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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第101話☆

1名無しさん@魔法少女:2009/11/24(火) 05:30:44 ID:sxkgTGY6
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所の5スレ目です。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第100話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1249470848/

328名無しさん@魔法少女:2009/12/19(土) 21:03:31 ID:cBR9wbL.
なのはとユーノが怒鳴りあうシーンも見てみたいな。

もう魔法が使えないかもしれない、という焦燥感から周囲の好意にもイライラするなのは。
ひょんなことから見舞いに来たユーノに対し感情的になってしまう。
ユーノも司書の仕事疲れから受け流すことも出来ずに怒鳴りあってします。
そんな修羅場ルート

329名無しさん@魔法少女:2009/12/19(土) 23:49:55 ID:uprSWqT6
どこかで似たようなのを見たような見なかったような…

330名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 02:41:08 ID:HAhQMojI
直近の流れを見て師弟としての側面を重視したユーノとなのはさんの話を読みたくなったり

331名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 06:58:17 ID:xWlQOWfU
あれ、そういうのまとめで読んだ気がする。ユーノが主でなのはが従だけど。ユーノが居ないとなのはの魔法は役立たずっていう設定のやつ
あれも魔法依存っぽいな

332 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:09:45 ID:Sd4SyoRw
君にも見える6Bの星 遠く離れて このスレに一人
SS投下に使命をかけて なのはエロ小説スレまで後わずか
下らぬネタを引っさげて 帰ってきたぞ 帰ってきたぞ ◆6BmcNJgox2

・ロストロギアのせいで浦島太郎状態になってしまったなのはが見た絶望の未来
・NTR注意(↑のせいでなのは不在の間に○○が××とくっ付いてたとかそんな意味で
・絶望の余りなのはが壊れる(違う意味で)
・人によってはハッピーエンドともバットエンドとも取れる微妙な結末注意。
・微エロ(直接的行為描写は無いけど淫語は出るから)
・前編「衝撃! 絶望の未来編」と後編「先生またやってしまいました〜編」の二部構成。

333なのはの新しい居場所 1 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:10:59 ID:Sd4SyoRw
 今日なのはは久々にユーノとお出かけ。しかしなのはにとってはそれ以上に重要な意味を持つ
特別な日でもあった。

「今日こそは…今日こそはユーノ君に告白して友達からもう一歩先に進むんだから。
百合厨が何と言おうと私は何も知らない知らない!」

 そう、なのははユーノに一世一代の大告白をやらかすつもりであった。その為に一生懸命練習を重ね、
いざ待ち合わせ場所でユーノに会った際にそれを発揮しようとしたのだが…それがまさかあんな事になるなんて…

「ゆ…ユーノ君…?」
「え? 何だい?」

 恥ずかしそうにユーノに訪ねるなのはに対し、ユーノは普通に答える。そしてなのはが恐る恐る口を開こうと
した時だった。突然時空管理局からのコールが鳴ったのである。

『○○地区にてロストロギア暴走事件発生! 緊急出動をお願いいたします!』
「え!? こんな時に!? ユ…ユーノ君…直ぐに戻るからね!」
「気を付けるんだよ。」

 せっかくこれからと言う時なのに何とタイミングの悪い事だろうか。しかし相手がロストロギア暴走事件ならば
仕方が無い。なのははちゃっちゃと事を済ませて直ぐに戻ってユーノに対しての告白をすると決意し飛び立った。

 そのロストロギアは手当たり次第に物を吸収し、封印する機能を持っているらしかった。
そして、とにかく急いで戻ってユーノに告白しようと焦っていた事もあり、なのはが
それに吸い込まれてしまったのである。しかし、なのははそこで終わる様な女では無かった。

「嫌だ! 私は一刻も早くユーノ君の所に戻って告白するんだから! 絶対にぃぃ!」

 なのははロストロギア内部に取り込まれてもなお抵抗した。いやむしろ内側から破壊するつもりだった。
それから数分。なのはの死に物狂いの抵抗の末にそのロストロギアを内側から破壊する事に成功する。
しかし…

334なのはの新しい居場所 2 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:11:57 ID:Sd4SyoRw
「やった! やっと出れた! あれ? でも…ここは?」

 ロストロギアを内部から粉砕し生還したなのはだが、そこは先程までとは全然異なる場所にいた。
先程までロストロギアと戦っていた場所は屋外であったはずなのに、突然屋内に場所が変わっている。
単純に移動したと言う事なのだろうが、僅か数分の間にそんな事が可能だろうか?
 そんな時…

「大変だー! 倉庫内に保管されていたロストロギアが粉々になって中から女が出て来たぞー!」
「え!? ええ!?」

 突然何処からともなく管理局の制服を着た見覚えの無い若い男達が数人現れて、
しかもまるでバケモノでも見るかの様な目でデバイスを向けて来たのである。

「お…お前は一体何者だ!?」
「ロストロギアの中から出て来るなんてただ事じゃない! お前は一体何だ!?」
「え? 私は教導隊の高町なのは一等空尉だけど…。」

 とりあえず自分の所属と階級を言うが、男達は首を傾げていた。

「知らん。そんな名前は我々は知らない。とにかくこっちに来てもらうぞ。ロストロギアの中から
出て来るなんて明らかに普通じゃない!」
「え!? 知らない!? どうして!? ええ!?」

 明らかに状況がおかしかった。なのはは一応はエース・オブ・エースと呼ばれ有名なはずである。
しかし、男達は明らかに局員でありながら知らないと言い、まるで怪しい物を見るかの様な目付きで
なのはを連れて行こうとしていたのである。しかし…

「あ! なのはさん! 貴女はなのはさんじゃないの!?」
「リンディさん!」

 そこに現れたのはリンディ=ハラオウン。そして彼女の権限でなのはは解放されるのだが
その後でなのはは衝撃の事実を知らされる事になる。

「あの吸収封印型ロストロギアに吸い込まれて以降てっきり死んだと思っていたのに…
流石はなのはさんね。あの状況から自力で出て来るなんて。でも…。」
「でも…何ですか?」

 確かになのははロストロギアに封印されてもなお、たった数分と掛からずに自力での
脱出に成功した。しかし、その話を聞かされてもリンディの顔は暗く、何かがある様子だった。

335なのはの新しい居場所 3 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:13:23 ID:Sd4SyoRw
「なのはさん。落ち着いて聞いて頂戴。貴女にとってロストロギアの中から脱出するまでの時間が
たった数分間の事だったとしても、実はその外では十年数年近い歳月が流れていたのよ。」
「え? 冗談キツイですよリンディさん。幾らなんでも十数年なんて無いですよ。
だってリンディさんは全然お変わり無いじゃありませんか。」

 確かに。リンディはなのはがロストロギアから脱出するまでの数分間の間に
外界では十数年の年月が流れたと言っても、それを言うリンディ自身が全然老けておらず
説得力が無い。しかしリンディの顔は真剣だった。

「残念だけどなのはさん、これは事実よ。例えばウラシマ効果等の様に、状況によって
時間の流れるスピードが変わる事は知られているけど、なのはさんを一度吸収した
ロストロギアもそうだったみたいね。なのはさんがロストロギア内部で脱出しようともがいていた
数分間の間に、こちらでは本当に十数年もの歳月が流れていたの。」
「…………………………。」

 なのはにとって信じ難い事であったが、リンディが嘘を付いているとも思えなかった。
と、そんな時である。突然ドアを開けて誰かが入って来たのである。

「リンディさん、私に会わせたい人がいるとお聞きしましたが…………………。」
「え…………………。」

 ドアを開けて入って来たのは明らかになのはより年上と分かる大人の女性。しかし………

「お母さん! あの時死んだと思っていたのに…生きていたんだね!」
「え? ど…どなたですか…?」

 突然涙を流しながらなのはに抱き付いてきた大人の女性になのはも困惑するが、その女性は言った。

「私だよ! 忘れたの? ヴィヴィオ! ヴィヴィオだよ!」
「え!? ヴィヴィオ!? ええ!?」

 何と言う事だろう。目の前の大人の女性の正体はヴィヴィオだったのである。
確かにそう考えれば、その瞳はヴィヴィオと同じ緑と赤のオッドアイで、ヴィヴィオの面影がある。
だが、さらにその彼女の背後に小さな子供の姿があった。

「ママー、その人は一体誰なのー?」
「この人はママのママだよ。」
「えー? でもママのママならもっとお祖母ちゃんになってないとおかしいよー。その人ママより全然若いじゃない。」

 なのはがロストロギアから脱出するまでの間にすっかり大人になったヴィヴィオの背後に現れた子供に
嫌な予感を感じたなのはは恐る恐る訪ねる事にした。

「あの…その子は…?」
「私の子供だよ。」
「………………………。」

336なのはの新しい居場所 4 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:15:00 ID:Sd4SyoRw
 なのはは絶句するしか無かった。ここで初めてリンディの言っている事が事実だと悟った。
そう考えれば先程の局員がなのはの事を知らなかった事も納得が行く。他の者達にとって
なのはは十数年前にロストロギアによって死亡した人間と言う扱いなのであるから。しかし…

「え!? でもリンディさんはどうして老けてないんですか!?」
「なのはさん。世の中には知らない方が幸せな事もあるのよ。」

 リンディはそれ以上答える事は無かった。と言うか、むしろ前より若返って見える気がしない事も無い。


 その後、なのははリンディから一度別れ、外を見て回った。確かに外を見ればリンディの言った通りに
なのはがロストロギアから脱出するまでの数分間の間に外界では十数年の年月が流れた事を実感させる程、
周囲の風景は様変わりしていた。ヴィヴィオがすっかりなのはより年上になり、子供までいた様に
かつては若者だった者が今では中年になっていたり、また新しい若者の姿があったりと、
十数年と言う歳月はそんなに変わらないと思わせてかなりの変化をなのはに見せ付けていた。

「あ! そうだ! ユーノ君! 私はユーノ君に告白しなきゃならなかったの!」

 余りにも衝撃的な状況にすっかり忘れる所だったが、なのはは元々ユーノに友達から一歩先に
進む為に告白をするつもりだった。だからこそ今からでもそれをやるつもりでユーノの所へ向かった。
ユーノならなのはのその言葉を今日になるまで忘れずに待っていてくれる。そう信じて…。

 リンディからユーノは今も無限書庫にいると聞き、なのはは無限書庫に走った。

「ユーノ君!」
「ああ…リンディさんからなのはが当時の状態のままで帰ってきたと連絡は受けていたけどまさか本当だったなんて…。」

 アレから十数年の歳月の流れたユーノはお髭の似合うナイスミドルになっていた。
悪く言えば老けたと言う事だが、逆にそこがなのはにユーノの漢を感じさせ、
立派なお髭と渋さがなのはの性欲を掻き立てていた。しかし……………

「あ…あのね……ユーノ君……あの時の約束…覚えてい…。」
「おーい旦那ー! 弁当持って来たぞー!」

 そこへ突然何食わぬ顔でズカズカと現れたのは赤毛の女性。しかもその赤毛の女性は弁当をユーノに渡していたのである。

337なのはの新しい居場所 5 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:16:16 ID:Sd4SyoRw
「毎日済まないねアギト。君だって自分の仕事があるだろうに。」
「何言ってんだよ! あたしは旦那の妻なんだぜ!」
「え!?」

 何と言う事だろう。その赤毛の女性の正体はアギト。確かにその姿はなのはの知るアギトに比べて
背も高くなっており、相変わらず胸が残念な点を除いては大人びた姿となっていたが間違いなくアギト。
しかもそれ以上に衝撃だったのは、なのはがロストロギアから脱出するまでの間にユーノとアギトが
結婚していたと言う事である。

「あ…あの…これ…どういう事なのかな?」
「ああ、僕達は結婚したんだよ。」
「うおぉ! 良く見たらお前死んだと思ってたなのはじゃねーか! どうしたんだよ!」

 なのはにとってロストロギアから脱出するまで数分の出来事であっても、外界では十数年の歳月が流れていた事は
何度も説明した通りだが、これもまさにその時間の流れる速度差が起こしたいたずらであった。
なのはがロストロギアから脱出する為にもがいていた間に何とユーノはアギトと結婚していたのだった。

「どうして! どうしてアギトがユーノ君と結婚してるの!? どうして!?」
「いきなり何を言い出すんだよ。あたしがユーノの旦那と結婚して悪いかよ!」

 元々はなのはがユーノに告白して友達から一歩先に進むはずだったのに、アギトがユーノの嫁になっていた。
これはなのはにとって我慢出来ない事であり、彼女は思わず叫んでいた。

「悪いよ! アギトが旦那と呼んでたのはゼストさんのはずでしょ!?
死んだゼストさんに申し訳無いとは思わないの!?」

 なのはの言う通り、かつてアギトが旦那と呼んでいたのはゼスト。しかし今はユーノを旦那と呼んでいる。
これがどういう事かと言うと…。

「確かにあたしにとって旦那と呼べるのはゼストの旦那ただ一人だけ…。そう考えていた時期があたしにもあったさ。
でもあたしは思ったんだ。もう天国に行っちまったゼストの旦那の事を何時までも想い続けるのは、
それこそゼストの旦那は喜ばねぇ。ゼストの旦那なら新しい恋に生きろと言うはずだ。だから…だから
ユーノにあたしの新しい旦那になってもらったんだ!」
「じゃあシグナムさんは!? シグナムさんのパートナーはやめちゃったの!?」
「やめるわけねーだろ。今でもあたしとシグナムはパートナーだ。でもプライベートにおいては
ユーノの旦那の妻でもあるんだよ。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

338なのはの新しい居場所 6 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:17:35 ID:Sd4SyoRw
 何と言う事だろう。しかし、これも十数年と言う歳月によって変わった物の一つなのかもしれない。
なのはにとってはほんの数分の出来事であるから実感は無いが、他の者達にとっては十数年の時が
経過しているのである。その間に考え方が変わらないと誰が良い切れようか。

「アギト…少し頭冷やそうか…。」
「おっ! 何だ!? やる気かこの野郎! ならあたしはお前を燃やしてやるぞ!」

 次の瞬間、なのははレイジングハートを構えていた。十数年の歳月を経た他の者達と違って
僅か数分間しか変化の無いなのはにとって、アギトがユーノの嫁になる等と割り切れる物では無く、
そのやるせなさと怒りの余りなのははアギトを砲撃しようとしていた。それに対してアギトも
臨戦態勢を取っていたのだが…

「やめるんだ二人とも!」
「ユ…ユーノ君…。」
「旦那…。」

 今にも戦いが始まらんばかりの勢いとなっていたなのはとアギトを止めたのは他でも無いユーノ。
しかし、そのユーノを見つめるなのはの目には涙が浮かんでいた。

「ユーノ君……どうして…どうして…私…ユーノ君の事好きだったのに…。」
「何言ってんだお前! 十年以上もいなくなってたくせに今更帰ってきてそれが通じると思ってるのかよ!」
「アギト! 良いからなのはの説得は僕に任せるんだ。」
「あ…旦那がそう言うんなら…。」

 今にもなのはに噛み付かんばかりの剣幕だったアギトがユーノの一睨みで萎縮した。
そしてユーノはなのはに言う。

「そうか…君は僕の事が好きだったんだね。」
「そうだよ…ユーノ君…だから…。」
「でも僕はなのは…君の好意に応える事は出来ない。何故なら僕は正式にアギトと結婚した身なんだ。
これは今更どうにもならない事なんだ。それは僕だってあの時は君が死んだと思って悲しんださ。
でも…そんな僕をアギトが救ってくれたんだ。だからこれからも僕はアギトの夫として生きていくよ。」
「………………………。」

 なのはは絶句した。ユーノは絶対になのはを裏切ったりしないと考えいただけに…
ユーノの口から直接この様に言われるのはなのはにとって衝撃だった。
しかし、数分しか経過していないなのはと違い、ユーノはなのはのいない十数年と言う時を
過ごして来たのだ。その間にアギトと様々な事があっても不思議では無い。
だが、そこでさらにそれ以上の衝撃がなのはに襲い掛かるのである。

339なのはの新しい居場所 7 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:21:07 ID:Sd4SyoRw
「お父ちゃん、お母ちゃん、二人で何してるのー?」
「え?」

 突然駆け寄って来た小さな子供。それは昔のアギトを思わせる悪魔っ子風の格好をした
ユーノに似た小さな幼子であり、これにはなのはも嫌な予感がした。

「あの…こ…この子は…?」
「僕達の子供だよ。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 何と言う事だろう。アギトは生身の人間では無くユニゾンデバイスである。では一体何故子供が…

「え!? だってアギトはユニゾンデバイスで…何で子供が出来ちゃうの!?」
「でも出来ちゃったんだから仕方ないだろ。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 どう言う原理かは分からないが…とりあえず出来てしまった様である。
しかし、子供が出来たと言う事はユーノとアギトが契ったと言う事を意味し、
アギトがユーノに抱かれ突かれてエロい声上げながら喘ぎよがってる所を想像するだけで
なのはは悔しくなって来た。

「ユ…ユ…ユーノ君とアギトのウンコたれぇぇぇぇぇぇ!! うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「なのは!?」

 悔しさの余り、なのはは彼女らしくない罵り言葉を叫び放ちつつ、その場を走り去ってしまった。
その痛々しい姿は流石のアギトも気まずくなり…

「な…何か悪い事しちまったな…。聞く所によるとアイツもロストロギアの被害者なんだろ…?」
「いいさ…。なのはなら僕がいなくても大丈夫。きっと良い相手が見付かるさ。」
「ねーねーあのおねーたんは一体何だったのー?」

 ユーノとアギト、そして二人の子供はただ奇声を上げて走り去るなのはをじっと見つめていた。


 ユーノはアギトと結婚し、なのはの知るユーノとは全く違う物に変わっていた。
それを悟ったなのはが次に向かったのはフェイトの所だった。

「もう良い! ユーノ君なんか要らない! 私はフェイトちゃんと…フェイトちゃんと百合に生きる!
フェイトちゃんなら私を待っててくれる! フェイトちゃん! 今行くからね!」

 フェイトならば絶対に自分を裏切ったりしない。そう希望を持ってなのははフェイトのいる場所へ
向かっていたが…。

「フェイ……………。」

 なのははフェイトを呼ぼうとしたが…そこで止まり、無言のままその場を立ち去っていた。
何故ならば…そこにいたのは一体アンタ誰だよ? って感じの見た事も聞いた事も無い様な男と結婚し、
かつてレオタードまがいの卑猥なバリアジャケットで乳をボインボインバインバイン揺らしながら
卑猥な活躍をしていた彼女が嘘の様にエプロン姿の似合う主婦に大変身を遂げていたフェイトの
姿があったのだから。こんな状況でなのはが訪ねた所で、百合を受けてくれるはずが無い。

 その後、なのはが色んな人々を訪ねて回ったが、どれも結果は同じだった。
確かになのはがロストロギアに吸い込まれたばかりの頃は、誰もがなのはが死んだと思い
枕を涙で濡らした事だろう。しかし、十数年と言う歳月は皆の心を癒し、なのはがいなくても
生きていく事が出来る様に成長させるに十分な年月であり、誰もがなのはがいなくても
自分達の力で立派にそれぞれの幸せを掴んでいた。しかし…そこになのはの居場所は…無い。

340 ◆6BmcNJgox2:2009/12/20(日) 12:22:16 ID:Sd4SyoRw
前編はここまで。あと一時してから後半書きます。

341名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 12:24:36 ID:BB3ONYF.
>>340
ご飯食べながら投下ないかなーって見に来たら遭遇してラッキーでした。
GJ!
浦島系はきついっすよね…なのはの行く末がどうなるのか、後編に期待します。

342名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 12:25:30 ID:tUYMeTXw
よりによってアギトとはwwww
いや相変わらず素晴らしい

343名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 13:22:20 ID:N8XHY316
GJ
ウラシマじゃないけどぬ〜べ〜の枕返しを思い出した

344名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 13:38:46 ID:amR5EfxU
デバイスと結ww婚wwしやwwがっwwwwwうぇww

345名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 13:44:11 ID:SaaZh3hg
>アギトがユーノに抱かれ突かれてエロい声上げながら喘ぎよがってる所を想像するだけで

…ウッ!
へ、やってくれるじゃねーか。想像したらやられそうだったぜ。
だが、わからんな。なぜそのシーンを文章にしない!

