不思議な感覚へ、寂しさが全く無いと言えば嘘になる。
別れはとうに済ませた。
一度目は届かぬ手に嘆くしかなく、二度目は言えなかった「さよなら」を確かに伝えて。
天々座理世は橘の元を去ったが、想いは形として残り続ける。
「仇を討ったとしても……」
殺された人間が生き返る訳ではない。
恐怖心に惑い迷走の末に、小夜子を伊坂の手から守れなかった時と同じだ。
カテゴリージャックを封印しても、最愛の恋人が戻って来ないように。
リゼがひょっこり顔を出し、自分の名前をもう一度呼ぶ奇跡は起きない。
復讐を果たした後に訪れる虚しさは皆無に非ず、なれど思考放棄へ逃げるつもりは微塵もない。
他ならぬリゼ自身が言ったじゃあないか。
橘達を生かす為に命を散らす選択を、後悔してはいないと。
誰かに強要されのではない、自暴自棄でどうでもよくなったんじゃない。
あれで良かった、最高の師匠を守れた自身の選択で落ち込まないで欲しい。
慰めや誤魔化しとは違う弟子の本心を告げられて尚、後ろ向きで腐っている責任感を忘れた男にはなれなかった。
782
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:01:06 ID:dyk1XPSI0
(放送でリゼが言っていた友達は呼ばれなかったか……)
精神的な消耗に加え、間髪入れずに起こった海神との死闘。
目まぐるしく変化する戦場へ考える暇も無かったが、ようやっと落ち着き意識を回す余裕も生まれる。
何故か二つ名前が記載されたココアを含め、リゼの友人達は無事。
専用武器があるとはいえ元々一般人のリゼ同様、本来は戦う術を持たない少女達。
仮面ライダーの自分でさえ苦戦を免れない環境で、運良く6時間危機から逃れたとは考え辛い。
信頼出来る参加者と出会えたのだろうと、今更ながらにホッと胸を撫で下ろす。
可能ならば二回目の定時放送まで発見ないし、せめて何らかの情報が得られるのを願いたい。
手遅れとなり、リゼに誓った決意を嘘にする気はないのだから。
「…っ!あれは……」
考え込むのに俯いていた顔を上げ、何となしに窓の外へ目をやる。
丁度そのタイミングだ、奇妙な飛行物体が一瞬見えたのは。
心意システムの影響で橘に起きた変化は、リゼの姿になっただけではない。
外見こそ学生生活を謳歌する少女でも、秘め得る力は常人の枠には収まらない。
仮面ライダーギャレンと同等のスペックを、生身で発揮可能。
パワーや走力のみならず、五感もまた超人の領域へ押し上げられた。
元々橘はバッティングセンターのボールに書かれた数字を正確に見れる程、優れた動体視力の持ち主。
そこへ加えて、オーガンスコープと呼ばれる高機能な視覚センサーと同等の力を得ている。
通常肉眼では捉えられない存在も、微かだが見る事が出来たのだ。
「ドラゴン、か?海馬やジャックのカードにあったのとは違うようだが」
長い胴体で空中を泳ぐ、未知の巨大生物。
やれUMAだ軍の秘密兵器だとメディアが騒ぎ、白井虎太郎が見たら新作のネタとはしゃぐだろう。
残念ながらここは殺し合いの場であり、巨大な怪物も然して珍しくない。
おまけにハッキリと姿を確認出来てはいないが、巨大生物の背に人らしき者が乗っているようにも見えたのだ。
「まさか、さっきの俺達のように逃げているのか?」
触手を操る怪物の追跡を振り払う為に、列車型のモンスターに乗り込んだのは記憶に新しい。
そういった目的でドラゴン(仮)を駆る可能性も、絶対ないとは言い切れない。
ひょっとすればリゼの友人達が乗っているかもしれないのを、どうして否定出来ようか。
783
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:01:46 ID:dyk1XPSI0
再び橘は考え込む姿勢を取る。
腕組し難しい顔を作る姿はリゼそのものだと、見てそう思う彼女の友人達は民家におらず。
どう動くかに頭を悩ませた。
リゼの仇相手に最悪の場合は、相討ちに持ち込む覚悟だったが無事生き延びた。
但し流石に無傷とはいかず、コンディションを考えればもう少し体力回復に充てるのが正しい。
何が待ち受けているか分からないのに、考え無しに飛び込んで良いものか。
(だがこんな時剣崎なら、迷わず向かう筈だ)
合理的な考えを優先した結果、助けられた筈の手を掴めない。
そんな後悔をしない為に、後輩であり尊敬する仲間がどう動くかは分かり切ったものだ。
馬鹿になれと、一人の男が言い遺した言葉を思い出す。
考え無しに動き回る無鉄砲になる気はないが、ほんの少し無茶をやる馬鹿にはなって良いのかもしれない。
行き先を決めた以上、動くのに躊躇は必要無い。
頷き立ち上がると、民家を出てドラゴン(仮)が見えた方へ走る。
出発し数分、橘はすぐに自分の体が如何なる状態かを悟った。
リゼ専用の槍を使ってないにも関わらず、足が異様に速い。
試しに速度を数段上げてみれば、どう考えても普通の人間が出せないだろう速さを叩き出す。
(バックルが突然消えたのはこういう事だったのか…!)
