したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

レス代行はここでおk その3

27名無しさん@避難中:2011/03/23(水) 15:32:00 ID:xGuRk7K.0
どなたか代行お願いします

【スレ名】【作曲・演奏】音楽系総合スレ【作詞等も可】
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1296144177/
【名前欄】なし
【メール欄】sage
【本文】↓
没曲投下
バリバリいってるので音量注意です
http://loda.jp/mitemite/?id=1857

28名無しさん@避難中:2011/03/23(水) 16:54:36 ID:9wVE1RQk0
いってきまーす

29名無しさん@避難中:2011/03/23(水) 16:55:49 ID:9wVE1RQk0
ただいま

30名無しさん@避難中:2011/03/23(水) 17:09:15 ID:xGuRk7K.0
>>28
確認しました、有り難う御座います!

31名無しさん@避難中:2011/03/24(木) 03:30:32 ID:4U0I9kC60
あと1レスで終わりだったのに連投規制……眠りたいのでどなたか代わりに1レスだけお願いできないでしょうか。
こんな時間帯ですが、どなたかいらっしゃればよろしくお願いいたします。

【スレ名】 【安価】わしを育てるスレ 22回育てた【AA】
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1299071030/
【メール欄】sage
【本文】↓
     ____
   /__.))ノヽ
   .|ミ.l _ノ 、_i.)
  (^'ミ/.´・ .〈・ リ   「あっぶな……なんとか桑田を盾にして逃げたけど、危うかったで……
  .しi   r、_) |    しかし逃げるのに必至で、現世への扉から遠ざかってもうた……」
    |  (ニニ' /
   ノ `ー―i







                  ____
                /__.))ノヽ
                .|ミ.l _  ._ i.)
               (^'ミ/.´・ .〈・ リ   「今度こそ、状況を打破できる策が必要やで。どうしようか」
               .しi   r、_) |
           ,--ーー  |  `ニニ' / ー-、_
          /   /i/ `'`ー―i´ | `ー、_
         /    /  llヽ/ ̄/  |    l
        /  Y L  |,) ∧ノ↑  ,> ィ   |
      /    |ヽ  |,バ  |  7 /  |
     /     .イ| |  |rA,| /  / /   |
    /      / |  |  |gca| |  / /|    )
   /     / /  | .|aAi| | / //    l
   レー-、_ / ̄`__-、__,l Aec.| | / /(     |
  fク´"''ノ_V    `\ノノavkj ̄レ ノ ノ     ノ
  / ,、 i  \      \_,ニコ∠、,≦    ,イ


『どうする? >>(代理投下の方の最終レスの一つ下)』

32名無しさん@避難中:2011/03/24(木) 03:33:44 ID:oehEI0no0
いてくる

33名無しさん@避難中:2011/03/24(木) 03:36:00 ID:oehEI0no0
行ってきたぜ

34名無しさん@避難中:2011/03/24(木) 03:43:21 ID:4U0I9kC60
深夜帯にも関わらず素早い対応ありがとうございました。

35名無しさん@避難中:2011/03/28(月) 16:39:02 ID:fY7WpxnM0
厚顔無恥はトンキンの代名詞です
エゴイストはトンキンの代名詞です
震災で大虐殺を行った野蛮人はトンキンだけです

治安を乱すトンキン土人受け入れお断り

36名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 03:19:04 ID:PM4tbXp20
夜分遅くに申し訳ありません。
連投規制を喰らってしまいました。
さるさんの間にと他のスレでも投下を始めてしまい、双方が投下中という事態に陥ってしまいました。
忍法帳で書き込み可能文字数が少なく、連投規制解除後はそちらを投下するだけで再規制を食らいそうな勢いですので、
申し訳ありませんがどなたか代理投下をお願いできないでしょうか。
「ちゃんと解除まで待て」「二つのスレに同時に投下するなんていうマナー違反を犯したお前が悪い」ということでしたら、依頼は破棄させて頂きます。

【スレ名】 【安価】わしを育てるスレ 22回育てた【AA】
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1299071030/
【名前欄】
【メール欄】age
【本文】↓
       ノV ノ ノヽ
     / ヽ ノ    ⌒`ン
    ン    トヽ       ヽ 
    ノ /ノ/  `ヽト、\\  ゝ
    `) /' '⌒'、  , -─ ヽ、 _(   
    .,_|| '-=・=-'ヽ,《 ・ 》 | |_    「地獄のコンビネーションッ!!」
    |ヽ|     .、_、,     |り|   
    ヽ. i  、___::___,   |._/  
      ! ` `ヽ_|_ノ " / /|    
      ト      /. .|    
     /|\  ̄ ̄   //\    
_, - '   \  ̄ ̄ ̄ /   `- 、._







          _____
       '     _____`   _
  ,  '     , : : ': : : : : : : : : : :  ̄: :`: : .
/ ./    /.: : : : : : : :,へ : : : : : : : : : : : : ヽ
  /   , ' : : : : : : :/i /   \: : : : : :!: : : : : : :ヘ     「おお、あの技なら、あるいは……!」
  |  /.: : : : : ―/‐∨''' ̄´ \ : : :ハ: : :| : : : : :ヘ  
  | ./.: : : : : : : /≠=ミ   ,  .\/ ∨:|: : : : : : :∨
  |/: : : : : : :.:./〃.,'⌒ヽ   u  ≠=x ∨: : : : : ∧;
 ./: : : : : : : :/.{  { 0 .}     r‐ 、. } .∨: : :/  /´` ̄ヽ
∨  \: : :.:/i   ゝ‐ '     { 0 }  .∧/   / .,' ./  `ヽ
. i :!: :/ .ヽ;/:.:|             `ー′ ./: :|   ∧ .i |  /  ゝ ,,
. | :∨乂_|:.:.:.:| u          ′     {: : |    .| .i .| | ./ ./  }: : ヽ
. |: : : : :.:.|: : :.| u   /⌒ ー‐┐    }: :.|    .| .ヽヽ'レゝ〈  /: : : : }
. |: : : : :.:.|: : :.|   (      /     ': :.:|    `´: : : : : : :  ̄: : : : : !
. |: : : :l: :.|: : :.| ゝ   `  ー一′.. イ|: : : :.|      ゝ: : : : : : : : : /
./: : :.:.|: :.l: : :.|     `  ┬: : ´|: :.:.:.| i: :.:.:.:|        `iー―一´i
 /ヽ^ ヽ: : ヽ       .|: : : :.!: :.:.:.| .i: :.:.:.|          .|     |
/   ヽ  \: : \     ゝー/ー――┤: : |          .|     |
     ヽ  ヽ: : ヽー丶 .┤ ヽヽ ...i.:.:.:.| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ''/     |
      ヽ   |: : : |    .i  ヽヽ .∨:∧         ',       |
         }}  |: : : |\   i    ∨  ∨:∧             !
     y //  i: : : |  \ .i     ゝー.∨:∧――――――― ′

37名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 03:19:19 ID:PM4tbXp20
.     /       ,.-‐、     /      /  /
   / /  ,.r‐-、 /〃:::::ヽ,    /    /  / ・,‘・,‘
  / /  /::-‐、:ヾ、〃/:l:{゙'!   /  /
  / /  /::::_;;;..::》:::\‐'゙、' {   / /   ・,‘・ ・,‘・,‘  ・,‘・,‘
 /    〉'":::ヽ::》;;:r'''\!,ノ  /        \●      ‘・,‘
../  /  }r┬┬、〉;:゙、o ヽ、_     /   ─■ ‘・,‘
/   /   ゙l |!:::|‐l!〉;;::ヽ. ゙:、;;|   /     // ・,‘・,‘     ‘・,‘
  /    |`ヽ/!;|;;;;;;:::゙:、o.゙、\                   だから無理だって!!
  /    |:::;;;;;;;;l!;l;;;;;;;;;::::\ \;\  /  /      ・,‘・,‘
 /     .!:::;;;;;;;;l;|;;;;;;;::::::::::::) 〉;;;:\   /    /   ∧  /
./      |、:::;;;;;;|!;;;;;;;;;;;;:::::/o `i;:,:':::`''-、    //     ■●  ・,‘・,‘
         !:'"::::::ヽ、_;;;::::::::`ヽ、 \::::;;r''"\         V  \   ・,‘
       |::::,r''"´ ̄`'''ー‐‐┴'''''゙⌒'、   \      /  ・,‘・,‘   /
       .|/            __,,,.ノ\.   `ヽ.  / ・,‘・,‘・,‘・,‘ /
        /       _,,.、-‐''"´;| \. `ヽ、   ゙''-、._       /
       ヽ、.__,.、-‐''i"::;;;;;;;;;;;;;;;;;;j    \  `ヽ、    |‐-、   /   ・,‘・,‘
       ,、-‐‐‐''''''"´::::::;;_,,.、-‐'"     ノ    ゙ヽ-く ヽ、|ヽ     /  ・,‘・,‘
      /:::::::::::;.、-‐‐‐'''"´       /|        ゙ヽ,l,jU   /   /
    /:::::::::::/        __,,.、-‐'i゙  |          ||jj  /   /
  /:::::::::::/     ,.、-‐''7"   /ヽ |          lj     /
../::::::::::::::/      /   ./  /   .ヽ|             /

★蛇の騎士、曹操は倒れた!

38名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 03:19:35 ID:PM4tbXp20

                  ____
                /__.))ノヽ
                .|ミ.l _  ._ i.)
               (^'ミ/.´・ .〈・ リ  「あっちも始まっとるようやな」
               .しi   r、_) |
           ,--ーー  |  `ニニ' / ー-、_
          /   /i/ `'`ー―i´ | `ー、_
         /    /  llヽ/ ̄/  |    l
        /  Y L  |,) ∧ノ↑  ,> ィ   |
      /    |ヽ  |,バ  |  7 /  |
     /     .イ| |  |rA,| /  / /   |
    /      / |  |  |gca| |  / /|    )
   /     / /  | .|aAi| | / //    l
   レー-、_ / ̄`__-、__,l Aec.| | / /(     |
  fク´"''ノ_V    `\ノノavkj ̄レ ノ ノ     ノ
  / ,、 i  \      \_,ニコ∠、,≦    ,イ






       ,..:;;;;;;;;;;;;;;;:::,
     ./;:::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
    /;;;;;;;;'''''''''''''''V''''''''' ;
    |;;;;;;;;」        !    「タイマンを望むとは……上等や。
    |;;;;;;|   ━、 , ━ i     お前がこっから帰れるか――
    i 、'||  <・> < ・> |     そしてどちらがあの花見席を取れるかを!」
    '; '|]     ' i,.  .| 
    ーi ::::::   ._`ー'゙  ..!
     ゙\:::::::、'、v三ツ::::;/      
     ,r''i\,.:::::゙::::::::::::::/
   ,/  ヽ  \:::;;;;;;;:/:: `ヽ
  /     ゙ヽ   ̄、:::::  ゙l, 
 |;/"⌒ヽ,  \  ヽ:   _l_        ri                   ri
 l l    ヽr‐─ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r| |                   / |
 ゙l゙l,     l,|`゙゙゙''―ll___l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l
 | ヽ     ヽ   _|_  _       "l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |二;;二二;;二=''''''''''' ̄ノ
 /"ヽ     'j_/ヽヽ, ̄ ,,,/"''''''''''''⊃r‐l'二二二T ̄ ̄ ̄  [i゙''''''''''''''''"゙゙゙ ̄`"
/  ヽ    ー──''''''""(;;)   `゙,j"  |  | |






     ____
   /__.))ノヽ
   .|ミ.l ヘ  .ヘ i.)
  (^'ミ/.´・ .〈・ リ   「おっしゃ! 行くで!」
  .しi   r、_) |
    |  |コヨヨ| |
    |  `ニニ' /
   ノ `ー―i´

★コマンド >>代理投下最終レスの一つ下

39名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 03:20:30 ID:PM4tbXp20
以上です。
忍法帳により字数制限をオーバーする場合などは、適当な空白行の位置(AAを切断しない位置)でレスを切って分割してくださって結構です。
それでは、よろしければお願いいたします。

40名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 08:50:01 ID:v0V35edM0
行ってくる

41名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 08:52:49 ID:v0V35edM0
行ってきた

4239:2011/04/30(土) 13:53:45 ID:sE4KJ82sO
ありがとうございます、助かりました

43名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 22:07:43 ID:zB8mqVk.0
【依頼に関してのコメントなど】よろしくお願いします
【スレ名】絵師募集スレ
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281196439/l50
【名前欄】
【メール欄】sage
【本文】↓
>>136
えーとこんな感じになりましたが
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1586998.png

44名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 22:18:05 ID:ubcCAYEM0
>>43
代行いてきた

45名無しさん@避難中:2011/04/30(土) 22:19:59 ID:zB8mqVk.0
>>44
確認しました。ありがとうございます

46名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 12:12:59 ID:2SHqq1wg0
また規制……どなたかよろしかったら代理投下をお願いいたします。

【スレ名】安価で決めたキャラでバトロワ
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1298131722/
【名前欄】第05話 ノーガール・ノークライ-アンパイ-
【メール欄】sage
【本文】↓

拝啓、大将様。
今どうしているでしょうか。
あたし達が不甲斐ないせいで最後の夏を終わらせてしまったことを、本当に申し訳なく思います。
個人戦も残念でしたね。
もう大会には出られないけど、今も大将が麻雀を楽しく続けていることを願っています。

――え? あたしですか?
あんだけボッコボコにされましたけど、あたしゃまだ麻雀を続けたいと思ってますよ。
まあ、それが叶うかどうか甚だ怪しいですけど。

何でかって?
ああ、そういえばまだ言ってませんでしたね。

あたし、上柿恵は今、殺し合いをさせられています。






(どうしてこうなった……)

半泣きになって頭を抱える。
現実逃避に大将のことを思い返してる場合じゃないのは分かっているけど、それでも逃避がやめられない。
一体全体何を考えているのか。責任者に問いただしたい。
いや、やっぱりちょっと怖いので、誰かに問いただして頂きたい。

(こんなこと、許されるわけないじゃないですか……っ!)

人を殺すだなんて、はっきり言って正気の沙汰とは思えない……
何で政府がそんなことを許すんですかぁ!
おかしいでしょう、こんなのっ!

……もうほんと、何が何やら分からない。
けどひとつだけ、分かっていることがある。

『そこに個人戦成績優秀者の南浦さんや当て馬数名を混ぜたのがこの集まりデース』

私は、当て馬としてここに呼ばれた。
自分の腕は分かっている。
決勝に残った4校や個人戦上位の人間相手に匹敵できるわけがない。

自分は、死ぬことを期待されてここに居るのだ。

(大将ぉ……)

頭に添えた手に一層力が入る。
大将に会いたかった。
こんなことに巻き込まれたのが千曲東ではあたし一人ということを、喜ぶべきなのかもしれない。
分かってる。分かっちゃいるけど、それでも大将に会いたかった。
大将なら、賢くて強くて対応力バツグンの大将なら、きっとなんとかしてくれる。
他力本願と言われようと、今までずっと大将を信じて丸投げしてやってきたのだ。
大将に全てを託す代わりに、大将の足を引っ張らぬよう、大将がベストの状況で打てるよう、しっかりと打つというのがあたしのスタイル。
麻雀と殺し合いを結びつけるっていうなら、他力本願したところで責められる謂れはない。

(うぅっ……嫌な人間……)

素直に皆がいないのを喜べないことに自己嫌悪。
そんな時だった。
遠くから、すすり泣く声が聞こえたのは。

47名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 12:13:27 ID:2SHqq1wg0

(だ、誰かいる――!?)

慌てて目元の涙を拭う。
まさか、鼻水を啜る音を聞かれたりしてないでしょうね……

(ど、どどどどうしたら……)

静かにしないといけないのに、歯がガチガチと鳴ってくる。
歯は忙しなく動くくせに、足は全く動かなかった。
逃げなくては、殺されてしまう。
見つかったらおしまいだ、勝てるわけがない。
何であたしは武器の確認もせず現実逃避をしていたんだ!

「あっ……」
「ひっ……」

背にしていた木の影から、泣き声の主が現れた。
不安の色と涙を文字通り目一杯に讃えており、あたしと同じく怯えているのが窺える。

けれど、それは安全を意味しているわけじゃない。
死にたくないっていうことは、殺さなくちゃいけないっていうことだから。
だから、むしろ不味いのだ。目が合ってしまったのは。

「う……うわああああああああああああああ!!」

咄嗟に取れた行動は、情けない叫び声と共に殴りかかること。
……仕方ないじゃないですか、怖かったんですから。
叫び声くらいあげなきゃやってられないんですよ。
むしろ、怯えていたにしてはよくやってる方ですよ、素手でなくアタッシュケースで殴りかかりましたし。
今ある条件でベストの攻撃方法だと自負します。

「きゃっ」

アタッシュケースは相手の肩に直撃する。
ただ、あたしが非力なのもあって、ダメージはあまりなさそうだ。

ゴン、という間抜けで鈍い音がした。
反動でこちらがよろける。
焦ったが、反撃はされなかった。
相手は不意を突かれたからか、弱っちい打撃だったにも関わらず尻餅をついている。

好機が、来た。
殺るなら、今。

48名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 12:13:50 ID:2SHqq1wg0

「ふーっ……ふーっ……」

緊張と恐怖で息が荒くなってきた。
目に溜まっていた涙も、今ではすっかり垂れ流しになっている。
ぼやけた視界で相手を睨み、アタッシュケースを振りかぶった。
大分大きいアタッシュケースだからか、それだけでよろけそうになる。

「ひっ……」

小さな体が恨めしい。
生来の運動音痴というのもあるが、どうにも殺し合いには不利だ。
だからこそ、当て馬に選ばれたのかもしれないが。
とにかく振り下ろした瞬間、アタッシュケースがすっぽ抜けた。

最悪だ。
緊張で手が汗まみれになってたからか、アタッシュケースは私の手を離れていった。
相手の肩の上を通り、その向こうまで転がっていく。

つまり、唯一の武器はもう無くなったということだ。

「うあ……」

絶望。
勝ち目など、これでもうない。
肉弾戦になってしまえば、こちらに勝ち目はないだろう。

逃げなくてはいけないのに、足が動かない。
視線も、相手に固定されたままだ。

だから、気が付いた。
呆けたように目を見開いていることに。

相手は気が付いていないのだ。
アタッシュケースの投擲がこちらのミスだということに。
殺す気でアタッシュケースが投げられたものと勘違いしていることに。
そのことに恐怖して、放心してしまっている。

(こりゃ、もしかして……)

反撃される心配はないのではないか。
そう思うと、途端に頭が冷えてきた。
相手を分析するように頭から眺めていく。
安全そうならアタッシュケースを回収するためにも近付くべきだろうと考えて、気が付いた。

片手で押さえられたスカートの向こう。
玉のような汗を浮かべた白い太腿が、びくびくと波打っている。
可愛らしい顔を涙でぐしゃぐしゃにした相手は、その太腿の先からも涙を流し始めていた。

「あー……」

完全に、戦意を削がれた。
こりゃ間違いない、対応さえ間違えなければ殺される心配は0だ。
演技のためにここまでは出来ないだろう。この先のこともあるわけだし。

「……大丈夫ですか?」

我ながら、襲っておいて何て言い草だ。
でも、まあ、そこは許してもらいたい。
追撃せずに、手を差し伸べてあげるんだから。

49名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 12:14:26 ID:2SHqq1wg0






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






「ごめんね、なんか」

照れ笑いと苦笑いを足して割ったような微妙な顔で謝られる。
彼女が濡らしたスカートと靴下は、そこらの茂みに放り込んだ。
持ち歩いていたところで洗濯する機会はあるまい。
ここに打ち捨てていくのが妥当だろう。

勿論、この状況で下半身を丸出しにするわけにはいかない。
今彼女は、何故だか私のアタッシュケースに入っていた制服を身につけている。

「いや、いいですよ。むしろあたしこそ申し訳ない。いきなり襲いかかっちゃって」

各校制服合計30着セット。
それが私に支給された武器らしい。
武器でも何でもない気がするが、説明書の言い分によれば、返り血を浴びても着替えられるため騙し討ちを有利に出来る十分役立つアイテムだそうだ。
まぁ、確かに予期せぬ形で役には立ったが。
サイズを無視して無理やり着れば5回は着替えることができる他校に対し、ウチの制服は一着しか無い。
こんなところでも当て馬への格差を感じた。

「ううん、殺さないでくれたし……私こそ、驚かせちゃってごめん」

あたしが当て馬だとしたら、目の前の彼女は本命馬だろう。
どこかで見た顔だと思ったが、思い返して見ればそれも当然だ。
決勝戦まで残った選手の一人なんていうレベルじゃない。
優勝校の、一員。それも、大将
昨年インターハイ得点王天江衣を撃破して、優勝をもぎ取った強者。

そして、あたしの知ってる限りでは最強だったウチの大将を押さえこみ、他校を飛ばして大将の夏を終わらせた張本人。

「それより……清澄の大将さん」

宮永咲。
体育館で言っていた、麻雀が強いものが生き延びるという発言が本当なら、間違いなく彼女はドが付く本命馬だ。

50名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 12:14:59 ID:2SHqq1wg0

「これからどうするおつもりで?」

考え方を変えれば、それは幸運なことと言える。
単なる当て馬だったあたしが、本命馬といきなり出会うことができた。
そして、言い方は悪いが、恩を売って信頼も得られている。
襲われる心配も裏切られる心配もない、完全無欠の強力な安牌。
それを手にしたこの状況は、非常に有利だと言えよう。

「あたしゃ清澄の大将さんにこの命を託しますよ。方針もお任せします」

ならば、やることは一つ。
あたしゃいつも通り頼りになる仲間のために尽くすのみ。
コバンザメと呼ばれようが知ったこっちゃない。
それこそが、あたしが勝利することへの最大の近道なのだから。

「え……ええええええ!?」
「今は宮永さんがあたしの大将ですからね。哀れな当て馬を導いてやってくださいよ」

もっとも、あたしの中の永遠の大将は棟居さんしかいませんがね。
あの人は憧れなんで、そこだけは譲れませんよ。
だから『大将』とは呼ばないけれど、まあ、恨まないでくださいね。
どーでもいいことでしょうけど、小物のあたしにとっちゃ大きなことなんで。

「大将なんかじゃないよぉ……そ、それに上柿さんだって、当て馬なんかじゃ……」
「ぎっひ、世辞はいいですよ。んで、どうするんです?」

謙遜合戦に時間を割く程暇ではない。
地図を広げ、サクっと次に移るように促す。
まだ動揺しているようだったが、しばらくすると観念したように口を開いた。

「じゃあ……とりあえず、人を集めよう? こんなこと、許すわけにはいかないし……」
「まあ、そうなりますよねぇ……さっきまでのあたし達から考えるに、あたし達ゃ殺し合いに向いてないですし」

あんな風にパニックになる人間が、最後の一人になれるまでひたすら殺していくなんて、出来るはずがないのだ。
それならまだ、一縷の望みに賭けて、仲間を集め脱出のためにあれこれ考えた方がいい。

51名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 12:16:07 ID:2SHqq1wg0

「となると人の集まる場所ってことになりますけど……」
「ここ、村から遠いよね……」

村が南西に位置しているのに対し、ここは北東である。
辺りも木々ばかりであり、物資調達や仲間の確保に向いているとは御世辞にも言えない。
隠れるのには最適なのかもしれないが……

「どうします? 人、集めるんですよね」
「うーん……あ、こことかどうだろう」

指されたのは、地図上にある学校。
山の上とは、不便な場所にあるものだ。

「確かに……他に目指す場所がない北東の人達は、みんなここに集まるかもしれませんしねぇ」

目立つ建物ではある。
目指す価値は十分だろう。

「じゃあ、行こっか」
「あいあいさー。お供しますよ」

――あたしは当て馬かもしれない。
でも、いい牌を引くことが出来た。
強力な力を持ち、あたしのことを裏切ったりはしないであろう究極の安牌。
扱い方さえ間違えなければ、生還すら見えてくる。

(ぎっひ……せいぜい利用させてもらいますよ)

だが、牌の扱いに自信はない。
大物手を張り調子に乗って原村和に振り込んだように、調子に乗るとよくないことが起こるものだ。
だからまずは付き従う。
強者に従い、いい流れを引き寄せてください。
だから

(頑張って下さいよ、清澄の大将さん。あたしゃいつも通り人任せにするだけですから)

あたしゃいつも通り打って大将に託しますよ。






【残り28人】

52名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 12:18:27 ID:2SHqq1wg0
以上で投下終了です。
ちょっとしたキッカケでやる気って削げちゃうよね、という話。
失禁描写は危うく力入れかけたので自重した。

めぐめぐの性格とか「二人称が大将ってどうよ」とか、何か違和感があったら遠慮無くどうぞ。



――――――――この上の発言まで代理投下お願いします――――――――

以上です。
どなたかよろしかったら代理投下をお願いいたします。

53名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 19:51:08 ID:2SHqq1wg0
ageておきます

54名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 19:59:16 ID:LyAafH0A0
いってくる

55名無しさん@避難中:2011/05/07(土) 20:05:07 ID:LyAafH0A0
いってきた

56名無しさん@避難中:2011/05/08(日) 00:11:40 ID:XnRRhA9YO
ありがとうございました、助かりました

57 ヘ ノ: ヘ ノ
ヘ ノ

58ペクチン ◆Un576eUSkA:2011/05/11(水) 13:06:08 ID:R.LGIiKI0
すみません。代行お願いいたします。

【スレ名】【DQ9】ドラクエ4コマを描くスレ その2【職人募集中】
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280761369/
【名前欄】ペクチン
【メール欄】sage
【本文】↓
規制されてしまったので代行スレで投下をお願いしています。

DQMJ2Pで1本描きました
以前描いたミイラおとこの♀ミイこのその後です。
http://loda.jp/mitemite/?id=2064

ミイこについては
http://www39.atwiki.jp/dq-4koma/pages/147.html
あたりを読んでいただければ…

まとめサイト管理人さんいつも本当にありがとうございます(´∀`)

――――――――
以上 ここまでです。
よろしくお願いします。

59名無しさん@避難中:2011/05/11(水) 13:27:59 ID:QfXhUjdc0
↑行ってきます

60名無しさん@避難中:2011/05/11(水) 13:32:48 ID:QfXhUjdc0
>>58
終了です、ご確認ください


最近離れてたけど、また見てみよう
雰囲気のいいスレですよね! 応援してますよ〜

61名無しさん@避難中:2011/05/11(水) 13:35:37 ID:R.LGIiKI0
>>60
すばやい対応感謝です!
ありがとうございます。頑張ります!!(´∀`)

62 ヘ ノ: ヘ ノ
ヘ ノ

63ペクチン ◆Un576eUSkA:2011/05/21(土) 20:03:47 ID:A/IlgtGw0
何度も申し訳ありません…代行よろしくお願いいたします。

【スレ名】【DQ9】ドラクエ4コマを描くスレ その2【職人募集中】
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280761369/
【名前欄】ペクチン
【メール欄】sage
【本文】↓
引き続き規制中なので、代行スレで投下をお願いしています。

またもやDQMJ2Pのミイこネタですが、1本描きました
http://loda.jp/mitemite/?id=2116

――――――――
以上 ここまでです。
よろしくお願いします。

64名無しさん@避難中:2011/05/21(土) 20:16:18 ID:2y/E/nfE0
いってきた

65名無しさん@避難中:2011/05/21(土) 20:28:42 ID:A/IlgtGw0
>>64
確認いたしました
ありがとうございます!!

66携帯につき… ◆6N57uayiF2:2011/06/10(金) 23:10:59 ID:Z0PAZ8.20
申し訳ございません、お願い致します。
【スレ名】【語り部】萌えキャラ『日本鬼子』製作25【募集中】
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306556163/
【名前欄】転載です。
【メール欄】sage
【本文】↓

                 (
               γ ハ゜ハヽ 
             ⌒*(ノ (V) リ>*⌒
               レ,l *゚ヮ゚ノ <避難所で参加者募集のための話し合いがはじまってるよ!!
            。 ⊂| ̄ハy/ ヽ、 意見がある人は参加してね!
           ‖|ヽ ̄ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    /,A^^A、  .‖|http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1297676789/
   卯ミ!|リノ)))リ .‖√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   lヾ|l .゚ ヮ゚ノリ. .‖ ・#語り部募集:基礎固め
  ノ ハ^∨/ヽ、 ‖ ※また、タグの運用中です※
   /.::::< 三];;;::;:フつ  この話題について書き込む時このレスのように #〜〜〜
  くΨ:::_;|*;:;|:: ノ  ‖  とそれぞれ入力をお願いします。
   ~T": ::..!~~  ‖避難所内での話題が複数あるため見分け安くするための措置です。
    |____ハ    °ご協力よろしくお願いします。

67名無しさん@避難中:2011/06/11(土) 01:21:22 ID:p5Xwvvy60
>>66
いってきました。

68携帯につき… ◆6N57uayiF2:2011/06/11(土) 06:27:50 ID:7B57zkDk0
>>67
有難うございます!助かりました。

69名無しさん@避難中:2011/08/10(水) 21:54:35 ID:xbyFCo420
どなたかよろしくお願いします


【スレ名】都道府県擬人化スレ
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281106063/
【本文】↓

あんまり驚いたので宣伝しちゃうのです。

ttp://loda.jp/mitemite/?id=2340.jpg
「あんたたち、ちっと落ち着けし」
「でも、私……わっち? はやまなっちゃんと違ってあんま表でえせんし、困ってまうげ……」
「おまんは名前が武将由縁やからええっしょ、わいは何で呼ばれたんや……」

・・・みたいな感想。


>>614
ついに釣ってしまったか・・・ちょかすけ桃花かわゆすなぁw

>>617
川で繋がってる=結ばれてるだとしたら
長野はそーとー浮気モノということになっちゃいませんかねw

>>618
そーいえばその組み合わせでしたなぁ
八つ当たりはしてかんてw
って阪ちゃんもあいっちゃんもAAできたのか・・・追いつかれそうですの

-----
ここまでです

70名無しさん@避難中:2011/08/10(水) 21:57:20 ID:v4ZVuGwI0
ほいきた

71名無しさん@避難中:2011/08/10(水) 21:59:01 ID:v4ZVuGwI0
行ってきたがやー

72名無しさん@避難中:2011/08/10(水) 22:06:20 ID:xbyFCo420
早w
おせんどさんでした

73名無しさん@避難中:2011/08/16(火) 02:25:43 ID:VqXUHoYo0
【依頼に関してのコメントなど】久々にお願いします
【スレ名】【天候擬人化】にっしょくたん
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1307723856/l50
【名前欄】なし
【メール欄】なし
【本文】↓
http://loda.jp/mitemite/?id=2350.png

74名無しさん@避難中:2011/08/16(火) 02:43:31 ID:VqXUHoYo0
ごめんなさい規制解けてました
↑はキャンセルで…

75名無しさん@避難中:2011/08/17(水) 23:53:56 ID:/1vifBxA0
お世話になります。よろしくお願いします。

【スレ名】都道府県擬人化スレ
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281106063/
【本文】↓

何時の間にやらならばぁさまの流れに。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=2355.jpg

兵庫と沖縄にそんな接点があったとは。
・・・ひょごさんは今年もカチワリ売ってるのだね・・・w

76名無しさん@避難中:2011/08/18(木) 00:11:12 ID:KjkhqF5E0
いってきます

77名無しさん@避難中:2011/08/18(木) 00:12:16 ID:KjkhqF5E0
いってきました

78名無しさん@避難中:2011/08/18(木) 00:49:38 ID:O3fXdMl60
ありがとうございました

79名無しさん@避難中:2011/08/22(月) 12:11:02 ID:v41flTnQ0
【スレ名】Twitter 初心者&質問スレ Part.7
【URL】http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/sns/1311700366/
【名前欄】なし
【メール欄】なし
【本文】↓
tweetの後ろに #何々 というのがついてる人がいますが
何のためにですか?どうやってつけるのですか

80名無しさん@避難中:2011/08/22(月) 15:38:25 ID:/8VBsfss0
やさしい俺が代行するまでもなく答えてやろう。ハッシュタグでぐぐれ。
それと申し訳ないが、ここのレス代行先は創発板だけにしておくれ。創発外も受け付けてるときりがないし、一応ここは創発の避難所という名目だし。
2chの他板への代行なら、シベリア板行って「レス代行」でスレ検索すると吉。

81名無しさん@避難中:2011/08/22(月) 16:59:00 ID:tvJnvtS.0
たまに見かけるが、なぜ創発外を依頼するw こんなドマイナーなところでw

82名無しさん@避難中:2011/08/22(月) 20:25:04 ID:UCT6BNdM0
ぶっちゃけハッシュタグってフリーダムすぎて使い方が逆に分からんw

83名無しさん@避難中:2011/09/19(月) 02:23:32 ID:g19EXQuo0
あと数スレなのに連続投稿規制! これはいかーん! 総統閣下がお怒りになる!
誰か、誰かいませんかー!

84名無しさん@避難中:2011/09/19(月) 02:34:55 ID:g19EXQuo0
すいません、規制が解けていました
醜態を晒して申し訳ありません、依頼はキャンセルします

85名無しさん@避難中:2011/10/01(土) 18:45:07 ID:DZ0bOCEk0
たまには上げますよ

86名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 04:53:51 ID:/oY3RYNE0

いつのまにかまた規制されていた……
どなたかよろしければ代理投下をお願いいたします

【スレ名】ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd鎮魂歌
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1316305239/
【名前欄】いつの間にかバトルロワイアルが開幕していた件
【メール欄】sage
【本文】↓
>>48
おまえwwwwwwwwwwwwwwww
まさかのOP投下にびっくらこきました。
しかもクオリティたけえwwww
これはGJwwwwww

>>53
タイトルクッソワロタwwwwww
エンポリオうるせえwwwwwwwwwwwwww



私も完成したので、折角なので投下させて頂きます

87名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 04:55:41 ID:/oY3RYNE0

「…………あれ?」

俺、イルーゾォが真っ先に発したのは、そんな言葉だった。
確か俺は、フーゴの野郎のウイルスを断ち切るため、鏡に飛び込んだはずだ。
場所は確かにポンペイ遺跡。

なのに何で、こんな和テイストあふれるうさぎ小屋の中にいるんだ?

「うおあァァーーーッ! きったねェェェーーーーーッ」

足元を見ると、足が何かにはまっていた。
その形、俺は本で見たことがある。
こいつはジャポネーズ便器だッ!
そこに足がはまっていやがるっ!

