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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part2

1名無しリゾナント:2011/01/18(火) 17:04:23
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第2弾です。

ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
>>1-3に作品を投稿
>>4で作者が代理投稿の依頼
>>5で代理投稿者が立候補
>>6で代理投稿完了通知

立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。

44名無しリゾナント:2011/02/19(土) 01:45:28
 「うわあああああああああああああああああああっっっ!」

何故自分がそんな場所に居るのかなどという疑問など吹っ飛んでいた。
彼は喉が痛くなるほどの叫びを上げる。浮遊感の後の落下する時に包む不気味な風。
ただひたすらに、死ぬ恐怖を取り払うように両手を振り回す。

一瞬前まで、死にたいと言っていた自分が、こうして死ぬ事を拒否している。
だが頭に浮かぶのは、自分がこのまま地面に叩きつけられるという事実のみ。
だからこそ彼は叫んだ。
生まれて初めて想った。

 「し、死にたくないいぃぃぃぃ!!!」
 "――― なら、軽々しく死にたいなんて言ったらあかんよ。君の世界はこれからなんやから"

先ほどの彼女の声がまるで頭の内側から聞こえて来た。
瞬間、彼の身体は廃墟の室内の床にドサリと転がる。
溜まった埃を舞い上げ、彼女が手で払い、「ぶぇっくしょい」とおっさんのような咳をした。

 「見つかった?愛ちゃ……なにしたの?」
 「ん?やぁ、この子の"意志"がどんなもんなんかちょっと気になってね」
 「気絶させるほどってどんだけよ」

階段から上がってきたのは彼女と同じくらいの少女。
強い意志を秘めた大きな瞳に長い睫毛。
その上にある凛々しい眉がひそまる。
気絶してしまった彼の安否を確かめながら、彼女に文句を言った。

 「というか、この子を気絶させちゃったら"コレ"を何処で手に入れたのか分かんないじゃないの」
 「あ、ごめん」
 「ごめんじゃないでしょ、全く愛ちゃんはー」

愛と呼ばれた彼女は反射的にペロッと舌を出して謝罪し
少女はそんな彼女の言動に慣れているのか諦めたようにがっくりと頭を垂らしながら言う。

45名無しリゾナント:2011/02/19(土) 01:47:45
 「ま、まぁほら、こうして"コレ"も回収できたし、今日はこれで、な?」
 「あーはいはい。分かったから。にしても、最近この子みたいなのが増えて困るよね。
 愛ちゃんが見つけてくれなかったらって思うと」
 「それってあーしのおかげってこと?珍しい、ガキさんがあーしを褒めた」
 「ねぇ、それって自覚か無自覚か突っ込んでほしいの?」
 「よーし、これからもやるよあーしはっ」
 「聞いてよねぇってば」

ハリキる愛を少女が止める。
沈みかけの夕陽が最期の光を発して、二人を照らしていた。

 「あーしはいくらでも見つけたげるよ。やってあーしらは『リゾナンター』やからな」



"意志"を持つ不思議な魔石、ダークネス。
ダークネスが持ち主と認めた人間は、その意志に触れる事により
特別なチカラを得るとされてきた。

だがその代償として人間はダークネスに意志を呑まれる。
その存在と出来事はこの世界の何処かで人知れず起こっていた。

 いつしか、そのダークネスを回収する任務を請け負う少女が現れた。
 その少女は白と黒を併せ持つ姿をし、周りには8人の少女達が集まる様になる。

現在、少女はダークネスが起こす不思議な事件を解決する日々を過ごしている。
何処から出現しているのかを調査しながら世界を救うために立ちあがる少女達。

その9人を見たある者はこう呼んだ。
蒼き意志と共鳴する者達、『リゾナンター』と。

46名無しリゾナント:2011/02/19(土) 01:51:35
「〜共鳴協奏曲〜 Concerto resonance」

という話を書いていた夢を見たのさ。

------------------------------------------
で、お願いします。
お時間がある時にでも投下してもらっても全然構わないのでorz

47名無しリゾナント:2011/02/19(土) 01:59:43
あ、タイトルは最期の文章の下にも明記して頂けると幸いです。
書き忘れてましたすみません(汗

48名無し募集中。。。:2011/02/21(月) 23:55:37
ある日、亀井絵里は病院の地下3階を訪れていた。

(ここに来るのはあの事件以来か。)

絵里が言うあの事件とはDr.マルシェが開発した細菌のためにリゾナンターをはじめ多くの人々が行動不能になった事件である。
その事件はさゆみが細菌発生装置を止め、絵里とジュンジュンが血清の材料を確保したおかげで事なきを得た。
しかし絵里にはひとつ気になることがあった。

(どうしてれいなの写真があの部屋にあったんだろう。)

絵里はあの時、地下三階でリゾナンターのメンバー・田中れいなの幼少期の写真を見つけたのだ。
ずっと気にしていたのだが、さまざまな事件が立て続けに起こったことですっかり忘れていたのだった。
ただ、れいなの過去についてはデリケートな事だと感じている絵里は本人に聞くのは気がひけたので写真があった病院の地下3階へと向かったのであった。

「それにさゆの両親の病院になんで地下室があったんだろう?ロビーにそんな表示はなかったし。紺ちゃんの一件がなかったら絶対わからなかったよ。」

様々な疑問をぶつぶつ呟いている内に問題の地下3階についた。
かつてこの中で絵里を成長させる戦いが繰り広げられたのだ。

「もう防衛機能なんて働かないよね・・・」
ここの防衛装置として大型ロボットが絵里とジュンジュンの前に立ちはだかったが、新たな力に目覚めた絵里のおかげもあってなんとか切り抜けた。

49名無し募集中。。。:2011/02/21(月) 23:56:42
ガサッ!
何か物音がした。
それに絵里は驚いた。

「何?何?まさかまたロボット!」

絵里がおそるおそる部屋の中を覗くと・・・

「あれ?女の子?」
そこには小学生ぐらいの少女が部屋の中をうろうろしていた。

「ね、ねぇ・・・」
絵里が声をかけると少女は鋭い目をして絵里を睨みつけた。

(こ、怖っ!れいなみたい・・・)
「ねぇ、あなたどうしたの?病院の患者さんなのかな?」
「病人がこんなところでうろうろすると思いますか?亀井絵里さん。」
「そうだよね、絵里何言って・・・ちょっと待ってあなたどうして絵里の名前を・・・」
「そうですね、説明したいところですけど・・・ちょっと無理みたいです。」
「えっ?」

すると絵里の降りてきた階段の方から男が数人降りてきた。
「え、何なんなの?」
「ちょっと後ろにいてください。あの人たちの目的は私ですから。」
「ちょっと、待って!」
「大丈夫です。あなたより戦い慣れてますから。」

50名無し募集中。。。:2011/02/21(月) 23:57:47
そういうと少女は男たちの方に向かっていった。
「鞘師、俺たちと来るんだ。」
「戻ったって殺すんでしょ。戻る気はない。」
「仕方がない。お前の命はここでもらう。」

男たちは一斉に懐から銃を抜く。

「あ、危ない!」
絵里がそう叫ぶのが早いのか。鞘師という少女は足を男たちの銃に向けて一閃した。
パキン!
すると男たちの銃が横に割れた。

「くそっ!」
男たちが悔しそうな顔をしていると少女はいつの間にか男たちの懐に入り、全員に拳をぶつけ、悶絶させていた。

「す、すごい。あの早さ愛ちゃん並だ。」
少女の戦闘はまるで瞬間移動を駆使して敵を倒していく愛のように見えた。
絵里が感心していると少女は男のひとりに近づいた。

「私を倒そうって言うんならもっと腕の良い人を派遣することね。さっきは殴るだけにしたけど今度は・・・」
少女は腕を振り上げて、まるで突き刺すような態勢をとった。

「ちょっと、何してるのよ。」
「殺すんです。死体にして相手を怯えさせるんです。二度と私に手を出させないように。」

少女は表情を変えずに恐ろしいことを言っている。
そして少女は腕を動かした。

51名無し募集中。。。:2011/02/21(月) 23:59:19

「だめ!」

絵里の叫びに少女は腕を止めた。

「だめよ、そんな簡単に命を奪ったら・・・その人にも家族がいるかもしれないじゃん。いくらあなたを襲ったからって命を奪ったら帰ってこないんだよ。それにまだ小さいあなたが命を奪うなんてそんなのないわよ。」
「甘いですね。」
「えっ?」

少女は薄らと冷たい笑みを浮かべている。

「そんな事が甘いのはリゾナンターとして戦っているあなたが一番わかっていると思ってましたけど。その歳で甘い事を言っててはずかしくないんですか?」
「甘い?」
「戦いは非情です。殺すか殺されるかの世界なんですよ。命がどうのこうの言っていたら闘えま・・・」

バシッ!
絵里は少女の頬をビンタしていた。
「命を守るが甘い考え・・・冗談じゃないわよ!絵里たちは殺し合いをするために戦っているんじゃない!命を・・・そこから生み出される未来を守るために戦ってきたのよ!」

絵里にビンタされた少女はそのまま階段へと進んだ。

「ちょっと、待って。この人たちどうするのよ。」
「ほおっておいても自分たちから姿を消します。全員殺すつもりでしたけど、あなたに免じて命だけは勘弁してあげます。」

52名無し募集中。。。:2011/02/22(火) 00:00:36
少女と絵里は病院の外に出た。
「ねぇ、あなた名前は?鞘師っていうのが聞こえたけど。」
「鞘師里保。」
「へぇー里保ちゃんか。ありがとうね、あの人たちの命救ってくれて。」
「リゾナンターってあなたみたいに甘い考えの持ち主の集まりなんですか?」
「えっ、まぁそうかな?でも、みんな強いよ。絵里だってそういう思いを持っているから強くなれたし。そういえばあなたどうして絵里の事を知っているの?」
「あなただけではありませんよ。ほかのリゾナンターのみなさんのこともある程度知ってます。戦闘相手としてデータを見てますから。」
「戦闘相手って?」
「あの病院に行ったのもあなたと道重さゆみ、田中れいなに関することの調べていたんです。実は私・・・」
「実は?」
「対リゾナンター戦士。あなたたちを倒すために自衛隊に育てられたんです。ちなみに亀井さん、さっきビンタしましたけど、私が能力を解除していなかったら・・・」

