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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第111話☆

1名無しさん@魔法少女:2011/08/18(木) 16:34:39 ID:tcLNLZv.
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。


『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第110話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1302424750/

806名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 18:03:34 ID:6Z4zP0vE
すげえ、というかなんというか。

ある意味、なのはの述懐が一番欝だよ……

807名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 21:58:37 ID:kKyjU3q6
なのはさんが山奥に引きこもって、
水面に映った自身を相手に訓練を続け、
無敵の強さを手に入れたにもかかわらず、
強すぎるがあまり己が敗北を渇望しださんかと心配になった。

808名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 22:18:59 ID:LGwOwJ7.
>>807
元ネタわからねえ……

809名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 22:55:45 ID:Kw1mynKU
>>802
GJ!
すずかの語り口は怪しげな雰囲気があって引き込まれました
特に夜の分解作業を目撃するところ好きです。姉ちゃんが夜こっそりメイドを解体してたら確かにホラーだ・・・


10分ぐらいしたらこっちも投下いきます

810鬼火 ◆RAM/mCfEUE:2011/11/05(土) 23:05:38 ID:Kw1mynKU
・鬱祭り参加を目指して書いてみたものの、鬱にならなかった!
・この話は、3年前に82スレ>>170-181で出てきた雑談を元ネタにしてます
具体的にはこのあたりからはじまる流れ
>170 名前:名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 20:33:33 ID:FwipE8wd
>使い魔って確か人間だと出来ないんだよな
>なのはさんが死んでフェイトさんがなのはさんを使い魔にとか読んでみたいけども
>あ、でも使い魔ってなる前となった後じゃ中身はまるで別物なんだっけか
>切ない話になりそうだな



次レスからどぞ

811die hard:2011/11/05(土) 23:07:09 ID:Kw1mynKU
【die hard】
1.〔粘り強く耐えて〕なかなか死なない
2.激しく戦って死ぬ
3.〔信念などに〕執着する
4.〔慣習・考え方などが〕なかなかなくならない
5.〔記憶・感情などが〕なかなか消えない[忘れられない・断ち切れない]
6.〔癖などが〕なかなかとれない
(『英辞郎 on the WEB』より"die hard"の定義を引用)





殺風景な部屋でフェイトは立ち尽くしていた。
部屋は凍えるほど寒かった。フェイトが息を吐くたびに白いもやができた。
薄暗い室内でみるリノリウムの壁や床はいつもよりいっそう無機質な感じがした。
奥の壁に据えつけられているロッカーのようなものは、「クリプト」と呼ばれる遺体安置用の箱の引き出しだった。
この部屋にはたくさんのボディが存在するが、動き回っているボディはフェイトだけだった。
今、フェイトの目の前にも、ボディが一体横たわっている。
このボディ――高町なのはは数時間前まで生きていた。今は生きていない。
何もかもが信じられなかった。
なのはは、任務中のアクシデントで撃墜され、病院に運び込まれたが処置の甲斐なく、数時間前に息をひきとったのだという。
フェイトは朝には彼女と通信機器越しに何気ない会話を交わしたのだが、夕方知らせを受けて駆けつけた時には物言わぬ彼女と対面するはめになった。
ショックのあまり、周囲の人々の話す言葉はすべて虚ろに聞こえ、まるで現実感がなかった。
茫漠とした記憶のなかにあるクロノの説明によれば、なのははアンノウン(未確認飛行物体)によって撃墜された。
そしてこの後は、アンノウンによって受けた身体の損傷を調査するために、司法解剖にまわされるだろうとのことだ。
解剖なんてとんでもない、とフェイトは思った。

812die hard:2011/11/05(土) 23:08:34 ID:Kw1mynKU
なのはの柔らかい肌がメスによって切られ、中を開かれ、臓器を取り出され、隅々まで調査のためにモノのように弄繰り回されるのを想像すると、たまらない気持ちになった。
フェイトは親友の変色した顔を、腕を、胸を、足を、愛おしむように撫でてさすった。暗く変色した皮膚を手で押すと、そこの部分だけ元の肌の色に戻る。元のなのはに戻って欲しくて何度もさすった。
だが無駄なことだ。なのはが自分に笑いかけてくれることはもうない。「フェイトちゃん」と自分を呼んでくれる声はもう聞けない。
生まれてはじめてできた友だちは、もういなくなってしまった。自分を置いて逝ってしまった。フェイトの胸は悲しみで張り裂けそうだった。

彼女は、今にも崩れ落ちそうな黄ばんだ古紙の束を取り出した。
ここにくるまでの数時間で食い入るように読み込んだ論文の表紙に目を落とす。



   TITLE:   On the Method for the Contract to Make Humans into Familiar Spirits
           (人間を使い魔にするための魔法契約術式について)

   AUTHOR: Precia Testarossa
           (プレシア・テスタロッサ)



この論文は、違法な研究を行っていたある研究所のガサ入れに参加していた折に、偶然、見つけたものだ。
当初、タイトルと著者名を見たフェイトは仰天した。
なにしろ人間を使い魔にするという行為は、違法行為だ。
身分などの法律関係の問題や技術的なハードルを別にしても、まず倫理的観点から強く忌避される。
非人道的な技術開発の数々で知られる旧ベルカ大戦でさえ禁則事項とされた、魔導技術開発におけるタブー中のタブー。

しかし、論文の中身はそれ以上の衝撃を彼女にもたらした。
そこには往来のパラダイムを覆すようなあまりに斬新な術式構築論が記されていた。
過去の定説を粉々に粉砕していくプレシア理論に、フェイトは、度肝を抜かれた。
天才魔導工学者プレシア・テスタロッサの執念あるいは怨念が生み出した狂気の理論。
およそ正常な人間が考え出したとはとても思えないような難解で複雑怪奇な術式。
回り道、あるいはおよそナンセンスにしか思えないような箇所すらあった。まるで伝説にうたわれたアルハザードの叡智だった。
当のプレシア、そしてその使い魔リニスによって英才教育を叩き込まれたフェイトの頭脳をもってしても、その未知の理論を完全に理解することはできなかった。
特に魂魄の構成に関すると推測される部分で採用されている方式は完全に未知のもので、個々のごく細分化した術式の意味はところどころ分かるものの、全体として見たとき、どういう結果につながろうとしているのかその理を捉えることができなかった。
その箇所を見た瞬間のフェイトの気分は、たとえるなら、スペースシャトルの設計図を見せられた石器時代の原始人のようなものだった。

813die hard:2011/11/05(土) 23:09:24 ID:Kw1mynKU
捜査活動中に発見したものは何であれ本来なら上に報告し提出しなければならない。
フェイトもそのことは分かっていたが、結局、この発見は彼女の胸のうちにしまわれたままになった。
当時、フェイトは職責に反する行為をおこなってしまったことで罪悪感を覚えた。
しかし今となっては、あの時あの場所でこの論文を見つけたことは今このときのための天の采配だったのではないか、とさえ思い始めていた。

フェイトにとって残念なことに、論文の最初と最後の数ページには、虫食いやページの欠落があって、読めない箇所があった。
しかし、本体である魔法式の載っているページは中盤にあったため、綺麗なままだ。
通例、この手の論文の最初には、論文の概略や先行研究が書かれている。
そして、論文の最終部では、著者の理論の総括、そして今後の課題などが書かれる。
理論には理解不能なものもまじっているので、万全を期すには、まとめ部分に書かれていたであろう考察についても読みたかった。
しかし、とフェイトは思った。
バイクの細かな内部機構を理解していなくても操作方法さえ知っておけば運転が可能なように、個々の術式の意味を理解していなくても、書かれている術式にしたがってさえいれば魔法を発動するのに問題はない、と。
実際、完全に術式の意味を理解していなくても、魔力とデバイスの助けがあれば魔法はつかえる。魔導理論を全く知らないままデバイスを渡されて魔法を行使したかつての高町なのはが良い例だ。

だから、問題、は、ない、はずだ……。
フェイトはゴクリと喉を鳴らし、燻っている不安をいっしょに無理やり飲みくだした。
今を逃せば、この術式をつかう機会は二度と訪れないかもしれない。
他の人の目があるときはできない。解剖に回されてしまった後は論外だ。

(やるなら、今しかない……)

ポケットからバルディッシュを取り出す。
黄金の三角形に、フェイト自身の顔が映った。
バルディッシュに映った顔はひどかった。泣きすぎて目元も鼻もすっかり真っ赤に腫れ上がっている。
血のように赤い双眸がフェイト自身を見つめ返す。
一瞬、沼のように濁った瞳のなかに人を惑わす鬼火のような光がちらちらと揺れるのが見えた気がした。
おぞましいものを隠すように、フェイトはバルディッシュを掌で覆い握り締めた。
震える手を押さえながら、目を閉じ、呼吸を意図してゆっくりとしたものに変える。
イメージ上で術式の手順の最終確認をおこなう。
最終確認をおえて、フェイトが目を開いたとき、ふと、声が聞こえたような気がした。
フェイトを諭す懐かしい声がする。

『いいですか、フェイト?』

814die hard:2011/11/05(土) 23:10:34 ID:Kw1mynKU
『使い魔の術法は死亡の直前か直後の動物の肉体を依代に、魔法で生成した人造魂魄を宿らせるというものです』
『実際には、いのちを助けるわけでも、よみがえらせるわけでもない。わかりますね?』
『失ったいのちを取りもどすなんて魔法は、世界中のどこを探してもないんです』

フェイトの決心がぐらつきそうになる。
もう一度、わかりきった事実を心中で反芻した。
ここでなのはを使い魔として復活させたとしても、それは本当の「高町なのは」ではない。
頭では分かっている。それでも、フェイトはなのはと離れるのが嫌だった。
フェイトは思う。
自分は今、母親と同じ過ちを繰り返そうとしているのかもしれない、と。
いや、ひょっとすると母親よりなお性質が悪いのかもしれない。

プレシアの論文を読んだフェイトが真っ先に思いついた疑問――「どうして母さんはこれを使わなかったんだろう?」
フェイトはその答えをずっと考えていた。

理論にどこか欠陥があったのだろうか?
否。そうであるなら、論文にして残すはずがない。
プレシア・テスタロッサの術式は信じられないことに、主要記憶の継承が可能であったし、
契約の時期も、「死亡の直前か直後」という従来の動物相手の使い魔契約のような縛りがなかった。
また、使い魔は魔導師の魔力を消費して存在を維持するが、この理論ならその消費量も従来の20分の1に抑えられる。
良いこと尽くめである。
だのにプレシアはアリシアに対して用いることはなかった。
なぜか、とフェイトは考えた。
答えはひとつしか思い浮かばなかった。
きっとプレシアは分かっていたのだ。この術式を使っても、偽者ができあがるだけだと。
彼女は姿だけが似ている偽者を欲さなかった。あくまで本物の娘を求めた。
結果、フェイトが生まれた。掴まされたのは偽者だった。そして伝説の地アルハザードに一縷の望みをかけることになった。
フェイト・テスタロッサは、アリシアの偽者だ。その偽者が、今度また偽者を――

815die hard:2011/11/05(土) 23:11:26 ID:Kw1mynKU
そこでフェイトは思考を強引に切った。
残っている良識がここぞとばかりにフェイトに囁いた。
(やっぱり、こんなことはいけない。
なのはだって、きっと、こんなこと望んでない。
さあ、お別れを済ませて、ここを出て行こう。)

彼女はもう一度、台の上に載せられているなのはを見た。
頭や体は包帯でぐるぐる巻きにされていて、肌の色は暗紫色になっている。
フェイトは上から覆いかぶさるようにして、なのはの胸に顔をうずめた。
そして息を何度も大きく吸い込む。錆び臭い血の匂いと甘ったるい死の匂いがした。
「なのは」、と名前を呼んでみた。昔、教えられた友だちになるための方法だ。
なのはから答えは返ってこない。いくら名前を呼んでも人形のように表情は動かない。
フェイトの目からまた新しい涙が零れ落ちた。

フェイトは非常に閉鎖的な環境で育った少女だった。
彼女の「世界」は狭かった。母親と自分を中心に、家庭教師のリニスや使い魔の狼アルフといった存在がならぶ。
バルディッシュを数にいれても、フェイトと日常的に接触のある者は最大でも4人。
リニスはフェイトの教育を終えると消えてしまったから、都合3人。内訳は、人間1人、狼1匹、デバイス1機。
当然のことながらフェイトが心を向ける比重は、唯一の人間であり、最も近しい肉親であるプレシアに圧倒的に傾いた。
母親の存在が全てといっても過言ではなかった。フェイトは母親を愛していた。そして母親に愛されたいと思った。
だが、プレシアの愛は自分に向けられなかった。
《生きていたいと思ったのは、母さんに認めてもらいたいからだった》
《それ以外に生きる意味なんかないと思っていた》
《それができなきゃ生きていけないんだと思ってた》
自分の生きた記憶が本当に自分自身のものであるかすら定かではない、曖昧な、幻のような自分。
プレシアがいなくなり、ぽっかりと空いた穴に代わりに嵌まり込んできたのが高町なのはだった。

PT事件以後の生活は以前とは全然違った。
義母となったリンディ、義兄のクロノ、ユーノ、地球で知り合ったアリサ、すずか、そして学校のクラスメイト。
フェイトの世界は、以前とは比べ物にならないほど大きくひろがった。
だがそれでもフェイトの心的構造は変わらなかった。
以前はプレシアとフェイトが中心にいて、そのまわりにアルフやリニスがいたように。
今度はなのはとフェイトという軸を中心に、義母や義兄、アースラの職員、地球で知り合った人々が並んだ。
もちろん、こういったイメージをフェイトがはっきりと意識していたわけではない。
この年頃の子供は、それでなくとも、家族よりも気の合った同性の友人のほうに心を寄せる傾向があるのだ。
それにフェイトの生まれや過ごした環境、生来の性格があわさって、彼女の高町なのはに対する並々ならぬ執着心――それこそプレシアにとってのアリシアのような――がうまれた。

816die hard:2011/11/05(土) 23:12:20 ID:Kw1mynKU
遺体に縋りつきながら、名前を呼んだ。

なのは、

『うん』、となのはの声が答えた気がした。きっと幻聴だ。

なのは、

『うん』。また幻聴が聞こえる。

なのは、なのは、なのは、

『にゃはは、どうしたの、フェイトちゃん』

なのは、いかないで。なのは、なのは、

『……』。幻聴は困ったような苦笑を漏らした。

なのは、なのは、私が君を使い魔にしたら怒るよね?

