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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第114話☆

1ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/06/30(土) 23:13:00 ID:24aAbHec
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。


『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

前スレ ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第113話☆

622名無しさん@魔法少女:2012/10/03(水) 02:26:05 ID:D1IBuRNA
GJです
このヘドロのように付きまとう過去の怨嗟がたまらない
しかも、愛した人の大切な身内を殺してましたってのが
やった本人じゃなく、本人たちの大切な人を狙うのが、
実に復讐として効果的な気がしました
あなた達も失うことで気づいてくださいと

623くしき:2012/10/03(水) 21:52:29 ID:nhLumrFc
良い行間、GJでした
シャマルさんの悲恋は正義。

ではシャマル祭り4番手いかせていただきます
・非エロ
・シャマルさんあんまり出番ないよ
・ちょっとナンバーズの成分が多いかも
・タイトル「涵養」

では次から投下させていただきます

624涵養:2012/10/03(水) 21:53:35 ID:nhLumrFc
▼▼▼

すれ違いざまの拳撃がガジェットを壁に叩きつけ、大破させる。
そのまま足を―――疾駆する靴裏のローラーを止めずに回避行動に移り、背後から薙ぎ払われたアームケーブルを回避。
息次ぐ間もなく襲い掛かる新手のガジェット2体の片方を蹴り飛ばして進路を確保、身を屈めてもう片側からの攻撃をかわす。

その視線の先にもさらにガジェット―――Ⅲ型の砲口から放たれようとする熱線を、彼女の機械の目は確かに捉える。

動線を崩せば、別方向から自分をターゲットする複数のⅠ型のケーブルのいずれかに捕らえられる。
灼かれるか、捕まるか―――いかな戦闘機人の身体能力をもってしても回避し得ぬ、袋小路の瞬間。

しかし少女には焦りも諦めもなく、むしろ砲口など目に入らないかのようにⅠ型ガジェットへ向き直り、足刀で蹴り潰す。
直後、発射寸前のⅢ型の熱線は発射されることはなく―――横合いからの、やはり拳による殴打で破壊された。

「ノーヴェ。いいところを見せるのはいいけど、ちょっとだけ張り切りすぎよ」

「うるさ……っ!?」

鋭いが咎めるわけではない、暖かですらある言葉が、孤軍奮闘していた少女―――ノーヴェにかけられる。
思わずムッと子供じみた表情で言い返そうとするが、すれ違いざまにぽんっ、と掌で頭を撫でられて言葉が詰まる。
さらに目を白黒させるノーヴェへ、ちらりと茶目っ気のあるウインクを投げると、それで事足りたとばかりに身を翻した。

突撃部隊の戦闘指揮を担当する、ギンガ・ナカジマ陸曹。
ガジェットの群れに飲み込まれかけたノーヴェへの絶妙のフォローをしたのが、彼女だ。

「……あーあっ、もう……気に入らねぇッ!」

気に入らない。
今の瞬間だけで、気に入らないことが多すぎる。

別に―――自分と同じ能力を持ち、自分より戦い慣れたギンガにフォローされたことが、気に入らないわけではない。
他の姉妹のために少しでも結果を出そうとした心情を、見透かされたためでもない。
管理局に恭順した必然とはいえ、その尖兵としてかつての自分達の施設を制圧する戦いを強いられているからでも、ない。

先ほどのギンガやその妹、そして保護責任者として施設で度々話をする、彼女たちの父親。
ふとした仕草で、どうしようもなく憧憬や親近感を抱いてしまう他人が、このところ多くなった。
かつては、スカリエッティと姉妹たちだけが『家族』であり、それ以外はすべて『敵』だったはずだ。
そんな彼女には、ここ半年間での自分の心境の変化が、どうしても認め難いのだ。

そして、もっと直接的に気に入らないのが、ノーヴェの後方にいる女の存在そのものだ。
ワイヤー状の武器と捕縛魔法で、ノーヴェを狙う敵とギンガの進路を塞ぐ敵を一度に拘束し、今の瞬間を演出した立役者。
そもそもこの女からの支援が無ければ、ギンガのフォローすら間に合わなかったのだ。

能力も経歴もデータとして知るが、直接顔を合わせたことなど数えるほどしかなく、言葉を交わした経験はもっと無い女。
今日の作戦そのものの絵図面を書いた策士。
このいけ好かない女の掌で踊らされている上に、命まで助けられた自分の不甲斐なさが、たまらなく腹立たしい。

夜天の書の付属物。
機動六課の、無位無官の医者。
名前は、シャマルといったはずだ。

625涵養:2012/10/03(水) 21:54:23 ID:nhLumrFc
▼▼▼

「フ〜ン、それは命令ッスかね?」

「いいえ。単なる提案ですから、強制も脅迫もなしですよ。
 断っても一切のペナルティが無いことは、同席しているナカジマ、カルタス両指導官が保証します」

7人のうち4人だけが集められた会議室で始まったのは、管理局機動六課による任務への、協力依頼だった。
示されたとおり、この場に同席しているのは、更生プログラムを担当するギンガ・ナカジマとラッド・カルタスの両名。
海上隔離施設における半年間の接触で、収容された元ナンバーズ7人もそれなりに信頼を置く、管理局側の人間である。

気心の知れた者ばかりのこの空間が緊張と緊張に満ちているのは、ひとえに話し手と、その内容のためだ。
話し手は、機動六課所属の医務官、シャマル。
かつての敵であることを除けば、姉妹たちにとっての接点は、更生プログラムのカウンセラーとして数回会った程度。
そして内容は―――

「『JS事件の関連施設の制圧要請』に非協力的、でもッスかぁ?」

「はい、その通り。名目上は更生プログラム評価の一環ですが、取捨選択は自由です。
 内容が内容なだけに、ですね」

机に片腕で頬杖を付いたウェンディの、明らかに皮肉げで挑発的な言葉を、シャマルはさらりと受け流す。
教壇に立つシャマルとその傍らに立つギンガ、ラッドの管理局員に対して、机に座る聞き手は4名。
この海上隔離施設に収容されている元ナンバーズ7名のうち、チンク、ノーヴェ、ディエチ、そしてウェンディだ。
残りの3名は昨日、初めて施設外に出ることが許可され、更生プログラムの一環として聖王教会への奉仕活動へ出向いている。

教会が保護責任者に名乗りを上げるであろう3人からは引き離され、残された4人に提示された依頼。
JS事件の残党同士を喰い合わせる、一石二鳥の事後処理に駆り出そうと言う訳だ。

「で? ペナルティはないとして、参加した場合のあたしらへの報酬はどんなもんなんスかね?」

「『局の要請による現場への出動』は、更生プログラムにおいて数年は先に行われるはずだったカリキュラムの前倒しです。
 応じれば、そして結果を出すことができれば、当然、更生プログラムの期間はその分短縮されます」

「……」

チンクを初めとするほかの3人の姉妹は、無言でウェンディとシャマルのやり取りを見守っている。
口を挟めぬわけではなく、ウェンディが自分たちの交渉窓口を担うつもりであることを、雰囲気で察したのだ。

ウェンディは、短絡的な性格ではない。
いささか調子に乗るきらいはあるが、周囲への気遣いは出来る娘なのだ。
ゆえに、この場に居る姉妹のために自分が為すべき役割と言うものは、承知していた。

更生組の『長女』であり、その言動が姉妹全員の総意として受け取られかねないため、迂闊な発言が出来ないチンク。
多感で、更生による価値観の変化に戸惑いつつも、ある意味血縁であるナカジマ姉妹らと良好な関係を築きつつあるノーヴェ。
もともと社会的な倫理観を有し、自らが為した罪を自覚するに従って、悔恨の念を強くするディエチ。

姉妹を代表する存在ゆえに、チンクは、管理局に対し特に模範生であらねばならない。
葛藤を内包する今のノーヴェとディエチは、こういった場面では疑問を抱いても上手く言葉にすることができないだろう。

今、この場で忌憚のない質問ができるのは、自分だけなのだ。

「具体的にどのくらい短くなるんスか? 前倒し分の3〜4年あたりがそっくりそのまま?
 まさか『考慮する』なんて程度のテキトウなもんじゃないっスよね?」

「では、ぶっちゃけましょう。ここでシャマル先生に聞いたことは絶対にナイショですよ?
 管理局にも籍の在る、聖王教会の偉い人経由で確認していただきましたが、今回が成功なら1年の期間短縮です。
 付け加えるなら、カリキュラムの前倒しで、以降の災害救助などの出動要請の機会も確実に増えます。
 出動要請は成功すればマニュアル的な加点形式で刑期が短縮されますから、これからの機会を買うためにも有利ですよ?」

「ふーん、ずいぶんイイコトずくめなんスね。
 管理局的にはよっぽど早く解決したい汚点なんスかね、JS事件は」

「もちろん……」

と、ここまでウェンディの挑発に眉ひとつ動かさなかったシャマルの雰囲気が変わる。
それまで対等に話を進めていたウェンディがぞくりと冷や汗を流すほどの、底の見えぬ艶を秘めた視線で。

「成功できれば、ですけれどね。自信が無いなら断っても構わないのですよ?
 『管理局の口約束は信用できない』の一言で、あなたたちの矜持は充分に守られるでしょうから」

626涵養:2012/10/03(水) 21:55:25 ID:nhLumrFc
▼▼▼

新暦76年、2月。
機動六課発足より10ヶ月―――昨年9月に引き起こされた『JS事件』から、はや半年。

発端は、機動六課所属のシャマルが、彼女たち4人を名指しして持ち込んだ依頼。

ミッド襲撃に用いる大量のガジェットを製造するために建造された、地下施設の制圧。
管理局が押収したデータを半年がかりで解析した末に突き止めた、JS事件時の拠点のひとつだ。

この手の施設はナンバーズの中でもウーノやクアットロが管理していたもので、他の姉妹に開示されていた情報ではない。
ゆえに、チンクたちは内部構造どころか、施設の数や場所すら知らない。

驚くべきことに、この施設は役目を終えた後も材料がなくなるまでは稼動を続け、相当数のガジェットを内部に蓄えていた。
その数、想定で200以上。
スカリエッティの感覚からすれば、証拠隠蔽など気にせず、ノルマに達した施設を放置しただけなのだろう。
しかし思いのほか優秀な設計だった無人の製造工場は、完全に放置されていてもメンテ要らずで動いていたらしい。

そう、この地下施設は無人で打ち捨てられながらも朽ちず、未だ『生きて』いる。
ガジェットの製造は材料のストックが尽きたゆえに停止状態だが、施設の動力やシステムは健在。
おそらくは、侵入者に対する自動防衛システムの類も。

憂いを断つ為には施設を制圧し、ガジェットを一掃する必要がある。
けれど踏み込めば、数層に渡り蟻の巣のように入り組んだ地下空間で、数百体のガジェットを相手にした泥沼の殲滅戦。
そしてほとんどのJS事件の関連施設がそうであったように、内部には高濃度のAMFも展開されているはずだ。

シャマルは、飾ることなくストレートに彼女たちに聞いた。
報酬は、刑期の短縮。
施設に最初に侵入し、内部構造などの情報を集め、後続の本隊のためにルートを確保する、突入部隊に志願するか否かを。

627涵養:2012/10/03(水) 21:56:05 ID:nhLumrFc
▼▼▼

深層に進むにつれて、ガジェットの数と抵抗が増す。
それはとりもなおさず、自分たちが施設のメインシステムに近付いている証でもある。

突入部隊は7名。
隊長としてリインフォースⅡ曹長、前線指揮官としてギンガ・ナカジマ陸曹、そして自分たち姉妹4人。
残りの1人が後方支援と情報収集役を兼ねたシャマルだ。

前衛はギンガを中心としてノーヴェとチンク、後衛はシャマルを中心としてディエチとウェンディ。
隊長であるリインフォースⅡが現場管制を敷く。

即興の部隊だが、チームワークと戦闘能力は悪くない、とチンクは客観的に評価する。
ギンガとノーヴェのツートップは、突出しがちなノーヴェをギンガが上手く制している。
フルバックのシャマルもディエチとウェンディをサポートし、その能力を十二分に引き出させて戦果を挙げている。

「……」

通路を塞ぐガジェットとの戦闘に極限まで集中しながらも、思考の一部はは取り留めなく泳ぐ。
自分の罪過と、これからの妹たちの未来。

妹たちは、長年に渡り人を殺め続けた自分とは違う。
管理局に帰順した以上、例え隔離施設を出て自由の身になろうと、再び犯罪に手を染めることはないと言い切れる。
妹らを説得して、結果的に父や長姉らを裏切らせる形で管理局に帰順させたのは自分だ。
ゆえにチンクには、妹たちをなるべく早く自由の身にすることが、自分に課せられた義務だと考えている。

そういえばノーヴェやウェンディは任務前、この取引を持ちかけたシャマルのことを悪辣と評してひどく嫌っていた。
餌をちらつかせ挑発し、機動六課のエースクラスは温存したままで、最も危険な任務に放り込もうとしている、と。

しかしチンクは2人とは異なり、シャマルに対して警戒感は抱いても、別に悪い感情は持ち合わせていない。

ただ危険な場所に消耗品として放り込むならば、ギンガやシャマルは同行しない。
それに命を削るほどの戦闘の繰り返しでも、彼女らの戦いぶりは本気であり、姉妹へのフォローも抜かりがない。
戦闘だけでなく、先ほどギンガがノーヴェに対してしてみせたように、メンタル面に関しても。

発想の飛躍だが、状況から鑑みれば、むしろ彼女らのほうが妹たちのために戦っていることになる。

JS事件の実行犯である妹たちが外に出るには、社会に貢献できるほどに更生した、という目に見える実績が要る。
無論、更生プログラムを遵守していけば、いずれ実績を積む機会は巡ってきただろう。
ただ、これほどまでに早い時期に与えられたのは、自分たちを名指しで招集したシャマルの意向に拠るものだ。

そういう意味でなら、機動六課のエースクラスが同行しないのは頷ける。

管理世界を救った『奇跡の部隊』機動六課の名声は、世間から隔絶された塀の中にも届くほど高い。
いずれ部隊は解散され沈静化するだろうが、JS事件の残滓を処理している現状、未だその名は不動である。

そんな彼女らと行動を共にすれば、実情がどうであれ、良い結果はすべて彼女たちのものになる。
エースらが妹たちの実績を評価しても、世間は英雄の手柄であることを望み、政治的判断はそれに追従するのだ。

だから―――どういう経緯であれ、妹たちに最初に手を差し伸べ体を張ってくれた事実には、素直に感謝している。
感謝はしてもやはり警戒心は手放せないのというのが、シャマルに対する今のチンクの偽らざる心境でもあるけれど。

628涵養:2012/10/03(水) 21:56:54 ID:nhLumrFc
▼▼▼

未だ冷徹に引き金を引けることに軽い自己嫌悪を抱きながら、それでも自らの存在意義を失わないでいたことに安堵する。
迫りくるガジェットの群れ―――半年前までの『僚友』をこの上なく効率的に壊しながら、ディエチの心は揺れている。

この任務を説明された際、交渉の矢面に立ってくれたウェンディに感謝しつつも、ディエチは沈黙していた。
目標を前にしたときに再び引き金が引けるのかという自問が、心の中に渦巻いていたからである。

実際に戦えている今、その心配は杞憂であったわけだが、だからといってなかなか割り切れるものでもない。

もともと普通に近い倫理観を持っていたディエチは、更生プログラムを経て、自らが為した犯罪行為を悔いている。
特に―――父や姉たちの思惑とはいえ、幼いヴィヴィオやルーテシアを利用したことを。

