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('A`)と( ^ω^)は異世界で絆と出会うようです
1
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:35:07 ID:X.bQi/M20
http://boonsoldier.web.fc2.com/kizuna.htm
2
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:35:34 ID:X.bQi/M20
6ヶ「激動する戦場」
その場所は、雄たけび、あるいは悲鳴が絶え間なく聞こえてきて、
更には地を踏みしめる大量の足音がつらなって、大きな地響きとなる。
だが派手なのは音だけではなく視覚的。
風が石を巻き込み吹きすさべば、大きな砂煙も同時に。
所々に炎が立ち上り、焼けるような熱気と眩しさを放ち。
人々の合間を青白いような線が走れば、叩きつけるような爆音が鳴る。
そしてその度、それらの後には凄惨な爪あとが残された。
並列された戦場はつづく、その争いの激しさに、
草木は薙ぎ倒され、地には消えぬ傷跡が刻まれ、
荒野はまさに文字通りの存在となっていく。
乱戦、誰が誰なのか、それを気にする余裕もなく、相手取りもめまぐるしく変わる、
だがそんな最中、いくつかの戦場では、固り、あるいは隔離された場所があった。
管理者、と呼ばれるものたちの戦いだ。
魔法的な力すら凌駕する彼らの姿は目を引くものではあるものの、
誰もそこへ割り込もうとはしない、近づくものすら存在しない。
3
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:36:07 ID:X.bQi/M20
それは真っ向からの衝突という、原始的な戦を主とする世界性か、
一騎打ちという形の様式美を守るものか、あるいは、畏怖そのものであるが故。
内の一つ、戦場のほぼ中央に位置する場所でもまた、対峙する姿があった。
しかし動きは無い、片方はうずくまり、もう片方はそれを呆然と眺めるのみ、
(;><)「………」
( 、 ;川「う……ぁ――――っっ」
自身を抱えるようにしながら、ペニサスが膝と頭を地に伏せる。
それをもう一人の男が見下ろす体制だった。
傍目に勝敗は決したように見える。
だが男はそれ以上何もしようとしない、どこか落ち着かない様子で佇むのみ。
周りの者たちもその異様さに近づくことをしない、
特に、そこに至るまでを見ていたら尚のことだった。
ただの一度。
駆けてくる姿に反応したペニサスが、その男に斬りかかった、その一度で、
何が起きたのか、一瞬輝いた光と共に、ペニサスは苦悶の声をあげて崩れ落ちた。
そして今も、男の持つ剣は、陽を受けたダイヤを思わせるような眩い輝きを刀身から放っている。
あれが管理者である事は、一目瞭然だった。
4
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:36:39 ID:X.bQi/M20
( ><)「……来ましたか」
ふと、男が正面に現れた人物に反応を示す。
宙に漂う剣をつれ、無手で戦場を歩く姿だった。
(´・ω・`)「ペニサス……神具も無いのに、まったく無茶して」
(;><)「あ…ぁ、いや、ちょっと…っ」
何ともなしに歩み寄る姿に、何故か対する男は後ずさる。
まるで脅えているように見える姿に、返ってショボンは困惑した。
(;><)「ま、待って…! まってほしいんです…! 話を、話を聞いて欲しいんです!」
(;´・ω・`)「何なんだあんたは……とりあえず、よくもと言っておくよ」
(;><)「ちが、彼女は無事なんです、今はその…苦しんでるけど、命に別状は……」
(´・ω・`)「……へぇ、そうは見えないけどねぇ」
ショボンは言って、手を正面の男へと突き出す。
追従するように、浮かんだ剣が切っ先を変え男を向いた。
言うとおり、ペニサスの様子は尋常じゃない。
涙と嗚咽にまみれ、うめき声だったものも悲鳴に近いものになっていく。
(;><)「それは……いやだって、こんなはずは………」
(;><)「……まさか、それほど…? そこまでの記憶が…?」
(´・ω・`)「時間が惜しいんだ、話は終わりでいいかい?」
5
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:37:12 ID:X.bQi/M20
言うなり、ショボンの元から剣が飛び立ち。
(;><)「ひっ……って、なん…っ!?」
男の持つ輝く剣へぶつかった。
しかしそれ以上に、男は驚いた様子で自らの剣を見た。
ゴッという鈍い金属音が響き、光を放つかのように見えていた刀身の輝きが、
みるみるうちに色あせて消えていき、純白のものへと変わったからだ。
同時に、苦しみに喘いでいたペニサスが、荒い呼吸そのままに顔を上げた。
(;><)「えっ……?」
(゚、゚;川「はっ…!? はあっ……はあっ……あ、あ…っ」
(´・ω・`)「大丈夫? 僕がわかる?」
(゚、゚;川「ショ…ショボン君………あ、ああ……わたし…」
(゚、゚;川「わたしが……この手で……巫女さま…っ!!」
(´・ω・`)「………そういうことか」
(;><)「神具の……まさかクラウソラスの幻影を、斬った…!?」
(;><)「これが誓賢……やはりフレイの…! これならば…!」
(´・ω・`)「……人の、忌まわしい記憶を見せる、といったところかい?」
(´・ω・`)「ああ、悪夢とはよく言ったものだね……彼女には、さぞ辛いだろうさ」
(;><)「それは……だって、知らなかったんです、まさかそんな……!」
(´・ω・`)「…いいから、話があるんだろう? 早く言ってみなよ」
6
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:37:38 ID:X.bQi/M20
(´・ω・`)「くだらない話だったら……覚悟してもらうよ」
( ><)「…………」
怒気を含んだ声色に、しかし先ほどまで脅えた様子だった男は、
ちらりと周辺の様子を伺うように見やると、剣を構えなおし、雰囲気を変え。
( ><)「僕はワカン、ルファウス国の……今は管理者として、このクラウソラスを預かっている」
( ><)「だけど僕は……彼の王、ロマネスクを―――認めていない」
言って。
( ><)「そして……その王が自分の半身だと言った男の事で、話がある」
(´・ω・`)「……つまり何だ、反逆を…スパイでもしてくれるって言うのかい?」
(´・ω・`)「信じるとでも?」
( ><)「信じる必要は無い、ただの事実で、そしてすぐに起こる現実だ」
( ><)「そして……」
( ><)「今のままでは、君たちは負ける―――――」
……………。
7
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:38:00 ID:X.bQi/M20
ノハ;-⊿゚)「ぐっ…」
自らに返ってきた火球を、ヒートは巨大化させた剣で受け止める。
いくつもの衝撃と熱気が襲ってくるが、それ以上に困惑が大きい。
何かしらの力であることは理解できるが、その正体があまりにも掴めない。
ノパ⊿゚)「……なら!!」
ジジ、とも。
パリパリ、とも言える音と、雷光のようなエフェクトを纏わせながら、
ヒートは大剣を幾度か振り回しながら背に構えると、ふたたび眼前の敵へと駆ける。
ノパ⊿゚)「これなら――――」
(#゚;;-゚)「――――」
振り回した分の重量まで加算された剣の一撃は、
細腕のヒートが繰り出したとは思えない、威力を見せ、地面に大きな亀裂を作る。
どこか鈍重な挙動にはなってしまうため、相手の女には避けられてしまう。
ふと、おかしな動きにも見えたが、しかしこれはまだ予想の範疇。
(#゚;;-゚)「――剣よ」
ノパ⊿゚)「―――」
本命は、大降りの攻撃による大きな隙。
ノパ⊿゚)「――――どうだっ!!!」
を、狙って、迂闊に踏み込んできた相手を狙った、
重量反動による硬直を無視した、返しの剣。
8
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:38:21 ID:X.bQi/M20
でぃ、と呼ばれた女は、突きの姿勢ですでに踏み込んできている。
今度は避けられない、そう考えるヒートだったが、
すでに彼女の耳には、囁くような声が聞こえていた。
(#゚;;-゚)「すり抜けよ」
それが、違う確信を感じさせ、寸でのところでヒートは、
剣の重量操作を解き、発生した自身を引っ張る力に身を任せ、
柄と共に弾き飛ばされるように横へ飛んだ。
そして、今しがたヒートの立っていた場所を、でぃが通り抜ける。
ノハ;゚⊿゚)(……やはり)
離れた場所に着地しながら、ヒートは相手を見る。
剣線はずれたとは言え、薙ぎ払った一撃、まっすぐに来たなら触れているはずだ、
しかしでぃの姿にそんな様子は無い、理解できないが、当たっていないのだ。
それどころか、自分の胸元、着ている衣服が切り裂かれ、
柔肌と下着が覗いていることに気付き、ヒートは戦慄を覚えた。
もう少し、僅かにでも判断が遅れていたなら、あの剣がこの胸を貫いていたのだから。
9
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:38:56 ID:X.bQi/M20
(#゚;;-゚)「……」
(#゚;;-゚)「……届いたと、思ったのに……」
ノパー゚)「あら、無感情な方かと思ったのだけれど……意外と情熱的?」
(#゚;;-゚)「賞賛、今のは素晴らしい判断、逃げなきゃ死んでた」
ノパー゚)「そのようね……やはり、急所には防具が必要かしら」
(#゚;;-゚)「やはり、貴女があのヒルトの管理者、紅牙……」
(#゚;;-゚)「あの御方の、仰る通り」
ノパー゚)「……何を?」
言って、と返すより先にでぃが仕掛けた。
(#゚;;-゚)「あなたを、捕らえる」
ノパ⊿゚)「…っ」
向かい来るでぃに、ヒートはいくつかの思考をめぐらせながら迎え撃つ。
身体強化の剣を発動させつつ、その剣戟を受けながら見る。
身のこなしと、剣技は優れたものではあるが、異常ではない。
だが時折、先にも見せた飛翔とも呼べる跳躍や、必中の状況での攻撃を避けた事。
更には先ほどの、炎の石つぶてを返した手段、そのどれもが不可思議。
風は起きていなかった、火を操った様子もなかった、
そもそも火を操っただけならば、石つぶては返せない。
そうなると、遠距離からの攻撃は通用しないばかりか、すべて返される恐れがある。
ならば近づく、しかしあの重力を感じさせないような動き、どういった手段ならば捕らえられるのか。
10
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:39:26 ID:X.bQi/M20
しかし答えは、今している行為の中にあった。
(#゚;;-゚)「動きを―――」
ノパ⊿゚)「させない……っ!! 風よ!!」
でぃがまた、何かを口にしようとする。
だが、それをさせじとヒートが剣を魔法剣へと変え、突風を叩きつけて言葉を封じた。
そう、どういった原理か知らないが、でぃは先ほどから何かを囁いている。
そして、その内容こそがおよそ、ヒートの狙いを防ぐものであった、
つまり。
ノパ⊿゚)(ならば……!)
ヒートは再び、炎を纏った剣を地面につき立てながら振りぬく。
爆発めいた音、そして火の石つぶてが飛翔する。
(#゚;;-゚)「撥ね返れ飛礫」
剣を突き出しでぃが言う、するとその通り、火球は急カーブを描いて返っていく。
しかし今度は確信を得た、ヒートはお構い無しに突貫する。
ノパ⊿゚)「白刃轟剣…!」
火球が降りかかるが、しかし身に纏った風が、まるで障壁のように逸らしていく。
でぃは掲げた剣をすぐに握りなおし、駆けてくる姿を迎撃する。
ノパ⊿゚)「バサルト…!!」
(#゚;;-゚)「…っ、と…止ま…っ」
しかし風を連れた姿は用意には止まらず、押し出されるように交代、しばし突風に目を細め、
すぐに眼前を見るがすでにそこにヒートの姿はなく、代わりに地に落ちた影を見る。
11
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:40:18 ID:X.bQi/M20
(;#゚;;-゚)(上…っ)
ノパ⊿゚)「バスタァアアアアアアアア!!!!!!!!!」
未だ風を纏ったまま、巨大化させた剣で棒高跳びのように跳躍、更に回転しながら、
そのまま直下、でぃに向かって暴風纏う大剣を打ち下ろした。
大量の砂煙が地響きとともに巻き上がるが、それをも突風が吹き飛ばしてしまう。
ノパ⊿゚)「あなたの…きっとその、神具、その力は…」
ノパ⊿゚)「口にした言葉、その内容を現実に反映させるもの……!」
ノパ⊿゚)「なら、簡単だ、喋らせなければいいだけの事…!」
ヒートは、衝撃に吹き飛ばされ、地を転がるでぃの姿を見ながら、
しかし大したダメージは与えていないと確信を得つつ、その後を追う。
そして、それが事実である事を、近づくなり身に纏った風がかき消された事で知る。
(#゚;;-゚)「吹き止め………同じ手は、きかない」
ノパー゚)「ええ、そのつもりよ」
12
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:40:56 ID:X.bQi/M20
(#゚;;-゚)「しかし…紅牙……聞きしに勝るバーサーカーぶり」
ノハ;゚ー゚)「それは褒められてるのかしら…」
(#゚;;-゚)「やはり、あなたは捕らえるべき価値がある」
ノパー゚)「できるのかしら? あなたに?」
(#゚;;-゚)「可能」
言うなり、ヒートは背後に気配、というにはあまりにも明確な足音、
そして大きく倒れこむような音を聞いた。
ノハ;゚⊿゚)「……っ!?」
(#゚;;-゚)「手段を、選ばなければ」
…………。
13
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:41:27 ID:X.bQi/M20
虹がたつ戦場があった。
(メ._⊿,)「咎人よ、我が極光の前に、己が罪を省みよ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「まったくよく喋る…!」
剣戟が繰り出されるたびに、その後をなぞるように、虹の輝きが浮かび上がる。
そして虹はゆっくりと消えるまで、質量を持ってその場に残り続けた。
それが何を意味するかは、ツンがマント男に向けて放った飛刃が虹に阻まれ、
パリンと小気味良い音を立てて砕ける事で教えていた。
激しい攻撃を繰り出せばそのたび、マント男を守る虹の壁が強固なものとなり、
しかし手をこまねいて距離を取れば、瞬きの間に伸縮する剣が狙ってくる。
攻防一体、まさに文字通りの力だった。
ξ゚⊿゚)ξ(……厄介な)
分かっていた事で、仕方のない事で、自分も認めていた事とは言え、
管理者の相手をするというのは、やはり骨が折れる。
ξ゚⊿゚)ξ(さてはて、どうしたものか……)
(メ._⊿,)「……愉快よな」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
と、マント男がふと手を止め、若干落ち着いたトーンでそう言った。
構えは解かぬまま、しかし両者共に動きを止める。
14
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:42:09 ID:X.bQi/M20
(メ._⊿,)「生命を奪い合う中で、我らは今のみ、互いを高めあう同志」
(メ._⊿,)「貴様もそうだろう月鏡? この瞬間に、喜びを得ている筈だ」
虹の向こうで、マント男はそう言った。
ツンは苦笑し、肩をすくめる。
同意を示したようにも見える行為だったが、やがて笑みは嘲笑に変わり。
ξ゚⊿゚)ξ「そうやって引きこもっているだけの臆病者が何を言っている?」
ξ゚⊿゚)ξ「口じゃなく手を動かせ手を」
(メ._⊿,)「……ふっ」
(メ._⊿,)「安い挑発だな、そうやって今も私を殺す算段でも立てているのだろう」
(メ._⊿,)「だが無駄だ、どう足掻こうとも……何の理由も無く、私が貴様の相手を受けたとでも?」
ここに来て、マント男は非常に冷静な声色で、
自分が最初からツンを標的にしていたと語る。
確かに、互いの神具の能力を見れば、ツンは事実上、その能力を封じられたと言っても過言ではない。
それが、互いの全てであるならば。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
(メ._⊿,)「無駄と言っている」
マント男の背後、いつの間にか刃が現れ、その背中めがけて刃を向けるが、
剣線と共に現れた虹の輝きに、またしても防がれてしまう。
15
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:42:26 ID:1RBXWRRo0
えっまじ????支援!!!!待ってた!!!!
16
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:42:41 ID:X.bQi/M20
(メ._⊿,)「うまく隠しているつもりだろうが……その刃、切っ先で操っているだろう?」
ξ゚⊿゚)ξ「……………………」
(メ._⊿,)「所作含め、分かりやすい挙動だ、他の者がどうかは知らんが、私には通じぬよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
(メ._⊿,)「理解したならいい加減……手の内を見せたらどうだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……何だと?」
(メ._⊿,)「その神具、その真価はよもや愚直に刃を飛ばすだけではあるまい?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、その通りだが」
(メ._⊿,)「………」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
(メ._⊿,)「謀るか、貴様ほどの人間が、よもや神具の能力を磨くことなく戦いに赴いたと?」
ξ゚⊿゚)ξ「だったら何だ、バカにするなとでも言いたいのか?」
(メ._⊿,)「馬鹿げていると言うのだ、なら、貴様のその余裕はなんだ」
(メ._⊿,)「この圧倒的不利を前にして、何を平然としている!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、何だお前―――」
先ほどからの攻防、起きている事象が現実離れこそしているものの、どこか静けさがあった。
それは近接戦が行われない事以上に、攻防そのものがはっきりし過ぎている事が原因だ。
17
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:43:28 ID:X.bQi/M20
まるでターン制のバトルのように、どちらかが受け、どちらかが攻めるの繰り返し。
様子見である事は明白だったが、しかしどちらが不利かは見てとれる、
にも関わらず静けさが保たれたままである理由は。
ξ゚ー゚)ξ「怖いのか?」
瞬間、ツンの眼前に剣先が現れた。
寸でのところで身をかわすが、長めの髪が宙を舞う。
更に、伸びた剣をなぞる様に虹の輝きが螺旋をえがきながら追従し、
とっさに発生させた板状の刃がそれを受け止め、いくつかの割れ音を生んだ。
ξ゚⊿゚)ξ「何だ図星か、弱い犬ほど何とやらは本当だな」
(メ._⊿,)「軽口を……いや」
煽り言葉に、しかし熱くなった様子もなく、マント男はしばし考えるような素振りを見せた。
(メ._⊿,)「………どうにも、解せん、貴様本当にあの月鏡か?」
ξ゚⊿゚)ξ「何だ今度は人格批判か、いい加減にしろ」
(メ._⊿,)「彼の王の御前で見かけた貴様は、もっと高潔だった、底知れぬ覇気を持っていた」
(メ._⊿,)「そして武勇智謀にて湖鏡という国を纏め上げた稀代の天才と謳われ、
ついには王より直接神具を賜るという栄誉を得るに値する者と誰もが認めていた…」
ξ;゚⊿゚)ξ「お…おう…」
(メ._⊿,)「それが何だ、その軽く薄っぺらい態度は…! 何が貴様をそうまで堕落させた!!」
18
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:44:17 ID:X.bQi/M20
ξ゚⊿゚)ξ「堕落ね……まあ、気負い無い、という面がある事は否定しないさ」
(メ._⊿,)「…………」
<_プー゚)フ「オイオイオイ、メンヘラストーカーの次は何だよ!? 何ていうんだアレ!!」
( 凸)「属性過多でもうわかんねぇなこれ」
_、_
( ,_ノ` )「モテるねぇ大将は」
と、そんなツンの背後を守るかのように、しかし遠巻きに陣取る連中が、
さも面白いネタを見つけたと言わんばかりに、ワラワラと寄ってきた。
ξ゚⊿゚)ξ「やかましいぞガヤ共、ていうかこっち来るな」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「あとカービィまだ生きてんのか」
<_フ;゚ー゚)フ「言い方ァ!!」
と、そんな様子を眺めていたマント男が、ふと言葉を漏らした。
笑みを微かに浮かべ、そうか、と一人納得するかのよう。
そしてツンは、自分の横を通り過ぎた刀身と、後を追う虹の光を見た。
反応できなかった訳ではない、見えていた、ただ自分に向かっていないから反応しなかった。
19
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:44:50 ID:X.bQi/M20
ξ;゚⊿゚)ξ「っ!!!」
それがどういう行為か、察するのは早かった。
故に焦燥と、後悔の入り混じった思いのままツンは振り返り見た。
<_プー゚)フ「痛っ――――」
(;凸)「―――ぁ」
見えたのは、倒れこむエクストの姿と。
_、_
( ,_ノ` )「…………」
そのエクストを突き飛ばし、迫る剣をその身に受け、串刺しとなった渋沢の姿だった。
遅れて虹の光が到達し、胸に大穴を空け、腕が千切れ、大量の血が宙を舞う。
<_プー゚)フ「は? だ……旦那…? なに、やって………」
引き抜かれた反動で、渋沢の身体が引きづられ、前のめりに倒れこむ。
すぐさま赤が広がっていく、血溜まりに沈むその姿は、ピクリともしない。
声すら、あげる間もなかった。
<_フ;゚ー゚)フ「何やってんだよ!? おま、何、俺を庇ったりして、頼んでねぇぞオイ!!」
声をかけても、既に反応は無い。
<_フ;゚ー゚)フ「ば、ばっかやろ……っ……死ぬのは、死ぬのは俺だって…言ってたろ!!」
(;凸)「エクスト、早く立て!! なんかやべぇぞ!!」
( 凸)「他の連中も来るぞ!」
20
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:45:23 ID:X.bQi/M20
(メ._⊿,)「次」
そして再び、もう一度エクストへ向けて剣先が伸びていく。
やけにゆっくりと感じられた剣は、今度は別の剣戟によって叩き落され地に突き刺さる。
ξ゚⊿゚)ξ「………貴様、何をしている」
打ち落とした剣に足をかけつつ、ツンは瞳に影を落としながら言った。
背後では、一人倒された事もあってか再び争う音が響く、しかし今度は振り返らない。
その表情に、マント男はにぃと笑いかける。
(メ._⊿,)「そこな雑多な者共だろう、お前をそうさせたのは」
ξ゚⊿゚)ξ「………自分が有利なんじゃなかったのか、人を怒らせて何がしたい?」
(メ._⊿,)「怒りを示すのであれば、証明されたようで何よりだ」
(メ._⊿,)「そして、そこな愚物共の影響で狂ったというのなら、私が正そう」
ξ゚⊿゚)ξ「狂っているのは貴様の方だ、唐突に対する意識も無い人間を手にかける等、ただの快楽殺人者だ」
ξ゚⊿゚)ξ「管理者を名乗っておきながら、恥を知れ」
(メ._⊿,)「くく、ふはははっ、だが良い眼だ、その身に纏う威圧感、それこそあの日の貴様よ」
(メ._⊿,)「だが、まだ不足だな、手下を一人殺された程度で憤りを隠せないとは、将にあるまじき姿」
(メ._⊿,)「戦場の道理すら失くしたと見える」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
剣先をマント男へ向け、今にも斬りかからんばかりの殺気を放つツンだったが、
そんな言葉に呼吸を一つ、姿勢を崩し、剣先を下げた。
21
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:46:38 ID:X.bQi/M20
訝しげにその様子を見るマント男だったが、ツンはむしろ笑みを浮かべ。
ξ゚ー゚)ξ「いや、いいや……アレは、手下なんかじゃないさ」
思う。
改めて考えれば不可思議な縁だった。
元より連中の存在は知っていた。
対戦国の中にある、尖兵とも取れる特殊な兵達。
戦場で見かけたこともあったかもしれない。
どちらにせよ、敵だ。
向こうからしても、敵だった。
気を許す関係になどなる筈も無い間柄。
しかしいつの間にか、気付けばツンの周りに当然のように居た。
協力関係を申し出たのは自分だったが、信用されるとまで考えていた訳では無い。
ただ、祖国、湖鏡にて貧民として生まれ、泥をすすり実力だけで成り上がった自分は、
あの国の将でいる間は、常に気を張り続け、相応しい自分でいなければならなかった。
22
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:47:22 ID:X.bQi/M20
しかしそれを失くし、上からでも下からでも無く自分に接する、その連中と過ごす時間は、
何を背負うでもなく自分の意思で生きられる日々は、どうやらとても。
ツン本人が自覚する以上に、とても、楽しかったのだ。
だからどんな状況でも、その態度は余裕にも見えた。
実際、心には常に余裕があった、生き死には当然として、
あとはどうするのか、それだけを考えるのは、当たり前の事だったから。
だからそう、そんな感情を抱く相手に対する関係は。
それを言葉にするならば。
ξ゚ー゚)ξ「あれは……"友"だ」
(メ._⊿,)「―――――これ以上」
ξ゚⊿゚)ξ「そしてそんな友が死んだ、殺された、最低の気分だ」
(メ._⊿,)「失望させてくれるな」
マント男は引き戻した剣を幾度か振るい、切っ先をツンへと向ける。
虹の光が男の周囲に浮かび上がり、またしても要塞のように守りを固める。
何らかの攻撃をしてくると、その対応だったのだが、しかしツンは動かない。
23
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:48:32 ID:X.bQi/M20
代わりに言葉が続いた。
これまでと違い、饒舌な姿にマント男は戸惑った。
威圧するでもなく、怒りを見せるでもなく、ただの語り掛けに。
ξ゚⊿゚)ξ「私はな、こう見えて、とても優しいんだ」
(メ._⊿,)「……何を言っている?」
ξ゚⊿゚)ξ「戦う意思の無い人間を傷つける気もない」
ξ゚⊿゚)ξ「余程の事でも無ければ、命乞いも聞こう」
ξ゚⊿゚)ξ「お遊びで命を弄ぶ奴は許せないし、弱い者に手を差し出す事もある」
ξ゚⊿゚)ξ「そして……敵だからと、相手をいたぶる趣味も無い」
一陣の風が吹いた。
そよ風と呼べる。
まだ柔らかなものだった。
(メ._⊿,)「だから何――」
ξ゚⊿゚)ξ「だから――――先に謝っておく」
ぴし、と小さな割れ音がどこかでした。
24
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:49:49 ID:X.bQi/M20
ξ゚⊿゚)ξ「悪いが楽には殺してやれん、苦しめて――――」
(メ._⊿,)「……貴様!」
ξ゚⊿゚)ξ「―――悪かったな」
ツンの態度の違和感の正体を、マント男はようやく気がついた。
戦意も、怒りも感じないのは当然だ、既にこの戦いは、彼の中で終わっているのだと。
(メ._⊿,)「何を勝った気でいる…!!」
切っ先をツンに向けたまま、円を描くように振るう、
虹がいくつも浮かび上がっては、剣に螺旋状の模様を描く。
一筋の虹の輝きでも、たやすく人を殺傷する威力だ。
これを開放すれば、広範囲にわたって光が暴れることになる、
少し避けただけでは、逃げられない。
ξ゚⊿゚)ξ「でも仕方ないだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「それが戦場の道理、お前もそう言ったじゃないか」
(メ._⊿,)「おのれ…!!」
次いで、解放された虹光を纏う刃が伸びゆきツンの身体を貫いた。
同時に、その姿に亀裂が走り、音を立てて砕け散る。
映していた刃の破片が風に舞い、マント男は何事かと目を見開く。
自らのマントが、風になびいていたのを自覚したのはその後だった。
25
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:51:15 ID:X.bQi/M20
やがて男は視界いっぱいに広がる透明な煌きを見る。
その正体は、神具がその形を保てなくなるほどに生成された、細く、薄い無数の刃。
それが、空気に煽られ、回りだす。
ξ゚⊿゚)ξ「風刃―――」
(メ._⊿,)「貴様…風使いだったのか……!?」
言うより先に、風が吹く。
それも強風、暴風とも呼べるほどの勢いをもった空気の圧力が、
虹の隙間を通り抜け、打ち付けるように男の身体を叩いた、薄い刃を乗せたまま。
結果、まず剣を握る指が数本、切り刻まれた。
次いで手の甲に、下手な盛り付けをしたお刺身のような不恰好な跡が生まれ、
血風を巻き上げながら腕を、それも皮膚だけを刻みながら上昇、
瞼に焼かれたような痛み、すぐに男の視界は暗闇に包まれ、
そのまま全身が同じように、うすく、しかし何度も、何度も、何度も、何度も、
暴れる風に乗った刃が切り斬り切り、いつしか血を纏った赤い刃が竜巻となって男を包み。
その間、ずっと絶叫が響いていた。
26
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:52:04 ID:X.bQi/M20
戦場に酔う周囲の人間をも一時止めるほどの、あまりにも悲痛な声だった。
やがて虹の輝きもとうに消え、赤い竜巻だけが残ると、
ツンは広げた手を男にむけ、強く、握りこんだ。
ξ゚⊿゚)ξ「――風縛刹…!」
そして血風と刃が、中心へと収束。
びしゃとぶちまけられた音がして。
残されたのは、最早原型もわからなくなった真っ赤な人型。
しかし何より恐ろしいのは、ずたずたの姿になって尚、震えと痙攣があり、
男はまだ息を、かろうじてではあるが、していた。
ツンはその惨状の元へと歩み寄ると、男の持っていた神具を拾い上げ。
ξ゚⊿゚)ξ「……すぐ楽にしてやる」
謝罪を口にしながら、振るい、男の首らしき箇所を切り落とした。
そして強めの接続を使用した反動に、眩暈を感じながら、凄惨な姿を見る。
ξ゚⊿゚)ξ「ああ―――」
「だから、これは使いたくなかったんだ」
眩暈と吐き気も未だ消えない、接続疲労は予想以上だった。
27
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:53:14 ID:X.bQi/M20
しかし、と。
そういえば今のよりも強い風を、広範囲で起こせる人間が居たな、と思う。
しかも直後にまだ動けるほどの容量だ、やはりあれも化物かと、思い浮かべるが、
未だ現れず、しかし彼の剣が別の誰かに渡った様子もない、生死不明の存在。
ξ゚⊿゚)ξ(……あれを信じるなら)
ペニサスが合流した際、彼女はある二人の生存を皆に伝えた。
一人はドクオ、深手を負ったためにある筋の人物に預けられているという。
だが迎えを出そうにも、どこに隠れ潜んだのかはわかっておらず、破壊の剣共に所在不明なまま。
しかし、破砕の管理者が共に居るという事で、ならひとまずは大丈夫という結論に達した。
もう一人は太陽の管理者、こちらに至っては無事なのかも定かではなく、
ただ、おそらくはロマネスクに敗れ、そのまま捕らえられている、と。
生かしておく理由も無い筈だが、ロマネスクは読めない人間だ。
現に一度、ツン自身も彼の王に逆らった事がある、しかし咎められる事なく、
神具すら与えたままで、ツンには自由にしていいと令を出した。
ならばそれも、ありえるのだろう。
問題はどうするのか、これについてはショボンが放っておく事を宣言している。
人質にでもされれば厄介だが、この情報の無さからその気はなく、
そしてルファウスという国が潔白の、正義を語っている事からも無いだろうと判断から。
ξ゚⊿゚)ξ(しかし随分と……覚悟の決まった事だ)
<_プー゚)フ「……大将、大丈夫かい?」
28
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:53:46 ID:X.bQi/M20
ξ゚⊿゚)ξ「む……」
(;凸)「おえ、こりゃ酷い……」
<_プー゚)フ「旦那の仇とはいえ…やりすぎじゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「戦況は? どうなっている?」
( 凸)「それがどうも変でして」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだ、はやく言え」
<_プー゚)フ「連中、なんか妙に綺麗なんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
( 凸)「ヒルトの連中、やはり各々の戦闘力と言いますか、そういった部分は圧倒してます」
ξ゚⊿゚)ξ「…向こうは、徴兵された人間も多かろうからな」
( 凸)「ええ、ただ、それに対抗するためなのか、複数人で構成した部隊が出来始めてます」
( 凸)「最初は国で分かれてるだけとも思ったんですがね、どうも違うようで…」
<_プー゚)フ「まあそのせいで攻めあぐねてるみたいな」
ξ゚⊿゚)ξ「陣形……もしやショボンの奴が言っていたような物か」
隊列を組み、人の行動を一貫させる事で士気を保ち、
個人でなく戦局に対して優位に立てるよう行動させる。
剣などの戦いでの定石だと、戦争等とは一見無縁そうにも見える人間が語った。
しかしこの世界では、接続という魔法の力により長距離および広範囲攻撃が可能であること、
防具等で防ぐことができる威力では無いことから、密集体系での戦いは元より選択肢に存在しなかった。
ツンは周囲を見渡しながら思考する。
29
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:54:28 ID:X.bQi/M20
管理者の相手を管理者が行う、これは想定どおりの行動だ、
しかし考えてみれば、相手側こそが、それを行ってきたようにも思える。
そも数で勝る状況で、なぜそうする必要があったのか、
数で劣るからこそ、こちらがそうする必要があったというのに、
ならばその狙いとは何なのか。
ξ゚⊿゚)ξ(………足止め、時間稼ぎ?…いや)
そして今の状況、ツンの方へと向かってくる者こそ居ないが、
辺りを埋めていくように散開している、これは。
ξ゚⊿゚)ξ「……分断されている」
<_プー゚)フ「んん?」
ξ゚⊿゚)ξ「おい、他の…ヒルトの女王と取り巻きはどこだ?」
(;凸)「え、ああ、確かあっちの方に」
ξ゚⊿゚)ξ「すぐに捜せ…!」
<_フ;゚ー゚)フ「そういや見ねぇな……おいおい、まさか…」
( 凸)「いや、そんな心配しなくても大丈夫じゃね?」
( 凸)「ああ、あれは謙遜してるけど相当な力の管理者でしょう」
( 凸)「んだんだ、簡単に遅れを取るようには」
ξ゚⊿゚)ξ「今の状況がわからんのか! 連中は、こちらを皆殺しにするつもりは無いんだぞ!」
30
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:55:29 ID:X.bQi/M20
未だ攻め込まれること無く、密集している自分達の姿を指してツンは言った。
今や世界の反逆者となった自分達は、戦争となれば当然、どちらかが滅びるまで。
そう思われた、しかしそれが盲点だった。
連中の狙いは、管理者そのものではなく、以前の戦いでツン達も行おうとした最短の手段。
要するに、組織の中枢となる存在を討つこと、そしてこの場合、頭となるのは、
失えば替えが効かない、一気に全てが崩れかねないほどの重要な存在となるのは、
これまで管理者を数人仕留めてきた英雄か、賢者と評されロマネスクすら特別視する誓賢か。
当然この場合、一人しか居ない。
<_フ;゚ー゚)フ「狙いは……女王ヒートだけか!」
例え敵であっても虐殺は望まない王の下、正義の戦い。
それがこの、連携と、それを支えるだけの士気を作る要因だった。
………………。
31
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:56:09 ID:X.bQi/M20
仮面をつけたグループが、互いに背を任せあうようにして、
しかし苦戦する様子もなく次々に襲い来る相手を斬り伏せていく。
だが、数が多い、休む間もなくそれは続き。
( - -)「次から次だなぁ…!」
(;<::V::>)「シュ……国王、ヒート様が…!」
( - -)「わかってるよ、しかしこれは…」
人の数が、この周辺だけ妙に多い。
明らかに集まってきている。
それにどこか違和感がある、正面からの戦いを主としていた筈の戦場が、
入り乱れているようで、どこか纏まっているように感じた。
具体的には、円。
広がる戦場の中に、いくつものグループができつつあった。
管理者を避ける為とも思えたが、しかしはっきりとした意思を感じる。
今もそう、まるでヒートの方へ合流することを阻むかのように。
( - -)(……あれ、やばくね)
そして状況は最悪な物となった事を知る。
いつの間にか、ヒートの近くへもう一人、大男が立っていた。
片腕には先端が勾玉のような形状をした大槌。
そして反対には何か、毛むくじゃらの大きな塊。
彼女の背後をとった大男は、担いでいた毛むくじゃらの何かを放り投げる。
32
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:56:35 ID:X.bQi/M20
( ゚∋゚)「……」
(;・(エ)・)「ぐっ……!」
ノハ;゚⊿゚)「…っ!」
人影に振り返った先には、大男に投げ捨てられ、横たわる熊の姿。
それはまるで、狩の獲物であるかのような絵面だった。
毛皮に包まれているため分かり辛いが、あちらこちらに血が滲んでいる。
ヒートは戦慄を覚えた。
そこらの剣では傷もつけられない分厚い皮膚と毛皮を持ち、
崖から落ちても平然と登り、多少の傷はむしろ野生の怒りを買う。
そんな彼をああまで痛めつけ、行動不能に追い込むなど可能なのか。
少なくともあの魔獣が圧倒されたのは、ただの一度しか見たことがなかった、
ともすれば、あの大男はそれほどの強さを持つということ。
あの鬼―――オーガに並ぶ。
しかし今はそれよりも、その行動こそが問題だった。
何故、その敗北を喫した存在を、今こうして突き出されたのか、と。
ノパ⊿゚)「なんの真似だ、よもや…人質などと言うまいな?」
33
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:57:20 ID:X.bQi/M20
(#゚;;-゚)「見捨てるの?」
ノハ#゚⊿゚)「ふざけるな…! 彼も獣である前に一人の戦士、生き恥など晒すものか!」
未熟な身なれど、そんな者たちを束ねる立場にある。
ヒートにとっても誇りにすべき事、ゆえにそれは彼にも、彼女にも侮辱に他ならない。
(;・(エ)・)「……っ、ま…て………」
(#゚;;-゚)「………」
ノハ#゚⊿゚)「私を捕らえるとか言ったな、なら無駄な事はやめてさっさと来るがいい!」
ノハ#゚⊿゚)「二人がかりだろうと、私は負けん…!」
ヒートは激情そのままに、自分を囲う二人を交互に見やり剣を構える。
しかし二人は未だ立ち尽くしたまま、しかし大男の方は手にした身の丈ほどの柄を握り、
巨槌をゴルフスイングの要領で振るう、狙いは正面の熊だった。
鈍い音と、同時に地震めいた振動が起こり、熊の身体が飛ぶ。
そして苦悶の声をあげながら、数度跳ねるようにヒートの近くへ転がった。
ヒートはそれを見据えると、音がするほど歯を噛み締め。
剣を肥大化させつつ地を蹴った、行く先は未だ振りぬいた姿勢のままの大男。
ノハ#゚⊿゚)「貴様……ッ!!!!」
( ゚∋゚)「………ふ」
対する大男は、向かい来る姿を見るなり小さく笑みを浮かべた。
そしてヒートは自分を覆い隠さんばかりの影が背に迫っている事を知る。
影の正体は、先ほど地に伏せたと思われた熊だった。
34
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:57:43 ID:X.bQi/M20
毛並みは乱れ、爪は折れ、口からは涎を垂らしながらも、
まるで子を守る獣の如き姿で、立ち上がるなりヒートの背を護るように後を追った。
(;・(エ)・)「ぬ、おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
ノハ;゚⊿゚)「クマちゃん…!? 何を!?」
(;・(エ)・)「止まれ、罠だ!!」
そんな姿に、迎え撃つ姿勢だった大男が前に出る。
背後の存在を気にしながらも、ヒートはすぐに前方へ意識を戻す。
巨漢に、大きなハンマー、見た目だけでもかなりの圧だ。
対するは細身の、華奢な女性の姿、しかし手にした剣は巨大。
互いがほぼ同時にふりかぶり、放つのもまた、同時。
裂帛の気迫と。
ノハ#゚⊿゚)「ハァアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
物言わぬ威圧感。
( ゚∋゚)「――――!」
しかしその衝突は、意外にも。
否、異常なまでに、一瞬の静寂を生み出した。
35
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:58:18 ID:1RBXWRRo0
ヒートかっこいい
36
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:58:37 ID:X.bQi/M20
え?という疑問符は誰のものだったか。
放たれた巨大剣と巨槌は、両者の間で触れることなく、停止していた。
それも無音、風切る音を最後に、衝撃も何もなく。
続けて大男が口にしたものこそ、その結果を作る神具の名。
( ゚∋゚)「弾き返せ――――アイヤムル」
ノハ;゚⊿゚)「………!」
停止していた大剣が、そんな言葉と共に弾かれ、ヒートは身体ごと引きづられ体勢を崩す。
そんな彼女を熊が受け止めるなり、押し倒すように地面へと突き飛ばした。
衝撃に息を詰まらせるヒートの頭上で、熊が仁王立つ。
続けざまに声と、もう一つ小柄な影が動いた。
(;・(エ)・)「まだだ、もう一人…居る!!」
ノハ;-⊿゚)「く、熊ちゃん…もう、一人!?」
|/゚U゚|丿+激しく登場+
熊の背後には、いつからそこに居たのか、顔までを布で覆い隠した、
いわゆる忍者装束の人間が、手にした棒状の物体を振りかぶり、
ゴルフスイングのような軌道で、熊の脇腹を打つ。
|/゚U゚|丿+追放せよ、ヤグルシュ+
ノハ;゚ -゚)「…っっ!!!?」
37
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:58:54 ID:aGQ2j7Kg0
マジでマジで
支援せざるを得ない
38
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:59:32 ID:X.bQi/M20
音は、そう響くものではなかった。むしろ軽いとも言えた。
棒も先端にこそ勾玉の装飾がされているが、殺傷力があるようには見えない。
熊の大きさと比べてどちらも小さい存在だ、ダメージがあるとは思えない光景。
しかしそんな考えが浮かぶよりも先に、発生した事象にヒートは驚愕に固まった。
それはとても軽く、吊るした衣服が風に吹かれるようにして、熊の身体が浮き上がり、
数百キロはあろうかと言う巨漢が、打たれた慣性そのままに正面へと飛んでいく。
その先には、あの大男。
向かってくる熊に向け、もう一度ハンマーを振りかぶると、今度はまっすぐに、熊へと打ち下ろす。
衝撃に熊の身体がのけぞるが、しかしその先端にはやはり触れることないまま、
まるで見えない何かに押されるようにして、地面へと叩きつけられた。
が、と苦悶の声が上がるが、更に一瞬遅れて衝撃が、音と共に地面を砕いた。
(; (エ) )「が、あ、、ああああああああああああああああああああああああああ」
硬い地面に半身がめり込み、その周囲には圧の威力を示すようにクレーターが広がった。
血が、幾度かいたるところから噴出し、身体を埋める溝へと溜まっていく。
39
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 19:59:44 ID:GDkUF/Ds0
おかえり…!!!
40
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:01:04 ID:X.bQi/M20
それでも槌を押し付けたままの大男だったが、自身の横に赤い影が走るのを見た。
ノハ#゚⊿゚)「図に乗るな!!!」
( ゚∋゚)「…!」
しかし、そこへ更に追撃する姿があった。
(#゚;;-゚)「させない」
ノハ#゚⊿゚)「こちらの台詞…!」
だがヒートはこの行動を読み、紫電の光を放つ剣を振るっていた。
帯電状態の剣は、触れた瞬間に相手の腕を焦がすだろう、
とっさの事ならば口にする暇も与えない、そのため神具は魔法剣状態にしていた。
(;#゚;;-゚)「ッッ!!!!」
衝突は一瞬、互いの剣が弾かれるや否や、
ヂヂッ、と弾けるような音がして、でぃの動きがピタリと止まる。
ヒートは剣を弾かれながらも、勢いそのままに女を蹴り飛ばす。
女の身体が大男にぶつかって、男はその身体を支えるように片手で受け止める、
でぃは口をパクパクさせているが、軽い痺れで声が出ていない。
この瞬間を勝機と見る、ヒートは剣を再び巨大化させようと思い、
しかしハッと周囲へと意識を向け、神具を大剣、魔法剣に次ぐもう一つの姿へと変えた。
41
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:02:41 ID:X.bQi/M20
|/゚U゚|丿+激しく隙在り+
ノパ⊿゚)「―――そんなものは無い、バルムンク…強化全開放!!」
ヒートの更に背後へ回り込んでいた忍者が、手にした棍棒を振るう、
しかし一度体勢を沈み込ませたように見えたヒートの姿が、その場から消えた。
忍者の攻撃は、と音を立てて空を切るだけに終わる。
|/;゚U゚|丿(……速い!?)
ノパ⊿゚)(あれに触れるのは駄目そうね)
横目に思いながら、眼前の二人を追い越し、更に回り込む。
この、一瞬の跳躍めいた疾走だけで、体中から軋むような音が響く、
やはり全体強化の負担は大きい、二度はないと考え、覚悟を決める。
ノハ#-⊿゚)(ここで……決めるっ!!)
三人共に反応できていない、行けると判断して地を蹴る。
だが、視界の隅に何かが見えた、大男が持つハンマーだった。
しかし自分を狙っていない、焦って振り回しているだけの行為に過ぎない。
真実、その通りだった。
大男はヒートを見失い、咄嗟にぶん回しただけである。
つまりは運、賭けの様なもの、攻撃ですらない。
42
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:03:58 ID:X.bQi/M20
それゆえの、誰も読めない挙動。
今回ばかりは運悪く、それはただの偶然の結果として、
ヒートの向かう先、およそ斬り付けた直後のあたりで打ち付けられる先を示していた。
その結果。
ノハ;-⊿゚)「ぐ……っっ!!」
ヒートは無理矢理に方向を変え、距離を取ってその場を離れる事を選んだ。
そしてすぐに強化を解く、気だるさのような物が全身を襲い、
足には痙攣と共に、はっきりとした痛みが走る。
正面を見れば、倒れ伏せた熊の前で、三人がゆっくりと体勢を整え、
ヒートの姿を見つけるなり、やけにゆっくりとした動作で並び歩いた。
( ゚∋゚)「先の僅かな一瞬の、その全ての判断力、見事、と言わせて貰おう」
|/゚U゚|丿+にんにん、これは確かに一人で相手をするのは難しいようでござる+
( ゚∋゚)「さぞ民にも慕われる存在だろう……ゆえに、その存在の大きさも噂通りという事」
|/゚U゚|丿+つまり失えば、激しく崩壊+
ノハ;゚ -゚)「………そう…あなた方、最初から……」
(#゚;;-゚)「あなたを捕らえる―――三人がかりで」
43
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:05:00 ID:X.bQi/M20
ノハ;゚ -゚)(落ち着け……落ち着いて、考えろ……どうする)
理性や、大局的なことを考えるなら、今すぐに逃げるべき。
連中の言うとおり、今のヒルトは団結しているようで危うい面もある、
何故なら、新たな王となった人間が、現在行方知らずとなっているからだ。
しかしそれが問題となっていないのは、代役を立てていることもあるが、
それ以上に、代役である事によってあまり現王との接点、会話等が少ない事に起因していた。
というにも、彼女自身としてはあまり理解したくない理由ではあるが、
どうやら民の多くがヒートの容姿に心を動かされているため、
要するに、イチャイチャしてないから許すよ、という若干気持ち悪い信仰心によるもの。
ゆえに、ヒルトの人間たちは、彼女を失うことがあれば、
少なくともその士気を無くし、全ては瓦解してしまう。
ノハ; ⊿ )(……けれど)
だからといって、彼女を崇拝する全てがその容姿にある訳ではない。
当然ながら、ヒルトという武力国家における前提として、強き者である事は絶対条件。
44
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:06:30 ID:X.bQi/M20
いくら多対一、それも管理者とは言え、自ら戦いに背を向けるなど、
王として先頭にたつことで皆を率いた存在が、尻尾を巻いて逃げ出すなど、
そんな姿を、衆目にさらす訳にはいかない、民にも、敵にも。
そうなれば、それもすぐに信仰の崩壊を招いてしまう。
故に、やはりただ逃げるわけにはいかない。
王として、立ち向かう事をやめてはならない。
ならば、あと自分ができることは。
ノハ-⊿-)「………」
ヒートは、剣を構えなおし、迎撃の姿勢を取った。
( ゚∋゚)「……この状況下で、まだ戦意を失わぬか」
ノパー゚)「そちら様方こそ、随分と余裕ですのね?」
ノパー゚)「人数が増えたからと言って……あなた達自身が、私より強くなった訳じゃないでしょうに」
|/゚U゚|丿+そう言って一対一の状況でも狙ってるでござるか? 無駄にござるよ+
( ゚∋゚)「こちらは元より、強さへの誇りなど持ち合わせてはいない」
45
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:07:12 ID:X.bQi/M20
ノパ⊿゚)「いいえ、そうではなく――――」
(#゚;;-゚)「ただ、令に従うのみ」
ノハ#゚⊿゚)「余裕ぶって歩いてないで、とっととかかってこいと言っている…!!」
ヒートはそう叫び、魔法剣に炎を宿らせ、そのまま高く燃え上がらせる。
決死の覚悟、ではなく、もう一つの選択肢を信じたから。
この組織めいた動きは脅威ではあるが、しかしそれは自分も同じ、
かつて国内で、ただ一人現実に立ち向かっていた頃とは違う、
色々な考えや、色々な強さを持った人間達と、今ここに立っている。
誰かは気付く、誰かが動くはず、と。
仲間を信じ、今はせめて時間を稼ぐこと。
それが今のヒートが選んだ、最善の選択肢だった。
( ゚∋゚)「……!」
最初に動いたのは大男、次いで傷女、最後に忍者が男の背に隠れるように駆け出す。
ヒートの最大の攻撃を、不可視の力で難なく受け止めた大男に対して、
言葉を紡ぐ間を与えれば、何が起きるかも読めない傷女に対して、
そしておそらく、触れたものを吹き飛ばす力をもつ忍者に対して、
打開策が無い。
46
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:08:18 ID:X.bQi/M20
下手をすれば、次の一度の斬りあいで決着してしまうかもしれない。
それでも、と剣を振るう、炎が放たれた。
だが案の定、炎はすぐに大男のもつハンマーの一振りでかき消され、
傷女の囁きによるものか、更には剣先の火までも消えていく。
見て、ハ、と笑みを浮かべ。
覚悟を決め、死地とも呼べるこの先へ、その一歩を踏み出した。
その先に、雷が落ちた。
全員が足をとめ、一瞬の閃光と、地を揺らす轟音に身を強張らせる。
向かい合ったその中間には、ぱりぱりと青白い光を放つ、白く小さな小槌があった。
周囲には煙があがっているが、しかし砂煙の類ではなく、黒の混じったもの、
焼け焦げた地面が、ぶすぶすと煙をあげている、雷接続を使用したあとに見られる様子ではあるが。
47
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:09:51 ID:X.bQi/M20
ノハ;゚⊿゚)(何よこの威力……普通じゃない!)
