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('A`)は撃鉄のようです
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く_;:::ハ /::ヘ
(_厂 ヒコ
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≪1≫
\(^o^)/(……暇すぎる。有能過ぎるのも罪だわ……)
人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
時系列は('A`)は撃鉄のようです第八話5レス目まで遡る。
後に『面汚しの夜』と総括される一夜の中、オワタは人生最大の敵に遭遇していた。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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午後6時にもなると街には 『ThisMan』 の感染者がうろついていた。
当然その頃にはオワタの会社も機能を停止しており、会社の中には同じ顔の『ThisMan』ばかりが居座っていた。
\(;^o^)/(な〜〜〜〜にが起こってんだよバカ!)
そんな会社から誰よりも先に逃げ出したオワタ。
彼は一目散に自分の車に立て篭もり、膝を抱えて逆ギレしていた。
彼が篭城場所に選んだのは地下の駐車場。
人気は少なく、隠れるには丁度いい環境である。
しかしその有様はまさに無力な小市民。
救助をじっと待つ木の上のネコそのものだった。
\(;^o^)/(誰か助けに来いよ! ケーサツ! おい!)
\(;^o^)/(こっちは税金払ってんだぞ! 働け! おい! 助けて!)
強気な救助要請をひらすら内心で唱え続ける。
それに応えてか、地下駐車場にコツン、コツンと足音が響いてきた。
\(;^o^)/(誰か来た! 普通の人であってほしい!)
オワタはそっと頭を上げ、窓から外を覗き見た。
\(^o^)/
すると、窓越し数センチ先に『ThisMan』の顔が迫っていた。
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\(^o^)/(やっべ)
オワタは即座に姿勢を正してハンドルを握った。
同時に外の『ThisMan』が窓ガラスを殴り始め、たった二発でガラスに亀裂を走らせた。
\(;^o^)/「おおおおおおッ!!」
アクセルとかレバーをガチャガチャして車を急発進させ、出口に最速で突っ込んでいく。
バックミラーを見ると、陸上選手ばりの迫力で『ThisMan』が追走して来るのが見えた。
\(;^o^)/(こうなりゃタワーまで突っ走るしかねえ! あそこなら確実に無事だ!)
しかし地上に出た瞬間、オワタはその考えがどれだけ困難であるかを理解した。
夕闇の中、見渡す限りに『ThisMan』の顔がある。その数十人分の同じ顔が、一斉にオワタの車を捕捉した。
\(;^o^)/(――轢かれても知らんからな!!)
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素直キュートが自身の超能力を自覚した時、彼女はその能力をひどく虚しいと一蹴していた。
o川*゚ー゚)o(まあ、この能力が色んな虚しさを誇張させたのは事実だけど)
最初、超能力は夢という形で現れた。
夢を見たのは算数のテストの前日。夢の中には、テストの答えが全て浮かんでいた。
翌日テストに見たままを書き込むとこれが全問正解。以降、彼女は時折こうした夢を見るようになった。
夢の次は幻覚だった。
じっと一点を見つめていると、そこに音付きの立体映像が見えてくるのだ。
しばらくは映像の意味が分からなかったが、ある日、自宅のリビングで見た映像が彼女の理解を早めることとなった。
リビングで見たのは両親が大声で口喧嘩をしている様子だった。
どちらも自分の手元にお金が欲しいらしく、適当な口実を作ってはそれをぶつけ合っていた。
最終的に取っ組み合いの喧嘩が始まり、けっきょく父親が暴力に打って出る。そういうものが見えてしまった。
映像を見てから数日後の深夜、キュートは両親の怒鳴り合いで目を覚ました。
静かにリビングを覗くと、そこには先日見たものと同じ光景があった。
口喧嘩の一言一句も違わず、まったく同じ展開がそこにあった。
それを見た彼女は直感した。自分の能力が 『未来予知』 である事を自覚してしまった。
そして、一番欲しくない力が来てしまったと、彼女は子供ながらに大きな虚脱感を覚えた。
自覚と同時に見えた彼女自身の未来は、この家族の為に歪みきっていたのだから。
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o川*゚-゚)o「……ああ」
素直キュートは回想を止め、電子レンジに入れた弁当に意識を戻した。
残り数秒を頭の中で数え、チンと鳴ると同時に弁当を取り出す。
蓋を外すと十分に温められた食材から湯気が沸き立ち、彼女の食欲をそそった。
だが、それは食欲というよりも義務感だった。
彼女にとって食べる事は作業でしかなく、味や見栄えは度外視された概念だった。
未来予知のせいで向こう数ヶ月分のご飯の味が分かってしまう。
だから食べるのが楽しくない、という訳ではない。
彼女の作業的な食事風景は、単にコンビニ弁当を死ぬほど食べ続けた結果の飽きだった。
弁当を半分ほど食べてから、キュートは時計の針を確かめた。
3分後、このコンビニに人生オワタという人が来る。
キュートは人生オワタに出会う未来を数年前に予知していた。
彼に出会い、最期を一緒に過ごす未来。
素直キュートは、今日ここで死ぬ事になっていた。
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\(;^o^)/「……お〜い」
三分後、人生オワタがおそるおそる店内に入ってきた。
自動ドアの開閉に反応し、入店の音楽が店に鳴りひびく。
キュートは数年振りに、自然に笑みを浮かべて言った。
o川*゚ー゚)o「こんばんは、人生オワタさん」
\(;^o^)/「……お前、だれ?」
o川*゚ー゚)o「素直キュートって言います。ずっと、あなたを待ってました」
\(;^o^)/(……なに言ってんだコイツ)
ひるんだオワタが一歩退くと、キュートはハッとして体裁を整えた。
軽く会釈をしてから、彼女は店内を一望して言った。
o川*゚ー゚)o「ここ、しばらくは安全ですよ。棚で入り口を塞ぎましょう」
\(;^o^)/「……分かった」
警戒を見せながらも、オワタは彼女の提案に乗っかった。
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二人は窓のブラインドを全て下ろし、商品棚を動かしてコンビニの出入り口を封鎖した。
そこまでやってようやく一息つき、二人は奥から持ってきたパイプ椅子に腰掛ける。
\(^o^)/「なんか大変な事になってるよなぁ……」
o川*゚ー゚)o「今夜中に終わる話ですし、特に被害も出ません。大丈夫です」
\(^o^)/「……だといいケド」
妙に自信あり気に断言されてしまい、オワタは口先に出かかった愚痴を飲み下した。
o川*゚ー゚)o「……あの、私。お話したいです」
\(^o^)/「……すれば? とりあえず聞いててやるよ」
不気味なほどニコニコしている彼女に対して、オワタはぶっきらぼうな返事をした。
安全な場所を共有させてくれた分は彼女に協調するが、それ以上に深入りする気は毛頭ない。
それは決して彼女に限った話ではなく、誰に対しても、オワタは必要以上の人間関係を作ろうとしないのだ。
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o川*゚ー゚)o「……嬉しいです。あの、馴れ馴れしくしてごめんなさい」
o川*゚ー゚)o「いちおう理由があるんです。私の能力、予知能力なので……」
\(^o^)/「……俺に会うのを知ってた?」
o川*゚ー゚)o「あ、そうです。この会話も一言一句その通りに予知してます」
\(^o^)/「……つまらなくないか? 俺ならそんな顔で喋ってられねえわ」
o川*゚ー゚)o「はい、すごくつまらないです。
でも今日だけは、今だけは特別なんです」
\(^o^)/「ふうん……」
o川*゚ー゚)o「私、今日ここで死ぬんです。
普段だったら、私こんなに喋らないです」
\(^o^)/「……そら災難だったな。知りたくもなかったが」
o川*゚ー゚)o「いいじゃないですか! 最後ですし、いっぱい話したいんです!」
人生オワタは、彼女の言う事を大体信じていた。
信じるかどうかで何かが変わる訳でもないので、善意的に受け止めてあげたのだ。
信じた上で、オワタは彼女の歪さを早々に察知していた。
彼女の表情はなぜか希望に満ちていて、とても今日ここで死ぬ人間の顔には見えない。
人間誰しも死ぬのは怖い。
しかし、彼女はそういう当然の感性を育てる事が出来なかった。あるいは、してこなかった。
そういう人生だったのだと、薄々分かってしまった。
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o川*゚ー゚)o「色々あって、私が自分語りを出来る時は今しかないんです。
なのでいっぱい話します。本当、聞くに堪えないのは承知の上ですが……」
\(^o^)/「……」
o川*゚ー゚)o「……最後なんです。落ち着いて、話しますね」
哀れむような視線に気付いたのか、キュートは声色を落として改めて言った。
o川*゚ー゚)o「物心ついた時には、私は私の一生を予知していました」
o川*゚ー゚)o「えっと、私思うんです。夢や希望って、分からないから意味があるって。
でも私は、人生における夢や希望にあたるものを全部見ちゃって……」