犯した罪は、自らの行動で贖わねばならない。
方向性の違いはあれど、それは父にも、姉たちにも、そして更生プログラムにおいても一貫して教えられた集団の規則だ。

ディエチの罪は、その砲口を社会に向けたこと。
罪の贖いは、同じ砲口をかつて帰属していた世界へと向けること。

否も応もないことは、理解できている。
それ以外に、人の役に立つすべを知らないからだ。

だから自分の意思で、この任務に参加すると決めた。

けれど―――そもそもそんな自分が人の役に立とうとすること自体、身の程をわきまえぬ考えではないだろうか。
どこまでも、答えなど無いネガティブな思考はループする。

「ねえ、ディエチ。ちょっとお願いがあるの」

そんなとき、不意に声をかけられた。

ノーヴェが言うように意地悪い人には、あまり見えない。
ディエチが言うように、怖い人とも思えない。
チンクが言ったように、深い考えを抱いている人かは、正直よくわからない。

ディエチには―――儚い人、に見える。

悠々としているけれど、どこか憂いがある人。
たくさんの人を支えているけど、この人自身は他の誰かに支えられているのだろうかと、心配になる人。
それがわかっていてもなお、傍らに居ることが心地良くて、頼りたくなる人。

声の主は部隊の後衛の司令塔、シャマルだった

629涵養:2012/10/03(水) 21:57:40 ID:nhLumrFc
▼▼▼

「はい皆さん、隊長のリインからの通達ですよ。手は止めずに聞いてください」

空飛ぶ隊長からの通達があったのは、中枢部に続く可能性が高い通路の制圧も佳境に入った頃。
無論、誰も手を止める事など出来ない激戦の最中である。

「こちらから機動六課司令部に送った内部構造とエネルギー配置からの逆算で、ほぼ中枢部の位置が確定されました。
 今から私たちの任務は、情報収集とルート確保から、中枢部に赴いての動力炉とメインシステムの停止に変更になります」

「中枢に行くって……今とルート変わんないんじゃないんスか?
 こんだけの数のガジェットの中を、これ以上の速さで進軍するのは無理っスよ。
 それとも場所がわかったから転送とかでパーっと送ってもらえるんスかね?」

「ん〜、転送魔法の使い手も居るのでそれも検討されたんですけど。
 これだけの高濃度AMF環境下で未知の場所に、しかも短時間の準備での転送はさすがに出来ないそうですよ。
 ですからシャマルの発案に従って、新しく道を作ろうということになりました」

「新しい、道……?」

目の前のガジェットと戦いながらリインとウェンディのやり取りを聞いてたノーヴェが、胡散臭げに眉をひそめる。
彼女にとっては、毛嫌いするシャマルからの発案と言うのも疑念を広げる原因だ。

「はいですぅ。
 無限書庫の司書長らの協力もあって、この先の構造も、床の材質や厚みや強度も、データからすべて計算済みなのです」

と言って浮遊するリインは、足元の床を指差す。
そのジェスチャーで何を言わんとするかを察したのはチンクだった。

「まさか……ゆりかごの時のように床を『抜く』のか?」

「そうですね〜。今までは内部構造も中枢部の位置も不確定で、ショートカットは出来なかったんですけれど。
 司令部からの座標データとシャマルの誘導があれば―――イノーメスカノンの出力で到達可能な計算ですっ」

「……!」

ガジェットと戦闘を維持しながらも、姉妹たちの目がディエチに集まる。
口には出さないが、ディエチの葛藤は皆の知るところだ。
姉妹だけでなく、更生プログラムでカウンセリングを担当するシャマルも、当然知っているはずである。

それを知りながらディエチに撃てと命令するシャマルに対し、ついにノーヴェが声を荒げる。

「オマエらいい加減に……っうぷ」

「あなたの妹でしょ。
 自分の主観で相手に噛み付くだけじゃなくて、まずお姉さんとして、妹の意思を聞きなさい。
 ……そういうまっすぐなところは、あの子の小さい頃にそっくりなんだから」

目の前の戦いを忘れてリインやシャマルに飛び掛りそうになるノーヴェの頭を、むぎゅっと押さえて静止させるギンガ。
完全に行動を予測していたかのような、鮮やかな手並みだった。

ノーヴェが一瞬であれ持ち場を離れたことで乱れた陣形は、チンクとウェンディが過剰火力を注いで支える。
2人はノーヴェと違い、初めからディエチの意見を待つつもりでいた。

▼▼▼

630涵養:2012/10/03(水) 21:58:21 ID:nhLumrFc

隊長であるリインフォースⅡから皆に通達される前に、ディエチはシャマルからその作戦を説明されていた。

「できる、かな……今の私に……」

出力を絞ってガジェットを撃ち抜く事は出来た。
だが、狭い通路が主戦場であった今回は、イノーメスンカノンの出力を全開にして撃つ機会に遭遇していない。
それはとりもなおさず、ゆりかごでの戦闘以降、一度も全力で撃っていないことを意味している。

迷い、そして未熟を思い知った今の自分に、高町なのはと同じ事が出来るのか。

「あら、出来るわよ」

「え?」

と。
ディエチの無意識のつぶやきに、目の前の緑の医師は、あっけにとられるほど事も無げに答えた。

「なにせ高町なのは隊長とレイジングハートに、遠隔目視観測からの狙撃をレクチャーしたのは、この私なんですから。
 そのシャマル先生が保証します―――大丈夫、ですよ」

▼▼▼

ディエチの口から了解の意が伝えられたことで、ノーヴェもしぶしぶ怒りの矛先を納めた。
それに、ここからが正念場でもある。

中枢部への砲撃を行うディエチと観測手を務めるシャマルは、その準備とチャージ時間の間、無防備になる。
殲滅ではなく維持が目的であるとはいえ、今まで7人で留めていたガジェットの波を、5人で支えることになるのだ。

「サーチャー、目標地点に先行完了……始めますよ、ディエチ」

「はい」

ディエチの足元にテンプレートが展開され、イノーメスカノンのチャージが始まる。

―――高町なのは。

その名前を聞くと少しだけ、狙撃手としての自分の誇りに火が灯る。

ヴィヴィオにした仕打ちと異なり、高町なのはに砲口を向けたことや、撃ち負かされたことに対しては、不思議と後悔がない。
むしろ、あれほどの相手と真っ向から砲撃の撃ち合いを演じたことは、誇らしくさえ思うのだ。

あの人にのように、なれるだろうか。
あの人のように強く―――優しく。

戦闘機人としてのデータリンク機能に、クラールヴィントからの情報が流れ込んできた。
直接の口頭指示ではなく、頭の中で狙撃に必要なデータが積み上がり、組み上げられていく。

その過程があまりにも理路整然としていて、心地良い。

中枢までの立体構造が、データとして『視える』。
方角と距離、その間の内部構造と対衝撃性能、ガジェットの配置―――そこから導かれる、詳細な砲撃シミュレート。

ああそうか、とディエチは1人で納得した。
高町なのはがゆりかごの壁越しにクアットロを砲撃したと聞いたときは、とんでもない無茶な力技だと思ったものだ。

けれど、今ならわかる。
あれは複数のカートリッジや砲撃出力に頼っただけの力技ではない。
『壁を抜く』という発想自体は別として、あの砲撃自体は極めて綿密に計算された上での、理に叶った選択肢だったのだ。

だから―――自分にも、出来る。

『出来る』と言葉で言われても、やはり迷いはあった。
けれどシャマルは、極めてわかりやすい端的なデータで『可能』であることをディエチに理解させたのだ。

だから、迷いはもう無かった。

「ISヘヴィバレル―――」

631涵養:2012/10/03(水) 21:58:57 ID:nhLumrFc
▼▼▼

「よう。今、大丈夫かい?」

「あらナカジマ陸佐。今日はこちらにお出ででしたか」

ノックに対してシャマルが許可を出すと、壮年の男性が気さくに扉を開けて医務室に入ってきた。
ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐。
最近、海上隔離施設で姿を見ることが多くなった、外部の人間の1人である。

「この前は、ウチの『娘ども』が世話になったな」

「いえ、ギンガさんにはむしろ私の我侭に付き合っていただいて、感謝しております」

本来ならば上座を譲るのはシャマルであるが、ゲンヤはそれを手で制すと、患者が座る簡素な椅子に自ら腰掛ける。
立ち上がりかけたシャマルはそれならばといった感じで自らコーヒーを淹れ、話しながらゲンヤへと差し出した。

「……わかってて言ってるだろ?」

「あら、何のことでしょうかね?」

コーヒーを啜り、取り合わないシャマルに対して大げさに溜息をついてみせるゲンヤ。
シャマルは困惑ではなく微笑を浮かべて、そんなゲンヤを見つめ返す。

ゲンヤは、ここに収容されている元ナンバーズの4人の保護責任者として名乗り出ている。
現時点では本人たちには秘匿されている情報であり、第一、まだ正式に決定したわけでもない。
当のゲンヤ自体、姉妹たちとは『外部の人間』としてたまに会うだけであり、込み入った話などできる立場ではないのだ。

「―――ディエチがな、高町嬢ちゃんとの面会に応じたそうだ」

それでも保護責任者の候補として、姉妹たちの現状を担当職員から聞くことは出来る。

今までにも度々、なのはは面会に訪れているのだが、ディエチは『合わせる顔が無い』と頑なに会うことを拒んでいた。
それが先日、初めて面会に応じて、拙いながらもいろいろと話をしたらしい。

無論、機動六課から隔離施設に出向いて、姉妹たちとカウンセリングを行っているシャマルには既知の出来事だ。
けれど、実の娘に友達が出来たとでも言わんばかりに感慨深く呟くゲンヤに、それを指摘する意味も無い。

「更生プログラムも、先日の結果で前倒しが決まったらしい。
 ……そもそもの上からの意向じゃあ、あの任務は別の陸士部隊に割り振られたって聞いたぜ?
 それを機動六課が請け負って、先方にもえらい恩を売ったらしいな?」

「そのあたりは八神部隊長の立ち回りですよ。
 部隊解散後は特別捜査官として現場に出たいと言っていましたから、いろいろな所に顔は繋いでおきたいのでしょう?」

「八神ならここに来る前に会ったが、その辺の悪巧みは自分の担当じゃないって言ってたな」

「クロノくんかグリフィスくんか―――悪い事を知っている人たちが、周りにいっぱいいるんですよ。困ったものです」

腹芸などというレベルではなく、子供のような単なる言葉のやり取りをしながら。
シャマルは、儚げに笑ってみせた。

632くしき:2012/10/03(水) 21:59:50 ID:nhLumrFc
以上でした

では失礼します

633名無しさん@魔法少女:2012/10/04(木) 01:38:28 ID:C7cXCM4U
これはシャマルSSというよりもうナンバーズSSじゃないか?www
まあ面白いのでよし!

634ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/10/04(木) 21:06:05 ID:C7cXCM4U
さて、くしきさんの投下を以って今回あらかじめ予定されていた面子による投下は一応終わります。
この後自然消滅するも、続けて書き上げたSSを投下して継続されるも自由ということで。

あ、ついでといっちゃなんですがちょっと出来上がった短編SSを投下します。
残念なことにシャマルさんメインじゃありませんがwww

635壁ドン:2012/10/04(木) 21:07:03 ID:C7cXCM4U
壁ドン


「そういえば無限書庫のユーノ・スクライアさんってなのはさんの魔法の先生なんですよね?」

 と、食堂で昼食中にスバルは言った。
 
「そうだね、最初に魔法のことを教えてくれたのはユーノくんだよ」

 と、なのはは答えた。
 スバルは続けて質問した。

「じゃあやっぱり戦闘スタイルとかも同じなんですか? もしかして凄く強いんですか?」

 なのはに憧れて魔導師になったスバルには当然の疑問であった。
 もし自分が目指しているなのはのように強いのなら、なにか一つくらい戦い方を教えてもらいたい。

「ユーノくんは私とは全然違うよ。ユーノくんはあんまり戦闘、っていうか攻撃魔法の類は使わない人だから」

「へぇ、そうなんですか、ちょっと意外ですね。じゃああの人ってあんまり強くないんですか?」

「そうだね。あ、でも私ユーノくんに負けちゃったよ」

「え!? なのはさんがですか!? い、いったいいつどうやって」

 これにはスバルだけでなくその場に居た全員がざわめいた。
 まさかあの高町なのはが勝負で負けるとは、まるで想像がつかない事である。
 なのはの実力は管理局の中でもトップクラス、その彼女を打ち破れる者などそうはおるまい。
 皆の視線が集まる。
 
「どうって、えへへ……」

 なぜかなのはは顔を紅くして照れ笑いを浮かべた。
 そして言った、





「……ベッドの上で(///」





 その時機動六課の皆が行った壁ドンでミッドが揺れた。


終幕

636ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/10/04(木) 21:10:16 ID:C7cXCM4U
投下終了。
はい、ご自由にどうぞ。 (゜3゜)つ|壁| サッ


しかし>>533 で言われた甘党STS版とかどうしようかなぁ、需要あるなら書きたいけどネタがいまいち、良いのがでない。

637名無しさん@魔法少女:2012/10/05(金) 13:18:53 ID:f55g5rFo
なのはさん、キャロやエリオが聞いてるかもしれない食堂でその発言は不適切だと思いますっ!!(>_<)

しかし、ユーノ君書庫入りしなかったらガンダムWのヴァイエイト・メリクリウスみたいな、ほこたてコンビをなのはさんと組んでたんじゃないだろうか?

638名無しさん@魔法少女:2012/10/06(土) 22:15:58 ID:NyR41IFY
ピンク髪は淫乱というが、あけすけに淫乱ってよりも、潜在的に淫乱って方がいいよな

要するに口では偉そうなことを言いつつも身体は正直なシグナムと、性知識に乏しく何が起きてるか分からないけど性欲は強いキャロが見たい

639名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 00:33:21 ID:DrBnsS/w
キリエさん………

640名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 01:06:57 ID:SA7Tx.oA
姉妹百合美味しいです

641名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 01:39:02 ID:DdKHZNsI
そうえばナンバーズのセッテも髪ピンクだよね?
無口であんな巨乳の子が淫乱とか・・・・・・・うん、やばい。

642名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 01:49:25 ID:T7hqj1YE
>>637
どんなものでもブチ破っちゃう最強の砲台と
チャージ中もがっちりガードしてくれる最強のバリアか・・・
チートすぎて誰も勝てないな

643名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 02:12:02 ID:XpQsiH8U
フェレットモードのユーノがなのはの胸の谷間に潜り込んで一緒に戦うSSがあったなぁ

644名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 02:28:52 ID:X0sT0jJA
>>642
おまけに相手を捕縛して動きを封じる上に相手の位置を特定して砲撃の管制もしてくれるからなのはとしては最高の相棒だろうな

645名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 02:40:47 ID:LBrZSWm6
>>644
だが大人なのははそれら全て一人でできるから
二人で分担となるとかえって邪魔になる可能性が

646名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 02:44:27 ID:XpQsiH8U
>>645
リソースが無限なわけが無いんだから分散処理したほうが効率よくなるだろ
特に情報処理は間違いなくユーノのほうが上手っぽいしなのはが作中で扱ってない
結界関連転送関連もあるし

647名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 02:45:24 ID:Mv9QXrbE
大人ユーノが前線に立つ状況といったら、アリサやすずかみたいに魔法が使えない人の壁になるとかそういうものだろうね

648名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 03:03:38 ID:X0sT0jJA
前線での支援能力もなかなかの物だけど後方での支援能力はもっと凄いから司書長をやらずに
誰かの副官とかになってた場合相手は凄く楽できそうだな

649名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 03:44:50 ID:S3NCey/6
そういやピンクで思い出したけど、アミタ×ユーノを書くって言った人
今どうなってんのかな?