すると里保は近くの鉄柵に手を振り下ろした。
スパッ!
すると鉄柵が真っ二つに切れた。

「手が真っ二つになってましたよ。」

53名無し募集中。。。:2011/02/22(火) 00:02:32
絵里に寒気が走った。
さきほどの男たちの銃が切られていたことは気になっていたけど、この子自身の体で切っていたとは。

「この斬体化の力は対リゾナンター用に人工的に植え付けられたんです。今度からは下手に触らない方がいいですよ。まぁっみんな、怖がって握手もしないでしょうけど。」

里保がそのままどこかに行こうとすると絵里が里保の手を掴んで引っ張った。

「えっ、ちょっと何するんですか!」
「行こうよ、喫茶リゾナントへ。」
「何考えてるんですか!私はあなたたちと戦うために訓練されたって・・・」
「でも、あなたは良い人だよ.絵里の言うことを聞いてくれたし。あなたは自分の事をあえて嫌われ者になろうとしているけど、本当は違うんでしょ。さっ、会わせてあげるよみんなに・・・」
「ちょっと!」
(この子は救ってあげないといけない。この子は絵里と同じなんだ、自分の力で関係ない人が傷つかないようにあえて遠ざけている。私たちなら救えるはず。たとえ私たちの敵なんだとしても・・・)

絵里は急いでリゾナントへ向かった心のうちに深い悲しみを抱える少女を救うために・・・

54名無し募集中。。。:2011/02/22(火) 00:07:43
>>48-53
「新たなる出会い 鞘師里保 編 」でした。
どうもリゾクラ作者です。
作者が何パターンも設定を考えてしまった鞘師里保ちゃんの登場回です。
実はここに投稿する数時間前にできたホクホクの作品なのでおかしなところがあるかもしれません。

ちなみにすでにほかの作者さんで出ている水限定念動力や水軍流はどこかで織り込んでみたいなと思っています。
今回は「Eri−Jun](07)100『Orange−Aid』という作品にリゾナントしました。

いまだにアク禁中ですので代理投稿よろしくお願いします。

55名無しリゾナント:2011/02/22(火) 05:56:32
行ってまいりました

56名無し募集中。。。:2011/02/22(火) 17:20:59
代理投稿ありがとうございました。

57名無しリゾナント:2011/02/24(木) 18:59:08
転載依頼

本スレ(http://toki.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1298110764/

>>136-145です

また連投規制をすっかり忘れていました
次からのレスの転載をおねがいできませんでしょうか?

58名無しリゾナント:2011/02/24(木) 19:00:20

そして別の言葉をつなげる。

「どうしても死ぬまで戦いたいとおっしゃるのでしたら、強くは止めません。
このまま続けましょう。
でも矢口さんはそこまで聞き分けのない人じゃないですよね?」

完全に上からの物言い。こんなガキに。
だが矢口はすでに戦意は喪失していた。
こいつらの言いなりになるしかない。

「オイラはこのあと、どうすればいい?」

「なにも。
矢口さんは今まで通りの毎日を。
なにかあればその時はこちらから、あらためて接触します。
変な気を起こさないでください、なんて野暮なことも言いません。
もともと矢口さんを縛るつもりもありませんしお好きなように。」

59名無しリゾナント:2011/02/24(木) 19:01:07

下手なことをすれば『警告なしに消す…。』そう言っているに等しい、最大限の脅迫。

矢口は首を縦に振るしかなかった。

「よかった。
願わくば今後も『平和的な関係で』ありたいものですね。」

少女たちは虚空へ消えた。
揺らぐ陽炎のように、忽然と。


夜の闇は静寂を取り戻していた。

60名無しリゾナント:2011/02/24(木) 19:01:49
----

以下補足情報。

補足1.組織側登場人物の能力設定。
後藤真希:【暗黒物質(ダークマター;dark matter)】
・詳細不明。実際には物質というよりは異空間の一種と推測されている。
天文の分野でよく耳にする実在の暗黒物質とは別物。
視認される現象としては一切光を反射しないマットで漆黒の不定形の『なにか』を出現させ
自在に形状変化させ攻撃や防御に利用する。
翼と化して飛行する等の使用も可能。
高硬度の物質を斬り裂く、銃弾や爆風、超高熱や超低温を防ぐなど、
物理的には最強の攻撃能力と無敵の防御能力を持つ。
極端な話、全身を【暗黒物質】で覆ってしまえば、文字通り悪魔のごとき人外の戦闘能力を発揮するはずで
後藤相手に勝つことなど、まして殺すことなど不可能に近いはずなのだが…

矢口真里:【能力阻害(インぺディメント;impediment)】
能力を妨害し事実上完全に封じ込めることが可能。
通常は距離にして数十メートル圏内の一人の能力を封じ込める。
またわざと妨害の威力を弱め、『がんばれば能力が使える』ようにすることも可能。
この場合、対象者は普段より威力の落ちた能力、かつ激しい体力気力の消耗を強いられる状態となる。
そんな相手をいたぶって楽しむのだ。
なお、エネルギー弾〜という設定は当作品では割愛されており、
実際に相手を倒すのは部下やコンビを組んだ他の能力者となる。
一人で戦う場合は、銃器に頼ることになる。

補足2.仮に後藤と矢口が戦ったら…
能力戦と言う点では、これほど最強の後藤といえども矢口によって能力は封じられてしまう。
ただし、後藤の場合、生身の格闘戦、銃撃戦いずれの場合も矢口を圧倒できるだけの能力を有しており
能力なしでもほぼ9割、後藤が勝つと思われる。
また、豊富な実戦経験と野性の勘から、実際は「後藤を殺してやろう」と決心した段階からすでに
その意図を見破られ、能力阻害しようとしたときにはすでに何らかの手を打たれているとおもわれ、
事実上矢口の勝つ見込みはゼロに等しい。
と、当作品内では設定しています。

61名無しリゾナント:2011/02/24(木) 19:03:26
>>136-145、>>->>

 ■ デビルマッシャー−和田彩花・前田憂佳X後藤真希・矢口真里− ■ でした。

62名無しリゾナント:2011/02/24(木) 19:05:12
>>57です
以上>>58-61のレスの
転載をどなたかお願いいたします

お手数おかけしてすみません

63名無しリゾナント:2011/02/24(木) 19:30:58
>>57です
自己解決できました

連投規制の仕組みがよくわからない…
もしかして30分で解除されるのだろうか?

64名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:07:18
相変わらずの規制です。どなたかよろしくお願いします…
7レスほどです。自分のやりたい放題
勝手に能力作って話書きましたので見たくない人はスルーでお願いします
フクちゃんメイン

65名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:08:32
お家の人について作文を書いてみましょう。
小学生の道徳の時間に先生がそういったのを鮮明に覚えている。
あの時、父親か母親かを指定しなかったのがせめてもの救いだった。
聖の手が止まる。思い浮かべるのは父親でも母親でもない。所謂『お手伝いさん』だった。


いいよねー聖ん家はお金持ちでさ。家超デカいじゃん。
お手伝いさんもいっぱいいるんでしょ?うらやましーい
服もいつだってブランドだしねー憧れるわー。やっぱ何でも買ってもらえるの?
いいなぁ。私も聖ん家の子に生まれればよかった


お金持ちだからといって全てにおいて恵まれているわけではない。 
実際、聖は自分の母親の顔が分からなかったし、父親だって年に2回会えばいいほうだった。
身の回りの世話をするのは赤の他人で、聖はいつも言いようのない孤独感を抱えていた。
 
クラスメイト達の声を曖昧な笑顔で濁す。
いつからだろうか、そうすることが当たり前になっていた。

66名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:10:01

「聖ちゃん、お茶のお稽古の時間です」

 
お嬢様という呼び方を『ちゃん』付けに変えろと言ったのはその孤独感を少しでも紛らわせるためで
聞き分けのよい聖がした唯一の我侭だった。
 
 
聖が生まれた頃から自分を世話してくれている『お手伝いさん』は申し分ないほど優しく、気の利く女性だった。
目じりに深い皺が刻まれている。笑うと濃くなるそれが聖は好きだった。
だがこの女性にも『家族』があり、その家族を養うため働いているのだと、社会の仕組みを知ったとき
聖はまた電気もつかない知らない場所にポツンと独りぼっちにされたような気分になった。

「お茶が終わったら絵を描いてもいい?」

顔も名前も知らぬ聖の母親は、絵を描くことが好きだったと聞いたことがある。
譜久村家ではタブー視されている母親の話題だったが、家政婦は聖が悲しそうな顔をする度
ほんの少しだけ母親の事を聖に教え、そして聖のために作った小さな巾着袋や赤ん坊の頃を描いた聖のスケッチをこっそりと見せてくれた。

旦那様は捨てろとおっしゃったのですが、私には出来ませんでした。

初めてそれを目にしたのはいつだったか。
家政婦から渡された綺麗な色の風呂敷。聖は静まり返った部屋の中でそっと結び目を解く。
随分と使い込んでいたらしい小さな巾着はところどころが綻びており、汚れが目立った。
『みずき』と鮮やかなピンクの糸で刺繍が施されている。
丸みを帯びたその文字がいかにも手縫である『らしさ』を表しており、聖は堪らずその文字を指でなぞった。
瞬きを忘れた瞳からぽたりと涙がこぼれる。それはすぐに袋の生地に吸収されてしまったが
零れ落ちるそれは止まる事を知らず、次々と溢れ頬を滑り落ちた。

67名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:10:55
優しいお手伝いさんも、ブランドの服も使いきれないほどのお小遣いなんかいらない。私のお母さんに会わせて

もう、温もりも匂いも何も残っていない。
涙が滲むそれを胸に抱きながら声を上げて泣いた。

ただ寂しかった。本来愛されるべき人に愛されたかった。
ぎゅっと抱きしめて、頭を撫でてほしかった。
聖、と優しい声で呼んで欲しかった。
それだけでいい。たったそれだけでいいのに


 ――――――――――――!!!!!

