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( ^ω^)きっとよくある冒険譚のようです
114
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:03:19 ID:eewwCBZg0
そこにいたのはやはりドラゴンだった。
だが腐りかけなどと言う姿ではなかった。
身体全体が黒く、つやのある皮膚で守られているようであった。
また全体の皮膚が硬いのか、関節部では節が入っていた。
身体の部分など節がたくさんあり、丸くなれそうだと感じられる。
ドラゴンは立つための二本の太い後ろ足。
最低限のものをつかむためにある小さな手。
そしてとても黒く、節の入った大きな尾があった。
身体に比べ細い首の先に頭があった。
そこには白く濁った眼を持っていた。
身体の腹部に一筋の線が入る。
そこが開くと多くの細かい白い牙と赤い舌が覗いた。
その場所から悲鳴のような鳴き声が響く。
じっと見ていたクーが感想を漏らす。
川 ゚ -゚)「……さっきまでと姿が違う」
( ^ω^)「え?」
川 ゚ -゚)「さっきまでは全身腐りかけだった
だが、口は頭にあった。
腹もさっきまでは一応少し白かったが
今は完全なる黒だ」
『さっきまでのとは別物ってことだ』
声がどこか楽しそうに言う。
幽霊ではないにしろ不気味なことは変わらない。
イラついたようにブーンは宙をにらみつけた。
115
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:10:29 ID:eewwCBZg0
クーの言葉を聞いてドクオは納得した声を漏らす。
('A`)「残っている腐臭はそのさっきまでの姿が原因か」
川;゚ -゚)「む、臭いが付いたか?」
ξ゚⊿゚)ξ「でもそうだったのなら
私としては近づきやすくなって
ありがたいけどね」
( ^ω^)「そうだお
ただ攻撃に注意はいるおね」
ツンとブーンの言葉にクーは頷く。
そして念を押すように言った。
川 ゚ -゚)「特に黒い煙には気をつけろ
疫病はあの黒い煙を浴びたら発症した」
( ^ω^)゚⊿゚)ξ「了解!」
二人は武器を構えてドラゴンに接近する。
そのドラゴンは背中の翼をはためかせ少し宙に浮いていた。
ブーンたちが近寄ってくることに少し遅れて気づく。
すると翼を力強く動かし、少し高く浮き上がる。
そしてきりもみ回転をしながらブーンたちに突っ込んでくる。
それを二人は逆の方向へ横に飛んでかわした。
後衛の二人はある程度離れていた。
そのため接近することが見えた。
進行方向からダッシュで離れることで攻撃をかわした。
116
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:16:16 ID:eewwCBZg0
ドラゴンはブーンたちに攻撃が外れたことを回転を止めて確認する。
ブーンたちは前に出て、ドクオは後ろへ下がった。
クーは少し動き、その間へ移動する。
それを見てドラゴンは空高く飛びあがり彼らを確認する。
ドラゴンはブーンたちの真上に近い場所にいた。
黒いドラゴンの腹部の口が大きく開く。
そしてその口の中で濃い紫の光が球状に集まっていく。
川 ゚ -゚)「……何だあのまがまがしい色は」
ξ゚⊿゚)ξ「クー、あそこまで高いと矢も届かないわ
魔法お願いできる?」
川 ゚ -゚)「それは構わんが……」
クーがツンの頼みに答えた瞬間口からその光が落ちる。
その球体は地面に落ちた瞬間砕け散る。
そして辺り一面に黒い煙を吐き出す。
川;゚ -゚)「二人とも下がれ!」
クーの遅い忠告の声が響いた。
117
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:20:23 ID:eewwCBZg0
_
( ゚∀゚)「あいつら、ドラゴンと対峙してやがる」
ジョルジュは城壁の上から双眼鏡を覗きこみ、ブーンたちを見守る。
その手にはしっかりやりが握られていた。
彼の後ろの外壁には長い木の棒がたてかけられていた。
その時城壁の内側の下の方から声がかけられた。
(;∵)「何やっているんですか!?」
_
( ゚∀゚)「見てわかんねーか?」
兵士がひぃひぃ言いながら近づく。
兵士はブーンたちを導いてしばらく経ってから城壁の上のジョルジュの存在に気が付いた。
慌てて城壁内に入ると内側の梯子から上ってきたのだった。
( ∵)「彼らを見守っているのですか?」
_
( ゚∀゚)「正解、見る?」
ジョルジュが渡そうとしたのを兵士は断る。
ジョルジュは素直に引くと再び覗き込み始める。
そして兵士に語りかけた。
_
( ゚∀゚)「俺今回はあいつらより1日早く出たんだよね
それで地下の町見てきたんだ
……あいつらへのバッシング酷かったな」
( ∵)「魔王に支配されたら人間は暮せませんから」
_
( -∀-)「あいつらが負けると思っているんだよな
俺は勝てると思っているけど」
( ∵)「力を取り戻したとしても?」
_
( ゚∀゚)「あぁ、勘だけどな」
118
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:29:00 ID:eewwCBZg0
ジョルジュの発言を最後に沈黙がつつむ。
兵士が居心地悪そうに町の方を見た。
黒いドラゴンが飛んでいるのが見えた。
( ∵)(あんなドラゴンでしたっけ?)
_
( ゚∀゚)「なぁ、お前はなんであいつらに協力したんだ?」
突然ジョルジュに問われ、兵士は不思議そうな声を上げた。
そして自分の行動を思い出す。
( ∵)「案内しただけですが……」
_
( ゚∀゚)「俺あいつらの半分護衛なんだ
だから一日早く来て、今日は船着き場で待機していた
お前があいつらを逃がそうとしたことも知っているぜ?」
( ∵)「……私はクーさんが行ったことは正しかったと思っていますから」
兵士の言葉にジョルジュは不思議そうに首を傾ける。
その様子を見て少し考えてから言葉を紡いだ。
( ∵)「今は疫病の患者がそれぞれの家にいるんです
そしていつも私に通報が来るのです
『隣の家の人が暴れている』とか
『疫病の人に殺された』とか
それを今まで彼女は防いでいたんです
確かに理性が消えた後殺す確率は100%ではありません
ですが、それでも私は正しかったと思うのです
私が今やっていることと同じですから」
_
( ゚∀゚)「ならなぜわざわざもっと逃がそうとせず送り込んだ?」
( ∵)「……クーさんを私は助けたい
私にはできない
彼らならきっとできますから」
_
( ゚∀゚)「あんたも信じているんだな」
( ∵)「はい……勘ですけどね」
ジョルジュは兵士が自分の言葉とかぶせてきたことに笑う。
兵士はジョルジュが槍を構えているのを見てどこからか爆弾を持ち出した。
119
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:33:19 ID:eewwCBZg0
( ∵)「一応彼らの救出のため武器を私もかまえましょう」
_
( ゚∀゚)「……え? 爆弾?
ただの兵士じゃないの?」
ジョルジュは思わず取り出された武器に声を上げる。
ジョルジュの疑問に兵士はどこか自慢げな顔をする。
そして腰から苦無を取り出すと言った。
( ∵)「職業は確かに兵士です
ですが家系的に忍者もやっています」
そのころサイドニアへ向かう上流からの船の上。
それには命を受けたモララーが乗っていた。
( ・∀・)(怪物か……面倒くさいな)
彼はそう考えつつ瘴気を防ぐマスクを身につける。
教会の本部の周りは瘴気で覆われているためだった。
背負った大剣とかぶるマスクがやけに重く感じられた。
120
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:39:00 ID:eewwCBZg0
以上で第4話終了です。
本当は水曜日の夜中投稿するつもりでした。
眠気であきらめましたが……。
そして『おつ』等のコメント本当にありがとうございます。
本当に力になります。
今回はこのお話で密かな目標としていた『気持ちの悪いボス敵』がかけていたらうれしいです。
あと2話で第0章は終わりです。
土日という感じに二日連続投稿も考えています。
次回予告としては絶望が見られます。
では夜分遅くに失礼いたしました。
121
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 00:44:26 ID:Y/Ctwjx60
乙です
122
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 02:23:25 ID:2LHqhvAk0
おつ! 腐敗臭は想像しただけで吐き気を催す
123
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 06:10:59 ID:ZnBFZdY60
乙 やっぱ王道RPGモノは見てて楽しいな、ワクワクする
124
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 07:43:34 ID:I1uB1CrA0
寝落ちした
続きおつ!
125
:
名も無きAAのようです
:2014/10/24(金) 12:46:39 ID:RElmQSdk0
更に書き慣れてきたらぐいぐい引き込まれそう。おつ
126
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 21:56:16 ID:CGEDAuak0
川;゚ -゚)
(;'A`)
真下におらず煙に巻き込まれなかった二人は呆然と煙を見つめる。
空からドラゴンの高らかな咆哮が降ってくる。
黒い煙が霧散していくと同時に二人の姿が見えてきた。
ドクオはクーの話から、クーは経験から二人が変化していることを覚悟する。
しかし、二人とも咳き込んではいたものの見た目に変化はなかったのだった。
127
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 21:58:15 ID:CGEDAuak0
第0章
第5話 サイドニアでの戦い(後編)
128
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:01:43 ID:CGEDAuak0
ξ;゚⊿゚)ξ「ゲホ……落ちた後に言われても」
(;^ω^)「吸っちゃったお……」
二人が呆然と言った表情で声を発する。
それを見てクーは不思議そうに声を出した。
普通の町の人たちはこれだけ吸いこんだら『疫病』に罹っていた。
川;゚ -゚)「……何ともないのか?」
(;^ω^)「僕はないお、ツンは?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと気持ち悪い程度……」
('A`)「状態異常ならまだ毒以外は治せんぞ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「えーと、毒とは違うかな
……にしてもあの毒は死ぬかと思った」
ツンはそう言うと思い出したのか、かまれた腕をなでる。
ドラゴンはこちらをじっと見下ろしていた。
やがてさっきの球が効いていないと分かると地面に降りる。
ブーンはそれに気付くと即座に近づいて攻撃を加えようとした。
しかし彼には足が異様に重く感じられた。
いつも通り動かせない。
その結果として近づくタイミングが遅れる。
ドラゴンは接近を認識すると長い尾を持ち上げる。
ブーンは攻撃を諦め、後ろへ下がって攻撃範囲から逃れることを試みる。
しかしそれはかなわず長い尾で横から叩きつけられてしまった。
吹き飛ばされ、後衛のドクオの近くの建物にぶつかる。
慌てて回復呪文が唱えられ傷は回復する。
しかし怪我は治っても痛みの記憶は消えず、頭を思わず抑えていた。
129
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:05:00 ID:CGEDAuak0
ブーンは頭を軽く振り、剣を持って立ち上がる。
そして冷や汗をかきつつ状態異常を伝えた、
(;^ω^)「……足が遅くなっているお」
(;'A`)「……すまん、速度系はまだ使えない
代わりに攻撃力もっと上げるから
当ててくれ『パワーアップデート』」
ドクオは申し訳なさそうに言う。
その横でツンはドラゴンへ接近を許さないよう矢を放つ。
しかし3本に1本ぐらいしかドラゴンの方へ向かわなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……私も目がかすんでうまく狙えないわ」
川 ゚ -゚)「疫病にはならないが状態異常か、厄介だな」
クーは呟きつつ考える。
自分が今何をすべきか。
そして自分が何をできるのか
そう考えているとドラゴンは翼を動かし軽く浮き上がる。
空中で体勢を整えるとこちらへ向かって低空飛行の突進を始めた。
130
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:08:24 ID:CGEDAuak0
川 ゚ -゚)「氷の壁よ! 彼のものと私たちの間にそびえ立て!」
クーがとっさに詠唱を行う。
結果としてドラゴンは勢いそのまま氷の壁に衝突した。
氷の壁は砕け、ドラゴンは地に落ちる。
ツンが矢を音とぼんやり見える姿を頼りに放つ。
しかしその矢は硬い皮膚にはじかれた。
ξ゚⊿゚)ξ「固いわね、関節か目を狙わないと
通りそうにない」
ツンが唸りながらつぶやく。
どうやら今の状態で狙える自信はないらしい。
その様子を見てブーンが声をかけた。
( ^ω^)「今僕の足遅いから
辿り着くまで注意をそらすの頼むお」
ξ゚⊿゚)ξ「顔のあたり狙いね
そのくらいの緩い狙いならできるわ」
ツンはそう言うと弓矢を構える。
ドラゴンは顔を持ち上げるとツンが攻撃態勢に入ったことを確認する。
その瞬間背中の翼で強い風を巻き起こした。
塵が舞い上がり前方が見えなくなる。
ツンはそれでも大体の方向に矢を向けていた。
('A`)「おい、見えないぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「それは相手も同じでしょ?
ブーンはわかっているみたいね」
ツンにそう言われてドクオは周りを見る。
前方には目を閉じて集中しているクー。
そして矢を構えているツンだけでブーンはいなかった。
風が吹き、一瞬塵の向こうにドラゴンの頭が見える。
素早くツンは構えた矢を放つ。
そして何発も同じ方向へ矢を放ったのだった。
131
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:11:17 ID:TVxz9XZ.0
おーきてる
読むお
132
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:12:54 ID:CGEDAuak0
ドラゴンはチリの中から飛んでくる矢を頭を振って振り払う。
目に当たらないように目はしっかりと閉じていた。
そのため、ブーンの接近にすぐに気付くことができなかった。
( ^ω^)「うおぉぉぉ!」
塵の中からブーンは翼を狙ってとびかかる。
しかし目を閉じていたとはいえ、正面からの攻撃である。
簡単に背中の翼には当たらない。
小さな前足を用いて剣をはじこうとした。
普段の力だったらその硬さにはじかれただろう。
ドラゴンにとっての想定外だったのは2段階上がったブーンの力だった。
パキリという音を立ててドラゴンの腕が肘の節から折れる。
わずかに紫色の液体が垂れ、空虚な中身が現れる。
勢いづいたブーンはここでさらに追撃を加えようとした。
ドラゴンは少し浮くとバック宙を放つ。
尾が下の方からブーンにたたきつけられる。
そして宙に浮いたブーンの元へ翼を広げて接近する。
翼がブーンに迫る。
ブーンは空中で体勢を立て直すことも剣を構えることもできない。
ξ゚⊿゚)ξ「危ない!」
ブーンが辿りつけたか確認するために近づいていたツンが叫ぶ。
そしてあらかじめ構えておいた矢を放つ。
その矢は偶然左目に直撃した。
腹から低いくぐもった声が響き渡る。
ドラゴンはブーンに迫るのを止め、宙に留まる。
ブーンはその間に背中から着地した。
ξ#゚⊿゚)ξ「何やってんのよ!
せっかく作ったチャンスに」
(;^ω^)「ごめんだお……でも前足は狩れたお」
ドラゴンは残った腕で目に刺さった矢を抜いていた。
ツンは無くなった方の腕をじっと見つめていた。
133
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:16:08 ID:CGEDAuak0
ブーンは斬った感触を思い出す。
あの感触は実生活で体験したことがあったような気がした。
ツンはじっと空虚な腕の中を見つめる。
そして記憶の中のあるものと一致することに気付く。
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、中身詰まってないのね」
( ^ω^)「……なんか切った感覚が
うっかり踏んだ時に似ていたんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「……奇遇ね、私も空っぽなのを見て
似ているものを思い出したわ」
ブーンはその言葉を聞いて冷や汗を流す。
そして恐る恐る尋ねる。
(;^ω^)「えー、腕とかもいだりするのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いい気はしないわよ
もいでも動いているし
良い毒の材料になるから仕方なくよ」
そこまで話して、お互いのイメージが同じそうだと確認する。
何となく頷きあう。
一拍置いてから一斉に声を発した。
134
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:20:14 ID:CGEDAuak0
( ^ω^)゚⊿゚)ξ「このドラゴン虫みたい」
( ^ω^)「そう考えるとあの羽も虫みたいだお」
ξ゚⊿゚)ξ「あの硬い皮膚はカブトムシやGかしらね」
川;゚ -゚)「そこの二人は何を話しているんだ!
虫の話はやめろ!!」
塵の向こうからクーの声が響く。
どうやら虫が苦手らしい。
その叫びを聞いて二人は顔を見合わせる。
そしてツンが困ったように目を細めドラゴンを見つつ言った。
ξ゚⊿゚)ξ「これは矢にぬれる毒じゃ無理ね
やっぱり目や節を狙うしかないかしら」
その言葉を聞いてブーンは剣を向けつつ考える。
そして思いついたように言った。
( ^ω^)「ハンマー系の武器が使えたらきっとつぶせるお」
ξ゚⊿゚)ξ「あぁ確かにいけるわね
でも誰も使えないわよねぇ」
そう会話をしているとドラゴンは風を巻き起こす。
どうやら邪魔にしかならなかった塵を吹き飛ばしたかったらしい。
塵が目などに入らないように二人はとっさに腕を掲げて防御態勢をとった。
塵はドラゴンの風によって空の彼方へ吹き飛んでいった。
135
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:25:04 ID:CGEDAuak0
塵が晴れ、お互いの様子がよく見えるようになる。
ブーンが結構ボロボロになっていたのでドクオは声をかけた。
('A`)「おーい、回復いるか?」
( ^ω^)「まだ大丈夫だお
それよりもう少しパワーアップ頼むお」
ξ゚⊿゚)ξ「私にもお願い」
('A`)「3段掛けまでしか効果ないぞ?
『パワーアップデート』」
ドクオはブーンに1回、ツンに2回呪文を唱えた。
クーはドラゴンを見て二人の会話の理由を探す。
そして不思議そうに「触角もないし、どこが虫なんだ」と呟いた。
ツンが真っ先に動き口を狙い全力で引き絞った矢を放つ。
一か所に集中する力は腹部の口の近くの装甲を無理やり突き破る。
矢が突き刺さった部分を中心としてひびが入る。
ドラゴンが矢の方を驚いたように見つめる。
ブーンはその隙に近づこうとする。
しかし相手もそう何度も近づかれるほど愚かではない。
翼を動かし、空高く飛びあがった。
クーはそれを見ると言った。
川 ゚ -゚)「身体の装甲が甲虫のようだという訳か
虫ならば……」
川#゚ -゚)「虫なんて嫌いだ!
火柱よ! 立ち上がれ!!」
クーが叫んだ瞬間巨大な火柱が地面から立ち上がる。
その火柱はドラゴンを巻き込む。
炎の柱が消えた後、ドラゴンがいた場所から燃え盛る塊が落ちてきたのだった。
136
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:30:37 ID:CGEDAuak0
川 ゚ -゚)「どうだ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「すごい火力ね」
( ^ω^)(ここまでの威力を出すには
『火の精霊』や『神』みたいな
契約名が普通要るはずなんだお)
ツンが感心している横でブーンは密かに考えていた。
(;^ω^)(契約名を言わずにこの火力
そしてクーのやっていたことを総合すると
たぶん契約しているのはあれになるお)
('A`)「どうした? 冷や汗なんて出して」
( ^ω^)「ん? なんでもないお
後で話すんだお」
(;^ω^)(そう言えばこいつも何と契約しているんだお?
今までの発言にヒントがありそうだお
……でも考えたくない気がするお)
ブーンはそこで思考を切るとドラゴンへ視線を向ける。
彼らの目の前でドラゴンはよく燃えていた。
虫のように体に水分が比較的少なかったためかもしれない。
比較的すぐに攻撃できるブーンとツンが様子を調べるために近づく。
一歩ずつ歩を進める。
そしてある一定の距離に近づく一歩を踏み出した。
その瞬間炎の中ドラゴンがにごった目を開けた。
炎をまとった尾で辺りを薙ぎ払う。
攻撃可能な距離にまで迫っていたブーンとツンが弾かれ飛んでいったのだった。
137
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:33:36 ID:CGEDAuak0
クーはほぼ倒したと考えていたドラゴンが動いたことに驚きを隠しきれない。
飛ばされた二人の方を示しつつドクオを急かした。
川;゚ -゚)「何!? おい、二人の回復を」
(;'A`)「分かってる! 二人とも大丈夫か?
『キロルオナ』!」
ドクオは遠くの方で倒れている二人に慌てて回復呪文をかける。
回復の効果を確認する前に二人の方へ低空飛行の突進が迫る。
後衛の二人はそれをギリギリかわした。
近くを飛ばれたことで凄まじい風が生じる。
クーは風に耐え切ったがドクオの方はしりもちをつく。
もちろんドラゴンは近くにいてなおかつ動けない方を狙う。
ドラゴンの炎は素早く飛んだおかげで消えていた。
燃え尽きたのか透明な方の翼はなくなっている。
そこまで観察したところで現実逃避の観察は終わる。
近くに降り立ち、思い切り踏みつけてきたためである。
それをぎりぎり横に転がってかわす。
少し離れて立ち上がるとドラゴンへ向かって杖を構える。
足は震えていて、おびえていることが嫌でも分かった。
クーはロッドを構えつつも驚いたように声をかける。
川;゚ -゚)「お前その体格で戦えるのか!?」
(;'A`)「確かに俺は小さいし筋力もねぇよ!
怖いし帰りたいし足が震えるしさ……
でも今やらなかったら死ぬ!
『パワーアップデート』」
138
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:40:39 ID:CGEDAuak0
ドクオは自らに強化呪文をかけ、立ち向かっていく。
迫ってくる尾を杖を用いて受け流す。
そしてツンの矢があった場所を拳で突いた。
一瞬固まった後痛そうに離れながら突いた方の腕を振る。
どうやら硬いらしく逆にダメージがあったようだ。
しかし焦げて見えにくくなっていたがひびが広がる。
クーはそれに気が付くと呪文でまず氷の槍を生じさせる。
そのあと槍にドラゴンへ突き刺さるように命令をした。
ドラゴンは後ろへ少し下がり、身をひるがえし、尾で槍を叩き落として槍をかわす。
クーはそれでも次々を槍を生じさせて攻撃していく。
ドラゴンはその攻撃を無事な目や傷を守りつつかわす。
ドクオは邪魔にならないよう少し下がる。
一応ドラゴンから見て左側という安全そうな方である。
一本の槍が自分の近くの地面に突き刺さる。
クーの方を見ると槍を指さした後ドラゴンの方を指さした。
その口は攻撃のための槍の出現と襲撃命令を出し続けていた。
(;'A`)「右目狙え? 傷狙え?
どっちだ?」
川 ゚ -゚)(当たらなくてもいい
どっちでもいいから攻撃してくれ!)
クーがそう言わんばかりに傷と右目を交互に指差した。
ドクオはそれを確認すると氷の槍を持つ。
冷たさが手に沁みた。
そして傷口を狙って槍を突き立てようとした。
この時彼はひびと口の裂け目を誤認していた。
口へと向かって思い切り槍を突き立てる。
ドラゴンは眼中になかった彼からの攻撃をかわすことができない。
隙間にねじ込まれた槍は比較的柔らかな赤い舌に突き刺さった。
139
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:45:34 ID:CGEDAuak0
(;'A`)「あれ? ミスった」
そうドクオが血の気の引いた顔で小さくつぶやく。
それと同時にドラゴンは辺り一面に尾を振り回した。
顔に直撃して大きく吹き飛ばされる。
しかし彼が尾の射程外に弾き飛ばされても暴れ続けていた。
結構痛かったらしいと吹き飛ばされた先でせき込みながら考える。
川 ゚ -゚)「氷の槍よ! 彼のものから抜けるな!」
その瞬間クーがそう命令をする。
ドラゴンが槍を抜こうとのた打ち回っていたがその命令後槍は全く動かなくなった。
だが、ドラゴンの動きは鈍くならない。
確かに痛いがダメージは少ないらしい。
それを確認したクーは疲れたように息をつく。
ずっと命令していたためか息切れをしていた。
ドクオは攻撃された部分をさすりながら立ち上がる。
そしてクーに声をかけた。
(メ'A`)「いてて、結果オーライなのか?」
川 ゚ -゚)「たぶんな、
だが、私の魔力も切れかけだ
魔力が回復するまで何もできん」
クーがそう言った瞬間回転しながらドラゴンが突進してくる。
ドクオはかわしたためぎりぎり掠る程度で済むがクーは動けなかった。
はね飛ばされ残っていた建物にぶつかる。
140
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:49:27 ID:CGEDAuak0
それを見てドクオは心配して駆け寄る。
クーはそれに気が付き、むくりと上半身を起こすと言った。
川メ゚ -゚)「……訂正だ
切れかけではない、切れている
動く気力がまったくでない」
(メ'A`)「……悪い、回復はできん
俺の方もあの二人のある呪文分しか残っていない」
慌てて駆け寄ったが何もできないドクオの言葉にクーは頷く。
彼女は「それでいい」と言ったつもりだった。
しかしその口はそう動いていなかった。
そのことに気付くとクーは心の中で嗤う。
「情けないな」と言いたかったがそんな気力も湧かなかった。
重々しい足音が響く。
視線を向けるとドラゴンが大地を踏みしめ近づいてくる様子が見えた。
ドクオは自分とクーの体力がほとんどないことが分かっていた。
だからこそどうすべきか考えていた。
(;'A`)「とは言ったもの回復しないと死ぬよな
だが回復したら二人とも魔力切れで動けないという絶望が」
川;゚ -゚)「それ使ったら奥の手使えなくなるんだろ?