『……』。幻聴が、少し驚き、ちょっと呆れたような吐息を漏らした。

なのは、ごめんね、嫌だよね?

『…………ううん、いいよ。フェイトちゃんなら』。あまりにも都合のいい返事がかえってきた。

それはきっと自分の願望がうみだした幻聴なのだろう。
想像の中のなのはに、自分の聞きたい言葉を言わせている。
まるでお人形遊びだ、とフェイトは思った。自分の浅ましさに叫びだしたくなった。
自分はなのはがモノのように弄繰り回される検死解剖を厭った。
だがなのはをモノのように扱おうとしているのは自分も一緒ではないか?
しかし、このままでは……

817die hard:2011/11/05(土) 23:12:56 ID:Kw1mynKU
懊悩するフェイトの脳裡に複数の映像が現われる。
《受けてみて、ディバインバスターのバリエーション!》
《名前を呼んで? 最初はそれだけでいいの》
《私、高町なのは。なのはだよ》
フェイトの中で宝箱のように大切にしまわれている美しい思い出の数々が走馬燈のように次々に映し出される。
はにかんでいるなのは。凛々しいなのは。しょんぼりとうなだれているなのは。楽しそうななのは。
これらが過去のものになり、もう永久に失われてしまうのだと思うと、急速に寒気が襲ってきた。
もう難しいことはなにも考えられなくなった。

なのは、なのは、
なのは、なのは、なのは、なのは、なのは、
なのは、なのは、なのは、なのは、なのは、なのは、なのは、なのは、
なのは、なのはなのは、なのはなのはなのはなのはなのはなのは、なのはなのはなのはなのはなのはなのは
、なのはなのは、なのはなのはなのはなのは、なのはなのは、なのはなのはなのは
なのはなのはなのは、なのはなのはなのはなのはなのはフなのはなのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのは、なのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはェなのはなのはなのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはなのはイなのはなのはなのはなのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはトなのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのちはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのは
なのはなのはなのゃんはなのはなのはなのはなのはなのは、なのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはななかのは
なのはなの泣かはなののはなのはなのはなのはなのは
なのはないなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのは
なのではなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのは
なのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのはなのは


……

…………

………………

818die hard:2011/11/05(土) 23:13:57 ID:Kw1mynKU

MIDCHILDA DALIY NEWS 新暦67年12月20日付記事
┌──────────────────────────────────────┐
│   【霊安室で葬儀を待つばかりだった管理局員、奇跡の生還】                 .│
│   メンラー記念病院で、タカマチなのはさん(11)が医務官から「死亡」と診断された後    .│
│   4時間後に霊安室で生き返っていたことが分かった。なのはさんは職務中に重傷を    │
│   負って意識不明のまま午後2時頃に病院に搬送された。午後3時頃に治療の甲斐  .....│
│   なく心肺停止状態に陥り、医務官がバイタルの消失を確認。死亡を宣告した。だが    .│
│   4時間後、なのはさんの友人のフェイト・T・ハラオウンさんが霊安室で遺体が動いて ......│
│   いるのに気づき、医務官を呼んだところ、バイタルが復活しているのが確認された。 ......│
│   なのはさんは再び治療室へと戻された。なお現在は、快方に向かっているとのこと。  ..│
│   この件について、病院側は担当の医務官の診断に問題がなかったか調べている。    .│
└──────────────────────────────────────┘

819die hard:2011/11/05(土) 23:14:35 ID:Kw1mynKU
高町なのはは霊安室からの帰還後、人間離れした速度でみるみる回復していった。
事故から約一ヶ月を待たずに、一般病棟に移ったぐらいだ。
あれほどの重傷を負いながらたったの一ヶ月で普通に食べたり会話したりするようになった。
そのようなことは、普通なら絶対にありえないのだが……。

地球からちょくちょくお見舞いにやってくる高町ファミリーは、「ミッドチルダの医療魔法って凄いんだなぁ」、と魔法のせいにして勝手に納得していた。
一方、なのはを診察していた医師たちは、「チキュウ人の回復力って凄いんだなぁ」、と未知の秘境たる管理外世界の生物進化の凄まじさに思いを馳せながら勝手に納得していた。

なのはが霊安室で息を吹き返したこと自体についても、周囲はとくに不審には思わなかった。
チキュウでもミッドチルダでも、こういったケースは稀ではあるが時折起こるものだったからだ。
ミッドチルダにも「通夜(Wake)」があり、夜通し親族が棺と一緒の部屋で過ごすのだが、これは死者が息を吹き返した場合に備える意味をもっているという説もあるくらいである。

フェイトからみて、なのはの記憶もほぼ完全であった。フェイトはプレシアに感謝した。
その性格も事故前と変わらずに見えた。
だから、誰もなのはがフェイトの使い魔になったとは気づいていないようだった。
フェイトが見る限り、本人すら気づいた素振りがない。
高町なのはの驚異的な回復について正しい心当たりをもつのは、さしあたってはフェイトのみのようだった。

全てがうまくいっていた。
なのはは順調に回復し、周囲はそれを見て喜ぶ。フェイトも嬉しかった。
失ったと思ったものが、かえってきたのだ。

820die hard:2011/11/05(土) 23:15:27 ID:Kw1mynKU




Feb 2
なのはは元気そうだ。
桃子さんが持ってきたノートPCでゲームをしたりアニメを見て暇を潰している。

Feb 4
なのはは最近アニメばかり見ているようだ。
なのはってこんなにアニメ好きだったかな?

Feb 7
なのはの病室に白い小動物のぬいぐるみが鎮座していた。
アニメの人気キャラらしい。なのはにぴったりの白いぬいぐるみだ。可愛い。

Feb 8
病室のぬいぐるみにちゃっかりフェレット姿のユーノがまざっていた。
そんなことだからクロノにからかわれるんだよ、ユーノ……。

Feb 9
最近なのはが事あるごとに「わけがわからないよ」と言うようになった。
頭を打った後遺症かもしれない。

Feb 10
どうやらデバイスの改造に興味を持ち始めたらしい。
レイジングハートがおかしな改造をされていた。ラーメンタイマー機能は必要なの?

Feb 13
なのはがバルディッシュに高枝切り鋏機能をつけたらどうかと言いだす。
わけがわからないよ。

Feb 15
私にそろそろバリアジャケットのデザインを変えたらどうかと言いだす。
なのはの考えることはよくわからない。

Feb 17
なのはは私のバリアジャケットに不満があるらしい。
なぜ急にそんなことを言い出すのだろう。

Feb 18
なのははバール型デバイスに興味があるらしい。
レイジングハートの将来が心配だ。

Feb 19
なのはが完全に歩けるようになった。
医者が人間離れしたありえない回復力と言っていた。

Feb 21
なのはがまた私のバリアジャケットのデザインに文句をつけはじめた。
しつこい。なのははこんなにしつこ……かったっけ、そういえば。

Feb 22
深夜病院の屋上で多重魔法弾の練習をしているなのはを発見した。
ひとりで「圧倒的じゃないか。わが軍は……」と呟いて悦に浸っていた。

Feb 23
なのはは私のバリアジャケットの防御力の薄さが気になるらしい。
「紙装甲」とはっきり言われてしまった。6月の執務官試験がおわったら変更を考えよう。

Feb 25
なのはが「お父さんってロリコンなのかな?」と悩んでいた。
桃子さんと恭也さんの年齢を考えるとロリコン疑惑がでてきたらしい。

Feb 26
士郎さんはロリコンではなかったらしい。よかったねなのは。

821die hard:2011/11/05(土) 23:16:32 ID:Kw1mynKU


フェイトは病室の扉をノックした。中から快活な声が返答する。
扉を開けて病室に入ると、柑橘類の甘酸っぱい香りが鼻をついた。
小テーブルの上に、ヘタの部分が凸状に隆起したオレンジのようなフルーツが山積みにされていた。
病室は日当たりの良い個室だった。
開け放たれた窓からは暖かい日射しと、早春の清冽な風が入ってきた。
なのははパジャマ姿でベッドの上に起き上がって座っていた。
血色が良く、とても怪我人とは思えないほどだった。

「お久しぶり、フェイトちゃん。あっ、これね、デコポンっていうんだって。お母さんからの差し入れ」

「デコポン? 面白い名前だね」

「九州の親戚のひとが送ってくれたんだって。甘くておいしいの。フェイトちゃんも食べていいよ」

「うん。じゃあ、ひとつもらおうかな」

フェイトはポンカンを剥いて、薄皮のついた房をひとつ口に入れた。
爽やかな甘みが舌の上に広がる。
なのはを使い魔にした後は、体調を崩していたフェイトだったが、今は持ち直しつつあった。
周囲は、受験前の無理のしすぎやなのはの事故の心労が重なったのだろうと解釈したが、
実態は、なのはという一個の人間を使い魔にしたことによる精神的重圧と魔力負担のせいだった。
しかし今は、使い魔であるなのはの存在維持に割いている魔力リソースの負担にもだいぶ慣れた。
あまりにもうまく行き過ぎていて、怖いくらいだった。

フェイトはポンカンを一房なのはの口に放り込んだ。
なのはが美味しそうに与えられた一房を咀嚼する。
蜜柑があるとフェイトはよくその皮を剥いて、なのはに食べさせてやっていた。
動物に餌付けしているみたいで何となく可愛かったので海鳴に来た年の冬中ずっと続けていた。
そうしたら、いつの間にか習慣になってしまったのだ。
図らずも今では、「主人がペットに餌を与えている」と言っても間違いではないのだが……。

「調子よさそうだね、なのは」

「にゃはは、おかげさまでね」

彼女がこうしてここにいるのは文字通りフェイトの「おかげさま」だ。
なのはの言葉に他意はないのだろうが、フェイトはほんの少しドキリとした。

822die hard:2011/11/05(土) 23:17:27 ID:Kw1mynKU
「フェイトちゃんこそ大丈夫なの? 執務官試験の後、倒れたって聞いたけど」

なのはが気遣うようにフェイトを見ながら、言った。
重傷だったのは自分の方なのにこうして他人の心配をするあたりが如何にもなのはらしく感じられてフェイトは嬉しくなった。

「うん、もう元気だよ。心配してくれてありがとう、なのは」

ついでになのはの口にポンカンをまた一房放り込んだところで、室内にノックが響き、また新たに人が入ってきた。

まず、「あー、また二人でベタベタしてる〜!」と騒々しいアリサ・バニングス。
そしてすぐ後から、「アリサちゃん、病院なんだから静かに」と冷静な月村すずか。
最後に、女の子だらけの室内にやや遠慮がちに、「やあ」とユーノ・スクライアが顔をのぞかせる。

それから、他愛のない談笑がはじまった。互いの近況や最近の出来事がほとんどだった。
なのはの経過が順調であることを喜んだあとは、フェイトの執務官試験、そしてアリサの犬が宿題プリントを食べてしまった珍事、それから学校の体育の授業でのすずかの活躍に話が移っていった。

「それでね。すずかったら、1人で相手チームを全員倒しちゃったのよ」
「相変わらずすずかはドッジボールがうまいね」
「いえいえ。そういうフェイトちゃんだって」

地球の学校での出来事に少しユーノも関心があるようだった。
ドッジボールとは何かと尋ね、それが学校で一番人気のある遊びだと分かると、すこし羨ましそうに言った。

「ぼくもやってみたいな、そのドッジボールというのを」
「ユーノもやればいいじゃない。ルールは簡単だからすぐできるわよ」
「そうですね、アリサちゃん。今度みんなでやりましょう」

フェイトも満面の笑みで頷いた。
が、

「うんうん、そうだね。私も久しぶりにやりたいな、ドッジボール」

なのはの言葉に表情が固まった。

(えっ……)

フェイトは「ドッジボールがやりたいと言ったなのは」を、奇妙な怪物でも見るかのようにマジマジと見つめた。
確かに、顔も、声も、口調も、身振りも、全部なのは本人のものだ。
しかし。
彼女の知っているなのはは、ドッジボールの時間が好きではなかった。

明るい陽射しの中で友人たちが談笑している光景。
それが、一瞬で、澱んだ色に変わったようにフェイトの目にうつった。

「へー、珍しいじゃん。なのはがそういうこと言うなんて。明日は雨が降るかもね」
「珍しいって? ああ、なのはは運動が得意ではないんだったね。魔法はあんなに凄いのに」
「そうよ、なのはったら、昔っから体育が苦手で。水泳をさせれば溺れるし! 鉄棒をさせれば落ちるし! 50m走も9秒を切ったことがないのよ!!」
「にゃはは……」
「ドッジボールだっていっつもフェイトが……フェイト?」

アリサにつられて、なのは、すずか、ユーノがフェイトに視線を移す。
フェイトの顔が青白くなっていた。
調子が悪いのではないかと皆が心配すると、フェイトは朝食を抜いたから貧血気味なのだろうとごまかした。
そして、さりげない風を装って用事があるからとその場を辞した。

病室から病院の出口へと向かう廊下の途中、前方から高町桃子が来るのが見えた。
フェイトは軽く会釈して通り過ぎた。
桃子はいつにもましてにこやかな顔をしていた。娘が快癒しつつあるのが嬉しいのだろう。

フェイトは思った。もしも桃子が、娘の中身が別の何者かにとって代わられていると知ったらどう思うだろう。
――大丈夫。なのはは前と変わってない。
フェイトはそう思いこもうとした。
病院から出ても、しばらくフェイトはなのはのいるあたりの病室を外から眺めていた。

823die hard:2011/11/05(土) 23:18:21 ID:Kw1mynKU



Mar 1
なのはがドッジボールをしたいと言いだした。
なのはらしくないと思った。

Mar 2
学校にいっしょに登校した。
なのはの歩き方が前とちがっている気がする。

Mar 3
社会の時間、先生が原爆という兵器が落とされた都市はどこかと聞くと、なのはが手を挙げて正解を答えた。
おかしい。なのはは社会は苦手で、入院中は勉強もそんなにできなかったはずなのに。

Mar 5
なのはが砲撃の高速化に取り組むらしい。
おかしい。なのはなら高速化より威力増強を考えるはずだ。

Mar 8
密度を絞ったSLBとか連射できるSLBとか。
恐ろしすぎる。仮想標的に私を使おうとしないで欲しい。

Mar 10
なのはの部屋に盗聴器をしかけてきた。
これで家の中でのなのはの様子がわかる。

Mar 11
盗聴できなくなった。盗聴器が壊れたかどうかしたみたいだ。安物だったからだろう。
なのはが何か言いたそうな目でこちらを時々見ているような気がするけど、きっと気のせいだ。

