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∵ Three dot ∴

147 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:51:17 ID:9OubR0lk0
(´ ゚_ゝ゚ `)「あっ……が……」

ハハ#ロ -ロ)ハ「食わせ者ガ!!貴様は後でじっくり可愛がってやル!!」

(´ ゚_ゝ゚ `)「ぐぅ……!!」

ハハ#ロ -ロ)ハ「追うゾ!!」

⌒*リ´・-・リ「はいなの!!」

*(‘‘)*「了解ですの!!」


デミタスの拘束を解いた三人は慌ただしく部屋を出た
残されたデミタスは、ボタボタと溢れ出す血を、カーテンで抑えて止血を施し


(´;^_ゝ^`)「ハ、ハハ……クソガキ共が、よくもこの俺を出汁に使いやがって……」


喉の奥から、『心底面白そうに』クツクツと笑った


(´;^_ゝ^`)「存分に暴れやがれ『冒険者』共。ここは俺の牧場、俺の街だ……一つ、盛り上げてやるぜ」


血で染まる指でPCを立ち上げ、ミュージックアプリをクリックする
選んだ選曲は、映画『ボヘミアン・ラプソティ』で再ブームメント巻き起こした『Queen』の名曲






♪Queen - Don't Stop Me Now
https://www.youtube.com/watch?v=HgzGwKwLmgM







外のスピーカーから、夜明け前の牧場へと響き渡った―――――

148 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:52:15 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(´・ω・`)「チャイニーの軍師曰く、『兵は詭道なり』」

('A`)「なんだいきなり」

<ヽ`∀´>「今更賢いアピールしても遅いニダ」

(´・ω・`)「話は最後まで聞けウンコマン共。『戦争に置ける勝利の決め手は、敵をだまし、欺き、敵の兵力を疲弊させる事』だ。この家で奴らを罠に掛ける」

<ヽ`∀´>「閉じ込める気ニカ?」

(´・ω・`)「いいや、『焦らせる』んだ。今までの傾向から見て、奴らは俺らの動向をなんらかの形で予測している。だが……」

('A`)「正確じゃない」

(´・ω・`)「ああ。物理的な罠を仕掛けず人員を送り込んでいるのは恐らくこれが理由だ。正確じゃないからこそ、人の目で確かめる必要があると見た」

('A`)「付け入る隙、だな。だが奴らの襲撃タイミングに合わせられるか?」

<ヽ`∀´>「出来なくは無いニダ。こっちには優秀な見張りがいるニダ」

( ∵)b「ゴエエエエエエエエエ!!!!!」

( ∴)b「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!」

(´・ω・`)「本当に大丈夫かな」※Aqua Timez『虹』

<ヽ;`∀´>「ま、まぁ……ニンジャの時もオレンジの時も結構ギリギリでの警告だったけど……目安にはなるニダ」

('A`)「どう出し抜く?」

(´・ω・`)「地下室から牛舎まで抜けられる抜け道があってな。そこから抜け出して牧場から逃げる『振り』をする。出来る限り目立つようにな」

(´・ω・`)「あと親父とか使う」

(´・_ゝ・`)「えっ?」

(´^ω^`)「パパお願ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(´^_ゝ^`)「しょうがねえなクソガキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!一肌脱いじゃうぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!」

('A`)「仲いいなこいつら」

<ヽ`∀´>「仲……いいニカ?これ」

149 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:52:35 ID:9OubR0lk0


 ̄ヽ、   _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´


('A`) と、思い返すドク・オーツだった

150 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:53:37 ID:9OubR0lk0
('A`)「ドンピシャだな」


ドクの独り言は、ゴキゲンなピアノとフレディ・マーキュリーの力強い歌声にかき消される
ログハウスの屋根裏の窓からポーチの屋根へと抜け出した彼は、出入り口から『目標』が飛び出すのを待ち構えた
鋭い鞭の音とデミタスの呻き声が気がかりだったが、先ずは脅威の排除を優先する


('A`)「さて」


侵入してきた時とは違い、慌ただしく扉が開く音が響く。ポーチの屋根を軽く蹴って飛び降り、頭上から奇襲を仕掛けた


ハハ#ロ -ロ)ハ「ッ!!!!!!見くびるナァ!!!!!!!」

('A`)そ「お゛!? お゛ぉ゛!?」


思わず下痢便が漏れ出しそうな声を上げたドクは、足首に巻き付いた鞭に振り回され――――


(;'A`)「っととぉ!!」


肩から地面へと落下。受け身を取って衝撃を和らげた


(;'A`)「なんだよ読まれてたか」

ハハ#ロ -ロ)ハ「豚の気配を探るなド、クイーンたるワタシにとっては呼吸に等しイ!!」

('A`)「そうか。デミのオッサンに豚の飼育量を増やして貰おう」

ハハ#ロ -ロ)ハ「やレ!!リリ!!」

⌒*リ´・-・リ「任せろなの!!どっっっっっっずごぉおおおおおおい゙!!!!!!!!!!!!!!」

(;'A`)そ「声野太っ!?」


振り落とされた一刀を、身を捩って躱す。背中に伝わる剣圧と衝撃は、小柄な少女に放てるものでは無かった


(;'A`)「っぶねえ殺す気か!?」

⌒*リ´・-・リ「その通りなの!!」

(;'A`)「ああそうだよなテメーらは話の通じる連中じゃなかった!!」

151 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:54:44 ID:9OubR0lk0
ハハ#ロ -ロ)ハ「その醜イ……マジ醜イ豚の相手は任せましタ!!私は車を用意しまス!!ヘリは馬を見失わないよう二!!」

*(;‘‘)*そ「しんどい方をヘリに任すなですの!!でもまぁやったるですの!!」

('A`)「おーおー慌てとる慌てとる」

⌒*リ´・-・リ「ブサイクは死ぬの!!!!!!」

(;'A`)そ「うおっとぉ!?」


足の鞭が解かれたドクは、後転して剣を躱す。素早く立ち直ると、構えを取った


('A`)「『兵は詭道なり』……か。教養は身を助けるな」

⌒*リ´・-・リ「何をブツブツいってるの……ブサイクな顔でマジキモいの」

('A`)「言ったなオイ?ガキだからって俺は一切容赦しねえぜ?」

⌒*リ´・-・リ「ブサイクは心の中も醜いの!!」

('A`)「……」


『疲れる』。容姿の罵倒など今やちっぽけな心の傷にもならないが
こうもバリエーションとユーモアに乏しければ与えられるのは虚無と疲労感だけだ


('A`)「お仲間の合流したけりゃサッサとそのなまくらで両断したらどうだおチビちゃん?言葉のナイフじゃ俺は殺せないぜ?」

⌒*リ´・-・リ「言われるまでもないの!!ぞっっっっお゙お゙お゙い!!!!!!」


銀に輝く半月が、ドクを『二枚下ろし』にせんと迫る


('A`)「……」


不意打ちを防がれ、鞭に不覚を取った。しかし、『それだけ』だった
ドクにとって巨大な剣を振り回す怪力少女など、取るに足らぬ小事であった―――――

152 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:56:13 ID:9OubR0lk0
*(‘‘)*「うりゃうりゃうりゃうりゃーーーーーー!!!!!」


一方、ヘリという少女は斧を肩に乗せ、走り去る蹄の音を必死に追いかけていた
足音は重く、進む一歩は走り幅跳びもかくやと言った距離。常人を遥かに超える速度で走っていたが、やはり馬の速度には敵わない


*(;‘‘)*「うおーーーーーーーーーーーー!!!!!速いですのーーーーーーーーーーーー!!!!!」


それでも健気に食らいつく彼女は、もう一種類の『蹄の音』に気付くのが遅れた


*(;‘‘)*そ「ですの!?」


(∪; ゚ω゚ )「おうおうおうおうおわんおうおうおうお!!!!!!」


側面から犬と


( ∵)「ハイヨーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

( ∴)「シルバーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


その背に乗った『超常保護対象』が

153 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:56:48 ID:9OubR0lk0




/フフ  A_A   ム`ヽ
/ ノ) ⊂ ・ ・⊃   ) ヽ
゙/ |  / (__ω)ノ⌒(ゝ._,ノ <ンモーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!
/ ノ⌒7⌒ヽーく  \ /
丶_ ノ 。   ノ、  。|/
`ヽ `ー-'´_人`ー'ノ           ※AAはイメージです
丶  ̄ _人'彡ノ
*    ノ  r'十ヽ/
\ /`ヽ_/ 十∨



*(;‘‘)*そ「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!??????」


暴走する牛の群れを引き連れ、此方に向かってきていたのだ


(∪; ゚ω゚ )「おおおおおおおおおおおおおお!!!??????」

*(;‘‘)*「ひぃいいいいいいいいこっちくんなですの!!!!!!!!」


これには怪力自慢も踵を返す他なく、彼女は文字通り『保身』に走る。背を見せたタイミングで、ビィは積み上げられた干し草の山に飛び込んだ
ビィが消えた事により、牛の誘導先はヘリへと移り変わる。マタドールにしては、随分と情けの無い姿であった


(∪; ゚ω゚ )「ゼッゼッ、ハァハァ……」

( ∵)b「ナイスラン」

( ∴)b「ナイスガッツ」


背中のビコとゼアが労いの言葉を掛けるが、ビィは少しも報われた気がしなかった
むしろ戻ったらこの作戦を言い渡したあのクソショボ眉毛の眉毛を噛み千切ろうと固く決意したのであった

154 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:57:53 ID:9OubR0lk0
時を同じくして、車を取りに走ったボンテージ・クイーンこと『ハロー』は


ハハ;ロ -ロ)ハ「……」

(´・ω・`)「よう」

(#゚;;-゚)「……」


『馬』で逃げ去ったと思われた『ショボン・バーデラス』と対峙していた
傍らには、リーダーから伝えられた回収目標の少女であるディの姿もある


ハハ;ロ -ロ)ハ「まんまト、分断させられたと言うワケカ」

(´・ω・`)「功を急いだなネエちゃん」

ハハ ロ -ロ)ハ「ふン。だが、ドク・オーツならまだしも、貴様が私に勝てる道理などあるまイ」

(´・ω・`)「どうかな」

ハハ ロ -ロ)ハ「すぐに思い知ルだろウ」


ハローは鞭をしならせると、二回、三回と地面を打ち鳴らす。生じた抉れが、その威力を証明していた
ショボンはディを下がらせると、後ろ手に隠し持っていた自身の『得物』を前に出す


ハハ ロ -ロ)ハ「それハ……?」

(´・ω・`)「おや、よくご存じの筈だぜ?アンタの商売道具でもあるだろうしな」


先端を輪の形に結んだ『投げ縄』であった


ハハ ロ -ロ)ハ「カウボーイ気取りカ?」

(´・ω・`)「オイオイオイ俺をどこの誰だと思ってやがる?大牧場の御曹司だぜ?正真正銘の『カウボーイ』さ」


円状に巻いた縄を右手で引き延ばして十分な長さを確保する。そして、『ヒュン、ヒュン』と横手に回転させた


(´・ω・`)「西部劇のガンマン風に言うなら……」

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

(´・ω・`)「『撃ちな!!どっちが速いか勝負してみようぜ』っつー奴だ」

155 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:58:59 ID:9OubR0lk0
ハハ ロ -ロ)ハ「……見くびられタものダ」

(´・ω・`)「試してみないとわからねえだろ?」


鞭と縄。奇しくも似た性質を持つそれぞれの武器ではあるが、『用途』に歴然とした差がある
確かに縄は縛る、吊るす、結ぶと言った多種多様の機能性を持つ。しかし『人を痛めつける』事に特化した鞭のように、『これ』といった決定打はない
『無謀』だと、ハローはほくそ笑んだ。それは超人部隊の一員としての揺ぎ無い自信と、産まれながらの嗜虐性癖による高慢さによるものだった


ハハ ロ -ロ)ハ「でハ……貴方の父親と、同じ部位に……」


狙いはデミタスと同じく『頬』。目の前の憎き男が、苦痛で悲鳴を上げ、血を滴らせる姿を脳裏に浮かべただけで下腹部に『熱』が生じる


ハハ ロ∀ロ)ハ「傷をつけて差し上げましょウ!!!!!!」


興奮を燃料に、ハローは鞭を高々と振り上げた。その時――――


(´^ω^`)「アホめ」

ハハ; ∀ )ハそ「What a fuck!!?」


顔面が『ベチン』と叩かれ、メガネを落とす。予期せぬ不意打ちに、鞭の軌道は明後日の方向へと反れた
アンダースローで投げられた縄の結び目は、牛を捕まえるための『投げ縄結び』ではなく、根本を纏めた『硬結び』だった
ショボンの狙いは縄による『捕獲』ではなく、投擲による『目くらまし』だったのだ


ハハ;3 -3)ハ「はワワ、メガネメガネ……」

(´^ω^`)「かーらーのォッ!!!!!!!!!!!!!」

ハハ;3Д3)ハそ「あばばばばばばばぁぁああばばばば!!!!!?????」


露出の高いボンテージファッションが災いし、『スタンガン』は素肌に押し付けられた
筋肉は電流により強制的に収縮し、絶頂したかのように全身を痙攣させる
ショボンはスタンガンを放すと、銃口から立ち上る硝煙を吹き消す真似をして、尻ポケットという名のホルスターに仕舞った

156 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:00:07 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「サディストは煽り易くて助かる」


縄で身体をギチギチに縛り上げると、鞭を拾って茂みへと投げ捨てた
今までなら退治した後は放置で良かったが、ここは彼の実家。沙汰に頭を悩ませていると


(;'A`)「ショボン、無事か!?」


『無傷』ではあるが、焦った様子のドクが駆けつけてきた


(´^ω^`)「おおこの通りピンピンしてらぁ!!!!!!手伝ってくれこいつ親父に任せるから」

(;'A`)「マズいことになった」

(´^ω^`)「漏らしたのか?」

(;'A`)「ニダーが連れ去られた」


ショボンの顔から一瞬にして笑顔が消えた。ドクは自身のスマホを差し出すと、そこには


【 <ヽ ∀ >  】


車内にて気を失ったニダーの画像が写し出されている
彼にはビィ、ビコ、ゼアと共に牛舎にて『牛追い』の役目を任せていたのだ


(;´・ω・`)「別働隊かっ……!!」


限られた人数での『分断作戦』。地の利こそあったが、条件は彼方と『同じ』になる
真正面から目立つ形で現れた三人組は12シスターズ側のブラフであり、ショボン達はそれにまんまと乗せられてしまったのだ

157 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:01:09 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ビィ達は?」

('A`)「……」


ドクのポケットがもぞりと蠢き


( ∵)「ゴエ……」


元気のないゼアが顔を覗かせる


('A`)「気を失った斧のガキと、こいつだけが牛に乗って戻ってきてな。俺もそれで異常に気付いた」

(#゚;;-゚)「……」


袖を引かれ、ドクはポケットからビコを取り出してディに差し出す
彼女は相変わらず無表情であったが、心底大事そうに胸へ抱きしめた


(;´・ω・`)「クソッ……悪い、俺の判断ミスだ」

('A`)「謝るな。今まで上手くやってけた方がどうかしてたんだ。それにまだ終わりじゃねえ」

(;´・ω・`)「……ああ、勿論だ」


ドクのスマホに送られたのは写真だけではない。短くメッセージも添えられている
『ホライゾンで待つ』。どの道、行先は変わらなかった

158 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:01:51 ID:9OubR0lk0
('A`)「それとだな……」


何かを言い籠り、チラリとディに目を向ける。ショボンはそれでドクの言わんとする事を察した


(;´・ω・`)「……親父か」

('A`)「……死にはしない傷だ。だが酷いのに変わりない」

(;´・ω・`)「……そう、っ?」


(#゚;;-゚)「……」


(´・ω・`)「ディ!!待て!!」


駆け出そうとしたディを咄嗟に引き止める。しようとせん事は既にわかっていた
だが、既に傷だらけの少女にそれを求められるワケがなかった


(;´・ω・`)「お前が背負う必要はない!!責任は吹っ掛けた俺にあるんだ!!」

(#゚;;-゚)「!!」

(;´・ω・`)「ディ……!!」


これまで見せた事ない力強い抵抗に、戸惑いながらも更に強く抑え込む。すると


(#∵)「ゴ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」

(;´・ω・`)そ「っ!?」


喋れない彼女の感情を代弁するかのように、ビコが雄叫びを上げた
耳を劈く声量に、思わず拘束の力が緩む。その隙にディはログハウスへと駆け出した

159 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:02:26 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「……」

('A`)「……」


放心するショボンの背中を、ドクは力強く叩く


('A`)「せめて見届けるのが俺らの『責任』だ。ケジメは親父さんに着けて貰おう」

(´・ω・`)「……ああ、わかった」


少女の後に続き、彼らもログハウスへと重い足取りで戻る
旅立ちから初めての、『敗北感』を胸に抱きながら

160 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:03:22 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(;´・ω・`)「おy」

(#´・_ゝ・`)「テメェ!!!!!!!」


リビングに入るや否や、血に染まったデミタスがショボンの胸倉を掴んで壁に押し付ける
ドクから『頬に酷い裂傷がある』と聞いていた物の、生乾きの血の下にはそれらしい傷は無い。代わりに


:(# ;;- ):「……っ」


頬に新たな傷が生まれたディが、傷口を抑えて蹲っていた


(#´・_ゝ・`)「どういう事だ……誰がこんな真似しろっつった!!」

(;´・ω・`)「……他でもない、その子だ」

(#´・_ゝ・`)「っ……」

(;´・ω・`)「親父……」


デミタスはショボンを突き放すと、自身の治療の為に使ったのであろう救急箱を引っ掴みディに駆け寄る


(#´・_ゝ・`)「……ニダ坊は?」

(;´⁻ω⁻`)「……連れ去られた。ビィとゼアも」

(#´・_ゝ・`)「そうか……見せなさい」

(# ;;- )「……」

(;´・_ゝ・`)そ「っ!?おい!!」

161 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:04:03 ID:9OubR0lk0
二人は最初、デミタスの反応はディの傷が塞がっている事に対しての驚きだと思ったが


