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('A`)は撃鉄のようです
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__ ,、
く_;:::ハ /::ヘ
(_厂 ヒコ
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止まったものはそれだけではない。
絶えず揺らめく筈の炎も停止し、熱風に舞う火の粉も空中に赤い点として留まっている。
一枚の絵として張り付いた炎の空間。
あらゆるものが流動を止めた最中、床に倒れていた女だけが、わずかに身動ぎした。
川; - )「……クソッ」
唾棄するように呟き、女はふらりと立ち上がった。
彼女は乱れた前髪を更にかきむしり、意識のない間に何が起こっていたのかを考える。
しかし、思考はまとまらない。
一から構築された正常は、彼女が内包する『異常』に侵食されて潰えていく。
途端、蹂躙された自我に致命的な亀裂が突き抜けた。
視界が崩落し、素直クールという人間がバラバラになる。
川; - )(意識が、途切れる――)
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爪゚ー゚)「――――ああ、分かっとる」
とたん、止まっていた空間にじぃの声が響いた。
その言葉は先程のドクオに向けられていたが、彼女の目は確かに素直クールを捉えている。
川; -゚)「動ける、のか……?」
残された自我が単純な問いを口にする。
じぃは得意気に頷いて答えた。
爪゚ー゚)「少し時間は掛かったがな。
この所業、時間停止や法則支配の類とは格が違う」
爪゚ー゚)「あえて形容するなら空間そのものの乖離。
時間や法則という縛りから、貴様が望んだ物だけを切り取っている」
爪゚ー゚)「もっとも、今はそれを制御できておらんようだが……」
川; - )
口を動かして答えることはもうできない。
素直クールは最後に、「後を頼む」と意思を込めた視線をじぃに送った。
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爪゚ー゚)(……四で足りるが、状況が悪いな)
素直クールの強さに対し、発揮するべき力を想定する。
『四』とはそのまま四割という意味。
彼女の見立てでは四割で互角。四割も出せば圧倒できるはずだった。
爪゚ー゚)「……」
じぃは己の手を見つめ、軽く拳を作った。
しかし、その動きには薬指だけがついてこない。
薬指をピンと立てた拳。
それが意味するものを、じぃは逸早く理解していた。
爪゚ー゚)(この指はもう駄目だな)
瞬間じぃは拳を思いきり振り払った。
ブチンという音を立て、薬指が拳から千切れて離れる。
停止空間に捕らわれた薬指は、わずかに血を滴らせてから空中に停止。
爪゚ー゚)(……ここは望んだものだけが存在を許される空間。
そこに力技で介入した手前、こうなるのは必然というもの)
爪゚ー゚)(気を抜いた部位から空間に自由を奪われる。
ここで戦う以上、奪われた部位は切り捨てるしかない)
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爪゚ー゚)「――おまけに、貴様自身も厄介極まりないときた」
じぃは素直クールに目を向け、嘲笑しながら言葉を投げかけた。
川 ゚ -゚)「……いや、そんな事は無い」
彼女は既に別人だった。正気ではあったが、先程とは中身が違った。
ここは望んだものだけが存在できる空間。
故に彼女が自分自身を望まなければ、ここに彼女の自我は存在できない。
であれば、今の素直クールがどういう存在かはすぐに分かる。
そして、彼女の能力も。
爪゚ー゚)「間違いなく強力な能力だが、くだらん力だな」
じぃはもう一度笑い、全身の神経を研ぎ澄ました。
気を抜いた部位など一つとしてない。
鋭気に満ちた全身は、この炎の停止空間でも十分な気合を放っていた。
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爪゚ー゚)「つまりここは夢の世界。貴様が望んだ理想そのもの」
爪゚ー゚)「まさに自己陶酔の極地と言えよう。まったくもって、見るに耐えん」
川 ゚ -゚)「好きに言え。私の在り方は、私自身が決めるのだから」
爪゚ー゚)「しかし独善の成れの果てが何も動かぬ世界とは、いや笑い話にすら程遠い」
じぃは偶像の妄言を無視して続ける。
爪゚ー゚)「まったくもって、こいつはどうしようもなく大嫌いな性分だ。
あの木偶には生かしてほしいと言われたが、たったいま、無理になった」
爪゚ー゚)「――膨れ上がったその独善、このオレが瓦礫の山に戻してやろう」
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≪2≫
果てしなく広がる荒野。
そのひび割れた大地から快晴の空に向かって、一本の線が立っていた。
線の正体は十本の槍。
一本ごとの長さは約5メートル。全長50メートル分の、ただの槍。
( `ハ´)「――――」
それらの直立を支えているのは槍の根元に立っている細身の老人、シナー。
彼は目前のミルナを見据えたまま、槍を支えていた手をパッと開いた。
( `ハ´)「言い残すことは」
( ゚д゚ )「無い」
風に吹かれ、十本の槍が無造作に崩れ落ちる。
シナーの攻撃は、その時点から始まっていた。
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( `ハ´)「ッ」
シナーは手元の槍を掴み直し、それを地面に叩きつけて空中に跳ね上がった。
反発力が最大になる瞬間で槍を手放し、棒高跳びの要領で一気に10メートル以上飛翔する。
飛び上がった先でさらに二本の槍を手に取る。
シナーは二本の槍を一本に合わせると、それを地面に突き立てて一点の足場を作った。
ここまでの挙動は刹那。
そして次の槍を掴むと同時、シナーはミルナに狙いを定めてその槍を投擲した。
(#゚д゚ )(槍使い、趣味は同じか――ッ)
一次元を疾駆する最速無音の一撃。
それを迎撃するため、ミルナは右腕に『マグナムブロウ』を発現して拳を振り抜いた。
長槍と拳。真っ向から激突した二つは互いを弾き合い、次の攻撃に向けて行動を開始する。
(#゚д゚ )「――チィッ!!」
シナーの槍の威力に押されて大地をすべるミルナ。
僅かに負けた、という事実が苛立ちを煽り、彼の表情をより一層険しくさせる。
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瞬間、シナーが視界から消える。見るなは彼を追って真上を見上げた。
感知が遅れた――それも束の間、ミルナは即座に回避に走る。
( `ハ´)
ミルナの上空でひるがえり、ずらっと五本の槍を携えているシナー。
彼は四本の槍を両脚で次々と蹴り飛ばし、残した一本を両手で構えてミルナに飛び掛った。
(#゚д゚ )(曲芸風情がッ……!)
ミルナは咄嗟に左腕に黒煙を纏い、それを振るって蹴り出された四本の槍を弾き飛ばした。
しかしその行動は安直すぎた。
質量を持った黒煙は攻防共に優れた武器だが、それは同時にミルナの視界を遮るものでもあった。
故に、空中に描かれた黒い軌跡がミルナの目前から消えた瞬間、
( `ハ´)「――ッ」
背後に現れたシナーの一撃が、ミルナの心臓を穿とうとしていた。
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(;゚д゚ )「――ッッ!!」
やられた、と思った途端、左腕の黒煙が独りでに飛び出して長槍を防御する。
ガキッ、という短い金属音。
( `ハ´)「……便利な獲物を」
この一撃で傷を負わせるつもりだったシナーは眉間をすぼめ、理外の黒煙に敵意を示す。
シナーは連続してミルナを刺突したが、それもすべて黒煙に防がれてしまった。
(;゚д゚ )(いったん退く! 目が追いつかん!)
黒煙の自動防御は、ミルナに冷静な思考をさせるだけの時間を作ってくれた。
ミルナは黒煙の一部を脚に纏わせて脚力を大幅に強化した。
シナーと目を合わせたまま大地を蹴り、大きく後ろに飛びのく。
( `ハ´)「――それで、逃げ切れると」
シナーはミルナを冷たく見返し、今度はその規格外の長槍で地面を斬り払った。
地表を引っぺがすような突風が弾け、空中に大量の砂塵が舞い上がる。
砂の段瀑がミルナを飲み込み、再び彼の身動きを封じ込める。
(; д゚ )(小細工ばかりッ……!)
敵が視界を遮りにきた以上、次に来るのは更なる追い討ち。
だが、ここで防御に回れば二度と攻勢には回れない。そういう確信がミルナの脳裏を過ぎった。
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(; д゚ )(やりたくないが、素では相手しきれん……!)
ミルナはtanasinnが生み出す黒煙を右腕に集中し、マグナムブロウに融和させた。
瞬間、彼の右腕はどろりと溶解し、無形の泥になって地面に落ちる。
(# д )(――――)
地に落ちた泥が浮かび上がり、激しく渦巻きながら肉体の一部として再構成され始めた。
彼の超能力は姿形を変え、蝕むように全身に広がっていく。
体内に何かが混ざり、血の流れが遅くなる。
自分の眼球の動きにすら感覚が反応してしまう。
記憶がバラバラに崩れ落ちていく。
自分を形容している決定的なものが、その“何か”に犯されている。
分かるのは痛みと熱だけ。
五感のすべてがその二つだけで構成されているような錯覚さえある。
そして、その錯覚を疑うことなく受け入れたとき、
(# д'゚)「――――」
ミルナの姿は、黒い影に飲み込まれていた。
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第二十八話 「悪性萌芽 その2」
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(# д'゚)「――――お゙お゙お゙ッッ!!」
周囲の砂煙を一掃し、人外の絶叫が迸る。
大地が震え、呼応するように空気が鳴動する。
それが止むと同時に、荒野は静寂した。
(# д'゚)「ッ」
静寂の中、ミルナは気配を直感する。
シナーの気配も確かにあるが、それとは別に二人分の気配が増えていた。
喉の奥を獣のように唸らせながら、ミルナはゆっくりと振り返る。
( "ゞ)「……二で足りる」
(・(エ)・)「……残念、私は八です」
(# д'゚)「……」
彼らが呟いた数字の意味を、今のミルナは理解できなかった。
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16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596
第二十七話 悪性萌芽 その1 >>609-673
第二十八話 悪性萌芽 その2 >>704-726
次回は来月再来月になります
来年には完結したいなぁと思います 以上です
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乙
補足王が出るまでも無かったか
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乙。クマー俺が思ったより強そう
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乙!
