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( ^ω^)きっとよくある冒険譚のようです
1
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 23:59:31 ID:t2pLqBbw0
彼らの世界には剣がある。
彼らの世界には魔法がある。
そして、彼らの世界には敵がいる。
だが、彼らの旅は自発的なものではない。
それでも彼らは駆け抜けるだろう。
210
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:32:42 ID:UFLVQn1o0
クーはノックの音で魔道書から顔をあげる。
そして「用なら入れ」という声を机の前で腰かけたまま発した。
( ^ω^)「失礼しますお」
川 ゚ -゚)「ブーンか、何の用だ?」
( ^ω^)「何か食べ物が欲しいなと……
何を読んでいるんだお?」
ブーンに問われ、クーは手に持っていた魔道書を見せる。
しかしそれを見せられてもブーンは不思議そうな顔をした。
( ^ω^)「黒魔法だと呪文は命令じゃなかったかお?」
ブーンの言う通りこの世界での黒魔法はほとんど口頭での命令である。
魔力の許容量以内で達成可能な命令ならば魔法として発動できる。
仮に許容量をオーバーしてしまう命令を行ったら倒れてしまうといった具合だった。
ドラゴンとの戦いで動けなくなったのは魔力消費量の蓄積で許容量を軽く超えてしまったためである。
意識を失うほど超えてはいなかったのは幸いであった。
川 ゚ -゚)「普通の魔法ならばそれで良い
だが強い魔法を使おうと思ったら細かい命令が必要でな
詠唱に時間がかかる」
そこまで言うとブーンに魔道書を見せた。
211
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:35:39 ID:UFLVQn1o0
川 ゚ -゚)「そこでドクオに白魔法みたいに黒魔法も短縮できないか訊いた」
( ^ω^)「ふむふむ、それで?」
川 ゚ -゚)「単純なものなら何度も使えば発動が速くなるらしい
それ以外だと昔『魔方陣』なる物が研究されていたと教えてくれた」
そう言うと持っていた魔道書のあるページを開く。
そこには不思議な模様が描かれていた。
大きな円の中に少し小さな円があり、その間には文字が描かれていた。
そして小さな円の中には二つの三角形でできた星があった。
川 ゚ -゚)「どうやら発動した魔法を封じ込めるというイメージらしい
この魔方陣を使えばあらかじめ封じた強い魔法が使える。
そして面白いことにトラップが可能になる」
( ^ω^)「踏んだら発動とかかお?」
川 ゚ -゚)「そうだ、トラップならうまいこと隠さなくてはいけないが
トラップでなくても呪文を聞かれてとっさにかわされることが無くなる
それにこの呪文という名の命令が無いと少し楽だしな」
( ‐ω‐)「うーんやっぱり魔法は奥が深いお」
ブーンはとても楽しそうにクーの魔方陣の意味などの説明を聞く。
その様子があまりに楽しそうなのでクーは尋ねた。
川 ゚ -゚)「魔法は好きなのか?」
( ^ω^)「才能はないけど大好きだお
下手したらごはんと同じくらい好きだお」
川 ゚ -゚)「そうか……ブーン安心しろ」
川 ゚ー゚)「魔法は40から使えるようになることもある」
( ^ω^)「本当かお!?」
ブーンはクーの言葉に嬉しそうに声のトーンを上げて返したのだった。
212
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:40:32 ID:UFLVQn1o0
ブーンはクーから魔方陣の理論について聞き終わると部屋を後にする。
結論として、彼の興味とは裏腹に彼女の話の半分も理解できなかった。
しかし理解できた話で呪文より細かいこともできるという話には驚かされたのだった。
(;^ω^)「そう言えば食べ物頼み忘れたお」
そう呟き戻ろうかと思案する。
しかし窓から外を見ると光が高い位置にあり、もうすぐ昼食だと分かる。
もう少し誰かと会話して時間をつぶせば昼ごはんと考えた。
その時食堂でぼんやりとしているドクオが目に入った。
彼が見ている先をできる限り見ないようにしつつ尋ねる。
( ^ω^)「……居るのかお?」
(;'A`)「いちいち俺が宙を見ていたら不安に思うなよ
居ないから安心しろ」
そう言うと意識するのをやめ、安心したように息をつく。
それを見てドクオは不思議そうに尋ねた。
('A`)「なんで魔物や精霊は恐れず幽霊は恐れるんだ?
あいつらはただそこにいるだけだぞ」
( ^ω^)「うーん……たぶん分からないからだお
精霊や魔物は悪戯とか攻撃が目的だお
でも何もやってこずにただ居るなんて不気味だお?」
('A`)「あー、確かに
何時もせず近くに居るだけの人がいたら怖いな」
ドクオはブーンの言葉に納得したようにうなずく。
その様子を見て付け加えるように言った。
( ^ω^)「あと魔物は剣で殺せるお
精霊は見える人には叩かれたりしているお
幽霊にそれはできるお?」
('A`)「普通魔力使えば話せはするがそれはできんな」
ドクオの言葉にブーンは顔を若干蒼くさせた。
213
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:44:38 ID:UFLVQn1o0
(;^ω^)「やっぱり倒せないのかお……」
('A`)「殴れないから怖いという感じか」
ドクオはどこか納得した様子で呟いた。
その言葉にブーンは頷く。
('A`)「まぁ俺も幽霊慣れているしそんなに注視することは無い
だからぼんやり宙を見てても安心してくれ」
( ´ω`)「なんかすまんお、でもこればっかりは怖いんだお」
('A`)「じゃぁおまえに安心させる言葉を一つ
この中には俺らの守護霊的なもの以外の霊はいない」
その言葉にしおれたブーンの顔に覇気が戻る。
安心したようでいつもの表情に戻るとほっとしたように言った。
( ^ω^)「それは良かったお」
('A`)「守護霊的なのは平気なんだな」
( ^ω^)「よくわからんけど
僕がドクオの回復の恩恵得られるのは
その人がいるからだお」
( ‐ω‐)「それに『守護』ってついているからには
僕を守ってくれているお
感謝する謂れはあっても恐れる謂れはないお」
('A`)「……俺がいるって言った時」
(;^ω^)「あ……あれは言い方にビビっただけだお
それにしてもお腹へったお」
ブーンはそう言うと立ち上がる。
そしてクーのところにご飯の催促へ行ったのだった。
( ^ω^)
好きなもの:食事、魔法
嫌いなもの:苦いもの、幽霊
214
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:51:41 ID:UFLVQn1o0
ツンは真顔のまま鼻歌を歌い、手綱を握る。
魔物に落とされた街とは言え今向かっている先は故郷だ。
何が残っているか楽しみではある。
その一方で何もなかったらどうしようと不安でもあった。
ξ゚⊿゚)ξ「地図だと今はここら辺で
私の町はここだから……少し右かしら」
地図と羅針盤を見ながらつぶやく。
周りに見えるのは瘴気の霧と廃墟だけだった。
そのため地図に記された街などはあまり参考にできない。
( ^ω^)「ツーン! ご飯運んできたお!」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ありがとう」
勢いよくブーンが手に皿を乗せて操縦室に入ってきた。
ツンはそんな彼に対し素直にお礼を言う。
昔、父に「精霊は素直じゃないと見えない」と言われたため人に対し素直になろうとしていた。
だが、今も昔見えた精霊の姿は見えなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……」
( ^ω^)「どうかしたのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「精霊見たいなって」
ブーンはツンの言葉を聞きつつ食事の乗った皿を渡す。
メニューはスパゲッティである。
野菜などがバラバラな大きさで切られて入っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「クーの作る料理はなんというか豪快ね」
(;^ω^)「厨房覗いたら魔法で焼いたり切ったりしていたお」
ξ;゚⊿゚)ξ「なるほど、料理当番二順目の時天井焦げていたのはそれが理由ね」
しかし味はしっかりとしておいしい。
ツンはブーンに運転を任せるとそれを食べ始めた。
215
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:56:38 ID:UFLVQn1o0
( ^ω^)「ツンは精霊に会いたいのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「小さいころは見えたからね
お父様がすごい精霊使っていたのが印象的なのよ」
( ^ω^)「そう言えば宿していたって言っていたおね」
ブーンは運転しながら会話をする。
ツンはスパゲッティをフォークに巻きつけながら言った。
ξ゚⊿゚)ξ「昔突然見えなくなって、お父様に相談したら言われたの
『精霊は素直じゃないと見れない』って」
( ^ω^)「素直なだけで見えたら僕も見れるお」
ξ゚⊿゚)ξ「確かにね、性格以外の要因もあるのかしら」
( ^ω^)「うーん……ツンは精霊のことは好きだおね」
ξ゚ー゚)ξ「うん、魔法とかは使おうとは思わなかった
でもきれいな花とかで遊ぶ精霊を見ているのが好きだった」
ξ゚⊿゚)ξ「だからこそまた精霊に会いたいんだけどね」
最後は少しさみしそうに言った。
ブーンは運転を続けつつ言った。
( ^ω^)「午後の運転は僕の担当だお
代わるからお皿を返したり頼むお」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、ありがとう」
( ^ω^)「それと、きっとまた会えるお! 精霊に!」
ブーンの言葉にツンは驚きの表情を漏らす。
ツンはそしてかすかに笑うと操縦部屋を出たのだった。
食堂にいたぃょぅは操縦室からツンが居なくなったことを確認する。
すると定位置である操縦部屋の中へ戻っていった。
ツンはそれをできる限り見ないようにしたのだった。
216
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:12:05 ID:UFLVQn1o0
('A`)「お前ら同じ船の中なのに空気悪い」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何よいきなり」
食堂で食べ終わったにもかかわらずぼんやりとしていたドクオはそう声をかける。
ツンはそれに対し少したじろぎ、考えると言った。
ξ゚⊿゚)ξ「仕方ないじゃない
あれは魔物よ……私の敵よ」
('A`)「敵意はないから別にいいじゃないか……」
ξ゚⊿゚)ξ「敵意があってもなくても魔物は魔物なの」
似たような問答を少し繰り返した後軽くため息をつく。
そしてらちが明かないと判断したのか空気を換えるように質問をした。
('A`)「お前の魔物嫌いは分かった
それ以外に苦手なものとかあるのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「うーん、幽霊は何もしないから怖くないし
虫だって故郷失ってから山の中だったから平気」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっと、あれ?
憎しみ強すぎて忘れちゃった?
何かすっごい怖いことが……」
ツンは慌てて答えを考える。
その様子にドクオは「そこまで考えなくても」と呟く。
そしてツンはひらめいたように言った。
ξ゚⊿゚)ξ「分かった! 私が苦手なものは毒よ!
格闘家の里の時以来毒調合してないもの」
(;'A`)「あーあの時遅くてすまんな」
ドクオは若干申し訳なさそうに言う。
ツンはそれに対して気にする風もなく返す。
ξ゚⊿゚)ξ「別にいいわよ、助けてくれたんだし」
217
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:16:14 ID:UFLVQn1o0
ドクオは二人を発見した時のことを思い出す。
('A`)「俺は矢が飛んできて気づいたから
お前自身が自分たちを救ったようなもんだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「え? 矢?」
('A`)「そう、お前の矢」
ξ;゚⊿゚)ξ(あの気絶する前、私は矢を放っていない
私が放った矢で気づいたならもう少し早くてもいい
と言うことは誰か別の人がいたのかしら?)
ツンはドクオの言葉で必死に考える。
しかしいくら思い出しても人の気配などなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(……情報が無いわね、このことは置いておくために話題を変えましょう)
ξ゚⊿゚)ξ「そう言えばあんたの魔法について知っておきたいんだけど
どこまでの距離なら回復してくれるとか」
(;'A`)「唐突に変わるな……範囲か?
他の白魔法と一緒で視認できるなら可だ
ただし俺の場合本人じゃなくても守護霊が見えれば治せる」
ξ;゚⊿゚)ξ「範囲すごい広いじゃない」
('A`)「ドラゴン戦で初めてやったけどな
だけどあれはダメだ、魔力が倍近くかかる」
ドクオはそう言うと手をひらひらとさせる。
そして「できる限りダメージ受けないでくれ」と言った。
ツンは少し考えた後に尋ねる。
ξ゚⊿゚)ξ「あの変な呪文は自分で考えたの?」
('A`)「……はい」
ドクオはツンの問いに消え入りそうな声を返した。
218
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:18:49 ID:UFLVQn1o0
('A`)「白魔法はそれ用の本に書き込んで契約主に効果や仕組みを覚えてもらう
神様とかと契約しているのはもう書き方が決まっているらしい
そしてその時に呪文も設定する」
ξ゚⊿゚)ξ「たくさん契約しているから揃えているのね」
('A`)「そうだな、おかげで『回復魔法Lv1』とか分かりやすい
俺みたいに個人で精霊とかと契約している場合はそう言うのが無い」
(;'A`)「書き方が公開されてないせいで皆独学だ
精霊は数があるから本とかにまとまっているが俺は本気の独学」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、使える魔法はどうやって増やすの?」
('A`)「経験を積めば覚えられる呪文の数が増える
だけど薬師みたいに切れた腕をくっつけたりする呪文は存在しない
だからお前らそんな致命傷を受けないように気をつけろよ?」
ツンはそれを聞いて少し考える。
そして顔をあげると言った。
ξ゚⊿゚)ξ+「前向きに検討いたします」
('A`)「それ考えないってことだろ」
ドクオの突込みにツンは軽く笑う。
そして「分かったわ」と言うと食堂を出て行ったのだった。
ξ゚⊿゚)ξ
好きなもの:精霊、買い物
嫌いなもの:魔物、毒
219
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:23:58 ID:UFLVQn1o0
黄昏時の日差しが霧の向こうにわずかに見える中、クーは一人部屋にいた。
そして自らのジュエリーボックスから石を取り出す。
それはイミテーションの宝石だった。
偽物とは言え、その輝きは本物以上である。
瘴気を通った夕日の赤い光を浴びてキラキラと輝く。
ξ゚⊿゚)ξ「クー? 入るわよ」
川 ゚ -゚)「ツンか、どうした?」
ξ゚⊿゚)ξ「今日のお風呂のことなんだけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「ってすごい量の宝石、魔法に使うの?」
川 ゚ -゚)「イミテーションだ、集めているのは趣味だ」
そう言うとツンに石を見せる。
光が乱反射して目がくらみそうになった。
ξ゚⊿゚)ξ「ずいぶんキラキラしているのねぇ」
川 ゚ -゚)「キレイだろ?
