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▼・ェ・▼その男、所詮、『犬』のようです。

134名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:46:33 ID:xEbffN3I0
▼・ェ・▼「ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……」


荒々しいパンチング呼吸が静寂に響く。
ツーは確信した。目の前の犬男はただの変態でも、気狂いでも、ましてや自殺願望のあるマゾヒストでもない。


(;*゚∀゚)(こいつ……メチャクチャ強い!!)


その男、被虐趣向。
その男、所詮、駄犬。

しかし、その男……



▼・ェ・▼



―――圧倒的、強者。

135名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:47:55 ID:xEbffN3I0
(;*゚∀゚)(何なんだよ!! こいつ一体何なんだよ!!)

今日という日は何て厄日なのか。
娼婦の皮を被った牝猫は小さく歯ぎしりすると自らの運命を呪いながら、思考の海に溺れていった。





――――――――――――――――






.

136名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:53:06 ID:xEbffN3I0
アマレット・ツーはイタリアのミラノの出身である。
愛らしく、人懐っこい彼女は両親と1つ上の姉の愛情を一身に受け、スクスクと成長した。
経済的にも裕福で、笑いの堪えない幸せな日常を謳歌していた。


だが彼女が9歳の時、悲劇が起こる。


家族4人でショッピングをしていた帰りの出来事である。
彼女が乗っていた軽乗用車に飲酒運転をしていた大型トラックが突っ込んで来たのだ。
その結果、両親、姉と共に即死。
奇跡的にツーは殆ど無傷であったが、彼女の心の傷は想像もできないくらい深いものとなった。

家族を無くしたツーは母方の親戚にあたる、アメリカに住む叔父に引き取られる事となり、イタリアを去りニューヨークの地を踏む事となる。

137名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:54:18 ID:xEbffN3I0
しかし、彼女の不幸はまだ終わらなかった。


40代にして独り身だった彼女の叔父は児童性愛の気があった。
そして皮肉な事に、9歳のツーは叔父の好みにピッタリだったのだ。

叔父はツーを引き取るとすぐさま彼女に悪戯をするようになった。
最初は身体を触る程度だったが1ヶ月もしない内にツーにフェラチオを強要するようになった。

まともな性知識もなく、ただ本能的な恐怖と嫌悪感を感じ、激しく抵抗したツーだったが2、3回殴られると抵抗する気力を無くし、生臭い男の物を小さな口に突っ込まれる事になる。
結局はその後ますます興奮した叔父に挿入までされることとなり、彼女は泣き叫びながら処女を失った。
あまりの痛みに、彼女は失神した。
その後も1週間はまともに歩く事が出来なかった。

138名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:55:32 ID:xEbffN3I0
叔父の性癖は偏っており、挿入よりもむしろフェラチオやイラマチオを好み、ツーに毎晩強要した。
非力な彼女には逆らう術も無く、毎日泣きながらも叔父のペニスを頬張った。

叔父は猿のように腰を振り、ツーの口内に射精した。
飲まないと殴られるので、毎晩頑張って飲み込んだ。


著名なシリアルキラーに多く共通するポイントとして、幼い頃、両親の愛情を充分に得られず、虐待を受けていたものが多いというデータがある。
シリアルキラーの多くは男性ではあるが、この悲惨な幼少期が後にツーを女性の身でありながら残忍なシリアルキラーへと変貌させるきっかけになったのは言うまでも無いだろう。

139名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:56:53 ID:xEbffN3I0
しかし、彼女が13の時。ある転機が訪れる。
皮肉にも叔父がツーの両親と同じ自動車事故に巻き込まれ、しばらくの間は杖無しでは歩けなくなったのだ。
ツーに希望の光が見えた瞬間だった。

歩けない叔父はいつものように寝る前にツーを呼び出しフェラチオをするように命じた。
本来だったら立ち上がり、無理やり喉奥にペニスを突っ込み、ツーが苦悶の表情を浮かべるのを楽しむのだが、骨折している間だけはツーに軽く命令はするものの、無理やりイラマチオをすることは無かった。
ツーは顔色1つ変えずに命令通りに叔父のペニスを口に含み、勃起させた。

快楽にだらしなく顔をとろけさせる叔父の表情をチラリと確認した彼女は、一際大きく口を開け、口いっぱいにペニスを頬張ると

140名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:57:36 ID:xEbffN3I0







―――思いっきり喰いちぎった。







.

141名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 21:58:51 ID:xEbffN3I0
情けなく股ぐらを押さえながら泣き叫ぶ叔父。
ツーを捕まえようにも両足は動かず、杖を掴もうにもあまりの痛みで失神寸前。
ツーはペニスを吐き捨て、口を洗うことも忘れ、一目散に警察に駆け込んだ。
程なくして叔父の悪行がすっかり明るみに出ると彼はペニスを無くしたまま刑務所にぶちこまれる事となり、彼女は叔父の魔の手からようやく開放される事となった。


またこれは余談だが、アメリカの刑務所内では児童性愛者は非常に嫌われており、ヒエラルキーも低い。
するとどうなるのか?
屈強な他の受刑者達に酷いイジメを受ける事となるのだ。

このような刑務所内の情勢もあり、入所してからわずか3ヶ月後。
ツーの叔父、アペロール・トラギコは他の受刑者達にリンチにあって死亡している。

葬儀には誰も来なかった。

142名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:00:02 ID:xEbffN3I0
かくして孤児院に預けられたツーは、間もなくしてある富豪の1家に養子に迎えられる。
何不自由なく暮らしていたツーだったか15の時にその生活は終わりを迎える。

寝ていた義父のペニスを喰いちぎるという気狂いじみた凶行により警察に捕まったためだ。

義父は決してツーを虐待などしていなかったし、ツーも義父の事を家族として愛していた。
しかし、自分の中に生まれた倒錯的な欲望を抑えることは、虐待の結果、精神的に未熟なまま成長した彼女には不可能だったのだ。


