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从 ゚∀从 スクールτアイドルのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/12/02(水) 01:13:20 ID:sDSK9/Q.0
遠く、黒く、暗い。
夜の空に数え切れない光がある。
見上げれば、澄んだ空気がうつしだす銀河が視界を覆う。
直下には、打ち寄せる波と潮風が響く砂浜があった。
周囲に動くものがあるとすれば、揺れる木々や葉、そして白波。
辺りに人の気配は見当たらない。
けれど無人ではない、砂浜には影が二つ。
86
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:19:53 ID:NGZxpddA0
(;^ω^)「…じゃあ、普通に学校生活をおくる分には」
( ・∀・)「そう、許容されているのはゼロ時間の決闘のみ、
傷害事件でも起こそうものなら……奴らもその辺りは慎重だ、問題ないだろう」
( ・∀・)「それと…もう一つ、いや一人、紹介しておこう、君のうしろに居る」
ζ( ^ω^)「?」
ζ(゚( ^ω^)「…?」
ζ(゚ー゚(゚ω゚;)「!!!!!??」ビクッ
ζ(^ー^*ζ「こんにちわぁ」
(;^ω^)(近っ、近い!!)
(;^ω^)「あの、この子は?」
( ・∀・)「彼女はデレ、二つ目の鍵、封印の巫女が一人だ」
ζ(゚ー゚*ζ「みたいなの、よくわかんないけど」
(;^ω^)「わ、わかんないて」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたも自分のことよくわからないって言ってたじゃない、
それと同じ、私もこの学校に入るまで知らなかったもの〜」
仲間ね、と言ってデレは内藤の手を取った。
小さく細い指が絡む感触に、内藤の思考はそこで止まった。
87
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:20:55 ID:NGZxpddA0
_,
ξ゚⊿゚)ξ
(;^ω^)ギクッ
しかし、突き刺さるような視線に我に返ると、すぐさま手を離す。
デレはそんな様子を知ってか知らずか、不思議そうに首をかしげた。
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば動画見たよ? すごくかっこよかったね〜」
(;^ω^)(完全にテレビ感覚のノリ……)
( ・∀・)「これでも、本来拒絶することが出来ないはずのゼロ時間への召集から
逃れ続けてきた上級ドライバーの一人だ、こちらで保護している」
(;^ω^)(これでもって言った)
ζ(゚ー゚*ζ「でも本当、別人だねー…わ、お腹ぷにぷにしてる!」
(*^ω^)「ちょ、やめ」
_,
ξ゚⊿゚)ξ
(;^ω^)「ひいいい」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ内藤君も、私を守るためにがんばってくれるのかな?」
(;^ω^)「え? えと、まあ、そうなると思う…」
ζ(^ー^*ζ「そうなんだ……」
朗らかな笑顔で、両手をあわせ、可愛らしい仕草で、
ポツリと、小さく、しかしデレは確かに言った。
88
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:22:27 ID:NGZxpddA0
「いいのに―――」
同時に、下校時刻を告げる鐘の音が、遠く響く。
モララーはそれぞれに解散と帰宅を告げた。
( ゚∀゚)「もうこんな時間か」
ξ゚⊿゚)ξ「今日のところは退散ね、行きましょう内藤君」
ξ゚⊿゚)ξ「……内藤君?」
(;^ω^)(今の)
内藤はさりゆく背中を見つめていた。
すぐ側に居たから、その言葉が最後まで聞こえた。
その意味をすぐには受け入れられず、困惑したまま。
89
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:24:25 ID:NGZxpddA0
・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
帰り道、特に会話もないまま、水平線を横目に夕暮れの道を行く。
道路わきの道はすでに人通りもなく、車すら通っていない。
この一年ですっかり慣れ親しんだ、ツンと二人の下校。
初めの頃とはまた違う、何ともいえない気まずさがある。
けれど苦ではなく、無理して話をする必要もない、それを互いに知っていた。
だが、どうしても気がかりがある内藤は、今日は一歩踏み出した。
( ^ω^)「ツン、話というか、相談があるお」
ξ゚⊿゚)ξ「ん、なぁに?」
( ^ω^)「……島から出られるなら、って、どういう意味だと思う?」
ξ゚ -゚)ξ「っ」
(;^ω^)「お?」
ξ゚⊿゚)ξ「なんで?」
(;^ω^)「え、ああ…デレさんが、最後に小声で言ってたんだお」
「いいのに」
「それで、島を出ることができるなら」
90
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:25:34 ID:NGZxpddA0
これまで、どこかゆるふわな雰囲気だった彼女とは思えないような、
過激で、しかし耳から離れないほど、悲しい声だった。
(;^ω^)「ツンも、確か同じようなこと言ってたお?