正直おもしろすぎ
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バトルシーンの描写とかキャラの葛藤とか好き
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http://ssks.jp/url/?id=348
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≪1≫
( "ゞ)「……なんだ、まあ、アレだな」
デルタはそう呟き、頭をかきながら前に出た。
目前には敵。人間という箍を外したミルナが、すぐそこで待ち構えている。
( "ゞ)「アレだ…………」
(# д'゚)
( "ゞ)「……おら、掛かって来い。
今さっき出掛かった言葉を呑んで、一発相手してやる」
(# д'゚)「―――」
デルタが煽るまでもなく、ミルナを取り巻く黒煙は鋭利な刃となってデルタに襲い掛かった。
一瞬で作り出された数十の刃――だが、それが砕け散るのもまた一瞬。
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( "ゞ)「……終わりならもう言うぞ」
幾多の黒煙の刃を粉砕し、握り潰して宣告する。
デルタの目は「さっさとしろ」と言いたげに、冷たくミルナを見据えている。
(; д'゚)「…………なンだ、お前ハ……」
tanasinnの力を得て暴走しているとはいえ、ミルナの攻撃は確かに必殺だった。
それが呆気なく、まるでクモの巣を払うかのように一掃された。
その事実に対して脅威を覚えたのは、ミルナではなくtanasinnの方だった。
( "ゞ)「なんだ、喋るのか? てっきり叫ぶだけの暴走野郎と思ったが」
ハ、と分かりやすい嘲笑をこぼすデルタ。
( "ゞ)「でもな、俺が誰かなんて今更だろう。俺だってお前が誰かなんて知らん。
俺はお前みたいな格下を知らないし、お前も俺みたいな格上は知らなくて当然だ」
(; д'゚)「…………」
( "ゞ)「……なんだよその顔は。ビックリって感じのその顔は。
まさかお前、思ってたんじゃねえだろうな」
( "ゞ)「tanasinnとやらを持ってない奴に俺が負ける訳が無い。
俺はそういう連中とは生きてる世界が違うんだ、とか」
( "ゞ)「ハハハ。だったらさっぱり的外れだわ、お前」
繰り返される嘲笑。
しかもそれは馬鹿にする所か、お前など眼中にないと明言しているようなものだった。
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( д )
――デルタ関ヶ原の実力を予感したtanasinnは、即断した。
まず、tanasinnはミルナという原形を捨てた。
ミルナの精神を経て形を保っていたtanasinnの力は、早々にその回路を放棄したのだ。
回路を失った力は理性を破壊し、燃料が尽きるまでミルナをひたすら暴走させ続ける。
これは先日ミセリやドクオを倒した時と同じやり方。しかし、今度のは限度未定の自殺行為。
今のミルナに出来る『全力の出し方』は、もうこれしかないのだ。
( ゚д゚ )「……陳腐な物言いだが、ムカつくぞ。
その場所は、俺が何百年掛けても到達しなかった場所だ」
束の間、正気を取り戻したミルナはデルタに向かって言い放つ。
それは単純な羨望と嫉妬――自分より強い人間への敵意。
自分より純粋に生き、純粋に強くなった男への逆恨み。
( ゚д゚ )「どうすればそこまで強くなれる? ただの人間のままで」
( "ゞ)「いや無能には無理だ。お前には才能がない、俺にはあった。
それだけの話だ。どうだ、理不尽だろう」
( ゚д゚ )「……ああ。まったく、やってられん」
( "ゞ)「だが結局それなんだよ。理不尽に見逃されるか立ち向かうか。
人の一生の構造なんざ、結局それだけだ」
( ゚д゚ )「なら、俺は後者でお前は前者か」
( "ゞ)「は? いちいち自分を美化したがる野郎だな。
俺もお前も後者だよ。ただし、お前は途中で膝を折った半端者」
デルタはミルナを指差し、当てつけのようにハッキリと言う。
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( "ゞ)「まあ分不相応ってコトだ。
諦めて普通に生きたらどうだ? とりあえず就活やれよ」
( ゚д゚ )「……いい加減にしろよ。俺には」
( "ゞ)「使命役目運命役割……がある、か? 清々しいほど言い訳だな。
それより就職して家賃10万のアパートに住む想像でもしろ。よっぽど有意義だ」
( "ゞ)「俺は武人としての地位がある。金も食い物も勝手に転がり込んでくる。
だがお前には何があるんだ? ないだろ、何にも」
(#゚д゚ )「……何も知らない奴が、俺の在り方に口を挟むな」
( "ゞ)「おいおいおいおい。おい怒るなよ。才能はない、力もない。人脈も何もない。
俺はそんな人間にも実現可能な最大限の幸福を言ってるだけだぞ」
デルタは真顔で語り続ける。
至極真剣に、当然の事をミルナに語りかける。
( "ゞ)「どうだ? 幸せだと思わないか。
スーパーの特売日。安い鳥肉を買って、それを唐揚げにして食べる。
給料日には酒があってもいいな。一升瓶で鬼殺しを飲んでいい」
( "ゞ)「あるいは女だ。自然に女ができれば上等だが、金があればまあ大丈夫だ。
風俗でもいい。チンコに潤いを持てば余裕ができるぞ」
(#゚д゚ )「……そんな下らない話を、いつまでッ……!!」
( "ゞ)「……なんだと?」
下らない。その一言に、デルタの眉がピクンと跳ねた。
( "ゞ)「お前、唐揚げを馬鹿にするのか?」
しかし、両者の話はどこか食い違っていた。
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( "ゞ)「……よし決まった。たった今、この戦いの動機が固まった」
( "ゞ)「俺は今から唐揚げを馬鹿にしたお前を殺す。
これは唐揚げの為の戦いだ」
独りでに自己完結したデルタは軽く構え、鼻で笑う。
( "ゞ)「どうだムカつくか?
大義名分を背負った戦いが勝手に唐揚げ大戦争にされちまって」
(#゚д゚ )「……強いだけの男が。意思のない力なんざ、犬畜生にも劣るゴミだ」
( "ゞ)「……」
( "ゞ)「……お前は、耳障りのいい言葉で、取り繕うばかりだな」
その返答は落胆。
デルタ関ヶ原は脱力し、小さく溜め息を吐いた。
( "ゞ)「なんというか、最早、見るに堪えん……」
( "ゞ)「おいクマー! あとお前がやれ!」
踵を返し、遠くに逃げ隠れていたクマーに向けて命令する。
デルタは適当なところまで離れると、その場にドスンと腰を下ろして傍観者に早代わりした。
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(;・(エ)・)「……煽るだけ煽って、結局人任せですか……」
程なくして、とぼとぼ、とぼとぼとクマーが歩いてくる。
クマーは興醒めして座り込んだデルタに恨めしい小言を零しながら、渋々ミルナに向かっていく。
( "ゞ)「おいクマー、半分でやれ。上司命令な」
(;・(エ)・)「……分かりました。死んだら弔ってください」
( "ゞ)「おうよ。山盛りの唐揚げで奉ってやる」
(;・(エ)・)(一気に死ねなくなった……)
――黒い、ぬるい風が迸る。
風速は些細だが、その風はレムナントの大地を荒々しく削り取っていた。
ぐつぐつと煮え滾る殺意と憤怒が、クマーとデルタの余裕に水を差す。
(・(エ)・)「……」
クマーが視線をミルナに向けた時、そこに彼の姿はもうない。
代わりにあったものは血肉を詰めた黒い甲冑。人ならざる、文字通りの化物。
黒甲冑から流れ出る黒い瘴気は、それこそがtanasinnが作り出す悪性の具現であった。
( `ハ´)「……あいつも無茶を言う。私が少し、手を貸そう」
(;・(エ)・)「あ、助かります……」
並び立った熊の覆面大男、槍使いの老人。
一度は途切れた戦いの呼吸は、次の瞬間、息を吹き返す。
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第二十八話 「悪性萌芽 その3」
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≪2≫
素直クールとドクオが武神屋敷に落ちて数週間。
屋敷の改修作業は適当なところで飽きて切り上げ、彼らはとりあえず元の生活を送っていた。
( "ゞ)「おい大根食うか」
(;'A`)「いや、食べない……。少なくとも生では」
墜落から数日目にして目覚めたドクオは、デルタの手厚い看護によってまぁまぁ復活していた。
軽度の痺れや発作的な痛みはあれど、少なくとも、内藤の研究所に居た頃よりは健康だった。
( "ゞ)「許さん。好き嫌いは死ぬぞ。いいから大根を食え」 グイグイグイグイグイグイグイ
___
* ダイコン>)'A`;)「主張が激しい割りに大根のAAが雑だ」
 ̄ ̄ ̄
tanasinnのあれこれによってメタ発言さえ許されたドクオは、渋々生の大根をかじり始める。
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(;'A`)「あー……」ジャリッ ガリッ
( "ゞ)「いい食いっぷりだドン引きするくらいにな。
でもさすがに生はねえわ。腹壊すぞ」
(;'A`)「最初から言ってるだろうに……」
ここは焼け残った武神屋敷の別邸。
ドクオが寝ているその部屋は、小さいながら無駄のない綺麗な和室であった。
ドクオが外に目をやると、写真でしか見たことがないような雪景色が広がっていた。
池と鹿威しのある大庭園。けっこう金を掛けたんだろうなあ、とドクオは呑気に想像する。
( "ゞ)「あの女、ジィ様が言うにはそろそろ起きるらしいがどうする」
('A`)「……俺が最初に顔見せないと面倒だろう。その時は悪いが肩を借りる」
( "ゞ)「いや、会うつもりなら女の寝床をこっちに移す。
その方が手っ取り早い。それでいいだろ?」
('A`)「ああ。お前には手間ばかり掛けさせるな」
( "ゞ)「マジでその通りだ。この借りは絶対に返せ」
(;'A`)「……分かった。でも期待はするなよ、俺もそう長くはない……」
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ドクオの身体は、確実にtanasinnに蝕まれていた。
彼は内藤が作り出した人工生命で常人よりも丈夫とはいえ、このドクオにはtanasinnの適性が無かった。
しかし内藤はそれを無視し、ドクオに『tanasinnの片鱗』の失敗作を投与し続けた。
その行為はただの紙コップにマグマを流し入れるようなもので、とどのつまり、最初から彼の死滅を前提としていた。
約束された死の瞬間は近い。ドクオ自身、十分にそれを自覚している。
( "ゞ)「だから死ぬ前に返せって話だ。お前なりにな」
('A`)「分かってるさ。死んで遺せるものなんか、高が知れているからな」
( "ゞ)「……お前、自分が生き残る可能性は考えてないのか」
('A`)「ああ、まったく」
デルタの問いに、ドクオはキッパリと即答する。
『ドクオ』とは元々他人に生み出された存在。なくて当然の物が、元に戻るだけなのだ。
道具として生まれ、道具として使役され、道具として破棄される。
ドクオはそんな一生を自分の末路として疑いなく受け入れていた。
ただ一つ、それが『理不尽』であるという事を見逃したまま。
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( "ゞ)「……理不尽に従えばこの世は地獄だ。
お前はそれでいいのか?」
('A`)「地獄で生まれた男が地獄で死ぬ。
それはそれで、道理だと思わないか」
( "ゞ)「……思わん。だが、それがお前の道理なら最期まで貫け。
絶対に途中で膝を折るなよ。でなけりゃ死ぬほどカッコ悪いからな」
('A`)「分かった、覚えておくよ」
( "ゞ)「……“分かった”は嫌いな言葉だ」
理不尽に従う人間は、みんなそれが口癖だ」
('A`)「……」
('∀`)「……なんつうか、反抗期だな」
一連のデルタの語りを聞いて、ドクオは朗らかな笑みを見せて言った。
( "ゞ)「当たり前だ。俺はまだ十三歳だぞ」
('∀`)「にしては言い分が達観しすぎだ。
そんなに嫌いか? この世の中が」
( "ゞ)「好きな所もあるが、ピンポイントで嫌いな所がある。
ま、そんなん誰でも一緒か……」
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デルタは大きく一呼吸すると、初めてドクオから目を逸らし、語り始めた。
( "ゞ)「俺は元々、心臓を病んでいた。
俺の身体は生まれた時から早死にを約束されていた。
理不尽が嫌いなのはそれが理由だ」
('A`)「……それがなんで、ここに」
ドクオは笑みを消し、彼の話に集中する。
( "ゞ)「大した理由は無い。誰よりも弱い男が、誰よりも強くなろうとしたってだけの話。
その結果ここに来て、今に至って、それだけよ」
('A`)「……時間が無いのはお互い様って事か。
因果なものだな、この地獄も」
( "ゞ)「だとしても俺はこのまま死ぬつもりは微塵も無い。
やるだけやって、俺は俺の一生を生き尽くして死んでやるつもりだ」
('A`)「…………」
( "ゞ)「残り数年の命だが、その間に何とかして神様をブッ潰す」
しんみりした空気も束の間、デルタの話は意味不明な方向に急展開した。
それについていけなかったドクオは数秒沈黙した後、思わず「え?」と呟いてしまった。
(;'A`)「いや、えっと、なんでそうなる?」
( "ゞ)「なんでもなにも、神様が理不尽の生みの親だからだ。
だから一発殴らなきゃ死んでも死に切れん。
なんならお前の分も殴っといてやるが」
(;'∀`)「……本気、か?」
( "ゞ)「冗談言ってる暇はない。死に掛けなんだぞこの俺は」
.