 
その時。 
眼球を強い力で押さえつけられているような酷い痛みを目の奥に感じた。
あまりの激痛に息が詰まる。
古いビデオテープが高速で巻き戻されているような気味悪い音が頭の中で鳴り響く。
フラッシュバック。白黒の映像が目の前を矢継ぎ早に通り過ぎる。目が、回る。

 うぅっ……!!!

頭が割れそうに痛い。

68名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:11:38

 なに…これは
 誰…

 
 
 寂しくなったらこの袋を開けて
 魔法をかけた飴玉が入っているから
 ひとつ舐めるだけで聖は元気になれる

 
 あの女の子は私だ
 そしてその女の子の頭を撫でるのは


 ママはお仕事に行ってくるから
 あとはばあやの言うことをしっかり聞くのよ、聖


 ――― お母さんだ

69名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:12:26

「6時にお迎えの車が参ります。夕食の後、絵の時間にしましょう」

「はぁい」

 
聖は手を振りながら車に乗り込む。家政婦は目じりの皺を深くしながらそれに応えた。
 


『モノ』に触れると母との夢を見ることが出来る。
実際に起こった現実なのか、自分が作り出している幻想なのか聖には判断が付かない。
それでも聖は母にひと目会いたくて、少しでも近づきたくて、名前を呼んで欲しくて
手当たり次第に『モノ』を掴み母との夢を探した。
夢を見た後には決まって高熱が出る。それでも聖はやめることができなかった。
 
  
「出発しますよ」
「お願いします」

車が静かに発進する。微かな揺れに稽古道具が小さな音を立てた。
 
「おっと」

割れ物が入っている。聖はそれを膝の上に乗せた。微かに指先が車のシートに触れる。

70名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:13:41
「―――っ!!」


眼球を押さえつけられているような激痛。
ビデオテープの巻き戻される音。
フラッシュバック。目の前を通り過ぎる白黒の映像。


 ―――…駅まで送ってください。そこからは自分で行きます。もう切符は買ってあるので…はい、
 時間までは喫茶店でも探して過ごします…ありがとう…。この車に乗るのも今日で最後ですね…
 あの、聖のこと………聖のこと、どうか気にかけてやってください…
 きっとあの人は―――…おざなりにすると思うから…どうか、お願いします…


「あ。」

この車だ。そして運転手は…、紛れもない今目の前に居る老人だ。今よりも少し若い。
そして母は…疲れた顔をしている。大きなバッグを膝に乗せて、今にも泣き出しそうな顔で話している。

 

 ――― あ、あの喫茶店にします。ここからだと駅まで歩いて5分くらいですよね…―――、いいです、停めてください
 本当に本当にお世話になりました…おねがいします、どうか、どうか聖のこと―――――――――………

71名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:14:32
「…ねぇ、じい。あなたは私のお母さんを最後に乗せた?」


体が熱い。体中に流れる血が沸騰しているかのようだ。お茶の稽古も絵を描くことも今日はできなさそうだ。
意識が朦朧とし始めている。聖は浅く呼吸を繰り返しながら、静かに車を運転する老人に声をかけた。



「お願い、母を降ろした喫茶店に連れて行って…私が見ているのは、夢じゃなかった…」


 
聖の身体が大きく揺れ、ぐったりとシートへ倒れこんだ。

72名無しリゾナント:2011/04/09(土) 01:20:07
>>65-71『mizuki―――』 以上です。
勝手に考えて勝手に作りました。一人に対して色んな能力案?があってもいいですよね
そこがリゾスレのいい所だといい風に解釈していますw
フクちゃんのお金持ちのイメージから書き始めたらこんなことになってしまった
一応『接触感応』『接触感応者』ってことでサイコメトリーでサイコメトラーなイメージです。
実際にフクちゃんはまだ自分の能力に気付いてない、でも気付き始めてる?設定でw
こんなん書いといてあれですが、フクちゃん未来人設定自分も好きです

改行などはお任せします
お手数ですが代理投稿よろしくお願いします
明日やっとリゾナンターに会えるっ!!!

73名無しリゾナント:2011/04/09(土) 10:48:09
行ってきますね

74名無しリゾナント:2011/04/09(土) 10:58:40
行ってまいりました
サイコメトリーとはまた渋い能力を選ばれましたな
ただ母の残像を求めて家中の色んなものを触る場面というのは美しいですな

75名無しリゾナント:2011/04/10(日) 00:56:29
>>74
ありがとうございました!
メジャーな能力なのに出てないなぁと思いましてフクちゃんに宛てました

またお世話になるかもしれませんm(__)m
その際はよろしくお願いいたします

76名無しリゾナント:2011/04/16(土) 21:49:50
http://hato.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1301481279/

サーバーが変わったらしいね

77名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:30:52
二人の預言者が彼女を例えた
一人は「希望」と、一人は「絶望」と

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

「はい、オッケーです!!」
「「「「「「ありがとうございました」」」」」」
豪華なセットの前でブラウン管の中の人物達がテレビ局のスタッフに挨拶をする

その中に月島きらり、いや、久住小春の姿があった
「ありがとうございました!」
久住は深々とお辞儀をして、スタジオを後にし、用意された楽屋に戻ってきた
「マネージャーさん、どうでした?今日の小春は?」
「う〜ん、まあまあだね。もう少し頑張れるとおもったな、僕は」
「そうですか?小春は結構手ごたえありましたけど〜あ、着替えるので後ろ向いてください」
マネージャーとの反省会をしながら久住は身支度を整える
「はい、こっち向いてもいいですよ。え〜と、今日はこれでおしまいですよね?」
「いや、チーフから事務所に来るようにと言伝を受け取っております」
「え〜せっかく早く終わったから映画観ようと思っていたのに〜」
唇を尖がらせて久住は抵抗を示すが、それが無駄だということは分かっていた

「じゃあ、急いで駅まで行きましょうか?」
「え〜タクシーじゃないんですか〜?」
マネージャーは頭を掻きながら苦笑いを浮かべた
「ダメみたいです、アハハ…」
「最近さあ、タクシー移動減ってるよね?もしかして、エコに会社も賛同したのカナ?」
「え、そ、そうかもしれませんね、ハハハ・・・さて、きらりちゃん行きましょうか!」
「は〜い」

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

78名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:31:26
「エリ〜まだ帰らないの〜寒いよ、暗いよ、お腹すいたよ〜」
「さゆ、もう少しだけ付き合ってよ。今、秘密特訓中なんだから」
「さゆみがいるだけでもうすでに『秘密特訓』じゃないと思うの」
さゆみは自販で買ったホットココアを一口飲み、満足そうに白い息を吐きだした

亀井は公園のベンチの上に並べられた空き缶に意識を集中した
体全体で空気の流れを感じ、微かな気流を読み取る
そこから気流の渦を掴み、その気流の端を手にするイメージを浮かべる
気流の端をムチのように、もしくは気流をそのまま弾丸のように弾き飛ばすように手を大きく振るう

シュッ  カーン

並べた10個の空き缶が見事に宙に舞った

「お見事、もう完璧だね♪」
道重がカマイタチで弾かれた缶の軌道を目で追いながらパチパチと拍手する
「・・・いや、まだだよ、今はしっかりと風の流れを掴め切れなかったもん
 ただ風をぶつけただけで、切れ味がまったくない。重いだけのカマイタチじゃダメなんだよぅ」
亀井は飛ばされた缶をもう一度並べ直しながら、首をかしげた
「どうすればいいんだろう?もっとしっかり風を読める方法ないのかな・・・」
「エリはほんとうにがんばるね〜さゆみはもう眠くて眠くて仕方がないよ」
しかしそうやって文句を言いながらも道重は亀井の特訓に付き合ってきていた

「よし、もう一回!」
亀井は集中するために大きく深呼吸を繰り返し、目を閉じた
両手を広げて全身の感覚を過ぎ富ませ、風を感じる
(よし、今は風は静かに流れてるね。よし、これなら、風を掴みやすい)
亀井は静かに呼吸を整え、きっかけをつかもうとタイミングを伺い始めた

79名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:32:32
(うん、いい風だな・・・ん?あれ?)

突然腕を下ろし、辺りをきょろきょろと見渡し始めた亀井の様子を見て道重もベンチから立ち上がる
「どうしたの、えり?」
「サユ、なんか風がおかしい。何か起こりそうな気がする」
「それってダークネス」
「いや、違う、そんな悪い空気じゃないの。これまで感じたことのない感覚」

亀井は空気が渦巻きのように一点に集中しているように感じた
その一点の空気の密度が重くて奇妙な感覚
まるでその一点に空気が流れこんでいて、窓があるかの外へと抜けていく感覚

「サユ、ちょっと見に行こう。何か気になるの」
強引に道重の手を引っ張って亀井は走り出した
「あっちだ!サユ、あそこを見て」
亀井がさした先はこの公園のシンボルにもなっている大きな木の頂上近く
「え?何あれ?」
空間に渦巻きができていて、頂上付近の葉が渦の中に吸い込まれて少しずつ消えていった

「ちょっとサユ、下がっていて。そーれ」
亀井は特訓に使っていた空き缶を頂上近くに飛ばした
放物線を描いて頂上付近まで飛んで行った空き缶は―そのまま地面に落ちることなく消えた
「消えた?」「というより吸い込まれているって感じだね」

(これは愛ちゃんに報告したほうがいい)
そう亀井が思った時、新たな、今とは違う風を感じた
今度は先ほどとは逆に『外に向かう』風だった

(―何かが来る)
それを感じさせたのは亀井の本能だったのかもしれない。何も言わずに亀井は道重の手を取って駆けだした

80名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:33:10
二人が振り返ると渦巻きのあった木の頂上の辺りの空間に卵を割るときのようなヒビが入っていた
そこから何本もの細い光が差し込み、深夜だというのに奇妙な明るさが生まれていた
「何が起きているの」
立ち止まろうとする道重の手を引っ張って足を止めないようにしつつも、亀井の目はそこに向いてしまう

ヒビ割れた空間には葉っぱなり砂が吸い込まれたり、吐きだされたりと忙しい
そうしているうちにひびが細かくなり、卵のように空間が『砕けた』
亀井、道重はもちろんのこと、辺り一帯が眩しい光で包まれた
「まぶしい」「何も見えない」
思わず道重は亀井の手を強く握った。ぎゅうっと強く、逃がさないようにと