Mar 13
なのはがペプシコーラを飲んでいた。
前はコカコーラだったはず。

Mar 15
なのはのメールの文面が前とちがうような気がする。
それに顔文字や絵文字が減ってきている。やっぱり本物のなのはとは違うのかな。

Mar 18
なのはの歯磨き粉が以前とはちがっていた。
前はメロン味をつかっていたのに、大人が使うような歯磨き粉をつかっている。

Mar 20
病院から帰ってきて以来なのはの部屋の本が増えた。
前はこんなに本や漫画やDVDを見たりすることはなかったのに。
はやては本について語れる相手が増えたって喜んでいる。

Mar 23
なのはが最近体力づくりのために自分から走りこみや筋トレをするようになった。
なのはらしくない行動が目立つ。

Mar 25
なのはが新しく考案した戦術シュミレーションを見せてもらった。
五重に罠を張り仕掛けてきた相手を動けなくしておいて砲撃で蜂の巣にするというえげつない戦法だった。
こんな怖いことを考えるなんてなのはらしくない

と思ったが、よく考えてみると、やっぱりなのはらしい気もした。

Mar 29
なのはの腹筋が割れてきたらしい。なのはは誇らしげだ。
こんなの私のなのはじゃない。

Apr 2
なのはが最近あのオレンジ色の服を着なくなった。
ジーンズをよく着るようになった。洋服のセンスも変わってしまったみたいだ。

Apr 6
最近クロノやリンディ母さんが私に休暇をとるように言う。
私は別に疲れてなんかいないんだけど。

Apr 7
久しぶりにすずかの家で5人で遊んだ。
なのはが紅茶に入れたミルクの量がこころなしか前より少ない。

Apr 8
なのはの髪型が変わった。ツインテールからポニーになった。
まるでなのはじゃないみたいだ。

Apr 9
なのはの口調がときどき以前と少し違うときがある。

Apr 10
なのはの雰囲気が変わった。アリサやすずかは分からないみたいだけど。
どうしてみんな気づかないんだろう。

Apr 11
なのはがどんどん変わっていく。
私の知っているなのはからどんどん離れていく。
最初は息をして動いているなのはを見るだけですごく嬉しくなったのに、最近見ているだけで辛くなる。
なんでだろう。

824die hard:2011/11/05(土) 23:19:53 ID:Kw1mynKU



フェイトは二度目の執務官試験受験にむけてリビングで勉強をしていた。
フェイトにとっては実技試験よりも、筆記試験のほうが難関だった。
法律科目を中心として、覚えることがたくさんあった。

フェイトが手にしている参考書には、条文とその解釈や判例についの解説がみっちりと書かれている。
法律も単純ではない。まずひとつの原則がある。しかしその原則には必ずといっていいほど例外がついてまわる。
この原則とそれに付随するいくつかの例外を覚えるだけでも大変なのに、例外にもさらにまた例外がついてくることがある。
条文に含まれる語句ひとつとっても、いろいろと解釈があって、それらの学説にも目を通す必要がある。

フェイトは思わずため息をついた。
目は字を追っていても、肝心の内容がなかなか頭に入っていかない。
考えるのは、なのはのことばかりだ。
なのはが前のなのはと違うところを発見すると、もうなんでもかんでも違って見えた。
小さな違いを発見し、数え上げるたびにフェイトはがっかりした。
そしてそういう風にがっかりする自分自身が嫌いになった。

テーブルの向かい側では、義兄のクロノがなにかのレポートを読んでいた。脇にも書類の束が見える。
また仕事を家に持ち帰ってやっているのだろうか。
昨日も徹夜で調べ物をしていたせいか、クロノの目元にはクマができている。
コーヒーと睡眠打破用のドリンクをかたわらに仏頂面で作業をしている義兄。
その様子をぼんやりと見つめながら、フェイトは何とはなしに口を開いた。

「ねえ、クロノ」
「なんだ……?」

睡眠不足で朦朧としているのか、クロノの声には張りがなかった。

「人間を使い魔にすることは法律で禁止されているけど、実際にそういう事をやった人はいるの?」

クロノは読んでいたレポートから目を離さないまま言った。

「まあ……規制対象になるぐらいだから、そういう試みをする奴はいたんだろうな……」
「でも判例集を検索してもこの条項に違反したケースは見つからなかった」
「判例集でカバーしていない時代――旧暦時代にまで遡ればあるんじゃないか?」

会話が途絶えた。
クロノはレポートを読み終えると、呆れたように頭を振って、手元の書類になにかを書き込みはじめる。

825die hard:2011/11/05(土) 23:20:37 ID:Kw1mynKU
「どうして動物は使い魔にできるのに人間は使い魔にできないんだろう?」

フェイトは小さく呟いた。自分の声がひどく遠く聞こえた。
それはクロノに尋ねているというより、ひとりごとに近かった。
だから答えは期待していなかった。
だが、クロノは作業をしながらだったが律儀に反応を返した。

「急にどうしたんだ?」

別に、とフェイトは答えた。
まさか、人間を使い魔にしてしまいました、
などとは口が裂けても言えない。
だから、別に、としか答えられなかった。

「まさか、やるつもりじゃないだろうな。フェイト?」

フェイトの心臓が跳ね上がった。
見抜かれた……?
そう思って、すぐさま内心で否定した。クロノはきっと冗談で言っているのだ。
だがそれにしては低い声だった気がする。いや、きっと気のせいだ。
フェイトは、巣穴から周囲をさぐる小動物のように、義兄の表情を慎重にうかがった。
疲労の色濃い仏頂面からはなにを考えているのかよく読めなかった。

「人間を使い魔にできないのは……それが違法だからだ」

フェイトの返答を聞かないまま、半分眠っているような声でクロノが続けた。
違法だから、やってはいけない。
法の番人らしい答えだった。しかし、フェイトが聞きたいのはその先だ。
そしてクロノならその先を聞かせてくれる気がした。

「それはどうして?」

「人が、人を隷属させ、操ることになるんだ。これを認めれば、人間という存在の……尊厳が崩れてしまう。
それに人工魂魄を入れるのだから、外見は同じでも中身は別人だ。生理的に良い気持ちはしないだろう」

まったくの正論だった。フェイトの心が暗くなる。
それでも、フェイトは縋るように言う。

「でも、もし、記憶や性格が生前と一緒のままだったら?」

「それでも……」

クロノがなにかを言いかけて、次の瞬間、ハッとしたように身をこわばらせた。
向かっていたレポートや書類の山からはじめて顔をあげ、フェイトを見た。
もう眠たげな様子は吹き飛んでいた。
口元が厳しく引き結ばれ、苦虫を噛み潰したような顔になっていた。自分の失敗を悔やんでいるときの顔だった。

「フェイト……」

しばらくの沈黙の後、言った。

「君はまだ気にしているのか。自分の生まれのことを……?」

それでフェイトも気づいた。
フェイトはなのはのことを念頭に置いて聞いていたが、
クロノが言った言葉は、そのままフェイト自身にも当てはまる。
だからクロノは苦虫を噛み潰した顔をしたのだ。失言だったと。
彼は気遣うような調子で、フェイトに言った。

「君は君なんだ。誰かの代わりものなんかじゃない」

だが、それは。
今のフェイトにとっては苦い言葉だった。

「うん……わかってるよ」

それでも、フェイトはなんとか言葉を搾り出した。
気遣ってくれたクロノに、本当は気の優しい義兄に、これ以上気まずい思いをさせたくなかった。
フェイトは無理に笑顔をつくり、法律書を閉じると、リビングを出て自分の部屋に向かった。
ベッドに背をもたれかけさせて、クロノの言葉の意味を考えた。

アリシアとフェイトとプレシア。
怪我をした狼とアルフとフェイト。
死んだなのはと生き返ったなのはとフェイト。

人間模様が頭のなかでぐるぐると渦をまきながら絡み合い、考えれば考えるほどわけがわからなくなりそうだった。

――私はなんで生きているんだろう……。

突然、フェイトはこの世から自分を消し去りたい衝動に襲われた。

私はどうして生きているんだろう。
プレシア母さんが虚数空間に落ちたときに、一緒に落ちればよかった。
なのはが死んだとき、あの日、私も死ねばよかった。
そうしたらさみしい思いもしなくてすんだ。
こんな取り返しのつかないことをしてしまった私は、やっぱり母さんの娘だった。

駄目な子でごめんなさい……。

馬鹿なことをしてごめんなさい……。

生まれてきてごめんなさい……。

826die hard:2011/11/05(土) 23:21:42 ID:Kw1mynKU



Apr 12
体がだるい。熱をはかったら39℃を超えていた。

Apr 15
みんなお見舞いにきたらしいが、顔をあわせられない。

Apr 16
メールに返信するのも億劫だ。
やっぱりなのはの文は前とちがう気がする。

Apr 20
けっきょく一週間もやすんでしまった。
熱はさがった。でも食欲がない。

Apr 22
リンディ母さんがひどく心配するので、少し食べた。
でも味をかんじない。

Apr 25
エイミィがゲームをもってきて遊んでくれる。
けど、なにをやっても楽しくない。

Apr 29
宿題を家にわすれた。先生はめずらしくおこらなかた。
だいじょうぶなのかってすごく心配された。

May 4
エイミィはカンが鋭いから気をつけないと。

May 12
調子がでない。集中力がすぐきれる。
仕事でも現場よりデスクワークにまわされることが多い。

May 18
アリサが私がおかしいと言う。
そういえば最近なのはと話していない。おかしいな。

May 23
体重が半年前より10キロ減っていた。

May 27
夜あまりねむれない。

Jun 1
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

Jun 5
どうしてみんな私に構いたがるんだろう。
こんな私なんかに。

Jun 8
クロノが今度の執務官試験はパスしたらどうかと言ってきた。
この頃なんだか妙にやさしい。

Jun 12
はやての家で睡眠薬があるのを見つけた。

Jun 17
もうすぐ試験なのに条文全然覚えてない。
実技も駄目かもしれない。おなかが痛い。頭も痛い。

827die hard:2011/11/05(土) 23:22:51 ID:Kw1mynKU



フェイトは、沈んだ顔で管理局施設の廊下をとぼとぼと歩いていた。
二度目の執務官試験の結果の通知を先ほど受け取ったところだった。
結果は、不合格だった。

フェイトはそれを意外だとは思わなかった。むしろ当然そうなるだろうと思っていた。
ずっと調子が悪かった。
不眠症気味のうえ、食欲がない。食べても味を感じない。なにをやるにも集中力が続かない。
以前は楽しかったシグナムとの模擬戦にも心が躍らない。なにもかもがうまくいかない。

この半年、勉強はしてきた。
だが、以前――なのはの事故の前――と比べるとそれほどの熱意をもてなかった。
勉強はするが、もはや機械的な作業と化していた。
勉強中にでてくる「正義」や「自由」、「尊厳」といった文言を見るたびに、自分が糾弾されているように感じられた。
自分などに執務官になる資格があるのかどうか疑わしかった。
こんな心構えで受かるはずがなかった。

フェイトは歩きながら、廊下ですれ違う青や黒の制服を着ている人たちを眺めた。
みな立派に見えた。
自分が場違いなところにいる気がした。
そのまま歩いていくと、書店コーナーに出た。新刊案内のPOPがところせましと棚の間を踊っている。
フェイトは気分転換をしようと、そちらに足を向けた。
ファッション誌やビジネス誌コーナーを素通りして、デバイス雑誌コーナーでいくつか雑誌を手にとってパラパラとめくる。
社会科学書や人文科学書を通り過ぎて、魔導科学書を眺める。フェイトの関心は魔法関連に偏っていた。
幼い頃から読む本といえば魔導書ばかりだった。プレシアの役に立ちたい一心で読んでいた。
ハラオウン家の養子となってからも、読む本の傾向はあまり変わらなかった。
どんどん奥に、書店の奥に足を進める。

「あれ……?」

フェイトは、思いがけない人物がいるのに気づいて眉をひそめた。
その人物は立ち読みをしていた。
読んでいる本の表紙には「資格Allガイド」とある。色んな資格の内容について書かれた本のようだ。
不審に思ったフェイトはそっと音を立てずにその人物の後ろに回りこんだ。
肩越しに読んでいる頁の内容を盗み見た。
一瞬、呼吸がとまった。

そこには「執務官」・「執務官補佐」の資格について書かれていた。
フェイトは頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。

突然、その人物――「高町なのは」が振り返る。

「わぁ、なんだ。フェイトちゃんか。びっくりした」

目の前のなのはにそっくりな何かは、なのはそっくりの顔で、なのはそっくりの口調で、なのはそっくりのことをしゃべった。
フェイトの胸からドス黒いものが湧き上がった。
だがそれをおくびにも出さず、何気ない風を装って尋ねる。

「……ずいぶん熱心に見てたけど、執務官に興味があるの?」

照れたように頬を掻き、視線をさまよわせるなのは。

「にゃはは……その、興味ってほどじゃないんだけど……」

「教導隊に入るんじゃないの? 前そう言ってたじゃない」

フェイトが聞くと、なのはは他にもどんな仕事があるのか色々と検討してみたい
というような趣旨のことをモゴモゴと言った。

フェイトは思った。本物のなのはなら、こんなに簡単に自分の決めた道を変えるはずがない。
なのははあれで結構な頑固者なのだ。
好きなだけ航空戦技を追求することができる教導隊は、誰がどう見てもなのはにぴったりだ。
なのは自身も、入局直後から教導隊を志望していたではないか。
空隊など空にかかわるような道に変更するのならまだ分かる。
デバイスを扱う技術系の道でもまあ納得するかもしれない。
それが、執務官?
どうみても、なのはが選びそうもない職種だ。適性にも疑問がある。
執務官は法務職だ。膨大な量の法的知識を暗記しなければいけないし、事務仕事や折衝・交渉など面倒な仕事も多い。
まったくといっていいほど興味はなかったはずだ、以前のなのはなら。

「――――官補佐なら――――ちゃんの役に――――かなって――――。
――――するより――ないから――ちゃんの魔力リソースの負担も減――――。
ね、駄目かな? あれ……聞いてる? ねぇ、フェイトちゃん。ねぇってば……」

828die hard:2011/11/05(土) 23:24:10 ID:Kw1mynKU
考え事に耽って、フェイトは相手の言う事をまったく聞いていなかった。
気づくと、なのはの姿をした何かが、不安げな瞳でフェイトを見ていた。
怖気の経つような不快感がフェイトの胃からせりあがってきた。
なのはと変わらない姿、なのはと変わらない声。しかし中身は別の正体不明の何かだ。