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(;'A`)「……じゃあまあ、そんな夢ある少年にひとつ助言を……」
('A`)「とりあえずハッキリ言っといてやる。
お前が殴りたがってるような神様は実在するよ」
('A`)「荒巻スカルチノフっていう爺さんがその神様と知り合いだ。
だからもし神様をブッ潰しに行く時は、荒巻の方を先に見つけるといい」
( "ゞ)「……いいことを聞いた」
(;'A`)「だが本当に神様だからな。倒すつもりなら」
忠告の途中、デルタは耳も貸さずにすっと立ち上がった。
彼は軽くストレッチをしたあと、そのまま庭に降りて雪上を歩き出した。
( "ゞ)「ちょっくら出掛けてくる。朝まで帰らん」
(;'A`)「……いや、いやいやいや待て!! 今が朝だぞ!!」
ドクオは手を伸ばしてデルタを止めようとするも、彼はそれを意に介さない。
(;'A`)ノ 「おい! お前マジで病人か!?」
( "ゞ)「闘病生活真っ只中だ。休む暇もありゃしねえ」
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デルタはそう言い、結局数日後の朝まで帰ってこなかった。
そして帰ってから一番最初に言った事は
( "ゞ)「神に土下座させてきた」
簡潔な勝利宣言だった。
.
-
≪3≫
素直クールの目覚めは、スイッチがパチンと切り替わるように明確だった。
('A`)「おっ」
川 ゚ -゚)「……ドクオ? ……ここはどこだ?」
布団で横になっていた彼女は周囲を見回しながら体を起こした。
肉体的な傷はすっかり完治したらしく、彼女に痛みを訴える素振りはない。
('A`)「武神の屋敷だ。目的地だよ、俺達の」
川;゚ -゚)「……いかん、覚えが無い。あれから何があった?
本当にあそこから無事に脱出できたのか?」
('A`)「本当だ。心配するな。今、他の人を呼んでくる」
そう言い、立ち上がろうとした瞬間。
素直クールがドクオの手を掴み、震える声で呟いた。
川;゚ -゚)「誤魔化さなくていい。私は内藤に何をされた……?」
('A`)「……それを話すつもりはない。
お前が起きる前に、武神も含めてそう決めた」
ドクオは彼女の手を優しく払い、部屋を出た。
デルタが神様を倒した記念の為、屋敷の住民達は別室で宴会中だった。
そこにひょっこり顔を出すと、事を察したじぃが宴会を抜け、ドクオと一緒に部屋に戻った。
.
-
爪゚ー゚)「やっと目を覚ましたか。……さて、オレの顔に覚えは?」
川;゚ -゚)「……あります。本当にありがとうございました」
素直クールは正座に座りなおし、じぃに深々と頭を下げた。
爪゚ー゚)「気にするな、些事であったぞ。
オレの名はじぃ。八極武神と名乗り、遊びほうけておる」
川;゚ -゚)「それじゃあ、じぃさん」
爪゚-゚)「待て、オレを呼ぶ時は『さん』ではなく『様』をつけろ。
でないと語感がでんじゃらすになるからな」
(;'A`)「気をつけろ、この人それでマジギレするからな」
川;゚ -゚)「わ、分かった」
川;゚ -゚)「……じぃ様、私達の事情はどこまで聞きましたか?」
爪゚ー゚)「……あー」
クールの質問に、じぃは少しばかり目を泳がせた。
人には知られたくない過去があるものだが、じぃはドクオからそれを丸々聞いてしまっていた。
開き直り、じぃは包み隠さずに答える。
爪゚ー゚)「すまんが徹頭徹尾すべて聞いた。
要はタナシンだろう? あんなものに関わるとは、災難だったな」
.
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川;゚ -゚)「……私は、内藤の研究所から脱出する時、内藤に『人工片鱗』を投与された。
追い詰められたが故に仕方が無かったが、それは間違いだった。
それで、もうそこから記憶は曖昧ですが、私は、私ではなくなった……」
川; - )「じぃ様、ドクオ。お願いだ。私は、何をしたんだ……」
爪゚ー゚)「……だと。どうする、ドクオ」
('A`)「……まだ寝起きで混乱してるんだろう。
落ち着いたら思い出せるはずだ。今は休め、いいな」
川;゚ -゚)「わ、私はッ――!」
(#'A`)「いいから聞けッ!」
ドクオは突然語気を荒げ、彼女を黙らせた。
(#'A`)「お前は今も体を『人工片鱗』に侵食されている!
それがどういう影響を与えているか分からないが、少なくとも今、お前はお前らしくない!」
川;゚ -゚)「……だが……」
(#'A`)「……何があったか話すのはいい。
だがその『忘れた振り』はお前らしくない。そう言っているんだ」
(#'A`)「お前があの時の事を忘れている訳がない!
tanasinnには人の心身を乗っ取るだけの意思は無いんだぞ!」
川;゚ -゚)「……私は、嘘なんか……」
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-
言い淀み、狼狽した素直クールに対し、ドクオは更に言葉を続けようとした。
しかし、じぃがそれを遮って二人の間に割って入る。
爪゚ー゚)「問答も結構。だがなあドクオ、これじゃあ埒が開かんぞ。
そろそろ折れてもよかろうに」
(#'A`)「……それじゃあ今以上に悪化するだけだ」
爪゚ー゚)「その時はオレが相手をする。問題あるか?」
川;゚ -゚)「……なんだ、なんの話をしている?」
素直クールの呼び掛けにも答えず、ドクオはじぃに怒りの矛先を向ける。
(#'A`)「問題ある。今後それを繰り返しても彼女は助からない。
彼女にこの後遺症を克服させるには時間が必要だ」
爪゚ー゚)「貴様バカか? 時間が無い者に時間が必要なのは当然だ。
ゆえに限り限られた時間の中で妥協と最善を尽くす」
爪゚ー゚)「なればこそ、今は妥協が最善だとオレは思うが……。
はて、貴様はその理想の為に限りあるものを使い潰すつもりか?」
(#'A`)「……」
ドクオは、言葉を噛み潰した。
感情的に言い返す事はできる。しかし、その言葉には中身が伴わない。
解決に近付くための言葉を、ドクオは思いつくことが出来なかった。
.
-
爪゚ー゚)「……さて。とりあえず起きてメシを食うといい。
かくして今は宴会中でな、腹を満たすに余りある用意ができておる」
川;゚ -゚)「……」
('A`)「……そうしよう。お前が聞きたがってる事もそこで話す」
素直クールがドクオに視線を送ると、彼はすっかり落ち着いた様子で彼女に微笑んだ。
そこでようやく、彼女は少しだけ気を緩めることができた。
爪゚ー゚)「オレとドクオは先に行っている。
着替えは好きに使え。オレの古着だがな」
川 ゚ -゚)「……え?」
('A`)「……また後でな」
川;゚ -゚)「……あ、ああ……」
素っ気無く部屋を後にしたドクオとじぃ。
しかし、その時ドクオは見逃していなかった。
あの素直クールが、人恋しそうに手を伸ばしてきていた事を。
('A`)(……違う)
( 'A`)(お前は、こんな奴じゃない……)
.
-
爪゚ー゚)「……十六回だ。貴様があれの説得に敗した回数」
縁側をトコトコ歩きながら、じぃは改まってその結果を口にした。
('A`)「……」
爪゚ー゚)「何度繰り返したところで同じだったと思うがな。
ま、これであの女が『望んだこと以外は受け付けない』と理解したか?」
――素直クールは、この数日間に十七回目覚めていた。
そして先程の一回を除いた十六回の中で、彼女は明らかな異変を起こしていた。
('A`)「恐らく……いや、もう確信した。あれは内藤の人工片鱗が原因だ。
素直クールは、感情の箍が外れかかっている」
('A`)「なんというべきか……弱くなってしまったんだ。あの女は、精神的に。
人工片鱗は彼女の精神を変えてしまった。強くあろうとする精神に、毒を混ぜた」
.