(;∵)「ゴエッ!!ゴエッ!!」


ビコの喚き声と、クタリと力のないディを見て只事ではないと悟る


(;´・ω・`)「ディ!?」

(;´・_ゝ・`)「彼女を拾ってからこの症状は!?」

(;´・ω・`)「無かった……脈はあるな!!ドク!!」

('A`)「ああ、すぐ発とう。親父さん、迷惑を掛けたな」

(;´・_ゝ・`)「待て!!すぐに医者を呼ぶ!!」

(#∵)「ゴエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

(;´・_ゝ・`)そ「うわっ!?」

('A`)「病院と警察がどうしても嫌いだそうで」

(;´・ω・`)「回復の当てがあるなら『スリー・ドット』しかない……ドク!!あの三人を詰め込め!!」

('A`)「オーライ。親父さん、手伝ってくれ」

(;´・_ゝ・`)「っ……」


『行かせていいのか?』と、迷いが生じた。伝説の地を目指したとしても、間に合わないかもしれない
その上、彼らの友人が得体の知れない組織に連れ去られている。ここから先は大人と警察と医師の領分では無いのだろうかと
だからこそデミタスはドクの要求にこう応えた


(;´・_ゝ・`)「……わかった!!」


大人であるからこそ、『大人の手間』を痛いほど知っている。警察はすぐ動いてくれるかわからない。医師はディを治療できるかどうか定かではない
そこに到るまでの時間と手続きは、『手遅れ』というバッドエンドに繋がり兼ねない。だったら、危険を承知で迷いなく突き進む息子たちに賭けた方が良いのではないか
親として無責任な考えである事は重々承知している。だが、子の想いと行動を信じて後押しするのもまた親の責務なのだ

162 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:05:18 ID:9OubR0lk0
準備は十分も掛からず終わる。後部座席にはロープで拘束した『交渉材料』を三人
二列目の座席にディを寝かせ、転げ落ちないように座高を荷物で埋める


('A`)「オムライスまでは?」

(;´・ω・`)「休憩なしで三、四時間って所だ……クソ、追う側に回るとはな」


運転席にショボンが座り、シートベルトを締める。最後に父親に挨拶をしようとパワーウィンドウを開けた


(;´・ω・`)「親父、行ってくる!!」

(´・_ゝ・`)「待て!!」

(;´・ω・`)「なんだよ急いでん……」


ログハウスからデミタスが持ち出した物を見て絶句する
凹凸が限りなく少ないシンプルかつ漆黒の銃身と、三十二連の『ドラムマガジン』
映画、『エクスペンダブルズ』でも活躍したフルオートショットガン『AA—12』であった


(´・_ゝ・`)「持ってけ」

(;´・ω・`)そ「持ってけねえよアホか!!!!!!扱えるわけねえだろそんなもん!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「安心しろ。非殺傷弾だ」

(;´・ω・`)「そういう問題じゃ……無理やり詰め込むんじゃねえ痛ぇよハゲ!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「お前もいずれ禿げる」

(#´゚ω゚`)「やめろや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


窓越しに無理やり突っ込まれ、なし崩し的に持っていかざるを得なくなる
デミタスは最後に息子の肩を掴み、今までにないほど真剣な眼差しを向けた

163 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:05:53 ID:9OubR0lk0
(´・_ゝ・`)「ニダ坊とビィ、ゼアを取り戻して、必ず嬢ちゃんを送り届けろ」

(´・ω・`)「わかってる」

(´・_ゝ・`)「それだけじゃねえ。必ず無事に帰ってこい。それで初めて『完全勝利』だ」

(´・ω・`)「言われるまでもねえよ。なぁドク!!」

('A`)「当然」

(´^_ゝ^`)「……よし、行ってこい!!」


力強い後押しを受け、ショボンはアクセルを踏む
乗せる人数は増えたが、静かになった車内。バックミラー越しに父親の姿を確かめると


(´・_ゝ・`)「……」


高々と拳を掲げ、激励を送っていた―――――

164 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:07:39 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



<ヽ`∀´>「……それで」


男に生まれたからには、一度は『ハーレム』に憧れる。彼も例外では無く、多感なジュニアハイスクール時代には学友と妄想を馳せらせたものだ
しかし成長するにつれ、自身の身の程を知った今となっては、限られた時間と脳のリソースを『叶わぬ夢』に注ぎ込む事は無くなった
しかし人生とはわからぬもので、意外な形で『妄想』は現実となった。良いか悪いかは別として―――――


<ヽ`∀´>「綺麗どころが男を囲んで、一体何をおっ始める気ニカ?」


『多勢の女性に囲まれる』という願いが叶ったのは事実なのだから


(゚、゚トソン「……ホステルを観たことは?」

<ヽ;`∀´>「えっ、ちょ、ホントやめてマジで」

(゚、゚トソン「冗談です。目的さえ達成すれば、無事にお帰しします」


キツいジョークに愛想笑いを返し、ニダーは窮屈そうに身を捩った
牛舎で気を失い、目覚めた時には既にこの『廃工場』の中で拘束されていた
椅子に座らされ、両腕には手錠。脚には足枷が掛けられており、一歩も進めそうに無い
そもそも、抜け出せた所で『超人ポンコツ集団』から逃げられるとは限らない。ニダーは早々に脱出を諦め、迎えを待つことにした

165 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:08:03 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「手錠は何の為にある?」

(゚、゚トソン「はい?」


キャスターが壊れた事務椅子に座り、クルクルと回っていた『ニンジャ』が手を上げる
このセリフはジパング発祥のコミックからの引用であり、彼女にとっては馴染み深いものだろう


从 ゚∀从「逃がさない為にあるんじゃあない!!屈服させる為にある!!」

<ヽ`∀´>「知ってるニカ?」

从 ゚∀从「へへ、当然さ。『ジョジョ』だろ?」

|゚ノ ^∀^)「何それ」

从 ゚∀从「ジパングで一番面白いコミックだよ。今度貸してやるぜ。百巻以上あるけどな」

|゚ノ;^∀^)「それだけ多いと幾ら面白くても読む気が失せるわね……」

166 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:09:40 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「そのコミックが何か?知識を披露したいだけですか?」

<ヽ`∀´>「いや、アンタ方の思惑を表してるようだなって思っただけニダ」

(゚、゚トソン「ふむ……ええ、そう言われると間違ってはいない気がします」


今の状況は、ショボンが自宅の牧場を使った作戦と酷似している
これまで単独での待ち伏せと襲撃が多かったが、今回は地の利と数的有利を揃えての迎撃だ。攫われた自分と


(∪#^ω^)「ウウウウウ……」


鬱陶しそうに首輪を後脚で弄るビィ


川*д川「はぁああああああああんかわいいぃぃぃいいいいいい!!!!!」

(;∴)ノシ「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」


そして『ナード』という言葉を体現したかのようなオタク女に強烈な頬擦りをされ続けるゼアを餌に
ショボン、そして最大の脅威であるドクを『屈服』させる為に用意された舞台なのだ


|゚ノ ^∀^)「心配しなくても殺しはしないわよ……」

<ヽ`∀´>「銃を弄りながら言われても説得力がないニダ」

|゚ノ ^∀^)「ウチらは別に殺し屋じゃないしねー。弾もゴム弾だから『死ぬほど痛い』程度で済むし」

<ヽ`∀´>「そりゃお優しい。所でブンマルでそこのニンジャに手裏剣やら鉤爪でぶっ殺されそうになった事に対する弁明はあるニカ?」

从 ゚∀从「乙女だから」

<ヽ`∀´>「なんでもかんでもそれで男が許すと思うなよ?」

167 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:10:46 ID:9OubR0lk0
从'ー'从「ご安心を〜。例えぇ、致命傷を負ったとしてもぉ、私がちゃーんと治して差し上げますからぁ〜」


背後からすり寄ってきた女が、ニダーの耳元に顔を寄せて吐息と共に囁きかける。ゾワリと鳥肌が立ち、思わず仰け反った


<ヽ;`∀´>「ヒィィ世界で一番信用できないタイプの女!!」

|゚ノ ^∀^)「ブフッwwwwwwww」


ワザとらしい吹き出し笑いを聴いて、ニダーの肩に女の指が力強くめり込む


<ヽ;`∀´>そ「いたた痛い痛い!!治療とは真逆のことしてる今!!!!」

从^ー^从「フフフ〜」

<ヽ;`∀´>「助けてビィ!!」

(∪#^ω^)「わんお……」

<ヽ;`∀´>「露骨に嫌そうに鳴かないで!!」

(゚、゚トソン「アヤカ、その辺で。そろそろ彼らも到着するようですし、貴方は下がっていてください」

|゚ノ ^∀^)「ウチは別に構わないけどねー」

从'ー'从「はい〜、お言葉に甘えます〜。ロクに狙いも定められない×××の流れ弾が此方へ飛んでこないとも限りませんし〜」


甘ったるい声色はそのままに、差別用語を投げつけて『アヤカ』は工場の奥へと歩き去る
レモナは軽く聞き流したかのように見えたが、右手はいつでもその後ろ姿を撃ち抜かんと、ホルスターに収まる銃のグリップに触れていた

168 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:12:34 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「怖い……」

(゚、゚トソン「お気になさらず。いつもの事でして」

<ヽ;`∀´>「心労をお察しするニダ」

(゚ー゚トソン「フフ、いえ。楽しい職場ですよ」


冷徹だと思っていた美女が微笑みで表情を崩す瞬間というものは、時と場合がどうあれ男ならグッと来るものがある
胸と股間に込み上げた熱を堪えて、ニダーは気を引き締め直した。『ストックホルム』の二の舞だけは絶対に避けねばならぬと


<ヽ`∀´>「……超常保護対象と、言っていたニダね。アンタらの仕事って、UMA版動物愛護団体ニカ?」

(゚、゚トソン「概ねその通りです。UMA、都市伝説、怪異等、世界の在り方を変えてしまいかねないモノを『超常保護対象』と呼び、我々はそれらを世間の明るみに出ないよう保護、及び隠蔽を施します」

<ヽ`∀´>「どちらかと言えば……MIB?」

|゚ノ ^∀^)「そっちの方がしっくり来るわね。もっとも、あんな暑苦しいスーツ姿はゴメンだけど」

<ヽ;`∀´>「いや……」


ニンジャとか格闘ゲームキャラのコスプレするよりかはマシじゃないかと言いそうになったのを堪える

169 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:14:22 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……悪用を目的にした組織では、無いニカ?」

(゚、゚トソン「真逆です。『悪用させない為に』我々は存在しています。保護も一時的な物で、ある程度のデータを取り終えれば安全な棲家へと返します。有名な例で言えばネッシーやビックフッドですね」

<ヽ;`∀´>「実在するニカ?」

|゚ノ ^∀^)「まぁウチらが担当したワケじゃないけどね。産まれてないし」

<ヽ;`∀´>「……Jesus」

(゚、゚トソン「驚くべきことでも無いでしょう?あなた方は既に彼らと遭遇し、ここまで旅をしてきたのです」

<ヽ;`∀´>「……」


世界の裏側を覗いている気分であったが、それ以上の不安が湧き上がってくる。『どうして敵対している筈の相手にここまで正直に話してくれるのか』
彼女たちは『殺しはしない』と言った。その言葉に嘘があるとは思えない。だが、超常保護対象を世間から『隠蔽』しているというのなら、自らの素性を打ち明けるべきではない


<ヽ;`∀´>「……関わった人間は、どう処理してきたニカ?」

(⁻、⁻トソン「……皆さん、大抵はそこに行きつきます。彼らの末路は主に三つ」


一つ、人差し指を立てる


(゚、゚トソン「記憶処理を施し、これまでと同じく平穏な生活に戻る」


二つ、中指を立てる


(゚、゚トソン「優秀な能力持ち主……例えば、超常保護対象『そのもの』や、使役している場合は、組織の傘下に加わってもらう」


三つ、薬指を立てる


(゚、゚トソン「超常保護対象の使用目的が悪質だった、もしくは見逃せない犯罪歴を持っている場合、然るべき機関へと引き渡す。以上です」

170 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:15:13 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……僕たちは、どれに該当するニカ?」

(゚、゚トソン「あなた次第ですよ、ニダー・コクソン。時間も限られていますし、今度は此方から質問させて頂きます」


トソンの両手がニダーの頬を掴む。一見すると煽情的なシーンだったが、真夏だというのに氷のように冷たい指に
背筋まで鷲掴みにされたかのような悪寒が身体中を駆け巡る


(゚、゚トソン「『アレ』の正体を、『女の子と犬』を引き連れている理由を、そしてあなた方の目的を、正直に話してください」

<ヽ;`∀´>「……」


鋭い視線に射抜かれ、ニダーは懸命に思考を巡らせた。『大した理由が無いからだ』
確かにブンゲーで『ショボンの兄の手がかりを探す』という目的が新たに発生した。しかしニダーにとってそれは副次的なモノに過ぎない
『行きたいから』『見たいから』。旅立ったのにそれ以上の理由は無いし、ディやビィ、ビコとゼアと出会ったのも成り行きに過ぎない
計画的に連れ去ったワケでも無く、悪意と欲望を以てセブンクロスへと向かっているワケでも無い。それを正直に伝えた所で、彼女たちは納得するだろうか


<ヽ`∀´>「……」


いや、ただ一つ明確な目的は残っていた。あのモーテルで奇妙な拾い物をした瞬間から
成り行きであろうとも、追われる身になろうとも、三人で成し遂げようと決めた目標があった


<ヽ`∀´>「『セブンクロス』に、彼らを送り届ける」

(゚、゚トソン「……『シャキン・バーデラス』の指示で、ですか?」

<ヽ`∀´>「……アンタら、悪い人じゃ無さそうだから正直に話すニダ。『それもある』」

|゚ノ ^∀^)「ふぅん……?」

<ヽ`∀´>「だけどそれ以上に、僕らが『そうしたいから』。彼らが助けを求めたのはアンタらじゃなくて、僕らニダ」

从 ⁻∀从「……」

<ヽ`∀´>「聞き飽きた説得かもしれないし、そもそもあれだけ派手に抵抗して今更何をとも憤慨するかもしれない。だけど、僕にはこれ以上の言い訳はない」

171 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:16:33 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「そして……出来る事ならば、僕らにそれを達成させて欲しい。罰なら後で幾らでも受ける。だから……」


(゚、゚トソン「もう結構です」


顔を放され、ニダーは息を大きく吐いた。その瞬間


<ヽ;`∀ >・'.。゜「うぐっ……!!」


胸板を、『ヒールの先端』が強く抉った。椅子は後ろへと倒れ、受け身も取れぬまま後頭部を強く打つ


从;゚∀从「何やってんだよトソン!!」

|゚ノ ^∀^)「黙って」


ハインの抗議は、眉間に突き付けられた銃口によって遮られる


:<ヽ; ∀ >:「アガッ……」

(゚、゚トソン「『聞き飽きた』。ええ、その通りです。命乞いも、身の潔白も、私にとっては全て戯言に過ぎない。いっその事、悪逆の限りを暴露してくれた方がよっぽど信頼できました」

:<ヽ; ∀ >:「っ……」

(゚、゚トソン「信じれば足下を掬われるのがこの世界です。だったら、正当性を聞き入れるよりも最初から最後まで疑ってかかった方が余程安全ですからね」

:<ヽ; ∀ >:「っ、なら、どう……して……?」

(゚、゚トソン「『どうして弁明の余地を与えたか』、ですか?フフ、別に大した理由はございません。ええ、ございませんとも」


ヒールが倒れこむニダーの頬に突き刺さり、皮膚を捩じる。苦痛に呻く声が、廃工業に広く響き渡った


(^、^トソン「ただの『憂さ晴らし』ですよ。ミスター・コクソン」

:<ヽ; ∀ >:「ぐっ、が……」

(゚、゚トソン「まだ何か囀りますか?」

:<ヽ; ∀ >:「っ……Fuck You……Bitch……!!」

(^、^トソン「お里が知れますね。シタラバ人を騙る劣等民族が」

172 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:17:11 ID:9OubR0lk0
从#゚∀从「っ……おい!!やりすぎだぞ!!」

|゚ノ#^∀^)「黙ってって言ってるでしょ!!」

从#゚∀从「黙れるかよ!!」


額に押し当てられた銃口に、怯むどころか一歩踏み出す。怯んだのは優位に立つ筈のレモナの方であった


从#゚∀从「俺にはお前らほどのキャリアはねえ!!頭だって悪いし、騙されて割りを食う事だってある!!でもなぁ!!人として何が正しくて、何が間違ってるかくらいの区別がつく!!」

(゚、゚トソン「はて……?私は間違っていますか?」

从#゚∀从「ッ……!!」


キョトンと首を傾げるトソンに対して、レモナは唇をキツく結ぶ


从#゚∀从「そりゃ確かにそいつらには散々な目に遭わされた!!だけどよ、その気なら命だって奪えたはずだ!!俺も、お前らも、他の奴らだってそうだ!!見逃されてんだよ俺達は!!」

|゚ノ#^∀^)「それが信用に値する行為とでも言いたいの!?ヒートは大怪我負ったのよ!?」

从#゚∀从「でも殺されちゃいねえ!!こいつらはただ『防衛』しただけだ!!俺が言えた義理じゃねえけど、最初から素直に協力を申し入れれば大事にならなかったかもしれねえ!!」