『だから実際には、命を助けるわけでも、よみがえらせるわけでもない。わかりますね?』
『失った命を取り戻すなんて魔法は、世界中のどこを探してもないんです』

リニスの声が脳裡に響く。
分かっていた。これが、自分の好きだったなのはそのものではないことは。
最初から分かっていた。
……いや、やはり自分は本当の意味では分かっていなかったのだ。
目の前のモノは、なのはに依存しきっていた自分の弱さが引き起こした罪そのものだった。
それをみていると、フェイトはとてつもなく気分が悪くなった。胃の中のものをぶちまけそうなくらいに。

「ううん、何でもない。そっか、なのはは、執務官にも興味があるんだね……」

目の前の何かが、微妙な表情をした。
何か言いたげだが、フェイトにそれを突っ込む気力はなかった。
フェイトは笑おうとしたが、口元はボンドで固められたかのように堅くなっていた。
それをありったけの意志の力で強引に緩めた。
多分いつものように微笑むことができたはずだ、とフェイトは思った。

「じゃあ、私、そろそろ帰るから……」

そう言いながら、フェイトはきびすを返した。

「フェイトちゃん、待って」

フェイトが声につられて一瞬立ち止まった。
その短い間に、なのはがフェイトの手を掴んでいた。
ゆっくりとフェイトは振り返った。
そこには強い光を湛えた眼差しがあった。

《最初で最後の本気の勝負――》
いつかを思い出させる眼差しだった。

「ね。フェイトちゃん、久しぶりにちょっとお話しよう?」

なのはの手は温かかった。昔と同じように。
フェイトは思わず抱きつきたい衝動に駆られた。
このなのはを、本物のなのはだと思い込んでしまえればどんなに楽だろう。

「レイジングハートをメンテナンスに出しているから、その間、暇なの。
カフェでなにか飲もうよ。それに、私、フェイトちゃんとお話したいことあるんだ」

なのはが微笑んでいた。
以前と変わらない見るものの心を温かくさせてくれるような笑みだった。

(でも……君は、やっぱりなのはじゃないんだ……)
フェイトは心の中で呟いた。
ここで、このなのはに縋りついてしまうことは、本物のなのはを裏切ってしまうような気がした。
いや、もう既に、なのはを使い魔にすると決めたあの日に裏切ってしまったのかもしれない。
だがそれでも、
いやだからこそ、

「……もう私に構わないで」

できるだけ冷たく聞こえるようにして言うと、フェイトは鬱陶しいと言わんばかりに掴まれた手を振り払った。
なのはの顔が、驚きでこわばり、それから悲しみで歪んだ。
フェイトは素早く背を向け、その場から離れようとした。
前から来た誰かと肩がぶつかったが、とっさに謝罪の言葉をかける余裕すらなかった。
ごめんなさい、と口の中で呟きながら逃げるように立ち去る。
後ろから彼女の名前を呼ぶ声が聞こえたが、もうフェイトは振り返らなかった。

829die hard:2011/11/05(土) 23:25:22 ID:Kw1mynKU



フェイトはただ歩いた。前だけを見ていた。だが、よく前が見えなかった。視界がにじんでいた。
前方にぼんやりと見えるのは、区画の出口のゲートの金属枠か。
その出口ゲートまであと十歩かそこらというとき、
突然、フェイトの首筋にぞわりと静電気のようなものが走った。

《 Sir! .... s ....n ... ing 》

バルディッシュの電子音声がノイズまじりの警告を発する。
施設内を照らしていた照明が一斉にダウンする。
どよめきがわきおこる。
すぐさま非常用灯がつき、喧騒がトーンダウンする。
だが、暗闇の中にぼうっと浮かび上がる小さなあかりは蝋燭のように心もとない。

「なんだ!」
「おかしいな。通信魔法がはたらかない」
「通信だけじゃねえ。魔力結合そのものができなくなってる」
「これは……たぶんアンチ・マギリンク・フィールドだ。それも広範囲の」

高濃度のAMFが広範囲にわたってかけられている、らしい。
すわテロかと、あたりは騒然とした雰囲気に包まれる。
どこからか地響きのような低い音が響き、局員たちの顔にさっと不安がよぎった。

「ジャーマーフィールド? しかしまさかこんなところで……!」

うわずった声で誰かが叫んだとき、雷鳴のような轟音があがった。
それとともに、フェイトが来た方向から廊下と天井が波打つようにして崩れだす。
逃げろ、と誰かが怒鳴る。
大多数の局員が一斉に出口の方向へ、つまりフェイトのいる方向へ駆け出す。
建物が崩れかけ、高濃度のAMFがかかっている状態では、ここにいてもどうにもならない。
AMFの効果範囲外へ離脱しようとするのは当然の判断だ。
フェイトもまたその流れにのろうと動き出した。
彼女が身を翻す刹那の、ほんの一瞬の間、後ろに置き去りにしてきたなのはのことが思いだされた。
そういえばなのははレイジングハートをメンテナンスに出したと言っていた……。

まがい物のなのは。フェイトが愛そうとして愛せなかったなのは。
管理局の施設で高濃度AMFが発生し建物が崩壊しかかっている、この異常事態。
たぶんテロだろう。このまま、アレが巻き込まれて亡くなってしまったらどうだろう。
都合が良いのではないか?
もともとなのはは死んでいるのだ。あの偽者が消えたところで、振り出しに――もとあるべき姿に戻るだけだ。
フェイトも苦しまなくて済む。この半年間のことは、忘れてしまえばいい。
そうすれば楽になる。

830die hard:2011/11/05(土) 23:26:39 ID:Kw1mynKU
ひどく甘美な考えだった。ここでフェイトが逃げても誰も不審に思わない。
AMFで魔法も碌に発動できないのに、わざわざ戻る馬鹿はいないのだから。
逃げたかった。知らん振りを決め込んで出口へ行きたかった。
罪に向き合えず、いつも迷いがちな弱い心が、逃げの一手を選択しようとした。
しかし今にも逃げだそうと動きだしかける体を、精神の一滴が押しとどめた。
小さいが、深く打ち込まれてなかなか抜けない楔のようなものが、
フェイトの精神の底に引っ掛かっていた。

《ただ捨てればいいって訳じゃないよね。逃げればいいって訳じゃ、もっとない》

はっと我にかえったときには、もうフェイトの体は人の波にさからって動きだしていた。
高濃度のAMFにさらされながら、必死で魔力を操作してバルディッシュを掲げ、
《Drive Ignition》
戦斧を出現させる。
バリアジャケットと自身を包み込むような薄い膜状のフィールドを起動させる。
AAAランクのフェイトの実力をもってしても、AMF下での魔力運用は至難の技だった。
しかも、もと来た道を走れば走るほどAMF濃度が高くなっていた。
せっかく起動させたフィールドが削り取られるようにどんどん薄くなる。
《The performance is being cut down by 42 percent.》

走りながらフェイトは「魔が差した」というチキュウ語の慣用句を連想した。
悪魔が心に入りこんだように一瞬の判断や行動を誤る、という意味のことばだ。
これはそのケースにあてはまるだろうか?

進行方向から、断続した爆発音と甲高い金属音、そして悲鳴の入りまじった人の叫び声が聞こえてきた。
助けを求めている人がいる。
それがわかった瞬間、フェイトの迷いの糸が切れた。
フェイトは走った。もと来た道を、崩れかけた道を、ひたすら走った。

非常灯に照らされた薄暗い視界の中、床に倒れている人々が見えた。
さらに、遠く、宙に浮かぶ妙なものが目に入った。
人間大の大きさの節足動物を連想させるおかしな機械だった。
それが縦横無尽に飛び回り、局内の壁や天井や床を破壊していた。
人間はほぼ全員倒れ伏していた。ただ一人をのぞいて。

(……!)

通路の奥の踊り場。フェイトの視界ぎりぎり。
「高町なのは」が白ジャケットをなかば赤く染めた姿で、崩れかけた壁にもたれかかっていた。
これだけの高濃度のAMF下だ。デバイスのない状態ではやはりきつかったらしい。
だが、すぐにフェイトは気づく。空間中の魔力の流れの違和感に。

(これは……この魔力素の流れは……)

SLB(スターライトブレイカー)――それも威力を絞った改良版を撃つつもりだ。
その身で実際に受けたことのあるフェイトだからこそ気づけた。

831die hard:2011/11/05(土) 23:27:34 ID:Kw1mynKU
フェイトの予感は正しかった。
見る間に、魔力の流れがなのはに向かっていく。SLBの発射シークエンスがはじまる。
場に漂っている魔力素が美しい軌跡を描いてなのはの手元へ集束していく。
おかしな機械兵器がそれに気づく。十機はあるだろうか、機械兵器が一斉になのは目がけて殺到する。

「バルディッシュ!」

《Yes, sir. Blitz Rush》

SLBの発射シークエンスはまだ途中だ。
なのはの迎撃は間に合わない。
こちらから射撃魔法を撃って援護するのも駄目だ。
AMF下でどれだけの威力・発射速度になるか不明瞭だ。
しかも、跳弾や崩れた瓦礫がなのはのほうに行く可能性が高い。

無我夢中だった。
危機にあるなのはの姿を目にした瞬間、
本物だとか偽者だとかそういったこだわりはすっかり消えていた。
守らなければ!

《Sonic form.》
もともと薄かった装甲をさらに薄くする。
より高い高速機動ができる反面、
攻撃に当たれば致命傷になりかねない。
だが今は速度が勝負だった。

《Load Cartridge.》
カートリッジの薬莢がニつ排出される。
一気に加速。
まだ速度が足りない。
さらにカートリッジを連続で消費。
高熱を帯びた空の薬莢が四つ弾き出される。
さらに加速。

それでも足りない。
なのはと機械兵器との間に滑り込むには、まだ速度が足りない。
《Jacket Purge.》
バリアジャケットをバージ。
装甲がほぼゼロになる。
フェイトの体に重いGがかかる。
皮膚がひきつる。
血管が収縮し、骨がギシリと音をたてる。
加速。
加速。
加速。

(間に、合え――)

機械兵器が鎌のような足をなのはに振りかぶる。
なのはのSLBのシークエンスはまだ完了してない。
フェイトが到達するまで、あと3m。
だが、加速に加速を重ねたフェイトが滑り込むには、充分。

間に合う。

そう彼女が確信した瞬間、

――がちり、と手足に枷が嵌まる音がした。

「なっ」

レストリクトロックだった。
高町なのはがもっとも得意とする拘束魔法。

「なっ。なっ。なっ」

愕然とするフェイトの目の前で、十数対の機械兵器の鎌がなのはの体を真正面から刺し貫いた。
鮮血が噴き上がって、フェイトの頬を濡らす。
同時にSLBの発射シークエンスが完了する。
肉を切らせて骨を断つゼロ距離砲撃。
なのはの指が振り払われる。圧縮された魔力が一気に解放される。
高水圧のホースから噴出する水のように、ぎゅっと締まった魔力の奔流が機械兵器を襲う。
集束砲は建物を壊すことなく、正確に機械兵器だけを打ち砕いた。神業ともいえる砲撃技術だった。
次の瞬間には、機械兵器はあとかたもなく一掃されていた。
残ったのは血の花の咲いた壁にもたれかかるように座り込んでいるなのはだけだ。

832die hard:2011/11/05(土) 23:28:43 ID:Kw1mynKU
レストリクトクロックが解除される。
フェイトは放心したように、膝から崩れ落ちた。
なにが起こったのか理解できなかった。
助けようとしたのに――

「なんで、なんで、なんで……なんで……!」

気が狂ったように同じことを呟きながら、這うようにしてなのはのもとへ向かった。
フェイトの手足は震えて思うとおりに動かなかった。自分の体ではないようだった。
なのはは滅多刺しにされてどこもかしこも血だらけだった。赤いペンキを上からぶっ掛けたような惨状。
死んでるかも……。
フェイトは卒倒しそうになる己を叱咤する。
慄きながら声をかけようとすると、なのはが目をひらいて億劫そうにフェイトのほうを見た。
それから掠れた声をあげた。

「フェ……トちゃ……泣い……てるの……?」

泣いている? 私が?
フェイトは自分が涙をこぼしていたことにやっと気づいた。
だが、今はそんなことより聞きたいことがあった。
なんであんなことをしたのか。フェイトは責めるように聞いた。

「なんでって……それ、こっちの台詞だよ……」

なのはの顔が呆れたような苦笑に変わった。

「だって……あんな……馬鹿みたいな、高速機動で突っ込んできて、
バリアジャケットも、つけないで……自殺でも、する気だったの……?
それに……私は、フ、ェイトちゃんの、つk……っか……はっ」

そこまでだった。
なのはの口からごぼりと血が溢れ出す。

「しゃべっちゃ駄目だ……今、医療班を――」

フェイトが立ち上がりかけると、なのはがフェイトの服の裾を掴んで引っ張った。
なのははまどろむような目つきで何かいいたそうに口を動かしていた。
フェイトが屈みこむと、念話でなのはが話しかけてきた。

(フェイトちゃん……お願いがあるの……)



……

…………

………………

833die hard:2011/11/05(土) 23:29:23 ID:Kw1mynKU

MIDCHILDA TODAY 新暦68年7月2日付記事
┌──────────────────────────────────┐
│  【管理局でテロ、局員1人死亡】                            ...│
│  1日午後5時50分頃、時空管理局本局M区画で機械兵器十五体によるテロ   .│
│  攻撃があり、少なくとも局員1人が死亡した。今回攻撃に使われた兵器は先   │
│  年に管理局員を襲ったものと同型であるとされる。現場の目撃証言などから  .│
│  当局は今回の攻撃を「テロ」と断定し、犯人の特定を急いでいる。         .│
└──────────────────────────────────┘

