[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
▼・ェ・▼その男、所詮、『犬』のようです。
234
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 19:56:37 ID:2kE5XV2E0
ここで再び最初の問題に戻る。
警察でもなく、教会でもない。
では一体何の力をもってこの台風の目のような安全地帯を作り出しているのか。
それは、南角にある小さな喫茶店『カフェ・パトロン』にいるある男の力。
気がつけばほぼ毎日のようにテラスに座り、そして常にコーヒーを飲んでいる、ある1人の男の力だった。
(´・_ゝ・`)「んー……エスプレッソ……」
真っ黒なスーツに白いシャツ。そしてまた真っ黒なネクタイ。
トレンチコートも同じく真っ黒で、深めに被った背の低い中折れハットも言うまでもなく真っ黒で。
おまけにソックスや革靴まで当然のように真っ黒。
235
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 19:58:20 ID:2kE5XV2E0
夏の日も冬の日も、雨が降ろうが風が吹こうが全身を黒に包んだこの格好がトレードマークのこの男。
中肉中背。そして顔つきは見事なまでに平々凡々。
(*´ー _ゝー`)「この苦味、この深味、そしてこの黒さ……エスプレッソ……」
その職業、情報屋。
名を『デミタス』というこの男、ソウサクシティーに似合わぬこの紳士風の男を、その見た目から人はこう呼ぶのだ。
――『ジョニーウォーカー』と。
.
236
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:02:16 ID:2kE5XV2E0
(*´・_ゝ・`)「うーん……やっぱりコーヒーはエスプレッソだよねー。あっ、ドルシアちゃーんお代わり頂戴なー」
$$*゚-゚/$ ドルシア「はいはーい。ちなみに次で丁度10杯目ですからねー♪」
ソウサクシティー唯一の喫茶店『カフェ・パトロン』の女店主が見惚れる程に上品な笑顔でコーヒーのお代わりを運んで来る。
その見た目はアウトローの街に似合わぬ癒しをまとったものだった。
ふわふわの金の巻髪を揺らし、同じく金色のくりくりとした瞳。
花は高く、唇はふんわりと柔らかく、全体的に化粧は薄め。
白いシャツブラウスに青いスキニー、それから動きやすい黒いスニーカーという地味めな服装。
唯一目立つのはパトロンという店名の刺繍が入った黄色いエプロンの存在と、左耳に揺れるドルマークをモチーフにした大きめのゴールドイヤリングのみ。
それがパトロンの看板娘兼、店長である『シャルトリューズ・ドルシア』だ。
237
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:03:44 ID:2kE5XV2E0
(*´・_ゝー`)「いやはや、ここのコーヒーは美味し過ぎちゃってねーどうにも止まらない。
いけないねー、こうやって何杯も飲んでたら財布がスッカラカンになってしまうよ」
$$*゚-゚/$「あらら。でも店側としては嬉しいんですけどね。はい、エスプレッソ」
白いクロスが置かれたテーブルに白いカップセットが静かに置かれる。
そしてその中身は当然ながら真っ黒の液体が並々注がれており、その色を際立てるかのように白い湯気がふわふわと漂う。
デミタスはその光景に満足げな表情を浮かべ、カップに口をつけた。
238
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:05:47 ID:2kE5XV2E0
(*´ー_ゝー`)「あぁ……エスプレッソ。いいね、愛しのエスプレッソだ。
ああ、確かにこのままだとスッカラカンになってしまうかもしれないなあ。
でもね、僕は信じてるんだ。ドルシアちゃん。君と、このカフェ・パトロンをね」
至福の味に酔いしれながら、デミタスは瞳を閉じて語り続けた。
(´ー_ゝー`)「優しいドルシアちゃんなら、ほぼ毎日のようにここに通っている、僕には特別に。そう、きっと特別にだ」
(´・_ゝ・`)「いつも本当にありがとうございます。だなんて感謝の言葉と共にだね、きっと1杯くらいエスプレッソをサービスしてくれ$$*゚-゚/$「しませんよ」あっ、はい、ごめんなさい」
239
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:08:23 ID:2kE5XV2E0
『カフェ・パトロン』はテラス席をメインとしたこじんまりとしたオープンカフェスタイルの店構えだ。
彼女1人で経営していることもあり、テーブルは4つ、席はそれぞれ3つ。
店内は彼女が栽培している数多くの野菜やハーブで溢れ、その奥には自慢のキッチン。
基本的に雨天時は臨時休業というかなり自由なスタイルでの営業のためなのか、1品1品のメニューがなかなか『いいお値段』なのだ。
(;´・_ゝ・`)「いや、ねえ? でもちょっと聴いてよドルシアちゃん。
いくらなんでもコーヒー1杯15ドルって言うのはご立派なお値段過ぎないかなー?
もっと安かったら沢山常連だって出来そうなんだけども」
$$*^-^/$「大丈夫ですよ。どんなにお客さんが少なくても、その分とびっきり美味しい常連さんのデミさんがいるんですから」
(´^_ゝ^`)「わあお! とびっきりの笑顔で搾取する気満々宣言してきたぞーこの鬼畜娘ったらー」
240
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:10:07 ID:2kE5XV2E0
デミタスはカップを置くとやれやれというジェスチャーをしてみせた。
小さな店構えのカフェ・パトロンの唯一の常連客(と言うか基本的に毎日いる)である彼は、何度も何度も値引き交渉をしているのだがそれが聞き入れられた事は1度として無かった。
ドルシアのイヤリングが主張するかのように輝いた。
上品で、気立てもよく、優しい、そして美人。
女としてほぼ完璧とも言える彼女の唯一の欠点は異常なまでに逞しい商魂。
$$*゚-゚/$
……まあ要するに、早い話がお金が大好きなのだ。
241
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:12:36 ID:2kE5XV2E0
$$*゚-゚/$「あっ、そう言えば新作のアップルパイがあるんですよ!
コーヒー好きのデミタスさんにピッタリのスペシャルレシピ!!」
(*´・_ゝ・`)「ほほーう。そんな嬉しいことを聴いたら注文せずにはいられないじゃないの」
$$*^-^/$「毎度ありがとうございます。特製アップルパイは1皿50ドルでーす♪」
(´^_ゝ^`)「はっはっはっ。この鬼畜守銭奴女め」
$$*^-^/$「そこまで言うならとりあえず3皿分ぐらい作っちゃいますねー♪」
(´・_ゝ・`)「やめてください、しんでしまいます」
財布への打撃は深刻ながら、この和やかで平和な時間は何事にも変えがたい。
キッチンへ消えていくドルシアのヒップを眺めながらエスプレッソを味わう。
まさに、そんな時だった。
242
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:14:24 ID:2kE5XV2E0
「ジョニーウォーカー!!!」
南の方から怒気を孕んだ大きな声が響いた。
その声にデミタスがコーヒー片手に振り向くと、そこには1人の若い男が必死の形相でこちらに向かって走ってくるのが見えた。
めんどうだな、と思いつつもエスプレッソを味わいながらデミタスは軽い感じで挨拶をしてみせた。
(´・_ゝ・`)「やあやあ、南東側の『プレイボーイクラブ』のニュックン氏じゃないか。
お久しぶりー。あっ、コーヒー飲む?