なら使うなよ?」
クーは流石に焦ったように声を発した。
ドラゴンが白と黒の魔法使いを見据えて近づいてくる。
二人はドラゴンの方を見て、そしてあることに気付いた。
141
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:52:27 ID:CGEDAuak0
(メ'A`)(……あ)
川メ゚ -゚)「さて、私は動く気力はもうないぞ」
クーがわざとらしく大声を出す。
ドラゴンは迷いなく、その速度を緩めることなく近づいてくる。
ドクオは落ちている瓦礫を拾い上げ、投げつける。
刺さったままの槍に当たり、ドラゴンは立ち止まる。
かすかにうめき声を上げた。
そして再び歩を進める。
速く動かないのは槍を動かすと痛いためだろうかと考える。
ドクオは杖を構えるとドラゴンの後ろの方へ向かって叫んだ。
(メ'A`)「後は頼んだ、『ディフェンスバージョンアップ』!」
( ^ω^)「二人とも後は任せるおぉぉぉ!」
ブーンのそんな叫び声とともに剣が振り落される。
残っていた黒い翼の片方が切り落とされる。
ドラゴンは振り返りながら尾で弾き飛ばそうとした。
ブーンは剣で防御する。
衝撃はあったが吹き飛ばされずギリギリ耐え切る。
そして氷の槍が刺さっている部分を狙って剣を突き出した。
最初ドラゴンは噛みしめることで歯を使い、口への攻撃を防御しようと試みる。
しかし、氷が邪魔で食いしばることができない。
そのことを察すると素早く下がる。
突き刺さった槍が動き、傷をえぐる。
ほんの一瞬痛みのためか動きを止める。
その瞬間ドラゴンの残った右目をツンの矢が貫いた。
142
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:54:45 ID:CGEDAuak0
矢が飛んできた方向をブーンが見るとモノクルをしたツンがいた。
当たったことを確認するとモノクルを外し嬉しそうに跳ねる。
ξ*゚⊿゚)ξ「やったわ! 当たったわ」
( ^ω^)「あれ? 命中落ちていなかったかお?」
ξ*゚⊿゚)ξ「吹き飛ばされた近くにこれが落ちていたの
着けると攻撃対象がよく見えるのよ」
そう言ってモノクルを嬉しそうに示す。
銀縁のシンプルなモノクルであった。
ブーンは素早さは下がったままなので素直にうらやましかった。
(*゚ω゚)ノ
その様子を妖精はちょっと嬉しそうに見ていた。
もちろん彼ら全員から確認されない位置からであったが。
ドラゴンは右目に矢が突き刺さった瞬間しゃがみ込んでいた。
怒りとも苦しみともつかない呻き声を上げている。
しばらくすると大きく咆哮をあげながら立ち上がった。
143
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 22:58:16 ID:CGEDAuak0
ドラゴンは頭を振る。
残った腕で矢を抜く。
しかし彼の眼はもう元には戻らない。
ドラゴンの視界は完全に闇に包まれていた。
また、このドラゴンはあまり耳は良くなかった。
そのため彼らの居場所が全く分からなくなっていた。
ドラゴンは空へ逃れようと翼を広げようとする。
しかし片翼を失った状態では飛ぶことはできない。
空へ飛ぼうとしたことにより腹部の口に刺さった槍が動き、ドラゴンにダメージを与える。
その槍は魔法によるもので抜けない、溶けない。
普通の動物なら「歯」も十分な武器となる。
しかし槍が刺さったままでは口の中にある歯は武器にならない。
そもそもこんなところにある口は自分から攻撃するのに向かない。
踏みつけようにも先述通り場所が分からない。
手の爪を使って攻撃しようにも手は小さく攻撃範囲は狭い。
そしてすでに片方の腕はない。
ドラゴンは闇雲に尾を振るのが良いと判断した。
見えないため適当に移動しながら尾を振るう。
ひとまず体が向いている方向へ歩き出す。
そして進みながら尾を闇雲に振るった。
ブーンはそこへあえて近づく。
そして尾を受け流した後槍が刺さっている隙間に剣を突き立てた。
ブーンが剣を抜くと紫色の血が隙間からあふれる。
尾を使って薙ぎ払うようにその場で一回転する。
ブーンはダメージを受けつつその尾を剣で受ける。
そして再び剣を振りおろす。
今度は受け止めた尾を狙った。
しかしドラゴンも当たった感触からブーンの位置は分かった。
尾の先端をブーンの方へ突き出す。
その尾は少々油断していたブーンの脇腹をかすめた。
そこに軽い傷が作られ、血がにじむ。
144
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:01:40 ID:CGEDAuak0
ツンはそのドラゴンがブーンに集中している隙にドラゴンに近づいていた。
モノクルをかけると見えにくいひびがよく見えた。
そのひびを狙って全力で引き絞った矢を放つ。
あえて先ほど矢が刺さった場所とは違う場所だった。
ドラゴンのひびがこじ開けられる。
そこから黒い煙がひびが広がったためか少しあふれる。
ドラゴンはかすかによろめく。
その隙にブーンは離れ尾の攻撃範囲から出る。
ドラゴンは尾を再び突き出すが当たるわけがない。
再びブーンたちの場所が分からなくなったドラゴンはフラフラ歩く。
そして口を開き紫色の光を集め始める。
今度は技を出される前にツンが口の中を狙って矢を放つ。
矢が口の奥に突き刺さった。
光を溜めるのをやめ、せき込むように矢を吐き出す。
何とか矢を出した時ツンが拡げたひびに剣が突き立てられた。
ひびが大きくなった瞬間煙があふれ出したためブーンはとっさにはなれる。
ドラゴンはとにかく闇雲に暴れまわる。
もはや敵などどうでもよいといった様子だった。
ひたすら痛みに苦しみ、暴れているだけだった。
その尾が近くにあった瓦礫を弾き飛ばす。
その瓦礫はツンへ飛来する。
とっさに身をかがめてかわす。
瓦礫がかすり皮鎧の背中の方が壊れ、傷を作る。
ツンは咳き込んだ後軽く舌打ちをした。
ξ#゚⊿゚)ξ「痛いわねぇ」
(;^ω^)「やっぱり皮は金属より脆いおー」
ξ#゚⊿゚)ξ「にしてもしぶといわね……」
145
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:05:48 ID:TVxz9XZ.0
描写の努力がみてとれる
少し読みやすくなった感じ
146
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:05:56 ID:CGEDAuak0
ツンの言葉通り確かにドラゴンはしぶとかった。
本能だけでここまで戦えるのか彼らには分からなかった。
だがブーンは自分たちにできることは一つだということは理解していた。
( ^ω^)「理由はわからないけど
さっさと楽にしてあげるべきだお」
ξ゚⊿゚)ξ「魔物に慈悲はないわ
けど楽にするというのには同意ね」
( ^ω^)「それに魔法組が魔力切れな今
さっさと休ませるべきだお」
川 ゚ -゚)「すまないな」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんな火柱出して
こんなに氷の槍を作って飛ばして
それで切れるだけというのはすごいわよ」
(;^ω^)「確かに普通なら枯渇して気絶するお」
川 ゚ -゚)「一応修道女だったから魔力は多いのかもな」
ξ;゚⊿゚)ξ(そういうものなのかしら)
(;^ω^)(あれと契約しただけの魔力じゃないと思ったお
あれ? でもそれだけで維持までできる魔力あるかお?)
(;'A`)(この人の魔力の量多かったんだ……)
川;゚ -゚)(とっさに無難な理由を言ってしまった)
各々別のことを考える。
しかし考えてはいたがしっかりドラゴンの方を見ていた。
ドラゴンはとぎれとぎれの咆哮をあげる。
ツンは前面へ矢を放ち、ひびを口の切れ目まで広げる。
ブーンは背後に回り全力で剣を横に振る。
横方向の切り傷が付き、端の方には小さなひびが生じる。
その端の方の小さなひびが元のひびと繋がり大きなひびとなる。
黒い煙があふれ出すがブーンは気にしない。
振るわれた尾に胴体を殴られつつも苦しそうに息を吐いてその場で耐える。
そしてその傷から剣を思い切り突き立てる。
正面から見るとドラゴンの腹部の口から剣が生えてきたようにも見えたのだった。
147
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:10:55 ID:CGEDAuak0
(#^ω^)「うおりゃぁぁぁ!」
ブーンはそんな掛け声をあげながら剣を動かす。
ドラゴンの周りをひびに沿って半周し正面に回る。
バキバキという音を立てひびが一つの大きな穴となる。
正面に回った瞬間ドラゴンと目が合ったように感じた。
慌てて蹴りを入れながら離れて距離をとる。
ドラゴンは不思議そうに軽くあたりを見渡す。
そして傷つき、見えていないはずの眼でブーンたちの方を見る。
足を持ち上げブーンたちの方へ歩み寄る。
(;^ω^)「体の半分斬ったのにまだ来るかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「真っ二つにしなくちゃ倒れないの?」
ブーンとツンが息を切らしつつ叫んだ。
ドラゴンは尾を振るおうと足を広げ踏ん張る。
そしてその上体をひねった。
ブーンはとっさにツンを守るように間に入る。
そして剣を縦に構え、尾の攻撃に備えた。
148
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:13:56 ID:CGEDAuak0
ドラゴンの上体がゆっくりと倒れていた。
ひびが入っていなかった部分がパキパキと音を立てて折れていく。
そしてその体内構造が日の下にさらされていく。
まず口、これは入り口に細かい歯があった。
そしてその内壁は血で紫色だった。
その内壁は胃へ直通のようだった。
食道の一部が口の内壁となっているようだった。
いくつかの内臓が黒い煙の中に見えた。
硬く、黒い装甲。
いくつかの内臓と神経。
そしてその間を埋める黒い煙。
これら3つがこのドラゴンを形成するものだった。
そのうち黒い煙は空中へと霧散し、やがては消えていく。
恐る恐る近づき確認したドクオが感想を言う。
('A`)「なんというか無駄が多いというか
バラバラの内臓を無理やり押し込めた感じだな
俺らが負けてもこいつたぶん遅かれ早かれ死ぬと思う」
( ^ω^)「確かに変な声が何かやった
そしたらできたという感じだったお」
川 ゚ -゚)「思い返すと最初は腐りかけだった
声は『腐るのが速い』『失敗作』と言っていた
あの声がこれを作ったのだろう」
(#'A`)「……失敗作って
まるで自分が作ったみたいな言い草だな」
ξ゚⊿゚)ξ「人工であってもなくても魔物は魔物
殺す対象よ……でも魔王にも部下っているのね
姿見えなかったし強い魔物なのかしら」
(;^ω^)「こんなにしぶといのたくさん作られたら厄介だお」
ブーンが力が抜けたように膝をつきつつ言う。
それを見て声をあげようとしたツンも座り込んでいた。
149
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:16:10 ID:CGEDAuak0
ツンは立てなくなった事実に焦る。
そして不思議そうに声を発した。
ξ;゚⊿゚)ξ「あれ? なんで? 立てない」
(;^ω^)「ツンもかお?」
('A`)「あ、3回強化したからだな
2回目までならそこまで副作用無いんだがなー
しばらく休めば動けるから安心しろ」
ドクオの言葉に二人は不満そうな声を上げる。
その不満にため息をつきながら言った。
('A`)「いいか? 普段の力の倍以上出しているんだ
身体に負荷かかるのは当然だろ」
(;^ω^)「でも魔物地区でこうなったら大変だお」
('A`)「2回なら平気だ
それに『レオナ』程度ですぐ回復できる」
ξ゚⊿゚)ξ「にしてもあんたの呪文独特ねぇ」
('A`)「独学だから自分で考えている
そもそも神官とかの呪文が一緒なのは
契約対象がほぼ同一だからだ」
川 ゚ -゚)「確かに神官以外の白魔法の連中は呪文ばらばらだったな」
( ^ω^)「契約対象で効果がほとんど変わらない
だけど呪文は違うのかお……」
ブーンは感心したように呟く。
どうやら魔法が本当に好きらしい。
新しい知識を得たブーンの声は弾んでいた。
150
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:17:38 ID:CGEDAuak0
(=゚ω゚)ノ「……無事倒せたかょぅ」
『おい、妖精』
瓦礫の影から見ている妖精に声がかけられる。
妖精は少し顔をしかめると何もない方向へ答えた。
(=゚ω゚)ノ「なんだよぅ」
『あのガキンチョにモノクルを渡したのおまえだろ?
その所為で目つぶされてあっさり負けたじゃないか』
(=゚ω゚)ノ「それはすまんかったよぅ」
『入れ込みすぎじゃないか?
お前の仕事は見守ることだろう?
無事魔王様の元へたどり着くまで』
姿なき声は若干声を荒らげる。
妖精は何も答えない。
姿なき声は軽くため息をつく。
『今回は俺も暴走した
魔王様には報告しないでおいてやる』
(=゚ω゚)ノ「勝手にするんだよぅ」
妖精はとても小さい声でぼそりと言ったのだった。
座り込む4人に兵士達が駆け寄っていくのが見えた。
151
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:20:19 ID:CGEDAuak0
_
( ゚∀゚)φ「今回は報告することたくさんあるぞー
まずは仲間が全員そろった
騎士、射手、黒魔法、白魔法ですっと」
_
( ゚∀゚)「ツンちゃんが近距離に出気味だから中距離として
遠、近、中距離がそろって回復もいる
まぁ良さげだよな」
_
( ゚∀゚)φ「次になんと彼らはドラゴンを倒した
正体は魔物とは言えすごい
クーちゃんの魔力の量がおかしかったっと」
_
( -∀-)「あんなに氷の槍放てるかって普通
そのとき一緒にいたのがドクオ君で
彼の村魔法使いがいないからすぐ気付かなかったんだな」
_
( ゚∀゚)φ「で、ドラゴン討伐後動けなかった
だから兵士のビコーズさんに助けてもらったっと
彼も王子たちの助けになりたいそうなので
俺と同行することを許してください」
_
(*゚∀゚)「全員そろったから一回帰るんだけどな
ついでに会ってもらって許可取るか
ハイン元気かなー」
_
( ゚∀゚)φ「……そうだ、あのこと書かなくちゃ
クーちゃんが許されたこと伝えなくちゃいけないしな」
ジョルジュはそう呟くと目を閉じる。
ブーンたちがドラゴン討伐後自分が地下の町で見た出来事を思い出していた。
152
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:22:39 ID:CGEDAuak0
( ∵)「君たちはあれを倒してくれた
一日くらいなら休んでも許されるだろう」
从∀゚ 从「そうそう、それくらい許されなくちゃな」
ジョルジュは変装して魔力切れで動けない二人に肩を貸していた。
もちろん一人だけだとつらいのでビコーズにも手伝ってもらっていた。
その後ろを歩くブーンは申し訳なさそうに言った。
(;^ω^)「運ぶの手伝ってくれてありがとうございます
えっと名前は」
从∀゚ 从「名前なんていいんだよ、ただの通りすがりで」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうですか、ありがとうございます
あれ? たくさん人が出ている」
ツンの言葉で全員が視線を寂れた教会へ向ける。
デミタスを先頭としたサイドニアの住人達がそこにいた。
ビコーズは真っ先に疑問の声を上げる。
( ∵)「皆さん出てきてどうしたのでしょう?」
(´・_ゝ・`)「……君たち、ついさっきドラゴンを倒したかい?」
( ^ω^)「倒しましたお」
(´‐_ゝ‐`)「そうか、感謝しよう」
デミタスは深々とお辞儀をする。
後ろにいた町人たちはブーンの言葉に嬉しそうにざわついた。
しかし、固まった表情のまま一言も発さない人々もいた。
153
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:24:27 ID:CGEDAuak0
クーは並んだ町人たちを見る。
そして少しためらった後幾分かの期待を込めて尋ねた。
川;゚ -゚)「患者はどうなりましたか?」
(´・_ゝ・`)「先ほど一斉に亡くなったよ」
その言葉を聞いたクーは一瞬血の気が引いたようになる。
そして目を閉じると「そうか」とだけ言った。
デミタスは後ろを振り返る。
大部分の人は安心したように笑っていた。
それを確認した後言葉を続ける。
(´・_ゝ・`)「クーさん、訴えは取り下げる」
(´‐_ゝ‐`)「理由は引き取られた患者たちが
多くの家族や隣人を殺した
君がやったことは仕方ないという世論が湧き上がった」
(´・_ゝ・`)「あれを倒した君たちなら魔王も倒せるかもね
訴えたからやってくる教会の人には
訴えを取り下げると伝えよう」
町人たちから「頑張れよ」等の軽い調子の応援が響く。
「びびってごめんね」「勝てよ」「負けるなよ」
ブーンはその声援に包まれながらデミタスに尋ねていた。
( ^ω^)「……本当に死んだのですかお?」
(´・_ゝ・`)「あぁ、本当は煙を吸った瞬間死んでいたらしい
調査の結果黒い煙の成分は魔物区域の瘴気と近かった
だが誰かが何かしたのか死んでいたはずの彼らは動いていた」
ξ;゚?゚)ξ「……そうですか……」
(;'A`)「ドラゴンに煙まとわせていたし
あの声の主の仕業か……?」
ドクオがそうぼそりと考えを漏らす。
その時、上流から下ってきた船の到着音が響く。
黒いカソックのような服を身にまとい大きな剣を背負ったモララーが船から降りる。
その船には十字架のような教会のマークがしるされていた。
154
:
>153訂正
:2014/10/26(日) 23:28:16 ID:CGEDAuak0
クーは並んだ町人たちを見る。
そして少し見回した後幾分かの期待を込めて尋ねた。
川;゚ -゚)「患者はどうなりましたか?」
(´・_ゝ・`)「先ほど一斉に亡くなったよ」
その言葉を聞いたクーは一瞬血の気が引いたようになる。
そして目を閉じると「そうか」とだけ言った。
デミタスは後ろを振り返る。
大部分の人は安心したように笑っていた。
それを確認した後言葉を続ける。
(´・_ゝ・`)「クーさん、訴えは取り下げる」
(´‐_ゝ‐`)「理由は引き取られた患者たちが
多くのその家族や無関係の隣人を殺した
君がやったことは仕方ないという世論が湧き上がった」
(´・_ゝ・`)「あれを倒した君たちなら魔王も倒せるかもね
訴えたからやってくる教会の人には
訴えを取り下げると伝えよう」
町人たちから「頑張れよ」等の軽い調子の応援が響く。
「びびってごめんね」「勝てよ」「負けるなよ」
ブーンはその声援に包まれながらデミタスに尋ねていた。
( ^ω^)「……本当に死んだのですかお?」
(´・_ゝ・`)「あぁ、本当は煙を吸った瞬間死んでいたらしい
調査の結果黒い煙の成分は魔物区域の瘴気と近かった
だが誰かが何かしたのか死んでいたはずの彼らは動いていた」
ξ;゚⊿゚)ξ「……そうですか……」
('A`)「ドラゴンに煙まとわせていたし
あの声の主の仕業か……?」
ドクオがそうぼそりと考えを漏らす。
その時、上流から下ってきた船の到着音が響く。
黒いカソックのような服を身にまとい大きな剣を背負ったモララーが船から降りる。
その船には十字架のような教会のマークがしるされていた。
155
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:31:19 ID:CGEDAuak0
(;・∀・)「あれ? ドクオ君?
とうとう村出たの?
もしかして噂の罪人の仲間?」
('A`)「あ、モララーさん、村は出ました
ですが罪を犯した記憶はありません」
ドクオを見るなりある意味失礼なことを言ったモララーはほっと息をつく。
「知り合いは捕まえたくないからよかった」と小さく呟く。
そこへジョルジュは前に出ると尋ねる。
从∀゚ 从「黒いカソックってことはお前が教会の人間か?
訴えは取り下げるってさ」
( ・∀・)「ん? そうなの?
魔王幇助罪の方も?」
(´・_ゝ・`)「はい、そうです」
( ・∀・)「良かった、捕まえることにならなくて
もう一つの訴えの怪物は?」
( ^ω^)「僕らが倒しましたお」
(*・∀・)「マジ? いやぁメンドかったから助かった」
モララーはとても嬉しそうな声を発する。
その様子を見て呆れつつもドクオは呟く。
(;'A`)「一応聖騎士サマなのに」
ξ゚⊿゚)ξ「聖騎士?」
川 ゚ -゚)「教会の次期6人長ということだ」
( ^ω^)「6人長?」
川 ゚ -゚)「教会の偉い人と理解しておけ」
ドクオの「聖騎士」という言葉に町の娘たちが色めき立っていた。
よく通る声に白い歯、鼻立ちはすっきりと言ったイケメンでしかも結婚できれば玉の輿一直線なのだ。
色めき立つのも当たり前だろう。
156
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:34:03 ID:CGEDAuak0
モララーはそのような反応に慣れているのか気にも留めない。
キラリと爽やかな笑顔を町娘たちに向けた後デミタスの方へ向き直った。
( ・∀・)「分かりました、では教会には訴えは取り下げられたと伝えます」
(´・_ゝ・`)「お騒がせしてすみませんでした」
デミタスは深々とお辞儀をした。
クーは笑顔を見せない町の人たちの方をじっと見ていた。
笑顔のない町人たちもクーを見ていた。
クーはその視線をしっかり受け止めた後深々とお辞儀をする。
その町人たちは視線を逸らしたのだった。
川 ゚ -゚)(彼らはおそらく、本当はすでに死んでいたとしても
私が殺すこととなった方々の遺族だろう)
川 - -)(私が彼らにできることは本当の敵を討つぐらい……だろう)
クーはそう密かに考える。
一瞬わずかに眉根を顰めつらそうな顔になる。
そのことに気が付いた者もいたが彼らは気づかないふりをしたのだった。
157
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:38:39 ID:CGEDAuak0
ジョルジュは目を開ける。
そして思い出したことを記した。
_
( ゚∀゚)φ「クーちゃんはつらそうな顔をしていました
俺は何か声をかけるべきだったのでしょうかっと」
_
( ゚∀゚)「ま、きっと正解なんてないさ
クーちゃんは19になったという話だし
自分で乗り越えられる年齢さ」
_
( -∀-)φ「彼らは言いつけどおり
ホライゾン国に戻るそうです
王子も王様に会えるのを楽しみにしていますっと」
ジョルジュはそう書くと大きく伸びをする。
そして報告書を送り出す。
_
( ゚∀゚)o彡゜「これで良し、ビコーズ酒飲んで寝るぞ」
(;∵)「毎晩これ飲んでいるんですか!?
度数高いですよ!」
同行することになった兵士、ビコーズと共に酒を飲む。
そして各々眠りについたのだった。
( ∵)「一杯で沈むのにこんなの飲んでいるんですね……」
ビコーズは呆れも混じった呟きを発する。
静かな地下の宿で起きているのは彼だけだった。
爪'ー`)「次は何を盗もうかな……無理そうだけどカギ欲しいなぁー」
手紙を結果的に公開したフォックスはそう寝言を呟く。
彼もまた巻き込まれる運命にあるのだが、この時は最後の平和な夜を過ごしていたのだった。
158
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:41:46 ID:CGEDAuak0
(´・ω・`)「取り下げたから捕まえない
確かに理由がないからね」
赤いカソックのような服を着た男はため息をつく。
そしてモララーからの報告書を握りつぶすと声を荒らげた。
(#´・ω・`)「だがやつらは魔王様に敵意を持っている!
敵意を持つなんてとんでもないことだ!
そんなやつを呼び込むなんてとんでもないことだ!」
(´・ω・`)「魔王様も魔王様だよ
世界のカギが欲しいのなら四天王が集めるのに」
( ^ν^)「何あらぶってんだよ」
垂れた眉の男が報告書をたたきつけたところで突然笑みを浮かべた男がその部屋に入ってくる。
赤いカソックを着た男は慌てずに答えた。
(´・ω・`)「いや、ある意味有能だけど無能な部下についてね」
( ^ν^)「モララーか? 仕方ないだろ
あいつは荒巻の跡目だからな」
(´・ω・`)「その笑顔止めてくれないか?」
( ^ν^)「この笑顔? 止めない」
入ってきた男もまた赤いカソックに着替える。
そして部屋から出ていきつつ言った。
( ^ν^)「ま、他のカギは魔物区域通る必要あんだろ?
どうせ死ぬから大丈夫だって
あとメンドーイ6人長会議が始まるぞショボン様」
(´-ω-`)「……分かった、今から出るよ」
最後の一言をわざとらしく言った男にショボンは苛立ちを覚える。
しかしそれを顔には出さずにその部屋から出たのだった。
159
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:51:13 ID:CGEDAuak0
以上で第5話投下終了です。
前回絶望が見られるといいましたね?
ドラゴンの絶望でした。
ゲームで言うとはめ技を食らったという感じです。
書き溜めを結構書き直しながらの投下になっています。
そのため書き方がぐちゃぐちゃしているかもしれません。
次回は第0章最終話です。
その最終話である第6話はほのぼのな仕上がりとなっています。
……ほのぼのしています、たぶん。
私がRPGでやったことあるゲームは某伝説などの一人旅が多いです。
そのため複数で戦うということに慣れていません。
複数ならではの連携などをかけるようにして戦闘描写などを読みやすくなるよう努力していきます。
もうしばらくお付き合いいただけるとありがたいです。
今はひたすら書いています。
最後に感想であった腐敗臭について一言、ピーマンは腐らせてはいけない。
160
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:58:33 ID:Hxg6S22Q0
乙
冒険物大好き
次回も楽しみにしてるよ!
161
:
名も無きAAのようです
:2014/10/26(日) 23:58:34 ID:KqimgO0U0
おつです
虫みたいなドラゴンか
それだけならともかく羽がGみたいって、想像しただけで少しゾッとした
>>155
このハインってジョルジュだったのか?!それとも誤字?
162
:
名も無きAAのようです
:2014/10/27(月) 00:02:17 ID:YlB/6oCw0
ミスった
皮膚がカブトムシやGみたい、だな
163
:
名も無きAAのようです
:2014/10/27(月) 00:30:15 ID:hVetNwO20
おつ!某伝説ってなんだろ
>>161
前の話に突然出てきたハインネタの回収かと思って読んでた
ジョルジュとハインは目付きが同じだし
164
:
名も無きAAのようです
:2014/10/27(月) 01:15:02 ID:sAA.0CD.0
ゼルダじゃね?
