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善子「影廊」ルビィ「夕暮れの迷宮から脱出」
563
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:43:32 ID:1///zhAs
─???─
善子「ここは……また回廊かしら?」
ルビィ「え、ということはまた迷宮を彷徨うの……?」
善子「そうなるわね……でもやることは変わらない……勾玉を5つ集めて祭壇に納めればいいのよ」
ルビィ「うゆ……」
私とルビィは先へと進む……
善子「彼岸花が咲いてるわね……水も流れてるわ……綺麗なところ……」
ルビィ「うゆ……」
善子「さあ、入るわよ」
中に入ると暗闇の回廊が奥へと続いていた……
564
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:44:16 ID:1///zhAs
善子「床は木材や畳……壁は土壁かしら? 白を貴重としていてとても綺麗な印象ね……」
ルビィ「うゆ……あの不気味な回廊よりは綺麗だね」
善子「燭台がないわね……ろうそくに火をともして明かりを確保したかったんだけど……」
ルビィ「あちこちに鉢植えがあるよ、彼岸花が植えてある」
善子「なんでこんなに彼岸花が置いてあるのかしら……まさか……」
私は彼岸花に灯りをともした……
ふわっと花びらが散り、彼岸花は赤く光り、あたりを照らしていた。
ルビィ「綺麗……」
善子「この彼岸花……光るのね……」
ルビィ「じゃあ、彼岸花で灯りをともせばいいんだね!」
善子「そういうことね……」
565
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:45:04 ID:1///zhAs
善子「もっと探索していきましょう」
善子「こっちのタンスや棚を調べて……」
ルビィ「爆竹……ひかり石……それからカメラに手鏡、鍵もあるよ」
善子「これは……何かしら?」
ルビィ「何だろう? お皿の上に乗ってるね?」
善子「まさか……トカゲの尻尾?」
ルビィ「ぴぎぃ!? なんでこんなものが!?」
善子「……持って行きましょう」
ルビィ「嘘でしょ善子ちゃん!?」
善子「コンパスはこっちを指しているわ……行くわよ」
ルビィ「うゆ……」
566
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:45:34 ID:1///zhAs
グスン……グスン……
善子「泣き声の主ね、爆竹で誘導してあそこにある勾玉を取るわよ」
ルビィ「うゆ、もし他の徘徊者しゃんが来たときのために逃げる場所も考えて……あっちとかどうかな?」
善子「ええ、大丈夫そうね……じゃあ、爆竹で気を引くわよ……えい」ヒョイ
……
パチパチパチパチ……
グスン……グスン……
善子「移動してるわね……慎重に勾玉を取るわよ」
ルビィ「うゆ」
私たちは1つ目の勾玉を入手すると、その場を立ち去った。
567
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:46:10 ID:1///zhAs
善子「次いくわよ……あら? あんなところに勾玉があるわ」
ルビィ「本当だね、取ろうよ」
善子「ええ……」ガチャガチャ
善子「扉が開かないわね、鍵が閉まってるわけではないみたいだし」
ルビィ「こっちの部屋は鍵がかかってるよ」
善子「開けてみましょう」
ルビィ「中にはレバーがあるよ」
善子「引いてみましょう」ガチャ
カチッ
善子「あ、こっちの部屋の扉が開いた」
ルビィ「うゆ、じゃあ勾玉を取ろうよ」
善子「ええ、2つ目ゲットね」
私たちはさらに先に進んでいく……
568
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:46:42 ID:1///zhAs
シャン……シャン……シャン……シャン……
善子「神楽鈴の徘徊者ね、隠れましょう」
ルビィ「うゆ」
シャン……シャン……シャン……シャン……
善子「あら?」
ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」
善子「彼岸花の灯りが……点滅してない」
ルビィ「本当だ」
シャン……シャン……
善子「どこかに行ったわね」
ルビィ「うゆ……」
569
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:47:15 ID:1///zhAs
ルビィ「この灯りは徘徊者しゃんが来ても消えないんだね、やったね!」
善子「逆よ、ルビィ」
ルビィ「え?」
善子「灯りが消えないということは、もし徘徊者が近づいてきてもどっちから来てるか分かりにくいということよ」
善子「今まではろうそくの火の揺らめきでなんとなく位置が分かっていたわ」
善子「でも灯りが消えないから自力で徘徊者を探さなくちゃいけないの……」
ルビィ「うゆ……そう考えるとたしかに怖いね……」
570
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:47:52 ID:1///zhAs
善子「それにしても、おかしい……」
ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」
善子「簡単すぎる……」
ルビィ「え……? 善子ちゃん? それはおかしいよ……だって命の危機だよ?」
善子「分かってるわ、そうじゃなくて……さっきの回廊に比べて簡単すぎるのよ……」
ルビィ「何か問題があるの?」
善子「これは何かおかしいわ……逆に不気味ね……これは何かあるわ」
ルビィ「うゆ……考えすぎじゃないかな……」
571
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:48:22 ID:1///zhAs
ドタドタドタドタドタドタ……
善子「走り廻る徘徊者もいるのね」
ルビィ「うゆ」
善子「あっちに行きましょう」
ルビィ「うゆ……こっちは水路?」
善子「そうね、水路になっているわね」
ルビィ「それじゃあ、こっちに行ってみようよ」
善子「ええ、そうね」
572
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:49:02 ID:1///zhAs
善子「ここも鍵を開けて……3つ目の勾玉をゲット」
ルビィ「順調だね!」
善子「ええ……もうここまで来たら残り2つは祭壇に向かいながら集めてもいいかもしれないわね」
そのときだった!
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
どこからともなく女性の歌声が聞こえてくる!!