650名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 04:11:02 ID:X0sT0jJA
>>649
結構いいとこまで書けてたんだ
でも間違って消しちゃったんだ
だから一から書き直してるんだ
笑っちゃうよねw


ホント笑うしかないよね・・・

651名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 08:14:24 ID:GcU9.hks
>>646
分散処理で効率が上がるかどうかは各ユニットの連携にかかっている
つまりなのはとユーノが身も心もひとつになれば・・・ウフン

652名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 10:01:31 ID:gMrPSRO2
なのは「ユーノ君…このダブルディルドウもとい連結用デバイスで、
私がユーノ君の後ろを犯しゲフンゲフン、ユーノ君と連結して並列処理能力をアップさせるの」

ユーノ「だが断る」

653名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 18:51:55 ID:NoMN3tzo
四期ヴィヴィオのSS書こうと思ってvivid関連をググってたのに
コロナのデザインがツボすぎて困る
ロンスカっていいよね

654名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 19:13:13 ID:Mv9QXrbE
>>653
スカートの長さとそれが捲れた時のエロさは比例するっていうしね

655名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 22:59:49 ID:SbtqV9ps
>>645
同意。なのはさん、弟子として完璧だからな。
分担したほうがいいって言っても役目がダブってるのは変わりないし。

むしろ、事務仕事の多そうでしかも自称ガチンコだとキャロにしか勝てないはやてさんとこの方が、
書類整理と戦闘の両面で役に立ちそう。(ユーノって蒐集されてないから、はやてさんはユーノの魔法使えなかったよね)

>>650
ご愁傷様です。めげずに頑張ってください。


>>653
確かに。ストライカーズのなのはさんもノーマルよりブラスターモード(ロンスカ)の方が可愛かった。

656名無しさん@魔法少女:2012/10/07(日) 23:07:28 ID:pCWxWUZQ
>>655
ユーノ専用と思われる魔法については、ね
バインドなどの魔法類についてはStSでやたらめったらなのはに伝授していたことが分かってるから
並のバインド、シールド系ははやても使えると思われる

657SandyBridge ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:19:33 ID:GcU9.hks
どうもー
闇と時と本の旅人 13話ができましたので投下します

658闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:23:36 ID:GcU9.hks
■ 13





 硬く、独特の強力な洗剤でクリーニングされたシーツが放つ石鹸の芳香を感じる。
 身体の平衡感覚が希薄になり、クロノは夢の中にいた。
 これは次元航行艦の中だろうか。だが、アースラとは別の艦のようだ。
 歩くが、足音がしない。浮遊するような夢の感覚で、艦の中を進む。
 艦内の通路の配置を覚えている。おそらく、L級だ。スチールロッカーに刻まれた製造年度の銘が、新暦42年となっている。

 見覚えのある、横顔。
 しかし、この場所で彼を見たことは無いはずだ。
 クライド・ハラオウン二等海佐、管理局次元航行艦隊提督。彼の指揮するL級艦船エスティアは、同級2番艦であり、現在現役にある中では最も古い艦船のひとつだった。

 若くハンサムな提督に、胸を躍らせる女子乗組員も多い。
 クライドの腕をとり、抱きつく少女。青みがかった銀髪に、金の髪飾りがきらめく。

 そして少女はクロノにも振り返って微笑み、身体を触れ合わせてきた。
 腕を、肩を、胸板を触られ、股間をズボンの上から握られる。
 とても愛おしい男性の肉体の局部。触りたいのは素直な性欲。夢の中では抵抗できず、腰が浮き上がるような感覚で身体の力が入らない。

 青い瞳に青い銀髪の少女が、無邪気に微笑む。

 彼女を、クロノはまだ見たことが無い。

「アインスさん──」

 目覚めと同時に声が出たことに気づき、クロノはあわてて息を呑む。
 もし、エイミィやリンディに聞かれたら。どんな夢を見ていたのか、寝言で名前を呼んでしまうほど、夢に見るほど彼女にどんな感情を抱いているのか、厳しく追及されるだろう。

 おそるおそる、周囲の状況を確認する。

 昨夜は部屋の床に布団を敷き、エイミィと一緒に寝た。
 2台備え付けられていたベッドには、片方にはリンディと、もう片方にはフェイトとアルフが寝ている。外はほのかに明るくなっており、まだ夜が明けきる前の早朝だ。
 エイミィはクロノの背中側から抱きついて、クロノの下腹に両手を包み込むように組んで抱えている。
 クロノの逸物を触りながら眠ったのを思い出した。エイミィはまるでおもちゃを与えられた子供のように楽しげにクロノの竿や袋を触っていて、パジャマの上からだけでなくパンツの中にも手を入れたりしていた。

 エイミィの手指の感触で、朝立ちしていることに気づく。
 ゆっくりと、布団の中で身体を回し、エイミィのほうに向き直る。エイミィもリンディも、まだ眠っていて静かな寝息が聞こえる。この部屋で起きているのはクロノだけだ。

 パジャマのボタンがほどけて胸のふくらみが見えているエイミィの寝姿に、クロノの股間はにわかに元気を盛り上がらせた。
 肌を触れ合わせることが気持ちいい。アインスだけではなく、幼馴染の少女とこのように触れ合うことが気持ちいい。

 そっと顔を近づけ、静かに上下しているエイミィの胸元にキスをする。
 思わず、笑みがこぼれた。
 同時に温かい吐息が首元にかかり、クロノは布団の中で心臓を飛び上がらせた。

「おはよ、クロノ」

 ぎこちない動きで振り返る。
 いつの間にか起きてきたリンディが、悪戯っぽく微笑みながらクロノの枕元に座り、見下ろしていた。

「か、母さん!?」

「もうすっかりできあがっちゃったみたいね」

「あっ……」

 起きたばかりで、しっとりと濡れているリンディの髪が、クロノの感情を激しく駆り立てる。
 普段見ない、母の姿。年齢を重ねた女性とは思えないほどの瑞々しい肌と貌。
 太陽が東の空に姿を現し、窓から差し込んできた淡い光で、リンディのネグリジェが透け、天使の衣のような薄手の布地を透かしてリンディの身体がシルエットになって浮かび上がる。

 胸が激しく脈打ち、ペニスがいよいよパンツの中でいきり立ってくる。

659闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:24:49 ID:GcU9.hks
「ね。こうして一緒に寝るのも久しぶりよね」

「リンディさん」

 エイミィもクロノを後ろから抱きとめ、逃がさない。
 布団の中で二人に挟まれ、合計4つの乳房と乳首に包まれる。

「なんだか……、わたしまで、リンディさんにムラムラきそう。朝だからかな?」

「な、何言ってるんだエイミィ!」

 フェイトがまだ寝ているので大声を出せず、身をよじりながらエイミィにささやく。

「わたしたち、家族──ですよね。互いに隠すことなんて無いんですよね」

「ええ……。クロノ、母さんもエイミィもさびしかったのよ、あなたがずっと、帰ってこなくて──」

「クロノくん──。うちは、クロノくんがいてこそだから。将来、クロノくんが、一家の大黒柱になって。わたしもリンディさんも、クロノくんに仕えて、家庭を守っていくんだから」

 寝起きでまだはっきりしない思考が、釈然としない言葉の解釈をしきれず、クロノは半ば朦朧とした意識でリンディとエイミィに抱かれている。
 それでもひとつ確かなことは、クロノのペニスは、睡眠の間に溜め込んだ精力をみなぎらせているということだ。
 エイミィを左腕に抱き、姿勢を仰向けに直したクロノの上に、毛布をはだけながらリンディが覆いかぶさる。
 ゆったりとした薄手のネグリジェが、クロノを包み込むように垂れ落ちてくる。黄色い朝日に、リンディのボディラインがくっきりと透けて浮かび上がる。

「母さん──」

「ねえ、クロノ。いつまでたってもあなたは私の可愛い息子よ……大きくなっても、いつまでも、私はあなたを愛していたいの」

 触れる。
 リンディやエイミィだけでなく自分も、乾いた寝汗と皮脂が混じり、独特のフェロモンを含んだ芳香が肌を包んでいるのがわかる。
 この匂いは、嗅いだらくせになる。性欲を刺激し、懐かしさを覚える、人肌の匂い。
 アインスの匂いとは違う、リンディの匂い、エイミィの匂い。
 そして自分の匂いも、二人にとっては、とても懐かしく、そして恋焦がれるものだろう。

「クロノくん、キスして見せてよ。わたし、リンディさんとクロノくんのキス、みたいです」

 エイミィの声。返事を待たず、リンディの潤んだ瞳に、クロノは意識を奪われていた。
 目が釘付けになり、横から聞こえるエイミィの声に反応できない。
 自分の肉体が、リンディにその狙いを定めた。思考が覚醒しきらない状態で、肉体の本能がはっきりとわかる。クロノの肉体は、人間の男を超える、ある種の強烈な精力を身につけつつある。
 その力でもって、女たちをひきつけていくのが本能だ。
 人間である以上、女性にも性欲はある。ただそれをあまり表に出したがらないだけで、セックスの気持ちよさを味わいたいと思う気持ちは誰もが共通だ。

 母の重み。
 ゆったりとした乳房が胸板の上に載り、クロノは母の身体を自分の腕の中に収めていると感じとった。
 右腕をリンディの背中に回し、髪を撫で、背筋を確かめる。やわらかく脂のついた、熟した女の肉体。背骨に繋がる骨盤の形が、その中に収まる子宮とそこに肉付く尻のシルエットが手に取るように浮かぶ。
 女としての母の肉体を、イメージできる。

「ん……」

 起き抜けで、粘度が高くほろ苦い、母の唾液の味。幼い頃、寝る前にしてくれたおやすみのキスとは違う。
 初めてアインスとキスをしたときのように、唇を深く交わらせる、性の儀式としてのキス。

 母の唇。
 信じられないほどに、やわらかい。年齢を感じさせないほどのみずみずしく、程よい厚さの熟れた唇。
 かあっと頭の奥が熱くなる。それでいて、思考は冷静さを保っている。
 自分の肉体の力がわかる。自分の肉体に触れた女が、たまらない愛おしさに包まれて虜になっていく様子がわかる。

 身体を重ねること、交わること。
 とても気持ちのいいこと。
 アインスが教えてくれたこと。

 それは、今のクロノにとって最大の武器となる。

「かあさん、んむっ」

 頭を持ち上げ、吸い付く。瞬間息を止め、そして、鼻と唇の隙間から呼吸を再開する。
 寝ていた間に歯と舌にたまったぬめりをかきとるように、舌を差し入れ、絡ませる。いきなり舌を入れてくるとはさすがのリンディも予想外だったのか、クロノの胸の上で艶かしく背を反らす。
 その動きによって乳房がクロノの目の前にこぼれ出て、それをエイミィが横から触る。

「っはぁ、はぁ、クロノ──あぁ」

660闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:25:46 ID:GcU9.hks
「リンディさん、すごい……もう、見てるだけであそこがジュンってなっちゃいます」

「エイミィ──」

「クロノくん、ほら──わたしもリンディさんも、クロノくんのことが好きでたまらないんだよ?わたしたちは家族だから、いちばんに大事にしてくれるよね?」

 母と幼馴染の、女の欲望をむき出しにした瞳。
 切ない恋心に潤み、感情をあふれさせている。

「ああ……母さん!」

 思い切って身体を起こし、リンディを布団の上へ仰向けにしてのしかかる。
 布団へ両腕をつき、リンディの胸へ身体を預けるようにして、胸いっぱいに母の乳房のやわらかさを感じる。
 出産と子育てを経験している女性の、乳汁を出すことを経験している乳房。硬いしこりのようでいて、しかし胸の中に確かにわかる、赤ん坊にミルクを与えるための乳腺。
 一度はここから乳汁を出し、クロノはそれを飲んだことがあるはずだ。

「すっごい、クロノくんのあそこ、バッキバキになってるよぉ」

 感極まった声で、エイミィが後ろからクロノに抱きついて、ペニスをいじくっている。
 エイミィはすっかり、この男性器のかたちを触ることにぞっこんになってしまったようだ。クロノなら、クロノの逸物なら、どれだけ触っても飽きない。

「はぁっはぁっ、か、かあさんっ」

「んっ……クロノ、すごいわ、熱い……あぁ……うれしいわ、あなたがこんなにたくましくなって」

 ネグリジェの上から、乳首をつまむ。
 経産婦ならではの、大きく発達した硬い乳首。赤ん坊がくわえやすいように膨れ、口にちょうどいい大きさになっている。
 白い肌の中に、うっすらと紅色に染まる乳輪。限りなく濃厚な、ミルクの香りを放っている。

 たまらず手を股間に伸ばし、リンディの茂みに指が絡む。許されることのない、交わり。
 それは近親交配による遺伝子の弱体化を避けようとする本能かもしれない。しかしそこに、人間は、背徳の欲望を見出す。

「ふぁっクロノ、クロノ、あぁ、あ、だめぇ……」

「リンディさん、わたしたち、家族ですよねっ!家族が増えると、うれしいですよねっ!」

 幼馴染の少女にはサディスティックな一面もあるのか、とクロノは思う。
 クロノの背中から身体を滑らせて、二人の股の間にかがみこんでエイミィはクロノの玉袋を手のひらで支えながら竿を舐め、さらにリンディの膣口を指で広げようとする。
 膣を閉じようと収縮するリンディの八の字筋がエイミィの指に逆らい、襞に指が食い込む。
 自分のとは違う濃い愛液が、エイミィの指先や爪の間に染み込んでいく。

「すごい、リンディさん、あぁ……匂いがすごくて、もう、なんだか……くらくらしそう」

「ひ、ひゃっ、え、エイミィそんなっ、そんなところぉ……あぁあっ!!」

「くぁっ、エイミィ、ああそんないっぺんにっ……」

「いいじゃないですか、恥ずかしがることなんてないですよ!ちゃんと濡らしてあげて、ほらクロノくんも」

 リンディの上に乗った体勢で見えないクロノの手を取って導き、陰唇へ持ってくる。
 指の感覚だけでクロノはすぐにリンディの形をおぼえ、人差し指と薬指で襞を広げ、中指をまず差し入れた。陰唇の内側にある分泌腺を指先で刺激し、愛液を出させる。
 さらに親指でクリトリスを押し込み、こちらも、とても大きく硬く、もしかしたらアインスよりも大きく勃起しているかもしれないと感じ取る。

 今はアインスのことは少しだけ忘れよう、とクロノは思った。
 アインスのおかげで、今まで持っていなかった力と技を覚えた。女体の扱いをアインスから教わり、それは役に立っている。

 深い感謝と、それから忠誠のような広い愛情。

 アインスはきっと、クロノよりもずっと人生に詳しく、底の知れない心を持っている。
 彼女に愛されて、彼女を愛して、きっと自分はもっと高みを目指していけるだろうとクロノは思った。その先に何があるのかは、おぼろげに感じているが、それはまだはっきりと姿を現してはいない。
 今はただ、この身についた力で、女たちを喜ばせたい。歓びを、味わってほしい。