( ゚∋゚)「……小槌……そして雷……?」
(;#゚;;-゚)「……」
明らかに、戦闘を妨害する行為だ、それぞれが周囲を見渡すが、
やがてすぐに視線は一点にむかうことになる。
何故なら地面にめり込んでいた槌が、突如として浮き上がり、その一点へと飛んでいったからだ。
弧を描き飛んでいく小槌が、銀色の篭手をもつ腕に吸い込まれるように飛来し、
やがて、ガシャァンと音を立てて手の中へ、視線を集めながら男はにぃと笑った。
( ゚∀゚)o彡゜「俺、参上!」
ノハ;゚⊿゚)「あなたは…!! どうしてここに!?」
( ゚∀゚)「よお王女さん、お楽しみのとこ悪いな、邪魔するよ」
ノハ;゚⊿゚)「いやそんな事より――――」
ノハ;゚ー゚)「はぁ……まったく、今までどこで遊んでいたのかしら?」
(;゚∀゚)「あれ? 連絡いってるんじゃねぇの?」
ノハ;゚ー゚)「場所まではわからないって話だったわよ」
(;゚∀゚)「あー…そう、そうか、そうだよなぁ」
(;゚∀゚)(どおりで……迎えの一つも寄越さねぇと思ったら…)
(;゚∀゚)(…………あれ、置いてきちまったの、もしかしてまずったか?)
48
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:10:47 ID:X.bQi/M20
ノパ⊿゚)「あなたが居るって事は、例の、破壊の管理者の子もここに?」
(;゚∀゚)「え!? い、いやっ、ドクオは、まだ、その…療養、中、みたいな?」
ノパ -゚)「何をどもってるの」
(;゚∀゚)「それよりだ! あれ、敵だろ! ほれこっち見てんぞ!」
( ゚∋゚)「……ミョルニル、破砕の管理者だな」
|/゚U゚|丿+もうずっと行方不明と聞いていたでござるが……本物?+
( ゚∀゚)「お、ご存知とは、俺も名が知れたもんだ」
(#゚;;-゚)「名は知らない」
(;゚∀゚)「そうかよ」
(#゚;;-゚)「興味も無い、前の戦場から逃げた、臆病者」
( ゚∀゚)「……まあ、な」
ノパ⊿゚)「…………」
( ゚∀゚)「んなわけだ王女さん、とにかく手を貸すぜ」
( ゚∀゚)「俺はそうだな……あっちのでかい奴、得物も似てるしあいつだな」
49
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:11:55 ID:X.bQi/M20
( ゚∋゚)「………む」
( ゚∀゚)「それと、さっき見えたけど後ろの奴、あれもセットで相手してやる」
|/゚U゚|丿+……+
ノハ;゚⊿゚)「管理者の手はありがたいけれど……大丈夫なの?」
(;゚∀゚)「あん? 信用ねぇなー……ってそういや、みっともないとこ見られたっけな」
( ゚∀゚)「ん、まあ、心配ご無用、でも今はもうちょい、こっち来てくれっか?」
|/゚U゚|丿+舐められているでござるな+
|/゚U゚|丿+卑劣な手段は認めよう、だが、拙者等も管理者の端くれ+
|/゚U゚|丿+激しく後悔するがいい―――クックル!!+
( ゚∋゚)「…!!」
大男と忍者が、再び一列となって駆ける。
対するジョルジュは槌を掲げ。
ノパ⊿゚)「何をする気?」
( ゚∀゚)「まあ見てな」
その場で、地面を殴りつけ。
(#゚∀゚)「行くぜ、俺の必殺技…パート4!!」
50
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:13:02 ID:X.bQi/M20
その箇所を中心として、大地に四方八方へ伸びゆくひび割れが走り、
続くもう一打にて、砕かれた箇所が一気に隆起、あるいは陥没し、いくつもの亀裂が広がっていく。
ノハ;゚⊿゚)「んな……!?」
(;゚∋゚)「う、おっ!?」
大地が揺れるどころではない、いくつもの地割れが直に足を取る、
駆けていた大男はつまづき、ついでにヒートも巻き込まれてよろけた。
(#゚∀゚)「ライジングメテオ・インフェルノオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
次いで小槌、ミョツルニルが纏う青白い光がより強く閃いた。
瞬間、亀裂のいたるところから閃光がほとばしり、わずかに辺りが膨らんだように見えると、
今度は突き上げるような爆発が、隆起した地面ごと宙へと吹き上がらせた。
突如として目の前に起きた事態に、ヒートは背筋を凍らせ、悲鳴を上げそうになるのを何とか堪えた。
光の中、大小様々な岩石が空へ登り、次いで落ちていく。
巻き込まれたらどうなるか、それは直撃を受けたと思われる、大男の姿が教えていた。
雷に焼かれたのか、むき出しの両足は黒く爛れ。
吹き上がる岩に撃たれた全身には裂傷と打撲痕。
うめき声を上げ倒れかけた姿を、更に上から落ちてきた岩が頭上に落ちると、
糸が切れたように倒れ伏し、その姿を土砂が埋めていく。
51
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:13:12 ID:aGQ2j7Kg0
そういやジョルジュの神器全部揃ったんだっけ
52
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:14:43 ID:X.bQi/M20
そんな光景を見た周囲からも悲鳴があがり、散り散りに逃げていく背が見えた。
( ゚∀゚)「あいつ……小さいほうを庇いやがったぞ、やるなぁオイ」
ノハ;゚⊿゚)「な……」
|/゚U゚|丿+激しく憤怒、よくもクックルを……!!+
( ゚∀゚)「ま、これでタイマンだ、暴れるぜぇ……!!」
瓦礫を避け、忍者が怒りを顕に駆けてくる。
対してジョルジュはヒートから離れ、迎撃の構えを取った。
ノハ;゚⊿゚)「いけない…あの神具に触れては…!!」
(;゚∀゚)「!?」
|/゚U゚|丿+激しく遅い、その神具、追放する―――+
忍者が、打ち上げるように棍棒を振るい。
ジョルジュは小槌で受けるように上から殴りつけ。
カコン、という異様なほどに澄んだ音を響かせて、
ジョルジュは凄まじいまでの衝撃と、反動で槌を握る腕が頭上まで返された事を知る。
しかも、ただ弾かれただけではなく、引っ張られる感覚は消えることなく、
何とか飛ばされないよう強く握るがそれでも、及ばず。
(;゚∀゚)「ぬ、あああああ、なん、じゃこりゃ……あっ!?」
53
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:15:53 ID:X.bQi/M20
ついには、すっぽ抜けた白い槌が、頭上へと飛ばされてしまった。
ジョルジュはどんどん上昇する己の神具を、呆然と見ている事しかできなかった。
|/゚U゚|丿+神具ヤグルシュ、その力は力にあらず+
ノハ;゚⊿゚)(やはりあれは………っ不味い!)
(;゚∀゚)「あーあー……」
|/゚U゚|丿+お覚悟、何か言い残すことは?+
忍者が、腰に携えたもう一振り、細身の剣を抜き放ち、
丸腰となったジョルジュへ向けて言う。
( ゚∀゚)「そうだな………お前がな、かな」
しかしジョルジュは大胆不敵に笑みをつくり、篭手のついた手を向ける。
瞬間、空から一筋の閃光が、空間を裂くように走り抜け、忍者の身体を貫いた。
|/;゚U゚|丿+……!? ……!?!?!?!+
光に打たれた忍者は、全身に痺れを感じ、身じろぎもままならない、
ただ全身には青白い光が、ぱりぱりと音を立てて浮かんでいる。
何が起きたのか、誰も理解できずに見守る中、そして次の瞬間。
再びの閃光。
54
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:16:27 ID:X.bQi/M20
しかし今度は物理的に地面に平伏せる圧力を伴い、
打ち上げられた筈の小槌が、忍者の体を押し潰す勢いで飛来した。
腹の底にまで響くほどの重低音が遠く響く。
雷が余波となって地を焦がし、すぐに黒い煙が立つ。
( ゚∀゚)「名付けて、神雷」
返ってきた小槌を、篭手が大きな音を立てて受け止める。
辺りは、遠巻きにこそ未だ戦火の声が響くものの、妙に静まり返っていた。
連続して起こった圧倒的な破壊力と、立て続けに、あっさりと管理者を二人下した存在によって。
ノハ;゚⊿゚)「………」
ノハ;゚⊿゚)「……あら?」
同様に、唖然とするヒートだったが、ふと気付く。
あの傷女が見当たらない、今の隙を狙ってのものかと警戒するが、
どこにもその姿は見当たらなかった、おそらく、最初の爆発の際に引いたのだろう。
( ゚∀゚)「こっちは終わったぜ」
ノハ;゚⊿゚)「………」
( ゚∀゚)「ま、ちょい物足りねぇし、何ならもう一人も……」
(;゚∀゚)「ってありゃ? どこいった?」
ノハ;゚ー゚)「……あなたも、人が悪いわね、闘技場では手を抜いていたのかしら?」
( ゚∀゚)「いや、あの時はあれが全力だったさ」
( -∀゚)「ま、事情があってな、今はまあ、こんなもんよ」
55
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:17:16 ID:X.bQi/M20
<おーい
ノパ⊿゚)「?」
と、そんな二人へと駆け寄る姿がある、ヒート側近の者達だ。
彼らは女王の無事に安堵すると、これからの行動について示唆を問う。
戦場の真っ只中であるはずだが、不思議と周囲には攻め寄ってくる姿は無い。
管理者を恐れてのことかは不明だが、ちょうどいいとそれぞれ口を開く。
( ゚∀゚)「攻め時だな?」
ノパ⊿゚)「……そう、ね…でも」
( - -)「ツンさんの方もまた一つお手柄みたいだし」
(;<::V::>)「あの人、聞けば管理者を過去何人も葬ってきたとか…やばいすね」
( - -)「ヤバみだね」
( ゚∀゚)「押せ押せムードだな、よし行こうぜ」
ノパ⊿゚)「………」
確かに、管理者を三人撃破、一人は逃走。
果たしてこれで全てなのかは不明だが、それでも今現れないのであれば同じこと、
ただの接続使いが相手なら、もはや自分ら管理者は居るだけで敵の戦意を削ぐ。
ましてや相手には非接続者までもが混ざっている。
ヒルトの民ならば、一人一人がそう遅れは取るまい。
このまま押し切る形で降伏を迫ることができれば、あとは裸の王が残るのみ。
いかにロマネスクが強大な力を持つ存在であったとしても、
この情勢が出来上がってしまえば、少なくとも戦争という意味合いの物は終わる。
56
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:17:43 ID:X.bQi/M20
ならば行くべきだ、しかしヒートは未だひっかかる部分があった。
敵方の行動に違和感がある。
明らかに一つの意思を感じる行動ばかりだった。
これがあのロマネスクという男によるものならば、
それならば、本当に今は優位に立っている状態なのだろうか、
自分達が相手をしているのは、管理者を失うだけで瓦解してしまうような物なのだろうか。
意図は分からずとも、いくつもの国の存亡すら手玉にした人間が、本当にその程度の。
と思案するヒートの耳に、聞き慣れない音が響く。
キ と イ が連続したような、甲高く鼓膜をくすぐるような音だった。
(;゚∀゚)「うっせ、なんだこりゃ?」
( - -)「前に使ったまいく? とかいう拡声器の音だよ」
ちなみにその失敗作であり、ノイズと騒音を撒き散らすだけの代物だったが、
音だけはよく通るため、いくつかの合図、信号代わりに持ち込まれた物だった。
そしてこの場合。
( ゚∀゚)「で、これが何だって?」
( - -)「合図だよ、たしかこう鳴らしっぱなしなのは…」
ノパ⊿゚)「…急ぎ撤退せよ」
57
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:18:14 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「……」
( - -)「ショボンって子の指示かな? なんでだろうね?」
( ゚∀゚)「……ああ、そう、それなら、そうだな、撤退か」
( - -)「認めるの?」
( ゚∀゚)「あいつがそう指示したんなら間違いねぇだろ」
( - -)「ふぅん……実力はありそうなのに、逃げ腰とは」
ノパ⊿゚)「………シュー、やめなさい」
( - -)「"また"逃げるなんて、やっぱり臆病者って噂は本当だったのかな?」
( ゚∀゚)「………」
ノパ⊿゚)「やめろと言ってるのが聞こえないの?」
( - -)「だっておかしいじゃないか、今は間違いなく好機のはずだよ」
「確かに…向こうが引くならわかるけどさ」
「いやでも、何か理由があるんじゃ?」
「なんだお前もびびってんのかよ」
「そうじゃねぇけど、ただ――」
ノハ;゚⊿゚)「……っ」
( <::V::>)「……ジョルジュ、だったか、一ついいか?」
( ゚∀゚)「ん? あー…お前、たしか闘技場で会ったな」
58
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:19:18 ID:X.bQi/M20
( <::V::>)「そうだ、俺はあんたが確かな実力者だって事を身を持って知ってる」
( <::V::>)「だから分からない、何故だ、あんたが居れば戦局すら変わりかねないのに」
( <::V::>)「何故今、いや以前にも、そうやって逃げを選ぼうとする?」
(;゚∀゚)「何故ったってなぁ……」
( <::V::>)「本当に臆病風に吹かれたとでも言うのか? あのオーガにすら恐れず最後まで立ち向かったあんたが!?」
( ゚∀゚)「……臆病風か」
( ゚∀゚)「確かにそうさ、俺はずっと……ビビッてたよ、だから耳を貸さなかった」
( ゚∀゚)「そういう可能性からも、目を背けちまってた…その結果がこれさ」
( <::V::>)「な、何を言って…」
ノパ⊿゚)「……あなた、何を知っているの?」
( ゚∀゚)「現実だよ、これから起こる」
( ゚∀゚)「なあ?」
ジョルジュが槌を向ける、その先にはいつの間にか一人の男が立っていた。
背は高く、顔面には大きな傷跡、手には剣が握られている。
剣は、金色の柄に、白銀の刀身。
59
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:19:19 ID:aGQ2j7Kg0
神器揃ったジョルジュ強すぎワロタ
60
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:20:17 ID:X.bQi/M20
ノハ;゚⊿゚)「あの剣――――あれ、は…!?」
傍らには、先ほど見失った傷女、でぃがかしずくように控えていた。
だがヒート達はそれ以上に、現れた男の、どこか見覚えのある姿に驚愕した。
( ゚∀゚)「……内藤」
( メωФ)
ノハ;゚⊿゚)「……っ、まさか…!?」
( - -)「……!」
( ゚∀゚)「よお、久しぶりだな」
( メωФ)「……? 僕のことを言っているのか?」
背丈も雰囲気もまるで違うが、それでも顔には確かな面影と、
そして声はそのまま、かつてヒルトの地を共にした少年の物だった。
(#゚;;-゚)「ロマネスク様、世を混乱に陥れる者の狂言など、聞いてはいけません」
( メωФ)「そう、だったな…」
( メωФ)「お前達、逆賊の管理者だな……ここからは、僕が相手だ」
顔に傷をもつ男は、そう言って剣の切っ先を向ける。
その瞳に惑いの色はなく、明確な敵意だけを宿して。
61
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:21:32 ID:X.bQi/M20
(;゚∀゚)「やれやれ、ほんとに忘れちまってんだな」
ノハ;゚⊿゚)「どういう事…!? 何故彼が…あれは、本当に!?」
( ゚∀゚)「話は後だ王女さん、あの通りあいつは今は敵、だから早く逃げな、ここは俺が引き受けた」
( - -)「いや駄目だ、あれが本当にそうなら……ここで討つ」
ノハ;゚⊿゚)「シュール!? 今度は何を…」
( - -)「まったく、戦闘モードが切れるとこれだ」
( - -)「彼が捕らえられたと聞いた時点でこうなる事は予想できたし、
それに何より、あれが本物で万が一うちの人間達に知られてご覧よ、それこそ問題」
ノハ;゚⊿゚)「それは……」
ノパ⊿゚)「いえ、そうね………その通りだわ」
(;゚∀゚)「おいおい話聞いてたか? 逃げろって」
( メωФ)「……」
未だ鳴り響くハウリングノイズ、そして響く喧騒。
その場を見据えるものたちは、遠巻きながらヒートの指示を待っていた。
顔に傷をもつ男女は、眼前のジョルジュ達を見据えたまま動かない。
シュールと呼ばれた仮面姿の人間が、静止の声も聞かず傷男へ向かい駆けていく。
遅れてジョルジュとヒートが続いた。
62
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:22:26 ID:X.bQi/M20
まず斬りかかったのはシュール、薙ぎ払うような素振りをフェイントに、
胸を狙っての突き、傷男は手にした剣で切り払う。
とても軽い所作だった、それは衝突の音も同様で、甲高くもよく響く金属音。
(;- -)「……っ!?」
シュールは困惑した、攻撃を払われた事にではなく。
眼前、宙を回転しながら飛んでいく自らの剣の、その刀身に。
剣戟がぶつかり合いになることなく、ただ、自らの剣が根元から手折られる結果に終わった事に。
( メωФ)「……降伏しろ」
(;- -)「何…を!」
つんのめるような体制で立ち止まったシュールの喉元へ、傷男は切っ先を突きつけ言い放つ。
ノパ⊿゚)「下がりなさい!!」
(;゚∀゚)「しょうがねぇな…っ」
そして二人がほぼ同時に、傷男へと襲い掛かる。
ヒートが大剣を頭上から振り下ろし、傷男は横へと身をかわす。
地面を砕く勢いで降りぬかれた大剣は、しかし途中で軌道を変えてVの字を描く。
咄嗟に傷男は自らの剣で受ける構えをとるが、大剣の勢いを見ればとめられる筈もない。
だが、大剣は軽やかな金属音だけを残し、細身の剣に容易く受け止められていた。
( メωФ)「お前達もだ」
63
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:23:24 ID:X.bQi/M20
ノパ⊿゚)(…!)
そのまま、鍔迫り合いのような形で動きが止まる。
ヒートが平静を保てたのは、この状況に覚えがあったからだ。
いつかの闘技場でもそうだったように、いかな理屈か強力な一撃が通用しない。
と、その隙にジョルジュがシュールを引っ張りあげ、後方へと投げつけるように逃がすと、
今度は傷男へと向きなおし、一瞬だけ、躊躇うように歯を鳴らすが、
すぐさま動きを止めた姿へと、青白く発行する槌で殴りかかった。
対する傷男の反応は、あまりにも早く。
ヒートは僅かな拮抗すらできぬまま、払われた大剣に引っ張られるように姿勢を崩し。
迫るジョルジュに対し、一度剣を振りまわす余裕を見せた上で、打ち下ろしの槌を弾き返して見せた。
(;゚∀゚)「ん、なろ…!!」
( メωФ)「…遅いな」
( ゚∀゚)「まだまだ!!」
しかしジョルジュは怯むことなく、腕ごと弾かれた槌をその場で手放し、もう片手を男へと向ける。
すぐさま槌から雷光が走り、白銀の刀身を貫き傷男へと飛び掛った。
傷男はその槌を正面から受け止めるが、勢いは止まらず、
踏ん張った両足で跡を作りながら、そのまま後方へと押し出されていく。
しかし異様なのはそれを堪えている事よりも、槌から放たれている雷光だ。
打ち付けた瞬間こそ、四方に電撃が散らばったものの、それらはすぐに収束を始めてしまう。
まるで、剣に光が吸い込まれていくように。
64
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:25:01 ID:X.bQi/M20
(#゚;;-゚)「ご無事で?」
( メωФ)「……ああ、大丈夫」
押し出された先で、傷男は女に対して手で近づかないよう制止した。
返ってきた槌を受け止めながら、ジョルジュはそんな様子にため息をつく。
落胆にも見えるが、しかしそれはどこか、安堵も含む。
ノパ⊿゚)「……あの神具、どういうこと?」
( ゚∀゚)「あん?」
ノパ⊿゚)「太陽の剣……身体強化の力を持っているとは聞いたけど、今のは……」
( ゚∀゚)「さあ……俺も詳しくは知らねぇんだ、ただ……」
ノパ⊿゚)「ただ?」
( ゚∀゚)「あのロマネスクって奴が言ってたらしいぜ、我が半身の力、ってよ」
ノパ⊿゚)(半身……? そういえば……前に母者さんも何か、変な事を…)
( メωФ)「お前達……そこの、赤い髪の女がヒルトの女王だな?」
( ゚∀゚)「ああ、しかし随分とまあ、偉そうな喋り方になったもんだな?」
( メωФ)「……?」
( メωФ)「…なら、ちょうどいい、そもそも僕は戦いに来た訳じゃない」
65
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:25:58 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「ほぉ? じゃあ何しに来たんだよ」
( メωФ)「降伏しろ」
ノパ⊿゚)「何…?」
( メωФ)「我が王は慈悲深い御方だ、抵抗を止めればこれ以上無駄に血を流すこともない」
( メωФ)「当然、首謀者と見られる誓賢と、紅牙、そして月鏡は引き渡して貰う必要があるが…」
( メωФ)「それも悪いようにはしない、我が王は、過ちと死は同義では無いと言っている」
( ゚∀゚)「何だ…結局はつまりお前もあれか、王女さん狙いって事か」
ノハ;゚ー゚)「人気者は辛いわね」
( - -)「でもそういうのは、ちゃんと許可得てからにして貰わないと」
( <::V::>)「……ええ、時間を作ります、二人は隙を見て撤退を」
ノパ⊿゚)「……私に言っているのか?」
( - -)「そうだよ、一旦任せて僕らは引こう」
ノパ⊿゚)「あなた、さっきと言ってることが違うんじゃなくて?」
(;- -)「ああ、撤回させてもらう……あれは駄目だ、まともにやりあっちゃいけない」
ふと横に並ぶシュールを見れば、腕が微かに震えている。
そしてこう口にした、違いすぎる、人間じゃない、と。
ノハ;゚⊿゚)(あのシュールが……脅えて?)
66
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:26:54 ID:X.bQi/M20
最初に剣を折られてからの、ほんの僅かな攻防。
それらを見続けた結果として、得た感想は。
まるで違う時間を生きているかのように、速度が違うということ。
野生の生き物が、その為だけの器官を使って得物を捕るような。
本能的に、敵わないということを悟らせる動きだった。
( メωФ)「逃がしはしない」
( ゚∀゚)「いいや、逃がしてもらうぜ、そのために俺は来たんだからな」
( - -)「……さあ、今のうちに!」
ノハ;゚⊿゚)「……くっ」
…………。
撤退の合図が出てからしばらく、ツン達は周りの逃走の手助けをしつつ、
姿の見えなくなった女王ヒート達の姿を探していた。
やがてようやく姿を見つけるも、その状況に思わず駆ける足を止めた。
67
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:27:39 ID:X.bQi/M20
焼け焦げた地面が煙を上げ、隆起した地面が亀裂をつくり、
そこかしこに倒れた人間がうめき声を上げている。
その中に、探していた人物も居た。
そして、唯一無傷で立ちすくむ人間には見覚えがある。
ξ゚⊿゚)ξ「あれは……太陽、なのか?」
<_プД゚)フ「それにあれ、ジョルジュじゃん! …いつの間に!?」
(;凸)「あんたら、大丈夫か!? 女王様も!」
(;- -)「……ぐ…それより、はやく、ヒートを連れて…!」
(;凸)「これ…無事、なのか?」
(;- -)「ああ、ただ情けないけど、さっきしこたま殴られてね」
ξ゚⊿゚)ξ「…私が行く、お前達は女王をつれて引け」
シュールの傍らには、額から血を流し横たわるヒートの姿がある、
息はあるが、意識を失っているようで、剣も手放したまま動かない。
そして、相対しているであろう傷男に今もまた一人向かっていく姿があるが、
すぐさま剣の腹の部分で横ばいに殴られ、地に伏せた。
と、そんな隙を突くかのように、白い小槌が傷男へと飛翔するが、
それもまたすぐに切り払われ、持ち主の下へと返っていく。
ガシャンと、重い金属的な音を鳴らして受け止めると、
ジョルジュはそのままの勢いで殴りかかる。
(#゚∀゚)「おらあああああ!!」
( メωФ)「いい加減に…しろ!」
68
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:28:22 ID:X.bQi/M20
衝突する二人を中心に雷光がばら撒かれ、辺りを焦がしていく。
傷男は苛立ちを顕に切り払い、ジョルジュを大きく後退させた。
( メωФ)「無駄だと言ってるのがわからないのか」
傷男はこれまで、ヒート含めて何人もの人間を切り伏せてきたが、
未だその剣に血の類は付着していない、そのすべてを柄や腹で殴りつける形で行ってきた為だ。
( メωФ)「言ったはずだ、僕はお前達を殺しに来た訳じゃない」
( メωФ)「むしろお前達を"救いに"来たと言ってもいいくらいだ」
(;゚∀゚)「……っ」
( ゚∀゚)「そいつは、嬉しいことを聞いたぜ」
( メωФ)「……だからといって、いつまでも抵抗を許す訳じゃない、勘違いするな」
( ゚∀゚)「そうじゃねぇよ、安心しただけさ」
( ゚∀゚)「救いに来たなんざ、やっぱ、お前は、どう変わってもお前なんだな」
( メωФ)「……?」
( ;メωФ)「っ……!?」
一度だけ、傷男はこめかみの辺りを押さえるような素振りを見せた。
ジョルジュはそんな姿に笑みを浮かべ、小槌を向ける。
( ゚∀゚)「ああ、やっぱぶん殴ってでも、お前を連れて帰ってやる」
69
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:29:08 ID:X.bQi/M20
( メωФ)「わけのわからない…事を…!」
(#゚;;-゚)「そう、あなた、いい加減邪魔」
(;゚∀゚)「うお!?」
そんな会話の隙を縫い、傷女がジョルジュへと駆け寄る。
ジョルジュは咄嗟に槌を振るい、女のもつ剣とが間で交差し、激しく音を立てた。
(#゚;;-゚)「止まれ」
(;゚∀゚)「…っ」
(;゚∀゚)(なんだこりゃ…雷が消える?!)
彼女が持つ神具の名はフラガラッハ、およそ先にヒートが予想した通り、
持ち主が望んだことの一部を現実とする剣、つまり実際には言葉すら必要としていない。
一見とんでもない能力だが、全てを現実にするわけではなく、制限が多い。
特に大きいのは、別で既に起きている現象にしか干渉できないということ。
もう一つは、管理者本人が心からその結果を信じなくてはならないこと。
つまりは後出しでしか効果を得られず。
かつ一切の躊躇いもなく高所から飛び降りるような精神性が必要となる。
むしろ後者に至っては、自らの死を強く想起すればそちらが優先されかねないという。
戦いにおいては非常に危険とも言える能力だった。
ゆえに正常な人間であればとても耐えられる代物ではなく、
彼女自身、それがどれほど大変な事であったか、傷だらけの容姿が語っている。
70
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:30:17 ID:X.bQi/M20
(#゚;;-゚)「…!」
傷女は視界の中にもう一人、駆けてくる姿を見つけるなり、
さらに自分へと飛翔する刃を一瞥する。
それだけで、ツンが走りながら発射させた刃は、彼女の横を通り過ぎるだけの結果に終わった。
ξ;゚⊿゚)ξ「外れ――いや、逸れた…!?」
( ゚∀゚)「が、隙ありだ!!」
(#゚;;-゚)「……」
と、傷女がツンへと視線をやった合間をついて、ジョルジュがもう一度槌を打ち下ろす。
剣を構えなおす間もない攻撃、ただ掲げた姿勢で受けきれる衝撃じゃない、
( ゚∀゚)(貰った…!!)
と、確信するジョルジュだったが、目の前の女はむしろ構えを解き、
棒立ちの状態で、眼前にせまる槌をまばたきもせず眺めていた。
(#゚;;-゚)「……」
(;゚∀゚)「な、んだそりゃぁああああ!!?」
そしてジョルジュの攻撃は彼女の身体をすりぬけ、地面を砕いた。
ツンはそんな様を見るなり、急ブレーキをかけてその場で立ち止まる。
傷女は感情のない瞳を向けたまま、剣を構えなおしてジョルジュへ斬りかかった。
この際に続けざま、二人がかりで攻めれば先のような回避はできないが、
今の光景を見せられて、攻撃をしかけようという判断はできず、ジョルジュとツンは距離をとった。
71
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:31:23 ID:X.bQi/M20
(#゚;;-゚)「……」
(;゚∀゚)「おいおい、なんだ今のは…! きもちわりぃ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「……おい、お前がジョルジュって奴でいいのか?」
( ゚∀゚)「ん、そうだぜ? そういうお前さんは…味方でいいんだよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、だが挨拶は後にさせてもらう…時間稼ぎならもういい、撤退だ」
(;゚∀゚)「お、おう、けど俺は…あいつを…」
ξ゚⊿゚)ξ「……理由は知らんが、状況は見ろ」
言われてジョルジュは辺りへと意識を向ける。
どうやら撤退は進んでいるようで、争いの光や音はどんどん減り。
代わりに相手側の、勝利を喜ぶかのような雄叫びが聞こえてくる。
(;゚∀゚)「ずいぶんスムーズだなオイ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ヒルトの連中、確かに腕は良いが長期的な殺し合いには慣れていないのだろう」
優位に事を運べているように見えて、その実戦意を失いかけた者が多い。
それもそのはず、なにせ彼らは殺戮で腕を磨いてきたわけではない。
互いを強者と見たうえでの競い合い、その中に、戦意無く脅える人間を斬るような機会は無かった。
しかし何時何処で襲われるか分からない状況で、見逃している余裕までは無い。
狂気に酔えるほど不慣れでもない彼らは、ただ単純に精神を磨耗させていた。
このタイミングでの撤退は、全体を見れば正しい判断であり、逃げる行為を受け入れる者も多かった。
72
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:32:17 ID:X.bQi/M20
そしてそれはお互い様のようで、引いていく姿を追いかけ殲滅しようとする者たちも見当たらない、
戦場はこうして、どこか矛盾した絵面を描きながらひとまずの終わりへと向かっていく。
ξ゚⊿゚)ξ「それに…奴が何者であれ、今あの場に立ち、こちらに相対している」
ξ゚⊿゚)ξ「ならば再び、必ずまた現れる」
(;゚∀゚)「……次を待てってか…」
( メωФ)「相談中に悪いが、お前達は…管理者は逃がさない」
( メωФ)「特にそこの水晶剣の……月鏡だな、お前には何人も仲間をやられている」
( メωФ)「これ以上放ってはおくわけには、いかない」
(#゚;;-゚)「女王ヒートも、あの様子ではそう遠くないはず…私はそちらを」
( ゚∀゚)「……だってよ」
ξ-⊿゚)ξ「また指名か、やれやれだ」
(´・ω・`)「いいや、見逃がしてもらうよ」
( メωФ)「…!」
(;#゚;;-゚)「…っ!!」
と、ジョルジュたちの後ろから不意にかけられた声とその姿に、
その場の全員が一様に驚きの表情を作る。
73
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:33:03 ID:X.bQi/M20
(;゚∀゚)「あ?」
ξ゚⊿゚)ξ「お前、なぜここに…」
(´・ω・`)「いや撤退が遅れてるって聞いたので…それと」
(´・ω・`)「……確かめたい事もあったんで」
(#゚;;-゚)「…いけませんロマネスク様、あれはフレイ…誓賢です」
( メωФ)「……あれが」
ショボンは傍らに剣を浮かべたまま、対する二人組みを見据える。
何か言いかけたようにも見えたが、しかし開きかけた口をすぐに閉ざす。
代わりに誤魔化すように、ジョルジュへと向きなおし声をかけた。
(´・ω・`)「そういえば大丈夫でした?」
( ゚∀゚)「おう、言われた通り女王さんは何とか逃がしたぜ」
(´・ω・`)「よかったです、それじゃあ僕らも引きましょう…積もる話はその後で」
(;゚∀゚)「そうしたいのは山川なんだがな…」
ξ゚⊿゚)ξ「逃がす気はないらしいぞ」
そんな言葉が指すとおり、傷男は彼らを真っ直ぐに見据えたまま踏み出す。
傷女はそんな彼を制止するが、聞く耳持たず。
( メωФ)「……」
(#゚;;-゚)「ロマネスク様、彼奴と戦うのは……」
74
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:33:43 ID:X.bQi/M20
( メωФ)「王は僕に言った、まずは自分の目で見ろと」
( メωФ)「その上で判断し、自らの意思で動けと」
( メωФ)「だから僕は見ていた、そしてわかった事がある」
(#゚;;-゚)「……」
( メωФ)「こんな戦争、誰も求めちゃいないんだ、皆決着を望んでる」
( メωФ)「終わらせなければいけない、だからその根源を絶つ、今、ここで…!」
ξ;゚⊿゚)ξ「!」
言って、傷男は剣を腰構えに地を蹴った。
わずか数歩で距離を詰め、斬りかかる。
その動作をジョルジュ達は見ていた、警戒していなかった訳では無い、
しかし見ている以上のこと、迎撃するまでの行為には至れなかった。
まさに一瞬の出来事だった。
(;゚∀゚)(速…!?)
ξ;゚⊿゚)ξ「ぐ……っっ!」
ろくな反応もできぬまま、まずツンが胴を殴りつけられ倒れこむ。
続けてジョルジュも同様に、幾度か弾かれるように地を転がった。
しかし斬られた様子はなく、血も出ていない、剣の腹で叩いただけ。
未だ手加減したまま、だが二人は呻き声をあげ立ち上がれない。
75
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:34:08 ID:1RBXWRRo0
>>73
( ゚∀゚)のセリフミスじゃないか?
そうしたいのは山川→山々
76
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:35:04 ID:X.bQi/M20
そんな様を見たショボンは、忌々しげに誰かの名を口にする、
傷男はその名に首をかしげるが、すぐに剣の切っ先をショボンへと向けた。
(;´・ω・`)「…っ」
( メωФ)「あとはお前だ、降伏するならこれ以上は――」
(´ ω `)「馬鹿野郎…ほんとうに、バカだよ、君は…」
( メωФ)「……何?」
(´・ω・`)「…このままだと君は、この先……きっと取り返しのつかない間違いを犯す」
浮遊する剣を取り、ショボンもまた傷男へと剣を向け。
(´・ω・`)「だからこれが最後だ、このまま見逃すなら良し、そうでなければ……」
(`・ω・´)「斬りあった瞬間に君は死ぬ、僕が殺す」
(;゚∀゚)(……っっ!!)
( メωФ)「……確かに、誓賢とぶつかるのは控えるよう言われているが……」
( メωФ)「それは逆を言えば、誓賢、お前こそが最も捕らえるべき敵…!」
対峙する二人が、互いに剣を向ける。
皮肉なことに、そのどちらも相手に対する憎しみではなく、
相手の事を思っての行為から、片や生存を、片や死を願う。
しかしその相対は衝突することなく、傷男のうしろに現れた大きな影によって中断した。
77
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:36:22 ID:X.bQi/M20
(・(エ)・)
それは熊だった、とても大きな森のくまさん。
二本足で立ち、毛並みはボロボロでそこかしこに血が滲んでいる。
(・(エ)・)「……お前達、ここは俺が引き受けよう」
(;メωФ)(……熊が喋った……!!!?)
突然現れたかと思えば、流暢に話し始めた動物に困惑する傷男。
そんな隙をつくようにして、熊は男に覆いかぶさるように羽交い絞めにした。
(;メωФ)「……こいつ、この怪我でなんて力を…これが野生…!」
(#・(エ)・)「さあ行け、今のうちだ!」
(´・ω・`)「……」
しかしショボンは切っ先を向けたまま、今にも飛び掛らんと構える。
傷男はそんな空気を察し、すぐに意識を眼前の相手へと向けるが、
( ゚∀゚)「……引くぞ」
(;´・ω・`)「わっ…と、ジョルジュさん!?」
ξ-⊿゚)ξ「時間切れだ、お前の指示だろう?」
両側からの制止に引きずられるようにして、ショボンはその場に背を向けた。
そのまま三人駆けていく姿を、傷男はただ見据え、熊はどこか満足げに鼻を鳴らす。
( メωФ)「その身体でよく動けるものだな……仲間のためか」
(・(エ)・)「……勘違いするな、俺が守りたかったのは……」
78
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:36:50 ID:X.bQi/M20
(・(エ)・)「……お前だ、内藤」
( メωФ)「…何か、勘違いしているようだな」
(・(エ)・)「いいや、どう変わろうと匂いでわかる」
と、熊の全身がいちど痙攣し跳ねたかと思うと、
足元に大量の血が一気に流れ落ちる。
(#゚;;-゚)「離れろ獣め」
傷女は引き剥がそうと、さらに攻撃を続ける、斬り、突き、その度に毛が舞う、
分厚い毛皮はそう刃物を通さないが、幾度もの切り傷が重なり血が噴出する。
(;・(エ)・)「ぐ……あ」
( メωФ)「いい加減離せ、死ぬぞ」
(;・(エ)・)「だめだ……お前を、奴らに、渡さない…」
(;・(エ)・)「お前の居るべき場所は……ここじゃない…だろう!」
( メωФ)「……」
(#゚;;-゚)「しぶとい……」
(; (エ) )「が…ぁ…!!!」
( メωФ)「何故そうまでして……」
79
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:38:00 ID:X.bQi/M20
( (エ) )「お前は……こんな俺を、対等に見て、接してくれた」
( (エ) )「短い時間ではあったが……そうして、同じ時を過ごしたのだ」
( (エ) )「お前はもう……俺にとって、家族同然」
(# (エ) )「獣とは、死に物狂いで家族を護るのだ……!!!」
そして熊は足を引き摺り、傷男を抱えたまま前へと進もうとする。
だが最早目も見えていないのか、方向も空ろで右往左往するばかり、
やがて、ずん、と一際大きな衝撃が走ると、熊の身体がゆっくりと倒れこんでいく、
最後まで傷男を掴んでいた腕が、最後に小さな引っかき傷をつくり血が滲む。
男は、血溜まりにしずむ熊を見下ろしながら、
これまでにも幾度か呼ばれた名を反芻する。
そして自らの肩についた傷を押さえながら、遠く、彼の王の方向を見やる。
問わなければならない事ができたと、そう思いながら。
80
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:42:43 ID:X.bQi/M20
6話ここまで、バトルが書きたくない書くのが辛い
誰だこんなお話考えたのは、そのせいで何年かかってることか。
そんな繋ぎのお話でした。
書く予定だったツン主人公の話が無いから裏側の部分というか
新キャラがよくわからないことに、でもきっと書く日はもう来ない。
次回は戦いのあと、いろいろ決意したりしつつ、盛大にやらかすお話。
また明日と思ったけど思ったより早く投下終わったからこのあとすぐ。
81
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:44:19 ID:aGQ2j7Kg0
マジかよ期待
82
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:45:10 ID:X.bQi/M20
7ヶ「雪上に浮かぶ傷痕」
長く続く街道に、長蛇の列がつづいていく。
街道といっても、ただの踏み固められただけの道ではあるが、
草木も生えず、時折看板が行き先をしめす通りは果てなく見える。
それが幾つかの渓谷と山を越えた麓に、とても古い建造物がある。
岩山をくり貫いて作られたその様相はまるで遺跡のようであり、城砦のようでもある、
果たしてどれほど昔に作られたのか、たくさんの窓のような穴はどれも歪で、
そこかしこから大きな木が根を張り、そして天へと伸びていた。
そんな存在がいくつも並ぶこの場所は、ヒルトへと続く道の最中にあった。
今は戦乱の最中、ここは戦線を維持するための仮拠点。
かつて大きな戦いがあった際にも使われたという天然の要塞。
陽も暮れ始め、焚き火の光がつきはじめる時刻だが、
未だ行き交う人並みは留まることを知らない。
物資と、人の補充、戦の準備。
これらが終われば、再び戦争がはじまる。
83
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:45:39 ID:X.bQi/M20
と、そんな砦の頂上付近の窓辺から、遠く空を見る姿がある。
( メωФ)「……」
男はしばらく前に行われた争いと、その際に起きた出来事を思い返す。
男には、これまでの人生の記憶が無かった、それをいいように利用しようとする者達がいると、
自らを拾い、目をかけ世話をしてくれた恩人が言った。そしてそれはそのとおり、
この戦乱の世を生み出した、悪しき管理者たちは自分をとある名で呼んだ。
それだけならば、考えるまでも無い。
どちらが正しいのであれ、彼の王は殺しは望んでおらず、平和的解決を求めると言った。
一方で、悪しき管理者達はその名の通り、仲間達を次から次へと殺めてしまった。
どちらを信じるかで言えば王を信じたいと思う。
どこか似た容姿の、どこか懐かしいような空気をもつ、彼の王ロマネスク。
これまでは、周りも自分も、何も疑うことなく信じようと思えていた。
ただ、少しだけ。
幾つか気になることがあった。
一つは、つい先日、砦の中で耳にしてしまった話。
どこぞの国の人間かは不明だが、なんだか揉めているようだったため、
いざとなれば、と思い、聞き耳を立てていたときの事。
84
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:46:33 ID:X.bQi/M20
(ペニサス……大将が、裏切った?)
(ああ、敵側の管理者と一緒にいたって)
(それも、あれなんじゃないか? 神具の中には人を意のままにする物もあるって)
(でも今になってみるとさ……あいつら、そんな、悪い奴らには見えなかったなぁって)
(お前…! 連中を庇おうってのか!? あいつらが何したか…!!)
(それは、それが……本当に、あいつらがやったのか…?)
(ペニサスさんが言ってたじゃねぇか! 間違いねぇって!)
(でもその大将が、今はあっちについてるんだぞ!?)
(……)
(俺…なんか、もう、わけわかんねぇよ……)
(それに、前から思ってたんだけどさ)
(あの、王の側に居る奴、なんか、ちょっと似てねぇか?)
(誰に?)
