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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。

1 ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 22:13:10 ID:6CCOWjXw0

どーも作者です。

新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。

半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。


話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。


この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。


まとめ

ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/

大変お世話になっております。

.

646 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:21:38 ID:8BYwryE20

(*´_ゝ`)「圏内だから殺せないぞー」

ツンを抱きかかえたまま必死に止めるブーン。

(;^ω^)「先輩も挑発しちゃだめだお!」

川#゚ -゚)「ならば私が!」

ブーンとツンの横をすり抜けようとしたクー。

既に手に持った槍は青く光っていたが、後ろからショボンが羽交い絞めにした。

(;´・ω・`)「く、クーも落ち着いて」

川#゚ -゚)「あのような姿をした者達に往来で名前を呼ばれて落ち着いていられるか!」

(;´・ω・`)「それはぼくもそう思うけど!とりあえず武器はダメだから!」

狭い路地の中央で塊のようになる四人。
 _
( ゚∀゚)「えっと……なあドクオ、これ、どうしたらいいんだ?」

('A`)センパイハセンパイデヤッパリセンパイダッタカワラナイッテスバラシイナア
 _
(;゚∀゚)「なんかこっちもダメか。
え?じゃあ俺が収拾つけなきゃいけないの?」

(´<_`;)「なんか…スマン」
 _
(;゚∀゚)「うを!変態二号」

逆側から回ってきたもう一人が、すまなさそうに首を垂れつつ近寄ってきた。

(´<_`;)「いや変態じゃ……変態…だよなあ……この格好」
 _
( ゚∀゚)「お!こっちは話が通じ……」

.

647 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:22:25 ID:8BYwryE20

( <_ ;)「だからおれは反対したんだ。
だけど兄者が一泡吹かすならインパクトが大事だと言いだして。
それなら前にゲットしたこの防具が…とか、
前に店で見た下着が…とか、
そういえばあんなブーツも…とか言い出して、
そしたらやっぱり名乗りもしなきゃだよなとか言い出してきて、
おれはいやだって言ったのにインパクト勝負とか言い続けて、
そしたらなんかおれもそうなのかなとか思うわけで、
だから……」
 _
(;゚∀゚)「なんかこいつもダメだったー!」

(*´_ゝ`)「ツーン―ちゃーん。クーうーにゃーん。あーそーぼー」

ξ#゚⊿゚)ξ
 「殺す!」
川#゚ -゚)「

(;^ω^)
 「ダメ―!!!」
(;´・ω・`)

結局全員が落ち着いたのは、たっぷり三十分後だった。



.

648 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:24:45 ID:8BYwryE20



(*)´_ゝ`)「殴られた」

(´<_` )「それで済んでよしと思え」

(*)´_ゝ`)「圏内なのに…」

兄弟を着替えさせ、街外れの丘まで連れてきた六人。
ツンとクーはまだ少しあらぶっているが、なんとか周りが抑えている。

(*)´_ゝ`)「一緒にやったのになんで弟者は殴られなかったんだ?」

(´<_` )「殴られる前に必死に謝ったからな」

(*)´_ゝ`)「弟者ばっかりずるい―。ひいきだ―」

ξ#゚⊿゚)ξ「まだ、」
川#゚ -゚)「足りないのか?」

(*)´_ゝ`)「ごめんなさい」

(´<_`;)「もうしません」

(;^ω^)「と、とりあえず話を聞いて」
 _
(;゚∀゚)「ああ、それが良いな」

正座をしている二人を囲む様に立つ六人。
クーを抑えるのはジョルジュが変わり、ショボンが二人の正面に立っている。

(;´・ω・`)「えっと…、なんでこんなことを」

(*)´_ゝ`)「一泡吹かせようと思って」

(;´・ω・`)「その為だけに!?」

(*)´_ゝ`)「うん」

('A`)センパイハセンパイダナア

.

649 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:25:42 ID:8BYwryE20

(;´・ω・`)「はあ……」

ショボンの口からこぼれたため息。

(;´・ω・`)「先輩はともかく、テイさんまで…」

(´<_`;)「止められなくてスマン」

(;´・ω・`)「というか、一緒にやってましたよね。
なんか他人事みたいな空気を醸し出してますけど」

(´<_`;)「…実はちょっと楽しかった」

(*)´_ゝ`)「さすが弟者。我が弟」

にやにやと笑うケイ。
それに答えてはにかむように笑うテイ。

それを見て、全員が同じタイミングでため息をついた。

「はあ……」

(´・ω・`)「まったく……。とにかく、もうこんなことは止めてくださいね」

( ´_ゝ`)「はーい」

(´<_` )「もちろん」

ショボンの強めの言葉に素直にうなずく二人。
大きなため息を一度つくことによって少し落ち着いた残りの五人も、
なんとか気持ちを切り替えた。

ξ゚⊿゚)ξ「次は」

川 ゚ -゚)「ありませんから」

( ´_ゝ`)「はーい」

( ^ω^)「ものすごく」
 _
( ゚∀゚)「いやな予感がする返事の仕方だ」

('A`)コノヘンジノシカタッテコトハワカッテナイヨネセンパイ

( ´_ゝ`)「えー。そんなことないのにー」

.

650 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:27:02 ID:8BYwryE20

感情のこもっていない棒読みのセリフを言いながら、
隣にいる弟の顔をちらっと見る兄。

それを受けて、口を開く弟。

(´<_` )「こ、こりゃあ、おれがとめてもだめだなあ」

(´・ω・`)「テイさん?」

(´<_` )「おれだけじゃ、とめられないかもしれん。
だ、だから、その…。
なんだ…、ほら……。
お、おれたちを…その……身近で監視したほうが、良いんじゃないか?」

ξ゚⊿゚)ξ?

川 ゚ -゚)?
 _
( ゚∀゚)?

( ^ω^)?

('A`)?……!

(´・ω・`)

(´<_` )「だ、だからその…おれ達を…お前たちのギルドに、入れてほしい」

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!
 _
( ゚∀゚)!

( ^ω^)!

('A`)

(´・ω・`)

(´<_` )「だ、だめか?」

.

651 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:28:19 ID:8BYwryE20

絞り出したようなテイの声。
しかし誰も反応しない。
正確には兄弟以外はショボンをチラチラと見ている状態なのだが、
兄弟はショボンの顔を見るので精一杯だった。

( <_  )「……ダメ…だよな…。そりゃ…」

(;´_ゝ`)「た、ただでとは言わんぞ!この一カ月おれ達は鍛冶屋を頑張ったんだ!
おれ達を仲間にすれば、メンテナンスもタダだし新しい武器と防具は使い放題だ!」

自分のウインドウを出して武器を実体化させる兄。

それぞれの武器をそれぞれに向けて放り投げる。

(;´_ゝ`)「弟者が知っている戦い方と、アルゴから買った情報を基に作り上げた武器だ!
多分今使っている奴より数段強くなれる!…と、おもう……。
お得だろ!な!
だから…その……」

沈黙。

静寂が、八人を包む。

何も言葉をかけないショボンに、首を垂れる兄弟。

(´・ω・`)「ほんと、斜め上の事をしますよね」

やっともらえた言葉の真意がつかめず、顔を上げる兄弟。
周りを見れば、ショボン以外の全員はにやにやと笑っている。

(´・ω・`)「こんなことしなくたって、ずっと待っていたんですよ」

(*´_ゝ`)!

(´<_`*)!

(´・ω・`)「やっと来たかと思ったら、こんなことして…」

(;´_ゝ`)「あ…」

(´<_`;)「…うん」

(´・ω・`)「はい、これ」

.

652 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:31:18 ID:8BYwryE20

ショボンがウインドウを出して操作すると、テイの目の前にウインドウが浮かぶ。

【Shobonさんからギルドに誘われています】
【YES】   【NO】

(´<_` )「あ、あ、ありがとう!」

YESのボタンを押すテイ。

(*´_ゝ`)

(´・ω・`)「じゃあご飯にでも行きましょうか」

( ´_ゝ`)「え?おれは?」

(´・ω・`)「え?先輩も入るんですか?」

( ´_ゝ`)「ちょちょちょちょちょちょ」

(´・ω・`)「確か前に『弟者だけでも』とか言ってらしたかと」

( ´_ゝ`)「え、あれ?いや言ったような気もするけど」

(´・ω・`)「ですよね」

(;´_ゝ`)「いやいやいやいやいやいやいやいや」

(´・ω・`)「冗談ですよ」

ケイの目の前に浮かぶウインドウ。
慌ててYESのボタンを押す。

.

653 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:32:19 ID:8BYwryE20

( ´_ゝ`)「鬼め…」

(´<_` )「結局負けだなおれ達の」

( ´_ゝ`)「この後輩め…。ふんだ。年上の余裕で許してやろう」

(´・ω・`)「ギルマスは除籍も出来るんですよね」

( ´_ゝ`)「ごめんなさい」

(´<_` )「すまんな、こんな兄で」

(´・ω・`)「大丈夫です。知ってますから」

ショボンが手を差し出し、テイがそれを掴んで立ち上がる。
ケイの前にはうれし涙を浮かべたドクオが立つ。

('A`)「先輩…」

( ´_ゝ`)「悪かったな。心配かけたみたいで」

('A`)「先輩と一緒に戦えて、嬉しいです」

立ち上がる兄者。

(´・ω・`)「さて、武器とか防具はまた後にして、まずはご飯に行こう!」

「おー!!!!」

それぞれに準備を整えて歩き出す八人。

( ´_ゝ`)「あ、これからおれの事は『兄者』と呼んでくれ」

(´<_` )「おれは『弟者』だ」

( ´_ゝ`)「敬語とかもいらないからなー」

ξ゚⊿゚)ξ「自分に対して使われると思っているところがムカつくわね」

( ´_ゝ`)「一応先輩だぞー」

.

654 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:33:18 ID:8BYwryE20

川 ゚ -゚)「ギルドの先輩で、レベルも戦闘経験も私達の方が上じゃないか?」

( ´_ゝ`)「MMORPGの経験…」

( ^ω^)「こっちにはドクオがいるお」

( ´_ゝ`)「………」

(´<_` )「兄者、兄者の負けだ。諦めろ」

( ;_ゝ;)「弟者―」

(´<_` )「泣くな抱きつくな!気持ち悪い!」
 _
( ゚∀゚)「また騒がしくなるな」

('A`)「ギルドにもなったし、本格的になってきたな」

思い思いにしゃべりながら歩いていくギルドVIPの面々。

(´・ω・`)「…鍛冶屋、料理とアイテム鑑定。薬の調合と服の製作…」



それはギルドVIPが生産者ギルドと呼ばれるようになる、一つの節目の出来事だった。







.

655名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 01:36:03 ID:twdmxM0k0
乙乙

656 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:49:10 ID:8BYwryE20
以上、第十四話でした。

支援、ありがとうございます。

また、十三話の感想もありがとうございました。

そしてイケメンの剣技に酔わせていただきました。
いつもありがとうございます。

次はどの話になるかまだ未定ですが、
終わりに向かって書いていけたらいいなと思っております。

ではではまた。

657 ◆dKWWLKB7io:2014/08/30(土) 01:51:17 ID:8BYwryE20
一応年表も置いておきます。

2022年
11月
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月流石兄弟「十四話 双頭の鷲の旗の下に」
04月フサギコ「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル「三話 それから」
06月クックル「四話 緑の手」
07月
08月
09月モララー「十三話 ダイヤモンドだね」
10月
11月
12月ギコ・しぃ「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」

.

658名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 01:54:40 ID:BRpDARkk0
乙です
これで追加メンバー全員だっけ?
ハインドクオ気になるー

659名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 05:54:27 ID:aR.fSiM60
5人はわかってたけど兄弟もリアル勢だったのかー

660名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 09:02:02 ID:oPDjpCC60

弟者は意外なキャラだった

661名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 10:44:49 ID:SOGzsDQI0
モララーの時にブーンが言ってた「ある人」は兄者の事だったのか・・・

662名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 15:44:17 ID:BbD0DPAk0

今後も期待してる

663名も無きAAのようです:2014/09/03(水) 04:37:38 ID:6N9q5HGg0
今まで兄者の扱いひでぇなと思ってたけどこんだけ変人なら仕方ねーか…
今回も面白かった。乙!