o川*゚ー゚)o「別に悲しいとかは思いませんでした。
ただ、なんだろう……」
o川*゚ー゚)o「ああ、こういう感じで生きて終わるんだなぁって。そう思うようになりました。
自分の身に起こるすべての事が、まるで他人事のようになってしまったんです」
用意された言葉を読み上げるように、彼女は淡々と語る。
しかしオワタは彼女の言葉に耳を傾けていなかった。聞いてはいたが、聞き流していた。
聞くに堪えないという言い訳を用意してくれた以上、オワタはそれに従っていた。
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o川*゚ー゚)o「多分どこかで未来を変える努力をすれば、
何かが変わっていたと思いますが……まだ子供なので、早々に諦めました」
\(^o^)/「……」
o川*゚ー゚)o「そもそも未来を変える気すらありませんでした。
私が予知のとおりに生きると、両親はすごい喜んだので。
基本的に完璧に生きてきました。自慢の娘だったと思います」
o川*゚ー゚)o「親は賭け事が好きでした。ギャンブル中毒とか、そういうんだと思います。
家庭は酷かったですね。およそテンプレ通りの、壊れた家庭です。
でも虐待とかはありませんでしたよ。私は数ある宝くじの一枚に過ぎないので」
o川*゚ー゚)o「で、私が予知を使って宝くじも競馬もパチンコも勝たせてあげると、環境は変わりました」
o川*゚ー゚)o「私の家には札束が溢れかえって、両親も幸せそうにしてくれました」
o川*゚ー゚)o「まぁ世間的には親に利用される子供ということで悲劇的に見えるでしょうけど、
やっぱり子供なので、どんな形であれ、親に信じて喜んでもらえるのは嬉しいんです」
o川*゚ー゚)o「これは、子供という役割に与えられた義務だと思います。
親のために生きるという義務。私はそれを全うしました」
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o川*゚ー゚)o「ただやっぱり、これがいつまでも続くのは私も嫌でした。
嫌だという根拠の無い感覚だけが、今日私をここに運びました」
o川*゚ー゚)o「別に大した意思があったわけじゃないです。
ただ家を出てここに来て、予知のとおり死ぬ。そうしたかったんです」
\(^o^)/「……親は止めなかったのか?」
o川*゚ー゚)o「両親ですか? 別にとめませんでしたし、むしろ見送ってくれました。
『生きて帰れるから大丈夫』って言ったら難なく出られました」
o川*゚ー゚)o「きっと探しにも来ませんよ。
だって、親が子供の言う事を信用しない訳がないじゃないですか」
o川*゚ー゚)o「子供を信用しないっていうのは、子供の責任から逃げたい人の言い分です。
子供が何かやらかした時、自分に対して言い訳をする為です」
o川*゚ー゚)o「あとあと『私に責任はありません』っていうことを主張する為に言質を揃えておきたいんです。
信用とか、耳障りのいい言葉を利用して」
信用、という言葉が完全に破綻している。
オワタは彼女に対して同情を思うより先に、不気味さを感じた。
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o川*゚ー゚)o「その点、私の両親は私を信じてくれてます。
私の家は、私を信じる事で回っています」
o川*゚ー゚)o「なのでまあ、私がこうして死を選んだ時点で、私の家は終わりだと思います。
みんな首吊って死ぬのかな、悲しいな、なんて……」
o川*゚ー゚)o「……まあ、そんな感じです。要はここで死ぬ、というだけの話です」
o川*゚ー゚)o「貴方なら話を聞いてくれると知っていたので、今までの分を簡単に話しちゃいました」
o川*゚ー゚)o「一方的に話してごめんなさい。初対面で私が何者かも分からないのに」
\(^o^)/「……嫌な気分になった」
o川*゚ー゚)o「……ごめんなさい。じゃあもう行っていいですよ」
\(;^o^)/「……なんか急に嫌な言い方だな」
o川*゚ー゚)o「……早く行かないと巻き込まれちゃいます。
私を殺す人がもうすぐ来ます。あと五分くらいかな」
\(^o^)/「……聞くまでもないんだろうが、逃げないのか?」
o川*゚ー゚)o「はい。死んだ方がマシなので」
彼女はたやすく断言し、店の裏口へ行くようオワタを促した。
o川*゚ー゚)o「……正直に言います。私の予知で、あなたは死ぬ事になってます。
でも私はその未来だけは変えたい。なので、お願いします」
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\(^o^)/「……俺の能力は、予知してないのか?」
o川*゚ー゚)o「……あなたが何故かここに留まって、私と一緒に殺される。
今までも、その未来しか見たことないです」
\(^o^)/「……じゃあそれで正解だよ、俺の中では」
オワタはよっこらせと呟いて腰を上げ、商品棚から適当なお菓子を持って椅子に戻った。
\(^o^)/「俺ここで死ぬわ。あともう話しかけないでくれ」
\(^o^)/「俺はお前が嫌いだ。人間が合わない」
o川*゚ー゚)o「……はい。ごめんなさい」
\(^o^)/(……こいつ、努力をした事がねえんだな)
人は、努力の積み重ねによって今を生きている。
それは未来に何が起こるか分からないから、人生が未知だからこそ努力なんていう面倒な事が出来るのだ。
しかし彼女の場合、素直キュートの場合は違う。
未来が分かってしまう以上、彼女の中ではそもそも努力が意味を成さない。成立しない。
生きる努力をしなくても生きていけると分かれば、どんな人間であろうと綻びが生まれてしまう。
彼女は未来を知る代わりに、生きる上でのあらゆる動機を失っていた。
未知に立ち向かう機会もなく、求めなくても与えられ、努力せずとも正解が分かる。
一生分のテストの答えを全て安全にカンニングできる状態で、一体誰がテスト勉強をするのだろうか?
宝くじの当選番号が毎回確実に分かるなら、そもそも勤労に意味はあるのか?
好きな人ができたとして、その人に一生振り向いてもらえないと分かっても、その人を好きで居続けられるか?
努力が報われないと分かっているのに、それでもなお努力は続くのか?
分からない、未知だからこそ人は努力に意味を見出す。
無駄かもしれない努力に懸命になれる。
しかし、彼女にはそれが出来なかった。努力をする動機が何一つとして無かった。
努力によって正解を見つける必要が、彼女にはまるで無かったのだ。
それは、人として余りにも大きな欠落だった。
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\(^o^)/(ま、俺にはぜんぜん関係ねーけどな)
\(^o^)/(あと数分でなんか来て殺されて終わり。
次はこんなクソガキに会わないよう行動するだけだ)
人生オワタの超能力は二つ。
その両方が、人生オワタの死亡を条件として発動する。
一つは【生前体験/ニア・ライブ・エクペリエンス】。
能力者が死亡すると、その死因を回避できる時点まで時を巻き戻す。
もう一つは【死後後悔/ルック・バック】。
死亡するまでの記憶、死んだ後の記憶。
その両方を過去の自分に送信する能力。
人生オワタはこの二つの能力を使って幾多の危機を脱してきた。
持って生まれたスペランカーボディと超不運もあって死んだ回数は無数(千回死んだ頃に数えるのを止めた)。
しかし、だからこそ現れた 『死を回避すること』 そのものに特化した超能力。
彼は強い意志をもって死の運命を回避し続け、その結果として平穏で幸福な人生を実現してきた。
素直キュートとは正反対に、生きる努力を人一倍、人の何百倍も積み上げてきた。
素直キュートが運命を肯定するなら、人生オワタは運命を否定する男。
そんな二人が相容れる訳もなく、オワタは先程の言葉どおり、素直キュートを大嫌いになっていた。
\(^o^)/(なにが運命だ。そんなもんはゼッテー無いね)
\(^o^)/(俺は何度でも運命を変えてきた。
だから断言できる。変わらない運命なんかない)
\(^o^)/(親のためだと? くだらねえ)
\(^o^)/(自分も他人も幸せな完璧な人生なんてまっぴらごめんだぜ。
どんな時であろうと、俺は俺自身の幸福のために生きてみせるぞ……)
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――五分後、素直キュートが宣告した時間になった。
o川*゚-゚)o「……来ました」
どうせ死ぬので確認する必要もなかったが、オワタはコンビニ店内をぐるっと見回した。
しかし中に居る人間は二人だけ。だったら外か? と思ってガラスから距離を取り、じっと待ち構える。
それでもしばらく音沙汰はなく、オワタは拍子抜けして肩の力を抜いた。
\(^o^)/(……もしかしてこいつの話、嘘か?)
オワタが油断してキュートを一瞥したその瞬間。
入り口を塞いでいた商品棚が、自動ドアのガラスもろとも巨大な衝撃に破壊された。
\(;^o^)/「……」
破壊が落ち着くと、瓦礫の山を踏み越えて一人の男が入ってきた。
男は袖のない黒の道着を着ている以外、何一つとして武器になる物を持っていなかった。
体一つで強化ガラスを破壊して余りある一撃を実現したとなれば、その正体は明白。
\(;^o^)/(……格闘家かぁ……)
男は一呼吸を置いてから、オワタ達に目を向けた。
古傷にまみれ、既に目としての機能を持たないその器官を。
( ФωФ)
オワタは、素直キュートを連れて壁際に下がった。
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\(;^o^)/(……格闘家は嫌いだ。
バトル大好きな人種の中でも特に話を聞かん)
\(;^o^)/(俺でも何とか出来るレベルなら予知変えてドヤ顔してやろうと思ったけど、これは無理!)
