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(‘_L’)は命令が欲しいようです

1名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:42:46 ID:5JotI9w60
遅いです。初心です。長い目でみててください

2名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:43:37 ID:5JotI9w60
その日、いつものように仕事を終わらせてフィレンクトは主人に連絡するために事務所へ帰った。事務所といっても二人そろって密談するだけの隠れ家。その日の出来事をつぶさに報告して、新しく仕事を命じられるために向かう。

仕事がら彼は足音を立てない。
長身でありながら静かに移動することができた。癖のようなものだが、入り口のドアが閉まっているのを確認すると隠密行動に切り替える。ここのドアは常に開いている。

主人が居るときに限って、閉められたりなどしない。壁に伝わる排水パイプをよじ登って、天窓からの侵入を試みた。ここは鍵もかかっていない。事務所には縦横斜めすべてに出口を設置している。
いつでも脱出できるように。

  _
( ゚∀゚)「……」

3名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:44:50 ID:5JotI9w60

窓枠から室内を伺うと、主人の椅子に腰掛ける男がいた。男は床の血だまりを見つめている。視線の先には死体があった。
フィレンクトは咄嗟に主人の元に駆け寄ろうとして、やめた。息を確認するまでもない。死体は首と胴が離れている。

とんっと何かが降り立つ音がして、ジョルジュは振り向いた。机の文鎮でも落ちたのか、絨毯に吸収されるような音だった。
  _
(; ゚∀゚)「なっ……」

(‘_L’)

フィレンクトは主人を無感動に見下ろした。これまでこの男から下された命令を思い返す。暗殺、敵対勢力の排除、護衛。ギャングへの使い。情報屋の始末。
そのすべてをこなしてきた。今日も終わった仕事を報告すると、次の命令のための待機を申しつけられるはずだった。

4名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:46:22 ID:5JotI9w60
  _
(# ゚∀゚)「てめぇ!いつのまに」

ジョルジュは焦った。背後から最も恐るべき男が近づいているのに気がつかなかった。感情が表に出せないので彼にはわからなかったが、この時フィレンクトは混乱していた。ジョルジュは銃をフィレンクトに向ける。引き金を引く前に長い足がそれを蹴り上げた。余裕のある優美な動作だったがずいぶんと重い蹴りで、銃は部屋の隅に飛んでいく。ジョルジュは冷静だった。

突然現れた男の顔を知っていた。続けざまの蹴りを後退して受け流し、携帯していたグルカナイフを顔を狙って投げつける。

先端に重心が集まり、打撃性の大きい山岳兵のナイフ。まともに食らえばそれだけで致命傷になる。だがジョルジュはそれよりも避けようとする動きを狙っていた。
ナイフの後ろで、振りかぶった一撃を浴びせる。大きく殴れば隙ができ、その間に銃を拾うつもりだった。

5名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:48:09 ID:5JotI9w60
  _
( ゚∀゚)「まじかよ……」

数センチずれて壁に突き刺さった。わざとはずしたようだ。ジョルジュはフィレンクトを睨みつけた。だが冷めた目で見つめ返される。わずかな攻防だったがジョルジュの息はあがっていた。向こうは涼しさを保っている。
  _
( ゚∀゚)「……」

(‘_L’)「……」

6名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:49:36 ID:5JotI9w60
(‘_L’)「彼は 何か伝言を残したでしょうか」
しばらく沈黙が降りて、先にフィレンクトが問いかけた。

  _
( ゚∀゚)「伝言……?誰あてにだ」

(‘_L’)「私かもしれませんし、他の誰かに」

さきほどの攻防が嘘のように淡々と話す。ジョルジュは身構えたがフィレンクトが襲ってくる気配はなかった。ボスの情報がほしいのか。しかしジョルジュはここに居た男を会話する間もなく殺している。逆上させるかもしれない。だが口を割らされるのもごめんなので正直に答えた。
  _
( ゚∀゚)「知らねぇな。なにも聞いてないぜ」

