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善子「影廊」ルビィ「夕暮れの迷宮から脱出」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2019/04/05(金) 10:40:05 ID:9xbPbDTk
ラブライブ!SS

これはホラーゲーム「影廊 -Shadow Corridor-」のパロディSSです。


ゲームは有料版と無料版があります。

リンクは貼りません。興味のある方は各自で検索してください。


ゲームに関する過度なネタバレはなるべく避けるようにします。


それでもネタバレが気になる場合はお戻りください。


また、SS内では設定の一部改変があります。



この物語はフィクションです。

502以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:37:24 ID:0q8CGXTE
善子「カメラはあと何回使える!?」

ルビィ「あと1回だよ!」

善子「1回……そのうちに祭壇を見つけるの……ッ!?」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ルビィ「ぴぎぃ!! 善子ちゃん!! もう来てるよ!!」

善子「ルビィ、走って!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!

503以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:37:57 ID:0q8CGXTE
善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……ッ はあ……ッ」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ルビィ「もう追いつかれちゃうよ!!」

善子「待って!! あの棚に手鏡がある!! あれでワープするわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは手鏡を拾うとすぐにワープする!!

一瞬で景色がどこかの部屋へと変わる。

どうやら別の場所に移動できたようだ。

504以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:38:44 ID:0q8CGXTE
善子「はあ……ッ はあ……ッ」

ルビィ「はあ……はあ……これで大丈夫?」

善子「いいえ、あいつはどこまでも追いかけてくる……ここに来るのも時間の問題よ!」

ルビィ「ぴぎぃ!! どうするの!!」

善子「コンパスはまだ使えない?」

ルビィ「うゆ、まだダメだよ」


善子「身を守れるものは……あとカメラ1回だけ……そしてコンパスは使えない……これで祭壇まで行く……」

ルビィ「無理だよそんなの!!」

善子「やるしかないのよルビィ! やらなければ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」

505以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:39:56 ID:0q8CGXTE
ルビィは持っていた猫の鈴を握りしめ、祈るように言う……

ルビィ「お願い、猫しゃん……ルビィたちを助けて……」

善子「ルビィ……」

そのときだった……


シャリン……


私たちの目の前に光の球が現れた!

善子「これは……あの時の光……私たちを助けてくれたあの光だわ」

ルビィ「猫しゃん……」

宙に浮かぶ光の球はどこかへと移動しはじめる……

善子「私たちを導いてくれるの……?」

ルビィ「ついて行こう善子ちゃん!!」

善子「ええ、今はそれしかないわ!」


私とルビィはその光についていく……

506以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:40:27 ID:0q8CGXTE
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


善子「来てるわね」

ルビィ「うゆ……」

善子「カメラを用意して!」

ルビィ「できてるよ!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!

507以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:41:23 ID:0q8CGXTE
善子「来たわ!! カメラを使って!! 今よ!!」

ルビィ「えい!!」


パシャ!!


オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!


凄まじい光に化け物は叫び声を上げて怯んだ!


善子「今のうちにあの光の球についていくわ!」

ルビィ「うゆ!!」

508以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:42:04 ID:0q8CGXTE
光は暗闇を照らしながら進む……


すると祭壇のような場所へと辿り着いて消えた……


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああああああ゛ッ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!


善子「着いたわ!! あいつが来てる!! はやく勾玉を納めるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは集めた5つの勾玉を祭壇に納めた!


おぞましい○気はどこかへと消え去った……


そして目の前の扉が開いた……

509以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:42:36 ID:0q8CGXTE
善子「とにかく中に入りましょう」

ルビィ「うゆ!」


私とルビィは走って奥へ行く。

すると……


バタン!!


後ろで扉が閉まった……それと同時に!


バァァァァァァァンンンン!!!!


シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン


目の前の扉を蹴破って神楽鈴の徘徊者が飛び出してきた!!

510以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:44:26 ID:0q8CGXTE
善子「嘘でしょ!? 後ろの扉は閉まってるし逃げられる場所なんてないわよ!?」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


シュィィィィィンン


突然、神楽鈴の徘徊者は謎の光に包まれる!

そして神楽鈴の徘徊者は倒れて動かなくなった……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……怖かった……」


善子「何が起きているのかしら……」


私たちは奥へと進んでいく……

511以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:45:03 ID:0q8CGXTE
奥へ行くと祭壇のような場所に出た……

そしてそこには畳と布団があり、誰かが布団に横になっている……


ルビィ「誰だろう……」

善子「眠っているのかしら……?」


そのとき、後ろから声が聞こえた。


???「私のお母さんよ」


振り向くとそこにはあのときの謎の少女がいた……

512以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:45:38 ID:0q8CGXTE
善子「あなた……」

ルビィ「この人、あなたのお母さんなんだね」

謎の少女「もうずっと長い間眠ったまま。その魂は体を離れ、底知れぬ憎悪に苛まれながら、今もこの世界を彷徨い続けている」

謎の少女「何とか体は維持していたけど……あの子が器を壊してしまった」

善子「Kのことね……」

謎の少女「もう時間がない、今すぐ生き返らせなければ……」

善子「どういうこと……?」

謎の少女「魂と体を一体化させるためには、途方もない力が必要なの。あの器で普通の魂を集めても、お母さんの体を維持するのでやっと」

謎の少女「だから、これを被せた」


少女が手をかざすとあの能面が現れた。


謎の少女「この面を被れば、魂の力が何倍にも増幅される。元となる魂が強ければ強いほどね」

謎の少女「その力の大きさゆえに大抵は自我を失い、人ならざる者へと変異する。でも、そういう者達は普通の魂を集めるのに役に立った」

謎の少女「あの子は素晴らしい魂を持っていた。あんなに自我を保っていられるなんて、正直驚いたわ」

ルビィ「Kしゃん……」

513以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:46:12 ID:0q8CGXTE
謎の少女「本当は、増幅した魂を収穫したかったけど……分かるでしょ、もう時間がないの」

謎の少女「あなたたちには、今○んでもらうわ……」

善子「……ッ!?」

ルビィ「ぴぎぃ!?」


謎の少女はそう言って手をかざす……


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!」

善子「ここまでなの……ッ!!」


しかし何を思ったのか、少女はその手を下ろした……


謎の少女「……」

善子「……?」

謎の少女「……まあいいわ……素の魂なんて、足しにもならない」

ルビィ「……え? 助かったの……?」

謎の少女「そこで見てるといい」

514以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:46:57 ID:0q8CGXTE
善子「何をするつもり……」


少女は横たわる彼女の母親の前に進み、力を使う……

緑色のエネルギーのような光が母親に注がれていく……


母親を蘇らせようというのだろうか……


しかし……


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


その光の中から異形の姿をした怪物が飛び出してきた!