詳しい原理は不明だが、生身でギャレンと同じ力を発揮出来るらしい。
考えてみれば動体視力に自信があるからといって、遠く離れた位置のドラゴン(仮)を見れるのも普通は有り得ない。
リゼが聞いたら、「今気付くのか」と天然加減へ呆れ笑いを浮かべたろう。
橋を渡って北上、隣接したエリアに到着。
暫く進むと見えたのは、点在する民家よりも目を引く建造物。
独自の佇まいから学び舎と即座に分かり、ご丁寧に学校名の書かれた校門まである。
モンスターに乗った者が近辺へ降りたとすれば、最も目立つ施設を無視するだろうか。
仮に負傷していたら手当の為に、保健室へ向かう可能性は低くない。
(行って確かめなければ始まらないな)
銃と槍、二つの得物を意識しながら校舎内へ入る。
念の為に不意打ちを警戒し、可能な限り気配を殺して進む。
少年少女が青春を送る場の賑やかさはなく、まるでホラー映画さながらの不気味さが漂う。
場合によってはいつ襲われてもおかしくない状況に、自然と表情も険しさを増す。
784
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:02:24 ID:dyk1XPSI0
「――――っ!?」
静寂は前触れなく終わりを告げ、橘の警戒心が一気に引き上げられた。
音もなく、しかし無視出来ない存在感を伴い現れる異形。
光の差し込まない寒々とした廊下の奥より、凡そ学び舎には釣り合いな者が顔を見せる。
嫌悪と恐怖を共に植え付ける、剣鬼の眼が橘を射抜く。
愚かにも腹を空かせた怪物の素巣へ、自ら飛び込んだとの錯覚を抱いた。
「お前、は……」
喉奥から這い出るここ数時間で聞き慣れた、喪った二人目の弟子の声。
酷く乾いて聞こえるのは、それだけ自身の緊張が大きい証拠。
何も相手が人間でないからというだけで、ここまで極端に警戒を強めない。
アンデッドとの戦いを思えば、今になって人ならざる存在を強く恐れる弱者に非ず。
加えて先の冥王のように人間以外との共闘も経た以上、人じゃない参加者と必ずしも敵対するとは限らない。
理解して尚戦慄を隠せない理由はただ一つ、相手の纏う気配に近しい者を知っているから。
外見は全く違う。
記憶に根付くソレは色を無くした髪だった、瞳の数は人間同様に二つだけ。
文字と漢数字を浮かばせてもいなかった。
似ても似つかない、しかし無関係と言い切るには己の中で待ったが掛かる。
積み上げた文化を気まぐれで蹂躙し素知らぬ顔で去って行く、天災もかくやの化け物。
バッティングセンターでの平和な時間に、望まぬ形で幕を下ろした男。
リゼの仇であり、今さっき討った名も知らぬ怪物をどういう訳か想起させるのだ。
「……」
互いに無言で相手を見据える中、施設を訪れた時以上に得物を意識せざるを得ない。
研究職であった橘がギャレンの適正者に選ばれたのは、人選の適当な穴埋めなんかじゃあない。
上級アンデッドや仮面ライダーレンゲル相手に、スペックで差を開けられても勝利を奪える強さ。
類稀なバトルセンスの持ち主だからに他ならない。
変身後と同等のスペックを発揮可能な今、培った技術をフルに活かし先手を取れる筈。
相手が刀を引き抜く速さを追い越し、ギャレンラウザーで撃ち落とせる。
785
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:03:15 ID:dyk1XPSI0
(……いや、難しいか)
事がこちらの有利で進む光景を、橘自身が否定し打ち消す。
自分と相手には距離が開き、向こうの剣が届くには十数歩足りない。
だというのに多少の有利を一瞬で覆し、瞬きを終えた直後に喉元を切っ先が突き刺したとておかしくはない。
剣崎も認める一流の戦士だからこそ分かる、男の前に立った時点で間合いに閉じ込められたも同然だと。
恐怖心をとっくに克服し、アンデッドとの戦いを終えた橘なら会話での戦闘回避も冷静に考えられたろう。
だがリゼの命を奪った怪物の脅威を、身を以て味合わされたが為に。
相手の反応を待たずして警戒心が上がり続け、思考は剣呑な方向へと向かったまま。
気付かぬ内に、戦いが起きる前提に傾かせる橘をどう思ったか。
沈黙を保った異形の侍が初めて口を開き掛け、
「待ってください!」
後方より発せられた少女の声に、爆発寸前の空気が鎮静化の兆しを見せた。
橘が驚く一方で、侍は心なしか不機嫌そうに口を噤む。
黒死牟を追い掛けて来たいろはが見たのは、穏やかじゃない様子で睨み合う男と少女。
変身せずとも魔力を操作し、身体能力を上げたのが功を為し間に合った。
夜中に水名神社を調査した時、高く聳える正門を一跳びで追い越したのと同じ方法だ。
それはともかく、まず先に言わねばならない事がある。
背に向けられる視線に気付きつつも、少女へ向けて口を開く。
「わたし達に殺し合いをする気はないです。少しだけ驚かせちゃったかもしれないけど、でも、黒死牟さんも自分からあなたを傷付けることはしません」
警戒されてるとは承知の上でハッキリと告げた。
見境なしに剣を振るい、血の河を生み出す為にいるんじゃない。
憐れみで庇い立てするのでなく、そう信じて疑わない言葉に顔を顰める
またしても頼んだ覚えのない気遣いに出て、自身の不快感を煽る気か。
背後から感情の揺らぎを察したのか、振り返って視線を合わせる。
眉を八の字に下げた困り顔で、苛立ちを臆さずに受け止めた。
786
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:04:20 ID:dyk1XPSI0
「だって、黒死牟さんのことを誤解して欲しくなかったから……」
「……」
人ではない貌をして、安易に人を寄せ付けない態度を取っていて。
過去の行いを知らないけど、許されざる罪を繰り返したと察しは付く。
誰かにとっての悲しみを生み出す側だったのを察せない程、いろはは鈍くない。
けど今ここにいる彼は、それだけが全部じゃないから。
彼の抱える傷を見て、彼に幾度も命を救われた。
ほんの少しでも痛みを癒したいと思えた相手だから、彼に向かう敵意の前へ飛び出せる。
人を喰らう鬼に向けてとは思えない、されどとうに見慣れた態度。