834die hard:2011/11/05(土) 23:29:57 ID:Kw1mynKU


新暦130年3月13日――。
この日、大きな事件が二つ起こった。
奇しくもどちらの出来事にもテスタロッサの姓をもつ者が関係していた。

まず一つ目。
往年の大魔導師であるプレシア・テスタロッサが遺した論文の一部が見つかったという発表がなされた。
これは昼のニュース番組でトップニュースのひとつとして扱われた。
注目を集めたのは、PT事件の主犯でもあるプレシア・テスタロッサの遺稿ということもあるが、内容が問題だった。
見つかった論文は、人間を使い魔にするための魔法契約術式について書かれたものだった。
そのテーマだけでもじゅうぶんにセンセーショナルなものであったが、見つかった論文の終章に書かれていたことが、世の魔導学者たちに衝撃を与えた。
彼女が開発した術式の場合、契約の際に人口魂魄ではなく、使い魔にする素体の生前有していた本来の魂魄を用いることができるというのだ。
人間を使い魔にするという行為の是非をとりあえず脇におくと、これは事実上、死者を完全な形で蘇らせることが可能となる画期的な術式といえる。
ところが、論文は、導入部『序論』と最後の『まとめ』や参考文献の頁のみしか見つからず、肝心の術式が書かれている『本論』の頁が欠落していた。
そのため、世間ではさまざまな論が飛び交った。
管理局が、術式を世に出すことによる混乱をおそれて『本論』の部分だけ抜き取ったのではないか。
こんなに凄い魔法術式を開発していたのなら、プレシア・テスタロッサはPT事件を起こす必要はなかったのではないか。
本当は『本論』――人間を使い魔にする術式の書かれた頁など最初からなく、誰かの捏造なのではないか……。




二つ目は、ミッドチルダの南部郊外にあるアルトセイム空港で起こった炎上爆破テロ事件だった。

「かまわん! 邪魔な車両はすべて移動させろ!」
「航空隊はまだか!」
「こっちに投光器をよこせ!」

「おい! 崩れるぞ!」

救助隊員たちの目の前でまたひとつ空港の地上施設の一部が崩れ落ちて瓦礫の山と化した。
砕けたガラスやコンクリートの残骸、熱でひしゃげた鉄骨が、救助に向かおうとする隊員達を阻む。
あたりには地獄の釜のような熱気がたちのぼり、近づく者の肌をチリチリと焦がす。
どす黒い煙、火花のような灰、鼻を刺す刺激臭がたちこめる。

「なんてこった……」

現場の救助隊員たちのリーダー格の男が歯噛みした。
火の元は何箇所もあったらしく、しかも火の回りが異常にはやかった。
アルトセイム空港全体が火に包まれていた。
航空隊からの支援がアルトセイムに到達するころには、中にいる要救助者は皆蒸し焼きになってしまっているだろう。
本局の戦技教導隊員のような卓越した技量をもつ魔導師がいればまた別だろうが、首都から遠く離れた辺鄙な田舎、ここアルトセイム地方に常時駐留している陸士部隊にはそこまでの戦力はない。

「クソ……まだ中に子どもがいるっていうのに!」

男は毒づいた。
社会科見学の一環で来ていた聖テルスン初等学校の生徒八十名のうち、十二名が空港内に取り残されている可能性が高いという報告を受けていた。
タイミングの悪いことに自由見学時間中だったらしく、避難もバラバラで、引率していた教職員も生徒全員の位置を把握できなかった。
生命反応探査装置の反応を見る限り、連絡の取れない子どもたちはほとんど地下の深部層にいるようだった。
だがどうやってそこまで行く?
辿りついたところでどうやって救助する?

835die hard:2011/11/05(土) 23:31:35 ID:Kw1mynKU
男が、黒煙と炎に包まれた空港を睨みつけていると、出し抜けに後ろから声をかけられた。

「子どもがいるの? どこ? 位置データを送って。私が行きます」

「アンタは、……」

声をかけてきたのは一人の老婦人だった。
歳をくってはいたが、凛とした佇まいの美しい老婦人だった。
どこかでみた顔だった。

「死ぬつもりですか? あんなの、AAランク級でもきつい」

「私はSランクオーバーよ」

老婦人は管理局の魔導師ライセンスを見せながら、深くソフトな声音で、もう一度データの引渡しを促した。
救助隊員の男は、データを彼女のデバイスに送りながら、脳内で老婦人の情報を検索した。
すぐに思い出した。
かつてフェイト・ザ・ブリット(鉄砲玉のフェイト)と呼ばれ、誰よりも先にすすんで最前線に飛んでいく怖いもの知らずの執務官として名が通っていた。
伝説の三提督の後継者の一人と目されていたこともある人物だったが、結局、一介の執務官という身分のまま先年退役したと聞いている。

「子どもたちは見つけ次第、小分けにして長距離転送でこっちに送ります」

そう言うと、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは飛び出した。

「バルディッシュ、レイジングハート、行くよ!」

《Get set.》
《All right.》

瞬時に、黒を基調とした服に白い外套を纏った姿に変わる。
そのまま老人とは思えぬ速さで、戦斧型のデバイスを携えて、燃え盛る業火の中に飛び込んでいった。

836die hard:2011/11/05(土) 23:32:36 ID:Kw1mynKU



「これで最後、かな」

フェイトは額に浮き出た汗をぬぐい、荒い息をつきながら呟いた。
空港内に突入した彼女は、行方がわからなくなっていた子供たちを全員探し出すことができた。
ちょうど今しがた、中距離転送魔法で、最後のグループを安全な地点まで転送させおえたところだった。

「やっぱり、昔のようには、いかないか……」

右手に持ったバルディッシュが重く感じられる。昔は軽々と振り回していたものだが。
全盛期の頃の彼女なら、この空港の最深部にも、もっとずっとはやく来れたはずだ。
転送魔法をたかが十回連続で使用したくらいで死ぬほど息があがることもなかった。
もう精密な転送魔法を使う余力は残っていない。

轟音とともに空港内部が揺れ始める。
ここももう長く持たないだろう。
フェイトの向かい側から伸びる長い通路の奥で、上階につながる扉がバァンと音を立てて消し飛んだ。
扉の吹き飛んだところから、炎が大蛇のようなうねりをあげて躍り込んでくる。

(私も年貢の納め時かな……)

フェイトは死をおそれない。
それどころか、むしろ死を渇望してきた。
なのはを死なせてしまったあの日、どんなに死にたいと思ったことか。
大切な友だちの命をもてあそんだ罪悪感。
守ると誓った相手を守りきれなかった無力感。
依存する相手を喪失したことによる空虚感。

だが約束があったから、今日まで自分から命を絶つことができなかった。
今まで何度も死にそうな目にはあったが、そのたびに生き延びた。
不思議にピンチになると、誰かが助けにきてくれた。
だが、今回はそうはいかないだろう。

フェイトは、死んでしまった大切な人たちの名前を呟いた。

なのは、

『うん』、となのはの声が答えた気がした。きっと幻聴だ。

クロノ、

『ああ』、と義兄の声が聞こえた。きっと幻聴だ。

はやて、

『なんやぁ辛気臭い顔して』。はやては幻聴でも相変わらずだった。

リンディ母さん、アルフ、ユーノ、エイミィ姉さん、シグナム、シャマル先生、リイン、ヴィータ、ザフィーラ。
みんな先に逝ってしまった。

寂しくてたまらなかった。
それでも生きつづけていたのは、なのはとの約束があったからだった。
目の前に、自分の手の届く範囲に「泣いている子」がいたら助けずにはいられなかった。

(フェイトちゃん……お願いがあるの……)
(私ができなかった分まで……私の代わりに……)
(泣いている子を救ってあげて……)

それで結局フェイトは60年近く奔走するはめになった。
まったく、すべてなのはのせいだった。
死に際に、なんてことを願うんだろう。
「助けて」とか「死にたくない」とか「私を忘れないで」とか。
普通は死ぬ間際は、そういったことを言うものではないか?
それが、泣いている子を助けてあげてだなんて……。

837die hard:2011/11/05(土) 23:33:50 ID:Kw1mynKU
フェイトは時々なのはを恨めしく思わずにはいられなかった。
後を追って死ぬほうがはるかに楽だったというのに。
なのはの願いを叶える為にフェイトは生きて奮闘しなければならなかった。
もちろん苦しいことばかりではなかった。
家族や友人、同僚にも上司にも部下にも恵まれた。
生きていくなかでは楽しいこともたくさんあった。
子どもたちの笑顔を見ると救われた気分になった。

けれど、とフェイトは思った。
もう疲れた。
疲れてしまった。
私は歳をとった。もう立派なおばあちゃんだ。
なにもかも若いときのようにはいかない。
そろそろ、みんなのもとへ……なのはのもとへ逝きたいところだった。
だが、あんなにひどいことをしたのだから、彼女とは同じ場所にいけないかもしれない。
フェイトがなのはにしたことを知ったら、なのははきっと恨みに思うことだろう。

フェイトは朝刊に書かれていた記事の内容を思い出した。
フェイトがあのとき見ることのできなかった論文の欠落部分が見つかったという報道。
プレシアの術式は、人工魂魄ではなく素体の本来の魂魄を使う術式だったという――たぶん、本当だろう。
あの魔法術式の、自分には理解できなかった箇所に織り込まれていたのだ。
なら、フェイトの使い魔になったあのなのはは、偽者などではなく、本物だった。
フェイトは驚かなかった。なんとなく予感はあった。
だが実際に事実を突きつけられると、堪えた。
時間は巻き戻せない。もう取り返しがつかない。
あれだけ本物のなのはとは違う、と悩んでいたのが馬鹿みたいだった。
否、事実、馬鹿だ。
歳を重ねた今ならわかる。人はまったく変わらずにはいられない。
なのはの成長を、偽者だからなのだ、と邪推した過去の自分を叩き殺したくなる。

フェイトは深いため息をつくと、壁によりかかって目を閉じた。

「もう泣いている子は、残ってないよね?」

《That's right, sir. 》

右手に持った戦斧――バルディッシュが肯定の意を返す。
それで彼女が安心した矢先。

待機状態で首からかけられている紅玉――レイジングハートが、

《NEGATIVE. Still we have the one. 》

否定を寄越した。

食い違う報告に首をかしげながら、フェイトは聞いた。

「レイジングハート、どこにいるっていうの?」

(泣いている子を救ってあげて……)

泣いている子がいるなら、自分は救わねばならない。
約束は果たさねばならない。
どこだ?
泣いている子はどこにいる?

彼女は立ち上がった。あたりを見回した。誰もいない。
ふと、横を見た。ガラス張りのスイング・ドアがあった。
この高温と揺れでも、奇跡的に無事のままのガラス張りのドア。
スイング・ドアに近づく。そして気づく。
泣いている子がいる。
ガラスの表面に、映っている。

レイジングハートが勝手に起動した。
フェイトの左手に収まったのは、音叉型のバスターモード。
なのはが一番得意としていた、砲撃に特化した型だ。

(フェ……トちゃ……泣い……てるの……?)

レイジングハートが、静かな口調で言った。

《Here's the last person left.... You should help her....... 》

どうしてなのはが最後にあんな願い事をしたのか。
フェイトは60年かけてやっとその意味がわかったような気がした。





END

838名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 23:34:24 ID:Kw1mynKU
おわり。ラーメン喰ってくらぁノシ

839名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 23:37:53 ID:6Z4zP0vE
乙。素晴らしい。

840鬱祭りSS:2011/11/05(土) 23:38:37 ID:HkX4IWZY
GJ
すばらしかった。

841名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 23:40:42 ID:HkX4IWZY
名前消すの忘れてた・・・

842名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 23:40:59 ID:zXGWw9KY
乙でしたー

843名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 23:49:26 ID:th311WiU
何が鬱SSだよこんなの認めないぞ。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
フェイトもなのはも良い子過ぎるよ……せつない

844名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 23:49:56 ID:th311WiU
GJでした

845名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 23:50:25 ID:GKQJka4I
乙。ブラヴォー!
お美事としか言いようの無い素晴らしいSSでした。
鬱祭りでまさかこんな爽快なSSが読めるとは。ありがとうございました!

846名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 00:10:39 ID:ykh.OfGs
GJGJ
時を越えて思いがつながった…

>>808
たしか楽園の瑕のブリジットリン

847名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 09:43:34 ID:FKqCZSlI
上手いですねー、途中に小ネタを挟みつつも破綻させずにこの読後感…
素晴らしかったです、GJ!

848名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 14:22:06 ID:flIzJQ/M
今ここでKC版なのは読んでない者って
どの程度いるのかなぁ…?

849名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 16:06:24 ID:XZW25cKo
KCって何?

850名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 16:07:23 ID:uaDU6ViU
角川コミック。
この場合、ForceとViVidのコミックのことでしょ

851名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 17:18:07 ID:HfMQL7RQ
講談社コミックかと思った

852名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 17:51:02 ID:XZW25cKo
>>850
thx
一瞬>>848がコミックのつづり間違えてるのかと思った

853名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 18:40:06 ID:g1SAhs8Q
KCったら講談社コミックスだろ

854名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 21:32:51 ID:zVhdH5tI
>>788
いいじゃないか百合方面で
ここは別に百合禁止じゃないぞ?投下待ってるよ

855名無しさん@魔法少女:2011/11/06(日) 22:29:08 ID:p7cxwRPc
ああ、ユーノくんとヤりたい…

856ヤギ使い ◆p2QA1mcDKM:2011/11/06(日) 22:35:43 ID:fwSDDCec
鬱展開祭ってことで、それほど鬱じゃないですが、救いのないってことことで
一本おとさせていただきます。
タイトルは『破滅の刻』18禁 凌辱 スバ×ティア
NGはコテハンとかでよろしくです。