その……役割ってのは、やっぱりそんなに重いものなのかなぁ、って」
言いながら、ふと気づく。
横を歩いていたはずのツンが、足を止めていた。
ふりむけば、夕日を横から受けてツンの表情が見えにくい、
手で顎に触れ、何かを考えているような仕草。
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね、何せ、私たち巫女は、今まで一度も島を出たことがないくらいだから」
(;^ω^)「出たくない、わけじゃないんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、皆そうなんだと思う」
( ^ω^)「で、でもほら、ちょっとくらいなら、いいんじゃないかお?」
(;^ω^)「だから、その…ええーと……」
91
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:26:31 ID:NGZxpddA0
二人っきりで、島の外へ遊びに行こう。
つまり、デートをしたい、のだが。
先の言葉が出てこない。
長い時間を共にした。
気を許した間柄。
告白すら、もう軽くできてしまう。
はずなのに。
『最低だよね』
『あなたの気持ちを、利用して』
そう思っていた、だけだったのだろうか。
今でも、彼女に対する感情は一つだ。
想いは変わっていない、ただ。
少なくとも自分への好意が、これまで思っていた物と違うことを知ってしまった。
内藤は自分でも気づかないまま、臆病になっていた。
92
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:27:34 ID:NGZxpddA0
その結果。
(;^ω^)「みんなで、遊びに行こう、僕案内するお」
そんな逃げの言葉を吐いていた。
対するツンは、一度、長く頷いて、俯いたまま、間をおいてから。
「うん、その時はお願いね」
笑顔で答えた。
しかしそれが作られたものであり、
表情には影が落ち、目の光は暗く淀んでいたことは、
そんな様を眺める猫だけが、知っていた。
・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
93
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:28:28 ID:NGZxpddA0
それから、数日。
普通の日々を送っていた内藤だったが、当番であるゴミ捨てに向かう最中、
どこかで見かけたことのある姿を見つけ、立ち止まる。
すると相手も気づいたようで、視線を合わせるなり微笑み、歩み寄ってきた。
ζ(゚ー゚*ζ「や、奇遇ね〜」
( ^ω^)「あ、どうも」
ζ(゚ー゚*ζ「相変わらずぷにぷにー」
(;^ω^)「やめてやめて」
それにしてもボディタッチが激しい、これは下手すれば、
しなくても、勘違いさせられてしまう危ないやつだ。
内藤は心をつよく持とうと思う。
しかし、目の前で笑う彼女を見ていると、
すぐさま折れそうになる自分に気がついた。
( ゚ω゚)(おああーーーー落ち着け僕、これは絶対違うやつぅーーーー!)
ζ(゚ー゚*ζ「変な顔ー」
(;^ω^)「そ、それより、あれから変わりないかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「ん、最近はずっと平和よ」
94
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:29:11 ID:NGZxpddA0
(;^ω^)「何よりだお……あ」
ふと、先日の別れ際を思い出す。
きっと色々思うところあっての事、とは思うもののやはり気にかかる、
なにせ、自分が助けると言った返事がノーだったのだ。
内藤はそれとなく、あのときの言葉の意味を聞いてみる事にした。
ζ(゚ー゚*ζ「だって、シルシが無ければ気兼ねなく外に遊びにいけるでしょ?」
(;^ω^)「それだけ?」
ζ(゚ー゚*ζ「それだけよー、なんで?」
(;^ω^)「そんなに、島の外って行きたいものなの?」
ζ(゚ー゚*ζ「もちろんだよ〜!」
( ^ω^)「でも、ここは海も綺麗で、空も綺麗で星もよく見えて凄いし
それに、街だってちゃんとしてる…」
( ^ω^)「島の外って言っても、都心まで行かなきゃそう変わらないお?」
むしろ、ここより何も無いところだって多い。
にも関わらず、彼女達は言う、島の外。
あくまでも、都心に行きたいでもなく、島の外だ。
内藤が感じている違和感は、そこにある。
95
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:42:04 ID:NGZxpddA0
(;^ω^)「何よりだお……あ」
ふと、先日の別れ際を思い出す。
きっと色々思うところあっての事、とは思うもののやはり気にかかる、
なにせ、自分が助けると言った返事がノーだったのだ。
内藤はそれとなく、あのときの言葉の意味を聞いてみる事にした。
ζ(゚ー゚*ζ「だって、シルシが無ければ気兼ねなく外に遊びにいけるでしょ?」
(;^ω^)「それだけ?」
ζ(゚ー゚*ζ「それだけよー、なんで?」
(;^ω^)「そんなに、島の外って行きたいものなの?」
ζ(゚ー゚*ζ「もちろんだよ〜!」
( ^ω^)「でも、ここは海も綺麗で、空も綺麗で星もよく見えて凄いし
それに、街だってちゃんとしてる…」
( ^ω^)「島の外って言っても、都心まで行かなきゃそう変わらないお?」
むしろ、ここより何も無いところだって多い。
にも関わらず、彼女達は言う、島の外。
あくまでも、都心に行きたいでもなく、島の外だ。
内藤が感じている違和感は、そこにある。
96
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:42:47 ID:NGZxpddA0
これではまるで、ただ、島から出ることが目的のよう。
デレはしばし、微笑んだまま内藤を見据え、
やがてゴミ捨て場近く、校舎階段へと腰掛けた。
ζ(゚ー゚*ζ「………これが、そっか…」
( ^ω^)「?」
ζ(^ー^;ζ「なんか…わかっちゃうなぁ、あの子のきもち」
(;^ω^)「何の話だお?」
ζ(゚ー゚*ζ「こっちの話、それよりも…じゃあ教えてよ、外のこと」
(;^ω^)「いいけど…別に変わらないお?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいの、あなたから、聞きたいの」
上目遣いに、デレが言う。
心臓が早鐘を打つのを内藤は感じていた。
( ゚ω゚)(あああああああああああおおおおおおおおおおん!!!!!)
( ゚ω゚)(罠、これは罠だああああああああああああああああああああ!!!!)