やっぱりモーニングはエスプレッソだよねー」
(# ^ν^)「何がお久しぶりだ! この裏切り物の黒服野郎が!!」
現れた金髪の若者、『ノチェロ・ニュックン』はデミタスの挨拶など聞く気がないのか、食ってかからんばかりに身を乗りだし、怒りの声をあげた。
243
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:15:40 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「テメエのせいで俺達は『クリムゾンヘッド』に目つけられちまったんだよ!
テメエ長い物に巻かれて俺達の情報を吐きやがったな!!」
怒りの形相を浮かべる男とは対照的にデミタスはポカンとした顔でニュックンを見つめた。
「こいつは何を言ってんだ?」と言わんばかりの表情で。
やがて諦めたような表情でカップを置きながら小さく溜め息を漏らす。
それから諭すような口調で、あのねー。と切り出した。
244
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:16:26 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「裏切り物って言われてもね、僕はそもそも、情報屋なんだよ?
この交差点で1人コーヒーを嗜む『ジョニーウォーカー』は何処にも属さないフリーの情報屋さ」
(´・_ゝ・`)「確かに僕はクリムゾンヘッドのお偉い様にに君達プレイボーイクラブの情報を売ったよ。
まあ、それだけじゃないけどね。顧客の要望は最近活発に動いている小さいチームの名称と現在地の全ての情報だった訳だし」
確かにデミタスはニュックンの言っている事に心当たりがあった。
今からちょうど2週間前、南を牛耳っていたチャイニーズマフィア『ドラゴン』の首領、『杏露・シナー』が何者かに暗殺された。
245
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:17:47 ID:2kE5XV2E0
それによって南側でひっそりと息を潜めていた小さなグループが返り咲かんとばかりに一気に暴れ始める。
それに目をつけたクリムゾンヘッドの女首領、ハインリッヒは小さなチームを全て喰らい尽くすために、右腕にあたるフィレンクトを通じてデミタスに情報を求めたのだ。
(´・_ゝ・`)「モララー氏率いる『ホワイトカラー』にシナー氏の実の娘、スニフィ嬢率いる『ウルボロス』。
それからつい最近結成されたばかりでリーダーを持たない『ザ・バンド』」
(´・_ゝ・`)「そして君達、プレイボーイクラブだ。
あ、そう言えばリーダーの『三月兎』ことラビット氏は元気ー?
それとも君がそこまで焦ってるって事はクリムゾンヘッドの誰かに殺されちゃったのかしら?」
246
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:19:55 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「ざけんじゃねえ!!」
ニュックンは怒声をあげながらデミタスの向かいの席のチェアーを蹴飛ばした。
そして懐から兎のように真っ白に塗装された拳銃を取りだし、デミタスの眉間に向けて突き付けた。
(# ^ν^)「リーダーはまだくたばっちゃいねえ!!
あの人が俺らを残して死んだりする訳がねえんだよ!!」
怒りに震えながら精一杯に叫んでいるところを見るや、プレイボーイクラブのリーダーとやらは随分と慕われているらしい。
もっとも、あらゆる情報を把握しているデミタスとしては彼がとある小さな病院で既に虫の息であることも把握していたので、割とどうでもいいことだったのだが。
247
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:21:16 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「いいか! クリムゾンヘッドの弱点を教えろ!! 何でもいいからとっとと吐け!!」
憤怒で顔を真っ赤にしながらニュックンはデミタスに食ってかかる。
だが当のデミタスはその怒声を右から左へ聞き流すかのように、涼しい顔のままカップを手に取り、静かにエスプレッソを堪能する。
そして空になったカップを静かに置いて、小さく微笑むような表情でニュックンに向かいあった。
(´・_ゝ・`)「もちろん僕は中立の立場にいる情報屋だからね。
ニュックン氏のお望みの情報だってしっかりと握っているさ」
( ^ν^)「なら……」
安堵したようなニュックンの表情を確認したデミタスはニッコリと微笑んで
248
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:22:43 ID:2kE5XV2E0
(´^_ゝ^`)「15万ドルになります」
と言った。
( ^ν^)「……は?」
(´・_ゝ・`)「あれ? 聴こえなかった? 15万ドルだよ。じゅ・う・ご・ま・ん・ど・る。
もちろん後で揉めないように安心安全の現金払いで完全前金制ね」
249
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:23:36 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「ざっけんじゃねえ黒服野郎が!! そんな大金払える訳ねーだろうが!!」
(´・_ゝ・`)「んー? それじゃあ教えられないよ。 僕にとって情報は大事な商品なんだからねー」
間延びした口調でふぅ、と溜め息を吐くデミタス。
小馬鹿にしたような目の前の男の態度にニュックンは静かに切れた。
カチャリ。と撃鉄を起こす音が小鳥のさえずりと噴水の水音が響く青空に静かに交じった。
(# ^ν^)「いいか。糞野郎が、よく聴きやがれ」
静かに、それでいて低く。
殺意を込めたニュックンの声が響く。
250
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:26:50 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「これは、マジだ。大マジだ。脅しでもねーマジな話だ。
テメエは大人しく吐け、さもなきゃ」
(# ゚ν ゚)「プレイボーイクラブの白い弾丸がテメエの頭を弾き飛ばす!!」
ニュックンの人指し指は既に引き金にかかり、何時でも目の前の男を処刑する準備は出来ている。
先程の彼の言葉は脅しでも何でもなく、目的の情報が得られないくらいだったら目の前にいる憎きエセ紳士を処分する腹積もりだった。
だが当のデミタスは銃口を向けられているにも関わらず、先程から表情を変えることなく、またやれやれと言ったジェスチャーをしてニュックンを挑発する。
必死の思いで引き金にかかった人指し指を抑える金髪の男の心情を知ってか知らずか、デミタスは少々めんどくさそうに口を開いた。
251
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:28:10 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝー`)「んー、まあ確かにね。こんな距離で弾丸なんか喰らっちゃったらさあ。
そりゃあ、いくら僕でも死んじゃうよね?