\(^o^)/(無理なものは無理! 諦めた!)
o川*゚-゚)o「……なにか、話しますか?」
キュートはオワタの制止を無視して前進し、男の前でそう口走った。
殺される未来を知ってなお、彼女は台本通りであり続ける。
( ФωФ)「……不要であろう。すぐに済む」
o川*゚-゚)o「……後ろの人だけは逃がしてくれませんか」
( ФωФ)「……言葉を交わす気は、ない」
男はゆっくりとキュートの首を掴み、その細い管をキュッと握り締めた。
すると彼女の体は一瞬痙攣してから脱力し、まったく動かなくなった。
( ФωФ)「……」
男は首を絞めたまま片手で拳を作り、それを彼女の心臓に突き刺した。
どぷ、という殺しの音が鼓膜の奥にゆっくりと入り込んでくる。
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素直キュートの死体を床に寝かせ、彼女に向かって手を合わせ、瞑目する。
男はその所作を終えると、振り返ってオワタを見据えた。
( ФωФ)「……逃げるなら、追わんが」
\(;^o^)/「チッチクショーー」
オワタは一方的に彼女を殺された悔しさから男に殴りかかった。
しかし実際のところ悔しさなど微塵も無かった。
自分が死ねば無かったことになる現実など、まともに受け止める気にもならない。
\(^o^)/(次は別のとこに逃げっか)
その思考の直後、オワタもサクッと殺されて超能力が発動した。
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≪2≫
\(^o^)/(……二週目スタートか)
人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
時系列は('A`)は撃鉄のようです第二十六話1レス目まで遡る。
\(^o^)/(まぁとりあえず、さっさと逃げ出すか)
オワタは残りの仕事を適当に仕上げて会社を出た。
上司から多少の嫌味は聞かされたものの、普段の優秀な仕事振りから大きな足止めをくらうことは無かった。
地下駐車場の車に乗り込み、エンジンを唸らせる。
\(^o^)/(フッやれやれ、またしても運命に勝利してしまった……)
オワタはしたり顔で勝利宣言を掲げ、ステーション・タワーに向けて一直線に車を走らせるのだった。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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\(;^o^)/
ステーション・タワー付近の駐車場に車を停め、車を降りたところで体が固まった。
オワタは、こちらをじっと見つめる少女に気付いてしまった。
o川*;゚д゚)o
だが、驚きのあまり硬直していたのは彼女も同じ。
二人は一分ほど、その場で口を開けたまま見つめあった。
\(;^o^)/「いや」
\(;^o^)/「……いやいやいやいや」
オワタは緊迫した表情で少女に詰め寄り、いまだに驚いている彼女の両肩を掴んだ。
\(;^o^)/「お前、違うよな? 別人だよな?」
o川*;゚д゚)o「……え?」
\(;^o^)/「名前だよ名前!! お前の名前、素直キュートじゃないよな!?」
o川*;゚д゚)o「……素直キュートです……」
\(;^o^)/「え?」
o川*;゚д゚)o「私の名前は素直キュートです……」
\(;^o^)/「……」
<(;^o^)>「うそだろ……」
オワタは頭を抱え、弱々しく呟いた。
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\(;^o^)/(どういうことだ? このガキはコンビニで俺を待ってたハズだろ?)
\(;^o^)/(『人生オワタがコンビニに来る』っていう未来予知はマジだった。
一週目でそれは確認済みだ。ならなんでコイツはここに居る?)
\(;^o^)/(ピンポイントで予知が変わったのか?
なんにせよ色々確かめねぇと……)
o川*;゚ー゚)o「あの、なんで私の名前、ていうかなんでここに……」
\(;^o^)/「お前、未来予知の詳細を言ってみろ」
o川*;゚ー゚)o「え、いや、なんで能力のことまで」
\(;^o^)/「いいから! 俺は殺されるのか!?」
一週目で彼女は『人生オワタは殺される』という予知をしていた。
今回行動を変えたのはその未来を回避する為であり、そもそもその原因となる彼女に出会わない為だった。
オワタが強く問い掛けた肝心な質問に、キュートはしどろもどろに答える。
o川*;゚ー゚)o「えっと、はい。そのはずでした……さっきまでは……」
\(;^o^)/「……どういう意味だ?」
o川*;゚ー゚)o「……貴方はコンビニに行って、そこで私と会うはずでした。
そういう予知を見たんです。でもそうすると私と一緒に殺されちゃうので、その……」
o川*;゚ー゚)o「それを回避しようと思って、こっちに来たら貴方も来て、今になります……」
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とたん、オワタはキュートに背中を向けて熟考した。
\(;^o^)/(予知そのものに変化はナシ。
変わったのは俺とコイツの行動だけか……)
\(;^o^)/(……とにかくもう一度、こいつに『未来予知』をとやらをさせてみるか)
そして最後に、まったく信用しちゃいねーけどな、と付け加える。
オワタは振り返って再びキュートの両肩をがっしり掴み、力強く言った。
\(;^o^)/「もっかい未来予知して!! お願い!!」
成人男性から少女への、体裁を捨てた本気のお願いだった。
o川*;゚ー゚)o「……あの、それが……その……」
\(;^o^)/「どうだった!?」
o川*;゚ー゚)o「……私達、あと十秒で狙撃されます」
\(^o^)/
\(^o^)/(オワッタアアアアアアアアアアアアwwwwwww)
ドキューンバーンwwwwwwwww二人とも死んだwwwwwwwww
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≪3≫
\(;^o^)/(世の中って理不尽!!)
人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
時系列は('A`)は撃鉄のようです第二十六話19レス目まで遡る。
\(;^o^)/(……よし! 次は時間を合わせよう)
\(;^o^)/(さっきは早く動きすぎた。
あいつがコンビニに居た時間まで待って、それから移動開始だ!)
\(;^o^)/(同じ顔の奴らからは逃げられないかも知れないが、
いま俺はもっとヤバイものに関わってる気がする!)
オワタは六時過ぎまで会社に残り、『ThisMan』が動き出した頃合で逃げ出した。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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≪4≫
\(^o^)/(……ダメだった、ふつうに出くわした)
\(^o^)/(同じ顔の奴らから逃げてたら曲がり角でぶつかった……)
\(^o^)/(一緒に逃げてたら知らん間に殺されてた……)
人生オワタは会社で目覚め、('A`)は撃鉄のようです第二十六話24レス目まで遡って反省した。
\(^o^)/(……もう会社に立てこもるか。
さすがに会社までは来ないだろ)
\(^o^)/(この騒動も収まってるかもしれないしな。
動かないのが一番だ。そうしよう……)
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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\(;^o^)/
o川*゚ー゚)o「あ、こんばんは!」
深夜二時ごろ、素直キュートは会社に来た。
彼女はとても元気そうに挨拶すると、オワタに駆け寄ってきて満面の笑みを見せた。
o川*゚ー゚)o「よかった、予知は変えられたんですね!」
\(;^o^)/「……え、そうなの?」
o川*゚ー゚)o「はい! 貴方は私と一緒に殺される筈でしたけど、助かりました!」
\(;^o^)/「……今、もう一回予知してくれる?」
o川*゚ー゚)o「はい、いいですよ! でも終わったら私の話をっ」
そこまで言って、彼女のハツラツとした言葉が止まった。
o川*;゚ー゚)o「……あの」
\(;^o^)/「……」
o川*;゚ー゚)o「……逃げてください」
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≪5≫
\(;^o^)/「もおおおお!! またかよ!! 死ねッ!!」
五週目に突入したオワタは社内で大声を発した。
周囲から憐憫の眼差しが突き刺さるも、今の彼にそれを気にする余裕はない。
\(;^o^)/(じゃあもう逆に街から出ちゃう!)
\(;^o^)/(飛行機とか乗ってアメリカ行っちゃうんだからな!)
オワタはさっそく空港に行って飛行機に乗った。
シートに深く腰をうずめ、たっぷりと息を吐き出す。
\(;^o^)/「ふぅ…………」
o川*゚ー゚)o「あ、失礼しまッ」
隣の席に現れた少女を見て、オワタは未来を察した。
離陸後、飛行機は何者かの攻撃によって墜落した。もちろんオワタは死んだ。
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≪6≫
≪7≫
≪8≫
≪9≫
≪10≫
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≪11≫
\(^o^)/「……はあ」
会社で目覚めると同時に、オワタは両腕を組んで椅子にもたれかかった。
この現状は場当たり的な行動では解決しないのだと、十分に理解した。
オワタは、これまでの10週分の体験をもとに考察する。
口元に手を当て、思考の逡巡に立ち向かう。
\(^o^)/(どうやら、俺とアイツが会うのは確定事項らしい……)
\(^o^)/(あんまり使いたくない言葉だけど、運命とでも言うのか……。
元々信じてない言葉だったが、今はその存在を否定できない……)
\(^o^)/(どうすりゃ俺は生き延びられる?
あいつに巻き込まれて死ぬなんてゴメンだぞ……)
\(^o^)/(……次はシンプルに動くか)
今回の行動方針を決めたオワタは、一週目と同じように過ごしてタイミングを待った。
彼は一週目と同じように行動し、あえて彼女が待つコンビニに足を踏み入れるのだった。
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\(^o^)/「……おーい」
コンビニに立ち入ると、入店の音楽が鳴り始めた。
店内をざっと見回し、彼女の姿を目視する。
彼女はレジに立ち、コンビニ弁当をゆっくり食べ進めていた。
オワタの存在には気付いているだろうが、彼女は構わず食事を続けている。
\(^o^)/(……話しかけてこない)
\(^o^)/(『こいつの話を絶対に聞かない』つもりで来たが、それだけで何か変わったのか?)