親が生きていた時分にはガラスのかけらを持って帰って怒られた」
ξ゚⊿゚)ξ「……親御さんは魔物に?」
川 ゚ -゚)「ただの事故だ、おかげで孤児院行き
その流れで修道女やっていた」
クーはそう言うとにやりと笑う。
そして「だから悪魔との契約に抵抗もなかった」とだけ言う。
ツンは小さく「へぇ」と声を上げた。
ξ゚⊿゚)ξ「私いまいち宗教が分からないのよね」
川 ゚ -゚)「親御さんは教えてくれなかったのか?」
ξ-⊿-)ξ「両親はどっちかと言うと精霊を信仰していたわ
親戚のおじさんは『祈る間があったら狩れ』っていう人だったし」
220
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:26:08 ID:UFLVQn1o0
川 ゚ -゚)「……すごいおじさんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「お世話になっていたホライゾン国も無宗教国だったしね」
川 ゚ -゚)「では教会について説明しよう
本部はホライゾン国よりずっと北の方にある
瘴気を超えた川の上流だな」
ξ゚⊿゚)ξ「そう言えばモララーさん船に乗ってきたわね」
川 ゚ -゚)「そして教会の人で偉いのは『6人長』と言うやつらだ
文字通り6人からなるらしい」
川;゚ -゚)「だが、私はアラマキ殿しかお見受けしたことが無い」
ξ゚⊿゚)ξ「アラマキ?」
川 ゚ -゚)「あの地区を管理しているという6人長の一人だ
称号は騎士長、そしてあのモララー殿は若かったが
聖騎士の称号はおそらくアラマキ殿の跡目だろう」
ξ゚⊿゚)ξ「何を信じているの?」
川 ゚ -゚)「神様だ……この世界と人を作った神らしい
そして悪魔と対立している種族らしい
彼と契約すると魔法が使える」
ξ゚⊿゚)ξ「らしいが多くてあやふやね」
クーの説明にツンがそう感想を漏らす。
その言葉にクーはかすかに笑みを漏らす。
川 ゚ー゚)「確かにあやふやだ
もしかしたら祈っている神様は
遠くから見て本物にそっくりなだけかもしれない」
川 ゚ -゚)「これのようにな
だが、偽物でも十分な人は十分なんだよ」
クーはそう言うとツンにイミテーションの宝石を示す。
その表情はどこか楽しげだった。
221
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:29:32 ID:UFLVQn1o0
川 ゚ -゚)「炎よ……なんだぃょぅか
てっきり虫かと思って燃やしかけたぞ」
(;゚ω゚)ノ「怖いこと言わないでくれょぅ」
夜の操縦部屋にクーは少しの間だけ運転を頼まれてやってきていた。
そして影から翅だけが見え、虫だとクーは思ったらしい。
深く息を吸って吐くと言った。
川 ゚ -゚)「すまないな、虫は苦手なんだ」
(=゚ω゚)ノ「なんでだょぅ?」
川 ゚ -゚)「昔は平気だった」
川;゚ -゚)「だがある時捕まえた蝶をまじまじと見たんだ
たくさん寄り集まった複眼、腹に生えた細かい毛
翅の鱗粉、足の節……とかな」
川 ゚ -゚)「そしたら気持ち悪くてだめになった」
(=゚ω゚)ノ「おぉう」
川 ゚ -゚)「他の虫なら大丈夫かと思って観察した
トンボ、ハエ、ムカデ、ダンゴ虫
ここら辺でこれ以上見たらだめだと気づいた」
川;゚ -゚)「だが、まじまじと見た所為か
夢の中で巨大な虫に襲われてな
それですっかり」
(=゚ω゚)ノ「なんというか、ご愁傷様だょぅ」
川 ゚ -゚)「好奇心猫をも殺すの意味を知ったよ」
クーはそう言うと困ったように笑った。
ぃょぅも苦笑いを浮かべる。
川 ゚ -゚)「そう言えばお前は魔物だったよな
聖水は大丈夫なのか?」
クーはふっと思いついたように尋ねた。
その手にはいつの間にかに無職透明な水の入った瓶があった。
222
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:32:45 ID:UFLVQn1o0
(=゚ω゚)ノ「聖水は精霊だった時は美味しく飲めたょぅ
でも最近は飲んでないょぅ」
川 ゚ -゚)「飲んでみてはくれないか?」
ぃょぅはそう言われて聖水に手を伸ばす。
そして何口か飲んだ後に言った。
(=゚ω゚)ノ「普通に美味しいょぅ」
川 ゚ -゚)「そうか、味は変わらないか
瘴気を聖水で払うから何かしらあると思ったんだが」
その言葉にもう一口と含んだ聖水を吹く。
そして焦った様子で尋ねる。
(;゚ω゚)ノ「さらりと試したのかょぅ!?」
川 ゚ -゚)「ついでに聖水処分だ
ちなみにほかのメンバーにも黒い煙の浄化と言って飲んでもらった」
(=゚ω゚)ノ「お前は?」
川 ゚ -゚)「悪魔を宿した身で神の水を飲めと?
ついでに言うと臭いだけでダメだ
聖水なんて大嫌いだ」
(=゚ω゚)ノ「影響しっかり出てるょぅ……元修道女だったんじゃないのかょぅ」
川 ゚ -゚)「煩いな、
ちなみに結果はブーンとツンがうまい、ドクオがまずいだった」
(=゚ω゚)ノ「神の性質じゃない魔法使うとまずいのかょぅ」
川 ゚ -゚)「かもしれないな」
クーはそう言うと羅針盤とにらめっこをしながら手綱を握る。
早く本来の当番こないかなと考えつつ。
川 ゚ -゚)
好きなもの:光り物、魔法開発
嫌いなもの:虫、聖水
223
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:36:14 ID:UFLVQn1o0
ドクオが操縦部屋に戻る。
そこには転寝しているぃょぅと地図を睨みつけるクーがいた。
('A`)「悪い、今戻った」
川 ゚ -゚)「む、待っていたぞ
まさかまだ食っていないとは思わなかった」
(;'A`)「あー、本読んでるとよくあるんだよな
飯忘れたり約束に遅れかけたり」
そう申し訳なさそうに言うと運転を代わる。
クーはその言葉を聞くと小さく「フム」と言った。
川 ゚ -゚)「勉強が好きなのか?」
('A`)「いや、白魔法の本じゃなくて普通の本
伝説まとめたやつとか小説とか」
川 ゚ -゚)「伝説で面白いものはあったか?」
クーの問いに手綱を離さず考える。
しばらくするとこう答えた。
('A`)「この世界の創世記かな」
川 ゚ -゚)「神話の神がこの世界を作ったという話か」
('A`)「いや、ある辺境の山間の村にだけ伝わる話だ
その話では神だけではなく
精霊、亡霊、悪魔も協力してこの世界を作ったらしい」
川 ゚ -゚)「……それは面白いな
だが、人間がいない」
('A`)「人間は全てを混ぜて作られた中間種らしい
だからすべての種族と契約できるんだとよ」
ドクオの言葉にクーは興味深そうに「ふむ」と声を出す。
224
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:47:54 ID:UFLVQn1o0
('A`)「興味があるなら貸すぞ?
俺の部屋の机の上だ」
川 ゚ -゚)「そうだな、寝る前に借りるとしよう」
クーはそう言うと操縦部屋を出ようとする。
そして気が付いたように尋ねる。
川 ゚ -゚)「ところでその神話における亡霊とはなんだ?
何の霊なんだ?」
('A`)「そんなの決まっている
他の種族の霊だ」
川 ゚ -゚)「では……悪魔の霊は見えるか?」
('A`)「……今のところは見えない
精霊の霊なら見たことある」
川 ゚ -゚)「ふむ、悪魔は死んでいないということなのか
では魔物はどうだ?」
('A`)「魔物は見たことないな」
クーはそれを聞いてひとまず興味が満たされたようだった。
何度もうなずく。
そして思い出したように言った。
川 ゚ -゚)「そう言えばぃょぅにとって聖水の味は変わらなかったらしいぞ
興味深い話の礼の情報だ」
('A`)「……マジか
瘴気に当てられたら瘴気を払える
聖水への耐性も変わると思ったんだが」
川 ゚ -゚)「面白い仮説だったがちがったな」
(#-ω-)ノ(飲まされたのはお前の所為かょぅ)
ぃょぅが密かにドクオに怒りを覚えたことは彼しか知らない。
クーは悪魔の霊がいないという話にどこか安心しつつ操縦部屋を出たのだった。
225
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:53:38 ID:UFLVQn1o0
ドクオは一人手綱を握っていた。
ぼんやり運転しつつ瘴気について考える。
仮説に過ぎなかった考えが頭をよぎる。
('A`)(もしかしたら瘴気は
聖水で払える何かと
逆の何かが混ざっているのかもしれん)
(;'A`)(だから聖水で助けられない人がいるんだな
村の奴ら大丈夫か?)
('A`)(時々瘴気に対して強い人がいるという
ただ個人差にすぎず、長い間活動していると人は弱る)
('A`)「そもそも聖水ってなんなのかね」
<_プー゚)フ『神の水じゃね? 俺あれ嫌い』
('A`)「成仏するからか?」
ドクオは自らの守護霊に対応する。
そして結果的にブーンに嘘をつくことになったかもなと感じた。
彼は旅に出始めてから魔力の消費無しで霊との会話が可能になっていた。
最近のことだったため忘れていたのだった。
何となくツンの故郷に向かっているということもあって里を思い出していた。
彼は一応故郷が好きではあった。
故郷の年下や同年代が心配でなければそもそも旅に出ていなかった。
子供がいないだけで村はあんなに静かにならない。
同年代の未成年もまた、多くが瘴気に倒れていた。
そのため若いほど瘴気に弱いと知っていた。
故郷のみんなが倒れた時彼は不思議だった。
何故他のみんなより弱い自分が平気なのだろう。
何故この里では普通な皆が倒れているのだろうと。
何となく里の他の人にもそう思われている気がした。
226
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:54:58 ID:u4DGbP8w0
待ってた! おっかえりいいい!
支援
227
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:56:50 ID:UFLVQn1o0
彼は昔から体が小さく筋力もなかった。
それでも里にいるからには格闘家の訓練をしなくてはならない。
その結果避けることばかりうまくなった。
格闘家らしくないとこの時から孤立気味だった。
昔から魔力を使えば幽霊と話せた。
そのことを話したら気味悪がられた。
結果としてさらに孤立した。
この里では邪道だと知りつつ幽霊と契約し白魔法を学んだ。
真っ先に怪我した時の回復魔法。
他のみんなに追いつくため強化魔法を覚えた。
努力と白魔法の才能は認められた。
だが、この里での劣等感、孤独感は深まった。
このあたりから視線に込められた気持ちに気が付き始めた。
「なぜこの里から出ないのだろう?」と言う疑問を。
周辺に毒を使う魔物が出始めた。
そのため解毒魔法を覚えた。
里のみんなにはいつの間にか知られていた。
モララーにはいざという時に頼むと言われた。
その一方でますます疑問の眼が増えた気がした。
表立ったいじめはない。
だが、勘違いかもしれないが無意識にこめられる気持ちはわかる。
そのため瘴気が降ってきた辺りで家にこもり気味になった。
他の人は心配だったがそれ以上に視線を感じたくなかった。
敵意が無いのは守護霊が騒がないから分かる。
それでもつらかった。
本当は瘴気に倒れたかった。
故郷で普通の人でありたかった。
228
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:00:12 ID:fz4a7DJs0
旅に出て白魔法を普通に使うようになった。
そしたら魔力消費無しでいつの間にか幽霊と話せていた。
どの本にも消費無しで話せた例などは載っていない。
体格などのコンプレックスはまだましになった。
一応自分くらいの体格の人も世界には普通にいた。
それをプラスマイナスした結果、旅を始めてから普通から遠ざかったような気がした。
そんな遠ざかった自分が嫌だった。
旅の仲間も嫌いではない。
時々怖いことはあるが疑問の目を向けないのでありがたい。
ブーンも幽霊を怖がっているのでありドクオを怖がっているわけではない。
そしてそれぞれの目的も一応知っている。
そして自分の眼は一部の目的の行きつく先を知っていた。
('A`)(やになるなぁ)
彼はぎりぎりまで言わないでおこうと思っていた。
このことは頼まれもしていた。
ぼんやり運転しているうちに朝日が昇って来るのが分かった。
今日徹夜当番と知っていたためしっかり寝ていたため眠気は大丈夫である。
瘴気の中から手招きする無数の手が消えていくのが見えた。
この無数の手は夜だけ見ええた。
夜は意思のない霊もある程度動けるようになるためだと考えられた。
そのため瘴気にのまれた魂が出口を求めているのだろう。
そう結論づけていた。
('A`)「……嫌だな」
<_プー゚)フ『何がだ?』
('A`)「自分自身がだよ」
そう言うと大きなため息をついた。
229
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:05:06 ID:fz4a7DJs0
ドクオは守護霊が騒いでいないのを確認する。
彼は一回本気で自殺を考えたことがあった。
その時守護霊は敵意が彼に向いていると感じたらしい。
ものすごい騒ぎ立てたのだった。
彼はその時守護霊は自分自身のものも含めて自分に向けられた敵意に反応すると知った。
そのため守護霊を見れば敵意が向けられているか分かった。
今自分が自殺を本気で考えているかも。
('A`)「俺さ、この世界は好きだよ
好きなものたくさんあるし」
<_プー゚)フ『俺も?』
('A`)「比較的そうだな……だから時々思うよ」
(-A-)「俺がいない方が俺の好きな世界じゃないかって」
(=゚ω゚)ノ「何を一人でぶつぶつ言っているんだょぅ」
操縦部屋を寝床にしているぃょぅが起き上がり話しかけると守護霊は途端に黙り込む。
一応ドクオが下手に反応しないように話すのを自重しているのであった。
('A`)「……独り言」
(;゚ω゚)ノ「でかい独り言だょぅ」
('A`)「それより地図だとここだよな」
ドクオはそう言うと馬車を泊める。
そして操縦室の窓から瘴気の霧を見ると呟いた。
(;'A`)「……これを見せるのか」
そこは町などなかった。
そこには朽ちかけた廃墟だけがあったのだった。
('A`)
好きなもの:読書、故郷
嫌いなもの:敵意、自分
230
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:20:11 ID:fz4a7DJs0
_
( ゚∀゚)「妹からの手紙と小包届いたからちょっと見てきていいか?」
( ∵)「長い小包ですね……分かりました、運転しておきます」
ジョルジュが機械の鳥が届けてくれた小包と手紙を見せつつビコーズに尋ねる。
ビコーズがそう返事をすると操縦席へとついた。
ジョルジュは手紙をいそいそと開封し、読み始める。
ビコーズとフォックスはブーンたちの馬車の様子を見つつ運転をする。
やがてブーンたちの馬車が止まるのが見えた。
ビコーズはブーンたちから見えない廃墟の影へと馬車を向かわせる。
その間にフォックスは手紙を読んでいるであろうジョルジュへ声をかけに行った。
爪'ー`)「あいつら泊めたぞ」
_
(#゚∀゚)「お、目的地に着いたのか」
フォックスの言葉に手紙をぐしゃりと握りしめつつ言う。
傍らには長い小包が置かれていた。
彼はその剣幕にビビり、ビコーズを呼ぼうか考える。
爪'ー`)「どうしたんだい? イラついて」
_
( ゚∀゚)「妹からの手紙で思い人と付き合うことになったという手紙が来た」
_
(#゚∀゚)「どこの馬の骨だ!?」
_
( ゚∀゚)「という訳で……」
ジョルジュの言葉にフォックスはフムフムと頷く。
そして軽くジョルジュの肩をたたいた。
231
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:21:37 ID:fz4a7DJs0
爪'ー`)y‐「そうか、だけど妹さんの人生じゃないか」
フォックスは火のついていないタバコを持ち直しつつ言う。
その言葉を聞いてジョルジュはかすかに寂しそうにした。
_
( ゚∀゚)「分かってる
だけど親が流行り病で死んだ俺にとってあいつは唯一の家族なんだ」
_
( -∀-)「あいつには幸せになってもらいたい」
フォックスは何となく故郷にいる家族を思い出した。
結果的に何も言わず飛び出した自分のことをどう思っているのだろうと感じた。
爪'ー`)y‐「大丈夫さ」
_
( ゚∀゚)「え?」
爪'ー`)y‐「大好きな妹さんが選んだ大好きな人なんだろ?