年齢のこともあり、直ぐに刑務所から釈放されたツーは俗に言う『たちんぼ』と言われる娼婦に成り下がる。

143名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:01:18 ID:xEbffN3I0
しかし、ここでも彼女は倒錯した欲望捨てきれず、約1年の間に20人の以上のペニスを喰いちぎる。
しかも、捕まる事と大声を出される事を恐れた彼女はペニスを切り取る(もしくは喰いちぎる)と同時に男の喉元を切り裂く事を覚えた。
そして10人目を超えたあたりから彼女はペニスを咀嚼し、飲み込むようになった。

また、彼女の凶行はニューヨーク市内で前代未聞の変態的連続殺人として騒がれることとなり、ニューヨークから逃げ出さざるをえない状況となったのだ。


かくして幼い頃の性的虐待から、残忍なシリアルキラーに堕ちたアマレット・ツー。

彼女は警察の手から逃れる為に、そしてさらなる狩りを続けるために17の時にソウサクシティの『クリムゾンヘッド』の娼婦として働き始めたのだ。

144名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:02:14 ID:xEbffN3I0
今日までは何とか周りの目を誤魔化し、狩りを続けてきた彼女だったが、今日はとにかく運が悪かった。

先ず獲物である客を殺害する様を近くに根城を持つホームレスに目撃され、叫び声を上げられた。
その悲鳴を聞き付け、『クリムゾンヘッド』が『チンコ狩りのホモ野郎』を(とは言っても、実際のところ犯人はツーなので野郎では無い訳だが)捕まえる為に雇ったと思われる傭兵どもが集まって来たのだ。

所詮チンピラ崩れの傭兵どもなど、幾度となく狩りをしてきた彼女の前では敵ではなかったが、そこにさらにイレギュラーが混ざり混んできた。


悲惨な最期を迎えた破壊王、ガリアーノ・クックルだ。

145名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:03:26 ID:xEbffN3I0
そもそもツーは殺人を犯すものの、あくまで叫び声をあげられるのが面倒だから殺しているだけで、正直な話ペニスさえ喰えれば殺人なんかはどうでもよかった。

ただし、クックルは違った。
あまりにも彼女の好み(マッチョで男らしく、自信と強さに溢れている大男)にマッチングしていため、必要以上に時間をかけて嫐り、切り刻んでしまい、あきらかに無駄な体力と時間を使ってしまったのだ。

そして戦利品であるマッチョマンのペニスを咀嚼し、つかの間のオーガズムにひたる彼女の前に……


ついにその男が現れてしまったのだ。

146名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:05:27 ID:xEbffN3I0

▼・ェ・▼


その男、奇妙。


先ず何よりも目につくのはシベリアンハスキーをデフォルメしたような奇妙な被り物。
口以外をすっぽりと隠しており、どう考えても戦闘には不向きな装飾品であった。

そして、その服装である。
痩せ細った上半身は衣服をまとっていない。
首もとには黒い、何かの金属で作られたと思われる首輪をつけており、同じく黒っぽい色の鎖がダラリとぶら下がり、腰元のあたりにベルト代わりと言わんばかりに何重にも巻かれていた。

両胸にはニップルに突き刺さっていると思われる、拳大の髑髏のピアスがぶら下がっており、見ているだけでも痛々しい。

147名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:06:31 ID:xEbffN3I0
下腹部にはデカデカと『Slave』という文字のタトゥーが自己主張しており、彼の価値観が常人のそれとは大きくかけ離れているのが見てとれる。

下半身にはレザーのボンテージパンツ。
そしてその上から組み合わせるかのように革と金属で作られている大きな貞操帯が象の鼻のようにぶら下がっている。
足元はロングタイプのベルトブーツにパンツをインしており、全ての色彩が黒か銀で統一されていた。

彼を見たものは口をそろえてこう、言うであろう。



―――変態(マニアック)。と。

148名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:08:45 ID:wCYhxRdM0
変態だ……

149名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:10:37 ID:yaOv8fbs0
参考BGM聞いてきたら、妥当な変態ぷりだった

150名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:14:25 ID:jZwxoD1I0
変態じゃないですかーやだー

151名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:17:05 ID:hi404eAI0
まごうことなき……変態……!

152名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:18:37 ID:xEbffN3I0
(#*゚∀゚)「っらああぁぁ!!」


壁を蹴り、ひたすら跳ね回り、男の死角を探り、隙をみて飛び掛かり爪を横に振るう。
しかし何度振るっても寸前でかわされ、男の肌に浅い傷を作るのみだった。


(*゚∀゚)(……なら!!)


大地を蹴ったツーは『壁に垂直に着地』し、その態勢のまま『重力を無視して駆け抜ける』。
常識では考えられない曲芸のような動きで翻弄せんと男の背後に回った辺りで足をバネにきりもみ回転しながら突っ込む。

153名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:20:48 ID:xEbffN3I0
▼・ェ・▼「わおん!!」

(#*゚∀゚)(チッ……!)


しかし死角からの攻撃にも関わらず犬男は後ろを振り返る事無く後方に身を翻しなから高く跳躍。
男の背中に十字の傷を作るもやはり浅く、決定打を与えるには至らなかった。


▼・ェ・▼「ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……」

(;*゚∀゚)「はあ……はあ……」


ツーは焦っていた。自分は無傷だが明らかに体力を消耗し過ぎている。
そして、何より彼女が恐れていた事があった。
それは……

154名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:22:31 ID:xEbffN3I0
(;*゚∀゚)(こいつ……まだ1度も私に反撃してきてない!)


明らかに目の前の男が、自分に対して手加減をしている事。
つまり、犬男はまだ本気で自分と命のやり取りをしていないということだ。
こちらは、もう、何十回と殺しにかかっているというのに本気を出していない相手になんなく避けられているのだ。


(;*゚∀゚)「くそっ……」


勝ち目は無い。恐らく逃げるしか無いだろう。
どのみちこの男との戦闘にあまり時間をかけ過ぎても、応援に来るであろう『クリムゾンヘッド』の傭兵達に捕まってしまったらもとも子もない。
サディストとして有名なハインリッヒに捕らえられたら2度と5体満足で日の目を浴びる事は出来なくなるだろう。

155名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:24:07 ID:xEbffN3I0
どうにかして目の前の犬畜生から逃げ出さねば。
その一心で頭を働かせていたツーだったが……


(;*゚∀゚)(……?)


