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石上優は気付かれた

1以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:47:35 ID:Zj1FT.Lw
小野寺と大友ネタ

「石上優は気付かれた」

─────────────────


小野寺麗は暇だった。
週末、共に遊ぶ予定だった友人に急遽予定が入り、時間をもて余していた。

体育祭が終わってまだ間もないのもあり、いつもの日々に戻ってもなお、小野寺の中にはあの日の感動、興奮がまるで昨日の事であるかのように頭から離れない。

そのためか彼女は家でじっとしている気になれず、何とはなしに全国チェーンの喫茶店に立ち寄った。

2以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:49:09 ID:Zj1FT.Lw

休日だったこともあり、喫茶店には多くの人が来ており、なんとか一ヶ所だけ空いていた席に座る。
コーヒーと店自慢のワッフルを注文し、品物が来る間、物思いに耽っていた。

思い出すのは、あの日のことと、クラスメイトの男子生徒。

小野寺「(噂は、アテになんないな)」

小野寺には、石上が聞いていた人物像とまるで結び付かなかった。
最初は噂通りだと思い嫌っていたし、応援団に居た石上を見て『正気かよ』とも思った。しかし、

小野寺「(あんな事する奴だって、思えない)」

応援団の練習時、石上はわたし達を『怖い』と言った。
それでも、逃げずに必死に取り組む姿を見て、石上があんな頭のおかしいストーカーみたいな事をする奴だとは、到底思えなかった。

小野寺「(そもそも、そんなのが生徒会の役員として任命されるっておかしくない?)」

現生徒会の会長、白銀御行だけでなく副会長の四宮かぐやが石上を厚く信頼している事は、誰の目にも明らかだった。
もし石上が本当にそんな人物だとして、彼等が石上を信頼し、生徒会に入れるだろうか?

小野寺「…何か知ってんのかな。生徒会は」

ぽつり、と呟いた所で注文の品が届き、小野寺はひとまず思考を止め、コーヒーへ手を伸ばした。

その時、喧しい『音』が耳を届く。

3以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:51:26 ID:Zj1FT.Lw

大友「それでさ〜、そいつが最悪なのよ。何よ『うるせぇばーか』って!」

友人A「えー…酷くないそれ?」

耳障りな『音』の正体は近くの席に偶然いた集団。その中の一人、大友京子。

共に居るのは高校の友人だろうか?小野寺は思わず眉を顰めた。よりにもよってなんでこいつに出くわすんだ、と。

大友京子。中学時代の同級生であり、石上が起こした事件の被害者の一人。

彼女は体育祭の時に来ていたが、正直言って、いい思いはしなかった。
大友自身に罪はないのだろう。しかし、小野寺にとっては体育祭に水を差されたかのような気分になった。

小野寺「(まあ気持ちはわからなくもないけどさ)」

あの事件から数日後、彼女は彼氏と破局したという。
しかし、自分には全く関係がない事なので、小野寺は無視を決め込み、ワッフルを食べ始めた。

4以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:52:04 ID:Zj1FT.Lw
大友「周知院での生活は楽しかったけど、あれだけは一生許せないと思う」

友達A「そりゃそうだよね〜。てか、そいつはなんでまだ学校に居られるの?」

大友「さあ?生徒会に入ってるみたいだし、生徒会長に上手く取り入ったんじゃない?」

友達B「うわ、せっこ!」


……………いい加減にしてくんないかな。
段々と苛立ちが募ってきた。
体育祭の時から、小野寺にとって石上の立場は『仲の良いクラスメイト』という位置付けになっている。
彼が居なければ、あの日の感動、興奮は生み出せなかったかも知れないとすら思っている。

そんな彼を、被害者とはいえたかだか中学まで一緒だった奴と、その友達という全く関わりのない奴らによって有ること無いこと陰口を延々と聞かされる。

それは小野寺にとっては耐え難い光景であり、思わず席を立ち───

小野寺「あのさ、いい加減にしてくんない?」

大友「えっ?」

大友京子のもとへ向かった。

5以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:54:45 ID:Zj1FT.Lw
大友「えっと…小野寺さんだっけ?」

小野寺「さっきから聞こえてたんだけどさ、そういう有ること無いこと適当に言うのやめてくんない?これでも石上、わたしのクラスメイトなんだけど」

大友「なっ…あいつのせいで私は!」

小野寺「大体、いつまで根に持ってんのって話だし。そもそも、あの事件があったとはいえ、それから数日で別れるのもどうなの?そんなんじゃどっちにせよ長続きしてないっての」

大友「それも石上が変なことしたせいでしょ!あんな事なかったら荻野君だって…!」

小野寺「何でもかんでも石上のせいにするのはどうなわけ?わたしはあんたの彼氏だった荻野って人がどんなのかよく知らないけどさ…少なくとも石上は、何の理由も無しにあんな事する奴じゃないってのは分かるよ」

大友「あんたねぇ…!!」

あぁ、わたしは何をやってるんだ。
確かに石上のことでイラっとはしたけど、ここまで言うつもりはなかった。
ついつい、ヒートアップしてしまった。

6以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:55:27 ID:Zj1FT.Lw
すると、さっきまで静観していた大友の友達が口を開く。