信じて祝ってやれよ」
ジョルジュはその言葉の意味を考える。
そして苦笑いしながら言った。
_
( ゚∀゚)「俺は多分そいつのことを一生好きだけど嫌いな奴だと感じると思うよ」
そう言うと無造作に小包を開ける。
そこには先端がドリル状になり、赤と青と白で彩られた槍があった。
232
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:25:34 ID:fz4a7DJs0
「珍妙な形の槍だな」とフォックスは言いそうになる。
フォックスがその言葉を発する前にジョルジュが続けた。
_
( ゚∀゚)「ハインリッヒからのプレゼントだとさ
あいつが何か作ると俺がすっごい喜んでたからなのか分からないけど
ときどき発明品送ってくれるんだ……今回のはどういうしかけかな?」
そう楽しそうに言うと持ち手の横にあるボタンに気付く。
そのボタンを押すと槍の先端が甲高い音を立てつつ回転した。
魔力が吸い取られる感覚を感じジョルジュが思わず槍を手放した。
槍が床に落ちた途端運転席の方で前の馬車を見ていたビコーズが音もなく二人の元へ現れる。
そして二人に聞こえるようはっきりとした声で言った。
( ∵)「彼らに動きがありました、馬車から降りていました……ですが」
爪'ー`)「なんかあったのか?」
( ∵)「瘴気を防ぐためのマスクをしていなかったのです」
そう言うと二人の方へ双眼鏡を手渡す。
瘴気の中では普通倒れると知っていたジョルジュはひったくる様に双眼鏡を受け取る。
そしてブーンたちの馬車が見えるであろう運転席の方へ向かったのだった。
233
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:33:23 ID:fz4a7DJs0
_
( ゚∀゚)「以上、半分以上説明会でした」
これにて7話終了です。
いろいろと終わったので戻ってきました。
今回はある意味旅の動機が一番薄い?ドクオ回でした。
次回はツン回だと思います、たぶん。
白魔法と黒魔法について。
白魔法はパソコンでのブックマーク。
黒魔法は検索エンジンでの検索をイメージしています。
黒魔法の短縮は何度も同じ言葉で検索したら予測が出るイメージです。
こういうのは何となくでいいのです。
234
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:39:26 ID:Ad0./hl60
乙乙
235
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:45:16 ID:l4LmEgwo0
おー、おかえり
そして乙
236
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 01:19:51 ID:PAwPk48U0
まってた
乙��
237
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 02:13:12 ID:EhqF1OkI0
うひょー来てくれた!おつ!
238
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 11:20:08 ID:W8VZp1/U0
乙乙
おかえりー
239
:
名も無きAAのようです
:2016/01/06(水) 21:32:42 ID:jOG85U6o0
待ってるよー
240
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 09:12:26 ID:qaniNzbw0
続きがないのがおしいな
241
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:39:44 ID:T2sbhsLU0
ξ ⊿ )ξ
ツンは外を見て黙りこくる。
(;^ω^)
(;'A`)
川;゚ -゚)
(;゚ω゚)ノ
他のメンバーは何も言えない。
かけるべき言葉も見当たらない
彼らは今、ツンの陰鬱な空気に包まれた故郷の前にいた。
彼女の故郷の建物は半分以上が崩れ、植物は枯れて朽ちかけていた。
だが、彼女の故郷が陰鬱な空気に包まれていた1番の理由はそれではなかった。
空間に瘴気が満ちている。
そのことがそこの雰囲気を一番暗く淀んだ、陰鬱なものに変えている要因だった。
242
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:42:01 ID:T2sbhsLU0
第一章
第8話 瘴気にのまれた街
243
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:45:41 ID:T2sbhsLU0
ξ゚⊿゚)ξ「……綺麗な街だったの
領主様が花が大好きなお方でね
何時も何かしらの花が咲いていた」
ξ-⊿-)ξ「風が吹くといい香りがして
綺麗に季節ごとに違った花弁が舞って……
魔物に支配されるっていうのはこういう事なのかしら」
( ^ω^)「ツン……大丈夫かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ……覚悟はしていたから」
ξ゚‐゚)ξ「でも少し部屋で休むわ
出るときに呼んでちょうだい」
ツンはそう言うと操舵室から出ていく。
誰もその背を追うものはいなかった。
川 ゚ -゚)「覚悟していた……か
実際に見た衝撃は覚悟以上だったようだが」
(;'A`)「確かに俺も故郷がこんなことになったら
絶対見たらショックだ」
( ^ω^)「……ツンみたいな思いをさせる人を増やしちゃいけないお」
ブーンが決意を新たにするように呟く。
ドクオは相変わらず外を見ていた。
クーはツンの部屋の方を見て小さく言った。
川 ゚ -゚)「……大好きな故郷があるというのはうらやましいよ」
('A`)「ん? クーは嫌いなのか?」
川 ゚ -゚)「好きではなかったというだけだ」
ドクオの問いにクーは表情を変えずさらりと答える。
彼もその答えに「そういうもんか」と言うだけだった。
その会話を耳に入れながらブーンは改めて瘴気の霧を見て困ったように呟いた。
(;^ω^)「ところでどうやって外に出るお? マスクあるかお?」
244
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:50:53 ID:T2sbhsLU0
ブーンの言葉にツンも招集し、馬車内の大捜索が始まる。
その結果得られた成果はロープぐらいだった。
彼らは馬車内に瘴気を防ぐためのマスクなどは存在しないということを理解した。
( ^ω^)「……瘴気、どうするお?」
全員沈黙する。外に存在する吸い込むと人間にとって毒となる瘴気。
何か防ぐ手はないかと全員考え込む。
その時クーが沈黙を断ち切る。
川 ゚ -゚)「それに関して案がある」
クーの言葉に全員が彼女を注目する。
そして「危険だが」と前置きしたうえで続けた。
川 ゚ -゚)「この装備のまま突撃するのはどうだ?」
(;^ω^)「聖水は買い込んでないお? 自殺行為だお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そもそも防護マスクなしで普通に歩けたら
もっと人間の反撃も楽のはずよ?」
川 ゚ -゚)「無謀に見えるかもしれないが無策ではない
あのドラゴンの煙あっただろ?」
そう言われてブーンたちがもろに吸い込んだ煙を思い出す。
ドクオが何を考えているか分かったかのように手をたたいた。
245
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:55:14 ID:T2sbhsLU0
(;'A`)「なるほど、だけど俺らは耐えきれるか分からんぞ?」
川 ゚ -゚)「その時は二人に馬車へ運んでもらおう
聖水も二人分ならまだある」
ξ;゚⊿゚)ξ「煙……あ、そうか」
ツンがここでわかったような声を上げる。
ブーンもあの時のことを思い出す。
(;^ω^)「そう言えばデミタスさん煙と瘴気の成分近いって言っていたお」
ξ゚⊿゚)ξ「……もし全滅したら?」
川 ゚ -゚)「……ではまずどちらかだけが行ってみてくれないか?」
ツンの問いに少し迷った後、クーはブーンとツンを見つめつつ頼む。
その頼みにブーンは自分が行こうと手をあげようとした。
しかしそれ以上の速度でツンが立候補していた。
ξ゚⊿゚)ξ「それなら私から行くわ」
川 ゚ -゚)「……勝手には動くなよ?」
クーにくぎを刺すように言われてツンは頷く。
そして何処か顔をそむけつつ「分かっているわよ」と小さく言うのだった。
246
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:01:04 ID:T2sbhsLU0
ξ゚⊿゚)ξ
ツンは一人外へとつながる扉へ向かう。
一歩一歩外へと近づく。
帰りたいと感じていた故郷が近づく。
だが、その故郷は自分が愛した面影はない。
花も家族も何もいない。
扉をあけ放ち、ひとり外に出て地上に降り立つ。
魔物と化した枯れた植物が噛みついてくる。
彼女は表情を変えず踏み潰す。
ξ ⊿ )ξ
息は苦しくなかった。
黒い煙の時のように視界がかすむということもなかった。
ただ紫の世界に見える世界が変わるだけ。
自分の居た世界が紫の瘴気に包まれたという事実を確認するだけ。
ξ;⊿;)ξ
気が付けば涙があふれていた。
綺麗だった花が魔物となって噛みついてくる。
それをひたすら淡々と踏み潰す。
周りの花を一通り踏み潰し終えると涙を拭く。
そして扉へ力強く叩く。
大丈夫と言うことを知らせるためもう2回、計3回叩く。
ふっと足元を見る。
枯れた花に口がある魔物がまたたくさんいた。
花の魔物を踏み潰す。
踏みつぶす際に地面に変な硬い感触を感じる。
魔物の感触だろうかとツンはぼんやり考えていた。
247
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:09:25 ID:T2sbhsLU0
(=゚ω゚)ノ「あぶないょぅ!」
妖精の叫びが聞こえた。
ツンはその魔物の叫びに意識を覚醒させる。
どうやら妖精は自分についてきていたらしい。
何が危ないのだろうとぼんやり考える。
巨大な根が地面を突き破って現れる。
その先端は金属のように硬く、鋭かった。
ツンの体は警告に従い、その場所から自然と離れていた。
その結果として彼女の眼はそれをしっかりと捉えていた。
248
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:17:24 ID:T2sbhsLU0
ツンは危険を知らせる声にとっさに動いていた。
そのおかげで間一髪攻撃をかわすことができたとはいえ、自分が動いたことに驚きを隠せなかった。
妖精の言葉を信じた自分への驚きで一瞬動きが止まる。
しかしその驚きを「危険なものだ」とすぐに捨て去る。
そしてモノクルをつけると敵の姿を探す。
しかし地上には現れている根、
そして枯れた花の魔物しかいなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「皆! 襲撃よ!」
(;^ω^)「マジかお!」
川 ゚ -゚)「下手に相手を刺激するなよ?」
クーはそう言うと馬車の扉を開け飛び出す。
そして飛び降りるとツンの後ろに華麗に着地する。
マントが後からふわりと降りる。
( ^ω^)「僕も行くおー!」
ブーンもそう叫ぶと飛びだす。
そして鎧から大きな金属の音を立てながらツンの元へ向かおうとする。
彼が地面を踏みしめた瞬間出ていた根がかすかに震えた。
ξ゚⊿゚)ξ「そこ! 剣を突き立てて!!」
( ^ω^)「了解だお!」
ツンの指示にブーンが素早く剣を突き立てる。
すると辺り一面に痛みにうめくように尖った根が出現した。
足などにかする程度で直撃は避けたが、ゾワリとした危険を感じつつ分析をする。
( ^ω^)「辺り一面に張った根っこが武器みたいだお」
ξ゚⊿゚)ξ「それだけじゃないわ」
そう言うとツンは枯れた花の魔物を示す。
さっき彼女が踏みつぶしたそれは元気を取り戻していた。
249
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:28:25 ID:T2sbhsLU0
ξ゚⊿゚)ξ「降りた時もみんなを呼んだ時も踏みつぶした
だけど全部元気を取り戻しているのよね
たぶん花の魔物と根の魔物、本体は一緒ね」
川 ゚ -゚)「焼いてしまいたいが私たちの足元の魔物が残るな」
ブーンが根を斬りつつツンの方へ向かう。
その途中ぐちゃぐちゃになった地面に足をとられる。
よろめいて地面に剣を突き立てる。
すると驚いたように大量の鋭い根が出現した。
どうやら地中の根にダメージを与えると根を生やすようだった。
( ^ω^)「うーんどうすればいいんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「食らうの覚悟で突き立てまくる?」
( ^ω^)「それ大変なの僕だけだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そう言われても」
そう言ってツンは地面に矢を放つ。
矢は地面に深々と刺さり、その周囲に大量の根が出現する。
( ^ω^)「……ツンが放って
僕が出てきた根っこ斬るのが効率絶対いいお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうみたいね
クー、あっちの方にも撃つから焼くのお願いできる?」
川 ゚ -゚)「了解した」
そう言ってクーがロッドを構えたあたりでドクオが下りてくる。
部屋に杖を忘れていたらしい。
足元に転がった根を見た後尋ねる。
('A`)「えっと今の状況は?」
( ^ω^)「焼き払いと切り払いを計画中だお」
そしてひとまず計画を話す。
彼には中に戻って待っていてもらうよう頼もうとしていた。
250
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:34:32 ID:T2sbhsLU0
('A`)「俺ら全員馬車に戻って顔出してクーが魔法はなって
全部焼き払えばよくね?」
川 ゚ -゚)「だがそれだとツンの故郷をすべて燃やすことになる
ツンはそれでいいのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「別n(=゚ω゚)ノ「だめだょぅ!」」
ツンの言葉を強い調子で遮った妖精は睨みつけられる。
妖精はその視線に耐えるようにそれきり黙る。
緊迫した空気が流れる。
その様子を見てドクオは冷や汗をかきつつ尋ねた。
(;'A`)「じゃぁ、ツン
この町にでかい木はあったか?」
ξ゚⊿゚)ξ「木? えっと……
タイムカプセルを埋めた木が確か一番大きかったわ」
( ^ω^)「何で木だお?」
('A`)「お前が切ったこの根っこに年輪っぽいものが見えたから
でかいのを聞いた理由はここら辺に木がないのに
攻撃がここまで来ることから大きくないと根を張り巡らさないよなと考えたから」
そう言うとブーンが切った根の先を持ち上げた。
切り口を見ると確かに年輪があるように見えた。
ドクオは持っていた根の先がピクリと動いたので慌てて放り投げた。
( ^ω^)「じゃぁツン、道案内頼むお」
ξ゚⊿゚)ξ「分かったわ
いつ根が生えてくるか分からないから
後ろの二人も気を付けてね」
ツンの言葉に他の3人も頷いて見せる。
彼女はブーンが剣を構えたことを確認した後走り出したのだった。
251
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:42:37 ID:T2sbhsLU0
彼らは走る。
時折目の前の地面が盛り上がり根が出てくる。
突然のことなので反応しきれず時々弾き飛ばされながらも進む。
根の前兆に気が付いたときにはできる限り方向を変える。
そうやってダメージを抑えながら進んでいた。
ツンはある違和感を感じていた。
似たような道を走ったような記憶があったのだ。
記憶を探るうちに走った日のことを思い出した。
ξ;゚⊿゚)ξ
その日は、自分たちの町を守っていた戦線が崩れた日だった。
魔物が大挙して襲ってきたあの日だった。
自分が故郷を失った10年前のことだった。
理性無き魔物はクローゼットに隠れた自分に気付かず家族を殺す。
そして目の前でむさぼり食らう。
ξ; ⊿ )ξ