(ほら、連中の……歓迎試合のときの…)
(内藤って奴に)
85
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:47:07 ID:X.bQi/M20
これも、他人の空似と言えばそれまでだ。
そもそも詳しく聞けば、その内藤と言う人間と自分とでは相違点はいくつもある。
この顔の傷のような痣も、何より体格、背丈もまるで違うと聞く。
ならば別人だ、関係ないはずだ。
それだけならば、それでもまだ、割り切れる。
しかしもう一つが特に、大きな要因として胸にしこりを残す。
今はもう消えてしまった肩の小さな傷跡、軽い痛みだけは今も覚えている。
家族を守るためだと、最後の命を振り絞っていた、獣の姿。
何か、応えてあげるべきだったのではないだろうか。
本人かどうかなんて些細な話ではなく、必死の想いを斬り捨てるのは、
それは、それこそが、本当の悪と呼べるものなのではないだろうか。
でぃ、あの女は王の命に従い動くと聞く。
ならばあの選択もまた、王の選択という事なのか。
否、あれは、ああする事はやむを得ない状況だった。
生命を尊ぶべきという、王の言葉に偽りはないはずだ。
思いながらも、懸念は小さな波紋となって、気付けば足を外へと向かわせていた。
行き先は出口、そしてその先を越えて、ヒルトへ向かう街道へ。
傷男は一人、胸をざわつかせる衝動に従い、歩き始めた。
86
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:48:15 ID:X.bQi/M20
…………。
雷珠による明かりが、書斎を思わせる一室をやさしく照らしている。
室内にはいくつもの本と、壁には大きな地図、机には大量の紙面が積まれていた。
そんなテーブルに向かい合うのはショボンだった。
偵察に向かった人たちの報告から、こちらの準備状況、そしてこれまでの被害まで、
今や色々な情報が届くようになってしまっていた。
それらは考える必要はあるので、これも大事な事ではあるのだが。
最初はただ、戦争を知らないエッダの人々に知る限りの戦術、戦略を教えていただけの筈が、
気付けば状況に流されるまま、今では国の動向にまで首をつっこむレベルとなっており、
徐々に混ざり始めている食料や武器類の、いわば経済に関する報告までもが届き始め、頭を抱えていた。
わからない、という訳では無い。
今時よくある異世界ものよろしく、現代経済のマニュアルと前例に則ってみれば、
この世界のまだ発展途上レベルの社会はとてもよく噛み合う。
賢たる者、次元接続によってすでに蓄積されている情報からすれば、
解決とまでは行かずとも、いくつもの改善案は提示できる。
しかし問題なのは、この先。
(;´・ω・`)(こんな事続けてたら……もしかしてずっとこのまま……)
もしも平和な世の中が来たとして、解放される日はくるのだろうか、
なんだかとても嫌な予感に見舞われ、机の上から目を逸らし、窓の外を見た。
87
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:48:39 ID:1RBXWRRo0
絶倫かよ愛してる
88
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:49:00 ID:X.bQi/M20
たくさんの白が降り注ぎ、窓枠にもまた雪が積もっていく。
外は雪景色、凍えそうな光景だが、室内は暖炉がパチパチと薪を燃やし、
ついでに最近ヒルトに出回っている、熱伝道送風機、つまりはストーブによって暖かい。
外で、屋根から落ちた雪が音を立てる。
ため息をつく。
すると、ノックの音が響いて、返事も待たずに扉が開く。
( ゚∀゚)「邪魔するぜ」
(´・ω・`)「どうしたんですか?」
( ゚∀゚)「いやちょっと様子見にな」
(´・ω・`)「なんだ、てっきりドクオの所在でもわかったのかと」
(;゚∀゚)「う゛……っ」
そう、あれからしばらく経つが、未だドクオは行方知れずのままだった。
街道で見かけたという情報もあるにはあるが、どれも不確定なものばかり、
更には最悪なことに、今やこのヒルトは各街道に検問を敷かれており、
聞けばドクオを匿っていたという場所は、その向こう側にあるというのだ。
これでは探し、迎えに行くこともできない。
89
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:49:35 ID:X.bQi/M20
ついでに一緒に居たはずのジョルジュも、聞けばもう大丈夫そうだからと、
まだ怪我も癒えてない状態のドクオを置いて、一人戻ってきたという。
その事で、ジョルジュが全員から総叩きにあったのは言うまでも無く、
某妹さんからは、連れて来るまで帰ってくるなと追い出されそうになっていた。
だが、もう少し深く容態までを聞いてみたところ。
巨大な剣で肩口から切り裂かれ、更にはそのまま谷底の川まで転落、
何とか救い上げたものの、すでに息絶えた所まで逝っていた、と。
それ本当に生きてるのかという疑惑まで浮上したが。
<_プー゚)フ(いや…それ、死んでるだろ……普通に)
川; - )(ぁぁ……っ)フラッ
从;゚∀从(ああっ、しっかりしろクー…!)
ノハ;゚ー゚)(そんな状態からどうやって……誰なの、そのもう一人って?)
(;゚∀゚)(……それは………)
(´-ω-`)(………)
('、`;川(―――死からの、蘇生……まさか)
(´・ω・`)(―――まあ、そんな重症なんじゃ、連れて来ないのは正解でしたね)
(;゚∀゚)(お、そ、そうか? そうだよな?)
90
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:50:20 ID:X.bQi/M20
(´・ω・`)(少なくとも戦力としては見れないし、安静にしてくれることを願いましょう)
ζ(゚- ゚*ζ(それで……もう一人って誰なの、お兄ちゃん?)
(;゚∀゚)(そりゃその、…たまたま! たまたま奇跡のお医者さんが居たんだよ…!!)
ζ(゚- ゚*ζ(へーそう)
(´・ω・`)(……はぁ)
なんだかんだで有耶無耶となっていたが、ほぼ本当は死んでる空気になりかけるも。
クーが見せたとある物と、彼女の言葉でその場は収まりを見せたのだった。
川;゚ -゚)(大丈夫、取り乱した、だが大丈夫だ)
从;゚∀从(ほんとに大丈夫か?)
川 ゚ -゚)(ああ、ほら、これを見てくれ)
手にあるのは、布にくるまれた赤い物体。
それはあの最後の地で、唯一発見、拾われたという彼の炎の剣の欠片。
折られ砕けた、レーヴァテインの刀身、その一部だった。
触れれば、それが奇妙な暖かさを持っている事がわかる。
その熱こそが、管理者である人間が生きているその証だと彼女が言った。
その剣の存在が、幾度も大切な人や場所を傷つけてきた、
しかし今は、それこそが唯一の、大切な繋がりだと、彼女は真っ直ぐな目で言う。
その姿に、その強さに、意を唱える者はもはや居なかった。
91
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:50:47 ID:X.bQi/M20
(;゚∀゚)「…そ、そりゃあ、考えが足りなかったとは思うけどよぉ…」
(´・ω・`)「足りないのは事情を語る言葉じゃないですかね?」
(´・ω・`)「……いくらあの、弟さんに預けてきたからって」
(;゚∀゚)「…………………」
_,
( -∀-)「……やっぱ、バレちまうか」
(´・ω・`)「……人を蘇らせるような力、心当たりなんて一つしかないでしょ」
( ゚∀゚)「ああ……だから、ドクオの奴は、大丈夫さ」
(´・ω・`)「大丈夫、ね……そう、言えるほどなんですか」
( ゚∀゚)「………」
(´・ω・`)「何があったか、まで聞く気はないですけど」
(´・ω・`)「本当に、本当に、大丈夫なんですね?」
問われ、ジョルジュはあの日の光景を思い返す。
何度も、何度も、何度も、自分の身体に剣を突き刺す姿があった。
苦しみに喘ぎながら、それでも微笑だけは崩さない姿があった。
いいのだと。
ようやくだと。
92
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:51:14 ID:X.bQi/M20
見ていられない、そんな逃げがあった事は否定しない。
だがそれ以上に、そんな姿を疑うことは、まず人として許されない、と。
迷うことなく、ジョルジュは大丈夫だと断言した。
ショボンは目を伏せ、わかりました、とだけ返す。
と、そこでジョルジュは気がついた。
( ゚∀゚)(……そういやこいつ今)
( ゚∀゚)(弟さん、って言ったのか)
( ゚∀゚)(敵、じゃねぇのか)
思わず笑ってしまう自分を、ジョルジュは堪えることができなかった。
……………。
93
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:52:30 ID:X.bQi/M20
造船所、その中でも一際大きなテント張りの中から一隻の船が姿を現した。
その姿を一言で表せば、巨大、以外のものがない。
木造ではあるが、至るところに鉄板が敷かれ、装甲に覆われており、
特に前部、船首には刃のように研ぎ澄まされた鉄の塊が突き出し。
これまでの陸船に見られた風受けのマストは無く、代わりに巨大な円筒のような物が船尾に。
船体の側面にはいくつもの窓穴が開けられ、同時にその全てに珠が取り付けられている。
極めつけは、先ほどからの自走行動。
そこらの民家をまとめて収納できるようなサイズの物体が、今もゆっくりと前進を続ける。
見れば車輪の部分からは雷光が輝き、激しい唸り音が鳴り響いていた。
同時に、歓声があがる。
「成功だ!!!」
「うおおおおお!!!!」
「すごい……本当に、こんな巨大なのが動いてる…」
「やりましたね、高岡さん!!」
从 ゚∀从「ああ、私が持てる限りの技術と、この国の珠の応用力を合わせて建造した大陸船」
从 ゚∀从「こいつが、俺たちの切り札ってやつだぜ…!」
从 ゚∀从「でも完成したのは、ここにいる皆のおかげだ…」
从 ゚∀从「ありがとう、余所者の私の、わがままにつきあってくれて」
「何言ってるんですか、珠について、僕らも勉強になりました」
94
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:53:35 ID:X.bQi/M20
あの日から、このヒルトに残って研究を重ねたハインが作っていたのは、
数百人規模と物資を乗せたまま、従来の陸船を大きく上回る速度をもつ移動手段。
時刻や場所を示し合わせ、多大な労力をかけて戦場を作ってきた、
これまでの常識を大きく塗り替える代物だった。
从 ∀从「………」
だがそれは、自らの作った物が、これから大量の血を流す原因となる事を示す。
存在の大きさが、ここにきてハインの心を押し潰しそうになるが、
「でけー!」
「かっこいい!!」
「あれのりたーい!!」
从 ゚∀从「……」
聞こえてきた、そんな幼い声色に、ふと肩の力が抜けるのを感じ、
そっと心の中で、未来に必ず、と、ひとつ約束事をした。
从 ゚∀从「母者さん」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「なんだい」
从 ゚∀从「私の仕事はここまで……」
从 ゚∀从「俺にできること、やったつもりだよ」
从 -∀从「あとはもう……信じることしかできそうにないんだ」
95
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:54:16 ID:X.bQi/M20
从 -∀从「大丈夫、かなぁ?」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「んなもん、あたしに分かる訳ないだろ」
从;゚∀从「な、ちょ、ちょっとは応援してくれても…っ」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「結果はすべて、あんたたち次第だよ」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「叶えたい未来は、今を生きる人間が作るものだからね」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「だから今を生きるあんたが、精一杯の今をあがいてみせたなら」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「何もしない過去よりは、きっとそこに、望んだ未来があるはずさ」
从 ゚∀从「……」
从 -∀从「うん、ありがとう」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「よしな、それより……この船、名前はあるのかい?」
从 ゚∀从「ああ、こいつは……この雪降る大地から吹く風」
从 ゚∀从「今はきっと、ただ死を運ぶだけの存在かもしれないけど、それでも」
从 ゚∀从「今あるこの世の全てを破壊して、新たな道を目指すための船」
从 ゚∀从「駆逐船・雪風、それがこの船の名前だよ」
そして幾つかのからかうような声に、反論する声があって。
最後に、良い名じゃないかと、そんな言葉で締めくくられた。
96
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:54:45 ID:X.bQi/M20
…………。
場所は再び、ショボンの居る一室。
ところで、と、ジョルジュは先ほどまでの砕けた雰囲気を一変させ、
視線を窓の外へと向かわせたまま、こう切り出した。
( ゚∀゚)「……内藤の、あの神具、お前は何かわかるのか?」
(´・ω・`)「いえ…」
以前、本人の口から語られたのは、太陽の名を冠する通り、陽を受けることで力を得る強化と、
自身の身体を根本から作り変え、怪我すら治癒させる進化の能力。
だが、明らかにそれだけではない能力を見せている。
大剣の、それも神具の力でより強化された一撃を容易く受け止め、
放たれた雷をも消し去った、少なくとも、当時の本人すらも知り得ない力。
再び戦いが始まれば、今度は最初からそんな人間が出てくる。
もはや、無策で真っ向から挑める相手ではない、せめてもう少し情報が欲しい。
(´・ω・`)「あれは……本当にガラティンと呼ばれる剣なのかも怪しい所ですし」
剣の元のお話からして、確かに陽が昇ると強くなるというのは似ているが、
そもそもそんな能力は剣には無い、その能力は持主である騎士が生まれ持った能力なのだから。
97
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:55:14 ID:X.bQi/M20
(;゚∀゚)「その辺はまあ…よくわかんねーけど」
(´・ω・`)「むしろ人格があるだの選ばれた人にだけ聞こえるだの、ソーディアンの方がまだ……」
( ゚∀゚)「なんだ? そーでぃあん? それが正体かもしれねぇのか?」
(;´・ω・`)「いえ冗談、というか、それだけは無いので忘れてください……」
(´・ω・`)「ああ、でも……選ばれた、ってのは、そうなんでしょうね」
( ゚∀゚)「これまで誰も使えなかった神具を、内藤だけが使えた……んだっけな」
(´・ω・`)「ええ、何故か」
( ゚∀゚)「じゃあむしろお前が知ってるんじゃねぇのか? お前が渡したんだろ?」
(´・ω・`)「……確かに、ブーンに渡せば、って確信はありました」
(´・ω・`)「でもそれだけなんですよ、理由は僕にはわからない」
( ゚∀゚)「だからどうしてだよ? 未来を視たんだろ?」
(´・ω・`)「予知じゃないですよ、世界の流れから見た…あくまでも予測です」
(´・ω・`)「ただ……」
(´・ω・`)「あの瞬間の、あの行動に関してだけは、多分……逆なんだと思います」
( ゚∀゚)「逆…?」
(´・ω・`)「未来じゃなく、過去を見た、その結果」
(;゚∀゚)「あん? どういうこった?」
(´・ω・`)「この世界そのものが知っていたんですよ、ブーンこそがあの剣の管理者だと」
98
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:55:39 ID:X.bQi/M20
それゆえに、まだ自分も知らぬ衝動に駆られるまま、彼に渡さなければならないと、
戦場という危険を省みず、ショボンは内藤の元へ走ったのだ。
(;゚∀゚)「……つまり?」
(´・ω・`)「その正体も理由も、神のみぞ知るってやつですね」
(;゚∀゚)「お、おぅ……」
それで、と一呼吸置き。
( ゚∀゚)「んで、どうにか出来ねぇのか? あれが神具による影響だってんなら、お前の力なら……」
軽い発言、しかし当然くるであろうその言葉は、ショボンを少しだけ動揺させた。
無意識に指先はすこし震えていたかもしれない、理解はしていても、それでも、迷ってしまったのは。
『誰かが悲しいのに』
『そんなのが救いだなんて』
『そんなのは、おかしい』
かつての言葉が、運命に抗うという可能性の探求が、
自分の中にある一つの決断を、今も揺るがせていたから。
(´・ω・`)「それは―――」
できない、だからこそ、先の戦いでショボンは殺すと口にした。
本来、フレイの無効化で可能なことと言えば、神具の効果を力の流れる線として、
それを一時的に断つという、繋ぎ直せば済んでしまう程度のもの。
自動迎撃可能なフレイの力もあり、あとは単純な腕が物を言う。
ゆえに既に強化された相手というのは、最悪の相性と呼べるものだった。
99
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:57:30 ID:X.bQi/M20
だが、今回の場合は話が違う。
通じないから、勝てないから、という理由ではなく。
剣の真髄は己が手足とするという言葉の通り、剣と一つになる特性がゆえ。
付与されているのが強化の力だけではなく、人格があることで精神的な意味合いでのリンクが生まれ。
これが不具合か否かはともかく、心を一つに合わせるのではなく、ついには混ざってしまった。
その感情が、思いが、誰のものだったのか、それすらわからなくなるほどに。
そうして二つ混ざり合い、一つの新たな形となってしまった今、
もはや元通りに戻すことはできない、不可能なのだと悟ってしまった。
むしろそんな事をすれば、おそらく彼の精神そのものを断ち切る事になる。
だから、次に対峙することがあれば。
一度でも斬りあいになれば、ただそれだけで、
おそらく内藤の攻撃は防げないが、同様に内藤もフレイによる能力は防げない。
あれが変わらずこちらを殺す気がないのであれば、結果は見えている。
この手で、友人を殺す事になる。
100
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:58:17 ID:X.bQi/M20
(´ ω `)「…………」
だからこそ。
(´・ω・`)「――――勿論可能ですよ、僕の神具の力を使えば、元のブーンを取り戻す事が」
本当は、今抱えている全てを、ぶちまけてしまいたかった。
そうすれば支えてくれる、優しい言葉がもらえる、そんな事はするなと。
可能も不可能も関係なく、力になってくれるだろう事は容易く想像できた。
だからこそ、真実を口にする事を嫌った。
( ゚∀゚)「……本当か?」
(´・ω・`)「ええ、本人も言ってたでしょう? 僕とは戦うなって」
心臓の音がやけに大きく響く聞こえてくる。
替わりに胸の奥からまた一つ、熱が消えるような感覚。
感情を切り離して、文書に書き連ねるように行動を決める。
そうして今までもやってきた、そうでなければ耐えられなかった。
今度もまた、同じようにするだけだ、しなければならない。
(´ ω `)(……そうだ、これでいい、これでいいんだ)
自分の中で悲しい声が響いているのを感じながら、
それでもショボンは、それらしい言葉を紡いでいく。
いつしか視線は、正面を向いていながら定まらず、視野の外を見ていた。
故に、気付いていなかった。
101
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:58:49 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「………」
_
( -∀-)「…………前から思ってたけどよ」
そんなショボンを見る、ジョルジュの目に。
(´・ω・`)「?」
_
( -∀゚)「お前、ウソつくの下手だよな?」
(´ ω `)「………っ!」
_
( -∀-)「自覚ねーのか? お前、嘘ついたり何か隠したりしてる時、
硬っ苦しい表情でよ、そうやって変に芝居がかった話し方するじゃねーか」
それは、当然のように言う言葉とは裏腹に、本当に些細な変化だった。
ショボンとてそれを自覚していた、けれど、気付く者は居ないと、そう思っていた。
( ゚∀゚)「……無理、なんだな? あいつを元に戻してやる事は」
(´ ω `)「………………」
けれど、気付いてしまった。
冷え固まっていた指先に、少しだけ熱が戻る。
変わっていく自分達を、改めてこの人はずっと見守っていてくれたのだという事を。
ショボンはそれを嬉しいと思う反面、泣きたい衝動に駆られるほどの辛さを覚えた。
102
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:59:25 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「お前の考えてる事、当ててやろうか」
(´・ω・`)「………」
( ゚∀゚)「……内藤が元に戻れないと分かった以上、あいつの存在は脅威以外の何物でもない、
なら、これ以上の犠牲を払う前に……自分の手で、ケリをつける、だろ?」
( ゚∀゚)「悪ぃが、そいつは駄目だぜ?」
(´・ω・`)「……どうして、ですか」
_
( -∀-)「たりまえだろ、俺は内藤の奴が死ぬのも、お前が親友殺しをするようなのも、見たくねぇからだよ」
(´・ω・`)「そんな、そんなの……」
(`・ω・´)「……ジョルジュさん、あなたは、わかってない…!」
_
( -∀-)「分かってるさ」
(`・ω・´)「いや、分かってたらそんな事は言えない筈だ…!」
(`・ω・´)「ブーンが敵になるっていうのは、仲間だからとか、そんな人情的な問題じゃない!」
_
( -∀-)「ああ、分かってるよ……あいつは、内藤は……強く、なったからなぁ」
そう、内藤は強い。
人間を超越した身体能力に加え、ちょっとした怪我なら一瞬で治癒してしまうほどの再生力。
もはや純粋な剣の腕で見れば、世界を見渡しても敵う人間は居ない。
取り囲んだところで、最早無双ゲームの世界、やはり同じことだろう。
今でこそ、かつての甘さを残したままに見えたが。
そんな人間が、これからの戦いの中で甘さまでも捨て去ったなら。
103
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 20:59:49 ID:X.bQi/M20
事実、先の戦闘では管理者三人とも、手加減した内藤にすら太刀打ちできなかったのだ。
あの一人の存在によって、この戦争そのものが、決まってしまいかねない。
なら、と言い掛けたショボンの言葉を塞ぐように、ジョルジュが言った。
( ゚∀゚)「帰ってくるさ、必ずな」
(´・ω・`)「……無理、ですよ」
( ゚∀゚)「いいや、どんなに変わったって、何を忘れたってさ、内藤は内藤だ」
( ゚∀゚)「あいつ、敵だと言う相手を救うとか言いやがったんだぜ?」
( -∀-)「やっぱ根っこのとこは変わりゃしねぇんだよ、なら、きっと手はある」
(´・ω・`)「……死にますよ、そんな考えじゃ」
( ゚∀゚)「バカ言うな、死なねぇよ」
(´・ω・`)「でも前例がありますからね」
(;゚∀゚)「あ、あー……いやあれは……」
どさ、と、また屋根から落ちる雪が音を立てる。
目を泳がせるジョルジュは、つい窓の外へと視線を向けた。
そして、そこに、ありえないものを見た。
104
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:00:22 ID:X.bQi/M20
……………。
相変わらず雪が降り続く、ヒルトの街並み。
しかし人は忙しなく、そこら中で賑わいを見せている。
道、主に歩道となる箇所には火珠による熱が伝わり、雪は積もらず解けだし。
流れる水は用水路に流れこみ、いくつかの水車がまた違うエネルギーを循環させている。
これらは、とある接続珠に詳しい人間がつい最近この国に持ち込んだシステムである。
そんな変化を受け、住まう人々の思惑も色とりどり、しかしほとんどが肯定的なもの。
今も広場にある配給場では、いくつも湯気がたつ中談笑する姿がある。
「ま、屋根はまだ人力なんだけどな」
「つらら落とすのが日課だから俺は別に」
「そのうち不要になるかもってさ、用水路の温水を使うとかなんとか」
「でかい風呂作ってるとも聞いたぞ?」
「なんか最近すげーな、どうしちゃったんだこの国は」
<_プー゚)フ「そりゃ珠作った本人が知恵袋だもんよ」
「ん? 兄ちゃんどういうこった?」
<_プー゚)フ「それよりスープいいかい? 人数分ほしいんだけど」
「お、おう、いくつだい」
<_プー゚)フ「えーっと」
105
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:00:56 ID:X.bQi/M20
そうして、いくつかのお椀を板に載せ、エクストは広場の一角をめざす。
大した距離ではないが、幾度も人がすれ違っていく。
聞こえてくる声も活気がある、とても、今が戦争の最中とは思えない光景だ。
更に出店が並ぶ先まで歩いていくと、大きな傘がいくつも立ち並ぶ場所がある。
その内の一つに、目当ての姿がたむろしていた。
<_プー゚)フ「ほいほい、持ってきましたよと」
ξ゚⊿゚)ξ「ごふおう」
<_フ;゚ー゚)フ「ツンの兄貴……また買い食いして」
ξ゚⊿゚)ξ「肉が旨い」
<_フ;゚ー゚)フ「そっすか」
( 凸)「ツン様、この国来てから常になんか食ってません?」
ξ゚ー゚)ξ「私の功績から見れば、正当なる対価だろう?」
( 凸)「安上がりですね」
<_プー゚)フ「ほれ、お譲ちゃんたちも冷めない内に」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます、すいませんわざわざ」
川#д川「誰がお譲ちゃんじゃ!! この、若造!!」
<_フ;゚ー゚)フ「痛っ、わ、わかったよ、杖で叩くなって」
川д川「こりゃ温かくてよいのぅ、ありがとうじゃよ」
<_プД゚)フ「情緒どうなってんだよ!?」
106
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:03:08 ID:X.bQi/M20
ζ(゚ー゚*ζ「はい、ペニサスさんも、どうぞ」
('、`*川「……ええ、どうも…ありがとう」
差し出されたカップを見つめて、受け取るまでに僅かな間があった。
そんな様子に一同なんとも言えない空気になる。
今でこそ落ち着いているが、ペニサスがこの国を訪れた際のこと。
彼女は自らが悪者にしてしまった人たちへ謝罪を、
まるで縋りつくような姿勢のまま、涙とともに繰り返した。
デレは神具が世界を、そして人を狂わせるのだと、
改めて認識すると共に、頭を下げ続けるペニサスを励ました。
それ以来、デレはよくペニサスを誘って町へと出ていた。
ショボンと何とも言えない関係である事は察していたが、当の本人は不在続き、
ほぼ城に呼ばれたまま宿へは戻らず、近頃は専用の部屋まで用意されていると聞く。
ならここは自分が、と。
デレもまた、自分にも何かできることをと模索していたのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「最近、おじいちゃん寝てばかりなんですよね」
川д川「迫る年波には勝てん言う事じゃな」
('、`*川「……」
なんとなく側に居て、時折話しかけては相槌を返す程度のもの、
だが、その日は珍しくペニサスは顔を上げ、周囲を見る。
107
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:03:43 ID:X.bQi/M20
('、`*川「……あなたたちは……」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
('、`*川「どうして……戦えるの?」
('、`*川「こんな…世界中から敵視されて、状況も不利、なぜそれでも…」
突然の声かけ、それも非常に直接的なものだった。
答えあぐねる者たちの中、しかし即答する声もある。
ξ゚⊿゚)ξ「気に入らんからだ」
('、`*川「その為に祖国まで捨てたっていうの?」
ξ゚⊿゚)ξ「……む」
('、`*川「ツン、あなたは特にそう……湖鏡でも、あの連合の中でさえ地位があった」
('、`*川「それを捨ててまで、命を賭けるのは何故?」
全員の視線がツンへと向けられる、当人は目を伏せ思案した様子。
誰も言葉にはしていていないが、ツンという人物が居なければこうまで拮抗はできていない。
個人の戦力としても、結果的にだが彼が連れてきた兵達も含め、重大な戦力だ。
それ故、敵対していた筈の側に、こうして当たり前のように居るのか。
デレもまたその返答を固唾を呑んで見守っていた。
ξ-⊿-)ξ「………」
ξ゚⊿゚)ξ「……ロマネスク王、奴は確かに命を奪うことを否定した」
108
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:04:24 ID:X.bQi/M20
ξ゚⊿゚)ξ「先見の明をもちながら、寛大で人を認める姿は王の理想像とも言える……だが私には違うように見えた」
ξ゚⊿゚)ξ「あれは……人を尊んでいる訳じゃない、単に興味がないのだ」
どこで誰がどう生きようと、どこで誰が共食いしようとも、
あるいは自身に逆らった者でさえ、さして関心をもっていない。
ゆえに、ありのままを受け入れる、感情的になることもない。
神を名乗るあの男は、人を、人として見てすらいない。
よくて盤上の駒、あるいは羽すら持たぬ虫がもがく様を見るような。
ξ゚⊿゚)ξ「逆に、必要となれば人を、あるいは国すらも消すだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「我が祖国は……とうにそんな人間の傀儡だ」
ξ゚⊿゚)ξ「ならば、真に人として想うならば、するべきは一つだろう、違うか?」
<_プー゚)フ「意外とちゃんと考えてんだなー」
<_プー゚)フ「てっきりここの飯が食いたいだけかと」
ξ;-⊿-)ξ「………」
<_プд゚)フ「なんで目をそらすんですかね?!」
('、`;川「………あなたは、強いのね」
ξ-⊿-)ξ「…お前とて、本当はそのはずだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「幾度も剣を交わしてきた、ペニサスという人間は」
ξ゚⊿゚)ξ「少なくとも私の知るそいつなら、自分のすべき事に惑うほど弱い奴ではなかった筈だぞ」
('、`*川「私の…」
ξ゚⊿゚)ξ「分かっているはずだ、お前にしかできない事があるだろう?」
109
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:05:41 ID:X.bQi/M20
<_プー゚)フ「そうだぜペニサスの大将、いい加減立ち直ってもらわねぇと」
<_プー゚)フ「……旦那や、先に逝った連中にも、示しってのがねぇだろ」
('、`*川「…そう、ね……その通りだわ」
('ー`*川「………あっちでも、説教されたくはないものね」
<_プー゚)フ「そうだろ? おっさんは押し付けがましいんだから!」
<_プー゚)フ「ってな訳でツンの兄貴、次の戦いの際には俺ら日陽の連中はいったん離れるぜ」
( 凸)「?」
ξ-⊿゚)ξ「なんだ、聞いてないのか?」
<_フ;゚ー゚)フ「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「次の…おそらく最終戦、私は単独行動を取ることになる」
ξ゚⊿゚)ξ「最初からお前達は全員、ペニサスと共に行動してもらうんだぞ」
( 凸)「そういえば、戻ってからだいぶ上の空だったもんなぁ」
( 凸)「カービィ言われても反応しなかったしな」
ξ-⊿-)ξ「まあ、気持ちはわからんでもないが」
<_フ;゚ー゚)フ「……はは」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな事だから腹ぺこキャラを私に奪われるんだぞ」
<_フ;゚Д゚)フ「いや別に……どうあってもカービィ!!」
110
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:06:07 ID:X.bQi/M20
川д川「そしてワシ等はもちろんシャキン様のためじゃ!!!!!!」
<_プд゚)フ「うわっびっくりした! 唐突だな!」
川д川「エッダの地はシャキン様のおかげで成り立った国、彼の力になることこそワシ等の本望!」
ξ゚⊿゚)ξ(さっきも言ってたなこれ)
川д川「大事なことなので」
ξ;゚⊿゚)ξ(心を読まれた?!)
ζ(゚、゚*ζ「でも…村長さん、エッダの村は…私たちが来たせいで…」
川д川「なんじゃまだそんな事気にしとるのか?」
ζ(゚、゚*ζ「……許してもらえているのは、わかります」
ζ(゚、゚*ζ「でも……私たちはその恩に、何も返せてない…」
川*д川「そんなこと、むしろシャキン様をお連れしてくれた事こそ最大の――――」
ζ(゚- ゚*ζ「………」
川д川「――-ふむ」
川д川「そうじゃな、確かに、彼はショボン、シャキン様ではないしの」
川д川「余所者がやってきて、そこに追っ手が来て、ワシ等の村は焼かれてしもうた」
川д川「誰も、何も文句が無いと言えば、確かに嘘になろう」
ζ(゚、゚*ζ「……はい」
111
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:06:29 ID:X.bQi/M20
川д川「じゃがワシ等はな、誰かに伝え聞いた話でも、どこぞの知らん国の声明でもない」
川д川「ワシ等自身が、お主たちと出会い、その人となりに触れてきたんじゃ」
川д川「その結果、ワシ等はおぬしらの力になりたいと思ったんじゃ、ワシ等の意思での」
ζ(゚、゚*ζ「……」
ζ(-、-*ζ(………みんな、すごい、なぁ…)
誰もが、色々な想いを秘めてここに居る。
当然のことなのだが、改めてそれを前にして、デレはなんだか愕然としてしまう。
これまで実際に戦ってきた彼らは、多くの悲しみを見せることなく前を向く。
そんな強さに対してここに居る、だけの自分はなんだろうと。
元々は、自分達が撒いた種であるというのに。
ここまでの事態を引き起こしておいて、何もせずに見守るだけ。
それを嫌だと願っても、力無き身では足を引っ張ることしかできない。
とは言え、この問答は既に何度も繰り返してきた。
しかしその度、様々な言い方はあれど、そのどれもが気にするな、だった。
言われてやがて気付いたのは、果たして自分は、そんな思いにどう応えられるのか。
いや、そもそも応えてきただろうか、と。
川д川「そういうお主こそどうなんじゃ」
ζ(゚、゚*ζ「私は……」
112
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:07:03 ID:X.bQi/M20
何もできないから、仲間達の影に隠れるように進んできた。
礼節程度に関わりはもてど、それ以上にはしなかった。
だけどもう、それだけじゃ駄目なのだ、恐れてはいけない。
いつだって、だれだって、本当はそうなのだから。
そんな決意を改めて。
ζ(゚、゚*ζ(……)
誰かの後を歩いていた少女はこうして今。
これまでを共にした仲間達を離れ、一人。
ζ(-、-*ζ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「私、たちは、次元接続を受け継いできた家計です、もう、ご存知でしょうけど」
ζ(゚ー゚*ζ「神具をこの世界にもたらした、してしまったのは、私たちの祖先」
ζ(゚ー゚*ζ「そんな私たちが今、またあの三人をこの世界に連れ込み、目指したのは」
ζ(゚ー゚*ζ「神具を、この世界から追放すること」
ζ(゚ー゚*ζ「過去に生み出してしまった過ちを正し、世界を正常に戻すこと」
ζ(゚ー゚*ζ「それが、はじまりでした」
ζ(゚、゚*ζ「けど、私には戦う力なんてないし」
ζ(゚、゚*ζ「それどころか……私が死ねば、接続が切れてしまう恐れがある」
ζ(゚、゚*ζ「だから私は、身を隠す事しかできませんでした」
ζ(゚、゚*ζ「だから私には……こんな事態にあっても、命を賭ける皆さんのお力にはなれないと思います」
113
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:07:30 ID:X.bQi/M20
ζ(゚ー゚*ζ「だけど私は、ここから逃げません、最後まで……心は共にあるつもりです」
ζ(゚ー゚*ζ「そして祈ります、そして願います、みなさんの武運長久を」
自分と向き合い、自らの旅路をつくりはじめた。
そんな第一歩を、また新たな仲間達はそれぞれの受け止め方で頷いていた。
<_プー゚)フ「可愛い子に応援されちゃ、頑張らない訳にはいかないな!」
( 凸)「んだんだ」
川д川「…ワシも戦える訳ではないのじゃが……なんだか立つ瀬ないのう」
<_プー゚)フ「どんまい幼女」
川#д川「キエェーーーーーーーーーィ!!!」
<_フ;゚Д゚)フ「うおおおおおお!!? 先端はマジであぶねぇって!!?」
('、`*川「…デレさん」
ζ(゚ー゚;ζ「はいっ、あ、なんでしょうか?」
('ー`*川「……ありがとう」
ζ(゚ー゚;ζ「えっ、そんな、それは私の方が…っ」
('、`*川「私も……頑張るから、あなたの願いの、その先の為に」
ζ(゚ー゚*ζ「……はい!」
こうして広場の一角はなんだかほっこりした空気に包まれる。
ツンは一人、すこしばかり距離を置いてそんな様子を眺めていた。
そんな彼の元へ駆け寄る姿があった。
114
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:08:10 ID:X.bQi/M20
「あ、あの…!」
ξ゚⊿゚)ξ「ん、お前はヒルトの……どうした?」
「ショボンさん、見ませんでしたか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、今日は会ってないな」
川д川「むむ、シャキン様と言ったかの?」
「いやショボン……あれ、今声がしたと思ったのに…」
川#д川「どこ見とるんじゃ!!」
「いてっ、あ、下か」
ξ゚⊿゚)ξ「その彼がどうした?」
「うん? ああ、部屋の方から消えてしまいましてね、探しているのですが…」
川;д川「行方不明じゃと!!!??」
「門番の連中も知らないって言いますし、どこに行ったのか…」
ξ゚⊿゚)ξ「腹でも減ったんじゃないのか」
<_プー゚)フ「ブレねえなぁ、ツンの兄貴は」
「ならいいんですけど、もし正門以外から外にでも行ってたら大変ですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだ? 危ないのか?」
「ええ、ほぼ未開拓地なんで一度奥まで行ったら迷いやすいですし」
「場所によっては崩れやすかったり、クレパスなんかもあるんで」
115
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:08:37 ID:X.bQi/M20
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ……だが、そんなところに一人で行くような愚か者とは思えんが」
「そうなんですけど…裏山のほうに誰かが向かっていくのを見かけたって奴もいて」
ξ-⊿゚)ξ「やれやれ、仕方ない……お前達、すこし探すのを手伝ってやれ」
( 凸)「了解」
ζ(゚、゚*ζ(何か…あったのかな、周りに黙ってどこかに出かけるほどの用事…?)
ζ(゚ー゚*ζ「もしかして……ドクオ君の手がかりでもあったとか?」
ショボンはどこか一歩引いた態度ながら、友達二人を大切にしている。
だから今回も、その一端なのかもしれないと思いながら、ふとデレは空を見た。
傘の先からは、小降りながらも未だ雪が舞っている。
早く青い空が見たい、そんなことも考えていた。
この先に待ちうける未来のことも、今はまだ知る由も無く。
…………。
誰も、何の跡も存在しない雪道を行く人間が居た。
しかもその道は険しいもので、崩れやすい雪の坂道をくだるもの。
どれほど下ったのだろうか、やがてその内の、前を行く背中が振り返った。
( メωФ)「そろそろいいか」
116
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:09:00 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「……」
そう問われ、二人は周囲を見回す。
ここはヒルトの国を出て、街道を外れた山を一つ下った先。
かつてはここにも集落があったのか、大きく開けたその空間には、
雪の重みでどれもひしゃげた形の民家がいくつか点在している。
(´・ω・`)「誘いに乗ってノコノコとついて来てみれば」
(´・ω・`)「いかにも、誰か隠れてそうな場所ですね」
(;゚∀゚)「……う」
(´・ω・`)「だから罠だって言ったのに」
( メωФ)「心配するな、ここに居るのは間違いなく僕達だけだ」
(;゚∀゚)「ほら、だってよ!」
(´・ω・`)「……はぁ、呆れて何も言えないです」
(´・ω・`)「それで君、お前は、ロマネスクでいいのか?」
二人に相対する傷男は、そうだと頷く。
それは本当に唐突に現れた、雪の落ちるさまに引かれ視線を向けた窓の向こう。
金色の柄をもつ剣を携え、顔に大きな傷のような痕が見える男が、そこに立っていた。
驚愕に言葉を失う二人をよそに、傷男は窓に手をかけ静かに開けると、
( メωФ)(話がある、出られるか?)
そう言って、ここで事を構えるつもりも、街中で関係ない人間を巻き込むつもりもないと、
ただ話をしたいだけだと、二人をここから離れた場所へ来るように要求してきた。
117
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:10:45 ID:X.bQi/M20
ジョルジュは迷うことなく了承し、ショボンはそれに異を唱え、もとい罵倒した。
罠過ぎる、バカじゃないのかと。
だがそれでも、と、ジョルジュは半ば強引に出発。
仕方が無いとショボンもその後に続き、今に至った。
(´・ω・`)「それじゃ聞かせてもらおうか、話ってのを」
( メωФ)「……」
( メωФ)「無論、一つは降伏勧告だ」
( メωФ)「こちらの準備はほぼ完了しつつある、数日のうちには開戦通告が出されるであろう」
( メωФ)「そうなればまた、無駄な血を流すことになる」
( メωФ)「今素直に降伏するなら、僕の方から王へとりなそう」
(´・ω・`)「断ったら?」
( メωФ)「……理解できないな、何故戦う? 戦力差は明らかな筈だぞ」
(´・ω・`)「言ったら信じるのかい? 僕らは逆賊、非道な管理者たちなんだろ?」
( メωФ)「……」
( ゚∀゚)「神具をこの世界から消し去ること、それが俺たちの理由だよ」
(;´・ω・`)「ちょ…!」
118
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:11:26 ID:X.bQi/M20
( メωФ)「神具を…? 何のために…」
( ゚∀゚)「平和のためさ、その為にこの世界を狂わせる元凶を絶つ」
( メωФ)「平和だと…刃を向け、それを乱す者たちが、何を言っているんだ」
( メωФ)「それに、なら何故お前達は神具を手にしている」
( メωФ)「まずお前達が手放してから、話し合いでも何でもするべきなんじゃないのか」
( ゚∀゚)「ああ……そうだな、その通りだ」
( ゚∀゚)「……どうして、こうなっちまったんだろうな?」
ジョルジュは、何か言いたそうなショボンを腕と、目で制止して一歩踏み出す、
傷男は警戒しかけるが、両手をあげる仕草を前にすぐにそれを解いた。
( ゚∀゚)「俺たちはあくまで協力を求めるために、話をするために歩き始めた」
( ゚∀゚)「そうやって俺たちの旅は始まったんだよな」
( ゚∀゚)「……色々、あったよな、内藤、特にお前には手を焼かされて」
( メωФ)「………内藤、か」
( メωФ)「ああ、それが、ここに来たもう一つの理由だ」
( メωФ)「ダレだその内藤というのは、何故僕のことをそう呼ぶ?」
119
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:12:07 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「……お前が、俺たちの仲間の、内藤ホライゾンだからだ」
( ゚∀゚)「何も……なんもわかんねぇのか? 欠片も覚えはねぇのか?」
( メωФ)「無い、ただ……そもそも僕には、王と出会うより以前の記憶が無かった」
(;゚∀゚)「なら…!!」
( メωФ)「だが最近、いや、この剣を振るうその度に、思い出せることがある」
( メωФ)「ロマネスク王と、共に戦った記憶だ」
( メωФ)「そして共に、歩いてきた記憶も」
( メωФ)「巨大な敵に、共に立ち向かったこともある」
( メωФ)「あの人が、僕を半身と呼んでくれた意味が、今は少しだけ理解できる」
( メωФ)「だから今は間違いなく言える」
( メωФ)「僕はロマネスクだ、内藤なんていう人間じゃない」
( メωФ)「その誤解も、きちんと解いておきたかったんだ」
( ゚∀゚)「……」
( ∀ )「……………」
( ∀ )「…………本当に……忘れちまったのかよ」
120
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:13:16 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「俺たちが一緒に歩いてきた時間ってのは、この心ってのは…!」
( ゚∀゚)「そんな簡単に消えちまうような、儚いもんだったのか!?」
( メωФ)「……………」
( ゚∀゚)「俺たちが今、ここまで来れたのは、接続やら神具だのっていう力のおかげじゃねぇ!」
( ゚∀゚)「きっと、この心が……想いが、人を、今を結んできた…! そんな強さがあったからだ!」
( メωФ)「……」
( ∀ )「思い出せよ…思い出してくれよ、俺はもう、あんな思いは…」
脳裏をよぎる遠い日の記憶、ふりしきる雨の中。
横たわる二人の姿、木々の隙間に消えていくあの背中。
あの時、あの背を追いかけることができていたなら、何か変わっていたのだろうか。
そして今、警告された言葉を素直に受け止めていたなら、何か変えられたのだろうか。
( ∀ )(俺が、俺が悪かったのか)
( ∀ )(俺が、お前をそんなにしちまったのか)
結局は後悔、そればかりが胸に重くのしかかる。
ふと傷男の目を見る、迷いの無いまっすぐな意思を感じさせるもの。
これも覚えがある、以前にもたった一人、危険を顧みずに行動したように。
いつも誰かのためにと、自分にできることをと頑張っている。
そんなところだけは変わらない、変わらないまま、変わってしまった。
121
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:14:07 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「……本当に何も、何もわからねぇのかよ、内藤」
( メωФ)「………」
( ゚∀゚)「お前と初めて会った時、この世界に来たあの時」
( ゚∀゚)「お前、接続をコントロールできなくてぶっ倒れたろ?」
( メωФ)「知らないな」
( ゚∀゚)「日陽の国じゃ、お前に振り回されっぱなしだったな」
( ゚∀゚)「行方不明になったと思えば、管理者になっちまってよぉ」
( ゚∀゚)「……そして、あんな事になっちまって」
( ゚∀゚)「でもお前の行動が、結果的には勇気をくれたんだ」
( メωФ)「……何のことだ?」
( ゚∀゚)「ここの闘技場じゃ、はじめてお前とやりあったっけな」
( ゚∀゚)「ま、選んだ武器が間違ってたけどな」
( ゚∀゚)「お前、隠してたけどめっちゃくちゃ凹んでたろ?」
( メωФ)「……お前に、負けた覚えはない」
122
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:15:05 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「そして――――」
( -∀-)「宿で、一緒に風呂覗きをしたよな」
(;メωФ)「………ッ」
(´・ω・`)「…ん?」
( -∀-)「あとちょっとの所で、向こうから来ちまってよ、おっぱいが―――」
(;メωФ)「お……おっぱい…?」
(;´・ω・`)「…んん?」
ここにきて、傷男の様子が変わった。
何処か、痛みを堪えるように苦悶の表情で頭を押さえている。
その姿に、むしろショボンが動揺した、え、そこなの、と―――。
( ゚∀゚)「そうだ、思い出せ内藤、あの夜の緊張と、興奮を……!!」
(;メωФ)「ぐ、う……うっ!!」
( ゚∀゚)「あの瞬間にこそ、俺たちは言葉もなくわかりあえたんじゃねぇか!!」
(;メωФ)「う、あ、あ、ああ……あっ!!」
( ゚∀゚)o彡゜「おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!」
(;メωФ)「っっ、うう……ぐああっっ!!!!!」
(´・ω・`)「なんだこれ」
123
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:16:06 ID:X.bQi/M20
あまりのアホな光景に、ショボンすらも油断したその時。
傷男を中心として、渦巻くような風が吹き荒れ、二人を大きく後退させた。
次いで、背中をぞわりとさせるような、奇妙な空気が場を包む。
発生源は、風の中心、傷男から発せられている。
(#メωФ)「……いい、加減にしろ」
手には剣が握られている、そして目には、明確な敵意が宿っていた。
(;メωФ)「なんだ、この頭痛は…!」
(#メωФ)「今、僕に何をしようとした…!」
(;゚∀゚)「内藤…お前…」
(#メωФ)「奪われた神具の中には、人を意のままにする物もあると聞く、さては……!」
( ゚∀゚)「確信したぜ……お前はまだ、そこに居るんだな…!」
(#メωФ)「……もう、いい、お前は、邪魔だ…!!」
ジョルジュはパリパリと雷光纏う槌を手に、
傷男は黄金の柄をもつ剣を手に、互いに一度向け合い。
(#゚∀゚)「まだ言いたい事はあるが……まずはお前を連れて帰ってからだ」
(#゚∀゚)「悪いが…今度こそ、ぶん殴ってでもなぁ!!!」
(#メωФ)「こうなったら誓賢だけでも…!!」
(#メωФ)「お前にもう用はない、そこを退け!!」
124
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:17:03 ID:X.bQi/M20
(#゚∀゚)「行くぞ内藤ぉおおお!!!」
(#メωФ)「邪魔だぁあああ!!!」
同時に駆け出すが、やはり初動には圧倒的な差がある。
しかしここは足を取られる雪上、馬力で勝るジョルジュはどうにかそれに追いつく。
互いが得物をふりかぶる。
手数で不利を承知しているからこそ、ジョルジュはとくに意識を視る事に注いでいた。
反応しろと、咄嗟にでも何でも、とにかく合わせて反応することに集中を。
ゆえに、視てしまった。
視界の隅にその姿を。
こちらへ向けて、手をかざすショボンの姿を。
浮かび上がる剣が、切っ先を向けている。
その意図を一瞬で理解したジョルジュは、咄嗟の行動を取った。
手にした槌を、フレイの切っ先の向かう先へと、放り投げたのだ。
125
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:17:47 ID:X.bQi/M20
対し、残る二人はとつぜんの行為に驚きながらも、始めた挙動を止められず。
ショボンは傷男へと神具を飛ばし、傷男は眼前のジョルジュへと剣を振り下ろす。
結果。
傷男の剣がジョルジュの身体を大きく切り裂いた。
噴出した鮮血が飛び散る。
返り血を浴びながら、呆然とその光景を見据えていた傷男だったが、
不意に訪れた更なる頭痛に苦しみあえぎ、手にした凶器を雪に埋没させた。
(;゚ωФ)「ア……あがっっ…づ、う、ぅ!!」
_
( -∀-)「―――――がふっ」
そんな傷男へと向かって、今尚、身体を真っ赤に染めながら、赤い足跡を残し歩く。
やがて目の前までたどり着くと、今だ頭を抱える傷男の両肩を掴み、倒れるように抱え込んだ。
(;゚ωメ)「…………え?」
( ゚∀゚)「――――づ、ぅ…………………」
寄りかかってきた姿を、反射的に受け止めてしまった傷男は戸惑いながらその姿を見た。
銀世界に異様なほど映える赤い血を吐き出しながら、苦悶の声を上げながら、
それでも男は、優しく微笑み、小さく、何度か、同じ単語を繰り返す。
126
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:18:39 ID:X.bQi/M20
傷男は戸惑いながらも、何故かもわからぬまま、
いつしか薄れていく頭痛も忘れ、その言葉に耳を澄ませた。
( ∀ )「ごめん……ごめんな………俺、お前を、守って、やれなかった……」
謝罪だった。
何に対してなのかわからない。
誰に対してなのかも、わからないが、痛みを伴うほど胸を打つ言葉だった。
それも圧のある物ではなく、もっと鋭利な物。
反射的に言葉が出た。
(; ω )「やめ……っ」
死よりも恐ろしい何かが、その先にあるような気がした。
理解してはいけない事が、その先にあるような気がして。
( ゚∀゚)「……しかも、こんな、辛いこと、させちまって……すまねぇ、本当に……すまねぇ…」
( ゚∀゚)「謝るよ、ごめんな…だから、だからさ……なぁ…?」
127
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:19:28 ID:X.bQi/M20
( ゚∀゚)「帰ってきちゃ、くれねぇか? 内藤…?」
( ゚ω゚)「……―――」
( ゚ω゚)「……―――――――」
( ゚ω゚)「……―――――――――――――ジ」
しばしの茫然自失、そして何かを呟きながら、傷男は膝から崩れ落ちる。
互いを支えあうようにしながら、やがて。
( ゚ω゚)「じょる………じゅ……さん…………?」
内藤 が、その名を口にした。
つづく。
128
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:20:58 ID:1RBXWRRo0
気になるところで切るな…
129
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:22:10 ID:X.bQi/M20
こうして罪の意識ループが始まったとさなお話でした。
次回は8話「迷子の雪路」ブーンをとにかく虐めたいだけのお話その一。
今度こそまた明日。
130
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:23:42 ID:1RBXWRRo0
明日も読めるの?嬉しい
帰ってきてくれて本当に本当にありがとう
心から乙
131
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:40:45 ID:aGQ2j7Kg0
乙乙
確か三部からは最終話までのスケジュールあったよな
132
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 21:56:19 ID:/YeoHhVQ0
復活???マジで!!?!?