664名も無きAAのようです:2014/09/03(水) 10:06:27 ID:uOOt8HsU0
まぁ兄者だし変人ロリコンはデフォでしょ

665名も無きAAのようです:2014/09/08(月) 00:13:58 ID:rW8BQogk0
双頭のryってワーグナーの行進曲だよな確か
次は本編進むのかドクオとハインとの絡みか

666名も無きAAのようです:2014/09/08(月) 00:24:31 ID:g6Rh/84.0
やっとこの前読みはじめて追いついたー
流石兄弟の話おもしろかったです


667名も無きAAのようです:2014/09/19(金) 16:23:45 ID:8rh6U5NI0
ツンが弟者に怒る心理描写とか凄いと良かった。
ツンも一度通ったところなのね

668名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 12:08:37 ID:KL2CtirI0
やはり何回読み直しても面白い

669名も無きAAのようです:2014/10/25(土) 19:49:00 ID:glwsS5s20
全部読み返しておもったんだけど
ブーンって心意システムに近いことやってるよね

670名も無きAAのようです:2014/10/26(日) 00:27:09 ID:t4juxNHc0
どこに上書き要素があんだ?原作でAGI極型の描写がないから不明だが通常型が狩りしてても疲労たまるんだから極型だとブーンくらいの持続度なんだろ

671名も無きAAのようです:2014/11/06(木) 10:03:19 ID:fgKdE9qI0
まだかなー

672 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 16:00:09 ID:fgBHdRvw0
書き終わった…

全文チェックが済んだら投下します。
早ければ本日中。
遅くとも近日中には。

よろしくお願いします。
ではではまた。

.

673名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 16:04:29 ID:FCMGHQBk0
待ってますよ

674 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 19:55:37 ID:Am.mXpzk0




第十五話 表とウラと




.

675 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 19:56:44 ID:Am.mXpzk0

0.現実とリアルと


おれの名前はシャキン。
ああ、もちろんリアルネーム、本名じゃないぜ。
ゲームネーム?プレイヤーネーム?ってやつだ。
ハッハッハッハッハ

ん?本名?
この世界じゃあ何の意味も持たないから、もう忘れちまったぜ!
ハッハッハッハッハッハ!

え?いや、うん、もちろん覚えているけど。
でも、もう一年以上『Shakin』としか呼ばれていないと、
少しだけ、ほんの少しだけだけど希薄になるのは確かで。

ゲームの中のおれと、
リアルな世界の自分。

どちらも本物だけど、
二つの自分が重なったり離れたりしているような気がする。

それでもおれはリアルな血縁がこの世界にいるからリアルを感じられる瞬間があるけど、
他のプレイヤーはどうなんだろうな。

この世界が、作られた世界が限りなく本当に感じる瞬間が、
もしかするとおれよりも多いのかもしれない。

この世界、そう世界初のVRMMORPGの世界。

『ソードアート・オンライン』

完全なる仮想世界の中で、今おれは生きている。



.

676 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 19:58:09 ID:Am.mXpzk0



タイトル≪シャキンはソードアート・オンラインを生き抜くようです≫



.

677 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 19:59:30 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「じゃじゃーん」

( ゚д゚ )「……で、おまえは何をやっているんだ?」

(`・ω・´)「ん?主人公としてのモノローグの練習」

(´・_ゝ・`)「アホだな」

( ゚д゚ )「アホだ」

从 ゚∀从「アホ」

(゚、゚トソン「アホですね」

<_プー゚)フ「………」

(`・ω・´)「ほら、来るべき日のために練習しておかないと」

<_プー゚)フ「………………」

(`・ω・´)「エクストだけが心の友だ」



.

678 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:00:32 ID:Am.mXpzk0

西暦2024年5月某日

54層 ダンジョン『朝霧の洞窟』

午前4時から10時まで探索することの出来るこのダンジョンは、
敵だけではなく宝箱まで短時間でポップする為非常に人気があった。
しかしその分敵の実力も高く、
また強さは固定ではなく上層がクリアされるごとに敵のレベルが高くなっていくため、
相応の実力者で無いと攻略は難しかった。

時間は午前6時。
午前4時の入り口の出現と同時に潜り込んでいたギルドN−Sのメンバーは、
二度目の安全エリアで休息を取っているところだった。

(゚、゚トソン「でもシャキンさん、この世界にリアルの血縁の方がいらっしゃったんですね。
知りませんでした」

(´・_ゝ・`)「え?トソン、マジで言ってる?」

(゚、゚;トソン「え、ええ。聞いてませんから」

六人パーティーで進んでいるため、三人が警戒し三人が休息をしていたのだが、
洞窟の天井の突起を見ながら呟いていたシャキンに残りの五人が呆れていた。

(`・ω・´)「あのデコボコ、カメラに見えない?」

从 ゚∀从「みえない」

<_プー゚)フ「それは同意できない」

(`・ω・´)「お前たちは想像力が足りないな」

今の警戒班はシャキン、ハイン、エクスト。
休憩を取るミルナ、デミタス、トソンが座ってお茶を飲んでいる周りに立ち、
安全エリアの出入口を警戒している。

.

679 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:01:48 ID:Am.mXpzk0

( ゚д゚ )「そうか、知らなかったのか」

(゚、゚トソン「みなさんはご存じなんですか?」

(´・_ゝ・`)「ああ。顔が似ているから、自然と」

(`・ω・´)「おれとあいつ、そんなに似てる?」

从 ゚∀从「似てないと言うやつはいないと思うぞ」

(`・ω・´)「そうかなー」

<_プー゚)フ「……え?」

(゚、゚トソン「……え?」

四人の会話を聞き、固まる二人。

ギルドN−Sは、もともとシャキンとミルナとデミタスの三人パーティーに
ハインが加入して作られたギルドであり、
その後何人かの加入と脱退があったが、
エクストとトソンの加入によってある種のまとまりを見せたギルドである。
その為、パーティーとして、ギルドとしての経験において、
三人あるいは四人との知識に差が出てしまうのはしょうがないのだが、
どうもこの件においては大きな衝撃が走ったらしい。

(゚、゚;トソン「も、もしやそれは…」

<_プー゚;)フ「もしかして…」

「ショボン(さん)?」

二人の声が重なり、懇意にしているギルドのギルドマスの名を告げる。

.

680 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:02:35 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「そうだけど、そんなに…」

(゚、゚;トソン「ほ、ほんとですか!?」

<_プー゚;)フ「違いすぎるだろ!」

(゚、゚;トソン「確かに顔は似ていらっしゃいますが」

<_プー゚;)フ「戦い方はともかくとしても、ギルド運営とかその他もろもろが」

(゚、゚;トソン「きょ、兄弟とかではありませんよね?」

<_プー゚;)フ「そうだな。違うよな。違うと言ってくれ」

(`・ω・´)「………従弟」

(゚、゚トソン「ですよねー」

<_プー゚)フ「だよなー」

(`;ω;´)「あれ、おかしいな。目から水があふれてくる」

笑う三人と、なぜかホッとした顔をしている二人。
ギルマスは一人涙を流していた。



.

681 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:03:38 ID:Am.mXpzk0

1.指揮を執る者と従う者と



(`・ω・´)「と、この前こんなことがあったんだ」

(;´・ω・`)「そ、そうなんだ」

43層ギルドN−Sのホーム。

層の北側に位置するその街の外れに、ギルドN−Sはホームを買っていた。
三階建ての一軒家を改造して、各々の個室のほかにキッチンと大きなのリビングを設置し、
更にハインこだわりのお風呂を造っていた。

(`・ω・´)「酷いと思わないか」

(;´・ω・`)「そうだねぇ」

今二人がいるのはギルマスの執務室。
と言う名のシャキンの趣味の部屋だった。

(`・ω・´)「なんだよ、おまえまであいつらの味方か?」

(;´・ω・`)「……僕になんて言ってほしいのさ」

(`・ω・´)「『酷いよねー』とか、『シャキンも頑張ってるのにさ』とか」

(;´・ω・`)「………『酷いよねー』…」

(*`・ω・´)「だよな!そうおもうよな!」

(;´-ω-`)「ああ…うん…」

ホームを作る時にショボンの部屋を羨ましがって執務室を作ったのだが、
ほぼその本来の使われ方はしていない。

高かった応接セットもこうやってショボンが来た時くらいしか使われておらず、
ソファーの周りには拾ってきたアイテムや衝動買いした家具が無造作に置かれていた。

(`・ω・´)「まったくあいつらは」

(´・ω・`)「(昔から自由な人だったけど、ここに来てから拍車がかかったような気がする)」

.

682 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:04:59 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「ん?なんだ?俺の顔をじっと見て」

(´・ω・`)「なんでもない。っていうかさ、ぼくら従兄弟でもないよね」

(`・ω・´)「めんどくさいから良いんだよ。
だいたい血縁関係ぐっちゃぐちゃで簡単に説明しようと思ったら『一族』なんて言えるか。
おまえだっておれがブーンやドクオと初めて会った時は、
おれの事を『いとこのおにいちゃん』って説明してただろうが」

(´・ω・`)「いつの話を言ってるのさ。あの頃はそう思ってたんだからしょうがないでしょ」

(`・ω・´)「え?そうなの?」

(´・ω・`)「あの頃確か小学校の低学年だよね。二年か、三年か」

(`・ω・´)「お前の事だから、全部わかってるかと思った」

(;´・ω・`)「いくらなんでも…。
例の訳のわからない家系図も見せられたのも高校に入ってからだよ」

(`・ω・´)「ああ、あの血族ぐっちゃぐちゃの」

(´・ω・`)「そ、ぐっちゃぐちゃのこんがらがってるやつ」

(`・ω・´)「そっか。見てたのか。
あの家系図を見せられたってことは、おまえも晴れて後継者だな」

(´・ω・`)「最有力後継者候補のどっかの誰かさんが逃げ回ってるせいで、
こっちに回ってきただけだよ。
それに、まだ【予備候補】だし」

(`・ω・´)「逃げ回ってるとはけしからんな」

(´・ω・`)「顔が見たかったら鏡でも見るんだね」

(`・ω・´)「所詮地方の同族会社グループなんだから、適当にやっておきゃいいんだよ」

(´・ω・`)「それは同感だけど、地方とは言え石油、不動産、輸送、医療、食品と手広くやってるとね。
トップにはそれなりの人が立たないと」

(`・ω・´)「ならなおさらお前が一番適任だろ」

.

683 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:06:06 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「…やめてよ。シャキンの方が適任だったのに、逃げ出したくせして」

(`・ω・´)「おまえは自分が見えてないだけさ。
実世界でも、ここでもな」

(´・ω・`)「攻略組への参加、まだ言っているの?」

(`・ω・´)「ほんとに合流しないのか?」

(´・ω・`)「層が厚いとは言えないけど、
今の攻略組はそれはそれとしてよくできていると思うからね。
新興勢力として新たに参加しても、バランスを崩すだけさ。
結局は、チームワークだと思うし」

(`・ω・´)「おまえなら、指揮が執れるだろ」

(´・ω・`)「今の攻略組には指揮者がちゃんといるよ。
血盟の団長とか副団長とか。それに黒の騎士も。
その信頼や培ってきた経験を壊してまで僕が指揮を執るメリットなんてないよ」

(`・ω・´)「だが」

(´・ω・`)「逆に聞くよ。
なぜそこまで参加させたいの?」

(`・ω・´)「お前だって、分かっているんじゃないか?」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「最近の攻略組の状況はアルゴやエギルさんから聞いているだろ?
あと、エリアボスとの戦闘は見たこともあるはずだし、
ここ数回の攻略の進行度だってそうだ。
このままいけば、何かが起こる様な気がしてならない」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「大人の世界で、色々なものを見せられてきたおれ達だからわかるモノが、
今感じていないか?」

(´・ω・`)「ぼくは、仲間と生きていたい。
生きて、現実世界に戻りたい」

.