ζ(゚ー゚*ζ「変な顔ー」
97
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:43:51 ID:NGZxpddA0
そうして、しばらく二人は談笑に興じた。
気づけば内藤も突っ込んだことまで口にしており、ふとした言葉にハッとするも、
デレはさして気にした様子もなく、それに答えていた。
特に気にかかったのは。
やはりデレの家はそういう家系か、と問えばそんなことはない、普通の家だと答え。
今まで島を出たことはないのかと問えば、やはり無いと答えた。
(;^ω^)「それは、しきたりだから?」
ζ(゚ー゚*ζ「んー…そうね〜、そんな感じかなぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「……あとは、こわいのかも、しれないね」
( ^ω^)「怖い?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、嫌な思いも、するかもしれないから」
(;^ω^)「どんなイメージ……」
( ^ω^)「まあ、なんなら、その時は僕が案内するお」
ζ(゚- ゚*ζ「…内藤君が?」
ふ、とデレの瞳に影が落ちたのを内藤は感じた。
ζ(゚ー゚*ζ「それって、もしかして、私デートに誘われてる?」
(;^ω^)「え、あ、いや、今のは、そんなつもりでは…!」
98
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:45:11 ID:NGZxpddA0
ζ(^ー^*ζ「いいのに〜…わたし、実はあなたのこと……」
(;゚ω゚)「ふぁっ!?」
ζ(゚ー゚*ζ「冗談よー、また変な顔してるー」
(;^ω^)「ぐぬぬ」
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ…いじわるするから、おかえしっ」
(;^ω^)「してないのに!?」
言って、デレは立ち上がって日向のほうへ。
すると目を細め、天を仰ぐ。
「まぶしい…なぁ」
そんなささやきが、聞こえた。
(;^ω^)「デレさん?」
内藤はそんな背を追いかけた。
デレはそのまま、手をかざして陽を避ける。
そして、あの時のように、ポツリと、口にした。
ζ(゚ー゚*ζ「私ね……太陽って、苦手なんだ」
99
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:46:30 ID:NGZxpddA0
( ^ω^)「それはまた、どうして?」
ζ(゚ー゚*ζ「繰り返しているから」
ζ(゚ー゚*ζ「何千、何万回と、ぐるぐるぐるぐる、同じところを回っている、
それって……恐ろしいことだと思わない?」
(;^ω^)「ん、んー…どうだろう…」
(;^ω^)「いやでも、繰り返すから、そうやって光が生まれるわけで…」
ζ(^ー^*ζ「ふふっ、ごめん、変なこと言ったね…私おかしいでしょ? 自覚はあるんだー」
( ^ω^)「んー、まあでも、太陽嫌いなのは別に変じゃないお?」
ζ(゚ー゚;ζ「え? そ、そう?」
( ^ω^)「うん、女の子が日差し…紫外線とか気にして避けるのは、普通だったお」
( ^ω^)「むしろ都心の方じゃ、太陽を避ける術ばかり磨かれてたお、
やれ日傘やら、クリーム塗らなきゃだの、なんか大変そうだったお」
ζ(゚ー゚*ζ「………避けても、いいの、かな」
( ^ω^)「健康考えたら避けないほうがいいかもしれないけど……
別に嫌なら、日陰に逃げたっていいと思うお」
ζ( ー *ζ「逃げても………いいの?」
100
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:47:56 ID:NGZxpddA0
( ^ω^)「いいお、それなら、あっちに戻ろう」
言って、内藤はようやくデレの表情に気がついた。
彼女は、その瞳に涙をためていた。
(;^ω^)「え…」
ζ(;ー;*ζ「内藤君は……私を、巫女を守ってくれるんだよね?」
(;^ω^)「そ、その、つもりだお…?」
ζ(;ー;*ζ「じゃあ………助けては、くれないのかなぁ…?」
(;^ω^)「いや、だから僕はそのつもりで…!」
ζ(;ー;*ζ「これから先…ずっとそうなのかな……変な人たちに付け狙われて、
逃げることもできずに、ずっとこの島の中で…?」
ζ(;ー;*ζ「ねえ、内藤君……もし、もしも私が――――」
言いかけた、その瞬間だった。
( ゚ω゚) !?
世界がすべての色を失くし。
モノクロの中に閉じ込められていく。
そして全てが静止した。
101
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:49:27 ID:NGZxpddA0
(;^ω^)「これは……ゼロ時間!?」
止まった世界の中、内藤は胸元から十字の光を放ち、周囲を見渡した。
まだ変化はない、目の前にはやはり言葉も途中に止まったままのデレが居る。
だが、今度はデレの胸元からも光が溢れ、やがて一つの形を象った。
モノクロだった彼女にも、再び色が戻っていく。
そして、浮かべていた涙を拭い、再び視線を合わせた。
ζ(゚ー゚*ζ「……呼んでる」
( ^ω^)「……みたいだお」
次いで、遠くで光の柱が立ち上った。
天を貫かんばかりに伸びた光は、やがて羽のように開き、
その中心部から、まばゆい世界が広がり、モノクロを覆い隠していく。
眩しさに目を閉じる内藤だったが、次に目を開けたとき、
そこに広がっていたのは、やはりあの時と同じ景色だ。
空には大きな模様と、鎖のような物が蠢いている。
地は白く、どこまでも続く果てには炎のような光が揺らいでいた。
ただ違うのは、自分は今、シャボン玉のような中で浮かび上がっていること、
もう一つは、今度ははじめから、二つの巨体が存在している事だ。
(;^ω^)(サイバディが二体…!? どういう事だお、これはどうすれば!?)