(゚、゚トソン「ハァ……常日頃から頭が悪いと思っていましたが、まさかここまでとは」

从#゚∀从「ああそうさ!!だけどな、真摯な人間の言葉を聞き分けられないほど愚かじゃねえんだよ!!レモナ!!お前はどうなんだ!!」

|゚ノ#^∀^)「っ……人を信じた瞬間、後ろから撃たれた絶望がアンタにわかる!?見返りに身体を要求された瞬間の不快感は!?子どもに悪魔でも見るような眼を向けられた瞬間は!?」

从#゚∀从「わかるかよ!!関係ねえだろこいつらには!!俺に取っちゃ今のお前らの方が歪んで見えるぜ!!」

(゚、゚トソン「レモナ。泥の味を知らぬ者に言って聞かせるなど、時間と労力の無駄です」

|゚ノ; ∀ )「……」

(゚、゚トソン「足手まといになるようならば、暫く眠ってもらう他ありません。さ、早急に処置を」


銃口から、レモナの震えが伝わってくる。トソンからは見えないが、目には涙が浮かび、唇の端から一筋の血が垂れる
トソンとは違い、迷い揺れている。ハインはそれ以上言葉を重ねることなく――――


从#⁻∀从「……」


ただ静かに、目を瞑った

173 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:19:11 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「レモナ……?貴女も、私を失望させるのですか?」

|゚ノ; ∀ )「違う!!そんなワケない!!」

(^、^トソン「そうですよね。貴女だけは、ずっと私の味方でいると仰ってくれたのですから」

|゚ノ; ∀ )「……」

(^、^トソン「さぁ、引き金を。仕事が終われば、気の迷いが生じたハインに休養と『研修』を与えましょう。そしてこれまで通りっ……!?」


顔を踏みつける足が、段差を踏み外したかのようにバランスを崩す。確かめると―――


<ヽ#`∀´>「ぺっ……不味……」


『噛み折ったヒールを吐き出した』ニダーが、怒りの眼差しで見上げていた


(゚、゚トソン「おやおや、口も悪ければ行儀も悪いのですか?」

<ヽ#`∀´>「不愉快ニダ」

(^、^トソン「あら、ようやく本性を現しましたか。それで?何が不愉快なのでしょう?」

<ヽ#`∀´>「ダチの言葉すら受け入れない、テメーの甘え切った性根ニダ」

(^、^トソン「……お門違いでは?私は超常保護対象の保護の為、引いては人類の平穏と安寧の為に最善を尽くしているまでです。あの日、あなた方が素直に我々の要求を、何も言わず受け入れて貰えれば、我々もこうして揉めずに済んだ」

<ヽ#`∀´>「いいや、僕達の判断は……ドクの抵抗は、間違っていなかった。ダチにダチを撃たせるような真似する奴に、ビコとゼアを……ビィとディを任せられるワケが無い」

(^、^トソン「ほぅ?それで?」

<ヽ#`∀´>「アンタがこの仕事に就いて、どれだけ辛い目に遭ったのかは僕には想像もつかない。もし同じ境遇を味わったのなら、人を信じられなくなるかもしれない……でもな」


|゚ノ; ∀ )「……」

从 ⁻∀从「……」


<ヽ#`∀´>「少しは可笑しいと思えよ!!仲間が仲間に銃を向ける、今の状況を!!!!」

174 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:20:38 ID:9OubR0lk0
(^、^トソン「……レモナ、まだですか?」

|゚ノ; ∀ )「……」

(^、^トソン「レモナ、お急ぎを」

|゚ノ; ∀ )「……」

(^、^トソン「聞こえているのでしょう?レモn」



「そこまでにしとけっぽ」



工場の扉が、耳を劈くような軋みを上げて開かれる。ニダーは差し込む太陽の光に目を眩ませたが


<ヽ`∀´>「……ご到着、ニダか」


よく見知った姿は、しっかりと捉えていた


(´・ω・`)「……」

('A`)「空気おっも」


二人は工場の中ほどまで進むと、ドクは両手に抱えていたゴシックファッションの少女二人を
ショボンは背に負ったボンテージ・クイーンを。それぞれ乱雑に落とす


⌒*リ;´・-・リそ「痛いの!!」

*(;‘‘)*「レディの扱いじゃないですの!!」

ハハ;ロ -ロ)ハ「お尻打ちましタ……ヘイ、ヒート!!解いテ下さイ!!」

ノハ;゚⊿゚)「お、おう……」



ぶつくさと文句を言う三人の縄を、工場の外でオレンジの女と見張りに就いていたヒートが解きに掛かる
工場内の会話が聞こえていたのか、気まずい空気に戸惑いを隠しきれてはいなかった

175 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:21:46 ID:9OubR0lk0
(*‘ω‘ *)「そこのボクの言う通りっぽ。どうしてもと言うなら、レモナじゃなくアンタがケジメするべきっぽ」

(^、^トソン「何故です?私と彼女は一心同体。ならばどちらが手を下そうが一緒じゃないですか」

(*‘ω‘ *)「アタイにはそうは見えないっぽ。一心同体と言うのなら、レモナと同じく苦しんでいる姿を見せたらどうっぽ?」

|゚ノ; ∀ )「やめて!!トソンは何も悪くないの!!」

('A`)「ようショボン、こういうシリアスな場面に立ち会うと腹が痛くならねーか?」

(´・ω・`)「わかる。そういうのは部外者のいないところでやって欲しい」

<ヽ`∀´>「いや空気読むことを覚えて?頑張って?」

(#´゚ω゚`)「お前が連れ去られへんかったらこんな場面に遭遇せんでも良かったんやろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ごめんて!!!!!!!」


(*‘ω‘ *)「……」


('A`)「あ、ごめん続けて?」

(*‘ω‘ *)「無茶言うなっぽ」

(´・ω・`)「まー、各々言いたい事はあるだろうがよ……」


ショボンはバッグを広げながらトソン達へと近づいていく。レモナは左手でもう一丁の拳銃を抜いて向けた
彼は脅しに臆することなく歩き進め、三メートルほど手前で立ち止まった


(´・ω・`)「取引と行こう。ここに俺らの目指す先『スリー・ドット』の資料と、ビコ、ゼア、ディの特性についてまとめたデータがある」

(゚、゚トソン「……それで手を引けと?」

(´・ω・`)「車内で連中から色々と聞いたよ。別に危ない……いやまぁオレンジぶつけられたり鞭でシバかれそうになったりしたけど……危ない連中じゃねーか」

<ヽ;`∀´>「ちょっと我慢して」

(´・ω・`)「あーあーうるせえボケナス。とにかく、あいつらの存在を公にせず丸く収めれば納得すんだろ?この情報と引き換えに、後は俺らに任せて欲しいんだよ」

176 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:23:31 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「情報はありがたく頂戴致します。ですが、その要求は飲めません」

(´・ω・`)「わがままし放題か????????」

(゚、゚トソン「あなたの行動がシャキン・バーデラスの指示による物だとするならば、自由に行動させるにはリスクが伴います。彼に悪意がない事を証明できないでしょう?」

(´・ω・`)「あー……まぁ、身内贔屓になっちまうかな。居場所もわかんねえし、そりゃ本人に訊いてくれとしか言えねえ。そこで転がってるアホみたく虐めたとしても、出てくるのは喘ぎ声だけだ」


⌒*リ´・-・リ「キショイの!!」

*(‘‘)*「ドン引きですの!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「虐げる価値も無イゴミクズ!!」

('A`)「仮性包茎!!」


(#´゚ω゚`)「るせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!ドクてめえ後でケツの穴増やすからな!!!!!!!!!」

从;⁻∀从「なんか気ぃ抜けるんだけど……」

(゚、゚トソン「ふぅ……困りますね。聞き分けてくださいよ。あなた達の領分では無いのですよ?」

(´・ω・`)「それを決めるのはお前じゃねえし、誰にも決める権利はねえ。それと、こっちも急いでんだよ。ディが危篤でな」

<ヽ;`∀´>「本当ニカ!?」

(´・ω・`)「ああ、ディの傷跡は恐らく『キャパシティ』を表してる。だから帰る必要があったんだ。役目を、終えようとしているんだ」

(゚、゚トソン「何を勝手に納得しているのかは知りませんが……此方にはまだ人質が残っているのですよ?聞き入れないと言うならば……」


トソンは懐から手帳サイズに折りたたまれた器具を取り出し、軽く振って展開する
バネ仕掛けが作動し、瞬く間に『弓』の形へと変貌を遂げた。続けて、胸ポケットのボールペンを引きぬき、三回続けてノックを行う
するとこれも特殊警棒のように勢いよく伸び、即席の『矢』へと変化する。それを番えると、ニダーの頭へと向けた


(゚、゚トソン「少々の犠牲を覚悟して貰わねばなr(´・ω・`)「射てよ」最後まで聞いてくださいません?」


<ヽ`∀´>「躊躇いなさ過ぎて引く」

177 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:24:19 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「『人々の平穏と安寧を守る』……ご立派なキャッチコピーだが」


ショボンはいつものようにタバコを取り出し、火を着ける。最早レモナは、彼の一挙手一投足に警告すらしない
『無気力』が似合う姿を横目に眺めながら、いつものペースを崩さずに語り掛けた


(´・ω・`)「今この場に置いて、アンタが一番平穏と安寧に程遠い真似してんぜ?」

(゚、゚トソン「……そんなこと、ない、ないですよ」


誰の目にも明らかなほど、狂った女は動揺を見せた。ニダーは彼女の人格を責めたが、これほどの効力は無かった
対し、女を手玉に取る事に長けたショボンはトソンの『プライド』を突く発言をした
幸いにも、ホライゾン到着まで『三時間』という猶予があった。捕らえた三人組から情報を聞き出すには充分な時間であり
それはショボンが得意とする『会話による心理戦』の武器を調達するまたとないチャンスであった


(´・ω・`)「どうした?早く射て。アンタの気は多少晴れるだろうが、後に残されるのは人を殺した後悔と毎晩枕元に立つニダーの怨霊だ。平穏と安寧から最も程遠い場所で一生を過ごす覚悟があんのなら、早く射てよ」


人格が破綻していようとも、人は誰しも譲れないプライドを持つ。トソンにとっては仕事に対する姿勢だ
そこを攻めれば、如何に頑固な者でも多少なりの心の揺らぎが生じる。『平穏』『安寧』。この二つのキーワードを繰り返し、その揺らぎを大きくしていく
加えて、内輪揉めを起こしている今の状況は、ショボンにとって強く働いた。互いに違う主張の衝突。つまりは相手を『説き伏せたい』と考えている者が、向こう側の組織に少なからず存在する
『味方』が多い今この時こそ、この旅に置ける最大の刺客を退ける『好機』なのだ

178 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:25:10 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「それとも、その役目もお友達に代わってもらうか?」

(゚、゚トソン「……れ」


一つ、この作戦には大きなリスクがある


(´^ω^`)「いいじゃん代わって貰えって!!どうせテメーじゃ何も出来ねえんだから、おんぶに抱っこしてもらえよ!!そんでアンタは安全な場所から人々の『平穏と安寧』を眺めて満足してりゃ良いじゃねえか!!」

(゚、 トソン「黙れ……」

(´^ω^`)「俺ら三人をぶっ殺してめでたしめでたし!!人々は何も知らず『裸の王様』によって与えられたふつーの生活を末永くアホみたいに過ごしましたってな!!ギャハハハハハハ!!!!!!!」


心の揺らぎが、奥底のマグマを引き起こし――――




(゚Д゚#トソン「黙れぇぇええええええええええええ!!!!!!!」




凄まじいヘイトが、ショボン自身へと向かってしまう事だ

179 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:26:44 ID:9OubR0lk0
矢尻の先はショボンの顔面へと向けられ、張り詰めた弦が解き放たれる
携帯式の弓とは言え、初速は毎秒六十メートル近い。たった数歩分の距離から躱すのは、余程の事がなければ不可能だ


『だからショボンは賭けに出た』


(;´^ω^`)そ「ごるぱァ!?」


側面から『空気』による強烈なタックルが、彼の身体を押し倒す
紙を掠めた矢は背後へと通り過ぎ、斜線上に居たドクを目掛けて真っ直ぐに飛ぶ


('A`)「あぶねっ」


それを何なく掴んで止めたドクは、驚きで目を見開くヒートに見せつけるかのようにクルクルと指先で回した


<ヽ;`∀´>「あれは……」


ニダーの視界は確かにショボンと、その周辺を捉えていた。そこに、彼を救った『存在』は見えていなかった
しかしその『正体』は知っていた。牛舎で彼とビィ達を連れ去ったのは、残された『12シスターズ』のメンバーだったからだ
意図的に存在感を失くす能力。そこに居てもまるで空気のように『気にならない』、これまでで一番恐ろしい能力者の一人がショボンを救った


ξ#゚⊿゚)ξ「ほんっ……とうに、他力本願のクズなのね!!アンタ!!」

(´^ω^`)「いやぁ面目ないガハハハハハ!!!!」


アラビアンな踊り子の衣装に身を包んだ女が、忌々しく舌打ちをしながら身体を起こす。ショボンの『賭け』。それはトソンの『仲間』に救って貰う事であった
一部過激なメンバーがいるものの、根っからの悪人でもなく、むしろ正義に準して行動している組織であるならば
例え競争相手であろうとも、危機が迫れば『助けに入る』。意見の衝突による内輪揉めの最中なら尚更可能性は跳ね上がる
ショボンは『博打』に見事勝利し、命の危機を回避した。それだけに止まらない。トソンは切ってはいけない口火を『切ってしまった』

180 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:27:39 ID:9OubR0lk0
('A`)「返すぜ。そらよっ」


ドクは受け止めた矢をダーツのようにトソンへと投げ返す。当たった所で小さな怪我をするだけで済む速度のそれを


|゚ノ;^∀^)「ッ!?」


冷静さを欠いたレモナが撃ち落とした。視線と意識が逸れた瞬間を


从#゚∀从「おらっしゃあ!!!!!」

|゚ノ;^∀^)「ぐっ!?」


『対立する者』は見逃さない。銃身を掴んで捻ると、肩の関節を極めて床へと押し倒した


(゚、゚;トソン「レモナッ!!」

(∪#^ω^)「わんお!!」


新たな矢を引き抜こうとしたトソンは、側面から襲いかかってきた『犬』を反射的に避ける
鬱陶しがっていた首輪と縄は解かれ、背中には


( ∴)「ゴエエエエエエエエエエッッハアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


オタク女の魔の手から逃れたゼアが雄叫びを上げていた

181 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:34:24 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「はわわ」

「落ち着いてください、今解放しますから!!」


またもや『空気』がニダーに語りかけると、手脚の錠が音を鳴らして外れる
彼の身体を起こしたのは、ショボンを救った女とよく似た容姿の女。強いて違いを挙げるとするならば
表情は柔らかく、片割れと比べて一部分が『豊満』である事だろうか


ζ(゚ー゚;ζ「さぁ、逃げて!!」

<ヽ;`∀´>「あ、あり、ありがとうございますニダ!!」

ζ(^ー^;ζ「いえ、貴方の言葉、心に響きました。御武運を!!」

(゚、゚#トソン「デレ!!貴女……逃すか……っ!?」


今度は飛来した『オレンジ』が、トソンの弓を叩き落とす。邪魔をした本人は肩を竦めてため息を吐いた


(*‘ω‘ *)「行けっぽ。アタイらの負けだ」

('A`)「良いのか?」

(*‘ω‘ *)「あんな立ち回り見せられちゃ、やる気も失せるっぽ」

('A`)「そんじゃ、遠慮無く。じゃあなストリートファイター」

ノハ#゚⊿゚)「フン!!貴様とはいずれ決着を着けてやる!!」

('A`)「おお、思ったより懲りてなくて何よりだな。まぁ精々精進しろや。トンズラすんぜテメーら!!」

(´^ω^`)「おおよ!!サンキューなお姉ちゃん!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「うるさい人でなし!!」

(∪^ω^)「わんお!!」

( ∴)「ヒンチチ!!!!!!!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「やっぱ待ちなさいそこの超常保護対象ォ!!!!!!!!」

182 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:35:21 ID:9OubR0lk0
数日間に渡る争奪戦はここにて終わり、ショボン一行は廃工場を後にする
最後に、ニダーだけが背後を振り返った。トソンは絶望したのか、その場にへたり込んで項垂れていた


('A`)「……こっから先はあいつらの問題だ。俺らの出る幕じゃねえ」

<ヽ`∀´>「……わかってるニダ。時間を取らせて悪かった」

('A`)「謝罪ならディに言うんだな。急ごう。恐らく猶予はあと少しだ」


エンジンを掛けっぱなしの車に乗り込むと、間髪入れずに出発する
後部座席では数時間ぶりの再会を果たしたビコとゼアが歓喜で踊り、『舞台』になっていたビィが鬱陶しそうに振り落とした


<ヽ;`∀´>「ディ……」

(#゚;;- )「……」


ディは目を覚ましてはいるが、身体を起こす気力は残っていない。顔色も青白に近づいていた
それでも、ニダーの顔の『傷』を請け負おうと手を伸ばす。彼はその手を優しく握ると、そっと彼女の腹の上へと戻した


(´・ω・`)「ここからセブンクロスの『入り口』まではすぐだ。だが肝心のスリー・ドットの正確な位置はまだ掴めてねえ」

<ヽ;`∀´>「……間に合うニカ?」

(´・ω・`)「少なくとも『案内役』は元気いっぱいだ。あとは俺らの『脚』次第だろう」

( ∵)b「ゴエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」

( ∴)b「ゴエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」


二体は『任せろ』と言わんばかりに親指らしきものを立てる
それだけで、ニダーの不安は多少解消された


('A`)「さぁ、伝説を拝みに行こうぜ」


気合の籠もった一声に、二人は強く頷き返す
冒険の『ゴール』が聳える山々は既に視界に捉えていた―――――

183 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:36:26 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