善子「なに……ッ!?」

ルビィ「ぴぎぃ……」


謎の少女「なんで……!? こんなはずじゃない!! 待って、お母さん!!」

515以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:47:41 ID:0q8CGXTE
善子「なんだったの……」


見ると目の前から少女と母親はいなくなっていた……

あたりは崩壊し、岩が落ち、ところどころ炎が上がっている……


???「遅かった……」


振り返ると、そこにはあの黒猫がいた。

首には勾玉の首飾りをつけている。


ルビィ「猫しゃん、あなたが話したの……?」

猫「やっと私の声が届きましたね」

善子「猫がしゃべってる……」

猫「事態は一刻を争うので、手短に話します。私のことは、ひとまず置いておいてください」

猫「彼女は、復活に不足していた力をこの世界を構成する力で補填したようです」

猫「お陰で私の声が届くようになりましたが……この世界はまもなく崩壊するでしょう」

516以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:48:20 ID:0q8CGXTE
猫「復活のために集められた魂はどれも苦痛や憎悪によって歪んでいた」

猫「それがあの人を変えてしまいました」

猫「今のあの人は、もはや人ではありません。底なしの憎しみに呑み込まれた怪物。憎悪そのものです」

ルビィ「そんな……」

猫「あの怪物は、やがてあなたの世界に現れることになります。人の魂を食らい、さらにその力を増し、とてつもない災厄になる……」

善子「なんですって……」

猫「まだ力が弱いうちに、こちらの世界で対処しなければなりません」

ルビィ「どうやって?」

猫「この世界の礎となった27の人柱、その魂が燻っている場所があります。今なら、私でもその封印を解けるでしょう」

猫「27の人柱は膨大な力を蓄えている。とても制御はできませんが、真っ先にあの怪物に向かっていくはずです」

猫「あとは、彼らが足止めしてくれます。時間が稼げれば、あの怪物もこの世界と共に消え去るでしょう」

猫「あなたたちは、その場所まで怪物を誘導してください。道中は、私が力を貸します」

517以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:48:50 ID:0q8CGXTE
猫「上手くいけば、あなたたちを元の世界に返しましょう。 それでいいですね?」

善子「……」

猫「この首飾りを持って行ってください。あなたの身を守ってくれます。封印を解くためにも必要ですので、くれぐれも無くさないように」


そう言って猫は勾玉の首飾りを私たちの足元に置いた。


猫「私は先回りしています。また後で会いましょう」


そう言い残して猫はどこかへと行ってしまった。


ルビィ「……大変なことになっちゃったね」

善子「……ええ」

518以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:49:20 ID:0q8CGXTE
善子「話をまとめましょう……あの子のお母さんは怪物へと姿を変えた……」

ルビィ「そのお母さんはルビィたちの世界にやって来ちゃうんだよね」

善子「そうならないためにも今ここで足止めをする……」


善子「……ええ…………」

ルビィ「うゆ……ルビィたちに出来るかな……」

善子「やらなければならないわ……絶対に……」

ルビィ「うゆ……」


私たちは歩みを進める……


祭壇の奥にあった鏡から別の場所へと移動した……

────
──

519以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 04:49:50 ID:0q8CGXTE
復活した少女の母は

少女が望んでいた、かつての母の姿ではなかった


強大な力を得て肥大化した憎悪は

今、全ての命を食らい尽くさんとしている


いずれこの世界は消滅する

私たちが生き残るためにも

あの怪物を止めなければならない

520以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/09(金) 12:59:07 ID:PdR/OAs.
世界観に引き込まれる

最後まで頼む

521以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:22:15 ID:1///zhAs
─???─

善子「ここは……」

ルビィ「綺麗なところ……」


荒廃した世界は夕陽に照らされ橙色に染まっていた。

建物は崩壊し、岩や鳥居は宙を浮いている。

広い荒野の地面が続いている……


善子「歩いていきましょう……」

ルビィ「うゆ……」


私たちはこの荒廃した美しい世界を進んでいく……

522以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:23:04 ID:1///zhAs
橋を渡っていくと、崖の前にあの謎の少女がいる……


善子「近づいてみましょう」

ルビィ「うゆ」


謎の少女「私は昔……人間として生きようとした」

謎の少女「でも……大切なものは全て人間が奪っていった」

謎の少女「私は、人間であることを捨て、心を捨てた。そして、数えきれない人間を殺した」

謎の少女「全ては、もう一度お母さんに会うため……そのためだけに……」

謎の少女「これで終わらせない……もう、あの時の私とは違う……」

謎の少女「今度こそ……絶対にお母さんを助ける……!」


少女の手は震えていた……そしてその震える手を握りしめる……


善子「……」

ルビィ「……」

523以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:23:49 ID:1///zhAs
オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


肥大化した憎悪がその姿を現した!

少女の母は醜い化け物へと姿を変えていた。

その姿は、浮遊する巨大な金魚のようであった……

おぞましい叫び声、魚のような外見、するどく巨大な牙……

激しい憎悪によって歪んでしまったその姿は、あの猫の言う通り、まさしく憎悪そのものだった。


善子「あれが……あの子のお母さん……」

ルビィ「そんな……こんなひどいことが……」

524以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:24:26 ID:1///zhAs
憎悪の化け物は少女に向けて金魚型の追尾弾を発射する!

ゆらゆらと揺れながら少女めがけて飛んでいく金魚型の追尾弾……


シャン!!


少女は手をかざす。

金魚たちは少女の目の前で爆発する。

着弾する前に打ち落としたようだ。


少女は鳥居の上に瞬間移動する! 彼岸花のような光が飛び散る。


しかし……


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


憎悪の化け物は鳥居ごと食い散らかし、すべてを破壊する!!

少女はたまらず崖の下へと落下していった……

525以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:25:24 ID:1///zhAs
ルビィ「ああ!! あの子が!!」

善子「ルビィ! 私たちも行くわよ!! 人柱が封印されている場所へ、アレを誘導するの!!」

ルビィ「うゆ……ッ!!」


後ろから巨大な金魚の化け物が私たちを追いかけてくる。 私とルビィは走り出した!

化け物は、地面も建物も、何もかもを食らい尽くしながら迫ってくる!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


ガラガラガッシャーン!!


善子「とんでもなくやばいわね! 追いつかれたらそれこそ終わりよ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

526以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:26:08 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……廊下みたいなところに来たわね!」

ルビィ「うゆ……嫌な予感がするよ……」


すると、私たちの足元から影ような黒い手が無数に生えてきた!!


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!! 下から手がたくさん出てくる!!」

善子「捕まったら終わりよ!! 走って!!」


空間を切り裂くように無数の手が地面から出てくる……

私たちはそれを避けながら走る……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

527以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:26:56 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……今度は開けた場所に来たよ」


憎悪は自分の体から金魚型の追尾弾を無数に発射する!!


善子「あれは……ルビィ!! あの岩の裏に隠れるわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは岩の裏に隠れて様子をうかがう……


金魚型の追尾弾は着弾すると爆発して消えるようだ……


善子「あれを食らうとやばいわね……ルビィ、隠れてやり過ごしながら走るわよ!」

ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁぁ無理ぃぃぃぃ!!!!」

善子「やらなければ帰れないわ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

528以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:27:43 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


金魚たちは私たちを追うようにゆらゆらと揺らめきながら飛んでくる……


善子「まだ走って!! あそこまで行くのよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


善子「今度は建物の中……障子がいっぱいあるわね」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


金魚たちは障子に着弾すると障子が木っ端みじんになって飛び散る!!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

529以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:28:25 ID:1///zhAs
善子「タイミングを見計らって走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


バァァァァァァァァンンンン!!!!