なんとなく。そうとしか言えない。

もしくは、牝猫の野生の勘としか。
それでもツーは直感的に感じていた。


目の前のマゾヒストの駄犬が、今、静かに覚醒し……


▼・ェ・▼「……」

▼・ェ・▼「……」

▼・ェ・▼「……」

156名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:27:09 ID:xEbffN3I0

▼・ェ・▼「GRUUUUUUUUUUUUAAAAAAAA!!!」

(;*゚∀゚)「!?」



―――サディストの猟犬として牙を剥く瞬間を。



犬男は四つん這いになると同時に咆哮。
猟犬が如くツーに向かい駆け出し、一瞬で懐まで入り込んで来た。


(;*゚∀゚)(さっきよりも速い!?)


瞬時に宙に身を翻し、狂犬の突進をかわしたツーは空中で態勢を立て直し、頭上から両の爪を男の襟首に向かって突き立てる。

157名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:28:27 ID:xEbffN3I0
しかし、思っていたよりも男のスピードは早く、背中に3本爪の傷痕を残す事は出来たが殆どダメージを与える事は出来なかった。


▼・ェ・▼「GRUUUU!!」

(;*゚∀゚)「はやっ……!?」


高速の突進を避けられた男は前足を軸に大地に弧を描きながらターンする。
ブーツがガリガリと音を立てながら地面を擦り、砂煙を巻き上げる。
隙の無い行動に驚きを隠せないツーの首もとに、男は弾丸の如く飛び付き一気に食らい付く。


(#*゚Д゚)「食らうかあああぁぁ!!」


ツーは軽く跳躍すると身体を少々強引に捻りながら犬男の頭を力いっぱい踏みつけた。

158名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:29:56 ID:xEbffN3I0
▼・ェ・▼「!?」


頭を文字通り踏み台にし、向かいの壁に向かって勢いよくバッタのように跳んでいく。


(*゚∀゚)(あんな変態の化物とやりあうなんてゴメンだ!! ここはムカつくけど逃げるが勝ち!!)


そしてあっという間に10メーター以上の距離を跳躍してみせたツーは壁に着地しようと態勢を整えたところで。


(*゚∀゚)(えっ?)




――空中で静止した。



.

159名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:32:30 ID:xEbffN3I0
いや、静止させられたという表現が正しいだろう。
右足に何か冷たく、グイッと強い力で引っ張られているのだ。
停止する思考の中、ツーが足元に視線をやると、そこには鎖に繋がれた何か黒い輪っかのようなものが嵌められていた。


(*゚∀゚)(これって……あいつの首輪……?)


そこまで考えた時、視界が急速にブレた。
右足に抗えない巨大な力でがかかり、身体ごと無理やり引っ張られる。
ツーの身体は風を切るように自身の重心とは真逆の方向に強引に飛ばされ、無様な放物線を描くかのように頭から地面に激突した。
ドゴッと痛々しく鈍い男と共に、砕け散った大地が砂煙となって舞った。

160名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:34:28 ID:xEbffN3I0
(;*##∀ )「がっ……!!」


スパークする視界の中、自身の右足に再び大きな付加がかかるのを感じた。


(;*##Д )「ひっ……やめっ……!?」


時既に遅し。
その男、鬼畜。

右足に枷を嵌められた哀れな牝猫は力任せに引きずられ投げ飛ばされる。
水ヨーヨーを振り回すかのように犬男はツーを軽々しく振り回してみせたのだ。

ぼやける視界、耳に響く暴風。そして全身が粉々になるような衝撃。
口から血が噴水のようにあふれ、呼吸すらままならない。

161名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:36:26 ID:xEbffN3I0
(*##Д#)「」





ガスッ!……ドシン!……ズリズリ……グチャ……ズリズリ……ドシン!





その光景、地獄。
まさに、地獄絵図。

辺りの地面はツーのの血にまみれ、真っ赤な服はズタズタに裂け、ほとんど全裸の状態と変わらなかった。
可愛らしい顔は砂とケロイド状になった傷痕でぐちゃぐちゃで、鼻は陥没。
歯は既に4本は欠けていた。

162名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:38:27 ID:xEbffN3I0
(;*##Д゚)「う……あ……」


辛うじて開いた視界の先に、こちらにゆったりと歩みを進める男の両足が見えた。
既に意識は朦朧としていたが、ツーの闘志は死んではいなかった。


(;*##∀゚)(……そうだ。そのままこっちへ来い)


こんなところで死んでたまるか。
瀕死の身体に力を振り絞り、男が近づいてくるのをただ静かにまった。


(;*##∀゚)(……もう少し!)

163名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:39:55 ID:xEbffN3I0
そして犬男の荒い吐息が自分の首もとに感じた時……


(;*##∀゚)(いまだ!)

(#*##Д゚)「……死ねえええぇぇぇ!!」


既にボロボロとなっているドレスに隠した最後の爪を素早く掴み、持てる力の全てを右手に込めて振るった。
男との距離、目測30センチメートル。
いくら素早い獣でもこの距離では避けられない。
一直線に男の喉元に向かう自身の爪を見送りながら牝猫は勝利を確信した。

164名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:40:36 ID:xEbffN3I0







―――ガリッ。







.

165名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:42:17 ID:xEbffN3I0
(;*##∀゚)(……へ?)



何かが砕けるような音がした。
攻撃をされた? いや、目の前の犬畜生はまだ自分の身体に触れて居ない筈だ。
なら何が折れたのか?何十人もの男の喉をかっ切ってきたがこんな無機質な音はしたことがない。

そうだ、喉だ。喉元だ。あいつの喉はどうなったのだろう? 私の爪はアイツを殺したはずだ。

この間、わずか1秒未満。
おそるおそる自身の爪に視線をやる。



(;*##∀゚)「あはは……嘘だと言ってよ。ハニー・バニー」

166名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:44:01 ID:xEbffN3I0
無かった。

厳密に言うと、刃先がポッキリと折れていたのだ。
そしてゆっくりと視線を上にあげると、犬男の口元が見えた。
ぐちゃぐちゃボリボリと音を立てて何かを咀嚼している。
やがてプッと音を立てながら何かを吐き出した。

それは予想通り、男の血で真っ赤に染まった彼女の爪だった。


(;*##∀ )(あぁ……あぁ……!!)