光が消え、目を開けて視界が回復するのも時間にしてみればわずか数秒
「さゆ、大丈夫?」
「うん、まだ少し頭がボゥっとしているけど、怪我はしていないよ。エリは?」
「エリも大丈夫・・・だけどなんだったんだろう?風は元に戻ったから大丈夫だと思うんだけど」
「爆発・・・じゃないよね?怪我もしてないし、何も倒れていないし」
そう言って道重は先程奇妙な渦が浮かんでいた辺りを眺めた

「!!ねえ、えり、あそこ、木の根元を見て!誰か倒れている」
「本当だ!さゆ、急いで!!」
慌てて二人は駈け寄った

倒れていたのは一人の女性であった。近くには彼女のモノと思われるカバンが落ちていた
道重は肩をたたいて意識があることを確認する
「もしもし、大丈夫ですか?私の声が聴こえますか?」
「う、うん・・・」
かすかではあったが女性は反応を示した
「よかった、意識はあるみたい。それに怪我もしていないみたい」
亀井と道重はほっと安堵のため息をついた

81名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:33:42
すると倒れていた女性が尋ねてきた
「あ、あの、今は何年何月ですか?」
「へ!?20XX年3月だよ」
「そう・・・よかった・・・着いたんだ・・・」
そう言って女性は意識を失った

「ちょっと、もしもし、もしもし!起きてよ!」
突然意識を失った女性を腕に抱えて何度も道重はヒーリングを試みる。が、一向に起きようとはしない
「息はしているんだけど、どうしよう?このままほっておくわけにはいかないし」
「・・・さっきの風の変化とこの人が関係あるかもしれないし、一旦リゾナントで預かってもらおうよ
 今、愛ちゃんにお願いするから」
亀井は携帯をカバンから取り出した

亀井が高橋に電話する間、道重は何者なのかを調べようと落ちていたカバンを探りだした
カバンの中身は主に衣服だったが、驚いたことに底の方に数百万ほどの現金が詰まっていた
「な、なに、この人何?なんで現金が入っているの?」
カバンの内ポケットには名前を示す書類が入っていた
「『ふくむらみずきさん』・・・14歳・・・え?14歳?この人、14歳なの!?」

そこに高橋が“跳んで”現れた
「連絡貰って急いできたよ〜話は聞いたからリゾナントに連れていくよ!絵里とさゆ荷物はお願い!」
そう言い高橋は「ふくむら」を背負い、リゾナントへと跳んだ
道重は開けていたカバンを閉じ、他にも落ちていた「ふくむら」の持ち物と思われる荷物を亀井に渡した
しかし、しっかりとカバンが閉じていなかったのだろう、何かがカバンから地面へと落ちた
「さゆ、しっかりしてよ。何か落ちたじゃない。もう〜」
亀井がしゃがみ込んでその“何か”を拾った
「なにこれ?お守り?」
月明かりに照らされたそれには黄色の糸で「A」、緑の糸で「R」とアルファベットが縫われていた

82名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:34:53
                ★   ★   ★   ★   ★   ★

カタンと光井の手から離れたその刀を小春は拾い上げた
鞘から抜き出しその刃が研がれているのを確認して、へえと小さく声を上げた
「なんだ、みっつぃ、やっぱりこの子をしっかり使ってくれてるじゃない。
全然錆びていないし、きっとたくさん血を吸ってきたのカナ?」
久住は刀の峰をぺろりと舐め、嬉しそうに微笑んだ

「うぅ・・・さ、触るんな・・・」
「あ、やっぱ電圧抑えてたから死ねなかったのカナ?みっつぃ、具合はどう?」
「・・・気易く愛佳の名前を呼ぶなや、この裏切りモンが!」
「その台詞、しっかり立って言えたらきっと凄身がでるのにね〜関西弁ってやっぱ苦手かも〜」
久住は地面で倒れたまで動けない光井を見て、髪の毛を左手でいじりながらあっけらかんとした口調で言った
「無駄だって、しばらくはみっつぃは動けないから。
『いい感じ』に運動神経だけ麻痺させたから見えたり、話せたりするけど動けないから」
そう言われても光井はどうにかして動かそうと手足に力を入れたが、やはりぴくりとも反応しない

久住はしゃがみ込み、動けない光井に顔を寄せた
「くやしいでしょ、みっつぃ。何もできないって。ただ見るだけ、話すだけってツライよね〜
ねえ、みっつぃ、その格好地べたにはいつくばっているようだよ!まるで蟻みたいカナ☆
それに比べて小春は蝶!自由に何にも囚われず空を飛びまわる綺麗な蝶☆バサバサ〜」
そう言って久住は腹を抱えて笑いだし、光井は唇を強く噛み締めた

その表情に気がついたのだろう、久住は明らかに不機嫌そうな顔で光井を睨みつけた
「あ?何、その表情?蟻の分際で蝶に楯突くつもり?」
「・・・あんたはほんまの久住さんやない・・・」
「何言ってんの?私は小春、あなたのかつての仲間であって、今はダークネスの久住小春」
「愛佳のしっとる久住さんはあんたみたいな心が凍った人間やない。
あんたは名前と顔は久住小春やけどあんたは仲間だった『久住さん』なんかとちゃうわ!」
久住は自分を見つめる愛佳の目に憎しみの炎が燃えたぎっているのを感じていた
「・・・光井愛佳、小春は変わったんだよ。あの頃みたいな甘い考えは捨てた
 やりたいようにやって、生きたいように生きる、それが今の小春のポリシー!今が楽しければそれでいい!」

83名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:35:35
小さく光井は悲しげに息を吐いた
「かつて視た未来の予知では久住さんと愛佳が高橋さんが残してくれたものを守るハズだったのに
いつから愛佳達の道は分かれてしもうたんや・・・」

光井の呟いた言葉が久住の脳裏に邪悪な心を呼び起こした
「『いつ』から?そうね、明確な時は小春も分からないや・・・そうだ、面白いこと考えた♪
 ねえ、みっつぃ、いつから小春が変わったのかその正確な日時を教えてあげるよ」
わざと声色を優しくして久住は光井に話しかけ始めた
「何をする気や!やめるんや!」
光井は大声をあげて、久住を引き留めようとした。そう、これから彼女がしそうなことを予測できたので―
ただ動こうとしてもやはり力が入らず、どうしようもない

「無駄だって、動けないよ。そこで大人しく見てなよ。
でも、仲間だったことがあるから小春のしそうなことは予想できるって?すごいよ、やっぱみっつぃは凄いよ
今度はさ、みっつぃも私と一緒にこちら側に来てくれることを期待しているから」
(動け、愛佳の体、少しでも動け!)
「みっつぃのしたことは小春、知ってるよ。過去に戦士を送って今を変えようとしてるんでしょ〜
そして、これがその過去へとつながり入口ってことも☆」
そう言い久住は―光井の開いた時空の扉へと飛び込んだ
「面白そうじゃん、時間旅行なんて☆」と言葉を残して

「フクちゃん・・・すまん、とんでもない人をそちらに送ってしもうた
気を付けてくれや・・・ああ、高橋さん、ふくちゃんを、久住さんをしっかりみていてください」
そして、動けない光井の目の前で時空の扉は完全に閉じ切った

84名無しリゾナント:2011/04/18(月) 22:40:00
以上『止み、病み、闇』です。
『聖なるもの』書いた作者が考えていた『聖なるもの』シリーズの続きです。
なんていうか設定だけを走らせてますが、一応の俺なりの答えです

投下できないので代理の方お願いします。

85名無しリゾナント:2011/04/19(火) 05:40:51
いって来ましたぜ
この小春は憎たらしいけど魅力的だな
…ところでもう一つ続き物書いてませんでしたっけ

86名無しリゾナント:2011/04/19(火) 20:33:52
>>85
代理ありがとうございました(^o^)
闇小春は矢口っぽい小春をイメージして書きましたw
それから『能力』については他の皆さんにお任せしたいです
全ての設定を決めるのはスレとして良くないことだと思うので

え〜と、もう一つのほうはもがき苦しんで書いてます(汗
オチは決めてるけど、最初の部分がしっくりこないんです(+_+)

87名無しリゾナント:2011/05/10(火) 19:26:43
――――――――

こんばんは

しばらく作品を投下せずにいる間に狼の事情がだいぶ変わっているみたいで
「忍法帳」という壁に投下を阻まれてしまいました。

どなたか【代理投稿】を願います。

――――――――

88名無しリゾナント:2011/05/10(火) 19:27:19
 ■ スクールエントランス −鈴木香音− ■

「やだやだやだやだー!やなの!やなの!やなの!!!」
道重さんがじたばたしながら必死に異議申し立てしている。
「もーさゆー。あんたも一回納得したでしょーが?」
「でもっでもっ」
「でもじゃなーい。あんまりわがまま言うと入学式連れて行かないよっ。」
「うーっ…」
「鞘ちゃあああああああん!」
「うわっ。道重さん。」
「鞘ちゃんだってやでしょ?寮なんかよりさゆんちの方がいいよね?ね?」

あーあー…、大変だなぁコリャw
ずっき…鈴木香音はニコニコと二人の珍コントを見物していた。

この春、鈴木と鞘師はそろって私立凰卵女学院中等部へ入学した。
この冬はとても勉強どころでは無かったし(鈴木「てっかもともとアタシばかだけどwww」)
学校どころではないって思っていたのに。
ある日、高橋さんが願書を持ってきてくれた。
「受けてみ?『きっと受かるから』」

「大丈夫ですよ。ずっきもいっしょだし…それに。女子寮、リゾナントへは道重さんちより近いです。」
「でもっでもっ!さゆいなかったら鞘ちゃんのシャンプーとかご飯あーんしてあげる係とかっそれからそれからっ…」
「大丈夫です…自分で出来ます…。」
「てゆうかアンタいままで鞘師にそんなことやってたんかい」
新垣さんのツッコミ。
「ひゃひゃひゃさゆは鞘師がホント好きなんやねー」
「笑い事じゃないよ愛ちゃん!ほんとにもー」
「それよっか皆さん。はよせんと時間時間!」
「うわっ!ちょっいつの間にこんな時間!鈴木っ鞘師っ!もーいくよ!」

89名無しリゾナント:2011/05/10(火) 19:28:20
勢いよく開いたドアから駆け出す。
春の風が頬をなでる。

わー幸せだなぁアタシ…

香音は空を見上げる。

お父さんっ、アタシねっ!今日から中学生になったよっ!