102
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:51:26 ID:NGZxpddA0
ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君!」
( ^ω^)「あ、ツン」
シャボンの一つが、流れるように近づいてくる。
中に居るのはツンだ、しかし気のせいか、近づくにつれ表情が険しく。
_,
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
(;^ω^)「ひい!?」
ζ(゚ー゚*ζ「やだ、怖い顔」
内藤はデレと同じシャボンの中、身を寄せ合っていた。
そして、ツンはとても冷ややかな声色で言った。
ξ゚⊿゚)ξ「何をしてるの…?」
(;^ω^)「いや、これは、たまたま……」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君じゃない! あなた、どういうつもり!?」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんでここに居るの!? そんな事をしたらあいつら…!!」
ζ(゚ー゚*ζ「私だって、見届けたいの……わかるでしょ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「っ……」
103
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:53:00 ID:NGZxpddA0
(;^ω^)「そ、それより、モラ……網羅さんは!? どこに!?」
((β∵β)「ここに居るよ、内藤君」
(;^ω^)「ああ、よかった…あの、この状況は」
((β∵β)「決闘だよ……形式上は、保守派と解放派の」
(;^ω^)「僕も行った方が…?」
((β∵β)「不要さ、結果がどうあれ、特に彼らに関しては」
(;^ω^)「へ? それはどういう…」
((β∵β)「それより警戒してくれ、デレさんがこちらへ来てしまった以上、
奴らはどんな手でくるかわからない…!」
( ^ω^)「奴ら……」
そんな内藤たちのちょうど反対側に、数人分のシャボンが浮かんでいる。
彼らの視線もまた同様に、目下のサイバディではなくその先にあった。
(('οο)「アレって、巫女じゃナイの?」
(( δδ)「そ、そうなんです…?」
((ρÅρ)(ついに現れたか、日死の巫女)
((ρÅρ)「この好機を逃す手はない…か、あとは奴がうまくやれば…」
104
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:55:08 ID:NGZxpddA0
『さあ、役者は揃ったぞ!』
『始めていいんでしょ?』
次いで、巨体から声が響いてくる。
そして、それに始めろ、と答える声があった。
同時に、二体のサイバディがそれぞれ輝く剣を手に、構えを取る。
よく似た姿の、黒ずくめのマントを羽織ったサイバディはまるで兄弟のよう、
しかしそれぞれ特徴もあり、輝く剣と同様の、赤と黄色のカラーリングがされていた。
((`γ´)『往くぞ、オートスター!!!!』
赤色の光る剣を振るい、一体が駆けた。
(`λ´))『来いよ、ジャンヌスタァアアアア!!!』
黄色く輝く剣を真っ直ぐに、受ける姿勢を取る。
そして、二体が衝突。
爆発めいた衝撃が空間を揺らし、砕け飛んだ地面が衝突の威力を物語り。
ぶつかりあう光の剣が、電撃のようなエフェクトを放ちながら両者の間に散る。
だがそんな均衡も僅かな間、すぐさま剣戟は二つ、三つ、と重なっていく。
白い雷光が幾度も弾け、爆発音が鼓膜を叩く。
105
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:57:34 ID:NGZxpddA0
平らだった地面はブロック状に抉れ。
内藤はそんな惨状にあらためて恐怖を覚えた。
(;^ω^)(こんなものが解き放たれたら、それこそ大変だお
道も建物もメチャクチャになる、シンゴジラとどっこいだ)
(`λ´))『そこだ!!』
((`γ´)『甘いわ!!!』
(`λ´))『っ……は、ははは!!! いい、最高だ!!』
((`γ´)『ああ、ああ!!! この高揚感、もっとだ、もっと打ってこい!!!』
やがてそんな中に笑い声が響く頃。
内藤はようやくこの戦いの違和感に気づいた。
周りが、どうもこの戦いに対してあまり関心がない。
現にこちらはデレと、反対側の方へとばかり目を向けているし、
相手側も遠くて見えないが、少なくとも戦いを応援するような空気ではない。
さらに言えば、いくつか浮かんでいるギャラリーと思われるものたち。
「変身しないのかなー」
「やっぱ詐欺だよあれ…」
「まだー?」
(;^ω^)「……」
106
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 19:59:32 ID:NGZxpddA0
明らかに、内藤へと向かって視線と、野次を投げかけている。
緊張感も何もあったものじゃない。
だが、その均衡もついに崩れる時が来た。
(;^ω^)(あっ!)
((`γ´)『ぬっ!?』
内藤側に立っていた、赤い剣をもつ方のサイバディが、
地面の大穴に足を取られ、バランスを崩して片膝をついてしまう。
(`λ´))『もらったああああああああ!』
その隙を逃さず、黄色い剣をもつサイバディが地を蹴り砕く。
暴風のような勢いで迫って斬りかかる。
よろめきながらも抵抗しようとする赤い剣の姿があるが、
突撃してくる勢いを殺しきれるわけもなく、
最早成すすべもないまま、黒衣の姿が黄色い光に貫かれた。
だがそれだけでは終わらない、貫いた勢いそのままに、
今度は黄色い剣が横薙ぎに払われれば、横線の残光と共に、胴体を真横に切り裂かれ、
真っ二つになった上半身と下半身は、やけにゆっくりとした動作で別方向へと倒れた。
107
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:01:39 ID:NGZxpddA0
((`γ´)『ちぃ…!』
(`λ´))『凡ミスだな、だがこれで…!!』
瞬間。
(`λ´))『っっ、何!?』
どこからか、まばゆい光が放たれ、その場の誰もが動きを止めた。
だが、それもつかの間、すぐに原因は察せられ、一部からは歓声があがる。
光の出所は、内藤だった。
(#^ω^)「行きますお…!」
((β∵β)「待て、まだあいつらは…!」
静止の声もあったが、今、目の前で仲間と思わしき相手がピンチだ。
今しがた、ゴミ捨て場で見てしまった涙の件も相成って、使命感に背中を押され、
これ以上黙ってはいられないと、内藤はシャボンの球体から駆け出していた、
そして飛び出しながら、内藤は叫ぶ。
(#^ω^)『アプリボワゼーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!』
108
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:05:32 ID:NGZxpddA0
胸の十字の光がより強く輝くと、呼応するように何もない空間に巨大なひびが走る。
亀裂は飛び出した内藤の背中側から広がっていくと、奥には輝く世界が覗く。
ついには零時間の景色を砕き割るようにして、まず現れたのは巨大な手。
そしてこじ開けた穴を無理やりくぐるかのように、紅白のシルエットが姿を現した。
それはやはり、貴族の帽子を被ったような姿に、腰元には浮遊したフィンが並ぶ。
この場に至っては異端そのものである、22体目のサイバディ。
『颯爽登場!』
胸部の球体に十字の光が走れば、次いで人影が現れた。
从 ゚∀从『銀河、美少年! タウ・バーン!!』
名乗りを上げ、再びあの姿となった内藤は、
そのまま二体のサイバディの間へと割り込んだ。
全周囲モニタ、あるいは透明な球体の中とも思える空間から、
自分の操るサイバディの一部が見える。
試しに片手をあげてみれば、巨大な腕も同じように動く。
最早これは、操るといったものではなく、ただ、自分の身体を動かす事と変わりない。
まさに一心同体。
同時に、全身に力がみなぎるのを感じる、これなら、これならば、と内藤は思う。
109
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:07:14 ID:NGZxpddA0
从 ゚∀从『そこまでだ、これ以上やるなら僕が相手になる』
(`λ´))『あーららいいとこだったのに……主賓がきちゃったよ』
从 ゚∀从『迷惑だったかい』
(`λ´))『ヘヘ、とんでもない、お待ちかねだってんだ………よぉ!!!!』
言葉より先に、黄色い剣のサイバディがタウバーンへと斬りかかる。
だが、その行動は背後に現れた存在によって止められた。
(`λ´))『っ、ジャンヌスター!?』
从;゚∀从『お、 無事だったk……ええ!?』
((`γ´)『まったく、こいつと闘りあう時用のとっておきだったんだがな…』
見れば、赤い剣を持つ黒衣のサイバディは、やはり上下に分断されたままだ。
しかし、上半身は剣を構えたまま、宙に浮かび上がっている。
((`γ´)『何にせよ、抜け駆けは許さんぞオートスター』
(`λ´))『いやいや、そんなつもりは』
(`λ´))『それよりどうだ、もういっそ二人がかりでこいつを…』
((`γ´)『そんな見え透いた手に乗るか、それにもう止めだ……興がそがれた』
110
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:09:50 ID:NGZxpddA0
(`λ´))『何故だ、絶好の機会だぞ!』
((`γ´)『……この状況下では、どちらについても面白くない』
(`λ´))『まーたフェア精神? ほんと、変なとこ頑固だよ』
((`γ´)『とにかく止めだ、帰るぞオートスター』
(`λ´))『しょうがないな…』
言って、二体の黒衣姿が光に包まれ、二体の巨人がその場から消え去り、
跡には仮面をつけた二人組みが腕を組み、タウバーンを見上げていた。
从 ゚∀从
((`γ´)(……あいつ)
((`γ´)(ここまでを見ていて、まだ俺を仲間だとでも思っているのか?)