133
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 23:05:30 ID:LQ1wm24k0
まさか動いてるスレを見られるとは思わなんだ
134
:
名無しさん
:2018/07/10(火) 23:47:55 ID:ZCBcMm7.0
超古参だ!ありがたやありがたや……
135
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:16:36 ID:DAgs3L120
8ヶ「迷子の雪路」
昨晩から降っていた雪が、すこしづつ止んでいく。
山向こうまで続く曇り空の先に、青空は未だ見えず。
戸口からそんな曇天を眺める老人は、自らに積もる雪も気にせず立ちすくむ。
/ ,' 3
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ちょうどいいところに!」
/ ,' 3 「む、なんじゃデレ?」
ζ(゚ー゚*ζ「ショボン君見なかった? あとお兄ちゃんも」
/ ,' 3 「いや、見とらんが、どうかしたかの?」
ζ(゚、゚*ζ「うん、なんか居なくなったとかで、皆探してるの」
/ ,' 3 「なんじゃ、二人ともか?」
ζ(゚、゚#ζ「うん、で、聞けば最後にショボン君に会ってたのお兄ちゃんらしくて」
ζ(゚、゚#ζ「またあのバカ兄が何かしたんじゃないかと思って!」
ζ(゚皿゚#ζ「もしそうなら……今度こそ思い知らせて」
/ 。゚ 3「お、おぅ……」
136
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:16:59 ID:DAgs3L120
/ ,' 3 「いやしかし、信用ないのう、あやつも」
ζ(゚、゚*ζ「だって単純で! すぐ暴れること考えるし! えっちだし!」
ζ(゚、゚*ζ「今の今まで帰ってこないで皆に心配かけて!」
/ ,' 3 「……あやつは、あれで色々と考えておるんじゃがな」
ζ(゚、゚;ζ「考えてる? そ、そうかなぁ……」
/ ,' 3 「そうじゃよ、ああいった態度に見えて、周りは常に見ておる」
/ ,' 3 「あれで、あまり意味のない行動はしない輩じゃ」
/ ,' 3 「帰らなかったのも、ドクオを助ける為だったのじゃろう?」
ζ(゚ー゚*ζ「それは……そう、ですけど」
/ ,' 3 「デレ、お前も少しは信じておやり」
/ ,' 3 「特に今は、あやつも色々と……思い詰めておるじゃろうしの」
137
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:17:50 ID:DAgs3L120
デレはそんな言葉を訝しげに聞いてたが、ややあって小さく頷いた。
そういう態度だけは、決して見せない男だから、それも仕方のないことかもしれない。
そう思い、思い返す遠い日のこと。
あの惨状を前にして、ただ泣きながら震える事しかできなかった少年が、
何もできない事を悔やみ、強くなる、と墓前で呟いていた、あの小さな背を。
だからそんな言葉を、一つの誓いを知る唯一の人間として、
せめて自分は信じていると、老人は再び空を見る。
空はそんな想いとは裏腹に、どこまでも、どこまでも曇り、影だけを落としていた。
…………。
138
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:18:34 ID:DAgs3L120
その名を口にしたきり、ピクリとも動かない内藤を横目に、
ショボンは血まみれの姿を抱き起こした。
肩口から裂かれた傷跡から、血が未だ溢れてくる。
千切れた皮膚の奥から、いくつもの白い破片も一緒に。
処置のしようもない程に、その傷痕はもはや、すべてが手遅れだった。
すぐ横のアホ顔で天をあおぐ輩を睨み付けるが、そちらも反応は無い。
(;´・ω・`)「ジョルジュさん……! なんで……あんな真似を…!!」
( ゚∀゚)「お前が……はやまったこと、すっからだよ…たく、危ねぇなぁ……」
(;´・ω・`)「どうして……こんなこと、しなくたって……」
(;´・ω・`)「僕は………僕はもう、決めていたのに…!!」
( ゚∀゚)「…………お前らには…」
( ゚∀゚)「特に、お前には、かなり重てぇもん背負わせちまったよなぁ」
(;´・ω・`)「そんな事……何かを背負ってるのはみんな、誰だってそうでしょう?」
( ゚∀゚)「……ああ……理由だけならな、でもお前は……責任を、抱えたろ?」
( ゚∀゚)「だからさ…これ以上、それも、親友殺しなんざ、背負わせたく、ねぇんだ」
(;´・ω・`)「……っ」
139
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:21:21 ID:DAgs3L120
( ゚∀゚)「なあ、ショボン」
(;´・ω・`)「……なん、ですか?」
( ゚∀゚)「物はついでだ……のこりの荷物も、俺に預けちまえよ」
( ゚∀゚)「お…まえは、オレに……命じられたとでも、しとけ」
( ゚∀゚)「人の生命を……弄んだ代償なんざ……考えてんな、よ」
その言葉に、ショボンは絶句した。
ずっと考えていた事だった。
自分のしていること、その行いのおこがましさに。
他人を駒のように扱い、他を潰し、他に潰させ、自分は手を汚さない汚さに。
この世界で戦い続けてきた、本物の人たちの隣で、知識だけを得た偽者の自分が、
本物であるかのように振舞い並び立つ、その醜さに。
そして、そんな偽者の自分を、本物と勘違いして慕ってくれる人たちの思いすらダシにして。
またこれから、更なる犠牲を生もうとしている、その罪深さに。
140
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:22:05 ID:DAgs3L120
思っていた。
神もあの世も信じてなどいなかったが、きっと自分は地獄に落ちる、
人を使って命のやり取りをする事への贖罪、そう思うことだけが、ある種の赦しだったから。
しかし、誰にもそんな思いは知られていない。
そして、そんな思いを、あの二人にまで共有して欲しくもない。
穴を気にし過ぎて、下手糞な壁しか作れなかった友人と、
塞がれた心に気付いていない、しかし真っ直ぐな友人が、
それぞれの道を歩み始めた、それを、喜ばしいと、そう思えたから。
だから隠そうと、今は心に鍵をかけて。
もう、自分の本心で、何かを壊したくはない。
そう思っていた、思えるだけの演技はできていたはずだった。
(´ ω `)(どうして……この人は……こう)
あけすけで、能天気なようでいて、しかしその実どこか冷静で、
周りをよく見ている、見抜ける、そんな目を持っている。
(´ ω `)(………っそうだ、だから…)
走馬灯という物か、これまでの事が思い返される。
これまでの、旅のさなか、いや出会ったその時から、どれほど。
141
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:22:49 ID:DAgs3L120
( ゚∀゚)「なあ…おまえ…は……あいつらの……これからに、必要、な」
(´ ω `)「……そんな、の、そんなの、ジョルジュさんだってそうでしょう!?」
(´・ω;`)「あなたも……あなたが! 僕らには必要なんですよ!? 」
(´・ω;`)「はじめて会った時からずっと…! あなたが居てくれたから…!」
( ゚∀ )「…………………」
(´;ω;`)「わけのわからないこの世界でも、恐れずに歩けたのは…!
大丈夫だって、何とかなるって、そう思えたのは…ジョルジュさんが、居たから…」
(´;ω;`)「だから……だから僕は………きっと、ブーンも、ドクオも……
ジョルジュさんを、信じて……その、おかげで………ぼくら、は……」
( ∀ )「ああ…そりゃ、兄貴分としちゃ……ほこらしい、なぁ」
(´;ω;`)「…………っ……はい、僕も、ブーンも、ドクオも…! そう思ってましたよ…!」
( ∀ )「は、は……やれ、やれ……だな、どい…つも……んと、せわ……やけて…なぁ」
( ∀ )「ああでも………こんだぁ、……とめられた、よな、おとうとを………きょうだいげんか…も……」
(´;ω;`)「はい……っ…ジョルジュさんの…おかげで…っ」
( -∀-)「……ああ、ああ……だいじょ、ぶ…さ…おまえ、ら……なら」
142
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:23:24 ID:DAgs3L120
既に光の消えた瞳で、空を見上げ、うわ言のような言葉が響く。
消えていく、無くなっていく、居なくなっていく。
手を取るが、返す感触はなにも無い。
声が届いているのかも、一秒ごとに怪しくなっていく。
こんな、誰も居ない寂れた場所で。
自分しか看取るものが居ないところで、この人を送らねばならない事が、今はただ悔しくて。
そして、その原因が何だったのか、もういちど、考えて。
(´ ω `)「………ぅ、く……」
(´;ω;`)「ごめん………ごめんなさい、ジョルジュさん……本当は…
こうなること……わかっていたのに……だから僕は、僕がその前にって……」
( -∀-)「俺はさ」
最後の懺悔は、しかし消えかけていた瞳に、もう一度光を宿し、
ジョルジュははっきりとした声色で口にした。
(´;ω;`)「………え?」
( ゚∀゚)「ダメさ、結局……あの日の英雄たちに憧れちまった」
( ゚∀゚)「かっこいいよな………一人を守ろうと皆が動いて、
その皆を守るために、その一人がまた命を賭けたんだ……」
( ゚∀゚)「俺は………俺も、そう、在りたかった…」
143
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:24:45 ID:DAgs3L120
( ゚∀゚)「でも、お前らはそうじゃない……だろ?」
言って、ジョルジュはいつの間にかこちらを見やる内藤を指す。
あれが、あれの目指したその先にある物こそ、お前たちらしい、と。
だから、と続け。
( ゚∀゚)「……伝えてくれよ、それを」
( -∀-)「――――信じてる……と………ほん…と…に……ごめん……な…………と―――――」
言って、息を吐くように、眠りにつくようにして、
凄惨な傷痕からは考えられないほど、穏やかな表情で、
これまでの、彼らの旅路を支えてきた男がその生涯を終えた。
ショボンは堪えきれない思いをそれでも飲み込むように空を仰ぐ、
ひとひらの雪が瞼に落ちると、いくつもの雫が頬を伝った。
144
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:25:39 ID:DAgs3L120
それを拭うと、立ち上がって剣、神具フレイを取る。
そしてこちらを見る、相変わらず唖然とした表情の内藤へと突きつけた。
しかし、それでも訳がわからない、という風に首をかしげるばかり。
( ^ω^)「……?」
(´・ω・`)「ブーン………僕がわかるかい?」
( ^ω^)「………? しってる……きが…する…」
(´・ω・`)「そう………じゃこの人は?」
( ^ω^)「…………じ、じょるじゅ、さん?」
(´・ω・`)「今の話…聞いてたよね? どう思う? 何か思うところない?」
( ^ω^)「はなし……?わから……ない、わから、ない」
(´・ω・`)「じゃあ……ブーン、きみ………死にたい?」
( ^ω^)「………」
( ^ω^)「うん」
( ^ω^)「死にたい」
145
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:26:25 ID:DAgs3L120
(´・ω・`)「素直だねぇ」
( ^ω;)「あ、あ……」
( ^ω;)「死にたい、死にたい、しにたい、シニ……タイ…ダレ、か」
(´・ω・`)「君は言ったね、皆を守るために、すぐ側の誰かを救うために戦うって」
(´・ω・`)「そんな君は、この結果をどう受け止めるのかな」
( ^ω゚)「コ…ロし…テ……」
(´・ω・`)「いいや、悪いけど……君には生き地獄を味わってもらうことになる…ていうか」
(`・ω・´)「死んで済むと思うなよ、もう……逃げる事は許されないんだから」
僕も、君も。
言って、ショボンは手にした剣で、内藤のもつ剣を叩いた。
外見に何か変化があった様子はないが、ショボンは確かな手応えを得る。
ややあって、内藤がうめき声をあげた。
146
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:27:28 ID:DAgs3L120
テレビがついている。
液晶に映るのは、誰かが自転車をこぐ姿。
もう一台、テレビが増えた。
今度は学校に居る、誰かの姿。
更にもう一台、そしてそれを切欠に無数の画面が点灯し、一気に映像と音声が流れ出す。
それは何気ない日常であり、そしてとんでもない非日常の様子まで。
しかし、いくつかノイズまみれでよく見えない物もあった。
見てはいけないものだった、だから内藤は見なかった。
自分の、これまでの、全てを、思い出しながら。
膨大で、音は滝のよう、映像は細かくなりすぎてステレオグラムのよう。
気が狂う。
ようで。
寝不足で眼を覚ました時の、混乱する頭のようで。
しかしはっきりと、意識がある。
自分は誰で、自分はどこで、自分が何をしているのか。
けれど思い出せないこともある。
それは、何を、したのか。
147
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:28:25 ID:DAgs3L120
(;゚ω゚)「……う、うああああああああああああ!!!???」
一面の白に、美しいほど映える赤い染み。
内藤はつまづきながら、横たわる姿へと駆け寄った。
そして必死に名を呼ぶが、返事どころか身じろぎひとつしない。
(;゚ω゚)「ジョルジュさん! ジョルジュさん…!! 何で、いったい何が!?」
(;゚ω゚)「誰か…!? 誰か居ないのかお? こんなに、血が…血が!!」
(´・ω・`)「………ブーン?」
(;゚ω゚)「あっ、ショボ!? 何してんだお!? 早く…!!」
(´・ω・`)「……壊れた、ってやつじゃ…ないよね?」
(;゚ω゚)「何わけわかんないこと言ってんだお!? これが見えないのかお!!」
(;゚ω゚)「早く、早くなんとかしないと、ジョルジュさんが…!!!」
(´・ω・`)「……君、ほんとに大丈夫?」
(;゚ω゚)「ショボ!! ふざけてんのかお!? 早くジョルジュさんを助けなきゃ!!!」
(´・ω・`)「は? 助ける? はっ……ははははっ!!!!!! 君がそれを言うわけ? 君が?」
この状況下で笑みを浮かべるショボンに怒りの感情が湧き上がるが、
しかしそれ以上に、内藤はその言葉に寒気と、恐怖を覚えた。
148
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:29:11 ID:DAgs3L120
(;゚ω゚)「ヒルトは…あっち…か? とにかく、町まで行けば!!」
(´・ω・`)「ふうん、ここに居る、って自覚はあるのか」
(;゚ω゚)「ジョルジュさん、死なないでくれお、今連れていくから、おねがいだから…!」
(´・ω・`)「…ああ、行くといい、でも、早まった事はしないようにね」
(;゚ω゚)「っっ……」
そうして、内藤はジョルジュを背負うなり駆け出した。
しかし雪に足をとられペースが落ちる、更には濡れた身体中が冷えて凍りつきそう。
けれどそれでも、と。
背中にまだ、暖かい物を感じて、暖かい物が、背を伝ってくる感覚があって、
手も、足も、どうなっても構わないと形振り構わず進んでいく。
(;゚ω゚)「まだ、間に合う……まだ、大丈夫、まだ…っ」
ただ、前へ。
赤く広がった雪の上から、赤い足跡を伸ばしていく。
ショボンは、そんな姿を小さくなるまで見送ってから、
ゆっくりと倒れこむように膝をつく。
頬をつたって流れた何かがまた、雪上に落ちた。
149
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:31:26 ID:DAgs3L120
………。
やがて。
どれほど進んだのか、開けた道に出た。
この辺りはどこも似た景色だから、はっきり覚えているわけではないが、
ヒルトへ続く街道で違いない、もう少しだと、気合を入れなおした。
(;゚ω゚)「あと、もう少し…だお、ジョルジュさん…」
返事は無い。
けれど、背中はまだ温かさを感じる。
気持ち悪いねばつく感触には気付かないふりをした。
後ろを見れば、あの、嫌な赤い足跡はとうに無くなっていた。
血は止まった。
150
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:32:47 ID:DAgs3L120
もしかしたらと、内藤は自分の持つ神具を握らせてみた。
あれだけ大怪我してもすぐに治した力だ、実績もある。
現にあれだけ流れていた血は止まっているし、
いつの間にか、自分にしがみついている腕にも力がある。
それも異様な硬さだ、人体の柔らかさを感じないほどの。
だから、大丈夫だと。
辺りは白い。
吐く息も白い。
自分も、背負う姿も、綺麗な白に染まっていくような誤解があった。
( ω )「…大丈夫、だお、今度は……僕が、助ける、番…だから」
( ω )「…ジョルジュさんは、ずっと、初めて会った時から、僕らを助けてくれてた」
( ω )「…やたらと、僕らに鍛えるよう言ってたお……あれだって」
( ω )「ジョルジュさんは、わかってたんだお? 僕らが……戦いに、巻き込まれること」
( ω )「でも、そうさせないように、してくれていたことも……わかってたお」
151
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:35:58 ID:DAgs3L120
( ω )「でも、それでも、どうしようもなくなったときの、ために……」
( ω )「僕らが、何もできずに潰されてしまわないように、歩いていけるように」
( ω )「自分のためじゃなく……人が、無力だって、知っているから…」
( ω )「ほんとは……最初は、疑ってたお、怪しいって…」
( ω )「だけど、それは本当はお互い様なのに、ジョルジュさんは受け入れてくれてた」
( ω )「あんなに強くて、弱音も吐かずに、いろんなことを背負っているのに」
( ω )「それでも、何も知らない、弱くて、わがままな、僕たちを、助けてくれていた」
( ω )「だから…気付いたら、いつのまにか………」
( ω )「……………兄貴ってのは、こんなに頼れるものだったかなぁ、って」
( ω )「もっと……頼りにならなくて、自分がしっかりしなきゃって思えるような……存在、のような……」
( ω )「なんでかなぁ、そう……思ったんだお」
( ω )「あ、でも……同じところも、あったんだお」
( ω )「優しいところ、いざって時には、僕のために……立ち上がってくれる、そんなところ……」
152
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:37:21 ID:DAgs3L120
( ω )「だから――――」
( ω )「だから……やめてくれお、ジョルジュさん」
混濁した記憶の中で、一際色濃く残っている言葉がある。
今もその映像はノイズだらけで、何が何だかわかりたくないけれど、
強く、残る言葉がある。
( ω )「ごめん、なんて……言わないでくれお」
謝罪。
悔やみ、嘆きの中で生まれる言葉。
そんな言葉を使わせてしまった。
苦しみながら、死んでいった。
他ならぬ、自分のせいで。
( ω )「ジョルジュさんは……ずっと、守ってくれてたじゃないかお、
そんなの知ってる、わかってる、みんなわかってる事だお」
( ω )「ジョルジュさんは何も悪くない、悪いのは……」
153
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:38:23 ID:DAgs3L120
( ω )「わる……い……の……」
悪いのは?
視界がぼやける、冷え切った手足はもとより、身体中が悲鳴をあげている。
しかしそれ以上に、何よりも、胸が苦しくて、内藤はついぞ膝をつく。
(; ω )「だめ……だお」
( ω )「まだ……立ち止まってる暇なんて…ない…いそがない…と」
立ち上がった、この誤解をやめるわけにはいかない、まだ勘違いしなければ駄目だ。
まだ忘れたままでいなければ、足が動かなくなる、頭がおかしくなってしまう。
だけどもう、どうしてか、内藤の視界は何かが邪魔をしていてよく見えない。
雪だ。
雪が目に入ってきて視界が歪む。
それも何度も何度も拭っても拭っても、雪が入ってくる。
そう思うことで、どうにか足を前に出す。
と、今度は完全につまづいて、前のめりに倒れこんだ。
ぱき、あるいは、ぱりん、と、小さな音がした。
154
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:39:34 ID:DAgs3L120
反射的に内藤は音のする方を見た。
これまで、見ないようにしていた後ろの、もっとうしろ。
自分が背負っているモノを。
更に周囲には、赤茶色の錆のようなものが撒かれている。
それは自分が背負うモノから、今もまた、ぱりぱりと、
割れる氷のような音を立てて破片が落ちる。
( ω )「ぅぁあ、あ、あ……」
( ω )「いそごう、イソがなきゃ、ひぐ、急がナきゃ…」
立ち上がろうとして、足を滑らせ、背負っていたものが落ちる。
ごろり、ぼす、と雪に埋もれる姿は、見知った存在の筈なのに、見覚えが無い。
形もおかしい、なんとなく、腕に抱きつく人形を思わせる。
もう、ダメだった。
どんな誤解をしようとも、思い込みをしようとも、信じようとも、
これはもう、どうしようもない、どうしようもなく、誤魔化しようもなく。
155
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:40:40 ID:Rce8byPA0
シエンタ
156
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:41:01 ID:DAgs3L120
( ω )「………そんなの」
( ω )「…そんなの……わかってたお……」
自分が斬ったのだ、手応えはこれ以上なく、今もこの手にある。
だから、今こうしている、あの場で、あの目が耐えられず、大義名分の下あの場から逃げ出して。
そして今度は、この先にある現実が近づいたことで、今度は足が進むことを拒み始めた。
守り、守られていくのだと、そう信じて疑わなかった相手から、
内藤はその両方を奪い、この温かさすら、二度と感じられないようにした。
そんな自分が悲しくて、そんな自分が許せない。
悲しい辛い苦しい痛い寒い寂しい怖い恐い不安憎い。
もう、あまりにも自分の感情がぐちゃぐちゃで、
もう、どうしたらいいのか分からない。
ただ、この先に行かなければならない事だけは間違いないと、
もう一度その姿を背負うと、内藤は歩き始めた。
( ω )「いかな…きゃ」
( ω )「いって……そして……そして……謝らな…きゃ……」
157
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:42:46 ID:DAgs3L120
( ω )「さむ…い、い……いた、い…」
( ω )「あ、あ……ごめん…なさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
凍傷による刺すような痛みと、尚も吹いてくる冷たさは、まるで脅迫されているようで、
いつしか、ひたすら同じ言葉を繰り返し続けていた。
謝らなければと、もはや誰に対してなのかも分からないまま。
「あ!」
(; ω )「…!?」
と、街道の先から声がしてきた。
誰かが内藤を見つけたようで、声をあげ、指をむけて周りを呼ぶ。
どこか聞き覚えのある声だった、それが誰だったのかはわからないが、
それでも内藤は、今の自分を見つけたその相手に対して。
「こっちだ! あそこに誰か…」
「……あれ、おい、あれって…!」
(li゚ω゚)「ひっ……ぃ!!」
恐怖のあまりに後ずさり、雪に足を取られて倒れこんだ。
背負っていたものが、反動で横に転がった。
158
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:43:43 ID:DAgs3L120
それを見て、そして近づいてくる姿を見て。
内藤はパニックを起こしたように叫びながら、
気付けば一人、街道を逆方向にむかって走り出していた。
背中から声がする。
転がった何かを見つけた声。
走り去る内藤の背に呼びかける声。
そして、自分自身を糾弾する、心の声が。
(何をしてる)
(何処へ行く)
(第一声で、言わなければいけない事があったのに)
(どうして僕は)
(逃げている?)
(怖いから?)
(自分のした事が)
159
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:44:12 ID:DAgs3L120
(逃げ出した)(受け入れられない)
(許されないことをした)(恐ろしい)
(逃げるのか)(謝りもしないで)
(卑怯者)(最低な人間)
(あんな事をしておいて、逃げた)
(ちゃんと謝れ)(謝罪しろ)
(謝って済まされる問題じゃない)
(償え)(逃げるな)(どうしたら)
(罰を受けろ)(裁かれるべき)
(そして)
( ゚ω゚)(そうだ)
逃げながら、気付けば自分を許すための術を探していた。
そしてすぐに答えは出た、なんてことのない、当然の行為で。
160
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:46:12 ID:DAgs3L120
覚えている、あの日の目的。
そしてそれは、これからの目的でもある。
なら、それだけが、今の自分にできる、そして許されたこと。
理解して、内藤はようやく笑みを浮かべた。
( ^ω^)
奴を、殺せばいい。
161
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:46:42 ID:uEssAFl60
あかんブーンが暗黒面に
162
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:50:10 ID:tRaYS1lU0
支援
163
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:51:03 ID:DAgs3L120
あ、つづくって書くの忘れた、8話はここまで。
ブーンをいじめたいだけの繋ぎのお話、あとジョルジュもまた縛られてきて、
感化はされども、やはりそういう世界で生きてきた人間だったという感じ。
次回は9話「喪失したもの」文字通りなにもかもを捨てるお話と、ドクオの小噺。
164
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:52:05 ID:tRaYS1lU0
乙
四部作って昔聞いた気がしたけどそれは変わらず?
165
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:55:40 ID:DAgs3L120
>131
今まで千行行かないと投下できない観念に追われたから、
いっそ細かく区切ってしまえばできると思ったらそうでもなかったので、
シナリオ自体はもうだいぶくっついちゃってるからだめぽ
>164
ツン主人公の話がお蔵入りしたから3部になるらしい
166
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:56:21 ID:DAgs3L120
でもやっぱり短いから次もしてしまおう
167
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:56:45 ID:DAgs3L120
9ヶ「喪失したもの」
( ^ω^)「……」
手にしたナイフを自らの額にあてがい、真っ直ぐに引く。
焼けるような痛みがすぐさま襲い、頬を伝って血が落ちた。
視界はすぐにピンクに染まる。
粘ついた感触で瞼が重く、切れた皮膚がじくじくと痛む。
洗い流そうとするかのように涙があふれるが、中々落ちてはくれなかった。
そうして内藤は水辺でしゃがみこんだまま、しばらく痛みを堪えていた。
何故こんな真似をしているかと言えば、剣に映りこんだ自分の顔に、
あの傷が無くなっている事に気がついたからだ。
このままでは奴の下へ行く前に、止められてしまうかもしれない。
そう思っての行為、そう、どこか言い訳めいた、自傷行為だった。
現に今も、痛みを堪えながら考えるのは、ただただ、誰かの痛み。
もっと痛かったはずだと、もっと苦しかったはずだと。
届かなかった手の先で、消えていった友人のことを。
そして自らの手で、消してしまった人のことを。
168
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:57:46 ID:DAgs3L120
許せなかった。
頭の中で声がするのを感じてはいたが、今は何も聞こえない。
今はただ、あの人間をこの手で殺すことしか考えられない。
ロマネスク、神を自称するあの男。
何もかもが奴のせいだ、今自分が失った人たちの事だけじゃない。
遥か以前から、奴のてのひらで踊らされていたという。
そのせいで、大勢の人たちが傷ついてきた、犠牲になってきた。
死ぬべきだ。
殺すべきだ。
生きてちゃいけない。
殺されるべきだ。
本当なら無残に、無意味に、後悔と屈辱に塗れた死を与えるべきだ。
だけどそこまでの贅沢は言えない、だからせめてこの手で殺す。
彼らと同じ傷を、同じ苦しみをせめて与えてやらなければ。
169
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:57:57 ID:uEssAFl60
>>165
乙乙
過去のスケジュールより話数は少なくなるってことね
170
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:58:15 ID:DAgs3L120
当然の報い、因果応報というやつだ。
そもそも最初から、奴を殺すための戦いだ。
奴さえ居なくなれば争いだって無くなる。
すべてが上手くいく。
奴さえ死ねば、何もかもが終わる。
そうしたら。
そうしたら。
そうしなければ……自分はもう、どこにも帰れない。
本当は守りたかった。
助けたかった。
全ての人々を救うなんて、大それた事を言っている訳じゃない。
171
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 20:59:47 ID:DAgs3L120
これからも一緒に歩いていきたいと、そう思っていただけなのに。
それなのに。
それなのに。
それなのに。
奴のせいで。
奴のせいで。
あいつのせいで。
許せない。
ゆるせない、ゆるせない、ゆるせない、ゆるせない。
ゆるせない?
いいや、これはそんな愛らしい言葉で済まされるものじゃない。
憎しみ、憎悪、そういったものだ。
172
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:00:12 ID:DAgs3L120
いっそ笑えてしまう。
人は、こんなにも誰かを憎むことができたのか。
いっそ楽しみにすら思えてしまう。
幼い日の、遠足前夜の布団の中にいるような。
ああ、はやくそのときがこないかなと。
( メω )「行かなきゃ……」
早く行かなければ。
今すぐ殺しにいかなければ。
太陽がまた輝くより先に。
星が瞬き流れるより早く。
今すぐ殺しにいかなくちゃ。
…………。
173
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:01:00 ID:DAgs3L120
ヒルトから続く街道のずっと先、検問をいくつか越えた先にその拠点はあった。
雪山で内藤が口にしていた通り、各国の戦力はほぼ集結しつつあり、
今は拠点をより強固なものとする突貫工事が夜通し行われている。
傷女、でぃは王に半身とまで称された人物に従うよう命じられ、
今は姿の見えないその人物を探し、拠点をさまよっていた。
と、そんな彼女に一報が届く。
探し人が見つかったとの事。
街道の途中で発見され、先ほど貨物船に同乗してきたという。
(#゚;;-゚)「ロマネスク様、今までどちらに」
( メω^)「お……ああ、ちょっと…ね」
(#゚;;-゚)「…お怪我を?」
( メω^)「いいや、平気だ、よ、これくらい」
(#゚;;-゚)「……まさか、お一人でヒルトに?」
( メω^)「………実は、ああ、そう、なんだ」
(#゚;;-゚)「なんて無茶を…」
( メω^)「なんとか、説得を、と思ったけど、返り討ちにあってしまった」
(#゚;;-゚)「……奴らは、罪も無い民草を平気で惨殺するような連中です」
174
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:01:18 ID:uEssAFl60
続いてるぅ支援
175
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:03:02 ID:DAgs3L120
( メω )「――――」
(#゚;;-゚)「慈悲など、通じるとは思えません」
( メω )「……なら」
(・(エ)・)
ナラ オマエ ハ ドウナンダ
(#゚;;-゚)「……?」
( メω^)「……とにかく、王に報告したい、どこ……今はどちらに?」
(#゚;;-゚)「確か今は、中央塔の見晴らし場に」
「わかった」
内藤は身体ごと顔をそむけつつ言った。
自分でも、表情が歪みそうになるのを感じていたから。
そして怒りのあまり、震える腕を隠すために。
176
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:04:42 ID:DAgs3L120
今はまだ、こいつは後でいい、とにかく今は奴を。
ロマネスクを、奴の息の根を止めれば、そうしたら今度こそ、
今度こそちゃんと謝れるはずだ、そう必死に自分を押さえつけながら、
まだ陽も上らぬ早朝、人はまばらでかがり火の側でなければ顔もよく見えない。
おかげで今の変化にも気取られていない、そう安堵する内藤だったが、
見え辛いからこそ、岩陰からこちらを凝視する姿があることにも、気付かなかった。
そうして、岩山の要塞内部へ。
ひんやりとした空気にぞわりとしたものを感じるが、歩を進める。
二つの歩く音が反響する。
話し声は微かに、あちらこちらから。
後ろをついてくるでぃを何とか撒くことを考えながら、階段を登る。
まるで虫に食われた跡のように、ところどころに空いた穴からは外が見える。
無数のかがり火に、それ以上の人影が蠢いている。
あんな男に騙されて、愚かな連中だと思う自分が居て、
それはそのまま、自分自身のことを指していることに嫌気がさす。
177
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:05:55 ID:DAgs3L120
そして、これからする事を思いかえし、小さく喉が鳴る。
あれらはもうすぐ、その全てが自分を狙うことになるだろう。
生きては帰れないかもしれない。
でも構わないと、前を向く。
今更だ、あんな事をしておいて、今更何を言っているのか。
もはや自分がどんな目に合うかなど、考慮するべきじゃない。
結果死ぬことになったとしても、自業自得なのだ。
)「…………」
殺意を新たに、内藤は再び歩を進めた。
こうしてどれほど歩いたのか、異様に長く感じる通路を行く。
通路と言っても岩をくり貫いたものが、いくつも枝分かれした楕円の形状。
道は舗装されてはいるものの、砂利や細かい砂が積もっている。
合間の窪みにはオイルランプが置かれ、薄暗くも道を照らしていた。
178
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:06:39 ID:DAgs3L120
壁にはいくつも、鳥避けで見たような、目を模した飾りが見える、
幸運を願うお守りのような物だと、誰かが言っていた。
また、対面から歩いてくる一人の人間がこちらへ声をかけてくる。
ただの挨拶だ、会釈だけしてやり過ごす。
耳を澄ませば、笑い声すら聞こえてくる。
ここにも、人が、生きている。
ただそれだけの事が、当たり前のことが、なぜか胸に痛みを与えた。
( メω )「……いつまで、ついて来るんだ?」
(#゚;;-゚)「王の下までご一緒します」
( メω )「なぜ、ちょっと報告してくるだけだぞ……」
(#゚;;-゚)「何か不都合が?」
( メω )「……ああ、いや、相談が…も、あるから」
(#゚;;-゚)「成程、では一つだけ聞いても?」
( メω )「なんだ」
(#゚;;-゚)「あなた」
(#゚;;-゚)「本当にロマネスク様ですか?」
179
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:07:28 ID:DAgs3L120
言葉に、内藤は全身が冷えていくのを感じた。
動揺もある、がそれ以上に、こうなったら、という諦めを含めて。
しかしギリギリの所で、剣に伸ばしかけた手を止め、
平静を装いながら半身だけで振り返る。
( メω )「質問の意味がわからないな」
(#゚;;-゚)「……先ほど、お会いした時から思ってましたが」
(#゚;;-゚)「今、あなたの近くにいると、それだけで背筋が寒くなります」
(#゚;;-゚)「率直に申しまして、今のあなたが恐ろしい」
(#゚;;-゚)「まるで――――」
内藤自身、それを意識した事も無かったが、いわゆる、殺気という物だろうか。
あるいは戦場で命をかける物がもつ直感のようなものか。
どちらにせよ、ここまでか、と。
振り返りながら柄で一度突き、続けて抜き放った剣の腹で殴りつけた。
でぃは小さな呻き声を上げながら、壁に衝突。
うなだれたまま、動かなくなった。
さらに衝撃で明かりのランプが落下して、音を立てて砕ければ、
溢れ出た油に火がついて、すぐさま廊下の一部が炎に包まれていく。
180
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:08:39 ID:DAgs3L120
すぐさまその場に背を向けて、内藤は駆け出した。
こうなったら、騒ぎが大きくなる前に、仕留めるしかない。
いくつもの通路を越え、そしていくつかの階段を越えると、
やがて広まった場所に出た、外を覗く穴からは、遠い空に日の出の兆候を映している。
そんなまだ小さな明かりを背景にして、その男がふりかえる。
( ФωФ)「戻ったか、我が半身よ」
それを見て、声を聞き、内藤は口を開いて笑みを作る。
手には抜き放ったままの剣が、薄明かりを浴びて徐々に輝きを取り戻し、
歩みは真っ直ぐに、段々と速度をあげながら。
明らかに様子のおかしい姿だが、対する男はただ見据えるばかり。
( メω゚)「――――ああ」
これを好機と、もう一度強く、地を蹴り。
( メω゚)「死ね……!!」
憎き人間を殺すべく、駆け出し。
181
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:10:53 ID:DAgs3L120
「オーッホホホホ!!!!」
気色悪い声色と共に、内藤とロマネスクの間に割り込む姿があった。
フリルのついたドレスから、すね毛を覗かせる巨漢。
顔は化粧にまみれ、目元はどこからが目なのかわからないほど濃い目のアイシャドー。
変態がそこに居た。
( <●><●>)「本性を現したわね!! この裏切り者!!!」
( <●><●>)「アンタの事は、ずっと怪しいと思っていたのよ!!」
( <●><●>)「見張っていて正解だったわ!!」
( メω゚)「………」
( <●><●>)「調べはついているのよ! アンタ、逆賊の仲間ね」
( <●><●>)「どうやって麗しき我が王にとりなしたか知らないけど…ここまでよ!」
( メω゚)「……け…」
( <●><●>)「ご覧ください王よ、こやつは今、王に剣を向けるばかりか」
( <●><●>)「つい今しがたにも、でぃに暴力を働いてここにおります」
( メω )「……ま…を……」
( <●><●>)「完全な裏切り行為、しかしご安心くださいませ!」
(*<●><●>)「このワタクシが、これ以上の不埒は許しません!!」
182
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:11:47 ID:DAgs3L120
( ФωФ)「ふむ、いや―――」
(*<●><●>)「見ていてください…! 真に忠誠を誓う姿を、そしてワタクシこそがあなたの傍に相応しい―――」
( ФωФ)「よいのだ、下がっておれ」
(;<●><●>)「!?」
(;<●><●>)(な、なぜ…!? 許すというの!? まさかそれでも、それでもあいつの事を!?)
(#<●><●>)「ぐ、ぬ、ぬぬぬ、いいいいい…!!!」
ぎぎ、と音を立てんばかりの勢いで、壊れた人形のようにオカマが振り返る。
そこには内藤が、伏目がちにこちらを睨み付けていた。
そして目と目が合う瞬間、お互いの激情が弾けた。
( メω゚)「そこを……退け…!!」
(#<●><●>)「この、アンタ、目障りなのよ…!!」
切っ先を互いに向け。
(#<●><●>)「消え失せ(#メω゚)「邪魔をするなああああああああああああああああああああああああ!!!!」
た、瞬間。
オカマは身体の感覚がなくなった事を知る。
183
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:12:42 ID:DAgs3L120
そして奇妙な浮遊感、景色がぐるりと回って床が近づいてくる。
口は動く、しかし呼吸の仕方も、声の出し方もわからなくなってしまった。
やがて地面だけが見える視界に、赤い液体が広がっていく頃、
未だわけもわからず、急速に消えていく景色に困惑しながら意識も失くし。
そんな傍らには、首から先、頭の無い身体が横たわっていた。
( ФωФ)「なんと愚かな…命を粗末にするとは」
( メω゚)「次はお前だ……今度こそ、今度こそ殺してやる…!!」
( ФωФ)「はは、まるでいつかの再現ではないか」
( ФωФ)「どうやら自分を取り返したようだな、うむ、見事だ」
( ФωФ)「ならば我も神として、その努力に応えよう、かかってくるがよい」
(#メω゚)「うる、せぇ、言われなくても…!!」
( ФωФ)「今度は、せめて届かせてみよ」
言って、ロマネスクは剣を構える。
しかし何時か見た、あの黒線をまとう大剣ではない。
神具ですら無い、特に装飾もないような簡素な一振り。
184
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:14:40 ID:DAgs3L120
他に武器らしきものは見当たらない。
よくよく見れば、服装も軽装でお休み前といった風貌。
どうやら、本当に不意打ちとなったようだ。
これなら、今度こそはと、勝利を確信する。
地を蹴る、間合いはすぐに無くなった。
その時、背後から何か叫ぶ声がした。
もう遅い、ロマネスクは当然のように反応してくるが、
得物の差は明らかだ、このままならあの剣ごと叩き斬れる。
斬りかかる、もう止められない。
が。
「ロマネスク様!!」
先ほど背中に響いていた声が、突如として眼前から響いてきた。
(;メω゚)(なっ…!?)
内藤は一連の動作の、その刹那に起きた事態に驚愕した。
185
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:15:17 ID:DAgs3L120
対峙する内藤とロマネスクの間。
誰も、何も居なかったはずのその隙間に。
(#゚;;-゚)
でぃが、ロマネスクを庇うように現れたのだ。
そうなれば当然、内藤の剣は彼女へと向かう。
剣は肩口から袈裟切りに、深く、その身を斬り裂いた。
破裂したように、吹き出た血が降りかかる。
むせかえるような鉄の匂い、文字通り血の雨が降る。
剣を、身体を染めていく。
でぃはそのまま後ろへ倒れこむ。
ロマネスクはその身を受け止めた。
「ご無事ですか」
そんなか細い声が響く。
186
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:16:28 ID:DAgs3L120
( ω )「―――――ぅ」
情景が。
何の因果か、偶然か。
あの瞬間の光景と重なって。
( ゚∀゚)
(; ω゚)「う、うぶ」
内藤はその場に膝をつき、呻きながらその場で嘔吐した。
あの感触が蘇ってくる、肉を千切り、骨を砕き、内臓を潰していく感触。
そしてそれ以上に、大事な存在に自ら手をかけた、その事実が。
今の今まで、恨みつらみで誤魔化していた感情が、
過剰なストレスが、ついには限界を超え身体に影響を与えた。
187
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:17:30 ID:DAgs3L120
嗚咽が止まらない、震えも止まらない。
手の感覚が無くなって、しかし握った指が開かない、剣を手放すこともできない。
しかし握った剣がまた、その感触を髣髴とさせ恐怖が襲う
それら全てが堪えきれず。
(; ω゚)「ぜっ――ぜっ――は、あ、あ―――」
「あああああああああああああ―――――――――――――――――」
悲鳴にも似た叫びをあげながら、ついにはその場から。
またしても、逃げることを選んでいた。
そして内藤が裏切った事、管理者が二人殺された事は、すぐに砦に広まった。
城砦の中、外はともにすぐさま警戒態勢となり、その足取りを探す人間達であふれた。
あちらこちらで、人の声や足音が響く。
居たか、どこにいった、あちらを探せと。
内藤は、そんな喧騒が響く城砦の中。
その奥深くの一室にて、しゃがみこんでいた。
188
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:17:31 ID:uEssAFl60
登場からほとんど出番なくワカッテマス退場か
189
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:18:59 ID:DAgs3L120
未だ、剣は指から離れない、まるで呪われた道具のよう。
嘔吐感は引いたものの、身体の震えは止まらない。
見つかれば、抵抗もできずに殺されるだろう。
覚悟をしていた筈なのに、それがとても恐ろしい。
そんな自分が、あまりにも無様で涙が出る。
それでも。
死ぬのが怖い。
死にたくない。
人は平気で殺してきたくせに、自分の番になったらこれだ。
そんな言い分は通らない、そうでなければならないのに。
それでも、恐怖のあまり、立ち上がることもできずにいた。
(; ω )(死にたく……ない……)
ずっと考えてきた、英雄のありかたも、その果てに得た答えも。
命はかけずに皆を守るなんていうのも、誰かが悲しむなんて詭弁だ、
結局はただ、自分が死にたくなかっただけなんじゃないか。
自分が安全だから、言えただけなんじゃないのか。
こうして命の危機に晒されてみればよくわかる。
要は、死にたくない、だけ。
190
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:20:07 ID:DAgs3L120
なんて、みっともない人間だろう。
こんな奴が、誰かを救うとか、守るとか、できるわけが無かったんだ。
最初から間違っていた。
(; ω )(なんで、どうして……こんなことに…)
とまで考えて。
(; ω )(そもそも僕は……人を………)
既に、もう何人も、この手にかけている事を思い出した。
それなのに、どうしてこうまで心を揺さぶられるのだろう。
いや、それ以前に。
いつから、そんな真似ができる人間になった?
平和な時代、世界に生まれ育ち、殺し合いなど映画や漫画でしか知らない自分が、
どうして、今まで気にもかけずに、行えてきたのか、戦えたのか。
191
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:21:23 ID:DAgs3L120
ゾ、と背筋にうすら寒いものを感じた。
神具を使ううちに、自分を失った、それは理解している。
ならそれは、いつから?