-
目覚める度、素直クールは自分が内藤に何をされ、何をしたのかを聞こうとする。
しかしそこで本当の事を教えると、彼女は“笑う”。
儚げに目に涙を溜めながら、悲しい事があり悪い事もしたけれど、これからは――と語り始める。
言うなれば悲劇のヒロイン――彼女はそれになってしまうのだ。
かといって真実を告げずに彼女の願いを拒否し続けると、
彼女は再び気を失い、深い眠りについてしまう。次に起きた時、この時のやり取りは全て喪失している。
つまり、今の彼女は都合のいい言葉しか受け付けない。
('A`)「……あの女は本物の『tanasinn』に関わり、俺よりよっぽど酷い道を歩いてきた。
だがそれでも分かるんだ。彼女はどんな悲劇であろうと、決して『過去のもの』にはしなかった」
('A`)「救われなくとも足掻いてきた。殺され掛けても何かを救おうとしてきた。
報われなくとも、たとえ叶わない願いであっても、それを否定する言葉を吐く人間ではない」
('A`)「そんな女が、誰よりも今を見て生きていた女が、
今ある問題から目を背けて 『これから』 と言った」
('A`)「……俺はそれを認められない。確かにあれも彼女の一面だろうが、決して本心ではない筈だ。
俺の知っている素直クールは、もっと強い人間なんだ……」
爪゚ー゚)「……それは貴様の願望だ。事実と妄想がごちゃ混ぜだぞ。
彼女の在り方は彼女が決める。それが清々しいほど現実逃避であろうとな」
じぃの言葉でふと我に返る。
ドクオは眉間を指で絞り、嘆息を零した。
(;'A`)「……すまない。俺にも彼女と同じ傾向があるらしい。
また変な事を言ったら、咎めてくれ……」
爪゚ー゚)「うちはメンヘラを二匹も飼えるほど寛容ではないからな。
殴ってでも言い改めさせるから安心しておけ」
.
-
宴会場に足を踏み入れると、ドクオはまず、疑問を持った。
目の前で起こっている宴会――というか乱闘に対して、これが一体何の集まりなのか分からなくなったのだ。
(# "ゞ)「おい阿部ェ!! その肉は俺のだっつってんだろ!!」
N|#"゚'` {"゚`lリ 「黙れ処女! 自分のモノなら胃の中に入れてから言え!!」
(;'A`)「……じぃ様、これって食事の場なのか?」
爪゚ー゚)「見て分からんか? 鍋も鉄板もあるだろう」
(;'A`)「あるのは分かる。でも調理器具として扱われていないぞ」
(# "ゞ)「テメェもだクソ忍者!!
さっきからちょくちょく盗んでんのバレてっからな!!」
X
∠ ̄\∩
|/゚U゚|丿 「――激しく奪取、そして咀嚼」
(`二⊃
( ヽ/
ノ>ノ
UU
.
-
飛び交う拳、焼ける肉。床や壁をことごとく粉砕し、ひたすら肉を奪い合う者達。
ゲイと忍者が入り乱れた乱闘焼肉パーティは、ドクオとじぃを無視してなおも混迷を深めていく。
爪゚ー゚)「貴様もあれに混ざったらどうだ。
死ぬかもしれんが楽しいぞ? 陰気なツラも変わるだろうて」
(;'A`)「……遠慮しておく。死を娯楽にするには未練が多すぎる……」
爪゚ー゚)「ははは。未練あっての人生だぞ。死ね」
(;'A`)「えっ、いやッ!」
ドッ、とドクオのケツを蹴り飛ばすじぃ。
ドクオも寸で踏み止まろうとするも、数歩前進した先は既に戦場であり――
( "ゞ)「よう兄弟。お前も肉か?」
(;'A`)「ちがっ……違う違う違う違う!!」
N| "゚'` {"゚`lリ 「なるほど騙まし討ちか。新入りにしては知恵があるな」
(;'A`)「すぐ下がるから待ッ――――」
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
宴会から一晩過ぎた翌朝、ドクオと素直クールは屋敷の庭先に立たされていた。
なにやら“けじめ”をつけると言っていたが、その実何をするのかはまだ聞かされていなかった。
雪降る早朝に呼び出されて十分ほど経過。
デルタの怒号や忍者がその辺を飛び交った後、じぃはデルタに肩車された状態でドクオ達の前に現れた。
('A`)「……じぃ様、顔色が悪いようだが」
爪;゚ー゚)「ああ、朝まで酒を飲んだせいでな……」
( "ゞ)「今から寝るって言って聞かねえから無理矢理連れてきた」
爪;゚ー゚)「今日は弟子入りの予定だったが……明日でいいか?」
(;'A`)「……え、弟子入りするのか? 俺達がか?」
爪;゚ー゚)「そうだ。貴様ら二人とも、強さ弱さを持て余しているようだしな」
吐き気を抑え込むように呻いた後、じぃは脂汗を拭った。
.
-
爪;゚ー゚)「ドクオ。貴様は弱過ぎる。だから強さを教え込む」
爪;゚ー゚)「素直クール。貴様は強過ぎる。だから弱さを教え込む」
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「……それぞれ、真逆のことを教えるのか?」
ドクオとクールは共通の疑問を持って言葉を詰まらせた。
じぃの言葉に対する違和感は一つ。
弱いから強くする。それは分かる。
しかし、強いから弱くするというのはどうにも理解が及ばなかった。
爪;゚ー゚)「……デルタ説明してやれ」
( "ゞ)「面倒を押し付けるな」
爪;゚ー゚)「頭の上で吐くぞ。いいのか」
( "ゞ)「そん時はお前の顔面に吐き返してやる」
爪; ー )「う……っぷ!」
(;'A`)「……おい。これ本当に吐くんじゃ――」
.
-
……激しい音はなかった。
しかし、じぃは口元に手を当てることもなく、当然のようにデルタの頭に吐瀉をぶちまけていた。
中身を全部吐くまでの数秒間、しゃびしゃびのゲロが脳天から流れ滴る最中、
( "ゞ)
デルタ関ヶ原、真顔――!!
( "ゞ)「……吐き終わったか?」
爪; ー )「……ああ」
( "ゞ)「よし」
するとデルタはじぃを投げ捨てて馬乗りになり、己の喉に手を突っ込み――
(; "ゞ)「――お゙ッ!!」
宣言通り、顔面への吐瀉返し――!!
.
-
爪゚ー゚)「すっきりした所で話の続きだ」
( "ゞ)
ゲロまみれの二人が平然と話を戻そうとしている。
ドクオは風呂に入るべきだと言おうとしたが、自分までゲロを浴びせられる気がして何も言えなかった。
爪゚ー゚)「ドクオ。貴様はそこそこ強い、が、それは内藤とやらが与えたものなのだろう?」
( 'A`)「……根本を言えばそうだ。俺はあの男の製作物だからな」
爪゚ー゚)「ならばその時点であの男から逃げ切れんと理解しろ。
貴様の行動は全て筒抜け。逃げても戦っても手の平の上だ。
それに、ここに来たのも内藤が言ったからに違いあるまい?」
('A`)「いや、ここに行くと言い出したのは素直クールだが……そうなのか?」
ドクオが一瞥すると、彼女は軽く頷いた。
川 ゚ -゚)「その通りだ。私も、もう次に頼るならここしかないと思っていたが」
爪゚ー゚)「まあつまりな、内藤が知りうる範疇のままでは話にならんという事だ。
だから単純に強くする。デルタの次くらいにはしてみたいな」
(;'A`)
無理だと反射的に言いたくなったが、
それだと「だからこそ」と言われて逆に大変な事になりそうでドクオは何も言えなかった。
この人達相手には変に口を挟まない方が安全だと、彼は薄々勘付いていた。
.
-
爪゚ー゚)「で、今度は素直クールだが、貴様はもう十分に強い。
相手したオレが言うんだから自信を持っていいぞ」
川;゚ -゚)「……その時の事は、あまり覚えていないんだ」
爪゚ー゚)「仕方あるまい。あの時の貴様は己の能力に利用される外殻でしかなかった。
貴様は確かに強い。が、それは貴様自身の強さとは別々のものだ」
爪゚ー゚)「貴様は己の能力を持て余している。制御しきれず、扱う事すら出来ていない。
そこを手っ取り早く矯正するには、それはもう弱さを自覚し克服するしかない」
川 ゚ -゚)「……それは、ドクオと同じように特訓するだけでは駄目なのか?」
爪゚ー゚)「駄目だ。貴様は今、時速0kmとマッハ1しかないようなふざけた戦闘機同然だ。
間を知って徐々に加速する事を覚えねば、明日にも自滅しかねん」
爪゚ー゚)「それに人工片鱗とやらの面倒もあるからな、弱さは克服してもらうぞ。
聞いた話では、人工片鱗は人の悪意を際限ナシに増大させるらしいが……」
爪゚-゚)「……弱い人間の悪意は狂気に直結する。
これでもオレは善良市民だ。若人一人、正してみせよう」
真意はその一言。回りくどく、しかし的を外さず、じぃは目的を語った。
とどのつまりは自制心の強化。じぃが素直クールに施す特訓は、ただそれだけだった。
.
-
爪゚ー゚)「まーそんなに気負うことでもない。
貴様ら二人とも才能なんかまるで無いからな、オレも長い目で見ている」
(;'A`)「初日から俺達のやる気を削ぐな」
爪゚ー゚)「数年掛けてゆっくりやればよい。
それまで最低限身の安全は約束してやる」
爪゚ー゚)「内藤とか顔付きとか、そういうのが来たら問答無用で追い返すから安心せい」
川;゚ -゚)「……そ、その時は、私も加勢する」
固唾を飲んで言い切った素直クールを、ドクオは静かに否定する。
(;'A`)「素直クール、多分この人達なら大丈夫だ。普通にあいつらより強いぞ」
川;゚ -゚)「いや、でも」
(;'A`)「俺が保証する。一人でも十分だが、じぃ様とデルタが組んだら多分誰も勝てない」
爪゚ー゚)「あらゆる異能を物理で殴り尽くす主義だ」
( "ゞ)「おなじく」
(;'A`)「実際、お前の完全停止能力もじぃ様の物理に負けた。
もう理屈抜きで思考停止していい。この人達は、死ぬほど強い」
川;゚ -゚)「え、えー……!?」
.