684 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:07:06 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「ショボン…」

(´・ω・`)「僕にできるのは、中堅層を厚くして、
上に何かあった時に対応できる下地を作ることぐらいだよ。
エギルさんのサポートとしてね」

(`・ω・´)「それでいいのか?」

(´・ω・`)「もし本当にぼくにそんな能力があるとしても、
ぼくにはそれを活かす度胸も根性も無いよ。
確かに今の攻略組は色々な部分で停滞し、澱んでいるようには感じる。
でも、それをそのままにしておく人達でもないと思う。
だから戦闘以外の部分で、支えていけたらいいなとは思ってるよ」

(`・ω・´)「…わかったよ」

(´・ω・`)「そっちこそ、……どうするの?攻略組に」

(`・ω・´)「お前たちが行かないのに、行くわけないだろ。
おれは今まで通り、おまえたちのそばにいる」

(´・ω・`)「……よかった。ありがとう」

(`・ω・´)「お前達と一緒にいると楽しいからな」

にやっと笑うシャキンと同時に叩かれるドア。
そして中からの応答を聞かないで開かれる。

<_プー゚)フ「ショボン!ショボン!」

(゚、゚トソン「こんにちは」

簡素な挨拶をしつつショボンのそばに駆け寄る二人。

(´・ω・`)「二人ともこんにちは。どうしたの?」

(`・ω・´)「おまえらノックしたのは褒めてやるが、」

<_プー゚)フ「今度朝霧の洞窟に一緒に行こう!お前の指揮で攻略してみたい!」

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685 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:08:31 ID:Am.mXpzk0

(゚、゚トソン「ぜひお願いします」

(´・ω・`)「朝霧の洞窟か。…うん。分かったよ。明後日くらいでどうかな?」

即座にウインドウを開き、予定を確認しつつ返答するショボン。

(`・ω・´)「中からの応答を確認してから開けろと」

<_プー゚)フ「よっしゃ!」

(´・ω・`)「メンバーは二人以外はどうする?」

(゚、゚トソン「お任せしますが、ドクオさんが行かれるようならハインさんが行きたいって言ってました」

(´・ω・`)「分かった。じゃあメンバーは明日には連絡するから」

(`・ω・´)「何度言ったらわかるんだこの野郎ども」

(゚、゚トソン「よろしくお願いします」

<_プー゚)フ「強くなったおれを見せてやるぜ!」

肩をまわしながら部屋を出るエクスト。
トソンは部屋を出る前にお辞儀をし、ドアを閉めた。

(´・ω・`)「エクストは相変わらずだね。
トソンはこのギルドに染まってきたかな。
……って、何泣いてるのさ」

(`;ω;´)「良いんだ良いんだ。おれの話なんて誰も聞いてないんだ」

(´・ω・`)「そんなことも無いと思うけど。
二人だってシャキンの指揮に付いていけるように自分の力を高めたくて、
ぼくと行きたいってのもその訓練の一環だろうし。
うちのギコとしぃもシャキンの指揮で戦って以来、戦い方に幅が出てきたよ」

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686 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:09:27 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「そ、そうか!」

(´・ω・`)「うん」

(`・ω・´)「いやー。おれもそうじゃないかと思ったんだけどよ。
自分で言うのってやっぱり憚れるじゃん」

(´・ω・`)「(嘘じゃないんだけど、なんかイラっとした)」

(`・ω・´)「それにしても、ハインは相変わらずだな」

(´・ω・`)「長いよね。諦めないし」

(`・ω・´)「しかし、ドクオはなんだってああ頑ななんだ?
ちょっと暴走気味だが、ハインは良い女だと思うが」

(´・ω・`)「……ドクオにも、思うところはあるみたいだね」

(`・ω・´)「おれにも言えないことか?」

(´・ω・`)「そんなことも無いけど、憶測だよ?」

(`・ω・´)「ああ。それでいい」

(´・ω・`)「うん。そうだね…。出会いは僕も聞いた限りだけど…」





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687 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:10:32 ID:Am.mXpzk0

2.愛と誠と



2023年9月
ギルドN−Sの四人は、フィールドダンジョン『常世の森』を攻略していた。

(`・ω・´)「ふん!」

シャキンの両手剣が唸り、目の前の大型猿を一刀両断する。

(´・_ゝ・`)「やらせない!」

そのシャキンの背後を狙って跳びかかった小型猿をデミタスの片手剣が打ち払い、
更にミルナの槍が追撃した。

( ゚д゚ )「周りも気にしろ!」

(`・ω・´)「前以外は任せた!」

叫びながら大型猿を更に切り裂くシャキン。

その言葉にため息をつきつつも、湧いて出た二匹の小型猿をそれぞれに攻撃するデミタスとミルナ。

ため息をつきつつも、前を突き進むシャキンを頼もしく感じ、
更にその焦りも理解している二人は懸命にサポートをしている。

(´・_ゝ・`)「あいつの実力があれば大丈夫だとは思うが」

( ゚д゚ )「蜘蛛が嫌いだとは知らなかったな」

(`・ω・´)「こっちだ!」

大型猿を片付けたシャキンがウインドウを出して仲間の位置を特定する。
エリアにして後三つ。
レベルだけで言えば単独での攻略はギリギリ。
通常であれば何とかなると思うが、苦手なタイプのモンスターが出てしまうことを考えると、
今は無事に合流できれば……とだけ、三人は願っていた。



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688 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:11:58 ID:Am.mXpzk0

从 ゚∀从「結構やばいな」

すらっとした体に革製の防具。細みの片手剣を構えたその姿は絵画のようだ。

実力も伴っており、この層の通常の敵であれば、一対一なら負けることは無い。

はずだった。

从;゚∀从「…クモは卑怯だろ」

人よりも大きな蜘蛛。

小型の蜘蛛型モンスターとは理性で戦えたが、自分よりも大きなこのサイズだと、
理性よりも感情で身体がこわばってしまう。
先程も仲間達と一緒に相対したのだが、威嚇された瞬間に逃げ出してしまった。

よく見ると剣の切先は細かく震えており、更に足も膝が笑っていた。

从;゚∀从「…ここで死ぬのかな…」

つい一週間前に仲間になったメンバーの事を思う。、
助けに来てくれる保証など、どこにもない。
メンバー募集を見て参加して、つまり知り合って一週間。
さらに戦場を放棄して逃げ出した知り合いを助けに奥まで来てくれるだろうか。

それは彼らが薄情とかそういう事ではなく、自分の命を大事だと考えた時に、
逃げ出した知り合いを自分の身を危なくさせてまで追うかということ。
ただこの一週間で知った彼らの人の好さを考慮すれば、助けに向かってきてくれていると思う。
けれど、彼らが来てくれた時に、自分が生きていられる保証などどこにもない。

巨大蜘蛛が、自分に気が付いた。

ソロとして隠密系のスキルは鍛えていたのに、
それを使って身を隠すのを忘れているほど混乱していた。

大きな体をゆっくりと動かし、自分を見る巨大蜘蛛。

八本の毛むくじゃらの足を動かして、自分に近寄る。

从;゚∀从「よ、よ、よよ、寄るなよ…」

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689 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:13:09 ID:Am.mXpzk0

震えが大きくなる。
頭の中では逃げなきゃと思っても、それすらも出来ないほど体が固まる。

从 ;∀从「や、やだ……。助けて……」

涙なのか恐怖なのか、目の前がかすむ。
けれど自分を見る巨大蜘蛛が牙をもった口を開けて威嚇し、
左右一番前の足を上げたのは分かった。

从 ;∀从「!!!」

死を覚悟したその瞬間、大型蜘蛛の脳天から尻まで一直線に斬撃が走った。

从 ;∀从「え?」

更にすべての足を切り落とす様に刃が襲い、
身体が落ちる前にその醜い体にも幾筋も刃の線が走った。

目の前のモンスターがポリゴンに変わる。

何事か分からず、けれど自分が助かったことだけは分かり、膝をつく。

霞む視界のなかに、自分に近寄ってくる人影を見る。

緑色のカーソルと、決して高くは無い身長。
黒いコートと、武器は片手剣。

「倒したけど、良かったか?」

高くも無く低くも無い男の声。
自分よりは年下のようだが、落ち着いたその声に心が安らぐ。

「……良かったか?」

問いかけに、慌てて頷く。

「なら良いけどよ。……一人で無理そうなら、ダンジョンはいるなよ」

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690 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:14:09 ID:Am.mXpzk0

从 ;∀从「なか、まと…はぐれ…て…」

恐怖からの解放で口までうまく回らない。

「ああ、まあ、それなら……でも…」

「おっ、おっ、あんまり攻めちゃ可哀想だお」

「……ねえ、そのギルドマークって…」

後ろにも二つの影。

声の雰囲気から、一人は男、一人は女のようだ。

从 ;∀从「あ、あり…がと……」

涙をぬぐう。

「とりあえず立って装備整えろよ。仲間の位置が分かれば送ってやるから。ブーン、ショボンに連絡しといてくれ」

( ^ω^)「わかったお。ツン、警戒宜しくだお」

ξ゚⊿゚)ξ「ん。って、私の話聞いてる?この人のギルドマークって」

拭って立ち上がろうとすると、手が差し出された。

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691 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:15:05 ID:Am.mXpzk0




('A`)「立てるか?」




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692 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:15:50 ID:Am.mXpzk0




从*゚∀从「は、はい…」




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693 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:16:52 ID:Am.mXpzk0

その手を握り、立ち上がる。

从*゚∀从(…超カッコいい…)

('A`)(イケメンで背も高いとか、助けなけりゃよかった)

( ^ω^)「ショボンに連絡…っと…。
(ドクオの雰囲気が禍々しいお)」

ξ#゚⊿゚)ξ「そろそろ私の言葉に耳を傾けろ」

(;^ω^)「ご、ごめんなさいだお。で、彼のギルドマークだおね。
えっと……。あれ?あのマークって…」

ξ#゚⊿゚)ξ「やっと気づいたか」

('A`)(そろそろ手を離してくれないかな。男と手をつなぐ趣味ないんだが)

从*゚∀从(やだどうしよう。視線が重なってる。もしかして彼も私の事を?)

('A`)(見れば見るほどイケメンだなこの野郎。ケッ)

从*゚∀从「あ、あの…」

('A`)「はい?(早く手を離せ)」

从*゚∀从「お名前、聞いても良いですか?」

('A`)「ん?ああ、ドクオだけど(だから手を早くだな)」

从*゚∀从「ドクオさん…。あ、わ、私はハインリッヒって言います」

('A`)「ああ、そう。(名前までイケメンかよ。クソッ。しかも自分の事を『私』とか、どんだけだよ)」

从*゚∀从「そ、それでその…」

('A`)「はい?(なんでこいつは手を離さないんだ?)」

从*゚∀从「ま、まずはその…お友達から」

(;`・ω・´)「ハイン!無事か!!」

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694 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:19:00 ID:Am.mXpzk0

どたばたとエリアに入ってきたシャキン。
その後にミルナとデミタスも続く。

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら。やっぱり」

(`・ω・´)「ブーンとツン?ドクオも?!」

('A`)「シャキン?」

( ゚д゚ )「どういう状況だ?」

(´・_ゝ・`)「謎だな」

从 ゚∀从「三人とも!」

とりあえずハインに近寄るシャキン達三人。

ブーンとツンも近寄る。

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695 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:19:55 ID:Am.mXpzk0

( ゚д゚ )「で、これはどういう状況なんだ」

('A`)「どういう状況と聞かれても…」

全員がそれぞれに全員の顔を見る。
正確にはハインだけは彼の顔しか見ていなかったが、
誰もそれには気付かない。

( ^ω^)「おっ」

ウインドウを開くブーン。

( ^ω^)「ショボンからメッセージだお。
二つ先の安全エリアで落ち合えるか聞いてきてるけど」

(`・ω・´)「ショボンもいるのか。じゃああいつにまとめさせよう」

( ゚д゚ )「(ひでえ)」

(´・_ゝ・`)「(今ここにいない奴にまとめさせるとか)」

( ^ω^)「(さすがのシャキンさんだお)」

(`・ω・´)「行くぞ行くぞ」

先頭に立って歩き始めるシャキン。
その後ろをぞろぞろと続く六人。

('A`)(で、この手はいつになったら離してもらえるんだ?)

从*゚∀从(ドクオさん…ドクオさん…ドクオさん……どっくん……)

次のエリアで戦闘になるまで、ドクオの手は繋がれたままだった。



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696 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:21:06 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「じゃあ、まとめると……」

( ゚д゚ )(なに!?)

(´・_ゝ・`)(まとめただと!?)