シタラバと、隣国『ソーサク』の国境をなぞるように聳え立つ山脈、『セブンクロス』
乾ききった空気と土、そして水の入手手段の厳しさから、別名『拒絶の山々』と呼ばれるその場所は
細々とした一本道が延々と続くだけで、ソーサクの国境沿いまで街らしき街は存在しない


(´・ω・`)「強行軍だな……」


ビコとゼアの知らせで車を停めた時には既に、辺りは夕焼けに染まっていた
本来ならばキャンプを張って明日に備えるべきだが、ディの容態がそれを許さない


('A`)「夜の山を歩いて進むとか正気じゃねえな……ニダー、本当に大丈夫か?」

<ヽ`∀´>「問題ないニダ。バランス感覚なら僕が一番優れてるし、キミらはキミらで役割がある」


ニダーの背中にはディが背負われており、両手を使う為にスリングでしっかりと固定されている
何度か屈伸をして重量による負荷を確かめると、そのまま準備体操を始めた
持ってきたキャンプ道具は全て車の中へと残している。元より探索による長期滞在の為に用意したものだ
『明確にその場所へと導いてくれる』ビコとゼアがいる今となっては、余計な荷物に他ならない


('A`)「頼もしいね。脚を滑らせて二人諸共真っ逆さまとか夢見が悪くなるからやめてくれよ」

<ヽ`∀´>「お前ほんと嫌な性格してんな顔面と性格ブサイク」

('A`)「ママァ!!!!!!ニダーが酷い事言ったァ!!!!!!!!!」

(´・ω・`)「お前の口がブサイクだからだろブサイク」

('A`)「俺の母親と同じくらい酷ぇなお前」

(´・ω・`)「間男と一緒に親父殺して遺産手にしようとした俺のお袋よりマシじゃん」

<ヽ;`∀´>「キミらどういう家庭環境で育ったの?」

184 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:37:25 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「灯りも心許ないな……オメーらの案内が頼りだ。頼むぜちびっ子コンビ」

( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」

(∪^ω^)「わんお!!」

(´^ω^`)「勿論オメーも頼りにしてるぜワン公!!」


ショボンは父親からの『餞別』を抱えなおすと、目の前に立ちはだかる『最後の難関』を見上げた
『兄が消えた山』であり、その原因となった『先住民』が棲む魔境。彼の膝は小刻みに『ふるえ』を起こした


:(´^ω^`):「……クク、参ったぜ」


ただし、臆病風に吹かれた『震え』ではなく、高揚による『奮え』である


(´・ω・`)「っしゃ……」


ガツガツとブーツの底で地面を蹴り、奮えを身体中に馴染ませる


(#´゚ω゚`)「行くぞォオオオオオオアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」


冒険者の雄叫びは、人を拒む山々にぶつかり反響し


(#'A`)<ヽ#`∀´>「「オオッッッ!!!!!!!!!!!!!」」

(#∵)(#∴)「「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」」

(∪#^ω^)「わんわんおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


それに応える咆哮が後に続いた


(# ;;- )「……」


目指すは『スリー・ドット』。精霊の、故郷である

185 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:39:02 ID:9OubR0lk0
( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」

(∪^ω^)「わんおわんお」


暗くなり始めた山道を、ビコとゼアを乗せたビィの先導で突き進む
ありったけのライトやランタンで照らしているとは言え、やはり視界が悪く足下が覚束ない
しかし、その場で『最も安全なルート』を選んでいるらしく、窪みに足を取られたり躓いたりなどのトラブルは起きなかった


(;´・ω・`)「ハァ、クソ、重ぇな……俺ぁ別に海兵隊志望じゃねえってのに……」

('A`)「鉄の塊抱えながら山道なんて歩くことねえもんな……置いてくりゃ良かったじゃねえか」

(;´・ω・`)「襲われないとも限らねえだろ。ここで十数人が失踪してんだぜ?」

('A`)「まぁそうだがよ」

<ヽ`∀´>「その、先住民って悪い人らニカ?」

('A`)「何言ってんだお前。グリーン・インフェルノの二の舞もあり得るんだぜ?」

(´^ω^`)「密林じゃねえからこの場合『ロック・インフェルノ』だな!!ガハハ!!」

<ヽ;`∀´>「的確に最悪なチョイスを……そうじゃなくて、僕達は今『Rebel』を連れているじゃん。それの祭事が行われているなら、むしろ歓迎されるべきじゃないニカ?」

('A`)「あー……楽観的に考えりゃそうだな。どうなんだ?」

(´・ω・`)「わかんねえけど……先住民ってよ、マサイ族みてーに文化その物を観光業にしてる連中ならまだしも、マイナーになればなるほど『排他的』になる傾向があるんだ」

('A`)「学者が入る隙もねえって事か。それか、狭いコミュニティで築かれた同族の絆と縄張り意識」

(´・ω・`)「そう。余所からの『血』を取り入れる必要が無く、彼らだけのコミュニティで完結していたとする。その場合懸念されるのは……」

<ヽ`∀´>「外の世界からの侵略ニダね」

(´・ω・`)「その通り。彼らが俺達と同じ社会に参加しなかった理由の一つは、極端に『外』を恐れているからってのがある」

<ヽ`∀´>「……善悪関係は無く、『外から来た』と言うだけで迫害に値する。か」

('A`)「触らぬ神とやらだな……俺らは今、余計な世話を焼いて消えちまった連中と同じ道を辿ってんだな」

186 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:40:17 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……避けるべきなんだろうな。お互いの為にも」


『冒険』とは『開拓』だ。世界の謎を解き明かす為に旅をして、研究を行う。だがその行為を、必ずしも全ての人間こ歓迎されるワケでは無い
かのクリストファー・コロンブスが、新大陸の原住民に対して虐殺と略奪を行ったように、これまで穏やかに過ごしていた人々へと災厄を運ぶ悪魔に成り得るかもしれない
好奇心や知識欲は必ずしも悪性を秘めてはいない。しかし『最悪』の事態を引き起こす『種』となる事はある
それを芽吹かせてしまうくらいなら、不可侵を突き通すべきなのだろう。だが――――


<ヽ`∀´>「そうも、言ってられないニダね」

('A`)「何があろうとも、『答え』は見つかるだろうしな」


そこに『家族』が関わっているならば、例え危険が伴おうとも踏み入れなければならない


(´・ω・`)「その通りだ……いざとなったらお前らを犠牲にして俺だけ逃げる」

('A`)「いやそれはねーよ」

<ヽ`∀´>「この期に及んでクズを貫き通すな」

(´^ω^`)「ぬぅん!!信念!!」


三人は疲労をかき消すかのようにゲラゲラと笑い合った。その時――――


(∪^ω^)「わんわんお!!」


何かを知らせるかのように、ビィが勢いよく吠えた


(´・ω・`)「っ……」

('A`)「ニダー、下がれ」

<ヽ;`∀´>「おっ、おう」


ショボンはAA—12を構え、ドクは深く息を吐いて呼吸を整える。二人はディを背負うニダーを庇うように前に出た

187 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:41:10 ID:9OubR0lk0
(∪#^ω^)「ウルルルルルル……」


姿勢を低くし唸り声を上げる。誰の目にも明らかにビィは『威嚇』していた


(;∵)「……」

(;∴)「……」


いつも騒がしいビコとゼアですら、静かに押し黙って互いを抱きしめ合っている
何度も『脅威』の存在を知らせていた彼らが『怯えていた』。火のない所に煙は立たない。何もなく見えようとも、そこには怯えるに値する存在が居る


<ヽ;`∀´>「……下がるニカ?」

('A`)「いや……多分これ『詰んで』んな。ショボン、お前ならどうする?」

(´・ω・`)「……退路を、断つだろうぜ」

<ヽ;`∀´>「……」


ニダーは唾を飲み込むと、背後を確認した。すると、『岩肌』が蠢き始める


(;´・ω・`)「おいおいおいおい……ダッチ少佐かよ」


『岩肌』は一つ、二つと立ち上がる。ライトの灯りに照らされたその姿は、肌を保護色に塗った人の形をしていた
各々が槍や弓など原始的な武器を手に、『外からの侵略者』を取り囲んでいく。僅かな風にすらかき消される足音は『捕食者』を連想させた


「ユメナラバ ドレホド ヨカッタデショ」

「イマダニアナタノコトヲ ユメニミル」


(;'A`)「なんて?」

(;´・ω・`)「分かるワケねえだろ……」


母国語では決して無い、彼ら独自の言語がヒソヒソと囁かれる。包囲網は徐々に狭まって行き、逃げ場は無くなる
どれほどの楽観主義者でも、『歓迎されている』とは思えないだろう。取るべき行動は二つ、『抵抗』か『服従』か

188 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:42:23 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……どうする?」

(;´・ω・`)「……」


不意を突かずこうして取り囲むと言う事は、侵略者に対して何かしらの『目当て』を抱いている可能性が高い
それは個人が有する財産の略奪ではなく、『身体』や『命』に関連する物事ではないかとショボンは推理した
つまり、今ここですぐさま『殺される事は無い』。だったら、無暗に抵抗をして刺激するべきでは無いだろう


(;´・ω・`)「……従っとくぞ。今はな」

<ヽ;`∀´>「了解……」


「アナタ フラフラフラフラミンゴ」


(;´・ω・`)「お、おお……武器かい?ほらよ」

(;'A`)「渡していいのか?」

(;´・ω・`)「弾は抜いてある。ただのこけおどしだ」

(;'A`)「ほんっと良い根性してやがる」


原住民の一人にAA—12を手渡すと、彼はそれを興味深げに弄繰り回した後、部下と思わしき人物へと渡した
グリップを握り、トリガーを指で引いたのを見るに、『銃』の知識はあるらしい
しかし散弾銃の中でもかなりの特異体であるAA-12の扱いそのものには疎いと見た


「オサ!!オサ!!チハイノチナリ!!」


<ヽ;`∀´>「何する……やめろ!!」


後方の一人が、ニダーからディを引き剥がそうとする。無抵抗を選んだ身だが、譲れない者は守らねばならない


「オオン!!ジョジョリオン!!デビリオン!!」


<ヽ;`∀ >・'.。゜「うっぐ……!!」


腹に『棍棒』が叩きこまれ、ニダーはその場に膝を着いてしまう

189 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:43:21 ID:9OubR0lk0
(#'A`)「てめっ……!!」


「ベルモンドバンデラスダレヤネン!!ダレパンテェテェ!!」


激昂して掴みかかろうとしたドクに、『Freeze』の意味を込めて何本もの槍の穂先が向けられる
ディを取り上げた先住民は、身体中に刻まれた傷跡を確認すると――――


「『Rebel』」


と、三人にも明確に伝わる、『精霊の名前』を高々と口にした


(;´・ω・`)「今……!!」


「コヨイ!!ボクタチハトモダチノヨウニ!!ウタウダロウ!!」


「「「ウーハァ!!!!!」」」


リーダーの号令に、先住民たちは一斉に色めき立つ。彼らは縄を取り出すと、三人を拘束せんと詰め寄る


(∪#^ω^)「わんわんお!!ウルルルルル!!」


人の事情など知った事じゃないビィは、手を差し伸べた一人に対して牙を剥くが、首根っこをヒョイと掴み上げられると


(∪#^ω^)「わんわんわんわんお!!わんお!!」


『背負い籠』の中へと収納され、上から蓋を閉められた

190 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:44:09 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「痛ってぇ……おいドク見たか?」

(;'A`)「ああ……ぐっ……居なかった」


縛られながらもその様を確認していた二人は、逆転になり得る『変化』を見逃さなかった
『ビコとゼア』の姿が、ビィの背中から消えていたのだ。先住民たちの様子を見るに、その事に気づいてはいない


(;'A`)「どう捉える?」

(;´^ω^`)「それを聞くか?」


『逃げた』など、『見捨てられた』など、微塵も思わなかった。不気味で喧しく、生意気で滑稽
そして頼もしく可愛げのある彼らは既に、三人にとってかけがえのない『友』となっていたのだ。疑うなど、最初から頭に無かった


(;´^ω^`)「耐え忍ぶのもまた冒険だ。信じようぜあいつらを」

(;'∀`)「へっ……言われるまでもねえや。さぁ!!天国だろうと地獄だろうと何処へでも連れてけや原始人共ォ!!」


「オレンジアームズ!!!!ハナミチ オン ステージ!!!!!」


両手を後ろに回され縛り付けられた彼らは、先導役を変えて再び歩き始める
太陽は深く沈み、数多に光る星々だけが、彼らの行く末を見守っているのであった―――――

191 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:45:04 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



「ウンメイノ ヤキニクロード」

「イカリノデスロード」


凡そ三十分ほど、柄で突かれながら進んだ先に『洞窟の入り口』に辿り着く
リーダーはその場にいた見張りに短く事情を説明すると、彼は三人と雑に抱えられているディを見てニヤリと笑った


「コチラガワノ ドコカラデモアケラレ マス」


松明に火打ち石で火を灯すと、洞窟の内部へと先導する
道は石を切り崩し整備され、山道と比べて格段に歩きやすかった
壁には恐らく『糞』を燃料とした灯りが等間隔で設置されている


('A`)「奴らの住居にご案内ってか。スイートルームは期待できなさそうだな」

(´・ω・`)「わかんねえぜ?Wi-Fiが使えるかもしれねえ」

<ヽ;`∀´>「これで生活水準高かったらシタラバ語話してても可笑しくないニダ……」


軽口を叩き合いながら洞窟内を『降って』いく。時間帯もあるだろうが、山の内部は熱帯夜とは無縁な程に肌寒く、汗ばんでいた身体を凍えさせる
光源は進むほどに増えていく。その反面、道幅は徐々に萎んでいく。『行き止まりなのではないか?』と不安が過るが


「イッショウニイチドハ イッテミタイナ オマエヲシアワセニシテヤルテ」


その際奥に、一般住居の扉ほどのサイズの『穴』、言わば『入り口』が待っていた

192 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:46:08 ID:9OubR0lk0
「シャナナナナナ!!アンタノシアワセガイチバン!!」


(´・ω・`)「入れってね、はいはい……」


背中をドンと押され、三人はその入り口を潜る。内部を目の辺りにした瞬間、それぞれが息を飲んだ


(;'A`)「こりゃすげえ……」


山の内部を丸々繰りぬいたかのような広大な半球状の空間。そこはまるで、天然が作り出した『野球ドーム』であった
壁際には石を掘り出した住居が点在し、窓穴からは暖色の光が溢れ出している
軒には商店や飲食店と思しき店舗が並び、動物の皮や串焼きなどの取引を、何かしらの『通貨』を使用して行なっていた
太陽や月の光の届かない山の奥底であるが、火の灯りだけを頼りにしている割には明るい
光源に磨き上げた『鉱石』を設置する事で反射による光の増幅を施していた


(´・ω・`)「思っていたより……文明は進んでるな。21世期にしちゃだいぶ遅れているが」

<ヽ;`∀´>「だけど……やっぱりこのコミュニティで完結している。アレを見るニダ」


ニダーが顎で指し示した先には、どこからか引いてきた『水』の貯水槽
岩をくり抜いて作られたであろうその場所から、何本もの溝に沿って流れていく


<ヽ;`∀´>「『水道』ニダ。人が生活するには厳しい筈のこの場所で、安定して水を得られる手段、そしてそれを分配する方法を彼らだけが知っている」

('A`)「となると……畜産及び農業も安定して行われていると考えるべきか。こいつら、こんなカスカスの土地だってのに結構『体格が良い』。さぞかし良いもん食ってんだろうよ」

(´・ω・`)「……」

('A`)「どうした?」

(´・ω・`)「いや……あいつらが使ってる『カネ』みたいなもん……」


「ドトールウジマッチャラテ!!」


(;´・ω・`)「あーはいはい!!静かにしますよ!!」

(´^ω^`)「尻穴チンポ野郎野郎が」

<ヽ;`∀´>「言葉が通じないからって滅茶苦茶言うじゃん……」

193 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:48:01 ID:9OubR0lk0
入り口から奥へ奥へと進み、反対側の壁際へと到着する
他の住居よりも一際大きく、派手な装飾も施されていることから『族長の豪邸』であると読み取れた


「ビバアフター スクール イェイイェイ」

「ハイハイハイピース」


召使らしき人物が、リーダーとディを抱えた先住民、それと三人を中へと招き入れる
室内へと入った瞬間、洞窟の中にも関わらず三人は『目を眩ませた』


(;'A`)「なんの冗談だよ……」

<ヽ;`∀´>「あれって……?」

(;´・ω・`)「やっぱそうかよ……」


天井にぶら下げられているのは、煌びやかな鉱石で造られた『シャンデリア』
素人目から見ても安っぽい代物ではなく、権力と財力を誇示するかのように光り輝いている
部屋の最奥には『狼』の毛皮が縫い込まれた『玉座』に、これまた装飾品を鎖帷子のように着飾った『老人』が鎮座している
傍らには三人を拘束した先住民よりも遥かに体格の良い大男が直立不動の姿勢で佇んでおり、外敵を厳しい視線で睨めつけた


「チンチンボウヤ Rebel セックスオンザビーチ」


傅いたリーダーが報告をすると、族長は腫れぼったい瞼をカッと見開かせた
グワと大きく開かれた口には、シャンデリアや装飾品と同じ『鉱石』で造られた差し歯が入れ込まれている
趣味が良いとは言えないファッションに、ドクは小さく「うわ成金趣味キッモ」と呟いた