他者からどれ程敵愾心を向けられても、今更知った事ではない。
しかしこの娘にとっては、黙っていられるものに非ず。
口走り掛けた吐き捨てる言も、喉をせり上がる前に消え失せる。
結局返すのは無言、向こうにとっても慣れた反応へ困ったような笑みを浮かべられた。
「女相手にだんまり貫くってのは、良いやり方とは言えねえな」
自身のとは異なる声に、発すべき内容を改めて練る必要が無くなる。
気安く肩に手を置かれ、僅かに振り向けばいろは程の付き合いは無いが見知った顔。
海賊帽の下で浮かべたシニカルな表情は、野性味溢れる顔立ちも相俟って異性を虜にするだろう。
色を好む軟派な男、そう軽蔑を籠めて断言は出来まい。
実戦を知らねば身に付かない屈強な体と、人の特徴から逸脱した異形の右腕。
いろはに少々遅れる形でやって来た蛇王院である。
「腕は立つようだが、堅物過ぎんのも考えもんだぜ?」
友人へ接するかのような軽口へ、鬱陶し気に手を振り払い応える。
必要以上に慣れ合う気が無いとの態度にも、激昂した様子はない。
気難しい奴だと呆れ笑いを一つ返された。
病院で会った小娘達といいこの男といい、馴れ馴れしくする者がいろは以外にもまだ現れるのか。
787
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:05:06 ID:dyk1XPSI0
「人じゃないって言ったら、俺の右手もどうこう言えるもんじゃないからな。殺り合う気がなけりゃ、理由も無いのに喧嘩は売らねぇよ」
蛇王院の住まう日本では人外の存在は珍しくもない。
第一蛇王院自身、学聖ボタンの影響でジャンヌに斬られた腕が異形と化した身だ。
人じゃないからといって排除を選ぶ、ホーリーフレイム同様の所業に走る気はゼロ。
異形の特徴を持つ元ホーリーフレイム聖歌隊のマリーシアを、差別意識を抱かず勢力へ迎え入れたように。
人間かそうでないかで態度を変える男じゃないからこそ、部下達からの厚い信頼を得て来た。
加えて意外に見えるかもしれないが、蛇王院はワイルドな外見と裏腹に他者へ積極的に戦闘を仕掛ける性質でもない。
スカルサーペントにとっての戦いは基本的に、自分達の身を守る為のもの。
全国統一を掲げ学生連合を襲撃したのも、神威との取引を受けたが故。
蛇王院を知る者に「らしくない」と疑問を持たれた好戦さは全て、自分を慕う部下を死なせない為の苦渋の決断があったから。
それは舞台が魔界孔出現後の日本ではなく、神が作り上げた遊戯盤に移っても同じ。
鬼の始祖に最も近い上弦の壱だろうと、他者を害する意図を見せなければこちらも手出しはしない。
「あんたといろはが仲良しだってのは分かったが、続きは一旦後回しにしとけ。初対面の女を放置は頂けないからよ」
「贋物の目玉でも填めているのか貴様……」
「あ、ご、ごめんなさい!」
辛辣に返す黒死牟を余所に、蛇王院に言われいろはは慌てて頭を下げる。
謝罪を受けた当の橘は、三人のやり取りに少々困惑気味。
ついさっきまで張り詰めていた空気は霧散し、気付けば思考も幾分かの冷静さを取り戻す。
相手の雰囲気につられたが、戦わずに済むならそれに越した事はない。
「済まない、少しばかり熱くなっていた。言うのが遅れたが、檀黎斗の言い成りになる気がないのはこちらも同じだ」
「なら話は早ぇ。ついて来な、女を立たせたままにはしないからよ」
敵意の無さを伝えれば向こうも頷き、顎で自分達が来た道をクイと示す。
ファーストコンタクトこそ殺伐としたが、殺し合いに乗っていない参加者との接触には無事成功。
蛇王院の提案を断る理由はない、ただ一つだけ訂正しておかねばなるまい。
「勘違いさせてしまったようだが…俺は元々男だぞ」
「は?」
サラリと言われた内容に思わず聞き返し、頬が引き攣るのが蛇王院自身にも分かった。
788
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:06:43 ID:dyk1XPSI0
◆
「橘朔也だ。ここには来たばかりだが、宜しく頼む」
橘が姿を変えたリゼは、元々こういった話し方をしていたからか。
うら若き十代の少女にあるまじき男口調も、不思議と違和感がない。
先んじて桜ノ館中学にやって来た者達と、遅れて現れた一人。
計7人が図書室に集まり、それぞれ適当な位置に腰を下ろしていた。
方針に細かな違いは有れど、共通し黎斗のゲームには否定的。
であれば各々が持ち寄った情報を提供し、擦り合わせを行うのは自然な流れ。
その前に名前くらいは教えようと、橘が自身の状態を含め簡潔に話ておく。
「蛇王院達にはもう伝えたが、元々男だ。こうなった経緯については後で詳しく話す」
「言われてみると橘さん、見た目以上に年上って感じがするかも……」
『これはあれですか、蛇王院さん痛恨の勘違いをしちゃいましたか?』
「言うなよそれを…」
揶揄い口調のステッキへ、バツが悪そうに頬を掻く。
シャイラが聞いたら、酒の席での笑い話確定だろう。
勘違いされた橘本人は、大して気にした様子もないが。
雑談もそこそこに、早速本題に入る。
時間は有限、こうしてる間も他のエリアでは戦闘が勃発中に違いない。
座って体力の回復に努める間も、必要な情報をお互い頭に入れておくに限る。
「異論が無いなら俺が最初に話そうと思う。構わないか?」
鬼とブラッド族の人外二名を抜かせば最年長の橘が、一番手に名乗りを上げる。
特に反対も飛ばなかった為、遠慮の必要無しと口火を切った。
剣崎を始め元々の仲間が不参加の為、プロフィールは簡潔且つ説明不足にならないよう努めて話す。
仮面ライダーギャレン、不死の生物アンデッドとの戦い。
探していた仮面ライダーが早くも見つかり驚くイリヤ達と、自身の知るライダーとは異なる戦士へ僅かな関心を見せるエボルト。
反応は様々だが話は中断させず、続きを聞く態勢を取る。
789
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:07:31 ID:dyk1XPSI0
「海馬がそんなことを……」
「厳しい言い方だったが、彼なりに殺し合いを現実的に見ていた。俺はデュエルモンスターズを深い所まで知ってはいないが、もぐもにとって意味のある経験だったと思う」