一週目とは違う状況に、ほんの少しの動揺を覚える。
\(^o^)/(……俺から話しかけるべきか、このまま去るべきか)
彼が訝しげに表情をしかめていると、キュートの視線がようやくこちらを向いた。
o川*゚-゚)o「……行かないんですか?」
\(^o^)/「……」
o川*゚-゚)o「貴方は裏口から出て行って、そのままタワーに行く筈なんですけど……」
\(^o^)/「……それに従えば、生き残れるのか?」
o川*゚-゚)o「貴方はここを通り過ぎるだけの人。
なので確実に生き残れます。今は、ですけど……」
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……結果的に、オワタの死亡条件は素直キュートと会話することだった。
しかし無理に逃げようとすれば 『運命』 のようなものが働き、彼女と一緒に殺されてしまう。
そこでオワタはあえて彼女に出会い、そして一切の関わりを持たずに彼女と別れることにした。
彼女の話を聞いて時間を無駄にし、変に接点を持ってしまったのが一週目の死亡理由。
彼自身は不服だったが、今回と一週目の彼女が促した 『逃げる』 という選択によって死を回避したのだ。
コンビニを出て、ステーション・タワーに向けて車を走らせる。
『ThisMan』による妨害も多少あったが、オワタは難なく安全圏であるタワー内部に入れた。
タワー内部には混乱した市民達の雑踏が溢れていた。
市民救助や謝罪、現状報告を求める大声が絶えなかった。
\(;^o^)/(うるっせえなゴミ共が……)
オワタは耳障りな雑音が無い場所を求め、ステーション・タワーの非常階段を上り始めた。
.
-
\(^o^)/「……」
長い階段をひたすら歩き、上る。
階段に設けられた簡易照明がオワタを感知しては点灯し、時間の経過と共に消灯する。
階が上がるごとにそれを繰り返しながら、オワタは胸中の不快感と向かい合っていた。
\(^o^)/(……最初に死んだのは子供の時か……)
オワタは取り出した煙草に火をつけ、独白する。
\(^o^)/(別に特別な死に方じゃなかった。ただの交通事故だった)
\(^o^)/(ボールを追って、道路に出て、車に跳ねられた)
\(^o^)/(俺を殺したのはバカの乗った車だった。その車は止まらなかった。
俺を轢いて殺しても、その車はどこかへ走り去っていった……)
\(^o^)/(……俺はそれが心底悔しかった。
一方的に殺されて、何も出来ずに終わるのが許せなかった……)
\(^o^)/(意識が無くなりかけて、このとき初めて死を感じた)
\(^o^)/(だけど次に目覚めた時、俺の時間は数日前に巻き戻っていた)
\(^o^)/(それが最初だった。俺が能力を使った、初めての事件は……)
.
-
\(^o^)/(事故を回避してからも俺は死にまくった。残機は無限だが、まあ疲れた)
\(^o^)/(時には辛くて死にたいと思ったこともある。
でも死ぬに死ねないから普通に生きていくことを選んだ)
\(^o^)/(常識を身につけ、安全を徹底し、今に至る)
\(^o^)/(そうだ、この現状は俺の生き方による当然の結果だ。
不服に思うところなんか、一片もありゃしねえ!)
\(^o^)/(そうだ! 俺はこの力を自分の為に使うって決めてんだ!)
\(^o^)/(世の中には交通事故が溢れてる!
初めて死んだ時は 『この世から交通事故を無くそう』 と思って奔走したが、まったくもって無駄だった!)
\(^o^)/(死にたい奴は死ねばいい! 俺は生きて、そして老衰で死ぬ。
老衰なら確実に死ねる。能力を持った本人だからこそ、そういう確信がある!)
\(;^o^)/(……今の俺は完璧なんだ。
植物の心のような人生を歩んでいく……それを実現し、実行できる状態なんだ)
\(;^o^)/(……でも、敵が現れた。『遂に』と言っても良い。過去最大の敵だ。
どんな運命だろうとクソッタレだと馬鹿にしてきた俺の前に……)
.
-
\(;^o^)/(今の俺は、あのガキの言った 『運命』 の通りに生きている)
\(;^o^)/(今までクソ同然だと思っていたものに従い、生き延びている……)
\(;^o^)/(……それを受け入れられるのか?)
\(;^o^)/(今まで運命を否定してきた俺が運命に救われるなんてありえねぇ……。
そんなん、最早ただの敗北宣言だぞ……)
\(;^o^)/(クソッ! まるで人生を犯された気分だ……。
ガキの頃、車に轢かれた時とまったく同じ無力感がある……)
\(;^o^)/(そして何より、今現在この俺が 『運命サマに生かされている』 という事実がこの上なくムカつく!)
\(;^o^)/(あのガキの存在は今、俺の 『平穏なる心』 をこっぴどくメチャクチャにしている……!
素直キュートの存在は、俺の人生とはまるっきり相反している……!)
.
-
\(;^o^)/(……否定しなきゃならない。運命を語るあのガキは、俺にとって唯一の敵だ。
あれの言葉を否定出来なければ、俺にもいつか 『運命』 が牙を剥く……)
\(;^o^)/(このまま生き延びれば俺は運命を受け入れてしまう……。
受け入れたら最後、俺は運命の奴隷だ……!)
\(;^o^)/(運命に支配された人生なんて俺が一番望んでないものだ!
何が何でも、俺は俺自身の未来の為に、この 『運命』 には従わないッ!)
階段を上る彼の足が、その段にぐっと踏み止まった。
オワタは振り返り、暗闇に落ちた階下を睨みつけた。
\(;^o^)/(……なんというか、『勝負に勝って試合に負けた』 という感じか……。
今回は 『人生に勝って運命に負けた』 が、いつか逆転してやるからな……)
\(;^o^)/(素直キュート、確かに覚えたぞ。そして強敵だと認める。
俺はあらゆる強敵から逃げ延びてきたが、お前にだけは立ち向かう)
.
-
\(;^o^)/(人生、勝たねばならない相手が確実に一人は居るって言うしな。
それが今来ただけの話。人生初の、俺だけの戦いだ……)
オワタは生唾を飲み下し、護身と自殺用を兼ねた拳銃を懐から取り出した。
拳銃をこめかみに当て、次の行動を整理する。
\(;^o^)/(……とりあえず、あの両目傷の野郎を攻略する)
\(;^o^)/(格闘家だから時間は掛かるだろうが、攻撃パターンを覚える)
\(;^o^)/(……まずは三十回だな。その先は後で考えよう)
途端、その階の照明が時間切れで消灯した。
そして、暗闇の中に小さな火花が飛び散った。
.
-
≪12≫
そして今度も呆気なく死ぬ。
≪13≫
死ぬたび、失敗したという結果がひとつ積み上がる。
≪15≫
人生オワタは何度でも死んだ。
≪17≫
何度でも――
.
-
≪19≫
終わりなど無かった。
≪23≫
終わりを受け入れる事は、運命への敗北に直結する。
≪29≫
運命への敗北は、人生オワタの存在そのものを否定するに等しい。
≪47≫
オワタの敵は『運命』であり、『素直キュート』だ。
.
-
≪101≫
『運命は行動によって変化する』という前提で存在する人生オワタの超能力。
≪127≫
『運命は決まっている』という前提で存在する素直キュートの超能力。
≪191≫
これが同時に存在する矛盾――
≪397≫
――人生オワタにとって、それはきっと、人生最大の敵だった。
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第二十六話 「面汚しの夜 その3」
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≪400≫
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-
\(^o^)/「……あ?」
オワタは会社で目覚め、半ば朦朧とした意識で現実を見た。
.
-
\(^o^)/(…………これ何回目だ)
\(^o^)/(最多記録は300とかか……。
そろそろ記録更新だな……)
\(^o^)/(……攻撃パターンを書き起こさないと)
オワタは書類の山から適当に一枚抜き取り、その裏にひたすら文字を書き殴った。
両目傷の格闘家。彼の攻撃パターンを、覚えている限り書き出していく。
こうも回数を重ねると忘れてしまった攻撃パターンも多数あるが、出来る限りを図と字にして復習した。
その作業だけで一時間が経過した。
攻撃パターンが余りにも多すぎる、という愚痴は100回目を超えたあたりで言うのを止めた。
ざっと二十枚にまとめた攻撃パターンのメモを見直しながら、人生オワタは思う。
\(^o^)/(……無理。これは無理だろ)
\(^o^)/(パターンは大体分かったけど、体が追いつかない)
\(^o^)/(先読みして動こうにも、先読みして動いたっていう行動自体で相手の動きが変わる)
\(^o^)/(先読みは、100手先まで出来なきゃ役に立たない)
\(^o^)/(グーだけでじゃんけん百連勝するようなもんだぞ、なんだこれ……)
.
-
\(^o^)/(…………)
\(^o^)/(…………どうしよ)
\(^o^)/(頭がさっぱり動かない……モチベが尽きた……)
\(^o^)/(……コーヒー牛乳でもキメるか)
⑩⑩
_____ ⑩⑩⑩⑩⑩
|←自販機| ⑩⑩⑩⑩⑩
 ̄ ̄|| ̄ ̄ ┗(^o^ )┛
..|| ┃┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_____ 、
|←自販機| 冂
 ̄ ̄|| ̄ ̄ 三┏( ^o^)┛
..|| 三 ┛┓
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
-
\(^o^)/(あ〜〜〜うまい血が冷える。なんだ血が冷えるって)
\(^o^)/(……しばらく休むか。まずモチベ戻そう)
\(^o^)/(とりあえず餃子とか食べにいこ……)
.
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≪401≫
\(^o^)/
\(^o^)/(社長殴りに行くか……)
≪402≫
\(^o^)/(ちょっと元気出た)
\(^o^)/(次は、カラオケだな……)
≪407≫
\(^o^)/(いくらでも歌えそうだ……)
\(^o^)/(……でも、そろそろ考えないとな。頑張ろう、頑張ろう)
.