犬男がゆっくりと口を開いた。
口の中はパッと見ても分かるほどにズタズタに切り裂かれており、血まみれであった。
その痛みはまさに拷問のようなものであろうに、それにも関わらず犬男は口を三日月みたいにニンマリと吊り上げ笑ってみせた。

167名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:45:28 ID:xEbffN3I0
瞬間、ツーは自分の身体が宙に浮くのを感じた。
それが、目の前の犬畜生に自慢の赤髪を引っ張られ、ああ、だから私の身体が浮いていたのか。
と気付いた時には、既にツーの身体は弾丸のような勢いで向かいの壁にぶん投げられ、その衝撃で滝のような血を吐いた後だった。


(;*##Д )「あ……あ……」

重力にしたがってズルリと音を立てながら、めり込んだ壁から大地に崩れ落ちる。

絶望。

重く冷たい言葉がツーの脳裏に浮かんだ。
現に彼女はもう指1本も動かせない、いわゆるツミの状態だ。

168名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:48:59 ID:xEbffN3I0
コツコツと響く男の足音。
チカチカと点滅し、酩酊したかのようにグラグラとボヤける視界。
必死の思いで目を凝らし、ピントを合わせた。


瞬間、ツーはさらに絶望の縁に立たされることとなる。


(;*##Д゚)(うそうそうそうそうそ……嘘でしょ!?)


その男、加虐趣向。
その男、所詮、狂犬。

しかし、その男……



▼・ェ・▼


紛れもない、雄。

169名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:50:16 ID:xEbffN3I0
男は貞操帯を外し、ペニスを露出していた。
それはまだ理解できた。
ここまで痛め付けていてなお殺さないと言うことは、自分の事を犯すつもりなのだろう。
ツーは諦めにも似た覚悟を持っていたので、屈辱的ではあるが、まだ理解は出来たのだ。

では果たして何が問題なのだろうか?




(;*##Д )(あんなもの入る訳無いよ!!)


男のペニスはまるで、何かおぞましい、別の生き物そのものだった。

白人のペニスが大きいのは珍しい事ではない。
スプレー缶サイズから、人によっては女性の腕ほどの大きさを持つ男だっている。

170名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:52:11 ID:xEbffN3I0
しかし、それを差し引いても。
その男、異常。

長さといい、太さといいツーの脚ほどの大きさがあった。
色は赤黒く、根本の方から亀頭に向かい拳大の極太のフレナム・ラダーが規則的に5連を描き、いわゆるカリ首から亀頭にかけてはと呼ばれる部位にはパンクファッションを思わせる鋭いスタッズが四方八方に伸びていた。


(;*##Д )「いや……いやだよ……や……」


涙を流しながら懇願するもツーには抵抗の術はない。
狂犬に狩り取られた哀れな牝猫は、乱暴な手付きでうつ伏せに寝かせられた。
そして臀部の辺りをぐいっと引っ張りあげられ、挿入しやすいように犬男がのし掛かる。
そして徐々に体重を乗せ、互いの性器と性器が口をつけ始める。


(;*##Д;)「ごめんなさいやだやだやだやだごめっごめんなさいやだいやだやなの……」

171名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:53:53 ID:xEbffN3I0



―――さて、ここで問題です。
身長145センチ、体重39キロの小柄な女性のプッシーに、彼女の脚ほどの大きさのトゲ付きペニスを挿入したらどうなるでしょうか?





(;*##Д;)「待って待って!!……やだやだやだやだやだ!!!」


.

172名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:55:21 ID:xEbffN3I0







(;*##Д;)「助けてママアアアアアアアアアアァァァァァ!!!」






.

173名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:56:10 ID:xEbffN3I0







▼・ェ・▼「わふぅん」







.

174名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:57:03 ID:xEbffN3I0





―――ここはソウサクシティ。
アウトローの吹き溜まり、正義が枯れ果てたスラムの街。

満月照らす薄汚いこの街で、狂犬の遠吠えと少女の悲鳴が響いて消えた。




.

175名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:58:39 ID:xEbffN3I0
以上です。
ありがとうございました。

出来ればバトル描写は参考BGMを聴きながら読んで頂けると気分も盛り上がると思います。

……つーの役がこんなんで申し訳ないです。

176名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 22:59:32 ID:jZwxoD1I0
おつ

177名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 23:00:55 ID:Rc4TbRP20
おつおつ。 ▼・ェ・▼ とんだ変態じゃねえか…!
個人的に好きだ。乙

178名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 23:02:09 ID:Y13yB8eY0

血なまぐさい作品を最近見てなかったから新鮮で面白い

179名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 23:02:20 ID:Xr7sB5q60

おっきした

180名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 23:04:59 ID:0uzUy01E0
おつおつ、ビーグルが変態過ぎて上手く想像つかないから誰か描いてくれよ
描写が独特でいいなあ
嫐なんて字初めて見た

181名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 23:07:14 ID:Z40kIUcc0
乙乙
とんでもない変態だな

182名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 23:36:55 ID:xEbffN3I0
Character File No.1

【( ゚∋゚)】

『ガリアーノ・クックル』


身長体重…196/153
年齢…26
性別…男
出身…イタリア
所属グループ…無所属
2つ名…『破壊王』

好きな物…トレーニング、肉類
嫌いな物…得物に頼る弱者


能力名『スレッジハンマー』
自身の筋肉の力を100%引き出す力。
単純だが、強力。戦車ぐらいだったら投げ飛ばす事も可能。


父の死を切っ掛けに弱い自分を捨て、己が拳で成り上がった誇り高きアウトロー。
幼少期はガリガリガリアーノとよくバカにされた。
特定の組織には属さないが、雇われとして『クリムゾンヘッド』の捜索部隊の傭兵となるが、運悪く『アマレット・ツー』と戦闘になる。
スピード重視のスタイルで戦うツーとは相性が悪く、最終的にはサイコロステーキのようにコマ切れにされて死亡。
ちなみにガリアーノとは特徴的なボトルに入ったバニラ風味のリキュールである。