とにかくいちおつ
165
:
名も無きAAのようです
:2014/10/27(月) 11:43:04 ID:RLtBm3Y60
おつ
>>161
変装って
>>152
にある
166
:
名も無きAAのようです
:2014/10/27(月) 14:35:30 ID:GCPgiSEU0
>>163
>>165
目つきについては確かに似てるな−とは思ってた
>>152
の文章落としてたorz
教えてくれてありがとう
167
:
名も無きAAのようです
:2014/10/30(木) 10:02:26 ID:9oqIRjAg0
乙
あのハインはジョルジュだったのね
168
:
名も無きAAのようです
:2014/10/31(金) 10:51:46 ID:xrVNemAo0
面白いなこれw
169
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:13:59 ID:YHNyFybQ0
草原をさ迷い歩く。
出てくるゴブリンをひたすら倒す。
そしてサイドニアを出てから四日が経った。
( ^ω^)「帰ってきたおー」
川 ゚ -゚)「ここがブーンの故郷か」
('A`)「でかいな」
ξ゚⊿゚)ξ「改めて見ると確かにデカいわね」
巨大な城壁を前にしてそんな感想を漏らす。
ここはブーンの故郷ホライゾン国であった。
170
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:15:53 ID:YHNyFybQ0
第0章
第6話 飛びだす時
171
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:19:11 ID:YHNyFybQ0
川 ゚ -゚)「ブーンのおじいさんとはどういう人なのだろうか
私を見つけたということはなかなかの人脈だな」
('A`)「俺も気になるな
母者さんが敬語使っていたし」
( ^ω^)「お? ……そう言えば言ってなかったお」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ確かに」
ブーンとツンの言葉に二人は市場を歩きながら不思議そうな顔をする。
白い布で張られたテントからの物売りの声が響く。
ブーンはにこやかに笑いながら言った。
( ^ω^)「僕のおじいちゃんここの王様なんだお」
川;゚ -゚);'A`)「な、なんだってー!?」
川;゚ -゚)「確かにその鎧は高級品だが
ツンはなんだ? 王女だったりするのか?」
(;'A`)(この鎧高いんだ……)
ξ゚⊿゚)ξ「私はここの国の者じゃないわ
今は魔物区域にあるとある国の没落貴族よ」
(;^ω^)(貴族だったのかお
魔物に対する態度の苛烈さで分からなかったお)
(;'A`)「……俺は村男Aです」
川;゚ -゚)「修道女Cです……態度改めたほうがいいですか?」
(;^ω^)「そういうのいいお……」
ξ;゚⊿゚)ξ「二人の方が年上なんだし」
委縮した二人に気にしないように言いながら彼らは城へ向かう。
その頃城ではロマネスクが楽しそうに彼らを待っていた。
172
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:27:52 ID:YHNyFybQ0
( ФωФ)「お主たち待っておったぞ
……よくぞ戻ってきたな、アヒャ大臣は下がれ」
( ゚∀゚ )「あひゃー、了解しました」
ブーンたちを城に入ってからここまで案内した大臣が一礼をして去る。
玉座に座ったロマネスクは赤い扉に金の装飾を施した扉から大臣が出ていくことを確認する。
しばらく経ってからロマネスクの頬が緩む。
それを見てブーンがうれしそうな声を上げた。
( ^ω^)「おじいちゃん久しぶりだおー!」
(*ФωФ)「ブーンよくやったぞ
ドラゴン倒したりしたんだってな、すごいぞー」
急に砕けた調子になったのをはじめて見たドクオとクーが若干引く。
そして聞こえないように小声で話す。
川 ゚ -゚)「王様はフランクなんだな」ヒソヒソ
('A`)「大国の王だからもっと厳格だと思ってた」ヒソヒソ
( ФωФ)「さて、君たち
それぞれ勇者とペニサスの子孫だね」
いきなり言葉を向けられた二人は慌てて姿勢を正す。
そしてはっきりと答えた。
川 ゚ -゚)「はい、確かに私の祖父は勇者と聞いています」
(;'A`)「あ、俺は母のおばがペニサスと聞いています」
(;ФωФ)(うーむ、彼らを見ていると昔を思い出す)
自分の仲間の面影をロマネスクは彼らから感じていた。
そのことをきっかけとして旅をしていたころの記憶が溢れてこようとしている。
勇者のことを最初どのような名前で呼んでいたか。
その記憶にも手が届きそうにも感じた。
しかし掠る程度の手ごたえしか感じられなかったのだった。
173
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:32:01 ID:YHNyFybQ0
( ^ω^)「一端戻れっておじいちゃんが言ったから戻ったけど
何の用なんだお?」
ブーンの言葉でロマネスクの意識は記憶の海から引き戻される。
そして頷きながら言った。
( ФωФ)「世界のカギのある迷宮は今は魔物区域にある
そこに行くために最近開発されたあるものと
私たちがかつて使ったあるものを渡そうと思ってな」
そう言うとロマネスクは用意していたのか懐から古い地図を取り出す。
4人が覗きこむとそこには今は瘴気に沈んでいる町も描かれた地図があった。
北の方には切り立った山々が描かれていた。
その頂上には十字架が立てられた建物が描かれている。
教会のある山のふもとには大きな国が描かれていた。
その近くには「寒い」とか「雪」等という単語が無造作に書かれていた。
地図の西方には海があった。
そしてその沿岸部にも大きめな国がある。
その横に「海危険」「魔法ばっかり」などの荒々しくかかれた文字があった。
東方には低くなだらかな山があった。
その山のふもとにも大きな国があった。
丸っこい文字で「木がほとんどないよ」「岩ばっかりで危ないよ」と書かれていた。
南の方には自分たちの今居るホライゾン国が一番の大国として描かれていた。
その国が集中した地域の中央に川が走っていた。
元気のよい文字で「故郷!」「帰るべき場所」という言葉が書かれていた。
そして地図の中央には大きな湖があった。
北の方から流れてきた川は湖に入り、それぞれの地域の方へと流れていた。
ただし、東は町から離れた場所だったが。
( ФωФ)「昔私たちが使った地図だ
ちなみにダンジョンはここに作った」
そう言うとロマネスクは西の町、地図の南と東からほぼ等距離にある南東の場所。
そして地図の北の町から少し東の位置に×を書いた。
174
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:34:48 ID:YHNyFybQ0
( ^ω^)「この国が小さいおー」
( ФωФ)「そりゃ世界地図だからな
世界はこんなにも広かったんだ……瘴気の所為で小さく感じるかもしれないがな」
ξ゚⊿゚)ξ「こんなにも広い地域が魔物地区なのね」
( ФωФ)「ちなみに魔王はここに居った」
そう言うと地図の中央の湖の真ん中に丸を描く。
そして目を閉じ小さく「ここの洞窟にいたのである」と呟いたのだった。
しばらくして目を開くと口元をわずかに吊り上げる。
( ФωФ)「お前たちにはこれから瘴気を抜けてもらう
それには足が必要であろう……アヒャ!」
( ゚∀゚ )「はい、なんでございましょうか?」
( ФωФ)「彼らをあれに案内しなさい」
( ゚∀゚ )「あれですね、分かりました!」
アヒャ大臣はそう言うと4人についてくるように言う。
「あれはすごいぞ」と言いアヒャヒャと楽しそうに笑いながら案内を始めたのだった。
ブーンたちが居なくなってからロマネスクはため息をつく。
そして若干怒りのこもった大声で叫んだのだった。
(#ФωФ)「ジョルジュ! 報告書について気になる部分があった
急いで参上するのである!!」
175
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:38:41 ID:YHNyFybQ0
アヒャの先導で辿り着いた先は中庭だった。
ブーンにとっては庭師によって整えられたいつもの中庭である。
だが、その中央には見慣れないものがあった。
それは2頭の巨大な機械の馬とそれにつながれた馬車であった。
馬車は大きく機械の馬で動かせるか不安になるほどであった。
外見は運転者が座るところまで屋根が伸び、ガラスで覆われていた。
一応手綱用の穴があったができる限り瘴気が入らないよう考慮されている。
中を軽く見ると2階建てで1階には運転席につながる扉や食堂等があった。
2階は小さな部屋が4つある。
小さな備え付けのベッドと小さな机あと旅のための荷物でほぼ一杯になる広さだった。
一応生活はできそうだと感じる空間であった。
( ゚∀゚ )「機械馬車だぞ、普通の馬では瘴気内では魔物になるからな
手綱を通して機械の馬に魔力を注いで動かんだ
ついでに馬車の中の環境も魔力を使って維持されるぞ」
クーは魔力という単語を聞いて小さく不安そうにつぶやく。
川;゚ -゚)「どれだけの魔力を注げばいいんだ?」
アヒャはその言葉を聞いて待ってましたと言わんばかりにいい笑顔を見せた。
176
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:47:19 ID:YHNyFybQ0
( ゚∀゚ )「アヒャヒャ! その点は大丈夫
ブーン王子世界のカギはあるか?」
( ^ω^)「どうぞだお」
ブーンに赤い石を手渡されたアヒャは馬車の横にあった扉から中に入る。
そして運転部屋に入ると小さなボタンがいくつか手綱の横にあるのが目に入った。
ボタンのうちEと書かれたボタンを押すとその隣に穴が開く。
その穴に赤い石を放り込む。
その瞬間木と鉄でできた馬が顔を上げ、大きないななきを上げた。
( ゚∀゚ )「カギの魔力を使って動かすんだぞ
カギが集まるほど魔力が多くなって速く走れるらしいぞ
だけど時々止まって石を休ませないと魔力切れるらしいぞ?」
('A`)「あ、じゃぁこれも」
( ゚∀゚ )「アヒャヒャ、ありがとう」
ドクオから紫の石が付いた腕輪を受け取るとアヒャはそれも放り込む。
中から一瞬強い光が漏れたように見えた。
カギがエネルギー源と聞きツンは少し考える。
そして不思議そうに尋ねた。
ξ゚⊿゚)ξ「魔王にこれ渡す前に一つのカギにするのよね
一つになった後でも問題はないのですか?」
( ;゚∀゚ )「アヒャー、実は1個になるとエネルギー取り出すのたぶん難しくなるぞ
だけどな、今魔法使いたちに宝石に魔力を注いでもらっている
たぶんカギが集まるころにはエネルギー源の魔力の詰まった石ができているぞ」
アヒャが苦笑いを浮かべながら答える。
その様子を見て軽く顔を見合わせ魔法使い組は小声で会話をする。
川 ゚ -゚)「いざとなったら魔力提供だな」
('A`)「そうなりそうだな」
177
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:52:31 ID:YHNyFybQ0
ブーンは手綱を見て考える。
一応馬には乗ったことがあるがすぐ落馬したし馬車も操ったことがなかった。
不安に感じたことを尋ねることにした。
( ^ω^)「ところで、だれが操縦するんだお?」
( ゚∀゚ )「全員操縦方法と整備方法くらいは覚えて欲しいぞ」
そうさらっと言われて顔を見合わせる。
驚いた様子なのを見て少し考えた後に言う。
( ゚∀゚ )「あひゃー、安心するんだぞ、この手綱は魔力をよく通すんだぞ
一応運転者の思考を魔力を使って馬に伝えてくれるから技術は問題ないぞ」
( -∀- )「魔力は量の違いはあってもだれにでもあるぞ
もちろん、王子とツンさんは魔法使いじゃないから魔力は少ない
でもその少ない魔力で運転できるようになっているから安心してほしいぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「魔力……ってことは」
ツンはサイドニアで魔力を使い切った二人が動けなくなっていたことを思い出す。
そうなったら大変だと思い声を上げようとした。
しかし、それを遮るように言った。
( ゚∀゚ )「アヒャヒャ、安心するといいぞ
一日運転したとしても疲れを感じるが寝たら治る程度の消費量だ
だけど一応みんなで覚えて交代で運転してほしいんだぞ」
( ^ω^)「分かったお!」
ブーンの返事を聞いて満足そうな顔をアヒャはする。
そしてその顔のまま彼に整備方法などが書かれたマニュアル本を渡す。
( ゚∀゚ )「今君たち用に新しい防具を作っているらしいぞ
もうすぐ完成するから出発は待ってほしいんだぞ
それまで整備マニュアルはしっかり目を通しておいてほしいぞ」
アヒャはそう言い残すと「頑張るんだぞ、アヒャ」と言いつつその場を去ったのだった。
178
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:55:48 ID:YHNyFybQ0
ブーンは渡されたマニュアルを呆然と見つめる。
( ^ω^)「……分厚いお」
('A`)「魔道書よりは薄い、頑張れ」
川 ゚ -゚)「あぁ、薄いな……大丈夫行けるさ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そう言うならあんたらも覚えなさいよ」
('A`)「一応覚えるつもりだが
魔力切れした時は整備できないからな」
川 ゚ -゚)「しっかりツンも読むんだぞ?」
ξ-⊿-)ξ「うぅ……全員暗記が任務ね、了解」
( ´ω`)「暗記苦手だけど頑張るお―」
ブーンとツンの言葉にはいささか覇気がないのであった。
全員そろって馬車から降りる。
すると元気な声がかけられた。
从*゚∀从「初めまして!
ジョルジュの妹で開発部に所属しているハインリッヒです!
このたび王様からツン様とクー様のお世話と機械馬の説明を頼まれました」
その場にいた全員がある顔を思い浮かべる。
その感情を代表してブーンが前に出て尋ねる。
( ^ω^)「……格闘家の里とかサイドニアに最近行ったかお?」
从 ゚∀从「いいえ、この町から出ていませんが……どうかしたか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、あなたのそっくりさんと会ってね」
その言葉を聞いてハインリッヒは不思議そうな顔をした。
そして少し考え、わずかに顔をしかめた後機械馬を触りながら言った。
从 ゚∀从「まぁ偶然でしょう
まずはこの子の説明をします」
179
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 00:59:27 ID:YHNyFybQ0
ハインリッヒはそう言うと楽しげに機械馬の説明を始める。
マニュアルには載っていないが、知っていると便利な機能を説明する。
例えば速度を変える時、手綱の持ち方を変えるだけで良い。
休ませる目安は機械馬が足を上げる高さが低くなってからで良い。
といった使うに当たって大切なことだった。
そして自分がこっそりつけた機能について説明する。
从 ゚∀从「今の魔力量じゃ無理だがもっとたくさん魔力があれば空も飛ぶ
このボタンを押すだけでいい……ちなみに飛び続ける時の消費魔力量は
ちゃんと減るから飛び続けるだけで魔力切れはないはずだ」
从 >∀从「フォルムは昔兄貴に読んでもらったペガサス風だ!
ちゃーんと馬車の方にも一緒に飛ぶように細工はしてある」
( ^ω^)「まじかお!?」
从 ゚∀从「マジなんですよ! 王子!!」
そうやって大声を出した瞬間自らの言葉遣いに気付き、はっと固まる。
ハインリッヒは少し照れたように頭をかきつつ言った。
从*゚∀从「すみません、家族が兄貴ぐらいで丁寧な言葉使いに慣れていないもので
えっとツン様はこの前宿泊した部屋で良いでしょうか?」
その問いにツンは少し考える。
そして楽しそうにハインリッヒの問いに答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「良いわよ、ベッド広かったからクーも同じ部屋でいいわ
あなたも一緒に泊らない?」
川 ゚ -゚)「良いのか?」
从 ゚∀从「え? でも」
ξ゚⊿゚)ξ「たまには女の子同士で語り合いたいし
あの部屋広くて一人じゃ寂しいもの」
从 ゚∀从「と、とにかくご案内します、ついてきてくれ」
180
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:04:07 ID:YHNyFybQ0
ハインリッヒを先頭にツンとクーがおしゃべりをしながら城の中へ入っていく。
気が付いたら中庭から太陽が塀に隠され見えなくなっていた。
辺りはオレンジ色の明かりに包まれている。
所在なさげに立っていたドクオが体をのばしつつ声を出す。
('A`)「町に宿でもとるか」
( ^ω^)「ここに泊らないのかお?」
(;'A`)「落ち着かないしどこに泊ればいいか分からないし」
_
(ゝ゚∀゚)「どうも、ジョルジュです
ドクオ君の案内に来ました」
そこへ頬が心なしかこけたジョルジュがニュッと現れる。
その様子にブーンが思わず声をかけた。
(;^ω^)「ジョルジュどうしたんだお?」
_
( ゚∀゚)「怒られただけです、大丈夫です、大丈夫です」
('A`)「……あ、あの時の」
ドクオが驚いたように声を出す。
ブーンはその反応に不思議そうに声をかけた。
( ^ω^)「会ったことあったかお?」
('A`)「え? あの時お前も」
そこまで言った瞬間ジョルジュは手でパンと音を鳴らす。
ドクオが驚き発言を止めた瞬間素早く有無を言わせず腕をつかんだ。
181
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:07:55 ID:YHNyFybQ0
_
( ゚∀゚)o彡゜「さぁ部屋へご案内します
おしゃべりは夕飯の時にでもお願いします」
(;'A`)「え、あの」
何か言いたげなドクオは半ば引きずられつつ中庭から去った。
中庭に一人残ったブーンはマニュアル本を見る。
その分量にため息を一つ出す。
何気なく顔をあげると馬車が目に入る。
(*^ω^)(これが僕らを新しい場所へ連れて行ってくれるんだお)
馬車を見るとそう心が躍るのもまた感じられる。
ブーンはとても楽しそうにしばらく馬車を見ていたのだった。
_
( ゚∀゚)「もう王子いないな」
ジョルジュが城の中に戻りそう呟く。
ドクオは必死に来た道順の暗記をしていた。
_
( ゚∀゚)「……お前に頼みがある」
('A`)「あっちが……なんですか?」
_
( ゚∀゚)「なんで分かったか分からんけど
あの変装が俺だって他の人には言わないでくれ!」
そう言うとジョルジュは土下座する勢いで懇願する。
勢いに若干気圧されながらもドクオはうなずく。
その反応を見てジョルジュはほっとしたようだった。
_
( ゚∀゚)「約束だぞ? 俺はもう王様に絞られたくないんだ!
さて部屋に案内しようか」
(;'A`)(あ、町に宿取りたいって言いそびれた)
182
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:11:26 ID:YHNyFybQ0
それぞれが部屋に案内された後、夕食をとる。
その後にツンとクーは浴室へ案内されていた。
从 ゚∀从「旅の最中じゃ満足に入れないでしょう
楽しんでくれ! 俺は機械馬の最終調整に行ってくる!!」
ξ*゚⊿゚)ξ「お風呂よー!」
川 ゚ -゚)「流石城、でかいな」
広い浴室を見てクーが感心したように声を上げる。
そして着込んでいた服を脱いでいく。
それを見たツンは密かにクーは着やせするタイプだったのかと考える。
ξ゚⊿゚)ξ(でかいわね……3年もすれば私も……)
川 ゚ -゚)「どうした?」
ξ;゚⊿゚)ξ「何でもないわ、入りましょう」
クーに声をかけられて見ていたことがばれるのが何となく恥ずかしく顔をそむける。
もう一度こっそりとクーの方を見ると背中に大きな傷跡があった。
ξ;゚⊿゚)ξ「背中大丈夫!?」
川 ゚ -゚)「これか? 故郷が襲われた時にな
……ツン、君は魔物が憎いかい?」
クーに問われ、ツンはためらいなく首を縦に振る。
その返答を見ると目を閉じて言った。
川 - -)「この傷を与えた魔物は人の形をしていた
君は信頼していた人が魔物になった時
その時はためらいなく殺せるかい?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ひ、人は魔物にはならないわ」
ツンの答えを聞いてわずかに悲しそうにクーは微笑む。
そして小さく「そうだな」と言ったのだった。
183
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:15:56 ID:YHNyFybQ0
ドクオは図書室で本を読んでいた。
食事は豪華なのは分かったがいまいち味はわからなかった。
いくつか本を本棚から引き出して座席へ持っていく。
すると虚ろな目でマニュアルを読むブーンがいた。
いまいち王子らしくない王子だなとあきれつつ声をかけた。
('A`)「おーい、大丈夫か?」
( ´ω`)「中身同じことの繰り返しだおー
変化なくてつまらんお
ドクオは何借りてきたんだお?」
('A`)「瘴気についての本
あの黒い煙がお前らにとって本当に大丈夫か気になってな」
( ^ω^)「一応聖水は飲んだお?」
(;'A`)「だが聖水だけじゃダメな気がするんだよなぁ
時々だけど聖水が効果ないときがあるから」
ドクオはそう言うと借りてきた本の一節を示す。
そこには前線で瘴気に当てられた兵士の治療の絵があった。
小さく『聖水で8割程度は回復できる』と書かれていた。
ブーンはその文を読んでロマネスクの話を思い出す。
瘴気に当てられた勇者。
正気を失った勇者。
( ^ω^)「おじいちゃんに話聞くといいお
昔魔王と戦った時に瘴気を扱ってきたらしいお」
('A`)「うーん、もう少し考えてから聞く
あの姿なき声の正体にも近づけそうだし」
( ^ω^)(そう言えばあれの正体は幽霊じゃなかったらなんだお?)
('A`)(実体がないという言い方から幽霊っぽくはある
だけどあれは幽霊じゃない
精霊は実体はあるが見えないだけ)
(;'A`)(よくわからない他の種族として思い当たるのは
後二つだけ……なんだが宗教的に
偉い人に聞くなら確証が欲しいよな)
184
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:18:29 ID:YHNyFybQ0
その時外からかすかに鐘の音が響いてくる。
ブーンにはその鐘の意味が消灯時間だと分かった。
( ^ω^)「消灯時間だからもう寝るといいお」
('A`)「消灯時間なんてあるのか」
( ^ω^)「でもみんな起きているお」
('A`)「消灯時間の意味とは」
ξ゚⊿゚)ξ「二人とも探したわよ!」
そう会話しているとツンががらりと乱暴に図書室の扉を開ける。
鎧を身にまとっていないラフなワンピースに近い姿だった。
ブーンはのんびりと振り返りながら言った。
( ^ω^)「図書室ではお静かにだお」
ξ゚⊿゚)ξ「それどころじゃないわよ!
今日すごい量の流れ星よ!」
(*^ω^)「マジかお!? 行くお!!」
そう言うと勢い良く立ち上がる。
何冊かの本が机から落ちる。
しかしブーンは気にせず走って行った。
('A`)「おい、落としたぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「もう行っちゃったわよ
あんたも早くしなさい!!」
機嫌良くせかすツンにため息をつく。
落とした本を拾い、ひとまず机の上に置くと図書室を後にしたのだった。
185
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:21:42 ID:YHNyFybQ0
城の屋上にはこの城にいる人間がほぼ全員集まっていた。
ほとんどの人物が上を見上げている。
川*゚ -゚)「この城の人全員来たか」
( ∵)「そのようですね」
( ^ω^)「兵士さん! 兵士さんも来ていたのかお?」
( ∵)「あなた方を見て旅がしたくなりましてね」
( ゚∀゚ )「そんなことより空をご覧ください!
あひゃひゃ! すげぇ!!」
从 ゚∀从「アニキッ! また落ちたぞ!!」
_
( ゚∀゚)o彡゜「オッパイ! オッパイ!! オッパイ!!!」
从;゚∀从「意味わからんぞ」
_
( ゚∀゚)o彡゜「『オれの妹に幸せいッパイ』の略だ!」
爪'ー`)y‐「お宝お宝お宝」
( ^ω^)「僕もお願いするお
えっと父さん父さん父さん!」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの目的の一つそれだったわね
じゃぁ私は……殲滅殲滅殲滅」
川;゚ -゚)「ツン、それは怖いぞ」
( ФωФ)「討伐成功討伐成功とうばちゅっ
舌を噛んでしまった……」
('A`)「皆案外願い事あるんだな……」
川*゚ -゚)「……目的目的目的」
( ^ω^)「そう言えばクーの目的ってなんだお?」
クーの願い事を聞いたことで何気なく発せられたブーンの問いに彼女は一瞬黙る。
ツンとドクオは突然の彼の問いを驚いたように見ていた。
クーはわずかに考えた後答えた。
川*゚ -゚)「まず最初に、私の魔法は悪魔と契約した魔法だ」
186
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:27:59 ID:YHNyFybQ0
(;^ω^)(あっさり言いおったおー!!)
川*゚ -゚)「ただし、悪魔との再会まで済ませている」
ξ゚⊿゚)ξ「だからあんなに強いのね」
ツンが驚きつつも安心したように言った。
クーはその言葉に頷く。
川*゚ -゚)「再会した時、その悪魔はとても弱っていた
聞いた話によれば悪魔にも集会があるらしい」
(;'A`)「話の腰を折るようで悪いが悪魔がいまいち分からん
幽霊とかと何が違うんだ?」
( ^ω^)「悪魔は神とは反する種属の総称だお
幽霊は僕らが死んだら生じるものだお」
川*゚ -゚)「要するに悪魔は生きているか死んでいるかで言ったら生きている」
川;゚ -゚)「そしてある一定の強さを持つ悪魔は時々集会を行うらしい
その時魔王に襲撃された」
ξ゚⊿゚)ξ「魔王……」
川*゚ -゚)「魔王はそこにいた悪魔の多くを食らったらしい
私と契約した悪魔は襲撃から逃れた
だが無傷ではなかった」
川*- -)「私が見つけた時、彼は弱っていた」
彼ら4人はわずかに沈黙する。
周りでは降り続ける星に喜びを上げる声が響いている。
川*゚ -゚)「だから私は、その悪魔を宿すことにした」
( ^ω^)「あの魔力の量はそういうわけかお」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
ツンが不思議そうな顔をして首をかしげる。
ブーンはあまりツンが魔法に詳しくないことをその様子を見て思い出した。
187
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:32:12 ID:YHNyFybQ0
( ^ω^)「宿すとその悪魔の魔力も使えるんだお
これは精霊と神様でも共通しているんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃぁ皆宿せばいいのに」
( ^ω^)「そういうわけにはいかないお
神様は何となくわかるおね」
ξ-⊿-)ξ「フフン、大勢と契約しているからでしょ?
一人を特別扱いできないっていうのはわかるわ
でも精霊はたくさんいるはずよ」
( ^ω^)「でも精霊の場合は魔法の使い分けのために
多くの場合一人が大勢の精霊と契約しているんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そう言えば昔父様言ってたわ
『精霊の管理大変』って
なんか一人宿していたという話だけど」
( ^ω^)「その一人がよっぽど強くない限り
宿すと他の精霊は嫉妬して離れるお」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほどね、悪魔はどうなの?」
川*゚ -゚)「悪魔は本来倒す相手だからな
しかもプライドが高いのが多い
今回のように弱ってないと大抵は宿ってはくれない」
('A`)「そういうもんなのか」
ξ゚⊿゚)ξ「魔法って興味深いわねぇ」
ツンもしっかり理解したようだった。
そのことを確認するとブーンはクーに続きを促した。
川*゚ -゚)「悪魔は助けた私を認めてくれた
おかげで死の呪いからは逃れられた」
川;゚ -゚)「だが魔王は多くの悪魔を取り込んだままだ
今のままでは魔王の魔力は手につかなくなるだろう」
クーの言葉に他の三人は頷いた。
188
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:35:41 ID:YHNyFybQ0
クーは軽く咳払いをする。
そして他の3人を見つつ言葉を発した。
川*゚ -゚)「私の目的は悪魔たちの魔王からの解放
それを達成すれば魔王の力も削げるはずだ
あともう一つあるが……」
ξ゚⊿゚)ξ「にしてもクー良くしゃべるわね」
ツンが何気なく感じたことを声にする。
クーはその言葉を聞いて不思議そうな顔をして手に持った瓶に入った液体を示す。
川*゚ -゚)「そうか? 何もやってないぞ?