言った瞬間、フィレンクトが動揺したのが見てとれる。よほど重要な案件だったのか、呆然と物言わぬ死体に目を向けた。
  _
( ゚∀゚)「……?」

(‘_L’)「……」

7名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:50:51 ID:5JotI9w60
立ち尽くす彼は彫刻のようだ。息するときだけわずかに肩が揺れる。フィレンクトは考えていた。主人からはなにも聞かされていない。死んだ後のことを、命じられていないのだ。思考が停止していた。なにをすればいいのかわからない。歩んでいたレールの先が、突然消えてしまった。

(‘_L’)「それでは私は……、誰に命令を乞えばいいのですか」
  _
( ゚∀゚)「は?」

突然バカな事を言い出した男をジョルジュは見る。表情は変わらないものの、どこか陰っていた。ボスの死に動揺しているのだろうか。それにしてはさっきまでの冷静さがおかしい。ジョルジュは苛立った。

知りうるかぎり最強の男が、雇い主が死んだくらいで不安そうなのが気に入らない。その気になれば自分など瞬殺できるだろう能力を持ちながら、迷子のような言葉はなんだ?

8名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:51:17 ID:FeB9SHY20
こんな時間から
支援

9名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 03:52:05 ID:5JotI9w60
  _
(# ゚∀゚)「じゃあ死ねよ」

そう口から出ていた。そのためにジョルジュはここへ来た。先に殺した男はついで。目標はフィレンクトただ一人。
本来なら挑発の言葉だった。この後どうせ自分を取り戻すであろう男への、憎しみから吐き捨てた。


フィレンクトは混乱していた。29年、生きてきて、彼に指示をくれるものがいなかったのはこれが初めてだ。どの主人も死んだ時のことを教えてくれたものは居ない。たいてい譲られるか、代替わりでなどで仕えていた。ジョルジュは主人の身内でも、雇用の責任者でもない。全くの第三者だった。それでもその言葉は フィレンクトの耳にすっと入る。

フィレンクトはその時従うべき命令を探していた。ジョルジュは彼に悪態をついた。彼の放った言葉を命令と認識し、フィレンクトは胸元からリボルバー式銃を取り出して、身体を硬直させるジョルジュの前で自らの頭を撃った。

10名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:09:53 ID:5JotI9w60
薬品の匂いがして、目を覚ました。見慣れた病室の白い壁でなく、薄汚れたつぎはぎ布のカーテンが目に入る。身体を起こそうとして上半身がベットに固定されていた。頭を触ることもできないが、なんらかの処置がされていることはわかる。
覚醒するのに脳波とリンクしているのか、チューブにつながれた先の機器が、機械音を鳴らす。さほど大きい音でもないのに、すぐに足音がこちらへ向かってきた。

('、`*川「起きたんだ」

女はフィレンクトの脈拍をはかり、身体をくまなくチェックする。横腹を撫でられ、古い傷跡に爪を立てられたがされるがままにおとなしくしていた。

('、`*川「なんだ。つまんない。怒らないの?」

そうのぞき込んだ顔には、好奇心と、なに かしらの侮蔑がある。どこかで見たことのある表情だった。

11名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:10:38 ID:5JotI9w60
「彼は、どこに」

('、`*川「だれのこと?」

(‘_L’)「私を、ここに連れてきた人」

女はにやっと笑った。形容しがたい笑みだ。

('、`*川「じきに来るわ。……アンタもう少しビビりなさいよ。脈がほとんど一定じゃない」

それきりなにも聞こうとしないフィレンクトの耳に、女は楽しそうに呟いた。


「ここはアンタのボスが潰したくて潰したくてたまらない奴らの住処よ」

12名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:11:31 ID:5JotI9w60
数分して、ジョルジュがドアを開けた。
('、`*川「ごゆっくり」

なにが嬉しいのか、機嫌よさそうに女が部屋を出て行く。
  _
( ゚∀゚)「……」

ジョルジュは、フィレンクトに繋がれている拘束を一本づつ外していく。ようやくフィレンクトは身体を起こすことができた。向かい合おうとするとがちゃん、と引っ張られる。ベッドの手すりに、手錠で片腕を括られていた。フィレンクトは座ったまま男の言葉を待つ。ジョルジュはしばらくフィレンクトを前に長考して、重そうに口を開いた。
  _
( ゚∀゚)「陥れようなんざ考えるな。知っていることはすべて話せ。いいな?」