346名無しさん@魔法少女:2009/12/20(日) 18:01:06 ID:xWlQOWfU
ttp://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1261234554/
なんか来てた

347100スレ807:2009/12/20(日) 23:47:08 ID:73fzuErE
前作の続編?ができましたので投下させていただきます

フェイト×アリサ×クロノです

タイトルは「フェイトのヤミ」です

348フェイトのヤミ 1:2009/12/20(日) 23:49:33 ID:73fzuErE
ふぇいとのやみ

「んん…んっ?…」

鼻腔をくすぐる甘い香りで、アリサは目覚めた。
ここはどこだろうか?…辺りを軽く見渡してみるが、
カーテンが閉めきられ、暗いため、どこなのかわからない。

ともかく、明かりをつけよう、そう思って立ち上がろうとするが。

ギシッ

「え…なんでっ!?なんで私縛られてるの!?なんで私裸なのよ?!」

アリサはベットに縄で縛り付けられ、服を全て剥ぎ取られていた。
その上俗に言うM字開脚の状態で縛り付けられているために、彼女の未成熟な性器が露になっている。
その事を知ったアリサは慌てて手で隠そうとするが、頭の上でしっかりと縛られた両手は、
ギシギシと音を立てるだけであった。

それでも縄を解こうと暴れるアリサに、ふいにに声がかけられる

「おはよう…ありさ」

その声は、親友のはずの少女、フェイトのものであった。

「フェイト!?これはどうなってるのよ!」

と、アリサが問うが、彼女が期待した答えは返ってこない
フェイトは

「えへへ…かわいいよありさ…」

などとわけのわからない事を口走り、こちらに近づいてくるだけであった。

「なんで?どうして?なにいってんのよ…フェイト…
 !!!アンタ!なんて格好してんのよ!」

近づいてくるフェイトの姿を、アリサの眼がとらえる。
姿を現したフェイトは、全裸であった。
にもかかわらず彼女は、恥ずかしそうな顔一つせずその肢体を
堂々とアリサの前にさらけ出している。

「おにいちゃんにおねだりしてよかったな…」

本当に何を言っているのだろうフェイトは、おねだり?なんのことだろうか
フェイトが何事かをつぶやく度に、アリサの混乱はますます深まっていく。
混乱するアリサを尻目に、フェイトはアリサのいるベットのすぐそばまで近づいて来た。

「なに?なに言ってるのよ!?クロノさんは?私はクロノさんに家に招待されて…なんで?ここは?なに…ひぁっ!」

フェイトが突然アリサの股座に顔を突っ込み、そこを舐めあげる。

「ふふ…ありさのここ…すごくきれいだよ…」

349フェイトのヤミ:2009/12/20(日) 23:50:19 ID:73fzuErE
フェイトはアリサの太ももの間に陣取り、膝を開かせる。
さらけ出された性器に口付けながらフェイトが笑みを浮かべる。

「やめ…ふあぁ…やぅ…あっ…あっ…あん…」

フェイトが股の間に陣取り、アリサの性器を弄くりまわす。
それを防ぐ術はアリサにはなく、ただフェイトのされるがままとなっていた。

「くりとりすがぴくんってしてるよ…かわいいなあ…
 おまんこってこんなあじなんだ…おいしいな…」

淫らな言葉を発しながら、フェイトは少しずつ膣に近づいていく

「ふぇいっ…とっ…もっ…ふぁ…やっ…やめっ…」

「うわあ…こんなにちいさいんだ…おまんこって」

「なにいって…フェイトぉ…ふぁああぁああああぁ」

ついにフェイトは膣口に到達し、そこを執拗に刺激する。
同時に、大きく勃起した淫核を激しく擦り上げる。
アリサの膣はその刺激に反応し、蜜をあふれさせる。

「そこだめぇええ…ふああぁあ…ああああ…あんっあっ…ふああああああ!!!!」

膣と淫核への同時の刺激は、アリサにひときわ大きな喘ぎ声を発させた。
その大きな喘ぎに喜びを感じたのか、フェイトは笑みを浮かべながら、
暗闇に向かって言う。

「くろののものがはいるよう…しっかりぬらさなきゃ…いけないもんね」

「わたしは…ありさのおねえちゃんだから…」

「はじめてがいたいだけだったら…ありさがかわいそうだから…」

「ありさと…しまいに…さおしまいになるんだから…」

「うふふ…ありさ…おまんことろとろになってきたよ…」

「ありさ…ありさのおまんこが…いれてほしいっていってるみたいだよ」

フェイトはさらにとわけのわからない台詞を発する。
暗闇に向けて満面の笑みで、何度も何度も発する。
だが、快楽に流され、性器から体液を垂れ流しにしている今のアリサには、その意味などどうでもよかった。
アリサはただ、もっときもちよくなりたいだけ
だから、彼女は言う。

「フェイ…と…もっと…もっとしてぇ…もっときもちよくしてえ!足りないのぉ!」

その言葉を聴いたフェイトは、アリサの頭を優しく撫で
まるで母が子に言い聞かせるような優しい口調で言う

「ありさ…だいじょうぶだよ…おにいちゃんがね…もっと…もっと…もっと…きもちよくしてくれるから…ね?」

そして、暗闇に呼びかける

「くろのっ…ありさが…くろのにしてほしいって!」

そのよびかけに答えるよう、闇が蠢いた

350フェイトのヤミ:2009/12/20(日) 23:51:06 ID:73fzuErE
闇の中からそれは現れた。
黒い髪、自分より少しだけ高い背丈、さらけだされた筋肉、そして…

「あ…あ…クロ…ノ…さん?」

黒光りする頑強で巨大な肉棒が…

「クロノさん…なに…なにするの?」

人間としての生存本能であろうか?
アリサは急激に正気を取り戻そうとしていた。
正気が戻るにつれ、恐怖がこみ上げてくる

「クロノさん…やめて…やめてよぉ!」

アリサの懇願が聴こえてないかのように、
クロノが一歩一歩ベットに近づいてくる。

「いやぁ!やだっ!」

身をよじって拘束から逃れようとするアリサ
だがそれは、縄をギシギシと鳴らすだけの行為であった。
その間にもクロノはさらに距離を縮める。

「こわいこわいこわい!やめてやめてやめて!」

「ありさ…よくみてね…あれがありさのおまんこにはいるんだよ
 せっくす…すっごくきもちいいよ」

ついにクロノがアリサの元にたどり着く。
クロノの肉棒はカウパーでヌラヌラとした光を放っていた。

「いやっ!こんなのいやっ!いやなのっ!」

「ふふ…ありさはえんりょしぃだね」

「そんなんじゃない!そんなんじゃない!」

アリサは半狂乱の状態で暴れまわる、だが拘束は解けない
フェイトは優しげな笑みを浮かべ、変な事を言っている。
クロノはモノをアリサの性器とふれあわせ、愛液を肉棒に塗ったくっている。

「くろの…いっきにおくまでいれてあげよ」

アリサにとって、死刑宣告に近い言葉がフェイトによって発される。
クロノは、その言葉に従うかのように腰を引き…



「そんなわ…ンぎぃいいいぃいいぃいぃいぃいいいいいい!!!!!!!!!」



アリサを一気に貫いた…

「いだぃ…ぬいでぇ…いだぃのぉ…」

アリサは顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにし、うわごとのように痛いとわめく
彼女の性器は血に染まり、腹に、腿に、クロノに、フェイトに、飛び散る。

「だいじょぶだよ…ありさ…すぐにそれがきもちよくなるから…」

相も変わらずフェイトが世迷言を言う。

「ンぐっ!アがぁああ…いダぃい…あガァああ!!!!」

クロノが腰を動かすたびにぐちゅぐちゅと、肉を引き裂くような音が響く
その動きにあわせて体が揺らされるアリサ、彼女の命はどうなってしまうのか…

「んづっ!あぐっ!んぎぃ!ああがっあっあっんあっ…?」

どうしたことだろう?アリサの悲鳴に甘い響きが混じり始めた。

「んぐっ…んぁ…ふぁあああ…あああああ!!ンきもぢぃっ!なでっ!なんでぇ…ふええあああああああああ!!!」

その響きは拡大し、悲鳴をかきけしていく。
それとあわせるかのように、アリサの性器の湿りが強くなっていく。


「よくいたいのがんばったね…ありさ…これからずっと…きもちいいよ…」

性器の発する水音を聴いて、フェイトがアリサにいとおしげに声をかける。

「ンあぁあああああああアアアアアアァアアアアアアァアアアア!!!!」

いつしかアリサは腰を振り始めていた。
自ら肉棒を擦り上げ、快楽を享受しようとする。



「ンッぎもぢぃッ!!!ぎもちぃぎのおおおおおおおおお!!!!
 んあぁがあああああああ!!!アソゴざげりゅぅううううう!!!
 もっどはげじぐジでぇええええ!おまんごめちゃぐちゃにじてえええ」

狂ったように叫ぶアリサ
その言葉に答えるようにクロノは腰の動きを激しくする

ぐちゅ…ぐちゅ…ぐちゅ…

一際大きな音がたつ

「…くろの…そろそろ…いきそうだよ」

フェイトが義兄の限界を感じ取る。

「あたしもぉ…あぐぅん!ぎもぢっ!イグっ!いぎぞう!!!!!!
 なかにぃ!おまんこにぃ!どぴゅどぴゅじてええええ!!!
 いぐアッ……………………………………」

クロノの肉棒が一際大きく膨らむ。
その後すぐに生命の奔流がアリサの膣に注がれていく。
入りきらなかった精が、ごぷりと音を立てて外にあふれだす。

2人は絶頂に達し、意識を飛ばし、倒れこんだ。

「ありさ…これで…わたしたちはしまいだね…」

意識を失った2人をぎゅっとだきしめ、しあわせそうに…フェイトは呟いた。

351100スレ807:2009/12/20(日) 23:53:17 ID:73fzuErE
作者としてもコレジャナイ感を感じる代物ですが、読んでいただけると嬉しいです。

感想、批評、批判などをいただけると嬉しいです。

352名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 02:50:26 ID:yXquQHl6
>>351



コレジャナイ感は前回の続きと言いつつ話が繋がってないからじゃね?とか
相手がなのはさんじゃなくて何故いきなりアリサなのかとりあえずお話聞かせて?とか
そういったことを書けばいいのかな

353名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 07:25:07 ID:QhtGG7B.
>>340
相変わらず酷いww
久しぶりに面白いSS読んだよ。GJ.

354名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 08:07:06 ID:RQKFf.WQ

アリサ久しぶりだったね

355名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 12:30:22 ID:AXIC6A2s
>>340
◆6BmcNJgox2さん、GJっス
時間経過ネタもなかなか…
シチュもいい感じです!

んで、>>330でも話上がってるけど。
んじゃ〜、ユーなのEND(師弟とかパートナーとして重視で)はどうだろう?

と考えたんで、>>332の設定をベースに自分が書いてもいいっスかね?
図々しくてすんません…

356名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 12:51:28 ID:XUhk9C8k
>355
YOU書いちゃいなYO!!
外は雪降ってるが全裸で待ってる。

357 ◆6BmcNJgox2:2009/12/21(月) 17:49:42 ID:l9sEnsAM
>>333-339の続きを書きます。

・ロストロギアのせいで浦島太郎状態になってしまったなのはが見た絶望の未来
・NTR注意(↑のせいでなのは不在の間に○○が××とくっ付いてたとかそんな意味で)
・絶望の余りなのはが壊れる(違う意味で)
・人によってはハッピーエンドともバットエンドとも取れる微妙な結末注意。
・微エロ(直接的行為描写は無いけど淫語は出るから)
・前編「衝撃! 絶望の未来編」と後編「先生またやってしまいました〜編」の二部構成。

では後編「先生またやってしまいました〜編」をやります。

358なのはの新しい居場所 8 ◆6BmcNJgox2:2009/12/21(月) 17:51:23 ID:l9sEnsAM
 ミッドの片隅にある小さな公園。その中のブランコに座り、夕日を浴びながらうな垂れるなのはの姿があった。

「私にとってはほんの数分…。確かにあのロストロギアから脱出するまでの時間は数分しか掛かってないのに…
外に出てみれば十数年も経過してた…。何それ? 私は浦島太郎なの? 皆…皆もすっかり変わってたし…。
十年以上も経ったんだから…仕方ないのかな…。リンディさんはむしろ孫のカレルとリエラの方が
老けて見える位若々しかったけど…あの人は色んな意味で仕方が無いし…。それに何よりも…みんな…もう私が
いなくても大丈夫になってて…。ヴィヴィオですら…私がいなくても…今ではすっかり私より年上になって…
子供もいて…。ユーノ君はアギトと結婚してて…フェイトちゃんも脱百合して人妻で…でも……私はどうすれば良いの…?」

 なのははこれから自分がどうすれば良いのか分からなかった。管理局としてもなのはは既に十数年前に
亡くなった人間と言う扱いになっていたし、かつての知り合い達もそれぞれの幸せを手に入れており、
そこになのはの入り込む隙間は無い。つまり…今のミッドになのはの居場所は無いと言う事である。

「私はこれから…どうすれば良いの…? 何処で…どうやって生きていけば良いの…?」

 なのはは途方に暮れ、夕日を浴びながら目から一筋の涙を落していたのだが…
そこで彼女は今後の運命を大きく変えるとある出会いをする事になる。

「なるほど。風の噂で十数年前に死亡したと思われた高町なのは君が当時のままの姿で戻ってきたと言う話は
聞き及んでいたが、本当だったのだな。」
「え!?」

 突然の謎の声になのはがふり向いた時、そこに彼がいた。なのはの隣のブランコに座るジェイル=スカリエッティ。

「ジェイル=スカリエッティ!」
「久し振りだな。と言っても、君にとっては大した時間では無いのだろうが…。」

 これにはなのはも驚いた。と言うか、ジェイルは軌道拘置所に収監されていたはずである。
なのはがロストロギア脱出の為にもがいていた十数年の間に状況が変わって刑期が短縮されたのだろうか?