「クソッついてねェーーーッ!!
 実際にクソがついてねェだろーなオイッ!」

靴をじろじろ眺めながら臭いをくんくんと嗅ぐ。
便器に突っ込んだというのに、特に異臭はしなかった。
そこで、愚痴をこぼすのを中断し、何でこんなことになったのかを考えることにした。

(罠、か……)

それ以外に考えられない。
何かの狙いを持って、鏡の中に飛び込ませたのだ。
恐らく、人間ワープを使えるスタンド使いが潜んでいたというところだろう。
暗殺者の始末を優先していたためすぐにはワープさせなかったが、ウイルス感染させたので遠くに飛ばしてやろうとでもしたのだろう。

(何にせよ、任務は失敗か……)

しかし、不幸中の幸いもある。
向こうの不手際か、ウイルスは体から消え去っていたのだ。
ここに来て最初の違和感は、場所でなくそのことについてだった。
腕から忌々しいウイルスが消えていたのだ。
……俺が行ったウイルスの不許可が、相手のスタンド能力と混ざったりでもしたのだろうか?

「つーか、どこだここは」

とりあえず、相当遠くであることは分かる。
一端この民家を出て、適当な通行人にでも聞いてみよう。
そう考えていたのだが……

「何じゃこりゃ、ゴーストタウンか?
 それともマイケル・ジャクソンのライブでもあって、総出でそっちに行ってるのか?」

しかしアテは外れた。
通りに出ても人っ子一人居やしない。

88名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 04:56:29 ID:/oY3RYNE0

「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い」

試しに大声を出してみた。
反応は……あった。

「お、何だよ、いるじゃねェ〜〜〜〜か」

やや離れた民家から、大柄な男が現れた。
丁度いい、コイツに話を聞こう。
そう思い、歩み寄ったその時。

「おいアンタ〜〜〜〜ッ! ここが何処だか知らねーか!?」

男の方が、そんなことを聞いてきた。
なんてこったい。

「……どーなってやがんだ?」

頭に疑問符が浮かぶ。
いくらなんでも、この状況は些か妙だ。
ただ単に、ワープをしただけとは思えなくなってきた。

「俺のベイビーもいねーしよォーー。
 何か事件か? だったらこの俺が解決して新聞でヒーローになってやるんだが」

分かったからお前はちょっと黙って――

「ん……?」

顎に手を添え、気がついた。
首に違和感がある。
ウイルスが消えた違和感があまりに大きく気が付いていなかったが、
いつの間にか首に何かが付いている。

89名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 04:57:20 ID:/oY3RYNE0

「首輪、か……?
 俺の首にも、それと同じ鈍色の筒っぽい首輪が付いてるのか?」

見ると、目の前の男も首に何かを巻いていた。
太陽の光に照らされて鈍く光その物質は、首輪と呼ぶのが最も適しているように思われる。

「何ィィーーーーーーーーッ!?
 このブルートさまを犬扱いするってェのかァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「落ち着けよ、実際付いてるだろうが」

激昂する男の首を、人差し指で指し示す。
それからようやく、自分の首に本当に首輪が巻きつけられているのに気が付いたらしい。
そして、犬のような扱いが不服なのか、男は首輪に手をかけた。

「ふざけやがってェーーーーーッ! こんなもんッ!!」

正直言って、その行いは自殺行為だと思った。
思いっきり罠にはまったのであろうこの状況で、露骨に怪しい首輪に手を出す。
はっきり言って、自殺行為だ。
それを分かっているからこそ、ブルートと名乗った男が首輪を引っ張る行為を黙って見ていたのだ。
どうなるのか、知るために。

「おおう……」

しかしそれでも、思わず声を漏らさないわけにはいかない。
何せ、目の前で首が飛んだのだ。
文字通り、数メートルの大ジャンプ。
ブルート選手、顔面垂直跳び世界記録更新です、イェー。

「クソッ爆発すんのかよッ!」

なお、顔面垂直跳びには、イルーゾォ選手も登録されております。
ゼッケン代わりはこの首輪。
爆薬内蔵、いつでもゴキゲンに首をふっ飛ばします。

「ふざけやがって……」

同情は、少しだけする。
ゴミのように打ち捨てられた男に、同情しないわけがない。
だからといって、黙祷を捧げるわけではないけど。

90名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 04:59:38 ID:/oY3RYNE0

「……まだ、誰かいやがるのか」

さてどうしようかと悩む前に、耳に飛び込むエンジン音。
どうやら、ここにはまだ人がいたみたいだ。
敵のスタンド使いなら、いっその事話は早かったのだけど。

「ふむ……爆音がしたと思ったが……」

死体に意識が真っ先に行くと考えて、視覚に隠れ奇襲の体勢を取った。
しかし、それは徒労に終わる。
相手の姿を見るや否や、こちらが姿を見せたから。

「まさかこんな所にお前がいるとはな、イルーゾォ」
「お前こそ、こんな所で何やってんだよ、メローネ」

バイクに跨るマスクの変態、もとい優男は、同僚であるメローネだった。
メローネはバイクを降りると、首無死体へと歩み寄る。

「これは、お前が?」
「いや……この首輪だ。無理やり外さない方がいいぞ」
「そんな迂闊なこと、言われなくてもする気はない」

言いながら、メローネは死体を観察する。
そして、予期せぬものに関する質問をしてきた。

「そのバッグ……コイツのか?」
「ああ……持ってくのか?」

自分達は誇り高き暗殺者であり、強盗ではない。
故に、遺品を持っていくのは気が引けた。

「このバッグ……さっき足元にあったものと同じデザインだ」
「なんだって!?」
「お前は気付いていなかったのか?
 ……もっとも、気付いていても怪しすぎたから置いてきてしまったけどな」
「まあ、これがスタンドって可能性もあるしな……バイクはパクってきたのか?」
「ああ、バッグの横に鍵付きで放置されていた」

言いながら、メローネはバイクをデイパックへと突っ込ませた。
自身は途中で飛び降りて、無人のバイクでデイパックを跳ね飛ばす。
デイパックは宙を舞うとぐしゃりと落ちた。
その飛距離、ブルート選手の首に及ばず。残念。

91名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 05:00:41 ID:/oY3RYNE0

「爆発はしない、みたいだな」
「よしイルーゾォ、開けてみろ」
「何で俺が!?」
「アレに気付いてやっただろう?」
「せめてじゃんけんとかだろうが!」
「……仕方のないやつだ」

腕を捻り、手の間を覗き込む。
特に意味はないが、こうすることで勝率が上がる気がするのだ。
……不吉なことに、手の隙間からはブルートの上唇から下が千切れた無残な首が見えちゃったけど。

「ジャンッ!」
「ケンッ!」
「「ポンッッ!!!」」

勢い良く振り下ろしたのは、固く握りしめた拳。
対するメローネは、大きく広げた手のひらを差し出した。

「っがあああああああ!!」
「ベネ(よし)。分かったらさっさと開いてこい」
「わぁったよ! ……まあ、そこまで危険じゃなさそうだしな」

ブルートはデイパックに被害を与えられていない。
そのことが、安全性を保証していると言える。
……しかしそれでも、一挙一動が恐る恐るチキン全開なそれになったのは仕方のないことだろう。
だって今、罠の真っ只中なんだから。

「……なんじゃこりゃ」
「ふむ……見せてくれ」

表紙に『バトルロワイアルのしおり』と書かれた、ふざけた手折の小冊子。
それが、横になったペットボトルの水の上に置かれていた。
他にも、サバイバルナイフなんかが入っている。

92名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 05:01:15 ID:/oY3RYNE0

「おいおい。野郎二人で顔寄せ合って見る気はねーぞ」
「自分のを取りに行けばいいだろう?
 お前は徒歩ってことは、そんなに遠くに置いてきたわけじゃないだろうに」
「……面倒くさいことを言うな、オイ」
「全部のバッグが同じ中身か調べるにこしたことはないだろう?
 それにジャンケンの敗者なんだ、逆らう権利があると思うなよ」
「……ちっ!」

確かに、メローネの言うことにも一理ある。
これがこの街に呼ばれた奴全員に配られているものなのか、
そして中身は全部同じなのかなど、知っておきたいことは多い。
それに、もし全部が同じ中身の場合、サバイバルナイフがもう一本手に入って大変お得だ。

「分かったよ、行って来ればいいんだろ」
「ディ・モールトベネ(大変よろしい)。よく分かっているじゃないか」
「ったく……」

ぶつくさ言いながら民家に戻り、トイレへと向かった。
見ると、便器の横に確かに同じデイパックが転がっている。

(これは爆発します、なんてことないだろうな……)

念のため遠距離からトイレットペーパーを投げつけて爆発しないことを確かめる。
特に何もないと判明したので、デイパックを担いでトイレを出た。
中身の確認はメローネの所に戻ってからでいいだろう。
トイレで中身を確認するのは、正直嫌だ。

「……お、なんだよ、鏡あるじゃねーか」

トイレの前、洗面所と思しき所に、ひび割れた鏡が設置されていた。
汚らしいが、スタンド能力の発言には十分だ。
スタンドが封じられているのか確かめておくのも大切だろう。
そう思い、スタンドを発言させ、叫んだ。

「俺の通行を許可するッ! だがこの首輪は許可しないィィィィィィィ!!!」

鏡にゆっくり体当たりをする。
勢いをつけすぎて怪我しましたじゃ笑い話にもならないので、それはもうスローペースで。
口では威勢よく叫んでも、そのへんは慎重である。

「……スタンドは使えるのか……勝ったッ!!」

スタンドを封じられていない。
ならば勝機は大いにある。
この無敵のスタンドがあれば、このクソ忌々しい首輪も――――

「な、ななななァァァ〜〜〜〜〜ッ!?!?」

外れて、いなかった。
それどころか、早朝の目覚まし時計みたいな音を発している。

嫌な、予感がした。

93名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 05:02:28 ID:/oY3RYNE0

「なんだってんだ、クソッ!」

とりあえず、メローネの所に行こう。
メローネの首輪も鳴っているのかもしれない。
そう考え、再び鏡へと飛び込む。

「俺だけを『許可』しろッ! 首輪は許可しないィィィィィィッ!!」

しかし、鏡の世界を脱しても首輪は首についている。依然変わりなく。
それどころか、電子音の感覚は短くなっていた。

そこから連想される単語は、カウントダウン。
何のカウントダウンだろうか?

(やべぇ、これは――――!!)

決まっている。
ブルートと同じ、顔面垂直跳びの競技開始へのカウントダウンだ。
恐らく間も無く競技開始のパンという音が鳴るだろう。

(何でだ!? そういう能力なのか!?)

だとしたら、回りくどすぎる。
さっき首を飛ばしてもよかったのに、何故今このタイミングで!?

(まさか――――)

そして、思い至る。
自分とブルートの共通点。

『首輪を、外そうとした』

それしか、考えられない。

「メローネ、この首輪はヤベェ!」

扉へ向かいながら、叫ぶ。
声は恐らく届いていない。
それでも、叫んだ。
せめて、最期に仲間に情報を残せるように。

「下手に外そうとすると、首が――」

よーい、ドン!
イルーゾォ選手、首から上が見事な垂直跳びをかましました!
しかし惜しいことにここは室内!
天井にあたってすぐさま落下してしまいましたね。
体の方は、まだ扉に向かって突っ込んでいっているようです。
……あ、力尽きましたね。
イルーゾォ選手、残念でした。

94名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 05:02:56 ID:/oY3RYNE0






☆  ★  ☆  ★  ☆






イルーゾォが今際の際に伝えようとしたことを、メローネは大筋把握していた。
というのも、この『バトルロワイアルのしおり』に、ルールなるものが書いてあったのだ。

「殺し合い、ね……」

とある島での殺し合い。
首輪によって管理されていて、定期的に首輪爆破の対象となる禁止エリアが更新される。
その他諸々、細かいルールが記載されていた。
サバイバルナイフはランダムに配られたアイテムの1つらしい。
……ついでに、このバイクも自分に配られたアイテムのようだ。

「……それにしても、遅いな」

しおりを再読し終えた所で、イルーゾォが未だに戻ってこないことに違和感を覚えた。
それでも奴なら大丈夫だろうという楽観的な思考が、急ぐという選択肢を奪い去る。
やれやれなどと気楽なことを考えて、向かえに行こうとイルーゾォが消えた民家に向かい、メローネは歩み始めた。






【ブルりん(ブルート)@2部 死亡】
【イルーゾォ@5部 死亡】
【残り???人】

【主催 不明】

※参加者は最初からランダムに配置されており、殺し合いのルール説明はパンフレットにおいてのみなされています

95名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 05:03:10 ID:/oY3RYNE0
以上です。
よろしければどなたかお願いいたします。

96名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 08:45:23 ID:R86hN1eI0
代行行ってきます

97名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 08:55:16 ID:/oY3RYNE0
ありがとうございます
描き忘れていましたが、名前欄は全て書き込んでいただけると幸いです

98名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 09:04:45 ID:R86hN1eI0
行ってきました

99名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 09:05:37 ID:R86hN1eI0
>>97
申し訳ない…間に合わなかった

100名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 09:07:11 ID:/oY3RYNE0
>>99
こちらこそ遅くなって申し訳ありません。
出来れば、追加で「タイトルは『いつの間にかバトルロワイアルが開幕していた件』です」と投下頂ければ幸いです。

101名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 09:09:05 ID:R86hN1eI0
わかりました

102名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 09:09:15 ID:e27giLo.O
やろうとコピペしてたら他の人が
やっぱり携帯は遅いから駄目だな

103名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 09:10:51 ID:/oY3RYNE0
>>101
ありがとうございます
お手数おかけしました

>>102
そのお気持ちに感謝します

104名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 21:52:15 ID:r7bYP/mo0

【依頼に関してのコメントなど】やられたっちゃ
【スレ名】【魔王】ハルトシュラーで創作発表するスレ 3作目
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283782080/l50
【名前欄】
【メール欄】
【本文】↓
>>425
投下乙。まさかのメカト2号とはw

そしてどっかで見かけた小ネタを
http://loda.jp/mitemite/?id=2507.jpg

105名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 22:01:06 ID:e27giLo.O
>>104
丁度投下するから代行行って来るよ

106名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 22:01:06 ID:1xmahxLk0
行ってきました。でも感想までは諸事象によりやりづらいので絵だけw

107名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 22:01:34 ID:h146uad60
>>105
あ、被った。でももう行っちゃったのねんw

108名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 22:05:36 ID:r7bYP/mo0
代行乙ですん。……でもまとめてやってほしかったず。

109名無しさん@避難中:2011/10/02(日) 22:08:29 ID:ezQFAFsM0
>>108
すみません……

110名無しさん@避難中:2011/10/03(月) 11:20:34 ID:uUO49Ab.0
つかテンプレに依頼レス改変するなって書いてあるじゃんよ
諸事情によりやりにくいなら誤爆かどっかで誰かに呼びかけたりすればいいのに

111名無しさん@避難中:2011/10/03(月) 18:31:25 ID:bdGBVDWI0
事情があるのなら無理に代行しなくてもいいと思うけどなぁ
急ぎの時間制限のある依頼でもないんだし
こっちのスレをageておけば誰かが代わりにやってくれる

112名無しさん@避難中:2011/10/04(火) 03:44:53 ID:qKH35DEM0
【依頼に関してのコメントなど】お願いします
【スレ名】【塗り絵】線画丸投げスレ2【自作限定】
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306046914/l50
【名前欄】
【メール欄】
【本文】↓
ロダで見つけた閣下線画塗ってみた
http://loda.jp/mitemite/?id=2515.png

113名無しさん@避難中:2011/10/04(火) 04:25:51 ID:1dGNX7o20
>>112
行ってみます

114名無しさん@避難中:2011/10/04(火) 04:28:53 ID:1dGNX7o20
>>112
行ってきました
ご確認よろしくお願いします

115名無しさん@避難中:2011/10/04(火) 07:31:59 ID:qKH35DEM0
確認しました。ありがとうございます

116名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 20:50:40 ID:NsodQsSE0
【依頼に関してのコメントなど】時間のある方はよろしくお願いします。
【スレ名】THE IDOLM@STER アイドルマスター part7
【URL】http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280733030/l50
【名前欄】20
【メール欄】sage

【本文】↓
・アイドルマスター×テイルズオブザワールド、文章型の架空戦記を目指しているつもり
・現段階では小鳥さん(時間軸的)に10代オンリー
・シリーズのサブキャラ並びに原作メインキャラの幼少(名前は直接は出てませんが)が登場
・後にアイドル総出演の予定
・苦手な方はスルー推奨

117名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 20:58:48 ID:NsodQsSE0

『世界樹』と呼ばれて、この地に生きている限り何処からでも見えるその樹は、『あちら側』での言葉を借りるなら正しく神様仏様イエス様の化身だった。
ただ、あの世界と違うのは単純に心の拠り所、という意味でなく、『実際に』人の営みを、生活を支えているということだ。
 数千年だか数万年だかの太古の昔から、その樹が世界の隅々へと生み出し、浸透する見えざる神秘。その力あってこそ作物は実り、土を潤わせる雨雲が生み出され、
数千年に渡ってこの世界を支えてきた。

 その神秘の名を、この世界の人々はマナと呼ぶ。



世界樹の麓近くにあり、精霊やマナを信仰する聖職者達が数多く集っているという以外は、歴史の古さ以外に特筆すべきこともない辺境の小国家。小鳥が現在住まう
ヴォルフィアナなる地は、そういう国である。

この国を含めた「世界」の名前については―――まだ直に確かめる術がないので、暫定だが小鳥的には『夢世界』なる呼称で落ち着いている。(一時は中○国だの
セ○ィーロだのといった呼称も候補に入っていた)

交通には馬車(遙か遠くの先進国では、長距離での移動用に飛空艇なる科学の最先端じみた代物を用いたりもしているらしいが)、炊事には薪や炭、小川や井戸水という
その文明レベルにはまだ納得がいく。自然との調和、とでも言えばいいのか。向こう側の記憶が混じっても、別段不便さみたいなものを感じたことはないし、最近では
種火で火を起こす動作一つにしても、万一向こうで何かあったら役立ちそう、なんて思える位だ。―――が、
「・・・・・・何で食文化だけはこんなに進化してるのかしら・・・・・・?」
当たり前のように浸透している、さっきの自分の昼食を始めとした日本のコンビニや食堂でも見かけるようなラインナップが目立っている。いつか見た
ファンタジー小説の一幕にあったような、硬い保存用の塩漬け肉みたいな代物を恒常的に食べさせられるよりはマシだが、ヨーロッパの片田舎辺りにありそうな郷土料理っぽいものを
期待するのは間違いなんだろうか。
そう考えつつも、店内に溢れかえっているメロンパンやカレーパン、コンビニエンスストアではよく見かけていた調理パンの放つ芳香につい我を忘れていると、レジから
威勢のいい声が投げかけられる。
「はい、お待ちどうさま!運が良かったね、今日はこれで完売だよ」
「いつもありがとうございます、ブレッドさん」
丁寧に頭を下げてから紙袋の中身を確認すると、小鳥は「ん?」とばかりに眉をひそめた。城での調理用に用いられるバゲットや食パンの他に、一個だけ浮き彫りになった
アップルパイが見える。
「あの、このパイ―――」
頼んでませんけど、と戸惑い混じりに声を上げた時、しかしささやかに『城の人達には内緒だよ』と前置きされ、
「いや何、君にアドバイスを貰ったあのパンへのささやかなお礼だよ。お三時にでも食べてくれ」
―――あ、と思い出してつい苦味走った記憶が走る。
(……あれはアドバイスというか……)

―――ラピ○タパンは置いてないんですか?

『記憶』が目覚めプライベートで初めて店を訪れた時、思わず零れた第一声はそれだった。別に『向こう側』でだって食べられない訳ではなかったにせよ、
ファンタジーでの食の代名詞みたいなイメージがこびりついていたせいだ。
無論、怪訝な眼差しを向けられた際に瞬時に我に返り、彼女は己の発言をなかったことにしようとした。そこは料理人としての性だったのか、心なしか獲物を狙う
ハンターの目で詰め寄ってくる店主の気迫に勝つことは出来ず、とりあえず『田舎にあった名物レシピ』ということで教えてはみた。
……よもや、基本目玉焼きをトーストに載せただけのそれが、色とりどりの調理パンの数々に並んで人気商品に昇りつめるなど思いもしなかったが。
「あれのお陰で一時は傾きかけてた店が持ち直したからね。けど、何でわざわざ『目玉焼きトースト』なんて商品名に?
原名の方が君の故郷の名前も広まるんじゃないかと思うんだが……」
「いえいえいえ!お気遣いは結構ですので」
いくらここでの小鳥が孤児とはいえ、出身地を天空の都市だなんて偽って名作を冒涜する勇気はない。それ以上の追求を拒む勢いで、彼女は店を慌てて飛び出していく。

118名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:01:14 ID:NsodQsSE0
所々苔むした部分もあるのに、汚さみたいなものは感じさせない立ち並ぶ白い家々。
牧歌的な普段着で井戸端会議に興じる主婦もいれば、物騒な鎧や仰々しいローブに身を包んだ冒険者達といった人々が混在する大通り。
「あちら」でアイドルを目指すようになってから過ごすことの多くなった、けばけばというかゴテゴテした混沌の都会とは違う、
健やかな活気が溢れ返っているようだ。
大量のパンを詰め込んだ買い物籠の重量によろめきそうになりながら、城への家路へつこうとした時だった。
シャラ、というか細い音と共に、ブーツのつま先に何かが当たる気配がした。

「・・・・・・あれ?」
銀色の鎖に通された、元はペンダント状であったのだろうそれは、何てことはない一本の鍵だった。
「だった」というのは他でもなく、元は輪っかをなしていたであろうその鎖は、途中でぷっつりと切れていたからだ。
どこかの家の鍵だろうか―――何気なく拾い上げてみたその時に、不意に脳裏を掠める一つの記憶。
さっきの店の中、小鳥の一つ前でレジで並ぶ、王冠のような金色に輝いているサラサラの後ろ頭がやけに印象的だった女の子。右手で不器用に料金を払う一方、
もう片方の手が強く胸元で「何か」を握りしめていたようなちぐはぐな仕草が、やけに引っかかっていた。
(・・・・・・考えすぎ、かも知れないけど)
でもそれは、身をもって体験した覚えのある仕草だったようにも思う。
「向こう側」では母子家庭として育った小鳥があの少女と同じ年頃だった時分、ギュッと手にして放そうとしなかったもの。万が一にでも手放してしまえばオシマイだ、みたいな
思いこみが根付いていたアイテム。
確証はない。けれど―――そっと、手のひらの上で銀色にきらめいているその小さな鍵には、ささやかだがほのかな温度の余韻が残されているような気がして。
それを知覚した途端、足は城とは逆方向目指して反転していた。


こういう時、仕方のないことなのだろうけど交番のようなシステムを持つ施設がないことが悔やまれる。
「金髪の女の子ねぇ・・・・・・それだけだとちょっと。街の中は色んな髪の子もいるから」
聞き込みに応じてくれた、買い物籠をぶら下げ井戸端会議中のマダム達は困り顔でそう返答した。まあ確かに―――と、改めて周囲を振り返る。
自分のような黒髪の者もいれば、赤に茶、時には銀髪と様々な髪色の者達で入り交じっている街並みで、ロクに顔を見ていないその女の子を捜そうなんて途方ない無茶かも知れない。
「あなたも奇特ねぇ。そんなに気になるんなら、どこかのギルドに頼んで捜してもらったら?」
「い、いえ。流石にそこまでは・・・・・・」
『ギルド』は総合的に言うならば、規模は様々なれどこの世界における『何でも屋』の代名詞だ。ある程度腕の立つ冒険者達が組み合って、大きい依頼では魔物の巣窟から
貴重な資材を採取してきたり、小さなものでは街の失せ物捜しまで引き受けてくれるという。
が―――小さなギルドでもそれなりに依頼というものは値を張るというのに、買い物を終えてすかんぴんの今の小鳥に代金を支払える余裕はない。
「でも家の鍵なんて言われると、うちも確かに心配になってくるわねぇ。ちゃんと施錠してきたかしら・・・・・・」
「確かに。最近は一層よくない話も聞くしねぇ・・・・・・ほら覚えてる?こないだ地中から発掘されたあの・・・・・・古代文明の遺跡の話」
「あら、私が聞いた話じゃ、海賊アイフリードの遺したかつての愛船らしいけど?」
「何でもいいけど。そこに怪しい集団が紛れ込んでるから、今日騎士団の小隊が確保に乗り込んだって話聞いて―――」
話が横道に逸れだしたのを察して、小鳥はそろそろとカニのそれにも似た横歩きでその場を脱した。船なのに何で地中から?という微かな好奇心がなくはなかったが、
今はそんな場合ではない。
足を棒にする程聞き込みに励んだつもりはないが、うっすらと疲労を覚えてきた。そもそも侍女長から課せられた「門限」もある。
けど、さっきのあの子の仕草を覚えていて、この鍵を見つけてしまった今の小鳥は、そのまま城へ足を向けることがどうしても出来なくなっていた。 
余計なお節介だということはわかっている。
ちゃんと帰りを待っている家族は家にいて、鍵一つなくしたところで、あの子は特別困ることなんてないのかも知れない。
(―――でも)
こうなったら、多少叱られる覚悟をしてでもギリギリまで粘ってみようか―――そう考えて、街の中を改めて見回してみた時だった。

119名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:15:05 ID:NsodQsSE0
「―――だからさお嬢ちゃん、捜し物があるなら手伝うからよ、おじさん達に任せてみちゃくんねえか?」
困ったようなそれでいて柔らかい問いかけの声が、雑踏の中不思議なまでにスルリと耳へ入り込んできて―――顔を向けてみれば、一種
異様な光景が広がっていた。
(・・・・・・かごめかごめ?)
腰を屈めた甲冑姿の騎士達が、「何か」を中心に円をなしている姿は正しくそんな感じだった。3名、という取り合わせについ先程メリル夫人の手で
撃沈されたあの男の顔が過ぎってしまうが、幸いさっきのようなことはなく皆普通の男性だった。
「あー、だからンな顔すんなって・・・・・・なあ、俺そんなに怖そうな顔してる?」
「そうですね・・・・・・怖そうというより、笑顔に油断して近づいていったらかどわかされそうな怪しいおじさんみたいな顔はしてると思いますが」
「・・・・・・単純に怖いって言われた方がまだマシなんだが」
えらい言われように若干へこんだような調子で声を上げたのは、小鳥本人は面識はないがやはり見覚えがある顔、というか有名人だった。ただし、自分に付き纏っている
ストーカー予備軍とは別の、もっとプラス方面の意味でだが。
 ナイレン・フェドロック―――やや焼けた顔と、顎に走った傷跡が粗野な印象を与えるだけに、その下に纏った騎士甲冑が妙に浮いているその男は、騎士団に数ある一個小隊の
内一つを預かっている、と聞いたことがある。
しかし、何やら小さな子をあやすみたいなその口調を聞いていると―――
(迷子でも保護しようとしてる、とか?)
いやいやそんな場合じゃない―――と頭を切り替えて、再び少女の姿を捜そうと身を翻して。



「―――隊長っ!すいませんっ、取り逃がしましたっ!」
明後日の方向から、誰かのそんな切羽詰まったような悲鳴が届いた時、騎士達の顔つきのみならず街全体の空気がビリビリと張り詰めたような気がした。
え、と声のした方に首だけ向けてみれば、ギョロギョロと異様な圧力を視線で放つ、痩せこけた体躯を黒いローブに包んだ壮年の男達がのろのろと近づいてきている。
開け放した窓が閉められ、大人が近くを遊んでいた子供達の手を強引に引っ張る。そこまで来て、ようやく呆然と立っている他なかった小鳥も状況を察し―――
(に、逃げないと!)
戦闘とは無縁の日々を生きる者にとっては起こってほしくない「有事」、それが起こる時の気配というのを、街の人達は普段城勤めの小鳥よりも敏感に嗅ぎとれる。
しかし、小鳥がその場を離脱しようとするには、少々タイミングが悪すぎた。
「・・・・・・エアスラストォッ!」
くぐもった声と共に響いた叫びが辺りを揺るがした時、小鳥の腰回りが物凄い勢いで引っ張られる。
「舌ぁ噛むなよ、しっかり掴まってろ!」
―――どこに掴まれ、というのか。
いつ小鳥の存在を察知したのかは知らないが、すでに抜剣していたナイレン氏が小鳥を脇に抱え込み、石畳を削って遅い来る風の刃から身をかわす。
「―――ま、魔術っ!?」
ギリギリで鼻先を掠めていったそれに、思わずギョッとしてしまう。この世界において精霊との契約を持ってなされるその奇跡の技を使う魔術師達は、
単純な武力以外での魔物達への防衛手段が乏しいこの小国では貴重な戦力の筈なのだが、よもやこんな往来で騒ぎを起こすなんて。
「くそっ、目ぇ離すなっつったろ!トイレでも要求されたのか!?」
「そんなベタな失敗はやらかしませんよ!・・・・・・口惜しい話ですが、どうも術だけでなく、武道にも通じていたようで・・・!」
最初に報告してきた騎士は、何か一撃を貰ったのか、首の辺りを押さえてよろめきながら駆け寄ってくる。
 通りを駆けるナイレンの、その脚力がなすスピードに思わず酔いそうになっていた時、不意に目まぐるしくスライドしていた景色がストップした。
そのまま、フワリとばかりに地へ身体を下ろされる。大きく立てかけられた、居酒屋の立看板の傍で呆然と佇む小鳥の顔を見ないまま、
「終わるまではそこから動かないようにしてくれ。多分皆鍵閉めちまってて、建物の中に入れねえからな」
畳みかけるようにそう言ってから、再び術を詠唱しようとしている魔術師の男目掛けて突進する。

120名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:19:19 ID:NsodQsSE0
「―――あの船の神秘は貴様ら如きが言いようにしていいものではないわ!身の程を知れぇ!」
「ったく、不法侵入しといて往生際が悪ぃ―――あんなガラクタのことよりも、街をしっちゃかめっちゃかにしてくれた落とし前は、
裁判でキッチリつけてもらうから覚悟しとけ!?」
「ほざけぇっ!ライトニングッ!」
一瞬の閃光と共に降り注ぐまさに「青天の霹靂」に、遠目で見ている小鳥ですら思わず背筋が震えた。
「―――すいません、この子のこともお願い出来ますか!?」
乱戦の中、部下と思しき騎士の一人が、立看板に隠れていた小鳥に声をかける。見てみれば、カタカタと小さな背を震わせる、
小さな女の子を腕に抱えている。
「なるべく被害がそちらに及ばぬよう尽力しますので、それまでお願いします!」
「えっ、あのちょっ―――!」
小鳥の返事を待たずして、騎士はその腕から下ろすと、ナイレンらの後を追って「戦場」へと舞い戻る。思わず手を伸ばして
待ったをかけようとしたが、出来なかった。
―――少女を下ろすその腕から流れる、赤黒い液体を目の当たりにした瞬間、息が詰まったように声が出なくなる。

 本人が気づいていない筈もないのに、それでも当然のように血を流したままのその腕は、今度は剣を力強く振り抜き、駆けていく。
どくどくと、心臓が早鐘のように脈打つ。オーディションに臨む時にどうしても付き物の「それ」とは、比べ物にならない速度で。
(―――大丈夫よ、落ち着いて。だって―――)
その先に続きそうになった言葉に気づいた瞬間、戦闘の中緊張しきった小鳥の脳を、一瞬の自己嫌悪が支配する。
自分が嫌になるのは、こんな時だ。
それまで当たり前で愛おしいと思ってた筈のこの日常を―――「これはどうせ夢」と、切り捨ててしまいそうになる時だ。

陰りのようなものなど何も見えなくても、この『世界』は交通事故よりも高い確率で、下手すれば明日の朝陽を拝めない危険を孕んでいる。
小鳥のみならず、人々が当たり前のように受け入れている事実。でも『音無小鳥』を、少なくとも目に見える危険も何もなかった世界を
思い出してしまった今は―――

―――自己嫌悪の海に沈みそうだった彼女の意識を呼び戻したのは、目の前を吹き抜けた金色の風だった。

「―――えっ?」

正確には、金糸のような髪が目の前を過ぎっていった。そのことに―――傍で震えていた筈の少女が、やおら立ち上がって走り出し、通りへ
飛び出していった瞬間を目の当たりにした時、サァッ、と冗談抜きで血の気が引いた。
「まっ―――待ちなさい、何やってるの!?」
耳を鋭く打つ剣戟と、呪文による総攻撃の波に怯えている暇はなかった。走り出した後に、唐突によりにもよって道のど真ん中へ座り込んだ少女を
連れ戻すべく、小鳥は飛び出していく。
「ここは危ないの!すぐに戻らないと―――」
怪我じゃすまない―――そう続けようとしたその瞬間。
見てしまった。ぐったりと、四肢を路面に横たわらせた、野良と思しき子猫。その腹が無惨にもバッサリと裂け、内蔵すら覗かせている惨状を。
反射的に、今の状況を忘れて口を押さえる。

「い、癒しの力よ・・・・・・ファーストエイド!」

幼くも鈴の鳴るような声が呪文を紡ぐと同時に、拳一つ分の天上の光を集めたような輝きが、少女の小さな掌に宿る。
そうして初めて、目の前の女の子の顔をしっかりと認識した。

121名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:25:47 ID:NsodQsSE0
黄金の月を糸にしたような、儚い印象を覚える輝く金髪。恐怖に揺れながらも、強い意志を燃やしている蒼い瞳。真ん中で
分けられた前髪から覗くその白い額には、うっすらと玉の汗が浮かんでいた。
先程まで必死になって捜し回っていた「落とし主」がいる、という感動など介在する余地はなくて。
5、6歳程度にしか見えない彼女は、しかし目の前で尽き果てようとしている命を救わんと、必死になって尽力している。
―――頭を思い切り不意打ちで叩かれたようだった。
こんな幼い少女が、いつか見た法術という癒しの奇跡を用いていることではない。
少女は、震えながらもしっかりと見据えていたのだ。
雨あられと降り注ぐ魔術の恐怖から目を逸らさずに、炎や雷がすぐ間近で舞う状況の中でこの子猫を見つけ、そして飛び出していった。

小刻みに震える身体から確かに滲む恐怖。あの奇跡のような光を注いでも、子猫の傷はほんの少ししか塞がらない。
いくら法術といっても、やはり限界はあるのか。
普通の子供であれば目を背けても当然の筈の子猫の惨状を前にして、泣きそうな表情になりながらも、
それでも彼女は術をかけることをやめなかった。