/ ,' 3「Rebel!!!!マイッチングマチコセンセ!!!!!クックドゥドゥルドゥ!!!!!」

( ゚∋゚)「ウーハァ!!!!!!!!!」


族長の呼びかけに大男が応える。リーダーや召使達はその姿を、さながら『ヒーロー』でも見るかのように目を輝かせた

194 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:48:36 ID:9OubR0lk0
/ ,' 3「スギヤケンシ ヤッテヤロウジャネエカ コノヤロウ!!」

「ウーハァ!!」


族長が下した指示に低頭で応えると、三人を強引に部屋から連れ出した


(;'A`)「テンポ早えよ何だってんだ……ッ!?」


この中で唯一、『殺気』を感じ取れるドクは族長たちの方を振り返る


( ゚∋゚)「……」


それを放った張本人は、明確にドクだけを見つめ


( ゚∋゚)「……」


人差し指で、首筋を掻き切るジェスチャーをした


('A`)「……」


言葉は通じずとも、ボディランゲージはコミュニケーションの手段となる
意味するところは分かりやすく『生贄』か、それとも『戦い』か。いずれにせよ、ドクは自分自身が最も『死』に近いのだと確信し――――


('∀`)「へっ……」

( ゚∋゚)「!!」


『余裕の笑み』を返した

195 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:49:39 ID:9OubR0lk0
('∀`)「首洗って待ってろってか。上等じゃねえか」


彼は『心を折る』手段をよく知っていた。それ故に、『折る側』に有効な態度も熟知していた
恐れを表に出さず、なんてことないと受け流す『胆力』。攻められながらも、相手を見下す『受け手の反撃』


(#゚∋゚)「ヒカキンティビィー!!!!!ギンイロノヤツ!!!!!!センエイジャシュ!!!!!!」


効果は絶大だったようで、大男は口角から泡を飛ばしながら激昂し、召使たちが慌てて宥めかけた


(;´・ω・`)「おいなんであいつあんなキレてんだ?」

('A`)「さぁな?乳酸菌取ってねえんじゃねえの?」

<ヽ;`∀´>「どうしてそう人を煽って壊す事だけに長けてるニダ……」


これから何が起こるか。三人の中でドクだけが肌感覚で予測できていた
事態を対処できるのは、ショボンでもニダーでもなく、腕っぷしに自信がある自分以外に無い


('A`)「……」


ドクは更に強く『覚悟』を決めた。『死』に対するものではなく、今まで通り『勝ち』『生き残る』覚悟を
それが彼の生き様であり、誰にも踏みにじられる事のない『強者』としての誇りであった

196 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:50:59 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(´・ω・`)「ドク、スイートルームだ」

('A`)「ああ、硬いベッドに岩の檻、フレグランスな香りのトリプル7。ジャックポッドだな」


移された場所は、生活圏より『下層』にある牢。灯りは僅かで薄暗く、うっすらと糞尿の臭いが漂っている
縄の拘束から解放されたものの、自由からは程遠い。装備品は全て取り上げられ、成す術もない


(∪#^ω^)「わんわんわんわんお!!!!!!!!!」

「イギー!!!!ザ フール!!!!!」

<ヽ;`∀´>「気持ちはわかるけど落ち着くニダ……疲れるだけニダよ」


同じく籠から解放されたビィは、『看守』に向かって怒りをぶつける。鳴声は狭い檻の中で反響し、鼓膜が僅かに痛んだ


('A`)「ビィよ、今は堪える時だぜ?後でギャフンと言わせた方が楽しいじゃねえか」

<ヽ`∀´>「陰湿極まってるニダ」

(∪#^ω^)「ブス……」

('A`)そ「ビィが喋った!?」

(´・ω・`)「被害妄想乙。それより、状況を整理しようぜ」

197 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:53:01 ID:9OubR0lk0
見張りに背を向けるように三人と一匹は円を組み、声を潜めて会議を始める
最初の話題は、ショボンが気づいた先住民の『通貨』についてだった


(´・ω・`)「ダイヤモンドだ」

<ヽ;`∀´>「は?」

(´・ω・`)「奴らは取引にダイヤモンドを使っている。それと族長の家のシャンデリアや装飾品、灯りの増幅にも使われている」

<ヽ;`∀´>「え、えと……え?見間違いとかじゃなくて?」

('A`)「いや、俺もそうだと睨んだ。ウチのババアが身に着けてるもんとよく似ていた。ショボン、お前は?」

(´・ω・`)「俺ァ……ガキの頃に親父が見つけたお袋の『ヘソクリ』だな。水切りの石に使わせてもらった」

<ヽ;`∀´>「えー、ええ……なにこの……金持ちと庶民のギャップ……」


ダイヤモンドの産地として有名なのは、北の大国『シベリア』や、南国『ワカンダ』などが挙げられるが
彼らの母国であるこのシタラバでも産出されている。中にはダイヤモンドを掘る事の出来る州立公園があるほどだ
しかしながら、狭いコミュニティとは言え『通貨』として使用できるほどの潤沢な産出量は未だかつて報告されておらず
もしもこの場所が公に知られるようになれば、『拒絶の山々』は『宝の山々』と名前を変えることになる


('A`)「思わぬ財宝が見つかったが、スリー・ドットと関連があるとは思えねえぞ?」

(´・ω・`)「いや、そうでもねえ。ダイヤモンドの発生原因の一つに、『太古の時代に地球に飛来した隕石の衝突』というものがある」

<ヽ;`∀´>「ッ!!それって……」

(´・ω・`)「Rebel……ディの祖先は『宇宙』からやって来たんじゃないかと思う」

(;'A`)「なるほど……辻褄は合うな」


(∪^ω^)「フンフンフン……」

(^ω^∪)「?」

198 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:53:54 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……ビコとゼアは?」

(´゚ω゚`)そ「アーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!確かにそっちの方がそれっぽい!!!!!!!!!」


「ゴウランガ!!!!ニンジャコロスベシ!!!!」


(#´゚ω゚`)「っるっせえぞチンカス野郎が今盛り上がってんだから水を差すんじゃねえ殺すぞ!!!!!!!!!」


「……」シュン


(#'A`)「ちょっと男子!!見張り泣いちゃったじゃん!!」

<ヽ`∀´>「……」

('A`)「さぁ」

<ヽ`∀´>「乗らねーからな」

('A`)「ノリ悪の民か?だが、ニダーの説も一理ある。あいつらが一体何の為に行動しているかはわからないままだからな」

<ヽ`∀´>「すると……先住民はダイヤモンドという『恵み』を齎したRebelを『精霊』として奉っている。と」

(´・ω・`)「それも辻褄が合うが……『苦痛』とは関係なくないか?」

<ヽ;`∀´>「た、確かに……」

('A`)「その点に付いては俺に憶測がある」


(^ω^∪)「フンフンフン……わんお」


('A`)「わんおわんお。後にしてくれ」


(∪^ω^)「ブス」


(;'A`)そ「ぜぇーーーーーーったい喋ってるって!!!!」

(´・ω・`)「どうでもいいから早く話せよブス」

<ヽ`∀´>「合ってんだから一々突っかかるなブス」

199 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:55:00 ID:9OubR0lk0
('A`)「恐らくこの後確実に、俺はあの大男と対峙する羽目になる」

<ヽ;`∀´>そ「なっ……なんで?」

('A`)「さぁな……でもまぁ、『見抜いてる』感じはしたよ。この中じゃ俺が一番強いってな」


手持無沙汰になったのか、ドクは小石を指で弄び始める


('A`)「そんで……『殺害予告』もされたよ。お前の首を刈るってな」

(;´・ω・`)「オイ待てよ……だったら落ち着いてる場合じゃねえだろ!!」

('A`)「直ぐには殺されねえだろうよ。だってあいつは『強い奴』を選んだ。生贄にするなら別に誰だっていいだろ」

<ヽ;`∀´>「『戦う』と?」

('A`)「恐らくな。ありゃ結構強いわ。コスプレ・ガールには及ばねえがな」

(;´・ω・`)「ッ……それで『苦痛』か!!」

('A`)「ああ。このコミュニティで最も勇敢な『戦士』と、外敵である『俺』を戦わせて、『苦痛』を精霊に捧げる……多分、そういう意味合いを持つ祭なんだろう」
l
<ヽ;`∀´>「でもそれって実質『生贄』となんら変わりゃしない!!ここは彼らの『ホーム』で、『外敵』を勝たせるような真似を許すはずがないニダ!!」

('A`)「そうだな、だけど……」


指先で小石を地面へと押し付け


('A`)「『俺の方が強い』」


そのまま『押し潰す』。粉微塵となった石の残骸を、フッと吹き飛ばした


('A`)「それに、心配するのは俺じゃなくて『ディ』の方だ。奴らがRebelの特性を知っているならば、あいつらはきっと――――」

200 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:56:49 ID:9OubR0lk0



「いででででで!!!!!」




(;´・ω・`)そ「うおっ!?」


牢の奥から突如聞こえて来た『男の悲鳴』に、三人は思わず身構える
か細い灯りが届かぬその場所からぼんやりと、何かを引きずるビィの尻が見えた


(;^Д^)「何だよこいつ痛ぇ痛ぇって!!クソ犬が!!」

(∪#^ω^)「ウルルルルル!!」


『シタラバ語』で悪態を吐く薄汚れた身なりの男。伸び放題の髭と髪が、この場にいた年月を思わせる
若者はビィを振りほどくと、あんぐりと口を開ける三人に気付いて言葉を失った


(;^Д^)「え……は、え?」

<ヽ;`∀´>「ビィ、こっちに!!」

(∪^ω^)「わんお」フンス


ニダーはビィを抱きかかえると、警戒し後ろへと下がる
男は瞬きを繰り返し、目を擦って反芻するかのように三人と一匹の存在を確かめると


(;^Д^)「ああ、ああ……シタラバ人だ!!シタラバ人だろアンタら!!」


一番近くにいたドクの足にしがみ付いた


(;'A`)「ようようよう落ち着け兄さん。アンタ誰だ?いつからここに?」

(;^Д^)「た、助けに来てくれたんだろう!?ああ、良かった!!もう限界だ、沢山だ!!年月なんてとうに忘れた!!馬鹿共はみんな殺されちまって、残りは俺だけだったんだ!!」

(;'A`)「え?何?どういう事?」

(´・ω・`)「ドク」

(;'A`)「ショボンどうするこのひ……と……」

201 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:57:59 ID:9OubR0lk0
ショボンの冷たい声色に、ドクもニダーも察しが付く


(´・ω・`)「……プギャー・スマイリィ。学生運動サークルのリーダーだ。よく覚えてるぜ、そのムカつく面構え」

(;'A`)「こいつが……?」


名前を呼ばれた『プギャー』はショボンの顔を見上げ、『ヤニ』にまみれた瞼を見開かせる。そして


(;^Д^)「は、はは……あ、あの、バーデラスの、弟か……」


唇を戦慄かせながら、彼の『兄』を口にした


(;^Д^)「な、なぁ……あいつは!?あいつの指示で助けに来たんだろう!?いつ出れる!?いつ帰れる!?」

(´・ω・`)「……残念ながら、兄貴は行方不明だ。俺らもアンタと同じく捕まって、沙汰を待ってる」

(;^Д^)「は……?冗談だろ?オイ……」

(´・ω・`)「俺にとっちゃ兄貴じゃなくてアンタがここに居る事こそが一番の冗談だ」

(#^Д^)「ふざっ……けんじゃねえぞガキコラァ!!!!!!!」


激昂して掴みかかろうとしたプギャーを、ドクが軽く突き飛ばす
元より衰弱していたのか、簡単に地面を転がった彼は咽び泣きながら地面を殴った


(#;Д;)「こんなのって……ヒグッ、あるかよ……兄弟揃ってボンクラの役立たずなんざ……」


(;'A`)「あー……元からこういう性格?」

(´・ω・`)「いや、プライドと声がデカい自信家だった。根がクズなのは変わりないようだがな」

('A`)「じゃあ同情の余地ねえな」

<ヽ;`∀´>「自業自得だけど、ちょっとは手心加えてやるニダ……」

202 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:59:22 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「まぁ、手がかりが生き残ってたってのは思わぬ幸運だな。神に感謝だ。アーメン」


大げさに十字を切ると、プギャーの胸倉を掴み上げ壁に押しやる
見張りは注意しようとしたが、眼を飛ばすと気まずそうに見てみぬ振りをした


(#´・ω・`)「何故ここへ来た?何が起こった?兄貴は来たのか?全て洗いざらい話せ。直ぐに!!」

(;^Д^)「ハッ、ハッ……Son of a bitch……!!」

(#´゚ω゚`)「オッルァア!!!!」

(;^Д )・'.。゜「ゴフッ!?」


腹に拳を打ち、蹲った所を、脂まみれの髪を掴み地面へと叩き付ける
激情に任せた『拷問』に、友は誰一人として止めようとしなかった。満場一致で『そうされて当然の人物だ』と判断したのだ


(;^Д^)「話す!!やめ、やめてくれ!!頼む、頼む……!!」

(#´・ω・`)「ああ話せ!!それ以外にテメーの価値なんざねえ!!」


惨めな男は手を組んで懇願する。その姿すらも、ショボンの癪に障った


(;^Д^)「わ、わ、悪いのは、あの女だ……あいつが、お、俺に、セブンクロスの『秘密』を教えてくれた……」

<ヽ;`∀´>「女って……」

(;^Д^)「バーデラス……しゃ、シャキン・バーデラスの女だ……あ、あいつは俺をベッドに誘って、『致した後』にその話を持ち掛けた……」

('A`)「……」

(;^Д^)「せ、セブンクロスの先住民は、大量のダイヤを所有しているってな……ど、ど、どうせ価値なんざわかんねえんだから、『手土産』と交換しに行こうと提案して、俺はそれに乗った……」

(´⁻ω⁻`)「……手土産とは?」

(;^Д^)「へ、へへ、決まってんだろ……声を上げりゃ世界が変わると本気で思ってる、ば、馬鹿共だよ……!!」

203 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:01:07 ID:9OubR0lk0
('A`)「なるほど……先住民を救うなどと大義名分を掲げて、アンタはまんまと『人身売買』に乗り出したってんだな」

<ヽ;`∀´>「バカげてる!!リスクがありすぎるニダ!!例え成功しても彼らにだって『家族』がいる!!糾弾は避けられない!!」

(;^Д^)「い、居なくなったとしても、『俺の所為じゃない』。イカレの先住民が他の連中を殺して、俺は命からがら逃げだしたって、世間に伝えりゃ良いだけだからな」

<ヽ;`∀´>「……本物のクズニダ」

(´⁻ω⁻`)「……続けろ」


男が抱いていた恐怖が『狂気』へと変わったのか、血みどろの顔を歪ませてヘラヘラと笑い始める


(;^Д^)「お、女は『嘘』は吐いていなかった。お前らも見ての通り、ここはシタラバで最大量の『ダイヤモンド』を保有してる。だが!!だがあいつは!!」


と、思いきや、今度は怒りで身を震わせた


(#^Д^)「事もあろうに『俺』まで取引材料として使って、一人だけとんずらしやがった!!あの女は最低の悪魔だ!!俺を身体と口車で騙した、最低最悪の売女だ!!」

('A`)「どの口が言えんだよ。お前がしようとしてた事と一緒じゃねえか。これじゃ犠牲になった脳内お花畑の連中も報われねえな」

(#^Д^)「お前に何がわかる!?ああ!?信じてた奴に裏切られ、周りの連中は次々死んでいき、俺一人だけがここに取り残される苦しみがわかるか!?」

('A`)「ダメだ。あの『スペシャル・フォース』以上に話が通じねえ野郎だぜこいつ」

<ヽ;`∀´>「彼女が……トソンさんが人を信じられなくなるのも、わかる気がするニダ」

(´・ω・`)「……概ねの事情は把握した。それで、兄貴は来たのか?」

(#^Д^)「シャキンか!?シャキン・バーデラスかァ!?ああ、来たさ!!奴の忌々しい顔面が、俺に取っちゃ救いのヒーローに見えた!!」


『だがあいつはァ!!』。嗚咽が混じった悲痛な金切り声だったが、誰一人として心は動かない


(#^Д^)「俺のことなんざ無視して、先住民のガキを一人攫ってとっとと帰りやがった!!信じられるか!?なぁ!!」

('A`)「ガキ……?」

(´・ω・`)「……ディだろうな」

204 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:03:42 ID:9OubR0lk0
(#^Д^)「なんだ?知ってんのか?じゃあ良い話を教えてやるよ!!あのガキ、死ぬぜェ!!それもただ死ぬんじゃねえ、『お前らに刻まれた苦痛』を引き受けて、苦しみながら死ぬんだ!!」

<ヽ;`∀´>「っ、それって、どういうことニカ!?」

(#^Д^)「俺は見てんだよ……へへ、へへへ、レベルだかラベルだか呼ばれてるガキが、無駄に傷つけられた馬鹿共の傷を吸ってる所を……」


掠れた笑い声は、喉では飽き足らず腹から込みあがっている
まるでこれから三人が辿る末路を、心底『面白がっている』ように


(#^Д^)「治った奴はまた何度も何度も何度も痛めつけられ、その度にまた治される!!心が壊れるまでずぅーっとな!!何の反応も示さなくなったら、サクッと殺して家畜の餌だ!!」

<ヽ;`∀´>「……奉っているんじゃ、ない、ニダ……」


ニダーは立っていられなくなり、その場にへたり込んだ。『祭事』と言うだけで、先住民は精霊を崇め奉っているワケでは無かった
ただ、『自分たちの娯楽の為』にRebelと犠牲者を捕まえ、繰り返し嬲って楽しんでいる。だからこそ、彼女の故郷である『スリー・ドット』の近くに集落を作った
鳥に帰巣本能があるように、いずれ旅を終えて戻ってくるRebelを捕えて、『イベント』として盛り上がるためだけに―――