857ヤギ使い ◆p2QA1mcDKM:2011/11/06(日) 22:44:37 ID:fwSDDCec
「スバル、やめて。頼むからやめて」
そう懇願するティアナを無視して、ティアナの秘部を責めるスバルの目は虚ろで、鍛え上げられた体の股間からは、スバルに存在しないはずの異形の塊がビクンビクンと脈打っていた。
救助ミッション中に行方不明になったスバルがティアナによって旧六課の近くの廃墟で見つかったのが今朝のこと。その搬送の途中、背後からの打撃によって気絶させられ、ティアナが気づいた時にはすでにベッドに寝かされ、大の字の形に手足を拘束された状態だった。
スバルはシックスナインの体勢でティアナに覆いかぶさると、脇や太股を愛撫しながら、舌で秘部を執拗に攻める。そして、股間の異形をティアナの口へ押しつける。
「やっ、やめてっ。正気に戻って」
しかし、スバルは止めるどころか、舐めていた舌を秘部へと差し込むようにしたり、陰核を弄んだりといった激しいものへと変化せていった。
「だめ、やめて、スバルッ」
ティアナが再び呼びかけようとした瞬間、スバルの両ももがティアナの頭をまっすぐに固定し、一気に腰を突き出した。
喉の奥深くまで入り込んできた肉の塊に、ティアナは「ぐうぇっ」と言う声を漏らすが、それさえも許さないように腰を動かして口内を凌辱していく。
腰の上下に合わせて頭を無理やり動かされ、ティアナの意識は朦朧としてくる。
口内の塊が肥大化して大量の欲望が放たれた後、口が解放されるのを感じたティアナは、スバルの気が済んだのだと安堵して無意識のうちに脱力して意識を朦朧とさせていた。
しかし、それが更なる凌辱への過程でしかないと気づいた時には、すでにティアナはスバルの手によって腰を掴まれて持ち上げられ、秘部と異形がずれないように固定されながら楔を打ち込まれる直前だった。
「や、やめっ」
事態に気づいたティアナが静止の声を上げようとするが、その前にスバルは腰を突き出した。
男性の腕ほどの太さの楔がティアナの秘部を骨盤ごと無理やり押し拡げていく。その強烈な衝撃に、ティアナは声さえ上げられず、白目を剥いて空気を求めて口をパクパクと動かす。
そんなティアナに構わず、スバルは容赦なくティアナの奥深くへ突き上げていく。それによって与えられる衝撃によって、ティアナは強引に現実に呼び戻される。
骨格が軋むほど揺さぶられ、ティアナは抗う力さえ残っておらず、何度目かの絶頂を迎えた時に、とうとうティアナの子宮口は痙攣をおこして、楔の子宮へと侵入を許した。
筋肉の塊である子宮に侵入したことで、自然と楔への締め付けがに良くなり、スバルの方もリミットが来たようで、先ほどの倍はあろうかと言う大きさまで膨張すると、ティアナの子宮が膨らむほどのすさまじい量の欲望を放つ。
体内で強烈な衝撃を与え、子宮を膨張させるほどの量を子宮内に直に放出されて、ティアナは再び白目を剥いて気を失った。
ズルリ……と、ティアナの秘部から異形をスバルは抜くが、ティアナの秘部は一滴もスバルが出したものを吐き出さず、それどころかビクン……ビクン……とティアナの下腹部を脈打たせると、急激に萎んでいった。
数時間後、目覚めたティアナの目はスバルと同様に虚ろで、秘部にはスバルと同じ様に異形の塊が存在していた。
そしてこの数日後、時空管理局はティアナやスバルのような異形のモノを生やした集団によって女性局員が根こそぎ凌辱され、男性局員は性器を抉られるという死に方によって、再び壊滅することとなる。

    おわり

858名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 01:02:12 ID:le9v84Ck
もがれて死ぬのはいやだなぁ・・

859名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 14:29:30 ID:adqPlD8w
>>855
なのはさんが酔った勢いでユーノ君を押し倒すなんてのはギャグ系のネタで割とよく見るな
やっぱり柔和な優男は押し倒されるイメージが強いんだろうか?

860名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 17:54:48 ID:.fRaxvb2
GJGJ!
こういう、共に闘った仲間は、もういない。みたいなのは切ないなぁ。

861名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 21:02:46 ID:eFdLJDLY
>>802
GJ!
こういう話すごく好きだけど、なのはさんがただの愚か者になってるのが少し心が痛いぜ
あとこのすずかがなのはを実際に拒絶?してなのはさん大ショック的な話が見て見たくなった

>>838
GJすぎる
この手のネタ大好物だぜ……というか>>810で引用されてるの三年前の俺のレスじゃないか
書いてくれてありがとう。ほんとありがとう

862名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 22:40:57 ID:Ehh.iCvk
10分ほどたったら本日の投下いきます
作者氏は今夜都合で来れないためIRC経由の代理投下となります

タイトルは『一番悪い子だーれだ?』
作者は槍氏

863 ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 22:51:14 ID:Ehh.iCvk
鬱・ダーク祭り参加作品です。

【注意】
・非エロ
・キャラ性格改変あり
・百合要素あり
・ダーク

864だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 22:52:59 ID:Ehh.iCvk
 たとえばそれは"もしも"の話。
 1人で膝を抱えながら涙を流す少女と、1人で車椅子の上で過ごす少女がもっと早く出会っていたら。

 孤独が怖くて、孤独が辛くて、孤独を恐れる高町なのは。
 孤独を傍受し、孤独を享受し、孤独でない事を諦めた八神はやて。

 そんな孤独に苛まれる日常で2人が"最初に"出会っていたら。
 孤独を埋めあうように耽溺して、孤独を舐めあうように依存して。

 世界が2人だけの孤島だと思ってしまうほどに狭隘で。
 世界が2人だけの楽園ならと思ってしまうほどに寂寞で。

 桃源郷のように甘く永遠に続けばとも思うほどの幸せだった。
 けれど幸福があれば不幸があるように、幸せな時間は辛い人生と等価であるように。
 始まりがあって終わりがあるように、自ら始まらせて自ら終わらせるように。

「――誰やろうなぁ」

 それは、この物語においての八神はやてが最後に呟く言葉。
 それは、桃源郷が失楽園に崩れ落ちて最愛の人を奪われた少女の――。



 ■■■ 1

 八神はやてが睡眠から目を覚ましてまず行うのは、時間を知ることでも起き上がることでも背伸びでも深呼吸でもなく。
 何よりも先に自身と同じベッドで眠る少女の愛らしい寝顔を確認することだった。

「――よかった」

 "今日も、ちゃんと傍にいてくれる"。はやては安堵して、ようやく現在の時間を確認。
 時計を見れば長針は真下を向き、短針は真上を向いていた。早朝6時、起床にしてはまだ早い。
 二度寝しようにも、一度目が覚めてしまえばそれほど眠くない。どうしようか――はやてがそう考えた折、隣の少女が小さく寝言を呟いた。

「……はやて、ちゃ……ん……」

「……はいはい。私はここにいるで」

 繊細な宝物を扱うように、はやては栗色の美しい髪をそっと撫でた。
 くすぐったそうに「んん……」と吐息をつく少女。それがとても可愛くて、同時にとても愛しかった。
 ――しばらく、この子の寝顔を眺めていよう。1時間でも2時間でも、美しいものは幾らでも見ていたいから。

「私はずーと傍にいる。だから――ずっと私の傍にいてな、なのはちゃん」

 少女の名前は高町なのは。八神はやての大切な"ともだち"で、ただ1人の"かぞく"と呼べる存在だった。

865だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 22:54:35 ID:Ehh.iCvk

 ■■■ 2

「――で、はやてちゃんは私より先に起きてたのに、どうして起こしてくれなかったの? 目覚まし時計も勝手に止めちゃってるし」

「なのはちゃんの寝顔が可愛すぎて、眺めるのに夢中で5時間ほど過ぎてることに気づかんかった。時計を止めたのは今でも反省はしてない」

 ベッドの上でバターを塗ったトーストを口で咀嚼するなのはは少々おかんむりといった様子。
 少し行儀が悪いとも思えるが、とある事情を八神はやてが“持っている”ので仕方のないことだ。
 八神はやての持つとある事情――“足”が動かないという原因不明の病気。
 それ故に、はやては日々をベッドの上か車椅子の上で過ごすことを余儀なくされている。

 だからこそなのはは朝食――というより今回は軽食だったからこそベッドの上で食べていた。
 はやてが動かずとも、はやての手の届く距離だから。無論、普段はリビングでちゃんとテーブルを囲んで団欒をとる。
 今回は時間がなかったのだ。そんな彼女の様子を知ってか知らずか、なんの悪気も見せないはやてはベッドに座るなのはを後ろから抱きとめる形でなのはの髪を梳いていた。

「はやてちゃんが反省してくれないお陰で今日も遅刻なの」

「目覚まし時計が壊れてたってことにしておかへん?」

「それは昨日の言い訳につかっちゃったよ」

「目覚まし時計のセットを間違えた」

「それは一昨日」

「目覚まし時計を盗まれた」

「それは三日前」

「目覚まし時計をガッちゃんに食べられた」

「それは四日前――あれ!? よく考えたら私って今週まともに学校行ってない!?」

「よく考えないでも平日の終わりに気づくことやないと思うんよ」

 現在金曜日、今日が終われば残った週は休日だけである。訂正、どうやら朝に限ってはキチンとしているわけではないようだ。
 さすがに四日連続で重役出勤は不味いと思ったのか――というか、もはや11時を回っているので大遅刻には変わりないのだがそれでもなのはは学校に急ごうと準備を始めた。

 畳まれた制服に身を包み、はやてに梳かされた髪をリボンで両結びに括りあげる。
 白を強調した私立聖祥大附属小学校の制服を着こなすなのはは可憐で、思わずはやては「ほぅ」――と感慨の溜息をついてしまう。

「相変わらず反則的、いや犯罪的な可愛さやね。お願いやから誘拐だけはされんといてな?」

「されないよ! いつも思うけど、はやてちゃんは私を過大評価しすぎ。そんなに可愛くないもん私」

「ちゃうって、なのはちゃんが自分を過小評価しすぎなんよ。そこまで自信がないなんてもはや自虐の域やで」

「だからそれははやてちゃんの感覚で……って、そろそろいかないと4時間目にすら間に合わない!?」

866だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 22:56:23 ID:Ehh.iCvk
 ばたばたと忙しなくなのはが動く。鞄を手に取り、お弁当(はやて作)をそっと入れた。
 最後は鏡で確認だ。おかしな所はないように思える。首筋に赤い虫刺されのような痕が出来ているが、いつものことなので気にしない。

「えー、ほんまに行ってまうん? おいてかないでー、わたしをすてないでー、がっこうなんていかずにわたしとあそぼー」

「うぅ……棒読みなのにそれでも引き止められそうな自分が悔しい!」

 このやり取りも毎度のことである。
 それでも毎回毎回、学校を休んではやてと過ごすという選択肢に後ろ髪を引かれてしまうのは愛故か。
 けれどその魅力的な提案を頭を振ってかき消して、部屋のドアノブに手をかけた。

「さすがにこれ以上休むと“約束”が違っちゃうもん!」

「はぁー……わかってるよなのはちゃん、行ってらっしゃい。事故には気をつけな」

「うん、行ってきます!」

「――あ!? なのはちゃん、すぐに終わるからちょっとこっち来て!」

「え、なに?」

 はやてはなのはを自分の傍に呼び寄せると、「ちょっとしゃがんで?」とジェスチャーで伝える。
 そのジェスチャーを理解して、何をするんだろう? と不思議がるも、言う通りにしゃがみ込み――。

「わすれもの」

 ちゅ――と軽快な音を立てて、はやての唇がなのはの頬に触れた。
 瞬間、湯沸かし器がお湯を沸点まで煮えたぎらせるようになのはの顔が真っ赤に染まる。
 ぱくぱくと金魚のように口を開け閉め、古のロボットダンスのようにカクカクしながらなのはは立ち上がって再び玄関口に続く扉に向かう。

「……出来れば、早く帰ってきてな?」

「……ダ、ダッシュデカエッテクル」

 ちなみに、このやり取りも週一感覚でやっているのにも関わらず、未だに初々しいバカップルのような反応だというのは、あまりにもなのはが純粋すぎる為――だと思いたい。

867だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 22:57:44 ID:Ehh.iCvk

 ■■■ 3

 運命というものがあるように、必然というものがあるように。
 その日。高町なのはは傷つき倒れたフェレット、ユーノ・スクライアとの出会いを果たした。
 誰かの助けを求めるような声を聞いて、なのはが寝付くはやてを起こさないように家をこっそりと抜け出せばそこにあった光景は超常現象不可思議奇々怪々の幻想で。

 デバイス。ジュエルシード――そして、魔法。
 その話を聞いて、手伝ってくれと言われて、“どこかのなにかの物語”たりえるような非日常に片足を突っ込んだ少女が何を思ったか、それは当人にしかわからない。

 とりあえず彼女は荒れ果てた道路を見て慌てて逃げ出しユーノを連れて家路を急いだ。
 玄関を開ければ、誰もが寝静まったはずの我が家から――といってもここには八神はやてと高町なのはしか住んでいないのだが、奇妙な声が聞こえてくる。

「――ぁ――――ぅ――」

 泣いているような、唸っているような。苦しんでいるような、悲しんでいるような。
 よもや、はやてに何かあったのではとなのはは2人の寝室に一目散で駆け出して扉を開けた。

「いな――なのはちゃ……ううぅ、ぁ――どこ……?」

 そこでなのはが見たものは――床に這い蹲って涙を流しながらガタガタと身体を震わすはやての姿。
 怯えて、怯えて、怯えつくしていた。その怯え方は尋常ならざるもの。例えるなら視界が見えなくなるほどの吹雪が舞う雪山で独り遭難したような、そういった表現がよく当てはまる。

「はやてちゃん、はやてちゃん!」

 なのはは駆け寄ってその震える身体を暖めるように抱きしめながら声を必死にかけ続けた。
 それから何分ほど経過しただろうか。焦点の合っていなかったはやての目に、憑き物が落ちたかの如く光が戻って――。

「――どこいってたん? こんな夜中に急にいなくなるなんて」

 そこに"いた"のはいつものはやてだった。さきほどまで震えていた声も別人のように透き通っていて、落ち着いて。
 "それ"を聞いたなのはもまた、必死になって荒げていた声は消え、いつもの通り、“何事もなかった”かのように。

「ごめんね、えっと……なんていったらいいのかな……ううん……簡単にいうと――」

 てへへ、となのはがはにかみながら、どこか誇らしげに呟く。

「私、魔法少女になっちゃった」

「……おジャ魔女?」

「どっちかというとプリキュア」

「ああ、ナノハナーみたいな」

「うん。それは完全に敵の名前だね」

868だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 22:59:53 ID:Ehh.iCvk

 ■■■ 4

 ――意外にも、はやてはなのはが魔法少女になったことをあっさりと信じたようだ。
 「危ないことだけはせんといてな?」と母親が子供に言い聞かせるようなことを毎回告げることさえのぞけば、寧ろ応援するくらいの勢いだった。

 その後のなのはが辿った出来事を、省略に省略を省略して簡潔にその後のあらすじだけを述べるとしよう。
 傷ついたり、怖かったり、悩んだり、それこそ沢山のことがあった。つまらない思い込みで未然に防げたはずの被害を起こしてしまったり、何のために自分はユーノくんを手伝っているのだろう、と思い悩むこともあった。

 その度になのはははやてに相談して甘えて甘やかして。
 遊んで笑って泣いて怒ってもう一度笑いあって、沢山のことを乗り越えていった。
 なのはと同じ年頃の魔法少女が現れたりもした。名前を聞かせてと叫んだりもした。何度もぶつかり合ったりした。
 時空管理局という存在が介入してきたり、魔法少女の母親が介入してきたり、次元崩壊の危機に直面したり、最後にはフェイトという名前の魔法少女とリボンを交換しあったり。