善子「何!? この歌!?」
ルビィ「善子ちゃん!! なんか怖いよ!!」
歌声はこちらに近づいてきていた……
573
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:49:50 ID:1///zhAs
ルビィ「よ、善子ちゃん……この歌声、どんどんこっちに来てるよ」
善子「落ち着いて……落ち着いて隠れましょう、あそこの部屋に入るわよ」
ルビィ「うゆ……そ、そうだね」
私たちは部屋に隠れた……
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
ガラガラ……
何者かがこの部屋の扉を開けて入ってきた!!
ルビィ「ぴぎぃ!?」
善子「嘘でしょ!? なんでここにいるって分かったの!? ルビィ、カメラを用意して!!」
574
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:50:25 ID:1///zhAs
見ると、そこには頭部が肥大化した人型の徘徊者の姿があった!
顔には他の徘徊者と同様に能面をつけている。
徘徊者はこちらに向かって近づいてくる!
ルビィ「ぴぎゃぁ!!」
善子「見つかった!! ルビィ!! シャッターを切って!!」
ルビィ「うゆ!!」
パシャ
凄まじい光が放たれ、その徘徊者は怯んだ。 今のうちなら逃げられるだろう……
善子「ルビィ!! 走るわよ!!」
ルビィ「うゆ!!」
私とルビィは走って部屋から出る!!
575
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:50:55 ID:1///zhAs
善子「はあッ…… はあッ……」
ルビィ「はあッ…… はあッ……」
善子「ここまで走れば大丈夫ね……どうして私たちの居場所が分かったのかしら……隠れるところは見られてないはずだし、大きな物音も立ててないはずよ」
ルビィ「うゆ……偶然じゃないよね?」
善子「ええ、あの動きは確実に私たちのことを捕捉してたわ」
しかし……
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
善子「またあの歌声が近づいてきてるわよ!?」
ルビィ「ぴぎぃ!! 怖いよ!!」
576
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:51:42 ID:1///zhAs
善子「いえ、歌声が聞こえてきてるだけかもしれないわ……あそこに隠れましょう」
ルビィ「うゆ……」
私とルビィはもう一度隠れる……
善子「今のうちにカメラの電球を取り替えて、何かあった時のために準備しておいて……何か嫌な予感がするわ」
ルビィ「うゆ」
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
善子「来る!!」
その徘徊者は私たちが隠れている場所に一直線で向かってくる!!
577
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:52:21 ID:1///zhAs
善子「居場所がバレてる!! こっちに向かってきてるわ!! ルビィ!! シャッターを切って!!」
ルビィ「うゆ!!」
パシャ!!
またカメラのフラッシュで怯む徘徊者……
善子「走るわよ、ルビィ!!」
ルビィ「うゆ!!」
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
不気味な歌声は後を追ってくる……
578
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:52:52 ID:1///zhAs
善子「ダメ!! 振り切れないわ!!」
ルビィ「ぴぎぃ!!」
追いつかれたその瞬間、あたりの景色が一瞬で変わった!!
どうやら別の場所へとワープしたようだ。
善子「はあッ…… はあッ……」
ルビィ「はあッ…… はあッ……」
善子「どうして助かったのかしら……」
ルビィ「うゆ……」
善子「手鏡を使ったわけではないわよね……だったらなぜ……」
善子「あら……?」
善子「トカゲの尻尾がなくなってる……」
579
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:53:29 ID:1///zhAs
善子「トカゲの尻尾……どこかで聞いたことがあるわ……おまじないとかでよく使われるって」
善子「きっと魔除けの力が込められた不思議なものだったのね……だから私たちに危機が迫ったときに効果があったのね」
善子「私たちが命の危機に陥ったからワープさせてくれたのよ」
ルビィ「はあ……そのおかげで助かったよ……」
善子「でも次はないわ……またあの徘徊者に出くわす前に何か考えておかないと……」
ルビィ「うゆ……何かヒントになりそうなものあるかな……?」
善子「こんなところに何かの書物が置いてあるわね」
善子「八尾の狐の昔話」
ルビィ「昔話……何かの役に立つかな?」
善子「分からないわ……でも先人たちはこういうお話の中に生きる知恵を残しておいたりしたのよ」
善子「もしかしたら何か分かるかも……?」
ルビィ「うゆ……」
580
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:54:01 ID:1///zhAs
善子「……」
ルビィ「……」
善子「ふむふむ」
ルビィ「何か分かった?」
善子「いえ、分からないわ……でもお話はこうよ」
善子「昔々、人里離れたある山に、八つの尻尾を持つ化け狐がいた」
善子「尻尾の数は強い妖力の証で、その狐は長い年月の研さんを積んでようやく九尾の狐になるところだった」
善子「九尾の狐は天狐と呼ばれ、千里先のことを見通す力を持ち、妖狐たちを束ねる頭領となるという」
善子「深い慈愛と徳と威厳を称えたその八尾の狐は、他の妖狐からの信頼も厚く次の頭領となることを誰もが疑わなかった」
善子「でも狸がその狐をからかったの……八尾の狐はそこで力を使い、雨雲を呼び寄せた」
善子「大嵐となり、雷鳴がとどろき、雨は土を砕き岩を押し流した。その大雨による川の氾濫に多くの人が巻き込まれたの」
善子「八尾の狐は、嘆き悲しみ軽率な自分を責めた……そして人間たちの屍の中から一人の子供を見つけると、その子に命を分け与えた」
善子「八つあった尻尾は四つになってしまったそうよ」
善子「そして狐の頭領は四尾となった狐を強く叱責し、彼の次期頭領としての座を剥奪した。四尾の狐は、仲間たちから追放された」
善子「そして、再び川で人が命を落とすことが無いよう、川の守り神となった……」
581