当時の自分は何もできなかった。
恐怖で固まり何もできないだけだった。
吐くことも、泣くこともせずただ見ていた。
幸か不幸か、そのおかげでその魔物にはばれなかった。
魔物が居なくなってからクローゼットから出ていき、家族だったものに近づく。
しかし形見となりそうなものは何もなかった。
顔をあげると部屋の隅に炎が上がっていた。
炎が広がっていくのを見て壁際に逃げる。
肩に何か当たったと思って縋りつくようにそれを掴む。
それが当時壁に掛けられていた自分の弓だった。
252
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:47:56 ID:T2sbhsLU0
炎に囲まれる恐怖と外にいる魔物の恐怖で幼いツンはどう動けばよいのかわからなかった。
その時、限界に近かった彼女の耳元から女性の声が聴こえたような気がした。
『逃げないの?』
その声に意味の分からない恐怖を覚える。
弓を掴んだまま外にいる魔物への恐怖も忘れ、必死に駆け出す。
時々魔物が目の前に現れる。
その時は方向転換をして逃げる。
ただやみくもに屋敷から、故郷から逃げる。
そしてあのタイムカプセルを埋めた木の下にたどり着く。
疲れ切ったツンは木の根の瘤で転ぶ。
ξ ⊿ )ξ「そうだ、この道は」
顔をあげると別の戦線の兵士たちがやってきていた。
そのおかげで自分は彼らに助けられた。
そして瘴気から遠い山に暮らしていた親戚に預けられた。
山で弓矢を扱い、動物を狩る。
そうやって育った。
魔物を倒したのはブーンと倒したあれが初めてだったなと懐かしさを思い出した。
ξ゚⊿゚)ξ「……みんな、走りながら聞いて」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
ブーンたちと旅をした期間はまだまだ短いものだった。
だが、ツンはすでに彼らを大切な仲間として認識していた。
だからこそ、もし危険があるのなら伝えるべきだ。
そう判断していた。
ξ゚⊿゚)ξ「私たちは誘導されている」
253
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:54:25 ID:T2sbhsLU0
( ^ω^)「……まじかお!?」
川 ゚ -゚)「つまり、何か待ち構えているのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「それは分からないわ
でも今走っている道が一緒なのよ」
ξ-⊿-)ξ「10年前滅ぼされたときに逃げた時に走った道と」
('A`)「なぞらせているのか? 悪趣味な」
( ^ω^)「悪趣味……そう言えばあのドラゴンも」
川 ゚ -゚)「あのドラゴンの黒い煙の効果もそうだな
なんだ? ブーンはまたあいつが来るとでも?」
( ^ω^)「……でもなんか違うお、あっちのは実験したい? ってな感じだお
でもこっちの悪趣味さは違うお」
ξ゚⊿゚)ξ「……部下は一人とは限らないわよね」
(;'A`)「あんな良くわからんのが他にもいるってことかよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「違う、そういう意味じゃなくて……10年前私は変な声を耳元で聞いたのよ!」
そう叫んだのと同時に大きな木の前にたどり着く。
その木はところどころから紫色の樹液が垂れていた。
節の部分では黄色い虹彩を持つ目がぎょろぎょろとせわしなく動く。
葉の大きさはまちまちで大きい物も小さい物もあった。
その木の周りでは例の根が守るように生えている。
見ただけで本体と分かる守り方だった。
そしてその木の影には白いノースリーブのワンピースを着た少女がいた。
二つに長い黒髪を結びにこにこと笑っていた。
o川*゚ー゚)o「覚えていてくれてうれしいよ、ツンちゃん」
その声を聞いたツンの表情が驚きと恐怖に染まり、固まる。
どうやら10年前聞いた声そのままだったらしい。
254
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:58:35 ID:T2sbhsLU0
o川*゚ー゚)o「見て見て、この身体
とってもキュートでしょ?」
(;^ω^)(瘴気の中なんで人がと思ったけど僕らもだったお)
(;'A`)「……たぶんあいつ人間じゃない」
くるくる楽しげに回った少女を見たドクオが顔を蒼くさせつつ言う。
その言葉を聞いてクーはロッドを構える。
o川*゚ー゚)o「えー、名前聞くところでしょー? こんなかわいこちゃんにさ」
川 ゚ -゚)「じゃぁ望みどおり聞こうか? 何者だ」
o川*゚ー゚)o「お姉さんキュートじゃなくてキレイ系だね
私はキュート、名前通りキュートなものが好きなんだ」
o川*^ー^)o「そこのツンちゃんも10年前から目つけていたんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
ツンは若干引いていた。
その様子を見て楽しそうにカラカラと笑うと一瞬にして真顔になる。
o川*゚ー゚)o「ところでさえないお兄さん
何で一発で人じゃないってわかったのかな?」
('A`)「えっとそれは……」
ドクオはブーンの方をちらりと見る。
何を言うのか予想したブーンは覚悟して親指を上げる。
('A`)「まったく同じ顔の幽霊が恨めしそうにお前を見ていたから
で、人間は死んだ人の体にそのまま入るとかできないからな」
m9('A`)「その幽霊が本来の体の持ち主としたら
お前は少なくとも人間じゃない!」
(;^ω^)(……ドクオの見えている世界が見えなくてよかったと思うお)
o川*゚ー゚)o「そっか、なんか見えるのか
他のみんなにもあんたに気を付けるよう伝えるよ
人間の入れ物は無駄だぞって」
255
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:01:54 ID:T2sbhsLU0
(;'A`)「入れ物って……」
川 ゚ -゚)「……仲間がいるのか」
o川*゚ー゚)o「そうだよー、私たち四天王が魔物を侵攻させるの
あっそういえばこの木だけど燃やせば死ぬよ
お姉さんの本気火力なら一発だろうね」
キュートがクーへ向かって楽しそうに言った。
ブーンはその言葉を聞いて警戒しつつ尋ねる。
( ^ω^)「本当かお?
燃やしたら歩き出すとか」
o川*゚ー゚)o「ないない
それに私がこの木魔物にしたのって
ツンちゃんの誘導のためだもん」
ξ゚⊿゚)ξ「な、何言ってんのよ!?」
ツンが身震いしつつ弓矢を構える。
理解できないというように手が震えていた。
その様子をキュートは満足そうに見ていた。
そしてくるりとまわってお辞儀をすると言った。
o川*゚ー゚)o「会いたかっただけだよ。 それじゃ、もうすぐ会議だから消えまーす
……そうだ、最後に一つ」
o川*^ー^)o「この町襲うように指示したの私なんだ、じゃね」
ξ#゚⊿゚)ξ「待ちなさい!!」
キュートが消える直前ツンの矢が放たれる。
それは正確にキュートの眉間を狙っていた。
256
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:08:54 ID:T2sbhsLU0
o川*゚ー゚)o「そんなレベルじゃまだまだ
この木を燃やしてせいぜいレベルアップしなさい」
キュートがかわいらしく指をさして言った瞬間矢が跳ね返る。
ツンに向かってくる矢の前にブーンがとっさに腕を出してとっさにかばう。
矢が飛んできた場所が関節の金属が無い部分だったため見事に突き刺さる。
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!
ドクオ、回復魔法と毒解除を」
Σ( ^ω^)「毒矢だったのかお!?」
('A`)「傷は深くないな
『ポイズンバスター』『レオナ』」
川 ゚ -゚)「くっ炎よ彼のものを……もういないか」
クーがロッドを向け呪文を言っている間にキュートはすでに消えていた。
そしてそこにはうごめいている木だけが残っていた。
そして彼らへ向けて何枚もの鋭い葉を飛ばしてきた。
何枚もの葉が彼らに降り注ぐ。
(;^ω^)「イタイイタイイタイ」
ξ;゚⊿゚)ξ「地味に痛いわね……あっという間にボロボロ」
('A`)「早く燃やさないともっとひどいことになるな」
ドクオがそう呟いた途端地面がうごめく。
慌てて場所を動くと居た場所を鋭い根が貫いていた。
最大火力を出すためにクーはロッドを木に向け深く息を吸う。
そしてしっかりと対象を見つめると言った。
川 ゚ -゚)「フル火力か……対象はロッドと私の視線が指し示す魔物の木とする
悪魔ワカッテマスとの契約における魔法において命令する
業火よ、対象をその中に包み燃やし尽くせ!」
257
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:14:04 ID:T2sbhsLU0
クーはいつもより長い命令を終える。
その瞬間青白い炎があがり、木を包みこむ。
その炎の高さは巨大だと思った木の2倍以上あった。
その炎は魔物の全てを焼き尽くした。
葉も、目も、幹も。
そして町にまで伸ばしていた根と枯れた花の魔物も。
ξ゚⊿゚)ξ「……これがクーのフル火力……」
( ^ω^)「僕ら要らないんじゃね?」
川 ゚ -゚)「そんなことは無いぞ」
クーの方を見るといつの間にか座り込んでいた。
顔が心なしか青白い。
そして片手を差し出していた。
( ^ω^)「軽い枯渇症状が出ているおね」
川 ゚ -゚)「うむ、久しぶりに使ったがキツイ
誰か魔力をくれ」
('A`)「この中で魔力使えるの残り俺だけじゃねぇか」
そう言うとドクオはその手を掴み握手する。
その瞬間立ちくらみを起こしたかのように彼もまたしゃがみ込んだ。
(;'A`)「取りすぎだ!」
川 ゚ -゚)「すまない……だが歩けるようにはなったぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、枯渇症状って何?」
( ^ω^)「魔力がマイナス値行った場合に起きるんだお
人から魔力貰ったり寝れば解決するお
でも行き過ぎると死に至るお」
ξ゚⊿゚)ξ「クー……気をつけなさいよ?」
ツンの心配そうな言葉にクーはニヤリと笑って見せる。
258
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:20:40 ID:T2sbhsLU0
川 ゚ -゚)「安心しろ、鍛えて魔力増やす
そしてさっきのが何発も打てるようになるのを目指す」
( ^ω^)「クーは宿しているから絶対できるお」
('A`)「魔力ねぇ……俺も鍛えれば増えるの?」
川 ゚ -゚)「それより魔法の系統増やしたらどうだ?
加速系とか」
(;'A`)「今勉強用の本と実力が無いんだよな
次の町いかねぇと」
ドクオの言葉にツンが不思議そうな顔をした。
そしてブーンに尋ねる。
ξ゚⊿゚)ξ「勉強に本がいるの?」
( ^ω^)「白魔法はいるらしいお
一応その本は安いらしいけど数が増えたら出費がかさむらしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「大変ねぇ」
( ^ω^)「黒魔法は命令だけでいいのが特徴だお
白魔法は覚えればいちいち命令しないのが特徴だお」
そう会話をしているうちに青白い炎は対象を燃やし尽くし、消えていた。
ツンは木が生えていた場所に行くと風がなく、舞う気配のない灰を掘る。
ブーンたちも手伝って灰を除く。 やがて灰の層は終わり、土の層が現れる。
その作業の合間にも時々ゴブリンが出るので切り裂く。
そして再びひたすら土を掘る。
ツンがその作業に一番没頭していた。まるで先ほどの恐怖から逃れるかのように……。
やがて、一つの小さなジュエリーボックスが掘り出された。
ツンがそれを開くと大きな黄色い石が埋め込まれたペンダントがあった。
その輝きはどこか人を焦らせる物だった。
しかし、それは焦らせると同時にとても視線を引き付けるのであった。
259
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:25:24 ID:T2sbhsLU0
ツンは一緒に入っていた手紙を取り出す。
そしてその表情を驚きに染まらせた。
( ^ω^)「ツン、どうしたお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、なんでもないわ」
ξ゚⊿゚)ξ(……この弓、精霊の弓という家宝だったんだ)
ツンが持っていた手紙は他愛のない未来の自分への質問がつづられていた。
その中に「かべのせいれーのゆみはもらえましたか」とつたない字であった。
使っている限り何の変哲のない弓なので家宝という事実を不思議に感じたのだった。
ξ゚⊿゚)ξ「それより早くこれを動力炉に入れましょう」
川 ゚ -゚)「では戻るか、場所はわかるか?」
( ^ω^)「僕道覚えているから走るお」
ブーンはそう言うと派手な音を立てつつ走り出す。
それを見てドクオが呆れたように言った。
('A`)「元気だなぁ」
川 ゚ -゚)「それが彼の味だろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ムードメーカーでいいじゃない」
などと口々に言いながらそれぞれのペースで馬車へと戻ったのだった。
260
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:30:07 ID:T2sbhsLU0
( ^ω^)「さて、次はどこ向かうお?」
(=゚ω゚)ノ「あっちがいいょぅ」
そう言うとぃょぅは東の方を指さした。
ツンは地面がところどころ焦げているだけだった町を思い出しつつ、その彼に無言で近寄る。
(=゚ω゚)ノ「な、なんだょぅ」
ξ゚⊿゚)ξ「……今日はいろいろありがとう
忠告とか、町を燃やさずに済んだこととか」
(=゚ω゚)ノ「……やっと妖精の偉大さが」
ξ-⊿-)ξ「視界に入って話すのは許すわ」
ツンはそう言うとそっぽを向く。
ぃょぅは少しさみしそうだったがそれでもうれしそうだった。
なお、その横で三人がツンが譲歩したことに驚いていることには二人とも気づかなかった。
川 ゚ -゚)「……私の町があった方角だな」
(=゚ω゚)ノ「それよりもっと向こうだょぅ」
川 ゚ -゚)「とすると石が売り飛ばされた方角か」
(;^ω^)「売り飛ばされたのかお?」
ブーンが驚いたように尋ねる。
クーは頷くと言う。
川 ゚ -゚)「私は孤児院にいたんだ
そこに入る時家財道具一式売り払われた
祖父が勇者と知っていたのはそう言われて育ったからだ」
川#゚ -゚)「皆して祖父のように立派であれなどと煩かった……」
何か思い出したようで怒りを込めて呟いた。
しかしその怒りも咳払いを一つすると見えなくなる。
261
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:32:32 ID:T2sbhsLU0
川 ゚ -゚)「という訳で売られた方向は知っている」
( ^ω^)「なるほど、つまり次は」
('A`)「転売先探しか、大変だな」
ξ゚⊿゚)ξ「これは場所分からないの?」
(=゚ω゚)ノ「大まかな場所しかわからないょぅ
すまんなだょぅ」
ぃょぅは申し訳なさそうに言う。
しかし、行動の目標が立つのは彼のおかげであった。
そして彼らは東へ向かう。
次の世界のカギを求めて。
('A`)(ところで、食料持つのか? 買いだめした記憶ないけど)
いくばくかの不安を抱えつつも。
262
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:35:53 ID:T2sbhsLU0
_
( ゚∀゚)φ「という訳で彼らはカギを無事手に入れることができました
加えて、彼らは防護マスク無くても大丈夫でしたっと……報告終わりー」
ジョルジュは報告書に書きながらつぶやく。
そして彼らを見て瘴気の中へマスクをつけずに飛び出したフォックスを見る。
彼は今聖水を飲まされ、安静にしている最中だった。
_
( ゚∀゚)「まぁ時々瘴気になかなか耐えるやつらは兵士にもいる
あいつら全員が偶然そうだったんだろう」
( ∵)「ジョルジュさん、彼らが東へ進み始めました」
_
( ゚∀゚)「了解、フォックス沈んでいるし俺が運転するよ」
ジョルジュはそう言うと手綱を握りしめる。
そして楽しそうに運転を始める。
_
( ゚∀゚)(そう言えばあの妖精なんだ?