うん、分かるよー分かる分かる」
(´・_ゝ・`)「でもさ、ニュックン氏。僕はどうしても君に1つ聞きたいことがあるんだよ」
(# ^ν^)「……んだよ、ごら」
殺気と怒気を隠そうとしないニュックンの言葉などまるで気にしない素振りでデミタスは続けた。
それは彼が今まで潜り抜けて来た修羅場の数を表しているようにも見えるし、そもそも何も考えていないような阿呆のようにも見える。
もっとも、常に何処かしこで鉛玉が飛び交うソウサクシティーの古株である彼にとっては、こんな状況など修羅場にすらなり得ないのかもしれないが。
252
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:29:27 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「いやはや、簡単な事なんだよ。
君はつい先程『白い弾丸がテメエの頭を弾き飛ばす』って言った訳なんだけどもね?」
(´ー_ゝー`)「僕と致しましてはね、んー、やっぱりさー。
そこら辺がちょいとばかし、不思議に思っちゃうんだよねー」
(# ^ν^)「……何が言いてえ」
質問の意図が全く読み取れないニュックンを諭すようにデミタスは続けた。
まるで、大人が悪ガキに仕方なく説教をするみたいに。
253
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:31:10 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「いやはや、だからね。本当に単純な疑問なんですけどねー」
(´・_ゝ・`)「ニュックン氏はどうやって、その弾丸を僕に撃ち込むつもりなんですかねー?」
そして、デミタスのめんどくさそうな表情がすっかりと変わり、ニヤリと音がなりそうな嫌な笑みを浮かべ、こう告げるのだ。
.
254
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:32:03 ID:2kE5XV2E0
―――「『銃も持っていない』のにさあ?」
と。
255
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:33:27 ID:2kE5XV2E0
( ^ν^)「……は?」
ニュックンの表情から怒りが消えた。
そしてその顔はみるみると青ざめ、額から脂汗がだらりと落ちる。
やがて身体が震え始め、気が付いたら2、3歩ほど後ろに後ずさっていた。
(; ゚ ν ゚)「なっ……なんで!?」
ニュックンの頭の中は疑問でいっぱいだった。
何故このエセ紳士は銃を突き付けられても涼しい顔だったのか?
何故こいつは意味の分からない質問をしたのか。
そして何より重要な事。
それは何故しっかりと握っていた愛用の白いベレッタが『一瞬で消えてしまった』のかと。
256
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:34:15 ID:2kE5XV2E0
驚きと困惑の表情を浮かべるニュックンを横目で眺めたデミタスはさて、ゆっくりと立ち上がりながら口を開く。
(´・_ゝ・`)「ニュックン氏や。ソウサクシティーに根付いたばかりの君に、このジョニーウォーカーこと、イケメン紳士のデミタス氏が特別に良い事を教えてあげるよ」
人の良さそうな、いかにも紳士という言葉が似合うデミタスの笑み。
先程まで神経を逆なでして仕方なかったそれが、今のニュックンには何かとても恐ろしい物に見えた。
257
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:35:24 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「ここ、ソウサクシティーは喰うか喰われるかの無法地帯。
それでも皆が怖れ、その怒りを買わないように努める『ヤバイ人間』が3人いるんだ」
落ち着いた声でデミタスは握っていた右手の人指し指だけをニュックンによく見えるように開いて、先ず1人目だ。と言った。
(´・_ゝ・`)「『ゴッドファーザー』こと西のイエローモンキーの首領『リシャール・ニダー』氏だ。
まさに昔気質のマフィアのドンである、彼の怒りを買う事がどんなに恐ろしいかは言うまでもないでしょ?」
(;´^_ゝ^`)「温厚で必要以上の争いを好まない彼がぶちギレたら……あはは、想像したらオシッコちびっちゃいそうだよねー」
258
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:36:30 ID:2kE5XV2E0
にこやかに笑いながデミタスは2本目の指を静かに開く。
(´・_ゝ・`)「そして2人目は君がつい先程まで情報を聞き出そうとしたクリムゾンヘッドの女首領『MM・ハインリッヒ』嬢。
典型的なサディストである彼女の拷問は、それはそれは恐ろしいらしくてね?」
(´・_ゝ・`)「なんでもいっそのこと殺してくれ!!
と叫ぶ可哀想な人達をあえて死なないように絶妙なテクニックを発揮して、たっぷり楽しむように3日間もかけて、ぐちゃぐちゃにしてしまうんだとか。
おっそろしい話だよねー」
「ああ、そう言えば新しい拷問の方法を教えてくれと頼まれた事もあったよ」とデミタスは何か愉快な事を思い出すかのようにクスリと笑って見せる。
やがて思い出したかのように、目の前の怯える若者の瞳をしっかりと見つめると3つめの指を開く。
259
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:37:30 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「そして最後に3人目だ」
少しもったいぶるように、余韻たっぷりで語り出す。
(´・_ゝ・`)「ソイツはコーヒーと平和と秩序を愛する、平々凡々な男なんだ。
なーんの特徴もない、氏がない情報屋」
(´・_ゝー`)「だけど不思議な事があってだね。
誰も彼も、彼のあだ名や下の名前を知っているっていうのに。
フルネームだけは、みーんな知らないんだよ。それは何故か?」
チッチッチッと舌を鳴らしながら右手の人指し指を振る。
三流俳優のようなこの演技が、どうしたことか、彼には異様な程にしっくりとマッチしていた。
260
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:38:22 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「それはね、ソイツの中で、あるルールを決めているからなんだよ。
ソイツは過去に悪い事をやり過ぎちゃったからね、昔を思い出さないように出来るだけ、フルネームを名乗らないようにしたんだよ」
(´・_ゝ・`)「でも、どうしても、ソイツのフルネームを名乗らなきゃいけない時があるとするだろう?
それでもソイツは名前を知られたくない訳なんだよ。
するとソイツはどんな行動をすると思う?」
ニュックンの汗が顎に流れ、褐色のレンガで作られた地面に小さなシミを作った。
目の前の紳士が、何か恐ろしい黒い化物のように感じたのだ。
261
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:39:15 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「答えはね、存外、単純な話でさ、消すんだよ。
自己紹介を済ました後に、相手の存在をすっかり消しちゃうんだってさ。
まあ、早い話が暗殺だよねー。
あ? 何でそんなことするか気になる?」
(´^_ゝ^`)「だってさ、知らない間にソイツの名前が色んな人に伝わってしまったらさあ、何だか恐いだろう?