90名無しリゾナント:2011/05/10(火) 19:30:12
転載しました

91名無しリゾナント:2011/05/10(火) 19:30:54
 ■ ミッションエントランス −鞘師里保− ■

「おうらん…女学院ですか?」
「そうやよ。そこへ潜入してもらいたいんやよ。」

走りながら鞘師は高橋さんの言葉を思い出していた。

「今回の任務…教師や職員という立場ではなく、学生という立場でなければならんの。」

「形の上では入試を受けてもらうことになるが…」

無邪気に前を走る鈴木に目を向ける。

「わかってんのかなぁ…もう」

高橋さんが掴んだ情報。

凰卵学園で能力者による事件が起こる。
確実に。
そしてその犠牲者もまた ―能力者―

92名無しリゾナント:2011/05/10(火) 19:31:59
>>88-89

 ■ スクールエントランス −鈴木香音− ■ でした。

>>91

 ■ スクールエントランス −鞘師里保− ■ でした。


>>91
ありがとうございます

93名無しリゾナント:2011/05/10(火) 19:33:48
>>91も転載しました
こちらこそ作品投稿ありがとうございました

94名無しリゾナント:2011/05/10(火) 20:01:03
転載乙です
締めレスも転載してあげてくださいね
やっときますゞ

95名無しリゾナント:2011/05/10(火) 20:04:31
すいません
忘れておりました

96名無しリゾナント:2011/05/10(火) 20:14:29
鞘師視点の方は作品の巻頭の「■ ミッションエントランス −鞘師里保− ■」として保管庫に収録させていただきました

97名無しリゾナント:2011/05/11(水) 19:00:22
>>93-96
昨日はお世話になりました。
実はまたお願いが…

98名無しリゾナント:2011/05/11(水) 19:01:15
 ■ スキームエンスキーム −矢口真里・市井紗耶香− ■

日暮れが、近付いて来ている。

「eg-0xx…13歳、能力は【残留思念感知(オブジェクトリーディング;object reading)】ねぇ…」
矢口は改めてターゲットのデータを確認した。
「今はふくむら…みずき…譜久村聖…14歳…か。こんなガキ拉致んの楽勝すぎんだろ」
矢口の独り言は続く。
「残ってる情報見る限りじゃその的中率も、とても実用には程遠いし、典型的なクズ能力者じゃん。
測定から一年経ってるったって現在の能力もたかが知れてるにきまってる」
そう、心配無いはずだ…、よぎる不安を無理矢理に打ち消す。
「そんなクズを捕獲するのにイチイを呼んだわけ?」
「うるせーな。なんも聞かねーで協力するって約束したろ!」
「まあ、いいけどね」
こいつ…なんかやつれたな…矢口は久しぶりに会った戦友にふとそう思った。
市井はだいぶ以前から前線に出ることはなくなっていた。
最強とまでは言えないものの、組織内でも上位の能力者であった市井がなぜ突然出世コースをも外れ、裏方に回ったのか。
矢口は矢口なりにその理由を理解していたが、あえてその真相を深く知ろうとはしてこなかった。
そんなことは、どうでもいいことだった。

99名無しリゾナント:2011/05/11(水) 19:02:14

組織内に裏切り者がいる。市井に話したのはおおむねその一点のみだった。
裏切り者はリフューズナンバーを使い、「なにかを画策している」。
自分のセリフとも思えない支離滅裂とした話の内容ではあったが、市井はなにも聞かず協力することを承諾してくれた。

エッグの育成は組織でもかなり上位の人間たちが運営してきたプロジェクトだ。
そのプロジェクトの「廃棄物」をほとんど痕跡も残さず外部へ持ち出し、あまつさえ「あんな化物に改造する技術力をもつ相手」…
どう考えてもそんなことが出来るのは「組織」それ意外にありえない。
であればうかつに幹部連中に情報を漏らすわけにはいかない。
可能な限り自分一人で調べる必要があった。
その過程で下部構成員クラスの内通者を大量にいぶり出すことには成功した。
ときには泳がせ、ときには拷問し、少しづつ疑問の解明につながる情報を集めていく。
そして、矢口は、ある疑念に辿りついていた。
矢口にとって考えたくない結論、あってはならない真実。
そして、その疑念が「間違いであることを証明するには」もはや直接廃棄物を捕獲し情報を得るしかないと決断したのだ。
調査の過程で「まず確実に裏切り者ではない」幹部も何人かは判明していた。
だが、どこから情報が漏れるかわからない。矢口は他の幹部を引きこむのはまだ危険だと判断した。
それよりも先に知っておくべきことがあった。
結局下手な小細工をしなくてもいい方法…記録を消す必要がない―組織が関心を持っていない相手。
となれば閑職の市井ぐらいしか選択の余地はなかった。

100名無しリゾナント:2011/05/11(水) 19:04:50
それにしても…矢口は思う。
譜久村聖を拉致するだけならコイツの能力で充分だろう。
仮に「能力の増幅」が行われていても、どのみち非戦闘系の能力者だ。何とでもなる。
「あの化け物」のようなけた外れの改造はそうそう成功しない。
それが、矢口なりに調べた結果得た確証だった。
そう、不完全とはいえ、すでに矢口は「廃棄物」達と…、何より「和田彩花」に行われた「おぞましい事」の概要を掴んでいた。
そして同時に「和田彩花」攻略の手掛かりも。
ただ、オイラとコイツだけでそれが可能なのか…それが不安だった。
だがそれもまた先の話だ。
自分の身辺を監視し、やつらに情報をリークしていたスパイはすでにこちらで掌握し、偽の情報を流してある。
今日のところはやつらと遭遇する可能性はまずない。

ピー。インカムにセンサーからの警告音。

「よし、予定通りターゲットを乗せた車両がポイントAを通過した。市井、アレ準備してくれ。」

「もう…始めてる。」

超…、超キメぇ…。
矢口は心の中で毒づく。
コイツの能力…オイラ、マジで嫌いなんだよな…。

日は沈み…、全てを暗闇が包んでいく中、不気味な音が地を満たしていく。

キチキチ…キチキチキチ…

101名無しリゾナント:2011/05/11(水) 19:07:27

>>98-100

 ■ スキームエンスキーム −矢口真里・市井紗耶香− ■ でした。

以上、本スレへの代理投稿をお願いできませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。

102名無しリゾナント:2011/05/11(水) 19:33:30
じゃ、行ってきますかね

103名無しリゾナント:2011/05/11(水) 19:39:17
完了
今度は矢口さんのターンですか(違
どんどん世界が広がってくなあ

104名無しリゾナント:2011/05/12(木) 19:04:29
>>102
代理投稿いただきありがとうございました
ご迷惑をおかけして申し訳ありません
本当に毎度毎度恐縮なのですが…またお願いに上がりました…

105名無しリゾナント:2011/05/12(木) 19:05:10
 ■ ヒデュオスレギオン −譜久村聖X市井紗耶香− ■  

今が夜であったことは、幸いであったのかもしれない。

キチキチ…キチキチキチ…

地面すれすれをさざ波のように音が這い進んでいく。
不気味なさざ波の音をかき消すようにクラクションの音が絶叫し続けている。
ひしゃげたバンパー、傾いたフェンス…。
そしてアスファルトを埋め尽くす…

 ―蟲だ。

ゴキブリ、ムカデ、アリ…、その他名状しがたい大小さまざまな蟲たちが、その黒いセダンを覆い尽くさんと這いまわる。

【蟲使い(バグテイマー;bug tamer)】。
蟲を呼び寄せ自在に操る…、それが市井紗耶香の能力だった。

ブチッ ブチッ ブチッ

地を覆い尽くす黒い絨毯を踏みつぶしながら、市井はセダンへと歩を進めていく。

ブブ…、ブブブブブ…

すでに羽虫やゴキブリによって窓という窓は覆い尽くされ、中の様子は伺えない。

車の機密性などたかが知れている。
今頃車内にも蟲が侵入し始めている頃だろう。
すぐにパニックになって飛び出してくるはずだ。

「簡単な仕事だったわね」

106名無しリゾナント:2011/05/12(木) 19:06:51

そうひとりごちる。

ガチャ…
後部座席のドアが少しだけ開く。
開いたドアの隙間から蟲たちが侵入する。
市井は体中を蟲に這いまわられ、悲鳴を上げて飛び出してくる少女を想像し、サディスティックな笑みを浮かべた。

が…。

ズバウン!

「!?」

ゴォッ!