善子「あの物陰に隠れるわ!!」

ルビィ「うゆ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!

530以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:29:06 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」


あの巨大な化け物は私たちの真横まで接近する……


ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!!」


キィィィィィィン


すると化け物の目が光り出す!!


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


善子「神通力で攻撃してきてるみたいね!! この辺り一帯を焼き尽くす光の攻撃……物陰に身を潜めてやり過ごすわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「あのおぞましい○気よりやばいわ……あれは目を合わせると呪いの力で命を削り取られたけど、こっちは光に当たるだけで体力を持っていかれる!!」

善子「物陰に隠れていれば大丈夫みたいね」

531以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:29:48 ID:1///zhAs
キィィィィィィン


善子「いい? 光が消えた瞬間に向こうの物陰まで走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「今よ!! 走って!!」

ルビィ「はあ……はあ……」


キィィィィィィン


善子「隠れて!!」

ルビィ「うゆ!!」


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

532以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:30:41 ID:1///zhAs
憎悪の化け物からの攻撃は苛烈を極める……

私とルビィはなんとかやり過ごしながら目的地へと走る!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」


善子「今度は建物の中ね……」

ルビィ「暗くてよく見えないよ」


シャリン……


あの光の球が現れた!


ルビィ「猫しゃん!!」

善子「あの光についていくわよ!!」

533以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:31:17 ID:1///zhAs
私たちが光の球についていくと下から影のような黒い手がまた無数に出現する!


善子「また来たわね! 走るわよルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


私たちは走って光の後をついていく!


外へと出ると光の球は消えた……


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

534以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:31:59 ID:1///zhAs
善子「ここは……開けた場所ね」

ルビィ「彼岸花がいっぱい咲いてるね」


赤い巨大な鳥居が立てられ、地面は石畳になっている。

彼岸花が辺り一面に咲いている。


そして、奥に高台が見える!!

あそこが目的地だ!!


善子「あそこまで行くわよ!」

ルビィ「うゆ!!」


彼岸花が咲き乱れる地を走って進んでいく!


善子「はあッ……はあッ……」

ルビィ「はあッ……はあッ……」

535以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:32:32 ID:1///zhAs
高台に到着するとあの化け物が浮遊していた……

どうやら上手く誘導できたようだ!


そして勾玉の首飾りが光り出した!


化け物の下の大地に紋様が浮かび上がり、光り出す!


オ゛オ゛オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォ!!!!!!


地の底から無数の巨大な手が伸びてきた!


無数の手は肥大化した憎悪を捕まえると地の底へと引っ張っていく!


謎の少女が化け物に向かって走りながら叫ぶ!!


謎の少女「お母さん!」


あの黒猫がその後ろから少女を追いかける。


猫「いっちゃだめ!」

536以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:33:19 ID:1///zhAs
少女は高台から飛び降り、化け物が引きずり込まれた地の底へと落ちていった……


善子「そんな……」

ルビィ「あの子が……」


猫「……」


猫「こうするしか方法がなかったの……ごめんなさい……ヒバナ……」


ルビィ「あの子、ヒバナちゃんっていうんだ……」

善子「ヒバナ……」


猫は少女が落ちていった地の底を見つめている……

537以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:34:01 ID:1///zhAs
猫「……」


猫「彼女はこの世界で、あまりにも多くの人の命を奪ってきました」

猫「ですが、母に会うために彼女はそうするしかなかったんです」

善子「……」

ルビィ「かわいそう……」


猫「彼女は人としての心を捨て、母のために化け物として生きた」

猫「その苦悩は想像を絶します。 彼女は、とても優しい人でしたから……」

猫「ですが……もうこれ以上、彼女が苦しむこともありません」

善子「……そうね」

538以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:34:34 ID:1///zhAs
猫「この世界も間もなく消え去り、誰かが迷い込むことも無くなります」

猫「あなたたちのお陰です」

ルビィ「……」

猫「あなたたちには、話しておきたいことが沢山ありましたが……」

猫「残念ながら、もう時間がありませんね」

善子「話しておきたいこと……」

猫「約束通り、あなたを元の世界へと送りましょう」

ルビィ「猫しゃんも一緒に脱出しないの……?」

猫「私は、この世界に残ります」

猫「この世界は、彼女の心そのもの。彼女が創ったこの世界の終わりを、見届けてあげたいんです……」

猫「あなたたちが来てくれてよかった」

善子「……」

539以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:35:13 ID:1///zhAs
猫「ありがとう……ございました……」

 
  
   
     
善子「…………ごめんなさい」

 
  
   
私たちは元の世界へと帰ったのだった……

540以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:35:51 ID:1///zhAs
─元の世界─


気がつけばあのトンネルにいた……

外からは光が差し込んでいる……


善子「……」

ルビィ「……」


ルビィ「……かわいそうだったね」

善子「……ええ」


???「ルビィちゃん! 善子ちゃん!」

541以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:36:36 ID:1///zhAs
ルビィ「……花丸ちゃん……花丸ちゃぁ!!」ギュ

花丸「ルビィちゃん!!」ギュ

善子「……帰ってきたのね、私たち」

花丸「よかったずら……本当に無事でよかったずら……」グスン

ルビィ「花丸ちゃぁ……」グスン

542以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:37:09 ID:1///zhAs
化け物と恐れられた少女は母と共に奈落へと消え

その悲願を遂げることは叶わなかった

それは、彼女が背負った業なのだろう


「もう一度母に会いたい」という少女の願いは

化け物と呼ばれるには、あまりにも人間らしく純粋なものだった……

543以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:37:40 ID:1///zhAs
善子「……ごめんなさい」

ルビィ「……善子ちゃん?」

善子「……ごめんね」グスン

ルビィ「善子ちゃん……」

花丸「……善子ちゃん…………」ギュ

善子「ずら丸……」

花丸「……マルには何があったか分からないけれど、善子ちゃんのせいじゃないずらよ」

善子「そう……だけど……」

544以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:38:12 ID:1///zhAs
善子「私には……私には、あの子が悪いだなんて、そう簡単に切り捨てることはできない……」

善子「失った命を蘇らせるなんて…………あの子のやったことは決して正しいと言えることではない」

善子「でもね、あの暗闇の迷宮はあの子の心……あの子がどれほど悲しい思いをしてきたか、すごく分かるの」

花丸「善子ちゃんは優しいから……」

善子「やっと分かったの……私、この前、あの世界から戻ってきてからずっと心の底に引っかかりを感じてた」

善子「心がなんかもやもやして……ずっと……でもようやく分かった……あの迷宮はあの子の悲しみ……きっとあのときの私はそれを感じ取ったのよ」

ルビィ「善子ちゃん……」

善子「もしかしたら私はあの子を助けられたかもしれない……そう思うの」

善子「そう考えたら……悲しくて……私がもっとちゃんとしていたら……」

花丸「善子ちゃん……」

花丸「残酷な時の流れを巻いて戻す術なんてないずら……」

花丸「善子ちゃんの心の傷を治す術も……マルには……」

花丸「……」

545以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:39:06 ID:1///zhAs
花丸「善子ちゃん……もう一度やり直せるとしたら、善子ちゃんはまた前を向いてくれる?」