-
≪408≫
\(^o^)/(……とにかく俺一人じゃ無理だ。
認めたくはないが、そういうことらしい)
\(^o^)/(強い奴が必要だ。それもブッチギリで強い奴)
\(^o^)/(でもそういう奴とは全員縁を切ってきたからな……。
強い奴は必ず戦いの火種になるし……)
\(^o^)/(どうしよ……。アレを倒すとなれば相当な奴だよなぁ)
\(^o^)/(警察は変顔一派の対応で手一杯って感じだし。
子供の生存者が居るって言えば数人分けてくれるだろうが、頼りねえ……)
\(^o^)/(…………)
\(^o^)/(……あの黒い奴ならいけるか?)
オワタは遥か昔の記憶から黒ローブの存在を思い出し、天井を見上げた。
いま一番身近に居る強い奴と言えば、オワタには彼くらいしか思いつかなかった。
\(^o^)/(一度殺されてっけど、他に頼る当てもねえし……)
\(^o^)/(……とりあえず行くかぁ)
.
-
≪426≫
「……こんな顔にされるとは聞いていなかったが」
『木を隠すなら、という事だ。
しかしアンタが見た目に文句を言うとは、意外だ』
ビルの屋上で黒いローブをはためかせ、誰かと通信している男。
彼が不満を口にすると、通信の相手は慎ましくそれに反論した。
「……荒巻の足止めはどうなってる」
『交戦開始から一時間になるが、三人掛かりでも抑え切れてない。
ガキ共は当然としても、思った以上にミセリが苦戦してる』
「マニーの想定通りという訳か。もうすぐ俺の所にも来るんだろう」
『その通りだ、そして時間が無い。急いで素直クールを奪取してきてくれ』
「了解した」
通信を切り、黒ローブは遠くにそびえるステーション・タワーを見渡した。
\(;^o^)/「……ども……」
そこに、人生オワタが音も無く現れた。
.
-
黒ローブは振り返ると同時に腰の拳銃を抜き取った。
狙いを定め、引き金を引く。
精密な動作で撃ち出された弾丸はオワタの眉間を貫き、彼を絶命させた――
\(;^o^)/「あの、話を聞いてほしいんですッ」
――という数週前の体験のもと、オワタはクイッと首をかしげて弾丸を避けた。
続けて放たれた弾丸も全て回避しながら、オワタは誠実に話し続ける。
\(;^o^)/「今、どうしても貴方の力が必要なんです!」
\(;^o^)/「金でも物でも、必要な対価は用意しますんで……!」
黒ローブはナイフを投擲すると同時に走り出し、投げたナイフを追い越してオワタに近接戦闘を仕掛けた。
十回の打撃がオワタの体を的確に破壊し、動けなくなったところでナイフが追いついて急所に突き刺さる。
――その経験があるオワタは、まず横に避けてナイフの軌道から外れた。
弾丸を避けるのと同じ要領で黒ローブの打撃も全ていなし、掠らせもしない。
\(;^o^)/「『依頼』という形で、僕の話を聞いてもらえませんか!」
そこまでを言い切ったオワタは回避を止め、黒ローブに向き直った。
直後、銃口が眉間に突きつけられた。
\(;^o^)/「ヒィィ! チクショウ話くらい聞けよバカ!」
「……すまないが、俺も目的があってここに来ている。
今はお前に関わっていられない。いい加減、諦めてくれ」
オワタに銃を向けたまま、黒ローブは溜め息交じりに言った。
即・銃殺と思っていたオワタは彼の返事を脳内でじっくり反芻し、話の取っ掛かりになりそうな部分を聞き返した。
.
-
\(;^o^)/「あの、いい加減って……」
「そのままの意味だ。お前、何度やり直せば気が済むんだ」
\(;^o^)/「……分かる感じですか?」
「……まあそうだな。分かる」
曖昧な質問に、曖昧な答え。
しかしオワタにはそれだけで十分だった。
この男が、オワタの時間逆行をしっかり認識していることは理解できた。
\(;^o^)/「……分かるなら力を貸してくれ。助けたくて倒したい奴が居る」
「……屋上の入り口を封鎖して夜を越せ。それで助かる」
\(;^o^)/「あんたくらい強ければアイツも倒せる。頼む」
「素直キュートは諦めろ。あれはもう手遅れだ」
\(;^o^)/「べつにお前じゃなくてもいい。強い奴がほしい。紹介してくれ」
「話を聞け」
\(;^o^)/「頼む。金は出す」
「金は要らない。無理だと言っている」
\(;^o^)/「肩揉み券をつけてもいい」
.
-
「……もういい。分かった。なら、こちらが諦める」
黒ローブは俯いて頭を振り、深々と息を吐いた。
\(;^o^)/「マジ!? 手伝ってくれんの!?」
黒ローブは中空を指差す。
オワタは彼の指先を目で追い、夕空を一望した。
「この街とマリスポ港のあいだに海上発電所があるだろう。
こちら側の仲間が一人、そこで陣取っている」
\(;^o^)/「……強いんだな?」
「強さは保証する。だが、お前に協力するとは限らない。交渉次第だ」
\(;^o^)/「……よし、分かった! ありがとう!
初見で殺された時は悪い奴だと思ったけど、本当に悪い奴だったな!」
黒ローブは黙って背を向け、さっさと行けとオワタに促した。
\(;^o^)/(……発電所か。急げば一時間、安全運転でプラス20分だな……)
新たな指針を得たオワタは手早く仕事を片付け、さっさと会社を後にした。
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発電所の警備網は、人も機械も一つ残らず全滅していた。
入り口の鉄扉は開け放たれたままで、オワタは簡単に敷地内に入ることができた。
車を降りて周辺を確認する。
敷地いっぱいに軒を連ねる発電施設、よく分からない倉庫、中央に真っ直ぐ佇む監視塔。
どこも真っ暗で人気などまったく無いが、今は黒ローブの仲間以外に頼る当てはない。
\(^o^)/(警備システムを破壊したなら制御室には当然居ない。
倉庫なんざ陣取る理由も無いだろうし、居るとすれば監視塔だけど……)
闇夜にそびえる監視塔を見上げ、渾身の溜め息を吐き出す。
\(^o^)/(……分かる。なんか、ヤバい……)
まあとにかく、駄目なら次で、とりあえず……。
駄目人間の動機にありがちな言葉を並べつつ、オワタは監視塔のエレベーターに乗り込んだ。
途中でエレベーターが爆発して死んだ。
.
-
≪461≫
監視塔の最上階でゆったりと荒巻を待っていたマニーは、
その瞬間に目を見開き、出入り口のドアを睨みつけた。
¥・∀・¥(……五回も避けた。強運か、あるいは)
この監視塔にはマニーの超能力で用意した罠が多く張り巡らされている。
しかし、さきほど監視塔を上り始めた侵入者は、その罠をするりと回避して見せた。それも一度ならず。
¥・∀・¥(感知する限りではとんでもないザコ。
私の罠を初見でくぐり抜けるような輩ではないが……)
思考している間に、また一つ罠が突破される。
道中まだまだ罠は残っているが、この調子であれば三十分と掛からずに上ってくるだろう。
¥・∀・¥(……出向いて始末するとしようかな。
心配事は早々に消すべきだろう)
マニーは外の投光機から少量の光を吸収し、椅子と一緒に瞬間移動した。
.
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
\(#^o^)/
床が落ちる、槍が降る、大玉が転がる、とにかく爆発する、外すと死ぬ二択クイズなど。
全てのマスに 『即死。スタートに戻る』 と書かれたスゴロク同然の有り様に、オワタはキレていた。
多数の風雲たけし城めいた罠を突破しつつ、オワタは監視塔の中層まで到達。
ここから先は未知の空間だったが、どうせ死ぬので今更立ち止まることもしない。
オワタはイライラを込めた力強い足取りで廊下を前進した。
¥・∀・¥「……避けんのか?」
\(#^o^)/「――あ゙あ゙!?」
背後の声に足を止め、オワタは横暴に振り返った。
すると、椅子に座った男が足を組んでこちらを見つめている。
オワタは一瞬こいつを殴ろうと考えたが、なにか忘れている気がして、思いとどまる。
\(^o^)/(……あっ。コレだ、アイツの仲間)
目的を思い出し、マニーの存在を合点する。
オワタは手の平を返し、彼を懐柔しようと愛想笑いで話しかけた。
.
-
\(;^o^)/「……エヘヘ初めましてェ〜」
¥・∀・¥「……」
\(;^o^)/「自分、あの、名前分かんないんですけど、黒いローブの人の紹介で……」
¥・∀・¥「……」
\(;^o^)/「……来ました。人生オワタって言います〜」
¥・∀・¥「……用件は? そちらとの関係は終わったはずだが」
\(;^o^)/「あっ個人的なお願いです! あの人とはまったく無関係です!
殺されるよしみで頼んで紹介してもらったんです!」
¥・∀・¥「……」
\(;^o^)/「……あのですねぇ、お願いがあるんですよ。
ちょっと一人、倒すか殺すかしてほしい相手が居るんです……」
¥・∀・¥「対価は?」
\(;^o^)/「あっそれはもうお金でもブツでも、出来る限りのことをします!」
¥・∀・¥「要らん。消えろ」
マニーが片手を振り払うと、オワタは爆発して死んだ。
.