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:54:38 ID:1///zhAs
善子「というお話ね」
ルビィ「うゆ……きつねしゃんかわいそうだね……」
善子「そうね……でもいま私たちがこの状況を打開するための情報は特になかったわね」
ルビィ「九尾のきつねしゃんは千里先も見通す力があるっていったよね、あの徘徊者しゃんも遠くまで見えたりして……」
善子「まさかね……いえ…………まさか……ッ!?」
善子「あの徘徊者の能力……その正体は……」
善子「千里眼……」
善子「千里眼の徘徊者……ッ!!」
ルビィ「ぴぎぃ!? 千里眼の徘徊者しゃん!?」
善子「そうかもしれないわ……まだ分からないけど、そうでなければあんなに的確に私たちの居場所が分かるはずがないもの……」
ルビィ「うゆ……だとしたらここにいるのもバレてるのかな……」
善子「分からないわ……障害物があっても透けて見えるとしたら……どうすればいいのかしら……」
582
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:55:10 ID:1///zhAs
ルビィ「ぴぎぃ……そんな徘徊者しゃんからどうやって逃げればいいの……」
善子「……ちょっと待って、きっと千里眼といってもその能力は完全ではないはずよ」
ルビィ「どういうこと?」
善子「この書物を読むと、千里眼はかなり特別な力とあるわ……そう簡単に操れるはずがない……」
ルビィ「よく夢が正夢になることを予知夢とかいうよね、あんな感じかな?」
善子「そうね、ちょっと違うけど、何か条件があるはず……」
ルビィ「あの徘徊者しゃんは歌を歌ってたよね? 何か関係あるのかな?」
善子「千里眼を使うのに歌が必要なのかしら? それとも歌声が聞こえる範囲に千里眼の効果があるとか……」
ルビィ「うゆ……分からないよ」
善子「ええ、分からないわ……でも確認できてることがある」
善子「まずカメラのフラッシュは効く、そしてワープしてもすぐには追ってこれない……回廊が広いからなのか、それともすごく遠くは分からないのか」
善子「つまり近づかれた場合はカメラと手鏡を駆使して逃げることができるはずよ」
ルビィ「うゆ……」
善子「そしてもう一つ……私たちが使えるものの中で考えるべきは、爆竹が効くかどうかね」
583
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:55:44 ID:1///zhAs
ルビィ「爆竹……? 何に使うの……?」
善子「爆竹で注意をそらせないかどうかってことよ」
ルビィ「できるのかな?」
善子「やってみる価値はあるわね……」
ルビィ「仮に見えているとして、見えてるのに爆竹のほうに行ってくれるかな?」
善子「分からない……でも音が鳴っていれば気になるんじゃないかしら……」
ルビィ「泣き声の主しゃんたちみたいに注意が引けるといいね」
善子「ええ、やるだけやるわよ」
ルビィ「うゆ……怖いよ」
私たちは再び暗闇の回廊を歩きだす……
584
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:56:16 ID:1///zhAs
善子「こっちで勾玉をゲット……これで4つね」
ルビィ「あと1つだね!」
そのときだった……
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
善子「……近づいてきたわね……千里眼の徘徊者……ッ!!」
ルビィ「うゆ……あの歌、不気味すぎるよ」
善子「いい? やることは変わらないわ。 爆竹で注意を引けるか試す、近づかれたらカメラと手鏡を使う」
ルビィ「うゆ……」
585
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:56:47 ID:1///zhAs
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
善子「来たわ! まずは爆竹で……えい」ヒョイ
……
パチパチパチパチ……
善子「今よ!! 走って!!」
ルビィ「うゆ!!」
私たちは暗闇の回廊を走って逃げる!!
善子「はあッ…… はあッ……」
ルビィ「はあッ…… はあッ……」
586
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:57:18 ID:1///zhAs
そして気づいた、歌声が遠くなっている!!
善子「はあ……はあ……」
ルビィ「はあ……はあ……」
善子「どうやら爆竹で注意を引けるようね」
ルビィ「うゆ……」
善子「そして追いかけてこない……これは歌声の範囲にいなければ千里眼の効果はないということ」
善子「これでなんとかなりそうね……あとはコンパスが指すほうに行きながら勾玉を集めて祭壇へ行くわよ」
ルビィ「うゆ!」
────
──
587
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:57:49 ID:1///zhAs
現状、2人が分かっている徘徊者の情報
・千里眼の徘徊者
肥大化した頭部を持つ人型の徘徊者
顔の部分には能面をつけている
歌を歌っていながら近づいてくる
歌の聞こえる範囲であれば、どこに隠れても見つかる、どこに逃げても追いかけてくる
逃げ切るには歌声が聞こえたら爆竹で注意をそらし、距離を取るのが有効
カメラのフラッシュで怯ませることもできる
588
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 19:58:20 ID:1///zhAs
善子「こっちね……コンパスはこっちを指して……」
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
善子「うーん、また追ってきてるわね」
ルビィ「ち、違うよ、善子ちゃん……」
ルビィ「千里眼の徘徊者しゃんは……2体いる……」
善子「え……?」
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
歌が同時に違う方向から聞こえてくる!!
589
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:00:29 ID:1///zhAs
善子「爆竹とカメラを準備して!!」
ルビィ「うゆ!!」
善子「爆竹を……えい!!」ヒョイ
……
パチパチパチパチ……
善子「いまのうちに走るわよ!!」
ルビィ「うゆ!! あ、目の前から千里眼の徘徊者しゃんが来てるよ!!」
善子「後ろから追って来てる千里眼の徘徊者とは違うやつね! カメラよ!!」
ルビィ「えい!!」
パシャ
凄まじい光に千里眼の徘徊者は怯んだ!