183名も無きAAのようです:2015/02/25(水) 23:38:51 ID:xEbffN3I0
Character File No.2

【(*゚∀゚)】

『アマレット・ツー』


身長体重…145/39
年齢…17
性別…女
出身…イタリア
所属グループ…『クリムゾンヘッド』
2つ名…『子猫』、『チンコ狩りのホモ野郎』

好きな物…シリアルキラーの勉強、男のペニス、アマレットミルク、赤い物全般(ただしトマトは除く)
嫌いな物…トマト、大型トラック


能力名『プッシーフット』
重力を無視して壁に垂直に着地したり、かけ上がったりする事ができる。
また、足音を消したりすることも出来る。


虐待がきっかけにシリアルキラーと化した若い娼婦。
普段は妹的な存在で娼婦仲間からは『子猫』と呼ばれ、可愛がられれている。
幼い頃の心的外傷から性的な意味で男性は好きだが深層心理では深く拒絶しているという矛盾した感情を持っている。
殺した人数は74人。
犬男に敗れ、気を失ったところを『クリムゾンヘッド』に回収される。
が、その後、その姿を見たものはいないという。
キャラクターのモチーフは切り裂きジャックで、日本刀を改造した小型ナイフを猫の爪のように挟んで相手を切り刻む。
ちなみにアマレットとは杏仁豆腐みたいな味のリキュールである。

184名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 00:34:31 ID:D2B6QVOQ0
おい、リョナに目覚めそうなんだがどうしてくれる

185名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 07:01:14 ID:28KYOhs.O
>>184
それは すばらしい ことですね

186名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 10:12:01 ID:WlXyStOI0
なんだこの曲....

187名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 13:52:21 ID:sqim.OWw0

全部酒の名前でしめてる辺り、設定の細かさが伺えるな

188名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 17:02:19 ID:9z9x6rtg0
沢山の支援と乙ありがとうございました。
第2話なのですが、オリジナルAAを登場させる予定ですので、不快に思う方はご注意下さい。

そして、ビーグルはまごうこと無きド変態ですのでどんどん罵ってやって下さい。

189名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 22:08:49 ID:xouPRo4I0
おつでした
とてもおもしろいとおもったので えをかきました 
つぎの にしのおはなしも たのしみに まっています

擬人化注意
http://imgur.com/9WgJNAS.png

190名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 22:19:17 ID:Nbjdem160
>>189
ビーグルか!? とザワザワしながら開いたらつーだった。
色っぺぇ、お洒落!GJ

191名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 22:28:55 ID:kJuPOS/o0
>>189
怪しげでセクシーでいいな!つーさんの目がたまらん!おつおつ!

192名も無きAAのようです:2015/02/26(木) 23:23:26 ID:tNnq6G0Q0
ビッチの人か!!楽しみにしてます

193名も無きAAのようです:2015/02/27(金) 01:59:56 ID:b/fpsaPE0
>>189
凄く雰囲気あっていいね

194名も無きAAのようです:2015/02/27(金) 16:02:48 ID:wUXpvnqA0
>>189 あまりの嬉しさに初めて見た時、奇声をあげてしまいした!バーにいたのに
支援絵のクオリティを劣化させないように頑張って書きます!
本当にありがとうございました!!



1です。
第2話は西のストーリーをメインに人気のあった北のストーリーも少し織り混ぜていきます。


第2話、参考BGM

・蜉蝣『所詮、自分は犬であります』

・蜉蝣『鬱』



今日の深夜、もしくは明日の夜に第2話の前半を投下します。

195名も無きAAのようです:2015/02/27(金) 16:09:38 ID:SOMlQqb20
楽しみにしてる

196名も無きAAのようです:2015/02/27(金) 19:29:24 ID:MyZZwxr60
はええええええ
楽しみにしてます

197名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 18:09:09 ID:2kE5XV2E0
19時に投下します。
前半はかなりほのぼのしていますのでご了承下さい。

198名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 18:59:07 ID:tsiAYoeM0
wktk

199名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:00:45 ID:2kE5XV2E0
投下します。

200名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:01:39 ID:2kE5XV2E0





声は届いているの?


ねえ


聴こえてますか


一人ぼっちの僕の想いが……





.

201名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:02:46 ID:2kE5XV2E0
(;`ハ´)「はぁ……はぁ……!!」


男が駆ける。
ぶくぶくと太っただらしない身体を揺らし、滝のような汗を流しながら、ひたすらに駆けている。
吐き出す息には苦痛の色が漏れだし、既に彼の限界が近いことを示唆しているようだった。

贅肉でぱつんぱつんに張りつめた真っ赤な中華風の制服に、長さ1メートル程のしっかりと手入れをされた立派な口髭。
そして右手に握られている、龍の装飾がされた黄金のリボルバーに、左の中指に嵌められた同じく純金の太めの指輪には3匹の龍が彫られている。


ソウサクシティーの南側を牛耳るチャイニーズマフィア『ドラゴン』が首領。
『杏露(しんる)・シナー』は真っ暗になった自らの館を必死の形相で駆け抜けていた。

202名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:03:39 ID:2kE5XV2E0
(;`ハ´)「……操!!(糞ったれ!!)」


ひたすら道なりに疾走していたシナーだったが、曲がり角をちょうど右に曲がったところで行き止まり。
普段の彼ならいくら巨大な建物といえ、自分が生活している館の道順など忘れる筈もないのだが、普段の運動不足と極度の焦燥のため、一心不乱に駆けながらも脱出ルートを正確に計算する、などという器用な真似が出来る程の思考能力など持ち合わせていなかった。

彼の脳裏に浮かぶ、絶望の2文字。
地団駄を踏む彼の背後から、何かが這うような、とにかく底冷えするような恐怖そのものが近付いて来る。

203名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:04:38 ID:2kE5XV2E0
そして、低く、しゃがれた声が。
暗闇からのっぺりと響く。


「なあ、あんたさぁ?」


暗闇にひたりと小さな音を立て、暗闇からまるで這い出るかのように、男の細い右脚が見えた。


「マリアージュ。ってぇ、知ってるかぁ?」


シナーの視界に敵の姿が入った瞬間、彼は体型からは考えられない俊敏な動きで姿勢を低く構えながら銃をしっかりと握り直し、狙いを定めた。

204名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:05:28 ID:2kE5XV2E0
(#`ハ´)「去死ロ巴!!(くたばれ!!)」


硝煙を撒き散らしながら響く6発の銃声。

銃の腕前はマフィア1を誇るシナーの狙いはまさに完璧で、暗闇にぼやける男の脳天に3発、そして心臓に3発と恐ろしい精度で命中した。

薬莢がカランカランと音を立て落下する。
暫しの沈黙が暗闇を支配した。


(;`ハ´)(死んだか?)