-
≪4≫
――話の途中、携帯電話が鳴り響いた。
('A`)
<_プー゚)フ
ミセ*゚ー゚)リ「……」
('A`)「……お前じゃねえの?」
ミセ*゚ー゚)リ「えっ? あっホント……」
ミセリの着信音により、長々と続くエクストの話は間を挟む事となった。
ミセリは携帯を持ってそそくさと部屋の隅に行き、そこで誰かしらと話し始めた。
('A`)「……色々嘘があったのは分かった。でもまあ、よく覚えてられんな」
<_プー゚)フ「知らねえだろうがな、俺は物覚えがいいんだ。
忘れたくても忘れられない事が多い。お前の話もその一つだ」
('A`)「……これが『本当の事』なら、どうして俺は昔の事を覚えてないんだろうな」
<_プ-゚)フ「……それは……」
('A`)「……分かってる。続きを聞けばいいんだろ。大方、予想はついたけどさ」
.
-
ミセ*;゚ー゚)リ「えっと、ちょっと気持ち悪いんですけど……」
('A` )「……お前記憶喪失だろ? 相手にそれ説明したのか?」
電話に戸惑っている声が聞こえてきて、ドクオは小声で助け舟を出してやった。
するとミセリはそれだ! と言わんばかりのガッツポーズをドクオに見せ付けた。
ミセ*;゚ー゚)リ「あの、私って記憶喪失なんです。
だから仲間とか言われても実感なくて、困ります!」
ミセ*;゚ー゚)リ「……え? 迎えに来るって、今ですか!?
いや、あの、気持ち悪いです!」
<_;プー゚)フ「ミセリちゃんよ、キモイだけじゃ話が通じないと思うぜ」
ミセ*;゚ー゚)リ「だっていきなり仲間だ迎えに行くってオッサンに言われてるんですよ!?
私って寛容ですけど、コレさすがに気持ち悪いです!」
(;'A`)「それ相手かなり傷付いてるぞ。とりあえず話聞いてやれって」
ミセ*;゚ー゚)リ「……は、はい? えっと居ますけど。
保護者っていうか、助けてくれた人……」
不安そうなミセリがドクオをチラ見する。
ミセ*;゚ー゚)リ「……かわってほしいそうです」
(;'A`)「……まあ、仕方ないか」
ドクオは渋々携帯電話を受け取ると、耳に当てて応答した。
('A`)「……もしもし」
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『……もしもし』
(; ^ν^)「あーもしもし。悪いな、そんなの拾わせちまって」
( ><)「ミセリお姉ちゃん!」
( <●><●>)「いま電話中だから黙れ」
『気にしないでくれ。俺もこの子しか助けられなかった』
( ^ν^)「ん? ……ああ、アレ相手に一般人を巻き込んだのか。
そいつは駄目だな……事後処理までさせて悪かった」
( ^ν^)「とにかく一度、そっちに行ってミセリの無事を確かめたい。
場所を教えてくれないか? 瞬間移動するから準備したらすぐ行ける」
( ^ν^)「……レム、え? なっ――」
ブツン、と唐突に通話が切れる。
番外編的な方で登場した男・鵜入速人は、ぽかんとした表情で携帯電話を下ろした。
.
-
( ^ν^)「……切れちった。
まあレムナントのどっかだろうし、そう焦ることもねえとは思う」
振り返り、視線の先の男に告げる。
その男――『顔付き』のリーダー格であるその男は、ゆっくりと腰を上げた。
「感知能力者が居ないのは、こういう時に不便だな」
男は冗談らしく微笑み、周囲で指示を待つ仲間達に向けて言った。
「あそこに行くなら必ず荒巻が出てくる。
少々早くなったが、戦闘はまず避けられんだろう」
「用意しろ。ミセリとミルナ、そして素直クールを奪還しに行く」
男は片手をかざして大仰に指示を下す。
しかしその言葉で動き出す者は一人も居らず、一同は言葉足らずの沈黙に呑み込まれた。
( ^ν^)「ネーノさん、用意できてねえのアンタだけだぞ」
「……」
「その名で呼ぶなら、この顔を付けてからにしろと言っているだろう」
男は照れ隠しの為に白々しくそっぽを向き、自分の顔面を一撫でした。
その行為を終えた直後、男の顔面には、先程とは別の顔が浮かび上がっていた。
.
-
( `ー´)「……今日は旧友にも会えるのだ。
本人も、この顔の使用を許してくれる筈だろう」
――男は、何者でもなかった。
ネーノという人物の姿形はあっても、それは彼自身本来のものではなかった。
本来、自分がどういう姿だったのかは彼自身も覚えていない。
男は、ネーノが作り出した最後の希望。
この物語がtanasinnと決別する為に生み出された、一つの結論であった。
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『とにかく一度、そっちに行ってミセリの無事を確かめたい。
場所を教えてくれないか? 瞬間移動するからすぐ行ける』
('A`)「分かった。えっと、レムナントの――――」
その時、微弱な揺れがドクオ達の体を揺らした。
揺れは数秒続いた後ピタリと止まったが、
(;'A`)「なんだ、地震――ッ!」
ミセ*;゚Д゚)リ「うわッ」
次の瞬間、地面そのものが大爆発したような衝撃が彼らを襲撃した。
予期しない、あり得ない規模の超衝撃。
最早建物の倒壊は必然――この場で唯一まともに動けるドクオには、エクストとミセリを守る義務があった。
<_;プー゚)フ「おおおッ!?」
(;'A`)「口閉じてろ!」
ふたたび微震が始まる最中、ドクオは冷静さを欠いたエクストとミセリを担いで外に飛び出した。
その直後、町にあったオンボロ小屋の数々は、藁の家が壊れるような呆気なさで次々と倒壊し始めた。
.
-
ミセ*; ー )リ「い、痛い……ケツを打った……」
荒野に放り出されたミセリは既に周囲を気に掛けている場合ではなかった。
彼女はケツを抑えて地面に倒れ、もうそれどころではなかった。
<_;プー゚)フ「おい、また揺れてるぞ!! 次あんじゃねえのか!?」
(;'A`)「衝撃の出所は覚えたから下がれ!!
これは地震じゃあない! 俺がなんとかする!!」
ドクオは二人を庇うように前へ。
左拳を地面に向かって構え、ドクオは複雑な笑顔を浮かべた。
(;'A`)(クマさん……。何しに来て、何やってんだよ……ッ!!)
微震が静止し、再びあの巨大な衝撃に身構える三人。
ドクオは超能力を発動し――光も無しに超能力を発動し、
(# A゚)「“撃動”のォ……――――」
次なる衝撃を相殺させるべく、撃動の拳を大地に突き出した。
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
( (エ) )「……」
( ゚д゚ )「……」
荒野に、まるで隕石でも落ちたかのような巨大陥没が出来上がっていた。
その中心には男が二人。クマーとミルナの戦いは、クマーの一撃のもとに終結していた。
( ゚д゚ )「……無様なもんだろう」
( д )「こんなに弱いのに……おれはまだ、それでも、生きてやがる――――」
ふら、と風に吹かれて倒れ込む。
ミルナは意識を喪失し、そして動かなくなった。
( (エ) )「……か」
(;・(エ)・)「――勝った! やった! あああああああああ!!」
その傍らで諸手を上げて喜ぶ熊マスク。
既にミルナなど眼中にない。クマーはもう早く帰って寝たかった。
.
-
( "ゞ)「おーおーやるやる。さすが。
つっても武神のお膝元に住んでんだ、こんぐれえ出来て貰わねえとな」
( `ハ´)「……助力したとはいえ、そちらの弟子も中々よの」
陥没の中に降りてきた二人は、クマーにそこそこの賞賛を浴びせた。
上記以外にまったく本当に何の賞賛もなかったので、クマーはかなり物足りなかった。
(;・(エ)・)「あーしんどい。あーしんど」チラチラ
( `ハ´)「……こやつの止め、私が貰っても構わんか?」
シナーは地面のミルナに槍の穂先を向け、今すぐ殺さんと槍に力を込めた。
しかしそこはデルタが止めに入った。
順序は入れ替えたが、デルタは荒巻の言いつけを守るつもりでいたのだ。
( "ゞ)「待ってくれ。こいつを殺すなら許可がいるんだよ。
そいつもウチの弟子でな、すぐ近くに居るんだ」
( `ハ´)「……構わん、待とう。この程度の男、いつでも殺せる」
槍を引き、シナーは踵を返す。
デルタは気絶したミルナを担ぎ上げると、満身創痍のクマーに一応声を掛けた。
( "ゞ)「お前は来るか? ドクオのとこ」
(;・(エ)・)「あー……疲れたので後で行きます。あとで」
(;・(エ)・)(早めに行くと五万返せって言われそうですし……)
( "ゞ)「あっそ。んじゃあ先に行ってるぜ」
こうしてミルナを容易く半殺しにした武人一同は、ミルナを連れてドクオの元へと走り出した。
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ところ変わってメシウマ、ステーション・タワー。
来客用の部屋でデミタスと今後の打ち合わせをしていた荒巻は、突然現れた敵意に戦慄を覚えた。
(´・_ゝ・`)「……どうした爺さん。急死するのか」
/ ,' 3 「……ちょっくら出掛けてくる。お前はカンパニー全員集めて迎撃しろ」
(´・_ゝ・`)「は?」
事実はシンプルに。
荒巻は今起こり始めた緊急事態を一言でデミタスに告げた。
/ ,' 3 「顔付きの連中が雁首揃えて来るぞ。数分後にな」
(;´・_ゝ・`)「――ハァ!?」
/ ,' 3 「ワシは素直クールを連れてレムナントに引っ込む。
殺し合いにはならんだろうが死ぬ気で戦ってほしい。では失礼」
パシュ、と呆気なく瞬間移動で姿を消した荒巻スカルチノフ。
訳も分からず取り残されたデミタスは、とりあえず
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「……ま、書類片付けてからでいっか」
緊急事態を後回しにした。
.
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16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596
第二十七話 悪性萌芽 その1 >>609-673
第二十八話 悪性萌芽 その2 >>704-726
第二十九話 悪性萌芽 その3 >>733-771
次回が折り返し地点です そうなる予定です
なのですが、30話を投下後、しばらく逃亡します('A`)
10話分は書き溜めてから投下再開したいので、正直一年は逃亡すると思います('A`)
もうほんと何年もかけてすまんね┗(^ω^)┛パワーオブスマイル
長さと面白さを比例させる為に笑顔で頑張ります┗(^ω^)┛パワーオブスマイル
次回は来月末くらいです
かなり長い回なるので、4月になるかもしれません('A`)スマヌ
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待ってたぞ!!!!!