善子「今のうちに走るわよ!」
ルビィ「うゆ!」
────
──
590
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:01:00 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」
ルビィ「はあ……はあ……」
善子「助かったわね……」
ルビィ「まさか2体いるなんて……」
善子「この場を離れましょう……コンパスはあっちを指してるわ……」
ルビィ「うゆ……」
────
──
591
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:01:32 ID:1///zhAs
────
──
善子「勾玉を5つ入手したわ!」
善子「祭壇に納めるわよ!」
ルビィ「うゆ!」
私とルビィは祭壇へと向かう……
善子「罠部屋とかもあったけど、なんとかなったわね」
ルビィ「うゆ……」
善子「これであの子を助けることができるのかしら……いえ、できるわ」
ルビィ「うん!」
私とルビィは祭壇へと到着した。
善子「勾玉を納めるわよ」
ルビィ「うん!」
592
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:02:07 ID:1///zhAs
目の前の扉が開き、奥へと行けるようになった。
善子「行くわよルビィ!」
善子「うゆ!」
リンリン……
奥へ進むと風鈴の音が聞こえてくる……
廊下に風鈴を飾っているようだ……
そして奥に部屋があるのを見つけた。
中は畳の部屋になっていて、その先には1人の少女がいた。
593
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:02:39 ID:1///zhAs
???「やっと会えましたね」
その少女は振り返りながら言う。
白い着物を着ており、頭には鬼の面を斜めにつけている。
善子「あなたは……」
ルビィ「あの猫しゃんと同じ声だ」
少女「あなたたちのことをずっと待っていました」
少女「立ち話もなんですから、どうぞお掛け下さい」
畳には座布団が敷いてある。
私たちは座って話をすることにした。
594
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:03:09 ID:1///zhAs
少女「私はヒガナ。 ヒバナは双子の姉です」
ルビィ「ヒガナちゃん……」
ヒガナ「ヒバナにはもう会いましたよね。 あの時は、危うく人で無くなるところでしたね」
善子「ええ、大変な目にあったわ」
ルビィ「どうしてルビィたちが来るのが分かってたの?」
善子「たしかにそうね、最初から座布団を用意してたし」
ヒガナ「私には、生まれつき千里眼という力が備わっています。 母から受け継いだ能力です」
善子「千里眼……さっきの徘徊者も使ってたような……」
ルビィ「八尾のきつねしゃんの昔話にも出てきたね」
ヒガナ「遠く離れたものを透視したり、稀にですが、未来に起こりうることも見えます」
善子「やっぱり……」
595
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:03:39 ID:1///zhAs
ヒガナ「あなたたちのことは、遠い昔、夢で見ました」
ヒガナ「夢の中で、あなたたちは、バラバラになった私たち家族を再び一つに結びつけてくれた」
ヒガナ「そして、あなたたちがこの世界に迷い込んだ時、夢が予知夢であったことを確信しました」
ヒガナ「そこで私は、あなたたちを見守ることにしました。 あなたたちと一緒に迷い込んだ、あの猫を通して……」
ルビィ「やっぱりヒガナちゃんがあの猫しゃんだったんだね!」
ヒガナ「そうですよ、猫ちゃんです。 話を戻しますね」
ヒガナ「私の身動きを取れない今、状況を打開するには、あなたたちに賭けてみるほかありませんでしたから」
善子「身動きが取れない……? どういうこと?」
ヒガナ「長い話になります……」
────
──
596
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:04:09 ID:1///zhAs
ヒガナ「私とヒバナは、小さな村から少し外れた山奥の、廃墟となった社で生まれ育ちました」
ヒガナ「私は母から千里眼を受け継ぎましたが、ヒバナには何の力もなく、普通の女の子でした」
ヒガナ「母はその能力ゆえに村人から忌み嫌われていて、私の身を案じた母は、私に山を下りることを禁じていました」
ヒガナ「そんな私と母のことを、ヒバナはいつも一番に想ってくれました。 ヒバナは本当に優しかった」
ルビィ「ヒバナちゃん……」
善子「ヒバナ……」
ヒガナ「ある日、私は村の少年達が川で鉄砲水に流される事を予知しました」
ヒガナ「それを聞いたヒバナは、少年達を助けようと急いで川に向かった……」
善子「あれ……この話、どこかで……」
ヒガナ「でも、ヒバナの警告は聞き入れられなかった。 母の子であるというだけで、ヒバナも村人に嫌われていました」
ヒガナ「そして、少年達は鉄砲水に飲み込まれてしまったのです」
ヒガナ「ヒバナだけは奇跡的に難を逃れましたが……それが村人の誤解を生みました」
ヒガナ「村人には、ヒバナが不思議な力を使って鉄砲水を呼んだように見えたようです」
597
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:04:47 ID:1///zhAs
ヒガナ「そして……その日の夕方には、大勢の大人がやって来ることが分かりました」
ヒガナ「お母さんは、その前に私たち2人を山奥に隠そうとしましたが……ヒバナはそれを断った……私とお母さんを守るんだと言って……」
ヒガナ「私の存在は村には知られていませんでしたから、ヒバナが残れば私は安全に山に隠れられます」
ヒガナ「母が説得するもヒバナの意志は強く、私1人で山奥に隠れることになりましたが……」
ヒガナ「2人のことが気がかりだった私はこっそりと林の奥から要すを伺うことにしました」
ヒガナ「村人たちは口々に叫びました……化け物の子が村の子供を◯した、化け物を出せ、仇を取ってやる……」
ヒガナ「母は社の中にヒバナを匿うと、表に立ち一歩も引きませんでした」
ヒガナ「優しい私の子が、人を◯すことなどあり得ない、何かの間違いだ……そう言い続けていました」
ヒガナ「でも、そんなやり取りはいつまでも続かず……しびれを切らした村人たちは、ついに大勢で母に襲い掛かりました」
ヒガナ「クワや鉈で打たれ、母が悲鳴を上げるとヒバナが飛び出してそれを庇った……」