ジャンヌスター、兄者はふと、ここ数日間の事を思い返す。
彼がスタードライバーとして得た能力は憑依。
この力によって、兄者は意思の弱い他生物のからだを乗っ取り、
猫や鳥となって内藤の行動を観察していた。
((`γ´)(巫女のために戦う、か…まるでどこぞの誰かさんのようだな)
111
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:11:21 ID:NGZxpddA0
(`λ´))「で、勝敗はどうするんだよ?」
((`γ´)「お前の勝ちでいいさ」
(`λ´))「え、マジ? ラッキー」
((`γ´)(ならば見せてもらおう銀河美少年、その願いが過ちと知ったその時
お前はどうする、それでも戦うと言えるのか、それとも―――奴同様に)
ちらりと兄者は解放派の面々を一瞥すると、可笑しそうに微笑んだ。
一方、そんな勝手気ままな兄弟の行動に、解放派の一人が怒りを顕に身を乗り出す。
(('οο)「…あいつラ、また勝手なコトを!!」
((ρÅρ)「放っておけ、それよりも―――」
ζ(゚ー゚*ζ「終わったの?」
ξ゚⊿゚)ξ「そのはず、だけど……内藤君?」
从 ゚∀从『……』
サイバディに乗り込んだまま、内藤は周囲を見渡した。
あたりには、シャボン玉がいくつも浮かんでいるばかりで変化は無い。
だが変化が無いゆえ、内藤は違和感を覚えた。
112
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:13:51 ID:NGZxpddA0
((β∵β)「どうした内藤君、サイバディがあってはゼロ時間は解けない、終わったなら」
从 ゚∀从『来る』
え、という誰かの疑問符が、突如として響いた爆音によってかき消された。
次いで、遠く炎の影から煙が生まれ、一筋の線となって伸びてくる。
ブォォオオオン、という音を連れ、姿を見せたのは巨大なバイクのシルエット。
それはタウバーンの周囲を大きく旋回し、白い地面にいくつもの跡を刻みながら、
高速で走行し、やがて正面にて停止すると、ウィリーのような行動を取る。
見れば前後のタイヤ部は、円形の光そのもので、
光が消えると両方の先端がふたつに別れ、変形と共に一つの形となっていく。
ζ(゚ー゚;ζ「な、なにあれ!?」
((β∵β)「テトリオート!? ドッグキャットか!!」
紺色にマゼンタのラインが走るサイバディだった。
喉元には特徴的な四本のマフラーが覗き、排気の煙が立ち昇る。
ミ(`θ´)『よお銀河美少年、いきなりだが…俺は解放派として、タウバーン、お前に決闘を申し込む!!』
从 ゚∀从『決闘…? ああ、いいよ、受けて立とう!』
ミ(`θ´)『へ、いい度胸だ、なら威勢だけで終わるなよ?』
113
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:15:55 ID:NGZxpddA0
((β∵β)「ま、待て!!」
从 ゚∀从『ん、網羅さん? どうしたんだ?』
((β∵β)「ドッグキャット!! なぜ、どうやってここに居る!! 」
((β∵β)「まさか……まさか、貴様にもシルシが!!?」
ミ(`θ´)『おいおい、早合点だぞ』
ξ゚⊿゚)ξ「生徒会の棺を…使ったのね」
ミ(`θ´)『正解、あいつらが闘うってんで、潜り込んでずっと待機してたんだわ』
((β∵β)「馬鹿な…そんな真似をしたら連中も黙っては」
ミ(`θ´)『お前が馬鹿、ちゃんと許可とったに決まってんだろ』
((ρÅρ)「ふん…網羅、あの問題児共が揃って棺を使うんだ、念のために対抗策を講じるのは当然のことだろう」
((β∵β)「っ…ゴールキャット、貴様が…!」
ミ(`θ´)『さあ、話は終わりだ!』
ミ(`θ´)『行くぞタウバーン、この俺ドッグキャットと!』
言って、紺色のサイバディの両腕、シールド状の装甲に先ほどの光が灯る。
しかし今度はギザギザの形状で、丸ノコのように回転し火花を散らす。
114
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:17:49 ID:NGZxpddA0
ミ(`θ´)『このサイバディ、テトリオートがお前をぶっ倒す!!!』
そして、その二つをタウバーンへと投げつけた。
光輪はそのまま回転を強め、空気を切り裂き飛翔する。
从 ゚∀从『おっと!』
しかし内藤、タウバーンはそれらを難なくすり抜ける。
避けた光輪は地面に大きな亀裂を二つ、綺麗な線を描いて伸びていく。
从 ゚∀从『流石に追尾はしないか』
从 ゚∀从『って、あれ?』
ふりむいて光の行くさまを見届けた後、ふたたび正面を向くが、
そこには紺色のサイバディ、テトリオートの姿は無く、
煙と大きなタイヤ跡だけが残されていた。
从;゚∀从『消え…? っ!!』
と、言葉も途中、タウバーンが背後からの衝撃に身をよろけさせる。
内藤は右腕にしびれと、痛みを感じていた。
ミ(`θ´)『今のを避けるか……褒めてやる』
从 ゚∀从『どーも、あんたもすげー早いな』
115
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:19:29 ID:NGZxpddA0
ミ(`θ´)『当然だ、だが……まだこんなものではないぞ!!』
いつの間にか、最初に見たバイクの姿となったテトリオートが、
再び排気の爆音を響かせながら、地面を抉るように発進、
すぐさま、目でも追いきれぬ速度で旋回を始めた。
内藤も追おうとはするものの、あまりにも速度が違う、
ほぼ立ちすくんで警戒するのに精一杯だった。
ミ(`θ´)『もっとだ……もっと早く…!!』
ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君!! 危ない!!」
从;゚∀从『っっ…! ぐぁ!!』
やがて、光るタイヤが作る残光だけが見えるほどの速度に達すると、
当初は掠めるだけだったものが、ついには避けきれず、受けた手が弾かれた。