-
≪540≫
¥・∀・¥「――対価は?」
\(;^o^)/「情報! これでどうだ!?」
¥・∀・¥「……中身による。言ってみろ」
\(;^o^)/「荒巻スカルチノフと戦うんだろ!?
戦うと死ぬぞ! それはもうこっぴどく!」
マニーは膝で手を組み、冷たい笑みを作った。
¥・∀・¥「……なるほど。聞き逃せんことを言ったな。
いったいどこで私の決闘を知った? 情報の出所を吐いてもらうぞ」
.
-
\(;^o^)/「見てきたんだよ! とにかくお前は死ぬの!」
¥-∀-¥「……正気ではないようだ。死んでおけ」
マニーは哀れむように目を逸らし、片手を振り払った。
するとオワタの肉体が爆発し、周囲に血肉が飛び散った。
\(;^o^)/「――それだって五十回以上くらってんだよ!」
しかし、そうなるはずだったオワタは五体満足で生きていた。
¥・∀・¥「……おお?」
マニーはすこし驚き、もう一度手を振り払った。
同時にオワタは二歩だけ横に動き、またしてもマニーの攻撃を避けて見せた。
¥・∀・¥「……ハハッ楽しいな。どこまで避ける」
それを面白がったマニーは指を鳴らし、連続してオワタの体を爆破させようとした。
\(;^o^)/「言っとくけどやるだけ無駄だからな! ダンレボみたいに避けきるぞ!」
紙一重で確実に、そして効率よく。
オワタは踊るように体を翻し、見えない爆破攻撃の全てを回避しきった。
.
-
¥・∀・¥「――いいぞ、ウォーミングにピッタリじゃないか!」
いよいよノッてきたマニーは椅子を立ち、本格的に超能力を発動させた。
彼の周囲に電撃が走り、空間が炸裂して音を上げる。
¥・∀・¥「誰かは知らんがちょうどいい!
私のガス抜きに付き合ってもらうぞ!」
\(^o^)/「――待て」
オワタは、それを静かに呼び止めた。
¥・∀・¥「なんだ?」
\(^o^)/「――疲れた」
¥・∀・¥
\(^o^)/「もうダメ」
¥・∀・¥
\(^o^)/「勘弁してください……」
オワタは、自然と土下座の姿勢をとった。
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
土下座のオワタに腰掛けると、存外しっくりきた。
¥・∀・¥「お。座り心地は中々だ」
\(;^o^)/「そっ、それは良かったです……!」
¥・∀・¥「下々の嗜みを心得ているという事だな。
適切な対応に免じ、まあ話くらいは聞いてやろう。しかし手短にな」
マニーは下衆な笑顔でオワタの顔を覗き込んだ。
人を見下しきった彼の表情に、オワタは土下座しながらキレた。
\(;^o^)/(いつかゼッテー仕返しする! 死ね!)
\(;^o^)/「あの……僕の能力は、ですねェッ……!」
¥・∀・¥「おいおいおいおい、手短にと言っただろう?
もっとハキハキと喋ってくれないと困るなぁ……」
\(;^o^)/(絶対に俺が殺す! 死ね!)
オワタは大きく息を吸い込み、一息で用件を話した。
\(;^o^)/「死んでも時間が戻って大丈夫って能力でそれで色々未来を死ねってるんですうッフウ……!」
¥・∀・¥「いま変な言葉を混ぜなかったか?」
\(;^o^)/「きのせいですッ……!」
.
-
\(;^o^)/「それでマニーさんが荒巻と戦って死ぬのも見てっ見てて……」
¥・∀・¥「すまん聞き逃した」
\(;^o^)/「だから死んじゃうんですよ戦ったらったスゥゥゥハァァァァ……!」
¥・∀・¥「なるほどな……。私の協力を取り付けるために、何度死んだ?」
\(;^o^)/「数えてねェッ……何百とかッ……!」
¥・∀・¥「……確かに、その能力が本当なら色々と理解できる。
お前のようなザコが私の攻撃を避けたのもな」
\(;^o^)/「じゃあ俺に手を貸してくれるんすかッ……!」
¥・∀・¥「いや、今回は駄目だ」
\(;^o^)/「ぐえっ! あと死ね(小声)」
マニーはオワタから降り、ザコに座ったいせいで付着した埃を手で払った。
一方オワタは満身創痍で床に伏し、激しい呼吸を繰り返した。
.
-
¥・∀・¥「貴様の能力、死をトリガーにしているのだろう?
であれば、その提案は 『次の私』 に言うがいい」
¥・∀・¥「同じように私に話をし、同じように話をしろ。
だがそれだけでは貴様は信用に足らん。今の私も貴様をまったく信用していない」
¥・∀・¥「だから合言葉を作ろうではないか。
その合言葉をもって協力関係の成立としよう。ゆえに今回は死ね」
マニーは片手を上げ、オワタを爆死させる用意を整えた。
¥・∀・¥「いいか、合言葉は――」
≪541≫
\(;^o^)/「――カネに勝る武力なし」
オワタは床に転がったままマニーを見上げ、その合言葉を口にした。
マニーは一瞬黙った後、上げた片手をそのままオワタに差し出した。
¥・∀・¥「……ふむ」
¥・∀・¥「私は資金と言ったが、まあいいだろう。
貴様の徒労はここに意味を成した。良かったな」
\(;^o^)/「……これで終われば、いいんだけどな」
マニーの手を取り、オワタはくたくたの笑顔を浮かべた。
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
¥・∀・¥「上限ナシ、対象『荒巻スカルチノフ』……もう迷いはない。荒巻、お前を止めるのは私だ」
/ ,' 3 「ワシは、平和な今に留まっていたいと願うような脆弱な人間ではない」
¥・∀・¥「今更話し合う気はお互い無いだろう……。
さらばだ。今夜どちらかが死ぬ。今生の別れだ」
そのとき、彼らの上空に太陽が出現した。
実際には、それは太陽のように灼熱を纏った岩――隕石だった。
数は多数。目視だけで二十はある。
それら隕石の全てが、荒巻とマニーの居る発電所へと落下してきていた。
¥・∀・¥「去らば友よ、然らば死ね」
/ ,' 3 「……くだらんな」
マニーの言葉を一蹴し、荒巻は夜空に向けて腰のサーベルを振りぬいた。
一瞬、時が止まったような錯覚がマニーの体を縛りつける。
¥;・∀・¥「なっ……!!」
そして気がついた時には、天上の隕石は一つ残らず真っ二つに裂けていた。
まるで灯篭の火を吹き消すかのように、荒巻は全ての隕石を切断して見せた。
¥・∀・¥「……化け物め。いや、分かりきったことか」
切断されて隕石としての形を失い、超能力の効力を失った隕石群は、元の形――幾千億円分の紙幣に戻った。
大量の紙幣は空中に舞い散り、やがて能力の対価として消滅していった。
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-
¥-∀-¥「……くくっ」
/ ,' 3 「……何がおかしい?」
唐突に笑い出したマニーに怪訝な表情を向けながら、荒巻は腰を落とした。
¥・∀・¥「……なに、愉快で堪らんだけよ。
私と貴様の茶番劇がな……」
マニーは頭を振って嘲笑をかき消す。
¥・∀・¥「さて、始めよう! 今夜はいい、実に愉快だ!」
/ ,' 3 「……気が触れたか。哀れよのお」
マニーは戦いの火蓋を切って落とした。
切って落とせば業火に見舞われる戦いである事は彼自身も分かっていた。
人生オワタに、そう教えられた。
もちろん今回もマニーは荒巻に勝利するつもりだった。
しかし今回は万が一にも備え、彼は人生オワタを利用した保険を用意していた――
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
\(;^o^)/
人生オワタは発電所から一番近いコンビニに入り、片隅のATMに直行した。
ATMの画面をまじまじと見つめた後、財布から三枚のキャッシュカードを取り出す。
\(;^o^)/「……フゥゥゥ……」
三枚の合計預金額は一千万近く。オワタがせっせと貯めてきた勤労の集大成である。
\(;^o^)/「……オァァ……」
一枚目をATMに挿入し、次にオワタは黒いキャッシュカードを取り出した。
\(;^o^)/「……」
黒いカードを前に黙り、目を丸くしたまま五分以上も迷い、迷い尽くす。
そして決心、というか諦めがつくと、オワタは人生最大の溜め息とともに、黒いカードをATMに吸い込ませた。
\(^o^)/「……」
\(^o^)/「……あっ」
作業時間たったの一分。
\(^o^)/(おひょおおおおおおおwwwwwwwwww)
オワタの一千万円が、消えた。
.
-
\(^o^)/(なんでだwwwwwwwwww)
発狂寸前の笑顔でコンビニを後にし、車に戻る。
オワタは黒いカードを後部座席に投げ捨て、発狂した。
\(^o^)/(なんか有り金ぜんぶとけたwwwwwwwwwwww)
\(^o^)/(あうあww)ガンッ!
パァァァァーーーwwww(クラクションの音)
.
-
(――おい)
発狂していると、頭の中に声が入ってきた。
いまさらそんな事にも反応せず、オワタは発狂を続ける。
(話が違うぞ。これではまったく足りん)
\(^o^)/「うっせwwwwwもう帰りのガソリン入れる金もねえよwwww」
\(^o^)/「あー社会的に終わったwwwww死にたいwwwww」
(……いずれ好きな金額で返してやる。冷静になれ)
\(^o^)/「うん」
マニーは久し振りに他人に心から同情し、強い哀れみを覚えた。
.