善子「ええ……でも時を戻すことなんてできない……いくらあんたでも……」

花丸「マルにはそんな力ないずら……でも……」


花丸「これがあるずら」


花丸は珍しい和柄の懐中時計を握っていた……


善子「それは……」

花丸「これは……時をほんのわずかに戻すことができる時計ずら……」

花丸「マルのお寺にあった時計……書物にも書いてあった……」

花丸「1回だけしか使えない……本当は見せるつもりもなかった……」

花丸「でも……マルはこんなに悲しむ善子ちゃんを見たくないの……」

546以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:39:39 ID:1///zhAs
善子「それを使えば、あの子を助けられるの……?」

花丸「分からない……崩壊して消え去った世界まで戻るかどうかも……」

花丸「でも賭けてみる価値はある……」

善子「……」

花丸「使ってみる……?」

善子「……ええ」

ルビィ「そんな……善子ちゃん! あの世界に戻るなんて!」

花丸「オラも本当は行って欲しくないずら……」

花丸「大事な友達が危険な目にあうなんて……もしものことがあったら……オラの心は耐えられないずら……」グスン

善子「ずら丸……」

547以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:40:26 ID:1///zhAs
善子「でも私、やっぱりあの子を助けたいの! お願い! 力を貸して!」

花丸「……そう……でも約束して……必ず生きて帰ってくるって」

善子「ええ……」

ルビィ「善子ちゃん!!」

善子「ルビィ、あんたは残りなさい……一緒に来る必要なんてないわ」

ルビィ「ううん、ルビィも行くよ……ルビィもあの子を助けたいもん!」

善子「ルビィ……」

花丸「決まりずらね……オラも一緒に行くずら」

善子「でもあんたは戻った時の先にいないわよ……」

花丸「すぐに追いかけて行くから先に行っててほしいずら」

善子「……分かったわ」

花丸「……与えられた猶予を大事にしてね」

善子「ええ……きっとやり遂げる」

548以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:41:05 ID:1///zhAs
私たち3人は手をつないだ。


善子「一緒に行くわよ!」

ルビィ「あの子を助けて、みんなで生きて帰るよ!」

花丸「マルも協力するずら!」


私たち3人は時を戻す懐中時計を使った……


あの子を助けるために……再びあの世界へと戻る……


キュキュキュキュキュキュ……

────
──

549以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:41:44 ID:1///zhAs
─???─

善子「ここは……船の上……Kとの別れて、そのあと船でうとうとしていた時ね……」

善子「いま私たちは時を巻き戻してここまで戻ってきた……」

善子「花丸はいないわよね……別行動を取るつもりみたいね……ルビィ! ルビィ起きて!」

ルビィ「うゆ……ここは……」

善子「どうやらあの世界へと戻って来たみたいよ」

ルビィ「本当だ……戻って来てる……」

善子「ルビィ……やるわよ……」

ルビィ「うゆ!」

550以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:42:20 ID:1///zhAs
ルビィ「善子ちゃん、具体的には何をするの?」

善子「ここまで戻ってきたということは何か意味があるはず」

善子「でも、さっきと同じことをやったのでは最悪の未来は避けられないわ」


善子「今まで祭壇の扉を開くためには勾玉を5つ集めてきたわよね」

ルビィ「うん」

善子「じゃあ大勾玉は今いくつある?」

ルビィ「ええっと、4つあるよ」

善子「そう、4つ……あと1つあるってことよ」

ルビィ「どういうこと?」

善子「大勾玉は何かを守っている……大事な何かをね」

善子「賭けてみるのはそれよ! この先のあの不気味な回廊で大勾玉を取るわ」

善子「そして、その大勾玉でもう一つの未来をつかみ取るわ!」

ルビィ「うん……ルビィは善子ちゃんを信じるよ」

善子「私を信じてくれてありがとう、ルビィ」

551以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:43:37 ID:1///zhAs
善子「そしてあなたのことも助けるわ、猫ちゃん」

私は船首に座る猫に言う。


船はあの不気味な回廊の船着き場へと着いた……

あの猫はどこかへといなくなってしまった……


善子「いくわよ……」

ルビィ「うゆ……」


善子「いい? 今回はいつも取っている勾玉は取らないわ」

善子「大勾玉だけ取ることを考えましょう」

ルビィ「うゆ」


私たちは大勾玉を取るため前へと進む……

552以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:44:20 ID:1///zhAs
善子「本当に不気味な回廊ね……」

ルビィ「うゆ……」

善子「おそらく大勾玉は鍵のかかった部屋にあるわ」

善子「そして、特別な部屋にも鍵がかかっているはず」

ルビィ「特別な部屋……?」

善子「ええ、落とし穴の部屋を覚えてる?」

ルビィ「うん」

善子「あそこに特別な部屋があるわ」

ルビィ「そうなの?」

善子「おそらく…………あと戻りできない場所に大勾玉を置くとは考えにくいわ」

善子「そうなると大勾玉は別の場所にあって、あそこは特別な部屋ということになるわ」

ルビィ「……その落とし穴の下の部屋に鏡があれば戻れるんじゃない?」

善子「ちょっと! 急に不安になってきたじゃない!」

553以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:45:00 ID:1///zhAs
善子「でもやることは一緒よ、大勾玉を探して、見つけたら落とし穴の部屋から下に降りる」

善子「仮に見つけられなくても下に降りてみる」

善子「これでもし落とし穴の下の部屋が大勾玉の祭壇だったとしても大丈夫よ」

善子「念のため手鏡も持って行きましょう」

善子「下の部屋から帰れなくなると困るから」

ルビィ「うゆ! 分かったよ!」


私たちは暗闇の中を彷徨い続ける……


あの徘徊者たちをやり過ごして先へと進んでいく……


そしてついに大勾玉の祭壇を見つけることができた……


鬼の面が飾ってある祭壇だ……私たちは大勾玉を取った。

554以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:48:21 ID:1///zhAs
善子「これで大勾玉5つゲットよ!」

ルビィ「うゆ! 落とし穴の部屋に行こう!」


私とルビィは落とし穴の部屋に行った……

────
──

善子「落とし穴の部屋を見つけた……さあ、やるわよ……レバーを引いて下に落ちる……あそこの穴、つまり部屋に飛び移るわよ」

善子「高さはさほど高くないから落ちても大丈夫よ」

ルビィ「うゆ!」

善子「いくわよ……穴に向かって走って!!」

ルビィ「うゆ!!」


私とルビィは走りながら下へと落ちていく……

そして部屋のある穴に飛び移ることに成功した!