なんであいつらと旅しているんだ?
王様が自分の元精霊に頼んだ?)
のんびりとそんなことを考えつつ彼らもまた後を追って東へと向かう。
報告書をくくりつけられた機械の鳩だけが彼らとは別方向へ進むのであった。
263
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:47:01 ID:T2sbhsLU0
以上で8話終了です。
お目汚し失礼しました。
〜以下、みっともない遅れた言い訳〜
槍の戦い方わからんな……確かあるゲームに槍出てきたし、手出してみるか。
↓
ゲームやっていたら遅くなっていた、書き溜め書き溜め
↓
うふふーラボ畜楽しいなー、書き溜めの時間も、投下の時間も、したらば見る時間もないわー
↓
就職活動つらいな……息抜きに久しぶりに覗くか
↓
……なんか大変なことになってるー、たぶん自分も一因だー……うわぁ
↓
時間あるときに少しずつでも投下して完走させよう ←イマココ
という感じでした。
申し訳ありませんでした。
次は……余裕があるときに、うん。
上げ下げご自由にどうぞ。
264
:
名も無きAAのようです
:2016/04/28(木) 08:28:29 ID:z4QThMcg0
帰ってきたか
おつ
265
:
名も無きAAのようです
:2016/05/01(日) 15:13:33 ID:TZAY64EU0
おかえり!
続きも気になるけどマイペースに頑張って
266
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:40:19 ID:N.nBhwUM0
ツンの村から瘴気の中を東へ進む。
途中川があったが一部をクーの魔法で凍らせて橋を作った。
時々追いついてくる魔物は窓から身を乗り出して退けた進んだ。
そうやって旅を続けていた。
そして、ある日その日の食事担当だったブーンが事実を述べた。
( ^ω^)「まずいお
食糧庫の中がだいぶ空だお」
ブーンの言葉にパーティメンバーが固まる。
沈黙に耐え切れずブーンは冷や汗を流しつつ続けた。
(;^ω^)「戻って補給を忘れていたお」
川 ゚ -゚)「瘴気の中で餓死か、洒落にならん」
クーが顎に手を当てて悩ましげに言う。
ツンは何か外に助けになるものはないかと操縦部屋の外を見る。
その時彼女の射手として鍛えられた目がある物をとらえた。
ξ゚⊿゚)ξ「あっちへ行って! 城壁があるの!!」
ツンの言葉でそちらの方へ馬車を進める。
瘴気が少しずつ薄くなる。
やがて瘴気がない場所にそびえたつ巨大な石の壁が目に入った。
( ^ω^)「僕らの地方以外にも残っていたのかお」
ξ゚⊿゚)ξ「瘴気を越えられなかったから分からなかったんだわ」
川 ゚ -゚)「面白いな、この壁はすべて石だ」
('A`)「うーん……この壁の周り走って停めるか」
ドクオはそう言うと手綱を持ち直した。
267
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:42:30 ID:N.nBhwUM0
第9話 石でできた場所
268
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:44:21 ID:N.nBhwUM0
馬車を壁の近くの草原にひとまず停める。
全員降りて見慣れない石を組み上げることによってできた石壁を見つめる。
( ^ω^)「そう言えばおじいちゃんが
『昔はもっと世界は広かった』って言っていたお」
川 ゚ -゚)「魔物に侵攻されないように必死で
他にもこういう場所があるとは考える余裕が余りなかったな」
ξ゚⊿゚)ξ「木の骨組みをしてから石を組み合わせた壁というわけじゃないのね」
そう会話しつつ周りの様子を確認する。
足元を見ると短い草しかない。
周りを見渡すと木など一切見当たらなかった。
あるのは岩肌がところどころむき出しになった草原。
そして岩山と石壁だけだった。
('A`)「木が育ちにくい環境なのかもな」
(*゚ー゚)「ようこそストーンヘッジの国へ
……皆さんはどちらからいらしたのですか?」
いつの間にか短い髪の少女が立っており、声をかけられ一瞬肩が跳ねる。
ところどころ時計をあしらったようなシャツと7分丈のズボンをはいていた。
年はブーンたちと一緒と言ったところであろうか、4人の反応を見ると驚かせたことを謝罪した。
( ^ω^)「えっとホライゾン国と言うところから」
川 ゚ -゚)「……失礼ですが人に尋ねるのならばあなたから名乗るのがマナーでは?」
クーに問われて少女は驚いたような顔をする。
そして小さく「名乗り忘れていた」と言いながら杖を取り出す。
杖の先にはレンズがついていた。
しかしただのレンズではなく時計の二つの針が中にあるという意匠だった。
269
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:46:15 ID:N.nBhwUM0
(*゚ー゚)「失礼いたしました
私は6人長の一人
時魔法のシィと申します」
川 ゚ -゚)「6人長……私たちはアラマキ殿が治める地域から来ました」
(;゚ー゚)「あ、あの瘴気の海を越えてきたのですか!?」
シィが驚きの声を漏らす。
ブーンはクーに後で「6人長」の意味を聞こうと考えながら「はいですお」と返事をした。
細かい事情を隠してこの馬車でここまで来たこと。
しばらく泊めさせてほしいこと。
そしてこの地域を回ることの許可を求めた。
(*゚ー゚)「はい、分かりました
通貨を見せてください」
( ^ω^)「これですお」
シィはお金を受け取るとこの地域のお金と両替した。
そして笑顔で言った。
(*^ー^)「これで買い物ができます
買い出しなどはこれでお願いします
また、できる限り外から来たということはご内密にお願いします」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしてかしら?」
(*゚ー゚)「いきなり外から来たと聞くと民が混乱が予想されるからです
魔法に関しては方法等は変わりませんのでご安心を
あ、馬車はばれないように隠しておいてください」
('A`)「……まぁブーンのおじいさんの時代まで
繋がっていたから魔法は当たり前か?」
ドクオは小さく納得の声を漏らした。
5人はひとまず岩山の中に巨大な馬車を隠す。
そして全員手持ちのお金を両替してもらうと買い出しへと向かったのだった。
270
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:50:03 ID:N.nBhwUM0
( ^ω^)「ここら辺はお蕎麦の料理が多いお」
ブーンは保存食となる物を買っていた。
そして「蕎麦」や「ジャガイモ」と言った荒れ地で育つものを買っていた。
選んだわけではない、ほとんどそれなのだ。
鳥肉の干したものなども売っていたのでそれを買う。
何の鳥かはわからなかった。
少なくとも魔物ではないらしい。
そしてツンが楽しそうに買い物をしているのが目に入る。
何を買っているのかと思い近づく。
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ブーン見て見て」
そう言うと石造りのペンダントを見せる。
ペンダントの模様は精霊の光をあしらっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「これいいと思わない? 買っちゃおうかなー」
( ^ω^)「これくらい僕が買うお」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、似合うか聞きたかっただけだし悪いわよ」
( ^ω^)「良いんだお、とても似合っていたお」
ブーンはそう言いながら店主にお金を払う。
店主は小さく「毎度」と言うと受け取った。
ξ*゚⊿゚)ξ「……ありがとう」
( ^ω^)「気にしなくっていいお」
ブーンはそう言うと市場へ戻る。
鍛冶屋に剣の手入れを頼もうと思い立ったためであった。
271
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:51:33 ID:N.nBhwUM0
ξ゚⊿゚)ξ(買ってもらってしまった……)
ツンはそう考えつつペンダントをいじくる。
そしてペンダントをしまおうと胸ポケットへ入れる。
その時胸ポケットししまっていた毒矢用の毒がほとんどないことに気づいた。
ξ゚⊿゚)ξ(材料の植物は荒れ地で育つ
岩山の方に探しに行こうかしら)
そう考えつつ足を止める。
そこでは石の矢が売っていた。
木があまりないため職人が必死に全て石で作ったものであった。
重くて鈍いがその分威力はお墨付きと説明されていた。
ツンはためらうことなくそれを買った。
矢のストックを考えてのことだった。
今までは普通に使ってきたが木が少ないなら運用を考えなくてはと考えていた。
ξ゚⊿゚)ξ「うーん、枝とか拾っておくべきだったわ」
ξ-⊿-)ξ「こういう木が無い場所を予想していなかったわ
私の世界って本当狭かったのね」
ツンは軽くため息をつく。
それでも変わらないものはあるのだなと城壁を見上げた。
272
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:53:42 ID:N.nBhwUM0
故郷の方の市場の多くは木の骨組みに布を張ったものだった。
家は木の骨組みに煉瓦や石材を積み上げたものが多い。
この町の市場は石でできている。
石畳ぐらいならホライゾン国ぐらい大きければあった。
しかし店も全て石でできているのだ。
店はいつも同じ場所にあることが予想された。
何せ石でできた店は動かせないからだ。
家も石でしっかりと作られていた。
同じものは城壁の存在だ。
国ごとに大抵は壁を持つ。
国によってその材料は変わる。
ホライゾン国は煉瓦が中心。
格闘家の里では木材が中心だった。
だがその目的は変わらない。
瘴気と魔物の侵攻にとっさに耐えるためのものだった。
城壁があるが故内側に入られると逃げ場が無くなるというパターンもあったが。
ξ゚⊿゚)ξ「ここの人も瘴気に怯えているのは変わりないのね」
ぶらぶらと町を見歩く。
家を見ていると石以外にもよく使われているものがあった。
それは鉄だった。
細かいパーツなどによく鉄が使われていた。
居た地域では鉄はだいぶ貴重だったがここでは少し事情が違うのかもしれない。
今木で作る矢の本体は無理だと思われた。
それでも、矢じりだけでも作ってもらおうかとツンは鍛冶屋に足を向けた。
273
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:58:29 ID:N.nBhwUM0
ドクオは二冊の本を見ていて悩んでいた。
そして手持ちのお金を見る。
(;'A`)(……上位回復魔法、麻痺、睡眠解除
後速度系や命中系と覚えるのに最低5冊は要る
だが、この本も面白そうだから欲しい)
('A`)「……白魔法の本5冊とこの本2冊欲しいのですが」
店主の言った値段と手持ちの金を見比べる。
そして嬉しそうな顔をして白魔法の本を3冊追加で買ったのだった。
本を抱え足取り軽く、歩みは遅く石造りの街並みを歩く。
('A`)(ここ、白魔法の本があっちより安い
そのくせ品質は変わらない……木がないのになんでだ?)
('A`)「……石の杖もいろいろ売ってるな
今の木の杖より使いやすそうだが」
( ´_ゝ`)「おい、そこの奴白魔法使いか?