「・・・・・・お願い、治ってっ・・・・・・!」

それは神か、それともこの世界の流儀ならば世界樹への祈りだったのか。震える手から灯る光は、絶える気配を見せない。
小鳥の視線が不意に、尚も戦い続ける騎士達の方へと向かう。
深手を負っても、逃げ遅れた人を避難させる者、倒れた仲間を介抱する者、発動する術にその身を晒しながらも飛び込む者達がいた。

躊躇わずに誰かを守るなんて、人の空想か漫画の中にしかいないと思っていた人達が、目の前にいる。
 その『現実』が、凝り固まってへばりついて、自分ではどうしようもないと思い込んでいた筈の澱を静かに吹き飛ばす。
気づけば、小鳥の手は、無駄な長さを誇る自分のスカートへと伸びていた。
ビィィッ、と裂かれる布が立てる耳障りな音によるものか、少女の目線がハッとこちらを映した。
「とりあえず、これ以上血が出ると危険だわ。今はこの子を連れて移動しましょう」
付け焼き刃の応急処置に過ぎないが、裂かれた腹部分に強引に布を巻き付ける。無論、この程度じゃ気休めにも
ならないだろうけど、せめて場所を移動させないと、これ以上は子猫どころか少女の身も危険だった。
「で、でも・・・・・・!」
「その子がこれ以上、呪文に巻き込まれるようなことになったら、今度こそ死んじゃうかも知れない。それでもいいの?」
直截的にも程がある、ともすれば恫喝するような勢いだったかも知れない。しかし少女は、ハッと我に返ったよう蒼い瞳を見開いた後、
しばし逡巡する様子を見せてから静かに頷いた。
少女と子猫を慎重に抱え上げ、さっきまで身を潜めていた立て看板へ視線を移す。
路地裏にでも身を移すべきか?いや―――

その数瞬の迷いの後、彼女らの後方から最悪のタイミングで次なる災禍が襲って来た。


「どけぇ、女!」

思いもかけず近い距離から降り懸かってきた声に振り返った時、頭から爪の先まで凍り付いたようだった。決死の形相で追い立ててくる騎士達を
振り切ったのであろう魔術師の一人が、血のように赤いドロドロした光を杖の先に纏わせて、突進してきている。
標的は考えるまでもない―――逃走経路の延長線上にいる、自分達だ。
しかし、鋭く息を呑む少女の気配を悟った瞬間、ほぼ反射的に、抱き上げる腕に力がこもる。
絶対放さない。避けられなくて、倒れてしまっても、せめて意識のある内は。

122名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:29:07 ID:NsodQsSE0
「―――疾風!」

勇ましくも清涼な声が大気に融け、風となったようだった。
わずかなブレや歪みもない、定められた道筋に沿っているかのように虚空を駆けるその軌道が閃くと同時に、
くぐもった呻き声が木霊する。
数秒前まで固めていた覚悟を思い切り霧散させ、小鳥は今の状況を冷静に反芻しようとした。
(―――あ、ありのまま今起こったことをryっていやいや!)
某奇妙な冒険ネタを引き合いに出すようなコミカルな状況ではないが、小鳥本人の心情としてはこんなものだった。
ただ、こっちに呪文を浴びせようとしていた人間の身体を、わずか数本の矢が「引っ張って」いった。
見事に袖口や裾―――体を掠めることなく、衣服のみを射抜いて、建物の壁へ画鋲みたいに人を縫い止めるという妙技を
目の当たりにして、小鳥と少女は揃って口を半開きにするより他ない。
 彼女らの困惑を余所にして、技を放った『射手』は、静かな足取りでこちらへ歩み寄ってくる。
「・・・・・・怪我はありませんか?」
木製の弓を携えた救いの主は、驚いたことにまだ年端も―――といっても十歳前後ほどの少年のようだった。
褐色の肌と相反する透明な水色をした長い髪を肩先辺りまで垂らしているその少年は、
年不相応な落ち着きと気品を空気に纏って歩み寄ってくる。
「発動する前に取り押さえられてたと思っていましたが……そこにいる猫は、まさか今ので?」
「あ、いいえ、この子のは―――呪文のせいには違いないんですけど、もっと前の―――」
……確実に年齢は下の筈の相手に、無意識に敬語を用いていることに疑問を持つ間もなく小鳥が対応している時。

「―――コラコラ」

闖入者は、少年だけに留まらなかった。やんわりと諌めるようなしわがれた声と共に、長い白髪を高い位置で括った、如何にも好々爺といった雰囲気の老人が、
しかし隙のない足取りで現れてくる。
「森の獲物ならいざ知らず、まだ人に向けていいと許可した覚えはないぞ。まあ、相手は相手かも知れんがな」
「・・・・・・すいません、先生。つい、先走って飛び出してしまいました」
穏やかな口調のまま、しかしキッパリと窘められ、少年が小さく頭を下げる。見れば老人もまた、肩には矢筒を、背中に弓を掲げている。
察するに、師弟関係にあるのだろうか。
「まあ、致命傷を負わせていないのは由としておくがの。―――別嬪さんの前でいいトコを見せたかったか?」
不意にニヤ、とした視線を小鳥に馳せる老人に対し、少年は眉根を寄せた真剣な表情で弓を下ろしながら、
「先生、不謹慎ですよ」

―――その言葉の後、見えざる第二撃を放った。


「家庭あるご夫人を前にして、そういった発言は失礼かと思います」


ブロークンハートという言葉の意味が、本来とは違う趣で嫌という程伝わってくるようだった。
自分の格好を、頭の中微かに残された冷静などこかが徹底検証している。とりあえず一目で家事手伝いとまでは知れる、踝まで伸びているスカート丈の地味なワンピースに、
腰周りには白いエプロン。実際の年より結構上に見られてしまう、髪を纏め上げたシニョンカバー。ついでに言うと、メイドとしての執念だったのか肘にはしっかりと買い物籠が
ぶら下がっていて、そして何より腕には小さい女の子。
 ―――ご夫人=自分。
16歳である。決してまだチョメチョメとかいう擬音を入れるような年齢ではなく、更に言うなら義務教育を終えたばかりの年齢である。
そうだそれより子猫が治療を受けられる状態にしないとああそういえば鍵のことだってあったっていうか落とし主(多分)はすぐ傍にいるし―――

「お、お姉さん、お姉さん……?」

先程呪文の嵐の只中にあっても歪まなかった女の子の顔が、泣きそうな顔でこっちを見ている。何とか笑顔で答えようとするも、悪気のない矢を心にぶっ放された
今の小鳥は、それに気づける余裕がなく。

「……?先生、彼女はどうしたんでしょう」
「……わしゃー知らんぞ、この節穴が。乙女心をズタズタにしよってからに」


―――その後、少女の必死な呼びかけの末、小鳥が意識を取り戻すのはもうしばらく先のことだった。

123名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:36:59 ID:NsodQsSE0
(あとがき)
規制に巻き込まれて、代行スレにお願いしました。投稿直後での出来事だったので、
微妙に凹んでおります(orz)
結構な長編を予定している上にアイドル達登場までは時間が掛かりそうですが、
一人でもこの拙作を楽しんで下さる方がいれば幸いです。

124名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:42:17 ID:NsodQsSE0
↑以上です。
後すいません、名前欄がタイトルだというのをうっかり失念していたので、
【名前欄】TOWもどきim@s異聞〜序章〜
とつけておいて貰えると助かります。

時間のある親切な方はよろしくお願いします。

125名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:48:21 ID:pjfrmplw0
いってきます

126名無しさん@避難中:2011/10/07(金) 21:55:41 ID:pjfrmplw0
いってきました

127名無しさん@避難中:2011/10/08(土) 09:03:54 ID:J2KLeQ7M0
↑作者です、こんなに早く対応して下さるとは思いませんでした、ありがとうございます。
これから板を見に行ってみます。

128名無しさん@避難中:2011/12/29(木) 01:48:33 ID:nLAW0tYwC
age

129名無しさん@避難中:2012/01/20(金) 23:19:26 ID:DsdEY6SY0
【依頼に関してのコメントなど】また規制……レス代行お願いします
【スレ名】動画創作関連総合スレ
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1298783451/
【名前欄】なし
【メール欄】なし
【本文】↓

創発の野望 第三十七話 後編 投下です
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16745107
やっと完成……遅れて申し訳ありません。
今年はうp速度アップしたいなあ。(願望)

130名無しさん@避難中:2012/01/20(金) 23:40:24 ID:ZvMM4lno0
いってくりゅ

131名無しさん@避難中:2012/01/20(金) 23:41:15 ID:ZvMM4lno0
いってきた

132名無しさん@避難中:2012/01/20(金) 23:46:03 ID:DsdEY6SY0
ありがとうございます。助かりました!

133名無しさん@避難中:2012/01/28(土) 04:14:26 ID:6esTN.7s0
【依頼に関してのコメントなど】規制されてしまいました。レス代行お願いします
【スレ名】記憶喪失のロリババァが安価で冒険
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1326866701/
【名前欄】1レス目だけ↓
規制されたのでレス代行お願いしました。感謝
【メール欄】
【本文】↓三レスあります

134規制されたのでレス代行お願いしました。感謝:2012/01/28(土) 04:16:01 ID:6esTN.7s0
意識が戻ったのは、暗闇の中であった。

「いつっ!」

体を起こそうとすると鈍い痛みが走った。床を触ると冷たい石の感触。ここで寝ていれば痛くもなろう。

「起きたか」

ろうそくを持った男が近づいて来る。中世風の鎧を着ていて、動きづらそうにガシャガシャ歩くのが可笑しかった。

「ここは……牢屋?どうしてこんなところに……」
「どうしてってお前、密航しておいてよく言えるな。普通なら外に放り出されても仕方なかったんだぞ」
「密航ですって」

これには少女も目を丸くする。

「密航……ということは、ここは船か何かなの?」

男があからさまに怪訝な顔をする。

「自分がどこに乗り込んだのかも分かってないのか。
ここは大型星間航行戦艦兼漁船“千塵丸(ちぢりまる)”だ」

早口で三回も言えなそうな名前である。それより、

「ひとつ気になる単語があるわね。星間、って、まさか……」
「?そのままの意味だが。アルネメ〜パスパゥ間を繋ぐ、二万三千光年コースだ」

意味の分からない単語もあるが、文脈から推察するに、

「つまり、ここは宇宙ってこと?」

135創る名無しに見る名無し:2012/01/28(土) 04:17:55 ID:6esTN.7s0
アルネメ、パスパゥとは惑星の名前らしい。この船はその二万三千光年間を約30日かけて“ゆっくりと”航行する船なのだとか。

「元々は里星の近海でマグロを獲っていた小さな船だったんだが、今はこんな大所帯になっちまった」

そう語る目は、懐かしいものを思い返しているようだった。

「それにしてもお前、どうやって23日もバレずに過ごしてこれたんだ?それとも考えづらいが、3日前の補給の時に乗り込んだのか」
「私は確か通路に倒れていたって話だったわね。だったらここへ着いたのは、おそらくその時よ。転移装置のようなもので飛ばされたから」

それを聞いて男は驚いたような、呆れたような顔をする。

「な。ワープしてきたっていうのか」
「星間航行するくらいの技術があるなら、ワープも出来ないの?」
「出来る。この船も半分ワープしながら動いているようなものだ。
だが高速で移動する船の中に、ピンポイントで到達出来るような技術はないし、あってもそんな危険な賭けに出る奴はいないだろう」

男は「理解しがたい」とかぶりを振る。

「だから、んん。もしそれが本当だったとしても、尋問の時に話したところで信じてもらえんぞ」
「あら、これは尋問ではなかったのね」
「こんな緩い尋問があるか。大体俺は看守じゃねえよ」
「へ?」

その立派な鎧は別に罪人を見張るためのものではなかったのか。

と、その時扉の開く音がする。

「おっと、本物の看守が戻ってきたようだぜ。じゃあな」

言うなり男はろうそくを消し、“音もなく”部屋の隅の闇に姿を消した。

(隠し通路でもあるのかしら)

男のことも気になるが、それよりも今は自分の身のことを考えなければ。


与えられた選択肢は思ったよりは多い。このまま狸寝入りをして考える時間を稼ぐか、無垢な少女を演じて同情をさそうか、自分の無罪を主張して正々堂々尋問に挑むか。
幸い、というか何故かポケットの三発弾が入った拳銃は没収されておらず、特に身体を拘束もされていない。

考えている間にほら、もう足音が近づいてきた――


>>35少女の取る行動

136名無しさん@避難中:2012/01/28(土) 04:18:46 ID:6esTN.7s0
以上です。
2レスで収まりました。お願いします

137名無しさん@避難中:2012/01/28(土) 04:26:57 ID:8OxjNcn60
ほいほい

138名無しさん@避難中:2012/01/28(土) 04:28:31 ID:8OxjNcn60
おっけーい

139名無しさん@避難中:2012/01/28(土) 04:46:16 ID:6esTN.7s0
ありがとうございます!

140名無しさん@避難中:2012/01/30(月) 12:48:39 ID:xd.vAr160
【依頼に関してのコメントなど】再びお世話になります。今回は規制喰らった訳ではないのですが、投下してる途中で突然
創発板そのものにアクセス出来なくなりました。お時間ある方はよろしくお願いします。
【スレ名】THE IDOLM@STER アイドルマスター part7
【名前欄】TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 25
【メール欄】sage
【本文】↓


「―――おい新入り!そろそろ休憩入るぞ、しっかり身体休めとけ」
「―――はい、ではお先に」

―――参った。いや非常に。
フロランタン村の入り口すぐ近く。都からやって来た祭の設営支援スタッフとして入り込んでいた青年は、
その悪意があるとしか思えない偶然に珍しく渋面を作っていた。頭に被った日除け用タオルは顔半分を覆い、
土埃にまみれたタンクトップに
「よりにもよって、こんな時にねぇ」
この世界で会えるなんて予想はしていなかったが、出来ればこんな形でまみえたくはなかった。出会うならもっと、街角でバッタリとか
平和的かつロマンスのある形が良かったのだが、これではどう足掻いても物騒なことになりそうだ。
「・・・・・・ごめんなさい、こういう時どんな顔すればいいのかわからないの」
「ちょっ、それ遠回しに『笑ってもいいか』って訊いてるの!?いや、ホントにアイドルなんだよ!?」
理由はわからないが、噛み砕いてアイドルという職業に就いていること、そしてアイドルの委細について
説明を聞いた僧侶の少女に、そんなにべもない言葉でバッサリ一蹴され、涙目になっている知り合いがいた。
そりゃ最近では半ばバラドルみたいな扱いされてるけど、あそこまで言われる程だろうか―――とちょっと気の毒になる。

「まあ、ここにはアイドルの概念自体ないも同然だけどね。
……仲がいいのは結構だけど、こうなるとやり辛くなっちゃうなぁ」
「・・・・・・おい、何ブツブツ言ってるんだよ」
ポーズではなく本心からの苦笑いでひとりごちていると、やがて同じように潜伏していた同僚がやって来た。
それが同じ事情を抱える仲間であったことに軽く口の端を上げると、
「いやー・・・・・・目標を見つけたはいいんだけど、こういう時に会いたくない子が一緒でね」
「はぁ?おい、何いっ・・・・・・―――!?」
顎で促したその先にいた存在に気づいて、彼の言葉が一端途切れる。
筆舌に尽くしがたい驚愕が、振り向きもしないのに伝わってくるようだった。
流石に声は控えているが、こちらへ近寄って動揺のあまり襟首を引っ掴んで乱暴に引き寄せると、
「―――な、何であいつが!?おい、まさかアイツもギルドのメンバーだっていうんじゃ」
「いや、幸いなことにただの顧客らしいし、僕らが『引っ張る』理由はないよ。・・・・・・ただ、ちょっと彼女の場合
ややこしいことになってるみたいだけど」
コッソリと聞いていた経緯をザッと説明すると、案の定予想していた通りの渋面を作る。
「盗み聞きかよ、あんまいい趣味じゃねえな。・・・・・・要するに何だ?アイツ、こっちでの記憶だけ抜け落ちてる状態なのか?」
「まあそういうことになるかな。・・・・・・けど、彼らも報告で聞いていたよりもいい子達みたいだね。荒唐無稽だってわかってる筈なのに、
何だかんだで受け入れてくれてるみたいだ」
―――参った。重ねて言うが、本当に。
多分、それは彼も―――冬馬も同じことだろう。
商売敵同士彼女とは取り立てて親しい間柄という訳ではない。
向こう側において、一見平凡でありながら舞台の上では一番の強敵であると看做している存在だった。
歌うことの楽しみや喜びを、誰かと分かちあうことを何よりも尊ぶ、まだ荒削りな原石ではあるがアイドルという言葉を体現したような少女。
 これで彼女にここでの記憶が―――この不穏な世界で一個の生命として根を下ろした彼女であれば、まだ躊躇いはなかったかも知れない。
だが、目の前にいるのは『765プロ』の天海春香だ。誰かの血を流すような悪意や脅威とは、無縁の場所にいる、『向こう側』の。
「・・・・・・夕刻までには確保するようにって言われてるけど、出来れば彼女から離れるのを待つ方向でいかないか?」
「―――努力はするさ。まあ、俺とお前でかかりゃどうにか出来るだろ」

141名無しさん@避難中:2012/01/30(月) 12:52:52 ID:xd.vAr160
↑本文修正


「―――おい新入り!そろそろ休憩入るぞ、しっかり身体休めとけ」
「―――はい、ではお先に」

―――参った。いや非常に。
フロランタン村の入り口すぐ近く。都からやって来た祭の設営支援スタッフとして入り込んでいた青年は、
その悪意があるとしか思えない偶然に珍しく渋面を作っていた。頭に被った日除け用タオルは顔半分を覆い、
土埃にまみれたタンクトップに迷彩柄のツナギなんて野暮なスタイルを見たら、
この世界にはいない自分の天使(大真面目)達はどう思うだろうか。
「よりにもよって、こんな時にねぇ」
この世界で会えるなんて予想はしていなかったが、出来ればこんな形でまみえたくはなかった。出会うならもっと、街角でバッタリとか
平和的かつロマンスのある形が良かったのだが、これではどう足掻いても物騒なことになりそうだ。
「・・・・・・ごめんなさい、こういう時どんな顔すればいいのかわからないの」
「ちょっ、それ遠回しに『笑ってもいいか』って訊いてるの!?いや、ホントにアイドルなんだよ!?」
理由はわからないが、噛み砕いてアイドルという職業に就いていること、そしてアイドルの委細について
説明を聞いた僧侶の少女に、そんなにべもない言葉でバッサリ一蹴され、涙目になっている知り合いがいた。
そりゃ最近では半ばバラドルみたいな扱いされてるけど、あそこまで言われる程だろうか―――とちょっと気の毒になる。

「まあ、ここにはアイドルの概念自体ないも同然だけどね。
……仲がいいのは結構だけど、こうなるとやり辛くなっちゃうなぁ」
「・・・・・・おい、何ブツブツ言ってるんだよ」
ポーズではなく本心からの苦笑いでひとりごちていると、やがて同じように潜伏していた同僚がやって来た。
それが同じ事情を抱える仲間であったことに軽く口の端を上げると、
「いやー・・・・・・目標を見つけたはいいんだけど、こういう時に会いたくない子が一緒でね」
「はぁ?おい、何いっ・・・・・・―――!?」
顎で促したその先にいた存在に気づいて、彼の言葉が一端途切れる。
筆舌に尽くしがたい驚愕が、振り向きもしないのに伝わってくるようだった。
流石に声は控えているが、こちらへ近寄って動揺のあまり襟首を引っ掴んで乱暴に引き寄せると、
「―――な、何であいつが!?おい、まさかアイツもギルドのメンバーだっていうんじゃ」
「いや、幸いなことにただの顧客らしいし、僕らが『引っ張る』理由はないよ。・・・・・・ただ、ちょっと彼女の場合
ややこしいことになってるみたいだけど」
コッソリと聞いていた経緯をザッと説明すると、案の定予想していた通りの渋面を作る。
「盗み聞きかよ、あんまいい趣味じゃねえな。・・・・・・要するに何だ?アイツ、こっちでの記憶だけ抜け落ちてる状態なのか?」
「まあそういうことになるかな。・・・・・・けど、彼らも報告で聞いていたよりもいい子達みたいだね。荒唐無稽だってわかってる筈なのに、
何だかんだで受け入れてくれてるみたいだ」
―――参った。重ねて言うが、本当に。
多分、それは彼も―――冬馬も同じことだろう。
商売敵同士彼女とは取り立てて親しい間柄という訳ではない。
向こう側において、一見平凡でありながら舞台の上では一番の強敵であると看做している存在だった。
歌うことの楽しみや喜びを、誰かと分かちあうことを何よりも尊ぶ、まだ荒削りな原石ではあるがアイドルという言葉を体現したような少女。
 これで彼女にここでの記憶が―――この不穏な世界で一個の生命として根を下ろした彼女であれば、まだ躊躇いはなかったかも知れない。
だが、目の前にいるのは『765プロ』の天海春香だ。誰かの血を流すような悪意や脅威とは、無縁の場所にいる、『向こう側』の。
「・・・・・・夕刻までには確保するようにって言われてるけど、出来れば彼女から離れるのを待つ方向でいかないか?」
「―――努力はするさ。まあ、俺とお前でかかりゃどうにか出来るだろ」

142TOWもどきim@s異聞〜第一章〜春香編 26:2012/01/30(月) 12:55:14 ID:xd.vAr160
嫌な方向に強くなったものだな、と。冬馬の横顔を見ているとそう思う。いばる上司に顎でこき使われる縦社会も同然の騎士の世界よりも、
丁度目の前の『確保対象』のような―――何にも縛られぬ立場で信念の為剣を振るえていれば、よっぽど『らしかった』気がするが、
貧乏籤を引きやすいのだろうか。
同時に、大袈裟な身振り手振りで何とか説明している『彼女』に視線を馳せる。
こっちとあっちが溶け合った時の混乱具合は、自分も冬馬も身をもって思い知っている。それが彼女の場合、向こう側での意識しかない状態で
この世界に放り出されたも同然の状態では、立ち振る舞い方もままならないだろうに。
―――そんな状態で出来た友人を、いきなり取り上げるようで申し訳ないが。

「―――これが、こっちでの俺達の仕事なんだよね。ごめんね、春香ちゃん」

ギルド『モンデンキント』メンバーの、無力化及び確保。
祭の前準備という賑やかな空気とは似つかわしくないそんな任務を負った伊集院北斗は、
どうか彼女に見つからないことを切に願いつつ―――

服の下に隠した得物に手を伸ばしていた。

143名無しさん@避難中:2012/01/30(月) 13:01:27 ID:xd.vAr160
投下終了。
先日(一ヶ月以上前になりますが)は、別所での投下云々について様々な方から
貴重かつ真摯なご意見を頂けたこと、誠に感謝しております。
ひとまずはテイルズファンもいつか訪れてくれるかなという淡い期待を胸に秘めて
投下はこっちに限定してみようかと思いますが、その内警告されているにも関わらず
魔が差してしまうかも知れません…。
今回出てきた3人はテイルズシリーズでも個人的にコアな気がしたので軽く紹介しておきます。

ロア・ナシオン……レディアントマイソロジー2(以下RM2)の主人公。記憶喪失でぶっちゃけて言うとディセンダーだが、今作品でどう転ぶか不明。天然にして万能イエスマン。
カノンノ・イアハート……RM2のヒロイン。別称『夏カノンノ』。またを添え物ヒロイン。
ロッタ……RMシリーズのNPC傭兵キャラの僧侶。尾張行先生のコミカライズ版RM2の番外編では結構活躍するツンデレ少女。自称姫。

144名無しさん@避難中:2012/01/30(月) 13:15:31 ID:d9ZQDswA0
あー、今2ちゃんそのものが落ちてるから、誰も行けないんだw
復活したらたぶん自分で行けると思うので、しばらく待ってみては?

145名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:34:11 ID:DOv5DBxE0
【依頼に関してのコメントなど】規制中だったのでお願いします
【スレ名】ネギまバトルロワイヤル31 〜NBR ⅩⅩⅩⅠ〜
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281248719/
【名前欄】ラジオの影響で流れ無視
【メール欄】なし
【本文】↓4レスくらいです

146名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:34:36 ID:DOv5DBxE0
自分で言うのも何だが私は頭がいい方だ。
勉強は勿論だが頭の回転、状況判断等そちらの頭もいいと思っている。
そんな私が今の状況を推察する。

正解は死

化物揃いのクラスメイトの中でちょっと優秀なだけの人間が生き残るのは不可能だ。
上手く立ち回ればそれなりに生き残ることはできるが、いずれにせよ結局は地力が違う。

つまり詰みである。

無駄な事はしない。ならば最後に出来ること、私にしか出来ない事は何か?

私はデイバッグとは違う、自分の鞄に手を差し込んだ。
取り出したのはデジカメと幾つものメモリースティック。

それだけを手にして民家を出た。


最初に見つけたのは大河内アキラだった。彼女は仰向けで全身穴だらけだった。
何十枚も写真を撮り、彼女のクラスでの雰囲気を話しながら動画で撮影した。

次は釘宮円と柿崎美沙だった。二人は寄り添うように下腹部から血を流していた。
アキラと同じように写真と動画に納めた。

147名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:35:05 ID:DOv5DBxE0
途中で長谷川千雨に出会った。彼女は私に銃口を向けてきた。私は構わずカメラを回す。
彼女はもう3人殺したようだ。レンズ越しで見る彼女の瞳はとても悲しそうでとても3人も殺してるようには思えない。
狂った人間を装っているが本当は違うのは分かった。

――きっと誰よりもこのクラスが好きだった。

そんな印象を受けた。
結局彼女は私を殺さず何処かに去ってしまった。

その後も何人もの死体を撮影していった。普段なら嘔吐して精神がおかしくなってしまう光景。
しかしレンズ越しで見ているせいか全くそんな気分にならない。
もしかしたら既におかしくなっているのかもしれない。


銃声が聞こえた。

長瀬楓が戦っている。相手は見えないが会話から察するに龍宮真名だ。
リアルな戦闘を余すことなく撮影する。
何時間にも感じるが撮影時間を見ると数分も経っていない。
楓の膝が折れた。その瞬間楓の頭が弾け飛んだ。
龍宮が現れ死体を確認している。彼女を傷だらけで立っているのも辛そうだ。

確認が終わるとこちらに発泡をしてきた。左肩を撃たれたがカメラだけは守った。
死を覚悟した時、私と龍宮の間に煙が上がった。と同時に私は誰かに担がれた。

私を助けてくれたのは春日美空だった。廃工場に着くと彼女は止血を始めた。
その様子も勿論撮影する。「撮ってる場合か!」と叱られたが「コレが仕事だから」と答えるとそれ以降何も言わなくなった。

148名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:35:44 ID:DOv5DBxE0

「これで大丈夫」

彼女は笑顔で包帯をしまう。しかし私は知っている。その笑顔は嘘だと。
恐らく私は長くはない。自分の身体は自分が一番知っている。
彼女に問い正した。躊躇ったが悲しそうな顔で答えた。

「弾丸に魔法が細工されている。普通の人間だと1時間もあれば……」

それを知って私はカメラを自分に向けた。


えーどうも、撮影者の朝倉和美です。えー、動画はこれまでとなります。
これが今麻帆良学園中等部3-Aで行われている『バトルロワイヤル』です。
動画にはショッキングな映像が沢山ありましたが全て本物です。
私は今話しにあったようにこれから死んでしまいますが、ここに映像を残した事で私の意志は生き続けると思います。
このような悲劇を繰り返さない、そんな私の意志をどうかしってくれたらと撮影をしました。
この動画が世界中に拡散されることを祈って。

149名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:36:01 ID:DOv5DBxE0
私は録画の停止ボタンを押した。
今までの記録データを全て美空に渡した。
必ずこれを持ち帰って欲しいと。全世界で公開してほしいと。
受け取った彼女はとても辛そうだった。

「最期に会ったのが美空でよかったよ。逃げ足だけは速いからね」

「だけって……何だよ。私が死んだらどうすんだよ……」

「私の直感だと美空は生き残りそうなんだけど、無理ならペットボトルにでも入れて海に流してよ」

「勝手ッスね……まあ死なないようにするよ。どんなに無様でも朝倉の分まで生き延びてやるよ」

「ありがと。それじゃ……おやすみ」

「ああ……おやすみ」

十字を切り祈りの言葉を呟くと、満足気な顔をした朝倉を写真に収めた。

150名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:37:40 ID:DOv5DBxE0
以上です。よろしくお願いします

151名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:43:46 ID:l3KjogK20
完了です

152名無しさん@避難中:2012/03/18(日) 01:45:00 ID:DOv5DBxE0
ありがとうございます

153名無しさん@避難中:2012/03/19(月) 23:39:22 ID:0wAgjufg0
 お願いします!

【スレ名】【駄洒落で】ダジャレー夫人の恋人2【創作】
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1293809844/l50
【名前欄】
【メール欄】sage
【本文】下記1レスお願いします。

154名無しさん@避難中:2012/03/19(月) 23:39:59 ID:0wAgjufg0

 今年も男のもとに長崎に住む高校時代の友人からカラスミが送られてきた。

 たがいに地元を離れ、それぞれの場所で暮らしている。
二十代の頃は連絡を取り合い、年に一二度帰省するたびに酒を酌み交わしていたが、
共に転勤を繰り返し、気がつけば北と南、気軽に遊びに行けるとは言えない距離に
まで離れてしまった間柄である。
 
 長崎ってなに有名なんだ? カステラとかカラスミとかハウステンボスじゃね?
 じゃあカラスミな。 ああ、後で送るわ。

 三年前、転勤になる際に携帯電話越しに交わした言葉がきっかけだった。
 珍味、何かの魚の卵を干したようなもの。
確かに食べたことはない。が、かといってカラスミを食べたいと強く願っているわけでもなく、
ありきたりな成り行き話で終わるはずだった。
 だが忘れた頃に突然友人から送られてきたカラスミに男は愕然とする。
珍味という認識は確かにあったが、それでも男は単に高級なたらこや辛し明太子の類似品と思っていた。
しかし大袈裟な木箱の中に鎮座する一はらの真空パックに、男の持つカラスミに対する価値観は
木っ端微塵に打ち砕かれる。
 早々友人宛てに無難な贈答用のビール詰め合わせと今住んでいる地域では割と有名な
日本酒を送り、その夜久しぶりに連絡を入れた――

 三度目なればカラスミの食し方もパターン化されてくる。
初めて口にしたときは日本酒を飲みながらだったが、ちょっとくせのあるチーズを思わせる濃厚さは
日本酒よりワインに合うのではと、二年目からは辛口の白ワインがテーブルに並ぶようになった。
 ご飯の上に乗るたらこほどの大きさで切り、ガスコンロで軽く炙ってちまちまとかじりながら
缶ビール二本を飲む。その後はコンロの上で温めたバターにおろしたカラスミを混ぜ、トーストした
フランスパンに塗りながら白ワインを飲む。付け合せは三杯酢をかけただけのレタスとハムのサラダ。
さらにはお気に入りのCDと雑誌、古本屋で100円で手に入る読みきりの漫画数冊が肴になる。
 カラスミ以外さほど高価なものはない。男にとっては贅沢品だが白ワインも一本980円の国産品だ。
しかしカラスミの存在が、午後に戯れる貴族にでもなったかの様に男を優雅な気持ちにしてくれる。
そして待ちに待った休日の今日がその日だった。

 新品のガスボンベと魚焼き網がセットされたカセットコンロ。切り分けられたフランスパンとカラスミ。
氷を張られた底の浅いボウルに佇む銀色の缶ビール二本とフルボトルの白ワイン。締めの一杯のための
お茶漬けの素と冷や飯。絶好調になった場合の予備のアルコールとスナック菓子。準備は万端である。
 取っ手の付いた二重底になっているタイプで食材にガス臭さが移ることはないが、なにかの儀式の
ように男は念入りに焼き網の位置と火加減を確認する。そして大ぶりに切られたべっ甲色のカラスミを
網の上に乗せ、焼き過ぎないように何度も何度も焼き目をひっくり返す。
 頃合を見て缶ビールを開ける。そして網の上のカラスミを直接手で取る。
熱と一緒になんとも言えぬむせ返るような、ある種の淫靡ささえ感じさせる匂いが漂う。大きく喉が鳴る。
しかし自ら罰を与えるように、手にしたカラスミをわざと鼻の前でとどめ、男はその余韻に浸る。
つばを何度も飲み込む。そしていよいよその時が来る。

 手にしたカラスミを舌先でなぶる。
皮と切り口の肉感の違いを、老獪な策士のような笑みを浮かべ楽しむ。口の中はすでに唾液であふれ
かえっている。そして缶ビールを左手に、満を持して男は力強くカラスミを噛み込んだ。

「!!!――っ」

 癖のあるチーズに似た、濃厚で芳醇な旨みが口いっぱいに広がるはずだった。
しかし男の口に響き渡ったのは、よもや頭蓋をも震わせる何かを砕く後味の悪い音だった。
 反射的にカラスミを吐き出し、舌先で歯を確認する。
折れたり欠けたりしたところはない。とりあえず胸を撫で下ろす。そして男は噛み切られたカラスミの断面を見る。

 至福の時から急転直下、ありえない現実に男は呆然とつぶやいた。

「カラスミから……炭?」

155名無しさん@避難中:2012/03/19(月) 23:40:36 ID:0wAgjufg0
以上よろしくお願いします。

156名無しさん@避難中:2012/03/19(月) 23:41:55 ID:2k8mZxEo0
完了です

157名無しさん@避難中:2012/03/19(月) 23:54:24 ID:0wAgjufg0
確認しました。あり!