555以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:49:00 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」

善子「ルビィ、どこか怪我してない? 足とか痛くない?」

ルビィ「うゆ、大丈夫だよ」

善子「私も大丈夫よ……さあ、中に入りましょう」


私とルビィは鍵を開けて部屋の中へと入っていく……

556以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:49:31 ID:1///zhAs
部屋の中には鏡があった……


善子「これでどこかへワープするのね」

ルビィ「うゆ、行こう」


私とルビィは鏡に触れた……一瞬で景色が変わり、どこかへと移動したことが分かる……


善子「ここは……どこかの部屋ね」

ルビィ「奥に扉があるよ!」

善子「行きましょう」


私とルビィは部屋の奥へと行く……

557以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:50:27 ID:1///zhAs
善子「また綺麗な場所に出たわね」

ルビィ「うゆ」


扉を開けると中には大きな鳥居があった。

あちこちから滝のように水が流れ落ちている。

まわりには灯りのともった石灯籠があり、洞窟の中のような場所なのに明るい。

石畳の階段の上には何かの祭壇のようなものがあり、大勾玉を5つ納めることができそうだ。


善子「行きましょう、あそこよ」


私たちはゆっくりと階段をのぼっていく。

558以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:51:20 ID:1///zhAs
善子「納めるわよ……」

ルビィ「うん!」


この世界のあちこちで手に入れた特別な勾玉……大勾玉を5つ納めると目の前の巨大な石の門が開いていく……


ゴゴゴゴゴゴゴ……


石の扉は大きな音を立てて開いた。


善子「開いたわ……」

ルビィ「すごいよ善子ちゃん! 大勾玉の秘密を解いちゃうなんて!」

善子「でもここからよ、ルビィ」


善子「あの子を助けるために、行くわよ」

ルビィ「うゆ!」

559以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:51:55 ID:1///zhAs
巨大な石の門をくぐり、中へ行くとそこには彼岸花が咲き乱れる石畳の道があった。

洞窟の中のような場所だが、灯りのともった石灯籠があちこちにあり、明るかった。

彼岸花は赤く光り、その花びらは宙へと舞っていた。

彼岸花と石灯籠による光の道が続いていた。


善子「進むわよ」

ルビィ「綺麗な場所だね」


進んでいくと小さな赤い鳥居があった。

彼岸花に囲まれ、その中央には台座と鏡が置いてあった。


善子「行くわよ……」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは鏡へと触れた……一瞬で景色が変わる……どこかへと移動したようだ。

560以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 04:52:25 ID:1///zhAs
まるで何かを守っているかのように

堅く閉ざされていた石の大扉が

重々しい音を立てて開いた


少女のこと……

不思議な猫のこと……

この世界のこと……


私たちは、隠された真実に迫ろうとしていた

561以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 07:24:32 ID:PYsN6Aj.
いよいよ聖域か…
続き期待

562以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 15:23:06 ID:JRQNeJHY
巻き戻してやり直してくれたのか
助かる

563以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:43:32 ID:1///zhAs
─???─

善子「ここは……また回廊かしら?」

ルビィ「え、ということはまた迷宮を彷徨うの……?」

善子「そうなるわね……でもやることは変わらない……勾玉を5つ集めて祭壇に納めればいいのよ」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィは先へと進む……


善子「彼岸花が咲いてるわね……水も流れてるわ……綺麗なところ……」

ルビィ「うゆ……」

善子「さあ、入るわよ」


中に入ると暗闇の回廊が奥へと続いていた……

564以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:44:16 ID:1///zhAs
善子「床は木材や畳……壁は土壁かしら? 白を貴重としていてとても綺麗な印象ね……」

ルビィ「うゆ……あの不気味な回廊よりは綺麗だね」

善子「燭台がないわね……ろうそくに火をともして明かりを確保したかったんだけど……」

ルビィ「あちこちに鉢植えがあるよ、彼岸花が植えてある」

善子「なんでこんなに彼岸花が置いてあるのかしら……まさか……」


私は彼岸花に灯りをともした……

ふわっと花びらが散り、彼岸花は赤く光り、あたりを照らしていた。


ルビィ「綺麗……」

善子「この彼岸花……光るのね……」

ルビィ「じゃあ、彼岸花で灯りをともせばいいんだね!」

善子「そういうことね……」

565以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:45:04 ID:1///zhAs
善子「もっと探索していきましょう」

善子「こっちのタンスや棚を調べて……」

ルビィ「爆竹……ひかり石……それからカメラに手鏡、鍵もあるよ」

善子「これは……何かしら?」

ルビィ「何だろう? お皿の上に乗ってるね?」

善子「まさか……トカゲの尻尾?」

ルビィ「ぴぎぃ!? なんでこんなものが!?」

善子「……持って行きましょう」

ルビィ「嘘でしょ善子ちゃん!?」

善子「コンパスはこっちを指しているわ……行くわよ」

ルビィ「うゆ……」

566以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:45:34 ID:1///zhAs
グスン……グスン……


善子「泣き声の主ね、爆竹で誘導してあそこにある勾玉を取るわよ」

ルビィ「うゆ、もし他の徘徊者しゃんが来たときのために逃げる場所も考えて……あっちとかどうかな?」

善子「ええ、大丈夫そうね……じゃあ、爆竹で気を引くわよ……えい」ヒョイ


……


パチパチパチパチ……


グスン……グスン……


善子「移動してるわね……慎重に勾玉を取るわよ」

ルビィ「うゆ」


私たちは1つ目の勾玉を入手すると、その場を立ち去った。

567以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:46:10 ID:1///zhAs
善子「次いくわよ……あら? あんなところに勾玉があるわ」

ルビィ「本当だね、取ろうよ」

善子「ええ……」ガチャガチャ

善子「扉が開かないわね、鍵が閉まってるわけではないみたいだし」

ルビィ「こっちの部屋は鍵がかかってるよ」

善子「開けてみましょう」

ルビィ「中にはレバーがあるよ」

善子「引いてみましょう」ガチャ

カチッ

善子「あ、こっちの部屋の扉が開いた」

ルビィ「うゆ、じゃあ勾玉を取ろうよ」

善子「ええ、2つ目ゲットね」


私たちはさらに先に進んでいく……

568以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:46:42 ID:1///zhAs
シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「神楽鈴の徘徊者ね、隠れましょう」

ルビィ「うゆ」


シャン……シャン……シャン……シャン……


善子「あら?」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」

善子「彼岸花の灯りが……点滅してない」

ルビィ「本当だ」


シャン……シャン……


善子「どこかに行ったわね」

ルビィ「うゆ……」

569以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:47:15 ID:1///zhAs
ルビィ「この灯りは徘徊者しゃんが来ても消えないんだね、やったね!」

善子「逆よ、ルビィ」

ルビィ「え?」

善子「灯りが消えないということは、もし徘徊者が近づいてきてもどっちから来てるか分かりにくいということよ」

善子「今まではろうそくの火の揺らめきでなんとなく位置が分かっていたわ」

善子「でも灯りが消えないから自力で徘徊者を探さなくちゃいけないの……」

ルビィ「うゆ……そう考えるとたしかに怖いね……」

570以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:47:52 ID:1///zhAs
善子「それにしても、おかしい……」

ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」

善子「簡単すぎる……」

ルビィ「え……? 善子ちゃん? それはおかしいよ……だって命の危機だよ?」

善子「分かってるわ、そうじゃなくて……さっきの回廊に比べて簡単すぎるのよ……」

ルビィ「何か問題があるの?」

善子「これは何かおかしいわ……逆に不気味ね……これは何かあるわ」

ルビィ「うゆ……考えすぎじゃないかな……」

571以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:48:22 ID:1///zhAs
ドタドタドタドタドタドタ……


善子「走り廻る徘徊者もいるのね」

ルビィ「うゆ」

善子「あっちに行きましょう」

ルビィ「うゆ……こっちは水路?」

善子「そうね、水路になっているわね」

ルビィ「それじゃあ、こっちに行ってみようよ」

善子「ええ、そうね」

572以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:49:02 ID:1///zhAs
善子「ここも鍵を開けて……3つ目の勾玉をゲット」

ルビィ「順調だね!」

善子「ええ……もうここまで来たら残り2つは祭壇に向かいながら集めてもいいかもしれないわね」


そのときだった!