以前にも、戦いの中で記憶をなくした事はあった。
そして気付けば、自然と闘うことを受け入れるようになっていた。
それは、つまり。
(;^^ω)『……う……』
( ゚ω゚)「………!!」
(;^^ω)『内藤…? ああ、やっと声が…』
(;゚ω゚)「お前……か?」
(;゚ω゚)「お前が……僕を、そうさせた…!!」
(;^^ω)『何…? 何を言って』
(#゚ω゚)「お前が僕を、人殺しにしたんだな!!?」
192
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:24:23 ID:DAgs3L120
(;^^ω)『…それは…』
(#゚ω゚)「何が…何が進化だ、何が神具だ! 何が太陽の管理者だ!!」
(#゚ω゚)「大層な言葉を並べて、人を狂わせるのがお前の、この剣の力か!!」
(;^^ω)『……落ち着け、パニックを起こすな』
(;^^ω)『気持ちはわかるが、今は』
(#゚ω゚)「気持ちだと!? お前に僕の何がわかるっていうんだ!」
(#゚ω゚)「大体気持ちが悪いんだよ、何なんだお前は!?」
(# ω )「お前のせいで僕は……ジョルジュさん……を、僕が…」
(#^^ω)『……待て、お前、それは違うぞ』
(# ω )「もういい、もう、やめてくれ」
(#^^ω)『あいつが願ったのは、その行為は、そんなことじゃないだろ!?』
(#゚ω゚)「うるさい…うるさい、うるさいうるさいんだよ…!!!」
(#^^ω)『ジョルジュは、お前をしん』
(#゚ω゚)「黙れ、黙れよ! この化物が!!!!!」
(#゚ω゚)「僕に話しかけるなああああああああああああああああ!!!!!」
193
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:24:57 ID:DAgs3L120
ザ
ばつん。
ザザ ザ
194
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:25:52 ID:DAgs3L120
(;´ω`)「――――あ…れ?」
気付けば、内藤は自分を支えきれずに横たわっていた。
何か、身体の、頭の奥底で、何かが千切れる様な感覚があった。
今は凄まじい脱力感に襲われ、全身に力が入らない。
なんとかして身を起こす。
人の体とは、こんなにも重たい物だったのだろうか。
手足が重い、腰に下げた鉄の塊は、本気で力をこめないと上がらない。
今まで、こんな重いものを振り回していたのかと、今更感心してしまう。
今、自分に起きていること、内藤はすぐに理解した。
先ほど自分でそう言ったのだから、当然の話だ。
与えられていた力を失い、本来の体力に戻っただけ。
要するに内藤は、管理者では無くなったのだ。
195
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:26:47 ID:DAgs3L120
頭に響く声もしない。
不思議と、何も感じなかった。
金属の擦れる音を鳴らしながら、足音が近づいてきても。
あれだけ騒いだのだ、当然誰かしら気付く者が居るのも必然。
そして抵抗する力は、存在しない。
待っているのは、死、だけだ。
当然の、結果だと。
ただ、ただ全てを諦めるように。
目の前に現れた人影を、ぼんやりと眺めていた。
196
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:27:53 ID:DAgs3L120
……………。
一つの検問所に一隻の陸船が通りがかった。
舵を握るのは初老の男、奥にはさらに二人同乗している。
このご時勢だ、どこで誰が何を企んでいるかもわからない。
精々水と食料が積まれているだけにしか見えない、ただの旅行者であっても、
お決まりの台詞として、木製の簡易的な門にたつ一人が、その船をひき止めた。
「この先に何の用だ?」
(´・_ゝ・`)「用って程じゃないが、順に国を巡っているところさ」
(´・_ゝ・`)「今の目的をしいて言うなら、エッダを目指したい」
(´・_ゝ・`)「あそこのヨジデーは良いものだからな」
「ふむ、だが残念ながら…今はエッダはもう、人が居ないと聞くぞ」
(´・_ゝ・`)「全ての集落がってわけじゃないだろう?」
「まあ、だがどちらにせよ……まだ、先日の争いの跡が残っている」
「すまないがこの先は危険だ、一介の旅人を通すわけにはいかない」
(´・_ゝ・`)「大丈夫だって、戦場は避ければいいんだろ?」
197
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:28:54 ID:DAgs3L120
多少ごねてみるが、門番の男は首をよこに振るばかり、
やがて諦めたのか、船は反転してその場を離れていく。
そして門が遠く小さくなった頃。
男は無精髭をなでながら小さく唸る。
イ从゚ ー゚ノi、「オイなんだデミのおっさん、諦めよすぎだろ」
そんな背中へ声をかけたのは、ローブ姿の子供だった。
やけに可愛らしい声色とは裏腹に、態度は大きく、ついには足で小突いている。
イ从゚ ー゚ノi、「また逆戻りとか、いつんなったら先に進めんだよ!」
(´・_ゝ・`)「いてぇな糞ガキ、しょうがねぇだろ」
イ从゚ ー゚ノi、「早くしねぇと腐っちまうぜ、なあ?」
悪態つきながら、少女はもう一人の同乗者へ声をかける。
汚れたマントを頭から被るその人物は、傍らの人が入れるほどの箱を見る。
「いや、もう血も抜かれてミイラ状態だから、それはたぶん大丈夫」
イ从;゚ ー゚ノi、「ほら、またなんか怖いこと言い出したし!!」
イ从゚ ー゚ノi、「てか、お前も急いでるんじゃねぇの?」
('A`)「そうだけど……」
('A`)「いや、デミタスさんにはここまでお世話になってるし、これ以上無茶は…」
198
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:29:58 ID:DAgs3L120
イ从゚ ー゚ノi、「あ? じゃあどうすんだよ?」
歩いてでも、そう言いかけるドクオだったが、
デミタスは二人の前までやってくると、大きな紙面を広げて見せた。
(´・_ゝ・`)「今いるのがここだ」
太い線で塗られた長い道、その一点を指して言った。
続けて指を向かわせるのは、道を外れた先、連なる山を表すマークの場所。
イ从;゚ ー゚ノi、「山越え!? マジで言ってんの!?」
(´・_ゝ・`)「いいや、この麓のところ」
('A`)「ここは?」
(´・_ゝ・`)「そこそこ大きな河がある、ここへ向かう」
(´・_ゝ・`)「ちょいと迂回することになるが、ここを抜ければあとは一本道だ」
イ从゚ ー゚ノi、「いや川なんかどうすんだよ?」
(´・_ゝ・`)「船がどういうもんかも知らねぇのか糞ガキ、少しは勉強しろ」
('A`)「そこまで…いいんですか?」
(´・_ゝ・`)「好いも悪いもねぇよ、行くのに必要なだけだろうが」
ドクオが乗っているこの船は、デミタスという旅人のものだ。
あれから、不思議なことに身体はどんどん全快していき、
怪我の痛みどころか、手足が今まで以上に軽くなり、
人を担いだままでも歩けるほどに回復した。
199
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:30:58 ID:DAgs3L120
ドクオは動かなくなった姿を破れた布で覆い隠し、
ついでにズタボロになった自分の衣服も捨て、マントを羽織ると、
皆のところへ帰るべく、遺体を背負いながら一路、街道を目指した。
歩き始めた当初は、行き先もわからないのにと不安になるが、
いざ進んでみればどの道も、景色も、見覚えがあった。
どう行けばいいのか、どこへ行けばいいのか、そういったものが頭にある。
奇妙な感覚だった。
そうして、不思議な記憶に導かれるように、先を急ぐ。
しかし、歩けど歩けど、遠い山にすら近づけない。
世界が広い、流石に息が切れて、ついにはその場で座り込んだ。
と、そんな時だ、一隻の船がやってきたのは。
船はドクオの横で停止すると、男が顔を覗かせる。
(´・_ゝ・`)「なんだ兄ちゃん、こんな何もないとこを一人で散歩かい?」
言いよどむドクオを、男は物色するように見据える。
ボロ切れに巻かれた妙な物を傍らに、薄汚れたマントを羽織る姿。
怪しいことこの上ないが、意外にもその男は、親指で自分の船を指す。
(´・_ゝ・`)「乗りな」
200
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:32:55 ID:DAgs3L120
(;'A`)「え、でも…」
(´・_ゝ・`)「あ? ああ、そうか、どこ行きてぇんだ?」
(;'A`)「とりあえず、エッダに」
(´・_ゝ・`)「ああ、この道に居るならそうなんだろうけどよ」
(´・_ゝ・`)「けどお前、今あそこ行っても何もねぇだろ?」
(;'A`)「何もない…? それ、どういう意味ですか?」
(´・_ゝ・`)「どうもこうも……今がどういう状況か、知らんのか?」
(;'A`)「……聞いても、いいですか?」
そうしてドクオは、今の自分が、そして他の仲間達が置かれた状況を知る。
暢気にしている場合じゃない、急いで合流しなければと思う。
思うが、荷物を抱えて、徒歩で行くにはあまりにも時間がかかる。
かといって、今の話を聞いてヒルトへ行きたいとも言えない、
口ごもるドクオだったが、男はそんな内心を見透かしたように言った。
(´・_ゝ・`)「じゃ、行き先はヒルトでいいんだな?」
(;'A`)「はい―――えっ!?」
201
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:34:43 ID:DAgs3L120
(´・_ゝ・`)「ほれ、とっとと行くぞ」
(;'A`)「ど、どうして? 今の話が本当なら…」
(´・_ゝ・`)「別に、他所の国がどこで戦争してようが、俺には関係のない話だ」
(´・_ゝ・`)「そよれり、ここで無視したらお前さん、野垂れ死にそうじゃねぇか」
(´・_ゝ・`)「そうなったら、なんか俺のせいみてぇで、寝覚めが悪いんだよ」
(´・_ゝ・`)「どうせ風任せの旅だ、送るだけしてやるから、後は好きにしろ」
(;'A`)「……はあ、えと、それじゃあ……はい、お願いします」
(´・_ゝ・`)「ああ、それと……その横の、そいつは……なんだ、家族か?」
問われて思う、その関係性とは。
助けられ、裏切られ、憎んで、傷つけあい、そして――――命を救われた。
今では自分がどう思っているのか、それもわからなくなってしまった。
歪な関係だ。
しかし今のこの瞬間だけを切り取ったなら、それを言葉にしたならば。
('A`)「……恩人、だと思います」
202
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:35:23 ID:DAgs3L120
(´・_ゝ・`)「そうかい」
(´・_ゝ・`)「まあ、このご時勢だ、人の命も自然と軽くなる、容易く消えちまう」
男はどこか遠くを見るように、何かを思い出すように口にした。
しかしすぐに意識を戻し、ふたたびドクオと、横の物体を見やる。
(´・_ゝ・`)「とにかく野ざらしは色々とよくねぇ、ちょうどいい箱があるから棺桶代わりに使え」
('A`)「すみません、なんか」
(´・_ゝ・`)「どうせやかましい先客も居るからな、今更増えたとこで変わらねぇさ」
('A`)「先客…? 他にも誰か?」
船に足を踏み入れ、テント状の幕に覆われた奥を見る。
たしかに、そこには大の字で横になる姿があった。
見るからに小さい、身なりも同じようなローブを羽織った子供だ。
少し近づいてみる、容姿こそとても可愛らしいものだったが。
「んあー……くそっ、が……」
しかし丸出しのお腹を今もボリボリとかき、とても口の悪い寝言を呟き、
いびきを掻きながら寝ている姿は、おっさんにしか見えなかった。
(;'A`)「……えーと、お子さんで?」
(´・_ゝ・`)「いいや、知らんガキだ、いつの間にか居ついちまった」
203
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:36:47 ID:DAgs3L120
(´・_ゝ・`)「起きろ、邪魔だ」
イ从;゚ ー゚ノi、「うおっ!? いってーなぁ! 何しやがる!?」
(´・_ゝ・`)「寝たけりゃせめてもっと隅にしろ、荷物取るのに邪魔だろうが」
イ从゚ ー゚ノi、「はあ? 何をいきなり……」
イ从゚ ー゚ノi、「あれ、なんだ? 誰だ兄ちゃん?」
イ从;゚ ー゚ノi、「つーか、うしろの……うわっ!? 死体!?」
そんなこんなで、ドクオは彼、デミタスの船に同乗させてもらう事になった。
何にせよ、これで合流できると安心するのも束の間、
今度は街道が閉鎖されているため、どこも通ることができないという事態に陥った。
しかし、これは先に話したとおり、迂回路を通ることで解決を見る。
広大で緩やかに流れる川を、船が本来の役目をまっとうし、帆を張り上っていく。
しばらく進んでから上陸すると、林を抜け、再び街道へ出た。
先には真っ白い山が、先端に雲を被せている。
更に進めば冷えた空気が流れてきて、その場所が近づいている事を教えていた。
そういえば、この服装ではとても不味いと思ったが、
デミタスは荷物の中から厚手の服を用意してくれた。
どうやら、このヒルトには何度も訪れているらしい。
204
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:38:27 ID:DAgs3L120
そして夕暮れを過ぎて暗くなった頃、軽めの食事を済ませ、
テント内にこもって明かりを囲む、外はやけに静かだ、
覗けばすでに雪が積もり始めていた、このままなら夜明け前には到着できる。
イ从;゚ д゚ノi、「うおお……さ、ささ、さみぃ……!!」
(´・_ゝ・`)「我慢しろ」
ドクオはふと思いついて、荷物の中からある物を取り出す。
刀身が半分以上失われた、波打つ刃の赤い剣だ。
(´・_ゝ・`)「……………」
イ从゚ ー゚ノi、「それ、まだ持ってんの? んな折れたもん使いもんに……」
('A`)「いや、大丈夫」
言って、念じる。
力と思いを込めて、灯れと。
すぐに赤い剣はうっすらと輝きを放ち、陽炎のような揺らぎをつくる。
テント内を薄明かりが照らすと、同時に熱が空間を満たしていく。
イ从;゚ ー゚ノi、「は? あったかくなった…? え、なんじゃそりゃ!?」
イ从;゚ ー゚ノi、「なにそれ!? なにそれすげぇ! 欲しい!!」
(´・_ゝ・`)「火珠の剣か、ヒルトじゃよく見るもんだな」
イ从;゚ ー゚ノi、「そうなんか、へー」
205
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:39:32 ID:DAgs3L120
こうして暖かな空気に包まれたテント内は、穏やかな時間に包まれる。
少女は眠気に襲われたのか、重そうな瞼をやがて閉ざし、寝息を立てた。
滑車と、船底のソリ部分だけが音を立てる。
ドクオは剣の輝きをぼんやりと眺めていた。
すぐ側で、地図をめくる音がした。
('A`)「……デミタスさん」
ヒルトにもうすぐ到着する。
その前に、尋ねておかなければいけない事があった。
これまで聞くに聞けなかったこと、この、今を作る理由。
('A`)「どうして……俺を乗せてくれたんですか?」
(´・_ゝ・`)「……言ったろ、寝覚めが悪いって」
('A`)「………」
(´・_ゝ・`)「ふぅ……ああ、そうだ、もういっこある」
(´・_ゝ・`)「お前が今持ってる、その剣……俺が聞いた代物に、よく似てたからだ」
(;'A`)(まさか……)
この人が、果たしていつから、どこからこうして旅を始めたのか分からない。
だけどもしかしたらと、そう思っていた。
206
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:40:20 ID:DAgs3L120
そして今、この剣を知るなら、それは、もしかしたら。
VIPの、と言い掛けて、男の口からは違う言葉が放たれた。
(´・_ゝ・`)「俺は、アース国の人間だった」
ドクオは息を飲んだ、その名は、確かに聞かされてはいた、
けれど今はそれ以上に、実感として、記憶として、覚えている。
ギコと、フサギコが戦い、そして滅ぼしたという国。
民も領土もVIPが物とした、敗戦国。
(´・_ゝ・`)「祖国を滅ぼす原因を作ったとされる、炎の風、破壊の剣」
(´・_ゝ・`)「炎を操り、燃えるように赤く、波打つ刀身をもつ片刃の剣」
(´・_ゝ・`)「よく似ていると思わないか?」
('A`)「……」
ぼ、と赤い輝きだけを見せていた剣から、小さな炎が溢れる。
まるで心の惑いを、そのまま表現するかのように。
(´・_ゝ・`)「何故そんなことを知っているかというとな」
(´・_ゝ・`)「俺の弟が、その国の兵達を纏める存在だったからだ」
(´・_ゝ・`)「俺と違って出来の良い奴でな、王からの覚えもよく、おかげで良い暮らしもさせてくれたよ」
(´・_ゝ・`)「だからずっと思っていた」
(´・_ゝ・`)「あいつを殺した破壊の管理者を、この手で殺してやりたいと、ずぅっとだ…!!」
207
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:43:39 ID:DAgs3L120
デミタスはそう言って、ドクオを睨み付けたまま動かない。
表情にも変化は見られない、真顔で、まっすぐに見据えている。
今までの自分なら、きっと恐怖で固まって、何も言えなかった。
だけど今は、たくさんの心が、勇気と、この状況の意図を伝えてくれていた。
だから一度目を閉じて、ドクオはふと笑みすら浮かべ。
('A`)「…立派な、人でした」
(´・_ゝ・`)「何?」
('A`)「敵ながら尊敬できる、堂々とした、とても強い人でした」
('A`)「そして……まだ、何もわかっていないあの人に、戦うことの意味を」
('A`)「その痛みを、教えてくれた人でした」
('A`)「ミルナさん、その名は、決して忘れません」
(;´・_ゝ・`)「お前…なぜ、その名を……」
そう言ったドクオの姿に、デミタスは驚きに固まった。
しばしの間があって、今度は表情をくずし、大声で笑い始めた。
(´・_ゝ・`)「ははは!! こりゃ参った、まさかそう返されるとはなぁ!!」
(´・_ゝ・`)「驚かすつもりがこっちが驚かされたわ!! くく、はははは!!!」
208
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:44:52 ID:DAgs3L120
('A`)(ああ、やっぱり……試されていたのか)
(´・_ゝ・`)「強かった、か……そうか、破壊の管理者が、そうまで言うほどに立派だったか」
('A`)「ええ、管理者にしか、止められない手合いでした」
(´・_ゝ・`)「そうか、ならば奴も、きっとそうは悔やまずに逝けたのだろうな……」
(;´・_ゝ・`)「て、ちょっと待て、何でお前がそんなの知ってるんだ?」
(;´・_ゝ・`)「見たとこそう年もとってねぇだろ? 」
(;'A`)「ええと……色々と事情がありまして…」
ドクオは、これまでの経緯と、VIPに纏わる全てを、できる限り説明をした。
あの戦争において隠されていた真実を、そして今それを自分が知る理由を。
(´・_ゝ・`)「そうか……本当の管理者は、終結時にはすでに…」
(´・_ゝ・`)「………」
(´・_ゝ・`)「国があんな事になっちまって、それが原因で家族もみな居なくなっちまった」
(´・_ゝ・`)「上が勝手に始めた事とは言え、そもそもこっちから仕掛けた戦争だ」
(´・_ゝ・`)「これでVIPを恨むのは……まあ、ちぃと筋が違うわな」
209
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:47:21 ID:DAgs3L120
(´・_ゝ・`)「ああ、俺が根無し草になったのも、それが嫌になっちまったのさ」
(´・_ゝ・`)「恨みは……まあ、無かったとは言わねぇ、例の管理者の名はよく聞いたし、この手でとも本気で考えた」
(´・_ゝ・`)「だがな、結局は……どんな恨みも、憎しみも……それを思い続けなければ消えてしまう」
(´・_ゝ・`)「あれから、いくつもの国を渡った、数え切れないほど人に出会ってきた」
(´・_ゝ・`)「良い奴も、悪い奴も居た、腹がたってしょうがない奴も居た」
(´・_ゝ・`)「でもな、その全て、誰とだって会話ができたんだ」
(´・_ゝ・`)「当たり前のことだけどな、今こうしているように、どこの誰かもわからん奴等でも寝食共にできる」
(´・_ゝ・`)「そういう連中と会う度に、そういう連中と過ごす度に、そんな時間まで、憎しみを思い続けられやしなかった」
(´・_ゝ・`)「良くも悪くも、だがな、きっとそれはどんな思いもそうだ」
(´・_ゝ・`)「俺には世界がどうとか、今更興味もないが、お前は今何か、理由があってあの場へ行きたいんだろう?」
210
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:49:46 ID:DAgs3L120
(´・_ゝ・`)「ああ、それなら言うまでも無いだろうが、想う事をやめない事だ」
(´・_ゝ・`)「思い続ける限り、想いは消えない、それが今居る誰かの為なら決してな」
(´・_ゝ・`)「……ん、お前を拾った理由を聞いてない?」
(´・_ゝ・`)「ただ、聞いてみたかったのさ、弟のこと、ミルナのことを」
(´・_ゝ・`)「………ありがとな」
陸船が行く。
雪上に三つの跡を作りながら、どこまでも線を伸ばしていく。
その先には、いつしか小さな灯りが見え始める。
巨大な渓谷と、その上に聳え立つ天空都市。
やがて船はその場所へ、ヒルトの国へとたどり着いた。
211
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:51:28 ID:DAgs3L120
…………。
時は遡り。
ロマネスクの居城、岩山に造られた城砦の内部。
震えながら座り込む内藤の前に、一つの影が現れた。
その男は肩で息をしながら、内藤を見据え、笑みを浮かべて言った。
( ><)「やっと、見つけたんです……」
男が手を伸ばす、殺されると察した内藤は目を閉じる、
だが、両肩を掴まれる感触にふと前を見れば、男が頭を下げていた。
(;´ω`)「…え?」
( ><)「ありがとう、君のおかげで…ようやく自由になれた!」
( ´ω`)「なに……言って」
( ><)「君が倒してくれたあの変態……ワカッテマス、僕はあいつに脅されていたんだ」
212
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:52:20 ID:DAgs3L120
( ><)「でも、こうなればもうこんな所に居る必要もない」
( ><)「だから今度は僕が君を助ける、さあ、こっちへ…!」
だけど、そう言いかける内藤だったが、引かれる力に一切抵抗できない。
引き摺られるようにして、内藤は隠れていた空間から廊下へ。
人気は今のところ見当たらない。
ここはかなり入り組んだ、その先のようだった。
無意識にでも、安全と思われる場所へと逃げていたのかと思ったが。
( ><)「違う塔で見かけたって誘導もしてきた、だから今の内です」
どうやら彼は、本気で内藤を助けようとしているようだった。
助かるのかと期待している自分に、足を止めたい衝動にかられるが、
それ以上に今は力が入らない、内藤は引かれるまま、さらに進んでいく。
( ><)「よし、この先だ……」
(;´ω`)「………はぁ、はぁ…」
( ><)「…実は、助ける代わりにと言ったら何ですが、頼みがあるんです」
( ><)「僕はここに、大切な子を幽閉されていたんです」
( ><)「あいつは、あの変態はそれを理由に僕を脅していた……」
( ><)「だから、君にその子を任せたいんです、守ってあげてほしいんです」
213
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:54:59 ID:DAgs3L120
大切な存在を、守って欲しいと、男はそう嘆願する。
しかし内藤は冷め切った心でそれを否定した。
( ´ω`)「無理だお」
(;><)「え?」
( ´ω`)「それが……大切なら、僕には無理だお」
( ´ω`)「大事なものは、僕には守れない……無理、なんだお」
(;><)「そんな…そんなことはない、だって君は、あれだけの力を…!!」
( ´ω`)「無い、力なんて無い、できない、無理なんだお…」
(;><)「何故そんな………いや、それでも…!」
男は再び手を引いて、その部屋の奥へと進む。
いくつもの木柵が並ぶ、妙な匂いが充満する空間だった。
( ><)「ぽっぽちゃん…!! 助けに来たんです!!」
その先に、それは居た。
一目には巨大な黒い塊が、動いたように見えた。
しかし薄明かりの中、立ち上がった姿はよく見覚えのあるものだった。
214
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:55:43 ID:DAgs3L120
(*'ω' *)「ぽヒヒヒーーン、ブルル…」
(;゚ω゚)「う、馬…!?」
( ><)「そう、馬の、ぽっぽちゃんです」
( ><)「この子は……特別な馬なんです、決して死なせたくない…」
( ><)「死なせちゃいけない子なんです!」
黒い体毛に、赤茶色のたてがみとしっぽが映える、
大きな、身の丈を軽くこえるような馬だった。
男が近づくと、馬は頬を摺り寄せ甘えたような声を発する。
( ><)「待たせてごめんよ、今自由にしてあげるから…!」
(*'ω' *)「ぽっぽ」
( ><)「そしてぽっぽちゃん……彼と一緒に、先にここを出てほしいんです」
(*'ω' *)「ぽひん?」
( ><)「まだ、追手をもう少し誤魔化さないといけない、まだ僕は行けない」
( ><)「だから、さあ、君も一緒に…!」
( ´ω`)「いや、だから僕は……」
ぽっぽと呼ばれた馬が、内藤の前でしゃがみこんだ。
まるで、本当に彼の言葉を理解しているような動きだった。
215
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:56:42 ID:DAgs3L120
(*'ω' *)「ぽぽ!!」
そして乗れ、と言わんばかりに嘶く。
内藤は促されるまま、その背にしがみついた。
上からはシーツのような物が被せられる。
( ´ω`)(どうして…)
カツ、と立ち上がった馬はすぐさま歩き出す。
ちょうどその先には、出口があって、荒野がどこまでも続いている。
人の気配が、いつしかすぐ近くに来ている。
(;><)「さ、さあぽっぽちゃん、早く!」
(;*'ω' *)「ぽっ……ぽひぃん」
馬が振り返りながら男を見る。
何度かそんな動作を繰り返してから、やがて意を決したように地を蹴った。
風が、景色がものすごい速度で流れていく、蹄が地面を叩く音が響く。
しばらく駆け抜けると、被っていたシーツが外れ視界が開ける。
背に揺られながら振り向けば、
あの要塞は、とうに小さくなっていた。
216
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:57:31 ID:DAgs3L120
( ´ω`)「………」
生きている。
生き延びた。
死ななかった。
助かった。
助けられた。
助けを求める手を、振り払っておきながら。
( ゚ω゚)「………!!」
こうして救われた事に、命があることに、安堵している。
どこまでも、どこまでも最低な、自分がそこに居た。
217
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 21:58:34 ID:DAgs3L120
何も守れず。
人を裏切り。
人を傷つけ。
何も成せず。
力も失くし。
信じた願いも虚。
帰る場所も無い。
そして最後には。
誰かを助けたいという意思すら投げ捨てた。
死ねないでいるだけの、無為な存在がここに居る。
全て、本当に何もかも、失くしてしまった。
その大きな背に揺られながら、内藤は絶望感に身を委ねるように、やがて目を閉じた。
つづく。
218
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 22:00:13 ID:s7KTsW/U0
ちんぽっぽが馬とはこれいかに
219
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 22:03:07 ID:s7KTsW/U0
おつ
ドクオとブーンは次で合流かな
220
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 22:03:34 ID:DAgs3L120
ブーンを虐めるだけのお話はこれでおわり、次回でなんたらかんたら。
ドクオはあらゆる過去を紡いで歩いていく、いやあ実に主人公だなー。
ちなみに分かり辛いけど時間軸は大きく、大きく? 割とずれてます、同時ではないです。
次回は10話「ありがとうのかわりに」
帰ってきたドクオとブーンのお話、タイトル回収するお話。
そしてまた明日。
221
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 22:14:56 ID:kfyKYIGs0
乙!
芸さんのところに投下報告した方がいいかね
222
:
名無しさん
:2018/07/11(水) 23:52:37 ID:tRaYS1lU0
乙
223
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 08:37:09 ID:K6h.fAtA0
乙 読み直す
224
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:30:30 ID:vp.cEk020
10ヶ「ありがとうのかわりに」
空も明るくなり始めた夜明け前。
降り続いた雪がようやくやんで、晴れ間がのぞいてきた。
同時にふもとからの船がやってきて、そこにはドクオの姿があった。
(´・_ゝ・`)「さて、巻き込まれる前に逃げるとすっかね」
('A`)「ありがとうございました、また、どこかで」
イ从゚ ー゚ノi、「じゃぁーな! もう迷子になんなよ!?」
(´・_ゝ・`)「糞ガキ、おめぇはここで降りてもいいんだぞ」
イ从゚ ー゚ノi、「寒いからやだ」
こうしてお世話になった陸船に別れを告げ、街を行く。
もっと活気があると思っていたが、どうにも人が見当たらない。
225
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:31:03 ID:vp.cEk020
(;'A`)「みんな、どこに居るんだろ……あっちの、でかい城みたい方かな」
通りは屋台跡のような物こそあれど、どれも閉まってる。
ときおり見かける人も、そそくさと家の中へ入っていくばかり。
朝早くとはいえ、こんなものだろうか。
不安になりながら進んでいくと、やがて開けた場所に出た。
そこに人だかりができている、近づくと、そこに見知った姿を見る。
从;゚∀从「え……は!? うそ、お前…!? ドクオか!?」
(;'A`)「よかった…やっと見つけた」
/ ,' 3 「おお、本当に無事じゃったのか…!」
('A`)「ええ、なんとか……助けられまして」
从;゚∀从「てかお前、ここに居るんじゃ……そうか、すれ違っちゃったか」
(;'A`)「え、どういう……そうだ、他の皆は?」
从;゚∀从「ああ……皆、開戦の準備にって麓へ集まってるぜ」
('A`)「そっか……遅かったのか、なら俺も……」
言いかけて、ふと気付く。
226
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:31:36 ID:vp.cEk020
(;'A`)「あれ、クーは…?」
从 ゚∀从「ああ、クーなら……てか、そうだ、まず話しておく事があるんだ」
聞けば最後の戦い、最終目的を果たすための準備は整っており、
クーはその要として共に向かっている、ということ。
ジョルジュの事だけじゃない、沢山の犠牲があったこと。
そして、内藤のこと。
一度はまた行方不明になったが、すぐに麓の集落で発見され、
ここまで運び込まれてきたらしい、それも、憔悴しきった様子で。
今は宿に閉じこもったまま、以前とは見る影もない状態だそうだ。
そうなった発端は、ジョルジュさんの事だろうと言っていた。
けれどその先に、何があったのかは分からない。
ただ、まるで、死を待っているようだと、誰かが言った。
('A`)「……」
从 ゚∀从「夜明けが来たら、麓の連中はきっと出発しちまうと思う」
从 ゚∀从「合流するなら、もうすぐにでも向かった方がいい」
从 ゚∀从「………だけど、できれば、その前に…あいつを」
从 ゚∀从「……何か、内藤に、お前からも言ってやってくれないか?」
从 ゚∀从「皆、何とかしてやろうとしたんだよ、だけど……駄目だった」
227
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:32:45 ID:vp.cEk020
恐らくは自分のした事の重さに、潰れてしまったのだろう。
ドクオには、その気持ちが理解できた、同じ事をした覚えがある。
他の誰が許しても、自分がそれを許せない。
何よりも自分が、憎くて仕方ない。
从 ゚∀从「……でもお前なら、友達の言葉なら、もしかしたら」
('A`)「……いや、きっと、無理だと思う」
友達の言葉、じゃ、きっと届かない。
もしも届くものがあるなら、それは失くした存在からの言葉だけ。
でもそんなのは、不可能だ。
運よく、しかしそれでも数多の犠牲の上で自分は叶ったが、
そんな真似は本来、どうあってもできやしない。
だから届くのは、自分自身の言葉だけ。
自分がそれを許し、あるいは理由にできなければ意味が無い。
ただ。
それに、自分に近い言葉なら、あるいは違うのかもしれない。
('A`)「でも、行ってみるよ、俺も話したいことがあるから」
228
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:33:10 ID:vp.cEk020
…………。
<_フ ー )フ『お前を助けてくれたんだろ』
誰かがそう言った。
わかっている、だけどそれは行動の結果だけを見たものだ。
何の悔いもなかったと言うのだろうか、苦しまなかったと言うのだろうか。
それはない、それはなかった。
謝りながら、悔やみながら行ってしまった。
それに助けられたなら、言わなければいけなかった。
なのにそれすら、自分はできなかった、何も何も何も何も伝えられなかった。
謝罪も感謝も何も、お別れすらも告げられず。
それは、もはや殺したのと何が違うのか。
そうなるまで、追い詰めたのは自分だ。
内藤という人間が、彼を死なせたのだ。
助けたなんて綺麗な言葉で取り繕ってもこれだけは変わらない。
229
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:34:38 ID:vp.cEk020
ζ( 、 *ζ『どうして……そんな、酷いことを…!』
そうして謝罪を告げた時、彼女に頬を打たれた。
目に涙を溜めて、初めて見る、恨みを込めた視線で。
様、と呼ばれる事を望んでいたわけじゃないけれど、
ブーンと呼んだことで、大きな亀裂ができたのを思い知らされた。
攻められることでせめて安心する、なんて事はなく。
ただただ、痛みだけが増していく。
叩かれた跡も、その言葉も、頬を伝う涙さえ。
ほかに何も言える事が無くて、もう一度謝罪を告げた。
罵声と共に、彼女は背を向けて去っていった。
その姿にさえ、何も言う事ができなかった。
追いかけることさえしなかった。
230
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:35:22 ID:vp.cEk020
(´ ω `)『僕は、君のことなんか信用しちゃいない、今も"昔"も』
決別の言葉は、思ったよりもすぐに受け入れることができた。
それとも、もう何も感じなくなってしまったのだろうか。
ほどなくして、宿の一室に放り込まれた。
一晩を灯りをつけずにそのまま過ごす。
闇夜の中に溶けて消えてしまいたいけれど、
目が慣れたその空間は、むしろ輪郭を浮かび上がらせる。
自分がここに居るということを、より強く教えてくる。
そうして、どれほどの時間が過ぎただろう。
廊下に足音、そして小さくノックが響く。
続いて聞こえてきた声に、戸惑った。
聞き覚えがある、聞き間違いか、あるいは夢でも見ていたのか。
('A`)「ブーン、居るか?」
231
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:36:59 ID:vp.cEk020
(; ω )「ど…ドク…オ…なの、かお?」
(; ω )「まさか、本物……生きて…?」
('A`)「ああ、なんとか無事、帰ってこれたよ」
(; ω )「そんな………ああ」
( ω )「よかった……本当に…よかった」
('A`)「んで、まあ……大体のことは聞いたよ」
('A`)「ジョルジュさんの事も………きつい、よな」
扉の向こうで、ドクオが何か言いよどんでいる。
彼はとても優しい人間だから、攻めたりはしない、できないだろう。
生きていてくれたのは嬉しく思う、だけど今は、放っておいてほしい。
慰めは、いらないのだと、身構えていた内藤だったが。
続く言葉はまるで違うものだった。
('A`)「………まさか、俺と同じ事してるとは思わなかったよ」
('A`)「ごめんな、ちょっとだけ、ほっとしちまった」
232
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:39:25 ID:vp.cEk020
( ω )「………?」
('A`)「俺ら二人揃って、何やってるんだろうな……」
( ω )「…………なに、を」
('A`)「………なあ、聞いてくれよ……」
( ω )「……」
掠れ気味の喉から発せられる言葉が、静かな空間に小さく響く。
それはもはや、内藤に対して語るものというよりは、独白。
説得どころか自ら許しを請うような、そんな悲痛さをも含んでいた。
('A`)「俺のせいで…また、一人、優しい人が死んだよ」
('A`)「……俺が、死なせたんだ」
('A`)「俺なんかよりよほど苦しんで、助けを求めていたくせに」
('A`)「それなのに、俺を助けるために、傷ついて、苦しんで、死んでいった」
('A`)「その人はさ、酷いことをしたんだ、誰が聞いても、誰が見ても、悪いことをした」
('A`)「俺もその人を恨んだ、恨んで……憎んで、この手で、と……思ってた」
('A`)「悪者には、当然の報いがあるべきだって……そう信じていたよ」
233
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:41:15 ID:vp.cEk020
('A`)「だけど、この世には……どうやら悪者っていう概念は存在しないみたいでさ」
誰も彼もを救う正義のヒーローが居ないように。
誰も彼もが認める、やっつけられる悪者も、この世には存在していない。
優しいことも、正しいことも、悪いことも、悲しいことも、その全てに意味が、理由がある。
一つの目だけでは、決してその答えは出せないのだと。
('A`)「…もう、その人がどうなるべきだったのか…わからないんだ」
('A`)「だってさ、意味わかんないくらい、酷い目にあってたんだよ、とっくに…」
今も、覚えている。
孤独感も、恐怖も、そして………後悔も。
今すぐに自分を殺したいけど、その前にやるべき事があるからまだ生きる。
はやく ころしてしまいたい
らくに なりたい
そんな事を思いながら生きる時間は、今も思い出すたび泣きそうになる。
234
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:44:35 ID:vp.cEk020
そんな独白を聞きながら、ぼんやりと扉を眺めていた内藤は。
続く言葉に、胸を痛め、息を飲んだ。
('A`)「……ごめん、て言われたよ…」
('A`)「俺を助けておいて……ごめんだって」
('A`)「俺はまだ、ありがとうも言っていないのに…」
('A`)「……また守れなかった」
('A`)「……俺は、また、見殺しに……した」
('A`)「その人が、どれほど苦しんだのか……知ってしまったのに」
('A`)「何も……何もしてあげられなかった……」
('A`)「………俺は……悔しいよ……何も返せない事が、こんなにも辛くてしょうがない」
( ω )(………ああ)
( ω )(わか…る……お)
その悔しさも、後悔も、ごめんという言葉の痛みも、よく知っている。
だからその悔しさを力に変えようとした、でも駄目だった。
から回りしただけ、何も報いることができなかった。
235
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:47:23 ID:vp.cEk020
そしてついには全部こぼれ落ちてしまった、もう何も残っていない。
だから駄目だと、それでは駄目だったのだと内藤は目を伏せるが、言葉は尚も続く。
でも、と続く。
('A`)「最後にごめんって言ったのは、きっと『これまで』の全てにじゃない」
('A`)「『これから』を、共に進めない事に対して」
('A`)「そしてそれは俺たちの―――――『これから』を信じてくれているから、ごめんなんだ」
ふと、内藤は伏せていた顔を正面に向けた。
陰りに曇った瞳に、差し込む光が少しだけ映りこむ。
それは、夜明けの始まりを示すものだった。
(―――信じてるからさ)
( ω )「……これ……から……?」
236
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:49:27 ID:vp.cEk020
伝えてくれと言った、その言葉を、今になってようやく、飲み込んだ。
最後の最後に残したのは、願いや希望じゃなく。
頼みでも、託すでも、懇願でもなく。
ただ、何も不安はないとでも言うような。
そんな一言だった。
果たして彼は何を信じたのか?
内藤のことを?
内藤の何を?
これから。
その―――先(理想)を。
( ω )「………」
( ω )「………僕を、僕なんかを……信じて、くれたのかお」
( ω )「一緒に、歩けなくて、ごめん、て……そう…言ってくれたのかお」
237
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:51:59 ID:vp.cEk020
みんなと共に、歩いていく未来を。
けれど、今更だ。
どこに信じられる要素があるというのか。
誰が信じてくれるというのか。
今も立ち止まったままの自分を。
何もかもを失った、今の自分を。
それでも―――――。
('A`)「俺も、お前のこと信じてるから」
('A`)「だから今は先に行くよ、何をどれだけ失っても、消えないものがあるから」
('A`)「心が知ってる、言葉にすれば簡単でちっぽけな理由、『それでも』」
('A`)「俺たちが出会ったこの――"絆"は、何がどうなっても、無くなったり、しないんだから」
238
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:53:26 ID:vp.cEk020
( ω )(――――――………)
いつだってそう、一人で成し得たものなんてなかった。
積み上げたきた、誰かと。
紡いできたのだ、誰かと。
歩いてきたのだ、誰かと。
自分だけじゃない、みんなと、ここまで来たんだ。
それこそが―――――。
( ;ω;)(………ああ、あああ………)
( ;ω;)(……ジョルジュ…さん………僕は……許されても…いいんですか)
239
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:54:43 ID:vp.cEk020
( ;ω;)(みんなと、生きていく道を……選んでも、いいですか)
( ;ω;)(もう一度……その先を、目指しても、いいんですか)
( ;ω;)(まだ…………信じて……くれますか?)
朝陽が昇っていく。
窓から差し込んだ光に、舞う埃が反射して、まるで神聖な何かが光臨するよう。
そんな光が広がって、いつしか壁にかけられた剣に届いた。
黄金の装飾がされた、綺麗な柄の部分に反射して、きらりと眩しく。
ゆっくりと、内藤は手を触れた。
握り締めると、馴染んだ感触がした。
吐き気は、もうしなかった。
240
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:55:37 ID:vp.cEk020
( ω )「………瀬川」
( ^^ω)『………ああ』
( ω )「…………ごめん、瀬川……僕が、バカだったんだお」
( ^^ω)『……いいのか? また、繰り返すことになるかもしれんぞ』
( ^^ω)『奴の言うとおりだ、俺は……いや、この剣は、壊れている』
( ω )「それでも……」
( ^^ω)『今度こそ……次は無いかもしれんぞ』
( ω )「それでも、あの人が信じてくれた僕には、必要なんだ…!」
( ^ω^)「だから僕はお前を、この剣を信じるお、今度こそ……もう、間違えない」
剣を抜き放てば、相変わらずみすぼらしい外見の刀身が現れるが、
すぐに陽の光を浴びて、輝くような白銀の姿へと変わる。
同時に、脱力感が消え、力が漲ってくるのを内藤は感じた。
241
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:57:00 ID:vp.cEk020
( ^ω^)「これが、きっと最後だから」
( ^^ω)『わかった……なら、その前に一つ』
( ^^ω)『お前に、言っておかなければならない事がある』
( ^^ω)『内藤……お前は』
『この剣の管理者ではない』
……………。
242
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:57:38 ID:vp.cEk020
从;゚∀从「ぐぬぬ……」
( ^ω^)「この人、あんな声出すんだって目で見られてたお」
(;'A`)「あんなに驚かなくても……」
从;゚∀从「うっさいなー、知らずにあんなの見たら誰だってなー」
細長い、人が入るほど、どいうか入っている箱を運ぶ三人。
先ほど合流した際、ハインは中を覗いて濁点のつかない悲鳴をあげた。
付近のお仲間と思わしき白衣の人たちは、そんな様子にぎょっとしていた。
そうしてやってきたのは、街外れにある丘の上。
開けたその場所には、乱雑に石が並んでいたり、
石柱だったり石造だったりと、とにかく纏まりがないが、
どれも名前が彫られ、いくつもの枯れた花が見える。
その一角に、座り込む姿があった。
(;^ω^)「あ」
ひとまず箱をその場に置くと、内藤は二人に背を押されて前に出る。
最後に会った時は、なかなかに酷い別れ方をしてしまった。
なんて声をかけたらいいのか、戸惑いながらも近づいていく。
243
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 19:59:02 ID:vp.cEk020
(;^ω^)「デレ……その、隣、いいかお」
ζ(゚、゚*ζ「……どうぞ」
屈んで手を合わせる、その先には名が彫られた石碑がある。
チクリと痛みが走るが、目を閉じ今度は本当に祈った。
ζ(゚、゚*ζ「………私が、あなたに言ったのは」
ζ(゚、゚*ζ「ブーンに、怒ったのは……」
ζ(゚、゚*ζ「まるで……お兄ちゃんが、間違ってるみたいに、言ったからですよ」
( ^ω^)「………」
ζ(゚、゚*ζ「苦しみながら、悔やみながら、そう言いましたけど」
ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃんの……表情、安心して、寝てるみたいでした」
ζ(゚、゚*ζ「それなのに……まるで、余計な事をされたように」
ζ(゚、゚*ζ「そして、その行為を……本当に、無意味な物にしようとした」
ζ(゚、゚*ζ「私はそれが………許せなかったんです」
( ω )(……ああ、そうか……)
244
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:01:17 ID:vp.cEk020
ζ(゚、゚*ζ「お兄ちゃんの事を……私は、信じたいんです、今度こそ」
ζ(゚ー゚*ζ「だからお願いします、その行為に、その心に、意味があったんだって」
ζ(゚ー゚*ζ「こうして祈る事しかできない私に、教えてください」
ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃんのした事は、成すべきを成した、立派な行為だって」
( ω )(………本当に、僕は、何も見えてなかったんだな)
いつしか向き合っていた二人、内藤は深く頷いて。
( ^ω^)「約束する、証明してみせる……これだけは、違えない」
ζ(゚ー゚*ζ「…はい!」
もう一度、見失いかけたユメを追いかける決意をした。
これは強制じゃない、使命でもない、ただ、そうしたいから、
もう、英雄になる資格はなくても、それでも、こんな自分を見守ってくれるすべてのために。
みんなの、力になりたい。
空を見る、晴れやかな青空に雲が流れていく。
もう一度、誰にともなく頷いて。
245
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:03:09 ID:vp.cEk020
( ^ω^)「よし…行こうドクオ」
('A`)「おう!」
从;゚∀从「あ、いや……盛り上がってるとこ悪いんだけどさ……」
(;^ω^)「え?なに?」
从;゚∀从「実はその……移動、手段が……だな?」
从;゚∀从「雪風つくるのに珠も大量につかっちゃって、今ある陸船は全部……」
(;'A`)「…走れるのが無い、と?」
从;゚∀从「お、おう……」
(;^ω^)「じゃあ、今すぐ行かなきゃ!」
(;'A`)「ても、どうすんだ!?」
(;^ω^)「走っていくしかないでしょ!」
(;'A`)「マジか…」
(;^ω^)「とにかく、麓まで行けば……」
从;゚∀从「いやいや! 無理だって! 言ったろ、今回は陸船で強襲するって」
从;゚∀从「ほぼ全員で乗り込んで、拠点まで一点突破だ、走っても追いつけねぇよ!?」
246
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:05:00 ID:vp.cEk020
ζ(゚ー゚;ζ「そ、そんな……じゃあ、今こんなところに来てる場合じゃ」
从;゚∀从「いや、だって、まさか行く流れになるなんて思わなくて……」
ζ(゚ー゚;ζ「……? て、あれは何!?」
从;゚∀从「何だ今度は?」
ζ(゚ー゚;ζ「あそこ、今、木の間に何か大きいのが通り過ぎて…!」
从;゚∀从「は? どこに……うわ!?」
デレが指差す先、そこには確かに、何か大きな生き物が蠢いていた。
それはこちらを見つけるなり、地を蹴って向かってくる。
二人は悲鳴を上げ、見覚えのある姿にもう二人はあ、と驚いた。
(*'ω' *)「ぽひひひぃーーーん!!」
(;^ω^)「ぽっぽちゃん!?」
(;'A`)「馬!? しかもでかっ!」
内藤をあの要塞から連れ出し、そして麓で保護された際に別れた馬だった。
それが何故かこの場に現れ、内藤の側までやってくると小さく嘶いた。
(;^ω^)「ついて来ちゃったのかお……」
(;'A`)「あれ……珍しいな」
247
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:06:15 ID:vp.cEk020
ζ(゚ー゚;ζ「ななな、何なんですか! その生き物!?」
(;^ω^)「あれ、馬って知らないのかお?」
考えてもみれば、今までに移動手段というものを考えたとき、
動物という選択肢がなかった、その結果が、あの陸船という変わった形だ、
今更ながら不思議に思う内藤だったが、その答えは意外にもドクオの口から語られた。
('A`)「ほら、こっちだと接続で自然を操ったりするだろ」
('A`)「野生動物ってそういうの敏感だからさ、馬なんて特に、普通、寄り付かないんだよ」
( ^ω^)「へえ……」
( ^ω^)「ああ、そういえば……この子の飼主が言ってたお、特別な馬なんだって」
从;゚∀从「って、何でお前そんなこと知ってるんだよ」
('A`)「いや、まあ…色々と…」
そう言う間にも、ぽっぽは内藤の服のすそをくわえ、引っ張る素振りを見せる。
何かを訴えている、今も幾度と無く地を蹴り地均しをした。
(;^ω^)「もしかして……連れてってくれる、のかお?」
(*'ω' *)「ぽひん!!」
( ^ω^)「……この子は、僕なんかより余程賢いのかもしれないな」
(*'ω' *)「ぽ?」
248
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:07:02 ID:vp.cEk020
( ^ω^)「いや、ありがとうぽっぽちゃん、じゃあ頼んだお、一緒に行こう!!」
(*'ω' *)「ぽヒヒィーーーーン!!!!」
空に握った手のひらを突き出すと、応えるように馬が前足を上げて嘶いた。
とは言え手綱もないような自然な姿、二人どころか一人でも乗っていくのは無理がある、
急ぐとあらば尚のことだ、そこで動力を無くした船に軽量化を加え馬車の代わりを用意した。
そして、さてどうやって繋げればいいものか、と考えたところで、
ハインはそういえば、と倉庫の中に居る仲間の技術者に声をかける。
从 ゚∀从「昨日頼まれてたのってどうなってる?」
「できてますけど、あの人、忘れちゃったんですかね?」
「急ぎとか言ってたのになぁ」
从 ゚∀从「ああ、ちょっと持ってきてくれるか」
「ええ、どうぞ」
そうして渡されたのは、革製の太いベルトが三つ、ロープで繋がった奇妙な物だ。
引っ張り出せば、いくつもの金具や鉄の棒がカラカラと音を立てる。
249
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:08:12 ID:vp.cEk020
从 ゚∀从「……やっぱりそうだ」
(*'ω' *)「?」
(;^ω^)「あれ、これって、あの…馬車とか繋いでるやつ?」
( ^ω^)「なんだ、ちゃんとあるんじゃないかお」
从 ゚∀从「いや、これは―――」
从 ゚∀从「……まったく、素直じゃないねぇ」
('A`)「ほんとにな」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですね」
(;^ω^)「?」
こうして出立ちの準備は整った、街の入り口まで見送る姿に手を振って、
二人と一匹は飛び出すようにして、その場を後にした。
見送る姿が徐々に小さくなっていく。
今度は前を見た。
思ったより速度が出ていることに脅えつつも、二人揃って前を向く。
250
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:09:42 ID:vp.cEk020
雪を文字通り蹴散らしながら走る背を眺めながら、
内藤はあの、宿で聞いた言葉を反芻する。
『お前は管理者ではない』
(;^ω^)「は? それは……」
(;^ω^)「……まだ、あの時のこと怒ってるのかお?」
『違う、そうじゃないんだ、もっとずっと前から』
『お前が最初にこの剣を手にした、あの瞬間から、ずっとだ』
(;^ω^)「いやいや、そんな、だって今までちゃんと…!」
『分かったんだ、思い出したんだよ』
『奴の言うとおりこの剣は壊れている、その原因は』
『俺だ、俺だったんだ』
『俺という存在が、この剣をおかしくしている』
『お前の言うとおりなんだ、俺さえ消えれば、お前は本当の――――』
251
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:10:11 ID:vp.cEk020
(;^ω^)「やめてくれお! 何馬鹿なこと言ってんだお!?」
『聞くんだ内藤、そしてもう一度願ってくれ、俺を……消してくれ』
(;^ω^)「嫌に決まってんだろ!? また僕にそんな真似させる気なのか!!」
『だが…このままでは、奴には!』
(#^ω^)「うるさい! 必要ないお、何が何でも僕達で勝つんだ!!」
『内藤…!』
( ゚ω゚)「アーアー聞こえなーい! ブロックブロックブロック」
『え、そんな―ア――――――』
………。
('A`)「ブーン?」
(;^ω^)「はっ、え? 何?」
252
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:11:12 ID:vp.cEk020
(;'A`)「いや、なんか急に遠くを見てるから何かと」
( ^ω^)「……や、大丈夫」
( ^ω^)「大丈夫だお……!」
瀬川が何かを思い出したのは、恐らくあの、ロマネスクとして生きた時間の中、
内藤自身も見たあの、見たことも無いような記憶によるものだろう。
今でも、おぼろげではあるが覚えている。
確かにロマネスクと共に戦っていた、相手は異様な姿の化物。
ただ、奴だけじゃない、何人もの人が一緒に戦っていた。
そこには、彼女の姿もあったように見えた。
あれは一体、どういうことなのだろう。
しかし何よりも、よく思い返してみれば、その視点はどこか変で、
側でというよりも、たとえるならば誰かの腕の先、そう、剣から見た世界のような。
そして自らの持つ、この黄金の柄をした剣が、違う名で呼ばれていたこと。
( ^ω^)(……セイオウケン)
253
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:12:10 ID:vp.cEk020
奴に勝つためには、その真の力が必要なのかもしれない、
だけどそれは、彼を消滅させる必要があるという。
そもそもそんな事ができるのかも定かではないが、迷いがあるのは事実だ。
これ以上何も失いたくはない、だけど、力が及ばなければ、
もっと沢山のものを失ってしまうかもしれない。
どちらにせよ、選択を迫られることはわかっていた。
しかし今はまだ、その答えを出すことができないまま、
巨馬に引かれた船が駆けていく、既に先を行ったものたちの元へ。
最後の戦場へ。
そして、最後の戦いの舞台へと。
つづく。
254
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:22:00 ID:vp.cEk020
特に意識してなかったけどDEENのひとりじゃないって曲の歌詞が、
ここまでの話にベストマッチしててヤベーイでした。
自分勝手に思い込んで裏目にでること、よくあるけど生きて生きたい今日より明日へ。
そんなお話の10話。
次回は11話になるか最終話になるか怪しいところ。
まだ未完成の区切ったシナリオが5つ、正直短いから纏めたら1、2話に収まりそう。
でも極限一閃ってタイトルかっこいいから使いたい、悩ましい。
あとはおまけというかエピローグではないエピローグがあるだけ。
長々続いたというか放置されてただけのこの話もついに完結しそう。
そんなわけで次はちょっとかかりそうですよ。
255
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 20:25:40 ID:elgOGm5I0
乙
完結まで毎日投下するのかと冷や冷やしてた
終わってしまうとなると寂しいな
続きも楽しみにしてる
256
:
名無しさん
:2018/07/12(木) 22:07:17 ID:Vouvhi4M0
乙
257
:
名無しさん
:2018/07/13(金) 20:11:40 ID:hTsutaC60
おいおい たまに覗いてみたら異世界の続きが読めるなんて ・・・
どんだけ待たすんだよ このオバカチン
帰ってきてくれてありがとう
続きを期待しまくる 乙おつ
258
:
名無しさん
:2018/07/14(土) 00:42:45 ID:shP/1BTc0
おい、遅えよバカ!