意外な所でライバルの動向を知り、静かな呟きが遊戯の口から出た。
実戦に慣れる意味でも、デュエリストとしてもぐもこと百雲龍之介をみっちりしごいたとのこと。
下手な慰めやフォローは不要とし、海馬らしい喝の入れ方も含めて。
名簿に載っている内、どちらの海馬かは分からない。
だが自他共に厳しく我が道を往く好敵手なら、そうするだろうなと納得があった。
海馬とのデュエルが結果的に、一人の決闘者の成長へ繋がったのは遊戯としても喜ばしくある。
しかし橘達が平和な時間を過ごせたのは、そこが最後だった。
ある日突然、大災害により日常が崩壊するように。
鬼の始祖という、生きた天災が全てを壊していった。
歴戦の決闘者と二人の仮面ライダー達が揃って尚、結果は敗走。
それも本来な非戦闘要員である少女の犠牲を経て、だ。
「海馬がいても歯が立たなかったのか…!?」
「…なんて名前だ?そのふざけた野郎はよ」
「それは分からない。奴は一度も自分の名を口にしなかった」
海馬の実力を誰よりも知る遊戯だからこそ、橘の話には戦慄を覚える。
驚愕し思わず立ち上がる一方で、冷静な顔のまま尋ねるのは蛇王院だ。
理不尽な死を撒き散らす、ホーリーフレイムのような胸糞悪い男に怒りがない訳がない。
一方でここで怒鳴り散らしても無意味だと分かっており、激昂を面に出さず問う。
とはいえ蛇王院の望む答えは返せず、男の特徴だけを伝える。
触手を操り、異様な再生能力があったことを。
790
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:08:13 ID:dyk1XPSI0
「……」
ピクリと、僅かな反応を見せた男には気付かず橘の話は続く。
放送の直前に出会った、ジャック・アトラス達の一団。
列車型モンスターを使った移動の最中、突如起きた海神の襲来。
耳飾りの侍と同じく、全参加者に存在を知られたポセイドン相手に繰り広げた死闘。
全滅へ陥ってもおかしくない、絶望的な戦いの果てに勝利を掴んだ。
と、そこで話を区切ればハッピーエンドだが現実は違う。
「アトラス様達が……」
犠牲者の名前に、口元に手を当てイリヤは声を震わせる。
放送で呼ばれたうさぎに続き、二人の王もこの世を去った。
本選が始まり最初に出会った一団は、これで全滅が確定。
生きてもう一度彼らと顔を合わせる機会は、永遠にやって来ない。
「結局、ジャックとのデュエルは叶わなかったな……」
デッキを取り戻した遊戯と、全力でデュエルする事は不可能。
殺し合いなんかじゃなかったら、決闘者同士デュエルを通じてもっとお互いを知れたのだろうか。
せめてもの慰めなどと言うつもりはないが、ジャックも冥王も『キング』と呼ぶに相応しい最期だったらしい。
かといってそれを聞き喜べる筈がなく、しんのすけという青年共々死んで欲しくなかった。
ジャックの友である遊星が知る時を思うと、ただただ胸が痛い。
ポセイドンとの戦闘後、橘はリゼを殺した触手の化け物との一騎打ちに挑み、結果は今こうして生きてるのが答え。
楽に勝てた戦いとは口が裂けても言えず、何より自分一人で掴んだ勝利ではない。
「おいおい、よくお前一人で勝てたな。聞く限りじゃ、都合の良いパワーアップアイテムなんて物も無かったんだろ?」
呆れ交じりに言うエボルトへ、口には出さないが内心はそれぞれ同意見だ。
複数人掛かりで逃げるしかなかった強敵に、単独で挑むなど普通は自殺行為。
「だが勝算が全く無い訳じゃなかった。あの男は太陽に当たると消滅する体質らしくて、だからわざわざ大我のベルトを奪って行ったんだ」
「え……」
聞かされた男の特徴に、小さく零れた声が自分のものと気付けたかどうか。
太陽を浴びれば死ぬ、御伽噺の吸血鬼のような特徴。
それに当て嵌まる参加者を、いろはは知っている。
思わず隣を見れば、思い浮かんだ予感は正しかったと理解せざるを得なかった。
弟が関わらなければ滅多に表情を崩さない彼が、六眼を見開き凍り付いているのだから。
791
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:09:07 ID:dyk1XPSI0
「お前はその者を……どうした……」
「急になにを…?」
「答えろ……お前が仇として追った男は……どうなった……」
耳をつんざく怒声を発してはいない、胸倉を掴まれ恫喝されてもいない。
静かに、しかし臓腑にまで届くだろう低く重い声。
有無を言わせぬ問いに、橘のみならず他の者も困惑や訝しさを表情に宿す。
これまで然したる反応を見せなかったのが、今になってどうしたというのか。
ただ一人、事情を察したいろはが口を開くより先に橘が答えを返す。
「勿論、それについても隠すつもりはない。今の俺がリゼの姿になってるのも、あの男との戦いがあったからだ」
やましい内容は一つも無く、嘘を並べ立てる気も皆無。
怪物との戦いで何が起きたかは、最初から余さず言うつもりだった。
散々こちらを異常者呼ばわりした男に、相討ちすら覚悟して食らい付き。
師弟として結んだ絆がリゼと橘をもう一度巡り合わせ、二人で勝利を手にした。
無論、死者であるリゼがそれ以上の時間を共に過ごす事は不可能。
必然的に二度目の別れとなり、直後橘の体に異変が起き今の姿になっていた。
「………………、………………」
茫然自失という言葉は、正に今の黒死牟の為にこそある。
度が過ぎた驚愕を抱き二の句が継げず、案山子のように立ち尽くす以外何もできない。
傍目には何も考えず阿呆同然に一歩も動かない、指先を微かに曲げもしない。
よもや屠り合いで二度、上弦の鬼らしからぬ致命的な隙を晒すとは予想だにしていなかった。
一度目は弟が傀儡と化したのを知らされた時。
そして現在、二度目の衝撃が頭部を打ち砕く鉄塊となり黒死牟を襲う。
鬼の始祖、千年に渡り数多の悲劇を生んだ最初の悪鬼。
上弦以下全ての鬼の頂点に君臨する、絶対的存在。
鬼舞辻無惨が異界の地にて、人間の手で討たれた。
長きに渡る鬼狩りとの因縁は、彼奴ら鬼殺隊が一切関わらぬ内に幕を閉じた。
792
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:10:32 ID:dyk1XPSI0