( ^ω^)(さすがのショボンだおね)

七人が安全エリアに入ると、そこにはショボンとクー、そして流石兄弟がいた。

(´・ω・`)「ハインリッヒさんが苦手な蜘蛛に驚いてシャキン達とはぐれた後、
巨大蜘蛛と鉢合わせしてしまい、そこに僕達と別行動をしていたドクオ達三人が通りかかったから、
間一髪助けることが出来た…と」

ショボンが拡げた絨毯の上に座るギルドN−Sの四人とショボン。
他の六人は周囲に立っている。

そこで各人から簡単に話を聞いた後、ショボンが状況をまとめていた。

(`・ω・´)「なるほど。そういうことか」

('A`)「蜘蛛が苦手ねぇ。(イケメンにも苦手なものがあるってか。
女はそんなところにもギャップを感じて、そこに惹かれるのー!ってか。ケッ)」

从 ゚∀从「面目ないです」

(`・ω・´)「蜘蛛が苦手だとはな」

从 ゚∀从「…すみません」

( ゚д゚ )「謝ることは無いが、言っておいてほしかったな」

(´・_ゝ・`)「ああ、誰にでも苦手なものはある。そこをフォローしあうのもの、仲間だ」

从 ゚∀从「は、はい!」

(`・ω・´)「他にも苦手なのはあるか?」

从 ゚∀从「あー。蜘蛛が一番ですけど、基本的に足の多い虫系の生き物がちょっと…。
ちいさいのはまだ良いんですが」

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697 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:22:04 ID:Am.mXpzk0

( ゚д゚ )「蟻とか百足とかは戦えてたよな」

从 ゚∀从「蟻は大丈夫でしたが、百足はちょっとやばかったです」

(´・_ゝ・`)「まじか。気付かなかった」

从 ゚∀从「蜘蛛は、あの毛むくじゃらなのもダメみたいで」

照れたように頭を掻くハインに、周囲に和やかな笑いが漏れた。

('A`)(イケメンは何をやっても様になるってか)

(´・ω・`)「まあ、そこら辺はまたゆっくり話し合ってよ。
新しくメンバーが増えたら、いろいろ話したり経験を積んで分かり合わないとね」

(`・ω・´)「ああ。そうだな」

大きく頷くシャキン。
そしてドクオ達三人を見る。

(`・ω・´)「三人とも、ありがとうな」

('A`)「あ、いや」

( ^ω^)「おっおっ」

ξ゚⊿゚)ξ「改まって何よ」

(`・ω・´)「大事な仲間を救ってくれたんだ。どれだけお礼を言っても足らない。
かといって、コルや品物では失礼だ。だから」

胡坐をかいていた足を正してきれいな正座をし、そして三人に向かって腰から頭を下げるシャキン。

ミルナとデミタスもそれに倣い、ハインも慌てて同じ様に頭を下げる。

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698 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:23:15 ID:Am.mXpzk0

('A`;)「い、いいってシャキン」

(;^ω^)「そうだお!当たり前のことをしただけだお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「いつか逆の立場になる時だってあるかもだし、止めて!」

(´・ω・`)「ってことだから、止めてあげてくれる?四人とも」

慌てる三人を見て、ショボンが四人を促す。

(`・ω・´)「本当に、ありがとう」

真剣な表情なまま頭を上げるシャキン。
その気配を感じて三人も頭を上げた。

(´・ω・`)「この世界では、お互い様だからね。これくらいで良しにしておこうよ」

ショボンがさらっとまとめ、笑顔で四人を見た。

(`・ω・´)

まだ何か言いたそうなシャキンを見て、更に言葉を続けるショボン。

(´・ω・`)「でも四人目を入れたの知らなかったよ」

(`・ω・´)「ああ、まだ一週間だからな。今はお試し期間だが、うまくやれていると思う」

从 ゚∀从「!ありがとうございます。……でも」

( ゚д゚ )「どうした?デミタスが変態で気持ち悪いか?」

(´・_ゝ・`)「お前の間違いだろ」

从 ゚∀从「い、いえ、その…。なんか武器に違和感を持つことがあって」

(`・ω・´)「違和感?」

从 ゚∀从「ソロの時にはそんなに感じなかったんですけど、
スイッチの時とかちょっと武器の射程距離に違和感があって」

('A`)「ああ…」

ハインの言葉に首をかしげるメンバーの中、ドクオが何か思うことがあるかのような声を漏らす。

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699 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:24:20 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「ドクオ?」

('A`)「多分、ちょっと踏み込みが浅い。もしかして、リアルの体型と今の身体、合致してないとか」

从*゚∀从「は、はい。少しだけ身長が低いというか、サイズが違う感じです」
(まだ知り合って少しなのに、そんなに私の事を見ていてくれたなんて)

('A`)「足の長さとかはキャリブレーション設定の時に適当にやるとずれることもあるみたいだから」
(足が長いと大変だよねー。おれは一生分からないだろうけどよ)

(`・ω・´)「ほぉ…」

(´・ω・`)「なるほどね…。どうしたらいいと思う?」

('A`)「そこら辺はショボンも一回見てみろよ。どうせこの後一緒に外に向かうんだろ?」

(´・ω・`)「戦闘に関してはドクオ先生には敵わないよ」

('A`)「まったくこんな時だけ。…まあ一番楽なのは有効範囲に融通が利く武器に変えることだけど、
投擲系はショボンくらいマニアじゃないと無理だから、槍とかにしてみるとか…かな。
ただ扱い的には片手剣より人によって難しくなるから、範囲の広い片手剣を選ぶのも手だけど」

川 ゚ -゚)「槍は人を選ぶのか?」

('A`)「んー。最初から使ってるとか、使ったことがあるなら別だけど。
片手剣に慣れてると、武器の射程距離は勿論持ち味が全く違うからな」

( ´_ゝ`)「そうだな。片手持ちと両手持ちでは構え、攻撃、防御、変わってくる。
慣れれば使えるようになるだろうが、それまでは大変だろう。
今まで武器は片手剣だけなのか?」

武器の話となると割り込んできた兄者。
普段と違う真面目な雰囲気にも誰も突っ込むことなく話を聞き、ハインの顔を見る。

从 ゚∀从「他には細剣を少し。槍を使ったことは無いです」

( ´_ゝ`)「おれは彼女の戦い方を見ていないから何とも言えないが、
ドクオ、武器の変更と片手剣の種類を選ぶようになるのでは、どちらがいいと思う?」

兄者の言葉を聞き、何人かが微妙な表情をした。

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700 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:25:41 ID:Am.mXpzk0

( ´_ゝ`)「ん?どうした?」

(´<_` )「兄者よ、それはあんまりだぞ」

( ´_ゝ`)「え?武器の変更はかなり建設的な意見だと思うが」

(´<_` )「いやいや、そこじゃなくて、『彼女』って」

( ´_ゝ`)「え?だっておにゃのこだし」

(´<_` )「兄者…。ただのロリコンだと思っていたが、男にまで手をのばしはじめたのか?」

(`・ω・´)「兄者の変態に拍車がかかったか」

( ゚д゚ )「良かったなデミタス。仲間が出来て」

(´・_ゝ・`)「おれはショタコンだから、ハインくらいの年齢は管轄外だ」

( ^ω^)「それを胸張って言えるデミタスは凄いと思うお」

(´・_ゝ・`)「それに二次とNPC専門だしな」

ξ゚⊿゚)ξ「まったくこいつらは。
で、クーはさっきから何黙って彼の事見てるのよ。
美形すぎて見惚れてる…ってわけでもないでしょう?」

川 ゚ -゚)「あ、いや、ハインリッヒさんを何かで見た覚えがあるんだが…」

ξ゚⊿゚)ξ「イケメンだし、街ですれ違ったことでもあるんじゃないの?
…クーはそんなタイプじゃないか…」

川 ゚ -゚)「うむ…」

( ´_ゝ`)「お前らこそ何を言っているんだ?
どこをどう見てもおにゃのこだろ。
確かにハインリッヒってのは男名かもしれないが」

「いやいやいやいやいやいやいや…」

兄者の言葉に苦笑いを浮かべながら否定の言葉を口にするシャキン達。

あまりの否定に兄者も顔を曇らせるが、眉間に皺を寄せつつショボンの顔を見ると、
ショボンも不思議そうな顔をしていた。

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701 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:26:59 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「いや、なにみんな、どうしたの?
ハインリッヒさん、誠に失礼ですが、女性で間違っておりませんよね?」

そんな表情のままハインに語りかけるショボン。

そのセリフに驚き、ハインとショボンの顔を交互に見るシャキン達。

从 ゚∀从「あ、はい。女です。よく間違われますけど」

「「「「えーーーーーーーーー!!!!??!!!」」」」

異口同音の叫びする数人。

(´・ω・`)「みんな失礼だよ。特にシャキンとミルナとデミタス。
一週間も一緒にいて」

(;`・ω・´)「い、いやだって言わなかったし」

(´・ω・`)「普通言う?『私は女です』とか。
僕は自己紹介で男ですって言ったことないけど」

(; ゚д゚ )「い、いやしかし」

(;´・_ゝ・`)「な、なんかスマン。ハイン」

从 ゚∀从「あ、いえ、間違われているかなとは思っていたんですが、
その方が円滑にいくならそれで良いかなと思ってしまい。
慣れてきたころにばれればそれはそれで良いかと思っていました。
こちらこそすみません」

慌ててハインに向かって頭をぺこぺこと下げる三人。
そしてハインも三人に頭を下げた。

(;^ω^)「ブーンも男の人かと思ってたお。ごめんなさい」

(´<_`;)「おれもだ。すまんな」

ξ;゚⊿゚)ξ「私も。ごめんなさい」

川 ゚ -゚)「私もだ。すまなかった。
しかし女性となると…。もしやあなた」

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702 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:28:06 ID:Am.mXpzk0

从 ゚∀从

ハインがクーに向かって笑顔を見せる。
それを見て、クーは続きを言うのを止めた。

川 ゚ -゚)

(´<_`;)「しかし、気付いていたのはショボンと兄者だけか」

( ´_ゝ`)「…おれが言っても笑ってバカにしたくせに。
ショボンが言ったら全員驚くとか」

ξ゚⊿゚)ξ「しょうがないでしょ。兄者なんだから。諦めなさい」

( ´_ゝ`)

(´<_` )「まあ、仕方ないな」

川 ゚ -゚)「ドクオはどうだったんだ?」

('A`;)「え?お、おれか?もちろんわかってたぞ」
(女!?女!?女??!え!マジで!!???
え、さっきまで手をつないでたのが女!!??
小学生の時にかーちゃんとつないで以来だぞ!!??
かーーーー。離さなきゃよかった!!!)

从*゚∀从(気付いててくれたんだ!やっぱり私の運命の人!)

('A`)「分かるに決まってるだろ。こんなきれいな人に向かって男とか。みんな失礼だな。
ごめんな。ハインリッヒさん」
(お、おれ大丈夫?!気持ち悪がられてないか!?
あ、笑っちゃダメだった!気持ち悪いって言われる!)

从*゚∀从「い、いえ、大丈夫です」
(やだ、超紳士!超クール!やっぱり私の王子様!)

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703 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:29:11 ID:Am.mXpzk0

('A`)(あーやばい。女だって知ったら緊張してきた。しゃべれねー。
マジイケメンだと思ってたけど、女だと思うと超きれいな人だった。
こんな人と話すことが出来るだなんて、SAOでなきゃ一生むりだったかも)

从*゚∀从(私、見つめられてる。もしかして彼を私の事を…。
何か喋ってほしいけど、寡黙なところも素敵!その目で見つめられたらもうだめ!)

('A`)(また手を繋いでくれたりしないかなー。無理だろうなー。
この世界は汚れないから手を洗う習慣とかなくてよかった。当分の間、手、洗わないでおこ)

从*゚∀从(そんなに見つめないで!でも見て!ああ!私おかしい!!)

('A`)(あれ?……なんでこの人おれの顔じっと見てるんだろ。
そっか。また変な顔とか気持ち悪いかとか思ってんのか。
こんなきれいな人から見たら、おれなんかモンスターレベルだよな…)

从*゚∀从(ダメ―!ダメ―!ドキドキしちゃう!)

('A`)(そうだよな…。おれなんか…)

短い会話の前後で色々な思惑が交差する二人。

(´・ω・`)(なんとなく、色々な思考が交差してる気がする)

( ´_ゝ`)「ドクオはどう思う?」

気を取り直して口を開く兄者。
ハインに向かって口々に謝罪の言葉を告げていた者も、兄者を見た。

('A`)「え?あ?え?なんですか?」
(先輩ナイス!何のことか分からないけど話を振ってくれてありがとう!)

(;´_ゝ`)「ドクオ…。彼女の武器の件だけどさ」

('A`;)「あ、ああ。片手剣で続けるか、槍に持ち直すかってことですよね。
一回槍を使ってもっと低層で戦闘してみて、それで決めてもいいかと思います」

(;´_ゝ`)「とりあえずそうだな。それでなんでお前は敬語復活してんだ?」

('A`;)「あ、いや、なんかその…。なんとなく」

从*゚∀从(礼儀正しいどっくんも素敵!)