でも、お前最高だぜ
259
:
名無しさん
:2018/07/15(日) 17:46:18 ID:uvrg5PVs0
高校生の時にドクオが異世界で出会うようですにハマったオレも今年三十のおっさんですよ
まさか続きが読めるとは思えなかったお帰りなさい
260
:
名無しさん
:2018/07/16(月) 18:35:32 ID:rtAaltUg0
ざっくりいつくらいに次の投下できそうです?
261
:
名無しさん
:2018/07/17(火) 00:25:59 ID:s5wwmaHA0
うっわマジか完全に続きは諦めてたからすっごい嬉しい
もっかい読み直してから来るわ
262
:
名無しさん
:2018/07/20(金) 08:44:19 ID:b/fQdqV20
懐かしのと嬉しいので、おっぱいと覗きで気持ちが揺れてるブーンにツッコミ入れる
の忘れてたw
263
:
名無しさん
:2018/07/23(月) 02:06:21 ID:TnTgooV20
気がついたのが金曜この週末暇を見つけっては読み進めやっと追いついたぜ。
264
:
名無しさん
:2018/07/23(月) 02:38:26 ID:Z6grLVnY0
おいおいおいおい!!
異世界とか8年前ぶりやんけ!!
復活とか胸熱すぎるぜよ!!!!
超期待やで!!
265
:
名無しさん
:2018/07/25(水) 07:38:42 ID:wyjV0g4I0
おいおい復活とかマジかよ…!
266
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:41:26 ID:ODOo7f.g0
11ヶ「生まれゆく光」
陽が昇り、日差しもより強くなり始めた頃。
街道が続く荒野には、また大勢の人並みが列を成して歩いている。
そんな彼らの手元からは、剣や珠が燦然と日を反射して輝いていた。
目指す先はヒルト、その麓に集結しているという敵集団。
前回の争いにおいて、管理者含め被害は大きいものではあったが、今尚士気は高い。
なにせ結果だけを見れば敵は無様にも敗走した、数の点で言えば当然の事だ、
あれから更に管理者も増員し、体制は磐石、それぞれ最後となるのを感じながら前を向く。
じきに相手の姿も見えるだろう、また同じような人の垣根が現れる。
それが、これまでの定石、覚悟をしてきた戦場の光景だ。
しかしその日は、何処か様子が違った。
遥か遠い先に、何も居ないのだ。
大群である筈の姿が、どれだけ進み、どれだけ目を凝らそうとも見えてこない。
267
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:41:57 ID:ODOo7f.g0
いつしか、まるで決められていたように先頭をゆく者たちが足を止めた。
何故ならこれ以上進めば、人の生活圏に踏み込むことになる。
侵略や略奪、更には殺戮が目的ではない彼らにとって、
そもそも戦の決まりごとにおいても、集落や街中を戦場とするのは良しとされない。
特異な場合を除いて、公的に宣言したものは特に、示し合わせたように無人の荒野を選ぶ。
そして踏み込む時というのは、全てに決着がついたその時に。
今回もそんな伝統に則って、彼らは迎え撃つべく足を止めたのだ。
街道の先に、相変わらず人の姿は無い。
やがて進軍か待機かと、ざわめき立つ集団の中、一人が声を荒げた。
混乱、あるいは困惑ともとれる声だった。
示すのは街道の先、そこに大きな煙を上げながら大地を駆ける姿があった。
船である事は理解できるが、しかし感嘆と悲鳴の入り混じったような声が上がる。
何故なら周りの物と比較しても、明らかにサイズがおかしい、まるで走る城砦。
その陸船と思わしき存在から比べれば、木々はまるで道端の雑草のよう、
更によく見れば、船の上にはまた小さな影が大量に蠢いている。
268
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:42:36 ID:ODOo7f.g0
そしてその巨大な船が、真っ直ぐに自陣に向けて突っ込んでくるのだ。
あれが何であるかは最早関係なく、混乱はすぐに波紋のように広がっていく。
向かってくる姿に先頭をゆく集団はすぐさま散り散りに、そんな様を見た後方もまた同様に、
訳もわからないまま、釣られるように右往左往、戦列は瞬く間に崩れてしまう。
しかしすぐに号令が飛ぶ、声は言う、避けろと。
そして一切速度を落とすことなく船は、ついに彼らの目の前までやってきた。
まるで地震、土砂崩れを前にしたような感覚だった。
砂塵を巻き上げ、後部の煙突状の箇所から大量の煙を上げ、しかし帆を張り、
車輪の音は轟と鳴り、地面に深く大きな跡を残し、船が横切る。
だがすぐに通り過ぎることはなく、巨大過ぎる船体は中々尾を見せない。
いくつも並んだ巨大な車輪が通るたび、がたんたんと規則正しい音が鼓膜を叩く。
そしてようやく船尾を見送った頃、呆然とそれを眺める人々は、己が生に遅れて安堵すると共に、
あの船が敵国のものである事、そしてそんな彼らの向かった先が何処であるかを思い出し、
未だパニックを起こす後方へと呼びかけながら、その船の後を追いかけた。
269
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:43:37 ID:ODOo7f.g0
前回の戦いで自分達がそうしたように、目的は殲滅ではなく、
その中心となるもの、王とその居城の制圧にあるのだと叫び急ぐ。
だが船はその巨体にも関わらず、あまりにも速く、みるみる遠ざかっていく。
そんな奇妙な追いかけっことなった、追われる側。
船上では見下ろす光景に目を奪われながらも、大きな歓声を上げていた。
「こいつはやべーい!」
「すげーい!」
「ものすげーい!!」
<_フ*゚Д゚)フ「ははっ見ろよ、慌てふためきようったらないぜ」
( 凸)「そりゃそうだろ、こんな状況誰が想像できるよ」
( 凸)「ああ、バーニング、サンダーと来たらアイスもソードかと思ったらスケートだったみたいな」
( 凸)「バーニングアイスが極大消滅系かと思ったら対消滅オチだったみたいな」
火<_フ;゚ー゚)フ「そのカービィネタは分かり辛いんじゃねぇかな?」
('、`;川「ここまで来てもそのノリは続くのね」
火<_プー゚)フ「ま、余裕ってのは大事じゃん? なんつーか、それが俺らなりの覚悟みたいな」
270
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:44:26 ID:ODOo7f.g0
('、`*川「余裕があっても視野が狭くちゃ意味ないわね…うしろ見なさいよ、燃えてるわよ」
炎_フ;゚Д゚)フ「は? なn…ぶわちゃちゃちゃ! あっちぃーーーー!!」
( 凸)「おお、エクストのやつ燃えてんな」
( 凸)「これが 火属性付与(エンチャントファイア)…気合入りすぎだろ」
メ_フ;゚д゚)フ「死にそうなんですけど!?」
('、`*川「さあお遊びはそこまでにして、消化と迎撃用意、いいわね?」
<_プー゚)フ「ま、流石にすんなり通してはくれねーか……!」
甲板の際から見えるのは、流れていく景色と、いくつもの火球。
目下からはいくつもの発光と、駆動音に混ざって破裂音が響いていた。
混乱はあれども、その船が敵の操るものである事は明白であり、
ただ追いかけ、あるいは見逃すばかりではなく、早々に気付いたものたちは、
すぐさま迎撃の姿勢をとり、船を止めるべく攻撃を開始した。
とは言え船体は装甲に覆われているため、一度や二度の攻撃ではびくともしていない。
だが全てが防火されている訳ではなく、そこかしこに穴はある、
特に大きな存在は、大量の風珠を取り付けた巨大マスト。
これがやられたら大きく速度を落とすことになってしまう。
271
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:44:57 ID:ODOo7f.g0
と、そんな最中に大きく響き渡る声があった。
同時に、声の主が手にした剣を大きく振るえば、
降り注いでいた火球が、突風によってかき消されていく。
おお、というどよめき、視線は一点へと向かう。
ノパ⊿゚)「皆見えているな、ここは敵陣ど真ん中通り越して奥地だ」
ノパ⊿゚)「最早退路は無い、進み、この身果てるまで戦うのみ」
ノパ⊿゚)「だが、それも今回は、討ち倒すための戦いではない」
ノパ⊿゚)「これより我らの戦いとは、守ること、この船を―――その時が来るまで守り続ける事にある」
ノパ⊿゚)「皆も知っての通り、その時がいつ訪れるのかもわからない、終わり無きものとなるやもしれない」
ノパ⊿゚)「言わばこれより始まるのは、最後の消耗戦だ、どうあっても厳しい戦いになる」
ノパー゚)「―――けれど、王としてこれだけは達する、生き延びることを自覚しなさい」
ノパ⊿゚)「今ここに居るのは、これまで決して同じ道を歩んできたわけじゃない」
ノパ⊿゚)「異なる世界の者も、他国の者も、かつては争っていた者も、争いによって帰る場所を失った者すらも」
ノパ⊿゚)「そう、奇せずして集まった我らだが、こうして同じ先を見据えている」
272
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:46:56 ID:ODOo7f.g0
ノパ⊿゚)「誰の命令でも無い、各々の意思で、それを選んでここまで来た」
ノパ⊿゚)「彼の王には、世を纏め上げ平和を掲げる様は確かに正義であるのだろう」
ノパ⊿゚)「世界が何を望んでいるのか、そんなのものは私にはわからない」
ノパ⊿゚)「だが、その為に他を悪と断じ、世を、人をも手中にせんとする行為、私は許容できない」
ノパ⊿゚)「あの日、あの者が言った、我らは世界の希望なのだと」
ノパ⊿゚)「ならば我らは、真実を知るものとして、この世界に問わねばならない」
ノパ⊿゚)「続く世界に、人に、心に、問いかけ続けなければならない、その為に今はこの剣に全てを込めよう」
ノパ⊿゚)「生きること、目指すもの、明日を――各々が剣に誓いを立てよ!!」
ノパ⊿゚)「我らが剣は―――」
「「「「「 誓約の下に!!! 」」」」」
雄々しく叫んだ声が、大地を抉る轟音よりも強く響く。
幾度も掲げられた剣が、何度も何度も反射しては煌いた。
こうして船上にいるものたちの、最初の戦場が始まった。
273
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:48:33 ID:ODOo7f.g0
(´・ω・`)「上は盛り上がってますね」
ξ゚⊿゚)ξ「あの女、自国の問題を片付けるために小細工をしていたそうだが……」
ξ-⊿゚)ξ「最初からああしていればよかったのではないのか?」
(´・ω・`)「伝統的なものだったようですし、そう簡単じゃなかったんでしょう」
(´・ω・`)「それに……殷鑑遠からずってのも、あるかと」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「なんだそれは?」
(´・ω・`)「僕らに会って、何か思う所があったんでしょうね、って話ですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ、何かしら覚悟を決めた人間の姿ではあるが」
それにしても、と続け。
ξ-⊿-)ξ「ここの女はどうにも肝の据わった者が多いな」
ξ゚⊿゚)ξ「なあ、そこのお前も、これから死地に向かうというのに随分と落ち着いたものじゃないか」
川 ゚ -゚)「…いや、そんな事はない」
川 ゚ -゚)「とても恐ろしいよ、ただ…」
布で巻かれた赤い剣の欠片を握り締め、唇には真っ直ぐな横線を描きながら、
時折感じる小さな振動と、遠くから響く人の声や破裂音、
そういった喧騒の中にありながら、真っ直ぐな目で、見つめ返す。
274
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:49:24 ID:ODOo7f.g0
川 ゚ -゚)「それ以上に……私でも、役に立てるかもしれないと思う気持ちが」
川 ゚ -゚)「色んな思いを少しだけ、上回っているんだと、思う」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうか、いや愚問だったな」
ξ゚⊿゚)ξ「お前もまた、国家間に振り回されてきた口だったか」
彼女とて、一度は折れながらも、立ち上がった一人である。
特別な何かがあった訳じゃない、それでも歩き続けた果てに確立した意思がある。
きっかけは何だったのか、今となっては彼女自身も定かではない。
ただ、共にあろうとした少年が、誰かと重ねて居ただけのその者が、
いつしか彼女の中で本当の、本物になっていたこと。
そして懸命に生きようともがく人たちに触れ、広い世界に触れたことで、
遠い日に、彼に説かれた生きる意味が何なのか、同じ思いに至れた事こそが。
人が言う、強さとなって今の彼女を支えていた。
川 ゚ -゚)「それに、もう一度ドクオに会えたときに、ちゃんと言いたいんだ」
川 ゚ー゚)「もう、大丈夫だってな」
ξ-⊿-)ξ「やれやれ最後はノロケ話か」
川 ゚ -゚)「いけないのか?」
275
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:50:41 ID:ODOo7f.g0
ξ゚ー゚)ξ「いいや、そういう覚悟も嫌いじゃない」
(´・ω・`)「じゃあその為にも、段取りは覚えてるよね?」
川 ゚ -゚)「わかっている、大丈夫だ、これは……私だけの勇気じゃないのだから」
そして船は街道を行く。
いつしか攻撃の手は止み、追手を一時的でも撒いた頃。
ついに目的地である岩の城砦が、その姿を覗かせた。
大きな岩山に、いくつもの穴が空くシルエット。
正面には入り口を覆うようにして、木組みの城門が立ちはだかる。
だが船はお構い無しに進んでいく、速度に緩みは一切ないまま。
門付近には番兵が点在し、迫る船を見つけるなり慌てた様子で駆け回っていた。
突如として城門よりも大きな船が、あろうことか突撃してくるのだ、
対処法などあるはずも無く、どんどん迫ってくる大きな影を前にして、
すぐに退避の一手をたどることになった。
散り散りに逃げていく姿がある。
その合間を縫うようにして船はついに、城門への突撃を敢行した。
木組みの門は一瞬たりともその勢いを受け止めること叶わず、
ぶつかるなり大きく形を歪ませ、そのまま弾かれる様に吹き飛んだ。
いくつもの木端が宙を舞い、巻き起こる粉塵が周囲を埋めていく。
276
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:51:25 ID:ODOo7f.g0
砂煙を纏いながら、減速を始めた船が門と城砦の中央付近で動きを止めた。
そんな有様を眺める人々は、戸惑いながら遠巻きに、
なんだあれは、船なのか、大きすぎる、等と口々に漏らしている。
と、そんな煙の奥に、更なる変化が起きた。
影だ、それも大量の、巨大な船の周囲を埋め尽くさんばかりの影が、
今この瞬間にもその数を増やしながら、蠢いている。
そもそもが異様な光景だ、誰かは怪物が襲ってきたのかとも問う。
しかし続いて聞こえてきた声と、煙の合間に覗く帆に描かれた模様に、その正体を知る。
「あれは…ヒルトの…まさかこれは!?」
『進め!』
『制圧せよ!!』
雄々と叫ぶ声が、文字通りに轟く。
踏み抜く足が地を鳴らす。
現れたのは人の群れ、何百という数が一斉にその空間を埋めていく。
巨大船から比べれば、まるで虫の群れが溢れるような光景だ。
城砦に残っていたのは、最低限の人数のみ。
そんなおぞましくもおそろしい光景に、まともな抵抗を示せたのはほんの僅かであった。
277
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:52:23 ID:ODOo7f.g0
('、`*川「門の制圧は完了したわ」
(´・ω・`)「敵の本隊はどう?」
('、`*川「もう見えているよ、衝突は時間の問題ね」
(´・ω・`)「うん、それじゃあ、次は船の防衛を、手筈通りに」
('、`*川「わかったわ」
<_プー゚)フ「門ぶっ壊したのは勿体無かったんじゃねぇかなー」
(´・ω・`)「……止め方、実は知らないんですよねぇ」
<_フ;゚ー゚)フ「そんな理由かよ!?」
ノパ⊿゚)「付近の詰め所もすぐに、と言いたいが何分多い、まだかかるな」
(´・ω・`)「充分です、一度集まってもらって……あとは……」
正面にある、一際大きな岩山の、その最上部を見上げる。
そこに、誰かが見下ろすように立っていた。
('、`;川「……あれを相手に…ツン、本当に一人で……」
(´・ω・`)「本人が大丈夫だって言うんだから、信じるしかない」
(´・ω・`)「それに、あくまで時間稼ぎなんだから」
ノパ⊿゚)「ああ、大体殺す気がないという輩の相手より、むしろこちらの方がよほど危険かもしれんぞ」
('、`*川「……そうね、それじゃあショボン君、私も行くわ」
(´・ω・`)「うん、日陽の件もよろしく……それと、なんだ、幸運と」
('、`*川「勝利を、ね、お互いに」
278
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:53:22 ID:ODOo7f.g0
ペニサスはそう言って背を向けた、その進みにもはや迷いもなく、
歩む先にはエクストら同郷のものたちと、ツンの下にいた兵達が集う。
( 凸)「大将」
('、`*川「ええ、それで見えた?」
( 凸)「案の定、今回は道がてらに合流しちまってるみたいだ」
<_プー゚)フ「ま、いくら陣形組んでたってこうなっちまえばなぁ」
('、`*川「前回は意図的に避けられてたようだけど、今度は逃がさないように、ね」
<_プー゚)フ「おうよ、野郎共、説得コマンド忘れんなよ!」
( 凸)( 凸)( 凸)「「「「「おー!!!」」」」」
こうして船を中心とした、防衛のための陣が敷かれた。
そう、こうまで大胆な策を講じておきながら、何故か拠点攻略に踏み込むことなく、
遠方より迫る集団を待ち受けるように、彼らは足を止めた。
城砦内に未だ残る一部のものたちは、そんな異様さに困惑を示しつつも、
じきに到着するであろう本隊を待つことを選んだ。
ゆえに、警戒も薄く、あっさりとその場へたどり着いた者が居た。
279
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:54:00 ID:ODOo7f.g0
ξ゚⊿゚)ξ「見張りもつけないとは、無用心ではないか?」
いくつもの天窓から明かりが差し込む空間、その奥に、
目下を眺めながら佇む姿へ、ツンは軽い口調で問いかけた。
( ФωФ)「はは、先日も入り込まれたばかりでな、他の者にも言われたよ」
( ФωФ)「だが不要なのだ、ここは神である我が居城、余分なものは必要がない」
ξ゚⊿゚)ξ「余分……人間を、そう称するか」
( ФωФ)「ふむ、ところで一人か?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、今のところな」
( ФωФ)「何をしに来た?」
ξ゚ー゚)ξ「わかりきった事に答える必要があるのか?」
( ФωФ)「そうであるな」
ツンは手にした水晶剣を地に突き立てる。
同じように、ロマネスクも黒線纏う大剣を突き刺した。
踏み込んだのは、ほぼ同時だった。
……………。
280
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:55:27 ID:ODOo7f.g0
ほどなくして、追いついた本隊との戦いが始まった。
人が次から次へと押し寄せてくる、その様はまさに津波のよう。
文字通り、門から船とつづく街道は人で埋め尽くされていく。
ノパ⊿゚)「我に続け!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ」」」
<_プー゚)フ「よし、やるぜ!」
('、`*川「日陽の人間たちは、どのあたり?」
(;凸)「まだ、見えないっす!」
('、`*川「仕方ないわね、今は……!」
('、`*川「皆、声を張りなさい、剣の誓いを今こそ!!」
<_プД゚)フ( 凸)「「「「応!!!」」」」
そして集団が、更に大きな集団に呑み込まれていく。
だが潰されはしない、一度は収縮しかけた形は、
すぐに押し返すように広がりを見せた。
そればかりか、楕円に広がる互いの境界線より奥地、
戦線より後方に、どこからか接続による攻撃が飛来する。
見れば巨大船の甲板や、胴体にはいくつもの珠が取り付けられており、
それぞれ配置した人々が後方より、前線の支援を開始したのだ。
281
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:56:10 ID:ODOo7f.g0
こうして崩れかけた前線は、しかし更に後方から第二第三の波が迫る、
波状攻撃と、三次元からの攻防、戦場はこうして消耗だけがつづく膠着状態となった。
雄叫びと、悲鳴が響く。
金属音と、割れ音が連なる。
轟音と、爆音がそれらを覆う。
川;゚ -゚)「………っ」
川 ゚ -゚)(………これが、戦場、か)
川 - )(わかっては……いた、のに)
そんな音は船内にも届いていた、クーは身を抱くように小さくなりながら、
震える身体に止まれと念じる、あまりにも、自分が場違いであると思う。
今も外では殺し合いが行われている。
顔でも出そうものなら、その瞬間に火に焼かれ、雷に撃たれるかもしれない。
しかし何より恐ろしいのは、状況がわからない事だ。
今甲板に響いた足音は、果たしてどちらの物なのか。
聞こえる喧騒が一つの残酷な結果による物ではないか、想像するだけで恐ろしい。
こんな世界に身を投じられる者たちの、なんと勇敢なことか。
祈るように目を閉じる、しかし震えは止まらない。
282
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:58:06 ID:ODOo7f.g0
どれほど時間が流れたのだろう。
その間、どれだけの音があっただろう。
幾度と無く響くそれら一つ一つが、誰か一人の結末だったのかもしれない。
やがて必死に握り締めていた手のひらに、刺すような痛みが走る、
思わず手放した物が床を転がっていく、すぐには動けず、目でそれを追いかけた。
力を込めすぎて、刃で切ったのかと思ったが、しかしすぐに違うと知る。
川;゚ -゚)「……なんだ……光って…?」
剣の欠片は、これまで見たこともないほど赤い光を強め、
陽炎をもまとうほどに、その熱量も高めていた。
その原因が何であるか、何が起きているのか、思い当たるのはただ一つ。
川 ゚ -゚)「……あ、ぁ、まさか、これは…っ」
川 ゚ー゚)「………お前、なのか?」
「ドクオ」
………………。
283
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 21:59:48 ID:ODOo7f.g0
( 凸)「あ!」
「あ、お前ら…!?」
<_プー゚)フ「お、やっと見つけたぞ!」
均衡を保つ戦場の最中に、しかし動き回る遊撃隊があった。
ペニサス率いる日陽と湖鏡の混在する兵達だ。
彼らは戦地を駆けながら、ある集団を探していた。
その目的は、同郷の者たちの誤解を解くために。
「くそ、本気で、お前ら!!」
<_プー゚)フ「居たぞ大将!!」
('、`*川「ええ、聞きなさい日陽の者達!!」
「え、ペニサス……さん!?」
「どうして…なんであんたまでそっちに!!」
('、`*川「事情は後で伝える、今は、戦いをやめなさい!!」
('、`*川「我が国の神具をもつ彼らは、私たちを裏切ってなどいなかった」
('、`*川「全ては仕組まれた事だったのよ!」
「何を…何を言ってるんです!?」
「だってそもそも、ペニサスさん、あんたがそう言って…!」
284
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:01:46 ID:ODOo7f.g0
「そうだ、巫女さまのお二人を、あんな……許される事じゃない!!」
('、`*川「違う、違うわ……巫女さまを手にかけたのは………」
('、`*川「私、この私が、あのロマネクスの配下に操られて犯したこと!!」
('、`*川「……とにかく、真実はもうじきにわかる!」
('、`*川「今は戦いをやめなさい、これ以上……こんな戦いで命を捨てては駄目!!」
必死の懇願に、少なくとも戦意は失った日陽の人間たちではあったが、
しかし困惑の色がつよく、どうしたらいいのかと戸惑うばかり、
と、そんな中に一人、ペニサスへ歩み寄る者が居た。
「……俺、あいつらと、宴会で騒いだり、色々、話したりしたよ」
「正直言って……悪い奴らには、思えなかった」
<_プー゚)フ「ああ、俺もそう思う」
( 凸)「少なくとも、友人を平気で傷つけられるような連中じゃないよな」
('、`*川「あなた自身は、どう見えていたの、彼らのことを」
「……………」
「エクスト、ペニサスの大将、俺は……俺たちは、騙されていたのか?」
<_プ -゚)フ「そうだ、裏切っていたのは……お前ら……いや、俺たちの方、だ」
285
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:02:12 ID:ODOo7f.g0
「……本当のこと、話してくれるんだよな?」
('、`*川「その為に、私たちはここに居るのよ」
「…………」
「わかった、どうすればいい?」
('、`*川「まずは同郷の者達すべてに伝えなさい、剣を捨てよと」
('、`*川「他の皆も、まだ信じなくてもいい、だけど真実はじきに明かされる、今は戦いをやめなさい」
カランと、いくつもの剣が地に落ちる音が連なった。
そんな姿に、ペニサスは笑みを浮かべ、頷いた。
<_プー゚)フ「ん? なんだあれ……」
と、そんな折、エクストは遠方に砂煙を引く影を見た。
遠目にも、普通の陸船とは思えないような速度で向かってくる。
( 凸)「増援か…? まだ来る?」
<_プー゚)フ「いやでも一隻…しかも、変だぞ、何かに引かれて…?」
( 凸)「つか、こっち来るぞ!!」
('、`*川「いえあの船、ヒルトのものよ、紋章がある」
<_プー゚)フ「ヒルトから!? ってーことは……」
('、`*川「ええ、きっと――――」
286
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:02:58 ID:ODOo7f.g0
そして四本足で駆ける大きな生物に引かれた船が、勢いそのままに戦場へと飛び込んだ。
生物と船はしかし怯むことなく駆け抜ける、突然の奇襲に敵味方問わず飛び退く人によって、
一本の道が整形され、やがて到達点、巨大船へと突っ込んでいった。
ノハ;゚⊿゚)「な、何だ!?」
(*‘ω‘ *)「ポヒヒヒィィィーーーン!!!!!」
「ひ、ひえええ!?」
「ちょ、ぶつかるお!!?」
馬がその場で旋回しつつ急停止、後を引かれた陸船は勢いを止めることなく、
ついには振り回されるような形で、巨大船へと衝突し、事故を起こした。
ひしゃげた船が大きく傾き、ひっくり返った。
しかし寸での所で飛び降りた影が二つ。
甲板に立つショボンは、その一部始終に苦笑を浮かべた。
(´・ω・`)「何をやってるんだか」
相当な勢いからの着地にも関わらず、難なく立ち上がる二人の姿がある。
下で歓待を受けているが、すぐにこちらを見るなり下部の入り口へ、
そして、甲板の扉が勢いよく開かれた。
(;'A`)「ごめんショボン、遅くなった!」
(´・ω・`)「うん、大丈夫だよ、それよりまた会えてよかった」
('A`)「と、そっか、心配かけた、でももう大丈夫だから」
(´・ω・`)「そうみたいだね、なんだか見違えたよ」
287
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:04:52 ID:ODOo7f.g0
('A`)「クーは? 来てるって聞いたけど」
(´・ω・`)「船内に居るよ、会ってくかい?」
('A`)「ん……いや、今はまだ」
('A`)「クーもきっと、自分の意思でここに居るんだろうから」
('A`)「全部終わらせてから、ゆっくりと会いに行くさ」
(´・ω・`)「そうか、うん、でも来た事は伝えておくよ」
(;^ω^)「その……ええと、ショボン?」
(´・ω・`)「………」
( ^ω^)「ごめん……今更って思うかもしれないけど、だけど、僕も、もう一度…」
(´・ω・`)「ああ、本当に今更だよ、言ったろ、君の事なんか信じちゃいないって」
( ^ω^)「……それでも、僕も決めたんだ、もうn」
(´・ω・`)「君みたいな考え無しの大馬鹿者が、何もかも諦めて来ないなんて、思っちゃいないさ」
(;^ω^)「にげな………え?」
('A`)「馬車用の道具、ショボンが用意させてたんだろ?」
(´・ω・`)「ああ、ブーンを追いかけて来てたの知ってたからね」
(;^ω^)「………な、なんだお、それ」
288
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:05:18 ID:ODOo7f.g0
(´・ω・`)「それにしたって遅い、ドクオの方は事情がわかるけど君はダメダメだね」
(;^ω^)「ひ、贔屓が、ここまで来て尚贔屓が酷い!」
(´・ω・`)「遅刻の罰としてほら」
言って、指すのは最上部、彼の王が居る場所。
(´・ω・`)「決着をつけてきなよ、今度こそね」
( ω )「―――――」
( ^ω^)b「がってん承知!」
(´・ω・`)「ドクオも、悪いけど、道を作ってあげてくれるかい?」
('A`)「道を……ああ、わかった」
(´・ω・`)「ちなみに今回の狙いは聞いてるよね?」
(;^ω^)「一応……でも、何時の間にそんなこと進めてたんだお」
(´・ω・`)「子供の喧嘩じゃないんだから、争いの間にだって政策は進むさ、当然だろ」
(´・ω・`)「とは言え、ヒルトっていう国に属しているからこそではあるけどね」
何にせよ、じきに人の戦いは終わる、この戦争はそういうものだと。
(´・ω・`)「というわけで、頼んだよ二人とも」
(´・ω・`)「ああそうだ、あとこれが終わったら、ご飯でも食べに行こうか」
( ^ω^)「おお、行く行く!」
289
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:07:08 ID:ODOo7f.g0
('A`)「飯か…何なら俺作ろうか」
(;´・ω・`)「え、ドクオって料理できたの?」
('∀`)「今ならすげーうまいもんできるぞ、お墨付きだよ」
(;^ω^)「それって……記憶の?」
('A`)「ああ、あの人の生きた証、皆にも、知ってほしいんだ」
( ^ω^)「そりゃ楽しみが増えたお、どんなのだろう」
('A`)「ギンギーとか」
(;^ω^)「ギンギー?」
(´・ω・`)「いいけど、男の手料理を楽しみにするとはこれいかに」
(´・ω・`)「……ま、そんな感じでよろしく」
( ^ω^)「うぃ、そんじゃ、行ってくるとしますか!!」
('A`)「ああ、今度こそ…終わらせよう!」
言って、二人は甲板から下へと伸びるスロープに手をかけ、一気に降下。
かけられた声に応えながら、人並みを抜けて駆けていく。
城砦へ続く道も、すでに人が壁となっている。
けれど、もはや管理者としてもある種の到達点へ達した二人。
ただの一瞬とて、止められる者は居なかった。
290
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:08:22 ID:ODOo7f.g0
そして城砦の入り口へと、あっという間にたどり着いた。
だがそこは重厚な石の扉によって閉ざされている。
二人はそこで一度立ち止まった。
後ろからは、王の下へと向かう二人を止めるべく、また人の群れが押し寄せる。
けれど見向きもしないまま、一人は赤い剣の輝きを強め、もう一人が風を起こす。
次いで、耳をつんざく爆裂音と共に、石の扉は文字通り爆発した。
吹き飛ばされた瓦礫が、長く宙を泳いで地を抉りながら落ちる。
残された扉だった箇所は、ところどころ未だ赤熱し、黒煙を立ち上らせた。
(;^ω^)「相変わらずトンデモ火力だお…!」
('A`)「……よし、道は開いたぞ、行ってくれブーン」
(;^ω^)「へ? ドクオは?」
('A`)「俺はここに残るよ、邪魔されないように、あいつら止めておくからさ」
言って、ドクオは再びこちらへ向かってくる人波を見る。
確かにここで止めなければ、王の下へ向かっても止められてしまう、
それにそんな状況下で奴とまもとにやり合えるとも思えない。
言い分は正しい、だが。
291
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:09:44 ID:ODOo7f.g0
(;^ω^)「そんな、一人じゃ…!」
言いかけて、もう何度も見たあの威力を思う。
あれなら確かに、とは思うが、それでも。
( ^^ω)『むしろお前が居たんじゃ邪魔になるだけだろ』
( ^^ω)『それに、気付いていないのか、船から降りた時もそうだったが』
( ^^ω)『ドクオの奴……今のお前の本気の動きに、ついてきているんだぞ』
それも、息も切らさず。
神具によって人外の力を得ている内藤に対し、ドクオの持つ神具にはそういった能力はない。
しかし、今はもう一つ、その腰にはもう一本の剣が下げられている。
紫色の水晶剣、人の血を吸い、かつて赤く染まっていた呪いの剣だ。
その忌むべく力によって蘇ったドクオは、その恩恵を未だ得たまま、
自覚も無く、常人を遥かに越える体力を身に付けていた。
加えてあの炎の剣だ、もはや囲まれた程度で遅れを取ることはないだろう。
しかし内藤が思うのは、その心配だけではなく。
(;^ω^)「いいのかお、だって、ドクオにとっても、あいつは……」
('A`)「正直なとこ、一緒に行っても、足を引っ張っちまうよ」
('A`)「わかるんだ、一度は相手をして、そして……傍で、見ていたから」
(;^ω^)「だけど…っ」
292
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:10:35 ID:ODOo7f.g0
('A`)「それに、いいんだ、俺はもう……恨みだとか、憎しみでこの剣は振るわない」
('A`)「そう、決めたんだ」
('A`)「お前だって、そうだろ?」
( ^ω^)「………!」
('A`)「だから俺の願いも、お前に託す、そして今は、よく聞くこの言葉を言うよ」
('∀`)「ここは、俺に任せて先に行け」
( ^ω^)「……ずるい、それ、僕だって言ってみたいのに」
('∀`)「だろ?」
( ^ω^)「うん、だけど、託されたお」
('A`)「ああ、頼んだ」
入り口の方からも、爆発の音を聞きつけて人が姿を見せた。
ドクオはその方向へと火柱を飛ばす、合間には道がある、
もはや言葉もなく、互いに頷き、内藤は友が作った道を駆けた。
そして再び、あの日も歩んだ通路を走る。
同じ目的を。
違う想いで。
白銀に輝く剣を手に、その先を目指した。
293
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:12:59 ID:ODOo7f.g0
('A`)「さて、と……」
右手には折られながらも、その輝きを失わない赤い剣。
左手には彼の生き方を象徴するような、今は空っぽの紫晶剣。
どちらも勝手に受け継いだだけの、借り物の力。
けれどその思い出は今も、確かにこの胸に宿る。
例えるならば、それは光、いつでも道を示してくれる輝き。
どんな暗闇の最中でも、どんな景色が見えても、どんな険しい道であっても、
進むべき道を照らしてくれる光、だからもう、二度と迷わないで進める。
そう、思える。
迫る人波を見据え、剣を構えてドクオは言う。
('A`)「俺たちの狙いは、敵将ロマネスクただ一人!!」
('A`)「この先へは、誰も通さない…!」
輝く赤い剣を一振り。
半円を描いた炎の道が、集団とドクオを隔てるように広がった。
駆けてくる群れは、突然燃え広がった熱に足を止める。
どよめきが起こる、その原因は燃え続ける炎の、その輝きにあった。
何故なら炎は、見たことのないような、幻想的なまでに蒼い光を放っているから。
('A`)「命が惜しければこの線を越えるな、さもなくば、この破壊の剣……炎の風が相手だ!」
294
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:14:22 ID:ODOo7f.g0
伝え聞くその管理者の名、そして先の石扉を一撃で消し飛ばした力。
怯む者は少なくなかったが、すぐに怒声が飛ぶ。
それでも、相手は一人だと。
進めという声に押されるようにして、人波は炎を乗り越え、再び駆ける。
中には異様な形の武器を手にした者も居る、あれも管理者なのだろう。
虹の輝きを放つ剣、光刃を纏う槍など見るからに特別な代物もあった。
更には珠を手にする者たちも大勢居る、それら全てが今、ドクオに向かってくる。
不思議と恐れはなかった。
それよりも、むしろ、今も心の奥底から湧き上がってくるものが。
ドクオの足を死地とも見えるその先、前へと進ませた。
力が漲る、魂が燃える、心のマグマが迸る。
('A`)「今の俺は…!」
(,,゚Д゚) ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)( ´∀`)
(#'A`)「負ける気がしない…!!」
雄々と叫び、いつしか眩く輝く光剣を振るう。
黒煙を内包する爆炎がばら撒かれ、呼吸するだけで喉を焼くほどの熱流が起きた。
ドクオを中心に発生したその熱によって、周囲の石はドロドロに溶けて流れ始める。
295
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:16:17 ID:ODOo7f.g0
空間が歪む、黒煙があちらこちで立ち昇る。
肌を焦がすような熱風に当てられた集団には、尻餅をついて後退する姿もあった。
同時に、どうなってるんだと疑問が沸く。
それほどの被害を出しながら、中心に立つドクオはまるで何事もなかったように、
光り輝く剣を携え、今尚熱風を纏いながら、集団に向けて更に一歩を踏み出した。
そして進むたびに、歩いた跡が赤熱していく。
化物と、誰とも無く呟いた。
現に歩みを止めないドクオの姿は、熱でぐにゃぐにゃに歪む背景と相成って異様なものとなっている。
「ひ、引くな! 押せ、行け行け!!!」
勇気によるものか脅えからくるものか、そんな声に応え、集団が行動を開始する。
珠を構える姿がある、それに続いて突撃すべく剣を構えるものが居た。
次いで、一斉に接続の力がドクオ目掛けて放たれた。
突風が砂塵を巻き上げ、数え切れない火球が飛来し、雷が散らばり地をも焦がす。
だが、それらは一つたりとも彼の下へ到達しない。
まるで見えない何かに守られているように、何らかの圧力が近づくだけで炎が爆ぜる。
黒煙纏う炎が幾度も広がり、中空で発生した爆発によって全てが掻き消されてしまう。
296
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:19:05 ID:ODOo7f.g0
更に進む。
そこへ一人、駆けてくる姿がある。
光刃を纏う槍を持つ人間だった、周囲には同じような輝きを放つ光球が浮かび、
槍の一振りに合わせ、ドクオに向かっていくつかの光が尾を引いて飛翔する。
だが先と同様に、近づくだけで光は爆発に飲み込まれ消滅した。
予想はしていたが、男は戸惑いを隠せない、
その隙をつくように、ドクオは距離を詰めていた。
「な、早い…!?」
('A`)「神具…こんな物があるから…」
防御すべく槍を構える男に向けて、もはや太陽と見紛うほどの輝きを放つ剣を振るう。
衝突は、もはや音にすらならなかった。
男は握る手のひらに感じた強烈な痛みに手を離す。
二つに分かれた槍が、断面を融解させながら地を転がる。
「そんな―――馬鹿な!!?」
('A`)「消えろ…!」
そして転がった槍へと剣をかざす。
発光。
突然のことに目が眩み、再び視界に入ってきたのは、
原型を留めないほどにドロドロに溶けた槍だった物の姿だった。
297
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:21:19 ID:ODOo7f.g0
あまりの事態に、男はその場で固まった。
そんな隙だらけの身体を、ドクオは蹴り飛ばした。
軽く数メートルは吹き飛ばされ、集団にその姿が止められる。
戦慄に、最早動けないのは蹴飛ばされた者だけはなかった。
一体目の前で何が起きているのか、理解できずにざわめきが起こる。
そしてそんな合間に、再び蒼い炎による線が敷かれた。
('A`)「もう一度だけ言う、命が惜しい者は、この線を決して越えない事だ!!」
そしてそんな光景を、巨大船から眺める者たちが居た。
あまりの光景に、防衛にまわる事すら忘れ見入ってしまう。
(;凸)「なにあれぇ……こわぁ」
(;凸)「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」
ノパ⊿゚)「お前たち、余所見をするな!」
(;凸)「あ、サーセン!」
(´・ω・`)「………」
ノパ⊿゚)「…あれがVIPの炎の風か、一国を滅ぼす力というのも伊達ではないな」
(´・ω・`)「いえ、きっとあれは、その伝説を上回るものですよ、それも遥かに……」
298
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:22:07 ID:ODOo7f.g0
ノパ⊿゚)「それでどうする、今こそ好機と見るが?」
(´・ω・`)「いえ、まだですよ、後は……」
言って、見据えるは砦の最上部。
このまま行けば地上は目論見どおり、残る問題は神を名乗るあの男。
先ほど見たように、神具をも消滅させる程の力をもつレーヴァテイン、
その剣でさえ、奴のもつ神具には及ばなかった。
そんな剣を持つ男が、あの時の内藤以上の力を持つというのだ。
恐らく、今の戦局とて奴が出てきたその瞬間に一転する。
裸の王とし、世界の意識を変える事ができたとして、全てが無意味になるかもしれない、
ゆえに残るはロマネスクという最大の難問を、どうするのか。
この点において、ショボンは考えることをやめた。
そしてただ、一人に託すことを決めていた。
これは賭けになる、そう知りながらも。
様々な事実と、要素が教えている、あの二人の関係性。
おそらく唯一対抗できるのは、その友人だけだと、不思議なことに確信をもち。
(´・ω・`)(ここまで道を作ったんだ、意地でも何とかしてもらうよ)
友の名を心で呼びかけながら、その場所を見つめていた。
…………。
299
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:24:15 ID:ODOo7f.g0
あれだけの人数を揃える敵の親玉、そのラスボスが住まう居城にしては、
いっそ不気味なまでに人の気配がしない、思えば以前の潜入の際もそうだった。
それゆえに逃亡ができたのだと、今更ながら知った。
そうして、いくつものランプが描く、多重の影を引き連れて内藤は走る。
だが、それにしても静かすぎる。
聞けばツンが一人で足止めに向かっているはず。
にも関わらずこの静寂。
少なくとも今も戦いが続いているとは思えない。
( ^ω^)「………」
嫌な予感が、おそらくは確信なのだろうと思う。
そもそもが無謀な作戦だ、あの男を一人で相手にするなど不可能だ。
自分がもっと早く来ていれば、いやそもそも、馬鹿な行動さえしていなければ。
口惜しさに歯噛みし、それでも先を急いだ。
やがて、その場所の入り口が見えた。
飛び込んでいく。
いくつもの天窓から差し込む光が美しい大広間。
そこにいくつも、無数の傷痕が刻まれている。
300
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:26:12 ID:ODOo7f.g0
恐らくは剣戟の跡なのだろう、至るところに見えるそれが、激戦の後を思わせる。
だがそれ以上に、正面、その最奥に二つの人影がある。
目を凝らし、ようやく見えたその先には。
思わず声を失うような光景が、広がっていた。
つづく。
301
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:28:04 ID:oe0A9Qos0
おつおつ
302
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:36:16 ID:ODOo7f.g0
おしまい、実際のところドクオ君が本気出せば城ごと焼き殺せるけどそこはご愛嬌。
いやあ今まで無力な子だったり空気だったりしたけど、しょうがないね、
魔力つきないめぐみんみたいな状態だし、作中最強キャラは本当に扱いが難しい。
というわけで次回は12ヶ「極限一閃」事実上の最終話、あとはエピローグ。
土日の間に89%くらいの確率で投下するかもしれないし、ないかもしれない。
303
:
名無しさん
:2018/07/27(金) 22:50:53 ID:3TYdgo1I0
おつ
未完だった作品が戻ってくるとうれしいね
それが好きな作品だったら尚更だ
304
:
◆QksyqzmdbE
:2018/07/28(土) 10:22:00 ID:hKDJBMdM0
乙です。
私、RPBと言うブーン系RPGの製作をしているものです。
よろしければこちらの作品の使用許可を頂けないでしょうか?お返事頂ければ幸いです。
305
:
名無しさん
:2018/07/29(日) 17:58:48 ID:W2IAUIy60
使用許可いうてもトリ無くしたから、今こうして書いてるのも続き書いてるのも本人かなんてわからないし
権利なんてないんだから好きにしていいと思いますよ。
まあしいて言うなら、これに出てくるのって基本技名も武器も元ネタありきだから、
この作品のというてもなんていうか、なんていうかですね。
306
:
◆QksyqzmdbE
:2018/07/30(月) 08:03:32 ID:lcK6gcSo0
なるほど把握です。
お返事ありがとうございます〜
307
:
名無しさん
:2018/07/30(月) 18:06:38 ID:EyjdF6r60
まさかの続き来てたのか!?