从;゚∀从『いてて……こりゃ止めるのも無理そうだな』
ミ(`θ´)『どうした、抵抗もできないのか!?』
从 ゚∀从『ならば…!』
从 ゚∀从『銀河を満たせ、タウの輝き!!』
タウバーンの周囲に、いくつもの十字の光が輝く。
それらは両肩から手のひらへと収束し、輝く玉となり、
(('οο)「アレは、リアジュウブルをやった光…!?」
116
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:21:13 ID:NGZxpddA0
从 ゚∀从『タウ・銀河…ビーーーーーーーーーム!!!!!!』
一筋の光線となって、今も疾走するテトリオートまでの空間を貫いた。
だが、それもあと一歩届かない、追従する形でビームが地面を抉っていく。
ミ(`θ´)『ああ、いいぞ…テトリオート!!』
从;゚∀从『何!?』
と、そこでテトリオートが反転、勢いそのままにビームを掻い潜り、
線に沿って直進、さらには速度を重ねて上げて、
ついにタウバーン本体を捕らえた。
衝撃。
吹き飛ばされたタウバーンの巨大が宙に浮かび、
全身が痺れ、浮遊感だけがそこにある。
誰かの悲鳴を聞きながら、内藤の意識は。
(; ω ) か、かてない…
そんな言葉に支配されかけていた。
117
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:22:20 ID:NGZxpddA0
( ω ) あんな早いの、どうしたら、こわい、むりだお、だけど
けれど、それでも折れずにいられるのは、
ひとえに、聞こえてくる声があるからに他ならない。
「諦めるなって、まだ終わってないぞ」
サイバディに乗り込んだときから、ずっと声は聞こえている。
恐れや不安も、この声が励まし、内藤に力と勇気を与えていた。
( ω ) でも、いわれたとおりにしたのに
「言われた通りにしか、してないからだよ」
「もっとよく見ろ、そして考えろ、大丈夫、やれるさ」
「なにせ」
从 ∀从「お前には、わたしがついてるんだから!」
118
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:25:21 ID:NGZxpddA0
从;゚∀从「っ!!!!!」
意識が戻る、地面が近い。
どうにか着地すれば、地面が大きく抉れてクレーターが出来上がる。
正面を見れば、テトリオートが再び走り始める、その瞬間しかまともに視認できない。
気を抜けばすぐに視野の外へ見えなくなる。
だが、それでも。
从 ゚∀从『恐れずに、前を向け、そういう事なんだな!!』
从 ゚∀从(だが、奴の足を止めるには…!)
あたりを見渡せど、何も見あたらない。
どこまでも地面が広がって、相手に有利なフィールドだ。
从 ゚∀从「…地面? 道路…?」
はっ、とあの兄弟の戦いを思い返す。
あのとき内藤は、その様子を見てなんと思ったのか。
そうだ、ともう一度声が聞こえた。
"彼女"では無い自分では、力不足で劣った戦いしかできない。
けれど声は言った、考えろと、そして諦めるな、と。
从 ゚∀从『これだ…! パイルよ!!』
119
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:27:35 ID:NGZxpddA0
ミ(`θ´)『そろそろお終いにしようぜ!!』
テトリオートが更に加速するべく、タウバーンから距離を取る。
タウバーンはその場に仁王立ち、腰元のフィンを頭上に展開させた。
そして、自分を中心に円を描くようにして、パイルから射出されたビームが、
地面を砕きながら、どんどんその範囲を広げていく。
(('οο)「なんだ? 気でも狂ったのか?」
((ρÅρ)「…頃合か」
(('οο)「ん、ゴールキャット? 何処へ…」
从 ゚∀从『そして、タウ銀河・ビーーーーーーーム!!!!!』
次いで、更に地面を抉りながら、再度光線を放つ。
だがやはり直線的な攻撃は、見切られ避けられてしまう。
ミ(`θ´)『こいつでぇ…終わりだあああああああああああああああああああああああああ』
突進。
対する内藤は、しかし不敵に笑う。
从 ゚∀从『よく見て走れよ、不幸と踊らないようにさ!!』
ミ(`θ´)『馬鹿め、路面を荒らして足止めって魂胆だろうがなぁ…』
ミ(`θ´)『この程度で、この俺を止められるか!!!!』
120
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:30:07 ID:NGZxpddA0
言うとおり、荒れた路面は酷く陥没し、あるいは隆起し荒れ果てている。
だが既に速度を纏った巨体は、そんな物は物ともせず、
弾き、あるいは砕きながら疾走を緩めない。
両者の距離が近づき、近づき、近づく。
从 ゚∀从『それは、どうかな!!!』
从 ゚∀从『パイルクロス、アターーック!!!!!!!』
同時に、頭上のパイルが一斉に降下。
それぞれが回転しながら直下、地面に追突、その瞬間。
ミ(`θ´)『こ、これは!!!??』
周囲は一瞬にして巨大な亀裂が暴れまわるように走り。
地面が文字通り、崩壊した。
一息の間に地面には大穴が空き、ものみな崩落していく。
121
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:31:51 ID:NGZxpddA0
((β∵β)「これは…!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「落とし穴!?」
ミ(`θ´)『っっ…こいつ、自分ごと!?』
ドッグキャットは、目の前で一緒に落下していく姿を見る。
タウバーンは、一際大きな瓦礫に足をかけ、姿勢を低く沈み込ませていた。
从 ゚∀从『パァアアアイルゥ……!!』
その腕には、地面をこうまで砕いたフィンを纏い、
回転を早めながら、やがて光を放ち。
ミ(`θ´)『しま…っっ!!!!』