(‘_L’)「はい」

13名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:11:59 ID:ygYtUwqw0
見てるよ

14名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:12:48 ID:5JotI9w60


ジョルジュはフィレンクトの主人の過去や、彼の行っていた事業、関わる者たちを聞いた。フィレンクトはすべてに答えた。けれど彼の知っているものなど微々たるもので、ジョルジュの期待していたものではない。フィレンクトは仕事の時に写真を見て覚え、記憶だけを頼りに 人物を探し出して始末する。それは膨大な記憶量になるため主人からよけいなことは忘れるようにと命令されていた。した、ことはうっすら覚えていても、日時や誰かなどとうに忘れている。

「いままで殺した奴らを覚えているか」

「いいえ」

ジョルジュはフィレンクトを殴りつけた。
渾身の力を込めたのに身体は揺らいだだけだ。
  _
( ゚∀゚)「……」

(‘_L’)「……」
  _
( ゚∀゚)「……なんで死のうとした?都合の悪い真実でも隠すためか?」

15名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:13:37 ID:5JotI9w60
それはジョルジュの最も聞きたかった疑問だった。後始末をするなら、彼が死ぬよりもジョルジュが死ぬほうが早い。あの戦闘で人間離れした実力を知っていた。フィレンクトの行動が理解できなかったし、気味が悪かった。冷徹な殺し屋が、目の前で頭を吹っ飛ばしたのだ。奇跡、ほんの 少し銃口がずれていたらこの世には居られなかった。


(‘_L’)「……あぁ」

思い出したように呟いた。表情のなかった顔が少しだけ不思議そうに、ジョルジュを見る。年齢に釣り合わないあどけなさだった。

「あなたが言ったから」

16名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:14:45 ID:5JotI9w60
('、`*川「殺さないの?」

フィレンクトの部屋を後にしたジョルジュに、ペニサスはそう声をかけた。
  _
( ゚∀゚)「……」

('、`*川「いま殺さないと、厄介になるよ。あいつ、耐性あるの」
  _
( ゚∀゚)「……耐性?」

ペニサスは小さく笑った。やだ、聞かないでよ。あたしが言うのよ。

('、`*川「拷問の跡。訓練では済まないような耐性。殺すんならあたしにさせてね。うんと苦しめてあげる」

それでもジョルジュは 沈黙している。
彼の態度にじれて、ペニサスが煽った。

('、`*川「アンタだって、いもうと殺されたじゃない」

ジョルジュはペニサスを睨む。彼女を無視して、歩みを続けた。方向はフィレンクトの部屋とは間逆で、ペニサスが怒鳴ったが気にとめないフリをした。その方が彼女を苛立たせられる。

17名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:16:29 ID:5JotI9w60
フィレンクトは気持ちの悪い男だった。
その存在は半ば伝説じみていて恐れられている。あの男に挑んだものはすべて消され、ターゲットにされたものは上手に事故死した。喉の奥から笑いがでてくる。

苦かった。あれほどジョルジュが望み追いかけた悪鬼は、見捨てられた子犬ような眼をしている。

なぜあのような行動にでたのか、問いつめると命令がなかったから。そう言った。ジョルジュの乱暴な言葉が命令系だった。
それだけだ。混乱したフィレンクトはすがるようにその指示を全うした。
実に狂っている。ジョルジュは病室でフィレンクトを試した。本当に彼はそのような価値観を持っているのか。ボスを崇拝するあまりの後追い自殺ではないのか。

フィレンクト自身の持っていた銃を渡して、もう一度死ねと言った。彼は恭しくそれを受け取り、しっかりと口にくわえ込んだ。一度失敗しているので、確実な方法でやり直す。迷うことなく引き金をひいた。