妄言と言い切るのは容易い。
真実は橘が無惨を相手取ってなどおらず、全く無関係の要因で天々座理世の現身となった。
嘘八百を連ね、あたかも無惨討伐の結果と言い張っているに過ぎない。
忌まわしくも最強の二文字を永遠に我がものとする、日輪の刃が与えた滅びならともかく。
鬼狩りですらない人間一人の力が届くなら、鬼との争いの歴史は遥か過去に終わっている。
そも、何故鬼殺隊は幾百年の時を経ても無惨を滅ぼせなかったのか。
何故己を含めた配下の鬼は、只の一度も無惨へ反逆を企てなかったのか。
徹底して自身の痕跡を残さない慎重さ。
絶対の隷属を確約する呪い。
それらも含まれているが最たる理由はもっと単純、強さ故にだ。
十二鬼月全員を束ねても、痣者や透き通る世界に至った柱を集結させても。
踝すら拝めぬ高き壁となって、始祖は君臨する。
風の一吹きで屋敷が更地となるように、波一つで漁村が飲み込まれるように。
無惨という天災を滅ぼせる存在など、鬼以上に理不尽極まる日輪を置いて他にいない。
しかし俄かには信じ難い一方で、そうなるだろうと納得を抱く己も確かにいる。
無惨の持ち得る力は今更疑いようもない。
だが橘と無惨の間に起きた闘争は、鬼狩りとの争いとは前提が異なる。
慣れぬ鎧一枚で太陽を遮断し、肉体変化や血鬼術も使用不可能となり、常時日の当たる場所での戦闘を強いられた。
付け加えるなら相手は奇妙な腰巻き、「仮面らいだあ」の力を完璧に使いこなす戦士。
ここまでの悪条件が揃って尚、無惨の勝利が揺るがないと言うには流石に躊躇が生じる。
更に屠り合いには無惨ですら把握していない、未知の能力や技術が数多く存在。
予期せぬ反撃を受け敗北へ繋がったのを、強く否定は出来ない。
「そうか……あのお方が……滅びたと……」
零れ出た声色に憤怒がなければ、嘆きもない。
純然たる事実を受け止め、波立たせず淡々と言う。
自分の中にあって当然と背負い続けたモノが外れ、居心地の悪い身軽さだけが残った。
主の敗死を余所におめおめと生を拾い、またしても我が身へ恥を塗りたくる始末。
情けなし、不甲斐なしとは思うも自ら腹を掻っ捌く気は起きない。
仇を討ち蘇生に全力を尽くす、屠り合いに招かれた唯一の配下としての責務に身を捧ぐ気概もない。
無惨の参加を知り、死を聞かされた今に至るまで終ぞ忠節が己を突き動かす事はなかった。
地の底へ堕ちた主が知れば、閻魔ですら目を覆う程の怒りが吹き荒れたろう。
そう分かった所で、使命感に火が付く気配は一向に表れない。
793
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:11:23 ID:dyk1XPSI0
ついでに言うと、無惨が滅びたとて円満解決と決めつけるのは早計であった。
「あのお方…?まさかお前は、奴に従っていたのか?」
「だとしたら……如何とする……」
目に見えて表情の強張る橘に対し、やはり感情の揺らぎを出さずに問い返す。
直接手を下した仇に非ずとも、鬼である以上自分に敵意が向けられるのは自然な流れだ。
「その鬼はお前の親兄弟を殺した奴じゃない。だから見逃してやれ」、と。
論され素直に剣を納めるような鬼狩りは、少なくとも黒死牟の記憶に一人も存在しない。
同じ例が橘に当て嵌まったとて、十分納得出来る。
大人しく頸を差し出すかは全く別の話だが。
張り詰めた空気は、先程廊下で対面した際の焼き直し。
但し此度は数十分前と違い、黒死牟を明確にリゼの仇の関係者と認識している。
いつ銃弾が放たれ、或いは刀が振り抜かれてもおかしくない。
闘争の予感に周囲の緊張感も自然と高まりを見せ、
ポスリと、橘が再び座り直した事で衝突は回避された。
「どういうつもりだ……」
「お前が奴と同じく殺し合いに乗っているなら、容赦する気は無い。リゼの友達が覆われる前に、ここで倒すつもりだ」
リゼを殺した男に従っていた。
否定されなかった事実へ、思う所が一つもないと言えば嘘になる。
「だがこの学校で見た限り、お前が集まった皆を襲う様子はなかった。それに、いろはだって何の根拠もなく俺にああ言ったんじゃないだろう」
人じゃない怪物でも、敵対以外の関係になれた者を橘は知っている。
上城睦月を闇から引き上げる為に力を貸した、二体の上級アンデッド。
そして、世界を滅ぼす鬼札であるも、人間の親子を守ろうとした男。
栗原親子や剣崎一真が影響を与えた、相川始を知っているから。
剣崎が我が身を犠牲にしてでも救おうとした程の友情が、ジョーカーとの間に結ばれたのを近くで見たのが橘だ。
無論、始達と黒死牟では背景からして異なる。
それでも人を襲う気が無く、人から信頼されるナニカがあるというなら。
794
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:12:11 ID:dyk1XPSI0
「話を一つも聞かない内に、お前と事を構えるつもりはない。俺が復讐心だけに駆られるのを、リゼもきっと望まない筈だからな」
「私に情けを……掛けたつもりか……」
「そうじゃない。俺にもお前を信じさせてくれと言ってるんだ」
キッパリと言い切った橘へ渋面を向けるも、言いたい事を言い切って口を閉じる。
数時間前、病院の地下での時と嫌になる程似た状況だ。
誰も彼もが鬼を鬼として排除せず、歩み寄ろうとする。
言い知れぬ不可解さへ苛立ちが湧き、だが激昂し刀を抜く恥の上塗りへ出る気も到底起きず。
仏頂面で腰を下ろせば、理解出来ない最たる例の娘と目が合う。
安堵と嬉しさの両方が宿った、鬼に向ける類ではない笑み。
訳の分からぬ煩わしさでいろはから目を逸らすのも、腹立たしい事に今に始まったものじゃなかった。
「見てるこっちも冷や冷やしたぜ。荒事になったら、俺なんざ真っ先にお陀仏だろうからなァ」
『口から出る内容全部が嘘って逆に凄いですね』
悪い意味が9割を占めるエボルトの空気の読めなさも、今回ばかりは良い方へ作用。
図書室内に燻る剣呑さをリセットし、改めて話の続きに移る。
橘の話す内容も各々驚きを与えたがまだ一人目。
次は自分の番と名乗り出たのは、白い魔法少女と決闘王。
「チノさん…リゼさんの友達とわたし達は会ってるんです」