テトリオートも逃れようとするが、宙に浮いた状態では、
タイヤも空回りするばかり、排気音だけが悲鳴のように響く。
从#゚∀从『クラッシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
次いで、アッパーの形で放たれたフィンが、
回転しながら周囲の瓦礫を砕きながら突き進み、そのまま天へと貫いた。
122
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:34:17 ID:NGZxpddA0
瓦礫の山の上、二体のサイバディが相対する。
頭部をまるごと失くしたテトリオートの奥、タウバーンが踵を返す。
从 ゚∀从『こんなものが暴れたら、道路は走れなくなるものさ』
ミ(`θ´)『……ああ、そう、かもな』
そして。
爆発。
勢いはその場に留まらず、天へと昇り、
まるで壁にぶつかったかのように、暴炎を空中に広げた。
そして、その音と光が。
とある知った人間の悲鳴を、かき消していた。
从 ゚∀从『ん…? なんだ?』
やがて光が収まって、穴の底から見上げれば、
ツンとモララーが何やら慌てた様子で、何かを指し示して叫んでいる。
123
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:36:28 ID:NGZxpddA0
示しているのは、空の中心。
大きな歯車のような形の、巨大な模様。
このゼロ時間の封印を表す、牢獄の刻印。
見れば、そこに何か浮かび上がっている。
从;゚∀从『あれは……サイバディ?』
紋のなかの一つ、人型の、まるで羽衣をまとう天女のような、
どこか神秘的なシルエットの存在がそこにある。
内藤が見惚けていると、上から声が続く。
ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君! あの子が!!!」
((β∵β)「頼む、奴を止めてくれ!!!」
从;゚∀从『あの子…? それに奴って…』
そこで、内藤はようやく気がついた。
先ほどまで、ツンと同じ場所に居たはずの、もう一人の姿が無い。
自分が守ると、そう宣言した彼女、デレが、居なかった。
从;゚∀从『まさか…あれは!?』
ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君、急いで! このままじゃ……このままじゃ、封印が!!!」
124
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:37:45 ID:NGZxpddA0
从;゚∀从『く、くそ!!!』
すぐさま駆け出すが、穴の底からでは時間がかかる上に、疲労も大きい。
見れば、空の紋のサイバディの正面には、ひとつの球体が浮かんでいる。
ζ(゚‐゚;ζ『……内藤君』
从;゚∀从『デレさん、今助けに…!!』
((ρÅρ)「……お前も、か、だが…!!!」
と、その球体から光が溢れる。
白く、眩く、とても強い光だった。
((ρÅρ)「スターソード…ディアマン!!」
遠目に、その正体は球体の中、一人の人間の手から放たれている。
そして光は収束し、ついにはとある形を作り出した。
剣だ。
光り輝く剣が、仮面の男の手に握られていた。
男は、その光を振りかざし。
125
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:40:18 ID:NGZxpddA0
从;゚∀从『やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
((ρÅρ)「もう遅い!!!!」
更に肥大した光の剣で、封印の紋ごと、サイバディを斬り裂いた。
ζ( ‐ ;ζ「っっっ、づあ、あ、あぐ!!!」
サイバディの正面、球体の中でデレが苦悶の声を上げ、
その胸元から一際大きな光が浮かぶと、今度は弾けたように消え去った。
同時に。
((ρÅρ)「ふっ」
从;゚∀从『あ、あ……』
空にいくつもあった鎖の一部が、ほどけて消えていく。
夜を思わせるような色をしていた空が、明るさを増してより青く。
そして封印の紋が、歯車がゆっくりと回転を始め、ガチリ、ガチリと音を立て、形を変えていく。
こうして、二つ目の封印が、解かれた。
想いは違えど、誰も言葉を発せ無いまま。
やがてゼロ時間も解かれ、周囲がそれぞれの景色に戻っていく。
126
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:42:13 ID:NGZxpddA0
・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
とある一室に、巨大なボルトで止められた、機械仕掛けの棺がある。
それはやがて大きな音を立て、蓋がゆっくりと開かれれば、その端に手がかかり、
中から人間がよろめきつつ、その姿を現した。
ミ,,-Д-彡「……」
ミ,,゚Д゚彡「ん?」
と、男は入り口のところに寄りかかる人影を見つけた。
暗がりの中で分かり辛いが、確かに目が合った。
( ´∀`)「お疲れ様ドッグキャット……いや、今はもう、フサギコと呼ぶべきモナ?」
そこに居たのは、生徒会の一員、会長であるクーの取り巻きの一人だ。
同時に、此度の決闘においてフサギコの参加を許可した本人である。
ミ,,゚Д゚彡「……どうでもいいっての」
棺のあるこの部屋も、また隠し通路の先にある。
モナーは当然、管理者の一人として鍵閉めなどで残っていた。
フサギコは舌打ちを一つ、モナーを横目に通り抜けようとする、
( ´∀`)「聞いてもいいモナ?」
ミ,,゚Д゚彡「あ? なんだよ?」
127
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:43:22 ID:NGZxpddA0
( ´∀`)「さっきの戦い、本気でやってたモナ?」
ミ,,゚Д゚彡「……どういう意味だよ」