風呂あがりにこの水飲んだくらいだが」
(;'A`)「……これ酒だ!」
川*゚ -゚)「なに!? 私が酔っているように見えるか!?」
ドクオの言葉にすかさず反論する。
ブーンはわずかに考えた後自分の回答を示す。
( ^ω^)「見えないけどなんか変だお」
('A`)「二日酔いじゃないから
回復呪文効かないよなぁ」
川*゚ -゚)「言っておくが酔っぱらっていても
貴様ら以外にこんなこと言わんぞ」
川*゚ー゚)「なんてったって一緒にドラゴン倒した仲だからな!」
かすかに笑いながら楽しそうに言葉を紡ぐ。
空からは相変わらず星が降り続けていた。
189
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:39:45 ID:YHNyFybQ0
その時ジョルジュがクーの持つビンを見て大きな声を上げた。
_
( ゚∀゚)「あったぜ俺の酒!」
( ^ω^)「お前のかお」
(;∵)「クーさんあのお酒飲んだんですか? あの度数の高い?」
ビコーズが呆れたように言葉を発する。
そのことを気にも留めずジョルジュは酒を取り返そうとする。
しかしクーは持ったまま警戒して離れる。
水と認識している酒を守ろうとするクー。
酒を取り戻したいジョルジュの攻防をのんびり笑いながら眺める。
※クーはうっかり飲んでしまいましたが、未成年はお酒飲んではいけません。
その時ブーンは感じた。
クーが悪魔との契約をカミングアウトしたこのノリなら聞けると。
( ^ω^)「そう言えばドクオは白魔法使うのに
魔法について知らないお?」
('A`)「俺の契約先はさっきの『宿す』がないからな
魔力は頼めば微妙に供給してくれるしまったく知らなかった」
( ^ω^)「ふむ、そうなのかお
で、契約先はどこだお?」
('A`)「……悲鳴あげるなよ?」
わずかに考え、空を見上げた後ドクオはそう言った。
その言葉にブーンは嫌な予感を感じる。
しかしここまで聞いてしまったら止まれない。
首をブーンは縦に振る。
いつの間にかに聞いていたツンも頷いていた。
190
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:43:19 ID:YHNyFybQ0
('A`)「俺の契約先はいわゆる幽霊です」
(;^ω^)「え」
('A`)「おかげで幽霊の類はばっちり見える
あのドラゴンとの戦いとか
ドラゴンの近くに恨みがましい目をしたのがたくさんいた」
(;^ω^)「」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃぁ守護霊みたいな幽霊とか見えるの?」
('A`)「もちろん、お前らの近くというか背後にも居る
そのおかげで変装とかは俺に意味ない、背後のやつらは変わらんからな」
(; ω )「」
('A`)「この契約は守護霊がついてないと治しにくいのが欠点かな
だがそのおかげでちょっと遠距離でも回復できる」
m9('A`)「お前の後ろにもいるぞ!」
Σ( ω )
('A`)「と言っても居たからって何をするわけではない
幽霊は基本そこにいるだけだ」
川*゚ -゚)「おい、そこ何をしている
ブーンが座ったまま寝ているぞ」
クーの言葉でドクオはブーンが気絶していることに気付く。
ブーンには結局この後の記憶がないのだった。
彼らの騒ぎなどつゆ知らず、この間も星は降り続けていた。
それは彼らの門出を祝っているようにも
彼らの行く先を暗示しているようにも見えた。
191
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:46:49 ID:YHNyFybQ0
( ^ω^)「……思い出すと昨日は失礼やらかしたお
突然聞いたり話聞いて気絶したり」
ブーンは日が高くなってから自室のベッドで起き上がる。
そして昨晩のことを思い出しつつ反省する。
流れ星でテンション上がりすぎたかなと考えた。
そして軽く頭を抱えつつ着替える。
いつでも旅立てるように目立たない格好である。
王の間の方へ向かおうとするとツンたちがある絵の前に立っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ブーン! この絵ってブーンの家族?」
( ^ω^)「そうだお
父ちゃんと母ちゃんの絵だお」
川 ゚ -゚)「ふむ、口元と目元はそれぞれ受け継いだか」
( ^ω^)「そうだお、父ちゃんは剣騎士だったらしいお
僕は父ちゃんぐらいの剣の使い手になりたいんだお!」
('A`)「……会えるといいな」
(;^ω^)「あ、そうだクーとドクオ昨日はすまんかったお」
ブーンは慌てて謝る。
クーはその言葉に顔をうつむかせ「しゃべりすぎた」と言った。
ドクオは絵の方をぼんやり見つつ「驚かせすぎた、悪い」と言った。
ブーンも絵の方へ視線を向ける。
( ^ν^)(*‘ω‘ *)
そこには変わらない両親の眼差しがあった。
きっと会える、ブーンはそんな無邪気な希望を持つのだった。
そこへハインリッヒが彼らを見つけ、駆け寄ってくる。
そして要件を手短に伝える。
从 ゚∀从「皆さん、王様がお呼びです」
192
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:50:49 ID:YHNyFybQ0
( ФωФ)「さて、操縦法は覚えたかい?」
(;^ω^)「ま、まぁ何とかだお」
( ФωФ)「ふむ、そうか
実はな装備が完成したんだ、着てみてはくれないか?」
ロマネスクがそういうとそれぞれに装備が手渡される。
ブーンに渡されたのは今までより金属に覆われた銀の甲冑だった。
重さは不思議と感じない。
また、兜も存在しなかった。
( ФωФ)「魔法で重さを減らしておるから速度は減らんぞ
ただ、馬のおかげで兜の分の金属までは集まらんかったがな」
ツンに渡されたのはレザージャケット、グローブ、ブーツだった。
一揃いのそれらを着ると一体感を感じる。
またポケットが多く存在し麻痺毒などの薬を入れる場所にも困らなかった。
( ФωФ)「防御力は下がった
だがそれ以上の機動力と使いやすさを追求したつもりだ」
ドクオに渡されたのは白い白衣のようなロングコートだった。
持ち上げてみると案外軽い。
( ФωФ)「その生地には魔力遮断の糸が使われている
相手が魔法攻撃をしても耐えるぞ、あと丈夫な生地だから斬撃には強い」
クーに渡されたのは黒いマントとワンピースだった。
マントの方が若干生地は厚く、固い。
( ФωФ)「服は穴が開いていたからついでだ
マントは丈夫で魔力がこもる布地を使っている
魔力が増強されるから更に攻撃力上がるぞ」
各々装備すると軽く動いて動きやすさなどを確認する。
ドクオとクーに関してはただの私服だった時よりよっぽど旅にふさわしかった。
193
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:53:38 ID:YHNyFybQ0
装備と食料品などを整え、各々町での買い出しも済ませる。
そしてその荷物などを積み込んだ馬車は城の前に置かれていた。
その馬車の前でハインリッヒは別れを惜しんでいた。
一晩仲よくしたツンとクーも寂しそうにしていた。
ξ゚⊿゚)ξ「ハイン、昨日は楽しいお話ありがとう」
从 ゚∀从「この城男ばっかで寂しいからさ、また来てくれよな」
川 ゚ -゚)「面白い話を仕入れておこう」
ξ*゚⊿゚)ξ「ハインのいい話期待しているわ」
从*゚∀从「いい報告ができるよう頑張るぜ……あ、ます」
川 ゚ -゚)「気にしなくていいんだぞ? ただの修道女Cだ」
ξ゚ー゚)ξ「私の身分も元だしね」
その横でブーンがマニュアル片手に機械馬の動作点検をしていた。
マニュアルを見て問題がないことを確認し終える。
( ^ω^)「たぶん大丈夫だおー」
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ行きましょう」
('A`)(あれ? 兵士さんやジョルジュさんがいない?)
川 ゚ -゚)「どうした、置いていくぞ?」
(;'A`)「あ、待ってくれ」
ドクオは不思議そうにあたりを見渡していたがその言葉で慌てて乗り込む。
しばらく時間が経つとブーンが運転席に乗り込み、動き出す。
ゆっくり加速するとツンの故郷の方角へと向かって駆け出す。
その馬車はあっという間に小さくなり、見えなくなったのだった。
194
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 01:55:48 ID:YHNyFybQ0
( ФωФ)「今だ! ジョルジュ達追うである!!」
ロマネスクがそう叫ぶと一頭の機械馬が引く馬車が走り出す。
そしてブーンたちを追いかけて消えていった。
ハインリッヒは見送った後小さく呟く。
从 ゚∀从「兄貴たち頑張れよ……」
ロマネスクは一息つくと城の方を見る。
そこには慌てて出てきたアヒャの姿があった。
アヒャは困ったようにロマネスクにあるものを渡す。
(;ФωФ)「し、しまったである!!」
アヒャから受け取ったものを見てロマネスクが叫ぶ。
叫び声に驚いてハインリッヒは振り返る。
その手には四つの防護マスクがあった。
(;ФωФ)「瘴気用の防護マスクを渡し忘れたのである」
从;゚∀从「王様何やってんですかー!?」
ハインリッヒの叫びが響いたのだった。
195
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 02:04:04 ID:YHNyFybQ0
ブーンたちは今、運転席にいた。
運転席は一番前が見え、なおかつ4人とも入れるスペースがあった。
操作に慣れる目的もあり、代わる代わる運転をしていく。
ひとまず一周して今はブーンが運転していた。
( ^ω^)「まずはツンの故郷へ向かうお
道案内頼むおー」
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ、えっとまずはこのまま」
(=゚ω゚)ノ「ぃょぅ! おまえら!!」
突然そんな声と共に目の前にトンボの羽の妖精が下りてくる。
とっさに全員武器を構えた。
妖精はその反応に多少ビビりながらも続ける。
(=゚ω゚)ノ「なんだょぅ、せっかく俺が出てきてやったのに
俺に敵意はないょぅ」
ξ#゚⊿゚)ξ「うるさい魔物!」
(;゚ω゚)ノ「魔物じゃなくて妖精だょぅ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「妖精なんて瘴気浴びた精霊じゃない!
理性を持っていようがいまいが魔物は魔物よ!」
( ^ω^)「……ツン落ち着くお
理性があるというのならなんでここにいるか言うお」
ツンのあまりの怒りの様子に他のメンバーは若干ビビる。
そのおかげで冷静になったブーンが尋ねた。
196
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 02:07:17 ID:YHNyFybQ0
妖精はブーンが冷静になったことに安堵したように息をついた。
(=゚ω゚)ノ「……やっと話が通じたかょぅ
俺はお前らを導く妖精だょぅ」
川 ゚ -゚)「導く? どういう事だ?」
(=゚ω゚)ノ「次行くべき場所とかを示すのが仕事なんだょぅ」
( ^ω^)「なら次はどこ行くべきだお?」
ブーンの問いに妖精は腕を組む。
そしてピーンと来たように言った。
(=゚ω゚)ノ「このまま彼女の故郷でいいんだょぅ」
('A`)「なんだ、良かった」
ξ゚⊿゚)ξ「……なら出てくる必要ないのに」
ツンは武器と怒りをおさめたが敵意を隠そうとはしない。
妖精はしょんぼりとうなだれる。
その様子を流石に憐れんだブーンが声をかけた。
(;^ω^)「えっと、君はどうしたいんだお?
旅に同行したいのかお?」
(=゚ω゚)ノ「そうだょぅ! たのむょぅ!!」
妖精は手を合わせて懇願する。
その妖精の頼みに四人は顔を見合わせる。
お互いの意見を聞きたそうな表情だった。
妖精は彼らの返事を不安そうな面持ちでひたすら待っていた。
197
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 02:10:58 ID:YHNyFybQ0
しばらく経ってからクーが口火を切った。
川 ゚ -゚)「私はその翅で部屋に入ってこなければいい」
('A`)「妖精は敵意があるってあまり聞かないから
俺は別にいいと思う」
まず魔物に対して敵意をそれほど持っていない二人が意見を言った。
ブーンは少し考えた後に言う。
( ^ω^)「怪しい部分があったら放り出すお」
(=゚ω゚)ノ「分かったょぅ」
妖精は伺うようにツンの方を見る。
ツンはわざとらしく大きくため息をつくと言った。
ξ゚⊿゚)ξ「皆がそう言うなら……勝手にしなさい」
(=゚ω゚)ノ「ありがとうだょぅ!」
ツンは機嫌が悪そうに乱暴に扉を開け、運転室から出ると部屋へ戻る。
ブーンはそれを見て少し困ったように言った。
( ^ω^)「できる限り彼女の前には姿を現さないでほしいお
えっと……妖精さん」
(=゚ω゚)ノ「俺はぃょぅだょぅ、わかったょぅ」
こうして移動手段の機械馬とやけに広い馬車。
ちょっと変わった新しいメンバーを加えた一行は進むのであった。
次なる目的地、ツンの故郷へと。
198
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 02:16:14 ID:YHNyFybQ0
爪'ー`)「まったく、なんで俺がこんなことを」
フォックスが文句を言いながら機械馬の手綱を握る。
その後ろでビコーズが呆れたように言った。
( ∵)「サイドニアの治安組織に突き出さないだけましですよ」
爪'ー`)「……ま、そうだな」
ジョルジュはビコーズがフォックスをサイドニアを出る直前に捕まえてきたときのことを思い出す。
ビコーズは「手紙を盗んだ犯人」とフォックスのことを言った。
フォックスは諦めたように肯定し、サイドニアの治安組織だけは勘弁してくれと懇願した。
ジョルジュはそれを聞いて許す条件を一つ出した。
それはすなわち、ブーンたちのアシスト隊に入ること。
フォックスもまたブーンたちが何をなすのか気になっていた。
また、厳しいことで有名なサイドニアの治安組織に捕まりたくはなかった。
そのため即座に了承したのだった。
爪'ー`)「あーぁ、隙を見てカギ盗ろうと思っていたのに
動力源じゃ無理だな」
_
( ゚∀゚)「ま、あきらめなって」
( ∵)「……ジョルジュさん、なんでこいつ引き入れたんですか?」
ビコーズが不満そうに声を上げた。
ジョルジュは少し考え込んだ後に言った。
_
( ゚∀゚)「こいつは手紙読んだ時『無理だ』とは思わなかった
勘だったらしいがな」
_
( ^∀^)「俺らと一緒だ!」
ビコーズはジョルジュの言葉にため息をついてしまう。
しかしその口元はわずかに笑っていたのだった。
199
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 02:17:34 ID:YHNyFybQ0
〜第0章 反撃の始まり〜
了
200
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 02:28:18 ID:YHNyFybQ0
_
从 ゚∀゚从 まずかつらをかぶります。
从∀゚ 从 かつらの前髪を降ろしたりして眉毛を隠します。
从∀゚ 从 妹からは『似ててキモイからやめろ』って言われた。
第0章終わりです、はい、やっと終わりです。
正直乙が多くて内心ビビったりしていますが力となっています。
時々考えている話で満足させられるか不安になります。
もちろん完結させて見せます。
ちなみに前回のあれはゼルダです、正解です。
前回までと比べペースが遅くなったと思ったそこのあなた、正解です。
ですがしっかり書き溜めはしています。
ご安心をしてください。
ブーンたちの馬車はでかいキャンピングカーをイメージしていただけたら楽かもしれません。
それではおやすみなさい。
201
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 02:33:02 ID:Tfo/VGAY0
おつ
202
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 08:14:28 ID:K0brxPxo0
女装ワロタ乙
203
:
名も無きAAのようです
:2014/11/03(月) 22:10:09 ID:w35rlA720
乙、いいねいいね
204
:
名も無きAAのようです
:2014/11/27(木) 14:59:17 ID:1c4syGhg0
おつ!
205
:
名も無きAAのようです
:2014/11/29(土) 21:49:03 ID:Yd37TuN60
アシスト隊が気になるww
おつ!
206
:
名も無きAAのようです
:2015/02/18(水) 03:48:29 ID:Tmojq0r20
まだー?
207
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:24:12 ID:UFLVQn1o0
( ^ω^)「時間的には朝だけど瘴気しか見えないお」
ブーンが硬いベッドから起き上がると自室の窓から外を眺めつつ呟く。
この窓は一応開くらしいが使う機会はあるのだろうかと考える。
瘴気の向こうの低い位置に明るい物が見えたような気がした。
( ‐ω‐)「案外馬車の旅は快適だお
まさか馬車のトップスピードなら魔物がついてこれないとは」
そう呟き遠くの空を見る。
鳥の魔物の群れの影が見えた。
彼は瘴気のない空を恋しく感じた。
208
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:26:54 ID:UFLVQn1o0
第1章
第7話 馬車の旅、好きと嫌い
209
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:29:39 ID:UFLVQn1o0
ブーンが瘴気のない空に思いをはせていたとしても空腹は感じる。
その欲求に従い、フラフラと食堂へ向かった。
おやつぐらいないかなと期待しての行動だった。
(=゚ω゚)ノ「何か用かょぅ!」
普段は操縦部屋にいる妖精が食料庫の前で陣取っていた。
ブーンは顔をしかめつつ聞く。
( ^ω^)「なんでここにいるお?」
(=゚ω゚)ノ「……運転の担当がだれか考えてみろょぅ」
そう言われてブーンは納得の声を上げる。
そして少し考えてから言った。
( ^ω^)「あそこにツンがいるのは分かったお
でもなんでこの場所にいるんだお?」
(=゚ω゚)ノ「クーに頼まれたんだょぅ」
川=゚ω゚)ノ「『居場所がないのか?
なら勝手に食べる奴が居ないよう見張れ』って」
( ^ω^)「……そうかお」
(=゚ω゚)ノ「改めて何の用だょぅ
何か食べたいなら今日の食堂担当のクーに頼むんだょぅ」
(;^ω^)「……なぜわかったお?」
(=゚ω゚)ノ「食堂に入ってきて
食料庫に直行するやつの目的なんて一つだょぅ」
ぃょぅの単純明快な答えにブーンは沈黙する。
そして苦笑いを浮かべつつ食堂を出たのだった。
(=゚ω゚)ノ「……図星かょぅ」
210
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:32:42 ID:UFLVQn1o0
クーはノックの音で魔道書から顔をあげる。
そして「用なら入れ」という声を机の前で腰かけたまま発した。
( ^ω^)「失礼しますお」
川 ゚ -゚)「ブーンか、何の用だ?」
( ^ω^)「何か食べ物が欲しいなと……
何を読んでいるんだお?」
ブーンに問われ、クーは手に持っていた魔道書を見せる。
しかしそれを見せられてもブーンは不思議そうな顔をした。
( ^ω^)「黒魔法だと呪文は命令じゃなかったかお?」
ブーンの言う通りこの世界での黒魔法はほとんど口頭での命令である。
魔力の許容量以内で達成可能な命令ならば魔法として発動できる。
仮に許容量をオーバーしてしまう命令を行ったら倒れてしまうといった具合だった。
ドラゴンとの戦いで動けなくなったのは魔力消費量の蓄積で許容量を軽く超えてしまったためである。
意識を失うほど超えてはいなかったのは幸いであった。
川 ゚ -゚)「普通の魔法ならばそれで良い
だが強い魔法を使おうと思ったら細かい命令が必要でな
詠唱に時間がかかる」
そこまで言うとブーンに魔道書を見せた。
211
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:35:39 ID:UFLVQn1o0
川 ゚ -゚)「そこでドクオに白魔法みたいに黒魔法も短縮できないか訊いた」
( ^ω^)「ふむふむ、それで?」
川 ゚ -゚)「単純なものなら何度も使えば発動が速くなるらしい
それ以外だと昔『魔方陣』なる物が研究されていたと教えてくれた」
そう言うと持っていた魔道書のあるページを開く。
そこには不思議な模様が描かれていた。
大きな円の中に少し小さな円があり、その間には文字が描かれていた。
そして小さな円の中には二つの三角形でできた星があった。
川 ゚ -゚)「どうやら発動した魔法を封じ込めるというイメージらしい
この魔方陣を使えばあらかじめ封じた強い魔法が使える。
そして面白いことにトラップが可能になる」
( ^ω^)「踏んだら発動とかかお?」
川 ゚ -゚)「そうだ、トラップならうまいこと隠さなくてはいけないが
トラップでなくても呪文を聞かれてとっさにかわされることが無くなる
それにこの呪文という名の命令が無いと少し楽だしな」
( ‐ω‐)「うーんやっぱり魔法は奥が深いお」
ブーンはとても楽しそうにクーの魔方陣の意味などの説明を聞く。
その様子があまりに楽しそうなのでクーは尋ねた。
川 ゚ -゚)「魔法は好きなのか?」
( ^ω^)「才能はないけど大好きだお
下手したらごはんと同じくらい好きだお」
川 ゚ -゚)「そうか……ブーン安心しろ」
川 ゚ー゚)「魔法は40から使えるようになることもある」
( ^ω^)「本当かお!?」
ブーンはクーの言葉に嬉しそうに声のトーンを上げて返したのだった。
212
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:40:32 ID:UFLVQn1o0
ブーンはクーから魔方陣の理論について聞き終わると部屋を後にする。
結論として、彼の興味とは裏腹に彼女の話の半分も理解できなかった。
しかし理解できた話で呪文より細かいこともできるという話には驚かされたのだった。
(;^ω^)「そう言えば食べ物頼み忘れたお」
そう呟き戻ろうかと思案する。
しかし窓から外を見ると光が高い位置にあり、もうすぐ昼食だと分かる。
もう少し誰かと会話して時間をつぶせば昼ごはんと考えた。
その時食堂でぼんやりとしているドクオが目に入った。
彼が見ている先をできる限り見ないようにしつつ尋ねる。
( ^ω^)「……居るのかお?」
(;'A`)「いちいち俺が宙を見ていたら不安に思うなよ
居ないから安心しろ」
そう言うと意識するのをやめ、安心したように息をつく。
それを見てドクオは不思議そうに尋ねた。
('A`)「なんで魔物や精霊は恐れず幽霊は恐れるんだ?
あいつらはただそこにいるだけだぞ」
( ^ω^)「うーん……たぶん分からないからだお
精霊や魔物は悪戯とか攻撃が目的だお
でも何もやってこずにただ居るなんて不気味だお?」
('A`)「あー、確かに
何時もせず近くに居るだけの人がいたら怖いな」
ドクオはブーンの言葉に納得したようにうなずく。
その様子を見て付け加えるように言った。
( ^ω^)「あと魔物は剣で殺せるお
精霊は見える人には叩かれたりしているお
幽霊にそれはできるお?」
('A`)「普通魔力使えば話せはするがそれはできんな」
ドクオの言葉にブーンは顔を若干蒼くさせた。
213
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:44:38 ID:UFLVQn1o0
(;^ω^)「やっぱり倒せないのかお……」
('A`)「殴れないから怖いという感じか」
ドクオはどこか納得した様子で呟いた。
その言葉にブーンは頷く。
('A`)「まぁ俺も幽霊慣れているしそんなに注視することは無い
だからぼんやり宙を見てても安心してくれ」
( ´ω`)「なんかすまんお、でもこればっかりは怖いんだお」
('A`)「じゃぁおまえに安心させる言葉を一つ
この中には俺らの守護霊的なもの以外の霊はいない」
その言葉にしおれたブーンの顔に覇気が戻る。
安心したようでいつもの表情に戻るとほっとしたように言った。
( ^ω^)「それは良かったお」
('A`)「守護霊的なのは平気なんだな」
( ^ω^)「よくわからんけど
僕がドクオの回復の恩恵得られるのは
その人がいるからだお」
( ‐ω‐)「それに『守護』ってついているからには
僕を守ってくれているお
感謝する謂れはあっても恐れる謂れはないお」
('A`)「……俺がいるって言った時」
(;^ω^)「あ……あれは言い方にビビっただけだお
それにしてもお腹へったお」
ブーンはそう言うと立ち上がる。
そしてクーのところにご飯の催促へ行ったのだった。
( ^ω^)
好きなもの:食事、魔法
嫌いなもの:苦いもの、幽霊
214
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:51:41 ID:UFLVQn1o0
ツンは真顔のまま鼻歌を歌い、手綱を握る。
魔物に落とされた街とは言え今向かっている先は故郷だ。
何が残っているか楽しみではある。
その一方で何もなかったらどうしようと不安でもあった。
ξ゚⊿゚)ξ「地図だと今はここら辺で
私の町はここだから……少し右かしら」
地図と羅針盤を見ながらつぶやく。
周りに見えるのは瘴気の霧と廃墟だけだった。
そのため地図に記された街などはあまり参考にできない。
( ^ω^)「ツーン! ご飯運んできたお!」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ありがとう」
勢いよくブーンが手に皿を乗せて操縦室に入ってきた。
ツンはそんな彼に対し素直にお礼を言う。
昔、父に「精霊は素直じゃないと見えない」と言われたため人に対し素直になろうとしていた。
だが、今も昔見えた精霊の姿は見えなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……」
( ^ω^)「どうかしたのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「精霊見たいなって」
ブーンはツンの言葉を聞きつつ食事の乗った皿を渡す。
メニューはスパゲッティである。
野菜などがバラバラな大きさで切られて入っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「クーの作る料理はなんというか豪快ね」
(;^ω^)「厨房覗いたら魔法で焼いたり切ったりしていたお」
ξ;゚⊿゚)ξ「なるほど、料理当番二順目の時天井焦げていたのはそれが理由ね」
しかし味はしっかりとしておいしい。
ツンはブーンに運転を任せるとそれを食べ始めた。
215
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 22:56:38 ID:UFLVQn1o0
( ^ω^)「ツンは精霊に会いたいのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「小さいころは見えたからね
お父様がすごい精霊使っていたのが印象的なのよ」
( ^ω^)「そう言えば宿していたって言っていたおね」
ブーンは運転しながら会話をする。
ツンはスパゲッティをフォークに巻きつけながら言った。
ξ゚⊿゚)ξ「昔突然見えなくなって、お父様に相談したら言われたの
『精霊は素直じゃないと見れない』って」
( ^ω^)「素直なだけで見えたら僕も見れるお」
ξ゚⊿゚)ξ「確かにね、性格以外の要因もあるのかしら」
( ^ω^)「うーん……ツンは精霊のことは好きだおね」
ξ゚ー゚)ξ「うん、魔法とかは使おうとは思わなかった
でもきれいな花とかで遊ぶ精霊を見ているのが好きだった」
ξ゚⊿゚)ξ「だからこそまた精霊に会いたいんだけどね」
最後は少しさみしそうに言った。
ブーンは運転を続けつつ言った。
( ^ω^)「午後の運転は僕の担当だお
代わるからお皿を返したり頼むお」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、ありがとう」
( ^ω^)「それと、きっとまた会えるお! 精霊に!」
ブーンの言葉にツンは驚きの表情を漏らす。
ツンはそしてかすかに笑うと操縦部屋を出たのだった。
食堂にいたぃょぅは操縦室からツンが居なくなったことを確認する。
すると定位置である操縦部屋の中へ戻っていった。
ツンはそれをできる限り見ないようにしたのだった。
216
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:12:05 ID:UFLVQn1o0
('A`)「お前ら同じ船の中なのに空気悪い」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何よいきなり」
食堂で食べ終わったにもかかわらずぼんやりとしていたドクオはそう声をかける。
ツンはそれに対し少したじろぎ、考えると言った。
ξ゚⊿゚)ξ「仕方ないじゃない
あれは魔物よ……私の敵よ」
('A`)「敵意はないから別にいいじゃないか……」
ξ゚⊿゚)ξ「敵意があってもなくても魔物は魔物なの」
似たような問答を少し繰り返した後軽くため息をつく。
そしてらちが明かないと判断したのか空気を換えるように質問をした。
('A`)「お前の魔物嫌いは分かった
それ以外に苦手なものとかあるのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「うーん、幽霊は何もしないから怖くないし
虫だって故郷失ってから山の中だったから平気」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっと、あれ?
憎しみ強すぎて忘れちゃった?
何かすっごい怖いことが……」
ツンは慌てて答えを考える。
その様子にドクオは「そこまで考えなくても」と呟く。
そしてツンはひらめいたように言った。
ξ゚⊿゚)ξ「分かった! 私が苦手なものは毒よ!
格闘家の里の時以来毒調合してないもの」
(;'A`)「あーあの時遅くてすまんな」
ドクオは若干申し訳なさそうに言う。
ツンはそれに対して気にする風もなく返す。
ξ゚⊿゚)ξ「別にいいわよ、助けてくれたんだし」
217
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:16:14 ID:UFLVQn1o0
ドクオは二人を発見した時のことを思い出す。
('A`)「俺は矢が飛んできて気づいたから
お前自身が自分たちを救ったようなもんだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「え? 矢?」
('A`)「そう、お前の矢」
ξ;゚⊿゚)ξ(あの気絶する前、私は矢を放っていない
私が放った矢で気づいたならもう少し早くてもいい
と言うことは誰か別の人がいたのかしら?)
ツンはドクオの言葉で必死に考える。
しかしいくら思い出しても人の気配などなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(……情報が無いわね、このことは置いておくために話題を変えましょう)
ξ゚⊿゚)ξ「そう言えばあんたの魔法について知っておきたいんだけど
どこまでの距離なら回復してくれるとか」
(;'A`)「唐突に変わるな……範囲か?