「ジェイル貴方がどうしてここにいるの!? 私の記憶が確かなら貴方はそう簡単に釈放されはしないはず!」
「ああ…。それなら簡単。脱獄して来たのだよ。」
「脱獄!?」

 何と言う事だろう。ジェイルは軌道拘置所を脱獄していた。しかもまるでそれが出来て当たり前と
言わんばかりの顔であっさり言ってのけるジェイルになのはも驚きを隠せない。

「私のこの天才的な頭脳を活かせばあんな所を脱獄する等造作も無い。」
「なら…なら何で直ぐに脱獄しなかったの?」

 そう。ジェイルが本当に軌道拘置所を簡単に脱獄出来たと言うのならば、では何故逮捕されて十数年経過した
今更になってそれをやらかすのだろうか? しかし彼はこう答えた。

359なのはの新しい居場所 9 ◆6BmcNJgox2:2009/12/21(月) 17:52:25 ID:l9sEnsAM
「うむ。脱獄は出来ても脱獄後の生活の当て等無かったからな。それにあそこでの暮らしもあれで中々
居心地が良い。そのままあそこでゆっくり余生を過ごすのも悪くは無かったのだがな…。
実はとある非管理世界にいる知り合いから技術協力を頼まれてな、他でも無い知り合いの頼みだからと
意を決して出て来たと言うわけなのだ。」

 ここでジェイルが今になって脱獄した理由が明かされた。しかし、その後で彼はなのはを見つめながら立ち上がった。

「さて、私はそろそろ行くつもりだが…君はどうするかね? 管理局員として私を捕らえるかね?
それも構わんが…多少は抵抗するかもしれんぞ。」

 ジェイルはかつてフェイトを捕らえた事もある赤い光の鎖を展開出来る特殊グローブを手に嵌めて
臨戦態勢を取っていたが、なのはは何もしなかった。

「やめておくよ。私はもう十年以上も昔に管理局員としての登録は抹消されてるみたいだし…。
そもそもミッド自体に居場所が無い。だからさ…私も連れてってよ。」
「何だと!?」

 なのはの爆弾発言にジェイルは驚愕した。確かになのは程の魔導師が付いて行ってくれると言うのならば
これ程心強い事は無いが…………

「ねぇお願いジェイル。私も連れてって。新天地で私の新しい居場所を探したいの。」
「確かに君程の魔導師が付いて来てくれるのは心強いが…。しかし…私にホイホイ付いて行けば
君もお尋ね者になってしまうぞ。半端な覚悟で私に付いて来られても困る。覚悟は出来ているのかね?」

 ジェイルは軌道拘置所を脱獄している故、これから管理局の追手が来るだろう。
そんなジェイルに付いて行けばなのはも犯罪者扱いになってしまう。
しかし、彼女の表情に戸惑いの色は無かった。

「覚悟なら出来てるよ。」
「ほう…ならばどの程度の覚悟なのか具体的に述べてもらおうか?」
「逃避行の最中に性欲を持て余したジェイルに押し倒されてそのまま赤ちゃん産まされる覚悟なら出来てる。」
「な…なんだとぉ!? ちょっと待て! 君は私をその様な男だと思っているのか!?」

 突然変な事を言い出すなのはに驚愕するジェイルだが、その時のなのはの瞳からはハイライトが消えており、
彼女はさらにこう続けた。

360なのはの新しい居場所 10 ◆6BmcNJgox2:2009/12/21(月) 17:55:08 ID:l9sEnsAM
「泣き叫びながら喘ぎよがる私を抱き締め突き上げながら貴方は言うの。『君のせいでナンバーズも
実質壊滅したも同然の状態にされてしまったが、その分を君自身の美しい肢体で産んで返してもらおう。
その君の女の肢体…これからも存分に利用させてもらうぞ。実はこれでも私は前々から君を狙っていたのだよ。
君のその乳房も…腰も…太股も…尻も…皆私の物だ。そしてこれから君が産む我等の子供達を
ニューナンバーズとするのだ。』『無理だよー! 私そんなに沢山産めないよー!』
『無理でもやるんだよ! 良いから黙って産むんだよ!』って感じで私に乱暴を振るいながら無理矢理に子供を
産ませるジェイル…。想像するだけでゾクゾクするね。」
「それは覚悟じゃない! ただの願望だ!」

 ジェイルの声真似とかしたりしながら、自分とジェイルのそんなやり取りを描くなのはの姿は
不気味この上無く、むしろゾクゾクするのはなのはでは無くジェイルの方だった。
しかしそんなジェイルにも構わずなのははさらに続けるのである。

「ウフフフフ…。私がジェイルの赤ちゃんを…しかもジェイルそっくりの憎たらしい顔した赤ちゃん
産んじゃったら皆どう思うかな…。きっと落胆するんだろうな…。想像するだけでゾクゾクするよね。
かつては管理局のエースと呼ばれた私…高町なのはが、皆からのけ者にされた腹いせに
時空犯罪者にして脱獄囚のジェイル=スカリエッティの子供を産む。フフフ…こんなに面白い事は無い。
もうざまぁ見ろって感じだよね!」
「落ち着けなのは君! 君はあまりにも激し過ぎる環境の変化に付いて行く事が出来ずに錯乱し、
冷静な判断が出来なくなっているだけだ! もっと落ち着いて…冷静になるんだ!」

 もはや浦島太郎状態になってしまった現実に耐え切れず逃避し、自分だけの世界に入り込んでいるとしか
思えないなのはを何とか落ち着かせようとするジェイルだが、なのはの瞳からハイライトが戻る事は無かった。

「うるさいうるさい! 幾ら管理局のエース・オブ・エースだなんて持ち上げられてても、私だって女なの!
男の人に中出しされちゃったら子供出来ちゃうんだよ! 例えそれが時空犯罪者相手でも出来ちゃうの!」
「だーかーらー!」
「だからもへったくれも無い! ナンバーズの女の子達のお腹の中に自分のクローンを仕込む度胸は
あるくせに、生身の女の子を抱いて子供を産ませる度胸は無いなんて今更言わせはしないよ!」
「もういい加減にしてくれ! 君はそれで良いのか!? そんな事されて嫌とは思わないのか!?」
「でもジェイルに無理矢理抱かれたんじゃ仕方が無いよね。私…悔しいのにジェイルの突きに感じちゃうの…。
赤ちゃんだって産んでしまうの…。私はこのままジェイルの子供を産む機械にされちゃうの…。
そしてそんな私の姿を見て落胆するフェイトちゃんやユーノ君…想像するだけで恐ろしくてゾクゾクしちゃうの…。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」

 恐ろしくてゾクゾクするのはむしろジェイルの方なのは言うまでも無い。確かになのは程の魔導師が
味方に付いてくれるのはジェイルにとってもこれ程頼もしい事は無い。しかし、今のなのはが相手では
確実にジェイルは逆レイプされ、無理矢理に父親にされてしまう事は想像も固く無かった。

361なのはの新しい居場所 11 ◆6BmcNJgox2:2009/12/21(月) 17:57:04 ID:l9sEnsAM
「(確かになのは君が味方に付いてくれるのは頼もしい。追手が来ても色々と守ってくれるだろうしな。
しかしその後どうするか? このままでは確実になのは君は私の子を産んでしまうぞ。そうなると
子育てとか色々大変だぞ…。私を受け入れてくれる知り合いもそこまで面倒見てくれるかどうか…。
それにプレシアに対するアリシアの様に必ずしもなのは君の様に優秀な子が出来るとは限らんし…。)」

 等と、なまじ頭が良い故に色々と考え込んでしまうジェイルであったが、そんな彼の腕をなのはが
強引に引張っていた。

「さあそうと分かれば出発だよ! 私とジェイルの新しい居場所! 新天地へ向けてレッツ&ゴー!」
「やめてくれ! 無理矢理に引かないでくれ! 落ち着いてくれなのは君! 良いのか!?
本当に良いのか!? そんな事をすれば君は本当に人生を棒に振る事になるぞ!」
「人生なら当の昔に棒に振ってるよ! 魔法と出会った時点でね! ユーノ君がアギトなんかと結婚して
子供まで出来ちゃった今、もう操を守るのが馬鹿馬鹿しくなっちゃったよ! ジェイルが何と言おうと
私はジェイルの子を産むよ! そして私を受け入れなかったユーノ君や皆が悔しがり落胆する顔を想像して
ほくそ笑むの! そして皆が泣いて悔しがる様な素晴らしい子供に育てるの!」

 ハイライトの消えた瞳で力一杯に論じるなのはだが、やはりジェイルは困らざるを得ない。
そしてジェイルの腕を引くなのはを逆に引き返しながらジェイルは言い返した。

「ちょっと待て! では何故私なのだ!? 単純に子供が欲しいなら私では無く
他の男でも良いのでは無いか!? そうだ! 君ならば私よりもっと良い相手が
見付かるのでは無いか!?」
「ダメだよ! これはジェイルじゃないと意味が無いの! かつて管理局のエース・オブ・エースと
呼ばれ称えられたこの私が、JS事件の主犯であり、軌道拘置所から脱獄した凶悪犯罪者のジェイルの
子供を産む事に意味があるの! 私が産むのは貴方の子供じゃないとダメなの!
他の何処の馬の骨とも分からない様な男の子供を産んだって意味が無いの!」
「く……狂ってやがる………。」
「そうとも私はもう狂っちゃったの! あのロストロギアに飲み込まれた時点で…
私の人生も何もかもが狂わされちゃったの! だからかつてエース・オブ・エースと
呼ばれた私が時空犯罪者の妻に堕ちてしまった所で今更どうと言う事は無いの!」

362なのはの新しい居場所 12 ◆6BmcNJgox2:2009/12/21(月) 17:59:58 ID:l9sEnsAM
 なのははもう後には退かない。完全にジェイルに付いて行くつもりであった。
これにはジェイルもほとほと困り果てざる得ないが、無理矢理に付いて来るなのはに
迷惑さを感じながらも、かと言って引き離すのはそれはそれで勿体無いと言う矛盾した感情を抱いていた。
やはり良くも悪くもなのはは味方に付ければ頼りになる強力な魔導師なのだから。
問題があるとするならば、自分一人が浦島太郎状態になってしまったと言う状況に耐え切れずに
錯乱し、半ばヤケクソ気味にジェイルの子を産もうとしてる事であろうか。
しかも恐らくは一人で済むはずも無く何人も産むのかもしれない。
クローン体や試験管ベビーの類ならジェイルだってナンバーズを始めとして
世話の一つや二つやった事はあるが、生身の女性がその身で産み落とした生身の赤子を
世話する事は無く、ジェイルとしてはむしろ勘弁してくれと言わんばかりであった。
しかし、それすら今のなのはに届くはずも無い。

「こうなったら仕方が無い…。一緒に逃げてる間になのは君の考えが変わる事を祈る他はあるまい…。」
「さようならユーノ君…さようなら時空管理局…さようならミッドチルダ…。
私は私の新しい居場所を探す為に旅立つよ…。なんて名残惜しい事を言った所で
今更私の事を気にしてくれる人なんていないだろうけど…。じゃあね…。」

 なのははハイライトの消えた瞳で皆に別れを告げ、こうして夕暮れの公園で二人何やら話をしている姿が
目撃された事を最後になのはとジェイルは忽然とミッドから姿を消した。無論時空管理局は
脱獄したジェイルと、そのジェイルと一緒にいた所を目撃されたなのはに関与の可能性を見て
それぞれを捜索するが…一向に見付かる事は無かった。

 それから…行方不明になったと思われていたなのはとジェイルが、何処かの世界の教会で
結婚式を挙げる様を撮影した写真の同封された手紙がユーノやフェイト等の家に送りつけられ、
しかも気まずい表情の新郎ジェイルと、瞳からハイライトの消えた新婦なのはの姿が
またなんともシュールさを醸し出し、アチャーと皆の頭を抱えさせたのは言うまでも無い。

 そしてさらにその翌年、非常に気まずい顔をしたジェイルと寄り添い、ハイライトの消えた瞳ながらも
誇らしい笑顔でジェイルそっくりの赤子を大事そうに抱くなのはの写真の同封された手紙がユーノやフェイトの
家に送り付けられて皆はアチャー! 何時かは絶対やると思ってたんだよな〜ってなったと言う。


 とあるロストロギアによって人生を狂わされた女…高町なのは。
しかしその狂わされた中でもそれはそれで幸せを手に入れたのだから良しとするべきなのか…
はたまた脱獄囚と共に駆け落ちしちゃった事を咎めるべきなのかは…各々の判断に任せるとしよう…。

                     おしまい

363 ◆6BmcNJgox2:2009/12/21(月) 18:02:07 ID:l9sEnsAM
これで終わりです。結局またこういう感じのENDやっちまいましたけど
浦島太郎状態になったせいでかつての知り合いが皆なのはを受け入れてくれなくなったので
こういう方向に行ってしまっても仕方が無い。と言う事でどうか。

364名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 18:17:05 ID:Qq9BnuPc
スカちゃん頑張れ超頑張れスカちゃんw

365名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 18:29:11 ID:zbcKh4ww
wikiのリンクが未だに前スレのままな件

366名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 21:15:03 ID:SPKSQyUc
ジェイルwwwww
ほんとうにこの組み合わせ好きやなあ。アンタ。

367名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 15:14:13 ID:zppW8NWk
「ユーノくんがキスしてくれたら検索魔法頑張る☆」
「しかたないなぁ」 チュッ

「「「確保ォォ!!」」」

368名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 17:22:13 ID:6DL0nW3Q
巣に帰れホモ野郎

369名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 17:32:27 ID:2Mbd8u6U
野良の司書じゃなくてヴィヴィオだろうに

370名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 21:45:51 ID:O8WnJTSc
ヴィヴィオがユーノきゅんを逆レイプするってのはどうよ

371名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 07:59:56 ID:r3efYzPo
それは普通すぎて面白くない。

372名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 11:08:38 ID:32fC2m5c
じゃぁ一捻りして聖王モードでレイプしようとするけどチェーンバインドで捕まって言葉責め&
緊縛プレイだけでイッちゃって変身解除されたところをユーノに逆レイプされちゃうヴィヴィオ。
しかし、そこまでがヴィヴィオの計算のウチだったのだ…的な

373 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:25:06 ID:FXgPlWzE
二日しか経過してませんが、また書きます。

・ユノティア
・エロ
・キャラ崩壊上等(しばらく封印状態になってた性的に強いユーノ解禁とか)

374ティアナが飛んだ! 1 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:26:26 ID:FXgPlWzE
 ティアナは空を飛べない。それはもはや業界では衆知の事実。
しかし、ティアナ自身にとっては深刻な問題であり、飛べない事こそが
彼女が自分自身を過小評価してしまう大きな要因となっていた。

「やっぱり飛べない……やっぱり私はダメな魔導師なんだー!」
「ティアナまた病気が再発しちゃった…これは私が何とかしないと…。」

 また『凡人と自虐的になっちゃう病』を再発して頭抱えていたティアナを
物陰から心配そうに見つめるは、ティアナに魔法を教える立場にある高町なのは。
しかし、彼女とて神様では無いのだ。そもそも最初から飛行魔法の資質の無い
ティアナに飛行魔法を使える様に出来るわけが無い。

「そうだ。ティアナは空が飛べなくても立派に戦えるんだから
そこを褒め称えて飛べなくても大丈夫って思わせれば良いんだ!」

 あのJS事件の際にティアナが戦闘機人三人抜きをやったのは知られている。
それはティアナが空を飛べなくとも立派に魔導師として通用し得る証拠であり
なのははそこを使って早速ティアナを励ます事にした。

「大丈夫だよティアナ。空が飛べなくても大丈夫。」
「でもやっぱり飛べた方が良いじゃないですか。」
「そんな事は無いよ。例えばマジンガーZはマジンガー軍団と違って空飛べないけど
マジンガー軍団より強いでしょ? つまりティアナは陸戦にこそ映えるタイプなんだよ。」
「でもそのマジンガーZも結局は空飛ぶ機械獣に苦戦して、最初の頃は奇策で何とかしてても
通用しなくなってジェットスクランダーで飛んじゃったじゃないですか。」
「う……………。」

 これは痛い所を付かれた。こうなったら違う例え方をするまで。

「飛べなくても…だ…大丈夫だって…。ゴジラだって飛べないけど、キングギドラとか
空飛ぶ相手にも立派に通用したじゃない。」
「でもゴジラ対ヘドラで飛んだじゃありませんか。」
「う……………。」

 ああ言えばこう言う。今のティアナを励ますのは尋常では無い。もういっそこのまま
頭冷やしてやろうとも思ったが、そう言う力に任せた抑え方はスマートでは無い。
しかし、ここでなのはは良い事を思い付くのである。

「あ! そうだ! ティアナ! 私に良い当てがあるよ!」
「え!? 本当ですか!?」

 一体何を考えたのか分からないが、なのははティアナを連れてある場所へ向かった。

375ティアナが飛んだ! 2 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:27:17 ID:FXgPlWzE
「この人ならば今のティアナを何とか出来るはずだよ。」

 なのはがティアナに紹介した人物。それは無限書庫最強の生物ユーノ=スクライア〜〜〜〜〜〜!
その力は一世界の全図書館司書力に匹敵………したら良いな。

「やあ。今日は一体何の用かな?」
「実はユーノ君に協力して欲しい事があって…。」

 ティアナが緊張の面持ちで待つ中、なのはとユーノは何やら話をしていたのだが…

「え!? ええ!? それを僕がやると言うのかい!?」
「お願い! ティアナを助けると思って協力して! ほら、ティアナからも頼みなさい!」
「お願いします! 良く分かりませんけど…とにかく私を助けて下さい!」

 何か大変な事でもあるのか戸惑いの色を見せるユーノに対し、ティアナはなのはに
言われて慌てて頭を下げていた。それにはユーノも一息付いてから事を話し始めた。

「分かった。でも本当に良いのかい? これは一歩間違えれば大惨事になりかねない大変な事なんだよ。」
「はい! 覚悟は出来ています! どんな辛い特訓にも耐える覚悟です!」

 あの無限書庫最強の生物ユーノ=スクライアがここまで真剣な顔になるのは、ティアナが
空を飛べる様にする特訓は相当に過酷な物であると見てティアナも真剣な面持ちになっていた。


 そしてユーノはティアナを別室に案内した。その部屋には窓一つ無く、部屋の真ん中に
一台のベッドが置かれているのみ。

「ここで早速始めるよ。」
「始めるって…こんな狭い所をで何をするんですか?」

 屋外の訓練場では無く、こんな狭い部屋で何をするのだろうとティアナは不安になっていたのだが、
その後でユーノが言った。

「さあここで服を脱いでベッドに寝そべるんだ。」
「え!? ええ!?」

 今凄い事をあっさり言った。服を脱いで裸になりベッドに寝そべろと言うのである。
これにはティアナも思わず顔を赤くしてしまう。

「ふ…服を脱いで…一体何をするって言うんですか!?」
「何って、決まってるじゃない。ティアナはこれからユーノ君に枕営業するの。」
「なのはさん〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 今度はなのはがあっさりと凄い事を言った。ティアナにはこれからユーノに枕をやれと言うのである。
これが果たして空を飛ぶ事と何の関係があるのだろうか?