通常なら声帯から弾丸が通って頭蓋にまで貫通し間違いなく死んだだろう。銃には弾が入ってなかった。カチ、カチ、と音がして、すまなさそうにフィレンクトが言う。

(‘_L’)「弾丸が入っていないようです。弾をもらえますか?」

18名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:18:14 ID:5JotI9w60

慈悲心を持ったわけでも、哀れんだわけでもない。あの男は間違いなく、己の敵だ。
復讐を忘れてなかったはずだが、ジョルジュはフィレンクトの存在をもて余している。

この世の常識を身につけ、傲慢であれば十分だった。仲間たちの多くは痛めつけて生まれてきたことを後悔されるようなやり方で処刑することを望む。

それは憎む相手の、残忍な手口に対しての報復だからだ。フィレンクトは非道だが残忍ではない。冷徹だが汚くない。見本のようにきれいな殺しかたをする。だから彼に見合うのは絶対の死。どれほど魅力的な情報と交換してもそれを変えるつもりはない。なのに彼 自身が、それに恐怖していない。

どちらかといえば、死ぬことよりも放っておく事の方が不安そうに見える。事実、敵(フィレンクト不安から主人に近く認識しているがジョルジュにそのつもりはない)から受け取った銃で死のうとした。怯え、懇願しなければ裁いたことにはならず、溜飲も下がらない。

さきほどのペニサスの言葉で痛めつける案も立ち消えた。殺してくれと頼むほどの拷問は、時間がくれば死んでしまう。フィレンクトには、死は主人が下す命令の一つにすぎないのだった。
  _
( ゚∀゚)「奴は凶器だ……」

問題はどのようにしてそれを裁くべきか

19名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:30:56 ID:5JotI9w60
数日がすぎた。相変わらずフィレンクトの様子を見に来るのはあの女だけで、ジョルジュは姿を見せなかった。ペニサスはことあるごとにこれから先の捕虜への暗い未来を語ったがフィレンクトは動じない。それを決定するのはジョルジュで、すでに彼は死を命じられている。だが道具がなかった。

弾の入った銃を引いた時点で、もういいとも言われている。もっと何か言うべきことはなかっただろうか。主人の命は終わった仕事はすみやかに忘れること。今まで気にしたことがなかったので覚えていることが少ない。ジョルジュは自分を使ってくれるだろうか。時々他人と組むこともあって賛辞されることは多々ある。彼は自分の主人ではない。

主人を殺した。けれどフィレンクトは何の命令も持たされなかった。その後どうすればいいのか自分で判断できない。誰に従うべきなのか。ジョルジュの訪れが待ち遠しかった。もう一度命じてほしい。
今度こそ、上手に死んでみせるから。

20名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:32:13 ID:5JotI9w60


突然ノックされることもなく、ドアが開かれた。見知らぬ男。男はフィレンクトの側にくると、手錠を外した。


(‘_L’)「……」
(´・_ゝ・`)「……」

男はフィレンクトの腕を強く掴むと、強引に部屋の外へ連れ出す。少し迷ったが、鍵は本来ジョルジュが持つものだろう。彼の許可のうえだと思い、ついて行く。
ねじれた階段を上って、ついた先は屋上だった。建物はいくつも後から継ぎ足される形で増築されている。フィレンクトのいた部屋はおもしろい外観の建物だった。
それでここが市街地だとわかる。スラム化の一歩手前。フィレンクトでさえ入るには案内人が必要だった。

「おまえ死に損なったんだって?」

男は下をのぞき込みなが言う。フィレンクトも下を見た。工事現場だと思ったが、
手入れされた地面、墓石。墓地だった。

(´・_ゝ・`)「ジョルジュが助けたなんて思ってないよな?あいつはとことんおまえを恨んでるんだから。……俺もな」

(‘_L’)「……」

21名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:33:15 ID:5JotI9w60
フィレンクトは何も言うことはない。雑談するような能力は持ってない。ジョークのひとつも知らなかった。それでもなぜ男がここに連れてきたかを察する。

(´・_ゝ・`)「俺の手で殺せるなんて……神に感謝するぜ……なぁ悪魔、いつもなにを考え て殺すんだ?俺は早く天国にいくよう祈ってる」

男はお世辞にも体格がいいとは思えなかった。歩き方から、体術にも通じているようには思えない。軸のぶれた歩幅。だからフィレンクトは殺意は感じ取っていても、警戒はしていなかった。余裕たっぷりに、男が笑う。銃を取り出した。まるでこの世のすべてがそれにひざまずくように、優越の眼でフィレンクトを見る。