「な?なにコレ…。聞いてねえぞ矢口…」

輝く翠玉…いや…これは炎だ。エメラルドグリーンに輝く、緑の焔。

すらりとした…それでいて肉感的な脚が地面に降り立つ。
瞬間、地を這う蟲は炎に巻かれ、タンパク質の燃える嫌な臭いを撒き散らす。

すらりとした…それでいて肉感的な手がドアに触れる。
ドアを這いのぼる蟲が、飛び回る羽虫が、根こそぎ焼き尽くされる。

「とうとう…見つかってしまったんですね…私…」

物憂げな瞳、抜けるように白い肌、艶やかな黒髪。そして…、

…匂い立つ色気…。

107名無しリゾナント:2011/05/12(木) 19:07:56

大量の蟲が焼け焦げる異臭の中にあって尚、彼女の周囲だけには蜜のような甘い香りが満ちているかのようだった。

―譜久村聖―

―少女と呼ぶにはあまりに早熟な肢体の―少女がそこにいた。

108名無しリゾナント:2011/05/12(木) 19:09:04
>>105-107
 ■ ヒデュオスレギオン −譜久村聖X市井紗耶香− ■  でした。

以上、本スレへの代理投稿をお願いできませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。

109名無しリゾナント:2011/05/12(木) 19:24:27
行ってきますかね

110名無しリゾナント:2011/05/12(木) 19:32:56
完了
市井さんの能力超キメぇ
譜久村さんの能力は緑つながりで発炎ってわけでもないですか

111名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:32:00
>>110
ありがとうございました。
>譜久村さんの能力
能力についてですが実は発炎ではないんです。
でも緑つながりはあるにはあります。

112名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:32:50
 ■ エンチャンター −譜久村聖− ■

薄闇に翠玉色の炎が舞い上がる。

大量の蟲が焼け焦げる悪臭の中にあって尚、彼女の周囲だけには蜜のような甘い香りが満ちているかのようだった。

―譜久村聖―

―少女と呼ぶにはあまりに早熟な肢体の―少女がそこにいた。


「おどろいた…。あなたの能力って【残留思念感知(オブジェクトリーディング;object reading)】じゃなかったの御嬢ちゃん?」
譜久村は答えない。
かわりに車内へ目を向け、手をかざす。

ゴォッ!
車内が一瞬で緑の炎に包まれる。
市井など意に介さずが如く運転席側へまわる。
不思議なことに緑炎は運転手の服も身体も、車内内装も焼くことなく、蟲だけを焼き殺していた。
よかった、まだ息はある。
それだけ確認すると、あらためて市井へ向き直った。

市井は落ち着きを取り戻していた。
現役だった頃から彼女は慎重な戦い方をしてきた。決して無理をしない。
たしかに、蟲使いである自分にとって、火炎能力者は最悪の相手だった。
単独での戦闘ならばとっくに市井は撤収している。
だが、後方に矢口が控えている限り、「どんな能力者であれ」無力化出来る。
そう、市井は目の前の能力者を単なる【二重能力者(デュアルアビリティ)】と思っていた。
すぐに矢口が無力化する。それからゆっくり料理してやればいい。

113名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:33:54

「矢口、たのんだ。」
沈黙、いや、かすかな息遣いは聞こえる。矢口に似合わない、逡巡、躊躇。

そう、市井は知らない。
「和田彩花」の存在を。矢口の能力の及ばぬ能力者の存在を。
目の前の相手もまた同様の存在ではないとはいえない。その可能性を。

「どうした矢口、やれよ。」

矢口は我にかえる。
大丈夫だ。あのガキは「あの化け物」じゃない。
「あの化け物だけ」が特別なんだ。
だが、どういうことだ?あれは「能力の増強」なのか?まるで別の能力じゃねえか。
いや、なんであれ無効化できるはずだ。
それに「あの化け物」に効かなかったカラクリだってもうわかってる…わかっているはずだ。
あのガキは「あの化け物」じゃない。大丈夫だ。やれる。

矢口は【能力阻害(インぺディメント;impediment)】を発動した。

114名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:34:59
突然、譜久村のまとっていた緑炎が消えた。
瞬間、世界に闇が戻る。

市井はニヤリと笑みを浮かべる。
炎におびえるかのごとく距離をおいていた蟲達が再び勢いを取り戻す。

「さぁて、どうする御嬢ちゃん?」
譜久村は動かない。
市井はわざとゆっくりと蟲達の包囲陣をせばめていった。

「安心なさい。おとなしくしていれば殺したりしないわ。そこでじっとしてなさいね。」

睡眠薬入りの注射器を取り出しながら優しく声をかける。
譜久村は答えない。おびえきっているのか?
まあいい。もともとこのコを殺すわけではない。
恐怖を与えおとなしくさせればそれでいい。
事実目の前の少女はおとなしかった。
いや…、おとなしすぎた…。
少女は空を見上げる。静かに、ただ静かに。
その顔に恐怖はない。不安も決意も諦めもない…。

「?…」

空を見上げたまま、譜久村はポケットから何かを取り出した。
その小さな何かを片手で器用にめくる。
四角く白く小さな何か。
文房具?…
かわいらしいキャラクターの表紙の付いた、どこにでもあるようなそれは…単語帳だ。

115名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:35:47
市井は異変に気づいた。
この御嬢ちゃん…、「まだ何かする気」だ。
何かはわからない。だが、あの手に持つ単語帳…あれが鍵だ。あれは危険だ。
市井の直感がそう告げる。
いますぐ取り上げなければ!
急いで蟲達に念を送る。
一気に輪が縮まる。少女が黒い濁流に飲み込まれる。


そのとき、
世界に再び、緑の光が満ちた。

ゴォッ!

地を這う蟲が焼き尽くされる、空を舞う羽虫が消し炭となってパラパラと落ちる。
翠玉のごとき煌めき。エメラルドグリーンに輝く、緑の焔。

「ザーッ…なんだ…ザーッ…!くそっ!ザーッ…なのか!?」
インカムから矢口の罵声が聞こえる。
だめだ。矢口らしくもない。完全に取り乱してる。
市井は作戦の失敗を悟った。
市井は現場であれこれ考えるタイプではない。失敗の原因など後で調べればよい。
失敗したなら即座に撤収する。それだけだ。
「矢口、あたし逃げるわ。あとで合流な」
矢口の答えを待たず市井は遁走した。
蟲達が瞬時に市井を覆い尽くし…。
再び散り散りに蟲が四散したとき、すでにそこに市井の姿はなかった。

116名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:37:57

先ほどまで世界に満ちていた翠玉色の炎はすでに消えさっていた。

だが、月明かりと、ぽつぽつと付き始めた街灯が、都会から暗闇を消しさっていく。

すでに敵の気配はない。

譜久村聖は単語帳、その中の一枚のカードに目を落とす。
カードには大きく手書きでなにかが書かれている。「…in …in 」誰かの名前だろうか?
そっと文字をなぞる。
ほとんど自動的に【残留思念感知(オブジェクトリーディング;object reading)】が発動する。
だが、そこからは何も読み取れない、なにも浮かんでこない…
特に気にする様子もなく、少女は胸ポケットからペンを取りだす。
そのカードに小さく×をつけた。
そして、ページをめくり何枚かのカードに×を書き加えていく。

「このカードは、あと、二枚か…」

そう…これが彼女の能力。

もともと、彼女の能力は人や物に触れることでその残留思念を読み取る力だった。
だがその能力は「処置」によって拡大され、残留思念を物体から物体へコピーする力へ…、
そして、いまや能力者の能力を物体にコピーする力へと進化していた。

【残留思念感知(オブジェクトリーディング;object reading)】の拡大された真の姿。
言うなれば、これは【能力複写(リプロデュスエディション;reproduce addition)】だった。

117名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:39:35

だが、どういうわけか譜久村にはこの単語帳に関する記憶が無い。
単語帳に能力を封入したのはまさに譜久村の能力、それはわかっている。
その使い方も戦い方もすべて完ぺきに理解している。
しかし譜久村にはその記憶がない、この単語帳を作る以前の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
当然、封入された能力の持ち主も知っていたはずだ。が、その記憶もない。
自らの思念感知を用いてもなぜかこの単語帳からは何も読み取れない。

単語帳や能力のことだけではない。
彼女の記憶は不自然な記憶の抜け落ちだらけだった。
組織のことも、エッグのことも、自らの生い立ちも…。
普通ならばこのような状態で平気でいられるはずがない。
自分はいったい何者なのか?今の自分はなんなのか?
疑念と不安に押し潰され、精神を病んでもおかしくはない。
しかし、彼女は信じられないほど楽観的だった。
なぜか、まったくそこに疑問を感じることが出来ないのだ。
虫食いだらけの記憶のまま、そのままで彼女はこの一年を過ごしてきた。

だが、それでも、それでも心の奥底で、彼女にはわかっていたのだろう。
今の偽りの生活が長くは続かないことを…、必ず訪れる平和な日々の終わりを。
そして、もしかしたら、平和な日々の終わりが、
失われた記憶を取り戻す可能性への扉が開くきっかけになるのかもしれないことを。

譜久村聖は夜空を見上げる。

夜空には、月が輝き、星は、やさしくまたたいていた。

118名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:47:37
>>112-117

 ■ エンチャンター −譜久村聖− ■ でした。

以上代理投稿をお願いできませんでしょうか?
お手数おかけしますがどうぞよろしくお願いいたします。

>>110
サイコメトラー設定からどこをどうしたわけかマジックアイテム作成能力者に設定が暴走してしまいました。
彼女の【能力複写(リプロデュスエディション;reproduce addition)】に関しては
制限やらなんやら設定を色々考えてあって付録で載せるかとも思ったのですが50行近くあるし
なにより「後で細かい設定を変えたくなった時」こまるかも?などと考えやっぱりやめます;

119名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:51:52
じゃ行ってきます

120名無しリゾナント:2011/05/13(金) 19:54:52
>>117に余計な文章が混じっていました。

以下>>117を修正させてください


当然、封入された能力の持ち主も知っていたはずだ。が、その記憶もない。
自らの思念感知を用いてもなぜかこの単語帳からは何も読み取れない。

単語帳や能力のことだけではない。
彼女の記憶は不自然な記憶の抜け落ちだらけだった。
普通ならばこのような状態で平気でいられるはずがない。
自分はいったい何者なのか?今の自分はなんなのか?
疑念と不安に押し潰され、精神を病んでもおかしくはない。
しかし、彼女は信じられないほど楽観的だった。
なぜか、まったくそこに疑問を感じることが出来ないのだ。
虫食いだらけの記憶のまま、そのままで彼女はこの一年を過ごしてきた。

だが、それでも、それでも心の奥底で、彼女にはわかっていたのだろう。
今の偽りの生活が長くは続かないことを…、必ず訪れる平和な日々の終わりを。
そして、もしかしたら、平和な日々の終わりが、
失われた記憶を取り戻す可能性への扉が開くきっかけになるのかもしれないことを。

譜久村聖は夜空を見上げる。

夜空には、月が輝き、星は、やさしくまたたいていた。

121名無しリゾナント:2011/05/13(金) 20:07:02
完了
何か錯綜してしまった
もうちょっと様子を見てから投下したら良かった

122名無しリゾナント:2011/05/14(土) 12:41:51
>>121
いえ、こちらこそ御手間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。