 ハッピーエンドとはいかなかったかもしれないけれど、必死で頑張って手に入れた1つの未来、そして友達。
 後にPT事件と呼ばれるようになる事件は終了し、なのはとはやてに再びいつもの日常が戻ってきたかに思われた――はやての9歳の誕生日。

「家族が増えたよ!」

「やったねはやてちゃん!」

 守護騎士ヴォルケンリッターと呼ばれる存在が2人の前に現れた。
 話を聞けばはやては『闇の書』と呼ばれる魔導書の主に選ばれた存在であり、はやての望みのままに動く配下が彼女らヴォルケンリッターということらしい。

 最初は騎士達全員が全員堅苦っしく生真面目なものであった。
 だからコミュニケーションを取るのも苦労をしたものだけれど、それでも数ヶ月もすれば徐々に“人間らしさ”も浮かんできて、主君とその家族に対する気高い騎士“家族”に変わっていっていたのかもしれない。
       


 “そのまま優しいはやての元で幸せな日々を過ごせれば”――という、話ではあったが。
        


 フェイト・テスタロッサが“惨殺死体”で発見されるというニュースを皮切りに、第97管理外世界『地球』においてそこに生きる生命全ての終わりを告げるラグナロクの鐘の音は、悲しげに鳴り響くこととなる。






 『だーれだ』 おわり

869一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:02:09 ID:Ehh.iCvk

 ■■■ 2『H』

 なのはが学校に出かけてから数分後。八神家は静まり返っていた。
 先ほどまで目を輝かしてなのはを弄り倒していた、ベッドに寝そべる少女の姿は、まるで別人のように雰囲気が違う。
 その表情は詰まらなそうに、退屈そうに。その眼は恨むように、妬むように。怒りとも悲しみともつかない禍々しさがそこにはあった。

「――学校なんて、いかんでええのに」

 “約束が違っちゃう”となのはが言っていた。それはなのはの両親である高町士郎と高町桃子との約束。
 その内容をはやては知っているし、若干9歳という少女達に与えられた“自由”に対する交換条件なら軽いものではあるが――。

「“学校は休まない、週に一日は実家で過ごすこと”……」

 その2つさえ守れば、高町なのはは週に6日という時間を八神はやてと共に過ごすことが出来る。
 なのはが学校に通う時間が6時間と過程して、一日換算で一緒にいられる時間は18時間。分数にして1080分、秒数にして64800秒。
 つまり6日で時数108時間、分数にして6480分、秒数にして388800秒――暗算で導き出したその答えに、はやては唇をかみ締めた。

 “たった、それだけしか一緒にいれない”のだと。

 なのはが学校にさえ行かなければ、実家にさえ帰らなければ、24時間一緒にいられるのに。
 一週間で時数168時間、分数10080分、秒数604800秒。時数なら60時間の損。分数なら3600分の損。秒数なら216000秒の損。
 八神はやてにとって、それが如何なる損失か。それがどれほどに多大なる損害か。

 実際は、なのははよく遅刻をしているし、はやてもはやてで病院に通わなければいけない時間などがある。
 そんな様々な差し引きは抜いているが、それでも惜しい、惜しすぎる。なのはと一緒にいられない時間など0.01秒たりともあって欲しくないというのがはやての願いなのだから。

870一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:04:18 ID:Ehh.iCvk
「なのはちゃんを“ひとりぼっち”にしてた癖に――よく“家族面”出来るもんや」

 本当に大事にしているなら、6日間も友達の家とはいえ泊まらせんやろ。
 だけど、そのお陰でなのはちゃんに会えて、家族になれたんやけどな。
 そう考えてはやては自嘲気味に笑った。それだけは、あの家族に感謝してもいい。
 しかし他は駄目だ。一切合切認めない。高町士郎も高町桃子も高町恭也も高町美由希も誰も彼も。
 なのはを傷つける者なんて、なのはを傷つけた者なんて、誰一人として許しておくものか。

 だから――はやてはいつか昔に高町士郎から、そして高町桃子からの“誘い”を断った。
 “一緒ニ住マナイカ”という誘い。或いはそれを承諾していればプラス24時間はなのはと一緒にいれたかもしれない。
 けれどその24時間もなのは以外の誰かといることが、その24時間もなのはが自分以外の誰かと過ごすのを“見る”のも我慢出来ない。

 学校もまた同意義。この足が自由に動いて四六時中なのはの傍にいられるなら聖祥大附属小学校に通うのも悪くはない。
 だが現実は車椅子生活というこのざまだ。例えば体育だったら見学は決定的、はやてとは違う誰かと準備運動をするなのはを見ることになるなんて気が狂いそう。

 だったら、見ないほうがいい。それくらいだったら、知らない方がいい。
 “殺意”を覚えて“実行”しかねないから。もしもそんなことになれば――なのはに迷惑がかかるから。
 勉学自体は身体障害を理由に通信教育でなんとか出来る。顔も知らないはやての保護者である“あしながおじさん”もそれでいいと言ってくれているし。

 衣食住に十分なお金、そして高町なのはという家族が揃った環境は八神はやてにとって楽園。
 “依存”という関係に浸りきった少女達に残された絶対に失ってはならない桃源郷。

「はやく――帰ってきて、なのはちゃん」

 消えるように呟いて、はやてはなのはの帰りをじっと待つ。
 一秒が何年にも感じられる地獄のような時の巡りを静かに、静かに。

871一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:05:33 ID:Ehh.iCvk

 ■■■ 3『H』

 原因は、肌寒さだった。いつも自分を包み込んでくれていた太陽のような暖かさの消失。
 そんな違和感を感じて、はやては重い目蓋をゆっくり開くと――。

「……ん、ん」

 隣に寝ていたはずのなのはの姿が無い。

「…………」

 いない。いない。どこにもいない。

「…………“う、あぁ”……」

 身体が静かに震えていく。落ちつけ、落ちつけ。
 ひょっとしたらトイレかなにかで下にいるのかもしれない。
 ここは寝室、二階の部屋だ。“壊れる”のはまだ早い。早計だ、心臓の鼓動を落ち着かせろ。

 そう自分に言い聞かせて、ベッドの横の車椅子に乗ってバリアフリーの階段を下る。
 探した、それこそ草の根わけて、声すらあげて、なのはを探しつくした。でもいない。
 いない。いない。どこにもいない。なのはがいない。そこから先のことをはやては覚えていない。どうやって寝室に戻ったことすらも。

 だってなのはちゃんがいない。どこにもいない。靴が無かった。この家から出て行った?
 なのはちゃんはどんな特別な用事でも私に話さないで出て行くことはないし置手紙だってないってどういうことなんよ
 悪い人に攫われたのかなそれだったら逆に安心するんやけどだってそれなら不可抗力やなのはちゃんの意思やないから
 せやったら助けださんとでも私のこの足じゃどうにも助けられへんしそもそもなのはちゃんは本当に攫われたのかな
 ひょっとしたら私に愛想つかせてでていったってことはないよな大丈夫ないないそんなことないにきまってるけど
 でも本当にないかな私がしらないうちになのはちゃんのこと傷つけてたってことがほんとうにないかなわかんない
 わたしなのはちゃんのことすきなのになのはちゃんはわたしのことすきじゃないんかなこまったなどうしよう
 またわたしひとりになってまういややそんなのいややひとりはいややもうこわいこわいなのはちゃんどうしていないの
 すてないですてないでどこにいるんなのはちゃんあやまらせてかおをみせてなんでそばにいてくれへんのなんで
 どどうしようこわいよいきができへんなのはちゃんたすけてずっといっしょにわらってごめんねどうしようあいしてる
 あしたのあさごはんはどうしようなのはちゃんどこやあいつらがまたわたしからなのはちゃんをうばったのかかえせ

 ――ゃん

 どうしてふたりっきりにしてくれないんよわたしからにどもかぞくをうばうなんてかみさまはどれだけいじわるなんや

 ――ちゃん

 ごめんなさいあやまるからなのはちゃんをかえしてあまえさせてあまやかさせてきらいきらいなのはちゃんいがいぜんぶきら

「はやてちゃん!」

872一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:07:10 ID:Ehh.iCvk

 聞きなれた、それでいて愛しい声が聞こえたような。
 はやてはそこでようやく自分が誰かに抱きしめられていることに気がついた。
 温かい、人肌と呼ばれる人間特有の体温が齎す安らぎの安心感たるや、“壊れた”はやてを静かに落ち着かせるほどだった。

 はやてのぶれる視界に映りこむのはいまにも泣きそうななのはの姿。
 ああ、またやってしまった――とはやては心が痛む。“なのはがいなくなるとこうなる”のは、他でもなくなのはの為に治さなければならない“びょうき”なのに、と。

 なのはが自分の知らないところでほんの少しいなくなったというだけで。
 なのはがいなくなったのはひょっとしたら自分に愛想をつかしたのかもしれないと考えるだけで。
 はやては地獄に落とされたような気分になってしまう。麻薬に魅入られてしまった廃人の如く、なのはに依存しきった少女の末路はこんな“ざま”だった。

「――どこいってたん? こんな夜中に急にいなくなるなんて」

 “私の傍からいなくなったんじゃなかった”ということを確認できれば、もう怖いことはなにもない。
 もう身体は震えない、声だって擦れないし涙だって出ない。愛しい愛しいなのはがすぐそこにいるのだから。

「ごめんね、えっと……なんていったらいいのかな……ううん……簡単にいうと――」

 てへへ、となのはがはにかみながら、どこか誇らしそうだった。
 もしくは新しいイタズラを覚えたような、楽しそうな微笑だった。

「私、魔法少女になっちゃった」

 なんだ、そんなことか。よかった、そんなことだったら安心できる。
 そんな理由で居なくなっていたのか。ああ、今日も今日とて本当によかった――“なのはちゃんに嫌われてなくて”。

873一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:08:48 ID:Ehh.iCvk

 ■■■ 4『H』

「ごめんね、危ないことしないでねってはやてちゃんに言われてたのに怪我して心配かけちゃって……」

「あの子フェイトちゃんっていうんだって。悲しい瞳をしてるんだ、なにがあって戦うのかな」

「なんでそんなにフェイトちゃんに構うのかって? うーん……友達に、なりたいからかな」

「うん、全部終わったよ。フェイトちゃんのお母さんのことは残念だったけど……フェイトちゃんは、プレシアさんの分も頑張らなくちゃと思うんだ」

「フェイトちゃんがビデオレターしてくれるって。にゃはは、世界一遠い文通だね」

 フェイト、フェイト、フェイト、フェイト、フェイトフェイトフェイトフェイト・テスタロッサ。
 なのはちゃんが魔法少女になって人知れず世界を救う手助けをして以来、なのはちゃんの口から出る言葉はそれだった。
 やめて、やめてや……なのはちゃんの口から、私以外の名前が出るなんて耐えられへんよぉ……なのはちゃん……。

 なのはが学校にいったので今はこの家ではやて独りきりだ。
 以前はそれに対して憤慨したものの、ここまで落ち込んだ時は数えるほど。
 なのはの“きもち”が“はやて”じゃない誰かに移ろうとしている。それはきっと確かなことで、いつもの“びょうき”から齎されるものではないことくらいはやてはわかっていた。

 どうしよう、このままじゃなのはちゃんが奪われてしまう。盗まれてしまう。どこかに本当にいなくなってしまう。
 ぎりぎりと心臓が締め付けられる。嗚咽がなる、呼吸が苦しい、目の前が揺れる、そもそもいま自分はどこにいるのかすらわからない。
 “なのは”という存在を知ってしまった今、それから離れてしまえばきっとはやては正真正銘完全に“ぶっ壊れ”るのだろう。

 そうなってしまえば、もう元には戻らない。どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
 “居なくなってしまえばいいのに”と、どうしても考えてしまう。思ってしまう。

「奪われるくらいなら、なのはちゃんがいなくなるくらいなら、いっそ……ころ――」

 頭を振る。無理だ、そんなことが今の私に出来るはずがない。
 なのはの話を聞けば彼女は魔法使いであり相当な強さを誇っているらしいし、そもそもフェイトは遠いどころか次元すら違う別の世界にいるのだ。足も動かない、普通の人間な私にどうやれば彼女を――。

 ここではやてが悩んでいるのが“殺人という禁忌”ではなく“殺人の実行法”という時点で、もはやはやてに“正常な思考”は残っていなかった。

874一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:10:40 ID:Ehh.iCvk

 そんな時に、はやての元に現れた存在の間の悪さ――否、“良さ”は不幸だったのかそれとも逆なのか。
 闇の書と呼ばれる魔導書に選ばれたはやて。彼女が望めばどんなことでも行うと断言する守護騎士と呼ばれる存在。
 ああ、何たる行幸か。この者達はフェイト・テスタロッサと同じくして魔法使い。話を聞く限りではとても強力な力を有すらしい。
 だから、命令しようと思った。迷うことなく、あるがままに自分の願いを叶えてくれと。

「フェイト・テスタロッサという少女を■■■――」

 そう口にだそうとして、思いとどまった。殺人に対する禁忌なんて、論理なんて、理論なんてどうでもいい。
 どうでもいいけど――はやての大好きな少女がはやて以外の唯一“友達”と呼ぶ少女が死んだら、なのははどう思うのだろうと考えて。
 はやてはなのはを傷つける存在を何一つ許さないし許せない。なのに、自分がそれを行ってどうする、自分がなのはを悲しませてどうすると。

 奪われることを恐れる少女の持つ最後に残った理性の破片。
 孤独になることに震える少女の全てであるなのはに対しての感情。
 “八神はやて”がこのように壊れた人間性を有しているのはきっと自分しかしらないことなのだ。
 八神はやてはなのはに対して“ずっと一緒にいたい”と思われる対象でなければならないのだ。

「けど……このまま、どうすればいいんよ……」

 わからない。八神はやてにはもうなにもわからない。

 ――それに狂えるほどに思い悩む日々が続き、ついにその時は訪れた。

「はやてちゃん。私、少しずつでも、大人になろうと思うの。フェイトちゃんは一人で頑張ってるのに、私って凄いわがままだったんだな、って思って」

 それが、決め手だった。なのはが“相互依存”という関係に疑問を持つという、世界の終わりに等しき思考。
 “ふたりぼっち”という楽園から羽ばたこうと、自立しようという最高最悪の志。世界が音を立てて崩れ落ち、世界は色素を失った。