ξ゚⊿゚)ξ(あれ?…もしかして彼女はドクオの事を…。いやいや無いか、そんなこと)

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704 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:30:45 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「しかし、うちのメンバーでは一緒に戦えても教えたりアドバイスはちょっとな…」

ちらちらとショボンを見るシャキン。

あからさまなため息をつくショボン。

(´・ω・`)「じゃあみんなで行こうか。ドクオ、特に見てあげて」

('A`)「え?!お、おれ!?」
(ショボン!?おれがおにゃのこと!?何言ってんだこの眉毛!ナイス!)

从*゚∀从「よ、よろしくおねがいします!」
(どっくんが私を見てくれる!
しょぼくれ眉さんありがとうございます!)

(´・ω・`)「他にちゃんと見られる人いないでしょ。クーと兄者もサポートしてあげて。
あと、予備の槍の持ち合わせがあったら貸してあげて」
(なんとなくだけど、失礼なことを思われているような気がする)

川 ゚ -゚)「ああ、分かった」

( ´_ゝ`)「了解した」

(`・ω・´)「すまんなショボン」

(´・ω・`)「まったく。期待したくせに」

(`・ω・´)「はっはっはっは」

ショボンが促し、座っていた者が立ち上がって準備を始める。

ショボンのそばにはシャキンが近寄り打ち合わせを始めると、
自然に幾つかの集団が出来た。

その流れから外れたドクオとハイン。

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705 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:32:20 ID:Am.mXpzk0

('A`)(やばい!やばい!やばい!嬉しいけどやばい!やっぱり無理!
ショボンありがとう!でもしね!いやしんじゃだめだけどしね!
どどどどどどどどうしよう!)

从*゚∀从「よ、よろしくお願いしまふ!」
(やだ!かんじゃったはずかしい!)

('A`;)「あ、、ひや、こちらこしょよろしくおねがいしあす!」
(かんだーーーーーーーーーーーはずいーーーーーーーー)

从*゚∀从(同じように噛んでくれた!なんて優しい人!大好き!)

お辞儀をしたハインに慌ててお辞儀で返すドクオ。

ξ゚⊿゚)ξ(二人して噛んでる!突っ込みたい!でも!)

川 ゚ -゚)(いろいろ突っ込みたいが、今突っ込んだら後の楽しみが半減する気がする)

ξ゚⊿゚)ξ
 (ガマン!!)
川 ゚ -゚)

(;^ω^)「ツン?クー?」

それぞれの思いを抱えながら、準備を整えて歩き出す十一人。

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706 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:34:57 ID:Am.mXpzk0

从*゚∀从「ドクオさんは、お強いんですね」

('A`)「いや、そんなことないですよ」

从*゚∀从「あんな大きな蜘蛛も一刀両断して」
(謙遜する姿も素敵)

('A`)「あれは…。まぁ、その…」
(あー。やっぱりなんか緊張する!)

从*゚∀从「片手剣であんなことできるんですね。すごくかっこよかったです!」
(言っちゃった!言っちゃった!やだどうしよう!)

('A`)「ははは。ありがとうございます」
(受け答え、間違ってないよな!大丈夫だよな!)

从*゚∀从「その後の剣捌きとかもすごくて、かっこよくて…」
(二回も言っちゃった!ばれちゃうかな!?好きになったのばれちゃうかな!?)

('A`)「ははは。剣技(ソードスキル)っすからね」
(そうだよなー。剣だけだよなー。この人も今から教わるから持ち上げてるんだろうな)

从*゚∀从「そんなことないですよ!流れるような剣でした!格好良かったです!」
(見た目もカッコいいけど、言われ慣れてるだろうからこっちで!

('A`)「ははは…」
(剣は…ね)

从*゚∀从「私も頑張ります!だから、いろいろ教えてください!」
(教えてもらえるときは会える!)

('A`)「そうですねー。VIPとN−Sは合同でクエストやったりもしますし」
(あーはいはい。教えてあげますよ。それくらいしか取りえないっすからね)

从*゚∀从「よろしくお願いします!ドクオさん!」
(やった!また会える!)

('A`)「…ハインリッヒさんは、なんでN−Sに入ったんですか?」
(なんか辛くなってきた。話変えよ)

从*゚∀从「あ、ドクオさん、良ければ『ハイン』って呼び捨てで呼んでください。
教えてもらってる時もその方が指示を貰えやすいと思いますし」
(今日の私は責める!彼女いるのかな。いるよね。でももしいなかった時のために!)

('A`)「ああ、じゃあハインって呼ばせてもらいますね」
(所詮ゲームネームじゃ、おれに呼び捨てにされても良いってか)

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707 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:35:51 ID:Am.mXpzk0

从*゚∀从「はい!」
(やった!呼び捨てゲット!一緒にいた二人のどっちかが彼女かな。
ツインテールがそうかな。でもドックンを好きな気持ちではきっと負けない!
過ごした時間が足りないなら、これから頑張る!)

('A`)「じゃあ俺の事もドクオで良いっすよ」
(ゲームネームなら呼べるだろ。ケッ)

从*゚∀从「え!?そ、そんな…無理です……」
(むりむりむりむりむりむりむりむり…。呼び捨てなんて恥ずかしすぎる!
それに金髪ツインテールが名前で呼んでたし!同じじゃダメ!彼女と一緒とかダメ!)

('A`)「あーはい」
(ゲームネームでもおれの名前なんて呼びたくないってか!)

从*゚∀从「あ、あの、あだ名で呼んでも良いですか?」
(私だけの呼び方で新密度UP!)

('A`)「ああ、いいっすよ」
(…ゾウリムシとか言い出すのかな。もう何でもいいよ)

从*゚∀从「じゃ、じゃあ……どっくん」
(呼んじゃった!呼んじゃった!恥ずかしい!!!)

('A`;)「ふぇ!?」
(ふぇ!?)

「「「「「 ふぇ !!?? 」」」」」

照れるハイン。
変な返事をしてしまうドクオ。
聞き耳を立てていて、変な声を出してしまうメンバー。

先頭を歩くショボンは、小さくため息を吐いた。





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708 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:36:58 ID:Am.mXpzk0

4.心の比重と揺れる心と



(`・ω・´)「あの後ドクオをドックンと呼ぶのが流行ったよな」

(´・ω・`)「ハインが本気でドクオとツンが付き合ってると思っていたことにはびっくりしたよ」

(`・ω・´)「……ツンの怒りが激しすぎて引いた覚えがある」

(´・ω・`)「あれはね……」

思わずお互いの顔を見て苦笑いを浮かべる二人。

(`・ω・´)「で、ドクオがそんなふうに感じていたのは分かったが、それはドクオから聞いたのか?」

(´・ω・`)「うん。ドクオがフリーなのを知ってハインが本気のアプローチをしてきて、
そのアプローチが本気だと知ったドクオが動揺しまくってね。
戦闘にも影響してたから聞き出した」

(`・ω・´)「あらら」

(´・ω・`)「ブーンもいたから、二人で付き合えば良いって言ったんだけど、無理だって」

(`・ω・´)「なんでだ?」

(´・ω・`)「美女と野獣過ぎてきついってさ」

(`・ω・´)「なんだそりゃ」

少しだけ不愉快そうに言葉を詰まらせるシャキン。

(`・ω・´)「いろいろと謎な部分はあるが、ハインは本気だぞ。
そんな見た目なことで断っているとは…。あいつを見損ないそうだ」

(´・ω・`)「もちろん、建前だよ」

(`・ω・´)「?」

(´・ω・`)「このゲームをクリアするまで、色恋とか考えられないんだと思う。
っていうか、僕達が現実世界に戻るまで…僕達を現実世界に戻すまで……ね」

(`・ω・´)!

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709 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:38:37 ID:Am.mXpzk0

悲しそうに話すショボン。
シャキンはその表情と口にされた内容に、息をのんだ。

(`・ω・´)「そうか…」

(´・ω・`)「誘ったことを、まだ気にしているんだろうね。
この世界に来たのは、自分達の意思だっていうのに」

(`・ω・´)「おまえは、人のことは言えないだろ?」

(´・ω・`)「……今は良いじゃん、それはさ。
それに僕は、ドクオ程応用効かなくないよ」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「怖いんだとも思う。僕ら…。ブーン、ツン、クー、そして…僕。
自惚れじゃなく、ドクオにとってこの四人は一番大事な友達なんだよ。
もちろん他のメンバーも大事な友達だけど、やっぱりさ。
でも、ハインを好きになってきている自分がいて、そんな自分が怖いんだと思う。
いや、嫌い…なのかもしれない」

(`・ω・´)「どういう事だ?」

(´・ω・`)「ぼくら以上に好きな人を、大事な人を作ってしまうのが、怖いんじゃないかな。
そして、そんな自分が許せない。嫌い。
ドクオなら例え恋人が出来たって恋愛脳になる様なキャラじゃないから、大丈夫だと思うんだけど」

最後はおどけた様に肩をすくめて話す。
けれどその表情はやはり悲しげで、シャキンの心は痛んだ。

(´・ω・`)「でも、少しずつだけど折り合いをつけ始めているような気がするんだ。
二人でクエストとか採取に行ったりしているみたいだしね。
……大事なものが増えるのは、良いことだよ。きっと。
ドクオなら、その分慎重になってくれるはずだから」

(`・ω・´)「……この先に期待だな」

(´・ω・`)「うん。そうだね」

最後に心からの笑顔を見せるショボン。
シャキンは、それを見て心の中で安堵の吐息を漏らした。

.

710 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:39:47 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)(こいつの方も色々とどうにかしてやりたいが……)

(´・ω・`)「どうしたの?じっと見て」

(`・ω・´)「いや、なんでもない」

(´・ω・`)?

再び部屋がノックされる。

(`・ω・´)「誰だ―?」

( ゚д゚ )「おれだー」

(´・_ゝ・`)「いるー」

(`・ω・´)「いいぞー」

ドアが開き、ミルナとデミタスが中に入ってくる。

( ゚д゚ )「ショボンがいると聞いたんだが…」

(`・ω・´)「流石にお前たちはちゃんと返事を聞くな」

(´・_ゝ・`)「ショボンがいると聞いたからな」

(`・ω・´)「……」

(´・ω・`)「ミルナ、デミタス、こんにちは」

( ゚д゚ )「おう」

(´・_ゝ・`)「だな」

(´・ω・`)「ぼくに何か?」

(´・_ゝ・`)「エクストとトソンから朝霧の探索の件を依頼されたと思うんだが…」

(´・ω・`)「うん。OKしたけど不味かった?」

( ゚д゚ )「いや、それはありがたいんだが、いくらぐらいかかる?」

(´・ω・`)「へ?」

.

711 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:41:25 ID:Am.mXpzk0

( ゚д゚ )「こちらから依頼したんだから、費用が掛かるだろ?」

(´・ω・`)「ああ、他のギルドや個人から依頼されたら請求はするけど、
ここから取るつもりはないよ?」

(´・_ゝ・`)「いや、取ってくれないか」

(´・ω・`)「何故?」

( ゚д゚ )「おまえとシャキンが血縁ってことで最初から仲良くさせてもらってるし、
いろいろ便宜を図ってもらっているが、あの二人はそれに慣れ過ぎてしまったように思える」

(´・_ゝ・`)「VIPはサポートや教育を生業にしているところもある以上、
そこら辺の線引きはちゃんとしておいたほうが良いと思うんだ」

( ゚д゚ )「この前血縁だってことを知って以来、
ギルド同志が親密にしているのを普通の事だと思っている節もあるから、
そこら辺も一度締めておこうと思ってな」

(´・ω・`)「んーーー。出来ればみんなとはギルドの垣根無くいたいから、別に良いんだけど…」

(`・ω・´)「だが、一つのギルドではない」

(´・ω・`)「シャキン…」

(`・ω・´)「特に今回はお前に戦闘の指揮をしてもらいたいという明確な意思もあるからな。
一度あいつらにガツンとしておいたほうが良いか」

( ゚д゚ )「お前が言うなだが、おまえは言ってもいいのか」

(´・_ゝ・`)「一応このギルドのマスターだし、ショボンと血縁なのもこいつだし。
なんとなく納得は出来んが」

(`・ω・´)「……結構ちゃんとしたこと言ったつもりなんだけど」

( ゚д゚ )「へこむなへこむな。冗談だから」

(´・_ゝ・`)「おまえがギルマスだから、おれ達は集まってきたわけだしな」

(*`・ω・´)「そ、そうか?そうだよな。てへへへへっへへ」

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712 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:42:30 ID:Am.mXpzk0

( ゚д゚ )(うぜぇ…)

(´・_ゝ・`)(うざいな)