だからソイツはさ、フルネームを名乗る時っていうのは、相手を殺す時だけ。っていうルールを決めているんだよね」
小さく震えすらみせているニュックンにデミタスはニッコリと微笑む。
そして見せびらかすように開いていた人指し指を閉じると、そのままゆっくりと右手をトレンチコートのポケットに忍ばせた。
262
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:40:06 ID:2kE5XV2E0
(´^_ゝ^`)「ねえ、弱小チーム、プレイボーイクラブのお馬鹿なお馬鹿なノチェロ・ニュックン氏。君は……」
そして目にも止まらぬ早さで右手を引き抜き『白いベレッタ』を目の前の男に突き付けた。
263
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:40:54 ID:2kE5XV2E0
(´ _ゝ・`)「僕の名前を聴く覚悟は、出来てるかい?」
.
264
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:42:43 ID:2kE5XV2E0
$$*゚-゚/$「アップルパイお待たせしましたー……ってあれ?椅子が壊れてる!?」
(´ー_ゝー`)「ああ、ごめんねー。ちょっとお客さんと揉めちゃってさ。
しっかりと弁償するから」
青空の下、ジョニーウォーカーことデミタスは椅子に浅く腰掛けながら、ぐったりとした笑顔をドルシアに見せた。
(´・_ゝー`)「そんなことより、コーヒーのお代わり頼むよ。こんな美味しそうなアップルパイをコーヒー抜きで味わうだなんて考えたくもないからね」
$$;*゚-゚/$「まったく、もう。デミさんは荒事ばっかり持ち込むんだから」
265
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:43:35 ID:2kE5XV2E0
ぷりぷりと怒りながらキッチンに消えていくドルシアのヒップを見送りながら、デミタスは心地よい小鳥のさえずりに耳をすませる。
そして、シナモンとアップルの甘い香りがふわふわと漂う特製のアップルパイを器用にフォークとナイフで切り分ける。
トロトロと溢れ出るジャムのような黄金の蜜。
それからゴロゴロと大粒にカットされた果肉の輝きたるいなや。
なるほど、これは、たまらない。
$$*゚-゚/$「はい、エスプレッソですよ」
ありがとう。と軽く礼をして、カップに口をつける。
そしてコーヒーの余韻が漂う中に、カリカリのパイ生地を放り込む。
ああ、これは……
266
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:44:40 ID:2kE5XV2E0
(*´^_ゝ^`)「美味しいね、いや、本当に」
$$*^-^/$「あら、嬉しい」
正義が枯れ果てたスラムの街。
それでも、この街もまだまだ捨てたものじゃないよね。
そんな事を考えながら、ジョニーウォーカーは今日もこの交差点の平和を守りつつ、至福の一時を堪能するのだった……
.
267
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:46:44 ID:2kE5XV2E0
$$*^-^/$「あっ、因みに椅子の弁償金は2000ドルになります♪」
(#´・_ゝ・`)「鬼! 悪魔! ドルシア!!」
$$#*゚-゚/$「アップルパイ5つ追加ありがとうございまーす♪」
(´;_ゝ;`)「マジでごめんなさい!!」
『交差点』は今日もそれなりに平和である。
268
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:47:51 ID:2kE5XV2E0
以上、中編に続く。
シリアス0でごめんなさい。中編から頑張ります!
269
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:49:03 ID:YAdQmzVg0
乙!
ドルシアちゃんがオリジナル?
かわええ!!
270
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:51:35 ID:9fBq5g7k0
おもしれー!!
続きが楽しみだ��
271
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 21:14:45 ID:ieFxtA5M0
ああ、これはほのぼのだわ(白目)
272
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 21:26:07 ID:gQZRzWfY0
おつ
びっちは下ネタしかなくて苦手だったけどこっちは面白い
273
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 00:42:10 ID:FrKb9p.s0
おつ
274
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 11:10:46 ID:.JRTdebo0
>>269
ドルシアがオリジナルですね。ちょくちょくデミタスとのセットで登場する予定です。
乙や支援、またVIPの感想スレでの感想ありがとうございました。
今日の深夜、もしくは明日の夜に中編を投下します。
徐々にシリアスになれるように頑張ります。
275
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 11:21:11 ID:2Cmwm4ik0
読み終わって乙を言おうとしたら既に次回投下予告があるっていうね
楽しみにしてます乙
276
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 11:28:47 ID:xziuJA8w0
いいじゃんドルシア
いいじゃん
277
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 19:34:39 ID:Ooaa8zH20
ごめんなさい……現在カキダメ中なのですが構想に迷っています。
1…スニフィ、ビロード、ニダー バトル重視
ルート、もしくは
2…ヒート、クール、ニダー、ビロード ストーリー重視
で苦悩しており、カキダメが進みませんので、申し訳ないのですが次の方の安価
>>278
にお任せします。
1か2で選んで下さい
278
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 19:42:19 ID:D726RzJA0
2のストーリー重視希望
がんばれ!
279
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 00:23:33 ID:N/0UWHsg0
ビロードがこういう作品でどういう感じになるかたのしみ
2希望してます
280
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 10:37:05 ID:VN6wb7hM0
278だけど、いざとなったら安価なんか無視しちゃってくだせぇ
無理せず焦らずに。のんびり待ってますぜ!
281
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 12:24:48 ID:XrK8.HNs0
>>278
>>279
安価ありがとうございます。
ストーリーよりも少しキャラ付けに手間取っているだけですので大丈夫ですよ。
今夜、もしくは深夜には投下できるかと思います。
282
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 19:08:37 ID:9.M2fcrA0
今夜0時に中編投下します。
283
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 23:38:13 ID:pPqCFOfg0
わくてか
284
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:00:45 ID:q7v0AJSc0
かなーりゆっくり投下します。
途中からながらになります。
285
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:03:16 ID:q7v0AJSc0
(>< )
『僕』がいる。
(>< )
無限に広がる暗闇に、『僕』がいる。
偉大なる父のモニュメントを背に置いて、虹色のステンドグラスから漏れる七色の光を、まるで後光みたいにして纏う、『僕』がいる。
でもその僕っていうのは、『本当の僕』じゃないっていうのは、いくら僕でも分かってるんです。
( ><)(>< )
まるで、鏡。
286
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:05:47 ID:q7v0AJSc0
姿形は全く同じなのに、その奥に隠れている瞳に写らない、とっても大切なものはプラスチックみたいに冷たくて、そして、空洞なのが見てすぐに分かった。
何でそんな事が見ただけで分かったのか?