 長く伸ばされたエイミィの舌が、リンディのアナルからヴァギナ、そしてクロノの竿、玉袋までを余すことなく舐めあげ、リンディのたっぷりと肉付いたヒップが激しく跳ね上がり、息子の腰を貪欲に打ち据えた。

661闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:26:56 ID:GcU9.hks
 




 朝凪が広がり、静寂に包まれた海岸で、アインスははるか遠い第97管理外世界へ思いを馳せていた。
 11年前のあの時から、闇の書が次に向かう場所は分かっていた。
 探索行のプランはあらかじめ計算され、それは闇の書内部に格納されていた。

 それを取り出せば、あらかじめ待ち伏せ作戦をとることもできた。
 管理局提督、ギル・グレアムが自分に対して抱いている感情を、アインスは思案する。

 親友の仇?しかし、グレアムがそのようなそぶりを見せたことは、少なくともアインスに対しては無かった。
 自分を利用すれば、闇の書に先回りをし、戦いを有利に進められることは分かるだろう。そう考えてくることを見越してアインスもグレアムに協力している。
 11年前の闇の書事件が起きるまでは、グレアムもクライドも、アインスを普通の人間だと思っていたのだから。

 クライドの想いにこたえたかった。愚かしくさえ思えるほどに実直で、濁りのない清らかな男だった。
 本当に、愛していたと思う。
 しかし、人間はどんなに頑張っても高々数十年しか生きられない。自分は今まで、幾星霜もの時を過ごしてきた。その時点ですでに隔たりがある。
 時を過ぎれば人間は朽ち、どんなに愛した男がいても、次の新たな男を探さなければならない。
 正体を知っても、クライドは自分を愛し続けてくれていた、とアインスは回想する。
 闇の書の意志。そう呼ばれてきたことを知っている。
 彼の妻のことも知っている。彼の息子のことも知っている。
 自分の心と、自分の命と。それらを天秤にかけて、彼は自分の心を選択した。己を曲げないために、自らの命を犠牲にした。
 次元世界の平和のためには、もはや人の道を外れてしまった自分が生き続けることはできないと判断した。そして彼は、クライド・ハラオウンは、次元航行艦エスティアとともに、遥かな星の海に散った。

 今更彼の後を追ってなんになる、とアインスは想う。
 実直で、それゆえに愚かな男だった。どんな理由があっても、自ら命を絶つ選択など、愚かだ。
 それで本当に命あるものといえるのか。命は、生き延びようとすることがその本分である。

 しかし同時に、闇の書の力に染まったクライドが生きて管理局に戻ったら、人間社会にもたらされるであろう混乱は想像に難くないことも事実だ。
 悪い想像は、妥当で、理解できる。
 しかし納得はできない。それは自分が人間ではないからかもしれない、とアインスは考える。
 クライドは、自分が人間ではなくなってしまったことを悟り、それである種の悲観に苛まれたのかもしれない。だとするなら、彼は自分のせいで命を絶ってしまったことになる。
 いかに強靭な精神を持つ管理局提督であっても、自我が破壊されるほどの衝撃に耐えることを求めるのは酷である。
 息子の前に戻れるのか。妻の前に戻れるのか。
 自分の肉体は、妻と再び交われるのか。妻を抱くことが許されるのか。

 クロノを、騙していると言われれば確かにそうなのかもしれない。
 また、もし最初からクロノにすべてを打ち明けていたとしても、たとえクロノのほうから求められても断るべきだったかもしれない。
 自分は、人間ではないから。人間と交わることは許されないから。

 闇の書は、それ自体が人類という種族にとって異物であった。
 それはアインス自身にとっても想定外であった。自分が生きていることが、人間にどれだけの影響をもたらすのか。それによって影響を受けた人間はどうなるのか。
 人間の恐怖を、喰らうことが自分の命だった。
 今、こうして自分が生きていること──クロノや、リンディや、グレアム、フェイト──彼らと共に過ごしていることが、いったい何を意味するのか。それはまだわからない。
 あるいはカリムのように、俗世を捨てて人里離れた土地で静かに隠遁すべきだったのかもしれない。

 それができればどんなに楽か──とは、今更考えても仕方ない。
 海から目を伏せてへたり込み、砂粒が膝と脛に食い込む感触を感じ取る。

「クロノ……私は、お前と一緒に……生きていきたい」

662闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:27:37 ID:GcU9.hks
 過去に、闇の書の主となった人間たち。彼らもまた、闇の書の一部となって生き続けることはできなかった。他の人間たちから攻撃され、闇の書はそのたびに破壊された。
 圧倒的な人間の魔法の攻撃を受け、そして主たちは、人間からの攻撃を受けて死ぬことを望んだ。
 極限状態の意識の中で、冷静な思考を保てる人間などそう多くはない。

「私は、もう闇の書の騎士じゃあない、お前にずっとそばにいてほしいんだ──こんな私が、主に認められるわけがない──私は、騎士失格……だ──」

 自分を抱きしめ、背を丸め、俯く。心の奥底、胸の奥深くから湧き上がる黒いものを抑え込もうと、胸を締め付けるように自らを抱く。
 これは自分なのか。自分ではないのか。人格が分裂して、自分ではない何かが意識の中に巣食っているのか。
 だとしても、記憶を失っていた期間は思い当たらない。自分の意識はすべて管理できているはずだ。
 すなわち、これは自分の意志。普段抑圧していて表に出さない、自分の本当の望み。エゴ、まさしく字義通りの真の自我。

 涙が、零れ落ちる。
 自分が本当に望んでいることは何だ──切なく胸を切る感情を浴び、アインスはその言葉を意識の俎上に書き記す。

「どうして、クライド艦長、あなたが死ななければいけなかったんですか……私は、闇の書は、ただこの世に在るだけで人間に追われる……
あなたが死んだら、私がどうなると……私は、最後の最期で、あなたに裏切られてしまったことになるんですよ……
私は、あなたを守れなかった……どんなに後悔しても取り戻せないことは分かっている、だから……」

 悔しさと悲しさが綯い交ぜになった、苦い涙。拳を握り締め、振りかぶり、砂浜にたたきつける。
 指の甲に砂が噛む痛み。小さく散る砂粒が、すぐに浜辺に落ちて溶け込み、何も答えずに沈黙する。この大地をさえ叩き割りたいと思う、やり場のない歯がゆさ。
 人間は自分を身勝手だと貶すだろう、しかしそれは、自分が人間ではないからだ。

「だから──、もう何があっても、私は私を生き続けさせる、それがクライド艦長、あなたへの手向けだ……
だからクロノ……お前を私のものにしたい、主と、お前と、皆で──私たちだけの、だれにも邪魔されない私たちだけの世界をつくろう……」

 果てしない願いが、張り裂けそうな胸の切なさを涙に変えて溢れ出させる。
 砂浜に落ちたしずくが、粒を集めて沈んでいく。
 守護騎士たちの頭領、烈火の将には、お前は泣き虫だと言われたことがある。もう遥か何百年も前の、まだ闇の書自体が幼かった頃のことだが、その頃からもうすでに、システムの崩壊は進行していた。
 闇の書は、建造された当初から不安定なシステムだった。管制人格であるアインスの能力をもってしても制御できないシステムクラッシュを頻繁に起こし、プログラムの暴走事故を招いた。
 やがてアインス自身、すなわちシステムマネージャともいうべき管理プログラムがコアカーネルからリンクを断たれて完全に切り離されてしまい、闇の書の機能に干渉できなくなった。

 別たれた運命──無限の転生能力を持つ守護騎士たちと、無限の再生能力を持つ管制人格。
 そしてアインスは、自らの意志で、闇の書の完成のために動き始めた。
 壊れたプログラムを修復し、モジュールを整え、リンクを正しく整理する。そうして、完全な状態を闇の書が取り戻せば、それは強力な武器としての生命体になることができるだろう。

 クライドがその力になってくれると思っていた。しかし彼は最後の最期で、管理局のために闇の書を破壊する選択肢を選んだ。
 そして現代、彼の息子クロノは、どのような選択肢をとるか。
 アインスに従い、共に戦ってくれるのか。それはクロノにとっては、恩師、家族、友人たち、同僚たちすべてに対する裏切りとなるかもしれない。
 果たして自分は、彼ら、クロノの社会生活の基盤すべてよりも重いだろうか。クロノがこれまでのそしてこれからの自分の人生と、アインスを天秤にかけて、アインスを選ぶに値すると考えるだろうか。

 確かに管理局は混乱するだろう。だが、クロノさえ手に入れられるなら、どこか遠い無人世界へ引きこもって、自分たちだけの次元世界を作っていくことだってできる。
 もちろんそうなれば、今まで共に暮らしてきた家族、共に過ごしてきた友人、共に働いてきた同僚たちとはお別れだ。
 新天地には、自分と、闇の書の主と、守護騎士たちしかいない。

 孤独ではない。なぜならば、そのような未来が現実になるであろう時には、すでにクロノは人間の心を失っているだろうから。

663闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:28:24 ID:GcU9.hks
 




 仰向けに寝かされたリンディの胸に、両側からフェイトとアルフが覆いかぶさっている。
 リンディの豊満な乳房は、ブラジャーなしで仰向けになった状態では果てしないほどに広がり、胸の上でたっぷりと乳量を揺らしている。
 寝そべりながら乳を吸うように、フェイトとアルフが、両側からそれぞれリンディの乳首に吸い付いている。
 エイミィに後ろから抱かれ、玉舐めされながらクロノはリンディの股間の前に膝をついて姿勢をなおし、挿入の準備を整えていた。
 エイミィの視点からは、待ちきれないように大きく緊縮と弛緩を繰り返すリンディの膣とアナルの様子がよく見える。蒸れたフェロモンを保持するふわりとした陰毛に包まれ、大陰唇がぱっくりと口をあけている。
 開いた襞の中で、幾重にも取りすがって絡まる肉壺の入り口が、クロノの先端から垂れ落ちる先走り汁を啜って吸い込んでいる。

「すごい、リンディさん……たまんないです、すごいすごい、エロくて……」

 心底感心したといった声で、エイミィはリンディの花弁を摘まんでめくったり、クリトリスの先端をつついたり、指で押したりこねたりしている。
 そのひとつひとつにリンディは激しく反応し、ふっくらと肉付いた腹肉や、太ももの肉が揺れ、弾む。
 腹肉に囲まれた臍穴が、きゅっとすぼまった漏斗型の肉の穴をつくりだし、腹の動きに従って艶めかしく蠕動する。

 田舎の実母はこれほどの若さを保てていなかったなあ、などと思いながら、エイミィはリンディの肉体をいじって遊ぶ。

「い、いやぁっ……やめて、エイミィ……あ、ああっ!んっ……ふぅ、ふっはぁぁっ……」

「そんなこと言って、本当はリンディさん、したくてたまんないんですよね?クロノくん、もうこんなに立派になってますよ?クロノくんも、大好きなお母さんに感謝したいんです。
わたしも、リンディさんがわたしのお母さんになってくれたらいいなって思ってます……フェイトちゃんも、そうだよね?」

「ちゅむっ……ちゅぱ、はい、エイミィさん……やさしいおかあさん、に……リンディさん、きれい……」

「ふぇ、フェイトさん……あぁっ、あ、んっくぅ……そんなっ、そんな吸い方って、あぁ、いやぁぁっ」

「リンディさぁん……アタシもフェイトも、すきなんですよぉ……おかあさんすきです、リンディさん、あたしたちみんなリンディさんをすてきなおかあさんだって思ってます、愛してますぅ……」

 喉を鳴らして甘えるアルフ、大きな乳房に顔を埋めて乳首を吸っているフェイト。
 アルフもさることながら、フェイトの乳首の吸い方も、赤ん坊のそれとは違う、愛撫のためのやり方になっていた。聖王教会で、カリムとアインスに教えられた。熟れきらない唇と小さな舌でついばむように乳首を咥え、甘噛みする。
 リンディの身体は艶めかしく、滑らかに、弾力をもってベッドの上で跳ね、よがる。
 身体をくねらせ、全身に降りかかる性感を味わう。エイミィに内股を撫でられ、股間を舐められ、アルフとフェイトに胸を責められる。
 その間、クロノはリンディの両手に手のひらを合わせて繋ぎ、膝の上にリンディの太ももを載せ、身体を支えていた。
 リンディはクロノの前で股を大きく開いて、M字開脚の姿勢で、正常位の体位をとっている。

 これを眺めているだけでもとても心地いい、とクロノは思っていた。
 エイミィとアルフとフェイトと、3人の少女からの愛撫を受ける母。たまらなく扇情的である。男である自分が交わるよりも、より美しくエロティックであるとさえ思う。
 レズビアンの女性を鑑賞したいと思うのは単なるフェティシズムだと思っていたが、いざ自分の母親がそうなってみると、息子である自分は、狂いそうになるほど性欲が昂ぶり、そして忌避感が薄れてくる。
 母リンディを、一人の女性として見ることができるようになっている。

 上半身をやや前傾させ、リンディの視界にクロノの胸板までが入るようにする。
 息子の肉体。大人への入り口にさしかかり、小さな子供ではない、しっかりと骨格と筋肉のついた大人の男へと変わり始めている。
 もう長いこと見ていなかった、息子の裸。男としてのクロノの裸の肉体を見て、リンディもまた抗いがたい背徳の性欲を生じていた。

664闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:29:37 ID:GcU9.hks
「母さん」

 クロノの呼びかけ。まだ声変わりのしていない、幼さの残る少年の声。しかし、クロノは執務官としての気勢を張るため、常に低く抑えた発声をするよう心掛けていた。
 それは多少なりとも心の抑圧であった。
 晴れやかにさえ思えるほどの、クロノの声。澄んで、細く、高く、それでいて芯のある、魅惑的なクロノの声。
 その声で名前を呼ばれると、身体の芯から、感情が湧き出して、心が茹で上がってしまいそうになる。
 大人である自分が、子供たちに群がられている。その意識もまた、リンディをよりいっそう興奮させる。

「母さん……僕は、忘れちゃいけないんだ。自分の意志で、歩いていく──いつまでも、母さんに助けてもらってばかりじゃいけない、男として独り立ちしなきゃいけないんだ。
でも、それは母さんを置いて行って独りにするって意味じゃない……母さん、僕は母さんのこと、とても大切に思ってる」

「ああ……クロノ……」

 息子との愛。自分が腹に宿し、自分が産み落とした子供。それがやがて成長し、生殖能力を身につけた。
 そうなったとき、親と子ではなく、男と女として向き合うことができる。
 立派な男になってほしい。クライドを亡くしてから、再婚せず、管理局提督としての仕事に打ち込んできた。どこかで、慰めがほしかった。クロノをいつまでも子供として愛することで、その代償になっていた。

 でも、クロノだって時を経れば成長していき、やがて大人になる。そうなったとき、いつまでも子供離れできないようではいけない。
 愛されたい。愛するだけでは、自分がわからなくなってしまう。クロノに、愛されたい。
 愛情と、性欲は、切っても切り離せない。乳首を吸い続けるフェイトとアルフの舌遣いが、クロノの微笑みとオーバーラップして、果てしない感情をリンディに想起させる。