( ´∀`)「言ったままモナ、だってあのサイバディ……ほんとは飛べるはずモナ」
( ´∀`)「そうしたら、少なくともあんな負け方は…」
ミ,,゚Д゚彡「馬鹿か、バイクってのは飛ぶものんじゃねぇ、走るもんなんだよ」
( ´∀`)「そんなこだわりの為に、君は理想を捨てたのかモナ?」
ミ,,゚Д゚彡「理想? んなもんねーな、俺はただ…もっと速く走ってみたかった、それだけだ」
( ´∀`)「それを理想というモナ、外の、もっと広い世界を走りたいのではないのかモナ?」
ミ,,゚Д゚彡「外の……じゃあそれこそ、あいつの言うとおりなんじゃねえの」
( ´∀`)「あいつ?」
ミ,,゚Д゚彡「あんなもん外で走らせたら―――走る道が、無くなっちまうだろ」
言い捨てるように、フサギコはその場を後にした。
モナーはその背を見送りながら、何かを小さくつぶやいた。
細い瞳の奥には、怪しくも淀んだ輝きが灯っている。
128
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:46:00 ID:NGZxpddA0
・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
内藤は自分が、元居た場所、ゴミ捨て場前にいることに気づき、
急ぎ周囲を見渡した。一緒に居たはずの存在を探して。
ζ(゚‐゚*ζ「……」
だがその姿は探すまでも無い、目前、既にそこに居た。
呆然とした様子で、何度か内藤と視線を交わした後、
恐る恐るといった様子で、自らの胸元に触れる。
(;^ω^)「デレさん……その…」
ζ(;‐;*ζ「あ……っ」
(;´ω`)「ごめん、本当に…ごめん、だお……」
(;´ω`)「守るって言ったのに……こんな…」
ζ(;‐;*ζ「う、ううん、ちが…の」
ζ(;ー;*ζ「違うの…これは、そうじゃ…そうじゃないの」
129
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:47:17 ID:NGZxpddA0
(;^ω^)「え…? デレさん…?」
ζ(;ー;*ζ「こんな、あっさり……なんだ、ね」
ζ(;ー;*ζ「なんだか、馬鹿みたい……何してたんだろ、わたし」
デレは、涙ながらも、どこか晴れたように天を仰ぐと、
今度は内藤へ笑いかけたまま、その両手を取って自分の額へと当てた。
ζ(;ー;*ζ「内藤君は、悪くないよ、悪いのは私だから」
ζ(;ー;*ζ「だから、ごめんなさい……私のわがままで、困らせて」
(;^ω^)「なんでデレさんが謝るんだお、悪いのは僕で…!!」
ζ(;ー;*ζ「………それなら、一つ、今度は私からお願いしても、いい?」
(;^ω^)「なんだお?」
ζ(;ー;*ζ「今度、島の外に行くときは、案内してくれる?」
(;^ω^)「え、それは…」
(; ω )「…」
(; ω )「……っ!!」
ζ(;ー;*ζ「だめ?」
(; ω )「い、いや、そんなこと、ないお……大丈夫、任せて、お」
ζ(;ー;*ζ「うん」
130
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:48:32 ID:NGZxpddA0
「ありがとう」
守ることができなかった約束と、それに対する彼女の反応によって、
内藤は、ようやく、気づいてしまった。
彼女が言った、いじわる、の意味を。
そう、思い違いをしていた。
巫女である彼女達は、島から出ることが出来ない。
これはおそらく、しきたりとか、そういった類の話ではなく、
本当に、何らかの力があって、島を出ることができないのだ。
ゼロ時間という、時の牢獄。
それを司る、その意味は。
彼女達もまた、牢獄に囚われているも同義なのだ。
131
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:50:11 ID:NGZxpddA0
つまり内藤は。
封印を守るということは。
封印をするということ。
島を出て、遊びに行きたい。
島を出て、安全に生きたい。
そんなささやかな願いを、叶えない為に戦うということ。
外へ憧れるあまり、こんな自分の側にずっと居てくれた彼女に、
言わば内藤は、外を見せると言いながら、外には出させないと、そう言ったのだ。
こんな意地の悪い話があろうか。
それなのに、彼女はそれを知りながら、それでも同じ想いで、
ツンは、ただ受け入れてくれたのだ。
なら。
132
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:51:26 ID:NGZxpddA0
( ω )(僕は……)
(いったい、誰のために、戦っているんだ?)
戦うことを支えてくれた。
あの声は、今は何も、聞こえない。
終
133
:
名も無きAAのようです
:2016/11/18(金) 20:55:58 ID:NGZxpddA0
おしまい、おつ。
ようやく書こうと重い腰を上げたらおよそ一年経ってて笑う笑えない
スタドラ元ネタなのは言わずもがなだけど、細かい設定やら過去がどうとか
かなり創作と自己解釈入ってるのでそこだけご了承。
あと原作は見よう、そうしよう。
134
:
名も無きAAのようです
:2016/11/20(日) 12:10:34 ID:DOhAuc8c0
あのさぁ、これめっちゃ面白いじゃん・・・
もっと更新してくれ頼む
135
:
名も無きAAのようです
:2016/11/20(日) 23:55:21 ID:RE1wbBSI0
ええそうでしょう、自分で書いてて面白いなぁって思うもの、ええ、えへへ
一度シナリオというかプロット?が最後まで完成して満足しちゃってたけど
いざ書き始めると細かい部分が膨らんできてそれも楽しいのね
とりあえずあと二話分だから、今年中には頑張りますね
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