もう待つの慣れてるから
これからも頑張ってくれ
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なにわろとんねん
乙待ってる
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何年でも待つ
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私待つわ
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武神連中が思ったよりチートだった
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いやっふぅ!乙
-
ネーノって誰かと思ったら刹那の時にいたなそういや
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おつおつ
待ってる
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(^ω^)今夜投下します('A`)
30話で逃亡予定でしたが、32話くらいになるかも('A`)
とにかく区切りの良いとこまで投下して逃亡するNE(^ω^)
-
待ってるぜ
-
≪1≫
――ステーション・タワー内、社員食堂。
(`・ω・´)「なんにする」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……」
(`・ω・´)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……あー……」
(;`-ω-´)「……決めてから来い」
カウンターに用意されたメニューをアホ面で眺めているツン。
注文を聞くため身構えているシャキンは、彼女に悟られないよう溜め息を吐いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……よし」
(`・ω・´)「決まったか」
ξ゚⊿゚)ξ「餃子とラーメン唐揚げ。あと水」
(`・ω・´)「……水は自分で取って来い。あと今は昼だが?」
ξ゚⊿゚)ξ「……それが?」
(`・ω・´)
シャキンは一瞬の間を置いた後、
(`・ω・´)「オッケー分かった死ぬほど盛ってやる。3番呼んだら来い」
と言い残して厨房に入った。
.
-
昼間の社員食堂はそこそこの繁盛振りを見せていた。
席も殆どが埋まっており、全方位から無意味な雑談が聞こえてくる。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
そんな混雑の中、ツンは三席用意されたテーブルに一人で座っていた。
誰かの為に席を確保している訳でもないが、彼女の辛辣な雰囲気が人気を払っていた。
つまりぼっちだった。
_
( ゚∀゚)「お〜居た居た」
その時、ぼっち飯敢行直前だったツンの前に、太眉の男・ジョルジュ長岡が現れた。
彼はさっさと椅子にかけ、持ってきた日替わり定食に向かって手を合わせた。
_
( -∀-)「いただきます」
ξ゚⊿゚)ξ「……他所で食べなさいよ」
_
( ゚∀゚)「いいだろ別に。お前んとこ、いっつも空いてるんだしさ」
.
-
_
( ゚∀゚)「それよりツン、昼飯は何にしたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「餃子とラーメンと唐揚げ。一口もあげないわよ」
_
(; ゚∀゚)「……俺が言う事じゃねえけどさ、お前健康とか考えたらどうだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「食べたい物を食べる主義よ。太った所で高が知れてるし」
_
(; ゚∀゚)「あーそう。お嬢様は言う事がちげーな。
普通、太るのは嫌がるもんだぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「私は太る前に運動するから大丈夫なの。
太ってから痩せようとするのがそもそも手遅れなのよ」
_
( ゚∀゚)「まぁ分からんでもない。だがこの話は打ち切りだ。
耳に激痛走ってる女子が周囲に居るのが分かる。自粛だ」
ξ-⊿-)ξ「話題に乗っただけよ。知ったこっちゃないっての」
ツンはテーブルに肘をつき、壁際にずらっと立ち並ぶ店舗を右から左へと一望していった。
フードコートめいたこの食堂は時折店が入れ替わる。
こうして店の様子を見直すと、新たな発見があったりするのである。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ。アイスの店、消えてない……?」
_
( ゚∀゚)「あの店か? こないだ撤退したぜ。
今はカキ氷屋が入ってる。けっこう美味いぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……要望書を書かなきゃ……」
_
( ゚∀゚)「お前の要望の為に消えた店がいくつあると思ってんだ。
今年はカキ氷の年なんだよ。諦めろ」
ξ;゚⊿゚)ξ「カキ氷じゃチョコとオレンジのダブルが出来ない……」
『シャキン食堂、番号札3番のお客様ー。出来たぞー』
半端な呼び出しが食堂に響く。
ツンは立ち上がり、シャキンが作った料理のもとへと早歩きで向かった。
(`・ω・´)「おう。たっぷり盛ってやったぞ。こぼすなよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ありがとう。出来れば席まで持ってきてほしいけど」
(`・ω・´)「俺の仕事は作るとこまでだ」
ξ゚⊿゚)ξ「頑固な料理人って感じ。お似合い」
(`・ω・´)「味以外を褒められてもな。ほら、冷めない内に食ってこい」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、それじゃ」
.
-
_
(; ゚∀゚)「……うっわ」
戻ってきたツンを見るなり、ジョルジュはドン引きして仰け反った。
彼女が持ってきた餃子ラーメン唐揚げセットの総量は、一般女性一回の食事量を明らかにオーバーしている。
だが当の本人は平静のまま、悪びれずに箸を構えていた。
_
(; ゚∀゚)「毎回思ってんだけどさ、それマジで食べんの?」
ξ゚⊿゚)ξ「……そんなに多くないと思うけど」
_
(; ゚∀゚)「いや、量もカロリーもヤバイ。
正気を疑うぜ。毎回食べきるんだから尚更な」
ξ゚⊿゚)ξ「アンタに人を疑う程の知能ないでしょ。もう食べるから黙って」
_
(; ゚∀゚)「……いただきます」
ξ-⊿-)ξ「いただきます」
――無言の昼食が始まろう、としたその途端。
尋常ではない大きさのノイズが食堂スピーカーを響かせ、次いで誰かの荒々しい息遣いが聞こえてきた。
_
( ゚∀゚)「なんだイタズラかぁ? 後が怖いのによくやるぜ」モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ「……多分、違う」
スピーカーの音声を冷静に分析するツン。
彼女の予想は、次の一言に全肯定された。
.
-
『――――タワー内、全職員に通達する……ッ!』
それは盛岡デミタスの声。
瞬間、この放送を聞いている全員が目の色を変えた。
『端的に言う……“敵”が来た! 複数だ! 瞬間移動能力者も確認済!』
『緊急事態宣言を出して適宜対応しろ! 自信がある奴は迎撃に迎え!』
『街の防御はカンパニーが請け負った! 以上、働け!!』
_
( ゚∀゚)「……ハハッ。なんか映画みたいだなぁ」パクモグ
ξ;゚⊿゚)ξ「バカ、マジの出来事よ! 訓練じゃないんだから早く行くわよ!」
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( ゚∀゚)
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(; ゚∀゚)「えぇぇええ!? 俺まだメシ食い終わってないんだがー!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……じゃあいいわよ。先に行ってるから。後で合流したらヨロシク!」
だらけた昼食ムードは一変。
弾けるような足音に満たされた食堂は、瞬く間に人気を失っていった。
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( ゚∀゚)
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( ゚∀゚) パクー モグー
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( ゚∀゚)「……あー美味い!! たまらんな!」
あっという間にぽつんと取り残されたジョルジュ長岡。
しかしそれでも食は進み続け、
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( ゚∀゚)(今ならツンの食べてもバレないんじゃね?)
という奇跡の発想にまで到達していた。
したらば即実行。ジョルジュはツンが注文したラーメンをずるりと平らげ、餃子唐揚げコンビにまで箸を伸ばす――
「――こんなトコに一人ッきり。狙えと言わんばかりだなあ、長岡ァ!!」
だが、自分に怒声を向けられたとあっては、ジョルジュ長岡はその手を止めざるを得なかった。
ジョルジュはピタリと箸を止め、目だけで声の方を確認した。
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(# ゚∀゚)「……なんだァ? てめェ……」
「…………アア? おい、俺だぞ…………!?」
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(# ゚∀゚)「……知らねェよ。誰だよお前、誰だよ!!」
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(; ゚∀゚ )「――このッ!!」
男は驚愕のあまりに身を震わせ、言葉の続きを恐る恐る呟く。
(; ゚∀゚ )「この永遠のライバル、アヒャ様を……っ!!」
_
(# ゚∀゚)「知らねェって言ってんだろ!!」
(; ∀ )「地下プロレスチャンプだったこの俺様を……ッ!!」
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(# ゚∀゚)「だから知らねェってば!!」
(# ゚∀゚ )「――忘れやがったなァァァァァァァ!!」
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(# ゚∀゚)「アァァァァアァァァァァァ!?」
戦闘、よく分からないまま開幕――――!!
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≪ ( ゚∀゚) / ジャガーノート ≫
【能力者】 ジョルジュ長岡
【タイプ】 近距離/身体強化型
【基礎能力】
[破壊力:B] [スピード:D] [射程距離:D]
[持続力:C] [成長性:D]
A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み E=よわい F=論外 S=最強
【能力概要】
シンプルな身体強化。とても力持ちになれるので、とてもスゴイ。
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――ステーション・タワー、最上階。展望フロア。
既に戦闘を始めていたデミタスは、相手の一挙手一投足を見逃さんと目を凝らしていた。
戦況はやや有利。攻撃権はデミタスが独占していた。
しかし、デミタスはいまいち相手を仕留めきれずにいた。
語るにも及ばない、分かりきった陳腐な理由一つで。
( ^ν^)「……なんだ、やりにくいか?」
(;´・_ゝ・`)「……まあな。よく似た奴を知ってると、どうにも」
( ^ν^)「……なるほど」
ニューはデミタスを手招き、宣言する。
( ^ν^)「念願叶って敵同士だぜ。来いよ、出来を見てやる」
(;´・_ゝ・`)(……あの頃よりイキイキしてやがるのが、ムカつく……!)