(#^Д^)「なぁ、まさかお前ら、そのガキと一緒に来たんじゃねえだろうな!?兄貴の、手がかりを探して!?ええ!?」

(´⁻ω⁻`)「……」

(#^Д^)「は、は、ハハハハハ!!!!ハハッ、ハハハハハ!!ざっ、ざまぁねえぜ!!バーデラスの野郎も報われねえなぁオイ!!こっ、こんな間抜け共がノコノコと餌になりに来ただなんて!!」

(#^Д^)「ガキが居なくなってから俺の番は回ってこなかったが、どうやら今回のメインはお前らが先みたいだぜ!!とっ、特等席で!!お前らの心が死んでいく姿を楽しっ……」


大きくあけられた口に、ショボンのつま先が蹴りこまれる
折れた歯の欠片が飛び散り、壁に頭を打ち付けたプギャーは血を吐き出しながら喘いだ


(;^Д^)「ハヒィー!!ハヒィー!!ハガ……ハガ!!」

(#´・ω・`)「イラつくぜ。こんな大事な情報をッ!!資料から抜いたあのッ!!アホの兄貴になッ!!」


容赦なく顔面を靴底で踏みつけていく。やはり誰も止める者はいない
プギャーは細腕で防ごうと努力したがそれも虚しく、四度目の蹴りで呆気なく意識を失った

205 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:04:53 ID:9OubR0lk0
(#´・ω・`)「俺以上のクズが……」


ベトリと靴に着いたプギャーの血を、こびり付いた犬のクソを払拭するかのように地面へと擦り付ける
辛うじて息はあった。このまま殺してしまう事も出来たが、『生き地獄』を味わわせた方が彼にとっては死ぬ以上の苦しみだろう


('A`)「……慰めにはなんねーかもしれねえけど」

(#´・ω・`)「言うな、わかってる、兄貴も俺らもその『女』にハメられただけかも知れねえ。情報に穴があった理由もそれで説明が付く」

<ヽ;`∀´>「それよりディが!!い、いや、僕達だって、サークルメンバーと同じ末路を」

('A`)「落ち着け。俺らにはまだ希望がある」

<ヽ;`∀´>「だけど!!」

('A`)「ニダー」


怒鳴りつけるワケでも無く、ドクは静かに友の名を呼んだ
『明鏡止水』。絶体絶命のこの状況に置いて、怒りも焦りも感じられない態度は


<ヽ;`∀´>「っ……」


ゾクリとした『恐ろしさ』と、『落ち着き』を与えた


('A`)「あいつらはやれる連中だ。それはお前だってよく知ってるだろ」

<ヽ;`∀´>「……ああ」

(∪^ω^)「わんおわんお!!」


ブンマルでは、彼らとビィが居たからこそ危機を脱することが出来た。いつだって、『任せろ』と自信に満ち溢れていた
シンプルが過ぎるあの顔を思い出し、ニダーは臭う空気を吸い込み、やや肺に留めてから吐き出す


<ヽ`∀´>「勿論、信じているニダ」

('A`)「それでいい。時間なら俺が幾らでも稼ぐ。お前らは『特等席』とやらで、俺の活躍を楽しめ」

(´^ω^`)「くっ、クク……尊大不遜もここまでくりゃ才能だな」

206 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:05:54 ID:9OubR0lk0
三人は拳を突き合せようとして、ふと足下を確かめた


(∪^ω^)「……」


じぃと顔を見上げるビィが、物欲しそうに尻尾を振っている。生意気な犬が初めて見せた可愛げに、三人は鼻で笑った


(´^ω^`)「ほらよ、お前も」


ビィが届くようにしゃがみ込むと、彼は頭を差し出した
種族は違う、言葉も先住民以上に通じない。それでも、この行為を行う『意味』を知っている


(´・ω・`)「『勝つぞ』ッ!!」

('A`)「オオッ!!」

<ヽ`∀´>「オオッ!!」

(∪^ω^)「わんわんお!!」


ゴツリと合わさった拳と頭。更に深まった団結は、彼らの心身に力を漲らせた


「ゴルバチョフ ジムソウチョウ!!」


それを見計らったかのように、『迎え』が到着する。祭の準備は整ったらしい
檻の錠が解かれ、三人と一匹は先住民の手によって連れ出された


(  Д )「」


誰一人として、『クズ』へと振り返る者はいなかった―――――

207 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:08:01 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



先住民の生活圏の中央。『広場』と思われるその場所に、決戦の舞台は整えられていた
八角形のリングを、ロープに替わって太い蔓を編み込んだ『網』で取り囲む
総合格闘技団体UFCに置いて使用されるリング、『オクタゴン』と類似していた
その周りをグルリと、ローマの『コロッセオ』のように観客席が用意され、先住民達が血気盛んに囃し立てる
一際目立つ最上段の席には族長が、屈強な男達を護衛に踏ん反り返っている。その足下には、布に包まれたディが寝転がっていた


('A`)「……」


ドクの目論見通り、彼一人だけがその祭壇へと押しやられた
他の二人とビィは、リング袖に設置された背の高い木製の檻に放り込まれる。さながら『控室』の有様であった


(´・ω・`)「本当に、趣味の悪い連中だ……」

('A`)「だな。これからこいつらが吠え面かく羽目になると思うと最高の気分だぜ」

(´^ω^`)「こんな時でも変わんねえなぁお前ェ!!!!!」

<ヽ`∀´>「キモ」

(∪^ω^)「わんお」

('A`)「よーしニダーはここに置いていこう」


軽口を叩き合いながら、ドクは網に手をかけ柔軟体操をする。同時に、『強度』を確かめた
本家本元で使用される金網と比べて、植物特有の柔軟性がある。強度こそ劣るだろうが、人の手で引き千切れる代物ではない

208 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:09:06 ID:9OubR0lk0



「「「「「クックドゥドゥルドゥ!!クックドゥドゥルドゥ!!」」」」」


('A`)「ん?」


観客の声援が一纏めになる。ドクの『対戦相手』が、ゆっくりと歩きながら両手を掲げて応えていた


( ゚∋゚)「ウーハァ!!」


「「「「「ウーハァ!!!!!!!!」」」」」


プロレスで言うところの、『ベビーフェイス』。ヒーローの到着に、『ヒール』であるドクは口角を上げた
『まさかここまでお膳立てしてくれるとは』。ドス黒い彼の嗜虐心が、ムラムラと燃え上がる


( ゚∋゚)「ハウス!!ウコンノチカラ!!バアチャンノクチグセ!!!!」

( ゚∋゚)「ニンニクランオウーーーーーーーーー!!!!!」


('A`)「ハハッ、何言ってんのかわかんねーよデカブツ」


ドクを指を差し、祭事の口上を高々と叫ぶ大男に、『早く上がれ』と指を折り曲げて挑発する
やはり煽り耐性がないのか、彼の顔は怒りで赤黒く染まる。そして『レフェリー』や『セコンド』と思しき数人と共にオクタゴンへと上がった


(#゚∋゚)「フーッ、フーッ……!!」

('A`)「ワォ、情熱的だな。そんなに見つめられると恥ずかしくってテレちまうぜ」

(#゚∋゚)「……ククッ」

('A`)「?」


僅かに、しかし確かに、クックドゥドゥルドゥは『嗤った』。ドクの愚かしさを嘲笑うかのように
すると、同行した先住民達がドクの身体を羽交い締めにする。両腕の自由を奪われたドクの前に、『布』に包まれた何かを手にしたレフェリーが立つ

209 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:10:28 ID:9OubR0lk0
(#゚∋゚)「オサカナテンゴク オスシヒトサラヒャクジュウエン」

(;'A`)「何を……グッ!?」


腹部に鋭い激痛が奔る。ドクにそれを与えたレフェリーは、『刃物』を引き抜くと意地の悪い笑みを浮かべた


<ヽ;`∀´>「ドク!!」

(;'A゚)「あっ、が……ッ!!」


身体は解放されたが、溢れ出す血と痛みで罵声すら飛ばせない。意地で膝を付くことだけは堪えたものの
今まで味わった事のない『死に近づく苦痛』は、彼の中から一切の余裕を奪い去った


「クックドゥドゥルドゥ」

( ゚∋゚)「ウーハァ!!」


レフェリーは大男に向き直ると、ドクの血で染まる刃物で『ちっぽけな傷』をつけた
大袈裟に痛がる素振りをし、観客はその姿にわざとらしい嘆きを投げかける
『これで対等』とでも言いたいのだろう。しかし、アウェーの人間が納得するはずがない


(#´゚ω゚`)「汚えぞテメエらァァァ!!!!!!!」

(∪#^ω^)「わんわんお!!!!!」


怒りの慟哭に、観客はゲラゲラと爆笑した。これは彼らの祭事であり、『万が一』があってはならない
『対戦』の場もあくまで形式上のものであり、最初から全て仕込まれた『出来レース』なのだ

210 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:11:31 ID:9OubR0lk0
( ゚∋゚)「チンチン ボウヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

(;'A゚)「……」


族長を意味する言葉が叫ばれ、観客はシンと静まり返る
ドクは傷口を抑えながら、今の内に出来る限り呼吸を整えようとした。しかし肺は酸素を拒み、深く吸い込めない


/ ,' 3「ポルノグラフティ!!!!カナブーン!!!!Rebelスキャットビート!!!!クックドゥドゥルドゥーーーーーーーー!!!!!」

( ゚∋゚)「ウーハァ!!」


『勇者』には声援と歓声が贈られ


/ ,' 3「スマホタロウ!!!!!オレマタナンカヤッチャイマシタ!!!!!チキチキマシンモウ!!!!レース!!!!!!!」

(;'A゚)「……ッッッ」


『外敵』には、ブーイングが投げつけられる


/ ,' 3「オシャベリクソジュウダイ!!シンヤラップバトル!!イイタビユメキブン!!」


『セコンド』と『レフェリー』はオクタゴンを降り、ドクと大男だけが残された
観客は待ってましたと言わんばかりに足を踏み鳴らす。族長は片手を高々と掲げ――――


/#,' 3「オシッコ!!!!!」


『開戦』の合図を送った

211 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:13:08 ID:9OubR0lk0
(#゚∋゚)「ウウウウウウウアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

(;'A゚)そ「チッ!!」


堰を切ったかのように、大振りで放たれた拳を側面へ転がり避ける
派手に動いたからか、傷口から更に多量の血が溢れ出た


(;'A゚)「っ……ぐ、アアッ」

(#゚∋゚)「ウンティ!!!!!」


足裏の蹴り出しを身を捩って躱す。メシメシと音を鳴らして破れた網が、その威力を思い知らせる
ドクは軸脚にしがみ付き倒そうとしたが、大地に根が張った大木のように動く気配がない


(;'A゚)「っの、野郎……!!」


万全であるならば、ここからマウントを取る事だって充分に可能であった
刺し傷による膂力の低下は著しく、身体を思い通りに動かすことすら儘ならない


( ^∋^)「ハハーハハハ!!!!チッチッチッ!!」


みっともなくしがみつくドクへ直様追撃せず、子どもと戯れ合うかのように舌を鳴らす
観客席から下品な嗤い声が響き、時折『指笛』が飛び交った


(#´゚ω゚`)「クソ共がァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ドク!!離れるニダ!!」

(;'A゚)そ「っ……グアッ!?」


振り下ろされた拳がドクの頬を打つ。脚から手はズレ落ち、ドクの血で化粧が施される
グラリと歪んだ視界に、大男の凶悪な表情が映る。網を蹴り破った脚は振り上げられ


(#゚∋゚)「キャプツバ!!!!」

(;'A゚)・'.。゜「っ……ガァアアアアアアアアアア!!!!!!!!??????」


ドクの傷口を、爪先が深々と抉った

212 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:14:59 ID:9OubR0lk0
:(;'A゚):「ッ……ツッ……!!!!」

オクタゴンがドクの血で彩られていく。鉄の臭いは、手も足も出せない二人と一匹まで届いた
身体の熱が血と共に流れ出る感覚が、寒気と『走馬灯』を呼び起こした


:(; A ):「ハッ、アアッ……」


格闘技界の名家に産まれ、才能と引き換えに腐った家族と醜い顔を押し付けられた
親からは疎まれ、兄弟達からは僻みを受けてきた。それでも手放されなかったのは、『利用価値』が残っていたから
『才能』だけは愛されていたのかもしれない。だからこそ、道場の『師範』という道だけは用意されていた


:(; A ):「グッ……ギギ……」


『御免』だった。友人も居らず、孤独だった彼を支えたのは銀幕やテレビの中の物語
抜群の閃きと行動力を武器に、数多の難関に立ち向かう『冒険者』の姿は、幼い彼にとって憧れの象徴だった
『夢の為に家族を犠牲に出来るか?』。常人ならば頭を悩ませるジレンマは、彼にとっては障害にすらなり得ない
縁を切るきっかけとなった『死合』に置いても、一切の手心を加えず家族を半殺しにした


:(# A ):「……!!」


新たに得たのは、初めての『友』と夢への茨道。産まれてきて良かったと思える程の、最高の日々
そして、一人の友が持ち出した『スリー・ドット』からの挑戦状。物語に引けを取らない今日この時までの『旅』は
彼の人生の中で一番に光り輝く、眩い星のような体験だった


(# A )「……ま、すんじゃ、ねえよ……!!」

(;゚∋゚)そ「!!」


彼は『立ち上がる』。見守る友と、信じた友の為。そして何より


(#'A゚)「邪魔ァ……すんじゃねえよ!!!!」


手を伸ばせば届く場所まで到達した、自分自身の夢の為に
彼は最後まで、産まれながらの強者らしく『戦い続ける』事を選んだ

213 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:16:20 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ドク……」

<ヽ;`∀´>「ショボン、ビィ」

(∪;^ω^)「クゥン?」

<ヽ;`∀´>「『盛り上げる』ニダ!!陰湿なあいつらしく、連中に嫌な気分を味わせてやるニダ!!」


『友』は彼の戦意に応える。悲痛を抑え、無理矢理笑顔を作り出し、声を張り上げた


(#´^ω^`)「やっちまえブサイクーーーーーーーーー!!!!!!お前それで負けたら取り柄無くなんぞオラァン!!!!!?????」

<ヽ#`∀´>「デカい口叩いてその体たらくはなんだ!?ガッカリさせるんじゃねえニダ!!!!!!!」

(∪#^ω^)「ブス!!!!!ブス!!!!!!」


(#'∀`)「へ、へへ……」


いつも通りの罵倒が飛び交う。それが何より、ドクの痛みを和らげ、力を取り戻させた
初めて、容姿を茶化されても嫌な気分にならなかった。いつだって友は、自分を対等な立場として接してくれた


(#'∀`)「ハ、ハンデはこれくらいで充分だ……そうだろお前らァ!!!!!!」


(#´^ω^`)「ったりめーだバッキャローーーーーーーー!!!!!!」

<ヽ#`∀´>「ぶちのめすニダァァァ!!!!!!」

(∪#^ω^)「わんわんお!!!!!!」


ドクは構えを取る。心底憎い家族に、彼が唯一感謝を捧げた『格闘術』の指南
障害を打ち砕き、友を救う為に鍛え続けた身体と『拳』。その真髄は、致命傷を負った所でへし折れるものではない


(;゚∋゚)「……」

(#'∀`)「どうしたデカブツ……『退ってるぜ』。お前」

(;゚∋゚)「!?」


気迫に押されたのか、圧倒的優位に立つ筈の大男は無意識に後ずさっていた
これまで『嬲るだけ』だった手負いの相手。故に、出会った事が無いのだろう。見たことが無かったのだろう

214 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:16:55 ID:9OubR0lk0






(#'A゚)「かかって来いやァァァアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」








本物の闘士が、こうも勇しく、戦いの意思を示すその様を

215 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:18:27 ID:9OubR0lk0
(#゚∋゚)「バ……ロック!!!!!!!」

(#'A`)「ッ!!」


『勝算』はあった。牢でプギャーに出会い、彼の話を聞けた事はドクにとって僥倖であった
先住民は外敵を『嬲る』事を目的とし、心が壊れるその時まで『殺し』はしない。つまり向こうには『手加減』をしなければならない縛りがある


(#゚∋゚)「ホイコーローテイショク!!!!!」

(#'A`)「シッ!!」


組みつこうと突進する大男をスウェーで躱し、掌の『ポケット』に溜めておいた血を顔面に投げつける


(; ∋ )そ「ベホイミ!?」


『目くらまし』を食らった大男は、勢い余って網へと衝突する。観客席から息を飲む音が溢れた


(#'A`)「スゥー……」


勝算は確かにある。しかし長く打ち合う余力は無い。一撃、多くても『二撃』で決着を着けねばならない
『骨抜き』を初めとした技術を伴う攻撃も繰り出す余裕はない。求められるのは『シンプル』かつ『強力』な、最短最速の拳


(; ∋ )「タネヅケ オジサン!!!!!」

(#'A`)「……ッ!!」


目に入った血を拭いながら、やたらめったらに振り回す腕を掻い潜って懐に潜り込む
狙いは胸部ど真ん中。筋肉と脂肪で覆われているが、人体の急所に違いは無い
予備動作、僅か『1インチ』。密接した状態から最大の威力を放つこの拳技は


『詠春拳』を学び、後に『截拳道』を編み出したアクションスター、『ブルース・リー』が得意とした奥義――――


(#'A゚)「シュアッッッ!!!!!!!」

(;゚∋ )・'.。゜「カッッッ……!!!!!!」


『寸勁』。またの名を、『ワンインチパンチ』である

216 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:19:53 ID:9OubR0lk0
(; ∋ )「っ……っつ……!!」