って聞かれたら、やっぱり「わかんないんです」って答えちゃうけど、それでもやっぱり、僕には分かる。
僕の事だから、『僕じゃない僕』の事もすぐに分かるんです。
でも、『僕じゃない僕』が、一体何者なのかはやっぱり馬鹿な僕には、わかんないんです。
(>< )
僕がいる。
ちっぽけな虹みたいな光。
でもそれでいて、この無限に続くような暗闇にとっては、とってもとっても眩しい七色の光の下に。
287
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:08:23 ID:q7v0AJSc0
磔刑に処せられ、顔を伏せる我らが父の足元に、まるで、幽霊みたいな『僕』がいる。
( ><)「ねえ、どうして君は、そんなに冷たい顔をしているんですか?」
勇気を出して僕が尋ねてみても、『僕じゃない僕』は、口を閉じたまま、僕の方をじぃっと見つめるだけ。
結局、僕が何を言っても応えてはくれない。
寂しいし、何よりも少しだけ、恐かった。
暗闇にぼんやりと浮かぶ、我らが父の姿。
キラキラと輝く、虹色の幻想。
それから、簡素な作りの真っ白な修道服に身を包む僕。
そして、対照的な真っ黒なローブに身を包んだ、『冷たい僕』。
288
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:11:33 ID:q7v0AJSc0
僕は右手をゆっくりと伸ばして、恐る恐る目の前の『僕じゃない僕』の頬に触れる。
僕じゃない筈の、目の前の『僕』の身体は、やっぱり僕自身とは全く違くて、とっても冷たい。
それから、痛かった。
触れただけなのに、僕の心の中の、何か大事なものがキリキリと締め付けられるようで、とっても痛かった。
右手越しに伝わる、その手触りも、無機質な冷たさも。
それから1番大切な、触れているだけで底冷えする、何か言葉では言い表せない、ココロそのものみたいな、鼓動が伝わらなくて。
だから、『目の前の僕』っていうのは、まるで死体のように感じられて、僕は知らず知らずの内に涙を流していました。
289
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:12:20 ID:q7v0AJSc0
その涙が、同情の涙なのか。それとも、キリキリと締め付けられる僕の心の奥が悲鳴を上げているからなのか。
それすら分からなかったけれど、気が付いたら涙が止まらなかった。
気が付くと、目の前の『僕じゃない僕』の瞳からもスーっと涙が流れていました。
でも、その涙は僕なんかのソレとは全く違かったんです。
(。><)「あ……」
『僕じゃない僕』の瞳から音もなく零れ落ちていく、真っ赤に染まった涙の雫。
それは、ずーっと昔に僕が見た、赤い赤い、とっても悲しい奇跡の涙。
290
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:14:02 ID:q7v0AJSc0
奥に浮かぶ父の瞳からも。
それから、露出した脇腹にある聖なる傷痕からも、赤いソレがどんどんどんどんと流れていく。
(。><)「あ……あ……」
僕が動く。
違う。僕じゃない。
『僕じゃない僕』の身体が、微かに動いた。
痙攣するように身体を震わせ、無表情だったその瞳に、光が宿る。
291
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:16:11 ID:q7v0AJSc0
『僕』の身体はやがて、ミチミチと肉を裂くような、とっても痛々しい音を立てながら、その姿を徐々に変えていく。
すっかり怯えきった僕を嘲笑うかのように、『僕』がほんの少しだけ笑った気がした。
そして、肩の辺りがまるで爆発でもするかのようにボコッと膨らんだ時、それは生まれていたんです。
(。><)「あ……」
バサッと何かが翻る音がした。
そして、純白の、白い羽が僕の目の前のにふわふわと揺れ動きながら落ちていく。
292
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:17:32 ID:q7v0AJSc0
気が付くいた時には、暗闇には何十何百といった純白の羽が、まるで雪のように舞い落ちていたんです。
そして、その中心には、優しく微笑む『僕』の姿が。
(。><)「天使……?」
『僕じゃない僕』からは、とても大きな翼が姿を現していたのです。
聖書を詠みながら何度も何度も想像していた、純白で美しく。穢れ無き、無垢なる天使の象徴。
『僕』の背に雄大に広がる、その翼を見た時、そして、そっと微笑みかける『僕』の表情を見た時。
僕は心の底から救われた気がしました。
293
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:18:14 ID:q7v0AJSc0
――――だけど、それだけじゃなかった。
.
294
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:19:19 ID:q7v0AJSc0
(。><)「あ……あ……!」
『僕』の右肩からから生えている美しい白い翼。
その姿は、誰がどう見ようと天使そのものに写る事でしょう。
(;。><)「な……んで……?」
『僕』は微笑んでいました。
右に天使の翼を広げて。
そして、左に獣の翼を広げて。
295
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:20:19 ID:q7v0AJSc0
(;><)「ち……がう……ちがうんです……」
『僕』の左肩から生えているソレは、獣のような短くて黒っぽい体毛にビッチリと覆われていて、ところどころ、血と、骨とが露出していました。
まるでボロボロのローブから穴っぽこが空いて、チラホラと中が見え隠れするようです。
翼の先には何か、牙や爪みたいなものがギラギラと輝いていて、その輝きはとてもじゃないけど神聖なものではありません。
邪悪、そのものが閉じ込められたような翼の象徴。
まるで、それは。
僕が昔に、ほんの一瞬だけ想像した……
(;><)「悪魔……?」
296
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:22:18 ID:q7v0AJSc0
瞬間、全てを焼き払うような巨大な雷が轟いたんです。
稲妻はまるで悲鳴のような唸りを上げて、宙に浮かぶ父の首を焼き払う。
目も眩むようなその閃光は、ステンドグラスの虹色の輝きすら音を立てて粉々に弾き飛ばしてしまった。
(;><)「あ……あ……!」
(><* )
『僕』がいる。
天使と悪魔の翼を持ち、静かに微笑みかける『僕じゃない僕』がいる。
暗闇にはもう、愛しき父の姿も、七色に輝くステンドグラスも何もない。
(;><)(><* )
僕と『僕』だけだ。
297
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:23:05 ID:q7v0AJSc0
僕は『僕』の視線に堪えきれなくて、いつの間にか小さく震えていた。
身体が寒くて寒くて、仕方が無くて。
心の中が痛くて痛くて、仕方が無くて。
それに、僕は『僕』が恐くて恐くて、仕方が無かったから。
何が?
僕は、『僕』の何が、怖いの?
……わかんないんです。
298
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:23:59 ID:q7v0AJSc0
―――だって『僕』は僕自身じゃないんですか?
.