376ティアナが飛んだ! 3 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:28:02 ID:FXgPlWzE
「あ…あ…。」
「別に嫌なら良いんだよ。僕は強制はしない。」

 顔を赤くして服を脱ぐ事を躊躇うティアナに対しユーノは優しく接していたが、なのはの態度は正反対だった。

「あ〜あ〜! ティアナったらこんな所で怖気付くなんて、空を飛びたくないんだね?」
「そんな事言われても…私まだ処女で…。」
「それがどうしたと言うの? そんなの遅かれ早かれいずれは失われる物じゃない。
それにこういう仕事だから、時空犯罪者に捕まって時空犯罪者相手にレイプされて
処女奪われちゃう可能性だってあるんだよ。そんな事になる位なら無限書庫司書長の
ユーノ君に捧げちゃった方が格好良いと思うな〜私は。」
「なのは! 彼女に無理言っちゃ悪いよ!」
「う……………。」

 ユーノは無理強いするなのはを叱っていたが、ティアナは悩んでいた。
確かに管理局で働き、かつ執務官方面に進むのだから、時空犯罪者に捕まってしまう事も
恐らくはあるのかもしれない。そうすればレイプは必至であり、時空犯罪者に
処女を捧げてしまい、下手をすれば妊娠さえさせられてしまうと言う大きな心の傷を
負ってしまいかねない。それならば…無限書庫司書長・無限書庫最強の生物の肩書きを持つ
ユーノに処女を捧げた方が、無限書庫司書長・無限書庫最強の生物とSEXした女として伯が付く
とも考えていたが、それでもやっぱり処女を失うのは名残惜しい。しかし…ここである事を思い出していた。
 
 それはティアナが昔見た事のあったとある映画。その映画は魔導師に弟子入りする若者の奮闘を
描いた物なのだが、その若者の師となる魔導師は最初は魔法のまの字もやらず、水汲み等を
初めとした雑用しかさせなかった。しかし、それは全て魔法を覚える為の修行に耐える為の
忍耐力や基礎体力を付ける為の特訓の一環であり、その後の特訓等も一見魔法とは無関係に
見える物が、実は知らず知らずの内に技術を付ける修行だったと言う描写が幾つもあった。

 とするならば、今なのはがティアナにさせようとしている事も、ユーノに抱かれて
枕営業する中で、知らず知らずの内に飛行技術を付けさせる何かがあると見て間違いは無い。
そう考えれば、ティアナの決意は固まった。

「やります! 私にやらせて下さい!」
「え!? 本当にやるのかい!?」

 先程までの恥じらいが嘘の様に自分から服を脱ぎ、ユーノの目の前で下着をも堂々と剥ぎ取り
素っ裸になってのけるティアナにむしろユーノの方が戸惑ってしまうのであったが、
しかし、ティアナの気持ちを汲んでユーノも決意を固めた。

「よし分かった。じゃあとりあえずベッドの上に寝そべってごらん?」
「ハイ…。」

 こうしてなのはの見守る中、ティアナは全裸でベッドに寝そべり、試練が始まる。

377ティアナが飛んだ! 4 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:29:08 ID:FXgPlWzE
「それじゃあ行くよ。」
「はい…………ん!」

 ユーノはベッドに寝そべったティアナの乳房に手をかけ、優しく握った。そうするとティアナの乳房の膨らみに
ユーノの指が少しだけ沈み込んだ。そしてその感触によりティアナも思わず声を上げてしまった。
過去に朝起きたらスバルに乳揉みされてました事件等があったが、ユーノに揉まれるのはスバルのそれとは
全然違っていた。

「(あ…あ…これが男の人の手………スバルのとは…全然違う…。)」

 ユーノはティアナの乳房をただ揉むのみならず、前後左右に押しては引き、グルグルと回転させたりもした。
そしてティアナの乳房の肌から伝わるユーノの指は、ティアナに今まで感じた事の無い何かを感じさせていた。

「それじゃあ次は…。」
「あっ!」

 次にユーノが行ったのはティアナの乳房の先端に輝く乳首に吸い付く事だった。
未だ誰にも吸われた事の無い敏感なティアナの乳首に、ユーノの口が吸い付き、その舌で
乳首を嘗め回して行く。これでティアナが感じないはずが無い。

「ああっ! (くっ…くすぐったい…。)あああ!」

 ユーノはティアナの乳房を手で揉みながら、その左右の乳首を交互に吸って行く。
その初めての感覚はティアナの敏感な乳首には一溜まりも無く、部屋の中にはティアナの
喘ぎ声が響き渡り、何度もビクビクと痙攣させてしまう程だった。

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…。」

 ユーノが一時的に手を止めた時、ティアナの全身の綺麗な柔肌から汗が吹き出て来る程だった。
確かにティアナはなのはから毎日みっちりと訓練を受け、体力に自信はあった。
しかし、この無限書庫最強の生物ユーノ=スクライアの愛撫は、それらが
一切役に立たない程にまで…勝手の違う物だった。

「(こ…これが…これが男の人………女とは全然違う……凄い……凄すぎるよ…。)」

 ティアナの目には涙が浮かんでいた。ユーノはただティアナの乳だけを愛撫したと言うのに
ティアナは未だかつて無かった程にまで興奮していた。しかしこれがもしも、今の様に
ティアナに優しくしてくれるユーノでは無く、凶悪時空犯罪者に捕まって、乱暴を受け、
命の危機を感じながらレイプされると言う状況に陥った場合どうなってしまうのか?
そう考えるだけでティアナは怖くなって来た。

「あの…君……大丈夫かい? 何か青くなってる気がするんだけど…。」

 今のティアナの様子はユーノにも良く分かり、心配になっていたが、次の瞬間だった。
何とティアナが自分からユーノに対して脚を大きくM字に開いていたのである。

378ティアナが飛んだ! 5 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:30:34 ID:FXgPlWzE
「ユーノ先生! して下さい! 私…怖いんです! 凶悪時空犯罪者に犯されて
処女奪われるのが…怖いんです! だから…だから…私の処女…ユーノ先生にあげます!
時空犯罪者に犯されるかもしれないって恐れている自分自身を………忘れさせてください!」
「うわお! ティアナったら大胆!」

 自分からユーノに処女を差し出し始めたティアナの姿はなのはですら思わず赤くなってしまう程だった。
しかし、そのティアナの気持ちを悟ったユーノに戸惑いの色は無かった。

「分かった。ならば…君の処女は…僕がいただくよ。」

 意を決したユーノはティアナに対し、自分自信の男根……男性器を露とした。

「キャッ!」

 確かにティアナもその存在を知っていた。まだ幼かった頃に、今は亡き兄と共に風呂に
入った事も度々あり、その兄の股間にぶら下がるソレを見た事も当然あった。
しかし、既に勃起していたユーノの一物は…そんな彼女の想像を絶する程にまで
太く、長く、そして固かった。しかしこれこそが…これこそがこれからティアナの膣口に
潜り込み、処女を奪う一物なのである。

「さあ行くよティアナ。」
「は…ハイ…。」

 時空犯罪者に犯されてしまう位ならユーノに処女捧げた方がマシと考えていたティアナだが、
いざユーノの一物の先端部分が自分自身の処女膣口にキスをする所を目の当たりにした時、
やっぱ時空犯罪者に犯されてた方がマシなんじゃないかとすら考え直し始める程でもあったが、
そうこうしている内にユーノの固い一物はティアナの柔らかい膣口をこじ開けながら潜り込んで行き…

「痛!!」

 ティアナは激痛を感じた。そしてユーノの一物の潜り込んだ膣口から赤い血が流れていく。
そう、ユーノの一物が…ティアナの処女膜を…貫いたのである。
ユーノの巨大な一物がティアナの処女膣にねじれ込まれる様は、破瓜の痛みの他にも
強烈な圧迫感と、全身に電撃が走る様な感覚を彼女に与えていた。

 ティアナの処女はこうしてユーノによって奪われた。しかし、それもまだ序章に過ぎない。
これから本格的にユーノとのSEXが始まるのである。

379ティアナが飛んだ! 6 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:31:51 ID:FXgPlWzE
「あっ! くっ! うっ!」

 ユーノの巨大な一物がティアナの膣を何度も突き上げ、ティアナはただただそれに合わせて
腰を突き動かすしか無かった。破瓜の痛みも大分収まって来たが、逆にここまで来てしまうと、
苦しい様で気持ち良く、気持ち良い様で苦しいと言う何とも言えない感覚をティアナは感じていた。

「あっ! あんっ! くぁ!」

 ティアナは全身汗だくになりながらも、必死にユーノの突きに耐え腰を動かしていた。
ティアナは確かになのはに課せられる教導の中でかなりの力を付けて来たはずである。
そしてそれらはティアナに大きな自信を付けさせるに至っていたはずなのだが………
ユーノの愛撫の前には全てが無意味だったとしか思えなくなる程であった。しかし………

「そろそろ痛くなくなっちゃったんじゃないかな? これから本番を始めるよ。」
「え!?」

 笑顔でさらりと凄い事を言うユーノにティアナの目は大きく見開いた。
確かにユーノは今までも充分過ぎる程にまでティアナを激しく突き上げて来たはずだ。
しかし、ユーノはそのさらに上の領域を持っていたと言うのである。流石は無限書庫最強の生物!

「ハッ…………………………!!」

 ユーノのさらに強烈になった突きの前にティアナは喘ぎ声を上げる事すら出来なかった。
先程までのそれでもティアナは既に汗だくになる程疲れ切っていたと言うのに、
さらにそれ以上強くされてしまえば、肺が圧迫され、声を出す事さえままならなかった。

「(息……苦し……ダメ……気をしっかり持たなきゃ……我慢しなきゃ……。)」

 ティアナは問答無用で突き動かされる中で必死にそう考え、耐えた。

 しかし、不思議な事にティアナがユーノの突きを耐えようとすれば耐えようとする程、
ユーノの突きはそれ以上に激しくなって行く様な感覚を感じ、しかもどんどん気持ちよくなっていく。

380ティアナが飛んだ! 7 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:34:38 ID:FXgPlWzE
「(だっダメ……快感に負けちゃダメ……負けちゃダメだよ……でも……気持ち良いよぉ………。)」

 ティアナはもうこれ以上は耐えられない。ユーノの突きの前に屈し、どんどん何も考えられなくなる。
その時のティアナの顔はもはや…俗に言う所の『アヘ顔』と呼ばれる物になっていた。
そして、彼女の開かれた口から、この様な言葉が飛び出したのだ。

「とっ……飛んじゃ………飛んじゃ………飛んじゃうぅぅぅぅぅ!!」

 ティアナは快感の余り、意識が飛んでしまいそうな状況にまで追いやられていた。
世の中には苦痛と快感は表裏一体と言う物もいるが、まさにその通り。
ユーノのティアナに対する愛撫から来る凄まじいまでの快感はティアナの身体のみならず
その心さえも追い詰めてしまうレベルに達していた。

「飛んじゃ………飛んじゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「よし! 今だ! 飛んで行け!」

                   びゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 直後、ユーノはティアナの膣内に射精した。しかもただの射精では無い。
その射精の勢いによって、ティアナは股間から大量の潮を吹きながら
まるでペットボトルロケットの様に発射されたのだ!

 ユーノの下から大きく飛び上がったティアナはそのまま天井を突き破り、何処へと飛び去った。
そしてなのはは天井に開いた穴を見上げていた。

「わー凄い! ティアナが飛んだ!」

 こうして……ティアナは身も心も……飛んだ。

                     おしまい

381 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:35:45 ID:FXgPlWzE
ティアナが飛べる様になるとするなら、こんな感じだろうな〜と思って作ったお話。

382名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 11:36:45 ID:e0.nACiM
ラストwwww

383名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 11:51:00 ID:cmXddjPE
ああ、こっちの飛ぶかぁ。とか思ったら最後wwwww
いや、素晴らしい

384名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 14:00:42 ID:P6BPhPZY
まったく貴方はwwwwwwww
っていうか先日のなのスカといい、既に様式美の域に達していると言わざるをえない



……………やっぱ最後吹いたwwwwwww
その発想はなかった。むしろしちゃいけなかった

385名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 15:05:04 ID:ZcC7Y7RU
空を自由に飛びたいな♪
ハイ、白い粉♪

くらいの格式美
GJでした

386名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 15:18:11 ID:OjFb4hfw
ラストwwねーよwww

387名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 17:36:02 ID:TJLoSlf2
初めてEPのSSで笑ったwwww
GJ!!

388名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 17:49:26 ID:QyQxupLo
笑いすぎて腹痛いwww

389名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 22:16:07 ID:yPh0.FWM
アインハルト陛下のオナニーを見たい

390名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 13:11:31 ID:IidLFS4w
カンセル×ヴィータ希望

391名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 20:37:04 ID:8UknOGLc
・・・港湾特別救助隊のターセル主任の事を言ってるのだろうか?

392名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 21:11:28 ID:vpk20sMU
>>52
2期ラストとか漫画版でエイミイに散々茶化されてなかったっけ?本人も全く否定してなかったし

393名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 21:16:21 ID:vpk20sMU
>>392
ごめんなさい。思いっきり誤爆しました。携帯だと一度に全部見れないので、とんでもない所にレス付けました。大変申し訳ございません

394名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 21:59:38 ID:1yx4WAHU
どんまい!

395ザ・シガー:2009/12/24(木) 23:11:31 ID:oNTzfdZw
メぇぇぇ〜リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁースぅ!!

よう! エロパロの良い子エロい子の皆! 元気!?
俺! 俺だよ俺! ザ・シガー!
俺? 俺は超元気! もう死にたいほど元気!


で、エロパロのブラザーにプレゼント投下しにきたよ!
って訳で投下するよ!!


前々から書く書くと言ってたギン姉SS!
全部で三篇の第一回目、一応非エロ!
カプは本編で出番のほとんとないあの人!!

396ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:13:01 ID:oNTzfdZw
ギンガの恋路 (前編)



 さて、それは何年前の事だったか。
 少なくとも当時の彼女は、今の容姿からは想像できないくらいあどけなく、幼い少女だった。


「は、はじめまして。本日付けで入隊する事になりました、ギ、ギンガ・ナカジマ二等陸士です」


 声と共にぺこりと頭を下げ、ギンガはこれから自分の上司となる男に挨拶する。
 その頃の彼女の階級は今の陸曹ではなく二等陸士で、階級だけでなく顔も体もてんで子供だった。
 顔は14歳の少女の、年相応の童顔。
 身体も女性らしい凹凸なんて欠片もない、可愛らしいなだらかなラインを描いている。
 そんな少女に、上司であり先輩でもある男は笑顔で応えた。


「ああ、よろしくなギンガ君。俺はラッド・カルタス陸曹、今日から君の上司だ」


 鋭い眼差しを細め、カルタスは可愛らしい後輩に優しく笑った。
 それが二人の初めての出会い。
 ラッド・カルタスとギンガ・ナカジマの、初対面の思い出だった。





「ふう……」


 夕刻の茜の光が差し込む陸士108部隊のオフィスで、彼女の口から疲労を孕んだ息が漏れた。
 その日のデスクワークを終えた少女はオフィスチェアの上で、うん、と背を伸ばし、身をしならせる。
 背筋を伸ばした事で胸に実った二つの豊かな果実が強調され、その豊満なラインを見せ付けた。
 熟れたボディラインに、ふわりと揺れる蒼の長髪、そして麗しい美貌。
 108部隊に入隊してから3年を経て美しく成熟した、ギンガ・ナカジマという少女である。
 現在部隊が対応している捜査の事件資料を纏め、もはや後は家路に就くだけ。
 デスク上で人工光を放つディスプレイの電源を落とし、ギンガは周囲を見渡した。
 窓から差し込む光は既に陽光から月光に移りつつあり、同僚の姿はほとんど見当たらない。
 もう残っているのは自分だけだろうか。
 そう思った彼女の思慮は、だがすぐに裏切られた。


「あ……カルタスさん」


 名を呟いた先には、男がいた。
 ギンガの腰掛けた位置から数メートル先、他の席から少し距離を置いて鎮座する捜査主任の席に腰掛けた男。
 切れ長の瞳、ややこけた頬、僅かに白髪の混じった黒い髪をオールバックに整えた偉丈夫。
 陸士108部隊捜査主任と二等陸尉の肩書きを持つ男、ラッド・カルタスその人である。
 彼もまたギンガと同じく、捜査に関するデスクワークの残業をしていたのだろう。
 集中した面持ちで机上のディスプレイを見つめ、キーを叩いている。
 が、ギンガの呟きを聞いたのか、彼は視線を上げた。
 捜査官として何度も危地を潜り抜けた、奥に鋭さを内包した切れ長の瞳が少女を捉えた。
 一瞬胸の奥をざわめかせ、ギンガは背筋を伸ばす。
 それは緊張と、そしてそれ以上の甘酸っぱい感情からの反応だった。
 されど少女の胸の内など知らぬ男は、いつもの通りに冷静な言葉を紡ぐ。


「ギンガ、まだいたのか」
 
「あ、え……はい」


 カルタスの言葉に、ギンガはやや口ごもりつつ答える。
 差し込む夕の光の中でカルタスには分からなかったが、少女の顔はほんのりと朱色に上気していた。
 理由は、やはり彼の眼差しだろう。
 静かに、鋭く、人の心の奥底まで見透かしそうな辣腕捜査官の視線。
 何よりギンガにとっては、ことさら特別な視線だった。
 長時間のデスクワークで疲れた目を指でこすりながら、カルタスはオフィスチェアに身を預け、また言葉を連ねた。