-
¥-∀,';,', 「――しかし、私とて傷心の極みだ」
後部座席に投げたカードが黒い輝きを放つと、その光の中にマニーの肉体が再生され始めた。
この再生にはざっと五百万円が利用されている。
¥・∀・¥「奴らを利用し、兆をつぎ込んでなお届かんとは……」
\(^o^)/「ちょう? ちょうちょ?」
¥・∀・¥「……なんでもない」
今のこいつに金の話はやめておこう、とマニーは話をごまかした。
¥・∀・¥「不満はあるが、何にせよ貴様は約束を守った」
肉体を再生しきったマニーは次に衣服を具現化して身にまとった。
のちの戦闘を考慮し、衣服は百万円程度のスーツにしておいた。
優雅に足を組み、マニーはバックミラーに映るオワタに視線を送った。
¥・∀・¥「次は私の番だ。何とでも言ってみろ」
.
-
\(;^o^)/「――ハッ! そうだ、急がねぇと!」
オワタは今月分の支払いすら出来なくなった携帯電話で地図を表示し、マニーに画面を突きつけた。
\(;^o^)/「ここ! このコンビニ行ってくれ!」
¥・∀・¥「……そこに行くのはいいが、確実だろうな?」
\(;^o^)/「は!? うっせバーカ早くしろ!」
¥・∀・¥「……私が関わったことで今回は特に状況が違うはずだ。
その影響で未来が変わった可能性はあると思うが、そこでいいんだな?」
\(;^o^)/「……」
冷静に考えるとその通りだったので、オワタは黙って頷いた。
¥・∀・¥「……街に戻ったら感知能力で探し出す。
その後、移動して戦闘……でいいか?」
\(;^o^)/「オッケー! 素直キュートって奴を探してくれ!」
¥・∀・¥「街に戻ったらと言っただろう。とりあえず車を降りろ」
.
-
¥・∀・¥「――地面に寝て私の足に掴まれ。それもガッチリな」
外に出て開口一番、マニーはオワタにそう促した。
訳も分からず言われた通りにすると、マニーの体が徐々に浮かび始めた。
\(;^o^)/「うおお……浮いてる……」フワフワ
¥・∀・¥「感知能力を使うならば瞬間移動はしてられん。
安値で済ませるため、最速でジャンプする」
\(;^o^)/「……なんて?」
¥・∀・¥「初動と着地でのみ力を使う。だから落ちても拾いには行けん」
¥・∀・¥「落ちるな。落ちたら多分、死ぬぞ」
空中でぐっと膝を折った次の瞬間、マニーは轟音を伴って夜空に跳躍した。
.
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≪567≫
人生オワタを探し、素直キュートは彼の勤め先の会社に来ていた。
会社はすでにもぬけの殻で、人気はまったく無い。
『ThisMan』に溢れかえる今夜、照明が消えた会社の中は真っ暗闇になっていた。
o川*゚ー゚)o「……ああ」
時計を一瞥し、小声を漏らす。
もうすぐ誰かが私を殺しに来る。
オワタさんを見つける前に、時間が来てしまった。
キュートは最期の景色を見ようと会社の屋上に出て行った。
ぬるい夜風がクソワロタの街をそよがせる。
街は静かだが、複数の思惑が街中に飛び交っている。
そして、それらがいずれ生み出す結末を知るのは彼女だけだ。
彼女が殺される理由は、それ以外に無い。
o川*゚ー゚)o「……私が居ると、彼の目的を誰かに口外されるかもしれない」
キュートは屋上のフェンスに体を預け、振り返った。
o川*゚ー゚)o「だから予め殺しておく。そうですよね」
( ФωФ)「……」
振り返った視線の先には、予知で見た両目傷の男が立っていた。
.
-
( ФωФ)「……畏怖せずか。貴様の親は、いい親ではないようだ」
o川*゚ー゚)o「……どうして、そう思うんですか?」
( ФωФ)「子に恐怖を教えるのは親の役目。
そして、その恐怖を克服させるのも親の役割だ」
( ФωФ)「子は、一番最初に親という存在への恐怖を克服する。しなければならない」
o川*゚ー゚)o
( ФωФ)「しかし貴様の親はそれをしていない。
故に、このような状況においても、貴様は死を感じていない」
( ФωФ)「恐怖を知らずに生きた人間は見るに耐えん。
恐怖を克服せずに生きる者など、動物畜生よりも遥かに下等である」
o川*゚ー゚)o「……恐怖はありません。貴方の言う通りです。
私の親は正直、二人とも親になるべきではありませんでした」
o川*゚ー゚)o「子供は二十歳で大人に。
その後、時間を掛けて大人になりきって、妻や夫の役割を全うできるようになってから、初めて親に。
しかし私の親は大人にすらなりきらないまま親になりました。だから、駄目だったんです」
o川*゚ー゚)o「でも、そういう人の子供だからと言って、
『家族』 という集団を円滑に動かす 『子供』 というパーツであり続けるのが、子供の仕事です」
o川*゚ー゚)o「もっとも、それも今、ここで終わる……」
キュートは目を閉じ、未来予知に見た死の光景を頭に浮かべた。
呆気なく心臓を潰され、痛みは一瞬。
これまで何度も見てきた死の瞬間が、もうすぐ来る。
.
-
( ФωФ)「……遠くから迫る気配、間違いなくここに向かっている。
どういう訳か、こちら側の者も一緒にだ」
しかし、キュートが生きることを放棄しても、両目傷の男はすぐに動かなかった。
直前の語りさえなければ殺すのは間に合っていたが、今はもう手遅れだった。
たった数秒の遅延。それが、男の手を止めた。
o川*゚ー゚)o「……子供が好きなんですよね。
ごめんなさい、予知で色々見ちゃいました」
o川*゚ー゚)o「あの人達が間に合うには、私の時間稼ぎが必要だったので……」
( ФωФ)「……やられた。演技派、もとい性悪であるな」
o川*゚ー゚)o「似たもの同士です。優しいおじさん」
.
-
o川*゚ー゚)o「私の嘘に付き合ってくれたお礼です」
その時、鋭い閃光が夜空を切り裂いた。
光は一直線に彼女達のもとに飛来し――
o川*゚ー゚)o「ギコさんの為にも、生き延びてください」
――彼女の言葉の後、屋上に着地して一層強く輝いた。
.
-
「――オレ生きてる!? 死んでる!?」
「生きてるぞ。女も居る」
収束していく光の中に二人分の声があった。
どちらの声にも聞き覚えは無かったが、キュートは彼らのことをずっと前から知っていた。
\(;^o^)/「……あっ! 素直キュート!」
o川*゚ー゚)o「こんばんは、人生オワタさん」
光が収まって互いの姿を認め合うと、人生オワタはキュートを指差して声を張り上げた。
¥・∀・¥「ほれ、決め所だろう。キザなセリフの一つでも言ってやれ」
マニーの冷やかし半分のアドバイスを聞くまでもなく、オワタは彼女に駆け寄って鬱憤を叩き付けた。
\(;^o^)/「てめえ全部知ってんだろ! あとで回数分感謝してもらうからな!」
o川*;゚ー゚)o「は……はい」
.
-
¥;-∀-¥「……呆れた男だ」
カッコつけろと言ったつもりが、出てきたのは逆ギレめいた怒号。
マニーは嘆息しながら踵を返し、両目傷の男に向き合った。
¥・∀・¥「……と、言う訳だ。悪いが敵に回る。
他の連中にも伝えておいてくれ、ロマネスク」
( ФωФ)「……承知したが、ここで一戦交える気であるか」
¥-∀-¥「残金は少ないが、まあ何とかなると計算した。
貴様など取るに足らん無能だ。現状でも、互角はあれど負けは無い」
( ФωФ)「なるほど。……ほざいたな」
ロマネスクはマニーに向かって構え、両脚を力強く踏みしめた。
空気にヒビを入れるような重々しい音が響き、空間が一気に張り詰める。
¥・∀・¥「……ああスマン、最後の仕事を忘れていた」
¥・∀・¥「ちょっと待て。後ろのをどかしてくる」クルッ
しかし意に介さず、マニーは男に背を向けた。
.
-
\(#^o^)/「お前ぇぇ!! お前がぁぁぁ!!」
o川*;゚ー゚)o「あの、せめて分かるように八つ当たりを……」
¥・∀・¥「ええい乳繰り合うな、場所を弁えろ」
二人に近付くと、マニーは彼らの肩を掴んで言った。
\(;^o^)/「……えっ。お前はアレと戦えよ。お前の仕事だろ」
¥・∀・¥「二人とも抱き合え」
\(;^o^)/「……えっなんで?」
¥・∀・¥「邪魔だからブッ飛ばす。さっきのヤツをやる」
\(^o^)/
\(;^o^)/「オェェ!? さっきのまたやんの!? 死ねよ!」
¥・∀・¥「心配するな。場所は選ぶし、肉体強化も施してやる。
ただし、とにかく女を抱いたまま離すな。でないと着地の衝撃で女が死ぬ」
\(;^o^)/「だったら二人分やれよ!」
¥・∀・¥「カネが無い。お前が守れ」
.
-
\(;^o^)/「……」
\(^o^;)/「……いける?」チラッ
o川*゚ー゚)o「……あっ大丈夫ですよ、出来ます。保証します」
\(;^o^)/「よっしゃ来い!」ギュッ!!