299
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:24:51 ID:q7v0AJSc0
(><* )「――――。」
『僕』が僕に優しく微笑みかけながら、語り出す。
その言葉は天恵のように神聖で、それでいて誘惑のように甘い。
『僕』の視線が、僕に訴える。
僕の身体を暖かい何かが包みこんで、それと同時に冷たい何かが僕の心を蝕んでいく。
(><* )「――――。」
違う。それは僕じゃない。
それは僕じゃなくて『僕』なんだ。
300
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:25:55 ID:q7v0AJSc0
(><* )「――――。」
僕は『僕』じゃない!
『僕』が僕自身だと笑いかけても、それは違う。絶対に違う!
(><* )「――――。」
天使、誘惑、悪魔、天恵、違う、僕が、『僕』だから、違う、違う、違う、獣の、神の、父の定め、違う、僕は、天使、違う、悪魔、違う、違う、裁き、違う。
301
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:27:55 ID:q7v0AJSc0
「――――。」
(;><)「違う!」
(><* )「――――。」
(;><)「違うんです!!」
(><* )「――――。」
(# ><)「違うってば!!」
(><* )「――――。」
(# ><)「違うのおお!!」
(><* )「――――。」
(# )「あああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ!!」
302
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:28:51 ID:q7v0AJSc0
叫びました。
気が付いたら僕は目の前にいる、僕の形をした『化物』の首に手を掛け、無我夢中で暗闇の中に押し倒していました。
天使のような微笑みを浮かべ、悪魔の誘惑を語り掛ける憎き『僕』の胸元に狙いを定めます。
右手に巻いたロザリオを、何度も何度もつっかえながらも必死で左手で引きちぎるようにほどいて構え、十字架の部分をナイフに見立てて思いっきり振りかぶり。
(# ><)「ちがあああああああああああああああああああああああああああああああああああう!!」
そして、力いっぱい突き刺しました。
303
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:30:27 ID:q7v0AJSc0
( ∀ )「――――」
その瞬間、胸元に十字架が刺さった『彼』は。
口が裂ける程の醜悪な笑みを作り、牙を剥き出しにして。
( ∀ )「――れ――は――前―身の願――うなんだよ」
と言った違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!
304
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:32:00 ID:q7v0AJSc0
(# ><)「違う違う違う違うちがあああああああう!!」
暗闇に浮かぶ、七色の破片。
首を失った、無惨な父の象徴。
それから、笑顔のまま、死んだ。
翼の生えた『僕』。
( ><)
それから、血まみれの、僕。
305
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:34:54 ID:q7v0AJSc0
(# )「僕はあああ!!」
暗闇に、祈った。
泣き叫びながら、祈った。
答えなんて知っている。
これが僕の定めで、天恵なんだって事も。
僕は神の子で、父のためにもそうしなきゃいけない事も。
(# ;)「僕はあああああぁぁぁぁ!!」
それでも、叫ばずにはいられなかった。
声が枯れるまで叫ばずにいられなかった。
もし、僕が泣き叫ぶ事すら赦されないというなら、父はどうして僕にこのような受難を与えたというのか。
僕は、僕は、僕は。
306
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:36:39 ID:q7v0AJSc0
(# ;;)「僕は悪魔なんかじゃないいいいいいいいいいいいい!!」
流した涙は、広がり、湖になり、やがて鏡になりました。
そこに映っていたのは、顔をぐじゃぐじゃにした僕。
右の背には純白の翼を携えた僕。
左の背には血濡れた獣の翼を携えた僕。
それから
( <●><(# ;;)
黒い、瞳の、彼が。
307
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:37:52 ID:q7v0AJSc0
―――ねえ、お父さん。僕は一体、誰なんですか?
.
308
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:39:20 ID:q7v0AJSc0
そうして、彼は。
( <●><●>)
すぅっと、近付いて。
( <●><●>)
僕の『右頬』に。
( <●><●>)
優しく、優しく……
.
309
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:41:51 ID:q7v0AJSc0
( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( ∀ )( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)
310
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:42:37 ID:q7v0AJSc0
―――――――――――――――――
.
311
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:14:42 ID:q7v0AJSc0
大きな木製扉の両脇に、2人の女性が門番のように立っていた。
向かって右側の白人の女性は直立不動という言葉がぴったりで、呼吸によってわずかに上下する胸元を見なければ、新手の現代彫刻かと疑いたくなるほど、一切の動きも無く、それでいて美しい。
対して左側に立つ女の肌は黒く、その体勢はすでに壁によりかかっており、表情からは退屈が見てとれる。
先の女性の魅力が神秘的なものとするならば、こちらの女の魅力は健康的なエロスとワイルドさと言ったところだろうか。
ノパ⊿゚)「なあ」
黒人の女、ヒートが小さく口を開く。
その口の右端には、火のついていない葉巻が咥えられているにも関わらず、器用に語りかける。
312
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:16:08 ID:q7v0AJSc0
ノパ⊿゚)「結局よお、親父はまだ籠もってやがんのか?」
川 ゚ -゚)「ああ」
白人の女、クールがぴしっと直立した状態のまま肯定する。
ヒートの方をチラと覗く事もなく、表情も、顔の向きも、一切ぶれる事はなかった。
川 ゚ -゚)「まだ、考え込んでいらっしゃるようだな」
姉のその言葉に、ヒートは舌打ちをしながら顔をしかめた。