他の白魔法と一緒で視認できるなら可だ
ただし俺の場合本人じゃなくても守護霊が見えれば治せる」
ξ;゚⊿゚)ξ「範囲すごい広いじゃない」
('A`)「ドラゴン戦で初めてやったけどな
だけどあれはダメだ、魔力が倍近くかかる」
ドクオはそう言うと手をひらひらとさせる。
そして「できる限りダメージ受けないでくれ」と言った。
ツンは少し考えた後に尋ねる。
ξ゚⊿゚)ξ「あの変な呪文は自分で考えたの?」
('A`)「……はい」
ドクオはツンの問いに消え入りそうな声を返した。
218
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:18:49 ID:UFLVQn1o0
('A`)「白魔法はそれ用の本に書き込んで契約主に効果や仕組みを覚えてもらう
神様とかと契約しているのはもう書き方が決まっているらしい
そしてその時に呪文も設定する」
ξ゚⊿゚)ξ「たくさん契約しているから揃えているのね」
('A`)「そうだな、おかげで『回復魔法Lv1』とか分かりやすい
俺みたいに個人で精霊とかと契約している場合はそう言うのが無い」
(;'A`)「書き方が公開されてないせいで皆独学だ
精霊は数があるから本とかにまとまっているが俺は本気の独学」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、使える魔法はどうやって増やすの?」
('A`)「経験を積めば覚えられる呪文の数が増える
だけど薬師みたいに切れた腕をくっつけたりする呪文は存在しない
だからお前らそんな致命傷を受けないように気をつけろよ?」
ツンはそれを聞いて少し考える。
そして顔をあげると言った。
ξ゚⊿゚)ξ+「前向きに検討いたします」
('A`)「それ考えないってことだろ」
ドクオの突込みにツンは軽く笑う。
そして「分かったわ」と言うと食堂を出て行ったのだった。
ξ゚⊿゚)ξ
好きなもの:精霊、買い物
嫌いなもの:魔物、毒
219
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:23:58 ID:UFLVQn1o0
黄昏時の日差しが霧の向こうにわずかに見える中、クーは一人部屋にいた。
そして自らのジュエリーボックスから石を取り出す。
それはイミテーションの宝石だった。
偽物とは言え、その輝きは本物以上である。
瘴気を通った夕日の赤い光を浴びてキラキラと輝く。
ξ゚⊿゚)ξ「クー? 入るわよ」
川 ゚ -゚)「ツンか、どうした?」
ξ゚⊿゚)ξ「今日のお風呂のことなんだけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「ってすごい量の宝石、魔法に使うの?」
川 ゚ -゚)「イミテーションだ、集めているのは趣味だ」
そう言うとツンに石を見せる。
光が乱反射して目がくらみそうになった。
ξ゚⊿゚)ξ「ずいぶんキラキラしているのねぇ」
川 ゚ -゚)「キレイだろ?
親が生きていた時分にはガラスのかけらを持って帰って怒られた」
ξ゚⊿゚)ξ「……親御さんは魔物に?」
川 ゚ -゚)「ただの事故だ、おかげで孤児院行き
その流れで修道女やっていた」
クーはそう言うとにやりと笑う。
そして「だから悪魔との契約に抵抗もなかった」とだけ言う。
ツンは小さく「へぇ」と声を上げた。
ξ゚⊿゚)ξ「私いまいち宗教が分からないのよね」
川 ゚ -゚)「親御さんは教えてくれなかったのか?」
ξ-⊿-)ξ「両親はどっちかと言うと精霊を信仰していたわ
親戚のおじさんは『祈る間があったら狩れ』っていう人だったし」
220
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:26:08 ID:UFLVQn1o0
川 ゚ -゚)「……すごいおじさんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「お世話になっていたホライゾン国も無宗教国だったしね」
川 ゚ -゚)「では教会について説明しよう
本部はホライゾン国よりずっと北の方にある
瘴気を超えた川の上流だな」
ξ゚⊿゚)ξ「そう言えばモララーさん船に乗ってきたわね」
川 ゚ -゚)「そして教会の人で偉いのは『6人長』と言うやつらだ
文字通り6人からなるらしい」
川;゚ -゚)「だが、私はアラマキ殿しかお見受けしたことが無い」
ξ゚⊿゚)ξ「アラマキ?」
川 ゚ -゚)「あの地区を管理しているという6人長の一人だ
称号は騎士長、そしてあのモララー殿は若かったが
聖騎士の称号はおそらくアラマキ殿の跡目だろう」
ξ゚⊿゚)ξ「何を信じているの?」
川 ゚ -゚)「神様だ……この世界と人を作った神らしい
そして悪魔と対立している種族らしい
彼と契約すると魔法が使える」
ξ゚⊿゚)ξ「らしいが多くてあやふやね」
クーの説明にツンがそう感想を漏らす。
その言葉にクーはかすかに笑みを漏らす。
川 ゚ー゚)「確かにあやふやだ
もしかしたら祈っている神様は
遠くから見て本物にそっくりなだけかもしれない」
川 ゚ -゚)「これのようにな
だが、偽物でも十分な人は十分なんだよ」
クーはそう言うとツンにイミテーションの宝石を示す。
その表情はどこか楽しげだった。
221
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:29:32 ID:UFLVQn1o0
川 ゚ -゚)「炎よ……なんだぃょぅか
てっきり虫かと思って燃やしかけたぞ」
(;゚ω゚)ノ「怖いこと言わないでくれょぅ」
夜の操縦部屋にクーは少しの間だけ運転を頼まれてやってきていた。
そして影から翅だけが見え、虫だとクーは思ったらしい。
深く息を吸って吐くと言った。
川 ゚ -゚)「すまないな、虫は苦手なんだ」
(=゚ω゚)ノ「なんでだょぅ?」
川 ゚ -゚)「昔は平気だった」
川;゚ -゚)「だがある時捕まえた蝶をまじまじと見たんだ
たくさん寄り集まった複眼、腹に生えた細かい毛
翅の鱗粉、足の節……とかな」
川 ゚ -゚)「そしたら気持ち悪くてだめになった」
(=゚ω゚)ノ「おぉう」
川 ゚ -゚)「他の虫なら大丈夫かと思って観察した
トンボ、ハエ、ムカデ、ダンゴ虫
ここら辺でこれ以上見たらだめだと気づいた」
川;゚ -゚)「だが、まじまじと見た所為か
夢の中で巨大な虫に襲われてな
それですっかり」
(=゚ω゚)ノ「なんというか、ご愁傷様だょぅ」
川 ゚ -゚)「好奇心猫をも殺すの意味を知ったよ」
クーはそう言うと困ったように笑った。
ぃょぅも苦笑いを浮かべる。
川 ゚ -゚)「そう言えばお前は魔物だったよな
聖水は大丈夫なのか?」
クーはふっと思いついたように尋ねた。
その手にはいつの間にかに無職透明な水の入った瓶があった。
222
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:32:45 ID:UFLVQn1o0
(=゚ω゚)ノ「聖水は精霊だった時は美味しく飲めたょぅ
でも最近は飲んでないょぅ」
川 ゚ -゚)「飲んでみてはくれないか?」
ぃょぅはそう言われて聖水に手を伸ばす。
そして何口か飲んだ後に言った。
(=゚ω゚)ノ「普通に美味しいょぅ」
川 ゚ -゚)「そうか、味は変わらないか
瘴気を聖水で払うから何かしらあると思ったんだが」
その言葉にもう一口と含んだ聖水を吹く。
そして焦った様子で尋ねる。
(;゚ω゚)ノ「さらりと試したのかょぅ!?」
川 ゚ -゚)「ついでに聖水処分だ
ちなみにほかのメンバーにも黒い煙の浄化と言って飲んでもらった」
(=゚ω゚)ノ「お前は?」
川 ゚ -゚)「悪魔を宿した身で神の水を飲めと?
ついでに言うと臭いだけでダメだ
聖水なんて大嫌いだ」
(=゚ω゚)ノ「影響しっかり出てるょぅ……元修道女だったんじゃないのかょぅ」
川 ゚ -゚)「煩いな、
ちなみに結果はブーンとツンがうまい、ドクオがまずいだった」
(=゚ω゚)ノ「神の性質じゃない魔法使うとまずいのかょぅ」
川 ゚ -゚)「かもしれないな」
クーはそう言うと羅針盤とにらめっこをしながら手綱を握る。
早く本来の当番こないかなと考えつつ。
川 ゚ -゚)
好きなもの:光り物、魔法開発
嫌いなもの:虫、聖水
223
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:36:14 ID:UFLVQn1o0
ドクオが操縦部屋に戻る。
そこには転寝しているぃょぅと地図を睨みつけるクーがいた。
('A`)「悪い、今戻った」
川 ゚ -゚)「む、待っていたぞ
まさかまだ食っていないとは思わなかった」
(;'A`)「あー、本読んでるとよくあるんだよな
飯忘れたり約束に遅れかけたり」
そう申し訳なさそうに言うと運転を代わる。
クーはその言葉を聞くと小さく「フム」と言った。
川 ゚ -゚)「勉強が好きなのか?」
('A`)「いや、白魔法の本じゃなくて普通の本
伝説まとめたやつとか小説とか」
川 ゚ -゚)「伝説で面白いものはあったか?」
クーの問いに手綱を離さず考える。
しばらくするとこう答えた。
('A`)「この世界の創世記かな」
川 ゚ -゚)「神話の神がこの世界を作ったという話か」
('A`)「いや、ある辺境の山間の村にだけ伝わる話だ
その話では神だけではなく
精霊、亡霊、悪魔も協力してこの世界を作ったらしい」
川 ゚ -゚)「……それは面白いな
だが、人間がいない」
('A`)「人間は全てを混ぜて作られた中間種らしい
だからすべての種族と契約できるんだとよ」
ドクオの言葉にクーは興味深そうに「ふむ」と声を出す。
224
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:47:54 ID:UFLVQn1o0
('A`)「興味があるなら貸すぞ?
俺の部屋の机の上だ」
川 ゚ -゚)「そうだな、寝る前に借りるとしよう」
クーはそう言うと操縦部屋を出ようとする。
そして気が付いたように尋ねる。
川 ゚ -゚)「ところでその神話における亡霊とはなんだ?
何の霊なんだ?」
('A`)「そんなの決まっている
他の種族の霊だ」
川 ゚ -゚)「では……悪魔の霊は見えるか?」
('A`)「……今のところは見えない
精霊の霊なら見たことある」
川 ゚ -゚)「ふむ、悪魔は死んでいないということなのか
では魔物はどうだ?」
('A`)「魔物は見たことないな」
クーはそれを聞いてひとまず興味が満たされたようだった。
何度もうなずく。
そして思い出したように言った。
川 ゚ -゚)「そう言えばぃょぅにとって聖水の味は変わらなかったらしいぞ
興味深い話の礼の情報だ」
('A`)「……マジか
瘴気に当てられたら瘴気を払える
聖水への耐性も変わると思ったんだが」
川 ゚ -゚)「面白い仮説だったがちがったな」
(#-ω-)ノ(飲まされたのはお前の所為かょぅ)
ぃょぅが密かにドクオに怒りを覚えたことは彼しか知らない。
クーは悪魔の霊がいないという話にどこか安心しつつ操縦部屋を出たのだった。
225
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:53:38 ID:UFLVQn1o0
ドクオは一人手綱を握っていた。
ぼんやり運転しつつ瘴気について考える。
仮説に過ぎなかった考えが頭をよぎる。
('A`)(もしかしたら瘴気は
聖水で払える何かと
逆の何かが混ざっているのかもしれん)
(;'A`)(だから聖水で助けられない人がいるんだな
村の奴ら大丈夫か?)
('A`)(時々瘴気に対して強い人がいるという
ただ個人差にすぎず、長い間活動していると人は弱る)
('A`)「そもそも聖水ってなんなのかね」
<_プー゚)フ『神の水じゃね? 俺あれ嫌い』
('A`)「成仏するからか?」
ドクオは自らの守護霊に対応する。
そして結果的にブーンに嘘をつくことになったかもなと感じた。
彼は旅に出始めてから魔力の消費無しで霊との会話が可能になっていた。
最近のことだったため忘れていたのだった。
何となくツンの故郷に向かっているということもあって里を思い出していた。
彼は一応故郷が好きではあった。
故郷の年下や同年代が心配でなければそもそも旅に出ていなかった。
子供がいないだけで村はあんなに静かにならない。
同年代の未成年もまた、多くが瘴気に倒れていた。
そのため若いほど瘴気に弱いと知っていた。
故郷のみんなが倒れた時彼は不思議だった。
何故他のみんなより弱い自分が平気なのだろう。
何故この里では普通な皆が倒れているのだろうと。
何となく里の他の人にもそう思われている気がした。
226
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:54:58 ID:u4DGbP8w0
待ってた! おっかえりいいい!
支援
227
:
名も無きAAのようです
:2015/02/20(金) 23:56:50 ID:UFLVQn1o0
彼は昔から体が小さく筋力もなかった。
それでも里にいるからには格闘家の訓練をしなくてはならない。
その結果避けることばかりうまくなった。
格闘家らしくないとこの時から孤立気味だった。
昔から魔力を使えば幽霊と話せた。
そのことを話したら気味悪がられた。
結果としてさらに孤立した。
この里では邪道だと知りつつ幽霊と契約し白魔法を学んだ。
真っ先に怪我した時の回復魔法。
他のみんなに追いつくため強化魔法を覚えた。
努力と白魔法の才能は認められた。
だが、この里での劣等感、孤独感は深まった。
このあたりから視線に込められた気持ちに気が付き始めた。
「なぜこの里から出ないのだろう?」と言う疑問を。
周辺に毒を使う魔物が出始めた。
そのため解毒魔法を覚えた。
里のみんなにはいつの間にか知られていた。
モララーにはいざという時に頼むと言われた。
その一方でますます疑問の眼が増えた気がした。
表立ったいじめはない。
だが、勘違いかもしれないが無意識にこめられる気持ちはわかる。
そのため瘴気が降ってきた辺りで家にこもり気味になった。
他の人は心配だったがそれ以上に視線を感じたくなかった。
敵意が無いのは守護霊が騒がないから分かる。
それでもつらかった。
本当は瘴気に倒れたかった。
故郷で普通の人でありたかった。
228
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:00:12 ID:fz4a7DJs0
旅に出て白魔法を普通に使うようになった。
そしたら魔力消費無しでいつの間にか幽霊と話せていた。
どの本にも消費無しで話せた例などは載っていない。
体格などのコンプレックスはまだましになった。
一応自分くらいの体格の人も世界には普通にいた。
それをプラスマイナスした結果、旅を始めてから普通から遠ざかったような気がした。
そんな遠ざかった自分が嫌だった。
旅の仲間も嫌いではない。
時々怖いことはあるが疑問の目を向けないのでありがたい。
ブーンも幽霊を怖がっているのでありドクオを怖がっているわけではない。
そしてそれぞれの目的も一応知っている。
そして自分の眼は一部の目的の行きつく先を知っていた。
('A`)(やになるなぁ)
彼はぎりぎりまで言わないでおこうと思っていた。
このことは頼まれもしていた。
ぼんやり運転しているうちに朝日が昇って来るのが分かった。
今日徹夜当番と知っていたためしっかり寝ていたため眠気は大丈夫である。
瘴気の中から手招きする無数の手が消えていくのが見えた。
この無数の手は夜だけ見ええた。
夜は意思のない霊もある程度動けるようになるためだと考えられた。
そのため瘴気にのまれた魂が出口を求めているのだろう。
そう結論づけていた。
('A`)「……嫌だな」
<_プー゚)フ『何がだ?』
('A`)「自分自身がだよ」
そう言うと大きなため息をついた。
229
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:05:06 ID:fz4a7DJs0
ドクオは守護霊が騒いでいないのを確認する。
彼は一回本気で自殺を考えたことがあった。
その時守護霊は敵意が彼に向いていると感じたらしい。
ものすごい騒ぎ立てたのだった。
彼はその時守護霊は自分自身のものも含めて自分に向けられた敵意に反応すると知った。
そのため守護霊を見れば敵意が向けられているか分かった。
今自分が自殺を本気で考えているかも。
('A`)「俺さ、この世界は好きだよ
好きなものたくさんあるし」
<_プー゚)フ『俺も?』
('A`)「比較的そうだな……だから時々思うよ」
(-A-)「俺がいない方が俺の好きな世界じゃないかって」
(=゚ω゚)ノ「何を一人でぶつぶつ言っているんだょぅ」
操縦部屋を寝床にしているぃょぅが起き上がり話しかけると守護霊は途端に黙り込む。
一応ドクオが下手に反応しないように話すのを自重しているのであった。
('A`)「……独り言」
(;゚ω゚)ノ「でかい独り言だょぅ」
('A`)「それより地図だとここだよな」
ドクオはそう言うと馬車を泊める。
そして操縦室の窓から瘴気の霧を見ると呟いた。
(;'A`)「……これを見せるのか」
そこは町などなかった。
そこには朽ちかけた廃墟だけがあったのだった。
('A`)
好きなもの:読書、故郷
嫌いなもの:敵意、自分
230
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:20:11 ID:fz4a7DJs0
_
( ゚∀゚)「妹からの手紙と小包届いたからちょっと見てきていいか?」
( ∵)「長い小包ですね……分かりました、運転しておきます」
ジョルジュが機械の鳥が届けてくれた小包と手紙を見せつつビコーズに尋ねる。
ビコーズがそう返事をすると操縦席へとついた。
ジョルジュは手紙をいそいそと開封し、読み始める。
ビコーズとフォックスはブーンたちの馬車の様子を見つつ運転をする。
やがてブーンたちの馬車が止まるのが見えた。
ビコーズはブーンたちから見えない廃墟の影へと馬車を向かわせる。
その間にフォックスは手紙を読んでいるであろうジョルジュへ声をかけに行った。
爪'ー`)「あいつら泊めたぞ」
_
(#゚∀゚)「お、目的地に着いたのか」
フォックスの言葉に手紙をぐしゃりと握りしめつつ言う。
傍らには長い小包が置かれていた。
彼はその剣幕にビビり、ビコーズを呼ぼうか考える。
爪'ー`)「どうしたんだい? イラついて」
_
( ゚∀゚)「妹からの手紙で思い人と付き合うことになったという手紙が来た」
_
(#゚∀゚)「どこの馬の骨だ!?」
_
( ゚∀゚)「という訳で……」
ジョルジュの言葉にフォックスはフムフムと頷く。
そして軽くジョルジュの肩をたたいた。
231
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:21:37 ID:fz4a7DJs0
爪'ー`)y‐「そうか、だけど妹さんの人生じゃないか」
フォックスは火のついていないタバコを持ち直しつつ言う。
その言葉を聞いてジョルジュはかすかに寂しそうにした。
_
( ゚∀゚)「分かってる
だけど親が流行り病で死んだ俺にとってあいつは唯一の家族なんだ」
_
( -∀-)「あいつには幸せになってもらいたい」
フォックスは何となく故郷にいる家族を思い出した。
結果的に何も言わず飛び出した自分のことをどう思っているのだろうと感じた。
爪'ー`)y‐「大丈夫さ」
_
( ゚∀゚)「え?」
爪'ー`)y‐「大好きな妹さんが選んだ大好きな人なんだろ?
信じて祝ってやれよ」
ジョルジュはその言葉の意味を考える。
そして苦笑いしながら言った。
_
( ゚∀゚)「俺は多分そいつのことを一生好きだけど嫌いな奴だと感じると思うよ」
そう言うと無造作に小包を開ける。
そこには先端がドリル状になり、赤と青と白で彩られた槍があった。
232
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:25:34 ID:fz4a7DJs0
「珍妙な形の槍だな」とフォックスは言いそうになる。
フォックスがその言葉を発する前にジョルジュが続けた。
_
( ゚∀゚)「ハインリッヒからのプレゼントだとさ
あいつが何か作ると俺がすっごい喜んでたからなのか分からないけど
ときどき発明品送ってくれるんだ……今回のはどういうしかけかな?」
そう楽しそうに言うと持ち手の横にあるボタンに気付く。
そのボタンを押すと槍の先端が甲高い音を立てつつ回転した。
魔力が吸い取られる感覚を感じジョルジュが思わず槍を手放した。
槍が床に落ちた途端運転席の方で前の馬車を見ていたビコーズが音もなく二人の元へ現れる。
そして二人に聞こえるようはっきりとした声で言った。
( ∵)「彼らに動きがありました、馬車から降りていました……ですが」
爪'ー`)「なんかあったのか?」
( ∵)「瘴気を防ぐためのマスクをしていなかったのです」
そう言うと二人の方へ双眼鏡を手渡す。
瘴気の中では普通倒れると知っていたジョルジュはひったくる様に双眼鏡を受け取る。
そしてブーンたちの馬車が見えるであろう運転席の方へ向かったのだった。
233
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:33:23 ID:fz4a7DJs0
_
( ゚∀゚)「以上、半分以上説明会でした」
これにて7話終了です。
いろいろと終わったので戻ってきました。
今回はある意味旅の動機が一番薄い?ドクオ回でした。
次回はツン回だと思います、たぶん。
白魔法と黒魔法について。
白魔法はパソコンでのブックマーク。
黒魔法は検索エンジンでの検索をイメージしています。
黒魔法の短縮は何度も同じ言葉で検索したら予測が出るイメージです。
こういうのは何となくでいいのです。
234
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:39:26 ID:Ad0./hl60
乙乙
235
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 00:45:16 ID:l4LmEgwo0
おー、おかえり
そして乙
236
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 01:19:51 ID:PAwPk48U0
まってた
乙��
237
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 02:13:12 ID:EhqF1OkI0
うひょー来てくれた!おつ!