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≪ (´・_ゝ・`) / 毒の姫君(ポイズン・メイデン) ≫
【能力者】 盛岡デミタス
【タイプ】 中距離/具現化・自立型
【基礎能力】
[破壊力:C] [スピード:D] [射程距離:C]
[持続力:A] [成長性:D]
A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み E=よわい F=論外 S=最強
【能力概要】
毒の能力。獰猛なスタンド。女体。
デミタスは小さい頃からこの能力を制御出来ておらず、今も出来ていない。
この能力は本体の意思に関わらず、本体の体内で無限に新種の毒を生成し続けている。
しかし新毒の抗体は自動生成されないため、それを放置しているとデミタスは自滅する。
抗体はデミタス自身の『毒に抗う意思』にのみ反応して作成され始める。
よって、能力自体の成長性に本体の意思がついていけなくなった時、本体には確実な死が待っている。
『強くなり続けなければ死ぬ』という非常に危険な能力だが、克服した毒はその後自由に取り扱える。
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あの放送から十分と経たない内に、タワー周辺には理路整然と並んだ武装車両の数々が出揃っていた。
能力者、無能に関わらず、カンパニーという枠組みの人間は次々とその車両に乗り込んでいく。
メシウマ住民への避難警報は後回し。まず街中の様子を確認しない事には『上』を動かすことは出来ない。
街全体に及びかねない戦闘行為、あるいは脅威、あるいは人物。
それらを一秒でも早く発見する事が、カンパニーにとって第一の仕事だった。
ツンが乗り込んだ車両には、見知った相手が二人乗っていた。
( ´∀`)
*(‘‘)*
モナーとヘリカル沢近の二人だった。彼らはツンを見るや、愛想よく手を振って見せた。
ツンは一瞥でそれに答えると、すぐさま運転席の男に出発の合図を出した。
運転手は車のあれやこれやガチャガチャし、別部隊を置いて街中を走り始める。
「ったく、部隊長は俺だっての……」
部隊長の小言を聞き流し、ツンは振り返って部隊メンバーを見直した。
先の二人以外には超能力保有者が三人。後方支援役の無能力者が一人。
ツンと部隊長を含めた八人が、この部隊の編成であった。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「誰か、状況分かる人居る?」
誰でもいいから答えて、と付け加えて全員の顔色を窺うツン。
案の定、彼女の問い掛けに答えられる者は一人も居ない。
*(‘‘)*「デミタスさんが展望フロアで戦闘中なのは確認されてます。
敵は複数との事ですが、他の戦闘は今のところ確認されていません」
ξ゚⊿゚)ξ「特課の流石兄者はズバ抜けた感知能力者でしょ?
そっちの情報はないわけ?」
( ´∀`)「残念。兄者はさっきの放送の少し前、一人で飛び出していったモナ。
連絡はつかず。今は別の感知能力者が事に当たっているモナ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。期待してたけど居ないなら算段から外すわ。
となれば、やっぱり大名行列を作って探すしかないか……」
ツンは腕を組み、深慮するためようやく座席に腰掛けた。
ξ゚⊿゚)ξ(敵は先日荒巻が話していた『もう一人』の集団に違いない。その目的はミルナ。
そしてミルナは壁の向こう。
私達の警戒網を突破しない限り、敵は目的を果たせない――いや、違う?)
ξ-⊿-)ξ(敵には瞬間移動の能力者が居る。ならわざわざこの街に一度降りる必要はなかった。
壁の向こうにはない目的が、この街にある?)
.
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ξ゚⊿゚)ξ「……ヘリカルちゃん。
街の重要施設、言えるだけ全部言ってくれる?」
*(‘‘)*「え、既に別の部隊が向かっていると思いますけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「個人的に優先順位を決めたいの。お願い」
*(‘‘)*「……分かりました。では、ステーション・タワー」
違う。
*(‘‘)*「メシウマ議事堂。あとその近くの記念公園」
違う。
*(‘‘)*「国立図書館。一部の秘匿文書が保管されてます」
……引っ掛かるが、違う。
*(‘‘)*「庁舎、特課の研究施設。刑務所や、総合病院……」
*(‘‘)*「お金を狙うなら大手銀行だし……今狙われそうな重要施設ってまだありましたっけ?」
( ´∀`)「……多分そこら辺は全部狙われてないモナ。
狙われてたら先に施設の警報が作動してるし、もう手遅れモナ」
*(‘‘)*「じゃあ敵の狙いって何なんでしょう? 陽動は、まあ目的の一部でしょうけど……」
.
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ξ゚⊿゚)ξ「……とりあえず街の見回りね。
一般人には適当に殺人犯ガーとか言っておきましょう」
*(;‘‘)*「それはそれで問題あるかと……」
「――通信だ! 音上げるぞ!」
途端、部隊長が声を張り上げた。
彼の一喝に閉口した面々は、その通信に耳を傾ける。
『現在タワー内にてデミタスさん、ジョルジュさんが交戦中!』
『ほか数箇所にて敵性勢力を確認! 各隊、一般人の避難・護衛を優先との命令!』
『敵はほぼ全員、戦略級以上の超能力を保持! よって“特記超能力保持者”の戦闘が予想されます!』
『その他能力保持者は戦闘の二次被害を想定し、対応できる範囲で被害を食い止めて下さい!』
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*(;‘‘)*「……せ、戦略級って、核兵器に使う言葉じゃ……」
その通信を聞いたヘリカルが、恐れ戦くように小さく呟いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……私も実際聞いたのは初めてかも。
なんにせよ、これで状況は前進したわ」
ξ゚ー゚)ξ「私達は、死なない程度に頑張りましょう」
さっきのお返しか、ツンはヘリカルに笑顔を送る。
もっともその内心は既に臨戦態勢。この笑顔は、最後の余裕で作った紛い物だった。
( ´∀`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ(……『特記超能力保持者』 なんて、わざわざ長い方で呼ばなくてもいいじゃない)
ξ゚⊿゚)ξ(荒巻さん、デミタスさん、モナーさん、1さん。
この四人で対処できなくても、今は武神までこの街に居る)
ξ゚⊿゚)ξ(磐石と言えば磐石だけど、でもまだ引っ掛かる。
敵の狙いが読みきれない内は、敵の思惑に乗っておくべき?)
ξ゚⊿゚)ξ(回復役の私に出来ることは一つ。展開を読んで適切なタイミングで回復を行うことだけ。
早々にリタイアする訳にはいかないし、モナーさんについていくのは早計かしら……)
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( ´∀`)「……部隊長、一番強いであろう敵の所に向かって欲しいモナ」
モナーの優しい声が、冷ややかに激戦を要求する。
彼はさっさと最大戦力を倒し、この局面を片付けるつもりでいた。
部隊長はモナーの頼みを聞き入れ、すぐさま司令室から敵の居場所を聞き出す。
「このまま真っ直ぐだ! 敵は二人!
ガキらしいが、先行した連中はもう潰されてるってよ!」
( ´∀`)「……だったら、まずは『三人』で様子を見るモナ……」
モナーはカンパニー制服の襟に手を入れ、そこに仕込まれたスイッチをカチンと押し込んだ。
すると制服は仄かな光を発し始め、その光は微塵も残さずモナーの超能力として再構成されていった。
*(;‘‘)*「……モナーさん……」
( ´∀`)「大丈夫、僕の【挑戦者(チャレンジャー)】は負けないモナ」
.
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≪ ( ´∀`) / 挑戦者(チャレンジャー) ≫
【能力者】 モナー
【タイプ】 中距離/具現・自立郡体型
【基本能力】
[破壊力:D〜S] [スピード:E〜S] [射程距離:C〜S]
[持続力:E〜S] [成長性:S]
A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み E=よわい F=論外 S=最強レベル
【能力概要】
小人戦士(全長15センチくらい)を具現化する能力。最大10人まで具現化可能。発動・具現化の対価は『記憶』
個々が自立して思考しており、戦闘は具現化した彼らが勝手に行う。モナーがやるのは具現化だけ。
一人二人が倒されたところで本体にダメージはないが、倒された場合は対価とした『記憶』を失う。
挑戦者達は学習能力が非常に高く、戦い続けることで理論上無限に強くなっていく。
しかも全員がモナーを介して戦闘経験を並列化しているので、一人を倒しても更に強くなった他の挑戦者を倒さなければならない。
攻略法その1。対価の『記憶』が限界を迎えるのを待つこと。
挑戦者達を倒し続け、人間として必要な『記憶』まで対価にせざるをえない状況にモナーを追い詰める。
もっとも、『戦闘経験』という『記憶』が発動中にも積み重ねられているため、『戦闘経験』を対価にしている間は絶対に倒せない。
しかも『戦闘経験』を失ったところでその経験は並列化によって補完されるため、実質対価ナシ
攻略法その2。モナーを含めた全員を一撃で倒しきる。
これが一番手っ取り早いだがそうそうできない。荒巻はこの方法で倒した。
攻略法その3。落とし穴などの戦闘を回避するトラップ
具現化されたチャレンジャーをその都度なにかに閉じ込める。これで10人を捕まえきれば勝てる。
チャレンジャーは挑戦者自体がダメージで再起不能になるか、能力者自身が敗北を認めない限り消えない。
(一度敗北を認めてから再度能力を発動するのは常套手段)
など(予防線)
格下〜同格の相手には圧倒的に勝てるが、圧倒的に自分より強い相手には歯が立たない(初期状態の挑戦者全員を一撃で倒すような相手)
だが、ずっと能力を具現化したまま経験値をため続ければ自分より強い相手にも互角はとれるのでほぼ最強。
一度発動を止めると経験値はリセット。挑戦者達は記憶を失い、初期状態に戻る。
なおデミタスと組むと無限に強くなれる。
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メシウマ郊外にどんと構えた三棟からなる巨大な研究施設。
それが世間一般に知られる“総合技術研究所”の本部なのだが、その中身が一般に公開された事は一度もない。
実は能力者が中に一人居て、そいつが施設全体をたった一人で防衛してる。
最深部には、世界を震撼させるほどの研究資料が眠ってる。
そうした枝葉をつけた噂は多々あるが、そもそも施設丸ごと囮という答えにまで世間は気付かない。
総技研の真の本部は、都市部のビル群に平然と紛れこんでいるのだ。
……ならば、ここまで巨大に作られた囮の施設は何の為にあるのか。
囮として作るには余りにも規模が大きすぎる。ただの箱に、荒巻はここまでの手間をかけるだろうか。
( ´_ゝ`)(恐らく、逆だ)
流石兄者は前々からそうした疑問を抱え、同時にこの施設に対する推測も立てていた。
表向き――つまり関係者の中では、こっちの巨大施設の方が囮で、総技研の方が本命とされていた。
しかし荒巻にとっては逆だったのだ。総技研が囮で、こっちが本命。
もし荒巻という男に関係者にすら隠さねばならない秘密があったなら、
その隠し場所はここ以外に候補がない――この推測が正しければ、敵は確実にここを狙いに来る。
街の陽動が良い証拠だ。流石兄者は確信し、既に巨大施設の中に足を踏み入れていた。
.