(´・ω・`)「……言いたいことと趣旨は分かったけど、やっぱやだ」

( ゚д゚ )「どうしてだ?」

(´・ω・`)「みんなとは、そういうの無しの繋がりでいたい。
確かにギルドは分かれているけど、みんなのことも大事だと思ってるから。
今までだってギルドの統合の話はあったけど、
その都度一つのギルドになることよりも二つのギルドでいる戦略性を
選ばせてもらったのは僕とシャキンだけど、
心の中では一つのギルドだと思ってるんだ。
二人にはぼくからも話すけど、今まで通り他のギルドや組織が絡まない時には、
そういうの無しでやりたい。
……だめかな?」

( ゚д゚ )「いや、分かった」

(´・_ゝ・`)「分かったか?二人とも」

ショボンの言葉を聞いてにやりと笑った二人。
そしてほんの少し開けておいたドアに向かって声をかける。

「「はい」」

返事と共に中に入るエクストとトソン。

(´・ω・`)「二人とも策士だね」

( ゚д゚ )「いや、おまえには負けるさ」

<_プー゚)フ「確かに甘えてました。すみませんっした」

(゚、゚トソン「そんなつもりはなかったのですが、気付かないうちに甘えていたと思います。
申し訳ありませんでした」

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713 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:44:03 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「いや気にしないで。
二人の事も、同じギルドのメンバーだと思ってるからさ。
僕にできる範疇の事なら、言ってほしい。
その分僕も無茶を言えるし、戦闘時の指揮も容赦なく出来るしね」

<_プー゚;)フ「き、気を付けます」

(゚、゚;トソン「お手柔らかにお願いします」

( ゚д゚ )「やっぱり一枚上手だったか」

(´・_ゝ・`)「そうだな」

にっこりほほ笑んだショボン。
冷や汗を垂らすトソンとエクスト。
ミルナとデミタスは少し悔しそうに笑い、シャキンはそんな五人を見て笑った。





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714 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:45:22 ID:Am.mXpzk0

5.嘘と誠と



(`・ω・´)「いろいろスマンな、うちの奴らが」

(´・ω・`)「ミルナとデミタスは色々と気を使ってくれていいよね」

(`・ω・´)「お前のところだって使ってくれてるだろ」

(´・ω・`)「まあねー。でもギルド運営とか戦闘パターンとか、そういうのは基本自由気ままだから。
ミルナとデミタスはそこら辺もサポートしてくれているんでしょ?」

(`・ω・´)「ああ。だがギルドの件はお前に任せておけば良いし、
戦闘もドクオと兄者が見てお前がまとめればそれが一番だからだろ」

(´・ω・`)「本当は色々意見も聞きたいんだけど…ってどうしたの。
変な顔して」

(`・ω・´)「ミルナとデミタスが色々言ってくれるのって、おれが頼りないからか?」

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715 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:46:27 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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716 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:47:12 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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717 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:48:12 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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718 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:49:00 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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719 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:50:41 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「えっと……」

(`・ω・´)「慰めはいらない」

(´・ω・`)「はい」

(`;ω;´)「おれ、もっとがんばる」

(´・ω・`)「シャキンは今のままでいいと思うけどね。
もともと今のシャキンを知ってからギルドになったわけだし。
うちとはギルドが出来た経緯が違うんだからさ」

(`・ω・´)「そうか?そうだよな。うん、そうだ」

(´・ω・`)(このパターンも短い間に何回もやられると飽きるよね)

(`・ω・´)「しかし血縁と言えば、しぃちゃんに会った時は驚いたな」

(;´・ω・`)「いきなり話題を持ってくるよね。確かにあれは驚いたけど」

(`・ω・´)「いきなり『兄弟ですか?』だからな」

(´・ω・`)「ふつうこういうゲームの中では、
リアルの世界関連の事柄は言わぬが花ってところがあると思うんだけど。
思わずギルド外の人に言われた時用の『他人』『友達』ってのを強調しちゃったから、
あのあとこっそり血縁だってことを話して、注意はしておいたよ」

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720 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:51:48 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「知られてまずいことはないが、
どんな弊害が出るかは分からないからな」

(´・ω・`)「そういう割にはミルナ達に紹介してくれる時に最初っから血縁だって話してくれたよね」

(;`・ω・´)「あ、あれだな、あれ」

(´・ω・`)「あれ?」

(`・ω・´)「あの子の中では、この世界ももう現実世界と同じなんだろ」

(´・ω・`)「そう…だね」

(`・ω・´)「ああ」

(´・ω・`)「でも冷静にこの世界と現実世界を見つめているところもあるんだよ」

(`・ω・´)「そうなのか?」

(´・ω・`)「うん。実はさ…」




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721 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:53:43 ID:Am.mXpzk0

6.現実と事実と



2024年4月

ギルドVIP執務室。
ショボンが一人机に向かっている。

目の前にはいくつかのウインドウが開いているが、
どちらかと言う机の上の書類を中心に見ていた。

すると、ドアがノックされた。

(´・ω・`)「はい」

(*゚ー゚)「しぃです。今大丈夫ですか?」

(´・ω・`)「大丈夫だよ」

(*゚ー゚)「お邪魔します。あ、すぐすみますからそのままで」

ドアが開かれる。
目の前のウインドウを消しつつ執務机の前から移動しようとしたショボンを止めるしぃ。
しぃの後ろにはギコも居た。

(,,゚Д゚)「お邪魔します」

(´・ω・`)「二人ともお疲れ様。しぃ、今日はお店の方はどうだった?」

(*゚ー゚)「順調です。今日から出してるメニューも好評でしたよ」

(´・ω・`)「それは良かった」

(*゚ー゚)「データは夜の分とまとめますね。今日のランチも持ってきました」

(´・ω・`)「!ありがとう。食べるの忘れてたよ」

しぃが籐で出来たようなバスケットを胸の位置で掲げるのを見て、嬉しそうにお礼を言うショボン。
そして書類を机の端に寄せた。

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722 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:55:54 ID:Am.mXpzk0

机の上に置かれるバスケット。

(*゚ー゚)「どうぞ」

(´・ω・`)「うん。話の後でいただくよ。で?二人でどうしたの?」

(*゚ー゚)「あ、やっぱり話があるって分かります?」

(´・ω・`)「わざわざ二人で来られればねー。悪い話で無いのを祈るばかりだよ」

(*゚ー゚)「ちょっとめんどくさい話です」

(´・ω・`)「しぃがそう言うってことは本当になかなか手をこまねく内容なんだろうね。
聞くのが怖いなー」

(*゚ー゚)「ショボンさんなら大丈夫ですよ」

(;´・ω・`)「ほんとに怖いんだけど」

おびえるように眉をひそめたショボンを見て笑顔を見せるしぃ。
ギコはその後ろで挙動不審に目線を部屋のあちこちに飛ばしている。

(´・ω・`)「じゃ、なんだろう。身構えて聞こうかな」

(*゚ー゚)「はい、お願いします」

しぃがウインドウを開き操作すると、ショボンの視界の隅にメッセージ到着シグナルが現れた。

(´・ω・`)「ん?」

(*゚ー゚)「開けてください」

(;´・ω・`)「えっと…本気で怖いな」

ウインドウを出すショボン。そしてメッセージを開く。

(´・ω・`)「!え、これって…え?」

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723 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:57:12 ID:Am.mXpzk0

(,,゚Д゚)「お、おれとしぃの本名と住んでるところだゴルァ」

(´・ω・`)「う、うん。二人の名前と、それぞれの住所が書いてある。…ね。
ど、どういうこと?」

(,,゚Д゚)「しぃと話し合ったんだゴルァ。
リアルに戻ってから、また会いたいからショボンに二人のデータを教えておこうって」

(´・ω・`)「ギコ……しぃ……」

(*゚ー゚)「重荷だと思いますが、よろしくお願いします」

(,,゚Д゚)「頼むぞゴルァ」

(´・ω・`)「頼むって言われても…」

真剣な顔のギコ。
柔和な笑顔を見せるしぃ。
そんな二人を交互に見ながら、珍しく本当に情けない顔を見せるショボン。
その表情は困惑と喜びから来たものだった。

(*゚ー゚)「ギルマスとして、リアルでもちゃんと呼んでくださいね」

(,,゚Д゚)「頼んだぞゴルァ」

(*゚ー゚)「ショボンさんから連絡が来る前に私達が先にショボンさん達に連絡できたら、
ペナルティですよ」

(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」

(´・ω・`)「ぼくの本名も渡しておこうかな」

(*゚ー゚)「いえ、それは大丈夫です」

(;´・ω・`)「え?ここで拒絶!?」

(*゚ー゚)「だって教えてもらってたら、私達から連絡出来ちゃうじゃないですか。
ギルマスとして、探してきてください。逃げたりしませんから」

(,,゚Д゚)「でもこちらも探す努力はするから、おれらが先に見付けることが出来たら罰ゲームだぞ」

(´・ω・`)「……ひどいな。二人とも」

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724 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 20:58:11 ID:Am.mXpzk0

(*゚ー゚)「私達をこのギルドに入れた以上、これくらいしてもらわないと」

(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」

(*゚ー゚)「後悔しました?」

(´・ω・`)「する分け無いよ。二人と仲間になれて良かった。
二人を誘った僕の目は間違ってなかったって、改めて思うよ」

(*゚ー゚)「物凄い自画自賛ですね。さすがショボンさんです」

(,,゚Д゚)「おれ達もこのギルドに入れて嬉しいぞゴラァ」

三人が、三様の笑顔を見せた。





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725 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:00:02 ID:Am.mXpzk0

7.見せかけと真意と



(`・ω・´)「それは……」

(´・ω・`)「すごいよね。二人とも。まさかそういった行動に出るとは思わなかったよ」

(`・ω・´)「すごいな、彼女は」

(´・ω・`)「で、二人がそれをしたのが広まって、
次の日のうちに全員から本名と所在地が送られてきた」

(`・ω・´)「ハハハハッハハ」

(´・ω・`)「しかも全員『ショボンの名前とかいらないから。ヨロシク』だって」

(`・ω・´)「さすがVIP、統制が取れてるな!」

(´・ω・`)「嬉しいけど大変だよまったく」

ため息を吐くショボン。
しかしその表情はどこか嬉しげで、けれどどこか寂しそうだった

(`・ω・´)「…ショボン?なにか引っかかってるのか?」

(´・ω・`)「うん…。しぃの、多分真意がね」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「彼女は、かなり聡明だよ。
多分ぼく達五人が…僕にはシャキンが、それに兄者と弟者もリアルで繋がっていることを知って、
自分が独りだってことを改めて感じたんだと思う」

(`・ω・´)「独り?いや、ギコも居るしお前達だって」

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726 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:01:30 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「うん。アインクラッドで彼女は一人じゃない。
でも、リアルの世界とのつながりは無いんだよ。
独りなんだ。
生きて帰れればいいけど、もしも死んでしまったら、それで終わり。
自分がこの世界で生きてきたことを、生き抜いたことを、リアルの誰にも知らせることは出来ない」

(`・ω・´)!

(´・ω・`)「もし僕が死んでもドクオやブーンが生き残ってくれれば、
その生きた証を父さんたちに伝えてくれると思う。
多分、彼女はそれを考えている。だから僕に依頼したんじゃないかな。
多分……だけどね」

(`・ω・´)「聡い子だな」

(´・ω・`)「うん。
おそらくだけど、モナーやクックル、モララーあたりはしぃの真意に気付いているだろうね。
そして自分達の事も教えてきたんだと思う」

(`・ω・´)「…おまえが、
自分の命に代えても自分達を守ろうとしてくれていることを、
分かっているんだな」

(´・ω・`)「………そんな良いもんじゃないけどね。
僕も、自分のエゴのために頑張っているだけだし。
それにそんな重いことはしたくないから、
絶対にみんなが生き残ることが出来るようにする。
ギルドの全員が生き残れるように。
僕はその為なら何でもやる。
…………そう。なんでもね。
その為なら泥水もすする。
僕一人なら手も染める。
………誰に後ろ指を指されても気にはしない」

(`・ω・´)「ショボン……」

(´・ω・`)「きっと、シャキンだって僕と同じ気持ちだと思うよ!
だから、シャキンの事を宜しく頼むね!」

.