「母さん……」

「ふあっ……、あぁ、クロノ、クロノ……おねがい、きて……」

 声にならなかった。唇を動かそうとすると同時にエイミィが尻肉に舌を当て、クロノを導いた。フェイトとアルフが、手のひらで乳房を押さえ、より激しく乳首をしゃぶる。
 クロノのペニスが、まっすぐに、肉の花園へと降り立つ。
 これ以上ないほどに美しい人体の神秘だと、エイミィは思っていた。
 なだらかにそして豊かに盛り上がったリンディの恥丘に、濃緑色の陰毛が萌え茂っている。生え際は汗と愛液でしなりと湿り、ほのかに絡み合い、そして手入れされた大陰唇の周りは、澄んだピンク色が、健康な血肉が通っていることを主張している。
 密度の高い膣口の肉襞は、とろとろに愛液で包まれた粘膜から、濃厚なフェロモンを含んだ空気を、膣の収縮運動によって吹き上げている。

 クロノのペニス。14歳の少年としてどれほどのサイズ、発育なのかはわからない。しかし、これはすばらしい逸物だ、とエイミィは思う。
 昨日、磯辺で、自分はこのペニスを体内に受け入れた。性器を、交わらせた。
 ヒトの交尾。男と女の生殖器が、互いに結合し、それぞれの持つ卵子と精子を吐き出しあう。
 美しい。息をのんで、クロノとリンディの結合を見つめる。不思議と嫉妬はわかない。ただただ、幼馴染の少年と、その母親の、命と精力の力強さに魅入られていた。

「かあ……さん……っ!くあっ……!」

「ぁぁっ……!」

 声にならない喘ぎを漏らし、奥歯を噛みしめ、クロノの両の手のひらを強く握りしめて身体を支え、リンディは腰を反らせた。
 股の間に陣取ったエイミィの視点からでは、まさしく絶景のような、果てしないほどの広さと体積があるように見えるリンディの尻と腰と太ももが、大きく隆起してベッドに押し付けられている。
 クロノはゆっくりとそして力強く腰を進め、わずかな反り返りとともに勃起したペニスを、リンディの陰唇へと挿入していく。
 膨れた亀頭で押し広げられた花弁が、弾力をもってカリ首に食いつき、引っかかりをつかまえて抜けないようにする。
 溢れ落ちてくる愛液を、エイミィはリンディの股間に舌を差し出して受け止め、舐めとり、さらに身体を起こしてクロノに口移しで啜らせる。
 クロノを背中から抱き、首をひねらせてキスをし、口に含んだあふれんばかりの濃厚な蜜をクロノに注ぎ込む。
 母親の、性の体液。母親が、女になったことを示す肉欲の液。
 これを飲むことで、自分もまたリンディの子供に、リンディの娘になれるような気がした。いずれフェイトにも味あわせてやりたいと思った。今はフェイトは、リンディの母乳を飲むのに夢中になっている。

665闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:30:48 ID:GcU9.hks
「はあっ……リンディさん、すごいじゃないですかぁ……わたしたち、みんなリンディさんのこどもですよ、リンディさん、いっきに子供3人も増えたじゃないですか」

「母さん……?リンディ、おかあさん……」

 フェイトが顔を上げ、つぶやくように名前を唱える。
 小さな唇から、白いしずくがこぼれている。リンディの母乳だ。もう10年以上前、幼かった赤ん坊のころ、クロノも飲んだことがある。

「……ただいま、母さん」

 いっぱいまで腰を進め、下腹部と太ももの付け根が触れ合う。リンディの膣は、クロノの大きく勃起したペニスを完全に呑み込み、根元までぴったりと咥えた。
 陰茎全体が肉襞に包まれ、ゆるやかに蠕動運動を繰り返す膣に、クロノのペニスはすっぽりと囲まれている。
 ペニス全体に、リンディの体温を感じる。
 太ももの付け根、股関節の筋肉のへこみにおさまった睾丸が、激しく脈打つリンディの鼓動を受け取っている。

 わざとらしいかもしれない、と思いながらもクロノは口に出した。母は、自分を子供としてみなしたい。それとも、男としてみなしたい。そのどちらかを、リンディ自身に確かめる。

「ああ……クロノ、クロノ……私のクロノ……」

「リンディ」

 その瞬間、リンディの股間の筋肉すべてがいっせいに引きつり、愛液をめいっぱい搾って吹き散らしながらクロノを締め上げるのを、エイミィは見た。
 フェイトとアルフも、乳房そのものが膨張するように突き上げられ、乳首から唇がすっぽ抜け、母乳のしずくを飛ばしながらベッドに転がった。

「くぁっ……!あぁ!」

 うめき声をあげ、クロノが胸を突っ張る。リンディもまた、腰を浮かせ、しなやかに捩る身体の上で乳房と腹肉、尻肉、股肉を躍らせている。
 クロノに名前を呼ばれたことで、リンディはこれまでにない強烈な幸福感と性感を受けた。
 今までずっと、クロノはリンディを母さん(マム、マイマザー)と呼んでいた。
 初めて、名前で呼ばれた。それは対等な人間として、女としてリンディをみなしていることをあらわす。

「クロノっ、あぁっ、いい、いいわぁ、んあぁっ、いぃ、ひっ、あ、すごっ、すごくっ、なか、はいってくる、なかまではいってくるぅ!」

「リンディさんっ、おっぱい、もっとのみたいです……」

「あっ、ふぇいっ、フェイトさんっ、あぁ、あぁぁっ、んっそんなぁ!く、あぁっ……も、もうだめぇ……おっぱい、乳首、ちくび吸われてぇ……あぁぁん、切なくなっちゃう……!
んうううっ!くぅ、くぁぁうっ……!く、クロノ、あぁっクロノお願い、きて、きて、きてぇっ!私を、あぁっクロノ、おねがい、突いてぇ、あぁぁ!」

「いいよ……いっぱい、触れ合おう」

 フェイトとアルフに両胸を同時に吸われ、さらにエイミィに襞を舐められている。これほどの刺激を同時に浴びて、さすがのリンディも我を忘れそうになっている。
 これほどに刺激されていて、膣に挿入されたペニスが動かないというのはまさに生殺しだ。母親としての表情は霧散し、純粋な、快楽を求める雌の貌になってリンディは嘆願する。

 征服欲、というのだろう。クロノの中で確かにそれは芽生えた。
 こうやって刺激し、責め、女を寵絡する。それが確かに技として存在する。

 ゆっくりと、長く、深く、ストロークを開始する。
 リンディの膣の内側の肉襞を一枚一枚、丹念にめくり味わうようにペニスを動かしていく。クロノのカリ首にこすられ、しごかれてリンディの肉壺はそのたびにはじけるように震える。
 とめどなくあふれる蜜が、股間を限りなく濡らし、互いの太ももと腰が滑るように、艶めかしく絡み合う。
 間近で見ているエイミィさえもがうっとりと見入ってしまうほどの、美しく、倒錯的な交合。

「すごい……たまらない。いいよ、かあさん……もっと、深く」

「ええっ、そう……もっと、奥まで来て……もっと、もっと奥まで……私の中、に、はいって、きて……んんっ!」

「中で、動いてるよ、中で……くっ、ぁ、これ、母さんの子宮……母さんの、中……母さん、ここに……キス……するよ……
子宮に、触れてる、僕のちんちんが、母さんの子宮にくっついてる、ちんちんが、わかるかい、僕のちんちんだよ……」

「あぁっ、クロノ!あぁ、あぁ、っくぅああぁぁ……!ひっ、はぁ、ぁっいい、いい……いいわぁクロノ、わたしうれしい……
クロノが、わたしを、あぁぁ……ごめんなさい、こんなわたしを、あぁ、息子に、息子のチンポに慰められて……あぁぁ……」

「涙は、嬉しさで流そう。もっと、気持ちよく……母さんを喜ばせてあげたい」

666闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:31:37 ID:GcU9.hks
 母を喜ばせたい。クロノの優しい言葉に、数か月前の自分の想いを思い出し噛みしめながら、フェイトはひたすらにリンディの乳首を貪った。
 大きく、硬く勃起したリンディの乳首。舌と唇だけではくわきれないほどに大きくなり、小さな前歯をそっと当てて甘噛みする。
 痙攣するように細かく揺れるリンディの乳房は、ゆったりと、優しく、フェイトを包んでいた。

「僕のちんちん、ほら、母さんの中に入ってる、母さんの膣に入ってる、僕のちんちんが……僕のちんちん、母さんのおまんこの中に入ってるよ。
母さんの中、とても……気持ちいい。とろけて、やすらかで……母さん、僕、でるよ……母さんの中に射精しちゃうよ……」

「はぁっ、はぁっ、ん、んっクロノ……!ええっ、いいわ、だして、私の、かあさんの中に……出して!あなたの、精子、あぁ、あなたが大人になった証、いっぱい……あぁぁっん!」

 押し付けられるクロノの腰に、リンディの腹肉がぷくりと盛り上がる。
 脂肪を押し寄せられたのと、さらに、クロノの放った大量の精液によってリンディの膣が膨張し、それが下腹をも押し上げたのだ。

 目くるめく、狂おしい性感の中で、クロノはこれまでにないほど落ち着いていた。
 けして感情が冷えていたわけではない、冷静ではないが、意識が落ち着いていて、状況を客観的にとらえることができた。
 自分の意識が確かに変容しつつあることを実感している。
 実の母親と交わる、しかも恋人になろうとしている幼馴染の前で、しかもほかの子供たちと一緒に、である。
 近親相姦よりもさらに変態的で倒錯的な交合の中、これが自分に身についた新たな力によってもたらされていると実感していた。

 リンディを、さらにはエイミィやフェイト、アルフさえをもこの射精で虜にする。
 単なる神経の興奮による錯覚ではない、実際に自分の肉体の表面から何かが放たれ、皆に浴びせられたとクロノは確信した。
 この射精を浴びて、リンディだけでなく皆が狂う。
 丹念なピストンによってほぐされ、ゆるやかに垂れたリンディの下腹が、精液をぱんぱんに詰め込まれて膨れている。
 腹圧で押し出されてくる、クロノの精液とリンディの愛液が混じった白濁を、エイミィは夢中で啜り、舐めとり、飲み込んでいる。感極まって、涙さえあふれている。
 大好きな、弟のように可愛がっていた男の子がたくましく成長し、つくりだした精液を飲みたい。そして、彼が犯した女の蜜を、飲み込んでやりたい。
 クロノとリンディのそれぞれの体液を、自分の体内に取り込みたいという欲望をエイミィは抱いていた。
 そしてフェイトもアルフも、絶頂によって痙攣するリンディの乳房を、赤子のように吸い、それでいていやらしく舐り責めている。

 4人がかりで、リンディを犯した。4人がかりで責められ、リンディは完全に意識を蕩かされ、惚けている。

667闇と時と本の旅人 ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:32:39 ID:GcU9.hks
 




 朝食の時間が来るころには、ベッドはきちんと片づけ、皆平静に戻って、モーニングのテーブルを囲んでいた。
 クロノもリンディも、アインスも、変わった様子を見せずに朝食をとった。

 潮風を浴びに外へ出たクロノたちを見送り、アインスは部屋に戻ろうとした。
 ダイニングを出るとき、ロッテと入れ違いになった。グレアムは、先に部屋に戻っている。さすがにこの場で事を構えるつもりがないのはお互いわかっているだろう、が、今朝の出来事を、グレアムも気づいている。
 それを見込んで、リンディたちを連れてきた。
 クロノとアインスが出会って何が起きるかということ、ここ数か月のアインスとクロノの付き合いさえ、グレアムは最初から織り込み済みだった。

 アインスはクロノに惹かれる。そして、クロノは自分の考えを持っている。
 そうすれば、クロノの言葉によってアインスを引き留められる。闇の書を、支配下に──制御下ではない──おけることになる。
 モノにしたければ、好きにすればいい。それさえ、利用できるなら利用する。
 八神はやてという少女と同じように、クロノ・ハラオウンという少年もまた、グレアムの計画する闇の書殲滅作戦の中では駒の一つに過ぎない。

 わずかな一瞬の流し目で、互いの気配を気取り、立ち止まる。
 背を向けたまま、アインスはロッテの言葉を聞いた。表情は見えないが、想像はつく。

「あんたがいくら足掻こうがお父様は全部お見通しだよ──」

 手を取り、傍目には普通に会話をするように腕を組む。しかし、背中に流れる髪の陰で、ロッテは思い切りアインスの手のひらを握りつぶそうとしていた。アインスも応じ、互いに静かに指を握りあう。

「クライド君のことは忘れない。闇の書の意志──あんたなんかにクロスケは渡さない、どんなにおだてて言いくるめたってクロスケはなびかない。
もしあんたがクロスケを口説けるって思ってるんならあたしは信じる、あいつは騙されない。寝取ろうなんて考えないことだよ」

 ロッテの唇の端が引きつっているのがわかる。激しいプレッシャーが、他に誰もいないログハウスのダイニングに瞬間、広がる。

「あたしには師匠としての責任がある。あいつがあんたに、闇の書の力に抱き込まれたならそんときは──クロノを殺してあたしも死ぬ」

 今にもアインスの喉笛に向かって両腕を伸ばしてきそうだった。すんでのところで、部屋から出てきたアリアに制止され、ロッテは険しく口元を歪めながら、外へ出て行った。





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668SandyBridge ◆UKXyqFnokA:2012/10/07(日) 23:34:15 ID:GcU9.hks
投下終了です

リンディさん!少しだらしなくなりかけたおなかとか想像したらたまらんですねもう
おにくぷよぷよ〜とそして肌はとても甘い
そしてロッテがやや闇もとい病み気味?ブルブル

キャットファイトならぬ女の戦いとかきっとすごそうです

ではー

669名無しさん@魔法少女:2012/10/08(月) 20:06:41 ID:DMfJlo2o
リンディさんきたああああああ!!!

うおおおおお!!リンディさん! リンディさあああああん!! 近親相姦! 近親相姦!!!

