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ドクオの背骨

6 ◆hmIR/WZ3dM:2016/04/03(日) 19:22:14 ID:LBDXupdA0
  血液がドクオの全身を駆け巡る。
体温が急上昇し、水色の身体がほのかに赤みを帯びた。細胞が形を変え、体中がより暴力的に隆起する。
その変態した体で、もう一度、ヒューマノイドを殴りつけた。ごおん、とくぐもった音が室内に反響した。もう一度。ごおん。

  二度、三度、四度、五度。ごんごんごんごんごんごん。
次第に殴る間隔が短くなり金属音が重なり始めると、二本の腕だけでは物足りないと言わんばかりに、
身体から新しい腕を生やして殴打する。伸ばし、反らし、しならせて、何度も何度も叩きつけた。ヒューマノイドはただ立っている。

(//‰ ゚)

  ……突如、鈍く響く殴打音に、細く甲高い音が混ざりこんだ。

(;'A`)

  ドクオの動きが、ぴたりと止まった。

  その正体は、ただ単にヒューマノイドがアイカメラのフォーカスを合わせた際に生じる音であり、
ドクオもこれまでに幾度と無く聞いたことのある、か細い音であったが今この瞬間、どんな音よりも鮮烈に彼の耳に届いた。

  ゆっくりと、ドクオはヒューマノイドを見上げた。相変わらずの――あるいは急激に吹き出した怒りに対しての特効薬は、
下手に構わずそのまま放っておくことだとプログラミングされているのか――無表情。瞳の奥底を覗きこまれ、じろりと睨まれている感覚。

(//‰ ゚)

:: (;゚A゚) ::

  恐怖心がドクオを鷲掴みにする。瞬く間に、燃え盛っていた憤怒の炎がいとも簡単に消え去ってしまった。
全身が凍りつく。広がり、乱舞していたすべての触腕が一斉に動きを止めていた。ただただ、ひたすらに怖かった。

  ドクオの胸中に去来した憂慮……何かの間違いで――いくら強固に厳守するよう設定されているとはいえ、
いにしえから伝えられている法則は変わらない。この宇宙に、絶対なんてものは存在しないのだ――ロボット三原則が適応されなくなった場合、
瞬時に自分は殺されてしまう。機械惑星<ドライブ・アーバン・ウォー>のヒューマノイドは優秀だ。故に、彼の恐怖は加速していく。

  従事するヒューマノイドに対してどれほど怒りをぶつけても、活動の維持に必須な部位の破壊――神経回路の切断や、
外部装甲を引き剥がして内部を分解するなど――を一度も行わなかった理由。
本当に自身の“命”が脅かされたその時、ヒューマノイドが抵抗しないだなんて、これが杞憂だなんて、誰が言い切れる?

  ドクオはようやく、身体の動かし方を思い出した。

(#'A`)「畜生ッ!」

  吐き捨てて、未だかすかに尾を引く金属音に背を向けて、ドクオは部屋を飛び出した。


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