白魔法使い向けに軽くしてあるから重さは心配するな」
店先に並んだ杖をまじまじと見ていたドクオは店番に声をかけられる。
お礼を言いつつ顔をあげるとお互いに固まった。
(;'A`)「えっと……アニジャさん?」
(;´_ゝ`)「……なんでお前がここにいんの?」
('A`)「えっと、いろいろ……アニジャさんこそどうして」
( ´_ゝ`)「うーんと……いろいろ
親方! 故郷の奴が来たんで少し休みます!」
アニジャはそう奥の店主に声をかける。
そして店の中から出てくると尋ねた。
( ´_ゝ`)「真っ先に聞きたいことは一つ、母者は?」
('A`)「連絡取れないことめっちゃ怒ってます、ご愁傷様」
274
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:27:23 ID:N.nBhwUM0
ドクオの言葉を聞いて兄者は青い顔になりつつ「あああ」と呻く。
そしてため息をついた後言い訳のように語る。
( ´_ゝ`)「俺もいろいろあったんだよ
まず傭兵として俺は前線地区にいた」
('A`)「そのあたりはオトジャさんから聞いている
あ、オトジャさんはこっちの方で傭兵長やっている」
( ´_ゝ`)「偉くなったもんだな……
で、俺は捕虜となって捕まってどこかで働いていた」
('A`)「瘴気は? ってかよく無事だったな」
( ´_ゝ`)「その場所は瘴気は薄かったんだ
で、俺は女神の手引きで逃げ出した
耐性があったらしく瘴気の中を一か八か闇雲に駆け出した」
その言葉にドクオは思わず「女神って……度胸あるな」と呟く。
普通の人なら聖水もない状況でリスクの高い瘴気の中へは飛び出さない。
アニジャはにやりと笑う。
( ´_ゝ`)「で、倒れた仲間をひずったりしてしばらく走ってぶっ倒れた
その時探検隊の人が近くを通ってな」
('A`)「探検隊?」
( ´_ゝ`)「この町には瘴気を探索する探検隊がいるんだ
とにかく俺はそこで救われ、今ここにいる
一応故郷の話を町の人にしない条件でな」
('A`)「そこは俺らと一緒か。 俺は……」
ドクオは魔王を倒すとかカギ集めなどの目的は言わない。
ただ仲間と旅をしていることなどを伝えたのだった。
( ´_ゝ`)「……イモジャも倒れたのか?」
瘴気の話を聞いたアニジャは心配そうに尋ねる。
ドクオは頷くとアニジャはため息をつく。
アニジャはここから出られない自分がもどかしく感じられたのだった。
275
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:28:54 ID:N.nBhwUM0
川 ゚ -゚)「巨大な青い石がはめられた指輪を知らないか?」
クーはアクセサリーショップの店員に尋ねる。
知らないと言われて大きなため息を一つついた。
川 ゚ -゚)「ここもはずれか……この町の外に売られたか?」
<ヽ`∀´>「ホルホル、そこの御嬢さん
なぜそんなものを追い求めているニダか?」
店員への質問を聞いていたらしい占い師が話しかけてくる。
クーは少し考えた後言った。
川 ゚ -゚)「家族の形見なんだ
孤児院にはいる時のゴタゴタで売られてしまってな」
川 - -)「大きくなったから探そうと思って
売られた方向の情報だけでここまで」
<ヽ`∀´>「ホルホル……すまないことを聞いたニダ」
クーはしおらしく「いや、いい」と答える。
その様子に不躾なことを聞いたかと占い師は申し訳なくなる。
<ヽ`∀´>「それなら隣国に行くといいニダ」
川 ゚ -゚)「隣国?」
<ヽ`∀´>「あそこは何でも売られているニダ
情報も、盗品も、人もニダ
ウリはあそこ出身ニダ」
川 ゚ -゚)「ふむ、行ってみるか」
<ヽ`∀´>「気を付けるニダよ?
この地域では魔法使いは常に不足ニダ
採石場もあらゆる産業も魔法で成り立っているニダ」
<ヽ ∀ >「師匠も使い捨てにされたニダ」
占い師は何かを思い出したように言う。
クーはその様子を見て少し考えた。
276
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:32:22 ID:N.nBhwUM0
占い師の表情は変わりない。
クーはいまいち真意が分からず尋ねる。
川 ゚ -゚)「……つまり?」
<ヽ`∀´>「御嬢さんみたいなのは高値で売り買いされるってことニダ」
占い師はクーの持つロッドを見つつそう言った。
そう言われて改めて街並みを見る。
剣などより魔法の杖やロッドがよく売られている。
それだけ魔法が重要視されているという事だろう。
川 ゚ -゚)「使い捨てにされたとは?
危険があるなら聞いておきたい」
<ヽ`∀´>「気分のいい話じゃないニダ
師匠のシナーは魔法使いだったニダ
あの人は採石場で働いていたニダ」
川 ゚ -゚)「これだけ家とかに石を使っていたら大盛況だろうな」
<ヽ`∀´>「だから石の切り出しに魔法が有効ニダ
あと運ぶ時に怪我が多いからそれにも魔法ニダ」
<ヽ ∀ >「師匠は使いすぎて魔力が足りなくなって倒れたニダ
全員カツカツだから魔力を分ける人もいないニダ
そこで石材が倒れてきたニダ」
川 ゚ -゚)「……すまないことを聞いた」
クーの言葉にニダーは頭を振る。
そして辺りを見渡した後言った。
<ヽ`∀´>「ウリはこの仕組みが許せないニダ
……シィちゃんは魔法使いの地位向上のため頑張っているニダ
でもギコはひたすら産業を推し進めているニダ」
川 ゚ -゚)「ギコ……だと?」
クーは占い師から出た名前に驚くほど反応する。
占い師はその反応に不思議そうな顔をしたのだった。
277
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:34:35 ID:N.nBhwUM0
ブーンは鍛冶屋で合流したツンと馬車の前で他のメンバーを待っていた。
なお、馬車の留守は一応ぃょぅが守っていた。
( ^ω^)「いやぁ、良かったお」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンにとっては本当によかったわね
剣の手入れだけでなく鎧の強化までしてもらえて」
ブーンの鎧は金属が変わっていた。
銀色の輝きは少し鈍くなった。
しかし耐久性と軽さを手に入れていた。
腰にさしてある剣は刃こぼれなどなくなっていた。
魔物の血で汚れていた剣刀身に顔が映るほどはきれいになった。
(;^ω^)「でもガッツリ怒られたお
『良い代物なんだから丁寧に扱え』って」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの剣幕はビビったわね
でも砥石がもらえたじゃない」
( ^ω^)「……買わされたんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「……あの店主なかなかね」
ツンは感心したように呟いたのだった。
278
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:37:35 ID:N.nBhwUM0
('A`)「おーい戻ったぞ」
ドクオがふらつきながらももどってくる。
そして荷物を部屋に置く。
慌ててブーンたちの元へ行くと一息つきながら言った。
('A`)「知り合いがいた」
( ^ω^)「どうやってここに来たのかお?」
('A`)「捕虜になっていたらしい」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして他にも捕まっている人たちがいるのかしら」
ドクオは頷くと地図を取り出す。
その地図はブーンたちの居た地方。
そして教会の本部があると言われる山しか書かれていなかった。
教会はその地図のほぼ上部にあった。
ブーンたちの地方は地図の中の南の方に位置していた。
そして東の方に大雑把に丸を描く。
('A`)「ここが俺たちが今居る場所
アニジャさんはここで保護されたらしい
俺たちが走ってきた中で瘴気が薄い場所はなかった」
と言って東の丸の北西の方に×を印す。
そして自分たちが通ってきたルートを大体線でひく。
('A`)「もしかしたらもっと北の方に何かあるのかもな」
そう言うとペンを投げ出す。
ブーンとツンは地図の北のほうを見つめ、うなったのだった。
279
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:42:33 ID:N.nBhwUM0
しばらく考えた後ツンが悔しそうに声を出す。
ξ゚⊿゚)ξ「……助けたいけど脱出の手助けはできないわよね」
( ^ω^)「確かに馬車に多分捕虜全員は乗れないお」
('A`)「だから分かったところでなんだという話になるんだよな」
そう悔しそうに言うとドクオは放り投げたペンと地図を片づける。
3人でどうにも手を出せない悔しさからため息をついたのだった。
川 ゚ -゚)「おい、何を暗くなっている
カギの情報を手に入れたぞ、旅のセットを持ってこい!」
( ^ω^)「お、クーおかえりだお」
川 ゚ -゚)「挨拶は今はいい、急げ!! 隣国へ行くぞ!」
その時戻ってきたクーが焦った様子で広げていた荷物をまとめつつ声を張る。
他の3人はその突然の行動に顔を軽く見合わせる。
驚きつつもそのただならぬ様子に従い荷造りを始めるのだった。
280
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:46:10 ID:N.nBhwUM0
慌てて纏めた荷物を持ってきたメンバーは岩山の中歩みを進めていく。
占い師からカギの話を聞いたクーが先頭であった。
彼女自身が聞いたその国では何でも売られているという話をした。
川 ゚ -゚)「裏ルートを通ってそこに石はあるのかもしれない」
( ^ω^)「なんで急ぐんだお?」
川 ゚ -゚)「……ここを治めている人物は二人いる
一人はシィ、私たちも会ったな」
ξ゚⊿゚)ξ「6人長の一人だっけ」
川 ゚ -゚)「もう一人も6人長の一人なんだ
そいつの名前はギコ、シィの兄だ
彼はここの技術の発展を推し進めようとしている」
('A`)「急ぐ理由があるのか?」
川 ゚ -゚)「あぁ、間もなくギコに対して反旗を翻すため
民衆が蜂起するという話がある
魔法使いの地位向上のためとのことだ」
そう言うとクーは占い師から聞いた話をする。
その話を聞いてブーンは真っ先に悲しそうな顔をした。
( ´ω`)「……ひどい話だお」
('A`)「魔力切れまで酷使するか普通?」
ξ゚⊿゚)ξ「それがここでの普通なんじゃない?
あんたの里で魔法が邪道だという普通と同じように」
('A`)「……納得した」
( ^ω^)「でも確かに反乱が起きたら
石を探す余裕なくなるおね」
ブーンは納得したように淡々と呟く。
その言葉にどこか寂しそうに全員が納得したのだった。
281
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:49:23 ID:N.nBhwUM0
クーは一人考える。
全員納得したようだったのでクーはある情報を言わないことを選ぶ。
声にしたら他のみんなは怒るだろう。
そして立ち向かおうとするのかもしれない。
だからこそクーは言わない選択をした。
今はまだ言ってはいけない。
もっと強くなるまでは……。
そのためにはさっさと石を回収してここから離れたかった。
背中の傷がわずかにうずいたような気がした。
( ^ω^)「あ、魔物だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴブリンじゃないのね」
彼らの前には4つ足の獣のような魔物が2匹いた。
唸り声をあげて飛びかからんとしている。
ブーンとツンが真っ先に飛び込む。
その後ろから強化呪文がかけられる。
ブーンの剣がのど元を切りつける。
体の横を切り裂く。
そして切り上げ立ち上がらせた後腹に剣を突き刺す。
ツンの矢が眉間を貫く。
ツンはそのまま横に回り矢を3発放つ。
心の臓などのあたりに矢は深々と刺さる。
それでも魔物は生きていた。
ふらつきながらもブーンたちに敵意を向ける。
そこでロッドをずっと魔物に向けていたクーが呪文を詠唱する。
川 ゚ -゚)「氷よ、彼の者たちに永久の牢獄を与えよ
命を絶ち、永遠に時を止めよ」
その瞬間魔物が凍りつき全く動かなくなったのだった。
しばらく様子を見ていると、絶命したと思しき魔物はやがて霧散した。
中身のなくなった氷像はあっという間に溶けていったのだった。
282
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:51:52 ID:N.nBhwUM0
( ^ω^)「里の近くの奴に似ていたお」
ξ゚⊿゚)ξ「小さかったけどね……ゴブリンより手間取ったわ」
('A`)「うわぁ、強くなっているっていう事かよ」
川 ゚ -゚)「瘴気の影響が強まったのか、地域の差か」
全員は少し考え込む。
しかし考えている暇などない。
ブーンと言う羽音が聞こえた。
恐る恐る振り返る。
川;゚ -゚)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「二人の顔が真っ青に!」
(;'A`)「……ハチの魔物と言う二人の苦手な虫であり毒の代名詞だからな」
そこには巨大なハチの群れがいた。
透明な翅を素早く動かすため、特徴的な羽音が辺りに響く。
身体にはビッシリと細かい毛が生えている。
尖った顎を持っておりこちらの方をじっと見ている気がする。
お尻の針からは毒が滴っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……毒の回復を優先でお願い」
( ^ω^)「頼むお」
('A`)「あ、了解」
川 ゚ -゚)「背後を狙う取りこぼしは燃やすから安心しろ」
そう会話をするとブーンとツンが動き出す。
魔物のハチたちも彼らに襲いかかったのだった。
なお、たまたま近くを歩いていた人は後に「巨大な火柱を見た」と話したらしい。
283
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:55:26 ID:N.nBhwUM0
時は少しさかのぼり、四人がそれぞれバラバラになるのを視界の隅でとらえる。
フォックスがジョルジュのほうを向くと小さな声で話しかける。
爪'ー`)「……ジョルジュさん? まずくないっすか」
_
( ゚∀゚)「……」
(,,゚Д゚)「誰か探し人でもいるのかゴルァ」
固まるジョルジュに先頭に立っていた男から声がかけられる。
男はいかつい顔つきだった。
腰にさすのは古代文字が書かれた細身の剣。
服装は白いシャツに赤いジャケット、そして茶色いカーゴパンツだった。
_
( ゚∀゚)「ん? あ、ギコさん大丈夫です」
(,,゚Д゚)「ならいいんだが……」
ギコとはブーンたちを追って壁際に来た時に出会っていた。
話から偉くてこの町を案内してくれた親切な人物と認識していた。
壁際についたときに話しかけられた時からずっとともにいた。
まさか「ばれない様に追跡しています」などとは言えないこともあり素直に案内を受けていた。
なお、ギコはその後2、3言話した後用があると言ってその場を去った。
ギコが完全に見えなくなったことを確認するとジョルジュが話し始める。
_
( ゚∀゚)「大丈夫だ、フォックス
この場にいないメンバー考えてみろ」
爪'ー`)「……確かに彼なら見失わないだろうけど」
ギコが居なくなった後そんな会話をする。
足元に何かがふれてくる感触がして見下ろす。
そこには一匹の手紙を背負った鼠がいた。
284
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:58:33 ID:N.nBhwUM0
_
( ゚∀゚)「ビコーズからだ……あいつら隣国へ向かったらしい」
爪'ー`)「お、じゃぁ行くか」
_
( ゚∀゚)o彡゜「もっちろん」
ジョルジュはそう元気よく返事をする。
そして槍を掲げ元気よく町の外へと向かって進み始めた。
フォックスは短剣を確認した後にその後ろ姿を追う。
ブーンたちには結局追いつけず、ちらちらと魔物が襲い掛かってくる。
ジョルジュは魔物の弱点を的確に槍で貫き、薙ぎ払って倒して進む。
フォックスも滑らかな短剣さばきで敵を退ける。
フォックスは密かに的確に敵の急所に攻撃を当てる彼のことを評価していた。
それこそ「ブーンたちより強いかもしれない」と。
少なくとも火柱を上げるなどという労力の無駄遣いをせず的確な労力で倒しているように感じた。
爪'ー`)「おまえはさ、『なんでこんな立場に甘んじているんだ』とか考えないのか?」
_
( ゚∀゚)「なんだよ突然……思わないね」
ジョルジュは迷いなく言い切る。
そして小さく「少なくとも俺は王子より強くないから」と呟いたのだった。
285
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 21:09:47 ID:N.nBhwUM0
以上で第9話終了です。
いろいろ伏線蒔いています。
たぶん、一応蒔いています。
収穫できたらいいな…。
……いつか登場人物とか基本用語まとめるつもりはあります。
もう一つカギ手に入れたあたりでざっとはまとめるつもりですよ?