ヒガナ「ヒバナの顔は恐怖で強張っていて……それでも必死に母の前に体を投げ出しました」
ヒガナ「でも、ただの少女だったヒバナは、大勢の大人の前に無力だった……きっと言葉にならない程の恐怖と悔しさだったでしょう……」
ルビィ「ヒバナちゃん……」
598
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:05:18 ID:1///zhAs
ヒガナ「でもその時、ヒバナの中に眠っていた力が目覚めました」
ヒガナ「ヒバナの体が強烈に光り輝き、その光が辺りを飲み込んでいくと……辺り一帯の空間と時間をねじ曲げ、切り裂き、別の世界を形作った」
ヒガナ「それが、いま私たちがいるこの世界です」
ヒガナ「この世界は、家族を守るという、ヒバナの強い思いが創った世界……」
ヒガナ「その想いは無意識に、この封印された聖域を創り出し、私を閉じ込めました。もう家族が誰にも傷つけられないように」
善子「やっぱりそうだったのね……」
ヒガナ「そして、ヒバナは母を復活させるために、この世界に人を誘いこみ、◯し始めた」
ヒガナ「心優しいヒバナにとって、それがどれだけ耐えがたいことだったか……」
ヒガナ「閉じ込められた私にはなすすべがなく、ここから見ていることしかできませんでした」
ヒガナ「ヒバナが苦悩する様子は壮絶で……思い出したくもありません……」
ヒガナ「……すみません、少し話が長くなりました……ですが、あなたたちには真実を知っていて欲しかったんです」
善子「分かったわ……」
ルビィ「うゆ……」
599
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:05:55 ID:1///zhAs
ヒガナ「母の復活は失敗します。今のうちに何とかしなければ、取り返しのつかないことに……」
ヒガナ「時間がない……一緒に来てください!」
善子「ええ、そのために私たちはここに来たのよ! 絶対にあなたたちを助けるわ!」
ルビィ「うゆ!!」
私たちはヒバナの元へと向かうことにした……
────
──
600
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:06:37 ID:1///zhAs
この世界は、幾多の人を傷つけてまで
たった一人の大切な人を守るために存在していた
それはとても自分勝手で
しかし、純粋で真っすぐな少女の思いだった
ヒバナとヒガナ
二人の少女は長い時を経て邂逅を果たす
引き裂かれた家族を、再び一つにするために……
601
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:07:09 ID:1///zhAs
またあの荒廃した世界へとやってきた。
どうやらヒバナとヒガナの母は復活したようだ……
崩壊した建物の廊下をまっすぐ進むとヒバナが立っているのが見えた。
ヒガナ「ヒバナ!」
ヒバナ「あなた……ヒガナ……? どうしてここに……」
ヒガナ「私もずっとこの世界にいて、この人たちが助けてくれたの。でも、詳しい話しはあとで」
ヒバナ「そう……」
ヒバナ「お母さんは今、とても苦しんでいる……私のせいで、お母さんはあんな姿に……」
ヒバナ「私がなんとかする……ヒガナは隠れていて……」
ヒガナ「私も手伝う」
ヒバナ「でも……あなたまで失ったら……私……」
ヒガナ「私たちのお母さんじゃない……二人で一緒に助けましょう」
善子「ちょっと、私たちもいるわよ」
ルビィ「うゆ!」
602
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:07:42 ID:1///zhAs
ヒバナ「……ヒガナを助けてくれて、ありがとう……」
ヒバナ「どうかお願いします……あなたたちの力を貸してください……」
善子「もちろんよ、何をすればいいの」
ヒバナ「この面を被ってください……あなたの力を引き出します……」
ヒバナ「それだけ負荷は相当なものになります……ですが、その負荷は、私がすべて肩代わりします……」
ヒガナ「そんな……ヒバナの身が持たない! ◯んでもおかしくないよ!」
ルビィ「ぴぎぃ!?」
ヒバナ「分かってる……それでもお母さんを助けたいの……」
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
凄まじい叫び声があたりに響き渡る!
あの肥大化した憎悪が再び私たちの前に姿を現した!
603
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:08:34 ID:1///zhAs
ヒバナ「時間がありません、どうかお願いします……」
善子「……分かったわ、その面を貸しなさい」
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「ルビィ、大丈夫よ……」
ヒバナ「……ありがとう」
私はヒバナが渡してくれた能面を被る!
ヒバナ「うぅぅぅあぁぁぁぁ!!!! はあッ……はあッ……」
ヒバナは力の負荷を肩代わりし、苦しみだす……
604
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:09:05 ID:1///zhAs
ルビィ「ヒバナちゃん!!」
ヒバナ「お母さんを覆っている歪んだ魂のエネルギーを削り取ります。 障壁は私たちが何とかする……」
ヒバナ「あなたは隙をついて攻撃して下さい」
善子「どうすればいいの?」
ヒバナ「ここに勾玉が5つあります……障壁が消えたらこれを射出してください」
善子「分かったわ……ルビィ、ヒバナとヒガナを頼んだわよ」
ルビィ「うゆ!」
605
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:10:36 ID:1///zhAs
善子「今度こそみんなを助ける!!」
宙を浮遊する巨大な金魚……
肥大化した憎悪に勾玉を撃ち込めばいい……
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
善子「いくわよ!!」
私は肥大化した憎悪に向かって走り出す!
開けた場所に出た……夕陽が差し込み、彼岸花が咲き乱れ、あちこちに石灯籠が置いてある……
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
肥大化した憎悪は自身の体から金魚型の追尾弾を飛ばしてくる。
善子「走ってあそこに隠れれば大丈夫ね!」
私は石灯籠の裏に隠れ、追尾弾を回避する!