焦点をあてるふりをして、腕、肩、足、頭にふらふらと銃口をむける。男はフィレンクトの、絶望する姿が見たいのだ。殺してしまってはいけないのだろうな。まだジョルジュは命令していない。ならフィレンクトは独断を許されない。長年の染み着いた考えだった。この男は恐らくジョルジュの部下。本来ならば自分に向けられる銃は殲滅しなければならない。だが今の状況で、男を殺すのはためらわれた。保身のためではない。主人の気に障ることをしてはいけない。考えるフィレンクトは反応がなく、男が怒鳴った。

22名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:34:25 ID:5JotI9w60


「さっさと命乞いしろよ。いまなら頭にぶち込んでやってもいいんだぞ。それとも先にそっちに突っ込むか?」

銃口が、フィレンクトの股間に向けられる。男として、背筋が凍るほど恐ろしい瞬間のはずだった。

(‘_L’)「困ります。あの人の、命令がないので」

フィレンクトが動いた。だが階段にも、男の側に近寄るわけでもない。男は背を向けるフィレンクトの足下に威嚇射撃をした。弾が数センチ横のコンクリートにめり込む。

「おい……ふざけるなよ。ほんとに撃つぞ」

それでもフィレンクトは止まらなかった。
囲むような壁はない。銃口をようやくフィレンクトの背中にむける。男は、歩みは一度止まると思った。数歩先は落下しかない。振り向いて、戸惑う姿に連射してやろうと。だがフィレンクトは屋根を踏むように空に足を落とした。支えを失って、彼の身体は簡単に地面に落ちていく。

(´・_ゝ・`)「ハハハ……地獄に落ちろ」

23名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 04:39:06 ID:5JotI9w60
一旦ここまで

>>5の前に

_
(; ゚∀゚)「んな!」

それなのにフィレンクトは向かってくるナイフを靴のかかとで受け止めた。先ほどから足技がすばらしい。感嘆するまもなく、ナイフはジョルジュに跳ね返ってくる。


が入ります

24名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 08:06:32 ID:D8ZVCz220

面白そうだけど改行入れてくれ

25名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 12:22:35 ID:.LZph7Gk0
乙続き楽しみ

26名も無きAAのようです:2014/06/18(水) 15:06:32 ID:h.pgp0HE0
いいねいいね。フィレンクトらしいストーリー。
応援してる。

27名も無きAAのようです:2014/06/19(木) 12:20:40 ID:ituE3gmY0
これほんとにオリジナル?

28名も無きAAのようです:2014/06/20(金) 07:12:29 ID:qEjEnUIs0
面白そうだな

29名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 11:42:37 ID:r.1uBdXk0


_
( ゚∀゚)「ここだ」

古い木造の建物だった。階段をあがってすぐの部屋。何も言わずに立っていると、開けるように促される。手の中の鍵が重く感じた。自分で鍵を開けるのは初めてだ。

何もないワンルームを想像していたが、室内は物が溢れている。テーブル、椅子、生活雑貨、テレビ、ソファ。玄関には山積みになった古新聞。観葉植物が黄色くなって放置されている。思わず隣のジョルジュを伺った。

今まで与えられてきたのはホテルの一室のような空間ばかり。すでに誰かが住んでいる場所へ、どうして連れてこられたのかわからない。カーテンを開けると太陽が部屋全体に差した。

埃が人の移動で所どころに舞っている。
珍しいもののように、フィレンクトは見ていた。

30名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 11:43:59 ID:r.1uBdXk0


外観からは予想できないが、中は広い。扉で区切られた部屋がリビングに面して二つもある。そのうちの一つ、物置のようになっている場所をフィレンクトは貰った。

「そこらにあるものは好きに使え」

指定された部屋。細々とした物に囲まれ不思議な気分になる。雑多な所だが、けして汚いわけじゃない。ただ物が、まるで組み合わせられたように隙間無く置かれているので、それがよかった。フィレンクトも、その一部になりたい。

病院とも呼べないようなあの場所から、土地勘を掴ませないために目隠しで車に乗って運ばれてきた。身一つで何も持たず、着ているものさえ貰ったものだ。手首には手錠はない。チップの入った首輪もない。