シナーの顔からようやく焦燥が消えかけたその時、暗闇から伸びていた脚がまたひたりひたりと歩みを進めた。

205名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:06:43 ID:tsiAYoeM0
しえんー

206名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:07:15 ID:2kE5XV2E0
(;`ハ´)(こいつ不死身なのか!?)


驚愕に目を丸くするシナーをまるで挑発するように、その男は姿を現した。


(  ゚∀゚ )


髪の色はやけに黒みの強い赤色で、黄色と赤がごちゃ混ぜになったように濁りきった瞳に前髪が僅かにかかっている。

その身体は灰色『だった』と思われるトレーナー越しでも分かる程にガリガリに痩せ細り、見ているものに何か不安な感情を植え付ける程。

下半身には『恐らく』黒いスキニーパンツに大幅に靴底がすり減ったスニーカー。

207名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:08:09 ID:2kE5XV2E0
一番特徴的なのは腰に巻いた真っ黒『だった』であろう太めの革製のベルトだ。
ちょうど上か下から覗けば、まるでリボルバーを象ったかのような形で四方八方に革製のボトル・ホルダーが付属しており、その中の殆どに緑色のウィスキーボトルが納まっている。

男はゆっくりと首を右に回し、骨を鳴らす。
額には3つの穴、トレーナーにも同じく3つの風穴が空いているにも関わらず、濁った瞳のその男は平然とそこに佇んでいた。


(  ゚∀゚ )「なぁ、あんたさぁ?」


低く、酒焼けした男の声が響く。

208名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:09:28 ID:2kE5XV2E0
頭からバケツで血液を被ったのか、と疑いたくなるほど、その身体を真っ赤に染めた男はゆったりとした手つきでホルダーから酒瓶を取り出す。
そしてそのまま流し込むように味わうと、一瞬とろけたような顔付きになり、不思議な事に『黒く色づいた吐息』を漏らす。


(  ゚∀゚ )「マリアージュ。ってぇ、知ってるかぁ?」


そして、シューっとガスが漏れ出すような音を立てながら、額の風穴が静かに閉じていき、やがて何事も無かったのように傷跡は消失していた。


(  ゚∀゚ )「マリアージュってさぁ、あれなんだよなぁ? つまりさぁ、すっごく重要な事なんだよなぁ」

209名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:11:31 ID:2kE5XV2E0
アヒャヒャと小さく笑いながらシナーに少しずつ歩みよる男の足下はふらついており、その臭いからもかなりの量のアルコールを摂取している事が推測できた。
それでも男はシナーに語りかけるように口を開き続ける。


(  ゚∀゚ )「食事っていうのはさぁ、あれなんだよぉ。素晴らしい、アートみたいものなんだよなぁ」

(  ゚∀゚ )「味覚だけじゃないんだぁ。嗅覚に触覚にぃ、聴覚に視覚ぅ、五感全部で味わうものな訳なんだよなぁ?」

(;`ハ´)「な……何を言ってるアルか!?」


弾丸のつきたシナーに抵抗すべき術は無い。
必死に目の前の男の言葉を理解して少しでも時間を稼ごうと考えたが、彼の言っている言葉はシナーには理解出来なかった。

210名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:12:33 ID:2kE5XV2E0
しかし、当の男はシナーの困惑を無視するようにヘラヘラ笑いながらまた酒を味わい、黒い吐息を漏らしながら続けた。


(  ゚∀゚ )「俺はさぁ、『ラスティネイル』が好きなんだよぉ。知ってるかぁ、あんた? ラスティネイルゥ」

(  ゚∀゚ )「俺とおぉんなじ名前のスコッチをベースに指定したさぁ? あの、錆びた釘が大好きなんだよぉ。」


ひたり。また1歩。
男が近付く。

211名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:13:33 ID:2kE5XV2E0
(  ゚∀゚ )「煙るピートの香りぃ、それから大きな、おぉきな丸氷がよぉ、ロックグラスにぃカランカラァンって綺麗な音を立てるんだよぉ」

(  ゚∀゚ )「それから琥珀の色ぉ、あの、色がまた、たまんねぇんだよなあぁ。実にぃ美しい訳なんだよなぁ……アヒャ……」

(  ゚∀゚ )「それから口に含むんだよぉ。あの、甘さ、辛さ、粘度……アヒャ……アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」


男は屈伸するかのように上半身をぐったりと下げて見せた。

その直後勢いよく上体を翻し、まるで悪魔が乗り移ったかのようにエビ反りになりながら奇声のような笑い声をあげた。



(  。∀。 )「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

212名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:13:43 ID:9fBq5g7k0
しぇえん

213名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:14:38 ID:2kE5XV2E0
シナーの喉がゴクリとなる。
とりあえずこの短時間で判った事がある。
まず、自分がかなり絶望的な状況に置かれていること。
そして、なにより……