口に咥えたコイーバを右手で弄びながら、やってらんねえとばかりに溜め息をつく。
そして先程よりもさらに体勢をだらしなく崩すと、両腕を頭の後ろに組み枕代わりにするように再び壁に寄りかかった。
313
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:40:30 ID:q7v0AJSc0
一瞬、クールの冷たい視線を感じたヒートだったが、殆ど物心ついた時からの付き合いである『義姉』のお堅い思考にはすっかり慣れていた彼女はあえて無視をした。
堅い思考や回りくどい事は苦手だ。
考えるくらいなら動いた方が早いし、理屈っぽいのは馬鹿な自分にはどうにも合わない。
リシャール・ニダーの『左目』と称される『ラーセン・ヒート』という人間は非常に短絡的な人間だった。
髪は赤く全体的に短いが、前髪の一部から右側頭部にかけてはアシンメトリーを描くように長く、中途半端に伸びた後ろ髪は、いわゆるポニーテールという形で後ろの方で縛っている。
314
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:41:20 ID:q7v0AJSc0
つい1週間ほど前に、酔った勢いでセルフカットした結果、この奇妙な髪型に落ち着いたのだ。
ちなみに姉妹からは散々からかわれたが、ヒート自身は結構気に入っているのため、しばらくカットする予定は無い。
顔立ちは整っており、瞳は切れ長でまるで虎のようにギラギラと輝く瞳は、本人の肌の色との対比でエキゾチックな魅力を存分に引き出している。
鼻も高く、その唇は黒人らしくぷっくりと膨らんでおり、ふとした時に見えるその犬歯はまるで牙のように鋭いものだから、そのワイルドでありながらどこか官能的な魅力も存分に引き出しているのだろう。
315
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:42:23 ID:q7v0AJSc0
背は高く、筋肉質で大柄。
服装はところどころに破れや解れが目立つ飾り気の無い、ボルドー色のつなぎ。
背中にはデカデカとイエローモンキーと書かれた英字のロゴと、ポップなタッチで描かれた大きな猿が水着の美女を食い殺すというショッキングなイラストが描かれている。
両腕の部分は7分のところで引きちぎられたかのように乱雑に裁断されており、露出した黒い肌からはトライバル模様のタトゥーが至るところに彫られている。
そして、何と言っても目立つ彼女の胸元を押し上げるように主張するウォーターメロンボールは、どうしてもつなぎに収まりきらないようで、ジッパーは腰元までしか閉じておらず、胸元は白いサラシで乱雑にぐるぐる巻きにされていた。
316
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:44:12 ID:q7v0AJSc0
ノパ⊿゚)y‐「考えたってよ、どうしようもならねーじゃねえかよ。もう、とうの昔に他人になった人間なんだからよ」
川# ゚ -゚)「おい」
『義妹』の拗ねたようなその言葉に『右目』と呼ばれる『ヘネシー・クール』が始めてヒートの方をしっかりと向いて怒気を孕んだ抗議の声をあげる。
外見から判断するに、ヒートとは何もかもが対照的な彼女だが、それは内面にも言える事だった。
粗暴で喧嘩っ早い(悪く言うならば、馬鹿)のヒートの面倒を幼い頃から見ていたクールは、幼少期から、常に冷静沈着で、しっかりと計画や計算をしてから物事にとりかかる人間だった。
317
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:44:55 ID:q7v0AJSc0
ヒートとは対照的な陶磁器のように白い肌を持つ彼女の美しさは神話に出てくる天使や女神を思わせた。
髪はセミロングでその色はしっかりと染色された艶のある黒。
瞳は青く、アーモンドのように大きく、魅力的だ。
高い鼻筋に、桜色の唇は彼女の白い肌に絶妙にマッチングしている。
清楚な白いシャツブラウスに、黒いパンツスーツに身をつつむ彼女の姿。
それはマフィアやギャングと言うよりも、SPや警察関係者と言った方がどこかしっくりとくるだろう。
318
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:47:40 ID:q7v0AJSc0
一見、フォーマルな装いに身を包んだ地味めな服装の彼女だが、強いて目立つ所があるとするならば、ジャケットの胸ポケットの部分に小さく英字で刺繍されている金色のロゴマークだろう。
「イエローモンキー」と縫われたそれは、控え目ながらも、彼女が北を征するニダーの子飼いである証としてしっかりと主張している。
足元はポピュラーな黒い革靴。
そしてパンツに隠れたくるぶしの辺りにホルスター。
両足にあるので、計2丁の拳銃を隠し持っている事となる。
もっとも、念には念を入れて装備しているだけで、グループ1の実力を誇る彼女が使った事は今まで1度も無かったのだが。
319
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:49:21 ID:q7v0AJSc0
背は女性にしては高めだが、常にヒートと並んで行動しているため、特別高くは見えない(ヒートは180センチ、クールは168センチ)。
体型はモデルのように細いが、その身体は数多くの修羅場で鍛えられた、しなやかな筋肉が全身を被っており、彼女もまたソウサクシティに根付く戦士の1人であることの証のようでもあった。
川# ゚ -゚)「ヒート。お前にもお父様の苦悩は分かるだろうが。お父様はつい先日、愛する息子を亡くしたばかりなんだぞ?」
ノハー⊿゚)y‐「そりゃあ、よお。俺だってシナーの兄貴は好きだったぜ?
親父と比べりゃあアホみてーだったけど、それでも歴としたファミリーの一員には変わりねー」
320
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:51:27 ID:q7v0AJSc0
ノハー⊿゚)y‐「でもよ、兄貴は……シナーの奴はもう『イエローモンキー』からとっくに離れた人間だぜ? そんなやつのために親父が塞ぎ込んじまったらよお」
ノハ;ー⊿ー)y‐「俺ら、ファミリーは、どうすりゃいいんだよ……」
ヒートは珍しく弱気な表情をクールに見せたあと、バツが悪そうに顔を伏せた。
川 ゚ -゚)「……」
クールの表情からわずかに戸惑いの色が見えた。
彼女は『義父』であるニダーと同じくらい、この愚直なまでに素直な妹を愛しているのだから。
321
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:52:45 ID:q7v0AJSc0
( `ハ´)
チャイニーズマフィア、ドラゴンの首領だったシナーは約8年までニダーのファミリーの一員として『イエローモンキー』に所属していた。
お調子者で、おおよそ裏の世界ではやっていけそうも無い程に気の弱いシナー。
太っちょでノロマ、要領もあまり良くない。
上司の使いっぱしりにされ、散々馬鹿にされてきた彼だったが、ある1点に関しては他の追随を許さぬ程の天才的な実力を持っていた。
それが、拳銃の腕だ。
.