31名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 11:46:00 ID:r.1uBdXk0

チップの入った首輪もない。繋がられてい
ないと不安になる。それでもここに連れられてきた。きっと放り出されるわけではないはずだ。
積まれた荷物を前にしてそう考える。
フィレンクトの思考は一つしかない。
使われるか。捨てられるか。

「おい、手伝え。飯の支度だ」

ジョルジュの声が背中にかけられるまで、その場で考え続けた。

32名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 11:47:18 ID:r.1uBdXk0

敵に傷を与えてはいけない場合。戦闘になってはいけない場合。逃げることを先行する。

歩きながら距離と高さを計っていた。あの建物は背が低い。密集した建築で、隣の家との足場もある。走ってはとっさに撃たれる可能性があった。

ゆっくりと、追いつめられる所まで移動する。それから下を眺めて、落ちた。張り巡らされた電線がちょうど真下にあったので、蹴って方向を変える。

向かいのベランダの手すりまで飛んで、身体の勢いを利用し反転。電球の割れた街灯にしがみついた。するすると降りて、屋上の男が下を覗くまえに逃げた。

場所に恵まれていた。高層のビルだと、こうはいかない。捕らえられてから久しぶりに身体を動かした。すこしだけなまっている。

このままあの病室に戻ろうかと思ったのだが、街中には銃を持った自営団があちこちに居た。姿を見られたら、撃ってくるだろう。手配はされたことないが、フィレンクトの顔は知れ渡っている。

苦労して隠れながら、主人に貰った部屋に一度帰った。薄いパネルに手をかざす。認証で簡単に入れる。以外にも部屋は荒らされていなかった。

33名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 11:48:38 ID:r.1uBdXk0


主人が死に、フィレンクトが捕らえられて、誰も訪れていないようだ。

フィレンクトは主人からのメッセージを探した。死後、彼の縁者や後継者に従うような命令がないか期待していた。

だがフィレンクトに向けてのものは何もない。主人の死により、特定の誰かがフィレンクトを引き取るような話もなかった。

困った。これでは命令の順位は、ジョルジュただ一人になってしまう。彼は命令をくれないのに。ジョルジュはフィレンクトを捕虜として扱う。尋問くらいしか、与ええられるものがない。それ以外はずっと病室でぼんやりしている。

放置されるのには慣れていたが定期的に仕事がなければ困る。意識がさび付くのだ。思考は急に切り替えられない
長らく動けないでいる。

34名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 11:51:36 ID:r.1uBdXk0
すると、そのまま根が張り付いたように固まってしまう。与えられる仕事こそが、フィレンクトには飴だ。
たとえ内容がどんなものでも。


(‘_L’)「これは?」
  _
( ゚∀゚) 「空豆だ」

かご一杯のさやのついた大きな豆。一つ一つを慣れた手つきでジョルジュは向いていく。みよう見まねでフィレンクトも同じようにしてみるが、どうしても手つきはたどたどしい。ジョルジュがふっと笑った。

「殺す方が上手だな」

返答を求められたのではない。だから何も答えなかった。

結局フィレンクトは戻る場所がここ以外になかった。主人の仲間には会ったことがない。常に直接、指示を下されていた。命令を下す人間が他にいないので、理想といえないジョルジュの元へ帰るしかなかった。

35名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 11:54:59 ID:r.1uBdXk0

ジョルジュは簡単にフィレンクトの帰還を許した。そもそも連れ出したのはフィレンクト憎しで殺そうとした男であり、手錠の鍵の管理も悪かった。

逃亡する能力も資金も十分にある男が、主人欲しさに帰ってくる。フィレンクトという存在に、ジョルジュは吐き気を催した。


沈黙は常にそばにある。だがフィレンクトが残念だったのはそれきり会話が途切れたことよりも作業が終わってしまうことだった。

(‘_L’)「他に、することはないのですか」

豆を向いてしまえば、それをジョルジュがもっていく。

「にんじんを刻んでくれ」

そう言って並べられた。ジョルジュは豆を洗っている。手にとって、戸惑った。包丁はある。皮むきもある。それをどのように使うのか予想してみるが、当たっているのかわからない。