――目の前の男(キチガイ)はかなりヤバイということだ。




後ろにそのまま倒れこむのでは無いかと疑いたくなる姿勢で停止した男は、やがてゆっくりと上体を元に戻し姿勢を正す。

そして、先程のように酒瓶に口づけたかと思うと、血走った目を見開き、男の表情がニヤついたものから凍り付くような真顔に一瞬で変わった。

214名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:19:04 ID:2kE5XV2E0
(  ゚Д゚ )「まず口内に広がる薬品を思わせるあの独特かつ馥郁なピート香ピート香ピート香ピート香それがまるで桜の花弁が春風に散るかの如く優雅に儚く幽玄に口いっぱいに広がるんだよそうすると奥の方からあのドランブイの濃厚なヒースの花の芳醇な蜜の甘さが身体を溶かすように染み渡っていくんだまさにその味わいは甘露甘露甘露甘露それから後を追うかのように絶妙なバランスで調合されたいくつものハーブが舌先を優しくくすぐるかのように転げ回りブレンドされた何十ものウィスキー達の豪華なシンフォニーが幕開くそしてそしてそして盛大なるクライマックスに輝きを見せるのはラフロイグラフロイグラフロイグゥゥゥゥゥラフロイグの深味のあるコクや辛みそしてその中に微かに姿を見せる華々しいバニラの香り香り香り香り香りいいいいいいぃぃぃぃぃ!!」

215名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:20:04 ID:2kE5XV2E0
暗闇の中に、男の絶叫だけが何重にも響いた。
興奮した様子で長台詞を叫んだ反動の、荒く、黒い吐息。
シナーの心臓の鼓動。
やがて、沈黙。

そして、またヘラヘラとしたあの笑い声が響いていく。


(  ゚∀゚ )「なあ、あんたさぁ? マリアージュって知ってるかぁ?」


ひたり。
また1歩、距離が縮まった。

216名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:21:57 ID:2kE5XV2E0
(;`ハ´)「ひっ……!」

思わず数歩後ずさるシナーだったが、やがて壁に行手を遮られる。
先程までの疾走で汗だくになる程の熱に襲われていた身体は、今はまるで凍り付くような寒さに支配されていた。


(  ゚∀゚ )「先ずは見た目を見るんだよぉ。男かぁ? 女かぁ? 若いかぁ? 老いぼれかぁ? 肉付きはぁ? 脂肪の量はぁ? 顔は美形かぁ? それとも醜いかぁ?」

(# ゚∀゚ )「味わう前に香りを想像するんだよぉ
! あの独特の鉄っぽい血塩の香りに程よく脂の差し込んだ生肉の命そのものの香りぃ! さぁさぁ次は聴覚に注目だぁ!!」

217名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:23:55 ID:2kE5XV2E0
(# ゚∀゚ )「ぐちゅぐちゅと咀嚼する時のあの水っぽい音に骨を砕く音だって食事時の立派なシンフォニーなんだよぉ! それにもちろん悲鳴だぁ! 悲鳴! 悲鳴 悲鳴いいいいいいぃぃぃぃぃ!! アヒャッアヒャヒャヒャヒャヒャ――――!!」


絶叫のような黒い吐息をまとった高笑いがこだまする。
やがて大きく舌舐めずりしたあとに酒瓶に食らい付くように大きく喉を音を鳴らし、目の前の怯えきった情けない中国人に見せびらかすように愛しき緑の酒瓶を付きだした。


(# ゚∀゚ )「こいつはアイラの傑作ラフロイグ10年!!この酒は最高だぁ! そしてこの酒をさらに美味なるものとするためには最高の料理との……」

(# ゚∀゚ )「マリアージュが必要だぁ!!」


響く黒い絶叫。
そして沈黙。

218名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:25:48 ID:2kE5XV2E0
やがてカタカタと何かが震える音が響く。
チャイニーズマフィア『ドラゴン』が首領。
シナーの身体は無意識のうちに恐怖に捕らわれ、ガタガタと震えていた。


(  ゚∀゚ )「なぁ、あんたさぁ……」


やがて沈黙を切り裂くように目の前の男は投げ掛ける。
その瞳の色は、黄色と赤が入り雑じった狂気に満ち満ちた色。


(# ゚∀゚ )「マリアージュ。ってぇ、知ってるかぁ!?」


気狂いの大声にヒィッと情けない悲鳴をもらしながらシナーは握っていた拳銃を落とした。
そして無様に地に平伏すと、顔中を涙でぐちゃぐちゃにしながら命乞いを始める。

219名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:28:03 ID:2kE5XV2E0
( ;ハ;)「止めろ……頼むから! もう2度と『北』には手を出さないと約束するアル!!」

(#;ハ;)「金だって武器だって女だっていくらでも流すアル! だっ……だから命だけはあああぁぁ!!」


プライドも財産も、全てを投げ出し、振り絞ったその言葉に血濡れの男はにんまりと笑いながらまた1歩、歩みを進める。

そしてまた喉を鳴らし、酒を流し込んで行く。
そして空になった酒瓶の口を、長い舌でなぞるように舐め回しながらひたりひたりと歩みを進める。

220名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:29:11 ID:2kE5XV2E0
ちょうど無様にひれふす中国男との距離が1メーター程になったその時、空になった酒瓶を後方に放り投げた。

ゆるやかな放物線を描いた緑の瓶は、ゆっくりと重力に従って地に吸い寄せられる。


シナーのすすり泣く声が虚しく響く。
血濡れの男の足跡が止まる。


そしてガラスが砕ける音が響いた瞬間……

221名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:30:27 ID:2kE5XV2E0







―――(#   Д )「いただきまあああぁぁぁぁぁす!!」





獣の如く飛び掛かり、シナーの右頬の肉を一瞬で食い千切った。

222名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:31:39 ID:2kE5XV2E0
(; ハ )「ひぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


そのままシナーの身体を押し倒すと、暴れる男をその細腕からは考えられない怪力で押さえつけ、今度は左腕にグヂュリと音を立て食らい付いた。
真っ赤に染まる血肉の奥に見えた白い骨を発見すると、黒い吐息を吐き出しながら、歯で削るかのようにガリガリと音を立てスペアリブを、まさに骨の髄まで味わおうとむしゃぶりつく。


(  ハ )「がああああぁぁぁぁあぎゃああああがっがっぎぎゃやあああああぁぁぁぁ!!」


シナーの悲鳴にうっとりとした表情を浮かべた男はそのまま彼の肉を3、4回咀嚼してゴクリと飲み込む。

223名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:32:34 ID:2kE5XV2E0
白目を向けて痙攣するシナーをチラリと見ると、滑るようにその牙を彼の腹部に移し、頭ごと突っ込む勢いで牙を立てる。