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪

いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪


どこからともなく女性の歌声が聞こえてくる!!


善子「何!? この歌!?」

ルビィ「善子ちゃん!! なんか怖いよ!!」


歌声はこちらに近づいてきていた……

573以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:49:50 ID:1///zhAs
ルビィ「よ、善子ちゃん……この歌声、どんどんこっちに来てるよ」

善子「落ち着いて……落ち着いて隠れましょう、あそこの部屋に入るわよ」

ルビィ「うゆ……そ、そうだね」


私たちは部屋に隠れた……


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪


ガラガラ……


何者かがこの部屋の扉を開けて入ってきた!!


ルビィ「ぴぎぃ!?」

善子「嘘でしょ!? なんでここにいるって分かったの!? ルビィ、カメラを用意して!!」

574以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:50:25 ID:1///zhAs
見ると、そこには頭部が肥大化した人型の徘徊者の姿があった!

顔には他の徘徊者と同様に能面をつけている。

徘徊者はこちらに向かって近づいてくる!


ルビィ「ぴぎゃぁ!!」

善子「見つかった!! ルビィ!! シャッターを切って!!」

ルビィ「うゆ!!」


パシャ


凄まじい光が放たれ、その徘徊者は怯んだ。 今のうちなら逃げられるだろう……


善子「ルビィ!! 走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!!」


私とルビィは走って部屋から出る!!

575以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:50:55 ID:1///zhAs
善子「はあッ…… はあッ……」

ルビィ「はあッ…… はあッ……」

善子「ここまで走れば大丈夫ね……どうして私たちの居場所が分かったのかしら……隠れるところは見られてないはずだし、大きな物音も立ててないはずよ」

ルビィ「うゆ……偶然じゃないよね?」

善子「ええ、あの動きは確実に私たちのことを捕捉してたわ」


しかし……


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪


善子「またあの歌声が近づいてきてるわよ!?」

ルビィ「ぴぎぃ!! 怖いよ!!」

576以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:51:42 ID:1///zhAs
善子「いえ、歌声が聞こえてきてるだけかもしれないわ……あそこに隠れましょう」

ルビィ「うゆ……」


私とルビィはもう一度隠れる……


善子「今のうちにカメラの電球を取り替えて、何かあった時のために準備しておいて……何か嫌な予感がするわ」

ルビィ「うゆ」


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪


善子「来る!!」


その徘徊者は私たちが隠れている場所に一直線で向かってくる!!

577以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:52:21 ID:1///zhAs
善子「居場所がバレてる!! こっちに向かってきてるわ!! ルビィ!! シャッターを切って!!」

ルビィ「うゆ!!」


パシャ!!


またカメラのフラッシュで怯む徘徊者……


善子「走るわよ、ルビィ!!」

ルビィ「うゆ!!」


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪


不気味な歌声は後を追ってくる……

578以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:52:52 ID:1///zhAs
善子「ダメ!! 振り切れないわ!!」

ルビィ「ぴぎぃ!!」


追いつかれたその瞬間、あたりの景色が一瞬で変わった!!

どうやら別の場所へとワープしたようだ。


善子「はあッ…… はあッ……」

ルビィ「はあッ…… はあッ……」


善子「どうして助かったのかしら……」

ルビィ「うゆ……」

善子「手鏡を使ったわけではないわよね……だったらなぜ……」

善子「あら……?」


善子「トカゲの尻尾がなくなってる……」

579以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:53:29 ID:1///zhAs
善子「トカゲの尻尾……どこかで聞いたことがあるわ……おまじないとかでよく使われるって」

善子「きっと魔除けの力が込められた不思議なものだったのね……だから私たちに危機が迫ったときに効果があったのね」

善子「私たちが命の危機に陥ったからワープさせてくれたのよ」

ルビィ「はあ……そのおかげで助かったよ……」

善子「でも次はないわ……またあの徘徊者に出くわす前に何か考えておかないと……」

ルビィ「うゆ……何かヒントになりそうなものあるかな……?」


善子「こんなところに何かの書物が置いてあるわね」


善子「八尾の狐の昔話」


ルビィ「昔話……何かの役に立つかな?」


善子「分からないわ……でも先人たちはこういうお話の中に生きる知恵を残しておいたりしたのよ」

善子「もしかしたら何か分かるかも……?」

ルビィ「うゆ……」

580以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:54:01 ID:1///zhAs
善子「……」

ルビィ「……」

善子「ふむふむ」

ルビィ「何か分かった?」

善子「いえ、分からないわ……でもお話はこうよ」

善子「昔々、人里離れたある山に、八つの尻尾を持つ化け狐がいた」

善子「尻尾の数は強い妖力の証で、その狐は長い年月の研さんを積んでようやく九尾の狐になるところだった」

善子「九尾の狐は天狐と呼ばれ、千里先のことを見通す力を持ち、妖狐たちを束ねる頭領となるという」

善子「深い慈愛と徳と威厳を称えたその八尾の狐は、他の妖狐からの信頼も厚く次の頭領となることを誰もが疑わなかった」

善子「でも狸がその狐をからかったの……八尾の狐はそこで力を使い、雨雲を呼び寄せた」

善子「大嵐となり、雷鳴がとどろき、雨は土を砕き岩を押し流した。その大雨による川の氾濫に多くの人が巻き込まれたの」

善子「八尾の狐は、嘆き悲しみ軽率な自分を責めた……そして人間たちの屍の中から一人の子供を見つけると、その子に命を分け与えた」

善子「八つあった尻尾は四つになってしまったそうよ」

善子「そして狐の頭領は四尾となった狐を強く叱責し、彼の次期頭領としての座を剥奪した。四尾の狐は、仲間たちから追放された」

善子「そして、再び川で人が命を落とすことが無いよう、川の守り神となった……」

581以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:54:38 ID:1///zhAs
善子「というお話ね」

ルビィ「うゆ……きつねしゃんかわいそうだね……」

善子「そうね……でもいま私たちがこの状況を打開するための情報は特になかったわね」

ルビィ「九尾のきつねしゃんは千里先も見通す力があるっていったよね、あの徘徊者しゃんも遠くまで見えたりして……」

善子「まさかね……いえ…………まさか……ッ!?」

善子「あの徘徊者の能力……その正体は……」


善子「千里眼……」


善子「千里眼の徘徊者……ッ!!」


ルビィ「ぴぎぃ!? 千里眼の徘徊者しゃん!?」

善子「そうかもしれないわ……まだ分からないけど、そうでなければあんなに的確に私たちの居場所が分かるはずがないもの……」

ルビィ「うゆ……だとしたらここにいるのもバレてるのかな……」

善子「分からないわ……障害物があっても透けて見えるとしたら……どうすればいいのかしら……」

582以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:55:10 ID:1///zhAs
ルビィ「ぴぎぃ……そんな徘徊者しゃんからどうやって逃げればいいの……」