ただ、なぜか――が??になってた。大して影響はないがw

158名無しさん@避難中:2012/03/19(月) 23:55:50 ID:2k8mZxEo0
ありゃ?本当だ。
すいません

159 ◆BVLuHix1X.:2012/04/09(月) 02:02:52 ID:JnWRG32k0

お願いします。
【スレ名】創作大会しようぜ! 景品も出るよ
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1284467791/645n-
【名前欄】#千野
【メール欄】sage
【本文】下記1レス

160 ◆BVLuHix1X.:2012/04/09(月) 02:05:30 ID:JnWRG32k0
あ、メル欄はageでお願いします

 春の朧を照らす宵月。
 堅く冷たいアルミサッシの部分に肘を載せ、開け放した窓から侵入する夜気を浴びながら、色と言うのは空気に映っているのだと、今、気付いた。
 遠い夜の黒。あるいは、深い藍色も。照らされた雲の白い造型も。
 眼前に広がる雲のような桜でさえも、その空気の色を纏い、湿った風に滲むように揺れる姿を投影する。
 研究棟から見上げる僕の網膜に映る夜景は、そんな色をしていた。
 月のライトが、手に届きそうな位置に咲く桃色の花束を白く咲かしているのが目に入る。
 そして、もう一つ。
 吹き散る桜の中に、黒い人影が。
「時に少年。少し、いいか?」
 死ぬほど驚いた。
 桜の木の上に、女性が登っていたのだ。
 時が止まったような、刹那の間。突然の一陣の夜風が彼女の長い黒髪と、彼女を包む桜の花の枝先を揺らし、僕の心を巡っていった。
 その湖の深淵のような、僕を見つめる深い色の瞳に覗き込まれ、吐く息を呑んだ。
 息が止まりそうな程、美しい人だった。
 夜だというのに長い睫毛が見える程の至近距離。桜の花びらのような赤い口唇から、緩やかな息遣いが聞こえてくる。
「研究棟の鍵を忘れてしまってね。すまないが、そこから入れてもらえないだろうか」
「あ……は、はい」
 窓際に寄りかかる体を退かすと、彼女は黒猫のように枝から外壁のとっかかりに足をかけた後、窓枠を優雅に飛び越えた。
「や、どうもありがとう」
 彼女が廊下に降り立った際、彼女の体に引っ付いていた桜の花びらがひらひらと舞い落ちた。
 そして気付く。
「あの。頭に花びらが」
「ん。そうか。とってくれ、少年」
 そう言って、僕に謝るように頭を垂れた。
 そっと、壊れものに触れるように、美しい黒髪の頭部に手を伸ばす。
「ありがとな」
 彼女が笑うだけで、僕の心は締め付けられた。
 暗い廊下。
 月明かりに照らされた桜の花びらが舞う景色を背に、笑う彼女の姿が浮かび上がる。
 それはまるで夢のようでーー


 ガクンと肘が落ち、夢から醒める。
 よだれを見られてはいないかと、研究室を見回すと、どうやら自分たけが残っていた様子で、その心配はなかった。
 時計は既に十二時を過ぎていた。
 先輩が卒業してから、二週間。
 嵐のような人だった。
 卒業式の日まで白衣を振り回し騒ぐから、別れを惜しむ暇がなかった。
「はは……」
『何が可笑しいんだ?少年』
 声が聞こえた気がして、顔を上げるが、伽藍とした研究室が広がるだけだった。
 失ってから、彼女はもう居ないのだと、初めて気付いた。
「……うぐっ……」
 みっともないな、とは思っても、流れる涙を止めることはできない。
 机に突っ伏したまま、僕は泣いた。


「何やってるんだ、僕は……」
 赤く腫れた目を冷ます為、しばらく外を歩いていたら、研究棟の鍵を研究室に置きっぱなしにして出てきてしまったらしい。
 仕方ないから、昔の先輩みたいに桜の木に登って入ろうとしたら、二階の窓が開いておらず、現在絶賛立ち往生中だ。
 桜の花は満開で、あの日と同じように満月が藍色の空に登っていて、僕を照らしていた。
 いずれ桜は散り、月は沈む。
 いずれは僕も同じようにこの場所を去り、彼女の事を忘れてしまうのだろうか。
 月に照らされた雲のように広がる桜も。
 その花弁の一片一片さえも。
 それらを背景にしても尚美しい黒髪の女性を。
「絶対に忘れない。忘れるはずがない」
「時に少年。君は面白いと前から思っていたが、月を見上げて独り言とはロマンチストなのかな?」
 体を跳ね起き、危うく落ちかけながら
 よっと、敬礼の仕草で彼女が窓を広げて僕の目の前に立っていた。
「忘れ物があったので戻ってきたが、君が寝ていたので、起きるまでそこでコーヒーを飲みながら桜を鑑賞していたのだよ。安心しろ。君の寝顔は既に私の携帯のメモリーの中だ」
「先輩。これは夢……ですか?」
「夢か。君がそう思うのなら、夢かもしれないな」
 ところで夢というのは云々と彼女が説明し始めたのを遮って、尋ねた。
「夢なら、何しても許されますよね」
「夢の中で犯した犯罪を裁く法律は聞いた事はないな」
 ハハハ。思わず笑ってしまう。
 夢の中の彼女は、間違いなく先輩で、だから僕は目の前の女性に全てを懺悔しようと決めた。
「僕、先輩の事が好きです。ずっと好きでした」
 先輩が缶コーヒーをカランと落とし、みるみるうちに顔が桜色に染まっていくのを確認してから、自分の頬を抓ってみた。

 死ぬほど痛かった。

161 ◆BVLuHix1X.:2012/04/09(月) 02:06:12 ID:JnWRG32k0
コミカルを意識して書きました。

162名無しさん@避難中:2012/04/09(月) 02:38:44 ID:hZrL8W3Y0
行ってくる

163名無しさん@避難中:2012/04/09(月) 02:42:03 ID:hZrL8W3Y0
ごめん改行が多すぎるみたいなんで
どこか分割していいかしら

164名無しさん@避難中:2012/04/09(月) 02:52:41 ID:JnWRG32k0
はい
最後以外の隙間でお願いします!

165名無しさん@避難中:2012/04/09(月) 02:58:10 ID:JnWRG32k0
ありがとうございましたー!

166名無しさん@避難中:2012/04/09(月) 03:01:07 ID:hZrL8W3Y0
行ってきました。

…が、名前欄のトリップを打ち込むと上記レスのとは違うようなんですが
大丈夫だったでしょうか?

167名無しさん@避難中:2012/04/09(月) 03:25:39 ID:JnWRG32k0
大丈夫ですよー
重ね重ねですがありがとうございましたっ

168 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:23:21 ID:nGm6wZFQ0
【依頼に関してのコメントなど】
SSです。よろしくお願いします。
【スレ名】 【能力ものシェア】チェンジリング・デイ 避難所2【厨二】
【URL】 http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1308806660/
【名前欄】 【幻の能力者】 成世編 前編
【メール欄】 sage
【本文】 ↓次レスから

169【幻の能力者】成世編前編 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:26:19 ID:nGm6wZFQ0
【幻の能力者】 成世編 前編
─  Abilities are not Benefits ─


西暦2000年、2月21日。
あの日地球に降り注いだ隕石によって、私たちは不思議な力を授かった。

物理法則を超越した様々な特殊能力を、私たちはひとりにふたつ、使うことができる。
ひとつは夜明けから日没までの昼に使うことができる能力、
もうひとつは日没から夜明けまでの夜に使うことができる能力だ。

能力の内容も覚醒時期も人によってまちまちだけれど、
人間なら誰でも潜在的に超能力──“EXA(エグザ)”──を持っているという。

でも、新しい力は必ずしも幸福をもたらしてくれるとは限らない。
中には“能力”によって人生をどうしようもなく狂わされた者もいる──


-主人公
>成世美歩 (なるせ みほ)
>
>S大学に通う“普通の”女子大生。
>ただ1つ、普通の女子大生が違う所があるとすれば、
>それは……『自らが死んでしまう能力』に苦しみながら生活している事だろう。
────

170 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:27:45 ID:nGm6wZFQ0


胸が苦しい。

布団の中で、私は呻いた。

息が続かない。

全身の筋肉は、まるで金縛りにあったように動かない。

怖い、助けて。

胸の中で自分の肺が腐り落ちてゆく感触が分かる。




助けて、衛一君……




──遠くでケータイのアラームが鳴っている。

その音に導かれて、私の意識は現実へと引き戻されていった。

171 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:29:32 ID:nGm6wZFQ0
────
201X年、6月10日、朝。

「朝…?」

枕元に手を伸ばして、アラームを止める。

夢と現の狭間で、私の意識は少しずつ働き始めた。

夢の内容はまだはっきりと覚えていた。

私の“能力”が発現する夢。

「いつあなたの命を奪ってもおかしくない」と、医師に宣告された忌まわしい“能力”が。

それを止めるために、私は薬を飲み続けなければならない。多分、一生。

そうだ、今朝も飲まなければ……
小物入れから薬を取り出し、重たい足取りで洗面所へと向かう。

それにしても、どうして今さら、彼の名前が出てきたのだろう。
もう一年以上も会っていないのに……


洗面所へと向かう途中で、私はふと衛一(えいいち)の事を思い出す。
一年前から、彼との連絡は途絶えたままだった。何故かはわからない。
警察の捜索でも結局彼は見つからずじまいだった。

──警察の話では、“能力”がこの世に現れてから、こういう事件はよく起こるようになった、という事だった。

「諦めなさい」遠回しにそう言われたのだと私は理解したし。自分でも諦めたつもりだった。
でも、心の奥底ではずっと気になっていたのだろう。
だからこそ、何かの拍子に夢の中に現れた。──そう考えれるのが一番納得がいく。

ちょうど洗面所に辿りついたところで、私は今朝の夢について考えるのを止めた。

172 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:32:03 ID:nGm6wZFQ0

“      頓服薬
   ─ 能力鎮静剤 ─

  成世美歩(ナルセ ミホ) 様
6時間毎に2粒、または3時間毎に1粒
水と共に服用してください。         ”


薬の袋にはそう書かれていた。

この薬は普通の薬局では売っていない。
私の“能力”を抑えるために、特別に処方してもらったものだった。

中からカプセル状の薬を2粒取り出して、水とともに飲み込む。
カルキ臭い水道水と一緒に胃の中に錠剤が落ちていくのが分かった。


これで、10時半までは安心。
私はケータイを取り出して時間を確認した。

173 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:36:11 ID:nGm6wZFQ0

私の“能力”が明らかになったのは2年前のことだった。
海外旅行に行くためのパスポートを申請する際に、能力鑑定を受ける必要があったのだ。
窓口の下から出てきたレポート用紙を見たとき、私は愕然とする他なかった。


──昼の能力
体組織が壊死する能力。

──夜の能力
(未覚醒)


「どういう事? “能力”って──」

声を出さずにはいられなかった。
私の身の周りの人が持っている“能力”は、みんな当人にとって「いいこと」を起こしてくれる能力だった。
空を飛ぶ能力、ご飯を1秒で作る能力、嘘を見抜く能力……

それなのに、私の能力は……

壊死とは、細胞がに血が通わなくなって腐り落ちる事らしい。

これでは、先天性の病気と一緒だ。
すぐに精密検査を受ける事になったのは、言うまでもない。

さらに詳しい検査の結果、私が自分の能力で“死ぬ”確率は、概算で12時間に0.1%程度ということが分かった。
専門家によれば「12時間にたった0.1%の確率でも、毎日それが重なると、2年後に生きている確率は50%を切る」という。

174 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:36:40 ID:nGm6wZFQ0

能力研究の世界的権威である比留間(ひるま)博士が私の家を訪れてきたのは、検査の翌日の事だった。

「僕が開発中の新薬を飲めば、能力を抑える事が出来るかもしれない。ただし、効果のほどは保証できない」

比留間博士は私に、当時まだ開発中だった能力鎮静剤を試してみないかと提案してきた。
試す、と言えば聞こえはいいが、要は「実験台になってくれ」という意味である事は、高校生の私にも理解できた。

もちろん、私は提案を受け入れるよりも他に方法は無かった。
このまま何もしなかったら、2年以内に50%の確率で死んでしまうのだから。

「ありがとう。君の協力のお蔭で、薬の実用化も早まりそうだ。僕も君を救うために、全力を尽くそう」

比留間博士はそう言うと、契約書を私たちに書かせ、
自分の仕事に戻るために私たちの家を去っていった。

それ以来、私は日が昇る前に起きて、ずっとこの薬を飲み続けている。

博士の言った通り、初期の方の薬はかなり不安定だった。
気分が悪くて倒れた事もあったし、生理にも支障をきたすようだった。
言いかえれば、この二年間、私は薬の副作用と闘い続けてきた事になる。

比留間博士は時々私の様子を見に来て、そのついでに“能力”研究の最先端の話を少しずつ私と両親に教えてくれた。

『能力と魂』、『抑制薬の効かない能力』、『能力の進化と変化』、『世界への干渉』、『能力の遺伝性』、『Exミトコンドリア』…



…そして今、その比留間博士が客員教授を務めるS大学に、私は通っている。

175 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:39:37 ID:nGm6wZFQ0
午前10時。
私は授業を聞きながら、ノートを取っていた。私の友達は、隣の席で机に突っ伏して寝ている。
この授業を担当しているのは、鞍屋峰子(くらや みねこ)という助教授だ。

「量子力学的な視点では、何か新しい出来事が起こるたび、世界にほんの一瞬、“ブレ”が生じます。
こうしたブレを『量子揺らぎ』と呼びます。このブレの中には、その出来事に対して起こりうる、あらゆる結果が内包されています。
『シューレディンガーの猫』の話になぞらえて言えば、ブレのこっち側では猫は生きていて、あっち側では死んでいる、という事になります」

鞍屋先生は黒板に図を書きながら説明していた。印象的な銀色の髪の下で、緑色の目が時折ぱちぱちと瞬く。
幾何学的な“ブレ”の図とは対照的に、脇に描かれた“シュレーディンガーの猫”の絵がやけに可愛い。

「ブレの中の各状態は同時に存在していて、ミクロレベルで干渉し合っています。
通常、ブレはすぐに収束するため、1つの出来事に対しては1つの結果だけが残ります。
世界には沢山の出来事が絶えず起こっているので、宇宙内には無数の泡のようなブレが絶えず生成と消滅を繰り返しています」

彼女は20歳の時に量子力学の分野で大きな活躍をして、ノーベル物理学賞を受賞したらしい。
そして今、S大学で授業を受け持っている。

「通常、量子ゆらぎのスケールは非常に小さいので、私達の宇宙が歩む歴史は、全体として見ると1本の糸のように見えます。
そしてこの1本の糸を、私たちは唯一の世界、一つの歴史として認識しています。
ちょうど、紙の表面のデコボコを無視して、平面と見做すようなものです」

入門講座と言う事もあって、鞍屋先生は分かりやすく説明してくれているけれど、
20世紀のとある科学者の言葉によれば「量子力学は人間に理解できるモノではない」そうだ。
その最先端を研究している、彼女の頭の中身は一体どうなっているのだろう。

176 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:42:22 ID:nGm6wZFQ0

「と、ここまでは20世紀の科学で分かっていた範囲の事です、
ここからは、21世紀になってから新たに分かった事になりますが……」

良く通る声で解説を続けながら、鞍屋先生は黒板に新たな図を描き足した。

「ごく稀に、世界がブレたまま戻らず、ブレの範囲が宇宙全体に拡大してしまい、
宇宙が2本の歴史に分岐してしまうことがあります。
この分岐してしまった世界を、いわゆる『並行世界(パラレルワールド)』と呼びます。
資料によっては『世界線(ワールドライン)』と書かれている場合もありますが、あまり専門的な呼称ではありませんね。
また、この分岐点は、『ジョンバール分岐点(ジョンバールヒンジ)』と呼ばれます」

矢継ぎ早に繰り出される専門用語をノートに書き取り続けながら、私は思った。
彼女と私の歳の差は、10歳もない。私も数年後には、鞍屋助教授のようになれているだろうか。
それとも、あれが天才と凡人の差なのだろうか。

「『並行世界』になってしまった場合、もはや2つの世界同士が干渉することはありません。
私達は今、こうした『並行世界』のうちの、どこかの世界にいることになります。
もちろん、他の『並行世界』にも、別の私達がいる事になります……」

177 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:44:01 ID:nGm6wZFQ0

「むにゃ…」

と、私の横で寝ていた友達が起きた。

「ミホちゃん、ノート見せて……」

小さな声で囁く友達に、私は呆れ顔でルーズリーフの前のページを手渡す。

「さて、授業時間も終わりに近づいて来ましたので。今日はここまでにしましょう。
いつも通り、疑問点や感想を出席カードに書いて提出してくださいね」

原理はよく分からなかったけれど、並行世界のくだりはなんとなく理解できたと思う。
別の世界の私は、どんな風に暮らしているのだろうか。
能力が発現せずに安全に暮らしているかもしれない。それとも……

考えが悪い方向に行く前に、私は出席カードに書く文章を考え始めた。

隣の友達は「並行世界が分岐する事があるという話でしたが、逆に収束する事はありますか?」なんて書いている。
ずっと寝ていたのだから、私のノートを急いで読んで、適当に思いついたことを書いたに違いない。

私は、少し考えて、こんな事を書いた。
「並行世界があると21世紀になって新たに分かったということは、
並行世界の存在を知る方法が21世紀になって発見されたということでしょうか?」


普通、質問の答えが返ってくるのは、次の授業の初めだ。
しかし、この質問に対する答えは、私の予想よりもずっと早く返ってくる事となる。

178 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:46:40 ID:nGm6wZFQ0
授業の合間。
私は大学のトイレで薬の袋を開けていた。
薬は一度に二粒までしか飲めない。そして大学の授業は1コマ90分と長い。
下手をすれば、授業中に薬の効果が切れてしまう。
なので、私はうまく授業の合間を縫って薬を飲まなければならなかった。


──と、後ろからいきなりドンと押された。
袋から薬がこぼれ落ちる。

「んにゃっ!?」

どこかで、というよりついさっきも聞いたような声質。
振り向くと、鞍屋助教授がばつの悪そうな顔でこちらを向いていた。

駆け込んできた拍子に体がぶつかってしまったようだ。

「あ、先生」

「ごめんなさ……あ、成世さん、丁度良かった」

鞍屋先生は床に転がったカプセルを拾って私に手渡しながら言った。

「貴方に話したい事があったのだけれど、授業後すぐに教室を出ていかれちゃったから、追いかけられなかったわ」

「そうですか…すみません」

私はさりげなく、薬の袋を手で隠した。一般には流通していない薬なので、なるべく隠しておくように比留間博士から言われていた。
しかし、鞍屋助教授の目は私の動作よりも早く、書かれていた文字を読み取っていた。

「“能力鎮静剤”……ああ、比留間博士のアレね?」

「ご存じなのですか?」

「ええ、実は私もその薬、使っているのよ」

179 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:47:53 ID:nGm6wZFQ0

「先生も?」

私以外にこの薬を飲んでいる人がいたなんて知らなかった。
でも、考えてみれば、新薬の効果を一人だけで試す、というのは、科学者からしたらありえない話だ。
私以外に飲んでいる人がいても、全然おかしくはない。

「ええ、私の“夜の能力”は少し厄介で、自分の力ではコントロールできないから……」

「そうなのですか……あの、どんな“能力”なのですか?」

「『夜の間は猫になる能力』よ。貴方は?」

鞍屋先生がそんな“能力”を持っていた事も、私は知らなかった。
猫になるというのはどんな感覚なのだろう。

「私は……」

私は言うのをためらった。
私の“能力”を、いや、能力とすら呼べないそれを、他人に知られるのは、正直、嫌だった。
私の能力は、ごく親しい友人と両親、それに比留間博士だけしか知らない。

「話したくなければいいのよ。
それより、貴方の薬、汚れちゃったわね……私のと取り替えてあげましょう」

「いえ、そんな」

「いいの、今日は使わないから。たまには猫になってみるのもいいものだわ」

先生は腰につけたポーチから薬を取り出して、私に手渡した。

「“能力”のことで何か相談したい事があったら、気軽に言ってね。力になってあげられるかもしれないから…」

「ありがとうございます」

私は先生に頭を下げた。先生はそれを見てにこりと笑う。

180 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:51:09 ID:nGm6wZFQ0

「…そうそう、本題だけど、さっき比留間博士が貴方を探していたわ」

「比留間博士が?」

私は思わず聞き返した。

「ええ、比留間博士よ。貴方、博士の授業を何か取ってたかしら?」

「ええ、まあ…」

「まあいいわ……
それで、『成世君に会ったら授業の空き時間にでも研究室まで来てくれるように伝えて欲しい』って言われたの。
ということで、後で行ってあげてね」

「分かりました」

「それじゃ」

そう言って、先生は洗面所の奥へと消えていった。



洗面所を出た後で、私は先生との会話を思い返す。

『夜の間は猫になる能力』……先生の“猫好き”は有名だったけれど、どうりで猫好きなわけだ。
いや、そんな事はどうでもいい。
私と同じく、自分の能力に苦しんでいる人がこの大学にいた。
思えば、私の事を理解してくれる友達はそれなりにいるけれど、私と同じ境遇の人を見つけたのは初めてかもしれない……

181 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:52:30 ID:nGm6wZFQ0
4時半すぎ。
今日の授業が終わった。
私は比留間博士の元へ向かう。

比留間博士のいる超能力学部棟は、大学の裏門に近い場所に位置していた。
チェンジリング・デイ以降、 “能力”は私達の生活の一部となった。
それに伴い、20世紀までは鼻で笑われていた「超能力」という現象も、科学者達から真面目に注目されるようになった。

当初は超能力を研究分野として受け入れるべきかどうか、学会のほうで一悶着あったようだけれども、
結局、今では大学に専門の学部が作られるほどに学問として定着しているのだ。

そして、その超能力研究のパイオニアが、比留間博士だった。

「超能力だろうと幽霊だろうとUFOだろうとオカルトだろうと、この宇宙内に現象として顕れさえすれば、科学はそれを探究する事ができる」
という比留間博士の格言がある。
彼は生物学の分野から“能力”の存在を立証するとともに、超能力研究に“統計”“実験”“観測”の三本柱を徹底して導入し、
科学的事実としての超能力を「噂話」や「詐欺」などのでたらめから区別した。
これによって、ようやく国際科学会議も「超能力学」をまともな科学の一分野として認めるようになったのだった。

とりあえず、私の“超能力学”についての認識は、こんな感じだ。
それとは別に、私自身、個人的に比留間博士とはつながりがある。(もちろん薬の事で)

学会の見解がどうとか、そんな話は私にとっては正直、どうでもいい。
私としては、早く博士の能力鎮静剤が完成してほしいと思う。
科学は、人を幸せにしてこその科学なのだから。

182 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:53:28 ID:nGm6wZFQ0

比留間博士が私を探していたのは一体なぜだろう。
私は夕日に照らされた超能力学部棟の階段を登りながら考えていた。

時期的にはたぶん、期末レポートに関することだとは思うけれど…
今朝の夢の事が気がかりだった。

階段を登って廊下を少し歩くと、目的の部屋についた。
超能力学部研究室。

私はここの研究室で授業を受けたことはない。
でも比留間博士とは大学に入る前から個人的につき合いがあったため、この研究室にも何度か来た事があった。

壁に掛かったホワイトボードに「比留間慎也 - 在籍中」の文字を確認すると、私は部屋をノックした。

「どうぞ」

という比留間博士の返事が聞こえたのを確認して、私は中に入った。

研究室は、中学校の理科室を思わせる造りをしている。
非人間的なほど清潔感の溢れた白い壁に、フラスコや蒸留装置や試験管などのガラス製品が並べられた棚。
白い薬品や結晶がこぼれてもすぐに気づくよう作られた黒い机は、ずれたり傾いたりしないように床に固定されている。
中学校の理科室と違うのは、人体模型の代わりに大きな装置が置かれている事だった。
博士の話によると遠心分離機や攪拌装置や分析器といった研究器具だそうだ。

私が部屋に入ると、比留間博士は何か顕微鏡のような装置の前で試験管やシャーレを片づけていたところだった。

「ああ、成世君。わざわざ呼び出して済まないね」

と、博士は相変わらずのフランクな喋り方をする。

183 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:54:07 ID:nGm6wZFQ0

「鞍屋先生に言われて来ました。何の用でしょうか?」

「ちょっと込み入った話なんだ。ここで話すのも何だし、教員室に移動してから話そう。
……ちょっと待ってくれ、今片づけるから」

「手伝いましょうか?」

「ああ、さすが成世君、気が効くな。
じゃあ空の試験管を分けて棚に戻しといてくれ」

言われた通りに私は空っぽの試験管を選んで棚に戻した。

その一方で、博士は良く分からない透明な液体の入ったものを冷蔵庫にしまう。私にはよく分からないけれど、たぶん中身は何かの薬品だろう。
博士は今でこそ“超能力学”を研究しているけれど、元は生理学者なので、そういう方面から能力を研究しているらしい。

184 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:55:32 ID:nGm6wZFQ0

片づけを終えて、私達は研究室の隣の教員室に移動する。

比留間博士の研究の“三本柱”のうち「観測」を行うのが野外で、「実験」を行うのがさっきの研究室だとすれば、そして「統計」を行っているのがこの教員室という事になる。
パソコン机と事務机が交互に並び、壁の棚は本やファイルで埋まっている。
机の上には棚に入りきらない資料やマグカップなどが乱雑に置かれている。

ちょうど今の時間は誰もいないらしく(もしかしたら比留間博士が人払いをしておいたのかもしれない)、
パソコンの画面はみな真っ黒かスクリーンセーバーだった。

「まあ取り敢えず、そこに腰かけてくれ。今飲み物を入れてくるから」

と、博士は回転椅子を指差した。

博士は私の好みを知っているので、研究室に定番のコーヒーではなく、紅茶を淹れてくれた。
紙コップにポットからお湯を注ぎ、ティーバッグを落とす。

「お待たせ」

と、博士は私の所まで戻ってくると、机に紙コップを置いた。
熱くないように紙コップを二重にしているあたり芸が細かい。

私が紅茶に口をつけている間に、博士は机の鍵つきの引き出しから封筒を取り出して、私の隣の椅子に腰かけた。


封筒には「Classified」(機密事項)と書かれている。


「さて、本題に入ろうか」
博士の口調はいつも通り……のはずなのに、
私には何故だか、場の雰囲気そのものが重くなったように感じられた。

185 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 00:58:50 ID:nGm6wZFQ0
「まず、基本的な確認をしておこう。
成世君の“能力”は《アポトーシス》。【無意識性】【変身型】。12時間に0.1%程度の確率で体細胞が大規模に壊死する。
だったね」

私は黙って頷く。
奇妙なまでに静まりかえった教員室に、空調の音のみが響く。

「それで、今までその発動を抑えるために、私の能力鎮静剤を服用し続けていた」

「はい」

「ところが、違うんだ」

「違うって?」

まさか──

「これを見てくれ」

博士は封筒の中から紙を取り出した。政府の押印と透かしが入っている、どう見ても正式な文書だった。

“ 成世 美歩 (Naruse Miho)
Ex Ability
 Day … ■■■■■
  EXA name: "Event-Leap"
  Sort: Conscious, Creative
  Details
  Time-space traveling for creating another worldline whose time is delaied about 12 hours,
  maybe confuse the history. So we should watch her and seal this ability.
 Night … Unawaken ”

一ヶ所だけ上から黒く塗りつぶされていたけれど、私に関する資料である事は分かった。
私が英語の文章を解読するよりも先に、博士がその内容を読み上げていた。

186 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:01:35 ID:nGm6wZFQ0

「成世 美歩。昼の“能力”、《イベントリープ》。【意識性】【具現型】。
12時間程度時間軸のずれた別の世界線を創り出す事による時空間移動能力。
歴史を混乱させる恐れがある。彼女を監視しこの能力を封印する事を推奨する。
なお、夜の能力は未覚醒」


淡々と読み上げられる文章。
私はその意味は理解できたが、それの意味する事はすぐには把握できなかった。

「……どういう事ですか? 博士」

「つまり、《アポトーシス》はまったくのでたらめだったという事だよ。
今まで君が自分の“能力”だと思っていたものは、真の“能力”を隠すためにでっちあげられた偽りの“能力”だったということだ」

「まさか、博士」

そんな事があっていいの?

「そう、政府が騙していた。それだけ、君の真の能力が恐ろしいものだから」

「でも、私の能力は一度だけ発症しかけた事が……」

「能力移植だ。特殊な薬を飲まされると、一時的に他人の“能力”を会得する現象がある」

それじゃ、私のこの2年間は?
薬の副作用に耐え続けて、不自由と恐怖に悩まされてきたこの2年間は?

全部、仕組まれたものだったと言うの?

187 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:03:52 ID:nGm6wZFQ0

心臓の鼓動が早まり呼吸が荒くなるのが、自分でも分かった。

「博士、この事にはいつ……?」

「僕が気づいたのは、つい半年ほど前だ。
済まないな、君に言うべきかどうか迷っていた。結果的に私も騙す側に回ってしまった」

「そんな……」

「とにかく、落ちつこう。
これからどうするべきか、相談しようか」

私の様子を見て、博士は言った。

博士の言うとおりだ。
自分でも気が動転しているのは分かっている。
でも、落ちつけるわけがない。
私の心臓はバクバクと暴れ続けている。

「物事を良い方に考えるんだ。もう意味の無い能力に怯える事はないんだ。
これからは鎮静剤の代わりに偽薬を処方する。政府の目を騙すために飲み続けなさい」

「それから……言いにくい事だけど、もし良かったら僕にこの能力を少し研究させてくれ。
もしかしたら危険性がない事を政府に示せるかもしれない」

「研究?」

私は声を荒げた。
この期に及んで研究? この博士は何を考えているの?

188 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:09:12 ID:nGm6wZFQ0

「……私、過去へ戻ります」

私は椅子から立ち上がった。

政府も、この人も同じだ。私の事を危険因子としてしか、あるいは実験や観察の対象としてしか見ていない。

「落ちつきなさい、そんな事をしても意味がない」

「落ちついているわ。博士だって、私を騙そうとしている」

「済まなかった。君に言うべきかどうか迷ったんだ」

「嘘よ。半年も黙っていたのは、私の能力を研究する準備を進めていたから、そうよね?」

「……」

博士は言葉を詰まらせた。

──やっぱりそうだ。
誰もが自分勝手な都合で私を振りまわす。
歴史や研究のためなら、人を不幸にしていいの?

「いいえ、半年かどうかだって疑わしい。
この文章だって、博士が書いたものでしょ? 2年前に」

「それは違う……と言っても信じてくれそうにないな」

「私は、こんな世界に居たくありません。
私をモルモット扱いしかしてくれない、こんな世の中に」

「待ってくれないか」

踵を返して部屋の出口へと向かおうとする私の袖を、博士が引っ張る。

「離して下さい」

「薬が効いているんだろう。“能力”は使えないぞ」

──あ、

189 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:10:31 ID:nGm6wZFQ0

うっかりしていた。
そういえば、昼過ぎも鎮静剤を飲んだばかりだった。

明日の朝になってから“能力”を使っても、また「この時」に戻されるだけだ。
どうしよう……

と、その時──


「その娘は薬を飲んでいないわ、博士」


部屋の入り口から澄んだ声が響いた。
その声は、何故だか私には救世主のように聞こえた。

「峰子君、いつの間に?」

本当にいつの間にか、鞍屋先生がドアを開けて部屋の入口に立っていた。

「さて、いつの間でしょう? それより、聞こえました?」

「ああ、薬を飲んでいないって?」

突然の展開に、私は思考停止した。

「彼女の薬は“何者か”によって入れ替えられていました。見てください」

鞍屋先生は少し早足でこちらに近づくと、薬を机の上に投げ出した。
博士と私はそれに目を落とす。

“─ 能力鎮静剤 ─
成世美歩(ナルセ ミホ) 様”

190 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:11:20 ID:nGm6wZFQ0

理解が状況に追いつかない。
私が驚いているうちに、比留間博士は次の手を打っていた。

「峰子君、失礼」

パチン、と指を鳴らす音が聞こえた。
窓越しの夕日が、一瞬で暗闇へと変わった。

それと同時に、鞍屋先生の姿が視界から消えた。

「僕の“能力”を使わせてもらった。もう君に力は使わせない」

聞いていなかった、そして迂闊だった──慎也博士が“能力”を持っていたなんて。
考えれば分かること。能力研究の第一人者だ。
自分の能力を覚醒させようとしないはずがない。

と、博士の近くの机の上に一匹の猫が姿を表した。
緑色の瞳、銀色の髭。昼間の授業で黒板に描いてあった、あの猫とそっくりだ。

「仕方ないわね。緊急事態だもの」

猫が喋った。
鞍屋先生の声で。

「鞍屋先生……?」

「昼間も説明したでしょう? この姿は私の“夜の能力”──《グレマルキン》よ」

夜の能力……?
すると、慎也博士の“能力”は──

191 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:12:02 ID:nGm6wZFQ0

「さて、もう一度落ち着いて話し合おうか」

私は博士の瞳に、狂気に満ちた科学者の邪悪な輝きを見た。

「落ち着けるか!!」

わたしは思わず、手元にあったマグカップを博士に投げつけた。

博士はそれを片手で受け止める。

その隙に私は出入り口のドアへと全速力で走った。

「峰子君、取り押さえろ」

「どう考えても“任務外”ですけれど、仕方ないわね」

走る私を黒猫──鞍屋助教授がもの凄い速度で追い抜いた。

彼女は体当たりでドアを閉めると、音も無くその前に浮かんだ。

「どいて! 先生!」

しかし先生は私を無視して、私の後ろから迫ってくる人物に対して話しかけた

「退路は阻んだわ──これでいいかしら? 博士」

「ああ、ご苦労」

後ろを振り向くと慎也博士が目の前に立っていた。

192 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:13:09 ID:nGm6wZFQ0

「こうなっては仕方ないな。私も君を野放しにしてはおけなくなった。私の研究所まで来てもらおう」

博士は私の腕をしっかりと掴んでいた。

何か方法はないの? どうすれば?
せめて、もう少し考える時間が欲しい。時間が……

──その思いは、私のなかで一つの形になった。


「これは……!?」

目の前を覆う銀色の霧に、慎也博士は目を見開いて後ずさった。

「どうやら覚醒したようね。彼女の“夜の能力”が」

鞍屋先生は澄ました顔で喋るのが聞こえる。

「まさか……このタイミングで覚醒するとは」

「貴方は彼女を窮地に追いやったことで、彼女のもう1つの能力を覚醒させてしまった」

私の意志が込められた銀色の霧。
これがどういう効果をもたらすのか、私にははっきり分かっていた。
銀色の霧は薄いヴェールとなり、慎也博士をゆっくりと包み込んでゆく。

「昼夜を逆転させた時点で、この展開は予想して然るべきだった
──博士、貴方の負けよ」


『時間を凍らせる能力』。


銀色のヴェールに覆われた博士の体は、微動だにしなくなった。

193 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:15:16 ID:nGm6wZFQ0

「行きなさい。
私には貴方を止める気はないわ。止めようと思っても無理でしょうし。
──あなたは真の自由を手に入れた。自分の力で道を切り開いたのよ」

博士が凍りついた様子を見て、鞍屋教授は私に語りかけた。

「先生、ありがとうございます」

「と、行く前に部屋の戸締りはちゃんとしておくのよ」

鞍屋先生の声で喋る猫はそう言うと、優雅な足取りで部屋から出ていった。

194 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:15:50 ID:nGm6wZFQ0
数分後、私は研究室棟の階段を下っていた。
周囲はいつの間にか、夕方に戻っていた。


こんな騒ぎを起こしてしまったのでは、どのみち、このままではいられない。

私の“能力”を知っている人がいるかぎり、私は誰かにつけ狙われるだろう。

それを止めさせるためには──

私の力で、過去をやり直すしかない。

この間違った2年間を。


私は目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をした。
意識が、そして体が、今までに感じた事の無い方向に落ち込んでいくのが分かった。

195 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:16:21 ID:nGm6wZFQ0
(成世編後編に続く)

196 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:22:24 ID:nGm6wZFQ0
・設定

《名前》
成世 美歩
S大学に通う“普通の”女子大生。
ただ1つ、普通の女子大生と違う所があるとすれば、
それは……その“能力”のために不幸な人生を送ってきた事。


《昼の能力》
名称 … アポトーシス
【無意識性】【変身型】
体が突発的に壊死する能力。
12時間に0.1%程度の確率で発動するといわれている。

成世美歩の真の“能力”を隠すために「でっちあげられた」能力。
尚、夜の能力は未覚醒


  ↓


《昼の能力》
名称 … イベントリープ
【意識性】【具現型】
半日前にタイムトラベルする能力。

政府の機密文書では
「12時間程度時間軸のずれた別の世界線を創り出す事による時間移動能力。
歴史を混乱させる恐れがある。彼女を監視しこの能力を封印する事を推奨する。」
と解説されている。


《夜の能力》
名称 … タイムホライゾン
【意識性】【操作型】
対象の時間を停止させる。
時間を止められた対象は鏡のようなヴェールで覆われ、一切の事象の干渉を受けなくなる。
夜が明ける(ヴェールの外側が「昼」になる)と解除される。
ベール自体に重力が働いているらしく、地球の遠心力で対象が飛んで行ってしまうようなことはない。

197 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 01:22:59 ID:nGm6wZFQ0
【本文】↑で以上です。よろしくお願いします。

198名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:27:15 ID:sB3Tujqo0
本当に代行スレ来てたのか
いくよー

199名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:33:01 ID:sB3Tujqo0
>>178投下時点でさるさん

200名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:33:39 ID:sB3Tujqo0
投下時点というか投下後

201名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:37:39 ID:ig4DkuyQ0
じゃあ代わりに行ってくるー
>>179からでいいのよね?