727 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:03:10 ID:Am.mXpzk0

「……わかった」

「ん……」

どこから聞こえる二つの男の声。
そしてほんの少しだけずれていたドアが動き、カチャリと閉まる音がした。

(`・ω・´)「外で聞いてるやつがいるのにどこまで何を話すつもりなのかと思ったが、そういうことか」

(´・ω・`)「さっき入ってきたとき少し違和感を感じたんだ。
で、出て行ったあとドアがほんの少しだけ閉まっていなかった。
この部屋はうちと同じで完全防音仕様だけど、ドアが少しでも開いていたら外から聞けるからね」

(`・ω・´)「しかしなんだって盗み聞きなんてことをあいつらは…」

(´・ω・`)「珍しく長くぼくが居るから、心配だったのかな。
シャキンが独りで何かを抱え込むんじゃないかって」

(`・ω・´)「おれ、そんなに信用ないのか?」

(´・ω・`)「逆だよ。自分達を守るために一人で何かを抱え込んだりしてしまうんじゃないかって
思ったんじゃないかな」

(`・ω・´)「……」

(´・ω・`)「心配だったんだよ。シャキンの事が」

(`・ω・´)「だが、おまえを」

(´・ω・`)「ぼくの事も心配だったと思う。
……ぼくがシャキンにこんな話をしていることを知っているのは、二人だけだからね。
だから、シャキンが独走しないように、ぼくが迷走しないように、
知ろうとしてくれてるんじゃないかな」

(`・ω・´)「そうなら良いが…」

(´・ω・`)「あの二人とモナーとクックルは仲良いしね。
多分それなりに互いのギルドの情報交換はしていると思うよ」

(`・ω・´)「それは知ってるが」

.

728 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:04:32 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「あと、気付いているでしょ?クックルの事」

(`・ω・´)「実はちゃんと喋れるってことか?」

(´・ω・`)「うん」

(`・ω・´)「ま、そりゃ。気付くさ」

(´・ω・`)「でも、知らないふりをしていてくれる。
と言うよりも、彼を心配し、彼が声を出せないことを周囲に分かる様にしてくれている」

(`・ω・´)「お前が何か企んでるってことは分かるからな」

(´・ω・`)「あの二人もそうしてくれている。
頭が下がる思いだよ。
僕もあの二人をあの二人が思っている以上に信用し信頼しているけど、
いつかちゃんとお礼を言わなきゃだね」

(`・ω・´)「あの二人が照れながら慌てる姿が見られるってことだな」

笑う二人。
無邪気な笑顔はこの二人は本当によく似ていた。

(´・ω・`)「さて、そろそろ帰ろうかな」

ひとしきり笑った後、ショボンが大きく伸びをした。

(`・ω・´)「なんだ、もう帰るのか?夕飯作って行けよ」

(´・ω・`)「そこ、ふつう『夕飯食べて行けよ』じゃないの」

(`・ω・´)「だってお前が作った方がうまいし」

(´・ω・`)「まったく。だいたいこのギルドホームの台所って使ってるの?」

(`・ω・´)「たまにトソンが」

(´・ω・`)「トソンが入る前は」

(`・ω・´)「……」

.

729 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:07:34 ID:Am.mXpzk0

(´・ω・`)「まったく」

(`・ω・´)「うちのギルドは生産系じゃないから良いんだよ」

(´・ω・`)「攻略組の中にも料理スキルを上げている人がいるって噂があるけどね」

(`・ω・´)「噂だろ、噂」

(´・ω・`)「まったくもう」

(`・ω・´)「作ってけよー。食材は買ってくるからさー」

(´・ω・`)「食べに来ればいいでしょ」

(`・ω・´)「えーー。だってさーー」

(´・ω・`)「食材は用意してくるようにね。
あと、店の方じゃなくてリビングの方で。
ついでに朝霧の洞窟の話もしよう」

(`・ω・´)「わかった。奴らに連絡しておく」

ウインドウを出してメッセージを打つシャキン。
ショボンはその姿をじっと見ている。

(`・ω・´)「ん?どうした?」

(´・ω・`)「なんでもない」

(`・ω・´)「変なやつだな…。よし、これでよしと。さて、夕食までまだ間があるから、まだいるだろ?」

(´・ω・`)「良いけど…なんか話でもあるの?」

ウインドウを消して真っすぐにショボンの目を見るシャキン。

(`・ω・´)「実はな、今日呼んだのはこれが本題と言っても良い」

真剣な顔でショボンを見るシャキン。
怪訝に思いショボンが口を開こうとしたその瞬間、
シャキンが言葉をつづけた。
.

730 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:09:18 ID:Am.mXpzk0




(`・ω・´)「おまえは、いつまで殺人ギルドであるラフコフのやつらと接触しているつもりなんだ?」





.

731 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:13:59 ID:Am.mXpzk0



(´・ω・`)



.

732 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:15:57 ID:Am.mXpzk0

ストレートなシャキンの物言いに、思わず返答できないでいるショボン。
それは彼にとっては珍しいことだった。

(`・ω・´)「いつからかは聞かん。いつまでつながっているつもりだ?」

(´・ω・`)「何を…言っているの…と言いたいところだけど、無駄なんだろうね」

(`・ω・´)「何故かの見当はついている。だが、それにしても…」

(´・ω・`)「情報のソースはアルゴさんかな?でも、何故繋がっているかまで突き止めていたとは」

(`・ω・´)「彼女から聞いたのはお前がPoH達三人と接触していたことぐらいだ。
あとは経験からくる想像だが、間違っているとは思わん」

(´・ω・`)「間違っているかもよ?」

(`・ω・´)「報酬はギルドVIPとN−Sのメンバーの命。及び他のレッドギルドの情報ってところか。
対価は…ツンとブーンとクー。あとは兄者と弟者ってところか?」

(´・ω・`)「……すごいね」

(`・ω・´)「ラフコフには一度、4人で狩りに行った際に遭遇したことがある。
おそらくは首領のPoHとその他7人。
後から調べたら、その時近くのフィールドダンジョンで大量虐殺があったらしいから、
その流れだろうな」

(´・ω・`)「……効率の良い限定クエストの噂に騙された人達を殺しまくった…」

(`・ω・´)「ああ、それだ。
その時に居たのはハインまでの四人。
ちょうどハインがドクオに惚れた少し後の頃だな」

その事件を思い出し、顔を曇らせたショボン。

.

733 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:17:54 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「おれ達を見て奴らは笑いながら武器を構えた。
おれは何とかして三人を逃がすことを考えた時、
奥にいたフードを被った奴が合図を出して、
そいつらは森の中に消えた。
あのフードが、首領のPoHだったんだろうな。
命が助かったことに、心底ホッとした。
三人も、身体がこわばっていた。
『人』から与えられる殺意がこれほどまでにキツイとは、思わなかった。
逃げるように街に戻り、近くの宿屋に入って、やっと落ち着いた。
そこで、思った。何故逃がしてもらえたのか。
その答えが、ついこの前、やっとわかったわけだ」

(´・ω・`)

(`・ω・´)「何故、ラフィン・コフィン、殺人ギルドと手を組んだ?」

(#´・ω・`)「手を組んでなどいない!」

(#`・ω・´)「だがそう思われても仕方ない状態じゃないのか!?」

(´・ω・`)「手なんか…組んでない…人を殺す手伝いなんて…していない…」

(`・ω・´)「人はそうは思わない。
…ラフコフの補給線。
なんだろ?」

(´ ω `)「……食事と、装備と服、POT関係。それらを時々渡しているだけだよ」

(`・ω・´)「…それを、手を組んでいると」

(#´・ω・`)「違う!僕たちの命を守るためだ!それしかなかったんだ!」

(`・ω・´)「おれはそれを信じられる。それが真実なんだろう。
おまえはおれに嘘は言わないから。
隠し事はあっても。
だが、他の者がそれを信じると思うのか?」

(´ ω `)「……さっき、…言ったよね。
何でもするって。
誰に後ろ指を指されても気にしないって」

(`・ω・´)「……ミルナやデミタス、ハインにも?」

(;´ ω `)!

.

734 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:19:33 ID:Am.mXpzk0

膝の上で手を強く握って身体を固めていたショボン。
しかしシャキンの言葉に動揺して身体を震わせた。

(`・ω・´)「ギコやしぃは知っているのか?」

(´ ω `)「……話してはいない」

(`・ω・´)「モナー、クックル、モララー、フサギコ…」

(´ ω `)「話してはいないけど、多分知ってる…」

(`・ω・´)「良いのか?」

(´ ω `)「彼らが、みんなが生きていてくれるなら、僕はそれでいい。
その先で何が待ち受けていても、みんなが生きて、笑っていてくれるなら」

(`・ω・´)「ショボン……」

(´ ω `)「軽蔑…する?」

(`・ω・´)「いいや。しない。
でも、心から思うよ。
やっぱりお前がうちの会社を継ぐべきだって」

(´ ω `)「なにこんな時にそんなこと」

(`・ω・´)「祥大、気付いてないのか?
今のお前のが言っているのは、じいちゃんそっくりだって。
自分の手の中にいる者は命に代えても守るって、あれに」

(´ ω `)「似てなんかないよ」

(`・ω・´)「頑固なところもそっくりだ」

(´ ω `)「…ばかだな…」

.

735 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:20:23 ID:Am.mXpzk0

(`・ω・´)「で、話してみろ。なぜこうなったのかを」

(´・ω・`)「え?」

(`・ω・´)「話してみろ。いくらなんでもお前が自分からあいつらに関わったとは思えない」

(´・ω・`)「……志也兄さん……」

(`・ω・´)「話せ」

(´・ω・`)「!!」

(`・ω・´)「は、な、せ。」

(´・ω・`)「…………………あれは」





.

736 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:21:41 ID:Am.mXpzk0

8.死への誘いと生への渇望と



2023年7月

フィールドダンジョン『常夜の森』
鬱蒼と茂る木々。
空(実際は次のフロアの底なのだが、ほとんどの者は『空』と呼んだ)を隠す程に高くそびえ立ち、
横に広く葉を生い茂る木々。
鬱蒼と茂る草花は人の背の高さを超え、視界を邪魔している。

昼の時間さえ闇が支配するその森に、彼らはいた。

( ´_ゝ`)「弟者、逃げろ」

今流石兄弟は、オレンジプレーヤーを含む7人のプレーヤーに囲まれ、
その場を動けずにいた。

(´<_`;)「出来るわけないだろう!」

( ´_ゝ`)「何とかしておれが隙を作る。その間を縫え」

(´<_`;)「だから出来る訳がないと言っているだろう!
大体この状況でどうやって!」

( ´_ゝ`)「この前覚えたあの技を使う」

(´<_`;)「ば、馬鹿野郎!
あの技は確かに全方位に有効だが、
その後の硬直を考えれば今この場で使える訳が」

( ´_ゝ`)「だが、やらねば二人とも死ぬ。
おまえだけでも生き抜くんだ」

(´<_`;)「兄者…」

小声で周囲に聞こえない様に話す二人。

.

737 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:23:06 ID:Am.mXpzk0

兄者の声は緊張に満ち、表情は厳しい。
弟者は兄者の言葉に反発しつつも理性的な反論をすることが出来ず、
ただ感情的に言葉を荒げるだけだった。

(´<_`;)「みんなを待とう。それまで二人で戦えば」

( ´_ゝ`)「もうすでにおれ達のHPはイエローだ。
POTを飲む隙も与えてもらえない今、反撃しても結果は目に見ている。
おまえだってわかっているだろう?」

(XX)「なにを 話して、いる」

(JB)「同じ顔した二人。片方だけでも生かしてやる?」

(XX)「二人の 殺しあいを、みせてもらう か」

( ´_ゝ`)「ふっ。どうせその後で残った方を殺すんだろ」

(XX)「   ばれて るか」

(JB)「ね、ヘッド。もうやっていい?」

髑髏のマスクをつけた赤目の男と黒いマスクを被った男に詰め寄られ、
武器を構えながらも後ずさりする兄者と弟者。

しかし周囲を数人のマスクを被った男に囲われており、
それほど後ろには下がれない。

(XX)「もう、良い だろ?」

(  )

骸骨マスクと黒マスクが意識を向けた先にいる、フードの男。
大きなフードを深くかぶっているため顔は分からない。
おそらくは顔を隠すためにマスクも被っていると思われるが、
そんなことを考える余裕などなく、兄者と弟者は更に体を強張らせ、
それでも必死に武器を構えている。

.