606
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:11:34 ID:1///zhAs
ヒバナ・ヒガナ「「今です!」」
雷が肥大化した憎悪に落ちる!
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
肥大化した憎悪のまわりを覆う障壁が破れた!!
私は石灯籠の裏から出ると勾玉を手にして構える!!
善子「届いて!!」
ビュゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!
勾玉が手から射出される! 緑色のエネルギー弾のようなビームとなり肥大化した憎悪に向かって飛んでいく!!
607
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:12:06 ID:1///zhAs
しかし……!!
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
憎悪は自身のまわりにすぐ障壁を張った!!
勾玉ビームは障壁の前にかき消されてしまう……ッ
608
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:12:36 ID:1///zhAs
善子「防がれた……ッ 障壁の回復がはやい……ッ 本当にヒバナとヒガナの2人と息を合わせなければ勝てないわ……ッ」
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
地面からまた無数の黒い手が出てくる!
善子「まずい!! 攻撃が飛んできてる!! 避けなきゃ!!」
私は走ってその攻撃を回避する。
キィィィィィィン
善子「今度は神通力攻撃……ッ 物陰に身を隠せば大丈夫ね……」
善子「はあッ……はあッ……」
苛烈な攻撃が続く……このままだと私だけでなく、負荷を肩代わりしているヒバナの身が持たない……
609
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:13:08 ID:1///zhAs
善子「ルビィ!! そっちは大丈夫!?」
ルビィ「ヒバナちゃんがすごく苦しそうだよ!」
ヒバナ「はあッ……はあッ……うぅぅ……」
ヒガナ「ヒバナ……ッ」
ルビィ「ヒバナちゃん……」
ヒバナはうずくまり苦しそうにしている……
善子「なんとかしないと……息を合わせなきゃ……勾玉は残り4つ……その間に憎悪に撃ち込まなきゃ……」
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
金魚型の追尾弾が時間差で飛んでくる!!
610
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:13:45 ID:1///zhAs
善子「速い追尾弾と遅い追尾弾があるから、うかつに石灯籠から頭を出せないわ……攻撃が終わったと思って顔を出せば遅いほうの追尾弾を食らう可能性があるわ」
善子「さらに攻撃しようとして頭を出せば……」
キィィィィィィン
善子「この神通力攻撃を食らってしまう……きびしいわね」
ヒバナ・ヒガナ「「今です!!」」
雷が憎悪に落ち、障壁が剥がされる……
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
だがその瞬間……
キィィィィィィン
善子「くっ……またこの神通力攻撃!! 勾玉を撃ち込めないわ!!」
611
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:14:47 ID:1///zhAs
そうこうしているうちに再び障壁が回復してしまう……
善子「いったいどうすれば……」
ルビィ「善子ちゃん!! ルビィと息を合わせて!!」
善子「ルビィ!?」
ルビィ「ヒバナちゃん、ヒガナちゃん……善子ちゃんと息を合わせるよ!! ルビィに任せて!!」
ヒガナ「分かりました!」
善子「これで連携は取れる……なんとかなるかもしれないわ」
善子「攻撃の間の隙を見てルビィが合図してくれるはず……私はそのタイミングで攻撃を撃ち込むわ……」
下からまた無数の影の手が伸びてくる!!
走ってそれを回避する。
612
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:15:19 ID:1///zhAs
攻撃が止まったその瞬間!!
ルビィ「今だよ!! 善子ちゃん!!」
ヒバナ・ヒガナ「「はああああああッ!!!!」」
ルビィの合図とともに雷が肥大化した憎悪に直撃する!!
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
障壁は消え去った!! いまがチャンス!!
善子「当たって!!」
ビュゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!
勾玉ビームは肥大化した憎悪に直撃する!!
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!
613
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:15:54 ID:1///zhAs
肥大化した憎悪は光を放ち、爆発しながら地面に落下していく……
善子「やったわ……」
ルビィ「やったね!」
しかし……
ヒガナ「お母さん!」
空は暗闇に覆われ、空間にはヒビが入っていた。
彼岸花が咲き乱れる中、炎の中に消え去る憎悪……
その中から私に向かって火炎弾が飛んでくる!!
善子「まずい!!」
ヒバナ「危ない!」
ヒガナ「ヒバナ!」
ヒバナが私を守った!! 体を投げ出し、私の代わりに火炎弾を受けた!!
614
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:16:30 ID:1///zhAs
ヒバナ「うっ!!」
善子「ヒバナ!!」
ルビィ「ヒバナちゃん!!」
力なく横たわるヒバナ……それでもヒバナは私に向かって必死に言う……
ヒバナ「お願い……します……お母さんを……助けて……」
善子「ヒバナ……ッ」
炎の中から1人の女性が出てきた……顔には狐の面をつけている……
そして……4つの光る尻尾を持っている!!
善子「あれが……ヒバナとヒガナの……」
ルビィ「2人のお母さん……」
善子「その昔、八尾の狐に助けられた少女……まさか……」
615
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:17:22 ID:1///zhAs
2人の母は火炎弾をこちらに向かって発射してくる!!
ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」
善子「ルビィ!! 2人を守って!!」
私はヒバナとヒガナの母の注意を引くため走り出す!!
私が注意を引かなければ……ルビィたちが危ない!
善子「こっちよ!!」
無数の火炎弾が私に向かって飛んでくる。
私は石灯籠の裏に隠れてなんとかそれを回避する!
善子「はあッ……はあッ……」
ヒバナは火炎弾が直撃した上に、私の負荷を肩代わりしている……はやくしなければ助からない!
616
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:17:52 ID:1///zhAs
善子「食らって!!」
ビュゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!
私は勾玉ビームを2人の母に向かって射出する!!