ではお目汚し失礼しました。
286
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 22:04:33 ID:oqkD725k0
乙乙
287
:
名も無きAAのようです
:2016/05/08(日) 20:45:24 ID:NmtNiKQ20
読んでみようかな
288
:
名も無きAAのようです
:2016/11/26(土) 09:54:33 ID:O.ySQUa60
読んでるよー
必ず戻って来てくれよな
289
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:12:41 ID:vqpVxaPI0
(=゚ω゚)ノ「……」
ぃょぅはブーンたちが居なくなったことを確認する。
操縦部屋から外を見て、しっかりと。
しばらくあたりを飛んで誰もいないことを確認する。
そして頷くとエネルギー炉からカギを取り出す。
3つの石は相変わらず力強く輝いていた。
(=-ω-)ノ「……妖精ぃょぅが命ず
世界のカギよ――が死した時魔王の元へ――――」
しばらく何かつぶやいていた。
カギはわずかに更に輝いたのち輝きは収まる。
どうやら魔法をかけ終わったらしい。
(=゚ω゚)ノ「……あいつらは弱いからその保険だょぅ」
そう呟くと馬車から出る。
そして馬車を置いてブーンたちが向かった方角へと飛んでいったのだった。
290
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:14:26 ID:vqpVxaPI0
第10話 ヨイの町
291
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:19:57 ID:vqpVxaPI0
その国の城壁をくぐった瞬間、辺りが暗闇に包まれる。
思わず驚きの声を漏らすと暗い路地裏から声が響いてきた。
しかし、発言者の顔は見えなかった。
「ヒヒヒ、この町は後ろ暗い連中が多いからね
魔法を使ってこの明るさに調整しているんだ」
( ^ω^)「光系の魔法かお……珍しいお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」
川 ゚ -゚)「光の魔法は生活に要るが攻撃力が無い
黒魔法使いはは大抵攻撃担当だからな、使わない」
('A`)「でも白魔法の範疇でもないから使用者が少ない」
「お前たちのパーティ魔法使いいるか?
この町で魔法は使わない方が安全だぜ
ヒヒヒヒヒヒヒヒ」
路地裏からの声はそう気味の悪い笑い声を残して去る。
ドクオは何となく不安を覚えた。
新しく買った石の杖をコートの裏側に隠したのだった。
すさまじく人があふれていた。
クーは少し考え思い出したように言う。
川 ゚ -゚)「話を聞いたやつも人身売買もあると言っていた
一応はぐれないようにしよう」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、ブーン聞いてた?」
ツンがそう声をかけるも他の二人がいない。
クーとツンは顔を見合わせた。
川 ゚ -゚)「……どっちがはぐれたことになる?」
ξ゚⊿゚)ξ「……一番お金持っているのはブーンよ」
ツンの言葉を聞いてクーは小さく「こっちか」と呟く。
その後クーはわずかに困ったように笑う。
292
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:24:27 ID:vqpVxaPI0
川 ゚ー゚)「こっちが迷子なら見つけて合流すればいいだけだな
私の家にあったカギは覚えている。青い石の指輪だ」
ξ゚ー゚)ξ「指輪ね、一緒に探しましょう
少なくとも私たちははぐれないように」
そう言うと二人は歩き出す。
そしてアクセサリーショップを見て回っていくのだが……。
足が痛むほど回っても見つからない。
ジュエリーショップは諦め自称情報屋に話を聞いてみる。
しかしどの情報屋も無言で彼女たちが持っていたお金を返すのであった。
ξ#゚⊿゚)ξ「いったいどうなってんのよ!
何でも売っているんじゃないの!?」
川;゚ -゚)「ここまで見つからないか
少し休みたいな」
小さく呟いたクーは辺りを見渡す。
人の流れていく先を見ると酒場があった。
煌煌と輝き、ざわめきが聞こえ栄えている気配がする。
川 ゚ -゚)「あそこに行ってみるか」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちここでは飲んでいいのかしら?」
川 ゚ -゚)「飲まないさ、話を聞くだけだ」
そう言うと酒場へ歩き出す。
近づくだけでアルコール独特のにおいが鼻を突く。
中に入りクーは焼き鳥を注文する。
ツンは少し迷ったがナッツを頼むのだった。
293
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:47:58 ID:vqpVxaPI0
\(^o^)/「お嬢ちゃんがたが来るような場所じゃねぇぞ?」
川 ゚ -゚)「良いじゃないか、探し物が見つからないんだ。情報知らないか?」
\(^o^)/「そこらへんうろついている奴らにでも聞け」
ξ゚⊿゚)ξ「それするとみんなお金返すんだよねぇ」
ツンがナッツをほおばりつつ言った言葉に店主が固まる。
周りで酒を飲んでいた男も固まった。
川 ゚ -゚)「自称の情報屋だったがな」
\(^o^)/「あいつらが金を返すなんていったい何を聞いたんだ?」
川 ゚ -゚)「青い石の指輪を知らないかと言う問いだ」
クーがその問いを発した途端大柄な男が彼女たちの席の隣に大きな物音を立てて座る。
ツンはナッツを相変わらず食べていた。
そして無くなったことに気付いて小さくショックを受ける。
大柄な男はツンをはさんでクーに声をかける。
|::━◎┥「おまえさんあんな代物求めているのか?」
川 ゚ -゚)「売られた家族の形見なんだ、知っているか?」
クーの言葉を聞いて男は考える。
そしてため息をつきつつ言った。
|::━◎┥「お前さんの家が手放さなけりゃな……
今更言っても仕方ないか」
川 ゚ -゚)「その口ぶり……何か知っているのか?」
クーは思わず身を乗り出す。
男はその大きな反応に軽く笑い声をあげた。
294
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:51:48 ID:vqpVxaPI0
ツンは追加のナッツを頼む。
すぐに出てきたそれを美味しそうに頬張る。
|::━◎┥「良い反応だ
知っているさ、どこにあるのかも」
川 ゚ -゚)「教えてくれ」
|::━◎┥「良いだろう、ただし」
そう言うと男はカウンターにカードをたたきつける。
ツンのナッツが乗っていた皿がひっくり返る。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
|::━◎┥「ただじゃ教えられん
これに勝ったら教えてやろう
ただし負けたら私の飲み代を払え」
ξ ⊿ )ξ
川 ゚ -゚)「私の方が勝ったら?」
|::━◎┥「情報を教えよう」
クーが了承の返事をしようとしたのをツンが止める。
心なしか顔に青筋が浮いていた。
ξ#゚⊿゚)ξ「待って、私が行くわ」
川 ゚ -゚)「だが、このカードのルールを知っているのか」
ξ#゚⊿゚)ξ「いいの、そこで見ておいて」
|::━◎┥「威勢のいい御嬢さんだねぇ
いいだろう、かかってきな」
マスターが二人に5枚のカードを無言で配る。
二人はお互いの顔を見つつ手札のうち1枚をお互いに交換した。
クーは呆れつつ周りを見渡す。
295
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:55:54 ID:vqpVxaPI0
どの人も酔っぱらっていた。
そして楽しそうな声を上げていた。
外に比べてこの店内は明るいように感じた。
クーはさらに店内を観察しようとする。
階段に目を止めたところでマスターが話しかけてきた。
\(^o^)/「2階は宿屋だ、大抵の奴が外で雑魚寝するから商売あがったりだがな」
川 ゚ -゚)「それで大丈夫なのか?」
\(^o^)/「大抵の奴が財布すっからかんなんだ
こういう風に賭け事したり飲み比べしたりしてな
勝った方も大抵は床で雑魚寝か町へ出ていく」
川 ゚ -゚)「では久しぶりの客になるかもな」
\(^o^)/「金髪の子が勝ったらかい?」
マスターの問いに首を縦に振る。
それを見てマスターは「期待しないでおくよ」と言った。
しばらく会話が途切れるもクーは思い出したように尋ねる。
川 ゚ -゚)「そう言えばここに入った時魔法は使うなと言われた、なぜだ?」
\(^o^)/「優しい人にあったねぇ
理由は単純明快さ」
マスターの言葉にクーは続きを待つ。
その時軽い地響きを感じた。
飲み比べとそれに熱中している人たちは気づかない。
扉の外を見るとそこには3mぐらいの土でできたゴーレムがいた。
ゴーレムの手の中には気絶した人がいた。
クーは冷や汗をかきながらその者が仲間ではないことを祈っていた。
その様子を見ながらマスターは続けた。
\(^o^)/「魔法を使った連中をあいつが何処かへ運ぶからだ」
川;゚ -゚)「……それは恐ろしいな」
296
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:00:19 ID:vqpVxaPI0
時はわずかに遡る。
( ^ω^)「完全にはぐれたお」
('A`)「マジですかい」
人混みの中ブーンの言葉にドクオはそう返す。
ブーンは困ったように見渡した後少し考えつつ尋ねる。
( ^ω^)「えーと、あれに訊いたりしてわからない?」
('A`)「たぶん分からん、と言うか目の前で話されて平気なのか」
( ^ω^)「怖いもの見たさってやつだお
最近はこの恐怖が楽しくなってきたお」
('A`)「変な方向で慣れたな……」
ドクオの言葉にブーンは照れたように頭をかく。
「褒めてないぞ」と言いつつ幽霊を求めて辺りを見渡す。
ぼんやりと立っている霊を見つけ、声をかけようとした。
その時少し先で爆発音が響いた。
(;'A`)「何の音だ!?」
(;^ω^)「攻撃魔法だお! 行ってみるお」
ブーンたちが野次馬に混ざる。
野次馬をかき分けて前に出ると二人の男が杖を構えていた。
どうやら喧嘩しているらしい。
魔法が飛び交う喧嘩に周りのざわめきが広がる。
魔法というよりこれから起こることに怯えている風であった。
297
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:17:39 ID:vqpVxaPI0
('A`)「良かったな、あいつらじゃなくて」
( ^ω^)「まったくだお……ん?」
ブーンはかすかに地響きを感じる。
辺りを見渡すとモーセのように人が道を開けていく一角が見えた。
人が動き道が完成される。
そう感じていると暗がりから巨大なゴーレムが現れる。
形状は土でできた腕が異様に大きい、関節とかはない巨大な人形のようだった。
顔を見ると二つの丸いくぼみと泥団子の鼻のみと簡単な構造であった。
(;'A`)「何だよあれ……」
( ^ω^)「ゴーレムだお、材質は土みたいだお」
ブーンが答えた途端戦っていた二人の間にゴーレムの拳が落とされる。
二人が放っていた魔法が霧散する。
そして腕を二人の頭の高さに持ち上げる。
その場で一回転をすると二人の魔法使いが吹き飛ぶ。
離れ損ねた何人かの野次馬も弾き飛ばされる。
巻き込まれた野次馬を気にすることなく魔法使いを拾い上げる。
そして持ったまま何処かへ歩いて行った。
( ^ω^)「何だったんだお? 魔法使うのがここでは御法度なのかお……?」
(;'A`)「碌なもんじゃない」
青い顔をしたドクオはそうぼそりという。
ブーンが不思議そうに彼を見る。
('A`)「聞きたくないと思ってても言ってやるぞ
あれの原動力は……魔力だ」
( ^ω^)「それなら普通じゃ」
('A`)「ゴーレムに大量の魔術師の霊が憑いていた
魔術師の体に残った魔力が原動力であの中にあいつらは居るんだとよ」
298
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:33:59 ID:vqpVxaPI0
ドクオの言葉の意味を理解した瞬間顔をブーンも蒼ざめさせる。
そして即座にゴーレムを追いかけ始め、それをドクオも追いかけた。
('A`)「どうしたんだよ!」
(#^ω^)「とんでもないことをやっているってわかったお!
突き止めてあげないと浮かばれないお!」
(;'A`)「確かにそうだ、だがやみくもに挑んだところで負けるし
そもそもゴーレムの動かし方を」
( ^ω^)「魔力源を引きはがせば止まるお、掘り出せばいいんだお」
('A`)「だがあいつらは死体に残った魔力だけでなく
それに憑いた霊の魔力で動いてい」
( ^ω^)「霊の方は任せるお」
(#'A`)「そういう事じゃない! 身体を引きはがそうとしたりすると
絶対抵抗受けるから作戦考えろっつう話だ!」
ドクオが怒ったように言う。彼もまた先ほどのゴーレムに怒りを覚えていた。
('A`)「あれは多分魔法を使った魔法使いを狙う
そうすると入った時の忠告とつながる」
( ^ω^)「じゃぁあえて捕まって本部に行って、そこで大暴れもありかお?」
(;'A`)「……多分魔法で抵抗できないようになっているんだろうな
魔法攻撃は少なくとも封じられている」
とりあえず本拠地を知るために後を追いかけ続ける。
ジュエリーショップの横を駆け抜け、路地裏を走る。
賑わいを見せる酒場の前を過ぎ去り、ようやくゴーレムが見える。
あと少しで追いつく、そう思った途端ゴーレムが消えた。
二人は驚きつつも消えた場へ近づく。
(;^ω^)「……消えた?」
(;'A`)「うーん……ワープか?」
( ^ω^)「時魔法使いが使えるやつだおね
魔法使いが関わっているのかお?」
(;'A`)「……分からん」
299
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:39:24 ID:vqpVxaPI0
ドクオが杖を取出し消えたあたりの地面をつつく。
ブーンもそれに倣い地面の上を歩いてみる。
まったくをもって違いが分からない。
( ^ω^)「ゴーレムと僕らの違いは重さだお
重さで反応するのかお?」
('A`)「人集めてこの上に立つってか?