もうこのまま実子の種で孕ませられてくれ。 あとレティさんもついでに孕ませてしまおう。

670aaa9on:2012/10/08(月) 23:58:29 ID:G4TMb.6o
シャンテ×シャンテ沢山 短編エロ
ViVid少ないと思ったので、自給自足にチャレンジしてみる
若干の尿分 レイプ系(?) 百合なのか自慰なのかようわからんジャンル
小説を書く経験が少ないので、かなりの駄文です(このスレでは初投稿)
意見感想批判に文句、全部募集中です

671シャンテinお風呂:2012/10/09(火) 00:00:01 ID:Y61h9OYs
「はぁ…」
浴槽の中でため息が漏れる
ヴィクトーリアとの試合で負けて、教会に帰ってきた
みんなよく頑張ったって言ってくれたけど、やっぱり負けて良い気はしない
帰ってすぐお風呂に来たから、今は大浴場に一人きり

「とりあえず、体でも洗うか…」
そう呟いて、洗い場に降りる

あれだけやられても体には傷、つかないんだよな
そんなことを思いながら、自分の体を触ってみる

本当に傷一つ無い綺麗なままだ
自然と手は自分の胸に当てられる
したことがない訳でもないが、決して経験豊富でもない自慰行為
普段なら特に気にすること無く体を洗い始めたと思う
でも、今日は違った
試合に負けた憂さ晴らしなのか、疲れているからなのかは分からないけど、したかった

「んっ…」
軽く胸を触る
揉むほどのボリュームはないが胸だとわかるほどには発達してきたと思う
乳首に触れるか触れないかの位置をサワサワし続けながら、反対の手をあそこに持っていく

「っ…!」
触れた途端体に軽い電気が走る
クリトリスに触れてしまったのだろう
絶頂には程遠いが今までとは段違いの感覚に手を止める

「そういえば…あいつに電気でやられたんだよな…」
電気が流れるような快感に試合のことを思い出してしまう
重くなりがちな気持ちを切り替えて胸を触るのを再開しながら今度はゆっくりと触れる

672シャンテinお風呂:2012/10/09(火) 00:00:46 ID:Y61h9OYs

「あっ…」
しっとりと湿ったあそこにゆっくりと指を埋めていく
気持ちいい…
その感覚が体中に広がっていく
少しずつ指を早めて快感に浸る

「あっ…いぃ……」
指が乳首に触れるともう声が抑えられなくなっていく
まぁ教会本体から少し離れた場所にあるお風呂だから平気だろうけど

「はぁ……いい…よぉ…」
あそこの指の動きは早く大きく、乳首はちょっと痛いくらいに、もっと気持ちよくなりたくてたまらない
そのまま親指でクリトリスを押しつぶすように触れる

「あああぁぁぁ………」
すごく気持ちいい…でも、あと一歩のところで絶頂に届かない
もどかしくてたまらない
これ以上力を込めてもきっと痛いだけだろう
物足らない…なにか方法は……


ひとつ、あった
「うまくいくか、わかんないけど…」
気持ちよくなれるなら、いいや…

「二重奏(デュエット)…」
意識を集中して魔法を組み立てる

そこにはもう一人の私が立っていた
「私を…気持よくしてぇ…」
少し恥ずかしかったけど、命令しないとダメだから…
それに相手は自分なんだし、恥ずかしがる必要、ないよね
分身の指が敏感になったそこに触れる

「あああぁっ!!」
自分でするのと、ぜんぜん違う
いや相手は自分なんだけど、一人で触るのとは段違いに気持ちいい
分身はそのまま指を痛みを伴う寸前の位置まで差し込むと激しく出し入れしてくる

「あっ…あぁっ……」
気持ちよすぎて、言葉が紡げない
ふと分身の指が止まったと思うと、分身が私のあそこに顔を近づけている

「ふぁぁ……ちょっ…ダメェ……」
何をするんだろう…?そう思う暇はなかった
分身は私のあそこに口をつけると舌を入れながら吸い始めた
あそこの中をなめられながら入り口を吸われる
我が分身ながら凄いことをしてくる

「四重奏(オクテット)」
あそこに口をつけながら分身がそうつぶやく

「っ…んんっ…ぁ……」
何が起こったのかわからない
強すぎる快感で眩んだ視界が戻るとそこには3人の私がいた
あそこを舐めてる奴と、胸を舐めながら揉んでる奴と、今私にキスした奴

「あぁぁぁぁ……」
分身が分身したんだ…たっツォレだけのことを理解する間にも私は高められていく
一人では、いや誰かとしたってできないような同時の攻めがこれ以上無く気持ちいい

「あっ…ダメっダメッ…も、だめぇぇぇぇ…」
目がチカチカする
気持ちいい…

わたし、イッちゃったんだ…
そう思えたのはつかの間だった

「ぁっ…ちょっと……もっ…」
分身たちは私が絶頂してもやめてくれない
『私を…気持よくしてぇ…』
命令が端的すぎたんだ…いまさら気がついても止まらない
これ以上されたらおかしくなる
分身を解こう、そう思った途端唇を奪われる
舌と歯茎をなめられ吸い付かれる
気持よくて考えがまとまらない

673シャンテinお風呂:2012/10/09(火) 00:01:37 ID:Y61h9OYs

「むんん…」
キスされながら全身を責められ続ける
気持ちいい…と言うより気持ち良すぎる

「んっ…ぷはぁあっ、ふぁぁ…あぁぁぁ」
達したばかりの体は私の意思に関係なく高まっていく

「あっ…ダメ、ダメッ……」
気持よすぎて、怖い
自分がどこかに行っちゃいそう
そう思っても、体はどんどんと高まっていく

「あっ…あぁぁぁぁぁぁ………」
強烈な電流が体に流れたみたいだった
たぶんクリトリスを噛まれたのだろう
もう何も考えられない…
ただ襲い来る快楽に身を任せることしかできない
だけど、分身たちはそれすら許してくれなかった

「五重奏(クインテット)」
そう聞こえた気がした
分身たちに抱えられて体制を変えさせられる
あそこが丸見えになるように…
マングリ返し…って言うんだっけ?
思考はどうでもいい方に飛んでいく

「ふぁぁ……」
すぐに攻めが再開される
もう動かなかい全身に快感の波が押し寄せる
目の焦点が合わない…今度は何をされるんだろう

「ふぇっ!?」
おしりの穴に湿ったものが入ってくる…多分舌だ
五人目はおしりなんだ…何故か納得してしまう

「ちょ…むぐぅ……」
なにかを言う前にキスされる
口の中と同時におしりの中も舐めまわされる
全身が気持ちよすぎて頭がおかしくなる
体はまた達しようとしている
ダメ…これ以上……

「むっ…んっ…んっ…んんんっ………」
キスされたまま達してしまった
だけど今度はそれだけじゃなかった

「んっ…はっ…ダメェェェェェェ…」
達した瞬間におしりに入っていた舌を思い切り引きぬかれた
視界が真っ白に染まる
もう、全身に全く力が入らない

「やっ、ぁぁぁ……」
あそこが暖かい…多分漏らしてしまったんだろう
全身への攻めは続いている
でも、気持ちいいって感じはなくなってきた
それよりも…なんだか…ねむ、ぃ……


結局あの後、私の意識が途切れたことで分身たちは消え、あまりに風呂から出てこない私を心配したシャッハに発見された
一応、のぼせたって事にしたといたけど、いろいろとバレていそうで、しばらくはシャッハとは顔が合わられそうにないよ…

おしまい

674シャンテinお風呂:2012/10/09(火) 00:04:29 ID:Y61h9OYs
初投稿緊張しました〜
で、あとがきを急遽付け足した理由↓
緊張のあまり、一回目sage忘れました、ごめんなさいm(__)m

675名無しさん@魔法少女:2012/10/09(火) 01:45:01 ID:VBSvibPQ
初投稿おめでとう! これであなたもエロパロ職人の仲間入りダゼ!

シャンテのエロって地味に初めて? これからもVのキャラでがんがんエロいSSを期待いちゃいます。

676名無しさん@魔法少女:2012/10/09(火) 03:06:13 ID:MdX5uVjU
初投稿乙です
新たな書き手が現れるのは実に良い事だ
そしてVにしろFにしろエルトリア勢にしろ新キャラ達のSSももっと増えて欲しいなぁ

677名無しさん@魔法少女:2012/10/10(水) 21:35:14 ID:V1fc5wh6
vividのキャラは虐めたくなる娘が多いよね

678名無しさん@魔法少女:2012/10/10(水) 21:49:18 ID:eHwpe9x.
ひたむきなのがそそりますな

679名無しさん@魔法少女:2012/10/10(水) 22:47:21 ID:XtHpeVqQ
バイブローター入れて戦わざるを得ないvivid裏大会を見たいものじゃ

680名無しさん@魔法少女:2012/10/11(木) 07:22:14 ID:0JrsCeJk
魔力消費と魔力ダメージを性的快感に変換するのもよろしいかと愚考します

681名無しさん@魔法少女:2012/10/11(木) 16:39:10 ID:9ezn077k
敗北するとバリアジャケット強制解除。全裸で客席一周とかもアリだな。

682名無しさん@魔法少女:2012/10/11(木) 18:45:48 ID:ng3Ydh92
>>680
あんた天才だな・・・

ダメージ全部痛みでなく快楽になっちゃうんだね?

683名無しさん@魔法少女:2012/10/11(木) 18:50:51 ID:GmQYThm6
カリム
「全てを賭けた上で敗北した少女を、首輪に繋いで全裸で客席を引き回す愉悦。
主催者の特権ですわ」

684名無しさん@魔法少女:2012/10/11(木) 19:18:00 ID:sRptSMtk
むしろ、利尿剤飲んでから戦って漏らしたら負けとか
浣腸してから以下同文とか
ミウラ「うわっ…ボクのおしりちゃんと閉じてる…!?」

685680:2012/10/11(木) 19:33:03 ID:56uIRVcI
>>682
YES!YES!YES! Y E S !
さあ!ミウラちゃんと砲撃番長の戦闘を読み直すのだ!

686名無しさん@魔法少女:2012/10/12(金) 11:42:51 ID:E3/lKQ0.
はやて「ミッドにきたころは、裏社会にコネ作るために裏インターミドルに出たな」
なのは「なつかしいね」
はやて「フェイトちゃんはここでアナルが性感帯なのがばれて対戦相手から集中攻撃されて大変やったな」
なのは「デバイスをバイブモードにして突っ込まれてたしね。かわいかったな〜」

687名無しさん@魔法少女:2012/10/12(金) 12:47:14 ID:e9dp92SE
はやてって魔力や魔法は凄くても、1vs1だとキャロにようやく勝てるかどうか、って話じゃなかったっけ?(漫画版Sts2巻参照)
そんなはやてさんが裏インターミドル出場とか妄想膨らむな

688名無しさん@魔法少女:2012/10/13(土) 02:40:16 ID:5o7kLrcU
裏なので、超改造した車椅子で戦闘だな
車いすのギミックとして地球制質量兵器を多数装備し、
ベルカお得意の魔力付与で銃弾の貫通力や威力の強化、
ミサイルやグレネード系統は爆発力を魔力強化で底上げし殺傷力を上げる
弾は転移魔法で事実上無限と
しかし、必殺技は復活した足での足コキ

689名無しさん@魔法少女:2012/10/13(土) 06:29:49 ID:w51MnMFU
>>688
いや、エロパロなんだし、そこは普通に連敗からの凌辱でいいやん(笑。

で、大会出なくなっても裏の人達に協力求める時に思い出したくもない思い出話をされて赤面したりとか

690名無しさん@魔法少女:2012/10/13(土) 07:18:16 ID:534Rx.BA
勝てば24時間対戦相手のパートナーの美女を自由にできるというあの大会ですか
本人が女性なら自分自身を担保にしてもいいとかって

691名無しさん@魔法少女:2012/10/13(土) 09:53:18 ID:VenOQAX6
なのは「わたしのパートナーはユーノくんなの」
対戦相手「YES!!」

692ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/10/13(土) 16:06:42 ID:jYAI4blM
僕はシグナム姐さんとリンディさんがいいです!

と妄言を叫んでみる。

あとちょいとばかり投下するよ。非エロ、ギャグ、短編。『メイドパンデミック』

693メイドパンデミック:2012/10/13(土) 16:07:30 ID:jYAI4blM
メイドパンデミック


「バーニングドラゴンマァッグナアアアアム!!!!!」

 必殺技の名を叫び、投手は己の手からボールを放った。
 燃え盛る鋼鉄の球は空中で音速を超え、ソニックブームを発生させながら直進。
 だがそれを迎え撃つバッターの慧眼は、超音速のボールに応じの技を炸裂させる。

「スカイドライブ、タイッガァーファンンングゥウウウウ!!!!!」

 魔力を込めた鋼鉄のバットが、超音速のボールを正面からぶち当たる。
 衝突した二つの鋼の衝撃と振動に揺れる球場。
 バットとボールは互いに力を拮抗させたまま、激しく火花を散らしてせめぎ合う。
 膨張する打者の筋肉。
 威力を落とさないボール。
 二つの力のぶつかり合いは、次の瞬間勝敗を決した。
 凄まじい破砕音が鳴り響き、鈍く輝いた鋼の煌きが宙を飛ぶ。
 幾度となく旋回して地に着き刺さる物体。
 それは、半ばからへし折られたバットだった。
 カメラが動いてピッチャーのミットを映す。
 そこにはしっかりとキャッチされた鋼鉄のボールがあった。
 ストライク!
 審判の声に、会場全体が湧き上がる。



「あー、点入らなかったかぁ」

 ヴァイス・グランセニックは、テレビを見てそう呟いた。
 場所は居酒屋である。
 そこそこの値段と人気で美味い酒と肴が楽しめる、クラナガンにある店であった。
 仕事帰りにたまにここで一杯飲んでいる。
 今日テレビで流れているのはミッドで大人気のマジカル野球だった。
 マジカル野球とは字の如く、魔法をがんがん使おうという野球だ。
 まともな野球ファンはこれを、野球という名の異種格闘技、とそしるものの、鋼鉄のバットとボールを魔力で強化してぶつけ合う様は大迫力で世代を問わず人気を博している。
 その夜の試合は二本ガムと高日トラゴンズとの試合であった。
 現状はガムが一点差でリードを守っており、トラゴンズは先ほどのように打点を入れられずにいる。
 ヴァイスはそれほど野球に熱心な方ではないが、地元のチームという事もありトラゴンズ推しだ。
 彼女は逆だった。

「ふふ、今日はこのままガムが勝ち逃げのようだな」

「かもしんないっすねぇ、シグナム姐さん」

 ヴァイスの前に座しているのはポニーテールの美女、上司でもあるシグナムだった。
 数年来の付き合いのある腐れ縁である彼女は、ジョッキに注がれたビールと焼き鳥を飲み食いしながら上機嫌。
 どうやら二本ガムのファンらしい。

694メイドパンデミック:2012/10/13(土) 16:08:09 ID:jYAI4blM
 ヴァイスとしては大して入れ込んだファンでもないので、そこそこに相槌を打った。
 機嫌の良いシグナムを見ていたいという面もあった、惚れた弱みというやつだろう。
 普段は凛として鋭い品に満ちた彼女も、酒盃を傾けながら機嫌を良くしているとなると、自然で素朴な笑みを見せる。
 そんな姿を見ていれば、自然とヴァイスも飲む酒の量が増えた。
 だからだろうか、彼はふとこんな事を漏らした。

「姐さん、賭けしないっすか」

「賭け?」

「ほら、もうじき試合も終わりますから、その勝敗で。ガムが勝ったら俺今日はおごりますよ」

「ふむ、それは面白いな。だがもう九回だ、勝ち目はないぞ」

「まあいいじゃないっすか、どうせ遊びっすから。それに、毎回女の姐さんと割り勘じゃ男の俺の顔が立たないっすよ」

「私はそんな事気にせんのだがな。まあ良い、その勝負乗ったぞ。それじゃあもしお前が勝ったら何でも言う事を聞いてやろうじゃないか」

「なんでも、っすか」

 その言葉に、思わずヴァイスの視線がシグナムのはち切れんばかりのボディラインに泳ぎ、脳裏にいかがわしい妄想がよぎった。
 頭を振って邪念を払う。
 だが桃色の思考の残滓のためか、それとも酒のためか、彼の口から出たのはややとっぴとも言えるものだった。

「じゃあ――とか、どうすか」

 店内で騒ぐ他の客と、テレビの音に掻き消されかけた声。
 だが近くにいたシグナムにはしっかり聞こえた。
 彼女の顔がアルコールではない、羞恥による赤で染まった。

「な……そ、そんな事をするのか?」

「だから、もしトラゴンズが勝ったらっすよ」

「……」

 シグナムはテレビを見た。
 点差は0対1で二本ガムがリードしている。
 既に九回、逆転する確率はそう高くないだろう。
 逡巡なくシグナムは頷いた。

「良いだろう」

 と。
 だがその時の彼女は知る由もなかった。
 まさか劣勢に見えたトラゴンズが逆転サヨナラ満塁ホームランを決めてしまうなどという展開は。



 翌日の機動六課。
 出勤するヴァイスの頭は前日の酒で頭痛を起こしていた。

695メイドパンデミック:2012/10/13(土) 16:08:42 ID:jYAI4blM
 なにやら面白い事があってやたら酒を飲んだ気がする。
 なぜそんなに嬉しかったのか、飲みすぎてぼんやりしていたため、いまいち正確に思い出せない。
 何かシグナムとの賭け事に勝ったと思うのだが。