てっきりジョルジュと同じことをするものと思っていた。会食でなんどかシェフが目の前でふるうのを見たことがあるが、それは下拵えでない。

材料も違った。包丁はナイフと同じ扱いでいいのだろうか。だが、形が違うから使い方も異なるはず。頭の中で次にとるべき行動を必死に探していると、ジョルジュがまた笑って人参の皮をむき始めた。

それから小さく切っていく。フィレンクトは安堵した。見せてもらえるなら同じことができる。次に渡されたタマネギを皮むきで向こうとして、とうとうジョルジュは爆笑した。真剣な顔つきで行うフィレンクトが滑稽で。

36名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 13:52:24 ID:r.1uBdXk0

('、`*川「感情って使わないと動かなくなるの。知ってた?」

勝手をした部下に厳しく処分を言いつけてジョルジュは不機嫌だった。彼の心配がフィレンクトによる返り討ちで、飛び降りた後も無事に生きていることを知った男はうなだれ、ジョルジュの言葉を聞き入れる。

('、`*川 「なんで殺さないのよ。まさかアンタ、飼うつもりじゃないでしょうね」

フィレンクトの願いそのものだったが、ジョルジュは首を降った。簡単に主人を鞍替えするものは、簡単に裏切る。今はフィレンクトの属性を理解するものが、ジョルジュ以外にいないだけだ。

('、`*川 「……もしも後悔とか、反省や償いを期待してるんなら無駄もいいとこよ。あれはそんなことできない」
_
( ゚∀゚)「そういえば……お前見ただけで拷問痕だとよくわかった な。ひどい怪我でもないのに」

「何か知ってるのか……?」

('、`*川「ちゃんと殺す?」

「生かしておくつもりはない」

本音を言った。ペニサスはジョルジュの眼をみて、その決意を確認する。

37名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 13:58:52 ID:r.1uBdXk0

('、`*川「引き出せるものなんてないでしょ。なのに自分のとこで面倒みるなんてどういうつもり?」
_
( ゚∀゚)「お前、簡単に殺したほうがいいと思うのか」

('、`*川「だって生きてたほうが困るじゃない。使えない大きな道具は処分しないといつ向かってこられるか分かんないわよ。今はまだいいけど、アンタに不満が集中したらどうすんの」

_
( ゚∀゚) 「信用があるうちは平気だ。でかい失態さえ犯さなけりゃな」

_
( ゚∀゚)「俺はあいつに絶望してから死んでほしい」

魚を食ったことがない者に、絶滅を告げて
も意味がないだろう。痛みを与えても、耐えることに意義を見つけるかもしれない。

使い捨ての鉄砲弾にしても、恐らく完璧にこなして帰ってくる。殺すだけなら簡単にできた。難しいのは、フィレンクトを心から後悔させること。罪の意識のないものに、道徳をとくつもりはない。必要に思われてから捨てる。そのあとに殺せばいい。

('、`*川 「無理だと思うけど」
_
( ゚∀゚) 「簡単に言うな。それでも人間だ。なんらかの心ぐらいはあるだろ」
「ないわよ」

「あんな人形に、意志なんてあるわけないじゃない」

そう、吐き捨てた。

38名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 14:06:42 ID:r.1uBdXk0

噂よ。噂。そもそもあんな異常者、訓練だけでそうなるわけじゃないって予想くらいつくでしょ。どう育てたら完全に依存する人間ができあがると思う?

白い部屋に閉じこめるの。くわしくは知らない。ただ閉じこめて、自我を完全に奪ってから人格を形成するの。さっき言ったでしょ。感情を持ち主にコントロールされるから、思考ひとつが命令に従うようになってるんだって。

都合のいい人形よ。ロボットのほうがまだかわいげがあるかもね。いくらでも設定を変えられるんだもの。とにかく染み着いた性格みたいなもんよ。

変えられるわけないじゃない。フォックスがどこからあれを手に入れたのか知らないけど、あれひとりでこの辺りをまとめられるほどのもんなんだから。人間の三大欲求も低いの。性欲なんてないんじゃない。