実は100%私のミスなのですが>>120の修正版、一日たって読み返して見ると
前半の数行をコピペミスによって落としてしまっていました。

本当は>>117の10行目あたり
>組織のことも、エッグのことも、自らの生い立ちも…。
この一行だけを削りたかったのですが、削りたくない前半の数行まで落としてしまいました。
遅ればせながら次のレスにてもう一度投下させてください。

123名無しリゾナント:2011/05/14(土) 12:43:04
だが、どういうことか譜久村にはこの単語帳に関する記憶が無い。
単語帳に能力を封入したのはまさに譜久村の能力、それはわかっている。
その使い方も戦い方もすべて完ぺきに理解している。
しかし譜久村にはその記憶がない、この単語帳を作る以前の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
当然、封入された能力の持ち主も知っていたはずだ。が、その記憶もない。
自らの思念感知を用いてもなぜかこの単語帳からは何も読み取れない。

単語帳や能力のことだけではない。
彼女の記憶は不自然な記憶の抜け落ちだらけだった。
普通ならばこのような状態で平気でいられるはずがない。
自分はいったい何者なのか?今の自分はなんなのか?
疑念と不安に押し潰され、精神を病んでもおかしくはない。
しかし、彼女は信じられないほど楽観的だった。
なぜか、まったくそこに疑問を感じることが出来ないのだ。
虫食いだらけの記憶のまま、そのままで彼女はこの一年を過ごしてきた。

だが、それでも、それでも心の奥底で、彼女にはわかっていたのだろう。
今の偽りの生活が長くは続かないことを…、必ず訪れる平和な日々の終わりを。
そして、もしかしたら、平和な日々の終わりが、
失われた記憶を取り戻す可能性への扉が開くきっかけになるのかもしれないことを。

譜久村聖は夜空を見上げる。

夜空には、月が輝き、星は、やさしくまたたいていた。

124名無し募集中。。。:2011/05/14(土) 15:26:32
まあいつの間にかやってくれてるでしょうよ

125名無しリゾナント:2011/05/22(日) 14:37:10
「「ありがとうございました〜」」
最後のお客様を笑顔で見送り二人はそれぞれ閉店の作業へと入る
高橋は食器洗い、れいなは店内の掃除
お店のために、お客様のために、そして自分自身のために手を動かす

れいなが雑誌の番号を綺麗に並び終えて仕事を終えた時、高橋は翌日の料理の仕込みの最中であった
「愛ちゃん、れーな終わったから先に上にあがってお風呂入るよ!」
閉店後の作業は高橋が残ることが多くて、れいなは先にお風呂に入るのが常だった

しかし、この日は違った
階段を上ろうとするれいなに高橋が「ちょっと、れいな待って」と声をかけたのだ
汗を流しさっぱりする気でいたれいなは当然「なんね、愛ちゃん」とぶーたれる
そんなれいなに高橋は笑顔でキッチンへと手招く

「愛ちゃん、れーなさっぱりしたかったとよ、何ね?れいな、何もしていないとよ」
「いやいや、怒ることなんてないよ、れいなはしっかりお店のことを思ってくれているから
でもさ、ちょっと、ちょっとだけでいいから、明日の仕込み手伝ってくれないかな?」
そんなお願いをするのは初めてだった
料理と作るのは高橋、それを給仕するのがれいな
それが二人の間で自然と生まれたルールだった
もちろんコーヒーくらいはれいなも自分で飲むから美味しい入れ方を教わった
でも名物のガレットやパスタはすべて高橋が1から10まで作っていた
「ちょっと疲れちゃってさ」なんていいながら高橋は頭を掻く
照れくさそうに笑う高橋を見てれいなは「仕方ないっちゃね」といって手洗い場へと脚を進めた

エプロンをキッと結び直して、れいなはお世辞にも広いとは言えないリゾナントの厨房へと身を滑りこませた

126名無しリゾナント:2011/05/22(日) 14:38:06
「それで何をすればいいと?」
「うーんと・・・じゃがいもを切ってちょうだい」
そういって高橋は手ごろな大きさのジャガイモと包丁をれいなに手渡した
「・・・愛ちゃん、れーな、包丁怖いからピーラーとか使いたいっちゃけど」
高橋は申し訳なさそうに「ごめん、壊しちゃったからないんだ」と言った

「えー、れーな包丁あんまり使ったことないとよ。怪我するかもしれんし」
「ゆっくりやれば大丈夫だって。私も最初はおっかなびっくりだったんだから
 それにいざとなればサユを呼びに行くから大丈夫だって」
不安そうなれいなに高橋は笑顔を向けた
「まずジャガイモの芽を包丁のアゴで取って、短冊切りにして塩水につけておいてね」
「顎ってなんね?」
「包丁の根元の部分。ほら、ここ」
「ふ〜ん、で、どうやって根を取ると?」

「一回だけやるからしっかり見ててね。それから根じゃなくて芽だからね
まず、包丁をしっかり握る。そしてアゴをジャガイモの芽にあてて、こうやって取るの」
「れーなピーラーでしかやったことないけん、手を間違えて切りそうで怖いちゃけど」
そう言っているうちに高橋はジャガイモ一つの全ての芽を取り除いてしまっていた
「はい、じゃあれいな、そこに置いてあるジャガイモ全てお願いね」
おっかなびっくりれいなは不器用な手つきながらジャガイモの芽を取る作業に入った

自分も他の料理の仕込みをしながら高橋はれいなに優しく声をかける
「れいな、スジいいよ!できるならもう少し芽を大きめに取った方がいいかな?」
「・・・うん」
集中しているのか返事が幾分遅れて返ってくる
「そうそう、それくらいでいいよ」
高橋が両手に力をこめて生地を練りながら、視線はれいなの手元に向けている
「切り終わったらこのボウルに入れてね」
れいなの前に塩水を入れたボウルを置いた

127名無しリゾナント:2011/05/22(日) 14:39:09
「・・・ふぅ、終わったと」
切り終えたジャガイモがボウルにポチャンと音を立てて入った
「ありがとう、れいな。でも、ごめんもう少しだけお願いしていい?ニンジンの皮もむいて」
「え〜愛ちゃんすればいいっちゃん」
「そんなこといわんで〜」
そう言いながら高橋はれいなの腕を掴んだ
「仕方ないっちゃね」

そうやってれいなは結局その後もカレーの味見なりサラダのドレッシングなど手伝わされた
終わったのはいつもよりも一時間も遅い時間
「ありがとうれいな。おかげでいつもより早く仕込み終えられたよ
 何か飲もっか?あったかいホットミルクとかレモンティーとか」
「ううん、れいな、早くお風呂入りたいから後でいいと
 あとでレモンティー用意してくれたら嬉しい」
「わかった。特製レモンティー入れておくから、温まってね」
言い終えるとれいなは階段へと脚を進めていった

高橋はそんなれいなのために戸棚からカップを取り出そうとした
「これでいいかな?」
そう呟いて高橋は二つのティーカップに手を伸ばした
右手で掴んだのは水色、れいな専用と決めたもの
水色のコップを取り出してカウンターテーブルの上に置いた
続けて黄色、自分のティーカップを取ろうと手を伸ばす

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

れいなは自身の部屋、れいな城でパジャマを手に取り少し休んでいた
「はぁ〜今日も良く働いたとね〜」
大きく欠伸をしてう〜んと背を伸ばす
肩がこったのか腕をグルングルンと回してみたりもした

128名無しリゾナント:2011/05/22(日) 14:40:26
「でも愛ちゃんはれいなよりもずっと遅くまで頑張っているとね
 初めて料理の手伝い頼まれたけん驚いたけど、ちょっと楽しかったかも」
れいなは先程まで握っていた包丁の感覚を思い出そうとした
「刃物相手には戦ったことあるけど、自分ではないけん、少し怖いとね」
そういって誰にも見られていないのは分かっていたが恥ずかしそうに歯をみせてニヤリとした
「・・・今度はれーなから『手伝おうか?』って言ってみようかな?」

そんなことを思っていると下の方からガチャンと食器の割れる音がした
「なんね?愛ちゃん、大丈夫と?」
れいなは大声を出して確認した
「れいな、ごめん。なんでもない〜ちょっとお皿割っちゃっただけやよ〜」
高橋がれいなに負けじと大声で返してきた
「愛ちゃん、気をつけるとよ〜小さい破片とかあるかもしれんけん」
「はいよ〜気をつけるから〜ゆっくり休みぃ」

能天気な高橋の声に安心したれいなはパジャマを持ってお風呂場へ

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

「あっちゃ〜やっちゃった」
高橋は掃除機のコードをコンセントに刺しながら自分のドジに嘆いていた
「せっかくのお皿だったのにな、あ〜あ」
掃除機のスイッチを入れ、店内は掃除機の低い音が鳴り響く
「これでいいかな?」と高橋は掃除機を止め、コンセントを引き抜こうとする

右手をのばし―そこでいったん手をひっこめ、左手でコンセントからコードを引き抜いた
掃除機のコードを巻くボタンを左手で押した
しかし、全てのコードが収まることなく、少しだけはみ出てしまっている

高橋はしゃがみこんで左手でコードをひっぱり、右手で掃除機本体を押さえた
右手の中指で掃除機のボタンを押すと今度はすべてのコードが収まった
「よし」と呟いて掃除機を片隅に片づけた

129名無しリゾナント:2011/05/22(日) 14:41:22
片付け終えた高橋は一人カウンターに座り軽く咳き込んだ
「れいな、少しは料理に興味持ってくれたかな?楽しさが分かってくれるといいんだけど」
そう言って自分の右手をゆっくりと目の前に持ち上げる

目の前にかざした右手は雪のように白くて華奢で小さい
何年も培ってきた料理スキルに高橋は自信を持っていた
実際にお客様にもメンバーにも好評で「おいしい」って言われることが至福の時だった

今、目の前にあるこの手、そんな手に「光」の力が宿っているなんて信じられないくらいだ

「このお店は私の幸せを生んだ場所。みんなの幸せを生む場所。いつまでも守らなきゃいけない」
掌を自身に向けて高橋は小さくため息をつく
「…何焦っているんだろう、私」
また小さく咳き込む