「それにもう聞いてるだろうが、ジャック達ともな」
ゲーム開始早々ジャンヌと一戦交え、司共々危機へ陥った所を遊戯に助けられた。
それから時間を置かずにジャック達と出会い、その時は情報交換だけして別行動を取ったのである。
彼らと話を出来たのも、あの時が最初で最後。
キングと、どこかヘタレ気味の冥王と、なんか小さくて修羅場を潜ってそうなやつ。
共有した時間が短くとも、もう会えないと思うと寂しさが胸をよぎった。
少々移動に時間を要した後、現在位置から東側のエリアでロゼ達と遭遇。
エーデルフェルト邸で治療を受けていたのが、橘も探すリゼの友人の一人だった。
丸眼鏡の巨漢との戦闘で負傷したらしく、特徴はジャック達が戦った男と一致する。
思わぬ所で繋がりが出て来たのに驚くも、件の男こと野比のび太は既に退場済。
深くは触れずに続きを促す。
795
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:13:05 ID:dyk1XPSI0
殺し合いに抗う者同士の平和な時間は、衛宮士郎と犬吠崎風の襲撃に端を発した混戦で終わりを告げた。
そこへ加え蛇王院と因縁を持つジャンヌ、イリヤ達の方には幼い魔女まで襲って来たのだ。
最終的に襲撃者達は退けたが、仲間の犠牲は避けられない苦い形で幕を閉じる。
「それで、殺されそうになった時に……」
「間一髪俺が来たって訳だ。戦兎を差し置いてヒーローの真似事に出ちまうたぁ、人生何が起こるか分からねぇな」
『正確には人生じゃなく、エイリアン生じゃないですかねー』
「おいおい、ネタバレならせめて自分の口から言わせてくれよ」
結果だけ見ればイリヤ達の危機を救ったエボルトだが、当然真っ当な感謝を向けられるような男ではない。
本人からしてもパンドラパネル回収のついでだったので、礼を言われたい訳でもなかった。
魔女と渡り合いトドメを刺し、首輪を手に入れ間もなく始まったのは定時放送。
エボルトとは一旦別れ、現在桜ノ館中学で数時間ぶりの再会を果たした。
「ってことは、次は俺が話した方がスムーズにいくだろ」
エーデルフェルト邸の出発時から。遊戯達と行動を共にする蛇王院が続く。
と言っても定時放送前の6時間は負傷による気絶もあった為、話せる内容も多くはないが。
プランドールシップヤードを結成及びジャンヌの襲撃は、既に聞いた内容だがその先は初耳の情報。
水属性のモンスターを操る決闘者、神代凌牙の参戦もあって危機を脱した。
移動先で応急手当てを受けた後、偶然にも凌牙の友の亡骸を見付けたのである。
「九十九遊馬……?確か、ジャック達が会った少年のことか?」
「知ってるのか?」
定時放送やポセイドンの襲撃が立て続けに起き、深く考え込む余裕も無かったが遊馬の名には橘も聞き覚えがあった。
丸眼鏡の巨漢との戦闘後に起きた、苦い結果となった一人の少年の死。
実際に立ち会ったジャック一行ではなく、橘からの又聞きという形で遊馬に何が起きたかを知ることになる。
「……胸糞悪ぃな」
開口一番に蛇王院が吐き捨てるのも、無理からぬ内容だ。
事故同然とはいえ仲間を手に掛け、ヤケクソ同然の立ち回りの末にジャック達から離れた場所で息絶えた。
冥王を助けたのが後にポセイドン相手に勝ったのに繋がった、そう考えるとまだ救いがある。
だとしても「良かった」などとは口が裂けても言えない。
凌牙と再会したら当然伝えるつもりだが、苦いものが残るのは避けられないだろう。
遊馬の死体を見付けた時の荒れようを思えば、どうにもやり切れない。
796
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL②』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:13:40 ID:dyk1XPSI0
「あの娘が凌牙さんの友達を……」
遊馬を手に掛けたのは特徴からして、エーデルフェルト邸を襲った魔女。
自分達と会う前の彼女が何をやったのか知り、イリヤは内心複雑だ。
憎悪に囚われ、コローソという名を苦し気に言った少女を救いたかったのは今も変わっていない。
けれど少女が凌牙の友を、自分にとっての美遊やクロのようなかけがえのない存在を奪ったのもまた事実。
もしもっと早くに彼女と会い、止めることが出来ていたらと。
意味が無いと分かっても、IFの可能性を考えてしまう。
「つまり俺は、意図せず遊馬って奴の仇を討ったって事になるのかねぇ」
イリヤの心境などなんのそので言うエボルトには、誰もがあえて何かを言いはしない。
咎めた所で苛立ちを引き出す皮肉や軽口が返って来るだけだ。
尤も本人は全く懲りていないが、話を中断させる気はないらしくそれ以上特に言葉は出なかった。
色んな意味で凌牙には会わせない方が良いと、密かに蛇王院は思う。
放送後については特別大きな戦いなどもなく、エーデルフェルト邸でイリヤ達と会い行動を共にするに至った。
「ならチノとは別行動中なのか…」
「ああ、だがロゼ達のことは信じて良いぜ。二人なら、チノにとっても心強い仲間だからな」
ありきたりな言葉で誤魔化したんじゃなく、遊戯なりに確信があっての発言だ。
決闘者同士感じ入るものがあったのか、実力と人格面両方で凌牙は信じられる少年。
ロゼについても共に戦い、彼女が仲間の死を悼む場面をすぐ傍で見た。
チノとは一番最初に出会ったらしく、お互いに向ける信頼の強さは疑うまでもない。
リゼが守りたがっていた友達の一人は、出会いに恵まれたらしい。
安堵と共に、チノの支えとなった剣士達へ内心で感謝を伝える。
叶うことなら零にも、彼が生きている内に会いたかったが。
「そんじゃあ次はお待ちかねの俺の番か。まあ、気楽に聞いてくれりゃ何よりだよ」
『色んな意味で気を抜ける要素ないですよ、あたなの場合』
「ルビーが珍しく正論言ってる……」
『酷いですよイリヤさん!わたしはいつでも大真面目じゃないですか!』
少女とステッキのやり取りもそこそこに、緩みかけた空気が再び引き締まる。
校内に入る前の騒動を知らない橘も、周りの様子で迂闊に気を許して良い相手でないのを察する他ない。
