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ドクオの背骨
1
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/01(金) 21:53:32 ID:iWpo9g3E0
〇 愛の存在――NOWHERE――
己が信念を杖に、魂を賭けて立ち向かう。
自分よりも二回りは大きな身体を持ち、自分よりも巧みに身体を操作する相手に、
ドクオは歯を食いしばって食らいついていた。右拳をかわし、左足をかわし、白刃をかわし、弾丸をかわす。
しかし、ふと気がついたその時にはもう、目の前に爆弾が迫っていた。そして、爆発。ドクオの両足が四散した。
('A`)「アバーッ!」
/#,' 3「これでどうだッ!? こんの、わからず屋がッ!」
前のめりに倒れこんだドクオの頭部めがけて、
巨大な五指を――肉体の体積を集中させて変態させ、更に鋼鉄が如き硬度にまで高めて――を振り下ろした。
ドクオがとっさに横へ転がったため、手のひらこそ地面を叩きつけたが、スカルチノフの指には確かな感触が残っている。
('A`)
頭部を損傷し、脳が一部飛び出していった。ドクオの記憶の一部が吹き飛ぶ。五感が消失する。
視界すべてが白に染まり、それから一瞬の後に、生存本能が脳と肉体の再生を開始する……。
2
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/01(金) 21:56:33 ID:iWpo9g3E0
仰向けとなったドクオがはじめに認識したのは、青白い空だ。
雲ひとつない快晴に、二つの恒星が浮かんでいる。背中には、ざりざりとした石の感覚。
わけもわからぬまま周囲に目を走らせると、見渡す限りの緑色――刈り込まれた芝や、
多種多様の生物をかたどった樹木――を縫うように敷き詰められた白と茶の石畳。遠くには、銀色に輝く屋敷。
('A`)(ここはどこだ? おれは、今、なにをしてる? は? はああああ?)
千切れ飛んだ断面が泡立ち、盛り上がる。同時にドクオの感覚と記憶が蘇っていく。
形が整い、散り散りになった部分にぴったりと埋まった。そして、現在の状況を完全に思い出した。
スカルチノフはドクオに追い打ちをかけることはせず、怒鳴り声で問いかけた。
/#,' 3「おいドクオ! これでもまだ、出て行くと言うのか!?」
(#'A`)「当たり前だろ!」
ドクオは全霊で叫んだ。今この瞬間こそ、自分がこれまでに生きてきた時間の中でなによりも大事な場面だと。
ずっと求めていた機会がようやく巡ってきたのだ。今回の好機をものに出来なかったら死んだほうがマシとさえ考えていた。
家から出て行きたい息子と、引き止めたい父親。
二人の自宅――惑星<マンドクセ>で一番大きな宮殿だ――の庭で、彼らは対峙している。
ここにいては、決して目にすることはできないものをドクオは求めていた。
このままでは、心を震わせる冒険も夢物語も、決して体験することができない。
そのことがドクオにはどうしても我慢ならなかった。
('A`)(<マンドクセ>には何もねえ。
俺が好きなもの……俺が心を躍らせる、俺が主役となって活躍する物語の舞台には成り得ない場所だ)
ドクオの全身に力が漲る。いつまでもいつまでも、自室で読み耽っていた書籍が勇気を与えてくれた。
3
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/01(金) 21:57:33 ID:iWpo9g3E0
('A`)(恒星を食らって宇宙を渡る鳥も、劇的な進化を促してくれるオベリスクも、惑星を覆う途方も無く巨大な水たまりも)
特殊な鉱石をめぐって何百年も戦争を続けている惑星<アルフ・アー・ベット>も、
どこまでも可能性を広げ続け、何事も決して終わらせない宗教を持つ惑星<ヴァニ・ロー>も、
小惑星帯にコミュニティを築き、人の心の影を黒い翼として見ると言われている<クーデルカ21g>も。
ドクオは大きく息を吸って、集中した。それらすべてを見に行くために、戦わなくては。
(´・ω・`)
巧みな話術で宇宙の雄大さと文化の多様さを語り、ドクオの胸を踊らせた人間が見ていた。
( ^ω^)
能力や特性を余すこと無く活かして生を謳歌する方法を提案してくれた半人半馬が見ていた。
(//‰ ゚)
偽りの愛情の具現化。所得顔で世話を焼く、束縛の象徴であるヒューマノイドが見ていた。
/#,' 3「やはり、力づくでわからせるしかないようだな」
(#'A`)「やれるモンならやってみろ、クソ親父ィ!!」
<マンドクセ>という小さな惑星に囚われたままの運命を打ち破るために、
自分が憧れた物語に登場する人物のように、空想を現実にするために……父親を打倒する決意をより強く固め、ドクオは駆け出した。
.