目の前に広げた掌はいつもよりも白く―透明になっているように感じられた
消えてしまいそうなくらいに白く、薄くなっていると感じるほどに

そしてまた咳き込む

そこにれいなからのメールが届いた
メールの内容はシンプルに「お風呂上がりは紅茶がいいと」とのこと
高橋は笑顔でゲンコツの絵文字をうって、キッチンに入っていった
ケトルに二人分の水を入れて、ガスを点けた

鳴り響くのは換気扇の音だけ
高橋は何も言わずに天を仰いだ

130名無しリゾナント:2011/05/22(日) 14:47:34
『Another Part Of Me』です
>>502で料理モノのリクエストあったから書いてみた
決して終わらせるつもりはないが、なんかこういうの浮かんだんですよね
どうしても卒業を意識して書いてしまいました
タイトルはマイケル曲から頂きました(^^♪

代理よろしくお願いします<(_ _)>

131名無しリゾナント:2011/05/22(日) 16:19:00
行ってみるよし

132名無しリゾナント:2011/05/22(日) 16:28:58
行ってきたよし
保護者目線のリーダーが良かったですな
ほのぼの一辺倒で終わらせなかったのは好みが分かれるところでしょうが個人的には好きですた

133名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:48:01
 ■ タイムオブヘル −矢口真里− ■

「おいおいなんだありゃあ…!くそっ!『コイツも』なのか!?」
全体を見渡せる離れたビルの屋上に移動していた矢口は砕かんばかりに歯を食いしばる。

矢口は混乱していた。
【能力阻害(インぺディメント;impediment)】が効かないだとぉ?
またかよ!またなのかよ!ふざけんじゃねえぞ。

矢口はライフルのスコープを譜久村の顔にあわせる。
同性ですら思わず引き込まれそうになる。
端正でふくよかな頬、ひかえめで奥ゆかしい口元。14歳の瑞々しい肌艶。

「ちっブサイクがっ!能面みたいなツラしやがってっ!」

嫉妬。
能力者である以前に、雌として、生物として自分の方が劣っている。
そう直感する。だが、認めない。矢口という女が認めるわけがない。
怒りの矛先が容姿に対する嫉妬へと向くにつれて、
不思議と冷静さが戻ってくる。

ちょっと待てよ…、『同じ』じゃねえぞこれは。

『同じ』じゃねえ。

矢口は忌まわしいあの敗北の夜を思い出す。

134名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:49:14

―もし矢口の能力が、物理的、視覚的にもっとわかりやすい能力だったなら、こんな誤解はしていなかったかもしれない。

あのときのオイラは能力を使う以前に封じられていた。
そうだ、最初から『発動していなかった』んだ。
それが「あの化け物」の力…。

だが、今のはちがう。
今、あのガキにオイラの【能力阻害】は確かに効いたんだ。
今度こそ勘違いじゃない。確実に効いた。
再び発火能力が復活したカラクリはわからない。
だが、一度でも効いたのなら、かければまた効くはずだ。
何度能力が復活しようがそのたびに何度でもかけ直せばいい。
矢口に自信が戻ってくる。

135名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:50:12

「みてろよ…、すぐに化けの皮を剥がしてやるっ!」

矢口は再び【能力阻害(インぺディメント;impediment)】を発動するため意識を集中する。

そのときだった。

「どういうことなのか聞かせてくれない?矢口。」

ふいに背後から浴びせられた言葉に、矢口は硬直した。


世界が、静止していた。


この能力は…、この能力者は…。

「け、圭ちゃん?…」

世界が静止した中で、その女性―保田圭―は、もう一度訪ねた。

「だから、これはどういうことなのって聞いてるの。」

地…地獄だ…。

矢口は力なくライフルを取り落とした。

136名無しリゾナント:2011/05/22(日) 17:52:21
>>133-135

 ■ タイムオブヘル −矢口真里− ■ でした

以上代理投稿をお願いいたします。

137136:2011/05/22(日) 17:54:43
>>130
高橋さんは死期が近付いてる
そう言う設定なのでしょうか?
何か悲しい結末を予感させるいい話ですね

138名無しリゾナント:2011/05/22(日) 19:45:48
行ってきま〜す

139名無しリゾナント:2011/05/22(日) 19:59:28
行ってきますた
矢口さんの婚約会見という良き日に相応しい作品でしたね

140名無しリゾナント:2011/05/22(日) 21:17:10
>>130です。代理ありがとうございました★
ほのぼのよりも裏のある話の方が書きやすいんですよ
死期が近いかどうかは読者次第だと思います

141名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:42:35
高橋からの短いメール「サユは××におる!」
道重の携帯にも届いたそのメールはすぐに消去された

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

道重の声が聴こえた―それは4日ぶりのこと
(サユが呼んでる)
一刻も早く道重のもとへと行かなくては、そんな思いが高橋の脚をもつれさせた
・・・勢いよく階段で転んだのだ
「愛ちゃん、大丈夫?れいな先行くけん」
転んだ高橋の上を跳んで一階へと華麗に着地を決めた

一階に降りたったれいなの前に影。それはすでにコートを羽織って待ち構えていた雅であった
「さあ行きましょう!高橋さん、大丈夫ですか?時間無いですよ」
雅は私も行くことがさも当然といった表情で力強く言う
「ミヤ、何してると?行く気かいな?遊びじゃないとよ」
「わかってますよ!でも私にも行く権利はあると思います。だってあの子がいるかもしれないから」
光井の手を頼りにして立ちあがった高橋が階段の上から雅の曇りない瞳をみて確信込めて言った
「れいな止めても無駄だと思う。連れていこう
ただこれだけは言っておくから、雅ちゃん、安全は保証しない。自分の身は自分で守るんだよ」
雅はコクンと頷き唾を呑み込んだ

「そんじゃみんな裏の駐車場に行って」
「ま、まさか、愛ちゃんリゾナントカー使う」
「ちょうど五人だからいいじゃん」
高橋はキッチンにおかれた鍵を手に取ったのを見て、三人は慌てて後ろに乗りこんだ
否応なしに雅は助手席に乗り込むことになる。何も言わずに後ろの三人はしっかりシートベルトを装着
「行くよ!」
ドォルゥゥゥゥゥ・・・ドヒュン
「た、高橋さん、速すぎますよ」
「アヒャヒャヒャ、この風、この景色最高!アヒャヒャヒャ!」

142名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:43:40
                ★   ★   ★   ★   ★   ★

「そんじゃ行くぞ。マルシェもたまには付いてこいよ。あんな暗いとこばかりいると体が錆びるぞ」
ダークネス本部におかれた物質転送装置(専ら移動に使われている)が置かれた部屋へと向かいながら吉澤が声をかける
「部署が部署だがな、体動かさないといざというときに動けないぞ。走っているのか?元ランナーのマルシェ?」
「・・・それなりにはしていますよ。それにいざというときの方法も考えていますから」
「ってまた例の『エネルギー産生』か?俺には難しくてわかんねえ能力だよな、お前の『原子合成』ってのは」
吉澤はあいまいに笑う

吉澤が警備している下級構成員にふざけて敬礼をして、入室パスワードを入力する
マルシェは吉澤に敬礼をされて慌てて敬礼を返す構成員の姿を見てクスッと笑っている
「何笑ってるんだよ。コミュニケーションだよ」なんて言いながら二人は部屋に入っていった
「それでは吉澤さん、いってらっしゃいませ」
「あ?お前も行くんだよ。気分転換だ。」
そう言って吉澤はマルシェの白衣の袖を掴み無理やり装置の中へと引っ張る
「ちょっと引っ張らないでくださ」
マルシェが言い終わる前に二人は異空間へと移動していた

「ちょっと危ないですよ、吉澤さん」
マルシェが珍しく本気で怒っている
「私まだしっかりと領域の中に入っていなかったんですから!知っているでしょ、この機械が危険だって!」
「いや、てっきりもういいだろと思っちまったからさ。悪い悪い、いいじゃねえか五体満足なんだからよ」
マルシェの言う危険―それは転送装置の狭間では空間が『切断』されてしまうこと
かつて転送装置にしっかり入らないことで右半身だけが転送されてしまうという事故が起きたことがあった
「あくまでもクールに冷静に、それがオマエらしいんじゃねえのかよ?」

143名無しリゾナント:2011/06/17(金) 23:45:07
吉澤にそう言われてマルシェは少し冷静さを取り戻した
「ふぅ・・・書類溜まっているんですよ・・・ボスに怒られる・・・それで、どこいくんですか?」
「あれ?言っていなかったか?あいつのところだよ、ほら出口だ、いくぞ」
二人の目の前にスリットができ、吉澤はその中へと飛び込んだ
「ちょっ、まだ答え聞いていませんよ。待ってくださいよ」
マルシェもスリットの中に飛び込んだ

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

「さあ、みんな着いたよ。降りた、降りた」
比較的乗り物酔いに強い光井、そして強がっているれいながゆっくりと車から降りた
それに対して雅は差し出してもらったビニール袋とお友達になっている

「ここ?」と本当なら酔いやすい亀はその城を見上げている
近くの駅まで新垣を迎えに行った高橋を除いた亀井達が着いたのは森の中の古城
蔦が生い茂り、石垣が積まれた城壁、さながら中世にでも来てしまったように錯覚してしまう
「ここっちゃろ、れーな、サユがいるのをビンビン感じると」
無意識ながられいなが拳を血管が浮き出るほど握りしめる
「しかし、雅ちゃん、本当に弱いんや。大丈夫?」
光井が心配そうに声をかけている横で亀井は「サユ〜サユ〜」と大切な親友の名前を呟いている
「キツいです。なんかいつもよりずっとキツい・・・ウッ・・・」
「…もしかして亀井さん?雅ちゃんに移したりしてへんですよね?」
「サュ…(ピタッと一瞬止まり)サユ〜サユ〜」
「…あれは黒っちゃね」

そこに近くの駅まで新垣達を迎えに行ったリゾナントカーが到着
「ガキさん送迎代はピンチャンポー宛でええよね?」
「ちょっと勝手に人のお店の名前宛で領収書切らない!そもそもタクシーじゃないんだから」
「…ガキさん、元気っちゃね。あれに乗ってきたのに」
ぐったりしているリンリン、久住、ジュンジュンの姿をみながられいなが力無く言う


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