「もう帰ると良い。随分遅くなったし、事件資料ももう随分纏まってるだろう?」

「え、ええ。そう、ですね」


 彼の問いに答えつつ、ギンガは手元でもじもじと指を遊ばせる。
 言葉を言い出そうとし、だが言い出せず。

397ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:13:42 ID:oNTzfdZw
 何度か口を意味もなく開き、少女はたどたどしく言の葉を紡いだ。


「あ、あの……良かったら一緒に帰りませんか? その……たまには一緒に夕食でも……」


 夕焼けの茜色に溶けそうなくらい頬を赤くし、告げたのは夕餉への誘いだった。
 込められたのは初々しく、そして甘い感情。
 淡い期待を孕んだ乙女の誘いを、だが男は冷たい響きで返した。


「すまん。悪いが俺はもう少し残って仕事を片付けるよ」


 鋭い容貌に眉尻を下げた苦笑を浮かべ、カルタスが告げたのは穏やかな拒絶。
 その言葉にギンガの表情が曇るが、しかし彼はすぐに視線をディスプレイに戻したので気付く事もない。
 豊かな胸の前で少女が手を固く握り、哀しげな色を瞳に溶かした事をカルタスは知らない。
 知る由もない。
 もはや目の前の画面しか見ぬ彼に、ギンガは何度か声を掛けようと口を開く。


「……」


 しかし、紡ごうとした声は出でる事無く。
 虚しく無音を刻み、乙女は今日もまた自分の想いを胸の内に仕舞いこみ、


「じゃあ……お先に失礼します」


 蚊の鳴くような声でそう告げてオフィスを後にした。
 




 茜色に燃え上がる夕焼けの光が沈み行き、紫色の残滓を残して夜へと移る空の下、ギンガは家路を歩いていた。
 その日の空が美しき情景を描こうと、頬を涼やかな風が撫ぜようと、乙女は物憂げな顔を俯かせている。
 理由はたった一つ。
 先ほどのカルタスとのやり取りである。
 彼女がああしてカルタスを誘ったのは、これが初めてではない。
 今まで何度も彼を誘っては二人の時間を作ろうと摸索してきた。
 結果は芳しくなく、成功した事はあまりない。
 その事を思い返し、少女は力ない溜息を吐いた。


「はぁ……やっぱり今日も駄目だったかぁ……カルタスさんったら、私の気持ちも知らないで……」


 と。
 ギンガは誰にでもなく、独り言を呟く。
 それは彼女が燻らせ続けている恋心のささやかな吐露。
 そう、ギンガ・ナカジマという少女は、ラッド・カルタスという男に恋をしていた。
 自分より一回り年上の、頼れる先輩であり上司でもある男に抱いていた尊敬の念が恋に変わったのは果たしていつ頃なのか。
 ギンガ自身にもそれは分からない。
 敢えて答えるならば、いつの間にか、だろうか。
 気付けば視線は彼を追い、胸の中には彼への想いが満ちていった。
 そして、少女が自分の中に芽生えた、甘く、淡く、切ない気持ちは恋だと気付いたのはつい最近。
 故にギンガはカルタスとの距離を縮めようと、今日のように彼を誘っていた。という按配である。
 しかし前述のように、彼女の誘いが成功した例は少ない。
 ラッド・カルタスという男は基本的に気さくで人当たりの悪い人間ではないが、どこか仕事をプライベートより優先する節がある。
 故に、先ほどのように仕事帰りの食事の誘いを断ることも少なくない。


「今度は休日に買い物でも誘ってみようかな……あ、でもいきなり二人でなんて……」


 顎先に指を当て、ギンガは歩みながら思慮を巡らせた。
 どうしたら彼と一緒の時間を作れるか、どうしたら彼に自分を意識させられるか、どうしたらこの想いを実らせられるか。
 今まで幾千幾万と繰り返してきて、そして今もまた幾千幾万とシミュレートする理想の仮想。
 されど成功した試しのない夢想。
 少し虚しいな、とは思う。
 だが、諦めよう、とは思えない。
 レールウェイの駅が近づき、ギンガは今度の休日にカルタスを誘う誘い文句を思案しながらバッグに手を入れた。
 サイフに入れたIDで駅の改札を通る為だ。

398ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:14:22 ID:oNTzfdZw
 が、しかしそこにはあるべき感触がなく、カバンに突っ込んだ彼女の指は虚しく空を掻いた。


「あ、あれ?」


 疑問符と共に何度もカバンの内を漁るが、目的の物は出てこない。
 カバンだけでなく服のポケットも探したが、結局サイフは見つからなかった。
 果たしてどこで無くしたのだろうか。
 少なくとも朝出勤する時は確かに持っていたし、使いもした。
 ギンガは記憶を遡り、そして思い出す。


「あ、そういえば……机の上に」


 オフィスで自分の机の上に置いたのを。
 
 



「あれ?」


 忘れ物を取りにオフィスに戻ったギンガが発したのは、疑問符の一声だった。
 理由は光。
 既に勤務時間を随分と過ぎた時分、誰もいない筈のオフィスは蛍光灯の白光が満ちていた。
 最後に残っていたのはカルタスだったが、彼が帰る際に消し忘れたのだろうか。
 自分のデスクの上にあったサイフをポケットに仕舞いながら、ギンガはそんな事を思う。
 が、その考えは次の瞬間、ギンガの視界に映ったものに否定された。
 オフィスの一角に鎮座するソファの上に、見覚えのある人間が寝そべっている。
 寝やすいように乱雑に制服のネクタイを緩め、上着をシーツ代わりに身体に掛けた男。
 ラッド・カルタスの姿だった。
 

「カルタスさん……」


 彼の名を呟き、ギンガはそっと近寄る。
 近くで見れば、カルタスは随分と酷い様だった。
 寝不足になる程仕事した為か目元には隈が浮かび、眉間には浅くシワまで刻まれている。
 服もずいぶんとよれよれで、もしかしたらこうやってオフィスで夜を過ごすのも初めてではないのかもしれない。
 彼の立てる寝息は静かだが、しかし深く連なる。
 仮眠のつもりがいつの間にか本気で寝入ったのだろうか、それとも最初からこうして夜を明かすつもりだったのか。
 それは分からないし、分かりようもない。
 ただ分かるのは、彼がこんな風に消耗している様を見て切なくなる自分の気持ちだけ。


「もう……こんな所で寝て、風邪でも引いたらどうするんですか?」


 その場で膝を突いてソファの上で眠る彼の顔を覗き込み、ギンガは問うた。
 もちろん答えを期待しての問いではなく、目の前の彼を見て自然と口から漏れた言葉だ。
 少女は手を伸ばし、眠るカルタスの髪をそっと撫でた。
 オールバックに整えられた髪には幾本か白いものが混じり、自分と出会ってからの月日を感じさせる。
 初めて会った頃は、確か全てが黒く染まっていた。
 いつしか全て白くなってしまうのだろうか、果たしてそれはいつか。
 そして、その時までに自分の想いは伝えられるだろうか。
 まったく無意味な妄想で、だがどうしても考えてしまう。
 彼の髪を無心に撫でながら、ギンガは堪らない切なさを感じた。


「まったく……人の気も知らないで……」


 自分が抱く恋心など知りもせず、仕事に明け暮れて疲れ果てた男へと乙女は呟く。
 そして、いつの間にかギンガは彼へと身を寄せていた。
 まるで寂しがり屋の子犬が主人に甘えるように、寒さの中で温もりを求めるように。
 窮屈そうに制服に包まれた膨らみを彼の胸板に重ね、吐息が掛かるほど顔を近づける。
 静かに脈打つ鼓動が、柔らかな乳肉を通してギンガに伝わり、しかし彼女の中では鼓動は逆に早まっていく。
 肌に伝わる彼の体温が、身体の芯まで響く彼の鼓動が、鼻腔に溶ける彼の匂いが。
 その全てがギンガの心を甘く蕩かせていく。
 もう、彼女はそれ以上自分の心を抑える事が出来なかった。
 カルタスの肩に手をやり、より一層と身を寄せていく。

399ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:14:53 ID:oNTzfdZw
 ゆっくりと、ゆっくりと。
 何度か理性が制動をかけるが、恋慕に脈打つ心がそれを砕き。
 そして、遂に身は重なる。
 

「んぅ……」


 少しかさついた男の唇に、艶やかに潤う乙女の唇が触れた。
 それは少女が初めて味わう口付けという名の愛撫。
 今までキスはおろか男性と付き合う経験もなかったギンガであるが、間近で感じた愛する男の鼓動と熱が普段の清楚さが嘘のように彼女を大胆にさせていた。
 夢や空想でしか交わさなかったファーストキスに、乙女は夢中で溺れた。
 唾液を貪る事も、情熱的に舌を絡ませる事もない、稚拙な愛撫ではある。
 されど、産まれて初めて味わう愛する男との口付けは甘美で、少女の心を甘く潤した。
 重ね、触れ合わせただけのキスは身じろぎする度に唇から淡い快感をもたらし、ギンガをどんどん蕩かせていく。
 最初は戸惑いを感じていた筈の心はいつの間にか、もっともっと、と彼を求めていた。
 求める心に身体は従順に応じ、身を重ねる。
 豊かで柔らかな乳房をより一層押し付け、唇を強く触れ合わせていく。
 抑圧され、秘され続けた感情の発露は容易に納まってはくれず。
 しばしの時、ギンガは我を忘れて、時を忘れて、口付けに没頭した。
 一体どれだけの時間を彼と繋がっていたのだろうか。
 唇を重ね続け、いつしか息苦しさを感じたギンガは、最初にした時と同じようにゆっくりと顔を離した。
 音もなく身を離し、少女は今まで瞑っていた瞳を静かに開く。
 そして、ギンガは見た。


「あッ……え?」


 しっかりと見開かれた、カルタスの切れ長の瞳がこちらを見据えるのを。



続く。

400ザ・シガー:2009/12/24(木) 23:18:29 ID:oNTzfdZw
はい投下終了!!

という訳で次回に続く! ギン姉の恋路や如何に!?
とりあえず年明けまでには全部投下したいね!!


てかもう、最近投下減ってごめんね!
一応書いてるよシコシコ!!
鉄拳最新話は40%、ヴィータメインのヤツは10%ってな具合で、投下できるクオリティと量に達しなくてな!

まあ書く書く詐欺にならないように頑張ります!
ちう訳でブラザー共よいクリスマスを!

メぇぇぇ〜リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁースぅ!!

401名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 23:20:23 ID:.nn774tg
プレゼントって寸止めですかぁー!

402名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 23:52:23 ID:D/vYQjHc
メリークリスマス!
独り身の聖夜にシガー兄貴のSSを読めてありがたや。
鉄拳続編も期待してるんで、がしがし書いてくれ!

403名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 23:59:56 ID:77E8dqy.
年内ってあと一週間しかないじゃないですか!

でもGJ!

404Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/25(金) 00:03:32 ID:zlV808uk
メリークリスマス!!

>ザ・シガー氏
おおぅ、グッジョブ。続きを楽しみにしてますよ。

さて、早速投下したいんですが大丈夫ですかな?

405名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:07:06 ID:1wAGMS8A
おkおk

406ザ・シガー:2009/12/25(金) 00:07:31 ID:awuKqnTU
れっつごー!!!

407Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/25(金) 00:08:24 ID:zlV808uk
ではでは、行きますよ〜。

・非エロ
・ユーなの短編集シリーズ
・ヴィヴィオ大活躍

408バカップル看病日記 1/15:2009/12/25(金) 00:08:57 ID:zlV808uk
──笑っていてよ、僕だけの天使──

「お疲れ様でしたー」
「はい、お疲れ様」
日も早く落ちるようになった宵の口、なのはは新人達の教導を終えて、家路に着こうとしていた。
ロッカールームでフェイトと会い、世間話なぞをしている間に、それは起きた。
「くしゅっ」
「ん、なのは、風邪でも引いた?」
小さなくしゃみ。
その時は、ただそれだけだったが、これが後に大騒動を起こすことになろうとは、なのはは知る由もなかった。
「ううん、誰かが噂してるだけじゃない?」
「そう、それならいいんだけど」
フェイトの中に妙な違和感が生まれたが、それが何なのかは気付かなかった。
なのははもう一度だけくしゃみをすると、厚手のコートを羽織って管理局を後にした。

「ただいまーっ!」
もう完全に愛の巣と化したアパートに戻ると、ちょうどユーノとヴィヴィオが食事を作っているところだった。
開口一番ユーノに抱きつくと、なのはは暖かなその顔に頬擦りする。
「な、なのは、早く手を洗ってきなよ」
「うん〜、でもあなたの成分を取る方が先なの!」
横でヴィヴィオが鍋を掻き混ぜている。見えぬ聞かぬを決め込んでいるようだった。
なのはは、ユーノから一瞬でも離れたら露と消えてしまいそうな顔を作って、洗面所に向かった。
そういえば、ヴィヴィオは今日で学校がお休み。明日からは冬休みだ。
日本では明後日は旗日だが、ミッドチルダに天皇などいるはずもなく、単なる平日であり、クリスマスもまた然り。
週末はどう過ごそうかな、となのはは心を浮かせながら考えていた。

一方のヴィヴィオは剥き終ったジャガイモの皮ほども興味を示さず、料理の味付けを細かく作業に精を出していた。
というか、どこの誰だって半年以上隣でいちゃいちゃされたら誰だって無感動になる。
万年新婚バカップルは当事者だけなのだ。
手を洗って戻ってきたらしいなのはが、早速ユーノにひっついてキスの嵐を浴びせている。
まんざらでもないユーノを見ているのも、ベタベタしているなのはを見るのも、実は好きなのだけれど、
それを認めるのはなんだか何かに負ける気がした。何に負けるのかは別問題としても、ちょっと悔しい。
何が悔しいのやら、ヴィヴィオにはまだ分からないのだった。
学校の皆でワイワイと騒ぐ、二日後に迫ったクリスマスパーティーが何よりも楽しみだった。
なのは達が持ち込んだ風習が真っ先に根付いた学校は、ザンクトヒルデが最初かもしれない。

***

夜。
なのはがユーノとベッドに入り、しばらく経った頃。
二人は雨あられとキスを繰り返し、ユーノはなのはのシャツに手を掛けていた。
「あっ……あんっ、あなたぁ」
「なのはの恥ずかしいところ、もっと見せて」
「やぁっ、ふぁっ……ふぁ」
ユーノはなのはの肢体に夢中で、その顔がいつもより更に上気していることに気がつかなかった。
乳房を優しく掴み、手のひらで丸く転がしていると、なのははいつになく強い力でユーノを抱きしめてきた。
「ん、なのは、今日は積極的だね?」
「や、いや……」
腕を解くと、ユーノは全身をくまなく愛撫する。
首筋に、頬に、二の腕に、背中に、ヘソに、太ももに、キスの嵐を浴びせていく。
そして、いよいよと唇にキスしようとした時、なのはは妙な顔を作った。

409バカップル看病日記 2/15:2009/12/25(金) 00:09:29 ID:zlV808uk
「ふぁ」
「ふぁ?」
すっぽ抜けた声に、ユーノは一瞬動きを止める。
それがいかなかった。
「ふぁ、ふぁ、ふぁ……ふぁっくしょん!! ……あっ、あなた、ごめん……なさい?」
ユーノの顔は洟やら涎やらですっかりコーティングされていた。
別に構わないよ、とティッシュを取って顔を拭いたユーノだったが、そこで初めてなのはが何かおかしいことに気付いた。
視線が宙を浮いている。顔の紅みも尋常ではない。
ゆらり、ふらりとなのはは身体を揺らすと、ドッと倒れ込んだ。
「ふにゃ〜? あやや、ユーノ君が、三人? どういうこと〜……分身〜?」
ユーノは慌ててなのはに下着パジャマを着せると、大急ぎで部屋を飛び出した。
電話に向かう途中、トイレに行くヴィヴィオと鉢合わせしてしまい、「パパ、どうして裸なの?」と疑惑を植え付けられてしまった。

「ごほっ、ごほっ、くしゅっ、くしゅん!」
「ごっ、ごめん。なのはが体調悪いだなんて、全然気付かなかったから」
「ううん、いいの。わたし、風邪引くなんて凄く久しぶりだったから、全然分からなかった……」
熱は、8度7分。
医者を呼んで診て貰ったが、過労が重なって抵抗力が落ちたところに丁度誰かから貰ってしまったようだ。
診断は、単なる風邪。但し、原因が原因なだけに、二三日は絶対安静を命じられた。
薬は五日分を処方され、ユーノが支払いを済ませると、帰りがけ、医者は白衣をさっと翻らせた。
「余計なことは言わないけどね、ちゃんと奥さんのこと、見てやんないと。彼女はいつも無理するんだろう?
そうそう、もう一つ。君も数日休んだ方がいい。疲れているようだし、下手に看病していると感染るよ」
医者は帰った。後ろで成り行きを見守っていたヴィヴィオが、くいくいとユーノの裾を引っ張る。
振り向くと、ヴィヴィオは今にも泣き出しそうな顔で、鼻を赤くしていた。
「ね、ママ大丈夫だよね? パパも、寝込んじゃダメだよ? ヴィヴィオ、いっぱい頑張るから……」
ユーノの目頭が熱くなったのは、その健気な姿だけではないだろう。
微笑みを作って、ヴィヴィオの頭に手を置き、ぽんぽんと撫でた。
「大丈夫だよ。無敵のママが、風邪くらいで負けちゃう訳がないよ。でしょ?」
「……うんっ」
ヴィヴィオはごしごしと目を擦り、グッと気合を入れた。本当に強い子だと、改めて感じる。
なのはは早速薬を飲んで、もう寝ているだろう。ユーノはヴィヴィオの手を引いて、ベッドに戻った。
娘の身体を抱いていると、ヴィヴィオは頭をくいと逸らしてユーノの顔を見上げた。
「私、今日で学校終りなの。明日から冬休みだから、洗濯とか、料理とか、全部任せて!
パパも、ママも、明日からはゆっくりしてて」
街灯の薄明かりで見るヴィヴィオの表情からは、鋭い決意が宿っていた。
色違いの両目から発せられる光は、なのはとまったく同じだ。
何年も見続けていた、一度決めたらまっすぐにどこまでも突き進む少女は、いつしか母親になり、
娘にしっかりと受け継がれていた。
そして、こうなると、絶対に引かないということも、ユーノはよくよく熟知している。
「ありがとう、ヴィヴィオ。それじゃ、お願いしようかな」
「うん!」
自分の強い想いが通じたヴィヴィオは、すぐに目を閉じ、あっという間に寝息を立て始めた。
ユーノもごろりと寝返りを打つと、枕に頭を押し付けた。