4
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/03(日) 19:16:11 ID:LBDXupdA0
一 ドクオ(種族:モディフィカ・スライム)
('A`)
これは、八つ当たりだ。
ドクオはそう自覚していたが、自らに仕えるヒューマノイドを切り刻む手を止めることは出来なかった。
(//‰ ゚)
刃を沈める。こめかみから、唇へと向かって緩やかな弧を描いた。
全身に貼り付けられた人工皮膚は驚くほど簡単に切り裂くことができた。
彼の鬱憤が日々溜まるにつれて、切り裂く部位は上へと登ってきていた。
……脚部、腕部、胴体、首筋。そして、今日は、顔面。ヒューマノイドの顎先に切れ込みを入れ、指先でつまみ、めくり上げた。
どこを切り開いても、同じ中身が詰まっていた。
絡み合う多色の配線――優れた人工知能による豊かな感情を誇示するような――と、
入り組む灰色の鋼鉄――所詮は機械とヒューマノイドの本質を象徴するような――が。
(//‰ ゚)
ヒューマノイドは、いつものように微動だにしなかった。
体内から駆動音が鳴り続けているため、電源は切られていない。
ドクオの荒い息遣いと、吐き出され続ける悪態。
そして、時折、ヒューマノイドがドクオへとアイカメラの焦点を合わせる音だけが、室内を満たしている。
5
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/03(日) 19:19:05 ID:LBDXupdA0
……ドクオの乱れた呼吸が次第に整い、上下する肩が落ち着いていく。
やがて、ドクオの動きが止まった。右腕の刃がだらりと落ちた。
その様子を見て、ヒューマノイドが口を開いた。
人工知能はドクオの思いを汲む――「わかるよ」と親しげに肩を叩く友人の――ような声色と口調だった。
(//‰ ゚)「満足しましたか?」
(#'A`)「するわけねえだろッ!」
ドクオの激高と同時に右腕の刃が歪み、震えた。
その一瞬の揺れの後、刃がしまいこまれ代わりに巨大な握り拳が出現し、ヒューマノイドを殴りつけた。
鈍い金属音が大きく鳴り響いたが、ヒューマノイドはほんのわずかにバランスを崩しただけだった。
(//‰ ゚)
続いて、首の関節が回る音。
明後日の方向を向いていたヒューマノイドが、ゆっくりと視線をドクオに戻した。
無表情で、彼をじいっと見つめるヒューマノイド……しかしそれから、何も起こらない。
口を開くことも、体を動かすこともなく、ただただ彼を見下ろしている……。
(#゚A゚)「ううううううウウワアアあああああああああああああああああァァァァアアアッッッッ!!」
ドクオの感情が爆発した。抱えていたものを曝け出す、長く続く絶叫。
ヒューマノイド――自分に仕えているはずの機械風情――の反応が、
彼が毎日毎日こころに積み重ねた怒り、抑えに抑えた怨みに火をつけたのだ。
“自分自身の世界に対する影響力が、ヒューマノイドの小さな反応として顕現し、存在の矮小さを改めて突きつけられた”。
能面のような反応を、そう捉えたのだ。本能的な解釈。
こころの奥底で長年気づかないように目を背けていた、忸怩たる理解が飛び込んできた……。
6
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/03(日) 19:22:14 ID:LBDXupdA0
血液がドクオの全身を駆け巡る。
体温が急上昇し、水色の身体がほのかに赤みを帯びた。細胞が形を変え、体中がより暴力的に隆起する。
その変態した体で、もう一度、ヒューマノイドを殴りつけた。ごおん、とくぐもった音が室内に反響した。もう一度。ごおん。
二度、三度、四度、五度。ごんごんごんごんごんごん。
次第に殴る間隔が短くなり金属音が重なり始めると、二本の腕だけでは物足りないと言わんばかりに、
身体から新しい腕を生やして殴打する。伸ばし、反らし、しならせて、何度も何度も叩きつけた。ヒューマノイドはただ立っている。
(//‰ ゚)