202名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:38:27 ID:LFVD87M60
>>179はいきました!

203名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:38:34 ID:sB3Tujqo0
おk
頼んだ

204名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:45:03 ID:LFVD87M60
>>188投下後猿です

205名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:46:55 ID:ig4DkuyQ0
じゃオイラいくわ

206名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 01:58:04 ID:ig4DkuyQ0
いてきた

207名無しさん@避難中:2012/04/10(火) 02:12:04 ID:oBgMYyyE0
代行リレーワロタw乙w

208 ◆VECeno..Ww:2012/04/10(火) 09:35:13 ID:nGm6wZFQ0
>>198 >>201 >>205
ありがとうございました!
長くて申し訳ない…

209名無しさん@避難中:2012/04/18(水) 00:09:33 ID:R702v2Cc0
お願いします!

【スレ名】ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283595918/l50
【名前欄】
【メール欄】sage
  このレス以降の8レスをお願いします。
 メール欄はすべてsageで
 名前欄1〜7レスは「 グレートサラマンダーZ 」にてお願いします。
 8レス目は未記入でお願いします。

210[:2012/04/18(水) 00:10:43 ID:R702v2Cc0

―― ストーンサークル……? 時計、いや……

 視聴覚モニターには、時計の文字盤に似た直径5メートルほどの円状に並べられた石と、その周りを
取り囲むように座っている子供達。そしてその子供を見守る大勢の人々の姿が映っていた。
 12時3時6時9時の場所にはそれぞれひと目で大きいと分る石が陣取っている。そしてその延長線上
には鳥居ように組み合わされた背の高い柱が立っていた。

 グレートサラマンダーZに乗り込んだうぱ太郎たちが案内されたのは、石置きという行事が行なわれる
場所から少し離れた土手のような、先の広場を見下ろすには都合のいい場所だった。
 チィミコと共にその場に着いたが村人達はグレートサラマンダーZに特に興味を示すこともなく、
おのおの談笑に夢中だった。当のチィミコは村長に話をしてくるとすぐにその場から離れ、広場へ駆けていった。
 ナビの時計表示は午前6時を廻ってしばらく経つ。
かすかに混じる薄い蜜柑色の光もやがては消えゆき、抜けるような空色に変わるだろう。

「ねーねー、あれって日時計?」
「……たぶんカレンダー。10日ごとに石置いて春分の日用に大きい石置くと思う。
あとあの柱は太陽の位置見るためだと思う。チィミコちゃんそんなこと言ってたから。
……ピラミッドなんかもそんな役割果たしているから昔の人の知恵で太陽の位置測ってるんだと思う」

 すでに完成している石の円12時から3時までの外周を、更になぞるように石が置かれている。
区切りの日となる今日、内側の円と同様3時の位置に大きな石を置くことになるだろうと容易に推測できた。

「倫ちゃん詳しいね。古代文明とか好きなの?」
コックピットの中、モニターを見つめたまま、それでも機嫌を伺うようにうぱ太郎はうぱ倫子に話しかける。
「……知ってることしか解らない」
「あはは。そりゃそうだよね……」
しかしながら、いまだうぱ倫子との会話の距離感は掴めていない。
気を取り直し今度はうぱ華子に話題を振ってみる。

「華ちゃんはストーンサークルとか古代文明とかそういうの興味ある?」
「残念ながら興味はないわね。それに忘れてるかも知れないけどあたしはメキシコ生まれよ。
地元の古代の話だってろくに解らないのに日本の古代のことなんか知ったこっちゃないわ」
さばさばとうぱ華子は答えた。
しまったと苦笑いを浮かべながらもうぱ太郎は続ける。

「あ、そう言えばそうだったね。……メキシコってなんだろ? サボテンとかアステカとか
しか思いつかないな」
「普通そんなもんでしょ? あえて言えばマヤ文明が有名だけど、あたしもB級雑誌の人類滅亡
とかのゴシップ記事読んでそんなのあったなってレベルだからたいそうなことは言えないわ」
「マヤ文明か……。僕も何かで読んだ気がするな。なんで人類滅亡するんだっけ?」
「……長期暦。マヤ文明でもいろんなこよみの計算があって、その中で一番長い何千年単位で
計算される長期暦の終わる時が2012年の冬至の頃。
 長期暦の終わりが来たら新しいこよみを迎えるために全てのものが終わって新しく生まれ変わる。
って、輪廻転生みたいな思想もマヤ文明の一部にあって、それで人類滅亡に繋がってるんだと思う。
……わたしは大丈夫だと思うけど」

211「 グレートサラマンダーZ 」:2012/04/18(水) 00:11:53 ID:R702v2Cc0

―― ワームホールとか言ってたしやっぱ好きなんだ。でも、それ言ったらまた止まるから……

 不自然にならないように少し考えてうぱ太郎は口を開く。

「なるほど。でもさっきのチィミコちゃんの1年の数え方もそうだけど、星とか月とか太陽見て
こよみ計算するなんて凄いよね、古代の人って。そう言えば三蔵法師だっけ? 日食の日わかってて
それ利用して妖怪退治するの」
「……そう。でも三蔵法師は実在したみたいだけど西遊記はフィクションだから、その時代の人が
日食や月食の正確な日にち理解してたかどうかはわからない」
ほんのちょっとだがうぱ倫子の声が弾んだように思えた。

「ふーん、なるほど。……ちなみに倫ちゃんは日食の日とか計算できるの?」
「……季節ごとの星座の位置とかは知ってるけど、日食月食の日までは解らない」
「さすがにそこまでは無理だよね」
「……うん」
 少し近づけたかなと、心の中でガッツポーズをとる。
そしてさらに盛り上げようと、うぱ太郎は昨日の夜のことを話し始めた。

「昨日倫ちゃんたちすぐ寝ちゃったけど、僕あのあと外に出てみたんだ。
なんて言うか、なんかびびっちゃうぐらいに星が凄かった。ちょっと怖いって思うほどだったもん。
僕は北斗七星とオリオン座ぐらいしか分らないけど下手なプラネタリウムより凄いんじゃないかな。
倫ちゃんも夜になったら見てみればいいと思うよ。大袈裟じゃなくてびっくりすると思うから」
「あはははは。朝っぱらからチィミコちゃん元気だなー」

 唐突にうぱ民子が笑い出した。

―― 朝っぱらからジャイアンリサイタル開いてる民ちゃんほうがよっぽど元気だよ。
   って言うか空気読めよ。

 何事かとモニターを見れば、村長との話が終わったのかこちらに向け走ってくるチィミコの姿が
小さく映し出されていた。
 そしてうぱ太郎が苦々しく思うことも束の間、無邪気な子鹿のようにあっという間に土手の
斜面を駆け上り、チィミコはグレートサラマンダーZの隣に立った。

「……お待たせ。……えーと、タロウちゃん以外にも聴こえているんだよな?」
吐く息はまだ白い。はぁはぁと少しあがった息をチィミコは身だしなみと共に整える。
「えーと、うん。大丈夫。みんな声も聴こえるし石置きの広場も見えてるよ」
「つくづく凄いな。一体どうなってんだグレマン様って?」
「……まぁ、いろいろと。持って生まれた力というか」
「あはは、そうなんだ」

 返事を深く追求しようともせずチィミコは明るく笑う。
そして合図を送るように大きく両手を振った後、通常姿勢のグレートサラマンダーZの隣に膝を
かかえ座り込んだ。
 しばらく止んでいた太鼓の音がひとつ響き、ざわついていた村人達が静まりかえる。
間もなく村長と思われる男が石の円の中央に立ち、話を始めた。しかしそれほど長い話でもなく、
連打される太鼓の音と一緒に円から外れていく。

「さあ、石置きの始まりだ。面白いと思うからみんなで見ててくれ」
身体をひねり覗き込むようにしてチィミコはグレートサラマンダーZに話しかけた。
「うん」
平然と返事はするが、モニターいっぱいに映るチィミコの笑顔に戸惑いうぱ太郎は思わずのけぞる。
「チィミコちゃんっていちいち顔近いよねー」
「……可愛い」
「眉毛の手入れぐらいしないのかしら?」
マイクが音を拾わないことをいいことに、うぱ太郎の後ろでは好き勝手に言い放っている。

212「 グレートサラマンダーZ 」:2012/04/18(水) 00:12:48 ID:R702v2Cc0

 どどどど、どんっ。

 広場に太鼓の音が響き渡る。
神聖な儀式なのだろう、太鼓の音に合わせ膝を折りチィミコは広場に向け襟を正した。

 どんどん、よいしょ。どんどん、よいしょ。
太鼓のリズムに合わせ、村人達から掛け声が沸き起こる。

―― お御輿……?

 モニターの片隅に、木製のはしごのようなものを担ぐ4人の男が映る。
中央の台座には大玉なスイカほどの黒っぽい石が乗っている。太鼓と村人の掛け声に合わせ、
その神輿のようなものは4人の担ぎ手によってゆっくりと広場の石の円に向かっていく。
 
 どんどん、よいしょ。どんどん、よいしょ。どんどん、よいしょーっ。
ひときわ大きい掛け声とともに、神輿は円から10歩ほど離れた場所に下ろされた。
 村長の声が響く。
同時に4人の男に入れ替わり、遠目でも幼稚園児ほどと分る4人の子供が神輿の四隅についた。

―― 子供だけで担ぐつもりなのか……? 何キロあるか分らないけど無理だ。

 どんどん、よいしょ。どんどん、よいしょ。
また掛け声が始まる。しかしうぱ太郎の予想通り神輿は子供の力ではびくともしなかった。
 どんどん、よいしょ、どんどん、よいしょ。
それでも掛け声は続く。徐々に笑い声や励ます声が混じりはじめる。
 どんどん、よいしょ。どんどん、よいしょ。どんどん、よいしょーっ。
まったく動かせないまま4人の子供は神輿から手を離した。それでも広場には労をねぎらう声が上がった。
そして少し恥ずかしそうにしている4人に、出番を待っていたかのようにさらに4人の子供が加わった。

―― 子供でも8人ならいけるかな?

 一呼吸置いて太鼓が鳴り始めた。
掛け声もあがる。だが次第に頑張れ踏ん張れと応援の声が増してくる。
 神輿が少し持ち上がったのが分る。その都度広場は歓声で盛り上がる。
だがやはり担ぎ上げられることはなく、最後の掛け声も虚しく神輿はその場から動けずにいた。

―― 今度の4人は中学生くらいか……

 動かない神輿の前にさらに4人が加わった。
大人とは言い切れないが最初の子供に比べ明らかに身体は大きく、2度目に加わった子供と違い、
事前の8人になにやら指示を出し場所を確認しながら神輿に全員揃って手を掛けた。
そして神輿の先頭をになう一人が大きく片手を揚げる。

 どんどん、よいしょ。どんどん、よいしょ。
みたび、掛け声が沸き起こる。しかし今までとは違いどこか確信めいた力強さがあった。
 声援も笑いも無い。ただひたすらに太鼓と掛け声だけが広場に響く。
そして最後に加わった4人が8人の子供を促すようにひときわ威勢よく叫んだ。

 よいしょー!!!

 神輿が担ぎ上げられた。
 怒号に似た歓声が響いた。
太鼓と掛け声が小気味よく続く中、神輿は12人の手により円の3時の位置にじわじわと向かっていった。

213「 グレートサラマンダーZ 」:2012/04/18(水) 00:13:35 ID:R702v2Cc0

「意味のないことやってると思うだろ?」
「え……? あ、うん」

 突然、チィミコに話を振られ、うぱ太郎は言葉に詰まる。

「はじめから終わりまで大人が担げばいいだけのことなんだけど。……でも、そうじゃないんだ」
「…………」
どう答えればいいのか分らずうぱ太郎はコックピットの中で黙り込んだ。
かまわずチィミコは話を続ける。
「私の村はな、生まれて6年たったら村の仕事にたずさわるんだ。それで一番最初の仕事が
この石置きなんだ」

―― 1年の数え方は教わった。でも何月何日なんて数え方じゃない。
   6年目とか言うけどそもそも村の人誕生日なんてわかってるのか?
  
「えーと、チィミコちゃん。ここの村の人は自分がいつごろ生まれたってみんな知ってるのかな?」
少し気になりうぱ太郎は尋ねる。

「みんな知ってるよ」
「どうやって?」
うぱ太郎の問いにチィミコは胸元に手を入れ、衣服の下、紐で首にかけられていた文庫本ほどの
大きさの木片をグレートサラマンダーZの顔の前に差し出した。

「あ……」

 その木片上部には、眼下の石の円に似た円状の模様が刻まれていた。
そして下部の上の位置に手の形に似た5本の放射状の線の塊が3組。

「よその村のことはよく分らないけど、うちの村では生まれたときにこの札をつけてもらうんだ。
あの石置きの丸と同じなんだけど、私は春の分かれの日の前に生まれたからここに印がついている。
それで生きた年は手の指の印で数えてて、ひとつ5年でそれがみっつで15年だ」
そう言いながらチィミコは木片の印に指をさした。
「当然小さいときは生きた年数の印自分じゃつけられないからその家の人につけてもらうんだけど、
6年目から自分でつけれるように、それまでみんなで教えるんだ。それで生きた年、6年になったら
その次の分かれの日の石置きのときから石を担ぐんだ」
「それ村の人全員持ってるの?」
「ああ、全員持ってるよ。みんな少なくても分かれの日ごとに必ず見てるから忘れることはない。
あと間違って燃やしたり割ったりする人いるけど、そのときは作り直す。怒られるけどな」

―― 昔の人の知恵か……。

 カレンダー代わりの石の円を眺めながらうぱ太郎は想う。
そしてあらためて現代社会とはかけ離れた場所に来てしまったことを痛感する。
木片を胸元に戻し、チィミコはどこか懐かしむような優しげな微笑を浮かべ広場を向いた。

「小さな子供だけじゃ石置きの石担げないことはみんなわかってる。それでも最初は子供4人に
担がせるんだ。初めて担ぐ子はその重さに驚く。そしていかに大人に力があるかを思い知る。
でも、子供だけでも力を合わせれば何とかなることに気づく。そこが一番大事なことなんだ」
「…………」
「ただ、石を動かせばいいってことではない。石が落ちたりしたら危ないからな。
それでそうならないように面倒を見るのが何回も石置きをやってきた年上の者だ。
小さい子が怪我しないように注意しながらみんなをまとめ、力をあわせ石を担ぐんだ。
 でも何も初めてやる子だけが教わるんじゃないんだ。何回も石置きをやった上の子もそうやって
自分が教わってきたことを下の子へ伝えることをちょっとずつ学んでいくんだ。
この村の者はみんな石置きをやって大きくなってきた。石置きはこの村の大事なならわしなんだ」
「…………」

214「 グレートサラマンダーZ 」:2012/04/18(水) 00:14:09 ID:R702v2Cc0

―― 蛇食べるって聞いたときどうなることかと思ったけど、ちゃんと考えてるんだな……。

 カレンダーはおろか紙さえも無いと思われる時代。だが少なからず秩序や道徳的な教えはある。
自ら作りあげてしまった幻想を恥ずかしく思い、うぱ太郎は胸の中で小さく反省する。

 モニターには神輿から石を降ろし、収まる穴に向け石を転がす男の姿が映っている。
占いの要素でもあるのか、石が動くたびに広場は歓声やため息で埋まった。
そして石が穴に収まったところでひときわ大きい拍手と歓声が沸き、続いて村長の話が始まった。
ところどころで横やりな声が掛かる。どっと笑い声があがる。だがたいして長い話でもない。
長く続く拍手が終わりを告げていた。

「よし。じゃあみんなそろそろ行こうか」
儀式を見届け、チィミコは立ち上がり軽く衣服をはたいた。

「……うん」
少しどきりとする。そしていよいよかと心の中でため息をつく。

 大勢の人の前に出る。
人の姿の無いうぱるぱ王国で過ごしてきたうぱ太郎にとって未知の経験である。
 うぱるぱ救出活動で何度も人とやりあって来た。何度も理不尽な目にも遭った。
しかしその体験どれもがグレートサラマンダーZという鎧に守られての事である。

「うおー、盛り上がってきましたよー!」
「……民ちゃん、いちいちうるさい」
「あんたら余計なこと言わないでよ」
人の気も知らないで。と、後ろの席で遠足気分ではしゃぐうぱ民子を少し恨めしく思う。
 
「それでさ、私が村のみんなに話すから悪いんだけどタロウちゃん、私の言うとおりグレマン様
動かしてもらっていいかな?」
屈託のない笑顔でチィミコはグレートサラマンダーZに話しかける。
「いいけど……。どんなことするのかな?」
少し自信なさげな声でうぱ太郎は聞き返した。

「うん。私やテンやツギは見たからいいけど、グレマン様いきなり立ったり口開けたりしたら村の
みんなびっくりすると思うからあらかじめ見せておきたいんだ。それにそうなったときは危ないから
近寄るなって小さい子にも言っておきたいし。その後タロウちゃんたち出てきてもらえればさっき
ハナちゃんが言ったみたいにさわろうとする子もいなくなると思うから」
「あー、うん、わかった。じゃあチィミコちゃんに任せるよ」
「うん。悪いようにはしないから安心しててくれ」

―― 大丈夫。チィミコちゃんがフォローしてくれる。

 気づかれないように大きく息を吐き、ハンドルの位置を確かめた。
そして坂を下るチィミコに続き、うぱ太郎はゆっくりとアクセル踏み込んだ。

215「 グレートサラマンダーZ 」:2012/04/18(水) 00:14:44 ID:R702v2Cc0

「昨日も話したけど、しばらく村にいてもらうグレマン様だ。
でな、昨日私の家でいろいろグレマン様と話したんだけど、とにかく凄いんだ。
ウマ。まぁオオシカでいいんだけど、オオシカも凄かった。でもそんなもんじゃない。
とにかく凄い。みんなびっくりすると思う。ホントにびっくりするはず。
って言うことでグレマン様よろしく」
「……どうも。……よろしくおねがいします」
「よろしくおねがいします!」
「「「 ……………。」」」

 チィミコに連れられて、いよいようぱ太郎たちを乗せたグレートサラマンダーZは
村人達の前に出た。だが案内された場所はよりにもよって石置きが行なわれた石の円の内側で、
ばちがあたるのではと、うぱ太郎の不安と緊張をさらに増幅させた。
 乳飲み子を抱く女から杖を持つ老人まで100人近くと思われる村の人々が、チィミコの
指示に従い半円を取り囲むように立ち並んだ。
 円の内側に入らなければどれだけ近づいてもいい。というチィミコの声に、小さな女の子が
いの一番で最前列に立った。そして怖いもの見たさか数人の若い男女が少女の隣に並んだ。

―― たしかあの子昨日も返事くれたよな。蛇とかトカゲとか好きなのかな?

 ほとんどの村人は無言で、不安げにグレートサラマンダーZを見つめている。
その中での少女の元気な返事は、ほんのわずかだがうぱ太郎の心の支えになった。

「えー、昨日私とテンとツギは見たんだけど、実はグレマン様って2本足で立てるんだ。
それでまずはみんなにグレマン様立ったところ見てもらいたいんだ。いきなり暴れたりは
しないから大丈夫。怖がらなくていい。じゃあグレマン様よろしく」
「え、えーと。じゃあこれから立ちます。……いきなり暴れたりしないから大丈夫です」
簡単な打ち合わせどおりにチィミコは話を進めた。声に従い、モニターで人が危険な位置にいないことを
確かめ、うぱ太郎はグレートサラマンダーZを立ち上がらせた。

「おいおいおいおい!」
「待て待て待て待て!」
「うわ、でかっ!」
「そりゃ反則でねーすか?」

 グレートサラマンダーZの動きに村人からどよめきが沸いた。
かまわずチィミコは場慣れした司会者のように話を続けた。

「はい、次はちょっと怖い。小さい子は泣いちゃうかもしれないからお母さん方よろしく。
当然と言えば当然だけど、グレマン様も口開けるときがある。でも何も知らないでその姿見ると
喰われちゃうかもって心配になってしまう。だから前もってその姿を見ておいてほしいんだ。
じゃあグレマン様、口開けてくれないか? できればなるべくゆっくりでお願いします」
「はい。えー、これから口開けます。いきなり暴れたりしないから大丈夫です」

 ぱかっ!

「「「 ――っ!? 」」」

「おいおいおいおい!」
「待て待て待て待て!」
「うわ、怖っ!」
「や、やんのかコノヤロー!!!」
「びゃー、えーんえーん」
「そりゃ反則ですって……」

216「 グレートサラマンダーZ 」:2012/04/18(水) 00:15:56 ID:R702v2Cc0

―― やっちゃった……。

 緊張のせいか、うぱ太郎は無造作に口開閉スイッチを操作してしまう。
案の定、少女やもの好き連中含め、村人がいっせいに身を引いた。
慌ててチィミコがフォローを入れる。

「暴れたりしないから大丈夫。ホントに大丈夫だから心配しないでくれ。
……泣いちゃった子はさがってもらったほうがいかな。ごめんな。
それでな、グレマン様立ったり口開けてるときは近づかないで欲しいんだ。危ないから。
て言っても、あはは。これじゃ誰も近づきたいなんて思わないよな」

「「「 …………。」」」

「えー、グレマン様、口閉じていつもの格好に戻ってもらえるかな?」
「じゃあ、これからいつもの格好に戻りますです」
気まずさを隠すようにチィミコは笑顔を振りまいた。
うぱ太郎もそそくさとグレートサラマンダーZの口を閉め、通常状態に姿勢を戻した。

 安堵のため息が広場を埋め尽くす。

「うわー、グレマン様、凄い!面白い!」
「まぁ今日はこのぐらいで勘弁してください」
「こいつ本当におとなしくしてるのか? オオシカみたいに機嫌悪かったら蹴ったりしないのか?」
「たまげたなぁ。ほんとに化け物っているんだ」

 ひと通り村人の反応を見回した後、チィミコはごほんと咳を打った。
そして最前列はしゃがみ後ろの人は前に詰めるようにと村人をまとめ、本題を切り出した。
「えー、世の中には私たちの知らない、信じられないことやびっくりすることがたくさんある。
オオシカの時もそうだし、隣で言うのもなんだけどグレマン様にもびっくりだ」
 チィミコの声に最前列の少女が興味深げにこくこくとうなずいた。
釣られるように、周りからもうんうんと声が漏れた。

「でも本当に凄いのはこれからだ。またグレマン様に口を開けてもらう。暴れはしないから
怖がらずにみんなよく見ててくれ。
 たぶんみんな信じられないと思う。けど信じてもらうしかない。
これからグレマン様から降りてもらう。みんなびっくりする準備してくれ。
まぁ、簡単に言えば人の言葉を喋る手の生えたナマズだ。神様じゃないけどとにかく凄いぞ。
じゃあタロウちゃんたち。グレマン様から降りてくれないかな?」

―― いよいよか……。

 覚悟を胸に秘め、うぱ太郎はゆっくりと口開閉スイッチを操作する。
 振り返る。
昨日チィミコの前に出たこともあり、無表情だがうぱ華子、うぱ倫子も準備は出来ている。
「 …………。」
だが何故かうぱ民子はへらへらと笑っている。
「……民ちゃん。もうちょっと真面目に出来ないのかな?」
深刻になれとは言わない。しかしうぱ民子の態度はうぱ太郎にはあまりにも不謹慎に思えた。
「あはは。太郎ちゃん緊張しすぎ。表情硬いよ?」
だが、うぱ民子はあいかわらずの調子だった。

「はいはいはい。太郎ちゃんいちいちイラつかない。サクっとやっつけるわよ。サクっと」
「……太郎ちゃん。いつもあんな感じだから右から左へ受け流せば大丈夫」
「あれれ? わたし悪者?」

「いいよ、もう。じゃあ行こうか?」
何もかもが馬鹿らしく思えた。爆発させたい怒りを押し殺し、うぱ太郎は後ろを振り返らずに
グレートサラマンダーZから降りはじめた。

217名無しさん@避難中:2012/04/18(水) 00:16:38 ID:R702v2Cc0
今日はここまで。

218209:2012/04/18(水) 00:19:27 ID:R702v2Cc0
>>210名前欄コピペミスです。「 グレートサラマンダーZ 」でおねがいします。

以上、よろしくお願いします。

219名無しさん@避難中:2012/04/18(水) 00:23:09 ID:dGgwZfGQ0
途中で猿さんなるかもですが、行ってきます
なんか本スレagaってますけど、ほかに誰か行こうとしてますかね?
30分まで待って動きなければ行きます

220名無しさん@避難中:2012/04/18(水) 00:40:25 ID:dGgwZfGQ0
終了です
猿さんに捕まらず投下できました
ご確認下さい

221209:2012/04/18(水) 00:45:05 ID:R702v2Cc0
>>220
確認しました。あり!

規制が解けそうにないのでまた機会がありましたらどうぞよろしくお願いします。

222 ◆VECeno..Ww:2012/06/03(日) 05:19:52 ID:5IN3YO860
【依頼に関してのコメントなど】
途中まで投下してありますが規制されてしまいました。
よろしくお願いします。
【スレ名】 【能力ものシェア】チェンジリング・デイ 6 【厨二】
【URL】 http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1308806660/
【名前欄】 【幻の能力者】 成世編 後編
【メール欄】 sage
【本文】 ↓次レスから

223 ◆VECeno..Ww:2012/06/03(日) 05:20:51 ID:5IN3YO860
 
私の疑問を余所に、二人は会話を続ける。

「その子の“能力”はtop secretのはずだ。ナゼ余計なコトを教えた?」

「愚問ね。
この子の“能力”の価値は貴方達には分からない。
どうせ持て余しているなら、解き放ってあげるべき」

「それがお前の選択か? もしそう思うのならば、他のmemberにそう訴えるべきだった。
お前の行為は明らかに反逆だ」

「あらそうですか」

「正気か?」

「本気よ」


「先生!」

私は思わず口を挟んだ。

「逃げて。彼は私がなんとかするから」

鞍屋先生は私のほうを振り返って小声で話す。

「でも、先生……」

224 ◆VECeno..Ww:2012/06/03(日) 05:22:02 ID:5IN3YO860

状況はよく分からないけれど、

「巻き込んで、ごめんね、成世さん」

これだけは分かる。

鞍屋先生は、死ぬ気だ。

「そうか、覚悟があるなら別に構わない。
だが、犬死にするだけだぞ」

男は、そう言いながらサングラスを外し…

…そこまで見た所で、目の前を先生の手が覆う。

「見ては駄目。目を瞑ったまま逃げなさい。過去の世界でまた会いましょう」

先生は早口で説明する。
私は小さくうなずくと、“昼の能力”を使った。

再び、体が奇妙な方向へと引き込まれる。
私はまた新たな並行世界へと旅立った。
この世界の先生の無事を祈りながら……

225 ◆VECeno..Ww:2012/06/03(日) 05:22:33 ID:5IN3YO860






こうして、私の“旅”は始まった。

226 ◆VECeno..Ww:2012/06/03(日) 05:23:31 ID:5IN3YO860

ここまで。

227名無しさん@避難中:2012/06/03(日) 05:28:37 ID:Ivb3Whnc0
行ってきます

228名無しさん@避難中:2012/06/03(日) 05:32:41 ID:Ivb3Whnc0
行って来ました

229 ◆VECeno..Ww:2012/06/03(日) 11:30:50 ID:5IN3YO860
>>288
代行ありがとうございました!

230名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 21:59:49 ID:t3zgK6BQ0
度々お世話になっております、どなたか宜しくお願い致します

【スレ名】モブ少女-3-
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1282395034/
【名前欄】特に指定無し
【メール欄】特に指定無し
【本文】↓
ご無沙汰しております、>>1こと>>2です
長々とお待たせしてしまって申し訳・・・って何回目だこの挨拶www
ちょうど区切りのいい所まで書けたので投下したかったのですが、現在規制にひっかかっておりまして書き込めません
そこで、また避難所の「個人スレ」をお借りして、続きを書き込もうかと思っています
てなわけで久しぶりの投下予告!
急ですが明日(7/7)の21時〜、レス数はだいたい20位です(ちょっと増えるかも)
修学旅行編の山場まで、いけるといいなぁ・・・

231名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 22:02:33 ID:t3zgK6BQ0
さーせん、age忘れです

232名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 22:24:37 ID:M..bK1a60
いってきまう

233名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 22:25:45 ID:M..bK1a60
いってきました

234名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 23:09:29 ID:t3zgK6BQ0
>>233
有り難う御座いました!助かりました

235名無しさん@避難中:2012/08/25(土) 05:51:58 ID:n./Cnuis0
お願いします!

【スレ名】【まとめ】創発板ウィキ・Wiki編集スレ2【保管】
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280991457/l50
【名前欄】
【メール欄】
【本文】↓


過去に投下した自作を見てにやにやしたいというきわめて個人的な理由でありますが、
よろしければ下記過去スレのhtlm化をお願いしたい所存であります。


月間創作発表スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1238396099/

【気軽に】職人がSSを書いてみる【短編】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1219996415/

【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1287933564/


上記の3スレをお願いします。

*三題噺スレは新スレに移行しているので、合わせてそれも変更していただければこれ幸い。
現行スレ【三題使って】 三題噺その4 【なんでも創作】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1345555392/l50


以上、よろしくお願いいたします。

236名無しさん@避難中:2012/08/25(土) 08:13:10 ID:Zz2M/0t.0
行って来た

237235:2012/08/25(土) 22:52:54 ID:Syq9FX1.0
遅くなりましたが確認しました。ありがとうございます!

238235:2012/08/26(日) 07:06:10 ID:RJwCcvUc0
お願いします!

【スレ名】【まとめ】創発板ウィキ・Wiki編集スレ2【保管】
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280991457/l50
【名前欄】218
【メール欄】
【本文】↓

>>219
確認しました。ありがとうございます。
また機会がありましたらよろしくお願いします。

239名無しさん@避難中:2012/08/26(日) 07:23:13 ID:hmNCdyZo0
ほいよ。

240名無しさん@避難中:2012/08/26(日) 07:24:31 ID:hmNCdyZo0
いってきたよ。ageでよかったんだよね?

241238:2012/08/26(日) 07:32:09 ID:RJwCcvUc0
>>240
確認しました。ありがとうございます。
あげでかまいません。

242名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 00:04:16 ID:Er7cgXvo0
【依頼に関してのコメントなど】
代行お願いします。

【スレ名】【イラスト】お絵描き総合スレ2【画】
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1345648799/
【名前欄】色軍
【メール欄】
【本文】
http://imefix.info/20120824/151103/rare
四周年おめでとうございます!

243名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 00:06:21 ID:Er7cgXvo0

【依頼に関してのコメントなど】
度々すみません。代行願います。

【スレ名】【魔王】ハルトシュラーで創作発表するスレ 3作目
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283782080/
【名前欄】色軍
【メール欄】
【本文】
http://imefix.info/20120824/591102/rare

244名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 00:09:48 ID:RcEOS4lc0
まず>>242行く

245名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 00:10:55 ID:RcEOS4lc0
>>243も行く

246名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 00:11:34 ID:RcEOS4lc0
完了

247名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 00:14:00 ID:Er7cgXvo0
確認しました!
ありがとうございます!

248名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 02:51:42 ID:8eXlBBdo0

お願いします!

【スレ名】○●○合作しようぜin創発板○●○ Part2
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281623915/l50
【名前欄】
【メール欄】age
【本文】↓

>>132
質問。
主人公の性別は男、女? ざっくり読んできたが正直主人公の性別がよく解らないので
今のままだと話が進められない(そういうのを狙っているのならごめん)

主人公が女で、名前をそちらで決めてもらえるなら続きを書こうかなと思っている。
(本当にざっくりとしか読んでいないので名前を見落としている可能性もあるがw)
ただしあっさり完結させるつもりなので、妖怪ハンターとして大活躍な展開を望んでいるならば
今回は縁がなかったということで遠慮する。

とりあえず検討してみてくだされ。

249名無しさん@避難中:2012/08/27(月) 10:15:01 ID:FehNA1Ko0
したよー

250248:2012/08/28(火) 00:22:13 ID:ttoQ9BzY0
>>249
遅くなりましたが確認しました。ありがとうございます!

251名無しさん@避難中:2012/08/28(火) 00:27:19 ID:ttoQ9BzY0
続けてお願いします!