翌朝、真っ先にユーノがしたことは、クロノに電話をかけることだった。
「おはよう、クロノ。元気にしてる?」
「ようやく航行から帰ってきた僕に、よくまあそんなセリフを吐けるな……」
不機嫌そうなクロノの声は、どこかに安堵が含まれている。
きっと、聞き慣れた声を久しぶりに耳にしたからだろう。
「で、今日は朝っぱらから何の用なんだい。僕は早くエイミィと子供たちの顔を見たいんだ」
「あー、うん、その前に一仕事して欲しいなあって」

410バカップル看病日記 3/15:2009/12/25(金) 00:10:14 ID:zlV808uk
受話器の向こう側で、露骨に舌打ちをするのが聞こえた。
だが、これもまた旧友とよくやるやり取りの一つだ。ユーノだって、無限書庫で仕事を貰う時、同じことをする。
『で、何?』とぶっきらぼうに聞くクロノに、ユーノは言った。
「僕となのはの有休を取って欲しくてね。書庫で今日、大規模な搬入があるはずだから、
僕一人で申請してもどうにかなりそうにないんだ」
クロノは「ああ」と合点の行った様子を見せた。
どうやら、その搬入はクロノの仕事で発生したもののようだ。
「それ自体はこっちの人員を寄越すから構わないけど、一体全体どうして今日なんだ? なのはの誕生日だったか?」
「いや、なのはは3月でしょ……」
ユーノは掻い摘んで状況を説明した。
風邪で倒れたこと、ユーノ自身も休養が必要だと医者に警告されたこと。
そして何より、今日からヴィヴィオが冬休みに突入してしまったこと。
「管理局のエース・オブ・エースが風邪……ねえ。なのはもやっぱり人間だったってことか」
しみじみと、クロノが思い出す。十年も前に倒れてから、そういえば流行病や怪我で動けなくなったことはない。
それだけ体調管理がしっかりしていたのだから、今このタイミングで倒れたのはやはり不思議に思える出来事なのだろう。
「まあ、いいよ。僕が何とかしておく。でも、その前に申請を出しておけよ。
お前より先に書類出すなんて、筋が通ってないんだから」
「分かってるよ。それじゃ、お願い」
「いいさ。そっちも久しく家族で過ごしてないんだろう? 水入らずで過ごせよ」
「君もね」
受話器を置くと、味噌汁の香りが漂ってきた。
時計を見ると、大分長電話をしてしまっていたことに気付く。もう、ヴィヴィオは起きだして早速朝ごはんを作っているようだ。
「あ、パパ、おはよう。今日は玉子焼きだよ」
味噌汁の鍋を見ると、色とりどりの野菜が入っていた。
柔らかくなるまで弱火でじっくりやれば、なのはでも食べられるようになるだろう。
別の鍋には、コトコトと煮られるおかゆ。これまた、なのはのお腹には優しいだろう。
本当に気が利く。ユーノが料理を作っていたら、なのはは食べられなかったかもしれない。
「パパはテレビでも見てて。私が全部やるから」
キラキラと輝く瞳。誰かのために役に立てて、活気が沸いている。
ユーノは「ありがとう」と言って、居間に戻った。が、ふと思い立って、なのはの眠る寝室へと向かった。

なのはは疲れがよほど溜まっているのか、起きる気配がない。
顔はまだ赤く、息も浅く多い。
枕に触れると、随分と熱を持っていたので、氷枕を取ろうとキッチンに戻った。
ヴィヴィオが料理に夢中になっている隙を上手いこと突いて、氷枕とタオルを取りあげる。
寝室に戻ると、なのはは寝返りを打っていた。
こうして見ると、なのはは決して完全無敵の完璧超人ではなく、ただ一人の女性なのだと気付かされる。
なのはを起こさないよう、慎重に頭をどけると、枕の上に氷枕を敷いて、また元に戻した。
──と、ここでなのはが起きてしまった。ぱちぱちとまぶたをしばたき、ユーノの顔を見ると、ふにゃりと顔を綻ばせた。
「うわぁ、ユーノ君がいっぱいー……幸せー」
完全に夢現のようだ。目が虚ろで、本当にユーノをしっかり捉えているのか分からない。
というか、人が何人にも分裂しているのは、寝起きだからなのか、熱に浮かされているからなのか。
「なのは、なのは……大丈夫?」
こうなったら目をハッキリ覚まさせて、何か食べさせた方がいい。
肩を軽く揺すってやると、むっくりと起き上がって、左右をキョロキョロと見た。
そしてまた横になると、布団を被って寝た。
「ちょ、なのは! 起きて、起きてよ!」
ゆさゆさと、さっきよりも少しばかり強い力で揺すってやると、なのははようやく目を覚ましたようだった。
ユーノの姿をまじまじと見た後、ガバっと抱きついてきた。
でもそれは、いつもより弱々しくて、覇気が欠けていた。

411バカップル看病日記 4/15:2009/12/25(金) 00:10:54 ID:zlV808uk
「おはよう〜、あなた〜……待っててね、今ご飯作る……から」
鼻声になってしまい、やや聞き取りにくい。
早速ベッドから起き上がろうとするなのはを、ユーノは肩を押さえて差し戻した。
キョトンとしているなのはにユーノは優しく語りかける。
「いい、なのは、君は風邪を引いてるんだ。昨日医者にも言われたでしょ、『安静にしていなさい』って」
それでやっと昨夜のやり取りを思い出したのか、シュンと項垂れた。
でも、だって、あらゆる言い訳を考えて、何が何でもユーノのためにご飯を作る気だ。
とても嬉しいことなのだが、かといってそれを許す訳にはいかない。
ユーノはなのはをしっかり寝かしつけると、自分の鼻を指差した。
「なのは、何か匂いしない?」
「え? んー……鼻が詰まっててよく分からない」
ユーノがティッシュを差し出し、洟をかませると、なのはは台所から漂ってくる匂いに気付いたようだ。
ヴィヴィオが料理を作っているのだと説明すると、安心と不安が複雑に入り乱れた表情を作った。
「大丈夫、ヴィヴィオ? 包丁で指切ったりとか、してない?」
「心配性だね、なのは。たまにヴィヴィオは僕らのために料理を作ったりするじゃないか」
「それは、そうなんだけど」
風邪で、親バカまで加速してしまったのか。
昨日の夜と、今日の朝と、ユーノはヴィヴィオの強さを見た。
だから、安心して任せられる。よもや指を切っても、それくらいなら舐めておけば治るのだ。
熱で上気したなのはの髪をそっと掻き上げて、額にそっとキスをする。
「もうすぐ出来上がるみたいだから、なのはは待ってて。僕は管理局に休みの連絡を入れてくるよ」
ドアを閉めてユーノは部屋に戻り、端末を起動した。
有休申請をして、クロノに短いメールを打って、司書達に今日は出られないかもしれないと伝えて──
そこで、はたと不思議な感覚に襲われた。

なのはとの出会いは、傷つき、小動物の形にしかなれなかったユーノを、なのはが拾ってくれたからだった。
初めての頃はどうすることもできず、ひたすらなのはのサポートに回ることしかできなかった。
でも、いつしか、「サポートに回ること『しか』」できなかったのではなく、「サポートに回れる」自分に、誇りを持てるようになった。
管理局に入局して、それぞれが自分の目指す道を歩み始めた頃、なのはと一緒にいられる時間が減っていった。
その寂しさが、単なる幼馴染のものではないと気付いたのが、なのはが堕ちてリハビリを終えた、丁度同じ時期。
時間の流れは早いもので、六課ができて、解散して、一緒になって、プロポーズをして、結婚式を挙げて……
思い返すと、随分と沢山のことがあった。でも、なのはを好きになってから、こんなにも弱い姿を見るのは、初めてだった。
いつだって気丈に振舞って、弱さを誰にも見せないようにして、ユーノやヴィヴィオにさえも、
「良妻賢母」であろうと努め続けていた節がある。

遂に、恩返しをする日が来たようだ。
なのはが弱っている今こそ、あの時のように、なのはを助けるのだ。
ユーノには、それが使命であるかのような気さえした。
『新着メールです』
端末から聞こえてくる、そっけない人工音声。
それを開くと、簡潔な一文が記されていた。
「君の有休はだぶついている。一週間ほど休暇を取る事を命じる。
尚、なのは=高町=スクライアの有休も、同様の理由により休暇を命じる。以上」
ユーノは思わずガッツポーズを決めた。
こんなにもタイミングの良い出来事が、人生に何度あるだろうか。
これから一週間と言うと、面白いことにクリスマスを挟む。
なのはとはやてが持ち込んだ文化は、じっくりとではあるがミッドチルダの地にも根づき始めている。
その証拠に、一部の商店街には特別なイルミネーションを飾って、幻想的な街並みとなっていた。
雑誌にも特集が組まれたり、地球が管理外世界であることを、ふとした瞬間に忘れそうになってしまう。
ユーノは立ち上がって居間に戻ろうとすると、ちょうどドアを開けたヴィヴィオと鉢合わせた。

412バカップル看病日記 5/15:2009/12/25(金) 00:11:26 ID:zlV808uk
「パパ、ご飯できたよ。食べよ?」
娘の功労に頭を撫でてあげると、気持ちよさそうにヴィヴィオは笑った。
ヴィヴィオはユーノの腕を取ると、中性的なその手のひらを撫で返してきた。
「パパの手、大きくてあったかくて、大好き!」
精一杯に背伸びをして、頬に軽いキスをすると、愛娘は可愛らしく髪をなびかせた。
食器の準備から何から、全部やってくれるヴィヴィオ。
これ以上楽なことはないが、同時にやるせなさも感じる。
でも、せっかくの努力に水を差すこともない。
ユーノは「ありがとう」と言って、お盆におかゆや味噌汁を載せてなのはの寝室へと向かうヴィヴィオを見送った。

***

ヴィヴィオが食事をなのはの部屋に行くと、いつもとは全く違う様子の母親がそこにいた。
窓から見える雪景色をぼんやり眺めながら、人が部屋に入ってきたことに気付かないようだった。
「ママ、ご飯だよ」
びくっと反応し、振り返るなのは。
ヴィヴィオの姿だと知って安心すると、なのはは「おいでおいで」とヴィヴィオを手招きした。
ベッドの上に盆を置くと、ユーノにやって貰ったように、頭を撫でてくれる。
「えへへ」とはにかむと、なのははできるだけ穏やかな顔を作って言った。
「ありがとね、ヴィヴィオ。でも、感染っちゃダメだから、早くパパのところに戻ろうね」
こんな時でも、絶対に弱い顔を見せようとしないなのは。
笑顔に陰りがあるのは、決して熱だけではないはずだ──今日の仕事だとか、ヴィヴィオに家事をさせることだとか、
いっぱい心配事があるような笑顔だった。
「大丈夫だよ、ママ! 私、こう見えてもちゃんとお洗濯もお料理も、何でもできるんだから!」
とてとてと居間に戻ろうとして、ふと思い立ってなのはへと振り向いた。
こんな時、なのはがどんなことをするのか、まだ小さいヴィヴィオにも分かる。
「食べ終ったら、絶対に呼んでね! ママはベッドから出ちゃダメだよ!!」
しっかりと厳命して、部屋を後にする。
ドアを閉じる瞬間、なのはが小さく「ありがとう」と言っていたのを、ヴィヴィオは聞き逃さなかった。

ユーノとゆっくりした食事を取って、子供向けの番組を一緒に見ていた。
膝の間にちょこんと座るのが、ヴィヴィオの定位置。
画面の中で繰り広げられる、ぬいぐるみのキャラクター同士が織りなす軽妙な掛け合いに食い入って眺めていると、
寝室からなのはが「ヴィヴィオ、お願いー」と頼む声が届いてきた。
ばっちりの時間に番組が終ったので、ヴィヴィオはユーノの膝から離れると、なのはの寝室に向かった。
「ママ、ちゃんと食べられた?」
聞きながら、盆の上を見る。八割方、食べているようだ。
なのはは申し訳なさそうに「ごめんね、ヴィヴィオ」と謝ったが、とんでもない。
ヴィヴィオは「お粗末さまでした」と笑顔で言って、食事を下げた。
部屋を出ようとドアを開けた瞬間、後ろからなのはが呼んだ。
「どうしたの、ママ?」
ヴィヴィオは振り返り、なのはのところに戻る。続きを言おうとしたなのはは、ゴホゴホと咳を出した。
それでも、なのはは何かを言おうとして、痰の引っかかった喉で掠れ声を出した。
「あのね、ヴィヴィオ……お買い物、行ってきてくれないかな……もう、冷蔵庫空っぽでしょう?」
「それならお安い御用だよ! 栄養のつくもの、いっぱい買ってくるね!」
「お願いね、ヴィヴィオ……」

413バカップル看病日記 6/15:2009/12/25(金) 00:11:58 ID:zlV808uk
実のところ、朝食を作っている時点で、昼食以降の食材が絶望的であることに気付いていた。
それでも、なのはに、ママに頼られることがとてもとても嬉しくて、ヴィヴィオは胸をどんと叩いた。
「大丈夫、ヴィヴィオにお任せ!!」
こうして、ヴィヴィオは初めて一人でおつかいをすることになったのだった。

***

「いってきまーす!」
エコバッグに、小さなポシェット。相棒のセイクリッドハートも忘れない。
勢いよく飛び出していったヴィヴィオを、ユーノは玄関で見送った。
「車とかに気をつけるんだよ。あと、帰りが遅くなりそうだったらちゃんと連絡してね」
「あい!」
はじめてのおつかい。
どんな冒険が待っているのか、ヴィヴィオは道すがらずっとワクワクしていた。
訪れたのは、スーパー。冬休みに突入したミッドチルダでは、主婦層の他にも一人暮らしの学生なんかが買い物に来ていた。
が、ヴィヴィオのような子供が一人でいるのは、かなり珍しい光景。
カートを一人で押して、生鮮食品のコーナーへ行く。
「うーん、お魚……野菜……お肉……どれをメインにしようかなぁ」
全体的に安めなのだが、これといって魅力的な特売の商品はない。
それでいて、風邪っ引きに優しい料理。
思えば三人が家族になってから風邪を引いたのはヴィヴィオくらいなもので、
その時は平熱でくしゃみが止まらなかっただけだから、割と普通の食事だった。献立を考えるのは中々難しい。
「今日は何にする?」
その時、学生二人の声が後ろで聞こえた。きっと年上の人なら何か知っていると考え、聞き耳を立てる。
すると、結構使い物になるヒントを得ることができた。
「料理なんてものはね、フライパンか鍋にぶちこんで火を通せばいいのよ。
高級料亭ってんでもあるまいし、それで何とかなるってものよぅ」
「んー、それじゃ鍋モノにするか。今日の夜からクリスマスまでずっと雪だって予報で言ってたし」
「え、そうなの? それじゃ、そうしましょ。今夜はあったかくしないと……」
鍋! そうだ、その手があった。幸いにも、元六課のメンバーが何人か集まることの多いスクライア家では、
そこそこ大きな土鍋が置いてあるのだ。
思い立ったが吉日、ヴィヴィオは早速材料を買うために奔走した。
「えーっと、シュンギクでしょ、ニンジンに、白菜、キノコ……あ、豆腐も」
しかも、鍋となると皆面白いようにぱくぱく食べる。10人分買って5人で空けるなんていつものことなのだ。
それに、もし余ったとしても、次の日に残りを温めつつ、ご飯を投入すれば、あっという間に雑炊の出来上がり。
実に優れた料理ではないか。
野菜を一通りカゴの中に入れると、次は精肉のコーナーへと向かった。
体力の落ちている時は、スタミナの付くものに限る。
豚肉を買って、ヴィヴィオは更にカートを押し進めた。

そして、肝心要、スープの種だ。
今日び、○○スープの元、とかいう商品は山のようにある。
ざっと見ただけでも、寄せ鍋、トマト鍋、チーズ鍋、キムチ鍋、ちゃんこ鍋……ちゃんこ!?
「なに……これ? どういう意味?」
ラベルを良く見ると、管理局でも地球寄りの品目を取引している企業の名前が書いてあった。
いつか、はやて辺りが口に出していた気がする。
意味は分からず仕舞いだったか、パッケージの写真から推測するに、肉や魚など、タンパク質が沢山入っているようだ。
妙に惹かれるものがあったが、なのははそんなに沢山タンパク質ばかり摂取できる身体ではないので、別なものを選ぶ。
といっても、特徴がよく分からないので、一番沢山並んでいてポピュラーそうな、寄せ鍋の素を使うことにした。
さて、いよいよ会計──という時になって、ヴィヴィオははたと困った。