善子「……ちょっと待って、きっと千里眼といってもその能力は完全ではないはずよ」

ルビィ「どういうこと?」

善子「この書物を読むと、千里眼はかなり特別な力とあるわ……そう簡単に操れるはずがない……」

ルビィ「よく夢が正夢になることを予知夢とかいうよね、あんな感じかな?」

善子「そうね、ちょっと違うけど、何か条件があるはず……」

ルビィ「あの徘徊者しゃんは歌を歌ってたよね? 何か関係あるのかな?」

善子「千里眼を使うのに歌が必要なのかしら? それとも歌声が聞こえる範囲に千里眼の効果があるとか……」

ルビィ「うゆ……分からないよ」

善子「ええ、分からないわ……でも確認できてることがある」

善子「まずカメラのフラッシュは効く、そしてワープしてもすぐには追ってこれない……回廊が広いからなのか、それともすごく遠くは分からないのか」

善子「つまり近づかれた場合はカメラと手鏡を駆使して逃げることができるはずよ」

ルビィ「うゆ……」

善子「そしてもう一つ……私たちが使えるものの中で考えるべきは、爆竹が効くかどうかね」

583以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:55:44 ID:1///zhAs
ルビィ「爆竹……? 何に使うの……?」

善子「爆竹で注意をそらせないかどうかってことよ」

ルビィ「できるのかな?」

善子「やってみる価値はあるわね……」

ルビィ「仮に見えているとして、見えてるのに爆竹のほうに行ってくれるかな?」

善子「分からない……でも音が鳴っていれば気になるんじゃないかしら……」

ルビィ「泣き声の主しゃんたちみたいに注意が引けるといいね」

善子「ええ、やるだけやるわよ」

ルビィ「うゆ……怖いよ」


私たちは再び暗闇の回廊を歩きだす……

584以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:56:16 ID:1///zhAs
善子「こっちで勾玉をゲット……これで4つね」

ルビィ「あと1つだね!」


そのときだった……


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪

いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪


善子「……近づいてきたわね……千里眼の徘徊者……ッ!!」

ルビィ「うゆ……あの歌、不気味すぎるよ」

善子「いい? やることは変わらないわ。 爆竹で注意を引けるか試す、近づかれたらカメラと手鏡を使う」

ルビィ「うゆ……」

585以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:56:47 ID:1///zhAs
いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪


善子「来たわ! まずは爆竹で……えい」ヒョイ


……


パチパチパチパチ……


善子「今よ!! 走って!!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちは暗闇の回廊を走って逃げる!!


善子「はあッ…… はあッ……」

ルビィ「はあッ…… はあッ……」

586以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:57:18 ID:1///zhAs
そして気づいた、歌声が遠くなっている!!


善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


善子「どうやら爆竹で注意を引けるようね」

ルビィ「うゆ……」

善子「そして追いかけてこない……これは歌声の範囲にいなければ千里眼の効果はないということ」

善子「これでなんとかなりそうね……あとはコンパスが指すほうに行きながら勾玉を集めて祭壇へ行くわよ」

ルビィ「うゆ!」


────
──

587以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:57:49 ID:1///zhAs
現状、2人が分かっている徘徊者の情報

・千里眼の徘徊者
肥大化した頭部を持つ人型の徘徊者
顔の部分には能面をつけている
歌を歌っていながら近づいてくる
歌の聞こえる範囲であれば、どこに隠れても見つかる、どこに逃げても追いかけてくる
逃げ切るには歌声が聞こえたら爆竹で注意をそらし、距離を取るのが有効
カメラのフラッシュで怯ませることもできる

588以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 19:58:20 ID:1///zhAs
善子「こっちね……コンパスはこっちを指して……」


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪


善子「うーん、また追ってきてるわね」

ルビィ「ち、違うよ、善子ちゃん……」

ルビィ「千里眼の徘徊者しゃんは……2体いる……」

善子「え……?」


いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪
  いあを〜かひれあきおいおやうぃき〜♪

う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪
  う〜さみりあみねまそおわづほ〜♪

い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪
  い〜にあうぃおおぬたなののこのく〜♪


歌が同時に違う方向から聞こえてくる!!

589以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:00:29 ID:1///zhAs
善子「爆竹とカメラを準備して!!」

ルビィ「うゆ!!」

善子「爆竹を……えい!!」ヒョイ

……

パチパチパチパチ……

善子「いまのうちに走るわよ!!」

ルビィ「うゆ!! あ、目の前から千里眼の徘徊者しゃんが来てるよ!!」

善子「後ろから追って来てる千里眼の徘徊者とは違うやつね! カメラよ!!」

ルビィ「えい!!」


パシャ


凄まじい光に千里眼の徘徊者は怯んだ!


善子「今のうちに走るわよ!」

ルビィ「うゆ!」
────
──

590以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:01:00 ID:1///zhAs
善子「はあ……はあ……」

ルビィ「はあ……はあ……」


善子「助かったわね……」

ルビィ「まさか2体いるなんて……」


善子「この場を離れましょう……コンパスはあっちを指してるわ……」

ルビィ「うゆ……」

────
──

591以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:01:32 ID:1///zhAs
────
──

善子「勾玉を5つ入手したわ!」

善子「祭壇に納めるわよ!」

ルビィ「うゆ!」


私とルビィは祭壇へと向かう……


善子「罠部屋とかもあったけど、なんとかなったわね」

ルビィ「うゆ……」

善子「これであの子を助けることができるのかしら……いえ、できるわ」

ルビィ「うん!」


私とルビィは祭壇へと到着した。


善子「勾玉を納めるわよ」

ルビィ「うん!」

592以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:02:07 ID:1///zhAs
目の前の扉が開き、奥へと行けるようになった。


善子「行くわよルビィ!」

善子「うゆ!」


リンリン……

奥へ進むと風鈴の音が聞こえてくる……

廊下に風鈴を飾っているようだ……

そして奥に部屋があるのを見つけた。

中は畳の部屋になっていて、その先には1人の少女がいた。

593以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:02:39 ID:1///zhAs
???「やっと会えましたね」


その少女は振り返りながら言う。

白い着物を着ており、頭には鬼の面を斜めにつけている。


善子「あなたは……」

ルビィ「あの猫しゃんと同じ声だ」


少女「あなたたちのことをずっと待っていました」

少女「立ち話もなんですから、どうぞお掛け下さい」


畳には座布団が敷いてある。

私たちは座って話をすることにした。

594以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:03:09 ID:1///zhAs
少女「私はヒガナ。 ヒバナは双子の姉です」