「ん?」

 ふと前方に人だかりが出来ているのに気付いた。
 朝っぱらから何なのか。
 人ごみの合間から顔を覗かせて見た。
 ヴァイスは目を丸くした。

「シグナム姐さん……なんすかその格好」

 そこに居たのはシグナムである。
 だがその格好は普段の彼女らしからぬものだった。
 ブラウンの制服でもなければ騎士服でもない。
 ――それはメイド服。
 そう、メイド服である。
 フリル付きの純白のエプロン、ふわりと長いロングスカート。
 どこに出しても恥ずかしくないメイドさんだった。
 メイドさんと化したシグナムはヴァイスの顔を認めるや真っ赤になって怒りの様相を見せた。

「な、何を言うヴァイス! お、お前が私にしろと言ったんだろうが! 昨日の賭けで!!」

「え……俺、っすか?」

 自分に集まる好奇の眼差しに顔を紅く染めて恥ずかしがるシグナムを前に、ヴァイスは昨晩の事をおぼろげに思い出していった。
 そうだ、確かメイド、そんな言葉を口にした気がする、もし高日トラゴンズが勝ったら明日一日メイドさんになってください、と。
 ヴァイスは唖然とした。

「姐さん、まじであの約束きっちり守ってんすか?」

「当たり前だ、騎士の言葉に二言はない!」

 大きな胸を張って誇らしげに言うシグナム。
 だが顔が紅くて恥ずかしそうなので大変可愛らしい。
 そんなシグナムを見ていると、突如としてヴァイスの脳裏に天啓が訪れた。
  
「姐さん? 姐さんは今日一日メイドなわけっすよね、騎士の言葉に二言はないんすよね?」

「うむ、当たり前だ」

「良かった、その言葉を聞いて安心しました」

「何がだ?」

 その言葉に、ヴァイスは笑った。
 にっかりと、実に悪そうな笑顔だった。

「昨日の勝負で勝ったのは俺なんですから、もちろんご主人様は、ねえ?」



「……ッ」

 ティアナ・ランスターは絶句した。
 若手ながら怜悧で、フォワードのリーダーを務める彼女が、今や呆然としていた。
 何故ならそれは、彼女の目の前で発生していた現象が極めて非現実的だったからだ。
 
「姐さんコーヒーおかわり」

「か、かしこまりました、ご、ご、ご主人様」

 デスクに座ったヴァイスに下知を命じられ、あろうことかメイド服姿となったシグナムが顔を引きつらせた笑みを浮かべてコーヒーを注いでいた。

696メイドパンデミック:2012/10/13(土) 16:09:12 ID:jYAI4blM
 周りから突き刺さる好奇の視線。
 シグナムは顔を真っ赤にしていた、ヴァイスはにやにやと満足そうな笑みをしている。
 いや、むしろ言うなれば鼻の下を伸ばしているというべきか。
 ティアナはむっとした。
 そりゃあ確かにメイド姿のシグナムは綺麗で可愛い。
 普段の凛とした様を知っている分、フリル付きエプロンや上品な衣装がかもし出すフェティッシュな愛らしさが堪らない。
 男はみんなこのような格好が好きなのだろうか。
 ならば……
 


「ヴァイスさん!」

「おう、ティアナ……っておま!?」

 ヴァイスは思わず椅子から転げ落ちそうになった。
 突然声を掛けてきた主はティアナだった。
 まあそれは良い、同じ職場なんだし良くある事だ。
 だがしかし、彼女の格好が問題だったのだ。
 なんと、彼女もメイド服を纏っていた。
 ロングスカートのゴシックなメイド服、照れた顔が実に可愛い。
 シグナムのめりはりのある豊満なボディの色香とはまた違った、初々しい愛くるしさがある。
 だが一体全体どういうわけでメイド服など身に付けているのであろうか。

「ちょ、ティアナ!? な、なんでお前までそんな格好してるんだ!?」

 ヴァイスに指示されて新しく淹れたコーヒーカップを手に、シグナムもびっくりしていた。
 そんなシグナムに、ティアナはきっと鋭い視線を叩きつける。

「わ、私だってメイドなんですから! シグナムさんには負けませんからね!!」

「え、負けって……何が?」

 わけのわからぬ様子のシグナムに敵意を向けるティアナ、実に修羅場。
 当のヴァイスは冷や汗を流して硬直していた。
 


 その様子を陰から見ていたのはスバルだった。

「ティアにシグナム副隊長……なんで二人ともメイド服着てるんだろう」

 真面目で知られる二人が、どういう理由があってあのような格好をしているのか。
 そんな事をスバルが知るわけがないし分かるわけもなかった。
 だが、あの真面目な二人がしているんだから何かしら理由があるのだろう。

「も、もしかして私もした方が良いのかな……」

 胸の中に湧き上がる不安。
 スバルはそっとポケットの中から相棒であるデバイス、マッハキャリバーを取り出した。

「よし、万が一の為に私もしておこう。マッハキャリバー、バリアジャケットのデザイン変更してメイド服を再現しよう」

 主の言葉に応えて、パッ、と輝くデバイス。
 次の瞬間、スバルの服装は変わった。
 マッハキャリバーのAIがそう判断したのだろうか、活動的な彼女に合った、ミニスカートのメイド服である。
 すらりと伸びた脚にはストッキングやソックスの類がなく、健康的な血色の肌が白くまぶしい。
 
「スバルさん、どうしたんですかその格好?」

「あ、エリオ、キャロ」

 スバルの姿に、同じくフォワードメンバーの少年少女が声をかけた。

697メイドパンデミック:2012/10/13(土) 16:09:45 ID:jYAI4blM
 当たり前だが部隊のメンバーがメイド服を着ていたらそりゃあ驚く。
 そんな彼らに、スバルは言った。

「ほら、ティアとシグナム服隊長がしてるから、たぶんしといた方がいいかなって」

「え、もしかして私たちもした方が良いんでしょうか」

「そうだなぁ、たぶんした方が良いんじゃないかな」

「ちょ、ちょっと待ってください、それってもしかして僕もですか?」

 あたふたとするエリオ。
 少年の彼はいったいどうすれば良いと言うのか。
 だがその言葉を聴いた瞬間、キャロの顔に名状しがたいオーラが宿った。

「エリオ君……そういうの凄く似合いそうだよね」

「え、キャロ? なんで僕の肩掴むの? い、痛いんだけど」

「ふふ、良いから、ほら、デバイス貸して。私がデザインしてあげる」

「ちょ、ま……いやー!!!」



「……キャロ、それに……エリオ?」

 フェイト・T・ハラオウンの口から出たのは素っ頓狂な声だった。
 彼女の目の前には親代わりとして育てた二人の少年少女がいた。

「あ、フェイトさん、おはようございます」

「……」

 キャロは朗らかに笑い、エリオは恥ずかしそうに顔をうつむけた。
 だがそれ以上にフェイトの目を引いたのはその格好だった。
 二人ともメイド服なのだ。
 そう――二人とも。
 ロングスカートの清楚なメイド姿、キャロはともかくエリオがそんな服を着るのはいわゆる一つの女装である。
 しかしこれがなんとも、似合っている。
 もともと顔立ちが整っており、幼さも加わって女の子に見えてしまうのだ。
 男としてのプライドからか、よほど恥ずかしいらしく真っ赤な顔を俯けている姿さえ可愛い。
 どうやらこの格好をさせたのはキャロらしく、恥ずかしがるエリオを見る瞳にはどこか嗜虐的な色が含まれていた。
 見ていると、フェイトも妙な気分になってしまいそうだった。
 
「一体どうして二人ともそんな格好してるのかな……」

「スバルさんから聞いたんですけど、なんだか今日はメイド服じゃないとダメみたいなんです」

「え!? そ、そうなの? どうしよう、私もした方が良いのかな」

「そうだ! 三人おそろいにしましょうよ、ね? エリオくん」

「ぼ、僕だけ普通の格好にできない? その……恥ずかしいよ」

「だめ」

「だめか……」

 かくして事態はどんどん広がっていくのである。



「なんやこれ」

 八神はやては独りごちた。
 本部の会議から帰ってきた彼女の眼前にはとてつもない光景があった。
 六課の隊舎、これに変化はない。
 だが変化を来たしているのはそこに居る人々だった。
 メイド、メイド、メイド、メイド、メイド……
 全ての人間がメイド服を纏っている。
 ルキノもメイド服、アルトもメイド服、シャーリーもメイド服、アイナさんもメイド服、なのはやフェイトもメイド服だしエリオやキャロもメイド服だった。
 ザフィーラ……はさすがに着ていない、そりゃあ犬用のメイド服なんてあるわけがないんだから当たり前である。

「あらはやてちゃん、お帰りなさい」

「あ、ああシャマル……って、やっぱりメイド服かい!」

 思わず突っ込むはやて。
 やはりというべきかシャマルもメイド服だった。

698メイドパンデミック:2012/10/13(土) 16:10:16 ID:jYAI4blM
 実に、官能的な。
 肩はおろか胸元の豊かな深い谷間まで露出され、眩い白い肌が目に焼きつく。
 腰を締めるコルセットで下乳が搾られて豊満な果実はより強調され、まろやかなラインを描く。
 短いスカートとガーターストッキングの合間からこぼれる太股が形容し難いエロティシズムを生んでいた。
 実に、エロい。
 
「シャマル、なんでそんな格好しとるんや……というかこれは一体なんなん……」

「え、あの……なんだか良く知らないんですけど、管理局制服の代わりにメイド服を着なきゃいけないみたいで、ロングアーチのみんながこれを薦めるから……」

 消え入りそうなか細い声でそう説明しながら、ほんのり朱色に染まった顔を隠すシャマル。
 果たして彼女は、それが錯綜する噂話が肥大化した末に広まったデマだとは知る由もない。
 ちなみにシャマルにこのような破廉恥な衣装を薦めたのはそれとはまったく関係ないロングアーチスタッフの単なるいぢわるである。
 それはそうとはやては焦った。
 まさか部隊長である自分の知らないうちにこんな条例(?)が施行されているなど聞いたためしがない。
 いや、しかしみんなが同じ事をしているのだから、もしかして間違っているのは自分なのではないだろうか。
 もしも自分が聞き逃しているだけでメイド服を着るのが正しいとすれば、とんでもない赤っ恥をかいてしまう。
 それだけは避けねばならない。
 ゆえに、はやては見栄を張った。

「あ、あー! そうやった、今日から局員全員メイド服を着るのが義務なんよ! 私もはよう着ななー!」

 もはや事態は止まらなかった。



「い、いったいこれはどういう事なのでしょうか……ご覧ください! これが現在のミッドです!!」

 リポーターはマイクを手に、冷や汗をかきながらカメラに向かって叫んだ。
 促す方向はクラナガンの繁華街である。
 平素と変わらぬ、穏やかな日常、道を行き交う人々。
 だが一点だけ尋常でないものがあった。
 ――メイド服であった。
 道を行くミッドチルダはクラナガン住人の姿は、その全てがメイド服を着ている人間だったのだ。
 何故?
 それは誰にもわからない。
 この現象はある日突如として発生し、人々に蔓延していった。
 今やそれは全次元世界にさえ広がりつつある。
 まさにメイドパンデミック。
 病原体なき大感染現象であった。

「あ! あいつらメイド服じゃないぞ」

「本当だ、よしじゃあ着せよう」

 カメラマンに向かって必死にこの怪現象を訴えるリポーターのメイドたちが迫る。
 ギラつく目、手にはメイド服。
 きっと寸法はぴったりだろう。

「や、ちょやめて! いやあああ!!!」
 
 こうして世界にまた一人メイドが。
 果たしてこの恐るべき現象がどこまで続くのか、それは誰にも分からなかった。




 いや、別にぜんぜん恐ろしくはないんですがね。



終幕  ギャフン

699ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/10/13(土) 16:11:14 ID:jYAI4blM
最初は久しぶりにヴァイシグでちゅっちゅさせようと思ったのに何故かこんな〆方になった。
わけがわからないよ!

700名無しさん@魔法少女:2012/10/13(土) 16:57:21 ID:w51MnMFU
シガー氏乙!
事の発端となったヴァイスさんもメイド服着たんだろうか(笑?

701名無しさん@魔法少女:2012/10/13(土) 23:55:07 ID:4kfPx0sQ
フェレットもどきは9歳verでメイドコスAAがあったなどっかに

702ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/10/15(月) 00:09:46 ID:IzFik9.o
なんか連続になっちゃうけど投下する。

クロフェ、短編、エロ、『シンデレラ』

703シンデレラ:2012/10/15(月) 00:10:35 ID:IzFik9.o
シンデレラ

 スピードメーターの針の振幅を一瞬見て、クロノは自分がアクセルを踏み過ぎていると気付いた。
 それが急ぎたいという内心から来る、気のはやりである事は分かっていた。
 普段から客観的に見て自己観察しても冷静さを保っている自分にしては、珍しいとも思った。
 だが仕方ないとも理解していた。
 かれこれもう一ヶ月ぶりだ。正味の話、クロノはこの時を待ちわびていたのだから。
 程なく車は目的地に到着する。
 マンションの駐車場に車を入れ、いつもの場所に車を止めるとドアロックの確認もそこそこにエントランスに向かう。
 エレベーターに乗って所定の階につくまでの時間が焦れったかった。
 ネクタイを緩めて腕時計を見ながら永遠のような一分間を過ごす。
 時刻は21:45、相手はとっくに着いているだろう。
 エレベーターのドアが開くとすぐに目的の部屋へ向けて小走りに駆けた。
 ノブを回す、鍵は掛かっていない。
 そのまま躊躇せず一気にドアを開けて部屋に入った。
 靴を揃えもせずに脱ぎ散らかし、廊下を渡って灯りの付いている居間に行く。
 彼女はそこに居た。

「あ、クロノ」

 ふわりと笑顔の花が麗しい美貌に咲き誇る。
 長いブロンドを揺らし、黒い執務官制服に包まれた豊熟な肢体が歩み寄る。
 すぐ近くから見上げてくる真紅の双眸。
 十年来の義妹に、クロノもまた笑いかけた。

「ごめん、フェイト。少し遅れた」

「ううん、良いの。気にしてないよ」

 会話を交わしながら、クロノはフェイトの金髪に触れた。
 指をすっと挿し入れて、ゆっくり撫でて梳いてやる。
 少しの引っかかりもなく滑らかに流れる髪の感触は、なんともいえず心地良い。
 フェイトもクロノに撫でられるのが気持ち良いのか目を細めてされるがままになる。
 まるで飼い主に甘える子猫のようだった。
 だが、猫ならば兄の指に触れられて、頬を染めながら甘い吐息など零すまい。するりとタイを外し、胸元の悩ましい谷間を晒す事もあるまい。
 