必然的に集まる警戒もどこ吹く風、一切の緊張を面に出さずエボルトが口を開いた。
797
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL③』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:15:10 ID:dyk1XPSI0
◆
「最初は軽い自己紹介といきたいが…俺が話すより適任がいるか。だろ?いろは?」
「え、わ、わたしですか?」
唐突に話を振られ、分かり易いくらいに困惑の表情を作る。
どうして自分がという疑問へ、相も変わらぬ軽薄な笑みで答えを返す。
「さっき、そこのスッテキが俺の名前を言った時だ。随分驚いてただろ?一体誰から聞いた?どこぞのアイドルじゃあるまいし、有名になった覚えは……ああまあ、ありゃ前の世界での話か」
「それは……」
「縮こまるなって。別に責めようってんじゃないぜ?」
10年もの間地球に潜伏し、人間達を思うがままに掌で転がして来たのだ。
感情の微妙な変化を察するのは容易い。
ルビーが自分の名を言った時、いろはから感じたのは驚きと警戒の二つ。
まだ名乗っていないにも関わらずあの反応、理由を難しく考える必要はない。
「戦兎は違うとして、だ。一体誰から俺のことを聞いたのかねぇ。だんまり貫いても良いが、お前が聞きたがってるやちよの話も始められなくるかもな?」
「っ……」
「ま、何を聞かされたのか予想は付く。気にせずそのまま言えば良いさ。お隣の侍殿がおっかない目つきになってきたしなァ」
癪に障る軽口を延々と吐き出すのを、六眼の鬼は許さなかったらしい。
睨みを利かされた手前、エボルトは一旦黙り待ちの姿勢に入った。
口籠るも自分が言わねば話は進まず、皆にも迷惑が掛かってしまう。
ややあって緊張の面持ちで、病院で聞いた内容をいろはが言う。
「わたしが直接聞いたわけじゃないです。天津さん達…ここに来る前に会った人達が、一海さんっていう人から聞いた内容で…」
「成程ねぇ、グリスの奴が……そんで?」
「……一海さん達のいる地球を滅ぼそうとしたのが、エボルトさんだって。そう聞きました」
「予想通りの内容で、逆に安心しちまったよ」
間違ってないけどな、とあっけらかんとした態度で笑う。
平然とするエボルトと反対に、当たり前だが他の者は和やかな様子とは言い難い。
既に危険性を天津と承太郎経由で知ったいろは達はもとより、初めて聞いた面々も警戒を抱かざるを得ない。
地球を滅ぼすという悪役のテンプレな目的も、実際にしでかす者がいたとあれば笑い事じゃないかった。
798
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL③』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:15:50 ID:dyk1XPSI0
「滅ぼすって…どうしてそんなことしたの!?」
「何でって言われてもねぇ?俺が“そういう種族”だからとしか答えようがないな」
星一つの崩壊は、イリヤにとっても他人事ではない。
ダリウスに見限られた世界がどうなったかを、ハッキリと思い出せる。
泥に塗り潰され、生存競争に負けた光景をヴィマーナの上から見た。
一人の魔術師が犯した禁忌を目の当たりにしたからこそ、問わずにはいられない。
だが返って来たのは納得とは程遠い答え。
壮大な背景も野望もない、エボルト…ブラッド族とは星を狩る生命体だから。
根本的に人間とは在り方が相容れないのを理解せざるを得ず、イリヤの背を嫌な汗が滴り落ちる。
「ならお前は、殺し合いでも人間を滅ぼすつもりなのか?」
「落ち着けよ橘、今はリゼだったか?そんな恐い顔じゃあ、チノ達だって怯えて逃げちまうだろ?」
息をするように苛立たせる言葉を吐き、険しい視線も涼しい顔で受け流す。
過去に地球滅亡を目論んだのを偽る気はない、全て本当のこと。
しかし殺し合いでもそのように動くかと問われれば、首を振るのは縦じゃなく横だ。
「確かにこの星を滅ぼそうとしたが、生憎見事に失敗しちまったよ。ラブアンドピースなんてのを掲げる、仮面ライダーどもに随分痛い目遭わされたもんさ」
「仮面ライダーがお前を…?」
「憎たらしいことに、な。おかげであいつらの大勝利、俺は新しい世界の素材にされちまったって訳だ」
そう言って細めた目は、この場にいない誰かへ向けているかのようで。
忌々しさと呆れと、他にも複数が綯い交ぜとなった一言では言い表せない表情。
エボルトにしては珍しい複雑な内面が見え隠れし、
799
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL③』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:16:45 ID:dyk1XPSI0
「……えっ?あの、何の話をしてるんですか?」
数秒の沈黙を挟んだいろはが、疑問符を浮かべ思わず聞き返す。
「何のもかんのも、どうせグリスの奴が戦兎と万丈の活躍を教えたんだろ?あんまり他人様の傷口をほじくり返すのは、俺でもどうかと思うがね」
「えっと、天津さん達はあなたが負けたって話はしませんでしたよ…?」
「……グリスの奴、ちょいと説明不足じゃねぇのか?」
いろはの様子から察するに、その天津や承太郎なる者に新世界やキルバスとの戦いに関しては言ってないのか。
或いは言ったものの、単に天津達がその辺の説明を端折ったのか。
どこか違和感を抱かないでもないが、エボルトの情報で嘘は言っていない。
一海本人はとっくに脱落しており、直接会って確かめるのは不可能。
不自然さを感じながらも、脱線し掛けた話を戻す。
「グリスの事はともかくだ、心配しなくてもゲームマスター様の言い成りにはならねぇよ。勝手にゲームの駒扱いは、俺も納得してないんでな」
コツコツと首輪を叩きながら自身のスタンスを伝える。
案の定、誰一人として信用の眼差しを向けないが別に構わない。
友達作りをするつもりはなく、自分の生還に利用出来れば文句もない。
警戒と不信感は変わらずとも、話を打ち切り戦闘を行う気がなければ上等だ。
何せ本選が始まってからの動きを、まだ一つも口にしてないのだから。