しかし……
相手は宙に浮きながら高速移動して回避する……
善子「はやい!! こんなの当てられるの!?」
さらに
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
複数の移動する炎の柱を呼び出し、あたり一帯を焼き尽くす!!
善子「くっ!! 走って逃げなきゃ!! 3人は大丈夫かしら……」
617
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:18:25 ID:1///zhAs
ヒバナとヒガナの母は、彼岸花の花びらのような光を放ちながら、瞬間移動もしてきた!!
さらに瞬間移動しつつ炎の柱を大量に発生させる!!
善子「このままじゃ勾玉を当てられない!! どうすれば……」
私は走って回避できるが、3人は大丈夫だろうか……
キィィィィィィン
さらに頭上に球体を発生させ、あたり一帯に神通力攻撃を放ってくる!!
善子「みんなを怪我させるわけにはいかない……あれだけでも壊さないと!!」
ビュゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!
私は勾玉ビームで頭上の球体を破壊する!!
善子「はあッ……はあッ……これで神通力攻撃はできないはず……」
善子「残りの勾玉は…………1つ!?」
618
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:18:57 ID:1///zhAs
善子「勾玉ビームが撃てるのはあと1回だけってこと!?」
善子「必ず当てなきゃ……!!」
無数の火炎弾、無数の移動する炎の柱、高速移動と瞬間移動を繰り返す相手……
この状況で残り1発を必ず当てなければ……全員◯ぬ……
善子「くっ!! どうしたらいいの……!! どうしたら……ッ!!」
そんなときだった……
???「落ち着くずら、善子ちゃん」
見ると横には花丸がいた!! ルビィも私の横にいる。
619
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:19:32 ID:1///zhAs
花丸「間に合ってよかったずら……善子ちゃん!! 必ず当てよう!!」
ルビィ「ルビィたちも一緒だから!!」
2人は私が勾玉を構える手を一緒に握ってくれた……
善子「2人とも……」
善子「なんだか安心してきたわ……必ず当てるわよ!!」
相手が攻撃の手を止めたその瞬間……ッ!!
花丸「今ずら!!」
善子「当たって!!」
ルビィ「お願い!!」
ビュゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!
射出された勾玉ビームがヒバナとヒガナの母の顔……狐の面に直撃した!!
620
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:20:02 ID:1///zhAs
カランカラン……
狐の面は地面に落ちると消え去った……
どさっ、と膝をつくヒバナとヒガナの母……
ヒバナとヒガナの母「ここは……」
善子「よかった……」
花丸「戻ったずら……」
ルビィ「ぴぎぃぃ……」
後ろからヒガナが走ってくる!
ヒガナ「お母さん! お母さん! ヒバナが大変なの!」
621
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:20:37 ID:1///zhAs
力なく横たわるヒバナ……
ヒガナと母は、ヒバナの元に駆け寄る……
ヒバナとヒガナの母「ヒバナ! ヒバナぁ!」
2人の母は悲痛な声をあげながら娘の名前を呼ぶ……
善子「ヒバナ……」
ルビィ「ヒバナちゃん……」
花丸「……」
ヒガナ「ヒバナ! ねぇ、起きてよ……! お母さんに会うんでしょ!! そのためだけに、ずっと頑張ってきたんでしょう!!」
ヒガナ「ずっとずっと……1人で……頑張ってきたんでしょう……?」
ヒガナ「ここで……◯んじゃったら……今まで何のために頑張ってきたのか……分からないじゃない……」
ヒガナ「ねえ……ヒバナ……」
ルビィ「ヒバナちゃん……」
善子「そんな……また助けられないの……?」
622
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:21:14 ID:1///zhAs
ヒバナとヒガナの母「私は幼い頃、あるお方に命を救われました」
ヒバナとヒガナの母「それ以来、私の中には人の血と、人ならざる者の血が流れている……そして、娘たちの中にも」
ヒバナとヒガナの母「あのお方に出来たのなら、私にも出来るかもしれません」
善子「八尾の狐の昔話……まさか……」
2人の母は輝く4つの尻尾を出す……
その尻尾は光を放ちながら2つになった……
ヒバナの体が優しい光に包まれる……
善子「……」
ルビィ「……ヒバナちゃん」
ヒバナとヒガナの母「ヒバナ……」
ヒバナ「おかあ……さん……? ……おかあさん!」
ヒバナは母親に抱きついた。
623
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:22:15 ID:1///zhAs
ヒバナ「お母さん……私……」
ヒバナとヒガナの母「ヒバナ、ありがとう……私のために、いっぱい頑張ってくれたのね」
ヒバナ「お母さん……私……私は……もう、お母さんの知っている私じゃないの……」
ヒバナ「沢山の人を◯した……◯しても、◯しても……もう何も感じなくなっちゃったの……私、本当に……化け物になっちゃったの?」
ヒバナとヒガナの母「ヒバナ……ッ」
自分のために娘がこんなことになってしまった……母としてどれほど心が痛むことか……
ヒバナとヒガナの母「確かに、私たちの半分は人ではないわ。 でも、人間とか妖とか、そんなことはどうだっていいの……ヒバナはヒバナよ」
ヒバナとヒガナの母「とってもとっても優しい、私の自慢の娘よ」
ヒバナ「うぅぅぅ……」
善子「ヒバナ……」
ルビィ「ヒバナちゃん……」
624
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:22:52 ID:1///zhAs
ヒバナとヒガナの母「娘たちを助けて頂いて、本当にありがとうございました。この御恩は、終生忘れません」
ヒバナとヒガナの母「私のために多くの命が失われた……そして私たちは、人の世で生きるには、もう取り返しのつかない領域まで踏み込んでしまいました」
ヒバナとヒガナの母「これはすべて、娘達を守ることができなかった私の責任です……償っても、償いきれることではありません」
善子「そんな……」
花丸「……これからどうするずら?」
ヒバナとヒガナの母「……この世界を立て直し、ここに留まることにします。 そしてここが、迷える魂や、私たちのような半端者の救いの場になれば……」
ヒバナとヒガナの母「そのために、出来るだけのことをしていこうと思います」
ヒバナとヒガナの母「ヒガナ、この方々を送り届けてくれますか?」
ヒガナ「うん」
花丸「あ、ちょっと待つずら……」
花丸が呼ぶと向こうから Kが出てきた。 化け物の姿ではなく、元の少女の姿をしている。
花丸「助けたずら」