238
:
名も無きAAのようです
:2015/02/21(土) 11:20:08 ID:W8VZp1/U0
乙乙
おかえりー
239
:
名も無きAAのようです
:2016/01/06(水) 21:32:42 ID:jOG85U6o0
待ってるよー
240
:
名も無きAAのようです
:2016/03/05(土) 09:12:26 ID:qaniNzbw0
続きがないのがおしいな
241
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:39:44 ID:T2sbhsLU0
ξ ⊿ )ξ
ツンは外を見て黙りこくる。
(;^ω^)
(;'A`)
川;゚ -゚)
(;゚ω゚)ノ
他のメンバーは何も言えない。
かけるべき言葉も見当たらない
彼らは今、ツンの陰鬱な空気に包まれた故郷の前にいた。
彼女の故郷の建物は半分以上が崩れ、植物は枯れて朽ちかけていた。
だが、彼女の故郷が陰鬱な空気に包まれていた1番の理由はそれではなかった。
空間に瘴気が満ちている。
そのことがそこの雰囲気を一番暗く淀んだ、陰鬱なものに変えている要因だった。
242
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:42:01 ID:T2sbhsLU0
第一章
第8話 瘴気にのまれた街
243
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:45:41 ID:T2sbhsLU0
ξ゚⊿゚)ξ「……綺麗な街だったの
領主様が花が大好きなお方でね
何時も何かしらの花が咲いていた」
ξ-⊿-)ξ「風が吹くといい香りがして
綺麗に季節ごとに違った花弁が舞って……
魔物に支配されるっていうのはこういう事なのかしら」
( ^ω^)「ツン……大丈夫かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ……覚悟はしていたから」
ξ゚‐゚)ξ「でも少し部屋で休むわ
出るときに呼んでちょうだい」
ツンはそう言うと操舵室から出ていく。
誰もその背を追うものはいなかった。
川 ゚ -゚)「覚悟していた……か
実際に見た衝撃は覚悟以上だったようだが」
(;'A`)「確かに俺も故郷がこんなことになったら
絶対見たらショックだ」
( ^ω^)「……ツンみたいな思いをさせる人を増やしちゃいけないお」
ブーンが決意を新たにするように呟く。
ドクオは相変わらず外を見ていた。
クーはツンの部屋の方を見て小さく言った。
川 ゚ -゚)「……大好きな故郷があるというのはうらやましいよ」
('A`)「ん? クーは嫌いなのか?」
川 ゚ -゚)「好きではなかったというだけだ」
ドクオの問いにクーは表情を変えずさらりと答える。
彼もその答えに「そういうもんか」と言うだけだった。
その会話を耳に入れながらブーンは改めて瘴気の霧を見て困ったように呟いた。
(;^ω^)「ところでどうやって外に出るお? マスクあるかお?」
244
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:50:53 ID:T2sbhsLU0
ブーンの言葉にツンも招集し、馬車内の大捜索が始まる。
その結果得られた成果はロープぐらいだった。
彼らは馬車内に瘴気を防ぐためのマスクなどは存在しないということを理解した。
( ^ω^)「……瘴気、どうするお?」
全員沈黙する。外に存在する吸い込むと人間にとって毒となる瘴気。
何か防ぐ手はないかと全員考え込む。
その時クーが沈黙を断ち切る。
川 ゚ -゚)「それに関して案がある」
クーの言葉に全員が彼女を注目する。
そして「危険だが」と前置きしたうえで続けた。
川 ゚ -゚)「この装備のまま突撃するのはどうだ?」
(;^ω^)「聖水は買い込んでないお? 自殺行為だお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そもそも防護マスクなしで普通に歩けたら
もっと人間の反撃も楽のはずよ?」
川 ゚ -゚)「無謀に見えるかもしれないが無策ではない
あのドラゴンの煙あっただろ?」
そう言われてブーンたちがもろに吸い込んだ煙を思い出す。
ドクオが何を考えているか分かったかのように手をたたいた。
245
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 21:55:14 ID:T2sbhsLU0
(;'A`)「なるほど、だけど俺らは耐えきれるか分からんぞ?」
川 ゚ -゚)「その時は二人に馬車へ運んでもらおう
聖水も二人分ならまだある」
ξ;゚⊿゚)ξ「煙……あ、そうか」
ツンがここでわかったような声を上げる。
ブーンもあの時のことを思い出す。
(;^ω^)「そう言えばデミタスさん煙と瘴気の成分近いって言っていたお」
ξ゚⊿゚)ξ「……もし全滅したら?」
川 ゚ -゚)「……ではまずどちらかだけが行ってみてくれないか?」
ツンの問いに少し迷った後、クーはブーンとツンを見つめつつ頼む。
その頼みにブーンは自分が行こうと手をあげようとした。
しかしそれ以上の速度でツンが立候補していた。
ξ゚⊿゚)ξ「それなら私から行くわ」
川 ゚ -゚)「……勝手には動くなよ?」
クーにくぎを刺すように言われてツンは頷く。
そして何処か顔をそむけつつ「分かっているわよ」と小さく言うのだった。
246
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:01:04 ID:T2sbhsLU0
ξ゚⊿゚)ξ
ツンは一人外へとつながる扉へ向かう。
一歩一歩外へと近づく。
帰りたいと感じていた故郷が近づく。
だが、その故郷は自分が愛した面影はない。
花も家族も何もいない。
扉をあけ放ち、ひとり外に出て地上に降り立つ。
魔物と化した枯れた植物が噛みついてくる。
彼女は表情を変えず踏み潰す。
ξ ⊿ )ξ
息は苦しくなかった。
黒い煙の時のように視界がかすむということもなかった。
ただ紫の世界に見える世界が変わるだけ。
自分の居た世界が紫の瘴気に包まれたという事実を確認するだけ。
ξ;⊿;)ξ
気が付けば涙があふれていた。
綺麗だった花が魔物となって噛みついてくる。
それをひたすら淡々と踏み潰す。
周りの花を一通り踏み潰し終えると涙を拭く。
そして扉へ力強く叩く。
大丈夫と言うことを知らせるためもう2回、計3回叩く。
ふっと足元を見る。
枯れた花に口がある魔物がまたたくさんいた。
花の魔物を踏み潰す。
踏みつぶす際に地面に変な硬い感触を感じる。
魔物の感触だろうかとツンはぼんやり考えていた。
247
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:09:25 ID:T2sbhsLU0
(=゚ω゚)ノ「あぶないょぅ!」
妖精の叫びが聞こえた。
ツンはその魔物の叫びに意識を覚醒させる。
どうやら妖精は自分についてきていたらしい。
何が危ないのだろうとぼんやり考える。
巨大な根が地面を突き破って現れる。
その先端は金属のように硬く、鋭かった。
ツンの体は警告に従い、その場所から自然と離れていた。
その結果として彼女の眼はそれをしっかりと捉えていた。
248
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:17:24 ID:T2sbhsLU0
ツンは危険を知らせる声にとっさに動いていた。
そのおかげで間一髪攻撃をかわすことができたとはいえ、自分が動いたことに驚きを隠せなかった。
妖精の言葉を信じた自分への驚きで一瞬動きが止まる。
しかしその驚きを「危険なものだ」とすぐに捨て去る。
そしてモノクルをつけると敵の姿を探す。
しかし地上には現れている根、
そして枯れた花の魔物しかいなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「皆! 襲撃よ!」
(;^ω^)「マジかお!」
川 ゚ -゚)「下手に相手を刺激するなよ?」
クーはそう言うと馬車の扉を開け飛び出す。
そして飛び降りるとツンの後ろに華麗に着地する。
マントが後からふわりと降りる。
( ^ω^)「僕も行くおー!」
ブーンもそう叫ぶと飛びだす。
そして鎧から大きな金属の音を立てながらツンの元へ向かおうとする。
彼が地面を踏みしめた瞬間出ていた根がかすかに震えた。
ξ゚⊿゚)ξ「そこ! 剣を突き立てて!!」
( ^ω^)「了解だお!」
ツンの指示にブーンが素早く剣を突き立てる。
すると辺り一面に痛みにうめくように尖った根が出現した。
足などにかする程度で直撃は避けたが、ゾワリとした危険を感じつつ分析をする。
( ^ω^)「辺り一面に張った根っこが武器みたいだお」
ξ゚⊿゚)ξ「それだけじゃないわ」
そう言うとツンは枯れた花の魔物を示す。
さっき彼女が踏みつぶしたそれは元気を取り戻していた。
249
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:28:25 ID:T2sbhsLU0
ξ゚⊿゚)ξ「降りた時もみんなを呼んだ時も踏みつぶした
だけど全部元気を取り戻しているのよね
たぶん花の魔物と根の魔物、本体は一緒ね」
川 ゚ -゚)「焼いてしまいたいが私たちの足元の魔物が残るな」
ブーンが根を斬りつつツンの方へ向かう。
その途中ぐちゃぐちゃになった地面に足をとられる。
よろめいて地面に剣を突き立てる。
すると驚いたように大量の鋭い根が出現した。
どうやら地中の根にダメージを与えると根を生やすようだった。
( ^ω^)「うーんどうすればいいんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「食らうの覚悟で突き立てまくる?」
( ^ω^)「それ大変なの僕だけだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そう言われても」
そう言ってツンは地面に矢を放つ。
矢は地面に深々と刺さり、その周囲に大量の根が出現する。
( ^ω^)「……ツンが放って
僕が出てきた根っこ斬るのが効率絶対いいお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうみたいね
クー、あっちの方にも撃つから焼くのお願いできる?」
川 ゚ -゚)「了解した」
そう言ってクーがロッドを構えたあたりでドクオが下りてくる。
部屋に杖を忘れていたらしい。
足元に転がった根を見た後尋ねる。
('A`)「えっと今の状況は?」
( ^ω^)「焼き払いと切り払いを計画中だお」
そしてひとまず計画を話す。
彼には中に戻って待っていてもらうよう頼もうとしていた。
250
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:34:32 ID:T2sbhsLU0
('A`)「俺ら全員馬車に戻って顔出してクーが魔法はなって
全部焼き払えばよくね?」
川 ゚ -゚)「だがそれだとツンの故郷をすべて燃やすことになる
ツンはそれでいいのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「別n(=゚ω゚)ノ「だめだょぅ!」」
ツンの言葉を強い調子で遮った妖精は睨みつけられる。
妖精はその視線に耐えるようにそれきり黙る。
緊迫した空気が流れる。
その様子を見てドクオは冷や汗をかきつつ尋ねた。
(;'A`)「じゃぁ、ツン
この町にでかい木はあったか?」
ξ゚⊿゚)ξ「木? えっと……
タイムカプセルを埋めた木が確か一番大きかったわ」
( ^ω^)「何で木だお?」
('A`)「お前が切ったこの根っこに年輪っぽいものが見えたから
でかいのを聞いた理由はここら辺に木がないのに
攻撃がここまで来ることから大きくないと根を張り巡らさないよなと考えたから」
そう言うとブーンが切った根の先を持ち上げた。
切り口を見ると確かに年輪があるように見えた。
ドクオは持っていた根の先がピクリと動いたので慌てて放り投げた。
( ^ω^)「じゃぁツン、道案内頼むお」
ξ゚⊿゚)ξ「分かったわ
いつ根が生えてくるか分からないから
後ろの二人も気を付けてね」
ツンの言葉に他の3人も頷いて見せる。
彼女はブーンが剣を構えたことを確認した後走り出したのだった。
251
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:42:37 ID:T2sbhsLU0
彼らは走る。
時折目の前の地面が盛り上がり根が出てくる。
突然のことなので反応しきれず時々弾き飛ばされながらも進む。
根の前兆に気が付いたときにはできる限り方向を変える。
そうやってダメージを抑えながら進んでいた。
ツンはある違和感を感じていた。
似たような道を走ったような記憶があったのだ。
記憶を探るうちに走った日のことを思い出した。
ξ;゚⊿゚)ξ
その日は、自分たちの町を守っていた戦線が崩れた日だった。
魔物が大挙して襲ってきたあの日だった。
自分が故郷を失った10年前のことだった。
理性無き魔物はクローゼットに隠れた自分に気付かず家族を殺す。
そして目の前でむさぼり食らう。
ξ; ⊿ )ξ
当時の自分は何もできなかった。
恐怖で固まり何もできないだけだった。
吐くことも、泣くこともせずただ見ていた。
幸か不幸か、そのおかげでその魔物にはばれなかった。
魔物が居なくなってからクローゼットから出ていき、家族だったものに近づく。
しかし形見となりそうなものは何もなかった。
顔をあげると部屋の隅に炎が上がっていた。
炎が広がっていくのを見て壁際に逃げる。
肩に何か当たったと思って縋りつくようにそれを掴む。
それが当時壁に掛けられていた自分の弓だった。
252
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:47:56 ID:T2sbhsLU0
炎に囲まれる恐怖と外にいる魔物の恐怖で幼いツンはどう動けばよいのかわからなかった。
その時、限界に近かった彼女の耳元から女性の声が聴こえたような気がした。
『逃げないの?』
その声に意味の分からない恐怖を覚える。
弓を掴んだまま外にいる魔物への恐怖も忘れ、必死に駆け出す。
時々魔物が目の前に現れる。
その時は方向転換をして逃げる。
ただやみくもに屋敷から、故郷から逃げる。
そしてあのタイムカプセルを埋めた木の下にたどり着く。
疲れ切ったツンは木の根の瘤で転ぶ。
ξ ⊿ )ξ「そうだ、この道は」
顔をあげると別の戦線の兵士たちがやってきていた。
そのおかげで自分は彼らに助けられた。
そして瘴気から遠い山に暮らしていた親戚に預けられた。
山で弓矢を扱い、動物を狩る。
そうやって育った。
魔物を倒したのはブーンと倒したあれが初めてだったなと懐かしさを思い出した。
ξ゚⊿゚)ξ「……みんな、走りながら聞いて」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
ブーンたちと旅をした期間はまだまだ短いものだった。
だが、ツンはすでに彼らを大切な仲間として認識していた。
だからこそ、もし危険があるのなら伝えるべきだ。
そう判断していた。
ξ゚⊿゚)ξ「私たちは誘導されている」
253
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:54:25 ID:T2sbhsLU0
( ^ω^)「……まじかお!?」
川 ゚ -゚)「つまり、何か待ち構えているのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「それは分からないわ
でも今走っている道が一緒なのよ」
ξ-⊿-)ξ「10年前滅ぼされたときに逃げた時に走った道と」
('A`)「なぞらせているのか? 悪趣味な」
( ^ω^)「悪趣味……そう言えばあのドラゴンも」
川 ゚ -゚)「あのドラゴンの黒い煙の効果もそうだな
なんだ? ブーンはまたあいつが来るとでも?」
( ^ω^)「……でもなんか違うお、あっちのは実験したい? ってな感じだお
でもこっちの悪趣味さは違うお」
ξ゚⊿゚)ξ「……部下は一人とは限らないわよね」
(;'A`)「あんな良くわからんのが他にもいるってことかよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「違う、そういう意味じゃなくて……10年前私は変な声を耳元で聞いたのよ!」
そう叫んだのと同時に大きな木の前にたどり着く。
その木はところどころから紫色の樹液が垂れていた。
節の部分では黄色い虹彩を持つ目がぎょろぎょろとせわしなく動く。
葉の大きさはまちまちで大きい物も小さい物もあった。
その木の周りでは例の根が守るように生えている。
見ただけで本体と分かる守り方だった。
そしてその木の影には白いノースリーブのワンピースを着た少女がいた。
二つに長い黒髪を結びにこにこと笑っていた。
o川*゚ー゚)o「覚えていてくれてうれしいよ、ツンちゃん」
その声を聞いたツンの表情が驚きと恐怖に染まり、固まる。
どうやら10年前聞いた声そのままだったらしい。
254
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 22:58:35 ID:T2sbhsLU0
o川*゚ー゚)o「見て見て、この身体
とってもキュートでしょ?」
(;^ω^)(瘴気の中なんで人がと思ったけど僕らもだったお)
(;'A`)「……たぶんあいつ人間じゃない」
くるくる楽しげに回った少女を見たドクオが顔を蒼くさせつつ言う。
その言葉を聞いてクーはロッドを構える。
o川*゚ー゚)o「えー、名前聞くところでしょー? こんなかわいこちゃんにさ」
川 ゚ -゚)「じゃぁ望みどおり聞こうか? 何者だ」
o川*゚ー゚)o「お姉さんキュートじゃなくてキレイ系だね
私はキュート、名前通りキュートなものが好きなんだ」
o川*^ー^)o「そこのツンちゃんも10年前から目つけていたんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
ツンは若干引いていた。
その様子を見て楽しそうにカラカラと笑うと一瞬にして真顔になる。
o川*゚ー゚)o「ところでさえないお兄さん
何で一発で人じゃないってわかったのかな?」
('A`)「えっとそれは……」
ドクオはブーンの方をちらりと見る。
何を言うのか予想したブーンは覚悟して親指を上げる。
('A`)「まったく同じ顔の幽霊が恨めしそうにお前を見ていたから
で、人間は死んだ人の体にそのまま入るとかできないからな」
m9('A`)「その幽霊が本来の体の持ち主としたら
お前は少なくとも人間じゃない!」
(;^ω^)(……ドクオの見えている世界が見えなくてよかったと思うお)
o川*゚ー゚)o「そっか、なんか見えるのか
他のみんなにもあんたに気を付けるよう伝えるよ
人間の入れ物は無駄だぞって」
255
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:01:54 ID:T2sbhsLU0
(;'A`)「入れ物って……」
川 ゚ -゚)「……仲間がいるのか」
o川*゚ー゚)o「そうだよー、私たち四天王が魔物を侵攻させるの
あっそういえばこの木だけど燃やせば死ぬよ
お姉さんの本気火力なら一発だろうね」
キュートがクーへ向かって楽しそうに言った。
ブーンはその言葉を聞いて警戒しつつ尋ねる。
( ^ω^)「本当かお?
燃やしたら歩き出すとか」
o川*゚ー゚)o「ないない
それに私がこの木魔物にしたのって
ツンちゃんの誘導のためだもん」
ξ゚⊿゚)ξ「な、何言ってんのよ!?」
ツンが身震いしつつ弓矢を構える。
理解できないというように手が震えていた。
その様子をキュートは満足そうに見ていた。
そしてくるりとまわってお辞儀をすると言った。
o川*゚ー゚)o「会いたかっただけだよ。 それじゃ、もうすぐ会議だから消えまーす
……そうだ、最後に一つ」
o川*^ー^)o「この町襲うように指示したの私なんだ、じゃね」
ξ#゚⊿゚)ξ「待ちなさい!!」
キュートが消える直前ツンの矢が放たれる。
それは正確にキュートの眉間を狙っていた。
256
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:08:54 ID:T2sbhsLU0
o川*゚ー゚)o「そんなレベルじゃまだまだ
この木を燃やしてせいぜいレベルアップしなさい」
キュートがかわいらしく指をさして言った瞬間矢が跳ね返る。
ツンに向かってくる矢の前にブーンがとっさに腕を出してとっさにかばう。
矢が飛んできた場所が関節の金属が無い部分だったため見事に突き刺さる。
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!
ドクオ、回復魔法と毒解除を」
Σ( ^ω^)「毒矢だったのかお!?」
('A`)「傷は深くないな
『ポイズンバスター』『レオナ』」
川 ゚ -゚)「くっ炎よ彼のものを……もういないか」
クーがロッドを向け呪文を言っている間にキュートはすでに消えていた。
そしてそこにはうごめいている木だけが残っていた。
そして彼らへ向けて何枚もの鋭い葉を飛ばしてきた。
何枚もの葉が彼らに降り注ぐ。
(;^ω^)「イタイイタイイタイ」
ξ;゚⊿゚)ξ「地味に痛いわね……あっという間にボロボロ」
('A`)「早く燃やさないともっとひどいことになるな」
ドクオがそう呟いた途端地面がうごめく。
慌てて場所を動くと居た場所を鋭い根が貫いていた。
最大火力を出すためにクーはロッドを木に向け深く息を吸う。
そしてしっかりと対象を見つめると言った。
川 ゚ -゚)「フル火力か……対象はロッドと私の視線が指し示す魔物の木とする
悪魔ワカッテマスとの契約における魔法において命令する
業火よ、対象をその中に包み燃やし尽くせ!」
257
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:14:04 ID:T2sbhsLU0
クーはいつもより長い命令を終える。
その瞬間青白い炎があがり、木を包みこむ。
その炎の高さは巨大だと思った木の2倍以上あった。
その炎は魔物の全てを焼き尽くした。
葉も、目も、幹も。
そして町にまで伸ばしていた根と枯れた花の魔物も。
ξ゚⊿゚)ξ「……これがクーのフル火力……」
( ^ω^)「僕ら要らないんじゃね?」
川 ゚ -゚)「そんなことは無いぞ」
クーの方を見るといつの間にか座り込んでいた。
顔が心なしか青白い。
そして片手を差し出していた。
( ^ω^)「軽い枯渇症状が出ているおね」
川 ゚ -゚)「うむ、久しぶりに使ったがキツイ
誰か魔力をくれ」
('A`)「この中で魔力使えるの残り俺だけじゃねぇか」
そう言うとドクオはその手を掴み握手する。
その瞬間立ちくらみを起こしたかのように彼もまたしゃがみ込んだ。
(;'A`)「取りすぎだ!」
川 ゚ -゚)「すまない……だが歩けるようにはなったぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、枯渇症状って何?」
( ^ω^)「魔力がマイナス値行った場合に起きるんだお
人から魔力貰ったり寝れば解決するお
でも行き過ぎると死に至るお」
ξ゚⊿゚)ξ「クー……気をつけなさいよ?」
ツンの心配そうな言葉にクーはニヤリと笑って見せる。
258
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:20:40 ID:T2sbhsLU0
川 ゚ -゚)「安心しろ、鍛えて魔力増やす
そしてさっきのが何発も打てるようになるのを目指す」
( ^ω^)「クーは宿しているから絶対できるお」
('A`)「魔力ねぇ……俺も鍛えれば増えるの?」
川 ゚ -゚)「それより魔法の系統増やしたらどうだ?
加速系とか」
(;'A`)「今勉強用の本と実力が無いんだよな
次の町いかねぇと」
ドクオの言葉にツンが不思議そうな顔をした。
そしてブーンに尋ねる。
ξ゚⊿゚)ξ「勉強に本がいるの?」
( ^ω^)「白魔法はいるらしいお
一応その本は安いらしいけど数が増えたら出費がかさむらしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「大変ねぇ」
( ^ω^)「黒魔法は命令だけでいいのが特徴だお
白魔法は覚えればいちいち命令しないのが特徴だお」
そう会話をしているうちに青白い炎は対象を燃やし尽くし、消えていた。
ツンは木が生えていた場所に行くと風がなく、舞う気配のない灰を掘る。
ブーンたちも手伝って灰を除く。 やがて灰の層は終わり、土の層が現れる。
その作業の合間にも時々ゴブリンが出るので切り裂く。
そして再びひたすら土を掘る。
ツンがその作業に一番没頭していた。まるで先ほどの恐怖から逃れるかのように……。
やがて、一つの小さなジュエリーボックスが掘り出された。
ツンがそれを開くと大きな黄色い石が埋め込まれたペンダントがあった。
その輝きはどこか人を焦らせる物だった。
しかし、それは焦らせると同時にとても視線を引き付けるのであった。
259
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:25:24 ID:T2sbhsLU0
ツンは一緒に入っていた手紙を取り出す。
そしてその表情を驚きに染まらせた。
( ^ω^)「ツン、どうしたお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、なんでもないわ」
ξ゚⊿゚)ξ(……この弓、精霊の弓という家宝だったんだ)
ツンが持っていた手紙は他愛のない未来の自分への質問がつづられていた。
その中に「かべのせいれーのゆみはもらえましたか」とつたない字であった。
使っている限り何の変哲のない弓なので家宝という事実を不思議に感じたのだった。
ξ゚⊿゚)ξ「それより早くこれを動力炉に入れましょう」
川 ゚ -゚)「では戻るか、場所はわかるか?」
( ^ω^)「僕道覚えているから走るお」
ブーンはそう言うと派手な音を立てつつ走り出す。
それを見てドクオが呆れたように言った。
('A`)「元気だなぁ」
川 ゚ -゚)「それが彼の味だろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ムードメーカーでいいじゃない」
などと口々に言いながらそれぞれのペースで馬車へと戻ったのだった。
260
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:30:07 ID:T2sbhsLU0
( ^ω^)「さて、次はどこ向かうお?」
(=゚ω゚)ノ「あっちがいいょぅ」
そう言うとぃょぅは東の方を指さした。
ツンは地面がところどころ焦げているだけだった町を思い出しつつ、その彼に無言で近寄る。
(=゚ω゚)ノ「な、なんだょぅ」
ξ゚⊿゚)ξ「……今日はいろいろありがとう
忠告とか、町を燃やさずに済んだこととか」
(=゚ω゚)ノ「……やっと妖精の偉大さが」
ξ-⊿-)ξ「視界に入って話すのは許すわ」
ツンはそう言うとそっぽを向く。
ぃょぅは少しさみしそうだったがそれでもうれしそうだった。
なお、その横で三人がツンが譲歩したことに驚いていることには二人とも気づかなかった。
川 ゚ -゚)「……私の町があった方角だな」
(=゚ω゚)ノ「それよりもっと向こうだょぅ」
川 ゚ -゚)「とすると石が売り飛ばされた方角か」
(;^ω^)「売り飛ばされたのかお?」
ブーンが驚いたように尋ねる。
クーは頷くと言う。
川 ゚ -゚)「私は孤児院にいたんだ
そこに入る時家財道具一式売り払われた
祖父が勇者と知っていたのはそう言われて育ったからだ」
川#゚ -゚)「皆して祖父のように立派であれなどと煩かった……」
何か思い出したようで怒りを込めて呟いた。
しかしその怒りも咳払いを一つすると見えなくなる。
261
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:32:32 ID:T2sbhsLU0
川 ゚ -゚)「という訳で売られた方向は知っている」
( ^ω^)「なるほど、つまり次は」
('A`)「転売先探しか、大変だな」
ξ゚⊿゚)ξ「これは場所分からないの?」
(=゚ω゚)ノ「大まかな場所しかわからないょぅ
すまんなだょぅ」
ぃょぅは申し訳なさそうに言う。
しかし、行動の目標が立つのは彼のおかげであった。
そして彼らは東へ向かう。
次の世界のカギを求めて。
('A`)(ところで、食料持つのか? 買いだめした記憶ないけど)
いくばくかの不安を抱えつつも。
262
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:35:53 ID:T2sbhsLU0
_
( ゚∀゚)φ「という訳で彼らはカギを無事手に入れることができました
加えて、彼らは防護マスク無くても大丈夫でしたっと……報告終わりー」
ジョルジュは報告書に書きながらつぶやく。
そして彼らを見て瘴気の中へマスクをつけずに飛び出したフォックスを見る。
彼は今聖水を飲まされ、安静にしている最中だった。
_
( ゚∀゚)「まぁ時々瘴気になかなか耐えるやつらは兵士にもいる
あいつら全員が偶然そうだったんだろう」
( ∵)「ジョルジュさん、彼らが東へ進み始めました」
_
( ゚∀゚)「了解、フォックス沈んでいるし俺が運転するよ」
ジョルジュはそう言うと手綱を握りしめる。
そして楽しそうに運転を始める。
_
( ゚∀゚)(そう言えばあの妖精なんだ?
なんであいつらと旅しているんだ?
王様が自分の元精霊に頼んだ?)
のんびりとそんなことを考えつつ彼らもまた後を追って東へと向かう。
報告書をくくりつけられた機械の鳩だけが彼らとは別方向へ進むのであった。
263
:
名も無きAAのようです
:2016/04/27(水) 23:47:01 ID:T2sbhsLU0
以上で8話終了です。
お目汚し失礼しました。
〜以下、みっともない遅れた言い訳〜
槍の戦い方わからんな……確かあるゲームに槍出てきたし、手出してみるか。
↓
ゲームやっていたら遅くなっていた、書き溜め書き溜め
↓
うふふーラボ畜楽しいなー、書き溜めの時間も、投下の時間も、したらば見る時間もないわー
↓
就職活動つらいな……息抜きに久しぶりに覗くか
↓
……なんか大変なことになってるー、たぶん自分も一因だー……うわぁ
↓
時間あるときに少しずつでも投下して完走させよう ←イマココ
という感じでした。
申し訳ありませんでした。
次は……余裕があるときに、うん。
上げ下げご自由にどうぞ。
264
:
名も無きAAのようです
:2016/04/28(木) 08:28:29 ID:z4QThMcg0
帰ってきたか
おつ
265
:
名も無きAAのようです
:2016/05/01(日) 15:13:33 ID:TZAY64EU0
おかえり!