【スレ名】○●○合作しようぜin創発板○●○ Part2
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281623915/l50
【名前欄】133
【メール欄】sage
【本文】↓

>>134

 連絡遅くなって申し訳ない。

どうも自分の固定観念で、一人称、語り手「私」だと自動的に女性を連想してしまうのであります。
ついでにざっとしか読んでないので「そこの妖孤の娘よ、さっき『妖怪の流行病』の話をしておったな?」
という住職の台詞で、妖狐(母)の子供(主人公。娘なので女)と認識してしまいました。

>>133
でも書きましたが、(投下作の設定を無視して)あっさり完結させるつもりだったのですが、
さすがに簡単でもキャラ設定を見せされると自分のやろうとしていることはあまりにも的外れ及び
不誠実と思われますので、今回は縁がなかったということですみませんが辞退させていただきます。
お騒がせさせて大変申し訳ありません。

 ちなみに自分が作ろうとした話。

母が妖怪化の発作を見せて数ヶ月経過。
(本堂の修復費用は建物保険でまかなうw為、妖怪ハンターの話は立ち消え)
妖怪の血の運命に翻弄される母娘。
(母。閉経とともに本来の妖怪の姿に戻り人間の姿には戻れない。閉経の頃は通常の人間より
大幅に早く四十歳前後。
娘。その話を母から聞かされて自分の行く末はどうなるのだろうかと大いに悩む)
そして母娘、それぞれの道を歩み始める。

 ついでにラストシーンw

 泣きじゃくる私を背にしても振り返ることはなかった。
山の裾野に広がる銀の海原に、一人静かに母は姿を消した。

 我が子を見守る親狐のしっぽのように、すすきの尾花が優しく私を包み込む。
そしてまるで別れを惜しむかのように、風のない空の下、いつまでもいつまでもそよぎ続けた。

 いやー、本当に申し訳ない。
心意気は買っているのでまた機会があれば懲りずに頑張ってください。

252名無しさん@避難中:2012/08/28(火) 20:47:27 ID:N95p55N20
依頼に関してのコメントなど】ネット繋がらないので、スマホからです。よろしくお願いします。
【スレ名】【能力ものシェア】チェンジリング・デ イ 6 【厨二】
【URL】 http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/ mitemite/1308806660/
【名前欄】名無し
【メール欄】 sage
【本文】
おお、カズさん小ネタ投下乙です〜
積極的なかれんちゃんもかわいいですねっw

以上、どうぞよろしくお願いします<(_ _)>

253名無しさん@避難中:2012/08/28(火) 22:49:38 ID:bQYDSlsE0
>>252

行ってきました

254名無しさん@避難中:2012/08/28(火) 23:36:40 ID:N95p55N20
ありがとう!!

255251:2012/08/29(水) 09:49:16 ID:x5iBIK720

251だけど誰も代行してくれないYO
もしかしてろくに話読まないで安請け合いして引っ掻き回して挙句の果てに断ってしまったので
代行人に反感買ってしまったか(でしゃばり過ぎた罰か。自業自得だがw)
合作スレの134の人はすでに見てると思うんだけど、こういうときのもどかしさは半端ねーぜw

自分本位ですみませんだが、このレスを再依頼として、また1日待ってみる。
重ね重ね合作スレ134の人申し訳ない。

256名無しさん@避難中:2012/08/29(水) 09:56:47 ID:YC.PkoZc0
あれ?……すまん、見過ごしてた。

257251:2012/08/29(水) 10:25:49 ID:x5iBIK720
>>256
確認しました、ありがとう。これで安心して仕事いけるYO

258名無しさん@避難中:2012/08/29(水) 10:31:10 ID:xqYnDgmk0
>>257
本スレの134です。

本スレのほうでも触れましたが、以前から書き込みを確認していたものの、自分が代行してしまうとIDの関係で自演みたいに見えてしまうので、
書き込みを控えていたのですが・・・なんか変な誤解を与えてしまったみたいですみません。
一応、本スレのほうに返信させていただきました。
今回の件は残念ではありますが、本作は『設定があるような無いような』な『斬鉄剣の性能』的作品ですので、
もし何かの機会がありましたら、>>251で書かれた作品が拝見出来る機会をお待ちしています。

259名無しさん@避難中:2012/08/30(木) 17:41:23 ID:tRewTDr60

お願いします!

【スレ名】【駄洒落で】ダジャレー夫人の恋人2【創作】
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1293809844/l50
【名前欄】
【メール欄】age
【本文】下記3レスお願いします。

260名無しさん@避難中:2012/08/30(木) 17:42:34 ID:tRewTDr60

「はじめまして。ヨン・シューネンいいます。ヨンと呼んで下さい。よろしくアルね」

 いま俺は大学でフランス語の講師をしているフランス人の友人ジャンと、安いだけが取り柄の
居酒屋で酒を飲んでいる。
 三年前、ジャンが講師を務める交換留学が盛んな大学の学園祭で知り合い、その後
交友を深め現在に至っている。地元から離れこの地で暮らしている俺にとって、ジャンは職場の
同僚以外では唯一の友達と言っていい存在だ。

「ジャン先生の率いるコスプレメンバーの一人を好きになってしまったアルが、どう打ち明ければ
いいか分からなくてジャン先生に相談したら、悩みを聞いてくれるいい人がいますと言われて
それで今日ジャン先生に同行させていただきました。どうぞ話を聞いて欲しいアルよ」

 安藤殿にちょっと相談がありましてとジャンから連絡があり、土曜の夜、繁華街に繰り出した。
どうやら相談というのは今日が初対面となるいまどき珍しいステレオタイプな中国人日本語を操る
ヨン君の恋愛相談のようだ。
 いちいち会話にアルが混じるのは玉にキズだが、それを除けばヨン君は痩せ型で前髪を上げた短髪、
オーソドックスな白の開襟シャツが眩しい爽やかな青年だ。

「お役に立てるか判らんが、俺でよかったら」

 そう言ってこれ見よがしに発泡酒の大ジョッキをぐびぐびと煽る。
だがしかし、正直ヨン君の相談に適切なアドバイスを送る自信は無い。人に恋愛指南出来るほど
女と付き合ったわけでもない。そして、なによりも俺自身いまだ過去の恋愛を引きずっているのだ。

 三年前の今頃から俺はコスプレ好きのアメリカ人留学生ジュンと付き合い始めた。
元々はジャンの嫁となったスージーという金髪が好きだったのだが、いろいろあって言葉は悪いが
ジュンに鞍替えした形である。
 楽しかった。まだ二十八だが生涯で一番輝いていた季節と言っても過言ではない。
外人さんと付き合うという特殊性も確かにあったが、それを差し置いても充実した日々だった。
 自分で言うのもなんだがジュンと会える日を待ちわびてバリバリと仕事をこなした。
映画、ドライブ、図書館でのお勉強、そして俺の部屋でいちゃついて過ごす甘いひととき。
 しかし蜜月はジュンの留学終了とともに終焉を迎える。
俺に引き止める勇気も追いかける覚悟も無かった。そしてジュンも両親との約束を破るつもりは無かった。
空を切り裂いた飛行機雲をただずっと目で追い続けた。一年前のことだ。

「えーと。コスプレチームの一員ということだけど、ヨン君が好きな子は俺の知ってる子?」

 傷心の俺に気遣ってか、ジュンが日本を去ったあともジャンは俺をコスプレ同好会みたいな
サークルの飲み会に誘ってくれた。
 部外者な俺だが三年前のある出来事をきっかけに何故か伝説の人となってしまい、飲み会でも
皆俺を歓迎してくれた。ジャン経由ではあるが休日で暇なときは、食事をしたり俺の車で観光案内に
出掛けたりと今も年々入れ替わるコスプレメンバーの留学生とは程々に交流がある。

 俺の質問に四人掛けテーブルの対面に座るジャンとヨン君は顔を見合わせた。
そして意を決したように二人小さくうなずきヨン君がちょっと重そうに口を開いた。

「……メアリーアルよ」
「うおっ、マジすか!?」
「マジアルよ」

 真っ直ぐに俺を見つめるヨン君の瞳に嘘は無かった。

 メアリー。二十二歳のアメリカ人留学生。金髪ポニーテールで背丈は俺とそれほど差はなく確実に
170センチ以上ある娘だ。チアガールの衣装を着たメアリーを見たことがあるが、端正なスタイルと
凛とした表情を持つ誰もが認めるアメリカンビューティーだ。

 うーん、爽やかなイケメンではあるがヨン君は確実にメアリーより背が低いしなあ……
口には出さないが胸の中では早くも諦めモードの俺。顔に出たのかすぐさまヨン君が俺に聞いてくる。

261名無しさん@避難中:2012/08/30(木) 17:43:49 ID:tRewTDr60

「ジャン先生から、アンドー殿もコスプレメンバーの一人と付き合っていたと聞きました。もし
よかったらヨンにアンドー殿の経験とコスプレさんと付き合う秘訣を教えていただきたいアルよ」
「うぬー、経験といっても俺の場合成り行き任せということもあったからなあ……」
「ヨンはいま二十一。でもいままで美人さんと付き合ったことありません。アンドー殿、どんな
ことでもかまいません。ヨンにデートの誘い方を教えてくださいアルね」

 真剣な眼差しで見つめられ思わずヨン君から目を逸らしジョッキを持って誤魔化す。
最初から判っていたが、いまだ自分のことでうだうだしてる人間だ。人様の恋愛沙汰にアドバイス
出来る立場には無い。

「安藤殿はジュンやスージーたちと初めてあったときどんなことを考えてましたか?」

 気まずさに堪えきれずジョッキを空にしたところでジャンから助け舟が入る。
ナイスタイミングと心の中でつぶやきながら、一旦空気をリセットするために店員を呼んで
ハイボールを注文する。

「……初めはコスプレの可愛い外人さんの写真撮れればいいかなってしか思わなかったけど、ジャンと
知りあえたから、だったら女の子とも仲良くなりたいなってデジタルカメラだけど写真プリントアウト
して、次の日写真撮らせてくれた女の子全員に配った。まあ用は自分が良く見られたいってことなんだけど
それでも女の子達は喜んでくれたから俺も嬉しかったよ。きっかけがあればあとはまめに話しかけたり
話を聞いてあげたりすればとりあえず知り合いぐらいにはなれる。付き合うとなるとまた話は違うと思うけど、
基本的にはその延長で、とにかく明るく誠実に色々と話をしてお互いを理解するのが大事だと思うけどね」

 ジャンの質問に答える形でヨン君に話しかける。
喋り終えたところで注文したハイボールが来たので喉を潤す。

「……まめアルか?」
ぽつりとヨン君がつぶやいた。しかし発音が微妙でヨン君の思うところが解らない。
「えーと、なんて言えばいいかな……」
まめ。の単語や英文を脳内で探す。しかし肝心のところで思い浮かばない。
すぐにジャンが英語でヨン君に話しかける。ジャンの言葉を追う。そしてああなるほどと納得する。
ジャンやジュン、スージーとともに過ごし、簡単な英会話も出来るようになった。が、まだまだ
道は険しい。同時期からスージーはフランス語を勉強し始めたがもうぺらぺら喋れる。きっと俺とは
頭の作りが違うのだろう。
そして、そうこう考えてるうちに暗雲が引けるようにヨン君の顔にぱーっと笑みが広がった。

「一生懸命話しかけて、一生懸命話を聞いて、いつも明るく元気に正直に誠実にってことアルな。
ヨンちょっと日本語と英語下手だけど頑張ります。アンドー殿ありがとう!」

 ジャンが知らぬうちに秘訣を付随して英語で説明したのか、それともヨン君が勝手に深読みして
くれたのか、俺の言ったこと以上にヨン君はすらすらと模範的で理想的な言葉を連ねた。
 うん。それが出来れば知人レベルなら簡単になれる。だけど簡単に思えて結構難しいわな。
それから先は本人の努力とメアリーとの相性か。メアリーちょっと固そうだしな……。
あとはメアリーが自分より背が低い男でもOKなことを祈る。
 色々と胸の内で心配するが当然表には出さない。
アドバイスにはなってないが、ちょっと長めに話しただけで納得してくれたなら俺的にはもう話す
ことは無い。綺麗にまとまったのに迂闊なことを言ってやぶへびになるのも避けたかった。

 本当にそれだけで上機嫌になったヨン君に、今度はこちらから話を振り続ける。
酒が入り、さらに饒舌になったヨン君は日本語韓国語英語中国語ともはや何を言ってるのか解らない
レベルで延々と喋り続けた。
 まだ二十八だが、若いっていいなと隠居した爺さんのようにしみじみとする。
そして、俺もそろそろ吹っ切らないと。と、心で思い、ヨン君に頑張れよとエールを送った。

 ヨン君の相談に乗って一ヶ月が過ぎた。
ジャンのマンションに招待され家飲みをする。その際、その後ヨン君はどうなったかと聞いたが
今のところ進展は無いと言うことだった。ただ、ふられたとかメアリーが迷惑しているという悪い
噂も聞かないので友達ぐらいにはなれたようだとジャンは言う。

262名無しさん@避難中:2012/08/30(木) 17:44:57 ID:tRewTDr60

 そして瞬く間にもう一ヶ月が過ぎた。

「アンドー殿、ありがとう。おかげ様でメアリーと付き合うことになったアルよ!」
「マジでっ!?」

 平日。ジャンから連絡があり、また安いだけが取り柄の居酒屋に出向いた。
仕事で遅れると連絡し三十分ほど遅刻して店に着くと、すでにジャンとヨン君は相当酔っ払っていた。

「これヨンの家で作ってるケイタイラン。若者向けに明るく可愛く作ってるので部屋に飾ってください。
本当にありがとう。アンドー殿のアドバイスが無かったらヨン諦めてたと思うアルよ」
席に着くなりヨン君から相談に乗ってくれたお礼にと中国の民芸品と思われる取っ手や台座のついた
お椀のようなものを貰った。
「うお、わざわざありがとう。それよりヨン君凄いな。どうやったんだ?」
速攻で店員に発泡酒の大ジョッキを頼み、ジャンやヨン君に追いつくべき煽る。
正直に白状すればヨン君にはハードル高すぎだろと思っていたので純粋に驚き、そして今度は
成り行きに俄然興味がわいてくる。

「どうやったもなにも、アドバイスどおり挨拶から始まって、あとメアリーと顔をあわせたら
少しでもいいから話すようにして、だんだん仲良くなって、でも嫌がられないように注意して、
メアリーが話したそうなときは一生懸命聞いて、友達にはなれたなと思って、それで昨日思い切って
告白したらOKもらったアル。
二ヶ月もかかったけど恋人出来ました。本当にアンドー殿とジャン先生のおかげ。ありがとう!」

 諦めたらそこで試合終了ですよ。
バスケマンガの名言が俺の心の中で何度も何度も繰り返された。

「ヨン君。私はただ安藤殿の言葉を解りやすく英語にしただけで何もしていません。それにアドバイスが
あったとしても実際にそれを行動に移したのはあなたです。ヨン君の努力の賜物ですよ」
「……そ、そうそう。俺のアドバイスなんて別に普通のこと普通に言っただけだから」

 危うく後悔という名の無間地獄に陥りそうになったが、ジャンの返礼に便乗して何とか踏みとどまる。

「たまものってよく解らないけどそれは違います。ヨン、いままで好きになった人いたら何も考えずに
付き合ってくださいって言ってたアルね。アドバイスで初めて気づかされました。付き合いたいと言うにも
順序があるということを。だから本当にアンドー殿のおかげ。ありがとうござります」
「いやいやいや。本当に俺なにもしてないから。ヨン君が頑張ったから結果がついてきたんだよ」
「いえ、もしあのアドバイスがなかったら、ヨンまた何も考えずに告白してふられてたと思います。
だからメアリーと付き合えるようになったのはアンドー殿のアドバイスのおかげアル。ありがとう」

 単に腰が低いのか、それとも中国に激しく相手を立てる風習があるのかヨン君はなかなか自分の
努力を認めようとしなかった。
 たいしたアドバイスでもないが、助言が実を結び感謝されるのは悪い気分じゃない。
だが、そろそろ延々同じ事の繰り返しになりそうなので、改めて言葉を探す。

「ヨン君。メアリーと恋人になれたことがゴールじゃない、そこはスタートなんだ。だからこれからも
あのアドバイスを忘れずに日々を過ごして欲しい。いずれにしてもヨン君はガッツと根性がある。
その何事も諦めないガッツと根性を、今度はメアリーを幸せにするために使ってやってくれないか?」
「……アンドー殿」

 俺の声をヨン君は少し意外そうな顔で受け止めた。そして姿勢を正し真顔になって俺に返事をくれた。

「アンドー殿、ありがとう。アンドー殿の言葉を胸に、ヨンはメアリーを幸せにするアルよ!」
俺が自分でふっておきながら、もはや聞いてるこっちが赤面しそうな気恥ずかしさ。
だが構わずに、酔いと勢いに身を任せヨン君を激励する。
「おう、その意気だ。影ながら応援するぜ。頑張れよ。ガッツと根性、諦めない心だ!」

 爽やかでどこか誇らしげな笑みを満面に浮かべる。そしてヨン君は高らかに声を掲げた。

「ありがとう、ヨン、頑張るアル。きっと大丈夫アル。ヨン、執念あるよ!」

263259:2012/08/30(木) 17:45:52 ID:tRewTDr60
以上、上記3レスよろしくお願いします。

264名無しさん@避難中:2012/08/30(木) 18:06:59 ID:bGGgs.260
しましたよ。

265259:2012/08/30(木) 18:14:58 ID:tRewTDr60
>>264確認しました。ありがとうございます。

266名無しさん@避難中:2012/08/31(金) 21:41:51 ID:wzHDA2as0
書いてから規制喰らってるの思い出しました。お願いします。

【スレ名】【三題使って】 三題噺その4 【なんでも創作】
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1345555392/
【名前欄】くるま・チーズトースト・復活
【メール欄】sage
【本文】↓
 榴弾に吹き飛ばされて、私の左脚は血煙の向こうに消えた。超長距離から飛来した7.62mm
弾は一瞬のすれ違いで右の視力を奪っていった。その日から私は傷痍軍人としての生き方を、
得た。
 後悔はない。戦況が最悪の峠を越える夜を生き延び、そして勝ったのだ。侵略の暴威はもう、
この国を侵すことはない。
 車椅子で故郷を目指す。唯一の肉親である祖父の眠る地へ。
 山羊を飼っていた。平凡で、緩やかな日々が私を形作った。祖父は全てに於いて私の師だっ
た。読み書きから天候の機微、人との接し方まで、人生に必要なことは皆、彼から学んだ。
 祖父は傭兵だった。精強を誇る国の輸出品として各地を転戦し、心に傷を負って帰還した。
山里に篭り、人を避け、折れた心を一人で繕っていた。
 私を引き取った理由を、祖父はただの気紛れだといって、それ以上には答えなかったが、今
なら少し解る。欠落の形が似ていたのだろう。彼と私はその時、同じように損なわれていたの
だ。
 上り坂を、ゆっくりと進む。急ぐ理由はない。共に出征した幼馴染は一足先に還り、悠久の
内に眠っている。取り分けて勇敢だったと、彼を知るものは口を揃え、それが嬉しかった。
 膝に載せた包みが、かさかさと鳴る。色の濃い、全粒粉のパンと、やはり色の濃い、山羊の
チーズが二人分。精白度の高い白パンに憧れた日を、少しこそばゆく思い返した。
 奪うより助けよと祖父は言い、だから私は衛生兵として志願した。支給された拳銃は結局、
一発の銃弾も放たなかった。必要に迫られなかった幸運に、感謝を。
 やあ、見えてきた。石を組み、萱を葺いた懐かしき我が家。ただいま、おじいさん。

 これは私の、魂の復活への道のりを綴るひとり語り。暖炉に火を入れたら、あのチーズトー
ストを焼いて、欠いてしまった心をもう一度、取り戻そう。大丈夫、ここは私の故郷。あの子
が自分の足で立てたように、私もできる。

267名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 00:01:48 ID:rPRD.IiA0
>>266
代行完了しましたので、ご確認ください
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1345555392/18

268名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 00:14:09 ID:Ixh2b4os0
【依頼に関してのコメントなど】
途中まで投下してる間に規制されてしまったのでお願いします。
【スレ名】■LAST EXILE■ラストエグザイル■二次創作スレ
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1344867493/
【名前欄】ディーオが救助された経緯
【メール欄】sage
【本文】以下4レス

269名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 00:14:51 ID:Ixh2b4os0

コキネラ「ディーオ様をマエストロにしてもまたデルフィーネ様と同じ事を始めたら意味が無いし、
     それならアルヴィス様を擁立して地上人と和睦の道を歩んだ方が良いかな?いや、子供に権力持たせるよりは
     ギルドの仕事を放り出して逃げたダゴベールや先代ロリカのグラフに責任取らせないと…」
アピス「コキネラ、何ブツブツ言ってるんだ?ディーオ様がヴァンシップでグランドストリームに入った。俺達も後を追うぞ」
コキネラ「え?ヴァンシップ?いつの間にオドラデクを?」
アピス「オドラデクじゃない。地上人のヴァンシップだ。しかもナビを乗せないで1人で操縦している。
    ノルキアの野戦病院のマークの入った戦闘用ヴァンシップだ」
コキネラ「地上人の戦闘用ヴァンシップ?あの機体じゃレインバードの道を外れたらあっと言う間にバラバラになっちゃうよ。
     て言うか、ディーオ様は何の為にグランドストリームへ?ギルド城に帰るつもり?」
アピス「いや、どうやら地上人のヴァンシップを攻撃しながら追いかけてるだけだ」

コキネラはオドラデクのモニターに映る2機の地上人のヴァンシップの座標を確認した。
クラウディア反応を見ると、1機はディーオの乗ってると思われる戦闘用ヴァンシップ。
もう1機は10年前にグランドストリームをデュシスに抜けようとしてギルド戦艦の旗に叩き落された旧式ヴァンシップだ。
ディーオはあの地上人とは友達では無かったのか?旧式ヴァンシップにはアルヴィスも乗っている。
ディーオの頭は元に戻ったと安心していたが、どうやら記憶までは回復していないようだ。
このままではエグザイルの鍵であるアルヴィス・ハミルトンも殺してしまうかも知れない。
そうなったらエグザイルにどんな影響があるかも分からない。
単に停止するだけか、それとも伝説にあったようにこの世界を破壊するのか、それは誰にも分からない。
エグザイルの鍵の周りにはクラウディアの力場が展開されるので、アルヴィスを攻撃しても大丈夫だとの説がギルドにはある。
その情報源は既に死んだシカーダで、確認したのは十数年前にギルドでデルフィーネがクーデターを起こした時だ。
当時ハミルトン家のグラフ(先代ロリカ)がクラウディアの力場を伴うアルヴィスを伴って、
シカーダやオドラデクの攻撃を防ぎながらギルドを脱出したとの話だが、
そのクラウディアの力場の展開には何か条件(ミュステリオン等)でもあるのかコキネラ達は今までその現象を見た事が無い。
しかしシカーダが言っているのであれば事実だろうとの判断で、
ギルドはアルヴィスの乗ったヴァンシップには遠慮なく銃撃を加えてきた。
もしアルヴィスが死んでエグザイルが停止したとしても、それは今までの世界と何ら変わる事が無い状態だとコキネラは考えた。
この世界は気象制御装置の故障の影響でデュシスは滅びつつある。
マエストロが死んでも問題は解決しない。
寧ろマエストロが死んだ後に問題が露呈するだけだ。
気象異常の原因はギルドにあるが、ギルドですら気象異常を治せないのだから、デュシスはアナトレーに移り住み、
ギルドは寒冷地や灼熱の地でも生存できるような技術を地上人に教える事になるだろう。
それがギルドが提供できるこの世界で皆が生存できる為の解決手段だ。
ギルドを脱出したダゴベールならば気象制御装置の故障を直せるかも知れないが、
自分達が子供の頃にギルドを見捨てて地上に逃げた人間だ(コキネラ達の世代はそのように教わっている)
この世界を救う為には役に立たないかも知れない。

270名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 00:15:14 ID:Ixh2b4os0

だがこの戦争が終わったら駄目元でダゴベールに気象制御装置の修理を頼んでみようとコキネラは思った。
シルヴァーナのユニットの周波数も判明したのだから、この世界の異常を直す為に出来るだけの事はやっておこう。
グランドストリームをおかしな軌道を描きながら飛んでる記憶の戻らないディーオも何かの役に立つかも知れない。
だからせめて戦後処理を上手くいかせる為にあの地上人を追いかけてるディーオを捕まえなくてはコキネラは考えた。
その捕獲対象のディーオの様子が落ち着いた。
地上人のヴァンシップとの追いかけっこに飽きたのか、地上人のヴァンシップを追い越してレインバードの周りでガッツポーズを取っている。
そのままヴァンシップを止めて浮いてるだけなので、オドラデクの速度ならばもう少しで追いつけるだろう。
そう思い気を抜いた途端ディーオがヴァンシップから落下するのが見えた。

アピス「コキネラ!ディーオ様が落ちた!お前のオドラデクの方が近い。キャッチしろ」
コキネラ「判ってる。グランドストリームで落ちても地上に衝突するのは数時間後だよ。救助する時間はたっぷりあるよ」

コキネラは冷静に返答する。
グランドストリームは千数百kmもの長さがある。時速200kmで落下したとしても、
グランドストリーム中心部からアナトレーかデュシスの地表に激突するまで4時間はかかる。
ホライゾンケイブの8時間耐久レースはギルドまでの往復かデュシスまでの片道に8時間はかかると見込んで、
ヴァンシップ乗りを養成する為に作られたと聞く。
地上人のヴァンシップでもグランドストリームを突破するのに8時間かかるのだ。
グランドストリームで落下したとしても直線距離では地表まで数時間かかるし、グランドストリームでは風が滞留してる為、
地表に落下せずに何年もグランドストリーム内部で滞留し続ける戦艦の残骸など珍しくもない。
コキネラが冷静なのもそれを知ってるからだ。焦らなければディーオを簡単に救助できる。
程なくしてアピスとコキネラはディーオを救助した。だがディーオの様子がおかしい。言動が支離滅裂なのだ。

271名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 00:15:39 ID:Ixh2b4os0
ディーオ「アピス!コキネラ!ルシオラを探して!僕が降りてって言ったからルシオラがヴァンシップを降りちゃったんだ!」
アピス「は?」
コキネラ「…」

アピスとコキネラはルシオラがギルド城でシカーダと戦って死んだ事を報告で聞いてる。
マエストロもルシオラが死ぬ時の願いを聞き届けてディーオの頭を戻したと言っていた。
ディーオの発言はついさっきまでヴァンシップのナビ席にルシオラが座っていたかのように聞こえる。
アピスは下手に隠しても無意味だと判断しディーオに現実を突きつける。

アピス「ディーオ様。ルシオラは死にました。あなたの為に命をかけたのです」

アピスからルシオラが死んだと聞かされてディーオの顔は真っ青になった。ディーオは救いを求めるようにコキネラに振り向く。

ディーオ「あはは…冗談だよね?ルシオラが死んだなんて…アピスったらいつの間に冗談が上手くなっちゃってー。
     ね、コキネラもそう思うでしょ?」
コキネラ「アピスの言ってる事は冗談ではありません。ルシオラはシカーダと戦って死にました。死体は未確認ですがほぼ確実です」

コキネラも事実をディーオに告げる。
死体を確認してないのは事実だが、スクトゥム達やシカーダを相手にしてマエストロに逆らって生きてる方がおかしい。
シカーダと戦ったと言う発言だけでディーオには十分だったのかディーオが狼狽する。

ディーオ「死体?ルシオラの死体だなんて………死体ってなんとも言えないよねw」
アピス「は?」

またディーオがおかしな事を言い始めた。泣いてたと思ったら笑い始めたり、発言の内容もコロコロと変わっている。

コキネラ「アピス。ディーオ様は記憶が一部抜け落ちて一時的に健忘症になってるんじゃないかな?人格が元に戻る過程でフラッシュバックが起きてるんじゃ…」
アピス「つまり今のディーオ様はボケてる状態だと?」
コキネラ「うん…しばらく仲の良い人と楽しかった頃の思い出話をさせとけば回復も早くなると思うけど…ギルドにはもうそんな人いないよね」

ディーオと一番親しかったルシオラはもういない。
ディーオが正気に戻ってもルシオラがいなくなった事を知ればディーオは正気を保てなくなるかも知れない。
正気を失ったディーオがマエストロの座に居座ったらデルフィーネを超える暴君になるかも知れない。
ディーオをルシオラのいるあの世に送った方がこの世界の為かもとコキネラは思い、ナイフで苦しまずに済む殺し方を実行しようとしていたその時、
マエストロの座乗艦がシルヴァーナに沈められた事を示す記号がオドラデクのモニターに表示された。
コキネラは自分の額に手をやる。額の印が即座に閉じるとは思えないが、何か特別な感触があったような気がした。

コキネラ「マエストロが…死んだ?地上人の船に沈められたか」
アピス「そうだシルヴァーナだ!」

272名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 00:15:39 ID:Ixh2b4os0
ディーオ「アピス!コキネラ!ルシオラを探して!僕が降りてって言ったからルシオラがヴァンシップを降りちゃったんだ!」
アピス「は?」
コキネラ「…」

アピスとコキネラはルシオラがギルド城でシカーダと戦って死んだ事を報告で聞いてる。
マエストロもルシオラが死ぬ時の願いを聞き届けてディーオの頭を戻したと言っていた。
ディーオの発言はついさっきまでヴァンシップのナビ席にルシオラが座っていたかのように聞こえる。
アピスは下手に隠しても無意味だと判断しディーオに現実を突きつける。

アピス「ディーオ様。ルシオラは死にました。あなたの為に命をかけたのです」

アピスからルシオラが死んだと聞かされてディーオの顔は真っ青になった。ディーオは救いを求めるようにコキネラに振り向く。

ディーオ「あはは…冗談だよね?ルシオラが死んだなんて…アピスったらいつの間に冗談が上手くなっちゃってー。
     ね、コキネラもそう思うでしょ?」
コキネラ「アピスの言ってる事は冗談ではありません。ルシオラはシカーダと戦って死にました。死体は未確認ですがほぼ確実です」

コキネラも事実をディーオに告げる。
死体を確認してないのは事実だが、スクトゥム達やシカーダを相手にしてマエストロに逆らって生きてる方がおかしい。
シカーダと戦ったと言う発言だけでディーオには十分だったのかディーオが狼狽する。

ディーオ「死体?ルシオラの死体だなんて………死体ってなんとも言えないよねw」
アピス「は?」

またディーオがおかしな事を言い始めた。泣いてたと思ったら笑い始めたり、発言の内容もコロコロと変わっている。

コキネラ「アピス。ディーオ様は記憶が一部抜け落ちて一時的に健忘症になってるんじゃないかな?人格が元に戻る過程でフラッシュバックが起きてるんじゃ…」
アピス「つまり今のディーオ様はボケてる状態だと?」
コキネラ「うん…しばらく仲の良い人と楽しかった頃の思い出話をさせとけば回復も早くなると思うけど…ギルドにはもうそんな人いないよね」

ディーオと一番親しかったルシオラはもういない。
ディーオが正気に戻ってもルシオラがいなくなった事を知ればディーオは正気を保てなくなるかも知れない。
正気を失ったディーオがマエストロの座に居座ったらデルフィーネを超える暴君になるかも知れない。
ディーオをルシオラのいるあの世に送った方がこの世界の為かもとコキネラは思い、ナイフで苦しまずに済む殺し方を実行しようとしていたその時、
マエストロの座乗艦がシルヴァーナに沈められた事を示す記号がオドラデクのモニターに表示された。
コキネラは自分の額に手をやる。額の印が即座に閉じるとは思えないが、何か特別な感触があったような気がした。

コキネラ「マエストロが…死んだ?地上人の船に沈められたか」
アピス「そうだシルヴァーナだ!」

273名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 00:16:04 ID:Ixh2b4os0
アピスがいきなり大声を出す。

コキネラ「何?シルヴァーナがどうかしたの?」
アピス「ディーオ様の友人だよ。シルヴァーナの連中がいたじゃないか!
    俺達がシルヴァーナを制圧しに行った時に格納庫でディーオ様の誕生日を祝う為の下手糞なケーキがあった。
    シルヴァーナにはディーオ様の誕生日を祝う程仲の良い友人がいるんだ。
    シルヴァーナの連中だったらルシオラの代わりになれる。ディーオ様の心に開いた穴を埋める事が出来る!」

アピスに言われてコキネラは思い出した。
確かにシルヴァーナの格納庫にはディーオの誕生日を祝ったと思われる即席のパーティー会場があって、
そこに見かけは悪いが心が篭ってそうなケーキとディーオに渡したと思われるプレゼントがあった。
制圧時にはルシオラも格納庫にいたからコキネラ達もルシオラから誕生パーティーの話は聞いていた。

アピス「ルシオラの話だと誕生パーティーに参加したのは、ええと名前を聞いてなかったが、あの時格納庫にいた連中だ。
    大男、ハゲ、眼鏡、特に特徴の無い奴、赤毛の少女がラヴィ、それとクラウスとアルヴィスだ。
    特にクラウスと言う少年にはディーオ様はインメルマンと言う名前を付けて仲良くしていたって話だ。
    コキネラ、シルヴァーナに周波数を合わせて回線を繋げ。シルヴァーナと話を付けろ。
    俺は地上人と話すのは苦手で喧嘩になるからお前がやれ。話すのならば早い方が良い」

アピスが一気にまくし立てる。アピスは口が悪いが悪人では無い。アピスなりにディーオの事を考えてるのだ。

ディーオ「誕生日だぜーハッピー、生まれて生きてー土にー返るー」

誕生日と言う単語がヒットしたのかディーオの様子がまた変わり、歌を歌い始めた。
だが今度のディーオの表情は幸せそうだ。
コキネラは先程自分がディーオの将来を悪い方に考えて殺そうとした事を少し恥じた。
アピスの言う通りシルヴァーナの連中にディーオを預ければ、ディーオは暴君にはならないかも知れない。
やれるべき事はやっておこうとコキネラは思い直しシルヴァーナへ通信機の周波数を合わせる。

コキネラ「こちらギルドのアスピス(白服)のコキネラです。シルヴァーナ。応答願います」
レシウス「ギルド?もうギルドに知り合いはいない。仕事の邪魔だ」

回線の向こうから聞こえる老人の声はそっけない。
それに向こうから聞こえる機械の音を聞くと、仕事の最中と言うのは本当のようだ。
恐らくユニットを再起動しようとしている最中なのだろう。
コキネラは手短に要件を伝える。

コキネラ「こちらで確保したディーオ様をそちらに引き取って頂きたい」

回線の向こうから老人の返答があった。

レシウス「ディーオだと?ギルドを抜け出したとは聞いていたが生きとったのか。どれ、ディーオの声を聞かせろ」
ディーオ「誕生日だぜーハッピー、生まれて生きてー土にー返るー」
レシウス「しぶとい奴め」

通信機の向こう側の老人はコキネラ達との通信回線を維持したままユニット始動シークエンスを実行している。
回線を切断しないと言う事はこちらと会話する意思があるとの意思表示だ。

レシウス「浮上!」
ディーオ「ふじょー」

老人の声にディーオが復唱する。
どうやらこの老人ともディーオは友人らしい。
ディーオは意外とシルヴァーナには友人が多いようだ。
戦争は終わり戦後処理はまだこれからだし、地上人との衝突も多いだろうけど、
ディーオの事に関してはシルヴァーナに任せれば心配いらなそうだ。
今まで自分達を振り回してきたギルドの御曹司の過去を振り返ってコキネラ達は笑った。

終わり

274268:2012/09/01(土) 00:19:21 ID:Ixh2b4os0
すいません>>271>>272は内容同じです(2重書き込みしてしまいました)なので、269、270、271、273、の4レスをお願いします。

275名無しさん@避難中:2012/09/01(土) 04:03:19 ID:fxjS6Awk0
>>267
ありがとうございます。

276268:2012/09/01(土) 08:38:01 ID:Ixh2b4os0
自己解決しました。
規制解除されたようなので、自分で>>269-273を貼り付ける事が出来ました。

277名無しさん@避難中:2012/10/29(月) 04:27:24 ID:hhpt4nYQ0
【依頼に関してのコメントなど】
申し訳ございません、規制されてしまいました。どなたか、お願い致します。
【スレ名】絵師募集スレ 2
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281196439/
【名前欄】269
【メール欄】sage
【本文】↓

>>271
有難うございます!これで妹も元気を取り戻し、助かると思います!