「ねえ」

「ん?」

「どうする? すぐ――する?」

 普段のフェイトを知る者ならば、その一声だけで息を呑んで耳を疑っただろう。
 フェイト・T・ハラオウンは異性関係に頑なだった、同性愛者でないかと疑う者もいるほどだった。
 それが男に、それも義兄に、堪らなく蕩けるような媚態を込めた声を囁いた。
 潤んだ眼差しで見上げながら、桜色の唇が囁く声音は、ぞっとするほどの色気があった。
 白く細い彼女の指が、兄の無骨な指に絡みついた。
 お互いの感触を確かめ合うように幾つもの指が触れては離れ、また重なる。
 いつしか二人の間にあった距離はゼロになっていた。
 兄の逞しい胸板に、フェイトは自身の豊満な乳房を押し付ける。
 ごわごわとした制服の生地越しでも、その量感と柔らかさは十分分かる。いや、そもそもクロノはその触り心地を全て知り尽くしていた。
 引き締まったフェイトの腰に手を絡め、クロノは彼女に答えた。

「正直なところ。もう待ちきれない」

「んっ!」

 言葉と共に床に照明が描いていた二人のシルエットが重なった。 
 クロノは妹の唇を味わう。
 甘美な、背徳と罪の味だった。

704シンデレラ:2012/10/15(月) 00:11:08 ID:IzFik9.o
 兄の腕に抱かれ、フェイトはその豊かな体を押し付け、自分から彼の愛撫を欲した。
 静かな室内に二人の舌が唾液を交えて絡み合う音が、いやらしく響く。
 顔を離す。フェイトの瞳はとろんと蕩けて、もう既に出来上がっていた。
 クロノを見つめる眼差しは、兄を見るそれではない。愛する男を見るものだった。

「……ベッドに行こうか」

「……」

 そう促され、フェイトは黙って頷いた。



「きゃ!」

 寝室に着くなり、フェイトは乱暴なくらいの強さでベッドに押し倒された。
 白く柔らかいシーツの上に、黄金の髪が千々と乱れ、黒い制服に包まれたグラマラスな肢体が横たわる。
 覆いかぶさって、クロノは彼女の制服を脱がしていった。
 ふつりふつりとボタンを外していく度、自分の中から理性を繋ぎ止めていた鎖が千切れていくのを感じた。
 フェイトもまた彼を欲して、下から手を伸ばして兄の制服を脱がせる。管理局提督の制服、クロノ・ハラオウンという男を社会的に規定するその外殻を。
 一枚一枚服を剥かれて肌が露になるにつれ、お互いの心も剥き出しになっていく。
 衝動のままに、クロノはフェイトの白いうなじに吸い付いた。

「……あッ」

 切ない吐息を上げて、悶えるフェイト。
 耳元をくすぐる甘い声を堪能しながら、舌先は肌蹴られた胸元に至った。
 制服もブラウスも全て解放されて、ブラだけになったフェイトの胸。
 まだ十九歳だというのに、はち切れそうな果実とばかりに豊かな乳房。
 もどかしく思いながら下着も剥がせば、ぶるんと揺れて乳首まで顔を出した。
 吸い付く。
 口の中で舌と歯を使って肉豆をころころと弄りながら、出ない乳汁を飲もうとするように。
 
「はぅ! あぁ……むね、いい、ああ!」

 目じりに涙を浮かべて、フェイトは溢れる法悦に歓喜の声を上げた。
 甘く、溶けた、女の声。
 こんな彼女の姿は、きっとクロノしか知らない。
 空いた手でもう片方の胸を揉みながら、乳首をきゅっと抓る。反応は劇的だった。
 細く引き締まったフェイトの体が跳ねて、ベッドのスプリングを軋ませる。
 その拍子にクロノは起用にスカートのホックを外した。
 あとは流れるように着衣を剥ぎ取った。
 眩い白い裸身は汗に濡れ、堪らない色香を匂わせる。
 クロノもまた一糸纏わぬ姿になり、執務官時代から鍛え上げたしなやかな体を見せ付ける。
 見上げる妹は気付いた、兄の下半身で熱くなっている彼自身に。
 兄は知っていた、妹の白い太股の間を伝う蜜の雫に。
 丸裸なのは体だけではなかった。
 制服、社会に属し自身をその内で位置付ける象徴から解放されて、二人の心は何ものにも疎外されない地金を晒す。

「……クロノぉ」

 荒く、熱くなった息遣いと共に、フェイトが兄の名を愛おしそうに囁く。
 彼女の手が頬に触れた。
 クロノもその上から自分の手を重ねる。

「フェイト」

 ただ名前を呼ぶ。それだけだが、込められた気持ちが溶けていた。
 決して妹に向けるべきでない、熱い恋情。
 クロノはその想いのままに、剥き出しの裸身を愛撫した。
 軽く鎖骨の辺りをキスしながら、指で太股を撫で上げる。
 すべすべした肌の下に、細く鍛えられた筋肉と、それを覆う柔肉のむっちりとした感触。

705シンデレラ:2012/10/15(月) 00:11:44 ID:IzFik9.o
 肉感的で、男心をそそる美脚を思う存分撫で回し、ゆっくりと付け根に向かう。
 ぐちゅ、と音を立てた。
 
「んぅッ!」

 フェイトがくぐもった声を上げる。
 構わず指で彼女の中を探った。
 自分が処女を奪って、幾度となくこじ開けて自身をねじ込んだ粘膜を、慣れた手つきで搔き回してやった。
 最初は軽く滴る程度だった愛液は、もうそれだけで大洪水になる。
 止め処なく溢れる蜜を指に絡ませて、クロノはフェイトの膣をめちゃくちゃにした。

「ひっ! あ、あぁぁ! だめ、やぁ……クロノ、はげ、しいよぉ……まって! んぅ! だめ……イっちゃうッ」

 シーツを掻き毟りながら悶え、フェイトの体がびくびくと小刻みに痙攣した。
 どうやら達してしまったらしい。
 それほど手の込んだ愛撫というわけでもなく、時間も掛けていなかったのに。
 過敏な反応、だが珍しくもなかった。
 特に、今夜のように久しぶりの逢瀬となると、彼女は触れるクロノの全てに官能を喚起させられる。
 指を引き抜くと、とろりと粘り気の強い果汁が糸を引く。
 つんと香る、雌の匂いが情欲をそそった。
 両脚を開かせ、その間に自分自身を導いた。
 しとどに濡れたフェイトの入り口に、先端が触れる。
 熱かった。
 お互いに、火傷してしまいそうなくらい。

「あ……クロノぉ」

 膣口に感じる、兄の熱に、フェイトが潤んだ目を細めた。
 高潮した顔に浮かべる微笑。
 愛らしく、そしてそれ以上に淫蕩な媚態。
 そんな彼女の表情に一層心を掻き乱されながら、囁いた。
 
「フェイト、行くぞ」

「うん……きて」

 クロノの背に手を回し、彼を求めるフェイト。
 兄は、その求めに応じるように、体を沈めた。
 じっとりと濡れていた肉壷は一切の抵抗なく彼を受け入れた。
 膣壁を掻き分け、一気に奥まで突き進む剛直。
 太く逞しい彼自身の侵入に、フェイトは髪を振り乱して喘いだ。

「はぁあ!! クロノ、すごい……ひぅ! ああ……きもちいいよぉ……クロノ……クロノぉ!!」

 涙交じりに甘い声を上げて、フェイトは彼の腰に脚を絡め、背を抱き寄せて求めた。
 もっと深い愛を、悦びを、契りを。
 恋しい妹に、クロノは全力で応える。
 鍛えた力を十全に使い、腰を力強く動かした。
 深く挿入されたかと思えば、一気に抜けそうになるくらい引かれ、また深く突き入れた。
 時折左右や斜めに抉りこみ、探索と開発を繰り返したフェイトの性感帯をこれでもかと攻撃する。
 溢れ出る愛液がシーツに飛まつとなって散って跡を作る。
 フェイトはあまりの快感に目の前が真っ白に染まった。

「クロノ! ふぁああ! クロノ、クロノクロノ、クロノぉおお!!」

 脳髄を法悦の雷撃で打ち据えられながら、フェイトはひたすらに彼の名を叫んだ。
 背中に回した指に力が入りすぎ、紅い線を作る。
 強く抱き寄せる。
 フェイトはクロノの首筋に激しいキスの雨を降らせた。
 吸い付き、貪り……その拍子に犬歯が傷を穿つ。
 ふっつりと浮き上がる雫。
 背中からも、首筋からも、つぅと血が零れた。
 
「あぅ……ごめんね、ごめんなさい……ん、ちゅ……」

 謝りながら、フェイトは首筋につけてしまった傷をペロペロと舐めた。
 兄の血の味は、きっと禁忌の甘美な味がした事だろう。
 クロノは責める事無く髪を撫で、腰を深く沈めて子宮口にキスをした。

706シンデレラ:2012/10/15(月) 00:12:38 ID:IzFik9.o
 汗だくの体が何度も跳ねて、荒い息遣いとスプリングの軋みを響かせる。
 もう、クライマックスが近かった。

「フェイト、今日は、いいか?」

「うん……きて……クロノの、全部……はぅん! ああ、全部だして! 私の中に!」

 涙を流して顔をぐしゃぐしゃにするフェイトの、甘い声が木霊する。
 クロノは彼女の求めるままに、解き放った。
 一番深いところまで突き立てて、結合部から音を立て零れ出る白濁液。
 震える二人の体。
 クロノも、そしてフェイトも、激しく濃密な絶頂感に頭の中を塗りたくられていた。
 
「くッ……はぁ」

 緊張の糸が切れて、クロノはフェイトの体に倒れこむ。
 仕事明けにこれだけ体を動かすのは、幾ら執務官時代から体を鍛えてきた彼でも堪えたのだろう。
 柔らかく豊かな二つの膨らみが彼を迎え入れた。
 汗でしっとりと湿った、豊満な胸の谷間。
 温かく、落ち着く。
 伝わる彼女の鼓動までもが心地よかった。
 いつまでもこうしていたかった、が、クロノはぐっと体を起こす。
 そうだ、自分は甘える側ではない、その逆だ。
 彼女を前にしては。
 クロノはフェイトの首に手を回すと、そのまま腕枕してやった。
 逞しい二の腕で首を支えて、自分の元に抱き寄せる。
 
「……クロノ」

 兄の腕に抱き寄せられ、その胸板に頬を寄せて、フェイトは感極まった声を零した。
 上目遣いに見上げる真紅の瞳。
 愛おしそうな、寂しそうな眼だった。
 クロノはそんなフェイトを、何も言わず強く抱きしめた。
 こんな風に彼女を抱くのは、一体何度目なのだろうか。
 初めて関係を持ったのは、クロノが十九、フェイトが十五の時だった。
 当事、既にクロノはエイミィと結婚を前提に付き合っていた。
 それを知ったフェイトは、その夜クロノの寝所に訪れて、彼を求めた。
 義理の兄への許されざる感情、エイミィに彼を取られてしまうと知り、抑え切れなくなった想い。
 彼女の生い立ちを骨身に沁みて知るクロノに、それを反故にできる非情さはなかった。
 これで終わりにしよう。
 最初からそう思いながら、しかし実行する事が出来ず、ずるずると数年間続いてしまった二人の関係。
 世間にこれが知れたのなら、もう二人はそれまでの生活を送る事はできないだろう。
 そして、決して暴かれない悪はないと、幼い頃から悪を暴いてきたクロノは知っていた。
 二人の行いが、禁忌を犯す悪しき行為である事も。
 だが今夜もまた、クロノの腕はフェイトを抱く。
 愛おしく、そして憐れなこの少女を捨てる事が出来ずに。
 きっとまた次に会った時も抱くのだろう。
 その身に破滅の足音が聞こえるまで。
 彼の温もりに包まれながら、まどろみの中でフェイトが呟いた。
 
「おにいちゃん……ずっと、こうしてて」

 豊かに育った体とは裏腹に、どこか幼ささえ孕んだ声で、求める。
 誰かに捨てられる事、きっと、彼女が一番恐れている事。
 クロノはもっと力を込めて抱き寄せながら、優しくその耳元に囁いた。

「ああ」

 短く確かな声で言い、クロノは眼を瞑る。
 このまま、朝まで過ごそう。
 それまでの間、彼と彼女の愛を阻むものはなにもなかった。
 たった一夜の愛。
 一晩明ければ、馬車はかぼちゃに戻ってしまう。
 ガラスの靴さえ残らない。
 残るのは、フェイトの付けた傷跡と、二人の心だけだった。



終幕

707ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/10/15(月) 00:15:00 ID:IzFik9.o
投下終了。

某絵描きさんとネット上でのやり取りの末に、背中に爪立てたり思わず首筋に歯を立ててしまうフェイト。
という事になり、書いたSS。
あんま書いたことのないカプだけど、クロフやはり良いものやでぇ。

708名無しさん@魔法少女:2012/10/15(月) 01:45:50 ID:TgfgbonQ
GJ!背徳的なのに、なんぞろまんちっくな終わり方でいいですな
ちなみに微妙に書き方というか文体というか何かが変わったような気がするが気のせいかぬ

709名無しさん@魔法少女:2012/10/16(火) 01:33:13 ID:fzwN.MEo
シガーさんいつも感じ違うけどとっても良かった

710名無しさん@魔法少女:2012/10/16(火) 08:08:21 ID:uB0DdYJg
ああ…女を知ったんですね、わかります

711名無しさん@魔法少女:2012/10/16(火) 08:22:34 ID:XENbERHU
なん・・・だと・・・

712名無しさん@魔法少女:2012/10/16(火) 18:31:14 ID:f1mjhLsc
シガーさんはホモだって信じてたのに……

713ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2012/10/17(水) 01:43:39 ID:.FlBljeQ
なんで俺が童貞やホモなことを前提にされてるのかわけが分からないんだが?www


文体なんか変わってるな今回、ってのは自覚してるけど特に理由が思い浮かばない。
なんかあせって書いたんと普段書かないクロフェだからだろうか。

714名無しさん@魔法少女:2012/10/17(水) 12:02:22 ID:HQ1Aw4Tw
惨事女とセクロスするようなリア充はこのスレには不要

715名無しさん@魔法少女:2012/10/17(水) 19:51:09 ID:.FlBljeQ
誰かリンディさんが大勢の男に辱められ嬲りものになって調教されるようなSS書いてくれないかぁ(発作

716名無しさん@魔法少女:2012/10/17(水) 20:24:11 ID:5rqB8mjE
裏インターミドル的に、更生プログラムと称して地下闘技場で
エロ見世物試合をさせられるナンバーズ

717名無しさん@魔法少女:2012/10/17(水) 20:26:18 ID:.FlBljeQ
エロい格好をさせてバイブとか仕込んだまま戦わせてダメージは全部快楽変換する魔法を使う、と?

718名無しさん@魔法少女:2012/10/17(水) 21:09:45 ID:tfXO8MCY
それなんてサイクロン?
800シリーズ、大変お世話になっております

719名無しさん@魔法少女:2012/10/19(金) 01:49:17 ID:rRLJbxfo
ホンットサイクロン先生はいい仕事しますなぁ
…ふ○○りに目覚めかけたww

720名無しさん@魔法少女:2012/10/20(土) 16:48:24 ID:5WEK4h5c
ふたはよいぞ・・・

誰かふたレズでリンディさんメインのとか書いてくれぬかァァ

721名無しさん@魔法少女:2012/10/20(土) 19:09:55 ID:V7RK7g6Y
今のリンディさんも良いけどまだ10代頃の少女時代のリンディさんが輪姦されるような話も良いと思わないか?




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