開始早々危機に陥った因縁のヒーロー、桐生戦兎との共闘に始まる。
間もなくしてNPCに襲われている女を発見、その人物こそいろはが最も聞きたがってるだろう情報。
七海やちよなのだが、再度いろはから疑問が飛ぶ。
「本当に……やちよさんがそう言ったんですか?」
話を中断させて悪いとは思うが、幾ら何でも問い質さずにはいられない。
やちよがいろは以外の魔法少女を強く警戒しているのは、明らかにおかしい。
灯花とねむのみならず、フェリシアとみふゆまでもその括りに入れている。
確かに二人共マギウスの翼に所属した事もあったが、過去の話だ。
鶴乃からウワサを引き剥がす戦いを経て、みふゆとの蟠りも解消されただろうに。
それに、まどかの名前を一度も出さなかったのも不自然。
まるでチーム解散を告げた時のような焦りを、やちよが抱いてる気がしてならない。
「内心じゃお気に入りのお前以外どうでも良いと思って、適当に吹かしただけかもな?」
「っ!やちよさんはそんな人じゃありません!」
「冗談だよ。しっかしこいつは……」
やちよといろはの間で生じる矛盾。
どちらかの話が間違ってるのでないとすれば、さてどういうことか。
800
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL③』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:17:26 ID:dyk1XPSI0
「…まさか、そういうことなのか?」
『遊戯さんも気付きましたか。いやはやあの自称神様、やりたい放題にも程があるでしょうに』
堪えにいち早く気付けたのは遊戯とルビー。
当然自分達だけの秘密にはせず、一同にも伝えておく。
恐らくだが、檀黎斗は平行世界のみならず異なる時間を行き来する術も有している。
嘗て未来の時間軸の決闘者達と共闘した遊戯だからこそ、すぐその可能性に思い至った。
加えてルビーもまた、放送前から薄々考えてはいたのだ。
参加者の中にはそれぞれ違う時間から招かれた者もいる。
それならいろはとやちよの話が食い違うのも納得だ。
いろはから見てやちよは過去の時間、記憶ミュージアムの崩壊から間もない頃に殺し合いへ連れて来られた。
「成程ねぇ……」
エボルトもまた合点がいったとばかりに独り言ちる。
遊戯達の仮説通りだとするなら、一海は旧世界での時間から参加していたのだろう。
道理で新世界を創造するに至った経緯を、何一つ言わなかったわけだ。
そして一海に限らず、万丈や幻徳も旧世界の彼らが参加してるとも考えられる。
二人に関しての情報は未だ得られず、現状確かめられないが。
無事疑問が解消され、エボルトの話にまた戻る。
明石が警戒し探索を断念した寺が実は、首輪の解析作業に持って来いの設備が整っていた。
そう聞き考え込む仕草の橘を尻目に、オーエド町での闘争を説明。
仮面ライダースペクターこと深海マコトはともかく、猛威を振るった紺色の剣士には微妙な空気が流れる。
橘や戦兎、天津といった善側のライダーだけじゃない。
殺し合いに乗り気且つ、人間性についてもコメントへ窮する者もライダーの力を得ているとは。
「あの人がわたしに凄く怒ってたのは……」
「ま、作戦の内ってことで大目に見てくれよ?」
自分の姿を勝手に擬態された挙句、悪びれる様子が全くない。
可愛くもないウインクと両手を合わせ頼む仕草に、何とも言えない顔となる。
紺色の剣士が如何に手強いかは理解しており、勝つ為の作戦の一環と言うなら仕方ないのかもと自分を納得させた。
流石にこの先も、特にやちよ達の前で擬態するのは止めさせたいが。
801
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL③』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 19:18:26 ID:dyk1XPSI0
ニノンという犠牲こそ生まれたが、紺色の剣士の撃退には成功。
尤も話はそこで終わらず、これまた少なからず衝撃が走る内容が語られる。
「キャルちゃんが言ってたカイザーインサイトって、あの人だったんだ…」
「ちょっと待って…司さんの友達がその人の所にいるの!?」
複雑な背景はあれど、キャルにとっても強く警戒せざるを得ない覇瞳皇帝。
フェントホープで強大な力の一端を見せた女が、まさかその本人なのは驚きだ。
いろはが息を呑む一方で、イリヤは思わず椅子から立ち上がり声を荒げる。
自分を庇って命を落とした司が生前、複雑そうにしつつも大事な友達と言っていた少女。
琴岡みかげはよりにもよって危険人物に同行中。
一応殺し合いには乗ってないらしいが、紺色の剣士への仕打ちを聞くに善人とは言い難い。
「陛下殿がお前らと仲良くするのは難しいだろうが、みかげに関しちゃ当分は無事だろうよ」
「理由はなんだ?まさか、女を囲って愛でる趣味でも持ってるのか?」
「えっ」
『それだと別の意味でみかげさんが危ないですねー』
「えっ」
女の子は女の子同士で恋愛すべきとは、とある夏の日に友人が言ったものだったか。
思考が凍り付くイリヤだが、当然そんな理由じゃない。
エボルトが見るに、カイザーインサイトには人手が余り足りていない。
元々ただの一般人のみかげを殺し、首輪を手に入れるのは容易い。
にも関わらず、実際は自分の部下としての運用を選んだ。
ランドソルなる場所へいた頃と違い、自由に動かせる駒が大いに不足してる証拠だ。
だから本来特別な力もないみかげだろうと、ここでは貴重な部下の一人。
少なくとも、今すぐ殺す程後先考えない真似はしない筈。
「一応アイツも立場的には打倒神様なんだ。いきなり喧嘩売る真似はなしにしようぜ?」
難しい顔で黙り込むイリヤは、どう見ても納得したとは言い難い。
すぐにみかげをどうこうされる可能性は高くない、だが絶対そうならないとも言い切れない。
これから先捨て駒として扱われ、命を落とすのも有り得る。
純粋な善意で保護した訳でない以上、不安は尽きなかった。
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