278名無しさん@避難中:2012/11/14(水) 23:28:06 ID:2CpOGd/.0
お願いします!

【スレ名】ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283595918/l50
【名前欄】
【メール欄】sage
  このレス以降の4レスをお願いします。
 メール欄はすべてsageで
 名前欄1〜3レスは「 グレートサラマンダーZ 」にてお願いします。
 4レス目は未記入でお願いします。

279「 グレートサラマンダーZ 」:2012/11/14(水) 23:30:45 ID:2CpOGd/.0

「誰だよタロウちゃんて?」
「チィミコちゃん。グレマン様のほかに誰かいるの?」
「なに始まるんだ?」
「…………」

 口は開いたが、一向に変化のないグレートサラマンダーZ。
無言のチィミコとグレートサラマンダーZにじらされ、次第に村人がざわめきたつ。

「「「 ????? 」」」

 だが、一瞬にしてそのざわめきは消え去った。

 うぱ太郎、うぱ華子、うぱ民子、そしてうぱ倫子。
怪物の口から這い出た、一匹を除けば神々しささえ感じる鮮烈な体色の見慣れぬ生き物。
石置きの円最前列を陣取った者たちは、ただ無言で事の顛末を見守ることしかできなかった。

「おはようございます!うぱ太郎といいます! タロウちゃんって呼んでくださいっ!!!!!」
「「「 !!!!!っ 」」」

 半ばやけくそ。
グレートサラマンダーZの前で横並びになったうぱ太郎は、呆然と立ち尽くす村人たちを見上げ、
開口一番あらん限りの声で叫んだ。

「「「 …………。」」」

 続く沈黙。
そして、ぽつりぽつりと困惑の声。

「あれ? この子グレマン様と同じ声だ」
「私、寝ぼけてるのかな?なんか魚が喋った気がする」
「……気のせいじゃね?」 
「なんか気色悪い色の魚だな」
「誰か叫んだやついる?」
「えーと。……どうなってんだ?」

「あたしはうぱ華子。華ちゃんて呼んで頂戴」

「「「 !!!!!っ 」」」

 どんなに目をこらしてもチィミコの隣に立つ者はいない。

 その声は間違いなく、怪物の中から突然現れた不可思議な生き物が発していた。
何ひとつ変わらない朝日の中で、受け入れきれない事実が現実に混じり始めた。

「おいおいおいおい!」
「ちょ、ちょっと待てコラ!」
「ふざけんな!」
「……嘘でしょ?」
「ありえねー」
「ナマズが喋っただと?」
「すげー色だな。神様か?」
「神様? イモリじゃねーのか?」
「長生きするもんじゃのう」
「世の中まちがってる……」

 広場がどよめきで溢れかえる。
事を確かめようと一斉に石の円に詰め寄ってくる村人たちを、にたにたと満足げに眺める。
うぱ太郎たちとの距離を確かめ、グレートサラマンダーZの隣に座り込む。そしてチィミコは
腕を伸ばし指を指しながらうぱ太郎たちの紹介を始めた。

280「 グレートサラマンダーZ 」:2012/11/14(水) 23:32:09 ID:2CpOGd/.0

「黒っぽいていうか一番魚っぽいのがタロウちゃんだ。赤っぽいのがハナちゃん。それで白の子が」
「……うぱ倫子。……倫ちゃん」
「わたし、うぱ民子。民ちゃんって呼んでねー。チィミコちゃん、つば飛んでくるからあっち向いて喋って」

 気後れしたのか、消え入るような声のうぱ倫子。
そして村人の反応などまったく意に介さないうぱ民子。

「あーっ!」
「――!?」
交差するざわめきに混じり、最前列の少女が大きく声を上げた。
びくりと、うぱ太郎含む4匹が一斉に身を引いた。

「朝、変な歌うたってた声だー!!!」
まるで探していた宝物を見つけたかのように弾む声。
そして少女はしゃがみ込み、物怖じすることなくうぱ民子に向けて身を乗り出した。

「あの歌、教えて教えて!」
「えーと……」
少女の勢いにたじろぎ、少し気まずそうな表情でうぱ民子はうぱ太郎やチィミコを見やる。

「トリノちゃん。タミちゃんの歌聴いてたのか?」
「だって私んちからグレマン様見えてて、すぐそばだから聴こえてきたもん!!!」
 少女は口を尖らせる。
負けん気の強い返答に苦笑いを浮かべ、なだめるようにチィミコは話しかけた。
「そうか。……でも今すぐはだめだな。そうだな、あとでタミちゃんたちと相談するから、
今日は我慢してくれないか?」
「うん、わかった」
返事に納得したのか、トリノと呼ばれた少女は期待に満ちた笑顔でぺたりと地べたに座り込んだ。

「またまたわけ分んねー奴連れてきたな、おい。 ……チィミコ。そいつら村におくって言うけどな、
いまうちの村にそんな余裕なんかねーだろ。おまえ本気か?」

 収まる気配のないざわめきの中、今度は少し気難しい表情をした男がチィミコに言い寄ってきた。
わずかな沈黙が広場の中に生まれる。そしてそうだそうだと男に同調する声がぽつぽつと上がる。
 男にむやみやたらと手を出してきそうな粗暴な印象は無い。ただ、トリノの突然の大声に懲りたのか
うぱ太郎たちはいつでもグレートサラマンダーZに乗り込める位置まで下がっていた。

「ナギタ。どういう意味だ?何を言いたい?」

 笑顔は崩れない。
立ち上がり膝をはたく。そしてチィミコは余裕の表情で注目の的となった男に問い返した。
だがその態度が面白くないのか、これ見よがしにナギタと呼ばれた男から舌打ちが漏れる。

「テンから聞いたけど、タカオとのいざこざ鎮めてくれたのはありがたいと思うし、確かに礼も
必要だろ。でもな、今うちの村にそんな余裕あんのか? グレマン様のそのなりじゃ肉でも魚でも
ばりばりかなりの量食うんだろ? 自分の食う米さえ無くてひーひー言ってんのに、いくら助けて
もらったからってそんな化け物に村の食べ物何日も恵んでる場合かって話だ」

―― 食べ物のせいにしてるけど、ようは村に居てもらいたくないってことだよね。たぶん……。

 心の中で溜息をつくうぱ太郎。無表情のうぱ華子うぱ倫子。相変わらずへらへらしているうぱ民子。
しかし、そんなうぱ太郎たちのことに気づくわけもなく、チィミコは大袈裟に頭を掻きながら話を進めた。

281「 グレートサラマンダーZ 」:2012/11/14(水) 23:33:27 ID:2CpOGd/.0

「あー、ごめんごめん。うん。言いたいことは分った。でも大丈夫だ。グレマン様の食べる分は
グレマン様が川に行って自分で魚獲って食べるから心配しなくていい。
あとタロウちゃんたちの分は私たちが一口で食べる魚の身があればそれで一日過ごせるらしいんだ。
それに魚がなければミミズでもいいみたいなんだ。だからグレマン様に村の食べ物が食べつくされる
とかそんな心配はまったくしなくていいよ。私が食べる分ちょっとタロウちゃんたちに分けてやれば
いいだけのことだから大丈夫だよ。ごめんな、村の食べ物のことまで心配してくれてありがとう」

 そう言ってチィミコはぺこりと頭を下げた。
それでも気がすまないのか、腕を組みナギタは執拗にチィミコに食い下がる。

「……分った。じゃあ食べ物のことはいい。……だけどな、本当にそいつら暴れないのか?
オオシカの時も酷かったよな。機嫌悪けりゃ暴れるわ蹴られるわで相当痛い目にあったよな?」
「大丈夫大丈夫。確かにオオシカも最初は酷かったけど今じゃ村一番の働き者だ。
簡単なことだよ。グレマン様に嫌がることを言ったりやらせたりしなければいい。それだけだ。
なんてったってグレマン様は人の言葉が分るんだ。私たちが変なことを言わない限り暴れたりする
ことはない。さっき見てただろ? ちゃんと話せばちゃんと通じるんだ。みんなと同じだよ。
怒る怒られるようなことしなければおとなしくしてるよ。それだけだ」
「……分った。……でももう一回聞く。まぁ、変な言い方だけど、俺たちはオオシカのときみたいに
やたらと気を遣わなくてもいいってことだよな?無理してなだめたりしなくてもいいってことだよな?」

「……ナギタ。おまえまだオオシカに蹴られたこと根に持ってんのか?」
「おわっ!?」

 いつのまにか火起こしがナギタの隣でにやついていた。
その火起こしのひと言で、少し不穏がかった重苦しい空気が払拭される。

「う、うるせーよ火起こし。おまえだってオオシカ乗れるようになったのつい最近だろ」
「ふんっ。俺はおまえと違って一回二回蹴られたくらいじゃ懲りないんだよ。それにな、
うちの巫女とか若い奴らはオオシカ乗れるのに大の男が乗れないなんて格好悪いだろ」

 火起こしの返事に今度は俺も乗れる私も乗れると、得意気な幼い声が盛んに混じる。

 顔つきから30歳前後で火起こしと同じ年代だろう。
しかし場に飛び交うオオシカに乗れるという声につまみ出され、次第にナギタは立つ瀬がなくなる。

「ちっ、どいつもこいつもオオシカ乗れるぐらいでいい気になってよ。そんなにオオシカに
乗れんのが偉いのかよ」
「おいおいナギタ。そんなことでいちいち拗ねんなよ」
「拗ねてねーよ!!!」

 火起こしとナギタ。
2人がやりあうたびに笑いや冷やかしの声で広場が盛り上がる。

―― ちょっとうわーって思ったけど、なんだかんだでみんな仲いいみたいだな。

 心の中で安堵の声が漏れる。
そしてうぱ太郎の思ったことを裏付けるように、トリノがくるりと振り返り2人に向かって叫ぶ。

「ナギタも火起こしも頭悪いなあ。もう忘れたの? オオシカじゃなくてウーマっ!!!」
「「……いいだろ別にオオシカで」」
「ウマっ!!!」
「「……はいはい。わかったわかった」」

 幼い子供には敵わないとでも言いたげに、火起こしとナギタ2人揃って肩をすくめた。

―― この村でうまくやっていけるのかな? ……僕。

 まるで奇妙な者たちの姿など目に入らないかのように、何も変わらない朝日の中、朗らかな数々の
笑い声が、いつまでも広場に響いた。

282名無しさん@避難中:2012/11/14(水) 23:34:58 ID:2CpOGd/.0
今日はここまで。

283278:2012/11/14(水) 23:35:48 ID:2CpOGd/.0
以上、よろしくお願いします!

284名無しさん@避難中:2012/11/15(木) 00:15:13 ID:nDE139ws0
代行します

285名無しさん@避難中:2012/11/15(木) 00:18:13 ID:nDE139ws0
終了

286278:2012/11/15(木) 00:26:06 ID:FlF4rBmU0
>>285
確認しました。ありがとうございます!

287名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 19:45:49 ID:qIVrXFJM0
代行という訳じゃないんだけど投下の支援してくれる人居るかい?

288名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:01:58 ID:mHkeOOQY0
何時から?

289名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:14:20 ID:qIVrXFJM0
キター!!!
投下準備はもう出来てる。あと一人いないと代行をお願いすることになりそうだけど。ちなみにマッ缶スレ。

【魔王】ハルトシュラーで創作発表するスレ 3作目
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283782080/

290名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:17:37 ID:qIVrXFJM0
>>288
ふと思ったけど人少ないし、連投に引っかかるまで投下してから続きの代行をお願いしてもよろしいか?

291名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:26:52 ID:mHkeOOQY0
あいよー

292名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:41:17 ID:qIVrXFJM0
連投キター……。以下からお願いします。名前欄は代行と分かればいいです。

293名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:41:36 ID:qIVrXFJM0
 裏刀のその言葉を最後に、二人の会話は途切れた。
 部屋の中には、ペンが紙を引っ掻く音だけが響いて、その中に時計の音が混じっていた。時折、どちらかが飲み物を飲むと、それらがかき消された。
 昼を回る頃合いで、朝から作業していたのでペンでの作業は終わりそうだった。

 倉刀が向い合せの裏刀にちらりと目をやると、眼差しは真剣で、目つきが鋭いと思っていたが今はもっと鋭く感じた。作業台に向かってずっと斜め下を向いているせいか、ずれた眼鏡を時折手で上げる動作をして、無言で筆を走らせている。
 自分が童顔と言われがちなほうだったが、相方はずいぶんと違う物だな、と見ていたら、つい手が止まっていた。

「……なに見てんだよ」

 裏刀が顏を上げて倉刀を見た。

「あのさぁ……お前その座り方やめてくんね?」

 うんざりした顏で言われて、倉刀は「は?」と間抜けな顔で裏刀を見返して、次いで自分の座り方を自覚した。

「なんでアヒル座りなんだよお前」
「仕方ないだろ。無意識にやってしまうんだ。正座だと脚がしびれるし」
「胡坐でいいだろ」
「それだとパンツが見えてしまうだろ」
「うわ気持ち悪っ!」
「仕方ないだろ!」
「さっさと元に戻してもらえよ」
「出来るならそうしてもらいたいよ……」

 また裏刀がうんざりした顔をして、作業を再開した。
 倉刀が男性→女性への変身をさせられた当初こそ裏刀は大笑いしていたが、最近はこの調子であからさまに嫌な表情を見せるようになってきて、倉刀自身もその反応が嫌になっていた。
 今朝のやり取りでハルトシュラーが見た目の感想を裏刀に聞いてみろと言っていたのを思い出したが、この調子だと聞けるはずがない。見るだけでため息をつかれるのだ。
 何しろ見た目は完全に女性なのだ。元から童顔の顏はいい具合に幼げを残した顏で、声も体つきも言うに及ばず、最近は仕草までそうなって来た。頭の中身も徐々に変化しているのだろう。
 どこかの偉い哲学者が精神など肉体のおもちゃに過ぎないと言っていたが、倉刀は今それを身を持って感じていて、哲学者の発言の前後を失念していたのでその言葉の本来の意味はよく分からなかったが、必要でも無かった。
 それが目につくのか、裏刀は非常に嫌そうな顔をする。

「マジで見た目で腹が立つって、ほんとにあるんだな」

 と言われ、一瞬だけカチンとなるが、なんとなく納得した。
 正座に座り直した倉刀は無言で作業を再開するが、今度は裏刀がちらちら見てくるので、今度は倉刀から問いかけた。

「なに?」
「なぁ、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだよ」
「お前、その姿でずっと生活してる訳だよな?」
「そうだよ」
「当然、風呂とかにも入るんだよな」
「あー嫌だもう喋りたくない。何聞かれるか予想つくからもう嫌」
「だよなぁ」
「どうせ、自分を隅々まで確認したか、とかそういう事だろ」
「そうだ」

294名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:42:33 ID:qIVrXFJM0
「……しないと思う?」
「そーだよなぁ」
「へ、変な事はしてないぞ!」
「聞いてねーよそこは黙ってろ」
「聞きたそうな顔してんだもん」
「聞きたくねーしそんな顏もしてない」
「ほんとかよ」
「……。実は一個だけ確認したい事はある」
「言ってみろ」
「……いいのか?」
「今更だろ」
「よし、お前、童貞だろ」
「余計なお世話だ」
「いやここ重要だから。お前は童貞だ。まだ何も知らんお子様だ」
「うっさいわ」
「そこで問題なのだが、未経験のお前が、今は野郎から女に変身させられてる訳だ」
「あー分かった何言いたいのか分かったなんか分かんないけどすげー聞きたくない」
「今のお前って……処女、なのか?」

 倉刀は答えに窮した。なにしろ答えようがなかったから。予想ではその通りなのだが確かめる術は某鶏が大激怒な展開しかないし、倉刀の頭の中身はまだ男のままなのでやろうとも思わない。
 が、実は倉刀自身も微妙に気になる所であった。

「考察するに……」
「するに?」
「多分その通りだ」
「……そうか」
「なんだよその目。こっち見んな」
「そうか、お前、処女なのか……」
「どうしたんだよ、なんかおかしいぞお前……」
「目の前に処女が居る」
「え、ちょっと何する気だ変なコト考えてるんじゃ」
「……ぅおぇええええええええええ! 気持ち悪ぅううううううううううう!! ゲロゲロォオォオオオ! うおぇああ!! びちゃびちゃびちゃ!」
「えっそれはそれで結構酷くね?」

295名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:42:59 ID:qIVrXFJM0
 
 





       ※






「珍しいね」
「何がだ?」
「ばっちゃんが散歩行こうなんて言うの」
「そうでもないさ」

 ハルトシュラーが美作と並んで歩いていた。
 見上げると、空が赤くなっていて、遥か向こうは闇が迫っていた。寒くなると夜が来るのが早くなる。時間軸も気候もデタラメな世界の狭間だったが、夕方と思えば夕方になる。いや、夕方という場面を望めば、この世界はそれに応えてくれるのだ。

「どこに行くの?」
「さぁな。脚が赴くままに、だ」

 日が落ちて、すっかり気温も下がってくる。
 ハルトシュラーも美作も厚手の冬着になっている。本格的な冬になれば、この世界にも雪が降るかもしれない。

「さて、この辺りかな?」

 ハルトシュラーが歩を止めた。

「どうしたのさこんな往来の途中で」
「まぁ見ていろ」

 ハルトシュラーは先に続く道を眺めていた。
 向こうから人影が近づいてくる。薄暗いので見えづらいが、寒そうに歩いてくる姿はよく知る人物で、向こうから先にハルトシュラーの存在に気づいた。

「師匠」
「ご苦労だったな」

 倉刀だった。今朝受け取った黒いニーハイを履いていたが、スカートの隙間から僅かに覗く太ももが外気にさらされて寒そうだった。

「どうしたんです?」
「出迎え」
「誰の?」
「もちろんお前だ」

296名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:43:18 ID:qIVrXFJM0

 ハルトシュラーは腕組みして倉刀を見上げ、倉刀は両腕で自分の身体を抱えて寒そうにハルトシュラーを見下ろした。
 胸には大きな茶封筒が抱えられていて、どうやら裏刀と二人で行う作業は終わったようだ。

「どうだ? 一日外で働いた気分は?」
「実際には裏刀の家にこもってましたけど」
「もう少し防寒を考えた服を用意せねばならんな」
「ぜひお願いします」
「楽しかったか?」
「いえ全く」
「ふふ。だから、そういう所がつまらんのだ、お前は」
「知ってます」
「だがそういう頑固な所は嫌いではないぞ?」
「そうですか」

 ハルトシュラーは小さな手を差し出した。手を取れと言っている。倉刀はその手を掴んで、ハルトシュラーはずいぶんと冷たい手だな、と一言漏らした。

「さぁ帰るぞ。腹が減った」
「はい」
「夕食は美作に作らせる」
「やめてください死人が出ます」
「死ぬのはお前だけだ」
「もっと嫌です」
「ばっちゃーん私も手つなぐー!」
「む?」

 倉刀の手を引くハルトシュラーを見ていた美作が、残る手を掴んで引っ張った。

「こら引っ張るな」
「早く帰ろ!」
「痛いぞこら! 倉刀なんか言ってやれ!」
「ところで師匠、帰ったら男に戻してくれますか?」
「ダメに決まっている」
「ですよね」

 美作に引っ張られながら、倉刀を引っ張るハルトシュラーは二人の間に挟まれて、三人でおしゃべりしながら帰路に着く。
 帰っても倉刀には雑用が待っている。原稿の仕上作業もある。それが済んで明日の朝になれば、また朝食の準備をするだろう。








     ※

297名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:43:36 ID:qIVrXFJM0






「そこに直れ眼鏡野郎」
「なに怒ってんだよ」
「あぁ?」
「はい座ります。すぐ正座します」

 目の前に立つ鬼の形相の人物は裏刀を震え上がらせるには十分すぎる殺気を纏って、仁王立ちして裏刀に凄みを効かせる。
 足元にビニール袋が置いてあって、中身はジャガイモや豚バラや玉ねぎにニンジン。カレーの材料だろうか。

「よし、貴様に説明する機会を与えよう。せいぜい言い訳するがよい」
「なんの話だよ」
「お黙り」
「さっき説明する機会がどうのって……」
「やかましい」

 なんか分からないがものすごく怒っている。
 今朝、電話で話していた時はこちらの身を心配していてくれたが、今は逆に身の危険を感じて、裏刀は何があったのかとあれこれ考えていた。

「……来なきゃよかった」
「なんで」
「うん、いいの。私来たら困るもんねそりゃそうだよね」
「おいどうした」
「ああ、こんなコトなら家で死んだ姉さん見守ってればよかった。置手紙までしてきたのに」
「死んだ……?」
「ええそうよ。今朝起きてたら姉さん死んでたの」
「お前それなんで言わないの!?」
「言う必要ある?」
「いやいやいや、あるだろ!」
「いいのよ今頃生き返って普通にごろごろしてるだろうし」
「生き返って……!?」
「ええ。あら言ってなかったっけ?」
「ああ、どういう事だか」
「まぁ説明してあげてもいいけど。でも必要ないかな。あなたにはもう関係ないかもしれないもの」
「なくはないだろ」
「じゃ、あなたからお先にどうぞ。存分に取り繕え」
「なんの話だよ」
「ふーん」

298名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:44:17 ID:qIVrXFJM0
 仁王立ちしていた彼女は正座した裏刀の前にしゃがみこんで、顔面を掴んで顏を自分に向けさせ、睨みつけた。
 あ、鬼がいる。
 それが裏刀の素直な感想だった。

「言いたくないなら私が言おうか? いいの?」
「だから何があった!?」
「私が来たのはついさっきだったけど、実はけっこう前から家の前に居たのよ」
「え?」
「だってさ、邪魔したくなかったから。夕方くらい、とは言ってたけど、何時に、とは言わなかったから、つい早く来ちゃって。暗くなり始めの頃には玄関の前に居たりした」
「電話すりゃよかったろ」
「だから邪魔したくなかったの。で、そしたら玄関の向こうで誰かが靴を履いてる音がして」
「音がして?」
「どう考えてもあなたじゃなかった。勘だけど。でもなんかこれはあなたじゃない、って感覚で分かった」
「それで?」
「思わず隠れた。そしたら出てきたの。ええ。フリルの付いたスカート履く黒いニーハイが似合うかわいい女の子が出てきたわ」
「……それかよ」
「なんだその顔はコラ」
「いろいろと凄まじい誤解があるが」
「ふーん。まだ弁明出来ると思ってる?」
「いや、お前が考えている事は解る、だけど、それは間違いだ」
「いやあんな子居たんだね。ええ、おっぱいが上の下くらいの感じで。下の下で悪かったな」
「何言ってんだ」
「前もアンタそんなDVD持ってたな。そんなに無い物を求めるか」
「そこはほっとけ」
「うんうん。夕方にあの子追い出して、そっから来いって事だったんだよね」
「違う。原稿の目途が付いたからだ」
「あらその原稿はどこ?」
「持ってったよ。その黒のニーハイが」
「証拠がないじゃない。ほんとに作画してたの?」
「そうだよ」
「じゃ、あの子誰?」
「倉刀だよ」
「は?」
「だから、あれ倉刀だ」
「……言うに事欠いてそれ? もっとマシな言い訳思いつかない?」
「いやマジだから。知らないの? 今のアイツが変なコトになってるって」
「人を舐めるのもいい加減にしてよ。今こうして怒られてるだけマシと思わない? 別にそのまま帰って二度と連絡しなくても私良かったけど」
「だから誤解だって」
「もういい」

 彼女は裏刀の顏を離して、すっと立ち上がる。
 先ほどまでの鬼の形相はすっかり消え失せ遠くを眺めていたが、その無表情ぶりがさらに怖くて、裏刀は座ったまま後ずさりした。どこからともなく黒い刀が現れて、彼女の手に握られる。

「おいおい何する気だ」
「決まってるじゃない」

 無表情から一転し、彼女はニッコリと素敵な笑顔を浮かべてみせた。

「斬り落とす」










 おわり

299名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:44:37 ID:qIVrXFJM0
↑以上です。お願いします。

300名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:49:13 ID:mHkeOOQY0
誤爆したよ!
了解

301名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 20:58:47 ID:mHkeOOQY0
終了

302名無しさん@避難中:2012/11/19(月) 21:00:04 ID:qIVrXFJM0
確認しました。ありがとう。

303名無しさん@避難中:2013/02/22(金) 14:28:07 ID:Q7gH32Yg0
【依頼に関してのコメントなど】初めてこのスレを利用いたします。お願いします。
 連投規制に引っかかってしまいまして……>>42の続きと終わりのメッセージです。
【スレ名】自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第75章
【URL】ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361022572/l50
【名前欄】そらのいくさ
【メール欄】sage
【本文】↓
「なるほど――小麦の量が減っていますね」
「今は、何処もかしこも戦争でね。むしろお宅の国の常識はずれの注文の量に担当者が即答したほどでして……お聞きしますが、日本国なる国の人口は?」
「前も言ったはずですが、約1億2千万人です」
「いえ、ですからそのような誇張ではなく」
「ですから、誇張ではなく、うちの国は約1億2千万人の人口がいるんですよ」
「……聞きますが、それ、本当に自由民の数ですか? 奴隷とかは数えてませんよね?」
「我が国にそのようなくくりはありません。ありていに言えば国民は全員、市民権を有した立派な自由民だけで構成された国家です」
警官の一人、谷垣はそう怒ったように口を開く。
奴隷のあたりに反論したい気持ちが抑えられなかったのかそれとも純粋に怒っていたのか。
「……ではお聞きしますが、これだけの食料を要求とはどういうことでしょうか? はっきりいって何故自活できないのか……まるで理解が出来ません。それだけの人口があり、自由民? 御伽噺だ」
「あなた方のその懸念も分かります。ですが、人口の話は事実だ。実のところ、自活しようと思えば出来なくはないのです。ただし、それでも1億2千万人全員を養うことは出来ない。かつて、うちのくには増え続ける人口を自活できる範囲に収めようと海外に人を捨ててきたことがあるくらいです」
「捨ててはいない、移民だ、岡部」
「はいはい。とにかくうちの国はそういう国で、今じゃ貿易することで手に入れた金銀財宝で各国の食料を買い捲るってやり方で1億2千万人を養っているんです。というわけで、よほど足元を見た値段じゃない限り払いますから、何とかなりませんか?」
「……事情は一応分かりましたが、無理ですな。そもそも、今は各国何処も戦争でして……むしろあなた方を無駄飯ぐらいとして批判なさる貴族様がたの所領から買い付けるのは……その大変な……手間を必要としまして」
岡部は頭を抱えたい気持ちになる。
(何で、俺ばかり頭を抱えねばならんのだ!)
「まぁ、まぁ、双方疲れたでしょうから、会食などいかがですかな?」
領主の声で商談は一時終了となった。

商談相手の商会の商人は日本側の備品に注目していた。
岡部がしきりに利用していたボールペンや鉛筆。そしてメモ帳。
どれもこれも非常に便利そうで、見たことがない。



終わりです。第1章やたらなげー
そして、リメイク前の無条件降伏演説につながる過程とかを第2章では予定したり……
なんだこの大長編。
最近、なろうとかそう言う場所に進出することを考えてたり……
規制とか…ありますから

そして、石動さんや前スレの新作など、楽しみにしてます。

304名無しさん@避難中:2013/02/22(金) 14:28:44 ID:Q7gH32Yg0
どなたかおりましたらよろしくお願いします。

305名無しさん@避難中:2013/02/22(金) 19:40:42 ID:S.sg9Hio0
いってきます?

306名無しさん@避難中:2013/02/22(金) 19:44:36 ID:S.sg9Hio0
いってきました?

行が長すぎるとエラーが出たので一部改行させていただきました
ご確認ください

307303:2013/02/22(金) 21:12:58 ID:dTxObhK.0
確認しました、ありがとうございます。
エラーが出ましたか……以後気を付けさせていただきます。
今回はありがとうございました。

308名無しさん@避難中:2013/05/01(水) 22:47:15 ID:Ve5iaDRk0
【依頼に関してのコメントなど】
作品投下でなく、駄レスなので・・・
もしもお暇な慈悲深い方がいらっしゃったらで良いです

【スレ名】
都道府県擬人化スレ その3
【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1362583470/
【名前欄】

【メール欄】
sage
【本文】↓
>>28乙です! 相変わらず仕事早いw

世界“文化”遺産なんだね
世界自然遺産だと思ってた・・・どういうわけなんだろう? 日本人の富士山信仰?

しぞーかとなっちゃんで盛り上げていってほしい!
なにげにこの二人の組み合わせが好きなんだよねw

なっちゃん → 張り合おうとアピール必死w お姉さんキャラ演出するもおっちょこちょい
しぞーか  → 頓着せず、でもなっちゃんに優しい。天然ボケなおっとり癒し系

こんなイメージ。そういや、萌えキャラ「ふじタン」はどーした!? 
いつ仕事するか? 今でしょ!!w

309名無しさん@避難中:2013/05/01(水) 22:51:53 ID:grePhgxg0
いてくる

310名無しさん@避難中:2013/05/01(水) 22:52:37 ID:grePhgxg0
いてきた

311名無しさん@避難中:2013/05/01(水) 23:01:10 ID:Ve5iaDRk0
ありがとうございます!
ていうか、こんなくだらないレスでお手をわずらわせて申し訳なかったです
すみませんでした

312名無しさん@避難中:2013/05/05(日) 00:12:16 ID:Dh51y1.o0
紀勢食らってた。おねがいしますー


【スレ名】
都道府県擬人化スレ その3
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1362583470/
【メール欄】
sage
【本文】↓

甲駿が沸き立つ一方かなこは鎌倉が却下されてぐぬぬってなってる・・・のかしら。

>>31
なにげにお茶生産量ランキングになってるっていう。
しかしかごしまのAAは浮いてるなぁw


村上駅に実際にあるらしいですわ。
ttp://download4.getuploader.com/g/sousaku_2/399/0505.jpg

313名無しさん@避難中:2013/05/05(日) 04:03:18 ID:VsmmnKd.0
いてきた

314名無しさん@避難中:2013/05/06(月) 00:32:43 ID:I64Q9f1Q0
ありがとー

315名無しさん@避難中:2013/05/06(月) 04:25:42 ID:Wu/u5MFs0
【依頼に関してのコメントなど】
またも駄レスです スレの賑やかしとして……

age sage については、ようわかりません
お暇で慈悲深いブッダのような方がいらしたら……
単レスなので、無視でも全然OKです

【スレ名】
【没ネタ】未完成作品の墓場【殴りがき】 Part2

【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1282057444/
【名前欄】

【メール欄】
あえて空欄で!

【本文】↓
>>142
二次創作……?
と思ったけど、とりまググってもそれらしいものは見当たらない
オリジナル作品かな?


文章は読みやすい、キャラ構成もなかなかにそそるものがあった
続きを書いてくれたらいいのに!

316名無しさん@避難中:2013/05/06(月) 09:21:04 ID:RZReMwC60
いてきた

317名無しさん@避難中:2013/05/06(月) 11:52:47 ID:Wu/u5MFs0
ありがとうございます!

318名無しさん@避難中:2013/05/11(土) 03:50:05 ID:A58XTj.Y0
NGワードが出たんで、テスト
クリスマス

319名無しさん@避難中:2013/05/16(木) 00:57:42 ID:x53oUoWM0
【依頼に関してのコメントなど】
ホントくだらないんで、もしお暇かつ心の広い方がいらっしゃれば……

【スレ名】
【没ネタ】未完成作品の墓場【殴りがき】 Part2

【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1282057444/l50

【名前欄】
(無しで)

【メール欄】
代行して下さる方にお任せします。

【本文】
昔の児童用特撮本みたいにしようと思ったんだけど、そういう塗り方時間かかるし、
グズグズしてたら完全に時宜を逃してしまったので没に。
http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/421/rks.jpg
オレ純粋な絵そのもののセンスや技術は酷いもんだから、 この手のネタで時宜外しちゃうとどーしようもないわけよ。

上のと一連として一緒に投下しようと考えてたもの。
今回の投下のためにわざわざ描いた。没ネタの描きかけのために新しく描きかけを描く俺。なにをやっているのか。
http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/422/rkss.jpg

320名無しさん@避難中:2013/05/16(木) 22:40:18 ID:Ggfs0cg60
いってくる

321名無しさん@避難中:2013/05/16(木) 22:41:30 ID:Ggfs0cg60
いってきた

322319:2013/05/17(金) 23:04:35 ID:Aimo8SxU0
>>321
昨日パソコン使えなかったんで反応が遅れてしまいましたが、
どうもありがとうございました。

323名無しさん@避難中:2013/06/23(日) 23:13:53 ID:NwOgEjwc0
【依頼に関してのコメントなど】
下らないコメントなのでお暇なときにおねがいします

【スレ名】
都道府県擬人化スレ その3
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1362583470/

【本文】
やまなっちゃんktkr
ひょごさんと同じソフトですよね?
薄さが際立つな……(キリッ)

324名無しさん@避難中:2013/06/24(月) 00:02:48 ID:rMldLsrA0
いってきました

325名無しさん@避難中:2013/06/24(月) 01:04:11 ID:gbUx5ROQ0
ありがとうございました!