全部読み直してきたわ!
308
:
名無しさん
:2018/08/03(金) 19:14:40 ID:odiXiEFk0
ようやく過去作読み返しも含め読み終えたぜ・・・
ほんっとドックンがかっこよくて最高だわ
次回最終回か・・・なんだろうな、ずっと見たかったはずなのに今はすごく見たくないわ・・・
309
:
名無しさん
:2018/08/08(水) 19:50:30 ID:747n7cEA0
11%をすり抜けてまた5年後とかやめろよぉぉお?!
310
:
名無しさん
:2018/08/08(水) 19:52:40 ID:M3.TJHpU0
>>309
何月の土日とは言ってないよな?
311
:
名無しさん
:2018/08/09(木) 00:31:21 ID:OoHTyhqk0
モチベが足りない、どうして書く側は続きを知っているんだろう
知らなければ気になって続きを書こうと思うのに、世は不条理である
312
:
名無しさん
:2018/08/16(木) 01:17:37 ID:/F8oanmY0
まだかしら
313
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:32:53 ID:mUoFvK1k0
今だ!
うおおおお最終話とはいったけどエピローグのほうはまだ書いてない最終話の投下行っけえええ!!
314
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:33:15 ID:mUoFvK1k0
終話「極限一閃」
外に出張った部位につながる大窓を逆光に、その一つが振り返る。
影はゆっくりと内藤の方へと向き、手にした物を掲げる。
ξ゚⊿゚)ξ「遅かったな」
そして湯気が立つティーカップに口をつけた。
優雅に午前のお茶をたしなむ姿だった。
あまりにも想像の斜め下をゆく光景に、内藤は思わず固まってしまう。
(;゚ω゚)「な……なっ」
( ФωФ)「どうした、呆然として?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだぞ、お前もどうだ、この飲み物は中々だぞ」
( ФωФ)「ふはは、当然であろう、我が口にするものぞ」
(#゚ω゚)「いや何しとんじゃーーーい!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「茶だ」
(#゚ω゚)「それは見ればわかるお、ていうか見たまんまか!」
ξ゚⊿゚)ξ「わめくな、何が言いたいんだ」
(;゚ω゚)「だから何で、ツン、おま、だって時間稼ぎをって…!」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、無論挑んだとも、そして敗れた」
315
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:33:48 ID:mUoFvK1k0
( ^ω^)「……それで?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、それで仕方なく、こうしてお茶を頂くことになったのだ」
( ^ω^)「意味がわからないんだけど」
( ФωФ)「何、この余興を楽しむのにちょうどよい手合いであったのだ」
( ^ω^)「……余興?」
( ФωФ)「そうだ、お前も見るがよい」
様々な覚悟の上にやってきたはずがこの始末。
しばし二人を交互に見やり、やがて観念するように内藤は歩み寄った。
石造りのテーブルが鎮座するテラスに出れば、先ほどまでの薄暗さから一変、
陽光に目を細めながら、内藤はロマネスクが示したものを見る。
黒煙と、赤く染まる大地が覗く戦場の風景だった。
(;゚ω゚)「あれって……ドクオ…? ドクオがやってるのかお?」
もはやそこに、争いは存在しなかった。
内藤を追いかけようとしていた者たちは、軒並み足止めをくらい。
船を中心とした戦いにまで影響を及ぼしたのか、あるいはペニサスたちの説得が上手くいったのか、
わからないが、そこかしこで文字通りの火花が散るものの、明らかに数は少なく、小競り合いとも取れる程度。
しかし終わった訳では無い、あくまで膠着状態に陥っているだけだ。
何か切欠があれば、それはすぐにでも崩壊する。
316
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:34:23 ID:mUoFvK1k0
そう、良くも、悪くも。
( ФωФ)「うむ、見事であるな」
( ^ω^)「……何が、だお」
( ФωФ)「幾度もの試練を越えた、美しくも儚い、人の命の輝き」
( ФωФ)「それが、この光景を造ったのだ」
( ω )「……」
( ФωФ)「鍵の担い手は、あらゆる惑いを捨て去り、真なる管理者となった」
( ФωФ)「数千年の時を経ても成しえなかった偉業だ、見事である」
(# ω )「……お前が…」
(#゚ω゚)「お前が、それを言うんじゃ……っ…くそ!」
激情に駆られそうになるのを堪え、内藤は壁を殴りつけた。
何よりも、その言葉をその通りだと受け入れてしまう自分に気がついて。
ξ゚⊿゚)ξ「ふん……それで貴様はどうするつもりだロマネスク王」
( ФωФ)「うむ、そろそろ頃合か」
( ФωФ)「神の力というものを、下々の者達に教えてやらねばな」
ξ゚⊿゚)ξ「ほう…」
(;^ω^)「…っ!」
317
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:35:21 ID:mUoFvK1k0
ロマネスクは、ゆっくりとした動作で大剣を振るう。
内藤もすぐさま相手取るため構えを取るが、ツンの声は続く。
ξ゚⊿゚)ξ「だが、最早手遅れだな」
( ФωФ)「?」
ξ゚⊿゚)ξ「此方が何の考えもなしに来たとでも?」
( ФωФ)「ああ――――」
(;^ω^)「そ、そうだお、今頃もう」
( ФωФ)「王国と双国の同時発起の件だな?」
(;^ω^)「っ……な!?」
( ФωФ)「珠と交易の要となる二国が同時に真実を語り」
( ФωФ)「各国へ秘密裏に行われた書文と合わせ、国交会議の場を造る事で戦争を締結させる」
( ФωФ)「その為に消耗戦を選び、誘き寄せるように国へ篭った、いわば全てが時を稼ぐ為の事」
( ФωФ)「今頃世界は混乱の渦中であろうな、最早、この戦場の勝敗すら無意味」
( ФωФ)「誓賢の担い手の画策であろう?」
ξ゚⊿゚)ξ「……知っていたのか」
( ФωФ)「知らぬはずがあるまい? うむ、こちらも見事であるな」
( ФωФ)「流石は賢たる者、戦争というもの…いや、その歴史すら熟知していると見える」
ξ゚⊿゚)ξ「そこまで分かっていて、何もしなかったのか? 何故だ?」
318
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:36:20 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「言ったであろう、人の輝きだ、我はそれを否定せぬ」
( ФωФ)「抗うことは罪ではない、そこにあるのはただ、乗り越えるか、潰れるかだ」
( ФωФ)「そして彼らは越えて見せた、この光景こそがその証明であろう」
( ^ω^)「……なんだ」
内藤は思う。
敵意は未だある、だがこの話が、物言いが、先ほどまでの状況と合致した。
つまり既に、戦う意思をなくしている。
戦争は既に、話し合いという次のステージへ向かっていて、
ロマネスクという男はそれを理解している、ゆえの行為なのだと。
かつて同じ名で過ごした時に感じた、理解のある人物だと。
許す許さないではなく、少なくとも分かり合おうとできる。
それなら、と。
いつしか内藤は剣を下げていた。
( ФωФ)「では、行くとしよう」
( ^ω^)「……」
どうあるべきなのかは分からない、だけど、これでひとまず終わるなら。
内藤は歩き始めた姿を、複雑な思いを込めながら見送った。
ロマネスクは何も言わず、出口へ向かう。
319
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:36:47 ID:mUoFvK1k0
ξ゚⊿゚)ξ「……太陽の、何をしている?」
(;^ω^)「何って?」
ξ゚⊿゚)ξ「何を突っ立っている、お前は、奴を止めに来たのではないのか?」
(;^ω^)「そう…だけど、これで、あの戦いが止まるなら……」
ξ-⊿-)ξ「愚か者が、言葉に惑わされおって」
(;^ω^)「…え?」
( ^^ω)(……思い出せ、その前に奴は何と言った?)
問われ、背筋を走る冷たさに促されるように内藤は彼の背を追った。
そして駆けながら名を呼び、名の主はそこで立ち止まる。
( ФωФ)「どうした?」
(;^ω^)「……どこに、何しに行く気だお?」
( ФωФ)「言ったであろう?」
( ФωФ)「神の力というものを教えにいくと」
(#^ω^)「…だから、それがどういう意味かって言ってんだお!!」
( ФωФ)「痴れた事、我に反目する者達を、これより皆殺しとするのだ」
( ω )「っ……―――」
320
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:37:33 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「如何な策を講じたところで、真実の語り部無くしては意味もあるまい」
( ФωФ)「誓賢も、詰めが甘いという所か、いや、人間にしてはよく働いておるがな」
( ФωФ)「そもそも彼奴ならば、相手を虐殺する手段など幾らでも講じられたろうに」
( ФωФ)「あれだけ人を弄んでいながら、そうせんとは不思議よの?」
(#゚ω゚)「…!!!!!」
( ゚ω゚)「…っ」
( ‐ω‐)「………」
( ω )「………っ、…………ふーーーーー」
( ФωФ)「む?」
( ^ω^)「違う……」
( ^ω^)「ショボは、この戦争に巻き込まれた人を、少しでも助けたいと思ってるから」
( ^ω^)「敵も味方も関係なく、生きるために、これからを、未来を目指すそのために」
( ^ω^)「僕を信じてくれたんだお」
321
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:38:22 ID:mUoFvK1k0
ロマネスクを追い抜き、扉の前に立ち。
思う。
怒りに呑まれてはいけない、激情のままに戦えば、
それは自分さえも見失う、それだけは繰り返してはならない。
ドクオ、彼の心の強さには未だ届かないままだけれど、
憎しみや、怒りだけで力を振るわないと言った、彼の言葉に倣って。
成すべきを成す、その為に。
…だけど許せない。
怒声を張り上げてしまいたい。
だけど許されない。
だから、と。
( ^ω^)「……ええと、こういう時、なんだったかな」
( ^ω^)「仇をとるときには……そう」
剣を、切っ先を向け。
( ^ω^)「僕の名は内藤ホライゾン」
( ^ω^)「僕らを助け、救ってくれた亡き英雄達の名誉のために」
( ^ω^)「僕をここまで導いてくれた、友の絆に、信頼に応えるために」
( `ω´)「お前が神を名乗るなら、あるべき場所へ、あの世に送ってやる!!」
決意を、高らかに叫んだ。
322
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:38:51 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「お前もまた、人として立ち向かおうと言うのだな」
( ФωФ)「ならばよかろう、足掻いてみせよ、欠けし我が半身よ」
( ФωФ)「……それで? お前はどうする、再び挑むか?」
ξ゚⊿゚)ξ「む…」
( ФωФ)「二人でも構わんぞ」
と、ロマネスクは振り向き、テラスに佇んだままのツンへと声をかける。
しかしツンは首だけを小さく横へ振り、自分は既に負けた身であると告げた。
ξ-⊿-)ξ「口惜しいが、私ではそこの太陽にすら及ぶまい」
(;^ω^)「ツン……」
ξ゚⊿゚)ξ「だから代わりに見届けさせてもらう、この戦争の終結を」
( ФωФ)「そうか、うむ、許そう、しかと見届けよ」
ロマネスクが黒剣を振るい、地を掠めた切っ先に火花が散る。
構えれば、いくつかの黒い線が浮かび上がり、空間を歪ませた。
( ^^ω)『来るぞ』
頭に響いてくる声、内藤は小さく頷き、剣を両手に構えなおす。
差し込む光は弱い、しかし刀身は鋭く、白銀の輝きを携えている。
心臓の鼓動が、やけに大きく聞こえていた。
323
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:39:30 ID:mUoFvK1k0
ξ゚⊿゚)ξ「…ああ、そうさせてもらおう」
言って、ツンは手にしていたカップを放る。
小さく弧を描きながら、回転し、やがて地に落ちる。
パリンとした割れ音に、すぐさま剣戟の音が重なった。
ツンはその姿を目で追いかけるが、秒に行われる攻防の苛烈さに、
やがて嫌気がさしたのか目を伏せため息をついた。
ξ-⊿-)ξ(……まったく腹立たしいことだ)
視線を下げた間にも、耳には連続した音が響いてくる。
子供がお遊びにカップを叩くような、ふざけた剣戟音。
しかしかと思えば、金属音が止み、風切り音だけが鳴る瞬間がある。
見れば互いに、高速の一閃に対して身をひねり、屈み、迫る剣を避けていた。
(;^ω^)「―――……っ」
( ФωФ)「……む」
行動の読み合いすら見て取れず、その速度はただひたすらに、馬鹿げていた。
だが、そんな凄まじさの中にあって、しかし疑問が浮かぶ。
互角の戦いが未だ続いている、ように見える。
ξ゚⊿゚)ξ(……何故、神具を、能力を使わない?)
ひたすら速度を上げていく内藤に対し、ロマネスクはただ合わせるばかり、
聞いた話では、あの黒い大剣には強化の類の能力はない、
つまりロマネスクは、元々の身体能力だけで戦っているということ。
324
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:40:23 ID:mUoFvK1k0
そしてそれは、対峙する内藤自身が一番に理解していた。
(; ω )(……こ、の…!!!)
手加減されている。
いや、相手にされていない。
相手をしているだけで、していない。
一度距離を取った。
剣は届く、速度も劣っていない、むしろ得物の差で僅かながら上回る。
とはいえ同じ理由から、こちらもあの大剣をいなすので精一杯だった。
( ФωФ)「ふむ……やはり、この程度か」
(;^ω^)「…っ」
( ^ω^ω)「『そう言う割には、てこずってるじゃないか?』」
(;^ω^)(何を…! てかなんかこれ久しぶりっ!)
( ФωФ)「うむ、では少しばかり手を抜くことをやめよう」
(;^ω^)「む…っ」
( ФωФ)「ではゆくぞ、これで終わるような真似はしてくれるでないぞ?」
言うなり、ロマネスクが地を蹴り、大剣を打ち下ろす。
内藤がその行動に反応できたのは、頭上に刀身が落ちる寸前だった。
咄嗟に地面を転がるようにして、ギリギリ避けきった。
しかしそれだけ、反撃など考える暇もなかった。
325
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:41:20 ID:mUoFvK1k0
目では追えた、それが限界だった。
(;゚ω゚)(な、なんだ今のは…!!)
( ФωФ)「さあ立ち上がるがよい、もう一度だ」
言われるがまま、内藤は剣を支えに立ち上がる、
しかし正面、ロマネスクの姿が、その距離が瞬く間に詰められ。
横、薙ぎ払いの一閃。
避ける、暇はない。
受けるべく剣を振るう。
金属音、だが均衡は生まれることなく、押し込まれる。
それも当然、圧倒的速度を乗せた一撃は、同様の威力をも見せた。
内藤は地を蹴り、圧に身を任せるように投げ出し、大剣に振り回されるようにして、
吹き飛ばされ、幾度か地面を転がって、やがて壁に衝突することで停止した。
ξ-⊿-)ξ「………」
(;゚ω゚)「ぐっ……う」
(;゚ω゚)「そんな……こ、ここまで…?」
( ;^^ω)『差があるのか…!?』
( ФωФ)「何を驚いている、当然であろう」
(;^ω^)「ま、まだだ…!」
(#^ω^)「瀬川、もっと力を…! サンバースト!!」
326
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:42:54 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「無駄だ、そんなバラバラな意思で、神化などできるものか」
(;^ω^)「…っ」
( ФωФ)「剣と一体と成り、蓄えた力を身に宿す、それがその剣の本質だ」
( ФωФ)「だがお前は、恐れている、そればかりか距離を置こうとしている」
(;^ω^)「そんな、こと…!」
( ФωФ)「先ほども奴の人格が浮き出ていたな、一体となっていればああはならぬ」
( ^^ω)『………』
(;^ω^)「っ……!!」
( ФωФ)「能力だけの話ではない、己が手足とすべき剣を恐れ、感情にすら躊躇する」
( ФωФ)「そのような弱き心で、力を制する事なぞ、できるものか」
違うと言いたかった、しかし言葉の通り、湧き上がる力は微々たる物で、
先ほどまでとそう変わらず、頭にはどこか遠く、彼の声が響いていた。
( ФωФ)「…もう、諦めよ、内藤ホライゾン」
(;^ω^)「……だ、誰が! ふざけんなお!!」
( ФωФ)「真価も出せず、出した所で自我も保てず、そもそもが無謀なのだ」
(;^ω^)「………」
( ФωФ)「ここまでを歩んだ命の輝きは、素晴らしい物であった、それでよかろう?」
( ω )「……………」
( ФωФ)「我と共に来るも良し、去りたければ去れ」
327
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:43:33 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「あるいは……お前達、みな、もとの世界に帰してやる事もできる」
( ω )「……そんなこと、できるのかお」
( ФωФ)「何、簡単な話よ、召還者を殺せばよいのだ」
( ^ω^)「はっ……聞いた僕がバカだったお」
( ^^ω)『……だが内藤、奴の……言うとおりだ』
(;^ω^)(……お前も、さっきから何を言ってんだお!)
( ^^ω)『このままでは、無理だ、だから……』
( ^ω^)(それは嫌だって言ったお……)
( #^^ω)『状況を見ろ! もうそんな場合じゃ…!!』
(#゚ω゚)「焦って状況が見えてないのはお前の方だ瀬川!」
( ФωФ)「む?」
ξ;゚⊿゚)ξ「…!?」
(;^^ω)『な、何を…!』
(#゚ω゚)(お前を消すだって? そもそもお前、どうやって消せってんだお!?)
(#゚ω゚)(僕が願えば消えるとでも思ってるのか? それならお前、とっくに消えてるだろ!)
(;^^ω)『っ!!』
( ゚ω゚)(この場所で、僕はお前に消えろと言った、でもお前は居るじゃないか)
328
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:45:21 ID:mUoFvK1k0
( ω )(そうした所で、消えたのは繋がり、力だけだ)
( ω )(今この場で、また戦う力を失くせってのかお…!)
(;^^ω)『………あ、ああ…そう、だな』
(;^^ω)『……すまん』
( ω )「いいお…だけど、もう、わかったお」
( ФωФ)「相談は終わりか?」
( ^ω^)「ここからさ」
( ω )「…………瀬川」
( ω )「覚悟、決めろ、僕は決めたぞ」
(;^^ω)『…お前…!!』
もう、やるしかない。
それ以外の手はない。
内藤は目を閉じ、剣を構える。
思い出せと。
自分を失ったあの日、それでも尋常ならざる力を感じたあの感覚を。
自分を失ったその間、当然のようにその力を制し戦ったあの感覚を。
目を閉じているのに、周囲の様子が理解できる。
全身の存在がわからなくなるほど、手足が軽くなる。
けれど感触は、感覚は鋭く、額から頬にかけて熱が走る。
手足にも痺れのような、軋むような感覚、体格すらも書き換えて。
329
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:46:36 ID:mUoFvK1k0
( メω-)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「あれは……」
( ФωФ)「愚かな……同じ事だとわからんのか」
(#メωФ)「同じかどうか、確かめてみろ!!」
言葉と同時に、その場に砂埃だけを残して、内藤の姿が掻き消えた。
次いで重厚な金属音がロマネスクの振るう剣との間で響く。
(#メωФ)「…は、あっ!!」
( ФωФ)「ほう…」
大剣が反対方向へと弾かれる、その隙を逃すまいと追撃の一閃、
ロマネスクはスウェーのような動作でそれを避けた。
更に着地と同時に身を回し、遠心力も加えての連斬、
そして今度は、互いの剣が中空でぶつかりあい、弾きあう。
弾きあった剣線は距離を取り、また衝突する。
一度、二度、と今度は奇妙な間を置いて、音と閃光が弾ける。
まるで空中でぶつかりあうボールのように、
瞬間的な衝突が、その回数を速めながら続いていく。
(#メωФ)「見える…動ける…! そうだ、これなら…!!」
( ФωФ)「うむ、確かにこれは我に匹敵する力よ」
( ФωФ)「だがいつまで持つかな」
330
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:47:56 ID:mUoFvK1k0
(#メωФ)「……そんなもの」
(#メωФ)「お前を、ぶっ倒すまでだ!!!」
激しい金属音は、石造りの空間によく反響し包んでいく。
もはや居るだけで鼓膜を叩かれ苦痛を感じる場となった。
しかしツンは平然としたまま、その戦いの様子を眺めていた。
どれだけぶつかり合ったのだろう、やがて変化が起きた。
( メωФ)「…」
ξ゚⊿゚)ξ(止まった?)
(;メωФ)「っ…!!」
弾かれ距離を取った内藤の動きが、僅かな間ではあるが停止したのだ。
それも、どこか不思議そうに、周囲を伺いながら。
すぐに行動を再開したものの、徐々に、その頻度があがっていく。
(;メωФ)「く、そ……また…っ!」
頭を振るう、しかし頭にかかる靄のようなものは晴れない。
先ほどから時折、内藤は踏み出す理由を見失いそうになっていた。
原因はわかっている。
覚悟の上だった。
331
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:49:08 ID:mUoFvK1k0
だからその前に、と。
けれど、すべての力を振り絞ろうとする、その度に。
(#メωФ)「でやあああああああああああああああああ!!!!!!」
(;ФωФ)「……むっ…!!」
その度に、欠けていく。
自分が欠けていく。
もう、友人がつけてくれた呼び名も思い出せない。
それを恐ろしいと思う自分すら、見失ってしまった。
けど、わかっている、わかっていた、だから今回は大丈夫。
(;ФωФ)「くっ……何故、まだ戦う、どうなるか分かっているのか?」
自分はどうなっても、ロマネスクを倒す。
そう、それだけを、ただ忘れないよう願い続けた。
そしてもう少し、もう少しで届く。
現に奴にも疲れが見える、力が上回る瞬間もある。
先ほども剣を押し切り、体を掠めた。
次で決める、それで駄目だならその次で、今度こそ。
死ぬ訳では無いのだ、一度は帰る事が出来た、
ならもう一度、すぐには無理でも、何時の日か。
何のために、倒さなければならないのかも、もうわからないけれど。
希望の為なのだから、大丈夫だと。
332
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:50:40 ID:mUoFvK1k0
更に剣を振るう。
誤算だったのは。
未だ倒しきれないほど、ロマネスクの底が見えない事と。
( ФωФ)「このままでは、記憶や人格では済まぬ、廃人となろう」
( ФωФ)「それでは、あまりにも惨めであるな……仕方が無い」
( ФωФ)「侵断の剣、世界を分かつ銛よ」
ここまで、未だ神具を使用していなかったという、現実。
( ФωФ)「我が前にその力を示すがよい!」
そして、大剣からおびただしい数の黒い線があふれ出した。
ロマネスクを中心に、それらは一度広がり天井や床に張り付いては蠢く。
(;メωФ)「う…うわっ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「なん……だ、これは!?」
黒線の隙間から覗く向こうの景色は、すべてがズレて、歪んでいる。
まるで、割れて散らばったガラスに映りこむ世界のよう。
333
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:51:25 ID:mUoFvK1k0
次いで、広がった黒線が今度は収束を始め、大剣に纏わりついていく。
ロマネスクは一度、剣を振る。
何の力も込めていない、軽い所作だった。
そんな剣線をなぞる様に、複数の黒線が飛び、壁に張り付いた。
瞬間、その境目ともいえる箇所が上下左右にずれた。
もう一度、返す刃で同じ剣線がなぞられる。
傍目に見れば、ただ剣を上下に振っただけ。
たったそれだけの動作で、城砦の重厚な石壁と天井の一角が切り抜かれ、
瓦礫となった石が崩れ、大きな穴が開いてその一角に陽が差した。
( ФωФ)「さて…」
ロマネスクは対する相手を改めて見据え、踏み出す。
対する内藤は、思わず後退、あとずさりして距離を取ってしまう。
あの結果を見て、壁を斬るだけだなど思えない。
もしもあの線が人体に触れ、剣を振るえば、距離すら関係なく、
恐らくは当然のように、あの瓦礫と同じ末路を辿るだろう。
どうすればいい、どうすれば、そう思う間もなく。
( ФωФ)
ロマネスクが、目の前に立っていた。
今度は、何の挙動も見えなかった。
しいて言うなら足元に剣を向けた程度のこと。
334
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:53:15 ID:mUoFvK1k0
だがもっとおかしな事実に気付く、ロマネスクは先の位置から移動していない。
つまり移動しているのは、内藤自身のほう、ということ。
(;メωФ)「……は?」
( ФωФ)「慌てるな、お前との間の世界を、空間を断っただけのこと」
(;メωФ)「く、空…間…? な、なに、言って…」
そして、動揺し後ずさる内藤が手にした剣へと、大剣が突きつけられた。
同時に渦巻く黒線が伸びゆき、白銀の刀身へと巻き付いていく。
不味い、反射的に身を引くが、それも遅く。
キン、と澄んだ音を響かせながら、折れた剣が地面に向かい、
切っ先を小さく地面に差し込んでから、カランと倒れた。
根元から折られた刀身が、みるみる輝きを失っていくのを、
内藤は震える体を止められないまま、呆然と眺めていた。
(;メωФ)「あ…あ、あ……そ、んな……」
自分の手に残る部分も、すぐにくすんだ色となり、
刃こぼれがいくつも生まれ、更に崩れていく。
( ФωФ)「我が半身よ、せめて人のまま、眠るがよい」
( ФωФ)「お前は神である我に最後まで抗い、立ち向かったのだと、誇りながら」
(;メωФ)「……う、うう…っ」
ロマネスクが、ゆっくりと剣を持ち上げていく。
それはまるで、断頭台の刃のよう。
335
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:55:17 ID:mUoFvK1k0
ξ゚⊿゚)ξ「……なるほどな」
ツンは遠巻きに眺めながら、思う。
あれが、奴の求めた力、あれだけ神具を集めて尚、求めた神具。
ロマネスクという男の身体能力に加えて、あの理不尽そのものといえる能力の剣。
成程、神を名乗るのも伊達ではないと。
もはやこの世界に、あの男に敵う者は存在しないのだと、理解しながら。
ξ゚⊿゚)ξ(……だが)
ξ゚⊿゚)ξ「気に入らんな」
ξ#゚⊿゚)ξ「……太陽、いや、内藤ホライゾン!!!」
( ФωФ)「む?」
(;メω )「……え、な、いとう…?」
ξ#゚⊿゚)ξ「貴様は、いったい何をしに来た、こんな結末でいいのか!」
ξ#゚⊿゚)ξ「その身を捧げた英雄達の名誉と、お前が言ったのだぞ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「それがその様は何だ! それで、お前は向こうで会った者たちに何と言うつもりだ!!」
(;メω )「う……く、で、でも……もう」
ξ#゚⊿゚)ξ「同じ事を繰り返し、何も果たせず、無気力に殺されるつもりか、恥を知れ!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「死ぬなら、その前に、せめて最後まで彼らに誇れるよう、抗ってみせろ!!」
336
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:58:24 ID:mUoFvK1k0
叫びと共に、割れ音が響いた。
音の正体は、ツンが握っていた水晶剣の砕けた音だった。
(;メω )「…これは…」
そして、内藤の目の前に、先ほど砕けたはずの水晶剣が浮かんでいた。
ξ゚⊿゚)ξ「月鏡アロンダイト、私の命と共に、お前に預ける!!」
ξ゚⊿゚)ξ「剣が必要なら、それを使え!」
ξ゚⊿゚)ξ「そしてそれでもお前が敗北し、息絶えたなら、返してもらおう」
ξ゚ー゚)ξ「その後は、私も命を賭ける、安心して死ね」
(;メω )「命って…」
ξ゚⊿゚)ξ「元より時間稼ぎが目的、それを果たすだけだ」
( ω )「………」
ξ゚⊿゚)ξ「さあ、剣を取れ! 初めて相対したあの頃と違うというのなら、見せてみろ!!」
( ω )「……ああ」
なんてことだと、笑みを浮かべて内藤は顔を上げた。
安心して、戦って死ね、そんな、あまりにも雑で、乱暴な言葉に、
これほどまでに勇気を得て、そして力が沸くのを感じてしまうなんて。
( ^ω^)「ああっ……遠慮なく借りるお! ツン!!」
337
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 18:59:29 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「………そうか、ここで、お前がその剣を手にするか、そう…か」
( ФωФ)「…ふ」
(#^ω^)「ロマネスク、お前の言う人間の、最後の輝きってやつを…!!」
(*ФωФ)「ふふ、はははっ、面白い!! いいだろう…!!」
(#^ω^)「みせ――――――――――――」
浮かぶ剣を握り、両手に剣を携えて、頭上の剣に視線を向けて、
内藤は立ち上がりながら、迎え撃つべく剣を。
今。
338
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:01:16 ID:mUoFvK1k0
その瞬間。
刃を失った剣と。
刃を生み出す剣が。
その手に、握られた。
339
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:02:01 ID:mUoFvK1k0
『内藤』
声がした。
( ^ω^) ……?
『約束の……今がその時だ』
(;^ω^) 何言ってるんだお、はせが…
( ^ω^)……
( ^ω^) はせがわ……?
ふと思う、何をしていたのだろう。
精々、まばたきをした、ほんの一瞬視界が暗くなって。
そして。
そして?
340
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:05:30 ID:mUoFvK1k0
『ああ、俺の名はハセガワ』
『理解したんだ、すべて、思い出したんだよ、内藤』
『俺が誰で、そして何故、お前だったのかも』
( ^ω^) 僕であった理由…?
『ああ、悠久の時の中、もはやどちらが俺だったのかも定かではなくなってしまったが』
( ^ω^) どちら…ってどういう意味だお
『だが確かなのは、俺と奴がかつて同じ、一人の人間として、この剣を手に戦ったこと』
( ^ω^) 奴……?
『続く戦乱に心折れ、欠けた刃と共に二つに分かれたモノ』
『故にこの剣は、今も管理者と繋がっている、故に他の誰も、この剣を手にすることはできない』
『はずだった』
(;^ω^) ちょっと話が難しくてよくわからんお! ちょっと、いい加減姿を…!
341
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:07:27 ID:mUoFvK1k0
『そう』
振り向いた先に、彼は居た。
その姿に、内藤は凍りついた。
( ^ω^)『違う世界から、もう一人の自分がやってくる、その日までは』
(;゚ω゚) …ハセ…ガワ……? え、その、顔…は…
( ^ω^)『そうだ、奴も言ったろう、半身と』
( ^ω^)『そう、奴は、ロマネスクという男は……』
( ^ω^)『かつての俺自身、そして、同時に、俺は―――お前だ、内藤ホライゾン』
( ^ω^)『違う世界に存在し、更に同じ時間軸に存在する、本来出会うはずの無い存在、それが』
(;^ω^) もう一人の…異世界、僕…?
( ^ω^)『そうだ、それゆえに、お前はこの剣に選ばれた』
( ^ω^)『いや、既に、管理者となっていた』
( ^ω^)『この―――――成王剣のな』
342
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:08:46 ID:mUoFvK1k0
(;^ω^) その……せいおうけん、って、何だお、太陽の剣…ガラティン、じゃないのかお?
( ^ω^)『それは分かたれた時につけられた仮の名だ』
( ^ω^)『失われた刃の輝きを、光を求める剣として』
( ^ω^)『そしてもう片方、折れた刃は時を経て別の形となった』
( ^ω^)『自らの帰る場所を探すように、刃を生み出し続けながら』
( ^ω^)『そして今、それらは一つとなった』
(;^ω^) それが……成王剣…?
( ^ω^)『そうだ、選定の意思によって手にする事ができる剣』
( ^ω^)『手にしたその人間を、王とする剣』
( ^ω^)『名を、成王剣コールブランド』
( ^ω^)『お前は意思の台座よりこの剣を引き抜いた』
( ^ω^)『これで、今度こそ正真正銘、お前はこの剣の、成王の管理者となった』
343
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:11:49 ID:mUoFvK1k0
(;^ω^)……それって…ハセガワ、お前は…
( ^ω^)『俺は、かつて剣と一体となった、その残滓に過ぎない』
( ^ω^)『真の管理者が生まれ、剣と一つとなったなら、消え往くが定めよ』
( ω ) そんな……
( ^ω^)『……やれやれだ』
( ^ω^)『お前なぁ、忘れてないか? お前たちは、神具をこの世界からなくすのが目標だろ』
( ^ω^)『ならどのみち、これが終わったらお別れなんだ、何を悲しむことがある?』
(;^ω^)それは……でも、そんな急すぎるお
( ^ω^)『……ああ、でもまあ、この意思がある限り、お前の戦いを見守っているから』
( ^ω^)『もう、こうして合間見えることはなくても、それは絶対だ、ここに居る、見ているから』
( ^ω^)『だから、最後に見せてくれ、お前が打ち勝つ、その先を、お前のこれからってやつをさ』
344
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:13:44 ID:mUoFvK1k0
( ω )………
( ^ω^)わかったお、どのみち消える、それが、お前の……望みなら
( ^ω^)「今すぐに…!」
(#^ω^)「――――て、やるおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
両手には、いつしか一振りの剣が握られている。
金色の柄と、眩い金色の刀身が輝く剣だった。
振り下ろされる黒い大剣に、黄金の剣が重なった。
ぶつかりあった剣戟が、押し合う形で止まる。
体勢を見れば圧倒的不利であるはずの内藤だが、押し負ける気配は無く。
頭上にて交差する剣の向こう、対するロマネスクを見据えた。
( ФωФ)「その輝き…この力…まさに、かつての我が神具」
( ^ω^)「そうだ、かつてお前が切り捨てた、そして、その剣に対抗できる唯一のものだお」
( ФωФ)「どうかな、いかな神具とて……このエアの前では!」
345
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:15:30 ID:mUoFvK1k0
距離をとるロマネスクと、それを追う内藤、
その間にも幾度かの剣戟が繰り返された。
しかし先ほどまでとは様子が違う。
弾かれながら、ようやく防いでいた大剣の一撃を、
今は体制もそのまま、ついには片手で捌いてみせている。
そんな姿に、ロマネスクはついに攻撃の手を止めた。
( ФωФ)「…そうであったな、衝撃すらも、取り込んでしまう、それが」
( ^ω^)「ああ、ハセガワが教えてくれた、この剣の本当の力を…!」
太陽と呼ばれていた頃の、光を吸収して力に変える能力とは、
いわば本来の能力の、こぼれだす様なほんの一滴でしかなかった。
この、黄金の聖剣がもつ本来の能力は、吸収。
王たる者が他者から富を奪う事で大きく、強くなるように、
この剣もまた、他者の力を奪うことで王たる抜き手に力を与える。
あの雪国の闘技場の舞台で、剣が打ち砕かれるほどの威力を受けた事で不完全に発現し、
衝撃自体を取り込み、わが身の力と変えて彼の女王を打ち倒したように。
あるいは戦場で、敵対する者が放つ雷を取り込んだように。
力となるエネルギーを、質量の有無に関係なく吸収し、己が力とする。
戦えば戦うほど、剣にダメージを与えれば与えるほど、
どこまでも強く、無限進化を促す究極のカウンター能力をもつ神具。
それが神具たるコールブランド、その真価であり。
ハセガワと、そしてショボンが内藤ならばと託した理由。
346
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:16:45 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「だが、空間、そして事象すらも断ち切る、このエアの前ではどうだ…!」
(;^ω^)「っ…!?」
黄金の剣に、蠢く黒線がふたたび絡み付いていく。
振りほどこうとするも、質量もなく、ただのホログラムのような存在は、
引き剥がすことも、能力によって吸収することもできない。
見れば刀身は、絡みついた箇所からズレが徐々に大きく。
( ФωФ)「神は二人と要らぬ、これ以上力を高める前に……消えよ!」
ロマネスクが剣を振るう。
(#^ω^)「いや、いいや…! 僕は、僕らは……もう折れたりしない! するもんか!!」
内藤は迷うことなく前に踏み出し、受けるべく剣を眼前に。
瞬間。
衝撃が、圧力となって空間を満たす。
火薬の炸裂音にも似た音が響いた。
347
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:21:04 ID:mUoFvK1k0
( ω )「………」
( ω )「………うぅ」
( ФωФ)「……まさか、な」
( ФωФ)「驚いたぞ、よもや、この世界を裂く力までも……」
たしかに、あの黒線は防ぐ術がない、あの割断も不可視の現象ゆえ避ける術も無い。
だが、剣が折られるその瞬間は、その一瞬だけは、確かに、世界をも裂くという『衝撃』が発生する。
故に今、内藤が剣から感じているのは、まさに究極の力。
そして放たれる剣は。
(#メω゚)「う、ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
極限まで高められた、一閃となる。
昂ぶる力を抑えきれず放ったそれは、ただ虚空を切り裂くだけの結果となった。
しかし斜めの剣線は、天井から床までを真っ直ぐに刻み、幾度かの砂埃と地鳴りの音を響かせ、
その空間のおよそ半分が文字通りに切り取られ、ゆっくりと落ちていった。
見れば、下は一階層分まるまる切り取られており、二階層の半ばまで覗いている。
そして地上では、突如として、最上部が真っ二つに断たれる異常を目撃し、
どよめきが広がっていく、見れば大穴が斜めに空いている、そんな突然の異変と、
落ちてきた巨大な瓦礫に動揺する声が上がっていた。
348
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:23:27 ID:mUoFvK1k0
ξ;゚⊿゚)ξ「……き、斬った、のか、城ごと…!」
(;メω゚)「っ…づ、う」
( ФωФ)「く、くく……いいぞ、久しく感じていなかった感覚だ」
( ФωФ)「流石は我が半身……我が全力で相手をするに相応しき者よ!」
(;メω゚)「ふー…う、ううう…!!!」
( ФωФ)「どうした、何を堪えている、神化の力を解き放ってみよ」
( ФωФ)「そして挑んでくるがよい、かつて神々を制し世界を救ったこの我に!!」
(;メω゚)「うる、さい…! 僕は、お前と同じになんか……ならない…!」
(#゚ω゚)「なってたまるか! 僕は、人間として、お前を……倒す!!!」
(#゚ω゚)「そうだ、今度こそ……本当の、究極進化を…!!!」
額から浮かんでいた、赤い腫れが引いていく。
神化の証と言わんばかりに浮かんでいたその痕が、中心、内藤の目に向かって。
代わりに、その黒い瞳の色を、鮮烈なまでの赤い輝きに変えて。
(#^ω^)「行くぞ、ロマネスク…! 千年越しの決着を、ここでつけてやる!!!」
( ФωФ)「フフ、フハハハ!! いいだろう、受けて立つぞ人間!!!」
どちらともなく駆け出し、最初の斬りあい、その一撃で、砦の最上部は崩壊した。
下の階層へ崩れ落ちる瓦礫の上、ツンは外を見る。
ξ-⊿゚)ξ「やれやれ、見物人のことも考えてほしいものだ」
349
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:24:18 ID:mUoFvK1k0
二人は宙に投げ出され、落ちていく。
その過程でまた斬り合って、また離れた。
( ФωФ)「下で待っているぞ」
ロマネスクは宙を切る、黒い歪が生まれるや否や、その姿が掻き消えた。
姿を探せば、地上の岩場、その一角から内藤を見上げている。
(;^ω^)「くそっ…ズルい…!」
(#^ω^)「エアロバリア、オン…!!」
その場所へ向けて、渦巻く風の道を造れば、
砂を巻き上げ、茶色い巨大な竜巻が生まれ両者の姿を覆い隠す。
続けざまに起きた城砦の崩壊と、巨大竜巻の発生。
既に収まりかけていた戦場は、それで完全に停戦状態と化した。
代わりに場はひたすら騒然とし、あちらこちらで混乱が起きている。
(;'A`)「おわわっ、また瓦礫が! 石が!」
(;'A`)「って……あれは…ブーンか!?」
350
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:25:08 ID:mUoFvK1k0
('、`*川「あれは……」
<_フ;゚Д゚)フ「オイオイオイ、今度は何だ、どうなってんだ!?」
( 凸)「あの竜巻さー、見覚えあるわ」
( 凸)「俺もだ、あんまりいい思い出じゃねーけどな」
(´・ω・`)「やれやれ、ちゃんと働いてるみたいだね」
川;゚ -゚)「……な、なんだ、まさか、空で戦ってるのか…?」
(´・ω・`)「いやぁ、落ちてるだけでしょ」
(*'ω' *) 「ポヒヒィーーーン!!!」
( - -)「ほんとにアレ、大丈夫なの?」
ノパー゚)「問題ないわよ、この私が見込んだ子なのだから」
lw´‐ _‐ノv「だから心配なんだけど…」
lw´‐ _‐ノv「ていうか、もう仮面取ってもいいよね、いい加減邪魔だよ」
ノハ;゚⊿゚)「取ってから言うな」
351
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:26:17 ID:mUoFvK1k0
やがて竜巻は舞い上がった砂だけを残して消えた。
視界の悪い空間に、音だけが遠く響く。
地鳴りのような音が響いては大地が揺れる。
見れば他の城砦がまた一つ、ひび割れながら崩壊する。
辺りの岩肌に謎の線が走れば、それらは歪に砕かれて崩れていく。
当初は近づいて様子を伺おうとした者も居たが、そんな彼らの近く、大きな岩山が三つほど、
見えない力により、まとめて切り崩された事で身の危険を察したのか、すぐに逃げ出した。
気付けば、誰もが争いを忘れてその光景を眺めていた。
一体何が起きているのか、何が暴れたらこうまで、
あれほどあった、切り立った岩山の群れが更地となってしまうのか。
と、その時。
砂埃の中から二つの影が飛び出した。
352
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:27:35 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「むん…!!」
一つは束ねられた黒い線を鞭のようにしならせ、その跡を追うように斬撃を放つ。
大岩や瓦礫を砕き割りながら、鋭利な線がもう一つの影へと伸びる。
そして地面を割る線が、黄金の剣を構える姿にぶつかると、
破裂音だけを残して霧散し、互いの間に綺麗な亀裂を生んだ。
(#゚ω゚)「うおりゃあ!!」
お返しと言わんばかりに、黄金の剣が、離れた相手に向かって振るわれる。
直線だった亀裂が大きく幅を広げ、見えない衝撃に吹き飛ばされるように進んでいく。
合間に存在した大岩は、その衝撃で砕け散り、砂埃をさらに巻き上げる。
そして互いに地を蹴り、衝突する。
それだけで、凄まじい衝撃が周囲に発せられ、地は陥没し、瓦礫の山がまた崩れていく。
山を消し飛ばすほどの力が反発し合う結果だ、遠巻きに居ても尚、圧だけで人が尻餅をついた。
( ФωФ)「……よくぞ、ここまで」
( ^ω^)「……」
ロマネスクは息を切らしながら、眼前の内藤を見る。
対する内藤は息も乱さず、ただ、周りの様子を見ていた。
353
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:28:51 ID:mUoFvK1k0
( ^ω^)「…僕の力なんて、無いようなもんだお」
( ФωФ)「だが結果的に、お前は我をも凌ぐほどの神化を果たした」
( ФωФ)「最後に忠告しよう、今、ここで我を討てば、お前は不幸になる」
( ФωФ)「これほどの力を見せ付けたのだ、人のまま、人として生きる事などできぬ」
( ФωФ)「恐れ、妬み、やがてその悪意がお前を殺す、かつての、我が半身のようにな」
( ^ω^)「……」
しばし固まっていると、どこからか野次めいた声が聞こえてくる。
行け、やれ、負けるな等の声援から、何してんだ、さぼるな、とブーイングまで。
聞き覚えのある声ばかり、なんだかにやけてしまう。
けれどその反面、そんな声が聞こえてしまうほどに、不気味なまでの静寂がそこにあった。
( ФωФ)「現に見ろ、周囲の目を、誰もがお前に畏怖の目を向ける」
( ФωФ)「友の存在とて、今は救いになろう、だがもし、それを失くしたならば、どうだ」
( ФωФ)「お前は、永遠の孤独を背負うことになる」
( ω )「………」
( ФωФ)「必要なのだ、信仰されるべき神が、絶対の存在が…!」
354
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:30:13 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「見よ、世界は今、試練に直面し、一つとなろうとしている」
( ФωФ)「今が好機なのだ、我か、お前でも良い、絶対の力をもつ者が君臨するのだ」
( ФωФ)「全ての者が神を信仰し、その神が統治する世界、これこそあるべき平和の形だ」
( ^ω^)「まるで、お前がそう仕向けたみたいな言い草だお」
( ФωФ)「無論そうではない、あくまでこれは、お前たちがたどり着いた結果だ」
( ФωФ)「だからこそ、これが最後の選択肢となる」
( ФωФ)「内藤ホライゾン、我が半身よ、もう一度、我と共に歩まぬか」
( ^ω^)「んー……」
( ^ω^)「悪いけど、話が難しくてよく聞いてなかったお」
( ^ω^)「まあ、なんせ友達にも言われるくらいだから、考えなしの大馬鹿者だって」
( ^ω^)「実際、本当に、そうだな…って、思うことばかりでさ……」
( ^ω^)「僕の考えなんて、きっとろくでもない事にしかならないって、思うんだお」
( ^ω^)「…だから僕は、ただそいつの為に、そいつの言うとおりにしようって思ってるんだお」
( ^ω^)「そしてお前は、そいつの考える世界にとって、邪魔なんだお」
( ^ω^)「だからお前を倒すよ、理由も、大義も関係ない、あとの事なんて、全部丸投げだお」
355
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:30:49 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「そうか」
返事を聞き、ロマネスクは小さく頷いた。
口惜しさや無念は感じられない、ただただ、受け入れるように。
そして空を眺めている。
雲ひとつ無い快晴の空は、こんな殺し合いの場とは不釣合いに青く、綺麗だった。
ドクオの言うように、完全な悪は存在しないのかもしれない。
目の前の男にも、きっと計り知れない何かがあったのだろう。
ハセガワの、僅かな記憶と想いが確かなら、彼は千の年を越えた存在。
人の理で測れるものではないのだろう。
だが、それでも許されないとも思う、罪は、やはり罪なのだから。
容赦はしないと、決意を新たに見据える空に、異様なものが浮かんだ。
(;゚ω゚)「…は?」
青空に、黒い線が走っている。
山の彼方から続くそれは、向かう地平線の彼方まで伸びていた。
そして線の出所は、目の前に立つ男が掲げる大剣から発せられている。
(;゚ω゚)「何を…おま!?」
356
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:31:54 ID:mUoFvK1k0
( ФωФ)「ふ、ならば、神殺しがどういうものかも、教えてやろう」
( ФωФ)「世を統べる神を殺すという事は、世界を導く光が消えるという事」
( ФωФ)「その責を、どう果たす、人間よ!!」
(;゚ω゚)「てめ、やめろこの…!!!」
( ФωФ)「もう遅い!!」
すぐさま駆け出すが、ロマネスクの掲げる剣はすでに振り下ろされ。
剣線を止める事はできず、大剣が地に突き立った。
その両腕を切り落とすが、ロマネスクは笑みを浮かべたまま空を見る。
空に走る線を中心に、亀裂が広がっていく。
青空が、堕ちていく。
ひび割れるように、剥がれ落ちるように。
(;゚ω゚)「あ、あ…っ、こ、んな…! 嘘、だお…!?」
( ФωФ)「は、ハハ、フハハハハハハハハハ!!!!!!!!」
(#゚ω゚)「ろ、マネスクぅ……お前ぇ…っ!!!」
( ФωФ)「これぞ、最後の試練……」
357
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:32:41 ID:mUoFvK1k0
内藤は剣を振るう。
その首が数度回転しながら、血を撒き散らし、落ちていく。
生首は、それでも言葉を続けた。
「見事、越えてみせよ」
(#゚ω゚)「くっ……こ、この、やろ…!!」
血の海に沈む姿を、影が覆っていく。
空の落下は勢いを増して、その向こう、一切の明かりの無い常闇が広がっていた。
その闇が広がるにつれ、地上も影で覆われて、夜がくる。