-
( ´_ゝ`)(……居るんだろ)
通路に足音が響く。
研究施設らしい潔癖な雰囲気はあるものの、この空間に人の気配は皆無。
ここに何があるのかは知らない。敵の目的すら分からない。
だが、流石兄者はどうしてもここに来なければならなかった。
彼の超能力 【リスキーシフト】 があの男を捉えた瞬間、彼は特課としての自分を放棄して動き出していた。
通路の天井の隅。そこからジィとこちらを見つめているのは、小さな監視カメラだった。
流石兄者はそれに気付くと、カメラに銃口を向けて呟く。
( ´_ゝ`)「決着をつけに来たぜ、兄弟」
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一瞬の火花。それを最後に、監視カメラの映像は砂嵐にまみれた。
モニター越しに流石兄者の姿を覗き見ていた男は、椅子にもたれて深く呼吸する。
(´<_` )「……さて」
やがて男は拳銃を持ってその部屋を後にした。
憎悪に染まった血の繋がりを、己が手で断ち切る為に。
.
-
≪ ( ´_ゝ`) / リスキーシフト ≫
【本体名】 流石兄者
【タイプ】 近〜遠距離 / 具現化型
【基本能力】
[破壊力:-] [スピード:-] [射程距離:E〜S]
[持続力:A] [精密動作性:S〜E] [成長性:E]
A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み E=よわい F=論外 S=最強
【能力】
発動するとシャボン玉のような球体が出現する。
それがリスキーシフトの本体であり、能力の全て。
この球体はある程度まで拡大する事が可能で、兄者は球体の内側に入った存在の 『思考』 と 『位置』 を知覚する事ができる。
ただし思考・位置は完全に読める訳ではなく、知覚範囲の拡大に従って情報は曖昧になる。
索敵能力として飛び抜けて優秀であり、この能力は周囲から感覚網と呼ばれている
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――レムナント。ドクオの故郷跡地。
ドクオにとって、最強という言葉を文字通りの意味で使える人物はただ一人。
数多の超能力者を含めてもなお、デルタ関ヶ原は変わらず最強の座にどんと腰を下ろしているだろう。
( "ゞ)「おう、なんか話してたか?」
(;'A`)「……デルタさん?」
その男が今、数年振りにドクオの前に立っていた。
半生半死のミルナを肩に担ぎ、デルタは意地悪い笑顔を浮かべている。
( "ゞ)「まあいい。そっちの話が終わったら俺の番だからな」
デルタはミルナを地面に置き、その隣に腰を下ろす。
彼の視線はドクオ達を捉えて放さず、無言の圧力を掛けてくる。
.
-
(;'A`)「……待ってくれ。そいつ、どこで……」
( "ゞ)「……なんだよ。素直に順番待ちしようと思ったんだが、先にしてくれんのか」
ドクオとデルタはミルナに目を向け、しばし、沈黙を挟んだ。
短いながらも共に過ごし、そして同じ超能力を持ったドクオとミルナ。
そのミルナは何かを切欠にドクオから離れ、多くの人間を殺戮した。
荒巻は言っていた。ミルナは孤立を選んだと。
だが、ドクオは未だにそれを本人の口から聞いていない。
ミルナを多くの人間の敵にしてしまうには、今はまだ余りにも言葉が足りなさすぎるとドクオは思っていた。
一人の友人として、最大限ミルナの味方であろうと思っていた。
だから荒巻にも一日だけ貰い、結論を先延ばしにして何をすべきか考えるつもりだった。
しかし、ドクオのそんな考えはデルタ関ヶ原には無関係。
この状況がまさにそれだ。一日の猶予があった筈が、ミルナは半日足らずで討伐されている。
最早、怒りとかそういうものを通り越した
(;'A`)「は?」
という困惑の言葉しか出てこなかった。
.
-
( "ゞ)「他の連中と一緒にこっちに来てな、荒巻の頼みでコレを殺しに来た」
(;'A`)「殺しに、って……」
( "ゞ)「ああ、もちろん聞いてるぜ。お前の知り合いなんだろ?
だから殺し切る前にお前の許可を貰いに来た。ついでに会いたかったしな」
(;'A`)「……」
(; A )
浮かび上がった言葉は一つ。
それを言う為、ドクオは心を深く閉ざした。
言えば恐らく回避不能の戦闘が始まる。
デルタ関ヶ原は確実に俺を屈服させようとする。
ドクオがそれに立ち向かうには、デルタに対しての恐怖・諦念を捨て去る必要があった。
ドクオの心身に冷たい空気が流れ込む。
冷えきった心は、反抗の言葉を口走った。
('A`)「……駄目だ」
.
-
( "ゞ)「……いま、なんつった」
ドクオの断言はデルタにとって不意打ちだった。
反対される予想はあったが、ドクオがそれを言う事はありえないとデルタは高を括っていた。
少なくとも昔のままのドクオであれば決して反対などしなかった。素直クールの命にだけ拘っていたドクオなら。
('A`)「駄目だって言った。そいつは俺の、……」
しかし、そこで言い淀むドクオ。続く言葉が思いつかない。
( "ゞ)「……なるほど。思ったよりタフに育ったか。
付け焼刃にしては良いトコまでいったらしい……。なるほどな……」
よっこらせ、と呟きながら立ち直るデルタ関ヶ原。
彼は含みのある笑みを浮かべたまま、ドクオに近づいた。
両者の間隔が拳の射程内に収まる。
ドクオはデルタの顔を見上げ、デルタは期待を込めた眼差しでドクオを見下ろす。
( "ゞ)「意見が違えば問答無用だ。
それを承知で俺に『駄目だ』と言ったな、ドクオ」
('A`)「……」
<_;プー゚)フ「――おい、ドクオ!!」
決裂した二人の間にエクストの叫びが割り込む。
彼は地べたに這ったままドクオに向かって言った。
<_;プー゚)フ「そいつデルタ関ヶ原だぞ!? 分かってんのか!?」
.
-
('A`)「……俺の話はまた後で頼む。
それより先に、こっちを片付ける」
<_;プー゚)フ「逆だバカ! 片付けられるのはお前だぞ!」
( 'A`)「……黙ってろ。邪魔だ」
最後の制止を振り払い、ドクオは目の前の男に集中する。
勝てる見込みはなかった。当人にもその理解はある。
ならなぜ戦うのか――強いて言うなら、それは発散だった。
('A`)
目覚めてからずっと内心で燻っていた感覚。
無数に枝葉をつけた言葉の数々。心身に結びついた思考の楔。
ドクオという存在が出来上がってから今まで積み重ねてきた葛藤、苦悩――そういう邪魔なもの。
もしそれを全力でぶつけられる相手が居るとすれば、それは今、デルタ関ヶ原しか居ない。
.
-
( "ゞ)「俺の性分を覚えててくれて嬉しいぜ。
俺は話し合いなんかには応じない。道理も理屈も見ず知らずだ」
( "ゞ)「……まあ、アレだ……いかんな。いざ“殺す”となると、語彙が狭まる……」
( "ゞ)「お前には分かるだろ? 死って奴を考えると、途端に言葉が薄くなる感じ」
('A`)「分からない。俺は逆だから」
( "ゞ)「だろ? だからよ、もうここまでだ。この先は殺し合いだ。
お互い、無理して真面目ぶるのはやめようぜ」
('A`)「でも帰ってくれるなら戦わない。俺自身、今の俺がどんなもんか分かってねえんだ」
( "ゞ)「なんか懐かしいな。お前とこうして喋るのは。
あの頃は何回くらい半殺しにしたっけな。もう覚えてねえわ」
('A`)「無駄にやりあってお互い致命傷じゃ意味無いだろ。
だから余裕のある方が下がるべきだと思うんだが」
( "ゞ)「そうだ、後でクマーの奴にも会ってやれよ。
あいつもあいつで相変わらずだけどな」
('A`)
( "ゞ)
<_;プー゚)フ(……こ、こいつら……)
.
-
(# "ゞ)「てめえは昔っからッ――人の話をッッ!」
(#'A`)「――そりゃあアンタも同じだッ!」
怒号と同時に飛び退いて距離を取ったドクオとデルタ。
そして次の瞬間には戦闘準備に入り、両者は即座に拳を構えて大地を蹴った。
<_;プー゚)フ(お互いまるで、人の話を聞いてねえ!!)
ミセ;*゚ー゚)リ「あーケツ痛い……え、なんか始まってます?」
(# "ゞ)「腹ァ括れよ馬鹿野郎! 泣かせてやるから覚悟しろ!」
先に殴りかかったのはデルタ関ヶ原。
その一撃を迎撃するのは、能力を発動し、装甲に包まれたドクオの左拳。
だがこれではデルタの一撃は相殺できない――直感の刹那、ドクオの背で撃鉄が高鳴る。
(# A゚')「マグナムブロウ、撃動のオオオオッッ!!」
二人の拳が真っ向から激突。
均衡した力の激突は両者にさほどのダメージを与えない。
(;'A`)「……ッ!」
しかしドクオは先んじて気付いていた。
自分の拳の装甲が、デルタの拳骨の形になって凹んでいる事に。
(;'A`)(なんだこれ!? 意味分かんねえッ……!)
(; "ゞ)(ミルナと同じ能力ッ!? しかもクマーの技ッ!?)
.
-
(# "ゞ)「――手段を選ばず強くなったか! 上等!」
(;'A`)「ッ!?」
ドクオが狼狽から覚める前に、デルタは次の攻撃に移っていた。
デルタは打ち合った拳を引くと同時、空いた片手でドクオの左拳を掴み取っていた。
ドクオは咄嗟に腕を引いたが、デルタの五指は既に装甲内部に深く食い込んでおり、回避は叶わず――
(;'A`)(握力ッ! なんつうバケモッ――)
(# "ゞ)「――――」
デルタの一撃が体に触れた瞬間。
ポ、と耳の奥で空気が弾けるのが分かった。
(; A )「が、あッ――」
遅れて、痺れるような痛みが腹の奥底から湧き上がってきた。
内臓が逃げ場を求めて縮み上がり、今にも口から噴き出そうなのを寸前で耐える。
(; A゚)「……ごっぷ!」
デルタの拳はドクオの胸部をものの見事にぶち抜いていた。
体を貫通していないのは手加減の賜物だが、逆にそのせいで一撃の全衝撃がドクオの体内で乱反射していた。
肉体の徹頭徹尾を破壊せんと暴れ回る激痛。
それに耐え切れず膝を折ろうとしたドクオを、
( "ゞ)「――ああ悪い。素直にブッ飛ばした方が楽だったか」
デルタは軽い助走付きのサッカーボールキックで追撃した。
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