322
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:53:54 ID:q7v0AJSc0
当時ソウサクシティに普及していた一般的な小形拳銃ではどんな凄腕のガンマンでも約50メーター以上の距離では通用しなかったと言われる。
しかし、小太りで汗っかきなひょうきん者の中国人。
杏露・シナーはその常識を不敵な笑みと共に覆してみせた。
彼がイエローモンキーのファミリーに入団して、約半年後の出来事だった。
当時ソウサクシティの南東を支配していた『ウビィーツァ』というロシアンマフィアと、人気の無い廃工場で薬の取り引きをさはていた時の話だ。
順調に進んでいた取り引きだったが、終了する直前に潜んでいた敵に奇襲をかけられる。
つまり、ハメられたのだ。
323
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:55:33 ID:q7v0AJSc0
圧倒的な物量、そして別件によりニダーを始めとする幹部達が居ない現状。
次々と死んでいく味方達。
まさに絶望的な状況により、窮地に陥るイエローモンキーだったが、その流れをたった1人の男が見事に変えてみせた。
それが、当初下っ端としてドライバーをやっていた杏露・シナーだった。
元々臆病者だった彼は突然の襲撃に気付くと同時に全力でその場から逃亡。
一見情けなく、とても誇り高きマフィアグループ、イエローモンキーの所業とは思えない行動。
しかし、彼とてファミリーをみすみす見捨てるような薄情者では無かった。
324
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:56:35 ID:q7v0AJSc0
彼はその場から離れると廃工場の向かいにある見晴らしのいい建物の3階に隠れた。
そして当時から愛用していた、特殊な改造を施した2丁の回転式拳銃『ピースメーカー』を両手に構える。
戦場からの距離、目測、約120メーター。
小形拳銃では全く役に立たないと言われる50メートルの距離の壁の、さらに倍以上の距離。
銃に知識がある者なら総じて「無謀だ」と鼻で笑うであろう挑戦を、杏露シナーはやってのけた。
まるで、彼の中に眠っていた龍の魂を解き放つかのように。
325
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:57:44 ID:q7v0AJSc0
彼が愛用している改造済みピースメーカー2丁の装弾数は6+12で18発。
風向き、南から約3メートル。
風を裂くような乾いた銃声が唸るように響き、彼の両手から薬莢が踊るように飛び出し、閃光が弾け飛ぶ。
120メートルの無謀な距離。
龍にとって、無意味。
18発の弾丸は寸分の狂いもなく18人の眉間に命中。
奇襲をかけたにも関わらず、スナイパーに狙撃されたと慌てた敵方は総崩れ。
かくして、この絶望的な状況を杏露・シナーは見事に救い、異例の大出世を遂げてみせたのだ。
326
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:59:18 ID:q7v0AJSc0
見た目からは想像できない実力に、いざという時の適格な判断力に行動力。
そして臆病でありながら愛嬌もあり、部下にも上司にも分け隔てなく丁寧にせっしていたシナーは首領であるニダーに大変気に入られ、実の息子のように可愛がられた。
シナーが結婚した時はニダーは涙を流しながら自分の事のように喜び、娘が産まれた時は名付け親にもなった。
マフィアグループというのは、総じて悪人だ。
社会のルールに従えない、落ちこぼれのクズの集まりには違いない。
だが、それでもイエローモンキーというファミリー達は、死と隣り合わせの厳しい悪の世界に身を起きながらも、確かに幸せであったのだ。
327
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:25:08 ID:q7v0AJSc0
―――しかし、8年前。全てが変わってしまったのだ。
328
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:25:56 ID:q7v0AJSc0
ニダーがファミリーの幹部と庭で食事をしていた時だった。
青空の下、談笑を楽しんでいた彼らに当時、北西に領土を広げていたコロンビアマフィア『ハイハット』が奇襲を仕掛けてきたのだ。
団欒の幸せな温もりが一瞬にして戦場と化す。
首領であるニダーの長年の経験とそのカリスマとも言えるリーダーシップが功を制し、なんとか劣勢を覆して攻勢に転じるイエローモンキー一行だったがここで不幸な偶然が起きる。
フルオートのライフルに指をかけたまま頭を撃ち抜かれた敵兵の弾丸が手下を庇ったニダーの両目に掠ったのだ。
すぐさま緊急手術が行われるも、手の施しようもなく、彼は視力を失い、永遠の暗闇に閉じ込められてしまったのだ。
329
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:26:43 ID:q7v0AJSc0
その後、辛くも勝利を治めたイエローモンキーだったが、代償は大きく、ファミリーへの精神的ダメージ、ニダーへの物理的ダメージと、かなりの痛手を負う事となってしまったのだ。
盲目となったニダーの世話をファミリーは嫌がる事なく、進んで行った。
例え目が見えなくなろうが、脚が立たなくなろうが、ファミリーにとってリシャール・ニダーはイエローモンキーの『偉大なる父親(ゴッドファーザー)』なのだから。
無論、言うまでもなくそのファミリーの輪の中にはシナーの姿もあった。
ニダーを実の父親以上に慕っていたシナーは彼の目となり、手となり、足となった。
彼の言うことにいつも忠実に従い、彼の事だけを考えて行動した。
330
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:27:37 ID:q7v0AJSc0
父の為、ファミリーの為なら何だってやった。
武器を捌き、女を拐い薬浸けにし、殺しだってやった。
それでもシナーは幸せだった。
ファミリーに尽くし、父に尽くす人生が幸せだった。
父の、あの一言を聴くまでは。
<ヽ`∀´>「私は、この見えない瞳に、神を見た。信仰に目覚めた。」
首領、リシャール・ニダーのこの一言を。
331
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:28:23 ID:q7v0AJSc0
ある者はとうとうボケたのかと落胆した。
そしてある者は薬のやり過ぎで気狂ったのだと罵った。
ある者は盲目に落ちて命が惜しくなったのだろうと同情し、ある者は見切りを付けるようにそっとファミリーを去った。
結果、ソウサクシティ1の団結力を見せていたイエローモンキーファミリーは大きな内部分裂を起こす事となる。
ニダーはそれまで手を染めていた、ドラッグの売買と売春の斡旋等を全て放棄すると宣言した。
善人にとっては尊敬に値する宣言かもしれないが、悪人からするとまさに気狂った発言でしかない。
薬もダメ、女もダメ。
残った武器の売買と領土の場所代だけで今までの生活が出来るだろうか?
否、出来る訳がない。
332
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:29:14 ID:q7v0AJSc0
当然、シナーは猛反対した。
金銭的な問題も大前提だったが、それ以上に親愛なる父であるニダーが若い連中に嘲笑され、見下されている現状がどうしても我慢ならなかったのだ。
自分を含め、いかにファミリーがニダーを愛しているかを説きながら、何日も何週間も、何ヵ月もかけて彼を説得をした。
しかし、ニダーは断固たる決意で宣言を覆す事をしなかった。
そしてついにシナーはイエローモンキーファミリーから絶縁を決意。
その後、ニダーの元を去るつもりだったファミリーの若い連中を中心に引き抜き、西を去る。
そして程なくして、中国人を中心とした多国籍チャイニーズマフィア『ドラゴン』を南に結成したのである。
333
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:30:31 ID:q7v0AJSc0
つまり、要点をかいつまんで語るとするなら
ば、シナー率いるドラゴンの人間は、父であるニダーを信じてイエローモンキーに尽くし続けたヒートやクールからすると、言い逃れの出来ない『裏切者』なのだ。
しかし、それでもクールはニダーを父親以上に慕い、愛していたシナーの事が嫌いになれなかった。
もちろん父であるニダーだって同じ気持ちであろうことは、賢い彼女には容易に想像できた。
川 ゚ -゚)「……お父様にとってはシナー氏は息子も同然なんだよ」
川 ゚ -゚)「例え、血縁も、思想も、そしてチームも。何もかもが違っても、お父様の中では、な」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板