「な、なんで……急に……」

「うん……はやてちゃんには、家族が出来たから。本当の、家族。もう、私がいなくなっても独りなんかじゃないから。
 はやてちゃんは、私の大好きな友達だから。このまま私と過ごしてたらきっと駄目になる。もう駄目になってるかもしれない。
 それが嫌だから――私達、変わっていこう? 少しずつ、良いほうに、正しいほうに――大人に、なろ?」

875一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:12:24 ID:Ehh.iCvk

            
            
「なぁ、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ――みんなは、私が望めばなんでもしてくれるって、いってたやんな……?」

 傅く騎士とそれを虚ろな瞳で見下ろす少女という光景は一枚の壁画たりえる美しさすらあったように思える。
 はやての言葉に騎士達は声をそろえて進言する。

「はい、我が主。全ては主の望みのままに我らヴォルケンリッターは剣を振るいます」

「なら、お願いがあるんよ……“フェイト・テスタロッサ”って女の子をな――」
             
             
             
             
 守護騎士達が次元を越えて跳躍したのを確認すると、ベッドの上ではやては息を引き取るように静かに目を瞑っていた。
 なのはと暮らすようになって、守護騎士達と暮らすようになって、この家で独りになるのは本当に久々のような気がする。

「――誰やろうなぁ」

 誰だったのだろうか。
 八神はやてから高町なのはを本意にせよ不本意にせよ奪うことになったフェイト・テスタロッサが悪い。
 八神はやてをここまで腐らせておいて去ろうとする高町なのはも悪いし、そんななのはから抜け出せない八神はやても悪い。

 けれど、誰だったのだろうか。それでも、誰だったのだろうか。
 こんなことになってしまったのは、こんなざまになってしまったのは、“一番悪かったのは”――。

 いったい、誰だったのだろうか。

「一番悪い子、だーれだ」

876一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:13:35 ID:Ehh.iCvk

 ■■■ ?『N』

 あの日、私は近くの公園で独り泣いていた。独りで泣くことしか出来なかった。
 お父さんが事故で怪我をして、家族みんなはお父さんのことで、自分のことで、未来のことでいっぱいになってしまって私のことなんて気にする余裕がなかったこと、少しだけ大人になった今の私ならわかる。

 でも、あのときの私はそんなことわからなかった。いってくれなきゃ、お話してくれなきゃわからなかった。
 捨てられたと思って、居場所がなくなったと思って、構って欲しくて泣いていたのに、それでも誰も構ってくれなくて。

 そんなときだったんだよね。はやてちゃんが話しかけてくれたのは。
 嬉しかったなぁ。世界で一人ぼっちだった私に声をかけてくれたのははやてちゃんだけだったから。
 甘えさせてくれるのは、優しくしてくれるのは、私を抱きしめてくれるのは、同じ年頃の女の子だけだったもん。

 そりゃ、好きになるよ。恋狂うほどに愛してしまうよ。
 ふたりっきりの楽園で、閉じこもろうとしてしまうのも、当たり前だよね。

 でも、気付いちゃったんだ。はやてちゃんが本当に“私と一緒にずっといてくれるのか”って。
 もしもはやてちゃんの足が治ってしまったら、ひょっとしたら、はやてちゃんはその足で私から離れていくんじゃないかって。
 はやてちゃんの足が治るのは喜ばしいことだけど、その足で逃げられたら私はきっとはやてちゃんを捕まえられないから。

 はやてちゃんがいなくなったら、私はあの公園で泣き続ける日々に戻ってしまうから。
 だから、鎖が欲しかった。はやてちゃんをずっと私に繋いでおく鎖。最初は“嫉妬”で縛ろうとした。
 けど、弱いの。嫉妬なんて鎖はきっとすぐに断ち切れて、簡単に束縛を解いてしまう。

 だったら他になにがあるかな。そんなことを必死に考えてたら――。
 守護騎士ってプログラムさんがはやてちゃんの元に現れちゃった。
 私以外の存在がはやてちゃんの傍にいるようになっちゃった。まずいと思った、どうにかしなきゃと焦って、ようやくその答えに辿りつけたんだよ。

877一番悪い子だーれだ? ◆Yari//HqpE:2011/11/07(月) 23:16:18 ID:Ehh.iCvk
 “私の為に人殺しという罪を背負わせちゃえばいいんだ”って。
 はやてちゃんはとっても優しくて、とっても純粋な子だって知ってるから。
 きっとその人殺しの罪ははやてちゃんの生涯に纏わりついて、私という存在を永遠に覚えていてくれるから。
 私の為に人を殺すなんて覚悟は、生涯一緒に居て欲しいってくらいの気持ちがないと無理だと思うもん。
 私がはやてちゃんのことを大好きなように、きっとはやてちゃんも私を大好きだから。お互いに依存しきってるから、それくらいわかるんだよ?

 だから、たまたまはやてちゃんに嫉妬して貰うのに丁度いいかなって思ってたフェイトちゃんがいたから。
 フェイトちゃんを“やっちゃうように”誘導しちゃった。思いのほかうまくいって、笑いそうになっちゃった。

 順調、何もかも順調だよ。ふたりだけの楽園に部外者なんていらない。
 わたしたちにわたしたち以外の“かぞく”なんて必要ない。私たちはふたりでいい。ふたりだからこそいいんだもん。

 私って、結構強いみたいなの。魔導師ランクAAAって、少なくて貴重で強力なんだって。
 これくらいの力があれば、シグナムさんもシャマルさんもヴィータちゃんもザフィーラさんも倒せちゃうし、はやてちゃんに何かあっても守れるよ。

 闇の書なんて、いらないよね? 壊しちゃっても、かまわないよね?



 大好きな大好きで誇りたいくらい大好きな私の友達。
 愛して愛する壊したいくらいに愛してる私のかぞく。

 だから、はやてちゃん――ずっと、ずっとずっとずーと……。

           

  ワタシヲヒトリボッチニシナイデネ
 “私の傍で一緒にいてね?”
            

            

            
            
 『一番悪い子だーれだ』 おわり

878名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 23:19:17 ID:Ehh.iCvk
代理投下終了

それと保管庫司書様。お手数ですが、
>>846のプロローグの1行目、5行目、1章の4行目、13行目(2箇所)
計5箇所でつかわれている「" "」(半角)を「“ ”」(全角)に直していただけますでしょうか。
コピペのミスか、元データでは全角なのに半角になってしまいました。申し訳ない。

879名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 23:20:28 ID:Ehh.iCvk
>>846じゃなくて>>864だった……重ね重ね失礼しました


ついでに感想

オチとしては、はやてを掌のうえで躍らせていたNさんkoeeee!!になるんだろうけど、はやての歪みっぷりが濃すぎてむしろそっちが印象に残りました
なのはがいないいないと探し回るはやての狂態とか、一緒に住まね?って高町夫妻の提案を嫉妬のせいで蹴っちゃうところとか凄まじすぐる・・GJ

880名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 23:21:09 ID:56XhanQ.
投下乙

二人の寂しがりやはすれ違ったまま終わったのでした、と

881名無しさん@魔法少女:2011/11/07(月) 23:44:59 ID:l06wCU/Y
めっちゃ病んでるなぁ2人とも
ラグナロクの音って闇の書が発動したのか
てことはNさんやっちまった・・・
ところで槍氏ってアルカディアのあの槍の人?
なんにせよ投稿&代理乙、面白かった

882名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 00:07:56 ID:xIBAwMqY
閉鎖的な空間に閉じこもる少女たちってシチュ大好き

883名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 00:53:42 ID:k5lJ0WiU
何でこの子達はこんなにも病んでるのが似合うんだろう

884名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 05:15:14 ID:.S/DsTA6
ひょっとして「魔法」とは、貴女方の想像上の現象ではないでしょうか

885名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 05:55:15 ID:dRht7Co2
あれ?
したらばってこんなに左によってたっけ?

886名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 11:13:59 ID:qBA.GvCM
>>882
ここを覗いてる人間は大なり小なり閉鎖的空間に篭もってるだろうけどなw

887名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 13:09:47 ID:qcOcv4rI
良いな、実にヤンデレだ
依存しまくった病み少女は好物
GJ

888名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 20:34:40 ID:MWtXa7PE
>閉じこもる
大は地球圏から小は心の中まで

889しずひと ◆XCJ6U.apcs:2011/11/08(火) 22:53:10 ID:MWtXa7PE
欝・ダーク祭り投下準備よろし!

タイトルは『もう人間じゃない』

890しずひと ◆XCJ6U.apcs:2011/11/08(火) 22:59:30 ID:MWtXa7PE
欝・ダーク祭り参加作品

注意
・非エロ
・欝・ダーク属性

891名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 22:59:49 ID:oXXTuxKc
パンツ脱いで待ってる

892もう人間じゃない1:2011/11/08(火) 23:00:41 ID:MWtXa7PE

 あの日から随分と月日が立ちました。あの頃の私には、自分がこんなことになるなんて思いもよりませんでした。



 八神はやては、目を覚ますとぐぐっと伸びをした。
 カーテン越しに差し込んでくる日差しは、近づいてくる春を感じさせて暖かい。
 はやての傍らには髪を下ろしたヴィータが丸まっている。
 ヴィータの眼を覚まさないように、そっとベッドから立上がった。

 夜天の書の管制人格・リインフォースの消滅という形で『闇の書事件』が終息してから、二ヶ月が経とうとしていた。
 その二ヶ月の間に、良いことが二つあった。一つには来春から聖祥小学校へ編入することが決まったことだ。
 すずかはもちろん、アリサ・なのは・フェイトも、

「おめでとう!」
 
 と祝福してくれた。
 
 もう一つは、はやてが立ったのである。もうはやては杖もなしで歩き回れるほどに回復していた。
 はやての異例の回復に、主治医の石田医師は喜びつつも首をひねったものだ。

 最近のはやては、よく笑う。


 はやては歩いていた。
 
 歩けるようになってからは、はやては散歩を日課にしている。
 ヴォルケンリッターたちが闇の書から現れてからは外出する事も増えたが、それでも家に引きこもりがちだった事もあり、体力を養うべく始めた事だった。
 もちろんそれだけの事ではない。はやて自身も歩き回れる事が、

「めちゃ嬉しい」

 のである。
 ずんずんと歩くと、見慣れた筈の町の様子も車椅子を使っていた時とはまるで違って感じる。

 
 まるで生まれ変わったような気分だった。

893もう人間じゃない2:2011/11/08(火) 23:01:17 ID:MWtXa7PE
「はあ……?」
 
 どういうことだか理解できない。
 はやてはぽかんとしてマリエル・アテンザを見つめ返していた。
 マリエルの痛ましげに眼を伏せたのが実に不快だった。
 はやての身体は夜天の書由来の組織に置き換わって居るのだと言う。
 
 ヴォルケンリッターたちは、まるで取り返しの付かない失敗をした子供のように打ち拉がれた顔を並べていた。

「それで、どういうことでしょう。何か不都合が?」

 歩けるようになったのだ。リインフォースと同じ融合騎の肉体になったとして、何の不都合があるというのだ。


 当時の私は愚かにも、人間ではないと言うことの意味が理解できませんでした。
 あの日からもう随分と立ちましたが、私の身長はあの日から全然変わっていません。これから先もずっと変わらないことでしょう。
 次の年の春には、私たちは海鳴の家を引き払っていました。もうそれ以上は成長しないことを誤魔化して暮らしていくのは難しかったものですから。
 あの頃の友達で、生きているのはもう一人もいません。
 でも寂しくはありません。私にはヴォルケンリッターのみんなが居てくれます。

 そう、ずっと、永遠に……

894しずひと ◆XCJ6U.apcs:2011/11/08(火) 23:01:59 ID:MWtXa7PE
以上です。

お粗末さまでした。

895名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 23:05:08 ID:7VUt180g
乙ですー

896名無しさん@魔法少女:2011/11/08(火) 23:45:57 ID:3awHNBBQ
投下乙
しかし不老不死が欲しい人にとっては羨ましい話かもしれない

897名無しさん@魔法少女:2011/11/09(水) 03:21:04 ID:6BbLZkAI
永遠のロリっ子最高じゃないか!!!

898名無しさん@魔法少女:2011/11/09(水) 04:13:59 ID:W9t5Ix.w
>>896
つ火の鳥 未来編

899黒天:2011/11/09(水) 10:20:30 ID:G.ipdBF.
>不老不死が欲しい人にとっては羨ましい話かもしれない
そういえば戦闘機人組は老化とかしないんだろうか?
ナカジマ姉妹は子供時代があったけど、身体能力が高い若い姿に固定されたりするのかな。
何百年にも及ぶ次元航行に耐える為、老化を防ぐor遅らせる薬とかを開発した文明とかあったりして。

900名無しさん@魔法少女:2011/11/09(水) 10:41:13 ID:WXg2Teyg
まるで00のイノベイターだな。そこまでいっちゃうと。
なのは風に解釈すると、夜天の魔導書のような蒐集行使型ストレージデバイスにデータとして保存しておいて、必要に応じて魔力で体を構成するという形にすれば、少なくともデータが正常である限り永遠にそのままだろう。
本体は本のほうのデータなので、体は破壊されても本が無事なら再生可能だし。

901名無しさん@魔法少女:2011/11/09(水) 10:48:37 ID:r.Y4fAeo
リリカル世界の一部のキャラクターは『老化現象、何それ』を地でいくからなあ……別段、戦闘機人じゃなくとも若いままのキャラはいそうなんですが。
……その割りに合法ロリは少ないかも。

902名無しさん@魔法少女:2011/11/09(水) 11:36:21 ID:iknGRFlA
>>901
リイン2やアギトは単なるチビだし、
実質ヴィータだけかな。
無限書庫の最奥掘り返せばロリババアくらいはいそうだし、
リンディさんはどうなってんのか知らんけどw

903名無しさん@魔法少女:2011/11/09(水) 19:56:31 ID:iabtEGCw
耳も遠くなり鼻も利かなくなったザフィーラ
日がな縁側で一人で昔語りするシャマル
老境著しい八神シグナム斎
食事に下の世話にと介護に忙しいはやてとヴィータ

904サンポール:2011/11/09(水) 22:24:50 ID:7TKZmKX2
ユーノとキャロを書きながら少し振りに来たら欝祭りだって……!
思うが侭に荒削りなものを書いてしまいました。今日投下予定の方はいらっしゃるのでしょうか……?
いるならパンツ脱ぎます。

905名無しさん@魔法少女:2011/11/09(水) 22:34:01 ID:2Bk7fvnc
you 投下しちゃいな yo !!




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