続きも気になるけどマイペースに頑張って
266
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:40:19 ID:N.nBhwUM0
ツンの村から瘴気の中を東へ進む。
途中川があったが一部をクーの魔法で凍らせて橋を作った。
時々追いついてくる魔物は窓から身を乗り出して退けた進んだ。
そうやって旅を続けていた。
そして、ある日その日の食事担当だったブーンが事実を述べた。
( ^ω^)「まずいお
食糧庫の中がだいぶ空だお」
ブーンの言葉にパーティメンバーが固まる。
沈黙に耐え切れずブーンは冷や汗を流しつつ続けた。
(;^ω^)「戻って補給を忘れていたお」
川 ゚ -゚)「瘴気の中で餓死か、洒落にならん」
クーが顎に手を当てて悩ましげに言う。
ツンは何か外に助けになるものはないかと操縦部屋の外を見る。
その時彼女の射手として鍛えられた目がある物をとらえた。
ξ゚⊿゚)ξ「あっちへ行って! 城壁があるの!!」
ツンの言葉でそちらの方へ馬車を進める。
瘴気が少しずつ薄くなる。
やがて瘴気がない場所にそびえたつ巨大な石の壁が目に入った。
( ^ω^)「僕らの地方以外にも残っていたのかお」
ξ゚⊿゚)ξ「瘴気を越えられなかったから分からなかったんだわ」
川 ゚ -゚)「面白いな、この壁はすべて石だ」
('A`)「うーん……この壁の周り走って停めるか」
ドクオはそう言うと手綱を持ち直した。
267
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:42:30 ID:N.nBhwUM0
第9話 石でできた場所
268
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:44:21 ID:N.nBhwUM0
馬車を壁の近くの草原にひとまず停める。
全員降りて見慣れない石を組み上げることによってできた石壁を見つめる。
( ^ω^)「そう言えばおじいちゃんが
『昔はもっと世界は広かった』って言っていたお」
川 ゚ -゚)「魔物に侵攻されないように必死で
他にもこういう場所があるとは考える余裕が余りなかったな」
ξ゚⊿゚)ξ「木の骨組みをしてから石を組み合わせた壁というわけじゃないのね」
そう会話しつつ周りの様子を確認する。
足元を見ると短い草しかない。
周りを見渡すと木など一切見当たらなかった。
あるのは岩肌がところどころむき出しになった草原。
そして岩山と石壁だけだった。
('A`)「木が育ちにくい環境なのかもな」
(*゚ー゚)「ようこそストーンヘッジの国へ
……皆さんはどちらからいらしたのですか?」
いつの間にか短い髪の少女が立っており、声をかけられ一瞬肩が跳ねる。
ところどころ時計をあしらったようなシャツと7分丈のズボンをはいていた。
年はブーンたちと一緒と言ったところであろうか、4人の反応を見ると驚かせたことを謝罪した。
( ^ω^)「えっとホライゾン国と言うところから」
川 ゚ -゚)「……失礼ですが人に尋ねるのならばあなたから名乗るのがマナーでは?」
クーに問われて少女は驚いたような顔をする。
そして小さく「名乗り忘れていた」と言いながら杖を取り出す。
杖の先にはレンズがついていた。
しかしただのレンズではなく時計の二つの針が中にあるという意匠だった。
269
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:46:15 ID:N.nBhwUM0
(*゚ー゚)「失礼いたしました
私は6人長の一人
時魔法のシィと申します」
川 ゚ -゚)「6人長……私たちはアラマキ殿が治める地域から来ました」
(;゚ー゚)「あ、あの瘴気の海を越えてきたのですか!?」
シィが驚きの声を漏らす。
ブーンはクーに後で「6人長」の意味を聞こうと考えながら「はいですお」と返事をした。
細かい事情を隠してこの馬車でここまで来たこと。
しばらく泊めさせてほしいこと。
そしてこの地域を回ることの許可を求めた。
(*゚ー゚)「はい、分かりました
通貨を見せてください」
( ^ω^)「これですお」
シィはお金を受け取るとこの地域のお金と両替した。
そして笑顔で言った。
(*^ー^)「これで買い物ができます
買い出しなどはこれでお願いします
また、できる限り外から来たということはご内密にお願いします」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしてかしら?」
(*゚ー゚)「いきなり外から来たと聞くと民が混乱が予想されるからです
魔法に関しては方法等は変わりませんのでご安心を
あ、馬車はばれないように隠しておいてください」
('A`)「……まぁブーンのおじいさんの時代まで
繋がっていたから魔法は当たり前か?」
ドクオは小さく納得の声を漏らした。
5人はひとまず岩山の中に巨大な馬車を隠す。
そして全員手持ちのお金を両替してもらうと買い出しへと向かったのだった。
270
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:50:03 ID:N.nBhwUM0
( ^ω^)「ここら辺はお蕎麦の料理が多いお」
ブーンは保存食となる物を買っていた。
そして「蕎麦」や「ジャガイモ」と言った荒れ地で育つものを買っていた。
選んだわけではない、ほとんどそれなのだ。
鳥肉の干したものなども売っていたのでそれを買う。
何の鳥かはわからなかった。
少なくとも魔物ではないらしい。
そしてツンが楽しそうに買い物をしているのが目に入る。
何を買っているのかと思い近づく。
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ブーン見て見て」
そう言うと石造りのペンダントを見せる。
ペンダントの模様は精霊の光をあしらっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「これいいと思わない? 買っちゃおうかなー」
( ^ω^)「これくらい僕が買うお」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、似合うか聞きたかっただけだし悪いわよ」
( ^ω^)「良いんだお、とても似合っていたお」
ブーンはそう言いながら店主にお金を払う。
店主は小さく「毎度」と言うと受け取った。
ξ*゚⊿゚)ξ「……ありがとう」
( ^ω^)「気にしなくっていいお」
ブーンはそう言うと市場へ戻る。
鍛冶屋に剣の手入れを頼もうと思い立ったためであった。
271
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:51:33 ID:N.nBhwUM0
ξ゚⊿゚)ξ(買ってもらってしまった……)
ツンはそう考えつつペンダントをいじくる。
そしてペンダントをしまおうと胸ポケットへ入れる。
その時胸ポケットししまっていた毒矢用の毒がほとんどないことに気づいた。
ξ゚⊿゚)ξ(材料の植物は荒れ地で育つ
岩山の方に探しに行こうかしら)
そう考えつつ足を止める。
そこでは石の矢が売っていた。
木があまりないため職人が必死に全て石で作ったものであった。
重くて鈍いがその分威力はお墨付きと説明されていた。
ツンはためらうことなくそれを買った。
矢のストックを考えてのことだった。
今までは普通に使ってきたが木が少ないなら運用を考えなくてはと考えていた。
ξ゚⊿゚)ξ「うーん、枝とか拾っておくべきだったわ」
ξ-⊿-)ξ「こういう木が無い場所を予想していなかったわ
私の世界って本当狭かったのね」
ツンは軽くため息をつく。
それでも変わらないものはあるのだなと城壁を見上げた。
272
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:53:42 ID:N.nBhwUM0
故郷の方の市場の多くは木の骨組みに布を張ったものだった。
家は木の骨組みに煉瓦や石材を積み上げたものが多い。
この町の市場は石でできている。
石畳ぐらいならホライゾン国ぐらい大きければあった。
しかし店も全て石でできているのだ。
店はいつも同じ場所にあることが予想された。
何せ石でできた店は動かせないからだ。
家も石でしっかりと作られていた。
同じものは城壁の存在だ。
国ごとに大抵は壁を持つ。
国によってその材料は変わる。
ホライゾン国は煉瓦が中心。
格闘家の里では木材が中心だった。
だがその目的は変わらない。
瘴気と魔物の侵攻にとっさに耐えるためのものだった。
城壁があるが故内側に入られると逃げ場が無くなるというパターンもあったが。
ξ゚⊿゚)ξ「ここの人も瘴気に怯えているのは変わりないのね」
ぶらぶらと町を見歩く。
家を見ていると石以外にもよく使われているものがあった。
それは鉄だった。
細かいパーツなどによく鉄が使われていた。
居た地域では鉄はだいぶ貴重だったがここでは少し事情が違うのかもしれない。
今木で作る矢の本体は無理だと思われた。
それでも、矢じりだけでも作ってもらおうかとツンは鍛冶屋に足を向けた。
273
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 19:58:29 ID:N.nBhwUM0
ドクオは二冊の本を見ていて悩んでいた。
そして手持ちのお金を見る。
(;'A`)(……上位回復魔法、麻痺、睡眠解除
後速度系や命中系と覚えるのに最低5冊は要る
だが、この本も面白そうだから欲しい)
('A`)「……白魔法の本5冊とこの本2冊欲しいのですが」
店主の言った値段と手持ちの金を見比べる。
そして嬉しそうな顔をして白魔法の本を3冊追加で買ったのだった。
本を抱え足取り軽く、歩みは遅く石造りの街並みを歩く。
('A`)(ここ、白魔法の本があっちより安い
そのくせ品質は変わらない……木がないのになんでだ?)
('A`)「……石の杖もいろいろ売ってるな
今の木の杖より使いやすそうだが」
( ´_ゝ`)「おい、そこの奴白魔法使いか?
白魔法使い向けに軽くしてあるから重さは心配するな」
店先に並んだ杖をまじまじと見ていたドクオは店番に声をかけられる。
お礼を言いつつ顔をあげるとお互いに固まった。
(;'A`)「えっと……アニジャさん?」
(;´_ゝ`)「……なんでお前がここにいんの?」
('A`)「えっと、いろいろ……アニジャさんこそどうして」
( ´_ゝ`)「うーんと……いろいろ
親方! 故郷の奴が来たんで少し休みます!」
アニジャはそう奥の店主に声をかける。
そして店の中から出てくると尋ねた。
( ´_ゝ`)「真っ先に聞きたいことは一つ、母者は?」
('A`)「連絡取れないことめっちゃ怒ってます、ご愁傷様」
274
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:27:23 ID:N.nBhwUM0
ドクオの言葉を聞いて兄者は青い顔になりつつ「あああ」と呻く。
そしてため息をついた後言い訳のように語る。
( ´_ゝ`)「俺もいろいろあったんだよ
まず傭兵として俺は前線地区にいた」
('A`)「そのあたりはオトジャさんから聞いている
あ、オトジャさんはこっちの方で傭兵長やっている」
( ´_ゝ`)「偉くなったもんだな……
で、俺は捕虜となって捕まってどこかで働いていた」
('A`)「瘴気は? ってかよく無事だったな」
( ´_ゝ`)「その場所は瘴気は薄かったんだ
で、俺は女神の手引きで逃げ出した
耐性があったらしく瘴気の中を一か八か闇雲に駆け出した」
その言葉にドクオは思わず「女神って……度胸あるな」と呟く。
普通の人なら聖水もない状況でリスクの高い瘴気の中へは飛び出さない。
アニジャはにやりと笑う。
( ´_ゝ`)「で、倒れた仲間をひずったりしてしばらく走ってぶっ倒れた
その時探検隊の人が近くを通ってな」
('A`)「探検隊?」
( ´_ゝ`)「この町には瘴気を探索する探検隊がいるんだ
とにかく俺はそこで救われ、今ここにいる
一応故郷の話を町の人にしない条件でな」
('A`)「そこは俺らと一緒か。 俺は……」
ドクオは魔王を倒すとかカギ集めなどの目的は言わない。
ただ仲間と旅をしていることなどを伝えたのだった。
( ´_ゝ`)「……イモジャも倒れたのか?」
瘴気の話を聞いたアニジャは心配そうに尋ねる。
ドクオは頷くとアニジャはため息をつく。
アニジャはここから出られない自分がもどかしく感じられたのだった。
275
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:28:54 ID:N.nBhwUM0
川 ゚ -゚)「巨大な青い石がはめられた指輪を知らないか?」
クーはアクセサリーショップの店員に尋ねる。
知らないと言われて大きなため息を一つついた。
川 ゚ -゚)「ここもはずれか……この町の外に売られたか?」
<ヽ`∀´>「ホルホル、そこの御嬢さん
なぜそんなものを追い求めているニダか?」
店員への質問を聞いていたらしい占い師が話しかけてくる。
クーは少し考えた後言った。
川 ゚ -゚)「家族の形見なんだ
孤児院にはいる時のゴタゴタで売られてしまってな」
川 - -)「大きくなったから探そうと思って
売られた方向の情報だけでここまで」
<ヽ`∀´>「ホルホル……すまないことを聞いたニダ」
クーはしおらしく「いや、いい」と答える。
その様子に不躾なことを聞いたかと占い師は申し訳なくなる。
<ヽ`∀´>「それなら隣国に行くといいニダ」
川 ゚ -゚)「隣国?」
<ヽ`∀´>「あそこは何でも売られているニダ
情報も、盗品も、人もニダ
ウリはあそこ出身ニダ」
川 ゚ -゚)「ふむ、行ってみるか」
<ヽ`∀´>「気を付けるニダよ?
この地域では魔法使いは常に不足ニダ
採石場もあらゆる産業も魔法で成り立っているニダ」
<ヽ ∀ >「師匠も使い捨てにされたニダ」
占い師は何かを思い出したように言う。
クーはその様子を見て少し考えた。
276
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:32:22 ID:N.nBhwUM0
占い師の表情は変わりない。
クーはいまいち真意が分からず尋ねる。
川 ゚ -゚)「……つまり?」
<ヽ`∀´>「御嬢さんみたいなのは高値で売り買いされるってことニダ」
占い師はクーの持つロッドを見つつそう言った。
そう言われて改めて街並みを見る。
剣などより魔法の杖やロッドがよく売られている。
それだけ魔法が重要視されているという事だろう。
川 ゚ -゚)「使い捨てにされたとは?
危険があるなら聞いておきたい」
<ヽ`∀´>「気分のいい話じゃないニダ
師匠のシナーは魔法使いだったニダ
あの人は採石場で働いていたニダ」
川 ゚ -゚)「これだけ家とかに石を使っていたら大盛況だろうな」
<ヽ`∀´>「だから石の切り出しに魔法が有効ニダ
あと運ぶ時に怪我が多いからそれにも魔法ニダ」
<ヽ ∀ >「師匠は使いすぎて魔力が足りなくなって倒れたニダ
全員カツカツだから魔力を分ける人もいないニダ
そこで石材が倒れてきたニダ」
川 ゚ -゚)「……すまないことを聞いた」
クーの言葉にニダーは頭を振る。
そして辺りを見渡した後言った。
<ヽ`∀´>「ウリはこの仕組みが許せないニダ
……シィちゃんは魔法使いの地位向上のため頑張っているニダ
でもギコはひたすら産業を推し進めているニダ」
川 ゚ -゚)「ギコ……だと?」
クーは占い師から出た名前に驚くほど反応する。
占い師はその反応に不思議そうな顔をしたのだった。
277
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:34:35 ID:N.nBhwUM0
ブーンは鍛冶屋で合流したツンと馬車の前で他のメンバーを待っていた。
なお、馬車の留守は一応ぃょぅが守っていた。
( ^ω^)「いやぁ、良かったお」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンにとっては本当によかったわね
剣の手入れだけでなく鎧の強化までしてもらえて」
ブーンの鎧は金属が変わっていた。
銀色の輝きは少し鈍くなった。
しかし耐久性と軽さを手に入れていた。
腰にさしてある剣は刃こぼれなどなくなっていた。
魔物の血で汚れていた剣刀身に顔が映るほどはきれいになった。
(;^ω^)「でもガッツリ怒られたお
『良い代物なんだから丁寧に扱え』って」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの剣幕はビビったわね
でも砥石がもらえたじゃない」
( ^ω^)「……買わされたんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「……あの店主なかなかね」
ツンは感心したように呟いたのだった。
278
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:37:35 ID:N.nBhwUM0
('A`)「おーい戻ったぞ」
ドクオがふらつきながらももどってくる。
そして荷物を部屋に置く。
慌ててブーンたちの元へ行くと一息つきながら言った。
('A`)「知り合いがいた」
( ^ω^)「どうやってここに来たのかお?」
('A`)「捕虜になっていたらしい」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして他にも捕まっている人たちがいるのかしら」
ドクオは頷くと地図を取り出す。
その地図はブーンたちの居た地方。
そして教会の本部があると言われる山しか書かれていなかった。
教会はその地図のほぼ上部にあった。
ブーンたちの地方は地図の中の南の方に位置していた。
そして東の方に大雑把に丸を描く。
('A`)「ここが俺たちが今居る場所
アニジャさんはここで保護されたらしい
俺たちが走ってきた中で瘴気が薄い場所はなかった」
と言って東の丸の北西の方に×を印す。
そして自分たちが通ってきたルートを大体線でひく。
('A`)「もしかしたらもっと北の方に何かあるのかもな」
そう言うとペンを投げ出す。
ブーンとツンは地図の北のほうを見つめ、うなったのだった。
279
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:42:33 ID:N.nBhwUM0
しばらく考えた後ツンが悔しそうに声を出す。
ξ゚⊿゚)ξ「……助けたいけど脱出の手助けはできないわよね」
( ^ω^)「確かに馬車に多分捕虜全員は乗れないお」
('A`)「だから分かったところでなんだという話になるんだよな」
そう悔しそうに言うとドクオは放り投げたペンと地図を片づける。
3人でどうにも手を出せない悔しさからため息をついたのだった。
川 ゚ -゚)「おい、何を暗くなっている
カギの情報を手に入れたぞ、旅のセットを持ってこい!」
( ^ω^)「お、クーおかえりだお」
川 ゚ -゚)「挨拶は今はいい、急げ!! 隣国へ行くぞ!」
その時戻ってきたクーが焦った様子で広げていた荷物をまとめつつ声を張る。
他の3人はその突然の行動に顔を軽く見合わせる。
驚きつつもそのただならぬ様子に従い荷造りを始めるのだった。
280
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:46:10 ID:N.nBhwUM0
慌てて纏めた荷物を持ってきたメンバーは岩山の中歩みを進めていく。
占い師からカギの話を聞いたクーが先頭であった。
彼女自身が聞いたその国では何でも売られているという話をした。
川 ゚ -゚)「裏ルートを通ってそこに石はあるのかもしれない」
( ^ω^)「なんで急ぐんだお?」
川 ゚ -゚)「……ここを治めている人物は二人いる
一人はシィ、私たちも会ったな」
ξ゚⊿゚)ξ「6人長の一人だっけ」
川 ゚ -゚)「もう一人も6人長の一人なんだ
そいつの名前はギコ、シィの兄だ
彼はここの技術の発展を推し進めようとしている」
('A`)「急ぐ理由があるのか?」
川 ゚ -゚)「あぁ、間もなくギコに対して反旗を翻すため
民衆が蜂起するという話がある
魔法使いの地位向上のためとのことだ」
そう言うとクーは占い師から聞いた話をする。
その話を聞いてブーンは真っ先に悲しそうな顔をした。
( ´ω`)「……ひどい話だお」
('A`)「魔力切れまで酷使するか普通?」
ξ゚⊿゚)ξ「それがここでの普通なんじゃない?
あんたの里で魔法が邪道だという普通と同じように」
('A`)「……納得した」
( ^ω^)「でも確かに反乱が起きたら
石を探す余裕なくなるおね」
ブーンは納得したように淡々と呟く。
その言葉にどこか寂しそうに全員が納得したのだった。
281
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:49:23 ID:N.nBhwUM0
クーは一人考える。
全員納得したようだったのでクーはある情報を言わないことを選ぶ。
声にしたら他のみんなは怒るだろう。
そして立ち向かおうとするのかもしれない。
だからこそクーは言わない選択をした。
今はまだ言ってはいけない。
もっと強くなるまでは……。
そのためにはさっさと石を回収してここから離れたかった。
背中の傷がわずかにうずいたような気がした。
( ^ω^)「あ、魔物だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴブリンじゃないのね」
彼らの前には4つ足の獣のような魔物が2匹いた。
唸り声をあげて飛びかからんとしている。
ブーンとツンが真っ先に飛び込む。
その後ろから強化呪文がかけられる。
ブーンの剣がのど元を切りつける。
体の横を切り裂く。
そして切り上げ立ち上がらせた後腹に剣を突き刺す。
ツンの矢が眉間を貫く。
ツンはそのまま横に回り矢を3発放つ。
心の臓などのあたりに矢は深々と刺さる。
それでも魔物は生きていた。
ふらつきながらもブーンたちに敵意を向ける。
そこでロッドをずっと魔物に向けていたクーが呪文を詠唱する。
川 ゚ -゚)「氷よ、彼の者たちに永久の牢獄を与えよ
命を絶ち、永遠に時を止めよ」
その瞬間魔物が凍りつき全く動かなくなったのだった。
しばらく様子を見ていると、絶命したと思しき魔物はやがて霧散した。
中身のなくなった氷像はあっという間に溶けていったのだった。
282
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:51:52 ID:N.nBhwUM0
( ^ω^)「里の近くの奴に似ていたお」
ξ゚⊿゚)ξ「小さかったけどね……ゴブリンより手間取ったわ」
('A`)「うわぁ、強くなっているっていう事かよ」
川 ゚ -゚)「瘴気の影響が強まったのか、地域の差か」
全員は少し考え込む。
しかし考えている暇などない。
ブーンと言う羽音が聞こえた。
恐る恐る振り返る。
川;゚ -゚)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「二人の顔が真っ青に!」
(;'A`)「……ハチの魔物と言う二人の苦手な虫であり毒の代名詞だからな」
そこには巨大なハチの群れがいた。
透明な翅を素早く動かすため、特徴的な羽音が辺りに響く。
身体にはビッシリと細かい毛が生えている。
尖った顎を持っておりこちらの方をじっと見ている気がする。
お尻の針からは毒が滴っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……毒の回復を優先でお願い」
( ^ω^)「頼むお」
('A`)「あ、了解」
川 ゚ -゚)「背後を狙う取りこぼしは燃やすから安心しろ」
そう会話をするとブーンとツンが動き出す。
魔物のハチたちも彼らに襲いかかったのだった。
なお、たまたま近くを歩いていた人は後に「巨大な火柱を見た」と話したらしい。
283
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:55:26 ID:N.nBhwUM0
時は少しさかのぼり、四人がそれぞれバラバラになるのを視界の隅でとらえる。
フォックスがジョルジュのほうを向くと小さな声で話しかける。
爪'ー`)「……ジョルジュさん? まずくないっすか」
_
( ゚∀゚)「……」
(,,゚Д゚)「誰か探し人でもいるのかゴルァ」
固まるジョルジュに先頭に立っていた男から声がかけられる。
男はいかつい顔つきだった。
腰にさすのは古代文字が書かれた細身の剣。
服装は白いシャツに赤いジャケット、そして茶色いカーゴパンツだった。
_
( ゚∀゚)「ん? あ、ギコさん大丈夫です」
(,,゚Д゚)「ならいいんだが……」
ギコとはブーンたちを追って壁際に来た時に出会っていた。
話から偉くてこの町を案内してくれた親切な人物と認識していた。
壁際についたときに話しかけられた時からずっとともにいた。
まさか「ばれない様に追跡しています」などとは言えないこともあり素直に案内を受けていた。
なお、ギコはその後2、3言話した後用があると言ってその場を去った。
ギコが完全に見えなくなったことを確認するとジョルジュが話し始める。
_
( ゚∀゚)「大丈夫だ、フォックス
この場にいないメンバー考えてみろ」
爪'ー`)「……確かに彼なら見失わないだろうけど」
ギコが居なくなった後そんな会話をする。
足元に何かがふれてくる感触がして見下ろす。
そこには一匹の手紙を背負った鼠がいた。
284
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 20:58:33 ID:N.nBhwUM0
_
( ゚∀゚)「ビコーズからだ……あいつら隣国へ向かったらしい」
爪'ー`)「お、じゃぁ行くか」
_
( ゚∀゚)o彡゜「もっちろん」
ジョルジュはそう元気よく返事をする。
そして槍を掲げ元気よく町の外へと向かって進み始めた。
フォックスは短剣を確認した後にその後ろ姿を追う。
ブーンたちには結局追いつけず、ちらちらと魔物が襲い掛かってくる。
ジョルジュは魔物の弱点を的確に槍で貫き、薙ぎ払って倒して進む。
フォックスも滑らかな短剣さばきで敵を退ける。
フォックスは密かに的確に敵の急所に攻撃を当てる彼のことを評価していた。
それこそ「ブーンたちより強いかもしれない」と。
少なくとも火柱を上げるなどという労力の無駄遣いをせず的確な労力で倒しているように感じた。
爪'ー`)「おまえはさ、『なんでこんな立場に甘んじているんだ』とか考えないのか?」
_
( ゚∀゚)「なんだよ突然……思わないね」
ジョルジュは迷いなく言い切る。
そして小さく「少なくとも俺は王子より強くないから」と呟いたのだった。
285
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 21:09:47 ID:N.nBhwUM0
以上で第9話終了です。
いろいろ伏線蒔いています。
たぶん、一応蒔いています。
収穫できたらいいな…。
……いつか登場人物とか基本用語まとめるつもりはあります。
もう一つカギ手に入れたあたりでざっとはまとめるつもりですよ?
ではお目汚し失礼しました。
286
:
名も無きAAのようです
:2016/05/04(水) 22:04:33 ID:oqkD725k0
乙乙
287
:
名も無きAAのようです
:2016/05/08(日) 20:45:24 ID:NmtNiKQ20
読んでみようかな
288
:
名も無きAAのようです
:2016/11/26(土) 09:54:33 ID:O.ySQUa60
読んでるよー
必ず戻って来てくれよな
289
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:12:41 ID:vqpVxaPI0
(=゚ω゚)ノ「……」
ぃょぅはブーンたちが居なくなったことを確認する。
操縦部屋から外を見て、しっかりと。
しばらくあたりを飛んで誰もいないことを確認する。
そして頷くとエネルギー炉からカギを取り出す。
3つの石は相変わらず力強く輝いていた。
(=-ω-)ノ「……妖精ぃょぅが命ず
世界のカギよ――が死した時魔王の元へ――――」
しばらく何かつぶやいていた。
カギはわずかに更に輝いたのち輝きは収まる。
どうやら魔法をかけ終わったらしい。
(=゚ω゚)ノ「……あいつらは弱いからその保険だょぅ」
そう呟くと馬車から出る。
そして馬車を置いてブーンたちが向かった方角へと飛んでいったのだった。
290
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:14:26 ID:vqpVxaPI0
第10話 ヨイの町
291
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:19:57 ID:vqpVxaPI0
その国の城壁をくぐった瞬間、辺りが暗闇に包まれる。
思わず驚きの声を漏らすと暗い路地裏から声が響いてきた。
しかし、発言者の顔は見えなかった。
「ヒヒヒ、この町は後ろ暗い連中が多いからね
魔法を使ってこの明るさに調整しているんだ」
( ^ω^)「光系の魔法かお……珍しいお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」
川 ゚ -゚)「光の魔法は生活に要るが攻撃力が無い
黒魔法使いはは大抵攻撃担当だからな、使わない」
('A`)「でも白魔法の範疇でもないから使用者が少ない」
「お前たちのパーティ魔法使いいるか?
この町で魔法は使わない方が安全だぜ
ヒヒヒヒヒヒヒヒ」
路地裏からの声はそう気味の悪い笑い声を残して去る。
ドクオは何となく不安を覚えた。
新しく買った石の杖をコートの裏側に隠したのだった。
すさまじく人があふれていた。
クーは少し考え思い出したように言う。
川 ゚ -゚)「話を聞いたやつも人身売買もあると言っていた
一応はぐれないようにしよう」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、ブーン聞いてた?」
ツンがそう声をかけるも他の二人がいない。
クーとツンは顔を見合わせた。
川 ゚ -゚)「……どっちがはぐれたことになる?」
ξ゚⊿゚)ξ「……一番お金持っているのはブーンよ」
ツンの言葉を聞いてクーは小さく「こっちか」と呟く。
その後クーはわずかに困ったように笑う。
292
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:24:27 ID:vqpVxaPI0
川 ゚ー゚)「こっちが迷子なら見つけて合流すればいいだけだな
私の家にあったカギは覚えている。青い石の指輪だ」
ξ゚ー゚)ξ「指輪ね、一緒に探しましょう
少なくとも私たちははぐれないように」
そう言うと二人は歩き出す。
そしてアクセサリーショップを見て回っていくのだが……。
足が痛むほど回っても見つからない。
ジュエリーショップは諦め自称情報屋に話を聞いてみる。
しかしどの情報屋も無言で彼女たちが持っていたお金を返すのであった。
ξ#゚⊿゚)ξ「いったいどうなってんのよ!