彼女の後押しで自信をつけたオワタは手の平を返してキュートを抱きしめた。
マニーはオワタの肉体を強化した後、彼の背中に両手を押し当てた。
¥・∀・¥「あとは任せて惚気ておけ。また会おう」
\(;^o^)/「ゼッテーだぞ! まだ俺の一千万がッ――」
瞬間、オワタ達はフェンスを突き破ってステーション・タワーの方角にブッ飛ばされた。
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――――軋む音が、頭の中に伝わってきた。
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直後、痛みが肢体に響き、意識が無理矢理に起こされる。
オワタは目を開けようとしたが、それが出来ないほどの眩しさが部屋中に満ちていた。
\(;^o^)/(……朝か……?)
少しずつ目を開け、光に目を慣らしていく。
思えば、数百回分の時間逆行はどれも夕暮れから夜にかけての時間帯だった。
朝という状態に晒されるのは、オワタの体感時間では本当に久し振りの事になる。
\(;^o^)/(……病院じゃないよな)
自分の服や大きなベッド、部屋の模様などから病院かとも思ったが、窓からの景色がその想像を否定する。
窓から見える街を一望できるほどの絶景は、ここが凄まじい高所であることを示していた。
\(;^o^)/(……てことは、タワーか。あー助かった……)
しかし、自分の体を見返すとけっこうな傷を負っているのが見て取れた。
\(^o^)/(でも生きてりゃハッピー! 俺の勝ち!)
こういう考え方の人生は、傷が絶えない。
.
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o川*゚ー゚)o「……おはようございます」モゾモゾ
ふと素直キュートの声がして、オワタは部屋の中を見回した。
声の出所が布団の中なのは一瞬でピンと来ていたが、オワタは何かをごまかす為に視線を泳がせた。
\(;^o^)/「……なんで布団に居るの」
o川*゚ー゚)o「そろそろ起きると思って。嬉しくないです?」
\(;^o^)/「嬉しくない。人に見られたら誤解される」
おそるおそる、掛け布団を持ち上げて覗き込む。
オワタは、小さな暗闇の奥に少女の得意気な笑みを見つけた。
o川*゚ー゚)o「隠れるので大丈夫です。
事案になっても私が証言するので大丈夫です」
\(;^o^)/「大丈夫とか言う前に出てくれ。
つーかさっき体が痛かったのお前が原因だろ」
o川*;゚ー゚)o「あれは私の寝相が悪くて……。ごめんなさい」
.
-
キュートを布団から追い出し、備えられていたパイプ椅子に座らせる。
オワタは何かとソワソワしている彼女を見かね、小さく鼻息を漏らした。
\(;^o^)/「なんか言いたいんだろ。好きにしろよ……」
o川*゚ー゚)o「え、いいんですか?」
すると、彼女は早速ぺらぺらと話し始めた。
o川*゚ー゚)o「あの、知ってました。貴方が助けに来てくれるの。
貴方が今まで、何度も私を助けに来てくれたことも……」
\(;^o^)/「……何度で足りる話じゃねえけどな……」
o川*゚ー゚)o「……はい、知ってます。本当にありがとうございます」
オワタが口を挟んだ途端、彼女の笑顔がすこし薄れた。
それでも笑みを保ったまま、彼女は言葉を続ける。
o川*゚ー゚)o「……私、貴方が死ぬ所を何度も見ました。
未来予知で何度も。それも凄い数で、もう、何百回も……」
o川*゚ー゚)o「多分、その回数だけ貴方は死んできたんだと思います。
私の未来予知が変わった回数だけ、貴方も……」
\(;^o^)/「……わりぃけど、泣かれても対処できないからな」
o川*゚ー゚)o「……すみません」
.
-
キュートは息を整えてから胸をなでおろし、平静を装って開口した。
o川*゚ー゚)o「私、貴方に死んで欲しくなかったです。
時間が巻き戻るとしても、嫌でした」
o川*゚ー゚)o「なんで私のせいでこんなに死んでるんだろうって、罪悪感とか、色々……」
o川*゚ー゚)o「……でも貴方は何度でも死んで、何度でも助けに来てくれた。
私を助けようと、何度でも未来を変えてくれた」
o川*゚ー゚)o「途中からは死なないでとか思えなくなりました。
未来を変える努力をしない私がそれを言っても、ただ無責任なだけだから……」
o川*゚ー゚)o「かわりに、途中からは助けてって思うようになりました。
貴方はたぶん、私が死んだら後追いするでしょうし、
貴方を死なせないためには、私自身が生き残るしかないんだって……」
.
-
o川*゚ー゚)o「……でもまぁ、とりあえず一件落着ということで」
彼女は姿勢を正し、オワタの目を見据えて言った。
o川*゚ー゚)o「お願いです。もう二度と死なないって、ここで約束してください」
\(^o^)/「いや無理だけど」
o川*゚д゚)o
.
-
o川*゚д゚)o「……」
\(^o^)/(……止まった)
o川*゚-゚)o「……実は今、すごい驚いてます」
\(^o^)/「……そう」
o川*゚-゚)o「予想外っていうものを初めて体験しました」
\(^o^)/「……いやお前、それは変だろ」
素直キュートには予知能力がある。
それがある限り、彼女の生活に予想外はありえないはずだった。
しかし、
o川*゚-゚)o「予知能力なら消えました」
\(^o^)/
その能力はいつの間にか消えていた。
.
-
o川*゚ー゚)o「……あの能力、たぶん最初から時限付きだったんだと思います」
途端、彼女は表情を取り戻し、オワタに含みのある視線を向けた。
o川*゚ー゚)o「はあ、これから困ったなあ〜」
\(;^o^)/
o川*゚ー゚)o「私の家、あんなだし、予知能力の無い私が戻ったら……」
\(;^o^)/「……分かった、もう言うな。やめろ」
o川*゚ー゚)o「役立たずだし、すごい虐待されるかも……」
\(;^o^)/「知らねえし、そもそもオレ完全に他人だし」
o川*゚ー゚)o「家に帰りたくないなぁ……」
\(;^o^)/「最初からこの話に持ってくつもりだったろ」
o川*゚ー゚)o「じゃあ端折りますけど責任とってほしいです……」
.
-
\(;^o^)/(……助けた手前、放り出すのも無責任)
\(;^o^)/(しかし今の俺はまったくの無一文。
多分今回の入院費も踏み倒すことになる……)
\(;^o^)/(行く当てがねえのは俺も一緒なのに、
それこそ無責任にコイツを連れてく訳には……)
o川*゚ー゚)o「えーじゃあ私が泣けば即答します?」
\(;^o^)/「話すのが楽しいのは分かる。だが今は黙れ」
o川*゚ー゚)o「ひどい! でも楽しい!」
「――ずいぶんと、楽しそうだな」
現実を深刻に考え始めたオワタと、そんな彼にちょっかいをかける素直キュート。
二人の喧騒に声が割り込むと同時に、窓から十枚ほどの紙幣が室内に滑り込んできた。
\(;^o^)/「なんだコレ……あっ。マニーさん」
「……出迎えの言葉がそれか。まあ、見逃そう」
紙幣は部屋の一角に集中すると、そこで渦巻いて白く発光し始めた。
下から上へと、渦は徐々にマニーの肉体を再構成していく。
一分ほど掛かって、マニーはようやく人間としての体を取り戻した。
.
-
¥ ¥「とにかく生き残れてよかったな」
\(;^o^)/
\(;^o^)/「待て」
¥ ¥「なんだ」
\(;^o^)/「顔が無い。怖い」
¥ ¥「カネが足りん。五体満足で精一杯なのだ」
\(;^o^)/「……そう」
φ川*゚ー゚)o「ならペンで描きますね」キュッキュ
五秒後
¥’q’¥
.
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
¥・∀・¥「……という感じだ」
/ ,' 3
/ ,' 3 「……ああ?」
マニーの話が唐突に終わり、荒巻スカルチノフは寝惚けた反応を見せた。
¥・∀・¥「かくして私と人生オワタの出会いという訳だ。感動的だな」
/ ,' 3 「え、ああ、まあ……」
ぶっちゃけ八割方聞いていなかったので、荒巻は適当に話を合わせた。
.
-
/ ,' 3 「……貴様、ロマネスクはどうした」
¥・∀・¥「いやあ、足止めが精一杯だった。呆気なく殺されたよ
復活はお前に殺された時と一緒だ。オワタのカードで課金した」
/ ,' 3 「ああ、そう……」
¥・∀・¥「話を戻すが」
もはや今の話がどこから分岐して発生したんだったか、荒巻にはまったく思い出せなかった。
¥・∀・¥「人生オワタとなおるよというガキの接触。
これによって人生オワタは再び死にまくった。今のところ百回」
¥・∀・¥「とりあえずガキを生存させる事には成功したが、どうにもミルナが毎度厄介でな」
/ ,' 3 「……そこで、ドクオか?」
荒巻が先んじて言うと、マニーは眉をすぼめて答えた。
¥・∀・¥「……そのつもりだった。二十回、そうしてきた。
しかし、今回に限ってイレギュラーが現れた」
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「……あの」
その時、ミセリが病室のドアから顔だけを出して話しかけてきた。
荒巻とマニーの冷たい視線が、一瞬彼女を恐怖させる。
/ ,' 3 「……どうしたね」
ミセ*;゚ー゚)リ「……あの、ドクオさんが起きました」
/ ,' 3 「……分かったよ。すぐに行く」
¥-∀-¥「……やれ、今度の未来はどう転ぶんだか」
/ ,' 3 「未来に期待など、したことが無い」
二人は立ち上がり、件のドクオが待つ病室へと戻っていった。
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