326名無しさん@避難中:2013/06/24(月) 21:53:48 ID:iLL7Azhs0
【スレ名】薔薇乙女の奇妙な冒険6
【URL】http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361187395/
【名前欄】1
【メール欄】sage
【本文】
規制にあったので、容量も残っていますが避難所にて7スレ目を始めます。

薔薇乙女の奇妙な冒険7 - 創作発表板 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1372078084/

327名無しさん@避難中:2013/06/24(月) 21:56:12 ID:rMldLsrA0
行ってきました

328名無しさん@避難中:2013/06/24(月) 21:58:21 ID:iLL7Azhs0
>>327 ありがとうございます 助かりました

329名無しさん@避難中:2013/07/31(水) 17:29:31 ID:NWqrkxdI0
【依頼に関してのコメントなど】
くだらないネタ投下なので、お暇な方お願いします……

【スレ名】
【天候擬人化】にっしょくたん 2スレ目

【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1307723856/

【名前欄】
(空欄でお願いします)

【メール欄】
代行して下さる方にお任せします

【本文】↓

遅ればせながら

にっしょく「はやいものでもうよんしゅうねんなのです」
いかづち「ああ、めでたいな」
ダイヤ「めでたいですわね」
たいふう「記念に台風でも起こそうかしら、くすくす」
いかづち「ああ、良いんじゃねぇ?」
にっしょく「はやいうちからつっこみをほうきしないでください」
たいふう「何かあったの?」
いかづち「いや……折角四周年なのに、こうやって駄弁ってるだけってどうなんだよ」
ダイヤ「まあ、確かにそれは同感ですわ」
にっしょく「しんぱいはごむようなのです、ふたりとも。
      よんしゅうねんようにすぺしゃるなはなびをよういしているのです」
たいふう「スペシャルな花火?」
にっしょく「はい、もうすぐあがるはずなのです」

 ひゅるるるるる どーん!

いかづち「おお、あがった!綺麗だな」
ダイヤ「四周年おめでとう、ですか……。とても細かくて綺麗ですわね」
たいふう「どうやってこんな作るのが難しい花火を用意したの?」
にっしょく「それはきぎょうひみつです。それではみなさん、こえをそろえて」

『にっしょくたん 四周年おめでとう!』



ダイヤ「……で、さっきから隅で何をこそこそしてるのですか」
しんきろう「きゃああ、ダイヤが私に話しかけてくれるなんて……♪ガン無視でも冷たくてよかったんだけど……」
ダイヤ「ガン無視の方が良かったかしら」
しんきろう「ああちょっと待ってー。細かい花火は無理があったから、わたしに幻をお願いするってにっしょくちゃんが」
ダイヤ「ああ、そういう事……」
しんきろう「あ、そうだダイヤ、北極のあたりからお土産買ってきたよ!」
ダイヤ「ただの氷じゃないのよ!?ああもう、どっかいっときなさい!」

330名無しさん@避難中:2013/07/31(水) 22:19:33 ID:i0TKZUi.0
いってきました

331名無しさん@避難中:2013/07/31(水) 23:09:19 ID:NWqrkxdI0
>>330
確認しました!ありがとうございます。

332名無しさん@避難中:2013/08/04(日) 21:04:47 ID:3TaaoP.A0
【依頼に関してのコメントなど】
帰省中なので、お手数ですがお願いします。急ぎません
【スレ名】
都道府県擬人化スレ その3
【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1362583470/
【名前欄】
(なし)
【メール欄】
sage
【本文】↓
>>51
いつもGJですー
8月3日は二の丑だったようですね。近所のスーパーにも、またもや鰻蒲焼(国産と中国産)が並んでた
代用品として、穴子(←まあ許せる)、秋刀魚(←えっ!?)、イワシ(←ええええ!!?)の蒲焼もラインナップ!
そこまでして食べるもの・・・? 

まあ、時季のものや習わしのものを食べる、てのは重要ですよ、文化として。
でも・・・「う」が付けばなんでもいいんだ、ってみんな知らないんじゃね?

で、ブレない彼の国w
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/economy/20130731000122

333名無しさん@避難中:2013/08/07(水) 19:34:01 ID:1tweTVkc0
>>332

代行いきましたー
依頼時はageでお願いします! 気づかないのでw

334わんこ ◆TC02kfS2Q2:2013/08/14(水) 21:12:29 ID:K4xwHQik0
【依頼に関してのコメントなど】
本スレの賑やかしにと思ったら規制中でした。
SSなのでレスが跨りますが、よろしゅうお願いします。
【スレ名】
獣人総合スレ 11もふもふ
【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1352420647/l50
【名前欄】
わんこ ◇TC02kfS2Q2
【メール欄】
ageでお願いします。
【本文】
(次レスからです。)

335わんこ ◆TC02kfS2Q2:2013/08/14(水) 21:13:29 ID:K4xwHQik0

 『夏期限定・芹沢定食〜やくそくのプール〜』


 姉妹の神様が舞い降りた。
 二人の偶然を弄んでくすくす笑う。

 「なんでねーちゃん、明日プール行くんだよ!」
 「タスクこそどうして被せるの?」
 「知らないし!」

 夏休みのとある日。タスクは友人たちと、そしてモエも友人たちと同じプールに行く約束をしていた。
それが発覚したのは前日の夜だった。お互い友人との約束なのでこちらのわがままが通らない。
 お互い一緒にお風呂にも入ら無くなってしまったお年頃、たまーにモエが女子を忘れて湯上がり姿をタスクに晒す程度はあるもの、
やはりなんだか水着姿は気恥ずかしい。モエはタスクに女子っぽい部分を見せるぐらいならげんこの一発をお見舞いしたいくらいだった。
 男子中学生も女子高生もお互いを理解することは粗悪品のジグソーパズルのように合わせるように難しい。

 「新しい水着、タスクに見せるのもったいないし!」
 「誰得だよ!」

 フリルの付いた空色のビキニ。自慢したいのはやまやま、(賛否はあろうが)せくしー姿で身内とともに過ごしたくはないし
モエはとりあえず無防備なタスクの腹をくすぐった。

 「そうだ。勝負しよう、明日」
 「はぁ?なにで」
 「25メートル自由型、どっちが速いか」
 「ばかじゃないの?」

 提案を一蹴されたタスクは折れずに続けた。

 「約束しただろ?またいつか勝負だって。ぼくがボロ負けしたから覚えてるんだけど、まさか忘れたとか?」
 「ってか、記憶の片隅にもない。いつ?」
 「7年前」
 「ばかじゃないの?」
 「逃げる気だ」
 「新しいビキニのデビューなんだよ?なに?ガール度マジ高い水着でガチ泳ぎさせる気?」

 そんな小さい頃の口約束など覚えちゃいない。もっともな話だ。タスクにそんな正論振りかざしても聞き入れる余裕はない。
そして、最後には……特に記さなくてもお分かりだろう。タスクが頭を押さえながら涙目で悔しがっている姿を見れば。

 タスクが寝床でじたばたと脚をばたつかせている頃、モエは買ったばかりの水着をベッドの上に並べてたたずんでいた。
 出来ればいつか出会うだろう素敵な彼に見せたかった。だけど、今はお生憎さまだから、きっと明日プールで運命の出会いが
訪れるかもと望みを新しい水着に乗せて託そうか。明日は早い。夜更けは速く時が経つ。

 当日は突き抜けるぐらい空は青かった。
 じりじりと照り付けて来る太陽がプールを促すのでタスクは勢いよく更衣室から飛び出した。
 姉とはまだ出会ってはいない。時間差で家を出たので、朝ごはん以来姿を見ない。しばらく姉のことを忘れて友人たちと
クロール勝負でも挑もうかと息巻くが、ちらちらと姉と近い年の娘をみるたびにびくついていた。

 「タスク、あっちの岸まで勝負だ!」
 「悪いね。アキラとの勝負もらったよ」

 プールのふちで拳を突き上げ、早くも勝った気になったタスク。勝てるかどうかは五分五分だけど威勢だけは負ける気はしない。
だが、敵もさるものタスクの勢いを塗りかえるぐらいの気合いでアキラは雄叫びを上げた。

336わんこ ◆TC02kfS2Q2:2013/08/14(水) 21:14:17 ID:K4xwHQik0

 「負けたらアイスおごりな」
 「マジ?賭けるの?」
 「あたりめーだろ?タスク、ビビってる!」
 「タスク、勝負だよ」
 「び、ビビってなんかねーよ!」
 「勝負なさいよ。ヘタレタスク」

 背中を足で突き飛ばされた感覚を残しタスクはプールに大の字になって吸い込まれた。そして水しぶき。もがいて、
もがいてあっけに取られた顔をして、体勢を立て直すとアキラの名を呼んだ。しかし、アキラこそあっけに取られた顔をしている不思議。
 プールサイドにはタスクを蹴り落とした張本人が腕を腰に当てて太陽を背に立っていた。流れ落ちる水滴を拭い視界が
はっきりしてきたタスクが見たもの。つややかに、はち切れそうに、紺碧なるスクール水着に身を包んだ姉の姿だった。

 「……なに、その罰ゲーム」
 「アキラくんと勝負しないんだったら、わたしと勝負!あっちの岸まで、負けたらアイス奢り!!」
 「冗談は水着と胸のサイズだけにしてくれよ!」
 「タスクと……タスクと勝負するから泳ぎやすいヤツ着てきたんだよ?好きで、好きで着てるんじゃないしー、
  もっとかわいいヤツ着てきたかったしー、タスクの為に着て……ってか、誤解するんじゃないよ!ばか!!」

 目を泳がせてモエはまくし立て、明らかに浮いた自分のスク水姿を弁護していた。
 モエの友人たちは華やかな水着姿を披露しているのに、タスクは早くこの場から立ち去りたい一方だ。

 「あっ!タスク!逃げるな!リオ!りんごちゃん!追いかけて!」
 「無理だし!」

 ばしゃばしゃと荒い泳ぎ方で逃走するタスクを捕獲しようとモエは両足で踏み切って勢いよくプールにダイビング。
太陽に重なる姉のスク水姿がシルエットになる奇跡のカット。振り向くとだんだんと姉の顔がはっきりくっきり見えてくる。

 「モエ!だ、大丈夫!?」
 
 リオやりんごが声を上げた頃にはモエはタスクを抜き去っていた。

 その日も姉弟の神様が舞い降りた。
 幼稚なケンカを眺めながら笑っているはずだ。

 「わたしの勝ちだよね?」
 「勝負なんかどうでもいいって」
 「逃げる気だ!タスクは」
 「いいよなぁ。りんごさんみたいな姉ちゃん欲しかったな」

 同じ格好で畳に大の字になって寝転びながら軽い罵りあいを続けていると、さすがに二人とも体力を無駄に消耗する。
それでもタスクとモエは言葉のアマガミを止めなかった。

 「ねーちゃん。また勝負だよ」
 「今度は?」
 「7年後」
 「ばかじゃないの?」

 モエの新しい水着が日の目を見るときをタスクちょっと楽しみに待った。


   おしまい。


 おまけ。モエちゃんに蹴飛ばされてもいいです!
 ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/543/moe_sukumizu.jpg

 投下おしまいです。

(↑ここまでです。よろしくお願いします)

337わんこ ◆TC02kfS2Q2:2013/08/19(月) 19:17:43 ID:RX4r74JQ0
解除きましたので、自分で貼って参りました。
お世話様になりました。

338名無しさん@避難中:2013/08/22(木) 11:22:52 ID:33HxMQjo0
【依頼に関してのコメントなど】お願いいたします
【スレ名】韓国料理は日本料理のように世界的人気になるか?108
【URL】 http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/korea/1376867587/
【名前欄】ワノルドン
【メール欄】sage
【本文】↓
>>36
釜山の緑町は明治45年1月の創業です。第二次世界大戦後玩月洞と
名称をかえて、いまも101年間続く老舗の伝統を守っています。
http://www.logsoku.com/r/21oversea/1191249649/

339名無しさん@避難中:2013/08/22(木) 15:42:47 ID:8D52uo.E0
ここは『創作発表板』のレス代行依頼です
他板の依頼は他でやって下さい

340名無しさん@避難中:2013/12/14(土) 16:21:27 ID:HvPMqQWY0
【依頼に関してのコメントなど】
よりによって「どのレスの次にレスするか?」が全てのスレに投下しようと描き上げたら
規制されてしまっていたのでどなたか代理お願いいたします。

【スレ名】
イラストでしりとりをするスレ2

【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1332176225/l50

【名前欄】
(無し)

【メール欄】
(無し)

【本文】↓
ルゴプス
http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/662/%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%97%E3%82%B9k.png

341名無しさん@避難中:2013/12/14(土) 16:41:58 ID:TQ5QDfDg0
行ってきました

342340:2013/12/14(土) 17:01:01 ID:HvPMqQWY0
>>341さん、どうもありがとうございました。

343340:2013/12/17(火) 03:46:49 ID:N9fI9zV60
【依頼に関してのコメントなど】
未だ規制中なので申し訳ありませんがまたしてもお願いいたします。

【スレ名】
イラストでしりとりをするスレ2

【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1332176225/l50

【名前欄】
(無し)

【メール欄】
(無し)

【本文】
ルーデル
http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/663/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%AB.png

どれもさっぱり似ない

344名無しさん@避難中:2013/12/17(火) 05:49:23 ID:xXXyPYpA0
行ってきました

345340:2013/12/17(火) 18:30:53 ID:N9fI9zV60
遅くなりましたが、>>344さんどうもありがとうございました。

346名無しさん@避難中:2013/12/30(月) 21:20:03 ID:.RcQZDjM0
【依頼に関してのコメントなど】
 すみません。最後の最後で、引っかかってしまったようです

【スレ名】
 【後書き】自作品の裏話を語るスレ【裏設定】

【URL】
 http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1282309219/

【名前欄】
 ◆BY8IRunOLE

【メール欄】
 sage

【本文】↓

元ネタは

1.最悪な出会い
2.いやなやつ
3.ターニングポイント
4.やっぱりいやなやつ
5.アイツと組まなきゃ駄目なんですか?
6.大会前夜
7.大会当日〜アイツの過去
8.大会当日〜絆が試されるとき
9.勝負は河原で
10.さよならなんかいうもんか。

となっていました
きっとスポーツ青春モノ?を想定していたのかも


それは12月にはやらないよ、とか
いろいろおかしなところはあると思うのですけど(取材・考証不足です)

より良い作品にしたいので、指摘頂けるととっても嬉しいです


では、また来年! 
彼女の旅は、まだまだ続きます!

347名無しさん@避難中:2013/12/30(月) 21:33:40 ID:1Q1fdx.s0
いってきました

348名無しさん@避難中:2013/12/30(月) 22:19:08 ID:.RcQZDjM0
>>347
ありがとうございました!

349名無しさん@避難中:2014/01/11(土) 19:55:01 ID:mDnDij/E0
【依頼に関してのコメントなど】
全部終わったと思ったら規制されてたんでどなたか暇な方お願いします。

【スレ名】
【塗り絵】線画丸投げスレ2【自作限定】

【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306046914/l50

【名前欄】
地獄のおしゃまさん

【メール欄】
(無し)

【本文】↓
>>166
トップレスがアウトになるなら胸修正するしかないじゃない!

http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/708/166%E6%B0%B4%E5%BD%A9%E9%87%8D%E3%81%AD.png

http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/709/166%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88%E9%87%8D%E3%81%AD.PNG
上の方が皮膚の透明感の表現は上だが下の方が描き込みにより表情を加えられる度合いと明るさの表現は上だ。
両者を統合することが今後の課題か。

http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/711/166%E6%B2%B9%E5%BD%A9.png
そーいやデジタルなら油彩の光と水彩の影を合わせられるんだなって気付けたのがエラい収穫。

350349続き:2014/01/11(土) 19:58:01 ID:mDnDij/E0
【依頼に関してのコメントなど】
URL貼り付け数制限にかかっちゃったんで>>349の本文に続けてこのレスの本文も一緒にお願いします。

【スレ名】
【塗り絵】線画丸投げスレ2【自作限定】

【URL】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306046914/l50

【名前欄】
地獄のおしゃまさん

【メール欄】
(無し)

【本文】↓
>>166
トップレスがアウトになるなら胸修正するしかないじゃない!

http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/712/166%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E5%A1%97%E3%82%8A%E9%87%8D%E3%81%AD.PNG
色の境目がぼけていないアニメ塗りしたかったんだけど難し過ぎて無理だった。

http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/713/166%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%BA.png
ザ・シンプソンズで「イッチー&スクラッチーショー(劇中のアニメ)が暴力的ということで規制されるんだけどそんな中ミケランジェロのダビデ像が……」って回が面白かった。
なんつーかセンスがスマートで無粋じゃない。

http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/714/166%E6%B7%A1%E8%89%B2%E6%B0%B4%E5%BD%A9.png
今日学んだこと:絶対的なインパクトを有するものが一つあると全部持ってかれる。

それにしてどれも顔がダメで脚がそこそこいい。やはり顔は「きれいに仕上げなくては」という意識を持ってしまって思い切りが悪くなるのがダメなのか。

ボクはなんでこんなに塗ったのでしょう 1〜3からえらびなさい

1.ヒトの皮膚の表現についていろいろ試してみたいと思っていたところに都合よく「練習に使って下さい」というちょうどいい線画があったから
2.デジタル着彩、特に下塗りの効果についていろいろ試してみたいと思っていたところに都合よく「練習に使って下さい」というちょうどいい線画があったから
3.思い付いた修正方法を全部描きたかったから

351名無しさん@避難中:2014/01/11(土) 21:34:48 ID:yvQn8C9.0
へい

352名無しさん@避難中:2014/01/11(土) 21:37:49 ID:yvQn8C9.0
いってきた

353>>349‐350:2014/01/11(土) 21:42:41 ID:mDnDij/E0
>>352さん、どうもありがとうございました。

354名無しさん@避難中:2014/04/10(木) 01:30:16 ID:0yhP8Wso0
ksks

355名無しさん@避難中:2014/06/30(月) 18:19:19 ID:cni7CTuAO
【依頼に関してのコメントなど】
一応告知しておきたいので よろしくお願いします…
【スレ名】
なんとかファイト フォーメーションC!!
【URL】
http://maguro.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1403014906/
【名前欄】
【メール欄】
age
【本文】↓
避難所にスレが立ちました

それでは!!!!!!!!!! なんとかファイト
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1403327104/

356名無しさん@避難中:2014/07/01(火) 00:10:10 ID:6mOuWti20
まだかな?
いってきます

357名無しさん@避難中:2014/07/01(火) 00:11:06 ID:6mOuWti20
行ってきました

358名無しさん@避難中:2014/07/01(火) 00:24:03 ID:thTCdi4MO
>>356-357
代行 どうもありがとうございました!!!!! m(__)m

359名無しさん@避難中:2014/11/30(日) 03:07:36 ID:surXBf4c0
【依頼に関してのコメントなど】
久しぶりに、調子にのって、連投規制に引っ掛かってしまいました。
遅い時間ですがどなたかよろしくお願いします。
【スレ名】
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第82章
【URL】
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1411893556/l50
【名前欄】
「そらのいくさ」リメイク外伝
【メール欄】sage
【本文】↓
規制に引っ掛かった為、次回は明日の夕方! たぶん!
もし投下が無かったら……
うーん、状況次第では、来週に分家あたりで続きをやろうかなーって感じになってると思います!

360名無しさん@避難中:2014/11/30(日) 19:24:42 ID:Gluwun1I0
ん?自己解決したのかな??

361名無しさん@避難中:2014/12/01(月) 01:02:48 ID:sTAy5SFs0
>>359-360
先ほど自己解決しました。報告が遅れてすいません。
お騒がせしました。

362わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/02/22(日) 19:46:50 ID:kQDpnfpk0
【依頼に関してのコメントなど】
連投ひっかかりました。ラストひとスレでした。
よろしくお願いします。
【スレ名】
『【シェアード】学園を創りませんか? 4時限目』
【URL】
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1356715113/
【名前欄】
わんこ ◆TC02kfS2Q
【メール欄】
age
【本文】↓



 高校の演劇部に萌えが必要かどうかはさておき、迫はネコミミを生やしていた。
 ついでというか、当然か、尻尾も立派に生やしていたことにも異論はない。
 迫先輩に萌えを添加した結果、舞台に彩りが添えられた。
 男の娘にヒーハーするもよし。
 恥じらう迫先輩をなぶるもよし。

 「じゃあ、撮影しますから、シーン01『探偵事務所にて』はじめっ」

 少年探偵に荵。そして子猫探しの依頼者は……男の娘・迫。
 携帯を二人に向けてあかねは合図を出す。やはり、演劇一筋の迫はパブロフの犬だった。



 「用件は手短に」
 「子猫を探してほしいんです」
 「特徴は?」
 「雪のように真っ白な子猫です。翡翠のような目をして……」
 「用件は手短に!」
 「昨日から居ないんです。お金はいくらでも支払いますから」



 動画撮影停止の電子音だけが響く。
 SDカードに迫の女装姿が納められた証拠だ。
 迫はスカートを抑えて太ももに感じる空気に遮ろうと恥らいつつも、演劇部部長として出来を気にしていた。

 長い沈黙が迫を羞恥プレイへと誘う。
 打ち破ったのはあかねだった。

 「やっぱり、前のパターンがいいですっ」
 「おい」


    おしまい。


アニメ化進行中です。うそです。
http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/923/nisina2015222.jpg

363名無しさん@避難中:2015/02/22(日) 19:54:45 ID:VkQoNFxY0
>>362
代理して来ました

364名無しさん@避難中:2015/02/22(日) 19:55:50 ID:ufPhExTw0
あ、ごめんなさい代行被ってしまった…

365わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/02/22(日) 19:59:25 ID:kQDpnfpk0
ありがとうございますっ

366名無しさん@避難中:2015/03/02(月) 08:28:18 ID:0aR7l1zc0
【依頼に関してのコメントなど】
専ブラ外しても何故かスレに書き込めない
どなたかお願いいたします
【スレ名】スレを立てるまでもない相談・雑談スレ34
【URL】http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361029197/
【名前欄】空白
【メール欄】sage
【本文】↓
>>956
日付が一つ7/27になってる
とりあえず反論もないし、告知テンプレはこれで決定?

367名無しさん@避難中:2015/03/04(水) 21:57:47 ID:Wipb2Fyg0
>>366
今、気付いた。
代行しました。

368名無しさん@避難中:2015/03/05(木) 19:29:52 ID:w.jEc8Rg0
ありがとうございました!

369名無しさん@避難中:2016/06/29(水) 18:20:42 ID:Zttje56g0
ksks

370アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/14(金) 07:44:26 ID:E0dbOopo0
【依頼に関してのコメントなど】急に規制に引っ掛かるようになってしまいました。以下2レスをどなかか代行お願いします。
【スレ名】【王道ファンタジー】ホワイトクロス騎士団【TRPG】
【URL】http://mao.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1492273663/l50
【名前欄】アレク ◆mhXMrsUqAc
【メール欄】sage
【本文】↓

371アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/14(金) 07:46:33 ID:E0dbOopo0
アストラという街に到着した一行。
まずは斥候が潜入し、体裁を整えるのための布地を手に入れる。
神官服のような真っ白な服装に着替えた面々が先導し、門番と交渉する。

>「ホワイトクロス騎士団の団長、シュヴィヤール公爵の娘、セレスティーヌ・ド・ラ・シュヴィヤールの代理として参った、
フィッチャー・レーガン副団長と申す。こちらは教会公認のデイドリーム、アレク。
この度はジャイプール帝国軍により攻撃を受けたレクトゥスの民を連れて参った。
どうか、アストラ教会の方にお目通し願いたい。それと、難民の者たちの受け入れ先を考えていただけるよう…」

「私からもお願いいたします」

アレクが羽根を出して見せると、門番は仕方なくといった感じで頷いた。

>「分かった。とりあえず入れてやるから、教会を頼れ。くれぐれも我々の監視の外には出すな。
領主様には話だけはつけておいてやる。後で教会に使いの者を出す。それで良いな」

「ありがとうございます!」

教会に行くと、亜人種らしき若い女神官が出迎えた。
そして、さらりと油断ならない事を言う。

>「おや、先ほどいらっしゃった方もお見えですね。我らは貴方がたを受け入れます。“プレシャス”
イオ・ポンフィールと申します。ここで司教代理をしています。とはいえ、実質代表のようなものですね。
“あの方”はしばらく戻らないでしょうから」

>「ホワイトクロス騎士団長の代理だ。話はもう聞いているな? では細かいことは省略する。俺は代表のフィッチャー。
レクトゥスという街が帝国に襲われて団長は行方不明、さらにこの通り難民が出た。
ホワイトクロス騎士団をそちらの教会の傘下に入れてもらいたい。それと、難民の保護も頼む」
>「そんな横柄な口の利き方をするなら、はじめから変装などしなければ良いんです」

「申し訳ございません、団長代理は神官出身ではなく現場からの叩き上げなのでこういう事に慣れてないだけなんです!」

>「どうやら、それなりの戦闘経験もおありのようですね。では、団員の皆様はこちらの上の宿舎をお使いください。
レクトゥスからの皆さんは暫くは礼拝堂で雑魚寝をしていただきますが、すぐにこの街の農民の皆さんに話をしておきますので、
明日にでも交渉のお手伝いをお願いします。あ、勿論ですが、今日は急なので食事は用意できませんよ。
水浴びぐらいなら、丁度教会の裏手に滝がありますので、そちらをお使いください。では、他の司祭たちが後は案内します」

372アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/14(金) 07:47:30 ID:E0dbOopo0
と、一瞬ヒヤリとしたが無事に部屋に通して貰える運びとなった。
部屋に入ると、フィッチャーが早速皆に問いかける。

>「おい、今の奴らはどうなんだ? お前ら。強そうなのか、信頼できそうか、だよ」

>「あの女は何人か殺してるね。間違いなく。とりあえず油断しちゃいけない相手なのは確かかな」

「ここにいて大丈夫なのでしょうか……」

本職の暗殺者であるペトラの見立てに続き、慎重なユニスが不安を口にする。

「まあ、少なくとも強いのは間違いないね。種族特性からいって挌闘系の神官戦士なんじゃないかな」

「信頼できそうかは――とりあえず今のところは大丈夫そう、かな? "あの方"がどんな奴なのかは気になるけど……」

続いてマーテルが強そうかの見立てを、アレクが信頼できそうかの見立てを行う。
往往にして、「あの方」とか「例のアイツ」とか言って名前を呼ばれない奴は、油断ならない奴である場合が多いのだ。
悪の司教に散々な目にあわされたばかりなので、いい方向に油断ならない奴であることを願うばかりである。

次の日、イオが、「客が来た」と一行を呼びに来る。
昨日門番が「後で教会に使いの者を出す」と言っていたので、おそらく領主の使いだろう。

【規制されてしまいました。
お手数ですが外部に避難所的な場所を新しく作るか既存の場所を指定かしていただけると大変助かります!】

373名無しさん@避難中:2017/07/14(金) 07:51:30 ID:E0dbOopo0
あげ

374アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/15(土) 19:20:53 ID:SnyfQDnc0
371-372 済

>フィッチャーさん
代行ありがとうございました!
以後も規制時はここを使う件了解です。お手数をおかけしますがよろしくお願いします。

375アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/18(火) 00:15:05 ID:JsyiXFFo0
【依頼に関してのコメントなど】以下2レスを代行お願いします。
【スレ名】【王道ファンタジー】ホワイトクロス騎士団【TRPG】
【URL】http://mao.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1492273663/l50
【名前欄】アレク ◆mhXMrsUqAc
【メール欄】sage
【本文】↓

376アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/18(火) 00:16:30 ID:JsyiXFFo0
他愛のない会話をしたり、フィッチャーが命知らずな発言をしてペトラに諌められたりしている時だった。
気付くと、驚愕と心配の混じったような目で全員がこちらに注目していた。

「何……? みんなしていきなりどうしたの?」

話によると、一瞬だけ灰色の石像のようになって動きが止まっていたという。
そして本人はそのことを認識していない。まるで時間が喰らわれたかのように。

>「―“時間蝕”というのを聞いたことがあるわ。何かの力で決まった対象の時間が奪われる。
今のはその一種じゃないかしら。デイドリームの全てにそれが適応されるようなことだとしたら…これは悪い予兆かもしれないわね」

《おお、世界の終末が近づいておるのじゃ……!》

と精霊王エントが騒いでいるが、彼も具体的なことは分からないらしい。
その後、情報取集に出かけたフィッチャーは、イオが竜人族とのハーフであること
イオが仕えているここの長がステッセルであることを仕入れてきた。

「ステッセル!? あの第一分隊の副長のステッセルか……?
……以前はまともだったのが何者かに唆されておかしくなったのかもしれないね」

何はともあれ、夜も更けたのでその日は床についた。

++++++++++++++++++++++++++++++

次の日、目覚めてみると、何故かフィッチャーがペトラとユニスに抱き着かれるような形になっていた。
暑苦しそうだなあ、と思ってみていると、司祭に起こされる。

>「おーい、イオ殿がお呼びだ、白十字の連中、さっさと起きてくれや」

眠たげに起き出した一行を、やはり眠たげなイオが迎える。

>「これより貴方がたには、町の南側の要塞建設と西側の農地開拓の手伝いをしてもらいます。
とりあえずは護衛が中心だと思ってください。結構きつい作業にはなると思いますが。
難民の方々には同時に西側に建設される住居に住んでもらいます。その代わり大変な作業にはなると思いますが」

言い渡された任務は、公共事業の手伝いであった。
確かに大変な作業ではあったが、アレクやユニス、マーテルの筋力強化の補助魔法が大活躍し、作業は滞りなく進む。
夕方遅くになって本日の作業を終え、滝に汗を流しに行く運びとなる。

>「まずは女どもが先に滝に行くらしい。お前ら、先に入っていっていいぞ。
多分アレクもそうだろ。ゆっくりしてこい。俺は寝てるから」

「お先にー」

ペトラ、ユニスと共に滝に向かうアレク。アレクがこちら側と一緒に来る事について特に異論を唱える者はいない。
何故なら外見的には中性的な少女――つまり身も蓋も無く言ってしまえば無乳の女である。
種族特性上天使に準えられるような整った外見をしているので、これはこれで一部の層には需要があるかもしれない。
老化が極端に遅いのをいい事に聖魔法少女のようなキャラ付けで通している者もいるとか。
ペトラがアレクに後ろから抱き着き、背中に飽満な胸を押しつけながら言う。

「アンタ、折角可愛い顔してるんだから聖術少女路線にイメチェンしてみたら?」

「えー、あはは、ワタシそういうキャラじゃないんで……」

折角のドキッ、女だらけの水浴びシーン! なのでついやってしまったが、誰得なんだろうか、このシーン。
話を逸らすかのように、マーテルのことを持ち出すアレク。

377アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/18(火) 00:17:24 ID:JsyiXFFo0
「それにしてもマーテルは来ないのかな?」

「さあね、大方フィッチャーのやつとよろしくやってるんじゃないかい?」

「えっ」

ニタリと笑って言うペトラに、ペトラはフィッチャーに惚れてこのパーティーに入ったんじゃないか?と一瞬混乱するアレク。

「ああ、ユニスには言うんじゃないよ、あの子は純粋そうだからね」

「えっ、もしかしてユニちゃんも!?」

なんというハーレムパーティーだ、と軽く戦慄しつつ、イメチェンはしないぞ、と改めて心に誓うアレク。
そんなことをしてフィッチャーが「これはこれで」と新たな路線に目覚めてしまったら目も当てられない。※目覚めません

「……でもさ、多分本命はセレスティーヌお嬢様だと思うよ」

「そんなことは百も承知さ。それでもね、惚れた男の役に立てるならいいのさ」

そんなものか、と思うアレクであった。
その後入れ替わりで男性陣も水浴びに行き、フィッチャーが帰ってくると、作戦会議が始まった。

>「で、まずはお前たちに話を聞きたい。特にアレク。
こいつらに話は聞いていると思うが、“時間蝕”ってのはどういう時に起こるんだ?」

>「“時間蝕”については、教会にいたから聞いたことはある。あたしはかじった程度だけどね。
“天使を媒体として行う”系の儀式があれば起こるとか、“終末”が近い予兆だとかね。
デルタが突然いなくなったのも不運すぎるというか、おかしな話だし。それに強そうなコボルト連中が死んだのもね」

「各地で時空のひずみが発生しているのかもしれない。
天変地異のようなものか、あるいは人為的な超大規模な儀式魔術の反動か……。
デルタが突然いなくなったのもそれで説明がつく。でもそうだとしたら希望はあるよ。
離れた場所で発見されたり暫くたってからひょっこり現れたりするかもしれないからね」

>「それから、レクトゥスのメンバーに娼婦の連中が紛れ込んでるが、あれをどうするか?
情報収集に利用した方がいいだろうか?」
>「娼婦に関しては、消してしまえば良いと思うけどねぇ。私が引き受けようか」
>「殺すぐらいなら農地で働かせるか、こっちに引き入れた方が良いと思うが。
俺はそのうちの一人とは知り合いだ」

余計な一言を言ってしまったフィッチャーを睨む皆をアレクがなだめる。

「まあまあ、うまく統制できれば情報収集には持ってこいだと思うな。
そういう時ってつい普段は喋らない秘密を話してしまうものらしいしね。よく分かんないけど」

>「なるほど、分かった。
どっちにせよ、セレスの位置を探るのが最優先だよな。お前はどう思う、アレク?」

「手掛かりがなければシュヴィヤール領があるヴィクサス神聖国に行ってみるのはどうだろう。
もしかしたら自分の領土に帰っているかもしれないしそうでなくとも何か情報がつかめるかもしれない。
ただ、敵勢力の本拠地に切り込むことになるから今まで以上に危険な旅になるかもしれない。
シュタインの奴もヴィクサス神聖国教会の支部司教だったしね……」

378アレク ◆mhXMrsUqAc:2017/07/20(木) 22:21:35 ID:4.qgTWCE0
>376-377
投下できたので代行不要です。お騒がせしました


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板