しかし月も、星も存在しない夜空はただ、どこまでも黒く。
影から逃れようと人が最後の明かりに群がっていく。
悲鳴と、苦悶が、世界に満ちていく。
もはや敵も味方も無い。
争いのない世界が訪れようとしている。
゚ω゚)「みえ…ない……全部、消えて、いく」
遠い空から、何もなくなっていく。
地平線も、山も、境が無い、一面の黒。
世界が、闇に閉ざされていく。
人が小さな灯りを焚いて、光を見出さんとする。
しかしこの暗闇は影ではない、そのせいなのか、
光は一切広がらず、小さな点にしかならず辺りを照らさない。
悲鳴がまた、響いてくる。
358
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:37:59 ID:c.a5104g0
ロマの凄い悪あがき
359
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:51:21 ID:mUoFvK1k0
ω )「僕が…僕が…もっと早く」
「僕の、せいで…」
あんな、余計な話などするべきでは無かった。
勝機と見た瞬間に、迷わず首を跳ねてしまうべきだったのだ。
甘さが、決意の弱さが、この結果を招いた。
果たしてこの規模はどれほどの物なのだろう。
この周囲だけ、そんな可愛いものである筈が無い。
ともすれば世界中、すべてが闇の中。
光の無い、永遠の世界。
「さ、むい……」
「ちがう、こんな、こんな世界にするために、戦ってきたんじゃ……」
最後の最後で、またしても、失くしてしまった。
それもこんな規模で、もう、どうしたって償えない。
「…僕のせいで……」
「ごめん……ごめんなさい……ジョルジュさん、僕は、結局……!!」
360
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:52:56 ID:mUoFvK1k0
何もない世界でひざまづき、いつしか剣をも落としていた。
カラン、カランと音が鳴り、いつしか足音が側で聞こえた。
「ブーン、大丈夫だ、あとは俺が…」
「………え、ドク、オ…?」
俯いていたから、そして光が広がらないから気がつかなかったけれど、
ふりむけば、光る線をもつ誰かの影が立っていた。
「ああ、言ったろ、ここは、任せろって」
そこは、気付かなかったけれど、城砦前。
最後にドクオと別れた場所だった。
361
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:54:09 ID:mUoFvK1k0
「だ、だけど……もう、こんな…」
「ずっとさ、考えてたんだ」
「世界を焼くって、どういう事だろうって」
「世界中に火をつける事なのか、焼き払う事なのか」
「でもそれって、単に地上にあるものを焼いてるだけだよな」
「だからさ、世界を焼くってのは……きっと」
光の柱が、闇を貫くように天へと昇っていく。
どこまでも、どこまでも高く、空をも突き破るように、どこまでも。
「太陽だよ、太陽なんだ、世界を焼くって」
「いつだって俺たちを、世界を、焼き焦がしながら」
「そして、照らしてくれるもの」
362
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:55:23 ID:mUoFvK1k0
輝く柱が闇夜にかかる姿を、今、世界中の人間が見つめていた。
自分の姿さえ見えない世界で、それは紛れも無い希望であるが故。
「こいつはさ、そんなのと同じ事ができるんだって、すごいよな」
「だから、もうこの剣は、破壊の剣でも、災いの杖でもない」
「もう、誰にも呼ばせない、こいつは……今この時から、世界を照らす永遠の光」
「永光の剣」
(♯'A`)「レーヴァテインだっ!!!!」
光の柱が闇を斬り裂いていく、まるでカーテンを開くようにして、
輝きのあとに眩しいほどの青空が追従していく。
更にその後を追いかけるように、地上の影が消えていく。
地上と、そして再び現れた空の太陽、二つの光が世界を満たす。
どよめき、そして、一斉に歓喜の声が溢れる。
天へと昇った光の柱は、小さな粒子になって空を流れ、消える事無く振り続ける。
それはまさに、奇跡と呼ぶに相応しい光景だった。
363
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:00:05 ID:mUoFvK1k0
( ;ω;)「あ、ああ、まぶ、まぶしい…! 眩しい!?」
(;'A`)「よお、って……おま、なんだその目、真っ赤だぞ!?」
( ;ω;)「……ひかりが……戻って……あぅ、あ」
(;'A`)「てか、そんな、泣くなよ……まったく、どっかの誰かさんみたいだ」
( ;ω;)「だっで、だっでもう、だめだど…!!」
( ;ω;)「ありがとうドクオ、ありがとうだおーーーー!!!!」
(;'A`)「お、おい…! あーもう、締まらないなぁ!」
( ;ω;)「うわああああああああああん!よかった、よかったよおおお!!!」
(;'A`)「それより! それよりもさ! ブーン、終わったんなら、俺たち行かなきゃいけないとこあるだろ!」
( ^ω;)「え? あ、ああっ」
( ^ω^)「そうだお、報告しに行かなきゃ!!」
('A`)「ああ! 行こうぜ!!」
( ^ω^)「ようし、ぽっぽちゃんやーーーーい!!!!」
(;'A`)「そんな金色雲呼ぶみたいな……」
(*‘ω‘ *) 「ぽヒヒヒィィィィン!!!!!」
(;'A`)(来てるし……)
( ^ω^)「何度も悪いけど、ヒルトまでお願いしたいんだお」
(*‘ω‘ *) 「おっけー!!」
(;^ω^)(;'A`)「「!!!!!?????」」
364
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:01:19 ID:mUoFvK1k0
そしてそんな様子を、遠巻きに眺める姿があった。
巨大船の上、小さくて、声も聞こえないけれど何やら楽しそうだ。
川 ゚ -゚)「混ざりたいんじゃないのか?」
(´・ω・`)「…そっちこそ、会いたいんじゃないの?」
川 ゚ー゚)「ふふ、ああ、だけどすべき事がある、今がそうだろう?」
(´・ω・`)「うん、今以上のタイミングは無いね」
(´・ω・`)「スピーカーの用意は?」
( 凸)「アイ、サー!」
(´・ω・`)「それじゃあ、これがファイナルフェーズだ、みんな、頼んだよ」
「「「「おおーーーー」」」」
そして元、戦場の最中では、敵も味方も入り乱れたまま、
暗闇そして解放という混乱にのまれ、しゃがみこんだ姿ばかりが見える。
ノパ⊿゚)「終わったのね…本当に」
('、`*川「けど、結果的には、勝ち負けではなく完全に戦意の喪失による停戦…」
365
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:03:14 ID:mUoFvK1k0
('、`*川「まるで……まるで、こうする事が目的だったような……」
ノパ⊿゚)「承知の上の…手のひらの上だとでも? 趣味が悪いぞ、そういう思考は」
ノパ⊿゚)「我々は立ち向かい、目標を達成した、今はそれを尊ぶべきだ」
<_プー゚)フ「そうそう、考えすぎてもしょうがないって」
('、`*川「あなたは本当に考えたほうがいいと思うわ」
( 凸)「あの暗闇の中でもなんか、平気そうだったよなこいつ」
<_プー゚)フ「え、なんで、結構落ち着く感じだったじゃん?」
( 凸)「なんやこいつこわ……」
lw´‐ _‐ノv「これで、これからはうちも外交国家の仲間入りかぁ、照れるや」
ノハ;゚ー゚)「……何が?」
『ザザーーーーーザ』
『 の戦場に るすべて に聞いて い 』
ノパー゚)「始まった、では、ご拝聴するとしましょうか」
lw´‐ _‐ノv「そうだねぇ」
366
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:05:11 ID:mUoFvK1k0
『凄惨な戦いに先の暗闇、さぞ疲労しきっている事と思うが、なんて、言っても』
『姿も見えない人間の言葉など不審だったな』
『まず名乗らせて欲しい、私は、今は亡きVIPの王族だった』
『今こうしてこの場を借りて語っているのは、この場の全ての人に、聞くだけでいい、聞いてほしいことがあるから』
『今ここに居るのは、とても強い、勇気をもった人たちだから』
(´・ω・`)「相変わらず下から目線な演説だなぁ」
( 凸)「えー、それがいいのに」
(´・ω・`)「王族言ってるんだから、多少威厳ってのも…」
( 凸)「それに可愛いし」
( 凸)「それな」
(´・ω・`)「彼氏持ちだけどね」
367
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:05:52 ID:mUoFvK1k0
『私には、恐ろしくて立つ事もできない場所に居る、それは、本当にすごいと、心から思う』
『ここには、世界に伝わっている通り、逆賊から世界を守るため、正義の心で立ち上がった人も居ると思う』
『愛国心で戦う人も、譲れない何かのために戦う人も、あるいは、何らかの…恨みの下に』
『そしてきっと、どうしてこの争いが起きたのか、それすら知らないままの人も居るだろう』
『私は今、この戦争が何故起きたのか、それを、伝えたく、ここまで来た』
(;^ω^)「これ……クー、だお?」
('A`)「ああ、そうだよ」
(;^ω^)「よかった、のかお? 何も、言わないで…」
('A`)「大丈夫だよ、ブーンは知らないだろうけど」
('A`)「あれ、行動力すっごいから、常に支えなきゃいけないほど、弱くないさ」
(;^ω^)「そ、そうなの…? いや、でもなぁ…」
('A`)(聞こえますか、ギコさん、しぃさん、つーさん)
('A`)(彼女が、自分の足で進んで、自分が戦うべき場所に立ってます)
('A`)(強く、なったでしょう、フッサールさんも、安心して、聞いてあげてください)
368
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:06:55 ID:mUoFvK1k0
『私の知る真実を』
『あなた達の知る真実と、照らし合わせるために』
『信じろとは言わない、ただ、まずは話を聞いて欲しい』
『そしてできれば、問いかけて欲しい』
『よくも、という憎しみの前に』
『どうして、という問いに答える機会を私達に与えてほしい』
川 ゚ -゚)「……ふー」
心臓が早鐘を打つ、マイクが拾わない事が不思議なほど強く、
しかし大丈夫だ、頭はまだちゃんと回っている。
次の言葉を紡ぎながら、ふと視線を泳がせる。
一隻の船が、何かの動物にひかれて走っていく。
その船から、こちらを見ている誰かと、目が合ったような気がした。
手を差しだし指先で泳がせた。
どこへ行くのか知らないが、まったく酷い話だ、人が頑張っているのに。
無視してどこかへ、また、行ってしまうなんて、どうかしている。
思いながら、その行為が信頼の証なのだと、ただ依存していた過去の自分が叱咤する。
だからせめて、次に会ったらそう、まずひっぱたいてやろう、そう思いながら。
369
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:08:02 ID:mUoFvK1k0
『呪われた神具を利用して、湖鏡という国を脅し』
『ロマネスクの支配下にあった人間の暗躍により』
『結果……私達を迎えてくれた、あの心優しい巫女たちが犠牲となってしまった』
『今でも、悔やみきれない事だ、原因だ真実だと語ったところで、私達の行動の結果である事は変わらない』
『その事に不審を抱いた事が、彼の湖鏡国の管理者が私達の下へつく発端と』
<_プー゚)フ「………」
「それが……今のが、真実だってのか!?」
('、`*川「…そうよ、まだ、私の体にはあの時の傷痕があるわ、見たい?」
「い、いや、そんなのは……」
<_プー゚)フ「なんだよ、信じられないのか?」
「そういうわけじゃ……いや…そう、だな」
「信じ……たく、ないのかもな」
「……ああ、俺も、それだな」
<_プ -゚)フ「お前ら…」
370
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:09:14 ID:njAXIGSk0
支援
371
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:09:39 ID:mUoFvK1k0
「だってよ…それ、信じたら、俺……なんて事を…」
「必死に身体張ってくれたあいつらに……俺たちは……」
('、`*川「……それについては、私も同じよ」
('、`*川「エクスト達、そして渋沢、彼らが居なければ、きっと、もっと取り返しのつかない事をしていたわ」
('、`*川「押し潰されそうな気持ちも、真っ直ぐに彼らを見れない気持ちもよくわかる…」
('、`*川「でも、罪の意識から目を背けてはダメ、それでは前を向けなくなってしまう」
('、`*川「ちゃんと後悔して、悔やみながら進むの、そして自分にできること、一緒に考えましょう?」
<_プー゚)フ「………」
( 凸)「何、ニヤニヤして、トマト食べたいの?」
<_プД゚)フ「次Mって書いて渡したらおこだからな!!」
( 凸)「ところで、ツンさんどこに居るんだろう」
<_フ;゚ー゚)フ「あ、そういえば……まさかまだあの城ん中か?」
(;凸)「めっちゃ崩れてんだけど、え、大丈夫なの、あれ?」
(;凸)「いや、そもそも、足止めに一人で行ったんだろ…?」
(;凸)「ああ、あんな、山を荒野にしちまうような化物と相手に……」
( 凸)「………いや、無理じゃね、今度ばかりは」
<_プ -゚)フ「ツンの兄貴……ちくしょう、人の事カービィ扱いして、自分が星になってどうすんだよ…!」
(;凸)「どうか安らかに……」
372
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:11:26 ID:mUoFvK1k0
『人を操る神具を使うものを相手に、己が仲間を守るために単身』
『月鏡の管理者、彼の存在なくして私達はありえなかった、彼こそ英雄であると』
「へくしっ」
ξ゚⊿゚)ξ「……なんか、背中がかゆくなるな」
ξ゚⊿゚)ξ「ていうかここ埃っぽくていかん」
ξ゚⊿゚)ξ「さっきからくしゃみが……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ふぇ…」
ξ゚⊿゚)ξ「止まった、くそ、早く出口を探さんと……」
ξ#゚⊿゚)ξ「ええい、通路はどこだ! 目印くらい用意しろ!」
373
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:12:14 ID:mUoFvK1k0
………。
しばし時は流れ、ここはヒルトの街から少し離れた山間の広場。
石碑が立ち並ぶその場所で、両手を組んだまま目を閉じる少女の姿があった。
晴れ間は覗けど、まだ降った雪は新しく、獣の歩いた跡すら存在しない。
吐息は白く、雪が煌く世界はまだまだ寒さだけを伝えている。
从 ゚∀从「……な、なあ…さすがに、身体壊すって、な、宿に戻ろうぜ?」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、私は大丈夫です、ハインさんこそ付き合わなくていいんですよ」
从;゚∀从「そう言われてもなぁ……またあんなのがあったら、怖いし」
ζ(゚ー゚*ζ「あのいきなり真っ暗になったの……なん、だったんでしょうね?」
从;゚∀从「うーん…異常気象…じゃないよな、流石に…」
从 ゚∀从「ま、晴れたからいいけどさ」
「ィ ン」
从;゚∀从「ん…なんか今聞こえたか?」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ、どんなですか?」
从 ゚∀从「なんか、鳴き声みたいな…」
374
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:12:54 ID:mUoFvK1k0
「ヒヒヒィィン」
ζ(゚ー゚;ζ「っ!」
从;゚∀从「これって、あん時の…!? まさか…!」
山道に足跡を残して駆ける二人の先には、あの時の馬と、
ボロボロになった船、そしてその上で手をふる、あの二人の姿。
そして笑顔で、親指を立てるジェスチャーが、その結末を教えていた。
( ^ω^)
('∀`)
从*゚∀从
ζ(;ー;*ζ
375
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:14:25 ID:mUoFvK1k0
泣き笑いのような声が、何度も何度も上がっては山間をこだまする。
彼らは奥へと進んでいった、目的地は、とある石碑。
直接、まず第一に伝えなくてはならないと、そう思っていたから。
英雄を目指し、英雄にはなれなかった少年と。
復讐を誓い、復讐を果たせなかった少年は。
しかし、とても満足そうな笑顔に涙をためて、最後に感謝を告げた。
ここまでこれた。
あなたに出会えた、おかげです、と。
遠く空へ、響いていた。
next to epilogue、、、、、、l
376
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:24:16 ID:mUoFvK1k0
あとは後日談ことエピローグと、読む必要が無いというか、読もうと考えたらあかん物、そんな自己満足の二本立て。
いやあ終わった終わった、詰まる話がエア対エクスカリバーがやりたかっただけの10年前の妄想でした。
でも素直に主人公にエクスカリバーってのもつまらないから、伏線で隠すのやってみようと思ったけど技術が足りないオチ。
そして思ったより書くことが無い、お疲れでした、ではまた次が正真正銘最後です。
377
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 21:07:39 ID:sljEb2HY0
乙!復活してくれて本当に嬉しかった!!
エピローグも楽しみにしてるからな!
378
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 22:24:42 ID:2W/xy6xk0
乙!!!完結本当にありがとうアイシテル
379
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 22:26:09 ID:txXHxzC20
そうか……もう完結か……!
380
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 23:45:26 ID:njAXIGSk0
お疲れ様!最後まで見届けるぞ
381
:
名無しさん
:2018/08/21(火) 01:16:50 ID:80p9wXCE0
乙!本当に乙!
最終話も変わらずの熱量で嬉しかった!ちょっと泣いたぜ!
382
:
名無しさん
:2018/08/21(火) 11:36:32 ID:bdBls2Rs0
乙
復活そして完結おめでとう
本当に嬉しい
383
:
名無しさん
:2018/08/21(火) 23:06:18 ID:MRqI3W720
終わっちゃうのか……お疲れ様
エピローグ来たら読み返すぞ
384
:
名無しさん
:2018/08/22(水) 13:57:25 ID:/t.11heQ0
乙でした!
次回作のご予定があれば聞きたいです
385
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 17:59:58 ID:5yZYcoEU0
とり見つけたというか辞書復旧できたわ、これでもう一々コピペせんで済むのです……。
そして今日か明日には投下できそうですよ。
そして次回作ね、まず現行が終わってないからなぁ……
特に文猫とあとスタドラ元ネタのやつ、話を考えててとても楽しかったから書きたい。
ただしいて言うなら、いい加減バトルのない女の子可愛いだけのを書きたい感。
具体的には昔書いたエロゲ的なノリのやつ、あれで、ちょっと書きたいお話があるといえばある。
386
:
名無しさん
:2018/08/22(水) 18:23:25 ID:LPcqpkEo0
全部書け
387
:
名無しさん
:2018/08/22(水) 21:05:59 ID:V8aKdRfw0
文猫の続きとか、そんなん読みたいに決まってますやん……
388
:
名無しさん
:2018/08/22(水) 21:16:42 ID:Ro4hPqDA0
そういや文猫は続き書き掛けだよね
したらばのブーン系のどっかにスレあったはず
389
:
名無しさん
:2018/08/22(水) 22:18:11 ID:7IH89o8w0
スタドラ元ネタのやつって何?
390
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:47:12 ID:5yZYcoEU0
エピローグ 「遠く離れていても」
(´・ω・`)「やっぱりだ、やっぱりこうなった………」
書類の山が詰まれたデスクの上を見ながら、ショボンは愚痴るように呟いた。
その背後には兄者さんが目を光らせ、そんな動向を見守っている。
( ´_ゝ`)「まだ言ってるのかい?」
(´・ω・`)「何度だって言いますよ、こんな若造をいつまでこんな政策の場に置く気ですか?」
( ´_ゝ`)「そうだなぁ……君がもってる知識が枯れるまで、かな」
(´・ω・`)「労働基準というものがありましてね」
( ´_ゝ`)「でも君、捕虜だし」
人が、世界の終わりを見たあの日。
いつしか終末の戦いと呼ばれるようになった、あの戦争から半年も過ぎたころ。
クーが行った演説は、やがて討論の場となり半信半疑ながらも連合国側は、
王が討たれたこともあってか、降伏を宣言し、戦場は終わりを迎えた。
391
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:47:41 ID:5yZYcoEU0
そして流石兄弟が結託し、双国と王国の連合からの離反と彼の王への糾弾。
これにより、戦争の勝者と敗者が決まる事になる、と誰もが思った。
だが同時に、ヒルト本国からも全面的な降伏が発表される事になる。
これはショボンも知らなかった事らしく、酷く動揺していた。
彼は勝者として君臨した後、自らの首を刎ねる事で決着を考えていたらしく、
そうなる事を見越したヒート女王が、自ら先に下していた命令だった。
その結果。
勝者なき戦争に残されたのは、第三勢力となった双国と王国。
そして、各国の代表を集め、初の世界会議が行われた。
そして二人の王は、戦争の主犯格と思われる人物等をまず捕虜とし、
各国に対し、傘下ではなく、共和国としての参加を求めることを発表した。
強制ではないが、参加するなら補助を約束すると条件をつけて。
共に目論んでいたエッダ、ヒルトはすぐにそれを了承。
指導者を失くしたルファウスも混乱の中それを受諾。
振り回された結果、国力を衰えさせた日陽と湖鏡も同様に。
392
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:48:35 ID:5yZYcoEU0
そして、一番の問題になると思われていた神教国に関しては、
意外にも王自らが参加し、協力したいと申し出てきた。
こうして、どの国も傷を抱えながら、新しい世界が始まった。
しかし、なにせ初めての試み、長きに渡る大混乱が予想された。
だが、いくつもの約束事からなる条約の形成や、共通通貨の製造から交易産業等、
次から次へと革新的な意見が提出されるにつれ、むしろ安定化の道を辿り始める。
時代は少しずつ、力とはまた違う国力を求める流れが生まれつつあった。
そしてそうなれば、一体誰がこのような知識を発信しているのか、当然の疑問となった。
当初こそ隠されてはいたものの、復興に悩むとある地域で起きた、
『お湯が沸いてるのに何で温泉事業しないんですか?』事件から露呈する事になる。
以来、要はショボンは、あらゆる場所から知識を求められるようになっていた。
(;´・ω・`)「それなら尚、条例を! 頑張って用意したでしょう!? ちゃんと読みました!?」
( ´_ゝ`)「ああ勿論だ、だから問題ないだろう、最低限の人権は遵守している」
393
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:49:18 ID:5yZYcoEU0
(;´・ω・`)「くっ……やはり戦犯としてあの時に処刑されていれば…っ」
( ´_ゝ`)「馬鹿な事言ってないで、街道工事のだけでも早急に確認してくれるかい?」
( ´_ゝ`)「明日にはまた、神教へと向かうんだろう?」
(´・ω・`)「……そう、ですね、不本意ながら」
( ´_ゝ`)「先方はとても楽しみにしているそうだよ」
(´・ω・`)「はぁ……そうなんでしょうね、でも僕、ちょっと苦手で…」
( ´_ゝ`)「君は特にもてなされてると聞いたけど?」
(;´・ω・`)「いや、まあ……なんていうか、親切の押し売りが凄いっていうか…」
(;´・ω・`)「あれが何度も他国を侵略しようとした王様とは思えないです」
( ´_ゝ`)「条約にあった宗教の自由ってのがきいたかな、それと何より……」
( ´_ゝ`)「あの日の、光の柱を見て人生観が変わってしまったそうだからね」
( ´_ゝ`)「気持ちはわかるよ、私も今でも思い出せる」
( ´_ゝ`)「絶望の闇を切り裂く光と、天を覆うほどに降り注いだ光の流星群」
( ´_ゝ`)「世界の創生と共に、生まれ変わったような気分にさせてくれたよ」
(´・ω・`)「……本人に聞かせたい話です」
394
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:50:07 ID:5yZYcoEU0
二人、海が覗く窓の外を眺めながら、あの輝きに思いを馳せる。
しかしそんな平穏を裂くように、いくつかの足音が響いて扉が一気に開かれた。
(´<_` )「ショボン君、ちょっち相談したいんだが」
从;゚∀从「ま、待て、こっちが先だ、ショボン! 積荷がまだ来てないみたいだぞ!」
(=゚ω゚)ノ「あの、街道の件はどうなってますかよぅ?」
lw´‐ _‐ノv「ねえ、魚、さ・か・な、ちょっと高いと思わない? 思うよね? あとお米? お米は?」
从・∀・ノ!リ「ひまなのじゃ! あそびにきたのじゃ!!」
川#д川「待ておぬし等、ショボン様に迷惑をかけるでない! ええい許さんぞ!!」
(´・ω・`)「あ、そういえば、あのバカまだ来てないんですかね、もう出航予定日も近いってのに」
(;´_ゝ`)「うん? あ、ああ、そうだね、まだみたいだよ」
(;´_ゝ`)(……日に日にスルーちからが上がってるな…)
395
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:54:04 ID:5yZYcoEU0
…………。
深い渓谷と、白で埋め尽くされた山々が立ち並ぶ合間に、大歓声が起こる場所があった。
かつて国の王を決める闘技場だったその場所は、今は賞金と名誉だけを求め、
あるいはその戦いの熱気にあてられた者たちで今日も賑わい、大盛況となっている。
ノパー゚)「あ、母者さん……? 今までどちらに?」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ん、まあちょっとさね、それより今日は話があって来たんだよ」
ノパー゚)「なにかしら?」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「そろそろ、この国を出ようと思っている、お別れだよヒート」
ノパ⊿゚)「………あ」
ノハ-⊿-)「……………」
ノパー゚)「そんな気は、してました」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「アンタも、もう王女さまじゃない訳だし、お役御免ってところさな」
396
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:54:51 ID:5yZYcoEU0
ヒルトと言う国は、共和国加入の際に王制を廃した。
代々受け継いできた文化を捨てようと言うのだ、当然、王直轄のものたちの反対は大きなものだったが、
ヒートはそういった事を悪しき妄執だと一喝し、新たな形を模索し始めたのだった。
ノパ⊿゚)「………最後に、聞いても?」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「なんだい、聞くだけならいいよ」
ノパ⊿゚)「……あの日、クマちゃんに襲われたあの時」
ノパ⊿゚)「母者さんがその場に居たのは、偶然ですか?」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ハッ、他にどんな理由があるってんだい」
ノパ⊿゚)「いえ、ただ……」
ノパー゚)「知ってましたか? 赤い髪は、私の家系の人間が代々生まれもつ特徴なんですよ」
397
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:55:36 ID:5yZYcoEU0
ノパー゚)「そして、この闘技場の創始者は、とても、とても強い、赤い髪の女性だったそうです」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ふーん、そう、そりゃ知らなかったよ」
ノパー゚)「そうですか」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ああ、話は終わりかい? それならもう行くよ」
ノハ-⊿-)「…これまでの事、感謝します、どうかお元気で」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ああ、まあ気にするんじゃないよ、すべて、そう、全部、ただの偶然さ」
言って、背中を見せたまま手を上げて、母者は去っていく。
ヒートはその、赤い髪の姿が見えなくなるまで、見送り続けた。
398
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:56:09 ID:5yZYcoEU0
………。
ヒルトの王制廃止に対して、城内でこそ荒れに荒れていたが、
反面、住まう人たちはおよそ歓迎ムードである。
特にその要因となっているのは、そうなれば例の婚姻も無効となること。
そしてもう一つ、あの戦争で彼らの士気を高めるもう一つの要因となった彼女が。
クーという女性が、ヒートと共に、この地で新たな政策を学びたいと申し出たこと。
指導者が統治する国ではなく、条約の下、個人が己を確立して生きる都。
それが彼女たちが目指す、あらたなヒルトの形となっており、
そもそもが自立した国民性をもつこの国では、すんなりと受け入れられた。
そうして街には、新たな区ができあがった。
法や、人、そして街そのものを管理するための、要は役所のようなもの。
それらが並ぶ区画は、行政区とされ、民意の元に召集された人たちが集っている。
そんな行政区の一角。
川 ゚ -゚)「本当はショボンに私も習いたかったが……あれではな」
川 ゚ -゚)「あとドクオ、ご飯おかわり」
(;'A`)「ちょっと食べすぎじゃない?」
399
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 22:57:29 ID:5yZYcoEU0
二人はそこで暮らしていた。
クーが座る食卓には詰まれたお皿と、美味しさが香る料理の品が並んでいる。
そんな彼女へ、エプロン姿でしゃもじを片手にドクオが近づいた。
人を、世界を救う光をもたらした英雄は、近頃めっきり主夫業が板についてきている。
川 ゚ -゚)「仕方が無いんだ……考えるという事は、その分エネルギーが必要なんだ…」
川 ゚ -゚)「あとご飯が美味しいのがいけない……くそう、なんてことだ…」
川 ゚ -゚)「にくいっ、ご飯が、おいしいのが……ああっ!はしが止まらない!」
('A`)「はいはい、でも本当に、いい加減ふと」
川 ゚ - )「――――――」
('A`)ヒッ
('A`)(でも気のせいか……最近、おなかまわりが少し……?)
川 ゚ -゚)「さーて、これ食べたらまた缶詰だな、ヒートのところに行かないと」
('A`)「夕飯は遅いほうがいい?」
川 ゚ -゚)「いや、しばらく要らないな、言ったろ、缶詰って」
400
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:00:06 ID:5yZYcoEU0
(;'A`)「え?」
川 ゚ -゚)「あー、だからしばらく家にも帰れないなー、もう数ヶ月はだめかもなー」
川 ゚ -゚)「帰らない間に、ドクオが長めの旅に出ていたとしても、わからないかもなーぁ」
('A`)「………………………」
川 ゚ー゚)「…行きたいんだろう? 彼と一緒に、見てみたいんだろう?」
('A`)「クー…」
川 ゚ー゚)「ドクオ、私のために、自分を殺すようなことはしないでくれ」
川 ゚ー゚)「そうしたい事は、ちゃんと言って教えてくれ」
川 ゚ー゚)「私も、したい事は、ちゃんと言うから」
川;゚ -゚)「そしたら、ちゃんと聞いて……あげ……あ、げ……」
川 ゚ -゚)「……何もかも、は、無理かも、だけどなっ」
川 ゚ -゚)「だからな」
('∀`)「……ありがとう」
401
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:02:19 ID:5yZYcoEU0
('A`)「ああ、俺、あいつと行きたい」
('A`)「この世界を、もう一度、ちゃんと……真っ直ぐに、見てみたい」
('A`)「そしてもっと広い世界に、出会いたいんだ」
川 ゚ー゚)「ああ、いってらっしゃい、私は……待ってるから、いつだって」
('A`)「うん、いってきます」
川 ゚ -゚)「だから最後に」
言って、クーが両手を差し出した。
(;'A`)「ああ……おかわり? ちょっとまって」
川 ゚ -゚)「違うぞ」
川* - )「その、抱きしめて、ほしい……な」
ああ、これはもう、一生勝てないな、と思いながら、ドクオはその手を取った。
身を寄せ合いながら、惜しみながら、それでも、まだ見ぬ何かを求めて。
そしてクーは思う、帰ってくる頃には、きっと、
もっと大きくなっているだろう箇所に、彼はどう反応するのだろう、と。
402
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:03:34 ID:5yZYcoEU0
………。
「………あんた、何者なんだ?」
J(;'ー`)し「見ての通り、ただの孤児のお世話をする者ですけど……」
「それにしちゃ、世論に通じすぎだろ……こんな場所で、なぜそんなことまで知ってる?」
J(;'ー`)し「ええと、そういうの、詳しい知り合いが居るもので」
J( 'ー`)し「あ、今もちょうど外に……」
旅人風の男と話す女が、表の庭を覗いた。
しかしそこには、子供が一人、棒切れを持って遊んでいるだけ。
先ほどまで、子供と一緒になって振り回していた人間の姿がない。
代わりに、一人の女性が立っていた。
この国で、彼女を知らぬものは居ない、女は慌てて外へ出た。
J(;'ー`)し「あ、あの! 何か御用でしょうか?」
('、`*川「いえ、人を探していて、ここに来てると聞いたのだけど」
403
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:04:28 ID:5yZYcoEU0
マト*・д・)メ「兄ちゃんならさっき、変なのつれた人といそいでいっちゃった」
('、`*川「変なの……顔の細長い、大きな動物?」
マト*・д・)メ「そう、それ!」
J(;'ー`)し「あらあら、忙しないのね、来たばかりで」
マト*・д・)メ「なんか、ひづけ、まちがえた、とか言ってた」
J(;'ー`)し「あの、それで、あの子が何か……」
('、`*川「いえ、まさにその日付を伝えにきたのだけれど」
('ー`*川「ふふ、相変わらずみたいね」
………。
(#´・ω・`)「遅い」
404
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:06:02 ID:5yZYcoEU0
ζ(゚ー゚;ζ「…あ、ははは」
(;'A`)「まさか、まだ来てないとは思わなかったよ…」
双国、その船着場に今、たくさんの人が群がっている。
海上には、かつて戦場を駆けたあの巨大陸船が、本来の名を現す姿となって浮かんでいた。
今も船内と地上を行き来する姿はあるが、積荷などは大部分が完了し、
あとは乗り込むだけとなっている、とはいえ、それもほぼ済んでいる。
なら何かを待つのかと言えば、航海に必要な要員ではなく、
行楽観光気分でいるだけの、お客様である。
(#`・ω・´)「こっちがど・れ・だ・け・忙しい中準備したと思ってんだあの野郎……!!」
ショボンがその辺に転がっていた樽を蹴り飛ばした。
普段感情を顕にしない彼の荒れた姿に、周囲は困惑を示す。
「うおおっーーぐああーーーーざけんなぁあああああ!!!」
(;'A`)「俺、あんなショボンの奴はじめて見たかも……」
ζ(゚、゚;ζ「い、意外な一面、ですね」
(´<_`;)「……いや、多分、日ごろのストレスが……ほら、だからやりすぎだって、兄者?」
(;´_ゝ`)「う、うーん……申し訳ない」
405
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:06:58 ID:5yZYcoEU0
/ ,' 3 「デレや、ワシらは先に乗船させてもらおうかの」
ζ(゚ー゚;ζ「えっ……あ、そう、ですね……」
船にかけられた階段を上る、デレはふと振り返る。
高所から見る町並みは、見慣れたはずが新鮮に思えた。
そしてそんな中に、その姿を見つけた。
ζ(゚ー゚*ζ「あっ、来ましたよ!」
馬に引かれる船の上から、たどり着くなり慌てた様子で駆けてくる数人の姿があった。
(;^ω^)「ありがとうワカン、ぽっぽちゃん! 助かったお!!」
ξ゚⊿゚)ξ「世話になった」
<_プー゚)フ「支払いはツケでヨロ!」
( ><)「気をつけて、無事を祈るよ」
(*‘ω‘ *) 「ぽヒヒィィィィん!!」
406
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:07:59 ID:5yZYcoEU0
船着場を走り、雑踏を抜け、そして内藤は。
(;^ω^)「みんな久しぶり、ごめん、遅れちゃっt―――」
(#´・ω・`)「見つけたぞ死ねえええええええええええええええええ!!!!!」
(;゚ω゚)「死ね!? ショボ!? ちょ、飛び蹴りぃ!!??」
「ぎゃああああああああああ」
歓迎の蹴りを受け、ショボンもろとも海に落ちた。
407
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:08:51 ID:5yZYcoEU0
そんな姿に呆れる者、心配する者、笑う者、反応は様々。
けれど、それはもう、これ以上ないほど、平和な時間そのもので。
(;゚ω゚)「ぷはっ、え、なになになに!? 何で!? どういうこと!?」
(;´・ω・`)「冷たっ……はっ……僕は何を………」
ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!? だ、大丈夫!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何をしてるんだ?」
<_プー゚)フ「変わった挨拶だな、やめてね?」
(´<_` )「兄者」
(;´_ゝ`)「……休みを、あげるよ、うん、ちゃんと」
从 ゚∀从「というわけで、今度は海だ、よろしくな」
ξ-⊿゚)ξ「まあ、ほどほどにな」
<_プー゚)フ「捕虜はつらいぜ」
知る者は一部とは言え、世界を救ったドクオは特例として、
捕虜として双国でお世話になっている者たちは、それぞれ仕事が与えられている。
408
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:10:00 ID:5yZYcoEU0
そして、特に体力ばかりが取り得の彼らに与えられているのは、測量の旅だった。
世界をより狭めるため、街道工事の都合のために、改めて地図をつくるための旅である。
今回こうして集められたのは、更に、世界を知るための行為だ。
これまで、ひとつなぎの大陸を旅してきたが、この海上の船が示すとおり、
外洋にはおそらく、他の、外の大陸というのも存在している。
今回の遠征は、その第一歩。
たくさんの国と、たくさんの人が手を取り合い進められた計画。
内藤達はそれに乗り込み、世界を見るため、新しい旅に出ようとしていた。
(´・ω・`)「…? なんで僕、海の中に居たんだろう?」
(;^ω^)「こっちが聞きたいお……」
(´・ω・`)「まあいいか、それより早く乗りなよ、もう出航時刻は過ぎてるんだから」
( ´_ゝ`)「その前に、渡しておこうか」
(´<_` )「そうだな、内藤君?」
409
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:11:22 ID:5yZYcoEU0
( ^ω^)「はい?」
(´<_` )「これを、君に貸し出そう」
(;゚ω゚)「……っ!? これ、え、なんで!??」
差し出されたのは、捕虜として連行された際に回収されたはずの、黄金の剣。
当初の目的どおり、神具はすべて集められ、あの日。
すべて消滅させるという宣言の後、各代表が見守る中、永光の力によって消された筈だった。
現に内藤も、光の柱がもう一度空にかかるのを見ていた。
もう二度と、目にすることはないと思っていた、その剣が目の前にある。
(;゚ω゚)「ど、どうして、いや、なんで今僕に…?!」
(´・ω・`)「実は、まだ神具は残ってるんだよ、三つだけね」
一つは、まだ存在するかもしれない神具を消滅させる必要がある事から、レーヴァテインを。
もう一つは、物質としての剣は消えても、再びあの触れられない姿となった、フレイを。
そしてもう一つは、本当に、どうにもならない脅威が迫った場合を考え、コールブランドを。
そんな理由もあり、世に称されることの無い英雄たちの武器を、せめて称えようと、
各国の代表が持つ鍵を使わなければ、解錠される事の無い場所で、保管されている。
410
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:12:54 ID:5yZYcoEU0
それが今、内藤の手に再び渡された。
( ´_ゝ`)「初の外界調査だ、何があるかわからない」
(´<_` )「もしもの時があったら、迷わず頼むぜ?」
内藤は受け取ると、目を閉じる。
意識を深く、手の先へ、剣のなかへ。
声は――――――聞こえない。
( ω )「…………ああ、行こう、瀬川…約束、したもんな」
けれど。
『見ているから』
その言葉を、誰より、何より、信じている。
絶対に、忘れない。
411
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:16:40 ID:5yZYcoEU0
生きる力を、戦う力をくれた。
そして、いつだって、すぐ側で見ていてくれた。
どれほど救いだっただろう、どれほど信頼を寄せたのだろう。
この想いは、届いていたのだろうか。
ちゃんと、届いてくれたのだろうか。
ずっと言えなかったけれど、ありがとう。
だから。
( ;ω;)「一緒に、行こう、これからを、見に行こう――――!!」
412
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:17:05 ID:5yZYcoEU0
帆を全開に広げた船が、今ゆっくりと動き出す。
広い世界の、更に広い世界へ。
これまでとは、違う世界へ。
また、新しい、異世界に出会う、そのために。
――― 完 ―――
413
:
名無しさん
:2018/08/22(水) 23:21:44 ID:Ro4hPqDA0
おつおつ
だいぶ駆け足感があったな
414
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:35:46 ID:5yZYcoEU0
おしまい、あとおまけパートがあるけど、これは本当に面白くもなければ本編とも関係ない、
しかも物理的に読める文章じゃないという本格的な自己満足なので、これが間違いなく完結。
ていうかうわ完結したよこれ、10年越しって何、意味わかんない怖い。
でも何が怖いってそんな経ってるの? 感覚は去年くらいなんだけど。
だから駆け足にもなるよ、もう終わらせたい一心で書いてるもの。
でもどうだろう、膨らませ方が難しいというか、なんか冗長になっちゃうんだよね。
とはいえ、ブーンとロマの決戦は確かに本当は最低でも倍以上あったけどほぼカット。
反省すべくは書きあがって読み返す、推敲の類をしないからながらと変わらない、
おかげで投下したあと見返すと、誤字どころか、あれ、これ伝わらなくない?というのが多々。
あと母者のAAは二度と使いたくない、貼るの大変行間空くの二重苦。
415
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/08/22(水) 23:42:38 ID:5yZYcoEU0
あとこれ書き途中のね。
ちなみに止まってる理由はどちらも書くネタの都合上、やむなくバトルが入るため。
そうでないと書けない内容だから、そしてそのせいで止まる本末転倒振り。
あとエロゲ的云々は春が来るたび戸惑うってやつだけど。
あらかじめ言っておくますが、書いたらシュールちゃんのお話になるよ。
スタドラのやつ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1448986400/l50
文猫
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1406141031/l50
416
:
名無しさん
:2018/08/23(木) 00:24:28 ID:aG0noFfk0
良く完結させてくれました。長ーい間待ってたんだぜ
ありがとう最高に面白かったお疲れ様です
最大限の乙!
417
:
名無しさん
:2018/08/23(木) 00:30:10 ID:33XDcCN20
ほんとによくもまあ10年も待たせやがって
この作品が真剣にブーン系を読むようになったきっかけで、俺の厨二の原典だ
今でもレーヴァテインっていう文字列を見ると無条件で興奮するぐらいこの作品に影響を受けた
本当にブーン系で一番好きな作品だ!完結ありがとう!作者に最大級の乙を!
418
:
名無しさん
:2018/08/25(土) 13:44:11 ID:OqAKy/XM0
乙!
最後まで読めたことに感謝
419
:
名無しさん
:2018/08/29(水) 10:12:16 ID:VR0cAgoI0
このハゲ作者!一緒に浴場で欲情してあんなにも盛り上がってた俺たちをこんなに待たせやがって・・・
ホントに完結おめでとう!
そして惜しみ無い乙です!
文猫も失禁する程楽しみしてる
420
:
名無しさん
:2018/08/31(金) 15:39:49 ID:62nhnDYE0
祝! 完結! 作者さんありがとー! フラッシュ!
駆け足ぎみ? 完結させることが肝要だからもーまんたい。
……しっかしよくもまあ9年? 10年? も待たせてくれちゃってこの野郎。10代も20代になったんだよね、それ一番言われておるから。ずっと待ってたんだからなっ! 完結に気づかない人多そうだから、大陸編もしくは番外編も投稿してくれてもええんやで?
421
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 19:38:52 ID:Q0orJsQ20
今気づいたぜーついに終わってしまったか!
長らくおつかれやで!
質問なんだけど、結局3人はこっちの世界に残る事を選択したって事なんだよね?
422
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/09/08(土) 00:11:51 ID:vft7PlxM0
>>421
一言で返せるけど、ちょっと語らせてもらいますね。
書く上でほんとうに昔から考えてること?いや決めてることがありましてね。
何て言ったらいいのか、登場人物が本当にそれを自分で考えての行動や発言かどうか、と言いますか。
だからそいつの感情とか心がわからないと書けなくて、無理に書くとすごく嫌な気分になるんですね。
一時期スランプ云々言ってた頃があったんだけど、要はまさにそれ、何考えてるのかわからないのに、
ストーリー進めるために無理に進めたから書いてて読んでて苦痛だった。
とは言え結末だけは何気に決めてから進めてるので、問題なのはキャラの想いをどうやってその結末、結論にさせるか。
例えばフサ、まず殺すことありきで始まるわけで、しかし凄い英雄みたいなイメージに反するキャラにしたかったから、
あんな性格、でも英雄として死ぬ必要がある、さてこいつをどうやって殺そうと考えるじゃないですか。
まずは戦場に引きずり出す、これは無理矢理でもいいし、友情で納得もできる。
怖いことを繰り返すための勇気も必要、強がりでも頼られることと、特別であることへの優越感でまだ継続。
でもそれだけで自分を犠牲にしてまで行動できるか、わからなかった、無意識に人助けってのじゃ納得できない。
というわけで責任をもたせて、精神的に追い込んで、そこからの解放でようやく決意する、で納得できたんですね。
ただその結論に至らせるためだけに、あんなに話数が必要になったんですね。
遠い昔にも書いたけど、ドクオ異世界はあんなに長引かせるつもりなかったんですよ。
だから本当に、キャラクターの心とか、行動はほんとに気を使うというか、わたくしの趣味ですのね。
だから春とまのときにキャラがいいと言われたのはいやあ認められてるみたいで嬉しいお言葉でしたなぁうへへ。
というわけで長々と書いたけど質問に答えると、わかりません。
いや本当に、それなりの話数を、人生のほんの一部を書いてきたけど、まだ帰りたいのか、それがわからない。
423
:
名無しさん
:2018/09/08(土) 00:33:44 ID:rhZKHjJU0
>>422
なんか言わんとしていることは分かるな…
本当に本人がそう考えて言って、行動しているかっていう一抹の不安というか。
そんな中で完結してくれて本当にありがとう。心からの乙。
俺も何か書いてみようかな。
424
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/09/08(土) 03:08:07 ID:vft7PlxM0
>423
想像が一致した時の気分の良さは山頂で見る朝焼けのそれだし、
それを書き起こせてる時の高揚感はべらぼうだよ、創作はいいよねいい。
425
:
名無しさん
:2018/09/09(日) 23:09:04 ID:dGjQkg.Q0
大陸編期待してる
426
:
◆6Ugj38o7Xg
:2018/09/10(月) 20:45:20 ID:KFstdl0.0
>>425
もうこれ以上異世界を書く気ないのでー
代わりに書いてくれてもいいのでー
427
:
名無しさん
:2018/10/13(土) 22:20:10 ID:tf00oJKI0
最高に好きだった作品が10年ぶりに完結してるだと........。
泣けた
428
:
名無しさん
:2021/10/21(木) 02:00:36 ID:74hKUypw0
フサの弟がブーンと知った記念カキコ
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