友達B「あの…京子?京子の元カレって…荻野って言うの?」

大友「?そうだけど…」

友達B「周知院中学の荻野…まさか、荻野コウって人?」

友達A「えっ、知ってるのその人?」

どうやら大友の友達が荻野の事を知っているようだが、何やら様子がおかしい。

友達B「うん。…その、京子には悪いんだけど、荻野コウって人…ちょっと変な噂があってさ」

大友「………えっ?」

小野寺「…ちょっとその話、詳しく教えてくんない?」

あの事件について、何か分かるかもしれない。

7以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:57:17 ID:Zj1FT.Lw
友達B「実は、私の知り合いにその荻野コウって人と付き合ってた人が居るんだけど…その人、なんか変な人たちとつるんでたみたいでね?その子、その後騙されて集団で酷い目に遭わされたみたいで…」

大友「えっ…なにそれ…」

とんでもない話が出てきた。
それってつまり…

友達A「それ…京子は大丈夫だったの?何も酷いこととかされなかった?」

大友「わ、私は何も…でも、ちょっと待って、そんな…」

小野寺「…それって、石上の事と何か関係あるんじゃないの?」

大友「なっ…!でも!それなら石上だって黙ってる筈ない!」

友達A「でも、そんなヤバいの言ったら何してくるかわかんないし…」

小野寺「…わたしはその場に居なかったけど、石上はそれらしい事とかなんか言ってなかったの?」

大友「そんな事ひとつも…っ!?」

石上『こいつは誰かが殴らなきゃ駄目なんだ!!親も教師もやらないから僕がやる羽目になったんだろ!!』

大友「あれが、そうなの?石上は、全部、知ってたの…?」

小野寺「…とりあえず、わたしは真実が知りたい。あの人たちなら、生徒会なら、何か知ってるはず。」

何がなんでも、聞き出してやる。
もう、人の噂に惑わされるのはこりごりだ。

8以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 05:58:30 ID:Zj1FT.Lw
週明けの放課後。

白銀とかぐやは、いつものように生徒会室で執務に励んでいた。そこに、

コンコン

白銀「はい、どうぞ」

ガチャ

小野寺「失礼します、白銀会長」

白銀「ん?小野寺さんじゃないか。今日はどうしたんだ?」

珍しい。彼女が生徒会室を訪ねてくるなんて。


小野寺「…石上、来てます?」

四宮「石上君なら、今日はもう帰りましたが…石上君にご用でしたか?」

小野寺「いえ、むしろ居ない方が助かります。…実は、お二人にお聞きしたい事があります。」

石上に聞かれたくない事とは?はて…

白銀「ふむ、聞きたい事とは?」

小野寺「その前に…入って」

その瞬間、入ってきた人物を目の当たりにした白銀は、小野寺の目的を悟った。

9以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 06:00:03 ID:Zj1FT.Lw
大友「…失礼します。」

白銀「!…君は確か……」

大友「はい。中等部まで周知院に在籍していた、大友京子です。」

白銀「…そうか、大体解った。君達の用件はな」

小野寺「!やっぱり何かご存知なんですね!?」

白銀「うむ…しかし、これはどうしたものか…」

白銀が答えあぐねていると、かぐやが即座に助け舟を出した。

四宮「…それを聞いて、あなた方はどうなされるおつもりですか?」

小野寺「わたし達は…真実が知りたい。なんで石上が、あんな事をしたのか」

白銀「…そもそも、何故彼女が此処に?どうして、石上の過去の出来事に疑問を持ったんだ?」

大友「私、は…友達から、荻野君の噂を聞きました。とても、良くない噂を…」

小野寺「わたしも、その場に居合わせていました」

白銀は失念していた。いや、対策を講じる必要はないと思っていた。

例の荻野とやらがやらかした件の被害者が居たとしても、それが大友の耳に届くことはないだろう、とたかを括っていた。

10以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/11(月) 06:02:04 ID:Zj1FT.Lw
白銀「そう、か…」

大友「私は!ずっと石上が全部悪いんだって、そう思っていました。体育祭の時だって、あいつが憎くて憎くて仕方がありませんでした。…でも!もし荻野君の噂が本当なら、私は石上の中学校生活を…!!」

自分の関係をぶち壊したと思っていた相手が、実は自分を守っていた。
そして、相手は今もなお、苦しみに耐えている。
成る程、確かに罪悪感が半端じゃないだろう。

しかし、

四宮「…それは都合が良すぎるのでは?」

大友「えっ…」

かぐやには許せなかった。許せるわけがなかった。

四宮「だって、今更すぎるでしょう?あの事件からどれだけ経っていると思っているの?真実を知る術と時間は充分にあった筈ですよ」

大友「それ、は…」

四宮「正直、あなたを体育祭で見かけた時に思いましたよ。『真相を全部教えてあげたら、どんな顔をするのでしょう?』とね」

白銀「おい四宮、それは…」

四宮「会長、石上くんは私にとっても大切な後輩です。それを今まで蔑ろにしてきた相手…許せる筈がないじゃないですか」


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