何でも売っているんじゃないの!?」
川;゚ -゚)「ここまで見つからないか
少し休みたいな」
小さく呟いたクーは辺りを見渡す。
人の流れていく先を見ると酒場があった。
煌煌と輝き、ざわめきが聞こえ栄えている気配がする。
川 ゚ -゚)「あそこに行ってみるか」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちここでは飲んでいいのかしら?」
川 ゚ -゚)「飲まないさ、話を聞くだけだ」
そう言うと酒場へ歩き出す。
近づくだけでアルコール独特のにおいが鼻を突く。
中に入りクーは焼き鳥を注文する。
ツンは少し迷ったがナッツを頼むのだった。
293
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:47:58 ID:vqpVxaPI0
\(^o^)/「お嬢ちゃんがたが来るような場所じゃねぇぞ?」
川 ゚ -゚)「良いじゃないか、探し物が見つからないんだ。情報知らないか?」
\(^o^)/「そこらへんうろついている奴らにでも聞け」
ξ゚⊿゚)ξ「それするとみんなお金返すんだよねぇ」
ツンがナッツをほおばりつつ言った言葉に店主が固まる。
周りで酒を飲んでいた男も固まった。
川 ゚ -゚)「自称の情報屋だったがな」
\(^o^)/「あいつらが金を返すなんていったい何を聞いたんだ?」
川 ゚ -゚)「青い石の指輪を知らないかと言う問いだ」
クーがその問いを発した途端大柄な男が彼女たちの席の隣に大きな物音を立てて座る。
ツンはナッツを相変わらず食べていた。
そして無くなったことに気付いて小さくショックを受ける。
大柄な男はツンをはさんでクーに声をかける。
|::━◎┥「おまえさんあんな代物求めているのか?」
川 ゚ -゚)「売られた家族の形見なんだ、知っているか?」
クーの言葉を聞いて男は考える。
そしてため息をつきつつ言った。
|::━◎┥「お前さんの家が手放さなけりゃな……
今更言っても仕方ないか」
川 ゚ -゚)「その口ぶり……何か知っているのか?」
クーは思わず身を乗り出す。
男はその大きな反応に軽く笑い声をあげた。
294
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:51:48 ID:vqpVxaPI0
ツンは追加のナッツを頼む。
すぐに出てきたそれを美味しそうに頬張る。
|::━◎┥「良い反応だ
知っているさ、どこにあるのかも」
川 ゚ -゚)「教えてくれ」
|::━◎┥「良いだろう、ただし」
そう言うと男はカウンターにカードをたたきつける。
ツンのナッツが乗っていた皿がひっくり返る。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
|::━◎┥「ただじゃ教えられん
これに勝ったら教えてやろう
ただし負けたら私の飲み代を払え」
ξ ⊿ )ξ
川 ゚ -゚)「私の方が勝ったら?」
|::━◎┥「情報を教えよう」
クーが了承の返事をしようとしたのをツンが止める。
心なしか顔に青筋が浮いていた。
ξ#゚⊿゚)ξ「待って、私が行くわ」
川 ゚ -゚)「だが、このカードのルールを知っているのか」
ξ#゚⊿゚)ξ「いいの、そこで見ておいて」
|::━◎┥「威勢のいい御嬢さんだねぇ
いいだろう、かかってきな」
マスターが二人に5枚のカードを無言で配る。
二人はお互いの顔を見つつ手札のうち1枚をお互いに交換した。
クーは呆れつつ周りを見渡す。
295
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 00:55:54 ID:vqpVxaPI0
どの人も酔っぱらっていた。
そして楽しそうな声を上げていた。
外に比べてこの店内は明るいように感じた。
クーはさらに店内を観察しようとする。
階段に目を止めたところでマスターが話しかけてきた。
\(^o^)/「2階は宿屋だ、大抵の奴が外で雑魚寝するから商売あがったりだがな」
川 ゚ -゚)「それで大丈夫なのか?」
\(^o^)/「大抵の奴が財布すっからかんなんだ
こういう風に賭け事したり飲み比べしたりしてな
勝った方も大抵は床で雑魚寝か町へ出ていく」
川 ゚ -゚)「では久しぶりの客になるかもな」
\(^o^)/「金髪の子が勝ったらかい?」
マスターの問いに首を縦に振る。
それを見てマスターは「期待しないでおくよ」と言った。
しばらく会話が途切れるもクーは思い出したように尋ねる。
川 ゚ -゚)「そう言えばここに入った時魔法は使うなと言われた、なぜだ?」
\(^o^)/「優しい人にあったねぇ
理由は単純明快さ」
マスターの言葉にクーは続きを待つ。
その時軽い地響きを感じた。
飲み比べとそれに熱中している人たちは気づかない。
扉の外を見るとそこには3mぐらいの土でできたゴーレムがいた。
ゴーレムの手の中には気絶した人がいた。
クーは冷や汗をかきながらその者が仲間ではないことを祈っていた。
その様子を見ながらマスターは続けた。
\(^o^)/「魔法を使った連中をあいつが何処かへ運ぶからだ」
川;゚ -゚)「……それは恐ろしいな」
296
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:00:19 ID:vqpVxaPI0
時はわずかに遡る。
( ^ω^)「完全にはぐれたお」
('A`)「マジですかい」
人混みの中ブーンの言葉にドクオはそう返す。
ブーンは困ったように見渡した後少し考えつつ尋ねる。
( ^ω^)「えーと、あれに訊いたりしてわからない?」
('A`)「たぶん分からん、と言うか目の前で話されて平気なのか」
( ^ω^)「怖いもの見たさってやつだお
最近はこの恐怖が楽しくなってきたお」
('A`)「変な方向で慣れたな……」
ドクオの言葉にブーンは照れたように頭をかく。
「褒めてないぞ」と言いつつ幽霊を求めて辺りを見渡す。
ぼんやりと立っている霊を見つけ、声をかけようとした。
その時少し先で爆発音が響いた。
(;'A`)「何の音だ!?」
(;^ω^)「攻撃魔法だお! 行ってみるお」
ブーンたちが野次馬に混ざる。
野次馬をかき分けて前に出ると二人の男が杖を構えていた。
どうやら喧嘩しているらしい。
魔法が飛び交う喧嘩に周りのざわめきが広がる。
魔法というよりこれから起こることに怯えている風であった。
297
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:17:39 ID:vqpVxaPI0
('A`)「良かったな、あいつらじゃなくて」
( ^ω^)「まったくだお……ん?」
ブーンはかすかに地響きを感じる。
辺りを見渡すとモーセのように人が道を開けていく一角が見えた。
人が動き道が完成される。
そう感じていると暗がりから巨大なゴーレムが現れる。
形状は土でできた腕が異様に大きい、関節とかはない巨大な人形のようだった。
顔を見ると二つの丸いくぼみと泥団子の鼻のみと簡単な構造であった。
(;'A`)「何だよあれ……」
( ^ω^)「ゴーレムだお、材質は土みたいだお」
ブーンが答えた途端戦っていた二人の間にゴーレムの拳が落とされる。
二人が放っていた魔法が霧散する。
そして腕を二人の頭の高さに持ち上げる。
その場で一回転をすると二人の魔法使いが吹き飛ぶ。
離れ損ねた何人かの野次馬も弾き飛ばされる。
巻き込まれた野次馬を気にすることなく魔法使いを拾い上げる。
そして持ったまま何処かへ歩いて行った。
( ^ω^)「何だったんだお? 魔法使うのがここでは御法度なのかお……?」
(;'A`)「碌なもんじゃない」
青い顔をしたドクオはそうぼそりという。
ブーンが不思議そうに彼を見る。
('A`)「聞きたくないと思ってても言ってやるぞ
あれの原動力は……魔力だ」
( ^ω^)「それなら普通じゃ」
('A`)「ゴーレムに大量の魔術師の霊が憑いていた
魔術師の体に残った魔力が原動力であの中にあいつらは居るんだとよ」
298
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:33:59 ID:vqpVxaPI0
ドクオの言葉の意味を理解した瞬間顔をブーンも蒼ざめさせる。
そして即座にゴーレムを追いかけ始め、それをドクオも追いかけた。
('A`)「どうしたんだよ!」
(#^ω^)「とんでもないことをやっているってわかったお!
突き止めてあげないと浮かばれないお!」
(;'A`)「確かにそうだ、だがやみくもに挑んだところで負けるし
そもそもゴーレムの動かし方を」
( ^ω^)「魔力源を引きはがせば止まるお、掘り出せばいいんだお」
('A`)「だがあいつらは死体に残った魔力だけでなく
それに憑いた霊の魔力で動いてい」
( ^ω^)「霊の方は任せるお」
(#'A`)「そういう事じゃない! 身体を引きはがそうとしたりすると
絶対抵抗受けるから作戦考えろっつう話だ!」
ドクオが怒ったように言う。彼もまた先ほどのゴーレムに怒りを覚えていた。
('A`)「あれは多分魔法を使った魔法使いを狙う
そうすると入った時の忠告とつながる」
( ^ω^)「じゃぁあえて捕まって本部に行って、そこで大暴れもありかお?」
(;'A`)「……多分魔法で抵抗できないようになっているんだろうな
魔法攻撃は少なくとも封じられている」
とりあえず本拠地を知るために後を追いかけ続ける。
ジュエリーショップの横を駆け抜け、路地裏を走る。
賑わいを見せる酒場の前を過ぎ去り、ようやくゴーレムが見える。
あと少しで追いつく、そう思った途端ゴーレムが消えた。
二人は驚きつつも消えた場へ近づく。
(;^ω^)「……消えた?」
(;'A`)「うーん……ワープか?」
( ^ω^)「時魔法使いが使えるやつだおね
魔法使いが関わっているのかお?」
(;'A`)「……分からん」
299
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:39:24 ID:vqpVxaPI0
ドクオが杖を取出し消えたあたりの地面をつつく。
ブーンもそれに倣い地面の上を歩いてみる。
まったくをもって違いが分からない。
( ^ω^)「ゴーレムと僕らの違いは重さだお
重さで反応するのかお?」
('A`)「人集めてこの上に立つってか?
協力してくれるのか?」
( ^ω^)「うーん、ひとまず人が多かった酒場行ってみるお」
('A`)「了解」
その返事を確認してからブーンは歩き出す。
全力疾走した後の荒い息を整えつつ何気なく周りを見る。
落ち着いて見ると武装した人が多くいた。
何かしら全員武器や食料を求めたりしている。
しかもほとんどの者が裏ルートを通るような高級武具を求めていた。
( ^ω^)「きな臭いのは本当みたいだお」
('A`)「まぁ冒険者や傭兵にとっちゃ荒稼ぎのチャンスだからな
と言うか冒険資金あるのか?」
( ^ω^)「食糧費はおじいちゃんからもらったお
ついでに魔物がかき集めたお金は倒した後貰っているお
だからまだまだあるからあとで分配するお」
(;'A`)「……時々魔物の死体を見ていると思ったのはそれか」
ドクオは小さく「しっかりしてんな」と呟く。
褒められたと感じたブーンは自慢げににこにこ笑っていたのだった。
300
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:43:34 ID:vqpVxaPI0
(;^ω^)「……ツンさん?」
(;'A`)「見つかってよかったというべきか?」
二人が酒場に入ると人だかりができていた。
そして仲間の顔を見つけたものの引いている二人の視線の先。
そこにはカード勝負をする仲間と見知らぬ大男がいた。
|::━◎┥「……」
ξ*゚⊿゚)ξ「おらぁ! もう一戦だぁ!!」
|::━◎┥「……まいり……ました」
ξ*゚⊿゚)ξ「聞こえないなぁ、ナッツの礼だ!」
高笑いをするツンとうなだれた身ぐるみがほとんどない大男だった。
ツンはニヤニヤ笑いながら「まだやるか?」と声をかけている。
ブーンとドクオがその光景に固まっているとクーが声をかけた。
川 ゚ -゚)「お前たちちょうど良いところに来た」
( ^ω^)「……宿屋はどこだお?」
\(^o^)/「ここの2階だよ」
( ^ω^)「分かったお……ツン! 今日はもう休むお!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ブーン? だまらっしゃいこいつにはナッツの恨みが」
(;^ω^)「ナッツなら食糧庫にあるお! 僕が買ったお!」
なぜか荒れるツンをブーンが引きずり2階へ連れて行く。
しばらく経ってからブーンが疲れた様子で戻ってきた。
( ´ω`)「ツンに何があったんだお?」
川 ゚ -゚)「カードで勝負していていた
途中お腹がすいたらしくお酒の入った菓子を頼んだ
そのアルコールで酔ったらしい」
(;'A`)「……弱すぎだろ」
301
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 01:53:47 ID:vqpVxaPI0
|::━◎┥「……」
\(^o^)/「珍しいじゃないか、こんなに大負けするなんて」
|::━◎┥「……」
\(^o^)/「たぶんお前オワタぞ、ほらつけの領収書」
男は顔を伏したまま領収書を受け取る。
そこに記された0の数を見た後ため息を大きくついた。
|::━◎┥「……飲み代払ってもらうつもりだったのに」
\(^o^)/「弱そうだと思って吹っかけたバツだと思いな」
大男はオイオイとわざとらしく泣きながら酒を頼んだ。
顔は伏したままなので泣き顔はわからない。
そもそも兜をしているのでわかるはずもなかった。
その様子を横に見つつ何かができるわけではない3人はひとまず宿をとることにしたのだった。
泣いている大男にクーが思い出したように言った。
川 ゚ -゚)「酔いがさめたらで良い、指輪について教えろ」
( ^ω^)「指輪?」
川 ゚ -゚)「あれのことだ」
('A`)「なるほど」
のんびりと会話をしながら2階へあがっていく。
クーに声をかけられた大男はピタッと泣き止む。
そして財布の中身を見た。
\(^o^)/「ツケ払えるか?」
|::━◎┥「……」
\(^o^)/「払い終わるまで働け」
マスターにそう言われた大男は大げさにため息をついたのだった。
302
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:20:20 ID:vqpVxaPI0
次の日店内を掃除する大男の前に情報共有を済ませたクーが立っていた。
大男は手を止めている。
川 ゚ -゚)「約束通り指輪について教えてもらおうか」
|::━◎┥「……あれは、ゴーレムの動力源になっている」
( ^ω^)「どのゴーレムだお?」
|::━◎┥「あの魔術師を捕まえる土でできた」
('A`)「はいダウトー」
|::━◎┥「なぜわかった!?」
('A`)「……あの土くれゴーレムの動力源は知っている」
川 ゚ -゚)「……本当はどこなんだ?」
大男は押し黙る。
どう話そうか迷っているようにも、嘘を見破られ、次の手を考えているようにも見えた。
|::━◎┥「指輪は地下だ」
川 ゚ -゚)「どこの地下だ」
|::━◎┥「詳しく教える代わりに……」
男はそう言うと親指と人差し指で輪を作る。
そして領収書を見せた。
3人が沈黙しているときっぱりと言った。
|::━◎┥「ツケがたまっているんだ」
( ^ω^)「……おぉう」
|::━◎┥「半分だけでも払ってくれたら喋るかもなー」
ダメ男はちらちらとブーンたちを見つつ言う。
ブーンは生真面目に考え込んでいた。
303
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:32:28 ID:vqpVxaPI0
(;^ω^)(どうするお? 一応払えない額ではないお
だけどこれ払ったら食費が圧倒的に心許ないお)
川 ゚ -゚)「ツケはお前の責任だろう?
そもそもこの話は昨日の賭けの結果のはずだ」
クーの言葉に大男は返事を詰まらせる。
どうやらこねる駄々に困ったようだった。
しばらく考えた末に搾りだすように声を出した。
|::━◎┥「指輪の所在を教えたらお前たちはそこに行くか?」
( ^ω^)「行くお」
躊躇いなく答えたブーンに覚悟を決めたように男は頷く。
そしてゆっくりと言った。
|::━◎┥「まず指輪の所在について
これは地下でゴーレムを作る際の魔力として使われている」
川 ゚ -゚)「だから地下にあると言ったのだな」
クーの確認に大男は首を縦に振る。
そして半ば土下座をするように言った。
|::━◎┥「頼む、ゴーレムの生産を止めてくれ!
地下にある研究所でゴーレムが作られているんだ!」
そう言うとゆっくりと立ち上がり3人の方をしっかりと見据える。
嘘泣きをしたりしていた時とは違い、落ち着いた印象を与える声だった。
|::━◎┥「私の名は『歯車王』私はそこでかつて所長をやっていた」
304
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:50:11 ID:vqpVxaPI0
(;'A`)「……偽名っぽい」
|::━◎┥「もちろん偽名だ、昔は『発明王』という称号があったがね」
( ^ω^)「今の発明王の称号は誰のだお?」
|::━◎┥「……今は関係ないだろ?
私が居た頃、研究所では魔力と契約する種族の関係を調べていた」
川 ゚ -゚)「今のところ悪魔との契約が突出している
これ以外は不明だったか」
|::━◎┥「そうだ……だが、あの研究所の研究内容は変わっていった
どうすれば魔力を効率よく使えるか
どうすれば魔力を取り出せるか」
( ^ω^)「取り出す……受け渡しはできるけど
それとは違うのかお?」
|::━◎┥「魔力を抜き出してその蓄えを作るというイメージだ
それがあれば魔力不足の人に入れることもできる」
川 ゚ -゚)「それだけなら聞こえはいいな」
クーの言葉に歯車王は頷く。
確かにそれだけならば魔力不足で倒れる人が多いこの地域にあっている。
|::━◎┥「6人長の一人魔道長ギコの指示だ
産業の推し進めに要るんだとよ
だけど方法が問題だ」
('A`)「……この町で魔法を使った人を実験に使っているのか」
|::━◎┥「このヨイの国は後ろ暗い連中が多いからな
そして余った素材は回収用のゴーレムにしている」
( ^ω^)「酷い話だお……」
ブーンはうつむきながら言った。
彼らにとって必要な情報は大分集まったように思えた。
目的の指輪が地下でゴーレムづくりに使われている。
材料はこの町で魔法を使った魔法使い。
ゴーレムの目的は魔法使い集め。
魔法使いを集める理由は研究とゴーレムの燃料のため。
背景の理解としては上出来に思えた。
305
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 02:58:31 ID:vqpVxaPI0
|::━◎┥「頼む、私には止められなかった、研究施設を破壊してくれ
全てのゴーレムに眠りを……」
('A`)「で、どうやって行けばいいんですか?」
|::━◎┥「……この町で魔法を誰かが使ったらゴーレムが出てくる
そのゴーレムに掴まれ
そうすれば一緒にワープできるはずだ」
( ^ω^)「やっぱりワープかお
なんだかここら辺には時魔法使いが多いお」
ワープは時魔法使いの範疇である。
移動時間のカットと言う捉え方をすれば確かに時魔法使いの範疇だ。
そしてこの魔法はブーンたちの地方ではあまり盛んではなかった
だがここに来てシィ、そして研究施設の何者か。
こんなに会ったのでは多いと感じても不思議ではない。
|::━◎┥「多いわけではない
時魔法使いになるための条件を知っているな?」
歯車王の問いに首を横に振る。
それを見た歯車王は軽く息を吐き出す。
|::━◎┥「この地域ではシィが時魔道長なのもあって有名だが
お前たち、この地域の人間じゃないな?」
(;^ω^)「……」
|::━◎┥「安心しろ、他の地域のことは知っている
他言はしない」
川 ゚ -゚)「それよりも条件とは?」
|::━◎┥「時魔法使いになる条件は複数契約だ」
その言葉にブーンはあからさまに驚いた顔をした。
他の二人はその動揺ぶりに驚く。
306
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:26:30 ID:vqpVxaPI0
( ^ω^)「……シィさんすごいお」
('A`)「えっと事情が分からんのだが」
( ^ω^)「複数契約っていうのは2つの種族にまたがって契約をすることだお」
('A`)「悪魔と幽霊とかか?」
( ^ω^)「他にも精霊と幽霊、精霊と神のパターンがあるお」
|::━◎┥「条件知らなかった割には詳しいな」
( ^ω^)「魔法はいろんな本読んだお
神と悪魔は反発するとか
残りの組み合わせは幽霊と精霊が負けるとか」
ブーンの知識にその場にいた二人は感心したような声を漏らす。
歯車王も小さく「ふむ」と声を漏らした。
|::━◎┥「そのとおりだ
そして向こうがワープが使えるという話である仮説が生まれた」
川 ゚ -゚)「その仮説とはなんだ?」
|::━◎┥「人工的に時魔法使いを作るという実験が成功したのかもしれない
方法は簡単、人と人を融合させるんだ
契約は魂で行う、魂が混ざれば2つの契約を結んだことになる」
3人は回りくどいその言葉を各々で翻訳する。
そして同じ結論にたどり着く。
( ^ω^)「魂ごと二人の人間を一人の人間に?」
|::━◎┥「ゴーレムはその一環だ
一つの入れ物に2つ以上の魂を入れたら混ざるのではという仮説のもとでな」
('A`)「実際は全く混ざらなかったわけか」
|::━◎┥「そうだ、だがその代わり霊体を用いて魔法をはじく効果ができた」
歯車王はそう返事をした後でドクオを見る。
そして「あれ見えるの?」と尋ねる。
ドクオは頷いた。
307
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:34:24 ID:vqpVxaPI0
その返答を聞いた途端歯車王はわずかに下がる。
ちょっとだけビビったのだろうと感じた。
|::━◎┥「すまん、見えるやつというのがまだ二人目でな
助手で一人見えるとは言っていたが」
歯車王は頭を下げる。
そして落ち着いたように続ける。
|::━◎┥「時魔法が使えたということは
おそらく融合を成功させたということだ」
川 ゚ -゚)「キメラの完成という訳か」
( ^ω^)「そもそもなんで融合させたいんだお?」
|::━◎┥「魔力は一説によれば魂に貯蓄される
融合して魂が大きくなれば貯蓄量も増えるのではというものらしい
時魔法は融合の成功のチェックだ」
(;'A`)「ここでらしい……」
|::━◎┥「この時期は『発明王』を教会に返上する手続きでゴタゴタしていてな」
川 ゚ -゚)「……そうだ、頼むのならゴーレムの弱点を教えてもらえないだろうか?」
|::━◎┥「……役立たずで申し訳ない、分からない」
歯車王は「これ以降は知らん」という風に手を広げた。
それを見た3人は顔を見合わせた。
( ^ω^)「さて、どうするお?」
川 ゚ -゚)「行くしかあるまい」
結論にはすぐいたる。
しかし待つというのは性に合わなかった。
どちらかというとさっさと襲撃したかった。
だが、昨日ゴーレムを見た以上魔法を使う人は少ないだろう。
308
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:40:22 ID:vqpVxaPI0
そこまで会話したところでツンが2階から降りてくる。
左手で頭を押さえて辛そうだった。
ξ-⊿-)ξ「……頭痛い」
( ^ω^)「ツン……もうお酒入った物食べるなお」
\(^o^)/「御嬢さんずいぶんたくさん食べたからね」
ξ゚⊿゚)ξ「食べすぎには気を付けるわ」
クーはツンの様子を見て昨日を思い出す。
そう言えばこの料理を勧めたのはこの歯車王だったなと考えた。
そのつながりで会話を思い出す。
どこかおかしいところはなかったのか気になったのだった。
その横でブーンが先ほどまでの会話を説明する。
( ^ω^)「という訳で突撃作戦を考えているお」
ξ-⊿-)ξ「確かにひどい話ね……頭が……」
('A`)「大丈夫か? マスター、水」
\(^o^)/「昨日止めれば良かったね、ここまで弱いとは」
クーは会話に参加せずひたすら考える。
歯車王はゴーレムに反対するいいヒト。
ならば何故材料を知った時ストップをかけなかった?
人間同士を融合する実験を企画段階で止めなかった?
('A`)「回復魔法を使えば一発で治るがゴーレムがなぁ」
( ^ω^)「いっそ使っておびき寄せるかお?」
(;'A`)「……援護頼むぞ? いや、本当に」
ξ゚⊿゚)ξ「抵抗しなければ安全よ、きっと」
考えるクーの横で話は進む。
歯車王の表情はわからない。
309
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:44:24 ID:vqpVxaPI0
覚悟を決めたようにドクオが杖を構える。
クーはある一つの結論にたどり着く。
もしかしたら歯車王は……。
('A`)「じゃぁ行くぞ、『ルオナ』」
川;゚ -゚)「待て! 使うな!!」
クーの制止はわずかに間に合わない。
回復したツンも含めた3人がクーを不思議そうに見る。
川 ゚ -゚)「ドクオ、急いで二人に強化系をつけろ」
(;'A`)「え? あぁ『パワーアップデート』」
先ほどの剣幕に少しビビりつつもブーンとツンに強化呪文をかける。
歯車王は何も言わず彼らを見ている。
マスターは慌てたように言う。
\(^o^)/「おい、兄ちゃん魔法なんて使ったらあれくるぜ」
川 ゚ -゚)「……来るよな、使ってしまったものはしょうがない」
(;^ω^)「いったいそんなに慌ててどうしたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ? 歯車王さんは?」
ツンの言葉に5人は辺りを見渡す。
確かにいなくなっていた。
マスターが「トンズラこきやがったか?」と呟いた。
クーもまた周りを確認する。
確かに誰もいなかった。
そして仲間を見据えると言った。
川 ゚ -゚)「多分あいつは敵だ」
310
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 03:53:38 ID:vqpVxaPI0
( ^ω^)「え、でもあの人ゴーレム止めたいって」
川 ゚ -゚)「研究所というのは研究する場合は計画書が所長まで一応行くはずだ
ましてや人の命を使うなんてものは特に」
(;'A`)「……落ち着いて考えたらゴタゴタしてても止めるよな
人間同士の融合なんて」
クーの言葉を聞いてドクオもため息をつきつつ言う。
ブーンとツンも嫌な予感を感じていた。
川 ゚ -゚)「おそらくあいつがGOサインを出した」
(;^ω^)「じゃぁなんで歯車王は研究所の破壊なんて?」
川 ゚ -゚)「……研究所へ我々を誘っているんだろう」
クーの言葉で沈黙が走る。
少しずつ地響きが聞こえてきた。
もう残された時間は少ないだろう。
ツンがそこで真っ先に発言した。
ξ゚⊿゚)ξ「ぶっ潰してやりましょう、向こうの計画ごと」
( ^ω^)「そうだお! どっちにしろカギは要るお!
ゴーレムも破壊しなくちゃダメだお!!」
('A`)「……せめて防御力は上げておくか」
三人とも言い方は違うが腹をくくったようだった。
クーはそれを見て少し笑う。
川 ゚ー゚)「お前らは強いな、私も覚悟を決めよう」
クーがそう言った途端ゴーレムが店の扉を突き破る。
そして真っ先に魔法使用者であるドクオの方へ向かっていく。
311
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 04:04:00 ID:vqpVxaPI0
\(^o^)/「店が……オワタ」
( ^ω^)「無駄な抵抗はするなお!」
(;'A`)「勝手なこと言いやがって……どっちにしろ足がすくんで動けん」
ゴーレムは彼が特に抵抗しないことを確認すると掴みあげる。
変なぐぐもった声が出たあたり力はなかなかなものらしい。
そしてゴーレムが残りのメンバーに背を向けた瞬間背中に飛びつく。
ξ;゚⊿゚)ξ「つかみにくくて今にも落ちそうね……」
川 ゚ -゚)「肩に手をひっかけるんだ」
(;^ω^)「ひびの中に目が見えた気がするお……」
各々そう言いながら必死にしがみつく。
マスターは戦う覚悟を決めたその様子を呆然と見ていた。
やがて彼らが店を出た後慌てて外に出る。
カウンターの裏手に置いていたものをその手に持って。
そしてそれを掲げつつ遠ざかる彼らに叫んだ。
\(^o^)/「この町の魔法使いに平和を!」
それは使い古したロッドだった。
マスターには彼らに声が届いたか分からなかった。
ただ、彼らは確かに頷いたように見えた。
ゴーレムはワープポイントに足を踏み入れる。
その瞬間飛び込んできた影のことをブーンたちは知らない。
312
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 04:08:26 ID:vqpVxaPI0
爪'ー`)「どうやって追いかける?」
フォックスとジョルジュはブーンたちが消えた場所を呆然と見る。
ジョルジュは何かを迷っているようだった。
_
( ゚∀゚)「……俺な、一つだけ魔法使えるんだ」
爪'ー`)「じゃぁそれ使って同じ手段で」
_
( ゚∀゚)「……できないんだ」
そう言うジョルジュの槍を握る手は震えていた。
フォックスが不思議そうに彼を見る。
_
( ゚∀゚)「俺相手が自分より強いって感じると動けなくなるんだ」
_
( -∀-)「そんな心根治せっていう事で俺を護衛にしたんだろう
でもやっぱり怖いんだ」
フォックスは煙草を出して指で挟む。
闇に覆われた国なので目立たぬよう火はつけない。
爪'ー`)y‐「大丈夫だ、一人じゃない
一人だとL1だったとしても二人以上ならそれ以上だ」
_
( ゚∀゚)「……」
爪'ー`)y‐「ビコーズもいるし、俺も少しなら手を貸せる」
_
( ゚∀゚)「……ありがとよ、『火の精霊よ』」
そこまで言った途端ゴーレムが出現し、ジョルジュを捕まえる。
フォックスは彼を捕まえたゴーレムにしがみつく。
ワープの瞬間小さな妖精もそのゴーレムに飛びついたのだった。
313
:
名も無きAAのようです
:2018/08/06(月) 04:13:35 ID:vqpVxaPI0
以上10話でした。
社畜になった後2年越しに戻ってみたら……。
誰も居なかったとしてもだからこそのんびり更新していきます。
2年前の自分の下書きのひどさに頭を抱え、展開を思い出しつつやっていきます。
では、お目汚し失礼いたしました。
314
:
名も無きAAのようです
:2018/08/27(月) 23:35:14 ID:Q1xDcHdM0
久々にきてみたら更新が!
待ってたよ
これからもマイペースにがんばって
楽しみにしてる
315
:
名も無きAAのようです
:2018/11/03(土) 12:34:50 ID:/efRcZxc0
ちょっと気になったから読んでみたら更新しているじゃないか!
面白いので続きを待ってます!
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