738名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 21:24:33 ID:Am.mXpzk0

(JB)「ヘッド、何考えてるの?」

集団の中では上位にいると思われる髑髏のマスクと黒いマスクの男。
その二人がさらに指示を仰ごうとするフードの男。

兄者と弟者の力量ならば、この輪を瞬間的に破ることはおそらくできる。
前に髑髏と黒マスクとフードの男の三人、
左右に一人ずつ、後ろに二人。
これくらいの人数ならば、隙間を作り逃げることが。
そしてそれは先ほど兄者が提案したような自らを犠牲にするようなやり方ではなく、
二人で逃げることを、生き続けることを選んだとしても。

だが二人はその行動を選ぶ気にはなれなかった。
髑髏のマスク、黒マスク、この二人は確かに強いと思われる。
でも本気で逃げようとすれば、戦えば隙を作ることは可能な様に思える。

しかしその後ろのフードの男。

こいつの手からは逃げられない。

そんな気がしてしまっていた。

特に兄者は初対面のはずのこの男の恐ろしさを、何故か知っているような気がした。

感じる圧力、前の二人や周囲から浴びせられる殺気とはまた違う、
恐ろしいほどのプレッシャー。
いつか、似たような何かを感じたことがあるような気がしていた。

弟者よりも冷静にこの場を観察できたのは、
弟者を守るという決意とともに、その経験によってなのかもしれない。

兄者自身はそこまで冷静に状況分析をしているわけではなかったが。

(´<_`;)「あ、兄者…」

( ´_ゝ`)「おれの言うとおりにしろ、弟者。
それに、死ぬと決まったわけじゃない。
あいつらがすぐ来るかもしれないしな」

前の三人を見据えたまま自嘲気味に笑う兄者。
口の端を少しだけ上げただけだったが、
弟者にはそれが『笑い』であると理解できた。

.

739 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:25:57 ID:Am.mXpzk0

自らの言葉がおそらくは実現しないであろうという嘲り。
そして弟者は分かってしまう。
自分の兄が、自分を守るために自分の命を捨てる覚悟をしたことを。
そして弟者は知っていた。
自分の兄が、一度決めたことをそう簡単に覆そうとはしないことを。

(´<_` )「兄者……」

おそらくは、自分が何をしても兄者はあの技を繰り出す。
自分を中心に衝撃波を生む剣技を。
その衝撃波によってできた隙を縫って、自分は外に飛び出す。
そして……。

(´<_` )「わかった」

( ´_ゝ`)「…おまえは、生きろ」

弟者の決意を感じ、構えを取る兄者。

剣技の発動には、所定の構えを取る必要がある。
何度も練習し、何度も実践に使えば技の発動までの時間を短縮することは出来るが、
覚えたばかりの技ではそうはいかない。

(XX)「技の 発動」

(JB)「ハンマー系は覚えてないや」

両手持ちのハンマーを頭上に掲げた兄者。
最初は淡い青色に発光しだしたが、すぐに濃い青に変わる。

(#´_ゝ`)「うりゃあああああああああ!!!!!」

それはまさに渾身の一撃。

叫びながら跳躍し、振りかざしたハンマーを落下の勢いのままに振り下ろす。

本来ならば敵に当ててHPを削りつつ周囲の敵に衝撃波を与える技だが、
今回は前にいる三人を狙うふりをしながら地面を叩きつけた。

それは剣技による相殺を避け、確実に衝撃波を相手に与えるための策。

.

740 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:27:17 ID:Am.mXpzk0

だから視線はあくまでも敵に、今回はこの一団のボスであろう、フードの男に視線を向けて。

兄者の放った技はハンマー系武器の固有剣技。
個別の攻撃と共に周囲に衝撃波を放つことが出来る技である。
威力は高く、衝撃波を受けた敵は硬直を起こすため、
使い方次第では戦況を変えることの出来る重要な技であった。

だがその威力・能力の分剣技後の硬直も長めに設定されていた。
特に覚えたばかりで技の熟練度も低い今は硬直時間が最大であった。

それでも技をしっかりと当てることが出来れば敵に与えた硬直と相殺できる設定ではある。

そう、敵に当てることが出来れば。

(:´_ゝ`)「行け弟者!!!!」

地面を叩きつける数瞬前、兄者の視界から三人は消えていた。
それはこの技を予期していた証拠。
自分の企みが、すべて見抜かれていた証拠。
自分の技が見抜かれたこと、フードの男を狙っていないこと。
地面に当たった瞬間に輪の様に広がる衝撃波から逃れるための行動。
身体能力を高めている高位プレイヤーだからできる行動。
おそらくほんの少しの予備動作で、衝撃波の届かない空高く飛びあがっているであろう三人。

己の死を覚悟しつつ、今は術の発動と共に同じようにジャンプして逃げた最愛の弟を思う。

しかし耳に届いた唸り声に、深い悲しみを覚えた。

(´<_`#)「うりゃあああああああああ!!!!!」

困惑しつつ硬直時間でも動かせる首から上を最大限に動かして声のした方向を見る。

逃げたはずの弟が、斧を構えていた。

上空に飛んでいるフードの男と黒マスクの男を見ながら、斧を構える弟者。
斜め右下から左上に一撃目を放つ剣技を使い、飛んだ二人を一度に切るつもりなのだろう。

そう、「二人」を。

.

741 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:28:29 ID:Am.mXpzk0

(XX)「残念」

七人のうち、雑魚の四人は衝撃波で飛ばした。
フードと黒マスクの二人はジャンプして避けた。
最後の一人、骸骨マスクは後方に飛んだあとに繰り出した剣技によって衝撃波を防御していた。

そしておそらくは防御後に一撃繰り出すことの出来るであろう剣技に沿って、
その細い剣を、細剣とはまた違う幅を狭くした細く薄い剣によって、
無防備な弟者の脇腹を突き刺していた。

(´<_`;)「っ!!」

技をキャンセルさせられた場合も硬直は起きる。
無防備な状態の弟者を更に追撃することなど、容易なはずだった。

しかし骸骨マスクはそうはしなかった。

(XX)「今のは 仕方ない。剣技の 流れ だから。それに まだ 殺してない」

攻撃を許可しなかったフードの男に言い訳じみたことを言っている。
しかしフードの男は返答しなかった。
それを許されたと判断した骸骨マスクの男。

そして三人が兄者と弟者の前にさっきと同じように立つ。

衝撃波を受けて倒れていた四人も復活し、苛立ちと殺気を隠そうともせず武器を構えている。

ただ一つ変わったのは、弟者のHP。
赤く変わったそれを、兄者は凝視した後弟者を見た。

(´<_`;)「逃げられるわけ、無いじゃないか」

弟者の狙いは分かった。
兄者の企みがうまくいった場合は、三人を通常の武器による追撃によってさらに大きな隙を作り、
兄者を抱えてでも逃げるつもりだったのであろう。
考えられた最悪の状況により三人が上空に逃げた場合は自分の剣技によって三人を追撃し、
できた小さな隙によって、けれど硬直から回復しているであろう兄者を連れて逃げるつもりだった。

だが実際は更に最悪な状況だった。
剣技による衝撃波の相殺と追撃による自身の負傷。

それは弟者の読みの浅さが招いた結果と言うには酷ではあるが、
そうとしか見えないのも事実であった。

.

742 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:29:42 ID:Am.mXpzk0

(´<_`;)「……すまない…兄者…」

( ´_ゝ`)「おれも想定外だった…」

とうとう八方塞を感じた兄者にとって、そうとしか言えない状況だった。

必死で逃げる方法を考えるが、暗闇の中だった。

唯一の光明は、何故かまだ自分達が生きていること。
本来ならばもう殺されていてもおかしくないのに、なぜか生きている。

光明ではあるが、理由が分からない以上すがることは出来ない。

兄者は、最近は仲間に、ギルマスに任せてしまっていることに、一歩踏み出した。

( ´_ゝ`)「で、何が目的なんだ?」

(XX)「殺したい だけ」

(JB)「もっと楽しみたいけど、これくらいで終わりかな」

( ´_ゝ`)「おまえらはそうでも、そいつは違うだろ」

『生きるために情報を引き出す』

自分よりも達者な者がいるならばそのものに任せてしまうという
兄者の悪い癖が出て最近はすべてショボンに任せているが、
兄者自身はこの作業は嫌いではなかった。
画面上、短いセンテンスの受け答えと相手の取った行動でその真意を測る。
MMORPGのプレイヤーとして行ってきたこと。
兄者はそれが苦手ではなかった。
得意であるとは言わないが、大きく外れたことは無かった。
ショボンの様に相手の顔色や仕草から読み取ることは苦手だが、
今の相手はマスクを着けていて顔が分からないから、画面と同じ。
そう思うことにより、口を開く。

( ´_ゝ`)「殺人ギルド、『Laughing Coffin』。
何が狙いだ」

兄者は変人だが、馬鹿ではない。

.

743 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:31:10 ID:Am.mXpzk0

変態だが、考えることを放棄したりしない。

思考と観察力だけならば、ギルドでもトップクラスである。

ギルドの中でその事に正しく気付いているのは実の弟とギルドマスターだけだとしても。

( ´_ゝ`)「ギルドマスターの『PoH』!!
何とか言え!」

フードの男が笑ったような気がした。

( ´_ゝ`)?

(´<_` )?

そして弟者は兄には劣るものの思考能力を持ち、
更にそれを埋めて余りある誠実さと思慮深さ、
正しい方向への行動力を持っていた。

兄者が思いついたことに対する瞬発力だとすれば、
弟者は考え抜いたことに対する持久力。

兄者の言葉から何を考えているのかを見抜き、
おそらくは兄が見逃してしまうような全体の雰囲気に気を配っていた。

それにより、弟者は斧を再び振り上げた。

(´<_`#)「おりゃああああああああ!!!」

それは絶叫。
斧を振り上げたまま空間を震わせるような雄叫びをあげる。

(;´_ゝ`)「弟者!?」

隣にいる仲間の狼狽した声に触発され、
思わず全員が弟者を見た瞬間、青い突風が吹いた。

.

744 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:32:31 ID:Am.mXpzk0

(  )

(XX)!

(JB)!

反応できた三人は流石だろう。

トップスピードで突撃してきたブーンの片手剣を、PoHは極端に少ない動作で避け、
髑髏とマスクはその場で自分の武器を使ってはじいた。

もともとブーンには三人を傷付けるつもりはなかったため、そのまま兄弟の周囲を駆ける。

周囲にいた者を牽制するブーンの片手剣。
三人以外は後方に数歩避けた。

そして周囲の視線をブーンが引き寄せた時、髑髏と黒マスクにドクオの片手剣が襲い掛かる。
死角から放たれたその攻撃すらも二人は自らの武器で防御したが、
流石に今度は後方に飛んだ。

そしてそれを見逃すことなく、できた隙間に向かって走り出す兄者と弟者。
その後ろをブーンが追い、髑髏とマスクを動かすことに成功したドクオの横に立って武器を構えた。
兄者と弟者もその後ろで武器を構える。

( ^ω^)「間に合ってよかったお」

( ´_ゝ`)「すまない。二人とも」

(´<_` )「助かった」

('A`)「安心するのはこの場から離れた後だな」

ドクオの言葉に気を引き締める三人。

そのまま逃げることも出来たように思えるが、
背中を見せないほうが良いという指示により、
四体七での対峙という図式が出来上がった。

.

745 ◆dKWWLKB7io:2014/11/09(日) 21:35:18 ID:Am.mXpzk0

(JB)「……よくもやってくれたね」

(XX)「二人がかりの 奇襲とは いえ 俺達を だしぬいた」

自分達の後ろに悠然と構えているPoHを感じつつ、
余裕を持ったふりをしながら武器を構える。

その前にブーンの威嚇で簡単に動いてしまっていた四人が立つ。

(XX)「邪魔。退け」

しかしすぐに髑髏マスクの男が左右に追い払った。

情報よりも強くしたたかだった同じ顔の二人。
情報以上に強いと思われる追加の二人。
確実に殺すためには、快楽を得るためには四人は邪魔だと考えていた。

もう一人、黒マスクの男は同じことを思いつつも、違うことに考えを向けていた。

(JB)「まだ、いるよね」

先に集めた情報から、突進してきた男が素早いことは理解している。
そしてもう一人の黒ずくめの男が、戦闘では飛びぬけている事も分かっている。
だが、もう一つのピースが、欠けていた。

(  )

それに他にも仲間はこの場にくるだろうと思い口にした言葉だったが、
それを聞いた、自分が崇拝する、
心酔していると言ってもよい男が、
笑ったように感じた。

(JB)?

その真意がつかめず、
振り返りたいが目の前の標的から目を離すことも出来ず、
ただ武器を構える黒マスクの男。

しかしその対峙は長く続かなかった。

醜態を見せてしまった四人が、
耐え切れずに剣を振り上げて突進した。

.




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