414バカップル看病日記 7/15:2009/12/25(金) 00:13:19 ID:zlV808uk
「こんなに沢山、持って帰れないよ……」
何も、今日の分だけではない。向こう三日分くらいは買い込んである。
普段でもこの量だが、それはヴィヴィオが軽い袋を抱え、
なのはとユーノがそれぞれ一つずつ重いのを持っているからこそ、家まで持って帰れたのだ。
ヴィヴィオ一人では、ちょっと無理。
どうしようかどうしようかと、レジを目の前にしてひたすら悩んでいると、レジ係のお姉さんが寄ってきた。
「どうしたの? パパとママは?」
しゃがんで、少女と同じ目線に来る。優しそうな顔に、ヴィヴィオは説明した。
ジェスチャーを交える度に、腰のポシェットがふさふさ揺れた。
「えっとね、ママが風邪引いちゃって、パパも家で『あんせー』にしてなきゃいけなくて……
だから、ヴィヴィオ、一人で買い物に来たの。でもね、いつもはパパとママが袋を持っててくれたから、
今日はヴィヴィオ一人だから、こんなに沢山、持って帰れないの」
話を聞き終ると、お姉さんは解決策を知っているようだった。
まずはレジに案内され、会計を済ますように言われる。
カゴを持ち上げて渡すと、お姉さんはテキパキとバーコードを読み取っていった。
告げられた値段に、ヴィヴィオはポシェットからサイフを取り出し、預かってきた紙幣を渡す。
お釣りを貰って、材料をエコバッグに詰めて、買い物カゴごとよたよたと持ち上げた時、その重さがフッとなくなった。
お姉さんが持ち上げてくれたのだ。
「こっちよ、ヴィヴィオちゃん」
一瞬、ヴィヴィオはどうしてお姉さんが自分の名前を知っているのか不思議に感じたが、
良く考えてみればさっき自分で一人称に使っていたのを思い出した。
カゴを持つお姉さんの後ろをとことこついて行くと、
電子レンジと似たような、買い物カゴくらいなら楽々入る大きさのものが目の前に現れた。
「これは、転送サービスと言いまして、ココからヴィヴィオちゃんの家までひとっ飛びに荷物を送ってくれるものなのよ」
ヴィヴィオは飛び上がらんばかりに喜んだ。これがあれば、どんな重い荷物でも簡単に運べる!
ただ、そのためには使用料が必要だと聞いた。
住所を聞かれ、たどたどしくもアパートの部屋番号まできっちりと答える。
お姉さんはそれを打ち込み、転送装置の扉を開けてカゴごとその中に押すと、しばらくして扉の右側に値段が表示された。
「ここに書いてあるだけのお金が必要なんだけど……ヴィヴィオちゃん、持ってる?」
「うんっ!」
お姉さんにまた紙幣を一枚渡すと、彼女はそれを投入口に入れ、そして出てきたお釣りをヴィヴィオに返した。
がたがた、ぴーぴーと如何にもな機械音が聞こえた後、また静かになった。
扉をもう一度開けると、カゴいっぱいに入っていたはずの材料が、一式全部なくなっていた。
「これでもう大丈夫よ。お買い物偉いね、ヴィヴィオちゃん」
本日三度目。頭を撫でられて、ヴィヴィオはふにゃふにゃになった。
でも、パパやママ──大切な人からの『なでなで』の方が、もっと気持いいかな、とも思ったりした。
「バイバーイ! お姉さん、ありがとー!!」
スーパーの出口でお姉さんに元気いっぱい手を振って、ヴィヴィオはスーパーを後にした。
家に帰って、昼ご飯を作って、それから洗濯をして、掃除もして──まだまだ、やることは沢山ある。
さっきまでよりも、もっと身軽になった気がした。
ヴィヴィオはスピードを上げて走り、両親の待つアパートへと急いだ。

「ただいまーっ!!」
帰り道、一歩ごとに力が湧いてくるようだった。
時は正午よりちょっと前。料理を作るにはぴったりの時間だ。
ユーノは書斎から出てきて「おかえり、ヴィヴィオ。買い物の荷物、全部届いてるよ」と、ヴィヴィオをキッチンに案内する。
そこには、さっき目の前から忽然と消えてなくなったはずの材料が、一つ残らず置いてあった。
「すごい、すごーい! あのねあのね、電子レンジみたいなのに入れて、お金を入れたらね、パッてなくなっちゃったの!!」
身振り手振りで示すと、ユーノは相槌を打ちながらその話をじっくりと聞いてくれた。
でも、ユーノはもう大人だから知っているのだろうと思い返したのは、ずっと後になってからだった。
ヴィヴィオはお気に入りのエプロンを身に纏い、子供用の台に上って、早速料理を始めた。

415バカップル看病日記 8/15:2009/12/25(金) 00:14:17 ID:zlV808uk
線切り、みじん切り、短冊切り。
包丁の使い方が上手いと、調理実習でも先生に褒められた。
もっと上手い人はいたけれど、何せ家に帰れば翠屋直伝の腕前があるのだ。
いつか、誰よりも上手になって、将来は料理を作る仕事に就いてみたい。
そして大好きな人達を招待して、美味しい料理をいっぱい食べて貰うのだ。
ルンルン気分で野菜炒めを作り、それに合わせて野菜スープ。
味付けを確かめるために軽く味見をする。
「うん、ばっちり!」
なのはの部屋に行くと、何だかもう早速動き出しそうな感じでうずうずとベッドの中で寝返りを打ち続けている。
熱を測ったら、8度0分。どうして積極的になれるのか、さっぱり分からない。
せめて今日くらい、医者の言うには明日明後日まで、じっとしていればいいのに。
「まま、ご飯できたよ。持ってくる? それとも、テーブルまで行く?」
もう、ダイニングくらいなら歩いていってもいいのだろうか。
流石にトイレくらいは歩かなければいけないし、何より本人がベッドから出たがっている。
なのははむっくりと起き上がって、ヴィヴィオの顔をまじまじと見てきた。
「ママ、そろそろ眠くなくなってきたんだけど……」
ケージから出してくれと動き回るハムスターそっくり。
ヴィヴィオは頷いて、手を差し出した。
「一緒に食べよ、ママ」
こうして、お昼は三人で食卓を囲むことになったのだった。

「はい、なのは。あーん」
「あーん……」
──忘れてた!!
この夫婦、バカップルだった!!
去年、構って貰えなくて部屋に閉じこもっていたのがバカバカしい。
なのははここぞいう時にユーノに甘えまくっているし、ユーノもまた、それを楽しんでいるようだ。
袖が触れる距離の隣でいちゃいちゃしている横で、一人もくもくと箸を動かすヴィヴィオ。
いつものこととはいえ、何となく味気ない。
それでも、今日は寛大になれる。だって、大好きなママが、寝込んでしまっているのだから。
まだ顔の真っ赤ななのはに、
「んーっ、あなたにご飯食べさせて貰うと、百倍に美味しくなるよ! ありがとう、あなた」
「ううん、僕こそ、千倍一万倍にしてあげられなくてごめんね」
「ごめんだなんて、そんな……嬉しいよ、すっごく! とっても! ね、だから、もっと食べさせて」
「もう、甘えんぼさんだな、なのはは。はい、あーん」
「あーん」
終始、この調子である。こんな日常を見せつけられては、ヴィヴィオだって彼氏が欲しくなる。
だが困ったことに、リオもコロナも女の子である。確かに共学のはずなのに、何故か男っ気ゼロ。
一体どういうことなのか、神様がいたら聞きたいものだ。
「あ、ほら、なのは。口が汚れてるよ。動かないで」
「んっ……ありがとう、あなた。本当にあなたって、細かいところまで気が利くんだね。見直しちゃった」
「なのはだって、見れば見るほど可愛いよ。惚れ直しちゃったな」
「あんっ、もう」
何だろう、この、親一人子二人というか、むしろヴィヴィオだけが親で他二名が子供と表現した方がいいのか。
甘えっぱなしのなのはは、まるで子供のようで、ヴィヴィオよりもまだ甘えんぼさんなのだ。
ただ、今までのことを考えてみると、それも仕方無いのかもしれない。

416バカップル看病日記 9/15:2009/12/25(金) 00:16:04 ID:zlV808uk
だって、二人はずっと、子供の頃から仕事を頑張っていたのだ。
勉強して、遊んで、魔法の練習もして、なのは達がいた世界には魔法がなかったのだから、さぞかし苦労したことだろう。
ユーノとのことだって、そんな日常に追われていたら恋なんてとてもできない。
管理局に入って、何年も経って、ようやく落ち着いた頃にユーノと付き合い始めた。
その頃にはもう、ヴィヴィオは会話の輪に入っていたから、そこから先のことは容易に予想が付く。
『子供らしい』子供時代を過ごさず、『恋人らしい』恋をしていなかったのだから、
今になってあの頃を謳歌し、今になって大恋愛。
頭ではもちろん納得が行くが、かといって別に娘の眼前でやらなくてもいいだろうに。
「ヴィヴィオも、はい、あーん」
むすっとしていたのにようやく気付いてくれたらしく、ユーノがレンゲを差し出す。
いやいやちょっと待て、それは風邪っ引きが口を付けたレンゲだろう、感染させる気か。
バカップル同士なら移ったところで看病関係が逆転するだけだが、娘にまで火の粉を回さないで欲しい。
「同じ食器使うと、風邪って移るんだよ?」と、穏やかに言う。
既に、なのはの前から椀は消えている。全部ユーノに「あーん」をして貰う気満々だ。
別に構わない、構わないけれど、ものごとには限度というものがある。

……しまった。
『なのは・T・スクライア』に限度など初めから無かった。

「大丈夫です、私はちゃんと一人でご飯を食べられます!」
本当なら二人を放っておきたいところだが、アパートは狭い。
ダイニング以外で食事ができる場所は事実上ヴィヴィオの部屋しかないのだ。
流石にそれは、ただでさえ少ない味気をゼロにしてしまうだろう。
それよりは、このバカップルを見つめていた方がまだいい。
改めてよくよく考えてみると、これはこれで漫才を見ているようで面白い。
チラチラと横目で見ながら、二人の様子を見守る。
両親とも、ここ最近見たこともないほど幸せそうな顔をしていた。
だったら、それはそれでいい。風邪の日くらい、ゆっくり過ごす権利は誰にだってある。
納得と諦観が複雑に入り乱れて、ヴィヴィオは箸を動かした。
そういえば、もう随分と箸使いに慣れたな、と時の流れを感じた。

***

薬を飲んで、またなのはは寝室へ戻った。
ユーノは手持ち無沙汰なようで、本を読んだり、新聞に目を通したりしている。
ヴィヴィオはその間に洗濯を済ませ、小さなベランダいっぱいに服を干した。
太陽の光をいっぱいに浴びて、小春日和の暖かさはすぐに洗濯物を乾かしてしまうだろう。
キラリ。弱くも明るい光がヴィヴィオの目を打って、思わず手をかざした。
雲がゆっくりと西へ流れていく。明日はさて、晴れるのか。
家の中に戻ると、今度は隅々まで掃除だ。
部屋から持ってきたゴミ箱のゴミを全部分別して、しっかり捨てる。
ホコリをワイパーで拭き取った後、掃除機をかける。
そうすると細かいのが排気で舞い上がる前に取れるのだと、いつかフェイトが教えてくれた。
窓ガラスを拭いてピカピカにすると、それだけで部屋の中が明るくなったかのようだ。
いや、実際に光の透明度が違う。家中を綺麗にしようという気合は、ますます強くなった。
風呂場に行って、浴槽をゴシゴシと擦る。それだけではなく、鏡を磨き、あちこちの水垢を削る。
これで、お風呂も気持ちよく入れるようになった。
乱雑気味になっていた本棚を揃えて、ユーノにも本を整理するように言いつけると、ヴィヴィオははたと思い出した。
なのはの部屋に行くと、寝息を立てていたが、かなり苦しそうだ。
氷枕を触ると、やっぱり温くなっていた。

417バカップル看病日記 10/15:2009/12/25(金) 00:16:40 ID:zlV808uk
そっと抜き取ってキッチンに戻り、それを冷凍庫に放り込む。
最近の氷枕は、完全に氷ではなく不凍液を使っているから、完全に冷えて取り出した後も柔らかい液体の感触を保っている。
冷え切った方の枕を代りに引っ張り出すと、タオルで包んで持っていく。
風邪を引くと物凄い量の汗が出るのだ、こうしないと汚れてしまう。
昼食の前にシーツも替えておくべきだったな、と小さな反省をして、夕飯の前には絶対やっておこうと決めた。
「……あ、そっか」
ヴィヴィオの部屋にあるベッドは普通のシーツだが、なのはの部屋にあるのはダブルベッドだ。
ユーノの書斎にはベッドはなく、もっぱらなのはの部屋で寝るか、三人で寝るか、
さもなくばヴィヴィオと一緒に寝てくれるかのどれかだった。
よく考えれば全員分のシーツ、我が家の洗濯機には入らない。
どっち道、その量のはベランダに並ばない。やっぱり後回しで正解だった。
「よし、全部終り!」
シーツの洗濯は明日。真新しいシーツをピンと張ってベッドに身体を投げ出すと、お日様の匂いがした。
ころころ転がって、伸びをすると、眠くなってきた。
もう、仕事といえば夕飯作りくらいしかない。
家計簿はつけられないし、ベランダの花に水をやるのは洗濯物を干す時に済ませた。
まぶたが段々重くなってきて、いつしかヴィヴィオは眠った。

「ん……」
目覚めた時、周囲は薄暗かった。
どうして寝ていたのかしばらく訝しがり、ハッと我に帰ると、慌てて時計を見た。
6時。夕食を作るつもりが、朝食になってしまった!?
太陽はもう空低くにあった。が、朝日とは反対方向である。
午後の6時であることに安堵してホッと胸を撫で下ろすと、頭に手を当てた。
……ぼさぼさ。寝相の酷さは折り紙付きな上に、全然まとまってくれない。
少しでもまともになるのは湯船に髪を浮かべた時くらいなものだった。
ヴィヴィオは軽く髪を梳かすと、部屋を出た。
誰もいないリビング。誰もいないダイニング。誰もいないキッチン。
多分、ユーノも昼寝をしているのだろう。閑散とした家の中は少し冷たくて、耳が痛くなるほど静かだった。
「よしっ」
この家に、暖かさと明るさと、そして家庭の音を取り戻すのだ。
ヴィヴィオは早速、買ってきた鍋の材料を切り始めた。
トン、トン、トン。少しずつ早くなってきた手捌きだが、まだ足りない。
指を切らないように集中して、一つ一つ切っていく。
土鍋を取り出して、鍋の素と水を注ぐ。火の通り辛い白菜とニンジンを真っ先に入れ、火にかける。
続いて、四つ切りにしたシイタケと、千切ったマイタケ、シメジ。
出汁の出るものを入れておくと、凄く美味しくなる。味噌汁でも常套の手段だ。
椅子を持ってきてちょこんと座り、お気に入りの本を読みながら、一煮立ちするのを待つ。
湯気がふつふつと鍋から立ち上がる頃には、ユーノが起き出してきた。
「おはよう、ヴィヴィオ。ご飯、美味しそうだね」
「まだまだだよ、パパ。これから、もーっと美味しくなるんだから」
沸騰を始めたら蓋を開けて、シュンギクと豆腐、豚肉を入れる。
更に弱火でしばらく煮ていると、様々な匂いが絡み合って、思わずお腹が鳴るほどの芳香が家中に立ち込めた。
それがなのはを起こしたようで、まだ足取りは重くも、蜜に引かれた蝶のように、食事を待ち望んでいた。
でも、まだダメ。最後の一仕上げが待っているのだ。
手狭になってきた鍋の隙間に揚げ麸とシラタキを入れて、ほんのちょっとだけ火を通して、出来上がりだ。
早速、鍋敷きをテーブル置いて、鍋を載せる。口の中が唾でいっぱいだ、早く食べたい。
お椀を取って、一人ひとりによそっていく。
「いただきまーす!」
家族で手を合わせ、ようやく訪れた至福の時間を楽しむ。

418バカップル看病日記 11/15:2009/12/25(金) 00:17:14 ID:zlV808uk
キノコのお陰で良い出汁が出て、白菜も柔らかくなっている。
ニンジンの甘みとシュンギクの苦味が調度良いハーモニーを奏で、豆腐が口の中で砕ける感触がまた嬉しい。
豚肉は難すぎず、一口噛むごとに中から肉汁が溢れ出してきた。
よくよく汁が染み込んだ揚げ麸は重く、口の中でいっぱいに広がる。
シラタキのちゅるちゅるした食感。何もかも完璧だ。
ふと顔を上げると、ユーノがふーふーと白菜を冷ましながら、なのはに差し出していた。
本日の「あーん」は、これで何度目ななのか。
はぐはぐと熱さを逃がしながら食べていたなのはだったが、やがて電流が走ったように止まった。
「ヴィヴィオ。一つ、聞きたいんだけど」
信じられないという顔を作って、なのはが聞いた。
ヴィヴィオはその真剣な眼差しに、首を傾げる。もしかして、なのはの口には合わなかったのか?
「……わたしより料理、上手くなった?」