ドクの身長より頭二つ分ほど上回る大男は、吹き飛びこそしなかったが打たれた鳩尾を抑えてよろよろと後ずさる
腰は引け、目は泳ぎ、口は陸に揚げられた魚のようにパクつかせている。客席は水を打ったかのように静まり返り
オクタゴンの『闘士』と『道化師』の、荒い息遣いだけが辺りを支配した


(;゚∋ )「……エゴサ……アンチツイート……」

(#'A`)「……」


『言葉は通じずとも、ボディランゲージはコミュニケーションの手段となる』
掌を向け、首を横に振るその様は、例え彼らの言語がわからなくとも何が言いたいかくらい伝わった


(;゚∋ )「 『待ってくれ!!』 」


懇願、命乞い。嬲り、蹂躙し、奪い続けた『悪魔』のような大男に対する返答は


(#'A`)「 『嫌だね』 」


毅然と切り捨てる、『拒否』であった


(;゚∋ )そ「ミ……ミクミクダンス!!」


頭を掴んで接近を拒もうとした腕を払い除け、『同じ個所』に拳を向ける
大男の背中は『網』に阻まれ、これ以上退がる事を許さなかった


(#'A`)「スーッ……」


ありったけの『死力』を、身体中に巡らせる。そして――――



(#'A゚)「ヴェアッ!!!!!!!!!!!!!」



決定的な『二撃目』を、初撃を上回る威力で放った

217 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:20:54 ID:9OubR0lk0
(; ∋ )・'.。゜「ッッッ……!!!!!!!!」


網は大男の身体に押され、縫い目の糸がブチブチと解れていく。編み目が崩壊した個所から囲いは破れ、オクタゴンの場外へと押し出された
口からは内臓を傷つけた事による『血泡』が吹かれ、全身はピクピクと小刻みに痙攣をする。眼球は虚ろに『上』を剥き、意識を示さない


(; A )「っっ……ハァッ!!」


誰も声を上げず、先住民も彼の友ですら、言葉を失う。しかしその意味は真逆であり、現に彼らは


(´゚ω゚`)「……!!」

<ヽ;`∀´>「っ……!!」

(∪*^ω^)「……!!」


誰の目に見ても明らかなほど、見事な逆転勝利に強く拳を握っていた


(; A )「お、おお……」


たった二回の攻撃で、ドクは体力を使い果たしてしまった。しかし、やるべきことが残っている
身体を壊せば次は心。敗北を今だ飲み込めてない連中に向けて仕掛ける次の一手





(#'A゚)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




『勝鬨』による勝利宣言を、『洞窟の外』にまで響き渡るように高々と吼えた

218 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:21:46 ID:9OubR0lk0
(#´゚ω゚`)「うらああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

<ヽ#`∀´>「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

(∪#^ω^)「わんわんおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!」


彼の勝利を信じ抜いた友もそれに続く。客席は、祭事始まって以来であろう『異常事態』に騒めき始めた。そんな中


/#,' 3「イップマンフォァ!!!!!!!!ミタカッタナァ!!!!!!!!」


『敗北』を認めない族長が、青筋を浮かべていきり立った


/#,' 3「コロナゲキジョウヘイサ!!!!マジクソファッキウイルス!!!!!!」


(;'∀`)「あァ……クソ、俺としたことが……」


族長の喚声と怒りは先住民たちに伝染する。兵士達は武器を手に、祭事を台無しにした者どもを八つ裂きにせんと目を血走らせる
ドクに抵抗する力は残っておらず、ようやく彼は両膝を着いた。しかし、顔は満足げに笑っている


(;'∀`)「わり……時間稼ぐっつっといてこのザマだわ……」

(´^ω^`)「何言ってんだ馬鹿野郎が!!最高にスカッとしたぜオイ!!」

<ヽ`∀´>「ナイスファイトニダ!!」


死に直面しているにも関わらず、二人はドクにありったけの称賛を贈った


(;'∀`)「……?」


しかしドクの視線は、自分の意志とは関係なく、『ビィ』へと向けられた


(^ω^∪)「……」


何かを発見したかのように、明後日の方向を見つめるビィの姿に

219 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:22:28 ID:9OubR0lk0
(;'∀`)「……ハ」


ビィの視線の先を確かめた瞬間、ドクは自分の仕事は功を奏したと気づく
だが、それは余りにも『予想外』の出来事で、夢でも見ているかのように現実味が無かった


(;'∀`)「……ニダー、言っただろ?」

<ヽ;`∀´>「え?何?」

(;'∀`)「あいつらは『やれる連中』だってよ」

220 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:22:56 ID:9OubR0lk0








「「ゴエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!」」







「全隊員に告ぐッ!!!!!!!!!!」







.

221 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:24:16 ID:9OubR0lk0
洞窟内に響き渡る奇怪な鳴き声と、凛とした女性の『シタラバ語』。ダイヤモンドが放つ灯りに照らされて


(;´・ω・`)そ「なっ、オイまさか……!!」

<ヽ;`∀´>「……これは、驚いた」


『12人の姉妹たち』は







(゚、゚#トソン「要人の救助及び、脅威の排除を遂行せよッ!!!!!!!!」

https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208775/3_zb6qc2.jpg







地の獄へ、彼らを救いに舞い降りたのであった

222 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:25:36 ID:9OubR0lk0
/#,' 3「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!アーヤシロキズク!!ウ!!ウ!!」


「「「ウーハァ!!」」」


新たな侵入者に怒髪天を突いた族長は、真っ先に彼女達の抹殺を命じる
兵士達は槍、斧、棍棒。各々の武器を手に、怒涛の勢いで疾走する


(゚、゚#トソン「レモナ!!合わせて!!」

|゚ノ#^∀^)「ええ!!食らいなさいッ!!」


衣装を新たに、腹部に大きく切れ込みが入ったタイツスーツと翼を模した髪飾りを着飾ったトソンが二矢同時に弓を放つ
地面に突き刺さった矢の間には細い『ワイヤー』が仕込まれており、先頭集団は躓いて転倒。突進の勢いは落ちた
続けざまに二丁拳銃によるゴム弾の嵐が撃ち込まれる。どの弾も正確に眉間を強く打ち、先住民は次々と失神していく


(゚、゚#トソン「存分に暴れなさい!!『サディスティック・スリー』!!」

⌒*リ´・-・リ「待ちわびたの!!」

*(‘‘)*「了解ですの!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「ご褒美を差し上げましょウ!!」


少女が斧と刀を振るうと、嵐に見舞われたかのように先住民は宙を舞う
女王が鞭を振るうと、蠢く『大蛇』の尾が素肌に傷を付け、苦痛に狂い悶える


(*‘ω‘ *)「武器の貯蔵は十分っぽ!!」


オレンジの弾幕が苛烈に襲い掛かる。見たことも無ない『魔法』に恐怖した瞬間、彼らは衝撃で意識を手放した

223 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:26:30 ID:9OubR0lk0
敵は多勢。しかし数を物ともしない超人集団の実力に、それを退けた筈の三人は呆気に取られる


(;´・ω・`)「すげえ……こいつら、こんな強かったんだな……」


「何をぼんやりしてんのよ!!」


(´゚ω゚`)そ「ファッ!?」


『空気』が近場の先住民を手早く失神させ、檻の錠を叩き壊す


ξ#゚⊿゚)ξ「サッサと出てきなさい!!まだ『冒険』は終わってないんでしょ!!」

(;´^ω^`)「ね、姉ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「アンタみたいな弟、死んでもお断りよ!!デレ!!そいつは!?」


オクタゴン上では、姉と同じく『存在感』を露わにした妹が、『世界で一番信用できないタイプの女』と共にドクの介抱を行っている


ζ(゚ー゚;ζ「酷い怪我だよお姉ちゃん!!生きてるのが不思議なくらい!!」

从;'ー'从「死なせないのがぁ、私の仕事〜。はい、これ見て〜?」

(;'A`)「え、お、な……」


『アヤカ』が浮かび上がらせた緑の玉を目の当たりにした瞬間


(;'q`)「あびゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ひかりきれい〜〜〜〜〜〜〜???????」


酷く酒に酔ったかのような痴態を曝した。その間に


从;'ー'从「はい、はい、はいぃ〜!!そしてはい!!」


傷口を医療用ホッチキスで塞ぎ、粘着性の高い液体で消毒を施し、テープで上から蓋をする
三十秒も掛けずに応急処置を完了させた彼女は、すぐさま『催眠』を解いた

224 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:27:42 ID:9OubR0lk0
(;'A゚)そ「いでででででで!!!!?????え!!!!????は????????」

从;'ー'从「応急処置かんりょ……デレちゃん!!」

ζ(゚ー゚;ζ「え……ハッ!?」


「リゼアンテェテェ!!!!!!!」


気を取られていた隙を突き、ドクに刺し傷を与えた『レフェリー』の凶刃がデレに襲い掛かる


ξ;゚⊿゚)ξ「デ……!!」


出遅れた姉に代わって


(∪#^ω^)「ヴルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

「イチカラッ!?」


ビィが腕に噛みつき軌道を逸らし


<ヽ#`Д´>「チ ン カ ス 野 郎 が ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! ! ! !」

「イワナガァ!?」


渾身の怒りを込めた『パルクールプレーヤー』の飛び蹴りが、頬を穿った


<ヽ#`Д´>「このッ!!クソが!!クソが!!オラッ!!」

(∪#^ω^)「わんおわんお!!ヴルルルルル!!」


ドクを刺した相手に対する報復をたっぷりと与えた後、ドク達へ振り返る


<ヽ#`∀´>「そいつを頼みますニダ!!」

ζ(゚ー゚;ζ「え、はっ、はい!!その、何方へ!?」

<ヽ#`∀´>「決まってる!!」

225 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:28:55 ID:9OubR0lk0
ニダーの視線は客席の、一番目立つ場所へと向けられた


/;,' 3「!!」


ディの居る、族長の席へと


<ヽ#`∀´>「大事な友達をもう一人、取り返すニダ!!」

(´・ω・`)「ああ、その通り!!」


ショボンはオクタゴンの部材として使われていた『縄』を手繰り寄せ、肩に掛ける


(´^ω^`)「ここから先は俺らが請け負う!!お前は少しでも休んでなドク!!取り返したら『スリー・ドット』へ直行だ!!」


从;'ー'从「え、ええ〜?彼はもう絶対あn(#´゚ω゚`)「だぁってろ世界で一番信用できないタイプのクソアマァ!!!!!」ふええ〜」


(;'∀`)「ク、クク……」


込み上げた笑いが傷口に障る。しかし、悪くない気分だった
『吠え面』を掻く連中に囲まれて、友が奮闘に応えようというのだ。『冥利に尽きる』とは正にこの事


(;'∀`)「とっとと済ませてこい!!」


後押しを受け、二人は乱戦の最中へと飛び込んでいく
解き放たれた新たな『闘士』の背中に、これ以上ないエールを贈った

226 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:30:19 ID:9OubR0lk0
<ヽ#`∀´>「ウルルァッ!!!!!!」

(#´゚ω゚`)「道を開けろ雑魚共がァッ!!!!!」


ニダーが持ち前の身軽さで先住民を翻弄し、ローキックで顔面から倒れこませる
ショボンは縄をピンと張り、襲い掛かって来た敵の腕を絡め取って背中から地面へと叩きつけた


(#´゚ω゚`)「クソが!!埒が明かねえ!!ニダー、先行しろ!!」

<ヽ#`∀´>「おう……よッ!!」


ニダーは襲い掛かって来た先住民を蹴りで迎撃。そのまま踏み台にして跳躍
前方から向かってくる敵の肩を、因幡の白兎のように素早く蹴り渡っていく


(#´゚ω゚`)「さぁどっからでもかかってこいやァ!!!!!!!」


「「「ベガルタセンダイ!!!!!」」」


(;´゚ω゚`)そ「やだぁやっぱ量多い!!」


<せえええええええええええええええええええええええええッ!!!!!!


(;´゚ω゚`)そ「うるさっ!?何!?」


鮮やかな『紅』が、ショボンを横切り敵へと向かう


ノハ#゚⊿゚)「『鉄塊拳』ッ!!!!!!」


コンクリートをも砕く『鉄の拳』が、大勢の先住民を巻き込み吹き飛ばした

227 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:31:34 ID:9OubR0lk0
(;´^ω^`)「つええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

ノハ#゚⊿゚)「当然ッ!!貴様も向かえ!!」

(;´^ω^`)「ありがたくっと!!」


怯んだ後続を避けるように観客席へと走り抜ける。その背後では再び、気合の籠った技名が炸裂した


/;,' 3「グロースグコワレル!!バッテリートカトクニ!!」


向かってくる二人の姿に、族長はそそくさと退散しようとする
屈強な男の一人は迎撃に、もう一人はディを担ぎ上げて族長の護衛に付く


<ヽ#`Д´>「逃がすかァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

「ドクズホンシャァ!!!!!」


客席を駆け上がるニダーに向かって、岩を削り取って作った『座席』を持ち上げ投げようとする
その瞬間、側面から『手裏剣』が飛来し、脇腹に突き刺さった

228 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:31:56 ID:9OubR0lk0
「ホ……ホマーニ……?」


切っ先が浅く刺さっただけだが、男の全身から力が抜け、持ち上げた座席の下敷きになった


从 ゚∀从「援護するぜ!!」

<ヽ#`∀´>「助かる!!」


放った張本人は、鉤爪を装着しニダーと合流した。即席コンビは風のように族長の元へと奔る


/;,' 3そ「ヒビキ!!」

「ウーハァ!!」


『Rebel』より、自らの身を案じたのか。護衛に短く指示を伝えると


「ナルニアノタメニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


大きく振りかぶって、『ディ』を宙へと投げ捨てた

229 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:32:41 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从そ「バッ……」

<ヽ#`∀´>「大丈夫ニダ!!!!」


衰弱したディがこのまま落下して地面に叩き付けられれば、いくら精霊と言えど命は無い
だがニダーは確信していた。『階下』で待機している、もう一人の友が


(#´^ω^`)「イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」


必ず、彼女を救うと


(#´^ω^`)「っしゃああああああああああああああああああいッ!!!!!」


頭から落ちていくディに向かって投げつけた『縄』。その輪の中へとすっぽりと納まったタイミングで


(#´゚ω゚`)「うっおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


縄を勢いよく引く。輪は締まり、彼女の身体を確実に捕える
軌道は変わり、慣性に従ってショボンの元へと飛んでいく。彼はそれを――――


(#´^ω^`)「いよぉナイキャッチィィィ!!!!!!!!!」


しっかりと、落とさぬように抱き留めた

230 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:33:23 ID:9OubR0lk0







(#´゚ω゚`)「落とし前着けたれやァ!!ニダァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!」






<ヽ#`Д´>「任せろォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」





.

231 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:33:54 ID:9OubR0lk0
一際高く跳躍。拳の射程圏内に、族長を捉えた


「ホロライブ!!!!!」

从#゚∀从「邪魔すんじゃねえ!!!!!!」


迎え撃とうとした護衛は、鉤爪の餌食となる。守る者が居なくなった族長は


/;,' 3「ラッコナベエエエエエエエエエ!!!????」


迫る『外敵』に、恐怖の悲鳴を上げた


<ヽ#`Д´>「ウルアァァァァッ!!!!!!!!!!」

/;  3・'.。゜「スバルッ!!!!?????」


老人であろうと容赦なく顔面に叩き込まれた拳は、ダイヤモンドの差し歯を呆気なくへし折った


<ヽ#`Д´>「いっ……!!」


族長は吹き飛ぶが、ニダーは空中で抜群のバランス感覚を活かし体勢を立て直して着地
ドクとは違い人を殴り慣れていない彼は、ジンと痛む拳を擦った


<ヽ#`∀´>「まぁまぁ痛い!!」

从;⁼∀从「格好つかねえなぁ」


なんとも間抜けな闘士を前に、ニンジャは護衛を足蹴に呆れた溜息を吐いた

232 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:34:44 ID:9OubR0lk0
从 ゚∀从「さぁ、後片付けは俺らに任せな。アンタらはサッサとあの子送り届けろ」

<ヽ;`∀´>そ「おっ、おお!!あ、ちょ、一個だけ!!どうしてここに!?」

从 ⁼∀从「いやぁ、あの後ボスを交えて反省会してさぁ。で、『仕事はまだ終わってない』って怒られて後を追ったんだよ。そしたらあの面白生物が慌てた様子で現れたからなんかあったなって思ってさぁ」

<ヽ;`∀´>「ボ、ボス!?」

从 ゚∀从「ああ、ちょうどあそこに」


ニンジャが鉤爪で差す先は、ドクとビィが待機するオクタゴン。族長の撃破に気付いてない先住民たちが周囲を『取り囲んでいる』
正確には、『取り囲んでいた』。数十人はいたであろう兵士たちは、皆一様に地に伏せ、立っているものはまばらだった
その中央でたった一人、キレのある『マーシャルアーツ』で相手をなぎ倒す『黒髪長髪』の女の姿


<ヽ;`∀´>「は?」


ニダーの見間違いで無ければ、ゼアを異常に可愛がっていた『ナード女』だった
『?』を頭に浮かべるニダーに向かって、ニンジャは心底面白そうにクスクスと笑う


从 ^∀从「行きゃわかるよ。きっと驚くぜ」

<ヽ;`∀´>「う、うん……じゃあ、僕ら行くニダ」

从 ^∀从「おうっ!!しっかりな!!冒険者!!」


バンと強く背中を叩かれ、ニダーは客席を駆け下りる。ショボンは既にオクタゴンの方へと退避していた

233 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:35:28 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「ハァッ、ハァ……これは一体?」