協力してくれるのか?」
( ^ω^)「うーん、ひとまず人が多かった酒場行ってみるお」
('A`)「了解」
その返事を確認してからブーンは歩き出す。
全力疾走した後の荒い息を整えつつ何気なく周りを見る。
落ち着いて見ると武装した人が多くいた。
何かしら全員武器や食料を求めたりしている。
しかもほとんどの者が裏ルートを通るような高級武具を求めていた。
( ^ω^)「きな臭いのは本当みたいだお」
('A`)「まぁ冒険者や傭兵にとっちゃ荒稼ぎのチャンスだからな
と言うか冒険資金あるのか?」
( ^ω^)「食糧費はおじいちゃんからもらったお
ついでに魔物がかき集めたお金は倒した後貰っているお
だからまだまだあるからあとで分配するお」
(;'A`)「……時々魔物の死体を見ていると思ったのはそれか」
ドクオは小さく「しっかりしてんな」と呟く。
褒められたと感じたブーンは自慢げににこにこ笑っていたのだった。
300
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:43:34 ID:vqpVxaPI0
(;^ω^)「……ツンさん?」
(;'A`)「見つかってよかったというべきか?」
二人が酒場に入ると人だかりができていた。
そして仲間の顔を見つけたものの引いている二人の視線の先。
そこにはカード勝負をする仲間と見知らぬ大男がいた。
|::━◎┥「……」
ξ*゚⊿゚)ξ「おらぁ! もう一戦だぁ!!」
|::━◎┥「……まいり……ました」
ξ*゚⊿゚)ξ「聞こえないなぁ、ナッツの礼だ!」
高笑いをするツンとうなだれた身ぐるみがほとんどない大男だった。
ツンはニヤニヤ笑いながら「まだやるか?」と声をかけている。
ブーンとドクオがその光景に固まっているとクーが声をかけた。
川 ゚ -゚)「お前たちちょうど良いところに来た」
( ^ω^)「……宿屋はどこだお?」
\(^o^)/「ここの2階だよ」
( ^ω^)「分かったお……ツン! 今日はもう休むお!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ブーン? だまらっしゃいこいつにはナッツの恨みが」
(;^ω^)「ナッツなら食糧庫にあるお! 僕が買ったお!」
なぜか荒れるツンをブーンが引きずり2階へ連れて行く。
しばらく経ってからブーンが疲れた様子で戻ってきた。
( ´ω`)「ツンに何があったんだお?」
川 ゚ -゚)「カードで勝負していていた
途中お腹がすいたらしくお酒の入った菓子を頼んだ
そのアルコールで酔ったらしい」
(;'A`)「……弱すぎだろ」
301
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:53:47 ID:vqpVxaPI0
|::━◎┥「……」
\(^o^)/「珍しいじゃないか、こんなに大負けするなんて」
|::━◎┥「……」
\(^o^)/「たぶんお前オワタぞ、ほらつけの領収書」
男は顔を伏したまま領収書を受け取る。
そこに記された0の数を見た後ため息を大きくついた。
|::━◎┥「……飲み代払ってもらうつもりだったのに」
\(^o^)/「弱そうだと思って吹っかけたバツだと思いな」
大男はオイオイとわざとらしく泣きながら酒を頼んだ。
顔は伏したままなので泣き顔はわからない。
そもそも兜をしているのでわかるはずもなかった。
その様子を横に見つつ何かができるわけではない3人はひとまず宿をとることにしたのだった。
泣いている大男にクーが思い出したように言った。
川 ゚ -゚)「酔いがさめたらで良い、指輪について教えろ」
( ^ω^)「指輪?」
川 ゚ -゚)「あれのことだ」
('A`)「なるほど」
のんびりと会話をしながら2階へあがっていく。
クーに声をかけられた大男はピタッと泣き止む。
そして財布の中身を見た。
\(^o^)/「ツケ払えるか?」
|::━◎┥「……」
\(^o^)/「払い終わるまで働け」
マスターにそう言われた大男は大げさにため息をついたのだった。
302
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:20:20 ID:vqpVxaPI0
次の日店内を掃除する大男の前に情報共有を済ませたクーが立っていた。
大男は手を止めている。
川 ゚ -゚)「約束通り指輪について教えてもらおうか」
|::━◎┥「……あれは、ゴーレムの動力源になっている」
( ^ω^)「どのゴーレムだお?」
|::━◎┥「あの魔術師を捕まえる土でできた」
('A`)「はいダウトー」
|::━◎┥「なぜわかった!?」
('A`)「……あの土くれゴーレムの動力源は知っている」
川 ゚ -゚)「……本当はどこなんだ?」
大男は押し黙る。
どう話そうか迷っているようにも、嘘を見破られ、次の手を考えているようにも見えた。
|::━◎┥「指輪は地下だ」
川 ゚ -゚)「どこの地下だ」
|::━◎┥「詳しく教える代わりに……」
男はそう言うと親指と人差し指で輪を作る。
そして領収書を見せた。
3人が沈黙しているときっぱりと言った。
|::━◎┥「ツケがたまっているんだ」
( ^ω^)「……おぉう」
|::━◎┥「半分だけでも払ってくれたら喋るかもなー」
ダメ男はちらちらとブーンたちを見つつ言う。
ブーンは生真面目に考え込んでいた。
303
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:32:28 ID:vqpVxaPI0
(;^ω^)(どうするお? 一応払えない額ではないお
だけどこれ払ったら食費が圧倒的に心許ないお)
川 ゚ -゚)「ツケはお前の責任だろう?
そもそもこの話は昨日の賭けの結果のはずだ」
クーの言葉に大男は返事を詰まらせる。
どうやらこねる駄々に困ったようだった。
しばらく考えた末に搾りだすように声を出した。
|::━◎┥「指輪の所在を教えたらお前たちはそこに行くか?」
( ^ω^)「行くお」
躊躇いなく答えたブーンに覚悟を決めたように男は頷く。
そしてゆっくりと言った。
|::━◎┥「まず指輪の所在について
これは地下でゴーレムを作る際の魔力として使われている」
川 ゚ -゚)「だから地下にあると言ったのだな」
クーの確認に大男は首を縦に振る。
そして半ば土下座をするように言った。
|::━◎┥「頼む、ゴーレムの生産を止めてくれ!
地下にある研究所でゴーレムが作られているんだ!」
そう言うとゆっくりと立ち上がり3人の方をしっかりと見据える。
嘘泣きをしたりしていた時とは違い、落ち着いた印象を与える声だった。
|::━◎┥「私の名は『歯車王』私はそこでかつて所長をやっていた」
304
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:50:11 ID:vqpVxaPI0
(;'A`)「……偽名っぽい」
|::━◎┥「もちろん偽名だ、昔は『発明王』という称号があったがね」
( ^ω^)「今の発明王の称号は誰のだお?」
|::━◎┥「……今は関係ないだろ?
私が居た頃、研究所では魔力と契約する種族の関係を調べていた」
川 ゚ -゚)「今のところ悪魔との契約が突出している
これ以外は不明だったか」
|::━◎┥「そうだ……だが、あの研究所の研究内容は変わっていった
どうすれば魔力を効率よく使えるか
どうすれば魔力を取り出せるか」
( ^ω^)「取り出す……受け渡しはできるけど
それとは違うのかお?」
|::━◎┥「魔力を抜き出してその蓄えを作るというイメージだ
それがあれば魔力不足の人に入れることもできる」
川 ゚ -゚)「それだけなら聞こえはいいな」
クーの言葉に歯車王は頷く。
確かにそれだけならば魔力不足で倒れる人が多いこの地域にあっている。
|::━◎┥「6人長の一人魔道長ギコの指示だ
産業の推し進めに要るんだとよ
だけど方法が問題だ」
('A`)「……この町で魔法を使った人を実験に使っているのか」
|::━◎┥「このヨイの国は後ろ暗い連中が多いからな
そして余った素材は回収用のゴーレムにしている」
( ^ω^)「酷い話だお……」
ブーンはうつむきながら言った。
彼らにとって必要な情報は大分集まったように思えた。
目的の指輪が地下でゴーレムづくりに使われている。
材料はこの町で魔法を使った魔法使い。
ゴーレムの目的は魔法使い集め。
魔法使いを集める理由は研究とゴーレムの燃料のため。
背景の理解としては上出来に思えた。
305
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:58:31 ID:vqpVxaPI0
|::━◎┥「頼む、私には止められなかった、研究施設を破壊してくれ
全てのゴーレムに眠りを……」
('A`)「で、どうやって行けばいいんですか?」
|::━◎┥「……この町で魔法を誰かが使ったらゴーレムが出てくる
そのゴーレムに掴まれ
そうすれば一緒にワープできるはずだ」
( ^ω^)「やっぱりワープかお
なんだかここら辺には時魔法使いが多いお」
ワープは時魔法使いの範疇である。
移動時間のカットと言う捉え方をすれば確かに時魔法使いの範疇だ。
そしてこの魔法はブーンたちの地方ではあまり盛んではなかった
だがここに来てシィ、そして研究施設の何者か。
こんなに会ったのでは多いと感じても不思議ではない。
|::━◎┥「多いわけではない
時魔法使いになるための条件を知っているな?」
歯車王の問いに首を横に振る。
それを見た歯車王は軽く息を吐き出す。
|::━◎┥「この地域ではシィが時魔道長なのもあって有名だが
お前たち、この地域の人間じゃないな?」
(;^ω^)「……」
|::━◎┥「安心しろ、他の地域のことは知っている
他言はしない」
川 ゚ -゚)「それよりも条件とは?」
|::━◎┥「時魔法使いになる条件は複数契約だ」
その言葉にブーンはあからさまに驚いた顔をした。
他の二人はその動揺ぶりに驚く。
306
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:26:30 ID:vqpVxaPI0
( ^ω^)「……シィさんすごいお」
('A`)「えっと事情が分からんのだが」
( ^ω^)「複数契約っていうのは2つの種族にまたがって契約をすることだお」
('A`)「悪魔と幽霊とかか?」
( ^ω^)「他にも精霊と幽霊、精霊と神のパターンがあるお」
|::━◎┥「条件知らなかった割には詳しいな」
( ^ω^)「魔法はいろんな本読んだお
神と悪魔は反発するとか
残りの組み合わせは幽霊と精霊が負けるとか」
ブーンの知識にその場にいた二人は感心したような声を漏らす。
歯車王も小さく「ふむ」と声を漏らした。
|::━◎┥「そのとおりだ
そして向こうがワープが使えるという話である仮説が生まれた」
川 ゚ -゚)「その仮説とはなんだ?」
|::━◎┥「人工的に時魔法使いを作るという実験が成功したのかもしれない
方法は簡単、人と人を融合させるんだ
契約は魂で行う、魂が混ざれば2つの契約を結んだことになる」
3人は回りくどいその言葉を各々で翻訳する。
そして同じ結論にたどり着く。
( ^ω^)「魂ごと二人の人間を一人の人間に?」
|::━◎┥「ゴーレムはその一環だ
一つの入れ物に2つ以上の魂を入れたら混ざるのではという仮説のもとでな」
('A`)「実際は全く混ざらなかったわけか」
|::━◎┥「そうだ、だがその代わり霊体を用いて魔法をはじく効果ができた」
歯車王はそう返事をした後でドクオを見る。
そして「あれ見えるの?」と尋ねる。
ドクオは頷いた。
307
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:34:24 ID:vqpVxaPI0
その返答を聞いた途端歯車王はわずかに下がる。
ちょっとだけビビったのだろうと感じた。
|::━◎┥「すまん、見えるやつというのがまだ二人目でな
助手で一人見えるとは言っていたが」
歯車王は頭を下げる。
そして落ち着いたように続ける。
|::━◎┥「時魔法が使えたということは
おそらく融合を成功させたということだ」
川 ゚ -゚)「キメラの完成という訳か」
( ^ω^)「そもそもなんで融合させたいんだお?」
|::━◎┥「魔力は一説によれば魂に貯蓄される
融合して魂が大きくなれば貯蓄量も増えるのではというものらしい
時魔法は融合の成功のチェックだ」
(;'A`)「ここでらしい……」
|::━◎┥「この時期は『発明王』を教会に返上する手続きでゴタゴタしていてな」
川 ゚ -゚)「……そうだ、頼むのならゴーレムの弱点を教えてもらえないだろうか?」
|::━◎┥「……役立たずで申し訳ない、分からない」
歯車王は「これ以降は知らん」という風に手を広げた。
それを見た3人は顔を見合わせた。
( ^ω^)「さて、どうするお?」
川 ゚ -゚)「行くしかあるまい」
結論にはすぐいたる。
しかし待つというのは性に合わなかった。
どちらかというとさっさと襲撃したかった。
だが、昨日ゴーレムを見た以上魔法を使う人は少ないだろう。
308
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:40:22 ID:vqpVxaPI0
そこまで会話したところでツンが2階から降りてくる。
左手で頭を押さえて辛そうだった。
ξ-⊿-)ξ「……頭痛い」
( ^ω^)「ツン……もうお酒入った物食べるなお」
\(^o^)/「御嬢さんずいぶんたくさん食べたからね」
ξ゚⊿゚)ξ「食べすぎには気を付けるわ」
クーはツンの様子を見て昨日を思い出す。
そう言えばこの料理を勧めたのはこの歯車王だったなと考えた。
そのつながりで会話を思い出す。
どこかおかしいところはなかったのか気になったのだった。
その横でブーンが先ほどまでの会話を説明する。
( ^ω^)「という訳で突撃作戦を考えているお」
ξ-⊿-)ξ「確かにひどい話ね……頭が……」
('A`)「大丈夫か? マスター、水」
\(^o^)/「昨日止めれば良かったね、ここまで弱いとは」
クーは会話に参加せずひたすら考える。
歯車王はゴーレムに反対するいいヒト。
ならば何故材料を知った時ストップをかけなかった?
人間同士を融合する実験を企画段階で止めなかった?
('A`)「回復魔法を使えば一発で治るがゴーレムがなぁ」
( ^ω^)「いっそ使っておびき寄せるかお?」
(;'A`)「……援護頼むぞ? いや、本当に」
ξ゚⊿゚)ξ「抵抗しなければ安全よ、きっと」
考えるクーの横で話は進む。
歯車王の表情はわからない。
309
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:44:24 ID:vqpVxaPI0
覚悟を決めたようにドクオが杖を構える。
クーはある一つの結論にたどり着く。
もしかしたら歯車王は……。
('A`)「じゃぁ行くぞ、『ルオナ』」
川;゚ -゚)「待て! 使うな!!」
クーの制止はわずかに間に合わない。
回復したツンも含めた3人がクーを不思議そうに見る。
川 ゚ -゚)「ドクオ、急いで二人に強化系をつけろ」
(;'A`)「え? あぁ『パワーアップデート』」
先ほどの剣幕に少しビビりつつもブーンとツンに強化呪文をかける。
歯車王は何も言わず彼らを見ている。
マスターは慌てたように言う。
\(^o^)/「おい、兄ちゃん魔法なんて使ったらあれくるぜ」
川 ゚ -゚)「……来るよな、使ってしまったものはしょうがない」
(;^ω^)「いったいそんなに慌ててどうしたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ? 歯車王さんは?」
ツンの言葉に5人は辺りを見渡す。
確かにいなくなっていた。
マスターが「トンズラこきやがったか?」と呟いた。
クーもまた周りを確認する。
確かに誰もいなかった。
そして仲間を見据えると言った。
川 ゚ -゚)「多分あいつは敵だ」
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