だいたいあんなもの作るなんてろくでもないわ。変な奴らに目をつけられるまえにさっさと処分したほうがいいわよ。

39名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 14:21:22 ID:r.1uBdXk0



('、`*川「何してんの」

芋の皮を向いていた。見てわかることなので説明はしない。ペニサスはゆっくりと手つきの悪いフィレンクトの手元をみて、
「ふうん」と呟くと

('、`*川 「何作るの?」そう聞き直す。

(‘_L’)「ポトフを」

朝食を作るのは難しい。食材を切って火に通して食器に盛りつける。調味料の数も多いうえに組み合わせが限られるので合わないと美味ではない。ジョルジュから教わったものはオーソドックスで簡単なものだ。好きなように作っていいと言われたがそれが難しいので教わったとおりの順番で献立を作っている。

('、`*川 「これから何するの」

(‘_L’)「洗濯と拭き掃除を」

ジョルジュがいない間、与えられたのはこれだけだった。どの部屋も好きに移動を許されている。

40名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 14:27:35 ID:r.1uBdXk0
時間を埋めるように作業するのはフィレンクトには喜びだった。だがペニサスはその答えを聞いて一気に機嫌を損ねる。

('、`*川 「あの部屋にも入っていいって?」

(‘_L’)「はい」

('、`*川 「なにそれ。本気で罪悪感でも煽るつもり……」

ペニサスはぎっときつく睨んで言った。フィレンクトに会話の脈絡も、彼女の怒りの理由も知らない。

('、`*川 「あそこはアンタなんかが入っちゃだめよ。あたしだって駄目なんだから」
その言葉を守るつもりはなかったが、

(‘_L’)「はい」

そう答えた。

ペニサスはジョルジュの家に移ってから、
これまで以上にフィレンクトの元に来る。

明確な理由はないようだ。家事をするフィレンクトのやり方などに口をだしては怒る。彼女が来ると時間を大きくとられる。それでもジョルジュの帰りは遅いので、
終わらせることはできた。

('、`*川 「トルティーヤ食べたい。作って。」

冷蔵庫の食材は限られている。だが彼女はジョルジュに近しいようだし、家に彼女が居ることをとがめられたことはなかった。何度も作ると勝手もわかるようになる。

食材の味しかしない料理だったが、最近は混ざった味というものもわかってきた。

(‘_L’)「どうぞ」

一口たべて、なんとも言えないような顔でペニサスが言う。

('、`*川「ジョルジュそっくり。」

褒められたのか、そうでなかったのか区別がつかないが、模倣はできたということだろう。

41名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 14:45:24 ID:r.1uBdXk0
('、`*川 「なにか話して。なんでもいいから」
食べながら彼女がいう。
フィレンクトが困惑するのはこういう時だ。すべての仕事終えて、することがないので逃げることもできない。

なんでもいいと言いながら、フィレンクトが一日の行動を言葉にすれば怒られる。彼女の求めるものがわからない。

(‘_L’)「何を話せばいいのでしょう」

('、`*川 「最近あったおもしろい話なんてどう?」

(‘_L’)「雑巾を縫いました……」

('、`*川 「なにそれ。ふざけてんの」

針を使って布を紡いでいくことを、好ましいと思った。初めてのことばかりで、慣れないものが多かったが、またやりたいと思のがそういうことだろう。だがフィレンクトの感動はペニサスに伝わらなかった。

('、`*川 「じゃ、フォックスについて聞かせて。覚えているものでいいから」

覚えている。主人のすべてを記憶していた。だが彼の行っていた陰謀は知らない。
フィレンクトが知ることではなかったからだ。

(‘_L’)「あの人に似ています」


('、`*川 「誰のこと?」

(‘_L’)「私を使ってくれない人」

('、`*川「……ジョルジュのこと?」

フィレンクトはうなずいた。

('、`*川 「……とんでもないこと言ってくれるじゃない。一体どこが似てんのよ」

(‘_L’)「話かけるところが」

('、`*川 「……アンタに?」

もういちど、フィレンクトはうなずいた。
ペニサスはあきれたがフィレンクトはそう思っている。

ジョルジュは主人のごとく振る舞うことはないが、家具のように存在しようとするフィレンクトに何度も話かける。

最初は一人言かと思ったが、まれに意見を求められるので会話だと気がついた。
主人にもそんな所があった。

これまでとはほとんど違う様子の新たな主人で、仕える期間も短かった。


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