ニダーがその場に到着すると、黒髪の女は拳に付着した先住民の血を払い、髪をかき上げる


川 ゚ -゚)「来たか」


『本当に同一人物か?』と疑って掛かるくらい、精悍な美貌を持つ女性。前髪の有無など関係なく、まるで別人のような立ち振る舞いだった
あれだけ過剰な反応を示していたビコとゼアには見向きもしない。いつものようにビィの背に乗る彼らは


(*∵)ノシ「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

(*∴)ノシ「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!!」


大きく手を振って、再会を喜んだ


川 ゚ -゚)「護衛は私が引き継ぐ。ツン、貴様らは残りの連中を片付けておけ」

ξ゚⊿゚)ξ「了解、ボス。プギャー・スマイリィの身柄はどうするの?」

川 ゚ -゚)「腐ったゴミでも重要参考人だ。四肢をへし折って連れてこい」

ξ゚⊿゚)ξ「はーいよ」

(;´・ω・`)「ちょ、オイ、待てよ!!」

川 ゚ -゚)「立ち止まっている時間が残されているか?その子、もう猶予がないぞ」

(;´・ω・`)そ「ッ……!!」


(# ;;- )「」


顔色に血の気は無く、唇は紫色に染まっている。ショボンが頬に触れると、死人のように冷たかった
それでも辛うじて『息』はある。『ボス』の言う通り、ここで問答をしてる余裕は無かった

234 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:36:55 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ビコ、ゼア!!早速で悪いが急ぎ案内を!!」

( ∵)b「ゴエ!!」

( ∴)b「ゴエ!!」

(∪^ω^)「わんわんお!!」


彼らの誘導に従い、ビィは倒れる先住民を踏みにじりながら前進する


<ヽ;`∀´>「ドク、まだ歩けるニカ?」

(;'∀`)「ったりめえよ……!!」


ニダーはドクに肩を貸し、後に続く


(;´・ω・`)「アンタ、着いてくる気か?」

川 ゚ -゚)「この後に脅威が残されていないとは限るまい?人手は必要だと思うがね」

(;´・ω・`)「そりゃありがたいね……どうせ俺らは拒める立場じゃねえ」

川 ゚ -゚)「重畳。話は道すがら行おう。此方も聞きたい事情が山ほどあるからな」

235 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:38:35 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」


先住民の居住区までは、幾つかのルートが存在しているらしい
ショボン達が通った入口は一本道だったが、ビコとゼアが選んだ穴の道のりは、迷路のように複雑に分かれていた
居住区から近い通路には、倉庫も兼ねているのか木材や食料、中にはダイヤが詰まった革袋まで積まれていた


川 ゚ -゚)「ふむ……衛星の届かぬ範囲に森でもあるのだろうな」

(;'A`)「ハァッ……ハァッ……そんな場所、あんのかい?」

川 ゚ -゚)「磁場が特に強い場所なんかはな。ネット上で公開される衛星写真は、悪戯に人が立ち入らぬよう加工をされている」

<ヽ;`∀´>「その……所で貴女、『サダコ』さんですよね?」


廃工場で監禁されている分、ニダーは12シスターズと面識がある。背丈や髪の長さ。そして趣味の悪いまっ黒な服は間違いなく彼女の特徴と一致する
表情を隠していた前髪の下までは確認できなかったが、声色は低く、背筋もピンと伸びている。ナードの雰囲気は微塵も感じず、『ボス』らしき風格に溢れていた


川 ゚ -゚)「ああ、身体はな。血の繋がりがある分、こいつの肉体は乗っ取り易い」

(;´・ω・`)「乗っ取る?アンタそりゃ……電子生命体か幽霊かって口ぶりだが?」

川 ゚ -゚)「実際その通りだからな。自己紹介をしよう。私は『C』。霊体のまま成長した『超常保護対象』だ」

(;´・ω・`)「何言ってんだこいつ」

川 ゚ -゚)「言葉の通りに捉えろ。死んだ赤子の霊が、人と変わらぬ成長速度で大人になっただけの事だ」

(;'A`)「それがわかんねえっつってんだよ……」

<ヽ;`∀´>「そ、そう言えば、トソンさんは超常保護対象自体も組織に参入させるとかなんとか言ってたニダ。貴女もそうニカ?」

236 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:39:38 ID:9OubR0lk0
川 ゚ -゚)「ああ、妹の『サダコ』と一緒にな。以後、トソンを初めとした部下を揃えて超人集団の一部隊を率いる立場だ。足下、気を付けろ」

(;´・ω・`)「おっと、どうも……するとアンタは今、妹に『憑依』してるって事か?」

川 ゚ -゚)「そうだ。サダコは引きこもりがちの運動嫌いでな。だからこうして、たまに乗っ取っては身体を動かすのさ」


(∪^ω^)「わんお?」

( ∵)「ゴエ」

( ∴)「ゴエイエ」

(∪^ω^)「わんわんお」


二股に分かれた道の右手を指し示す。その奥から、僅かにだが風の通り抜ける音が聞こえてきた


川 ゚ -゚)「スリー・ドットの資料……拝見させて貰ったよ。彼らの特性もな」

(´・ω・`)「お役に立てそうかい?」

川 ゚ -゚)「ああ。こういった申し出は少ないからな。有効活用させて貰うよ」

(´・ω・`)「だが……アンタら、超常保護対象とやらを調査する立場なんだろ?この事については何も知らなかったのか?」

川 ゚ -゚)「恥ずかしながら、な。何分、世界には謎と不思議が多すぎる。サダコの『予知夢』で対象をサーチして、調査と保護を並行して行う安定しない稼業だ」

<ヽ`∀´>「スポンサーは?」

川 ゚ー゚)「聞いて驚け。『映画スタジオ』だ」

<ヽ;`∀´>そ「映……うわっ!?」

(;'A゚)「うおお気ぃつけて歩けやこちとら重傷者だぞ!!!!!!!!!!」


躓いて転びそうになった二人を、Cは難なく受け止める


川 ゚ -゚)「あれだけ出血したにも関わらず、そこまで喚ける元気があるとは驚きだな」

(;'A`)「空元気だよ。驚く気力もねーや。ありがとよ」

川 ゚ -゚)「礼には及ばん」

237 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:40:37 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「あー……大体読めて来た。つまりアンタらは『元ネタ』を提供して、スタジオから資金提供してもらっていると」

川 ゚ -゚)「その通り。誰もが一度は観た事があるファンタジーやホラー作品。あれらはほとんど我々が調査した、実在する超常保護対象だ」

<ヽ;`∀´>「スケールが大きすぎて開いた口も塞がらないニダ……」

('A`)「閃いた」

<ヽ`∀´>「置いてくぞ」

川 ゚ー゚)「フフッ」

(´・ω・`)「……兄貴については、何処で知った?」


下品なジョークに笑い返した彼女は、キュッと表情を引き締める。笑いごとで済むような話では無いらしい


川 ゚ -゚)「……我々がマークしている団体の傘下で暗躍していると、匿名からの通報があった」

(´・ω・`)「それだけで、危険人物と?」

川 ゚ -゚)「理由はいくつかある。プギャー・スマイリィを発端にしたセブンクロスの集団学生失踪事件に関与している疑いが一つ。これは直に晴れるだろう」

(´・ω・`)「……他には?」

川 ゚ -゚)「『消息が掴めなかった』。世界中の監視カメラ、並びに空港の関所や国境に到るまで、すべての監視機関に引っかからなかったんだ」

(;'A`)「整形とかじゃねーのか?」

川 ゚ -゚)「整形にも限界がある。顔を変えられても骨格を変えるのは難しい。DNAや無意識の癖、仕草などもな。だからこそ上層部は彼を『死亡扱い』にした」

(´・ω・`)「……」

川 ゚ -゚)「だがこうして、弟のキミやその友人たちが、彼の遺した資料を手がかりに活動をしている。これは彼の居所を掴むチャンスだと私は考えた」

238 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:41:28 ID:9OubR0lk0
川 ゚ -゚)「結果は……見ての通り空回り、だったかな。トソンにも過度の期待を寄せすぎて、暴走を招く羽目になった。本当に申し訳ない」

<ヽ`∀´>「いえ、貴女方が居なければ、僕達今頃あいつらに八つ裂きにされていました」

('A`)「へっ、いきなり銃を突きつけられた時はちょっぴり焦ったがな」

川 ゚ -゚)「……言い訳にならないかも知れないが、我々にも薄暗い過去がある。これまでの積み重ねが、強行という手段を取ってしまった」

(´・ω・`)「もういいっつってんだろ。こっちは助けられたんだ。だから、俺らがこう言うべきだ。『ありがとう、恩に着る』ってな」


Cは何かを言おうと口を開いたが、そのまま少しの時間考え直し


川 ゚ー゚)「どういたしまして」


感謝を、素直に受け入れた


川 ゚ -゚)「だが『シャキン・バーデラス』は引き続き警戒される立場にある。キミの身内だからと言って、手心は加えんぞ」

(;´・ω・`)「あーあー好きにしてくれ。あのアホが腐った真似してやがったら俺も親父も容赦しねーよ」

川 ゚ー゚)「言ったな?もう撤回は出来んぞ」

(;´・ω・`)「しつけえな!!いいっつってんだろ!!!!!」

239 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:42:04 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんわんお!!!!」


先行していたビィが、通路の奥から明るい声色で人間たちを呼び寄せる


('A`)「いよいよか……」

<ヽ`∀´>「うん……ディは?」

(´・ω・`)「大丈夫、大丈夫だ」


半ば自分に言い聞かせるように応え、ショボンは腕の中のディに呼びかける


(´・ω・`)「もうすぐだぞ。それまで、絶対に持ちこたえろ」


(# ;;- )「」


頷き返しも出来ない彼女を強く抱きしめ、誰よりも早く先頭へと向かった

240 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:43:32 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



私には『時計』と言うものは理解できない。だが、朝の太陽の匂いを嗅ぎ分けられる
ネズミの肛門のようにちっぽけな光は、近づくほどに強さと大きさを増す。色々な事があってクタクタだった筈の身体は
『早く、早く』と脚を急かせる。薄暗い洞窟に慣れたのか、出口の先は光で真っ白にしか見えない


( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」


ああ行くとも!!誰が躊躇うものか!!こんな腐った洞窟なんて、一刻も早く抜けてやる!!


(∪^ω^)「わんわんお!!!!」


硬い岩の地面を一際大きく蹴り、私は光の中へと飛び込んだ






https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208775/4_hu9ekx.jpg






自慢の肉球を、柔らかな草が包み込む。空は高く澄み渡り、色鮮やかな緑の絨毯がどこまでも続いている
吹き抜ける風が、甘い花の香りを運んでくる。何の種族かわからないが、角の生えた動物がのどかな食事を止めて此方を見ていた

241 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:44:11 ID:9OubR0lk0
(*∵)「ゴエエエエエエエエエエエエ!!!!ゴエッ!!ゴエエエエエエエエエ!!!!」

(*∴)「ゴエエエエエエエエエ!!!!ゴゴエエエエエエエエ!!!!」

(∪^ω^)「……」


そうか、ここが


(∪^ω^)「ヘッヘッヘッ」


キミ達の、『故郷』か


(∪^ω^)「わんわんおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


ああ、なんて気持ちがいい!!吼えずにはいられない!!腐りきっていると思っていた世界に、こんな素晴らしい場所が残っていたなんて!!


(;´・ω⁻`)そ「うおっ眩しっ……!!」


下僕共も追いついたようだ。顔を見るに、私と同じように『感動』しているのだろう


(;'∀`)「こいつぁ……ハハッ、ダイヤなんかよりよっぽどの財宝じゃねえか」

<ヽ;`∀´>「驚いた……乾燥気候のセブンクロスに、これほど緑豊かな土地があるなんて……」

川 ゚ -゚)「ふむ……どうやら、一種のエネルギースポットとして機能しているらしいな。先住民共はここを頼りに生活していたか」

(;´・ω・`)そ「って、惚けてる場合じゃねえぞ!!ビコ!!ゼア!!どうすりゃいいんだ!!」


( ∵)「ゴエエエエエエ!!!!」

( ∴)「ゴエエエエエエ!!!!」

(∪^ω^)「……」


どうやら、ここからまた歩かなければならないみたいだ

242 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:45:09 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんわんお!!」


奴らを呼び、また彼らの案内に従う。そう遠くはないと言った。きっと間に合うだろう


(;´・ω・`)「行くぞッ!!」

(;'A`)「ああ!!アンタは!?」

川 ゚ -゚)「ここで待っているよ。これはキミ達の旅だ」

<ヽ;`∀´>「心遣い、ありがたく!!」


どうやら、あの別人のように変身したキモ女は着いてこないらしい。元に戻られたら嫌だから普通にありがたかった
行き先の目印は分かりやすく、大きな一本の大樹。そこにさえ到達すればディは助かると言ったが……


(∪^ω^)「ヘッヘッヘッ……」


( ∵)「……」

( ∴)「……」


一足先に到着し、その樹を見上げる。枝葉は大きな雲のように太陽の日差しを遮り、心地よい日陰を作り出している
生息する動物たちの休憩所にもなっているのか、先ほどの角が生えた草食動物の親子がゆったりと寝そべっていた


( ∵)「……」

( ∴)「……」


(∪^ω^)「?」


彼らは私から降りると、樹の根元へと近づいていく。気になって確かめてみると


(∪^ω^)「……」


横たわった姿のまま白骨化した獣の死骸が遺されていた

243 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:45:47 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ハァ、ハァ……んぐっ、ここか?」

( ∵)「ゴエ」

( ∴)「ゴエ」

(;´・ω・`)「ここに寝かせればいいのk……なんだこりゃ骨か?」

(#∵)「ゴエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

(#∴)「ゴエエ!!!!!」

(;´・ω・`)そ「わぁわぁわかったよ悪かった!!ほら、これでいいのか!?」


アホの下僕は急かされて、ようやくディを骨と寄り添わせるように寝かせた
下僕一号と死にかけ下僕も遅れて到着し、その姿を見守る


(;'A`)「……」

<ヽ;`∀´>「……」


(# ;;- )「」


変化はない。最早、私の耳にも息遣いすら聞こえない


(;´・ω・`)「っ……く、っ……!!」


『間に合わなかった』。誰もがそう認識し、悔しさを地面へと叩きつけようとした瞬間


(∪;>ω<)そ「キャイン!?」


太陽の光すら超越する、強烈な閃光が『ディ』から放たれた

244 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:46:16 ID:9OubR0lk0
(;´ ω `)そ「うおおっ!?」

(; A )そ「目ぇええええええええええ!?」

<ヽ; ∀ >「っ……ディ!!」


:(∪>ω<):「おおおおおおお……」


何も見えねえ!!!!!!!!


:(∪>ω<):「お゛!? お゛ぉ゛!?」


しばし悶絶していると、ベロリと顔面を大きくて湿った柔らかいものが撫でた


(∪^ω^)「お、おお……?」


視界がすぐさま回復し、その正体を目の当たりにする。『舌』だった
生え揃えた牙は鋭く、顔付きは精悍。逞しい四肢と、木漏れ日に照らされて光り輝く『銀』の毛並み
私の身長を遥かに越すその獣は、正しく私の偉大なる先祖である――――


「……」


『狼』であった

245 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:47:22 ID:9OubR0lk0
(;´゚ω゚`)そ「うおおおおおなんじゃああ!?かっけえ!!!!!!」

(;'A`)そ「うわ本当だクソかっけええええええええ!!!!!」


語彙力無いのかこいつら


<ヽ;`∀´>「ひょ……として、ディ、ニカ?」


「……」


狼は答えない。しかし『人』であるディの姿が無いのが何よりの証拠だった


「……」


(;'A`)「お?なんだどうしtうわわわわわわ」


ブサイク下僕の、血が染みついた個所をベロリと舐める。すると


('A`)そ「お゛!? お゛ぉ゛!?」


ずっともたれ掛かったままだった下僕一号を解放し、腹を弄る


(;'A`)「な、な……治ってるーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

(;´゚ω゚`)そ「何ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!??????」

<ヽ;`∀´>「うるさ……テンション落とせ!!」


目も当てられないほど酷い傷が、文字通り綺麗さっぱり無くなっていた

246 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:49:06 ID:9OubR0lk0
(;'A`)「し、しかもなんか貧血も治ってる気がする!!」

(;´・ω・`)「気がするじゃなくてそうなんだよ!!顔色めっちゃいいぞお前!!」

(;'A`)そ「イケメンになった!?」

(´・ω・`)「あっ、顔はそのまま」

<ヽ`∀´>「ブサイクのまま」

(うA`)「夢見せてくれてもいいじゃんか……」


では、これまでと同じく吸い取った傷はどうなったのか?


(;´・ω・`)「おい見ろ!!」


ディの舌の上には、ブサイクの物だった傷がそっくりそのまま貼り付いている
それを『フッ』と吹き飛ばすと、穏やかな光に代わって空へと昇る


(∪^ω^)「!!」


これまで彼女が請け負ってきた『沢山の苦痛』も同じく、幾千の光と変わって大樹の天辺へと向かっていた


<ヽ;`∀´>「Rebel……『反逆』……還すんだ……人から請け負った苦痛を、神に……」

(;´・ω・`)「……いや、もしかしたら……『再分配』じゃねえか?」

<ヽ;`∀´>「え?」

(;´・ω・`)「ディの身体に刻まれた傷跡の多くは……言っちまえば、『過度の苦痛』に相当する致命傷ばかりだった。だから、『余分』を引き受けていた」

(;'A`)「いやでも、俺の怪我はともかく、ニダーの噛み傷や親父さんの怪我は?」

(;´・ω・`)「それは『サービス』だったんじゃねえか?成り行きとは言え、俺らは送り届ける役目を担ってたからな」

<ヽ;`∀´>「それでキャパオーバーを起こして、行動出来なくなった……」


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