……突如、鈍く響く殴打音に、細く甲高い音が混ざりこんだ。
(;'A`)
ドクオの動きが、ぴたりと止まった。
その正体は、ただ単にヒューマノイドがアイカメラのフォーカスを合わせた際に生じる音であり、
ドクオもこれまでに幾度と無く聞いたことのある、か細い音であったが今この瞬間、どんな音よりも鮮烈に彼の耳に届いた。
ゆっくりと、ドクオはヒューマノイドを見上げた。相変わらずの――あるいは急激に吹き出した怒りに対しての特効薬は、
下手に構わずそのまま放っておくことだとプログラミングされているのか――無表情。瞳の奥底を覗きこまれ、じろりと睨まれている感覚。
(//‰ ゚)
:: (;゚A゚) ::
恐怖心がドクオを鷲掴みにする。瞬く間に、燃え盛っていた憤怒の炎がいとも簡単に消え去ってしまった。
全身が凍りつく。広がり、乱舞していたすべての触腕が一斉に動きを止めていた。ただただ、ひたすらに怖かった。
ドクオの胸中に去来した憂慮……何かの間違いで――いくら強固に厳守するよう設定されているとはいえ、
いにしえから伝えられている法則は変わらない。この宇宙に、絶対なんてものは存在しないのだ――ロボット三原則が適応されなくなった場合、
瞬時に自分は殺されてしまう。機械惑星<ドライブ・アーバン・ウォー>のヒューマノイドは優秀だ。故に、彼の恐怖は加速していく。
従事するヒューマノイドに対してどれほど怒りをぶつけても、活動の維持に必須な部位の破壊――神経回路の切断や、
外部装甲を引き剥がして内部を分解するなど――を一度も行わなかった理由。
本当に自身の“命”が脅かされたその時、ヒューマノイドが抵抗しないだなんて、これが杞憂だなんて、誰が言い切れる?
ドクオはようやく、身体の動かし方を思い出した。
(#'A`)「畜生ッ!」
吐き捨てて、未だかすかに尾を引く金属音に背を向けて、ドクオは部屋を飛び出した。
7
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/03(日) 19:34:26 ID:LBDXupdA0
二 ショボン(種族:ホモ・サピエンス)とブーン(種族:ホライゾン)
(´・ω・`)
( ^ω^)
ショボンとブーンがこの小さな惑星<マンドクセ>に訪れてから、
もうすぐ三十標準日――宇宙標準時間で三十日間――になる。
彼らがなけなしの金とコネクションを使ってこんな銀河の辺境にまで――なにしろ、
銀河標準地図に記載されていない――、宇宙船を飛ばしたのは、交易のネタを求めてであった。
宇宙中から秘匿されている惑星ならば、個人商人である自分たちでも、
物珍しさを売りにしてなにか大きな取引にありつけるかもしれない、と。
(´・ω・`)「遠慮など不要でございます。是非、お手にとってご覧ください。
如何でしょうか? しなやかで、手触りの良い蔓でございましょう?」
(;’e’)「いやあ〜あのねえ〜」
(´・ω・`)「いやはや。さすがにお客様はお目が高い。これは植物惑星<ジュカイ=T=ケット>産のものでして、
強度・靭性・耐火・耐水性すべてに優れているという、とても優秀な素材でございます」
(;’e’)「だから〜その〜ね〜」
(´・ω・`)「丁寧に蔓を編んで頂きますと――もちろん、お代を頂戴できるなら我々が提供いたします――籠や鞄、
お皿等々が作れまして、これらをお店で提供することによって……」
(;’e’)「間に合ってるから〜必要ないなぁ〜」
(´・ω・`)「ふむ、そうでしたか。これは失礼致しました。
すでに調度が完全に整えられたこのお店には不要な商品を紹介してしまいましたな」
(´・ω・`)「それでは次の商品はどうでしょうか?
音楽惑星<KLRY>から極上のミュージックデータが……」
(;’e’)「うわぁ〜〜〜〜〜〜」
情けない声とともに、店主は手のひらを見せ、嘴をカチカチと打ち鳴らす。
ショボンの交渉に対しての答えだ。拒否の意。彼は移住民で、<マンドクセ>人ではない。
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