ルビィ「ヒガナちゃん……」

ヒガナ「ヒバナにはもう会いましたよね。 あの時は、危うく人で無くなるところでしたね」

善子「ええ、大変な目にあったわ」

ルビィ「どうしてルビィたちが来るのが分かってたの?」

善子「たしかにそうね、最初から座布団を用意してたし」

ヒガナ「私には、生まれつき千里眼という力が備わっています。 母から受け継いだ能力です」

善子「千里眼……さっきの徘徊者も使ってたような……」

ルビィ「八尾のきつねしゃんの昔話にも出てきたね」

ヒガナ「遠く離れたものを透視したり、稀にですが、未来に起こりうることも見えます」

善子「やっぱり……」

595以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:03:39 ID:1///zhAs
ヒガナ「あなたたちのことは、遠い昔、夢で見ました」

ヒガナ「夢の中で、あなたたちは、バラバラになった私たち家族を再び一つに結びつけてくれた」

ヒガナ「そして、あなたたちがこの世界に迷い込んだ時、夢が予知夢であったことを確信しました」

ヒガナ「そこで私は、あなたたちを見守ることにしました。 あなたたちと一緒に迷い込んだ、あの猫を通して……」

ルビィ「やっぱりヒガナちゃんがあの猫しゃんだったんだね!」

ヒガナ「そうですよ、猫ちゃんです。 話を戻しますね」

ヒガナ「私の身動きを取れない今、状況を打開するには、あなたたちに賭けてみるほかありませんでしたから」

善子「身動きが取れない……? どういうこと?」

ヒガナ「長い話になります……」

────
──

596以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:04:09 ID:1///zhAs
ヒガナ「私とヒバナは、小さな村から少し外れた山奥の、廃墟となった社で生まれ育ちました」

ヒガナ「私は母から千里眼を受け継ぎましたが、ヒバナには何の力もなく、普通の女の子でした」

ヒガナ「母はその能力ゆえに村人から忌み嫌われていて、私の身を案じた母は、私に山を下りることを禁じていました」

ヒガナ「そんな私と母のことを、ヒバナはいつも一番に想ってくれました。 ヒバナは本当に優しかった」

ルビィ「ヒバナちゃん……」

善子「ヒバナ……」

ヒガナ「ある日、私は村の少年達が川で鉄砲水に流される事を予知しました」

ヒガナ「それを聞いたヒバナは、少年達を助けようと急いで川に向かった……」

善子「あれ……この話、どこかで……」

ヒガナ「でも、ヒバナの警告は聞き入れられなかった。 母の子であるというだけで、ヒバナも村人に嫌われていました」

ヒガナ「そして、少年達は鉄砲水に飲み込まれてしまったのです」

ヒガナ「ヒバナだけは奇跡的に難を逃れましたが……それが村人の誤解を生みました」

ヒガナ「村人には、ヒバナが不思議な力を使って鉄砲水を呼んだように見えたようです」

597以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:04:47 ID:1///zhAs
ヒガナ「そして……その日の夕方には、大勢の大人がやって来ることが分かりました」

ヒガナ「お母さんは、その前に私たち2人を山奥に隠そうとしましたが……ヒバナはそれを断った……私とお母さんを守るんだと言って……」

ヒガナ「私の存在は村には知られていませんでしたから、ヒバナが残れば私は安全に山に隠れられます」

ヒガナ「母が説得するもヒバナの意志は強く、私1人で山奥に隠れることになりましたが……」

ヒガナ「2人のことが気がかりだった私はこっそりと林の奥から要すを伺うことにしました」

ヒガナ「村人たちは口々に叫びました……化け物の子が村の子供を◯した、化け物を出せ、仇を取ってやる……」

ヒガナ「母は社の中にヒバナを匿うと、表に立ち一歩も引きませんでした」

ヒガナ「優しい私の子が、人を◯すことなどあり得ない、何かの間違いだ……そう言い続けていました」

ヒガナ「でも、そんなやり取りはいつまでも続かず……しびれを切らした村人たちは、ついに大勢で母に襲い掛かりました」

ヒガナ「クワや鉈で打たれ、母が悲鳴を上げるとヒバナが飛び出してそれを庇った……」

ヒガナ「ヒバナの顔は恐怖で強張っていて……それでも必死に母の前に体を投げ出しました」

ヒガナ「でも、ただの少女だったヒバナは、大勢の大人の前に無力だった……きっと言葉にならない程の恐怖と悔しさだったでしょう……」

ルビィ「ヒバナちゃん……」

598以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:05:18 ID:1///zhAs
ヒガナ「でもその時、ヒバナの中に眠っていた力が目覚めました」

ヒガナ「ヒバナの体が強烈に光り輝き、その光が辺りを飲み込んでいくと……辺り一帯の空間と時間をねじ曲げ、切り裂き、別の世界を形作った」

ヒガナ「それが、いま私たちがいるこの世界です」

ヒガナ「この世界は、家族を守るという、ヒバナの強い思いが創った世界……」

ヒガナ「その想いは無意識に、この封印された聖域を創り出し、私を閉じ込めました。もう家族が誰にも傷つけられないように」

善子「やっぱりそうだったのね……」

ヒガナ「そして、ヒバナは母を復活させるために、この世界に人を誘いこみ、◯し始めた」

ヒガナ「心優しいヒバナにとって、それがどれだけ耐えがたいことだったか……」

ヒガナ「閉じ込められた私にはなすすべがなく、ここから見ていることしかできませんでした」

ヒガナ「ヒバナが苦悩する様子は壮絶で……思い出したくもありません……」

ヒガナ「……すみません、少し話が長くなりました……ですが、あなたたちには真実を知っていて欲しかったんです」

善子「分かったわ……」

ルビィ「うゆ……」

599以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:05:55 ID:1///zhAs
ヒガナ「母の復活は失敗します。今のうちに何とかしなければ、取り返しのつかないことに……」

ヒガナ「時間がない……一緒に来てください!」

善子「ええ、そのために私たちはここに来たのよ! 絶対にあなたたちを助けるわ!」

ルビィ「うゆ!!」


私たちはヒバナの元へと向かうことにした……

────
──

600以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:06:37 ID:1///zhAs
この世界は、幾多の人を傷つけてまで

たった一人の大切な人を守るために存在していた


それはとても自分勝手で

しかし、純粋で真っすぐな少女の思いだった


ヒバナとヒガナ

二人の少女は長い時を経て邂逅を果たす


引き裂かれた家族を、再び一つにするために……

601以下、名無しが深夜にお送りします:2021/07/10(土) 20:07:09 ID:1///zhAs
またあの荒廃した世界へとやってきた。

どうやらヒバナとヒガナの母は復活したようだ……


崩壊した建物の廊下をまっすぐ進むとヒバナが立っているのが見えた。


ヒガナ「ヒバナ!」

ヒバナ「あなた……ヒガナ……? どうしてここに……」

ヒガナ「私もずっとこの世界にいて、この人たちが助けてくれたの。でも、詳しい話しはあとで」

ヒバナ「そう……」

ヒバナ「お母さんは今、とても苦しんでいる……私のせいで、お母さんはあんな姿に……」

ヒバナ「私がなんとかする……ヒガナは隠れていて……」

ヒガナ「私も手伝う」

ヒバナ「でも……あなたまで失ったら……私……」

ヒガナ「私たちのお母さんじゃない……二人で一緒に助けましょう」

善子「ちょっと、私たちもいるわよ」

ルビィ「うゆ!」


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