突然の一言に、ヴィヴィオは固まった。
だが、とても冗談とは思えない、なのはの口調と表情。
それは紛れもなく、ヴィヴィオがこの家で誰よりも料理が上手くなってしまった、証だった。
「早いね、ヴィヴィオ。もうわたしを超えちゃうなんて……これから翠屋の将来は安泰だね」
「僕はどっちも同じくらいだと思うんだけど、やっぱりどこか違うの?」
「うん、全然。なんていうか、元々の才能というか、根っこのところがわたしより上手い……」
向かいに座っていたなのははテーブルを立つと、ヴィヴィオのところまで来て、ぽんと頭に手を置いた。
そして、優しく撫でる。スッと手を下ろして、その長い髪を梳いた。
「ホントに……ホントに凄いよ、ヴィヴィオ。美味しいご飯を、ありがとう」
なのはを見上げると、ニコニコと笑っている。
ユーノの方を向いても、やっぱりニコニコしている。
ヴィヴィオはぼけっとしていたが、やがて満面の笑顔になった。
「どういたしまして!!」
その後、あっという間に鍋は殻になった。しかも、予想通り食べ足りない。
なのはも食欲が出てきたのか、「もっとパパに『あーん』して貰いたい!」と娘にのろけだした。
駄目だこのママ早く何とかしないと。
もちろん、ユーノに至っては大の男であり、きっとまだまだ食べられるだろう。
明日の食材を一足先に入れてしまおうかとも思ったが、ユーノは何か思うところがあるようだった。
炊飯器を開け──確か昼で食べ終ったから、もうない──、次に冷凍庫を開け、いいものを見つけたと戻ってきた。
「はい、冷凍うどん。これで締めにしよう」
「『しめ?』」
「そ。鍋を終らせる時に、残ったスープで食べるものだよ」
「あっ、なるほど。じゃあ、ヴィヴィオが『しめ』やる!」
鍋つかみが要らなくなった温度の土鍋を掴んで、コンロの上に載せる。
ユーノから貰ったうどんを入れて、もう一度火にかける。
スープはもう少なくなっていたから、焦げ付かないように掻き混ぜる。
そして出来上がったうどんは、コシがありつつも、さっきまでの鍋が程よく甘みを引き立てて、
ただ普通のうどんを作るより、何倍も美味しかった。
「ママ、温かくなった?」
食べ終って、食器を下げながらヴィヴィオは聞く。
なのはは微笑みながら頷き、元気を取り戻した調子で答えた。
「うん、とっても。これなら、明日にも治っちゃうかもね」
それでも、大事を取ってというか、医者の忠告に従ってというべきか、薬を飲んで、すぐに寝室に引っ込んだ。
洗い物をしていると、ユーノがやってきて、手伝おうとした。
「ダメ。パパは寝てるかテレビでも見てるかしてて」
一蹴すると、何かしょんぼりした姿でキッチンを後にした。
多分、ユーノは暇を持て余しているのだろう。

419バカップル看病日記 12/15:2009/12/25(金) 00:17:49 ID:zlV808uk
でも、家庭内労働は禁止なのだ。しばらくは、二人とも完全にお休み。
元気になったら、また一緒にご飯を作ったりしてもいいのだが。
その代り、ユーノと一緒に風呂に入って、互いに背中を流した。
二人で浴槽に入ると、豪快に湯がざばざばと溢れ出した。
縁まで湛えられた湯に肩まで浸かると、一日の疲れが全部吹き飛んでしまいそうだ。
「ねえ、パパ」
何とはなしに、聞いてみる。
ユーノは「どうしたの?」と瞳を覗きこんできた。
「パパ、ママのこと、好き?」
「大好きだよ。世界中の誰よりも、大事にしたい」
「ヴィヴィオのことは?」
「もちろん、大好きだよ。ヴィヴィオのためなら、僕はいくらでも頑張れる」
「じゃあ……」
ヴィヴィオは言葉を切って、イタズラっぽく微笑んだ。
小悪魔の笑みをユーノに向けて、意地悪な質問をする。
「じゃあ、ママと私と、どっちが好き?」
ユーノは思い切り考え込んだ。うーん、うーんと唸り込み、遂には喋らなくなってしまった。
顔をよく見ると、皺が刻まれ、考えすぎて今にも上せそうだった。
「す、ストップストップ!」
慌ててユーノを止め、ヴィヴィオはぺこりと頭を下げた。
突然遮られて、ユーノは目をぱちくりさせていた。
「ごめんなさい、変なこと聞いて……でも」
でも。
これだけは。
絶対、守って欲しいことがある。
「パパは、私よりママの方が好きでいて。娘からのお願いです、パパとママは、いつまでも愛し合っていて下さい」
ユーノはヴィヴィオの顔を見つめると、その手を頭に置いて、撫でた。
頭を「パパ」に撫でられるのが何よりも好きなヴィヴィオは、ふにゃふにゃに気持ちよくなった。
天にも昇る心地とはまさにこのこと。「もっと、もっと」とおねだりすると、ユーノはいつまででも撫でてくれた。
ヴィヴィオはほくほく顔になり、ユーノの頬に本日二度目のキスをした。
「でも、私は、パパとママ、どっちも同じくらい、大好き!!」
そう言って、ヴィヴィオはユーノに抱きついた。

翌日、体調が回復しかかっていたなのはは、ここぞとばかりにユーノに甘えまくっていた。
元々の体力が高いから、簡単に風邪の細菌を追っ払えているのだろう。
ただ、そのお陰ですぐ動きたがる。まだ7度5分もあるというのに。
いちゃいちゃ具合が加速して行く二人を横目で見るヴィヴィオの口から言えば、
バカップル以外に形容する方法があるとすれば、それは「親バカップル」しかなかった。
「ヴィヴィオはホントに偉いね、ママが病気とはいえ、ちゃんと一人でご飯も作れて、洗濯も、何もかも上手くて」
「うん、うん。ヴィヴィオは『ママ』の才能があるよ」
「なのはにもあるじゃないか。こんな可愛くて優しいママは宇宙のどこを探したっていないよ」
「まあ、あなたったら。でも、あなたより頼もしくて格好良いパパも、宇宙のどこにもいないんだよ?」
うるさいうるさいうるさい。頼むから他でやってくれ。気が散る。
スープの鍋を掻き混ぜながら、ヴィヴィオは頭を抱えたのだった。

***

寒気が流れ込んできた上に天気予報が外れ放射冷却が重なったせいで、
雪こそ降らなかったものの、クリスマスイブの朝は死ぬほど寒かった。
気温は氷点下を打ち、毛布に掛け布団を二枚重ね、更に湯たんぽまで抱いて寝たのに、
朝早くヴィヴィオが起きた理由は寒さでガタガタ震えたからだった。
時計を見ると、朝ご飯どころかもう一眠りしてもいいような時間帯だった。

420バカップル看病日記 13/15:2009/12/25(金) 00:18:22 ID:zlV808uk
取り敢えず、寒さが原因で催してきた。トイレで用を足し、もう一度ベッドに潜り込む。
だが、どうすることもできなかったので、押し入れを探して電気毛布を引っ張り出し、
掛け布団の間に挟んでスイッチを入れる。温度が上がってきた頃、再びまどろみが訪れてきたので、ヴィヴィオは眠った。
意識が落ちた瞬間、誰かが夢の中で語りかけてきた。
『ヴィヴィオ、ヴィヴィオ……』
ヴィヴィオは辺りを見回し、しかし声の主はどこにもいなかった。
果てしなく白い世界が広がるばかりで、何も見えない。
『私は、もうすぐあなたとまた会えるでしょう。早ければ、今日にでも』
「誰、誰なの!?」
どちらにいるのか分からない相手に向かって叫んでみたが、答えは帰ってこなかった。
一方的に話しかけられる電話のようで、相手の声だけが淡々と響く。
『楽しみにしています。でも、その時には、私は多分──』
「えっ、どうしたの、何があるの!?」
あらん限りの声を張り上げても、相手に届かないもどかしさ。
やがて、相手の声はフェードアウトを始めた。
『私は多分、私の大好きな人と、一緒にいるでしょう。でも、最初に会うのは、ヴィヴィオ、友達であるあなたの方が……』
声は途切れた。ヴィヴィオがどんなに呼びかけても、答えはない。
意味も意図も不明な、まるで独り言のような一方通行の科白。
でも、確かに相手は「ヴィヴィオ」と言った。何となれば、それはヴィヴィオに向けた手紙なのだ。
立ち尽くし、たった今投げかけられた言葉の意味を反芻していると、ハッと目が覚めた。
時計をもう一度見る。夢の中で時間感覚が狂ったのか、十分も経っていない気がするのに、もう二時間以上が経過していた。
そろそろ、朝ご飯を作らないといけない。
起き上がると、何故かいい匂い。キッチンに行くと、なんとユーノが包丁を振るっていた。
「まぁ、僕も一応料理の一つや二つくらいなら作れるからね。
もう二日も休んだんだし、そろそろ僕にもできることをさせて欲しいな?」
「……うん! パパと一緒に朝ご飯作る!」
出来上がった頃、まるで計ったかのように起きだしてきたなのはの体温を測ると、平熱!
病み上がりとはいえ、もう程々には動いても大丈夫そうだ。
「そういえば、今日はヴィヴィオは皆でパーティーをやるんだよね。何時からだっけ?」
ユーノが思い出して、聞く。
ヴィヴィオは記憶を手繰って、夜からだと答えた。
でも、その前にプレゼント交換のプレゼントを買いに行ったり、昏々と眠り続けているイクスヴェリアに挨拶に行ったり、
それに会場であるリオの家で料理の手伝いをしたりと、結構やることは沢山あるのだ。
買い出しの待ち合わせは、昼前。その後、教会に行かなければならない。
「だから、私は早く出るね」
トーストを頬張りながら、両親の「気をつけてね」という忠告にしっかり応えた。
朝食の後、準備を整えて、ヴィヴィオは家を出て行った。
「あ、もしかしたら遅くなるかもしれないから、その時は連絡するね!」

ヴィヴィオが出て行った後のスクライア家は、閑静とした空間に変わっていた。
なのははユーノに寄り添い、身体を預けて楽な姿勢を取る。
ユーノもまた、なのはの肩に手を回して、不安定な空を眺めていた。
放射冷却ですっかり冷え込んだところに、思い切り雲が流れ込んできて、粉雪を降らし始めた。
「管理局の白い風邪引きさん、感想は?」
「雪か……今日はホワイトクリスマスになりそうだね。自然が私達にプレゼントしてくれるなんて、素敵じゃない?」
「そうだね、なのは。澄んだ空だし、きっと雪化粧の街並みは綺麗だよ──なのはの次にね」
「ひゃわっ、またあなたってば」
正午を過ぎてからしばらく、雪は一旦止む。曇り空から青空へと、世界の色は変わっていった。
ヴィヴィオから息急き切って端末に映像電話が飛び込んできたのは、そんな昼下がりのひと時だった。
「マ、ママ! パパ!!」

421バカップル看病日記 14/15:2009/12/25(金) 00:18:57 ID:zlV808uk
一刻も早く何かを伝えたくて、帰って呂律が回っていないヴィヴィオの声。
取り敢えず落ち着くようになのはは言ったが、それでも全然落ち着くどころかもはや錯乱の域まで達しかけていた。
絶対に信じられない、でも目の前に確かにある。
そんな、失くして久しい宝物を見つけたような顔だった。
「ああ、起きたの、起きたの!!」
「誰が起きたの、ヴィヴィオ?」
寝ている人が起きたくらいで普通、全力で電話などしない。
とすれば、仮死状態にあったか、昏睡していた人が起きたとしか……
「イクスが……イクスが起きたの!! たった今、私の見てる前で!!」
止まった時間が流れ始めた。
マリアージュ事件をなのはもユーノも直接体験しておらず、だからこそ、
画面の端に小さく映る少女が、何でもない普通の女の子に見えたのだった。
「よかったね、ヴィヴィオ」
娘の笑顔とも泣き顔とも、或いは驚きとも取れる表情に、なのはもユーノも微笑んでみせた。
パァッと、ヴィヴィオの顔に季節外れのヒマワリが咲き、思い切り首を縦に振った。
「うんっ!!」
通話が切れた後、夫婦の間には得も言えぬ満足感が広がっていた。
娘の喜ぶ顔が見られるだけで、幸せいっぱいになれるのだ。
「さて、ヴィヴィオのクリスマスプレゼントを買ってこないとね」
ユーノが立ち上がると、なのはがその腕を掴んだ。
一緒に連れていけと、その瞳が訴えていた。
「……ちゃんと、あったかくするんだよ」
「あなたと一緒にいれば、どんな寒さも平気だよ」
ユーノは苦笑いを浮かべながら、なのはの分のコートを渡した。
夕方になるに連れ、再び分厚い雲が立ち込め始めた。
街はすっかり白く覆われていて、白銀の世界は、中世の城下町を思わせた。
はらり、はらりと白い羽が街を彩り、イルミネーションが雪の純白に映える。
二人は互いに温め合いながら、ヴィヴィオのプレゼントを探し求めた。

目当てのものを手に入れ、家に帰ると、留守電が一つ。
「思ったより盛り上がっちゃって、ちょっと帰るのが遅くなりそうです。鍵は閉めてても大丈夫です。
気をつけて帰るので、安心して下さい ヴィヴィオより」
ヴィヴィオはあれで、スバルなどに教えられながら格闘にも興味を示している。
下手な不審者程度なら、軽くのせるだろう。
ほんの少し心配しながらも、けれどセイクリッドハートもいることだし、と二人は愛娘を信じることにした。
というか、むしろ。
「なのは、この前の続きなんだけどさ……」
「あん、もう、あなたのえっち」
双方、お預けを喰らっていたため、物凄く『溜まって』いた。
「性活を潤すには、やっぱりアッチからやな!」というタヌキの科白は、あながち間違っていない。
いや、今日ばかりは正しいということにしておこう。
首筋を舌でちろちろと舐められたなのはは、身体が奥から疼いてくるのを感じた。
ベッドまで行くのがもどかしく、なのははブラウスのボタンを開けながら、ユーノに熱く口づけた。

途中でヴィヴィオが帰ってきた気がしたが、止められるはずもなかった。
互いに激しく愛し合い、冬だというのに有り得ない程暑かった。
深々と降り続ける雪は、聖夜の総てを祝福しているかのようだった。
きっと今夜なら、神様だって何でも赦してくれるだろう。

422バカップル看病日記 15/15:2009/12/25(金) 00:19:39 ID:zlV808uk
後戯も終り、シャワーを浴びてパジャマを着ていたなのはは、窓の外をじっと見つめていた。
日付が変わり、クリスマス当日となった世界。風がまったく吹かない中で、真白い天使の羽が着々と積もっていく。
それがやがて少なくなり、雪は止んだ。あれほど降っていたのに、どういうことなのか。
答えは、すぐに分かることになる。
「あっ……あなた。見て、見て」
眠気に侵食されかけていたユーノを揺すり起こして、外の景色を指差す。
これが何でもない光景の一つだったら、そのまま寝かせてしまってもよかっただろう。
だが、そうではない。人生の中でそう何度も拝めない逸品が、目の前に広がっているのだ。
「どうしたの、なのは……わぁ」
ユーノも、一発で眠気が覚めてしまったようだ。
二人揃って、空を見上げる。幻想的な光景が、ミッドチルダの地にあった。
天使の梯子。あれだけ雪を降らせていた雲が切れて、その隙間から月明かりが差し込んでいる。
太陽ではたまに見かける瞬間だが、月の場合は満月でもなければまず見ることができない。
しかも、今日は一年で一番幸せな日だ。どんな魔法よりも素敵で、どんな科学でも再現できない景色。
更に、去年愛を誓い合った日でもある。
神様、こんなにも美しいものを見せてくれて、ありがとう。
「なのは……」
「あなた……」
世界で最も祝福されるべき二人は、口づけを交わした。
甘く蕩ける最高のキスを、互いに捧げあった。

***

クリスマスの朝。
パーティーを終え、前日遅くに家へ帰ってきたヴィヴィオは、眠くてふらふらとベッドに倒れ込んでしまった。
家の中で何か物音がしていたが、全然思い出せない。
途中までは、バカップルのバカっぷりや、イクスヴェリアの目覚めなどなどで食欲が沸かなかったが、
時間と共に飲めや歌えや──もちろん、ジュースだけれど──の大騒ぎになり、つい長居をしてしまった。
プレゼント交換ではぬいぐるみのコレクションが一つ増え、かなり嬉しかったのは公然の秘密である。
ふと、指先に何かが触れ、手元を見ると、そこにプレゼントが置いてあるのを見て大変に喜んだ。
寸分違わず、望んでいたものと同じだった。昨日に続き、大当たりの冬休みと言わざるを得ない。
出掛けに手紙を書いて置いて、大正解だ。昨日のことなんて、綺麗さっぱり一ミリだって忘れた。
ルンルン気分で朝食後、なのはのシーツを洗おうとしたが、そこではたと手が止まった。
「……ママのシーツ、なんでこんなに汚れてるの?」
今までにも何度かあったが、その理由を聞く度にはぐらかされ、今に至る。
汗とは違う、何か別の匂い。決して嫌なものではないが、疑問は呈したくなる。
絶対、秘密にしたいことに違いない。だが、余計な詮索はしない。
可哀想だし、何より話してくれるような状況が整ったら話してくれるだろう。

その後、なのはが「管理局の白い親バカ」に昇格した。
「白い聖母」に昇格するのは、果たしていつの日になるのか。

423Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/25(金) 00:23:29 ID:zlV808uk
これはこれで完結してますが、実は前編みたいなもの。
後編のスバル&ティア&イクスの泥沼三角関係ドロドロ3Pは後20時間くらい待ってくれよなっ!
……すみません遅れました('A`)

当方一人というより、所属サークル全員からのクリスマスプレゼント。
お読み頂いてありがとうございました。

424名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:28:08 ID:KJggnrZE
テラ糖度高ぇw
GJだゴルァ!

425名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:40:21 ID:5YcCiOBY
超GJ
いいもの見させてもらったぜ

426名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:56:39 ID:RKlVjsDk
GJ!
ニヤニヤが止まらないおw

427名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 05:34:57 ID:mrtlJFws
>>423
ウヒョー!Foolish氏久しぶりの激甘作品だー。超GJ。

>>スバル&ティア&イクスの泥沼三角関係ドロドロ3P
泥沼怖いけど期待してまふ!




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