贅肉で膨らんだその腹を衣服ごと強引に食い千切ると、ポッカリと穴の開いた、その腹の中に首を突っ込むようにして中の血液をごくごくと飲み始める。
やがてグリグリと首を捻り、小腸と大腸を避けながら(排泄物が詰まっている可能性があるため)手当たり次第、目につく臓器に食らい付く。

男にとって、シナーの腹の中はご馳走の山。
飢えた野良犬が可愛く見える勢いで食い破り、食い散らかし、貪り尽くす。

224名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:33:32 ID:2kE5XV2E0
鼓膜を割らんばかりの悲鳴をあげるシナー自身に響くのは、自分の体内をまさぐられる奇妙な感覚と、ぐちゅぐちゅと水っぽい何かを咀嚼する音。
それから人生で感じた事の無い、燃えるような灼熱と氷のような冷たさという矛盾した感覚。
そして嘔吐を促す程のひたすらな激痛激痛激痛。


そして膵臓と肝臓を完食した男が、肋骨を噛み砕き、血色のいい心臓に牙を突き立てた瞬間。
杏露・シナーはその口から噴水のような血を噴き出しながら、38年の短い人生に幕を下ろした。





.

225名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:34:33 ID:2kE5XV2E0
ぐちゃぐちゃとした水音。それから肉を剥ぐ音、それらを食い千切る音だけが響く暗闇に、ピピピッと携帯の着信音が交じる。


('、`*川


無力な中年男がその身体を食い散らかされる様を後ろから眺めていたジャージ姿の女はポケットからスマートフォンを取り出すと通話のスイッチをタッチ。
何ともダルそうな脱力した声で「もしもーし」と応答した。


『俺だ。そろそろ片付いたか?』


電話からは若い男の声が聞こえてきた。
一応、彼女の上司でありながら、実際のとこら自分の弟にあたるという微妙な関係性の我らがリーダーに、ジャージ姿の女『カリラ・ペニサス』は先程と同じように脱力した声で返事をする。

226名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:35:25 ID:2kE5XV2E0
('、`*川「あーうん、ちなみに今うちの『グルメマン』が絶賛食事中だよー。なんならスピーカーにしとくー?」

『いやっちょっ辞めろ! 夜寝れなくなるから辞めて下さい頼むから!!……それよか少し不味い事になったかもしれない』

('、`*川「えー何さ何さ?」


目の前でゾンビのように肉に食らい付くもう1人の弟を眺めながら、自分の髪の毛をくるくると指で弄び、電話越しに疑問の声を投げ掛ける。
あーなんか髪の毛ベタベタしてんなー、そういやー最近シャワー浴びてないやー。
とか、どうでもいいことを考えながら。

227名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:36:45 ID:2kE5XV2E0
『今しがたバラして貰ってる「ドラゴン」の杏露・シナーなんだがな、ソイツについて見落としていた情報があったんだ』

('、`*川「んー?」

『そいつは約8年前。自分の組織を立ち上げるまでは、とある巨大マフィアグループに属していた』

('、`*川「ふぅん、それが?」

『相変わらず適当に話ききやがって……西だ。ペニサス』

('、`*川「西?」


ああ。と電話の男はやけに深刻そうな声で肯定した。
そして少し間をあけると、やがてこう告げた。

228名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:38:40 ID:2kE5XV2E0
『奴が所属していたのは「イエローモンキー」だ。いいか、ペニサス。
もう一度言うからよく聴けよ? 奴が所属していたのは……』







――――『「ゴッドファーザー」と称される大物、「リシャール・ニダー」が率いる「イエローモンキー」なんだよ!』――――





.

229名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:39:43 ID:2kE5XV2E0







第2話    天使







.

230名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:53:08 ID:YAdQmzVg0
ほのぼのとは何だったのか……
支援!

231名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:53:54 ID:2kE5XV2E0
『台風の目』という言葉がある。

ザックリと説明してしまうなら、台風の真ん中は周囲の暴風や豪雨を全く感じさせない程に静かで平和だという意味である。


アウトロー集う、この吹きだまりであるソウサクシティーにも、そんな台風の目が存在する。

ちょうど市内のど真ん中。そこには大きな交差点がある。

真ん中には小さな噴水。北側の角にはBAR Bloody Mary。
そしてそこから時計廻りに、警察署、喫茶店、教会といった施設が集結している。

232名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:54:41 ID:2kE5XV2E0
この中央の大きな交差点は、どこのギャングの縄張りにも属さない、ポッカリと穴の開いた台風の目なのである。

仮に例え東でレイプ事件があろうが、北で殺人があろうが、西と南で戦争が起きようが、この『平和な交差点(クロス・ロード)』では平穏が約束されているのだ。


だが、ここで1つの疑問が産まれてくる。

そもそも法律など有っても無いような無法地帯のソウサクシティーの住人達が、なぜわざわざ『交差点』では争いを起こしてはいけないという暗黙の掟を守っているのだろうか?


東の角にある警察署のおかげだろうか?
しかしソウサクシティーの警官はほぼ全員がマフィアと繋がった悪徳警官である。
しかも、署長の『サザンカンフォート・ロマネスク』は前科持ち、ドラッグ依存症、ギャンブル中毒のトリプルパンチで街の平和を守る気などさらさら無い。

むしろ、今日は人が何人死ぬかという賭事を署内で繰り広げる程の屑っぷりなのだ。

233名も無きAAのようです:2015/02/28(土) 19:55:39 ID:2kE5XV2E0
では、西の角にある教会の力だろうか?
確かにアメリカ合衆国ではクリスチャンが多いので、ソウサクシティーにも当てはまるだろう。
だが教会といってもちっぽけでボロボロのほったて小屋のような建物な訳で、威厳などさらさら無い。

そもそもソウサクシティーのクリスチャンの全員が熱心に毎週教会に祈りを捧げる訳でもなく、精々死にかけた時にジーザス!と大袈裟に叫ぶ程度だ。
この腐った街の住人の殆どは教会に行くくらいなら娼館や酒場に。
祈りを捧げる時間があったら金儲けの方法を考えるような人間ばかりの世界なのだから。


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