善子「なんでよ!」
K「まさか助けてもらえるなんてね……」
625
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:23:22 ID:1///zhAs
花丸「マルは善子ちゃんが笑顔になれる最善のことをしたかったずら」
善子「ちょ、ちょっと」
花丸「また泣かれても困るずら」
善子「泣いてないわよ!」
花丸「Kさんの怪我や病気は治ってるずらよ」
ルビィ「よかったね! Kしゃん!」
K「みんな……ありがとう…………あの子は……?」
善子「あとで詳しく話してあげるわよ」
ヒガナ「皆さん、帰りましょう」
626
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:24:27 ID:1///zhAs
空間に光の球のような裂け目がある……
ヒガナ「あの門をくぐれば元の世界に帰ることができます」
ヒガナ「あなたたちを見届けたら、この世界への入り口を封鎖します。 もう二度と、誰かがこの世界へ迷い込むことは無いでしょう」
ヒガナ「本当にありがとうございました…………これでお別れですね……あなたたちが来てくれて、本当に良かったです」
ヒガナ「私たち家族は、こんなに近くにいたのに、ずっと離れ離れでした」
ヒガナ「でもこうしてまた会えた……あなたたちが家族を一つにしてくれました」
ルビィ「助けられてよかったよ」
善子「ええ……よかった」
ヒバナ「待って! 言わないといけないことがあるから……」
ヒバナ「……お母さんとヒガナを助けてくれてありがとう」
善子「ええ、いいのよ」
花丸「助けたいって泣いてたずらよ」
善子「う、うるさい!」ポカポカ
花丸「い、痛いずらよ、善子ちゃん」
627
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:24:59 ID:1///zhAs
猫「にゃあ!」
ヒバナ「猫? なんでこの世界に?」
ヒガナ「ふふ、後で教えてあげる」
ヒガナ「そろそろ行かないと門が閉じてしまいます」
ヒガナ「さようなら」
善子「さようなら」
ルビィ「バイバイ!」
私とルビィと花丸、それからKと猫ちゃんは一緒に元の世界へと帰ったのだった……
────
──
628
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:25:29 ID:1///zhAs
─元の世界─
私たちは無事に元の世界へと帰ってきた。
Kにはこれまでの話をちゃんとしてヒバナたちのことを理解してもらった。
猫ちゃんは無事に元の場所へと帰っていったようだ。
それから私たちは元の日常を送っている。
629
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:27:30 ID:1///zhAs
まだ続きます。
皆様、ありがとうございます。
いまさらですが、
>>30
伏せ字にするの忘れてました。
◯されるかもしれないわ です。
630
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 20:36:34 ID:oyqKJddc
皆助かって良かった
続き待ってます
631
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 21:13:49 ID:1///zhAs
─浦の星女学院─
果南「1、2、1、2……はい、ここまで!」
ダイヤ「皆さんお疲れ様でした」
千歌「はあ疲れた〜」
善子「戻って来たのね……私たちの日常に」
花丸「ルビィちゃん、パソコンで何見てるずら?」
ルビィ「あ、見てよ花丸ちゃん! Kしゃんが踊ってるよ!」
善子「Kもスクールアイドルに戻れたのね、よかったわ」
ルビィ「ヒバナちゃんたちも元気かな」
善子「ええ、向こうの世界でもきっと元気にやってるわよ」
632
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 21:15:49 ID:1///zhAs
私たちはこの世界を生きる。
晴れ渡る空、目の前に広がる海……
私の心のもやもやは、もうどこかにいっちゃったみたい。
私たちはみんなで、この先へと進んでいく……
何があってもみんなと一緒ならきっと大丈夫。
おわり
633
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 21:17:09 ID:1///zhAs
以上で再び完結です。
シャドーコリドーに関するネタバレが色々とありましたが、大丈夫だったでしょうか。
そして、3日後(7月13日)はヨハネちゃんのお誕生日ですね。 おめでとうです!
皆様、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました! コメントももらえて嬉しかったです!
おわり
634
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 21:43:26 ID:oyqKJddc
乙です
ラブライブも影廊も好きな自分にとっては最高のSSだった
635
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/10(土) 22:57:08 ID:8r.6Xlhg
乙乙乙
本当に良かった
最後まで書き切ってくれてありがとう
主人公が1人じゃなくて善子とルビィの2人だったのが原作の雰囲気もラブライブの世界観も、キャラクター性も壊さずで特に良かった
636
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/11(日) 00:56:44 ID:TBcGlH76
乙
気が向いたらまた何か書いて
637
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/12(月) 22:40:45 ID:fbux3c.U
善子「影廊」ルビィ「再びあの迷宮へ」
ttps://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1625275226/
(httpsのhは抜かしてあります)
上記のスレ(前スレ)に当スレの続きの内容を写しました。
あと
>>522
伏せ字にするの忘れてました。
数えきれない人間を◯した です。
638
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2021/07/13(火) 12:51:54 ID:ixfwcifM
ヨハちゃん、お誕生日おめでとう!
639
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2022/03/01(火) 04:27:08 ID:J.banIVQ
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
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